(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】改善された触媒性能を有するプロピレン重合のための触媒成分
(51)【国際特許分類】
C08F 4/656 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
C08F4/656
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514012
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 US2022042086
(87)【国際公開番号】W WO2023034334
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】マリン,ウラジーミル・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ヒルファーディング,キース・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ヒントレー,アーメド
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AB01
4J128AC05
4J128BA01A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC15B
4J128BC36A
4J128BC36B
4J128CB44A
4J128CB92A
4J128DB03
4J128DB08
4J128EA01
4J128EB04
4J128EC01
4J128FA08
4J128GA07
4J128GA09
4J128GA21
4J128GB02
(57)【要約】
オレフィン重合のための単離された固体触媒成分。触媒成分は、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物、ハロゲン化チタン化合物、ベンゾエートを含む支持供与体、内部電子供与体、及び活性制御剤(ACA)を含む。ACAは、i)触媒成分中に約0.1~約5重量%の量で存在する、Si-O基を含有する第1の有機ケイ素化合物、ii)約0.1重量%~約15重量%の量のC
4~C
30脂肪酸の有機エステル又はC
4~C
30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステル、及びiii)アルキル基を含有する有機アルミニウム化合物のうちの少なくとも1つを含む。ACAの少なくとも一部は、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物に化学的に結合している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン重合のための単離された固体触媒成分であって、前記成分が、
ハロゲン化物含有マグネシウム化合物と、
ハロゲン化チタン化合物と、
ベンゾエートを含む支持供与体と、
内部電子供与体と、
活性制御剤(ACA)であって、
前記触媒成分中に約0.1~約5重量%の量で存在する、Si-O基を含有する第1の有機ケイ素化合物、
約0.1重量%~約15重量%の量のC
4~C
30脂肪酸の有機エステル又はC
4~C
30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステル、及び
アルキル基を含有する有機アルミニウム化合物のうちの少なくとも1つを含む、活性制御剤(ACA)との反応生成物を含み、
前記ACAの少なくとも一部が、前記ハロゲン化物含有マグネシウム化合物に化学的に結合されている、固体触媒成分。
【請求項2】
前記支持電子供与体が、前記触媒成分中に約0.5重量%~約7重量%の量で存在する、請求項1に記載の固体触媒成分。
【請求項3】
前記内部電子供与体が、前記触媒成分中に約3重量%~約25重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載の固体触媒成分。
【請求項4】
前記内部電子供与体が、ジエステル、ジエーテル、スクシネート、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項5】
前記ハロゲン化物含有マグネシウム化合物が、塩化マグネシウムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項6】
前記第1の有機ケイ素化合物が、以下の化学構造を有するシラン、シロキサン、又はポリシロキサンであり、
R
nSi(OR’)
4-n
式中、
各Rが、H、アルキル、又はアリールであり、
各R’が、H、アルキル、アリール、又はSiR
n’(OR’)
3-nであり、
nが、0、1、2、又は3である、請求項1~5のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項7】
前記内部電子供与体が、以下の式によって表され、
【化1】
式中、
R
15~R
20の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、
qが、0~12の整数である、請求項1~6のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項8】
前記内部電子供与体が、以下の式のうちの1つによって表され、
【化2】
式中、R
1~R
4が、同じであるか若しくは異なり、各R
1~R
4が、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル、6~20個の炭素を有する置換若しくは非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、R
1~R
4のうちの少なくとも1つが、水素ではなく、
E
1及びE
2が、同じであるか若しくは異なり、各E
1及びE
2が、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル、6~20個の炭素を有する置換若しくは非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるか、
X
1及びX
2が、各々、O、S、アルキル基、若しくはNR
5であり、R
5が、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、若しくは水素であるか、
【化3】
式中、
R
60~R
65の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、若しくはヘテロアリールアルキルであるか、又は
【化4】
式中、R
66~R
73の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、若しくはヘテロアリールアルキル基である、請求項1~7のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項9】
前記支持電子供与体が、以下の式を有し、
【化5】
式中、R’が、アルキル基、環式基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はそれらの組み合わせを含み、R’’が、1つ以上の置換基を含み、各置換基が、独立して、水素、アルキル基、環式基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はそれらの組み合わせを含み得る、請求項1~8のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項10】
前記第1の有機ケイ素化合物とは異なる第2の有機ケイ素化合物を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項11】
前記第2の有機ケイ素化合物が、オルトケイ酸テトラエチル及び/又はポリジメチルシロキサンを含む、請求項10に記載の固体触媒成分。
【請求項12】
前記第1の有機ケイ素化合物が、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項13】
前記ACAが、有機ケイ素化合物を含み、いかなる有機アルミニウム成分も、前記触媒成分中に含有されない、請求項1~12のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項14】
前記ACAが、a)ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、及び/又はトリメトキシシランと、b)アルキル基を含有する有機アルミニウム化合物との組み合わせを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項15】
前記ACAが、有機アルミニウム化合物を含み、ポリジアルキルシロキサン及び/又はテトラアルコキシシラン以外のいかなる有機ケイ素化合物も、前記触媒成分中に存在しない、請求項1~5及び7~11のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項16】
前記ACAが、脂肪族C4~C30モノ-又はジ-カルボン酸の有機エステルを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項17】
前記有機エステルが、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジ-n-ブチル、(ポリ)(アルキレングリコール)、モノ-又はジ-ミリステート、吉草酸ペンチル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の固体触媒成分。
【請求項18】
前記ACAが、a)ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、及び/又はトリメトキシシランと、b)ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジ-n-ブチル、(ポリ)(アルキレングリコール)、モノ-又はジ-ミリステート、吉草酸ペンチル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される有機エステルとの組み合わせを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項19】
前記ACAが、有機アルミニウム化合物を含み、いかなる有機ケイ素化合物も、前記触媒成分中に存在しない、請求項1~5及び7~11のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項20】
前記固体触媒成分が、ポリオレフィンを含有しない、請求項1~19のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項21】
前記触媒成分が、30分の期間にわたってプロピレンをバルクプロピレン反応器中で重合することによって決定される、他の点では同じ条件下で80℃で呈される触媒活性よりも少なくとも約10%低い、90℃での前記触媒活性を呈する、請求項1~20のいずれか一項に記載の固体触媒成分。
【請求項22】
固体触媒成分を生成するためのプロセスであって、前記プロセスが、
マグネシウムアルコキシドMg(OR)
nX
2-n又はマグネシウムアルコラートMgX
2mR’OHをTi(OR’’)
gX
4-gと反応させることによって、触媒前駆体成分を形成することであって、式中、Xが、Br、Cl、又はIであり、nが、1、2であり、mが、0.5~10であり、gが、0、1、2、3、又は4であり、R、R’、R’’が、独立して、C1~C10アルキルであり、前記触媒前駆体が、支持電子供与体及び内部電子供与体を含有する、形成することと、
前記触媒前駆体成分を、炭化水素溶媒中で、
以下の式:R
2nSi(OR
3)
4-nを有する第1の有機ケイ素化合物であって、式中、R
2が、H、アルキル、若しくはアリールであり、各R
3が、アルキル、若しくはアリールであり、nが、0、1、2、若しくは3である、第1の有機ケイ素化合物、
C4~C30脂肪酸エステルからの有機エステル若しくはC4~C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステル、又は
アルキルアルミニウム化合物のうちの少なくとも1つと反応させることと、
前記固体触媒成分を単離することと、を含む、プロセス。
【請求項23】
前記触媒前駆体を前記反応させる工程の前に、前記触媒前駆体化合物を単離及び/又は乾燥させることを更に含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記支持電子供与体が、前記触媒成分中に約0.5重量%~約7重量%の量で存在する、請求項22又は23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記内部電子供与体が、前記触媒成分中に約3重量%~約25重量%の量で存在する、請求項22~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記内部電子供与体が、ジエステル、ジエーテル、スクシネート、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項22~25のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記第1の有機ケイ素化合物が、以下の化学構造を有するシラン、シロキサン、又はポリシロキサンであり、
R
nSi(OR’)
4-n
式中、
各Rが、H、アルキル、又はアリールであり、
各R’が、H、アルキル、アリール、又はSiR
n’(OR’)
3-nであり、
nが、0、1、2、又は3である、請求項22~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記内部電子供与体が、以下の式によって表され、
【化6】
式中、
R
15~R
20の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、
qが、0~12の整数である、請求項22~27のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記内部電子供与体が、以下の式のうちの1つによって表され、
【化7】
式中、R
1~R
4が、同じであるか若しくは異なり、各R
1~R
4が、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル、6~20個の炭素を有する置換若しくは非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、R
1~R
4のうちの少なくとも1つが、水素ではなく、
E
1及びE
2が、同じであるか若しくは異なり、各E
1及びE
2が、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル、6~20個の炭素を有する置換若しくは非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるか、
X
1及びX
2が、各々、O、S、アルキル基、若しくはNR
5であり、R
5が、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、若しくは水素であるか、
【化8】
式中、R
1~R
6の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、若しくはヘテロアリールアルキルであるか、又は
【化9】
式中、R
7~R
14の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、若しくはヘテロアリールアルキル基である、請求項22~28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記支持電子供与体が、以下の式を有し、
【化10】
式中、R’が、アルキル基、環式基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はそれらの組み合わせを含み、R’’が、1つ以上の置換基を含み、各置換基が、独立して、水素、アルキル基、環式基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はそれらの組み合わせを含み得る、請求項22~29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記第1の有機ケイ素化合物とは異なる第2の有機ケイ素化合物を前記触媒前駆体成分に組み込むことを更に含む、請求項22~30のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記第2の有機ケイ素化合物が、オルトケイ酸テトラエチル及び/又はポリジメチルシロキサンを含む、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記第1の有機ケイ素化合物が、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項22~32のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項34】
前記固体触媒成分が、ポリオレフィンを含有しない、請求項22~33のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項35】
オレフィンポリマーを生成するためのプロセスであって、前記プロセスが、単離された固体触媒成分の存在下でオレフィンを重合することを含み、前記固体触媒成分が、
ハロゲン化物含有マグネシウム化合物と、
ハロゲン化チタン化合物と、
少なくとも1つの内部電子供与体と、
活性制御剤(ACA)であって、
前記触媒成分中に約0.1~約5重量%の量で存在する、Si-O基を含有する第1の有機ケイ素化合物、
約0.1重量%~約15重量%の量のC4~C30脂肪酸の有機エステル又はC4~C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステル、及び
アルキル基を含有する有機アルミニウム化合物のうちの少なくとも1つを含む、活性制御剤(ACA)との反応生成物を含み、
前記ACAの少なくとも一部が、前記ハロゲン化物含有マグネシウム化合物に化学的に結合されており、前記固体触媒成分が、重合反応器中で調製されない、プロセス。
【請求項36】
前記支持電子供与体が、前記触媒成分中に約0.5重量%~約7重量%の量で存在する、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記内部電子供与体が、前記触媒成分中に約3重量%~約25重量%の量で存在する、請求項35又は36に記載のプロセス。
【請求項38】
前記内部電子供与体が、ジエステル、ジエーテル、スクシネート、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項35~37のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項39】
前記第1の有機ケイ素化合物が、以下の化学構造を有するシラン、シロキサン、又はポリシロキサンであり、
R
nSi(OR’)
4-n
式中、
各Rが、H、アルキル、又はアリールであり、
各R’が、H、アルキル、アリール、又はSiR
n’(OR’)
3-nであり、
nが、0、1、2、又は3である、請求項35~38のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項40】
前記内部電子供与体が、以下の式によって表され、
【化11】
式中、
R
15~R
20の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、
qが、0~12の整数である、請求項35~39のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項41】
前記内部電子供与体が、以下の式のうちの1つによって表され、
【化12】
式中、R
1~R
4が、同じであるか若しくは異なり、各R
1~R
4が、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル、6~20個の炭素を有する置換若しくは非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、R
1~R
4のうちの少なくとも1つが、水素ではなく、
E
1及びE
2が、同じであるか若しくは異なり、各E
1及びE
2が、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル、6~20個の炭素を有する置換若しくは非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるか、
X
1及びX
2が、各々、O、S、アルキル基、若しくはNR
5であり、R
5が、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、若しくは水素であるか、
【化13】
式中、R
1~R
6の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、若しくはヘテロアリールアルキルであるか、又は
【化14】
式中、R
7~R
14の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、若しくはヘテロアリールアルキル基である、請求項35~40いずれか一項に記載のプロセス。
【請求項42】
前記支持電子供与体が、以下の式を有し、
【化15】
式中、R’が、アルキル基、環式基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はそれらの組み合わせを含み、R’’が、1つ以上の置換基を含み、各置換基が、独立して、水素、アルキル基、環式基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はそれらの組み合わせを含み得る、請求項35~41のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項43】
前記固体触媒成分が、前記第1の有機ケイ素化合物とは異なる第2の有機ケイ素化合物を更に含む、請求項35~42のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項44】
前記第2の有機ケイ素化合物が、オルトケイ酸テトラエチル及び/又はポリジメチルシロキサンを含む、請求項43に記載のプロセス。
【請求項45】
前記第1の有機ケイ素化合物が、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項35~44のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項46】
重合反応が少なくとも2時間続き、重合の最初の2時間にわたる平均触媒活性が50kg/g/時超である、請求項35~45のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項47】
重合の1時間目から2時間目までの触媒活性の低減が、約30%以下である、請求項46に記載のプロセス。
【請求項48】
90℃の温度での前記触媒活性が、他の点では同じ条件下での80℃の温度での前記触媒活性よりも少なくとも約10%低い、請求項35~47のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項49】
前記オレフィンポリマーが、0.75超のB/L3比を有する半球状又は球状粒子を含む、請求項35~48のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項50】
前記オレフィンポリマーが、0.80超の真球度(SPHT)を有する粒子を含む、請求項35~49のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項51】
前記オレフィンポリマーが、約0.35g/cc超の嵩密度を有する粒子を含む、請求項35~50のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年9月2日出願の米国特許仮出願第63/240,300号に対する優先権の利益を主張するものであり、ありとあらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、単純なオレフィンから誘導されるポリマーのクラスである。ポリオレフィンを作製する既知の方法は、チーグラー・ナッタ重合触媒の使用を伴う。これらの触媒は、遷移金属ハロゲン化物を使用してオレフィンモノマーを重合して、様々な種類の立体化学的配置を有するポリマーを提供する。
【0003】
ある種類のチーグラー・ナッタ触媒系は、チタン化合物及び内部電子供与体化合物が上に担持されているハロゲン化マグネシウムによって構成される固体触媒成分を含む。アイソタクティックポリマー生成物に対する高い選択性を維持するために、触媒合成中に内部電子供与体化合物が添加される。内部供与体は、様々な種類のものであり得る。従来、ポリマーのより高い結晶化度が必要とされる場合、外部供与体化合物も重合反応中に添加される。
【0004】
過去30年の間に、多くの担持チーグラー・ナッタ触媒が開発されており、それらは、オレフィン重合反応においてはるかに高い活性を与え、それらが生成するポリマー中にはるかに高い含量の結晶性アイソタクティック画分を与える。内部及び外部電子供与体化合物の開発に伴い、ポリオレフィン触媒系は、絶えず改革されている。
【0005】
新たに開発されたチーグラー・ナッタ触媒、特に非フタレート触媒が遭遇する1つの問題は、触媒が重合プロセス中に即座に有意に高い触媒活性をもたらすことである。高い触媒活性は、触媒粒子の中心における急速な温度上昇をもたらし得る。いくつかの用途において、触媒粒子の表面積は、熱を放散させるのに十分ではなく、粒子の破損又はそうでなければ分解が引き起こされる。
【0006】
高活性を有する触媒に関する別の問題は、それらが通常、重合プロセス中に高レベルの活性の崩壊を呈することである。この崩壊によって、耐衝撃性コポリマーなどのある特定のポリマー生成物を生成するための多重反応器重合プロセスにおいてそのような高活性触媒を使用することが困難になる。
【0007】
触媒動態を制御するために、いくつかの重合プロセス、すなわちスラリー相重合プロセス又はバルク相重合プロセスは、予備重合ライン又は反応器を備えている。気相プロセスなどの他の重合プロセスでは、重合プロセスの動態は、外部供与体及び活性制限剤によってわずかに改善され得る。しかしながら、重合動態の制御におけるより大きな改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、概して、オレフィン重合のための単離された固体触媒成分を対象とする。触媒成分は、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物、ハロゲン化チタン化合物、ベンゾエートを含む支持供与体、内部電子供与体、及び活性制御剤(activity control agent、ACA)を含む。ACAは、i)触媒成分中に約0.1~約5重量%の量で存在する、Si-O基を含有する第1の有機ケイ素化合物、ii)約0.1重量%~約15重量%の量のC4~C30脂肪酸の有機エステル又はC4~C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステル、及びiii)アルキル基を含有する有機アルミニウム化合物のうちの少なくとも1つを含む。ACAの少なくとも一部は、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物に化学的に結合している。
【0009】
本開示はまた、単離された固体触媒成分を作製するためのプロセスを対象とする。プロセスは、a)マグネシウムアルコキシドMg(OR)nX2-n又はマグネシウムアルコラートMgX2・mR’OHをTi(OR’’)gX4-gと反応させることによって、触媒前駆体成分を形成する工程であって、式中、Xが、Br、Cl、又はIであり、nが、1、2であり、mが、0.5~10であり、gが、0、1、2、3、又は4であり、R、R’、R’’が、独立して、C1~C10アルキルであり、触媒前駆体が、支持電子供与体及び内部電子供与体を含有する、工程と、b)触媒前駆体成分を、炭化水素溶媒中で、i)以下の式:R2nSi(OR3)4-nを有する第1の有機ケイ素化合物であって、式中、R2が、H、アルキル、又はアリールであり、各R3が、アルキル、又はアリールであり、nが、0、1、2、又は3である、第1の有機ケイ素化合物、ii)C4~C30脂肪酸エステルからの有機エステル又はC4~C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステル、及びiii)アルキルアルミニウム化合物のうちの少なくとも1つと反応させる工程と、c)固体触媒成分を単離する工程と、を含む。
【0010】
オレフィンポリマーを生成するためのプロセスも提供される。プロセスは、固体触媒成分の存在下でオレフィンを重合することを含む。固体触媒成分は、a)ハロゲン化物含有マグネシウム化合物、b)ハロゲン化チタン化合物、c)少なくとも1つの内部電子供与体、及びd)活性制御剤(ACA)の反応生成物を含む。ACAは、i)触媒成分中に約0.1~約5重量%の量で存在する、Si-O基を含有する第1の有機ケイ素化合物、ii)約0.1重量%~約15重量%の量のC4~C30脂肪酸の有機エステル又はC4~C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステル、及びiii)アルキル基を含有する有機アルミニウム化合物のうちの少なくとも1つを含む。ACAの少なくとも一部は、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物に化学的に結合している。
【0011】
本開示の他の特徴及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示は、以下の図面を参照することによって、よりよく理解され得る。
【
図1】本開示に従って作製されたACAを含有する触媒成分のFTIRスペクトルを、ACAを含まない触媒成分と比較するチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
いくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明が、以下の説明に記載される構造又はプロセス工程の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方式で実施又は実行することができる。
【0014】
一般に、本開示は、ポリオレフィンポリマー、特にポリプロピレン、ポリエチレン、及びそれらのコポリマーを生成するための触媒成分と、そのような触媒成分を作製する方法とを対象とする。本開示はまた、触媒成分を使用してオレフィンを重合する方法を対象とする。一般に、本開示の触媒成分は、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物と、ハロゲン化チタン化合物と、モノベンゾエート支持電子供与体と、少なくとも1つの内部電子供与体と、(a)Si-O基を含有する有機ケイ素化合物、(b)C4~C30脂肪酸の有機エステル若しくはC4~C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステル、(c)アルキル基を含有する有機アルミニウム化合物、又はそれらの任意の組み合わせを含む、活性制御剤(ACA)との反応生成物である。
【0015】
本発明者らは、重合前にハロゲン化マグネシウム化合物上に担持されたモノベンゾエート支持供与体及び内部供与体を含有する触媒前駆体をACAで処理することが、予想外にも、触媒成分へのACAの高レベルの組み込み、触媒成分からの支持供与体の部分的な除去、及びACAとハロゲン化物含有マグネシウム化合物との間の結合に起因するハロゲン化マグネシウム担体表面上の内部供与体の配位の変化をもたらすことを発見した。
【0016】
加えて、本発明者らは、予想外にも、得られた触媒成分が、改善された寿命及び比較的平坦な重合動態を呈し、これが、耐衝撃性コポリマーを生成するための系などの多重反応器重合系において触媒成分を使用する場合に有意な利点を提供することを発見した。例えば、触媒活性のレベルは、重合の開始時に非常に高く、その後急速に減少する代わりに、1時間より長いような比較的長期間にわたってより一定のままである。いくつかの多重反応器重合プロセスは、触媒が複数時間にわたって活性のままであることを必要とするため、本明細書に記載される触媒成分のより安定な動態が望ましい。
【0017】
本発明者らは更に、可変活性化条件及び可変量の内部供与体を使用してハロゲン化マグネシウム表面上の内部供与体の配位を変化させることによって触媒寿命が制御され得ることを発見した。
【0018】
触媒寿命の1つの尺度は、重合の1時間目にわたる触媒活性を重合の2時間目にわたる触媒活性と比較することである。重合の1時間目の間の高い触媒活性、それに続く2時間目の間のはるかに低い触媒活性は、触媒が短い寿命を有するという証拠である。2時間目の間の活性レベルが1時間目の活性レベルと同様である場合、触媒は一般により長い寿命を有する。複数時間にわたって行われる多重反応器プロセスなどのある特定の重合プロセスでは、活性レベルが最初にわずかに低くても、より長い触媒寿命を有することがより望ましい。この点において、本明細書に記載される触媒成分は、重合の1時間目にわたる触媒活性を重合の2時間目の間の触媒活性と比較することによって測定されるように、比較的長い寿命を呈する。例えば、1時間目から2時間目までの触媒活性の変化は、一般に約30%以下、例えば約25%未満、例えば約20%未満、例えば約15%未満、例えば約10%未満、例えば約5%未満である。いくつかの実施形態では、触媒活性は、1時間目よりも2時間目により大きくなる。
【0019】
通常、触媒は、活性及び他の重合特徴が異なる3~5つの主要な種類の活性中心を含有する。高活性触媒中心は、通常、寿命が短い。したがって、重合動態を改善するためには、狭い触媒活性を有する多重部位活性触媒中心を有することが必要である。理論によって限定されることを意図するものではないが、触媒寿命の改善は、ハロゲン化マグネシウムとの弱く配位した錯体の濃度を増加させることによってハロゲン化マグネシウム担体上の内部供与体配位を変化させることに関連すると考えられる。弱く配位された内部供与体は、重合プロセスの初期段階において、トリエチルアルミニウム(triethylaluminum、TEAl)などの共触媒によって容易に除去することができ、重合プロセスの開始時に非常に活性な触媒中心の低減がもたらされ、したがって、触媒寿命が延びると考えられる。
【0020】
加えて、活性触媒を使用するいくつかの重合プロセスでは、重合温度が反応器のある特定のスポットで上昇し、非制御重合及び重合反応器の閉塞をもたらし得る。ACAを含有する触媒は、高い重合温度で触媒活性を低減させ(すなわち、それらは自己消滅性である)、重合プロセスを改善し得る。例えば、いくつかの実施形態では、90℃での触媒活性は、30分の期間にわたって決定した場合、80℃での触媒活性よりも少なくとも約10%低く、例えば約12%~約20%低くなり得る。
【0021】
改善された触媒はまた、改善された形態、例えば改善された嵩密度、粒子形状、及び真球度を有するポリマーを生成し得、これは、より良好な商業的プロセス可能性をもたらす。例えば、高生産性の商業的プロセスにおいて、高い嵩密度を有し、かつ破損のない球状ポリマー粒子の生成が望まれている。
【0022】
この点において、本開示に従い作製されたポリマー粉末は、約5ミクロン超、例えば約50ミクロン超、例えば約100ミクロン超、例えば約300ミクロン超、例えば約500ミクロン超の平均粒径を有し得る。ポリマー粒子の平均粒径は、一般に、約3,000ミクロン未満、例えば約2,000ミクロン未満、例えば約1,600ミクロン未満であり得る。上記のように、ポリマー粒子は、実質的に球状であり得る。例えば、ポリマー粒子は、約0.65超、例えば約0.7超、例えば約0.75超、例えば更に約0.8超、一般に、1未満のB/L3を有し得る。加えて、ポリマー粒子は、約0.80超、例えば約0.85超、例えば約0.9超、例えば約0.95超、一般に1未満の真球度(sphericity、SPHT)を有し得る。
【0023】
粒子形態に起因して、本開示に従って作製されたポリマー樹脂はまた、増加した嵩密度、ひいては良好な流動特性を有し得る。ポリマー粒子の嵩密度は、例えば、約0.35g/cc超、例えば約0.38g/cc超、例えば約0.4g/cc超、例えば約0.41g/cc超であり得る。嵩密度は、一般に、約0.55g/cc未満、例えば約0.50g/cc未満である。
【0024】
高い触媒活性レベルは、本開示の触媒成分を使用して達成され得る。例えば、重合の最初の2時間にわたる平均触媒活性は、40kg/g/時超、例えば50kg/g/時超、例えば60kg/g/時超、例えば70kg/g/時超、例えば80kg/g/時超、例えば更に90kg/g/時超であり得る。
【0025】
有利には、触媒成分は、重合反応器の外部で調製され、したがって乾燥形態で、又は炭化水素溶媒若しくは鉱油中で貯蔵及び使用され得る。
【0026】
一実施形態では、本開示の触媒成分を調製する方法は、マグネシウム化合物、チタン化合物、支持供与体、及び内部電子供与体を含有する触媒前駆体を形成する工程を含む。次いで、触媒前駆体を、(a)Si-O基を含有する有機ケイ素化合物、(b)C4~C30脂肪酸エステルからの有機エステル又はC4~C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステル、(c)アルキル基を含有する有機アルミニウム化合物、又はそれらの任意の組み合わせと反応させる。別の実施形態では、活性制御剤は、内部供与体の組み込み中に添加される。
【0027】
A.触媒前駆体
触媒前駆体が活性制御剤を組み込む前に形成される場合、触媒前駆体は一般に、支持電子供与体及び少なくとも1つの内部電子供与体と組み合わされたマグネシウム化合物及びチタン化合物を含む。
【0028】
一実施形態では、触媒前駆体は、式MgdTi(ORe)fXを有する混合マグネシウム/チタン化合物であり、式中、Reは、1~14個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素ラジカル又はCOR’であり、R’は、1~14個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素ラジカルであり、各ORe基は、同じであるか又は異なり、Xは、独立して、塩素、臭素、又はヨウ素であり、dは、0.5~56、又は2~4であり、fは、2~116、又は5~15であり、gは、0.5~116、又は1~3である。触媒前駆体成分は、その調製に使用される反応混合物からアルコールを除去する制御された沈殿によって調製され得る。一実施形態では、反応媒体は、芳香族液体、特に塩素化芳香族化合物、例えばクロロベンゼンとエタノールなどのアルカノールとの混合物を含む。好適なハロゲン化剤としては、四臭化チタン、チタンアルコキシド、四塩化チタン、又は三塩化チタンが挙げられる。ハロゲン化に使用される溶液からアルカノールを除去すると、固体触媒前駆体の沈殿がもたらされる。
【0029】
例えば、一実施形態では、触媒前駆体成分は、内部電子供与体の存在下で、マグネシウムエチレンオキシドなどのマグネシウムアルコキシドと、o-クレゾール、チタンエトキシド、四塩化チタン、及びエタノールの混合物との反応生成物を含む。プロセス中、一実施形態では、支持電子供与体が副生成物として形成され、触媒に組み込まれる。加えて、支持供与体は、内部供与体の反応混合物との反応によってインサイチュで副生成物として形成され得る。
【0030】
別の実施形態では、触媒前駆体成分は、マグネシウムアルコラート、ハロゲン化チタン、支持電子供与体、及び内部電子供与体から形成される。例えば、一実施形態では、固体マグネシウムアルコラートをハロゲン化チタンで処理して、アルコールを除去する。内部供与体及び支持供与体をプロセスの異なる工程で添加して、固体触媒成分の特性を変化させることができる。
【0031】
例えば、触媒前駆体は、無水ハロゲン化マグネシウムのアルコール付加物であり得る。無水ハロゲン化マグネシウム付加物は、一般に、MgX2-nROHとして定義され、式中、nは、0.5~10、好ましくは2.5~4.0、最も好ましくは2.8~3.5モルの総アルコールの範囲を有する。ROHは、直鎖状若しくは分岐鎖C1~C4アルコール、又はアルコールの混合物である。好ましくは、ROHは、エタノール又はエタノールと高級アルコールとの混合物である。ROHが混合物である場合、エタノールの高級アルコールに対するモル比は、少なくとも80:20、好ましくは90:10、最も好ましくは少なくとも95:5である。
【0032】
一実施形態では、実質的に球状のMgCl-nEtOH付加物は、噴霧結晶化プロセスによって形成され得る。
【0033】
別の実施形態では、触媒前駆体は、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物を混合物中で溶解することによって形成され、混合物は、エポキシ化合物、有機リン化合物、及び炭化水素溶媒を含み、均質な溶液を形成する。次いで、均質な溶液を、有機ケイ素化合物及び炭化水素溶媒の存在下で、支持供与体で処理し得る。次いで、ハロゲン化チタン化合物を添加して、固体沈殿物を形成し得る。次いで、沈殿物を炭化水素溶媒と組み合わせて、混合物を形成し得る。次いで、炭化水素溶媒中の内部電子供与体を、混合物に添加し得る。次いで、得られた固体を濾過し得、ハロゲン化チタンで更に処理して触媒前駆体を形成し得る。
【0034】
特定の実施形態では、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物、エポキシ化合物、及び有機リン化合物を、有機溶媒の存在下、約25~約100℃の第1の温度で反応させて、均質な溶液を形成する。別の実施形態では、第1の温度は、約40~約90℃又は約50~約70℃である。ある特定の実施形態では、マグネシウム化合物のアルキルエポキシドに対するモル比は、約0.1:2~約2:0.1又は約1:0.25~約1:4又は約1:0.9~約1:2.2である。ある特定の実施形態では、マグネシウム化合物のルイス塩基に対するモル比は、約1:0.1~約1:4又は0.5:1~2.0:1又は1:0.7~1:1である。いかなる理論にも束縛されるものではないが、ハロゲン原子がマグネシウム化合物からエポキシ化合物に移動して、エポキシド環を開環し、新たに形成されたアルコキシド基のマグネシウム原子と酸素原子との間に結合を有するアルコキシドマグネシウム種を形成すると考えられる。このプロセス中、有機リン化合物は、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物のMg原子に配位し、存在するマグネシウム含有種の溶解度を増加させる。
【0035】
有機ケイ素化合物は、マグネシウム化合物の有機溶媒中での溶解中又は溶解後に、エポキシ化合物とともに添加し得る。有機ケイ素化合物は、シラン、シロキサン、又はポリシロキサンであり得る。有機ケイ素化合物は、いくつかの実施形態では、以下の式(II)として表され得る。
RnSi(OR’)4-n (II)
式(II)では、各Rは、H、アルキル、又はアリールであり得、各R’は、H、アルキル、アリール、又は-SiRn’(OR’)3-nであり得、式中、nは、0、1、2、又は3である。
【0036】
いくつかの実施形態では、有機ケイ素は、モノマー化合物又はポリマー化合物である。有機ケイ素化合物は、-Si-O-Si-基を1分子中又は他の分子間に含有し得る。有機ケイ素化合物の他の例示的な例としては、ポリジアルキルシロキサン及び/又はテトラアルコキシシランが挙げられる。そのような化合物は、個々に使用され得るか、又はそれらの組み合わせとして使用され得る。有機ケイ素化合物は、アルミニウムアルコキシド及び第1の内部供与体と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、ポリジメチルシロキサン及び/又はテトラエトキシシランが使用され得る。
【0037】
触媒前駆体を形成するために使用されるハロゲン化チタン化合物は、Ti(OR)gX4-gとして表され得、式中、各Rは、独立して、C1~C10アルキルであり、Xは、Br、Cl、又はIであり、gは、0、1、2、3、又は4、例えばTiCl4である。
【0038】
触媒前駆体の生成に使用される炭化水素溶媒は、芳香族若しくは非芳香族溶媒又はそれらの組み合わせを含み得る。ある特定の実施形態では、芳香族炭化水素溶媒は、トルエン及びC2~C20アルキルベンゼンから選択される。ある特定の実施形態では、非芳香族炭化水素溶媒は、ヘキサン及びヘプタンから選択される。
【0039】
エポキシ化合物の例示としては、限定されないが、以下の式のグリシジル含有化合物が挙げられ、
【0040】
【化1】
式中、「a」は、1、2、3、4、又は5からであり、Xは、F、Cl、Br、I、又はメチルであり、R
aは、H、アルキル、アリール、又はシクリルである。一実施形態では、アルキルエポキシドは、エピクロロヒドリンである。いくつかの実施形態では、エポキシ化合物は、ハロアルキルエポキシド又は非ハロアルキルエポキシドである。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、エポキシ化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカン、7,8-エポキシ-2-メチルオクタデカン、2-ビニルオキシラン、2-メチル-2-ビニルオキシラン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,2-エポキシ-7-オクテン、1-フェニル-2,3-エポキシプロパン、1-(1-ナフチル)-2,3-エポキシプロパン、1-シクロヘキシル-3,4-エポキシブタン、1,3-ブタジエンジオキシド、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、シクロペンテンオキシド、シクロオクテンオキシド、α-ピネンオキシド、2,3-エポキシノルボルナン、リモネンオキシド、シクロデカンエポキシド、2,3,5,6-ジエポキシノルボルナン、スチレンオキシド、3-メチルスチレンオキシド、1,2-エポキシブチルベンゼン、1,2-エポキシオクチルベンゼン、スチルベンオキシド、3-ビニルスチレンオキシド、1-(1-メチル-1,2-エポキシエチル)-3-(1-メチルビニルベンゼン)、1,4-ビス(1,2-エポキシプロピル)ベンゼン、1,3-ビス(1,2-エポキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1,2-エポキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、1,2-エポキシ-4-フルオロブタン、1-(2,3-エポキシプロピル)-4-フルオロベンゼン、1-(3,4-エポキシブチル)-2-フルオロベンゼン、1-(2,3-エポキシプロピル)-4-クロロベンゼン、1-(3,4-エポキシブチル)-3-クロロベンゼン、4-フルオロ-1,2-シクロヘキセンオキシド、6-クロロ-2,3-エポキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン、4-フルオロスチレンオキシド、1-(1,2-エポキシプロピル)-3-トリフルオロベンゼン、3-アセチル-1,2-エポキシプロパン、4-ベンゾイル-1,2-エポキシブタン、4-(4-ベンゾイル)フェニル-1,2-エポキシブタン、4,4’-ビス(3,4-エポキシブチル)ベンゾフェノン、3,4-エポキシ-1-シクロヘキサノン、2,3-エポキシ-5-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3-アセチルスチレンオキシド、4-(1,2-エポキシプロピル)ベンゾフェノン、グリシジルメチルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチル3,4-エポキシブチルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシジル4-tert-ブチルフェニルエーテル、グリシジル4-クロロフェニルエーテル、グリシジル4-メトキシフェニルエーテル、グリシジル2-フェニルフェニルエーテル、グリシジル1-ナフチルエーテル、グリシジル2-フェニルフェニルエーテル、グリシジル1-ナフチルエーテル、グリシジル4-インドリルエーテル、グリシジルN-メチル-α-キノロン-4-イルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-ジグリシジルオキシベンゼン、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリス(4-グリシジルオキシフェニル)メタン、ポリ(オキシプロピレン)トリオールトリグリシジルエーテル、フェノールノボラックのグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-メトキシシクロヘキサン、2,3-エポキシ-5,6-ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン、4-メトキシスチレンオキシド、1-(1,2-エポキシブチル)-2-フェノキシベンゼン、グリシジルホルメート、グリシジルアセテート、2,3-エポキシブチルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルベンゾエート、ジグリシジルテレフタレート、ポリ(グリシジルアクリレート)、ポリ(グリシジルメタクリレート)、グリシジルアクリレートと別のモノマーとのコポリマー、グリシジルメタクリレートと別のモノマーとのコポリマー、1,2-エポキシ-4-メトキシカルボニルシクロヘキサン、2,3-エポキシ-5-ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、エチル4-(1,2-エポキシエチル)ベンゾエート、メチル3-(1,2-エポキシブチル)ベンゾエート、メチル3-(1,2-エポキシブチル)-5-フェニルベンゾエート、N,N-グリシジル-メチルアセトアミド、N,N-エチルグリシジルプロピオンアミド、N,N-グリシジルメチルベンズアミド、N-(4,5-エポキシペンチル)-N-メチル-ベンズアミド、N,N-ジグリシルアニリン、ビス(4-ジグリシジルアミノフェニル)メタン、ポリ(N,N-グリシジルメチルアクリルアミド)、1,2-エポキシ-3-(ジフェニルカルバモイル)シクロヘキサン、2,3-エポキシ-6-(ジメチルカルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(ジメチルカルバモイル)スチレンオキシド、4-(1,2-エポキシブチル)-4’-(ジメチルカルバモイル)ビフェニル、4-シアノ-1,2-エポキシブタン、1-(3-シアノフェニル)-2,3-エポキシブタン、2-シアノスチレンオキシド、及び6-シアノ-1-(1,2-エポキシ-2-フェニルエチル)ナフタレンからなる群から選択される。
【0042】
有機リン化合物の例としては、トリアルキルリン酸エステルなどのリン酸エステルが使用され得る。そのような化合物は、以下の式によって表され得、
【0043】
【化2】
式中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、メチル、エチル及び直鎖又は分岐鎖(C
3~C
10)アルキル基からなる群から選択される。一実施形態では、トリアルキルリン酸エステルは、トリブチルリン酸エステルである。
【0044】
上記のように、少なくとも1つの内部電子供与体が、触媒前駆体の合成中に存在する。内部電子供与体は、添加されたか、又はそうでなければ触媒前駆体の形成中に形成された化合物であり、得られた触媒担体中に存在する1つ以上の金属に少なくとも1対の電子を供与する。支持供与体もまた存在する。支持供与体は、担体合成中に添加される及び/又は触媒前駆体を構築するプロセス中に形成される試薬であり、内部電子供与体と同様に、マグネシウム表面に結合し、触媒前駆体中に残る。支持供与体は、通常、内部電子供与体よりも小さく(嵩張らず)、触媒担体との配位が弱い。
【0045】
触媒成分は、ハロゲン化によって固体触媒に変換され得る。ハロゲン化は、触媒成分を、支持電子供与体及び/又は内部電子供与体の存在下でハロゲン化剤と接触させることを含む。ハロゲン化は、触媒成分中に存在するマグネシウム部分を、ハロゲン化チタン(ハロゲン化チタンなど)が堆積されているハロゲン化マグネシウム担体に変換する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ハロゲン化中、内部電子供与体は、(1)マグネシウム系担体上のチタンの位置を調節し、(2)マグネシウム及びチタン部分の、それぞれのハロゲン化物への変換を促し、(3)変換中にハロゲン化マグネシウム担体の結晶サイズを調節すると考えられる。
【0046】
ある実施形態では、ハロゲン化剤は、式Ti(ORe)fXhを有するハロゲン化チタンであり、式中、Re及びXは、上記のように定義され、fは、0~3の整数であり、hは、1~4の整数であり、f+hは、4である。ある実施形態では、ハロゲン化剤は、TiCl4である。更なる実施形態では、ハロゲン化は、塩素化又は非塩素化芳香族液体、例えばジクロロベンゼン、o-クロロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、又はキシレンの存在下で行われる。更に別の実施形態では、ハロゲン化は、ハロゲン化剤と塩素化芳香族液体との混合物であって、40~60体積パーセントのハロゲン化剤、例えばTiCl4を含む混合物の使用によって行われる。
【0047】
反応混合物は、ハロゲン化中に加熱され得る。触媒前駆体及びハロゲン化剤は、約10℃未満、例えば約0℃未満、例えば約-10℃未満、例えば約-20℃未満の温度で最初に接触される。初期温度は、一般に、約-50℃超であり、例えば約-40℃超である。触媒前駆体をハロゲン化剤と接触させた後、混合物を初期温度で一定時間、例えば1時間保持することができ、次いで0.1~10.0℃/分の速度で、又は1.0~5.0℃/分の速度で加熱する。内部電子供与体は、ハロゲン化剤と触媒成分との間の最初の接触期間の後に、後で添加され得る。ハロゲン化の温度は、20℃~150℃(又はそれらの間の任意の値若しくは部分範囲)、又は0℃~120℃である。
【0048】
ハロゲン化剤、支持電子供与体、及び内部電子供与体を添加する様式は、触媒前駆体を合成する際に変更してもよい。ある実施形態では、触媒前駆体は、最初に、ハロゲン化剤及び塩素化芳香族化合物を含有する混合物と接触される。得られた混合物を撹拌し、必要に応じて加熱し得る。次に、前駆体を単離又は回収することなく、支持電子供与体及び/又は内部電子供与体を同じ反応混合物に添加する。前述のプロセスは、自動プロセス制御によって制御される様々な成分を添加して、単一の反応器内で行われ得る。
【0049】
一実施形態では、触媒成分は、ハロゲン化剤と反応する前に内部電子供与体と接触される。
【0050】
触媒成分の支持電子供与体及び/又は内部電子供与体との接触時間は、少なくとも-30℃、又は少なくとも-20℃、又は少なくとも10℃から最大150℃、又は最大120℃、又は最大115℃、又は最大110℃の温度で、少なくとも10分、又は少なくとも15分、又は少なくとも20分、又は少なくとも1時間である。
【0051】
一実施形態では、触媒成分、支持電子供与体、内部電子供与体、及びハロゲン化剤は、同時に又は実質的に同時に添加される。ハロゲン化手順は、必要に応じて1回、2回、3回、又はそれ以上繰り返され得る。
【0052】
触媒前駆体に含有されるモノベンゾエート支持供与体は、以下の式を有し、
【0053】
【化3】
式中、R’は、アルキル基、環式基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はそれらの組み合わせを含み、R’’は、1つ以上の置換基を含み、各置換基は、独立して、水素、アルキル基、環式基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はそれらの組み合わせを含み得る。例示的なモノベンゾエート支持供与体としては、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-メチル安息香酸メチル、p-t-ブチル安息香酸エチル、ナフトエ酸エチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、又はエトキシ安息香酸エチルが挙げられる。
【0054】
様々な異なる種類の内部電子供与体が、固体触媒成分に組み込まれ得る。一実施形態では、内部電子供与体は、フェニレン置換ジエステルなどのアリールジエステルである。一実施形態では、内部電子供与体は、以下の化学構造を有し得、
【0055】
【化4】
式中、R
50、R
51、R
52、R
53、R
54、及びR
55の各々は、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、qは、0~12の整数である。
【0056】
一実施形態では、内部電子供与体は、以下の化学構造のうちの1つを有し得、
【0057】
【化5】
式中、R
60~R
73の各々は、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルルであり、qは、0~12の整数である。
【0058】
一実施形態では、内部電子供与体は、以下の化学構造を有し得、
【0059】
【化6】
式中、R
1~R
4は、同じであるか又は異なり、各R
1~R
4は、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル(hydrocarboyl)基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル(hydrocarobyl)、6~20個の炭素を有する置換又は非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、R1~R4のうちの少なくとも1つは、水素ではなく、E
1及びE
2は、同じであるか又は異なり、5~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含む1~20個の炭素原子を有するアルキル、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、6~20個の炭素原子を有するアリール、6~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有し、かつ任意選択でヘテロ原子を含有する不活性官能基からなる群から選択され、X
1及びX
2は、各々、O、S、アルキル基、又はNR
5であり、R
5は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である。
【0060】
一実施形態では、R1及びR4は、各々、1~20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和ヒドロカルビル基であり、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、水素であり、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、5~15個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基を含み、ヒドロカルビル基は、分岐鎖若しくは直鎖構造を有するか、又は5~15個の炭素原子、例えば7~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基、アリール基及び置換アリール基を含み、E1及びE2は、同じであるか又は異なり、1~20個の炭素原子を有するアルキル、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、6~20個の炭素原子を有するアリール、6~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有し、かつ任意選択でヘテロ原子を含有する不活性官能基からなる群から選択され、X1及びX2は、各々、O、S、アルキル基、又はNR5であり、R5は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である。
【0061】
一実施形態では、R1及びR4は、同一であるか、又は非常に類似している。一実施形態では、例えば、R1及びR4は、直鎖ヒドロカルビル基である。例えば、R1及びR4は、C1~C8アルキル基、C2~C8アルケニル基、又はそれらの混合物を含み得る。例えば、一実施形態では、R1及びR4は、両方とも、同じ炭素鎖長を有するか、又は炭素鎖長が約3個以下の炭素原子、例えば約2個以下の炭素原子によって変化するアルキル基を含み得る。
【0062】
一実施形態では、R4は、メチル基であり、R1は、メチル基、エチル基、プロピル基、若しくはブチル基であるか、又はその逆である。別の代替的な実施形態では、R1及びR4の両方が、メチル基であるか、R1及びR4の両方が、エチル基であるか、R1及びR4の両方が、プロピル基であるか、又はR1及びR4の両方が、ブチル基である。
【0063】
上記のR1及びR4基に関連して、一実施形態では、R2又はR3のうちの少なくとも1つは、R1及びR4基よりも大きいか又は嵩高い置換基である。R2又はR3の他方は、水素であり得る。R2又はR3に位置する、より大きいか又は嵩高い基は、例えば、分岐鎖若しくは直鎖構造を有するヒドロカルビル基であり得るか、又は5~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含み得る。シクロアルキル基は、例えば、シクロペニル(cyclopenyl)基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、又はシクロオクチル基であり得る。R2又はR3のいずれかが分岐鎖又は直鎖構造を有する場合、他方で、R2又はR3は、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などであり得る。例えば、R2又はR3は、t-ブチル基、3-ペンチル基、又は2-ペンチル基であり得る。
【0064】
本開示に従って作製される内部電子供与体の更なる例を以下に示す(式I~XII)。以下の構造の各々において、R1~R4は、上記の組み合わせのいずれかの基のいずれかにより置換され得る。
【0065】
【化7】
式(I)では、R
6~R
15は、同じであり得るか又は異なり得る。R
6~R
15の各々は、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、及び1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシル基、ヘテロ原子、並びにそれらの組み合わせから選択され得る。
【0066】
【化8】
式(II)では、X
1及びX
2は、酸素、硫黄、又は窒素含有基であり得る。一実施形態では、例えば、X
1は、酸素であり、X
2は、硫黄である。R
5a及びR
5bは、独立して、アルキル基又はアリール基であり得る。R
5a及びR
5bは、他の実施形態では、個々に、C
1~C
8アルキル基であり得る。
【0067】
【化9】
式(III)では、R
16及びR
17は、独立して、水素又はC
1~C
20ヒドロカルビル基である。上記式では、X
1及びX
2は、酸素、硫黄、又は窒素基であり得る。代替的に、X
1及びX
2のうちの一方又は両方は、1~3個の炭素原子を含有するアルキル基などのヒドロカルビル基であり得る。X
3は、-OR基又は-NR’R’’基であり得、式中、R、R’、又はR’’は、独立して、ハロゲン、リン、硫黄、窒素、又は酸素から選択されるヘテロ原子を任意選択で含有する、C
1~C
20ヒドロカルビル基である。一実施形態では、X
1は、炭素原子であり、X
3は、エチル基である。
【0068】
【化10】
式IVでは、R
5cは、アルキル基又はアリール基であり得る。例えば、R
5cは、C
1~C
8アルキル基であり得る。
【0069】
【0070】
【化12】
上記式では、R
18は、水素若しくは約1~約8個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり得る。
【0071】
【0072】
【化14】
上記式では、R
19、R
20、及びR
21は、同じであり得る又は異なり得、任意選択で、ハロゲン、リン、硫黄、窒素、又は酸素から選択されるヘテロ原子を含有する約1~約15個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択され得る。R
20及びR
21は、同じであり得るか又は異なり得、一緒に縮合されて、1つ以上の環式基を形成し得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」という用語は、分岐鎖若しくは非分岐鎖の飽和若しくは不飽和の、環式、多環式、縮合、又は非環式種、並びにそれらの組み合わせを含む、水素及び炭素原子のみを含有する置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「置換ヒドロカルビル」及び「置換炭化水素」という用語は、1つ以上の非ヒドロカルビル置換基により置換されたヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」は、炭素又は水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、周期表の第IV、V、VI、及びVII族からの非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例としては、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N、O、P、B、S、及びSiが挙げられる。置換ヒドロカルビル基はまた、ハロヒドロカルビル基及びケイ素含有ヒドロカルビル基を含む。本明細書で使用される場合、「ハロヒドロカルビル」基という用語は、1つ以上のハロゲン原子により置換されたヒドロカルビル基を指す。本明細書で使用される場合、「ケイ素含有ヒドロカルビル基」という用語は、1つ以上のケイ素原子により置換されたヒドロカルビル基である。ケイ素原子は、炭素鎖中にあってもよく、又はなくてもよい。
【0075】
支持供与体は、一般に、触媒成分中に、約0.5重量%~約7重量%、例えば約2重量%~約6重量%、例えば約3重量%~約5.5重量%の量で存在する。支持供与体の一部分は、一般に、活性制御剤が添加されると触媒成分から除去される。例えば、活性制御剤が触媒成分中に組み込まれる場合、触媒前駆体中に存在するモノベンゾエートの量と比較して、約1重量%~約20重量%、例えば約4重量%~約16重量%のモノベンゾエート支持供与体が失われ得る。
【0076】
内部供与体は、一般に、触媒成分中に、約3重量%~約25重量%、例えば約5重量%~約12重量%、例えば約8重量%~約17重量%、例えば約10重量%~約15重量%、例えば約12重量%~約14重量%の量で存在する。
【0077】
触媒成分は、一般に、約1重量%~約10重量%、例えば約1.5重量%~約5重量%、例えば約2重量%~約4重量%、例えば約2.5重量%~約3.5重量%の量でチタンを含有する。触媒成分は、一般に、約10重量%~約20重量%、例えば約15重量%~約18重量%の量でマグネシウムを含有する。
【0078】
B.活性制御剤
触媒成分は更に、活性制御剤を含有する。活性制御剤は、炭化水素溶媒中で触媒前駆体を活性制御剤と混合することによって触媒前駆体に添加され得る。次いで、触媒成分が濾別され得る。
【0079】
例えば、一実施形態では、触媒前駆体は、約10℃~約40℃、例えば約15℃~約35℃、例えば約20℃~約30℃の温度で、炭化水素溶媒中で活性制御剤と接触される。炭化水素溶媒は、芳香族若しくは非芳香族溶媒又はそれらの組み合わせを含み得る。ある特定の実施形態では、芳香族炭化水素溶媒は、トルエン及びC2~C20アルキルベンゼンから選択される。ある特定の実施形態では、非芳香族炭化水素溶媒は、ヘキサンなどのシクロアルキル化合物である。
【0080】
活性制御剤は、Ti 1モル当たり約0.01~約1.0モル、例えばTi 1モル当たり約0.05~約0.7モル、例えばTi 1モル当たり約0.08~約0.6モル、例えばTi 1モル当たり約0.1~約0.5モルの量で添加され得る。活性制御剤は、一般に、触媒成分の約0.1重量%~約20重量%の量で触媒成分中に存在する。
【0081】
活性制御剤は、(a)Si-O基を含有する有機ケイ素化合物、(b)C4~C30脂肪酸エステルからの有機エステル若しくはC4~C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステル、(c)アルキル基を含有する有機アルミニウム化合物、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0082】
本発明者らは、活性制御剤が触媒前駆体に添加されると、活性制御剤がハロゲン化物含有マグネシウム化合物に化学的に結合するようになることを発見した。ハロゲン化物含有マグネシウム化合物へ結合する際、ACAは、支持供与体の部分的除去を引き起こし、内部供与体とハロゲン化物含有マグネシウム担体との間の配位の変化を引き起こす。
【0083】
Si-O基を含有する有機ケイ素化合物は、以下の化学式によって表され得、
RnSi(OR’)4-n
式中、各R及びR’は、独立して、炭化水素基、例えば水素、アルキル、又はアリール基を表し、nは、0≦n<4である。
【0084】
有機ケイ素化合物の具体的な例としては、限定されないが、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビス-o-トリジメトキシシラン、ビス-m-ジメトキシシラン、ビス-p-トリジメトキシシラン、ビス-p-トリジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ガンマ-クロロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、イソ-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ガンマ-アンニオプロピルトリエトキシシラン(amniopropyltriethoxysilane)、コロトリエトキシシラン(cholotriethoxysilane)、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、エチルシリケート、ブチルシリケート、トリメチルフェノキシシラン、及びメチルトリアリルオキシシランが挙げられる。
【0085】
一実施形態では、触媒成分は、Si-O基を含有する有機ケイ素化合物を、触媒成分の約0.1重量%~約5重量%、例えば約0.2重量%~約4重量%、例えば約0.15重量%~約2重量%の量で含有する。
【0086】
別の実施形態では、ACAは、C4~C30脂肪酸エステルである。好適なC4~C30脂肪族酸エステルの非限定的な例としては、脂肪族C4~30モノカルボン酸のC1~20アルキルエステル、脂肪族C8~20モノカルボン酸のC1~20アルキルエステル、脂肪族C4~20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1~4アルキルモノ及びジエステル、脂肪族C8~20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1~4アルキルエステル、及びC2~100(ポリ)グリコール又はC2~100(ポリ)グリコールエーテルのC4~20モノ又はポリカルボキシレート誘導体が挙げられる。一実施形態では、C4~C30脂肪酸エステルは、ミリスチン酸イソプロピル、吉草酸ペンチル、及び/又はセバシン酸ジ-n-ブチルであり得る。
【0087】
別の実施形態では、活性制御剤は、ポリ(アルキレングリコール)エステルである。好適なポリ(アルキレングリコール)エステルの非限定的な例としては、ポリ(アルキレングリコール)モノ-又はジアセテート、ポリ(アルキレングリコール)モノ-又はジ-ミリステート、ポリ(アルキレングリコール)モノ-又はジ-ラウレート、ポリ(アルキレングリコール)モノ-又はジ-オレエート、グリセリルトリ(アセテート)、C2~40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリ-エステル、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、ポリ(アルキレングリコール)エステルのポリ(アルキレングリコール)部分は、ポリ(エチレングリコール)である。
【0088】
用いられる場合、C4~C30脂肪酸エステル又はC4~C30脂肪酸のポリ(アルキレングリコール)エステルは、触媒成分中に約0.1重量%~約15重量%、例えば約0.5重量%~約14重量%、例えば約1重量%~約12重量%の量で存在する。
【0089】
一実施形態では、活性制御剤は、アルキル基を含有する有機アルミニウム化合物である。そのような有機アルミニウム化合物の例としては、以下の式のものが挙げられ、
AlRnX3-n
式中、Rは、独立して、通常1~約20個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、0<n≦3である。
【0090】
有機アルミニウム化合物の具体的な例としては、限定されないが、トリアルキルアルミニウム、例えばトリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、及びトリヘキシルアルミニウム;トリアルケニルアルミニウム、例えばトリイソプレニルアルミニウム;ハロゲン化ジアルキルアルミニウム、例えば塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジブチルアルミニウム、及び臭化ジエチルアルミニウム;アルキルアルミニウムセスキハライド、例えばエチルアルミニウムセスキクロライド、ブチルアルミニウムセスキクロライド、及びエチルアルミニウムセスキブロマイド;二ハロゲン化アルキルアルミニウム、例えば二塩化エチルアルミニウム、二塩化プロピルアルミニウム、及び二臭化ブチルアルミニウム;ジアルキルアルミニウム水素化物、例えばジエチルアルミニウム水素化物、及びジブチルアルミニウム水素化物;並びに他の部分水素化アルキルアルミニウム、例えばエチルアルミニウム二水素化物、及びプロピルアルミニウム二水素化物が挙げられる。
【0091】
有機アルミニウム化合物を用いる場合、有機アルミニウム化合物は、一般に、触媒成分中に約0.1重量%~約5重量%、例えば約0.15重量%~約2重量%、例えば約0.2重量%~約1.5重量%の量で存在する。
【0092】
C.重合
本開示に従うオレフィン重合方法は、本明細書に記載される固体触媒成分、有機アルミニウム化合物などの共触媒、及び任意選択で有機ケイ素化合物などの外部電子供与体を含む触媒系の存在下で実行される。一般的に言えば、CH2=CHRであり、式中、Rが水素又は1~12個の原子を有する炭化水素ラジカルである、オレフィンは、ポリマー生成物を形成するのに好適な条件下で触媒系と接触される。本開示で使用される重合という用語は、ヘテロ相コポリマーを生成するために使用されるランダム共重合又は多段階共重合などの共重合を含み得る。重合プロセスは、既知の技術、例えば、流動床又は撹拌床反応器における気相、希釈剤として不活性炭化水素溶媒を使用するスラリー重合、又は反応物及び希釈剤として液体モノマーを使用するスラリー重合に従って実行され得る。重合プロセスはまた、組み合わせ又はハイブリッドプロセス、例えば気相反応器に接続されたバルクプロピレン液体ループ反応器であり得る。重合は、一般に20~120℃の温度で実施され、より好ましくは約50~90℃で実行される。
【0093】
一実施形態では、触媒成分又は触媒成分の一部分は、重合反応器ゾーンに供給される前に予備接触される。予備接触工程は、典型的には、重合反応器ゾーンよりも高い濃度及び低い温度条件で行われる。別の実施形態では、固体触媒成分は、別々に反応器に供給され、重合条件下で共触媒及び外部電子供与体と接触させられ得る。有機アルミニウム共触媒は、好ましくは、プロ触媒中のチタンのモル数に対して約1~1000、好ましくは約100~600、より好ましくは約45~300のモル量で使用される。外部電子供与体は、有機アルミニウム共触媒のモル数に対して、好ましくは約0.005~1.0、より好ましくは約0.01~0.5のモル量で使用される。高レベルの外部電子供与体では、キシレン可溶物によって測定されるように、非晶質ポリプロピレンを更に低減させる能力が低下し、触媒活性が減少し得る。本開示のプロ触媒は、外部電子供与体に供給する還元が低下する点に達する前に、低いキシレン可溶物レベルに達し得る。場合によっては、1%以下の非常に低いXSが、達成可能である。
【0094】
ある実施形態では、予備重合工程(予備重合)は、主重合の前に行われる。別の実施形態では、主重合は、予備重合工程を含まずに実行される。予備重合を使用する場合、予備重合はバッチ式で行われ、続いて予備重合触媒が重合プロセスに供給され得る。代替的に、触媒は、連続重合プロセスに供給され得、予備重合工程がプロセスの一部として行われ得る。予備重合温度は、好ましくは-20~+100℃、より好ましくは-20~+80℃、最も好ましくは0~+40℃の範囲である。予備重合工程を行うことによって、触媒活性、立体選択性、粒子断片化、及び得られるポリマー形態を改善することが可能である。
【0095】
水素は、典型的には、ポリマー分子量を制御するために連鎖移動剤として添加される。異なる重合プロセスは、より低いポリマー分子量に添加され得る水素の量に対して異なる制限を有する。本開示のプロ触媒は、水素に対する増加した感受性を有し、したがって、プロセスの分子量制御能力を改善し、生成され得るポリマーの種類を拡大する。
【0096】
本開示は、以下の実施例を参照してよりよく理解され得る。
【実施例】
【0097】
以下のパラメータは、以下のように定義される。
【0098】
触媒粒子形態は、それから生成されたポリマー粒子形態を示す。ポリマー粒子形態の3つのパラメータ(真球度、対称性、及びアスペクト比)は、Camsizer機器を使用して決定され得る。Camsizerの特徴:
真球度
【0099】
【数1】
Pは、粒子投影の測定された周囲/円周であり、Aは、粒子投影によって覆われた、測定された面積である。理想的な球の場合、SPHTは、1と定義される。そうでない場合、値は、1未満である。
【0100】
対称性は、次のように定義され、
【0101】
【数2】
式中、r
1及びr
2は、面積の中心から測定方向の境界までの距離である。非対称粒子の場合、Symmは、1未満である。面積の中心が粒子の外側にある場合、すなわち、
【0102】
【数3】
である場合、Symmは0.5 x
Ma=r
1+r
2未満であるか、又は「Symm」は、異なる方向からの対称性値の測定された一連の最小値である。
【0103】
アスペクト比:
【0104】
【数4】
式中、x
c min及びx
Fe maxは、測定された一連のx
c及びx
Fe値からのものである。
【0105】
アスペクト比(「B/L3」)などの触媒形態特徴は、ポリマー形態の特徴付けに使用され得る。
【0106】
「D10」は、粒子の10%がそのサイズ未満である粒子のサイズ(diameter、直径)を表し、「D50」は、粒子の50%がそのサイズ未満である粒子のサイズを表し、「D90」は、粒子の90%がそのサイズ未満である粒子のサイズを表す。「Span」は、粒子の粒径の分布を表す。この値は、以下の式に従って計算することができる。
Span=(D90-D10)/D50
【0107】
BDは、嵩密度(bulk density)の略語であり、g/mlの単位で報告される。
【0108】
CEは、触媒効率(catalyst efficiency)の略語であり、1時間の重合中の触媒1グラム当たりのポリマーKg(Kg/g)の単位で報告される。
【0109】
MFRは、メルトフローレート(melt flow rate)の略語であり、g/10分の単位で報告される。MFRは、ASTM試験D1238 Tに従って測定される。
【0110】
EBは、安息香酸エチル(ethyl benzoate)の略語である。
【0111】
Ti、Mg、及びDはそれぞれ、組成物中のチタン、マグネシウム、及び内部供与体の各々についての重量パーセント(重量%)である。
【0112】
XSは、キシレン可溶物(xylene soluble)の略語であり、重量%の単位で報告される。
【0113】
slは、標準リットル(standard liter)の略語である。
【0114】
実施例1.触媒成分(1)(比較)の調製。MgCl2(13.2g)、トルエン(59.5g)、リン酸トリ-n-ブチル(36.3g)、及びエピクロロヒドリン(14.25g)を組み合わせ、窒素雰囲気下で8時間、600rpmで撹拌しながら60℃に加熱した。室温まで冷却した後、トルエン(140g)を、安息香酸エチル(3.5g)及びオルトケイ酸テトラエチル(6g)とともに添加した。次いで、混合物を-25℃に冷却し、温度を-25℃に維持しながら、600rpmの撹拌下でTiCl4(261g)をゆっくり添加した。添加が完了した後、温度を1時間維持し、その後30分にわたって35℃に加温し、その温度で30分間保持し、次いで温度を30分にわたって85℃に上昇させ、30分間保持した後、濾過によって固体沈殿物を収集した。固体沈殿物をトルエン(各洗浄200ml)で3回洗浄した。次いで、得られた沈殿物を、トルエン(264ml)と組み合わせた。この混合物を撹拌下で105℃に加熱し、続いてトルエン(10g)中に内部電子供与体2.4g)を添加した。内部電子供与体は、tert-ブチル(3-メチル-5-t-ブチルカテコールジベンゾエート)(CDB-1)であった。
【0115】
105℃での加熱を1時間続けた後、濾過によって固体を収集した。このプロセスは、トルエン中でTiCl4と組み合わせること、及び105℃で加熱し、再び110℃で加熱して、触媒成分(1)を形成することを含んでいた。触媒成分(1)をヘキサン(各洗浄200ml)で4回洗浄し、各洗浄について60~65℃で10分間撹拌した。
【0116】
実施例2.触媒成分(2)の調製。2.00グラムの乾燥触媒成分(1)を、撹拌棒を有する50mLバイアルに添加した。20グラムのヘキサン及び0.295gの10%ジシクロペンチルジメトキシシラン(D供与体)を周囲温度で添加した。混合物を周囲温度で1時間撹拌した。液体を濾過し、固体をヘキサンで3回洗浄した。固体を乾燥させ、触媒成分(2)を形成した。
【0117】
実施例3.触媒成分(3)の調製。1.00グラムの乾燥触媒成分(1)を、撹拌棒を有する50mLバイアルに添加した。20グラムのヘキサン及び4.29gの10%D供与体を周囲温度で添加した。混合物を周囲温度で1時間撹拌した。液体を濾過し、固体をヘキサンで3回洗浄した。固体を乾燥させ、触媒成分(3)を形成した。触媒成分1~3の組成を表1に提供する。
【0118】
【0119】
示されるように、安息香酸エチルの量は、触媒成分のMgCl2表面上のD供与体による置換に起因して、非処理触媒成分(1)と比較して実施例2及び3において低減する。実施例3においてD供与体の量を増加させると、安息香酸エチルがより多く低減した。内部供与体CDB-1の量は変化しなかった。
【0120】
実施例8~16は、内部供与体としてCDB-2、支持供与体として安息香酸エチル、及びACAとしてジシクロペンチルジメトキシシラン(D供与体)又はシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(C供与体)のいずれかを含有する触媒成分の調製及び組成を例示する。実施例は、ACAでの処理後の触媒成分組成の変化を示す。例えば、ACAは、内部電子供与体CDB-2の量を、比較例4の触媒成分と比較して同じに保ちながら、支持電子供与体を部分的に置換する。
【0121】
実施例4~7.触媒成分(4~7)(比較)の調製。触媒成分4、5、6、及び7は、CDB-2を内部供与体(2.5~3.0g)として使用し、TiCl4処理条件が可変であったことを除いて、実施例1に基づいて調製した。CDB-2は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0261273号の段落52に記載されているカテコールジベンゾエートである。
【0122】
実施例8.触媒成分(8)の調製。触媒成分(4)を、実施例2に記載の条件下で、Ti 1モル当たり0.1モルの量のD供与体で処理した。
【0123】
実施例9.触媒成分(9)の調製。触媒成分(4)を、実施例2に記載の条件下で、Ti 1モル当たり0.5モルの量のD供与体で処理した。触媒成分4、8、及び9の組成を表2に提供する。
【0124】
【0125】
実施例10.触媒成分(10)の調製。触媒成分(5)を、実施例2に記載の条件下で、Ti 1モル当たり0.1モルの量のD供与体で処理した。
【0126】
実施例11.触媒成分(11)の調製。触媒成分(5)を、実施例2に記載の条件下で、Ti 1モル当たり0.2モルの量のD供与体で処理した。触媒成分5、10、及び11の組成を表3に提供する。
【0127】
【0128】
実施例12.触媒成分(12)の調製。触媒成分(6)を、実施例2に記載の条件下で、Ti 1モル当たり0.1モルの量のD供与体で処理した。
【0129】
実施例13.触媒成分(13)の調製。触媒成分(6)を、実施例2に記載の条件下で、Ti 1モル当たり0.1モルの量のシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(C供与体)で処理した。触媒成分6、12、及び13の組成を表4に提供する。
【0130】
【0131】
実施例14.触媒成分(14)の調製。触媒成分(7)を、実施例2に記載の条件下で、Ti 1モル当たり0.1モルの量のD供与体で処理した。
【0132】
実施例15.触媒成分(15)の調製。触媒成分(7)を、実施例2に記載の条件下で、Ti 1モル当たり0.15モルの量のD供与体で処理した。
【0133】
実施例16.触媒成分(16)の調製。触媒成分(7)を、実施例2に記載の条件下で、Ti 1モル当たり0.1モルの量のC供与体で処理した。触媒成分7、14、15、及び16の組成を表5に提供する。
【0134】
【0135】
実施例17.触媒成分(17)(比較)の調製。第2の電子供与体であるジエーテル(3,3-ビス(メトキシメチル)-2,6-ジメチルヘプタン)(DEMH)を添加し、CDB-1の量を低減させて、実施例1に基づいて触媒成分(17)を調製した。
【0136】
実施例18.触媒成分(18)の調製。触媒成分(17)を、実施例2に記載の条件下で、D供与体と反応させた。
【0137】
【0138】
実施例19.触媒成分(19)(比較)。W.R.から入手可能なCONSISTA(登録商標)触媒成分Graceを触媒成分19として使用した。
【0139】
実施例20.触媒成分(20)の調製。触媒成分(19)を、実施例2に記載の条件下で、D供与体で処理した。
【0140】
バルクプロピレン重合
上記実施例の触媒成分を使用してポリプロピレンを生成した。以下の方法を使用した。重合を行う前に、反応器を窒素流下、100℃で30分間焼成した。反応器を30~35℃に冷却し、共触媒(1.5mlの25重量%トリエチルアルミニウム(TEAl))、C供与体(シクロヘキシルメチジメトキシシラン(cyclohexylmethydimethoxysilane))(1ml)、水素(3.5psi)、液体プロピレン(1500ml)をこの順序で反応器に添加した。鉱油スラリーとして装填された触媒(5~10mg)を、高圧窒素を使用して反応器に押し込んだ。重合を70℃で1時間実行した。重合後、反応器を22℃に冷却し、大気圧に排気し、ポリマーを収集した。
【0141】
重合の1時間目及び2時間目のバルク重合結果を使用して、処理触媒及び非処理触媒の触媒性能を比較した。重合の1時間目及び2時間目における触媒活性を、各時間の間に収集された生成ポリマーに基づいて計算した。
【0142】
表7~11の実施例は、プロピレン重合における触媒成分の性能を実証する。触媒成分の性能を、ACAを含まずに調製した比較例と比較する。触媒活性を、重合の1時間目及び2時間目の間に測定した。表中の結果は、ACAを含む触媒の触媒活性が、比較触媒成分と比較して、重合の1時間目で低減するが、重合の2時間目を通して高くかつ安定したままであることを示す。ACAを含む触媒の活性の低減は可変であり、使用される触媒成分及びACAの性質に依存する。触媒寿命に対するD供与体の強い効果が、C供与体と比較して観察された。各触媒成分の調製に使用されるACAの量は、触媒活性に影響を及ぼす。例えば、1時間目及び2時間目の両方における触媒活性は、ACAの量が増加するにつれて低減する。
【0143】
観察された触媒寿命の改善は、触媒のMgCl2表面上のACAの配位がTi活性中心の周りの内部供与体の配位を変化させ、非常に活性な触媒中心を部分的に失活させ、重合プロセスの2時間目の触媒寿命をより長くするという事実によって説明され得る。
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
実施例34.アルミニウムを含有する触媒成分(触媒成分21~27)の調製。触媒成分(4)を様々な量のEt3Al及びD供与体で処理した。使用したACAの量及び得られた触媒の組成を表12に示す。示されるように、支持供与体(安息香酸エチル)の量は、触媒成分(4)と比較して低減され、触媒成分は、アルミニウムを含有する。
【0150】
【0151】
実施例35~41.アルミニウムを含有する触媒成分による重合。触媒成分21~27を実施例21~33と同様に試験した。結果を表13に示す。
【0152】
実施例35~39は、異なる量のAlを含有する触媒成分による触媒性能を実証しており、重合の1時間目及び2時間目の間の触媒活性の異なる分布をもたらした。これらの実施例は、比較例23と比較して、触媒活性のより良好な分布及び改善されたポリマー形態(嵩密度及び真球度データ)を示す。
【0153】
実施例40及び41は、2つのACA(D供与体及びTEAl)を含有する触媒成分(26)及び(27)による触媒性能を実証する。
【0154】
【0155】
実施例42~58.ACAを含む2種類の球状触媒成分を調製し、試験した。実施例42~50で使用した第1の種類を、米国特許出願公開第2020/0283553号に記載されているようにエマルジョン方法を使用して作製した担体とともに作製した。触媒成分29~31は、ACA及び内部供与体としてのCDB-2と組み合わせて担体を使用した。
【0156】
実施例42.球状触媒成分(28)(比較)。球状触媒成分(28)を、米国特許出願公開第2020/0283553号に記載されているようにマグネシウムアルコキシドに基づいて作製した。
【0157】
実施例43.球状触媒成分(29)の調製。触媒成分(28)をTi/D=0.1で実施例2に記載したようにD供与体で処理した。
【0158】
実施例44.球状触媒成分(30)の調製。触媒成分(28)をTi/D=0.2で実施例2に記載したようにD供与体で処理した。
【0159】
実施例45.球状触媒成分(31)の調製。触媒成分(28)をEt3Al(Ti/Al=0.5)で処理した。触媒成分28~31の組成を表14に提供する。
【0160】
実施例46~48.実施例47及び48は、球状触媒成分(29)及び(31)によるバルクプロピレン重合を実証する。実施例は、実施例46と比較して、これらの触媒により生成されたポリマー粒子の改善された嵩密度を示した。結果を表15に提供する。
【0161】
【0162】
【0163】
実施例49及び50.実施例50では、触媒成分(31)を「応力試験」を使用して試験し、この応力試験では、触媒を60℃で重合反応器に注入して、予備重合段階なしの触媒性能を比較した。これらの条件下で生成されたポリマー粒子の嵩密度を、触媒成分(28)(比較例49)と比較する。
【0164】
【0165】
実施例51~58で使用した第2の種類の球状触媒を、内部供与体としてCDB-2を含む球状MgCl2nEtOH担体に基づいて調製した。
【0166】
実施例51.球状触媒成分(32)(比較)。球状触媒成分(32)を、参照により本明細書に組み込まれるPCT国際公開第2021/055430号に記載されているように、球状MgCl2n nEtOH及びCDB-2に基づいて作製した。
【0167】
実施例52.球状触媒成分(33)及び(34)の調製。触媒成分(33):触媒成分32を実施例2に記載したようにD供与体(Ti/D=1.0/0.2)で処理した。触媒成分(34):触媒成分32をヘキサン中のEt3Al(Ti/Al=1.0/0.8)で周囲温度で1時間処理した。固体をヘキサンで洗浄し、乾燥させた。触媒成分(33)及び(34)を、予備接触及び予備重合工程を含む標準バルクプロピレン重合(表17)において、及び上記の「応力」試験(表18)下で試験した。触媒性能を、ACAを含有しない比較触媒成分(32)と比較した。
【0168】
実施例54、55、57、及び58は、D供与体及びEt3Alで作製された触媒成分により生成されたポリマーの嵩密度及び真球度の改善を実証する。
【0169】
【0170】
【0171】
実施例59~63.別のACA、ミリスチン酸イソプロピル(iso-propylmyristate、IPM)を使用した。
【0172】
実施例59.触媒成分(35)の調製。ミリスチン酸イソプロピル(IPM)(3.0g)を添加して実施例1を繰り返した後に、CDB-1を添加した。
【0173】
実施例60.触媒成分(36)の調製。TiCl4処理の最終段階でミリスチン酸イソプロピル(IPM)(3.0g)を添加して、実施例1を繰り返した。
【0174】
実施例61.触媒成分(37)の調製。TiCl4処理の最終段階でミリスチン酸イソプロピル(IPM)(3.0g)を添加して、実施例4を繰り返した。
【0175】
実施例62.触媒成分(38)の調製。触媒成分(6)(3.00g)をヘキサン中のIPM(0.525g)で周囲温度で1時間処理した。固体をヘキサンで洗浄し、乾燥させた。
【0176】
実施例63.触媒成分(39)の調製。触媒成分(27)(1.00g)をヘキサン中のD供与体(ヘキサン中0.143gの10%溶液)で周囲温度で1時間処理した。固体をヘキサンで洗浄し、乾燥させた。
【0177】
実施例64~66.触媒成分(35)~(39)をバルクプロピレン重合において試験して、重合の1時間目及び2時間目における触媒活性を評価した。実施例64及び65は、ACAとしてIPMで調製されたCDB-1及び安息香酸エチルを含有する触媒成分(35)及び(36)による重合を実証する。IPMの含浸方法は、重合の1時間目及び2時間目の間の触媒活性に影響を及ぼすことが見出された。例えば、実施例65は、重合動態の劇的な改善を示し、1時間目の触媒活性よりも2時間目の触媒活性が高い。実施例21は比較例として使用することができ、重合の1時間目でより高い触媒活性が観察される。
【0178】
異なる方法で調製されたCDB-2、安息香酸エチル、及びIPMを含有する触媒成分(37)及び(38)は、異なる重合挙動を呈する。触媒成分(34)による実施例66は、比較例29と比較して、重合の1時間目及び2時間目において高い触媒活性を実証し、ほぼ平坦な動態を有する。
【0179】
触媒成分(39)は、2つのACA(D供与体及びIPM)で調製した。実施例58は、触媒成分(39)の重合挙動を実証し、触媒活性の低減を示すが、重合の1時間目よりも2時間目に高い触媒活性を維持し、これは、多重反応器重合プロセスに利益を提供する。
【0180】
【0181】
【0182】
高い重合温度で触媒活性を制御するためのACAを含む触媒成分は、実施例69~70に記載されている。高い重合温度での触媒活性の低減(自己消滅性)は、非制御重合及び重合反応器の閉塞を防止するための重要な触媒特徴である。
【0183】
本明細書に記載されるACA、例えばC4~C30脂肪酸の有機エステル、C4~C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステル、有機ケイ素化合物、及びアルキルアルミニウム化合物もまた、自己消滅性を提供し得ることが見出された。ACAは、この効果を達成するために単独で又は組み合わせて使用され得る。例えば、以下に示すように、C4~C30脂肪酸又はC4~C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルをACAとして単独で使用して、自己消滅性を実証することができる。
【0184】
ミリスチン酸イソプロピルを含有する触媒成分調製の実施例は、実施例35~39に記載されている。
【0185】
吉草酸ペンチル(pentyl valerate、PV)を含有する触媒成分40は、IPMの代わりにPV(MgCl21g当たり0.23g)を使用することを除いて、触媒成分35と同じ手順で調製する。
【0186】
ベンゾエート支持供与体及び内部供与体を含有する触媒成分は、いくらかの自己消滅性(高い重合温度での触媒活性の低減)を示す。しかしながら、触媒成分中のベンゾエート支持供与体、内部供与体、及びACAの組み合わせが、触媒の自己消滅性を増加させることが観察された。
【0187】
自己消滅性を試験するために、重合をバルクプロピレン重合反応器中で70、80、及び90℃で30分間行った。90℃及び80℃での触媒活性の比率を使用して、触媒の自己消滅性を比較した。
【0188】
実施例69~70は、高い重合温度における触媒成分挙動を例示する(表19)。実施例69は、触媒成分1を使用し、実施例70は、ACAとしてPVを含有する触媒成分40を使用する。実施例70は、実施例69と比較して、90℃での触媒活性のより高い低減(15%)を示す。
【0189】
【0190】
実施例71.処理触媒及び非処理触媒における供与体配位。供与体配位に対するACAの組み込みの効果を、ACAを含む触媒成分と含まない触媒成分とのFTIRスペクトルを比較することによって研究した。
図1は、CDB-2供与体の配位に対するD供与体の効果を例示する。1700cm-1の領域における広いピークは、CDB-2供与体及び安息香酸エチルからのC=O基に関連する。内部供与体の配位における特異的な差異を理解するために、ピークを、MgCl
2表面上の異なる割り当てられた錯体(供与体/Q4-及び供与体/Q5-MgCl2)のいくつかのピークにデコンボリューションした(表20)。
【0191】
CDB-2 Q5/Q4-MgCl2錯体の比率及びFTIRスペクトルにおけるC=O基の最大頻度を、触媒寿命に対するそれらの効果について分析した(重合プロセスの1時間目と2時間目との間の触媒活性の分布)。
【0192】
Q5/Q4比率の増加(弱い錯体の濃度の増加)は、重合の2時間目における触媒活性の増加をもたらすことが見出された。
【0193】
【0194】
ある特定の実施形態を例示及び記載してきたが、以下の特許請求の範囲において定義されるようなそのより広い態様における技術から逸脱することなく、当業者によって、その中で変更及び修正が行われ得ることが理解されるべきである。
【0195】
本明細書に例示的に記載される実施形態は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素(複数可)、限定(複数可)の非存在下で好適に実践され得る。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、広範囲に、かつ限定せずに読み取られるべきである。加えて、本明細書で用いられる用語及び表現は、限定的なものではなく説明の用語として使用されており、そのような用語及び表現の使用において、示され、記載される特徴又はそれらの一部分のいずれの均等物も除外することを意図していないが、様々な修正が特許請求される技術の範囲内で可能であることが認識される。加えて、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、具体的に列挙されたこれらの要素、並びに特許請求される技術の基本的な特徴及び新規の特徴に物質的に影響しないこれらの追加の要素を含むことが理解されよう。「からなる(consisting of)」という語句は、指定されていないあらゆる要素を除外する。
【0196】
本開示は、本出願に記載される特定の実施形態に関して限定されるものではない。当業者には明らかなように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変形が行われ得る。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に均等な方法及び組成物は、前述の記載から当業者には明らかであろう。そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲の範疇内に収まることが意図される。本開示は、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の条件によってのみ限定されるものである。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物学的系に限定されず、これらは当然変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのものに過ぎず、限定するものとしては意図されていないことも理解されたい。
【0197】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群に関して記載される場合、当業者は、本開示が、それによって、マーカッシュ群の任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループに関しても記載されることを認識するであろう。
【0198】
当業者によって理解されるように、ありとあらゆる目的のために、特に書面による説明を提供するという観点で、本明細書に開示される全ての範囲は、ありとあらゆる可能性のある部分範囲及びその部分範囲の組み合わせも包含する。いずれの列記された範囲も、同じ範囲が、少なくとも二等分、三等分、四等分、五等分、十等分などに細分されることを十分に記載し、それを可能にすることが簡単に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で考察される各範囲は、下部3分の1、中部3分の1、及び上部3分の1などに容易に細分され得る。また、当業者によって理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「~超の(~を超える)」、「未満」などの全ての文言は、列挙される数を含み、かつその後、上で考察した部分範囲に細分され得る範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲は、各個々のメンバーを含む。
【0199】
本明細書において参照される全ての刊行物、特許出願、発行済み特許、及び他の文献は、各個々の刊行物、特許出願、発行済み特許、又は他の文献が、参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように、参照によって本明細書に組み込まれる。参照によって組み込まれる記載内容に含まれる定義は、それらが本開示における定義に矛盾する限りにおいて除外される。
【0200】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載される。
【国際調査報告】