(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】化学的平坦化用ツール
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240905BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01L21/304 622F
H01L21/306 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514029
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 US2022075778
(87)【国際公開番号】W WO2023034874
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523404114
【氏名又は名称】ケムパワー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】バブ,スリャデバラ
(72)【発明者】
【氏名】ミスラ,ズートハンシュ
【テーマコード(参考)】
5F043
5F057
【Fターム(参考)】
5F043AA02
5F043AA22
5F043AA31
5F043AA35
5F043BB01
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5F043EE08
5F057AA06
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5F057BB34
5F057CA11
5F057DA02
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5F057EA21
5F057EA22
5F057FA25
5F057FA31
(57)【要約】
研磨剤を使用せずに基板を平坦化することに関する例が開示される。ある例では、基板を化学的に平坦化する方法を提供し、この方法には、研磨剤フリーの平坦化溶液を多孔性パッド上に導入することと、基板の高い部分が多孔性パッドに接触し、基板の低い部分が多孔性パッドに接触しないように多孔性パッドと基板とを相対的に移動させながら、基板を多孔性パッドに接触させることと、多孔性パッドとの接触を介して基板の高い部分から材料を除去して、基板の低い部分に対する基板の高い部分の高さを減少させることとが含まれる。ある例では、化学的平坦化に直線運動が使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を化学的に平坦化する方法であって、
研磨剤フリーの平坦化溶液を多孔性パッド上に導入すること、
多孔性パッドと基板とを相対的に移動させながら、基板を多孔性パッドに接触させること、および
多孔性パッドとの接触を介して基板の高い部分から材料を除去し、基板の低い部分に対する基板の高い部分の高さを減少させること、
を含む、方法。
【請求項2】
除去される前記材料には、コバルト、銅、モリブデン、ルテニウム、レニウム、ロジウム、ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ポリシリコン、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、およびタングステンのうちの1または複数が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記研磨剤フリーの平坦化溶液には過酸化水素が含まれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
除去される前記材料にポリシリコンが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記研磨剤フリーの平坦化溶液には、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が含まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記研磨剤フリーの平坦化溶液には錯化剤が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記多孔性パッドがベルトとして構成され、前記多孔性パッドを移動させることが、毎秒0.5~5インチの速度範囲で搬送機構を用いてベルトを回転させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記官能化ポリマーパッドが、錯化剤で官能化されたポリマーを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記官能化ポリマーパッドが、加水分解剤で官能化されたポリマーを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記多孔性パッドを移動させることが、毎分0~60回転の速度で前記多孔性パッドを回転させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
1平方インチ当たり1ポンド以下の圧力で前記基板と前記パッドを互いに押し付けることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
基板の化学的平坦化を行うための多孔性パッドであって、
平坦化中に基板に接触するように構成された第1のポリマー層と、
前記第1のポリマー層の基板接触側とは反対側に配置された第2のポリマー層と、
を含み、
前記第1のポリマー層は、第1の、より大きい平均孔径および第1の、より小さい厚さを含み、
前記第2のポリマー層は、第2の、より小さい平均孔径および第2の、より大きい厚さを含む、
多孔性パッド。
【請求項13】
前記多孔性パッドがベルトまたは回転台として構成されている、請求項12に記載の多孔性パッド。
【請求項14】
基板を化学的に平坦化する方法であって、
加水分解剤と錯化剤とを含む研磨剤フリーの平坦化溶液を多孔性パッド上に導入すること、
基板の高い部分が多孔性パッドに接触し、基板の低い部分が多孔性パッドに接触しないように多孔性パッドを直線的に移動させながら、基板を多孔性パッドに接触させること、
多孔性パッド上の加水分解剤を介して基板の高い部分から材料を除去し、基板の低い部分に対する基板の高い部分の高さを減少させること、および
錯化剤を介して除去された物質を錯化すること
を含む、方法。
【請求項15】
前記多孔性パッドがベルトとして構成され、前記多孔性パッドを移動させることが、搬送機構を用いてベルトを回転させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
平坦化ツールであって
ベルトとして構成された平坦化パッドと
ベルトに対して基板を保持するように構成された基板保持システムと
ベルトを直線的に移動させるように構成された搬送機構と、および
ベルトに平坦化溶液を添加するように構成された平坦化溶液添加ステーションと、
を含む平坦化ツール。
【請求項17】
再生ステーションをさらに備える、請求項16に記載の平坦化ツール。
【請求項18】
前記ベルトが閉回路を画定する、請求項16に記載の平坦化ツール。
【請求項19】
前記ベルトは、ロール・ツー・ロール操作用に構成されている、請求項16に記載の平坦化ツール。
【請求項20】
前記基板保持システムは、前記ベルトに対して複数の基板を保持するように構成されている、請求項16に記載の平坦化ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本願は、2021年9月3日に出願された「TOOLS FOR CHEMICAL PLANARIZATION」と題する米国仮出願第63/240,846の優先権を主張するものであり、その全内容はその目的を問わず参照によりここに援用される。
【背景技術】
【0002】
化学機械平坦化(CMP)は、化学作用と機械的力の組み合わせによって材料を除去し、半導体基板などの表面を平滑化するために、集積回路製造プロセスで一般的に使用されている。一般的なCMPプロセスでは、研磨剤と、除去される材料に対して腐食性の化学スラリーを、研磨パッドと組み合わせて使用する。基板と研磨パッドはプレスされ、非同心回転軸で互いに相対的に回転させる。その力とスラリーの組み合わせることにより、基材でトポロジー的に低い領域に比較してトポロジー的に高い領域が除去され、それにより表面が滑らかになる。
【発明の概要】
【0003】
本概要は、「詳細な説明」で後述する概念の一部を簡略化して紹介するものである。本概要は、請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、また請求される主題の範囲を限定するために使用することを意図したものでもない。さらに、請求される主題は、本開示のいずれかの部分で示される欠点のいずれかまたはすべてを解決する実施態様に限定されるものではない。
【0004】
研磨剤を使用せずに基板を平坦化することに関する例が開示される。ある例では、基板を化学的に平坦化する方法を提供し、この方法には、研磨剤フリーの平坦化溶液を多孔性パッド上に導入することと、基板の高い部分が多孔性パッドに接触し、基板の低い部分が多孔性パッドに接触しないように多孔性パッドと基板とを相対的に移動させながら、基板を多孔性パッドに接触させることと、多孔性パッドとの接触を介して基板の高い部分から材料を除去して、基板の低い部分に対する基板の高い部分の高さを減少させることとが含まれる。
【0005】
別の例では、基板の化学的平坦化を行うための多孔性パッドであって、平坦化中に基板に接触するように構成された第1のポリマー層と、前記第1のポリマー層の基板接触側とは反対側に配置された第2のポリマー層とを含み、前記第1のポリマー層は、第1の、より大きい平均孔径および第1の、より小さい厚さを含み、前記第2のポリマー層は、第2の、より小さい平均孔径および第2の、より大きい厚さを含む、多孔性パッドが与えられる。
ある例では、化学的平坦化に直線運動が使用される。
また平坦化ツールの構成例も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、化学的平坦化システムの一例のブロック図である。
【
図2】
図2は、化学的平坦化用の多孔性パッドの一例の概略図を示し、基板のトポロジー的に高い部分とパッドの上層との接点を示している。
【
図3】
図3は、化学的平坦化溶液を基板に供給するための回転プラットフォームの一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、化学的平坦化溶液を基板に供給するための中空糸膜プラットフォームの一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、化学的平坦化処理を行う方法の一例を示すフロー図である。
【
図6】
図6は、水平方向ベルトとして構成されたパッドを含む化学的平坦化システムの別の例のブロック図である。
【
図7】
図7は、垂直方向ベルトとして構成された化学的平坦化システムの別の例のブロック図である。
【
図8A】
図8Aは、ベルトとして構成されたパッドを含み、化学物質がパッドの下方から供給される、別の例の化学的平坦化システムのブロック図である。
【
図8B】
図8Bは、ベルトとして構成されたパッドを含み、化学物質がパッドの下方から供給される、さらに別の例の化学的平坦化システムのブロック図である。
【
図9A】
図9A~9Bは、ベルトとして構成された化学的平坦化パッド上の基板配置を模式的に示したものである。
【
図9B】
図9A~9Bは、ベルトとして構成された化学的平坦化パッド上の基板配置を模式的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[詳細な説明]
現行のCMP法は、さまざまなデバイス製造の場面で利用されているが、一方でさまざまな欠点もある。例えば、現行のCMPプロセスは、パッドコンディショナーの使用や、平坦化中に材料を機械的に研削する研磨スラリーとパッドが一因となり、他の製造プロセスと比較して汚染度が比較的高くなる。CMPによって発生する欠陥は、製造工場にとって大きな歩留まり損失の要因となり得る。CMPにおいて発生する欠陥や傷は、スラリーに含まれる研磨剤、パッドの基板への押しつけ力、パッド調整、プロセスの摩擦学的側面など、プロセスの機械的要素に起因することが多い。さらに、スラリーには研磨剤が含まれているため、デバイス層に傷がつき、ピットができたりカスが残るなどして欠陥となる可能性がある。さらに、研磨やパッド調整の際にもパッドカスが発生する。このようなパッドカスは、処理基板を汚染する粒子や凝集物を生成し、また、パッドがウェハに押し付けられる力によりパッドの変形が起こり得る。その結果、基板との密接な接触や基板とパッド間の相対運動による接触面におけるせん断応力を引き起こす可能性がある。さらに、CMPプロセスは必ずしも予測可能でないこともあり、分析的アプローチではなく、試行錯誤的なアプローチが主流となることもある。さらに、スラリーの取り扱い、供給、および安定化は、固形物により製造施設に困難をもたらし、施設の維持コストが増大する可能性がある。その結果、従来のCMPプロセスでは成膜の冗長性や過剰研磨が必要となり、リソースの浪費やコスト増、生産性の低下につながる可能性がある。
【0008】
したがって、ここでは従来のCMP法で使用される、汚れたり欠陥が生じやすい機械的プロセスを使用せずに、化学的に平坦化を行う例が開示される。簡単に説明すると、開示される例は研磨剤フリー平坦化溶液を研磨スラリーの代わりに使用し、平坦化溶液の基板表面への接触を制御することにより、基板のトポロジー的に低い部分に対してトポロジー的に高い部分からより高い速度で材料を選択的に除去する。「研磨剤フリー」とは、基材除去用の機械的研磨固体成分を含まない平坦化溶液を示す。以下に詳述するように、いくつかの例では、研磨剤フリー平坦化の化学物質は、パッドと基板の間のパッド上ではなく、多孔性パッド内に存在する。このようにして、基板のトポロジー的に高い特徴部を多孔性パッドに接触させ、基板のトポロジー的に低い特徴部には接触させないように制御することができる。平坦化化学物質は、多孔性パッドと接触している基材の部分に作用し、それにより基材のそれらの部分から物質を選択的に除去する。このようにして、研磨剤を使用することなく、基板に対して比較的軽い圧力を加えるだけで、基板表面のトポロジーをより滑らかにすることができる。これにより、デバイス層への傷やその他の損傷を避けることができるため、欠陥の発生を回避でき従来のCMPプロセスに比較して歩留まりの向上が可能である。
【0009】
また、開示されるプロセスにより、CMPに使用されるものとは異なる、円形パッドと回転研磨運動を使用するツール構成が使用可能となる。例えば、化学的平坦化パッドは、長方形または他の形状を有し、直線運動をとることができる。さらに、以下に詳述するように、化学的平坦化パッドは、定常の直線運動をするベルトとして構成することができる。化学的平坦化溶液の分配ステーションと再生ステーションはベルトに沿って配置することができ、ベルトは使用中に連続的な回転が可能である。
【0010】
図1は、本開示に従った化学的平坦化システム100の一例の概略図を示す。システム100は、多孔性パッド104を支持する圧盤102を含む。システム100はさらに、多孔性パッド104の表面に対して基板108を保持するように構成された基板ホルダー106と、多孔性パッド104上に平坦化溶液112を導入するための平坦化溶液導入システム110とを含む。システム100には、基板108の表面から除去された複合物質など、多孔性パッド104から考えられる汚染物質を洗浄するように構成されたパッド洗浄システム114がさらに含まれてもよい。パッド洗浄システム114はまた、以下に示すように、異なる平坦化溶液の使用間のパッドの洗浄に使用することも可能である。システム100に組み込むことができる他の構成要素としては、使用済み溶液回収システム、(例えば、閉ループプロセスにおいて平坦化溶液を再循環させるための)物質再循環システム、および化学種剥離システムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
従来のCMPプロセスでは、基板ホルダーが圧盤上に支持された研磨パッドに基板を押し当て、パッドと基板を非同心状に相対回転させる。このような従来のプロセスでは、比較的高い回転数、例えば40~100rpmが使用される。さらに、基板は、1平方インチ当たり1~4ポンドといった、比較的高い圧力でパッドに押し付けられる。対照的に、本願で開示の例では0.25~0.75ポンド/平方インチといった、より低い圧力を使用することができるが、この圧力に限定されるものではない。より低い圧力を使うことにより、パッド形状の歪みを回避することができ、従来のCMPプロセスと比較してせん断応力を低減することができる。同様に、本願で開示の例では、回転運動が研磨に使用されないため、従来のCMPプロセスよりも低い回転速度を使用してもよい。その代わり、圧盤102の回転は、多孔性パッド104全体に平坦化液を行き渡らせるのに役立つ。任意の適当な回転速度が使用可能である。例としては、0~60rpm、好ましくは5~30rpmといった範囲の速度が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
平坦化溶液には、基材を(例えば、酸化及び溶解により)加水分解する目的で化学成分が含まれてもよい。平坦化溶液は、任意の適当な材料を除去するように構成することができる。一例として、ポリシリコンは、脱イオン水中のポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDADMAC)を含む平坦化溶液を介して除去してもよい。いくつかのそうした例において、PDADMAC溶液は、シュウ酸および/または過酸化水素と混合されてもよく、pH調整用に適当な酸またはアルカリ剤(例えば、硝酸または水酸化カリウム)をさらに含んでもよい。ポリシリコンの平坦化のためには他の試薬を使用することも可能で、それにはポリ(ジメチルアミン-コ-エピクロロヒドリン-コ-エチレンジアミン)、ポリ(アリルアミン)、およびポリ(エチレンイミン)(PEI)が含まれるがこれらに限定されない。他の例として、銅、モリブデン、ルテニウム、レニウム、ロジウム、コバルトなどの1ないし複数の金属を、過酸化水素と炭酸グアニジンを含む平坦化溶液を用いて除去することが可能で、やはり所望の溶液pHになるようにpH調整剤を用いてもよい。別の例として、所望の溶液pHを達成するためのpH調整剤とともに過硫酸アンモニウムを、適当な金属(例えばコバルト)の除去に使用してもよい。適当な加水分解剤の他の例としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
いくつかの例では、平坦化溶液にはさらなる成分が含まれてもよい。例えば、平坦化溶液には、加水分解後に基材から除去された物質を輸送するために、錯化/キレート化剤が含まれてもよい。適当なキレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、スルホサリチル酸、ナフトール(PAN)、ジチゾン、有機リン酸エステル、ポリエチレングリコール、アミン、およびチオキシンが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、いくつかの例では、平坦化溶液には、不動態化剤および/または腐食防止剤を含まれてもよい。例としては、ベンズトリアゾール(BTA)、トリルトリアゾール(TTA)、チオール(例えば、PTAT(5-(フェニル)-4H-1,2-4-トリアゾール-3-チオール))、チオジアゾール、カルボン酸、安息香酸、および安息香酸アンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。平坦化溶液に含まれ得る材料の例としてこの他に、界面活性剤、不動態化および/または腐食防止剤以外の表面改質剤、触媒、熱活性化化学物質、光活性化化学物質、種トレーサー、添加剤、および安定剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
いくつかの例では、以下にさらに詳述するように、加水分解剤および錯化剤を多孔性パッドの官能化ポリマーに結合させることができる。このような例では、多孔性パッド上に分注される平坦化溶液は脱イオン水を含み、化学的平坦化は官能化ポリマーによって行われる。このような例では、平坦化溶液は、上述したように、脱イオン水以外の追加成分を含んでもよい。
【0015】
図2は、多孔性パッド104として使用するのに適した多孔性パッド200の例を示す概略図である。多孔性パッド200には第一層202と第二層204が含まれる。このような二層構造は、二部構成の物質除去・分離プロセスを実装するために使用することができ、第一工程は除去される種の加水分解(および場合によっては溶解)を含み、第二工程はその種の化学的錯体形成を含む。第一層202は、第2のパッドと比較して比較的薄くてもよく、平坦化プロセスにおいて除去される物質の加水分解(例えば、いくつかの例では金属種の酸化)用に構成されてもよい。このように、第一層202は、比較的大きな細孔を含んでいてもよく、親水性であってもよく、ポリマー表面を官能化するように表面修飾されていてもよく、それによって第一層202のポリマーが加水分解反応を担うことが可能である。いくつかの例では、第一層は、厚さが0.1ミクロンから5ミクロンの範囲でもよい。さらに、いくつかの例では、第一層は、10nm~1000nm、好ましくは30nm~200nmの範囲の平均孔径を有してもよい。第一層および第二層は、任意の適当な材料から作られてもよい。いくつかの例では、第一層202および/または第二層204は、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリアクリロニトリル、およびポリフッ化ビニリデンのうちの1または複数から構成されてもよい。さらに、第一層および/または第二層は、硬度60~90ショアAまたは硬度30~60ショアDを有してもよい。
【0016】
さらに、第一層および/または第二層の多孔性ポリマーは、ウェハ荷重および押下力/印加圧力を処理するのに十分な剛性を有し、標準的なDMA、DSCおよびTGA法によって決定される粘弾性特性および物理的属性を有するように、例えば、貯蔵弾性率が15MPa~1200MPa、好ましくは400~800MPa、損失弾性率が100~600MPa、好ましくは150~500MPa、損失正接(損失÷貯蔵)が0.2~0.9、好ましくは0.4~0.8、圧縮率は5%未満、表面張力は40mN/m未満となるような機械的特性を有するように設計されてもよい。
【0017】
第二層204は、第一層よりも相対的に厚くてもよく、第一層よりも相対的に小さい細孔を有してもよい。いくつかの例では、第二層は、第一層によって除去された物質を保持するように構成されてもよい。例えば、第二層は、基材から除去された金属イオンを保持するために、細孔内で第二層に吸着または結合された金属錯化剤で化学的に修飾された表面を含んでもよい。いくつかの例では、第二層は、数ミクロンから3mmの厚さ、より具体的な例では40ミクロンから2mmの厚さを有してもよい。さらに、いくつかの例では、第二層は、5nmから500nmの範囲の平均孔径を有してもよい。第一層と第二層は、接着剤を介するなど、任意の適切な方法で接合することができる。いくつかの例では、多孔性パッド200は、織布マトリックスまたは軟質ポリマーシート(例えば、従来のCMP研磨パッドに現在使用されているタイプのサブパッド)などの追加のサブ層に接着またはその他の方法で接合されてもよい。いくつかの例では、2つの層は一体化され、外見上複合多孔性パッドを構成している。このような例では、最上層と最下層とで異なる特性を有することにより、非対称多孔性媒体を構成することになる。このような非対称多孔性媒体は、いくつかの例では、2つの層の界面で細孔の特性が緩やかかつ系統的に遷移することもあれば、急激に遷移することもある。
【0018】
第一層および/または第二層の多孔性ポリマーは、任意の適切な方法で作製されてもよい。いくつかの例では、ポリマーの相反転または相分離を使用することができる。他の例では、蒸気誘起相分離(エアーキャスティング)を使用してもよい。さらに別の例として、室温でポリマーを溶媒に溶解し、液体の非溶媒に浸漬して相分離を誘導することによる液体誘導相分離(浸漬キャスティング)を用いてもよい。これにより、非対称膜を含むさまざまな形態が可能になる。非対称構造(例えば多層多孔性マトリックス)を形成する方法としては、単層キャスティング時の相分離条件の操作、大きな孔径の基材上に小さな孔径の膜をキャスティングする方法、異なる孔径の多層を同時にキャスティングする方法、異なる孔径の層を積層する方法、温度誘起相分離(TIPSまたはメルトキャスティング)(ポリマーを融点以上に加熱してポロゲンに溶解させ、冷却により相分離を誘起する)を利用する方法などがある。
【0019】
他の例では、加水分解および錯体形成の両方が、第一層202中、および/または、第二層204中の異なる官能化種によって提供されてもよい。さらに、いくつかの例では、加水分解および錯形成が同じ層で起こるように構成されるべく単層多孔性パッドが使用されてもよい。
【0020】
図2には、基板206と多孔性パッド200との接触も描かれている。基板206は、いくつかの例では、
図1の基板108を表し得る。
図2に示すように、基板206と多孔性パッド200との接触は、基板206のトポロジー的に高い領域に限定され、多孔性パッド200が基板のトポロジー的に低い領域に接触しないようになっている。多孔性パッド200に対する基材206の圧力が比較的小さいことと、加水分解化学物質がパッドと基材との間の空間ではなく多孔性パッド200内に位置することと合わせて、トポロジー的に高い領域が多孔性パッド内の加水分解環境と接触しているため、トポロジー的に低い領域と比較して、あるいはトポロジー的に低い領域を除外して、基材206のトポロジー的に高い領域からの材料の除去をより高速度で達成するのに役立つ。
【0021】
第一層202および第二層204はそれぞれ任意の適当な形態を有してもよい。様々な例において、第一層202および/または第二層204はそれぞれ、層状、中空管状または繊維状、螺旋巻き状、あるいはシート状といった形態が含まれてもよい。
【0022】
本明細書の例に開示される化学的平坦化は、従来の化学機械的平坦化に対して様々な利点を提供する。例えば、基板上のトポロジー的に高い領域からの選択的な材料除去は、基板とパッド間においてより少ない圧力および運動により行われ、またスラリー中の研磨材料を使用せずになされることが可能である。これにより、従来のCMPの機械的側面(例えば、パッドと基板の摩擦や毎分当たりの相対回転数)から生じるランダム性を緩和、あるいは排除することができ、これにより化学的動力学と拡散の明確化から、プロセスがより予測しやすくモデリングに適したものとすることができる。さらに、パッドコンディショナーの使用も避けることができる。これら全ての要素は、従来のCMPプロセスにおける機械的プロセスに起因する欠陥を回避するのに役立つ可能性があり、従って、従来のCMPプロセスと比較して歩留まりを向上させるのに役立つ可能性がある。開示される例は、用途に応じて化学的にカスタマイズ可能であり、将来的には先端材料やデバイス設計に拡張可能である。
【0023】
さらに、本明細書に記載される例は、例えば、開示されるような研磨剤フリーの平坦化溶液を、パッドに対するより低い圧力およびより低い回転速度と組み合わせて使用することにより、従来のCMP装置におけるドロップインソリューションとして実施することができる。ドロップインソリューションの一部として従来のCMP装置に対する可能な変更には、そのほかに、従来のCMPパッドを開示される多孔性パッドに置き換えることや、パッドコンディショナーを脱イオン水または他の適当な洗浄液に置き換えることが含まれる。これらの変更は、問題のある工程や材料を除外し、従来のCMP装置の使用と比較してコストを下げることができるという点でプラスに働く可能性がある。
【0024】
図1に戻ると、システム100は回転工具を含むものとして図示されており、図示された圧盤および/または基板ホルダーは、パッドに対する基板の回転運動を付与するために回転するように構成されている。このような例では、平坦化溶液は、多孔性パッドの中心位置に分注されてもよい。これは
図3に模式的に示されており、多孔性パッド304の中央部分に分注された平坦化溶液(矢印302で表される)を示している。基材の位置は306で示されている。中央に置かれた平坦化溶液は、多孔性パッドを通って外側に流れ、それによって多孔性パッドの体積全体に分配され得る。このような流れは、多孔性パッドが取り付けられた圧盤を回転させることによって促進される。このようにして、多孔性パッドは回転プラットフォームとして機能する。上述のとおり、回転運動は、本明細書の例では基板から材料を摩耗させるためには使用されないため、回転速度は、従来のCMPプロセスで圧盤が回転する速度よりも低くてもよい。
【0025】
他の例では、回転機構以外の任意の機構を使用して平坦化溶液を分配してもよい。
図4は、平坦化溶液402が中空糸404を通って流れる中空糸膜機構400の一例を模式的に示している。基板が406で模式的に図示されている。様々なプラットフォーム様式(回転式、直線式またはベルト式、垂直、ローラー、中空糸)に対して、多くの異なる構成および設計が可能であることが理解されよう。さらに、いくつかの例ではコスト経済性および環境上の理由から、化学材料を再生および再利用することができる。
【0026】
いくつかの例として金属や合金層が処理される場合、多孔性パッドが取り付けられた圧盤を陽極として構成し、導電性基板を陰極として構成することができる。高トポグラフィー領域の間にあり、高トポグラフィー領域と接触している化学物質は電解質として作用し、電解力が選択的除去を促進するために使用され、その結果平坦化が促進される。このようにして、平坦化のための電気化学的支援による選択的除去を実施することができる。
【0027】
様々な例において、平坦化溶液は、基板平坦化プロセスの前、および/または、プロセス中に、ユースポイント(POU)で多孔性パッド上に適用されてもよい。いくつかの例では、レシピステップを変更することにより、平坦化プロセス中に化学物質を変更することができる。分離(例えば、デバイス層上の異種材料)が適切に行われていることを確実にする目的、またプロセスを制御する目的で、異なる化学物質をその場で追加または変更することも可能である。さらに、いくつかの例では、1つの化学物質から別の化学物質への切り替えは、基板の平坦化中にその場で行うことができ(例えば、化学物質間の洗浄システムを使用)、またツール(例えば、マルチプレートツール)の異なる平坦化/研磨チャンバに固有に定めることもできる。さらに、官能化ポリマーが多孔性パッドに使用される場合、官能化は、例えば、金属種を剥離し、キレート化官能基を再生するために、その場で(例えば、平坦化溶液分注機構を通して)新たな官能基を付加することによって、再生することができる。官能化の再生におけるその他の態様については、2022年4月26日に出願された「PAD SURFACE REGENERATION AND METAL RECOVERY」と題する米国出願第17/729,805に詳述されており、その全内容はその目的を問わず参照によりここに援用される。
【0028】
上述したように、いくつかの例において、ポリマー材料の表面は、ポリマーに加水分解性、錯体形成性、および/または他の官能性を付与するために官能化されてもよい。このような例では、基材から材料を除去し、材料を錯化するために使用される化学物質は、溶液中に解放されるのではなく、ポリマー表面および細孔内に固定される。一例として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)多孔質層または他の適切な多孔質層は、基材からの除去後に金属イオンを錯化するために、ポリ(アクリル酸)などのキレート剤で官能化されてもよい。PVDF多孔質層は、
図2の例では第一層または第二層のいずれに用いてもよい。ポリマー分子は、層の表面から層の深部まで遍在し得るため、加水分解の後に金属イオンを基板表面から輸送し、表面の汚染とその結果生じる欠陥を防ぐのに役立つ。別の例として、多孔性PVDFポリマー層は、まずPVDF表面をヒドロキシル化し、次に過剰のアジポイルクロリドを添加し、次に超分岐ポリエチレンと反応させることにより、超分岐ポリエチレンでの官能化が可能である。さらに他の例では、平坦化中に基材を加水分解するために、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどの加水分解性物質で表面を官能化してもよい。他の例では、多孔性パッドに任意の所望の化学的官能性を付与するために、他の任意の適当な官能化を行うことができる。官能基の他の例としては、COOH、-NH
2、-SO
3H、-COOCH
2CH
2OH、-N(CH
3)
2、-PO
3H
2、-N(CH
2CH
2OH)
2、および-CONHRが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例では、表面は、例として、イミノジコハク酸(IDS)、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、グルタミン酸(GLDA)、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)、および/またはジシアナミド(DCA)などの生分解性錯化剤で官能化することができる。このような化学種は、それらによるパッドの官能化に加えて、またはその代替として、パッドとは別のキレート剤として使用することもできる。
【0029】
多孔性パッドのポリマーを官能化するには、任意の適当な方法を使用することができる。いくつかの例では、ポリマーは被覆によって官能化されることがあり、この場合官能基はポリマー基材に架橋されず、代わりに吸着される。別の例では、官能基は架橋されていてもよい。例えば、架橋した共重合体を多孔性パッドの多孔性ポリマーマトリックス上に析出させることができる。さらに別の例として、官能基をポリマーに共有結合させることもできる。
【0030】
図5は、化学的平坦化プロセスを実行するための方法500の例を示すフロー図である。方法500には、502において、研磨剤フリーの平坦化溶液を多孔性パッド上に導入することが含まれる。いくつかの例では、平坦化溶液には、基板上の化学種を加水分解する化学種が含まれる。このように、様々な例において、平坦化溶液には、過酸化水素504、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)506、および/または、様々な酸(硝酸、塩酸、硫酸、リン酸など)のような他の任意の適当な加水分解性化合物が含まれてもよい。さらに、いくつかの例では、平坦化溶液は錯化剤507、および他の任意の適切な成分(安定剤、不動態化剤/防腐剤など)を含む。他の例では、加水分解剤と錯化剤は多孔性パッドのポリマー材料に官能的に結合している。このような例では、平坦化溶液は脱イオン水508、または他の適当な溶媒を含んでもよい。
【0031】
方法500にはさらに、510において、基板と多孔性パッドとを接触させることが含まれ、この接触は、基板のトポロジー的に高い部分が多孔性パッドに接触し、また基板のトポロジー的に低い部分が多孔性パッドに接触しないように、多孔性パッドと基板とを互いに相対的に移動させながら行われてもよい。いくつかの例では、512で示されるように、パッドは官能化ポリマーパッドであってもよい。官能化ポリマーパッドには、加水分解、錯体形成、および/または任意の他の追加的な化学プロセスを行うために、結合または吸着された官能性分子/基が含まれてもよい。
【0032】
方法500にはさらに、514において、多孔性パッドとの接触を介して基板のトポロジー的に高い部分から材料が、基板のトポロジー的に低い部分からの材料よりも速く除去され、それによって基板が平坦化されることが含まれる。いくつかの例では、除去される材料は、銅516または銅含有種、コバルト518またはコバルト含有種、またはポリシリコン520を含む。他の例では、任意の他の適当な材料が、平坦化プロセスにおいて除去されてもよい。他の例には、モリブデン、ルテニウム、レニウム、ロジウム、ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、タングステン、および/または他の材料のうちの1または複数が含まれる。上述のように、加水分解および錯化の化学物質はパッドに存在するため、パッドに接触する領域において基板から材料が選択的に除去され、それによって基板が平坦化され得る。
【0033】
上述のように、開示された例示的な化学的平坦化プロセスの研磨剤フリーという性質により、円形パッドを有する回転ツール以外のツール構成が可能となる。
図6は、上述したように、多孔性化学的平坦化パッド604を支持する搬送機構602を含む例としての化学的平坦化システム600の概略図を示す。この例では、搬送機構602は、閉ループ構成を有するベルトとして描かれているが、ロール・ツー・ロールシートなど、他の例では任意の適当な形態をとることができる。
【0034】
システム600はさらに、多孔性パッド604の表面に対して基板608を保持するように構成された基板ホルダー606と、多孔性パッド上に平坦化溶液612を導入するための平坦化溶液導入システム610とを含む。基板608が多孔性パッド604の表面に対して保持されると、搬送機構602により多孔性パッド604が直線的に移動する。いくつかの例では、搬送機構602により毎秒0.5~5インチの範囲の直線速度で多孔性パッド604が移動する。
図1に描かれている例では、移動は、水平方向614(例えば、重力方向に実質的に垂直な方向)で、
図1において左から右に起こる。いくつかの例では、搬送機構602は多孔性パッド604を一方向に移動させることができるが、他の例では、搬送機構602は、化学的平坦化プロセスにおいて多孔性パッド604を2方向(例えば、「順運動」と「逆運動」の両方)に移動させることができる。さらに、いくつかの例では、基板ホルダー606及び/又は多孔性パッドは、方向614に対して横方向の動きも支持することができる。
【0035】
システム600にはさらに、基板ホルダー606の下流に配置された再生ステージ616が含まれる。上述したように、多孔性パッド604には、平坦化中に基板から除去されたキレート種が含まれることがある。このように、多孔性パッド604からキレートが剥離され、それによって多孔性パッド604が再生されるように再生ステージが構成されてもよい。一例として、多孔性パッド604がキレート化銅イオンを含む場合、適当な酸性溶液を適用して銅塩を形成し、それによりキレート化銅を剥離してパッドを再生することができる。再生後、多孔性パッド604から除去された化学種(この例では銅)を回収することができる。
【0036】
図6は、基板608が重力方向に実質的に垂直な水平方向に搬送される例を示している。しかしながら、システム内の様々な構成要素は、任意の適切な向きに配置されてもよい。このような代替的な配置の一例として、搬送機構702および多孔性パッド704が、基板706を垂直方向708(例えば、重力方向に実質的に平行)に搬送するように配置されたシステム700が、
図7に示されている。したがって、平坦化溶液導入システム710は、搬送機構702および多孔性パッド704の端部に近接して配置され、平坦化溶液712を垂直方向708に実質的に平行な方向に供給するように構成される。
【0037】
図8Aには、再生ステージ804を介して供給される平坦化溶液802および再生化学物質が、パッドに向けられたそれぞれの噴霧器によって多孔性パッドの下方から供給される、システム800におけるさらに別の考えられる配置が示されている。いくつかの例では、パッドはコンベアベルト806として構成される。これにより、パッドの連続運転が可能になる。
図8Bは、システム808において、パッドがバッチ操作でローラー810Aおよび810Bに巻き付けられるという、別の考えられる配置を示している。
図8Bの例では、パッドはまずローラー810Aに完全に巻き付けられ、その後ローラー810Bに完全に巻き付けられる。この時点で、新しいパッドをローラー810Aに取り付けることができ、使用済みのパッドは適宜、再調整または廃棄することができる。
【0038】
上述の例では、基材は、任意の適切な数および配置で多孔性パッドと接触するように設置してもよい。
図9Aは、複数の基板900(この例では3枚)がベルトとして構成されたパッド902上に並列に配置され、処理(例えば、平坦化)される一例を示している。このような例では、基板保持システムは、複数の基板を保持するための複数の基板ホルダーから構成されてもよい。
図9Bは別の例として、基板900がパッド902上に配置され直列に個別に処理される例を示している。さらなる例として、可能性のある他の配置には、基板900の対角配置および斜め配置が含まれる。
【0039】
[実験結果]
研磨剤フリーの化学薬品を使用して、官能化パッドの概念実証として、ポリシリコン(poly-Si)、銅(Cu)およびコバルト(Co)膜の材料除去率(RR)を測定し、化学試薬を態様とするパッドによる研磨のシミュレーション条件を求めるべく実験を行った。
【0040】
ポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム(PDADMAC)の研磨剤フリーのスラリーを、ポリシリコン研磨の除去率の実験に使用した。市販のIC1000パッド上のpH10で250ppmのPDADMAC溶液を比較のためベンチマークとして使用した。シリカ研磨剤を使用せずにCuを研磨するためにシュウ酸とH2O2の混合物が使用された。0.065Mのシュウ酸と1wt%のH2O2の溶液は、低いCu溶解率(DR)と共に使用された。
【0041】
ここでは、研磨剤フリーのスラリーを使用した。実験は、ウェハ研磨の前にパッドを前記化学物質であらかじめ浸漬し、研磨中に前記化学物質の供給を停止するように設計された。そうすることで、研磨パッドは官能化された形で前記化学物質を態様とした状況に類似する。ポリシリコン、Cu、Co膜の研磨は、研磨剤フリーのスラリーの連続供給がない状態で行われた。
【0042】
これらの実験では、200mmのSiウェハ上に成膜したポリシリコン膜(~1000nm)、Cu膜(~1500nm)、Co膜(~300nm)を使用した。研磨剤フリーのスラリーの調製には、ACS試薬グレードのPDADMAC(MW200,000~350,000)、シュウ酸、過硫酸アンモニウムを使用した。前記スラリーのpHは、必要に応じてHNO3またはKOHを用いて調整した。
【0043】
最初にパッドは脱イオン化純水で10分間湿潤され、その後コンディショニングが行われた。研磨の前に、圧盤を回転させながら、120mL/minの流速で5分間、それぞれの研磨剤フリーのスラリーにパッドを浸漬した。その後、圧盤の回転を止め、さらに2分間浸漬を続けた。その後、研磨剤フリーのスラリーはパッド上に供給せずに、圧盤とキャリアを回転させながらウェハを研磨した。比較のため、研磨剤フリーのスラリーを60mL/minまたは120mL/minの流量で供給しながら、3種類のフィルムを研磨した。ポリシリコン膜と2種類の金属膜(CuとCo)の研磨には、2種類の研磨機を使用した。研磨条件を表1に示す。
【0044】
【表1】
浸漬パッドのケースは、化学種を態様としたパッドを直接観察したものであり、官能化パッドの挙動に近似している可能性がある。これらは市販のパッドであり、いかなる官能化にもカスタマイズされていないため、結果は概念実証にのみ使用されることが期待される。このような状況で達成された除去率は、研磨剤やパッドの最表面への化学試薬の供給を必要としない除去メカニズムが実現可能であることの証拠である。
【0045】
[ポリシリコン膜の除去率]
表2は、pH10の250ppm PDADMAC溶液の研磨剤フリーのスラリーに浸漬したSuba400研磨パッド上のポリシリコン膜のRRと、研磨剤フリーのスラリーを連続供給したSuba400(アリゾナ州ScottsdaleのEminess Technologies社から入手可能)、IC1000(同じくEminess Technologies社から入手可能)、およびFujibo-Polypas(富士紡ホールディングスから入手可能)研磨パッド上のRRを示している。浸漬したSuba400上のポリシリコンのRRは~639nm/minで、PDADMAC研磨剤フリーのスラリーの連続フローで研磨したポリシリコン膜のRRより5~7%低いだけである。IC-1000上のRRはSuba-400のRRとほぼ同じであり、柔らかいFujiboパッド上のRRは<1nm/minである。Pentaら(1)は、pH10の脱イオン化純水(PDADMACなし)で研磨したポリシリコン膜のRRを<200nm/minと報告しているが、これはPDADMAC研磨剤フリーのスラリーに浸漬したSuba-400パッド上のRRよりも著しく低い。このことは、Suba-400パッドを浸漬することで、研磨剤フリーのスラリーの連続供給がなくても、研磨中に十分なレベルのPDADMACを維持できることを示唆している。
【0046】
しかし、Fujibo-Polypasの結果は、期待される除去率を生み出すためには、化学的な再調合(またはpHレジーム)が必要であることを示している。これは、Fujibo-Polypasのパッドに選択された条件では前記化学物質が効果的でないように見えることから、パッドが浸漬された場合と分注された場合を示すものではない。
【0047】
【0048】
[CuおよびCo膜の除去率]
CuとCoのRRに対する研磨剤フリーのスラリーフローとパッドタイプの影響を調べ、得られたRRを表3に示す。CuのRRは~60nm/minと~74nm/minで、それぞれpH9の1wt%H2O2+50mM炭酸グアニジンとpH6の1wt%H2O2+65mMシュウ酸の研磨剤フリーのスラリーで浸漬したFujibo-Polypasパッドを用いて得られた。化学物質の選択は、以前に行われた研究(2)(3)に基づいている。浸漬したFujibo-PolypasとPolitexのパッドの使用により、このコンセプトの実現可能性を示す良好な除去率が示された。市販のパッドと比較した場合、特に官能化パッドを最適化するために材料をカスタム設計していないため、これは有望な結果である。
【0049】
Co研磨の場合、1wt%の過硫酸アンモニウム(APS)研磨剤フリーのスラリーをpH9で使用しても、2つの研磨法を比較して、注目に値するRRは得られなかった。しかし、pHを8まで下げると、RRは著しく向上した。これは、研磨剤を完全に除去できる官能化パッドに必要な化学物質とカスタマイズの重要性を示すもう一つの証拠である。
【0050】
【0051】
半導体の3つの主要用途、すなわちポリシリコン、Cu、Coの研磨プロセスすべてについて、研磨剤フリーの化学薬品がさまざまな市販のパッド材料に対して比較された。浸漬パッド条件は、パッドが化学試薬を態様とし、研磨中にスラリーが供給されない状況を表している。「浸漬」パッド条件は除去率の実現可能性を表し、従来の研磨の態様と同等の場合もあった。パッド材料は、この概念実証試験で所望の程度まで化学的に官能化されていなかったため、この結果は有望である。官能性のカスタマイズは、その後の試作と製品開発の段階でなされる。この結果は、ポリマー材料を調合し、マトリックスを官能化することで、研磨剤も複雑な化学物質も必要としない革新的なパッドを開発するための基礎を形成する上で極めて重要である。
【0052】
本明細書に記載される構成および/またはアプローチは、本質的に例示的なものであり、多数の変種が可能であるため、これらの特定の実施形態または実施例は、限定的な意味でとらえられるべきではないことが理解されよう。本明細書に記載される特定のルーチンまたは方法は、任意の数の戦略のうちの1または複数を表すことができる。そのため、図示および/または記載された様々な行為は、図示および/または記載された順序で実行されてもよく、他の順序で実行されてもよく、並行して実行されてもよく、省略されてもよい。同様に、上述した工程の順序を変更してもよい。
【0053】
本開示の主題には、本明細書に開示された様々な工程、システム、構成、および他の特徴、機能、作用、および/または、特性の新規かつ非自明な組み合わせおよび副組み合わせ、ならびにそれらのあらゆる均等物が含まれる。
【国際調査報告】