(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ラテックス重合用組成物、ディップ成形用ラテックス及びそれから製造されたディップ成形品
(51)【国際特許分類】
C08F 236/12 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
C08F236/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513954
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 KR2022013397
(87)【国際公開番号】W WO2023043115
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122925
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516298504
【氏名又は名称】コリア クンホ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Korea Kumho Petrochemical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】100,Cheonggyecheon-ro,Jung-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ヅソン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,クン-ホ
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AJ02R
4J100AM02Q
4J100AS03P
4J100DA09
4J100DA48
4J100DA49
4J100DA50
4J100DA55
4J100DA56
4J100EA07
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA20
4J100JA51
4J100JA57
4J100JA60
(57)【要約】
共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー、エチレン性不飽和酸モノマー、及びイオン性化合物を含み、イオン伝導度が275μs/cm以上である、ラテックス重合用組成物、それから重合されたディップ成形用ラテックスとそれを用いたディップ成形品が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系モノマー、
エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
エチレン性不飽和酸モノマー、及び
イオン性化合物を含み、
イオン伝導度が275μs/cm以上である、ラテックス重合用組成物。
【請求項2】
前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン及びオクタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載のラテックス重合用組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和ニトリルモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル及びα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載のラテックス重合用組成物。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和酸モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピルからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載のラテックス重合用組成物。
【請求項5】
前記イオン性化合物は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、重亜硫酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、エチレンジアミン四酢酸またはそのナトリウム塩、エチレングリコール四酢酸またはそのナトリウム塩、ニトリロ三酢酸またはそのナトリウム塩、イミノ二酢酸またはそのナトリウム塩及びキノリン酸またはそのナトリウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載のラテックス重合用組成物。
【請求項6】
前記組成物は、共役ジエン系モノマー30~90重量部、エチレン性不飽和ニトリルモノマー1~55重量部、エチレン性不飽和酸モノマー0.001~20重量部を含む、請求項1に記載のラテックス重合用組成物。
【請求項7】
水、乳化剤、重合開始剤及び分子量調節剤をさらに含む、請求項1に記載のラテックス重合用組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のラテックス重合用組成物由来のコポリマーを含むディップ成形用ラテックスであって、
前記コポリマーの平均粒径が1,000~3,000Åである、ディップ成形用ラテックス。
【請求項9】
前記ラテックスの25℃粘度が50~2,500cpsである、請求項8に記載のディップ成形用ラテックス。
【請求項10】
前記ラテックスの固形分含量が50~65重量%である、請求項8に記載のディップ成形用ラテックス。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックスから製造された、ディップ成形品。
【請求項12】
前記ディップ成形品は、手術用手袋、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋、コンドーム、化粧用素材、カテーテルまたは健康管理用成形品である、請求項11に記載のディップ成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ラテックス重合用組成物、それを重合したディップ成形用ラテックス及びそれから製造されたディップ成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用、食品用、検査用、実験用として使用される手袋やコンドームなどのディップ成形品は、天然ゴムラテックス(natural rubber latex)を主原料として製造された。しかし、このような天然ゴムラテックス成形品は、内部にタンパク質を含んでユーザーに接触性アレルギー反応を引き起こし、発疹、かゆみ、風邪などを誘発するという問題があった。その結果、タンパク質を全く含まない合成ゴムラテックスを主原料として製造されたディップ成形品の使用量が増加する傾向にある。
【0003】
ディップ成形用ラテックスの使用量の増加に伴い品質向上の必要性があり、近年、ディップ成形用ラテックスから製造されたディップ成形品の引張強度、伸び率などの耐久性を改善しようとする試みが行われている。しかし、このような機械的物性の改善の試みにもかかわらず、ディップ成形品の破損により人命事故が発生するか、または所望の目的を達成できない事例が引き続き現れている。
【0004】
これは成形品の実使用時、弱酸性である人体の皮膚や汗などの体液と接触して物性が劣化するためであり、従来の機械的物性である引張強度と伸び率は常温の空気下で測定され、これらの特性に優れた場合、ディップ成形品の使用前の耐久性は担保できるが、実使用条件での耐久性が不良である場合が発生した。したがって、実使用条件での耐久性に優れたディップ成形品の製造のための技術開発が求められているのが実状である。
【0005】
これにより、少量でも優れた品質を有する高固形分のディップ成形用ラテックスに対する需要も増加している。しかし、従来のディップ成形用ラテックスは、濃縮などで固形分含量を増加させる場合、粒子安定性の低下により、一定含量以上で粘度が急激に上昇するという問題がある。
【0006】
また、ディップ成形用ラテックスは、一般的に800Å前後の平均粒径を有する粒子状重合体を含む。これを濃縮させるか、または化学的処理などで肥大化させて品質に優れた大粒径の重合体粒子を含むラテックスの製造技術が提案されたが、その過程でラテックスの安定性が急激に低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書の記載事項は、安定性に優れており、大粒径、高固形分及び低粘度特性を有するディップ成形用ラテックスを製造するための重合用組成物を提供し、前記ディップ成形用ラテックスを用いて品質に優れたディップ成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様によれば、共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー、エチレン性不飽和酸モノマー、及びイオン性化合物を含み、イオン伝導度が275μs/cm以上である、ラテックス重合用組成物が提供される。
【0009】
一実施例において、前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン及びオクタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0010】
一実施例において、前記エチレン性不飽和ニトリルモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル及びα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0011】
一実施例において、前記エチレン性不飽和酸モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピルからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0012】
一実施例において、前記イオン性化合物は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、重亜硫酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、エチレンジアミン四酢酸またはそのナトリウム塩、エチレングリコール四酢酸またはそのナトリウム塩、ニトリロ三酢酸またはそのナトリウム塩、イミノ二酢酸またはそのナトリウム塩及びキノリン酸またはそのナトリウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0013】
一実施例において、前記組成物は、共役ジエン系モノマー30~90重量部、エチレン性不飽和ニトリルモノマー1~55重量部、エチレン性不飽和酸モノマー0.001~20重量部を含んでもよい。
【0014】
一実施例において、水、乳化剤、重合開始剤及び分子量調節剤をさらに含んでもよい。
【0015】
他の一態様によれば、前述したラテックス重合用組成物由来のコポリマーを含むディップ成形用ラテックスとして、前記コポリマーの平均粒径が1,000~3,000Åである、ディップ成形用ラテックスが提供される。
【0016】
一実施例において、前記ラテックスの25℃粘度は、50~2,500cpsであってもよい。
【0017】
一実施例において、前記ラテックスの固形分含量は、50~65重量%であってもよい。
【0018】
他の一態様によれば、前述したディップ成形用ラテックスから製造されたディップ成形品が提供される。
【0019】
一実施例において、前記ディップ成形品は、手術用手袋、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋、コンドーム、化粧用素材、カテーテルまたは健康管理用成形品であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
一態様によれば、ラテックスの重合時、ポリマーの安定性が著しく改善され、トレードオフの関係である高固形分、大粒径及び低粘度を同時に満たすことができる。
【0021】
本明細書の一態様の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本明細書の詳細な説明や請求範囲に記載された構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解されなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、具体的な例示に基づいて本明細書の一態様を説明する。しかし、本明細書の記載事項は、様々な異なる形態で具現されてもよく、したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0023】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとするとき、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を介して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに備えることができることを意味する。
【0024】
本明細書において数値の範囲が記載されたとき、その具体的な範囲が特に記述されない限り、その値は有効数字に対する化学における標準規則に従って提供される有効数字の精度を有する。例えば、10は5.0~14.9の範囲を含み、数字10.0は、9.50~10.49の範囲を含む。
【0025】
ラテックス重合用組成物
一態様によるラテックス重合用組成物は、共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー、エチレン性不飽和酸モノマー、及びイオン性化合物を含み、イオン伝導度が275μs/cm以上であってもよい。
【0026】
前記ラテックス重合用組成物は、所望のイオン伝導度を達成するためにイオン性化合物の含量を調節したものであってもよい。例えば、前記組成物のイオン伝導度は、275μs/cm以上、例えば、275μs/cm、277.5μs/cm、280μs/cm、282.5μs/cm、285μs/cm、287.5μs/cm、290μs/cm、292.5μs/cm、295μs/cm、297.5μs/cm、300μs/cm、302.5μs/cm、305μs/cm、307.5μs/cm、310μs/cm、312.5μs/cm、315μs/cm、317.5μs/cm、320μs/cm、322.5μs/cm、325μs/cm、327.5μs/cm、330μs/cm、332.5μs/cm、335μs/cm、337.5μs/cm、340μs/cm、342.5μs/cm、345μs/cm、347.5μs/cm、350μs/cm、352.5μs/cm、355μs/cm、357.5μs/cm、360μs/cm、362.5μs/cm、365μs/cm、367.5μs/cm、370μs/cm、372.5μs/cm、375μs/cm、377.5μs/cm、380μs/cm、382.5μs/cm、385μs/cm、387.5μs/cm、390μs/cm、392.5μs/cm、395μs/cm、397.5μs/cm、400μs/cm、これらのうち2つの値の間の範囲、またはこれらのうち1つの値以上であってもよい。前記ラテックス重合用組成物のイオン伝導度が前記範囲未満であれば、重合されたラテックスの安定性が低下し、特に固形分を半分以上濃縮した時に粘度が急激に上昇するという問題が発生することがある。
【0027】
また、前記組成物のイオン伝導度は、10ms/cm以下、5ms/cm以下または1ms/cm以下であってもよいが、これに制限されるものではない。前記組成物のイオン伝導度が高すぎる場合は、重合に不要な成分が増加し、ラテックスの安定性が低下することがある。
【0028】
共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマー由来のコポリマーを含むラテックスの重合時のイオン伝導度を調節してラテックスの安定性を改善しうる。これを用いて50重量%以上の高い固形分含量でも低い粘度を維持しうる。また、安定性を維持し、1,000Å以上の大粒径コポリマーを形成しうる。
【0029】
前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン及びオクタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。ディップ成形用ラテックスのコポリマーにおいて前記共役ジエン系モノマー由来の構造は、ディップ成形品に柔軟性を付与しうる。
【0030】
前記エチレン性不飽和ニトリルモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル及びα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。ディップ成形用ラテックスのコポリマーにおいて前記エチレン性不飽和ニトリルモノマー由来の構造は、ディップ成形品の強度と耐薬品性を改善しうる。
【0031】
前記エチレン性不飽和酸モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピルからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。ディップ成形用ラテックスのコポリマーにおいて、前記エチレン性不飽和酸モノマーに由来する構造は、架橋構造を形成し、ディップ成形品の機械的物性を改善しうる。
【0032】
前記イオン性化合物は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸カリウム(K2SO4)、硫酸カルシウム(CaSO4)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)、重亜硫酸カリウム(KHSO4)、ピロリン酸ナトリウム(Na4P2O7)、ピロリン酸カリウム(K4P2O7)、リン酸三ナトリウム(Na3PO4)、リン酸三カリウム(K3PO4)、リン酸一水素ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸一水素カリウム(K2HPO4)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはそのナトリウム塩、エチレングリコール四酢酸(EGTA)またはそのナトリウム塩、ニトリロ三酢酸(NTA)またはそのナトリウム塩、イミノ二酢酸(IDA)またはそのナトリウム塩及びキノリン酸(QNA)またはそのナトリウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一つであってもよい。前記イオン性化合物は、ディップ成形用ラテックスのコポリマー重合時に反応が進行中のコポリマーの安定性を改善し、重合後でもラテックスの凝集を抑制しうる。
【0033】
前記組成物は、共役ジエン系モノマー30~90重量部、エチレン性不飽和ニトリルモノマー1~55重量部、エチレン性不飽和酸モノマー0.001~20重量部を含んでもよい。
【0034】
例えば、前記組成物の共役ジエン系モノマー含量は、30重量部、32.5重量部、35重量部、37.5重量部、40重量部、42.5重量部、45重量部、47.5重量部、50重量部、52.5重量部、55重量部、57.5重量部、60重量部、62.5重量部、65重量部、67.5重量部、70重量部、72.5重量部、75重量部、77.5重量部、80重量部、82.5重量部、85重量部、87.5重量部、90重量部、またはこれらのうち2つの値の間の範囲であってもよい。前記共役ジエン系モノマー含量が30重量部未満であれば、ディップ成形品が過度に硬化して着用感が不良であり、90重量部超過であれば、ディップ成形品の耐久性または耐化学性が低下することがある。
【0035】
前記組成物のエチレン性不飽和ニトリルモノマー含量は、1重量部、2.5重量部、5重量部、7.5重量部、10重量部、12.5重量部、15重量部、17.5重量部、20重量部、22.5重量部、25重量部、27.5重量部、30重量部、32.5重量部、35重量部、37.5重量部、40重量部、42.5重量部、45重量部、47.5重量部、50重量部、52.5重量部、55重量部またはこれらのうち2つの値の間の範囲であってもよい。前記エチレン性不飽和ニトリルモノマーが1重量部未満であれば、ディップ成形品の耐薬品性または機械的強度が低下することがあり、55重量部超過であればディップ成形品の伸び率が低下し、使用性が低下することがある。
【0036】
前記組成物のエチレン性不飽和酸モノマー含量は、0.001重量部、0.5重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部、5重量部、5.5重量部、6重量部、6.5重量部、7重量部、7.5重量部、8重量部、8.5重量部、9重量部、9.5重量部、10重量部、10.5重量部、11重量部、11.5重量部、12重量部、12.5重量部、13重量部、13.5重量部、14重量部、14.5重量部、15重量部、15.5重量部、16重量部、16.5重量部、17重量部、17.5重量部、18重量部、18.5重量部、19重量部、19.5重量部、20重量部またはこれらのうち2つの値の間の範囲であってもよい。前記エチレン性不飽和酸モノマーが0.001重量部未満であれば、ディップ成形品の引張強度が低下することがあり、20重量部超過であれば、ディップ成形品が過度に硬化して着用感が悪くなることがある。
【0037】
本明細書において「モノマー総和」とは、前記共役ジエン系モノマー、前記エチレン性不飽和ニトリルモノマー及び前記エチレン性不飽和酸モノマーを合わせたものを意味するが、前記ラテックス重合用組成物は、耐久性試験の結果が前記範囲から逸脱しない限度において、前述した共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマー以外の重合性モノマーをさらに含んでもよく、このとき、「モノマー総和」は、前記重合性モノマーをさらに含む。
【0038】
非制限的な一例において、前記組成物に含まれるモノマーは、前述した共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーからなるものであってもよい。前記3種のモノマーを共重合時に前述したイオン性化合物を通じてイオン伝導度を制御することにより、ラテックスの安定性を改善し、平均粒径を増大させることができるが、別々のモノマーを追加する場合、このような作用効果の具現が困難な場合がある。
【0039】
前記イオン性化合物の含量は、モノマー組成比、イオン性化合物の種類によって変わり得る。前記イオン性化合物の含量は、前述したイオン伝導度を満たす条件下で、モノマー合計100重量部を基準として0.1~5重量部、例えば、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部、5重量部、またはこれらのうち2つの値の間の範囲であってもよい。前記範囲から外れる場合、イオン伝導度の条件を満たすことが困難であるか、またはイオン伝導度を満たしても安定性改善効果が具現されない場合がある。
【0040】
前記ラテックス重合用組成物は、水、乳化剤、重合開始剤及び分子量調節剤をさらに含んでもよい。
【0041】
前記水は、前記モノマー合計100重量部を基準として75~150重量部、例えば、75重量部、77.5重量部、80重量部、82.5重量部、85重量部、87.5重量部、90重量部、92.5重量部、95重量部、97.5重量部、100重量部、102.5重量部、105重量部、107.5重量部、110重量部、112.5重量部、115重量部、117.5重量部、120重量部、122.5重量部、125重量部、127.5重量部、130重量部、132.5重量部、135重量部、137.5重量部、140重量部、142.5重量部、145重量部、147.5重量部、150重量部またはこれらのうち2つの値の間の範囲であってもよい。前記水の含量が75重量部未満であれば、重合時の粘度が過度に上昇して成形品の製造が困難な場合があり、150重量部超過であれば、固形分含量が過度に低くなることがある。前記水は、イオン伝導度が5μs/cm以下、2.5μs/cm以下、または1μs/cm以下であってもよい。例えば、前記水は、イオン交換水、超純水または精製水であってもよい。イオン伝導度の高い水を使用すると、重合安定性ないしラテックスの安定性に悪影響を及ぼす不純物が含まれ得る。
【0042】
前記乳化剤は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤または両性界面活性剤であってもよい。例えば、アニオン性界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩及びアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1つを使用してもよいが、これに限定されるものではない。前記乳化剤は、前記モノマー合計100重量部を基準として0.8~8重量部が使用されてもよい。前記乳化剤の含量によって前述したイオン伝導度を達成するためにイオン性化合物の含量が変わり得る。
【0043】
前記重合開始剤は、ラジカル開始剤であってもよい。前記ラジカル開始剤は、例えば、
過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、及び過酸化水素からなる群から選ばれる無機過酸化物、t-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、及びt-ブチルパーオキシイソブチレートからなる群から選ばれる有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル及びアゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチルからなる群から選ばれるアゾ系開始剤のうちの少なくとも1つであってもよいが、これに限定されるものではない。前記重合開始剤は、前記モノマー合計100重量部を基準として0.01~1.5重量部が使用されてもよい。
【0044】
前記分子量調節剤としては、α-メチルスチレンダイマー(dimer)、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物であってもよいが、これに限定されるものではない。前記分子量調節剤の含量は、前記コポリマーラテックスのモノマー合計100重量部を基準として0.1~1重量部であってもよい。例えば、前記分子量調節剤は、0.1重量部、0.15重量部、0.2重量部、0.25重量部、0.3重量部、0.35重量部、0.4重量部、0.45重量部、0.5重量部、0.55重量部、0.6重量部、0.65重量部、0.7重量部、0.75重量部、0.8重量部、0.85重量部、0.9重量部、0.95重量部、1重量部またはこれらのうち2つの値の間の範囲であってもよい。前記分子量調節剤が0.1重量部未満であれば、ゲルが生成されてラテックス安定性が低下することがあり、1重量部超過であれば、引張強度が不良であるか、または応力維持率が低下すること以外にも実使用耐久性が低下することがある。
【0045】
ディップ成形用ラテックス
他の一態様によるディップ成形用ラテックスは、前述したラテックス重合用組成物由来のコポリマーを含むディップ成形用ラテックスであって、前記コポリマーの平均粒径が1,000~3,000Å、例えば、1,000Å、1,050Å、1,100Å、1,150Å、1,200Å、1,250Å、1,300Å、1,350Å、1,400Å、1,450Å、1,500Å、1,550Å、1,600Å、1,650Å、1,700Å、1,750Å、1,800Å、1,850Å、1,900Å、1,950Å、2,000Å、2,050Å、2,100Å、2,150Å、2,200Å、2,250Å、2,300Å、2,350Å、2,400Å、2,450Å、2,500Å、2,550Å、2,600Å、2,650Å、2,700Å、2,750Å、2,800Å、2,850Å、2,900Å、2,950Å、3,000Åまたはこれらのうち2つの値の間の範囲であってもよい。前記ディップ成形用ラテックスは、イオン伝導度を制御して重合することにより、安定性の低下を最小限に抑え、コポリマーの粒径を肥大化させることができる。また、前記ラテックスは、オリゴマー含量が少なく、より安定性に優れている。
【0046】
前記ディップ成形用ラテックスは、ゼータ電位のサイズ(絶対値)が60mV以上、62.5mV以上、65mV以上、67.5mV以上または70mV以上であってもよい。このような条件を満たすラテックスは、安定性に優れており、50重量%以上の高い固形分で濃縮時にも粘度の上昇を抑制しうる。
【0047】
前記ディップ成形用ラテックスの25℃粘度は、50~2,500cps、例えば、50cps、75cps、100cps、125cps、150cps、175cps、200cps、225cps、250cps、275cps、300cps、325cps、350cps、375cps、400cps、425cps、450cps、475cps、500cps、525cps、550cps、575cps、600cps、625cps、650cps、675cps、700cps、725cps、750cps、775cps、800cps、825cps、850cps、875cps、900cps、925cps、950cps、975cps、1,000cps、1,100cps、1,200cps、1,300cps、1,400cps、1,500cps、1,600cps、1,700cps、1,800cps、1,900cps、2,000cps、2,100cps、2,200cps、2,300cps、2,400cps、2,500cpsまたはこれらのうち2つの値の間の範囲であってもよい。粘度が前記範囲を外れる場合、ラテックスは実質的に製造が不可能であるか、またはディップ成形が困難な場合がある。
【0048】
前記ディップ成形用ラテックスの固形分含量が50~65重量%、例えば、50重量%、52.5重量%、55重量%、57.5重量%、60重量%、62.5重量%、65重量%またはこれらのうち2つの値の間の範囲であってもよい。固形分含量が前記範囲を外れる場合、前述した安定性の改善による効果が不要であるか、またはラテックスの凝集が発生することがある。
【0049】
前記ディップ成形用ラテックスの特徴は、pH8.0~10.0、例えば、pH8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0で測定されたものであってもよい。添加剤を通じてラテックスのpHの調節時、固形分含量と平均粒径が変化することがあるが、前記ディップ成形用ラテックスは、前記pH範囲で前述した平均粒径、固形分含量及び粘度の要件を同時に満たすことができる。
【0050】
前記ディップ成形用ラテックスは、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒径調整剤、老化防止剤及び酸素捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの添加剤をさらに含んでもよい。これらの添加剤としては、当業界の公知の構成を使用してもよく、前述したイオン伝導度の範囲を満たすものであれば、種類、機能及び添加量についての説明は省略する。このような添加剤は、前記コポリマーの重合前または重合後に添加されてもよい。
【0051】
前記ディップ成形用ラテックスは、低粘度、固形分及び大粒径を同時に満たすことができ、ラテックスそのものの安定性に優れている。したがって、外部からの衝撃や長期間保管時にもディップ成形品の品質の低下を防止しうる。
【0052】
ディップ成形用ラテックスの製造方法
前記ディップ成形用ラテックスの製造方法は、(a)共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーを含むモノマー混合物に乳化剤及び水を投入する段階、(b)イオン性化合物を投入してイオン伝導度を調節する段階、及び(c)重合開始剤を投入してディップ成形用ラテックスを製造する段階を含み、前記(b)段階でイオン性化合物はイオン伝導度が275μs/cm以上になるように投入してもよい。
【0053】
前記(a)段階は、カルボン酸変性ニトリル系コポリマーを構成するモノマーである共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーを含むモノマー混合物を準備して乳化水に投入する段階で、窒素雰囲気下で行われてもよい。
【0054】
前記(a)段階または(b)段階で分子量調節剤、乳化剤をさらに投入してもよい。これらについては、前述した通りである。
【0055】
前記(b)段階は、イオン性化合物を投入して前述したラテックス重合用組成物を製造する段階で、重合に必要な成分をすべて投入した後、イオン伝導度を制御することにより、前述した安定性改善効果を具現しうる。
【0056】
前記(c)段階の重合は、10~90℃で行われてもよく、例えば、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃またはこれらのうち2つの温度の間の温度で行われもよい。
【0057】
前記重合反応の転換率が90%以上の場合、重合停止剤を投入して重合を停止しうる。例えば、前記重合停止剤は、前記重合反応の転換率が90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%またはこれらのうち2つの値の間の値であるときに投入するものであってもよい。
【0058】
前記重合停止剤は、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸及びそのアルカリ金属イオン、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよい。前記重合停止剤の含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.02~1.5重量部であってもよい。
【0059】
その他に前記製造方法に使用された原料、含量などについては、前述の通りである。
【0060】
ディップ成形品
他の一態様によるディップ成形品は、前述したディップ成形用ラテックスから製造されてもよい。
【0061】
前述したディップ成形用ラテックスに前記コポリマー100重量部を基準として酸化亜鉛0.1~1重量部、硫黄1~2重量部及び加硫促進剤0.3~1.5重量部を添加させた後、ディップ成形してディップ成形品を製造してもよい。
【0062】
前記酸化亜鉛は、前記エチレン性不飽和酸に由来する構造とイオン結合を形成して架橋構造を形成しうる。また、イオン性化合物を用いて前述したイオン伝導度の範囲を満足すれば、前記イオン結合強度を改善して耐久性を向上させることができる。前記酸化亜鉛は、例えば、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部または1重量部であってもよい。前記酸化亜鉛が少なすぎると、実使用耐久性が低下することがあり、多すぎると、引張強度が低下することがある。
【0063】
前記硫黄は、前記共役ジエン系モノマーに由来する構造と反応して架橋構造を形成しうる。イオン性化合物を用いて前述したイオン伝導度の範囲を満足すれば、加硫時に離漿現象(syneresis)による成形品の収縮を抑制しうる。前記硫黄は、例えば、1重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.4重量部、1.5重量部、1.6重量部、1.7重量部、1.8重量部、1.9重量部または2.0重量部であってもよい。前記硫黄が1重量部未満であれば、引張強度などの機械的物性と実用耐久性が低下することがあり、2重量部超過であれば、ユーザーのアレルギー反応を引き起こすことがある。
【0064】
前記ディップ成形品は、前記ディップ成形用ラテックスに水酸化カリウム水溶液を添加して固形分を調節した後、ディップ成形したものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記ディップ成形品の引張強度が3MPa以上、5MPa以上、7MPa以上、9MPa以上、11MPa以上、13MPa以上、15MPa以上、20MPa以上、25MPa以上、30MPa以上または35MPa以上であってもよいが、これに限定されるものではない。引張強度が高いほど、保管時の耐久性は向上するが、伸び率などのその他の機械的物性が減少することがある。
【0066】
前記ディップ成形品の伸び率は、600%以上、650%以上、700%以上、750%以上、800%以上、850%以上または900%以上であってもよいが、これに限定されるものではない。伸び率が高いほど、着用感などが向上するが、その他の機械的物性とトレードオフの関係であり得る。
【0067】
前記ディップ成形品は、耐久性試験結果が60分以上であり、引張強度が10MPa以上であり、伸び率が600%以上であってもよい。重合時にイオン伝導度を制御することにより、最小限の引張強度及び伸び率を維持するとともに、耐久性試験により確認される実使用耐久性に優れており、高品質のディップ成形品を製造しうる。
【0068】
[耐久性試験方法]
幅30mm、長さ135mm、厚さ0.06~0.08mmのディップ成形品を長手方向に20%伸張して35℃のpH4.0~4.3溶液に浸漬し、前記成形品を10秒間長手方向伸び率が50%になるように伸張させて2秒間固定した後、10秒間長手方向伸び率が20%になるように弛緩させる工程を繰り返し、前記成形品が破損する時間を測定した。
【0069】
前記耐久性試験方法は、ディップ成形品の実使用時に接触可能性の高い皮膚、体液と類似した条件である35℃、pH4.0~4.3の溶液中で伸張及び弛緩を繰り返して試片の破損の有無を確認するものであり、例えば、前記成形品が手袋であれば、指の動きに応じて成形品が伸張と弛緩を繰り返す状況を模写し、実使用条件でのディップ成形品の耐久性を測定しうる。
【0070】
前記ディップ成形品は、手術用手袋、医療用手袋、濃畜産物加工用手袋、産業用手袋、コンドーム、化粧用素材、カテーテルまたは健康管理用成形品であってもよい。
【0071】
例えば、前記ディップ成形品は、手術用手袋、またはその他に医療用手袋であってもよく、化学薬品取扱用手袋などの産業用手袋であってもよく、パフなどの化粧用素材であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0072】
以下、本明細書の実施例についてさらに詳細に説明する。ただし、以下の実験結果は、前記実施例のうち代表的な実験結果のみを記載したものであり、実施例などによって本明細書の範囲と内容が縮小または制限されて解釈できない。以下、明示的に提示していない本明細書の様々な具現例のそれぞれの効果は、当該部分で具体的に記載する。特に言及のない限り、各試験は、20℃、1気圧の条件で行われてもよい。
【0073】
実施例及び比較例
攪拌機、温度計、冷却器、及び窒素ガスの引き込み口が備えられており、モノマー、乳化剤、重合開始剤などの各構成要素を連続的に投入できるように装着された1Lの高圧反応器を用意した。イオン交換水としては、伝導度が1μs/cm以下のものを用意した。前記反応器を窒素に置換した後、イソプレン(IPM)74重量部、アクリロニトリル(AN)24重量部、メタクリル酸(MAA)2重量部のモノマー混合物を投入した。その後、前記モノマー混合物100重量部に対してイオン性化合物(IC)、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタン0.5重量部、乳化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2重量部及びイオン交換水120重量部を前記反応器に投入した。反応物のイオン伝導度を測定し、所望のイオン伝導度に達するまでイオン性化合物を投入してラテックス重合用組成物を製造した。前記反応器の温度を約25℃まで昇温した後、過硫酸カリウムを0.3重量部投入した。それぞれの実施例及び比較例で使用されたイオン性化合物の種類及びラテックス重合用組成物のイオン伝導度を下記表1に示した。
【0074】
転換率が約95%に達したとき、ナトリウムヒドロキシド0.9重量部を投入して重合反応を停止させた。その後、脱臭工程を通じて未反応のモノマーなどを除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤などを添加し、pH8.5(但し、実施例6、比較例6は、pH9.6)のカルボン酸変性ニトリル系コポリマーラテックスを得た。前記ラテックスのゼータ電位、平均粒径、固形分含量及び粘度を測定し、下記表1に示した。
【0075】
比較例7は、所望のイオン伝導度を達成するためにイオン性化合物を投入せず、分子量調節剤及び乳化剤をそれぞれ0.05重量部、0.1重量部を投入したが、重合が不可能であった。
【0076】
【0077】
-イオン伝導度(μs/cm):イオン伝導度は、2電極方式を用いた電気化学インピーダンス分光器(EIS)で抵抗を測定した後、Nyquist線図法で決定した。抵抗は、振動数60Hz~1kHz、電流10.0mV、電圧範囲±10Vの条件で測定した。イオン伝導度は、予想される範囲の標準溶液で補正した後に測定した。電極としては黒鉛電極を使用した。イオン伝導度は25℃基準で補正された値を用いた。
【0078】
-ゼータ電位(mV):Malvern Zetasizer機器を用いて25℃でのゼータ電位を測定した。
【0079】
-平均粒径(Å):Nanotrac 150を用いた動的光散乱法(dynamic laser light scattering)で測定した。
【0080】
-25℃粘度(cps):ブルックフィールド(Brookfield)粘度計でスピンドル(spindle)62、100rpm条件で測定した。
【0081】
前記表1を参考すると、ラテックス重合用組成物のイオン伝導度が相対的に高い実施例の場合、ラテックス粒子の電気的安定性を意味するゼータ電位のサイズが相対的に大きく測定された。その結果、1,000Å以上の大粒径、50重量%以上の高固形分を達成しながらも低い粘度を有することができるものと判断される。一方、低いイオン伝導度の条件下で重合された比較例のラテックスは、ゼータ電位のサイズが相対的に小さく測定された。したがって、安定性が不足して大粒径、高固形分と低粘度を同時に達成することが困難であった。特に粒径の小さい比較例のラテックスは、濃縮を通じて固形分含量を増加させる場合、粘度が急上昇するという問題点があった。また、イオン伝導度を制御して重合を行う場合、低分子量のオリゴマー生成が減少し、ラテックスの安定性が増加するものと予想される。
【0082】
実験例
前記実施例及び比較例のラテックス100重量部に硫黄(S)1.8重量部、酸化亜鉛(ZnO)0.7重量部、加硫促進剤としてジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(zinc dibutyldithiocarbamate,ZDBC)1.2重量部を添加した。その後、4%水酸化カリウム水溶液及び2次蒸留水を投入して固形分濃度20%、pH10.0のディップ成形用組成物を製造した。前記ディップ成形用組成物として横30mm、縦135mm、厚さ0.06~0.08mmの矩形の試片を製造し、各物性を測定して下記表2に示した。
【0083】
【0084】
-引張強度及び伸び率:万能試験機(Universal Testing Machine,UTM)を用いてダンベル状の試片を500mm/分の速度で伸長させ、試片の破断が発生したときに加えられた引張荷重と伸び率を測定した。
【0085】
-応力維持率(stress retention,S/R):万能試験機を用いて試片を500mm/分の速度で伸び率100%まで伸長させた後、初期の引張荷重(σ0)を測定し、6分後の引張荷重(σ6)を測定し、下記式により応力維持率を計算した。
【0086】
【0087】
-耐久性(durability):クエン酸を用いてpH4の溶液を製造し、35℃の条件で維持した。矩形の試片を縦方向に20%伸長させた状態で前記溶液に投入した。前記試片を10秒間伸び率50%まで伸長させ、2秒間固定した後、10秒間伸び率20%に弛緩させる作業を繰り返し、試片が破損する時間を測定した。
【0088】
前記表2を参考すると、実施例のラテックスを用いて製造した試片は、機械的強度と耐久性の両方が比較例に対して優れていた。特に、固形分含量が類似した実施例4と比較例4を対比すると、相対的に平均粒子が大きい実施例4の試片が機械的強度と耐久性に優れた。これはディップ成形による試片の製造時、平均粒径が小さい比較例4でフィルムの収縮現象が発生したためであると判断される。
【0089】
前述した本明細書の説明は例示のためのものであり、本明細書の一態様が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本明細書に記載された技術的思想や必須的な特徴を変更せずに、他の具体的な形態に容易に変形可能であるということが理解できるだろう。したがって、前述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的なものではないものと理解しなければならない。例えば、単一の形態で説明されている各構成要素は分散して実施されてもよく、同様に分散されていると説明されている構成要素も結合された形態で実施されてもよい。
【0090】
本明細書の範囲は、後述する請求範囲によって示され、請求範囲の意味と範囲、及びその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本明細書の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【国際調査報告】