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特表2024-533188波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/18 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
F03B13/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514073
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2022075846
(87)【国際公開番号】W WO2023041742
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P-2021/1153
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RS
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510040075
【氏名又は名称】ドラギッチ,マイル
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】ドラギッチ,マイル
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074AA12
3H074BB10
3H074BB15
3H074BB30
3H074CC03
3H074CC50
(57)【要約】
波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置は、支持構造体(300)と、第1の作用体(200)と、アンカー(500)と、アンカーケーブル(400)と、から構成されている。支持構造体(300)はアンカーケーブル(400)によってアンカー(500)に接続され、一方、第1の作用体(200)は支持構造体(300)に摺動可能に接続される。運動変換システム(100)は支持構造体(300)に強固に接続されており、一方側にロール付き歯車(103a、103b)と噛み合わされる剛体歯車(101a、101b)を備え、これらは他方側は第1の作用体(200)にヒンジ止めされており、ロール付き歯車(103a、103b)の他方側には剛体歯車(102a、102b)の一端が接続されており、これらの他端は他の作用体(600)にヒンジ止めされている。ロール付き歯車(103a、103b)は、発電を更に行う発電機(108)を駆動する増速機と、シャフトによって接続されている。このように構築されている装置は、それ自体で安定して浮くため、利用場所への輸送が可能である。アンカーシステム(500)は、同じくそれ自体で浮くおよび水没する能力を有する輸送体(700)を使用して、利用場所まで輸送される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置であって、前記装置は支持構造体(300)と、第1の作用体(200)と、運動変換システム(100)と、アンカー(500)と、アンカーテザー(400)と、を備え、前記第1の作用体(200)は、前記支持構造体(300)に摺動可能に接続されており、前記運動変換システム(100)に歯車(101a、101b)によって接続されており、前記運動変換システム(100)は歯車(102a、102b)によって第2の作用体(600)に接続されており、前記第2の作用体(600)は前記支持構造体(300)に摺動可能に接続されており、前記アンカー(500)は輸送体(700)を使用して前記支持構造体(300)から独立して輸送可能である、装置。
【請求項2】
前記歯車(101a、101b)は前記運動変換システム(100)を介して歯車(102a、102b)に接続されている、請求項1に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項3】
前記歯車はピニオンとラックとの組合せとして製作されている、請求項1または2に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項4】
前記歯車(102a、102b)と歯車(103c、103d)とが、前記歯車(103c、103d)が同じ方向に回転するように接続されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項5】
歯車(101a、101b)は歯車(103a、103b)から切り離されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項6】
歯車(103a、103b)からの歯車(101a、101b)の前記切り離しは、固定された前記歯車(101a、101b)をグリップ状態から前記歯車(101a、101b)の方向に引っ張ることによって行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の、特に請求項5に記載の、波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項7】
歯車(103a、103b)からの前記歯車(101a、101b)の分離は、電気式または油圧式のシリンダによって駆動されるレバー機構を使用することによって行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の、特に請求項4に記載の、波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項8】
前記第2の作用体(600)は重力の影響下で下方向に移動する際に前記運動変換システム(100)を介して有用な仕事を行う、請求項1から7のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項9】
前記第1の作用体(200)は少なくとも2つの水密チャンバを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項10】
前記第1の作用体(200)のチャンバは、水が入ることを可能にする弁(Sd)と、前記チャンバ(W3)から空気が出ることを可能にする弁(Sg)とを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の、特に請求項9に記載の、波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項11】
前記第1の作用体(200)の質量はその排水量よりも大きく、前記第1の作用体が前記第2の作用体(600)に接続されていない場合には水面上に浮いた状態を維持しない、請求項1から10のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項12】
前記第1の作用体(200)は安全位置内に設置されると、前記支持構造体(300)の周囲でのその並進移動を阻止するために前記支持構造体(300)に固定された状態になる、請求項1から11のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項13】
前記第1の作用体(200)は前記歯車(101a、101b)によって前記運動変換システム(100)に接続されており、前記第2の作用体(600)はチャンバに水を充填することおよびチャンバを空にすることが可能である、請求項1から12のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項14】
前記第1の作用体(200)は前記第1の作用体(200)の軸に沿って移動可能な可動包囲体(Om)を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項15】
アンカーはチェーンまたはケーブルで接続された2つ以上の重りから構成されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項16】
前記支持構造体(300)は略六角形の構成を形成する周縁要素を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項17】
前記輸送体(700)は水面上に浮くことが可能である、請求項1から16のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項18】
前記輸送体(700)は内圧を調節することが可能である、請求項1から17のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項19】
前記輸送体(700)は、内部チャンバからの水の放出によって自重を調整し、前記輸送体(700)の浸漬速度を調整することが可能である、請求項1から18のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項20】
前記輸送体(700)は圧縮空気および弁を使用することによって持ち上げることが可能である、請求項1から19のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【請求項21】
前記輸送体(700)は前記輸送体(700)の内部に閉じ込められた空気の量を調節する、請求項1から20のいずれか一項に記載の波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置、および、利用場所へのその配備のためのプロセスであって、装置の特性がこの配備プロセスに適合されている、プロセス、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の解決法との関連では、本装置は、特に上下に動く浮体から発電を行う発電機へのエネルギー伝達の領域において異なっている。配備プロセスは、偶発的な損傷を防ぐための安全システムを備えた、波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置の配備場所の海底にある係留システムの適合に基づいている。IPC(国際特許分類)によれば、装置は海波のエネルギーを利用する動力機械に分類され、分類記号F03B13/12に対応している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明によって解決される技術的問題は、効率すなわち利用度が最大であり、稼働条件に対して耐久性を有し、かつ同時に、経済的要件を満たす、すなわち費用対効果の高い、許容可能な材料および許容可能な数の下位組立体で製作されている、波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置の構築方法である。
【0004】
これらの問題は当技術分野でよく知られている。費用対効果の高い解決法を見つけるのは困難である。波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置の持続可能な解決法には、装置の効率が最大限であると同時に、システムが高い信頼性を有し安全に稼働し安価になるように、材料の数が最小限でありかつ組立体の数が最小限であることが必要である。上下に動く浮体に作用する波力は、先行技術で知られているように非常に大きくなる可能性があり、例えば、強固な支持構造と、浮体から発電機への力の伝達に関与する要素の強力な連繋とを必要とする。水に接する浮体の可動性の要件を考慮すると、このことは、エネルギーを生成するために利用される波の大きな力に耐えられるだけの強度を有すると同時に、沖合の条件に耐えられるだけの強度を有する構造である必要のあることと、対立するように見える。
【0005】
局所的に負荷のかかる個々の要素の耐用年数の問題も知られている問題であるが、この問題はさらされてきた負荷に要素がより長い期間耐えられるように解決される。
【0006】
深喫問題。この種の装置の特徴は、大水深用に設計されているために必然的に大型となることであるが、このような装置の建造は、この分野の専門家に知られているように、必要な喫水深さと比較して水深の非常に浅い造船所で行われる。
【0007】
海上に設置された装置は非常に過酷な大気条件にさらされ、安価なメンテナンスを頻繁に行う必要があるが、本発明はこの問題を大幅に緩和し簡略化する。
【0008】
この種の装置は非常に強い暴風雨の中で機能するようには設計されていないが、本発明は、極めて強い暴風雨の中で装置を固止するという問題を解決するものである。
【0009】
本発明は、装置の輸送およびその配備の問題を解決する。
【0010】
本発明はまた、この装置を所望の位置に保持するアンカーの輸送および水没のための解決法も含む。
【0011】
本発明はまた、利用場所への装置の配備の問題も解決する。
先行技術
再生可能エネルギー源に基づく解決法が多く知られている。地球の明らかな気候変動の観点からは、環境に有害気体を排出する発電所の使用を、一刻も早く回避する必要があると思われる。本願と同じ発明者による欧州特許EP2183478は、波から上下に動く浮体へのエネルギーの伝達に関連する基本的な問題のうちのいくつかを解決する装置を示している。EP2183478に記載されている波から取り出したエネルギーのうち電気エネルギーへと更に変換可能な量は最大化されるが、この装置が他の知られているエネルギー変換用装置に対して競争力を有すること、および大気中に大量の有害気体を放出するエネルギー生成用装置を気候変動が深刻化する前に置き換え可能である必要がある。
【0012】
同発明者の特許WO2017176142A2ではこのような装置の応用が大きく進んだが、伝達システムの部品の耐用年数に関する問題が見られる。その理由は、可撓性の部品が小さな波で非常に早く疲弊する、すなわち、負荷が常に一箇所に現れる結果である材料疲労の現象に起因して、可撓性の部品にひび割れが生じるからである。
【0013】
別の問題(WO2017176142A2)は、歯車ラックの解決法が長い管を必要とし、垂直姿勢で輸送される場合、輸送中に海に大きな深さを必要とすることである。輸送中の海の深さは数十メートル程度であるべきである。このことが可能な場所は多くはない。装置を水平に倒した姿勢で輸送する場合、配備場所までの輸送および立ち上げは非常に複雑でありコストもかかる。
【0014】
上記特許(WO2017176142A2)のフローティング・アンカーには、水没時にこのアンカーが理想的な水平姿勢でないため、アンカー内部の水が片側に移動しその結果重心が乱れ、このためアンカーの制御されない回転および転覆を起こす可能性があるという欠点がある。または、このフローティング・アンカーは大きな気球、より多くの潜水士、人、および高価な機器を必要とする。その場合、アンカーを水から出すプロセス中に大きな欠点が存在するが、その理由は、海底では圧力が大幅に上昇し、水からアンカーを取り出すときには空気の体積が大幅に増大するため、アンカーの取り出しが困難になり、アンカーが制御されずに水から飛び出す危険性が高まり、アンカーが爆発する危険性さえあるからである。
【0015】
システムの構造は改善され、軽量化され、より安価になり、簡略化され、この結果その効率および経済性が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
波エネルギーを電気に変換するための装置は、支持構造体と、第1の作用体と、エネルギー変換のシステムと、アンカーと、アンカーケーブルと、を備える。支持構造体は水面に浮き上がりやすいが、アンカーケーブルは一端が支持構造体に、他端がアンカー重りに接続されているため浮くのを防止し、このようにして装置全体が所定位置に保持される。第1の作用体は、波の作用を受けて支持構造体に沿って上下に動くことができるように、支持構造体に摺動可能に接続される。
【0017】
第1の作用体は、水面の上方に位置付けられた固定歯車(ラック、ロールラック)を介して運動変換システムに接続され、同じ固定歯車(ラック、ロールラック)を介して第2の作用体に更に接続される。第1の作用体は、支持構造体に沿って上下に動くと固定歯車を介して運動変換システムを駆動し、これら固定歯車は支持構造体の内部にある第2の作用体を更に駆動する。
【0018】
本発明の本質は、2つの作用体であり、波が作用する水と接触している第1の作用体は固定歯車、この場合はラックおよびロールピニオンのシステムを介して第2の作用体に接続され、第2の作用体に至る第2のラックは、最小限のメンテナンス、最小限の摩擦損失、および最小限の潤滑で、長年の稼働を可能にする。
【0019】
運動変換システムは、固定歯車、ロールラック(または歯車ラック)-ピニオン(ピニオン歯車)またはラック歯車-ロールピニオンのシステム、発電機シャフトに強固に接続されている歯車に接続されている駆動歯車のシステムを備え、システムには2つの分岐を介して動力が供給される。
【0020】
歯車シャフトはハウジングに埋め込まれ、ハウジングは固定歯車ガイドが強固に結合されている支持パネルに強固に取り付けられ、これらガイドは、固定歯車と歯車とを噛合することによって得られる全ての荷重を確実に受け入れて、装置の滑らかな動作に必要な垂直方向以外の全方向において、歯車から固定歯車が分離するのを防止する。
【0021】
運動変換システムは、固定歯車が伸張に対して負荷されることが外部作用体および内部作用体によって保証されるように構成され、この結果、固定歯車はより剛性が低くより軽い構造となる。このことは新規性を有し、これまでどの特許でもこのように実施されたことはなく、またこのことは、装置が信頼できかつ十分な耐用年数を有するための条件である。
【0022】
第2の作用体の一体の部分である固定歯車は、ロール歯車から分離可能である。このことは本発明の重要な特徴であるが、その理由は、輸送および極めて強い暴風雨の際に、システム全体の質量の重心を可能な限り低くする必要があるからである。
【0023】
水と接触している第1の作用体は、その排水量がその質量よりも小さいという特徴を有し、したがって第1の作用体は、運動変換システムに接続されていないときは浮いた状態を維持する(浮く)ことができないため、浮体とは呼ばれ得ない。第1の作用体の質量と排水量との間の差は、固定歯車によってロール歯車を介して補償される。この技術的解決法を適用することによって、2つの非常に重要な成果が得られる。第1の成果は、固定歯車には延伸方向に負荷がかかるということである。このように設置された固定歯車では延伸方向への負荷が支配的であって、自体をより軽くより安価にすることが可能になり、また波がもたらす大きな力を考慮して、その長さが大きければ既存の材料で製作可能である。
【0024】
第2の成果は、第1の作用体が水没可能であるため、極めて強い暴風雨が発生した場合に、安全な構成で装置を設置できることである。排水量が外部作用体の質量よりも大きい場合には、水没時に、例えば第1の作用体に水を充填することによって外部作用体の質量を増加させ(すなわち排水量を小さくし)、第1の作用体が作用位置に戻されるときには、ポンプ、圧縮空気などによる圧力下で水を空にすべきであるが、本発明では、第1の作用体が浮上する際に自動的に水が捨てられる。
【0025】
本発明の範囲内では、小型クレーンを有する船舶による輸送および係留を可能にする輸送体が提示される。
【0026】
輸送体は、重り、アンカー、水中装置(例えば、潮汐エネルギー変換装置、等)の部品の輸送およびそれらの場所での配備に使用され得る。
【0027】
積荷は輸送体に取り付けられ、所望の場所まで曳航され、その後クレーン、または積荷を適正な場所に置く適切な装置に取り付けられる。弁が開かれて水が輸送体の中に入ることが可能になり、同時に、他の弁を開くことによって空気が外に出ることが確保され、このことによって重りを補正し、排水された体積と重りの質量との間の差は、更なる浸漬工程においてクレーンによって受け入れられる最小重量にまで小さくされる。クレーンに負荷されることになるこの残留重量の差は、圧縮容器および調節弁によって細かく調節され得る。
【0028】
本発明による波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置について、以下で添付の図を参照してより詳細に説明する。添付されているのは、本発明による工程、つまり、説明されている組立段階および装置輸送段階によって可能になる装置の構造的特徴を、よりよく理解するために使用される図である。図は本発明の実施形態の例を示すものであり、特許請求の範囲によって規定される保護範囲内にある他の可能な実施形態を限定するものとして解釈されるべきではない。特許請求の範囲に従う技術的特徴は、構造の実施形態の他の例において相互に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態の第1の例の等角図である。
図1a】本発明の実施形態の例の部分断面等角図である。
図2】運動変換システムの実施形態の例の等角図である。
図3】閉位置における、ロール歯車からラックを分離するための機構の断面図である。
図3a】開位置における、ロール歯車からラックを分離するための機構の断面図である。
図3b】引き抜きシステムによってロール歯車からラックを解放する別の方法の断面図である。
図4】安全モードに構成された場合の本発明の実施形態の例の等角図である。
図5】輸送用に構成された場合の本発明の実施形態の例の等角図である。
図6】制振アンカーを有する装置の実施形態の別の例を示す図である。
図6a】アンカーにおける制振器を示す図である。
図7】輸送体の概略等角図である。
図7a】アンカー・プラットフォームの概略等角図である。
図7b】アンカー・プラットフォームの断面図である。
図8a】発電機がシステム内で水面下に位置するシステムの正面図である。
図8b】より単純な増速機(multiplier)の概略図である。
図9】自由側を拡大した第1の作用体の概略正面図である。
図9a】チャンバからの水の自由排出の概略正面図である。
図10】下側位置にある可動外側包囲体(wrapper)の概略正面図である。
図10a】上側位置にある可動外側包囲体の概略正面図である。
図11】油圧シリンダによる作用位置でのシステムの配置の概略正面図である。
図11a】(浸漬の初期段階における)油圧シリンダが引き込まれているときのシステムの配置の概略正面図である。
図11b】(浸漬の中間段階における)油圧シリンダが引き出されているときのシステム配置の概略正面図である。
図11c】(最終浸漬段階における)油圧シリンダが引き込まれているときのシステム配置の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置を示しており、装置は、体重に対して低減された正の排水量すなわち浮力(液体中に浸漬された物体によって排水されるその液体の重量に等しい)を有する支持構造体300と、第1の作用体200と、運動変換システム100と、アンカー500と、アンカーケーブル400と、を備える。支持構造体300は水面上に浮く傾向を有するが、一端が支持構造体300に、他端がアンカー500に接続されているアンカーケーブル400は、支持構造体300が流れることを許さず、このようにして装置全体が所定位置に保持される。第1の作用体200は、波の作用を受けて支持構造体に沿って上下に動くことができるように、支持構造体300に摺動可能に接続される。
【0031】
図1aは、波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置の内部を示す。ロッカー201が連接されている第1の作用体200は、一端がロッカー201に連接されている固定歯車101a、101bの力のバランスをとるために使用され、固定歯車101a、101bは運動の変換のための運動変換システム100に更に接続され、そこには固定歯車102a、102bが取り付けられ、これらの他端は支持構造体300に摺動可能に接続されている第2の作用体600に接続される。第1の作用体200は、支持構造体300に沿って上下に動くと、固定歯車101a、101bを介して運動の変換のための運動変換システム100を駆動し、固定歯車101a、101bは、支持構造体300上に固定されたガイドの内側に摺動可能に導かれた支持構造体300の内側に位置する第2の作用体600とともに、固定歯車102a、102bを更に駆動する。
【0032】
第1の作用体200および第2の作用体600は固定歯車101a、101b、102a、102bを介して高い剛性で接続されており、絵画的に「2皿の天秤(two-scale scales)」と表される。このように接続された作用体は比較的小さな波力によって不均衡となり、システムの効率を高めている。その場合、第2の作用体600は水面上にある第1の作用体をその重量によって引っ張り、第1の作用体の喫水は小さくなり、この結果第1の作用体は波エネルギーのより高い区域に至るが、この理由として、波エネルギーが水深とともに指数関数的に減少することが知られている。より高い波エネルギーの作用を受けている第1の作用体200は、より多くのエネルギーを発電機に至るまでシステムに伝達し、より大量の発電が行われ、システム全体がより効率的となる。これは本発明の美点である。
【0033】
図2は、固定歯車の直線運動を発電機の交互円運動に変換する、運動変換システム100の実施形態の一例を示しており、システムは、ロール付き歯車103a、103b(ロールラックを適用する場合、GB2555854Aのロールピニオン)とそれぞれ結合された、ラック、ロールラックなどであり得る固定歯車101a、101bから構成され、ロール付き歯車103aはシャフト104aに強固に取り付けられ、一方でロール付き歯車103bはシャフト104bに強固に取り付けられ、シャフト104a、104bの他端には歯車105a、105bが強固に接続され、歯車105aは発電機シャフト108に強固に取り付けられている歯車107と噛み合わされ、歯車105bは歯車107と更に噛み合わされている歯車106と噛み合わされる。固定歯車101a、101bが上に移動すると、ロール付き歯車103a、103bが回転してシャフト104a、104bを介して歯車105a、105bを駆動し、歯車105aは歯車107を直接駆動し、一方で歯車105bは歯車106を介して歯車107を駆動する。歯車106は回転方向を変える役割を果たす。このことは、出力歯車107に、同じ方向および強度を有し加算されて2倍の出力トルクとなるトルクが2つの側から供給されることを保証し、歯車107がなければ、その左側のトルクとその右側のトルクは減算されるが強度は同じであるため、結果的なモーメントはゼロに等しくなり、したがってシステムは機能することができないと考えられる。
【0034】
装置動作の可能性を示すために1つのタイプの増速機が提示されている。
【0035】
シャフト104a、104bはハウジング111に埋め込まれ、歯車105a、105b、106、107もまたそれぞれに属するシャフトとともにハウジング111内に配置され埋め込まれる。ハウジング111は支持構造体300(図1)に強固に取り付けられている。摺動ガイド117a、117b(図3)、117c、117dは、支持構造体300(図1)と強固に結合されている中央ガイド113に強固に取り付けられている。摺動ガイド117a、117b(図3)、117c、117dの両端では、一端にはレバー機構のハウジング114aが、ガイド117a、117b(図3)、117c、117dの他端にはレバー機構のハウジング114bが、所属するレバー(図3)を介して強固に接続されており、固定歯車101aのガイド116a、116bは摺動ガイド117a、117b(図3)、117c、117dに接続され摺動可能に取り付けられており、固定歯車のガイド116a、116bは、固定歯車101a、101bがロール付き歯車103a、103bと滑らかに結合し、以って固定歯車101aをロール付き歯車103a、103bと結合することによって得られる全ての荷重を受け入れ、この結果、装置の滑らかな動作に必要な垂直方向以外の全方向において、歯車103aから固定歯車101aが分離するのを防止することを実現する。
【0036】
この実施形態の特徴は、固定歯車102a、102bとロール付き歯車103a、103bとの結合に起因して生じる荷重がガイド113上で相互に釣り合い、ガイド117a、117b、117c(図3)、117dに伝達される荷重が、伸張に対してそれらの永続的な荷重を加えることである(このタイプの荷重が、従来技術から知られているガイドの強度および寸法の点で最も適している)。
【0037】
このシステムの特徴は、荷重が2つの側からもたらされ、発電機の歯車を通して1つの側のみから取り除かれるので、動力および動きのこの変換が、より軽く慣性荷重への寄与の少ない、はるかに小型で単純な部品で達成され得ることである。
【0038】
他方で、運動変換システム100は、第1の作用体200および第2の作用体600(図1a)が、固定歯車101a、101b、102a、102bの伸張に対して一定の荷重を与えるように設計されており、固定歯車の要求される強度が低くなり、このため固定歯車の構築が容易になる。この解決法は先行技術も含めてここで初めて示されている。
【0039】
第1の作用体200に取り付けられるときの固定歯車101a、101bのバランス調整、ならびに、第2の作用体600に取り付けられるときの固定歯車102a、102bのバランス調整ためのシステム、例えば、ロッカー、レバーシステム、チェーン付きスプロケット、および油圧バランサーなどを設置することが可能である。
【0040】
図3は、ピニオンから固定歯車を分離するためのレバー機構を示す。図3はこのシステムの片側のみを示しているが、他方側は同一であり、鏡の中の鏡像として設置される。
【0041】
固定歯車をロール付き歯車から解放する方法は2つあり、一方は以下に記載するような方法であり、他方は、固定歯車をロール付き歯車のグリップ状態(grip)に戻すシステムを設けることによって、固定歯車をグリップ状態から引き抜くことによる。
【0042】
ここでは、本発明の実施形態の可能性を説明するために、機械的システムについて記載する。記載されているシステムの代わりに、油圧式システム、電気機械式システム、空気圧式システム、またはこれらの組合せが、グリップ状態から固定歯車およびロール付き歯車を分離または引き抜くための、同じタスクで設置され得る。
【0043】
システムは、レバー機構114aのハウジングが端部に強固に取り付けられている、固定されたガイド117a、117bを備え、114aは一端にあり、114bは他端にある(図2)。レバー118a、118bは、一端がレバーハウジング機構114aに枢動可能に接続されており、一方で、これらは他端がレバー120ならびにレバー119a、119bに枢動可能に接続されており、レバー119a、119bの他端は、ガイド117a、117bに摺動可能に接続されている固定歯車ガイド116aに枢動可能に接続されている。レバー120は、他端がレバー機構114aのハウジングに枢動可能に接続されているシリンダ115aと、一端が枢動可能に接続されている。
【0044】
固定歯車を開位置において分離するための機構が図3aに示されている。シリンダ115aを伸ばすことにより、レバー120はレバー118a、118bの長さに対応する半径を有する円に沿って移動し、レバー120を動かすことによりレバー119a、119bも移動され、このことにより運動連鎖が満たされ、その結果、レバー119a、119bの回転運動、ならびに、ガイド117a、117bに沿ったラックガイド116aの並進運動が生じ、これにより固定歯車101aが引っ張られ、ロール付き歯車103aから分離される。固定歯車101aを作用位置に戻すこと、すなわちロール付き歯車103aと結合させることは、シリンダ115aを引き込むことによって達成され、以ってシステムは動作位置に戻される。
【0045】
係留場所への輸送中に装置が安全モードに設定されることが計算される。安全モードは、システム全体の重心の位置が、装置の支持構造体の最下点から最小距離にあることを特徴とする。
【0046】
図3bは、固定歯車101aをロール付き歯車103aのグリップ状態から単に引き抜くだけで固定歯車101および関連するロール付き歯車103aを分離する、別の方法を示す。これは、固定歯車101aを作用体200のストローク(図1より)よりも少し短くすることによって達成される。このように、作用体を作用モードに戻すときには、作用体の持ち上げを強制的に確保することが必要である。
【0047】
図4は安全モードに構成された装置を示す。
【0048】
波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置を安全モードに構成することは、第1の作用体200を支持構造体300上に載るように降下させ、次に第2の作用体600を予測される最下位置まで降下させることを含む。
【0049】
装置を安全モードに構成するための手順は以下の通りである:発電機がプログラムによりモータモードに設定され、第2の作用体600が固定歯車102a、102bの上を、第1の作用体200が支持構造体300にもたれかかる位置まで上昇され、次に発電機が停止し第2の作用体600を上側位置に保持し、この瞬間から(既に説明したように)固定歯車の分離工程が開始し、固定歯車を分離するサイクルの完了後、第2の作用体600が発電機によって下側位置まで降下される。
【0050】
安全位置にあるシステムは重心が最も低く、最も強い暴風雨に耐えられる状態である。
【0051】
より低い地点まで水没させると、作用体200は、強い暴風雨の間動かないように、機械的に、電気によって、油圧によって、空気圧によって、またはシステムのうちのいくつかによって、容易にロックされ得る。
【0052】
固定歯車102a、102bを切り離すことが可能である、または単に、固定歯車102a、102bがロール付き歯車103a、103bとのグリップ状態から外れる。
【0053】
暴風雨の終了後、第2の作用体600は空気圧、油圧または機械によって上昇され、ロール付き固定歯車102a、102bは、ロール付き歯車103a、103bと結合され、次いで第2の作用体600は発電機によって上側位置まで上昇され、固定歯車101a、101aはロール付き歯車103a、103bと結合し、次いで第2の作用体600は発電機によって制御された様式で中間位置まで降下され、システムは標準モードに戻る。
【0054】
図5は輸送装置の位置を示しており、この位置は安全位置(図4)に対応しているが、輸送中は装置が海底に係留されず、水面上に自由に浮くという違いがある。
【0055】
輸送中に重りを降下させることが必要なのは、波エネルギーを変換するための装置が、この装置の重心の位置が低くなることによってもたらされる十分な安定性を確保するためであることを、強調することが重要である。運動変換システム全体が構造体の上でかつ水上に設置されており、このことが構造体自体の重心を高くし、また第2の作用体が作用位置にあるときに重心は水上の高い位置にあり、装置の構造を不安定にする。第2の作用体を構造体の底部に向かって降下させると重心点が下がり、その結果重心点が浮力点に近づき、安定性の向上が達成される。
【0056】
図1に示すような、波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置の動作構成では、第1の作用体200の質量の中心および運動変換システム100の質量の中心が水上にあるため、重心は支持構造体300の上部にある。この場合、装置の安定性が脅かされることはないが、その理由は、装置がアンカーケーブル400によってアンカー500に係留され、支持構造体300全体が、支持構造体300を水面に押し上げる傾向を有する自身の浮力を有し、その結果、アンカーケーブル400の力が、波エネルギーを電気に変換するための装置の安定した平衡位置を実現するからである。
【0057】
このような構造の実施形態は、先行技術で述べられた従来の解決法に比べ、いくつかの利点を有する。第1の大きな利点は、この構造は実質的に喫水が非常に低いため、輸送時に大きな水深を必要としないことである。他方で、運動変換システムは水上に位置し、整備、交換、および定期メンテナンスが可能である。運動変換システムは、小型船によく見られる可搬重量の比較的小さいクレーンで全体を交換可能である。また、整備を実施する人員、技術者は、整備を実施するために構造体の中に入る必要はなく、全て構造体の外側から行う。
【0058】
TLP(緊張係留式プラットフォーム)プラットフォームは標準的な操作で装置の垂直性が得られるので便利であるが、装置の傾きをもたらすニーリングすなわちアンカーケーブルの緩み、を回避するためにアンカーケーブルに大きな力が必要であり、その後アンカーケーブルを引き締める際に、アンカーケーブルに極めて大きい力が発生する。
【0059】
このような極めて大きい力を回避するために、排水量、つまりアンカーケーブルの静的な力が大きくされる。その結果、装置が高価になり、ほとんどの場合現在の技術材料の限界にあるケーブルに、余分な高い力が生じ、高価なバランシングでより多数が使用される。
【0060】
この極端な増大の現象は、ニーリング後の引き締めの際に衝撃力を緩和するためのショックアブソーバを設置することによって回避され得る。これらのショックアブソーバは高価であり、操作が水中であることおよび力が大きいことに起因して、利用が困難である。
【0061】
ここでは、1つまたは複数の重りから構成される信頼性が高く安価な新規技術(novelty)を紹介する。すなわち、第1の重りは、固定式の重りよりも常に大きい、発明者らが選択した質量を有し、第2の重りまたは固定点に取り付けられるまでのストロークを有する。第2の重りのストロークは自由であり、つまり、第3の重りまたは固定点に取り付けられるまで上昇することができる。
【0062】
図6および図6aは、アンカーを有する、波エネルギーを電気エネルギーに変換するための装置の係留システムを示す。係留システムは海底に真空圧入された管体501から構成され、重り502が管体501上に設置されチェーン(またはケーブル)504によって接続され、重り503が重り502上に設置されチェーン(またはケーブル)505によって重り502と結合される。
【0063】
ニーリングが発生すると、システム偏位の慣性の結果としてアンカーケーブル400に動的な力が発生し、この力がQ1質量を有する重り503を最初に持ち上げる。重り503は持ち上げられた後で、チェーン505が引き締められるまで構造体を減速させ、チェーン505が引き締められると重り502が持ち上がり、重り502はチェーン504が引き締められるまで重り503とともに上へと移動し続ける。
【0064】
動作原理:アンカーケーブル400が緩められると、波力が停止した後で、装置はある程度の加速度および速度で標準位置へと戻る。大きい質量およびニーリング後の加速に起因して、システムは平衡位置に戻ろうとし、その場合、停止時間が極めて短いため、極めて大きい力が生成される。装置の停止経路を長くするために(つまり減速の時間間隔を長くするために)、ショックアブソーバが追加される。重りの数および質量、ならびにその自由なストロークを選択することによって、アンカーケーブルのニーリング後に十分な力を達成することができる。これはニーリング後の力を制御するための確実で安価な方法である。
【0065】
図7に示すような輸送体700が、重り、アンカー、水中装置の部品の輸送およびその場所での設置に使用される。
【0066】
輸送体700上には、輸送体700内の水を放出するための弁S2と、空気を放出するための弁S1とがあり、海底に降ろされる積荷Qの重量よりも小さい容量のクレーンが使用され、輸送体700上には、輸送体の型枠にかかる静水圧がより高くなるより深い深さまで積荷を降ろす場合、肉厚で重く高価な型枠を製作しないために、外圧にさらされる輸送体700の型枠の負荷を緩和できるようにするための、調節弁R、および圧縮空気の入ったタンクTが設置されている。
【0067】
積荷Qは積荷Qと一緒に浮くことのできる輸送体700に取り付けられ、輸送体700は船舶によって所望の場所まで曳航された後で、輸送体700を適正な場所に設置するために、クレーンまたは適切な装置、ケーブルなどに取り付けられる。弁S2が開き、輸送体700の内部に水が流れ込み、輸送体700が沈み始めるまで弁S1を通って余分な空気が外に出て、その後弁S1が閉じ、弁S2が閉じ、その結果、降ろされる積荷の速度は例えばクレーンによって制御可能になり、潜水用に小型クレーンが使用される場合、潜水速度を制御せねばならず、その場合は圧縮空気の付属タンクを有する調節弁が設置される。水深が深くなるにつれて周囲の水圧が高くなり、輸送体700の型枠に圧力を及ぼすが、型枠が変形しないように、輸送体700の内部にタンクTからの圧縮空気が挿入されて、内圧と外圧を均等化する。積荷Qが海底に触れると弁S2が開かれて、輸送体700の内部に水が再び入るようになり、同時に弁S1が開いて、外部の静水圧と同じ圧力の圧縮空気が、輸送体内部の水位が弁管S1が設置された高さに達してそれ以上の空気の漏れが防止されるまで、外に出ることができるようになる。弁管S1の高さは、今や付加された積荷Qのない輸送体700を海底から持ち上げることのできる、十分な容積を提供するように計算される。浸漬後に輸送体700に水を充填する必要があるが、その理由は、そうしなければ積荷Qを切り離した後で輸送体700が、その自重と水没体積との間の差が大きいことに起因して、瞬時に水面に向かって移動しようとするからであり、このことが起こらないようにするためには輸送体700に水を充填せねばならない、つまり、余分な空気は記載した様式で追い出されなければならない。
【0068】
降下の速度が重要でない輸送体700の水没の場合には、弁S2は開いたままであり、その場合、弁S2が、潜水時の圧力を均等化するのに十分な水が輸送体の中に入るのを可能にするのに適切な直径のものであるならば、輸送体の内部の圧力と外部の圧力は同じになる。
【0069】
海底からの輸送体700の持ち上げは、輸送体700の充填後に積荷Qの接続を解除することによって行われ、その瞬間に輸送体700は水面に向かって移動し始め、輸送体700が何もない水面に近づくと、輸送体700の型枠の外側部分に圧力がかかり、弁S2を通した水および弁S1を通した空気の制御放出によって、輸送体700内部の圧力調節が行われる。
【0070】
図8aは、水面下の支持構造体300の内部に関連する増速機システムを有する発電機の概略図である。このシステムの利点は、システム全体の重心がより低いこと、動作安定性がより高いこと、より単純でより経済的な増速機が実現できること、システムの冷却がより容易でより単純であること、などである。主な欠点は、固定歯車102a、102bが長めになること、アクセスおよび整備がより困難になること、ならびに、装置の場所までの輸送および直立姿勢をとらせることがより困難になることである。
【0071】
図8bはより単純な増速機の概略図である。増速機は、ロール付き歯車103c、103dと結合されている固定歯車102a、102bから構成され、ロール付き歯車103c、103dはシャフトを介して歯車105a、105bに強固に接続され、歯車105a、105bは同時に、発電機108のロータに緊密に接続されている歯車107と結合されている。
【0072】
固定歯車102a、102bの(上または下への)並進移動中、ロール付き歯車103c、103dは同じ方向に回転するが、その理由は、固定歯車102a、102bが、ロール付き歯車103c、103dの回転軸に対してロール付き歯車103c、103dの同じ側に設置されているためである。
【0073】
この増速機を用いれば、図2で説明した場合のように、回転方向を変えるための歯車を使用する必要はないが、その理由は、この構成の剛性歯車102a、102bは、ロール付き歯車103a、103bの回転軸に対して、ロール付き歯車103a、103bの同じ側に配置されているからである。
【0074】
図9は、動作中の作用位置における、追加のチャンバV3を有する第1の作用体200を示す。第1の作用体200は、波エネルギーが最大となる区域、すなわち水面の最上部付近まで第1の作用体200が引っ張られるように、運動変換システム100(図1a)を介して第2の作用体600に取り付けられている。傾向としては、作用体の動きの振幅を大きくし、以って得られる電気の量を増やすということである。作用体の動きの振幅の増大は、システムを共振させるかまたは共振帯に近づけることによって達成され得る。このことは第1の作用体200(図1a)の自由側を大きくすることによって達成され得るが、第1の作用体200の排水量はここで説明したように増大されているので、安全位置をとらせることが犠牲になることはない。
【0075】
追加のチャンバV3は第1の作用体200上に、弁Sgが水面よりも更に上になり弁Sdがより水面に近くなるように、上側から設置される。
【0076】
弁Sd、Sgは閉じられており、したがってシステムを共振させるために必要な大きな自由側が得られ、この大きな自由側は、第1の作用体200(図1a)の排水量を増大させることになるが、このことはシステムを安全位置に容易に導くことを妨げる。弁Sd、Sgは必要に応じて開閉する電動弁とすることができる。その場合、弁Sd、Sgにエネルギーが供給されねばならないか、またはそれらを、波が開口部Sdの上を通過するときにチャンバV3に入ることになる水の量が無視できるように計算された直径の、単なる開口部とすることができ、入った水は、波が引くかまたは開口部Sdよりも下に降下した後で出てくることになる。この効果は、水がチャンバV3に入るよりも早く出てくることを可能にするような、一方向弁によって達成され得る。
【0077】
図9aについて、システムに安全位置をとらせたいときには、弁Sd、Sgを開き、発電機が第2の作用体600(図1)を上昇させる。第1の作用体が沈み、喫水線が弁Sdを越え、水がチャンバV3に流れ込み、空気が弁Sgを通ってチャンバから出て、第1の作用体200(図1)が支持構造体300(図1)上の適切な支持体まで降下すると、それらの関連する固定歯車101a、101bがロール付き歯車103a、103bとのグリップ状態から抜け出し、第1の作用体200はその位置に固定される。第2の作用体600は発電機によって支持構造体300の底部に設けられた支持体まで降下され、大きな暴風雨に対してシステム全体の準備が整う。
【0078】
暴風雨の終了後、発電機によって第2の作用体を上側位置まで上昇させることで、システムに作用位置をとらせ、その後、第1の作用体は結合解除され、油圧、機械などによって持ち上げられて、固定歯車101a、101bならびにロール付き歯車103a、103bと結合され、その後、第2の作用体は中間位置に向かって降下され、第1の作用体を水面まで引っ張る。第2の作用体の作用でSgが水面上に出ると弁SgとSdが開くので、空気はチャンバV3に入ることになり、水は弁Sdを通って流出することになる。チャンバV3から水が空にされると、弁Sg、Sdが閉じ、システムは動作位置をとる。
【0079】
図10は、その排水量が正である可動外部包囲体Omを有する第1の作用体の概略図である。外部包囲体Omは、第1の作用体の周囲にある第1の作用体と同じ球半径の球体に沿って、または、両者の間を通過する水や空気が少なくなるような隙間を有して移動できるように、設計され得る。図9は、波の作用で下向きに移動する第1の作用体を示す。その質量および発電機の制振に起因して、第1の作用体はOm包囲体よりもゆっくりと移動する。この場合、Om包囲体は捕捉される水W3の質量を増加させ、またラックにおける力も増加させ、結果的に出力エネルギーがより高くなる。
【0080】
図10aは、波が近づき、そのとき外部包囲体Omが第1の作用体よりも速く移動して、波しぶきおよび第1の作用体の上面が水で覆われることから第1の作用体を保護する状況を示すが、まさにそれが、システムを共振させて生成されるエネルギーの増加を引き起こすための前提条件である。
【0081】
外部包囲体は、第1の作用体の上面の水しぶきを減少させるとともに、捕捉される水W3’の体積を大きくし、このことにより固定歯車101a、101bの引張力を大きくして、より高いエネルギーおよびシステムのより容易な共振が得られるようにするために、第1の作用体の直径をより大きくして使用される。
【0082】
図11は、支持構造体300を正確な作業深度に至らせ、アンカーケーブルの力をバランス調整するための、油圧システムを示す。
【0083】
例えば、水上風力発電機用の大型プラットフォームはアンカーケーブルにおいて大きい静的な力を有し、その大きい静的な力をまとめて3つに分割しているが、その理由は、平面が3点で定義されるという事実により、それらの力は3点で結合するからである。より多くのケーブルを挿入したならば静的な力は小さくなると考えられるが、全ての取り付け点が同一平面上にあること、つまり、全てのアンカーケーブルに同じ引張力を持たせることは難しい。
【0084】
ここで提示されている特許は、このことを容易で安価で効率的な方法で解決するものである。
【0085】
支持構造体300の外部のアンカーケーブルの結着点に近い箇所には、フックまたはベアリングK、K1が設けられるものとし、その場合、図10におけるようなフックシステムを有する油圧シリンダhxが設置されるであろう。固定フック405は、チェーン、ケーブル、中実体などとして製作することができ、油圧シリンダが引き込まれているときに、油圧シリンダによって引かれているケーブル402の開口部に固定フックを引っ掛けることができるように、支持構造体300に固定される。支持構造体300をアンカー500の上方の正確に予測された位置まで移動させ、次に、ケーブルやチェーンなどの先端に1つのフックを有する油圧シリンダのピストンを引き抜く。シリンダのストロークよりわずかに小さい距離に開口部を持つケーブル402がケーブル400に取り付けられている。ケーブル402上の開口部404の数は、支持構造体300の浸漬深さとピストンのストロークによって規定される。支持構造体300の降下は、ケーブル402の端部フックが油圧シリンダの端部のフックに引っ掛かり、全てのシリンダが引き込みを開始し、その結果支持構造体300が水面のレベルよりも下に降下されるようにして行われる。シリンダが引き込まれると、固定フック405はケーブル402に引っ掛かり、次いで油圧シリンダが引き出され、ケーブル405が支持構造体300を保持して、その持ち上がりを防止する。シリンダが引き出されると、ケーブル402上の第2の開口部が油圧シリンダ403に取り付けられ、シリンダを引き込む工程が始まり、このため支持構造体300が降下を始め、支持構造体300が所望の深さに達するまで、この工程が繰り返される。支持構造体300が所望の深さに達したら、次いで油圧分配器を介して、全てのシリンダが並列に接続され得る、つまり、油圧シリンダ内の同じチャンバが並列に接続され、その結果全てのアンカーロープの力が均等化され(当業者には既知である)、次いでケーブル400は、ねじ、ワッシャ、コーンなどによって長さが調整され得る支承部で支持構造体300に取り付けられ、ケーブル400の全ての端部が均等に引き締められ支持構造体300に固定されると、油圧ピストンが引き出され、構造体の全ての浮上力がケーブル400に引き継がれ、支持構造体300が所望の深さに位置決めされる。これにより、支持構造体300を降下させ、アンカーケーブルの全ての力をバランス調整するという問題が解決される。バランス調整時に、すなわち油圧シリンダを並列接続させるときに、支持構造体300の重心が移動してしまっている場合、アンカーロープの力のバランスを調整するときに、装置が垂直にされねばならない。アンカーロープにおける力は、油圧機構および制御された圧力弁によって、個別にバランスをとることができる。このことは当業者には既知である。
【0086】
支持構造体300の位置決めの完了後、油圧シリンダは取り外され、別の支持構造体300を位置決めするためにその上に設置され得る。
【0087】
油圧シリンダ用の駆動装置は内蔵型とすることができ、油圧エンジンからシリンダまで油圧ホースが延伸され得る。
【0088】
より直径の小さい油圧シリンダを使用するために、比較的小さい排水量を有する支持構造体300内に、部分的に水を入れることができ、支持構造体300が所望の位置に設置されると、次いで加圧された空気が支持構造体300の上側の弁に放出され、先に放出された水が捨てられる。
図1
図1a
図2
図3
図3a
図3b
図4
図5
図6
図6a
図7
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図9a
図10
図10a
図11
図11a
図11b
図11c
【国際調査報告】