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特表2024-533157二環式毒素複合体およびその中間体の合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】二環式毒素複合体およびその中間体の合成
(51)【国際特許分類】
   C07K 11/02 20060101AFI20240905BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240905BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20240905BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
C07K11/02 ZNA
A61K47/64
C07K7/06
C07K7/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513918
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 GB2022052249
(87)【国際公開番号】W WO2023031623
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/260,878
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226757
【氏名又は名称】バイスクルテクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ウィティ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】リム,ダレン
(72)【発明者】
【氏名】ミン,ビョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ホァ,リーウェン
(72)【発明者】
【氏名】サンダース,ウィリアム ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ンナナブ,アーネスト オビナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076EE59
4H045AA20
4H045BA16
4H045BA31
4H045BA72
4H045CA50
4H045DA83
4H045EA20
4H045FA10
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、二環式毒素複合体、その調製方法、および癌を処置するための使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその塩を調製する方法であって、
1)フラグメントF-2:
【化1】
またはその塩を提供する工程;
2)フラグメントF-2を、フラグメントF-3:
【化2】
またはその塩と反応させることで、式I:
【化3】
の化合物またはその塩を形成する工程;および
3)非極性溶媒中で沈殿により反応混合物から式Iの化合物または塩を分離する工程、
を含み、
ここで、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11はそれぞれ独立して、水素であるか、あるいは、C1-6脂肪族、3-8員飽和または部分的不飽和単環式炭素環式環、フェニル、8-10員二環式芳香族炭素環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~2個のヘテロ原子を有する4-8員飽和または部分的不飽和単環式ヘテロ環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5-6員単環式ヘテロ芳香環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する8-10員二環式ヘテロ芳香環から選択される、場合により置換されていてよい基であり;
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15であり;そして
nは、0、1、または2である、方法。
【請求項2】
工程1)の反応では、約1当量のフラグメントF-2を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程2)の反応が、双極性非プロトン性溶媒中で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記双極性非プロトン性溶媒が、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程3)の非極性溶媒が、エーテルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
エーテルが、メチル tert-ブチルエーテル(MTBE)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式Iの化合物またはその塩をカラムクロマトグラフィーにより精製することをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
RRT0.93不純物が、式Iの化合物に対して約5%未満の相対面積で形成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記不純物が、約2.5%未満である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記不純物が、約1%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記不純物が、約0.5%未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記不純物が、約0.05%未満である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
フラグメントF-2またはその塩を調製する方法であって、
1)フラグメントF-1:
【化4】
またはその塩を提供する工程;
2)フラグメントF-1を、化合物A:
【化5】
と反応させることで、フラグメントF-2:
【化6】
またはその塩を形成する工程;および
3)非極性溶媒中で沈殿によりフラグメントF-2またはその塩を反応混合物から分離する工程、
を含み、
ここで、
R10およびR11はそれぞれ独立して、水素であるか、あるいは、C1-6脂肪族、3-8員飽和または部分的不飽和単環式炭素環式環、フェニル、8-10員二環式芳香族炭素環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~2個のヘテロ原子を有する4-8員飽和または部分的不飽和単環式ヘテロ環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5-6員単環式ヘテロ芳香環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する8-10員二環式ヘテロ芳香環から選択される、場合により置換されていてよい基であり;そして
nは、0、1または2である、方法。
【請求項14】
工程2)の反応が、双極性非プロトン性溶媒中で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記双極性非プロトン性溶媒が、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程3)の非極性溶媒が、エーテルである、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
エーテルが、メチル tert-ブチルエーテル(MTBE)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
反応液を酸性の飽和ブライン溶液に投入することにより、フラグメントF-2またはその塩を精製することをさらに含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
フラグメントF-2またはその塩をカラムクロマトグラフィーにより精製することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11がそれぞれ独立して、C1-6脂肪族、3-8員飽和または部分的不飽和単環式炭素環式環、フェニル、8-10員二環式芳香族炭素環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~2個のヘテロ原子を有する4-8員飽和または部分的不飽和単環式ヘテロ環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5-6員単環式ヘテロ芳香環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する8-10員二環式ヘテロ芳香環から選択される、場合により置換されていてよい基である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
R1が、
【化7】
である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
R2が、
【化8】
である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
R3が、
【化9】
である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
R4が、
【化10】
である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
R5が、
【化11】
である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
R6が、
【化12】
である、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
R7が、
【化13】
である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
R8が、
【化14】
である、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
R9が、
【化15】
である、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
R10が、
【化16】
である、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
R11が、
【化17】
である、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
式Iの化合物が、
【化18】
である、請求項20~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
フラグメントF-3が、
【化19】
またはその塩である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。。
【請求項34】
フラグメントF-2が、
【化20】
またはその塩である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
フラグメントF-3が、
【化21】
またはその塩である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
フラグメントF-2が、
【化22】
またはその塩である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
式Iの化合物が、BT8009またはその塩である、請求項1~12または20~36のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年9月3日出願の米国仮特許出願63/260,878の優先権を主張し、その全内容を引用により本明細書に包含させる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、強力な抗チューブリン剤MMAEに共有結合した拘束された二環式ペプチドを含む二環式毒素複合体(BTC)、例えばBT8009、およびその中間体を合成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
環状ペプチドは、高い親和性と標的特異性でタンパク質標的に結合することができるため、治療薬の開発にとって魅力的な分子クラスである。実際、いくつかの環状ペプチドが、例えば、抗菌ペプチドであるバンコマイシン、免疫抑制剤であるシクロスポリン、抗癌剤であるオクトレオチドとして、すでに臨床で成功裏に使用されている(Driggers et al. (2008), Nat Rev Drug Discov 7 (7), 608-24)。良好な結合特性は、ペプチドと標的との間に形成される相互作用表面が比較的大きいこと、および環状構造の低減された配座の柔軟性に起因する。典型的には、大環状分子は、例えば、環状ペプチドCXCR4アンタゴニストCVX15(400 Å2; Wu et al. (2007), Science 330, 1066-71)、インテグリンαVb3に結合するArg-Gly-Aspモチーフを有する環状ペプチド(355Å2)(Xiong et al. (2002), Science 296 (5565), 151-5)、またはウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクティベーターに結合する環状ペプチド阻害剤ウパイン-1(603 Å2; Zhao et al. (2007), J Struct Biol 160 (1), 1-10)のように、数百平方オングストロームの表面に結合する。
【0004】
その環状の立体配置に起因して、ペプチド大環状分子は、直鎖ペプチドより柔軟性が低く、これは、標的への結合の際にエントロピーの喪失が小さいことにつながり、高い潜在的な結合親和性をもたらす。また、低減された柔軟性は、標的特異的な立体配座のロックにつながり、これは、直鎖ペプチドと比較して結合特異性を増加させる。この効果は、環が開環したときに他のMMPよりも選択性を喪失したマトリックスメタロプロテイナーゼ8(MMP-8)の強力で選択的な阻害剤によって実証されている(Cherney et al. (1998), J Med Chem 41 (11), 1749-51)。大環状化によって達成される好ましい結合特性は、例えば、バンコマイシン、ナイシン、およびアクチノマイシンのような1つを超えるペプチド環を有する多環式ペプチドにおいてさらに顕著である。
【0005】
これまでは様々な研究チームが、システイン残基を有するポリペプチドを合成分子構造に結合させてきた(Kemp and McNamara (1985), J. Org. Chem; Timmerman et al. (2005), ChemBioChm)。Meloenと共同研究者らは、タンパク質表面の構造を模倣する目的で合成足場上に複数のペプチドループを迅速かつ定量的に環化するためにトリス(ブロモメチル)ベンゼンおよび関連分子を使用していた(Timmerman et al. (2005), ChemBioChem)。システインを含むポリペプチドを、例えばトリス(ブロモメチル)ベンゼンのような分子足場に結合させることによって生成される薬剤候補化合物の生成方法は、WO 2004/077062およびWO 2006/078161に開示されている。
【0006】
目的の標的に対する二環式ペプチドの大規模なライブラリーを生成してスクリーニングするためのファージディスプレイベースのコンビナトリアルアプローチが開発されている(Heinis et al. (2009), Nat Chem Biol 5 (7), 502-7 and WO2009/098450)。簡単に説明すると、3つのシステイン残基および、6つのランダムなアミノ酸の2つの領域を含む直鎖ペプチド(Cys-(Xaa)6-Cys-(Xaa)6-Cys)のコンビナトリアルライブラリーを、ファージ上にディスプレーし、システイン側鎖を小分子(トリス-(ブロモメチル)ベンゼン)に共有結合させることによって環化した。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、二環式毒素複合体、およびその調製方法を提供する。いくつかの実施態様において、本発明の二環式毒素複合体は、強力な抗チューブリン剤MMAEに共有結合した、拘束された二環式ペプチドを含む。いくつかの実施態様において、二環式毒素複合体は、ネクチン-4に高い親和性および特異性で結合する拘束された二環式ペプチドを含む。
【0008】
いくつかの実施態様において、本発明は、式I:
【化1】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、m、およびnはそれぞれ、以下に定義され、本明細書の実施態様(単独および組み合わせの両方)に記載される通りである]の二環式毒素複合体またはその薬学的に許容できる塩を提供する。
【0009】
いくつかの実施態様において、本発明は、本明細書に記載のスキームおよび工程に従って、本発明の二環式毒素複合体、またはその合成中間体を調製する方法を提供する。
【0010】
いくつかの実施態様において、本発明は、本明細書に記載の癌を予防および/または処置する方法であって、本発明の二環式毒素複合体を患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施態様において、本発明は、本発明の二環式毒素複合体の調製に有用な合成中間体またはその組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、要因回帰を示す:+56(%)対TFA(%)、DTT(%)。CenterPtは、+56不純物に対する効果の正規プロットを示した図1に示されている。
【0013】
図2図2は、+56不純物に対する効果のパレート図を示す。
【0014】
図3図3は、要因回帰を示す:+163(%)対TFA(%)、DTT(%)。CenterPtは、+163不純物に対する効果の正規プロットを示した図3に示されている。
【0015】
図4図4は、+163不純物に対する効果のパレート図を示す。
【0016】
図5図5は、切断カクテルの応答最適化を示す。
【0017】
本発明の詳細な説明
1.本発明の特定の態様の一般的な説明
多数の二環式毒素複合体およびその合成方法は、国際特許出願番号PCT/GB2019/051740(国際公開番号WO 2019/243832)に記載されており、その全体は引用により本明細書に包含される。例えば、二環式毒素結合体BCY8245(BT8009)は、以下のようにして合成されると記載されている:工程1)Fmoc-Val-Citの固相合成;工程2)Fmoc脱保護;工程3)グルタル酸モノメチルとアミド形成;工程4)弱酸性条件下、樹脂からグルタリル-Val-Citメチルエステルを切断;工程5)p-アミノベンジルアルコールでC末端にアミドを形成;工程6)ビス(4-ニトロフェニル)カーボネートを用いてp-ニトロフェニルカルバメートを形成;工程7)MMAEで処理してp-アミノフェニルカルバメートを形成;工程8)グルタリルメチルエステルを加水分解して酸を形成;工程9)酸を活性化し、N-ヒドロキシスクシンイミドで処理して活性化NHSエステルを形成;工程10)DMA中塩基(DIEA)の存在下、NHSエステルをBCY8234で処理してBCY8245を形成し、次いで、C18半分離カラム(TFA条件)を用いた標準的な逆相精製および凍結乾燥を行い、純粋な二環式毒素複合体BCY8245(BT8009)を得る。
【0018】
今回、Val-Cit-PAB-MMAEをグルタル酸無水物で処理し、得られた酸とBCY8234で直接アミドを形成することにより、合成経路の工程数を減らし、不純物プロファイルと収率を改善できることが見出された。
【0019】
BCY8245の改良プロセスには、以下の特徴が含まれるが、これらに限定されない:
・簡略化された2工程プロセス;
・収率の改善(2工程で44%の収率、LC純度96.9%);
・カップリング工程(第二工程)において1当量のgvcMMAE/TBTUを使用して、同定されたRRT0.93不純物を減少させる;および
・最適化された濾過およびカラム精製工程。
【0020】
さらに、二環ペプチドBCY8234の合成の改良を行った。
【0021】
BCY8234の改良プロセスには、以下の特徴が含まれるが、これらに限定されない:
・形成されたアスパルチミド不純物の量の減少;
・10%ピペリジン/DMF中3%オキシマを含むデブロッキングカクテルの最適化;
・カップリング反応においてDITUを使用して、システインの酸化を抑制することを助ける;
・サルコシンカップリングにおいてサルコシンジペプチド誘導体を使用;
・高担持(>0.8mmol/g)樹脂の使用;
・二環ペプチド形成工程中、TATAを1.3eq.に減少させ、反応時間を4時間に短縮し、ACN含有量を20%に減少させる;
・カラム充填(pH=6.8)および粗生成物長期保存(pH=4.5)に最適なpH値の同定;および
・精製TFA塩を脱塩し、次いで、凍結乾燥することで長期安定性を向上させる。
【0022】
したがって、一態様において、本発明は、式I:
【化2】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、およびR11はそれぞれ独立して、水素であるか、あるいは、C1-6脂肪族、3-8員飽和または部分的不飽和単環式炭素環式環、フェニル、8-10員二環式芳香族炭素環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~2個のヘテロ原子を有する4-8員飽和または部分的不飽和単環式ヘテロ環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5-6員単環式ヘテロ芳香環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する8-10員二環式ヘテロ芳香環から選択される、場合により置換されていてよい基であり;
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15であり;そして
nは、0、1または2である]
の二環式毒素複合体またはその薬学的に許容できる塩を提供する。
【0023】
別の態様において、本発明は、式Iの二環式毒素複合体またはその塩を調製する方法を提供する。特定の実施態様において、本化合物は、一般に、以下に規定されるスキームIに従って調製され、ここで、変数、試薬、中間体および反応工程はそれぞれ、以下に定義され、本明細書中の実施態様(単独および組み合わせの両方)に記載される通りである。
【化3-1】
【化3-2】
【0024】
変数R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、mおよびnは、上記で定義されている通りであり、本明細書で説明するクラスおよびサブクラスである。
【0025】
一態様において、本発明は、上記のスキームIに示された工程に従って、高いエナンチオマーおよびジアステレオマー純度のホモキラル出発物質から式Iの二環式毒素複合体(BTC)を調製する方法を提供する。本式の化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、式Iの化合物について上記で定義されている通りであり、それぞれ独立して水素であるか、あるいは、C1-6脂肪族、3-8員飽和または部分的不飽和単環式炭素環式環、フェニル、8-10員二環式芳香族炭素環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~2個のヘテロ原子を有する4-8員飽和または部分的不飽和単環式ヘテロ環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5-6員単環式ヘテロ芳香環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する8-10員二環式ヘテロ芳香環から選択される、場合により置換されていてよい基である。
【0026】
本式の化合物において、mは、式Iの化合物について上記で定義した通りであり、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15である。
【0027】
本式の化合物において、nは、式Iの化合物について上記で定義した通りであり、0、1または2である。
【0028】
工程S-1において、式F-1のフラグメントを、式Aの無水物への開環付加を介して、式Aの無水物にカップリングして、式F-2のフラグメントを形成する。
【0029】
工程S-2において、アミド形成を介してF-2のフラグメントをF-3のフラグメントにカップリングして、式Iの化合物を形成する。アミド形成は、以下の当技術分野で公知の多種多様なカップリング剤を用いて達成することができるが、これらに限定されるものではない:
・N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC);
・N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC);
・N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド(EDC);
・N-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU);
・N,N,N',N'-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU);
・O-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU);
・(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP);
・(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP);
・ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBrOP);
・ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP);
・ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィンクロライド(BOP-Cl);
・3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン(DEPBT);
・2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン-2,4,6-トリオキシド(T3P);
・1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドテトラフルオロボレート(TATU);
・N,N,N',N'-テトラメチル-O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU);
・2-(エンド-5-ノルボルネン-2.3-ジカルボキシルイミド)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TNTU);
・O-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TOTU);
・O-(2-オキソ-1(2H)ピリジル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TPTU);
・N,N,N',N'-テトラメチル-O-(N-サクシニミジル)ウロニウム テトラフルオロボレート(TSTU);または
・O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TDBTU)。
【0030】
別の態様において、本発明は、フラグメントF-3またはその塩を調製する方法を提供する。特定の実施態様において、本発明化合物は、一般に、以下に記載されるスキームIIに従って調製され、ここで、変数、試薬、中間体および反応工程はそれぞれ、以下に定義され、本明細書の実施態様(単独および組み合わせの両方)に記載される通りである。
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【0031】
一態様において、本発明は、上記のスキームIIに示されている工程に従って、式F-3のフラグメントをエナンチオマー豊富化形態で調製する方法を提供する。本式の化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、式Iの化合物について上記で定義されている通りであり、それぞれ独立して、水素であるか、あるいは、C1-6脂肪族、3-8員飽和または部分的不飽和単環式炭素環式環、フェニル、8-10員二環式芳香族炭素環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~2個のヘテロ原子を有する4-8員飽和または部分的不飽和単環式ヘテロ環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5-6員単環式ヘテロ芳香環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する8-10員二環式ヘテロ芳香環から選択される、場合により置換されていてよい基である。
【0032】
本式の化合物において、mは、式Iの化合物について上記で定義されている通りであり、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15である。
【0033】
本式の化合物において、nは、式Iの化合物について上記で定義されている通りであり、0、1または2である。
【0034】
工程S-1’において、式Gの化合物を脱保護して窒素保護基PG3を除去し、次に、式Fの保護アミノ酸にカップリングし、次いで、PG3を除去して、アミド形成を介して式Eの化合物を形成する。
【0035】
当業者であれば、様々な条件を用いてPG3を除去し得ることを認識するであろう。いくつかの実施態様において、PG3除去は、DMF中20%ピペリジンでの処理(デブロッキング工程)によって達成され得る。いくつかの実施態様において、PG3除去は、カップリング/リカップリング工程の前に、DMFでの洗浄サイクルが続いてもよい。
【0036】
工程S-2'において、式Eの化合物をPG3保護アミノ酸に反復的にカップリングし、次いでPG3を除去し、アミド形成を介して式Dの化合物を形成する。アミド形成は、DCC、DIC、EDC、HATU、HBTU、HCTU、PyBOP、PyAOP、PyBrOP、BOP、BOP-Cl、DEPBT、T3P、TATU、TBTU、TNTU、TOTU、TPTU、TSTU、またはTDBTUなどの当技術分野で公知の多種多様なカップリング剤を用いて達成することができるが、これらに限定されない。当業者であれば、上記のカップリング剤を用いてアミド形成が達成され得ることを認識するであろう。
【0037】
いくつかの実施態様において、アミド形成はDIC/オキシマを用いて達成され、式Dの化合物を得る。
【0038】
工程S-3’において、式Dの化合物を、a)固相樹脂から切断し、b)全体的に脱保護して(すなわち、示されたPG2およびPG1保護基、ならびにR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、およびR11基上の任意の追加の保護基の除去)、式Cの化合物を得る。当業者であれば、固相からの切断および全体的な脱保護が酸による処理によって達成され得ることを認識するであろう。当業者であれば、TFAのような酸、およびDTT、TISおよびNH4Iを含むがこれらに限定されない陽イオン捕捉剤を含むTFAカクテルを水のような溶媒中で処理することにより、固相からの切断および全体的な脱保護を一工程で達成することができることも認識するであろう。
【0039】
工程S-4'において、式Cの化合物を化合物B(TATA)上に環化し、式F-3の化合物を得る。当業者であれば、式Cの化合物のシステイン残基のTATAへの3つのマイケル付加を介して反応が進行され、塩基性条件下で達成でき、環状生成物を得ることを認識するであろう。
【0040】
式DのPG1基はそれぞれ独立して、適当なアルコール保護基である。適当なアルコール保護基は、当該技術分野において周知であり、Protecting Groups in Organic Synthesis, T. W. Greene and P. G. M. Wuts, 4th Edition, John Wiley & Sons, 2006(その全体は引用により本明細書に包含される)に詳細に記載されている。適当なアルコール保護基は、それらが結合している--O--部分と一緒に取られており、エーテル、置換メチルエーテル、置換エチルエーテル、置換ベンジルエーテルなどを含むが、これらに限定されない。式DのPG1基の例としては、t-ブチル(tBu)、メチル、エチル、メトキシメチル、テトラヒドロフラニル、アリル、ベンジル(Bn)、アセテート、2-ヒドロキシエチルなどが挙げられる。特定の実施態様において、式Dの化合物中のPG1基は、t-ブチル(tBu)、メチル、アセテート、またはエチルである。他の実施態様において、式Dの化合物中のPG1基は、t-ブチル(tBu)である。
【0041】
式D、EおよびGのPG2基はそれぞれ独立して、適当なチオール保護基である。適当なチオール保護基は、当該技術分野において周知であり、Protecting Groups in Organic Synthesis, T. W. Greene and P. G. M. Wuts, 4th Edition, John Wiley & Sons, 2006(その全体は、引用により本明細書に包含される)に詳細に記載されているものを含む。。適当なチオール保護基は、それらが結合している--S--部分と一緒に取られており、エーテル、置換メチルエーテル、置換エチルエーテル、置換ベンジルエーテルなどを含むが、これらに限定されない。式D、EおよびGのPG2基の例として、t-ブチル(tBu)、メチル、エチル、メトキシメチル、テトラヒドロフラニル、アリル、ベンジル(Bn)、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル(Tr)、アダマンチルなどが挙げられる。特定の実施態様において、式D、E、およびGの化合物のPG2基は、トリフェニルメチル(Tr)、t-ブチル(tBu)、メチル、ジフェニルメチル、またはアダマンチルである。他の実施態様において、式D、E、およびGの化合物中のPG2基は、トリフェニルメチル(Tr)である。
【0042】
式FおよびF'のPG3基はそれぞれ独立して、適当なアミノ保護基である。適当なアミノ保護基は、当該技術分野において周知であり、Protecting Groups in Organic Synthesis, T. W. Greene and P. G. M. Wuts, 4th Edition, John Wiley & Sons, 2006(その全体は引用により本明細書に包含される)に詳細に記載されているものを含む。適当なアミノ保護基は、それらが結合している--NH--部分と一緒に取られており、アラルキルアミン、カルバメート、アリルアミン、アミドなどを含むが、これらに限定されない。式FおよびF'のPG3基の例としては、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、ピバロイルなどが挙げられる。特定の実施態様において、式FおよびF'の化合物のPG3基は、t-ブチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、またはアセチルである。他の実施態様において、式FおよびF'の化合物中のPG3基は、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)である。
【0043】
当業者であれば、本明細書に記載のホモキラル構成要素を用いた反復的アミドカップリングおよび脱保護プロトコルを、高いエナンチオマー純度およびジアステレオマー純度で式E、D、CおよびF-3の化合物を提供するために適合させることができることを認識するであろう。特定の実施態様において、式E、D、C、およびF-3の化合物の1つのジアステレオマーは、他の立体異性体を実質的に含まずに形成される。本明細書で使用される「実質的に含まない」とは、化合物が有意に高い割合の1つのジアステレオマーから構成されていることを意味する。他の実施態様において、少なくとも約98重量%の所望のジアステレオマーが存在する。本発明のさらに他の実施態様において、少なくとも約99重量%の所望のジアステレオマーが存在する。このようなジアステレオマーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および結晶化を含む、当業者に公知の任意の方法によってジアステレオマー混合物から単離され得るか、または本明細書に記載の方法によって調製され得る。
【0044】
2.化合物および定義
本発明の化合物には、上記で一般的に記載されているものが含まれ、本明細書で開示されるクラス、サブクラス、および種によってさらに例示される。本明細書で使用される場合、特に断らない限り、以下の定義が適用されるものとする。本発明の目的のために、化学元素は、元素周期表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、75thEd.に従って定義される。さらに、有機化学の一般原理は、“Organic Chemistry”, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999、および“March’s Advanced Organic Chemistry”, 5th Ed., Ed.: Smith, M.B. and March, J., John Wiley & Sons, New York: 2001(それぞれの全内容は引用により本明細書に包含される)に記載されている。
【0045】
本明細書で使用される用語[脂肪族」または「脂肪族基」とは、完全に飽和しているか1つまたはそれ上の不飽和単位を含む直鎖(すなわち、分岐していない)または分岐の置換または非置換炭化水素鎖、あるいは完全に飽和しているか1つまたはそれ以上の不飽和単位を含むが芳香族ではない単環式炭化水素または二環式炭化水素(本明細書では「炭素環」、「シクロ脂肪族」または「シクロアルキル」とも称される)であって、分子の残りの部分に単一の結合点を有するものを意味する。特に断らない限り、脂肪族基は、1~6個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施態様において、脂肪族基は、1~5個の脂肪族炭素原子を含む。他の実施態様において、脂肪族基は、1~4個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施態様において、脂肪族基は、1~3個の脂肪族炭素原子を含み、さらに他の実施態様において、脂肪族基は、1~2個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施態様において、「シクロ脂肪族」(または「炭素環」または「シクロアルキル」)とは、完全に飽和しているか1つまたはそれ以上の不飽和単位を含むが芳香族ではない単環式C3-C6炭化水素であって、分子の残りの部分に単一の結合点を有するものを意味する。適当な脂肪族基としては、直鎖または分岐の置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル基、およびそれらのハイブリッド、例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「架橋二環式」とは、少なくとも1つの架橋を有する任意の二環式環系、すなわち、飽和または部分不飽和の炭素環式またはヘテロ環式を意味する。IUPACによって定義されるように、「架橋」は、2つの橋頭を連結する原子の分岐していない鎖または原子または原子価結合であり、ここで「橋頭」は、3個またはそれ以上の骨格原子(水素を除く)に結合している環系の任意の骨格原子である。いくつかの実施態様において、架橋二環式基は、7~12個の環員および、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する。このような架橋二環式基は、当該技術分野において周知であり、各基が任意の置換可能な炭素原子または窒素原子において分子の残りの部分に結合している、以下に規定される基を含む。特に断らない限り、架橋二環式基は、脂肪族基について規定されるように、1つまたはそれ以上の置換基によって場合により置換されていてよい。さらに、または代替的に、架橋二環式基の置換可能な窒素は場合により置換されていてよい。例示的な架橋二環式としては、
【化5】
が挙げられる。
【0047】
用語「低級アルキル」とは、C1-4直鎖または分岐アルキル基を意味する。例示的な低級アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびtert-ブチルである。
【0048】
用語「低級ハロアルキル」とは、1個またはそれ以上のハロゲン原子で置換されているC1-4直鎖または分枝アルキル基を意味する。
【0049】
用語「ヘテロ原子」とは、酸素、硫黄、窒素、リンまたはシリコン(窒素、硫黄、リンまたはシリコンの酸化型;塩基性窒素の四級型または;ヘテロ環式環の置換可能な窒素、例えばN(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルの場合)、NH(ピロリジニルの場合)またはNR(N-置換ピロリジニルの場合)を含む)の1つ以上を意味する。
【0050】
本明細書で使用される用語「不飽和」とは、ある部分が1つまたは以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「2価の炭化水素鎖」とは、本明細書で定義されるような直鎖または分岐の2価のアルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン鎖を意味する。
【0052】
用語「アルキレン」とは、2価のアルキル基を意味する。「アルキレン鎖」はポリメチレン基、すなわち-(CH2)n-(ここで、nは正の整数であり、好ましくは1~6、1~4、1~3、1~2、または2~3である)である。置換アルキレン鎖は、1個またはそれ以上のメチレン水素原子が置換基で置換されているポリメチレン基である。適当な置換基としては、置換脂肪族基について以下に説明するものが挙げられる。
【0053】
用語「アルケニレン」とは、2価のアルケニル基を意味する。置換アルケニレン鎖は、1個またはそれ以上の水素原子が置換基で置換されている少なくとも1つの二重結合を含むポリメチレン基である。適当な置換基としては、置換脂肪族基について以下に説明するものが挙げられる。
【0054】
用語「アルキニレン」は、2価のアルキニル基を意味する。置換アルキニレン鎖は、1個またはそれ以上の水素原子が置換基によって置換されている、少なくとも1つの三重結合を含むポリメチレン基である。適当な置換基としては、置換脂肪族基について以下に説明するものが挙げられる。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「シクロプロピレニル」とは、以下の構造の2価のシクロプロピル基を意味する:
【化6】
【0056】
用語「ハロゲン」とは、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0057】
単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」または「アリールオキシアルキル」のように大きな部分の一部として使用される用語「アリール」は、合計5~14個の環員を有する単環式または二環式環系(ここで、系中の少なくとも1つの環は芳香族であり、系中の各環は3~7個の環員を含む)を意味する。用語「アリール」とは、用語「アリール環」と互換的に使用され得る。本発明の特定の実施態様において、「アリール」とは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルなどを含むがこれらに限定されない、1つまたはそれ以上の置換基を有していてもよい芳香族環系を意味する。また、本明細書で使用される用語「アリール」の範囲内には、芳香族環が1つまたはそれ以上の非芳香環に縮合した基、例えば、インダニル、フタルイミジル、ナフトイミジル(naphthimidyl)、フェナントリジニル、またはテトラヒドロナフチルなどのも含まれる。
【0058】
単独で、またはより大きな部分、例えば「ヘテロアルアルキル」または「ヘテロアルアルコキシ」の一部として使用される用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアル-(heteroar-)」とは、5~10個の環原子、好ましくは5個、6個または9個の環原子を有する;環状アレイで共有される6個、10個または14個のπ電子を有する;および、炭素原子に加えて、1~5個のヘテロ原子を有する、基を意味する。用語「ヘテロ原子」とは、窒素、酸素もしくは硫黄を意味し、窒素または硫黄の任意の酸化型および塩基性窒素の任意の四級型を含む。ヘテロアリール基には、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニルおよびプテリジニルが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」および「「ヘテロアル-(heteroar-)」はまた、ヘテロ芳香環が1つまたはそれ以上のアリール環、シクロ脂肪族環またはヘテロシクリル環に縮合される基を含み、ここで、ラジカルまたは結合点がヘテロ芳香環上にある。非限定的な例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルおよびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが挙げられる。ヘテロアリール基は単環式または二環式である。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」または「ヘテロ芳香族」という用語と同じ意味で使用することができ、これらの用語はいずれも、場合により置換されていてよい環を含む。用語「ヘテロアラルキル」とは、ヘテロアリールによって置換されているアルキル基を意味し、ここで、アルキルおよびヘテロアリール部分は、独立して場合により置換されていてよい。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環式ラジカル」および「ヘテロ環式環」は、互換的に使用され、飽和または部分的不飽和であり、炭素原子に加えて、1個またはそれ以上、上記で定義されるように、好ましくは1~4個のヘテロ原子を有する、安定な5-7員単環式または7-10員二環式ヘテロ環式部分を意味する。ヘテロ環の環原子に関して使用される時、用語「窒素」は置換窒素を含む。例として、酸素、硫黄または窒素から選択される0~3個のヘテロ原子を有する飽和または部分不飽和環において、窒素は、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルの場合のように)、NH(ピロリジニルの場合のように)、またはNR(N-置換ピロリジニルの場合のように)であってもよい。
【0060】
ヘテロ環式環は、任意のヘテロ原子または炭素原子においてそのペンダント基に結合して安定な構造をもたらすことができ、環原子のいずれかは場合により置換されていてよい。このような飽和または部分的不飽和ヘテロ環式ラジカルの例としては、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニルピロリジニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、トリアゼピニル、モルホリニルおよびキヌクリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「ヘテロ環式基」、「ヘテロ環式部分」および「ヘテロ環式ラジカル」は、本明細書において互換的に使用され、ヘテロシクリル環が、1つまたはそれ以上のアリール、ヘテロアリール、またはシクロ脂肪族環に縮合した基、例えばインドリニル、3H-インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニルも含む。ヘテロシクリル基は、単環式であっても二環式であってもよい。用語「ヘテロシクリルアルキル」とは、ヘテロシクリルによって置換されているアルキル基を意味し、ここで、アルキル部分およびヘテロシクリル部分はそれぞれ独立して場合により置換されていてよい。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「部分的不飽和」とは、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む環部分を意味する。用語「部分不飽和」は、複数の不飽和の部分を有する環を包含することが意図されるが、本明細書で定義される、アリールまたはヘテロアリール部分を包含することは意図されない。
【0062】
本明細書に記載されるように、本発明の化合物は、「場合により置換されていてよい」部分を含むことができる。一般的に、用語「置換されている」とは、「場合により」という用語が先行するか否かにかかわらず、指定された部分の1つまたはそれ以上の水素が、適当な置換基によって置換されていることを意味する。特に断らない限り、「場合により置換されていてよい」基は、その基の各置換可能な位置において、適当な置換基を有することができ、任意の所与の構造における複数の位置が、特定の基から選択された複数の置換基によって置換され得る場合、該置換基は、全ての位置において、同一であっても異なっていてもよい。本発明によって想定される置換基の組み合わせは、安定した、または化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものが好ましい。本明細書で使用される用語「安定した」は、それらの産生、検出、ならびに、特定の実施態様においては、それらの回収、精製、および本明細書に開示される1つまたはそれ以上に対する使用を可能にする条件に供される時に実質的に改変されない化合物を意味する。
【0063】
「場合により置換されていてよい」基の置換可能な炭素原子上の適当な一価の置換基は、独立して、ハロゲン-(CH2)0-4R°;-(CH2)0-4OR°;-O(CH2)0-4R°、-O-(CH2)0-4C(O)OR°;-(CH2)0-4CH(OR°)2;-(CH2)0-4SR°;R°によって置換されていてよい-(CH2)0-4Ph;R°によって置換されていてよい-(CH2)0-4O(CH2)0-1Ph;R°によって置換されていてよい-CH=CHPh;R°によって置換されていてよい-(CH2)0-4O(CH2)0-1-ピリジル;-NO2;-CN;-N3;-(CH2)0-4N(R°)2;-(CH2)0-4N(R°)C(O)R°;-N(R°)C(S)R°;-N(R°)C(NR°)N(R°)2;-(CH2)0-4N(R°)C(O)NR°2;-N(R°)C(S)NR°2;-(CH2)0-4N(R°)C(O)OR°;-N(R°)N(R°)C(O)R°;-N(R°)N(R°)C(O)NR°2;-N(R°)N(R°)C(O)OR°;-(CH2)0-4C(O)R°;-C(S)R°;-(CH2)0-4C(O)OR°;-(CH2)0-4C(O)SR°;-(CH2)0-4C(O)OSiR°3;-(CH2)0-4OC(O)R°;-OC(O)(CH2)0-4SR-、-SC(S)SR°;-(CH2)0-4SC(O)R°;-(CH2)0-4C(O)NR°2;-C(S)NR°2;-C(S)SR°;-(CH2)0-4OC(O)NR°2;-C(O)N(OR°)R°;-C(O)C(O)R°;-C(O)CH2C(O)R°;-C(NOR°)R°;-(CH2)0-4SSR°;-(CH2)0-4S(O)2R°;-(CH2)0-4S(O)2OR°;-(CH2)0-4OS(O)2R°;-S(O)2NR°2;-(CH2)0-4S(O)R°;-N(R°)S(O)2NR°2;-N(R°)S(O)2R°;-N(OR°)R°;-C(NH)NR°2;-P(O)2R°;-P(O)R°2;-OP(O)R°2;-OP(O)(OR°)2;-SiR°3;-(C1-4直鎖または分岐アルキレン)O-N(R°)2;または-(C1-4直鎖または分岐アルキレン)C(O)O-N(R°)2であり、ここで、各R°は以下に定義するように置換されていてもよく、独立して水素、C1-6脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0-1Ph、-CH2-(5-6員ヘテロアリール環)、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5-6員飽和部分的不飽和またはアリール環であるか、または上記の定義にかかわらず、R°の2つの独立した出現がそれらの介在原子と一緒になって窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択された0~4個のヘテロ原子を有する3-12員飽和、部分不飽和、またはアリール単環式もしくは二環式環を形成し、これらは以下に定義するように置換されていてもよい。
【0064】
R°(またはR°の2つの独立した出現をそれらの介在原子と一緒にとることによって形成する環)上の適当な一価の置換基は、独立してハロゲン、ハロゲン、-(CH2)0-2R、-(ハロR)、-(CH2)0-2OH、-(CH2)0-2OR、-(CH2)0-2CH(OR)2;-O(ハロR)、-CN、-N3、-(CH2)0-2C(O)R、-(CH2)0-2C(O)OH、-(CH2)0-2C(O)OR、-(CH2)0-2SR、-(CH2)0-2SH、-(CH2)0-2NH2、-(CH2)0-2NHR、-(CH2)0-2NR 2、-NO2、-SiR 3、-OSiR 3、-C(O)SR -(C1-4直鎖または分岐アルキレン)C(O)OR、または-SSRであり、ここで、各Rは非置換であるか、または「ハロ」が前にある場合には、1つまたはそれ以上のハロゲンのみによって置換されており、C1-4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0-1Ph、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5-6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリール環から選択される。R°の飽和炭素原子上の適当な二価の置換基は、=Oおよび=Sを含む。
【0065】
「場合により置換されていてよい」基の飽和炭素原子上の適当な二価の置換基としては、以下が挙げられる:=O、=S、=NNR* 2、=NNHC(O)R*、=NNHC(O)OR*、=NNHS(O)2R*、=NR*、=NOR*、-O(C(R* 2))2-3O-、または-S(C(R* 2))2-3S-、ここで、R*の各独立した出現は、水素、以下に定義されるように置換されていてもよいC1-6脂肪族、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換の5-6員飽和、部分不飽和、もしくはアリール環から選択される。「場合により置換されていてよい」基の近隣の置換可能な炭素に結合される適当な二価の置換基としては、以下が挙げられる:-O(CR* 2)2-3O-(ここで、R*の各々独立した出現は、水素、以下に定義されるように置換されていてもよいC1-6脂肪族、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換5-6員飽和、部分不飽和もしくはアリール環から選択される)。
【0066】
R*の脂肪族基上の適当な置換基としては、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH2、-NHR、-NR 2、または-NO2が挙げられ、ここで、各Rは非置換であるか、または「ハロ」が先行する場合には、1つまたは以上のハロゲンのみによって置換されており、独立してC1-4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0-1Ph、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5-6員の飽和、部分不飽和もしくはアリール環である。
【0067】
「場合により置換されていてよい」基の置換可能な窒素上の適当な置換基としては、-R、-NR 2、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)C(O)R、-C(O)CH2C(O)R、-S(O)2R、-S(O)2NR 2、-C(S)NR 2、-C(NH)NR 2、または-N(R)S(O)2Rが挙げられ、ここで、各R†は、独立して水素、以下に定義されるように置換されていてもよいC1-6脂肪族、非置換-OPh、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換5-6員飽和、部分的不飽和もしくはアリール環であるか、または上記の定義にかかわらず、Rの2つの独立した出現がそれらの介在原子と一緒になって、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択された0-4個のヘテロ原子を有する非置換3-12員飽和、部分的不飽和、もしくはアリール単環式環または二環式環を形成する。
【0068】
Rの脂肪族基上の適当な置換基は、独立してハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH2、-NHR、-NR 2、または-NO2であり、ここで、各Rは非置換であるか、または「ハロ」が先行する場合には、1つまたはそれ以上のハロゲンのみによって置換されており、独立してC1-4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0-1Ph、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5-6員飽和、部分不飽和、もしくはアリール環である。
【0069】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容できる塩」とは、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応などがなく、ヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当なベネフィット/リスク比に見合った塩を意味する。薬学的に許容できる塩は、当該技術分野においてよく知られている。例えば、S.M.Bergeらは、薬学的に許容できる塩をJ.Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19(引用により本明細書に包含される)に詳細に記載している。さらに、薬学的に許容できる塩は、Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, 2nd Revised Edition, (2011), P. Heinrich Stahl (Editor), Camille G. Wermuth (Editor), (ISBN: 978-3-906-39051-2)(その全体は引用により本明細書に包含される)に詳細に記載されている。本発明の化合物の薬学的に許容できる塩には、適当な無機および有機の酸および塩基に由来するものが含まれる。薬学的に許容できる非毒性酸添加塩の例として、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸、または有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸、またはイオン交換のような当技術分野で使用される他の方法を用いて形成されるアミノ基の塩である。その他の薬学的に許容できる塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸、ベシル酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルフォン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、リンゴ酸塩フマル酸塩、グルコヘプトン酸、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヒドロアイオダイド、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などがある。
【0070】
適切な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1-4アルキル)4塩が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらに薬学的に許容できる塩としては、適切な場合、ハライド、ヒドロキシド、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、(C1-6アルキル)スルホン酸塩、アリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成される非毒性のアンモニウム塩、第4級アンモニウム塩、アミンカチオン塩が挙げられる。
【0071】
特に断らない限り、本明細書に記載の構造は、構造のすべての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何学的(または配座))形態;例えば、各不斉中心のRおよびS配置、ZおよびEの二重結合異性体、ならびにZおよびEの配座異性体も含むことを意味する。したがって、本発明の化合物の単一立体化学異性体、ならびにエナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何学的(または配座)混合物は、本発明の範囲内である。特に断らない限り、本発明の化合物のすべての互変異性形態は本発明の範囲内である。
【0072】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」とは、所望の生物学的応答を引き出す物質(例えば、治療剤、組成物、および/または製剤)の量を意味する。いくつかの実施態様において、治療有効量の物質とは、疾患、病気(condition)または障害に罹患しているか、または罹患しやすい対象に投与レジメンの一部として投与された場合に、疾患、病気または障害の発症を処置、診断、予防、および/または遅延させるのに十分な量である。当業者には理解されるように、物質の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される物質、標的細胞または組織などの因子に応じて変化し得る。例えば、疾患、病気または障害を処置するための製剤中の化合物の有効量は、疾患、病気または障害の1つまたはそれ以上の症状または特徴を軽減、改善、緩和、阻害、予防、発症遅延、重症度軽減、および/または発生率軽減する量である。
【0073】
本明細書で使用される用語「処置する(treat)」または「処置する(treating)」は、疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の1つまたはそれ以上の症状を部分的にまたは完全に軽減、阻害、発症遅延、予防、改善および/または緩和することを意味する。本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」、「処置(treat)」および「処置する(treating)」という用語とは、本明細書に記載されるように、疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の1つもしくはそれ以上の症状を部分的または完全に軽減、阻害、発症遅延、予防、改善および/もしくは緩和することを意味する。いくつかの実施態様において、処置は、1つまたはそれ以上の症状が発生した後に投与され得る。いくつかの実施態様において、「処置する(treating)」という用語は、疾患または障害の進行を予防または阻止させることを含む。他の実施態様において、処置(treatment)は、症状がない状態で投与されてもよい。例えば、処置は、症状の発症前に(例えば、症状の既往歴に照らして、および/または遺伝的因子もしくは他の感受性因子に照らして)感受性のある個体に投与されてもよい。処置(treatment)はまた、症状が消散した後も、例えば再発を予防または遅延させるために継続され得る。したがって、いくつかの実施態様において、用語「処置する(treating)」とは、疾患または障害の再発(relapse)または再発(recurrence)を予防することを含む。
【0074】
本明細書で使用される「単位剤形」という表現とは、処置される対象に適切な治療用製剤の物理的に個別的な単位を意味する。しかしながら、本発明の組成物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医が決定することが理解されるであろう。任意の特定の対象または生物に対する特定の有効用量レベルは、処置される障害および障害の重症度;利用される特定の活性剤の活性;利用される特定の組成物;対象の年齢、体重、一般的健康状態、性別および食事;利用される特定の活性剤の投与時間および排泄率;処置の期間;利用される特定の化合物(複数可)と併用または同時に使用される薬物および/または追加療法、ならびに医学技術において周知のような因子を含む種々の因子に依存する。
【0075】
二環式毒素複合体BT8009は、以下に示す構造を有し、BT8009(BCY8245)の調製は、WO 2019/243832に記載されており、その全体は、引用により本明細書に包含される。
【化7】
【0076】
3. 式Iの二環式毒素複合体および関連中間体の合成に関する説明
いくつかの実施態様において、本発明は、スキームIに従って式Iの二環式毒素複合体を調製する方法であり、変数、試薬、中間体および反応工程はそれぞれ、以下に定義され、本明細書の実施態様(単独および組み合わせの両方)に記載される通りである。
【0077】
スキームIの式Iの化合物は、ネクチン-4に高い親和性および特異性で結合する拘束された二環ペプチドを含む。いくつかの実施態様において、二環ペプチドは、国際特許出願No.PCT/GB 2019/051740(国際公開WO 2019/243832)(その全体は引用により本明細書に包含される)に記載されているものから選択される。いくつかの実施態様において、二環ペプチドは、分子足場に共有結合したペプチドである。いくつかの実施態様において、二環ペプチドは、分子足場へ共有結合を形成することができる3つのシステイン残基(以下の配列ではCi、CiiおよびCiiiと称される)を有するペプチドを含む。いくつかの実施態様において、二環式ペプチドは、
ペプチドCi-P/A/Hyp-F/Y-G/A-Cii-X1-X2-X3-W/1-Nal/2-Nal-S/A-X4-P-I/D/A-W/1-Nal/2-Nal-Ciii(配列番号:1);
Ci-W/A-P-L-D/S-S/D-Y-W-Cii-X5-R-I-Ciii(配列番号:2);
Ci-V-T-T-S-Y-D-Cii-F/W-L/V-H/R/T-L-L/G-G/Q/H-Ciii(配列番号:3);
Ci-X6-X7-X8-Cii-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-Ciii(配列番号:4);および
Ci-W/A/Y-P/A-L-D/S/A-S/D/P/A-Y-W/1-Nal-Cii-X5-R/HArg/A-I-Ciii(配列番号:5)、を含み;ここで、
X1~X5は、修飾および非天然アミノ酸を含むいずれかのアミノ酸残基を示し;X6は、Gly;Proまたは、アゼチジン(Aze)、ヒドロキシプロリン(HyP)、4-アミノ-プロリン(Pro(4NH))、オキサゾリジン-4-カルボン酸(Oxa)、オクタヒドロインドリンカルボン酸(Oic)または4,4-ジフルオロプロリン(4,4-DFP)から選択される、Proの非天然誘導体;Alaまたは、アミノイソ酪酸(Aib)から選択される、Alaの非天然誘導体;またはサルコシン(Sar)を示し;
X7は、Pheまたは、3-メチル-フェニルアラニン(3MePhe)、4-メチル-フェニルアラニン(4MePhe)、ホモフェニルアラニン(HPhe)、4,4-ビフェニルアラニン(4,4-BPA)または3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)から選択される、Pheの非天然誘導体;Tyr;あるひは、Alaまたは、1-ナフチルアラニン(1-Nal)、2-ナフチルアラニン(2-Nal)または2-ピリジルアラニン(2Pal)から選択される、Alaの非天然誘導体を示し;
X8は、Gly;Ala;Asp;Lysまたは、アセチル-リシン(KAcまたはLys(Ac))から選択される、Lysの非天然誘導体;Phe;Glu;Gln;Leu;Ser;Arg;またはシステイン酸(Cya)を示し;X9は、存在しないか、あるいは、Metまたは、メチオニンスルホン(Met(O2))から選択される、Metの非天然誘導体;Glnまたは、ホモグルタミン(HGln)から選択される、Glnの非天然誘導体;Leuまたは、ホモロイシン(HLeu)またはノルロイシン(Nle)から選択される、Leuの非天然誘導体;Lys;Ile;t-ブチル-アラニン(tBuAla);またはホモセリン-メチル(HSe(Me))を示し;X10は、Pro;Lysまたは、アセチル-リシン(KAcまたはLys(Ac))から選択される、Lysの非天然誘導体;Argまたは、2-アミノ-4-グアニジノ酪酸(Agb)、ホモアルギニン(HArg)またはN-メチル-ホモアルギニンから選択される、Argの非天然誘導体;Glu;Ser;Asp;Gln;Ala;ヒドロキシプロリン(HyP);またはシステイン酸(Cya)を示し;
X11は、Asnまたは、N-メチル-アスパラギンから選択される、Asnの非天然誘導体;Thr;Asp;Gly;Ser;His;Alaまたは、チエニル-アラニン(Thi)、2-(1,2,4-トリアゾール-1-イル)-アラニン(1,2,4-TriAz)またはベータ-(4-チアゾリル)-アラニン(4ThiAz)から選択される、Alaの非天然誘導体;Lys;またはシステイン酸(Cya)を示し;
X12は、Trpまたは、アザトリプトファン(AzaTrp)、5-フルオロ-L-トリプトファン(5FTrp)またはメチル-トリプトファン(TrpMe)から選択される、Trpの非天然誘導体;またはAlaまたは、1-ナフチルアラニン(1-Nal)または2-ナフチルアラニン(2-Nal)から選択される、Alaの非天然誘導体を示し;
X13は、Serまたは、ホモセリン(HSer)から選択される、Serの非天然誘導体;Ala;Asp;またはThrを示し;
X14は、Trpまたは、アザトリプトファン(AzaTrp)から選択される、Trpの非天然誘導体;Ser;Alaまたは、2-(1,2,4-トリアゾール-1-イル)-アラニン(1,2,4-TriAz)、1-ナフチルアラニン(1-Nal)または2-ナフチルアラニン(2-Nal)から選択される、Alaの非天然誘導体;Asp;Pheまたは、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)から選択される、Pheの非天然誘導体;Tyr;Thrまたは、N-メチル-スレオニンから選択される、Thrの非天然誘導体;テトラヒドロピラン-4-プロパン酸(THP(O));またはジオキソ-4-テトラヒドロチオピラニル酢酸(THP(SO2))を示し;
X15は、Proまたは、アゼチジン(Aze)、ピペコリン酸(Pip)またはオキサゾリジン-4-カルボン酸(Oxa)から選択される、Proの非天然誘導体を示し;
X16は、Ileまたは、N-メチル-イソロイシン(NMeIle)から選択される、Ileの非天然誘導体;Alaまたは、3-シクロヘキシル-アラニン(Cha)またはシクロプロピル-アラニン(Cpa)から選択される、Alaの非天然誘導体;Proまたは、ヒドロキシプロリン(HyP)から選択される、Proの非天然誘導体;Asp;Lys;シクロペンチル-グリシン(C5A);テトラヒドロピラン-4-プロパン酸(THP(O));またはジオキソ-4-テトラヒドロチオピラニル酢酸(THP(SO2))を示し;
X17は、Trpまたは、アザトリプトファン(AzaTrp)または5-フルオロ-L-トリプトファン(5FTrp)から選択される、Trpの非天然誘導体;Phe;Tyr;1-ナフチルアラニン(1-Nal);または2-ナフチルアラニン(2-Nal)を示し;
Hypはヒドロキシプロリンを示し、1-Nalは1-ナフチルアラニンを示し、2-Nalは2-ナフチルアラニンを示し、HArgはホモアルギニンを示し、Ci、CiiおよびCiiiはそれぞれ、第一のシステイン残基、第二のシステイン残基および第三のシステイン残基、またはこれらの薬学的に許容できる塩を示す。
【0078】
いくつかの実施態様において、前記二環式ペプチドは、以下から選択されるペプチドを含む:
CPFGCMETWSWPIWC(配列番号:6);
CPFGCMRGWSWPIWC(配列番号:7);
CPFGCMSGWSWPIWC(配列番号:8);
CPFGCMEGWSWPIWC(配列番号:9);
CPFGCMEDWSWPIWC(配列番号:10);
CPFGCMPGWSWPIWC(配列番号:11);
CPFGCMKSWSWPIWC(配列番号:12);
CPFGCMKTWSWPIWC(配列番号:13);
CPFGCMKGWSWPIWC(配列番号:14);
CPFGCQEHWSWPIWC(配列番号:15);
CPFGCIKSWSWPIWC(配列番号:16);
CPFGCQEDWSWPIWC(配列番号:17);
CPFGCMSDWSWPIWC(配列番号:18);
CPFGCM[HArg]NWSWPIWC(配列番号:19);
CPFGCM[K(Ac)]NWSWPIWC(配列番号:20);
CPFGCM[K(Ac)]SWSWPIWC(配列番号:21);
CPFGC[Nle]KSWSWPIWC(配列番号:22);
CPFGCM[HArg]SWSWPIWC(配列番号:23);
CPFGCM[dK]SWSWPIWC(配列番号:24);
CP[dA]GCMKNWSWPIWC(配列番号:25);
CPF[dA]CMKNWSWPIWC(配列番号:26);
CPFGCM[dA]NWSWPIWC(配列番号:27);
CPFGCMK[dA]WSWPIWC(配列番号:28);
CPFGCMKN[dA]SWPIWC(配列番号:29);
CPFGCMKNWSWP[dA]WC(配列番号:30);
C[dA]FGCMKNWSWPIWC(配列番号:31);
CPFGC[tBuAla]KNWSWPIWC(配列番号:32);
CPFGC[HLeu]KNWSWPIWC(配列番号:33);
CPFGCMKNWSWPI[1Nal]C(配列番号:34);
CPF[dD]CM[HArg]NWSWPIWC(配列番号:35);
CPF[dA]CM[HArg]NWSWPIWC(配列番号:36);
CP[3MePhe]GCMKNWSWPIWC(配列番号:37);
CP[4MePhe]GCMKNWSWPIWC(配列番号:38);
CP[HPhe]GCMKNWSWPIWC(配列番号:39);
CPF[dD]CMKNWSWPIWC(配列番号:40);
CPFGC[Hse(Me)]KNWSWPIWC(配列番号:41);
CPFGCMKN[AzaTrp]SWPIWC(配列番号:42);
CPFGCMKNWSFPIWC(配列番号:43);
CPFGCMKNWSYPIWC(配列番号:44);
CPFGCMKNWS[1Nal]PIWC(配列番号:45);
CPFGCMKNWS[2Nal]PIWC(配列番号:46);
CPFGCMKNWS[AzaTrp]PIWC(配列番号:47);
CPFGCMKNWSW[Aze]IWC(配列番号:48);
CPFGCMKNWSW[Pip]IWC(配列番号:49);
CPFGCMKNWSWPIFC(配列番号:50);
CPFGCMKNWSWPIYC(配列番号:51);
CPFGCMKNWSWPI[AzaTrp]C(配列番号:52);
CGFGCMKNWSWPIWC(配列番号:53);
C[Aze]FGCMKNWSWPIWC(配列番号:54);
CPF[K(Ac)]CMKNWSWPIWC(配列番号:55);
CPFGCLKNWSWPIWC(配列番号:56);
CPFGC[MetO2]KNWSWPIWC(配列番号:57);
CPFGCMPNWSWPIWC(配列番号:58);
CPFGCMQNWSWPIWC(配列番号:59);
CPFGCMKNWSWPPWC(配列番号:60);
CP[2Pal]GCMKNWSWPIWC(配列番号:61);
CPFGCMKN[1Nal]SWPIWC(配列番号:62);
CPFGCMKN[2Nal]SWPIWC(配列番号:63);
CPFGCMKNWSWPI[2Nal]C(配列番号:64);
C[HyP]FGCMKNWSWPIWC(配列番号:65);
CPF[dD]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:66);
CPF[dD]CM[HArg][dK]WSTPIWC(配列番号:67);
CPF[dD]CM[HArg]NWSTPKWC(配列番号:68);
C[Pro(4NH)]F[dD]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:69);
CPF[dD]CMKNWSTPIWC(配列番号:70);
CPF[dK]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:71);
CPF[dD]CK[HArg]NWSTPIWC(配列番号:72);
CPF[dD]CM[HArg]KWSTPIWC(配列番号:73);
C[Oxa]F[dD]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:74);
CPF[dD]CM[HArg][Thi]WSTPIWC(配列番号:75);
CPF[dD]CM[HArg][4ThiAz]WSTPIWC(配列番号:76);
CPF[dD]CM[HArg][124TriAz]WSTPIWC(配列番号:77);
CPF[dD]CM[HArg]NWS[124TriAz]PIWC(配列番号:78);
CPF[dD]CM[HArg]NWST[Oxa]IWC(配列番号:79);
CP[DOPA][dD]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:80);
CPF[dD]CM[HArg]NWS[DOPA]PIWC(配列番号:81);
CPF[dD]CM[HArg]NWS[THP(SO2)]PIWC(配列番号:82);
CPF[dD]CM[HArg]NWSTP[THP(SO2)]WC(配列番号:83);
CPF[dD]CM[HArg]N[5FTrp]STPIWC(配列番号:84);
CPF[dD]CM[HArg]NWSTPI[5FTrp]C(配列番号:85);
CPF[dD]CM[HArg]NWS[THP(O)]PIWC(配列番号:86);
CPF[dD]CM[HArg]NWSTP[THP(O)]WC(配列番号:87);
C[44DFP]F[dD]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:88);
C[Oic]F[dD]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:89);
CPF[dF]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:90);
CPF[dE]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:91);
CPF[dQ]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:92);
CPF[dL]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:93);
CPF[dS]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:94);
CPF[dD]CM[HArg]NW[HSer]TPIWC(配列番号:95);
CPF[dD]CM[HArg]NWSTP[C5A]WC(配列番号:96);
CPF[dD]CM[HArg]NWSTP[Cpa]WC(配列番号:97);
CPF[dD]CM[HArg]NWSTP[Cha]WC(配列番号:98);
CPF[dD]C[HGln][HArg]NWSTPIWC(配列番号:99);
CPF[dD]C[C5A][HArg]NWSTPIWC(配列番号:100);
CPF[dD]CM[HArg]N[Trp(Me)]STPIWC(配列番号:101);
CPF[dD][NMeCys]M[HArg]NWSTPIWC(配列番号:102);
CPF[dD]C[HArg]NWS[NMeThr]PIWC(配列番号:103);
CP[1Nal][dD]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:104);
CP[2Nal][dD]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:105);
CP[44BPA][dD]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:106);
CPF[dD]CM[HArg]NWSTPPWC(配列番号:107);
CPF[dD]CM[HArg]NWSTP[HyP]WC(配列番号:108);
CPF[dD]CL[HArg]NWSTPPWC(配列番号:109);
CPF[dD]CL[HArg]NWSTPIWC(配列番号:110);
CPY[dD]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:111);
C[Aib]F[dD]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:112);
C[Sar]F[dD]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:113);
CPF[dR]CM[HArg]NWSTPIWC(配列番号:114);
CPF[dD]CM[HArg]NWSTPKWC(配列番号:115);
CP[1Nal][dD]CM[HArg]NWSTP[HyP]WC(配列番号:116);
CP[1Nal][dD]CM[HArg]HWSTP[HyP]WC(配列番号:117);
CP[1Nal][dD]CM[HArg]DWSTP[HyP]WC(配列番号:118);
CP[1Nal][dD]CM[HArg]DWSTPIWC(配列番号:119);
CP[1Nal][dR]CM[HArg]NWSTP[HyP]WC(配列番号:120);
CP[1Nal][dR]CM[HArg]HWSTP[HyP]WC(配列番号:121);
CPF[dD]CM[NMeHArg]NWSTPIWC(配列番号:122);
CPF[dD]CM[HArg][NMeAsn]WSTPIWC(配列番号:123);
CPF[dD]CM[HArg]NWS[NMeThr]PIWC(配列番号:124);
CPF[dD]CM[HArg]NWSTP[NMeIle]WC(配列番号:125);
CP[1Nal][dD]CM[HArg][Cya]WSTP[HyP]WC(配列番号:126);
CP[1Nal][dD]CM[Cya]DWSTP[HyP]WC(配列番号:127);
CP[1Nal][DCya]CM[HArg]DWSTP[HyP]WC(配列番号:128);
CP[1Nal][dD]CM[HArg]DWDTP[HyP]WC(配列番号:129);
CP[2Nal][dD]CM[HArg]DWSTP[HyP]WC(配列番号:130);
CP[1Nal][dD]CM[HArg]DWTTP[HyP]WC(配列番号:131);
CP[1Nal][dD]CM[HArg]DW[HSer]TP[HyP]WC(配列番号:132);
CP[1Nal][dD]CM[HArg]DW[dS]TP[HyP]WC(配列番号:133);
CP[1Nal][dD]CM[HArg]DWSSP[HyP]WC(配列番号:134);
CP[1Nal][dD]CM[Agb]DWSTP[HyP]WC(配列番号:135);
CP[1Nal][dD]CMPDWSTP[HyP]WC(配列番号:136);
CP[1Nal][dD]CM[HyP]DWSTP[HyP]WC(配列番号:137);
CP[1Nal][dR]CM[HArg]DWSTP[HyP]WC(配列番号:138);
CP[1Nal][dR]CM[HArg]DWDTP[HyP]WC(配列番号:139);
CP[2Nal][dR]CM[HArg]DWSTP[HyP]WC(配列番号:140);
CP[1Nal][dR]CM[HArg]DWTTP[HyP]WC(配列番号:141);
CP[1Nal][dR]CM[HArg]DW[HSer]TP[HyP]WC(配列番号:142);
CP[1Nal][dR]CM[HArg]DW[dS]TP[HyP]WC(配列番号:143);
CP[1Nal][dR]CM[HArg]DWSSP[HyP]WC(配列番号:144);
CP[1Nal][dR]CM[Agb]DWSTP[HyP]WC(配列番号:145);
CP[1Nal][dR]CMPDWSTP[HyP]WC(配列番号:146);
CP[1Nal][dR]CM[HyP]DWSTP[HyP]WC(配列番号:147);
CP[1Nal][dD]CL[HArg]DWSTPIWC(配列番号:148);
CP[1Nal][dD]CL[HArg]DWSTP[HyP]WC(配列番号:149);
CP[1Nal][dR]CL[HArg]DWSTP[HyP]WC(配列番号:150);
CP[1Nal][dR]CL[HArg]HWSTP[HyP]WC(配列番号:151);
CP[1Nal][dR]CM[HArg]DWSTPIWC(配列番号:152);
CP[1Nal][DCya]CM[Cya]DWSTP[HyP]WC(配列番号:153);
CP[1Nal][DCya]CM[HArg][Cya]WSTP[HyP]WC(配列番号:154);
CP[1Nal][dD]CM[Cya][Cya]WSTP[HyP]WC(配列番号:155);
CP[1Nal][dK]CM[HArg]DWSTP[HyP]WC(配列番号:156);
CP[1Nal][dD]CMKDWSTP[HyP]WC(配列番号:157);
CP[1Nal][dD]CM[HArg]D[dW]STP[HyP][dW]C(配列番号:158);および
CPFGCM[HArg]DWSTP[HyP]WC(配列番号:159)。
【0079】
いくつかの実施態様において、二環式ペプチドは、
【化8】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9はそれぞれ、以下に独立して定義され、本明細書の実施態様(単独および組み合わせの両方)に記載される通りである]である。
【0080】
いくつかの実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9はそれぞれ独立して、水素であるか、あるいは、C1-6脂肪族、3-8員飽和または部分的不飽和単環式炭素環式環、フェニル、8-10員二環式芳香族炭素環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~2個のヘテロ原子を有する4-8員飽和または部分的不飽和単環式ヘテロ環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5-6員単環式ヘテロ芳香環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する8-10員二環式ヘテロ芳香環から選択される、場合により置換されていてよい基である。
【0081】
特定の実施態様において、R1は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R1は、
【化9】
である。
【0082】
特定の実施態様において、R2は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R2は、
【化10】
である。
【0083】
特定の実施態様において、R3は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R3は、
【化11】
である。
【0084】
特定の実施態様において、R4は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R4は、
【化12】
である。
【0085】
特定の実施態様において、R5は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R5は、
【化13】
である。
【0086】
特定の実施態様において、R6は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R6は、
【化14】
である。
【0087】
特定の実施態様において、R7は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R7は、
【化15】
である。
【0088】
特定の実施態様において、R8は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R8は、
【化16】
である。
【0089】
特定の実施態様において、R9は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R9は、
【化17】
である。
【0090】
特定の実施態様において、R10は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R10は、
【化18】
である。
【0091】
特定の実施態様において、R11は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R11は、
【化19】
である。
【0092】
いくつかの実施態様において、式Iの二環式毒素複合体は、
【化20】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、およびR11はそれぞれ独立して、水素であるか、あるいは、C1-6脂肪族、3-8員飽和または部分的不飽和単環式炭素環式環、フェニル、8-10員二環式芳香族炭素環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~2個のヘテロ原子を有する4-8員飽和または部分的不飽和単環式ヘテロ環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5-6員単環式ヘテロ芳香環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する8-10員二環式ヘテロ芳香環から選択される、場合により置換されていてよい基であり;
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15であり;そして
nは、0、1または2である]およびその薬学的に許容できる塩である。
【0093】
特定の実施態様において、R1は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R1は、
【化21】
である。
【0094】
特定の実施態様において、R2は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R2は、
【化22】
である。
【0095】
特定の実施態様において、R3は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R3は、
【化23】
である。
【0096】
特定の実施態様において、R4は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R4は、
【化24】
である。
【0097】
特定の実施態様において、R5は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R5は、
【化25】
である。
【0098】
特定の実施態様において、R6は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R6は、
【化26】
である。
【0099】
特定の実施態様において、R7は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R7は、
【化27】
である。
【0100】
特定の実施態様において、R8は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R8は、
【化28】
である。
【0101】
特定の実施態様において、R9は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R9は、
【化29】
である。
【0102】
特定の実施態様において、R10は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R10は、
【化30】
である。
【0103】
特定の実施態様において、R11は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R11は、
【化31】
である。
【0104】
特定の実施態様において、mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15である。
【0105】
特定の実施態様において、mは0である。特定の実施態様において、mは1である。特定の実施態様において、mは2である。特定の実施態様において、mは3である。特定の実施態様において、mは4である。特定の実施態様において、mは5である。特定の実施態様において、mは6である。特定の実施態様において、mは7である。特定の実施態様において、mは8である。特定の実施態様において、mは9である。特定の実施態様において、mは10である。特定の実施態様において、mは11である。特定の実施態様において、mは12である。特定の実施態様において、mは13である。特定の実施態様において、mは14である。特定の実施態様において、mは15である。
【0106】
特定の実施態様において、nは、0、1または2である。
【0107】
特定の実施態様において、nは0である。特定の実施態様において、nは1である。特定の実施態様において、nは2である。
【0108】
スキームIにおけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11はそれぞれ独立して、水素であるか、あるひは、C1-6脂肪族、3-8員飽和または部分的不飽和単環式炭素環式環、フェニル、8-10員二環式芳香族炭素環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~2個のヘテロ原子を有する4-8員飽和または部分的不飽和単環式ヘテロ環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5-6員単環式ヘテロ芳香環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する8-10員二環式ヘテロ芳香環から選択される、場合により置換されていてよい基である。
【0109】
特定の実施態様において、R1は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R1は、
【化32】
である。
【0110】
特定の実施態様において、R2は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R2は、
【化33】
である。
【0111】
特定の実施態様において、R3は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R3は、
【化34】
である。
【0112】
特定の実施態様において、R4は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R4は、
【化35】
である。
【0113】
特定の実施態様において、R5は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R5は、
【化36】
である。
【0114】
特定の実施態様において、R6は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R6は、
【化37】
である。
【0115】
特定の実施態様において、R7は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R7は、
【化38】
である。
【0116】
特定の実施態様において、R8は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R8は、
【化39】
である。
【0117】
特定の実施態様において、R9は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R9は、
【化40】
である。
【0118】
特定の実施態様において、R10は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R10は、
【化41】
である。
【0119】
特定の実施態様において、R11は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R11は、
【化42】
である。
【0120】
スキームIにおいて、mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15である。
【0121】
特定の実施態様において、mは0である。特定の実施態様において、mは1である。特定の実施態様において、mは2である。特定の実施態様において、mは3であり、特定の実施態様において、mは4である。特定の実施態様において、mは5である。特定の実施態様において、mは6である。特定の実施態様において、mは7である。特定の実施態様において、mは8である。特定の実施態様において、mは9である。特定の実施態様において、mは10である。特定の実施態様において、mは11である。特定の実施態様において、mは12である。特定の実施態様において、mは13である。特定の実施態様において、mは14である。特定の実施態様において、mは15である。
【0122】
スキームIにおいて、nは0、1または2である。
【0123】
特定の実施態様において、nは0である。特定の実施態様において、nは1である。特定の実施態様において、nは2である。
【0124】
スキームIIにおけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9はそれぞれ独立して、水素であるか、あるいは、C1-6脂肪族、3-8員飽和または部分的不飽和単環式炭素環式環、フェニル、8-10員二環式芳香族炭素環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~2個のヘテロ原子を有する4-8員飽和または部分的不飽和単環式ヘテロ環式環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5-6員単環式ヘテロ芳香環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する8-10員二環式ヘテロ芳香環から選択される、場合により置換されていてよい基である。
【0125】
特定の実施態様において、R1は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R1は、
【化43】
である。
【0126】
特定の実施態様において、R2は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R2は、
【化44】
である。
【0127】
特定の実施態様において、R3は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R3は、
【化45】
である。
【0128】
特定の実施態様において、R4は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R4は、
【化46】
である。
【0129】
特定の実施態様において、R5は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R5は、
【化47】
である。
【0130】
特定の実施態様において、R6は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R6は、
【化48】
である。
【0131】
特定の実施態様において、R7は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R7は、
【化49】
である。
【0132】
特定の実施態様において、R8は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R8は、
【化50】
である。
【0133】
特定の実施態様において、R9は、水素または場合により置換されていてよいC1-6脂肪族である。特定の実施態様において、R9は、
【化51】
である。
【0134】
スキームIIにおいて、mは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15である。
【0135】
特定の実施態様において、mは0である。特定の実施態様において、mは1である。特定の実施態様において、mは2である。特定の実施態様において、mは3である。特定の実施態様において、mは4である。特定の実施態様において、mは5である。特定の実施態様において、mは6である。特定の実施態様において、mは7である。特定の実施態様において、mは8である。特定の実施態様において、mは9である。特定の実施態様において、mは10である。特定の実施態様において、mは11である。特定の実施態様において、mは12である。特定の実施態様において、mは13である。特定の実施態様において、mは14である。特定の実施態様において、mは15である。
【0136】
フラグメントF-3は、一般に、類似化合物(例えば、WO 2019/243832に記載されているように、その全内容は、引用により本明細書に包含される)について当業者に知られている合成および/または半合成方法、および本明細書の実施例に詳細に記載されている方法によって調製または単離することができる。
【0137】
いくつかの実施態様において、スキームIにおけるフラグメントF-3は、
【化52】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびmはそれぞれ、以下に定義され、本明細書の実施態様(単独および組み合わせの両方)に記載される通りである]またはその塩である。
【0138】
いくつかの実施態様において、スキームIにおけるフラグメントF-3は、
【化53】
またはその塩である。
【0139】
いくつかの実施態様において、スキームIにおけるフラグメントF-2は、
【化54】
[式中、R10、R11、およびnはそれぞれ、以下に定義され、本明細書の実施態様(単独および組み合わせの両方)に記載される通りである]またはその塩である。
【0140】
いくつかの実施態様において、スキームIにおけるフラグメントF-2は、
【化55】
またはその塩である。
【0141】
いくつかの実施態様において、スキームIにおけるフラグメントF-3は、
【化56】
[式中、R10およびR11はそれぞれ、以下に定義され、本明細書の実施態様(単独および組み合わせの両方)に記載される通りである]またはその塩である。
【0142】
いくつかの実施態様において、スキームIにおけるフラグメントF-3は、
【化57】
またはその塩である。
【0143】
工程S-1(無水物の開環を介するアミド形成)において、フラグメントF-1またはその塩を、化合物Aまたはその塩にカップリングして、フラグメントF-2またはその塩を形成する。適当なカップリング反応は、当業者にはよく知られており、典型的には、アミン部分による処理がアミド結合の形成をもたらすような活性化エステル誘導体(例えば、無水物)に関わる。カップリング反応は、典型的には、過剰の塩基の存在下で行われる。いくつかの実施態様において、塩基は第三級アミン塩基である。いくつかの実施態様において、第三級アミン塩基はトリエチルアミンである。いくつかの実施態様において、塩基は第三級アミン塩基である。いくつかの実施態様において、第三アミン塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である。カップリング反応は、すべての試薬を可溶化する適当な溶媒中で行われ得る。いくつかの実施態様において、溶媒は双極性非プロトン性溶媒である。いくつかの実施態様において、双極性非プロトン性溶媒は、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)である。いくつかの実施態様において、双極性非プロトン性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、酢酸エチル、ヘキサメチルホスホロアミド(HMPA)またはN,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)である。いくつかの実施態様において、反応混合物を酸性の水溶液と混合して、フラグメントF-2またはその塩を沈殿させる。いくつかの実施態様において、反応混合物を酸性のブライン溶液と混合して、フラグメントF-2またはその塩を沈殿させる。いくつかの実施態様において、ブライン溶液は13%ブライン溶液である。いくつかの実施態様において、ブライン溶液は飽和ブライン溶液である。いくつかの実施態様において、沈殿および濾過により得られるフラグメントF-2またはその塩は、純度が約80%またはそれ以上である。いくつかの実施態様において、沈殿および濾過により得られるフラグメントF-2またはその塩は、純度が約82%、84%、86%、88%、90%、92%、94%、96%または98%である。いくつかの実施態様において、沈殿および濾過により得られるフラグメントF-2またはその塩は、カラムクロマトグラフィーによりさらに精製される。
【0144】
工程S-2(アミド形成)において、フラグメントF-2またはその塩、およびフラグメントF-3またはその塩がアミド形成反応に参加し、式Iの化合物またはその塩を形成する。適当なアミド形成反応は、当業者によく知られており、典型的には、アミン部分による処理がアミド結合の形成をもたらすような活性化エステル部分に関わる。カップリング反応は、典型的には、過剰の塩基の存在下で行われる。いくつかの実施態様において、塩基は第三級アミン塩基である。いくつかの実施態様において、第三級アミン塩基はトリエチルアミンである。いくつかの実施態様において、塩基は第三級アミン塩基である。いくつかの実施態様において、第三級アミン塩基はDIPEAである。カップリング反応は、すべての試薬を可溶化する適当な溶媒中で行われ得る。いくつかの実施態様において、溶媒は双極性非プロトン性溶媒である。いくつかの実施態様において、双極性非プロトン性溶媒はDMAである。いくつかの実施態様において、双極性非プロトン性溶媒は、DMSO、DMF、アセトン、酢酸エチル、HMPAまたはDMPUである。いくつかの実施態様において、反応混合物を非極性溶媒と混合して、式Iの化合物またはその塩を沈殿させる。いくつかの実施態様において、反応混合物を室温または低温で非極性溶媒と混合して、懸濁液またはスラリーを形成する。いくつかの実施態様において、懸濁液またはスラリーは、式Iの化合物またはその塩を濾過する前に、混合の有無にかかわらず、室温またはより低温で一定期間さらに保存する。いくつかの実施態様において、低温は、約15℃、10℃、5℃、0℃、-5℃、-10℃、-15℃または-20℃である。いくつかの実施態様において、低温は-20℃未満である。いくつかの実施態様において、非極性溶媒はエーテルである。いくつかの実施態様において、非極性溶媒はジエチルエーテルである。いくつかの実施態様において、非極性溶媒はメチル tert-ブチルエーテル(MTBE)である。いくつかの実施態様において、沈殿および濾過により得られる式Iの化合物またはその塩は、純度が約70%またはそれ以上である。いくつかの実施態様において、沈殿および濾過により得られる式Iの化合物またはその塩は、純度が約72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、92%、94%、96%または98%である。いくつかの実施態様において、沈殿および濾過により得られる式Iの化合物またはその塩は、カラムクロマトグラフィーによりさらに精製される。
【0145】
いくつかの実施態様において、本発明は、フラグメントF-2またはその塩を調製する方法であって、1)フラグメントF-1またはその塩を提供する工程;2)フラグメントF-1またはその塩を化合物Aまたはその塩と反応させることで、フラグメントF-2またはその塩を形成する工程;および3)沈殿によって反応混合物からフラグメントF-2またはその塩を分離する工程を含み、ここで、化合物AおよびフラグメントF-1およびF-2はそれぞれ、上記の通りである、方法を提供する。いくつかの実施態様において、前記方法は、フラグメントF-2またはその塩をカラムクロマトグラフィーにより精製することをさらに含む。いくつかの実施態様において、前記方法の溶媒および条件は、上記工程S-1で記載されている通りである。
【0146】
いくつかの実施態様において、本発明は、式Iの化合物またはその塩を調製する方法であって、1)フラグメントF-2またはその塩を提供する工程;2)フラグメントF-2またはその塩をフラグメントF-3またはその塩を反応させることで、式Iの化合物またはその塩を形成する工程;および3)沈殿によって反応混合物から式Iの化合物またはその塩を分離する工程を含み、ここで、フラグメントF-2およびF-3および式Iの化合物は、上記の通りである、方法を提供する。いくつかの実施態様において、前記方法は、式Iの化合物またはその塩をカラムクロマトグラフィーにより精製することをさらに含む。いくつかの実施態様において、前記方法の溶媒および条件は、上記の工程S-2に記載されている通りである。
【0147】
いくつかの実施態様において、本発明は、式Iの化合物またはその塩を調製する方法であって、1)フラグメントF-1またはその塩を提供する工程;2)フラグメントF-1またはその塩を化合物Aまたはその塩と反応させることで、フラグメントF-2またはその塩を形成する工程;3)沈殿により反応混合物からフラグメントF-2またはその塩を分離する工程;4)フラグメントF-2またはその塩をフラグメントF-3またはその塩と反応させることで、式Iの化合物またはその塩を形成する工程;および5)沈殿により反応混合物から式Iの化合物またはその塩を分離する工程、を含む方法を提供する。いくつかの実施態様において、前記方法は、式Iの化合物またはその塩をカラムクロマトグラフィーにより精製することをさらに含む。いくつかの実施態様において、工程3)から得られたフラグメントF-2またはその塩は、工程4)で使用する前にカラムクロマトグラフィーによりさらに精製しない。いくつかの実施態様において、前記方法の溶媒および条件は、上記の工程S-1およびS-2について記載されている通りである。
【0148】
いくつかの実施態様において、本発明は、フラグメントF-2またはその塩および非極性溶媒を含む不均質混合物を提供する。いくつかの実施態様において、不均質混合物は懸濁液である。いくつかの実施態様において、不均質混合物はスラリーである。いくつかの実施態様において、本発明は、フラグメントF-2またはその塩および少量の非極性溶媒を含む固体組成物を提供する。いくつかの実施態様において、前記不均質混合物および/または固体組成物はTBTUをさらに含む。いくつかの実施態様において、前記不均質混合物および/または固体組成物中の非極性溶媒は、上記の工程S-1において記載されている通りである。いくつかの実施態様において、前記不均質混合物および/または固体組成物の温度は、上記の工程S-1において記載されている通りである。いくつかの実施態様において、前記不均質混合物から濾過された後のフラグメントF-2またはその塩の純度は、上記の工程S-1において記載されている通りである。いくつかの実施態様において、前記固体組成物中のフラグメントF-2またはその塩の純度は、上記の工程S-1において記載されている通りである。
【0149】
いくつかの実施態様において、本発明は、式Iの化合物またはその塩および非極性溶媒を含む不均質混合物を提供する。いくつかの実施態様において、不均質混合物は懸濁液である。いくつかの実施態様において、不均質混合物はスラリーである。いくつかの実施態様において、本発明は、式Iの化合物またはその塩および少量の非極性溶媒を含む固体組成物を提供する。いくつかの実施態様において、前記不均質混合物および/または固体組成物中の非極性溶媒は、上記の工程S-2において記載されている通りである。いくつかの実施態様において、前記不均質混合物および/または固体組成物の温度は、上記の工程S-2において記載されている通りである。いくつかの実施態様において、前記不均質混合物から濾過された後の式Iの化合物またはその塩の純度は、上記の工程S-2において記載されている通りである。いくつかの実施態様において、固体組成物中の式Iの化合物またはその塩の純度は、上記の工程S-2において記載されている通りである。
【0150】
4.例示的な二環式毒素複合体の説明
いくつかの実施態様において、式Iの二環式毒素複合体は、
【化58】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、mおよびnはそれぞれ、以下に定義され、本明細書の実施態様(単独および組み合わせの両方)に記載される通りである]またはその薬学的に許容できる塩である。
【0151】
いくつかの実施態様において、式Iの二環式毒素複合体は、
【化59】
またはその薬学的に許容できる塩である。
【0152】
いくつかの実施態様において、式Iの二環式毒素複合体は、BT8009またはその薬学的に許容できる塩である。
【0153】
5.使用、製剤および投与
薬学的に許容できる組成物
別の実施態様によれば、本発明は、本発明の二環式毒素複合体またはその薬学的に許容される誘導体、および薬学的に許容できる担体、アジュバント、またはビヒクルを含む組成物を提供する。
【0154】
本明細書で使用される用語「患者」とは、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0155】
用語「薬学的に許容できる担体、アジュバントまたはビヒクル」とは、それが配合される化合物の薬理活性を破壊しない非毒性担体、アジュバントまたはビヒクルを意味する。本発明の組成物に使用され得る薬学的に許容できる担体、アジュバントまたはビヒクルには、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解物、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂肪が含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
「薬学的に許容できる誘導体」とは、本発明の化合物の非毒性の塩、エステル、エステルの塩または他の誘導体であって、受領者への投与により、本発明の化合物またはその阻害活性代謝物もしくは残留物を直接的または間接的に提供することができるものを意味する。
【0157】
本発明の組成物は、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸的に、経鼻的に、頬内に、膣内に、または移植されたリザーバーを介して投与され得る。本明細書で使用される用語「非経腸」には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内(intrasternal)、髄腔内、肝臓内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術が含まれる。好ましくは、組成物は腹腔内または静脈内に投与される。本発明の組成物の無菌注射可能な形態は、水性懸濁液または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、当該分野で公知の技術に従って製剤化され得る。無菌注射調剤はまた、非毒性の非経腸的に許容できる希釈剤または溶媒、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液中の無菌注射溶液または懸濁液であってもよい。利用され得る許容できるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液および生理食塩液がある。
【0158】
これらの溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、例えばカルボキシメチルセルロース、またはエマルションおよび懸濁液を含む薬学的に許容できる剤形の製剤化において一般的に使用される同様の分散剤を含有し得る。製剤化の目的には、他の一般的に使用される界面活性剤、例えば、ツイーン、スパンおよび他の乳化剤、または薬学的に許容できる固体、液体、または他の剤形の製造に一般的に使用されるバイオアベイラビリティ増強剤も使用し得る。
【0159】
いくつかの実施態様において、例えば等張食塩水またはデキストロースを含有する輸液に希釈することによって非経腸投与に使用するための凍結乾燥および再構成のための適当な製剤は、以下の賦形剤の1つ以上を含み得る:
・酸緩衝成分、例えばクエン酸、コハク酸、酢酸、またはアミノ酸、例えばグリシンまたはヒスチジン;
・塩基、例えば水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、または有機塩基、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;
・通常pH3~9の所望の範囲内にpHを調節する鉱酸、例えばHCl;
・分散剤または界面活性剤、例えばポリソルベート20またはポリソルベート80;および/または
・凍結乾燥製品の安定性を提供し、水分含有量を制御するための糖類、例えばスクロース、ラクトース、デキストロース、トレハロースまたはマンニトール。
【0160】
混合物は通常、水溶液から凍結乾燥され、所望の輸液に希釈する前に精製水で再構成される。
【0161】
あるいは、本発明の薬学的に許容できる組成物は、直腸投与用の坐薬の形態で投与され得る。これらは、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、したがって直腸内で融解して薬物を放出する適当な非刺激性賦形剤と薬剤を混合することにより調製することができる。このような材料には、カカオバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0162】
本発明の薬学的に許容できる組成物は、特に、処置のターゲットが、眼、皮膚、または下部腸管の疾患を含む、局所適用によって容易にアクセス可能な領域または器官を含む場合、局所投与することもできる。適当な局所製剤は、これらの領域または臓器の各々のために容易に調製される。
【0163】
下部腸管に対する局所適用は、直腸坐薬製剤(上記参照)または適当な浣腸製剤で行うことができる。局所経皮パッチも使用され得る。
【0164】
局所適用のために、提供される薬学的に許容できる組成物は、1つまたはそれ以上の担体中に懸濁または溶解された活性成分を含有する適当なゲル、軟膏、ローションまたはクリームに製剤化され得る。本発明の化合物の局所投与用担体としては、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水があるが、これらに限定されない。あるいは、提供される薬学的に許容できる組成物は、1つまたはそれ以上の薬学的に許容できる担体中に懸濁または溶解された活性成分を含有する適当なローションまたはクリームに製剤化することができる。適当な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水があるが、これらに限定されない。
【0165】
眼科的使用の場合、提供される薬学的に許容できる組成物は、塩化ベンジルアルコニウムのような防腐剤の有無にかかわらず、等張性pH調整無菌生理食塩水中の微粉化懸濁液として、または好ましくは等張性pH調整無菌食塩水中の溶液として製剤化することができる。あるいは、眼科的使用の場合、薬学的に許容できる組成物は、ワセリンなどの軟膏に製剤化され得る。
【0166】
本発明の薬学的に許容できる組成物はまた、鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。このような組成物は、医薬製剤の技術分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適当な防腐剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化剤または分散剤を用いて、食塩水中の溶液として調製され得る。
【0167】
単一剤形の組成物を製造するための、担体材料と組み合わされ得る本発明の化合物の量は、処置される宿主、特定の投与様式に応じて変化する。好ましくは、提供される組成物は、0.01~100mg/kg体重/日の阻害剤の投与量が、これらの組成物を受ける患者に投与され得るように製剤化されるべきである。
【0168】
また、特定の患者に対する特定の投与量および処置レジメンは、利用される特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、排泄率、薬剤の組み合わせ、および治療医の判断、および処置される特定の疾患の重症度を含む様々な因子に依存することが理解されるべきである。組成物中の本発明の化合物の量も、組成物中の特定の化合物に依存する。
【0169】
化合物および薬学的に許容できる組成物の使用
いくつかの実施態様において、本発明は、本明細書に記載の癌を予防および/または処置する方法であって、本発明の二環式毒素複合体を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0170】
本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」、「処置する(treat)」および「処置する(treating)」という用語は、本明細書に記載されるように、疾患もしくは障害、またはその1つもしくはそれ以上の症状を逆転させること、軽減すること、発症を遅延させること、または進行を阻害することを意味する。いくつかの実施形態において、処置は、1つまたはそれ以上の症状が発生した後に投与され得る。他の実施態様において、処置は、症状が存在しない状態で投与され得る。例えば、処置は、症状の発症前に(例えば、症状の既往歴に照らして、および/または遺伝的因子もしくは他の感受性因子に照らして)感受性個体に投与され得る。また、症状が消散した後も、例えば再発を予防または遅延させるために処置を継続され得る。
【0171】
癌は、一実施態様において、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病)、真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病または非ホジキン病)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、重鎖病、および固形腫瘍、例えば肉腫および癌腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌(colon carcinoma)、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)、基底細胞癌(basal cell carcinoma)、腺癌(adenocarcinoma)、汗腺癌(sweat gland carcinoma)、脂腺癌(sebaceous gland carcinoma)、乳頭癌(papillary carcinoma)、乳頭状腺癌(papillary adenocarcinomas)、嚢胞腺癌(嚢胞adenocarcinoma)、髄様癌(medullary carcinoma)、気管支原性肺癌(bronchogenic carcinoma)、腎細胞癌(renal cell carcinoma)(renal cell carcinoma)、肝細胞腫、胆管癌(bile duct carcinoma)、絨毛癌(choriocarcinoma)、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、頸部癌、子宮癌、精巣癌、肺癌(lung carcinoma)、小細胞肺癌(small cell lung carcinoma)、膀胱癌(bladder carcinoma)、上皮性癌(epithelial carcinoma)、神経膠腫、星状細胞腫、多形神経膠芽腫(GBM、神経膠芽腫としても知られている)、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、シュワン腫、神経線維肉腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、および網膜芽細胞腫)を含むが、これらに限定されない。
【0172】
いくつかの実施態様において、癌は、神経膠腫、星状細胞腫、多形神経膠芽腫(GBM、神経膠芽腫としても知られている)、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、シュワン腫、神経線維肉腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、または網膜芽細胞腫である。
【0173】
いくつかの実施態様において、癌は、聴神経腫瘍、星状細胞腫(例えば、グレードI-毛様細胞性星状細胞腫、グレードII-低悪性星状細胞腫、グレードIII-悪性星状細胞腫、またはグレードIV-神経膠芽腫(GBM))、脊索腫、CNSリンパ腫、頭蓋咽頭腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、混合性神経膠腫、視神経膠腫、上衣下腫、髄芽腫、髄膜腫、転移性脳腫瘍、乏突起神経膠腫、下垂体腫瘍、原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)腫瘍、またはシュワン腫である。いくつかの実施態様において、癌は、成人よりも小児に一般的に見られるタイプ、例えば脳幹神経膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、若年性毛様細胞性星状細胞腫(JPA)、髄芽腫、視神経膠腫、松果体腫瘍、原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)、またはラブドイド腫瘍である。いくつかの実施態様において、患者は成人ヒトである。いくつかの実施態様において、患者は小児(child)または小児科(pediatric)患者である。
【0174】
いくつかの実施態様において、癌は、中皮腫、肝胆道(肝臓および胆管)、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼球内黒色腫、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、消化器(胃、結腸直腸および十二指腸)、子宮癌、卵管癌(carcinoma of the fallopian tubes)、子宮内膜癌(carcinoma of the endometrium)、頸部癌(carcinoma of the cervix)、膣癌(carcinoma of the vagina)、外陰癌(carcinoma of the vulva)、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、精巣癌、慢性または急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌または尿管癌、腎細胞癌(renal cell carcinoma)(renal cell carcinoma)、腎盂癌(carcinoma of the renal pelvis)、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質癌、胆嚢癌、多発性骨髄腫、胆管細胞癌(cholangiocarcinoma)、線維肉腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、または1つまたはそれ以上の前記の癌の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0175】
いくつかの実施態様において、癌は、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)、卵巣癌、卵巣上皮癌、または卵管癌;乳頭状漿液嚢胞腺癌(papillary serous cystadenocarcinoma)または子宮乳頭漿液性癌(uterine papillary serous carcinoma, UPSC);前立腺癌;精巣癌;胆嚢癌;肝臓胆管癌(hepatocholangiocarcinoma);軟部組織・骨滑膜肉腫(soft tissue and bone synovial sarcoma);横紋筋肉腫;骨肉腫;軟骨肉腫;ユーイング肉腫;組織非形成性甲状腺癌;副腎皮質腺腫;膵臓癌;膵管癌(pancreatic ductal carcinoma)または膵臓腺癌(pancreatic adenocarcinoma);消化器/胃(GIST)癌;リンパ腫;頭頸部扁平上皮癌(squamous cell carcinoma of the head and neck, SCCHN);唾液腺癌;神経膠腫、または脳癌;神経線維腫症-1型関連悪性末梢神経鞘腫(MPNST);ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;または髄芽腫から選択される。
【0176】
いくつかの実施態様において、癌は、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma, HCC)、肝芽腫、結腸癌、直腸癌、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵管癌、乳頭状漿液嚢胞腺癌(papillary serous 嚢胞adenocarcinoma)、子宮乳頭漿液性癌(uterine papillary serous carcinoma, UPSC)、肝臓胆管癌(hepatocholangiocarcinoma)、軟部組織・骨滑膜肉腫(soft tissue and bone synovial sarcoma)、横紋筋肉腫、骨肉腫、組織非形成性甲状腺癌、副腎皮質腺腫、膵臓癌、膵管癌(pancreatic ductal carcinoma)、膵臓腺癌(pancreatic adenocarcinoma)、神経膠腫、神経線維腫症-1型関連悪性末梢神経鞘腫(MPNST)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、または髄芽腫から選択される。
【0177】
いくつかの実施態様において、癌は、固形腫瘍、例えば肉腫、癌、またはリンパ腫である。固形腫瘍は一般に、通常は嚢胞または液体領域を含まない異常な組織塊を含む。いくつかの実施態様において、癌は、腎細胞癌(renal cell carcinoma)、または腎臓癌;肝細胞癌(hepatocellular carcinoma, HCC)または肝芽腫、または肝臓癌;黒色腫;乳癌;結腸直腸癌(colorectal carcinoma)、または結腸直腸癌(colorectal cancer);結腸癌;直腸癌;肛門癌;肺癌、例えば非小細胞性肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC);卵巣癌(ovarian cancer)、卵巣上皮癌、卵巣癌(ovarian carcinoma)、または卵管癌;乳頭状漿液嚢胞腺癌(papillary serous 嚢胞adenocarcinoma)または子宮乳頭漿液性癌(uterine papillary serous carcinoma, UPSC);前立腺癌;精巣癌;胆嚢癌;肝臓胆管癌(hepatocholangiocarcinoma);軟部組織・骨滑膜肉腫(soft tissue and bone synovial sarcoma);横紋筋肉腫;骨肉腫;軟骨肉腫;ユーイング肉腫;組織非形成性甲状腺癌;副腎皮質癌;膵臓癌; 膵管癌(pancreatic ductal carcinoma)または膵臓腺癌(pancreatic adenocarcinoma);消化器/胃(GIST)癌;リンパ腫;頭頸部扁平上皮癌(squamous cell carcinoma of the head and neck, SCCHN);唾液腺癌;神経膠腫、または脳癌;神経線維腫症-1型関連悪性末梢神経鞘腫(MPNST));ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;または髄芽腫から選択される。
【0178】
いくつかの実施態様において、癌は、腎細胞癌(renal cell carcinoma)、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma, HCC)、肝芽腫、結腸直腸癌(colorectal carcinoma)、結腸直腸癌(colorectal cancer)、結腸癌、直腸癌、肛門癌、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣癌、卵管癌、乳頭状漿液嚢胞腺癌(papillary serous cystadenocarcinoma)、子宮乳頭漿液性癌(uterine papillary serous carcinoma, UPSC)、肝臓胆管癌(hepatocholangiocarcinoma)、軟部組織・骨滑膜肉腫(soft tissue and bone synovial sarcoma)、横紋筋肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、組織非形成性甲状腺癌、副腎皮質癌、膵臓癌、膵管癌(pancreatic ductal carcinoma)、膵臓腺癌(pancreatic adenocarcinoma)、神経膠腫、脳癌、神経線維腫症-1型関連悪性末梢神経鞘腫(MPNST)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、または髄芽腫から選択される。
【0179】
いくつかの実施態様において、癌は、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma, HCC)、肝芽腫、結腸癌、直腸癌、卵巣癌(ovarian cancer)、卵巣上皮癌、卵巣癌(ovarian carcinoma)、卵管癌、乳頭状漿液嚢胞腺癌(papillary serous 嚢胞adenocarcinoma)、子宮乳頭漿液性癌(uterine papillary serous carcinoma, UPSC)、肝臓胆管癌(hepatocholangiocarcinoma)、軟部組織・骨滑膜肉腫(soft tissue and bone synovial sarcoma)、横紋筋肉腫、骨肉腫、組織非形成性甲状腺癌、副腎皮質癌、膵臓癌、膵管癌(pancreatic ductal carcinoma)、膵臓腺癌(pancreatic adenocarcinoma)、神経膠腫、神経線維腫症-1型関連悪性末梢神経鞘腫(MPNST)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、または髄芽腫から選択される。
【0180】
いくつかの実施態様において、癌は肝細胞癌(hepatocellular carcinoma, HCC)である。いくつかの実施態様において、癌は肝芽腫である。いくつかの実施態様において、癌は結腸癌である。いくつかの実施態様において、癌は直腸癌である。いくつかの実施態様において、癌は卵巣癌(ovarian cancer)または卵巣癌(ovarian carcinoma)である。いくつかの実施態様において、癌は卵巣上皮癌である。いくつかの実施態様において、癌 は卵管癌である。いくつかの実施態様において、癌は乳頭状漿液嚢胞腺癌(papillary serous cystadenocarcinoma)である。いくつかの実施態様において、癌は子宮乳頭漿液性癌(uterine papillary serous carcinoma, UPSC)である。いくつかの実施態様において、癌は肝臓胆管癌(hepatocholangiocarcinoma)である。いくつかの実施態様において、癌は軟部組織・骨滑膜肉腫(soft tissue and bone synovial sarcoma)である。いくつかの実施態様において、癌は横紋筋肉腫である。いくつかの実施態様において、癌は骨肉腫である。いくつかの実施態様において、癌は組織非形成性甲状腺癌である。いくつかの実施態様において、癌は副腎皮質癌である。いくつかの実施態様において、癌は膵臓癌または膵管癌(pancreatic ductal carcinoma)である。いくつかの実施態様において、癌は膵臓腺癌(pancreatic adenocarcinoma)である。いくつかの実施態様において、癌は神経膠腫である。いくつかの実施態様において、癌は悪性末梢神経鞘腫(MPNST)である。いくつかの実施態様において、癌は神経線維腫症-1関連性MPNSTである。いくつかの実施態様において、癌はヴァルデンストレームマクログロブリン血症である。いくつかの実施態様において、癌は髄芽腫である。
【0181】
いくつかの実施態様において、癌は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連固形腫瘍、ヒトパピローマウイルス(HPV)-16陽性難治性固形腫瘍、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)によって引き起こされ、白血病細胞におけるHTLV-Iのクローン組込みを特徴とするCD4+T細胞白血病の非常に侵攻性の形態である成人T細胞白血病を含む、ウイルス関連癌(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/study/ NCT02631746を参照);および胃癌、鼻咽頭癌(nasopharyngeal carcinoma)、子宮頚部癌、膣癌、外陰癌、頭頸部扁平上皮癌(squamous cell carcinoma of the head and neck)、メルケル細胞癌におけるウイルス関連腫瘍である。(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/study/NCT02488759; see also https://clinicaltrials.gov/ct2/show/study/NCT0240886; https://clinicaltrials.gov/ct2/show/ NCT02426892を参照)
【0182】
いくつかの実施態様において、癌は黒色腫癌である。いくつかの実施態様において、癌は乳癌である。いくつかの実施態様において、癌は肺癌である。いくつかの実施態様において、癌は小細胞肺癌(SCLC)である。いくつかの実施態様において、癌は非小細胞性肺癌(NSCLC)である。
【0183】
いくつかの実施態様において、癌は、腫瘍のさらなる成長を阻止することによって処置される。いくつかの実施態様において、癌は、処置前の腫瘍の大きさに対して、腫瘍の大きさ(例えば、体積または質量)を少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、90%または99%減少させることによって処置される。いくつかの実施態様において、癌は、処置前の腫瘍の量と比較して、患者の腫瘍の量を少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、90%または99%減少させることによって処置される。
【0184】
本発明の方法による化合物および組成物は、癌の処置または重症度の軽減に有効な任意の量および任意の投与経路を使用して投与され得る。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、全身状態、疾患または症状の重症度、特定の薬剤、その投与方法などに応じて、対象ごとに異なるであろう。本発明の化合物は、投与の容易さおよび投与量の均一性のために、単位剤形(dosage unit form)で製剤化されることが好ましい。本明細書で使用される表現「単位剤形」とは、処置される患者に適切な薬剤の物理的に個別の単位を意味する。しかしながら、本発明の化合物および組成物の一日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるであろう。特定の患者または生体に対する具体的な有効用量レベルは、処置対象の障害や障害の重症度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、健康全般、性別および食事;使用される特定の化合物の投与時間、投与経路、および排泄率;処置期間;使用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、および医療分野でよく知られている同様の因子を含む様座な因子に依存する。本明細書で使用される用語「患者」とは、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0185】
本発明の薬学的に許容できる組成物は、処置される疾患または障害の重症度に応じて、ヒトおよび他の動物に、直腸投与、非経腸的投与、嚢内(intracisternally)投与、膣内投与、腹腔内投与、局所的投与(粉末、軟膏または滴剤によって)、口腔内、経口または鼻腔スプレーなどとして投与することができる。特定の実施態様において、本発明の化合物は、1日当たり対象体重の約0.01mg/kg~約50mg/kg、好ましくは約1mg/kg~25mg/kgの投与量レベルで非経口的に投与され得る。
【0186】
注射製剤、例えば、無菌の注射可能な水性または油性懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて公知技術に従って製剤化され得る。無菌注射製剤は、非毒性の非経腸的に許容できる希釈剤または溶媒中の無菌注射溶液、懸濁液またはエマルジョン、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用され得る許容できるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、U.S.P.および生理食塩液がある。加えて、無菌の固定油が溶媒または懸濁媒として慣例的に使用される。この目的のために、合成モノ-またはジグリセリドを含む任意のブランド固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は注射剤の調製に使用される。
【0187】
注射製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通して濾過することによって、または使用前に無菌水または他の無菌の注射可能な媒体に溶解または分散され得る無菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌され得る。
【0188】
本発明の化合物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅延させることがしばしば望ましい。これは、難水溶性の結晶性または非晶性材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。次に、化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、次いで、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経腸的に投与される化合物形態の遅延吸収は、化合物を油ビヒクル中に溶解または懸濁させることによって達成される。注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中に化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって製造される。ポリマーに対する化合物の比率および使用される特定のポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)がある。デポー注射製剤はまた、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンに化合物を封入することによって調製される。
【0189】
直腸または膣投与用の組成物は、好ましくは、本発明の化合物を、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬ワックスなどの適切な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製することができる坐薬であり、これらは環境温度では固体であるが体温では液体であるため、直腸または膣腔内で融解して活性化合物を放出する。
【0190】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、フォーム、粉末、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性成分は、無菌条件下で、薬学的に許容できる担体および必要に応じて必要な防腐剤または緩衝液と混合される。眼科製剤、点耳剤、および点眼剤もまた、本発明の範囲内であると考えられる。さらに、本発明は、身体への化合物の制御された送達を提供するという追加の利点を有する経皮パッチの使用を意図する。このような剤形は、化合物を適当な媒体に溶解または分配することによって製造することができる。吸収促進剤を用いて、皮膚を通過する化合物の流量を増加させることもできる。速度は、速度制御膜を提供することによって、またはポリマーマトリックスまたはゲル中に化合物を分散させることによって制御することができる。
【0191】
例示
以下の実施例は、上述した本発明を説明するものであるが、これらは、本発明の範囲をいかなる形でも限定することを意図するものではない。本発明の医薬化合物、組み合わせ、および組成物の有益な効果はまた、関連技術の当業者にそのようなものとして知られている他の試験モデルによって決定することができる。
【0192】
実験セクションで使用される一般的な略語のリスト。
AA(s):アミノ酸(s)
ACN:アセトニトリル
Ac2O:無水酢酸
AcOH:酢酸
API:原薬
Aq.:水性
A%:ピーク面積パーセント
1,4-BDMT:1,4-ベンゼンジメタンチオール
Boc:t-ブチルオキシカルボニル
BV:ベッド容積(Bed volume)
℃:摂氏度
C of A:試験成績書
Cat:カテゴリー
CPP:現行の好ましい手順
CV:カラム体積
DIC:ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
DITU:ジイソプロピルチオ尿素
DMA:N,N-ジメチルアセトアミド
DMF:ジメチルホルムアミド
DM1:メルタンシン/エムタンシン
DTT:1,4-ジチオスレイトール
eq.:モル当量
Eq.:当量
Expt:実験
h:時間(Hours)
H:時間(Hour)
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
Imp:不純物
Info:情報
IPA:イソプロピルアルコール
IPC:インプロセス制御
Lab:試験室
LC:液体クロマトグラフィー
Lyo:凍結乾燥
MBHA:4-メチルベンズヒドリルアミン
Fmoc:フルオレニルメチルオキシカルボニル
MeOH:メタノール
Min:分
mL:ミリリットル
Mol:モル
Mol. Wt.:分子量
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル
non-GMP:非良品製造基準(Non-Good Manufacturing Practices)
NMT:それ以下
オキシマ(Oxyma):エチル シアノ(ヒドロキシイミノ)アセテート
PD:プロセス開発
Pdt:製品
RO/DI:逆浸透
RP-HPLC:逆相高速液体クロマトグラフィー
RP-18:逆相C18結合シリカ
RRT:相対保持時間
Rt:室温
SAFC:Sigma-Aldrich Fine Chemicals
SM:出発物質
SPP:N-サクシニミジル 2-ピリジルジチオ-カルボキシレート
SPPS:固相ペプチド合成
TATA:1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ1,3,5-トリアジン
TFA:トリフルオロ酢酸
TIPS:トリイソプロピルシラン
TLC:薄層クロマトグラフィー
USP:米国薬局方
v/v:体積/体積
vol:体積
wt%:重量パーセント
Wt:重量
【実施例
【0193】
実施例1:BicycleBCY8234の調製
BCY8234の合成を、以前に見出された高レベルのアスパルチミド関連不純物を低減する目的で再検討した。異なるデブロッキングカクテルを用いて一連の実験を行い、10%ピペリジン/DMF中3%オキシマを用いたカクテルを次のプロセス用として選択した。
【0194】
樹脂からの切断、およびペプチドの全体的な脱保護は、90%TFA、15%DTT、および5%TIPS、0.25%NH4Iおよび5%水を含むTFAカクテルを用いて、一段階工程で行った。150gのペプチド-樹脂を切断し、沈殿および乾燥後、使用済み樹脂有する142gの粗直鎖ペプチドを生成した。
【0195】
塩基性条件下でTATAを用いて直鎖ペプチドの環化を行うことで、粗環状生成物を生成した。使用済み樹脂を有する合計121gの粗直鎖ペプチドを用いて(それぞれ異なる切断方法からの粗直鎖ペプチドを用いて)環化実験を2セット行った。環状粗溶液の品質は同様であった。
【0196】
最初の精製は、C18カラム媒体(ダイソーゲル、120Å、10μ)を用い、水/ACN緩衝系中0.1M NH4OAcで逆相HPLCにより達成した。続いて、同じ逆相C18カラムで水/ACN中0.1%TFAでの精製を行った。TFAメインプールを水/ACNで脱塩し、凍結乾燥して最終生成物約24gを95%を超える純度で得た。
【0197】
配列は、β-Ala1-Sar2-Sar3-Sar4-Sar5-Sar6-Sar7-Sar8-Sar9-Sar10-Sar11-*Cys12 - Pro13 -1Nal14 -d-Asp15 -*Cys16 -Met17 -hArg18 -Asp19 -Trp20-Ser21 - Thr22 -Pro23 -Hyp24 -Trp25 -*Cys-NH2である。
【0198】
ここで、*は、以下のように1,1,1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリス(プロパン-1-オン)と二環式チオエーテルを形成するシステイン残基を示す。
【化60】
【0199】
BCY8234の固相合成
最後のGMPバッチに使用されたBCY8234の合成プロトコルは、アスパルチミド関連不純物が多く存在するため、最適化する必要があった。アスパルチミド不純物は、DMF中20%ピペリジンによるデブロッキングプロセス中に形成すると考えられている。アスパルチミド不純物の量は、デブロッキング溶液に0.1Mのオキシマを添加することにより、20.4%から18.6%に減少した。
【0200】
以前の試みでは、3%ピペリジン/DMF中0.15Mオキシマを使用することでこれらの不純物を抑制した。このカクテルの欠点は、粗直鎖ペプチドに存在する欠失配列不純物によって確認されるFmoc保護基の不完全なデブロッキングの存在であった。
【0201】
以前の作業のデータと以前の知識に基づいて、アスパルチミドの問題を軽減することを目的とした最適化実験を計画した。
【0202】
アスパルチミドの減少に加えて、新たな改良技術を試験した。これらの技術には、60分間の予備活性化、DITUによる酸化抑制、およびDMFの量を減少させるためのカップリング後の1回の洗浄が含まれる。さらに、以前の作業で使用された部分的担持の利点があるかどうかを確認するために、完全担持樹脂(fully loaded resin)(置換度>0.8mmoles/g)で実験を行った。
【0203】
合成の最適化
合成最適化実験はSymphony XTM Synthesizerで行った。3つの因子をスクリーニングした:デブロッキングカクテル中のピペリジン、オキシマおよびギ酸の濃度。スクリーニング実験の設計にはMinitabを使用した。最初の4つの実験は、傾向と関係を検討するために計画した。実験について以下で説明する:
・デブロッキング反応は5'および20'である。
・2eq.のアミノ酸、2eq.のオキシマ、および2.1eq.のDIC
・Fmoc-Sar-OHの代わりにFmoc-Sar-Sar-OHを使用した。
・60分間の活性化時間(CysとhomoArg残基を除く)
・0.2eqのDITUをすべてのカップリング溶液に添加した。
・カップリング時間は3時間とした。
・アセチル化なし
・カップリング後洗浄1回
【0204】
実験結果を表1に要約する。
【表1】
【0205】
考察
これらの実験結果から、有機酸の添加によりアスパルチミド生成が減少されることが確認された。試験した2つの酸のうち、反応性の低いオキシマは合成収率にプラスの影響を示す。5%ピペリジン/DMF中3%ギ酸(実行No.3)は、粗試料の分析的HPLC分析で観察されたように、合成収率を50%未満に低下させた。オキシマは次の実験セットでさらに検討した。
【0206】
追加のオキシマとピペリジンの濃度実験
このセクションでは、10%ピペリジン溶液中オキシマ濃度を5%に増加させる効果を検討した。最終カップリングにBoc-β-Ala-OHを使用することによって最終デブロッキングを除去する効果を、Fmoc-β-Ala-OH#5と比較して実験#6で試験した。BicycleTX社によって提案された追加のデブロッキング条件も、実験#7で評価した。結果を表2に示す。
【表2】
【0207】
最初のデブロッキング条件では、粗純度が最も悪く、収率も低かった。Fmoc-β-Ala-OHをBoc-β-Ala-OHで置換した場合、収率と純度に有意差はない。アスパルチミド関連不純物は実験#5では異常に高く、他の条件と比較するとトレンドから外れているように見える。
【0208】
合成からの粗ペプチドの品質は、配列の欠失または切断を引き起こすことなくアスパルチミド形成を制限する方法を用いることによって改善することができる。ギ酸の使用により、遊離アミンのホルミル化に起因すると考えられる切断を引き起こした。これはExp. Std order #3で一般的であり、45.6%の収率である。さらに、ギ酸(pKa=3.75)の酸性に起因して、ピペリジン溶液の有効性を低減させることにより、同定された欠失配列またはDes不純物のいくつかを引き起こした可能性がある。これらの理由から、ギ酸はアスパルチミド形成の予防には不適当な添加剤と見なされた。
【0209】
ピペリジン溶液の塩基性を緩衝するためのオキシマ(pKa=4.60)の使用はギ酸よりも効果的であるかもしれない。これは、オキシマの反応性が低く、配列のいかなる切断も引き起こさないためであろう。設計した実験では、オキシマ添加物の使用に対して同様の結果を与えたが、最初のプロトコルの複製は劣っていた。実験std. order #2で使用した条件をGMP製造工程用として選択した。
【0210】
切断および全体的な脱保護
切断の最適化実験:
【0211】
樹脂からペプチドを切断するための最良の条件を見つけるために、一連の切断実験を行った。まず、種々のTFAカクテルを試験した。次に、カクテルと樹脂の比率を評価して、切断に最良の反応濃度を見つけた。カクテルと反応濃度の後、操作温度を試験した。切断反応は10gのペプチド-樹脂で3時間行い、-40℃のMTBE(4x)を用いて、使用済み樹脂を有するペプチドを沈殿させた。
【0212】
TFAカクテル選択実験
チオールスカベンジャーとしての1,4-BDMTとDTTの比較
【0213】
1,4-ベンゼンジメタンチオール(1,4-BDMT)は、DTTよりも優れたスカベンジャーであることがPPLによって報告されている(Pawlas and Rasmussen, Green Chemistry 2019 (21) 5990-5998)。この試薬を切断最適化で試験した。行った実験を以下に要約する。
・10mL/gの切断濃度
・カクテル:85%TFA、5%水 5%TIPS、0.2%NH4Iおよび5%DTTまたは1,4-BDMT
・カクテルを10±2℃に冷却
・1h後TIPSを添加
・RTで3hの反応時間
【0214】
結果を表3に要約する。
【表3】
【0215】
1,4-BDMTの切断によりt-ブチル化が3.5%減少したが、全体の純度は1,4-BDMTで2.5%とわずかに低下したとはいえ、よく似ている。この差はプロセスに新しい化学物質を導入するほど重要ではないので、切断プロセスのさらなる最適化のためにDTTを使用した。
【0216】
カクテルスクリーニング実験
実験の計画にはMinilabを使用
・10mL/gの切断濃度
・カクテル:85%TFA、5%水 5%TIPS、0.2%NH4Iおよび5%DTTまたは1,4-BDMT
・カクテルを10±2℃に冷却
・1h後TIPSを添加
・RTで3hの反応時間
【表4】
【0217】
カクテルスクリーニング実験の結果は、Minitabを用いて分析した。分析結果を以下で説明する。
【0218】
因子回帰:+56(%)対TFA(%)、DTT(%)、CenterPtを+56不純物について図1に示す。
【0219】
+56不純物に対する効果のパレート図を図2に示す。MSE=0または誤差の自由度=0のため、指定された残差タイプをグラフ化することができなかったことに注意すべき。
【0220】
要因回帰:+163(%)対TFA(%)、DTT(%)、CenterPtを、+163不純物に対する効果の正規プロットを示している図3に示す。
【0221】
+163不純物に対する効果のパレート図を図4に示す。MSE=0または誤差の自由度=0のため、指定された残差タイプをグラフ化することができなかったことに注意すべき。
【0222】
応答最適化:+163(%)、+56(%)、純度(%)を以下の表5に示す。
【表5】
【0223】
図5は、切断カクテルの反応最適化を示す。
【0224】
TFAおよびDTT含有量は両方の対象不純物に有意な影響を示さなかった。Minitab応答オプティマイザは標準順序#4を選択したが、チームはより良い結果として標準順序#3を選択した。10%DTTカクテルは5%DTTより優れていた。そこで、液体混合物(すなわち、TFA、水およびTIPS)を15%DTT実験で試験した。
【0225】
% DTT実験
最初のスクリーニング実験では、DTT量を10%増加させると粗物の品質が改善することが示された。10%DTTカクテル2つを15%DTTに増加させ、現在のBPRカクテルと比較する。
・すべての実験に15%DTTを使用
・固体スカベンジャー(DTTおよびNH4I)は総カクテル体積から除外
・NH4Iは全体積の0.25%を保持
・カクテル中水の量=TIPSの量
・総体積=TFA+水+TIPS
・カクテルを10±2℃に冷却した。
・1時間後にTIPSを追加
・RTで3hの反応時間
・実験を以下の表6に要約する。
【表6】
【0226】
3つの実験の間に有意差はなかったが、10%DTTの結果から、全体的な純度に関していくらかの改善が観察された(表4)。実験7は若干良く、これを選択して濃度および温度の実験に使用した。
【0227】
カクテルと樹脂の比率(切断濃度)の実験
カクテル組成の選択後、切断濃度、すなわちカクテルと樹脂の比率(mL/g)を評価した。実験は、カクテル#7(表6)を用いて、それぞれ10gのペプチド-樹脂を用いて行った。この実験結果を以下の表7に報告する。
【表7】
【0228】
どの比率で試験しても純度または粗回収率の向上は見られなかったので、大規模な切断では10mL/gの比率を維持した。
【0229】
切断温度実験
カクテルおよび濃度の選択で、次の工程は、温度が純度または収率に有意な影響を与えるかどうかをチェックすることである。低温(15℃)および高温(30℃)を試験し、これらの実験結果を以下に報告する。
【表8】
【0230】
Exp.11(15℃)の結果は最も粗純度が高かったが、この切断からの回収率は非常に低く、他の切断よりも67%低かった。30℃の切断では、粗純度が低い。したがって、最適と考えられる切断条件は室温に保持することであった。
【0231】
切断条件の要約と結論
最適化実験で観察された明らかな傾向は、DTT量が5%から15%に増加するにつれて、粗純度が向上することである。切断の最適条件は、90%TFA、5%水、15%DTT、0.25%ヨウ化アンモニウムおよび5%TIPS(1時間後に添加)のカクテルである。90%TFA+5%水+5%TIPS=100%(10mL/g)。15%DTTおよび0.25%NH4Iを上部に加える。樹脂添加前にカクテルを10±2℃に冷却した。全反応時間は室温で3時間である。使用済み樹脂を有する粗物をカクテル体積の4倍の冷MTBE(≦-30℃)で沈殿させ、沈殿物をMTBEで3回洗浄する。
【0232】
使用済み樹脂を有しない粗収率の測定
上記の最適化条件を用いて、10gずつ2回の切断を行った。一方の切断では、樹脂を有しない粗物を単離し、もう一方では使用済み樹脂(対照)を有する粗物を単離した。単離された使用済み樹脂はメタノールで洗浄し、乾燥させて、重量測定を行った。実験結果を以下に要約する。
【表9】
【0233】
上記の結果から、切断から単離された粗物+使用済み樹脂には67%の粗物が存在すると推定できる。
【0234】
大規模の切断の表示
最適化切断条件の拡張性を試験するために、150gで切断を行った。切断とその結果を以下に要約する。
・150gのペプチド樹脂を使用した。
・カクテル:90%TFA(1350mL)、5%(75mL)水、15%(225g)DTT、0.25%(3.75g)NH4I、および5%(75mL)TIPS
・カクテルを10±2℃に冷却
・1h後にTIPSを添加
・RTでの3hの反応時間
・-40℃のMTBE(6L)で4回沈殿させ、150mLのMTBEで3回洗浄
・乾燥後142gを回収、純度は74.04%
【0235】
環化
環化の最適化実験
環化反応の最良の方法を見出すために、一連の実験を行った。BPRの現在の方法と、Bicycle社によって提供された設定といった2つの異なる設定を検討した。2.5gの粗直鎖ペプチド(純度約71.6%)を用いて、表10に示す四つの実験を行った。反応物の濃度と添加時間を試験した。現在のPPLプロトコル(3ポット)は2eq.を、Bicycle法(2ポット)では1.3 eq.を使用した。24時間後、6.5eq.(43mg)AC-Cys-OHの添加により反応をクエンチし、1時間撹拌した。次に溶液のpHを酢酸でpH=4に調整した。
【表10】
【0236】
考察
結果は、粗物の最終濃度を510g/Lから10g/Lに増加させても、純度に傾向は見られなかった。粗ペプチドをカラムに充填する前に3倍希釈が必要であるため、50%ACNの使用は有益ではない。TATA当量は1.3eq.まで減らしても純度は低下しない。実験と結果を表10に示す。
【0237】
2ポットと3ポットの設定の比較
オリジナルの3ポット設定を、Bicycle社が提案した2ポット設定と比較した。反応は両方とも、30%ACN/0.1MNH4HCO3中5g/Lで行った。1.3eqのTATAを2時間かけて添加し、24時間後に反応をクエンチした。
【表11】
【0238】
考察
どちらの方法でも同様の結果が得られる。2ポットセットアップの方が必要な設備が少なくて済むので魅力的に見えるが、3ポット設定はTATA安全性のために標準化し、GMP製造のための設定であり続けるだろう。
【0239】
環化実験(アセトニトリルの低下率)
環化に水中30%アセトニトリルを使用することは、精製カラムにロードする前に溶液を水で2倍に希釈しなければならないことを意味する。これは、より高い体積とより長い充填時間を意味する。したがって、この問題を回避するためには、環化溶液中のアセトニトリル濃度を低下させる必要があった。以下の実験は、環化の際にアセトニトリル含有量を低減できるかどうかを確認するために行った。3.7gの直鎖粗物+使用済み樹脂(純度約70.86%)。結果を以下の表12に要約する。
【表12】
【0240】
アセトニトリルのパーセントが低下すると、純度がわずかに上昇するようである。20%ACNでは混濁または沈殿は観察されなかったが、15%ACNでは若干の沈殿が観察された。したがって、大規模の環化には20%ACN最終溶液を使用する。
【0241】
大規模の環化
大規模の環化を、一定の窒素バブルを有する22Lの三口フラスコ中で実施した。使用済み樹脂を有する121gの直鎖を用いて二つの反応を行った。第一の反応は150gの切断からの直鎖+使用済み樹脂で行い、第二の環化は切断最適化プロセスからの混合した残りの粗物+使用済み樹脂で行った。環化反応のプロトコルを以下に示す。
【0242】
手順
・N2下、10.75Lの16.3%ACN/水(1.75LのACN & 9LのH2O)中0.15MのNH4HCO3溶液(130g, 1.65モル)を調製した。
・121g(27.7ミリモル)の直鎖ペプチドを20%ACN/水(3.75L)に溶解した。
・直鎖の溶液を濾過し、使用済み樹脂を20%ACN/水3x250mLで洗浄する。
・9.6g(38.6ミリモル)のTATAを1Lの50%ACNに溶解した。
・TATAおよび粗直鎖ペプチドを、窒素下で撹拌したNH4HCO3溶液に2時間かけて添加した。
・最終反応容量は16.25Lであった。
・反応完了をHPLCでモニターした。
・41gのAc-Cys-OH(250ミリモル)を500mLの水に溶解した。
・反応が完了したら、Ac-Cys-OH溶液を反応フラスコに加え、反応をクエンチした。
・反応物をさらに1時間撹拌した。
・水中50%AcOH 800mLを反応混合物に添加し、第一のサブロットのpHを4.5に調整した。第二のサブロットではpH=6.8に調整した。
・精製に進んだ。
【表13】
【0243】
精製
精製の最適化
現在の精製法を最初に試験し、最適化された上流工程から高品質の粗生成物を精製するのに十分であるかどうかを確認した。各段階で充填量を試験する。RPC3はTFA脱塩のために添加した。
【0244】
RPC1精製試験
環化から得られた結合粗物を、以下に述べる既存の精製法を用いて精製した:
・カラム媒体:ダイソーゲルC18 120Å、10μm
・緩衝液A=0.1M NH4OAc、緩衝液B=ACN
・グラジエント:グ20~35%B、105分
・充填前に15%ACN(pH=4.5)に粗環状物を希釈した。
・異なるカラムローディングで3回行った。
・結果は以下の通りである。
【表14】
【0245】
結論
最適化されていない環化実験からの粗物の精製には、現行のRPC1法を使用した。最適化合成および環化工程により、純度および回収率に影響を与えることなく、粗物の充填量を2倍(2.6倍)にすることができた。カラムの充填を3倍にすると過負荷となった。
【0246】
RPC2の精製試験
現行のRPC2法を試験に使用した。0.1M NH4OAc(aq.)からの純度が85%を超える画分を一緒にした。より低い試料純度(サイドカット)は、この方法の精製力を試験するために使用した。
・カラム媒体:ダイソーゲルC18 120Å、10μm
・カラム直径:2.5cm
・充填量:約1.56g、純度=88.04、SLI=3.76%
・試料は充填前に等容量の水で希釈した。
・緩衝液Aは0.1%TFA(aq.)とした。
・緩衝液Bはアセトニトリルとした。
・使用したグラジエントは、15%B~35%B、100分であった。
・生成物を29%Bで溶出させた。
・15mL分画を収集した。
【0247】
結果および考察
メインプールの純度=95.64、SLI=1.43%、量=827.2mg、回収率53%が得られた。この結果は、現行のRPC2法を使用して、純度が90%未満の生成物(RPC1メインプール)を精製することができるが、回収率に悪影響を及ぼすことを示している。したがって、RPC2精製にはRPC1メインプールの純度≧90%の基準を選択した。
【0248】
RPC3の開発
この段階(RPC3)は、最終凍結乾燥生成物のTFA低減のために追加した。高いTFA含有量は凍結乾燥生成物の安定性に悪影響を及ぼすためである。最初に塩の選択作業を行った。
【0249】
塩選択実験
塩の選択作業のために2つの実行を行い、得られたメインプールを凍結乾燥し、安定性について試験した。実行は以下の通りであった:(a)TFA塩を充填し、洗浄し、30%ACN/水で溶出させ、(b)TFA塩を充填し、0.1M NH4Cl、pH=4.5で塩交換し、30%ACN/水で溶出させた。
【0250】
TFA塩カラムの洗浄と溶出
・カラム:ダイソーゲルC18、120Å、15μm、0.46X1cm
・5%ACN/0.1%TFAの2BVでカラムをコンディショニングした。
・113mgの凍結乾燥生成物を10%ACN/0.1% TFAに溶解しして充填した。
・2BVの水中5%ACNを通過
・グラジエント: 5%B~10%B、10分、その後10%B~30%B、10分
・移動相A:水;移動相B:ACN
・2BVの30%Bの後に生成物が溶出
・メインプールのpH=6.5、凍結乾燥して76.6mgを回収;純度=94.81%(TFA法)
【0251】
塩化アンモニウムから塩化物への実験
・カラム:ダイソーゲルC18 120Å 15μm、0.46X1cm
・5%ACN/0.1%TFAの2BVでカラムをコンディショニングした。
・116mgの凍結乾燥生成物を5%ACN/0.1%TFAで10回溶解して充填した。
・3BVの0.1M塩化アンモニウム/5%ACNを通過させた。
・1BVの水中5%ACNを通過させた。
・グラジエント:10分間で5%B-10%B、その後10分間で10%B-30%B
・移動相A:水、移動相B:ACN
・2BVの30%Bの後に生成物が溶出した。
・メインプールのpH=6.81、凍結乾燥して81mgを回収;純度=94.99%(TFA法)
【0252】
結論
各実行の試料を分析開発部に渡して、分析を行った。塩の含有量および安定性を試験した。両試料とも対イオンを含まないことが確認され、これは生成物が遊離塩基の形態であることを意味する。安定性は両試料とも同様で、元のTFA塩よりも優れていることが見出された。TFAカラム洗浄を選択してさらなる開発を行った。
【0253】
RPC3の精製開発
RPC2メインプールを、この段階で脱塩し、さらに精製した。精製法は、RPC1およびRPC2で使用したのと同じ媒体を同じ流速で使用して開発した。以下に実験を示す:
・カラム媒体:ダイソーゲルC18 120Å、10μm
・カラム直径:2.5cm
・緩衝液A=水、緩衝液B=ACN
・カラムを2BVの5%ACN/0.1%TFAでコンディショニングした。
・RPC2メインプール純度=95.64、SLI=1.43%、量=827.2mgを等容量の水で希釈して充填した。
・2BVの10%ACN/水を通過させることでTFAを除去した。
・グラジエント: 20~35%B、60分
・32.5%Bで溶出させた
・画分20mLを回収した。
・結果:メインプール純度= 95.91、SLI=1.21%、量=800mg
・回収率=96.7%
【0254】
この方法は、大規模の実証のために選択したものである。
【0255】
大規模の精製および凍結乾燥
0.1M NH4OAcの精製(RPC1)
環状粗溶液を2.4μmのフィルターで濾過し、分取逆相カラムに充填した。使用した精製法を以下に示す。
【0256】
0.1M NH4OAcの精製条件(RPC1)
カラム直径:10cm
カラム媒体:ダイソーゲルTM C18、120Å、10μm
充填した媒体の量:1.2kg
緩衝液A:0.1M NH4OAc/H2O、緩衝液B:100%ACN
グラジエント: 10~20%緩衝液B、10分、その後20~35%緩衝液B、105分
流速:175mL/分
波長:230nm
手順
・0.1%TFA(aq.)中5%ACNを2ベッド体積通過させる。
・得られた溶液を2.4μmフィルターで濾過する。
・試料をカラムに充填する。
・10%緩衝液Bを1ベッド体積通過させる。
・上記のグラジエントを開始する。
・生成物が溶出し始めたら画分(約250mL)を回収する。
・3BVの水中80%MeOHでカラムを逆洗浄する。
【0257】
結果および考察
得られた環状粗物を精製した。粗試料#1のpHはpH=4.5であったが、第二の粗試料はpH=6.8であった。実行の結果を以下に要約する。
【表15】
【0258】
この精製段階からの回収率は83%であった。メインプールの保持時間はセクション11に報告されている。
【0259】
TFA精製(RPC2)
0.1M NH4OAc(aq.)精製からのメインプールを等容量の水で希釈し、同じカラムに充填した。次に、0.1%TFA(aq.)中5%ACNをカラムに通過させ、塩交換を促進した。0.1%TFA(aq.)による精製と溶出は、以下に示す条件で行った。
【0260】
0.1%TFAの条件(RPC2)
カラム直径:10cm
カラム媒体:ダイソーゲルTM C18、120Å、10μm
充填した媒体の量:1.2kg
緩衝液A:水中0.1%TFA、緩衝液B:100%ACN
グラジエント: 5~15%B、10分、その後15~35%緩衝液B、100分
波長:230nm
流速:175mL/分
約29%緩衝液Bで生成物を溶出させた。
手順
・水中0.1%TFA中5%アセトニトリルを2ベッド体積通過させる。
・NH4OAcメインプールを等容量の水で希釈する。
・希釈したメインプールをカラムに充填する。
・2ベッド体積の10%バッファBを通過させる。
・RPC2条件で指定されたグラジエントを実行する。
・生成物が溶出し始めたら画分(約300mL)を回収する。
・3BVの水中80%MeOHでカラムを逆洗浄する。
【0261】
カラムへの充填量は約30g(25g/kgのカラム媒体)とした。RPC2精製のためにカラムに充填した推定充填生成物(ピーク面積によるRPC1メインプール)約23g(77%)を、HPLC純度95.22%、単一最大不純物1.43%で回収した(下記図18参照)。この段階ではサイドカットは行われなかった。TFAメインプールは5℃で28日間安定であった(セクション11)。
【0262】
TFA脱塩(RPC3)
0.1%TFA(aq.)精製からのメインプールを等容量の水で希釈し、同じカラムに充填した。次に、精製水中10%ACNをカラムに通過させてTFA塩を脱塩した。精製および精製水とACNによる溶出は、以下に示す条件で行った。
【0263】
脱塩条件(RPC3)
カラム直径:10cm
カラム媒体:ダイソーゲルTM C18、120Å、10μm
充填した媒体の量:1.2kg
緩衝液A:水、緩衝液B:100%ACN
グラジエント: 10~20%緩衝液B、10分、その後20~35%緩衝液B、60分
波長:230nm
流速:175mL/分
約32%の緩衝液Bで生成物を溶出させた。
手順
・水中0.1%TFA中5%アセトニトリルを2ベッド体積通過させる。
・TFAメインプールを等容量の水で希釈する。
・希釈したメインプールをカラムに充填する。
・2ベッド体積の10%バッファBを通過させる。
・RPC3の条件に指定されているグラジエントを実行する。
・生成物が溶出し始めたら画分(約500mL)を回収する。
・3BVの水中80%MeOHでカラムを逆洗浄する。
【0264】
HPLC純度95.22%、単一最大不純物1.43%の推定23gをカラムに充填し、純度=95.91、SLI=1.49%の約10gがメインプールにあった。これは精製が観察されず、回収率は43%に過ぎないことを意味する。これは、2.5cmカラム精製で観察された結果を再現できなかったことを示している。これがスケーラビリティによるものか、あるいは単にカラムの悪いの性能によるものかを調べるために、5cmカラムを用いてこの実験を繰り返した。
【0265】
RPC3のサイドカットの処理
RPC3のサイドカット溶液(約11g)を等容量の水で希釈し、カラムに充填した。
【0266】
脱塩条件(RPC3)
・カラム直径:5cm
・カラム媒体:ダイソーゲルTM C18、120Å、10μm
・充填した媒体の量:300g
・緩衝液A:水、緩衝液B:100%ACN
・グラジエント:10~35%B、10分、その後20~40%緩衝液B、50分
・波長:230nm
・流速:43.7 mL/min
・約32%緩衝液Bで生成物を溶出させた。
【0267】
手順
・2ベッド体積の0.1%TFA水溶液中5%アセトニトリルを通過させる。
・サイドカットを同容量の水で希釈する。
・希釈したメインプールをカラムに充填する。
・2ベッド体積の10%緩衝液Bを通過させる。
・RPC3条件で指定されているグラジエントを実行する。
・生物が溶出し始まったら画分(約50mL)を回収する。
・カラムを3BVの80%MeOH水溶液で逆洗浄する。
【0268】
回収可能な11gからわずか6gが回収された(回収率54%)。これは、2.5cmカラム脱塩実行からの結果が大規模に実現可能でないことを確認するものである。速いグラジエントのキックアウト実験が必要である。
【0269】
脱塩 および キックアウト
セクション9.2.3.1のすべての画分を一緒に、等容量の水で希釈し、カラムに再充填して、この実験を行った。
【0270】
脱塩条件(RPC3)
・カラム直径:5cm
・カラム媒体:ダイソーゲルTM C18、120Å、10μm
・充填した媒体の量:300g
・緩衝液A:水、緩衝液B:100%ACN
・グラジエント: 10~35%B、10分、その後、すべての生成物が溶出されるまで35%緩衝液Bで保持した。
・波長:230nm
・流速: 43.7 mL/min
・約32%緩衝液Bで生成物を溶出させた。
【0271】
手順
・2ベッド体積の0.1%TFA水溶液中5%アセトニトリルを通過させる。
・サイドカットを同容量の水で希釈する。
・希釈されたメインプールをカラムに充填する。
・2ベッド体積の10%緩衝液Bを通過させる。
・RPC3条件で指定されているグラジエントを実行すう。
・生成物が溶出し始まったら画分(約50mL)を回収する。
・カラムを3BVの80%MeOH水溶液で逆洗浄する。
【0272】
充填した11g(カラム培地36.7g/kg)から約10.8gが回収されたので、充填した生成物はすべて回収されたと考えてよい。最終メインプールの濃度は25g/Lであった。この方法は大規模の脱塩に推奨される。
【0273】
凍結乾燥
脱塩実行からのメインプールを一緒にし、ボトル中で凍結乾燥させた。凍結乾燥後、最終凍結乾燥生成物24gを回収した。最終凍結乾燥生成物の純度は95.77%であり、最大の不純物は1.49%であり、全体の収率は約10.6%であった。
【0274】
保持時間試験
保持時間試験は、環化から始まる各段階の最終溶液について行った。条件は室温(試料を室内に放置)、2~8℃(冷蔵庫に保管)とした。
【0275】
粗物
pH=4.5およびpH=6.8の粗物について保持時間試験を行った。これらの試験の要約を以下の表に示す。
【表16】
【表17】
【0276】
粗物(pH=4.5)は両方の条件でより安定的であり、室温で3週間、冷蔵で1ヶ月間放置することができる。粗物(pH=6.8)は、室温で1週間、冷蔵で2週間保存することができる。
【0277】
RPC1のメインプール
酢酸アンモニウムメインプールを室温で保存し、純度を毎週モニターした。結果は以下に要約する。
【表18】
【0278】
この段階のメインプールは、室温または冷蔵で1ヶ月間保存できる。
【0279】
RPC2のメインプール
TFAメインプールは室温で保存し、純度を毎週モニターした。結果を以下に要約する。
【表19】
【0280】
TFAメインプールは、1ヶ月までは冷蔵保存すること。室温保存は推奨されない。
【0281】
RPC3メインプール
凍結乾燥前の最終脱塩溶液の安定性を検討した。結果を以下の表に報告する。
【表20】
【0282】
室温および冷蔵溶液は両方とも1ヶ月間安定的である。
【0283】
結論:
合成
BCY8234のSPPSを、アスパルチミド不純物の形成を最小限に抑えるように最適化した。
【0284】
DOEスタイルのスクリーニング実験を用いて様々なデブロッキングカクテルを試験した。
【0285】
10%ピペリジン/DMF中に3%オキシマを含むデブロッキングカクテルは、5%ピペリジン/DMF中3%オキシマおよび10%ピペリジン中5%オキシマをわずかに上回った。
【0286】
GMP製造用には、10%ピペリジン/DMF中3%オキシマを選択した。
【0287】
DITUをカップリング溶液に添加してシステイン酸化を抑制した。
【0288】
サルコシンカップリングにはサルコシンジペプチド誘導体を使用した。
【0289】
高担持(>0.8mmol/g)樹脂をこの最適化作業に成功裡に使用した。
【0290】
切断
一連の切断実験を行った。
【0291】
1,4-BDMTをDTTと比較した結果、両者に有意差は見られなかった。
【0292】
Minitabを用いて、DTTを用いたスクリーニング実験を計画した。
【0293】
スクリーニング実験の結果、Minitabの応答オプティマイザによる選択と、チームの選択という、2つの可能性のあるカクテルの選択肢が示された。
【0294】
さらなる最適化作業により、最適な方法は、樹脂を添加する前に、90%TFA、15%DTT、5%水を10℃に冷却し、1時間後に5%TIPSを添加することであることが明らかになった。
【0295】
カクテル対樹脂の比率は10mL/gであり、反応はRTで3時間行った。
【0296】
沈殿を-40℃(4×TFAカクテル)で行い、濾過し、MTBEで3回洗浄した。
【0297】
150gを切断して、142gを純度74.04%で回収した。
【0298】
環化
環化のために一連の最適化実験を行った。
主要な発見は以下の通りであった:
TATAは1.3eqまで減少させることができる。
反応時間を4時間に短縮することができる。
反応液中ACN含有量を20%に低減できる。
121gの環化を2回行い、推定18gの生成物を生成した。
粗環状溶液をpH=6.8でカラムに充填する。
粗物の長い保存にはpH=4.5が必要である。
【0299】
精製
0.1M NH4OAc(aq.)を用いて粗環状ペプチドを精製した。
【0300】
次に、0.1%TFA(aq.)を用いてさらに精製し、最終TFA塩を生成した。
【0301】
精製したTFA塩を水洗で脱塩し、35%ACN/水で溶出させた。
【0302】
特定の理論に縛られたくないが、脱塩の主な利点は、酸性または塩基性対イオンを含まない固体ペプチド中間体の長期安定性にあると考えられている。
【0303】
凍結乾燥
脱塩したTFAのベストプールをボトル凍結乾燥して、純度95.77%、単一最大不純物1.49%の生成物24gを得た。
【0304】
GMP製造に関する推奨事項
合成
リンクアミドMBHA樹脂3000g(2.4モル)
反応容器は、常に不活性条件下(N2またはアルゴン)でなければならない。
【0305】
Asp19のカップリング後、デブロッキングはすべて、10%ピペリジン/DMF中3%オキシマを使用しなければならない。
全てのデブロッキング時間は5分および20分でなければならない。
【0306】
ピペリジン溶液を長時間容器内に放置することは避ける(ドレイン時間は合わせて5分以下が理想的)。
【0307】
0.2eq.のDITUをカップリング溶液に添加すべきである。
【0308】
サルコシンカップリングはすべてFmoc-Sar-Sar-OHで行わなければならない。
【0309】
特定の理論に拘束されることを望まないが、すべてのサルコシンカップリングにFmoc-Sar-Sar-OHを使用する主な利点は、固相上への全体的なカップリング効率を維持しながらペプチド合成および脱保護サイクルの数を減少させ、アスパリティミド形成の機会を最小限にすることであると考えられる。
切断
【0310】
1000~2000gの範囲のペプチド-樹脂が推奨される。
【0311】
90%TFA、5%水、0.25%NH4I、5%DTTおよび5%TIS(1時間後に添加)のカクテル(10mL/g)で樹脂を3時間処理することによって実施されるペプチドの切断および包括的脱保護。
【0312】
使用済み樹脂を有する反応混合物を冷MTBEで沈殿させ、得られた沈殿を単離し、乾燥させる。
【0313】
環化
直鎖粗物500g+使用済み樹脂が推奨される。
40gのTATAをあらかじめ5Lスクリューキャップフラスコに入れて秤量した。
TATAの秤量および分配は、隔離システムで行わなければならない。
TATAへの曝露は最小限でなければならない。
反応液は、66Lの20%ACN(aq.)中0.1M NH4HCO3である。
反応は、4~20時間でなければならない。
2~8℃での保持時間=5日(酢酸処理後、pH=4.28)
【0314】
精製
ダイソーゲルC18を充填した20cmカラム120Å
緩衝液B=ACN
RPC1およびRPC2に現在のBPRを保持する。
RPC3では、3BVの10%ACN/水を用いて残留TFAを洗浄し、生成物を35%ACN/水で溶出させた。
【0315】
HPLC条件および試験成績書
【表21】
【表22】
【0316】
試験成績書
BCY8234
アイテム番号:512175
ロット番号:P200462
分子量:2954.3
外観:白色粉末
ペプチド純度:≧95%
ペプチド含有量:92.8%(窒素含有量による)
水分(KF):7.1%
TFA:検出されなかった
マスバランス:99.9%
同一性:質量スペクトル分析(ESI)は正しい分子イオンを示す(2953.3)
保存:乾燥した状態に保持し、-20℃未満で保存する。
【0317】
参考文献
Acid-Mediated Prevention of Aspartimide. Michels, Tillmann, et al. 2012, ORGANIC LETTERS, Vol. 14, No. 20, pp. 5218-5221.
ReGreen SPPS: enabling circular chemistry in. Pawlas, Jan: Rasmussen Jon H. 2019, Green Chemistry (21), pp. 5990-5998.
【0318】
実施例2:BT8009の調製
はじめに
目標:kilo lab規模でのBT8009生産のための新しいプロセスを開発する。この例では、プロセス開発で特定された問題に対処するために実施されたプロセス開発活動について説明する。
【化61】
【0319】
結果および考察
工程1:gvcMMAEの形成
【化62】
【0320】
1~3gの規模で5つの実験を行った(表23)。エントリー1の実験は、ワークアップ手順を簡略化し、収率を向上させるために実行した。1:1のEtOAc/THFを用いてブライン溶液を抽出した。有機層と水層の両方にgvcMMAEが多く含まれていた。水性反応液のEtOAc/THFによる抽出はうまくいかなかった。そこで、反応液を酸性ブライン溶液に投入した。濾過可能な懸濁液が得られた。94.3%のLC純度と88%の収率で生成物を得た。生成物中の塩化ナトリウムはわずか0.07%w/wであった。
【0321】
ワークアップ体積を減らすために、エントリー2の実験を実行した。ワークアップ体積を70体積から50体積に減らした。反応液をHCl酸性水溶液に投入した。生成物は溶液から析出した。93.5%のLC純度と79%の収率で生成物を得た。水溶液は食塩水よりも多くのgvcMMAEを溶解し、低い収率となった。
【0322】
エントリー3の実験は、エントリー2実験がエントリー1より低い収量を示した理由を検討するために行った。エントリー3の実験では、ワークアップで塩水を水に置き換えた以外は、エントリー1の実験手順を繰り返した。94.6%のLC純度と72%の収率で生成物を得た。その結果では、塩水が高収率を達成するために重要であることが示された。
【0323】
エントリー4の実験は、エントリー2の実験がエントリー1より収率が低かった理由を引き続き検討するために行った。エントリー4実験では、反応混合物を蒸留してDIPEAを除去した以外は、エントリー1の実験の手順を繰り返した。94.6%のLC純度、74%の収率で生成物を得た。この結果は、高い収率を達成するために蒸留は重要ではないことを示している。
【0324】
エントリー1~4の結果から、高い収率を達成するためには塩水が重要であることが実証された。この仮説を確認するために、エントリー5の実験を行った。反応液を酸性の飽和塩水に投入した。懸濁液を濾過した。95.4%のLC純度、91%の収率で生成物得た。生成物中の塩化ナトリウムはわずか0.45%w/wであった。これらの条件は、好ましい手順として使用される(添付資料参照)。
【表23】
【0325】
工程2:BT8009の形成
【化63】
【0326】
0.708~2.832g規模で11回の実験を行った(表24)。これらの実験では、BCY8234の2つのロットを使用し、ロットCは以前のルートで調製し、ロットPは後のルートで調製した。エントリー1の実験は、ワークアップ手順を検討し、カラム精製条件を最適化するのに十分な粗BT8009を製造するために実行した。BCY8234の出発物質はロットCのもので、TFAが7.62%w/wであった。このBCY8234はDMAに溶解しやすかった。反応を1時間撹拌した後、IPCは1.73%のBCY8234、0.75%のgvcMMAEおよび0.07%のRRT0.93不純物を示した。反応液をMTBE溶液に投入した。生成物を濾過可能な懸濁液として沈殿させた。この懸濁液をクラスD漏斗で濾過した。アッセイ分析により、濾液中に生成物が存在しないことが示された。。粘着性のある固体の形成を避けるため、濾過中、溶媒はケーキの上に保持した。リンスが終了し、溶媒の滴下が止まったら、直ちに真空を停止した。LC純度86.1%、推定収率100%の粗生成物を得た。
【0327】
カラム精製条件を検討するために、エントリー2~4の実験を行った。各実験において、1gの理論上のBT8009をエントリー1の粗生成物から引き抜き、60gのウルトラC18カラムで精製した。
【0328】
エントリー2の実験では、ウルトラC18カラムのグラジエント溶出に10~40%ACN/H2O+0.1%AcOHを使用した。凍結乾燥後、BT8009を、96.2%のLC純度、RRT0.93不純物のない、89.8%収率で得た。
【0329】
エントリー3の実験では、ウルトラC18カラムのグラジエント溶出に10~40%ACN/H2O+0.05%AcOHを使用した。凍結乾燥後、BT8009を、95.6%のLC純度、RRT0.93不純物のない、61.1%の収率で得た。
【0330】
エントリー4の実験では、ウルトラC18カラムのグラジエント溶出に10~35%ACN/H2O+0.1%AcOHを使用した。凍結乾燥後、BT8009を、96.9%のLC純度、0.1%のRRT0.93不純物、62.7%の収率で得た。この結果から、エントリー2の精製が最良の条件であったが、最適化が必要であることが示された。
【0331】
ロットPのBCY8234が許容できる最終生成物を提供するかどうかを確認するために、エントリー5の実験を実行した。この実験では、5当量のDIPEAおよび1当量のgvcMMAE/TBTUを使用した。このBCY8234はTFAを含まず、DMAに溶解しなかった。懸濁液を1時間撹拌した後、IPCは36.14%のBCY8234と2.78%のgvcMMAE、2.81%のRRT0.93不純物を示した。gvcMMAE/TBTUの追加投入(2x0.1当量)後、IPCは3.32%のBCY8234および3.55%のgvcMMAEおよび3.88%のRRT0.93不純物を示した。
【0332】
エントリー6の実験では、反応が改善されるかどうかを見るために、11当量のDIPEAを使用する以外は、エントリー5の実験を繰り返して実行した。IPCはエントリー5と同様であった。懸濁液を1時間13分間撹拌した後、IPCは27.33%のBCY8234および3.76%のgvcMMAEおよび1.19%のRRT0.93不純物を示した。gvcMMAE/TBTUの追加投入(3x0.1当量)後、IPCは0.16%のBCY8234および4.37%のgvcMMAEおよび1.66%のRRT0.93不純物を示した。
【0333】
エントリー7の実験では、gvcMMAE/TBTUと混合する前に、ロットPからのBCY8234をDMAおよび4当量のTFAに溶解した。17時間撹拌した後、IPCは4.62%のBCY8234および0.99%のgvcMMAEおよび0.38%のRRT0.93不純物を示した。gvcMMAE/TBTUの追加投入(0.1当量)の後、IPCは0.26%のBCY8234および1.53%のgvcMMAEおよび0.79%のRRT0.93不純物を示した。この実験では、ウルトラC18カラムのグラジエント溶出に10~40%ACN/H2O+0.1%AcOHを使用した。凍結乾燥後、BT8009を、94.7%のLC純度、0.99%のRRT0.93不純物、59.1%の収率で得た。
【0334】
エントリー8の実験では、ロットPのBCY8234を、gvcMMAE/TBTUと混合する前に、DMAと3当量のTFAと12当量の水に溶解した。1時間攪拌後、IPCは3.82%のBCY8234および1.14%のgvcMMAEおよび0.38%のRRT0.93不純物を示した。gvcMMAE/TBTUを追加投入(0.1当量)した後、IPCは0.21%のBCY8234および1.98%のgvcMMAEおよび1.69%のRRT0.93不純物を示した。この実験では、ウルトラC18カラムのグラジエント溶出に10~38%ACN/H2O+0.1%AcOHを使用し、C18カラムからすべての生成物が溶出されるように45%ACN/H2O+0.1%AcOHを使用した。キャッチ-リリースカラム(catch - release column)を行った。凍結乾燥後、BT8009を、95.5%のLC純度、1.36%のRRT0.93不純物%、68.5%の収率で得た。
【0335】
1.1当量のgvcMMAE/TBTUの直接投入がRRT0.93の不純物を最小化するかどうかを確認するために、エントリー9~10の実験を行った。エントリー9の実験では、ロットPのBCY8234を反応に使用した。1時間攪拌後、IPCは0.55%のBCY8234、1.72%のgvcMMAEおよび1.04%のRRT0.93不純物を示した。エントリー10の実験では、ロットCのBCY8234を反応に使用した。1時間攪拌後、IPCは0.23%のBCY8234、1.68%のgvcMMAEおよび0.87%のRRT0.93不純物を示した。この結果から、gvcMMAE/TBTUが過剰になるとRRT0.93不純物が発生し、工程2の反応には1当量のgvcMMAE/TBTUを使用する必要があることが示された。この不純物はロットPとロットCのBCY8234の両方から発生した。
【0336】
エントリー11の実験では、gvcMMAE/TBTUと混合する前に、ロットPからのBCY8234をDMAおよび4当量のTFAに溶解した。この反応には1当量のgvcMMAE/TBTUを使用した。1時間攪拌後、IPCは3.45%のBCY8234、2.00%のgvcMMAEおよび0.01%のRRT0.93不純物を示した。凍結乾燥後、BT8009を、96.9%のLC純度、RRT0.93不純物のない、64.7%の収率で得た。この実験は、好ましい手順として使用されるであろう。
【0337】
【表24】
【0338】
工程2:不純物の同定
RRT0.97不純物:粗BT8009のクロマトグラムには、4.5%のRRT0.97不純物が存在する。この不純物はIPCクロマトグラムにも存在する。この不純物は、BT8009のLC-MSにより、不純物BT8009+OHとして同定された。
【0339】
RRT0.93不純物:最終BT8009のクロマトグラムでは、1.4%のRRT0.93不純物が存在する。この不純物は、過剰なgvcMMAE/TBTUを使用した場合のIPCクロマトグラムにも存在する。この不純物は、BT8009のLC-MSにより不純物BT8009-H2Oとして同定された。ロットCとロットPのBCY8234をLC-MSで分析し、この不純物BCY8234-H2Oが含まれていることを確認した。これはメインピークと部分的に共溶解する。ロットCのBCY8234はこの不純物をより多く含んでいるようである。
【0340】
結論
BT8009を二つの工程で44%の収率、96.9%のLC純度で製造するプロセスを開発した。工程1のプロセスを簡略化し、収率を向上させた。RRT0.93不純物を最小化するために、工程2の反応に1当量のgvcMMAE/TBTUを使用した。工程2の濾過およびカラム精製を最適化した。
【0341】
本発明の多数の実施態様を説明したが、本発明の化合物および方法を利用する他の実施態様を提供するために、基本的な実施例を変更し得ることは明らかである。従って、この発明の範囲は、例として表した特定の実施態様によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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【国際調査報告】