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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】光線治療マスク
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513878
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 GB2022052245
(87)【国際公開番号】W WO2023031619
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/260,867
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524073337
【氏名又は名称】アスセティック テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AESTHETIC TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】デール ニーダム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】イソベル リーヴス
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA01
4C082PA02
4C082PC01
4C082PC09
4C082PE09
4C082PJ21
(57)【要約】
LED光線治療マスクに関する。マスクは、人の顔の輪郭にフィットするよう所望の3D形状プロファイルを採用するように操作可能な少なくとも1つの可撓性材料から形成される多層構造を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用して、人の額、顎および頬を覆うように構成可能な光線治療マスクであって、
可撓性を有する外層と、
人の皮膚に対向するように配置可能な可撓性を有する内層と、
前記外層と内層とを物理的に連結する連結機構と、
複数のLEDおよび前記LEDを取り付けるための可撓性を有するLEDプリント回路基板を有するLEDアセンブリであって、前記内層と外層との間に取り付けられ、前記内層と外層とによって位置的に保持される、前記LEDアセンブリと、
を備え、
前記マスクは、前記マスクの額端と顎端との間で少なくとも長さ方向に湾曲形状プロファイルを採用するように屈曲可能である、マスク。
【請求項2】
前記マスクの各側面から前記マスクの長手方向中心軸に向けて内方に延在する頬スリットを備える、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
各スリットは、前記マスクにわたって幅方向に対応するその長さに沿って湾曲している、請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
各スリットの幅が前記マスクの周囲から前記長手方向中心軸に向かう方向に減少する、請求項2または3に記載のマスク。
【請求項5】
一対の目開口部を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項6】
口開口部および/または鼻開口部を備える、請求項5に記載のマスク。
【請求項7】
各頬スリットが、前記マスクの長手方向において、前記目開口部と前記口開口部との間に位置する、請求項2~4および6のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項8】
前記連結機構が、前記内層または外層のうちの一方から延在する複数の雄突起と、前記外層または内層のうちの他方に設けられた複数の穴とを備え、前記突起が前記穴に受け入れられて、前記内層と外層とを連結することができる、請求項1~7のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項9】
前記連結機構が前記マスクの周囲にまたは前記マスクの周囲に向けて配置されており、および/または前記連結機構がもっぱら前記マスクの周囲にまたは前記マスクの周囲に向けて配置されている、請求項8に記載のマスク。
【請求項10】
前記内層の各前記目開口部のそれぞれから突出するアイガードを更に備え、各アイガードが前記内層および/または外層の材料とは異なる材料を含む、請求項5に従属する場合の請求項1~9のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項11】
各アイガードが環状であり、各目開口部にスカートを画定する、請求項10に記載のマスク。
【請求項12】
前記LEDプリント回路基板と前記内層との中間に位置する光反射層を更に備え、前記反射層は、前記LEDが前記内層に向かう方向に延在する複数の開口部を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項13】
前記内層の各LEDに近接して配置された複数の光拡散体を更に備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項14】
各光拡散体が前記内層の各LEDから離れる方向に軸方向に延在する円錐部分を備える、請求項13に記載のマスク。
【請求項15】
前記外層および/または前記内層がシリコン材料を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項16】
前記可撓性を有するLEDプリント回路基板は、少なくとも1つのポリマー基板と、前記ポリマー基板に連結されたまたは前記ポリマー基板に取り付けられた金属トラックを有する導電層とを備える、請求項1~15のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項17】
前記反射層がポリマー材料、白色材料または反射材料を含む、請求項12に従属する場合の請求項1~16のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項18】
各LEDがマルチチップLEDであり、各LEDの前記チップが異なる波長の光を放射するように構成されている、請求項1~17のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項19】
各LEDにて前記チップを熱的に仕切るための熱仕切りを更に含む、請求項18に記載のマスク。
【請求項20】
各LEDに電気的に連結された電子コントローラを更に備え、前記コントローラが各LEDへの電流供給を制御して、各LEDの各チップをアクティブモードと非アクティブモードとの間で切り替えるように構成されている、請求項19に記載のマスク。
【請求項21】
前記マスクの材料組成は、前記マスクを略平面形状プロファイルから、人の顔の輪郭に合致した3D形状プロファイルにほぼ一致する輪郭に合致した3D形状プロファイルに屈曲させることができるように構成されている、請求項1~20のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項22】
前記LEDプリント回路基板に取り付けられた複数の抵抗器を更に備える、請求項1~21のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項23】
着用して、人の顔を覆う光線治療マスクを準備する方法であって、
可撓性を有する外層および内層と、前記内層と外層との間に取り付けられたLEDアセンブリとを有する可撓性多層体を提供することであって、前記多層体が連結機構を介して互いに固定されていることと、
前記多層体を屈曲させて、前記マスクの額端と顎端との間で少なくとも長手方向に延在する湾曲形状プロファイルを形成することと、
を含む、方法。
【請求項24】
前記マスクは、前記マスクの各側面から前記マスクの長手方向中心軸に向けて内方に延在する頬スリットを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記頬スリットの各内側終端の間で前記マスクにわたって横幅方向に屈曲部が延在するように、前記スリットの位置で前記多層体を屈曲させることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記マスクが、前記額端と顎端との間で長さ方向に、かつ前記マスクの側面の間で幅方向に延在する湾曲形状プロファイルを採用するように、前記マスクに複数の屈曲部を形成することを含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
人の顔の皮膚を照射する方法であって、
可撓性を有する外層および内層と、前記内層と外層との間に取り付けられたLEDアセンブリとを有する可撓性多層体を提供することであって、前記可撓性多層体は輪郭に合致した3D形状プロファイルを備えることと、
少なくとも1つのバッテリを使用して前記LEDに電力を供給することと、
ユーザインタフェースを介して、複数の治療モードから治療モードを選択することと、
コントローラを介して、所定の時間にわたって供給される所定のLED電力需要を伴う前記治療モードを供給するために前記LEDに電力を供給するのに十分な電力が前記バッテリに残っているか否かを判断することと、
前記コントローラにより、前記治療モードを供給するために前記LEDを作動させるか、または前記バッテリの前記判断された電力に基づいて、前記選択された治療モードを作動させないという通知をユーザに出力することと、
を含む、方法。
【請求項28】
人の顔の皮膚を照射する方法であって、
可撓性を有する外層および内層と、前記内層と外層との間に取り付けられたLEDアセンブリとを有する可撓性多層体を提供することであって、前記可撓性多層体は輪郭に合致した3D形状プロファイルを備えることと、
前記LEDから光を放射することと、
前記LEDから放射された前記光を、前記内層の各LEDに近接して、対向しておよび/または隣接して配置された少なくとも1つの光拡散体に通過させて、前記光が前記皮膚に伝達される際に前記光を拡散させることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用して、人の顔を覆うように構成可能な光線治療装置に関し、特に、限定されるわけではないが、個人の顔に光線治療を供給するための医療用および/または美容用の照射マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
「光による治療」である光線治療は、低レベルの光エネルギーを適用して生物学的プロセスを刺激または制御するものであり、治療効果が証明されている。効果的なメカニズムは、フォトバイオモジュレーションとして知られるプロセスによる植物の光合成と同様の自然な反応である。LED光線治療(即ち、発光ダイオード(LED)を使用して光を供給する光線治療)は、外傷を引き起こすことなく、再生効果および抗炎症効果があることが十分に証明されており、安全かつ全ての肌タイプに適している。この治療は、光スペクトルの可視部分および赤外部分からの低レベルの有益な光エネルギーに皮膚を曝露することを伴う。特定の波長が生物学的システムと相互作用し、主要な細胞受容体を活性化させ、その結果、光エネルギーの細胞エネルギーへの伝達をトリガーする。活性化された皮膚細胞はより良く機能し、より早く再生して、若々しく健康で輝く肌を促進する。非侵襲的治療への移行により、LED光線治療は、有害反応、不快感、およびダウンタイムのリスクがより高い、より積極的な処置に代わる進歩的な代替手段をもたらす。スペクトル的に純粋な波長を介して供給されるLEDエネルギーは、皮膚自体の修復メカニズムを刺激し、問題のある皮膚状態を修正し、最適な皮膚機能を回復するのに役立つ。LED光線治療は、現在、スキンケア従事者にとって不可欠な手段として認識されており、広範囲の炎症性および問題のある皮膚状態、創傷治癒の促進、および皮膚の老化の兆候の安全かつ効果的な治療が可能であることが十分に証明されている。
【0003】
ユーザの顔に光線治療を提供する製品が市場に存在している。これらは、通常、マスクの内面に配置されたまたは埋め込まれたLEDアレイを有するマスクを含み、LEDからの光によりユーザの顔の皮膚を照射する。このようなマスクは、通常、顔の全体的な形状にフィットするように湾曲するが、通常は一方向にのみ、即ち、顔の正中線に沿ってのみ湾曲または屈曲し、シールドのように顔に付く。例示的な光線治療マスクは、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7および特許文献8に記載されている。
【0004】
従って、既存のデザインは、ユーザの顔に適切にフィットしないことが多く、特に特定の領域における過剰曝露や曝露不足を含む、不規則または不均一な照射を引き起こす。従って、これらおよび他の欠点を克服する光線治療マスクが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/009270A1号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2018/196310A1号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2019/103301A1号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2019/200686A1号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2020/003231A1号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2020/040435A1号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2021/085886A1号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2022/045850A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、人の顔の形状および輪郭にぴったりとフィットする光線治療マスクを提供することで、顔の皮膚に均一な光治療を提供することである。更なる目的は、マスク内に長さ方向と幅方向との両方に複数の湾曲部または屈曲部を形成するように操作可能なマスクを提供することである。更に別の目的は、皮膚への効率的かつ効果的な光伝達のための光線治療システムを提供し、既存の光線治療装置と比較して長寿命かつ動作効率が向上した光線治療装置を提供することである。
【0007】
この目的は、多層構造および適切な材料組成を有する機械的に可撓性を有する光線治療マスクを提供することによって達成される。本マスクは、人の顔の皮膚の反対側に配置されて皮膚を覆うことができるマスク内面にて光を放射可能なLEDのアレイの取り付け具を提供する。本光線治療装置およびシステムは、ユーザが複数の治療モードを選択し、所望の光線治療セッションに従ってLEDチップを作動および停止できるようにする適切な電子コンポーネントを備える。特に、本システムのLEDは、内部チップが互いに熱的に仕切られることで電子効率および動作効率を高めるマルチチップ設計を含む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、着用して、人の額、顎および頬を覆うように構成可能な光線治療マスクが提供され、マスクは、可撓性を有する外層と、人の皮膚に対向するように配置可能な可撓性を有する内層と、外層および内層を互いに物理的に連結する連結構成と、複数のLEDおよびLEDを取り付けるための可撓性を有するLEDプリント回路基板を有するLEDアセンブリであって、内層と外層との間に取り付けられ、内層および外層によって位置的に保持されるLEDアセンブリと、を備え、マスクは、マスクの額端と顎端との間で少なくとも長さ方向に湾曲形状プロファイルを採用するように屈曲可能である。
【0009】
本明細書における「機械的に可撓性を有する光線治療マスク」への言及は、特定の平面(例えば、平面構成)から屈曲される、湾曲されるまたは折り畳まれることで、湾曲プロファイルを採用することができる個々のマスク層を有するマスクを包含する。本マスクの材料組成および物理的構造により、ユーザの手(親指および指)によってマスクを容易に屈曲させる、成形する、および調整することができる。更に、それぞれの内層は、外層と内層との中間に位置し、それにより、マスクが3D形状プロファイルを採用するように屈曲されたときに、それぞれの内層が互いの上をスライドすることができる位置的/運動的自由度を有することが好ましい。
【0010】
好ましくは、マスクは、マスクの各側面からマスクの長手方向中心軸に向けて内方に延在する頬スリットを備える。好ましくは、各スリットは、マスクにわたって幅方向に対応するその長さに沿って湾曲している。好ましくは、各スリットの幅は、マスクの周囲から長手方向中心軸に向かう方向に減少する。好ましくは、マスクは、各側面にヘッドストラップ取り付け部を備える。ヘッドストラップ取り付け部は、好ましくは、各頬スリットの上下に位置する一対のアパチャを備える。ヘッドストラップをアパチャ内に導入することができ、それにより、ヘッドストラップが軸方向の張力下に置かれたときに、ヘッドストラップが締め付けられるとアパチャが互いに引き寄せられるようにしてもよい。この構成により、頬スリットの幅を「閉じ」または「狭め」、マスクを人の顔にしっかりと位置付け、保持する。任意に、ヘッドストラップまたはヘッドストラップの少なくとも一部は伸縮性を有する。
【0011】
好ましくは、マスクは一対の目開口部を備える。好ましくは、マスクは、更に、口開口部および/または鼻開口部を備える。好ましくは、各頬スリットは、マスクの長さ方向において目開口部と口開口部との間に位置する。好ましくは、マスクは、更に、目開口部から延在するまたは目開口部に取り付け可能なアイガードを備える。好ましくは、アイガードは、マスクの1つ以上の層の材料とは異なる材料を含む。
【0012】
任意に、連結構成は、内層または外層のうちの一方から延在する複数の雄突起と、外層または内層のうちの他方に設けられた複数の穴とを備えることができ、突起は穴に受け入れられて内層と外層とを連結することができる。任意に、連結構成は、マスクの周囲にまたはマスクの周囲に向けて配置されており、および/または連結構成は、もっぱらマスクの周囲にまたはマスクの周囲に向けて配置される。理解されるように、連結構成は、外層と内層とを連結して内層を捕捉しおよび/または包み込み、多層複合統合体を提供する任意の手段を含むことができる。任意に、連結構成は、内層と外層との間で作用する接着剤、化学的または熱的結合(熱接着等)である。
【0013】
好ましくは、マスクは、内層の各目開口部のそれぞれから突出するアイガードを備え、各アイガードは、内層および/または外層の材料とは異なる材料を含む。好ましくは、各アイガードは環状であり、各目開口部にスカートを画定する。
【0014】
好ましくは、マスクは、更に、LEDプリント回路基板と内層との中間に位置する光反射層を備え、反射層は、LEDが内層に向かう方向に延在する複数の開口部を備える。
【0015】
好ましくは、マスクは、更に、LEDから放射されて顔の皮膚に伝達される光を拡散する光拡散体構成を備える。好ましくは、拡散体構成は、内層の各LEDに近接して配置された複数の光拡散体を備える。任意に、各光拡散体は、内層の各LEDから離れる方向に軸方向に延在する円錐部分を備える。好ましくは、各円筒部分は、LEDを少なくとも部分的に受け入れる開口端を備え、それにより、LEDが光拡散体の円錐部分によって画定される内部チャンバに隣接して配置されるようにする。
【0016】
任意に、外層および/または内層は、シリコン材料を含む。任意に、可撓性を有するLEDプリント回路基板は、少なくとも1つのポリマー基板と、ポリマー基板に連結されたまたはポリマー基板に取り付けられた金属トラックを有する導電層とを備える。任意に、反射層は、ポリマー材料、白色材料または反射材料を含む。
【0017】
任意に、各LEDはマルチチップLEDであり、各LEDのチップは、異なる波長の光を放射するように構成されている。任意に、各LEDは、デュアル、トリプルまたはクアッドチップ設計で構成される。好ましくは、各チップは、少なくとも1つの物理的仕切りを介して互いに熱的に仕切られる。このような構成により、マスクの熱効率および動作効率が向上され、それにより、アクティブでないチップがアクティブなチップによって加熱されないようにする。アクティブでないチップがその後アクティブ化されると、事前に加熱されたチップと比較して電子効率が向上する。好ましくは、各チップの熱的部分は、プリント回路基板(PCB)層に設けられるか、またはプリント回路基板(PCB)層から延在する。
【0018】
好ましくは、本装置およびシステムは、各LEDに電気的に連結された電子コントローラを備え、コントローラは、各LEDへの電流供給を制御して、各LEDの各チップをアクティブモードと非アクティブモードとの間で切り替えるように構成される。好ましくは、本システムは、更に、少なくとも1つのプロセッサ、ユーザインタフェース、データストレージライブラリ、動作モードライブラリまたはユーティリティ、電子診断ユーティリティ、データストレージデバイス、バッテリ、外部電源ポート、データ送信のための有線または無線通信手段、オーディオ/ビジュアル入出力コンポーネントを含む入出力手段を備える。好ましくは、装置は、更に、LEDプリント回路基板に取り付けられた複数の抵抗器を備える。マスクは、LEDごとに抵抗器を備えることができ、各抵抗器はそれぞれのLEDに電子的に呼び出される。
【0019】
好ましくは、マスクの材料組成は、マスクを略平面形状プロファイルから人の顔の輪郭に合致した3D形状プロファイルにほぼ一致する輪郭に合致した3D形状プロファイルに屈曲させることができるように構成される。
【0020】
本発明の更なる態様によれば、着用して、人の顔を覆う光線治療マスクを準備する方法が提供され、この方法は、可撓性を有する外層および内層と、内層と外層との間に取り付けられたLEDアセンブリとを有する可撓性多層体を提供することであって、多層体が連結機構を介して互いに固定されていることと、多層体を屈曲させて、マスクの額端と顎端との間で少なくとも長手方向に延在する湾曲形状プロファイルを形成することと、を含む。
【0021】
好ましくは、この方法は、頬スリットの各内側終端の間でマスクにわたって横幅方向に屈曲部が延在するように、頬スリットの位置で多層体を屈曲させることを含む。好ましくは、この方法は、更に、マスクが額端と顎端との間で長さ方向に、かつマスクの側面の間で幅方向に延在する湾曲形状プロファイルを採用するように、マスクに複数の屈曲部を形成することを含むことができる。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、人の顔の皮膚を照射する方法が提供され、この方法は、可撓性を有する外層および内層と、内層と外層との間に取り付けられたLEDアセンブリとを有する可撓性多層体を提供することであって、可撓性多層体は輪郭に合致した3D形状プロファイルを備えることと、少なくとも1つのバッテリを使用してLEDに電力を供給することと、ユーザインタフェースを介して、複数の治療モードから治療モードを選択することと、コントローラを介して、所定の時間にわたって供給される所定のLED電力需要を伴う治療モードを供給するためにLEDに電力を供給するのに十分な電力がバッテリに残っているか否かを判断することと、コントローラにより、治療モードを供給するためにLEDを作動させるか、またはバッテリの判断された電力に基づいて、選択された治療モードを作動させないという通知をユーザに出力することと、を含む。
【0023】
本発明の更なる態様によれば、人の顔の皮膚を照射する方法が提供され、この方法は、可撓性を有する外層および内層と、内層と外層との間に取り付けられたLEDアセンブリとを有する可撓性多層体を提供することであって、可撓性多層体は輪郭に合致した3D形状プロファイルを備えることと、LEDから光を放射することと、LEDから放射された光を、内層の各LEDに近接して、対向しておよび/または隣接して配置された少なくとも1つの光拡散体に通過させて、光が皮膚に伝達される際に光を拡散させることと、を含む。
【0024】
本発明の更なる態様によれば、着用して、人の額、顎および頬の少なくとも一部を覆うように構成可能な光線治療マスクが提供され、このマスクは、人の顔の反対側に配置される内面および外面を画定する可撓性を有する多層構成と、複数のLEDおよびLEDを取り付けるための可撓性を有するLEDプリント回路基板を有するLEDアセンブリであって、内層と外層との間に取り付けられ、内層および外層によって位置的に保持されるLEDアセンブリと、を備え、マスクは、マスクの額端と顎端との間で少なくとも長さ方向に湾曲形状プロファイルを採用するように屈曲可能である。本発明の更なる態様によれば、本明細書に記載の光線治療マスクを使用する光線治療方法が提供される。
【0025】
本発明の更なる態様によれば、人の顔の反対側に位置する内面および外面を画定する可撓性を有する本体と、複数のLEDおよびLEDを取り付けるための可撓性LEDプリント回路基板を有するLEDアセンブリであって、本体に取り付けられるLEDアセンブリと、を備える光線治療マスクが提供され、本体およびLEDアセンブリは、マスクの長さ方向および幅方向のうち少なくとも一方に屈曲または湾曲することができる。
【0026】
次に、本発明の特定の実施例を、単なる例示として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の特定の実施形態による、湾曲した3D形状プロファイルを採用するための可撓性構成を有するLED光線治療マスクの正面図である。
図2】説明目的のために層を除去した、図1のマスクの背面斜視図である。
図3】長さ方向と幅方向との両方に湾曲部を有する3D形状プロファイルに加工された図1のマスクの更なる正面斜視図である。
図4図3のマスクの側面斜視図である。
図5図4のマスクの上端図である。
図6】略平面状の、非湾曲構成にある図5のマスクの背面斜視図である。
図7】略平面構成を有する図6のマスクの側面図である。
図8図1図7のマスクに取り付け可能なアイガードの背面斜視図である。
図9図8のアイガードの正面斜視図である。
図10図8および図9のアイガードが目開口部の所定の位置に取り付けられた、図6のマスクの背面斜視図である。
図11】マスクを人の頭部に固定するヘッドストラップが設けられた図10のマスクの背面図である。
図12】説明目的のために内層を除去した、図11のマスクの更なる背面図である。
図13図12のマスクのLED PCB層の背面図である。
図14】3D湾曲形状プロファイルに加工された図12のマスクの背面斜視図である。
図15】マスクの周囲領域に向けた、図1のマスクの複数の層の断面図である。
図16】マスクの中央領域に向けた、図1のマスクの複数の層の更なる断面図である。
図17】本明細書に記載のマスクの動作に関連する、本発明の様々な電子コンポーネントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、ユーザの顔にLED光線治療を供給するための方法およびシステム(特にマスク)に関する。この方法の実施形態は、若返りおよび矯正効果のために臨床的に証明された治療用光エネルギーを供給する非侵襲的治療である。特定の波長が皮膚に吸収され、細胞の再生およびコラーゲンの生成を刺激し、ざ瘡や赤み等の問題のある皮膚状態を解決し、皮膚の治癒を促進する。ダウンタイムのない安全かつ痛みを伴わない治療である。ユーザは、肌のトーン、水分量および明るさを即時に改善することを期待できる一方、より効果を長続きさせるために有益な光がより深い細胞プロセスを同時に刺激する。敏感な皮膚状態に対して、本発明の方法は、赤みや刺激を伴わずに症状を軽減することができる。光線治療は、ざ瘡、乾癬、敏感肌、筋骨格痛およびその他の皮膚状態の治療に使用可能であり、創傷治癒にも使用させ得る。更なる美容上の治療には、肌の若返り、色素沈着や赤みの軽減等が含まれる。
【0029】
スペクトル的に純粋な波長を介して供給されるLEDエネルギーは、皮膚自体の修復メカニズムを刺激し、問題のある皮膚状態を補正し、最適な皮膚機能を回復するのに役立つ。LED光線治療による治療の成功は、臨床的に証明された波長を最適化された強度で供給し、これらの特定の細胞反応の発生を可能にする光/発色団の相互作用を最大化することによって決定される。発色団は、独特の光吸収特性を有する皮膚内の標的化合物である。波長が標的の発色団と一致しない場合、吸収も反応も結果も生じない。また、供給される光出力が低過ぎると、所望の反応が起こらない可能性がある。
【0030】
開示された方法およびシステムの実施形態は、LED光線治療に関して業界をリードし、臨床的に最も証明された波長である青色415nm、赤色633nm、近赤外830nmを供給するように構成可能である。本発明は、必要に応じて他の波長を放射するよう動作するように構成することもできる。光の各波長は、異なる標的発色団によって吸収され、特定の皮膚強化プロセスを刺激し、証明された治療効果をもたらす。開示された方法およびシステムは、これらの有益な波長を複数のプロトコル(またはモード)オプションを介して単一または複数波長モードで供給することを可能にし、調整された適応可能な治療アプローチを提供する。多波長治療は、肌の改善効果を最大限に高めるために、1回のセッションで様々な兆候を対象としている。
【0031】
青色光415nm(最大1mmの透過):主要メカニズム:抗菌。傷と戦う青色光は、ざ瘡の原因となる細菌を破滅させ、発疹の予防に役立つ。青色光はアクネ菌によって吸収され、一重項酸素を放出する自然な光化学反応をトリガーする。一重項酸素には強力な抗菌作用があり、肌に優しい一方でシミを解消するのに役立つ。また、油分生成のバランスを整え、肌の透明感を改善するのにも役立つ。赤色光および近赤外光を組み合わせて適用される本治療法は、ざ瘡に対する効果が高く、発疹を最小限に抑え、赤みを軽減するのに役立つ治療後の処置として優れている。
【0032】
赤色光633nm(2~3mm透過):主要メカニズム:若返りおよび細胞の再生。若返りの赤色光は、細胞の再生および修復を促進し、より滑らかでハリのある肌のためにコラーゲンとエラスチンの合成を促進する。赤色光は細胞のミトコンドリアに吸収され、細胞機能に必須のエネルギーであるアデノシン三リン酸(ATP)の合成を刺激する。私たちの細胞を過給することにより、有益な生物学的反応のカスケードがトリガーされ、その結果、様々な肌強化効果が得られる。活性化された皮膚細胞はより良好に機能し、最大で200%より早く再生可能である。赤色光は線維芽細胞により強力に吸収され、コラーゲンとエラスチンの合成を増加させ、水分量レベルを高める。血流の改善により組織の酸素供給が増加し、修復が促進され、一方でリンパ系の刺激により解毒が促進される。赤色光は肌のトーン、水分量および活力を即座に改善し、一方で有益な光は同時に細胞プロセスを刺激して、肌の外観および健康に長期的な利点をもたらす。
【0033】
近赤外光(NIR)830nm(5~10mm透過):主要メカニズム:創傷治癒作用。近赤外光は、皮膚の最深層で吸収され、赤色光と相乗的に作用して最適な若返り効果をもたらす。830nmの近赤外光に曝露されると、血液循環が促進され、重要な酸素および栄養素がもたらされて、炎症を調節し、創傷治癒を促進し、炎症を鎮め、赤みを軽減するのに役立つ。近赤外光は、易感染性の、環境によってダメージを受けた、敏感な皮膚状態に強さおよび完全性をもたらす。色素沈着過剰症の治療にも臨床的に効果がある。
【0034】
本装置、システムおよび方法の実施形態は、単一、ツイン、トリプル、または他のマルチチップLEDを備えることで、ざ瘡、乾癬、創傷治癒および筋骨格痛等のうちの1つ以上の状態の治療を可能にするのに必要な標的波長を供給することができる。使用の適用には次の症状が含まれるが、これらに限定されない;皮膚の若返り;顔の色つや;乾燥肌;色素沈着:光による損傷;色素沈着;ざ瘡:軽度から中程度;ざ瘡:中程度から重度;赤み:血管性;赤み:肌のトーン;敏感肌;皮膚:問題のある状態;乾癬;創傷治癒;痛み。LED光線治療は、ユーザの対象領域全体に一定量の光を供給することによって機能する。逆二乗法則により、光パワーの量は、ユーザの標的領域(皮膚)からLEDが配置されている距離に基づいて変化する。既存のマスクはシールドとしてユーザの顔に装着されるため、顔の下半分と額全体のLEDは、頬や鼻の周囲のLEDよりも標的領域から遠く離れた位置に配置される。結果的に、ユーザは標的領域全体で様々なレベルの光パワーを受け、これは、最終的には供給される光パワーの差により一貫性のない治療につながる。
【0035】
本発明には、ユーザがマスクを操作して複数の湾曲部を有する3D形状にすることを可能にする2D-3Dの可撓性を有する設計を有する実施形態が含まれる。これにより、オペレータまたはユーザは、顔全体に均等に配置されるようにマスクを成形することができ、それにより、マスクの内面上に分散されたLEDのアレイが顔の全領域で皮膚からほぼ均一な分離距離に配置されるようになる。これにより、装置はLEDから供給される光出力を介して、より均一かつ一貫した治療を提供できる。フィット感を向上させるため、ヘッドストラップの伸縮性機能により、マスクが皮膚の反対側の、顔全体にフィットし、所定の位置に維持されるようになり、治療期間にわたって一貫した光照射を保証する。
【0036】
図1を参照すると、LED光線治療マスク10は、人の額に配置可能な第1の長さ方向端縁(または端部)18と、人の顎領域に配置可能な第2の長さ方向端縁(または端部)19と、端部18と端部19との間で長さ方向に延在する2つの横方向端縁(または側面)20とによって周囲が画定される外向き面または外面11を備える。複数のストラップアパチャ12が各長さ方向側面20にてマスクの周囲に向けてマスク10を貫通している。マスク10は、更に、一対の目開口部14、鼻スリット15および口開口部16を備える。ノーズガード27は、マスク10が顔に取り付けられたときに、人の鼻の大部分を覆うように、スリット15の領域で目開口部14の間から口開口部16に向けて延在している。マスク10は、マスク顎端19に、またはマスク顎端19に向けて設けられた電子連結17(例えば、マイクロUSBポート)を除いて、長手方向軸29を中心に対称的である。一対のスリットが、各側面20からマスク10にわたって幅方向に延在している。各スリット13は、目開口部14と口開口部16との間の長さ方向において、鼻スリット15の領域のほぼ下端に位置するように配置されている。従って、スリット13は、マスク10を着用している人のほぼ頬の位置に対応する。
【0037】
マスク10の材料組成は、人の顔の全体的に湾曲した形状プロファイルに対応する3D構成に適合できるように、マスクが可撓性を有し、オペレータの手や指によって容易に屈曲され、湾曲され、成形され得るように設計されている。このような湾曲には、全体的に長さ方向に延在する第1の屈曲部または湾曲部(28)と、マスクにわたって幅方向に延在する第2の屈曲部または湾曲部21とが含まれる。頬スリット13は、湾曲部21がスリット13の最も内側の長さ方向端部13aの間に延在するという点で、ユーザがマスク10を屈曲するのを容易にする。図3図5は、更に、マスク10が長さ方向と幅方向との両方に湾曲され得る方法を示している。特に、屈曲部または湾曲部28は、長さ方向、即ちマスク10の長手方向軸29と同じ方向に延在している。特に図3を参照すると、湾曲部28はほぼz方向に延在する一方、湾曲部21はほぼx方向に延在している。従って、マスク10は、第1および第2の湾曲部28、21を介してz方向に屈曲される。更に、マスク10の材料組成により、ノーズガード27も調整可能であり、アイホール14の間を横方向に延在するノーズブリッジ27aを中心としたピボットを介してスリット15を開閉するように屈曲させるまたはヒンジ留めすることができる。図4は、額端18および顎端19が、幅方向屈曲部21を介して、マスク10の最前部(ノーズガード27に対応する)から離れて後方(z方向)に屈曲される方法を示す。同様に、図5は、側面20が、長さ方向屈曲部28を介して、ノーズガード27から後方(z方向)に屈曲される方法を示す。図6および図7は、2Dのほぼ平坦または平面形状プロファイルと3Dの完全に輪郭に合致した形状プロファイルとの間で操作可能なマスク10の可撓性を有する材料構成を示す。従って、本マスク10は、所望に応じて複数の屈曲部、折り目および角度を付けた向きを含むように完全に調整可能である。このような構成は、第一に、マスクの材料組成によって提供され、第二に、図15および図16を参照して図示および説明した多層構造によって提供される。
【0038】
図16を参照すると、マスク10は、人の皮膚の反対側に配置されるように意図された内向き面45を有する内層40を備える。マスク10は、外向きであり、外向き面または外面11を有する外層58も備える。マスク10の周囲に、またはマスク10の周囲に向けて、複数の突起、ボスまたはラグ49を有する内層40が設けられている。ラグ49の各端部領域59を受け入れるように、外層58に複数の対応する穴24が設けられている。このような構成は、外層40および内層58を一体として物理的に取り付ける連結構成を提供する。ラグ端部59および穴24は、多層構造の確実なアセンブリのためのクリックロックタイプの連結構成を提供するように、適切な摩擦嵌合構成要素(例えば、バヨネット、変形可能なラグ、戻り止め、ワッシャー等)を用いて構成されてもよい。マスク10は、更に、特に、光反射層47およびLEDプリント回路基板(PCB)層48を含む複数の内層を備える。各層47、48には、内層40のラグ49が外層58と嵌合することを可能にするように、複数の各アパチャが設けられている。しかしながら、層47、48のアパチャの相対的な寸法により、このような層には、外層40と内層58との間に挟まれたときに、ある程度の位置自由度が与えられる。これにより、内層47、48は、マスク10が長さ方向と幅方向との両方に湾曲され、図2図5の湾曲形状プロファイルを採用する際に、互いの上を滑動し、更に滑動して、外層40および内層58に対して位置自由度を有することが可能となる。
【0039】
図15の層状構造によれば、内層40は、反射層47の内面23の反対側に位置する内面46も備える。PCB層48は、反射層47の内面50の反対側に位置する内面51を備える。LED PCB層は、更に、外層58の内面57の反対側に位置する内面56を備える。
【0040】
図16を参照すると、内層40は、皮膚の近くで光を広範囲に分散させることを可能にする独自の光供給システムを提供するように成形される。この光学部品の独自の設計の特徴は、光を取り出して(outcouple)焦点領域に光を誘導するのではなく、光学部品の内部で光の一部を反射および屈折させ、その結果、広い領域にわたって光を照射(分散)し、光が皮膚の表面にあって細胞を過飽和させるダークスポットの生成を回避する。特に、内層40には、内面46から外層58に向けて突出する複数の拡散体61が設けられている。各拡散体61は、略円錐台形状を含み、内端62(層40における)と外端63(PCB層48における/PCB層48付近)との間に延在する拡散体61の円錐壁によって包囲される内部空隙または領域60を画定する。環状拡散体の外端63は、PCB層48に取り付けられたLED22の周囲に配置され延在するように開口している。従って、各LED22は、円錐形拡散体61の縮径端部に隣接して配置される。好ましい実施形態によれば、各LED22は、各拡散体61のそれぞれの開口端を介して空隙60内に少なくとも部分的に突出する。
【0041】
好ましい実施形態によれば、内層40は、医療グレードのシリコンを含む。好ましくは、外層58も医療グレードのシリコンから形成され、内層40についても同一または同様である。そのような材料は、医療用途のための既存の一般的なシリコン材料を含むことができる。理解されるように、そのようなシリコンは、必要な密度と、特に柔らかさ、曲げ強度等を含む物理的および機械的特性とを達成する付加硬化技術または縮合硬化技術によって製造することができる。反射層47は、ポリマー材料(ポリアルキレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等)またはアルミニウム等の金属材料を含むことができ、LED22からのあらゆる光を皮膚(内層40の下に位置する)に向けて反射し戻るように反射性かつ光不透過性である。反射層47は、例えば、白色PTFEシートを含んでもよく、LED22を突出させるように構成された窓65を有してもよい。PCB層48は、複数の金属トラックを支持するポリマー基板を有する多層構造を備えることができる。PCB層48は、更に、1つ以上の電気絶縁ポリマー層内に導電性トラックを挟むか、または少なくとも部分的に封入する追加のポリマー層を含んでもよい。任意に、ポリマー基板および/または層は、ポリイミド、ポリプロピレン等のポリアルキレン、ポリエチレン等を含んでもよい。そのような構成により、PCB層48の所望の可撓性を提供する。
【0042】
好ましい実施形態によれば、各LED22は、異なる発光波長を有する第1のチップ22aおよび第2のチップ22bを備える。例えば、チップ22aは赤色光を放射するように構成され、チップ22bは赤外光を放射するように構成されてもよい。理解されるように、マスク10には、医療用および美容用の光線治療に適した電磁スペクトルの所望の領域内の異なる波長の光を放射する任意の構成および多数のチップ22a、22bを有するLED22を設けることができる。例えば、各LED22は、デュアルチップ構成を含んでもよく、またはそれぞれが少なくとも2つの異なる光波長を供給する3つ、4つまたはそれより多くのチップを含んでもよい。LED22は、説明目的で内層40が除去された図2に示されるように、PCB層48にほぼ均一に分布している。従って、活性化されると、各LED22および活性化されたチップ22a、22bのうちの特定の1つは、ほぼ内面45の全体または少なくとも大部分にわたって光を放射するように構成される。放射された光は、拡散体61を介して、拡散照明として皮膚上に投光され、(非常に集中した照射ゾーンとして)皮膚に害を及ぼし得る光が集中する表面積の減少を特に回避する。本構成、特に拡散体61を含む多層構造は、人の皮膚の領域上に所望の強度のほぼ均一な光の輝きを提供する。このツインLED設計は、熱仕切り64によって熱的に分割される2つの内部LED部分または領域を備える。これにより、チップからのより良好な熱放散が促進され、光効率が向上する。以前のLEDマスクは、通常、6ピン構成の5050LEDを使用する。3つのチップは全て同じLEDウェルの内側に取り付けられており、それにより、2つ以上のチップが同時に動作すると、発生する熱はLEDの表面積にわたって/PCBボードに取り付けられるLED全体に放熱される。これにより、動作温度の上昇とアクティブでない隣接チップへの放熱とによる光損失が発生する結果となる。仕切り64を介してLEDチップ22a、22bを熱的に仕切る/隔離することにより、本マスクはチップを互いに位置的にかつ熱的に隔離し、製品の光効率を向上させる。熱安定性の向上により、LEDあたりの光出力がより増加し、寿命性能が向上する。
【0043】
図6図8図9および図10を参照すると、マスク10には一対のアイガード25が設けられている。ガード25は、層40、47、48および58とは異なる材料および/または組成を含む。内層40は光透過性を有する一方、アイガード25は光不透過性材料で構成される。各ガード25は、ほぼ環状の形状プロファイルを有する。特に、各ガード25は、それぞれの目開口部14の周囲に配置され延在する寸法および形状プロファイルを有する第1の環状長さ方向端部30を備える。各目開口部14には、環状溝14a(任意にリップ、ショルダーまたはステップ付き環状領域を有する)が設けられており、アイガード25を各目開口部14の相手側コンタクトにクリップ留めすることができる。各ガード25は、更に、第1の端部30に隣接して配置された環状カラー31と、カラー31から延在し、スカート32が環状ガードの第2の端部33にて終端する環状スカート32とを備える。端部33は、第1の端部30に対して半径方向に拡大されており、人の眼窩の輪郭および一般的な形状に適合するように、円周方向に略楕円形状プロファイルを備える。従って、ガード25が目開口部14の所定の位置に固定されると、環状端部33は各眼窩の皮膚に密着し、空間的に完全に仕切られ、LED22によって放射される照射から各目を隔離する。アイシールド25は、角度を外れた配光から目を保護する。医療機器は、該当する場合、ユーザと施術者との両者に対して厳格なフォトニックテストの対象となる。通常、このような装置には青色光と近赤外光との両方に対するリスク分類が記載されている。マスクの近接性により、光はより高いリスク分類とみなされ、保護眼鏡を必要とする。アイシールド25は、スイミングゴーグルの原理に従い、顔の様々なプロファイルに適合し、眼窩の目の周りに快適に収まるように設計される。材料組成は高密度であり、使用時に目への全体的な光の曝露を軽減し、好ましくは完全に遮断するようにする。好ましくは、ガード25の材料は、照射光を完全に遮断するように光不透過性である。好ましくは、ガード25の材料は、眼窩に圧縮嵌合するように少なくとも部分的に可撓性を有する。
【0044】
図11および図12を参照すると、マスク10には、マスク10を人の頭部に固定するヘッドストラップ35が設けられている。好ましい実施形態によれば、ストラップ35は、2つの部分に分割されており、それぞれがストラップアパチャ12を介してそれぞれの側面に固定されている。特に、第1の端部のストラップの長手方向部分は、それぞれ面ファスナ36、39を備え、第2の端部には、一対のブレースストラップ37およびクロスストラップ38を備えることで、略三角形の取り付け領域を提供し、そこから長手方向ストラップ領域が延在している。言及したように、分割された頬設計は、頬領域にスリット13を含む。クロスストラップ38は、上方固定点と下方固定点との間で伸縮性があり、頬スリット13を自動的に閉鎖する。次いで、図14に示すように、面ファスナを人の頭部の後ろに固定することで、マスクを人の顔に保持することができる。
【0045】
図13を参照すると、PCB層48は、更に、LED22への電流を制御するように構成された各LED22のそれぞれに関連付けられた複数の抵抗器44を備える。各抵抗器44は、マスクの電子構造の一部を形成し、所定の治療要件およびモードに従って、所望の機能および照射の制御を提供する。PCB層48は、図1図6に示すように、マスク10の一般的な形状および構成に対応する頬スリット48aとともに、対応する目、鼻および口開口部41、42および43も備える。
【0046】
図17を参照すると、本発明は、LED22から放射される照射の活性化および制御のための電子アーキテクチャ66を有するLEDベースの光線治療マスクおよび照射システムを提供する。特に、電子アーキテクチャ66は、多層40、47、28、58に対して局所的にマスク10に設けられてもよい。代替的に、または付加的に、選択された構成要素は、マスク10から離れて配置され、適切な電気接続34を介して取り付け可能であり、PCB層48に取り付けられるマスク10の電子カップリング17に取り付け可能である、適切な制御装置内に収容されることが好ましい。電子制御装置は、中央処理装置(CPU)67(通常、複数のプロセッサのうちの1つ)およびユーザインタフェース68を備える。インタフェース68は、LEDの起動および電力出力の制御に適したスクリーン(タッチスクリーン等)、ボタン、ダイヤル等を含むことができる。制御モジュール69には、所定のLED動作時間/継続時間および電力出力レベルを有する異なる動作モードを実施する適切なソフトウェア、制御装置、コンポーネントおよび機能が設けられている。本システムは、少なくとも1つのライブラリ70(任意に、データ参照ライブラリ、ユーザデータライブラリまたは他のデータ収集)、選択可能な動作モード(ソフトウェアとして実装される)、診断ユーティリティ72(ソフトウェアとして実装される)、データストレージユーティリティ73、バッテリ75、および任意に外部電源に接続するための外部電源ポート74も備える。モードユーティリティ71は、LED22のための複数の予め設定されたおよび/または構成可能な動作モードを含む。このようなモードには、LEDの照明持続時間および出力の制御が含まれる。任意に、第1のモード71aは、LED出力が開始点から徐々に増加して最大値まで上昇し、その後、終点に向けて減少する、20分間の予め設定された光線治療処置時間で構成することができる。例示的に、第2のモード71bは、LEDが予め設定された時間にわたり供電され、続いて非アクティブ化され、その後更なる時間間隔にわたり再度アクティブ化される、段階的な時間間隔ベースの治療を含むことができる。診断ユーティリティ72により、継続的に実行するように実装することができ、LEDに電力が供給されることで、電子的な性能および機能を監視し、何らかの動作エラーまたは問題の通知を、インタフェース68を介して提供する。電子アーキテクチャ66は、更に、ローカルネットワーク、クラウドストレージまたはインターネットによる有線または無線通信を提供する追加の電子コンポーネントを備えることができる。本システムは、例えば、光センサ、温度センサ、近接センサ、圧力センサ、電圧計、電流計および/またはタイマーを含むセンサも備え得る。図17に示され、LED22を含むアーキテクチャ66の様々な電子コンポーネントは、相互接続され、従来のシステムに従って動作することが理解されるであろう。任意に、マスク10は、無線通信を介して、図17の電子アーキテクチャ66の残部に電子的に連結されてもよい。任意に、バッテリ75がマスク10に局所的に設けられてもよく、制御装置69によって制御されるように、モードユーティリティ71に従ってLED22をアクティブ化または非アクティブ化するようにバッテリを無線で制御してもよい。動作時には、マスクを所望の3D形状プロファイルに調整し、マスクを顔の所定の位置に固定すると、ユーザ/オペレータは、所定の光線治療セッションのために、インタフェース68および/または制御装置69を介してモードユーティリティ71からモード(例えば、71a)を選択することができる。
【0047】
本発明の特定の実施形態を図示し説明してきたが、上記の説明は本発明をこれらの実施形態に限定することを意図したものではないことを理解されたい。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。従って、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内に含まれ得る代替物、修正物、および均等物を網羅することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】