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特表2024-533148粘弾性減衰層を含む遮音ガラスアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】粘弾性減衰層を含む遮音ガラスアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240905BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C03C27/12 F
B60J1/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513871
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022074513
(87)【国際公開番号】W WO2023031430
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】2109187
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】メルシエ,ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】セダノ セラノ,フランシスコ ジャヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ライ,チョン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ニッキー
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA03
4G061AA11
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB16
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
本発明は、車両用ガラスアセンブリ(1)に関しており、ガラスアセンブリは、重ねられた第一のガラスシート(2)と第二のガラスシート(3)、車両の音響減衰のための第一の粘弾性減衰層(4)を含み、第一の減衰層(4)は、少なくとも1つのアクリルポリマー、少なくとも1つの粘着付与剤、および少なくとも1つの可塑剤を含む材料によって形成され、第一の減衰層(4)は、第一のガラスシート(2)と第二のガラスシート(3)との間に配置され、また第一のガラスシート(2)と直接接触している。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ガラスアセンブリ(1)であって、ガラスアセンブリ(1)は、重ねられた第一のガラスシート(2)と第二のガラスシート(3)とを含み、ガラスアセンブリ(1)は、車両の音響減衰のための第一の粘弾性減衰層(4)を含み、第一の減衰層(4)が、
- 少なくとも1つのアクリルポリマー、
- 少なくとも1つの粘着付与剤、および
- 少なくとも1つの可塑剤、
を含む材料によって形成され、
第一の減衰層(4)が、第一のガラスシート(2)と第二のガラスシート(3)との間に配置され、また第一のガラスシート(2)と直接接触していることを特徴とする、車両用ガラスアセンブリ。
【請求項2】
材料が、-70℃から10℃以下、とりわけ-45℃~0℃また好ましくは-40℃~-20℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載のガラスアセンブリ。
【請求項3】
材料が、0.21~0.62、とりわけ0.21~0.51また好ましくは0.21~0.35の、第一の層(4)における単数または複数のアクリルポリマーの質量分率を有する、請求項1または2に記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項4】
材料が、0.17~0.60、とりわけ0.22~0.35また好ましくは0.22~0.26の、第一の減衰層(4)における単数または複数の粘着付与剤の質量分率を有する、請求項1から3のいずれか一つに記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項5】
材料が、0.07~0.43、とりわけ0.12~0.31また好ましくは0.16~0.26の、第一の減衰層(4)における単数または複数の可塑剤の質量分率を有する、請求項1から4のいずれか一つに記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項6】
粘着付与剤が、水素化樹脂、また好ましくは水素化ロジン樹脂を含む、請求項1から5のいずれか一つに記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項7】
単数または複数のアクリルポリマーが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸イソアミル、メタクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸、スチレンおよびアクリロニトリルによって形成されるグループの中から選択されるモノマーから形成される、請求項1から6のいずれか一つに記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項8】
第一の減衰層(4)が、5μm~500μm、とりわけ30μm~100μmの厚さeを有する、請求項1から7のいずれか一つに記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項9】
材料が、第一のガラス転移温度Tg1を有する第一のアクリルポリマーと、Tg1を超える第二のガラス転移温度Tg2を有する第二のポリマーとを含み、第二のガラス転移温度Tg2と第一のガラス転移温度Tg1との間の差が、好ましくは10℃を超え、また好ましくは20℃を超える、請求項1から8のいずれか一つに記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項10】
第一の減衰層(4)が、第二のガラスシート(3)と直接接触している、請求項1から9のいずれか一つに記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項11】
第二の減衰層(8)を含み、第二の減衰層(8)が、第一の減衰層(4)と第二のガラスシート(3)との間に配置され、第二の減衰層(8)が、第二のガラスシート(3)と直接接触している、請求項1から10のいずれか一つに記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項12】
第一の減衰層(4)が、第一の損失係数ηを有する第一の材料によって形成され、第二の減衰層(8)が、第二の損失係数ηを有する第二の材料によって形成され、ガラスアセンブリ(1)が、中間層(9)を含み、中間層(9)が、第一の減衰層(4)と第二の減衰層(8)との間に配置され、中間層(9)が、第三の損失係数ηを有する第三の材料によって形成され、第三の損失係数ηが、第一の損失係数よりも小さく、また第二の損失係数ηよりも小さい、請求項11に記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項13】
第一のガラスシート(2)が、第一の厚さeを有し、第二のガラスシート(3)が、第二の厚さeを有し、第一の厚さeが、第二の厚さeを超えており、第一の厚さeが好ましくは、1mm以上かつ5mm以下であり、第二の厚さeが好ましくは、0.5mm以上かつ5mm未満である、請求項1から12のいずれか一つに記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項14】
第一の減衰層(4)の材料が、1kHz~10kHzの周波数帯域において最大損失係数η1maxを有し、最大損失係数η1maxが、とりわけ1より大きく、また好ましくは3.5より大きい、請求項1から13のいずれか一つに記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項15】
ガラスアセンブリが、車両の開閉式側面ガラスアセンブリである、請求項1から14のいずれか一つに記載のガラスアセンブリ(1)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一つに記載のガラスアセンブリ(1)の製造方法であって、方法が以下の、
a)第一のガラスシート(2)上の液体組成物の被着ステップであって、組成物は、ラテックス、粘着付与剤、および可塑剤を含み、ラテックスはエマルジョンを含み、エマルジョンは連続水相と分散相とを含み、分散相は少なくとも1つのアクリルポリマーを含むこと、
b)第一のガラスシート(2)上の組成物の乾燥ステップであって、第一の減衰層(4)が形成されること、
を含む、ガラスアセンブリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の音響減衰のための粘弾性減衰層を含むガラス要素、およびそのようなガラス要素の製造方法に関する。ガラス要素は特に、自動車の開閉式側面グレージングであることができる。
【背景技術】
【0002】
自動車の開閉式側面グレージングとして強化ガラス製グレージングを使用することが知られている。しかしながら、そのようなグレージングは、車両の移動の際に、グレージング上の空気流の乱流によってもたらされる空気の騒音の伝達が著しい。
【0003】
このために、欧州特許出願公開第2608958号明細書は、積層ガラスアセンブリを含む側面グレージングを記述している。積層ガラスアセンブリは、重ねられた2枚のガラスシートと1枚の中間層とを含む。中間層は、2枚の重ねられたPVB製の外部層と、2枚の外部層の間に配置されたPVB製の内部層とを含み、内部層は、2枚の外部層よりも高い音響減衰特性を有する。このようなガラス要素は、モノリシック強化ガラスによって形成されたグレージングのものよりも高い音響減衰特性を有する。
【0004】
しかしながら、単数または複数のPVB層を含むグレージングの製造は、複雑になる可能性がある。例えば、PVB層をガラスシートに粘着するには、オートクレーブにおける処理が必要である。さらに、PVB層を含むガラスアセンブリは、車両のドアの溝が許容する厚さを超え得る厚さを有する。最後に、積層グレージングは、強化ガラスよりも低い機械的剛性を有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2608958号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、車両のガラスアセンブリ、特に車両の側面グレージングの音響減衰を増大させるための解決案を、その製造の複雑さを制限しつつ、提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、車両用ガラスアセンブリのおかげで本発明の範囲内で達成され、ガラスアセンブリは、重ねられた第一のガラスシートと第二のガラスシートとを含み、ガラスアセンブリは、車両の音響減衰のための第一の粘弾性減衰層を含み、第一の減衰層は、
- 少なくとも1つのアクリルポリマー、
- 少なくとも1つの粘着付与剤、および
- 少なくとも1つの可塑剤、
を含む材料によって形成され、
第一の減衰層は、第一のガラスシートと第二のガラスシートとの間に配置され、また第一のガラスシートと直接接触している。
【0008】
本発明は有利には、以下の特徴によって補完され、これらの特徴は、個々にまたは技術的に可能なそれらの組み合わせのうちの任意の1つとして選ばれる:
- 材料は、-70℃から10℃以下、とりわけ-55℃から10℃以下、とりわけ-45℃~+5℃、とりわけ-45℃~0℃また好ましくは-40℃~-20℃のガラス転移温度を有する、
- 材料は、0.21~0.62、とりわけ0.21~0.51また好ましくは0.21~0.35の、第一の層における単数または複数のアクリルポリマーの質量分率を有する、
- 材料は、0.17~0.60、とりわけ0.22~0.35また好ましくは0.22~0.26の、第一の層における単数または複数の粘着付与剤の質量分率を有する、
- 材料は、0.07~0.43、とりわけ0.12~0.31また好ましくは0.16~0.26の、第一の層における単数または複数の可塑剤の質量分率を有する、
- 粘着付与剤は、水素化樹脂、また好ましくは水素化ロジン樹脂を含む、
- 単数または複数のアクリルポリマーは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸イソアミル、メタクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸、スチレンおよびアクリロニトリルによって形成されるグループの中から選択されるモノマーから形成される、
- 第一の減衰層は、5μm~500μm、とりわけ30μm~100μmまた好ましくは40μm~70μmの厚さeを有する、
- 材料は、第一のガラス転移温度Tg1を有する第一のアクリルポリマーと、Tg1を超える第二のガラス転移温度Tg2を有する第二のポリマーとを含み、第二のガラス転移温度Tg2と第一のガラス転移温度Tg1との間の差は、好ましくは10℃を超え、また好ましくは20℃を超える、
- 第一の減衰層は、第二のガラスシートと直接接触している、
- ガラスアセンブリは、第二の減衰層を含み、第二の減衰層は、第一の減衰層と第二のガラスシートとの間に配置され、第二の減衰層は、第二のガラスシートと直接接触している、
- 第一の減衰層は、第一の損失係数ηを有する第一の材料によって形成され、第二の減衰層は、第二の損失係数ηを有する第二の材料によって形成され、ガラスアセンブリは、中間層を含み、中間層は、第一の減衰層と第二の減衰層との間に配置され、中間層は、第三の損失係数ηを有する第三の材料によって形成され、第三の損失係数ηは、第一の損失係数ηよりも小さく、また第二の損失係数ηよりも小さい、
- 第一の材料は、第一のヤング率Eと第一のヤング率の実部E’とを有し、第二の材料は、第二のヤング率Eと第二のヤング率の実部E’とを有し、第三の材料は、第三のヤング率Eと第三のヤング率の実部E’とを有し、第三のヤング率の実部E’は、第一のヤング率の実部E’よりも大きく、また第二のヤング率の実部E’よりも大きい、
- 第一のガラスシートは、第一の厚さeを有し、第二のガラスシートは、第二の厚さeを有し、第一の厚さeは、第二の厚さeを超えており、第一の厚さeは好ましくは、1mm以上かつ5mm以下であり、第二の厚さeは好ましくは、0.5mm以上かつ5mm未満である、
- 第一の減衰層の材料は、1kHz~10kHzの周波数帯域において最大損失係数η1maxを有する、
- 最大損失係数η1maxは、1より大きく、また好ましくは3.5より大きい、
- ガラスアセンブリは、車両の側面ガラスアセンブリ、好ましくは車両の開閉式側面ガラスアセンブリである。
【0009】
本発明の別の態様は、本発明の一実施形態によるガラスアセンブリの製造方法であって、該方法は以下を含む:
a)第一のガラスシート上の液体組成物の被着ステップであって、組成物は、ラテックス、粘着付与剤、および可塑剤を含み、ラテックスはエマルジョンを含み、エマルジョンは連続水相と分散相とを含み、分散相は少なくとも1つのアクリルポリマーを含む、
b)第一の減衰層を形成するための、第一のガラスシート上の組成物の乾燥ステップ。
【0010】
有利には、第一のガラスシート上の液体組成物の被着は、ブレードコーティングのプロセスによって実行される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の他の特徴、目的および利点は、続きの説明から明らかになるであろうが、これは単に例示的なものであって限定するものではなく、以下のような付属の図面と対比して読まなければならない。
【0012】
図1】本発明の一実施形態による側面グレージングを概略的に示している。
図2】本発明の一実施形態によるガラスアセンブリの断面の詳細を概略的に示しており、ここでガラスアセンブリは単一の減衰層を含んでいる。
図3】本発明の一実施形態によるガラスアセンブリの製造方法を概略的に示している。
図4】本発明の一実施形態によるガラスアセンブリの材料の損失係数を、第一の層の粘着付与剤および可塑剤のさまざまな質量分率について示している。
図5】本発明の一実施形態によるガラスアセンブリの材料のせん断弾性係数の実部を、第一の層における粘着付与剤および可塑剤のさまざまな質量分率について示している。
図6】本発明の一実施形態によるガラスアセンブリの断面を概略的に示しており、ガラスアセンブリは2枚の中間層を含んでいる。
図7】本発明の一実施形態によるガラス要素の音響減衰と既知のガラス要素の音響減衰とを、各ガラス要素への入射波の周波数に応じて示している。
【0013】
図面の全体にわたって、類似した要素は、同一の参照記号を有している。
【0014】
[定義]
材料の「損失係数η」という場合、材料が、材料のヤング率の虚部E’’と材料のヤング率の実部E’との比である複素ヤング率を有することを意味する。材料の損失係数ηは、国際規格ISO 18437-2:2005(Mechanical vibration and shock-Characterization of the dynamic mechanical properties of visco-elastic materials-Part 2:Resonance method,partie 3.2)によって定義されている。損失係数ηは好ましくは、所定の周波数について定義されることができる。本明細書において、「材料が、ある値より大きい第一の損失係数ηを有する」とは、材料が、20℃での、可聴周波数帯域内、すなわち20Hz以上かつ20kHz以下また好ましくは20Hz以上かつ10kHz以下に及ぶ周波数帯域内で選択される少なくとも1つの周波数についての値よりも大きい第一の損失係数ηを有することを意味する。
【0015】
「材料のヤング率の実部E’の値が、ある値より大きい」とは、材料のヤング率の実部E’の値が、20℃での、可聴周波数帯域内、すなわち20Hz以上かつ20kHz以下また好ましくは20Hz以上かつ10kHz以下に及ぶ周波数帯域内で選択される少なくとも1つの周波数についての材料のヤング率の実部E’の値よりも大きいことを意味する。
【0016】
ヤング率の実部E’および虚部E’’は、所定の温度について定義されることができる。本明細書において、「材料のヤング率の実部E’が、ある値より大きい」とは、材料が、20℃での値よりも大きいヤング率の実部E’を有することを意味する。本明細書において、「材料が、ある値より大きい第一の損失係数ηを有する」とは、材料が、20℃での値よりも大きい第一の損失係数ηを有することを意味する。
【0017】
せん断弾性係数Gは、特に等方性材料について、関係G=E/2(1+v)によってヤング率Eに関係づけられることができ、ここでvは、材料のポアソン比である。
【0018】
材料の動的特性評価は、ビスコアナライザーMetravibタイプの粘度計で、以下の測定条件において実現することができる。正弦波外力が材料に加えられる。測定すべき材料によって形成される測定用試料は、2つの直方体で構成され、各平行六面体は、厚さ3.31mm、幅10.38mmおよび高さ6.44mmを有する。材料によって形成される各平行六面体はまた、せん断「試験片」という用語でも呼ばれる。励起が、静止位置を中心に5μmの動的振幅で行われ、1Hz~700Hzの周波数帯域を含み、また-90℃~+60℃の温度範囲を含む。
【0019】
粘度計は、各試験片(各試料)を温度と周波数の正確な条件下で変形させ、試験片の変位、試験片に加わる力、およびそれらの位相差を測定することを可能にし、これにより、試験片の材料を特徴付けるレオロジー量を測定することが可能になる。
【0020】
測定値を活用すると特に、材料のヤング率E、また詳しくは材料のヤング率の実部E’およびヤング率の虚部E’’を計算すること、またしたがって損失角の正接(または損失係数)η(tanδとも示される)を計算することが可能になる。
【0021】
材料のヤング率の実部E’の値および/または損失係数ηは、材料にプレストレスを与えずに測定される。
【0022】
「光透過率」とは、規格NF EN 410において定義されている係数を指す。
【0023】
「曇価」とは、2.5°より大きい角度でガラス要素を通過することによって拡散される光の全体の強度(散乱比すなわちI)とガラス要素を透過する光の強度(I)との間の関係である。曇価は、分光学の技術によって測定することができる。可視光領域(380nmから780nm)の全体にわたる強度の積分は、正規の透過率Tと拡散透過率Tとを決定することを可能にする。そのような測定値はまた、ヘーズメーターの使用によって得ることもできる。その曇価が10%未満、特に5%未満また好ましくは1%未満である場合に、グレージングは透明であると考えられる。ヘーズメーターは、BYK-Gardner社が販売する「Haze-Gard(登録商標)」装置であり得る。
【0024】
「透明度」とは、以下の式によって定義される関係を意味する。
【0025】
【数1】
【0026】
この式において、Iは、拡散されなかった、グレージングを通過した後の光の強さであり、Iは、小さい角度、好ましくは15°に等しい角度に沿って拡散された、グレージングを通過した後の光の強さである。透明度は、分光学の技術によって測定することができる。可視光領域(380nmから780nm)の全体にわたる強度の積分は、正規の透過率Tと拡散透過率Tとを決定することを可能にする。そのような測定値はまた、ヘーズメーターの使用によって得ることもできる。その透明度が90%を超える場合また好ましくは95%を超える場合に、グレージングは透明であると考えられる。
【0027】
材料、好ましくは第一の減衰層の材料のガラス転移温度Tは、示差走査熱量測定(英語で、Differential Scanning Calorimetryの略であるDSC)の分析によって測定することができる。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定に関する規格ASTM-D-3418において記述されているような中間点法を用いて決定することができる。本出願人が使用する測定器具は、TAインスツルメントのDiscovery DSCモデルである。
【0028】
好ましくは、ガラス転移温度Tは、動的粘弾性測定(DMA)または動的機械分光法によって決定される。Tの値は、等周波数での、材料の温度に応じた損失係数の曲線を描画することによって決定する。損失係数の値が最大となる温度は、ガラス転移温度Tに等しい。ガラス転移温度は、材料の励起周波数に依存する。本明細書において、「ガラス転移温度」とは、DMAによって1Hzの周波数で測定されるガラス転移温度を意味する。
【0029】
第二の要素における第一の要素の「質量分率」とは、第二の要素の質量に対する第一の要素の質量の割合を意味する。
【0030】
[発明の詳細な説明]
ガラスアセンブリの一般的な構造
【0031】
図1および図2を参照して、ガラスアセンブリ1は、重ねられた第一のガラスシート2と第二のガラスシート3とを含む。第一のガラスシート2および/または第二のガラスシート3は、無機ガラスまたは有機ガラスによって形成されることができる。
【0032】
ガラスアセンブリ1は、車両のフロントガラス、リヤウインド、および側面ガラスアセンブリの中から選択されることができる。車両は、自動車、列車、および/または航空機であり得る。図1を参照して、ガラスアセンブリ1は好ましくは、車両の開閉式側面ガラスアセンブリである。
【0033】
図2を参照して、ガラスアセンブリ1は、車両の音響減衰のための第一の粘弾性減衰層4を含む。第一の層4は、少なくとも1つのアクリルポリマー、少なくとも1つの粘着付与剤、および少なくとも1つの可塑剤を含む材料によって形成される。第一の層4の材料は、1kHz~10kHzの周波数帯域において最大損失係数η1maxを有することができる。最大損失係数η1maxは、1より大きくてよく、また好ましくは3.5より大きくてよい。
【0034】
第一の減衰層4は、第一のガラスシート2と第二のガラスシート3との間に配置され、また第一のガラスシート2と直接接触している。このように遮音ガラスアセンブリは、匹敵し得る音響減衰特性を有する既知のガラスアセンブリ、例えばPVB(ポリビニルブチラール)層を含むガラスアセンブリよりも製造が単純であると同時に、車両における使用に適合した光透過率特性、曇価特性および透明度特性を有する。
【0035】
実際に、本発明者らは、少なくとも、アクリルポリマー、粘着付与剤、および可塑剤によって形成される材料が、音響減衰特性を有することができると同時に、該材料が第一のガラスシート2と直接接触している場合に車両グレージングに適合した光透過率、曇価および透明度をガラス要素が有することを可能にする、透明の境界面を形成することができることを発見した。好ましくは、ガラス要素1の光透過率は、90%を超える。好ましくは、ガラス要素1の曇価は、1%未満である。好ましくは、ガラス要素1の透明度は、99%を超える。
【0036】
第一の減衰層4は、5μm~500μm、とりわけ30μm~100μm、また好ましくは40μm~70μmの厚さeを有する。このように、ガラスアセンブリは、既知のガラス要素に照らし合わせてみると、第一の層4を製造するために使用する原料の量を減らしつつ、音響減衰特性を有する。
【0037】
第一の粘弾性減衰層4
【0038】
先に定義されたように、第一の層4は、少なくとも1つのアクリルポリマー、少なくとも1つの粘着付与剤、および少なくとも1つの可塑剤を含む材料によって形成される。
【0039】
材料は、-55℃から10℃以下、とりわけ-45℃~+5℃、また好ましくは-30℃~-5℃のガラス転移温度を有することができる。このように、20℃で、材料の最大損失係数は、可聴周波数帯域内に含まれることができる。
【0040】
単数または複数のアクリルポリマー
【0041】
単数または複数のアクリルポリマーは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸ter-ブチル、メタクリル酸ter-ブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸イソアミル、メタクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸、スチレンおよびアクリロニトリルによって形成されるグループの中から選択されるモノマーから形成されることができる。
【0042】
単数または複数のアクリルポリマーは、先に定義されたモノマーによって形成されるグループの中から選択される少なくとも2つのモノマーから形成されるコポリマーであり得る。
【0043】
好ましくは、第一の減衰層4は、2つの異なったアクリルポリマーを含むことができる。2つのポリマーのうちの1つは、アクリル酸2-エチルヘキシル(2-EHA)および/またはアクリル酸ブチル(BA)であり得る。好ましくは、2つのポリマーのうちの1つはアクリル酸2-エチルヘキシル(2-EHA)であり、2つのポリマーのうちのもう1つはアクリル酸ブチル(BA)である。アクリル酸2-エチルヘキシル(2-EHA)とアクリル酸ブチル(BA)との間の質量比は、2~4であり得、また好ましくは3に等しい。
【0044】
第一の層4を形成するために、アクリルポリマーを含む他の市販のラテックスを使用することができる。例えば、Arkema(登録商標)Encor 4028、Arkema(登録商標)Encor 4517、またはAlberdingk(登録商標)A&B75070のラテックスを使用することが可能である。
【0045】
材料は、アクリルポリマーではない他のポリマーを含むことができる。そのような他のポリマーは、スチレンとメタクリル酸メチルとの中から選ばれる少なくとも1つのモノマーから形成されることができる。
【0046】
材料は、第一のガラス転移温度Tg1を有する第一のアクリルポリマーと、Tg1を超える第二のガラス転移温度Tg2を有する、アクリル系またはアクリル系ではない、第二のポリマーとを含むことができる。第二のガラス転移温度Tg2と第一のガラス転移温度Tg1との間の差は、好ましくは10℃を超え、また好ましくは20℃を超える。このように、第一のアクリルポリマーを用いるだけで得られる材料のガラス転移温度に照らし合わせてみると、材料のガラス転移温度を上げることが可能である。実際に、第一のアクリルポリマーを用いるだけで得られるガラス転移温度は、可聴周波数帯域内で材料の最大減衰を示すには低すぎる可能性がある。
【0047】
単数または複数のポリマーは、相互侵入高分子網目(IPN)を形成することができる。相互侵入高分子網目は、第一のガラスシート上に被着されるラテックスから作られることができる。「ラテックス」とは、水または水性溶媒中のポリマー微粒子の分散体を意味する。ラテックスは、コアシェル構造(英語でcore-shell)を有するポリマー微粒子を含むことができる。コアは、-50℃~-30℃、好ましくは-45℃~-35℃のガラス転移温度(Tg)を有する相互侵入高分子網目(IPN)で形成されることができ、またシェルは、乾燥後の微粒子の融合を可能にするのに十分に低いガラス転移温度を有するポリマーで形成されることができる。シェルのガラス転移温度は、コアのガラス転移温度よりも低くてもよく、また好ましくは-50℃未満、またより好ましくは-60℃未満であり得る。相互侵入高分子網目で形成されるコアは、2回の連続した重合によって得ることができる。IPNはこのように、3つ目の架橋ポリマーおよび4つ目のポリマーを含み、4つ目のポリマーは、架橋していても架橋していなくてもよい。4つ目のポリマーが架橋していない場合、IPNは、いわゆる「半相互侵入高分子」網目である。4つ目のポリマーは、線状でも分岐状でもよい。
【0048】
粘着付与剤
【0049】
粘着付与剤は、第一のガラスシート2を、第一の層4、好ましくは第二のガラス層3と直接接触している別の層と接着することを可能にするのに適合している。
【0050】
粘着付与剤は、水素化樹脂、また好ましくは水素化ロジン樹脂を含むことができる。水素化樹脂は、ウッドレジングリセリンエステル、好ましくはアビエチン酸を含んでもよい。水素化樹脂は、水素化ロジンエステル(例えばArakawa(登録商標)KE-311またはKE-100の樹脂)を含んでもよい。
【0051】
可塑剤
【0052】
可塑剤は、第一の層4の可塑性を高めるのに適合している。可塑剤は、クエン酸塩、アジピン酸塩、グリコールおよびトリエチレングリコール誘導体の中から選択される少なくとも1つの要素を含み得る。クエン酸塩は、クエン酸アセチルトリブチルであってもよい。アジピン酸塩は、トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノアート)(例えば、Celanese(登録商標)からWVC 3800の名称で販売されている)であってもよい。
【0053】
ガラス要素1の製造方法
【0054】
図3を参照して、本発明の別の態様は、本発明の一実施形態によるガラスアセンブリ1の製造方法である。方法は、第一のガラスシート2上に液体組成物を被着するステップ301を含む。組成物は、ラテックス、粘着付与剤、および可塑剤を含む。ラテックスは、エマルジョンを含む。エマルジョンは、連続水相と分散相とを含む。分散相は、少なくとも1つのアクリルポリマーを含む。組成物は、水相中でのラテックス、粘着付与剤および可塑剤の希釈物であり得る。
【0055】
方法は、第一のガラスシート2上の組成物の乾燥ステップ302を含み、第一の減衰層4を形成する。このように、第一の減衰層4を、車両のガラスアセンブリ用に適合された光学特性を有する透明の境界面を形成しつつ、第一のガラスシート2上に直接接触して形成することが可能である。
【0056】
第一のガラスシート上への組成物の被着ステップ301は、ブレードコーティングプロセス(バーコート法とも呼ばれ、または英語で「bar-coating」と呼ばれる)によって実行され得る。
【0057】
方法は次に、第二のガラスシート8が配置されるようになる圧延ステップを含む。方法は最後に、ガラスアセンブリを、例えば300Pa未満の圧力で、真空にするステップを含むことができる。
【0058】
このように、90%を超える透過率、1%未満の曇価、および99%を超える透明度を有するガラスアセンブリを製造することが可能である。
【0059】
ガラス要素1の音響特性の調整
【0060】
材料は、0.21~0.62、とりわけ0.21~0.51、また好ましくは0.21~0.35の、第一の層4における単数または複数のアクリルポリマーの質量分率を有する。このように、第一の層4の材料は、1より大きい損失係数tanδを有する。
【0061】
アクリルポリマーを含む、音響減衰のための既知の材料は、第一の層4の材料の損失係数tanδの値が50kHzより大きくなる周波数fを有する。この周波数は、可聴周波数スペクトル内に含まれておらず、このことは音響減衰特性を減少させる。
【0062】
材料は、0.07~0.43、とりわけ0.12~0.31、また好ましくは0.16~0.26の、第一の層4における単数または複数の可塑剤の質量分率を有する。このように、第一の層4の材料の損失係数tanδの値が最大となる周波数fは、既知の材料に照らし合わせてみると、損失係数tanδの値が上がりつつ、可聴周波数スペクトル内に含まれる。
【0063】
実際に、発明者らは、所定の濃度の単数または複数のアクリルポリマーについて、損失係数が最大となる周波数fが、第一の層4中の可塑剤の質量分率と同じ方向に変化することを発見した。発明者らはこのように、周波数fが可聴周波数スペクトル内に含まれる第一の層4中の可塑剤の質量分率の範囲を発見した。さらに、第一の層4の材料の損失係数tanδの値は、第一の層4中の可塑剤の質量分率と同じ方向に変化する。
【0064】
材料は、0.17~0.60、とりわけ0.22~0.35、また好ましくは0.22~0.26の、第一の層における単数または複数の粘着付与剤の質量分率を有することができる。このように、第一の層4の材料の損失係数tanδの値が最大となる周波数fは、可聴周波数スペクトルの中に含まれる。
【0065】
実際に、発明者らは、所定の濃度の単数または複数のアクリルポリマーについて、損失係数が最大となる周波数fが、第一の層中の粘着付与剤の質量分率と反対の方向に変化することを発見した。発明者らはこのように、周波数fが可聴周波数スペクトル内に含まれる第一の層4中の粘着付与剤の質量分率の範囲を発見した。さらに、第一の層4の材料の損失係数tanδの値は、第一の層4中の粘着付与剤の質量分率にほぼ関係なく変化する。
【0066】
図4を参照して、曲線(a)は、第一の層4と異なった層の損失係数を示しており、この層は、接着剤から製造されており、この接着剤は、本発明の実施態様において得られる境界面とは違って、ガラスシートと層との間の透明な境界面の利用を可能にしない。曲線(b)は、第一の層4の損失係数を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.58に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.08に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.34に等しい。曲線(c)は、第一の層4の損失係数を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.55に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.12に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.32に等しい。曲線(d)は、第一の層4の損失係数を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.53に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.16に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.31に等しい。曲線(e)は、第一の層4の損失係数を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.49に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.09に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.43に等しい。曲線(f)は、第一の層4の損失係数を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.48に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.10に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.42に等しい。曲線(g)は、第一の層4の損失係数を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.46に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.14に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.41に等しい。曲線(h)は、第一の層4の損失係数を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.42に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.09に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.49に等しい。
【0067】
図5を参照して、曲線(i)は、第一の層4と異なった層のせん断弾性係数の実部G’を示しており、この層は、接着剤から製造されており、この接着剤は、本発明の実施態様において得られる境界面とは違って、ガラスシートと接着剤の乾燥後に得られる層との間の透明な境界面の利用を可能にしない。曲線(j)は、第一の層4のせん断弾性係数の実部G’を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.58に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.08に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.34に等しい。曲線(k)は、第一の層4のせん断弾性係数の実部G’を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.55に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.12に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.32に等しい。曲線(l)は、第一の層4のせん断弾性係数の実部G’を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.53に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.16に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.31に等しい。曲線(m)は、第一の層4のせん断弾性係数の実部G’を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.49に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.09に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.43に等しい。曲線(n)は、第一の層4のせん断弾性係数の実部G’を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.48に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.10に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.42に等しい。曲線(o)は、第一の層4のせん断弾性係数の実部G’を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.46に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.14に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.41に等しい。曲線(p)は、第一の層4のせん断弾性係数の実部G’を示しており、アクリルポリマーの質量分率は0.42に等しく、第一の層4中の可塑剤の質量分率は0.09に等しく、また第一の層4中の粘着付与剤の質量分率は0.49に等しい。
【0068】
有利には、材料は、第一の層4中の単数または複数のアクリルポリマーの質量分率0.21~0.62、第一の層4中の単数または複数の可塑剤の質量分率0.07~0.43、また第一の層中の単数または複数の粘着付与剤の質量分率0.17~0.60を有する。
【0069】
有利には、材料は、第一の層4中の単数または複数のアクリルポリマーの質量分率0.21~0.51、第一の層4中の単数または複数の可塑剤の質量分率0.12~0.31、また第一の層中の単数または複数の粘着付与剤の質量分率0.22~0.35を有する。
【0070】
有利には、材料は、第一の層4中の単数または複数のアクリルポリマーの質量分率0.21~0.35、第一の層4中の単数または複数の可塑剤の質量分率0.16~0.26、また第一の層中の単数または複数の粘着付与剤の質量分率0.22~0.26を有する。
【0071】
有利には、材料は、第一の層4中の単数または複数のアクリルポリマーの質量分率0.21~0.62、第一の層4中の単数または複数の可塑剤の質量分率0.12~0.31、また第一の層中の単数または複数の粘着付与剤の質量分率0.22~0.35を有する。
【0072】
有利には、材料は、第一の層4中の単数または複数のアクリルポリマーの質量分率0.21~0.62、第一の層4中の単数または複数の可塑剤の質量分率0.16~0.26、また第一の層中の単数または複数の粘着付与剤の質量分率0.22~0.26を有する。
【0073】
単数または複数の減衰層の配置
【0074】
図1を参照して、ガラスアセンブリ1は、単一の減衰層を含んでいてもよく、単一の減衰層は第一の層4である。第一の減衰層4はその場合、第二のガラスシート3と直接接触していることができる。このように、既知の遮音ガラスアセンブリの厚さに照らし合わせてみると、ガラスアセンブリ1の厚さを減少させつつ、遮音ガラスアセンブリ1を製造することが可能である。
【0075】
図6を参照して、ガラスアセンブリ1は、複数の粘弾性減衰層を含むことができる。減衰層は、第一のガラスシート2と第二のガラスシート3との間に配置される。ガラスアセンブリ1は、第一の減衰層4と第二の減衰層8とを含むことができる。第二の減衰層8は、第一の減衰層4と第二のガラスシート3との間に配置される。第二の減衰層8は、第二のガラスシート3と直接接触している。第二の減衰層8は、少なくとも1つのアクリルポリマー、少なくとも1つの粘着付与剤、および少なくとも1つの可塑剤を含む材料によるものであり得る。第二の層8の材料は、第一の層4用に適合された材料であってもよい。
【0076】
第一の減衰層4は、第一の損失係数ηを有する第一の材料によって形成される。第二の減衰層8は、第二の損失係数ηを有する第二の材料によって形成される。第一の損失係数ηおよび第二の損失係数ηは、好ましくは1より大きい。
【0077】
第一の層4は、第二の層8と直接接触していてもよい。図5を基準にした変形例において、ガラスアセンブリ1は、中間層9を含んでもよい。中間層9は、第一の層4と第二の層8との間に配置されてよい。中間層9は、第三の損失係数ηを有する第三の材料によって形成され得る。第三の損失係数ηは、第一の損失係数よりも小さくてもよく、また第二の損失係数ηよりも小さくてもよい。
【0078】
第一の材料は、第一のヤング率Eと第一のヤング率の実部E’とを有する。第二の材料は、第二のヤング率Eと第二のヤング率の実部E’とを有する。第三の材料は、第三のヤング率Eと第三のヤング率の実部E’とを有する。第三のヤング率の実部E’は、第一のヤング率の実部E’よりも大きくてもよく、また第二のヤング率の実部E’よりも大きくてもよい。
【0079】
ガラスシート
【0080】
第一のガラスシート2は、第一の厚さeを有する。第二のガラスシート3は、第二の厚さeを有する。第一の厚さeは、第二の厚さeを超えていてもよい。このように、ガラスアセンブリ1の所定の厚さについて、ガラスアセンブリの音響減衰を増大させることが可能である。
【0081】
第一の厚さeは、1mm以上かつ5mm以下であり得る。第二の厚さeは、0.5mm以上かつ5mm未満であり得る。
【0082】
ガラスアセンブリ1の音響特性付与
【0083】
図7は、規格NF EN 10140に準じて生じる空気の騒音を受けるガラスアセンブリ1の音響減衰を示している。破線によって形成された曲線は、3.85mmに等しい厚さを有する、既知のモノリシック強化ガラスの音響減衰を示している。実線によって形成された曲線は、アクリル酸2-エチルヘキシルおよびアクリル酸イソブチルから形成される2つのタイプのアクリルポリマーを含む第一の層を含む、ガラスアセンブリ1を示している。第一の層4の厚さeは、30μmに等しい。第一のガラスシート2および第二のガラスシートはそれぞれ、1.6mmに等しい厚さを有する。2kHz~10kHzの周波数帯域において、ガラスアセンブリ1の音響減衰は、モノリシック強化ガラス製グレージングによって形成されるガラスアセンブリの音響減衰よりも12デシベル優れていることが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 ガラスアセンブリ
2 第一のガラスシート
3 第二のガラスシート
4 第一の粘弾性減衰層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】