(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】自動ナビゲーションのために経路を決定するための方法、機械制御装置、及びコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240905BHJP
B25J 9/10 20060101ALI20240905BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20240905BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20240905BHJP
B29C 64/379 20170101ALI20240905BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240905BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240905BHJP
【FI】
B29C45/76
B25J9/10 A
B29C45/64
B33Y40/20
B29C64/379
B29C64/393
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024513788
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2022074294
(87)【国際公開番号】W WO2023031320
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】102021122606.6
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510332006
【氏名又は名称】アールブルク ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ファウルハーバー、ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ペータース、ユルゲン
【テーマコード(参考)】
3C707
4F202
4F206
4F213
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707KS12
3C707LS15
3C707LT06
3C707LV14
4F202AM23
4F202AP06
4F202AP20
4F202AR07
4F202AR20
4F202CA11
4F202CB01
4F202CC01
4F202CK52
4F202CL50
4F202CM90
4F202CR10
4F206AM23
4F206AP06
4F206AP20
4F206AR07
4F206AR20
4F206JA07
4F206JL09
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP21
4F206JQ81
4F206JQ83
4F206JQ88
4F206JQ90
4F206JT40
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL55
4F213WL85
(57)【要約】
【課題】オペレータを機械サイクルの適合において支援し、移動ルート、サイクル時間、プロセス確実性、エネルギー、並びに摩耗に関して最適化されている、少なくとも1つの自動ナビゲーションのために経路の少なくとも一部分を決定するための方法を提供する。
【解決手段】
機械(100)における空間(R)を通る、少なくとも1つの可動コンポーネントの少なくとも1つの自動ナビゲーションのために、空間(R)内の少なくとも1つの開始点(14)を少なくとも1つの目標点(16)と接続する経路(12)の少なくとも一部分を決定するための方法において、可動コンポーネント及び機械(100)の少なくとも1つのモデルが提供され、幾何学形状情報が検知され、現在位置が決定され、幾何学形状情報と現在位置が、グラフ(10)を生成するために互いに関連付けられる。アルゴリズムを用いて経路(12)が計算され、衝突検査後に、経路(12)に沿った衝突のない自動ナビゲーションが実行される。それによりオペレータは、機械サイクルの適合において支援され、同様に、移動ルート、サイクル時間、プロセス確実性、エネルギー、並びに摩耗に関して改善が得られる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械(100)における空間(R)、特にプラスチックないし他の可塑化可能材料を処理するための射出成形機、又は3Dプリンタ機における空間(R)を通る、少なくとも1つの可動コンポーネントの少なくとも1つの自動ナビゲーションのために、前記空間内の少なくとも1つの開始点(14)を少なくとも1つの目標点(16)と接続する経路(12)の少なくとも一部分を決定するための方法であって、
以下のステップを含むこと:
a)前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び前記機械(100)の少なくとも1つのモデルを提供するステップ、
b)前記空間(R)、前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び前記機械(100)の幾何学形状情報を検知するステップ、
c)前記空間(R)内の前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び前記機械(100)の現在位置を決定するステップ、
d)前記空間(R)内の前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び前記機械(100)の前記幾何学形状情報と前記現在位置を、前記空間(R)の少なくとも1つのグラフ(10)を生成するために互いに関連付けるステップ、
e)前記グラフ(10)上で少なくとも1つのアルゴリズムを適用して前記経路(12)を計算するステップ、但し前記経路(12)の計算のためには、追加的に少なくとも1つの最適化が実行されること、
f)一方の前記少なくとも1つの可動コンポーネントと他方の前記機械(100)との間で前記経路(12)に沿って少なくとも1つの衝突検査を実行するステップ、
g)前記経路(12)に沿って前記少なくとも1つの可動コンポーネントを衝突なく自動ナビゲートするステップ、
但し前記少なくとも1つの可動コンポーネントは、前記機械に対して相対運動し、前記アルゴリズムは、前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は前記機械(100)の運動に基づく前記グラフ(100)の動的な変化のもとで適用され、
また前記方法は、生産手順内の変化に際してリアルタイムでシミュレートされ、及び/又は、前記アルゴリズムは、少なくとも1つの更なる衝突検査が実行される及び/又は少なくとも1つの新しい経路(12)が計算されることにより、前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は前記機械(100)の変更されたポジション及び/又は速度に反応すること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び前記機械(100)の少なくとも1つの接触点のそれぞれが、前記空間(R)内の前記少なくとも1つの接触点の位置に関して提供されること、但しこれらの接触点は、前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び前記機械の前記モデルを提供するために互いに論理的に結合されること、
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの接触点には、少なくとも1つのリストが割り当てられ、前記リストに基づき、連結可能なモデルが記述され及び/又はリストアップされること、
を特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記空間(R)は、前記少なくとも1つのグラフ(10)の生成のために使用される、立方体(18)から成るグリッドに分割されること、
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルゴリズムとして、少なくとも、グリーディサーチアルゴリズム、ダイクストラアルゴリズム、及び/又は、少なくとも1つのオープンリストを用いるA
*アルゴリズムが使用されること、
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記最適化として、少なくとも、ジャンプポイント探索、及び/又は前記オープンリストの管理が使用されること、
を特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記オープンリストの前記管理は、二分ヒープ(20)を用いて行われること、
を特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、事前にシミュレートされること、及び/又は、前記方法の少なくとも2つの異なるバリエーションがシミュレートされ、異なる基準に関して互いに比較されること、
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は前記機械(100)の、前記グラフ及び/又は前記モデルは、グラフィック表示されること、
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
機械(100)のための機械制御装置、特にプラスチックないし他の可塑化可能物質を処理するための射出成形機のための機械制御装置であって、
前記機械制御装置は、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行するように、調整され、実行され、及び/又は構成されていること、
を特徴とする機械制御装置。
【請求項11】
プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品であって、
前記プログラムコードは、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行するために、コンピュータ読み取り可能な媒体上に記憶されていること、
を特徴とするコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との関係)
本出願は、2021年9月1日付けで提出のドイツ特許出願第 10 2021 122 606.6 号に関連し、その優先権を主張する出願であり、その開示内容は、ここに明文をもってその全ても本出願の対象とされるものとする。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、請求項1の上位概念による、機械における空間、特にプラスチックないし他の可塑化可能材料を処理するための射出成形機、又は3Dプリンタ機における空間を通り、少なくとも1つの可動コンポーネントの、例えば成形品を取り出し、移動させ、及び/又は置くための、開始点から目標点への少なくとも1つの自動ナビゲーションのために、空間内の少なくとも1つの開始点を少なくとも1つの目標点と接続する経路の少なくとも一部分を決定するための方法、請求項10の上位概念による機械制御装置、並びに請求項11の上位概念によるコンピュータプログラム製品に関する。
【0003】
本発明の説明のために、先ず幾つかの概念が、以下に定義される。
【0004】
本出願の枠内で「軸(アクシス)」とは、例えば、駆動部を介し、例えばモータを介して駆動制御される、例えば、機械、装置、装置部分、及び/又は周辺機器における可動部分として理解される。射出成形機の例において、軸は、例えばスピンドルシステムのスピンドルであろう。
【0005】
本出願の枠内で「機械(マシン)」とは、機械の稼働のために構成上必要である全ての部分(ないし部品)として理解され、例えば、射出成形機では、射出成形型が受容される型締ユニット、射出成形ユニット、機械脚部、並びに付属の駆動部である。自動ナビゲーションのために重要なのは、少なくとも、機械又はその部分が例えば周辺機器の可動コンポーネントと衝突する可能性のある空間領域である。この際、具体的な事例は、例えば、型締ユニットのおける開かれた型支持体の間の型締付空間内を運動するグリッパを備えたロボットアームである。ロボットアーム及び/又はグリッパは、例えば、傾動運動、旋回運動、回転運動のような様々な運動を実行することができる。これらの運動により、ロボットアーム及び/又はグリッパのベクトルを変更することができる。機械は、例えば、工具、型ネスト、成形品(Formteil)、スプルー、可動プレート、定置プレート、及び/又は射出ユニットのような、少なくとも1つの機械部分を有することができる。更に機械は、更なる機械部分及び/又はコンポーネントを有することができる。これらの機械部分も運動することができ、好ましくは、紹介される方法を用いて同様に空間内で自動ナビゲートされることが可能である。その際、機械部分は、好ましくは、アルゴリズムを用いて計算された所定の経路に沿って自動ナビゲートされ、それにより他の機械部分、可動コンポーネント、及び/又は機械と衝突することはない。
【0006】
以下で機械について述べるときには、常に機械、並びに場合により機械の機械部分を意味しているものとする。
【0007】
本出願の枠内で「可動コンポーネント」とは、周辺機器のような、機械に対して相対運動可能な要素として理解される。この際、ロボットアーム、グリッパ、ロボット、エジェクタ、又は、空間内を運動する、周辺機器や機械の他の可動コンポーネントでもあり、それにより、特に機械及び/又は機械部分も運動する場合には、機械との衝突が回避されるべきである。
【背景技術】
【0008】
(従来技術)
射出成形プロセスでは、今日では多くの過程ないし全ての過程が自動化されて進行する。例えば、工具プレートの閉鎖、圧力の付勢、工具プレートの開放のような、射出成形機の全ての制御が大概は完全に自動化されて行われるだけでなく、例えばロボットを用いて成形品を取り出し、移動させ、及び/又は置くことも完全に自動化されて行われる。頻繁に機械空間及び/又は工具空間内には、複数の軸、例えば周辺機器の進入軸(Tauchachse)、例えばロボット又はロボットグリッパの進入軸があり、それにより射出成形プロセス中には、例えば成形品を取り出すときにそれらの軸の互いの妨害又は衝突が起こる可能性がある。有利に効率的な生産性のためには、できるだけ短いサイクル時間が望ましく、サイクル時間は、例えば周辺機器による例えば成形品の取り出し速度により制限されている。
【0009】
例えばロボット手順を対話式で作成することのできる、プラスチック処理用の機械及び装置におけるシステムが知られている。例えば所謂ティーチ機能により、手順ポジション、例えば軌道のポイントを入力ないし「ティーチ」することができ、それにより例えばロボット手順制御装置に自動的に入力することができる(例えば下記特許文献1(WO 2009/080296 A1)。
【0010】
同様に、手順内でロボットと工具の包囲体幾何学形状情報が、最終ポイント及びティーチポイントにおける機械との(例えばロボットアームないしロボットグリッパの)準静的な衝突検査を実行するために使用されるシステムが知られている。
【0011】
下記特許文献2(DE 10 2012 103 830 A1)から、共通の作動領域を有する一対のロボットの相互のロッキングを防止するための方法が開示されている。各ロボットは、割り当てられたプログラムにより制御される。これらのロボットは、プログラムの同時実行中に共通の作動領域の一区画を占める。共通の作動領域のそれらの区画が覆われる妨害領域が特徴付けられる。その妨害領域は、分析され、どこにロボットの相互のロッキングが発生する可能性があるかが特徴付けられる。ロッキングを回避するために、プログラムの実行中に相互のロッキングの少なくとも1つの条件を回避する指令が実行される。
【0012】
下記特許文献3(DE 690 27 634 T2)には、少なくとも2つの要素を備えたマルチロボット装置のための衝突検知方法が開示されている。衝突検知のために耐衝突問題が衝突検知フェーズと排除(回避行動)フェーズとに分割される。3D衝突検知問題を2DXY検知と1D高さ比較とに更に分解することにより、問題を更に簡素化することができる。
【0013】
下記特許文献4(EP 1 672 449 A1)では、時間効率が良く衝突のないルートを決定するために、機械制御装置には、離散化された各座標点において並びに離散化された工具モデルと加工品モデルの各組み合わせに対して衝突パラメータ0又は1を有するデータセットが提供される。この衝突パラメータは、対応の座標点に割り当てられた配置(コンステレーション)、即ち加工品と工具の相対ポジションが工具と加工品の衝突又は空間的な交差を結果として有するか否かを示す。この際、データセットは、ルックアップテーブルを構成し、ルックアップテーブルは、与えられた経路を検査するために、或いは経路の延ばすため又はステップごとに構成するために利用可能である。
【0014】
下記特許文献5(WO 2009/024783 A1)には、構成部品と、該構成部品と相互作用する機器との間の運動を決定するためにコンピュータで実現される方法が開示されている。構成部品と機器に関する幾何学形状データが受信され、それらの幾何学形状データから、いかに機器と構成部品が互いに相対運動され得るかが決定され、この際、最適化基準が使用される。一実施例では、対象物のモデル、即ちタービンブレードのモデルがロードされ、対象物の一表面が選択され、その表面上に複数のポイントが生成される。次いでこれらのポイントは、測定器によりルート最適化されてアプローチされる。
【0015】
下記特許文献6(US 2017/0090454 A1)には、CNC機械用のポジション走行データを生成するための方法が開示されている。最適化されたポジションルートが、機械運動学、機械軸の移動制限、機械軸の速度限界及び加速度限界、並びに機械の位置決めメソッドに基づいて作成され、この際、第1配置構成から第2配置構成への工具の新たな位置決めのために多数の可能な経路が決定される。
【0016】
下記特許文献7(DE 10 2004 027 944 A1)は、衝突から少なくとも2つのロボットを保護するための方法を開示し、そこでは、1つのロボットの運動が、起こり得る衝突について自動的に検査され、運動手順内に自動的にロック機能が挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2009/080296号
【特許文献2】独国特許出願公開第102012103830号
【特許文献3】独国の欧州特許公報翻訳文第69027634号
【特許文献4】欧州特許出願公開第1672449号
【特許文献5】国際公開第2009/024783号
【特許文献6】米国特許出願公開第2017/0090454号
【特許文献7】独国特許出願公開第102004027944号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
既述の機能は、今日では既にロボット手順のプログラミングを容易にし、エラーの回避を援助する。しかし前述の全ての個々の支援システムは、これらが不完全で、特定の範囲内では不正確であるという問題を有する。それによりプログラミングでは、依然としてオペレータとの対話が必要である。このことは、衝突による損傷が完全には防止され得ないことを更に意味する。
【0019】
また既述の様々な個別機能の組み合わせにより、ロボット手順の改善は、簡単には達成されず、全く新しい考察により、動的で衝突のない自動ナビゲーションに対する前提が創作されるべきである。
【0020】
(発明の概要)
この従来技術に基づき、本発明の基礎を成す課題は、オペレータを機械サイクルの適合において支援し、移動ルート、サイクル時間、プロセス確実性(ないし安全性)、エネルギー、並びに摩耗に関して最適化されている、少なくとも1つの自動ナビゲーションのために経路の少なくとも一部分を決定するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記課題は、請求項1の特徴を有する、少なくとも1つの自動ナビゲーションのために経路の少なくとも一部分を決定するための方法により、請求項10の特徴を有する機械制御装置により、並びに請求項11の特徴を有するコンピュータプログラム製品により解決される。
【0022】
有利な更なる構成は、従属特許請求項の対象である。特許請求項において個々に記載された特徴は、技術的に有意義なかたちで互いに組み合わせ可能であり、また本明細書で説明される内容により及び図面からの詳細により補足することができ、その際には本発明の更なる実施バリエーションが示されることになる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
【0024】
機械における空間、特にプラスチックないし他の可塑化可能材料を処理するための射出成形機、又は3Dプリンタ機における空間を通る、少なくとも1つの可動コンポーネント、例えば周辺機器、例えばロボット又はロボットグリッパの少なくとも1つの自動ナビゲーションのために、空間内の少なくとも1つの開始点を少なくとも1つの目標点と接続する経路の少なくとも一部分を決定するための方法は、以下のステップを含む。
【0025】
機械(マシン)は、冒頭で規定したように、例えば、工具、型ネスト、成形品、スプルー、可動プレート、定置プレート、及び/又は射出ユニットのような少なくとも1つの機械部分を有することができる。更に機械は、例えば射出成形機や3Dプリント機における更なる機械部分及び/又はコンポーネントを有することができる。機械部分は、運動可能であり、好ましくは、紹介される方法を用いて同様に空間内で自動ナビゲートされることが可能である。その際、機械部分は、好ましくは、アルゴリズムを用いて計算された所定の経路に沿って自動ナビゲートされ、それにより他の機械部分、周辺機器、及び/又は機械と衝突することはない。
【0026】
以下で機械について述べるときには、常に機械、並びに場合により機械の機械部分を意味しているものとする。
【0027】
「可動コンポーネント」は、周辺機器のような、機械に対して相対運動可能な要素に関するものである。この際、例えば、グリッパ、ロボット、エジェクタ、又は、空間内を運動する、周辺機器や機械の他の可動コンポーネントでもあり、それにより、特に機械も運動する場合には、機械との衝突が回避されるべきである。
【0028】
先ず、少なくとも1つの可動コンポーネント、例えば周辺機器、及び機械の少なくとも1つのモデル、例えばデジタルモデルが提供される。機械が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、機械部分のために対応のモデルを提供することもできる。例えばモデルは、データとして、コンピュータ、プログラム、又は制御装置に提供されることが可能である。またモデルがネットワークを介して提供されるか又は既に機械上に設けられていることも可能である。モデルは、可動コンポーネント及び/又は機械の幾何学形状に関する情報を有することができる。モデルの幾何学形状は、例えばCollada(Collaborative Design Activity)のような幾何学形状モデルを用いて記述されることが可能である。
【0029】
更なるステップにおいて、空間、少なくとも1つの可動コンポーネント及び機械の幾何学形状情報が検知される。機械が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、機械部分のためにも対応の幾何学形状情報を検知することができる。幾何学形状情報は、例えばモデルから取り出されることが可能であり、ないしモデル内に含まれている。また例えば可動プレートのポジションを、機械制御装置に対して既知のプレート位置の実際値に基づき、各時点で明確に決定することもできる。つまり例えば、個々の可動コンポーネント、機械、及び場合により機械部分の、長さ、幅、及び高さについて幾何学形状の寸法が得られる。更に好ましくは、幾何学形状情報をセンサに基づいて検知することも考えられる。
【0030】
次のステップにおいて、(所定)空間内の少なくとも1つの可動コンポーネント及び機械の現在位置が決定される。機械が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、空間内の機械部分の現在位置も決定されることが可能である。位置とは、例えばポジション及び/又は配向(オリエンテーション)のことを意味している。例えば、空間内、例えばデカルト座標系内の軸の位置は、ゼロ位置に関する角度を用いて明確に決定されることが可能である。従ってまた軸の配向、例えばロボットの軸の配向を空間内で検知することも可能である。ここでも現在位置は、好ましくはセンサを用いて検知されることが可能である。
【0031】
空間内の少なくとも1つの可動コンポーネント及び機械の幾何学形状情報と現在位置は、空間の少なくとも1つのグラフを生成するために、例えばコンピュータ又は機械制御装置を用いて互いに関連付けられる。機械が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、機械部分の幾何学形状情報と現在位置も、空間内のグラフを生成するために、少なくとも1つの可動コンポーネント及び機械の幾何学形状情報と現在位置と関連付けられることが可能である。幾何学形状情報と現在位置を用い、空間内の、例えば、周辺機器のような可動コンポーネント、及び機械、並びに場合により機械部分の配置が決定されており、それによりグラフとして「空間の地図(マップ)」を作成することができる。可動コンポーネント、機械、及び場合により機械部分は、グラフ内では例えば障害物として表示されることが可能である。
【0032】
更なるステップにおいて、グラフ上で少なくとも1つのアルゴリズムを適用して経路の計算が行われ、この際、経路の計算のためには、追加的に少なくとも1つの最適化が実行される。
【0033】
更なるステップにおいて、一方の少なくとも1つの可動コンポーネントと他方の機械との間で経路に沿って少なくとも1つの衝突検査が実行される。機械が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、衝突検査において機械部分を考慮することもできる。例えば成形品の取り出し中には、周辺機器と機械ないし機械部分との間で衝突が発生する可能性がある。衝突検査は、例えば経路に沿って障害物が位置するか否かについて検査されることにより行われる。
【0034】
好ましくは、衝突検査は、リアルタイムで行われる。衝突検査により、経路に沿って障害物があることが分かると、例えば、可動コンポーネント、機械、及び/又は場合により機械部分に対する運動指示の後に、経路の新しい計算が実行される。衝突検査により、経路に沿って障害物がないことが分かると、更なるステップにおいて、経路に沿って少なくとも1つの可動コンポーネントが自動ナビゲートされ、この際、少なくとも1つの可動コンポーネントは、機械に対して相対運動する。
【0035】
射出成形プロセス中には、通常は、周辺機器のような可動コンポーネント、機械、及び/又は場合により射出成形型の部品のような機械部分は、互いに相対運動し、それにより自動ナビゲーションのために経路が適合されなくてはならない。有利に向上された確実性(ないし安全性)とユーザフレンドリー性のために、アルゴリズムは、少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は機械の運動に基づくグラフの動的な変化のもとで適用される。機械が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、アルゴリズムは、機械部分の動的な変化のもとで適用されることも可能である。例えば、可動コンポーネント、機械、及び/又は場合により機械部分が運動して、現在経路に沿って障害物が位置するようにグラフが変化するのであれば、可動コンポーネント、機械、及び/又は機械部分の運動は、障害物を有する現在経路上で停止され、新たに計算された経路上で続行される。つまり他の既存の要素により記述され且つ可動コンポーネントが運動可能である「地図」上の経路は、各運動と共に変化することができる。同じことが、例えば、材料供給ユニット、ディスチャージヘッド、ファイバ供給ユニット、構造支持体、製造すべき物体のような、3Dプリントプロセスにおいて使用される要素についても当てはまる。
【0036】
生産プロセス中には予期せぬ事象が発生する可能性があるので、本方法は、生産手順内の変化に際してリアルタイムでシミュレートされ、及び/又は、アルゴリズムは、少なくとも1つの更なる衝突検査が実行される及び/又は少なくとも1つの新しい経路が計算されることにより、例えば周辺機器のような少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は機械の変更されたポジション及び/又は速度に反応する。機械が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、アルゴリズムは、少なくとも1つの更なる衝突検査が実行される及び/又は少なくとも1つの新しい経路が計算されることにより、機械部分の変更されたポジション及び/又は速度に反応(対応)することもできる。
【0037】
有利にはそれによりオペレータは、機械サイクルの適合に際して支援され、この際、同様に、移動ルート(Fahrweg)、サイクル時間、プロセス確実性(ないし安全性)、エネルギー、並びに摩耗に関して改善が得られる。同様にできるだけ少ない計算時間とメモリ需要で、最短/最速の移動ルートが検出される。また更に有利には、衝突のない移動ルートが行われ、この移動ルートに対しては、整備工による機械制御装置及び/又はロボット制御装置を用いた手動のプログラミング及びパラメータ設定が不必要であるか、又はそれらは、ほとんど自動化されて進行する。
【0038】
有利にはそれにより道路交通での自動ナビゲーションにおけるように、変化(配置構成の変化)に反応することができ、この際、道路交通とは異なりここでは、地図に代わりグラフが変化するという違いがある。保存されたアルゴリズムは、例えば、変更された位置実際値と軸速度に反応できる状態にある。オペレータは、例えば機械サイクルの適合に際してロボットシステムを全く配慮する必要はない。その手順は、自動的に且つ動的に適合される。このことは、現在進行中のサイクルにおいて行われることが可能であり、その理由は、本方法の高いパフォーマンスに基づき、現在の実際ポジションを新しい開始値として新たに適合させ、変更された障害物(例えば運動された工具半体)を、目標点への最適な経路を検出するために、新たに適合させることができるためである。
【0039】
つまり現在進行中のサイクルにおける自動ナビゲーションに関連したパラメータ変更に際し、経路を適合することができる。例えば本方法は、自動ナビゲーション中にグラフの変化があるか否か、例えば障害物の変化があるか否かを記録する。変化に基づき経路上に障害物がある場合には、現在ポジションから出発してアルゴリズムが新たに適用され、新しい経路が計算される。障害物が現在経路を妨げないのであれば、新しい計算は行われない。
【0040】
好ましくは、計算、衝突検査、及び/又は自動ナビゲーションは、先読みして行われる。即ち、運動時には、例えば所定の期間中には確かに経路に沿って障害物が存在するが、この障害物は、可動コンポーネント、機械、成形品、及び/又は場合により機械部分がこの障害物に当たるないしこの障害物と衝突する以前に、可動コンポーネント、機械、成形品、及び/又は場合により機械部分の運動に基づき再び経路から消え去るということがあり得る。有利には、この場合には方向を変える必要はなく、それにより例えば方向変更に基づく振動を回避することができる。
【0041】
有利に正確で精密なナビゲーションのために、好ましくは、少なくとも1つの可動コンポーネント及び機械の少なくとも1つの接触点(コンタクトポイント)のそれぞれが空間内のその位置に関して提供され、この際、これらの接触点は、少なくとも1つの可動コンポーネント及び機械のモデルを提供するために互いに論理的に結合される。機械が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、それぞれ、機械部分の少なくとも1つの接触点を提供し、他の接触点と結合させることができる。例えば射出成形工具は、型に対する取り付け面において、空間内のポジションと位置に関して少なくとも1つの接触点により、ゼロ位置の角度による補足のもと、一義的(明確)に記述されることが可能であり、この接触点には、例えば次の機械部分及び/又は周辺機器を自動的に結合させることができる。この点(接触点)は、例えば可動プレートの現在の実際値と論理的に結合され、自動的に更新(フォロー)される。この接触点は、電子技術に類似して例えば「ソケット」と称することができる。同様に例えば固定プレートは、空間内のポジション、位置、及び角度に関して少なくとも1つのポイントを有することができ、このポイントは、固定プレートの場合には静的である。
【0042】
また例えば、可動コンポーネントとしてのロボットは、モデルとしてのその幾何学形状と、機械に対するその位置について、既知である(データを有する)こともできる。最も簡単な事例においてロボットは、その台座部又は脚部を用い、前述の機能「プラグ」及び「ソケット」を介し、例えば機械の固定的な工具プレートと幾何学形状的に及び/又は論理的に結合されている。ロボットの進入軸は、例えば成形品特有のグリッパが連結されるフランジプレートを有する。フランジプレートは、追加的な傾動軸、旋回軸、及び/又は回転軸を有することができる。このことは、グリッパを連結するための論理的な連結点「ソケット」が、フランジプレートの移動運動、傾動運動、旋回運動、及び/又は回転運動に従うことを意味する。成形品特有のグリッパは、例えばそのモデル及び規定の連結点「プラグ」を介して論理的にグリッパフランジと接続されることが可能であり、起こり得る移動運動、傾動運動、及び/又は回転運動を介して幾何学形状的に連動されることが可能である。またグリッパは、論理的な「ソケット」として成形品を受け取ることのできる少なくとも1つの連結点(例えば吸盤面の中心点)を有する。重要なのは、現在経路にも関するグリッパの位置である。所定の向き(配向)では、加速度が強い場合には、グリッパの吸盤部において成形品の滑りが起こる可能性があり、極端な場合にグリッパは、成形品を失うことになる。グリッパの向きに応じ、好ましくは、加速度を適切に制限することができる。射出成形プロセスでは、成形品形成の終了後に型が開かれる。グリッパの目標ポジションは、成形品を取り出すために、好ましくは幾何学形状的に決定されることが可能であり、この際、全ての潜在的な衝突縁部(衝突エッジ)及び妨害幾何学形状部は、障害物として既知である。
【0043】
有利には、連結可能なモデルに関して迅速で確実な検査を得るために、少なくとも1つの接触点には、好ましくは少なくとも1つのリストが割り当てられ、このリストに基づき、連結可能なモデルが記述され及び/又はリストアップされる。例えば可動プレートには、射出成形型の可動部分が連結される。射出成形型は、同様にモデルとして既知であり、例えば機械内にデジタル情報として設けられている。そして射出成形型のデジタルモデルのこの部分(可動工具半体)は、規定の連結点を有し、この連結点は、空間内のポジションと位置についてモデル内で正確に規定されている。この点(連結点)は、例えば対応して「プラグ」と称することができる。接触点「プラグ」を有する可動工具半体は、例えば可動工具プレートの「ソケット」における連結リスト内にリストされている。好ましくは「プラグ」ないし「ソケット」の使用により、例えば周辺機器及び/又は機械部分の運動を介し、連結された周辺機器及び/又は機械部分の運動を把握することもできる。
【0044】
経路の有利に精密な計算のために、空間は、好ましくは、少なくとも1つのグラフの生成のために使用される、立方体から成るグリッドに分割される。好ましくは空間全体が、少なくとも1つのグラフの生成するために使用される、立方体から成るグリッドに分割される。この際、空間は、少なくとも部分的に少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は機械を有することができる。機械が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、空間は、少なくとも部分的に機械部分を有することもできる。そしてグラフには、例えば可動コンポーネント、機械、及び/又は場合により機械部分が障害物として表示される。障害物のない空間の他の部分は、好ましくは、例えば異なる色で、移動領域としてグラフィック的に異なって表示されることが可能である。
【0045】
更に好ましくは、例えば立方体で分割されている空間のグリッドサイズに依存せず、斜めのルートを記述することも可能である。例えば2つの軸と、規定の共通の軌道速度とを有する1つの軌道運動を介し、斜め(対角線)に走行することができる。この場合、有利には、複数の個別運動が実行されるのではなく、好ましくは、開始点から目標点までの1つの運動が実行され、この際、複数の軸は、互いに同期して運動する。
【0046】
好ましくは、アルゴリズムとして、少なくとも、グリーディサーチ(Greedy-Search)アルゴリズム、ダイクストラ(Dijkstra)アルゴリズム、及び/又は、少なくとも1つのオープンリストを用いるA*アルゴリズムが使用される。それにより有利には、グラフに応じ、開始点から目標点までの最短経路が得られる。
【0047】
経路の有利に迅速な計算のために、最適化として、好ましくは、少なくとも、ジャンプポイント探索、及び/又はオープンリストの管理が使用される。
【0048】
オープンリストの有利に最適化された管理のために、好ましくは、オープンリストの管理は、二分ヒープ(Binaerheap)を用いて行われる。
【0049】
有利な一目瞭然性とより良い確実性のために、本方法は、好ましくは事前にシミュレートされる。つまり例えば、手順及び経路作成の事前シミュレーションがコンピュータモデルにおいて行われ、更に好ましくはこの事前シミュレーションは、視覚化されることも可能である。
【0050】
有利には、本方法の計算時間と速度に関して改善を保証するために、好ましくは、本方法の少なくとも2つの異なるバリエーションがシミュレートされ、異なる基準に関して互いに比較される。この際、手順(フロー)は、現在の工具データセットに関して作成されることが可能である。この際、様々なバリエーションをシミュレートし、例えば、エネルギー、摩耗、移動ルート、及び/又はサイクル時間のような様々な基準に関して比較することが可能である。
【0051】
生産プロセスを有利には離れたところから監視できるようにするために、好ましくは、少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は機械の、グラフ及び/又はモデルは、グラフィック表示される。機械が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、機械部分をグラフィック表示することができる。
【0052】
説明した本方法は、例えば射出成形機における例えば複数の工具を用い、多数個取り工具及び/又はマルチコンポーネント工具において実行することができ、これらの工具は、可動プレート上に直接的に取り付けられるのではなく、例えば回転ユニット上に取り付けられ、また回転ユニットは、モデルとして保存されており、その位置は「プラグ」及び「ソケット」を介して正確に規定されている。同様に前射出成形品(射出成形前の部材 Vorspritzling)がロボットシステムを介して移動される(umgesetzt)マルチコンポーネント工具を使用することができる。またロボットシステムを介してグリッパを用いてインサートされるインサート部分も可能である。同様に立方体工具(「キューブ」)を使用することもでき、この立方体工具は、更に少なくとも1つの回転軸を有し、複数の取り入れ面ないし取り出し面を備え、並びに立方体が再度分割されており且つ反対方向に回転するその特殊型(「リバースキューブ」)を有する。この際、各立方体半体は、別個に記述される。
【0053】
更に前記課題は、機械のための機械制御装置、特にプラスチックないし他の可塑化可能物質を処理するための射出成形機、又は3Dプリント機のための機械制御装置により解決される。オペレータによる機械サイクルの有利な適合のため、並びに移動ルート、サイクル時間、プロセス確実性、エネルギー、及び摩耗に関する改善のために、本機械制御装置は、前述の方法を実行するように、調整され、実行され、及び/又は構成されている。
【0054】
同様に前記課題は、コンピュータプログラム製品により解決される。移動ルート、サイクル時間、プロセス確実性、エネルギー、及び摩耗に関する経路の計算に関する利点のために、プログラムポイント(ないしプログラムコード)を備えたコンピュータプログラム製品は、上述の方法を実行するために、コンピュータ読み取り可能な媒体上に記憶されている。
【0055】
更なる利点は、下位請求項から、及び好ましい実施例の以下の説明から明らかである。特許請求項において個々に記載された特徴は、技術的に有意義なかたちで互いに組み合わせ可能であり、また本明細書で説明される内容により及び図面からの詳細により補足することができ、その際には本発明の更なる実施バリエーションが示されることになる。
【0056】
以下、添付の図面に図示された実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】可動コンポーネントを備えた一機械を示す図である。
【
図2】可動コンポーネントを備えた一機械を示す図である。
【
図3】グリーディサーチ探索法の進行過程後の一グラフを示す図である。
【
図4】ダイクストラアルゴリズムの進行過程後の一グラフを示す図である。
【
図5】A
*アルゴリズムの一フローチャートを示す図である。
【
図6】A
*アルゴリズムの進行過程後の一グラフを示す図である。
【
図7a】ジャンプポイント探索に対する対称経路の一比較を示す図である。
【
図7b】ジャンプポイント探索に対する対称経路の一比較を示す図である。
【
図8a】隣接ノード数の減少のための一比較を示す図である。
【
図8b】隣接ノード数の減少のための一比較を示す図である。
【
図8c】隣接ノード数の減少のための一比較を示す図である。
【
図9】ジャンプポイント探索の進行過程後の一グラフを示す図である。
【
図11】1つの軌道運動を有する一グラフを示す図である。
【実施例】
【0058】
(好ましい実施例の説明)
さて、本発明が添付の図面に関連して実施例を用いて詳細に説明される。しかしこれらの実施例は、発明のコンセプトを特定の装置に限定すべきではない単なる例示に関するものである。本発明を詳細に説明する前に、本発明が装置のそれぞれの構成部品並びに方法のそれぞれの方法ステップに限定されているものではないことを指摘しておくが、それはそれらの構成部品並びに方法を変更することができるためである。またここで使われている概念ないし用語は、特殊な実施形態を説明するためだけに定められており、限定として使われるものではない。それに加え、本明細書又は請求項で単数形又は不定冠詞が使われる場合には、全ての関連において明らかに他のことが説明されていない場合に限り、それらの要素は複数形であってもよいものとする(尚、これに対応し、和文訳文において単数は複数も代表するものとする。)。
【0059】
一実施例において、機械100における空間R、特にプラスチックないし他の可塑化可能材料を処理するための射出成形機、又は3Dプリンタ機における空間Rを通る、例えば周辺機器のような少なくとも1つの可動コンポーネントの少なくとも1つの自動ナビゲーションのために、空間R内の少なくとも1つの開始点14を少なくとも1つの目標点16と接続する経路12の少なくとも一部分を決定するための方法では、最初のステップにおいて、少なくとも1つの可動コンポーネント及び機械の少なくとも1つのモデルが提供される。このモデルは、例えばデジタルモデルとして提供されることが可能である。
【0060】
機械100は、例えば、型工具、型ネスト、成形品、スプルー、可動プレート110、定置プレート112、及び/又は射出ユニットのような、少なくとも1つの機械部分を有することができる。更に機械100は、例えば射出成形機又は3Dプリンタ機の更に他の機械部分及び/又はコンポーネントを有することができる。これらの機械部分は、例えば可動プレート110のように運動することもできる。
【0061】
機械100が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、機械部分のモデルを提供することができる。
【0062】
「可動コンポーネント」とは、周辺機器のような、機械100に対して相対運動可能な要素として理解される。この際、グリッパ、ロボット、エジェクタ、又は、空間R内を運動する、周辺機器や機械の他の可動コンポーネントでもあり、それにより、特に機械100も運動する場合には、機械100との衝突が回避されるべきである。
【0063】
更なるステップにおいて、空間R、少なくとも1つの可動コンポーネント及び機械100の幾何学形状情報が検知される。この際、幾何学形状情報は、少なくとも部分的に1つのモデルないし複数のモデルから導き出されることが可能である。例えば幾何学形状情報は、センサを介して検知されることも可能である。
【0064】
機械100が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、機械部分の幾何学形状情報を検知することができる。
【0065】
引き続き、更なるステップにおいて、空間R内の少なくとも1つの可動コンポーネント及び機械100の現在位置が決定される。現在位置は、例えばセンサを介し、或いは少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は機械100のポジション実際値を介して検出されることが可能である。
【0066】
機械100が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、1つの機械部分ないし複数の機械部分の現在位置を決定することができる。
【0067】
更なるステップにおいて、空間R内の少なくとも1つの可動コンポーネント及び機械100の幾何学形状情報と現在位置が、空間Rの少なくとも1つのグラフ10を生成するために互いに関連付けられる。
【0068】
機械100が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、機械部分の幾何学形状情報と現在位置を、同様にグラフ10を生成するために関連付けることができる。例えば、それにより
図3によるグラフ10が得られ、
図3では、例えば、機械100、可動コンポーネント、及び存在する機械部分が、障害物24として表示されている。簡単化のために
図3のグラフ10は、単に二次元グラフとして図示されている。しかし原理的にグラフを、例えば1次元グラフ又は3次元グラフとして、他の次元及び/又は複数の次元のために表示することができる。
【0069】
グラフ10上で少なくとも1つのアルゴリズムを適用した経路12の計算は、更なるステップにおいて行われ、この際、経路12の計算のためには、追加的に少なくとも1つの最適化が実行される。
【0070】
更なるステップにおいて、経路12に沿って少なくとも1つの衝突検査が実行される。好ましくは、衝突検査は、リアルタイムで行われる。
【0071】
次いで、更なるステップにおいて、経路12に沿った少なくとも1つの可動コンポーネントの自動ナビゲーションが行われる。
【0072】
好ましくは、経路の計算及び経路に沿った自動ナビゲーションは、機械100の機械部分のためにも行うことができる。つまり例えば、可動コンポーネントの自動ナビゲーション、例えば周辺機器の自動ナビゲーションに加え、1つ又は複数の機械部分の自動ナビゲーションを行うことができる。
【0073】
好ましい一実施例において、アルゴリズムは、少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は機械100の運動に基づくグラフ10の動的な変化のもとで適用される。機械100が機械部品を有するか否かに応じ、好ましくは、アルゴリズムは、少なくとも1つの機械部分の運動に基づくグラフ10の動的な変化のもとで適用されることが可能である。例えば自動ナビゲーション中には、他の機械部分、可動コンポーネント、及び/又は機械の運動が互いに相対的にも起こる可能性がある。この運動に基づき、グラフ10、即ち「地図(マップ)」は変化し、従って既に計算された経路12上に障害物118が現れることが起こり得る。アルゴリズムは、グラフ10のこの変化を好ましくは自動的に認識し、経路12上に障害物が位置するか否かを記録する。その場合(経路12上に障害物が位置する場合)には、アルゴリズムが新たに適用され、この際、開始点14として、現在の実際ポジションが使用される。つまり現在進行中のサイクルにおける自動ナビゲーションに関連したパラメータ変更に際し、経路12を適合することができる。
【0074】
図1の実施例において、機械100は、可動コンポーネント、例えば可動コンポーネントとしての進入軸(Tauchachse)102とともに図示されており、進入軸102は、正に成形品(Formteil)122を取り出すところである。進入軸102は、成形品122を衝突なく自動ナビゲートして取り出すべできあり、異なる方向106、108において、
図1による実施例では上下左右に運動されることが可能である。原理的には、進入軸102は、好ましくは追加的に、傾動運動、旋回運動、及び回転運動を実行することもでき、従って空間R内の任意のポジションをとることができると考えられる。それにより進入軸102が有することのできる任意のベクトルが得られる。
【0075】
更に機械100は、可動プレート110と固定プレート112を備えた閉鎖ユニットを有し、可動プレート110と固定プレート112は、それらの間で、2つの工具半体114、116を有する型工具を受容するための型締付空間を固定する。可動プレート110は、方向104において、
図1による実施例では左右に運動されることが可能である。また原理的には、定置プレート112が、一方向において、例えば方向104において運動され得ることも考えられる。可動プレート110の運動により工具半体116も運動する。つまり機械100がある空間Rは、衝突のない自動ナビゲーションが不可能ないし可能である障害物118及び移動領域120を有する。
【0076】
図2には、可動コンポーネントとしての進入軸102と、可動工具プレート110との運動が図示されている。そこでは、進入軸102は、成形品122とともに方向106に沿って上方に運動された状態にある。可動プレート110は、方向104に沿って右方に運動された状態にある。それに対応し、これらの運動により自動ナビゲーションにとって新しい障害物118と移動領域120が生じる。
【0077】
更なる好ましい一実施例において、計算、衝突検査、及び/又は自動ナビゲーションは、先読みして行われる。例えば所定の期間中には経路に沿って障害物118が現れるが、この障害物118は、可動コンポーネント、機械100、成形品、及び/又は場合により機械部分がこの障害物118と衝突するであろう時より前に、既に再び経路から消え去っていることがある。つまり有利には、方向を変える必要はなく、それにより例えば方向変更に基づく振動が回避される。
【0078】
更なる好ましい一実施例において、それぞれ、少なくとも1つの可動コンポーネント及び機械100の少なくとも1つの接触点(コンタクトポイント)が空間R内の少なくとも1つの接触点の位置に関して提供され、この際、これらの接触点は、少なくとも1つの可動コンポーネント及び機械100のモデルを提供するために互いに論理的に結合される。機械100が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、それぞれ、1つの機械部分ないし複数の機械部分の接触点を提供することができ、これらの接触点を他の接触点と論理的に結合させることができる。例えば可動プレート110には、射出成形型の可動部分を結合させることができる。射出成形型は、同様にモデルとして既知であり且つ存在している。例えば射出成形型のモデルの可動部分(可動工具半体116)は、モデル内で空間R内のポジションと位置について正確に規定されている規定の接触点を有する。この点(接触点)は「プラグ」と称することができる。
【0079】
更なる好ましい一実施例において、少なくとも1つの接触点には、少なくとも1つのリストが割り当てられ、このリストに基づき、連結可能なモデルが記述され及び/又はリストアップされる。可動工具半体116を用いた上記の例に留まると、この可動工具半体116は、その接触点「プラグ」を用い、リスト内では、可動プレート110の「ソケット」にリストされている。
【0080】
図3による更なる好ましい一実施例において、空間Rは、少なくとも1つのグラフ10の生成のために使用される、立方体18から成るグリッドに分割される。空間Rは、少なくとも部分的に少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は機械100を有することができる。機械100が機械部分を有するか否かに応じ、空間Rは、好ましくは少なくとも部分的に、例えば
図3によるグラフ10内で障害物24(濃い灰色部分)として図示されている機械部分を有することができる。
図3では、簡単化のために、障害物24を有する空間の1つの平面だけがグラフ10として図示されている。しかしこのグラフは、基本的に3次元としてよい。
【0081】
更なる好ましい一実施例において、アルゴリズムとして、少なくとも、グリーディサーチアルゴリズム、ダイクストラアルゴリズム、及び/又は、少なくとも1つのオープンリストを有するA*アルゴリズムが使用される。
【0082】
次に、如何にグラフ10内の任意の2つの点14、16の間の経路12が計算されるかについて紹介する。最短ルート問題は、人工知能の分野でよく見られ、グラフ10を通るできるだけ良好の経路12を見つけることを目的とし、大概は極めて高い複雑性(コンプレキシティ)と結び付いている。ルート発見は、開始点14から目標点16までのグラフ10内の経路12を見つけるという問題に取り組む。グラフ10は、紹介されるアプローチにとって、グラフ10の全ての辺(エッジ)が正(非負)で重み付けされているという特性を満たさなければならない。そのために機械空間は、ノード18とも呼ばれる立方体18から成るグリッドに分割される。グラフ10として使用される空間Rのグリッド状のモデルに基づき、開始点14から目標点16までのできるだけ最短経路12が探索される。また探索グラフ10は、暗黙的にのみ存在することになる。つまり各ノード18に対し、その進入に際して、これらのノード18がロボットシステムの有効なポジションであるか又は障害物24を表しているかが検査されなくてはならない。
【0083】
グリーディサーチアルゴリズム(貪欲探索)は、知られた探索法であり、推定関数(ヒューリスティック関数)を必要とする。この推定関数は、任意のノード18から目標点16までの距離を推定する。例えば、あるロボットが1つの軸を他の軸の後に運動させるべきであることが考えられる。それ故、ヒューリスティック関数として、マンハッタン距離を使用することができる。しかしロボットは、X方向、Y方向、又はZ方向において直線的に運動するだけではなく、又は1つの軸だけが他の軸の後に運動するだけではない。グリッドサイズに依存せず、例えば複数の立方体を用いて斜めのルートを記述することもできる。原理的には、更なる好ましい一実施例において、ロボットは、規定の共通の軌道速度を有する、例えば2つの軸132、134(例えばY及びZ)を用いた軌道運動130を介し、対角線を移動することも可能(
図11)である。
図11の事例では、ロボットは、例えば14回の個別運動を実行するのではなく、開始点14から目標点16までの1つの運動を実行し、この際、両方の軸は、互いに同期して運動する。
【0084】
探索は、開始点14で始まり、開始点14が展開される。展開では、開始点14から到達可能な全てのノード18が、ヒューリスティックを介し、目標点16に向かうその推定距離に関して調べられる。それに加え、訪れた各ノード22(薄い灰色部分)において、いま正に展開されるノード18に対するリファレンスが記憶される(
図3の矢印26を参照)。従って訪れた各ノード22は、その先行部、即ち先行ノードを知っている。最善のヒューリスティックを有するノードが、次のノードとして展開される。目標点16が見つけられるまで、最も好ましいノードが繰り返し展開される。つまり続くノードとして、選択の時点で最良の結果を約束するノード18が常に選択される。一度成された決定は、グローバルな観点から分析又は修正されることはない。
【0085】
目標点16が見つかった場合には、目標点16から開始点14までの経路12は、ノード18の記憶された先行ノードを介して簡単に逆にたどることができる。この場合の経路12は、逆の順番では、開始点14から目標点16まで探索された経路12である。グリーディサーチアルゴリズムの利点は、このアルゴリズムが簡単に設計でき、効率的に実行できるということである。しかしこのアルゴリズムは、問題を迅速に解決するが、常に最適であるとは言えない。
図3では、見つけられた経路12が常に最短ではない一例が図示されている。この理由から、グリーディサーチアルゴリズムは、最短経路12(濃い灰色と薄い灰色の間の灰色部分)を見つけることに常に適しているとは言えない。
【0086】
図4によるダイクストラアルゴリズムは、グリーディサーチアルゴリズムとは異なり、最短の経路の問題を解決する。推定ヒューリスティックを使用する代わりに、ダイクストラは、逆のルートを辿る。ダイクストラアルゴリズムは、訪れたノード18から開始点14までの経路のコストを記憶する。更に同様に、訪れた各ノード18は、その先行ノードを分かっている。開始点14から始まり、それまでに最も少なく進んだ経路コストを有するノード18が繰り返し展開される。展開では、現在のノード18の全ての直接的な隣接部、即ち隣接ノードに対して開始点14までのコストが検出される。このことは、この場合には想定可能で簡単である。グリッド内の全てのノード18は同じ大きさであるので、ノードの進入のためには、コストとして常に「1」を見積もることができる。つまりコストは、開始点14と調べられたポジションとの間で訪れたノード22の数から得られる。この理由から、開始点14の周りの全領域が均等に調査される。各ノード18はその先行ノードを知っていることにより、各ノード18から、開始点14への最短経路が知られている。目標点16が均等な展開により見つけられるのであれば、見つかった経路12が既に最も好ましいので、アルゴリズムは終了する。ここでも経路12は、逆の順序で処理されなくてはならない。このことは、
図4において訪れた任意のノード22を探し出し且つ開始点14に至るまで矢印26を辿ることにより、把握することができる。
【0087】
図4は、ダイクストラアルゴリズムがグリーディサーチアルゴリズム(
図3)と比較して、確かに最短経路12を見つけるが、そのためには遥かに多くのノード18を調べなくてはならないことを明らかに示している。このことは、ダイクストラアルゴリズムが、グラフ10内で目標点16がどの箇所にあるかについての情報を、展開すべきノード18の選択時に利用することができないことにある。このアルゴリズムは、とりわけ目標点16のポジションが知られていないというシナリオにおいて、その強さを示すことができる。しかし目標点16のポジションが知られているときには、大抵の場合は不必要に多くのノード18が展開されることになる。このことは、実行時間とメモリ消費量について極めて負荷となる。
【0088】
人工知能の分野において、A
*アルゴリズムは、方向性のあるグラフ10内で開始点14と目標点16の間の最善経路12を計算するためには、信頼できるアプローチである。A
*アルゴリズムは、ダイクストラアルゴリズムの利点とグリーディサーチアルゴリズムの利点とを組み合わせ、欠点を十分に取り除いている。経路12が見つかるのであれば、その経路12は、常に最適である。訪れたノード22の数は、多くの場合はダイクストラアルゴリズムの進行過程におけるよりも明らかに少ない(
図6)。しかし最悪の場合には、同じ大きさの数である。経路12での訪れた各ノードKiに対し、開始点14から目標点16までの経路12全体のための推定された経路コストFが計算される。
【0089】
経路コストFを検出するために、次の式が有効である:F=G+H。Gは、開始点14からノードKiまでの既に進んだ経路12のためのコストである。Gを決定するためには、先行ノードのGに、1つのノード18を訪れるためのコストが加算される。Hは、ヒューリスティックを表し、つまりノードKiから目標点16までに発生するであろう推定されたコストを表す。そのためにグリーディサーチアルゴリズムにおけるようにヒューリスティック関数が使用される。ヒューリスティック関数は、常に特有の問題提起に適合されなくてはならない。最も有利な経路12の保証は、ヒューリスティック関数が過少推定している場合にのみ与えられている。つまりヒューリスティック関数は、実際に発生するよりも高いコストを決して推定してはいけない。推定関数が正確であるほど、A
*アルゴリズムは、より速く進行する。ここでも例えば、あるロボットが1つの軸を別の軸の後に運動させるべきであることが考えられる。例えばその際には、グリーディサーチアルゴリズムのようにマンハッタン距離をヒューリスティック関数として使用することができる。しかし原理的には、ロボットは、X方向、Y方向、又はZ方向において直線的に運動するだけではなく、又は1つの軸だけが他の軸の後に運動するだけではない。グリッドサイズに依存せず、例えば複数の立方体を用いて斜めのルートを記述することもできる。原理的には、更なる好ましい一実施例において、ロボットは、規定の共通の軌道速度を有する、例えば2つの軸132、134(例えばY及びZ)を用いた軌道運動130を介し、対角線を移動することも可能(
図11)である。
図11の事例では、ロボットは、14回の個別運動を実行するのではなく、開始点14から目標点16までの1つの運動を実行し、この際、両方の軸は、互いに同期して運動する。更にA
*アルゴリズムでは、オープンリストとクローズドリストが使用される。オープンリスト(まだ評価されていないノードのリスト)には、訪れるノード18が置かれ、クローズドリスト(評価が完了したノードのリスト)には、完全に調べられた全てのノード18が置かれる。
【0090】
図5のフローチャートに基づき、A
*アルゴリズムの手順を説明する。開始30に際し、ステップ32では、開始点14ないし開始ノードがオープンリストに置かれ、次にステップ34では、ループ36において、常に、最も有利なF値を有するノード18がオープンリストから取り出されて処理される。オープンリストが空の場合には、アルゴリズムが答えを見つけなかったことを意味する。例えばロボットは、回転軸を用いてその幾何学形状を変化させることができるので、ここで探索を諦める必要はない。
【0091】
更なるループ38において、例えば、まだ操作されなかった回転軸があるか否かについて検査される。ステップ40においてそれらが運動され得るのであれば、探索が更なるステップ42において新たに開始する。そうでなければアルゴリズムは、終了44となる。ループ39において目標点16が見つけられていると、探索は、成功して終了する。1つのノード18がステップ46において処理されるべきであれば、ステップ48で、ループ50、52において、その直接的な各隣接ノードについて、これらが障害物24を表しているか又は既にクローズドリスト内にあるかについて検査される。イエスの場合には、隣接ノードは、ステップ54において無視される。そうでない場合には、ステップ56において、隣接ノードのためにG値とH値が決定され、ステップ58において現在のノードが先行ノードとして記憶される。終わりにステップ60において、隣接ノードがオープンリストに挿入される。1つのノードの全ての隣接ノードが調べられているのであれば、そのノードは、ステップ62においてクローズドリストに入る。
【0092】
1つのノード18がクローズドリストに挿入されたら直ちに、このノード18からの最も有利なルートが知られている。最悪の場合には、A*アルゴリズムは、全てのノード18を訪ねなくてはならない。理想ライン上の障害物24は、実行時間を著しく悪化させ、その理由は、コストが障害物24に沿って増え、それにより最初は、間違った方向の多くのノード18が調べられなくてはならないためである。
【0093】
更なる好ましい一実施例において、最適化として、少なくとも、ジャンプポイント探索及び/又はオープンリストの管理が使用される。
【0094】
図7aのA
*アルゴリズムの進行過程後の探索グラフのより正確な考察から、同じコストを有する多数のパス12が存在することが分かる。この現象は、水平方向又は垂直方向の運動だけを可能とするグリッド形状に配置されたグラフ10において発生する。これらの経路12は、これらが運動の順序だけで異なるので、シンメトリックと呼ばれる。このことは、
図7aと
図7bのグラフ10に対し、例えばロボットが右方向に全部で6つのノード18を走行し、上方に3つのノードを移動することを意味する。アクションの順序は重要ではない。この特性の考慮により、訪れたノード18の数を大幅に減らすことができる。
【0095】
図7bのような結果を達成できるためには、経路12のシンメトリが考慮されなくてはならない。成功への道筋は、隣接ノードの減少(ネイバープルーニング)に通じている。A
*アルゴリズムと異なり、ノード18を展開時には、常に全ての隣接ノードが調べられるわけではなく、ほとんどの場合は(2次元空間では4つに代わり、3次元空間では6つに代わり)1つだけが調べられる。そのための最も重要な3つの規則が、
図8a~8cから導き出される。
【0096】
第1規則:
正確には運動方向に位置しない全ての隣接ノードは顧慮されない。
図8aの例では、番号6のノードが、オープンリスト内に置かれる唯一のノードである。番号2、4、8のノードは調べられない。
【0097】
第2規則:
現在のノード22が障害物24に隣接している場合には、A
*アルゴリズムのように、通過可能な全ての隣接ノードが調べられる(
図8b)。このことは、障害物24を理想的に迂回し且つ最短経路12を見つけるために必要である。
【0098】
第3規則:
第1規則で選択された隣接ノードが現在のノード18よりも悪いF値を得る場合には、全ての通過可能な隣接ノードが調べられる(
図8c)。つまり経路12が1つの次元において目標を通り過ぎることが防止される(
図9)。
【0099】
第1規則が隣接ノードの省略を記述するのに対し、第2規則と第3規則は、探索が引き続き最適の結果を提供することをもたらす。これらは、ジャンプポイント探索からその名が与えられる所謂ジャンプポイント64(跳躍点)を見つける。これらのポイントは、これらのポイントの間では極めて迅速に且つまっすぐでのみナビゲートされるので、ジャンプポイント64と称する。ジャンプポイント64は、これらが1つの隣接ノードよりも多くを調べることで認識される。
図9では、例えばパス12がその方向を右方に変えるノード18がジャンプポイント64である。
【0100】
ジャンプポイント探索の利点として、以下のことが得られる:
1.ジャンプポイント探索は最適である(最も有利な経路12を見つける)。
2.事前計算は不必要である。
3.メモリの増加消費は起こらない。
4.単純なA*アルゴリズムを多大に速める。この際、経路12が長いほど、改善が大きくなるということが当てはまる。
【0101】
単純なA
*アルゴリズム(
図6)と、ジャンプポイント探索を用いる最適化されたA
*アルゴリズム(
図9)との間の、障害物24での直接的な比較から、どれだけ多くのノード調査が最適化により節約できるかを、改めて明らかに見ることができる。
【0102】
A*アルゴリズムにおける計算時間の大部分は、最小のF値を有する要素についてオープンリストをくまなく探索することに割り当てられる。グラフ10が大きいほど、オープンリストの管理のために必要とされる実行時間部分は大きくなる。例えば機械空間のグラフ10は極めて大きいので、オープンリストの管理を最適化することには価値がある。最も簡単な場合には、オープンリストの全ての要素が1つのアレーリスト内に保持される。このことは、リスト内への迅速な挿入(複雑性:O(1))を可能にするが、考えられる要素の除去を遅くし、その理由は、最小のFを見つけるために各要素がくまなく探索されなくてはならないためである(複雑性:O(n))。このことは、長いオープンリストでは即座に問題になる可能性がある。要素の除去を簡単に速める1つの方法は、オープンリストをソートしておくことである。挿入時に発生するコストは、正に比較的大きいリストでは、それ以外の場合で除去時に必要とされるであろうコストのほんの一部分にすぎない。複雑性<O(n)を有する挿入のためのソートアルゴリズムが選択されると、その手間は価値のあるものであった。除去オペレーションの複雑性は、ソートされたリスト内ではO(1)である。
【0103】
更なる好ましい一実施例において、二分ヒープ20を用いてオープンリストの管理が行われる。極めて効果的には、データは、構造化されて二分ヒープ20(バイナリヒープ)内に保持されることが可能である。二分ヒープ20は、例えば1つの簡単なアレイ内に記憶されることが可能である。挿入操作、削除操作、及び探索操作は、O(log n)のワーストケース実行時間をもって処理されることが可能であり、最小の要素66についての探索(この探索は、A*アルゴリズムにおいて使用される)は、それどころかO(1)である。しかし最小の要素へのアクセス後には、この要素も削除されなくてはならない。ソートされたリストとは異なり、二分ヒープ20は、厳密には降順又は昇順でソートされていない。この際、以下の2つの追加的な条件を満たす二分木(バイナリツリー)70に関するものである:
1.二分木70は、左揃えでバランスされている。
2.各ノード18には、固有のキーが子ノードのキーよりも小さいということが当てはまる。
【0104】
従って二分木70の最初の箇所では、常に、最小の要素66がある。
図10は、一例の二分ヒープ20を示している。アレイ28内では、0番目の箇所に要素66がないことが分かる。それにより子ノード又は父親ノードのインデックスの計算が簡素化される。
【0105】
更なる好ましい一実施例において、本方法は、生産手順内の変化に際してリアルタイムでシミュレートされ、及び/又は、アルゴリズムは、少なくとも1つの更なる衝突検査が実行される及び/又は少なくとも1つの新しい経路12が計算されることにより、少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は機械100の変更されたポジション及び/又は速度に反応する。機械100が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、アルゴリズムは、少なくとも1つの機械部分の変更されたポジション及び/又は速度に反応することができる。
【0106】
更なる好ましい一実施例において、本方法は、事前にシミュレーションされる。例えば、コンピュータモデルにおいて手順と経路設定の事前シミュレーションが可能である。
【0107】
更なる一実施例において、本方法の少なくとも2つの異なるバリエーションがシミュレートされ、異なる基準に関して互いに比較される。つまり例えば、エネルギー、摩耗、移動ルート、及び/又はサイクル時間に関して本方法の異なる基準を比較し、最も所望の有利な方法を選択することができる。例えばある所定のプロセスでは、サイクル時間は(重要性に関して)副次的であるが、それに対し、例えば工具は強い負荷を受けるので、摩耗が極めて重要であり、ないし考慮されなくてはならない。
【0108】
より良い一目瞭然性のために更なる一実施例において、少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は機械100の、グラフ及び/又はモデルは、グラフィック表示される。機械100が機械部分を有するか否かに応じ、好ましくは、機械部分をグラフィック表示することもできる。例えば表示は、機械制御装置上、ディスプレイ上、又はコンピュータ上で行うことができる。
【0109】
一実施例において、機械100、特にプラスチックないし他の可塑化可能材料を処理するための射出成形機、又は3Dプリンタ機のための機械制御装置が開示され、この機械制御装置は、前記の利点の達成のもと、前述の方法の少なくとも1つを実行するように、調整され、実行され、及び/又は構成されている。
【0110】
更なる一実施例は、前記の利点の達成のもと、前述の方法の少なくとも1つを実行するための、コンピュータ読み取り可能な媒体上に記憶されているプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品を構成する。
【0111】
自明のことであるが、本開示には、極めて異なる修正、変形、及び適合を施すことができるが、これらは、添付の請求項に対する均等の範囲内で可能とされるものである。
【符号の説明】
【0112】
10 グラフ
12 経路
14 開始点
16 目標点
18 立方体、ノード
20 二分ヒープ
22 訪れたノード
24 障害物
26 矢印
28 アレイ
30 開始
32 ステップ
34 ステップ
36 ループ
38 ループ
39 ループ
40 ステップ
42 ステップ
44 終了
46 ステップ
48 ステップ
50 ループ
52 ループ
54 ステップ
56 ステップ
58 ステップ
60 ステップ
62 ステップ
64 ジャンプポイント
66 要素
68 インデックス
70 二分木
100 機械
102 進入軸
104 方向
106 方向
108 方向
110 可動プレート
112 定置プレート
114 工具半体
116 工具半体
118 障害物
120 移動領域
122 成形品
130 軌道運動
132 軸
134 軸
R 空間
【手続補正書】
【提出日】2023-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックないし他の可塑化可能材料を処理するための射出成形機、又は3Dプリンタ機である機械(100)における空間(R)
を通り、成形品を取り出し、移動させ、及び/又は置くために構成された、少なくとも1つの可動コンポーネントの少なくとも1つの自動ナビゲーションのために、前記空間内の少なくとも1つの開始点(14)を少なくとも1つの目標点(16)と接続する経路(12)の少なくとも一部分を決定するための方法であって、
以下のステップを含むこと:
a)前記少なくとも1つの可動コンポーネント
、前記機械(100)
及び前記成形品の少なくとも1つのモデルを提供するステップ、
b)前記空間(R)、前記少なくとも1つの可動コンポーネント
、前記機械(100)
及び前記成形品の幾何学形状情報を検知するステップ、
c)前記空間(R)内の前記少なくとも1つの可動コンポーネント
、前記機械(100)
及び前記成形品の現在位置を決定するステップ、
d)前記空間(R)内の前記少なくとも1つの可動コンポーネント
、前記機械(100)
及び前記成形品の前記幾何学形状情報と前記現在位置を、前記空間(R)の少なくとも1つのグラフ(10)を生成するために互いに関連付けるステップ、
e)前記グラフ(10)上で少なくとも1つのアルゴリズムを適用して前記経路(12)を計算するステップ、但し前記経路(12)の計算のためには、追加的に少なくとも1つの最適化が実行されること、
f)
1.前記少なくとも1つの可動コンポーネントと
、2.前記機械(100)
と、3.前記成形品との間で前記経路(12)に沿って少なくとも1つの衝突検査を実行するステップ、
g)前記経路(12)に沿って前記少なくとも1つの可動コンポーネントを衝突なく自動ナビゲートするステップ、
但し前記少なくとも1つの可動コンポーネントは、前記機械に対して相対運動し、前記アルゴリズムは、前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は前記機械(100)
及び/又は前記成形品の運動に基づく前記グラフ(100)の動的な変化のもとで適用され、
また前記方法は、生産手順内の変化に際してリアルタイムでシミュレートされ、
前記アルゴリズムは、少なくとも1つの更なる衝突検査が実行され
、少なくとも1つの新しい経路(12)が計算され
、且つ前記アルゴリズムが新たに適用され、この際、開始点として現在の実際ポジションが使用されることにより、前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は前記機械(100)
及び/又は前記成形品の変更されたポジション及び/又は速度に反応
し、
前記計算、前記衝突検査、及び前記自動ナビゲートは、先読みして行われること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び前記機械(100)の少なくとも1つの接触点のそれぞれが、前記空間(R)内の前記少なくとも1つの接触点の位置に関して提供されること、但しこれらの接触点は、前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び前記機械の前記モデルを提供するために互いに論理的に結合されること、
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの接触点には、少なくとも1つのリストが割り当てられ、前記リストに基づき、連結可能なモデルが記述され及び/又はリストアップされること、
を特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記空間(R)は、前記少なくとも1つのグラフ(10)の生成のために使用される、立方体(18)から成るグリッドに分割されること、
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルゴリズムとして、少なくとも、グリーディサーチアルゴリズム、ダイクストラアルゴリズム、及び/又は、少なくとも1つのオープンリストを用いるA
*アルゴリズムが使用されること、
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記最適化として、少なくとも、ジャンプポイント探索、及び/又は前記オープンリストの管理が使用されること、
を特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記オープンリストの前記管理は、二分ヒープ(20)を用いて行われること、
を特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、事前にシミュレートされること、及び/又は、前記方法の少なくとも2つの異なるバリエーションがシミュレートされ、異なる基準に関して互いに比較されること、
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの可動コンポーネント及び/又は前記機械(100)
及び/又は前記成形品の、前記グラフ及び/又は前記モデルは、グラフィック表示されること、
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
プラスチックないし他の可塑化可能物質を処理するための射出成形機、又は3Dプリンタ機である機械(100)のための機械制御装置
であって、
前記機械制御装置は、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行するように、調整され、実行され、及び/又は構成されていること、
を特徴とする機械制御装置。
【請求項11】
プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品であって、
前記プログラムコードは、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行するために、コンピュータ読み取り可能な媒体上に記憶されていること、
を特徴とするコンピュータプログラム製品。
【国際調査報告】