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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】後部硝子体剥離硝子体切除プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A61F9/007 130F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513815
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 IB2022057762
(87)【国際公開番号】W WO2023052865
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/250,401
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】レト グルーブラー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-アントワーヌ プールナラ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル サム カルダモン
(57)【要約】
「増強」表面領域と呼ばれ得る強化された摩擦特性の領域を有する硝子体切除針を備えた硝子体切除プローブ。この領域は、硝子体切り離しを実現する際の網膜に対するある程度の引張力を回避するやり方で例えば基底網膜から強制的に煎断するための硝子体皮膜などの組織と接触させるために利用され得る。切り離しを実現するために硝子体切除プローブを利用することにより、煎断又は切り離された硝子体皮膜物質の取り込みのためにプローブを導入するためのその後の介入も回避され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドピースと;
前記ハンドピースへ固定されるとともに眼からの硝子体又は硝子体物質の取り込みのポートを収容する硝子体切除針と;
その取り外し又は取り込みを促進するために組織に噛み合うための強化された摩擦特性を有する前記針の外側表面における増強領域と
を含む硝子体切除プローブ。
【請求項2】
前記増強領域は前記強化された摩擦特性を提供するための歯を含む、請求項1に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項3】
前記歯は連続リブ及び個々の鱗のうちの1つで配置される、請求項2に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項4】
前記連続リブ及び個々の前記鱗の1つは、更に水平列で配置される、請求項3に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項5】
硝子体の取り込みのためのポート又は眼の硝子体皮膜を画定する外側表面と;
その取り外し又は取り込みを促進するために組織に噛み合うための強化された摩擦特性を有する前記針の外側表面における増強領域と
を含む硝子体切除プローブの針。
【請求項6】
前記増強領域は前記強化された摩擦特性を提供するための歯を含む、請求項5に記載の針。
【請求項7】
前記歯は水平列内へ配置される、請求項6に記載の針。
【請求項8】
硝子体皮膜に対し垂直に配向された前記針により前記歯はそれに対し約10°~90°で角度付けされる、請求項6に記載の針。
【請求項9】
前記歯は約3マイクロメートル~約50マイクロメートルのプロファイルである、請求項6に記載の針。
【請求項10】
前記歯は約10×10平方マイクロメートルから約25×25平方マイクロメートルの連続リブ及び個々の鱗のうちの1つで配置される、請求項6に記載の針。
【請求項11】
前記個々の鱗の各々は四角錐状、円筒状、円形、多角形、矩形、正方形、及び貝殻状からなる群から選択された形状のものである、請求項10に記載の針。
【請求項12】
眼に予め置かれたカニューレを介し、膜に向かって硝子体切除針を前進することと;
前記針の外側表面における増強領域と前記膜とを接触させることと;
その下の前記眼の網膜から前記膜の少なくとも一部を切り離すための前記接触中に前記領域を移動させることと
を含む方法。
【請求項13】
前記切離しは前記網膜からの前記膜の少なくとも一部の剪断を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記領域に隣接する前記針内のポートを介し前記膜の少なくとも一部を除去すること、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記予め置かれたカニューレを介し残されたままの前記針により硝子体切除を行うことを更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、本明細書に完全且つ詳細に記載されたものとして参照のためその全体を本明細書に援用する2021年9月30日申請の米国仮特許出願第63/250,401号明細書:題名“POSTERIOR VITREOUS DETACHMENT VITRECTOMY PROBE”;発明者Jean-Antoine Pournaras、Michael Sam Cardamone及びReto Grueeblerの優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
ここ何年にもわたって、眼科手術の分野において多くの劇的な進歩がみられてきた。より一般的な眼科手術の処置のうちの1つは硝子体切除である。硝子体切除は、患者の眼から硝子体液の一部又はすべてを除去することである。手術が混濁硝子体液の除去に限定されるいくつかのケースでは、硝子体切除が処置の大部分を構成することがある。しかし、硝子体切除は、白内障手術、網膜を修復するための手術、黄斑部ひだ又は多くの他の問題に対処するための手術を伴う場合がある。
【0003】
硝子体切除をしばしば伴う及び/又は硝子体切除プローブの使用により容易にされる処置の1つは後部硝子体剥離(PVD:posterior vitreous detachment)である。即ち、硝子体液と網膜との間には境界として働く硝子体皮膜が一般的に存在する。眼の後部では、繊維状膜のこの皮膜は、後部硝子体皮膜と呼ばれることがあり、「偽皮膜」とみなされる場合がある。この皮膜の除去は、乱視に対処するために、又は以下に説明される網膜剥離のより深刻な事象を回避するための予防策として意図的に行われることがある。
【0004】
一般的に、人々が年を取るにつれ、下にある敏感且つより重要な網膜から硝子体が分離する又はわずかに切り離される傾向が増加する。これが発生すると、閃光などの徴候及び/又は「浮遊物」の存在の増加が現れることがある。しかしより深刻には、この分離は網膜剥離への前兆である場合がある。
【0005】
網膜剥離は、上述のような切り離された硝子体と同じ問題のうちのいくつかと共に存在し得る。しかし、網膜剥離はまた、はるかに厳しい視力合併症を含むことがある。霞眼、ほのかな明かり下で見ることができないことと、視野狭窄と、そして更には視力の喪失とが纏めて網膜剥離と共に発生することがある。この結果、硝子体分離が発生した後に、網膜剥離を防ぐための取り組みが実施され得る。
【0006】
実施され得るこのような1つの予防措置は分離硝子体を除去することである。PVD処置により分離硝子体皮膜を除去することにより、基底網膜上の被膜による引張りもなくなる。したがって、その後の網膜剥離が回避され得る。当然、網膜剥離が発生した場所でも、PVD処置は修復の一部として実施されることがある。更に、硝子体分離が始まっていない場合でも、既に実施されている別の眼科手術と併せた予防措置などのPVDが実施され得ることもある。それにもかかわらず、PVD処置はここ何年にもわたってかなり一般的になった。
【0007】
他の眼科手術と同様に、PVD処置はかなり標準的な一組の最小侵襲的技術に関与し得る。例えば、オフセット眼位置における小さな予め置かれたカニューレが、介入器具を支持しそしてそれを眼内へ誘導するために位置決めされ得る。これは、光学器具、上記硝子体切除プローブ、及び更にはPVD自体を行うためのピック状器具など含み得る。
【0008】
当然、眼の周囲の作業スペースは限られており、外科医は2つの手しかないため、3つ以上の切開及びカニューレ配置を行うのではなくむしろ、PVDを行った後に、同じカニューレ位置を介した硝子体切除を行うこともある。即ち、例えば皮膜が下の網膜へしっかりと付着しているより若い患者において、PVD器具は、意図的なPVD分離を完了するために最初に使用することもできる。その後、PVD器具は除去され得、硝子体切除プローブが、今や浮いた状態の硝子体皮膜及び他の硝子体液の切断及び取り込みを実現するために導入され得る。
【0009】
残念ながら、説明されたシーケンス及び技術には潜在的な危険性がある。例えば、PVD器具を通じての基底網膜からの硝子体皮膜の分離は引張力を網膜上にもたらし得る。したがって、網膜剥離及び視力の潜在的損失又は他の眼の問題のリスクがある。加えて、多くの場合、1つの外科PVD器具の除去に続いて別の硝子体切除ツールが挿入される。即ち、PVD処置を完了するためには、それぞれに固有リスクを伴う複数の介入が必要となる場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
いくつかの器具は、外側表面上の増強領域を追加することにより利益を受けることができる。例えば、硝子体切除プローブ(そこから出てくる硝子体切除針を有する外科医により保持されるハンドピースを含む)は、針の外側表面上の増強領域(例えば、例えば硝子体物質を眼から取り込むポート近くの)から利益を受けることができる。増強領域は、例えば硝子体物質を基底網膜から除去するための強化された摩擦特性を有する表面を含み得る。
【0011】
増強領域も含み得る器具の他の例は、例えば内視鏡照明器プローブ、ハサミ、鉗子、膜ピック、剥離スパチュラ、黄斑レンズ、吸引ハンドピース、膜スクレーパ、及びレーザプローブを含む。更に、器具上の様々な位置が使用され得る(例えば以下に概説されるように)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、眼科手術を容易にするための増強表面を有する硝子体切除針の一実施形態を有する硝子体切除プローブの側面の透視図である。
図2A-C】図2A-Cは、図1の針により持ち上げられている患者の眼内の硝子体皮膜の部分的拡大断面図であり、硝子体切除プローブの様々な部分上に増強表面を有する部分的拡大断面図である。
図2D図2Dは、側面及び面取り面上に増強表面を有する硝子体切除プローブの側面断面図を示す。
図2E図2Eは、傾斜面と前面との間の丸い先端上に増強表面を有する硝子体切除プローブの側面断面図を示す。
図3図3は、眼科手術において(図2A~Cの皮膜においてを含む)利用されている図1のプローブの側面断面概観である。
図4A図4Aは、そこにおける個々の突起列を露呈する図1の針領域の増強表面の図である。
図4B図4Bは、図4Aの列を形成する個々の突起を露呈する針領域の増強表面の別の図である。
図5図5は、眼科手術(例えばPVD処置)を容易にするための増強表面を有する硝子体切除プローブ針を利用する実施形態を要約するフローチャートである。
図6図6は、プローブの遠位部上に増強表面を有する直線状内視鏡照明器プローブを示す。
図7a図7aは、ハサミの内部表面上に増強表面を有する湾曲ハサミを示す。
図7b図7bは、ハサミの外側表面上に増強表面を有する湾曲ハサミを示す。
図8図8は、ハサミの遠位部上に増強表面を有する直線状ハサミを示す。
図9a図9aは、ハサミの内部表面上に増強表面を有する垂直ハサミを示す。
図9b図9bは、ハサミの外側曲面上に増強表面を有する垂直ハサミを示す。
図10図10は、鉗子の遠位部上に増強表面を有する三角鉗子(例えばGRIESHABER MAXGRIP(登録商標)鉗子)を示す。
図11図11は、鉗子の遠位部上に増強表面を有する把持鉗子を示す。
図12図12は、鉗子の遠位部上に増強表面を有する非対称鉗子を示す。
図13図13は、鉗子の遠位部上に増強表面を有する鋸歯状鉗子を示す。
図14図14は、ピックの遠位部上に増強表面を有する膜ピックを示す。
図15図15は、ピックの遠位部上に増強表面を有する被照射膜ピックを示す。
図16図16は、スパチュラの遠位部上に増強表面を有する剥離スパチュラを示す。
図17図17は、スクレーパの遠位部上に増強表面を有する軟質膜スクレーパを示す。
図18a図18aは、プローブの遠位部上に増強表面を有する直線状レーザプローブを示す。
図18b図18bは、プローブの遠位部上に増強表面を有する湾曲レーザプローブを示す。
図19図19は、タブの底面上に増強表面を有する黄斑レンズを示す。
図20図20は、先端の遠位部上に増強表面を有する吸引ハンドピースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では、多くの詳細が本開示の理解を提供するために記載される。しかしながら、説明される実施形態は、これらの特定の詳細が無くても実行され得ることが当業者により理解されることになる。更に、具体的に説明されるいくつかの実施形態により、依然として企図される多数の変形形態又は修正形態が採用され得る。
【0014】
いくつかの実施形態は、いくつかのタイプの眼科手術(例えばPVD及び硝子体切除外科手術処置)を参照して説明される。本明細書において説明される実施形態は、PVDが硝子体切除プローブにより直接的且つ一意的に行われる処置を説明するが、本明細書において説明され特許請求される修正型硝子体切除プローブは他のタイプの外科手術処置(例えば牽引網膜剥離(TRD:tractional retinal detachment)など又は単一デバイスによる切断及び組織操作から利益を受け得る他の処置)において使用され得るということを理解すべきである。いくつかの実施形態では、プローブは、後部硝子体皮膜又は硝子体の取り込みのために利用され続け得、そして更には、例えば硝子体出血又は他の眼の問題に対処するために利用され続け得る。当然、1回の介入でプローブにより様々な他の操作が行うことができる。それにもかかわらず、硝子体切除針の増強表面領域が例えばPVD処置を容易にするために利用される限り、かなりの利益が実現され得る。
【0015】
ここで図1を参照すると、硝子体切除プローブ101の側面透視図が示される。プローブ101は、例えばPVD処置を容易にするための増強表面領域100を有する一実施形態の硝子体切除針175を備える。これは、図2A~Cによく示されており、ここでは、領域100の拡大図は、以下に詳述されるように皮膜の基底網膜280からの分離を剪断的に容易にするために例えば硝子体皮膜260に物理的に接触するために使用される歯200により描写される。増強表面領域100は、その表面における製造及び/又は摩擦感触のモードに起因してレーザ構造又はサメ皮領域と呼ばれ得る。
【0016】
引き続き図1を参照すると、硝子体切除プローブ101は標準的な従来のものであってもよい。示された実施形態では、プローブ101のハンドピース部分は、針175内のカッターを往復運動させることに向けられた機械的機能を収容する部品筐体150を含む。したがって、硝子体液、切り離された硝子体物質又は他の物質はポート177内へ取り込まれそして患者の眼から移動され得る。
【0017】
図1の部品筐体150は、プローブ101の使用中に通常は親指と人指し指との間で外科医が保持するための先細り端を含む。示された実施形態では、取外し可能シェル125も筐体150の近位端に設けられる。したがって、プローブ101は、外科医がそのように選択すれば親指と人指し指との間の指間において支持され得る。当然、プローブは様々な他の支持機能及び態様を備え得る。
【0018】
図2A~Cを参照すると、硝子体皮膜260の部分的拡大断面図が、硝子体切除プローブの様々な部分上の増強表面100と共に示される。図3への追加参照により、この皮膜260は患者の眼350内にそして患者の網膜280上に見出される。様々な理由のために、本明細書に記載されるような硝子体皮膜260を除去するためのPVD処置が求められ得る。図示のように、プローブ針175は、その増強表面領域100と皮膜260とを軽くではあるが強制的に接触させるために外科医により直接操作され得る。このようにして、摩擦剪断力が領域100の歯200を介し皮膜260上へ与えられ得る。これは、従来のPVDにおいて代替的に採用される可能性がある引張力又は他の力と対照的である。図3への追加参照により、このような剪断力が硝子体皮膜260を壊す及び/又は切り離すために与えられる限りでは、基底網膜280を引張って潜在的に損傷させる傾向がある引張力が回避され得る。
【0019】
いくつかの環境では、例えばより若い患者において又は硝子体基底及び視神経に近い位置において、硝子体皮膜260は基底網膜280に特に付着し得る。したがって、PVD中に皮膜260上の引張りの回避は、網膜280にとって健康的な利益となり得る。更に、硝子体皮膜260は繊維堆積の膜であり、通常は偽皮膜であると考えられる。PVD処置中に切り離されると、硝子体皮膜260は取り込まれ、そして切り裂かれて隣接ポート177を通り抜ける。したがって、より一様な従来の持ち上げ又は引張りとは対照的に硝子体皮膜260を様々な塊又は粒子へ剪断、切り裂き、又は切断することに関するいかなる懸念もない。いくつかの状況では、増強領域100は剪断に先立って皮膜260内へ又はこの皮膜260と網膜280との間の空間内へすらわずかに埋め込まれ得る。
【0020】
図2A~Cの実施形態では、増強領域100が硝子体皮膜260と接触するやり方は、剪断力を与える際に外科医により発生する可能性が高いタイプの作戦に合わせられ得る。例えば、外科医は針175の端を(図示のように左へ又は右へ)強制的に前進又は後退させると予測され得る。したがって、増強領域100は、上述の前方向運動又は逆方向運動に対し主として垂直方向に配置される個々の歯200の水平列内へ配置され得る。当然、多種多様な代替形態又は構造も採用され得る。図2A~Cに見られるように、いくつかの実施形態では、増強領域100はポート177とプローブ100の遠心端との間に置かれ得る。増強領域100は、遠位端に隣接するプローブの部分を部分的に(例えば図2Aに示すように)又は十分に(図2Bに示すように)囲むパッチとして形成され得る。いくつかの実施形態では、増強領域100はプローブの遠位端上に形成され得る(図2Cに見られるように)。いくつかの実施形態では、増強領域100はプローブの両側に又はその端に形成され得る。別の例では、増強表面は硝子体切除プローブの側面又は勾配面上に置かれ得る(例えば図2Dに見られるように)。更に別の例として、増強表面は、傾斜面と前面との間の硝子体切除プローブの丸い先端上に置かれ得る(例えば図2Eに示すように)。
【0021】
例えば、歯200は、図4Aに示すように連続リブであってもよいし図4Bに示すように個々の鱗の列で構成されてもよく、これによりいずれの場合も隣接組織皮膜260に摩擦グリッドを提示する。もう一度、描写された歯200は、針175から垂直又は水平方向(高さ又はプロファイルで約3~約40マイクロメートルの距離)に出現する。しかし、これは必要とされなく、そして一実施形態では、歯200はこのような方向における運動が硝子体皮膜260の剪断を促進するように前方向又は逆方向に角度付けされ得る。実際、逆方向における角度付けが図2A~Cに示されている。なお、皮膜260に対し垂直な針175では、この角度付けは10°~90°の間の任意の角度であり得る。
【0022】
ここで図3を参照すると、眼350におけるPVD処置において利用される図1のプローブ101の側面断面概観が示されている。特に、硝子体皮膜260は基底網膜260から剪断的に切り離されて示されている。この外科処置中、硝子体切除プローブ101は、描写された分離を容易にするめに、増強領域100と皮膜260とを摩擦的に接触するために利用される。当然、これは、予め置かれたカニューレ330にプローブ101の針175が挿入されそして眼350の前部領域に向けられることで始まる。
【0023】
硝子体皮膜260が十分に切り離されると、吸引が行われ、そしてプローブ101のポート177は切り離された硝子体物質の取り込みのために利用され得る。更に、図示のように適所に置かれた硝子体切除プローブ101により、硝子体液又は他の物質の取り込みを目的とした従来の硝子体切除を同じ1回の介入で行うことができる。例えば、示された処置では、領域310内で出血が起こる可能性があり、血液もまた硝子体液及び前部硝子体物質と共にポート177内に吸い込まれる。当然、この領域は、PVD処置に先立って浮遊物として現れた硝子体物質を含み得る。それにもかかわらず、同硝子体切除はこのような物質の取り込みのために使用され得る。
【0024】
この繊細な処置中に針175内で往復運動するカッターは、これらの生体物質の取り込みが隣接する眼の機能への損傷を回避するのに役立つやり方で確実に行われる、ということに役立つということを想起されたい。更に、図示されるように、手術は、強膜370においてオフセット的やり方で位置決めされたカニューレ315及び330を介し眼350内へ到達するプローブ101及び光学器具325を含む。このようにして、より繊細な角膜390及び水晶体380が回避され得る。同様に、視神経360及び網膜280もまた極めて繊細である。したがって、PVD中の硝子体皮膜260を切り離すための剪断又は摩擦プローブ技術の使用は多大な利益であり得る。
【0025】
次に図4A及び4Bを参照すると、走査型電子顕微鏡(SEM)を介し明白であり得るような、増強表面領域100の実施形態のより近い図が示される。具体的には、図4A図2A~Cに示すような列の歯200がどのように見えるかを示す。代替的に、図4Bは、摩擦グリッド表面を図2A~C及び図3に示すような隣接硝子体皮膜260に提示する可能性がある上に参照されたような個々の歯200を示す。図4Bの実施形態では、これらの突起200はおおよそ15×15マイクロメートルの大きさで約3~50マイクロメートルの深さである。他の寸法も企図される(例えば10×10マイクロメートル、20×20マイクロメートル、25×25マイクロメートルなど)。もう一度、歯200は、四角錐状、円筒状、円形、多角形、矩形、正方形、貝殻状、又は多数の他の形態など多種多様な形状を呈し得る。更に、個々の歯として提示されているが、突起200は図4Aのものと同様な列で整列されるということに留意されたい。
【0026】
ここで図5を参照すると、PVD処置を容易にするための増強表面を有する硝子体切除プローブ針を利用する実施形態を要約するフローチャートが示されている。具体的には、針は、515において指示されるように患者の眼内の硝子体皮膜に向かって前進される。針及び増強表面は基底網膜からの硝子体の剪断タイプの切り離しを実現するために使用され得る(540を参照)。540において指示されるように、切り離された硝子体物質はPVDのために既に存在する針により取り込まれ得る。実際、590において記載されるように、針は眼内に依然として在る間の硝子体切除を容易にするために使用され得る。
【0027】
上に説明された実施形態は、強化された摩擦特性を有する針器具を通じてのPVD処置に対処しそしてそれを容易にするために硝子体切除プローブの使用を含む。したがって、大体において、基底網膜から硝子体皮膜を持ち上げて切り離すための剥離力又は引張力が回避され得る。この結果、網膜を引張力により意図せず切り離す又は損傷させる傾向もまた大いに回避され得る。更に、同じ器具が、硝子体のその後の取り込み及び他の硝子体切除タスクのために使用されるPVDのために利用されるので介入の回数は有益に低減され得る。
【0028】
図6は、プローブ601の遠位部上に増強表面603を有する直線状内視鏡照明器プローブ601を示す。増強表面603はプローブ遠位端全体の周りに又はその一部分上に置かれ得る(例えばプローブ遠位端周りの180度の周面を介し)。他の部分(例えば90度、45度などの)も企図される。いくつかの実施形態では、増強表面603はプローブ遠位端の先端近くだけに置かれ得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、増強表面はハサミ上に置かれ得る(例えば図7a内の湾曲ハサミ701の内部表面上の増強表面703)。別の例として、増強表面705は図7bにおける湾曲ハサミ707の外側表面上で使用され得る。いくつかの実施形態では、増強表面はハサミの切断端に沿って置かれ得る。
【0030】
増強表面は他のタイプのハサミ上で同様に使用され得る。例えば、図8に見られるように、増強表面803は直線状ハサミ801の遠位部上で使用され得る。更に別の例として、増強表面903は、図9aに見られるように垂直ハサミ901の内部表面上で使用され得る又は垂直ハサミ905の外側曲面上で使用され得る(図9bの増強表面907を参照)。
【0031】
いくつかの実施形態では、増強表面1003は鉗子上で使用され得る。例えば、図10は、その遠位部上に増強表面1003を有する三角鉗子1001(例えばGRIESHABER MAXGRIP(登録商標)鉗子)を示す。図11は端把持鉗子1101の遠位部上の増強表面1103の別の例を示す。更に別の例として、図12は鉗子の遠位部上に増強表面1203を有する非対称鉗子1201を示す。更に、図13は鉗子1301の遠位部上に増強表面1303を有する鋸歯状鉗子1301を示す。いくつかの実施形態では、増強表面は鉗子の把持プラットホーム上に置かれ得る(例えば約1~5マイクロメートルの範囲内の高さまで)。
【0032】
増強表面は更に膜ピック上で使用される(例えば、ピック1401の遠位部上に増強表面1403を示す図14とピック1501の遠位部上に増強表面1503を有する被照射膜ピック1501を示す図15とを参照)。
【0033】
図16はスパチュラ1601の遠位部上に増強表面1603を有する剥離スパチュラ1601を示す。いくつかの実施形態では、増強表面1603はスパチュラ1601の内面上に在り得る。いくつかの実施形態では、増強表面1603がスパチュラ1601の外側曲線上に在り得る。
【0034】
図17は、スクレーパ1701の遠位部上に増強表面1703を有する軟質膜スクレーパ1701を示す。いくつかの実施形態では、増強表面1703はスクレーパ1701の外側曲線上に在り得る。増強表面1703は、スクレーパ1701の最遠位部上に在り得、そしていくつかの実施形態ではスクレーパ1701のループの側面の少なくとも部分的に下に延伸し得る。いくつかの実施形態では、ループ全体が増強表面1703を含み得る。
【0035】
図18aは、プローブ1801の遠位部上に増強表面1803を有する直線状レーザプローブ1801を示す。いくつかの実施形態では、レーザプローブ1801はレーザプローブ1801の遠位側部上に増強表面1803を含み得る。いくつかの実施形態では、増強表面1803はプローブ1801の遠位側に沿ってずっと延伸し得る。いくつかの実施形態では、より小さな角度(例えば180度、90度、45度、など)の被覆が使用され得る。
【0036】
図18bは、プローブ1805の遠位部上に増強表面1807を有する湾曲レーザプローブ1805を示す。いくつかの実施形態では、増強表面1807はレーザプローブ1805の内側曲線及び/又は外側曲線上に置かれ得る。いくつかの実施形態では、増強表面1807はレーザプローブ1805の遠位端の周囲全体に沿って延伸し得る。いくつかの実施形態では、より小さな角度(例えば180度、90度、45度、など)の被覆が使用され得る。
【0037】
図19は、そのタブの底面上に増強表面1903を有するタブを有する黄斑レンズ1901を示す。いくつかの実施形態では、タブの底面が増強表面1903(眼に接触する表面)を含み得る。いくつかの実施形態では、増強表面1903はタブのすべての上に在り得る。いくつかの実施形態では、増強表面1903はタブのサブセット上に(例えば1タブおきに)在り得る。
【0038】
図20は先端の遠位部上に増強表面2003を有する吸引ハンドピース2001を示す。いくつかの実施形態では、増強表面2003は吸引ハンドピース2001の先端の内側曲線上に置かれ得る。いくつかの実施形態では、増強表面2003は吸引ハンドピース2001の外側表面上に置かれ得る。いくつかの実施形態では、増強表面2003は吸引ハンドピース2001の遠位端の周囲全体に沿って延伸し得る。いくつかの実施形態では、より小さな角度(例えば180度、90度、45度など)の被覆が使用され得る。
【0039】
先の説明はいくつかの実施形態を参照して提示された。しかし、上に開示されたが詳述されなかった実施形態の他の実施形態及び/又は特徴が採用されてもよい。更に、これらの実施形態が関係する技術の当業者は、説明された操作構造及び方法における更に他の改変及び変更がこれらの実施形態の原理及び範囲から有意に逸脱することなく実行され得るということを認識されるであろう。加えて、先の説明は、添付図面において説明され示された精密な構造だけに関係すると読まれるべきではなく、むしろ、最も完全で公正な範囲を有する以下の特許請求項に一致するものとして、そしてそれを支援するものとして読まれるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
【国際調査報告】