(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】小児被験体におけるSARS-CoV-2感染の抗体療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240905BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240905BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
A61K 35/14 20150101ALI20240905BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20240905BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P31/14
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K35/14
C07K16/10
C12N15/13 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513947
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 US2022075766
(87)【国際公開番号】W WO2023034866
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521268130
【氏名又は名称】ヴィア・バイオテクノロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Vir Biotechnology, Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】524076202
【氏名又は名称】グラクソ ウェルカム ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】オースティン, ダレン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー, エリザベス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB33
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB35
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB33
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、小児被験体における、例えば、COVID-19を発症しているまたは発症するリスクがある小児被験体における、SARS-CoV-2感染を処置または予防する方法であって、抗体、抗原結合断片、またはそれを含む組成物を小児被験体に投与することを含む方法を提供する。開示される方法は、SARS-CoV-2に感染している小児被験体の処置ばかりでなく、SARS-CoV-2感染または伝播に対する予防も含む。処置されるSARS-CoV-2感染(例えば、COVID-19の原因となる)は、あらゆる感染ステージのものであり得、および/またはあらゆる疾患ステージ、例えば、軽度、軽度から中等度、重度もしくは重篤につながり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小児被験体におけるSARS-CoV-2感染を処置する方法であって、
(A)(i)配列番号106に記載される相補性決定領域(CDR)H1アミノ酸配列と、配列番号121に記載されるCDRH2アミノ酸配列と、配列番号108に記載されるCDRH3アミノ酸配列とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号169に記載されるCDRL1アミノ酸配列と、配列番号170に記載されるCDRL2アミノ酸配列と、配列番号171に記載されるCDRL3アミノ酸配列とを含む、軽鎖可変ドメイン(VL);
(B)(i)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列の、CDRH1とCDHRH2とCDRH3とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号168に記載されるアミノ酸配列の、CDRL1とCDRL2とCDRL3とを含む、軽鎖可変領域;または
(C)(i)配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる、軽鎖可変領域
を含む、SARS-CoV-2中和抗体または抗原結合断片を含む組成物の単一用量を前記小児被験体に投与することを含む方法。
【請求項2】
小児被験体におけるSARS-CoV-2感染を処置する方法であって、(i)SARS-CoV-2中和抗体もしくは抗原結合断片の、または(ii)(a)前記抗体もしくは抗原結合断片と(ii)(b)薬学的に許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤とを含む組成物の、有効量を前記小児被験体に投与することを含み、
前記抗体または抗原結合断片が、
(A)(i)配列番号106に記載される相補性決定領域(CDR)H1アミノ酸配列と、配列番号121に記載されるCDRH2アミノ酸配列と、配列番号108に記載されるCDRH3アミノ酸配列とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号169に記載されるCDRL1アミノ酸配列と、配列番号170に記載されるCDRL2アミノ酸配列と、配列番号171に記載されるCDRL3アミノ酸配列とを含む、軽鎖可変ドメイン(VL);
(B)(i)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列の、CDRH1とCDHRH2とCDRH3とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号168に記載されるアミノ酸配列の、CDRL1とCDRL2とCDRL3とを含む、軽鎖可変領域;または
(C)(i)配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる、軽鎖可変領域
を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の抗体もしくは抗原結合断片または請求項2に記載の組成物の単一用量のみを前記小児被験体に投与することを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(1)前記VHが、配列番号113に記載されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含む、または(2)前記VHが、配列番号105に記載されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体または抗原結合断片が、IgG1アイソタイプである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体または抗原結合断片が、以下の変異:
(i)M428L/N434S;または
(ii)M428L/N434S/G236A/A330L/I332E
を含むFcポリペプチドまたはその断片をさらに含み、前記Fcポリペプチドにおけるアミン酸残基の番号付けが、EU番号付けシステムに従う、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号173または265のCH1~CH3アミノ酸配列、および配列番号174のCLアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号175または266のCH1~CH3アミノ酸配列、および配列番号174のCLアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体または抗原結合断片が、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含み、
(i)前記重鎖ポリペプチドが、配列番号113に記載されるVHアミノ酸配列、および配列番号173または265に記載されるCH1~CH3アミノ酸配列を含み;
(ii)前記軽鎖が、配列番号168に記載されるVLアミノ酸配列、および配列番号174に記載されるCLアミノ酸配列を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体または抗原結合断片が、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含み、
(i)前記重鎖ポリペプチドが、配列番号113に記載されるVHアミノ酸配列、および配列番号175または266に記載されるCH1~CH3アミノ酸配列を含み;
(ii)前記軽鎖が、配列番号168に記載されるVLアミノ酸配列、および配列番号174に記載されるCLアミノ酸配列を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記小児被験体が、
(i)2歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週である;
(ii)2歳~18歳未満である、
(iii)2歳~6歳未満である;
(iv)6歳~12歳未満である;
(v)12歳~18歳未満である;
(vi)軽度から中等度のCOVID-19に罹患している;
(vii)症状の開始から7日未満しか経過していない;
(viii)逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応または抗原SARS-CoV-2試験の結果が陽性であったことがある;
(ix)1歳未満の年齢、真性糖尿病、ポンペ病、ムコ多糖症、糖原病、脂肪酸酸化障害、メープルシロップ尿症、有機酸血症、肥満(≧2歳の小児についてのCDCもしくはWHO成長チャートに基づいて年齢および性別の95パーセンタイル以上のボディーマスインデックス(kg/m2))、先天性心疾患、高血圧、心筋症、心不全、鎌状赤血球症、中等度から重度の喘息、慢性肺疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、発作性障害、全般的発達遅延、脳性麻痺、構造的脳欠損/奇形、原発性免疫不全、CD4+数<200細胞/mm
3であるHIV感染、実質臓器もしくは骨髄移植;全身性コルチコステロイド(≧2週間にわたって摂取される、体重に基づいて≧0.5mg/kg/日、または≧20mg/日のプレドニゾン等価物のどちらか[2つのうちのどちらか低いほうの用量]により定義される)、免疫抑制生物剤、疾患修飾性抗リウマチ薬の長期使用;胃瘻造設もしくは空腸瘻造設依存、非経口栄養依存、気管切開依存、ベースライン酸素要求、CPAP/BiPAP/人工呼吸器サポートの使用、または他のベースライン重度心身障害、のうちのいずれか1つまたは複数を有する;
(x)体重が2kgまたはそれを超える早産新生児または正期産新生児である;あるいは
(xi)(i)~(x)の任意の組合せである、
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体、抗原結合断片、または組成物を前記小児被験体に静脈内投与することを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体、抗原結合断片、または組成物を、前記小児被験体に、三角筋、臀部(例えば、背側臀部、腹側臀部)または大腿(例えば、大腿前外側)注射により筋肉内投与することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体または抗原結合断片を、前記小児被験体に、62.5mg以下、100mg以下、125mg以下、150mg以下、187.5mg以下、200mg以下、225mg以下、250mg以下、300mg以下、350mg以下、375mg以下、400mg以下、450mg以下、または500mg以下の用量で投与することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(i)62.5、125、187.5、250、もしくは375mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を前記小児被験体に投与すること;
(ii)100mg、200mg~250mgの範囲、もしくは500mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を前記小児被験体に投与すること;
(iii)100mg、150mg、225mg、もしくは350mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を前記小児被験体に投与すること;
(iv)
(a)2歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週であり、体重が少なくとも2kgであるが4kg未満である、前記小児被験体に、62.5mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;
(b)2歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週であり、体重が少なくとも4kgである、前記小児被験体に、125mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;
(c)2歳~6歳未満である前記小児被験体に、187.5mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;
(d)6歳~12歳未満である前記小児被験体に、250mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;および/もしくは
(e)12歳~18歳未満である前記小児被験体に、375mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;
(v)
(a)1歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週である前記小児被験体に、100mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;
(b)少なくとも1歳~12歳未満である前記小児被験体に、200から250mgまでの範囲の前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;および/もしくは
(c)少なくとも12歳~18歳未満である前記小児被験体に、500mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;
(vi)
(a)2歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週である前記小児被験体に、100mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;
(b)少なくとも2歳~6歳未満である前記小児被験体に、150mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;
(c)少なくとも6歳~12歳未満である前記小児被験体に、225mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;および/もしくは
(d)少なくとも12歳~18歳未満である前記小児被験体に、350mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;または
(vii)少なくとも12歳であり、体重が40kgを超える、前記小児被験体に、500mgの前記抗体もしくは抗原結合断片を投与すること
を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記小児被験体が、PCRまたは他の核酸増幅検査によりSARS-CoV-2感染が確認された者である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記小児被験体が、室内空気でSpO
2≧94%、ならびに発熱、悪寒、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、関節もしくは筋肉痛、嗅覚もしくは味覚の変化、嘔吐、下痢、息切れ、食欲不振もしくは摂食不良、鼻閉/鼻水、および嗜眠のうちの1つまたは複数を有するが、1日より長い酸素補給を必要とし、≧4L/分の酸素補給もしくは同等の処置を必要とする低酸素血症(室内空気でのO
2飽和度≦93%、もしくはPaO
2/FiO
2<300)、侵襲的機械的人工換気もしくはECMOの少なくとも一方を必要とする呼吸不全、ショック、多臓器機能不全/不全を有さない、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記小児被験体が、SARS-CoV-2試験の結果が陽性であったことがあり、室内空気での酸素飽和度≧94%を有し、COVID-19症状を有し、症状の開始から7日未満または7日である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記小児被験体が、1歳未満の年齢、真性糖尿病、ポンペ病、ムコ多糖症、糖原病、脂肪酸酸化障害、メープルシロップ尿症、有機酸血症、肥満、先天性心疾患、高血圧、心筋症、心不全、鎌状赤血球症、中等度から重度の喘息、慢性肺疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、発作性障害、全般的発達遅延、脳性麻痺、構造的脳欠損/奇形、原発性免疫不全、CD4+数<200細胞/mm3であるHIV感染、実質臓器もしくは骨髄移植、全身性コルチコステロイド、免疫抑制生物剤もしくは疾患修飾性抗リウマチ薬の長期使用、胃瘻造設もしくは空腸瘻造設依存、非経口栄養依存、気管切開依存、ベースライン酸素要求、CPAP/BiPAP/人工呼吸器サポートの使用、または他のベースライン重度心身障害のうちの1つまたは複数を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記小児被験体が、SARS-CoV-2のための、i)回復期血漿療法、ii)レムデシビル、ソホスブビル、アシクロビル、ジドブジン、モルヌピラビル、ニルマトレルビル、リトナビル、もしくはファビピラビル、もしくはブレキナル、デキサメタゾン、トシリズマブ、エテセビマブ、ロピナビル、レロンリマブ、ベブテロビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、またはこれらの任意の組合せ、あるいはi)とii)の両方を受けている、あるいは受けたことがある、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
小児被験体におけるSARS-CoV-2感染を処置するための医薬の調製における使用のための、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片であって、前記医薬が、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片を含む液体組成物であり、前記抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片が、
(A)(i)配列番号106に記載される相補性決定領域(CDR)H1アミノ酸配列と、配列番号121に記載されるCDRH2アミノ酸配列と、配列番号108に記載されるCDRH3アミノ酸配列とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号169に記載されるCDRL1アミノ酸配列と、配列番号170に記載されるCDRL2アミノ酸配列と、配列番号171に記載されるCDRL3アミノ酸配列とを含む、軽鎖可変ドメイン(VL);
(B)(i)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列の、CDRH1とCDHRH2とCDRH3とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号168に記載されるアミノ酸配列の、CDRL1とCDRL2とCDRL3とを含む、軽鎖可変領域;または
(C)(i)配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる、軽鎖可変領域
を含む、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片。
【請求項22】
前記医薬が、前記抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片の単一用量を投与するために製剤化される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
(A)(i)配列番号106に記載される相補性決定領域(CDR)H1アミノ酸配列と、配列番号121に記載されるCDRH2アミノ酸配列と、配列番号108に記載されるCDRH3アミノ酸配列とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号169に記載されるCDRL1アミノ酸配列と、配列番号170に記載されるCDRL2アミノ酸配列と、配列番号171に記載されるCDRL3アミノ酸配列とを含む、軽鎖可変ドメイン(VL);
(B)(i)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列の、CDRH1とCDHRH2とCDRH3とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号168に記載されるアミノ酸配列の、CDRL1とCDRL2とCDRL3とを含む、軽鎖可変領域;または
(C)(i)配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる、軽鎖可変領域
を含む、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片を含む、液体組成物を含むキット。
【請求項24】
使用説明書が、請求項1~20に記載のいずれかの方法または請求項21~22に記載のいずれかの使用のためのものである、請求項23に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表に関する陳述
本願に関連する配列表は、紙コピーの代わりにXMLフォーマットで提供され、これは、これにより参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むXMLファイルの名称は、930585_428WO_SequenceListing.xmlである。XMLファイルは、111,330バイトであり、2022年8月30日に作製され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0002】
背景
新規なベータコロナウイルスが、2019年末に中国の武漢において明らかになった。2021年6月9日現在、このウイルスによる感染のおよそ1億7400万の症例(他の名称の中でも、SARS-CoV-2および武漢コロナウイルスと称される)が世界中で確認され、およそ370万人の死亡がもたらされた。SARS-CoV-2感染およびCOVID-19を予防または処置するための治療法が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】
図1は、軽度から中等度のCOVID-19疾患の処置のための組換えモノクローナルIgG1抗体ソトロビマブ(本明細書では、例えば、S309 N55Q LSまたはVIR-7831とも呼ばれる)の成人臨床研究デザインを示す。
【0004】
【
図2A】
図2A~2Eは、軽度から中等度のCOVID-19疾患の処置のためのソトロビマブの成人臨床研究の事象のタイムラインを示す。
【
図2B】
図2A~2Eは、軽度から中等度のCOVID-19疾患の処置のためのソトロビマブの成人臨床研究の事象のタイムラインを示す。
【
図2C】
図2A~2Eは、軽度から中等度のCOVID-19疾患の処置のためのソトロビマブの成人臨床研究の事象のタイムラインを示す。
【
図2D】
図2A~2Eは、軽度から中等度のCOVID-19疾患の処置のためのソトロビマブの成人臨床研究の事象のタイムラインを示す。
【
図2E】
図2A~2Eは、軽度から中等度のCOVID-19疾患の処置のためのソトロビマブの成人臨床研究の事象のタイムラインを示す。
【0005】
【
図3】
図3は、重度~重篤COVID-19疾患の処置のためのソトロビマブの成人臨床研究の研究デザインを示す。
【0006】
【
図4】
図4は、COVID-19疾患の曝露後の予防のためのソトロビマブの成人臨床研究の研究デザインを示す。
【0007】
【
図5】
図5は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質上のソトロビマブの結合部位を示す。SARS-CoV-2受容体結合ドメインが示されており、ACE2受容体結合モチーフが緑色で、ソトロビマブエピトープが橙色で示されている。ACE2は、アンジオテンシン変換酵素2を示す。
【0008】
【
図6】
図6は、本明細書に記載されるソトロビマブを使用する成人臨床研究のデザインを示す。Rは、無作為化を示す。*患者を年齢(70歳以下対70歳超)、症状継続期間(3日以内対4~5日)、および領域により層別化した。† 盲検化を維持するために研究薬剤師が全ての研究対象薬を等しい時間枠内に再構成し、調剤した。
【0009】
【
図7】
図7は、ソトロビマブの成人臨床研究の治療企図(ITT)患者集団における患者の内訳を示す。
【0010】
【
図8】
図8は、ソトロビマブを使用する成人薬物動態(PK)臨床研究の導入期のデザインを示す。
【0011】
【
図9A】
図9Aは、成人臨床研究による単回注射後141日目のソトロビマブ血清濃度の均等目盛プロットである。
【0012】
【
図9B】
図9Bは、同じデータの半対数目盛プロットである。注記:定量下限(LLQ)=0.1μg/mL。臨床薬理学者により試料採取誤差と見なされる異常な濃度を除外する。データは、1時間の注入時間に基づく。
【0013】
【
図9C】
図9Cは、成人臨床研究による単回注射後169日目のソトロビマブ血清濃度の均等目盛プロットである。
【0014】
【
図9D】
図9Dは、同じデータの半対数目盛プロットである。注記:定量下限(LLQ)=0.1μg/mL。臨床薬理学者により試料採取誤差と見なされる異常な濃度を除外する。データは、1時間の注入時間に基づく。
【0015】
【
図10】
図10は、ソトロビマブの小児薬物動態臨床研究デザインを示す。
【0016】
【
図11A】
図11A~11Bは、2歳またはそれより高齢の患者についてのソトロビマブの小児薬物動態臨床研究の事象の代替タイムラインを示す。
【
図11B】
図11A~11Bは、2歳またはそれより高齢の患者についてのソトロビマブの小児薬物動態臨床研究の事象の代替タイムラインを示す。
【0017】
【
図11C】
図11C~11Dは、2歳未満の患者についてのソトロビマブの小児薬物動態臨床研究の事象の代替タイムラインを示す。
【
図11D】
図11C~11Dは、2歳未満の患者についてのソトロビマブの小児薬物動態臨床研究の事象の代替タイムラインを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
小児被験体におけるSARS-CoV-2感染を、例えば、COVID-19を発症した、または発症するリスクがある被験体において、抗体、抗原結合断片、またはそれを含む組成物を使用して処置または予防する方法が、本明細書で提供される。方法における使用のためのある特定の抗体および抗原結合断片は、in vitroおよびin vivoでSARS-CoV-2のS糖タンパク質に保存されたエピトープを認識し、SARS-CoV-2を強力に中和する。抗体の非限定的な例としては、S309、およびS309の操作されたバリアント(例えば、ソトロビマブ、VIR-7832)が挙げられる。一部の実施形態では、S309のバリアントは、VH領域にN55Q置換を含む。一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、例えば、抗体もしくは抗原結合断片のin vivo半減期を延長することができる、および/または抗体もしくは抗原結合断片のワクチン効果を促進することができる、1つまたは複数のアミノ酸変異を含む、Fcポリペプチドを含む。
【0019】
本開示の方法は、SARS-CoV-2に感染している被験体の処置ばかりでなく、SARS-CoV-2の感染または伝播を予防するための予防的投与も含む。SARS-CoV-2感染(例えば、COVID-19の原因となる)は、いずれの感染ステージであってもよく、および/またはあらゆる疾患ステージ、例えば、軽度、軽度から中等度、重度もしくは重篤につながり得る。例えば、さらに本明細書に記載されるように、本開示の抗体の単一用量は、軽度から中等度のCOVID-19に罹患している被験体の入院または死亡を低減するのに十分であり得る。
【0020】
抗体または抗原結合断片の投与は、例えば静脈内注射および筋肉内注射などの、任意の方法を使用して行うことができる。一部の状況では、抗体または抗原結合断片(またはそれを含む組成物)の単一用量が被験体に投与される。小児被験体は、本明細書において提供されるように、1つもしくは複数の基準に従って特徴付けられることがあり、および/または1つもしくは複数の特徴を有することができる。小児被験体におけるSARS-CoV-2感染(またはCOVID-19)を処置または予防する方法において、ならびに小児被験体におけるSARS-CoV-2感染の処置のために、それを処置するための、またはその予防のための医薬の調製において使用するための、抗体、抗原結合断片、および組成物も提供される。
【0021】
本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合断片を含むキット、または本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合断片を含有する組成物を含むキット、または本明細書に記載の抗体もしくは抗原結合断片を小児被験体に提供する本明細書に記載の核酸、宿主細胞もしくはベクターを含むキットも、提供される。本明細書に記載される方法における使用のためのキットも提供される。本開示をより詳細に記載する前に、本明細書で使用されるある特定の用語の定義を提供することはその理解を助け得る。追加の定義は、本開示全体を通して記載される。
【0022】
本明細書で使用される場合、「小児被験体」は、18歳未満であるヒト被験体を指す。ある特定の医学的基準は、小児被験体の場合、成人被験体のものと異なることがある。例えば、肥満の臨床的定義は、成人被験体と小児被験体とで異なる。成人被験体の文脈で本明細書に記載される医学的基準を、当業者は、適用可能な医療水準を使用して小児の文脈に適応させることができる。臨床研究では、小児被験体は、「小児参加者」と呼ばれることがある。本明細書での「小児(child)」または「小児(children)」への任意の言及が、小児被験体(pediatric subject)も指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「武漢コロナウイルス」、「武漢海鮮市場肺炎ウイルス」、または「武漢CoV」、「新型CoV」、または「nCoV」、または「2019 nCoV」、または「武漢nCoV」またはそのバリアントとも元来称される、「SARS-CoV-2」は、B系統のベータコロナウイルス(サルベコウイルス)である。SARS-CoV-2は、2019年末に中国、湖北省武漢において最初に同定され、2020年初めまでに中国内および世界の他の場所に広がった。SARS-CoV-2感染は、COVID-19として公知の疾患につながり得、COVID-19の症状としては、発熱または悪寒、乾性咳、呼吸困難、疲労、体の痛み、頭痛、新たな味覚または臭覚の消失、喉の痛み、鼻づまりまたは鼻水、悪心または嘔吐、下痢、持続的な胸の圧迫感または痛み、新たな錯乱、起きることまたは起きていることができないこと、および唇が紫色または顔面蒼白が挙げられる。
【0024】
これまでのところ、SARS-CoV-2による感染は、多くの場合、小児には軽度の疾患として現れている。武漢における感染児の20%もが無症状であり、35%ほどもの高レベルが報告されている。呈する場合、小児が経験する最も一般的な症状としては、発熱、軽度の咳、および咽頭炎が挙げられているが、喉の痛み、鼻閉、鼻漏、および下痢も認められている。およそ10%が、消化器症状を呈する。小児の他のウイルス性呼吸器疾患とは異なり、喘鳴は、めったに起こっていない。肺のCTスキャンは、ほとんどの場合、肺のCTスキャンによって周囲にすりガラス状の陰影がある硬化を明示している。
【0025】
SARS-CoV-2分離株Wuhan-Hu-1のゲノム配列は、GenBank MN908947.3(2020年1月23日)に提供され、ゲノムのアミノ酸翻訳は、GenBank QHD43416.1(2020年1月23日)に提供される。他のコロナウイルス(例えば、SARS CoV)と同様に、SARS-CoV-2は、受容体結合ドメイン(RBD)を含有する「スパイク」または表面(「S」)I型膜貫通糖タンパク質を含む。RBDは、細胞表面受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合することによって、系統BのSARSコロナウイルスの呼吸上皮細胞への侵入を媒介すると考えられる。特に、ウイルスのRBD中の受容体結合モチーフ(RBM)は、ACE2と相互作用すると考えられる。
【0026】
SARS-CoV-2 Wuhan-Hu-1表面糖タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号165で提供される。SARS-CoV-2武漢コロナウイルスRBDのアミノ酸配列は配列番号166で提供される。武漢コロナウイルスSタンパク質は、SARS-CoVとおよそ73%のアミノ酸配列同一性を有する。武漢コロナウイルスRBMのアミノ酸配列は、配列番号167で提供される。武漢コロナウイルスRBDは、SARSコロナウイルスRBDに対しておよそ75%~77%のアミノ酸配列類似性を有し、武漢コロナウイルスRBMは、SARSコロナウイルスRBMに対しておよそ50%のアミノ酸配列類似性を有する。
【0027】
本明細書で他に指示されない限り、SARS-CoV-2 Wu-Hu-1は、GenBank QHD43416.1、2020年1月23日または配列番号165および166のいずれか1つまたは複数に記載のアミノ酸配列を、必要に応じて、GenBank MN908947.3、2020年1月23日に記載のゲノム配列とともに含む、ウイルスを指す。
【0028】
いくつかのSARS-CoV-2バリアントが新たに出現している。一部のSARS-CoV-2バリアントは、N439K変異を含有し、これは、ヒトACE2受容体への結合親和性を増強する(Thomson, E.C., et al., The circulating SARS-CoV-2 spike variant N439K maintains fitness while evading antibody-mediated immunity. bioRxiv, 2020)。一部のSARS-CoV-2バリアントは、N501Y変異を含有し、これは、感染性の増加に関連し、系統B.1.1.7(20I/501Y.V1およびVOC 202012/01としても公知)およびB.1.351(20H/501Y.V2としても公知)を含み、これらは、それぞれ、英国および南アフリカで発見された(Tegally, H., et al., Emergence and rapid spread of a new severe acute respiratory syndrome-related coronavirus 2 (SARS-CoV-2) lineage with multiple spike mutations in South Africa. medRxiv, 2020: p. 2020.12.21.20248640;Leung, K., et al., Early empirical assessment of the N501Y mutant strains of SARS-CoV-2 in the United Kingdom, October to November 2020. medRxiv, 2020: p. 2020.12.20.20248581)。B.1.351はまた、SARS-CoV2スパイクタンパク質のRBDドメインに2つの他の変異、K417NおよびE484Kを含む(Tegally, H., et al., Emergence and rapid spread of a new severe acute respiratory syndrome-related coronavirus 2 (SARS-CoV-2) lineage with multiple spike mutations in South Africa. medRxiv, 2020: p. 2020.12.21.20248640)。
【0029】
系統B.1.617.2(デルタバリアントとしても公知)は、複数のスパイクタンパク質変異:T19R、Δ157-158、L452R、T478K、D614G、P681R、およびD950Nを含有する。特に懸念されるP681R変異は、系統B.1.617.2のより高度なウイルス負荷量および伝播の増加と関連しているようである。(Bernal JL, Andrews N, Gower C, et al. Effectiveness of COVID-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant. N Engl J Med. 385:585-594 (2021))。現行のワクチンは、この系統に対して依然として有効であるが、承認されたワクチン接種年齢より低年齢の小児患者における感染があるので、ワクチンのブレークスルーが懸念事項である。
【0030】
他のSARS-CoV-2バリアントとしては、最初にブラジルで報告された系統B.1.1.28;最初に日本で報告されたバリアントP.1、系統B.1.1.28(20J/501Y.V3としても公知);最初に米国のカリフォルニア州で報告されたバリアントL452R(Pan American Health Organization, Epidemiological update: Occurrence of variants of SARS-CoV-2 in the Americas, January 20, 2021, https://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/2021-jan-20-phe-epi-update-SARS-CoV-2.pdfで利用可能)が挙げられる。他のSARS-CoV-2バリアントとしては、系統群19AのSARS CoV-2;系統群19BのSARS CoV-2;系統群20AのSARS CoV-2;系統群20BのSARS CoV-2;系統群20CのSARS CoV-2;系統群20DのSARS CoV-2;系統群20EのSARS CoV-2(EU1);系統群20FのSARS CoV-2;系統群20GのSARS CoV-2;およびSARS CoV-2 B1.1.207;ならびにRambaut, A., et al., A dynamic nomenclature proposal for SARS-CoV-2 lineages to assist genomic epidemiology. Nat Microbiol 5, 1403-1407 (2020)に記載される他のSARS CoV-2系統が挙げられる。
【0031】
本開示によるSARS-CoV-2感染は、上述のSARS-CoV-2ウイルスおよびそれらのバリアントのうちのいずれか1つまたは複数による感染を含む。
【0032】
「多系統炎症性症候群」または「MIS-C」、MIS-C(COVID-19に続発する小児多系統炎症性症候群、略してPIMS-TSまたはPIMS、としても公知)、は、小児に認められるSARS-CoV-2感染の(現在のところ)稀な合併症を意味し、最近、成人において同様の症例、成人多系統炎症性症候群(MIS A)が認められた。MIS Cは、症状が川崎病(KD)または毒素性ショック症候群(TSS)に似ており、2つまたはそれより多くの複数の臓器系(心臓系、腎臓系、呼吸器系、血液系、消化器系、皮膚系、または神経系)を侵す重度自己炎症性障害を特徴とする。
【0033】
2021年5月3日の時点で、アメリカ疾病管理予防センターは、症例定義に合致する3742件のMIS-C症例が、症例定義に合致する35件の死亡とともに報告されていることを報告した。MIS-Cに罹患した小児の年齢の中央値は、9歳であり、症例の半数は、5~13歳の間の小児に起こった。その上、症例は、不釣り合いなほどヒスパニック系またはラテンアメリカ系または非ヒスパニック系黒人のもの(63%)であった。肥満は、最もよく報告される併存疾患であり、全研究における症例の少なくとも60%は、ICU入院を必要とした。
【0034】
この状態を呈する小児の大多数は、もはやPCRによって検出可能なウイルスを有さないので、この状態は、ほとんどの場合、SARS-CoV-2血清学の使用によって診断される。これは、MIS-Cの症状が一般にSARS-CoV-2感染後3~4週間の間に見つかるという報告と一致している。それは、この3~4週間の時間差が獲得免疫のタイミングと一致すること、およびMIS-Cが、病原性自己抗体の形成により引き起こされると考えられる感染後合併症に相当する可能性が高いことを示唆していた。
【0035】
本明細書では、任意の濃度範囲、パーセンテージの範囲、比の範囲、または整数の範囲は、他に指示されない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合には、その分数(整数の10分の1、および100分の1など)を含むことが理解されるべきである。また、ポリマーサブユニット、サイズ、または厚さなどの任意の物理的特徴に関して本明細書に列挙される任意の数の範囲は、他に指示されない限り、列挙された範囲内の任意の整数を含むことが理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、他に指示されない限り、示された範囲、値、または構造の±20%を意味する。「a」および「an」という用語は、本明細書で使用される場合、数え上げられている構成成分の「1つまたは複数」を指すことが理解されるべきである。代替物(例えば、「または」)の使用は、代替物のいずれか1つ、その両方、またはこれらの任意の組み合わせを意味することが理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「含む(include)」、「有する」、および「含む(comprise)」という用語は、同意語として使用され、これらの用語およびその変形は、非限定的と解釈されることが意図される。
【0036】
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、それに続いて記載される要素、構成成分、事象、または状況が存在してもよく、または存在しなくてもよいこと、ならびにその記載が、その要素、構成成分、事象、または状況が存在する例、およびそれらが存在しない例を含むことを意味する。
【0037】
加えて、本明細書に記載される構造およびサブユニットのさまざまな組み合わせに由来する個々の構築物または構築物の群が、各構築物または構築物の群が個々に記載されたのと同じ程度に、本出願により開示されることが理解されるべきである。そのため、特定の構造または特定のサブユニットの選択は、本開示の範囲内である。
【0038】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、「含む(comprising)」と等価ではなく、特許請求の範囲の指定される材料もしくはステップ、または特許請求の範囲に記載された主題の基本的な特徴に実質的に影響を及ぼさないものを指す。例えば、タンパク質ドメイン、領域、またはモジュール(例えば、結合ドメイン)、またはタンパク質は、ドメイン、領域、モジュール、またはタンパク質のアミノ酸配列が、組み合わせて、ドメイン、領域、モジュール、またはタンパク質の長さの多くて20%(例えば、多くて15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%または1%)に寄与し、ドメイン(複数可)、領域(複数可)、モジュール(複数可)、またはタンパク質の活性(例えば、結合タンパク質の標的結合親和性)に実質的に影響を及ぼさない(すなわち、活性を、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または1%以下など、50%よりも大きくは低減しない)、伸長、欠失、変異、またはこれらの組み合わせ(例えば、アミノもしくはカルボキシ末端の、またはドメイン間のアミノ酸)を含む場合、特定のアミノ酸配列「から本質的になる(consist essentially of)」。
【0039】
「処置する」、「処置」、または「回復させる」は、被験体(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、霊長類、ウマ、ネコ、イヌ、ヤギ、マウスもしくはラット)の疾患、障害または状態の医学的管理を指す。一般に、本開示の抗体、抗原結合断片または組成物を含む適切な用量または処置レジメンは、治療上または予防上の利益を引き出すのに十分な量で投与される。治療上または予防上の/予防的な利益は、例えば、臨床アウトカムの改善;疾患に関連する症状の軽減もしくは緩和;症状の発生の減少;生活の質の向上;より長い無病状態;疾患の程度の減少、病態の安定化;疾患進行の遅延もしくは予防;寛解;生存;生存期間の延長;またはこれらの任意の組合せを含む。ある特定の実施形態では、治療上または予防上の/予防的な利益は、SARS-CoV-2感染またはCOVID-19の処置のための入院の低減または防止を含む(すなわち、統計的に有意な形で)。ある特定の実施形態では、治療上または予防上の/予防的な利益は、SARS-CoV-2感染またはCOVID-19の処置のための入院期間の短縮を含む(すなわち、統計的に有意な形で)。ある特定の実施形態では、治療上または予防上の/予防的な利益は、挿管、および/または人工呼吸器デバイスの使用などの、呼吸介入の必要性の低減または抑制を含む。ある特定の実施形態では、治療上または予防上の/予防的な利益は、後期疾患病状を好転させること、および/または死亡率を低下させることを含む。ある特定の実施形態では、治療上および/または予防上の利益は、例えば、被験体からの呼吸器試料(肺組織、鼻腔スワブ、痰など)における、ウイルス負荷量および/またはウイルス排出の低減を含む。ある特定の実施形態では、治療上および/または予防上の利益は、例えば、本明細書に記載される軽度から中等度から重度への、または重度から重篤への、COVID-19の進行を予防することを含む。ある特定の実施形態では、治療上および/または予防上の利益は、例えば、症候性であることもあり、または無症候性であることもある、SARS-CoV-2感染の罹患および/または伝播を予防することを含む。
【0040】
本開示の抗体、抗原結合断片または組成物の「治療有効量」または「有効量」は、統計的に有意な形での、臨床転帰の改善;疾患に関連する症状の軽減もしくは緩和;症状の発生の減少;生活の質の向上;より長い無病状態;疾患の程度の減少、病態の安定化;疾患進行の遅延;寛解;生存;または生存期間の延長を含む、治療効果をもたらすのに十分な、組成物または分子の量を指す。単独で投与される個々の活性成分に言及する場合、治療有効量は、その成分の効果、または単独でその成分を発現する細胞の効果を指す。組合せに言及する場合、治療有効量は、連続的に投与されるのか、逐次的に投与されるのか、同時に投与されるのかを問わず、治療効果をもたらす、活性成分の合わせた量、または活性成分を発現する細胞と組み合わせた補助活性成分の合わせた量を指す。組合せは、例えば、SARS-CoV-2抗原に特異的に結合する2つの異なる抗体を含み得、このSARS-CoV-2抗原は、ある特定の実施形態では、同じもしくは異なるSARS-CoV-2抗原であり得、および/または同じもしくは異なるエピトープを含み得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸ミメティックを指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝コードによってコードされるもの、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているα-炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのようなアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸ミメティックは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能する化合物を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「変異」は、それぞれ、参照または野生型核酸分子またはポリペプチド分子と比較して、核酸分子またはポリペプチド分子の配列における変化を指す。変異は、ヌクレオチド(複数可)またはアミノ酸(複数可)の置換、挿入または欠失を含む、いくつかの異なる種類の配列の変化をもたらし得る。
【0043】
「保存的置換」は、特定のタンパク質の結合特徴に有意に影響を及ぼさないか、またはそれを有意に変更しない、アミノ酸置換を指す。一般に、保存的置換は、置換されたアミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。保存的置換は、以下の群の1つにおいて見出される置換を含む:群1:アラニン(AlaまたはA)、グリシン(GlyまたはG)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT);群2:アスパラギン酸(AspまたはD)、グルタミン酸(GluまたはZ);群3:アスパラギン(AsnまたはN)、グルタミン(GlnまたはQ);群4:アルギニン(ArgまたはR)、リシン(LysまたはK)、ヒスチジン(HisまたはH);群5:イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、メチオニン(MetまたはM)、バリン(ValまたはV);および群6:フェニルアラニン(PheまたはF)、チロシン(TyrまたはY)、トリプトファン(TrpまたはW)。加えて、または代わりに、アミノ酸は、類似の機能、化学構造、または組成(例えば、酸性、塩基性、脂肪族、芳香族、または硫黄含有)によって保存的置換の群に分類することができる。例えば、脂肪族の分類は、置換の目的について、Gly、Ala、Val、Leu、およびIleを含み得る。他の保存的置換群としては、硫黄含有:Metおよびシステイン(CysまたはC);酸性:Asp、Glu、Asn、およびGln;小さな脂肪族の、非極性の、またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro、およびGly;極性の、負に荷電した残基、およびそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、およびGln;極性の、正に荷電した残基:His、Arg、およびLys;大きな脂肪族の、非極性の残基:Met、Leu、Ile、Val、およびCys;ならびに大きな芳香族の残基:Phe、Tyr、およびTrpが挙げられる。追加の情報は、Creighton
(1984) Proteins, W.H. Freeman and Companyに見出すことができる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」または「ポリペプチド」は、アミノ酸残基のポリマーを指す。タンパク質は、天然に存在するアミノ酸ポリマー、ならびに1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸のポリマーの人工的な化学ミメティックであるアミノ酸ポリマーに適用される。本開示のタンパク質、ペプチド、およびポリペプチドのバリアントも企図される。ある特定の実施形態では、バリアントのタンパク質、ペプチド、およびポリペプチドは、本明細書に記載される定義されたアミノ酸配列または参照アミノ酸配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%同一であるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる。
【0045】
「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」または「ポリ核酸」は、共有結合的に連結したヌクレオチドを含むポリマー化合物を指し、これは、天然のサブユニット(例えば、プリンまたはピリミジン塩基)または非天然サブユニット(例えば、モルホリン環)で構成され得る。プリン塩基としては、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、およびキサンチンが挙げられ、ピリミジン塩基としては、ウラシル、チミン、およびシトシンが挙げられる。核酸分子は、mRNA、マイクロRNA、siRNA、ウイルスゲノムRNA、および合成RNAを含むポリリボ核酸(RNA)、ならびにcDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含むポリデオキシリボ核酸(DNA)を含み、これらはいずれも一本鎖または二本鎖であり得る。一本鎖の場合、核酸分子は、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であり得る。アミノ酸配列をコードする核酸分子は、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列の一部のバージョンは、イントロン(複数可)が共転写のまたは転写後の機構により除去されるであろう程度にイントロン(複数可)も含み得る。言い換えれば、異なるヌクレオチド配列は、遺伝コードの重複性もしくは縮重の結果として、またはスプライシングにより、同じアミノ酸配列をコードし得る。
【0046】
本開示の核酸分子のバリアントも企図される。バリアント核酸分子は、本明細書に記載される定義されたまたは参照ポリヌクレオチドの核酸分子と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%同一であり、好ましくは、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%同一であり、あるいは、これは、0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム、約65~68℃の、または0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム、および50%ホルムアミド、約42℃のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でポリヌクレオチドにハイブリダイズする。核酸分子バリアントは、標的分子の結合などの本明細書に記載される機能性を有するその結合ドメインをコードする能力を保持する。
【0047】
「配列同一性パーセント」は、配列を比較することによって決定される、2つまたはそれより多くの配列間の関係を指す。配列同一性を決定するための好ましい方法は、比較される配列間の最良の一致を与えるように設計される。例えば、最適な比較の目的で、配列を整列させる(例えば、最適な整列のために、第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができる)。さらに、非相同配列は、比較の目的で、無視してもよい。本明細書において言及される配列同一性パーセントは、他に指示されない限り、参照配列の長さにわたって算出される。配列同一性および類似性を決定する方法は、公に利用可能なコンピュータープログラムに見出すことができる。配列の整列および同一性パーセントの算出は、BLASTプログラム(例えば、BLAST 2.0、BLASTP、BLASTN、またはBLASTX)を使用して行ってもよい。BLASTプログラムにおいて使用される数学アルゴリズムは、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997に見出すことができる。本開示の文脈内では、配列解析ソフトウェアを解析のために使用する場合、解析の結果は、言及されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことが理解される。「デフォルト値」は、最初に初期化された場合にソフトウェアに元々ロードされた任意の値またはパラメーターのセットを意味するが、低複雑度領域に関連してフィルタリングを使用することができない場合がある。
【0048】
「単離された」という用語は、材料が、その元々の環境(例えば、それが天然に存在する場合、天然の環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生きている動物中に存在する天然に存在する核酸またはポリペプチドは、単離されていないが、同じ核酸またはポリペプチドが、天然の系中で共存している材料の一部または全部から分離されている場合、単離されている。そのような核酸は、ベクターの部分であり得、かつ/あるいは、そのような核酸またはポリペプチドは、組成物(例えば、細胞溶解物)の部分であり得、それでもなお、そのようなベクターまたは組成物が核酸またはポリペプチドについて天然の環境の一部ではないという点で、単離されている。
【0049】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAまたはRNAのセグメントを意味し、ある特定の文脈では、これは、コード領域の前後の領域(例えば、5’非翻訳領域(UTR)および3’UTR)、ならびに個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)を含む。
【0050】
「機能的バリアント」は、本開示の親化合物または参照化合物と構造的に類似しているか、または実質的に構造的に類似しているが、組成がわずかに異なる(例えば、1つの塩基、原子または官能基が異なる、付加されている、または除去されている)ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指し、その結果、ポリペプチドまたはコードされるポリペプチドは、親ポリペプチドの少なくとも1つの機能を、少なくとも50%の効率(すなわち、親ポリペプチドの活性レベル)で、好ましくは、少なくとも55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%の効率で行うことができる。言い換えれば、本開示のポリペプチドまたはコードされるポリペプチドの機能的バリアントは、結合親和性を測定するためのアッセイ(例えば、Biacore(商標)(Cytiva)または会合定数(Ka)または解離定数(KD)を測定する四量体染色)などの選択されたアッセイにおいて、親化合物または参照ポリペプチドと比較して、機能的バリアントが性能の50%以下の低減を示す場合、「類似の結合性」、「類似の親和性」、または「類似の活性」を有する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「機能的部分」または「機能的断片」は、親化合物または参照化合物のドメイン、部分または断片のみを含むポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指し、ポリペプチドまたはコードされるポリペプチドは、親化合物または参照化合物のドメイン、部分または断片に関連する少なくとも50%の効率(すなわち、親ポリペプチドの活性レベル)、好ましくは、親ポリペプチドの活性の少なくとも55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%の効率を保持するか、あるいは生物学的利益(例えば、エフェクター機能)を提供する。本開示のポリペプチドまたはコードされるポリペプチドの「機能的部分」または「機能的断片」は、選択されたアッセイにおいて、親ポリペプチドまたは参照ポリペプチドと比較して、機能的部分または断片が、50%以下(好ましくは、20%以下または10%以下、あるいは親和性に関して、親または参照と比較して対数差以下)の性能の低減を示す場合、「類似の結合性」または「類似の活性」を有する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「操作された」、「組換え」、または「非天然」という用語は、少なくとも1つの遺伝的変更を含むか、あるいは外因性または異種核酸分子の導入によって改変された、生物体、微生物、細胞、核酸分子、またはベクターを指し、そのような変更または改変は、遺伝子操作(すなわち、人為的な介入)によって導入される。遺伝的変更としては、例えば、機能的RNA、タンパク質、融合タンパク質または酵素をコードする発現可能な核酸分子を導入する改変、あるいは他の核酸分子の付加、欠失、置換、または細胞の遺伝子材料の他の機能的破壊が挙げられる。追加の改変には、例えば、改変がポリヌクレオチド、遺伝子、またはオペロンの発現を変更する、非コード調節領域を含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、「異種」、または「非内因性」、または「外因性」は、宿主細胞または被験体に対してネイティブではない任意の遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子、または活性、あるいは、宿主細胞または被験体に対してネイティブであるが変更されている任意の遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子、または活性を指す。異種、非内因性、または外因性としては、ネイティブなおよび変更された遺伝子、タンパク質、化合物、または核酸分子の間で構造、活性、またはその両方が異なるように変異しているか、またはそうでなければ変更されている、遺伝子、タンパク質、化合物、または核酸分子が挙げられる。ある特定の実施形態では、異種、非内因性、または外因性の遺伝子、タンパク質、または核酸分子(例えば、受容体、リガンドなど)は、宿主細胞または被験体に対して内因性でなくてもよいが、代わりに、そのような遺伝子、タンパク質、または核酸分子をコードする核酸が、コンジュゲーション、形質転換、トランスフェクション、電気穿孔などによって宿主細胞に付加されていてもよく、ここで、付加された核酸分子は、宿主細胞のゲノムに組み込まれていてもよく、または染色体外遺伝子材料として(例えば、プラスミド、または他の自己複製性ベクターとして)存在することができる。「相同な」または「ホモログ」という用語は、宿主細胞、種、または株において見出されるか、またはそれに由来する、遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子、または活性を指す。例えば、ポリペプチドをコードする異種または外因性のポリヌクレオチドまたは遺伝子は、ネイティブなポリヌクレオチドまたは遺伝子と相同であってもよく、相同なポリペプチドまたは活性をコードするが、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、変更された構造、配列、発現レベル、またはこれらの任意の組み合わせを有していてもよい。非内因性のポリヌクレオチドまたは遺伝子、ならびにコードされるポリペプチドまたは活性は、同じ種、異なる種、またはこれらの組み合わせ由来であってもよい。
【0054】
ある特定の実施形態では、変更されているか、または変異している場合、宿主細胞に対してネイティブな核酸分子またはその部分は、宿主細胞に対して異種とみなされ、あるいは、異種発現制御配列を用いて変更されているか、または宿主細胞に対してネイティブな核酸分子に通常は関連しない内因性発現制御配列を用いて変更されている場合、宿主細胞に対してネイティブな核酸分子は、異種とみなされてもよい。加えて、「異種」という用語は、宿主細胞に対して異なる、変更された、または内因性ではない、生物活性を指し得る。本明細書に記載されるように、1つより多くの異種核酸分子は、別々の核酸分子として、複数の個々に制御される遺伝子として、ポリシストロニックな核酸分子として、融合タンパク質をコードする単一の核酸分子として、またはこれらの任意の組み合わせで、宿主細胞に導入することができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「内因性」または「ネイティブ」という用語は、宿主細胞または被験体に通常存在する、ポリヌクレオチド、遺伝子、タンパク質、化合物、分子、または活性を指す。
【0056】
「発現」という用語は、本明細書で使用される場合、遺伝子などの核酸分子のコード配列に基づいてポリペプチドが産生されるプロセスを指す。プロセスは、転写、転写後制御、転写後修飾、翻訳、翻訳後制御、翻訳後修飾、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。発現される核酸分子は、典型的には、発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結されている。
【0057】
「作動可能に連結される」という用語は、一方の機能が他方によって影響を受けるような、単一の核酸断片上の2つまたはそれより多くの核酸分子の会合を指す。例えば、プロモーターは、コード配列の発現に影響を及ぼすことができる場合、コード配列と作動可能に連結されている(すなわち、コード配列は、プロモーターの転写制御下にある)。「連結されていない」とは、関連する遺伝エレメントが互いに密接に関連せず、一方の機能が他方に影響を及ぼさないことを意味する。
【0058】
本明細書に記載されるように、1つより多くの異種核酸分子は、別々の核酸分子として、複数の個々に制御される遺伝子として、ポリシストロニックな核酸分子として、タンパク質(例えば、抗体の重鎖)をコードする単一の核酸分子として、またはこれらの任意の組み合わせで、宿主細胞に導入することができる。2つまたはそれより多くの異種核酸分子が宿主細胞に導入される場合、2つまたはそれより多くの異種核酸分子を、単一の核酸分子として(例えば、単一のベクターにおいて)、別々のベクターにおいて、宿主染色体の単一の部位または複数の部位に組み込んで、あるいはこれらの任意の組み合わせで導入することができることが理解される。言及される異種核酸分子、またはタンパク質活性の数は、宿主細胞に導入される別々の核酸分子の数ではなく、コードする核酸分子の数またはタンパク質活性の数を指す。
【0059】
「構築物」という用語は、組換え核酸分子(または、文脈が明確に指示する場合、本開示の融合タンパク質)を含有する任意のポリヌクレオチドを指す。(ポリヌクレオチド)構築物は、ベクター(例えば、細菌ベクター、ウイルスベクター)中に存在していてもよく、またはゲノムに組み込まれていてもよい。「ベクター」は、別の核酸分子を輸送できる核酸分子である。ベクターは、例えば、染色体、非染色体、半合成または合成核酸分子を含み得る、プラスミド、コスミド、ウイルス、RNAベクター、あるいは直鎖状または環状のDNAまたはRNA分子であり得る。本開示のベクターは、トランスポゾン系も含む(例えば、Sleeping Beauty、例えば、Geurts et al., Mol. Ther. 8:108, 2003: Mates et al., Nat. Genet. 41:753, 2009を参照されたい)。例示的なベクターは、自律複製できるベクター(エピソームベクター)、ポリヌクレオチドを細胞ゲノムに送達できるベクター(例えば、ウイルスベクター)、または連結された核酸分子を発現させることができるベクター(発現ベクター)である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」または「ベクター」は、適切な宿主における核酸分子の発現をもたらすことができる適切な制御配列に作動可能に連結されている核酸分子を含有するDNA構築物を指す。そのような制御配列は、転写をもたらすためのプロモーター、そのような転写を制御するための必要に応じたオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終結を制御する配列を含む。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、ウイルス、または単なる潜在的なゲノム挿入物であってもよい。適切な宿主に形質転換されたら、ベクターは、宿主ゲノムとは独立して複製および機能し得、あるいは、一部の例では、ゲノムにそれ自体が組みむか、またはベクターに含有されるポリヌクレオチドをベクター配列なしでゲノムに送達することができる。本明細書では、「プラスミド」、「発現プラスミド」、「ウイルス」、および「ベクター」は、多くの場合、互換的に使用される。
【0061】
核酸分子を細胞に挿入する文脈における「導入される」という用語は、「トランスフェクション」、「形質転換」、または「形質導入」を意味し、核酸分子の真核細胞または原核細胞への組込みへの言及を含み、ここで、核酸分子は、細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、色素体、またはミトコンドリアDNA)に組み込まれ得るか、自律的なレプリコンに変換され得るか、または一過的に発現され得る(例えば、トランスフェクトされたmRNA)。
【0062】
ある特定の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、ベクターのある特定のエレメントに機能的に連結されていてもよい。例えば、ライゲーションされるコード配列の発現およびプロセシングをもたらすのに必要なポリヌクレオチド配列が、機能的に連結されていてもよい。発現制御配列は、妥当な転写開始、終結、プロモーター、およびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;ならびに場合により、タンパク質分泌を増強する配列を含んでいてもよい。発現制御配列は、それらが、目的の遺伝子と、トランスにまたは目的の遺伝子が制御される距離で作用する発現制御配列とが近接する場合、機能的に連結され得る。
【0063】
ある特定の実施形態では、ベクターは、プラスミドベクター、またはウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター、またはγ-レトロウイルスベクター)を含む。ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)などのマイナス鎖RNAウイルス、ピコルナウイルスおよびアルファウイルスなどのプラス鎖RNAウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタインバーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘、およびカナリアポックス)を含む二本鎖DNAウイルスが挙げられる。他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血症肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、およびスプーマウイルスが挙げられる(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields et al., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
【0064】
「レトロウイルス」は、RNAゲノムを有するウイルスであり、これは、逆転写酵素を使用してDNAに逆転写され、次いで、逆転写されたDNAは、宿主細胞のゲノムに組み込まれる。「ガンマレトロウイルス」は、レトロウイルス科の属を指す。ガンマレトロウイルスの例としては、マウス幹細胞ウイルス、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、およびトリ細網内皮症ウイルスが挙げられる。
【0065】
「レンチウイルスベクター」は、遺伝子送達のためのHIVに基づくレンチウイルスベクターを含み、これは、組込みまたは非組込みであり得、比較的大きなパッケージング容量を有し、異なる細胞型の範囲に形質導入することができる。レンチウイルスベクターは、通常、3つ(パッケージング、エンベロープ、および移入)またはそれより多くのプラスミドの産生細胞への一過性トランスフェクション後に生成される。HIVと同様に、レンチウイルスベクターは、標的細胞に、ウイルス表面糖タンパク質と細胞表面上の受容体との相互作用により侵入する。侵入したら、ウイルスRNAは、ウイルス逆転写酵素複合体によって媒介される逆転写を受ける。逆転写の産物は、二本鎖直鎖状ウイルスDNAであり、これは、感染細胞のDNAへのウイルス組込みのための基質である。
【0066】
ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、ガンマレトロウイルス、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)由来ベクターであり得る。他の実施形態では、ウイルスベクターは、より複雑なレトロウイルス由来ベクター、例えば、レンチウイルス由来ベクターであり得る。HIV-1由来ベクターは、このカテゴリーに属する。他の例としては、HIV-2、FIV、ウマ伝染性貧血ウイルス、SIV、およびマエディビスナウイルス(ヒツジレンチウイルス)に由来するレンチウイルスベクターが挙げられる。導入遺伝子を含有するウイルス粒子を用いて哺乳動物宿主細胞を形質導入するために、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクター、ならびにパッケージング細胞を使用する方法は当技術分野において公知であり、以前に、例えば、米国特許第8,119,772号;Walchli et al., PLoS One 6:327930, 2011;Zhao et al., J. Immunol. 174:4415, 2005;Engels et al., Hum. Gene Ther. 14:1155, 2003;Frecha et al., Mol. Ther. 18:1748, 2010;およびVerhoeyen et al., Methods Mol. Biol. 506:97, 2009に記載されている。レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターの構築物および発現系も市販されている。他のウイルスベクターはまた、ポリヌクレオチド送達のために使用することができ、例えば、アデノウイルスに基づくベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくベクターを含むDNAウイルスベクター;アンプリコンベクター、複製欠損HSVおよび弱毒化HSVを含む単純ヘルペスウイルス(HSV)に由来するベクターを含む(Krisky et al., Gene Ther. 5:1517, 1998)。
【0067】
本開示の組成物および方法とともに使用することができる他のベクターとしては、バキュロウイルスおよびα-ウイルスに由来するベクター(Jolly, D J. 1999. Emerging Viral Vectors. pp 209-40 in Friedmann T. ed. The Development of Human Gene Therapy. New York: Cold Spring Harbor Lab)、またはプラスミドベクター(Sleeping Beauty、または他のトランスポゾンベクターなど)が挙げられる。
【0068】
ウイルスベクターゲノムが、宿主細胞において発現される複数のポリヌクレオチドを別々の転写物として含む場合、ウイルスベクターはまた、バイシストロン性または多シストロン性発現を可能にする2つ(またはそれより多くの)転写物の間に追加の配列を含んでいてもよい。ウイルスベクターにおいて使用されるそのような配列の例としては、配列内リボソーム侵入部位(IRES)、フューリン切断部位、ウイルス2Aペプチド、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0069】
被験体への直接投与のためのDNAに基づく抗体または抗原結合断片をコードするプラスミドベクターを含め、プラスミドベクターは、本明細書でさらに記載される。
【0070】
本明細書で使用される場合、「宿主」という用語は、目的のポリペプチド(例えば、本開示の抗体)を産生する異種核酸分子による遺伝子改変のために標的にされる細胞または微生物を指す。
【0071】
宿主細胞は、ベクター、または核酸の組込みを受け入れ得るか、あるいはタンパク質を発現し得る、任意の個々の細胞または細胞培養物を含み得る。この用語は、遺伝学的にまたは表現型的に同じまたは異なるかにかかわらず、宿主細胞の子孫も包含する。適切な宿主細胞は、ベクターに依存してもよく、哺乳動物細胞、動物細胞、ヒト細胞、サル細胞、昆虫細胞、酵母細胞、および細菌細胞が挙げられ得る。これらの細胞は、ウイルスベクター、リン酸カルシウム沈殿による形質転換、DEAE-デキストラン、電気穿孔、マイクロインジェクション、または他の方法の使用により、ベクターまたは他の材料を組み込むように誘導されてもよい。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2d ed. (Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)を参照されたい。
【0072】
SARS-CoV-2感染の文脈では、「宿主」は、SARS-CoV-2に感染した細胞または被験体を指す。
【0073】
「抗原」または「Ag」は、本明細書で使用される場合、免疫応答を起こさせる免疫原性分子を指す。この免疫応答は、抗体産生、特定の免疫適格細胞の活性化、補体の活性化、抗体依存性細胞傷害、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。抗原(免疫原性分子)は、例えば、ペプチド、グリコペプチド、ポリペプチド、グリコポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質などであり得る。抗原が、合成され得るか、組換的に生成し得るか、または生体試料に由来し得ることは、容易に明らかである。1つまたは複数の抗原を含有し得る例示的な生体試料としては、組織試料、糞便試料、細胞、生体液、またはこれらの組み合わせが挙げられる。抗原は、抗原を発現するように改変または遺伝子操作されている細胞によって産生され得る。抗原はまた、SARS-CoV-2(例えば、表面糖タンパク質、またはその部分)に存在することができ、例えば、ビリオン中に存在することができ、あるいはSARS-CoV-2に感染した細胞の表面上で発現または提示され得る。
【0074】
「エピトープ」または「抗原エピトープ」という用語は、免疫グロブリン、または他の結合分子、ドメイン、またはタンパク質などの同族の結合分子によって認識され、および特異的に結合する、任意の分子、構造、アミノ酸配列、またはタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、一般に、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面の基を含有し、特定の三次元構造の特徴ならびに特定の電荷特徴を有することができる。抗原が、ペプチドまたはタンパク質であるか、またはこれを含む場合、エピトープは、連続したアミノ酸で構成され得るか(例えば、直鎖状エピトープ)、あるいはタンパク質フォールディングによって近接するタンパク質の異なる部分または領域由来のアミノ酸で構成され得るか(例えば、不連続エピトープもしくはコンフォメーションエピトープ)、またはタンパク質フォールディングとは無関係に極めて近接する非連続アミノ酸で構成され得る。
【0075】
抗体、抗原結合断片、および組成物
ある特定の本開示の方法および使用は、CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含み、SARS-CoV-2の表面糖タンパク質(例えば、宿主細胞の細胞表面上および/またはSARS-CoV-2ビリオン上に発現されるような)に結合できる、抗体またはその抗原結合断片を、被験体に投与することを含む。
【0076】
本明細書にさらに記載される、ある特定の好ましい実施形態では、方法に使用される抗体またはその抗原結合断片は、配列番号106、121、108、169、170、および171にそれぞれ記載される、または配列番号106、107、108、169、170、および171にそれぞれ記載される、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3アミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、方法に使用される抗体またはその抗原結合断片は、配列番号113または105に記載されるVHアミノ酸配列、および配列番号168に記載されるVLアミノ酸配列を含む。
【0077】
ある特定の実施形態では、方法において使用される抗体または抗原結合断片は、SARS-CoV-2の表面糖タンパク質のエピトープ、またはエピトープを含む抗原に会合するか、またはそれと合体する一方で、試料中の任意の他の分子または構成成分と有意に会合も合体もしない。
【0078】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、SARS-CoV-2の表面糖タンパク質のエピトープに会合または合体し(例えば、結合する)、試料中に存在する別のコロナウイルス(例えば、SARS CoV)由来のエピトープにも会合または合体することができるが、試料中の任意の他の分子または構成成分に有意に会合も合体もしない。言い換えれば、ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、SARS-CoV-2、および1つまたは複数の追加のコロナウイルスに対して交差反応性である。
【0079】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、SARS-CoV-2の表面糖タンパク質に特異的に結合する。本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」は、試料中の任意の他の分子または構成成分と有意に会合も合体もしないが、105M-1(この会合反応のオンレート[Kon]のオフレート[Koff]に対する比と等しい)と等しいまたはそれより大きい親和性またはKa(すなわち、単位1/Mの特定の結合相互作用の平衡会合定数)での抗体または抗原結合断片の抗原への会合または合体を指す。あるいは、親和性は、単位Mの特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)として定義され得る(例えば、10-5M~10-13M)。
【0080】
特定の標的に結合する本開示の抗体を同定するため、および結合ドメインまたは結合タンパク質の親和性を決定するための種々のアッセイ、例えば、ウェスタンブロット、ELISA(例えば、直接、間接、またはサンドイッチ)、分析超遠心、分光法、および表面プラズモン共鳴(Biacore(商標))分析が公知である(例えば、Scatchard et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660, 1949;Wilson, Science 295:2103, 2002;Wolff et al., Cancer Res. 53:2560, 1993;および米国特許第5,283,173号、同第5,468,614号、または等価物を参照されたい)。親和性、または見かけの親和性、または相対的な親和性を評価するためのアッセイも公知である。
【0081】
結合は、例えば、宿主細胞においてSARS-CoV-2抗原を組換えで発現させること(例えば、トランスフェクションにより)、および抗体で宿主細胞を免疫染色すること(例えば、固定する、または固定および透過処理する)、およびフローサイトメトリー(例えば、ZE5 Cell Analyzer(BioRad(登録商標))およびFlowJoソフトウェア(TreeStar)を使用する)によって結合を分析することによって、決定することができる。一部の実施形態では、正の結合は、対照(例えば、偽)細胞に対するSARS-CoV-2発現細胞の抗体による分染によって定義することができる。
【0082】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、SARS-CoV-2による感染を中和できる。本明細書で使用される場合、「中和抗体」は、宿主における感染を開始および/または永続化する病原体の能力を、中和することができる抗体、すなわち、防止することができる抗体、阻害することができる抗体、低減することができる抗体、妨げることができる抗体、または妨害することができる抗体である。「中和抗体」および「~を中和する抗体(antibody that neutralizes)」または「~を中和する抗体(antibodies that neutralize)」という用語は、本明細書では、互換的に使用される。ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、感染のin vitroモデルにおいて、および/または感染のin vivo動物モデルにおいて、および/またはヒトにおいて、SARS-CoV-2感染を予防できる、かつ/または中和できる。
【0083】
抗体技術の当業者によって理解される用語は、本明細書で明らかに異なって定義されない限り、当技術分野において得られる意味をそれぞれ示す。例えば、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む完全な抗体、ならびに完全な抗体によって認識される抗原標的分子に結合する能力を有するか、またはこれを保持する、完全な抗体の任意の抗原結合部分または断片、例えば、scFv、Fab、またはFab’2断片を指す。そのため、本明細書の「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含み、完全な抗体、ならびに断片抗原結合(Fab)断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、一本鎖可変断片(scFv)を含む一本鎖抗体断片、およびシングルドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片を含むその機能的(抗原結合)抗体断片を含む。この用語は、免疫グロブリンの遺伝子操作された形態および/または他の方法で改変された形態、例えば、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多特異性、例えば、二特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、タンデムジ-scFv、ならびにタンデムトリ-scFvを包含する。他に言及されない限り、「抗体」という用語は、その機能的抗体断片を包含することが理解されるべきである。この用語は、完全な抗体または全長抗体も包含し、IgGおよびそのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgE、IgA、およびIgDを含む、任意のクラスまたはサブクラスの抗体を含む。特定の実施形態では、抗体は、IgG1アイソタイプである。
【0084】
「VL」または「VL」、および「VH」または「VH」という用語は、それぞれ、抗体軽鎖および抗体重鎖由来の可変結合領域を指す。ある特定の実施形態では、VLは、カッパ(κ)クラス(また、本明細書では「VK」)である。ある特定の実施形態では、VLは、ラムダ(λ)クラスである。可変結合領域は、「相補性決定領域」(CDR)および「フレームワーク領域」(FR)として公知の別個の十分に定義されたサブ領域を含む。「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、「超可変領域」または「HVR」と同義であり、一般に、抗体の抗原特異性および/または結合親和性を一緒に付与する抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指し、ここで、連続CDR(すなわち、CDR1およびCDR2、CDR2およびCDR3)は、フレームワーク領域によって、一次構造が互いに分離されている。各可変領域中に3つのCDRが存在する(HCDR1、HCDR2、HCDR3;LCDR1、LCDR2、LCDR3;それぞれ、CDRHおよびCDRLとも称される)。ある特定の実施形態では、抗体VHは、以下の通り4つのFRおよび3つのCDRを含み:FR1-HCDR1-FR2-HCDR2-FR3-HCDR3-FR4;抗体VLは、以下の通り4つのFRおよび3つのCDRを含む:FR1-LCDR1-FR2-LCDR2-FR3-LCDR3-FR4。一般に、VHおよびVLは、それらのそれぞれのCDRを通して抗原結合部位を一緒に形成する。
【0085】
CDRおよびフレームワーク領域の番号付けは、任意の公知の方法またはスキーム、例えば、Kabat、Chothia、EU、IMGT、およびAHoの番号付けスキーム(例えば、Kabat et al., ”Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services, Public Health Service National Institutes of Health, 1991, 5th ed.;Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27:55, 2003;Honegger and Plueckthun, J. Mol. Bio. 309:657-670 (2001)を参照されたい)に従い得る。等価の残基位置を、Antigen receptor Numbering And Receptor Classification(ANARCI)ソフトウェアツール(2016, Bioinformatics 15:298-300)を使用して、比較される異なる分子についてアノテートすることができる。
【0086】
ある特定の実施形態では、CDRは、IMGT番号付け方法に従う。
【0087】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、それぞれ、配列番号106、121または107、108、169、170、および171に記載の、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3アミノ酸配列を含む。
【0088】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、感染のin vitroモデルにおいて、および/または感染のin vivo動物モデルにおいて、および/またはヒトにおいて、SARS-CoV-2感染を予防できる、かつ/または中和できる。
【0089】
「CL」という用語は、「免疫グロブリン軽鎖定常領域」または「軽鎖定常領域」、すなわち、抗体軽鎖由来の定常領域を指す。「CH」という用語は、「免疫グロブリン重鎖定常領域」または「重鎖定常領域」を指し、これは、抗体のアイソタイプに応じて、CH1、CH2、およびCH3ドメイン(IgA、IgD、IgG)、またはCH1、CH2、CH3、およびCH4ドメイン(IgE、IgM)にさらに分けられる。抗体重鎖のFc領域は、本明細書にさらに記載される。ここに開示される実施形態のいずれかでは、本開示の抗体または抗原結合断片は、CL、CH1、CH2、およびCH3のいずれか1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態では、CLは、配列番号174または配列番号193のアミノ酸配列に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、CH1-CH2-CH3は、配列番号173または配列番号175のアミノ酸配列に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0090】
例えば、哺乳動物細胞系における産生は、抗体重鎖の1つまたは複数のC末端リシンを除去することができることが理解される(例えば、Liu et al. mAbs 6(5):1145-1154 (2014)を参照されたい)。したがって、本開示の抗体または抗原結合断片は、重鎖、CH1-CH3、CH3、またはFcポリペプチドを含むことができ、ここで、C末端リシン残基は、存在するか、または存在せず、言い換えれば、重鎖、CH1-CH3、またはFcポリペプチドのC末端残基がリシンではない実施形態、およびリシンがC末端残基である実施形態を包含する。C末端リシンを欠いているCH1~CH3アミノ酸配列の例は、配列番号265および266に提供される。
【0091】
ある特定の実施形態では、組成物は、複数の本開示の抗体および/または抗原結合断片を含み、ここで、1つまたは複数の抗体または抗原結合断片は、重鎖、CH1-CH3、またはFcポリペプチドのC末端にリシン残基を含まず、1つまたは複数の抗体または抗原結合断片は、重鎖、CH1-CH3、またはFcポリペプチドのC末端にリシン残基を含む。
【0092】
「Fab」(抗原に結合する断片)は、抗原に結合する抗体の部分であり、鎖間ジスルフィド結合を介して軽鎖に連結された重鎖の可変領域およびCH1を含む。各Fab断片は、抗原結合に関して一価である、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処置は、二価の抗原結合活性を有し、さらに抗原を架橋することができる、2つのジスルフィド結合したFab断片におおよそ対応する単一の大きなF(ab’)2断片を生じる。FabおよびF(ab’)2は両方とも、「抗原結合断片」の例である。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシ末端において、抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステインを含む追加のいくつかの残基を有することによって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離のチオール基を持つFab’についての本明細書での表示である。F(ab’)2抗体断片は、元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
【0093】
Fab断片は、例えば、ペプチドリンカーによって接合されて、本明細書で「scFab」とも称される一本鎖Fabを形成し得る。これらの実施形態では、ネイティブのFabに存在する鎖間ジスルフィド結合は存在しなくてもよく、リンカーは、単一のポリペプチド鎖においてFab断片を連結または接続するように、完全にまたは部分的に役割を果たす。重鎖由来のFab断片(例えば、VH+CH1、または「Fd」を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる)および軽鎖由来Fab断片(例えば、VL+CLを含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる)は、任意の配置で連結されて、scFabを形成し得る。例えば、scFabは、N末端からC末端への方向で、(重鎖Fab断片-リンカー-軽鎖Fab断片)または(軽鎖Fab断片-リンカー-重鎖Fab断片)に従って配置されていてもよい。scFabにおいて使用するためのペプチドリンカーおよび例示的なリンカー配列は、本明細書でさらに詳細に議論される。
【0094】
scFabは、本明細書に開示される、VHおよびVL配列の任意の組み合わせ、またはCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3配列の任意の組み合わせを含むことができる。ある特定の実施形態では、scFabは、配列番号105または配列番号113に提供されるVH配列、および配列番号168に提供されるVL配列を含む。ある特定の実施形態では、scFabは、配列番号106に提供されるCDRH1配列、配列番号107または121に提供されるCDRH2配列、配列番号108に提供されるCDRH3配列、配列番号169に提供されるCDRL1配列、配列番号170に提供されるCDRL2配列、および配列番号171に提供されるCDRL3配列を含む。ある特定の実施形態では、scFabは、配列番号218~219または226~227のいずれか1つに提供されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0095】
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含有する小さな抗体断片である。この断片は、一般に、密接に非共有結合的に会合した1つの重鎖可変領域ドメインおよび1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。しかしながら、単一の可変ドメイン(または、抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、抗原を認識し、かつそれに結合する能力を有するが、典型的には、結合部位全体よりも親和性が低い。
【0096】
「一本鎖Fv」は、「sFv」または「scFv」とも略され、単一のポリペプチド鎖に接続されたVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。一部の実施形態では、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために所望の構造を保持または形成することを可能にする、VHおよびVLドメインの間に配置され、VHおよびVLドメインを連結するポリペプチドリンカーを含む。そのようなペプチドリンカーは、当技術分野において周知の標準的な技法を使用して、融合ポリペプチドに組み込むことができる。scFvの概説について、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994);以下のBorrebaeck 1995を参照されたい。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、VHドメイン、VLドメイン、およびVHドメインをVLドメインに連結するペプチドリンカーを含むscFvを含む。特定の実施形態では、scFvは、ペプチドリンカーによってVLドメインに連結されたVHドメインを含み、これは、VH-リンカー-VLの方向、またはVL-リンカー-VHの方向であり得る。本開示の任意のscFvは、VLドメインのC末端が短いペプチド配列によってVHドメインのN末端に連結されるように、またはその逆のように(すなわち、(N)VL(C)-リンカー-(N)VH(C)または(N)VH(C)-リンカー-(N)VL(C))、操作されていてもよい。あるいは、一部の実施形態では、リンカーは、VHドメイン、VLドメイン、またはその両方のN末端部分またはVHドメイン、VLドメイン、またはその両方の末端に連結されていてもよい。
【0097】
ペプチドリンカー配列は、例えば、(1)可撓性の伸長コンフォメーションを採用するそれらの能力、(2)第1および第2のポリペプチド上のおよび/または標的分子上の機能的エピトープと相互作用し得る二次構造を採用できないこと、またはこれを採用する能力の欠如、ならびに/あるいは(3)ポリペプチドおよび/または標的分子と反応する可能性がある疎水性または荷電残基の欠如または相対的な欠如に基づいて選択され得る。リンカー設計に関する他の考慮事項(例えば、長さ)は、VHおよびVLが機能的抗原結合部位を形成することができるコンフォメーションまたはコンフォメーションの範囲を含み得る。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカー配列は、例えば、Gly、Asn、およびSer残基を含有する。ThrおよびAlaなどの他のほぼ中性アミノ酸もまた、リンカー配列に含まれていてもよい。リンカーとして有用に用いられ得る他のアミノ酸配列としては、Maratea et al., Gene 40:39 46 (1985);Murphy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8258 8262 (1986);米国特許第4,935,233号、および米国特許第4,751,180号に開示されているものが挙げられる。リンカーの他の実例および非限定的な例としては、例えば、単一の反復が存在するか、または1~5回もしくはそれより多くの回数、またはそれより多く繰り返される場合、Glu-Gly-Lys-Ser-Ser-Gly-Ser-Gly-Ser-Glu-Ser-Lys-Val-Asp(配列番号215)(Chaudhary et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1066-1070 (1990))、およびLys-Glu-Ser-Gly-Ser-Val-Ser-Ser-Glu-Gln-Leu-Ala-Gln-Phe-Arg-Ser-Leu-Asp(配列番号216)(Bird et al., Science 242:423-426(1988))、および五量体のGly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号217)が挙げられ得る;例えば、配列番号213を参照されたい。任意の適切なリンカーが使用され得、一般に、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、15、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100アミノ酸長、または約200アミノ酸長未満であり得、好ましくは、可撓性の構造を含み(リンカーによって接続された2つの領域、ドメイン、モチーフ、断片、またはモジュールの間のコンフォメーションの動きのための可撓性および場所を提供することができる)、好ましくは、生物学的に不活性であり、かつ/またはヒトにおいて免疫原性の低い危険性を有する。例示的なリンカーとしては、配列番号206~217のいずれか1つまたは複数に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるリンカーが挙げられる。ある特定の実施形態では、リンカーは、配列番号206~217のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%(すなわち、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高い)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる。
【0098】
scFvは、本明細書に開示される、VHおよびVL配列の任意の組み合わせ、またはCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3配列の任意の組み合わせを使用して、構築することができる。ある特定の実施形態では、scFvは、配列番号105または配列番号113に提供されるVH配列、および配列番号168に提供されるVL配列を含む。ある特定の実施形態では、scFabは、配列番号106に提供されるCDRH1配列、配列番号107または121に提供されるCDRH2配列、配列番号108に提供されるCDRH3配列、配列番号169に提供されるCDRL1配列、配列番号170に提供されるCDRL2配列、および配列番号171に提供されるCDRL3配列を含む。ある特定の実施形態では、scFvは、配列番号220~221または配列番号228~229に提供されるアミノ酸配列を含むことができる。
【0099】
一部の実施形態では、例えば、第1および第2のポリペプチドが、機能的ドメインを分離し、立体的な干渉を防止するために使用され得る非必須N末端アミノ酸領域を有する場合、リンカー配列は必要ではない。
【0100】
ここに開示される(「親」)抗体と比較して、可変領域(例えば、VH、VL、フレームワーク、またはCDR)中に1つまたは複数のアミノ酸の変更を含むバリアント抗体であって、バリアント抗体が、SARS-CoV-2抗原に結合できる、バリアント抗体も本明細書に提供される。
【0101】
ある特定の実施形態では、VHは、配列番号105または113のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(すなわち、85%、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、ここで、変動は、必要に応じて、1つまたは複数のフレームワーク領域に限定され、かつ/あるいは変動は、生殖系列にコードされたアミノ酸に対する1つまたは複数の置換を含み、かつ/あるいは(ii)VLは、配列番号168のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(すなわち、85%、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれからなり、ここで、変動は、必要に応じて、1つまたは複数のフレームワーク領域に限定され、かつ/あるいは変動は、生殖系列にコードされたアミノ酸に対する1つまたは複数の置換を含む。
【0102】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、配列番号113または105に記載のアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVH、および配列番号168に記載のアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるVLを含む。
【0103】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、単特異性であるか(例えば、単一のエピトープに結合する)、または多特異性である(例えば、複数のエピトープおよび/または標的分子に結合する)。抗体および抗原結合断片は、さまざまなフォーマットで構築され得る。Spiess et al., Mol. Immunol. 67(2):95 (2015)およびBrinkmann and Kontermann, mAbs 9(2):182-212 (2017)に開示される例示的な抗体フォーマット、このフォーマットおよびそれを作製する方法は、参照により本明細書に組み込まれ、例えば、二特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、DART、ノブイントゥホール(KIH)アセンブリー、scFv-CH3-KIHアセンブリー、KIH共通軽鎖抗体、TandAb、トリプルボディ、TriBiミニボディ、Fab-scFv、scFv-CH-CL-scFv、F(ab’)2-scFv2、四価HCab、イントラボディ、クロスマブ、二重作用Fab(DAF)(ツーインワンまたはフォーインワン)、DutaMab、DT-IgG、Charge Pair、Fabアーム交換、SEEDボディ、トリオマブ、LUZ-Yアセンブリー、Fcab、κλボディ、オルソゴナルFab、DVD-Ig(例えば、米国特許第8,258,268号、このフォーマットは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、IgG(H)-scFv、scFv-(H)IgG、IgG(L)-scFv、scFv-(L)IgG、IgG(L,H)-Fv、IgG(H)-V、V(H)-IgG、IgG(L)-V、V(L)-IgG、KIH IgG-scFab、2scFv-IgG、IgG-2scFv、scFv4-Ig、Zybody、およびDVI-IgG(フォーインワン)、ならびに、いわゆるFIT-Ig(例えば、PCT公開番号WO2015/103072号、このフォーマットは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、いわゆるWuxiBodyフォーマット(例えば、PCT公開番号WO2019/057122号、このフォーマットは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、およびいわゆるIn-Elbow-Insert Igフォーマット(IEI-Ig;例えば、PCT公開番号WO2019/024979号およびWO2019/025391号、このフォーマットは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を含む。
【0104】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、2つまたはそれより多くのVHドメイン、2つまたはそれより多くのVLドメイン、あるいはその両方(すなわち、2つまたはそれより多くのVHドメイン、および2つまたはそれより多くのVLドメイン)を含む。特定の実施形態では、抗原結合断片は、フォーマット(N末端からC末端への方向)VH-リンカー-VL-リンカー-VH-リンカー-VLを含み、ここで、2つのVH配列は、同じまたは異なり得、2つのVL配列は、同じまたは異なり得る。そのように連結されたscFvは、所与の標的に結合するように配置され、フォーマットにおいて、2つまたはそれより多くのVH、および/あるいは2つまたはそれより多くのVLを含む、VHおよびVLドメインの任意の組み合わせを含むことができ、1、2、またはそれより多くの異なるエピトープまたは抗原が結合し得る。複数の抗原結合ドメインを組み込むフォーマットが、任意の組み合わせまたは方向で、VHおよび/またはVL配列を含み得ることが認識される。例えば、抗原結合断片は、フォーマットVL-リンカー-VH-リンカー-VL-リンカー-VH、VH-リンカー-VL-リンカー-VL-リンカー-VH、またはVL-リンカー-VH-リンカー-VH-リンカー-VLを含むことができる。
【0105】
本開示の単一特異性または多特異性抗体または抗原結合断片は、本明細書で開示されるVHおよびVL配列の任意の組合せならびに/またはCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3配列の任意の組合せを含み得る。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号105または配列番号113に提供されるVH配列、および配列番号168に提供されるVL配列を含む。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号106に提供されるCDRH1配列、配列番号107もしくは121に提供されるCDRH2配列、配列番号108に提供されるCDRH3配列、配列番号169に提供されるCDRL1配列、配列番号170に提供されるCDRL2配列、および配列番号171に提供されるCDRL3配列を含む。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号222~225または配列番号230~233に提供されるアミノ酸配列を含む。二特異性または多特異性の抗体または抗原結合断片は、一部の実施形態では、本開示の1つ、2つ、またはそれより多くの抗原結合ドメイン(例えば、VHおよびVL)を含み得る。同じまたは異なるSARS-CoV-2エピトープに結合する2つまたはそれより多くの結合ドメインが存在していてもよく、本明細書に提供される二特異性または多特異性の抗体または抗原結合断片は、一部の実施形態では、SARS-CoV-2結合ドメインをさらに含むことができ、かつ/または異なる抗原または病原体全体に結合する結合ドメインを含むことができる。
【0106】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、多特異性、例えば、二特異性、三特異性などであり得る。
【0107】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、Fcポリペプチドまたはその断片を含む。「Fc」断片またはFcポリペプチドは、ジスルフィドによって一緒に保持された両方の抗体のH鎖のカルボキシ末端部分(すなわち、IgGのCH2およびCH3ドメイン)を含む。抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(ネイティブ配列のFc領域またはアミノ酸配列バリアントのFc領域)に起因するそれらの生物活性を指し、抗体アイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節;ならびにB細胞活性化が挙げられる。本明細書で議論されるように、Fc含有ポリペプチド(例えば、本開示の抗体)の1つまたは複数の機能性を改変する(例えば、改善する、低減する、または取り除く)ために、改変(例えば、アミノ酸置換)がFCドメインに行われてもよい。そのような機能としては、例えば、Fc受容体(FcR)結合、抗体の半減期のモジュレーション(例えば、FcRnへの結合による)、ADCC機能、プロテインA結合、プロテインG結合、および補体結合が挙げられる。Fc機能性を改変する(例えば、改善する、低減する、または取り除く)アミノ酸改変としては、例えば、T250Q/M428L、M252Y/S254T/T256E、H433K/N434F、M428L/N434S、E233P/L234V/L235A/G236+A327G/A330S/P331S、E333A、S239D/A330L/I332E、P257I/Q311、K326W/E333S、S239D/I332E/G236A、N297Q、K322A、S228P、L235E+E318A/K320A/K322A、L234A/L235A(本明細書で「LALA」とも称される)、およびL234A/L235A/P329G変異が挙げられ、この変異は、InvivoGen (2011)によって公開され、invivogen.com/PDF/review/review-Engineered-Fc-Regions-invivogen.pdf?utm_source=review&utm_medium=pdf&utm_ campaign=review&utm_content=Engineered-Fc-Regionsにおいてオンラインで利用可能な”Engineered Fc Regions”に概説および注釈付けされており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
例えば、補体カスケードを活性化するために、C1qタンパク質複合体は、免疫グロブリン分子(複数可)が抗原標的に結合する場合、少なくとも2分子のIgG1または1分子のIgMに結合することができる(Ward, E. S., and Ghetie, V., Ther. Immunol. 2 (1995) 77-94)。Burton, D. R.は、アミノ酸残基318~337を含む重鎖領域が補体固定に関与することを記載した(Mol. Immunol. 22 (1985) 161-206)。Duncan, A. R., and Winter, G. (Nature 332 (1988) 738-740)は、部位特異的変異誘発を使用して、Glu318、Lys320、およびLys322がC1qに対する結合部位を形成することを報告した。C1qの結合におけるGlu318、Lys320、およびLys322残基の役割は、これら残基を含有する短い合成ペプチドの補体媒介性溶解を阻害する能力によって確認された。
【0109】
例えば、FcR結合は、(抗体の)Fc部分と、造血細胞を含む細胞上の特殊な細胞表面受容体であるFc受容体(FcR)との相互作用によって媒介され得る。Fc受容体は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、免疫複合体のファゴサイトーシスによる抗体被覆病原体の除去、および抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC;Van de Winkel, J. G., and Anderson, C. L., J. Leukoc. Biol. 49 (1991) 511-524)を介した、対応する抗体で被覆された赤血球およびさまざまな他の細胞標的(例えば、腫瘍細胞)の溶解の両方を媒介することを示した。FcRは、免疫グロブリンクラスに対するそれらの特異性によって定義され、IgG抗体に対するFc受容体はFcγRと称され、IgEに対するFc受容体はFcεRと称され、IgAに対するFc受容体はFcαRと称されるなどであり、新生児のFc受容体はFcRnと称される。Fc受容体結合は、例えば、Ravetch, J. V., and Kinet, J. P., Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492;Capel, P. J., et al., Immunomethods 4 (1994) 25-34;de Haas, M., et al., J Lab. Clin. Med. 126 (1995) 330-341;およびGessner, J. E., et al., Ann. Hematol. 76 (1998) 231-248に記載されている。
【0110】
ネイティブIgG抗体のFcドメインによる受容体(FcγR)の架橋は、ファゴサイトーシス、抗体依存性細胞性細胞傷害、および炎症メディエーターの放出、ならびに免疫複合体のクリアランス、および抗体産生の調節を含む多種多様なエフェクター機能を引き起こす。受容体(例えば、FcγR)の架橋を提供するFc部分が本明細書で企図される。ヒトでは、これまでに、FcγRの3つのクラスが特徴付けられており、以下である:(i)FcγRI(CD64)、これは、単量体IgGに高い親和性で結合し、マクロファージ、単球、好中球、および好酸球上で発現される;(ii)FcγRII(CD32)、これは、中から低い親和性で複合体化IgGに結合し、特に、白血球上で広く発現され、抗体媒介性免疫の中心的なプレーヤーであると考えられ、かつ、これは、FcγRIIA、FcγRIIB、およびFcγRIICに分けることができ、これらは、免疫系において異なる機能を行うが、IgG-Fcに対して類似の低い親和性で結合し、これらの受容体の細胞外ドメインは高度に相同である;ならびに(iii)FcγRIII(CD16)、これは、中から低い親和性でIgGに結合し、2つの形態で見出されている:FcγRIIIA、これは、NK細胞、マクロファージ、好酸球、ならびに一部の単球およびT細胞において見出されており、ADCCを媒介すると考えられる;ならびにFcγRIIIB、これは、好中球において高度に発現される。
【0111】
FcγRIIAは、殺傷に関与する多くの細胞(例えば、マクロファージ、単球、好中球)において見出され、殺傷プロセスを活性化することができるようである。FcγRIIBは、阻害プロセスにおいて役割を果たすようであり、B細胞、マクロファージ、ならびに、肥満細胞および好酸球において見出される。重要なことには、全FcγRIIBの75%が肝臓中で見出されることが示されている(Ganesan, L. P. et al., 2012: ”FcγRIIb on liver sinusoidal endothelium clears small immune complexes,” Journal of Immunology 189: 4981-4988)。FcγRIIBは、LSECと呼ばれる肝類洞内皮、および肝臓におけるクッパー細胞において多量に発現され、LSECは、小さな免疫複合体のクリアランスの主要部位である(Ganesan, L. P. et al., 2012: FcγRIIb on liver sinusoidal endothelium clears small immune complexes. Journal of Immunology 189: 4981-4988)。
【0112】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体およびその抗原結合断片は、FcγRIIbへの結合のためのFcポリペプチドまたはその断片、特に、例えばIgG型抗体などのFc領域を含む。また、Chu, S. Y. et al., 2008: Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcgammaRIIb with Fc-engineered antibodies. Molecular Immunology 45, 3926-3933に記載されるように、変異S267EおよびL328Fを導入することによって、Fc部分を操作してFcγRIIB結合を増強することが可能である。それによって、免疫複合体のクリアランスを増強することができる(Chu, S., et al., 2014: Accelerated Clearance of IgE In Chimpanzees Is Mediated By Xmab7195, An Fc-Engineered Antibody With Enhanced Affinity For Inhibitory Receptor FcγRIIb. Am J Respir Crit, American Thoracic Society International Conference Abstracts)。一部の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合断片は、特に、Chu, S. Y. et al., 2008: Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcgammaRIIb with Fc-engineered antibodies. Molecular Immunology 45, 3926-3933に記載されるように、変異S267EおよびL328Fを有する操作されたFc部分を含む。
【0113】
B細胞において、FcγRIIBは、さらなる免疫グロブリン産生、および例えば、IgEクラスへのアイソタイプスイッチングを抑制するように機能し得る。マクロファージにおいて、FcγRIIBは、FcγRIIAを通して媒介されるファゴサイトーシスを阻害すると考えられる。好酸球および肥満細胞において、B形態は、IgEのその別々の受容体への結合を通して、これら細胞の活性化を抑制するのに役立ち得る。
【0114】
FcγRI結合に関して、ネイティブIgGのE233~G236、P238、D265、N297、A327、およびP329の少なくとも1つの改変は、FcγRIへの結合を低減する。233~236位のIgG2残基が、IgG1およびIgG4の対応する位置へと置換されることで、IgG1およびIgG4のFcγRIへの結合が103倍低減し、抗体で感作された赤血球に応答するヒト単球応答が排除される(Armour, K. L., et al. Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2613-2624)。
【0115】
FcγRII結合に関して、例えば、E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292、およびK414の少なくとも1つのIgG変異について、FcγRIIAに対する結合の低減が見出される。
【0116】
ヒトFcγRIIAの2つの対立形質は、高親和性でIgG1 Fcに結合する「H131」バリアント、および低親和性でIgG1 Fcに結合する「R131」バリアントである。例えば、Bruhns et al., Blood 113:3716-3725 (2009)を参照されたい。
【0117】
FcγRIII結合に関して、例えば、E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、S239、E269、E293、Y296、V303、A327、K338、およびD376の少なくとも1つの変異について、FcγRIIIAに対する結合の低減が見出される。Fc受容体についてのヒトIgG1上の結合部位のマッピング、上記で言及された変異部位、ならびにFcγRIおよびFcγRIIAへの結合を測定するための方法は、Shields, R. L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604に記載されている。
【0118】
ヒトFcγRIIIAの2つの対立形質は、低親和性でIgG1 Fcに結合する「F158」バリアント、および高親和性でIgG1 Fcに結合する「V158」バリアントである。例えば、Bruhns et al., Blood 113:3716-3725 (2009)を参照されたい。
【0119】
FcγRIIへの結合に関して、ネイティブIgG Fcの2つ領域、すなわち、(i)IgG Fcの下部ヒンジ部位、特に、アミノ酸残基L、L、G、G(234~237、EU番号付け)、ならびに(ii)IgG FcのCH2ドメインの隣接領域、特に、例えば、P331の領域における、下部ヒンジ領域に隣接する上部CH2ドメインにおけるループおよび鎖が、FcγRIIおよびIgGの間の相互作用に関与するようである(Wines, B.D., et al., J. Immunol. 2000; 164: 5313 - 5318)。また、FcγRIは、IgG Fc上の同じ部位に結合するようであるが、FcRnおよびプロテインAは、CH2-CH3境界面にあるようであるIgG Fc上の異なる位置に結合する(Wines, B.D., et al., J. Immunol. 2000; 164: 5313 - 5318)。
【0120】
本開示のFcポリペプチドまたはその断片の、(すなわち、1つまたは複数の)Fcγ受容体への結合親和性を増加させる(例えば、参照Fcポリペプチドまたはその断片、あるいは変異(複数可)を含まないそれを含有するものと比較して)変異も企図される。例えば、Delillo and Ravetch, Cell 161(5):1035-1045 (2015)およびAhmed et al., J. Struc. Biol. 194(1):78 (2016)を参照されたく、このFc変異および技法は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
本明細書に開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、G236A;S239D;A330L;およびI332E;あるいはそのいずれか2つまたはそれより多くを含む組み合わせ;例えば、S239D/I332E;S239D/A330L/I332E;G236A/S239D/I332E;G236A/A330L/I332E(本明細書では「GAALIE」とも称される);またはG236A/S239D/A330L/I332Eから選択される変異を含むFcポリペプチドまたはその断片を含むことができる。一部の実施形態では、Fcポリペプチドまたはその断片は、S239Dを含まない。
【0122】
ある特定の実施形態では、Fcポリペプチドまたはその断片は、FcRn結合への結合に関与するFcポリペプチドまたはその断片の少なくとも一部を含み得るか、またはこれからなり得る。ある特定の実施形態では、Fcポリペプチドまたはその断片は、FcRn(例えば、約6.0のpHで)に対する結合親和性を改善する(例えば、結合を増強する)1つまたは複数のアミノ酸改変を含み、一部の実施形態では、それによって、Fcポリペプチドまたはその断片を含む分子のin vivo半減期が延長される(例えば、参照Fcポリペプチドまたはその断片、あるいは改変(複数可)を含まないがそうでなければ同じ抗体と比較して)。ある特定の実施形態では、Fcポリペプチドまたはその断片は、IgG Fcを含むか、またはこれに由来し、半減期を延長する変異は、M428L;N434S;N434H;N434A;N434S;M252Y;S254T;T256E;T250Q;P257I;Q311I;D376V;T307A;E380A(EU番号付け)のいずれか1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、M428L/N434S(本明細書では「MLNS」とも称される)を含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、M252Y/S254T/T256Eを含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、T250Q/M428Lを含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、P257I/Q311Iを含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、P257I/N434Hを含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、D376V/N434Hを含む。ある特定の実施形態では、半減期を延長する変異は、T307A/E380A/N434Aを含む。
【0123】
一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、置換変異M428L/N434Sを含むFc部分を含む。一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、置換変異G236A/A330L/I332Eを含むFcポリペプチドまたはその断片を含む。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、G236A変異、A330L変異、およびI332E変異(GAALIE)を含み、S239D変異を含まない(例えば、239位にネイティブSを含む)、(例えば、IgG)Fc部分を含む。特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、置換変異:M428L/N434SおよびG236A/A330L/I332Eを含み、かつ、必要に応じてS239Dを含まない、Fcポリペプチドまたはその断片を含む。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、置換変異:M428L/N434SおよびG236A/S239D/A330L/I332Eを含むFcポリペプチドまたはその断片を含む。
【0124】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、グリコシル化を変更する変異を含み、ここで、グリコシル化を変更する変異は、N297A、N297Q、またはN297Gを含み、かつ/あるいは抗体または抗原結合断片は、部分的にもしくは完全にアグリコシル化(aglycosylate)されており、かつ/または部分的にもしくは完全にアフコシル化(afucosylate)されている。宿主細胞系、および部分的にもしくは完全にアグリコシル化されたか、または部分的にもしくは完全にアフコシル化された抗体および抗原結合断片を作製する方法は公知である(例えば、PCT公開番号WO2016/181357号;Suzuki et al. Clin. Cancer Res. 13(6):1875-82 (2007);Huang et al. MAbs 6:1-12 (2018)を参照されたい)。
【0125】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、検出可能なレベルの抗体または抗原結合断片が被験体において見出すことができない場合であっても(すなわち、抗体または抗原結合断片が、投与後に被験体から除去されている場合)、被験体において、in vivoでの継続的な保護を誘発できる。そのような保護は、本明細書ではワクチン効果と称される。理論に縛られることを望まないが、樹状細胞が、抗体および抗原の複合体を内部移行することができ、その後、抗原に対する内因性の免疫応答を誘導またはこれに寄与することができると考えられる。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、例えば、G236A、A330L、およびI332Eを含むFc中の変異などの1つまたは複数の改変を含み、これは、抗原に対して、例えばT細胞免疫を誘導し得る樹状細胞を活性化できる。
【0126】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、CH2(またはその断片)、CH3(またはその断片)、またはCH2およびCH3を含むFcポリペプチドまたはその断片を含み、ここで、CH2、CH3、またはその両方は、任意のアイソタイプのものであり得、それぞれ、対応する野生型CH2またはCH3と比較して、アミノ酸置換または他の改変を含有していてもよい。ある特定の実施形態では、本開示のFcポリペプチドは、会合して二量体を形成する2つのCH2-CH3ポリペプチドを含む。
【0127】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、モノクローナルであり得る。「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、一部の場合では、微量で存在し得る可能な天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に向けられている。さらにまた、異なるエピトープに向けられている異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の単一のエピトープに向けられている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが、他の抗体によって汚染されずに合成され得るという点で有利である。「モノクローナル」という用語は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするとして解釈されるべきではない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法論によって調製されてもよく、あるいは、細菌細胞、真核細胞、動物細胞、または植物細胞において組換えDNA法を使用して作製されてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載されている技法を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。モノクローナル抗体はまた、PCT公開番号WO2004/076677A2号に開示される方法を使用して得てもよい。
【0128】
本開示の抗体および抗原結合断片は、「キメラ抗体」を含み、ここで、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来する抗体中の、あるいは特定の抗体のクラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であるが、鎖(複数可)の残部は、それらが所望の生物活性を示す限り、別の種に由来する抗体中の、あるいは別の抗体のクラスまたはサブクラスに属する抗体中の、ならびにそのような抗体の断片中の対応する配列と同一または相同である(米国特許第4,816,567号;同第5,530,101号および同第7,498,415号;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)を参照されたい)。例えば、キメラ抗体は、ヒトおよび非ヒト残基を含んでいてもよい。さらにまた、キメラ抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、抗体の性能をさらに改良するために行われる。さらなる詳細について、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。キメラ抗体は、霊長類化抗体およびヒト化抗体も含む。
【0129】
「ヒト化抗体」は、一般に、非ヒトである供給源から導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有するヒト抗体であると考えられる。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的には、可変ドメインから取得される。ヒト化は、Winterおよび共同研究者(Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986);Reichmann et al., Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988))の方法に従って、非ヒト可変配列をヒト抗体の対応する配列と置換することによって行われてもよい。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号;同第5,530,101号および同第7,498,415号)、ここで、実質的に無傷ヒト可変ドメインよりも少ない配列が、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。一部の例では、「ヒト化」抗体は、非ヒト細胞または動物によって産生され、ヒト配列、例えば、HCドメインを含むものである。
【0130】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体中に存在する配列のみを含有する抗体である。しかしながら、本明細書で使用される場合、ヒト抗体は、本明細書に記載される改変およびバリアント配列を含む天然に存在するヒト抗体(例えば、ヒトから単離されている抗体)中で見出されない残基または改変を含んでいてもよい。これらは、典型的には、抗体の性能をさらに改良または増強するために行われる。一部の例では、ヒト抗体は、トランスジェニック動物によって産生される。例えば、米国特許第5,770,429号;同第6,596,541号および同第7,049,426号を参照されたい。ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合断片は、キメラ、ヒト化されたもの、または
ヒトのものである。
【0131】
本開示の例示的な抗体は、S309、ソトロビマブ、およびVIR-7832を含む。S309は、SARS-CoV生存者のB細胞から得られたヒトモノクローナル抗体である。S309は、配列番号105のVHアミノ酸配列、および配列番号168のVLアミノ酸配列を含む。ソトロビマブ(IgG1*01 G1m17;配列番号113のVH、M428LおよびN434S Fc変異;配列番号168のVL(カッパ軽鎖IgKC*01 k1m3))およびVIR-7832((IgG1*01 G1m17;配列番号113のVH、G236A、A330L、I332E、M428LおよびN434S Fc変異;配列番号168のVL(カッパ軽鎖IgKC*01 k1m3))は、S309に由来する操作されたヒトモノクローナル抗体である。
【0132】
ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞
本開示の抗体および抗原結合断片(およびそれらの部分;例えば、CDR、VH、VL、重鎖、または軽鎖)は、ポリヌクレオチドによりコードされ得る。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を含み得る。RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)を含み得る。ポリヌクレオチドを宿主細胞における発現のためにコドン最適化することができる。コード配列が公知であるか、または同定されると、公知の技法およびツールを使用して、例えば、GenScript(登録商標)OptimiumGene(商標)ツールを使用して、コドン最適化を行うことができる(Scholten et al., Clin. Immunol. 119:135, 2006も参照されたい)。コドン最適化配列は、部分的にコドン最適化されている(すなわち、1つまたは複数のコドンが宿主細胞における発現のために最適化されている)配列、および完全にコドン最適化されている配列を含む。本開示の抗体および抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドは、異なるヌクレオチド配列を有し得るが、同じ抗体または抗原結合断片を、例えば、遺伝コードの縮重、スプライシングなどに起因して、さらにコードすることも、理解されよう。抗体または抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドが、例えば、宿主細胞におけるその抗体または抗原結合断片の発現のために、他の配列および/または特徴を含むポリヌクレオチドに含まれていることもあることは、理解されよう。例示的な特徴としては、プロモーター配列、ポリアデニル化配列、シグナルペプチドをコードする(例えば、発現された抗体重鎖もしくは軽鎖のN末端に位置する)配列などが挙げられる。
【0133】
ポリヌクレオチドは、ベクターに含まれているまたは含有されていることもある。ベクターは、本明細書で開示されるベクターのいずれか1つまたは複数を含み得る。ベクターは、例えば、抗体もしくは抗原結合断片またはその一部分をコードするDNAプラスミド構築物(例えば、いわゆる「DMAb」;例えば、Muthumani et al., J Infect Dis. 214(3):369-378 (2016);Muthumani et al., Hum Vaccin Immunother 9:2253-2262 (2013));Flingai et al., Sci Rep. 5:12616 (2015);およびElliott et al., NPJ Vaccines 18 (2017)を参照されたく、これらの文献の抗体コードDNA構築物および関連使用方法は、その投与を含めて、参照により本明細書に組み込まれる)を含み得る。DNAプラスミド構築物は、抗体または抗原結合断片の重鎖および軽鎖(またはVHおよびVL)をコードする単一のオープンリーディングフレームであって、重鎖をコードする配列と軽鎖をコードする配列が、必要に応じて、プロテアーゼ切断部位をコードするポリヌクレオチドにより、および/または自己切断性ペプチドをコードするポリヌクレオチドにより、隔てられている、オープンリーディングフレームを含み得る。抗体または抗原結合断片の置換基成分は、単一のプラスミドに含まれているポリヌクレオチドによりコードされ得る。あるいは、抗体または抗原結合断片の置換基成分は、2つまたはそれより多くのプラスミドに含まれているポリヌクレオチドによりコードされ得る(例えば、第1のプラスミドは、重鎖、VH、またはVH+CHをコードするポリヌクレオチドを含み、第2のプラスミドは、コグネイト軽鎖、VL、またはVL+CLをコードするポリヌクレオチドを含む)。単一のプラスミドは、本開示の2つまたはそれより多くの抗体または抗原結合断片からの重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含み得る。例示的な発現ベクターは、Invitrogen(登録商標)から入手可能なpVax1である。本開示のDNAプラスミドを、被験体に、例えば、電気穿孔(例えば、筋肉内電気穿孔)により、または適切な製剤(例えば、ヒアルロニダーゼ)を用いて、送達することができる。ベクターは、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み得る。シグナルペプチドは、成熟抗体または抗原結合断片上に存在することもあり、またはしないこともある(例えば、酵素により切断された形態であり得る)。シグナルペプチドをコードする核酸配列は、配列番号252または配列番号263に記載されるヌクレオチド配列を含む。シグナルペプチドは、配列番号256または配列番号264に記載されるアミノ酸配列を含み得るか、またはこれらからなり得る。ベクターは、ポリアデニル化シグナル配列を含み得る。ポリアデニル化シグナル配列の例は、配列番号253に記載されるヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。
【0134】
ベクターは、CMVプロモーター(例えば、配列番号251に記載されるヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる)を含み得る。
【0135】
本開示の抗原またはその抗原結合断片を発現するために使用され得る宿主細胞の例としては、真核細胞、例えば、酵母細胞、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞;およびE.coliをはじめとする原核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。細胞は、哺乳動物細胞系、例えば、CHO細胞(例えば、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al., PNAS 77:4216 (1980))、ヒト胎児腎細胞(例えば、HEK293T細胞)、PER.C6細胞、Y0細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、ヒト肝細胞、例えばHepa RG細胞、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ細胞を包含する。哺乳動物宿主細胞系の他の例としては、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4細胞);SV40により形質転換されたサル腎CV1系(COS-7);ベビーハムスター腎細胞(BHK);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76);サル腎細胞(CV1);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);イヌ腎細胞(MDCK);バッファローラット肝細胞(BRL 3A);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);TRI細胞;MRC 5細胞;およびFS4細胞が挙げられる。抗体生成に好適な哺乳動物宿主細胞系は、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B. K. C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, N.J.), pp. 255-268 (2003)に記載されているものも含む。
【0136】
宿主細胞はまた、E.coliなどの原核細胞を包含する。E.coliなどの原核細胞におけるペプチドの発現は、十分に確証されている(例えば、Pluckthun, A. Bio/Technology 9:545-551 (1991)を参照されたい)。例えば、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合、抗体を細菌において生成することができる。細菌における抗体断片およびポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、および同第5,840,523号を参照されたい。発現ベクターに関する本記載に従って、細胞にベクターをトランスフェクトすることができる。用語「トランスフェクション」は、核酸分子、例えば、DNAまたはRNA(例えば、mRNA)分子の、細胞への、例えば、真核細胞への導入を指す。本記載に関して、用語「トランスフェクション」は、核酸分子の細胞への導入、例えば、哺乳動物細胞への導入を含む、真核細胞への導入、のための、当業者に公知の任意の方法を包含する。そのような方法は、例えば、電気穿孔、リポフェクション、例えばカチオン性脂質および/もしくはリポソームに基づくリポフェクション、リン酸カルシウム沈殿法、ナノ粒子に基づくトランスフェクション、ウイルスに基づくトランスフェクション、またはカチオン性ポリマー、例えばDEAE-デキストランもしくはポリエチレンイミン、に基づくトランスフェクションなどを包含する。ある特定の実施形態では、導入は、非ウイルス性である。
【0137】
さらに、宿主細胞に、ベクターを、例えば、抗体またはその抗原結合断片の発現のために、安定にまたは一過性にトランスフェクトすることができる。細胞にベクターを安定にトランスフェクトすることができる。あるいは、細胞に、抗体または抗原結合断片をコードするベクターを一過性にトランスフェクトすることができる。
【0138】
抗体または抗原結合断片(またはそれをコードするポリヌクレオチド)は、宿主細胞に対して異種であり得る。例えば、細胞は、抗体を完全にまたは部分的に得た種とは異なる種の細胞(例えば、ヒト抗体または操作されたヒト抗体を発現するCHO細胞)であり得る。宿主細胞の細胞型は、抗体または抗原結合断片を自然に発現しないかもしれない。さらに、宿主細胞は、天然状態の抗体または抗原結合断片に(または抗体もしくは抗原結合断片が操作されたかもしくは由来した天然状態の親抗体に)存在しない翻訳後改変(PTM;例えば、グリコシル化またはフコシル化)を抗体または抗原結合断片に付与し得る。そのようなPTMは、機能差(例えば、免疫原性の低下)を生じさせる結果となり得る。したがって、本明細書で開示される宿主細胞により生成される本開示の抗体または抗原結合断片は、その天然状態の抗体(または親抗体)とは明確に異なる1つまたは複数の翻訳後改変を含み得る(例えば、CHO細胞により生成されるヒト抗体は、ヒトから単離されたおよび/または天然ヒトB細胞もしくは形質細胞により生成された場合の抗体とは明確に異なる1つまたは複数の翻訳後改変を含むことができる)。
【0139】
本開示の結合タンパク質の発現に有用な昆虫細胞は、当技術分野において公知であり、例えば、Spodoptera frugipera Sf9細胞、Trichoplusia ni BTI-TN5B1-4細胞、およびSpodoptera frugipera SfSWT01「Mimic(商標)」細胞を含む。例えば、Palmberger et al., J. Biotechnol. 153(3-4):160-166 (2011)を参照されたい。非常に多数のバキュロウイルス株が同定されており、それらは、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併用され得る。
【0140】
糸状菌または酵母などの真核微生物も、タンパク質コードベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主であり、該真核微生物は、部分的にまたは完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体の生成をもたらす「ヒト化」グリコシル化経路を有する真菌および酵母株を含む。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004);Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006)を参照されたい。
【0141】
植物細胞も、本開示の結合タンパク質の発現のための宿主として利用することができる。例えば、PLANTIBODIES(商標)技術(例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、および同第6,417,429号に記載されている)は、トランスジェニック植物を利用して抗体を生成する。
【0142】
哺乳動物宿主細胞は、例えば、CHO細胞、HEK293細胞、PER.C6細胞、Y0細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、ヒト肝細胞、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ細胞を含む。
【0143】
抗体または抗原結合断片を生成するための方法は、宿主細胞を、抗体または抗原結合断片を生成するための十分な条件下で、十分な時間にわたって培養することを含み得る。組換え生成された抗体の単離および精製に有用な方法は、例として、組換え抗体を培養培地に分泌する好適な宿主細胞/ベクター系から上清を得ること、次いで、市販のフィルターを使用して培地を濃縮することを含み得る。濃縮後、濃縮物を、単一の好適な精製マトリックスに、または一連の好適なマトリックス、例えば、親和性マトリックスもしくはイオン交換樹脂に適用することができる。1つまたは複数の逆相HPLCステップを利用して、組換えポリペプチドをさらに精製することができる。これらの精製方法を、免疫原をその天然環境から単離する際に利用することもできる。本明細書に記載される単離された/組換え抗体の1つまたは複数についての大規模生成のための方法は、適切な培養条件を維持するためにモニターされ、制御される、バッチ細胞培養を含む。可溶性抗体の精製は、本明細書に記載されるおよび当技術分野において公知の方法であって、自国および外国の規制機関の法律およびガイドラインに適合する方法に従って、行うことができる。
【0144】
医薬組成物ならびにその方法および使用
本開示の抗体または抗原結合断片のいずれか1つまたは複数を含む組成物であって、薬学的に許容されるキャリアー、賦形剤、または希釈剤をさらに含み得る組成物も、本明細書で提供される。キャリアー、賦形剤および希釈剤は、本明細書中でさらに詳細に論じられる。
【0145】
ある特定の実施形態では、組成物は、本開示による2つまたはそれより多くの異なる抗体または抗原結合断片を含む。ある特定の実施形態では、組み合わせて使用される抗体または抗原結合断片は、各々独立して、次の特徴のうちの1つまたは複数を有する:天然に存在するSARS-CoV-2バリアントを中和する;スパイクタンパク質結合について互いに競合しない;明確に異なるスパイクタンパク質エピトープに結合する;SARS-CoV-2に対する耐性の形成の低減を有する;組合せでの場合、SARS-CoV-2に対する耐性の形成の低減を有する;生SARS-CoV-2ウイルスを強く中和する;組み合わせて使用された場合、生SARS-CoV-2ウイルスの中和に対して相加または相乗効果を示す;エフェクター機能を示す;感染の妥当な動物モデル(複数可)において防御的である;大規模生成に十分な量で生成できる。
【0146】
一部の実施形態では、組成物は、抗体または抗原結合断片をコードする、ポリヌクレオチドまたはベクターを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、第1のプラスミドを含む第1のベクター、および第2のプラスミドを含む第2のベクターを含み、第1のプラスミドは、重鎖、VH、またはVH+CHをコードするポリヌクレオチドを含み、第2のプラスミドは、抗体またはその抗原結合断片のコグネイト軽鎖、VL、またはVL+CLをコードするポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、好適な送達ビヒクルまたはキャリアーに連結されたポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を含む。ヒト被験体への投与のための例示的なビヒクルまたはキャリアーとしては、脂質または脂質由来の送達ビヒクル、例えば、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、油性懸濁液、サブミクロン脂質乳剤、脂質マイクロバブル、逆脂質ミセル、渦巻型リポソーム(cochlear liposome)、脂質マイクロチューブル(lipid microtubule)、脂質マイクロシリンダー(lipid microcylinder)、または脂質ナノ粒子(LNP)もしくはナノスケールプラットフォーム(例えば、Li et al. Wilery Interdiscip Rev. Nanomed Nanobiotechnol. 11(2):e1530 (2019)を参照されたい)が挙げられる。適切なmRNAを設計するための、およびmRNA-LNPを製剤化するための、およびそれを送達するための、原理、試薬および技法は、例えば、Pardi et al. (J Control Release 217345-351 (2015));Thess et al. (Mol Ther 23: 1456-1464 (2015));Thran et al. (EMBO Mol Med 9(10):1434-1448 (2017);Kose et al. (Sci. Immunol. 4 eaaw6647 (2019);およびSabnis et al. (Mol. Ther. 26:1509-1519 (2018))に記載されており、その技法は、キャッピング、コドン最適化、ヌクレオシド改変、mRNAの精製、mRNAの安定した脂質ナノ粒子(例えば、イオン化可能なカチオン性脂質/ホスファチジルコリン/コレステロール/PEG-脂質;イオン化可能な脂質:ジステアロイルPC:コレステロール:ポリエチレングリコール脂質)への組込みを含み、ならびにその皮下、筋肉内、皮内、静脈内、腹腔内および気管内投与を含む、これらの技法は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0147】
本開示の抗体もしくは抗原結合断片、またはそれを含む組成物を使用して小児被験体を処置する方法であって、小児被験体がSARS-CoV-2に感染している、感染していると考えられる、または感染するリスクがある、必要に応じて、COVID-19に感染している、感染していると考えられる、または感染するリスクがある、方法も、本明細書で提供される。
【0148】
したがって、ある特定の実施形態では、小児被験体(例えば、SARS-CoV-2に感染またはCOVID-19に罹患しているまたはそのリスクがある)のSARS-CoV-2感染を処置するための方法であって、本明細書で開示される抗体、抗原結合断片、または組成物の有効量を小児被験体に投与することを含む方法が、提供される。
【0149】
小児被験体は、男性または女性であり得、任意の好適な年齢であり得、乳児、若年、および青年被験体を含む。ある特定の実施形態では、小児被験体は、in uteroで母への抗体、抗原結合断片または組成物の投与があった、2歳未満であり得、必要に応じて、出生時の在胎週齢少なくとも32週もしくは出生時の在胎週齢32週未満でもあり得るか、少なくとも2歳であり得るが6歳未満であり得るか、少なくとも6歳であり得るが12歳未満であり得るか、または少なくとも12歳であり得るが18歳未満であり得る。
【0150】
手短には、本開示のある特定の実施形態による医薬組成物は、患者への組成物の投与の際にその中に含有される活性成分が生物学的に利用可能になることを可能にするように製剤化される。小児被験体に投与される組成物は、1つまたは複数の投与単位の形態をとることができ、例えば、錠剤が単一投与単位であってよく、エアロゾル形態の本明細書に記載の抗体または抗原結合のコンテナは、複数の投与単位を保持することができる。そのような剤形の実際の調製方法は、当業者には公知であるか、明らかである。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (Philadelphia College of Pharmacy and Science, 2000)を参照されたい。いずれにせよ、投与される組成物は、本明細書での教示に従って目的の疾患または状態を処置するための本開示の抗体もしくは抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞または組成物の有効量を含有する。
【0151】
組成物は、固体の形態であることもあり、または液体の形態であることもある。一部の実施形態では、キャリアー(複数可)は粒状であり、組成物は例えば錠剤または粉末形態である。組成物が、例えば、経口油、注射可能な液体、または例えば吸入投与に有用であるエアロゾルである場合、キャリアー(複数可)は液体であり得る。経口投与が意図される場合、医薬組成物は、好ましくは、固体形態または液体形態のどちらかであり、半固体、半液体、懸濁液およびゲル形態は、本明細書で固体または液体のどちらかとみなされる形態の中に含まれる。
【0152】
経口投与のための固体組成物として、医薬組成物を、粉剤・散剤(powder)、顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、チューインガム剤、カシェ剤などに製剤化することができる。そのような固体組成物は、1つまたは複数の不活性希釈剤または食用キャリアーを通常は含有する。加えて、次のうちの1つまたは複数が存在することもある:結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、トラガカントガムまたはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプン、ラクトースまたはデキストリン;崩壊剤、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、Primogel、トウモロコシデンプンなど;滑沢剤、例えば、ステアリン鎖マグネシウムまたはSterotex;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロースまたはサッカリン;着香剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味料;ならびに着色剤。組成物が、カプセル、例えばゼラチンカプセル、の形態である場合、その組成物は、上記のタイプの材料に加えて、液体キャリアー、例えば、ポリエチレングリコールまたは油を含有し得る。
【0153】
組成物は、液体、例えば、エリキシル、シロップ、溶液、乳剤または懸濁液、の形態であることもある。液体は、2つの例として、経口投与のためのもの、または注射による送達のためのものであり得る。経口投与が意図される場合、好ましい組成物は、本化合物に加えて、甘味剤、保存剤、色素/着色剤および風味増強剤のうちの1つまたは複数を含有する。注射により投与することが意図される組成物には、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散化剤、懸濁化剤、緩衝液、安定剤および等張剤のうちの1つまたは複数を含めることができる。
【0154】
液体医薬組成物は、それらが溶液であるか、懸濁液であるか、他のこれらに類する形態であるかを問わず、次のアジュバントのうちの1つまたは複数を含み得る:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、好ましくは生理食塩水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム、固定油、例えば、溶媒もしくは懸濁媒体として役立ち得る合成モノもしくはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液またはリン酸緩衝液;および等張性の調整用の剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。非経口調製物を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てのシリンジまたは複数回用量のバイアルに封入することができる。生理食塩水は、好ましいアジュバントである。注射用医薬組成物は、好ましくは無菌である。
【0155】
非経口投与または経口投与のどちらかが意図される液体組成物は、本明細書で開示される抗体または抗原結合断片の量を、好適な投与量が得られるように、含有するべきである。通常は、この量は、組成物中、少なくとも0.01%の抗体または抗原結合断片である。経口投与が意図される場合、この量を、組成物の重量の0.1%~約70%の間になるように変動させることができる。ある特定の経口医薬組成物は、約4%~約75%の間の抗体または抗原結合断片を含有する。ある特定の実施形態では、本発明による医薬組成物および調製物は、非経口投与単位が希釈前に0.01~10重量%の間の抗体または抗原結合断片を含有するように調製される。
【0156】
組成物は、局所投与が意図されたものであることがあり、その場合、キャリアーは、溶液、乳剤、軟膏またはゲル基剤を適切に含み得る。基剤は、例えば、次のうちの1つまたは複数を含み得る:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、希釈剤、例えば水およびアルコール、ならびに乳化剤および安定剤。増粘剤が局所投与のための組成物中に存在してよい。経皮投与が意図される場合、組成物は、経皮パッチまたはイオン導入デバイスを含み得る。医薬組成物は、直腸内で融解して薬物を放出する形態、例えば座薬の形態での、直腸投与が意図されたものであることもある。直腸投与のための組成物は、油性基剤を好適な無刺激賦形剤として含有し得る。そのような基剤としては、ラノリン、カカオ脂、およびポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
組成物は、固体または液体投与単位の物理的形態を改変する様々な材料を含み得る。例えば、組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含み得る。コーティングシェルを形成する材料は、通常は不活性であり、例えば、糖、セラック、および他の腸溶コーティング剤から選択され得る。あるいは、活性成分は、ゼラチンカプセルに封入され得る。固体または液体形態の組成物は、本開示の抗体または抗原結合断片に結合し、それによって化合物の送達を補助する、作用物質を含み得る。この能力で作用し得る好適な作用物質は、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体、1つもしくは複数のタンパク質、またはリポソームを含む。組成物は、エアロゾルとして投与することができる投与単位から本質的になり得る。用語エアロゾルは、コロイド状の性質のものから、加圧パッケージからなる系までの幅がある、様々な系を示すために使用される。送達は、液化もしくは圧縮ガスによることもあり、または活性成分を分注する好適なポンプシステムによることもある。エアロゾルは、活性成分(複数可)を送達するために単相、二相または三相系で送達され得る。エアロゾルの送達は、必要なコンテナ、アクチベーター、バルブ、サブコンテナなどを含み、これらが一緒にキットを形成し得る。当業者は、過度の実験をしなくても、好ましいエアロゾルを決定することができる。
【0158】
本開示の組成物が、本明細書に記載されるようなポリヌクレオチドのためのキャリアー分子(例えば、脂質ナノ粒子、ナノスケール送達プラットフォームなど)も包含することは、理解されよう。
【0159】
医薬組成物は、製薬技術分野で周知の方法論により調製することができる。例えば、注射により投与されることが意図される組成物は、本明細書に記載の抗体、その抗原結合断片、または抗体コンジュゲートと、必要に応じて塩、緩衝液および/または安定剤のうちの1つまたは複数とを含む組成物を、溶液を形成するための滅菌蒸留水と合わせることにより、調製することができる。界面活性剤を添加して、均一な溶液または懸濁液の形成を促進することができる。界面活性剤は、ペプチド組成物と非共有結合的に相互作用して水性送達系への抗体またはその抗原結合断片の溶解または均一な懸濁を促進する化合物である。
【0160】
一般に、適切な用量および処置レジメンは、治療上および/または予防上の利益(例えば、臨床転帰の改善(例えば、下痢もしくは関連する脱水症または炎症の頻度の低下、継続期間の短縮、または重症度の低下、あるいはより長い無病および/または全生存期間、あるいは症状重症度の軽減)を含む、本明細書に記載されるもの)をもたらすのに十分な量の組成物(複数可)を提供する。予防上の使用のための用量は、疾患もしくは障害に関連する疾患を防止するのに、その開始を遅延するのに、またはその重症度を低下させるのに十分であるべきである。本明細書に記載される方法に従って投与される組成物の予防上の利益を、前臨床研究(in vitroおよびin vivo動物研究を含む)および臨床研究を行うこと、そしてそこから得られたデータを、適切な統計学的、生物学的および臨床的方法および技法により分析することによって、決定することができ、これらの全てを当業者は容易に実行することができる。
【0161】
組成物を有効量(例えば、SARS-CoV-2感染を処置するための)で投与し、この有効量は、利用される具体的な化合物の活性;化合物の代謝安定性および作用の長さ;小児被験体の年齢、体重、一般的健康、性別および食事;投与の方法およびタイミング;排泄率;薬物の組合せ;特定の障害または状態の重症度;ならびに治療を受けている小児被験体を含む、様々な因子に依存して変わる。ある特定の実施形態では、本開示の製剤および方法による治療の投与後、試験小児被験体は、プラセボで処置される被験体または他の好適な対照小児被験体と比較して、処置される疾患または障害に関連する1つまたは複数の症状の約10%から約99%までの低減を示す。
【0162】
一般に、抗体または抗原結合断片の治療有効1日用量は、(70kgの哺乳動物について)約0.001mg/kg(すなわち、0.07mg)~約100mg/kg(すなわち、7.0g)であり;好ましくは、治療有効用量は、(70kgの哺乳動物について)約0.01mg/kg(すなわち、0.7mg)~約50mg/kg(すなわち、3.5g)であり;より好ましくは、治療有効用量は、(70kgの哺乳動物について)約1mg/kg(すなわち、70mg)~約25mg/kg(すなわち、1.75g)である。
【0163】
本開示のポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および関連組成物についての治療有効用量は、抗体または抗原結合断片についての治療有効用量とは異なり得る。
【0164】
ある特定の実施形態では、本開示による方法は、小児被験体に、本開示の抗体または抗原結合断片、特に、ソトロビマブまたはVIR-7832を、62.5mg以下、100mg以下、125mg以下、150mg以下、187.5mg以下、200mg以下、250mg以下、300mg以下、350mg以下、375mg以下、400mg以下、450mg以下、または500mg以下の用量で投与することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、小児被験体に、本開示の抗体または抗原結合断片、特に、ソトロビマブまたはVIR-7832を、約50mg~約500mgの範囲、または約50mg~約250mgの範囲、または約50mg~約100mgの範囲、または約100mg~約500mgの範囲、約250mg~約500mgの範囲、約62.5mg~約500mgの範囲、または約62.5mg~約375mgの範囲の用量で投与することを含む。一部の実施形態では、方法は、小児被験体に、50、62.5、75、100、125、150、175、187.5、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475または500mgの抗体または抗原結合断片、特に、ソトロビマブまたはVIR-7832を投与することを含む。一部の実施形態では、方法は、小児被験体に、62.5、125、187.5、250または375mgの抗体または抗原結合断片、特に、ソトロビマブまたはVIR-7832を投与することを含む。一部の実施形態では、方法は、小児被験体に、100mgの、200mg~250mgの範囲の用量の、または500mgの抗体または抗原結合断片、特に、ソトロビマブまたはVIR-7832を投与することを含む。一部の実施形態では、方法は、小児被験体に、100mg、150mg、225mg、または350mgの抗体または抗原結合断片、特に、ソトロビマブまたはVIR-7832を投与することを含む。一部の実施形態では、方法は、小児被験体に、500mgの抗体または抗原結合断片、特に、ソトロビマブまたはVIR-7832を、特に、小児被験体が、12歳またはそれより高齢であり、体重が40kgを超える場合に、投与することを含む。
【0165】
本開示のある特定の実施形態による抗体または抗原結合断片、特に、ソトロビマブまたはVIR-7832について、有効用量は、年齢によって異なり得る。一部の実施形態では、小児への投与は、77kgの成人のための500mgの成人用量から縮小され得る。
【0166】
一部の実施形態では、2歳未満であり、必要に応じて、出生時の在胎週齢少なくとも32週または出生時の在胎週齢32週未満でもある、小児被験体の場合、投与は、体重に基づき得る。
【0167】
一部の実施形態では、2歳またはそれより高齢の小児被験体の場合、投与は、年齢に基づき得る。
【0168】
一実施形態では、2歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週であり、体重が少なくとも2kgであるが4kg未満である小児被験体には、62.5mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、1.0mL、0.83mL、0.63mL、0.5mL、または0.42mLの体積であり得る。
【0169】
別の実施形態では、2歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週であり、体重が少なくとも4kgである小児被験体には、125mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、2.0mL、1.67mL、1.25mL、1.0mL、または0.83mLの体積であり得る。
【0170】
別の実施形態では、少なくとも2歳~6歳未満の小児被験体には、187.5mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、3.0mL、2.5mL、1.88mL、1.5mL、または1.25mLの体積であり得る。一部の実施形態では、2歳未満であるが体重が10kgを超える小児被験体にも、この用量が投与され得る。
【0171】
別の実施形態では、少なくとも6歳~12歳未満の小児被験体には、250mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、4.0mL、3.33mL、2.5mL、2.0mL、または1.66mLの体積であり得る。
【0172】
別の実施形態では、少なくとも12歳~18歳未満の小児被験体には、375mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、6.0mL、5mL、3.75mL、3.0mL、または2.5mLの体積であり得る。
【0173】
別の実施形態では、1歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週である小児被験体には、100mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、1.6ml、1.33mL、1mL、0.8mL、または0.67mLの体積であり得る。
【0174】
別の実施形態では、少なくとも1歳~12歳未満の小児被験体には、200から250mgまでの範囲の用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、3.2mL~4mL、2.67mL~3.33mL、2mL~2.5mL、1.6mL~2mL、1.33mL~1.67mLの範囲の体積であり得る。
【0175】
別の実施形態では、少なくとも12歳~18歳未満の小児被験体には、500mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、8mL、6.67mL、5mL、4mL、または3.33mLの体積であり得る。
【0176】
別の実施形態では、2歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週である小児被験体には、100mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、1.6mL、1.33mL、1mL、0.8mL、または0.67mLの体積であり得る。一部の実施形態では、体重が10kg未満であるいずれの小児対象にも、年齢に関係なく、この用量を投与することができる。
【0177】
別の実施形態では、少なくとも2歳~6歳未満の小児被験体には、150mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、2.4mL、2.0mL、1.5mL、1.2mL、または1mLの体積であり得る。
【0178】
別の実施形態では、少なくとも6歳~12歳未満の小児被験体には、225mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、3.6mL、3mL、2.25mL、1.8mL、または1.5mLの体積であり得る。
【0179】
別の実施形態では、少なくとも12歳~18歳未満の小児被験体には、350mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、5.6mL、4.67mL、3.5mL、2.8mL、または2.33mLの体積であり得る。
【0180】
一部の実施形態では、小児被験体(18歳未満の年齢である)の場合、投与は、年齢と体重の組合せに基づき得る。
【0181】
一部の実施形態では、2歳未満であり、体重が少なくとも2kgであるが5kg未満である小児被験体には、62.5mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、1.0mL、0.83mL、0.63mL、0.5mL、または0.42mLの体積であり得る。
【0182】
一部の実施形態では、2歳未満であり、体重が少なくとも5kgであるが15kg未満である小児被験体には、125mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、2.0mL、1.67mL、1.25mL、1.0mL、または0.83mLの体積であり得る。
【0183】
一部の実施形態では、2歳未満であり、体重が少なくとも15kgであるが40kg未満である小児被験体には、250mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、4.0mL、3.33mL、2.5mL、2.0mL、または1.66mLの体積であり得る。
【0184】
一部の実施形態では、少なくとも2歳~6歳未満であり、体重が少なくとも5kgであるが15kg未満である小児被験体には、125mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、2.0mL、1.67mL、1.25mL、1.0mL、または0.83mLの体積であり得る。
【0185】
一部の実施形態では、少なくとも2歳~6歳未満であり、体重が少なくとも15kgであるが40kg未満である小児被験体には、250mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、4.0mL、3.33mL、2.5mL、2.0mL、または1.66mLの体積であり得る。
【0186】
一部の実施形態では、少なくとも6歳~12歳未満であり、体重が少なくとも15kgであるが40kg未満である小児被験体には、250mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、4.0mL、3.33mL、2.5mL、2.0mL、または1.66mLの体積であり得る。
【0187】
一部の実施形態では、少なくとも6歳~12歳未満であり、体重が少なくとも40kgである小児被験体には、500mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、8mL、6.67mL、5mL、4mL、または3.33mLの体積であり得る。
【0188】
一部の実施形態では、少なくとも12歳~18歳であり、体重が少なくとも15kgであるが40kg未満である小児被験体には、250mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、4.0mL、3.33mL、2.5mL、2.0mL、または1.66mLの体積であり得る。
【0189】
一部の実施形態では、少なくとも12歳~18歳であり、体重が少なくとも40kgである小児被験体には、500mgの用量を投与することができ、さらに特に、この用量は、8mL、6.67mL、5mL、4mL、または3.33mLの体積であり得る。
【0190】
用量を、静脈内投与することができ、または筋肉内投与、特に、三角筋、大腿または臀部注射により投与することができる。筋肉内投与は、特に、小児被験体では、より高濃度の抗体または抗原結合断片をより低体積、例えば、上記実施形態における4つのより低体積のうちのいずれか、で投与することによって容易になり得る。三角筋に投与される用量は、2.5mL/注射、またはそれ未満であり得る。臀筋または大腿筋に投与される用量は、5.0mL/注射、またはそれ未満であり得る。
【0191】
一部の実施形態では、各被験体に、抗体または抗原結合断片の単一用量、例えば、単一用量のみを、投与することができる。
【0192】
単一用量を1回より多くの注射によって投与することができる。単一用量を投与するための複数回の注射の使用は、極低年齢もしくは極高齢の患者、または筋肉量が少ない者、ならびに高濃度製剤による恩恵も受ける他の患者への投与を容易にし得る。例えば、単一用量を1回より多くの三角筋注射により投与することができる。特に、それを三角筋、臀部(例えば、背側臀部もしくは腹側臀部)、または大腿(例えば、大腿前外側)部位各々への注射によって投与することができる。単一用量を異なる部位への注射、例えば、そのような背側臀部および腹側臀部注射、背側臀部および三角筋注射、背側臀部および大腿前外側注射、腹側臀部および三角筋注射、腹側臀部および大腿前外側注射、大腿前外側および三角筋注射、背側臀部、腹側臀部および大腿前外側注射、背側臀部、腹側臀部および三角筋注射、腹側臀部、大腿前外側および三角筋注射、背側臀部、腹側臀部、大腿前外側および三角筋注射、三角筋および臀部注射、三角筋および大腿注射、臀部および大腿注射、または三角筋、臀部および大腿注射によって投与することができる。
【0193】
一部の実施形態では、「用量」は、設定期間(例えば、1日未満、6時間未満、2時間未満)内に投与される抗体または抗原結合断片の設定量(例えば、250mgまたは500mg)であり得る。特定の実施形態では、用量は、1日未満に投与される設定量である。
【0194】
一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片を100mg/mLの濃度で提供することができる。この濃度を使用して、5mL、2.5mL、1.5mL、1.25mL、0.63mL、または0.5mLの体積を有する用量を提供することができる。これらの体積を有する用量を単一注射部位にまたは2カ所もしくはそれより多くの注射部位に投与することができる。
【0195】
一部の実施形態では、小児被験体は、体重が2kgまたはそれを超える早産新生児または正期産新生児であり得る。
【0196】
一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、投与前に約62.5mg/mLの濃度、投与前に約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約95mg/mL、約100mg/mL、約105mg/mL、約110mg/mL、約115mg/mL、約120mg/mL、約125mg/mL、約130mg/mL、約135mg/mL、約140mg/mL、約145mg/mL、または約150mg/mL、または投与前に約75mg/mL~約150mg/mL、約95mg/mL~約105mg/mL、もしくは約120mg/mL~約130mg/mLの範囲の任意の濃度を有し得る。
【0197】
一部の実施形態では、抗体は、62.5mg/mL~150mg/mLの範囲、75mg/mL~150mg/mLの範囲、100mg/mL~125mg/mLの範囲、95mg/mL~105mg/mLの範囲、または120mg/mL~130mg/mLの範囲の高濃度で提供される。
【0198】
一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、少なくとも62.5mg/mL、少なくとも65mg/mL、少なくとも70mg/mL、少なくとも75mg/mL、少なくとも80mg/mL、少なくとも85mg/mL、少なくとも90mg/mL、少なくとも95mg/mL、少なくとも100mg/mL、少なくとも105mg/mL、少なくとも110mg/mL、少なくとも115mg/mL、少なくとも120mg/mL、少なくとも125mg/mL、少なくとも130mg/mL、少なくとも135mg/mL、少なくとも140mg/mL、少なくとも145mg/mL、または少なくとも150mg/mLの高濃度で提供される。
【0199】
一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、最大で65mg/mL、70mg/mL、85mg/mL、80mg/mL、少なくとも85mg/mL、少なくとも90mg/mL、少なくとも95mg/mL、少なくとも100mg/mL、少なくとも105mg/mL、少なくとも110mg/mL、少なくとも115mg/mL、少なくとも120mg/mL、少なくとも125mg/mL、少なくとも130mg/mL、少なくとも135mg/mL、少なくとも140mg/mL、少なくとも145mg/mL、または少なくとも150mg/mLの高濃度で提供される。
【0200】
一部の実施形態では、抗体は、ソトロビマブであり得、それを62.5mg/mLの濃度での静脈内注入または筋肉内注射用に製剤化することができる。一部の実施形態では、抗体を患者への投与の前に希釈することができる。製剤は、透明な溶液、さらに特に、滅菌溶液であり得る。
【0201】
製剤は、少なくとも10mMのヒスチジン、少なくとも15mMのヒスチジン、少なくとも20mMのヒスチジン、少なくとも25mMのヒスチジン、10mM~25mMの範囲のヒスチジン、10mM~20mMの範囲のヒスチジン、15mM~20mMの範囲のヒスチジン、20mM~25mMの範囲のヒスチジン、または20mMのヒスチジンを含有し得る。
【0202】
製剤は、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、または少なくとも9%スクロース(w/v)、5%~9%、6%~9%、7%~9%、5%~7%、5%~8%、6%~7%、もしくは6%~8%の範囲のスクロース(w/v)、または7%スクロース(w/v)を含有し得る。
【0203】
製剤は、少なくとも0.02%、少なくとも0.03%、少なくとも0.04%、少なくとも0.05%、または少なくとも0.06%PS80(w/v)、0.02%~0.06%、0.02%~0.04%、もしくは0.04%~0.06%の範囲のPS80(w/v)、または0.04%PS80(w/v)を含有し得る。
【0204】
製剤は、少なくとも4mM、少なくとも4.5mM、少なくとも5mM、少なくとも5.5mM、もしくは少なくとも6mMのL-メチオニン、4mM~6mM、4mM~5mM、もしくは5mM~6mMの範囲のL-メチオニン、または5mMのL-メチオニンを含有し得る。
【0205】
製剤は、5.0~7.0、5.0~6.0、6.0~7.0、もしくは5.5~6.5の範囲のpH、または6.0のpHを有し得る。
【0206】
製剤は、20mMヒスチジン、7%スクロース(w/v)、0.04%PS80(w/v)、5mM L-メチオニンも含有し得、pH6.0であり得る。
【0207】
製剤は、保存剤を含有しないことがある。
【0208】
一部の実施形態では、ソトロビマブを、500mgのソトロビマブを収容している単回使用用10mLバイアルで、提供することができる。
【0209】
一部の実施形態では、各小児被験体に抗体または抗原結合断片の単一用量のみを投与することができる。
【0210】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、それぞれ、配列番号106、121、108、169、170および171の、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3アミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号113のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号168のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定のさらなる実施形態では、抗体または抗原結合断片は、M428LおよびN434S Fc変異(ソトロビマブ、別名VIR-7831)、ならびに/またはM428L、N434S、G236A、A330LおよびI332E Fc変異(VIR-7832)を含む。
【0211】
いくつかの基準が、SARS CoV-2感染に関連する疾患の罹患、伝播、進行の、および/または重症症状または死亡の、高いリスクの一因となると考えられる。これらは、年齢、職業、一般的健康、既存の健康状態;SARS-CoV-2に感染している、もしくは感染している疑いがある、もしくは感染するリスクが高い被験体との、濃厚接触;および生活習慣を含む。小児被験体における、特定のリスク因子としては、1歳未満の年齢、喘息または慢性肺疾患、糖尿病、遺伝的、神経学的または代謝の状態、鎌状赤血球症、生まれつきの心疾患、免疫抑制(ある特定の医学的状態に起因して弱体化した免疫系、または免疫系を弱める投薬を受けている)、重度心身障害(身体の多くの部分を冒す、または日常生活のために技術および他の有意なサポートに依存している、複数の慢性状態を有する小児)、および肥満(肥満は、CDC成長チャートに基づき年齢および性別の95パーセンタイル以上のボディーマスインデックス(kg/m2)と定義された)が挙げられる。一部の実施形態では、本開示に従って処置される小児被験体は、1つまたは複数のリスク因子を有する。
【0212】
一部の実施形態では、濃厚接触者は、(a)インデックス診断の前の7日間に発端者と一緒に住んでいた、および(b)発端者への最後の曝露(SARS-CoV-2に感染している人物との濃厚接触)から3日未満である、小児被験体を含む。
【0213】
ある特定の実施形態では、本開示に従って処置される小児被験体は、SARS-CoV-2用のワクチンを受けたことがある。一部の実施形態では、このワクチンは、例えば、小児被験体におけるワクチン後の感染または症状により、臨床診断または科学的もしくは規制基準により、効果がないと決定されている。ある特定の実施形態では、本開示に従って処置される小児被験体は、SARS-CoV-2用のワクチンを受けたことがない。ある特定の実施形態では、本開示に従って処置される小児被験体は、SARS-CoV-2のための、i)回復期血漿療法、ii)レムデシビル、ソホスブビル、アシクロビル、ジドブジン、モルヌピラビル、ニルマトレルビル、リトナビル、もしくはファビピラビル、もしくはブレキナル、デキサメタゾン、トシリズマブ、エテセビマブ、ロピナビル、レロンリマブ、ベブテロビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、またはこれらの任意の組合せ、あるいはi)とii)の両方を受けている、あるいは受けたことがある。
【0214】
ある特定の実施形態では、処置は、曝露前または曝露前後の予防として投与される。ある特定の実施形態では、処置は、軽度から中等度の疾患に罹患している小児被験体に投与され、例えば、静脈内投与されるかまたは筋肉内注射により投与され、これは外来患者の状況においてであり得る。ある特定の実施形態では、処置は、中等度から重度の疾患に罹患している小児被験体、例えば、入院を必要とする被験体に投与される。重度の疾患の続発症としては、呼吸不全;肺塞栓症および脳卒中につながる血栓塞栓性疾患;不整脈;ショック;またはこれらの任意の組合せを挙げることができる。ある特定の実施形態では、重度のCOVID-19は、(i)1日より長い酸素補給を必要とする低酸素血症(室内空気でのO2飽和度≦93%、もしくはPaO2/FiO2<300)または(ii)≧4L/分の酸素補給もしくは同等の処置を必要とする被験体を含む。
【0215】
一部の実施形態では、小児被験体は、重篤COVID-19に罹患しているか、またはそれに進行するリスクがある。重篤な疾患は、一般に、重度の疾患と比較して死亡リスクの増加を含む。一部の実施形態では、重篤COVID-19は、侵襲的機械的人工換気および体外式膜型人工肺(ECMO)の少なくとも一方を必要とする呼吸不全;ショック;ならびに多臓器機能不全/不全を含む。
【0216】
ある特定の実施形態では、小児被験体は、COVID-19で入院しており、これは、例えば、集中治療室(ICU)に入れられることまたは移されることを含み得る。
【0217】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、SARS-CoV-2に感染している小児被験体は、軽度から中等度のCOVID-19に罹患しており;発熱、咳、疲労、息切れもしくは呼吸困難、筋肉の痛み、悪寒、喉の痛み、鼻水、頭痛、胸痛、味覚および/もしくは臭覚の消失、ならびにはやり目(結膜炎)、倦怠感、ならびに画像診断での異常のうちのいずれか1つもしくは複数を経験しており;臨床評価もしくは画像診断による下気道疾患の証拠、および海抜ゼロでの室内空気で93パーセント(%)より高い(>)酸素飽和度(SaO2)を有し;SARS-CoV-2ウイルス試験の結果が陽性であり、ならびに/または重度のCOVID-19および/もしくは入院に進行するリスクが高く、例えば、ヒト小児被験体が、12~17歳であり、彼らの年齢および性別の値の≧85%のBMI、または鎌状赤血球症、先天性もしくは後天性心疾患、神経発達障害(例えば、脳性麻痺)、医療関連の技術依存(例えば、COVID-19に関係のない気管切開、胃瘻造設もしくは陽圧換気)、または管理のために日常の投薬を必要とする喘息、反応性気道もしくは他の慢性呼吸器疾患を有し;COVID-19による診断を最近(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日もしくは14日以内に)受けており、および/または症状開始から10日以内であり;または上述のもののいずれかの組合せを経験したことがある、もしくは経験している。
【0218】
一部の実施形態では、小児被験体は、COVID-19感染が、例えば、任意のタイプの気道試料で、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、例えば、RT-PCR)試験陽性による検査で確認された者である。一部の実施形態では、小児被験体は、末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)>94% 室温(RA)を有し、COVID-19の1つまたは複数の症状を≦120時間(5日間)経験したことがある。一部の実施形態では、本開示による治療を受けている小児被験体は、レムデシビル、ソホスブビル、アシクロビル、ジドブジン、モルヌピラビル、ニルマトレルビル、リトナビル、もしくはファビピラビル、もしくはブレキナル、デキサメタゾン、トシリズマブ、エテセビマブ、ロピナビル、レロンリマブ、ベブテロビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、またはこれらの任意の組合せを受けている、または受けたことがある。本開示の実施形態のいずれかでは、方法は、抗体、抗原結合断片、または組成物の単一用量を小児被験体に投与することを含み得る。したがって、本開示の組成物を投与する典型的な経路は、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、頬側、直腸、膣および鼻腔内経路を含むが、これらに限定されない。用語「非経口」は、本明細書で使用される場合、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入技法を含む。ある特定の実施形態では、投与は、経口、静脈内、非経口、胃内、胸膜内、肺内、直腸内、皮内、腹腔内、腫瘍内、皮下、局所、経皮、大槽内、髄腔内、鼻腔内、および筋肉内経路から選択される経路による投与を含む。特定の実施形態では、方法は、抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を小児被験体に経口投与することを含む。
【0219】
好ましい実施形態では、方法は、抗体、抗原結合断片、または組成物を小児被験体に静脈内または筋肉内投与することを含む。抗体または抗原結合断片の単一用量を、小児被験体に、30分、60分または90分にわたって静脈内投与することができる。筋肉内投与は、三角筋、大腿または臀部注射によることがある。具体的には、筋肉内投与を、背側臀部、腹側臀部もしくは大腿前外側、または三角筋位置(2歳またはそれより高齢の小児被験体の場合)に施すことができる。
【0220】
一部の実施形態では、小児対象は、軽度から中等度のCOVID-19に罹患している;重度のCOVID-19に罹患している;重度から重篤のCOVID-19に罹患している;症状の開始から7日未満または5日もしくはそれより少ない日数しか経過していない;症状の開始から7日またはそれより長く経過した;逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応または抗原SARS-CoV-2試験の結果が陽性であったことがある;投薬を必要とする糖尿病、肥満(肥満は、CDC成長チャートに基づき年齢および性別の95パーセンタイル以上のボディーマスインデックス(kg/m2)と定義された)、慢性腎疾患(推定糸球体濾過量<60mL/分/1.73m2)、うっ血性心不全(ニューヨーク心臓学会クラスIIもしくはそれより上)、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、慢性閉塞性の肺疾患、もしくは労作時の呼吸困難を伴う肺気腫の病歴)、および中等度から重度の喘息(小児被験体が、症状を制御するために吸入ステロイドを必要とする、もしくは過去1年以内に経口ステロイド治療を受けた)のうちの1つまたは複数に罹患している;あるいは上記のことの任意の組合せである。
【0221】
一部の実施形態では、小児被験体は、2歳未満であり、必要に応じて、出生時の在胎週齢少なくとも32週もしくは出生時の在胎週齢32週未満である;2歳~6歳未満である;6歳~12歳未満である;12歳~18歳未満である;軽度から中等度のCOVID-19に罹患している;重度のCOVID-19に罹患している;重度から重篤のCOVID-19に罹患している;症状の開始から7日未満しか経過していない;逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応または抗原SARS-CoV-2試験の結果が陽性であったことがある;1歳未満の年齢、真性糖尿病、ポンペ病、ムコ多糖症、糖原病、脂肪酸酸化障害、メープルシロップ尿症、有機酸血症、肥満、先天性心疾患、高血圧、心筋症、心不全、鎌状赤血球症、中等度から重度の喘息、慢性肺疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、発作性障害、全般的発達遅延、脳性麻痺、構造的脳欠損/奇形、原発性免疫不全、CD4+数<200細胞/mm3であるHIV感染、実質臓器もしくは骨髄移植、全身性コルチコステロイド、免疫抑制生物剤もしくは疾患修飾性抗リウマチ薬の長期使用、胃瘻造設もしくは空腸瘻造設依存、非経口栄養依存、気管切開依存、ベースライン酸素要求、CPAP/BiPAP/人工呼吸器サポートの使用、または他のベースライン重度心身障害、のうちの1つまたは複数を有する;体重が少なくとも2kgである、あるいはこれらの任意の組合せである。
【0222】
ある特定の実施形態では、方法は、抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を、小児被験体に、1回、投与することを含む。
【0223】
ある特定の実施形態では、方法は、抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を小児被験体に2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれより多くの回数投与することを含む。
【0224】
ある特定の実施形態では、方法は、抗体、抗原結合断片、または組成物を小児被験体に複数回投与することを含み、第2のまたは次に続く投与は、それぞれ、第1のまたは前の投与の少なくとも約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約24、約48、約74、約96時間後またはそれより後に行われる。
【0225】
ある特定の実施形態では、方法は、小児被験体がSARS-CoV-2に感染する前に少なくとも1回、抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を投与することを含む。
【0226】
ある特定の実施形態では、処置を受ける小児被験体は、SARS-CoV-2感染が検査で(例えば、PCR試験によって)確認された、18歳またはそれより高齢である。
【0227】
一部の実施形態では、小児被験体は、WHO臨床重症度スコア、9点順序尺度による定義に従って、グレード4(入院している;マスクもしくは鼻プロングによる酸素)、5(入院している;非侵襲的換気を用いている、もしくは高流量の酸素)、6(入院している;挿管および機械的人工換気)、または7(換気および追加の臓器サポート-昇圧薬、腎代替療法(RRT)、体外式膜型人工肺(ECMO))の臨床状態を有する。
【0228】
一部の実施形態では、小児被験体は、軽度から中等度のCOVID-19に罹患している。一部の実施形態では、小児被験体は、重度のCOVID-19に進行するリスクがある。一部の実施形態では、小児被験体への抗体、抗原結合断片、または組成物の投与後、小児被験体は、COVID-19による入院リスクが低下された状態になる。ある特定の実施形態では、小児被験体への抗体、抗原結合断片、または組成物の投与後、COVID-19による入院リスクは、10%もしくはそれより大きく、20%もしくはそれより大きく、30%もしくはそれより大きく、40%もしくはそれより大きく、50%もしくはそれより大きく、60%もしくはそれより大きく、70%もしくはそれより大きく、80%もしくはそれより大きく、または85%もしくはそれより大きく低下される。
【0229】
一部の実施形態では、小児被験体は、重度のCOVID-19に罹患しているか、またはそれに進行するリスクがあり、必要に応じて、重度のCOVID-19は、(i)1日より長い酸素補給を必要とする低酸素血症(室内空気でのO2飽和度≦93%、もしくはPaO2/FiO2<300)または(ii)≧4L/分の酸素補給もしくは同等の処置を必要とする小児被験体を含む。
【0230】
一部の実施形態では、小児被験体は、重篤COVID-19に罹患しているか、またはそれに進行するリスクがあり、必要に応じて、重篤COVID-19は、侵襲的機械的人工換気およびECMOの少なくとも一方を必要とする呼吸不全;ショック;ならびに多臓器機能不全/不全を含む。
【0231】
一部の実施形態では、小児被験体は、症状の開始から7日未満である。他の実施形態では、小児被験体は、症状の開始から7日であるか、またはそれを超えている。
【0232】
一部の実施形態では、小児被験体は、(i)SARS-CoV-2試験の結果が(任意の有効性が認められた試験、例えばRT-PCR、により任意の検体タイプで)陽性である;(ii)(1)グレード4もしくはグレード5の疾患と一致する酸素補給もしくは非侵襲性換気が必要と定義される重度のCOVID-19疾患で入院しているか、または(2)機械的人工換気を用いている者(グレード6もしくはグレード7の疾患)と定義される重篤のCOVID-19疾患で入院している;(iii)男性または女性であり、必要に応じて、(1)女性が、非妊娠可能女性(WONCBP)であるか、または(2)妊娠可能な女性(WOCBP)であり、避妊法を使用する。
【0233】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、SARS-CoV-2感染が確認された人物に濃厚接触したことがある、または濃厚接触することがある。
【0234】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、処置することは、SARS-CoV-2および/またはCOVID-19による感染を予防することを含み得る。ここに開示される実施形態のいずれかでは、処置することは、小児被験体におけるCOVID-19の進行を予防することを含み得る。ここに開示される実施形態のいずれかでは、処置することは、有症候性COVID-19の罹患および/または伝播を予防することを含み得る。ここに開示される実施形態のいずれかでは、処置することは、無症候性COVID-19の罹患および/または伝播を予防することを含み得る。ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、COVID-19に罹患するまたはそれが進行するリスクがあり得る。
【0235】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、処置することは、(1)咳、痰が出ること、喉の痛み、および息切れから選択される1つもしくは複数の急性呼吸器症状;または(2)38℃より高い発熱;(3)次の症状:疲労、筋肉痛/関節痛、悪寒、悪心/嘔吐、下痢、および臭覚脱失/味覚異常のうちの2つもしくはそれより多くの症状を、予防または低減することを含み得る。
【0236】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、処置することは、次の症状:38℃より高い発熱、悪寒、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、筋肉痛、嗅覚または味覚の変化、鼻閉/鼻漏、嘔吐、下痢、労作時の息切れのうちの1つまたは複数を、予防または低減することを含み得る。
【0237】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、処置することは、次の症状:38℃より高い発熱、悪寒、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、関節もしくは筋肉痛、嗅覚もしくは味覚の変化、嘔吐、下痢、息切れ、食欲不振もしくは摂食不良、鼻閉/鼻水、嗜眠のうちの1つまたは複数を、予防または低減することを含み得る。
【0238】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体、抗原結合断片、または組成物を投与することは、静脈内注入を含み得る。ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体、抗原結合断片、または組成物を投与することは、筋肉内注射を含み得る。
【0239】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、軽度から中等度のSARS-2-CoVに感染している(例えば、軽度から中等度のCOVID-19に罹患している)ことがあり、必要に応じて、重度の疾患に進行するリスクがあり得る。
【0240】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、(i)12歳またはそれより高齢であり得、(ii)SARS-CoV-2感染が確認された人物と最後に接触したのが組成物の投与3日前以降であり得る。
【0241】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、軽度から中等度のCOVID-19に罹患しており、方法は、抗体、抗原結合断片、または組成物の単一用量を小児被験体に筋肉内投与することを含む。
【0242】
一部の実施形態では、(i)小児被験体は、12歳またはそれより高齢であり、COVID-19の進行リスクが高い、および/または(ii)小児被験体は、SARS-CoV-2試験の結果(例えば、PCR試験による)が陽性であり、室内空気での酸素飽和度≧94%を有し、COVID-19症状を有し、症状の開始から7日未満または7日である。
【0243】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、(i)小児被験体は、12歳またはそれより高齢であり得、COVID-19の進行リスクが高い、および(ii)小児被験体は、SARS-CoV-2試験の結果(例えば、PCR試験による)が陽性であり得、室内空気での酸素飽和度≧94%を有し、COVID-19症状を有し、症状の開始から7日未満または7日である。
【0244】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、入院しておらず、(i)入院するおよび/または(ii)COVID-19が進行するリスクが高い。
【0245】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、12歳もしくはそれより高齢であり得、必要に応じて、COVID-19が進行するリスクが高いことがあり得る。ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、SARS-CoV-2試験の結果が陽性であったことがあり、室内空気での酸素飽和度≧94%を有し、COVID-19症状を有し、症状の開始から7日未満または7日である。
【0246】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、その抗体または抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドが安定にトランスフェクトされた細胞の非クローンプールから得られた。ここに開示される実施形態のいずれかでは、抗体または抗原結合断片は、クローンマスターセルバンクから得られた。マスターセルバンク(MCB)は、元の抗体/抗原結合断片産生細胞系から産生される。MCBは、一般に、製造プロセス中に細胞系が継代または処理される全回数をなくすことにより遺伝的多様性および可能性のある夾雑を防止するために複数のバイアルで凍結保存される。MCBは、好ましくは、細菌、真菌およびマイコプラズマなどの夾雑物について試験され、これらの夾雑物はMCB中に存在すべきではない。
【0247】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、SARS-CoV-2に感染していると診断されたもしくは感染している疑いがある被験体の、家族の一員もしくは他の濃厚接触者である;過体重もしくは医学的に言って肥満である;喫煙者である、または喫煙者であった;慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患している、もしくは罹患していた;喘息である(例えば、中等度から重度の喘息に罹患している);自己免疫疾患もしくは状態(例えば、糖尿病)に罹患している;免疫系が損なわれている、もしくは免疫系が枯渇している(例えば、AIDS/HIV感染、がん、例えば血液がん、リンパ球除去療法、例えば化学療法、骨髄もしくは臓器移植、または遺伝性免疫状態に起因して);慢性肝疾患に罹患している;心血管疾患に罹患している;および/または肺もしくは心臓に欠陥がある;および/または他人に極めて接近して、例えば、工場、配送センター、病院環境などの場所で、働いている、もしくは別様に時間を過ごす。ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、SARS-CoV-2のワクチンを受けたことがあり、ワクチンは、例えば、小児被験体におけるワクチン後の感染または症状により、臨床診断または科学的もしくは規制基準により、あるいはワクチンが当初試験されたバリアントよりもワクチンの効果が低いまたはワクチンが効かないSARS-CoV-2バリアントによる感染により、効果がないと決定されている。ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、SARS-CoV-2のワクチンを受けたことがない。
【0248】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、SARS-CoV-2のための、i)回復期血漿療法、ii)レムデシビル、ソホスブビル、アシクロビル、ジドブジン、モルヌピラビル、ニルマトレルビル、リトナビル、もしくはファビピラビル、もしくはブレキナル、デキサメタゾン、トシリズマブ、エテセビマブ、ロピナビル、レロンリマブ、ベブテロビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、またはこれらの任意の組合せ、あるいはi)とii)の両方を受けている、あるいは受けたことがある。ここに開示される実施形態のいずれかでは、処置は、曝露前または曝露前後の予防を含む。ここに開示される実施形態のいずれかでは、処置は、軽度から中等度の疾患に罹患している小児被験体に、必要に応じて外来患者の状況で、投与される。ここに開示される実施形態のいずれかでは、処置は、中等度から重度の疾患に罹患している小児被験体、例えば、入院を必要とする小児被験体に投与される。ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、COVID-19で入院している。
【0249】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、SARS-CoV-2に感染している小児被験体は、軽度から中等度のCOVID-19に罹患している;発熱、咳、疲労、息切れもしくは呼吸困難、筋肉の痛み、悪寒、喉の痛み、鼻水、頭痛、胸痛、味覚および/もしくは臭覚の消失、ならびにはやり目(結膜炎)、倦怠感、ならびに画像診断での異常のうちのいずれか1つもしくは複数を経験している;臨床評価もしくは画像診断による下気道疾患の証拠、および海抜ゼロでの室内空気で93パーセント(%)より高い(>)酸素飽和度(SaO2)を有し、SARS-CoV-2ウイルス試験の結果が陽性であり、ならびに/または重度のCOVID-19および/もしくは入院に進行するリスクが高い、例えば、ヒトは、慢性腎疾患に罹患している;糖尿病に罹患している;免疫抑制疾患に罹患しており、免疫抑制処置を受けている;ならびに/あるいは12~17歳であり、彼らの年齢および性別の値の≧85%のBMIを有するか、あるいは鎌状赤血球症、先天性もしくは後天性心疾患、神経発達障害(例えば、脳性麻痺)、医療関連の技術依存(例えば、COVID-19に関係のない気管切開、胃瘻造設もしくは陽圧換気)、または管理のために日常の投薬を必要とする喘息、反応性気道もしくは他の慢性呼吸器疾患に罹患している;COVID-19の診断を最近(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日もしくは14日以内に)受けており、および/または症状開始から10日以内である;あるいは上述のもののいずれかの組合せを経験したことがある、または経験している。
【0250】
ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、例えば、RT-PCR)試験陽性により、例えば、任意のタイプの気道試料で、COVID-19感染が検査で確認された者である。ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)>94% 室温(RA)を有し、COVID-19の1つまたは複数の症状を≦120時間(5日間)経験したことがある。ここに開示される実施形態のいずれかでは、小児被験体は、SARS-CoV-2のための、i)回復期血漿療法、ii)レムデシビル、ソホスブビル、アシクロビル、ジドブジン、モルヌピラビル、ニルマトレルビル、リトナビル、もしくはファビピラビル、もしくはブレキナル、デキサメタゾン、トシリズマブ、エテセビマブ、ロピナビル、レロンリマブ、ベブテロビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、またはこれらの任意の組合せ、iii)酸素補給または呼吸療法、あるいはi)、ii)およびiii)のうちの2つもしくはそれより多くを、さらに受けている、あるいは受けたことがある、受けている、あるいは受けたことがある。
【0251】
一部の実施形態では、以下のうちの1つまたは複数は、本開示による治療を受ける小児被験体に適用されない:筋肉内注射を受けることが禁忌となるあらゆる状態、例えば、凝固障害、出血性素因、または血小板減少症;抗体組成物中に存在するいずれかの構成要素に対する公知のアレルギーまたは過敏性;モノクローナル抗体による以前のアナフィラキシーまたはモノクローナル抗体に対する以前の過敏症;COVID-19ワクチンを以前に受けたことがある;COVID-19生存者からのSARS-CoV-2高力価静注用免疫グロブリン(hIVIG)を以前に受けたことがある;回復したCOVID-19患者からの回復期血漿または抗SARS-CoV-2 mAbを以前に受けたことがある;妊娠しているまたは授乳中の女性;アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および/またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)>正常上限(ULN)5回;ステージ4重度慢性腎疾患、または透析を必要とすること(すなわち、推定糸球体濾過量<30mL/分/1.73m2);安静時の息切れ、または呼吸促迫、または酸素補給を必要とすることにより定義される、重度のCOVID-19と一致する症状を有する;免疫抑制化学療法または免疫療法を受けているがん患者、過去3カ月以内に固形臓器移植または同種幹細胞移植を受けた、何らかの心臓もしくは肺移植歴がある、または高用量の長期全身性コルチコステロイド(2週間を超える期間にわたって1日に≧20mgのプレドニゾンもしくは全身性等価物に相当する)を受けた者を含むがこれらに限定されない、重度免疫不全の参加者;糖尿病(投薬を必要とする)、慢性腎疾患(すなわち、Modification of Diet in Renal Disease(MDRD)研究により決定される、eGFR<60)、慢性肝疾患(例えば、肝硬変)、うっ血性心不全(ニューヨーク心臓学会(NYHA)クラスIIもしくはそれより上)、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、慢性閉塞性の肺疾患、もしくは労作時の呼吸困難を伴う肺気腫の病歴)、および中等度から重度の喘息(参加者が、症状を制御するために吸入ステロイドを必要とする、もしくは過去1年以内に経口ステロイド治療を受けた)に罹患していた;モノクローナル抗体による以前のアナフィラキシーまたはモノクローナル抗体に対する以前の過敏症;終末臓器機能不全、例えば、a.脳卒中、b.髄膜炎、c.脳炎、d.脊髄炎、e.心筋梗塞、f.心筋炎、g.心膜炎、h.症候性うっ血性心不全(ニューヨーク心臓学会[NYHA]クラIII~IV)、i.動脈もしくは深部静脈血栓症または肺塞栓症;末梢臓器不全カテゴリー、例えば、a.高流量酸素、非侵襲的換気、または侵襲的機械的人工換気を必要とすること、b.体外式膜型人工肺(ECMO)、c.機械的循環補助(例えば、大動脈内バルーンポンプ、心室補助デバイス)、d.昇圧剤治療、e.この入院中の腎代替療法(RRT)の開始(すなわち、長期RRTを受けている患者ではない);脳卒中;髄膜炎;脳炎;脊髄炎;心筋虚血;心筋炎;心膜炎;症候性うっ血性心不全;動脈もしくは深部静脈血栓症または肺塞栓症;および侵襲的機械的人工換気、ECMO(体外式膜型人工肺)、機械的循環補助、昇圧剤治療、またはこの入院中の腎代替療法の開始(すなわち、長期腎代替療法を受けている患者ではない)を現在または差し迫って必要としていること。
【0252】
本開示の抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞または組成物を含む組成物を、1つもしくは複数の他の治療剤の投与と同時に、その前に、またはその後に投与することもできる。そのような併用療法は、本発明の化合物と1つまたは複数の追加の活性薬剤とを含有する単一の医薬投与製剤の投与はもちろん、本開示の抗体または抗原結合断片を含む組成物および各活性薬剤を含む組成物のその独自の別個の投与製剤での投与も含み得る。例えば、本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合断片と他の活性薬剤とを、患者に、錠剤もしくはカプセル剤などの単一経口投与組成物で一緒に投与することができ、または各薬剤を別個の経口投与製剤で投与することができる。同様に、本明細書に記載の抗体もしくは抗原結合断片と他の活性薬剤とを、小児被験体に、単一非経口投与組成物で、例えば、食塩溶液もしくは他の生理的に許容される溶液で、一緒に投与することができ、または各薬剤を別個の非経口投与製剤で投与することができる。別個の投与製剤が使用される場合、抗体または抗原結合断片を含む組成物と、1つまたは複数の追加の活性薬剤を含む組成物とを、本質的に同時に、すなわち並行して、投与することができ、または別々にずらした時間で、すなわち、逐次的にかつ任意の順序で投与することができ、併用療法は、これらのレジメン全てを含むと理解される。
【0253】
ある特定の実施形態では、本開示の1つもしくは複数の抗SARS-CoV-2抗体(または1つもしくは複数の核酸、宿主細胞、ベクターもしくは組成物)と、1つもしくは複数の抗炎症剤および/または1つもしくは複数の抗ウイルス剤とを含む、併用療法が提供される。特定の実施形態では、1つまたは複数の抗炎症剤は、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾンなどのような、コルチコステロイドを含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の抗炎症剤は、例えば、IL6に結合する抗体(例えば、シルツキシマブ)、またはIL-6Rに結合する抗体(例えば、トシリズマブ)、またはIL-1β、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、FGF、G-CSF、GM-CSF、IFN-γ、IP-10、MCP-1、MIP-1A、MIP1-B、PDGR、TNF-αもしくはVEGFに結合する抗体などの、サイトカインアンタゴニストを含む。一部の実施形態では、抗炎症剤、例えば、ルキソリチニブおよび/またはアナキンラが使用される。一部の実施形態では、1つまたは複数の抗ウイルス剤は、例えば、レムデシビル、ソホスブビル、アシクロビル、ジドブジン、モルヌピラビル、ニルマトレルビル、リトナビルまたはファビピラビル、およびブレキナルなどの、ヌクレオチドアナログまたはヌクレオチドアナログプロドラッグを含む。特定の実施形態では、抗ウイルス剤は、ロピナビル、リトナビル、ファビピラビル、レロンリマブまたはこれらの任意の組合せを含む。本開示の併用療法で使用するための他の抗炎症剤は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)を含む。そのような併用療法において、1つまたは複数の抗体(または1つもしくは複数の核酸、宿主細胞、ベクター、もしくは組成物)と、1つもしくは複数の抗炎症剤および/または1つのまたはより多くの抗ウイルス剤(one or the more antiviral agent)とを、任意の順序および任意の順番で、または一緒に投与することができることは、理解される。
【0254】
一部の実施形態では、本開示は、任意の組合せで、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片、および上記併用療法剤のうちの1つまたは複数(例えば、抗SARS-CoV抗体または抗原結合断片、およびヌクレオチドアナログまたはヌクレオチドアナログプロドラッグ)を含む、組成物を提供する。
【0255】
一部の実施形態では、抗体(または1つもしくは複数の核酸、宿主細胞、ベクター、もしくは組成物)は、1つもしくは複数の抗炎症剤および/または1つもしくは複数の抗ウイルス剤を以前に受けたことがある小児被験体に投与される。一部の実施形態では、1つもしくは複数の抗炎症剤および/または1つもしくは複数の抗ウイルス剤は、抗体(または1つもしくは複数の核酸、宿主細胞、ベクター、もしくは組成物)を以前に受けたことがある小児被験体に投与される。
【0256】
ある特定の実施形態では、本開示の2つまたはそれより多くの抗SARS-CoV-2抗体を含む併用療法が、提供される。方法は、第1の抗体を、第2の抗体を受けたことがある小児被験体に投与することを含むことができ、または2つまたはそれより多くの抗体を一緒に投与することを含むことができる。例えば、特定の実施形態では、方法は、小児被験体に、(a)小児被験体が第2の抗体もしくは抗原結合断片を受けたことがある場合に第1の抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;(b)小児被験体が第1の抗体もしくは抗原結合断片を受けたことがある場合に第2の抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;または(c)第1の抗体もしくは抗原結合断片および第2の抗体もしくは抗原結合断片を投与することを含む方法が、提供される。
【0257】
関連態様では、本開示の抗体、抗原結合断片、ベクター、宿主細胞、および組成物の使用が、提供される。
【0258】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物のいずれかが、小児被験体におけるSARS-CoV-2感染および/またはCOVID-19を処置する方法(例えば、本開示の方法のいずれか)において使用するために提供される。
【0259】
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される任意の抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片または任意の組成物(1つもしくは複数の核酸、宿主細胞、もしくはベクターを含む)を含むキットをさらに提供する。キットは、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片または組成物を小児被験体に投与するための使用説明書をさらに含み得る。キットは、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片または組成物を小児被験体に投与するためのデバイス(例えば、注射器または吸入器)をさらに含み得る。一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片または組成物は、エアロゾルの形態であり、キットは、エアロゾル送達に使用されるコンテナ、アクチベーター、バルブ、サブコンテナなどのうちの少なくとも1つを含み、これらが一緒にキットを形成し得る。ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合断片、または組成物のいずれかが、小児被験体におけるSARS-CoV-2感染および/またはCOVID-19を処置するための医薬を製造または調製する方法において使用するために提供される。
【0260】
本開示は、以下の実施形態も提供する。
【0261】
実施形態1.小児被験体におけるSARS-CoV-2感染を処置する方法であって、(A)(i)配列番号106に記載される相補性決定領域(CDR)H1アミノ酸配列と、配列番号121に記載されるCDRH2アミノ酸配列と、配列番号108に記載されるCDRH3アミノ酸配列とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号169に記載されるCDRL1アミノ酸配列と、配列番号170に記載されるCDRL2アミノ酸配列と、配列番号171に記載されるCDRL3アミノ酸配列とを含む、軽鎖可変ドメイン(VL);(B)(i)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列の、CDRH1とCDRH2とCDRH3とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号168に記載されるアミノ酸配列の、CDRL1とCDRL2とCDRL3とを含む、軽鎖可変領域;または(C)(i)配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる、軽鎖可変領域を含む、SARS-CoV-2中和抗体または抗原結合断片を含む組成物の単一用量を小児被験体に投与することを含む方法。
【0262】
実施形態2.小児被験体におけるSARS-CoV-2感染を処置する方法であって、(i)SARS-CoV-2中和抗体もしくは抗原結合断片の、または(ii)(a)抗体もしくは抗原結合断片と(ii)(b)薬学的に許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤とを含む組成物の、有効量を小児被験体に投与することを含み、抗体または抗原結合断片が、(A)(i)配列番号106に記載される相補性決定領域(CDR)H1アミノ酸配列と、配列番号121に記載されるCDRH2アミノ酸配列と、配列番号108に記載されるCDRH3アミノ酸配列とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号169に記載されるCDRL1アミノ酸配列と、配列番号170に記載されるCDRL2アミノ酸配列と、配列番号171に記載されるCDRL3アミノ酸配列とを含む、軽鎖可変ドメイン(VL);(B)(i)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列の、CDRH1とCDRH2とCDRH3とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号168に記載されるアミノ酸配列の、CDRL1とCDRL2とCDRL3とを含む、軽鎖可変領域;または(C)(i)配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる、軽鎖可変領域を含む、方法。
【0263】
実施形態3:実施形態1に記載の抗体もしくは抗原結合断片または実施形態2に記載の組成物の単一用量のみを小児被験体に投与することを含む、実施形態1または実施形態2に記載の方法。
【0264】
実施形態4:VHが、配列番号113に記載されるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0265】
実施形態5:VHが、配列番号105に記載されるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0266】
実施形態6:抗体または抗原結合断片が、Fcポリペプチドまたはその断片をさらに含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0267】
実施形態7:抗体または抗原結合断片が、IgG、IgA、IgM、IgE、またはIgDアイソタイプである、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0268】
実施形態8:抗体または抗原結合断片が、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるIgGアイソタイプである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0269】
実施形態9:抗体または抗原結合断片が、IgG1アイソタイプである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0270】
実施形態10:Fcポリペプチドまたはその断片が、以下の変異:(i)M428L/N434S;または(ii)M428L/N434S/G236A/A330L/I332Eを含み、アミノ酸残基の番号付けが、EU番号付けシステムに従う、実施形態6~9のいずれか1つに記載の方法。
【0271】
実施形態11:抗体または抗原結合断片が、配列番号173または265のCH1~CH3アミノ酸配列、および配列番号174のCLアミノ酸配列を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0272】
実施形態12:抗体または抗原結合断片が、配列番号175または266のCH1~CH3アミノ酸配列、および配列番号174のCLアミノ酸配列を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0273】
実施形態13:抗体または抗原結合断片が、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含み、i)重鎖ポリペプチドが、配列番号113に記載されるVHアミノ酸配列、および配列番号173または265に記載されるCH1~CH3アミノ酸配列を含み;(ii)軽鎖が、配列番号168に記載されるVLアミノ酸配列、および配列番号174に記載されるCLアミノ酸配列を含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0274】
実施形態14:抗体または抗原結合断片が、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含み、(i)重鎖ポリペプチドが、配列番号113に記載されるVHアミノ酸配列、および配列番号175または266に記載されるCH1~CH3アミノ酸配列を含み;(ii)軽鎖が、配列番号168に記載されるVLアミノ酸配列、および配列番号174に記載されるCLアミノ酸配列を含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0275】
実施形態15:小児被験体が、(i)2歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週である;(ii)2歳~18歳未満である、(iii)2歳~6歳未満である;(iv)6歳~12歳未満である;(v)12歳~18歳未満である;(vi)軽度から中等度のCOVID-19に罹患している;(vii)症状の開始から7日未満しか経過していない;(viii)逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応または抗原SARS-CoV-2試験の結果が陽性であったことがある;(ix)1歳未満の年齢、真性糖尿病、ポンペ病、ムコ多糖症、糖原病、脂肪酸酸化障害、メープルシロップ尿症、有機酸血症、肥満(例えば、≧2歳の小児についての当該国の成長チャートに基づいて[または入手できない場合、CDCもしくはWHO成長チャートにそれぞれ基づいて]年齢および性別の95パーセンタイル以上のボディーマスインデックス(kg/m2)と定義される)、先天性心疾患、高血圧、心筋症、心不全、鎌状赤血球症、中等度から重度の喘息、慢性肺疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、発作性障害、全般的発達遅延、脳性麻痺、構造的脳欠損/奇形、原発性免疫不全、CD4+数<200細胞/mm3であるHIV感染、実質臓器もしくは骨髄移植;全身性コルチコステロイド(≧2週間にわたって摂取される、体重に基づいて≧0.5mg/kg/日、または≧20mg/日のプレドニゾン等価物のどちらか[2つのうちのどちらか低いほうの用量]により定義される)、免疫抑制生物剤(例えば、リツキシマブ)、疾患修飾性抗リウマチ薬(例えば、アザチオプリン、メトトレキサート、レフルノミド)の長期使用;胃瘻造設もしくは空腸瘻造設依存、非経口栄養依存、気管切開依存、ベースライン酸素要求、CPAP/BiPAP/人工呼吸器サポートの使用、または他のベースライン重度心身障害、のうちのいずれか1つまたは複数を有する;(x)体重が2kgまたはそれを超える早産新生児または正期産新生児である;あるいは(xi)(i)~(x)の任意の組合せである、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0276】
実施形態16:抗体、抗原結合断片、または組成物を小児被験体に静脈内投与することを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0277】
実施形態17:抗体、抗原結合断片、または組成物を、小児被験体に、30分、60分または90分にわたって静脈内投与することを含む、実施形態16に記載の方法。
【0278】
実施形態18:抗体、抗原結合断片、または組成物を小児被験体に筋肉内投与することを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0279】
実施形態19:抗体、抗原結合断片、または組成物を、小児被験体に、三角筋または臀部(例えば、背側臀部、腹側臀部)または大腿(例えば、大腿前外側)注射により投与することを含み、必要に応じて、抗体、抗原結合断片、または組成物が、背側臀部、腹側臀部、または大腿前外側に投与され、小児被験体が、2歳未満である、実施形態18に記載の方法。
【0280】
実施形態20:抗体または抗原結合断片を、小児被験体に、62.5mg以下、100mg以下、125mg以下、150mg以下、187.5mg以下、200mg以下、225mg以下、250mg以下、300mg以下、350mg以下、375mg以下、400mg以下、450mg以下、または500mg以下の用量で投与することを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0281】
実施形態21:抗体または抗原結合断片を、小児被験体に、約50mg~約500mgの範囲、または約50mg~約250mgの範囲、または約50mg~100mgの範囲、または約100mg~約500mgの範囲、または約250mg~約500mgの範囲、または約62.5mg~約500mgの範囲、または約62.5mg~約375mgの範囲、または約100mg~約350mgの範囲の用量で投与することを含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0282】
実施形態22:50、67.5、75、100、125、150、175、187.5、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475または500mgの抗体または抗原結合断片を小児被験体に投与することを含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0283】
実施形態23:62.5、125、187.5、250または375mgの抗体または抗原結合断片を小児被験体に投与することを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0284】
実施形態24:100mg、200mg~250mgの範囲、または500mgの抗体または抗原結合断片を小児被験体に投与することを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0285】
実施形態25:100mg、150mg、225mg、または350mgの抗体または抗原結合断片を小児被験体に投与することを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0286】
実施形態26:(i)2歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週であり、体重が少なくとも2kgであるが4kg未満である小児被験体に、62.5mgの抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;(ii)2歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週であり、体重が少なくとも4kgである小児被験体に、125mgの抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;(iii)2歳~6歳未満である小児被験体に、187.5mgの抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;(iv)6歳~12歳未満である小児被験体に、250mgの抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;および/または(v)12歳~18歳未満である小児被験体に、375mgの抗体もしくは抗原結合断片を投与することを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0287】
実施形態27:(i)62.5mgの抗体もしくは抗原結合断片を1.0mL、0.83mL、0.63mL、0.5mL、もしくは0.42mLの体積で投与すること;(ii)125mgの抗体もしくは抗原結合断片を2.0mL、1.67mL、1.25mL、1.0mL、もしくは0.83mLの体積で投与すること;(iii)187.5mgの抗体もしくは抗原結合断片を3.0mL、2.5mL、1.88mL、1.5mL、もしくは1.25mLの体積で投与すること;(iv)250mgの抗体もしくは抗原結合断片を4.0mL、3.33mL、2.5mL、2.0mL、もしくは1.66mLの体積で投与すること;および/または(v)375mgの抗体もしくは抗原結合断片を6.0mL、5mL、3.75mL、3.0mL、もしくは2.5mLの体積で投与することをさらに含む、実施形態26に記載の方法。
【0288】
実施形態28:(i)1歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週である小児被験体に、100mgの抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;(ii)少なくとも1歳~12歳未満の小児被験体に200から250mgまでの範囲の抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;および/または(iii)少なくとも12歳~18歳未満である小児被験体に、500mgの抗体もしくは抗原結合断片を投与することを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0289】
実施形態29:(i)100mgの抗体もしくは抗原結合断片を1.6ml、1.33mL、1mL、0.8mL、もしくは0.67mLの体積で投与すること;(ii)200から250mgまでの範囲の抗体もしくは抗原結合断片を3.2mL~4mL、2.67mL~3.33mL、2mL~2.5mL、1.6mL~2mL、1.33mL~1.67mLの範囲の体積で投与すること;および/または(iii)500mgの抗体もしくは抗原結合断片を8mL、6.67mL、5mL、4mL、もしくは3.33mLの体積で投与することをさらに含む、実施形態28に記載の方法。
【0290】
実施形態30:(i)2歳未満であるが出生時の在胎週齢少なくとも32週である小児被験体に、100mgの抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;(ii)少なくとも2歳~6歳未満である小児被験体に、150mgの抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;(iii)少なくとも6歳~12歳未満である小児被験体に、225mgの抗体もしくは抗原結合断片を投与すること;および/または(iv)少なくとも12歳~18歳未満である小児被験体に、350mgの抗体もしくは抗原結合断片を投与することを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0291】
実施形態31:(i)100mgの抗体もしくは抗原結合断片を1.6mL、1.33mL、1mL、0.8mL、もしくは0.67mLの体積で投与すること;(ii)150mgの抗体もしくは抗原結合断片を2.4mL、2.0mL、1.5mL、1.2mL、もしくは1mLの体積で投与すること;(iii)225mgの抗体もしくは抗原結合断片を3.6mL、3mL、2.25mL、1.8mL、もしくは1.5mLの体積で投与すること;および/または(iv)350mgの抗体もしくは抗原結合断片を5.6mL、4.67mL、3.5mL、2.8mL、もしくは2.33mLの体積で投与することをさらに含む、実施形態30に記載の方法。
【0292】
実施形態32:小児被験体の体重が40kgまたはそれ未満である、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0293】
実施形態33:少なくとも12歳であり、体重が40kgを超える小児被験体に、500mgの抗体もしくは抗原結合断片を投与することを含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0294】
実施形態34:抗体、抗原結合断片、または組成物を小児被験体に1回投与することを含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0295】
実施形態35.抗体、抗原結合断片、または組成物を小児被験体に複数回投与することを含み、第2のまたは次に続く投与が、第1のまたは先行する投与の約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約24、約48、約74、または約96時間後に行われる、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0296】
実施形態36.小児被験体が、PCRまたは他の核酸増幅検査によりSARS-CoV-2感染が確認された者である、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
【0297】
実施形態37.小児被験体が、軽度から中等度のCOVID-19に罹患している、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法。
【0298】
実施形態38.小児被験体が、室内空気でSpO2≧94%、ならびに発熱、悪寒、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、関節もしくは筋肉痛、嗅覚もしくは味覚の変化、嘔吐、下痢、息切れ、食欲不振もしくは摂食不良、鼻閉/鼻水、および嗜眠のうちの1つまたは複数を有するが、1日より長い酸素補給を必要とし、≧4L/分の酸素補給もしくは同等の処置を必要とする低酸素血症(室内空気でのO2飽和度≦93%、もしくはPaO2/FiO2<300)、侵襲的機械的人工換気もしくはECMOの少なくとも一方を必要とする呼吸不全、ショック、多臓器機能不全/不全を有さない、実施形態37に記載の方法。
【0299】
実施形態39:小児被験体が、重度のCOVID-19に進行するリスクがある、実施形態37に記載の方法。
【0300】
実施形態40:重度のCOVIDが、(i)1日より長い酸素補給を必要とする低酸素血症(室内空気でのO2飽和度≦93%、またはPaO2/FiO2<300)または(ii)≧4L/分の酸素補給もしくは同等の処置を必要とする小児被験体を含む、実施形態39に記載の方法。
【0301】
実施形態41:小児被験体への抗体、抗原結合断片、または組成物の投与後、小児被験体が、COVID-19による入院リスクが低下された状態になる、実施形態37に記載の方法。
【0302】
実施形態42:小児被験体への抗体、抗原結合断片、または組成物の投与後、小児被験体のCOVID-19による入院リスクが10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または85%低下される、実施形態41に記載の方法。
【0303】
実施形態43:小児被験体が、SARS-CoV-2感染症状またはCOVID-19症状の開始から7日未満である、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
【0304】
実施形態44:小児被験体が、SARS-CoV-2感染症が確認された人物に濃厚接触した、または濃厚接触している、実施形態1~43のいずれか1つに記載の方法。
【0305】
実施形態45:処置することが、SARS-CoV-2による感染を予防することおよび/またはCOVID-19を予防することを含む、実施形態1~35または44のいずれか1つに記載の方法。
【0306】
実施形態46:処置することが、小児被験体におけるCOVID-19の進行を予防することを含む、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法。
【0307】
実施形態47:処置することが、症候性COVID-19の罹患および/または伝播を予防することを含む、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法。
【0308】
実施形態48:処置することが、無症候性COVID-19の罹患および/または伝播を予防することを含む、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法。
【0309】
実施形態49:小児被験体が、COVID-19に罹患するまたはそれが進行するリスクがある、実施形態1~48のいずれか1つに記載の方法。
【0310】
実施形態50.処置することが、(1)咳、痰が出ること、喉の痛み、および息切れから選択される1つもしくは複数の急性呼吸器症状;または(2)38℃より高い発熱;(3)次の症状:疲労、筋肉痛/関節痛、悪寒、悪心/嘔吐、下痢、および臭覚脱失/味覚異常のうちの2つもしくはそれより多くの症状を予防または低減することを含む、実施形態1~49のいずれか1つに記載の方法。
【0311】
実施形態51:処置することが、次の症状:38℃より高い発熱;悪寒、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、関節もしくは筋肉痛、嗅覚もしくは味覚の変化、嘔吐、下痢、息切れ、食欲不振もしくは摂食不良、鼻閉/鼻水、嗜眠のうちの1つまたは複数を、予防または低減することを含む、実施形態1~50のいずれか1つに記載の方法。
【0312】
実施形態52:小児被験体が、SARS-CoV-2試験の結果が陽性であったことがあり、室内空気での酸素飽和度≧94%を有し、COVID-19症状を有し、症状の開始から7日未満または7日である、実施形態1~44および46~51のいずれか1つに記載の方法。
【0313】
実施形態53:小児被験体が、1歳未満の年齢、真性糖尿病、ポンペ病、ムコ多糖症、糖原病、脂肪酸酸化障害、メープルシロップ尿症、有機酸血症、肥満、先天性心疾患、高血圧、心筋症、心不全、鎌状赤血球症、中等度から重度の喘息、慢性肺疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、発作性障害、全般的発達遅延、脳性麻痺、構造的脳欠損/奇形、原発性免疫不全、CD4+数<200細胞/mm3であるHIV感染、実質臓器もしくは骨髄移植、全身性コルチコステロイド、免疫抑制生物剤もしくは疾患修飾性抗リウマチ薬の長期使用、胃瘻造設もしくは空腸瘻造設依存、非経口栄養依存、気管切開依存、ベースライン酸素要求、CPAP/BiPAP/人工呼吸器サポートの使用、または他のベースライン重度心身障害のうちの1つまたは複数を有する、実施形態52に記載の方法。
【0314】
実施形態54:抗体または抗原結合断片が、抗体または抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドが安定にトランスフェクトされた細胞の非クローンプールから得られた、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法。
【0315】
実施形態55:抗体または抗原結合断片が、クローンマスターセルバンクから得られた、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法。
【0316】
実施形態56:小児被験体が、SARS-CoV-2のワクチンを受けたことがあり、ワクチンが、例えば、小児被験体におけるワクチン後の感染または症状により、臨床診断または科学的もしくは規制基準により、あるいはワクチンが当初試験されたバリアントよりもワクチンの効果が低いまたはワクチンが効かないSARS-CoV-2バリアントによる感染により、SARS-CoV-2感染に対して効果がないと決定されている、実施形態1~55のいずれか1つに記載の方法。
【0317】
実施形態57:小児被験体が、SARS-CoV-2のワクチンを受けたことがない、実施形態1~55のいずれか1つに記載の方法。
【0318】
実施形態58:小児被験体が、SARS-CoV-2のための、i)回復期血漿療法、ii)レムデシビル、ソホスブビル、アシクロビル、ジドブジン、モルヌピラビル、ニルマトレルビル、リトナビル、もしくはファビピラビル、もしくはブレキナル、デキサメタゾン、トシリズマブ、エテセビマブ、ロピナビル、レロンリマブ、ベブテロビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、またはこれらの任意の組合せ、iii)酸素補給または呼吸療法、あるいはi)、ii)およびiii)のうちの2つもしくはそれより多くを受けている、あるいは受けたことがある、実施形態1~57のいずれか1つに記載の方法。
【0319】
実施形態59:処置が、曝露前または曝露前後の予防を含む、実施形態1~58のいずれか1つに記載の方法。
【0320】
実施形態60:処置が、軽度から中等度の疾患に罹患している小児被験体に、必要に応じて外来患者の状況で、投与される、実施形態1~44および46~60のいずれか1つに記載の方法。
【0321】
実施形態61:小児被験体が、SARS-CoV-2のための、レムデシビル、ソホスブビル、アシクロビル、ジドブジン、モルヌピラビル、ニルマトレルビル、リトナビル、もしくはファビピラビル、もしくはブレキナル、デキサメタゾン、トシリズマブ、エテセビマブ、ロピナビル、レロンリマブ、ベブテロビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、またはこれらの任意の組合せをさらに受けている、または受けたことがある、実施形態1~44および46~61のいずれか1つに記載の方法。
【0322】
実施形態62.実施形態1~61のいずれか1つに記載の被験体におけるSARS-CoV-2感染を処置するための医薬の調製における使用のための、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片。
【0323】
実施形態63.小児被験体におけるSARS-CoV-2感染を処置するための医薬の調製における使用のための、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片であって、医薬が、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片を含む液体組成物であり、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片が、(A)(i)配列番号106に記載される相補性決定領域(CDR)H1アミノ酸配列と、配列番号121に記載されるCDRH2アミノ酸配列と、配列番号108に記載されるCDRH3アミノ酸配列とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号169に記載されるCDRL1アミノ酸配列と、配列番号170に記載されるCDRL2アミノ酸配列と、配列番号171に記載されるCDRL3アミノ酸配列とを含む、軽鎖可変ドメイン(VL);(B)(i)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列の、CDRH1とCDRH2とCDRH3とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号168に記載されるアミノ酸配列の、CDRL1とCDRL2とCDRL3とを含む、軽鎖可変領域;または(C)(i)配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる、軽鎖可変領域を含む、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片。
【0324】
実施形態64.医薬が、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片の単一用量を投与するために製剤化される、実施形態63に記載の使用。
【0325】
実施形態65.液体組成物が、少なくとも67.5mg/mLの抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片を含む、実施形態62~64のいずれか1つに記載の使用。
【0326】
実施形態66.(A)(i)配列番号106に記載される相補性決定領域(CDR)H1アミノ酸配列と、配列番号121に記載されるCDRH2アミノ酸配列と、配列番号108に記載されるCDRH3アミノ酸配列とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号169に記載されるCDRL1アミノ酸配列と、配列番号170に記載されるCDRL2アミノ酸配列と、配列番号171に記載されるCDRL3アミノ酸配列とを含む、軽鎖可変ドメイン(VL);(B)(i)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列の、CDRH1とCDRH2とCDRH3とを含む、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)必要に応じてIMGTにより決定される、配列番号168に記載されるアミノ酸配列の、CDRL1とCDRL2とCDRL3とを含む、軽鎖可変領域;または(C)(i)配列番号113もしくは105に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる、重鎖可変ドメイン(VH);および(ii)配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはこれからなる、軽鎖可変領域を含む、抗SARS-CoV-2抗体または抗原結合断片を含む、液体組成物を含むキット。
【0327】
実施形態67.実施形態1~61に記載のいずれかの方法における使用のための、または実施形態62~64に記載のいずれかの使用のための、実施形態66に記載のキット。
【0328】
実施形態68.液体組成物が、少なくとも67.5mg/mLの抗SARS-CoV-2抗体を含む、実施形態65または実施形態66に記載のキット。
【0329】
実施形態69.液体組成物が、筋肉内注射による投与のために製剤化される、実施形態66~68のいずれか1つに記載のキット。
【0330】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【実施例】
【0331】
(実施例1)
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合するヒトモノクローナル抗体
欧州特許EP1597280B1に記載のとおりに、以前にSARS-CoVに感染したドナーからのB細胞を384ウェルプレートにおいて選別し、EBVで不死化し、スクリーニングした。
【0332】
不死化の2週間後、フローサイトメトリーに基づく方法を使用して、不死化B細胞の上清をSARS-CoV-2スパイクタンパク質への抗体結合について試験した。SARS-Cov-2(BetaCoV/Wuhan-Hu-1/2019株)のSタンパク質を、または陰性対照として空のプラスミドを、ExpiCHO(商標)(Thermo Fisher Scientific)細胞にトランスフェクトした。SARS-CoV-2 Sに結合する14のモノクローナル抗体を同定し、これらを、SARS-CoV-2 S300からSARS-CoV-2 S312まで、およびSARS-CoV-2 S315と名付けた。
【0333】
(実施例2)
Octetを使用するSARS-CoV-2のRBDへのヒトモノクローナル抗体の結合
キネティクス緩衝液(KB;PBS中、0.01%のエンドトキシン不含のBSA、0.002% Tween(登録商標)-20、0.005% NaN3)を用いる10分間の湿潤化ステップ後、ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio)を使用して3ug/mlの抗Strep Tag II抗体(クローン5A9F9、ビオチン、LabForce AG、Muttenz CH)を固定した。次いで、Strep Tag IIを有するSARS-CoV-2 RBD(内部で生成)を6分間、KB中、4μg/mlの濃度で負荷した。B細胞上清からの抗体をある期間にわたって会合させた。解離を観察するために、センサーを抗体溶液からKBに移動させ、抗体解離をモニターした。
【0334】
S309 mAbは、表1で提供したS309-v1 VHおよびS309-v13 VLアミノ酸配列(それぞれ、配列番号105および168)を含む。S303の結合曲線とS309の結合曲線の比較は、S303が、S309より速いオンレート(on-rate)と速いオフレート(off-rate)の両方を有することを示し、これは、S309が、より高い親和性で結合し得ることを示唆する。
【0335】
(実施例3)
Octetを使用するSARS-CoV-2およびSARS-CoV-1のRBDへのヒトモノクローナル抗体の結合
3つの交差反応性組換え抗体(S303 rIgG1、S304 rIgG1、S309 rIgG1)および2つのSARS-CoV-1特異的抗体の親和性を、Octetを使用して試験した。抗体をセンサー上に固定すること、およびそのセンサーを異なる濃度のRBDを含有するウェルに浸漬することにより、親和性を測定した。
【0336】
RBDへの抗体結合のキネティクスを会合段階中に記録し、その後、抗体を含まない緩衝液にセンサーを浸漬して解離段階中にRBDから離脱する抗体のキネティクスを観察した。手短に述べると、キネティクス緩衝液(KB;PBS中、0.01%のエンドトキシン不含のBSA、0.002% Tween(登録商標)-20、0.005% NaN3)を用いる10分間の湿潤化ステップ後、プロテインAバイオセンサー(Pall ForteBio)を使用して2.7ug/mlの組換え抗体を1分間、固定した。抗体で被覆されたセンサーを異なる濃度のSARS-CoV-1 RBD(Sino Biological)またはSARS-CoV-2 RBD(Expi-CHO細胞において内部で生成;BetaCoV/Wuhan-Hu-1/2019、受託番号MN908947、からのスパイクの残基331~550)とともにインキュベートすることにより、5分間、会合曲線を記録した。試験した最高RBD濃度は10ug/mlであり、次いで、それを1:2.5で連続希釈した。KBを含有するウェルにセンサーを移動させることによって、解離を9分間記録した。KD値により表される親和性を、グローバルフィットモデル(Octet)を使用して算出した。Octet Red96(ForteBio)装置を使用した。
【0337】
3つの交差反応性抗体(S303 rIgG1、S304 rIgG1、S309 rIgG1)および2つのSARS-CoV-1特異的抗体(S230およびS109)を試験した。全ての抗体がSARS-CoV-1 RBDへの強い結合を示した。S230およびS109は、SARS-CoV-2 RBDに結合しなかった。S303 rIgG1、S304 rIgG1およびS309 rIGg1のSARS-CoV-2 RBDへの結合は、ナノモル範囲であり、S309 rIgG1が最も高い親和性を示した。KD値をグラフの下に示す。抗体結合が非常に強く、解離が遅い場合、KD値は推定に過ぎない(KD=<1.0×10-12M)。S309 rIgG1についての正確なKDは、解離が遅すぎたので、このアッセイでは測定することができなかった。
【0338】
(実施例4)
ヒトモノクローナル抗体によるSARS-CoV-2の中和
SARS-CoV-2のS遺伝子でシュードタイプ化された複製能力のないウイルス(BetaCoV/Wuhan-Hu-1/2019分離株;受託番号MN908947)を、以前に記載されたような方法(Temperton NJ, et al. (2005) Longitudinally profiling neutralizing antibody response to SARS coronavirus with pseudotypes. Emerg Infect Dis 11(3):411-416)を使用して生成した。手短に述べると、SARS-CoV-2 Sを発現するプラスミド(phCMV1、Genlantis)と、補完ウイルス-ゲノムレポーター遺伝子ベクター、pNL4-3.Luc+.E-R+とを、HEK293T/17に共トランスフェクトした。単一サイクル感染力アッセイを使用して、SARS-CoV-2のSタンパク質でシュードタイプ化されたルシフェラーゼをコードするビリオンの中和を、以前に記載されたように(Temperton NJ, et al. (2007) A sensitive retroviral pseudotype assay for influenza H5N1-neutralizing antibodies. Influenza Other Respi Viruses 1(3):105-112.)測定した。手短に述べると、ビリオンを含有する培養上清の適切な希釈物を、37℃で1時間、様々な濃度の抗体とともにプレインキュベートし、次いで、ウイルス-mAb混合物を、感染の前日に播種したVero E6細胞に添加した。次いで、細胞をSteady-Glo(登録商標)試薬(Promega、E2520)で溶解し、細胞溶解物の相対的な発光単位(RLU)をルミノメーターマイクロプレートリーダー(Synergy H1 Hybrid Multi-Mode Reader;Biotek)で決定した。感染力の低下を、抗体の存在下でのRLUと非存在下でのRLUとを比較することにより決定し、中和のパーセンテージとして表した。
【0339】
抗体SARS-CoV-2 S300-v1、S301、S302、S303-v1、S304、S306、S307、S308-v1、S309(S309-v1 VH配列およびS309-v13 VL(VK)配列を含む)、およびS310を、中和能について試験した。抗体SARS-CoV-2 S300-v1およびSARS-CoV-2 S309は、SARS-CoV-2を中和することが明らかになった。
【0340】
SARSドナー血漿、ならびに抗体SARS-CoV-2 S309、S311、S312、S303-v1(rIgG1)、S304(rIgG1)、S306(rIgG1)、S310(rIgG1)およびS315を使用して、さらなる中和アッセイを行った。このアッセイを使用して、抗体S309、S311、S312、およびS315は、SARS-CoV-2を中和することが明らかになった。
【0341】
モノクローナル抗体S303、S304、S306、S309、S310、およびS315を使用して、追加の中和アッセイを行った。
【0342】
(実施例5)
組換えヒトモノクローナル抗体によるSARS-CoV-2の中和
2つの組換えSARS-CoV-1およびSARS-CoV-2交差中和抗体、S304 rIgG1およびS309 rIgG1の、SARS-CoV-2シュードタイプ化ウイルス(SARS-CoV-2pp)に対する中和活性を決定した。
【0343】
SARS-CoV-2スパイクタンパク質でシュードタイプ化されたマウス白血病ウイルス(MLV)(SARS-CoV-2pp)を使用した。ACE2を安定にトランスフェクトしたDBT細胞(DBT-ACE2)を標的細胞として使用した。SARS-CoV-2ppを10ug/mlのトリプシンTPCKで活性化した。活性化SARS-CoV-2ppを抗体の希釈系列(抗体ごとに50ug/mlの最終濃度で出発して、3倍希釈)に添加した。S304 rIgG1とS309 rIgG1の組合せについては50ug/ml~0.02ug/ml、の間の濃度で抗体を試験し、出発濃度は、各抗体について50ug/mlであった、すなわち、合計出発抗体量は、100ug/mlであった。DBT-ACE2細胞を抗体-ウイルス混合物に添加し、48時間インキュベートした。細胞培養上清の吸引およびSteady-GLO(登録商標)基質(Promega)の添加後に発光を測定した。
【0344】
S309 rIgG1は、0.37ug/mlのIC50を示し、S304 rIgG1は、おおよそ17ug/mlのIC50を示した。両方の抗体の組合せが0.077μg/mlのIC50で強く中和されることになった。個々におよび組み合わせて、組換えモノクローナル抗体S309およびS315について同じ手順を使用して、さらなる中和アッセイを行った。S309は、1.091ug/mlのIC50を示し、S315は、25.1ug/mlのIC50を示した。両方の抗体の組合せは、0.3047ug/mlのIC50を示した。
【0345】
(実施例6)
SARS-CoVおよびSARS-CoV-2に対するヒトモノクローナル抗体の反応性
スパイクS1サブユニットタンパク質、ならびにSARS-CoVおよびSARS-CoV-2タンパク質のRBDに対する、追加のヒトmAb S311およびS312の反応性を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により決定した。
【0346】
組換えSARS-CoV-2スパイクS1サブユニットタンパク質(Sino Biological)、SARS-CoV-2 RBD(Sino Biological、または内部で生成;BetaCoV/Wuhan-Hu-1/2019、受託番号MN908947、からのスパイクの残基331~550)、組換えSARS-CoVスパイクS1サブユニットタンパク質(Sino Biological)、またはSARS-CoV RBD(Sino Biological)で、96ウェルプレートを被覆した。
【0347】
ウェルを洗浄し、PBS+1%BSAで1時間、室温でブロックし、次いで、連続希釈したmAbとともに1時間、室温でインキュベートした。結合したmAbを、アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(Southern Biotechnology:2040-04)を1時間、室温でインキュベートすることにより検出し、0.1Mグリシン緩衝液(pH10.4)中の1mg/mlのp-ニトロフェニルリン酸基質により30分間、室温で発色させた。光学密度(OD)値をELISAリーダー(Powerwave 340/96分光光度計、BioTek)において405nmの波長で測定した。
【0348】
同じ手順を使用してさらなるアッセイを行って、SARS-CoV-2およびSARS-CoV-1のRBDに対するヒトモノクローナル抗体S300、S307、およびS309の反応性を決定した。
【0349】
(実施例7)
組換えヒトモノクローナル抗体S309およびS315によるSARS-CoV-2の中和
SARS-CoV-2シュードタイプ化ウイルス(SARS-CoV-2pp)に対する組換え抗体S309 rIgG1-LSおよびS315 rIgG1-LSの中和活性を決定した。
【0350】
SARS-CoV-2スパイクタンパク質でシュードタイプ化されたマウス白血病ウイルス(MLV)(SARS-CoV-2pp)を使用した。ACE2を安定にトランスフェクトしたDBT細胞(DBT-ACE2)を標的細胞として使用した。SARS-CoV-2ppを10ug/mlのトリプシンTPCKで活性化した。活性化されたSARS-CoV-2ppを、抗体の希釈系列に添加した。DBT-ACE2細胞を抗体-ウイルス混合物に添加し、48時間インキュベートした。細胞培養上清の吸引およびSteady-GLO(登録商標)基質(Promega)の添加後に発光を測定した。感染細胞のルシフェラーゼシグナルを使用して、無抗体対照に対する中和のパーセンテージを算出した。
【0351】
S309 rIgG1-LSは、おおよそ3.9nMのIC50を示し、S315 rIgG1-LSは、おおよそ111.7mMのIC50を示した。
【0352】
S309-rFabの中和活性を、全長S309 rIgG1-LSのものと比較した。全長S309 rIgG-LSは、3.821nMのIC50を示し、S309-rFabは、3.532nMのIC50を示した。
【0353】
(実施例8)
SARS-CoV-1のRBD、SARS-CoV-2のRBD、および様々なコロナウイルスの細胞外ドメインに対するヒトモノクローナル抗体の反応性
SARS-CoV-1およびSARS-CoV-2のRBD、ならびにSARS-CoV-1、SARS-CoV-2、OC43およびMERSのスパイクタンパク質に対するモノクローナル抗体の反応性を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により決定した。
【0354】
1μg/mlのSARS-CoV-1、SARS-CoV-2、OC43もしくはMERSの安定化した融合前スパイクタンパク質三量体で、または10μg/mlのSARS-CoV-2 RBD(内部で生成;BetaCoV/Wuhan-Hu-1/2019、受託番号MN908947、からのスパイクの残基331~550)、もしくは1μg/mlのSARS-CoV-1 RBD(Sino Biological)で、384ウェル浅底ELISAプレートを被覆した。
【0355】
ウェルを洗浄し、PBS+1%BSAで1時間、室温でブロックし、次いで、連続希釈した抗体とともに1~2時間、室温でインキュベートした。抗体を5~0.00028μg/mlの濃度範囲で試験した。プレートを洗浄し、結合した抗体を、アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(Southern Biotechnology:2040-04)を1時間、室温でインキュベートし、続いて0.1Mグリシン緩衝液(pH10.4)中の1mg/mlのp-ニトロフェニルリン酸基質(Sigma-Aldrich 71768)を使用して30分間、室温で発色させることによって、検出した。光学密度(OD)値をELISAリーダー(Powerwave 340/96分光光度計、BioTek)において405nmの波長で測定した。
【0356】
(実施例9)
SARS-CoV-1およびSARS-CoV-2スパイクタンパク質へのモノクローナル抗体の結合
Expifectamine(商標) CHOエンハンサー(Thermo Fisher Scientific)を使用して、phCMV1-SARS-CoV-2-S、SARS-スパイク_pcDNA.3(SARS株)、または空のphCMV1を、ExpiCHO(商標)細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、細胞を抗体での免疫染色のために採取した。Alexa647標識二次抗体抗ヒトIgG Fcを検出に使用した。トランスフェクト細胞へのモノクローナル抗体の結合を、ZE5セルアナライザー(Biorad)およびFlowJo(商標)ソフトウェア(TreeStar)を使用してフローサイトメトリーにより分析した。陽性結合を、CoV-Sトランスフェクタントのモックトランスフェクタントに対する示差染色により定義した。モノクローナル抗体S309を、10μg/mlで、SARS-CoV-1またはSARS-CoV-2のSタンパク質を発現するExpiCHO(商標)細胞を染色する能力についてフローサイトメトリーにより試験した。
【0357】
SARS-CoV-1のSタンパク質またはSARS-CoV-2のSタンパク質への結合をモノクローナル抗体S303、S304、S306、S309、S310、S315、S110、S124、S230、およびS109についてフローサイトメトリーにより測定し、EC50値を算出した。これらの抗体のうちの8つは、SARS-CoV-2のSタンパク質結合について1.4ng/ml~6,100ng/mlの間の範囲のおよびSARS-CoV-1のSタンパク質結合について0.8ng/ml~254ng/mlの間の範囲のEC50値を有すると算出された。
【0358】
同じ手順を使用するさらなる結合アッセイを、組換えモノクローナル抗体S309および4つのS309バリアントに関して行った。抗体ごとのEC50値を表2に示す。VHおよびVLを実施例17で要約する。
【0359】
【0360】
同じ手順を使用する追加のアッセイを、モノクローナル抗体S303、S304、S306、S309、S310、S315、ならびに比較対照抗体S109、S110、S124およびS230を使用して行った。
【0361】
同じ手順を使用するアッセイをまた、組換えモノクローナル抗体S300およびS307を使用して行った。
【0362】
(実施例10)
Octetを使用するSARS-CoV-2およびSARS-CoV-1のRBDへのヒトモノクローナル抗体S309、S303、S304およびS315の結合
組換えモノクローナル抗体S309、S303、S304およびS315の親和性を、Octetを使用して試験した。
【0363】
SARS-CoV-1またはSARS-CoV-2のHisタグ付きRBDを、キネティクス緩衝液(KB)中、3μg/mlで15分間、抗HIS(HIS2)バイオセンサー(Molecular Devices、ForteBio)上に負荷した。全長抗体の会合を、KB中、15μg/mlで5分間、行った。Fab断片の会合を、KB中、5μg/mLで5分間、行った。KB中での解離を10分間、測定した。
【0364】
KD値により表される親和性を、グローバルフィットモデル(Octet)を使用して計算した。Octet Red96(ForteBio)装置を使用した。
【0365】
これらの抗体の各々は、ナノモル濃度からピコモル濃度未満の親和性でSARS-CoV-2およびSARS-CoV-1 RBDに結合した。
【0366】
(実施例11)
SARS-CoV-2のSタンパク質細胞外ドメイン三量体およびRBDへのヒトモノクローナル抗体S309 IgGおよびS309 Fabの結合
Fab断片と比較したIgG1の親和性およびアビディティーの決定:SARS-CoV-2のビオチン化RBD(内部で生成;ThermoFisherからのEZ-Link NHS-PEG4-Biotinでビオチン化した、BetaCoV/Wuhan-Hu-1/2019、受託番号MN908947、からのスパイクタンパク質の残基331~550)、およびaviタグ付きビオチン化SARS-CoV-2 2P Sを、キネティクス緩衝液(KB;PBS中、0.01%のエンドトキシン不含のBSA、0.002% Tween(登録商標)-20、0.005% NaN3)中、7.5μg/mlで8分間、ストレプトアビジンバイオセンサー(Molecular Devices、ForteBio)上に負荷した。IgG1およびFabの会合を、KB中、100、33、11、3.6、1.2nMで5分間、行った。KB中での解離を10分間、測定した。1:1グローバルフィットモデル(Octet)を使用してKD値を算出した。S309 IgGは、SARS-CoV-2 RBDに、およびS細胞外ドメイン三量体に、それぞれ、ピコモル濃度未満のアビディティーおよびピコモル濃度のアビディティーで結合した。S309 Fabは、SARS-CoV-2 RBDとS細胞外ドメイン三量体の両方にナノモル濃度からナノモル濃度未満の親和性で結合した。
【0367】
(実施例12)
SARS-CoV-1またはSARS-CoV-2のRBDへのヒトモノクローナル抗体の競合的結合
SARS-CoV-1 RBDまたはSARS-CoV-2 RBDへの対のモノクローナル抗体の競合的結合を測定して、抗体のそれぞれの結合部位を定義した。
【0368】
キネティクス緩衝液(KB;PBS中、0.01%のエンドトキシン不含のBSA、0.002% Tween(登録商標)-20、0.005% NaN3)を用いる10分間の湿潤化ステップ後、ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio)を使用して3ug/mlの抗Strep Tag II抗体(クローン5A9F9、ビオチン、LabForce AG、Muttenz CH)を固定した。次いで、Strep Tag IIを有するSARS-CoV-1またはSARS-CoV-2 RBD(内部で生成)のどちらかを、KB中4μg/mlの濃度で6分間、負荷した。第1の抗体をある期間、会合させ、次いで、第2の抗体をある期間にわたって会合させた。
【0369】
(実施例13)
ヒトACE2へのヒトモノクローナル抗体S309およびRBDの競合的結合
ヒトACE2へのモノクローナル抗体およびRBDの競合的結合を測定した。ACE2-His(Bio-Techne AG)を、キネティクス緩衝液(KB)中の5μg/mlで30分間、抗HIS(HIS2)バイオセンサー(molecular Devices-ForteBio)上に負荷し、1μg/mlのSARS-CoV-1 RBD-ウサギFcまたはSARS-CoV-2 RBD-マウスFc(Sino Biological Europe GmbH)を、30μg/mlの抗体を含むまたは含まない30分間のプレインキュベーション後に15分間会合させた。解離を5分間モニターした。
【0370】
(実施例14)
ヒトモノクローナル抗体の抗体依存性細胞傷害および抗体依存性細胞食作用
ナチュラルキラー(NK)媒介性抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、その表面上にウイルスタンパク質を提示する感染細胞を殺傷することによってウイルス制御に寄与し得る。この機能を利用する単離されたAbの能力を調査するために、新たに単離されたヒトNK細胞をエフェクター細胞として、およびSARS-CoV-2 SトランスフェクトExpiCHO(商標)細胞を標的細胞として使用して、ADCCをin vitroで調査した。標的細胞を異なる量の抗体とともにインキュベートし、10分後、エフェクター細胞としての初代ヒトNK細胞とともに9:1の標的:エフェクター比でインキュベートした。MACSxpress(登録商標) NK Isolation Kit(Miltenyi Biotec、カタログ番号130-098-185)を使用して、健康なドナーの新鮮な血液からNK細胞を単離した。37℃での4時間のインキュベーション後にLDH放出アッセイ(細胞傷害検出キット(LDH)(Roche;カタログ番号:11644793001)を使用して、抗体依存性細胞殺傷を測定した。
【0371】
マクロファージ媒介性または樹状細胞媒介性抗体依存性細胞食作用(ADCP)もまた、感染細胞を排除することにより、およびウイルス抗原提示によってT細胞応答を潜在的に刺激することにより、ウイルス制御に寄与し得る。末梢血単核細胞をファゴサイトとして使用し、PKH67蛍光細胞リンカーキット(Sigma Aldrich、カタログ番号:MINI67)で蛍光標識したSARS-CoV-2 SをトランスフェクトしたExpiCHO(商標)を標的細胞として使用して、ADCPを試験した。標的細胞を異なる量の抗体とともに10分間インキュベートし、続いて、セルトレースバイオレット(Invitrogen、カタログ番号:C34557)で蛍光標識した健康なドナーから単離したヒトPBMCとともに20:1のエフェクター:標的比でインキュベートした。37℃での一晩のインキュベーション後、食細胞を染色するための抗ヒトCD14-APC抗体(BD Pharmingen、カタログ番号:561708、クローンM5E2)で細胞を染色した。フローサイトメトリーによりPKH67蛍光について陽性である単球の%を測定して、抗体媒介性食作用を決定した。
【0372】
ヒトモノクローナル抗体S309、S304、S306、S315、S230、およびS309とS304の組合せを、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および抗体依存性細胞食作用(ADCP)についてアッセイした。
【0373】
モノクローナル抗体S309のFcバリアントをADCCについて試験した。S309-LSは、MLNS Fc変異を含む。S309-GRLRは、G236R/L328R Fc変異を含み、FcγRへの結合をほとんど示さない。S309-LS-GAALIEは、MLNS Fc変異とGAALIE Fc変異の両方を含む。
【0374】
ヒトモノクローナル抗体S303、S304、S306、S309、S315、およびS309とS315の組合せを、ADCCおよびADCPについてアッセイした。少なくとも、非GRLR S309抗体は(単独で、またはS304との組合せで)、ADCCおよびADCPを明示した。
【0375】
(実施例15)
SARS-CoV-2感染細胞の細胞溶解物に対するモノクローナル抗体の反応性
SARS-CoV-2感染VeroE6細胞の細胞溶解物に対するモノクローナル抗体S304、S306、S309およびS310の反応性を測定した。
【0376】
(実施例16)
単独での、および組合せでの、モノクローナル抗体S304およびS309によるSARS-CoV-2感染の中和
モノクローナル抗体S304およびS309によるSARS-CoV-2感染の中和を、SARS-CoV-2生ウイルスアッセイを使用して評価した。生ウイルス中和アッセイは、ウイルス核タンパク質(NP)についてのNP特異的ポリクローナルウサギ血清による染色によって感染細胞の数を定量する。感染後24および45時間の時点でNP発現を測定することにより阻害を評価した。酵素イムノアッセイ(EIA)を使用して、試験した各抗体希釈物についての感染レベルを定量した。
【0377】
96ウェルプレートにおいて単層のVero E6細胞を使用して1時間、室温で、示されている抗体濃度で、中和を行った。ウェルを100 TCID50のウイルスに感染させた。24または45時間後、単層を固定し、NP発現の阻害について染色した。モノクローナル抗体S304およびS309は、中和の相乗的増強を示す。
【0378】
(実施例17)
S309 rIgGバリアントの生成
組換えIgG1抗体を、モノクローナル抗体S309のVHおよびVL配列を使用して生成した。S309-11は、S309の野生型VH配列(配列番号105)および野生型VL配列(配列番号168)を含む。S309-12は、S309のN55Q VHバリアント配列(配列番号113)および野生型VL配列(配列番号168)を含む。S309-13は、S309のW50Fバリアント配列および野生型VL配列(配列番号168)を含む。S309-14は、S309のW105Fバリアント配列(配列番号119)および野生型VL配列(配列番号168)を含む。S309-15は、S309のW50F/G56A/W105F VHバリアント配列および野生型VL配列を含む。S309組換え抗体、および4つのバリアントの各々を、組換え抗体をコードするプラスミドベクターのHD 293F細胞(GenScript)への一過性トランスフェクションおよびそれらの細胞での発現によって生成した。細胞を4日目に回収し、ウェスタンブロットおよびプロテインA力価分析によってIgG発現を検証した。
【0379】
(実施例18)
SPRによって測定される、SARS-CoV-2 RBDへのS309 rIgGおよびバリアントの結合
組換えモノクローナル抗体S309および4つのバリアント(実施例17を参照のこと)のRBDへの結合を、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して測定した。SPR実験は、シングルサイクルキネティクス手法を使用してBiacore(商標) T200装置を用いて行った。S309 IgGを表面上で捕捉し、グリコシル化または脱グリコシル化のどちらかの、漸増濃度の精製されたSARS-CoV-2 RBDを注入した。抗ヒトFcが共有結合で固定されたセンサーチップ(GE)を使用してSPRを行った。使用した緩衝液は、10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.05% P20界面活性物質であった。アッセイを25℃で行った。組換え抗体を上清からおおよそ2μg/mlに希釈した。RBD濃度は、0.8nM、3.1nM、12.5nM、50nM、および200nMであった。グリコシル化RBDをHEK293細胞における発現によって得て、ワンステップNi親和性精製を使用して精製した。脱グリコシル化RBDは、キフネンシンの存在下で成長したExpi293細胞における内部での発現、ワンステップNi親和性精製を使用する精製、およびエンドグリコシダーゼHでの処置によって得た。シングルサイクルキネティクスアッセイを3分の注入および20分の解離期間で行った。会合および解離キネティクスをモニターし、結合モデルにあてはめて親和性を決定した。結果を表3にまとめる。
【0380】
【0381】
脱グリコシル化RBDへの結合を、異なるパラメーターを使用して2つの異なるSPRアッセイで測定した。実験1は、10分の注入、および100nMから4倍希釈のRBD濃度系列を使用した。実験2は、上記のような、3分の注入、および200nMから4倍希釈の濃度系列を使用した。結果を表4に示す。
【0382】
【0383】
組換えモノクローナル抗体S309および5つのバリアントのRBDへの結合を、細胞培養上清ではなく精製組換え抗体を使用したことを除いて上で説明したのと同じ手順を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)により測定した。結果を表5に示す。
【0384】
【0385】
(実施例19)
組換えモノクローナル抗体S309および4つのバリアントによるSARS-CoV-2の中和
組換えモノクローナル抗体S309および4つのバリアント(実施例17)の中和活性を、VSVに基づくルシフェラーゼレポーターシュードタイピングシステム(Kerafast)を使用して決定した。VSVシュード粒子および抗体をDMEM中で混合し、30分間、37℃で放置してインキュベートする。次いで、感染混合物をVero E6細胞とともに1時間、37℃で放置してインキュベートし、続いて、Pen-Strepと10% FBSとを含有するDMEMを添加する(感染混合物を除去しない)。細胞を37℃で18~24時間インキュベートする。Bio-Glo(商標)試薬(Promega)の添加後、Ensight Plate Reader(登録商標)(Perkin Elmer)を使用してルシフェラーゼを測定する。この実験に基づく算出EC50値を表6に示す。
【0386】
【0387】
(実施例20)
ヒトFcγRIIIaまたはFcγRIIaの抗体依存性活性化の決定
SARS-CoV-2 S(BetaCoV/Wuhan-Hu-1/2019)を一過性にトランスフェクトして滴定濃度の抗体とともに10分間インキュベートしたExpiCHO(商標)細胞を使用して、ヒトFcgRIIIaまたはFcgRIIaの抗体依存性活性化の決定を行った。次いで、その表面上にFcγRIIIa受容体またはFcgRIIaを発現するジャーカット細胞であって、NFAT駆動ルシフェラーゼ遺伝子(Promega、カタログ番号:G9798およびG7018)をFcγRIIIaについては6:1およびFcγRIIaについては5:1のエフェクター対標的比で安定にトランスフェクトしたジャーカット細胞とともに、ExpiCHO(商標)細胞をインキュベートした。このバイオアッセイでのヒトFcγRの活性化は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子のNFAT媒介性発現をもたらす。37℃で、5% CO2での21時間のインキュベーション後、Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬を製造業者の使用説明書に従って使用して発光を測定した。モノクローナル抗体S303、S304、S306、S309、S315、およびS309とS315の組合せを、比較対照抗体S320とともに、アッセイした。単独での、またはS315との組合せでの、S309は、FcγRIIIa(V158)およびFcγRIIa(H131)を活性化した。
【0388】
(実施例21)
SARS-CoV-2のS糖タンパク質配列の分析
2,229のSARS-CoV-2分離株のS糖タンパク質配列の分析が行われ、いくつかの変異がSARS-CoV-2 S細胞外ドメイン上に可変頻度で存在することを示す。
【0389】
S糖タンパク質配列のさらなる分析を、11,839のSARS-CoV-2分離株を使用して行った。S309が結合したエピトープは、4つの分離株を除く全てで保存され、これらの単離株は、S309の認識に影響を与えると予想されないN354DまたはS359N置換を含有した。
【0390】
(実施例22)
抗体S309とSARS-CoV-2患者から単離した抗体との競合
SARS-CoV-2感染から回復した患者から単離したヒトモノクローナル抗体を、RBD結合部位と、モノクローナル抗体S309の重複について試験した。競合アッセイを、Octet(装置:Octet Red96、ForteBio)を使用して行った。抗Hisセンサー(BIOSENSOR ANTI-PENTA-HIS(HIS1K)1*1ST)を使用して、SARS-CoV-2(BetaCoV/Wuhan-Hu-1/2019、受託番号MN908947、からのスパイクタンパク質の残基331~550)の内部で生成したHISタグ付きRBDを3μg/mlの濃度で固定した。抗体を15μg/mlで6分間、会合させた。全てのタンパク質をキネティクス緩衝液(KB)で希釈した。次いで、競合抗体を同じ濃度でさらに6分間、会合させた。2つの抗体は、RBDへの結合についてS309と競合することを示したが、S309とは異なり、それらはSARS-CoV-2に対して中和性でなかった。データを示さない。
【0391】
(実施例23)
モノクローナル抗体S309-12-MLNSに対するSARS-CoV-2の耐性選択
耐性選択を調べるために、SARS CoV-2を、Vero E6細胞および固定濃度のモノクローナル抗体S309-12-MLNS(すなわち、FcにMLNS変異を有するS309 N55Q(VH))の存在下で、1カ月にわたって継代させた。細胞変性効果(CPE)をプレートの目視検査によって評価した。CPEが観察されなかった場合でも、メチルセルロース重層を用いるフォーカス形成アッセイによってウイルス力価を評価した。試験した最小抗体濃度ででも、抗体処置ウェルにおいてウイルスのブレークスルーの証拠は観察されなかった。データは、三連のウェルの代表である。
【0392】
(実施例24)
モノクローナル抗体S309によるCalu-3ヒト肺細胞のSARS-CoV-2感染の中和
モノクローナル抗体S309を、ナノルシフェラーゼアッセイを使用して、Calu-3ヒト肺細胞(これは、膜貫通型プロテアーゼTMPRSS2について陽性である)およびVeroE6細胞の生SARS-CoV-2ウイルス感染を中和するその能力について試験した。このアッセイでは、S309は、Calu-3細胞では97.70μg/mLおよびVeroE6細胞では158.5μg/mLのIC50を有した。
【0393】
(実施例25)
モノクローナル抗体S309によるSARS-CoV-2感染の中和
モノクローナル抗体S309を、ナノルシフェラーゼアッセイとIFAアッセイの両方を使用して、生SARS-CoV-2ウイルス感染の中和について試験した。手短に述べると、モデル細胞を、6時間、生SARS-CoV-2ルシフェラーゼウイルスに感染させた。3つの異なる抗体濃度:1、0.1および0.01 MOIを使用して、データを収集した。
【0394】
ナノルシフェラーゼアッセイからの結果は、次の通りであった:1MOIで、S309
IC50は、240.6μg/mLであり、0.1MOIで、S309 IC50は、235.3μg/mLであり、0.01MOIで、S309 IC50は、206.6μg/mLであった。
【0395】
IFAアッセイからの結果は、次の通りであった:1MOIで、S309 IC50は、233.0μg/mLであり、0.1MOIで、S309 IC50は、156.5μg/mLであり、0.01MOIで、S309 IC50は、142.8μg/mLであった。注目すべきことに、感染のクラスター(またはフォーカス)は、この感染形式では観察されなかった。
【0396】
(実施例26)
モノクローナル抗体S309 N55Q LSおよびS309 N55Q LS GAALIEによるSARS-CoV-2感染の中和
モノクローナル抗体S309 N55Q LS(本明細書では、S309 N55Q MLNSとも呼ばれ、M428L/N434S Fc突然変異を含む)およびS309 N55Q LS GAALIE(本明細書ではS309 N55Q MLNS GAALIEとも呼ばれ、G236A、A330L、I332E、M428L、およびN434S Fc突然変異を含む)を、肝臓SARS-CoV-2ウイルス感染を中和する能力についてアッセイした。S309 N55Q LSおよびS309 N55Q LS GAALIEの各々は、配列番号113に記載される配列を有するVH、および配列番号168に記載される配列を有するVLを含む。S309 N55Q LSについての算出EC50は、100.1ng/mlであった。S309 N55Q LS GAALIEについての算出EC50は、78.3ng/mlであった。
【0397】
(実施例27)
モノクローナル抗体S309 N55Q LSおよびS309 N55Q LS GAALIEによるSARS-CoV-2シュードタイプ化ウイルスの中和
モノクローナル抗体S309 N55Q LSおよびS309 N55Q LS GAALIEによるSARS-CoV-2シュードタイプ化ウイルスの中和を試験した。シュードタイプ化ウイルスは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質でシュードタイプ化されたVSVであった。S309 N55Q LSについての算出EC50値は、24.06ng/mlであった。S309 N55Q LS GAALIEについての算出EC50値は、22.09ng/mlであった。
【0398】
(実施例28)
モノクローナル抗体S309 N55Q LSおよびS309 N55Q LS GAALIEのSARS-CoV-2 RBDへの結合
モノクローナル抗体S309 N55Q LSおよびS309 N55Q LS GAALIEのSARS-CoV-2 RBDへの結合を、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定した。両方の抗体が強い結合を示した。
【0399】
(実施例29)
モノクローナル抗体S309 N55Q LSおよびS309 N55Q LS GAALIEのSARS-CoV-2スパイクタンパク質への結合
モノクローナル抗体S309 N55Q LSおよびS309 N55Q LS GAALIEの、SARS-CoV-2へのSARS-CoV-2スパイクタンパク質への結合を、フローサイトメトリーにより測定した。両方の抗体は、おおよそ10ng/mLほども低い濃度でスパイクタンパク質に結合し、細胞の60%より多くに抗体10,000ng/mLで結合した。
【0400】
(実施例30)
モノクローナル抗体S309 N55Q LSおよびS309 N55Q LS GAALIEのヒトFcγ受容体への結合
モノクローナル抗体S309 N55Q LSおよびS309 N55Q LS GAALIEのヒトFcγ受容体への結合を、SPRを使用してアッセイした。FcγRIIa(低親和性R131対立遺伝子と高親和性H131対立遺伝子の両方)、FcγRIIIa(低親和性F158対立遺伝子と高親和性V158対立遺伝子の両方)、およびFCγRIIbへの結合を、測定した。Biotin CAPture Reagent(改変ストレプトアビジン)を、Biacore(商標) T200(Cytiva)にドッキングしたCAPセンサーチップの全てのフローセルにわたり注入した。1つのフローセルを参照表面として取っておいて、1μg/mLのビオチン化Fc受容体を、単一フローセルにわたり60秒間、10μL/分で注入した(1フローセル当たり1つの受容体)。100μg/mLの抗体(HBS-EP+で希釈した)を、30μL/分の流量を使用して200秒間、全てのフローセルにわたり注入し、会合をモニターした。注入後さらに200秒間、解離をモニターした。データを10Hzで収集した。各々の結合測定後、CAP Regeneration試薬を注入して、新しいサイクルのための表面を用意した。試料を注入の前に装置内で15℃で保持して、実験を25℃で行った。両方の抗体は、試験した全てのFcγ受容体に少なくとも測定可能な結合を有した。S309 N55Q LS GAALIEは、FcγRIIbを除く全てのFcγ受容体への結合の増加(S309 N55Q LSと比較して)があった。
【0401】
(実施例31)
モノクローナル抗体S309 LS、S309 N55Q LS、およびS309 N55Q LS GAALIEの補体成分C1qへの結合
モノクローナル抗体S309 LS、S309 N55Q LS、およびS309 N55Q LS GAALIEの補体成分C1qへの結合を、Octet装置でのバイオレイヤー干渉法(BLI)により測定した。抗ヒトFab(CH1特異的)センサーを使用して、10μg/mlの抗体を10分間、捕捉した。次いで、IgGを負荷したセンサーを、3μg/mlの精製ヒトC1qを含有するキネティクス緩衝液に4分間、曝露し、続いて、さらに4分間、同じ緩衝液中で解離ステップを行った。会合および解離プロファイルを、干渉パターンの変化としてリアルタイムで測定した。S309 LSおよびS309 N55Q LSは、C1qに強く結合したが、S309 N55Q LS GAALIEはしなかった。
【0402】
(実施例32)
モノクローナル抗体S309 LS、S309 N55Q LS、およびS309 N55Q LS GAALIEによるヒトFcガンマ受容体のin vitro活性化
ヒトFcγ受容体の抗体依存性活性化を惹起するモノクローナル抗体S309 LS、S309 N55Q LS、およびS309 N55Q LS GAALIEの能力をin vitroでアッセイした。S309 LS、S309 N55Q LS、S309 N55Q LS GAALIE、および陰性対照抗体S309-GRLRの各々を、アッセイ緩衝液で10,000ng/mlから0.006ng/mlへと6倍連続希釈した。抗体の9点連続希釈物を、白色の平底プレートにおいて96プレートウェル当たり12,500(FcγRIIIaおよびFcγRIIbについて)または10,000(FcγRIIaについて)のCHO-CoV-2-スパイク細胞とともに15分間、室温でインキュベートした。示したFcγRを発現するジャーカットエフェクター細胞であって、NFAT駆動ルシフェラーゼ遺伝子を安定にトランスフェクトしたジャーカットエフェクター細胞を解凍し、アッセイ緩衝液で希釈し、FcRγIIIaおよびFcγRIIbについては6:1またはFcγRIIaについては5:1のエフェクター対標的細胞比でプレートに添加した。抗体非依存性活性化(標的細胞およびエフェクター細胞を含有するが抗体を含有しない)、およびプレートのバックグラウンド発光(アッセイ緩衝液のみを含有するウェル)を測定するために、対照ウェルを含めた。プレートを18時間、37℃で、5% CO2でインキュベートした。このバイオアッセイでのヒトFcγRの活性化は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子のNFAT媒介性発現をもたらす。Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬の添加後に製造業者の使用説明書に従ってルミノメーターで発光を測定した。陰性対照は、FcγRIIbの低レベル活性化を示したが、他のいずれのFcγRも活性化しなかった。S309 N55Q LS GAALIEは、FcγRIIIa(F158)を強く活性化する唯一の抗体であった。全ての非GRLR S309抗体は、FcγRIIa、FcγRIIb、およびFcγRIIIa(V158)を活性化した。
【0403】
(実施例33)
ヒトモノクローナル抗体S309 LS、S309 N55Q LS、およびS309 N55Q LS GAALIEのエフェクター機能
ヒトモノクローナル抗体S309 LS、S309 N55Q LS、およびS309 N55Q LS GAALIEを、CoV2-スパイクタンパク質を発現する細胞に対するNK細胞媒介性抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および単球媒介性抗体依存性細胞食作用(ADCP)を促進するそれらの能力についてアッセイした。
【0404】
ホモ接合性低親和性(F/F158)または高親和性(V/V158)FcγRIIIaを発現する、2名の遺伝子型同定ドナーから新鮮に単離したヒトNK細胞を、CHO-CoV-2-スパイク細胞とともにプレインキュベートした抗体に曝露すること、および37℃で4時間のインキュベーション後にLDH放出を製造業者の使用説明書(Cytotoxicity Detection Kit(LDH)、Roche)に従って読み出しとして測定することによって、ADCCをin vitroで測定した。手短に言うと、プレートを4分間400×gで遠心分離し、35μlの上清を平坦な384ウェルプレートに移した。LDH試薬を調製し、35μlを各ウェルに添加した。キネティックプロトコールを使用して、490nmおよび650nmでの吸光度を2分に1回、8分間測定し、キネティクス曲線の傾きを結果として使用した。次の式を当てはめることにより特異的溶解パーセントを決定した:(特異的放出-自然放出)/(最大放出-自然放出)×100。S309 GRLRを陰性対照として使用した。全ての非GRLR S309抗体がADCCを惹起した。
【0405】
初代CD14+単球によるADCPを促進するモノクローナル抗体S309 LS、S309 N55Q LS、S309 N55Q LS GAALIE、および対照抗体S309-GRLRの能力を、新鮮に単離したヒトPBMC(セルトレースバイオレットで標識したもの)を、抗体とともにプレインキュベートしたCHO-CoV-2-スパイク発現細胞(PKH67蛍光細胞リンカーキット(Sigma Aldrich)で標識したもの)に曝露することによって、in vitroで測定した。mAbの連続希釈物(10% Hyclone(商標)(Cytiva) FBS+2×抗・抗(抗生物質・抗真菌薬)を補充した、RPMI-1640+L-グルタミンで、5,000ng/mlから0.32ng/mlに5倍連続希釈したもの)を、96ウェルポリプロピレンプレートの1ウェル当たり10,000のCHO-CoV-2-スパイク細胞とともに10分間インキュベートした。セルトレースバイオレットを製造業者の使用説明書に従って用いて初代PBMCを蛍光標識した。次いで、標的細胞と抗体の混合物を、標識したPBMCとともに16:1のエフェクター対標的比でインキュベートした。一晩のインキュベーション後、単球集団をCD14について標識すること、およびCD14+単球の中のセルトレースバイオレット+PKH67+細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって測定することによって、ADCP活性を測定した。
【0406】
(実施例34)
SARS-CoV-2スパイクタンパク質媒介性細胞融合に対するモノクローナル抗体S309の効果
SARS-CoV-2スパイクタンパク質媒介性融合に対するモノクローナル抗体S309の効果を、細胞表面上にスパイクタンパク質を過剰発現するように操作した細胞を使用して試験した。これらの細胞培養物へのS309の添加は、Sタンパク質媒介性細胞-細胞融合を阻害した。
【0407】
(実施例35)
SARS-CoV-2複製に対するモノクローナル抗体S309 N55Q LSおよびS309 N55Q LS GAALIEの効果
SARS-CoV-2複製に対するモノクローナル抗体S309 N55Q LSおよびS309 N55Q LS GAALIEの効果を、VeroE6細胞、PBMC、および樹状細胞において試験した。SARS-CoV-2ウイルスを、抗体S309 N55Q LSまたはS309 N55Q LS GAALIEとともに1時間インキュベートした。次いで、ウイルス/抗体混合物を、平板培養したVeroE6、PBMC、または単球由来樹状(MoDC)細胞に添加した。細胞をウイルス/抗体混合物とともに1時間、37℃でインキュベートした後、細胞を洗浄し、さらに72時間、新鮮培地中でインキュベートした。次いで、培養細胞からの上清をフォーカス形成単位(FFU)についてアッセイした。上清を1:5希釈し、VeroE6細胞に添加した。37℃で1時間後、VeroE6細胞にメチルセルロースを重層した。24時間のさらなるインキュベーション後、VeroE6細胞培養物をSARS-CoV-2核タンパク質について染色した。結果は、S309バリアント抗体が、ヒトドナー由来PBMCまたは樹状細胞においてSARS-CoV-2複製の抗体媒介性増強を引き起こさないことを示した。
【0408】
(実施例36)
SARS-CoV-2感染から回復した個体の血清におけるRBDエピトープ特異的抗体
COVID-19と診断された入院している有症状および無症状の個体からの血清を、SARS-CoV-2スパイクタンパク質RBDの同定された抗原結合部位に結合するモノクローナル抗体との結合の競合について試験した。
【0409】
X線結晶構造解析またはCryo-EMによりRBD分子上の抗原結合部位が同定された6つの抗体(S2H13、S2H14、S2A4、S2X35、S304およびS309)を生成し、精製し、EZ-Link(商標)NHS-PEO固相ビオチン化キット(Thermo Scientific #21450)を製造業者の使用説明書に従って使用してビオチン化した。RBDへの結合をELISAにより測定した。手短に述べると、96ウェルハーフエリアプレート(corning、カタログ番号3690)を、1ug/mlのRBD(マウスFc Tag、Sino Biological Europa GmbH、カタログ番号40592-V05H)で被覆し、Blocker buffer(カゼイン1%、Thermo Fisher Scientific、カタログ番号37528、+0.05% Tween(登録商標)20)でブロックした。ビオチン化モノクローナル抗体を滴定し、プレートに添加し、続いてストレプトアビジン-APおよびpNPP基質(Sigma N2765-100TAB)とともにインキュベートした。プレートを405nmで分光光度計により読み取って光学密度(OD)を決定した。RBDへの結合の80%を決定するビオチン化抗体の濃度(EC80)を、Graph Prismソフトウェアを使用して非線形回帰分析により算出した。ほとんどの血清(58~62%)は、ACE2受容体と相互作用する受容体結合モチーフの主要部分の1つであるRBD部位Iaに結合する抗体を含有した。この部分は、RBDが開いたコンフォメーションである場合にのみ接近可能である。より少ない血清画分(25~41%)は、他のRBD部位を認識する抗体を含有した。
【0410】
RBD抗原部位特異的抗体の量を決定するために、滴定した血清を、上記のELISAと、20分のインキュベーション後に2×BC80濃度のビオチン化抗体を血清の最上部に添加する追加のステップにより、試験した。ビオチン化抗体の残基の結合を表すODを測定し、結合の阻害パーセンテージを対照ウェル(血清およびビオチン化抗体が入っていないウェルでの100%、血清が入っていないウェルでの0%)と比較測定した。結合の80%遮断を決定する血清の希釈度(BD80)を、Graph Prismソフトウェアを使用して非線形回帰分析により算出した。同様に、6つのモノクローナル抗体の結合の80%自己遮断を、血清の代わりに精製モノクローナル抗体の滴定物を試験することにより決定した(BC80)。RBD抗原部位特異的抗体の推定量を、各血清について、次の式を用いて試料の相当濃度(ug/ml)として決定した:BD80×BC80。6つのRBD部位への抗体応答は個体によって異なり、一部の個体は、不良な抗体応答を示した。
【0411】
さらなる解析を行って、ソトロビマブの結合部位を決定した。それを
図5に示す。
【0412】
(実施例37)
材料および方法
哺乳動物細胞上に発現されたCoV Sタンパク質への結合についてのフローサイトメトリーに基づくスクリーニング
ExpiCHO(商標)細胞に、SARS-CoV-2、SARS-CoVおよびMERS-CoVのSタンパク質を、または陰性対照として空のプラスミドを、トランスフェクトした。次いで、モノクローナル抗体を、10μg/mlで、フローサイトメトリーにより、2019-nCoV、SARS-CoV、MERS-CoVのSタンパク質を発現するExpiCHO(商標)細胞またはモック細胞トランスフェクタントを染色するそれらの能力について試験した。
【0413】
組換えSARS-CoV-2タンパク質の一過性発現
SARS-CoV-2株(2019-nCoV-S)BetaCoV/Wuhan-Hu-1/2019分離株(受託番号MN908947)の全長S遺伝子を、ヒト細胞発現のためにコドン最適化し、phCMV1発現ベクター(Genlantis)にクローニングした。Expifectamine(商標) CHOエンハンサーを使用して、phCMV1-SARS-CoV-2-S、phCMV1-MERS-CoV-S(London1/2012)、SARS-スパイク_pcDNA.3(SARS株)または空のphCMV1(モック)をExpi-CHO細胞に一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、細胞を収集し、固定したか、または固定し、SARS-CoV受容体結合ドメイン(RBD)に反応するモノクローナル抗体のパネルでの免疫染色のためにサポニンで透過処理した。Alexa647標識二次抗体抗ヒトIgG Fcを検出に使用した。トランスフェクト細胞への抗体の結合を、ZE5セルアナライザー(Biorad)およびFlowJo(商標)ソフトウェア(TreeStar)を使用してフローサイトメトリーにより分析した。陽性結合を、CoV-Sトランスフェクタントのモックトランスフェクタントに対する分染により定義した。
【0414】
Octet(BLI、バイオレイヤー干渉法)を使用する競合実験
本明細書で別段の指示がない限り、抗Hisセンサー(BIOSENSOR ANTI-PENTA-HIS(HIS1K))を使用して、SARS-CoVのS1サブユニットタンパク質(Sino Biological Europe GmbH)を固定した。センサーを、10分間、キネティクス緩衝液(KB;PBS中、0.01%のエンドトキシン不含のBSA、0.002% Tween(登録商標)-20、0.005% NaN3)で水和した。次いで、SARS-CoV S1サブユニットタンパク質を、8分間、KB中10μg/mlの濃度で負荷した。抗体を、全長mAb nCoV-10およびnCov-6 mAbについては15μg/mlで、Fab nCoV-4については5μg/mlで、ならびにnCoV-1を含む後続の実験では全て10μg/mlで、6分間、会合させた。次いで、競合抗体を同じ濃度でさらに6分間、会合させた。
【0415】
Octet(BLI、バイオレイヤー干渉法)を使用する競合実験
ACE2競合実験のために、ACE2-His(Bio-Techne AG)を、30分間、KB中5μg/mlで抗HIS(HIS2)バイオセンサー(Molecular Devices-ForteBio)上に負荷した。抗体を含むまたは含まないプレインキュベーション(30μg/ml、30分)後に15分間、1μg/mlのSARS-CoV-1 RBD-ウサギFcまたはSARS-CoV-2 RBD-マウスFc(Sino Biological Europe GmbH)を会合させた。解離を5分間モニターした。
【0416】
Octet(BLI、バイオレイヤー干渉法)を使用する親和性の決定
全長抗体のKD決定のために、キネティクス緩衝液での10分間の湿潤化ステップ後、プロテインAバイオセンサー(Pall ForteBio)を使用して、2.7μg/mlの組換え抗体を1分間、固定した。抗体で被覆されたセンサーを異なる濃度のSARS-CoV-1 RBD(Sino Biological)またはSARS-CoV-2 RBD(内部で生成;BetaCoV/Wuhan-Hu-1/2019、受託番号MN908947、からのスパイクの残基331~550)とともにインキュベートすることにより、5分間、会合曲線を記録した。試験した最高RBD濃度は10ug/mlであり、その後これを1:2.5で連続希釈した。KBを含有するウェルにセンサーを移動させることによって、解離を9分間記録した。KD値を、グローバルフィットモデル(Octet)を使用して算出した。Octet Red96(ForteBio)装置を使用した。
【0417】
Fab断片と比較して全長抗体のKDを決定するために、SARS-CoV-1またはSARS-CoV-2のHisタグ付きRBDを、KB中3μg/mlで15分間、抗HIS(HIS2)バイオセンサー(Molecular Devices、ForteBio)上に負荷した。全長抗体およびFabの会合を、KB中それぞれ15ug/mlおよび5ug/mlで5分間、行った。KB中での解離を10分間測定した。
【0418】
ELISA結合
mAbとSARS-CoVスパイクS1サブユニットタンパク質(WH20株)タンパク質の反応性を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により決定した。手短に述べると、96ウェルプレートを3μg/mlの組換えSARS-CoVスパイクS1サブユニットタンパク質(Sino.Biological)で被覆した。ウェルを洗浄し、PBS+1% BSAで1時間、室温でブロックし、次いで、連続希釈したmAbとともに1時間、室温でインキュベートした。結合したmAbを、アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(Southern Biotechnology:2040-04)を1時間、室温でインキュベートすることにより検出し、0.1Mグリシン緩衝液(pH10.4)中の1mg/mlのp-ニトロフェニルリン酸基質により30分間、室温で発色させた。光学密度(OD)値をELISAリーダー(Powerwave 340/96分光光度計、BioTek)において405nmの波長で測定した。
【0419】
中和アッセイ
別段の指示がない限り、SARS-CoV-2スパイクタンパク質でシュードタイプ化されたマウス白血病ウイルス(MLV)(SARS-CoV-2pp)、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質でシュードタイプ化されたマウス白血病ウイルス(MLV)(SARS-CoV-1pp)を使用した。ACE2を安定にトランスフェクトしたDBT細胞(DBT-ACE2)を標的細胞として使用した。SARS-CoV-2ppまたはSARS-CoV-1ppを10ug/mlのトリプシンTPCKで活性化した。活性化されたSARS-CoV-2ppまたはSARS-CoV-1ppを、抗体の希釈系列(抗体ごとに50ug/mlの最終濃度で出発して、3倍希釈)に添加した。DBT-ACE2細胞を抗体-ウイルス混合物に添加し、48時間インキュベートした。細胞培養上清の吸引およびSteady-GLO(登録商標)基質(Promega)の添加後に発光を測定した。
【0420】
別段の指示がない限り、シュード粒子中和アッセイは、VSVに基づくルシフェラーゼレポーターシュードタイピングシステム(Kerafast)を使用する。VSVシュード粒子および抗体をDMEM中で混合し、30分間、37℃でインキュベートする。次いで、感染混合物をVero E6細胞とともに1時間、37℃でインキュベートし、続いて、Pen-Strepと10% FBSとを含有するDMEMを添加する(感染混合物を除去しない)。細胞を37℃で18~24時間インキュベートする。Bio-Glo試薬(Promega)の添加後、Ensightプレートリーダー(登録商標)(Perkin Elmer)を使用してルシフェラーゼを測定する。
【0421】
SPRシングルサイクルキネティクス
SPR実験は、シングルサイクルキネティクス手法を使用してBiacore(商標) T200装置を用いて行った。S309 IgGを表面上で捕捉し、グリコシル化されたまたは脱グリコシル化された、漸増濃度の精製されたSARS-CoV-2 RBDを注入した。会合および解離キネティクスをモニターし、結合モデルにあてはめて親和性を決定した。
【0422】
組換え抗体の発現
組換え抗体を、以前に記載されたように重鎖を発現するプラスミドと軽鎖を発現するプラスミドとを一過性に共トランスフェクトしたExpiCHO(商標)細胞に発現させた。(Stettler et al. (2016) Specificity, cross-reactivity, and function of antibodies elicited by Zika virus infection. Science, 353(6301), 823-826)。モノクローナル抗体S303、S304、S306、S309、S310およびS315を、rIgG-LS抗体として発現させた。LS変異は、in vivoでのより長い半減期をもたらす。(Zalevsky et al. (2010) Enhanced antibody half-life improves in vivo activity. Nature Biotechnology, 28(2), 157-159)。
【0423】
配列アラインメント
SARS-CoV-2ゲノム配列を、2020年3月29日にGISAIDから「complete(>29,000bp)」フィルターおよび「low coverage exclusion」フィルターを使用してダウンロードした。コウモリおよびセンザンコウ配列を除去して、ヒトのみの配列を得た。GeneWise2で参照タンパク質(YP_009724390.1)-ゲノムアラインメントを行うことにより、スパイクORFの位置を特定した。不完全マッチおよびインデル含有ORFをレスキューし、下流の分析に含めた。seqkitを使用して、ヌクレオチド配列をin silicoで翻訳した。10%より多くの未確定アミノ酸を(Nベースコールに起因して)有する配列を除去した。MAFFTを使用して多重配列アラインメントを行った。アラインメントされた配列(n=2,229)と参照配列とを、R/BioconductorパッケージBiostringsを使用して比較することにより、バリアントを決定した。同様の戦略を使用して、ViPRが出典のSARS-CoVゲノムからスパイクタンパク質配列を抽出し、翻訳した(検索基準:SARS-CoV-2を除外するために2019年12月より前に寄託された、SARS関連コロナウイルス、全長ゲノム、ヒト宿主、n=53)。提供されているSARS-CoVゲノム配列は、数ある中でもUrbani、Tor2、TW1、P2、Frankfurt1などの、主要な公開株の全てを含んでいた。Tsan-Yuk Lamらにより示されたようなセンザンコウ配列は、GISAIDが出典であった。Lu et al (Lancet 2020)により示されたようなサルベコウイルスの3つの分岐群からのコウモリ配列は、Genbankが出典であった。ジャコウネコおよびタヌキ配列は、同様にGenbankが出典であった。
【0424】
(実施例38)
成人における軽度から中等度のCOVID-19疾患の処置のためのソトロビマブ(S309 N55Q LS)およびVIR-7832(S309 N55Q LS GAALIE)の第1/2相臨床研究
COVID-19の処置のための複数の候補薬剤の最適な用量、活性および安全性を決定するための、多施設、マルチアーム、複数用量、複数ステージ非盲検、アダプティブ、シームレス第I/II相ベイズ無作為化プラットフォーム試験(患者600名)の1つのアームにおいて、ソトロビマブ(S309 N55Q LS;より詳細には、ソトロビマブは、操作されたモノクローナル抗体(IgG1*01 G1m17;配列番号113のVH、M428LおよびN434S Fc変異;配列番号168のVL(カッパ軽鎖IgKC*01 k1m3)である)およびVIR-7832(IgG1*01 G1m17;配列番号113のVH、G236A、A330L、I332E、M428LおよびN434S Fc変異:配列番号168のVL(カッパ軽鎖IgKC*01 k1m3))を、候補者を優先して候補者と対照とに2:1で無作為に割り振って評価する。各用量を、患者6名のコホートで順次、安全性について評価する。このアームは、VIR-7831(ソトロビマブ)の3:1無作為化、盲検、プラセボ対照第I相、続いて、VIR-7832対ソトロビマブ対プラセボの2:2:1盲検、並行群間第II相試験を含む。VIR-7832単一用量を静脈内(IV)注入により投与する。出発用量は50mgであり、150および500mgの用量漸増を使用し得る。実薬比較対照は、ソトロビマブ(1時間にわたってのi.v.注入による500mg)である。プラセボを1時間にわたってi.v.注入により与える。
【0425】
主要アウトカム指標:
1.用量設定/第I相[時間枠:無作為化から29日]
有効性評価のための用量(複数可)の決定。用量制限毒性(研究中の薬物の安全性および忍容性-CTCAE v5グレード≧3 有害事象)
2.有効性評価/第II相-重症患者(A群)[時間枠:無作為化から29日]
活性および安全性の決定。
重症患者(群A)における:臨床的改善までの時間。改善は、WHO臨床進行尺度に従って決定することになる;改善は、無作為化後最大29日目までの、無作為化から最低限2段階の尺度の変化と定義する。
3.有効性評価/第II相-軽症から中等症患者(B群)[時間枠:無作為化から15日]
活性および安全性の決定。
軽症から中等症患者(B群)における:無作為化後最大15日まで測定して、鼻および/または咽頭スワブにおける陰性ウイルス力価までの時間と定義する、研究中の薬物の薬力学特性。
【0426】
副次的アウトカム指標:
1.有害事象率により評価する安全性[時間枠:無作為化から最大29日]
CTCAE v5に準拠する有害事象率
2.臨床的改善の評価[時間枠:無作為化から29日目まで]
8日目、15日目および29日目に臨床的改善(上で定義したとおり)があった患者の割合。
3.WHO臨床進行尺度を使用する臨床的改善の評価[時間枠:無作為化から15日目まで]
8日目および15日目におけるWHO臨床進行尺度で無作為化からの変化
4.WHO臨床進行尺度を使用する臨床的改善の評価[時間枠:無作為化から29日目まで]
WHO臨床進行尺度での1点変化までの時間
5.SpO2/FiO2を使用する臨床的改善の評価[時間枠:無作為化から29日目まで]
酸素飽和度の吸収酸素濃度比(SpO2/FiO2)に対する比
6.退院の評価[時間枠:無作為化から29日目まで]
8、15および29日目に退院した患者の割合
7.ICUへの入院の評価[時間枠:無作為化から29日目まで]
ICUへの入院率
8.安全性のさらなる評価(WCC)[時間枠:無作為化から29日目まで]
1、3、5、8、11日目(入院中)、ならびに15および29日目の白血球計数
9.安全性のさらなる評価(Hg)[時間枠:無作為化から29日目まで]
1、3、5、8、11日目(入院中)、ならびに15および29日目のヘモグロビン
10.安全性のさらなる評価(血小板)[時間枠:無作為化から29日目まで]
1、3、5、8、11日目(入院中)、ならびに15および29日目の血小板
11.安全性のさらなる評価(クレアチニン)[時間枠:無作為化から29日目まで]1、3、5、8、11日目(入院中)、ならびに15および29日目のクレアチニン
12.安全性のさらなる評価(ALT)[時間枠:無作為化から29日目まで]
1、3、5、8、11日目(入院中)、ならびに15および29日目のALT
13.全死亡率の評価[時間枠:無作為化から29日目まで]
8、15および29日目の死亡率。無作為化から死亡までの時間
14.酸素供給を行わなかった日数の評価[時間枠:無作為化から29日目まで]
酸素供給を使用した日および酸素供給を行わなかった日の継続期間(日数)
15.人工呼吸器離脱日数の評価[時間枠:無作為化から29日目まで]
機械的人工換気を行った日および機械的人工換気を行わなかった日の継続期間(日数)
16.新たな機械的人工換気の使用の発生頻度の評価[時間枠:無作為化から29日目まで]
新たな機械的人工換気の使用の発生頻度
17.早期警告スコア(National Early Warning Score)(NEWS)2/qSOFAの評価[時間枠:無作為化から29日目まで]
入院中に毎日NEWS2/qSOFAを評価する
18.トランスレーショナルアウトカム(ウイルス負荷量)の評価[時間枠:無作為化から29日目まで]
経時的なウイルス負荷量の変化
19.トランスレーショナルアウトカム(ベースラインSARS-CoV-2)の評価[時間枠:無作為化から29日目まで]
経時的なウイルス負荷量の変化
【0427】
適格性
研究に適格な年齢:18歳およびそれより高齢(成人、高齢者)
研究に適格な性別:全て
健康なボランティアを受入れる:無
【0428】
組入れ基準
1.SARS-CoV-2感染が検査(PCR)で確認された成人(≧18歳)
2.研究患者または法定代理人が署名したインフォームドコンセントを提供することができること
3.妊娠可能な女性(WOCBP)およびWOCBPと性交渉がある男性患者は、試験
処置の最終投与後、候補者特異的試験プロトコールに概要が示されている期間中、試験処置の最初の投与から試験処置を通して、非常に有効な避妊方法(プロトコールに概要が示される通り)に同意する
【0429】
追加の基準が適用され得る:
A群(重度の疾患)4a。WHO臨床重症度スコア、9点順序尺度による定義に従って、グレード4(入院している;マスクもしくは鼻プロングによる酸素)、5(入院している;非侵襲的換気を用いている、もしくは高流量の酸素)、6(入院している;挿管および機械的人工換気)、または7(換気および追加の臓器サポート-昇圧薬、腎代替療法(RRT)、体外式膜型人工肺(ECMO))の臨床状態を有する患者。
B群(軽度から中等度の疾患)4b。次の特徴を有する外来または入院患者:末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)>94%RA N.B.
以下のような主な試験除外基準の概要をマスタープロトコールに示す:
1.*
2.*
3.妊娠または授乳
4.*
5.いずれかの研究対象薬に対するアレルギー
6.登録から30日または半減期の5倍(どちらか長い方)以内に他の禁忌薬(CSTプロトコールに概要を示すような)を摂取している患者
7.別の治験医薬品の臨床試験(CTIMP)に参加している患者
*「マスタープロトコールは、「1」、「2」および「4」について以下のことを定める:
2.ステージ4重度慢性腎疾患、または透析を必要とすること(すなわち、推定糸球体濾過量<30mL/分/1.73m2)
4.「72時間以内に研究施設でない別の病院に移されることが予想される」
IMPは、肝臓または腎臓により体から除去されない(1および2)モノクローナル抗体であり、入院している患者は、この研究から除外されるので、これらの基準は、このプロトコールに適用されない。
VIR-7832およびソトロビマブ候補特異的試験の目的では、以下の除外基準も適用する:
8.現在入院しているか、または治験責任医師によって今後24時間以内に急性期医療のために入院を必要とする可能性が高いと判断される
9.安静時の息切れ、または呼吸促迫、または酸素補給を必要とすることにより定義される、重度のCOVID-19と一致する症状
10.治験責任医師の判断で、今後7日以内に死亡する可能性が高い参加者
11.免疫抑制化学療法または免疫療法を受けているがん患者、過去3カ月以内に固形臓器移植または同種幹細胞移植を受けた、何らかの心臓もしくは肺移植歴がある、または高用量の長期全身性コルチコステロイド(2週間を超える期間にわたって1日に≧20mgのプレドニゾンもしくは全身性等価物に相当する)を受けた者を含むがこれらに限定されない、重度免疫不全の参加者
12.第I相のみ:糖尿病(投薬を必要とする)、慢性腎疾患(すなわち、Modification of Diet in Renal Disease(MDRD)研究により決定される、eGFR<60)、慢性肝疾患(例えば、肝硬変)、うっ血性心不全(ニューヨーク心臓学会(NYHA)クラスIIもしくはそれより上)、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、慢性閉塞性の肺疾患、もしくは労作時の呼吸困難を伴う肺気腫の病歴
)、および中等度から重度の喘息(参加者が、症状を制御するために吸入ステロイドを必要とする、もしくは過去1年以内に経口ステロイド治療を受けた)。
13.治験責任医師の判断で、研究への参加者の安全な参加およびその研究の遂行を不可能にする、あらゆる現行の病状
14.治験製品中に存在するいずれかの構成要素に対する既知の過敏性
15.モノクローナル抗体による以前のアナフィラキシーまたはモノクローナル抗体に対する以前の過敏症
16.臨床試験の一部としてまたは別様にSARS-CoV-2のワクチンをこれまでに受けたことがある。
17.登録前48時間以内に何らかのワクチンを受けたこと。ワクチン接種は、投与後4週間は認められないことになる。
18.回復したCOVID-19患者からの回復期血漿、または抗SARS-CoV-2 mAbを、過去3カ月以内に受けたこと。
19.治験責任医師の判断で、プロトコールの要件を満たす可能性が低いまたは満たすことができない参加者。
【0430】
(実施例39)
軽度から中等度COVID-19疾患の処置のためのソトロビマブの第2/3相臨床研究
ランダム化、多施設、二重盲検、プラセボ対照研究を行って、外来患者におけるCOVID-19の早期処置のためのソトロビマブ(S309 N55Q LS)の安全性および有効性を評価する。ソトロビマブは、操作されたモノクローナル抗体(IgG1*01 G1m17;配列番号113のVH、M428LおよびN434S Fc変異;配列番号168のVL(カッパ軽鎖IgKC*01 k1m3))である。
【0431】
主目的は、軽度/中等度から重度または重篤COVID-19疾患への進行を予防する点でのソトロビマブの有効性をプラセボに対して評価することである。主要エンドポイントは、29日目までの主要解析による、重度の疾患、重篤疾患、または死亡に進展する参加者の割合である。
【0432】
重要な副次的目的は、ソトロビマブの安全性および忍容性をプラセボと比較して決定すること、8、15および22日目にCOVID-19疾患進行を予防する点でのソトロビマブの有効性をプラセボに対して評価すること、死亡を予防する点でのソトロビマブの有効性をプラセボに対して評価すること、人工呼吸器使用日数、ICU滞在期間(LOS)、および全病院LOSを短縮する点でのソトロビマブの有効性をプラセボに対して評価すること、COVID-19臨床兆候および症状の継続期間を短縮する点およびその重症度を低下させる点でのソトロビマブの有効性をプラセボに対して評価すること、COVID-19の非呼吸器合併症を予防する点でのソトロビマブの有効性をプラセボに対して評価すること、SARS-CoV-2ウイルス排出の継続期間を低減する点でのソトロビマブの有効性をプラセボに対して評価すること、抗ウイルス応答を誘導する点でのソトロビマブの有効性をプラセボに対して評価すること、正常な生活への復帰を助長する点でのソトロビマブの有効性をプラセボに対して評価すること、血清中のソトロビマブの薬物動態(PK)を評価すること、およびソトロビマブの免疫原性を評価することである。
【0433】
予備的な目的は、8、15および22日目までCOVID-19疾患進行を予防する点でのソトロビマブの有効性をプラセボに対して評価すること、ソトロビマブに対するSARS-CoV-2耐性変異体の処置中の出現をモニターすること、SARS-CoV-2ウイルス負荷量を低減する点でのソトロビマブの有効性をプラセボに対して評価すること、SARS-CoV-2に対する宿主応答の潜在的バイオマーカーを用いてソトロビマブの効果をプラセボに対して評価すること、被験体の遺伝的多型とソトロビマブの作用機序および/またはPKとの潜在的な関係性を評価すること、ならびにCOVID-19病に起因する仕事の離脱期間および仕事の生産性に対するソトロビマブ処置の影響を測定することである。
【0434】
【0435】
評価基準の詳細
この研究の主要エンドポイントは、以下の通りである:
・以下により定義される、29日目までに重度もしくは重篤COVID-19に進行する、または死亡する被験体の割合:
1.重症疾患:酸素補給>1日を必要とする低酸素血症(室内空気でのO2飽和度≦93%、またはPaO2/FiO2<300)、または
被験体が、≧4L/分の酸素補給もしくは同等の処置を必要とし、治験責任医師もしくは委任された者により室内空気でのO2飽和度の測定が医学的に安全でないと判断される。または
2.重篤疾患:侵襲的機械的人工換気、ECMOの少なくとも一方を必要とする呼吸不全;またはショック;または多臓器機能不全/不全
または
3.死亡
この研究の副次的エンドポイントは、以下の通りである:
1.有害事象(AE)の発生
2.重篤有害事象(SAE)の発生
3.特に注目すべき有害事象(AESI)の発生
4.進行して8日目、15日目または22日目に重度もしくは重篤COVID-19を発症する被験体の割合
5.29日目、60日目、および90日目の全死因死亡率
6.無作為化から29日にわたって呼吸器使用日の総数
7.全集中治療室滞在期間(LOS)
8.全病院LOS
9.Flu-PRO患者報告アウトカム測定装置を使用するCOVID-19関連疾病についての被験体報告兆候および症状の重症度および継続期間
10.心臓、血栓塞栓、腎、神経学的事象の発生
11.ベースラインでの、および追跡調査期間中、29日目までの、PCRによる鼻汁中のSARS-CoV-2の検出
12.血清中のソトロビマブの薬物動態(PK)
13.ソトロビマブに対する血清ADAの発生率および力価(該当する場合)
【0436】
この研究の予備的エンドポイントは、以下の通りである:
1.臨床的改善についての順序尺度の各カテゴリー(下記参照)の8日目、15日目、22日目および29日目における被験体の割合
2.SARS-CoV-2によるmAbに対するウイルス耐性変異体の出現
3.qRT-PCRによる鼻汁および血液中のウイルス負荷量
4.宿主トランスクリプトームおよび免疫表現型解析
5.遺伝子型判定により決定されるFcγR多型
6.遺伝子型判定により決定されるIgG1アロタイプ
7.仕事の生産性および活動障害(WPAI)のベースラインからの変化
8.EQ-5D-5Lによる健康に関連する生活の質のベースラインからの変化
【0437】
臨床的改善をカテゴリー分けする際に使用するための順序尺度は、以下の通りである:
1.未感染:感染の臨床的証拠もウイルス学的証拠もない。
2.非入院者;活動制限なし(在宅で酸素を使用する場合、カテゴリー4として報告する)
3.非入院者;活動制限あり
4.入院者;酸素療法なし
5.入院者;マスクもしくは鼻プロングによる低流量酸素
6.入院者;高流量酸素;持続的気道陽圧法(CPAP);二相性気道陽圧法(BiPAP);非侵襲的換気
7.入院者;挿管および機械的人工換気
8.入院者;機械的人工換気に加えて臓器サポート(昇圧剤、RRT、ECMO)
9.死亡
【0438】
被験体の数
この研究は、2部から構成される。導入期には、疾患進行リスクが高い、早期、軽度から中等度COVID-19に罹患している被験体おおよそ20名を登録する。拡大期には、疾患進行リスクが高い、早期、軽度から中等度COVID-19に罹患している被験体おおよそ850名を登録する。
【0439】
診断および主な組入れ基準
組み入れ基準は、以下を含む:
年齢:
1.糖尿病、肥満(BMI>30)、慢性腎疾患、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患および中等度から重度の喘息をはじめとする合併症をCOVID-19疾患から発症するリスクが高い18歳およびそれより高齢の被験体
および
2.併存疾患に関係なく、被験体≧55歳
【0440】
疾患特性:
1.SARS-CoV-2試験の結果(任意の有効性が認められた試験、例えば、任意の検体タイプでのRT-PCR、による)が陽性である被験体
および
2.室内空気での酸素飽和度≧94%を有する被験体;
および
1.次の症状の1つまたは複数により定義される、軽度から中等度または中等度の合併症のないCOVID-19病を有する者:
発熱、悪寒、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、関節または筋肉痛、嗅覚および味覚の変化、嘔吐、下痢、労作時の息切れ;
および
3.症状の開始から4日未満または4日である者
【0441】
性別:
1.性別による制限なし
2.女性被験体は、次の避妊基準を満さなければならず、順守することに同意しなければならない。女性による避妊具の使用は、臨床研究に参加する者のための避妊方法に関する当該国の規制と一致していなければならない。
3.女性被験体は、妊娠しておらず、授乳中でもなく、以下の条件の1つが当てはまる場合、適格である:
非妊娠可能な女性(WONCBP)である;
または
妊娠可能な女性(WOCBP)であって、失敗率が<1%である非常に有効である避妊法を研究治療期間中および研究治療薬の最終投与後1年までの間、使用する女性である。治験責任医師は、研究治療薬の初回投与と関係付けながら避妊方法の失敗の可能性(例えば、不遵守、最近開始されたもの)を評価しなければならない。
4.WOCBPは、入院時または研究治療薬の初回投与の前に高感度妊娠検査(当該国の規制の要求に応じて尿または血清)が陰性でなければならない。尿検査が陰性と確認できない場合(例えば、あいまいな結果)、血清妊娠検査が必要である。そのような場合、血清妊娠結果が陽性であった場合には被験体を参加から除外しなければならない。
【0442】
インフォームドコンセント:
5.研究要件を満たす意思があり、署名済みのインフォームドコンセントを提出することができるか、または署名済みのインフォームドコンセントを提出することができない場合、代替承諾手順に従うことができる場合。
【0443】
除外基準:
医学的状態
・現在入院しているか、または治験責任医師によって今後24時間以内に入院を必要とする可能性が高いと判断される
・安静時の息切れまたは呼吸困難、または酸素補給を必要とすることにより定義される、重度COVID-19と一致する症状
・治験責任医師の判断で、今後7日以内に死亡する可能性が高い患者
・免疫抑制化学療法または免疫療法を受けているがん患者、過去3カ月以内に固形臓器移植または同種幹細胞移植を受けた者、または無作為化から6週間以内に1日に≧0.5mg/kg体重のプレドニゾンに相当する全身性コルチコステロイドの使用を必要とする状態を有する者を含むがこれらに限定されない、重度免疫不全の患者
・治験製品中に存在するいずれかの構成要素に対する既知の過敏性
・モノクローナル抗体による以前のアナフィラキシーまたはモノクローナル抗体に対する以前の過敏症
【0444】
過去の臨床研究/並行臨床研究の経験
・過去180日以内の何らかの治験ワクチン研究への参加、または1日目の前の30日以内、もしくは治験化合物の5半減期以内、どちらか長い方、の何らかの他の治験薬研究への参加
・SARS-CoV-2用の治験ワクチンの何らかの試験への参加
【0445】
他の除外
・登録前48時間以内の何らかのワクチンを受けたこと。無作為化前の何らかの時点でSARS-CoV-2ワクチンを受けたこと。ワクチン接種(SARS-CoV-2用のワクチン接種を含む)は、投与後4週間は認められないことになる。
・回復したCOVID-19患者からの回復期血漿、または抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体を、過去3カ月以内に受けたこと
・治験責任医師の判断で、29日目までプロトコールの要件を満たす可能性が低いまたは満たすことができない患者
【0446】
研究参加および追跡調査の継続期間
研究対象薬物による処置の継続期間は、単回投与である。各被験体について、スクリーニングおよび追跡調査を含めて、研究にかかる推定合計時間は、おおよそ9カ月である。全ての被験体を、研究ユニットからの退院前に、投与後、少なくとも2時間にわたってモニターする。研究の導入部分に登録した被験体を、最低7日間、入院環境でモニターする。その後、被験体を、外来患者として1、2、3および4週目に対面での研究のための受診で、ならびに14日目まで研究のための受診日以外の日に毎日電話連絡で、積極的にモニターする。29日目の後は、投与から合計9カ月間、月に1回、遠隔医療によってまたは電話連絡によって患者をモニターする。
【0447】
研究デザイン
独立データモニタリング委員会(Independent Data Monitoring Committee)(IDMC)が、中間の非盲検化安全性データ(導入期)ならびに中間の非盲検化安全性および有効性データ(拡大期)を積極的にモニターして、進行中の研究の実施に関する提言を行う。IDMCメンバーは、関連する医学の専門的訓練を受けた医師および1名の統計学者を含む。IDMCは、拡大期の開始前に研究の導入期からの非盲検化安全性データを再調査する。加えて、IDMCは、拡大期中に定期的な安全性の再調査を行う。第1の安全性再調査は、患者合計60名(1アームあたり30名)からの14日目までに入手可能な安全性および忍容性データを含む。事前に指定された基準に従って安全性の懸念も忍容性の懸念もない場合、IDMCは、重度から重篤COVID-19に罹患している入院患者における別の研究の開始を提言する。必要に応じて、追加の患者おおよそ100名(1アームあたり50名)各々を登録した後に追加の安全性の再調査を行う。最後に、登録した被験体のおおよそ33%(1アームあたり145名)および登録した被験体のおおよそ67%(1アームあたり290名)による2つの中間解析を行って、安全性、無益性および有効性を評価する。共同安全性再調査チーム(Joint Safety Review Team)(JSRT)は、インストリーム盲検化データ再調査中に特定された安全性の懸念を、IDMCに付託する必要があるかどうかを決定する。
【0448】
この研究は、高リスク被験体における軽度から中等度COVID-19疾患の進行を予防するための、SARS-CoV-2に対するモノクローナル抗体(mAb)であるソトロビマブの、無益性、有効性または安全性のための早期中止を可能にする中間解析用モニタリングを伴う、無作為化、二重盲検、多施設、プラセボ対照試験である。疾患進行リスクが高い早期、軽度から中等度COVID-19に罹患している被験体を1:1無作為化して、ソトロビマブまたは等体積の生理食塩水プラセボのどちらかの単回静脈内注入を彼らに施す。安全性および有効性の比較は、並行して無作為化した参加者からのデータに基づく。
【0449】
この研究は、2部から構成される。導入期には、疾患進行リスクが高い、早期、軽度から中等度COVID-19に罹患している被験体20名を登録する。独立データモニタリング委員会(IDMC)による非盲検化データ安全性評価の後に、追加の被験体を登録する拡大期が進行し、これらの被験体は、早期、軽度から中等度COVID-19に罹患しており、疾患進行リスクが高い。
【0450】
導入期:
研究の導入期は、重度の疾患に進行リスクが高い、早期、軽度から中等度COVID-19に罹患している被験体におけるソトロビマブの安全性および忍容性を評価する。呼吸器の状態、酸素化および他のバイタルサインの評価ならびに検査室評価を含む入院環境で7日間、被験体をモニターする。単一用量レベルを研究し、静脈内注入により送達する。被験体を研究ユニットに受け入れ、有害事象、検査室パラメーターの変化、ならびに疾患の兆候および症状の進行または改善について厳密にモニターする。
【0451】
登録した最初の2名の適格な被験体をソトロビマブまたはプラセボに1:1無作為化する。これらの指標被験体に投与し、彼らを少なくとも48時間、入院環境でモニターする。用量投与中、1時間のIV注入を通して15分ごとにバイタルサインをモニターする。バイタルサインを注入後にも2時間にわたって1時間ごとにモニターする。バイタルサイン、ECG、症状関連身体検査、および有害事象(AE)を、治験責任医師が再調査する。治験責任医師が差し迫った安全性の懸念を抱かなければ、導入期の被験体の残部に投与する(指標被験体を含めて1アームあたり合計10名)。
【0452】
導入期に登録した被験体20名の全て(1アームあたりN=10;ソトロビマブまたはプラセボ)を、インテンシブPKおよび免疫原性の下位研究に割り当てる。下位研究に登録していない全ての参加者から、スパース試料を採取する。血清PKおよび抗薬物抗体(ADA)試料を採取する。
【0453】
拡大期:
研究の拡大期は、IDMCによる導入期(14日の追跡調査にわたって1アームあたりN=10)からの入手可能な非盲検化安全性データの評価後に進行する。拡大期の目的は、プラセボ対照アームと比較してソトロビマブの安全性および有効性を評価することである。重度の疾患に進行リスクがある早期の軽度から中等度のCOVID-19に罹患している被験体を1:1比(1アームあたり435名)で無作為化して、ソトロビマブまたはプラセボの単回IV注入を彼らに施す。
【0454】
被験体を、研究ユニットからの退院前に、投与後、少なくとも2時間にわたってモニターする。その後、被験体を、外来患者として1、2、3および4週目に対面での研究のための受診で、ならびに14日目まで研究のための受診日以外の日に毎日電話連絡で、AEおよび疾病の悪化について積極的にモニターする。加えて、低酸素血症をモニターするためのデバイスを被験体に提供する。
【0455】
29日目の後は、必要に応じて、投与から合計9カ月間、月に1回、遠隔医療によってまたは電話連絡によって患者をモニターして、その後のCOVID-19病の発生率および重症度について評価する。
【0456】
登録した被験体のおおよそ33%(1アームあたり145名)および登録した被験体のおおよそ67%(1アームあたり290名)による2つの中間解析を行って、無益性、有効性および安全性を評価し、これらの中間解析によって、全疾患進行率が予想より低かった場合には試料サイズを概算し直すことが可能になる。
【0457】
プラセボ対照は、ソトロビマブの安全性および忍容性とCOVID-19のバックグラウンド兆候および症状を区別し、臨床アウトカムに対するその潜在的利益を評価する。プラセボアームの使用によって、研究中に施されるバックグラウンド支持療法に起因し得るものに対してソトロビマブに起因し得る有効性および安全性のあらゆる変化を正当に評価することが可能になる。
【0458】
処置の有効性を評価するための主要エンドポイントは、酸素補給を必要とする低酸素症と定義される重度疾患への進行、または重篤疾患(次のうちの少なくとも一方を必要とする呼吸不全:侵襲的機械的人工換気、ECMO;またはショック;または多臓器機能不全/不全)の発生、または無作為化から29日以内の死亡である。低酸素症も酸素要求もない外来患者状態から、酸素療法または高レベルの呼吸/臓器サポートを必要とする低酸素症への移行は、臨床的に有意なマイルストーンである。
【0459】
有意な副次的エンドポイントは、29日目の全死因死亡率である。入院に関係する他の副次的有効性エンドポイント-入院の長さ、ICU滞在、換気を受ける時間、被験体報告兆候の重症度および継続期間、ならびにCOVID-19の症状も、臨床的に意義がある。
【0460】
免疫学評価下位研究:
宿主免疫応答および感染の潜在的バイオマーカーを探究するために、被験体は、末梢血単核細胞(PBMC)を指定された時点で採取する必要に応じた下位研究に同意し得る。この必要に応じた下位研究を選択された施設で行う。1アームあたり参加者おおよそ20~50名をこの必要に応じた下位研究に登録する。研究の導入期と拡大期の両方からの被験体を免疫学評価下位研究に組み入れることができる。
【0461】
研究治療群および継続期間
スクリーニング評価を初回投与前24時間以内に行う。適格な被験体を1日目に盲検方式で単回IV投与によって処置し、9カ月まで(36週間)追跡調査する。
【0462】
導入期に、軽度から中等度のCOVID-19に罹患している被験体20名を1:1無作為化して、ソトロビマブまたはプラセボの単回IV投与を彼らに施す。研究の導入期に登録した被験体を、最低7日間、入院環境で厳密にモニターする。この7日の終了時、彼らは、治験責任医師による臨床状態の評価に基づいて、退院して家に戻るか、入院ユニットに留まるか、または正式に入院する。
【0463】
拡大期に、軽度から中等度のCOVID-19に罹患している被験体を1:1無作為化して、ソトロビマブまたはプラセボの単回IV投与を彼らに施す。
【0464】
拡大期への参加者を以下の基準によって層別化する:
1.症状の継続期間:≦2日対3~4日
2.年齢≦70歳対>70歳
【0465】
研究治療薬
研究治療薬および投与指示は、次の表7の通りである。
【0466】
【0467】
用量選択は、生ウイルス中和データ、耐性データ、非ヒト霊長類PKによる情報に基づくヒトPK予測、およびカニクイザルにおける無毒性量(NOAEL)により導かれる。
【0468】
【0469】
(実施例40)
ソトロビマブ単剤療法は、COVID-19に罹患している成人の早期処置で入院を低減し、死亡リスクを低下させる
実施例39で説明した臨床試験の第3相部分での、ソトロビマブ(500mg)またはプラセボの単回静脈内注入の安全性および有効性を、世界規模で非入院参加者583名(処理アームの患者291名およびプラセボアームの患者292名)において評価した。主要有効性エンドポイントは、COVID-19が進行した患者の割合であり、この進行を、少なくとも24時間の入院の必要性、または無作為化から29日以内の死亡により定義した。研究した者の中で、63%は、ヒスパニック系アメリカ人またはラテンアメリカ系住人であり、7%は、黒人またはアフリカ系アメリカ人であった。アメリカ疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)によれば、これらの個体群は、COVID-19によって入院する可能性がおおよそ3倍高く、死亡する可能性がおおよそ2倍高い(データソース:COVID-NET(www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/covid-data/covid-net/purpose-methods.html、2020年3月1日から2021年1月30日までアクセスした);数は、2019 US standard COVID-NET catchment populationに標準化された年齢調整比の比率である;データソース:NCHS暫定死亡者数(data.cdc.gov/NCHS/Deaths-involving-coronavirus-disease-2019-COVID-19/ks3g-spdg、2021年1月30日までのデータ)。数は、2019 US intercensal population estimateに標準化された年齢を調整した比の比率である)。
【0470】
試験に登録した患者583名からのデータの中間解析は、試験の主要エンドポイントである、プラセボと比較して単剤療法としてのソトロビマブによる患者の入院または死亡の85%(p=0.002)低下を実証した。ソトロビマブは、忍容性良好であった。この試験は、現在進行中であり、患者に対して盲検化して24週間の追跡調査が継続しており、疫学およびウイルス学データを含む追加の結果を採取している。
【0471】
この研究および結果をさらに詳細に説明する:
方法:多施設、二重盲検、第3相試験において、症候性COVID-19に罹患しており、少なくとも1つの疾患進行リスク因子を有する非入院患者を、ソトロビマブ500mgまたはプラセボの静脈内注入に無作為化(1:1)した。主要有効性エンドポイントは、COVID-19が進行した患者の割合であり、この進行を、29日までの、24時間より長い入院、または死亡と定義した。
【0472】
結果:患者583名(ソトロビマブ、291名;プラセボ、292名)の治療企図解析対象集団を含む、この予め計画された中間解析において、主要有効性エンドポイントを満たした。COVID-19進行リスクは、有意に85%低下され(97.24%信頼区画、44%~96%;P=0.002)、プラセボ群での患者21名(7%)に対してソトロビマブ群では主要エンドポイントに進行した患者は合計3名(1%)であった。29日目までに死亡した1名を含む、集中治療に入れた患者5名は全て、プラセボを施した者であった。安全性を患者868名(ソトロビマブ、430名;プラセボ、438名)で評価した。有害事象は、ソトロビマブおよびプラセボを施した患者のそれぞれ17%および19%により報告され、重篤有害事象は、一般的に、プラセボ(6%)に対してソトロビマブ(2%)の方が低かった。
【0473】
治療企図解析(N=1057、フルデータセット)において、29日までの入院(あらゆる原因)についての調整した相対リスク低下は、プラセボのレシピエント(n=526)に対してソトロビマブのレシピエント(n=523)では79%(95%CI、9%~50%;p<0.001)であった。ソトロビマブでの処置(ITT)は、プラセボと比較して、疾病管理のためのER受診の必要性、急性疾病管理のための入院(任意の継続期間)、または死亡(任意の理由)に関する数値低減をもたらした。参加者4名が機械的人工換気を必要とした参加者9名のプラセボと比較して、ソトロビマブを用いた参加者にICU入院を必要とした者はいなかった。プラセボを用いた参加者4名と比較して、ソトロビマブを施して死亡した参加者はいなかった。有害事象の発生率は、処置アーム間で同様であり、SAEは、プラセボアームでのほうが数値的に多く見られた。
【0474】
結論:ソトロビマブは、COVID-19の軽度/中等度の疾患に罹患している患者の進行を低減し、忍容性良好であり、安全性シグナルは特定されなかった。
【0475】
方法
試験目的および監視
この第3相、無作為化、二重盲検、多施設、プラセボ対照研究は、ソトロビマブ500mgの単回静脈内注入を高リスク、非入院患者における軽度/中等度のCOVID-19の進行の予防について評価する。この予め計画された中間解析のために、患者を4カ国の37の研究施設(米国、カナダ、ブラジルおよびスペイン)で2020年8月27日に募集し始め、2021年3月4日まで続けた。試験開始後にプロトコールおよび統計解析プランに加えたあらゆる変更を本実施例の補足付録に要約する。
【0476】
この研究は、ヘルシンキ宣言および国際医学団体協議会の国際的倫理指針(Declaration of Helsinki and Council for International Organizations of Medical Sciences International Ethical Guidelines)の原則、適用International Council for Harmonisation Good Clinical Practiceガイドライン、ならびに準拠法および規則に従って行う。全ての患者が書面によるインフォームドコンセントを提出した。
【0477】
患者および手順
逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応または抗原SARS-CoV-2試験の結果が陽性であり、過去5日以内に症状が開始した、18歳またはそれより高齢の成人患者を、適格についてスクリーニングした;スクリーニングは、研究対象薬物投与前24時間以内に行った。患者は、COVID-19に進行するリスクが高い必要があり、リスクの高い患者を、高齢の成人(年齢≧55歳)、または次のリスク因子の少なくとも1つを有する成人と定義した:投薬を必要とする糖尿病、肥満(ボディーマスインデックス>30kg/m2)、慢性腎疾患(推定糸球体濾過量<60mL/分/1.73m2)23、うっ血性心不全(ニューヨーク心臓学会クラスIIもしくはそれより上)、慢性閉塞性肺疾患、および中等度から重度の喘息24。
【0478】
安静時の息切れ、呼吸困難、または酸素補給を必要とすることにより定義される、既に重度のCOVID-19に罹患している患者は、除外した。組入れ基準を本実施例の補足付録に記載する。
【0479】
適格な患者を、1日目に、双方向ウェブ応答システムを使用して、ソトロビマブの単回500mg、1時間注入、または等体積の生理食塩水プラセボに、1:1無作為化して与えた。
【0480】
有効性評価
主要エンドポイントは、29日目までに、何らかの原因により、24時間を超えて入院した、または死亡した患者の割合であった。副次的有効性エンドポイントは、救急外来受診、入院、または死亡があった患者の割合;死亡率;患者報告アウトカム;ウイルス負荷量の変化;および酸素補給を必要とするところまで進行した患者の割合を含んだ。
【0481】
安全性評価
安全性エンドポイントは、有害事象、重篤有害事象、および注入に伴う反応(過敏症反応を含む)として定義される特に注目すべき有害事象、抗薬物抗体についての免疫原性試験、ならびに抗体依存性感染増強の評価を含んだ。COVID-19によるものを含む、全ての入院を、重篤有害事象と見なした。
【0482】
統計解析
安全性、無益性、および絶大な有効性についての予め計画された中間解析を、研究患者の必要数のおおよそ41%が29日目に達したときに始動させた。試料サイズ計算は、有効性の欠如に起因する無益性または絶大な有効性の両方を評価するために2つの中間解析を用いる群逐次デザインに基づいた。第1種過誤を制御するためにLan-DeMetsのアルファ消費関数を使用し、無益性についてはPocockアナログ規則を利用し、有効性についてはHwang-Shih-DeCani(パラメーターγ=1を用いて)アナログを利用した25。1360の全試料サイズによって、全体として両側5%の有意レベルで29日目までのCOVID-19の進行の低減に関して37.5%相対有効性を検出する検出力おおよそ90%が得られ、プラセボ群での仮定進行率は16%であった。
【0483】
中間解析治療企図(ITT)集団は、研究対象薬物が施されたかどうかに関係なく、2021年1月19日の事前に指定された中間解析カットオフ日までの全ての無作為化患者を含んだ。中間解析安全性解析集団は、研究対象薬を施し、2021年2月17日まで無作為化した、全ての患者を含み、施した実際の処置に従って患者を群別化した。ポアソン回帰モデルを使用して、処置、症状の継続期間、年齢および性別について調整したロバストなサンドイッチ推定で、ITT集団において主要エンドポイントを解析した。進行のない状態は、多重代入法を使用して、ランダムな欠測を仮定して代入した。この解析モデルに基づいて、統計的有意性検定、相対進行リスク、およびその適切な信頼区間(CI)を、この中間解析のために、調整した有意性レベルを使用して得る。
【0484】
観察された有効性の結果として、独立データモニタリング委員会は、研究への登録を2021年3月10日に中止することを提言し、この時点で患者1057名が無作為化されていた。全ての副次的および予備的エンドポイントの解析は、全ての患者が29日目を完了したときに行う。
【0485】
結果
患者
スクリーニングした患者795名のうち、583名を2021年1月19日までにソトロビマブ(患者291名)またはプラセボ(患者292名)に無作為化した。これらの患者は、中間解析ITT集団を含む(
図7)。このITT集団において、処置群にわたって同様の気質が見られた。全体として、各々ソトロビマブおよびプラセボ群における患者4名が、研究を中止した。ソトロビマブ群の患者3名は、投与の前に中止し、患者4名は、個人的理由で5日目に同意を取り消した。プラセボ群の患者1名は、投与の前に同意を取り消し、患者3名は、投与後に個人的理由で取り消した(16、25、および85日目)。ITT集団における追跡調査継続期間の中央値は、ソトロビマブ群について72日(範囲、5~190日)およびプラセボ群について72日(範囲、16~190日)であった。
【0486】
全体として、患者868名(ソトロビマブ、患者430名;プラセボ、患者438名)を無作為化し、2021年2月17日まで研究対象薬物を施した。これらの患者は、中間解析安全性解析対象集団を含む。この集団における追跡調査継続期間の中央値は、ソトロビマブ群について56日(範囲、5~190日)およびプラセボ群について55日(範囲、2~190日)であった。
【0487】
ITT集団の処置群は、ベースライン人口統計および疾患特性のバランスがよく取れていた(表8)。全体として、患者の22%は、65歳より高齢であり、7%は、黒人またはアフリカ系アメリカ人であり、63%は、ヒスパニック系またはラテンアメリカ系であり、42%は、COVID-19進行のリスク因子と考えられる2つまたはそれより多くの状態を有した。最もよく見られたリスク因子は、肥満、55歳またはそれより高齢、および投薬を必要とする糖尿病であった。最もよく見られた提示症状(全患者の>60%)は、咳、筋肉の痛み/筋肉痛、頭痛、および疲労であった(本実施例の補足付録における表11)。安全性解析対象集団におけるベースライン人口統計および疾患特性は、処置群にわたって同様であった。これらを本実施例の補足付録における表12で報告する。
【0488】
有効性アウトカム
ソトロビマブでの処置は、何らかの原因による24時間を超える入院の必要性または死亡をプラセボと比較して85%低減する結果となった(相対リスク、0.15[97.24%CI、0.04対0.56])。プラセボ群の患者21名(7%)に対してソトロビマブ群では患者3名(1%)が主要エンドポイントに進行した(P=0.002)(表9)。24時間より長い入院24件の主な理由は、進行性COVID-19と一致した(本実施例の補足付録における表13)が、次の1件はこの例外となる可能性が高かった:感染後22日目に小腸閉塞を示した、小腸閉塞の顕著な過去の医療歴があるソトロビマブ群の患者。これらの入院の重症度に関して、集中治療に入れる必要があった患者5名全てがプラセボ群の者であり、これら患者5名のうちの2名は、侵襲的機械的人工換気を必要とし、3番目の患者は、挿管を断り、その後、29日目までに死亡した。救急外来受診または24時間未満の入院が、ソトロビマブ群においてプラセボ群と比較して少ない患者に見られた(表9)。
【0489】
安全性
有害事象を報告した安全性解析対象集団における患者の割合は、ソトロビマブ群が17%(患者430名のうちの73名)およびプラセボ群が19%(患者438名のうちの85名)であった(表10)。グレード3または4有害事象を報告した患者の割合は、ソトロビマブ群(2%)におけるほうがプラセボ群(6%)より低かった。全体として、ソトロビマブを施した患者の少なくとも1%に発生した唯一の有害事象は下痢であり、下痢は、まれに発生した-プラセボ群の患者3名(<1%)に対してソトロビマブ群では患者6名(1%)。ソトロビマブ群の患者の中で、下痢の全ての症例は、重症度の点で軽度(患者5名)または中等度(患者1名)であった。
【0490】
注入に伴う反応が、プラセボ(1%)と比較してソトロビマブを施した患者の同様の割合(1%)に認められた。ソトロビマブを施した患者1名に、研究処置に関連すると考えられる注入に伴う反応があった:中等度(グレード2)の呼吸困難。
【0491】
重篤有害事象は、ソトロビマブを施した患者の2%およびプラセボを施した患者の6%に発生した。これらの事象の大部分は、COVID-19に関連する原因による入院であった。ソトロビマブに関連する重篤有害事象は認められなかった。
【0492】
プラセボ群の患者1名は、29日目より後に死亡した。この患者は、37日目にCOVID-19肺炎に起因して死亡した。
【0493】
血液、肝臓または化学検査データに傾向は認められなかった。全体として、検査結果は、ソトロビマブおよびプラセボ群において同様であった。
【0494】
論考
COMET-ICE研究のこの予め計画された中間解析では、ソトロビマブの単一500mg用量が、症候性COVID-19に罹患していた高リスク成人における入院(>24時間)または死亡のリスクをプラセボと比較して85%低下させた(P=0.002)。症候性COVID-19に罹患していた高リスク患者17名いずれに対しても、ソトロビマブは1回の入院を防止した。プラセボを施した患者5名と比較して、入院したこれらの患者の中にはソトロビマブを施し集中治療に入る必要があった患者はおらず、これは、ソトロビマブが、入院の必要自体を防止することに加えてCOVID-19のより重度の合併症を予防することができることを示唆していた。完全解析によって同様の結果が得られた。さらに、治験責任医師施設選択の結果として、研究対象集団の60%より多くがヒスパニック系またはラテンアメリカ系として自己認識している患者からなったため、この試験は、パンデミックがこの民族グループで起こってきた不当な悪影響にもかかわらずCOVID-19臨床試験に占める割合が非常に低い集団において有効性を実証する初めてのものである。全体として、ソトロビマブは、忍容性良好であり、安全性シグナルはこの研究では特定されなかった。プラセボと比較して疾患の増悪として現れ得る、ソトロビマブによる抗体依存性感染増強の証拠もなかった。
【0495】
COVID-19の処置は、進化するウイルスにさらされても活性を保持することが必要となる。そのために、ソトロビマブは、汎サルベコウイルスエピトープを標的とすることの結果として耐性に対する本質的に高いバリアを有し得る。1つの解析では、Global Influenza Surveillance and Response Systemデータベース(Global Initiative on Sharing All Influenza Data)における584,000より多い配列の中で、ソトロビマブエピトープを含むアミノ酸位置は、天然に存在するウイルスに少なくとも99.96%保存されていた。さらに、耐性に対する幅広さおよびバリアをさらに強化する必要がある場合、ソトロビマブと現在認可されている受容体結合モチーフ標的化抗体とをその非オーバーラップ耐性プロファイルのために組み合わせることができる可能性が高い。
【0496】
これらの結果はまた、ACE2受容体相互作用を直接遮断しない非受容体結合モチーフ結合抗体が臨床治療用になり得ることを示し、他の受容体の役割を示唆する。さらに、ソトロビマブは強力なエフェクター機能を有するので、安全性シグナルの非存在、および認められた有効性は、エフェクター機能が有害でもなく、抗体依存性感染増強に関連もしないことを強く示唆している。実際、COVID-19の前臨床モデルは、その強力なエフェクター機能が有益であり得ることを示唆している。
【0497】
COMET-ICE試験のこの中間解析からの(ならびに完全治療企図解析からの)結果は、ソトロビマブがCOVID-19の外来患者処置のための重要な治療薬であり得ることを裏付ける。注目すべきことに、500mg用量を筋肉内投与することができ、それによって、COVID-19に罹患している患者にとっての抗体治療薬の利便性が高まり、患者がそれを入手しやすくなる。研究は、この投与経路を評価するために現在進行中である。
【0498】
【0499】
【0500】
【0501】
補足方法
組入れ基準
患者は、以下の基準の全てが当てはまった場合にのみ研究に組み入れられる資格がある。
年齢およびリスク因子
患者は、18歳またはそれより高齢でなければならず、以下のリスク因子のうちの1つまたは複数の存在に基づいてCOVID-19が進行するリスクが高くなければならない:
1.糖尿病(投薬を必要とする)
2.肥満(ボディーマスインデックス>35kg/m2)
変更:ボディーマスインデックス閾値は、元のプロトコールでは>30kg/m2であった。より多くの情報については「プロトコール/SAPへの変更」の項を参照されたい
1.慢性腎疾患(すなわち、Modification of Diet in Renal Disease研究の計算式に従って推定糸球体濾過量<60mL/分/1.73m2)
2.うっ血性心不全(ニューヨーク心臓学会クラスIIもしくはそれより上)
3.慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、慢性閉塞性の肺疾患、もしくは労作時の呼吸困難を伴う肺気腫の病歴)および中等度から重度の喘息(患者が、症状を制御するために吸入ステロイドを必要とする、もしくは過去1年以内に経口ステロイド治療を受けた);
または
併存疾患に関係なく、55歳またはそれより高齢の患者
注記:患者数の約15%が70歳より高齢である目標登録者数
変更:目標登録者数基準は元のプロトコールにはなかった。より多くの情報については「プロトコール/SAPへの変更」を参照されたい
【0502】
患者のタイプおよび疾患特性
SARS-CoV-2試験の結果(任意の有効性が認められた診断試験[例えば、任意の検体タイプでの、RT-PCR、抗原に基づく検査]による)が陽性である患者;
および
室内空気での酸素飽和度≧94%;
および
次の症状のうちの1つまたは複数により定義されるCOVID-19を有する:発熱、悪寒、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、関節または筋肉痛、嗅覚または味覚の変化、嘔吐、下痢、労作時の息切れ;
および
症状の開始から5日未満または5日
性交および避妊/バリア要件
性別による制限なし
女性患者は、次の避妊基準を満さなければならず、順守することに同意しなければならない。
1.女性による避妊具の使用は、臨床研究に参加する者のための避妊方法に関する当該国の規制と一致していなければならない
2.女性患者は、妊娠しておらず、授乳中でもなく、以下の条件の1つが当てはまる場合、適格である:
非妊娠可能な女性である
妊娠可能な女性であって、失敗率が<1%である非常に有効である避妊法を研究治療期間中および研究治療薬の最終投与後24週間までの間、使用する女性である。治験責任医師は、研究治療薬の初回投与と関係付けながら避妊方法の失敗の可能性(例えば、不遵守、最近開始されたもの)を評価しなければならない。
【0503】
妊娠可能な女性は、研究治療薬の初回投与の前に高感度妊娠検査(当該国の規制の要求に応じて尿または血清)が陰性でなければならない。尿検査が陰性と確認できない場合(例えば、あいまいな結果)、血清妊娠検査が必要である。そのような場合、血清妊娠結果が陽性であった場合には患者を参加から除外しなければならない。
【0504】
治験責任医師は、早期の未検出の妊娠がある女性の組入れリスクを低下させるために、医療歴、月経歴、および現在の性行為について再調査する責任がある。
【0505】
インフォームドコンセント
インフォームドコンセント用紙におよび本プロトコールに記載されている要件および制限の順守を含む、署名済みのインフォームドコンセントを提出することができる;
または
患者が、署名済みのインフォームドコンセントを提出することができない場合、代替承諾手順に従うことになる。
【0506】
過去の臨床研究/並行臨床研究の経験
過去180日以内の何らかの治験ワクチン研究への登録、または1日目の前の30日以内、もしくは治験化合物の5半減期以内、どちらか長い方、の何らかの他の治験薬研究への登録
【0507】
SARS-CoV-2用の治験ワクチンの何らかの試験への登録
【0508】
手順
有害事象およびCOVID-19の増悪について評価するための、5、8、11、15、22および29日目の対面での研究のための受診、ならびに15日目まで毎日電話連絡(対面での受診日を除く)。8週目に開始して、患者を、投与から合計24週間、COVID-19病について電話連絡(8および16週目)と対面での受診(12、20および24週目)を交互に行うことによって、毎月モニターした。血液試料を検査室評価のために1、15、22および29日目に、抗薬物抗体のために1および29日目に採取した。患者報告アウトカムの評価を24週目まで行う。
【0509】
プロトコール/SAPへの変更
スクリーニング時の実施医療機関による安全性の検査室評価を、ABO型判定のみをプロトコールごとに必要とすることを指定するように改良した
根拠:
研究対象患者の適格性を確認するためのある特定のスクリーニング評価(例えば、妊娠可能な女性についての妊娠検査、および有効性が認められた診断試験によるSARS-CoV-2感染)を実施医療機関で行わなければならないまたは文書化しなければならないが、ABO型判定が、安全性を目的としてスクリーニング時に唯一求められる実施医療機関による検査室評価である。
【0510】
スクリーニングのための来院中に実施医療機関による全ての他の安全性検査室評価(血液学、臨床化学、および凝固パラメーター)を、治験責任医師の臨床的判断に従って、または当該国の規制による要求に応じて、行ってもよく、または行わなくてもよい。
【0511】
無作為化までの時間および1日目(無作為化)における中央検査室検査の要件を考えると、採取する試料の量は、施設にとってあまりにも面倒であった。
研究目的およびエンドポイント(副次的および予備的エンドポイント)を改良し、これは、追加の副次的エンドポイント(すなわち、疾病の管理のための病院の救急外来の受診、疾病の救急管理のための入院、または死亡により定義されるような、29日目までにCOVID-19の進行があった患者の割合の評価)の導入、既存の患者報告アウトカムおよびウイルス学エンドポイントの修正、ならびに追加の予備的エンドポイントの導入を含むものであった。
【0512】
根拠:
COVID-19を標的とする他のモノクローナル抗体について生成された予備的な臨床試験データは、入院の必要につながるCOVID-19の進行速度が、当初推定された速度より遅い可能性があること、および外来患者集団のCOVID-19の処置における抗スパイクタンパク質モノクローナル抗体の有効性が、29日目までの医療機関の受診割合の50%より大きい低下であることを示唆している。
【0513】
抗SARS-CoV-2 mAbの最近の臨床試験からの新しいデータを踏まえて、副次的および予備的エンドポイントを、COVID-19モノクローナル抗体を施した外来患者集団において最も適切である臨床アウトカムを反映するように改良した。
【0514】
「年齢およびリスク因子」適格基準(組入れ基準#3および#4)を、医療ニーズが最も満たされていない高リスク集団を多く含むように改良した。
根拠:
「年齢およびリスク因子」適格基準を、肥満を定義するボディーマスインデックス要件を増加させるように、および患者(おおよそ15%)>70歳の目標最小数を導入するように改良した
【0515】
外来患者の状況におけるCOVID-19の進行に関する出現臨床データを踏まえて、適格基準を、重度のCOVID-19に進行するリスクが高い集団を多く含むように変更した
【0516】
「医学的状態」適格基準(除外基準#10)を、医療ニーズが最も満たされていない高リスク集団を多く含むように改良した
根拠:
「医学的状態」適格基準を、「重度免疫不全」の定義を明確にするように改良した
外来患者の状況におけるCOVID-19の進行に関する出現臨床データを踏まえて、適格基準を、重度のCOVID-19に進行するリスクが高い免疫抑制集団を多く含むように改良した
【0517】
「他の除外」適格基準および「研究中に許可されない投薬」を、SARS-CoV-2ワクチンの投与に関する制約を明確にするように改良した
根拠:
SARS-CoV-2ワクチンに関して公開された最近のデータを考慮して、プロトコールを、実験的または承認されたSARS-CoV-2ワクチンの投与に関する制約を明確にするように改良した
注入に伴う反応についてのガイダンスを明確にした
根拠:
プロトコール言語を、実施施設が注入に伴う反応の処置についての実施医療機関または施設のガイドラインに従わなければならないことを明確にするように修正した
統計解析計画(中間解析#1、中間解析#2、および統計手法)を改良した
根拠:
COVID-19を標的とする他のモノクローナル抗体について生成された予備的な臨床試験データは、入院の必要に至るCOVID-19の進行速度が、当初推定された速度より遅い可能性があること、および外来患者集団のCOVID-19の処置における抗スパイクタンパク質モノクローナル抗体の有効性が、29日目までの医療機関の受診割合の50%より大きい低下であることを示唆している
【0518】
この出現データを踏まえて、中間解析を、COVID-19の進行に関するおよびSARS-CoV-2に対するモノクローナル抗体の潜在的有効性に関する最新データをより正確に反映するように改良した
【0519】
「非COVID-19」安全性解析を行う意図を明記した
根拠:
入院が、COVID-19合併症に直接関係するのか、抗体依存性感染増強に起因してより重症度の高い疾患を引き起こすソトロビマブに関係する可能性があるのかを、それぞれの患者に関して詳しく記述するのは不可能であるので、原因が何であれ全ての入院を主要エンドポイントに含め、重篤有害事象として計数する
【0520】
非COVID-19有害事象および重篤有害事象の数および性質に関する情報を提供するために、追加の安全性解析を行い、この解析では、COVID-19疾患の既知の進行と一致する、選ばれた、事前に指定された用語を除外する。
【0521】
【0522】
【0523】
【0524】
(実施例41)
重度から重篤COVID-19疾患に罹患している入院している被験体の処置のためのソトロビマブの第2/3相臨床研究
無作為化、多施設、二重盲検、プラセボ対照研究を、重度または重篤COVID-19疾患に罹患している患者におけるモノクローナル抗体ソトロビマブの安全性および有効性を評価するために行う。
【0525】
主目的は、ソトロビマブの有効性をプラセボに対して比較することである。副次的目的は、上気道および下気道試料におけるウイルス排出に関するソトロビマブの有効性をプラセボに対して比較すること、ソトロビマブの安全性および忍容性をプラセボに対して比較すること、抗ウイルス応答の誘導に対するソトロビマブの有効性をプラセボと対比して決定すること、ICU非滞在日数および非在院日数の増加に対するソトロビマブの有効性をプラセボと対比して決定すること、およびソトロビマブの血清薬物動態(PK)を決定することである。
【0526】
予備的目的は、COVID-19疾患の非呼吸器合併症を予防する点でのソトロビマブの有効性をプラセボに対して比較すること、上気道および下気道試料ならびに血液試料におけるウイルス排出に関するソトロビマブの効果をプラセボに対して比較すること、ソトロビマブに対する耐性の出現を評価すること、宿主応答の潜在的バイオマーカーに対するソトロビマブの効果を評価すること、および有効性と安全性とPKとウイルス排出と免疫原性との相関関係を評価することである。
【0527】
評価基準の詳細
この研究の主要エンドポイントは、以下の通りである:
以下により定義される、29日目までに重度もしくは重篤COVID-19に進行する、または死亡する被験体の割合:
1.重症疾患:酸素補給>1日を必要とする低酸素血症(室内空気でのO2飽和度≦
93%、またはPaO2/FiO2<300)、または被験体が、≧4L/分の酸素補給もしくは同等の処置を必要とし、治験責任医師もしくは委任された者により室内空気でのO2飽和度の測定が医学的に安全でないと判断される;
または
2.臨床疾患:侵襲的機械的人工換気、ECMOの少なくとも一方を必要とする呼吸不全;またはショック;または多臓器機能不全/不全;
または
3.死亡
標準治療(SOC)と比較して、29日目まで生きており、酸素補給に依存していないと定義される、臨床応答までの時間。
【0528】
この研究の副次的エンドポイントは、以下の通りである:
1.有害事象(AE)の発生
2.重篤有害事象(SAE)の発生
3.特に注目すべき有害事象(AESI)の発生
4.進行して8日目、15日目または22日目に重度もしくは重篤COVID-19を発症する被験体の割合
5.29日目、60日目、および90日目の全死因死亡率
6.無作為化から29日にわたっての呼吸器使用日の総数
7.29日にわたっての酸素補給を必要とする日数の総数
8.全集中治療室滞在期間(LOS)
9.全病院LOS
10.Flu-PRO患者報告アウトカム測定装置を使用するCOVID-19関連疾病についての被験体報告兆候および症状の重症度および継続期間
11.心臓、血栓塞栓、腎、神経学的事象の発生
12.ベースラインでの、および29日目までの追跡調査期間中、PCRによる鼻汁中のSARS-CoV-2の検出
13.上咽頭試料からの定量的RT-PCRにより検出可能なウイルスRNAがなくなる(<LLOQ)までの時間
14.血清中のソトロビマブの薬物動態(PK)
15.ソトロビマブに対する血清ADAの発生率および力価(該当する場合)
【0529】
この研究の予備的エンドポイントは、以下の通りである:
1.臨床的改善についての順序尺度の各カテゴリー(下記参照)の8日目、15日目、22日目および29日目における被験体の割合
2.SARS-CoV-2によるmAbに対するウイルス耐性変異体の出現
3.qRT-PCRによる鼻汁および血液中のウイルス負荷量
4.宿主トランスクリプトームおよび免疫表現型判定解析
5.遺伝子型判定により決定されるFcγR多型
6.遺伝子型判定により決定されるIgG1アロタイプ
7.仕事の生産性および活動障害(WPAI)のベースラインからの変化
8.EQ-5D-5Lによる健康に関連する生活の質のベースラインからの変化
【0530】
臨床的改善のカテゴリー分けに使用するための順序尺度は、以下の通りである:
1.未感染:感染の臨床的証拠もウイルス学的証拠もない
2.非入院者;活動制限なし(在宅で酸素を使用する場合、カテゴリー4として報告する)
3.非入院者;活動制限あり
4.入院者;酸素療法なし
5.入院者;マスクもしくは鼻プロングによる低流量酸素
6.入院者;高流量酸素;持続的気道陽圧法(CPAP);二相性気道陽圧法(BiPAP);非侵襲的換気
7.入院者;挿管および機械的人工換気
8.入院者;機械的人工換気に加えて臓器サポート(昇圧剤、RRT、ECMO)
9.死亡
【0531】
計画した被験体数
この研究は、2部から構成される。第1部は、重度のCOVID-19疾患に罹患している被験体おおよそ20名を登録する。第2部は、重度から重篤のCOVID-19疾患に罹患している被験体おおよそ500名、1処置アームあたり被験体おおよそ250名、が登録する。
【0532】
無作為化および層別化
被験体を1:1比で無作為化して、標準治療(SoC)に加えてソトロビマブの単一IV用量、またはSoCに加えて等体積の生理食塩水プラセボを彼らに施す。
【0533】
第1部については、研究に登録される最初の被験体20名(1アームあたり10名)は、重度のCOVID-19疾患集団(グレード4または5)である。これらの被験体を、症状の開始から、1)7日未満までの時間、または2)7日もしくはそれ以降までの時間、いずれかにより層別化する。第1部に登録される全ての被験体をインテンシブPK試料採取に割り当てる。血清PK試料をこれらの被験体から採取する。
【0534】
第2部については、被験体の臨床状態を、以下のように、病状(重度または重篤)、および症状の開始からの時間により層別化する:
1.重度(グレード4または5)であり、症状の開始から7日未満
2.重度(グレード4または5)であり、症状の開始から7日またはそれ以降
3.重篤(グレード6または7)であり、症状の開始から7日未満
4.重篤(グレード6または7)であり、症状の開始から7日またはそれ以降。
スパースPK試料を第2部に登録した被験体から採取する。
【0535】
診断および主な組入れ基準
組み入れ基準は、以下を含む:
年齢:
18歳およびそれより高齢の被験体
疾患特性:
SARS-CoV-2試験の結果(任意の有効性が認められた試験、例えば、任意の検体タイプでのRT-PCR、による)が陽性である被験体;
および
グレード4またはグレード5の疾患と一致する酸素補給もしくは非侵襲性換気が必要と定義される重度のCOVID-19疾患で入院している;
または
機械的人工換気を用いている者(グレード6もしくはグレード7の疾患)と定義される重篤のCOVID-19疾患で入院している;
および
14日目の14日以内のCOVID-19症状の開始
および
病院への入院の48時間以内の無作為化
【0536】
性別:
性別による制限なし
女性被験体は、次の避妊基準を満さなければならず、順守することに同意しなければならない。女性による避妊具の使用は、臨床研究に参加する者のための避妊方法に関する当該国の規制と一致していなければならない。
女性被験体は、妊娠しておらず、授乳中でもなく、以下の条件の1つが当てはまる場合、適格である:
非妊娠可能な女性(WONCBP)である;
または
妊娠可能な女性(WOCBP)であって、失敗率が<1%である非常に有効である避妊法を研究治療期間中および研究治療薬の最終投与後1年までの間、使用する女性である。治験責任医師は、研究治療薬の初回投与と関係付けながら避妊方法の失敗の可能性(例えば、不遵守、最近開始されたもの)を評価しなければならない。
【0537】
WOCBPは、入院時または研究治療薬の初回投与の前に高感度妊娠検査(当該国の規制の要求に応じて尿または血清)が陰性でなければならない。尿検査が陰性と確認できない場合(例えば、あいまいな結果)、血清妊娠検査が必要である。そのような場合、血清妊娠結果が陽性であった場合には被験体を参加から除外する。
【0538】
インフォームドコンセント:
研究要件を満たす意思があり、署名済みのインフォームドコンセントを提出することができるか、または意識不明の成人、および彼らの医学的状態に起因して彼ら自身が同意することができない者については、法定代理人が、研究に参加するために被験体の代理として署名済みのインフォームドコンセントを提出する意思があり、それをすることができる。
【0539】
除外基準:
・主幹研究責任医師の見解で、参加することが参加者にとって得策にならない、またはプロトコール指定の評価を制限する可能性がある、あらゆる状態;研究手順に参加することができないと予想されること;研究責任医師の見解で、無作為化の時点で48時間を越えて生存している可能性が低い参加者;無作為化の時点で72時間以内に退院することまたは別の病院に移されることが計画または予想されること;治験製品中に存在する他のmAbに対するまたは賦形剤のいずれかに対する過敏症の病歴;
・導入期について:終末臓器不全または機能不全に罹患している参加者は、導入期には適格でないが、拡大期には適格である。
○終末臓器機能不全カテゴリーは、例えば、a.脳卒中、b.髄膜炎、c.脳炎、d.脊髄炎、e.心筋梗塞、f.心筋炎、g.心膜炎、h.症候性うっ血性心不全(ニューヨーク心臓学会[NYHA]クラスIII~IV)、i.動脈もしくは深部静脈血栓症または肺塞栓症である
○末梢臓器不全カテゴリーは、例えば、a.高流量酸素、非侵襲的換気、または侵襲的機械的人工換気を必要とすること、b.体外式膜型人工肺(ECMO)、c.機械的循環補助(例えば、大動脈内バルーンポンプ、心室補助デバイス)、d.昇圧剤治療、e.この入院中の腎代替療法(RRT)の開始(すなわち、長期RRTを受けている患者ではない)である。
・過去に、時を問わず、以下のものを受けたこと:
○COVID-19生存者からの任意のSARS-CoV-2高力価静注用免疫グロブリン(hIVIG)
○COVID-19から回復した人物からの回復期血漿または
○SARS-CoV-2中和mAb。
・COVID-19のためのものを含む、治験研究治療に関わる他の臨床試験への参加
・妊娠しているまたは授乳中の女性
【0540】
研究参加および追跡調査の継続期間
研究対象薬物による処置の継続期間は、単回投与である。各被験体について、スクリーニングおよび追跡調査を含めて、研究の推定合計時間は、おおよそ36週間である。スクリーニング評価を初回投与前48時間までに行う。スクリーニング評価の完了後、適格な被験体をソトロビマブまたはプラセボの単一IC用量で処置する。被験体を退院日まで毎日評価する。退院後、評価を15日目および29日目に行い、追跡調査を無作為化後36週目まで継続する。
【0541】
研究デザイン
独立データモニタリング委員会(IDMC)が、中間の非盲検化安全性データ(第1部)ならびに中間の非盲検化安全性および有効性データ(第2部)を積極的にモニターして、進行中の研究の実施に関する提言を行う。IDMCメンバーは、関連する医学の専門的訓練を受けた医師3~4名および統計学者1名を含む。共同安全性再調査チーム(JSRT)は、インストリーム盲検化データ再調査に基づいて安全性の懸念をIDMCに付託する必要があるかどうかを決定する。
【0542】
この研究は、COVID-19疾患で入院している成人参加者における処置としての治験責任医師により定義された標準治療(SoC)に加えてソトロビマブの単一IV用量の有効性および安全性をプラセボに対して評価するための、SARS-CoV-2に対するモノクローナル抗体(mAb)であるソトロビマブの、無作為化、二重盲検、多施設、プラセボ対照試験である。研究対象集団は、SARS-CoV-2試験の結果が陽性であるCOVID-19疾患に罹患している、入院している被験体からなる。これらの参加者は、重篤(グレード6もしくは7)または重度(グレード4もしくは5)疾患に罹患している可能性がある。全ての被験体に、研究処置に加えて、実施医療機関のプロトコールに従ってSoCを施す。
【0543】
この研究は、2部を含む。第1部は、重度のCOVID-19疾患に罹患している参加者20名を登録する。IDMCによる14日目の盲検化されたデータの最初の安全性評価後、第2部(主コホート)が進行し、第2部には重度および重篤COVID-19疾患に罹患している両方の参加者を登録する。重症参加者のみを、IDMCが重篤参加者の動員をさらに推奨するまで研究を中断せずに第2部に登録する。
【0544】
宿主免疫応答および感染の潜在的バイオマーカーを探究するために、被験体は、末梢血単核細胞(PBMC)を指定された時点で採取する、必要に応じた下位研究に同意し得る。この必要に応じた下位研究を選択された施設で行う。1アームあたり参加者おおよそ50~100名をこの必要に応じた下位研究に登録する。
【0545】
この研究中に、IDMCにより行われた非盲検安全性データの再調査によって、重度(グレード4または5)COVID-19疾患に罹患している被験体を含む第1部から、重篤(グレード6または7)COVID-19疾患に罹患している被験体をさらに含む第2部に拡大することが安全であるかどうかが決定される。
【0546】
プラセボ対照は、ソトロビマブの安全性および忍容性とCOVID-19のバックグラウンド兆候および症状を区別し、臨床アウトカムに対するその潜在的利益を評価する。プラセボアームの使用によって、研究中に施されるSoCおよび他の処置に起因し得るものに対してソトロビマブに起因し得る有効性および安全性のあらゆる変化を正当に評価することが可能になる。
【0547】
処置の有効性を評価するための主要エンドポイントは、生きており、補給酸素に依存していない、または無作為化から29日以内に少なくとも24時間の発病前酸素要求量に戻る被験体(慢性的に酸素供給を使用する被験体)と定義される、臨床応答までの時間である。酸素療法または高レベルの呼吸/臓器サポートを必要とすることからの移行は、臨床的に有意なマイルストーンである。
【0548】
有意な副次的エンドポイントは、29日目の全死因死亡率である。入院に関係する他の副次的有効性エンドポイント-入院の長さ、ICU滞在、換気を受ける時間、被験体報告兆候の重症度および継続期間、ならびにCOVID-19の症状も、臨床的に意義がある。
【0549】
研究治療群および継続期間
スクリーニング評価を初回投与前48時間までに行う。スクリーニング手順は、医療および病歴を受け取ること;試験で陽性が以前に確認されていない被験体に関して鼻、上咽頭または気管内スワブによりSARS-CoV-2感染について試験すること;身長および体重の測定を含む全身身体検査;血圧、脈拍、呼吸数および体温を含むバイタルサインの測定;侵襲的機械的人工換気を用いていない被験体についての酸素飽和度(SpO2);酸素運搬および換気状態;12誘導ECG(三反復);妊娠可能な全ての女性被験体についての尿または血清妊娠検査;血液学、臨床化学プロファイル、凝固パラメーター、CRP、Dダイマー、尿検査、および心臓トロポニンを含む、検査室評価;胸部X線撮影(SoCに従って入院後に行われる胸部X線またはコンピューター断層撮影スキャン);および過去の薬または併用薬についての再調査を含む。
【0550】
適格な被験体を、1日目に、SoCに加えて単一IV用量(ソトロビマブまたはプラセボ)で処置する。被験体を退院日まで毎日評価する。退院後、評価を15日目および29日目に行い、追跡調査を無作為化後36週目まで継続する。
【0551】
第1部では、重度のCOVID-19疾患(グレード4または5)に罹患している被験体を盲検方式で双方向自動応答技術(IRT)により1:1無作為化して単一IV用量のソトロビマブまたはプラセボを彼らに施す。第2部(主コホート)では、重度(グレード4もしくは5)または重篤(グレード6または7)COVID-19疾患に罹患している被験体を1:1無作為化して単一IV用量のソトロビマブまたはプラセボを彼らに施す。全ての参加者に、研究処置に加えて、実施医療機関のプロトコールに従ってSoCを施す。
【0552】
無作為化を、無作為化時の疾患重症度(重度または重篤)および症状の開始からの時間(7日未満または7日もしくはそれより長い)に基づいて層別化する。
【0553】
研究治療薬
研究治療薬および投与指示は、表14における次の通りである:
【表14】
【0554】
【0555】
(実施例42)
COVID-19で入院している患者におけるソトロビマブの第3相臨床研究
第3相臨床研究を、感染で入院している人々のCOVID-19の処置における異なる薬物の安全性および有効性を評価するために行う。研究の参加者を、現行の標準治療(SOC)に加えて研究対象薬物(例えば、ソトロビマブ)、または現行のSOCに加えてプラセボ、どちらかで処置する。
【0556】
このプロトコールは、研究過程で治験薬を加えることおよびやめることを可能にする、無作為化、盲検、対照プラットフォーム研究のためのプロトコールである。これは、同じ研究の中でプラセボおよび標準治療(SOC)処置に対する薬物の効率的な試験を可能にする。1つより多くの薬物を同時に試験する場合、参加者を処置薬またはプラセボに無作為に割り振る。
【0557】
無作為化は、研究施設の薬局、および疾患の重症度により層別化される。疾患重症度には、臓器不全のない参加者(重症度第1層)および臓器不全のある参加者(重症度第2層)という2つの層がある。
【0558】
独立データ安全性モニタリング委員会(Data and Safety Monitoring Board)(DSMB)は、中間解析を定期的に再調査し、安全性および有効性アウトカムをまとめている。既存の安全性の知識がごくわずかである治験薬の場合、登録ペースは、最初は制限され、DSMBによる安全性データの初期再調査がある。各薬剤の研究のために、試験の開始時には、疾患重症度第1層の参加者のみが登録される。これは、参加者おおよそ300名を登録して5日間追跡するまで、継続する。実際の数は、登録速度およびDSMBの会合のタイミングによって変わり得る。疾患重症度第2層の患者も含める拡大登録の前に、安全性を評価し、5日目に評価した2つの順序アウトカムを使用してDSMBによる指定前無益性評価が行われる。
【0559】
研究中の治験剤が、SARS-CoV-2感染に伴ってリスクが上昇される非肺アウトカムに、一部は、肺のアウトカムに影響を及ぼす機序とは異なり得る機序によって、主として影響を及ぼすことになるかどうかが不明確であるため、両方の順序アウトカムが無益性を評価するために使用される。
【0560】
この無益性評価に合格する治験剤への参加者の登録を、途切れなく、データ盲検化を一切用いずに、拡大して、疾患重症度第1層の参加者のみならず疾患重症度第2層の参加者も含める。さらなる中間解析は、持続的回復の主要エンドポイントに基づくものであり、事前に指定されたガイドラインを使用して、治験剤についての利益、損害または無益性の初期の証拠を判定する。参加者を、無作為化後18カ月間、追跡する。
【0561】
このプロトコールの中の国際試験を数百の臨床施設で行う。参加施設は、アメリカ合衆国国立衛生研究所(United States National Institutes of Health)(NIH)およびアメリカ合衆国退役軍人省(US Department of Veterans Affairs)による資金提供を受けたネットワークと提携している。
【0562】
参加者おおよそ10,000名を登録する。割振りを無作為化する。治療モデルは、並行群間比較試験である。マスキングは、三重(参加者、医療提供者、治験責任医師)である。主要目的は、処置である。1つのアームでは、参加者を無作為化して、SOCに加えて薬物(例えば、ソトロビマブ)、またはSOCに加えてプラセボを彼らに施す。その後、参加者がソトロビマブに無作為に割り当てられることはもはやない。プラセボアームには、レムデシビルに加えてプラセボ(IV注入により投与される市販の0.9%塩化ナトリウム溶液)を、禁忌がない限り、提供する。
【0563】
主要アウトカム尺度
無作為化から持続回復までの時間[時間枠:90日目まで] 持続的回復、これは、インデックス入院から退院し、その後、90日目より前に14日間連続して生きており、在宅していることと定義される。
【0564】
副次的アウトカム尺度
1.全死因死亡率[時間枠:90日目まで]
2.持続的回復までの時間および死亡率の合計[時間枠:90日目まで]
3.短期救急病院外での生存日数[時間枠:90日目まで]
4.肺の順序アウトカム[時間枠:1~7、14および28日目]
7つのカテゴリー(1=最も軽度、7=最も重度)で測定される酸素要求量。参加者の最高の(すなわち、最も重症度が高い)観察スコアを使用する。
5.肺+順序アウトカム[時間枠:1~7日目]
肺外の合併症、および7つのカテゴリー(1=最も軽度、7=最も重度)で測定される呼吸機能障害。参加者の最高(すなわち、最も重症度が高い)観察スコアを使用する。
6.臨床的臓器不全の発生率[時間枠:28日目まで]
7.死亡または重篤な臨床的COVID-19関連事象の合計[時間枠:90日目まで
]
8.心血管事象および血栓塞栓事象の合計[時間枠:90日目まで]
9.グレード3および4臨床的有害事象、重篤有害事象(SAE)または死亡の合計[時間枠:5日目および28日目まで]
10.注入反応の発生率[時間枠:0日目まで]
11.SAEまたは死亡の合計[時間枠:18カ月まで]
12.SARS-CoV-2中和抗体レベルの変化[時間枠:ベースライン~1、3、5、28および90日目]
13.抗体の総合力価の変化[時間枠:ベースライン~1、3、5、28および90日目]
14.中和抗体レベルの変化[時間枠:ベースライン~1、3、5、28および90日目]
15.発病前の酸素使用を上回る酸素補給の在宅使用の発生率[時間枠:18カ月]
次のこととして測定する:自宅で生きており、途切れのない14日間の継続的な酸素補給の使用がない
16.発病前の酸素使用を上回る酸素補給の在宅不使用の発生率[時間枠:14日]
次のこととして測定する:途切れなく14日間、自宅で生きており、14日間の終了時に継続的な酸素補給の使用がない。
【0565】
全ての性の18歳またはそれより高齢の成人(成人および高齢者)は、適格である。組入れ基準は、次の通りである:インフォームドコンセントへの署名;COVID-19の試験陽性、およびCOVID-19感染が継続中であることを示唆する進行性疾患;≦12日間のCOVID-19の症状;ならびに急性期医療のために(単に公衆衛生目的でも隔離目的でもなく)入院を必要とする。除外基準は、次の通りである:
・COVID-19から回復した人物からの血漿を施された患者、または入院前の任意の時点で中和モノクローナル抗体を施された患者。
・研究の5日目後まで他のCOVID-19処置試験への参加を控える意思がない患者。推奨される標準治療処置を比較する、ある特定の試験への同時登録が、研究首脳部の意見に基づいて許可されることもある。
・主幹研究責任医師の見解で、参加することが参加者にとって得策にならない、またはプロトコール指定の評価を妨げる、制限する、もしくは混乱させる可能性がある、あらゆる状態。
・研究手順に参加することができないと考えられる患者。
・研究への登録時にまだ妊娠していない妊娠可能な女性であって、18カ月の研究を通して男性との性交を控えるまたは適切な避妊を実践するという確かな助言を受け入れようとしない妊娠可能な女性。
・18カ月の研究を通して妊娠可能な女性との性交を控えるまたはバリア避妊法を使用するという確かな助言を受け入れようとしない男性。
・妊婦
・授乳期間中の母親
・研究登録時に以下のいずれかが存在すること:
1.脳卒中;
2.髄膜炎
3.脳炎
4.脊髄炎
5.心筋虚血
6.心筋炎
7.心膜炎
8.症候性うっ血性心不全
9.動脈もしくは深部静脈血栓症または肺塞栓症
・以下のいずれかを現在または差し迫って必要としていること:
1.侵襲的機械的人工換気
2.ECMO(体外式膜型人工肺)
3.機械的循環補助
4.昇圧剤治療
5.この入院中の腎代替療法の開始(すなわち、長期腎代替療法を受けている患者ではない)。
【0566】
加えて、参加者おおよそ150名をソトロビマブに登録し、150名をプラセボに登録したときに行われる、最初の無益性評価の前に、高流量酸素または非侵襲的換気を用いている患者(肺の順序アウトカムのカテゴリー5)は、除外することになる。これらの患者は、この薬剤によって最初の無益性評価に合格した場合、試験に適格となる可能性がある。
【0567】
500mgのソトロビマブの単一用量を投与する。この用量は、in vitro中和データ、in vitro耐性データ、カニクイザルにおける研究から外挿された予想ヒトPK、およびGLPサル毒性研究の結果に基づいて選択する。ソトロビマブは、186.3ng/mL(範囲125.8~329.5ng/mL)の平均EC90値で、SARS-CoV-2生ウイルスを中和した。耐性分析では、ウイルスのブレークスルーは、抗体の固定濃度で、試験した最低用量(約10×EC50)ででも、10継代にわたって観察されなかった。このことは、ソトロビマブが耐性への高いバリアを有する可能性を示している。
【0568】
耐性の出現を強いるために濃度漸増選択方法を使用すると、EC50の小規模な倍率の変化が一部の継代についてウイルス選択中に観察された(EC50の5倍~6倍の変化)。シュードタイプ化ウイルス系を使用するこれらの継代からのスパイクバリアントの配列決定および試験によって、作用強度のこの小規模なシフトの原因となるバリアントは同定されなかった。ウイルスの1継代は、EC50の>10倍シフトを明示し、これは、E340A突然変異との相関関係が認められた。さらなる評価によって、E340Aが、ソトロビマブに対する感受性の100分の1以下への低下を付与するモノクローナル抗体耐性突然変異体(MARM)であることを同定した。注目すべきことに、E340は、入手可能なSARS-CoV-2配列間で100%保存される。耐性選択結果の二元性に起因して、耐性プロファイリングにより具体的な阻害指数(IQ)の情報は得られなかった。しかし、カバー率の幅を直接評価するために利用できる株がほとんどないので、この場合はコンサバティブなIQ(>10)が適切である。カニクイザルPK研究(単一IV用量、5mg/kg)を2コンパートメントPKモデルに当てはめた。完全ヒトIgGについての相対成長率手法(CLおよびVについて、それぞれ、0.85および1の相対成長係数;10)を使用して、カニクイザルからヒトPKパラメーターを拡大した。ヒトにおけるソトロビマブの予測血清クリアランスは、141mL/日であると推定され、推定分布容積は、ヒトの体重70kgを仮定すると、6500mL(約93mL/kg)である。予測されるヒト終末相消失半減期は、おおよそ32日である。
【0569】
患者へのリスク(処置の失敗、ウイルス耐性の出現)を低下させるために、肺内のソトロビマブ濃度が、28日の処置ウィンドウおよびそれを超える継続期間にわたってSARS-CoV-2感染を防御すると予想されるレベルよりはるかに上に確実に維持される、単一治療用量を選択した。500mgの用量は、28日の処置継続期間にわたって血清レベルを38.5μg/mLでまたはそれより高く維持すると予想される。EC90範囲の上限からのコンサバティブなEC90(0.33μg/mL)に基づく、およびIgGの肺:血清比(0.25のコンサバティブな値を仮定した;肺全体および腸液についてそれぞれ報告されている範囲0.25~0.68)の主な原因となる、500mg用量後の血清トラフ濃度は、28日の処置継続期間中に最大(>99%)抗ウイルス活性に関連する肺内濃度、>29×組織調整EC90、をもたらすと予想される。肺内のこのコンサバティブな阻害指数(29倍)は、処置成功の可能性を増加させ、耐性リスクを低下させるために適切であると考えられる。
【0570】
加えて、500mg用量は、伝播を低減し得る可能性がある、上咽頭分泌物中のソトロビマブの防御レベル(0.05のNPS:血清比を仮定して、>5×組織調整EC90、12)を生じさせる結果となると予想される。
【0571】
ソトロビマブをIV注入によって2週間、週1回、カニクイザルに投与したとき、ソトロビマブのNOAELは、500mg/kg、試験した最高用量、であった。このNOAELで、予備的Cmaxおよび曲線下面積(AUC)0-t(2回目の用量後の注入終了後の時間0~168時間のAUC)は、それぞれ、13500μg/mLおよび48200μg・日/mLであった。ヒト等価用量(HED)(Mr>100,000ダルトンに関する血管内投与されるタンパク質についてのFDAガイダンスに従って直接mg/kg変換によって算出したHED)は、500mg/kgまたは30,000mg固定用量(60kgのヒト体重を使用して)である。10の安全率を使用して、ヒトにおける最大推奨出発用量は、おおよそ50mg/kgまたは3,000mg固定用量である。提案500mgヒト用量に基づいて、HED、Cmax、およびAUCに基づくマージン(TX-7831-0102からの部分的AUC0-tおよびヒトにおける予想AUCinfに基づくコンサバティブなAUCマージン)は、500mgの提案臨床用量を支持する、それぞれ、60倍、87倍、および13.6倍である。
【0572】
マスタープロトコールに概要を示した組入れおよび除外基準に加えて、以下の患者は、除外されることになる:1)妊婦;および2)授乳期間中の母親。加えて、参加者おおよそ150名がソトロビマブに登録し、150名がプラセボに登録したときに行う、最初の無益性評価の前に、高流量酸素または非侵襲的換気を用いている患者(肺の順序アウトカムのカテゴリー5)は、除外する。これらの患者は、この薬剤によって最初の無益性評価に合格した場合、試験に適格となる可能性がある。
【0573】
単回注入を1時間かけて投与する。研究参加者を厳密にモニターし、および注入を監督する医師の裁量により、注入速度の調整を行い、および/または注入を中断するかまたは停止する。
【0574】
注入を監督する医師は、必要であれば、実施医療機関の慣行に従って対症療法を使用することができる。ソトロビマブは、250mgの抗体を含有する10ml溶液のバイアルで各々提供される。ソトロビマブを2℃~8℃の間で保管しなければならない。合計2本のバイアルが500mgの薬剤の投与に必要である。薬剤を1mg/ml~10mg/mlの濃度で投与する。プラセボは、現地調達による生理食塩水である。注入反応が投与中に起こった場合、または参加者に前投薬による恩恵を受ける可能性があることを示唆する医療歴がある場合、治験責任医師が適切な前投与を決定しなければならない。参加者間での注入反応の頻度によって正当化される場合には、前投与が推奨され得る。小規模な注入反応が観察された場合、アセトアミノフェン、500mg~1000mg、抗ヒスタミン薬、および/または他の適切に指示された薬の投与を、後続の参加者の注入開始前に施すことができる。その後の参加者の注入についての前投与の実行の決定を治験責任医師およびスポンサーが行い、総括報告書に記録する。施したあらゆる前投薬を併用療法として記述する。
【0575】
0、28および90日目に、静脈血試料を採取して、ソトロビマブに対する抗体産生を判定する。ソトロビマブの存在下でADAを検出するように設計された、有効性が認められたアッセイにより、免疫原性を評価することができる。抗体を、ソトロビマブの活性を中和するそれらの能力について、さらに特徴付けることができる。PK試料からの残りの体積を必要に応じて免疫原性の評定に使用することもできる。
【0576】
0、1、5、28および90日目に、静脈血試料を採取して、薬物動態評価のためのソトロビマブ血清濃度を決定する。PK/免疫原性評価には、採取された血清2mLが必要である。有効性が認められたアッセイにより、生物分析研究所で、PK試料を評価することができる。PK評価は、同じ2mlの血清を使用する。プラセボ処置被験体からの試料の分析は、計画していない。PKに使用した残りの試料をプールし、適切と思われる場合には予備的な代謝または生物学的分析法実験に使用する。下位研究が展開するにつれて分析のために研究所に試料を数回に分けて発送することができる。そのような分析からの結果は、試験中央データベースに返送される。参加者に関するこのデータおよび全ての他のデータは、試験が非盲検化されるまで試験中央データベースに残っている。いずれかの生物学的製剤に伴う注入反応および過敏症(アナフィラキシーを含む)のリスクがあるので、全ての参加者を注入後、2時間は厳密にモニターしなければならない。
【0577】
注入反応の一部として起こり得る症状および兆候としては、発熱、悪寒、悪心、頭痛、気管支痙攣、低血圧、血管性浮腫、咽頭刺激感、発疹(蕁麻疹を含む)、そう痒、筋肉痛、およびめまいが挙げられるが、これらに限定されない。
【0578】
臨床施設は、酸素、IV液、エピネフリン(/アドレナリン)、アセトアミノフェン(/パラセタモール)および抗ヒスタミン薬を含み得るがこれらに限定されない、あらゆる注入反応の管理のために必要な装置、薬、適切な医療保険を有する十分な資格および経験を持つスタッフを有さなければならない。
【0579】
参加者が注入反応を経験した場合には、兆候および症状に従って支持療法を使用しなければならない。重度の、生命を脅かす可能性のある注入反応が、ソトロビマブ/プラセボで起こった場合、その使用を恒久的に中止しなければならない。以下のことが薬剤ソトロビマブ、またはソトロビマブのプラセボについてのAESIである:注入に伴う反応;アレルギー/過敏性反応。
【0580】
(実施例43)
SARS-CoV-2に曝露された成人および青年被験体間のCOVID-19の予防のためのソトロビマブの第3相臨床研究
無作為化、多施設、二重盲検、プラセボ対照第3相研究を、SARS-CoV-2に曝露された成人および青年被験体のCOVID-19の予防におけるモノクローナル抗体ソトロビマブの安全性および有効性を評価するために行う。
【0581】
主目的は、SARS-CoV-2に感染している人物の濃厚接触者間の症候性COVID-19の予防のためのソトロビマブの有効性をプラセボに対して評価すること、ならびにソトロビマブの安全性および忍容性をプラセボと比較して決定することである。
【0582】
副次的目的は、以下である:
・SARS-CoV-2に感染している人物の濃厚接触者間の無症候性SARS-CoV-2感染の予防におけるソトロビマブの有効性をプラセボと比較して評価する
・SARS-CoV-2感染者間のウイルス排出の継続期間を低減する点でのソトロビマブの有効性を評価する
・SARS-CoV-2感染者間のCOVID-19の臨床兆候および症状の発生率、重症度および継続期間を低減する点でのソトロビマブの有効性を評価する
・SARS-CoV-2感染者間の臨床症状の緩和までの時間に関するソトロビマブの有効性を評価する
・COVID-19に起因する入院率、ICUへの入院率または死亡率により評価して、SARS-CoV-2感染者間の重度の疾患への進行を低減する点でのソトロビマブの
有効性を評価する
・ソトロビマブの血清薬物動態(PK)を評価すること
・ソトロビマブへの潜在的免疫原性(ADAの誘導)応答を評価する
【0583】
予備的目的としては、以下のことが挙げられる:
・SARS-CoV-2感染者間のウイルス負荷量を低減する点でのソトロビマブの有効性を評価する
・SARS-CoV-2ウイルス負荷量と疾患の処置とのおよび重症度との関連性を評価する
・SARS-CoV-2が確認された被験体におけるソトロビマブに対する耐性ウイルスの出現をモニターする
・被験体の遺伝的多型とソトロビマブの作用機序および/またはPKとの潜在的な関係性を評価する
・COVID-19に起因する仕事の離脱期間および仕事の生産性に対するソトロビマブの影響を測定する
・宿主応答の潜在的バイオマーカーに対するソトロビマブの効果を評価する
【0584】
評価の基準
この研究の主要有効性エンドポイントは、以下の通りである:
・2週目(15日目±1日)までに以下のうちの1つまたは複数として定義されるCOVID-19が検査(RT-PCR)で確認された被験体の割合:
1.急性呼吸器症状(咳、痰が出ること、喉の痛み、または息切れ);
または
2.発熱>38℃;
または
3.次のうちの2つまたはそれより多くの症状(疲労、筋肉痛/関節痛、悪寒、悪心/嘔吐、下痢、臭覚脱失/味覚異常)
この研究の主要安全性エンドポイントは、以下の通りである:
・ソトロビマブの投与後に出現した有害事象(AE)および重篤AE(SAE)の処置を施した被験体の割合
・臨床検査結果を含むがこれらに限定されない、臨床評価
この研究の副次的エンドポイントは、以下の通りである:
・ベースライン試験で陰性であった被験体における2週目(15日目±1日)までに検査(RT-PCR)で確認される無症候性SARS-CoV-2感染の発生率
・鼻腔スワブからRT-PCRにより評価されるソトロビマブ処置群とプラセボ処置群とのウイルス排出継続期間の差
・COVID-19の臨床兆候および症状の発生率、重症度および継続期間
・COVID-19に起因して入院を必要とする参加者のパーセンテージ
・ICU治療を必要とする参加者のパーセンテージ
・機械的人工換気またはECMOを必要とする参加者のパーセンテージ
・COVID-19に関連して死亡した参加者のパーセンテージ
・血清中のソトロビマブの濃度
・ソトロビマブに対する血清ADAの発生率および力価(該当する場合)
この研究の予備的エンドポイントとしては、以下のことが挙げられる:
・鼻腔スワブからqRT-PCRにより評価されるソトロビマブ処置群とプラセボ処置群との病気の開始時にウイルス負荷量の差
・ウイルス負荷量(qRT-PCR)とCOVID-19の重症度との関係性
・ベースライン試験で陰性であった被験体における4週目に血清学による検査で確認されるSARS-CoV-2感染の発生率
・遺伝子型判定により決定されるFcR多型
・遺伝子型判定により決定される免疫グロブリンG1(IgG1)アロタイプ
・仕事の生産性および活動障害(WPAI)のベースラインからの変化
・EQ-5D-5Lによる健康に関連する生活の質のベースラインからの変化
・宿主トランスクリプトームおよび免疫表現型判定分析により評価される宿主応答のバイオマーカーに対するソトロビマブ投与の影響
【0585】
被験体の数
被験体おおよそ1350名(1処置アームあたり450名)を登録する。
【0586】
診断および主な適格性基準
1.12歳またはそれより高齢の男性および女性被験体
2.SARS-CoV-2に感染していることがPCRにより確認され、分かっている人物(発端者)の濃厚接触者
濃厚接触者を以下のように定義する:
a.インデックス診断の前の7日間に発端者と一緒に住んでいる者(集合した環境、例えば、長期ケア施設もしくは老人ホームにおける居住者もしくはスタッフを含む)
b.医療スタッフ、ファーストレスポンダー、または他の介護スタッフ
c.発端者への最後の曝露(SARS-CoV-2に感染している人物との濃厚接触)から3日未満である者
4.女性被験体は、妊娠検査で陰性でなければならず、または閉経後状態である確認が取れていなければならない
5.投与前4時間以内にSARS-CoV-2感染の迅速試験で陰性であること
【0587】
研究参加継続期間
スクリーニングを含めて、各被験体の研究にかかる推定合計時間は、最大で36週間である。被験体を無作為化前24時間以内にスクリーニングする。研究対象薬物投与後、被験体をエンドポイント評価のために6週目(D43±3)まで、および安全性追跡調査のために36週間以下、評価する。
【0588】
研究デザイン
これは、ウイルスに曝露された成人の症候性SARS-CoV-2感染の予防のためのソトロビマブの2用量レベルについての、無作為化、二重盲検、プラセボ対照研究である。症候性SARS-CoV-2感染の予防における低および高用量のソトロビマブの有効性をプラセボと比較して評価するように研究をデザインする。
【0589】
この研究は、併存疾患に罹患している者を含む、12歳またはそれより高齢の無症状の男性および女性被験体であって、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)でSARS-CoV-2感染が確認された人物の濃厚接触者(すなわち、家族または医療提供者)である被験体おおよそ1350名を登録する。迅速診断試験をスクリーニング時に使用して、感染が確定されていない被験体を多く含むようにする。適格な被験体を無作為化して、低用量のソトロビマブ、高用量のソトロビマブ、またはプラセボのいずれかを比率1:1:1で1日目に単回投与として彼らに施す。
【0590】
関連する専門知識を有するメンバーからなる独立データモニタリング委員会(DMC)が、研究データを再調査するために招集される。DMCの目的は、安全性、有効性および無益性をモニターし、プラセボアームで観察された感染率に基づいて試料サイズ再調整の必要性を決定する。2つの中間解析を行う。第1の中間解析を、被験体のおおよそ20%を登録した後(1アームあたり約90)に行って、S309 N55Q LSの各用量レベルの安全性および忍容性を評価する。
【0591】
第2の中間解析を、被験体のおおよそ50%を登録した後(1アームあたり約225)に行って、安全性、無益性および有効性を評価する。安全性の懸念または有効性の欠如に起因して用量レベルが中止されることもある。
【0592】
SARS-CoV-2予防に有効な薬剤に関するデータがでたら、プロトコールを改良して対照アームに新しい標準治療剤を含めることができる。
【0593】
研究は、インテンシブPKおよびADA試料採取のための被験体おおよそ75名(1アームあたり25名)においてPK下位研究を含む。他の全ての被験体からスパースPKおよびADA試料を採取する。ソトロビマブの新しいロットを研究に導入する場合、追加の被験体をインテンシブPKおよび免疫原性下位研究に含めることができる。
【0594】
研究手順
スクリーニング:
スクリーニングを無作為化前24時間以内に行い、スクリーニングは、署名済みのインフォームドコンセント;適格性の決定;人口統計、過去および現在の医学的状態(既知の妊娠および/または授乳状態を含む)、併用薬、および発端者への曝露に関する情報の収集を含む。
【0595】
投与(1日目):
1日目にRT-PCRのためのベースライン鼻腔スワブの採取後、適格な被験体を無作為化してソトロビマブまたはプラセボのどちらかを彼らに施す。ソトロビマブの安全性および実施医療機関による忍容性を評価し、評価を完了するために、投与後最低4時間、被験体は診療所内に留まる。
【0596】
追跡調査期間:
被験体は、1日目から2週間目の受診まで毎日の日誌の全ての項目に記入する。この調査は、感染の臨床兆候および症状ならびに併用薬再調査の文書化を含む。加えて、全ての被験体は、無症候性SARS-CoV-2感染をモニターするために4、7および10日目に自宅で鼻腔スワブを採取する。研究チームのメンバーは、有害事象を評価するために電話連絡により被験体と連絡を取り、研究手順を遂行するため支援を行う。被験体は、2週目(15日目±1日)および6週目(42日目±3日)に来院し、評価を完了する。
【0597】
被験体が、呼吸器症状(乾性咳、息切れ、喉の痛み、もしくは痰が出ること)の急性発症;または>38.0℃の発熱;または≧2の次の症状:筋肉痛/関節痛、悪寒、悪心/嘔吐、下痢、臭覚脱失/味覚異常と定義される症状発症を経験した場合、被験体をCOVID-19モニタリングスケジュールに従って追跡する。
【0598】
可能性のある症候性COVID-19の基準を満たす被験体は、感染の確認のための鼻腔内スワブをはじめとする、SARS-CoV-2感染についての院内評価を遂行する。被験体は、症状開始後21日間、毎日の日誌の全ての項目に記入し続ける。追加の鼻腔スワブを採取して、ウイルス負荷量およびウイルス排出の継続期間を評価する。これらの被験体の場合、鼻腔スワブを試験陽性後第1週に1日おきに採取し、次いで感染後第2および第3週の間は3日おきに採取する。
【0599】
被験体を、投与後最大36週間、安全性、PKおよび免疫原性の評価について追跡する。追跡調査期間は、NHP PKの相対成長率に基づいてソトロビマブの予測ヒトt1/2による情報に基づく。最終追跡調査期間は、プロトコールに指定されている。6週目の来院と最後の追跡調査のための来院の間、有害事象モニタリングのために電話連絡により被験体と連絡を取る。
【0600】
製品、投薬量、および投与方法
ソトロビマブは、半減期を増加させるように改変された、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する操作されたヒトIgGモノクローナル抗体である。ソトロビマブを低用量レベルまたは高用量レベルのどちらかの単一用量IVまたはIMで投与する。プラセボに無作為に割り当てられた被験体には、無菌の、保存薬不含の生理食塩水の0.9%溶液をIM注射により投与する。
【0601】
統計法
SARS-CoV-2に曝露された全ての個体が感染し、症状を発症するとは限らず、初期の推定は、推定曝露後の家族の感染リスクを3%~15%に設定する。試料サイズの算出を目的として、推定10%の発病率を使用した。検査で確認された症候性COVID-19のエンドポイントについての両側第1種過誤0.05、発病率10%、および症候性COVID-19を低減させる点でのソトロビマブの有効性50%で、検出力80%を達成するように、試料サイズを選択した。これらの仮定に基づいて、1処置アームあたり被験体おおよそ450名を登録する(合計1350名)。
【0602】
2つの中間解析をこの研究のために行う。第1の中間解析を、被験体のおおよそ20%を登録した後(1アームあたり90名)に行って、ソトロビマブの各用量レベルの安全性および忍容性を評価する。安全性の懸念に起因して用量レベルが中止されることもある。第2の中間解析を、被験体のおおよそ50%を登録した後(1アームあたり225名)に行って、安全性、無益性および有効性を評価する。安全性の懸念または有効性の欠如に起因して用量レベルが中止されることもある。中間解析で認められた発病率に基づいて、主要エンドポイントを満たすための全予想症例数を獲得する尤度を上昇させるように試料サイズを調整することができる。全第1種過誤率(「アルファ」)を0.05レベルで正確に制御するために、オブライエン・フレミング法を使用して、第2の中間解析(0.0052)と最終の解析(0.048)間にアルファを割り振る。
【0603】
全ての有効性解析を、ITT集団(全ての無作為化された被験体)を使用して行う。症候性および無症候性SARS-CoV-2感染の発生率も、mITT集団(ベースライン来院でSARS-CoV-2陰性である被験体)において評価する。研究対象薬物のいずれかの量を施した全ての被験体に関して、安全性を評価する。
【0604】
【0605】
(実施例44)
SARS-CoV-2に曝露された成人および青年被験体間のCOVID-19の予防のためのソトロビマブの第3相臨床研究
無作為化、二重盲検、プラセボ対照第3相研究を、COVID-19の予防のためのソトロビマブの安全性および有効性を評価するために行う。参加者おおよそ3150名を2:1比で無作為化して、それぞれソトロビマブまたはプラセボのどちらかを彼らに施してCOVID-19の予防のためのソトロビマブの安全性および有効性を評価する。
【0606】
主要目的は、COVID-19を予防する点での安全性および有効性をプラセボに対して評価することである。主要エンドポイントは、13週目までの(3カ月)、以下のことにより定義されるプロトコール定義COVID-19の発生率である:
・上咽頭スワブからのSARS-CoV-2逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応
(RT-PCR)陽性;
および
・少なくとも24時間の期間の後に存続するまたは再発する以下の症状の少なくとも1つまたは複数の新たな開始(または増悪):
○発熱>38℃、悪寒、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、筋肉痛、嗅覚または味覚の変化、鼻閉/鼻漏、嘔吐、下痢、労作時の息切れ
【0607】
これは、臨床家にとっても参加者にとっても臨床的に意義のあるエンドポイントである。症候性COVID-19の予防は、この疾患による罹患率および死亡率の低下につながり得ることはもちろん、伝播の低減につながる可能性もあり得るからである。加えて、統計検定階層手法を利用して全I型過誤を制御して、さらなる時点(17、21および26週目まで)で、プロトコール定義症候性COVID-19の予防の点でのソトロビマブの有効性を決定する。
【0608】
CDC定義症候性COVID-19の予防、および無症候性SARS-CoV-2感染の予防(13および26週目にセロコンバージョンにより評価して)を含む、他の副次的有効性エンドポイントも、臨床的に意義がある。
【0609】
参加者は、彼/彼女が26週目まで研究を遂行した場合に、研究を遂行したと見なされる。
【0610】
インフォームドコンセントの提出時に18歳またはそれより高齢(参加者が19歳またはそれより高齢である、韓国における参加者を除く)であり、任意の性別の参加者が、適格である。女性参加者は、以下に列挙する避妊基準を満さなければならず、順守することに同意しなければならない。女性による避妊具の使用は、臨床研究に参加する者のための避妊方法に関する当該国の規制と一致していなければならない。
【0611】
女性参加者は、妊娠しておらず、授乳中でもなく、以下の条件の1つが当てはまる場合、適格である:
a.非妊娠可能な女性(WONCBP)であるか、
または
b.妊娠可能な女性(WOCBP)であって、失敗率が<1%である非常に有効である避妊法を研究治療期間中および研究治療薬の最終投与後26週間までの間、使用する女性。
治験責任医師は、研究治療薬の初回投与と関係付けながら避妊方法の失敗の可能性(例えば、不遵守、最近開始されたもの)を評価しなければならない。
【0612】
WOCBPは、研究治療薬の初回投与の前に高感度妊娠検査(当該国の規制の要求に応じて尿または血清)が陰性でなければならない。
a.尿検査が陰性と確認できない場合(例えば、あいまいな結果)、血清妊娠検査が必要である。そのような場合、血清妊娠結果が陽性であった場合には参加者を参加から除外しなければならない。
b.研究治療中または研究治療後の妊娠検査についての追加の要件を実施する可能性がある。
【0613】
治験責任医師は、早期の未検出の妊娠がある女性の組入れリスクを低下させるために、医療歴、月経歴、および最近の性行為を再調査する。
【0614】
参加者は、インフォームドコンセントを提出できる。参加者は、活動スケジュールに指定された、上咽頭スワブの採取、鼻腔中鼻甲介スワブおよび静脈血の自己採取を含む、研究手順に同意する。参加者は、研究調査質問票の全ての項目に記入することおよび活動を遂行することができ、そうする意思がある。
【0615】
参加者には登録のためのスクリーニング中に抗スパイクSARS-CoV-2抗体試験がある。抗スパイクSARS-CoV-2抗体試験が陽性である参加者を登録しない。参加者は、投与前の1日目に上咽頭SARS-CoV-2 RT-PCRおよび抗N SARS-CoV-2抗体試験を受ける。1日目のSARS-CoV-2 RT-PCR試験で陽性または抗N SARS-CoV-2抗体試験で陽性であることが判明した参加者を主要解析(mITT)集団から除外する。
【0616】
除外基準
参加者が以下の基準のいずれかが当てはまった場合、参加者を研究から除外する。
【0617】
医学的状態
1.過去のSARS-CoV-2 RT-PCRもしくは抗原試験での陽性歴またはスクリーニング中を含むSARS-CoV-2血清検査での陽性歴
2.無作為化前7日以内の呼吸器症状(例えば、咳、鼻閉)を伴うまたは伴わない熱病
3.治験責任医師が判断して、研究参加継続期間の不安定な医学的状態、およびこの期間に生存していると予想されない
4.参加者が、治験責任医師の見解で、筋肉内注射を受けることが禁忌となる何らかの状態、例えば、凝固障害、出血性素因、または血小板減少症を有する
5.治験製品中に存在するいずれかの構成要素に対する既知の過敏性
6.モノクローナル抗体による以前のアナフィラキシーまたはモノクローナル抗体に対する以前の過敏症
7.治験責任医師の判断で、26週間目までプロトコールの要件を満たす可能性が低いまたは満たすことができない参加者
【0618】
過去の投薬
8.登録前に時を問わずCOVID-19ワクチンを受けたこと、または研究の最初の13週間の間にCOVID-19ワクチンを受ける計画があること
9.登録前48時間以内に何らかのワクチンを受けたこと。ワクチン接種は、投与後2週間は認められないことになる
10.COVID-19生存者からの任意のSARS-CoV-2高力価静注用免疫グロブリン(hIVIG)を受けたこと
11.スクリーニング前3カ月もしくは5半減期以内に、どちらか長い方、および/または研究中に、COVID-19から回復した患者からの回復期血漿または抗SARS-CoV-2 mAbを受けたこと
【0619】
過去/現在の臨床研究経験
12.1日目の前の90日以内、または治験化合物の5半減期以内、どちらか長い方、のSARS-CoV-2/COVID-19の何らかの治験薬研究またはデバイス研究への登録
【0620】
他の除外
13.妊娠しているまたは授乳中の女性。
(妊娠可能な状態を顧慮せず全ての女性参加者は、スクリーニング時/投与前の妊娠検査が陰性でなければならない)
ソトロビマブを単回使用用バイアル内の溶液(62.5mg/mL)の状態に製剤化する。単位用量強度は、500mg/バイアル(500mg/8mL)である。ソトロビマブを単一用量(1回、500mg)で筋肉内注射により投与する。プラセボは、単一用量
で筋肉内注射により投与される、地元産の無菌0.9%(w/v)塩化ナトリウム溶液である。
【0621】
概要:
導入期
研究の導入期は、注射部位反応(ISR)の高頻度の評価、およびPK分析のための集中的な血液試料採取によって、ソトロビマブの安全性、忍容性および薬物動態(PK)を評価することを目的としている。これらの参加者を有効性評価のための拡大期参加者とともにプールする。参加者おおよそ21名を登録し、2:1無作為化してVIR-7831(N=14)または等体積の生理食塩水プラセボ(N=7)を彼らに施す。投与後6時間、安全性モニタリングおよび局所注射部位忍容性評価のために、参加者をモニターする。6時間の終了時に、彼らを退院させる。導入期に登録したら、共同安全性再調査チーム(JSRT)による8日目の安全性評価により継続が推奨されるまで、無作為化を中断する。JSRTが、IDMCへの付託を求めた場合には、IDMCによる進行の推奨の結果が出るまで無作為化を中断する。
【0622】
インテンシブPK試料採取および免疫原性
導入期に登録した全ての参加者には、PK血液試料採取のための追加の時点がある。血清PKおよび抗薬物抗体(ADA)試料を採取する。
【0623】
研究の導入期を
図8に要約し、この図では、ソトロビマブがVIR-7831として同定される。
【0624】
拡大期
研究の拡大期は、JSRTからの、進行しても安全であるという推奨に依存する。具体的には、拡大期の無作為化は、導入期からJSRTによる追跡調査の8日目までの局所注射部位忍容性評価データ(ISR)および他の安全性データの盲検評価後に開始する。
【0625】
追加の参加者おおよそ3129名を登録し、2:1比で無作為化してソトロビマブまたは等体積の生理食塩水プラセボをそれぞれIM投与によって彼らに施す。
【0626】
拡大期の参加者を、診療所/研究ユニットからの退院前に、投与後、1~2時間にわたってモニターする。モニタリングの継続期間(1または2時間)は、導入期からのISRの評価に基づく。モニタリングの継続期間に関する決定を、実施施設へのJSRT推奨事項の一部として、およびプロトコールファイルの注記として連絡する。
【0627】
導入期と拡大期の両方からの参加者を、研究を通して以下の2つの機構でCOVID-19についてモニターする:
1.参加者に、注意すべきCOVID-19兆候および症状の印刷されたガイドと、それらの症状のいずれかを経験してから24時間以内に、または自分がSARS-CoV-2に感染している可能性があるのではないかと思う任意の他の理由がある場合に、電話連絡するための研究施設の電話番号とを提供する。
2.加えて、施設は、有害事象(AE)、重篤有害事象(SAE)を捕捉するために、および参加者に関するCOVID-19症状チェックリストを再調査するために、1日目から13週目まで定期的に週1回(13週目~26週目は2週間おきに)参加者に電話連絡する。
【0628】
全ての参加者に、研究開始日に、鼻腔(中鼻甲介)スワブセルフテストキット、および中央研究所での試験のための返信用封筒を提供する。26週間の研究追跡調査期間中にCOVID-19症状を経験するいずれの参加者にも、セルフテストキットをすぐに使用するように、および疑われるCOVID-19を管理するために実施医療機関の任意の追加のガイダンスに従うように、指示する。試験で陽性である者は、週1回の自己報告COVID-19症状調査質問票ならびに週1回の仕事の生産性および活動障害(WPAI)質問票の全ての項目に記入し、彼らを、症状開始後4週間、COVID-19病モニタリングスケジュールに従って追跡する。参加者が試験で陰性であり、それでもやはり症状を経験している場合、その参加者に反復試験のための第2の自己採取キットを送付する。
【0629】
全ての参加者には定期的な追跡調査のための電話連絡があり、全ての参加者は、有効性、安全性およびPK(スパース)の評価のための特定の追跡調査を受けに行く。
【0630】
参加者数:
参加者おおよそ3150名を、ソトロビマブまたはプラセボへの2:1比での研究治療薬に無作為に割り当てる。研究治療薬を施すいずれの参加者も評価可能と考えられる。
【0631】
研究スクリーニング、無作為化、および継続期間
スクリーニング評価を1日目の前の14日間に行う。適格な参加者を1日目に盲検方式でIM用量によって処置し、研究終了(EOS)まで-26週間(6カ月)-追跡調査する。参加者は、EOSまで盲検化されたままである。COVID-19を発症する(入院しているまたは入院していない)参加者を、症候性感染後4週間にわたって、またはEOSまで、どちらか早い方、追跡する。
【0632】
導入期と拡大期の両方における参加者の無作為化を、以下のことに基づいて層別化する:
年齢層(<65歳、≧65歳) 曝露リスク上昇群
免疫不全状態(immunocompromising condition)の存在
ブロック別無作為化(block randomization)は、国ごとに行う。
【0633】
独立データモニタリング委員会
非盲検化独立データモニタリング委員会(IDMC)は、ソトロビマブの全安全性プロファイルを研究の実施全体にわたって評価し、これには、プラセボに無作為に割り当てられた参加者と比較してソトロビマブに無作為に割り当てられた参加者におけるCOVID-19症例の発生率および重症度を評価することが含まれる。メンバーシップ、範囲、会合の頻度および通信計画をはじめとする、IDMCの役割および責任は、IDMC憲章で定義されている。IDMCの会合は、IDMC憲章に概要が示されている通り、研究全体
にわたって定期的に行われる。
【0634】
共同安全性再調査チーム
研究スポンサーからの臨床研究、医薬品安全性監視、および統計学からのチームメンバーから構成される共同安全性再調査チーム(JSRT)は、インストリーム盲検化データ再調査中に同定された安全性の懸念をIDMCに付託する必要があるかどうかを決定する。JSRTは、上記の導入期の盲検化安全性再調査の責任を負うものであり、必要に応じてIDMCに付託する。IDMCは、IDMC憲章に定義されているプロセスに従って行動する。拡大期の開始は、JSRTからの、進行しても安全であるという推奨を条件とする。JSRTの責任および評価の頻度は、関連安全性再調査チーム(SRT)文書で入手可能である。
【0635】
13週目(3カ月)までのプロトコール定義COVID-19の発生率を、ポアソン回帰モデルを使用して解析して、相対リスクを推定する。このモデルは、処置群、年齢層、曝露リスク群、免疫不全群および国についての用語を含む。しかし、事象がない国については、このモデルについては国を領域に落とすことができる。相対リスク、95%信頼区画、および対応するp値を、ソトロビマブとプラセボの比較のために提示する。
【0636】
(実施例45)
軽度/中等度COVID-19のための筋肉内用ソトロビマブ
高リスクの非入院患者の軽度/中等度COVID-19の処置のために筋肉内投与されるソトロビマブの有効性、安全性および忍容性を、静脈内投与されるものに対して評価するための、第3相無作為化、多施設、非盲検研究を行う。アームおよび治療薬は、表15にある通りである。
【0637】
【0638】
アウトカム尺度
主要アウトカム尺度:
1.COVID-19の進行
[時間枠:29日まで]
副次的アウトカム尺度:
2.有害事象(AE)の発生
[時間枠:24週間まで]
3.重篤有害事象(SAE)の発生
[時間枠:24週間まで]
4.特に注目すべき有害事象(AESI)の発生
[時間枠:24週間まで]
5.ソトロビマブに対する血清抗薬物抗体(ADA)の発生率および力価(該当する場合)
[時間枠:24週間まで]
6.qRT-PCRにより測定した鼻汁中のSARS-CoV-2ウイルス負荷量の平均曲線下面積
[時間枠:8日まで]
7.qRT-PCRによるウイルス負荷量のベースラインからの変化
[時間枠:8日まで]
8.qRT-PCRによる8日目のSARS-CoV-2ウイルス負荷量が持続的に高い参加者の割合
[時間枠:8日まで]
9.重度および/または重篤な呼吸器COVID-19の発生
[時間枠:29日まで]
10.IVおよびIMソトロビマブの血清中薬物動態(PK)
[時間枠:24週間まで]
参加資格
最低年齢:12歳
最高年齢:
性別:全て
性差に基づくもの:なし
健康なボランディアを受入れる:なし
基準:組入れ基準:
・参加者は、同意時に12歳またはそれより高齢であり、COVID-19の進行リスクが高くなければならないか、または≧65歳でなければならない
・参加者は、SARS-CoV-2試験の結果が陽性であり、室内空気での酸素飽和度≧94%を有し、COVID-19症状を有し、症状の開始から7日未満または7日でなければならない
除外基準:
・現在入院しているか、または治験責任医師によって今後24時間以内に入院を必要とする可能性が高いと判断される
・重度COVID-19と一致する症状
・治験責任医師の判断で、今後7日以内に死亡する可能性が高い参加者
・治験製品中に存在するいずれかの構成要素に対する既知の過敏性
【0639】
(実施例46)
軽度から中等度のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)に罹患している非入院参加者の第二世代ソトロビマブ材料の第II相研究
実施例39~40に記載した研究で使用したソトロビマブ薬物材料を、安定にトランスフェクトされた細胞の非クローンプールを使用して生成した。これを「Gen1」薬物材料と呼ぶ。「Gen2」薬物材料を、トランスフェクタントの元のプールに由来するクローンマスターセルバンクを使用して作製する。軽度から中等度のCOVID-19に罹患している非入院参加者におけるGen2薬物材料の安全性、忍容性および薬物動態を評価するために、多施設、無作為化、二重盲検、並行群間第II相研究を行う。
【0640】
主要目的は、Gen2およびGen1ソトロビマブ薬物材料の安全性および忍容性を評価することである。エンドポイントは、次の通りである:29日目までの有害事象(AE)の発生;29日目までの重篤有害事象(SAE)の発生;29日までの特に注目すべき有害事象(AESI)の発生;29日目までの12誘導心電図(ECG)読み取り値に基づく臨床的に有意な異常の発生;および29日目までの疾患進行事象(AEと分類されない)の発生。
【0641】
副次的目的は、以下である:
(1)ソトロビマブGen2およびGen1の血清中薬物動態(PK)を評価すること
エンドポイント:Cmax、Clast、Tmax、Tlast、AUCD0-28、AUCinf、AUClast、%AUCexp、t1/2、λz、Vz、Vss、CL;
(2)ソトロビマブGen2およびGen1の安全性および忍容性プロファイルを評価すること
エンドポイント:24週目までのSAEの発生;24週目までのAESIの発生;24週目までの12誘導ECG読み取り値に基づく臨床的に有意な異常の発生;24週目までの疾患進行事象(AEと分類されない)の発生。
【0642】
予備的エンドポイントは、以下である:
(1)ソトロビマブGen2およびGen1の潜在的免疫原性を評価すること
エンドポイント:ソトロビマブに対する血清抗薬物抗体(ADA)の発生率および力価(該当する場合)
(2)上気道試料におけるウイルス排出プロファイルに対するソトロビマブGen2およびGen1の効果を特徴付けること。
【0643】
エンドポイント:唾液試料から定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)により測定される29日目までの全来院のウイルス負荷量のベースラインからの変化。
【0644】
この研究は、非入院患者の軽度から中等度COVID-19の進行を予防するためのSARS-CoV-2に対するモノクローナル抗体(mAb)であるソトロビマブの、無作為化、二重盲検、多施設、並行群間第II相試験である。早期の軽度から中等度のCOVID-19に罹患している参加者を3:1無作為化して、Gen2研究材料またはGen1研究材料のどちらかの単回500mg静脈内注入を施す。安全性、忍容性およびPKを評価する。
【0645】
スクリーニング評価を注入開始前24時間以内に行う。適格な参加者を1日目に盲検方式で単回IV投与によって処置し、24週間まで追跡調査する。参加者を、1日目におおよそ9時間、安全性評価およびインテンシブPK試料採取のためにモニターする。
【0646】
この研究は、実施医療機関臨床検査および/またはポイントオブケア試験により確認された軽度から中等度のSARS-CoV-2に感染している非入院患者を含む。Gen1または等体積Gen2材料の単一用量レベルを研究し、IV注入によって送達する。参加者に診療所/研究施設において注入を施し、そこで彼らを注入後期間の有害事象について厳密にモニターする。研究活動および臨床モニタリングのためのその後の受診は、診療所または訪問看護によって行う(16週目を除いて)。二重盲検設計は、偏りを最小限に抑えるために無作為化、対照研究の標準的な方法論である。研究の実施中にGen2ソトロビマブ研究材料を受けることに対してGen1ソトロビマブ研究材料を受けることの盲検化を維持するためにGen1研究アームを含める。この盲検化は、AEおよび疾患関連安全性アウトカムの評価中に起こり得るものを含めて、研究評価中に起こり得る偏りを最小限に抑えるために非常に重要である。
【0647】
盲検化安全性データを24週目までJSRTが定期的に再調査する。主要目的がGen2材料の安全性および忍容性を評価することであるため、この研究にはプラセボがない。この研究中には、全ての参加者に、主幹研究責任医師が必要と思った場合の入院を含む、COVID-19疾患の標準治療を施す。
【0648】
分析的比較可能性研究が臨床研究におけるGen2の使用を支持する。
【0649】
(実施例47)
S309抗体によるSARS-CoV2中和のACE2非依存性機序
以下の実験では、S309抗体(配列番号105のVH、配列番号168のVL)を、M428LおよびN434S Fc変異を有する組換えIgG1として発現させた。S309抗体の感染中和に対するACE2過剰発現の効果を調査した。Vero E6またはVero E6-TMPRSS2細胞を、S309(10μg/ml)の存在下でSARS-CoV-2(USA-WA1/2020分離株)にMOI 0.01で感染させた。感染の24時間後に細胞を固定し、ウイルスヌクレオカプシドタンパク質を免疫染色し、定量した。ヌクレオカプシド染色は、抗体処置細胞には実質的に存在しなかった。S309は、Vero E6細胞では65のおよびVero E6-TMPRSS2では91のIC50(ng/mL)を有した(データを示さない)。
【0650】
7つの細胞系(HeLa、293T(wt)、Vero E6、Huh7、293T ACE2、MRC 5-ACE2-TMPRSS2、A549-ACE2-TMPRSS2クローン5、A549-ACE2-TMPRSS2クローン10)のパネルを、S309の存在下で、SARS-CoV-2-Nlucに、またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質でシュードタイプ化されたVSVに、感染させた。ルシフェラーゼシグナルを感染の24時間後に定量した。S309最大中和値は、表16に示す通りであった。
【0651】
【0652】
これらの細胞系に結合する精製された蛍光標識SARS-CoV-2スパイクタンパク質の結合をフローサイトメトリーにより定量した。HeLaおよび239T WT細胞は、最低MFIを有し、これにHuh7およびVeroE6細胞が続いた。293T ACE2細胞(最高)、MRC 5-ACE2-TMPRSS2(3番目に高い)、A549-ACE2-TMPRSS2クローン5(4番目に高い)、およびA549-ACE2-TMPRSS2クローン10(2番目に高い)は、より高いMFIを有した。S309のスパイク結合最大中和能力間の相関分析を決定し、S309スピアマン相関値は、両方のウイルスモデルについてr=-0.94であった。p=0.017。
【0653】
SARS-CoV-2感受性細胞系をさらに特徴付けるために、上記の7つの細胞系を、精製された蛍光標識SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはRBDタンパク質とともにインキュベートし、タンパク質結合をフローサイトメトリーにより定量した。MFIの降順で、細胞系は、A549-ACE2-TMPRSS2クローン10、293T ACE2、MRC 5-ACE2-TMPRSS2、A549-ACE2-TMPRSS2クローン5、Vero E6、Huh7、293T(wt)、そしてHeLaであった。
【0654】
選択されたレクチンおよび公開されている受容体候補を、SARS-CoV-2 VSVシュードウイルスに感染したHEK293T細胞を使用してスクリーニングした。ACE2、DC-SIGN、L-SIGN、およびSIGLEC-1は、最高のシグナルを生じさせた。ACE2は、おおよそ105の相対的な発光単位(RLU)のシグナルをもたらし、DC-SIGN、SIGLEC-1、およびL-SIGNは、おおよそ104RLUのシグナルを有した。試験した全ての他のレクチン/候補は、おおよそ102~103RLUのシグナルを生じさせた。
【0655】
HEK 293T、HeLaおよびMRC5細胞に、DC-SIGN、L-SIGN、SIGLEC1またはACE2を過剰発現するように一過性に形質導入し、それらの細胞をSARS-CoV-2 VSVシュードウイルスに感染させた。未感染細胞および非形質導入細胞を対照として含めた。HEK293T細胞では、ACE2、DC-SIGN、SIGLEC-1、およびL-SIGN全てが、感染の大幅な増加をもたらした。HeLaおよびMRC5細胞では、ACE2のみが感染を増加させた。
【0656】
DC-SIGN、L-SIGN、SIGLEC-1またはACE2を過剰発現する安定したHEK293T細胞系を真正のSARS-CoV-2に感染させ(MOI 0.1)、24時間の時点で、固定し、SARS-CoV-2核タンパク質について免疫染色した。野生型細胞(感染および未感染)を対照として使用した。DC-SIGN、L-SIGN、またはSIGLEC-1を過剰発現する細胞では染色の増加が観察され、ACE2を過剰発現する細胞では染色が有意に増加された。
【0657】
安定した細胞系をSARS-CoV-2-Nlucに感染させ、ルシフェラーゼレベルを24時間の時点で定量した。RLUの昇順で、未感染(おおよそ102~103RLU)、親293T(おおよそ104RLU)、DC-SIGN(おおよそ105RLU)、L-SIGN(おおよそ105RLU)、SIGLEC-1(おおよそ105~106RLU)、ACE2(>107RLU)。
【0658】
安定した細胞系を異なる濃度の抗SIGLEC1 mAb(クローン7-239)とともにインキュベートし、SARS-CoV-2-Nlucに感染させた。未処置細胞のパーセンテージとしての感染は、DC-SIGN、L-SIGNまたはACE2を発現する293T細胞ではほぼ100%を維持した~100%を超えたが、SIGLEC-1を発現する293T細胞では50%未満へ(0.2μg/mLの抗SIGLEC)または0近くへ(1μg/mLまたは5μg/mLの抗SIGLEC)と降下した。
【0659】
選択された、可能性のあるSARS-CoV-2(共)受容体候補の単一細胞発現レベルを、Human Lung Cell Atlas(nature.com/articles/s41586-020-2922-4)から得た異なる肺細胞型で決定した。DC-SIGN、L-SIGNおよびSIGLEC-1は、ACE2と同様のレベルでまたはさらにはそれより高いレベルで肺における様々な細胞型に発現される。
【0660】
それぞれの付着受容体を安定的に過剰発現するHEK293T細胞上のDC-/L-SIGN、DC-SIGN、SIGLEC1またはACE2を標的とする抗体の結合を、フローサイトメトリーおよび免疫蛍光分析により分析した。それぞれの付着受容体を過剰発現するHEK 293T細胞を、SARS-COV-2野生型スパイクでまたはB1.1.7系統の変異を有するスパイクでシュードタイプ化されたVSVに感染させた。感染の1日後に発光を分析した。付着受容体を発現する細胞では感染が増加された。どちらかのスパイクでシュードタイプ化されたVSVによる感染は、各試験群について同様であった。ACE2を発現する細胞は、最も高い発光シグナルを生じさせた。
【0661】
Vero E6細胞、in vitroで分化させたmoDCまたはPBMCを、SARS-CoV-2にMOI 0.01で感染させた。感染後24時間の時点で、細胞を固定し、ウイルスヌクレオカプシドタンパク質について免疫染色し、感染細胞を定量した。VeroE6細胞のみが感染を示した(細胞のおおよそ7%)。感染細胞の上清を24、48および72時間の時点で採取し、感染性ウイルス力価をVero E6細胞に関してFFUアッセイにより定量した。
【0662】
重症COVID-19患者の気管支肺胞洗浄液(BALF)および痰において検出可能なSARS-CoV-2ゲノムを有する主要細胞型を評価した。t-SNEプロットを作成し、各SARS-CoV-2+細胞型の計数を決定した(Ren et al. Cell 2021では、8名の被験体から合計n=3,085細胞)。細胞型は、T細胞型、NK細胞型、形質細胞型、好中球型、マクロファージ型、線毛細胞型、扁平上皮細胞型、および分泌細胞型であった。ACE2、DC-SIGN、L-SIGN、SIGLEC-1、およびこれらの組合せの発現を、各細胞型について評価した。
【0663】
ACE2、DC-SIGN(CD209)、L-SIGN(CLEC4M)、SIGLEC1転写物の計数は、マクロファージにおいておよび分泌細胞においてSARS-CoV-2 RNAの計数と相関していた。相関は、Ren et al. Cell 2021からの(log変換前の)計数に基づくものであった。
【0664】
細胞系を作製して、導入遺伝子をコードするレンチウイルスでHEK293T細胞に形質導入することによりDC-SIGN、L-SIGNまたはACE2を過剰発現させ、免疫蛍光アッセイを行って導入遺伝子発現を評価した。
【0665】
DC-SIGNまたはL-SIGNの発現は、シュードウイルス感染レベルをWT HEK293T細胞の感染と比較して10倍を超えて上昇させ、ACE2の発現は、シュードウイルス感染レベルをWT HEK293T細胞の感染と比較して100倍を超えて上昇させた。
【0666】
VSVシュードウイルスに対する例示的なmAb S309の中和活性を、操作されたHEK293T細胞において評価した。S309は、DC-SIGNおよびL-SIGNを介した感染を完全に中和し、それより低い程度にだが、ACE2を介した感染を中和した。
【0667】
ルシフェラーゼレポーターを有する生SARS-CoV-2の、HEK293T細胞を感染させる能力を、発光アッセイを使用して調べた。DC-SIGNまたはL-SIGNの発現は、生ウイルス感染レベルをWT HEK293T細胞の感染と比較して3倍を超えて上昇させ、ACE2の発現は、生ウイルス感染レベルをWT HEK293T細胞の感染と比較して100倍を超えて上昇させた。
【0668】
VSVシュードウイルスに対するmAb S309の中和活性を、操作されたHEK293T細胞において評価した。S309は、DC-SIGNおよびL-SIGNを介した感染を完全に中和し、それより低い程度にだが、ACE2を介した感染を中和した。
【0669】
S309抗体が、SIGLEC-1を介したSARS-CoV-2の侵入を中和することができるかどうかを調査するために、実験を行った。手短に述べると、安定した細胞HEK293T系を上で説明したように作製して、DC-SIGN/L-SIGN、DC-SIGN、SIGLEC-1、またはACE2を過剰発現させた。DC-SIGN、L-SIGN、またはSIGLECの発現は、生ウイルス感染レベルをWT HEK293T細胞の感染と比較して10倍を超えて上昇させ、ACE2の発現は、シュードウイルス感染レベルをWT HEK293T細胞の感染と比較して100倍を超えて上昇させた。S309は、DC-SIGN、L-SIGN、およびSIGLEC-1を介した感染を完全に中和した。
【0670】
DC-SIGN(CD209)、ならびにSIGLEC-1および他のSIGLECをはじめとする他の細胞表面受容体タンパク質の発現を、様々な細胞型上で決定した。
【0671】
さらなる実験を行って、SARS-CoV-2感染におけるDC-SIGN、L-SIGN、およびSIGLEC-1の機能を調査した。1セットの実験では、DC-SIGN、L-SIGN、SIGLEC-1またはACE2を安定的に発現するHEK293T細胞を、3つの異なる感染多重度(MOI):0.01、0.1および1で、生SARS-CoV-2 Nlucに感染させた。相対的な発光単位を使用して感染を決定し、HEK293T細胞(親)における感染と比較した。試験した最低MOIで、DC-SIGN、L-SIGNまたはSIGLECを発現する細胞において感染の増加が観察された。試験した最高MOIでは、感染は、親のものと対比して、DC-SIGN、L-SIGNまたはSIGLECの発現によってさらに増加されなかった。これらのデータは、親293T細胞がSARS-CoV-2による感染を受けやすいこと、ならびにL-SIGN、DC-SIGN、およびSIGLEC-1が、感染レベルを高めるが、感染の主受容体として機能しないことを示す。
【0672】
別のセットの実験では、293T細胞、HeLa細胞、およびMRC5細胞に、DC-SIGN、L-SIGN、SIGLEC-1またはACE2をコードするレンチウイルスで一過性に形質導入し、形質導入の3日後にこれらの細胞をVSVシュードウイルスに感染させた。293T細胞は、低い感受性レベル(形質導入されていないものと未感染のものを比較して)を示した一方で、HeLaおよびMRC5細胞は、ウイルスに対して完全に不応性であった。293T細胞におけるこの低い感染レベルを、L-SIGN、DC-SIGNまたはSIGLEC-1の発現によって上昇させることができ、これは、これらのタンパク質の付着因子としての役割と合致する。HeLaおよびMRC5細胞は、L-SIGN、DC-SIGNまたはSIGLEC-1の発現後であっても感染に対して不応性のままであり、ACE2の発現後にのみ感受性になる。これらのデータは、L-SIGN、DC-SIGNおよびSIGLEC-1が、SARS-CoV-2の主受容体でないことを示す。
【0673】
(実施例48)
感染の動物モデルにおけるS309抗体のin vivo有効性
S309の有効性をゴールデンハムスターで調査した。この動物モデルは、今のところ、生産的感染および疾患を支持するためにACE2のin vivo過剰発現を必要としなかったSARS-CoV-2感染の最も関連性のあるモデルの代表である。S309の予防的投与は、ウイルスRNAレベル、ウイルス負荷量、ならびに肺における病理組織学的スコアによって実証されるように、ハムスターにおいてSARS-CoV-2感染および組織損傷に対する用量依存的防御を誘導した。これらのデータは、in vitroでACE2を過剰発現する細胞を使用した際のS309による侵入の不良かつ不完全な中和
が、非RBM mAbのin vivo有効性を損なわせなかったことを示す。
【0674】
N297A変異を有するS309は、Fcγ受容体への係合減少の結果として、エフェクター機能を誘発する能力が低い。このことを、ハムスターの脾臓内の単球へのS309-N297Aバリアントの結合の低減によってさらに確認した。N297A mAbで測定されるin vivo有効性は、wt S309と同様であるか、またはほんの少し劣り、このことは、mAbの中和能がこれらの条件ではそのエフェクター機能能力に基づいて優勢になることを示唆する。肺におけるウイルスRNAを90%低下させるために必要なS309の血清濃度は、9μg/mlであった。
【0675】
ソトロビマブは、SARS-CoV-2のハムスターモデルで活性を明示した。鼻腔内接種前の≧5mg/kgでのソトロビマブのIP投与は、測定した全てのアウトカム(体重、肺重量、肺内の総ウイルスRNA、およびTCID50測定値に基づく感染性ウイルスレベル)の用量依存的改善をもたらした。
【0676】
加えて、ソトロビマブ活性を、SARS-CoV-2感染のゴールデンシリアンハムスターモデルにおいてUK B.1.1.7バリアントを使用してin vivoで評価した。ソトロビマブは、SAおよびブラジルバリアントを中和した。活性の軽微なシフトがUKバリアントで観察され、野生型に対して幾何平均EC50の3.0倍シフトおよび野生型に対してEC90の4.1倍シフトがあった。アイソタイプ対照抗体処置動物と比較して30mg/kgおよび5mg/kgのソトロビマブを施した動物における感染後3日目と4日目の両方での体重の有意な差に基づいて、ソトロビマブを施したB.1.1.7感染ハムスターにおいて防御が観察された。
【0677】
(実施例49)
SARS-CoV-2バリアントに対する抗体活性
いくつかのSARS-CoV-2バリアントが出現してきており、バリアントによる感染数の増加が2020年後半に報告されている。受容体結合モチーフ(RBM)は、変異に特に変わりやすいようである。注目に値する新たに出現したバリアントが、スコットランド、UK、南アフリカ、カリフォルニア、コロンバスにおいて、およびデンマークにおけるミンクにおいて観察されており、一部の変異は、抗体からの逃避または血清中和をもたらすと報告されている。バリアントを中和するS309抗体の能力を評価するために実験を行った。配列読み取りデータにより決定して、20の最も頻度の高いSARS-CoV-2 RBDバリアント変異のパネルを有するSARS-CoV-2に対してS309 N55Q MLNS(VH:配列番号113、VL:配列番号168;M428LおよびN434S Fc変異を有する)を試験した。抗体REGN10933およびREGN10987(Hansen et al., Science 369(6506):1010-1014; eabd0827-0810 (2020)およびPDB 6XDG (rcsb.org/structure/6XDG))を、比較のために含めた。結果を表17に要約する。
【0678】
【表17】
Y=生ウイルスまたはシュードウイルスの中和が1/3まで低下しない
N=生ウイルスまたはシュードウイルスの中和が1/3未満に低下する
P=エピトープの外側にあるバリアントアミノ酸に起因して抗体による中和が予測される
?=不明。
【0679】
抗体から逃避することが公知のSARS-CoV-2の配列決定された変異体の総数(2021年1月29日現在)は、S309 N55Q MLNS=29、REGN10987=10,425、REGN10933=3,621であった。
【0680】
S309抗体のSARS-CoV-2バリアントRBDへの結合をBLIにより評価した。野生型Fcを有するS309(VH:配列番号105、VL:配列番号168)、およびMLNSまたはMLNS+GAALIE Fc変異を有するS309 N55Q(VH:配列番号113、VL:配列番号168)を、評価した。REGN10987およびREGN10933を比較対照として含めた。手短に述べると、抗体をキネティクス緩衝液中、3ug/mlで希釈し、プロテインAセンサー上に75秒間、負荷した。キネティクス緩衝液中での短時間の平衡ステップ後、負荷されたセンサーを、キネティクス緩衝液中5ug/mlのRBDバリアントを含有するウェル内に移動させ、3分の間、会合を記録した。複合体の解離をキネティクス緩衝液中で3分間、行った。
【0681】
SARS-CoV-2バリアントに対するS309抗体の中和を、MLVシュードウイルスとTMPRSS2を発現するVero-E6標的細胞とを使用して評価した。野生型Fcを有するS309(VH:配列番号105、VL:配列番号168)、およびMLNS(ソトロビマブ)またはMLNS+GAALIE(VIR-7832) Fc変異を有するS309 N55Q(VH:配列番号113、VL:配列番号168)を、評価した。REGN10987、REGN10933、およびREGN10987+REGN10933の組合せも評価した。S309抗体(S309、ソトロビマブ、およびVIR-7832)は、SARS-CoV-2バリアントを中和した。
【0682】
ソトロビマブを、英国(UK)(B.1.1.7)、南アフリカ(SA)(B.1.351)およびブラジル(P.1)からの懸念されるSARS-CoV-2生ウイルスバリアントに対するin vitro活性について評価した。ソトロビマブは、各バリアントに対して3.0またはそれ未満のEC50の平均倍率変化を示した。
【0683】
ソトロビマブを、シュードタイプ化ウイルスアッセイで、懸念される他のSARS-CoV-2バリアントに対する中和活性についても評価した。結果を表18に提示する。
【0684】
【0685】
ソトロビマブと同一の可変領域およびSARS-CoV-2スパイクタンパク質結合特性を有するが、免疫調節性改変G236A/A330L/I332Eも含有する、mAb(VIR-7832、別名S309 N55Q MNLS_GAALIE)を使用して、耐性選択研究、感受性低下をもたらすバリアントの生成を調べる研究、およびエフェクター機能を特徴付ける研究を、ソトロビマブおよびVIR-7832で行った。ウイルスを固定濃度の抗体の存在下で10継代(34日)にわたって継代させたとき、試験した最低濃度(約10×EC50)でも、ウイルスブレークスルーは観察されなかった。このことは、耐性への高いバリアを示唆する。濃度漸増選択方法によって耐性バリアントの出現を強いることで、E340AをソトロビマブmAb耐性変異体(MARM)として同定した。現在流行中のエピトープ多型を調べるin vitroシュードタイプ化ウイルス実験は、P337(T/L/H/R)およびE340(A/K/G)におけるアミノ酸置換がソトロビマブに対する感受性の低下をもたらすことを実証する。注目すべきことに、E340およびP337は、入手可能なSARS-CoV-2配列間で≧99.99%保存される。加えて、シュードタイプ化ウイルス実験は、ソトロビマブが、バムラニビマブ、イムデビマブおよび/またはカシリビマブ(casivirimab)への感受性の低下をもたらすスパイクバリアントに対する活性を保持することを実証し、ソトロビマブは、in vitro研究に基づいて、ヒトIgGと一致する様式でFcγRに結合し、抗体依存性細胞傷害および抗体依存性細胞ファゴサイトーシスの可能性を明示する。レムデシビルまたはバムラニビマブとの併用in vitro研究では、ソトロビマブは、ヌクレオシド阻害剤との相加性を示し、拮抗作用はどちらの併用によっても観察されなかった。
【0686】
つい最近のシュードタイプ化ウイルス様粒子in vitro評価では、ソトロビマブは、UK(アルファ、B.1.1.7;EC50値の2.30倍の変化);南アフリカ(ベータ、B.1.351;EC50値の0.60倍の変化);ブラジル(ガンマ、P.1;EC50値の0.35倍の変化);カリフォルニア(イプシロン、B.1.427/B.1.429;EC50値の0.70倍の変化);ニューヨーク(イオタ、B.1.526;EC50値の0.6倍の変化)、インド(カッパ、B.1.617.1;EC50値の0.7倍の変化、デルタ、B.1.617.2;EC50値の1倍の変化、デルタプラス[AY.1;EC50値の1.1倍の変化およびAY.2;EC50値の1.3倍の変化])およびペルー(ラムダ、C.37;EC50値の1.5倍の変化)バリアントスパイクタンパク質に対する活性を保持する。
【0687】
真性SARS-CoV-2バリアントウイルスからのマイクロ中和データも、ソトロビマブがUK(EC50値の3倍の変化)、南アフリカ(EC50値の1.2倍の変化)およびブラジル(EC50値の1.6倍の変化)バリアントに対する活性を保持することを示している。
【0688】
(実施例50)
カニクイザル研究からのPK結果
カニクイザルにおける5mg/kgのソトロビマブの単回IV投与後、他のIgGと一致して、血管腔外でのソトロビマブの分布は限定的であった。半減期延長LS改変の付加と一致して、ソトロビマブは、17.7日の長い半減期、および低いクリアランス(3.87mL/日/kg)を有した。PKパラメーターの性別による顕著な差は、観察されなかった。
【0689】
カニクイザルの体内分布研究を行って、全身ポジトロン放出断層撮影およびコンピュータ断層撮影(PET/CT)イメージングにより気道をはじめとする様々な組織へのソトロビマブの取込みを調査し、組織対血液比を定量的に決定した。単回5mg/kg IV投与(およそ2.5mCiの89-Zrソトロビマブを含有する)の後、鼻腔(0.29)、咽頭(0.20)、喉頭(0.23)、気管(0.16)、肺気管支(0.41)および肺(気腔を含めて0.25、気腔を除外して0.70)を含む気道組織において、3日目に組織対血液比を決定した。
【0690】
(実施例51)
成人臨床研究からの臨床およびPK結果
2021年3月31の時点で、参加者およそ1350名が2つの臨床研究におけるソトロビマブ(500mg用量)またはプラセボに無作為に割り振られている:軽度から中等度のCOVID-19に罹患している非入院個体の処置のためのソトロビマブを評価する研究(COMET-ICE[NCT04545060])の参加者1057名、およびCOVID-19で入院している個体の処置のためのソトロビマブを評価した研究(NCT04501978])の参加者300名。
【0691】
COMET-ICEは、進行およびその後の入院のリスクが高い非入院参加者においてCOVID-19の早期処置のためのソトロビマブの単回500mg IV投与の安全性および有効性を評価する、シームレスのファースト・イン・ヒューマン(FIH)第II/III相研究である。参加者をソトロビマブまたはプラセボに1:1比で無作為に割り当てた。COMET-ICEは、2020年8月に安全性および忍容性を評価するための導入期(N=21)で始まった。IDMCは、2020年9月23日に会合を開いて、導入コホートからの第20の参加者が15日目を完了した(参加者1名が離脱した)後の非盲検化安全性データを再調査した。
【0692】
このIDMC再調査までに報告された死亡もSAEもなかった。IDMCは、研究に、拡大期を進めて各処置群にわたって追加の参加者(参加者合計約1300名)を登録するように提言した。IDMCは、その後、参加者583名からのデータの再調査による計画された中間解析のために、2021年3月10日に会合を開いた。プラセボアームに対してソトロビマブアームにおける入院または死亡の主要エンドポイントの85%低下があった(p=0.002)。IDMCは、圧倒的な有効性に基づいて研究が登録を中止することを提言した[Vir Biotechnology, 2021]。これまでに行われたIDMC再調査で特定された安全性の懸念はない。
【0693】
COMET-ICEへの登録を2021年3月11日に終わらせ、参加者を24週目まで追跡調査し続けた。29日目解析データカットオフでのCOMET-ICE研究の結果(DCO;2021年4月27日)は、ソトロビマブが、重度の疾患に進行するリスクがある軽度から中等度のCOVID-19に罹患している参加者に対して非常に効果のある処置であることを示し、これは、満たされていない医療ニーズを満たすものである。ソトロビマブまたはプラセボのどちらかを施した治療企図(29日目)集団(N=1057)に基づくCOMET-ICE有効性データの再調査は、主要有効性エンドポイントを満たすことを実証した。
【0694】
ソトロビマブでの処置は、プラセボと比較してソトロビマブアームにおいて29日目までに24時間より長い入院または死亡に進行する軽度/中等度のCOVID-19に罹患している参加者の割合を有意に79%低下(調整した相対リスク低下;p<0.001)させる結果となった。
【0695】
SARS-CoV-2シュードタイプ化ウイルスを使用するin vitro中和データが、ソトロビマブエピトープにおいて検出された17の独特のバリアントのうちの13について現在入手可能である。入手可能なデータがあるバリアントについて、ソトロビマブは、試験したほとんどのアミノ酸位置におけるエピトープバリアントを有効に中和し、半最大有効濃度(EC50)の倍率変化は<3倍(範囲:0.70~1.72)であった。バリアントE340AおよびE340Kは、in vitroでソトロビマブへの感受性の低下を示す有意なEC50シフト(>100倍)をもたらした。
【0696】
COMET-ICE参加者合計539名からの限られたヌクレオチド配列決定データは、参加者36名(プラセボで処置した16名およびソトロビマブで処置した20名)がB.1.1.7(アルファ、UK起源)バリアントを有することを示した。参加者4名(プラセボで処置した2名およびソトロビマブで処置した2名)は、N501Y置換を有した。参加者31名(プラセボで処置した19名およびソトロビマブで処置した12名)は、B.1.427/B.1.429(イプシロン、カリフォルニア起源)バリアントを有した。追加の参加者8名は、L452R置換を有した(プラセボで処置した6名およびソトロビマブで処置した2名)。参加者11名は、P.1(ガンマ、ブラジル起源)バリアントを有した(プラセボで処置した3名およびソトロビマブで処置した8名)。参加者3名は、E484K置換を有するB.1.526(イオタ、ニューヨーク起源)バリアントを有し(プラセボで処置した2名およびソトロビマブで処置した1名)、その一方で、参加者9名(プラセボで処置した4名およびソトロビマブで処置した5名)は、B.1.526(イオタ、ニューヨーク起源)バリアントに関連するS477N置換を有した。加えて、参加者10名は、E484K置換を有し(プラセボで処置した4名およびソトロビマブで処置した6名)、2名は、S494P置換を有し(プラセボで処置した1名およびソトロビマブで処置した1名)、3名はS494P置換をN501Y置換とともに有した(プラセボで処置した2名およびソトロビマブで処置した1名)。ソトロビマブを施した群の参加者2名(B.1.427/B.1.429[イプシロン、カリフォルニア起源]バリアントを有する1名およびB.1.1.7[アルファ、UK起源]バリアントを有する1名)は、入院に進行した。プラセボ群の参加者4名(E484K置換を有する2名、P.1[ガンマ、ブラジル起源]バリアントを有する1名、およびB.1.1.7[アルファ、UK起源]バリアントを有する1名)は、入院に進行した。現在入手可能なベースライン配列を有する参加者には特徴的な置換の完全な相補体を全て有する者はいなかった。1時間のIV注入によって投与したソトロビマブの500mg IV用量のPKをCOMET-ICEにおいて評価した。この研究の導入期におけるソトロビマブアームの参加者は10名であった。参加者1名は、ソトロビマブの注入後、同意撤回により早期に中止した。したがって、COMET-ICEの導入期の参加者9名(ソトロビマブ)からの完全な血清PKが入手可能である。1時間のIV注入後、500mgのソトロビマブの平均最高血中濃度(Cmax)は、219μg/mLであった。29日目の平均血清レベルは、37.2μg/mLである。平均クリアランス(CL)および定常状態での分布容積(Vss)は、それぞれ、125mL/日および8.1Lであった。半減期中央値は、48.8日であった。平均PKプロファイルおよびパラメーターを
図9A~Dおよび表19に提示する。
【0697】
COMET-ICE拡大の参加者363名からの研究29日目までの部分的なスパース血清PKは、研究29日目におけるソトロビマブの平均血清濃度が25.8μg/mLであったことを示す。
【0698】
【0699】
(実施例52)
軽度から中等度のCOVID-19に罹患している高リスク小児参加者における単回投与ソトロビマブの薬物動態、薬力学および安全性の第IIb相研究
非盲検、非比較対照、多施設研究を、疾患進行リスクが高い軽度から中等度のCOVID-19に罹患している小児参加者におけるソトロビマブの単回静脈内または筋肉内投与後の薬物動態(PK)、薬力学(PD;ウイルス負荷量)および安全性を評価するために行う。
【0700】
略語:ADA=抗薬物抗体;AE=有害事象;AESI=特に注目すべき有害事象;抗N=抗ヌクレオカプシド;AUCinf=ゼロ時間から無限大までの血清濃度時間曲線下面積;Cmax=最高血中濃度;CL=クリアランス;ECG=心電図;F=バイオアベイラビリティ;SAE=重篤有害事象;t1/2=終末相消失
【0701】
主目的:
1.出生から<18歳の小児におけるソトロビマブのIVまたはIM投与による薬物動態を評価すること。
エンドポイント:i.ソトロビマブの体重調整血清クリアランス;ii.IM注射またはIV注入により投与したソトロビマブの血清PK(PKパラメーターは、Cmax、Tmax、AUCinf、t1/2、Vz、CL、Fを含み得る)
他のエスティマンド属性:i.集団:PK(研究治療薬に曝露される、および少なくとも1つの非欠測PK評価を有した、コホートA/コホートBの全ての参加者[定量できない値は非欠測値と見なすこととする]);ii.集約尺度:PKモデルパラメーター
2.IVまたはIM投与によるソトロビマブの安全性および忍容性を評価すること。
エンドポイント:29日目および36週目までの有害事象(AE)、重篤有害事象(SAE)および特に注目すべき有害事象(AESI)の発生率
他のエスティマンド属性:i.集団:安全性(コホートA/コホートBにおける研究治療薬に曝露される全ての参加者);ii.集約尺度:計数およびパーセンテージ
【0702】
副次的目的:
1.ソトロビマブのIVまたはIM投与後の疾患進行を評価すること
エンドポイント:i.医療機関の受診*の必要性またはより高い医療レベルへの上昇または死亡により定義される29日目までのCOVID-19の進行;*医療機関の受診は、疾病管理のための病院の救急外来の受診、または疾病の救急管理のための入院を含む;ii.酸素補給の必要により明らかになるような重度および/または重篤な呼吸器COVID-19の29日目までの発生*;*発病前の状態のために酸素または呼吸サポートを必要とする参加者については、疾患進行を、必要とされる酸素補給のレベルまたは方法の任意の持続的(>24時間)増加と定義する
他のエスティマンド属性:i.集団:安全性;ii.集約尺度:計数およびパーセンテージ
2.SARS-CoV-2に感染した参加者間の気道試料におけるSARS-CoV-2ウイルス負荷量に対するソトロビマブのIVまたはIM投与の効果を特徴付けること
エンドポイント:5日目、8日目および11日目にqRT-PCRにより測定した、鼻汁中のウイルス負荷量のベースラインからの変化
他のエスティマンド属性:i.集団:ウイルス学(コホートA/コホートBにおける研究治療薬に曝露される、およびベースラインで定量可能なSARS-CoV-2ウイルス負荷量測定値を有する、全ての参加者);ii.集約尺度:算術平均
【0703】
他の安全性目的:
1.IVまたはIM投与後にソトロビマブの安全性および忍容性を評価すること。
エンドポイント:検査室パラメーターのベースラインからの変化、およびバイタルサイン
他のエスティマンド属性:i.集団:安全性;ii.集約尺度:平均
エンドポイント:i.ECGのベースラインからの臨床的に有意な変化;ii.29日目までの疾患関連事象および/または疾患関連アウトカム(AEとして分類されない)の発生;iii.;および29日目および36週目までの小児の多系統炎症性症候群(MIS-C)の発生
他のエスティマンド属性:i.集団:安全性;ii.集約尺度:計数およびパーセンテージ
【0704】
予備的な目的
1.死亡発生率を評価すること
エンドポイント:36週目の全死因死亡発生率
他のエスティマンド属性:i.集団:安全性;ii.集約尺度:計数およびパーセンテージ
2.ソトロビマブに対するSARS-CoV-2耐性変異体をモニターすること
エンドポイント:i.ベースラインでのソトロビマブに対するSARS-CoV-2耐性変異体;ii.SARS-CoV-2によるソトロビマブに対するウイルス耐性変異体の出現
他のエスティマンド属性:i.集団:ウイルス学;ii.集約尺度:計数およびパーセンテージ
3.SARS-CoV-2による呼吸器同時感染の発生率を評価する
エンドポイント:1日目の鼻汁における呼吸器病原体の検出
他のエスティマンド属性:i.集団:安全性;ii.集約尺度:計数およびパーセンテージ
4.ソトロビマブの免疫原性を評価すること
エンドポイント:ソトロビマブに対する血清抗薬物抗体(ADA)の発生率および力価(該当する場合)
他のエスティマンド属性:i.集団:安全性;ii.集約尺度:計数およびパーセンテージ
5.≧2歳の参加者においてSARS-CoV-2抗体に対するソトロビマブの効果を評価すること
エンドポイント:≧2歳の参加者についての1日目および29日目における抗ヌクレオカプシド(抗N)SARS-CoV-2抗体の発生率および力価(該当する場合)
他のエスティマンド属性:i.集団:安全性;ii.集約尺度:計数およびパーセンテージ
6.COVID-19症状の変化を経時的に評価すること
エンドポイント:COVID-19症状の重症度の評価
他のエスティマンド属性:i.集団:安全性;ii.集約尺度:計数およびパーセンテージ
全ての目的のエンドポイントをIVおよびIM投与について別々に評価することとする。
【0705】
全体的なデザイン:
この研究は、疾患進行リスクが高い軽度/中等度のCOVID-19に罹患している出生から<18歳の小児参加者におけるソトロビマブのIMまたはIV投与のPK、安全性およびPDを評価するための第2b相非盲検、非比較対照、多施設研究である。
【0706】
この研究は、2つのコホート(コホートAおよびコホートB)を含む。コホートAの参加者にはIVソトロビマブを施し、コホートBの参加者にはIM注射によってソトロビマブを施す。コホートAまたはコホートBの参加者を登録するための決定は、両方のコホートが所与の年齢群を同時に登録するときには治験責任医師の裁量による。コホートB開始は、1)コホートAにおける12歳~<18歳の青年からの許容されるPKおよび安全性次第、および2)成人におけるIM投与の有効性を裏付けるCOMET-TAILからのデータ次第となる。曝露と応答の関係は、IM投与後の成人においてソトロビマブについてまだ確証されていない。これは、COMET-TAIL研究からの読み出し後に決定され、コホートBにおけるIM投与および登録の開始を裏付けるために使用されることになる。
【0707】
参加者をコホートAとコホートBの両方の以下の年齢帯に登録する:
・12歳~18歳未満の青年
・6歳~12歳未満の小児
・2歳~6歳未満の小児
・出生から2歳未満
【0708】
概要:
研究の目的は、疾患進行リスクが高い軽度/中等度のCOVID-19に罹患している小児参加者(出生から<18歳)において静脈内(IV)注入または筋肉内(IM)注射によるソトロビマブ投与の薬物動態(PK)、安全性、および薬力学(PD)を評価することである。参加者を2つのコホート(コホートAまたはコホートB)の一方に登録する。コホートAの参加者にはIVソトロビマブを施し、コホートBの参加者にはIM注射によってソトロビマブを施す。
・研究継続期間:36週間
・処置継続期間:ソトロビマブの単一用量を、1日目に、IV注入により投与するかまたは筋肉内投与する。
・受診頻度:参加者を研究施設でスクリーニングする。参加者に研究施設においてスクリーニングと同じ日にまたはスクリーニング後2日以内に投与する。この投与日を1日目と呼ぶ。参加者は、追跡調査のための受診のために、投与後3、5、8、11、14、22および29日目、ならびに12週目および36週目に往診を受けるかまたは研究施設に戻る。COVID-19疾患進行を、1日目から14日目まで毎日、ならびに22日目および29日目にモニターする(モニタリングは、往診または来院が予定されていない日には電話連絡による)。加えて、週1回の電話連絡を、5週目に開始して、予定された来院/往診がない週に行う。両方のコホートの参加者から、ウイルス学および耐性解析のために鼻腔中鼻甲介スワブを採取し、PK、抗薬物抗体(ADA)の評価のためにおよび研究中の安全性評価のために採血する。≧2歳の参加者からも抗ヌクレオカプシドおよび抗スパイクSARS-CoV-2抗体の評価のために採血することになる。
【0709】
参加者数:
コホートAおよびコホートB各々に参加者およそ36名を登録する;したがって、参加者合計およそ72名をこの研究に登録する。以下の参加者数を各コホートの各年齢帯に登録する:
・12歳~18歳未満の青年:参加者およそ6名
・6歳~12歳未満の小児:参加者およそ12名
・2歳~6歳未満の小児:参加者およそ12名
・出生から2歳未満:参加者およそ6名
募集は、以下ようにコホートAで開始する:
・コホートAの2~<18歳の年齢帯を同時に募集する。
・2~18歳未満のコホートA参加者の半数(すなわち、参加者15名)が29日目を完了して安全性データの再調査後にJSRTおよびIDMCによって適切と認められた場合、コホートAの出生から<2歳の年齢帯を募集する。
【0710】
コホートBの募集は、以下のように行う:
・コホートBは、コホートAの12~<18歳の年齢帯の全ての青年(すなわち、参加者6名)からの29日目までのPKデータの再調査後、かつIM投与の有効性が成人において確認された後、適切と認められた場合に募集を開始する。コホートAの12歳~<18歳の年齢帯の参加者全てからの29日目までの安全性データも、コホートBの募集を開始する前にJSRTおよびIDMCによって再調査される。好ましい再調査の後、コホートBの2~<18歳の年齢帯を同時に募集する。
・2歳~<18歳のコホートB参加者の半数(すなわち、参加者15名)が29日目を完了して安全性データの再調査後にJSRTおよびIDMCによって適切と認められた場合、コホートBの出生から<2歳の年齢帯を募集する。
【0711】
コホートAまたはコホートBの参加者を登録するための決定は、両方のコホートが所与の年齢群を同時に登録するときには治験責任医師の裁量による。双方向自動応答技術(IRT)システムを使用することにより、調剤をモニターして、各コホートのおよび各年齢帯の参加者の目標数にIV注入またはIM注射を確実に施す。
【0712】
投与をスクリーニング評価から2日以内に行う。投与は、COVID-19症状の開始から≦7日に行わなければならない。スクリーニングは、投与と同じ日に行うことができる。適格な参加者を1日目にソトロビマブの単回IMまたはIV投与によって処置し、36週間まで追跡調査する。
【0713】
組み入れ基準:
参加者は、以下の基準の全てが当てはまった場合にのみ研究に組み入れられる資格がある。
年齢
1.参加者は、参加者の同意による署名時(年齢が適切である場合)または親/法的に権限を有する代理人によるインフォームドコンセントへの署名時のいずれかに、32週の推定在胎週齢(EGA)、日齢(DOL)0~<18歳(両端を含む)でなければならない。
参加者のタイプおよび疾患特性
2.下記により定義される軽度~中等度のCOVID-19に罹患している参加者:
・有効性が認められた任意のqRT-PCRまたは他の核酸増幅検査(NAAT)によるSARS-CoV-2陽性の検査結果[FDA、2021a];および
・室内空気でSpO2≧94%*;および
・次の症状:発熱、悪寒、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、関節もしくは筋肉痛、嗅覚もしくは味覚の変化、嘔吐、下痢、息切れ、食欲不振もしくは摂食不良、鼻閉/鼻水、嗜眠のうちの1つまたは複数に罹患している;および
・症状の開始から投与日(1日目)まで7日未満または7日。
*注記:一部の参加者は、COVID-19罹患前にベースライン酸素補給または呼吸サポート(CPAP、BiPAP、または人工呼吸器依存)を用いていてもよい。他の者、例えば、不治の先天性心疾患に罹患している参加者は、COVID-19罹患前に室内空気で<94%であるベースラインSPO2を有していてもよい。参加者が、彼/彼女のベースライン酸素補給(室内空気を含む)およびベースライン呼吸サポート(モダリティ、圧力および使用頻度)を用いているときに彼/彼女のベースラインSpO2を維持することができる場合、彼/彼女を研究に組み入れてもよい。
3.以下の基準の少なくとも1つに伴う疾患進行リスクがある参加者:
・年齢<1歳
・真性糖尿病
・遺伝性または代謝性疾患:ポンペ病、ムコ多糖症、糖原病、脂肪酸酸化障害、メープルシロップ尿症、有機酸血症
・肥満(≧2歳の小児についての当該国の成長チャートに基づいて[または入手できない場合、CDCもしくはWHO成長チャートにそれぞれ基づいて]年齢および性別の95パーセンタイル以上のボディーマスインデックス(kg/m2)と定義する)
・心血管疾患:先天性心疾患、高血圧、心筋症、心不全
・鎌状赤血球症
・肺疾患:中等度から重度の喘息、慢性肺疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症
・神経学的疾患:発作性障害、全般的発達遅延、脳性麻痺、または構造的脳欠損/奇形
・免疫抑制:原発性免疫不全(例えば、重症複合免疫不全)、CD4+数<200細胞/mm3であるHIV感染、実質臓器もしくは骨髄移植、全身性コルチコステロイド(≧2週間にわたって摂取される、体重に基づいて≧0.5mg/kg/日、または≧20mg/日のプレドニゾン等価物のどちらか[2つのうちのどちらか低いほうの用量]により定義する)、免疫抑制生物剤(例えば、リツキシマブ)および疾患修飾性抗リウマチ薬(例えば、アザチオプリン、メトトレキサート、レフルノミド)の長期使用
・ベースライン重度心身障害(胃瘻造設または空腸瘻造設依存性、非経口栄養依存、気管切開依存、ベースライン酸素要求、CPAP/BiPAP/人工呼吸器サポートの使用)。
【0714】
体重
4.下述の範囲を有する体重:
・早産新生児および正期産新生児:≧2kg
・2歳~<18歳の小児:
・当該国の成長チャート(または入手できない場合、CDCもしくはWHO成長チャート)に基づいて年齢の5パーセンタイル以上のボディーマスインデックス(BMI)。
【0715】
性交および避妊/バリア要件
5.男性および/または女性(染色体対により指定された彼らの生殖器および機能による)[FDA、2016]
・臨床研究に参加する者には、小児参加者の年齢および性行為から見て適宜、ならびに避妊方法に関する当該国の規制による要求に応じて、女性にのみ避妊およびバリアならびに妊娠検査が要求される。
・女性参加者は、彼女が、授乳中でなく、次のどちらかである場合、参加する資格がある:
○初潮前である、または
○生殖能がある場合、研究治療薬の初回投与の前のスクリーニング時に妊娠検査(当該国の規制による要求に応じて血清または高感度尿検査)陰性により確認して妊娠していない。36週目または早期離脱のための受診時に再び行う。
・尿検査が陰性と確認できない場合(例えば、あいまいな結果)、血清妊娠検査が必要である。そのような場合、血清妊娠結果が陽性であった場合には参加者を参加から除外しなければならない。
・治験責任医師により必要と決定された場合または当該国の規制による要求に応じて、参加者の研究への参加中の任意の時点で妊娠の非存在を確証するために追加の血清または高感度尿妊娠検査を行うことがある。
【0716】
妊娠可能な女性は、失敗率が<1%である非常に有効である避妊法を、研究治療期間中および研究治療薬の最終投与後少なくとも36週間、使用することを誓約する。治験責任医師は、研究治療薬の初回投与と関係付けながら避妊方法の失敗の可能性(例えば、不遵守、最近開始されたもの)を評価する。
【0717】
治験責任医師は、早期の未検出の妊娠がある女性の組み入れリスクを低下させるために、医療歴、月経歴、および現在の性行為について再調査する責任がある。
【0718】
注記:妊娠可能性が研究開始後に変化した(例えば、初潮前の女性参加者が初潮を経験した)場合、または妊娠リスクが変化した(例えば、異性と性的関係を持たない女性参加者が持つようになった)場合、参加者は、このことを治験責任医師と話し合い、治験責任医師は、女性参加者が非常に有効な避妊方法を始めなければならないかどうかを決定する。生殖状態が疑わしい場合、追加の評価を検討するべきである。
【0719】
インフォームドコンセントおよび同意
6.治験責任医師、または治験責任医師により指名された人物は、一切の研究特異的活動を行う前に、適宜、各研究参加者の法定後見人からの書面によるインフォームドコンセントおよび参加者の同意を得る(ただし、インフォームドコンセントの免除が施設内治験審査委員会[IRB]/倫理委員会[EC]により承諾された場合を除く)。全ての法定後見人に十分に説明し、参加者には、彼らが理解することができる言語および用語で、研究について可能な限り十分に説明する。
【0720】
7.署名し、日付を記入した同意書を提供することができる参加者は、文書による同意書に署名し日付を入れ(年齢に達している)、親/後見人は、一切の研究関連活動の開始前に研究参加についての書面によるインフォームドコンセント用紙(ICF)に署名し、日付を記入する。
【0721】
その他
8.法定後見人または主介護者は、研究施設職員が確実に追跡調査を行えるように助けることに対応し;参加者がSoAに従って評価日に出席する(例えば、予定された受診、処置計画、臨床検査、および他の研究手順を遵守することができる)ように支援し;予定された研究のための受診中の評価尺度を使用する参加者に関する情報の提供に一貫しておよび連続して対応し;指示に従って研究治療薬を正確かつ確実に施す。
9-1.法定後見人または主介護者は、一般的健康の項目を含む小児の持ち帰り記録を正確に維持することができる。
1つの代替案では、投与は、表20に記載の体重/年齢帯に基づくことになる。
【0722】
【0723】
静脈内投与用ソトロビマブは、2歳未満の参加者にはシリンジポンプを使用して未希釈のものを投与し、≧2歳の参加者には40mL食塩水で希釈したものを投与する。ソトロビマブのエンドトキシン規格限界が、体重が<1.88kgである乳児の許容可能レベルを超えるため、<2kgの乳児は、この研究から除外する。
【0724】
筋肉内投与用ソトロビマブは、食塩水希釈を一切せずに、背側臀部、腹側臀部もしくは大腿前外側筋(<2歳)、または三角筋に投与する(位置は、参加者/法的に権限を有する代理人[LAR]の好み、および治験責任医師の臨床的判断による)。
【0725】
ソトロビマブのIV注入またはIM注射後、参加者を2時間モニターする。局所注射部位忍容性も、投与後2時間の間、モニターする。研究全体にわたって、JSRTおよびIDMCは、どちらかのコホートに登録した全ての参加者からの安全性データを再調査する。どちらかのコホート(コホートAまたはコホートB)の年齢帯のいずれにおいても、参加者の3分の2に投与した後、JSRTは、その年齢帯の安全性データを再調査し、安全性の懸念がなかった場合、JSRTは、同じコホート内のその同じ年齢帯について1日目の投与後モニタリング観察時間を1時間に短縮するように提言することがある。
【0726】
コホートAおよびコホートBの全ての参加者を、投与後36週間(すなわち、36週目)、外来患者として積極的にモニターする。モニタリングは、36週の期間を通して往診または来院および電話連絡により行う。
【0727】
9-2.代替方法として
投与をスクリーニング評価から2日以内に行うことになる。投与は、COVID-19症状の開始から≦7日に行わなければならない。スクリーニングは、投与と同じ日に行うことができる。適格な参加者を1日目にソトロビマブの単回IMまたはIV投与によって処置し、36週間まで追跡調査することになる。
【0728】
投与は、表21に記載の各年齢帯における体重に基づくことになる。
【0729】
【0730】
静脈内投与用ソトロビマブは、<15kgの参加者にはシリンジポンプを使用して未希釈のものを投与し、≧15kgの参加者には40mL食塩水で希釈したものを投与することになる。ソトロビマブのエンドトキシン規格限界が、体重が<1.88kgである乳児の許容可能レベルを超えるため、<2kgの乳児は、この研究から除外することになる。筋肉内投与用ソトロビマブを背側臀部、大腿前外側筋、または三角筋に投与することができる。IM注射の位置は、参加者/法的に権限を有する代理人[LAR]の好み、および治験責任医師の臨床的判断によることになる。
【0731】
ソトロビマブのIV注入またはIM注射後、参加者を2時間モニターすることになる。局所注射部位忍容性も、投与後2時間の間、モニターすることになる。研究全体にわたって、JSRTおよびIDMCは、どちらかのコホートに登録した全ての参加者からの安全性データを再調査することになる。どちらかのコホート(コホートAまたはコホートB)における参加者の半数に投与した後、JSRTは、安全性データを再調査し、安全性の懸念がなかった場合、JSRTは、同じコホート内の1日目の投与後モニタリング観察時間を1時間に短縮するように提言することがある。
【0732】
コホートAおよびコホートBの全ての参加者を、投与後36週間(すなわち、36週目)、外来患者として積極的にモニターすることになる。モニタリングは、36週の期間を通して往診または来院および電話連絡により行うことになる。
【0733】
【0734】
図11A~11Bおよび
図11C~11Dは、研究中に行われることになる活動のタイムラインを提供する。
図11A~Bおよび関連ガイドラインは、2歳またはそれより高齢の研究参加者に適用される。
【0735】
以下のガイドラインも
図11A~11Bのタイムラインとともに使用する。注記:早期中止(ED)または離脱(EW)の場合、全ての36週目の活動を行うべきである。
1.全てのスクリーニング手順を、投与前2日以内に完了しなければならない。可能な場合、スクリーニングと投与(1日目)を同じ日に行うことができる。二次的接触についての接触情報をスクリーニング時に収集することになり、医療提供者/施設についての情報もスクリーニング時に収集することができる。
2.投与は、症状の開始から≦7日に行うことになる。参加者を、投与後2時間モニターすることになる。共同安全性再調査チーム(JSRT)が1時間のモニタリングに短縮するように提言した場合、参加者を、投与後およそ1時間モニターすることになる。
3.身長、体重、およびボディーマスインデックス(BMI)を含む。スクリーニングと投与を同じ日に行った場合にのみ、全身身体検査を1回行う必要がある。
4.毎日の評価は、来院または往診が予定されていない場合、電話連絡によることになる。
5.その後のCOVID 19病の発生率および重症度について、もしあれば、評価するために、5週目~11週目、および13週目~35週目に週1回、電話連絡する。週1回の評価は、予定された電話連絡の±1日以内に行わなければならない。
6.1日目のバイタルサインを投与前1時間以内に記録する。30分のIV注入にわたって15分ごとにバイタルサインをモニターすることになる。投与のおよそ30分、1時間および2時間後にも(IMまたはIV注入)、バイタルサインをモニターすることになる。投与後モニタリングを、JSRTの提言に従って1時間に短縮した場合、1日目のバイタルサインを投与前1時間以内に記録する。30分のIV注入にわたって15分ごとにバイタルサインをモニターすることになる。投与(IMまたはIV注入)のおよそ30分および1時間後にも、バイタルサインをモニターすることになる。
7.スクリーニング時に、三反復ECGを行うことになる。単回12誘導ECGを、1日目の投与の前、1日目の投与終了から30分以内、および8日目に行うことになる。スクリーニングと投与を同じ日に行った場合、投与の前に三反復ECG 1セットしか必要としない(追加の投与前単回ECGを必要としない)。追加のECGは、臨床上の必要に応じて行うことになる。
8.1日目に、局所注射部位忍容性評価を、投与のおよそ1時間および2時間後に行うことになる。JSRTがモニタリング時間の短縮を提言した場合、1日目の評価は、投与の1時間後となる。全ての注射部位反応を主任治験責任医師(PI)は解消まで追跡する必要がある。
9.1日目に、試料採取を投与前に行うことになる。スクリーニングと投与を同じ日に行った場合にのみ、スクリーニング/1日目血液学、凝固、化学および尿検査を1回行う必要がある。IM投与については、投与の前に血液学の結果および凝固検査結果を受け取って再調査しなければならない。
10.妊娠可能な女性:当該国のガイドラインによる要求に応じて、血清または高感度尿妊娠検査。
11.研究への登録前≦7日に採取した任意の呼吸器検体から任意の有効性が認められたqRT-PCRまたは他の核酸増幅検査(NAAT)によって検査で確認されたSARS-CoV-2感染の証拠書類を、スクリーニング時に確認しなければならない。入手可能でない場合、または以前のqRT-PCR検査が陰性であった場合、SARS-CoV-2 qRT-PCRまたは他のNAATを、適格性を確認するためにスクリーニング時に行わなければならない。
12.1日目の試料もSARS-CoV-2特徴付け(例えば、バリアントの同定)のために評価することになる。
13.1日目に、コホートA参加者は、注入終了時に採取した単一PK試料を有することになる。コホートB参加者は、1日目に採取したいずれのPK試料も有さないことになる。
14.1日目の試料採取は、投与前のみである。
15.MIS-Cを含むAEを、36週目(EOS)まで、実施施設受診または電話連絡中に収集することになる。
16.全てのSAEは、用量を投与したときから収集し、研究参加またはGSK製品に関係すると考えられるSAEだけは、インフォームドコンセントに署名したときから収集することになる。SAEは、全ての実施施設受診または電話連絡中に収集することになる。注記:全てのSAEを24時間以内に報告しなければならない。
【0736】
以下のガイドラインも
図11C~11Dのタイムラインとともに使用する。
図11C~11Dおよび関連ガイドラインは、2歳未満の研究参加者に適用される。注記:早期中止(ED)または離脱(EW)の場合、全ての36週目の活動を行うべきである。
1.全てのスクリーニング手順を、投与前2日以内に完了しなければならない。可能な場合、スクリーニングと投与(1日目)を同じ日に行うことができる。二次的接触についての接触情報をスクリーニング時に収集することになり、医療提供者/施設についての情報もスクリーニング時に収集することができる。
2.投与は、症状の開始から≦7日に行うことになる。参加者を、投与後2時間モニターすることになる。共同安全性再調査チーム(JSRT)が1時間のモニタリングに短縮するように提言した場合、参加者を、投与後およそ1時間モニターすることになる。
3.身長、体重、およびボディーマスインデックス(BMI)を含む。スクリーニングと投与を同じ日に行った場合にのみ、全身身体検査を1回行う必要がある。
4.毎日の評価は、来院または往診が予定されていない場合、電話連絡によることになる。
5.その後のCOVID 19病の発生率および重症度について、もしあれば、評価するために、5週目~11週目、および13週目~35週目に週1回、電話連絡する。週1回の評価は、予定された電話連絡の±1日以内に行わなければならない。
6.1日目のバイタルサインを投与前1時間以内に記録する。30分のIV注入にわたって15分ごとにバイタルサインをモニターすることになる。投与のおよそ30分、1時間および2時間後にも(IMまたはIV注入)、バイタルサインをモニターすることになる。投与後モニタリングを、JSRTの提言に従って1時間に短縮した場合、1日目のバイタルサインを投与前1時間以内に記録する。30分のIV注入にわたって15分ごとにバイタルサインをモニターすることになる。投与(IMまたはIV注入)のおよそ30分および1時間後にも、バイタルサインをモニターすることになる。
7.スクリーニング時に、三反復ECGを行うことになる。単回12誘導ECGを、1日目の投与の前、1日目の投与終了から30分以内、および8日目に行うことになる。スクリーニングと投与を同じ日に行った場合、投与の前に三反復ECG 1セットしか必要としない(追加の投与前単回ECGを必要としない)。追加のECGは、臨床上の必要に応じて行うことになる。
8.1日目に、局所注射部位忍容性評価を、投与のおよそ1時間および2時間後に行うことになる。JSRTがモニタリング時間の短縮を提言した場合、1日目の評価は、投与の1時間後となる。全ての注射部位反応を主任治験責任医師(PI)は解消まで追跡する必要がある。
9.1日目に、試料採取を投与前に行うことになる。スクリーニングと投与を同じ日に行った場合にのみ、スクリーニング/1日目血液学、凝固、化学および尿検査を1回行う必要がある。IM投与については、投与の前に血液学の結果および凝固検査結果を受け取って再調査しなければならない。
10.研究への登録前≦7日に採取した任意の呼吸器検体から任意の有効性が認められたqRT-PCRまたは他の核酸増幅検査(NAAT)によって検査で確認されたSARS-CoV-2感染の証拠書類を、スクリーニング時に確認しなければならない。入手可能でない場合、または以前のqRT-PCR検査が陰性であった場合、SARS-CoV-2 qRT-PCRまたは他のNAATを、適格性を確認するためにスクリーニング時に行わなければならない。
11.1日目の試料もSARS-CoV-2特徴付け(例えば、バリアントの同定)のために評価することになる。
12.1日目に、コホートA参加者は、注入終了時に採取した単一PK試料を有することになる。コホートB参加者は、1日目に採取したいずれのPK試料も有さないことになる。
13.1日目の試料採取は、投与前のみである。
14.MIS-Cを含むAE(セクション10.3)を、36週目(EOS)まで、実施施設受診または電話連絡中に収集することになる。
15.全てのSAEは、用量を投与したときから収集し、研究参加またはGSK製品に関係すると考えられるSAEだけは、インフォームドコンセントに署名したときから収集することになる。SAEは、全ての実施施設受診および電話連絡中に収集することになる。注記:全てのSAEを24時間以内に報告しなければならない。
【0737】
(実施例53)
COVID-19の処置のための小児治験計画
3つの研究を小児被験体に関して行う。
【0738】
研究1
非盲検、非比較対照、多施設研究を、進行リスクが高い軽度から中等度のCOVID-19に罹患している小児参加者におけるソトロビマブの単回静脈内または筋肉内投与後の薬物動態(PK)、薬力学(ウイルス負荷量)および安全性を記載するために行った。
【0739】
研究デザイン特徴および主目的:
1.血清中のソトロビマブのPKを評価すること
2.ソトロビマブの安全性および忍容性を評価すること
【0740】
研究対象集団およびサブセット:
進行リスクが高い軽度から中等度のCOVID-19に罹患している出生から18歳未満の男性および女性乳児、小児および青年(在胎週齢少なくとも32週で生まれた未熟児を含む)
【0741】
小児サブセット(例えば、年齢、性別、重症度、またはステージ)ごとの研究参加者数:
小児参加者少なくとも38名、これらの参加者は、主要解析のために評価可能であり、以下の年齢群に分けられる:
・12歳~18歳未満の青年:少なくとも6名
・6歳~12歳未満の小児:少なくとも12名
・2歳~6歳未満の小児:少なくとも12名
・出生から2歳未満の乳児および幼児(在胎週齢少なくとも32週で生まれた未熟児を含む):少なくとも8名
募集は、降順年齢群に基づき、6歳~18歳未満の年齢範囲を最初に募集する。
【0742】
参加者の研究継続期間:
・処置継続期間:1日目に単一用量ソトロビマブ
・追跡調査継続期間(この研究の完了部分):少なくとも24週間、計画する
投薬量、処置レジメンおよび投与経路:
単一用量ソトロビマブ、静脈内使用(IV)または筋肉内(IM)使用。全年齢群にわたって、参加者最低10名にIV投与によって投与し、参加者最低10名にIM注射によって投与する。残りの参加者には、治験責任医師の裁量によりIVまたはIM投与によって投与する。
【0743】
投与は相対成長の原理に基づくものであり、体重帯ごとに、および(必要に応じて)体重帯ごとに、成人AUC(0~28d)と比較して予測小児曝露の差が最小となる用量が好ましい。
【0744】
IM投与は、IV投与に多くの場合必要とされるような専用の注入センターの必要なく、mAb処置のより多くの利用を可能にし得る。
100mg~500mgの間の用量:
・>40kgの体重を有する12~18歳の青年:500mgの固定用量
・10kg~40kgの間の体重を有する1歳~12歳未満の小児:200mg~250mgの間の固定用量
・<10kgの体重を有する1歳未満の小児:100mgの固定用量
または
【0745】
100mg~350mgの間の用量:
・12~18歳の青年:350mgの固定用量
・6~12歳の小児:225mgの固定用量
・2~6歳の小児:150mgの固定用量
・2歳未満の小児:100mgの固定用量
【0746】
主要エンドポイントと評価の時点:
薬物動態:
・クリアランス(CL)、分布容積(Vdss)、Cmax、C(28d)、AUC(0~28d)、AUC(0~inf)。少なくとも5つの試料を0~84日の間の異なる時点で採取する。
【0747】
安全性:
・処置中に発生した有害事象(TEAS)
・重篤AE
・MIS-Cの発生率をAE/SAEとして評価することになる
・注入に伴う反応
・抗薬物抗体(ADA)および抗体依存性感染増強(ADE)
【0748】
主な副次的エンドポイントと評価時:
任意のタイプの医療機関の受診、または既に医療を受けている者についてはより高い医療レベルへの上昇の必要性によって定義される、COVID-19の進行が29日目までにあった参加者の割合。酸素補給の必要により明らかになるような重度および/または重篤な呼吸器COVID-19の29日目までの発生。ベースラインで酸素または呼吸サポートを必要とする参加者については、疾患進行を、必要とされる酸素補給のレベルまたは方法の任意の持続的(>24時間)増加と定義する。
【0749】
気道試料における定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)により測定されるウイルス負荷量のベースラインから7日目への変化
【0750】
予備的エンドポイント:
小児の多系統炎症性症候群(MIS-C)の発生率をAE/SAEとして評価することになる。
【0751】
研究の実施および解析を含む、統計的計画:
PK:記述統計、成人と比較した体重調整クリアランスおよび分布容積の推定、AUC(028d)の推定、成人とのC(28d)の比較。
安全性:主要安全性エンドポイントの解析を安全性集団(ソトロビマブを施した全ての参加者)において評価し、全ての年齢コホートについての研究中の安全性データを注視する。PK試料を用いて、安全性データを記述的に要約し、選ばれた安全性エンドポイントについてベースラインからの変化を判定する。
29日目までにCOVID-19が進行した参加者の割合:記述統計
ウイルス学:記述統計
組み入れ基準:
1.検査で確認されたSARS-CoV-2感染(PCRまたは他の核酸検査により)
2.COVID-19で入院した、COVID-19のための医療を必要とする小児
3.以下の基準の少なくとも1つに伴う疾患進行リスクがある軽度から中等度のCOVID-19に罹患している小児:
・日常の投薬を必要とする喘息、または慢性肺疾患
・糖尿病
・遺伝的、神経学的または代謝の状態
・鎌状赤血球症
・先天性心疾患
・免疫抑制(ある特定の医学的状態に起因して弱体化した免疫系、または免疫系を弱める投薬を受けている)
・重度心身障害(例えば、気管切開、人工呼吸器サポート、または胃瘻管)
・肥満(研究1では、当該国の成長チャートに基づき年齢および性別のパーセンタイル以上のボディーマスインデックス(kg/m2)と定義した)
【0752】
研究2
在胎週齢32週(出生時)~18歳未満についての小児患者における投与予測および構造のための母集団PK(PopPK)モデル。用量を設定するために使用する。
【0753】
モデルタイプ:最小の、生理学に基づくPKモデル
モデルを作るために使用することになるデータ:
成人データ:単回投与ソトロビマブ500mg IVからの密および疎PKデータ
出生から18歳未満の全ての参加者からの小児データ
29日目に決定される主要有効性エンドポイントを踏まえて血漿ソトロビマブC(28d)およびAUC(0~28d)として定義される標的効果的曝露の定義および同定にデータを使用する。
【0754】
標的係合を確認し、曝露-応答を評価するために、ウイルス負荷レベルに関する追加のデータも使用する。
【0755】
モデル方法論およびソフトウェア:適切なソフトウェアを使用する母集団PK解析。
【0756】
共変量:年齢;体重;体表面積、性別および人種をはじめとする追加の共変量を試験してもよい。
モデル適格性:パラメーター不確実性の伝播を用いるブートストラップ再推定法を使用する視覚的事後予測性能評価を含む、標準的モデル適合度評価
【0757】
研究3
在胎週齢32週(出生時)~18歳未満の小児における軽度、中等度COVID-19疾患の処置のためのソトロビマブの使用を裏付けるための安全性およびウイルス学データのPKブリッジングおよび外挿。
【0758】
研究目的:
以下のことを正当とする根拠を提供すること:
・基礎疾患過程およびソトロビマブへの曝露-応答の成人および小児参加者における類似性に基づく外挿/PLブリッジングによる小児投与
・全小児年齢群にわたっての累積成人安全性および免疫原性データの外挿
・成人データに基づく全小児年齢群におけるウイルス学的効果仮定の外挿
標的母集団:在胎週齢32週(出生時)~18歳未満の小児。
【0759】
方法論:
ウイルス負荷量低下によって測定される(成人集団におけるウイルス負荷量低下と臨床的有効性の間に明らかな相関関係があるかどうかに基づく)標的係合の確認とともに、年齢/体重帯ごとの比較C(d28)およびAUC(0~28d)曝露の確認に基づいて、処置の有効性が全小児年齢群にわたって同様である可能性が高いという仮説を裏付けるデータを提示すること。乏しい試料抽出(log10変換)ウイルス負荷量データを、ベイズ動的借用法を使用して成人参照データと比較することになる。
【0760】
安全性を裏付けるために記述統計を使用して成人および全年齢群にわたる小児からの安全性および免疫原性データの要約を提示すること。
【0761】
研究対象集団およびサブセットの定義(層別化を含む):
成人:疾患進行リスクが高い軽度の早期COVID-19疾患(症状が出てから5日未満)に罹患している患者、および軽度から中等度のCOVID-19に罹患している患者
小児:出生から18歳未満の患者
小児サブセット(例えば、年齢、性別、層)ごとの研究参加者数:研究1の場合と同じ。
【0762】
外挿:モデルを作るために使用することになるデータ:成人:研究COMET-ICE(214367)およびCOMET-PEAK(216912)からの単回投与ソトロビマブ500mg IVおよびIMからの密および疎PKデータ。
【0763】
薬物動態解析のための共変量:体重と肥満の両方についての調整を可能にするソトロビマブ曝露の共変量としての年齢、体重およびボディーマスインデックス(BMI)。
【0764】
上記の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を得ることができる。本明細書で参照するおよび/または出願データシートに収載する米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許公表文献の全ては、2021年9月1日に出願された米国特許出願第63/239,888号、および2021年12月7日に出願された米国特許出願第63/286,966号を含めて、それら全体が、参照により本明細書に組み込まれる。様々な特許、出願および公表文献の概念を利用するために必要に応じて実施形態の態様を変更して、またさらなる実施形態を得ることができる。
【0765】
上記の詳細な説明に照らして、これらおよび他の変更を実施形態に加えることができる。一般に、下記の特許請求の範囲において使用する用語は、本特許請求の範囲を、本明細書および本特許請求の範囲で開示する特定の実施形態に限定するように解釈すべきでなく、当該特許請求の範囲に権利がある均等物の全範囲とともに全ての可能な実施形態を含むように解釈すべきである。したがって、本特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
【0766】
以下の参考文献は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0767】
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