(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】異種移植のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/12 20150101AFI20240905BHJP
A61K 35/42 20150101ALI20240905BHJP
A61K 35/22 20150101ALI20240905BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240905BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240905BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240905BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240905BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240905BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K35/12
A61K35/42
A61K35/22
A61P11/00
A61P13/12
A61P37/06
A61P29/00
A61K35/28
A61P43/00 121
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513512
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 US2022075809
(87)【国際公開番号】W WO2023034894
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306018457
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】サイクス,ミーガン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ヨン-グワン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB33
4C087BB41
4C087BB44
4C087BB55
4C087CA03
4C087MA02
4C087MA05
4C087MA67
4C087NA14
4C087NA20
4C087ZA31
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZC75
4C087ZC80
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、異種移植の方法、例えば、ブタからヒトへの移植である。また、本明細書で提供されるのは、細胞外小胞(「EV」、例えば、エクソソーム)及びそれを含む組成物、例えば、ヒトCD47を発現するEVである。更に、本明細書で提供されるのは、EVを作製する方法及び異種移植のためのその使用である。いくつかの態様では、異種移植の方法は、異種移植片においてヒトCD47を発現するステップを含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種移植の方法であって、前記方法が、
a.ドナーブタから臓器を得ることと、
b.前記臓器をヒトCD47でクロスドレッシングさせること(cross-dressing)と、
c.ヒトレシピエントに前記臓器を移植することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記クロスドレッシングステップが、前記臓器を、細胞外小胞(EV)を含むヒトCD47に曝露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記EVが、ヒト細胞から単離される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が、組換えヒトCD47を発現する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が、トランスジェニック細胞である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記クロスドレッシングが、ヒトCD47を発現するEVとともに、前記臓器を2時間インキュベートすることによって達成される、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記クロスドレッシングが、ヒトCD47を発現するEVとともに、前記臓器を6時間インキュベートすることによって達成される、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記クロスドレッシングが、前記臓器をエクスビボ灌流することによって達成される、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記クロスドレッシングが、前記ドナーブタ、前記ヒトレシピエント、またはそれらの組み合わせをインビボ灌流することによって達成される、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、ヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約5%~約25%、クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約25%~約50%、前記クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約50%~約75%、前記クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約75%~約80%、前記クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、クロスドレッシングされた細胞を飲み込むCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約80%~約85%、前記クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約85%~約90%、前記クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約90%~約95%、前記クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、前記クロスドレッシングされた臓器の検出可能な貪食がないという結果をもたらす、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、ヒトマクロファージからの保護による前記臓器の生存率の増加をもたらす、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記クロスドレッシングされた臓器が、アポトーシスを誘導することなく、貪食を回避する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記クロスドレッシングされた臓器が、貪食を回避し、任意の検出可能なレベルのアポトーシスを呈しない、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞が、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、約5%~約25%低いレベルのアポトーシスを呈する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞が、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、約25%~約50%低いレベルのアポトーシスを呈する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞が、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、約50%~約75%低いレベルのアポトーシスを呈する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞が、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、約75%~約80%低いレベルのアポトーシスを呈する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞が、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、約80%~約85%低いレベルのアポトーシスを呈する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞が、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、約85%~約90%低いレベルのアポトーシスを呈する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞が、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、少なくとも約90%低いレベルのアポトーシスを呈する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
アポトーシスが、ヨウ化プロピジウム染色によって測定される、請求項20~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記クロスドレッシングされた臓器が、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の低減を呈する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記クロスドレッシングされた臓器が、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の約5%~約25%の低減を呈する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記クロスドレッシングされた臓器が、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の約25%~約50%の低減を呈する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記クロスドレッシングされた臓器が、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の約50%~約75%の低減を呈する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記クロスドレッシングされた臓器が、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の約75%~約80%の低減を呈する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記クロスドレッシングされた臓器が、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の約80%~約85%の低減を呈する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記クロスドレッシングされた臓器が、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の約85%~約90%の低減を呈する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記クロスドレッシングされた臓器が、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の少なくとも90%の低減を呈する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記ヒトレシピエントが、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の低減を呈する、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記ヒトレシピエントが、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の約5%~約25%の低減を呈する、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記ヒトレシピエントが、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の約25%~約50%の低減を呈する、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記ヒトレシピエントが、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の約50%~約75%の低減を呈する、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記ヒトレシピエントが、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の約75%~約80%の低減を呈する、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記ヒトレシピエントが、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の約80%~約85%の低減を呈する、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記ヒトレシピエントが、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の約85%~約90%の低減を呈する、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記ヒトレシピエントが、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の少なくとも90%の低減を呈する、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記臓器が、腎臓である、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記臓器が、肺である、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記ヒトレシピエントが、腎不全に罹患している、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記ヒトレシピエントが、同等な臨床環境における標準ケアよりも少ない免疫抑制療法を必要とする、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記ヒトレシピエントが、同等な臨床環境における標準ケアよりも10~20%少ない免疫抑制療法を必要とする、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記ヒトレシピエントが、同等な臨床環境における標準ケアよりも20~30%少ない免疫抑制療法を必要とする、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記ヒトレシピエントが、同等な臨床環境における標準ケアよりも30~40%少ない免疫抑制療法を必要とする、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記ヒトレシピエントが、同等な臨床環境における標準ケアよりも40~50%少ない免疫抑制療法を必要とする、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記ヒトレシピエントが、同等な臨床環境における標準ケアよりも50~60%少ない免疫抑制療法を必要とする、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記ヒトレシピエントが、同等な臨床環境における標準ケアよりも60~70%少ない免疫抑制療法を必要とする、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記ヒトレシピエントが、同等な臨床環境における標準ケアよりも70~80%少ない免疫抑制療法を必要とする、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記ヒトレシピエントが、同等な臨床環境における標準ケアよりも80~90%少ない免疫抑制療法を必要とする、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記ヒトレシピエントが、同等な臨床環境における標準ケアよりも少なくとも90%少ない免疫抑制療法を必要とする、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記方法が、タンパク尿の低減をもたらす、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
タンパク尿が、24時間当たり3g未満に低減される、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
タンパク尿が、24時間当たり500mgに低減される、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
タンパク尿が、24時間当たり300mgに低減される、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
タンパク尿が、24時間当たり150mgに低減される、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
タンパク尿が、前記移植の2週間以内に消失する、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
タンパク尿が、前記移植の1か月以内に消失する、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
タンパク尿が、前記移植の2か月以内に消失する、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
タンパク尿が、前記移植の4か月以内に消失する、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記レシピエントに骨髄組織を移植することを更に含む、請求項1~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記骨髄が、前記腎臓と同じブタから採取される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記骨髄が、前記腎臓とは異なるブタから採取される、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記骨髄が、EVへの曝露によってヒトCD47でクロスドレッシングされる、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記臓器が、ヒトSIRPαを発現しない、請求項1~71のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.相互参照
本出願は、2021年9月3日出願の米国仮出願第63/240,637号の利益を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
2.配列表
本出願は、Patent Centerを介してXMLファイルフォーマットで提出されたコンピュータ可読式配列表を含み、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。Patent Centerを介して提出された配列表のXMLファイルは、「14648-004-228_seqlist.xml」と題され、2022年8月30日に作成され、32,782バイトのサイズである。
【0003】
3.政府ライセンスの権利
本発明は、National Institute of Allergy and Infections Diseases(NIAID)、National Institutes of Health(NIH)によって授与された付与番号P01 AI045897の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明にある特定の権利を有する。
【0004】
4.序言
本明細書で提供されるのは、異種移植(xenotransplantation)、例えば、ブタからヒトへの移植の方法である。また、本明細書で提供されるのは、細胞外小胞(「EV」、例えば、エクソソーム)及びそれを含む組成物、例えば、ヒトCD47を発現するEVである。更に、本明細書で提供されるのは、EVを作製する方法及び異種移植のためのその使用である。いくつかの態様では、異種移植の方法は、異種移植片においてヒトCD47を発現するステップを含む。ある特定の態様では、異種移植の方法は、標的組織上でのシグナル調節タンパク質α(SIRPα)の発現に依存しない。
5.
【背景技術】
【0005】
現在、同種ドナーの深刻な不足が、実施される臓器移植の数を制限している。この需給格差は、他の種の臓器(異種移植片)の使用によって補うことができる。非ヒト霊長類の使用に関連する倫理的問題及び非現実性を考慮すると、ブタはヒトにとって最も好適なドナー種と考えられている。臓器のサイズ及びヒトとの生理学的類似性に加えて、ブタは急速に繁殖させ、同系交配させることができるので、遺伝子改変に特に適しており、ヒトへの移植片ドナーとして機能する能力を改善することができる(Sachs 1994,Path.Biol.42:217-219、Piedrahita et al.,2004,Am.J.Transplant,4 Suppl.6:43-50)。
【0006】
非特異的免疫抑制療法と移植との組み合わせは、高い早期移植免疫寛容に関連するが、臨床臓器移植の成功に対する重大な制限は、大きくは、移植片の慢性拒絶反応に起因する晩期移植片機能喪失である。腎臓移植によって、レシピエント当たり平均4.4年の生存年数がもたらされている。Rana et al.JAMA Surg.2015;150(3):252-259を参照されたい。しかしながら、生体腎移植後10年以内には、移植片の30%超が機能しなくなる。Department of Health and Human Services:2017 Annual Data Report:Kidney[2021年3月22日に取得]を参照されたい。インターネット:<URL:srtr.transplant.hrsa.gov/annual_reports/2017/Kidney.aspx>から取得。
【0007】
異種移植片拒絶反応を防止するために必要な生涯にわたる免疫抑制のレベルは許容できないほど毒性があり得るので、免疫寛容は、臨床異種移植を成功させるために更に重要である。加えて、患者において免疫学的寛容が達成されたかどうかを確実に示すマーカーは同定されておらず、その結果、免疫抑制離脱が基礎とする実験パラメータが存在しない。
【0008】
したがって、異種移植における目的は、異種レシピエントに移植された後にドナー動物由来の混合キメラ細胞の耐久性を最適化すること、ならびにドナー動物の健康及び生存率を維持することを含む。
【0009】
混合キメリズムにより、レシピエントにおけるT細胞、B細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞のレベルでドナーへの寛容を誘導することができる。Griesemer A,Yamada K.and Sykes M.,2014,Immunol.Rev.258:241-258。Sachs D.H.,Kawai T.and Sykes M.,2014,Cold Spring Harb.Perspect.Med.4:a015529。造血は、骨髄微小環境におけるサイトカイン及び接着分子と造血細胞上の受容体との相互作用に関与する、厳密に調節された工程である。これらの受容体-リガンド相互作用のうちの多くは、種特異的(例えば、IL-3及びIL-3R)または種選択的(例えば、SCF-cKIT、GM-CSF-GM-CSFR、VLA-5-フィブロネクチン)であるので、(例えば、ブタからの)混合キメラ細胞は、内因性造血細胞(例えば、ヒト細胞)と比較して競合的に不利であり、移植された細胞の緩やかな機能喪失に至るであろう。耐久性のある混合キメリズムは、生涯にわたるT、B、及びNK細胞寛容を最も確実にすることができるので、このキメリズムの機能喪失は、望ましくない。
【0010】
ヒトサイトカイン受容体及び接着分子をブタドナー動物に導入することは、この競合的欠点を克服するのに役立ち、生涯にわたるキメリズム及び寛容を確実にするであろう。Griesemer A,Yamada K.and Sykes M.,2014,Immunol.Rev.,258:241-258。造血は厳密に調節されるので、これらの遺伝子をブタゲノムのそれらの自然の遺伝子座に挿入して、それらが天然の調節配列の制御下で、生理学的様式で機能できるようにすることが望ましい場合がある。これは、天然ブタ遺伝子を破壊し、それをヒト対応物と置き換えることによって達成され得る。しかしながら、このアプローチには、それぞれ、種特異的または種選択的ブタサイトカイン(または接着リガンド)に対してブタ細胞を無応答または低反応にするという問題が有り得る。したがって、ヒト導入遺伝子の長期発現は、ドナー動物の健康に有害であり得る。Dwyer et al.,J.Clin.Invest.2004 May;113(10):1440-6、及びCrikis et al.,2010,Am.J.Transplant;10:242-50。
【0011】
インテグリン関連タンパク質(IAP)としても知られているCD47は、遍在的に発現される50kDaの細胞表面糖タンパク質であり、シグナル制御タンパク質(SIRP)α(CD172a及びSHPS-1としても知られている)のリガンドとして機能する(Brown,2002,Curr.Opin.Cell.Biol.,14:603-7、Brown and Frazier,2001,Trends Cell Biol.,111:130-5)。CD47及びSIRPαは、細胞遊走、B細胞の接着、及びT細胞活性化を含む、多様な細胞工程において重要な役割を果たす、細胞間コミュニケーション系を構成する(Liu et al.,2002,J.Biol.Chem.277:10028、Motegi et al.,2003,EMBO 122:2634、Yoshida et al.,2002,J.lmmunol.168:3213、Latour et al.,2001;J.lmmunol.167:2547)。加えて、CD47-SIRPα系は、マクロファージによる貪食の負の調節に関与する。いくつかの細胞タイプ(すなわち、赤血球、血小板または白血球)の表面上のCD47は、マクロファージによる貪食を阻害した。貪食の阻害におけるCD47-SIRPα相互作用の役割は、初代野生型マウスマクロファージが、CD47欠損マウスから得られたが野生型マウスからのものではない、オプソニン化されていない赤血球(RBC)を急速に貧食するという観察によって示されている(Oldenborg et al.,2000;Science 288:2051)。また、CD47は、その受容体であるSIRPαを通して、Fcγ及び補体受容体媒介性貪食の両方を阻害することも報告されている(Oldenborg et al.,J.2001;Exp.Med.193:855)。
【0012】
CD47は、遍在的に発現し、マクロファージ及び樹状細胞(DC)上の重要な阻害性受容体であるシグナル伝達調節タンパク質(SIRP)αのリガンドとして作用する。新たな証拠は、CD47-SIRPαシグナル伝達経路が、マクロファージ及びDC活性化の調節において重要な役割を果たすことを示しており、免疫学的障害のための有望な介入標的を提供する。CD47-SIRPα細胞コミュニケーション系は、種特異的である(例えば、ブタCD47は、ブタ骨髄細胞の貪食を阻害しない)。ブタCD47とヒトSIRPαとの間の交差反応の欠如はまた、ヒトマクロファージによる他のタイプのブタ細胞(例えば、肝細胞)の拒絶に寄与し、DC活性化を刺激し(以下を参照されたい)、したがって、抗ブタT細胞応答を誘発する。
【0013】
CD47欠損細胞は、同系野生型(WT)マウスへの注入後にマクロファージによって激しく拒絶され、CD47が、マクロファージに「私を食べないで」シグナルを提供することを実証している(Oldenborg PA,et al.,2000 Science,288:2051-4、Wang et al.,2007,Proc Natl Acad Sci USA.104:13744)。ブタを移植ソースとして使用する異種移植には、臨床移植における主要な制限要因であるヒト臓器ドナーの深刻な不足を解消する可能性がある(Yang et al.,2007,Nature reviews Immunology.7:519-31)。マクロファージによる異種細胞の強い拒絶(Abe 2002,The Journal of Immunology 168:621)は、大きくは、ドナーCD47とレシピエントSIRPαとの間の機能的相互作用の欠如によって引き起こされ(Wang et al.,2007,Blood;109:836-42、Ide et al.,2007,Proc Natl Acad Sci USA 104:5062-6。Navarro-Alvarez 2014,Cell transplantation,23:345-54)、これが、ヒトCD47トランスジェニックブタの開発につながっている(Tena et al.,2017,Transplantation 101:316-21、Nomura et al.,2020,Xenotransplantation.2020;27:e12549)。マクロファージに加えて、DCの亜集団もまた、SIRPαを発現する(Wang et al.,2007,Proc Natl Acad Sci USA.104:13744-9、Guilliams et al.,2016,Immunity.45:669-84)。CD47-SIRPαシグナル伝達はまた、DC活性化及びT細胞をプライミングするその能力を阻害し、ドナー特異的輸血(DST)または肝細胞移植によるT細胞寛容の誘導に重要な役割を果たす(Wang et al.,2007,Proc Natl Acad Sci USA.104:13744-9、Wang et al.,2014,Cell transplantation 23:355-63。Zhang et al.,2016,Sci Rep.6:26839)。SIRPαとの相互作用を介して貪食を阻害する「私を食べないで」分子として機能することに加えて、そのリガンド(例えば、抗CD47抗体、TSP-1、可溶性SIRPα)へのライゲーション時に、CD47シグナル伝達はまた、細胞老化または死を誘導し、細胞増殖を抑制する。
【発明の概要】
【0014】
6.発明の概要
一態様では、本明細書で提供されるのは、異種移植の方法であって、方法が、(a)ドナーブタから臓器を得ることと、(b)臓器をヒトCD47でクロスドレッシング(cross-dressing)させることと、(c)臓器をヒトレシピエントに移植することと、を含む、方法である。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングステップは、臓器を、細胞外小胞(EV)を含むヒトCD47に曝露することを含む。いくつかの実施形態では、EVは、ヒト細胞から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、組換えヒトCD47を発現する。いくつかの実施形態では、細胞は、トランスジェニック細胞である。
【0015】
いくつかの実施形態では、クロスドレッシングは、ヒトCD47を発現するEVとともに、臓器を2時間インキュベートすることによって達成される。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングは、ヒトCD47を発現するEVとともに、臓器を6時間インキュベートすることによって達成される。
【0016】
いくつかの実施形態では、クロスドレッシングは、臓器をエクスビボ灌流することによって達成される。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングは、ドナーブタ、ヒトレシピエント、またはそれらの組み合わせをインビボ灌流することによって達成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、方法は、ヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、クロスドレッシングされた臓器細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約5%~約25%の、クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約25%~約50%の、クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約50%~約75%の、クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約75%~約80%の、クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約80%~約85%の、クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約85%~約90%の、クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされていない臓器細胞と比較して、約90%~約95%の、クロスドレッシングされた臓器細胞のヒトマクロファージによる貪食の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、クロスドレッシングされた臓器の検出可能な貪食がないという結果をもたらす。
【0018】
いくつかの実施形態では、方法は、クロスドレッシングされた細胞を貪食するCD14陽性細胞のパーセンテージをFACS分析によって測定して、ヒトマクロファージからの保護により臓器の生存率が増加したという結果をもたらす。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器は、アポトーシスを誘導することなく、貪食を回避する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器は、貪食を回避し、検出可能なレベルのアポトーシスを呈しない。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞は、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、約5%~約25%低いレベルのアポトーシスを呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞は、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、約25%~約50%低いレベルのアポトーシスを呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞は、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、約50%~約75%低いレベルのアポトーシスを呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞は、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、約75%~約80%低いレベルのアポトーシスを呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞は、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、約80%~約85%低いレベルのアポトーシスを呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞は、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、約85%~約90%低いレベルのアポトーシスを呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器から得られた細胞は、クロスドレッシングされていない臓器から得られた細胞と比較して、少なくとも90%低いレベルのアポトーシスを呈する。いくつかの実施形態では、アポトーシスは、ヨウ化プロピジウム染色によって測定される。
【0019】
いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器は、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の低減を呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器は、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の約5%~約25%の低減を呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器は、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の約25%~約50%の低減を呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器は、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の約50%~約75%の低減を呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器は、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の約75%~約80%の低減を呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器は、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の約80%~約85%の低減を呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器は、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の約85%~約90%の低減を呈する。いくつかの実施形態では、クロスドレッシングされた臓器は、クロスドレッシングされていない臓器と比較して、炎症の少なくとも90%の低減を呈する。
【0020】
いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の低減を呈する。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の約5%~約25%の低減を呈する。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の約25%~約50%の低減を呈する。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の約50%~約75%の低減を呈する。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の約75%~約80%の低減を呈する。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の約80%~約85%の低減を呈する。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の約85%~約90%の低減を呈する。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、クロスドレッシングされていない臓器を用いた移植と比較して、移植後に、全身炎症の少なくとも90%の低減を呈する。
【0021】
いくつかの実施形態では、臓器は、腎臓である。いくつかの実施形態では、臓器は、肺である。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、腎不全に罹患している。
【0022】
いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、同等な臨床環境における標準ケアよりも少ない免疫抑制療法を必要とする。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、同等な臨床環境における標準ケアよりも10~20%少ない免疫抑制療法を必要とする。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、同等な臨床環境における標準ケアよりも20~30%少ない免疫抑制療法を必要とする。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、同等な臨床環境における標準ケアよりも30~40%少ない免疫抑制療法を必要とする。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、同等な臨床環境における標準ケアよりも40~50%少ない免疫抑制療法を必要とする。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、同等な臨床環境における標準ケアよりも50~60%少ない免疫抑制療法を必要とする。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、同等な臨床環境における標準ケアよりも60~70%少ない免疫抑制療法を必要とする。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、同等な臨床環境における標準ケアよりも70~80%少ない免疫抑制療法を必要とする。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、同等な臨床環境における標準ケアよりも80~90%少ない免疫抑制療法を必要とする。いくつかの実施形態では、ヒトレシピエントは、同等な臨床環境における標準ケアよりも少なくとも90%少ない免疫抑制療法を必要とする。
【0023】
いくつかの実施形態では、方法は、タンパク尿の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、タンパク尿は、24時間当たり3g未満に低減する。いくつかの実施形態では、タンパク尿は、24時間当たり500mgに低減する。いくつかの実施形態では、タンパク尿は、24時間当たり300mgに低減する。いくつかの実施形態では、タンパク尿は、24時間当たり150mgに低減する。
【0024】
いくつかの実施形態では、タンパク尿は、移植の2週間以内に消失する。いくつかの実施形態では、タンパク尿は、移植の1か月以内に消失する。いくつかの実施形態では、タンパク尿は、移植の2か月以内に消失する。いくつかの実施形態では、タンパク尿は、移植の4か月以内に消失する。
【0025】
いくつかの実施形態では、方法は、骨髄組織をレシピエントに移植することを更に含む。いくつかの実施形態では、骨髄は、腎臓と同じブタから採取される。いくつかの実施形態では、骨髄は、腎臓とは異なるブタから採取される。いくつかの実施形態では、骨髄は、EVへの曝露によってヒトCD47でクロスドレッシングされる。
【0026】
いくつかの実施形態では、臓器は、ヒトSIRPαを発現しない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
7.図面の簡単な説明
【
図1A-C】ブタLCLの(A)、トランスジェニックhCD47による(B)、hCD47-Tg LCL細胞との共培養(C)後の、クロスドレッシング。
【
図2】ブタLCLの、及びトランスジェニックhCD47による、hCD47-Tg LCL細胞との共培養後の、クロスドレッシング。
【
図3A-B】ヒトJurkat細胞の(A)、hCD47-Tg LCL細胞との共培養後のトランスジェニックhCD47による(B)、クロスドレッシング。
【
図4A-C】hCD47KO Jurkat細胞の(A)、天然hCD47による(B)、WT Jurkat細胞との共培養(C)後の、クロスドレッシング。
【
図5A-B】ブタLCLの(A)、WT Jurkat細胞との共培養後の(B)、天然hCD47によるクロスドレッシング。
【
図6】WT Jurkat細胞、ブタLCL/CD47
p/h細胞、CD47KO Jurkat細胞、WT Jurkat細胞と混合したCD47KO細胞(染色時に混合)、WT JurkatまたはブタhCD47-Tg LCL細胞と共培養したCD47KO Jurkat細胞(24時間)、ブタLCL細胞、及びWT Jurkat細胞と共培養したLCL細胞(24時間)上のCD47発現。図中の数字は、ゲーティングされたCD47KO Jurkat細胞及びブタLCL細胞に対するCD47染色の平均蛍光強度(MFI)を示す。
【
図7A-D】2時間後の、CD47KO Jurkat細胞の(A)、WT Jurkat細胞(B)からの細胞外小胞(C)またはエクソソーム(D)によるCD47クロスドレッシングの測定。
【
図8A-D】6時間後の、CD47KO Jurkat細胞の(A)、WT Jurkat細胞(B)からの細胞外小胞(C)またはエクソソーム(D)によるCD47クロスドレッシングの測定である。
【
図9A-D】2時間後の、ブタLCL細胞の(A)、WT Jurkat細胞からの細胞外小胞(C)またはエクソソーム(D)によるCD47クロスドレッシングの測定。
【
図10A-D】6時間後の、ブタLCL細胞の(A)、WT Jurkat細胞からの細胞外小胞(C)またはエクソソーム(D)によるCD47クロスドレッシングの測定。
【発明を実施するための形態】
【0028】
8.発明の詳細な説明
本明細書で提供されるのは、CD47を担持する細胞外小胞(「EV」、例えば、エクソソーム)及びそれを含む組成物である。そのようなCD47を担持するEVを使用して、組織をクロスドレッシングし、そのような組織がマクロファージ及び他の食細胞による貪食による排除を回避することを可能にすることができる。そのような方法及び組成物は、異種移植に使用され得る。EVを作製する方法は、セクション6.1に記載されている。生じたEVを含む組成物については、セクション6.2に記載されている。EVを使用して組織をクロスドレッシングさせる方法については、セクション6.3に記載されている。異種移植におけるそのような組織の使用については、セクション6.4に記載されている。
【0029】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、所与の値または範囲のプラスまたはマイナス10%以内を意味する。整数が必要とされるかまたは予想される場合、及びパーセンテージの場合では、この用語の範囲は、次の整数までの切り上げ、及び次の整数までの切り下げを含むことが理解される。明確にするために、「約X」及び「少なくとも約X」等の語句の本明細書における使用は、「X」を包含し、具体的にXを列挙すると理解される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「細胞外小胞(EV)」という用語は、一般に、細胞によって細胞外空間に分泌される脂質膜封入小胞を指し、限定されないが、エクソソーム及び/またはマイクロベシクルを含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、「エクソソーム」という用語は、一般に、マイクロベシクル等の他のEVと比較して、典型的にはサイズが小さい(例えば、直径が30~150nm)EVのサブセットを指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「クロスドレッシング」という用語は、一般に、例えば、細胞を、当該タンパク質を発現する細胞またはEVとともにインキュベートすることによって誘導される、細胞におけるトランスジェニックタンパク質(例えば、CD47)の発現を指す。
【0033】
8.1 EVを作製する方法
8.1.1.EV
細胞外小胞(EV)は、細胞によって細胞外環境に放出される脂質二重層封入膜である。EVの例としては、エクソソーム、マイクロベシクル(MV)、及びアポトーシス体が挙げられる。例えば、Carnino et al.Respiratory Research(2019)20:240を参照されたい。ある特定の実施形態では、EVは、エクソソームを含む。いくつかの実施形態では、EVは、エクソソームからなる。ある特定の実施形態では、EVは、MVを含む。いくつかの実施形態では、EVは、MVからなる。
【0034】
特定の実施形態では、EVは、約20nm~約2,000nmである。いくつかの実施形態では、EVは、約20nm~約1,500nmである。いくつかの実施形態では、EVは、約20nm~約1,000nmである。いくつかの実施形態では、EVは、約20nm~約500nmである。いくつかの実施形態では、EVは、約20nm~約250nmである。いくつかの実施形態では、EVは、約20nm~約200nmである。いくつかの実施形態では、EVは、約20nm~約150nmである。いくつかの実施形態では、EVは、約50nm~約150nmである。いくつかの実施形態では、EVは、約50nm~約1,500nmである。いくつかの実施形態では、EVは、約50nm~約1,000nmである。いくつかの実施形態では、EVは、約50nm~約500nmである。
【0035】
エクソソームは、本開示での使用に好適な1つの例示的なタイプのEVである。エクソソームを特徴付けるための様々なマーカーは、当該技術分野で既知であり、限定されないが、Alix、Tsg101、テトラスパニン(例えば、CD63、CD81、CD82、CD53、及びCD37)、及びフロチリンを含む。MVは、本開示での使用に好適な別の例示的なタイプのEVであり、これらの小胞を定義するために使用される一般的なタンパク質マーカーとしては、限定されないが、セレクチン、インテグリン、及びCD40リガンドが挙げられる。
【0036】
8.1.2.EVのソース
本明細書で提供されるのは、CD47、例えば、ヒトCD47を含むEVである。いくつかの実施形態では、EVが含むCD47は、EVを放出する細胞に対して天然である。他の例では、CD47は、EVを放出する細胞(例えば、トランスジェニックCD47)に対して天然ではない。好ましい実施形態では、CD47は、トランスジェニックヒトCD47である。
【0037】
多くの細胞タイプは、EVを放出し、EVは、宿主細胞によって放出される、核酸、タンパク質、及び脂質等の様々なタイプのカーゴを担持し得る。本明細書で提供されるEVは、培養物中の細胞株によって、または培養物中の一次細胞によって放出され得る。例示的な実施形態では、EVは、ヒト細胞、例えば、培養物中のヒト一次細胞から放出される。特定の実施形態では、本明細書で提供されるEVは、トランスジェニックCD47を発現するヒト細胞から放出される。他の特定の実施形態では、本明細書で提供されるEVは、ヒトがん細胞、例えば、CD47を過剰発現するヒトがん細胞(例えば、Jurkat白血病細胞)から放出される。本明細書で提供されるEVは、ヒトCD47を自然に発現する細胞から、またはヒトCD47を組換え発現するように改変されている細胞、例えば、以下のセクション6.1.3に記載の改変された細胞から放出され得る。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるEVは、ヒトCD47を過剰発現するように改変された細胞、例えば、以下のセクション6.1.3に記載の改変された細胞から放出される。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるEVは、ヒトCD47を誘導的に発現するように改変された細胞、例えば、以下のセクション6.1.3に記載の改変された細胞から放出される。特定の実施形態では、本明細書で提供されるEVは、生体液、例えば、血液から単離される。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるEVを放出する細胞は、EV放出を向上する薬剤で処置され得る。細胞からのEVの放出を向上する薬剤は、当該技術分野で周知であり、例えば、Deng et al.,Theranostics 2021,11(9):4351-4362、Wang et al.Cells 2020,9(3):660、及びNakamura et al.,Molecular Therapy 28(10):2203-2219 October 2020を参照されたい。特定の実施形態では、EV放出を向上する薬剤は、超音波、アジポネクチン、ノルエピネフリン、フォルスコリン、フェノテロール、メチルドーパミン、またはメフェネシンである。
【0039】
8.1.3.EVを放出するトランスジェニック細胞株を作製する方法
また、本明細書で提供されるのは、CD47を発現するトランスジェニック細胞(例えば、一次細胞または細胞株細胞)であり、これは、CD47を担持するEVを放出する。ヒトCD47のアミノ酸配列は、以下のNCBI参照配列(RefSeq)受入番号:NP_001768、NP_001369235.1、NP_942088、及びXP_005247966.1に見出すことができる。ヒトCD47をコードする核酸配列は、以下のNCBI RefSeq受入番号:NM_001777、NM_198793、XM_005247909.2及びNM_001382306.1に見出すことができる。本明細書で提供されるトランスジェニック細胞株を作製するために、CD47の任意の既知のスプライスバリアントが使用され得る。ヒトCD47のアミノ酸及びヌクレオチド配列の非限定的な例が、表1に提供されている。
【0040】
本明細書で提供されるのは、CD47、例えば、ヒトCD47をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、発現ベクター)である。ベクターとしては、ウイルスベクター(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、自己相補的アデノ随伴ウイルス(scAAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス(例えば、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、または改変ヒト免疫不全ウイルス)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、アルファウイルス、ワクシニアウイルス(vaccina virus)等)、プラスミド、または他のベクター(例えば、リポプレックス、リポソーム、ポリマーソーム、またはナノ粒子等の、非ウイルスベクター)を挙げることができる。
【0041】
8.1.3.1 トランスジェニック細胞株を作製する方法
トランスジェニック細胞(一次細胞または細胞株細胞を含む)は、当該技術分野で既知であるか、または本明細書で提供される任意の方法を使用して産生され得る。
【0042】
本明細書で提供されるトランスジェニック細胞株は、細胞DNAと、細胞に導入された外来性DNA(例えば、DNA構築物、ベクター等)との間の相同組換え(HR)を使用して、CD47(例えば、ヒトCD47)を発現するように操作され得る。あるいは、本明細書で提供されるいくつかの実施形態では、ヒトCD47導入遺伝子は、その必要な調節配列の全てと一緒に、例えばヒト人工染色体として細胞株に導入される。
【0043】
細胞株のゲノムへのヒトCD47導入遺伝子の配列特異的挿入(またはノックイン)は、ヒトCD47の導入遺伝子を含有する構築物を、標的となる染色体遺伝子座の相同組換え(HR)で組み合わせた、配列特異的エンドヌクレアーゼによっても達成され得る。Meyer et al.,2010,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 107,15022-15026.Cui et al.,2010,Nat.Biotechnol.29:64-67.Moehle et al.,2007,Proc Natl Acad Sci USA 104:3055-3060.
【0044】
配列特異的エンドヌクレアーゼの別の例としては、RNA誘導DNAヌクレアーゼ、例えば、CRISPR/Cas系が挙げられる。Cas9/CRISPR(クラスターを形成し規則的間隔を持つ短い回文構造の繰り返し(Clustered Regularly-Interspaced Short Palindromic Repeats))系は、標的DNAのRNA誘導DNA結合及び配列特異的切断を利用する。ガイドRNA(gRNA)(例えば、20ヌクレオチドを含有する)は、ゲノムPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)部位(NNG)の上流の標的ゲノムDNA配列及び定常RNA足場領域に相補的である。Cas(CRISPR関連)タンパク質は、gRNA及びgRNAが結合する標的DNAに結合し、PAM部位の上流の定義された位置で二本鎖切断を導入する。Geurts et al.,2009,Science 325:433;Mashimo et al.,2010,PLoS ONE 5,e8870、Carbery et al.,2010,Genetics 186:451-459、Tesson et al.,2011,Nat.Biotech.29:695-696。Wiedenheft et al.Nature 2012,482:331-338、Jinek et al.Science,2012,337:816-821、Mali et al.,2013,Science 339:823-826、Cong et al.2012,Science 339:819-823。
【0045】
本明細書に記載の方法及び組成物の配列特異的エンドヌクレアーゼは、生物から操作、キメラ化、または単離することができる。エンドヌクレアーゼは、例えば、変異誘発によって、特定のDNA配列を認識するように操作することができる。Seligman et al.(2002)Nucleic Acids Research 30:3870-3879。コンビナトリアルアセンブリは、異なる酵素からのタンパク質サブユニットを会合または融合させることができる方法である。Amould et al.(2006)Journal of Molecular Biology 355:443-458。ある特定の実施形態では、これらの2つのアプローチである変異誘発及びコンビナトリアルアセンブリを組み合わせて、所望のDNA認識配列を有する操作されたエンドヌクレアーゼを産生することができる。
【0046】
配列特異的ヌクレアーゼは、タンパク質の形態で、またはmRNAもしくはcDNA等の配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸の形態で、細胞に導入され得る。核酸は、プラスミドもしくはウイルスベクター等のより大きな構築物の一部として、または例えば、エレクトロポレーション、脂質小胞、ウイルス輸送体、マイクロインジェクション、及びバイオリスティック法によって直接送達され得る。同様に、1つ以上の導入遺伝子を含有する構築物は、核酸を細胞に導入するのに適切な任意の方法によって送達され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるトランスジェニック細胞株は、ヒトCD47を誘導的に発現した。多数の誘導性プロモーター及び遺伝子発現系が当該技術分野で既知である。例えば、プロモーターは、化学物質、例えば、テトラサイクリン、タモキシフェン、またはクミン酸塩によって誘導され得る。遺伝子発現は、タンパク質-タンパク質相互作用(例えば、ラパマイシンによって制御されるFKBP12とmTORとの間の相互作用)によって制御することもできる。例えば、Kallunki et al.(2019),Cells 8:796を参照されたい。
【0048】
一実施形態では、標的遺伝子の条件付きノックアウトを達成するために、配列特異的組換え系が使用され得る。リコンビナーゼは、介在するポリヌクレオチドに隣接する特定のポリヌクレオチド配列(リコンビナーゼ認識部位)を認識し、相互鎖交換を触媒し、介在するポリヌクレオチドの反転または切除をもたらす酵素である。Araki et al.,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:160-164。
【0049】
一実施形態では、細胞内の標的遺伝子の条件付きノックアウトについては、Cre-loxP系が使用され得る。これは、相同組換え(HR)及び誘導性Creリコンビナーゼの発現を介した、loxP部位の標的化された組み込み(ノックイン)に関与する。
【0050】
別の実施形態では、導入遺伝子(例えば、リコンビナーゼ、またはヒトCD47導入遺伝子をコードする)の条件付き発現は、外因性刺激によって誘導または不活性化され得る調節配列を使用することによって達成することができる。例えば、条件付きノックアウト対立遺伝子の配列特異的組換え系は、例えば、リコンビナーゼの活性を化学物質(薬物)によって誘導可能であるようにすることによって調節することができる。化学物質は、Creリコンビナーゼ遺伝子の転写を活性化するか、またはCreリコンビナーゼタンパク質の核への輸送を活性化することができる。あるいは、リコンビナーゼは、投与された薬物の存在によってではなく、投与された薬物の不在によって活性化され得る。誘導系を調節する(したがって、例えば、条件付きノックアウトを誘導する)化学物質の非限定的な例としては、テトラサイクリン、タモキシフェン、RU-486、ドキシサイクリン等が挙げられる。Nagy A(Feb 2000),Cre recombinase:the universal reagent for genome tailoring,Genesis,26(2):99-109。例えば、米国特許出願第15/558,789号に記載される条件付きノックアウト及びノックイン構築物を参照されたい。
【0051】
8.1.3.2 EVの染色体外発現
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、CD47が染色体外DNAから発現されるEVを産生する方法である。染色体外DNAは、宿主染色体DNAに組み込まれないDNAである。染色体外DNAの非限定的な例としては、プラスミド及び環式染色体外DNAが挙げられる。真核生物細胞では、染色体外DNAは、核内部または核外部に見出され得る。例えば、宿主細胞は、ヒトCD47をコードするベクター(例えば、上のセクション6.1.3に記載のベクター)でトランスフェクトされ得、ヒトCD47タンパク質は、宿主DNAに組み込まれることなく、ベクターから発現される。
【0052】
8.1.3.3 細胞からのEVの単離
EVは、当該技術分野で既知であるか、または本明細書に記載の任意の方法を使用して、細胞(例えば、CD47を発現するトランスジェニック細胞)から単離され得る。例えば、Carnino et al.Respiratory Research(2019)20:240を参照されたい。
【0053】
例えば、EVは、細胞培養上清の画分遠心分離によって単離され得る。例示的なプロトコルでは、細胞上清は、2,000g(3,000rpm)で20分間遠心分離されて、細胞デブリ及び死細胞が除去される。次いで、EVは、16,500g(9,800rpm)で45分間の遠心分離によって精製される。エクソソームは、同様のプロトコルによって得ることができ、細胞上清が、2,000g(3,000rpm)で20分間遠心分離されて、細胞デブリ及び死細胞が除去され、次いで、エクソソームが、100,000g(26,450rpm)でおよそ2時間~16時間の遠心分離によって単離される。
【0054】
エクソソームを含むEVはまた、勾配密度遠心分離を使用して精製され得る。この方法では、EVは、スクロース、イオヘキソール、またはイオジキサノールのいずれかの溶液中の浮力密度に基づいて分離される。エクソソーム等のEVを単離するために使用される方法の他の例としては、有機溶媒(例えば、ポリエチレングリコール、酢酸ナトリウム、またはプロタミン)を用いる沈降、免疫沈降、抗体でコーティングされた磁気ビーズ(例えば、抗CD63でコーティングされた磁気ビーズ)を使用する分離、マイクロ流体デバイス、及び限外濾過が挙げられる。例えば、例示的なプロトコルについては、Carnino et al.Respiratory Research(2019)20:240、及びMomen-Heravi et al.Biol.Chem.2013;394(10):1253-1262を参照されたい。更なる例示的な方法は、ヘパリン抱合アガロースビーズを使用する単離(例えば、Balaj et al.(2015)Sci Rep 5,10266を参照されたい)、及びTim4親和性精製を使用する精製(例えば、Nakai et al.(2016)Sci Rep 6,33935を参照されたい)である。
【0055】
更に、EVの単離のための市販のキットが利用可能であり、本明細書で提供されるEVを分離するために使用することができる。非限定的な例としては、exoEasyキット(Qiagen)、ExoQuick(登録商標)キット(Systems Bioscience)、Total Exosome Isolation Reagent(ThermoFisher Scientific)、及びEasySep(商標)Human Pan-Extracellular Vesicle Positive Selection Kit(Stem Cell Technologies)が挙げられる。
【0056】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるEVは、単離または精製される。本明細書で提供されるEVは、当該技術分野で既知であるか、または本明細書で提供される任意の方法を使用して精製され得る。本明細書で使用される場合、「単離された」または「精製された」EVは、EVが由来する細胞または組織ソースからの細胞材料、微粒子、または他の汚染物質(例えば、細胞小器官、脂質、コレステロール)を実質的に含まない。特定の実施形態では、本明細書で提供されるEVは、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の純度のものである。特定の実施形態では、本明細書で提供されるEVは、99%超の純度のものである。純度は、例えば、動的光散乱もしくは単一粒子追跡分析を使用して粒径を測定することによって、またはフローサイトメトリー、ELISA、もしくは電子顕微鏡等の技術によって決定することができる。例えば、Balaj et al.(2015)Sci Rep 5,10266,Nakai et al.(2016)Sci Rep 6,33935及びCarnino et al.(2019)Respiratory Research 20:240を参照されたい。
【0057】
8.1.3.4 mRNAレベルを検出するためのアッセイ
mRNAレベルを検出または定量するいくつかの方法が、当該技術分野で既知である。例示的な方法には、ノーザンブロット、リボヌクレアーゼ保護アッセイ、PCRベースの方法(例えば、定量的PCR)、RNA配列決定、Fluidigm(登録商標)分析等が含まれるが、これらに限定されない。ヒトCD47のmRNA配列を使用して、mRNA配列に少なくとも部分的に相補的なプローブを調製することができる。次いで、プローブを使用して、PCRに基づく方法、ノーザンブロッティング、ディップスティックアッセイ、TaqMan(商標)アッセイ等の任意の好適なアッセイを使用して、試料中のmRNAを検出することができる。
【0058】
他の実施形態では、生体試料中のヒトCD47発現を試験するための核酸アッセイを用意することができる。アッセイは、典型的には、固体支持体及び支持体に接触する少なくとも1つの核酸を含有し、核酸は、mRNAの少なくとも一部分に対応する。そのアッセイは、その試料におけるmRNAの発現の変化を検出するための手段を有することもできる。アッセイ方法は、所望のmRNA情報のタイプに応じて変動し得る。例示的な方法としては、限定されないが、ノーザンブロット及びPCRに基づく方法(例えばqRT-PCR)が挙げられる。qRT-PCR等の方法はまた、試料中のmRNAの量を正確に定量することができる。
【0059】
典型的なmRNAアッセイ方法は、(1)表面に結合した対象プローブを得るステップと、(2)特異的な結合を提供するのに十分な条件下でmRNAの集団を表面に結合したプローブにハイブリダイズするステップと、(3)ハイブリダイゼーション後に洗浄して、表面に結合したプローブに特異的に結合しない核酸を除去するステップと、(4)ハイブリダイズされたmRNAを検出するステップと、を含むことができる。これらのステップの各々で使用する試薬と、使用する条件は、特定の用途に応じて変動し得る。
【0060】
PCRベースの方法等の他の方法も、ヒトCD47の発現を検出するために使用することができる。PCR方法の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,927,024号に見出され得る。RT-PCR方法の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,122,799号に見出され得る。インサイチュ蛍光PCRの方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,186,507号に記載されている。
【0061】
いくつかの実施形態では、定量的逆転写-PCR(qRT-PCR)は、RNA標的の検出及び定量の両方に使用することができる(Bustin et al.,Clin.Sci.2005,109:365-379)。いくつかの実施形態では、qRT-PCRベースのアッセイは、細胞ベースのアッセイ中のmRNAレベルを測定するのに有用であり得る。qRT-PCRベースの方法の例は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,101,663号に見出すことができる。
【0062】
通常の逆転写酵素-PCR及びアガロースゲルによる分析とは対照的に、qRT-PCRは定量的な結果を与える。qRT-PCRの更なる利点は、使用の相対的な容易さ及び利便性である。Applied Biosystems 7500等のqRT-PCR用の装置は市販されており、TaqMan(登録商標)配列検出化学品等の試薬も市販されている。例えば、TaqMan(登録商標)Gene Expression Assaysを、製造業者の指示に従って使用することができる。これらのキットは、ヒト、マウス、及びラットのmRNA転写産物の迅速で信頼性の高い検出及び定量のための事前に製剤化された遺伝子発現アッセイである。例示的なqRT-PCRプログラムは、例えば、50℃で2分間、95℃で10分間、40サイクルの95℃で15秒間、次に60℃で1分間である。
【0063】
8.1.3.5 ポリペプチドまたはタンパク質レベルを検出するためのアッセイ
いくつかのタンパク質検出及び定量方法を使用して、ヒトCD47のレベルを測定することができる。任意の好適なタンパク質定量方法を使用することができる。いくつかの実施形態では、抗体ベースの方法を使用する。使用することができる例示的な方法には、免疫ブロット法(ウェスタンブロット)、ELISA、免疫組織化学、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、サイトメトリービーズアレイ、質量分析法等が含まれるが、これらに限定されない。直接ELISA、間接ELISA、及びサンドイッチELISAを含む、いくつかのタイプのELISAが一般的に使用されている。
【0064】
8.2 EV組成物
本明細書で提供されるのは、本明細書に記載のEV、例えば、CD47を担持するエクソソーム等のCD47を担持するEVを含む、組成物である(「EV組成物」)。精製されたEVは、例えば、凍結保護剤の存在下でEVを冷凍することによって凍結保存され、凍結乾燥または噴霧乾燥され得る。EVは、親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)または足場(例えば、EVがインビボで結合する細胞外マトリックスの構成要素を含む足場)を使用することによって安定化され得る。例えば、Kusuma et al.(2018)Front.Pharmacol.,9:1199を参照されたい。
【0065】
本明細書で提供されるEV組成物は、CD47含有量が変動し得る。ある特定の実施形態では、EVは、CD47 mRNAを含む。ヒトCD47 mRNAのレベルは、当該技術分野で既知の任意の好適な方法、例えば、セクション6.1.3.4に記載の方法によって決定することができる。ある特定の実施形態では、EVは、CD47ポリペプチドまたはタンパク質を含む。ヒトCD47タンパク質のレベルは、当該技術分野で既知の任意の好適な方法、例えば、セクション6.1.3.5に記載の方法を使用して決定することができる。
【0066】
したがって、例えば、EV組成物の1単位中に存在するEVの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%は、ヒトCD47を発現する。同様に、ヒトCD47は、EV組成物中の総膜関連タンパク質の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%を占め得る。
【0067】
本明細書で提供されるEV組成物は、好適な担体、例えば、薬学的に許容される担体を更に含み得る。一般に、「薬学的に許容される」担体は、生物学的ではない材料であるか、または望ましくないものではない材料であり、すなわち、この材料は、毒性等の任意の望ましくない生物学的影響を引き起こすことなく、対象に投与することができる。例示的な薬学的に許容される担体としては、限定されないが、水性溶媒(例えば、水;リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩類溶液(HSB)、アール平衡塩類溶液(EBSS)等の平衡塩類溶液;及び細胞培養培地)、ならびに非水性溶媒(例えば、脂肪、油、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、植物油、及びエチルオレイン酸塩等の注射用有機エステル)が挙げられる。担体としては、液体、半固体、例えば、ペースト、または固体担体が挙げられる。加えて、必要に応じて、組成物は、湿潤剤、または乳化剤、安定化剤、またはpH緩衝剤等の少量の補助物質を含有し得る。薬学的組成物中の様々な成分のpH及び正確な濃度は、周知のパラメータに従って調整される。したがって、本発明のEVは、薬学的に許容される担体中で投与するために、既知の技術に従って製剤化することができる。例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(22nd Ed.2012)を参照されたい。
【0068】
いくつかの実施形態では、組成物は、0.01重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、0.05重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、0.1重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、0.5重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、1重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、5重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、10重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、15重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、20重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、25重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、30重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、35重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、40重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、50重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、55重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、60重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、70重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、75重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、80重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、85重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、90重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、95重量/体積%~99重量/体積%のEVを含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、100%の凍結乾燥されたEV等のEVを含み得る。
【0069】
本明細書で提供される組成物中に含まれるEVの量は、当業者によって容易に決定することができる。いくつかの実施形態では、EVの量は、異種移植片をクロスドレッシングさせるのに十分な量である。特定の実施形態では、EVの量は、異種移植片をクロスドレッシングさせ、臓器細胞の貪食を低減するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、異種移植片をクロスドレッシングさせ、移植後のレシピエントにおける全身炎症を低減するのに十分な量である。
【0070】
ある特定の実施形態では、EVの量は、定量された量である。MV及びエクソソームを含むEVの定量のための様々な方法が、当該技術分野で既知である。例えば、EVを定量するための非限定的な例示的な方法としては、電子顕微鏡(EM)、表面プラズモン共鳴(SPR)、フローサイトメトリー、調節可能な抵抗性パルスセンシング(TRPS)、ナノサイトナノ粒子追跡分析、タンパク質に基づく方法、及び酵素結合免疫吸着アッセイが挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×106~約1.0×1015個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×107~約1.0×1014個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×108~約1.0×1013個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×109~約1.0×1012個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×1010~約1.0×1011個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×106~約1.0×1010個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×106~約1.0×108個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×108~約1.0×1015個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×108~約1.0×1012個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×1010~約1.0×1015個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×1012~約1.0×1015個のEVを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×106個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×107個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×108個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×109個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×1010個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×1011個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×1012個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×1013個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×1014個のEVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0×1015個のEVを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0マイクログラム(μg)~約100グラム(g)のEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約5.0μg~約50gのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約10.0μg~約10gのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約50.0μg~約5gのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約100.0μg~約1gのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0μgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約5.0μgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約10.0μgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約25.0μgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約50.0μgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約100.0μgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約250.0μgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約500.0μgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0mgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約5.0mgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約10.0mgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約25.0mgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約50.0mgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約100.0mgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約250.0mgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約500.0mgのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約1.0gのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約5.0gのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約10.0gのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約25.0gのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約50.0gのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約100.0gのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約250.0gのEVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約500.0gのEVタンパク質を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、組成物中に含まれるEVの量は、EVが生成される細胞の量と相対する。例えば、いくつかの実施形態では、EVの量は、48時間超の間培養された約1.0×106~約1.0×1010個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約48時間の間培養された約1.0×106~約1.0×1010個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約24時間の間培養された約1.0×106~約1.0×1010個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約16時間の間培養された約1.0×106~約1.0×1010個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約12時間の間培養された約1.0×106~約1.0×1010個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、12時間未満の間培養された約1.0×106~約1.0×1010個の細胞から収集される量である。
【0075】
いくつかの実施形態では、EVの量は、48時間超の間培養された約1.0×108~約1.0×1010個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約24時間培養された約1.0×108~約1.0×1010個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約16時間の間培養された約1.0×108~約1.0×1010個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約12時間の間培養された1.0×106~約1.0×1010個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、12時間未満の間培養された1.0×108~約1.0×1010個の細胞から収集される量である。
【0076】
いくつかの実施形態では、EVの量は、48時間超の間培養された約1.0×106~約1.0×108個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約24時間培養された1.0×106~約1.0×108個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約16時間の間培養された1.0×106~約1.0×108個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約12時間の間培養された1.0×106~約1.0×108個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、12時間未満の間培養された1.0×106~約1.0×108個の細胞から収集される量である。
【0077】
いくつかの実施形態では、EVの量は、約1.0×105個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約1.0×106個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約1.0×107個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約1.0×108個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約1.0×109個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約1.0×1010個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約1.0×1011個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約1.0×1012個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約1.0×1013個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約1.0×1014個の細胞から収集される量である。いくつかの実施形態では、EVの量は、約1.0×1015個の細胞から収集される量である。
【0078】
8.3 組織をクロスドレッシングさせるためにEVを使用する方法
本明細書で使用される場合、「クロスドレッシング」という用語は、例えば、細胞を、当該タンパク質を発現する細胞またはEVとともにインキュベートすることによって誘導される、細胞におけるトランスジェニックタンパク質(例えば、CD47)の発現について記載している。例えば、ブタ細胞は、例えば、共インキュベーションによって、ヒトCD47を発現する細胞に曝露することによって、ヒトCD47でクロスドレッシングされ得る。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるEVは、ドナーブタからの骨髄組織とともにインキュベートされる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるEVは、ドナーブタからの腎臓とともにインキュベートされる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるEVは、同じドナーブタからの骨髄組織及び腎臓の両方とともにインキュベートされる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるEVは、第1のドナーブタからの腎臓及び第2のドナーブタからの骨髄組織とともにインキュベートされる。
【0079】
8.4 異種移植においてEVを使用する方法
本明細書で提供されるのは、異種移植片を標的組織に移植する前に、異種移植片をCD47(例えば、ヒトCD47)でクロスドレッシングさせることを含む、異種移植の方法である。ある特定の実施形態では、標的組織は、腎臓組織である。他の実施形態では、標的組織は、肺組織である。いくつかの実施形態では、標的組織は、ヒトである。いくつかの実施形態では、標的組織は、当該技術分野で既知の方法(例えば、ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー、または定量的ポリメラーゼ連鎖反応)によって決定した場合、SIRPα(例えば、ヒトSIRPα)を発現しない。ある特定の態様では、CD47クロスドレッシングは、標的組織上のシグナル調節タンパク質α(SIRPα)発現に依存しない。
【0080】
8.4.1.異種移植片をEVに曝露する方法
ある特定の実施形態では、クロスドレッシングは、異種移植片を、CD47を含むEVに曝露することによって達成される。他の実施形態では、クロスドレッシングは、ヒトCD47を発現する細胞株(例えば、トランスジェニック細胞株)と異種移植片を共培養することによって達成される。いくつかの実施形態では、異種移植片は、インビトロでEVに曝露される。いくつかの実施形態では、異種移植片は、インビボでEVに曝露される。例えば、エクソソーム等のEVは、インビボでEVを送達するために、後眼窩静脈洞、尾静脈、もしくは心内、または同様のアプローチを介して注射することができる。いくつかの実施形態では、異種移植片は、エクスビボでEVに曝露される。特定の実施形態では、異種移植片血管は、インビボでEVで灌流される。例えば、異種移植片は、ドナーもしくはレシピエントのいずれか、またはその両方においてインビボで灌流され得る。いくつかの実施形態では、異種移植片血管は、エクスビボでEVで灌流される。
【0081】
いくつかの実施形態では、異種移植片は、2回以上EVに曝露される。いくつかの実施形態では、異種移植片は、1、2、または3日間の過程にわたって2、3、4、5、6、7、8、9、または10回EVに曝露される。いくつかの実施形態では、異種移植片は、同じEV組成物に繰り返し曝露される。いくつかの実施形態では、異種移植片は、異なるEV組成物に曝露される。
【0082】
本明細書で提供されるように、EVへの異種移植片の曝露は、移植前、移植後、またはその両方で行われ得る。いくつかの実施形態では、異種移植片は、移植前にEVに曝露される。いくつかの実施形態では、異種移植片は、移植後にEVに曝露される。いくつかの実施形態では、異種移植片は、移植前及び移植後にEVに曝露される。
【0083】
いくつかの実施形態では、異種移植片は、移植後に2回以上曝露される。例えば、移植後、レシピエントは、EVを1回以上注入(例えば、静脈内注入)され得る。いくつかの実施形態では、レシピエントは、毎日EVを注入される。いくつかの実施形態では、レシピエントは、1日に2回以上EVを注入される。いくつかの実施形態では、レシピエントは、注入される。
【0084】
特定の実施形態では、臓器は、移植前、移植後、またはそれらの組み合わせで、インビボで直接EVを注入される。例えば、臓器は、移植前に直接(例えば、肝門脈を介して)灌流され得る。いくつかの実施形態では、臓器は、移植前にインビボで直接灌流される。いくつかの実施形態では、臓器は、移植後にインビボで直接灌流される。いくつかの実施形態では、臓器は、移植前及び移植後にインビボで直接灌流される。いくつかの実施形態では、臓器は、移植前に2回以上インビボで直接灌流される。いくつかの実施形態では、臓器は、移植後に2回以上インビボで直接灌流される。いくつかの実施形態では、臓器は、移植前及び移植後に2回以上インビボで直接灌流される。
【0085】
EVへの異種移植片の曝露は、異種移植片をクロスドレッシングさせるのに十分な任意の時間の間であり得る。いくつかの実施形態では、異種移植片は、約1~2時間、2~3時間、3~4時間、4~5時間、5~6時間、6~7時間、7~8時間、8~9時間、9~10時間、10~11時間、または11~12時間、EVに曝露される。いくつかの実施形態では、異種移植片は、約12~16時間EVに曝露される。いくつかの実施形態では、異種移植片は、約16~24時間EVに曝露される。いくつかの実施形態では、異種移植片は、24時間超EVに曝露される。
【0086】
いくつかの実施形態では、EVは、特定の臓器または細胞タイプへのその送達を改善するように操作される。標的化特性を有するEVを操作する様々な技術が、当該技術分野で既知である(例えば、Murphy,D.E.,et al.Exp Mol Med 51,1-12(2019)を参照されたい)。例として、いくつかの実施形態では、EVは、その意図する作用細胞に対するEVの標的化を改善する、特異的標的化ペプチドを発現する。別の例示的な標的化技術は、意図された作用細胞に対するEVの標的化を改善する特定のインテグリンの組み合わせを発現するように、EVを操作することを含む。いくつかの実施形態では、操作は、EV産生後に実施される。
【0087】
8.4.2.異種移植片におけるEVへの曝露の影響
いくつかの実施形態では、細胞に対するCD47のクロスドレッシングは、当該細胞が貪食を回避することをもたらす。特定の実施形態では、細胞に対するCD47のクロスドレッシングは、アポトーシスを誘導することなく、当該細胞が貪食を回避することをもたらす。
【0088】
ある特定の実施形態では、セクション6.4に記載の方法等によって本開示に従って生成されたCD47でクロスドレッシングされた細胞は、EVからのCD47でクロスドレッシングされていない、CD47を発現する細胞と比較して、CD47リガンド(例えば、トロンボスポンジン(TSP-1))とのライゲーションが減少したCD47を発現する。いくつかの実施形態では、セクション6.4に記載の方法等によって本開示に従って生成されたCD47でクロスドレッシングされた細胞は、EVからのCD47でクロスドレッシングされていない、CD47を発現する細胞と比較して、CD47リガンド(例えば、トロンボスポンジン(TSP-1)またはSIRPα)とのライゲーションが全くないかまたは検出不可能なレベルであるCD47を発現する。
【0089】
例えば、CD47がTSP-1に結合すると、CD47を発現する細胞に炎症及び死を引き起こし得る。しかしながら、本開示は、CD47でクロスドレッシングされた細胞がアポトーシスシグナル伝達を伝達しないという知見に部分的に基づいている。逆に、CD47でクロスドレッシングされておらず、内因性または外因性にCD47を発現している細胞は、細胞死を受け、炎症が増加する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示に従って生成されたCD47でクロスドレッシングされた細胞は、EVからのCD47でクロスドレッシングされていない、CD47を発現する細胞と比較して、細胞死の減少を呈する。ある特定の実施形態では、本開示に従って生成されたCD47でクロスドレッシングされた細胞は、EVからのCD47でクロスドレッシングされていない、CD47を発現する細胞と比較して、SIRPα、またはその断片、キメラ、及び/または融合物への曝露時に細胞死の減少を呈する。特定の実施形態では、本開示に従って生成されたCD47でクロスドレッシングされた細胞は、約50nMのヒトSIRPα-Fcへの1時間の曝露時に、EVからのCD47でクロスドレッシングされず、同じ量のSIRPα-Fcへ曝露された、CD47を発現する細胞と比較して、細胞死の減少を呈する。
【0090】
貪食は、当該技術分野で既知であるか、または本明細書に記載の、例えば、実施例4に記載の任意の方法によって決定することができる。例えば、細胞は、Celltraceバイオレットで標識され得、ヒトマクロファージとともにインキュベートされ得る。次いで、貪食のレベルは、フローサイトメトリーを使用して、標識された標的細胞を貪食したマクロファージ(CD14陽性細胞)のパーセンテージを決定することによって測定することができる。本明細書で提供されるのは、移植前に、異種移植片を、ヒトCD47を含むEVに曝露することを含む、異種移植片をクロスドレッシングさせる方法であって、方法が、クロスドレッシングされていない異種移植片と比較して、異種移植片の貪食を約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%減少させる、方法である。
【0091】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される異種移植方法は、アポトーシスを誘導することなく貪食の減少をもたらす。アポトーシスは、当該技術分野で既知の任意の方法または本明細書に記載の方法を使用して測定することができる。例えば、アポトーシスは、ヨウ化プロピジウム(PI)またはPI及びアネキシンVで細胞を染色することによって測定することができる。アポトーシスは、検出不可能であり得るか、または、同種CD47を発現する異種移植片と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%減少され得る。
【0092】
貪食の回避は、細胞のより長い生存を生じ得、ひいては、延長されたキメリズムを生じ得る。例えば、ブタ骨髄細胞におけるヒトCD47のクロスドレッシングは、ブタ骨髄細胞がヒトレシピエントへの移植後の貪食を回避することを可能にし得、これは、ブタ骨髄細胞の生存の延長をもたらす。次いで、ブタ骨髄細胞の生存期間が長くなると、ひいては、キメリズムの延長につながり得、これは、移植拒絶反応を回避するのに有益であり得る。
【0093】
本明細書で提供されるように、移植前に、ヒトCD47を含むEVで異種移植片をクロスドレッシングさせることは、異種移植片の炎症を低減する。いくつかの実施形態によれば、異種移植片の炎症は、検出不可能であり得るか、または、同種CD47を発現する異種移植片と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%減少され得る。
【0094】
また、本明細書で提供される、移植前に、ヒトCD47を含むEVで異種移植片をクロスドレッシングさせることは、レシピエントにおける全身炎症を低減し得る。いくつかの実施形態によれば、異種移植片移植後のレシピエントにおける全身炎症は、検出不可能であり得るか、または、同種CD47を発現する異種移植片を用いた移植後と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%減少され得る。
【0095】
移植拒絶反応は、異種移植片の多くのレシピエントにとって主要な問題であり、しばしば免疫抑制療法の長期投与を必要とし、貪食の回避がレシピエントにおける異種移植片の拒絶反応を低減し得る。したがって、一態様では、本明細書で提供されるのは、レシピエントにおける異種移植片の拒絶反応を低減するための方法であって、移植前に、異種移植片を、ヒトCD47を含むEVに曝露することを含む、方法である。
【0096】
いくつかの実施形態では、方法は、移植前にヒトCD47を含むEVに曝露されていない異種移植片のレシピエントと比較して、レシピエントへの免疫抑制療法の投与の低減(例えば、約10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90%超の投与の低減)をもたらす。特定の実施形態では、方法は、ヒトCD47を含むEVに曝露されていない異種移植片を受けている同等なレシピエント(例えば、レシピエントと同じタイプの組織または臓器を受けた、同じ性別の、かつ同等な年齢、身長、及び/または体重の人)に通常投与される免疫抑制療法の量と比較して、レシピエントへの免疫抑制療法の投与の低減(例えば、約10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90%超の投与の低減)をもたらす。特定の実施形態では、方法は、同等な臨床環境における標準ケアと比較して、レシピエントへの免疫抑制療法の投与の低減(例えば、約10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90%超の投与の低減)をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、移植前にヒトCD47を含むEVに曝露されていない以前の異種移植片を受けた後に当該レシピエントが必要とする免疫抑制療法の量と比較して、レシピエントへの免疫抑制療法の投与の低減(例えば、約10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90%超の投与の低減)をもたらす。他の実施形態では、方法は、同等な臨床環境における異種移植片が移植前にヒトCD47を含むEVに曝露されていない、同等な臨床環境における免疫抑制療法の必要とされる量と比較して、レシピエントへの免疫抑制療法の投与の低減(例えば、約10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、または90%超の投与の低減)をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、免疫抑制療法、例えば、以下のセクション6.4.3に記載の免疫抑制療法の更なる投与を必要としないレシピエントをもたらす。
【0097】
いくつかの実施形態では、方法は、移植前にヒトCD47を含むEVに曝露されていない異種移植片と比較して、異種移植片の生存率の延長をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、同等なレシピエント(例えば、同じ性別の、かつ同等な年齢、身長、及び/または体重の患者)に移植された、移植前にヒトCD47を含むEVに曝露されていない同等な異種移植片(例えば、レシピエントと同じタイプの組織または臓器)と比較して、異種移植片の生存率の延長(例えば、約10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~75%、75~100%、100~200%、200~300%、もしくは300%超の生存率の延長、または1~2年、2~3年、3~4年、4~5年、5~6年、6~8年、8~10年、10~15年、もしくは15~20年の延長)をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、当該レシピエントが以前に受けた、移植前にヒトCD47を含むEVに曝露されていない、異種移植片の生存率と比較して、異種移植片の生存率の延長(例えば、約10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~75%、75~100%、100~200%、200~300%、もしくは300%超の生存率の延長、または1~2年、2~3年、3~4年、4~5年、5~6年、6~8年、8~10年、10~15年、もしくは15~20年の延長)をもたらす。
【0098】
いくつかの実施形態では、方法は、異種移植片が移植前にヒトCD47を含むEVに曝露されていない、同等な臨床環境における異種移植片の生存率と比較して、生存率の延長(例えば、約10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~75%、75~100%、100~200%、200~300%、もしくは300%超の生存率の延長、または1~2年、2~3年、3~4年、4~5年、5~6年、6~8年、8~10年、10~15年、もしくは15~20年の延長)をもたらす。
【0099】
いくつかの実施形態では、方法は、移植前にヒトCD47を含むEVに曝露されていない異種移植片のレシピエントと比較して、レシピエントのより良好な健康に関連する生活の質をもたらす。他の実施形態では、方法は、移植前にヒトCD47を含むEVに曝露されていない異種移植片を受けた同等なレシピエント(例えば、レシピエントと同じタイプの組織または臓器を受けた、同じ性別の、かつ同等な年齢、身長、及び/または体重の人)と比較して、レシピエントのより良好な健康に関連する生活の質をもたらす。他の実施形態では、方法は、以前の異種移植後に当該レシピエントが経験した健康に関連する生活の質と比較して、レシピエントのより良好な健康に関連する生活の質をもたらす。他の実施形態では、方法は、異種移植片が、移植前にヒトCD47を含むEVに曝露されていない、同等な臨床環境と比較して、レシピエントのより良好な健康に関連する生活の質をもたらす。健康に関連する生活の質とは、個人の生活の質に対する健康側面の全体的な影響を指し、身体的症状、機能的状態、心理的状態、及び社会的関係性を含む。健康に関連する生活の質は、例えば、36-Item Short Form Survey(SF-36)、EuroQol-5 Dimensions(EQ-5D)、及びKidney Disease Quality of Life Instrument(KDQOL)を含む、当該技術分野で既知の任意の手段によって評価することができる。例えば、Parizi et al.The Patient-Patient-Centered Outcomes Research(2019)12:171-181を参照されたい。
【0100】
いくつかの実施形態では、方法は、移植前にヒトCD47を含むEVに曝露されていない異種移植片のレシピエントと比較して、移植レシピエントのより長い(例えば、10~20%、20~30%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、もしくは90~100%長い、または2~3倍、3~5倍、5~7倍、7~10倍、もしくは10~15倍長い)生存をもたらす。他の実施形態では、方法は、ヒトCD47を含むEVに曝露されていない異種移植片を受けた同等なレシピエント(例えば、レシピエントと同じタイプの組織または臓器を受けた、同じ性別の、かつ同等な年齢、身長、及び/または体重の人)の生存と比較して、移植レシピエントのより長い(例えば、10~20%、20~30%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、もしくは90~100%長い、または2~3倍、3~5倍、5~7倍、7~10倍、もしくは10~15倍長い)生存をもたらす。他の実施形態では、方法は、異種移植片が移植前にヒトCD47を含むEVに曝露されていない、同等な臨床環境における移植レシピエントの生存と比較して、移植レシピエントのより長い(例えば、10~20%、20~30%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、もしくは90~100%長い、または2~3倍、3~5倍、5~7倍、7~10倍、もしくは10~15倍長い)生存をもたらす。
【0101】
一態様では、本明細書に記載の移植の方法は、タンパク尿のリスク、重症度、または持続時間の低減をもたらす。1日当たり150mgを超えるタンパク質排泄は、一般的にタンパク尿の診断として使用される。ディップスティック分析は、しばしば尿中のタンパク質濃度を測定するために使用される。これは半定量的方法であり、その結果は負、トレース、1+、2+、3+、または4+として表される。例えば、Carroll and Temte,Am Fam Physician 62(6):1333-1340(2000)を参照されたい。総タンパク質レベルまたはアルブミンレベルのみを測定して定量試験を提供してもよい。結果は、総タンパク質もしくはアルブミンレベルで、またはアルブミン対クレアチンの比またはタンパク質対クレアチンの比で発現され得る。
【0102】
特定の実施形態では、本明細書に記載の移植の方法は、タンパク尿の重症度の低減をもたらす。特定の実施形態では、本明細書に記載の移植の方法は、タンパク尿の持続時間の低減をもたらす。例えば、本明細書の方法に従って処置された患者におけるタンパク尿の重症度は、ヒトCD47でクロスドレッシングされていないドナー腎臓を受けた患者において観察されるタンパク尿の重症度と比較して、減少され得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、尿中のタンパク質レベルによって測定されるタンパク尿の重症度は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または95%を超えて低減する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に従って処置された患者は、尿中の1日当たり150mgを超えるタンパク質の排泄量として定義されるタンパク尿を経験しない。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に従って処置された患者は、移植後1、2、3、3~7、7~10、10~14日後、または1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8週間後、または1、2、3、4、5、6か月後に消失する一過性タンパク尿を経験することがある。
【0104】
いくつかの実施形態では、タンパク尿を発症する、本明細書に記載される方法で処置されたレシピエントの尿中の総タンパク質の濃度は、1日当たり約60mg未満、1日当たり約80mg未満、1日当たり約100mg未満、1日当たり約120mg未満、1日当たり約140mg未満、1日当たり約160mg未満、1日当たり約200mg未満、1日当たり約220mg未満、1日当たり約240mg未満、1日当たり約260mg未満、1日当たり約280mg未満、1日当たり約300mg未満、1日当たり約320mg未満、1日当たり約340mg未満、1日当たり約360mg未満、1日当たり約380mg未満、または1日当たり約400mg未満である。
【0105】
いくつかの実施形態では、タンパク尿を発症する、本明細書に記載される方法で処置されたレシピエントの尿中のアルブミンの濃度は、1日当たり約5mg未満、1日当たり約10mg未満、1日当たり約20mg未満、1日当たり約30mg未満、1日当たり約40mg未満、1日当たり約50mg未満、1日当たり約60mg未満、1日当たり約70mg未満、1日当たり約80mg未満、1日当たり約90mg未満、または1日当たり約100mg未満である。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置された患者の24時間尿試料中のクレアチニンに対するタンパク質の比は、約0.2未満、約0.4未満、約0.6未満、約0.8未満、または約1未満である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置された患者の24時間尿試料中のクレアチニンに対するアルブミンの比は、約0.02未満、約0.04未満、約0.06未満、約0.08未満、または約0.1未満である。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で処置されたレシピエントがタンパク尿を発症するリスクは、ヒトCD47でクロスドレッシングされていないドナー腎臓のレシピエントのリスクと比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%減少する。
【0108】
8.4.3.追加の処置
ある特定の態様では、本明細書に記載の方法に従って処置された患者は、追加の処置を受ける。患者は、1つ以上の異なる方法による追加の処置を受ける場合がある。追加の処置は、本明細書で提供される処置の方法の前に、それと同時に、またはその後に行われ得る。
【0109】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って異種移植片を受けている患者は、骨内骨髄移植(IBBM)を受ける。特定の実施形態では、骨髄は、異種移植片と同じソースからのものである。特定の実施形態では、骨髄は、ヒトCD47を発現する。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って異種移植片を受けた患者は、免疫抑制療法を受ける。免疫抑制療法は、移植拒絶反応を低減させる、及び/または異種移植の転帰を寛解するために示される任意のFDAに承認された処置であってもよい。免疫抑制療剤の非限定的な例としては、カルシニューリン阻害剤(例えば、タクロリムスまたはシクロスポリン)、抗増殖剤(例えば、ミコフェノール酸塩、6-メルカプトプリンまたはそのプロドラッグであるアザチオプリン等の抗代謝物質)、ラパマイシンの哺乳動物標的の阻害剤(mTOR)(例えば、シロリムス、ラパマイシン)、ステロイド(例えば、プレドニゾン)、細胞周期阻害剤(アザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチル)、リンパ球除去剤(例えば、抗胸腺細胞グロブリン、またはアレムツズマブ、シプリズムまたはバシリキシマブ等の抗体)及び共刺激遮断剤(例えば、ベラタセプト)が挙げられる。例えば、Chung et al(2020).,Ann Transl Med.Mar;8(6):409、van der Mark et al.(2020),Eur Respir Rev;29:190132及びBenvenuto et al.(2018),J Thorac Dis 10:3141-3155を参照されたい。
【0111】
免疫抑制療法は、導入療法(周術期、または手術直後)、維持用量として、または急性拒絶反応のために、投与することができる。導入療法には、一般的に、バシリキシマブ、抗胸腺細胞グロブリンまたはアレムツズマブが含まれる。免疫抑制療法はまた、レシピエントの生涯にわたって継続するためにしばしば必要とされる維持療法として投与され得る。維持免疫抑制療法は、一般的に、カルシニューリン阻害剤(タクロリムスまたはシクロスポリン)、抗増殖剤(ミコフェノール酸塩またはアザチオプリン)、及びコルチコステロイドを含む。急性拒絶反応に対する免疫抑制療法には、一般的に、チモグロブリンまたはミコフェノール酸塩が含まれる。例えば、Chung et al.(2020),Ann Transl Med.Mar;8:409及びBenvenuto et al.,(2018)J Thorac Dis 10:3141-3155を参照されたい。
【0112】
免疫抑制剤の非限定的な例としては、(1)プリン合成阻害剤(例えば、イノシンモノホスフェートデヒドロゲナーゼ(IMPDH)阻害剤、例えば、アザチオプリン、ミコフェノール酸塩、及びミコフェノール酸モフェチル)、ピリミジン合成阻害剤(例えば、レフルノミド及びテリフルノミド)、及び葉酸代謝拮抗剤(antifolate)(例えば、メトトレキサート)等の代謝拮抗剤;(2)タクロリムス、シクロスポリンA、ピメクロリムス、及びボクロスポリン等のカルシニューリン阻害剤;(3)サリドマイド及びレナリドミド等のTNF-アルファ阻害剤;(4)アナキンラ等のIL-1受容体拮抗剤;(5)ラパマイシン(シロリムス)、デフォロリムス(deforolimus)、エベロリムス、テムシロリムス、ゾタロリムス、及びバイオリムスA9等のラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)阻害剤;(6)プレドニゾン等のコルチコステロイド;ならびに(7)いくつかの細胞標的または血清標的のうちのいずれか1つに対する抗体(抗リンパ球グロブリン及び抗胸腺細胞グロブリンを含む)が挙げられる。
【0113】
非限定的な例示的な細胞標的及びそのそれぞれの阻害剤化合物としては、補体成分5(例えば、エクリズマブ)、腫瘍壊死因子(TNF)(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、アフェリモマブ及びゴリムマブ)、IL-5(例えば、メポリズマブ)、IgE(例えば、オマリズマブ)、BAYX(例えば、ネレリモマブ)、インターフェロン(例えば、ファラリモマブ)、IL-6(例えば、エルシリモマブ)、IL-12及びIL-13(例えば、レブリキズマブ及びウステキヌマブ)、CD3(例えば、ムロモナブ-CD3、オテリキシズマブ、テペリズマブ、ビシリズマブ)、CD4(例えば、クレノリキシマブ、ケリキシマブ及びザノリムマブ)、CDI la(例えば、エファリズマブ)、CD18(例えば、エルリズマブ)、CD20(例えば、アフツズマブ、オクレリズマブ、パスコリズマブ)、CD23(例えば、ルミリキシマブ)、CD40(例えば、テネリキシマブ、トラリズマブ)、CD62L/L-セレクチン(例えば、アセリズマブ)、CD80(例えば、ガリキシマブ)、CD147/ベイシジン(例えば、ガビリモマブ)、CD154(例えば、ルプリズマブ)、BLyS(例えば、ベリムマブ)、CTLA-4(例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ)、CAT(例えば、ベルチリムマブ、レルデリムマブ、メテリムマブ)、インテグリン(例えば、ナタリズマブ)、IL-6受容体(例えば、トシリズマブ)、LFA-1(例えば、オズリモマブ)、ならびにIL-2受容体/CD25(例えば、バシリキマブ、ダシリズマブ、イノリモマブ)が含まれるが、それらに限定されない。
【0114】
8.4.4.患者集団
好ましい実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置された患者(例えば、ヒトCD47でクロスドレッシングされた異種移植片のレシピエント)は、ヒト患者である。本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は交換可能に使用され、任意のヒトまたは非ヒト哺乳動物を含む。非限定的な例としては、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ、ラット、マウス、イヌ及びネコ種のメンバーが挙げられる。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。特定の実施形態では、対象は、ヒト成人である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒト小児である。特定の実施形態では、対象は、ヒトであり、ブタドナーから1つ以上のドナー移植片を受ける。他の特定の実施形態では、対象は、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、カニクイザルまたはアカゲザル)であり、ブタドナーから1つ以上の移植片を受ける。
【0115】
一態様では、本明細書に記載の方法に従って処置された患者は、腎移植を必要とする。患者は、腎不全またはドナー腎臓の拒絶反応のために腎臓移植を必要とする場合がある。腎不全には、高血圧(high blood pressure)(高血圧(hypertension))、身体傷害、糖尿病、腎臓病(多嚢胞性腎疾患、糸球体疾患)、及びループス等の自己免疫疾患を含むがこれらに限定されない多くの原因があり得る。腎不全は、急性または慢性であり得る。腎不全は、糸球体濾過率、血中尿素窒素、及び血清クレアチニン等の臨床検査、画像検査(超音波、コンピュータ断層撮影)または腎臓生検によって診断することもできる。
【0116】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置された患者は、ステージ1の腎臓病を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置された患者は、ステージ2の腎臓病を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置された患者は、ステージ3の腎臓病を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置された患者は、ステージ4の腎臓病を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置された患者は、ステージ5の腎臓病を有する。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置された患者は、約90以上の糸球体濾過速度(GFR)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置された患者は、約60~90のGFRを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置された患者は、約30~60のGFRを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置された患者は、約15~30のGFRを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置された患者は、約15以下のGFRを有する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【実施例】
【0118】
9.実施例
このセクション(すなわち、セクション7)の実施例は、限定ではなく、例示として提供される。
【0119】
9.1 実施例1:hCD47-Tg LCL細胞との共培養後のトランスジェニックhCD47によるブタLCL細胞及びヒトJurkat細胞のクロスドレッシング
この実施例は、異種ヒトCD47が、共培養後にヒトCD47を発現しない細胞株において正常に発現されることができることを実証する。
【0120】
ヒトCD47をEVによって1つの細胞から別の細胞に移すことができるかどうかを決定するために、ヒトCD47(hCD47)を発現しない親ブタBリンパ腫細胞株(LCL)からの細胞を、hCD47をトランスジェニックに発現するLCL細胞と共培養した。
図1A及び
図2に示されるように、親ブタLCL細胞株は、FACSによって測定したところ、hCD47を発現しなかった(
図1A、
図2、及び表2)。対照的に、トランスジェニックヒトCD47を発現するブタLCL細胞(hCD47-Tg LCL細胞)は、高レベルのCD47を発現した(
図1B、
図2、及び表2)。注目すべきことに、hCD47-Tg LCL細胞との共培養後の親LCL細胞株におけるhuCD47の検出は、hCD47発現の強力な増加を示した(
図1C、
図2、及び表2)。
【表2】
【0121】
CD47がCRISPR-Cas9によってノックアウトされ、hCD47-Tg LCL細胞と共培養されたヒトT細胞白血病Jurkat細胞を使用して、同様の結果が観察された。簡潔には、CD47ノックアウト(KO)Jurkat細胞を、hCD47-Tg LCL細胞と共培養し、hCD47発現を、FACSによって測定した。
図3Bに示されるように、共培養は、CD47KO Jurkat細胞におけるhCD47発現の強い増加に至った(
図3B及び表2)。
【0122】
これらのデータは、ヒトCD47を発現する細胞と共培養することによって、ブタ細胞をヒトCD47でクロスドレッシングさせることができることを示した。
【0123】
9.2 実施例2:野生型Jurkat細胞との共培養後の天然hCD47によるブタLCL及びhCD47ノックアウトJurkat細胞のクロスドレッシング
この実施例は、共培養後の1つの細胞株から別の細胞株へのhCD47のクロスドレッシングが、追加の例示的な細胞株モデルにおいて再現可能であったことを実証する。
【0124】
簡潔には、CD47ノックアウト(KO)細胞を、親(野生型、WT)Jurkat細胞またはブタLCL細胞と24時間共培養し、抗hCD47-BV786 mAbを使用して、ゲーティングされたCD47KO Jurkat細胞に対するhCD47クロスドレッシングについて、FACSによって分析した。単独で培養した細胞を染色対照として使用し、染色対照を別々に染色するか、または染色直前に混合した。示されているのは、代表的なヒストグラムである(図中の数字は、ゲーティングされたCD47KO Jurkat細胞の平均蛍光強度(MFI)を示す)。
【0125】
図4Aに示されるように、FACSによって決定したCD47KO Jurkat細胞におけるヒトCD47のレベルは、野生型(WT)Jurkat細胞と比較して、ほぼ完全に検出不可能であった(それぞれ、
図4及び
図4B、
図6及び表3)。CD47KO Jurkat細胞のWT Jurkat細胞との共培養後、CD47KO Jurkat細胞において、hCD47の強力な増加が観察された(
図4C、
図6、及び表3)。
【表3】
【0126】
ブタLCL細胞をWT Jurkat細胞と共培養すると、同様の結果が観察された。
図5A~5Bに示されるように、ブタLCL細胞のWT Jurkat細胞との共培養は、非共培養ブタLCL細胞と比較して、hCD47発現に強い増加をもたらした(それぞれ、
図5A及び
図5B、ならびに表3)。
【0127】
これらの結果はまた、ヒトCD47クロスドレッシングを、ヒト細胞に対して行うことができ、hCD47トランスジェニック細胞だけでなく、天然CD47のみを発現する細胞によっても誘導することができることを示した。
【0128】
9.3 実施例3:WT Jurkat細胞からの細胞外小胞またはエクソソームによるCD47KO Jurkat細胞のCD47クロスドレッシング
この実施例は、CD47を発現する細胞から単離されたEVを使用して、CD47を発現しない細胞をクロスドレッシングさせることができることを実証する。
【0129】
簡潔には、MV及びエクソソームを、10%のエクソソーム枯渇FBS中で培養したWT Jurkat細胞から収集した上清から単離した。細胞培養上清からの細胞外小胞(EV)及びエクソソーム(Exos)を、標準画分遠心分離プロトコルによって精製した。48時間の細胞培養物から収集した上清を、2,000g(3,000rpm)で20分間遠心分離して、細胞デブリ及び死細胞を除去した。細胞外小胞を、16,500g(9,800rpm)で45分間遠心分離した後ペレット化し(Beckman Coulter、Optima XE-90)、PBSに再懸濁させた。上清からのペレット化したエクソソームを、100,000g(26,450rpm)で2時間、4℃で更に遠心分離し(Beckman Coulter、Optima XE-90)、PBSに再懸濁させた。
【0130】
その後、単離したMV及びエクソソームを、CD47がノックアウトされたJurkat細胞(CD47 KO Jurkat細胞)と2時間または6時間共培養した。
図7Cに示されるように、MVとの2時間の共培養は、CD47 KO Jurkat細胞におけるCD47発現の増加に至った(
図7C及び表4)。MVまたはエクソソームとの共培養の6時間後、CD47 KO Jurkat細胞において、CD47発現が増加した(それぞれ、
図8C及び
図8D、ならびに表4)。
【表4】
【0131】
これらのデータは、hCD47を発現する細胞からのEV(例えば、MVまたはエクソソーム)を使用して、hCD47を発現しない細胞をクロスドレッシングさせることができることを示している。
【0132】
9.4 実施例4:WT Jurkat細胞からの細胞外小胞またはエクソソームによるブタLCL細胞のCD47クロスドレッシング
この実施例は、共培養後に、ブタ細胞をヒト細胞からのhCD47でクロスドレッシングさせることができることを実証する。
【0133】
簡潔には、上記のように、MV及びエクソソームをWT Jurkat細胞から単離した。その後、単離したMV及びエクソソームを、hCD47を発現しないブタLCL細胞と2時間または6時間共培養した。
図9Cに示されるように、MVとの2時間の共培養は、ブタLCL細胞におけるCD47発現の増加に至った(
図9C及び表5)。MVまたはエクソソームとの共培養の6時間後、ブタLCL細胞において、CD47発現が増加した(それぞれ、
図10C及び
図10D、ならびに表5)。
【表5】
【0134】
これらのデータは、野生型ヒトJurkat細胞から単離されたEVまたはエクソソームへの曝露によって、ブタLCL細胞(ブタCD47を発現する)を、ヒトCD47でクロスドレッシングさせることができることを示している。
【0135】
10.均等物
本発明の具体的な実施形態を参照しながら、本発明について詳細に説明されているが、機能的に均等である変形形態が、本発明の範囲内であることが理解されるであろう。実際、本明細書に示され、記載されるものに加えて、本発明の様々な修正形態は、前述の説明及び添付の図面から当業者には明白になるであろう。そのような修正形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。当業者は、慣用的な実験のみを使用して、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0136】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が参照によりその全体が本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同じ程度に、本明細書に参照により組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】