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特表2024-533095筋骨格系の治療のためのデジタルツインシステム、デバイス、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】筋骨格系の治療のためのデジタルツインシステム、デバイス、および方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 70/20 20180101AFI20240905BHJP
【FI】
G16H70/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513497
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 US2022041163
(87)【国際公開番号】W WO2023034072
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/239,169
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507280594
【氏名又は名称】マコ サージカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ガーリング、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ロング、アリソン
(72)【発明者】
【氏名】ポランコス、アマイア
(72)【発明者】
【氏名】ヴュステマン、ティース
(72)【発明者】
【氏名】デ マッサーリ、ダニエレ
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
疾患または障害を有している対象患者を治療するためのガイダンスの電子表示を生成するための方法は、1つまたは複数のプロセッサによって、(i)対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、(ii)医療サービスプロバイダからの対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、および(iii)医療サービスプロバイダからの対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットと、を備える複数の以前データセットを受け取る。非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納済みの、複数の以前データセットにわたるパターンを識別するためのアルゴリズムを実行する。パターンは、対象患者に可能性が存在している複数の治療オプションごとの成功確率を記述する。1つまたは複数のプロセッサは対象患者への治療パス推奨を自動生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋骨格疾患または筋骨格障害を有している対象患者を治療するためのガイダンスの電子表示を生成および提示するためのコンピュータ実装方法であって、前記コンピュータ実装方法は、
複数の以前データセットを、1つまたは複数のプロセッサによって受け取る工程であって、複数の前記以前データセットは、(i)前記対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、(ii)医療サービスプロバイダからの前記対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、および(iii)前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットと、を備えている、複数の前記以前データセットを受け取る工程と、
非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納済みの、複数の前記以前データセットにわたるパターンを識別するためのアルゴリズムを実行する工程であって、前記パターンは前記対象患者に可能性が存在している複数の治療オプションごとの成功確率を記述する、前記アルゴリズムを実行する工程と、
1つまたは複数の前記プロセッサによって、前記対象患者への治療パス推奨を自動的に生成する工程と、
前記治療パス推奨の電子表示を生成および提示する工程と、
を備えている、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
1つまたは複数の前記プロセッサは、前記対象患者に特異的な少なくとも1つの前記データセットを、前記対象患者からウェブベースのアプリケーションを介して受信する、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
1つまたは複数の前記プロセッサは、前記対象患者に特異的な少なくとも1つの前記データセットを、前記対象患者からウェアラブル電子デバイスを介して受信する、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つの前記データセットは、患者報告アウトカム指標を備えている、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記治療パス推奨は、放射線評価を実行する工程を備えているか、または磁気共鳴画像(MRI)評価もしくはコンピュータ断層撮影(CT)評価を実行する工程を備えている、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記治療パス推奨は、非外科的治療計画を備えており、
前記非外科的治療計画は、1つまたは複数のリハビリテーション運動、医療プロバイダからの1つまたは複数の治療、および/または1つまたは複数の薬物治療、を備えている、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記治療パス推奨は、推奨インプラントおよび推奨人工関節置換術計画を備えている、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記推奨人工関節置換術計画は、人工膝関節全置換術計画または人工膝関節部分置換術計画である、
請求項7に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記治療パス推奨は、前記対象患者のための推奨術前治療スケジュールを備えており、
推奨人工関節置換術計画は、後十字靭帯温存型人工膝関節置換術、後方安定型人工膝関節全置換術、骨セメントを用いた人工膝関節全置換術、または骨セメントを用いない人工膝関節全置換術、である、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記治療パス推奨は、推奨術前薬物治療を備えている、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記治療パス推奨の前記電子表示を生成および提示する前記工程は、
前記対象患者の推奨外科的治療の治療成功確率を表示する工程と、
前記対象患者の推奨非外科的治療の治療成功確率を表示する工程と、
を備えており、
前記推奨外科的治療の前記治療成功確率と、前記推奨非外科的治療の前記治療成功確率と、は
(i)前記対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つの前記データセットと、
(ii)前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者に特異的な少なくとも1つの前記データセットと、および
(iii)前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者との少なくとも1つの前記共通属性を有している前記患者集団に特異的な少なくとも1つの前記データセットと、
の各々を使用することで決定される、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者との少なくとも1つの前記共通属性を有している前記患者集団に特異的な少なくとも1つの前記データセットは、複数の以前のロボット外科手技からのロボットデータを備えており、
前記ロボットデータは、前記対象患者との少なくとも1つの前記共通属性を有している前記患者集団内の患者ごとの外科手技中のロボットアームの運動を備えている、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記治療パス推奨は、ロボット医学的手技のための推奨手術計画を備えており、
前記推奨手術計画は、前記対象患者を治療するための推奨ロボットツールの運動を備えている、
請求項12に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つの前記データセットは、前記ロボット外科手技の後で前記対象患者から収集された術後データを備えており、
前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者に特異的な少なくとも1つの前記データセットは、前記対象患者を治療するべく行なわれる前記ロボット外科手技からのデータを備えており、
前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者との少なくとも1つの前記共通属性を有している前記患者集団に特異的な少なくとも1つの前記データセットは、以前のロボット外科手技を受けた患者から収集された術後データを備えており、
前記治療パス推奨は、前記対象患者のための推奨術後リハビリテーション運動スケジュールを備えている、
請求項12に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
前記コンピュータ実装方法はさらに、
非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納済みの、複数の前記以前データセットにわたるパターンを識別するための第2アルゴリズムを実行する工程であって、前記パターンは前記対象患者に可能性が存在している複数の治療オプションごとの成功確率を記述する、前記第2アルゴリズムを実行する工程と、
1つまたは複数の前記プロセッサによって、前記対象患者に可能性が存在している複数の前記治療オプションごとの前記成功確率を使用することで、前記対象患者のための更新済み治療パス推奨を自動的に生成する工程と、
更新済み前記治療パス推奨の前記電子表示を生成および提示する工程であって、更新済み前記治療パス推奨は、前記対象患者の術後リハビリテーション運動スケジュールのための推奨調整を備えている、前記電子表示を生成および提示する前記工程と、
を備えている、
請求項14に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項16】
医学的処置を行なうためのガイダンスの電子表示を生成および提示するためのシステムであって、前記システムは、
前記医学的処置用の前記ガイダンスの前記電子表示を生成および提示するための命令を格納するコンピュータ可読記憶媒体と、
前記命令を実行することで方法を実行するように構成された1つまたは複数のプロセッサと、
を備えており、
前記方法は、
複数の以前の手技データセットを受け取る工程であって、以前の前記手技データセットの各々は、(i)対象患者に特異的で、かつ前記対象患者から受信済みの少なくとも1つのデータセットと、(ii)前記対象患者に特異的で、かつ医療サービスプロバイダから受信済みの少なくとも1つのデータセットと、および(iii)前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットと、のうちの1つまたは複数を備えている、複数の以前の前記手技データセットを受け取る前記工程と、
前記医学的処置の予測アウトカムを同定する客観的データを識別する工程と、
複数の前記以前の手技データセットにわたるパターンを識別する工程であって、前記パターンは前記客観的データによって定義される患者アウトカムを達成する前記医学的処置の特性を記述する、前記パターンを識別する前記工程と、
医療プロバイダから、前記対象患者に将来実施される前記医学的処置のインスタンスに関する情報を受け取る工程と、
前記パターンによって識別済みの前記特性と、実施される前記医学的処置の前記インスタンスに関して受信済みの前記情報と、に基づき前記医学的処置を実施するための前記ガイダンスを自動的に生成する工程と、
前記医学的処置を実施するための前記ガイダンスの前記電子表示を、生成および提示する工程と、
を備えている、システム。
【請求項17】
前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者との少なくとも1つの前記共通属性を有している前記患者集団に特異的な少なくとも1つの前記データセットは、複数の以前のロボット外科手技からのロボットデータを備えており、
前記ロボットデータは、前記対象患者との少なくとも1つの前記共通属性を有している前記患者集団内の患者ごとの外科手技中のロボットアームの運動を備えている、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
治療パス推奨は、ロボット医学的手技のための推奨手術計画を備えており、
前記推奨手術計画は、前記対象患者を治療するための推奨ロボットツールの運動を備えている、
請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
筋骨格疾患を有している対象患者を治療するための外科手技の術前ガイダンスの電子表示を生成および提示するためのコンピュータ実装方法であって、前記コンピュータ実装方法は、
複数の以前データセットを、1つまたは複数のプロセッサによって受け取る工程であって、複数の前記以前データセットは、(i)前記対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、(ii)医療サービスプロバイダからの前記対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、および(iii)前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットと、を備えており、前記患者集団の患者の各々は、前記対象患者の前記外科手技とで同じ外科手技を受けている、複数の前記以前データセットを受け取る工程と、
非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納済みの、複数の前記以前データセットにわたるパターンを識別するためのアルゴリズムを実行する工程であって、前記パターンは、前記対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つの前記データセットと、前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者に特異的な少なくとも1つの前記データセットと、および前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者との少なくとも1つの前記共通属性を有している前記患者集団に特異的な少なくとも1つの前記データセットと、に基づき前記対象患者への前記外科手技が前記外科手技の平均的困難度よりも難しいと予測されるかどうかを記述する、前記アルゴリズムを実行する工程と、
1つまたは複数の前記プロセッサによって、前記対象患者を治療するための前記外科手技の困難度の評点を自動的に生成する工程と、
前記外科手技の前に、前記困難度の前記評点の電子表示を生成および提示する工程と、
を備えている、コンピュータ実装方法。
【請求項20】
前記コンピュータ実装方法はさらに、
非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納済みの、複数の前記以前データセットにわたる前記パターンを識別するための前記アルゴリズムを実行する工程であって、前記パターンは、前記対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つの前記データセットと、前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者に特異的な少なくとも1つの前記データセットと、および前記医療サービスプロバイダからの前記対象患者との少なくとも1つの前記共通属性を有している前記患者集団に特異的な少なくとも1つの前記データセットと、に基づき前記対象患者への前記外科手技の手術計画の一部が前記外科手技の前記一部の前記平均的困難度よりも難しいと予測されるかどうかを記述する、前記アルゴリズムを実行する工程と、
1つまたは複数の前記プロセッサによって、前記対象患者を治療するための前記外科手技の前記手術計画を自動的に生成する工程と、
前記外科手技の前に前記手術計画の電子表示を生成および提示する工程であって、前記手術計画の前記電子表示は、前記外科手技の前記一部が前記外科手技の前記一部の前記平均的困難度よりも難しいと予測されるかどうかのインジケーションを備えている、前記手術計画の前記電子表示を生成および提示する前記工程と、
を備えている、請求項19に記載のコンピュータ実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般に、筋骨格状態の治療のためのガイダンスを提供することに関する。より具体的には、本開示は、デジタルデータベース、患者、医療プロバイダ、手術ロボット、および、デジタルツイン仮想環境中の以前の手技、からのデータを収集および分析することで、医学的処置のためのガイダンスを開発することに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年8月31日に出願された米国仮特許出願第63/239,169号の米国特許法第119条下における優先権の利益を主張するものであり、その全体は参照によって本明細書に援用されている。
【0003】
筋骨格疾患は、医師に一意(ユニーク)の問題を提示する。現在、筋骨格状態を管理するときに、適切な患者に、適切な治療を適切な時機に確実に行なうためのアプローチは標準化されていない。変形性関節症は、筋骨格疾患を有している患者たちの大部分を占める1つの筋骨格状態である。そして変形性関節症の治療は、多くの場合、人工関節置換術の手技(プロシージャ)を必要とする。
【0004】
人工関節置換術の手技は、一般に、対象の関節を人工関節構成要素とで置換する工程を備えている。例えば、人工膝関節全形成術(「TKA」:トータルニーアンスロプラスティ)の手技は、大腿骨の遠位端部および脛骨の近位端部を、各々に大腿骨人工関節および脛骨人工関節とで置換する工程を備えている。これらの人工関節の移植の前に、大腿骨遠位部および脛骨近位部における複数の骨切除を必要とする。適切な軟組織の張力、関節のアライメントおよびバランス、は滑らかで良好にアライメントされた関節の運動に必要である。患者の健康および治療の履歴に迅速にアクセスする機能がなければ、外科医は、患者の特定の解剖学的形態または既往症を考慮できないので、人工関節置換術の手技に必要な調整を行なうことができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/013565号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移植技術および手術手技が改善されてきているが、患者アウトカムは、筋骨格手技中に変動し続ける。外科医の経験および技能の違い、治療選択、周術期のケア基準の欠如、患者の併存疾患、ならびに患者との意思疎通および関与方法の違い、によって多くの場合、治療計画に従う患者が減少しているとともに、医療専門家が行った意思決定が著しくバラつくので、負のアウトカムにつながることがある。加えて、ヘルスケアシステムによる患者フローが非効率的であるだけでなく、ヘルスリテラシーのプロビジョニングが限られているので、患者が満足しないだけでなく、治療計画のリビジョンが避けられるとともに、患者の生活の質が影響を受けたり、リソースの使用が損なわれたりするだけでなく、ヘルスケアシステムに対するコストが増加する。
【0007】
人工関節置換術は、筋骨格状態を管理するための1つの解決策に過ぎないので、エンドポイントを無効にできる虞があるとみなされる。或る割合の人々は、理学療法、食事制限、および運動、のような他の介入治療を備えている、協働したリスク評価および治療プログラムを用いて管理されているので、手術の必要性が低減するか少なくともよい時機まで手術を遅延させるかいずれかである場合、人工関節置換術を回避することができる。例えば、年齢と、症状の発症と、の間の相関が密接である変形性関節症を有している大部分の人々は、六十歳を超えるので、糖尿病、心疾患、および肥満症、などの効率的に考慮されなければならない多数の関連する併存疾患を有していることが多い。筋骨格疾患の診断および治療を通じて、患者パス全体を通したこれらの患者特性を効率的に追跡する必要がある。
【0008】
筋骨格疾患の治療に関する、上記の問題および関連する健康問題の1つまたは複数に対処する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施形態は、とりわけ、患者ケアパス全体を通して情報を取得したり、取得された情報を分析したり、することで患者の診断および治療のためのガイダンスを医療専門家に提供することに関する。本明細書に開示される実施形態の各々は、他の開示された実施形態のいずれかに関連して記載される特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0010】
一例では、筋骨格疾患または筋骨格障害を有している対象患者を治療するためのガイダンスの電子表示を生成および提示するためのコンピュータ実装方法が開示される。方法は、1つまたは複数のプロセッサによって、(i)対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、(ii)医療サービスプロバイダからの対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、および(iii)医療サービスプロバイダからの対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットと、を備えている複数の以前データセットを受け取る工程と、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納済みの、複数の以前データセットにわたるパターンを識別するためのアルゴリズムを実行する工程であって、前記パターンは、対象患者に可能性が存在している複数の治療オプションごとの成功確率を記述している、前記アルゴリズムを実行する工程と、を含み得る。方法は、1つまたは複数のプロセッサによって、対象患者への治療パス推奨(トリートメントパスウェイレコメンデーション)を自動的に生成する工程と、治療パス推奨の電子表示を生成および提示する工程と、をさらに含み得る。
【0011】
他の例では、方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。1つまたは複数のプロセッサは、対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットを、患者からウェブベースのアプリケーションを介して受信し得る。1つまたは複数のプロセッサは、対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットを、患者からウェアラブル電子デバイスを介して受信し得る。対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットは、生活の質スコアおよび/または人工関節忘却スコア(フォーゴットンジョイントスコア)を含み得る。治療パス推奨は、放射線評価を実行すること、または磁気共鳴画像(MRI)評価もしくはコンピュータ断層撮影(CT)評価を実行することを含み得る。治療パス推奨は、非外科的治療計画を含み得、非外科的治療計画は、1つまたは複数のリハビリテーション運動、医療プロバイダからの1つまたは複数の治療、および/または1つまたは複数の薬物治療、を備えている。治療パス推奨は、推奨インプラントおよび推奨人工関節置換術計画を含み得る。推奨人工関節置換術計画は、人工膝関節全置換術計画または人工膝関節部分置換術計画であり得る。治療パス推奨は、患者のための推奨術前治療スケジュールを含み得る。治療パス推奨は、推奨術前薬物治療を含み得る。
【0012】
他の例では、方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。治療パス推奨の電子表示を生成および提示する工程は、患者の推奨外科的治療の治療成功確率を表示する工程と、患者の推奨非外科的治療の治療成功確率を表示する工程とを含み得、推奨外科的治療の治療成功確率および推奨非外科的治療の治療成功確率は、(i)対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、(ii)医療サービスプロバイダからの対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、および(iii)医療サービスプロバイダからの対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットと、の各々を使用することで決定される。医療サービスプロバイダからの対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットは、複数の以前のロボット外科手技からのロボットデータを含み得る。ロボットデータは、対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団内の患者ごとの外科手技中のロボットアームの運動を備えている。治療パス推奨は、ロボット医学的手技のための推奨手術計画を含み得る。推奨手術計画は、対象患者を治療するための推奨ロボットツールの運動を備えている。対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットは、ロボット外科手技後に患者から収集された術後データを含み得る。医療サービスプロバイダからの対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットは、対象患者を治療するべく行なわれたロボット外科手技からのデータを含み得る。医療サービスプロバイダからの対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットは、以前のロボット外科手技を受けた患者から収集された術後データを含み得る。治療パス推奨は、対象患者のための推奨術後リハビリテーション運動スケジュールを含み得る。
【0013】
他の例では、方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。方法はさらに、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納済みの、複数の以前データセットにわたるパターンを識別するための第2アルゴリズムを実行する工程であって、前記パターンは、対象患者に可能性が存在している複数の治療オプションごとの成功確率を記述する、前記第2アルゴリズムを実行する前記工程と、1つまたは複数のプロセッサによって、対象患者に可能性が存在している複数の治療オプションごとの成功確率を使用することで、対象患者のための更新済み治療パス推奨を自動的に生成する工程と、更新済み前記治療パス推奨の電子表示を生成および提示する工程であって、更新済み前記治療パス推奨は、対象患者の術後リハビリテーション運動スケジュールのための推奨調整を備えている、前記電子表示を生成および提示する前記工程と、を含み得る。
【0014】
他の態様では、医学的処置を実施するためのガイダンスの電子表示を生成および提示するためのシステムは、医学的処置のためのガイダンスの電子表示を生成および提示するための命令を格納するコンピュータ可読記憶媒体と、これら命令を実行することで方法を実行するように構成された1つまたは複数のプロセッサと、を含み得る。方法は、複数の以前手技データセットを受け取る工程であって、前記以前手技データセットの各々は、(i)対象患者に特異的であるとともに、対象患者から受信する少なくとも1つのデータセットと、(ii)対象患者に特異的であるとともに、医療サービスプロバイダから受信する少なくとも1つのデータセットと、および(iii)医療サービスプロバイダからの対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットと、のうちの1つまたは複数を備えている、前記以前手技データセットを受け取る前記工程と、医学的処置の予測されたアウトカムを識別する客観的データを識別する工程と、複数の以前の手技データセットにわたるパターンを識別する工程であって、前記パターンは、客観的データによって定義された患者アウトカムを達成する医学的処置の特性を記述する、前記パターンを識別する前記工程と、を含み得る。方法はさらに、医療プロバイダから、対象患者に将来実施される医学的処置のインスタンスに関する情報を受け取る工程と、パターンによって識別済みの特性および実施される医学的処置のインスタンスに関して受信済みの情報に基づき、医学的処置を実施するためのガイダンスを自動的に生成する工程と、医学的処置を実施するためのガイダンスの電子表示を生成および提示する工程と、を含み得る。
【0015】
他の態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含んでもよい。医療サービスプロバイダからの対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットは、複数の以前のロボット外科手技からのロボットデータを含み得る。ロボットデータは、対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団内の患者ごとの外科手技中のロボットアームの運動を備えている。治療パス推奨は、ロボット医学的手技のための推奨手術計画を含み得る。推奨手術計画は、対象患者を治療するための推奨ロボットツールの運動を備えている。
【0016】
他の態様では、筋骨格疾患を有している対象患者を治療するための外科手技の術前ガイダンスの電子表示を生成および提示するためのコンピュータ実装方法が開示されている。方法は、1つまたは複数のプロセッサによって、(i)対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、(ii)医療サービスプロバイダからの対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、および(iii)医療サービスプロバイダからの対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットと、を備えている複数の以前データセットを受け取る工程であって、患者集団の患者の各々は、対象患者の外科手技とで同じ外科手技を受ける、複数の前記以前データセットを受け取る前記工程と、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納済みの、複数の以前データセットにわたるパターンを識別するためのアルゴリズムを実行する工程ことであって、前記パターンは、対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、医療サービスプロバイダからの対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、および医療サービスプロバイダからの対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットと、に基づき対象患者の外科手技が平均的な困難度の外科手技よりも難しいと予測されるかどうかを記述する、前記パターンを識別するための前記アルゴリズムを実行する前記工程と、を含み得る。方法はさらに、1つまたは複数のプロセッサによって、対象患者を治療するための外科手技の困難度の評点を自動的に生成する工程と、外科手技の前に困難度の評点の電子表示を生成および提示する工程と、を含み得る。
【0017】
いくつかの例では、方法はさらに、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納済みの、複数の以前データセットにわたるパターンを識別するためのアルゴリズムを実行する工程であって、前記パターンは、対象患者からの前記対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、医療サービスプロバイダからの対象患者に特異的な少なくとも1つのデータセットと、および医療サービスプロバイダからの対象患者との少なくとも1つの共通属性を有している患者集団に特異的な少なくとも1つのデータセットと、に基づき対象患者の外科手技の手術計画の一部が外科手技の一部の平均的な困難度よりも難しいと予測されるかどうかを記述する、前記アルゴリズムを実行する前記工程と、1つまたは複数のプロセッサによって、対象患者を治療するための外科手技の手術計画を自動的に生成する工程と、外科手技の前に手術計画の電子表示を生成および提示する工程であって、手術計画の表示は外科手技の一部が外科手技の一部の平均的な困難度よりも難しいと予測されるかどうかのインジケーションを備えている、前記電子表示を生成および提示する前記工程と、を含み得る。
【0018】
上述の一般的な説明および以下の発明を実施するための形態はどちらも例示的かつ説明的であり、特許請求される本発明を限定しないと理解され得る。
添付の図面は、この明細書の一部に組み込まれ、これを構成しており、本開示の例示的な実施形態を示しており、この説明と併せて、本開示の原理を説明する役目を果たしている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】例示的な実施形態による、医療専門家にガイダンスを提供するための筋骨格デジタルツインシステムを示す。
図2】例示的な実施形態による、筋骨格デジタルツインデータフロー図を示す。
図3-1】例示的な実施形態による、筋骨格デジタルツインシステムの処理フロー図を示す。
図3-2】例示的な実施形態による、筋骨格デジタルツインシステムの処理フロー図を示す。
図4】例示的な実施形態による、デジタルツインシステムによって提供された例示的な医療プロバイダアラートを示す。
図5】例示的な実施形態による、患者パスの概略図を示す。
図6】例示的な実施形態による、デジタルツインシステムを組み込んだロボット医学的手技用のガイダンスを提供するためのシステムを示す。
図7】例示的な実施形態による、筋骨格治療アウトカム予測モデルを示す。
図8】例示的な実施形態による、患者データを処理しており、患者治療用のガイダンスを提供するための例示的なデジタルツインアーキテクチャのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示には、他の態様の中でも、筋骨格疾患の治療用のガイダンスを提供するためのシステムおよび方法が示されている。デジタルツインは、将来を計画したりまたは予測したりするべく、データの分析およびシステムの監視を容易にする、物理世界とデジタル世界との間のブリッジである。本明細書では、デジタルツインは、患者の筋骨格系、病歴、および治療記録、の生物物理学的態様の仮想表現であるだけでなく、エビデンスに基づいた人工知能パワードモデルとで組み合わされているとともに、データを分析することで一連の臨床的および論理的質問に回答するためのインサイトを提供する。
【0021】
本開示は、患者の治療行程のデータ記録を格納するべくデジタルツイン電子システムを組み込むとともに、患者データを分析することで一連の臨床的質問に対する回答を提供することができるエビデンスに基づいた人工知能パワードモデルを実行することで、患者データおよび関連する分析および推奨を、電子ネットワークを介して医療プロバイダに配信するシステム、方法、およびデバイス、を備えている。
【0022】
図1は、デジタルツイン電子システム(101)を利用する整形外科医療用の変換的リアルタイム分析システム(TRANSFORM:トランスフォーム)111を備えているデジタル環境100を示す。整形外科医療の文脈で論じられるが、本明細書で論じられるシステム、方法、およびデバイス、はそのように限定されずに整形外科医療以外の他の医療文脈で利用されてもよい。デジタルツインシステム(101)は、インターネットに通信することで提供されるオンラインプラットフォームを含み得る。いくつかの例では、デジタルツインシステム(101)は、例えば、プラットフォームサーバシステムおよびウェブサーバシステムを含み得る。プラットフォームサーバシステムは、インターネットまたは任意の他の電子ネットワークシステムを介して、ウェブサーバシステムに通信し得る。一例では、プラットフォームサーバシステムおよびウェブサーバシステムは、共通の所有者によって運営されてもよいし、または完全に所有されてもよいし、単一の企業もしくは団体によって運営されてもよい。別の実施形態では、プラットフォームサーバシステムまたはウェブサーバシステムの一方または両方は、インターネットベンダにアウトソーシングされてもよい。いくつかの例では、動的ユーザインタフェースは、デジタルツインシステム(101)に通信したりまたはその一部であったりしてもよい。
【0023】
デジタル環境100は、コンピュータ、モバイルデバイス、または他の電子デバイス、を介してインターネットまたは他の電子ネットワーク経由で、デジタルツイン101のプラットフォームサーバシステムおよびウェブサーバシステムとでインタラクト(対話、相互作用)する医療サービスプロバイダ(HCSP:ヘルスケアサービスプロバイダ)107も含み得る。いくつかの例では、医療サービスプロバイダ107は、手術ロボットを介してデジタル環境100にアクセスし得る。一般に、医療サービスプロバイダ107は、インターネットを介してデジタルツイン101に通信し得るだけでなく、デジタルツイン101内に含まれる多数のデータソース103と、人工知能(AI)およびデータアナリティクス120と、にアクセスし得る。例えば、医療サービスプロバイダ107は、例えば、ウェブサーバシステム、または病院の独立した電子ネットワーク内に含まれた電子アプリケーションなどの他の電子システムによって実行されるウェブサイトとでインタラクトすることによって、診断または現在の治療レジメンなどの患者に関する情報を、デジタルツイン101のプラットフォームサーバシステムおよび/またはウェブサーバシステムに送信し得る。次に、デジタルツイン101は、推奨される患者の治療、患者の解剖学的形態、もしくは手術環境、のデジタルモデルまたは他のデータ分析に関する情報を、要求に応じてすべてインターネットを介して医療サービスプロバイダに送信し得る。
【0024】
デジタルツイン101、データソース103、および患者インタフェース105、を備えているデジタル環境100は、パーソナルコンピュータ、モバイルデバイス、クラスタ化コンピューティングマシン、および/またはサーバ、などの任意のタイプまたは組合せのコンピューティングシステムを実装し得る。一実施形態では、各コンピューティングシステムは、メモリ、中央処理装置(「CPU」)、および/またはユーザインタフェース、を備えているハードウェアのアセンブリであってもよい。メモリは、ハードディスクもしくは磁気テープを備えている磁気ストレージ、ソリッドステートディスク(SSD)もしくはフラッシュメモリなどの半導体ストレージ、光ディスクストレージ、または光磁気ディスクストレージ、などの物理的な記憶媒体に具現化された任意のタイプのRAMまたはROMを含み得る。CPUは、メモリに格納済みの命令に従ってデータを処理するための1つまたは複数のプロセッサを含んでよい。プロセッサの機能は、単一の専用プロセッサによって、または複数のプロセッサによって、提供され得る。さらにプロセッサは、限定ではないが、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)ハードウェア、またはソフトウェアを実行できる任意の他のハードウェア、を含み得る。ユーザインタフェースは、ディスプレイモニタ、タッチスクリーン、キーボード、および/またはマウス、のような入出力デバイスの任意のタイプまたは組合せを含み得る。医療サービスプロバイダ107または患者109によって使用されるモバイルデバイスは、例えば、ローカルエリアまたはワイドエリアWi-Fi(登録商標)またはBluetooth(登録商標)接続、などの任意の他の無線通信媒体を介して無線デジタルデータ、電話、および/またはインターネットアクセス、にアクセスするように構成され得る。モバイルデバイスは、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(「PDA」)、いわゆる「スマートフォン」、タブレットPCコンピュータ、または、通信を受信してユーザにデータを表示するように構成された任意の他のモバイルデバイス、の任意のタイプまたは組合せを含み得る。
【0025】
デジタルツイン101を利用することで、本明細書に記載の様々な機能(例えば、計算、処理、分析)を実装し得る。いくつかの例では、デジタルツイン101は、プロセッサおよびメモリを有している処理回路を含み得る。プロセッサは、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、処理構成要素のグループ、または他の適切な電子処理構成要素、として実装されることができる。メモリ(例えば、メモリ、メモリユニット、ストレージデバイスなど)は、本出願に記載の様々な処理を完了したりまたは容易にしたりするべく、データおよび/またはコンピュータコードを格納するための1つまたは複数のデバイス(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスクストレージなど)であってよい。メモリは、揮発性メモリまたは不揮発性メモリであったりまたはそれを含んだりしてもよい。メモリは、本出願に記載の様々なアクティビティをサポートするべく、データベース構成要素、オブジェクトコード構成要素、スクリプト構成要素、またはいずれかの他のタイプの情報構造体、を含んでもよい。例示的な実施形態によれば、メモリは、プロセッサに通信可能に接続されてよく、本明細書に記載の1つまたは複数の処理を実行するためのコンピュータコードを含んでよい。メモリは、様々なモジュールを含んで各モジュールは、特異的なタイプの機能に関連するデータおよび/またはコンピュータコードを格納することができる。
【0026】
デジタルツイン101が単一ハウジング内に収容される必要はないことを理解されたい。むしろ、デジタルツイン101の構成要素は、ヘルスケアシステム内の様々な位置に、またはさらには遠隔位置に配置されてよい。プロセッサおよびメモリの構成要素を備えている、デジタルツイン101の構成要素は、例えば、病院もしくは他の医療プロバイダコンピュータ、ヘルスケア環境内の互いに異なるロボット手術システム、またはクラウドベースのサーバシステム、のようなヘルスケアシステムの外部の構成要素内に位置していてもよい。
【0027】
本開示は、様々な操作を達成するべく任意の機械可読媒体上に方法、システム、およびプログラム製品、を企図する。機械可読媒体は、デジタルツイン101、またはデジタル環境100、の他の態様の一部であってまたはそれとでインタフェースしてもよい。本開示の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを用いることで、またはこの目的もしくは別の目的のために組み込まれた適切なシステムのための専用コンピュータプロセッサを用いることで、またはハードワイヤードシステムを用いることで、実装されてよい。一部の例では、コンピュータプロセッサは、別個の病院内、医療装置企業リサーチセンター内、別個の国内、および/または病院ネットワークの別々の建物内、などの様々な個別の位置に配置されてよく、各コンピュータ処理システムは、中央ハブなどを介して、互いに直接および/または間接的に通信してもよい。本開示の範囲内の実施形態は、機械可読媒体を有しているプログラム製品を備えており、この機械可読媒体は、その上に格納される機械実行可能命令またはデータ構造体を搬送したりまたは備えたりしている。そのような機械可読媒体は、汎用もしくは専用コンピュータによって、またはプロセッサを備えた他のマシンによって、アクセスされることができる任意の利用可能な媒体であることができる。例として、そのような機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROMもしくは他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージ、他の磁気ストレージデバイス、ソリッドステートストレージデバイス、またはいずれかの他の媒体、を備えていることができ、これらは、機械実行可能命令またはデータ構造体の形式で所望のプログラムコードを搬送したりまたは格納したりするべく使用されることができ、汎用もしくは専用コンピュータによって、またはプロセッサを備えた他のマシンによってアクセスされることができる。ネットワークまたは別の通信接続(ハードワイヤードか、ワイヤレスか、ハードワイヤードまたはワイヤレスの組合せのいずれか)を介して情報をマシンに転送したりまたは提供したりすると、このマシンは接続を機械可読媒体として適切に表示する。したがって、いずれかのそのような接続は、機械可読媒体として称されるのが妥当である。上記の組合せもまた、機械可読媒体の範囲内に含まれる。機械実行可能命令は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または専用処理マシン、に或る特定の機能または機能群を実行させる命令およびデータを備えている。
【0028】
図1に示されるように、デジタルツイン101は、モバイルデバイスまたはコンピュータなどのコンピューティングデバイスを介して医療サービスプロバイダ107および/または患者109からアップロードされたデータと、病院データベースおよび他の電子健康記録データベースからアップロードされたデータと、を含み得る。データソース103は、患者データのデータセットストレージ、インタロゲーション、分析、および表示、を提供し得る臨床ビジネスインテリジェンスフレームワーク(CBIF)を備えている、病院ネットワークなどのネットワークを介して維持される電子アプリケーションのヘルススイートを含み得る。データは、一般的な手技の種類などの手技情報(例えば、人工膝関節全または部分置換術;人工股関節置換術;足首、肩、または脊椎、の手技;関節外方の骨における手技;軟組織などにおける非整形外科手技;心臓の手技または整形外科手技などのオンコロジーまたは腫瘍治療手技;ならびに薬物の種類、タイミング、および量、などの他の治療データ)を含み得る。またデータは、骨改造の形状および順序の計画、または手技中に使用されるツール(例えば、ソー、バール)、などの手技の詳細に関する手術計画、を含んでもよい。データソース103は、統合電子医療記録(IEMR)アプリケーションも含み得る。これら統合電子医療記録IEMRアプリケーションは、患者医療記録を格納し得るとともに、紙媒体の臨床カルテの代わりとして機能し得ることによって、医療専門家が患者情報に同時にアクセスおよび更新することが可能になる。いくつかの例では、電子医療記録は、いくつかのリモートデータベースから収集されることで1つまたは複数の病院または他の医療施設電子データベースを使用することによってコンパイルされてもよい。例えば、患者のバイタルサインおよび他の関連する医療情報は、統合電子医療記録IEMRに自動的にアップロードされてよいので、患者の状態が悪化する場合、デジタルツイン101によって生じる早期警告アラートをトリガし得る。「私の健康記録」(マイヘルスレコード)は、アレルギー、医学的状態/治療、処方された薬物、以前の手術歴、医用画像、およびテストまたはスキャン報告、を備えている個人の重要な医療情報の要約を備えている全国電子健康記録システムを提供するウェブベースのアプリケーションであってもよい。ビューアは、ヘルスケアシステムネットワーク内の複数のシステム(病院の内部記録システムなど)からデータを照合するだけでなく、医療専門家が患者の治療パスの任意の段階で患者の情報に迅速にアクセスすることができることを確保するような、ウェブベースのアプリケーションであってもよい。ビューアは、ヘルスケアシステムネットワーク内の複数のシステムからデータを収集する任意のウェブベースのアプリケーションであり得る。患者報告経験指標(PREM:ペイシェントレポーテッドエクスペリエンスメジャー)および患者報告アウトカム指標(PROM:ペイシェントレポーテッドアウトカムメジャー)のデジタルソリューションは、患者報告経験指標(PREM)および患者報告アウトカム指標(PROM)を収集および格納するウェブベースのアプリケーションであってもよい。いくつかの例では、患者報告経験指標(PREM)および患者報告アウトカム指標(PROM)のデジタルソリューションは、Philips(登録商標)エンタープライズソリューション、RecoveryCOACH(登録商標)、または患者報告経験指標(PREM)および患者報告アウトカム指標(PROM)、を収集および格納する任意の他のウェブベースのアプリケーションなどのソフトウェアの使用を含み得る。
【0029】
医療プロバイダ(HCP:ヘルスケアプロバイダ)リファラルシステムは、医療サービスプロバイダの紹介(リファラル)と、他の医療サービス専門家との一般開業医のコミュニケーション(通信)と、を追跡するウェブベースのアプリケーションであってよい。例えば、医療プロバイダHCPリファラルシステムは、特定の医療専門家の紹介情報の履歴と、参照(リフー)された患者の関連する患者特性と、を提供してもよい。電子医療記録システム(EMRS:エレクトロニックメディカルレコードシステム)は、患者の一般開業医または他の医療専門家によって使用される電子医療記録を格納するウェブベースのアプリケーションであってよい。デジタルツイン101は、インターネットまたは任意の他の有線もしくは無線ネットワークなどの電子ネットワークを介して、データソース103の各々に自律的にアクセスするように構成されてよい。
【0030】
患者インタフェース105は、直接接続またはネットワーク接続(例えば、インターネット接続、LAN、WAN、またはWLAN接続など)を介して外部ソースとのデータ通信を行なうべく、有線または無線インタフェース(例えば、ジャック、アンテナ、送信器、受信器、トランシーバ、ワイヤ端子など)であったりまたはそれらを備えていたり、することができる。例えば、通信インタフェース28は、イーサネット(登録商標)ベースの通信リンクまたはネットワークを介してデータを送受信するべく、イーサネット(登録商標)カードおよびポートを備えていることができる。別の例では、患者インタフェース105の通信インタフェースは、無線通信ネットワークを介した通信のためのWi-Fi(登録商標)トランシーバを備えていることができる。従って、患者インタフェース105が図1に示されるデジタル環境100のデジタルツイン101のような他の構成要素から物理的に分離している場合、患者インタフェース105は、患者インタフェース105と、デジタル環境100のデジタルツイン101のような他の構成要素と、の間の無線通信を可能にすることができる。いくつかの例では、患者インタフェース105は、コンピュータ、ハンドヘルド電子デバイス、ウェアラブル電子デバイス、または他の電子システム、を介してアクセス可能なウェブベースのアプリケーションであり得る。
【0031】
患者インタフェース105は、コンピュータ、携帯電話もしくはポータブルコンピュータなどのハンドヘルド電子デバイス、スマートウォッチなどのウェアラブル電子デバイス、または当技術分野で既知の他の電子デバイス、を介して患者によってアクセスされ得る。患者インタフェース105は、リハビリテーション運動についての患者のケア計画またはリマインダに関する情報、などの患者教育およびエンパワーメント特徴へのアクセスを提供し得る。患者教育およびエンパワーメント特徴は、治療全体を通して医療プロバイダ(107)によってアクセスされてもよいし編集されてもよいような、患者インタフェース105を介して提供されるパーソナライズされた教育を含み得る。患者インタフェース105は、リアルタイムでの収集のために、心拍数モニタまたは可動域検出器のようなウェアラブル電子デバイスに接続されているので、患者医療パラメータおよびデジタルツイン101に関連している他のデータについては、患者インタフェース105を介して、このデータを収集してもよい。例えば、医療プロバイダは、デジタルツイン101を介して医療プロバイダにアクセス可能にされ得る患者インタフェース105を介して、医療プロバイダに電子的に提供される患者の可動域の報告を監視することによって、患者のリハビリテーション進捗を監視してもよい。また患者インタフェース105は、患者が患者報告経験指標(PREM)および患者報告アウトカム指標(PROM)を入力することを可能にするデータ収集特徴も含み得る。例えば、患者は、生活の質スコア、人工関節忘却スコア、または様々な膝もしくは股関節スコア、を入力し得る。生活の質スコアは、患者の生活の質の数値表現であり得る。人工関節忘却スコアは、治療成功の結果として、人工関節を忘却する患者の能力の数値表現であり得る。一部の例では、患者の生活の質スコアは、「1」~「10」(インクルーシブ:包括的)の間のスコアであり得るので、「1」は非常に低い生活の質を指示する一方で、「10」は非常に高い生活の質を指示する。いくつかの例では、患者は、患者が現在感じている疼痛の量をゲージ測定する、疼痛スコアを提供し得る。健康な患者データを、患者プールから経時的に収集するとともに、損傷した患者データとで比較し得るので、患者リハビリテーションの結果を、健康な患者データとで比較することで、患者リハビリテーションの成功または進捗のゲージを決定し得る。一部の例では、健康な患者データを、現在の患者データとで比較することで、損傷、疾患、運動、および/または老化、に起因する関節運動における変化を判定してもよい。病院、リハビリテーションセンター、かかりつけ医の診療所、外来診療所、および/または他の医療施設、を備えている合計などの医療施設への再入院の合計数は、患者インタフェース105および本明細書に記載の他のデータソースを介して、デジタルツイン101に記録されてもよい。
【0032】
一部の例では、患者インタフェース105は、他の患者データの中でも、(1)患者が仕事に戻るまたは自分の職業に戻るのにかかる時間の量、(2)日常生活活動(ADL:アクティビティ_オブ_デイリーリビング)(例えば、毎日の食事回数および食事量を含んでいる食習慣、1日の入浴回数などの入浴習慣、歯磨き能力、食料品の買い出し、または車の運転、の日々の作業(タスク)を支援無しで完了する能力など)、(3)患者が治療施設(例えば、一般病院、救急室、および/またはプライマリケア施設、など)に再入院する回数、(4)リハビリテーションセッション数、(5)医療プロバイダ(HCP)とのインタラクション数、(5)患者が完了する術前タスクなどの、術前の患者期待の履行、および/または、(6)歩行運動検査室または他の施設における人工膝関節または他の身体部位の機能評価の完了のコンプライアンス(例えば、満足または不満足など)、を追跡したりおよび/または記録したりしてもよい。
【0033】
また患者インタフェース105は、患者が治療計画へのアドヒアランス(固守、執着:患者が治療方針の決定に賛同することで積極的に治療を受けること)における修正可能なリスク因子または変化を示している場合に患者にアラートを出したり、または患者が医療プロバイダによる緊急または他の介入を必要とし得る修正不可能なリスク因子を示している場合に患者にアラートを出したり、してもよいアラートシステムも含み得る。例えば、患者インタフェース105は患者の携帯電話によってアクセスされ得るので、スケジュールされた期間内にリハビリテーション運動の完了を患者が入力できない場合に、携帯電話は振動し得る。一部の例では、患者インタフェース105は、医療プロバイダとの約束が近づいているとき、または治療計画の一部としての患者の運動期間であるとき、リマインダを患者に提供してもよい。一部の例では、医療プロバイダは、例えば、患者が高血圧または可動域の減少のような新たなリスク因子を報告した場合、患者インタフェース105に電子的にアクセスすることによって、患者の治療計画を修正してもよい。患者インタフェース105は、修正可能なリスク因子が患者活動によって実際に修正されたかどうかに関するリアルタイムデータを、医療プロバイダ(107)に提供し得る。一部の例では、患者インタフェース105は、患者インタフェース105内のビデオチャットまたはオンラインチャットルームを介して、医療プロバイダが患者に直接接続することを可能にするライブチャット特徴を含んでもよい。一部の例では、患者は、ライブチャットを介して患者とでインタラクトするためのチャットボットを提供するソフトウェアプログラムにインタラクトしてもよい。また患者インタフェース105は、患者が医療サービスプロバイダ107との予約をスケジュールすることを可能にすることで、医療サービスプロバイダ107が患者インタフェース105を介して電子的に患者に紹介を送信することを可能にしてもよい。いくつかの例では、患者インタフェース105は、互いに異なる治療パスおよび活動の正および負の効果を備えている、将来状態治療アウトカムを表示し得る。例えば、患者インタフェース105は、患者がリハビリテーションプログラムを効率的に完了した場合に術後の所期の(エクスペクテッド、期待される)回復時間を表示したり、および/または患者が所定のリハビリテーションプログラムから逸脱したと検出されるときに回復時間の推定される遅延を表示したり、してもよい。デジタルツイン101は、スケジュールされた期間内に1つまたは複数の所定のリハビリテーション運動の完了を示すように患者が患者インタフェースを更新することができなかった場合、リハビリテーションプログラムからの患者の逸脱時間を検出し得る。いくつかの例では、デジタルツイン101は、患者インタフェース105内の患者報告データに基づき、または1つまたは複数のリモートデバイス(センサ付き人工膝関節インプラントまたはウェアラブルデバイスなど)を介して感知されたデータによって活動における変化を検出することで、人工膝関節置換術後の足首損傷などの処理中の治療に無関係であり得る損傷発生または他の悪影響の可能性を、患者に示してもよい。
【0034】
患者インタフェース105を介して収集された全てのデータは、デジタルツイン101に送信されるとともに、デジタルツイン101内に格納されてもよい。一部の例では、将来状態治療アウトカムは、外科手技の完了後に予測される骨位置決め、術後に予測される可動域、予測される疼痛レベル(例えば、「0」~「10」の範囲の疼痛スコアなど)、予測されるリハビリテーションの長さ、医療プロバイダによる経過観察訪問の予測される回数、および/または他の一般的な患者指標、を含み得る。将来状態治療アウトカムは、患者インタフェース105、またはデジタルツイン101システムへの電子アクセスを有している医療プロバイダコンピュータシステム、などの任意の他のディスプレイによって表示され得る。
【0035】
図2は、デジタルツイン電子システム(201)のデータフロー図を示す。デジタルツイン電子システム(201)は、本明細書に記載のデジタルツイン101の特徴のいずれかを有し得る。図2に示されるように、デジタルツイン電子システム(201)は、医療専門家203への患者の最初の訪問から、患者の治療結果として得られるアウトカムおよび患者経過観察205まで、患者ケアパスを通して患者からデータを収集する。いくつかの例では、デジタルツイン101は、電子インタフェースを介して、他の治療オプションの中でも、人工膝関節全置換術のための互いに異なる関節アライメントのオプション、互いに異なる手術セッティングオプション(入院患者対外来患者など)、手術を完了するべく推奨外科医のための互いに異なる外科医プロファイルオプション、を医療専門家に提供してもよい。結果として得られるアウトカムの例は、関節の可動域、外科手技後または医療プロバイダからの他の患者治療後の関節アライメント、毎日の日常活動を再開する能力、を含んでいる。
【0036】
患者データは、デジタルツイン201にアップロードされることで、図1で示されているヘルススイートから収集された患者データなどの、ヘルスデータプール207からの患者集団データとで比較されてもよい。デジタルツイン201内で、人工知能および機械学習アルゴリズムは、ヘルススイートを介して入力された患者のデータと、ヘルスデータプール207からの患者集団データと、に基づき患者の解剖学的形態のモデルおよび可能な治療レジメンを作成してもよい。デジタルツイン201は、患者の膝のモデル(例えば、生体力学モデル)、医療プロバイダに推奨される活動方針、および患者の病歴のデータベース、などの患者の解剖学的形態の仮想モデルを含んでもよい。患者のデジタルツインは、他の患者の他のデジタルツインなどのデータベースとで、例えば、患者の症状または1つまたは複数の同様の所定の治療として症状および/または解剖学的形態/解剖学的特徴などの1つまたは複数の同様の表現型を有している他の患者のデジタルツインなどのデータベースとで、比較されてもよい。患者のデジタルツイン201を、現在の患者とで同様の属性を有している他の患者のデジタルツインとで比較することによって、患者のデジタルツイン201は、デジタルツイン101内のアルゴリズム実行によって医療プロバイダに、リスク評価、疾患発症の予測、および/または推奨される活動方針、を提供してもよい。同様の属性は、関節サイズ、骨アライメント、身長、体重、年齢、病歴の一部、損傷の程度、などのような1つまたは複数の属性を含んでよい。デジタルツイン201からのデータが医療専門家によって解釈されると、医療専門家は、治療パス意思決定211を行なうことで、患者の治療についてのその次の活動指針を実行してよい。治療パス意思決定211は、患者が外科手技を受けるように指示したり、患者に非外科手技に進むように指示したり、または外科手技もしくは非外科手技のうちの1つまたは複数の態様を変化させたり、してもよい。いくつかの例では、治療パス意思決定211は、推奨手術用インプラントまたは推奨手術計画を含み得る。この治療パス意思決定211は、デジタルツイン201にアップロードされたり保存されたりしてもよい。
【0037】
治療パスの完了後、患者の治療のアウトカムデータは、デジタルツイン201内にアップロードされたり格納されたりしてもよい。いくつかの例では、治療パス意思決定211は、治療前もしくは術前の意思決定を、または術後もしくは治療後の意思決定を、含み得る。いくつかの例では、治療パス意思決定211は、患者に対する適切な手術用インプラントまたは手術計画を選択することであってもよい。いくつかの例では、術後または治療後の意思決定は、現在の患者とで共通の1つまたは複数の属性を有している患者の以前の外科手技からのアウトカムデータに基づき、人工膝関節または患者の解剖学的形態の他の部分の所期(エクスペクテッド、期待される)の健常状態の回復目標を含み得る。いくつかの例では、デジタルツイン101は、患者に対する、外科手技の所期の影響、または人工関節置換術のために互いに異なるインプラントオプションを使用することの所期の影響、例えば、所期の術後疼痛レベル、所期の術後回復時間、関節可動域の所期の増加または減少、などを判定し得る。いくつかの例では、デジタルツイン101は、推奨される外科手技を受けることを即時に進めることの推奨、または待機することの推奨、を表示してもよい。一部の例では、1つまたは複数のウェアラブルセンサは、患者の体重、平均心拍数、可動域、または他の物理パラメータ、を監視するので、デジタルツイン101は、これらの測定されたパラメータを受信するとともに、合計回復時間を減少させるべくリハビリテーションおよび/または他の治療に可能性が存在している変化を決定してもよい。
【0038】
いくつかの例では、治療パス意思決定211は、埋め込み型センサまたはセンサ付き人工関節構成要素などの、術後の患者データを追跡し得るセンサ付き手術用インプラントを選択することを含み得る。センサ付き手術用インプラントは、モーションセンサ、加速度計、温度センサ、荷重センサ、振動センサ、可動域検出器、ビデオカメラなどのカメラ、または人工膝関節インプラントの任意の部分内に位置決めされたりもしくはそれに結合されたりした他のセンサ、のうちの1つまたは複数を備えている人工膝関節インプラントであってもよい。いくつかの例では、センサ付きインプラントは、デジタルツイン101に無線で通信し得ることで、直接または間接的にデジタルツイン101にデータを伝送し得る。例えば、治療パス意思決定211は、可動域、インプラントに加えられる荷重、インプラントの運動、インプラント周囲の身体領域内の身体の感染もしくは他の特性の監視、または他のパラメータ、のようなデータを収集し得るセンサ付き人工膝関節インプラントを推奨することを含み得る。センサ付きインプラントによって収集されたデータをデジタルツイン101にアップロードするとともにこのデータを使用することで、患者または他の将来の患者に対する将来の手技または他の推奨を最適化してもよい。センサ付きインプラントデータを術後に使用することで、リハビリテーション運動プログラムに対する調整、または医療専門家に推奨される追加の医学的手技もしくは推奨される経過観察訪問、などの術後治療を患者に推奨してもよい。
【0039】
図3は、デジタルツイン301と患者インタフェース303との間のデータフロー図を示す。デジタルツイン301および患者インタフェース303は、デジタルツイン101、201および患者インタフェース105に関連する本明細書に記載の特徴のいずれかを有してもよい。図3に示されるように、デジタルツイン301は、臨床意思決定支援を医療サービスプロバイダに提供し得るとともに、ワークフロー最適化支援を医療施設内に提供し得る。デジタルツイン301内の人工知能およびデータ分析アルゴリズムは、患者パス全体を通して患者および医療プロバイダからデータを収集するフィードバックループを連続的に実行するように構成され得る。デジタルツイン301に入力された患者データおよび医療プロバイダデータの連続ストリームを可能にすることによって、デジタルツイン301は、対象患者に対する以前の手技の結果と、治療の現在のリアルタイムでの結果と、に基づき連続的に学習し得る。デジタルツイン301は、次いで、リアルタイム患者データおよび医療プロバイダデータに基づき、治療または他の活動の推奨を調整し得る。
【0040】
いくつかの例では、デジタルツイン301は、医療サービスプロバイダに対する臨床意思決定支援のリスク因子の識別および/またはリスク評価を決定するためのアルゴリズムを含んでもよい。例えば、デジタルツイン301は、1つまたは複数の類似の属性を有している患者からの複数の他のデジタルツインからのデータを使用することで、体重の減少または喫煙の停止などの修正可能なリスク因子を決定するためのアルゴリズムを実行してもよい。いくつかの例では、デジタルツイン301は、患者の体重が減少する場合、などの患者が識別済みのリスク因子を修正することにアドヒアランスである場合に患者アウトカム予測を表示することで、患者が識別済みのリスク因子を修正しない場合にも患者アウトカム予測を表示する。いくつかの例では、デジタルツイン301は、併存疾患評価を提供し得る。一部の例では、デジタルツイン301は、患者の血流または組織中の化学レベル(例えば、アルコール、糖摂取、薬物または薬剤)を評価したりおよび/または監視したりしてもよい。デジタルツイン301は、手技の前、中、または後、に提供された薬物を監視してもおよび/または決定してもよい。またデジタルツイン301は、喫煙、アルコール、または糖摂取、を評価したりおよび/または監視したりすることでそれらのような因子を、手技計画の態様を決定したりおよび/または最適化したりするときに考慮し得る。
【0041】
またデジタルツイン301は、患者の膝関節の現在の術前の状態および/または術後の結果として得られる骨アライメントなどを示す患者の膝のコンピュータシミュレーションモデルのような、患者の膝または他の筋骨格系の解剖学的形態の生物物理学的表現の電子モデル、などの患者の解剖学的形態の機構的モデルも提供し得る。いくつかの例では、デジタルツイン301は、患者の解剖学的形態の電子モデルを表示するとともに、潜在的な問題または治療領域を指示する解剖学的形態の領域をハイライトするように構成され得る。またデジタルツイン301は、専門家への患者紹介、配置の推奨、追加の患者評価、例えば、放射線評価、磁気共鳴画像(MRI)評価、x線評価、コンピュータ断層撮影(CT)評価、他の撮像評価、などの患者撮像評価の必要性などの診断パスの推奨および/または治療パスの推奨を提供し得る。いくつかの例では、デジタルツイン301は、人工膝関節全形成術または人工膝関節部分形成術を推奨する、などの推奨される膝治療を決定するためのアルゴリズムを含み得る。デジタルツイン301は、患者集団データを利用することで、手術シミュレーション、治療計画、手術計画、および/またはリソース割り振り推奨、を作成し得る。いくつかの例では、デジタルツイン301は、患者インタフェース105を介して患者に提供するべく、推定されたリハビリテーション期間、仕事に戻る推定された時期、または推定された疼痛レベル、などの予測されたアウトカムを生成し得る。デジタルツイン301および/または患者インタフェース105によって表示される予測されたアウトカムは、患者の期待の管理に有用であり得る。
【0042】
いくつかの例では、デジタルツイン301は、手動(マニュアル)ステップまたは手技(プロシージャ)を使用する必要があるとき、および/または他の手術支援デバイスを使用する必要があるとき、データを利用することで手術ロボットまたはロボット手技(ロボティックプロシージャ)を使用することに関する推奨を提供し得る。例えば、デジタルツイン301は、互いに異なるレベルのツール同士を決定してもよい。各ツールは、データとして入力され得る、および/またはデジタルツイン301によって決定され得る、所定のスコアに関連していてもよい。デジタルツイン301は、データを使用することで、および/または1つまたは複数のアルゴリズムを実行することで、インテリジェントまたは人工知能(AI)の関与レベルを指示する手技の支援スコアを決定し得る。例えば、第1範囲(例えば、「0」~「20」)内で決定された支援スコアは、一般的な非コンピュータ支援手術を指示し得る。そして第2範囲(例えば、「20」~「40」)内で決定された支援スコアは、何らかのタイプのコンピュータガイダンスツールを使用する手技を指示し得る。さらに第3範囲内または第2範囲よりも上(例えば、40以上)で決定された支援スコアは、ロボット手技またはインテリジェントツールの使用数の増加を示し得る。またデジタルツイン301は、手技の互いに異なるステップにおける、互いに異なるツールの必要性を示してもよい。デジタルツイン301は、手技(プロシージャ)のための、互いに異なる外科的アプローチまたは技法(テクニック)を決定し得る。
【0043】
一部の例では、アウトカムの予測は、手術成功の予測、患者の術後診断の予測、手術からの術後の合併症の予測、手術による合併症の尤度の予測、術後疼痛レベルの予測、骨再アライメントの予測、回復時間の予測、手術からの部分および/または完全回復のタイムラインの予測、術後のリハビリテーション成功の予測、患者が再び歩行できるまでのタイムラインの予測、手術の術後副作用の予測、術後の患者報告経験指標(PREM)および/または患者報告アウトカム指標(PROM)の範囲の予測、および/または患者の術後の解剖学的形態の予測、の仮想モデルの形式であり得る。
【0044】
いくつかの例では、デジタルツイン301は、ベイズ学習アプローチを利用するアルゴリズムを含み得る。例えば、デジタルツイン301は、個々の患者に関連するコンテキスト因子を捕捉することができるモデルベースのアルゴリズム(例えば、ベイジアンネットワークモデル化)を含み得る。ベイジアンネットワークは、システム内の複雑なインタラクション(例えば、システム内の個人だけでなく、全ての参加者に影響する複数の因子)を捕捉するための「複雑系」として、患者フローの有向非巡回グラフィカルネットワークモデルを確立する。このアプローチは、患者のアウトカムに影響する重要な因子だけでなく、個人のアウトカムの予測に関連する確率を定量化するべく使用されることができる他の因子(例えば、環境、併存症など)を捕捉する。含まれるデータが多いほど、モデルの予測性が向上する。またデジタルツイン301は、シミュレーションベースのアルゴリズム(例えば、エージェントベースのモデル化)も含み得るので、各エンティティ(例えば、患者)は、特性を有しているエージェントとして確立される。これは、他の患者(例えば、特性(例えば、年齢、併存症、治療レジメン、有害アウトカムの確率、治療の「良好な」アウトカムの確率、所期のタイムスパン関連アウトカム(短期、より中長期)など)を有している他の患者のアウトカム)から学習する場合に有用であることができる。このアプローチは、個々の患者からだけでなく、全ての患者からの学習を可能にする。
【0045】
いくつかの例では、デジタルツイン301は、外科手技の困難度を予測するための1つまたは複数のアルゴリズムを含み得る。例えば、デジタルツイン301は、以前の手技データセットおよび患者特異的特性に基づき、所期の手術時間を生成し得る。デジタルツイン301は、外科手技が平均的な外科手技よりも難しいと予測される場合に医療サービスプロバイダに通知することによって、外科医がスケジュールを調整することで手術の困難度の増大を考慮することが可能になったり、および/または必要な手術ツールまたは手術に必要なスタッフの総計数、タイプ(標準的な施術手技から外れ得る)、手術ワークフローの変更、および/または手術位置(例えば、外来手術センター対病院など)の変更、などの必要なリソースを調整することが可能になったり、してもよい。
【0046】
図4は、外科手技が、同じタイプの通常の外科手技(または、その外科手技に見込まれる困難レベル)よりも難しいと決定されるとき、デジタルツイン101(および/または図2および図3に示されるデジタルツイン201および/または301)によって生成され得る通知450の例を示す。例えば、外科医は、患者の手技がその手技のスケジュールされた時間量よりも20分長くなると予測されることを示す通知450を、自分のデスクトップコンピュータおよび/またはモバイル電子デバイス上で受信し得る。デジタルツイン101は、ユーザに、(1)外科手技が所期よりも長くかかると予測される理由に関連する情報をレビューすること(452)、または(2)手技に必要な予測される時間延長に関して、看護師、医師アシスタント、医師、などの手術室チームの他のメンバーに通知すること(454)、といういずれかの選択可能なオプションを生成し得る。外科手技がより長くなると予測される理由に関する情報は、ユーザに電子的に表示されうる。手術室チームの他のメンバーへの通知454は、ネットワークを介して、他のメンバーにアクセス可能な電子デバイスに電子的に送信されてもよい。いくつかの例では、デジタルツイン101は、特定の患者に対して手術するその特定の外科医にとって手技がより難しくなり得る潜在的な理由を生成し得るだけでなく、患者の解剖学的形態が手術には難しい虞のある領域に関連する画像456をユーザに表示し得る。いくつかの例では、デジタルツイン101は、切開の長さもしくは位置、または人工関節インプラントの位置決め、のような外科手技のステップのガイダンスなどの医療専門家に表示するための症例特異的訓練材料を生成してもよい。
【0047】
いくつかの例では、デジタルツイン101は、データソース103から1つまたは複数の医用画像を受信することで、人工膝関節全形成術または人工膝関節部分形成術などの外科手技が、平均的な人工膝関節全形成術または人工膝関節部分形成術よりも困難であると予測されるかどうかを判定するためのアルゴリズムを実行してもよい。手術がより難しいと予測される場合、デジタルツイン101は、対象の外科手技に必要な追加時間を考慮するべく、手術スケジュール、または手術の日もしくは場所、の調整を推奨したり、または対象の外科手技に追加時間を組み込むために手術スケジュールを自動的に調整したり、してもよい。このアルゴリズムは、患者の年齢、性別、身長、体重、および/または肥満度指数(BMI)、のような追加の患者特異的データを受信してもよい。またアルゴリズムは、aHKA(アナトミカル_ヒップ-ニー-アンクル_アングル:解剖学的な股関節-膝関節-足関節角度)、MPTA(メディカル_プロキシマル_チビアル_アングル:内方近位脛骨関節面角)、LDFA(ラテラル_ディスタル_フェモラル_アングル:外方遠位大腿骨関節面角)、関節線角度(ジョイント_ライン_アングル:大腿骨遠位顆部の接線と脛骨プラトーとの間になす角度など)、などを備えている1つまたは複数の解剖学的尺度を、医療プロバイダから受信するとともに、1つまたは複数の医用画像を使用することで計算したり、または患者の解剖学的形態の機構的モデルを使用することで計算したり、してもよい。デジタルツイン101は、内反/外反関節形状、下肢機能軸および機能軸、可動域を通る関節の接触位置、関節の骨のアライメント、疾患状態、軟組織位置、骨または組織形状、厚さ、直径、密度、靭帯サイズ、および/または断裂の位置、などの解剖学的形態の分散に関するデータを決定してもおよび/または受信してもよい。
【0048】
デジタルツイン101は、入力データ(103)および患者インタフェース105を介して受信済みのデータに基づき、手技の合計手術時間を予測するアルゴリズムを実行し得る。いくつかの例では、デジタルツイン101は、手術ロボットによって供給されるデータを使用することで、外科手技が特定のタイプの平均的な外科手技よりも難しいと予測されるかどうかを判定するためのアルゴリズムを実行し得る。ロボット外科手技が平均よりも難しいと予測される場合、手術ロボットの1つまたは複数の計画された運動は、外科手技の予測された困難度に基づき調整され得る。いくつかの例では、デジタルツイン101の1つまたは複数のアルゴリズムは、計画された外科手技に対して予測された困難度スコアを生成し得るので、「1」~「100」の間のスコアなどの数値スコアによってユーザに困難度の程度を示し得る。「100」は最も困難であり、「0」は最も困難ではない。いくつかの例では、デジタルツイン101の1つまたは複数のアルゴリズムは、対象とで同様の1つまたは複数の患者解剖学的特徴を有している以前の患者手技から受信済みの手術ロボットデータに基づき、患者の手技の予測手術時間を調整し得る。いくつかの例では、デジタルツイン101は、ロボットアームを備えているロボット手術システムの使用、などのロボットツールとで比較することで推奨される手動ツール、などの手技中の使用に推奨されるツールを決定し得る。いくつかの例では、手術アプローチおよび/または切開のタイプは、手術計画に含まれ得ることで、同じタイプの平均的な手技に対して調整され得る。
【0049】
図5は、変形性関節症の結果として膝関節痛を有している患者の例示的な治療パス500を示す。同様の治療パスは、他の筋骨格疾患を有している患者によって利用され得る。最初に患者は、一般開業医を訪問することで、治療アウトカム不良に寄与し得たりまたは患者を手術不適応にし得たりするような、患者の併存疾患およびリスク因子を評価する。いくつかの例では、デジタルツイン101に一般開業医がアクセスすることによって、膝手術に適切な時期であるかどうかを判定することが支援されてもよい。デジタルツイン101は、患者の医療記録および他の患者データへの電子アクセスを一般開業医に提供し得る。一部の例では、一般開業医は、デジタルツイン101を介して外科医に通信することで、膝手術(または他の人工関節置換術、または脊椎および/または外傷を備えている筋骨格疾患もしくは障害を治療するための任意の手術)を進めるべきかどうかに関する意思決定を容易にし得る。膝手術を進めないと意思決定する場合、一般開業医は、患者を理学療法または栄養法などの医療関連(非外科的)治療にまわすので、患者は在宅ケアに進む。いくつかの例では、一般開業医は、デジタルツイン101によって患者に在宅治療計画を提供しつつ患者インタフェース105を介して患者にアクセス可能であってもよい。患者の在宅におけるケアに関する進捗は、患者インタフェース105およびデジタルツイン101を介して監視されてもよい。一般開業医が膝手術に妥当な時期であると決定しているとともに、患者が手術に適応する場合、患者は、x線撮像、超音波、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴画像(MRI)、または他のタイプの医用撮像、のような医用撮像を受けることに進んでもよい。患者が撮像を受けた直後、医用画像データはデジタルツイン101にアップロードされるので、医用画像データには、デジタルツイン101によって即時に一般開業医および他の専門家がアクセス可能であってもよい。撮像後、整形外科医は、患者の医用画像の全てを、一般開業医による患者の評価とで共に含み得るデジタルツイン101にアクセスしているので、手術を計画し得る。いくつかの例では、デジタルツイン101は、データ入力(103)を処理する1つまたは複数のアルゴリズムに基づき、整形外科医に推奨される手術計画を提供し得る。術中、デジタルツイン101は、術中に生じ得るリアルタイム予測モデルおよび潜在的な問題を外科医に提供し得る。いくつかの例では、デジタルツイン101は、外科手技の前、中、および後、に整形外科医へのガイダンスとで共に、電子ネットワークを介したガイダンスを手術ロボットに提供し得る。術後、デジタルツイン101は、患者に適切なリハビリテーション計画を割り当てる際に医療プロバイダを支援するべく、推奨リハビリテーション計画を提供し得る。デジタルツイン101は、患者パス(500)に示される事象中の医療専門家の支援に限定されず、筋骨格疾患または関連する患者治療のための任意の治療パスで利用されてもよい。
【0050】
いくつかの例では、デジタルツイン101は、治療に関するデータを受信してもよいし、および/または治療の順序を決定してもよい。例えば、患者が腫瘍の除去、および人工膝関節置換術、を必要とする場合、デジタルツイン101は、所望の患者アウトカムのために完了すべきステップの好ましいタイミングおよびシーケンスを識別してもよい。
【0051】
いくつかの例では、デジタルツイン101は、代替のステップ、手技、および/または治療パス、を提示し得るので、レビューする開業医および/または患者に選択肢を提供し得る。デジタルツイン101は、所望のアウトカムまたは所望の治療に関するオプションを提供したりおよび/または表示したりすることで、各治療またはオプションの成功の推定値を提供してもよい。例えば、1人の患者は、可能な限り迅速に手術を受けることを好み得るが、別の患者は、一層非外科的なオプションを好み得る。デジタルツイン101は、患者がインフォームドチョイスを有し得るように、オプションごとに見込まれる疼痛および活動レベルを提供し得る。患者および/または開業医は、デジタルツイン101への入力データとして、服用したくない薬物(例えば、アレルギーが原因で)または避けたい外科手技のタイプをエントリ(入力)し得る。これらのエントリは、代替物を決定するときにデジタルツイン101によって考慮され得る。例えば、デジタルツイン101は、避けるべきものに関する患者および/または開業医の入力に基づき、いくつかのオプションを制限してもよい。
【0052】
図6は、デジタルツイン601を利用することでロボット医学的手技用のガイダンスを開発するためのシステム600を示す。システム600は、プロシージャオプティマイザ602を備えている。プロシージャオプティマイザ602は、複数のロボットシステム604から入力プロシージャデータ603を受信し得る。一実施形態では、入力プロシージャデータ603の各セットは、ロボットシステム604を使用することでユーザによって実行されることによって、完了したまたは進行中のロボット医学的手技に対応する。「ユーザ」は、「開業医」とで同義であり得るだけでなく、記載された活動を完了する任意の人間(例えば、外科医、技術者、看護師など)であり得る。他の構成要素の中でも、ロボットシステム604の各々は、ロボットデバイス605、ガイダンスモジュール、ならびに、患者および他のオブジェクトを追跡するためのカメラスタンド、を含み得る。ガイダンスモジュールおよびカメラスタンド(本明細書ではガイダンス構成要素606と呼ばれる)は、ユーザに出力を提供するための画面を含み得る。ロボットデバイス605、ガイダンスモジュール、またはカメラスタンド、のうちの1つまたは複数は、プロシージャオプティマイザ602によって取得され得る入力プロシージャデータ603を格納し得る。入力プロシージャデータ603は、代替に、ロボットシステム604の任意の他の構成要素に格納されたり、またはロボットシステム604の外部に格納されたり、してもよい。いくつかの例では、入力プロシージャデータ603は、デジタルツイン601を介して電子的に取得され得る。プロシージャオプティマイザ602は、格納済みの入力プロシージャデータ603を分析することで、対応する医学的手技の特性パターンを決定し得る。デジタルツイン601は、術前、術中、および術後、に患者データをプロシージャオプティマイザ602に提供し得る。
【0053】
プロシージャオプティマイザ602は、デジタルツイン601によって、ロボット支援医学的手技に関する情報をさらに受信し得る。次いで、プロシージャオプティマイザ602は、入力プロシージャデータ603およびデジタルツイン601の情報の分析に基づき、ロボット支援手技のためのガイダンスを開発することができる。「支援手技」は、プロシージャオプティマイザ602からのガイダンスが関連付けされているロボット医学的手技を指す。「支援手技」という用語は、本明細書では、ガイダンスが対象にしたりまたは関連したりしている手技を、プロシージャオプティマイザ602への入力として使用される手技およびそれらの対応するデータとは区別するべく使用される。支援手技は、ガイダンスがユーザのために開発または提供される時点で開始または完了されていてもよいしまたはされていなくてもよい。さらに、支援手技は、実際には決して行なわれない計画された手技、部分的に完了している手技、または既に完了した手技、であってもよい。出力は、支援手技に関連しているガイダンスであり得ので、プロシージャオプティマイザ602によって提供されると、ユーザが実際に行動してもまたはしなくてもよいし、そして仮に実行してもガイダンスは、所与の指標に関して、手技を実際に最適化してもよいしまたはしなくてもよい。デジタルツイン601は、他の患者のデジタルツインに収集された以前のロボット外科手技からの情報を、プロシージャオプティマイザ602に提供し得る。またデジタルツイン601は、手術ロボット615、ガイダンス構成要素616、および/またはプロシージャオプティマイザ602、から患者の外科手技に関連するロボットデータを受信するので、そのようなロボットデータは、手術室内における手術ロボットの特異的な運動、手術ロボットが使用するツール、および/または手術ロボットの位置決め、を含んでもよい。いくつかの例では、デジタルツイン601は、ロボットデバイス605のロボットアームの1つまたは複数のツールの運動のための命令を提供し得る。例えば、デジタルツイン601は、ロボットシステム604のネットワーク内の各ロボットデバイス605の各ロボットアームの運動を追跡し得るので、各ロボットデバイス605の各ロボットアームの運動に関連して収集されたデータを使用することで、将来のロボット手術のために、ロボットアームの特異的な運動、などのロボットデバイス(615)の運動を推奨し得る。
【0054】
プロシージャオプティマイザ602は、プロセッサ650およびメモリ660を有している処理回路640を含み得る。プロセッサ650は、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、処理構成要素のグループ、または他の適切な電子処理構成要素、として実装されることができる。メモリ660(例えば、メモリ、メモリユニット、ストレージデバイスなど)は、本出願に記載の様々な処理を完了したりまたは容易にしたりするべく、データおよび/またはコンピュータコードを格納するための1つまたは複数のデバイス(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスクストレージなど)であってよい。メモリ660は、揮発性メモリまたは不揮発性メモリであったりまたはそれらを含んだりしてもよい。メモリ660は、本出願に記載の様々なアクティビティをサポートするべく、データベース構成要素、オブジェクトコード構成要素、スクリプト構成要素、またはいずれかの他のタイプの情報構造体、を含んでもよい。例示的な実施形態によれば、メモリ660は、プロセッサ650に通信可能に接続されてよく、本明細書に記載の1つまたは複数の処理を実行するためのコンピュータコードを含んでよい。メモリ660は、様々なモジュールを含んで各モジュールは、特異的なタイプの機能に関連するデータおよび/またはコンピュータコードを格納することができる。一実施形態では、メモリ660は、入力モジュール680、分析モジュール685、および出力モジュール690、などの医学的手技に関連するいくつかのモジュールを備えている。
【0055】
プロシージャオプティマイザ602は、単一ハウジング内に収容される必要がないことを理解されたい。むしろ、プロシージャオプティマイザ602の構成要素は、様々な位置に、またはさらには遠隔位置に、配置され得る。プロセッサ650およびメモリ660の構成要素を備えているプロシージャオプティマイザ602の構成要素は、例えば、支援手技の互いに異なるロボットシステム604の構成要素内に、またはロボットシステム構成要素内(例えば、ガイダンス構成要素506内)に、配置され得る。プロシージャオプティマイザ602は、インターネットまたはヘルスケアシステムの内部ネットワークなどの電子ネットワークを介して、デジタルツイン601に接続され得る。一部の例では、プロシージャオプティマイザ602は、デジタルツイン101、601の一部、手術ロボット615の一部、またはデジタルツイン101、601および1つまたは複数の手術ロボット(605、615)の両方の一部、であってもよい。本明細書で論じられるデジタルツイン101、601の特徴のいずれも、ロボット外科手技に組み込まれてプロシージャオプティマイザ602は、デジタルツイン101、601からの推奨を受信するとともにデジタルツイン101、601からの推奨に基づき、生成されたロボット手術計画を調整してもよい。いくつかの例では、デジタルツイン101は、ロボット外科手技の対象患者に予測されたアウトカムも、および非ロボット外科手技の対象患者に予測されたアウトカムも、生成し得る。
【0056】
いくつかの例では、デジタルツイン101は、患者、医療プロバイダ、または他のソース、からデータを収集するとともに、予測されたアウトカムを術後に確認し得る。例えば、予測回復時間は、疼痛スコア、人工関節忘却スコア、患者の解剖学的形態の測定された可動域、または、予測アウトカムを確認するべく患者から収集された他のデータ、などの術後の患者報告アウトカム指標を受信することによって確認されてもよい。いくつかの例では、デジタルツイン101は、特定の予測アウトカムを確認するための患者のウェアラブル電子デバイスからのデータ、例えば、患者の全体的な健康を確認するための心拍数モニタからのデータ、または関節の可動域を検出することでリハビリテーションの成功を確認するためのウェアラブルデバイスからのデータ、を収集し得る。予測アウトカムを確認することによって、デジタルツイン101は、デジタルツイン101によって追跡される患者に類似している1つまたは複数の属性を有している患者の将来の推奨を、さらに最適化し得る。いくつかの例では、デジタルツイン101は、運動および/またはリハビリテーション機器からデータを収集し得る。そのような機器は、筋力および/または可動域または心血管活動レベルに関連する情報を、デジタルツイン101に直接に(例えば、センサ付き機器によって)または間接的に(例えば、医療従事者が活動を監視するまたは追跡することによって)提供し得る。トレッドミルまたはエクササイズバイクなどの運動機器は、患者の改善を監視するべく、距離、速度、および抵抗レベル、などの活動に関連する情報を提供し得る。
【0057】
デジタルツイン101は、患者を類似の患者群(グループ)にクラスタ化するアルゴリズムを実装し得る。例えば、術前情報を使用することで、選択済みの類似度指標に基づき、互いに異なるサブコホートに患者をクラスタ化し得る(互いに異なる指標は各患者のデジタルツインから取得されているので、このユースケースに適用されることができる)。最初に、患者クラスタ化701は、履歴データに基づき得る。各新しいケースはまたは新しい患者治療インスタンスは、デジタルツインデータセットに追加され得るので、ケース履歴は、将来の分析データ出力に影響し得る。各サブコホートは、表現型703(図7に示される)としてみなされる。いくつかの例では、すべての新しい患者は表現型703に割り当てられ得るだけでなく、医療サービスプロバイダには、デジタルツイン101によって、選択済みの表現型703を参照する記述統計が提示され得るので、説明を受けた上での意思決定が可能になる。術後アウトカムの履歴平均、最も使用された術中パラメータ、および平均治療成功率、などの情報が示され得る。デジタルツイン101は、治療クラスタ化705を使用することで、各表現型703の治療アウトカムを追跡することによって、将来の治療推奨を調整し得る。例えば、特異的な表現型内の全ての患者を追跡するとともに、受信済みの治療タイプにクラスタ化することで、患者ごとのアウトカムを比較することによって、将来の治療選択を容易にし得る。いくつかの例では、ユーザは、特異的な患者クラスタまたは治療クラスタを選択し得るとともに、特異的な表現型703に関連する情報を閲覧することによって、デジタルツインを介して、特異的な表現型703に割り当てられる患者に基づいた推奨を受け取り得る。一部の例では、ユーザは、特異的な推奨外科医を選択し得るので、予測アウトカムのプロファイルは、患者が比較するべく推奨外科医ごとに表示され得る。同様に、ユーザは、特異的な推奨リハビリテーションプロトコルを選択し得るので、予測アウトカムのプロファイルは、患者が比較するべく推奨リハビリテーションプロトコルごとに表示され得る。他の例では、ユーザは、特異的な推奨インプラントタイプを選択し得るので、予測アウトカムのプロファイルは、患者が比較するべく推奨インプラントタイプごとに表示され得る。
【0058】
図8は、例示的なデジタルツインアーキテクチャ800のブロック図を示す。デジタルツイン801は、医療プロバイダまたは他のデータソース803からの患者特異的データと、患者インタフェース805を介した患者からの患者特異的データと、および医療プロバイダまたは他のデータソース807からの患者集団データと、を受信し得る。患者治療パス全体を通して、デジタルツイン101、601、801は、電子デバイス809、コンピュータ811、および手術ロボット813、からデータを受信しているだけでなく、それらにデータを送信しているとともに、医療プロバイダに情報を提供したり、および/または患者の治療を容易にしたり、し得る。デジタルツイン801は、受信済みのデータによって、デジタル表現型解析、機構的モデル化、および機械学習アルゴリズム、を実行するので、リスク因子の識別815、併存疾患評価817、ワークフロー管理推奨819、推奨配置決定821、治療パス推奨823、治療選択推奨825、アウトカムに基づいた手術シミュレーション827、リソース割り振り推奨829、患者の期待の管理のための治療教育の推奨831、推奨リハビリテーション支援833、リアルタイムでのケア計画最適化の推奨835、および/または手術計画最適化の推奨837、を出力し得る。一部の例では、デジタルツイン801は、寛骨臼カップの配置に特異的な位置を推奨してもよい。一部の例では、デジタルツイン801は、治療施設(例えば、入院患者、外来患者、外来手術センター)、退院の場所(例えば、患者の自宅住居または養護施設)、患者特異的教育(例えば、所期のアウトカム/リスクに従う材料)、および/または必要なケース特異的機器(例えば、手術ロボット、バール、電動ナイフなど)、を推奨してもよい。
【0059】
人工膝関節部分および全形成術は、本明細書では例として言及されているが、デジタルツイン101をオンコロジーの分野に使用することで、癌を治療し得る。例えば、デジタルツイン101は、腫瘍治療手技に関連する手技データまたは他のデータを含み得、本明細書に開示される態様は、最適な計画を決定するべく、腫瘍治療手技または手技の組合せ(例えば、心臓の手技および整形外科的手技)を評価し得る。本明細書に開示される態様を外傷ケースに使用することで、完了すべきステップのシーケンスを決定するのに有用であり得る。本明細書に開示される態様は、手技(例えば、外科手技)のステップを監視することで、インジケーションの評価および/または最適化、術前評価、術中評価、または術後評価、を備えている手技を最適化する方法を決定し得る。本明細書に開示される態様は、処方されたりまたはその他の方法で使用されたりする薬物の種類、薬物のタイミング、および薬物の量、を備えている外科的および非外科的技法を改善し得る。
【0060】
本明細書で論じられるデジタルツインシステムは、病院もしくは医療ネットワークなどの組織、保険会社、または政府、にガイダンスを提供し得る。病院は、例えば患者治療計画コンプライアンス、外科医技術、または治療成功率、に関連するデータを備えている1つまたは複数のデジタルツインシステムから、様々なトレンドデータを受信し得る。
【0061】
本開示の原理は、特定の用途に例示的な実施形態を参照して本明細書に記載されるが、本開示がこれに限定されないことを理解されたい。当業者および本明細書に提供される教示へのアクセスは、追加の修正形態、用途、実施形態、および等価物の置換、が本明細書に記載される実施形態の範囲内に全て含まれることを認識するであろう。従って、本発明は、上記の説明によって限定されるとはみなされないものとする。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】