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  • 特表-絹様白色の多層コーティング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】絹様白色の多層コーティング
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/06 20060101AFI20240905BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240905BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240905BHJP
   C09D 5/36 20060101ALI20240905BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240905BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20240905BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240905BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B32B27/06
C09D201/00
C09D7/61
C09D5/36
B32B27/20 A
B05D5/06 101A
B05D1/36 B
B05D7/24 303J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513783
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2022074120
(87)【国際公開番号】W WO2023031225
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21193783.4
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】コルニー,ゼノン ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウィークス,フィリス エー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ダニエル ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】チュー,チョンリヤン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チンリン
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075CB13
4D075DC12
4D075EC23
4F100AA21A
4F100AA21H
4F100AB10B
4F100AB10H
4F100AC05B
4F100AC05H
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AT00
4F100BA03
4F100BA15
4F100CA13A
4F100CA13B
4F100CA13H
4F100CC01A
4F100CC01B
4F100CC01C
4F100CC10A
4F100CC10B
4F100CC10C
4F100DE01A
4F100DE01H
4F100DE02B
4F100DE02H
4F100GB32
4F100JN28
4F100YY00
4J038CG121
4J038DA162
4J038DD001
4J038DG001
4J038HA146
4J038HA546
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA03
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA01
4J038PA06
4J038PA19
4J038PB07
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T)を含む少なくとも1つのグラウンドコート層、水素チタン酸化物(P1)、二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)および二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)からなる群から選択される少なくとも1つの小板形状の酸化チタン顔料(P)を含む、該少なくとも1つのグラウンドコート層の上の少なくとも1つのミッドコート層、および少なくとも1つのミッドコート層の上の少なくとも1つのクリアコート層を含み、CIELabによる明度L*が、視野角範囲-15°から+45°で少なくとも80、金属効果顔料がミッドコート層に含有される場合、視野角範囲+75°から+110°で少なくとも70、および金属効果顔料がミッドコート層に含有されない場合、視野角範囲+75°から+110°で少なくとも75である、多層コーティングに関する。本発明はさらに、そのような多層コーティングの製造方法および多層コーティングされた基材にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
a) 少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T)を含む、少なくとも1つのグラウンドコート層、
b) 以下、
i. 水素チタン酸化物(P1)、二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)および二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)からなる群から選択される、少なくとも1つの小板形状の酸化チタン顔料(P)
を含む、前記少なくとも1つのグラウンドコート層の上の少なくとも1つのミッドコート層、および
c) 前記少なくとも1つのミッドコート層の上の少なくとも1つのクリアコート層
を含み、CIELabによる以下の明度L*
(i) 視野角範囲-15°から+45°で、少なくとも80、
(ii) 金属効果顔料が前記ミッドコート層に含有される場合、視野角範囲+75°から+110°で、少なくとも70、
(iii) 金属効果顔料が前記ミッドコート層に含有されない場合、視野角範囲+75°から+110°で、少なくとも75
を有し、そして
≦2.5の粒状性(Gdiff)を有する、
多層コーティング。
【請求項2】
前記b)少なくとも1つのミッドコート層が、
ii) 少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T)
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の多層コーティング。
【請求項3】
前記b)少なくとも1つのミッドコート層が、
i. 水素チタン酸化物(P1)、二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)および二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)の群から選択される少なくとも2つの小板形状の酸化チタン顔料(P)
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の多層コーティング。
【請求項4】
前記b)少なくとも1つのミッドコート層が、
a. 少なくとも1つの小板形状の水素チタン酸化物および少なくとも1つの小板形状の二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ、または
b. 少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)および水素チタン酸化物と二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカとからなる群から選択される少なくとも1つの小板形状の酸化チタン(P)
を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の多層コーティング。
【請求項5】
前記b)少なくとも1つのミッドコート層が、少なくとも1つの小板形状の二酸化チタンでコーティングされたアルミニウムを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の多層コーティング。
【請求項6】
前記水素チタン酸化物が、以下の式、HTiおよびH4x/3Ti2-x/3 nHOの1つにより表され、式中、xは0.50~1.0であり、そしてnは0~2であり、および/または前記フッ素化マイカがフルオロフロゴパイトであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多層コーティング。
【請求項7】
視野角-15°、+15°、+25°、+45°、+75°、および+110°で、CIELabシステムによるa*が-3.8から+3.8であり、そしてb*が-5から+4であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の多層コーティング。
【請求項8】
少なくとも1つのグラウンドコート層、少なくとも1つのミッドコート層および少なくとも1つのクリアコート層を含み、そして、
CIELabによる以下の明度L*
(i) 視野角範囲-15°から+45°で、少なくとも80、
(ii) 金属効果顔料が前記ミッドコート層に含有される場合、視野角範囲+75°から+110°で、少なくとも70、
(iii) 金属効果顔料が前記ミッドコート層に含有されない場合、視野角範囲+75°から+110°で、少なくとも75、および
(iv) 視野角+15°で少なくとも105
を有し、
≦2.5の粒状性Gdiff、および
≧0.9の液体金属指数LMI
を有する、多層コーティング。
【請求項9】
前記グラウンドコート層、ミッドコート層およびクリアコート層が、請求項1から7のいずれか一項によりさらに定義されることを特徴とする、請求項8に記載の多層コーティング。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に定義した多層コーティングの製造方法であって、以下の工程、
a. 少なくとも1つのグラウンドコート組成物を、コーティングされたまたはコーティングされていない基材上に塗布して1つ以上のグラウンドコート層(複数可)を形成する工程であって、前記グラウンドコート組成物(複数可)が少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T)を含む、工程
b. このように形成された唯一のまたは最後のグラウンドコート層(複数可)上に少なくとも1つのミッドコート組成物を塗布して1つ以上のミッドコート層(複数可)を形成する工程であって、前記ミッドコート組成物(複数可)が、水素チタン酸化物(P1)、二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)および二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)からなる群から選択される少なくとも1つの小板形状の酸化チタン顔料(P)を含む、工程、および
c. このように形成された唯一のまたは最後のミッドコート層(複数可)上に少なくとも1つのクリアコート組成物を塗布して1つ以上のクリアコート層(複数可)を形成する工程、および
d. 未硬化のまたはまだ完全硬化していないグラウンドコート層、ミッドコート層および/またはクリアコート層を硬化させる工程
を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の多層コーティングの製造方法であって、前記ミッドコート組成物が、フィルム形成ポリマー(A1)、および前記フィルム形成ポリマー(A1)が外部架橋性である場合、架橋剤(A2)を含むことを特徴とし、そして
存在する場合、水素チタン酸化物(P1)対フィルム形成ポリマー(A1)と架橋剤(A2)との合計の質量比が0.01~0.5の範囲であり、および/または
存在する場合、小板形状の二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)対フィルム形成ポリマー(A1)と架橋剤(A2)との合計の質量比が0.01~0.5の範囲であり、および/または
存在する場合、二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム顔料(P3)対フィルム形成ポリマー(A1)と架橋剤(A2)との合計の質量比が0.001~0.2の範囲である、方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載の多層コーティングを含むことを特徴とし、コーティングされていないまたはプレコートされた基材であり、金属基材、プラスチック基材、ガラスまたは繊維からなる群から選択される、多層コーティングされた基材。
【請求項13】
プライマーコーティング層、電着コーティング層および変換コーティング層の少なくとも1つを含むプレコートされた金属基材である、請求項12に記載の多層コーティングされた基材。
【請求項14】
自動車ボディおよびその部品である、請求項12または13に記載の多層コーティングされた基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層コーティング、その多層コーティングの製造方法、およびその多層コーティングされた基材に関する。多層コーティングは、好ましくは、車両および車両部品、例えば自動車ボディおよびその部品のコーティング用である。
【背景技術】
【0002】
近年、白色は自動車産業において、販売車両数の点から最も重要な色となっている。白色は、2つの主要なカテゴリー、小板(platelet)形状の効果顔料を含むものと含まないものとに大別される。
【0003】
第一のカテゴリーは、しばしば「金属様」または「真珠光沢」白色と呼ばれるが、多数の小板の様々な組成物を含有し得る。これらの組成物は様々な基材、例えば金属、天然または合成マイカ、ガラス、金属の酸化物、シリケートおよび他のものをベースとする。小板は、例えば(半)金属酸化物層でコーティングされることがあり、いわゆる「絹様白色」効果を生み出す。
【0004】
しかしながら、これらの多層コーティングはしばしば粗い質感を示し、コーティングされた小板から生じる多色の虹色の干渉がはっきりと分かるのが通常である。このような小板形状の顔料の使用に関連する他の問題は、微細で絹様の効果を得るのが困難であること、または色が、明るく純粋な白色を維持しないことである。
【0005】
自動車用コーティングの分野で最も一般的に使用されている白色着色剤は、二酸化チタンをベースとしている。よって、自動車コーティングの製造に使用することができる、酸化チタンおよび二酸化チタンをベースとした、効果をもたらす独自の配合物の提供に対する所望が、継続的に、そしてさらに増加している。
【0006】
多くの場合、一般的に使用される二酸化チタン顔料は移動がなく、全視野角範囲にかけて、同じまたは同様の明るさの値を提供する。他の製品は、上記で説明したような特徴的な干渉「虹色」効果を有することにより、または色の明るさを下げることにより、または所望されない色相を加えることにより、白色コーティングの純粋な白色外観を低減させる傾向がある。
【0007】
色に対する影響とは、酸化チタンおよび二酸化チタンをベースとした効果顔料の組成的性質である。粒度分布が大きいと、このような薄片状顔料の縁に沿った光の散乱が増加し、明らかに粗い外観となる。さらに、効果顔料は、コーティング表面をよく観察すると明白である複数の色を呈するようになり、効果顔料の「虹色」反射を生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、わずかな金属様の外観と明るい白色を有し、且つ微細で絹様の柔らかい金属様の質感効果を示し、一方では、過度の粒状性を伴うことなく優れた明度L*値を維持する、多層コーティングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、以下の成分、
a) 少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T)を含む、少なくとも1つのグラウンドコート層、
b) 以下、
i. 水素チタン酸化物(P1)、二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)および二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)からなる群から選択される、少なくとも1つの小板形状の酸化チタン顔料(P)
を含む、該少なくとも1つのグラウンドコート層の上の少なくとも1つのミッドコート層、および
c) 該少なくとも1つのミッドコート層の上の少なくとも1つのクリアコート層
を含み、そして、
CIELabによる以下の明度L*
視野角範囲-15°から+45°で、少なくとも80、
二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)がミッドコート層に含有される場合、視野角範囲+75°から+110°で、少なくとも70、および
二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)がミッドコート層に含有されない場合、視野角範囲+75°から+110°で、少なくとも75
を有する、多層コーティングを提供することによって達成された。
【0010】
前述の多層コーティングおよびその好ましい実施形態を、以下に本発明による多層コーティングと表記する。
【0011】
本発明により提供される多層コーティングを、その色特性の観点から記載することも可能である。よって本発明は、少なくとも1つのグラウンドコート層、少なくとも1つのミッドコート層および少なくとも1つのクリアコート層を含み、そして、
CIELabによる以下の明度L*
(i) 視野角範囲-15°から+45°で、少なくとも80、
(ii) 金属効果顔料がミッドコート層に含有される場合、視野角範囲+75°から+110°で、少なくとも70、
(iii) 金属効果顔料がミッドコート層に含有されない場合、視野角範囲+75°から+110°で、少なくとも75、および
(iv) 視野角+15°で少なくとも105
を有し、
≦2.5の粒状性Gdiff、および
≧0.9の液体金属指数LMI
を有する、多層コーティングを提供する。
【0012】
前述の多層コーティングおよびその好ましい実施形態もまた、以下に本発明による多層コーティングと表記する。
【0013】
本発明のさらなる目的は多層コーティングを製造する方法であり、該方法は以下の工程、
a. 少なくとも1つのグラウンドコート組成物を、コーティングされたまたはコーティングされていない基材上に塗布して、1つ以上のグラウンドコート層(複数可)を形成する工程であって、該グラウンドコート組成物(複数可)が少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T)を含む、工程、
b. このように形成された唯一のまたは最後のグラウンドコート層(複数可)上に少なくとも1つのミッドコート組成物を塗布して、1つ以上のミッドコート層(複数可)を形成する工程であって、該ミッドコート組成物(複数可)が、水素チタン酸化物(P1)、二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)および二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)からなる群から選択される少なくとも1つの小板形状の酸化チタン顔料(P)を含む、工程、および
c. このように形成された唯一のまたは最後のミッドコート層(複数可)上に少なくとも1つのクリアコート組成物を塗布して、1つ以上のクリアコート層(複数可)を形成する工程、および
d. 未硬化のまたはまだ完全硬化していないグラウンドコート層、ミッドコート層および/またはクリアコート層を硬化させる工程
を含む。
【0014】
前述の多層コーティングの製造方法およびその好ましい実施形態を、以下に本発明による多層コーティングの製造方法と表記する。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、本発明による多層コーティングでコーティングされた多層コーティングされた基材であり、以下に本発明の多層コーティングされた基材と表記する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、マルチアングル測定ジオメトリを示す。
図2図2は、3層コーティングの光輝性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好ましい実施形態および特徴について、より詳細に記載する。
【0018】
本発明の一般的な文脈において、および特に本発明によるコーティング層およびコーティング組成物に関連して、用語「含む(comprising)」は、「からなる(consisting of)」よりもむしろ「含有する(containing)」の意味を有する。特に、「含む」とは、それぞれの文脈において列挙される層または成分または化合物に加えて、以下に言及される1つ以上のさらなる層、成分または化合物が、本発明による多層コーティングまたはコーティング組成物中に任意に含有され得ることを意味する。あらゆる成分は、各場合において、以下に言及するそれらの好ましい実施形態に従って存在し得る。
【0019】
ここでの用語「視野角範囲」は、-15°から+110°の範囲における特有の角度、すなわち、一般的に使用される測定セットアップによってL*、a*およびb*値が決定される角度を定義する。このようなセットアップでは、特有の視野角は、図1に示すように、-15°、+15°、+25°、+45°、+75°および+110°のオフスペキュラーにある。よって、例えば視野角範囲-15°から+45°におけるL*値の決定は、視野角-15°、+15°、+25°および+45°におけるL*値が決定され、関連することを意味する。
【0020】
コーティング組成物のあらゆる必須成分およびさらに任意に存在する成分のwt.-%(すなわち、質量%)の割合および量は、それぞれのコーティング組成物の総質量に対して100質量%まで加算される。
【0021】
以下に記載するコーティング組成物のうちの任意の調製は、慣用的且つ既知の調製および混合方法および混合ユニットを用いて、および/または従来の溶解器および/または撹拌機を用いて、実施することができる。
【0022】
多層コーティング、その中の様々な層およびその組成物
本発明の多層コーティングは、少なくとも3つの層、すなわち、少なくとも1つのグラウンドコート層、少なくとも1つのミッドコート層(以下に「ベースコート層」とも呼ぶ)および少なくとも1つのクリアコート層を含む、またはそれらからなる。好ましくは、本発明の多層コーティングは、1つのグラウンドコート層、1つまたは2つ、好ましくは1つのベースコート層および1つのクリアコート層を含む、またはそれらからなる。
【0023】
グラウンドコート層(複数可)、ミッドコート層(複数可)およびクリアコート層(複数可)は、グラウンドコート組成物(複数可)をプレコートされたまたはコーティングされていない基材上に、ミッドコート組成物(複数可)を唯一のまたは最後のグラウンドコート層上に、およびクリアコート組成物(複数可)を唯一のまたは最後のミッドコート層上に、それぞれ塗布することによって形成される。同じコーティング組成物をもつ複数のスプレーパスを用いてそれぞれの層を塗布する場合、これは1つの層の形成とみなす。2つ以上の異なるグラウンドコート、ミッドコートまたはクリアコート組成物を用いる場合のみ、2つ以上のグラウンドコート、ミッドコートまたはクリアコート層がそれぞれ形成されるとみなす。
【0024】
本発明の多層コーティングは白色であり、すなわち、白色色空間内において上記のL*値によって定義される色の印象を作り出す。より好ましくは、白色色空間は、上記の必須のL*値に加えて、以下のCIELab値a*およびb*(EN ISO11664-4「Colorimetry-Part4:CIE1976L*a*b*Colour Space」、2011年7月版による、ここではこの規格を単にCIELabという)によって特徴付けられる:視野角範囲-15から+110°で、a*は-3.8から+3.8であり、そしてb*は-5から+4である。前述の範囲では、多層コーティングがわずかに色づき、特に好ましくは多層コーティングのグラウンドコート層が色づくが、観察者に与える白色の印象は、依然として維持される。
【0025】
本発明の多層コーティングは、好ましくは以下を有する。
・ 視野角15°で、≧105、より好ましくは≧108、および最も好ましくは≧110、またはさらに≧115の明度(L*)値、および/または
・ 視野角110°で、≧75、より好ましくは≧78、最も好ましくは≧80、またはさらに≧85の明度(L*)値、および/または
・ ≦2.5、より好ましくは≦2.2、最も好ましくは≦2.0、またはさらに≦1.8の粒状性(Gdiff)値、および/または
・ ≧0.9、より好ましくは≧1.0、最も好ましくは≧1.20の液体金属指数(LMI)値。
【0026】
前述の好ましい特性L*(15°および110°において)、GdiffおよびLMIは、互いに独立して、本発明の多層コーティングをさらに特徴付け、そして改善するのに好適であり、独立して実施することができる。よって、本発明の最も広範な実施形態は、視野角+15°または視野角+110°における明度を増加させることにより、または液体金属指数を増加させることにより、または粒状性を低減させることにより、または2つ、3つ、または4つすべての特性を改善することにより、さらに改善することができる。特に好ましいのは、多層コーティングが粒状性値≦2.5を有することであり、これは、例えば、本明細書中、以下に開示するように実施することができる。
【0027】
さらに、白色多層コーティングは、色相がニュートラルからわずかに青みがかっていることが好ましく、すなわち、本発明の多層コーティングのb*値は、視野角-15°から110°にかけて、好ましくは≦3、より好ましくは≦1、最も好ましくは≦0、およびさらに≦-0.5であることが好ましい。あらゆる場合において、b*の下限値は、視野角-15°から110°にかけて好ましくは-5である。
【0028】
好ましくは、本発明の多層コーティングは、視野角15°で4から16の範囲、より好ましくは5から15の範囲、および最も好ましくは6から12の範囲の光輝面積を有し、そして視野角15°で2から8の範囲、より好ましくは2.5から7の範囲、および最も好ましくは3から6の範囲の光輝強度を有する。
【0029】
L*、a*、b*、光輝面積および強度、粒状性、フロップ指数および液体金属指数の値は、本発明の実験セクションで詳述するようにBYK Mac i分光光度計で決定される。
【0030】
コーティング組成物またはその一部の固形分含量は、コーティング組成物またはその一部のサンプル(約1g)を110℃で60分間乾燥させることによって決定される。乾燥残渣の質量をサンプルの質量で割って100を掛けたものが、質量%の固形分含量である。
【0031】
以下では、まず、様々な種類の層および層を形成するために使用されるそれぞれのコーティング組成物について記載する。
【0032】
グラウンドコート層およびグラウンドコート組成物
グラウンドコート層(単数または複数)は、少なくとも1つのグラウンドコート層が少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T)を含むことにより特徴づけられる。この層は良好な隠蔽力を付与するので、下にあるコーティングされていないまたはプレコートされた基材の色が、好ましくは見えない。
【0033】
このグラウンドコート層に使用される二酸化チタン顔料(T)は、典型的には、自動車コーティング産業で使用される従来の二酸化チタン顔料である。このような非小板形状の二酸化チタン顔料(T)は、典型的には球状または不規則な形状であり、そしてルチル型のものであり、好ましくは周知の塩化物プロセスによって得られる。それらは、一次粒子、アグロメレートおよびアグリゲートを含み、そして典型的には、研削/粉砕されて顔料ペーストを形成し、グラウンドコート層の形成に使用されるグラウンドコート組成物に用いられる。
【0034】
二酸化チタン顔料(T)は、少量の他の金属酸化物、例えばアルミナまたは半金属酸化物、例えば二酸化ケイ素を含んでよい。このような場合、二酸化チタン顔料は、典型的にはコア粒子として機能し、そして様々な金属酸化物および半金属酸化物は、顔料表面に析出して、特性、例えばより良好な濡れ性などを採用する。しかしながら、そのような顔料の二酸化チタン含有量は、顔料の総質量に対して、好ましくは少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも92質量%超である。
【0035】
このような二酸化チタン(T)は、グラウンドコート組成物の製造に用いられ、好ましくは、Malvern Zetasizer(Malvern社製、S90ユニット、Nanoseries Model ZEN 1690mfg 5/2017)を用いた動的光散乱によって決定して、200~500nm、より好ましくは300~400nmの範囲の中央一次粒子径を有する。この方法は、Z平均粒子径の決定、および体積ベースのD10、D50およびD90値の決定についての記載を通して使用される。さらなる詳細は、本明細書の実験パートに見出される。
【0036】
このような二酸化チタン顔料(T)は、例えば、Chemour社からTi-Pure商標、Kronos社からKronos2310、Citic Titanium社からCR510、またはCristal社からTiona596の商品名で市販されている。
【0037】
グラウンドコート層またはグラウンドコート層のスタックの好ましい乾燥層厚は8~20μm、より好ましくは12~18μmの範囲である。
【0038】
本発明の多層コーティングの任意のコーティング層の乾燥層厚は、本発明の実験セクションで説明するように決定することができる。
【0039】
グラウンドコート層(複数可)は、上記の非小板形状の二酸化チタン顔料の1つ以上を含有するグラウンドコート組成物を、コーティングされていないまたはプレコートされた基材上に塗布することによって形成される。
【0040】
グラウンドコート組成物は、典型的には、1液型組成物および2液型組成物から選択され、これらは水性または溶媒ベースである。
【0041】
以下に、任意のコーティング組成物(グラウンドコート組成物、ミッドコート組成物およびクリアコート組成物)に対して有効とするものであるが、コーティング組成物は、主な揮発分が水である場合、水性または水系のコーティング組成物であると分類し、主な揮発分が有機溶媒または有機溶媒の混合物である場合、ここでコーティング組成物を溶媒ベースまたは溶媒系のコーティング組成物であると分類する。揮発分は、コーティング組成物の総質量とその固形分含量との差である。溶媒系コーティング組成物に好適な溶媒は、以下に「グラウンドコート、ミッドコートおよびクリアコート組成物中に使用するための溶媒(S)」という見出しで記載する。
【0042】
ここで好ましいのは、水性1液型組成物をグラウンドコート組成物として使用することである。
【0043】
好ましくは、本発明による水性グラウンドコート組成物の固形分含量は、25~55質量%、より好ましくは27~50質量%、最も好ましくは35~45質量%、特に37~42質量%の範囲である。
【0044】
好ましくは、本発明による溶媒系グラウンドコート組成物の固形分含量は、30~80質量%、より好ましくは40~70質量%、最も好ましくは50~68質量%、特に55~66質量%の範囲である。
【0045】
前述の非小板形状の二酸化チタン顔料(T)の他に、グラウンドコート組成物は、少なくとも1つのフィルム形成ポリマー(A1)、(A1)が外部架橋性である場合、架橋剤(A2)、任意に、非小板形状の二酸化チタン顔料(T)とは異なる1つ以上の染料(B1)、顔料(B2)および/またはフィラー(B3)、溶媒成分(S)、およびさらなる任意の成分(C)、例えば典型的なコーティング添加剤、例えばレオロジー添加剤などを含む。グラウンドコート組成物のこれらの前述の成分は、他のコーティング組成物(ミッドコート組成物およびクリアコート組成物)の1つ以上にも使用され得るので、以下の記載の別の部分でさらに記載する。
【0046】
ミッドコート層およびミッドコート組成物
用語「ミッドコート層」および「ミッドコート組成物」は、当該技術分野において既知であり、それぞれ「ベースコート層」および「ベースコート組成物」とも呼ばれることが多い。用語「ベースコート」は、例えば、Roempp Lexikon、「Lacke und Druckfarben」(「Paints and「Printing Inks」)、Georg Thieme Verlag、1998年、第10版、第57頁に定義されている。従って、本明細書で命名するベースコートまたはミッドコートは、中間コーティング組成物としてベースコート/ミッドコート組成物を使用することによって着色および/または光学的効果をもたらすために、特に自動車コーティングおよび一般工業塗料の着色で使用される。ベースコート/ミッドコート組成物は、一般に、任意に前処理および/またはグラウンドコート組成物でプレコートされた金属またはプラスチック基材に塗布され、本出願では少なくともグラウンドコート層上に塗布される。
【0047】
本発明のミッドコート層(単数または複数)は、1つ以上のミッドコート組成物を、唯一のまたは最後のグラウンドコート層上に塗布することによって形成される。本発明のミッドコート層(単数または複数)は、水素チタン酸化物(P1)、二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)および二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)からなる群から選択される少なくとも1つの小板形状の酸化チタン顔料(P)を含む。
【0048】
小板形状の酸化チタン顔料(P)
用語「小板形状の」は、コーティングの技術分野において一般的に使用される用語であり、効果顔料の小板様形状を指し、DIN EN ISO4618:215-01において用語「効果顔料」を特徴付けるために使用される。このような顔料は、典型的には、高いアスペクト比(平均粒子長/平均粒子厚)を有する。本発明で使用される小板形状の顔料は、好ましくはフレーク形状の顔料である。
【0049】
以下の3種類の顔料(P1)、(P2)および(P3)はすべて、好ましくは、様々な角度で青色のシフト(「移動」)を提供し、一方で鏡面視野角近辺(+15°)で明るさを増加させる傾向がある。原理的に、本発明者らは、より大きなサイズの顔料はより明るさを加え、一方でより小さなサイズの顔料は粒を低減させることを見出した。
【0050】
水素チタン酸化物(P1)
小板形状の、特にフレーク形状の水素チタン酸化物顔料(P1)およびその製造は、例えば、EP2007598A1およびEP3753903A1に、フレーク状チタン酸として、US2021/0047517またはChem.Mater.2018,30,1505-1516に記載されている。これらの生成物に関しては、式HTiまたはH4x/3Ti2-x/3 nHOがしばしば参照され、式中、xは0.50~1.0であり、そしてnは0~2である。生成物は、結合結晶水を含有してよく、これは、存在する場合、顔料の一部であるとみなされる。
【0051】
このような水素チタン酸化物顔料(P1)は、ミッドコート組成物の製造において用いられ、好ましくは、体積ベースのD50平均粒径が5~50μm、より好ましくは8~40μm、および最も好ましくは10~35μmの範囲であり、これらは上記および本明細書の実験セクションに記載のものと同じ方法および装置を用いた動的光散乱法によって決定され、そして好ましくは、小板厚さが50~150nmの範囲、より好ましくは70~130nmの範囲、および最も好ましくは90~110nmの範囲であり、これらは本明細書の実験セクションに詳述する電子顕微鏡法によって決定される。本発明で使用される任意の小板形状の顔料のあらゆる小板厚さは、この方法によって決定することができる。
【0052】
これらの水素チタン酸化物は、白色色空間で多層コーティングの色変化を加え、同時に、先行技術のコーティングについて記載した虹色効果を低減し、そしてオフスペキュラー範囲近辺(-15°および+15°)で明るさおよび青みがかった色相を加え、このようにしてこれらの角度でより純粋な白色の印象を提供する。
【0053】
これらの水素チタン酸化物顔料(P1)は、例えば、石原産業株式会社からLPT-106の名称で市販されている。
【0054】
ミッドコート組成物中に存在する場合、水素チタン酸化物(P1)対フィルム形成ポリマー(A1)と架橋剤(A2)との合計の質量比、すなわち(P1)/[(A1)+(A2)]は、好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.05~0.4、および最も好ましくは0.1~0.3の範囲である。
【0055】
二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)
用語「フッ素化マイカ」または「フッ素マイカ」は合成マイカを表し、それぞれのマイカ式においてOH基がF基で置換されている。
【0056】
小板形状の二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)は、二酸化チタンでコーティングされた合成マイカであり、特に好ましくは二酸化チタンでコーティングされた合成フルオロフロゴパイトである。
【0057】
天然のマイカは砂、カオリン、長石、および、他のシリケートの存在下で採鉱され、種々の不純物、例えば鉄酸化物および重金属を含有し得るが、合成マイカはそれとは異なり、このような不純物を含有しない。これらの追加的な不純物の存在のせいで、天然のマイカは変色していることが多い。この変色は当然ながら、特にマイカが顔料のための小板、コアまたは基材として使用される場合、特に白色色空間の塗料において、当該天然材料の所望されない特性である。
【0058】
さらに、天然のマイカはフレークを製造ために研削しなければならない。この研削では、マイカの表面の滑らかさ、フレークの階段状特性および薄さを厳密に制御することができない。よって、フレークは不完全なエッジおよび面、およびより低い鏡面反射(エッジ散乱)を有することが多い。そのため、天然のマイカの採鉱および研削は、高アスペクト比の小板をもたらす大直径で薄いフレークの製造に向いていない。
【0059】
よって、合成フッ素含有マイカを、例えばUS2014/0251184A1に記載のように、またはシード付き白金るつぼを利用するBridgman-Stockbarger法を使用して、合成することができる。特にフルオロフロゴパイトは広く使用されている顔料であり、式KMgAlSi10を有する。このフッ素化マイカは、本発明で最も重要なものであり、そして化粧品製剤にしばしば使用される。
【0060】
本発明では、フッ素化マイカ、特に好ましくはフルオロフロゴパイトが使用され、これは二酸化チタンで覆われる、またはコーティングされる。合成マイカを、例えば二酸化チタンでコーティングする方法は、例えばEP3719081A1に開示されているが、市場のほとんどのマイカ製品は様々な組成の金属酸化物でコーティングされているので、これもまた最新技術に属する。
【0061】
ここで使用される二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)は、好ましくは、コーティングとして二酸化チタンのみを含有する。しかしながら、コーティング中の少量の他の酸化物、例えば酸化スズなども許容される。さらに、グレードによっては、表面改質剤としてのシランを、顔料(P2)の総質量に対して好ましくは0~3質量%の量で含有してよい。
【0062】
二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)における二酸化チタン対フッ素化マイカの質量比は、フッ素化マイカの二酸化チタンコーティングとフッ素化マイカ自体の質量の合計に対して、好ましくは3:7~7:3、より好ましくは3.5:6.5~6.5:3.5、または4:6~6:4の範囲である。
【0063】
ミッドコート組成物中に存在する場合、小板形状の二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)対フィルム形成ポリマー(A1)と架橋剤(A2)との合計の質量比、すなわち(P2)/[(A1)+(A2)]は、好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.05~0.3、および最も好ましくは0.1~0.28の範囲である。
【0064】
このような二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)は、ミッドコート組成物の製造に用いられ、好ましくは、体積ベースのD50平均粒径が2~40μm、より好ましくは3~30μmの範囲、および最も好ましくは5~20μm、例えば5~15μmの範囲であり、これらは本明細書の実験セクションに記載の動的光散乱法によって決定され、そして本明細書の実験セクションに記載の電子顕微鏡法によって決定して50nm~約400nmの小板厚さを有する。
【0065】
本発明において、これらの顔料は、粒状性を低減し、一方で明るさに寄与し、そしてニュートラルまたはより青い色相を可能にする傾向があることが見出された。特に、10未満のD50値を有する、より小さいサイズの二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)は、粒状性を低下させ、より直線的な色調(すなわち、非金属様)の外観をもたらす。D50値が10以上のものは、特に鏡面反射(+15°)付近で、より明るい外観(L*値)をもたらすが、粒状性を増加させる。
【0066】
二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)
小板形状の二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)は、「金属効果顔料」の群に属する。
【0067】
用語「金属効果顔料」は、EN ISO18451-1:2019(顔料、染料および体質顔料-用語-第1部)に従って使用される。金属効果顔料は、金属からなる小板形状の顔料として定義される。本発明において、用語「金属からなる」には、金属効果顔料の表面コーティング、すなわちアルミニウム効果顔料上の二酸化チタン層の存在が含まれる。しかしながら、これは、アルミニウムに塗布されたコーティング中に、少量の、好ましくは、二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)の質量に対して5質量%未満の、さらなる金属酸化物または半金属酸化物が存在することを排除するものではない。アルミニウム効果顔料(P3)は、他の薬剤(例えば官能性シラン)で処理し、コーティング特性の劣化を引き起こし得る水分の反応および取り込みに対して顔料を安定化させてもよい。
【0068】
本発明者らにより、これらの二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム顔料(P3)は、わずかな金属様外観を提供し、そして多層コーティングに、より高いフロップ指数、すなわち向上した金属様効果を与え、且つ青みを加えることが見出された。これらの顔料(P3)は、好ましくは少量であることから、当該技術分野で既知の金属様コーティングの典型的な全体的金属様外観を提供しないが、直線的な色調の白色の外観にわずかな金属様の印象を与えることができる。これらの顔料の存在は、視野角+110°でより暗いフロップにつながるので、L*値を白色色空間に所与の範囲に保つために、低量でしか使用されない。
【0069】
このような二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)は、ミッドコート組成物の製造に用いられ、好ましくは、体積ベースのD50平均粒径が5~20μm、より好ましくは6~15μmの範囲、および最も好ましくは7~12μmの範囲であり、これらは本明細書の実験セクションに記載の動的光散乱法によって決定され、そして本明細書の実験セクションに記載の電子顕微鏡法によって決定して50~200nmの小板厚さを有する。
【0070】
いくつかの(半)金属酸化物でコーティングされた金属様顔料が当技術分野で知られている。二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム顔料の製造方法は、例えば1990年代に発行された米国特許第5,026,429号に既に開示されている。
【0071】
ミッドコート組成物中に存在する場合、二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム顔料(P3)対フィルム形成ポリマー(A1)と架橋剤(A2)との合計の質量比、すなわち(P3)/[(A1)+(A2)]は、好ましくは0.001~0.2、より好ましくは0.002~0.15、および最も好ましくは0.003~0.1の範囲である。
【0072】
任意だが好ましい非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)
特に好ましいのは、ミッドコート組成物が、小板形状の酸化チタン顔料(P)の他に、少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)を含むことである。この非小板形状の二酸化チタン顔料は、様々な量の他の金属酸化物、例えば二酸化ジルコニウムまたは二酸化アルミニウムおよび/または金属水酸化物、例えば水酸化ジルコニウムおよび水酸化アルミニウムをさらに含有してよい。好ましくは、二酸化ジルコニウムと水酸化アルミニウムの組み合わせである。このような非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)における二酸化チタンの典型的な量は、非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)の総質量に対して少なくとも80質量%~100質量%である。他の金属酸化物および/または金属水酸化物が存在する場合、その合わせた量は、非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)の質量に対して、20質量%以下であってよいが、好ましくは15質量%未満、およびより好ましくは10質量%未満である。最も好ましいのは、少なくとも85質量%の量の二酸化チタン、10質量%未満、より好ましくは8質量%未満の量の水酸化アルミニウム、および5質量%未満、より好ましくは3質量%未満の量の二酸化ジルコニウムを含有する非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)であり、あらゆるパーセンテージは非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)の総質量に対するものである。好ましくは、このような顔料は、10~50nm、より好ましくは20~40nmの範囲、例えば25~35nmの一次粒子径を有する。このような顔料は、例えば、Tayca Corporation社から、またはIshihara社からのTTO-55A、TTO-55D、TTO-51AおよびTTO-51Cが市販されている。
【0073】
上述の非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)は、典型的には低い一次粒子径を有するが、市販品は一次粒子のアグリゲートおよびアグロメレートを含有しており、これら粒子の不均一な混合物がもたらされるので、大きな粒度分布スパン[(D90-D10)/(D50)]および高いZ平均粒子径を有し、これは名目一次粒子径よりもはるかに高い。
【0074】
従って、任意の非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)は、市販品よりもさらにより低い粒子径を有するように、好ましくは微粉砕される。
【0075】
このような二酸化チタン顔料(T*)は、好ましくは、動的光散乱によって決定して30nm~220nmの範囲のZ平均粒子径を有し、そして0.7~1.5の範囲の粒度分布スパンを有する二酸化チタン粒子(T*)を含むコロイド分散体として使用することができる。このような分散体は、二酸化チタン粒子に結合する基を有する1つ以上の分散剤をさらに含む。微粉砕された二酸化チタン顔料(T*)のこのような分散体は、動的光散乱によって決定して>220nmのZ平均粒子径、および/または>1.5の粒度分布スパンを有する1つ以上の非微粉砕二酸化チタン顔料(T*)と、1つ以上の二酸化チタン顔料に結合する基を含む1つ以上の分散剤とを含むプレミックスを最初に形成し、そしてその後、動的光散乱によって決定して30nm~220nmの範囲のZ平均粒子径を有し、0.7~1.5の範囲の粒度分布スパンを有する二酸化チタン粒子が得られるまで、第一の工程で得られたプレミックスを、ビーズミルまたはシェーカーミルを使用して研削することによって、得ることができる。Z平均粒子径の決定、および粒度分布スパンの算出に使用されるD10、D50およびD90値は、本発明の実験セクションに記載のように、Malvern Zetasizer(Malvern社製、S90ユニット、Nanoseries Model ZEN 1690mfg 5/2017)を使用した動的光散乱によって決定することができる。
【0076】
非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)は一般に、だが特に上述のように微粉砕されたものは、本発明において有利に使用することができ、遠方のオフスペキュラー視野角(+110°)で粒状性を低減するために利用することができ、且つ青みがかった色相に寄与することができ、高い金属様移動よりも白色の直線的な色調の方に留まることが所望される場合には、任意のより白くより明度の高いL*を110°で提供することができる。しかしながら、+15°の角度で大きなL*が所望される場合、非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)は使用しない、または少量のみを使用すべきである。
【0077】
ミッドコート層またはミッドコート層のスタックの好ましい乾燥層厚は、3~20μm、より好ましくは4~15μm、さらにより好ましくは5~10μm、例えば6~8μmの範囲である。
【0078】
ミッドコート層(複数可)は、上記の小板形状の酸化チタン顔料(P)の1つ以上を含有するミッドコート組成物の塗布によって形成される。
【0079】
ミッドコート組成物は、典型的には、1液型組成物および2液型組成物から選択される。これは好ましくは水性1液型組成物である。
【0080】
ミッドコート組成物中に存在する場合、非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)は、ミッドコート組成物の総質量に対して、0.01~2.0質量%の範囲、より好ましくは0.05~1.5質量%の範囲、および最も好ましくは0.1~1.0質量%の範囲の量で存在する。
【0081】
ミッドコート組成物中に存在する場合、非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)対フィルム形成ポリマー(A1)と架橋剤(A2)との合計の質量比、すなわち(T*)/[(A1)+(A2)]は、好ましくは0.001~0.2、より好ましくは0.003~0.1、および最も好ましくは0.004~0.08の範囲である。
【0082】
好ましくは、ミッドコート層(複数可)およびミッドコート組成物(複数可)は、水素チタン酸化物(P1)、二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)および二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)の群から選択される少なくとも2つの小板形状の酸化チタン顔料(P)を含む。
【0083】
より好ましくは、ミッドコート層(複数可)およびミッドコート組成物(複数可)は、少なくとも1つの小板形状の水素チタン酸化物(P1)および少なくとも1つの小板形状の二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)、または少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)および水素チタン酸化物(P1)と二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)とからなる群から選択される少なくとも1つの小板形状の酸化チタン(P)を含む。
【0084】
さらにより好ましくは、ミッドコート層(複数可)およびミッドコート組成物(複数可)は、少なくとも1つの小板形状の二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)、少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)、および追加的に少なくとも1つの小板形状の水素チタン酸化物(P1)および/または少なくとも1つの小板形状の二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)を含む。
【0085】
ミッドコート組成物は、典型的には、1液型組成物および2液型組成物から選択され、水性または溶媒ベースとすることができる。
【0086】
ここで好ましいのは、ミッドコート組成物として水性1液型組成物を使用することである。
【0087】
好ましくは、本発明による水性ミッドコート組成物の固形分含量は、15~30質量%、より好ましくは16~27質量%、最も好ましくは17~25質量%、特に18~23質量%の範囲である。
【0088】
好ましくは、本発明による溶媒系ミッドコート組成物の固形分含量は、30~70質量%、より好ましくは40~60質量%、最も好ましくは45~58質量%、特に50~55質量%の範囲である。
【0089】
前述の小板形状の二酸化チタン顔料(P)および非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)の他に、ミッドコート組成物は、少なくとも1つのフィルム形成ポリマー(A1)、(A1)が外部架橋性である場合、架橋剤(A2)、任意に、小板形状の酸化チタン顔料(P1)、(P2)および(P3)とは異なる、1つ以上の染料(B1)、顔料(B2)および/またはフィラー(B3)、溶媒成分(S)、およびさらなる任意の成分(C)、例えば典型的なコーティング添加剤、例えばレオロジー添加剤などを含む。ミッドコート組成物のこれらの前述の成分は、他のコーティング組成物(例えば、グラウンドコート組成物およびクリアコート組成物)の1つ以上にも使用され得るので、以下の記載の別の部分でさらに記載する。
【0090】
クリアコート層およびクリアコート組成物
本発明の多層コーティングのクリアコート層(単数または複数)は、1つ以上のクリアコート組成物を、唯一のまたは最後のミッドコート層上に塗布することによって形成される。塗布されるクリアコート組成物は、1液型または2液型組成物とすることができ、そして水性または溶媒ベースとすることができる。好ましくは、本発明のクリアコート組成物は、溶媒ベースの2液型組成物である。
【0091】
クリアコート組成物は、好ましくは少なくとも1つのバインダーを含み、より好ましくは少なくとも1つのポリマーをバインダーとして含む。
【0092】
好ましくは、クリアコート組成物は、平均して2つ以上のOH基および/またはアミノ基および/またはカルバメート基、より好ましくはOH基および/またはカルバメート基、最も好ましくはOH基を有する、少なくとも1つのポリマーを含む。好ましくは、少なくとも1つの、好ましくは少なくともOH-および/またはカルバメート官能性ポリマーは、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定して、好ましくは800~100,000g/molの範囲、より好ましくは1,000~75,000g/molの範囲の質量平均分子量Mを有する。
【0093】
クリアコート組成物が2液型コーティング組成物として配合される場合、それは、好ましくは、架橋剤として、遊離NCO基を有する少なくとも1つのポリイソシアネートを含有する。クリアコート組成物が1液型コーティング組成物として配合される場合、それは、好ましくは、架橋剤として、ブロックされたNCO基および/または少なくとも1つのメラミンホルムアルデヒド樹脂を有する少なくとも1つのポリイソシアネートを含有する。
【0094】
架橋剤として使用するのに好適なポリイソシアネートは、平均して2つ以上のNCO基を有する。
【0095】
このような架橋剤は、好ましくは、三量体化、二量体化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成および/またはアロファネート形成によって脂環式ポリイソシアネートから誘導された脂環式構造および/または親構造を有する。代替的にまたは付加的に、少なくとも1つの架橋剤は、三量体化、二量体化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成および/またはアロファネート形成によって、非環式脂肪族ポリイソシアネートから誘導された非環式脂肪族構造および/または親構造を好ましくは有する。非環式脂肪族ポリイソシアネート(親構造として任意に働く)は、それ自体既知である、好ましくは置換または非置換の脂肪族ポリイソシアネートである。例は、テトラメチレン1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサン1,6-ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ドデカン1,12-ジイソシアネート、および前述のポリイソシアネートの混合物である。脂環式ポリイソシアネート(親構造として任意に働く)は、それ自体既知である、好ましくは置換または非置換の脂環式ポリイソシアネートである。好ましいポリイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート、シクロブタン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,6-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1,3-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1,4-ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート、4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えばBayer AG社のDesmodur(登録商標)W)、および前述したポリイソシアネートの混合物である。平均して2つ以上のNCO基を有する架橋剤は、加水分解性シランによって部分的にシラン化することもできる。このようなシラン化された架橋剤は、例えばWO2010/063332A1、WO2010/139375A1およびWO2009/077181A1に開示されている。
【0096】
特に、クリアコート組成物が2液型コーティング組成物である場合、これは、最も好ましくは溶媒ベースのクリアコート組成物である。なぜなら、水性組成物中で遊離NCO基および任意に含有される加水分解性シランが、水との望ましくない早期反応を引き起こす可能性があるからである。
【0097】
特にクリアコート組成物が1液型コーティング組成物として配合される場合に特に好適な架橋剤は、メラミンホルムアルデヒド樹脂である。
【0098】
クリアコート組成物に上記のフィルム形成ポリマーおよび架橋剤を用いることができるが、クリアコート組成物はこれらに限定されるものではない。よって、クリアコート組成物は、上記成分の他に、フィルム形成ポリマー(A1)、(A1)が外部架橋性である場合、架橋剤(A2)、溶媒(S)、およびさらなる任意の成分(C)、例えば後述するような典型的なコーティング添加剤、レオロジー添加剤などの1つ以上を含むことができる。典型的には、クリアコート組成物は、隠蔽顔料および/またはフィラーを含有せず、またはさらにより好ましくは、如何なる顔料および/またはフィラーも含有しない。しかしながら、場合によっては、クリアコート組成物は、顔料が非常に低いヘイズしかもたらさない、または透明である場合には、そのような顔料を含有してよい。そのような顔料は、例えば、上記のように微粉砕された二酸化チタン顔料T*とすることができる。
【0099】
好ましくは、クリアコート組成物の総固形分含量は、各場合においてクリアコート組成物の総質量に対して、10~65質量%、より好ましくは15~60質量%、さらにより好ましくは20~50質量%、特に25~45質量%の範囲である。
【0100】
クリアコート組成物(複数可)から形成されるクリアコート層(複数可)は、好ましくは、20~60μm、より好ましくは30~50μm、およびさらにより好ましくは35~45μmの範囲の乾燥膜厚を有する。
【0101】
グラウンドコート、ミッドコートおよびクリアコート組成物中に使用するためのフィルム形成ポリマー(A1)
本発明のグラウンドコートおよびミッドコート組成物は、それぞれの組成物のフィルム形成バインダー(A1)として、少なくとも1つのフィルム形成ポリマーを含む。
【0102】
本発明の目的のために、用語(A1)は、添加剤を除き、特にさらなる添加剤(C)を除き、フィルム形成の原因となるコーティング組成物の不揮発性の構成成分であると理解される。好ましくは、少なくとも1つのポリマー(A1)の少なくとも1つのポリマーが、コーティング組成物の主要バインダーである。本発明における主要バインダーとして、バインダー成分は、好ましくは、コーティング組成物中に他のバインダー成分がない場合に、コーティング組成物の総質量に対してより高い割合で存在するものを指す。
【0103】
用語「ポリマー」は、当業者に既知であり、本発明の目的では、重付加物および重合物、および重縮合物を包含する。用語「ポリマー」には、ホモポリマーとコポリマーの両方が含まれる。
【0104】
成分(A1)として使用される少なくとも1つのポリマーは、物理的乾燥性、自己架橋性または外部架橋性であってよい。成分(A1)として使用することができる好適なポリマーは、例えば、EP0228003A1、DE4438504A1、EP0593454B1、DE19948004A1、EP0787159B1、DE4009858A1、DE4437535A1、WO92/15405A1およびWO2005/021168A1に記載されている。
【0105】
成分(A1)として使用される少なくとも1つのポリマーは、好ましくは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、および/または前記ポリマーの構造単位のコポリマー、特にポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタンポリウレアからなる群から選択される。成分(A1)として使用される少なくとも1つのポリマーは、特に好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、および/または前記ポリマーの構造単位のコポリマーからなる群から選択される。本発明の文脈における用語「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」は、各場合において、「メタクリル」および/または「アクリル」、または「メタクリレート」および/または「アクリレート」の意味を含む。
【0106】
好ましいポリウレタンは、例えば、独国特許出願DE19948004A1の4頁19行~11頁29行(ポリウレタンプレポリマーB1)、欧州特許出願EP0228003A1の3頁24行~5頁40行、欧州特許出願EP0634431A1の3頁38行~8頁9行、および国際特許出願WO92/15405の2頁35行~10頁32行に記載されている。
【0107】
好ましいポリエステルは、例えば、DE4009858A1の6列53行~7列61行および10列24行~13列3行および実施例D、またはWO2014/033135A2、2頁24行~7頁10行および28頁13行~29頁13行に記載されている。同様に、ポリエステルは、例えばWO2008/148555A1に記載のように樹枝状構造を有してもよい。
【0108】
好ましいポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー(例えば(メタ)アクリレート化ポリウレタン))およびそれらの調製は、例えばWO91/15528A1の3頁21行~20頁33行、およびDE4437535A1の2頁27行~6頁22行に記載されている。
【0109】
好ましいポリ(メタ)アクリレートは、水および/または有機溶媒中におけるオレフィン性不飽和モノマーの多段階フリーラジカル乳化重合によって調製できるものである。例えば、シード-コア-シェルポリマー(SCSポリマー)が特に好ましい。このようなポリマーまたはこのようなポリマーを含有する水性分散体は、例えば、WO2016/116299A1から公知である。
【0110】
好ましいポリウレタン-ポリウレアコポリマーは、ポリウレタン-ポリウレア粒子、好ましくは40~2000nmの平均粒径を有するものであり、そのポリウレタン-ポリウレア粒子は、それぞれが、アニオン基および/またはアニオン基に変換できる基を含有する少なくとも1つのイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーおよび2つの1級アミノ基および1つまたは2つの2級アミノ基を含有する少なくとも1つのポリアミンを、反応した形態で含有する。好ましくは、このようなコポリマーは、水性分散体の形態で使用される。このようなポリマーは、原則として、例えばポリイソシアネートとポリオールおよびポリアミンとの従来の重付加によって調製することができる。
【0111】
成分(A1)として使用されるポリマーは、好ましくは、架橋反応を可能にする反応性官能基を有する。当業者に既知である任意の一般的な架橋性の反応性官能基が存在することができる。好ましくは、成分(A1)として使用されるポリマーは、1級アミノ基、2級アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基およびカルバメート基からなる群から選択される官能性反応基の少なくとも1種類を有する。好ましくは、成分(A1)として使用されるポリマーは、官能性ヒドロキシル基を有する。
【0112】
好ましくは、成分(A1)として使用されるポリマーはヒドロキシ官能性であり、そしてより好ましくは、10~500mgKOH/g、より好ましくは40~200mgKOH/gの範囲のOH価を有する。
【0113】
成分(A1)として使用されるポリマーは、特に好ましくは、ヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー、ヒドロキシ官能性ポリエステルおよび/またはヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリウレアコポリマーである。
【0114】
さらに、本発明のコーティング組成物は、それ自体既知の少なくとも1つの典型的な架橋剤を含有してもよい。架橋剤(A2)は、コーティング組成物のフィルム形成不揮発性成分の中に含まれるべきものであり、従って「バインダー」の一般的な定義に含まれる。
【0115】
グラウンドコートまたはミッドコート組成物中のフィルム形成ポリマー(A1)の量は、好ましくは、コーティング組成物の総質量に対して20~45質量%、より好ましくは25~35質量%の範囲である。
【0116】
グラウンドコート、ミッドコートおよびクリアコート組成物中に使用するための架橋剤(A2)
(A1)が外部架橋性である場合、架橋剤(A2)が架橋に必要であり、これは好ましくは少なくとも1つのアミノプラスト樹脂および/または少なくとも1つのブロックされたまたは遊離の、好ましくはブロックされたポリイソシアネートであり、そして最も好ましくはアミノプラスト樹脂である。アミノプラスト樹脂の中では、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂などのメラミン樹脂が特に好ましい。
【0117】
グラウンドコートまたはミッドコート組成物中の架橋剤(A2)の量は、好ましくは、コーティング組成物の総質量に対して3~20質量%、より好ましくは4~10質量%の範囲である。
【0118】
グラウンドコートおよびミッドコート組成物およびクリアコート組成物に使用するための、さらなる染料(B1)、顔料(B2)およびフィラー(B3)
本発明のグラウンドコート、ミッドコートおよびクリアコート組成物、好ましくは本発明のグラウンドコート組成物のみが、着色剤および/またはフィラーをさらに含有してよく、着色剤は、染料(B1)および着色および/または効果顔料(B2)からなる群から選択され、上述した顔料(P)、(T)および(T*)は除く。この文脈における「除く」とは、顔料(P)、(T)および(T*)が当然ながら存在し得るが、顔料(B)の定義から除外されるのみであることを意味する。よって、例えば量の算出に関して、顔料(P)、(T)および(T*)は、顔料(B)に包含されない。
【0119】
用語「染料(dyes)」(B1)(染料(dyestuffs)とも呼ばれる)は、顔料とは対照的に、周囲の媒体に可溶である着色剤を表す。好適な染料は有機または無機である。本発明のコーティング層のいずれにも如何なる可溶性染料も使用することは推奨されない。なぜなら可溶性染料は、上記で定義したように、白色色空間から逸脱するように色を変化させ得るからである。従って、本発明のコーティング層は、好ましくは染料(B1)を含まない。染料(B1)が使用される場合、それらは好ましくは少量の青色染料である。
【0120】
用語「顔料」は色顔料(B2)に用いられるが、顔料(P)も着色剤を表し、これは染料とは対照的に、周囲の媒体中に本質的に不溶である。この用語には色顔料および効果顔料が含まれる。当業者は効果顔料という用語に精通している。対応する定義は、例えば、Roempp Lexikon,Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag、1998年、第10版、176頁および471頁に見出すことができる。
【0121】
当業者は色顔料の概念に精通している。用語「着色顔料(coloring pigment)」および「色顔料(color pigment)」は交換可能である。色顔料として、無機および/または有機顔料を使用することができる。好ましくは、色顔料は無機色顔料である。特に好ましい使用される色顔料は、白色顔料、色付顔料および/または黒色顔料である。白色顔料の例は、二酸化チタン顔料、白色亜鉛、硫化亜鉛およびリトポンである。黒色顔料の例は、カーボンブラック、鉄マンガンブラックおよびスピネルブラックである。色付顔料の例は、酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーン、ウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー、マンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット、コバルトおよびマンガンバイオレット、酸化鉄レッド、モリブデートレッドおよびウルトラマリンレッド、酸化鉄ブラウン、混合ブラウン、スピネルおよびコランダム相およびクロムオレンジ、酸化鉄イエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエローおよびビスマスバナデートである。
【0122】
本発明のコーティング層のいずれにも如何なる色顔料(B2)も、特に白色または青色ではない場合には、使用することは推奨されない。なぜならそれらは、上記で定義したように白色色空間から逸脱するように色を変化させ得るからである。従って、本発明のコーティング層は、好ましくは顔料(B2)を含まない。顔料(B2)が使用される場合、それらは好ましくは少量の青色染料である。青色顔料(B2)は、少量で使用される場合、特にグラウンドコート層で、およびより好ましくはないがミッドコート層で使用される場合、より純粋な白色の外観を付加する。特に好適なのは、無機青色顔料、例えばスピネル型顔料、例えばコバルトアルミネートスピネル型の青色顔料である。
【0123】
さらなる効果顔料の例は、必須の顔料(P1)、(P2)および/または(P3)の他に、前述の顔料(P)とは異なる小板形状の金属様効果顔料、例えばゴールドブロンズ、炎色ブロンズおよび/または酸化鉄-アルミニウム顔料、真珠光沢顔料、ガラス顔料およびシリカ顔料、および/または天然のマイカ顔料である。これらの小板形状の効果顔料フレークの任意は、吸収または干渉型の色挙動を提供するために追加の化合物でコーティングされてもよい。小板のコーティングは、金属酸化物または有機着色剤であってよい。
【0124】
用語「フィラー」(C3)は、例えばDIN55943(日付:2001年10月)から当業者に公知である。本発明の目的において、「フィラー」とは、塗布媒体、例えば本発明によるコーティング組成物中に本質的に不溶であり、特に体積を増加させるために使用される物質を意味すると理解される。本発明の文脈において、「フィラー」は、好ましくは、その屈折率が「顔料」とは異なり、フィラーの場合は<1.7であるが、顔料の場合は≧1.7である。好適なフィラーの例は、カオリン、ドロマイト、カルサイト、チョーク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、ケイ酸、特にパイロジェンケイ酸、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムなどの水酸化物、ガラスフレークなど、または有機フィラー、例えば織物繊維、セルロース繊維および/またはポリエチレン繊維であり、追加的に、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag、1998年、第250頁以下、「Fillers」を参照されたい。
【0125】
前述のように、前記着色剤(B1)および(B2)およびフィラー(B3)のいずれもが、顔料(P)、(T)および(T*)とは異なる。含有される場合、(B1)、(B2)および(B3)は、グラウンドコート組成物および/またはミッドコート組成物中に含有されてよいが、含有される場合、好ましくはグラウンドコート組成物中にのみ含有される。
【0126】
特に、着色染料(B1)および/または着色または着色および効果付与顔料(B2)および/または着色フィラー(B3)の総量および種類は、本発明の多層コーティングについて規定されるL*値の上記定義の範囲内で白色印象を維持しながら、多層コーティングの全体的な白色印象にちょうど淡い色合いを与えるように選択される。
【0127】
グラウンドコート、ミッドコートおよびクリアコート組成物中に使用するための溶媒(S)
グラウンドコートおよびミッドコート組成物は、水および/または1つ以上の有機溶媒を成分(S)として含む。
【0128】
コーティング組成物中に存在する水および有機溶媒の総量は、組成物の総質量とその固形分含量との差であり、「揮発分」とも呼ばれる。
【0129】
グラウンドコート組成物およびミッドコート組成物が、揮発分の一部として水を主に含む場合、それらは水性または水系グラウンドコートまたはミッドコート組成物と命名される。これは、グラウンドコート組成物およびミッドコート組成物にとって好ましい。
【0130】
当業者に既知のあらゆる従来の有機溶媒を、本発明のコーティング組成物の調製のための有機溶媒として使用することができる。用語「有機溶媒」は、特に1999年3月11日の理事会指令1999/13/ECから当業者に公知である。好ましくは、1つ以上の有機溶媒は、一価または多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-エチルヘキサノール、エチレングリコール、エチルグリコール、プロピルグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール、エーテル、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、例えばトルエンおよび/またはキシレン、ケトン、例えばアセトン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エステル、例えばメトキシプロピルアセテート、エチルアセテートおよび/またはブチルアセテート、アミド、例えばジメチルホルムアミドおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0131】
グラウンドコート組成物、ミッドコート組成物およびクリアコート組成物に使用するためのコーティング組成物(C)のさらなる任意の成分
グラウンドコート、ミッドコートおよびクリアコート組成物は、任意に、成分(A1)、(A2)、(T)、(T*)、(P)、(B1)、(B2)、(B3)および(S)の各成分とは異なる1つ以上の成分を含んでよい。
【0132】
グラウンドコート、ミッドコートおよびクリアコート組成物は、本発明の多層コーティングを形成するのに使用され、所望の用途に応じて、一般的に用いられる添加剤を1つ以上含有してよい。例えば、コーティング組成物は、反応性希釈剤、例えばポリプロピレンジオール、光安定剤、酸化防止剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合阻害剤、可塑剤、フリーラジカル重合用開始剤、付着促進剤、流動制御剤、フィルム形成助剤、垂れ制御剤(SCA)、難燃剤、腐食防止剤、殺生物剤および/またはマット剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでよい。これらは、既知で慣用の割合で使用することができる。好ましくは、それらの含有量は、本発明によるコーティング組成物の総質量に対して0.01~25質量%、より好ましくは0.05~20質量%、特に好ましくは0.1~15質量%、最も好ましくは0.1~10質量%、特に0.1~7質量%、および最も好ましくは0.1~5質量%である。
【0133】
添加剤の中でも、本発明によるコーティング組成物は、任意に少なくとも1つの増粘剤またはレオロジー剤を含有してもよい。そのような増粘剤の例として、無機増粘剤、例えば層状シリケートなどの金属シリケート、および有機増粘剤、例えばポリ(メタ)アクリル酸増粘剤および/または(メタ)アクリル酸(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤、ポリウレタン増粘剤およびポリマーワックスが挙げられる。金属シリケートは、好ましくはスメクタイトの群から選択される。スメクタイトは、特に好ましくは、モンモリロナイトおよびヘクトライトの群から選択される。特に、モンモリロナイトおよびヘクトライトは、アルミニウム-マグネシウムシリケートおよびナトリウム-マグネシウムおよびナトリウム-マグネシウムフッ素-リチウムフィロシリケートからなる群から選択される。これらの無機フィロシリケートは、例えば、Laponite(登録商標)の商標で販売されている。ポリ(メタ)アクリル酸をベースとする増粘剤および(メタ)アクリル酸(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤は、好適な塩基で任意に架橋され、そしてまたは中和される。このような増粘剤の例として、「アルカリ膨潤性エマルジョン」(ASE)、およびその疎水的に修飾された変形である「親水性修飾アルカリ膨潤性エマルジョン」(HASE)が挙げられる。好ましくは、これらの増粘剤はアニオン性である。対応する製品、例えばRheovis(登録商標)AS1130が市販されている。ポリウレタンベースの増粘剤(例えば、ポリウレタン会合性増粘剤)は、好適な塩基で任意に架橋および/または中和される。対応する製品、例えばRheovis(登録商標)PU1250が市販されている。好適なポリマーワックスの例は、エチレン-ビニルアセテートコポリマーをベースとする任意に修飾されたポリマーワックスである。対応する製品は、例えば、Aquatix(登録商標)8421の名称で市販されている。
【0134】
少なくとも1つの増粘剤が本発明によるコーティング組成物中に存在する場合、それは好ましくは、コーティング材料組成物の総質量に対して、各場合において、多くとも7質量%、より好ましくは多くとも5質量%、最も好ましくは多くとも3質量%、特に多くとも2質量%、最も好ましくは1.5質量%以下の量で存在する。増粘剤の最小量は、コーティング組成物の総質量に対して、各場合において、好ましくは0.1質量%である。
【0135】
本発明で提供される多層コーティングは、その色特性の観点からも記載することができる。よって本発明の多層コーティングは、少なくとも1つのグラウンドコート層、少なくとも1つのミッドコート層および少なくとも1つのクリアコート層を含み、そして典型的には以下、
CIELabによる以下の明度L*
(i) 視野角範囲-15°から+45°で、少なくとも80、
(ii) 金属効果顔料がミッドコート層に含有される場合、視野角+75°から+110°で、少なくとも70、
(iii) 金属効果顔料がミッドコート層に含有されない場合、視野角+75°から+110°で、少なくとも75、および
(iv) 視野角+15°で少なくとも105、
を有し、
≦2.5の粒状性Gdiff、および
≧0.9の液体金属指数LMI
を有する。
【0136】
好ましくは、明度(L*)値は、視野角+15°で≧108、および最も好ましくは≧110またはさらには≧115であり、好ましくは、明度(L*)値は、視野角+110°で≧78、最も好ましくは≧80、またはさらには≧85であり、好ましくは、粒状性(Gdiff)値は、≦2.2、最も好ましくは≦2.0、またはさらには≦1.8であり、そして好ましくは、液体金属指数(LMI)値が≧0.95、より好ましくは≧1.0、最も好ましくは≧1.20であり、そして好ましくは5より高くない。
【0137】
さらに、白色多層コーティングがわずかな青みがかった色合いを有することが好ましく、すなわち、本発明の多層コーティングのb*値が、視野角範囲-15°から110°にかけて、好ましくは≦3、より好ましくは≦1、最も好ましくは≦0、およびさらには≦-0.5であることが好ましい。いずれの場合も、b*の下限値は、視野角-15°から110°にかけて好ましくは-5である。
【0138】
色特性による多層コーティングの記載は、それ自体で成立するが、前述の色値または値範囲の任意と本発明の多層コーティングの記載とを具体的な原材料成分およびその典型的な量、例えば、小板形状の酸化チタン顔料(P)、非小板形状の顔料(T)および(T*)、フィルム形成ポリマー(A1)および架橋剤(A2)、染料(B1)、顔料(B2)およびフィラー(B3)、および溶媒(S)およびさらなる成分(C)により組み合わせてよい。これらの原材料成分およびその量に関する上記の記載から、それぞれの色特性を有する多層コーティングを得ることができる。色に関連する各原材料成分について、上記のパラメータへの影響を説明することにより、当業者は、その色特性によって定義される多層コーティングを得ることができる。
【0139】
多層コーティングの調製方法および多層コーティングされた基材
本発明のさらなる目的は、多層コーティングを製造する方法であり、該方法は以下の工程、
a. 少なくとも1つのグラウンドコート組成物を、コーティングされたまたはコーティングされていない基材上に塗布して1つ以上のグラウンドコート層(複数可)を形成する工程であって、該グラウンドコート組成物(複数可)が少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T)を含む、工程
b. このように形成された唯一のまたは最後のグラウンドコート層(複数可)上に少なくとも1つのミッドコート組成物を塗布して1つ以上のミッドコート層(複数可)を形成する工程であって、該ミッドコート組成物(複数可)が、水素チタン酸化物(P1)、二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)および二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)からなる群から選択される少なくとも1つの小板形状の酸化チタン顔料(P)を含む、工程、および
c. このように形成された唯一のまたは最後のミッドコート層(複数可)上に、少なくとも1つのクリアコート組成物を塗布して、1つ以上のクリアコート層(複数可)を形成する工程、および
d. 未硬化のまたはまだ完全硬化していないグラウンドコート層、ミッドコート層および/またはクリアコート層を硬化させる工程
を含む。
【0140】
本発明の多層コーティング組成物およびその好ましい実施形態に関連して本明細書で上述したあらゆる好ましい実施形態は、コーティングされたまたは多層コーティングされた基材を製造するための本発明の方法の好ましい実施形態でもある。
【0141】
基材は、特に基材が金属基材である場合、プレコートされた基材であることが好ましい。そして前記金属基材は、好ましくは、プライマーおよび/(または)電着コーティングをプレコーティング層として、および/(または)変換コーティング層を前処理として有する。基材がプレコートされたまたはコーティングされていない金属基材である場合、金属は、好ましくは鋼または亜鉛めっき鋼またはアルミニウムまたはこれらの合金である。
【0142】
グラウンドコート、ミッドコートおよびクリアコートコーティング組成物は、スプレーコーティング、ドロップコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティングおよび他の技術など、当技術分野で周知の多数の技術によって塗布することができる。好ましくは、本発明のコーティング組成物は、スプレーコーティング、より好ましくは空気圧または静電スプレーコーティングによって塗布する。ウェット・オン・ウェットで塗布することもできるが、必ずしもそうである必要はない。
【0143】
使用する基材は、プラスチック基材、すなわち、ポリマー基材とすることができる。好ましくは、このような基材として熱可塑性ポリマーを用いる。好適なポリマーは、ポリ(メタ)アクリレート、含まれるのはポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニルクロリド、ポリエステル、含まれるのはポリカーボネートおよびポリビニルアセテート、ポリアミド、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびまたポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレンコポリマー(A-EPDM)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリルエステルコポリマー)およびABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、ポリエーテルイミド、フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、含まれるのはTPU、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物である。ポリカーボネートおよびポリ(メタ)アクリレートが、特に好ましい。基材は、複合基材、例えばガラス繊維、炭素繊維またはポリアミド繊維のようなポリマー繊維を含有する繊維強化基材とすることもできる。基材はまた、複数のポリマー層からなっていてもよい。
【0144】
さらに、使用される基材は、ガラスまたは繊維、特にガラスとすることができる。
【0145】
コーティングされたまたは多層コーティングされた基材
本発明のさらなる主題は、多層コーティングされた基材を製造するための上記方法のうちの1つによって得ることができる少なくとも部分的に多層コーティングされた基材である。
【0146】
本発明のコーティング組成物、本発明の方法およびその好ましい実施形態に関連して、本明細書で上述したあらゆる好ましい実施形態は、本発明のコーティングされたまたは多層コーティングされた基材の好ましい実施形態でもある。
【0147】
コーティングされた基材は、好ましくは自動車の車体およびその部品である。
【実施例
【0148】
以下では、特に断りのない限り、あらゆる量は質量部であり、そしてあらゆるパーセンテージ値は質量%である。
【0149】
コーティング組成物の調製
ミッドコート組成物およびグラウンドコート組成物の調製
ミッドコート組成物AおよびB(すなわち、3層コーティングのベースコート組成物)の原材料成分を、表3および4に示す。
【0150】
本発明で使用するミッドコート組成物AおよびBは、水性1液型ミッドコート組成物であり、それぞれ下記の小板形状の酸化チタン顔料の1つまたは組み合わせを含む:
・ フレーク形状の二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ効果顔料(CQV社のAutomotive Rutile Micro White A-901-F OPBおよび/またはAutomotive Rutile Fine White A-901-D-OPB)(本発明による)、
・ フレーク形状の水素チタン酸化物(Ishihara社のLPT-106)(本発明による)、および
・ フレーク形状の二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム顔料(本発明による)、または
・ フレーク形状の二酸化チタンでコーティングされた非フッ素化マイカ効果顔料(Ext.Mearlin Micro White 139M)(本発明によるものではない)。
【0151】
ミッドコート組成物Aは、表1に記載の顔料ペーストの形態で用いられる非小板形状の二酸化チタン顔料(Tacaya MT500 HD)をさらに含有する。
【0152】
グラウンドコート組成物の原材料成分を表2に示す。
【0153】
グラウンドコート組成物は、水性1液型組成物であり、それぞれ表2に示す非小板形状の二酸化チタン顔料、およびさらに別の非小板形状の着色剤を含み、両者は表1に記載のように顔料ペーストの形態でグラウンドコート組成物に組み込まれている。
【0154】
クリアコート組成物は、ポリイソシアネートを有する架橋ヒドロキシル基含有ポリマーをベースとする市販の従来の溶媒系の2成分コーティング組成物であった。
【0155】
多層コーティング(3層コーティング)の調製
グラウンドコート組成物AおよびBを、焼成プライマー層上に空気圧塗布によって塗布して、約33μm(グラウンドコート組成物Aからのグラウンドコート層A)および約17μm(グラウンドコート組成物Bからのグラウンドコート層B)の乾燥層厚を有するグラウンドコート層を形成した。
【0156】
グラウンドコート層Aの上に、ミッドコート組成物Aを、1~3分のフラッシュ後、ESTAベルでウェットオンウェットで塗布し、グラウンドコート層Bの上に、ミッドコート組成物Bを、1~3分のフラッシュ後、空気圧塗布で塗布して、約7μm(ミッドコート組成物Aからのミッドコート層A)および10μm(ミッドコート組成物Bからのミッドコート層B)の乾燥層厚を有するミッドコート層AおよびBをそれぞれ形成した。
【0157】
その後、3~5分間の加熱(63℃)後、2成分クリアコート組成物を空気圧で塗布した。クリアコートは、乾燥層厚約40~50μmで塗布された2成分ポリウレタン塗料であった。
【0158】
このようにコーティングされたパネルは、5~10分間のフラッシュ後、130℃で25分間硬化させた。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【0161】
【表3】
【0162】
【表4】
【0163】
結果
L*、a*、b*、C*およびh値の決定
3層コーティングの色データは、Byk Mac i装置(Byk Gardner GmbH社、ドイツ)を用いて決定した。照明はD65照明(観察者角度10°)を使用した。マルチアングル(視野角:-15°、+15°、+25°、+45°、+75°、+110°)測定ジオメトリを図1に示す。110°の角度は「フロップ角」とも表される。
【0164】
前述の装置を用いて、2層コーティングおよび3層コーティングのL*、a*およびb*値を決定した。C*は以下の式で算出される:C*=(a+b0.5およびh=arctan(b/a)。
【0165】
CIELAB式は、緑から赤に伸びるa*軸、青から黄に伸びるb*軸、および他の2つに垂直な明度軸L*によって特徴付けられる色空間を定義する。b*の負の値は色が青みがかっていることを意味し、一方でb*の正の値はより黄色がかった色を表す。L*(すなわち明度)の値が高いほど明度の高い色を表し、L*の値が低いほど暗い色を表す。
【0166】
以下では、ペーストAおよびBをそれぞれベースコート層に含有する2層コーティング、およびペーストAおよびBをそれぞれミッドコート層に、且つこの場合は他の着色顔料をグラウンドコート層に含有する3層コーティングについて、それぞれの色値および色空間におけるこれらの値の差ΔL*、Δa*およびΔb*を示す。
【0167】
フロップ指数Fの計算
フロップ指数は以下の式に従って算出し、
【数1】
式中、L*はByk Gardner社のBYK Mac i装置を用いて測定した。フロップは、上記のように多層システムで測定した。
【0168】
光輝面積Sおよび光輝強度Sの決定
光輝性印象は照明の角度によって変化する。従って、BYK-mac i分光光度計を用い、15°/45°/75°の3つの異なる角度で試料を非常に明るいLEDで照射し、垂直に位置するCCDカメラで撮影することで、3層コーティングの光輝性を測定した(図2参照)。
【0169】
写真はBYK mac i分光光度計の画像分析アルゴリズムによって分析され、光輝パラメータ算出の基礎として明度レベルのヒストグラムが用いられた。より明確に区別できるように、光輝性印象を2次元システム:各角度の光輝面積(S)および光輝強度(S)で記載した。
【0170】
簡略化のため、光輝面積および強度を1つの値、光輝等級(SG)にまとめた。
【0171】
粒状性Gdiffの決定
3層コーティングの粒状性(graininess)(Gdiff)は、白色コーティング半球による拡散照明条件下、CCDカメラで写真撮影することにより評価した。写真は明度レベルのヒストグラムを使用して分析され、明部及び暗部の均一性をBYK mac i分光光度計によって算出された1つの粒状性値にまとめた。
【0172】
粒状性値がゼロの場合はソリッドカラーを示し、値が高いほどサンプルは拡散光下で粒状または粗く見える。
【0173】
液体金属指数LMIの計算
液体金属指数は以下の式で算出し、
LMI=f/gdiff
式中、フロップ指数Fおよび粒状性Gdiffは、上記のように算出/決定した。
【0174】
非小板形状の二酸化チタン顔料の粒度分布およびZ平均粒子径の決定
前述のパラメータは、上記のMalvern Zetasizer(Malvern社製、S90ユニット、Nanoseries Model ZEN 1690mfg 5/2017)を使用して、動的光散乱法を用いて決定した。測定を実施するために、顔料分散体を適切な溶媒(水性分散体の場合は脱イオン水、溶媒ベース分散体の場合は有機溶媒)で希釈し、ユニットをアッテネータ設定7にしたときの光子計数率が約300~500カウントを超えないようにした。
【0175】
手順は以下の通りであった:
典型的には、20質量%の顔料を含有するペースト0.07gをまず15.0gの脱イオン水に希釈し、その後この溶液5滴を再び15.0gの脱イオン水に希釈した場合、光子計数率は上記の範囲である。顔料ペーストが20質量%超またはこの値未満の顔料を含有する場合は、0.07gの初期量を適宜増減するべきである。
【0176】
このような2回希釈したペーストを用いて、体積ベースのD10、D50およびD90値を決定した。D10は、直径がこの値より小さい粒子の部分が10%であることを定義する。D50は、この値より小さい直径の粒子の部分が50%であることを定義し、中央値直径としても知られる。D90は、この値未満の直径の粒子の部分が90%であることを定義する。
【0177】
小板形状の顔料の横寸法およびその分布の決定
サンプルを0.04%のIgepal CA630界面活性剤を含有する脱イオン水中に分散させた後、Mastersizer(登録商標)3000 Particle Size Analyzer(Malvern Instruments社、Southborough,MA)を用いて動的光散乱法によりフレーク状顔料(P1)、(P2)および(P3)の横寸法を測定した。結果は、体積加重平均直径D[4,3]で報告された。母集団の10%、50%および90%が小さくなる直径は、D10、D50およびD90として表す。
【0178】
顔料の板厚の決定
板厚は次のようにして決定することができる:まず、フレーク状顔料を適切な溶媒に分散させ、ミッドコート組成物に組み込む。次に、小板形状の顔料を含有するミッドコート組成物を基材上にスプレーし、硬化させる。こうして得られたフィルムを試料の端から剥がし、ダイヤモンドナイフを用いてミクロトームでフィルムの小片を切断し、薄切片をTEMグリッド上に転写した。薄切片をSTEMまたはTEMで観察し、それぞれのフレーク顔料の厚さを決定した。
【0179】
コーティング層の乾燥層厚の決定
本発明のコーティング層の乾燥層厚は、Fischer Dualscope FMP20CなどのElcometerを用いて決定した。
【0180】
3層コーティング(グラウンドコートA-ミッドコートA-クリアコート)
表5-1、5-2および5-3において、3つのさらなる3コート層コーティングを比較し、第1のもの(C A1)は、従来の微粒子二酸化チタンおよび酸化クロム(III)でコーティングされた天然のマイカを含有するミッドコート層を使用し、第2のもの(E A2)は、二酸化チタンでコーティングされたマイカをチタンの酸化物を含む小板に置き換えたものであり、第3のもの(E A3)は、(C A1)の二酸化チタンでコーティングされた天然のマイカを超微細合成ベースの二酸化チタンでコーティングされたマイカ(フルオロフロゴパイト)に置き換えたものである(表3参照)。
【0181】
【表5】
【0182】
オフスペキュラー範囲近辺(角度-15°から+15°)では、E A2の明るさが顕著に増加している。さらに、角度-15°から角度+15°の間の差は、二酸化チタンおよび酸化クロム(III)をコーティングした天然のマイカ含有ミッドコートの方が大きく、より金属的な挙動を示している。遠方のオフスペキュラー+110°の角度では、二酸化チタンでコーティングされた合成マイカ、および特にチタンの酸化物の添加により、b*値は大きく減少し(より青みがかった)、よってより青みがかった色合い、ひいてはより純粋な白の外観を表す。全体的な質感は、対照材料に対して大きく増加することはなく、<1.7の粒状性(Gdiff)値で、依然として絹様の外観を維持していた(表5-2および5-3参照)。
【0183】
【表6】
【0184】
【表7】
【0185】
特に△L*および△b*の色値の差(△)は、二酸化チタンでコーティングされた合成マイカまたは小板チタンの酸化物がミッドコートに導入された結果、好ましい色を示した。
【0186】
3層コーティング(グラウンドコートB-ミッドコートB-クリアコート)
表6-1および表6-2において、2つの3コート層コーティングを比較し、第1のもの(C B1)は、二酸化チタンでコーティングされたアルミニウムを含有しないミッドコート層を使用し、第2のもの(E B2)は、二酸化チタンでコーティングされたアルミニウムが添加されたものである。C B1はE B2と同等であるが、それでもなお本発明に属するものであり、二酸化チタンでコーティングされたアルミニウムフレークを少量添加することによるコーティング組成物のさらなる改善を示すものにすぎない。両方のミッドコート組成物Aは、チタンの酸化物(Ishihara社のLPT-106)、および二酸化チタンでコーティングされたマイカ効果顔料(Automotive Rutile Micro White A-901-F OPB)をさらに含む(表4参照)。
【0187】
【表8】
【0188】
オフスペキュラー範囲近辺(-15°から+15°)では、E B2の明るさが顕著に増加している。さらに、角度-15°から角度+15°の間の差は、アルミニウム含有ミッドコートの方が大きく、より金属的な挙動を示している。遠方のオフスペキュラー範囲(角度+75°および+110°)では、二酸化チタンでコーティングされたアルミニウムの添加により、b*値は減少し(より青みがかった)、よってより青みがかった色合い、ひいてはより純粋な白の外観を表す。
【0189】
【表9】
【0190】
特に△L*および△b*の色値の差(△)は、二酸化チタンでコーティングされたアルミニウムがミッドコートに導入された結果、好ましい色を示した。
【0191】
【表10】
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
a) 少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T)を含む、少なくとも1つのグラウンドコート層、
b) 以下、
i. 水素チタン酸化物(P1)、二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)および二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)からなる群から選択される、少なくとも1つの小板形状の酸化チタン顔料(P)
を含む、前記少なくとも1つのグラウンドコート層の上の少なくとも1つのミッドコート層、および
c) 前記少なくとも1つのミッドコート層の上の少なくとも1つのクリアコート層
を含み、CIELabによる以下の明度L*
(i) 視野角範囲-15°から+45°で、少なくとも80、
(ii) 金属効果顔料が前記ミッドコート層に含有される場合、視野角範囲+75°から+110°で、少なくとも70、
(iii) 金属効果顔料が前記ミッドコート層に含有されない場合、視野角範囲+75°から+110°で、少なくとも75
を有し、そして
≦2.5の粒状性(Gdiff)を有する、
多層コーティング。
【請求項2】
前記b)少なくとも1つのミッドコート層が、
ii) 少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T)
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の多層コーティング。
【請求項3】
前記b)少なくとも1つのミッドコート層が、
i. 水素チタン酸化物(P1)、二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)および二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)の群から選択される少なくとも2つの小板形状の酸化チタン顔料(P)
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の多層コーティング。
【請求項4】
前記b)少なくとも1つのミッドコート層が、
a. 少なくとも1つの小板形状の水素チタン酸化物および少なくとも1つの小板形状の二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ、または
b. 少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T*)および水素チタン酸化物と二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカとからなる群から選択される少なくとも1つの小板形状の酸化チタン(P)
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の多層コーティング。
【請求項5】
前記b)少なくとも1つのミッドコート層が、少なくとも1つの小板形状の二酸化チタンでコーティングされたアルミニウムを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の多層コーティング。
【請求項6】
前記水素チタン酸化物が、以下の式、HTiおよびH4x/3Ti2-x/3 nHOの1つにより表され、式中、xは0.50~1.0であり、そしてnは0~2であり、および/または前記フッ素化マイカがフルオロフロゴパイトであることを特徴とする、請求項1または2に記載の多層コーティング。
【請求項7】
視野角-15°、+15°、+25°、+45°、+75°、および+110°で、CIELabシステムによるa*が-3.8から+3.8であり、そしてb*が-5から+4であることを特徴とする、請求項1または2に記載の多層コーティング。
【請求項8】
少なくとも1つのグラウンドコート層、少なくとも1つのミッドコート層および少なくとも1つのクリアコート層を含み、そして、
CIELabによる以下の明度L*
(i) 視野角範囲-15°から+45°で、少なくとも80、
(ii) 金属効果顔料が前記ミッドコート層に含有される場合、視野角範囲+75°から+110°で、少なくとも70、
(iii) 金属効果顔料が前記ミッドコート層に含有されない場合、視野角範囲+75°から+110°で、少なくとも75、および
(iv) 視野角+15°で少なくとも105
を有し、
≦2.5の粒状性Gdiff、および
≧0.9の液体金属指数LMI
を有する、多層コーティング。
【請求項9】
前記グラウンドコート層、ミッドコート層およびクリアコート層が、請求項1または2によりさらに定義されることを特徴とする、請求項8に記載の多層コーティング。
【請求項10】
請求項1または2に定義した多層コーティングの製造方法であって、以下の工程、
a. 少なくとも1つのグラウンドコート組成物を、コーティングされたまたはコーティングされていない基材上に塗布して1つ以上のグラウンドコート層(複数可)を形成する工程であって、前記グラウンドコート組成物(複数可)が少なくとも1つの非小板形状の二酸化チタン顔料(T)を含む、工程
b. このように形成された唯一のまたは最後のグラウンドコート層(複数可)上に少なくとも1つのミッドコート組成物を塗布して1つ以上のミッドコート層(複数可)を形成する工程であって、前記ミッドコート組成物(複数可)が、水素チタン酸化物(P1)、二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)および二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム(P3)からなる群から選択される少なくとも1つの小板形状の酸化チタン顔料(P)を含む、工程、および
c. このように形成された唯一のまたは最後のミッドコート層(複数可)上に少なくとも1つのクリアコート組成物を塗布して1つ以上のクリアコート層(複数可)を形成する工程、および
d. 未硬化のまたはまだ完全硬化していないグラウンドコート層、ミッドコート層および/またはクリアコート層を硬化させる工程
を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の多層コーティングの製造方法であって、前記ミッドコート組成物が、フィルム形成ポリマー(A1)、および前記フィルム形成ポリマー(A1)が外部架橋性である場合、架橋剤(A2)を含むことを特徴とし、そして
存在する場合、水素チタン酸化物(P1)対フィルム形成ポリマー(A1)と架橋剤(A2)との合計の質量比が0.01~0.5の範囲であり、および/または
存在する場合、小板形状の二酸化チタンでコーティングされたフッ素化マイカ(P2)対フィルム形成ポリマー(A1)と架橋剤(A2)との合計の質量比が0.01~0.5の範囲であり、および/または
存在する場合、二酸化チタンでコーティングされたアルミニウム顔料(P3)対フィルム形成ポリマー(A1)と架橋剤(A2)との合計の質量比が0.001~0.2の範囲である、方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の多層コーティングを含むことを特徴とし、コーティングされていないまたはプレコートされた基材であり、金属基材、プラスチック基材、ガラスまたは繊維からなる群から選択される、多層コーティングされた基材。
【請求項13】
プライマーコーティング層、電着コーティング層および変換コーティング層の少なくとも1つを含むプレコートされた金属基材である、請求項12に記載の多層コーティングされた基材。
【請求項14】
自動車ボディおよびその部品である、請求項12に記載の多層コーティングされた基材。
【国際調査報告】