(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】コバルト錯体によって触媒されるヒドロシリル化法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/08 20060101AFI20240905BHJP
C07F 15/06 20060101ALI20240905BHJP
C07F 19/00 20060101ALI20240905BHJP
C07F 7/10 20060101ALI20240905BHJP
C07F 9/58 20060101ALI20240905BHJP
C08G 77/08 20060101ALI20240905BHJP
C08K 3/11 20180101ALI20240905BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240905BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20240905BHJP
C08K 5/50 20060101ALI20240905BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20240905BHJP
B01J 31/24 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07F7/08 W
C07F15/06
C07F19/00
C07F7/10 F
C07F9/58 B
C08G77/08
C08K3/11
C08L83/05
C08L83/07
C08K5/50
C08K5/05
B01J31/24 Z
C07F7/08 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514023
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 FR2022000077
(87)【国際公開番号】W WO2023031525
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエス
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES France SAS
(71)【出願人】
【識別番号】524077209
【氏名又は名称】セペウ・リヨン
【氏名又は名称原語表記】CPE LYON
【住所又は居所原語表記】43 BOULEVARD DU 11 NOVEMBRE 1918,69100 VILLEURBANNE FRANCE
(71)【出願人】
【識別番号】506369944
【氏名又は名称】サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】523165352
【氏名又は名称】ユニヴェルスィテ クラウド ベルナール リヨン 1
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス・ドロルム
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ミルガレ
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーヌ・ブラン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・モンテーユ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・レイノー
(72)【発明者】
【氏名】マガリ・プイエ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H049
4H050
4J002
4J246
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169AA11
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC67A
4G169BC67B
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4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE26A
4G169BE26B
4G169BE27A
4G169BE32A
4G169BE32B
4G169BE36A
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169CB25
4G169CB62
4G169CB80
4G169DA04
4G169FA01
4G169FB05
4G169FC08
4H049VN01
4H049VP02
4H049VQ35
4H049VR23
4H049VR51
4H049VU33
4H049VU34
4H049VW02
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB40
4J002CP04X
4J002CP12X
4J002DB006
4J002EC008
4J002EU047
4J002EW017
4J002FD156
4J002FD207
4J002FD208
4J002GT00
4J246AA11
4J246AB01
4J246BA020
4J246BA02X
4J246BB020
4J246BB021
4J246BB02X
4J246BB142
4J246BB14X
4J246CA010
4J246CA01U
4J246CA01X
4J246CA240
4J246CA24X
4J246CA340
4J246CA34U
4J246CA34X
4J246FA221
4J246FA321
4J246FA431
4J246FC131
(57)【要約】
本発明は、不飽和化合物を、少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物でヒドロシリル化するための方法であって、式(3):R’OH(式中、R’は、水素原子を表し、又はR’は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、アリールアルキル基及びシリル基よりなる群から選択される。)を有する化合物(E)の存在下で有機コバルト化合物によって触媒する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケン官能基及びアルキン官能基から選択される少なくとも1個の官能基を含む不飽和化合物Aを、少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物Bでヒドロシリル化するための方法であって、前記方法は、前記不飽和化合物Aと、前記化合物Bと、次式(1)のコバルト化合物C:
[Co(N(SiR
3)
2)
x]
y (1)
(式中、
・記号Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、又は1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
・x=1、2又は3であり、
・y=1又は2である。)と、
次式(2)の化合物D:
【化1】
(式中、
・A
1、A
2、A
3及びA
4は、互いに独立して、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、ハロゲン及び式OA
9(ここで、A
9は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択され、
・A
5及びA
6は、互いに独立して、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、及び7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基から選択され、
・A
7及びA
8は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式OA
10(ここで、A
10は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択される。)と、
次式(3)の化合物E:
R’-OH (3)
(式中、R’は、水素原子を表し、又はR’は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式Si(A
11)
3(ここで、各A
11は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。)のシリル基よりなる群から選択される。)と
を接触させることからなる工程を含む方法。
【請求項2】
前記化合物Eが水である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物Eが次式(3):
R’-OH (3)
(式中、R’は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式Si(A
11)
3(ここで、各A
11は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。)のシリル基よりなる群から選択される。)
のアルコール又はシラノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物Eが、0.1~500、より好ましくは0.5~100の(化合物E)/(コバルト化合物Cにより与えられるCo元素)モル比で存在する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記コバルト化合物Cが次式:
[Co(N(Si(CH
3)
3)
2)
2]
y
(式中、yは1又は2に等しい。)
によって表される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記化合物Dが次式(2):
【化2】
(式中、
・A
1、A
2、A
3及びA
4は、水素原子であり、
・A
5及びA
6は、水素原子であり、
・A
7及びA
8は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式OA
10(ここで、A
10は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択され、好ましくは、A
7及びA
8は、t-ブチル、イソプロピル、メチル、エチル、フェニル及びシクロヘキシル基から選択される。)
によって表される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記不飽和化合物Aがオルガノポリシロキサンではなく、かつ、2~40個の炭素原子、より好ましくは2~12個の炭素原子を含み、芳香環の一部ではない1個以上のアルケン又はアルキン不飽和を含み、ハロゲン原子により1以上置換されていてよく、1個以上の炭素原子がヘテロ原子、典型的には酸素原子、窒素原子又はケイ素原子により置換されていてもよい炭化水素化合物から選択される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記化合物Eが0.1~100、好ましくは0.1~50、さらに好ましくは0.5~15の(化合物E)/(コバルト化合物Cによって与えられるCo元素)モル比で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記不飽和化合物Aが1個以上のアルケン官能基、好ましくは少なくとも2個のアルケン官能基を含むオルガノポリシロキサン化合物である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記化合物Eが0.5~300、好ましくは5~100の(化合物E)/(コバルト化合物Cによって与えられるCo元素)モル比で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アルケン官能基及びアルキン官能基から選択される少なくとも1個の官能基を含む少なくとも1種の不飽和化合物Aと、少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物Bと、次式(1)のコバルト化合物C:
[Co(N(SiR
3)
2)
x]
y (1)
(式中、
・記号Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、又は1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
・x=1、2又は3であり、
・y=1又は2である。)と、
次式(2)の化合物D:
【化3】
(式中、
・A
1、A
2、A
3及びA
4は、互いに独立して、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、ハロゲン及び式OA
9(ここで、A
9は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択され、
・A
5及びA
6は、互いに独立して、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、及び7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基から選択され、
・A
7及びA
8は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式OA
10(ここで、A
10は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択される。)と、
次式(3)の化合物E:
R’-OH (3)
(式中、R’は、水素原子を表し、又はR’は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式Si(A
11)
3(ここで、各A
11は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。)のシリル基よりなる群から選択される。)と
を含む組成物。
【請求項12】
前記化合物Eが、0.1~500、より好ましくは0.5~100の(化合物E)/(コバルト化合物Cにより与えられるCo元素)モル比で存在する、請求項11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、アルケン又はアルキン化合物と、ケイ素原子に結合した少なくとも1個の水素原子を含む化合物とのヒドロシリル化反応に関する。特に、本発明は、これらの反応のための新規なタイプの触媒の使用に関する。これらの触媒は、特にシリコーン組成物を架橋によって硬化させることができる。
【背景技術】
【0002】
従来技術
ヒドロシリル化反応(重付加反応ともいう)中に、不飽和化合物、すなわち少なくとも1つの二重結合又は三重結合不飽和を含む化合物が、少なくとも1個のヒドロシリル官能基、すなわちケイ素原子に結合した水素原子を含む化合物と反応する。この反応は、例えば、アルケン不飽和の場合には、次式によって説明でき:
【化1】
又は、アルキン不飽和の場合には、次式によって説明できる:
【化2】
。
【0003】
ヒドロシリル化反応は、脱水素的シリル化反応を伴うことがあり、それに置き換わる場合もある。この反応は次式によって説明できる:
【化3】
。
【0004】
ヒドロシリル化反応は、特に、アルケニル又はアルキニル単位を有するオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル官能基を有するオルガノポリシロキサンとを含むシリコーン組成物を架橋するために使用される。
【0005】
不飽和化合物のヒドロシリル化反応は、典型的には、金属触媒又は有機金属触媒を用いた触媒作用によって実施される。現在、この反応に適した触媒は白金触媒である。したがって、特にアルケンのヒドロシリル化のためのほとんどの工業的なヒドロシリル化プロセスは、Speierヘキサクロロ白金酸又は一般式Pt2(ジビニルテトラメチルジシロキサン)3(又はPt2(DVTMS)3と略記)のカールシュテットPt(0)錯体によって触媒される。
【0006】
2000年代に入り、白金-カルベン錯体の製造により、より安定した触媒の入手が可能になった(例えば、国際公開第01/42258号参照)。
【0007】
しかし、白金を含む金属触媒又は有機金属触媒の使用には依然として問題がある。白金は高価な金属であり、その希少性はますます高まっており、そのコストも莫大に上昇している。そのため、工業的規模での使用は困難である。したがって、反応に必要な触媒の量を、収率や反応速度を低下させることなく、最小限にすることが望まれている。カールシュテット触媒に代わるものを見出すために、数多くの研究が実施されてきた。
【0008】
このような背景から、アルケンのヒドロシリル化を実施するための新規触媒を見出すために研究が長年行われてきた。
【0009】
国際公開第2018/115601号には、ヒドロシリル化及び/又は脱水素シリル化触媒としての新規なコバルト系触媒の使用が記載されている。これらの新規触媒は、一般式[Co(N(SiR3)2)x]yによって表され、式中、記号Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、xは1、2又は3に等しく、yは1又は2に等しい。本発明者は、これらの新規触媒が、有利には溶媒なしで(これらの触媒はシリコーンオイルへの良好な溶解度を有するため)、ヒドロシリル化反応及び/又は脱水素的シリル化反応を効果的に触媒できることを実証した。しかしながら、これらの化合物は空気及び水の非存在下で製造され、取り扱われた。ヒドロシリル化及び/又は脱水素的シリル化プロセスは、グローブボックス内において不活性雰囲気下で実施される。実施例は全て、不活性雰囲気下、グローブボックス内及び/又は密閉ピルボックス内で実施された。
【0010】
同様に、コバルト触媒は、Yang Liu及びLiang Dengによる論文「Mode of Activation of Cobalt(II)Amides for Catalytic Hydrosilylation of Alkenes with Tertiary Silanes」(J.Am.Chem.Soc.2017,139,1798-180)に記載されている。反応は厳密な無水条件下、乾燥窒素の不活性雰囲気下、特にグローブボックス内で実施された。溶媒を使用前に乾燥させ、脱気した(同論文、Supporting Informationを参照)。
【0011】
したがって、従来技術に記載されている触媒は、空気及び水のない無水条件下で製造、貯蔵、使用されなければならないという技術的な先入観がある。さらに、他の試薬や任意の溶媒は、使用前に乾燥させなければならない。工業的な観点からは、このような条件を満たすことは困難であり、コストもかかる。
【0012】
さらに、ヒドロシリル化触媒を記載した他の文献を挙げることができる。国際公開第2016/099727号には、式R1
2P-X-N=C(R2)-Yの特定の配位子を使用することを特徴とする、鉄、コバルト、マンガン、ニッケル又はルテニウムをベースとするヒドロシリル化触媒が記載されている。国際公開第2005/028544号には、コバルト、ロジウム、ルテニウム、白金及びニッケルから選択される少なくとも1種の金属を含み、不活性担体上に堆積される不均一系触媒組成物であって、ヒドロシリル化が少なくとも1種の無機非求核塩基及び任意に水の存在下で実施されることを特徴とするものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第01/42258号
【特許文献2】国際公開第2018/115601号
【特許文献3】国際公開第2016/099727号
【特許文献4】国際公開第2005/028544号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Yang Liu及びLiang Deng,「Mode of Activation of Cobalt(II)Amides for Catalytic Hydrosilylation of Alkenes with Tertiary Silanes」,J.Am.Chem.Soc.2017,139,1798-180
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
全ての予想に反して、本発明者は、上記のコバルト触媒が、水、アルコール又はシラノールの存在下で有利に使用できることを見出した。
【0016】
したがって、本発明は、アルケン官能基及びアルキン官能基から選択される少なくとも1個の官能基を含む不飽和化合物(A)を、少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)でヒドロシリル化するための方法であって、前記方法は、前記不飽和化合物(A)と、前記化合物(B)と、次式(1)のコバルト化合物(C):
[Co(N(SiR
3)
2)
x]
y (1)
(式中、
・記号Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、又は1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
・x=1、2又は3であり、
・y=1又は2である。)と、
次式(2)の化合物(D):
【化4】
(式中、
・A
1、A
2、A
3及びA
4は、互いに独立して、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、ハロゲン及び式OA
9(ここで、A
9は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択され、
・A
5及びA
6は、互いに独立して、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、及び7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基から選択され、
・A
7及びA
8は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式OA
10(ここで、A
10は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択される。)と、
次式(3)の化合物(E):
R’-OH (3)
(式中、R’は、水素原子を表し、又はR’は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式Si(A
11)
3(ここで、各A
11は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。)のシリル基よりなる群から選択される。)と
を接触させることからなる工程を含む方法に関する。
【0017】
さらに、本発明は、アルケン官能基及びアルキン官能基から選択される少なくとも1個の官能基を含む少なくとも1種の不飽和化合物(A)と、少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)と、次式(1)のコバルト化合物(C):
[Co(N(SiR
3)
2)
x]
y (1)
(式中、
・記号Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、又は1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
・x=1、2又は3であり、
・y=1又は2である。)と、
次式(2)の化合物(D):
【化5】
(式中、
・A
1、A
2、A
3及びA
4は、互いに独立して、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、ハロゲン及び式OA
9(ここで、A
9は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択され、
・A
5及びA
6は、互いに独立して、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、及び7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基から選択され、
・A
7及びA
8は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式OA
10(ここで、A
10は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択される。)と、
次式(3)の化合物(E):
R’-OH (3)
(式中、R’は、水素原子を表し、又はR’は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式Si(A
11)
3(ここで、各A
11は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。)のシリル基よりなる群から選択される。)と
を含む組成物に関するものでもある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本文中の記号→は、配位子に自由電子対が存在することによる共有配位結合を表す。
【0019】
本明細書では、技術分野の標準的な表記に従って、記号「N」は窒素原子を表し、記号「Co」はコバルト原子を表し、記号「H」は水素原子を表し、記号「P」はリン原子を表す。
【0020】
別段の指示がない限り、本説明に関係するシリコーンオイルの粘度は全て、25℃における「ニュートン」動粘度量、すなわち、それ自体既知の方法で、ブルックフィールド粘度計を用いて、測定される粘度が速度勾配に依存しない程度に十分低い剪断速度勾配で測定される動粘度に相当する。
【0021】
描写はしないが、本明細書に記載される化合物の可能な互変異性形態は、本発明の範囲内に含まれる。
【0022】
本発明において、アルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルキル基は、好ましくは1~30個の炭素原子、より好ましくは1~12個の炭素原子、さらに好ましくは1~6個の炭素原子を含む。アルキル基は、例えば、次の基から選択できる:メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル及びn-ドデシル。
【0023】
本発明において、シクロアルキル基は単環式又は多環式とすることができ、好ましくは単環式又は二環式とすることができる。シクロアルキル基は、好ましくは3~30個の炭素原子を含み、より好ましくは3~8個の炭素原子を含む。シクロアルキル基は、例えば、次の基から選択できる:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル及びノルボルニル。
【0024】
本発明において、アリール基は単環式又は多環式とすることができ、好ましくは単環式とすることができ、好ましくは6~30個の炭素原子、より好ましくは6~18個の炭素原子を含む。アリール基は、非置換であるか、又はアルキル基によって1以上置換されていてよい。アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ジイソプロピルフェニル基及びトリイソプロピルフェニル基から選択できる。
【0025】
本発明において、アリールアルキル基は、好ましくは6~30個の炭素原子、より好ましくは7~20個の炭素原子を含む。アリールアルキル基は、例えば、次の基から選択できる:ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、ナフチルメチル、ナフチルエチル及びナフチルプロピル。
【0026】
本発明において、ハロゲン原子は、例えば、フッ素、臭素、塩素及びヨウ素よりなる群から選択でき、フッ素が好ましい。フッ素置換アルキル基は、例えば、トリフルオロプロピルとすることができる。
【0027】
本発明は、不飽和化合物(A)と少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)とをヒドロシリル化するための新規な方法であって、以下で説明するように、化合物(D)及び化合物(E)の存在下でコバルト化合物(C)によって触媒されるものである。
【0028】
ヒドロシリル化反応は、脱水素的シリル化反応を伴ってもよい。後述する化合物(D)及び化合物(E)の存在下でのコバルト化合物(C)は、アルケン官能基及びアルキン官能基から選択される少なくとも1個の官能基を含む不飽和化合物(A)と、少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)との脱水素的シリル化反応用の触媒としても有利に使用できる。本明細書において、特に断りのない限り、ヒドロシリル化反応に関するコメントや説明は、脱水素的シリル化反応にも当てはまる。
【0029】
コバルト化合物(C)は次式によって表される:
[Co(N(SiR3)2)x]y (1)
式中、
・記号Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、又は1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
・x=1、2又は3であり、
・y=1又は2である。
【0030】
好ましくは、記号Rは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、及び7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基よりなる群から選択される。より好ましくは、記号Rは、同一であっても異なっていてもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、キシリル基、トリル基及びフェニル基よりなる群から選択される。さらに好ましくは、R基はメチルである。
【0031】
この式(1)において、コバルトは+I、+II又は+IIIの酸化状態であってもよい。
【0032】
好ましい実施形態によれば、x=2である。コバルト化合物(C)は、式[Co(N(SiR3)2)2]yを有し、R及びyは上で定義した通りである。このとき、コバルトは+II酸化状態にある。
【0033】
非常に好ましい実施形態によれば、コバルト化合物(C)は、以下の式で表される:
[Co(N(Si(CH3)3)2)2]y
式中、yは1又は2に等しい。
【0034】
コバルト化合物(C)は、商業的に入手することができ、又は当業者に知られている若しくは文献に記載されている任意の方法に従って製造できる。一実施形態によれば、コバルト化合物(C)[Co(N(Si(CH3)3)2)2]yは、ハロゲン化コバルト、例えば塩化コバルトCoCl2を、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドLiN(SiMe3)2と反応させることによって製造できる。この合成は、ヒドロシリル化反応の前に行ってもよいし、不飽和化合物(A)の存在下においてその場でコバルト化合物(C)を合成してもよい。
【0035】
コバルト化合物(C)によって与えられるコバルト元素のモル濃度は、不飽和化合物(A)が保持する不飽和の総モル数に対して、0.01モル%~15モル%、より好ましくは0.05モル%~10モル%、さらに好ましくは0.1モル%~8モル%であってよい。別の変形例によれば、本発明に係る方法において使用されるコバルトの量は、化合物(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量に対して、溶媒の任意の存在を考慮せずに、重量基準で、10ppm~3000ppm、より好ましくは20ppm~2000ppm、さらに好ましくは20ppm~1000ppmである。好ましい変形例によれば、本発明に係る方法において、白金、パラジウム、ルテニウム又はロジウムをベースとする化合物は使用されない。反応媒体中の白金、パラジウム、ルテニウム又はロジウムをベースとする化合物の量は、例えば、コバルト化合物(C)の重量に対して0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0.001重量%未満である。
【0036】
本発明に係る化合物(D)は、次式(2)によって表される。
【化6】
式中、
・A
1、A
2、A
3及びA
4は、互いに独立して、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、ハロゲン及び式OA
9(ここで、A
9は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択され、
・A
5及びA
6は、互いに独立して、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、及び7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基から選択され、
・A
7及びA
8は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式OA
10(ここで、A
10は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択される。
【0037】
好ましくは、上記式(2)において
・A1、A2、A3及びA4は水素原子であり、
・A5及びA6は水素原子であり、
・A7及びA8は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式OA10(ここでA10は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択され、好ましくは、A7及びA8は、t-ブチル基、イソプロピル基、メチル基、エチル基、フェニル基及びシクロヘキシル基から選択される。
【0038】
さらに好ましくは、化合物(D)は、次式(4)~(9)の化合物から選択される。
【化7】
【0039】
任意の一つの理論によって限定されることを望むものではないが、化合物(C)と化合物(D)とは、部分的に又は完全に反応して錯体を形成することができる。化合物(D)は、窒素原子、リン原子、又はその両方が有する自由電子対を介してコバルトを配位することができる配位子として作用することができる。このようにして、下記式(10)で表されるコバルト錯体(C’)を得ることができる。
【化8】
式中、R、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5、A
6、A
7及びA
8は上記の意味を有する。
【0040】
錯体(C’)は、不飽和化合物(A)と少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)とのヒドロシリル化反応を有利に触媒できる。
【0041】
第1の実施形態によれば、化合物(C)及び(D)は、ヒドロシリル化反応の前に混合することができ、錯体(C’)は、化合物(A)と化合物(B)とのヒドロシリル化反応に使用する前に、任意に分離及び精製できる。
【0042】
第2の実施形態によれば、化合物(D)を反応物(A)及び(B)ならびに化合物(C)とともに反応媒体に導入することができる。次いで、ヒドロシリル化反応中に、その場での錯体形成が可能である。
【0043】
本発明に係るヒドロシリル化方法の実施中に、化合物(D)と、化合物(C)によって与えられるコバルト元素とのモル比は、0.5~4、好ましくは0.8~3.5、さらに好ましくは1.5~3であってもよい。
【0044】
本発明に係るヒドロシリル化方法は、以下で説明する次式(3)の化合物(E)の存在下で実施される:
R’-OH (3)
式中、R’は、水素原子を表し、又はR’は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式Si(A11)3(ここで、各A11は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。)のシリル基よりなる群から選択される。
【0045】
第1の実施形態によれば、R’は水素原子を表す。そのときに、化合物(E)は水である。
【0046】
驚くべきことに、上記のコバルト触媒を用いたヒドロシリル化反応は、水の存在下でも実施できることが実証された。制御された量の水を加えることで、反応の転化率や選択率に関してさらに良好な性能を達成することも可能になる。
【0047】
さらに、水はアルコール又はシラノールに置き換えてもよいことが分かった。第2の実施形態によれば、R’は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式Si(A11)3(ここで、各A11は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。)のシリル基から選択される基を表す。好ましくは、R’は、メチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル、フェニル、ベンジル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル及びトリ-t-ブチルシリルよりなる群から選択できる。
【0048】
本発明に係るヒドロシリル化反応中に、化合物(E)は、好ましくは0.1~500、より好ましくは0.5~100の(化合物(E))/(コバルト化合物(C)により与えられるCo元素)モル比で存在する。この比率は、化合物(A)及び(B)の性質に応じて調節できる。
【0049】
第1の実施形態によれば、不飽和化合物(A)はオルガノポリシロキサンではない。不飽和化合物(A)は、好ましくは、2~40個の炭素原子、より好ましくは2~12個の炭素原子を含み、芳香環の一部ではない1個以上のアルケン又はアルキン不飽和を含み、ハロゲン原子により1以上置換されていてよく、1個以上の炭素原子がヘテロ原子、典型的には酸素原子、窒素原子又はケイ素原子により置換されていてもよい炭化水素化合物から選択される。この第1の実施形態によれば、化合物(E)は、好ましくは0.1~100、好ましくは0.1~50、さらに好ましくは0.5~15の(化合物(E))/(コバルト化合物(C)によって与えられるCo元素)モル比で存在する。
【0050】
第2の実施形態によれば、不飽和化合物(A)は、1個以上のアルケン官能基、好ましくは少なくとも2個のアルケン官能基を含むオルガノポリシロキサン化合物であってもよい。この実施形態によれば、化合物(E)は、好ましくは0.5~300、好ましくは5~100の(化合物(E))/(コバルト化合物(C)によって与えられるCo元素)モル比で存在する。
【0051】
また、本発明は、アルケン官能基及びアルキン官能基から選択される少なくとも1個の官能基を含む少なくとも1種の不飽和化合物(A)と、少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)と、次式(1)のコバルト化合物(C):
[Co(N(SiR
3)
2)
x]
y (1)
(式中、
・記号Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、又は1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
・x=1、2又は3であり、
・y=1又は2である。)と、
次式(2)の化合物(D):
【化9】
(式中、
・A
1、A
2、A
3及びA
4は、互いに独立して、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、ハロゲン及び式OA
9(ここで、A
9は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択され、
・A
5及びA
6は、互いに独立して、水素原子、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、及び7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基から選択され、
・A
7及びA
8は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式OA
10(ここで、A
10は1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。)のアルコキシ基から選択される。)と、
次式(3)の化合物(E):
R’-OH (3)
(式中、R’は、水素原子を表し、又はR’は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、6~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基、7~24個の炭素原子を有するアリールアルキル基、及び式Si(A
11)
3(ここで、各A
11は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。)のシリル基よりなる群から選択される。)と
を含む組成物に関するものでもある。
【0052】
本発明に係るヒドロシリル化方法において使用される不飽和化合物(A)は、芳香環の一部ではない少なくとも1個のアルケン又はアルキン不飽和を含む化合物である。不飽和化合物(A)は、アルケン官能基及びアルキン官能基から選択される少なくとも1個の官能基、好ましくはアルケン官能基から選択される少なくとも1個の官能基を含む。このものは当業者に知られているもの、及びヒドロシリル化反応を妨害し、実際に阻害する可能性のある反応性化学官能基を含まないものから選択できる。
【0053】
一実施形態によれば、不飽和化合物(A)は、1個以上のアルケン官能基及び2~40個の炭素原子を含む。別の実施形態によれば、不飽和化合物(A)は、1個以上のアルキン官能基及び2~40個の炭素原子を含む。好ましくは、不飽和化合物(A)は、2~40個の炭素原子、より好ましくは2~12個の炭素原子を含み、芳香族環の一部ではない1個以上のアルケン又はアルキン不飽和を含み、ハロゲン原子で1以上置換されていてよく、1個以上の炭素原子がヘテロ原子、典型的には酸素原子、窒素原子又はケイ素原子で置換されていてもよい炭化水素化合物から選択できる。
【0054】
不飽和化合物(A)は、好ましくは、アセチレン、C1~C4アルキルのアクリレート及びメタクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸、アルケン、好ましくはオクテン、より好ましくは1-オクテン、アリルアルコール、アリルアミン、アリルグリシジルエーテル、N-アリルピペリジン、立体障害N-アリルピペリジン誘導体、スチレン、好ましくはα-メチルスチレン、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、塩素化アルケン、好ましくは塩化アリル、フッ素化アルケン、好ましくは4,4,5,5,6,6,7,7,7-ノナフルオロ-1-ヘプテンよりなる群から選択できる。
【0055】
不飽和化合物(A)は、ビニルペンタメチルジシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサンなどのジシロキサンとすることができる。
【0056】
不飽和化合物(A)は、数個のアルケン官能基、好ましくは2個又は3個のアルケン官能基を含む化合物から選択でき、特に好ましくは、化合物(A)は次の化合物から選択される。
【化10】
【0057】
好ましい一実施形態によれば、不飽和化合物(A)は、1個以上のアルケン官能基、好ましくは少なくとも2個のアルケン官能基を含むオルガノポリシロキサン化合物とすることができる。アルケンのヒドロシリル化反応は、シリコーン化学の重要な反応の一つである。これは、SiH官能基を有するオルガノポリシロキサンとアルケニル官能基を有するオルガノポリシロキサンとを架橋してネットワークを形成し、材料に機械的性質を付与するだけでなく、SiH官能基を有するオルガノポリシロキサンを官能化して、その物性及び化学的性質を改変することを可能にする。前記オルガノポリシロキサン化合物は、特に、
・次式の少なくとも2個のシロキシル単位:
ViaUbSiO(4-a-b)/2
(式中、
Viは、C2~C6アルケニル基、好ましくはビニル基であり、
Uは、1~12個の炭素原子を有する1価の炭化水素基であり、好ましくは、メチル基、エチル基又はプロピル基などの1~8個の炭素原子を有するアルキル基、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基から選択され、
a=1、2又は3、好ましくはa=1又は2;b=0、1又は2;及び合計a+b=1、2又は3である。)と、
・任意に次式の単位:UcSiO(4-c)/2
(式中、Uは上記と同じ意味を有し、c=0、1、2又は3である。)と
から構成される。
【0058】
上記の式において、複数のU基が存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよいものとする。
【0059】
1個以上のアルケン官能基を含む化合物は、Vi2SiO2/2、ViUSiO2/2及びU2SiO2/2シロキシル単位よりなる群から選択される「D」及び「DVi」シロキシル単位と、ViU2SiO1/2、Vi2USiO1/2及びU3SiO1/2シロキシル単位よりなる群から選択される末端「M」及び「MVi」シロキシル単位とから本質的になる直鎖構造を有することができる。記号Vi及びUは上記の通りである。
【0060】
末端「M」及び「MVi」シロキシル単位の例としては、トリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基又はジメチルヘキセニルシロキシ基を挙げることができる。
【0061】
「D」及び「DVi」シロキシル単位の例としては、ジメチルシロキシ基、メチルフェニルシロキシ基、メチルビニルシロキシ基、メチルブテニルシロキシ基、メチルヘキセニルシロキシ基、メチルデセニルシロキシ基又はメチルデカジエニルシロキシ基を挙げることができる。
【0062】
本発明に係る1個以上のアルケン官能基を含むオルガノポリシロキサン化合物であることができる直鎖オルガノポリシロキサンの例は、以下の通りである:
・ジメチルビニルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルフェニルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルビニルシロキサン);
・トリメチルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルビニルシロキサン);及び
・環状ポリ(メチルビニルシロキサン)。
【0063】
最も推奨される態様において、1個以上のアルケン官能基を含むオルガノポリシロキサン化合物は、末端ジメチルビニルシリル単位を含む。さらに好ましくは、1個以上のアルケン官能基を含むオルガノポリシロキサン化合物は、ジメチルビニルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン)である。
【0064】
シリコーンオイルの粘度は、一般に、1mPa.s~2,000,000mPa.sである。好ましくは、1個以上のアルケン官能基を含むオルガノポリシロキサン化合物は、25℃で20mPa.s~100000mPa.s、好ましくは25℃で20mPa.s~80000mPa.s、より好ましくは100mPa.s~50000mPa.sの動的粘度を有するシリコーンオイルである。
【0065】
任意に、1個以上のアルケン官能基を含むオルガノポリシロキサン化合物は、さらに、「T」(USiO3/2)シロキシル単位及び/又は「Q」(SiO4/2)シロキシル単位を含むことができる。U記号は上記の通りである。そして、1個以上のアルケン官能基を含むオルガノポリシロキサン化合物は、分岐構造を有する。
【0066】
本発明に係る1個以上のアルケン官能基を含むオルガノポリシロキサン化合物である、樹脂とも呼ばれる分岐オルガノポリシロキサンの例は以下の通りである:
・MDViQ、ここで、ビニル基はD単位に含まれる、
・MDViTQ、ここで、ビニル基はD単位に含まれる、
・MMViQ、ここで、ビニル基はM単位の一部に含まれる、
・MMViTQ、ここでビニル基はM単位の一部に含まれる、
・MMViDDViQ、ここで、ビニル基はM単位及びD単位の一部に含まれる、
・及びそれらの混合物;
ここで、MVi=式(U)2(ビニル)SiO1/2のシロキシル単位、DVi=式(U)(ビニル)SiO2/2のシロキシル単位、T=式(U)SiO3/2のシロキシル単位、Q=式SiO4/2のシロキシル単位、M=式(U)3SiO1/2のシロキシル単位、及びD=式(U)2SiO2/2のシロキシル単位であり、Uは上記の通りである。
【0067】
好ましくは、1個以上のアルケン官能基を含むオルガノポリシロキサン化合物は、0.001重量%~30重量%、好ましくは0.01重量%~10重量%、より好ましくは0.02重量%~5重量%のアルケニル単位の重量含有量を有する。
【0068】
不飽和化合物(A)は、本発明に従って、少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)と反応する。
【0069】
一実施形態によれば、少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)は、ケイ素原子に結合した少なくとも1個の水素原子を含むシラン又はポリシラン化合物である。「シラン」化合物とは、本発明において、4個の水素原子又は有機置換基に結合したケイ素原子を含む化合物を意味するものとする。「ポリシラン」化合物は、本発明において、少なくとも1個の≡Si-Si≡単位を有する化合物を意味するものとする。シラン化合物のうち、少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)は、フェニルシラン、又はモノ-、ジ-若しくはトリアルキルシラン、例えばトリエチルシランとすることができる。
【0070】
別の実施形態によれば、少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)は、ケイ素原子に結合した少なくとも1個の水素原子を含むオルガノポリシロキサン化合物であり、オルガノヒドロポリシロキサンとしても知られている。当該オルガノヒドロポリシロキサンは、有利には、
・次式の少なくとも2個のシロキシル単位:
HdUeSiO(4-d-e)/2
(式中、
Uは、1~12個の炭素原子を有する1価の炭化水素基であり、好ましくは、メチル基、エチル基又はプロピル基などの1~8個の炭素原子を有するアルキル基、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基から選択され、
d=1、2又は3、好ましくはd=1又は2;e=0、1又は2;及びd+e=1、2又は3である。)と、
・任意に次式の単位:UfSiO(4-f)/2
(式中、Uは上記と同じ意味を有し、f=0、1、2又は3である。)と
から構成されるオルガノポリシロキサンであることができる。
【0071】
上記の式において、いくつかのU基が存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよいものとする。優先的には、Uは、塩素又はフッ素などの少なくとも1個のハロゲン原子で置換されていてよい、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基よりなる群から選択される1価の基を表すことができる。Uは、有利には、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニルよりなる群から選択できる。
【0072】
上記の式中、記号dは、好ましくは1に等しい。
【0073】
オルガノヒドロポリシロキサンは、直鎖状、分岐状又は環状の構造を有することができる。重合度は好ましくは2以上であり、一般的には5000以下である。
【0074】
直鎖重合体に関する場合、これらは、次式D:U2SiO2/2又はD’:UHSiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位と、次式M:U3SiO1/2又はM’:U2HSiO1/2の単位から選択される末端シロキシル単位とから本質的になり、ここで、Uは上記と同じ意味を有する。
【0075】
本発明に係る少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)であることができるオルガノヒドロポリシロキサンの例は、以下の通りである:
・ヒドロジメチルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルヒドロシロキサン);
・ヒドロジメチルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルヒドロシロキサン);
・トリメチルシリル末端ポリ(メチルヒドロシロキサン);及び
・環状ポリ(メチルヒドロシロキサン)。
【0076】
オルガノヒドロポリシロキサンが分岐構造を有する場合、好ましくは、次式のシリコーン樹脂よりなる群から選択される:
・M’Q、ここで、ケイ素原子に結合した水素原子はM基によって保持される、
・MM’Q、ここで、ケイ素原子に結合した水素原子はM単位の一部によって保持される、
・MD’Q、ここで、ケイ素原子に結合した水素原子はD基によって保持される、
・MDD’Q、ここで、ケイ素原子に結合した水素原子はD基の一部によって保持される、
・MM’TQ、ここで、ケイ素原子に結合した水素原子はM単位の一部によって保持される、
・MM’DD’Q、ここで、ケイ素原子に結合した水素原子はM単位及びD単位の一部によって保持される、
・及びそれらの混合物
ここで、M、M’、D及びD’は上で定義した通りであり、T:式USiO3/2のシロキシル単位及びQ:式SiO4/2のシロキシル単位であり、ここで、Uは上記と同じ意味を有する。
【0077】
好ましくは、オルガノヒドロポリシロキサン化合物は、Si-Hヒドロシリル官能基の含有量が0.2重量%~91重量%、より好ましくは3重量%~80重量%、さらに好ましくは15重量%~70重量%である。
【0078】
本発明の特定の一実施態様によれば、不飽和化合物(A)及び少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)が、第一に、少なくとも1個のケトン官能基、1個のアルデヒド官能基、1個のアルケン官能基及び/又は1個のアルキン官能基と、第二に、少なくとも1個のケイ素原子及びケイ素原子に結合した少なくとも1個の水素原子とを含む1種の同じ化合物であることが可能である。この化合物は「二官能性」であると説明することができ、ヒドロシリル化反応によってそれ自体が反応することができる。したがって、本発明は、二官能性化合物自体をヒドロシリル化するための方法に関することもでき、前記二官能性化合物は、第一に、ケトン官能基、アルデヒド官能基、アルケン官能基及びアルキン官能基よりなる群から選択される少なくとも1個の官能基(好ましくは、少なくとも1個のアルケン官能基及び/又は少なくとも1個のアルキン官能基)と、第二に、少なくとも1個のケイ素原子及びケイ素原子に結合した少なくとも1個の水素原子とを含み、前記方法は、上記のような化合物(D)及び化合物(E)の存在下でコバルト化合物(C)によって触媒される。
【0079】
二官能性化合物であることができるオルガノポリシロキサンの例は以下の通りである:
・ジメチルビニルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン-コ-ヒドロメチルシロキサン-コ-ビニルメチルシロキサン)、
・ジメチルヒドロシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン-コ-ヒドロメチルシロキサン-コ-ビニルメチルシロキサン);及び
・トリメチルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン-コ-ヒドロメチルシロキサン-コ-(プロピルグリシジルエーテル)メチルシロキサン)。
【0080】
不飽和化合物(A)及び少なくとも1個のヒドロシリル官能基を含む化合物(B)の使用に関する場合、当業者であれば、これは二官能性化合物の使用も意味することが分かる。
【0081】
化合物(A)及び化合物(B)の量は、化合物(A)のアルケン官能基及びアルキン官能基に対する化合物(B)のヒドロシリル官能基のモル比が、好ましくは1:10~10:1、より好ましくは1:5~5:1、さらに好ましくは1:3~3:1となるように制御できる。
【0082】
ヒドロシリル化反応は、溶媒中又は溶媒の非存在下で実施できる。別の態様では、反応物の一つ、例えば不飽和化合物(A)は溶媒として作用することができる。適切な溶媒は、化合物(B)と混和性の溶媒である。ヒドロシリル化反応は、15℃~300℃、好ましくは20℃~240℃、より好ましくは50℃~200℃、より好ましくは50℃~140℃、さらに好ましくは50℃~100℃の温度で実施できる。
【0083】
本発明の好ましい一実施態様によれば、使用される化合物(A)及び(B)は、上で定義したオルガノポリシロキサンから選択される。この場合、三次元ネットワークが形成され、その結果、組成物が硬化する。架橋は、組成物を構成する媒体の緩やかな物理的変化を伴う。その結果、本発明に係る方法を使用して、エラストマー、ゲル、発泡体などを得ることができる。この場合、架橋シリコーン材料が得られる。用語「架橋シリコーン材料」とは、少なくとも2個の不飽和結合を有するオルガノポリシロキサンと少なくとも3個のヒドロシリル単位を有するオルガノポリシロキサンとを含む組成物を架橋及び/又は硬化させることによって得られる任意のシリコーン系生成物を意味するものとする。架橋されたシリコーン材料は、例えば、エラストマー、ゲル又は発泡体であることができる。
【0084】
化合物(A)及び(B)が上で定義したようなオルガノポリシロキサンから選択される、本発明に係る方法のこの好ましい実施形態によれば、シリコーン組成物において通常の機能性添加剤を使用することが可能である。通常の機能性添加剤類としては、次のものを挙げることができる:
・充填剤、
・接着促進剤、
・ヒドロシリル化反応の抑制剤又は遅延剤、
・接着調節剤、
・シリコーン樹脂、
・稠度向上添加剤、
・顔料
・耐熱性添加剤、耐油性添加剤、耐火性添加剤、例えば金属酸化物など。
【0085】
本発明の他の詳細又は利点は、単に例示目的で以下に示す実施例に照らせば、より明確に明らかになるであろう。
【実施例】
【0086】
空気に影響を受けやすい化合物及び湿気に影響を受けやすい化合物の実験は全て、乾燥アルゴンの不活性雰囲気下及びグローブボックス内で行った。使用前に、使用した溶媒及び反応物を精製及び脱気し、モレキュラーシーブで乾燥し保存した。
【0087】
例1:Co[N(SiMe
3
)
3
]
2
コバルト(II)ビスアミド錯体(COBAM)の合成
1.0830g(8.34×l0-3mol)の塩化コバルトCoCl2と2.7895g(1.67×l0-2mol)のリチウムビス(トリメチルシリル)アミドLiN(SiMe3)2をグローブボックス内において200mlシュレンク管で秤量した。100mlのEt2Oを氷浴に浸したチューブに加え、懸濁液を0℃で10時間撹拌した。溶液は濃い緑色を呈し、白/灰色の沈殿物が形成された。溶媒を蒸発させ、錯体を30mlのペンタンで3回抽出した。ペンタンを蒸発させた後、粘性の高い緑色のオイルが得られた。その後、このオイルを高真空下(10-7mbar)において80℃で昇華させて、茶褐色の粉末を得た。収率=70%。
【0088】
例2:コバルト(II)ビスアミド+配位子錯体(COBAM+PN)の合成
【化11】
40.1mgの2-(ジ-t-ブチルホスフィノメチル)ピリジン(以下、「PN配位子」)(l.69×l0
-4mol)を3mlのペンタンに溶解した。同時に、例1に記載される通りに得られた64.2mgのCo[N(SiMe
3)
2]
2(COBAM)(l.69×l0
-4mol)を3mlのペンタンに溶解した。次に、PN配位子の溶液をコバルト(II)ビスアミドの溶液に添加した。この媒体を室温で1時間撹拌した。その後、ペンタンを蒸発させ、薄緑色の粉末を98%を超える収率で得た。コバルト(II)ビスアミド+PN配位子の構造をNMRで確認した。
【0089】
例3~10:官能化試験
アルゴンの不活性雰囲気下、グローブボックス内で、例1に記載される通りに得られたコバルト(II)ビスアミド錯体(COBAM)の所要質量を秤量し、乾燥密閉フラスコに導入した。PN配位子の所要質量を秤量し、フラスコに導入した。0.3gのドデカンを加え、予備触媒を溶解させるために媒体を攪拌下に置いた。次に、所要質量の不飽和化合物(A)を導入し、続いて所要質量の化合物(B)を導入した。アルゴン気流下で、マイクロピペットを使用して、所要容量の化合物(E)を導入した。その後、反応媒体を5分間攪拌下に置き、75℃に予熱した小型金属バレルに入れた(t=0)。
【0090】
転化率及び選択率を決定するために、反応媒体をガスクロマトグラフィーで定量分析した。
【0091】
実施例3~15の全てについて、使用した化合物(B)は、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-ヒドロトリシロキサン(以下、「MD’M」)である。SiH/SiViモル比=1である。触媒量(COBAM)=0.5モル%(化合物(B)によって与えられるケイ素に結合したビニルラジカルのモル数に対する触媒によって与えられるコバルト元素のモル%)。
【0092】
【0093】
例16~26:架橋試験
コバルト(II)ビスアミド錯体(COBAM)の所要質量を、アルゴンの不活性雰囲気下、グローブボックス内で秤量し、乾燥密閉フラスコに導入した。PN配位子の所要質量を秤量し、フラスコに導入した。次に、オルガノポリシロキサンを以下の順序で導入した。まず、不飽和オルガノポリシロキサン(A)を注入した。次に、媒体を攪拌して錯体(COBAM)を溶解させた。最後に、水素化オルガノポリシロキサン(B)を添加した。アルゴン気流下で、マイクロピペットを使用して、所要容量の化合物(E)を導入した。その後、反応媒体を5分間攪拌下に置き、90℃に予熱した小型金属バレルに入れた(t=0)。
【0094】
架橋試験のゲル時間は、攪拌停止時間(SST)によって定性的に測定した。このSSTは、媒体がもはや攪拌できないほど大きな粘度の上昇と関連している(約1000mPa.sの粘度に相当)。
【0095】
実施例16~26の全てについて、SiH/SiViモル比=2であった。触媒(COBAM)の量=1モル%であった(化合物(B)によって与えられるケイ素に結合したビニル基のモル数に対する触媒によって与えられるコバルト元素のモル百分率)。
【0096】
A1:ジメチルビニルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン)、25℃における粘度:約100mPa.s、ビニル基の含有量:約1.08重量%。
【0097】
B1:トリメチルシリル末端ポリ(メチルヒドロシロキサン)、25℃における粘度:約20mPa.s、SiH基の含有量:約44.5重量%。
【0098】
B2:ヒドロジメチルシリル末端及びトリメチルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルヒドロシロキサン)、25℃における粘度:約20mPa.s、SiH基の含有量:約20重量%。
【0099】
【国際調査報告】