(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】放射線および/または抗がん治療補助療法としてアデノシン二リン酸リボースの活用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7076 20060101AFI20240905BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240905BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K31/7076
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514036
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 KR2022013186
(87)【国際公開番号】W WO2023038368
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0118942
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524077988
【氏名又は名称】パールズインマイアーズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PEARLSINMIRES CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チョン,クンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミンヒ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA18
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、アデノシン二リン酸リボース(adenosine diphosphate ribose;ADP-Ribose)を利用した抗がん療法に関し、具体的に、ADP-リボースの単独抗がん療法および抗がん剤または放射線との併用療法などに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を含む、抗がん用組成物。
【請求項2】
がんは、脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん、胃がんおよび卵巣がんからなる群から選択された1種以上の固形がんである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
がんは、転移性がんである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
がん細胞内ADP-リボース蓄積を誘導することで、がん細胞生化学作用撹乱を誘発するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を含む、放射線療法の抗がん補助剤。
【請求項6】
放射線敏感度を向上させるものである、請求項5に記載の抗がん補助剤。
【請求項7】
(i)ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩および(ii)第2抗がん剤を含む、抗がん組成物。
【請求項8】
第2抗がん剤は、細胞毒性抗がん剤、標的抗がん剤および免疫抗がん剤からなる群から選択された1種以上である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
第2抗がん剤は、細胞毒性抗がん剤である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
細胞毒性抗がん剤は、アルキル化剤であり、ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩は、アルキル化剤に対する敏感性を増進させるものである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
第2抗がん剤は、標的抗がん剤である、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
標的抗がん剤は、VEGF/VEGFR、EGFRおよびHER2からなる群から選択された1種以上のターゲットを標的する標的抗がん剤であり、ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩は、前記標的抗がん剤に対する敏感性を増進させるものである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
標的抗がん剤は、VEGF/VEGFR抑制剤である、請求項12に記載の脳がんまたは肝がん治療用組成物。
【請求項14】
標的抗がん剤は、EGFR抑制剤である、請求項12に記載の肺がん治療用組成物。
【請求項15】
標的抗がん剤は、HER2抑制剤である、請求項12に記載の乳房がん治療用組成物。
【請求項16】
第2抗がん剤は、免疫抗がん剤である、請求項8に記載の組成物。
【請求項17】
ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を含む化学療法に対する、抗がん補助剤。
【請求項18】
抗がん薬物療法および抗がん補助剤の投与は、同時または異時に遂行されるものである、請求項17に記載の抗がん補助剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アデノシン二リン酸リボース(adenosine diphosphate ribose;ADP-Ribose)を利用した抗がん療法に関し、具体的に、ADP-リボースの単独抗がん療法および抗がん剤または放射線との併用療法などに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法は、X線などの強力なエネルギービームを使用して、がん細胞を殺すがん治療法である。放射線を処理する間、高エネルギービームが機器から出て、身体の正確な箇所に向かってビームを照準して治療される。放射線療法は、細胞の成長と分裂を制御する遺伝物質(DNAなど)を破壊することで、細胞を損傷させる。放射線療法の最終的な目標は、可能な正常且つ健康な組織を避けて、がん組織を目標にして破壊することである。コンピュータ技術の発展により、コンピュータ断層撮影(CT)、陽電子放出断層撮影(PET)および磁気共鳴映像(MRI)スキャンを開発して正常的な組織の損傷を減らすために、標的腫瘍を正確に計算し出すことができる。強度調節放射線療法および陽性子ビーム療法は、腫瘍を効率的に除去し、正常機関に対する損傷を最小化するために、様々な方向に光子および陽性子ビームを少ない誤差で標的に照準する方式で遂行され、この方法を通じて、放射線治療による副作用は多く減少する傾向にある。しかし、治療技術の改善にもかかわらず、多数の患者は、がん細胞の放射線に対する固有耐性によって治療後にがんが容易に再発する問題が生じる。
【0003】
化学療法は、がん細胞を殺すために、薬物を使用するすべての抗がん剤治療を称する。化学療法は、単一薬物または様々な薬物の組み合わせで構成されることができ、静脈、筋肉、皮下を通じて投与されるか、体腔内に注射されるか、錠剤形態で経口に伝達されることができる。化学療法は、がんと戦う薬物が血液を通じて広がり、元のがんと遠くのがん(転移性)細胞を殺すか、または除去することができるように、身体のすべての部位を循環するという点で、手術や放射線療法と異なる。がん診断を受けたすべてのヒトの半分以上が化学療法を受ける。しかし、がん化学療法を通じた治療時の障害物のうち一つが薬物に対する副作用の念慮である。化学療法は、身体で速やかに成長して分裂するすべての細胞に影響を及ぼすことができ、ここには、骨髄の新たな血液細胞または口、胃、皮膚、毛髪および生殖器官の細胞を含む正常細胞が含まれる。化学療法が正常細胞を損傷させると、副作用が発生する。副作用の発生有無とその深刻度は、薬物の類型および最初の治療周期から次の治療周期までの反応によって異なり得るが、特に、薬物の用量とも密接な関連がある。副作用が酷くなると、治療が直ちに中断されなければならず、正常且つ健康な細胞が回復した後、副作用が漸進的に改善する傾向にある。時々化学療法は、消えない長期間の副作用を誘発することがあり、ここには、心臓、肺、神経、腎臓または生殖器官損傷が含まれ得る。
【0004】
進行性がん患者が必須に経験しなければならない治療過程で予期せぬ耐性で初期治療の失敗を経験することもあり、治療に対する耐性なしに放射線や抗がん療法などの治療を持続的に進行することができるとしても、甘受しなければならない様々な大小の多様な副作用の負担はかなり大きい。放射線治療の場合は、治療によって誘導される抗がん効果を持続的に維持するための方法であって、低酸素環境で誘導されるがん特異的遺伝子の抑制やDNAを修復に活用される多様な分子生物学的、遺伝的要因を調節するための試みがあったが、放射線治療効果を増進させるか、耐性克服のための知られている療法は、放射線治療と併用する際に基本的に放射線治療によって現れる塩症、胃腸障害、悪心、嘔吐、下痢などの副作用をさらに悪化させる可能性が共存するため、積極的な使用に制限があり、根本的な放射線治療の敏感度の増進や耐性克服のための療法として明確に認められていない。化学療法の場合は、治療で効能に比べて甘受しなければならない副作用を減らすための方法であって、投与用量を減少させることが最も確かな方法であるが、療法の特性上、副作用によって用量を減量すること自体が、治療の失敗と考えられることがある。よって、現在まで知られている方法を通じた成績は満足できず、これを克服するための部分は、医学的に未充足のニーズ(unmet needs)に十分に該当し、かなり解決し難い課題として残っている。
【0005】
アデノシン二リン酸リボースまたはADP-リボースは、NAD(nicotinamide adenine dinucleotide)に由来する生体物質であって、細胞内でADP-リボシル化(ribosylation)の単位分子に翻訳後修飾(post-translational modification)に関与するものと知られている。外部NADの悪性腫瘍または感染性疾患に対する用途は、WO99/12951に一部開示されており、外部ADP-リボースのアデノウイルス-関連疾患または病態または粘膜炎に対する用途もまた、WO2017/143113またはWO03/099297に一部開示されている。しかし、前記文献は、ADP-リボースの具体的な抗がん用途または抗がん補助用途を開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アデノシン二リン酸リボース(ADP-リボース)を活用して、抗がん療法の効能を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的達成のために、本発明者らが研究努力した結果、ADP-リボースががん細胞内に蓄積されると、がん細胞内ADP-リボースの恒常性が崩れる生化学作用撹乱によって抗がん効果を発揮することができ、放射線療法および/または化学療法に対する敏感性が顕著に向上し得ることを確認して、本発明を完成した。よって、本発明は、抗がん治療のためのADP-リボースの使用方法、抗がん治療のための放射線療法および/または抗がん療法とADP-リボースの併用方法、抗がん治療のためのADP-リボース製剤などを提供する。
【0008】
1.抗がん治療のためのADP-リボースの使用
【0009】
本発明者らは、ADP-リボースの抗がん効果を多様な固形がん腫から具体的に確認することで、本発明を完成した。したがって、本発明は、ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を含む抗がん用組成物;治療的有効量のADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を患者に投与することを含む、がん治療方法;がんの予防または治療のためのADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩の用途;または抗がん剤の製造のためのADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0010】
ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩
本発明において、ADP-リボースまたはアデノシン二リン酸リボースは、下記化学式1で表示される化合物である。
【化1】
【0011】
ADP-リボースの製造方法は、本発明の属する技術分野に公知になっている。一実施態様において、ADP-リボースは、アルカリ性塩基の存在下にニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の加水分解を通じて合成されることができる。また、ADP-リボースは、これに相応する塩基の金属イオンの一価または二価塩の形態で単離されることができる。または、ADP-リボースは、精製された原料で商業的に入手できる(CAS Number:68414-18-6)。
【0012】
本発明において、薬学的に許容可能な塩は、製薬業界で通常的に使用される塩を意味し、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、銅、マンガン、亜鉛、鉄などを始めとした無機イオンの塩と塩酸、リン酸、硫酸のような無機酸の塩があり、その外にアスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、グリコール酸、コハク酸、プロピオン酸、酢酸、オロト酸、アセチルサリチル酸のような有機酸の塩などとリジン、アルギニン、グアニジンなどのアミノ酸塩がある。また薬学的な反応、精製および分離過程で使用され得るテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンゼトニウムなどの有機イオンの塩がある。ただし、列挙されたそれらの塩によって、本発明において意味する塩の種類が限定されるものではない。好ましくは、本発明において、ADP-リボースの薬学的に許容可能な塩は、ADP-リボースのリチウム塩(モノおよびジ-リチウム塩を含む)ではない。
【0013】
本発明において、ADP-リボースは、ポリ-ADP-リボース(Poly-ADPR)のようなADP-リボースの前駆薬物形態で使用されることができる。例えば、ADP-リボースの前駆薬物は、化学式1で表示されるADP-リボース内末端リボース部分の一つ以上のヒドロキシル基とカルボン酸、アミノ酸、脂肪酸またはこれらの組み合わせが縮合されて形成されることができる。
【0014】
ADP-リボースの抗がん効果
本発明者らは、本発明の抗がん組成物ががん細胞内ADP-リボースを蓄積させ、がん細胞生化学作用の撹乱を誘発することで、抗がん効果を発揮するという点を見つけた。
【0015】
具体的に、本発明者らは、各種固形がん(脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん)細胞株にADP-リボース(数~数十μM濃度)を処理する場合、がん細胞内ADP-リボース濃度が顕著に増加するということを確認した(実施例1;
図1)。特に、抗がん療法の一つとして使用される放射線照射時にがん細胞内ADP-リボースの濃度が一時的にのみ(数時間)増加したが、外部ADP-リボース処理時にがん細胞内のADP-リボース濃度は、放射線照射時と比べて顕著に、そして持続的に上昇することを確認した(実施例7;
図17)。
【0016】
本発明者らは、ADP-リボースをがん細胞内部に人為的に蓄積させる場合、がん細胞で維持されるADP-リボースの生化学的恒常性を崩壊させることで、効果的な抗がん効果を発揮することができるものと予想した。これを具体的に確認した結果、ADP-リボースが低濃度(数~数十μM濃度)で各種固形がん(脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん、胃がん、卵巣がん)に対して顕著な抗がん効果を示すことを確認した(実施例2;
図2~9、実施例4;
図12~14)。
【0017】
これを通じて、ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩は、がん治療のために有用に活用され得ることを確認した。
【0018】
本発明において、がんは、悪性腫瘍または新生物とも呼ばれる細胞の死滅調節と関連する疾病であって、正常的な細胞死滅均衡が崩れて細胞が過多増殖するようになることで生じる状態または疾病を指称する。このような非正常的な過多増殖細胞は、場合によって、周囲組織および臓器に侵入して腫塊を形成し、体内の正常的な構造を破壊するか、変形させる。
【0019】
本発明の抗がん組成物によって緩和、軽減または治療され得るがんは、生化学作用過程の撹乱によって、増殖、浸潤、転移などが抑制されることができる限り、特にこれに制限されないが、細胞内ADP-リボース生化学作用の撹乱によって、増殖、浸潤、転移などが抑制され得る固形がんであることが好ましい。前記固形がんは、乳房がん、子宮頸部がん、神経膠腫、脳がん、黒色腫、頭頸部がん、肺がん、膀胱がん、前立腺がん、白血病、腎臓がん、肝がん、結腸がん、直腸がん、大腸がん、膵臓がん、胃がん、胆嚢がん、卵巣がん、リンパ腫、骨肉腫、子宮がん、口腔がん、気管支がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、皮膚がん、扁平上皮細胞がん、甲状腺がん、副甲状腺がんまたは尿管がんであってよいが、これに制限されない。前記がんは、特定遺伝子が突然変異されたがんであってよい。好ましくは、前記固形がんは、脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん、胃がんおよび卵巣がんからなる群から選択された1種以上である。
【0020】
本発明において、がんは、原発性がんと転移性がんを含む。本発明の抗がん組成物は、がん細胞の浸透および転移能力抑制に効果的である。具体的に、本発明者らは、ADP-リボースが低濃度(数~数十μM濃度)で転移がん(膵臓がん、乳房がん)に対する顕著な抗がん効果を示すことを確認した(実施例3;
図10および11)。よって、本発明の組成物は、固形がん、特に、転移性固形がん(例えば、転移性膵臓がん、乳房がん)の治療に有用に活用されることができる。
【0021】
投与経路、用法および用量
本発明に係る抗がん組成物は、目的組織に到達できる限り、如何なる一般的な投与経路を通じても投与されることができる。例えば、目的とするところによって、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経皮パッチ投与、経口投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与などの経路を通じて投与されることができる。経口投与時には、剤形化されていない形態または活性成分をコーティングするか、胃における分解から保護されるように剤形化された形態または経口用パッチ形態で口腔内に投与されることができる。また、本発明の抗がん組成物は、活性成分が標的がん細胞に移動することができる任意の装置によって投与されることができる。
【0022】
具体的に、本発明者らは、マウスを対象とする動物実験を通じて、ADP-リボースを皮下注射、静脈注射または口腔投与する場合、各種固形がん(膵臓がん、腎臓がん、膵臓がん)に対して抗がん効果を示すことを確認した(実施例4;
図12~14)。
【0023】
本発明に係る抗がん組成物は、治療的有効量で投与されることができ、これは、医学的治療または予防に適用可能な合理的な受益/危険割合で疾患を治療または予防するに十分な量を意味する。治療的有効量水準は、疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、使用された本発明組成物の投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、使用された本発明の組成物と配合または同時に使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野によく知られている要素によって決定されることができる。本発明の抗がん組成物は、一日一回~数回に分けて投与されることができる。
【0024】
本発明の抗がん組成物は、単独投与されるか、1種以上の抗がん療法と併用されることができる。併用投与される場合、前記1種以上の抗がん療法は、化学療法、免疫抗がん療法、放射線療法、手術、ナノ医学、またはこれらの組み合わせを含み、ADP-リボースの抗がん効果が増進され得る抗がん療法であれば、その種類および回数に特に制限されない。例えば、本発明の抗がん組成物は、手術前後の補助療法に使用されることができ、後述されるように、放射線療法および/または抗がん療法と同時にまたは前後に併用されることができる。
【0025】
2.抗がん治療のための放射線療法とADP-リボースの併用
本発明者らは、放射線療法とADP-リボースを併用する場合、抗がん治療の効果が顕著に相乗することを見つけた。したがって、本発明は、放射線療法と併用されるADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を含む抗がん組成物;治療的有効量のADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を患者に投与することと放射線療法を併用するがんの治療方法;ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を含む放射線療法の抗がん補助剤;ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を含む放射線敏感化剤;または放射線療法の補助剤として、前記ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0026】
本発明において、放射線療法の抗がん補助剤とは、放射線療法前後に投与される場合、放射線療法の抗がん効果を改善、向上または増大させることができる製剤を意味する。
【0027】
放射線療法
本発明において、用語「放射線療法」は、がん細胞を死滅させるための目的であって、がん細胞または腫瘍組織に放射線を照射する治療行為を言う。一般的に、切開不可能または手術不可能な腫瘍、または腫瘍転移を制御するための標準治療法であって、標的部位に伝達された放射線が再生性細胞(reproductive cell)の死滅を招くという原理に基づく。本発明において、放射線抗がん治療は、イオン化放射線療法(ionizing radiation therapy)、電磁気放射線療法(electromagnetic radiation)、近接放射線療法(brachytherapy)または外部放射線療法(external beam radiation therapy)であってよいが、これに制限されるものではない。
【0028】
本発明に係るADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物は、放射線療法と併用される場合、相乗的抗がん効果を示すので、放射線療法に対する抗がん補助剤または放射線敏感度を向上させる放射線敏感化剤として有用に活用されることができ、適用可能ながんの種類に特に制限されない。一例として、前記がんは、脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん、胃がん、または卵巣がんのような固形がんであってよいが、これに制限されるものではない。
【0029】
一実施様態として、前記固形がんは、放射線療法に対して耐性を示すものであってよい。放射線治療の抗がん効果は、DNA切断の形成で示されるため、放射線治療に対する耐性は、一般的に放射線治療によって誘導されるDNA損傷を修復できる機序によって決定される。放射線治療の抗がん効能を相乗させる方法として、DNA修復機序抑制のための多くの試みがあり、破壊されたDNA鎖の修理が遮断されると、放射線治療の感度が高くなり得る。DNA損傷の二つの主要形態は、SSB(Single Strand Breaks)とDSB(Double Strand Breaks)である。よって、SSBおよびDSBを対象とする二つの修復経路の範疇で説明することができる。BER(Base Excision Repair)は、選択された類型のDNA SSBの修復に関与する様々な経路のうち一つである。
【0030】
PARP1は、ADP-リボシル化(ribosylation)と知られている工程を通じて、DNA SSBのBERで重要な役割を果たす。核においてPARP1は、SSB DNAの損傷を感知し、修理のためにSSB部位にADP-リボシル化を通じてDNA修復複合体を募集する。PARP-1活性によるADP-リボシル化を通じて合成されたポリ-ADP-リボースの過蓄積は、最終的に細胞の死滅に繋がるため、がん細胞は、この現象を防ぐためにPARGやARH3などのようなプロテアソームを通じてポリ-ADP-リボースの分解を活性化して、生存シグナル伝達活動を活性化する。本発明者らは、がん細胞内ADP-リボースやADP-リボース重合体の蓄積ががん細胞のこのような生化学的生存機序を撹乱させることができる媒介体として作用することができ、放射線治療耐性を克服する重要な抗がん補助剤として活用できることに着眼した。
【0031】
本発明の具体的な一実施例においては、それぞれ異なるがん種で低線量の放射線照射とともに、本発明のADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を併用処理した場合、すべてのがん種で放射線治療に対する反応性が増進されることを確認した。したがって、本発明のADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩は、放射線治療の反応を増進させることができ、抗がん補助用途として非常に有用に使用されることができ、放射線を耐性線量で照射しても、優れた抗がん活性を有するので、放射線によって発生し得る副作用を最小化することができる。
【0032】
具体的に、本発明者らは、各種固形がんでADP-リボース処理によって放射線照射時に上昇するがん細胞内ADP-リボース濃度以上に細胞内ADP-リボース濃度上昇を維持させることができることを確認した(実施例7;
図17)。放射線照射による抗がん効果は、遺伝物質の損傷による死滅作用を通じて期待することができるが、がん細胞は、これを克服するために、ADP-リボシル化を通じてDNAの鎖を持続的に修復する。しかし、
図17から見られるように、放射線照射によって破壊されたDNA鎖の修復作用のために、一時的にのみ増加するADP-リボースを持続的に蓄積されるように補助すると、がん細胞のDNA修復過程で生化学的撹乱を起こして、放射線治療の相乗した抗がん効果を期待することができ、放射線治療の耐性克服および副作用減少のための減少した線量での抗がん放射線活用可能性を期待することができる。
【0033】
さらに、本発明者らは、放射線療法とADP-リボース投与と放射線併用時に各種固形がん(脳がん、肺がん、膵臓がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん)に対する相乗的抗がん効果を示すことを確認した(実施例8;
図18、実施例9;
図19)。
【0034】
投与経路、用法および用量
放射線照射療法は、一般的に放射線吸収線量(Gray;Gy)、時間および分類面で定義され、腫瘍学者によって控え目に定義されなければならない。患者が収容できる放射線量は、多様な考慮事項によって左右されるが、2つの最も重要なものは、身体の他の決定的な構造または長期に対する腫瘍の位置および腫瘍が広がった程度である。放射線療法を受けている患者治療の典型的な過程はこれに制限されないが、例えば、1週間に5日間、1日1回線量を約1.8~2.0Gyに、患者に投与された総線量が10~80Gyにして、1~6週の期間にわたった治療スケジュールであってよく、1-10cGyまたは5-40cGy数十回など、低い濃度の放射線で多回分画する治療スケジュールであってよい。
【0035】
本発明者らは、腫瘍マウスモデルを対象に2Gy線量の放射線療法とADP-リボース投与を併用する場合、各種固形がんに対する相乗的抗がん効果を示すことを確認した(実施例8;
図18、実施例9;
図19)。しかし、本発明の抗がん組成物と併用され得る放射線療法の放射線吸収線量は、これに制限されず、1回線量は、1~10Gyに、総線量を約1~100Gyにすることができるが、これに制限されない。例えば、患者に照射される総放射線量は、約1cGy~約100Gyまたは約1cGy~約50Gyであってよい。一部具体例において、個体は、放射線療法を受けており、および/または受けることができる。放射線療法は、1週~10週間、週当り5日投与される一つ以上の放射線治療を含むことができる。当業者が理解するように、放射線療法は、特定期間(例えば、1-10週)にわたることができ、個体に連続して投与されず、却って断続的に投与されることができる。
【0036】
放射線療法と併用されるADP-リボースの投与経路、用法および用量は、上述したとおりであり、直接的な放射線療法前または後に投与されることができる。また、後述するように、化学療法を併用することができる。
【0037】
3.抗がん治療のための化学療法とADP-リボースの併用
本発明者らは、化学療法とADP-リボースを併用する場合、抗がん治療の効果が顕著に相乗することを見つけた。したがって、本発明は、ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を含む化学療法の抗がん補助剤または敏感化剤;(i)ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩および(ii)第2抗がん剤を含む抗がん用組成物または組み合わせ物;治療的有効量のADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩および第2抗がん剤を併用投与することを含む、がん治療方法;がんの予防または治療のための化学療法の抗がん補助剤または敏感化剤として、前記ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0038】
本発明において、化学療法の抗がん補助剤は、抗がん剤の抗がん効果を改善、向上または増大させ得る製剤であって、抗がん剤とともに使用される場合、前記抗がん剤の抗がん効果を改善、向上または増大させることができる製剤を意味する。
【0039】
ADP-リボースと併用されることができる抗がん剤
本発明において、化学療法は、1種以上の化学療法剤を抗がん剤として使用するがん治療方法である。本発明において、ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩と併用されることができる第2抗がん剤は、がんの種類と進行程度によって、がんの完治、調節、症状緩和のために適切な種類を選択することができ、例えば、細胞毒性抗がん剤、標的抗がん剤、免疫抗がん剤、代謝抗がん剤またはこれらの組み合わせから選択された1種以上であってよい。
【0040】
本発明において、細胞毒性抗がん剤は、正常細胞に比べて速い速度で無分別に分裂するがん細胞を攻撃して抗がん効果を示す薬物であって、その意味は、本発明の属する技術分野において通常的に使用されるものと同じである。前記細胞毒性抗がん剤は、アルキル化剤、抗代謝剤(antimetabolite)、天然物抗がん剤を含む。
【0041】
前記アルキル化剤は、窒素マスタード(例えば、シクロホスファミド、クロルメチン、ウラムスチン、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、ベンダムスチンなど)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン、プロカルバジンなど)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシンなど)、白金基盤アルキル化剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、ジシクロプラチン、エプタプラチン、ロバプラチン、ミリプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン、トリプラチンテトラニトラートなど)を挙げることができるが、これに制限されない。アルキル化剤は、がん細胞内DNAに結合してDNA構造を損傷させることで、がん細胞の破壊を誘発することができる。
【0042】
前記抗代謝剤(antimetabolite)は、ピリミジン誘導体(例えば、5-フルオロウラシル、カペシタビン、シタラビン、ゲムシタビン、フルダラビンなど)、フォレート誘導体(例えば、メトトレキサート、ペメトレキセドなど)、プリン誘導体(例えば、メルカプトプリンなど)を挙げることができるが、これに制限されない。抗代謝剤は、DNA複製および細胞生存に必要な代謝を抑制することで、がん細胞死滅を誘導することができる。
【0043】
前記天然物抗がん剤としては、トポイソメラーゼ抑制剤(カンプトテシン、エピポドフィロトキシン、タキサン系列薬物)、抗生剤(例えば、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシン、フレオマイシン、イダルビシン、ミトキサントロンHClなど)を挙げることができるが、これに制限されない。
【0044】
本発明において、標的抗がん剤は、がんの成長に関与するターゲットタンパク質(受容体または酵素)を抑制することで、がん細胞の死滅を誘導する抗がん剤であって、その意味は、本発明の属する技術分野において通常的に使用されるものと同じである。前記標的抗がん剤は、標的タンパク質(チロシンキナーゼなど)抑制低分子化合物および単クローン抗体を含む。
【0045】
本発明において、標的抗がん剤は、VEGF/VEGFR、EGFR、およびHER2からなる群から選択された1種以上のターゲットを標的する受容体チロシンキナーゼ抑制剤であってよい。
【0046】
一実施態様において、ADP-リボースと併用投与されることができる標的抗がん剤は、VEGF/VEGFR抑制剤である。本発明において、VEGF/VEGFR抑制剤は、アキシチニブ(axitinib)、カボザンチニブ(cabozantinib)、ラパチニブ(lapatinib)、レンバチニブ(lenvatinib)、パゾパニブ(pazopanib)、レゴラフェニブ(regorafenib)、ソラフェニブ(sorafenib)、スニチニブ(sunitinib)、バンデタニブ(vandetanib)のような低分子化合物とともに、ベバシズマブ(bevacizumab)、ラムシルマブ(ramucirumab)、ラニビズマブ(ranibizumab)のような単クローン抗体を挙げることができるが、これに制限されない。本発明において、ADP-リボースとVEGF/VEGFR抑制剤の併用投与によって治療され得るがんは固形がんであり、好ましくは、脳がんまたは肝がんである。
【0047】
一実施態様において、ADP-リボースと併用投与されることができる標的抗がん剤は、EGFR抑制剤である。本発明において、EGFR抑制剤は、オシメルチニブ(osimertinib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、エルロチニブ(erlotinib)、アファチニブ(afatinib)、ブリグチニブ(brigatinib)、イコチニブ(icotinib)、バンデタニブ(vandetanib)のような低分子化合物とともに、セツキシマブ(cetuximab)、パニツムマブ(panitumumab)、ザルツムマブ(zalutumumab)、ニモツズマブ(nimotuzumab)、マツズマブ(matuzumab)のような単クローン抗体を挙げることができるが、これに制限されない。本発明において、ADP-リボースとEGFR抑制剤の併用投与によって治療され得るがんは固形がんであり、好ましくは、肺がんである。
【0048】
一実施態様において、ADP-リボースと併用投与されることができる標的抗がん剤は、HER2抑制剤である。本発明において、HER2抑制剤は、ラパチニブ(lapatinib)、ネラチニブ(neratinib)、アファチニブ(afatinib)のような低分子化合物とともに、トラスツズマブ(trastuzumab)、ペルツズマブ(pertuzumab)、マルジェツキシマブ(margetuximab)のような単クローン抗体を挙げることができるが、これに制限されない。本発明において、ADP-リボースとHER2抑制剤の併用投与によって治療され得るがんは固形がんであり、好ましくは、乳房がんである。
【0049】
以外にも、本発明の標的抗がん剤はまた、イマチニブ(imatinib)、ダサチニブ(dasatinib)、ニロチニブ(nilotinib)のようなBcr-Abl標的抗がん剤;ボスチニブ(bosutinib)のようなSrc標的抗がん剤;レスタウルチニブ(lestaurtinib)、ルキソリチニブ(ruxolitinib)、パクリチニブ(pacritinib)のようなJAK標的抗がん剤;コビメチニブ(cobimetinib)、セルメチニブ(selumetinib)、トラメチニブ(trametinib)、ビニメチニブ(binimetinib)のようなMAP2 Kinase標的抗がん剤;セリチビン(ceritibin)、クリゾチニブ(crizotinib)のようなMEL4-ALK標的抗がん剤などを含むことができる。
【0050】
本発明の第2抗がん剤は、1種以上の細胞毒性抗がん剤および/または標的抗がん剤の組み合わせであってよく、これらは、同時にまたは異時に投与されてよい。例えば、前記第2抗がん剤は、ナイトロジェンマスタード、イマチニブ、オキサリプラチン、リツキシマブ、エルロチニブ、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、ボルテゾミブ、スニチニブ、カルボプラチン、ソラフェニブ、ベバシズマブ、シスプラチン、セツキシマブ、ビスカムアルバム、アスパラギナーゼ、トレチノイン、ヒドロキシカルバミド、ダサチニブ、エストラムスチン、ゲムツズマブ オゾガマイシン、イブリツモマブ チウキセタン、ヘプタプラチン、メチルアミノレブリン酸、アムサクリン、アレムツズマブ、プロカルバジン、アルプロスタジル、硝酸ホルミウムキトサン、ゲムシタビン、ドキシフルリジン、ペメトレキセド、テガフール、カペシタビン、ギメラシン、オテラシル、アザシチジン、メトトレキサート、ウラシル、シタラビン、フルオロウラシル、フルダラビン、エノシタビン、デシタビン、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン、カルモフール、ラルチトレキセド、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン、ベロテカン、トポテカン、ビノレルビン、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、テニポシド、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、マイトマイシン、ブレロマイシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ピラルビシン、アクラルビシン、ペプロマイシン、テモゾロミド、ブスルファン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルファラン、アルトレタミン、ダカルバジン、チオテパ、ニムスチン、クロラムブシル、ミトラクトール、ロムスチンおよびカルムスチンからなる群から選択された1種以上であってよいが、これに制限されない。
【0051】
本発明において、免疫抗がん療法(cancer immunotherapy)は、免疫抗がん剤を通じて人体の免疫系を活性化させて、がん細胞と戦わせるがん治療方法である。本発明において、免疫抗がん剤は、免疫チェックポイント抑制剤、免疫細胞治療剤、抗がんワクチン、抗体-薬物接合体を含み、がんの種類と進行程度によって、がんの完治、調節、症状緩和のために適切な種類を選択することができる。
【0052】
一実施態様において、免疫抗がん剤は、免疫チェックポイント抑制剤であってよく、PD-1抗体、PD-L1抗体、CTLA-4抗体、CD28抗体、KIR抗体、TCR抗体、LAG-3抗体、TIM-3抗体、TIGIT抗体、A2aR抗体、ICOS抗体、OX40抗体、4-1BB抗体およびGITR抗体からなる群から選択された1種以上であってよい。例えば、前記免疫チェックポイント抑制剤は、ニボルマブ(nivolumab)、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)、セミプリマブ(cemiplimab)、ピジリズマブ(pidilizumab)、トリパリマブ(toripalimab)のようなPD-1抗体;アテゾリズマブ(atezolizumab)、アベルマブ(avelumab)、デュルバルマブ(duralumab)のようなPD-L1抗体;イピリムマブ(ipilimumab)、トレメリムマブ(tremelimumab)のようなCTLA-4抗体であるか、これらのすべてであってよい。
【0053】
一実施態様において、免疫抗がん剤は細胞治療剤であってよく、チサゲンレクロイセル(tisagenlecleucel)、アキシカブタゲンシロルユーセル(axicabtagene ciloleucel)のようなCAR-T治療剤またはCAR-NK治療剤であってよいが、これに制限されるものではない。
【0054】
本発明において、代謝抗がん剤は、がん細胞に栄養を供給するなど、がん細胞の成長および生存に関与するか、必須な様々な代謝作用に関与してがん細胞を死滅させる薬物を言う。前記代謝抗がん剤は、例えば、IM-156、3-ブロモピルビン酸(3BP)、NYH817100、WZB117、GNE-140、AZ93、AZD3965、CPI-613、MKT-077、CB-839、CB-1158、CPI-444、TVB-2640、NDI-010976、TCD-717、ADI-PEG20、エパカドスタット(Epacadostat)、インドキシモド(Indoximod)、PX478、CPI-0610、RTA402、APO866、GMX1778、AG-221またはAG-120などであってよいが、これに制限されるものではない。
【0055】
本発明のADP-リボースは、第2抗がん剤と独立して存在する形態で併用投与されることができるだけでなく、目的によって、公知の任意の方法で第2抗がん剤と物理/化学的な結合を形成した状態で投与されることができる。例えば、ADP-リボースは、第2抗がん剤と直接結合された状態で使用されるか、または公知のリンカーを通じて第2抗がん剤と連結された状態で使用されることができ、本発明のADP-リボースが第2抗がん剤とともに作用して相乗した抗がん効果を示す限り、その適用方法に特に制限されない。
【0056】
抗がん剤と併用されたADP-リボースの相乗的抗がん効果
本発明に係るADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物は、化学療法と併用される場合、相乗的抗がん効果を示すため、化学療法に対する抗がん補助剤または抗がん療法敏感化剤として有用に活用されることができる。前記抗がん補助剤または化学療法敏感化剤で、がんは、上述した固形がんであってよい。前記固形がんは、放射線療法に対して耐性を示す固形がんであってよい。
【0057】
既存の抗がん剤によるがん細胞生存の減少などで代表される抗がん効果は、ADP-リボースのシグナルによって誘導されることができ、既存の抗がん剤による死滅過程でADP-リボースを積極的に活用することができるように誘導すると、既存の抗がん剤を必要濃度以下で処理しても、相乗した抗がん効果を期待することができる。具体的に、本発明者らは、ADP-リボースと第2活性剤の併用投与時に各種固形がん(脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん)に対して相乗的抗がん効果を示すことを確認した(実施例5;
図15、実施例6;
図16)。
【0058】
一実施態様において、ADP-リボースと併用投与されることができる細胞毒性抗がん剤は、抗代謝剤抗がん剤であってよく、具体的に、ピリミジン誘導体であってよく、より具体的に、ゲムシタビンまたは5-フルオロウラシルであってよい。この場合、前記併用療法によって治療され得るがんは固形がんであり、具体的に膵臓がんまたは大腸がんである。本発明者らは、ADP-リボースとゲムシタビンの併用投与による相乗的抗がん効果を膵臓がんで確認し(実施例5-3;
図15C;実施例6-3;
図16C)、ADP-リボースと5-フルオロウラシルの併用投与による相乗的抗がん効果を大腸がんで確認した(実施例5-6;
図15F)。
【0059】
一実施態様において、ADP-リボースと併用投与されることができる標的抗がん剤は、VEGF/VEGFR抑制剤であってよく、具体的に抗-VEGF単クローン抗体であってよい。この場合、治療可能ながんは、固形がん、具体的に脳がんまたは肝がんであってよい。本発明者らは、ADP-リボースと抗-VEGF単クローン抗体であるベバシズマブの併用投与による相乗的抗がん効果を脳がんで確認し(実施例5-1;
図15A、実施例6-1;
図16A)、ADP-リボースとソラフェニブの併用投与による相乗的抗がん効果を肝がんで確認した(実施例5-4;
図15D、実施例6-4;
図16D)。
【0060】
一実施態様において、ADP-リボースと併用投与されることができる標的抗がん剤は、EGFR抑制剤であってよく、具体的に、低分子EGFR抑制剤であってよい。この場合、治療可能ながんは、固形がん、具体的に、肺がんであってよい。本発明者らは、ADP-リボースとEGFR抑制剤であるオシメルチニブの併用投与による相乗的抗がん効果を肺がんで確認した(実施例5-2;
図15B、実施例6-2;
図16B)。
【0061】
一実施態様において、ADP-リボースと併用投与されることができる標的抗がん剤は、HER2抑制剤であってよく、具体的に抗-HER2単クローン抗体であってよい。この場合、治療可能ながんは、固形がん、具体的に、乳房がんであってよい。本発明者らは、ADP-リボースと抗-HER2単クローン抗体であるトラスツズマブの併用投与による相乗的抗がん効果を乳房がんで確認した(実施例5-5;
図15E)。
【0062】
投与経路、用法および用量
本発明の抗がん組成物または組み合わせ物において、ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩と第2抗がん剤は、同時または異時に投与されてよい。例えば、前記組成物または組み合わせ物は、ADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩が第2抗がん剤の抗がん療法前または後に投与されることができる。それぞれの療法は、投与サイクルを1回または数回繰り返すものであってよいが、これに制限されない。
【0063】
一実施態様において、腫瘍マウスモデルを対象に相乗的抗がん効果を確認した第2抗がん剤とADP-リボースの投与スケジュール(
図16)は、以下の表1のとおりであり、本発明の抗がん組成物と第2抗がん剤の好ましい患者投与用量は、本発明で具体的に確認された最適のマウス投与用量とマウス-ヒトとの間の用量-反応関係(dose-response relationship)およびNOAEL(No-observed-adverse-effect level)などを考慮して換算されることができる。
【表1】
本発明に係るADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩と第2抗がん剤は、医学的治療または予防に適用可能な合理的な受益/危険割合で疾患を治療または予防するに十分な量でそれぞれ投与されることができる。それぞれの有効用量水準は、疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、使用された本発明組成物の投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、使用された本発明の組成物と配合または同時に使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野によく知られている要素によって決定されることができる。
【0064】
4.抗がん治療のためのADP-リボース製剤
上述した抗がん組成物に含まれるADP-リボースまたはその薬学的に許容される塩の重量%は、特にこれに制限されないが、最終組成物の総重量を基準に0.0001~90重量%、具体的に0.001~50重量%、より具体的に0.01~20重量%の含量で含まれ得。
また、前記抗がん組成物は、薬学組成物または食品組成物の形態で製造されることができる。
【0065】
本発明の抗がん組成物が薬学組成物の形態で製造される場合、前記薬学組成物は、薬剤の製造に通常的に使用される適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んで製造されることができる。
【0066】
具体的に、本発明の薬学組成物は、それぞれ通常の方法によって多様な投与経路の製剤で製造されることができる。
【0067】
一実施態様において、本発明の薬学組成物は、経口投与用製剤で製造されることができる。具体的に、前記組成物は、錠剤(例えば、口腔崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠)、カプセル剤(例えば、硬質カプセル剤、軟質カプセル剤)、顆粒剤(例えば、徐放性顆粒剤、腸溶性顆粒剤、発泡顆粒剤)、散剤、経口用液剤(例えば、エリクサー剤、懸濁液剤、乳剤、レモネード剤、芳香水剤、煎剤および浸剤、酒精剤、チンキ剤)、シロップ剤、経口用ゼリー剤、茶剤、エキス剤(例えば、軟稠エキス剤、乾燥エキス剤)、流動エキス剤、丸剤で製造されることができる。
【0068】
一実施態様において、本発明の薬学組成物は、口腔投与用製剤で製造されることができる。具体的に、前記組成物は、口腔用錠剤(例えば、トローチ剤、舌下錠、バッカル錠、付着錠、ガム剤)、口腔用液剤(例えば、ガーグル剤)、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤(例えば、口腔用クリーム剤、口腔用ゲル剤、口腔用軟膏剤)、口腔溶解フィルムで製造されることができる。
【0069】
一実施態様において、本発明の薬学組成物は、注射剤で製造されることができる。この場合、注射剤は、アンプル、バイアル、プレフィルドシリンジ、カートリッジ形態などで製造されることができ、より具体的に、輸液剤、凍結乾燥注射剤、粉末注射剤、移植剤、持続性注射剤、透析および貫流用製剤で製造されることができる。
【0070】
一実施態様において、本発明の薬学組成物は、投石および貫流用製剤で製造されることができる。具体的に、前記組成物は、透析剤(例えば、腹膜透析剤、血液透析剤)、貫流剤で製造されることができる。
【0071】
一実施態様において、本発明の薬学組成物は、気管支、肺投与用製剤で製造されることができる。具体的に、前記組成物は、吸入剤(例えば、吸入粉末剤、吸入液剤、吸入エアロゾル剤)で製造されることができる。
【0072】
一実施態様において、本発明の薬学組成物は、眼球投与用製剤で製造されることができる。具体的に、前記組成物は、点眼剤、眼軟膏剤で製造されることができる。
【0073】
一実施態様において、本発明の薬学組成物は、鼻に投与する製剤(例えば、点鼻粉末剤、点鼻液剤)で製造されるか、浣腸剤、直腸投与製剤(例えば、坐剤、直腸用半固形剤、浣腸剤)で製造されるか、膣に適用される製剤(例えば、膣錠、膣用坐剤)、皮膚適用製剤(例えば、外用固形剤、外用液剤、エアロゾル剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、経皮吸収剤、カタプラズマ剤、貼付剤、ペースト剤)で製造されることができる。
【0074】
前記薬学組成物が経口投与用として使用される場合、適切なカプセル化(encapsulation)、腸溶コーティング(enteric coating)、ポリマーの配合などを通じて、徐放性製剤で製造されることができる。
【0075】
一実施様態において、前記徐放性製剤は、長時間作用性(long acting)製剤で製造されることができる。
【0076】
一実施態様において、長時間作用性製剤には、ポリマーと脂質が適切な割合で混合されることができる。
【0077】
本発明の抗がん組成物が食品組成物の形態で製造される場合、前記食品組成物は、食品に通常使用されて、匂い、味、視覚などを向上させることができる追加成分を含むことができる。例えば、食品添加物(food additives)を添加することができる。前記添加物は、食品の種類によって選別され、適切な量で使用される。
【0078】
前記食品組成物は、健康機能性食品で製造されることができ、ここで、健康機能性食品(functional food)とは、特定保健用食品(food for special health use、FoSHU)と同一の用語であって、栄養供給の外にも、生体調節機能が効率的に示されるように加工された医学、医療効果が高い食品を意味する。前記健康機能性食品は、がんの改善に有用な効果を得るために、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸などの多様な形態で製造されることができる。
【発明の効果】
【0079】
本発明に係るADP-リボースまたはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物は、単独または放射線療法および/または化学療法と併用されて効果的な抗がん治療効果を示すだけでなく、正常細胞に対する毒性を現わさないため、抗がん療法に有用に活用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】各種固形がん(A:U-87MG、B:H1975、C:AsPC-1、D:Hep G2、E:MDA-MB-231、F:HCT116、G:Caki-1細胞株)細胞にADP-リボース処理後、細胞内ADP-リボースが蓄積されたことを確認した結果を示すグラフである。
【
図2】脳がん(U-87MG)細胞にADP-リボース処理後、がん細胞成長抑制および死滅効果を確認した顕微鏡写真(A)およびグラフ(B)である。
【
図3】肺がん(H1975)細胞にADP-リボース処理後、がん細胞成長抑制および死滅効果を確認した顕微鏡写真(A)およびグラフ(B)である。
【
図4】膵臓がん(AsPC-1)細胞にADP-リボース処理後、がん細胞成長抑制および死滅効果を確認した顕微鏡写真(A)およびグラフ(B)である。
【
図5】肝がん(Hep G2)細胞にADP-リボース処理後、がん細胞成長抑制および死滅効果を確認した顕微鏡写真(A)およびグラフ(B)である。
【
図6】乳房がん(MDA-MB-231)細胞にADP-リボース処理後、がん細胞成長抑制および死滅効果を確認した顕微鏡写真(A)およびグラフ(B)である。
【
図7】大腸がん(HCT116)細胞にADP-リボース処理後、がん細胞成長抑制および死滅効果を確認した顕微鏡写真(A)およびグラフ(B)である。
【
図8】腎臓がん(Caki-1)細胞にADP-リボース処理後、がん細胞成長抑制および死滅効果を確認した顕微鏡写真(A)およびグラフ(B)である。
【
図9】胃がん(SNU-1)または卵巣がん(OVCAR-3)細胞にADP-リボース処理後、がん細胞死滅効果を確認したグラフである。
【
図10】膵臓がん(AsPC-1)細胞にADP-リボース処理後、がん細胞の浸透および転移能力の減少を確認した顕微鏡写真(A)およびグラフ(B)である。
【
図11】乳房がん(MDA-MB-231)細胞にADP-リボース処理後、がん細胞の浸透および転移能力の減少を確認した顕微鏡写真(A)およびグラフ(B)である。
【
図12】膵臓がん細胞株に誘発された異種移植動物モデルにADP-リボース皮下注射(S.C)後、腫瘍体積の減少効果を示したグラフ(A)および顕微鏡写真(B)である。
【
図13】腎臓がん細胞株に誘発された異種移植動物モデルにADP-リボース静脈注射(I.V)後、腫瘍体積の減少効果を示したグラフ(A)および顕微鏡写真(B)である。
【
図14】膵臓がん細胞株に誘発された異種移植動物モデルにADP-リボース経口投与(P.O)後、腫瘍体積の減少効果を示したグラフ(A)および顕微鏡写真(B)である。
【
図15】各種固形がん(A:U-87MG、B:H1975、C:AsPC-1、D:Hep G2、E:MDA-MB-231、F:HCT116)細胞に低用量の抗がん剤(A:ベバシズマブ、B:オシメルチニブ、C:ゲムシタビン、D:ソラフェニブ、E:ハーセプチン、F:5-フルオロウラシル)とADP-リボースを併用処理したとき、相乗的細胞死滅効果を示したグラフである。
【
図16】腫瘍誘発動物に低用量の抗がん剤(A:ベバシズマブ、B:オシメルチニブ、C:ゲムシタビン、D:ソラフェニブ)とADP-リボースを併用投与したとき、相乗的腫瘍体積減少効果を示したグラフである。
【
図17】固形がん(A:U-87MG、B:Caki-1、C:AsPC-1、D:MDA-MB-231)細胞に放射線を照射したときとADP-リボースを処理したとき、細胞内ADP-リボース蓄積量を比較した結果を示すグラフである。
【
図18】固形がん(A:U-87MG、B:H1975、C:AsPC-1、D:Hep G2、E:MDA-MB-231、F:HCT116、G:Caki-1)細胞に放射線照射耐性を示す線量とADP-リボースを併用処理したとき、相乗的細胞死滅効果を確認したグラフである。
【
図19】腫瘍誘発動物に低線量の放射線照射とADP-リボースを併用投与したとき、相乗的腫瘍体積減少効果を示すグラフである。
【
図20】正常細胞(A、B:Human colon fibroblast、C、D:Human hair dermal papilla cell)にADP-リボースを投与した後、細胞毒性が現れるか否かを確認した写真およびグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、本発明を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
材料および方法
1.ADP-リボースおよび抗がん剤準備
ADP-リボースおよびベバシズマブ、オシメルチニブ、ゲムシタビン、ソラフェニブ、ハーセプチン、5-フルオロウラシル抗がん剤は、すべてSigma社から注文した(St Luois、MO、USA)。ADP-リボースとすべての抗がん剤は、活用する前まで―20℃冷凍保管した。
【0083】
2.細胞株の準備
脳がん(U-87MG)、肺がん(H1975)、膵臓がん(Aspc-1)、肝がん(Hep G2)、乳房がん(MDA-MB-231)、大腸がん(HCT116)、腎臓がん(Caki-1)、胃がん(SNU-1)、卵巣がん(OVCAR-3)細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA、USA)社から注文して、研究に活用する前まで液体窒素に保管した。
【0084】
3.ADP-リボース定量分析
5×105個の脳がん(U-87MG)、肺がん(H1975)、膵臓がん(Aspc-1)、肝がん(Hep G2)、乳房がん(MDA-MB-231)、大腸がん(HCT116)、腎臓がん(Caki-1)細胞をそれぞれの適正培地に10%ウシ胎児血清+100units/mlペニシリン+100μg/mlストレプトマイシンを混ぜて、37℃、5%CO2条件で何も処理しないグループ、ADP-リボースを処理したグループに分けて、24時間培養した。培養後に培地を除去して、リン酸緩衝生理食塩水で細胞を洗浄した後、RIPA bufferを入れて20分間氷上に放置した。細胞を掻き寄せた後、遠心分離機チューブに入れて、10,000g、4℃条件で10分間遠心分離した。上層液を獲得して、1%のSDSを添加した後、100℃で5分間沸かして、氷に冷やした。上層液を10,000g、4℃条件で10分間再遠心分離して最終上層液を獲得し、ELISA分析キット(Cell Biolabs、Inc.、San Diego、CA、USA)を活用して、ADP-リボースを定量分析して比較した。
【0085】
4.がん細胞死滅検証
96-ウェルプレートに3×103個の脳がん(U-87MG)、肺がん(H1975)、膵臓がん(Aspc-1)、肝がん(Hep G2)、乳房がん(MDA-MB-231)、大腸がん(HCT116)、腎臓がん(Caki-1)、胃がん(SNU-1)、卵巣がん(OVCAR-3)細胞をそれぞれ37℃、5%CO2条件で24時間培養後、各濃度のADP-リボースをそれぞれのがん細胞に処理した。37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して、処理しない細胞対比半数致死率および最大致死率の濃度を求めた。
【0086】
5.がん細胞転移および浸透能抑制検証
8.0μm気孔サイズポリカーボネート膜フィルターを有するトランスウェルを使用して、がん細胞の転移および浸透能を分析した。トランスウェルを24-ウェルプレートに入れ、各ウェルに膵臓がん(Aspc-1)および乳房がん(MDA-MB-231)細胞を各ウェル当たり3.5×105細胞の密度で挿入物の上面に撒き、何も処理しないグループとADP-リボースを処理したグループに分けて、37℃、5%CO2条件で24時間培養した。培養後、トランスウェルを滅菌水で控え目に洗浄した後、100%メタノールに入れ、付いている細胞を固定させた。固定後、細胞を観察するために、ヘマトキシリンおよびエオシン試薬で染色し、何も処理しないグループ対比挿入物の上面を透過して、下面に転移および浸透した細胞の割合を求めた。
【0087】
6.動物の準備
5週齢のBALB/cヌードマウスをCharles River Laboratories(Wilmington、MA、USA)から注文した。飼育施設は、特定病巣がない環境で温度は22~25℃、昼夜サイクルは12時間周期(午前8時点灯)で維持し、飼料と飲水は自律配食した。すべての動物研究は、動物研究倫理委員会の規定によって遂行した。
【0088】
7.異種移植モデルからADP-リボースの投薬経路および濃度による抗がん効能検証
5週齢のBALB/cヌードマウスに膵臓がん(AsPC-1)または腎臓がん(caki-1)細胞(1×107個)をマウスの脇腹後ろに接種し、腫瘍体積の約150mm3まで成長させた。そして、3種の濃度のADP-リボースを週3回皮下注射、静脈注射、口腔投与した。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを6日間隔で測定して、腫瘍体積の変化結果を各群別に比較した。
【0089】
8.がん細胞で抗がん剤併用による死滅検証
96-ウェルプレートに3×103個の脳がん(U-87MG)、肺がん(H1975)、膵臓がん(Aspc-1)、肝がん(Hep G2)、乳房がん(MDA-MB-231)、大腸がん(HCT116)細胞をそれぞれ37℃、5%CO2条件で24時間培養後、脳がん(U-87MG)を対象に15mMのベバシズマブ、肺がん(H1975)を対象に1nMのオシメルチニブ、膵臓がん(Aspc-1)を対象に1μMのゲムシタビン、肝がん(Hep G2)を対象に1μMのソラフェニブ、乳房がん(MDA-MB-231)を対象に2.5μMのハーセプチン、そして、大腸がん(HCT116)を対象に10μMの5-フルオロウラシルを単独またはADP-リボースと併用処理した。処理後、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の死滅程度を比較した。
【0090】
9.異種移植モデルから抗がん剤併用による抗がん効能検証
5週齢のBALB/cヌードマウスに脳がん(U-87MG)、肺がん(H1975)、膵臓がん(AsPC-1)、または肝がん(Hep G2)細胞(1×107個)をそれぞれマウスの脇腹後ろに接種し、腫瘍の体積が約150mm3に成長する時点で対照群(Control)、抗がん剤単独処理群、併用処理群に分類した。脳がん(U-87MG)研究のために、25mg/kg低用量のベバシズマブを週2回腹腔に、肺がん(H1975)研究のために、1mg/kg低用量のオシメルチニブを週2回口腔に、膵臓がん(AsPC-1)研究のために、50mg/kg低用量のゲムシタビンを週2回腹腔に、肝がん(Hep G2)研究のために、10mg/kg低用量のソラフェニブを週5回口腔に単独または既述されたそれぞれの抗がん剤と10mg/kgのADP-リボース(皮下投与、週3回)を併用投与した。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを6日間隔で測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0091】
10.がん細胞で放射線併用によるADP-リボース定量分析
6-ウェルプレートに脳がん(U-87MG)、腎臓がん(Caki-1)、膵臓がん(AsPC-1)、または乳房がん(MDA-MB-231)細胞をそれぞれ培養して、何も処理しないグループ、放射線を処理したグループ、ADP-リボースを処理したグループに分類した。放射線照射は、X-Rad 320照射器(Precision X-ray、North Branford、CT、USA)を活用して遂行し、12.5mAおよび2.0mm Alで構成されたX線ビームフィルターを使用して、300kVp、150cGy/minの線量率で計1、2、5Gyをそれぞれがん細胞に処理した。処理前および処理後、4、8、16、24時間に培地を除去し、リン酸緩衝生理食塩水で細胞を洗浄した後、RIPA bufferを入れて20分間氷上に放置した。細胞を掻き寄せた後、遠心分離機チューブに入れて、10,000g、4℃条件で10分間遠心分離した。上層液を獲得して、1%のSDSを添加した後、100℃で5分間沸かして、氷に冷やした。上層液を10,000g、4℃条件で10分間再遠心分離して最終上層液を獲得し、ELISA分析キット(Cell Biolabs、Inc.、San Diego、CA、USA)を活用して、ADP-リボースを定量分析した。
【0092】
11.がん細胞で放射線照射併用による死滅検証
96-ウェルプレートに3×103個の脳がん(U-87MG)、肺がん(H1975)、膵臓がん(Aspc-1)、肝がん(Hep G2)、乳房がん(MDA-MB-231)、大腸がん(HCT116)、腎臓がん(Caki-1)細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、ADP-リボースや2、5Gy線量の放射線を単独またはADP-リボースと2Gy線量の放射線を併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、ジメチルスルホキシドを各ウェルに200μlずつ入れた後、吸光度を測定して細胞の死滅程度を比較した。
【0093】
12.異種移植モデルから放射線照射併用による抗がん効能検証
5週齢のBALB/cヌードマウスに脳がん(U-87MG)、膵臓がん(AsPC-1)、乳房がん(MDA-MB-231)または腎臓がん(Caki-1)細胞(1×107個)をそれぞれマウスの脇腹後ろに接種し、腫瘍の体積が約150mm3に成長する時点で対照群(Control)、2Gy線量の放射線単独、2Gy線量放射線+10mg/kgのADP-リボース(皮下投与、週3回)を併用投与する3種群に分類した。マウスに放射線照射は、X-Rad 320照射器(Precision X-ray、North Branford、CT、USA)を通じて遂行され、定められた放射線量を照射するために、放射線源から適正距離を維持してマウスを配置した。マウスの発がん部位の以外に他の身体部位や臓器を放射線の被爆から保護するために、鉛遮蔽物が使用された。12.5mAおよび2.0mmAlで構成されたX線ビームフィルターを使用して、300kVp、150cGy/minの線量率で計2Gyの放射線を1Gy 2回分画して(2日間)照射した。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを6日間隔で測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0094】
13.統計的有意性の分析
すべてのグラフは、平均±標準偏差で求められた値で表示された。統計的有意性は、データが正規化されたか否かによって、Student’s t-test分析を使用して分析された。P<0.05以上の差を統計的に有意なものと見なし、統計的有意性の分析のために、Systat Software社のプログラムを活用した(Sigmastat ver.3.5、Systat Software Inc.、Chicago、IL、USA)。
【0095】
実施例1:がん細胞内ADP-リボース水準の変化
実施例1-1:U-87MG細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のU-87MG細胞を、Eagle’s Minimum Essential Medium培地に10%ウシ胎児血清+100units/mlペニシリン+100μg/mlストレプトマイシンを混ぜて、37℃、5%CO2条件で、処理しないグループ、8μMのADP-リボースを処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を処理して、準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0096】
その結果、脳がん細胞(U-87MG)にADP-リボース処理時に対照群グループと対比して有意に(P<0.001)ADP-リボースの量が顕著に増加したことを確認した(
図1のA)。
【0097】
実施例1-2:H1975細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のH1975細胞をRPMI-1640培地に10%ウシ胎児血清+100units/mlペニシリン+100μg/mlストレプトマイシンを混ぜて、37℃、5%CO2条件で、処理しないグループ、4μMのADP-リボースを処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を処理して、準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0098】
その結果、肺がん細胞(H1975)にADP-リボース処理時に対照群グループと対比して有意に(P<0.001)ADP-リボースの量が顕著に増加したことを確認した(
図1のB)。
【0099】
実施例1-3:AsPC-1細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のAsPC-1細胞をRPMI-1640培地に10%ウシ胎児血清+100units/mlペニシリン+100μg/mlストレプトマイシンを混ぜて、37℃、5%CO2条件で、処理しないグループ、8μMのADP-リボースを処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を処理して、準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0100】
その結果、膵臓がん細胞(AsPC-1)にADP-リボース処理時に対照群グループと対比して有意に(P<0.001)ADP-リボースの量が顕著に増加したことを確認した(
図1のC)。
【0101】
実施例1-4:Hep G2細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のHep G2細胞をEagle’s Minimum Essential Medium培地に10%ウシ胎児血清+100units/mlペニシリン+100μg/mlストレプトマイシンを混ぜて、37℃、5%CO2条件で、処理しないグループ、8μMのADP-リボースを処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を処理して、準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0102】
その結果、肝がん細胞(Hep G2)にADP-リボース処理時に対照群グループと対比して有意に(P<0.001)ADP-リボースの量が顕著に増加したことを確認した(
図1のD)。
【0103】
実施例1-5:MDA-MB-231細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のMDA-MB-231細胞をLeibovitz’s L-15培地に10%ウシ胎児血清+100units/mlペニシリン+100μg/mlストレプトマイシンを混ぜて、37℃、5%CO2条件で、処理しないグループ、16μMのADP-リボースを処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を処理して、準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0104】
その結果、乳房がん細胞(MDA-MB-231)にADP-リボース処理時に対照群グループと対比して有意に(P<0.001)ADP-リボースの量が顕著に増加したことを確認した(
図1のE)。
【0105】
実施例1-6:HCT116細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のHCT116細胞をMcCoy’s5A培地に10%ウシ胎児血清+100units/mlペニシリン+100μg/mlストレプトマイシンを混ぜて、37℃、5%CO2条件で、処理しないグループ、8μMのADP-リボースを処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を処理して、準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0106】
その結果、大腸がん細胞(HCT116)にADP-リボース処理時に対照群グループと対比して有意に(P<0.001)ADP-リボースの量が顕著に増加したことを確認した(
図1のF)。
【0107】
実施例1-7:Caki-1細胞内ADP-リボース水準の変化
5×105個のCaki-1細胞をMcCoy’s5A培地に10%ウシ胎児血清+100units/mlペニシリン+100μg/mlストレプトマイシンを混ぜて、37℃、5%CO2条件で、処理しないグループ、16μMのADP-リボースを処理したグループに分けて、24時間培養した。培養された細胞の培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を処理して、準備された上層液をELISA分析に活用して、ADP-リボースを検出分析した。
【0108】
その結果、腎臓がん細胞(Caki-1)にADP-リボース処理時に対照群グループと対比して有意に(P<0.001)ADP-リボースの量が顕著に増加したことを確認した(
図1のG)。
【0109】
以上を整理すれば、実施例1を通じて各種固形がん(脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん)細胞で外部ADP-リボース処理によって細胞内ADP-リボース濃度を顕著に増加させることができることを確認した(
図1)。
【0110】
実施例2:ADP-リボース濃度によるがん細胞生存率の変化
実施例2-1:U-87MG細胞でADP-リボース濃度増加による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のU-87MG細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、最終0.125、0.25、0.5、1、2、4、8、16、32μM濃度のADP-リボースをそれぞれ処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0111】
その結果、ADP-リボースを処理しない対照群では、脳がん細胞(U-87MG)が急激に成長している形態を顕微鏡で観察した一方、ADP-リボースを処理した実験群では、脳がん細胞の成長が抑制されて死滅することを確認した(
図2のA)。ADP-リボース処理濃度による半数致死量および最大致死量を定量的に測定した結果、8μMの濃度で脳がん細胞の半分程度が死滅され、32μMでは、ほぼすべての細胞が死滅されることを確認した(
図2のB)。
【0112】
実施例2-2:H1975細胞でADP-リボース濃度増加による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のH1975細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、0.125、0.25、0.5、1、2、4、8、16、32μM濃度のADP-リボースをそれぞれ処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0113】
その結果、ADP-リボースを処理しない対照群では、肺がん細胞(H1975)が急激に成長している形態を顕微鏡で観察した一方、ADP-リボースを処理した実験群では、肺がん細胞の成長が抑制されて死滅することを確認した(
図3のA)。ADP-リボース処理濃度による半数致死量および最大致死量を定量的に測定した結果、2μMの濃度で肺がん細胞の半分程度が死滅され、32μMでは、ほぼすべての細胞が死滅されることを確認した(
図3のB)。
【0114】
実施例2-3:AsPC-1細胞でADP-リボース濃度増加による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のAsPC-1細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、0.125、0.25、0.5、1、2、4、8、16、32μM濃度のADP-リボースをそれぞれ処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0115】
その結果、ADP-リボースを処理しない対照群では、膵臓がん細胞(AsPC-1)が急激に成長している形態を顕微鏡で観察した一方、ADP-リボースを処理した実験群では、膵臓がん細胞の成長が抑制されて死滅することを確認した(
図4のA)。ADP-リボース処理濃度による半数致死量および最大致死量を定量的に測定した結果、2μMの濃度で膵臓がん細胞の半分程度が死滅され、32μMでは、ほぼすべての細胞が死滅されることを確認した(
図4のB)。
【0116】
実施例2-4:Hep G2細胞でADP-リボース濃度増加による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のHep G2細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、0.125、0.25、0.5、1、2、4、8、16、32μM濃度のADP-リボースをそれぞれ処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0117】
その結果、ADP-リボースを処理しない対照群では、肝がん細胞(Hep G2)が急激に成長している形態を顕微鏡で観察した一方、ADP-リボースを処理した実験群では、肝がん細胞の成長が抑制されて死滅することを確認した(
図5のA)。ADP-リボース処理濃度による半数致死量および最大致死量を定量的に測定した結果、4μMの濃度で肝がん細胞の半分程度が死滅され、32μMではすべての細胞が死滅されることを確認した(
図5のB)。
【0118】
実施例2-5:MDA-MB-231細胞でADP-リボース濃度増加による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のMDA-MB-231細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、0.125、0.25、0.5、1、2、4、8、16、32μM濃度のADP-リボースをそれぞれ処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させる。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0119】
その結果、ADP-リボースを処理しない対照群では、乳房がん細胞(MDA-MB-231)が急激に成長している形態を顕微鏡で観察した一方、ADP-リボースを処理した実験群では、乳房がん細胞の成長が抑制されて死滅することを確認した(
図6のA)。ADP-リボース処理濃度による半数致死量および最大致死量を定量的に測定した結果、16μMの濃度で乳房がん細胞の半分程度が死滅され、32μMでは、ほぼすべての細胞が死滅されることを確認した(
図6のB)。
【0120】
実施例2-6:HCT116細胞でADP-リボース濃度増加による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のHCT116細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、0.125、0.25、0.5、1、2、4、8、16、32μM濃度のADP-リボースをそれぞれ処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0121】
その結果、ADP-リボースを処理しない対照群では、大腸がん細胞(HCT116)が急激に成長している形態を顕微鏡で観察した一方、ADP-リボースを処理した実験群では、大腸がん細胞の成長が抑制されて死滅することを確認した(
図7のA)。ADP-リボース処理濃度による半数致死量および最大致死量を定量的に測定した結果、8μMの濃度で大腸がん細胞の半分程度が死滅され、32μMでは、ほぼすべての細胞が死滅されることを確認した(
図7のB)。
【0122】
実施例2-7:Caki-1細胞でADP-リボース濃度増加による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のCaki-1細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、0.125、0.25、0.5、1、2、4、8、16、32μM濃度のADP-リボースをそれぞれ処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させる。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0123】
その結果、ADP-リボースを処理しない対照群では、腎臓がん細胞(Caki-1)が急激に成長している形態を顕微鏡で観察した一方、ADP-リボースを処理した実験群では、腎臓がん細胞の成長が抑制されて死滅することを確認した(
図8のA)。ADP-リボース処理濃度による半数致死量および最大致死量を定量的に測定した結果、16μMの濃度で腎臓がん細胞の半分程度が死滅され、32μMでは、ほぼすべての細胞が死滅されることを確認した(
図8のB)。
【0124】
実施例2-8:SNU-1またはOVCAR-3細胞でADP-リボース処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のSNU-1またはOVCAR-3細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、32μM濃度のADP-リボースをそれぞれ処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0125】
その結果、胃がん細胞(SNU-1)または卵巣がん細胞(OVCAR-3)にADP-リボース処理時に対照群グループと対比して有意に細胞が死滅されることを確認した(
図9)。
【0126】
以上を整理すれば、実施例2の細胞実験を通じてADP-リボースが各種固形がん(脳がん、肺がん、膵臓がん、肝がん、乳房がん、大腸がん、腎臓がん、胃がん、卵巣がん)細胞に対する抗がん効果があることを確認した(
図2~9)。
【0127】
実施例3:ADP-リボースによる前ががん細胞転移および浸透能力の変化
がん細胞の成長が抑制されて死滅が誘導されれば、がん細胞の転移能力や浸透能力にも影響を受けることができる。前記実施例2のように、ADP-リボースの処理によってがん細胞の成長抑制および死滅誘導の効果を明確に観察したので、ADP-リボースの処理ががん細胞の転移および浸透能力の減少を誘導すると期待することができる。
【0128】
実施例3-1:AsPC-1細胞でADP-リボースによる転移および浸透能力の変化
8.0μm気孔サイズポリカーボネート膜フィルターを有するトランスウェルを使用して分析が遂行された。トランスウェルを24-ウェルプレートに入れ、各ウェルにAsPC-1細胞を各ウェル当たり3.5×105細胞の密度で挿入物の上面に撒き、37℃、5%CO2条件で24時間培養した。培養後、トランスウェルを滅菌水で控え目に洗浄した後、100%メタノールに入れ、付いている細胞を固定させた。固定後、細胞を観察するために、ヘマトキシリンおよびエオシン試薬で染色した。
【0129】
その結果、対照群ではトランスウェル上部から下部への膵臓がん細胞(AsPC-1)浸透および転移が容易に観察される一方、16μMのADP-リボースを処理した実験群では膵臓がん細胞の浸透および転移が顕著に抑制されたことを確認した(
図10のA)。ADP-リボースの膵臓がん細胞に対する転移および浸透抑制効果を定量的に測定した結果、対照群に対比して有意に(P<0.001)転移および浸透能力が顕著に減少したことを確認した(
図10のB)。
【0130】
実施例3-2:MDA-MB-231細胞でADP-リボースによる転移および浸透能力の変化
8.0μm気孔サイズポリカーボネート膜フィルターを有するトランスウェルを使用して分析が遂行された。トランスウェルを24-ウェルプレートに入れ、各ウェルにMDA-MB-231細胞を各ウェル当たり3.5×105細胞の密度で挿入物の上面に撒き、37℃、5%CO2条件で24時間培養した。培養後、トランスウェルを滅菌水で控え目に洗浄した後、100%メタノールに入れ、付いている細胞を固定させた。固定後、細胞を観察するために、ヘマトキシリンおよびエオシン試薬で染色した。
【0131】
その結果、対照群ではトランスウェル上部から下部への乳房がん細胞(MDA-MB-231)浸透および転移が容易に観察される一方、32μMのADP-リボースを処理した実験群では乳房がん細胞の浸透および転移が顕著に抑制されたことを確認した(
図11のA)。ADP-リボースの乳房がん細胞に対する転移および浸透抑制効果を定量的に測定した結果、対照群に対比して有意に(P<0.001)転移および浸透能力が顕著に減少したことを確認した(
図11のB)。
【0132】
以上を整理すれば、実施例3を通じてADP-リボースが固形がん(膵臓がん、乳房がん)細胞の転移および浸透能力を抑制することで、転移性がんに対する治療効果に優れる点を確認した(
図10および11)。
【0133】
実施例4:動物モデルを利用したADP-リボースの濃度および投与経路による抗がん効能効果比較および検証
実施例4-1:多様な濃度のADP-リボースを皮下経路に注射した動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のBALB/cヌードマウスに膵臓がん(AsPC-1)細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、対照群(Control)と2、20、および40mg/kgのADP-リボースを皮下経路に注射する4種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、各濃度のADP-リボースを週3回皮下注射した。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0134】
経時によって注射された膵臓がんの体積を測定した結果、最終投薬後の対照群腫瘍の最終体積は約2155.8mm
3であり、2、20、および40mg/kgのADP-リボースを皮下経路に注射した群の最終腫瘍体積は、それぞれ1015.8mm
3、496.6mm
3、336.2mm
3であって、すべての投薬グループで対照群に対比して統計的に有意に(P<0.001)腫瘍の体積が減少した。具体的に、2mg/kgのADP-リボースを皮下注射した群と対比して、20mg/kgのADP-リボースを皮下注射した群の腫瘍の体積が有意に(P<0.001)減少しており、40mg/kgのADP-リボースを皮下注射した群の腫瘍の体積が最も小さく、2mg/kg ADP-リボースを皮下注射した群と対比して、統計的に有意な(P<0.001)減少を示した(
図12のA、B)。
【0135】
実施例4-2:多様な濃度のADP-リボースを静脈注射した動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のBALB/cヌードマウスに腎臓がん(caki-1)細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、対照群(Control)と2、10、および20mg/kgのADP-リボースを静脈注射する4種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、各濃度のADP-リボースを週3回静脈注射した。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0136】
経時によって注射された腎臓がんの体積を測定した結果、最終投薬後の対照群腫瘍の最終体積は約2074.9mm
3であり、2、10、および20mg/kgのADP-リボースを静脈注射した群の最終腫瘍体積は706.7mm
3、331.7mm
3、227.2mm
3であって、すべての注射グループで対照群に対比して統計的に有意に(P<0.001)腫瘍の体積が減少した。具体的に、2mg/kgのADP-リボースを静脈注射した群と対比して、10mg/kgのADP-リボースを静脈注射した群の腫瘍の体積が有意に(P<0.001)減少しており、20mg/kgのADP-リボースを静脈注射した群の腫瘍の体積が最も小さく、2mg/kgおよび10mg/kgのADP-リボースを静脈注射した群と対比して、統計的に有意な(P<0.001)減少を示した(
図13のA、B)。
【0137】
実施例4-3:多様な濃度のADP-リボースを口腔投与した動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のBALB/cヌードマウスに膵臓がん(AsPC-1)細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、対照群(Control)と10、40、および80mg/kgのADP-リボースを口腔投与する4種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、各濃度のADP-リボースを週5回口腔投与した。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0138】
経時によって注射された膵臓がんの体積を測定した結果、最終投薬後の対照群(Control)腫瘍の最終体積は約3194.3mm
3であり、10、40、および80mg/kgのADP-リボースを口腔投与した群の最終腫瘍体積は1798.6mm
3、1175.9mm
3、1056.9mm
3であって、すべての口腔投与グループで対照群に対比して統計的に有意に(P<0.001)腫瘍の体積が減少した。10mg/kgのADP-リボースを口腔投与した群と対比して、40および80mg/kgのADP-リボースを口腔注射した群の腫瘍の体積が有意に(P<0.001)減少していた(
図14のA、B)。
【0139】
以上を整理すれば、細胞実験結果である実施例2、3に引き続き、実施例4の動物実験を通じてADP-リボースが各種固形がんに対する抗がん効果があることを再確認した(
図12~14)。
【0140】
実施例5:ADP-リボースと抗がん剤低濃度併用処理によるがん細胞生存率の変化
実施例5-1:U-87MG細胞でADP-リボースと低濃度ベバシズマブの併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個の脳がん(U-87MG)細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、1.6μM濃度のADP-リボースと15mMのベバシズマブをそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0141】
その結果、脳がん細胞にベバシズマブを単独で処理したときは、全がん細胞の約68%が生存したが、ADP-リボースと併用処理する場合、がん細胞の生存率が約18%で(P<0.001)顕著に減少することを確認した(
図15のA)。
【0142】
実施例5-2:H1975細胞でADP-リボースと低濃度オシメルチニブの併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個の肺がん(H1975)細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、1.6μM濃度のADP-リボースと1nMのオシメルチニブをそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0143】
その結果、肺がん細胞にオシメルチニブを単独で処理したときは、全がん細胞の約50%が生存したが、ADP-リボースと併用処理する場合、がん細胞の生存率が約0.9%で(P<0.001)顕著に減少することを確認した(
図15のB)。
【0144】
実施例5-3:AsPC-1細胞でADP-リボースと低濃度ゲムシタビンの併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個の膵臓がん(AsPC-1)細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、1.6μM濃度のADP-リボースと1μMのゲムシタビンをそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させる。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0145】
その結果、膵臓がん細胞にゲムシタビンを単独で処理したときは、全がん細胞の約54%が生存したが、ADP-リボースと併用処理する場合、がん細胞の生存率が約1%で(P<0.001)顕著に減少することを確認した(
図15のC)。
【0146】
実施例5-4:Hep G2細胞でADP-リボースと低濃度ソラフェニブの併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個の肝がん(Hep G2)細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、1.6μM濃度のADP-リボースと1μMのソラフェニブをそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0147】
その結果、肝がん細胞に1μMのソラフェニブを単独で処理したときは、全がん細胞の約49%が生存したが、ADP-リボースと併用処理する場合、がん細胞の生存率が約0.9%で(P<0.001)顕著に減少することを確認した(
図15のD)。
【0148】
実施例5-5:MDA-MB-231細胞でADP-リボースと低濃度ハーセプチンの併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個の乳房がん(MDA-MB-231)細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、3.2μM濃度のADP-リボースと2.5μMのハーセプチンをそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0149】
その結果、乳房がん細胞に2.5μMのハーセプチンを単独で処理したときは、ハーセプチン耐性によって全がん細胞のなんと81%が生存したが、ADP-リボースと併用処理する場合、がん細胞の生存率が約20%で(P<0.001)顕著に減少することを確認した(
図15のE)。
【0150】
実施例5-6:HCT116細胞でADP-リボースと低濃度5-フルオロウラシルの併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個の大腸がん(HCT116)細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、1.6μM/100μl濃度のADP-リボースと10μMの5-フルオロウラシル(5-FU)をそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0151】
その結果、大腸がん細胞に10μMの5-フルオロウラシルを単独で処理したときは、全がん細胞の約51%が生存したが、ADP-リボースと併用処理する場合、がん細胞の生存率が約12%で(P<0.001)顕著に減少することを確認した(
図15のF)。
【0152】
以上を整理すれば、実施例5を通じてADP-リボースと既存の抗がん剤の併用投与時に固形がんに対する相乗的抗がん効果を示し、ADP-リボースが固形がんに対する抗がん剤として活用されることができるだけでなく、既存の抗がん剤の抗がん補助剤として有用に活用され得ることが分かる(
図15)。
【0153】
実施例6:ADP-リボースと低濃度抗がん剤を併用投与した動物モデルから腫瘍体積の変化
実施例6-1:ADP-リボースと低濃度ベバシズマブを併用投与した脳がん動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のBALB/cヌードマウスに脳がん(U-87MG)細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、対照群(Control)とアバスチン(成分名ベバシズマブ)25mg/kgの単独腹腔投与、アバスチン+10mg/kgのADP-リボースを併用投与する3種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、アバスチンは週2回腹腔に投与され、10mg/kgのADP-リボースは、皮下に週3回注射された。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0154】
経時によって脳がんの体積を測定してこれを比較した結果、最終投薬後の対照群(Control)腫瘍の最終体積は約2527.1mm
3であり、アバスチンを投与した群の最終腫瘍体積は約1598.9mm
3で対照群に対比して約37%減少にとどまった一方、アバスチンとADP-リボースを併用投与した群の最終腫瘍体積は約334.5mm
3で対照群に対比して約87%の有意な減少(P<0.001)結果を示し、アバスチンを単独処理した群と対比しても、併用投与群の腫瘍体積が約79%有意に減少(P<0.001)する結果を示した(
図16のA)。
【0155】
実施例6-2:ADP-リボースと低濃度オシメルチニブを併用投与した肺がん動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のBALB/cヌードマウスに肺がん(H1975)細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、対照群(Control)とオシメルチニブ1mg/kgの単独口腔投与、オシメルチニブ+10mg/kgのADP-リボースを併用投与する3種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、オシメルチニブは週2回口腔に投与され、10mg/kgのADP-リボースは皮下に週3回注射された。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0156】
経時によって肺がんの体積を測定してこれを比較した結果、最終投薬後の対照群(Control)腫瘍の最終体積は約2265.5mm
3であり、オシメルチニブを投与した群の最終腫瘍体積は約1881.9mm
3で対照群に対比して約17%減少にとどまった一方、オシメルチニブとADP-リボースを併用投与した群の最終腫瘍体積は約424.7mm
3で対照群に対比して約81%の有意な減少(P<0.001)結果を示し、オシメルチニブを単独処理した群と対比しても、併用投与群の腫瘍体積が約77%有意に減少(P<0.001)する結果を示した(
図16のB)。
【0157】
実施例6-3:ADP-リボースと低濃度ゲムシタビンを併用投与した膵臓がん動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のBALB/cヌードマウスに膵臓がん(AsPC-1)細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、対照群(Control)とゲムシタビン50mg/kgの単独腹腔投与、ゲムシタビン+10mg/kgのADP-リボースを併用投与する3種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、ゲムシタビンは週2回腹腔に投与され、10mg/kgのADP-リボースは皮下に週3回注射された。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0158】
経時によって膵臓がんの体積を測定してこれを比較した結果、最終投薬後の対照群(Control)腫瘍の最終体積は約2174.3mm
3であり、ゲムシタビンを投与した群の最終腫瘍体積は約1815.3mm
3で対照群に対比して約17%減少にとどまった一方、ゲムシタビンとADP-リボースを併用投与した群の最終腫瘍体積は約444.3mm
3で対照群に対比して約80%の有意な減少(P<0.001)結果を示し、ゲムシタビンを単独処理した群と対比しても、併用投与群の腫瘍体積が約76%有意に減少(P<0.001)する結果を示した(
図16のC)。
【0159】
実施例6-4:ADP-リボースと低濃度ソラフェニブを併用投与した肝がん動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のBALB/cヌードマウスに肝がん(Hep G2)細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、対照群(Control)とソラフェニブ10mg/kgの単独口腔投与、ソラフェニブ+10mg/kgのADP-リボースを併用投与する3種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、ソラフェニブは週5回口腔に投与され、10mg/kgのADP-リボースは皮下に週3回注射された。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0160】
経時によって肝がんの体積を測定してこれを比較した結果であって、最終投薬後の対照群(Control)腫瘍の最終体積は約2322.4mm
3であり、ソラフェニブを投与した群の最終腫瘍体積は約1849.8mm
3で対照群に対比して約20%減少にとどまった一方、ソラフェニブとADP-リボースを併用投与した群の最終腫瘍体積は約546mm
3で対照群に対比して約76%の有意な減少(P<0.001)結果を示し、ソラフェニブを単独処理した群と対比しても、併用投与群の腫瘍体積が約70%有意に減少(P<0.001)する結果を示した(
図16のD)。
【0161】
以上を整理すれば、実施例5の細胞実験に引き続き、実施例6の動物実験を通じてADP-リボースと既存の抗がん剤の併用投与時低い濃度で投与しても固形がんに対する相乗的抗がん効果を示し、ADP-リボースが固形がんに抗がん剤として活用されることができるだけでなく、既存の抗がん剤の抗がん補助剤としても有用に活用され得ることが分かる(
図16)。
【0162】
実施例7:放射線およびADP-リボース処理によるADP-リボースのがん細胞内変化
実施例7-1:U-87MG細胞内の多様な線量の放射線およびADP-リボースの処理によるADP-リボースの時間による変化
U-87MG細胞を何も処理しないか(Control)、1、2、5Gyの放射線を処理するか、ADP-リボースを処理した5個のグループに分けて、0、4、8、16、24時間の間それぞれ6-ウェルプレートに培養した後、培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を処理して、上層液を準備した。準備された上層液は、ADP-リボースの検出のためのELISA分析に活用した。
【0163】
図17のAは、U-87MG細胞で1、2、5Gyの増加する放射線線量および8μMのADP-リボース処理によって対照群グループと対比してADP-リボースの細胞内の増加量を%で示したグラフで、1、2、5Gyの増加する放射線線量を活用したグループは、ADP-リボースの量が4時間に最高に増加してから8時間から減少し始めて、24時間に処理しないグループとほぼ同じ量に修復されているが、ADP-リボースを処理したグループは、24時間が過ぎても対照群グループと対比して有意に(P<0.001)細胞内ADP-リボースの量が増加して維持されていることを確認した(
図17のA)。
【0164】
実施例7-2:Caki-1細胞内の多様な線量の放射線およびADP-リボースの処理によるADP-リボースの時間による変化
Caki-1細胞を何も処理しないか(Control)、1、2、5Gyの放射線を処理するか、ADP-リボースを処理した5個のグループに分けて、0、4、8、16、24時間の間それぞれ6-ウェルプレートに培養した後、培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を処理して、上層液を準備した。準備された上層液は、ADP-リボースの検出のためのELISA分析に活用した。
【0165】
図17のBは、Caki-1細胞で1、2、5Gyの増加する放射線線量および16μMのADP-リボース処理によって対照群グループと対比してADP-リボースの細胞内の増加量を%で示したグラフで、1、2、5Gyの増加する放射線線量を活用したグループは、ADP-リボースの量が4時間に最高に増加してから8時間から処理しないグループとほぼ同じ量に修復されているが、ADP-リボースを処理したグループは、24時間が過ぎても対照群グループと対比して有意に(P<0.001)細胞内ADP-リボースの量が増加して維持されていることを確認した(
図17のB)。
【0166】
実施例7-3:AsPC-1細胞内の多様な線量の放射線およびADP-リボースの処理によるADP-リボースの時間による変化
AsPC-1細胞を何も処理しないか(Control)、1、2、5Gyの放射線を処理するか、ADP-リボースを処理した5個のグループに分けて、0、4、8、16、24時間の間それぞれ6-ウェルプレートに培養した後、培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を処理して、上層液を準備した。準備された上層液は、ADP-リボースの検出のためのELISA分析に活用した。
【0167】
図17のCは、AsPC-1細胞で1、2、5Gyの増加する放射線線量および2μMのADP-リボース処理によって対照群グループと対比してADP-リボースの細胞内の増加量を%で示したグラフで、1、2、5Gyの増加する放射線線量を活用したグループは、ADP-リボースの量が4時間に最高に増加してから16時間から処理しないグループとほぼ同じ量に修復されているが、ADP-リボースを処理したグループは、24時間が過ぎても対照群グループと対比して有意に(P<0.001)細胞内ADP-リボースの量が増加して維持されていることを確認した(
図17のC)。
【0168】
実施例7-4:MDA-MB-231細胞内の多様な線量の放射線およびADP-リボースの処理によるADP-リボースの時間による変化
MDA-MB-231細胞を何も処理しないか(Control)、1、2、5Gyの放射線を処理するか、ADP-リボースを処理した5個のグループに分けて、0、4、8、16、24時間の間それぞれ6-ウェルプレートに培養した後、培地を除去し、RIPAバッファーおよび1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を処理して、上層液を準備した。準備された上層液は、ADP-リボースの検出のためのELISA分析に活用した。
【0169】
図17のDは、MDA-MB-231細胞で1、2、5Gyの増加する放射線線量および16μMのADP-リボース処理によって対照群グループと対比してADP-リボースの細胞内の増加量を%で示したグラフで、1、2、5Gyの増加する放射線線量を活用したグループは、ADP-リボースの量が4時間に最高に増加してから16時間から処理しないグループとほぼ同じ量に修復されているが、ADP-リボースを処理したグループは、24時間が過ぎても対照群グループと対比して有意に(P<0.001)細胞内ADP-リボースの量が増加して維持されていることを確認した(
図17のD)。
【0170】
以上を整理すれば、実施例7を通じて、各種固形がん細胞で外部ADP-リボース処理によって放射線照射時に上昇するがん細胞内ADP-リボース濃度以上に細胞内ADP-リボース濃度上昇を維持させることができることを確認した(
図17)。放射線照射による抗がん効果は、遺伝物質の損傷による死滅作用を通じて期待することができるが、がん細胞は、これを克服するために、アデノシン二リン酸リボシル化と知られている工程を通じてDNAの鎖を持続的に修復する。しかし、
図17から見られるように、放射線照射による修復作用で一時的にのみ増加するADP-リボースを持続的に蓄積されるように補助すると、生化学作用の撹乱によって放射線治療の相乗した抗がん効果を期待することができ、ADP-リボースを併用することで、放射線治療の耐性克服および副作用減少のための減少した線量への抗がん放射線活用可能性を期待することができる。
【0171】
実施例8:ADP-リボースと放射線併用処理によるがん細胞生存率の変化
実施例8-1:U-87MG細胞でADP-リボースと耐性線量の放射線併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のU-87MG細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、8μMのADP-リボースと2、5Gy線量の放射線をそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、ジメチルスルホキシドを各ウェルに200μlずつ入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0172】
その結果、U-87MG細胞に2Gy線量の放射線を単独で処理したとき、処理しないグループ(Control)対比、がん細胞の約88%が生存する耐性を示しているが、ADP-リボースと併用処理すると、2Gy線量の放射線を活用しても、がん細胞の生存率は約12.3%で有意に(P<0.001)減少することを確認した(
図18のA)。
【0173】
実施例8-2:H1975細胞でADP-リボースと耐性線量の放射線併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のH1975細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、2μMのADP-リボースと2、5Gy線量の放射線をそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、ジメチルスルホキシドを各ウェルに200μlずつ入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0174】
その結果、H1975細胞に2Gy線量の放射線を単独で処理したとき、処理しないグループ(Control)対比、がん細胞の約75%が生存する耐性を示しているが、ADP-リボースと併用処理すると、2Gy線量の放射線を活用しても、がん細胞の生存率は約8%で有意に(P<0.001)減少することを確認した(
図18のB)。
【0175】
実施例8-3:AsPC-1細胞でADP-リボースと耐性線量の放射線併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のAsPC-1細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、2μMのADP-リボースと2、5Gy線量の放射線をそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、ジメチルスルホキシドを各ウェルに200μlずつ入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0176】
その結果、AsPC-1細胞に2Gy線量の放射線を単独で処理したとき、処理しないグループ(Control)対比、がん細胞の約87.3%が生存する耐性を示しているが、ADP-リボースと併用処理すると、2Gy線量の放射線を活用しても、がん細胞の生存率は約8%で有意に(P<0.001)減少することを確認した(
図18のC)。
【0177】
実施例8-4:Hep G2細胞でADP-リボースと耐性線量の放射線併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のHep G2細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、4μMのADP-リボースと2、5Gy線量の放射線をそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、ジメチルスルホキシドを各ウェルに200μlずつ入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0178】
その結果、Hep G2細胞に2Gy線量の放射線を単独で処理したとき、処理しないグループ(Control)対比、がん細胞の約82.3%が生存する耐性を示しているが、ADP-リボースと併用処理すると、2Gy線量の放射線を活用しても、がん細胞の生存率は約7.3%で有意に(P<0.001)減少することを確認した(
図18のD)。
【0179】
実施例8-5:MDA-MB-231細胞でADP-リボースと耐性線量の放射線併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のMDA-MB-231細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、16μMのADP-リボースと2、5Gy線量の放射線をそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させる。反応を終えた試薬を除去した後、ジメチルスルホキシドを各ウェルに200μlずつ入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0180】
その結果、MDA-MB-231細胞に2Gy線量の放射線を単独で処理したとき、処理しないグループ(Control)対比、がん細胞の約90.6%が生存する耐性を示しているが、ADP-リボースと併用処理すると、2Gy線量の放射線を活用しても、がん細胞の生存率は約11.3%で有意に(P<0.001)減少することを確認した(
図18のE)。
【0181】
実施例8-6:HCT116細胞でADP-リボースと耐性線量の放射線併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のHCT116細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、16μMのADP-リボースと2、5Gy線量の放射線をそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させた。反応を終えた試薬を除去した後、ジメチルスルホキシドを各ウェルに200μlずつ入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0182】
その結果、HCT116細胞に2Gy線量の放射線を単独で処理したとき、処理しないグループ(Control)対比、がん細胞の約90.3%が生存する耐性を示しているが、ADP-リボースと併用処理すると、2Gy線量の放射線を活用しても、がん細胞の生存率は約14%で有意に(P<0.001)減少することを確認した(
図18のF)。
【0183】
実施例8-7:Caki-1細胞でADP-リボースと耐性線量の放射線併用処理による生存率の変化
96-ウェルプレートに3×103個のCaki-1細胞を37℃、5%CO2条件で24時間培養後、16μMのADP-リボースと2、5Gy線量の放射線をそれぞれまたは併用処理し、37℃、5%CO2条件でさらに24時間培養した後、10μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド試薬を各ウェルに入れて、1時間反応させる。反応を終えた試薬を除去した後、ジメチルスルホキシドを各ウェルに200μlずつ入れた後、吸光度を測定して細胞の生存率を確認した。
【0184】
その結果、Caki-1細胞に2Gy線量の放射線を単独で処理したとき、処理しないグループ(Control)対比、がん細胞の約94.7%が生存する耐性を示しているが、ADP-リボースと併用処理すると、2Gy線量の放射線を活用しても、がん細胞の生存率は約22.7%で有意に(P<0.001)減少することを確認した(
図18のG)。
【0185】
以上を整理すれば、実施例8を通じてADP-リボースと放射線併用投与時に固形がんに対する相乗的抗がん効果を示し、ADP-リボースが固形がんに抗がん剤として活用されることができるだけでなく、放射線療法の抗がん補助剤としても有用に活用され得ることが分かる(
図18)。
【0186】
実施例9:ADP-リボースと耐性線量の放射線を併用処理した動物モデルから腫瘍体積の変化
実施例9-1:ADP-リボースと耐性線量の放射線を併用処理した脳がん動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のBALB/cヌードマウスに脳がん(U-87MG)細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、対照群(Control)と2Gy線量の放射線単独、2Gy線量放射線+10mg/kgのADP-リボースを併用投与する3種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、2Gy線量の放射線は1Gyずつ2回照射され、10mg/kgのADP-リボースは皮下に週3回注射された。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0187】
図19のAは、経時によって脳がんの体積を測定してこれを比較した結果であって、最終投薬後の対照群(Control)腫瘍の最終体積は約2545.2mm
3であり、2Gy線量の放射線を単独照射した群の最終腫瘍体積は約1472.1mm
3で対照群に対比して約42%減少した一方、2Gy線量の放射線とADP-リボースを併用投与した群の最終腫瘍体積は約725.2mm
3で対照群に対比して約71.5%の有意な減少(P<0.001)結果を示し、2Gy線量の放射線を単独照射した群と対比しても、併用投与群の腫瘍体積が約50.7%有意に減少(P<0.001)する結果を示した(
図19のA)。
【0188】
実施例9-2:ADP-リボースと耐性線量の放射線を併用処理した膵臓がん動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のBALB/cヌードマウスに膵臓がん(AsPC-1)細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、対照群(Control)と2Gy線量の放射線単独、2Gy線量放射線+10mg/kgのADP-リボースを併用投与する3種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、2Gy線量の放射線は1Gyずつ2回照射され、10mg/kgのADP-リボースは皮下に週3回注射された。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0189】
図19のBは、経時によって膵臓がんの体積を測定してこれを比較した結果であって、最終投薬後の対照群(Control)腫瘍の最終体積は約2384.3mm
3であり、2Gy線量の放射線を単独照射した群の最終腫瘍体積は約1725.5mm
3で対照群に対比して約27.6%減少した一方、2Gy線量の放射線とADP-リボースを併用投与した群の最終腫瘍体積は約736.2mm
3で対照群に対比して約69.1%の有意な減少(P<0.001)結果を示し、2Gy線量の放射線を単独照射した群と対比しても、併用投与群の腫瘍体積が約57.3%有意に減少(P<0.001)する結果を示した(
図19のB)。
【0190】
実施例9-3:ADP-リボースと耐性線量の放射線を併用処理した乳房がん動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のBALB/cヌードマウスに乳房がん(MDA-MB-231)細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、対照群(Control)と2Gy線量の放射線単独、2Gy線量放射線+20mg/kgのADP-リボースを併用投与する3種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、2Gy線量の放射線は1Gyずつ2回照射され、20mg/kgのADP-リボースは皮下に週3回注射された。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0191】
図19のCは、経時によって乳房がんの体積を測定してこれを比較した結果であって、最終投薬後の対照群(Control)腫瘍の最終体積は約2336.1mm
3であり、2Gy線量の放射線を単独照射した群の最終腫瘍体積は約1459.6mm
3で対照群に対比して約37.5%減少した一方、2Gy線量の放射線とADP-リボースを併用投与した群の最終腫瘍体積は約640.4mm
3で対照群に対比して約72.6%の有意な減少(P<0.001)結果を示し、2Gy線量の放射線を単独照射した群と対比しても、併用投与群の腫瘍体積が約56.1%有意に減少(P<0.001)する結果を示した。
【0192】
実施例9-4:ADP-リボースと耐性線量の放射線を併用処理した腎臓がん動物モデルから腫瘍体積の変化
5週齢のBALB/cヌードマウスに腎臓がん(Caki-1)細胞(1×107)をマウスの脇腹後ろに接種し、対照群(Control)と2Gy線量の放射線単独、2Gy線量放射線+20mg/kgのADP-リボースを併用投与する3種群に分類した。腫瘍の体積が約150mm3まで成長したとき、2Gy線量の放射線は1Gyずつ2回照射され、20mg/kgのADP-リボースは皮下に週3回注射された。デジタルケリファーを使用して腫瘍サイズを測定して、腫瘍体積の変化結果を群別に比較した。
【0193】
図19のDは、経時によって腎臓がんの体積を測定してこれを比較した結果であって、最終投薬後の対照群(Control)腫瘍の最終体積は約2620.5mm
3であり、2Gy線量の放射線を単独照射した群の最終腫瘍体積は約2454.5mm
3で対照群に対比して約6.3%減少にとどまった一方、2Gy線量の放射線とADP-リボースを併用投与した群の最終腫瘍体積は約786.4mm
3で対照群に対比して約70%の有意な減少(P<0.001)結果を示し、2Gy線量の放射線を単独照射した群と対比しても、併用投与群の腫瘍体積が約68%有意に減少(P<0.001)する結果を示した(
図19のD)。
【0194】
以上を整理すれば、実施例8の細胞実験に引き続き、実施例9の動物実験を通じてADP-リボースと放射線併用投与時に固形がんに対する相乗的抗がん効果を示し、ADP-リボースが固形がんに抗がん剤として活用されることができるだけでなく、放射線療法の抗がん補助剤としても有用に活用され得ることが分かる(
図19)。
【0195】
実施例10:ADP-リボースの正常細胞処理時の毒性有無確認
抗がん剤の場合、正常細胞に対しては毒性を現わさないとともに、がん細胞に特異的に毒性を現わすことが重要である。そのため、本発明によってADP-リボースが正常細胞に対して毒性を現わすか否かを評価した。
【0196】
正常細胞としてhuman colon fibroblast(CCD-18Co)とhuman dermal papilla cell(HDPC)細胞を活用した。先ず、96-ウェルプレートに5×103個の各正常細胞をDMEM培地で37℃、5%CO2条件で24時間培養した。次いで、ADP-リボースを処理しないグループ(Untreated)および処理したグループに区分(25、50、100 ul濃度別に増量処理)、計4グループに区分した。薬物処理24、48、72時間後、MTT assayで細胞生存率を比較した。
【0197】
その結果、正常細胞(
図20のA、B:CCD-18Co、
図20のC、D:HDPC)すべてにおいて、ADP-リボース処理時に毒性が現れないことを確認した。よって、上述した実施例の実験結果とともに、本実施例は、ADP-リボースががん細胞特異的に作用して、抗がん剤として有用に活用され得ることを示す。
【国際調査報告】