(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ヒドロゲルマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチド並びにカプセル化オリゴヌクレオチドを製剤化及び使用するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/06 20060101AFI20240905BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240905BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K9/06
A61K31/7088
A61K47/34
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514085
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 US2022041038
(87)【国際公開番号】W WO2023034056
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519392030
【氏名又は名称】バイオナット ラブス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、トービン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、スヒョン
(72)【発明者】
【氏名】スタントン、マーティ
(72)【発明者】
【氏名】キセリョフ、アレックス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA95
4C076EE13
4C076EE23
4C076EE24
4C076FF33
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA13
(57)【要約】
本発明は、乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスの組成物、水又は水性媒体中のオリゴヌクレオチド固有溶解度を超える量のヒドロゲルマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチドを製剤化するための方法、記載される方法によって産生されるヒドロゲルマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチド、並びに全身及び局所マイクロ送達のために乾燥した速放性の高濃度ヒドロゲルマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチドを使用するための治療方法に関する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度のオリゴヌクレオチドを送達するための乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持ポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスであって、
当該マトリックスの再水和時に当該マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分~約30分である、マトリックス。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチドは、当該マトリックス中に、40w/w%~80w/w%、又は80w/w%超の高濃度で含まれている、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドは、当該マトリックス中に、50w/w%超の高濃度で含まれている、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドは、当該マトリックス中に、60w/w%の高濃度で含まれている、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドは、当該マトリックス中に、60w/w%超の高濃度で含まれている、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドは、当該マトリックス中に、70w/w%超の高濃度で含まれている、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドは、当該マトリックス中に、80w/w%又は80w/w%超の高濃度で含まれている、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項8】
当該マトリックスの再水和時に当該マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分~約20分である、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項9】
当該マトリックスの再水和は、水、水性媒体、又は、脳脊髄液(CSF)、血液、リンパ液、滑液、及び房水からなる群から選択される体液中で行われる、請求項8に記載のマトリックス。
【請求項10】
当該マトリックスの再水和時に当該マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分~約10分である、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項11】
当該マトリックスの再水和時に当該マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分~約6分である、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項12】
当該マトリックスの再水和時に当該マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分である、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項13】
20μmの平均長さを有する、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項14】
15μmの平均長さを有する、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項15】
10μmの平均長さを有する、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項16】
1μm~10μmの平均長さを有する、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項17】
1μm~5μmの平均長さを有する、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項18】
1μm~2μmの平均長さを有する、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項19】
1μmの平均長さを有する、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項20】
前記オリゴヌクレオチドは、25量体ポリdTを含む、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項21】
当該マトリックスの10.6μLの体積において、
前記オリゴヌクレオチドの密度が1.4~1.7gcm
-3であり、
前記ポリエチレングリコール(PEG)の密度が1.1gcm
-3である、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項22】
当該マトリックスの再水和時に、1分~15分未満の期間で、前記ポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルの1.6μLの総体積当たり、0.025mg~1mgの前記オリゴヌクレオチドを放出する、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項23】
スライス及び平坦化された100μmフレークを含む、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項24】
前記スライス及び平坦化された100μmフレークは、当該マトリックスの再水和時に、1分未満のほぼ瞬間的な期間~約10分未満の期間で、当該マトリックスに担持されている約1mgの前記オリゴヌクレオチドのうちの0.1mg~0.4mgの前記オリゴヌクレオチドを放出する、請求項24に記載のマトリックス。
【請求項25】
前記スライス及び平坦化された100μmフレークは、当該マトリックスの再水和時に、1分未満~約10分未満の期間で、当該マトリックスに担持されている約1mgの前記オリゴヌクレオチドのうちの95%超の前記オリゴヌクレオチドを放出する、請求項24に記載のマトリックス。
【請求項26】
前記スライス及び平坦化された100μmフレークは、当該マトリックスの再水和時に、約15~約35分の期間で、該マトリックスに担持されている約1mgの前記オリゴヌクレオチドのうちの100%の前記オリゴヌクレオチドを放出する、請求項24に記載のマトリックス。
【請求項27】
長さ1mm×幅1mm×高さ1mmの体積を有する送達デバイスに装填可能である、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項28】
マレイミド官能化ポリエチレングリコール(PEG-MAL)、及びスルフヒドリル基を含有するポリエチレングリコール化合物(PEG-SH)の混合物と、pH4.0~4.8を有する緩衝液中のオリゴヌクレオチドの水溶液との反応物を含み、
前記オリゴヌクレオチドは、チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスの1.6μLの総体積当たり、500~900μgのオリゴヌクレオチドの担持値を有する、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項29】
モールドにキャストされる、請求項28に記載のマトリックス。
【請求項30】
マイクロメートルスケールから長さ2mm×直径1~2mmまでの範囲の長さ及び直径寸法を有する、請求項29に記載のマトリックス。
【請求項31】
前記モールドは、従来のピペットチップであり、
当該マトリックスは、長さ2mm×直径1mmの寸法を有するマイクロシリンダーを含む、請求項29に記載のマトリックス。
【請求項32】
当該マトリックスは、チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1~27のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項33】
当該マトリックスは、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸-ジアクリレート(PEG-PLA-DA)ヒドロゲルである、請求項1~27のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項34】
前記ポリエチレングリコール-ポリ乳酸-ジアクリレート(PEG-PLA-DA)ヒドロゲルは、光重合される、請求項33に記載のマトリックス。
【請求項35】
当該マトリックスは、PEG-ジアクリレート(PEG-DA)ヒドロゲルである、請求項1~27のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項36】
前記PEG-ジアクリレート(PEG-DA)ヒドロゲルは、光重合される、請求項35に記載のマトリックス。
【請求項37】
治療有効量の高濃度のオリゴヌクレオチドを対象における特定の組織位置に送達するための送達デバイスであって、
当該送達デバイスは、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持ポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスを搭載しており、
前記マトリックスの再水和時に前記マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分~約30分である、送達デバイス。
【請求項38】
長さ1mm×幅1mm×高さ1mmの体積を有する、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項39】
前記オリゴヌクレオチドは、前記マトリックス中に、40w/w%~80w/w%、又は80w/w%超の高濃度で含まれている、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項40】
前記オリゴヌクレオチドは、当該マトリックス中に、50w/w%超の高濃度で含まれている、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項41】
前記オリゴヌクレオチドは、当該マトリックス中に、60w/w%の高濃度で含まれている、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項42】
前記オリゴヌクレオチドは、当該マトリックス中に、60w/w%超の高濃度で含まれている、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項43】
前記オリゴヌクレオチドは、当該マトリックス中に、70w/w%超の高濃度で含まれている、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項44】
前記オリゴヌクレオチドは、当該マトリックス中に、80w/w%又は80w/w%超の高濃度で含まれている、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項45】
前記マトリックスの再水和時に前記マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分~約20分である、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項46】
前記マトリックスの再水和時に前記マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分~約10分である、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項47】
前記マトリックスの再水和時に前記マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分~約6分である、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項48】
前記マトリックスの再水和時に前記マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分である、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項49】
前記マトリックスは、20μmの平均長さを有する、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項50】
前記マトリックスは、15μmの平均長さを有する、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項51】
前記マトリックスは、10μmの平均長さを有する、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項52】
前記マトリックスは、1μm~10μmの平均長さを有する、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項53】
前記マトリックスは、1μm~5μmの平均長さを有する、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項54】
前記マトリックスは、1μm~2μmの平均長さを有する、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項55】
前記マトリックスは、1μmの平均長さを有する、請求項37に記載の送達デバイス。
【請求項56】
前記マトリックスは、チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)である、請求項37~55のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項57】
前記マトリックスは、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸-ジアクリレート(PEG-PLA-DA)ヒドロゲルである、請求項37~55のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項58】
前記ポリエチレングリコール-ポリ乳酸-ジアクリレート(PEG-PLA-DA)ヒドロゲルは、光重合される、請求項57に記載の送達デバイス。
【請求項59】
前記マトリックスは、PEG-ジアクリレート(PEG-DA)ヒドロゲルである、請求項37~55のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項60】
前記PEG-ジアクリレート(PEG-DA)ヒドロゲルは、光重合される、請求項59に記載の送達デバイス。
【請求項61】
水、水性媒体、又は体液中でのオリゴヌクレオチド固有溶解度を超える高濃度の乾燥した速放性のヒドロゲルマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチドを製剤化する方法であって、
(a)マレイミド官能化ポリエチレングリコール(PEG-MAL)と、スルフヒドリル基を含有するポリエチレングリコール化合物(PEG-SH)との混合物を、pH4.0~4.8を有する緩衝液中のオリゴヌクレオチドの濃縮水溶液と反応させて、1.6μLの総体積当たり500~900μgのオリゴヌクレオチド担持値を有するオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルを形成するステップと、
(b)前記オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルをモールドにキャストして、均一なオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスを作製するステップと、
(c)前記均一なオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスを周囲温度で乾燥させて、該マトリックス中に前記オリゴヌクレオチドを40w/w%~80w/w%又は80w/w%超の量で含む、乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスを形成するステップと、を含む、方法。
【請求項62】
前記オリゴヌクレオチドの水溶液を同時超音波処理で60℃に加熱することによって、前記オリゴヌクレオチドの濃縮水溶液を調製するステップを更に含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記オリゴヌクレオチドの濃縮水溶液は、25量体ポリdTを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記均一なオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスの乾燥は、72時間行われる、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスを100μmフレークにスライスするステップと、
スライスされた前記フレークを1μm~100μmの厚さに平坦化するステップを更に含む、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックの10.6μLの体積において、
前記オリゴヌクレオチドの密度が1.4~1.7gcm
-3であり、
前記ポリエチレングリコール(PEG)の密度が1.1gcm
-3である、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスは、該マトリックスの再水和時に、約1分~約15分の期間で、前記チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルの1.6μLの総体積当たり、0.025mg~1mgの前記オリゴヌクレオチドを放出する、請求項61に記載の方法。
【請求項68】
前記水、水性媒体、又は体液中での前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスの再水和時に該マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分~約6分である、請求項61に記載の方法。
【請求項69】
前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスの前記100μmフレークは、水、水性媒体、又は体液中での再水和時に、1分未満のほぼ瞬間的な期間で前記オリゴヌクレオチドを放出する、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスは、該マトリックスの再水和時に、約15~35分の期間で、該マトリックスに担持されている950μg~1mgの前記オリゴヌクレオチドのうちの550μg~997.50μgの前記オリゴヌクレオチドを放出する、請求項61に記載の方法。
【請求項71】
前記モールドは、マイクロメートルスケールから長さ2mm×直径10mmまでの範囲の長さ及び直径寸法を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項72】
前記モールドは、長さ2mm×直径1~2mmの長さ及び直径寸法を有する従来のピペットチップであり、前記モールドでの成形によりマイクロシリンダーが形成される、請求項61に記載の方法。
【請求項73】
前記マイクロシリンダーは、水、水性媒体、体液、又は臓器中での浸漬/再水和後の1分以内に、110μgの前記オリゴヌクレオチドを放出する、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
治療用オリゴヌクレオチドの全身又は局所マイクロ送達のための方法であって、
それを必要とする対象に対して、スライス及び平坦化された乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持ポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスの100μmフレークを投与するステップを含み、
前記スライス及び平坦化された乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持ポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスは、該マトリックスの再水和時に該マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分~約30分未満である、方法。
【請求項75】
前記スライス及び平坦化された乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持ポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスの前記100μmフレークは、前記治療用オリゴヌクレオチドの局所マイクロ送達のための前記対象の解剖学的位置への前記100μmフレークの移植によって中枢神経系に投与される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記解剖学的位置は、脳又は脊椎である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記100μmフレークは、経腸投与又は非経口投与によって全身投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記100μmフレークを作製するステップを更に含み、
当該方法は、
(a)マイクロメートルスケールから長さ2mm×直径1mmまでの範囲の長さ及び直径寸法を有するモールドに、1.6μLの総体積当たり500~900μgのオリゴヌクレオチドの担持値を有する高濃度オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルをキャストして、均一なオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスを作製するステップと、
(b)前記均一なオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスを周囲温度で乾燥させて、該マトリックス中にオリゴヌクレオチドを40w/w%~80w/w%又は80w/w%超の量を含む、乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスを形成するステップと、
(c)前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスを100μmフレークにスライスするステップと、
(d)スライスされた前記フレークを1μm~100μmの厚さに平坦化するステップと、を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
前記高濃度オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルは、長さ2mm×直径1~2mmの寸法のマイクロシリンダーを形成するべく、従来のピペットチップにキャストされる、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記マイクロシリンダーは、水、水性媒体、体液、又は臓器中での浸漬/再水和後の1分以内に110μgの前記オリゴヌクレオチドを放出する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
20~50w/w%のオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの水溶液を同時超音波処理で60℃に加熱することによって、前記高濃度オリゴヌクレオチドを作製するステップを更に含む、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記オリゴヌクレオチドの水溶液が、25量体ポリdTを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記均一なオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスの乾燥は、72時間行われる、請求項78に記載の方法。
【請求項84】
前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスは、25量体ポリdTを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項85】
前記100μmフレークにおける前記オリゴヌクレオチドの密度が1.4~1.7gcm
-3である、請求項74に記載の方法。
【請求項86】
前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスにおける前記オリゴヌクレオチド対前記チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)の比は、60w/w%対40w/w%~80w/w%対20w/w%である、請求項74に記載の方法。
【請求項87】
前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスは、該マトリックスの再水和時に、約1分~約35分の期間で、前記ポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルの1.6μLの総体積当たり0.025mg~1mgの前記オリゴヌクレオチドを放出する、請求項74に記載の方法。
【請求項88】
前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスの再水和時に該マトリックスに担持されているオリゴヌクレオチドの半分の量を放出するのに要する時間(t
1/2)が約1分~6分である、請求項74に記載の方法。
【請求項89】
前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスの前記100μmフレークは、該フレークの再水和時に、1分未満のほぼ瞬間的な期間で、前記オリゴヌクレオチドを放出する、請求項74に記載の方法。
【請求項90】
前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスは、該マトリックスの再水和時に、約15~35分間の期間で、該マトリックスに担持されている950μg~1mgの前記オリゴヌクレオチドのうちの550μg~997.50μgの前記オリゴヌクレオチドを放出する、請求項87に記載の方法。
【請求項91】
前記乾燥したオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスは、前記チオール-マレイミドポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルの1.6μLの総体積当たり、500~900μgのオリゴヌクレオチドを含む、請求項74に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持(装填)ポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスに、及びPEGヒドロゲルベースマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチドに関する。本発明はまた、再水和時に約1分~約30分未満のオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)を有する、乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスに関する。乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、乾燥ヒドロゲルマトリックス中の40w/w%~80w/w%超又は80w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。本発明はまた、対象における特定の組織位置への治療有効量の高濃度のオリゴヌクレオチドの急速送達のための乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスで装填された送達のための送達デバイスに関する。本発明は更に、水、水性媒体、又は体液中のオリゴヌクレオチド固有溶解度を超える高濃度の乾燥ヒドロゲルマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチドを製剤化するための方法に関する。本発明はまた、提供される方法によって産生されたヒドロゲルマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチドに関する。本発明は更に、乾燥した速放性の高濃度治療ヒドロゲルマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチドの全身及び局所マイクロ送達のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチドの捕捉及び便利な製剤化を可能にする複数の製剤化技法があるが、マトリックス中の治療用オリゴヌクレオチド分子の最大濃度は、水性媒体又は関連代替物におけるオリゴヌクレオチド固有溶解度によって決定される。体内の複数の区画、組織、臓器、及び管腔は、安全上の理由によって、大きな体積のこれらのオリゴヌクレオチド含有マトリックスを収容しない場合がある。結果として、放出された治療用オリゴヌクレオチド分子の濃度は、治療レジメン中に所望の治療曝露に達しない場合がある。したがって、ヒドロゲルベースマトリックスにカプセル化されたオリゴヌクレオチドの堅牢で、信頼性が高く、再現性のある製剤、オリゴヌクレオチド製剤を含む組成物を製剤化するための改善された方法、及び治療有効量のカプセル化オリゴヌクレオチド製剤を投与するための方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、本発明は、高濃度のオリゴヌクレオチドを送達するための乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持ポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲルベースマトリックスであって、オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスが、再水和時に約1分~約30分未満のオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)を有する、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスを提供する。いくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、大きなオリゴヌクレオチド(例えば、少なくとも1,000bp長)を担持するために最適化され得る。
【0004】
別の態様では、本発明は、高濃度のオリゴヌクレオチドを送達するための乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスであって、オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスが、再水和時に約1分~約30分未満のオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)を有する、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを提供する。
【0005】
別の態様では、本発明は、対象における特定の組織位置への治療有効量の高濃度のオリゴヌクレオチドを送達するための送達デバイスであって、送達デバイスが、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス(例えば、チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス)で装填され、高濃度オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスが、約1分~30分未満の再水和期間中にオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)を有する、送達デバイスを提供する。
【0006】
一態様では、本発明は、水、水性媒体、又は体液中のオリゴヌクレオチド固有溶解度を超える高濃度の乾燥ヒドロゲルマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチドを製剤化するための方法であって、(a)マレイミド官能化ポリエチレングリコール(PEG-MAL)及びスルフヒドリル基を含有するポリエチレングリコール化合物(PEG-SH)の混合物を、pH4.0~4.8を有する緩衝液中のオリゴヌクレオチドの濃縮水溶液と反応させて、1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり500~900μgのオリゴヌクレオチドの装填値を含むオリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルを形成することと、(b)オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルをモールドにキャストして、均一オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを作製することと、(c)均一オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルベースマトリックスを周囲温度で乾燥させて、乾燥チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス中の40w/w%~80w/w%超又は80w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを形成することと、を含む、方法を提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は、治療用オリゴヌクレオチドの全身又は局所マイクロ送達のための方法であって、方法が、それを必要とする対象に、スライス及び平坦化された乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス(例えば、チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス)の100μmフレークを投与することを含み、オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスが、再水和時に約1分~約30分未満のオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)を有する、方法を提供する。
【0008】
一態様では、本発明は、水又は水性媒体中のオリゴヌクレオチド固有溶解度を超える量でヒドロゲルマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチドを製剤化するための方法であって、方法が、(a)マレイミド官能化ポリエチレングリコール(PEG-MAL)及びスルフヒドリル基を含有するポリエチレングリコール化合物(PEG-SH)の混合物を、pH4.0~4.8を有する緩衝液中のオリゴヌクレオチドの水溶液と一緒に反応させて、1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり400μgのオリゴヌクレオチドの装填値を含む高濃度オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルを形成することと、(b)高濃度オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルをモールドにキャストして、均一高濃度オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを作製することと、を含む、方法を提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、pH4.0~4.8を有する緩衝液中のオリゴヌクレオチドの水溶液と一緒にマレイミド官能化ポリエチレングリコール(PEG-MAL)及びスルフヒドリル基を含有するポリエチレングリコール化合物(PEG-SH)の反応混合物を含む乾燥ヒドロゲルマトリックスカプセル化高濃度オリゴヌクレオチドの製剤であって、高濃度オリゴヌクレオチドが、1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり400μgのオリゴヌクレオチドの装填値を含む、製剤を提供する。
【0010】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、例、及び図から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び具体例は、本発明の実施形態を示しながら、本発明の趣旨及び範囲内の様々な変更及び修飾が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、例示としてのみ与えられることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】ヒドロゲル形成のためのクリック化学、及び両方の反応がDNA官能基に直交することを示す。
図1A~1Bは、試験される代表的な化学:歪み促進アジドアルキン環化付加(SPAAC)(
図1A)及びチオール-マレイミド(チオール-マイケル付加)(
図1B)を示す。反応は、チオレートアニオン、k約10
6M
-1s
-1に依存する。両方の反応は、DNA官能基に直交する(
図1C)。
【
図1B】ヒドロゲル形成のためのクリック化学、及び両方の反応がDNA官能基に直交することを示す。
図1A~1Bは、試験される代表的な化学:歪み促進アジドアルキン環化付加(SPAAC)(
図1A)及びチオール-マレイミド(チオール-マイケル付加)(
図1B)を示す。反応は、チオレートアニオン、k約10
6M
-1s
-1に依存する。両方の反応は、DNA官能基に直交する(
図1C)。
【
図1C】ヒドロゲル形成のためのクリック化学、及び両方の反応がDNA官能基に直交することを示す。
図1A~1Bは、試験される代表的な化学:歪み促進アジドアルキン環化付加(SPAAC)(
図1A)及びチオール-マレイミド(チオール-マイケル付加)(
図1B)を示す。反応は、チオレートアニオン、k約10
6M
-1s
-1に依存する。両方の反応は、DNA官能基に直交する(
図1C)。
【
図2A】チオール-マイケルヒドロゲルがpH依存性反応速度を有することを示す。
図2Aは、ゲル時間対pHを示す。緩衝液は、0.1MのヒスチジンHCl(様々なpH)であった。ゲル点は、ピペッティングが非実用的になる時間として測定された。
【
図2B】チオール-マイケルヒドロゲルがpH依存性反応速度を有することを示す。
図2Bは、pH4.7で、ゲルが28秒で形成されることを示す。これは、成分を完全に混合し、ヒドロゲルをモールドにキャストして均一ネットワークを作製するのに十分な時間である。
【
図2C】チオール-マイケルヒドロゲルがpH依存性反応速度を有することを示す。
図2Cは、pH7.4で、ゲルが混合すると瞬時に形成されることを示す。ヒドロゲルは、ピペットチップにはめ込まれている。
【
図3A】ヒドロゲル小型化を示す。寸法制約は、直径1mm、長さ1~2mm、及び0.8~1.6μLの体積のヒドロゲル混合物であった。
【
図3B】ヒドロゲル小型化を示す。寸法制約は、直径1mm、長さ1~2mm、及び0.8~1.6μLの体積のヒドロゲル混合物であった。
【
図3C】1.6μLのヒドロゲルが2mmの長さ及び約1mmの平均直径を有するピペットチップにおいてキャストされたことを示す。
【
図4】動態監視によるDNA放出研究を示す。1.6μLのヒドロゲルは、ピペットチップにおいてキャストし、10分間硬化させた後、取り出し、室温でエンドオーバーエンド混合しながら1mLの水に浸漬した。上清中のDNA濃度は、A
260(260nmの波長での吸収)で監視した。
【
図5】オリゴヌクレオチド放出動態を示す。DNAは、t
1/2約1分でヒドロゲルから急速に放出された。定量的放出は、20分以内に測定した。放出DNA質量は、装填DNA質量とよく相関する。A
260、分=A
260、24時。
【
図6A】装填オリゴヌクレオチド質量がオリゴヌクレオチド放出を決定することを示す。
【
図6B】装填オリゴヌクレオチド質量がオリゴヌクレオチド放出を決定することを示す。
【
図7A】放出されたDNAの逆相高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析を示す。
図7Aは、装填及び放出DNAクロマトグラムが同一であることを示す。PEGと反応したDNAは、DNAがヒドロゲルネットワークに共有結合しているため、放出される可能性が低い。
【
図7B】放出されたDNAの逆相高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析を示す。
図7Bは、ヒドロゲルカプセル化DNAの溶媒勾配HPLCを示す。カラムは、Waters XBridge(商標)C18 3.5μmであった。溶媒Aは、水中の0.1Mの酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)であり、溶媒Bは、80/20%(H
2O/アセトニトリル)中の0.1MのTEAAであった。溶媒勾配HPLCは、60℃の温度及び1mL/分の流量で行った。
【
図8】高度濃縮DNAのヒドロゲル装填及び放出を示す。ヒドロゲル製剤10μL前駆体溶液は、pH4.0緩衝液中の7μLの濃縮DNA、2μLのPEG-MAL溶液、及び1μLのPEG-SH溶液を含有した。以前のように、1.6μLのヒドロゲルが形成された。0.52ngのDNAがヒドロゲル混合物に装填され、DNAの78%が放出された。
【
図9】装填オリゴヌクレオチド質量を増加させる乾燥ヒドロゲルの調製を示す。以前に作製されたヒドロゲルは、85質量%の水(6重量%のPEG及び9重量%のDNA)を含有した。
図9は、したがって、ヒドロゲルを6.7倍大きくし(10.7μL)、乾燥させて、同じ質量(及びわずかに小さい体積)のDNA装填ポリマーネットワークをもたらすことができることを示す。DNA密度は、1.4~1.7g cm
-3であり、PEG密度は、1.1g cm
-3であった。
【
図10A】乾燥ヒドロゲルを実質的により多くのDNAで装填することができ、放出が再水和期間中に遅延されることを示す。ヒドロゲル再水和中の遅延された、ほぼ線形の放出相(目測で約10分)が実証された。t
1/2は、水和ヒドロゲルについての1分と比較して、6分であった。905mgの装填されたDNAは、105%の放出を示した。
【
図10B】乾燥ヒドロゲルを実質的により多くのDNAで装填することができ、放出が再水和期間中に遅延されることを示す。ヒドロゲル再水和中の遅延された、ほぼ線形の放出相(目測で約10分)が実証された。t
1/2は、水和ヒドロゲルについての1分と比較して、6分であった。905mgの装填されたDNAは、105%の放出を示した。
【
図11A】乾燥及び切断オリゴヌクレオチドヒドロゲルフレーク並びにそれらの放出動態を示す。
図11Aの乾燥オリゴヌクレオチドヒドロゲルが平坦化され、小さなフレークに切断された。大きな表面積は、DNAカーゴの急速バースト放出につながる。
【
図11B】乾燥及び切断オリゴヌクレオチドヒドロゲルフレーク並びにそれらの放出動態を示す。
図11Bは、大きな表面積がヒドロゲルマトリックスからのDNAカーゴの急速バースト放出につながることを示す(
図11B)。
【
図12A】DNA放出速度の比較を示す。オリゴヌクレオチドの「従来の」溶解度を制限する固定化(黒色の点「ヒドロゲル」)及び実施例4において現在記載されるアプローチ(格子柄の点:「乾燥」ヒドロゲル、灰色の点:乾燥/切断ヒドロゲル)が示される。
【
図12B】DNA放出速度の比較を示す。オリゴヌクレオチドの「従来の」溶解度を制限する固定化(黒色の点「ヒドロゲル」)及び実施例4において現在記載されるアプローチ(格子柄の点:「乾燥」ヒドロゲル、灰色の点:乾燥/切断ヒドロゲル)が示される。
【
図13】実施例5に記載される、異なるトランスフェクションプロトコルについてのHEK293細胞におけるeGFPプラスミドトランスフェクション速度を示す。
【
図14】実施例5に記載されるプロトコルに基づいて、0日目~7日目にμgでの放出されるeGFPプラスミドDNAの速度を示す。
【
図15】実施例5に記載されるプロトコルに従って、2日後に2つの最適化されたヒドロゲル製剤から放出されるeGFPプラスミドDNAのμgを示す。
【
図16】実施例5に記載される試験されたモノマーゲル及び重合条件の要約を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記載される。しかしながら、本開示は、本明細書に記載される及び/又は示される特定の製品、方法、条件、又はパラメータに限定されず、本明細書で使用される用語は、例としてのみ特定の実施形態を説明するためのものであり、特許請求される開示の限定を意図するものではないことが当業者によって理解されるであろう。他の事例では、本発明を不明瞭にしないために、周知の方法、手順、及び成分は、詳細には説明されていない。
【0013】
ヒドロゲルマトリックス中の治療用オリゴヌクレオチド分子の最大濃度は、水、水性媒体、又は関連代替物におけるその固有溶解度によって決定される。巨視的ヒドロゲルのサイズは、通常、ミリメートルからセンチメートル台である。そのようなヒドロゲルは、外科的に体内に移植されるか、又は経上皮薬物送達のために体と接触して配置される。体内の多くの区画、組織、臓器、管腔は、安全上の理由によって、大きな体積のこれらのオリゴヌクレオチド含有マトリックスを収容しない場合がある。結果として、投与されたオリゴヌクレオチド含有マトリックスからの放出された治療用オリゴヌクレオチド分子の濃度は、治療レジメン中に所望の治療曝露に達しない場合がある。
【0014】
従来のオリゴヌクレオチド含有マトリックスの前述の制限を解決するために、本発明は、ポリエチレングリコール(PEG)ヒドロゲル中のオリゴヌクレオチドの堅牢で、信頼性が高く、再現性のある製剤化のための方法論を提供する。本明細書で提供されるアプローチは、ヒドロゲルベースマトリックスを使用して、水又は水性媒体中のオリゴヌクレオチドの固有溶解度を劇的に超える量で多様なオリゴヌクレオチドをカプセル化する。提供される方法は、安定した、十分に特徴付けられた、超濃縮された、すなわち、乾燥ヒドロゲルマトリックス中の40w/w%~80w/w%超又は80w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む高濃度のオリゴヌクレオチドを有する、乾燥ヒドロゲル溶液、乾燥及び加工ヒドロゲル、並びに/又はインサイチュ形成ヒドロゲルによって捕捉される対象のオリゴヌクレオチドを含有するコロイド系の調製に依存する。乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持(装填)PEGヒドロゲルベースマトリックス(例えば、チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス)の得られる製剤は、脳及び脊椎を含む、CNSによって例示されるように、特に外部介入に特に感受性である解剖学的位置への、治療用オリゴヌクレオチドの全身及び局所(マイクロ)送達の両方に好適である。
【0015】
本明細書で別段定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。更に、文脈によって別段要求されない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
【0016】
上記及び本開示を通して採用される場合、以下の用語及び略語は、別段に指示されない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0017】
本開示では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数の参照を含み、特定の数値への言及は、文脈が別段明確に指示しない限り、少なくともその特定の値を含む。よって、例えば、「a compound(化合物)」への言及は、そのような化合物及び当業者に知られているその等価物などのうちの1つ以上への言及である。「複数の」という用語は、本明細書で使用される場合、2つ以上を意味する。ある範囲の値が表されるとき、別の実施形態は、一方の特定の値から、及び/又は他方の特定の値までを含む。同様に、値が、先行詞「約」の使用によって、近似値として表されるとき、特定の値は別の実施形態を形成することが理解される。全ての範囲は、包括的であり、組み合わせ可能である。
【0018】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、ポリヌクレオチド、又はデオキシリボ核酸(DNA)などのオリゴヌクレオチド、及び適切な場合、リボ核酸(RNA)若しくはその模倣物を指す。この用語はまた、等価物として、ヌクレオチド類似体から作製されたRNA又はDNAのいずれかの類似体、並びに、記載されている実施形態に適用可能であるように、一本鎖(センス又はアンチセンス)及び二本鎖ポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。この用語は、天然に存在する核酸塩基、糖、及び共有結合ヌクレオシド間(バックボーン)結合からなるオリゴヌクレオチド、並びに同様に機能する、天然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。そのような修飾又は置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば、増強された細胞取り込み、核酸標的についての増強された親和性、及びヌクレアーゼの存在下での増加した安定性などの、望ましい特性のために、オリゴヌクレオチドの天然形態の代わりに使用され得る。
【0019】
本開示を通して、様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性及び簡潔性のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示したとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示したとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0020】
数値範囲が本明細書に示されるときはいつでも、それは、示される範囲内の任意の引用された数値(分数又は整数)を含むことが意味される。第1の示された数と第2の示された数との「間の範囲である/範囲」、及び第1の示された数「から」第2の示された数「までの範囲である/範囲」は、本明細書で交換可能に使用され、第1及び第2の示された数、並びにそれらの間の全ての分数及び整数を含むことが意味される。
【0021】
値が、先行詞「約」の使用によって、近似値として表されるとき、特定の値は別の実施形態を形成することが理解される。全ての範囲は、包括的であり、組み合わせ可能である。一実施形態では、「約」という用語は、示された数又は数の範囲から0.1~5%の逸脱を指す。
【0022】
「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内を意味し、これは、どのように値が測定又は決定されるか、すなわち、測定システムの制限に部分的に依存するであろう。例えば、「約」は、当該技術分野における実施毎に、1以内の又は1を超える標準偏差を意味することができる。あるいは、量、時間的期間、濃度などのような測定可能な値を指すとき、指定された値から±20%又は±10%、より具体的には±5%、更により具体的には±1%、更により好ましくは±0.1%の変動を包含し得、そのような変動は、開示された方法を行うのに適切である。別の実施形態では、「約」という用語は、示された数又は数の範囲から1~10%の逸脱を指す。別の実施形態では、「約」という用語は、示された数又は数の範囲から20%までの逸脱を指す。一実施形態では、「約」という用語は、示された数又は数の範囲から±10%の逸脱を指す。別の実施形態では、「約」という用語は、示された数又は数の範囲から±5%の逸脱を指す。
【0023】
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、本発明による薬学的組成物による予防的治療を含む治療が提供される動物、例えば、状態又はその後遺症の療法を必要とする、又はその影響を受けやすいヒトを含むヒトを指す。「対象」という用語は、全ての点で正常である個体を除外しない。本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を指す。「非ヒト動物」及び「非ヒト哺乳動物」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(例えば、マウス又はラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、並びに非哺乳動物、例えば、爬虫類、両生類、ニワトリ、及びシチメンチョウを含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、「成分」、「組成物」、「化合物の組成物」、「化合物」、「薬物」、「薬理学的に活性な薬剤」、「活性剤」、「活性成分」、「治療剤」、「療法」、「治療」、又は「医薬品」という用語は、本明細書で交換可能に、対象(ヒト又は動物)に投与されるとき、局所及び/又は全身作用によって所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を誘導する、化合物(複数可)又は物質の組成物を指すために使用される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「療法」という用語(及びそれらの異なる形態)は、予防的(preventative、例えば、prophylactic)、治癒的、又は緩和的治療を含む。本明細書で使用される場合、「治療すること」という用語は、状態、疾患、又は障害の少なくとも1つの有害又は負の効果又は症状を軽減又は低減することを含む。
【0026】
よって、本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与と互換性のある、任意及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤などを含むことが意図される。好適な担体は、当該分野における標準的な参考文献であるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。そのような担体又は希釈剤の例としては、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソーム及び非水性ビヒクル、例えば、固定油も使用され得る。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性化合物と非適合性である限りを除き、組成物におけるそれらの使用が企図される。補助活性化合物もまた組成物中に組み込むことができる。
【0027】
一実施形態では、本明細書に記載される治療剤(複数可)を含有する薬学的組成物は、一実施形態では、限定なしに、経口、非経口、経鼻、経粘膜、皮下、経皮、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、腹腔内、心室内、頭蓋内、膣内、又は腫瘍内などの、当業者に知られている任意の方法によって対象に投与することができる。
【0028】
担体は、上記のように、従来使用されるもののいずれであってもよく、溶解度及び本発明の化合物との反応性の欠如などの化学物理学的考慮事項によって、並びに投与経路によってのみ限定される。担体の選択は、薬学的組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。好適な担体のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、及びメチルセルロースが挙げられる。製剤は、加えて、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油などの潤滑剤;湿潤剤、界面活性剤、乳化剤、及び懸濁剤;メチル-及びプロピルヒドロキシ安息香酸塩などの保存剤;甘味剤;香味剤、着色剤、緩衝剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩)、崩壊剤、保湿剤、抗菌剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)、及び塩化ナトリウムなどの張力調節剤を含むことができる。他の薬学的担体は、無菌液体、例えば、水、及び石油、動物、植物、又は合成由来のものを含む、油、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒であり得る。一実施形態では、薬学的組成物が静脈内又は腫瘍内投与される場合、水、好ましくは、静菌水は、担体である。生理食塩液並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液はまた、特に注射可能な溶液のための、液体担体として使用することができる。
【0029】
注射可能な使用に好適な薬学的組成物は、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び無菌注射可能溶液又は分散液の即時調製のための無菌粉末を含み得る。静脈内投与について、好適な担体としては、限定なしに、生理学的生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany,N.J.)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。組成物は、無菌であるべきであり、容易な注射可能性が存在する程度まで流動性であるべきである。製造及び保管の条件下で安定であり、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能組成物の長期吸収は、組成物中に、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0030】
無菌注射可能溶液は、活性化合物を必要な量で適切な溶媒中に、必要に応じて、上記に列挙された成分のうちの1つ又は組み合わせとともに組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散液媒体及び上記に列挙されたものからの必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射可能溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製の方法は、以前に無菌濾過されたその溶液から活性成分の粉末に加えて任意の追加の所望の成分をもたらす真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0031】
本明細書に記載される組成物及び製剤は、単独で、又は他の生物学的活性剤とともに投与され得る。投与は、全身又は局所、例えば、肝臓への門脈送達を通したものであり得る。加えて、脳室内及び髄腔内注射を含む、任意の好適な経路によって、組成物を中枢神経系に投与することが有利であり得る。心室内注射は、リザーバー(例えば、オンマヤリザーバー)に取り付けられた心室内カテーテルによって促進され得る。肺投与はまた、吸入器又はネブライザーの使用、及びエアロゾル化剤を含む製剤の使用によって採用され得る。また、治療を必要とする領域に、治療用オリゴヌクレオチドを局所投与することが望ましい場合があり、これは、例えば、限定ではなく、手術中の局所注入、局所塗布、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、又はインプラントによって達成され得る。
【0032】
更に、「薬学的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は合理的な利益/リスク比に相応の他の問題の合併なしでのヒト及び動物の組織との接触に好適である、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。「薬学的に許容される」という用語はまた、動物及び、より具体的には、ヒトにおける使用について、連邦若しくは州政府の規制機関によって承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般に認識されている薬局方において列挙されている担体を含む。
【0033】
一態様では、本発明は、高濃度のオリゴヌクレオチドを送達するための乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持(装填)チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスであって、オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスが、再水和時に約1分~約30分未満のオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)を有する、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを提供する。提供される乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスの一実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の40w/w%~80w/w%超又は80w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の40w/w%~90w/w超%又は90w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の40w/w%~95w/w%超又は95w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の50w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の60w/w%又は60w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。一実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の60w/w%又は60w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の70w/w%又は70w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の80w/w%又は80w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスの特定の実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の80w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスのいくつかの実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の90w/w%又は90w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスの一実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の95w/w%のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の95w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。
【0034】
一実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、脳脊髄液(CSF)、血液、リンパ液、滑液、又は房水からなる群から選択される水、水性媒体、又は体液中での再水和時に約1分~約20分未満のオリゴヌクレオチドのt1/2を有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、再水和時に約1分~約10分未満のオリゴヌクレオチドのt1/2を有する。いくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、再水和時に約1分~約6分未満のオリゴヌクレオチドのt1/2を有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、再水和時に約1分のオリゴヌクレオチドのt1/2を有する。
【0035】
別の態様では、本発明は、高濃度のオリゴヌクレオチドを送達するための乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスであって、オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスが、再水和時に約1分~約30分未満のオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)を有する、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスを提供する。いくつかのそのような実施形態では、PEGヒドロゲルベースマトリックスは、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸-ジアクリレート(PEG-PLA-DA)ヒドロゲルである。いくつかのそのような実施形態では、PEG-PLA-DAヒドロゲルは、光重合される。いくつかのそのような実施形態では、PEGヒドロゲルベースマトリックスは、PEG-ジアクリレート(PEG-DA)ヒドロゲルである。いくつかのそのような実施形態では、PEG-DAヒドロゲルは、光重合される。いくつかのそのような実施形態では、PEGヒドロゲルベースマトリックスは、メトキシ-PEG-アクリレート(mPEG-A)を含む。いくつかのそのような実施形態では、mPEG-Aは、光重合される。いくつかのそのような実施形態では、PEGヒドロゲルベースマトリックスは、本開示を通して説明されるように、チオール-マイケルクリック化学で形成されたヒドロゲルである。
【0036】
提供される乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスの一実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の40w/w%~80w/w%超又は80w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の40w/w%~90w/w%超又は90w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の40w/w%~95w/w%超又は95w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の50w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の60w/w%又は60w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。一実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の60w/w%又は60w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の70w/w%又は70w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の80w/w%又は80w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスの特定の実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の80w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスのいくつかの実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の90w/w%又は90w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスの一実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の95w/w%のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲル中の95w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。
【0037】
一実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、脳脊髄液(CSF)、血液、リンパ液、滑液、又は房水からなる群から選択される水、水性媒体、又は体液中での再水和時に約1分~約20分未満のオリゴヌクレオチドのt1/2を有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、再水和時に約1分~約10分未満のオリゴヌクレオチドのt1/2を有する。いくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、再水和時に約1分~約6分未満のオリゴヌクレオチドのt1/2を有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、再水和時に約1分のオリゴヌクレオチドのt1/2を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、大きなオリゴヌクレオチド(例えば、少なくとも1,000bp長)を担持するために最適化され得る。そのような実施形態では、大きなオリゴヌクレオチドは、少なくとも1,000bp、少なくとも1.5kbp、少なくとも2.0kbp、少なくとも2.5kbp、少なくとも3.0kbp、少なくとも3.5kbp、少なくとも4.0kbp、少なくとも4.5kbp、少なくとも5.0kbp、少なくとも5.4kbp、少なくとも5.5kbp、少なくとも6.0kbpの長さ、又はそれ以上であり得る。大きなオリゴヌクレオチドは、線状又は環状であり得る。大きなオリゴヌクレオチドは、プラスミドなどの、発現ベクターであり得る。そのような実施形態は、実施例5及び表2を参照して更に理解され得る。いくつかのそのような実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸-ジアクリレート(PEG-PLA-DA)ヒドロゲルである。いくつかのそのような実施形態では、PEG-PLA-DAヒドロゲルは、例えば、385nmの光、約25mW cm-2フラックスで約5分間、0.2%の光開始剤で光重合される。いくつかのそのような実施形態では、ヒドロゲルは、PEG-ジアクリレート(PEG-DA)ヒドロゲルである。PEG-DAヒドロゲルは、例えば、385nmの光、約25mW cm-2フラックスで約5分間、0.2%の光開始剤で光重合される。いくつかのそのような実施形態では、PEGヒドロゲルベースマトリックスは、メトキシ-PEG-アクリレート(mPEG-A)を含む。いくつかのそのような実施形態では、mPEG-Aは、例えば、385nmの光、約25mW cm-2フラックスで約5分間、0.2%の光開始剤で光重合される。いくつかのそのような実施形態では、ヒドロゲルは、本開示を通して記載されるように、チオール-マイケルクリック化学で形成され、例えば、チオール-マイケルヒドロゲルは、約4.0のpHの溶液への約10分の曝露によって重合される。いくつかのそのような実施形態では、オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、スクロースを含む。いくつかのそのような実施形態では、スクロース対DNA比(質量)は、約160:1~約500:1の範囲である。
【0039】
様々な実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス(例えば、チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス)は、20μmの平均長さを有する。いくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、15μmの平均長さを有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、10μmの平均長さを有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、1μm~10μmの平均長さを有する。一実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、1μm~5μmの平均長さを有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、1μm~2μmの平均長さを有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、1μmの平均長さを有する。
【0040】
乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス(例えば、チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス)のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、25量体ポリdTを含む。乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスの様々な実施形態では、オリゴヌクレオチドの密度は、1.4~1.7g cm-3であり、PEG密度は、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスの10.6μLの体積で1.1g-3である。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、1分未満~15分の再水和期間中に1.6μLのPEGヒドロゲルの総体積当たり0.025mg~1mgのオリゴヌクレオチドを放出する。いくつかの実施形態では、乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、厚さが1μm~100μmのスライス及び平坦化されたフレークを含む。本明細書で使用される場合、「100μmフレーク」は、厚さが100μmである。乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスの一実施形態では、スライス及び平坦化された1μm~100μmフレークは、1分未満~約10分未満の再水和期間中のほぼ瞬間的な放出において約1mgの装填オリゴヌクレオチド質量のうちの0.1mg~0.4mgを放出する。乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスのいくつかの実施形態では、スライス及び平坦化された100(又はより小さい厚さの)μmフレークは、約15~約35分の再水和期間中に約1mgの装填オリゴヌクレオチド質量のうちの>95%のオリゴヌクレオチドを放出する。一実施形態では、厚さ1mm~2mmを有する乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、切断/スライスされ、更に約100μm以下の厚さに平坦化される。乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスの様々な実施形態では、スライス及び平坦化された100μm(又はより小さい)フレークは、約15~約35分の再水和期間中に約1mgの装填オリゴヌクレオチド質量のうちの100%のオリゴヌクレオチドを放出する。いくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、長さ1mm×幅1mm×高さ1mmの体積を有する送達デバイスに装填可能である。
【0041】
一実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、pH4.0~4.8を有する緩衝液中のオリゴヌクレオチドの水溶液と一緒にマレイミド官能化ポリエチレングリコール(PEG-MAL)及びスルフヒドリル基を含有するポリエチレングリコール化合物(PEG-SH)の反応混合物を含み、オリゴヌクレオチドは、1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり500~900マイクログラムのオリゴヌクレオチドの装填値を含む。いくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、モールドにおいてキャストされる。
【0042】
特定の実施形態では、モールドキャストされた乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、マイクロミリメートル(μm)スケールから長さ2mm×直径1~2mmまでの長さ及び直径寸法を有する。モールドキャストされた乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスの特定の実施形態では、モールドは、従来のピペットチップであり、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、長さ2mm×直径1mm寸法のマイクロシリンダーを含む。
【0043】
別の態様では、本発明は、対象における特定の組織位置への治療有効量の高濃度のオリゴヌクレオチドを送達するための送達デバイスであって、送達デバイスが、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス(例えば、チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス)で装填され、高濃度オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスが、約1分~30分未満の再水和期間中にオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)を有する、送達デバイスを提供する。一実施形態では、送達デバイスは、長さ1mm×幅1mm×高さ1mmの体積を有する。送達デバイスのいくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス中の高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲルベースマトリックス中の40w/w%~80w/w%超又は80w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス中の高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲルベースマトリックス中の50w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。一実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス中の高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲルベースマトリックス中の60w/w%又は60w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。送達デバイスのいくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス中の高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲルベースマトリックス中の70w/w%又は70w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。送達デバイスの様々な実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス中の高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲルベースマトリックス中の80w/w%又は80w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。送達デバイスの特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス中の高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲルベースマトリックス中の90w/w%又は90w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。送達デバイスの一実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス中の高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲルベースマトリックス中の95w/w%のオリゴヌクレオチドを含む。送達デバイスのいくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス中の高濃度のオリゴヌクレオチドは、乾燥ヒドロゲルベースマトリックス中の95w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む。
【0044】
送達デバイスの特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス(例えば、チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス)は、再水和時に約1分~約20分未満のオリゴヌクレオチドのt1/2を有する。いくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、再水和時に約1分~約10分未満のオリゴヌクレオチドのt1/2を有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、再水和時に約1分~6分未満のオリゴヌクレオチドのt1/2を有する。様々な実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、再水和時に約1分のオリゴヌクレオチドのt1/2を有する。
【0045】
送達デバイスのいくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス(例えば、チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス)は、20μmの平均長さを有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、15μmの平均長さを有する。様々な実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、10μmの平均長さを有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、1μm~10μmの平均長さを有する。送達デバイスのいくつかの実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、1μm~5μmの平均長さを有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、1μm~2μmの平均長さを有する。特定の実施形態では、乾燥した速放性のオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、1μmの平均長さを有する。
【0046】
一態様では、本発明は、水、水性媒体、又は体液中のオリゴヌクレオチド固有溶解度を超える高濃度の乾燥した速放性の高濃度ヒドロゲルマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチドを製剤化するための方法であって、(a)マレイミド官能化ポリエチレングリコール(PEG-MAL)及びスルフヒドリル基を含有するポリエチレングリコール化合物(PEG-SH)の混合物を、pH4.0~4.8を有する緩衝液中のオリゴヌクレオチドの濃縮水溶液と反応させて、1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり500~900μgのオリゴヌクレオチドの装填値を含むオリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルを形成することと、(b)オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルをモールドにキャストして、均一オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを作製することと、(c)均一オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルベースマトリックスを周囲温度で乾燥させて、乾燥チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス中の40w/w%~80w/w%超又は80w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを形成することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、周囲温度での均一オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルベースマトリックスの乾燥は、72時間行われる。一実施形態では、本方法は、オリゴヌクレオチドの水溶液を同時超音波処理で60℃に加熱することによって、オリゴヌクレオチドの濃縮水溶液を調製することを更に含む。提供される方法のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの水溶液は、25量体ポリdTを含む。特定の実施形態では、本方法は、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを100μmフレークにスライスすることを更に含む。
【0047】
上述の方法のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの密度は、1.4~1.7g cm-3であり、PEG密度は、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスの10.6μLの体積で1.1g-3である。方法の特定の実施形態では、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、約1分~約15分の再水和期間中に1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり0.025mg~1mgのオリゴヌクレオチドを放出する。方法の特定の実施形態では、水、水性媒体、又は体液中の乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスからオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)は、再水和期間中に約1分~6分である。提供される方法のいくつかの実施形態では、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスの100μmフレークは、水、水性媒体、又は体液中での再水和中に1分未満のほぼ瞬間的な放出においてオリゴヌクレオチドを放出する。方法の一実施形態では、950μg~1mgの装填オリゴヌクレオチド質量のうちの550μg~997.50μgのオリゴヌクレオチドは、約15~35分の再水和期間中に放出される。いくつかの実施形態では、モールドは、長さ2mm×直径10mmまでのマイクロミリメートル(μm)スケールでの長さ及び直径寸法を有する。特定の実施形態では、モールドは、長さ2mm×直径1~2mmの長さ及び直径寸法を有する従来のピペットチップであり、キャスティングは、マイクロシリンダーを形成する。特定の実施形態では、マイクロシリンダーは、水、水性媒体、又は体液若しくは臓器中での浸漬/再水和後1分以内に110μgのオリゴヌクレオチドを放出する。
【0048】
別の態様では、本発明は、治療用オリゴヌクレオチドの全身又は局所マイクロ送達のための方法であって、方法が、それを必要とする対象に、スライス及び平坦化された乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス(例えば、チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス)の100μmフレークを投与することを含み、オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスが、再水和時に約1分~約30分未満のオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)を有する、方法を提供する。提供される方法のいくつかの実施形態では、スライス及び平坦化された乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスの100μmフレークは、治療用オリゴヌクレオチドの局所マイクロ送達のための対象の解剖学的位置への100μmフレークの移植によって中枢神経系に投与される。特定の実施形態では、解剖学的位置は、脳又は脊椎である。特定の実施形態では、100μmフレークは、経腸又は非経口投与によって全身投与される。様々な実施形態では、本方法は、100μmフレークを調製することを更に含み、本方法は、(a)マイクロミリメートル(μm)スケールから長さ2mm×直径1mmまでの長さ及び直径寸法を有するモールドに、1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり500~900μgのオリゴヌクレオチドの装填値を含む高濃度オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルをキャストして、均一オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを作製することと、(b)均一オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルベースマトリックスを周囲温度で乾燥させて、乾燥チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス中の40w/w%~95w/w%超のオリゴヌクレオチドを含む乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを形成することと、(c)乾燥チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを100μmフレークにスライスすることと、(d)フレークを1μm~100μmの厚さに平坦化することと、を含む。特定の実施形態では、乾燥高濃度オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルのスライス及び平坦化されたフレークの再水和は、本明細書で論じられるように、解剖学的位置への投与後、又は経腸若しくは非経口投与後、1分未満~最大約35分での、治療用オリゴヌクレオチドの全身又は局所マイクロ送達時又は後に起こり、再水和は、フレークが、これらに限定されないが、脳又は脊椎を含む、対象の臓器などの、解剖学的位置への全身又は局所マイクロ送達によって投与又は送達される、脳脊髄液(CSF)、血液、リンパ液、滑液、又は房水からなる群から選択される血液又は体液中で起こる。
【0049】
提供される方法のいくつかの実施形態では、高濃度オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルは、長さ2mm×直径1~2mm寸法のマイクロシリンダーを形成するように従来のピペットチップにキャストされる。特定の実施形態では、マイクロシリンダーは、水、水性媒体、又は体液若しくは臓器中での浸漬/再水和後1分以内に110μgのオリゴヌクレオチドを放出する。いくつかの実施形態では、周囲温度での均一オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルベースマトリックスの乾燥は、72時間である。様々な実施形態では、本方法は、20~50w/w%(又は50w/w%超)のオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの水溶液を同時超音波処理で60℃に加熱することによって、高濃度オリゴヌクレオチドを作製することを更に含む。提供される方法の実施形態では、オリゴヌクレオチドの水溶液は、25量体ポリdTを含む。提供される方法のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの乾燥水溶液は、25量体ポリdTを含む。特定の実施形態では、100μmフレークは、1.4~1.7g cm-3のオリゴヌクレオチドの密度を有する。特定の実施形態では、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、60w/w%対40w/w%比~80w/w%対20w/w%比のオリゴヌクレオチド対チオール-マレイミドPEGを含む。いくつかの実施形態では、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、60w/w%対40w/w%比~95w/w%対5w/w%比のオリゴヌクレオチド対チオール-マレイミドPEGを含む。提供される方法の特定の実施形態では、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、再水和中に約1分~約35分で1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり0.025mg~1mgのオリゴヌクレオチドを放出する。提供される方法のいくつかの実施形態では、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスからオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)は、再水和期間中に約1分~6分である。一実施形態では、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスの100μmフレークは、再水和期間中に1分未満のほぼ瞬間的な放出でオリゴヌクレオチドを放出する。特定の実施形態では、950μg~1mgの装填オリゴヌクレオチド質量のうちの550μg~997.50μgのオリゴヌクレオチドは、約15~35分の再水和期間中に放出される。いくつかの実施形態では、乾燥オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり500~900μgのオリゴヌクレオチドを含む。
【0050】
一態様では、本発明は、水又は水性媒体中のオリゴヌクレオチド固有溶解度を超える量でヒドロゲルマトリックスカプセル化オリゴヌクレオチドを製剤化するための方法を提供し、本方法は、(a)マレイミド官能化ポリエチレングリコール(PEG-MAL)及びスルフヒドリル基を含有するポリエチレングリコール化合物(PEG-SH)の混合物を、pH4.0~4.8を有する緩衝液中のオリゴヌクレオチドの水溶液と一緒に反応させて、1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり400μgのオリゴヌクレオチドの装填値を含む超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルを形成することと、(b)超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルをモールドにキャストして、均一超濃縮オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを作製することと、を含む。一実施形態では、本方法は、オリゴヌクレオチドの水溶液を同時超音波処理で60℃に加熱することによって、オリゴヌクレオチドの超濃縮水溶液を調製することを更に含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの水溶液は、25量体ポリdTを含む。特定の実施形態では、本方法は、均一な超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルベースマトリックスを周囲温度で72時間乾燥させて、60%対40%比のオリゴヌクレオチド対チオール-マレイミドPEGを含む乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを形成することを更に含む。一実施形態では、本方法は、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスを100μmフレークにスライスすることを更に含む。提供される方法のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの密度は、1.4~1.7g cm-3である。一実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルは、4.0~4.8のpHを有する緩衝液中の、オリゴヌクレオチド、例えば、DNA、スルフヒドリル基を含有するポリエチレングリコール化合物(PEG-SH)、及びマレイミド官能化ポリエチレングリコール(PEG-MAL)を含む。超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルの特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド対PEG-SH対PEG-MALの比は、7:1:2である。特定の実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲル溶液は、4.0~4.8のpHを有する緩衝液中の、7μlのオリゴヌクレオチド、例えば、DNA、1μlのPEG-SH、及び2μlのPEG-MAを10μLの総体積で含む。特定の実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルは、シリンダー又はピペットチップで小型化され、その各々は、直径1mm、長さ1~2mm、及び0.8~1.6μLの体積の寸法を有する。特定の実施形態では、1.6μLの超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルは、2mmの長さを有する(約1mmの平均直径を有する)ピペットチップにおいてキャストされて、円筒形状を有する超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルペレット(本明細書では「ヒドロゲルペレット」とも呼ばれる)が形成され、約10分間硬化させた後、ピペットチップから取り出され、オリゴヌクレオチド放出は、室温でエンドオーバーエンド混合しながら1mLの水中でのヒドロゲルペレットの浸漬によって測定される。上清中のDNA濃度及びヒドロゲルマトリックスからのDNA放出は、A260(動態監視)で監視される。本明細書で使用される場合、「超濃縮」及び「高度濃縮」は、乾燥チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス中の約40w/w%超~95w/w%超のオリゴヌクレオチド担持量を意味するように交換可能に使用される。一実施形態では、本発明のヒドロゲルは、約6.7倍大きく作製し(10.7μL)、乾燥させて、乾燥ヒドロゲル中のオリゴヌクレオチド、例えば、DNA、1.4~1.7g cm-3の密度及び1.1g cm-3のPEG密度を含む、同じ質量及びわずかに小さい体積(85%の水及び9%のDNAを含む以前に作製されたヒドロゲルよりも)の本発明のオリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルポリマーネットワークをもたらすことができる。よって、本発明の方法は、本明細書に記載される方法に従って作製されない従来のヒドロゲルと比較して、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス(例えば、ヒドロゲルペレット)中のオリゴヌクレオチドの装填質量(濃度)を増加させる。
【0051】
様々な実施形態では、オリゴヌクレオチド、例えば、DNAは、ヒドロゲルマトリックスから急速に放出され、水又は水性媒体中の乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスからオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)は、約1分である。定量的放出は、20分以内に測定される。特定の実施形態では、放出質量は、オリゴヌクレオチドの装填質量とよく相関する。核酸吸光度スペクトルは、UV範囲における260mmでピークを有する。このA260値は、核酸濃度に正比例する。
【0052】
提供される方法の特定の実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、再水和期間中0~15分で1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり0.025mg~1mgのオリゴヌクレオチドを放出する。いくつかの実施形態では、水又は水性媒体中の乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスからオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)は、再水和期間中に約1分~6分である。提供される方法の一実施形態では、水又は水性媒体中の乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスの100μmフレークは、再水和期間中に1分未満のほぼ瞬間的な放出でオリゴヌクレオチドを放出する。提供される方法の特定の実施形態では、950μgの装填オリゴヌクレオチド質量のうちの550μgのオリゴヌクレオチドが、再水和期間中に放出される。提供される方法のいくつかの実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルは、長さ2mm×直径10mmまでのマイクロミリメートル(μm)スケールでの長さ及び直径寸法を有するモールドにキャストされる。特定の実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルは、長さ2mm×直径1~2mm寸法のマイクロシリンダーを形成するように従来のピペットチップにキャストされる。提供される方法の特定の実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持マイクロシリンダー(例えば、ヒドロゲルペレット)は、水、水性媒体、又は体液若しくは臓器中での浸漬/再水和後1分以内に乾燥1.6μLヒドロゲルマイクロシリンダーから400μgの装填オリゴヌクレオチドのうちの110μgのオリゴヌクレオチドを放出する。
【0053】
別の態様では、本発明は、pH4.0~4.8を有する緩衝液中のオリゴヌクレオチドの水溶液と一緒にマレイミド官能化ポリエチレングリコール(PEG-MAL)及びスルフヒドリル基を含有するポリエチレングリコール化合物(PEG-SH)の反応混合物を含む乾燥ヒドロゲルマトリックスカプセル化超濃縮オリゴヌクレオチドの製剤であって、超濃縮オリゴヌクレオチドが、1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり400μgのオリゴヌクレオチドの装填値を含む、製剤を提供する。
【0054】
製剤の一実施形態では、オリゴヌクレオチドの超濃縮水溶液は、25量体ポリdTを含む。製剤のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの超濃縮水溶液は、モールドにキャストされる。提供される製剤の特定の実施形態では、ヒドロゲルマトリックスカプセル化超濃縮オリゴヌクレオチドは、60%対40%比のオリゴヌクレオチド対チオール-マレイミドPEGを含む乾燥製剤である。別の実施形態では、乾燥した速放性の高濃度オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスは、乾燥チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス中の約40w/w%超~95w/w%超のオリゴヌクレオチド担持量を含む。乾燥製剤のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの乾燥超濃縮水溶液は、100μmフレークにスライスされる。乾燥製剤の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドの密度は、1.4~1.7g cm-3である。提供される乾燥製剤の特定の実施形態では、乾燥製剤は、再水和期間中0~15分で1.6μLのチオール-マレイミドPEGヒドロゲルの総体積当たり0.025mg~1mgのオリゴヌクレオチドを放出する。乾燥製剤の一実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスからオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)は約1分~6分である。乾燥製剤のいくつかの実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスの100μmフレークは、再水和期間中に1分未満のほぼ瞬間的な放出においてオリゴヌクレオチドを放出する。乾燥製剤の特定の実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスの100μmフレークは、再水和期間中に950μgの装填オリゴヌクレオチド質量のうちの550μgのオリゴヌクレオチドを放出する。製剤のいくつかの実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルは、長さ2mm×直径10mmまでのマイクロミリメートル(μm)スケールでの長さ及び直径寸法を有するモールドにキャストされる。一実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルは、長さ2mm×直径1~2mm寸法のマイクロシリンダーを形成するように従来のピペットチップにキャストされる。乾燥製剤の別の特定の実施形態では、マイクロシリンダー(すなわち、ヒドロゲルペレット)は、水、水性媒体、又は体液若しくは臓器中での浸漬/再水和後1分以内に乾燥1.6μLヒドロゲルマイクロシリンダーから400μgの装填オリゴヌクレオチドのうちの110μgを放出する。
【0055】
一態様では、本発明は、治療用オリゴヌクレオチドの全身及び局所マイクロ送達のための方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載される方法によって調製された乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス(例えば、チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス)の100μmフレークを投与することを含む、方法を提供する。提供される方法の一実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスの100μmフレークは、治療用オリゴヌクレオチドの局所マイクロ送達のための対象の解剖学的位置への100μmフレークの移植によって中枢神経系に投与される。特定の実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、治療有効量の治療用オリゴヌクレオチドを含む。一実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスの100μmフレークは、平坦化及び切断されたフレークとして投与される。一実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、本明細書に記載される、2mmの長さ及び約1mmの平均直径を有するピペットチップにおいてキャストした後、モールドキャストされた小型化形状、例えば、円筒形状で投与される。様々な実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、平坦小型化ヒドロゲルマトリックスとして投与される。モールドキャストされた小型化乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス並びに/又は平坦化及び切断された100μmフレークの投与は、全身又は局所経路によって行われ、特定の実施形態では、その投与は、局所マイクロ送達による。一実施形態では、中枢神経系への局所マイクロ送達は、血液脳関門(BBB)を迂回する。特定の実施形態では、モールドキャストされた小型化乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス並びに/又は平坦化及び切断された100μmフレークは、対象の療法を必要とする臓器又は系であり得る、解剖学的位置への移植を介してマイクロ送達される。提供される方法のいくつかの実施形態では、解剖学的位置は、脳又は脊椎である。提供される方法の特定の実施形態では、100μmフレークは、経腸又は非経口投与によって全身投与される。いくつかの実施形態では、小型化乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス並びに/又は平坦化及び切断された100μmフレークは、担体なしでモールドキャストされた小型化形態で投与される。特定の実施形態では、小型化乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス並びに/又は平坦化及び切断された100μmフレークは、例えば、全身送達のために、担体ありでモールドキャストされた小型化形態で投与される。提供される方法の特定の実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、長さ2mm×直径10mmまでのマイクロミリメートル(μm)スケールでの長さ及び直径寸法を有するモールドにキャストされる。提供される方法のいくつかの実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、長さ2mm×直径1~2mm寸法のマイクロシリンダーを形成するように従来のピペットチップにキャストされる。提供される方法の特定の実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持マイクロシリンダー(例えば、ヒドロゲルペレット)は、水、水性媒体、又は体液若しくは臓器中での浸漬/再水和後1分以内に乾燥1.6μLヒドロゲルマイクロシリンダーから400μgの装填オリゴヌクレオチドのうちの110μgを放出する。提供される方法の一実施形態では、オリゴヌクレオチドの乾燥超濃縮水溶液は、25量体ポリdTを含む。特定の実施形態では、100μmフレークは、1.4~1.7g cm-3のオリゴヌクレオチドの密度を有する。特定の実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、60%対40%比のオリゴヌクレオチド対PEGを含む。提供される方法のいくつかの実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、再水和期間中0~15分で1.6μLのPEGヒドロゲルの総体積当たり0.025mg~1mgのオリゴヌクレオチドを放出する。提供される方法のいくつかの実施形態では、水又は水性媒体中の乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスからオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)は、再水和期間中に約1分~6分である。いくつかの実施形態では、水又は水性媒体中の乾燥超濃縮飽和オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスの100μmフレークは、再水和期間中に1分未満のほぼ瞬間的な放出でオリゴヌクレオチドを放出する。提供される方法の特定の実施形態では、950μgの装填オリゴヌクレオチド質量のうちの550μgのオリゴヌクレオチドが、再水和期間中に放出される。提供される治療方法の特定の実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、1.6μLのPEGヒドロゲルの総体積当たり400μgのオリゴヌクレオチドを含む。
【0056】
状態又は疾患の治療のための、本発明の乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス又はオリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスを含む薬学的組成物の治療有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、他の医薬品が投与されるか、及び治療が予防的であるか治療的であるかを含む、多くの異なる因子に応じて変動する。通常、患者は、ヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も治療することができる。治療投与量は、安全性及び有効性を最適化するために、当業者に既知の日常的な方法を使用して滴定され得る。本発明の乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス、又は乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスを含む薬学的組成物であって、活性成分は、オリゴヌクレオチドであり、よって「治療有効量」を含み得る。「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量及び期間で、有効な量を指す。分子、特定の実施形態では、対象の療法について投与されるオリゴヌクレオチドの治療有効量は、個体の病状、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する分子の能力などの因子に応じて変動し得る。治療有効量はまた、治療的に有益な効果が分子のいかなる毒性又は有害効果も上回る量である。
【0057】
更に、当業者であれば、「治療有効量」という用語が、有意義な患者の利益、すなわち、関連する医学的状態の治療、治癒、予防、若しくは改善、又はそのような状態の治療、治癒、予防、若しくは改善の速度の増加を示すのに十分である、各活性成分、すなわち、本発明の乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス中のオリゴヌクレオチド、又は乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックス若しくは方法を含む薬学的組成物の総量を包含し得ることを理解するであろう。単独で投与される、個々の活性成分に適用されるとき、用語は、その成分単独を指す。本発明のいくつかの実施形態では、活性成分は、本明細書に記載される方法に従って、チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス中に装填された超濃縮オリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持PEGヒドロゲルベースマトリックスは、60%対40%比のオリゴヌクレオチド対PEGを含む。一実施形態では、PEGヒドロゲルベースマトリックス中のオリゴヌクレオチドの密度は、1.4~1.7g cm-3である。特定の実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルは、7:1:2のオリゴヌクレオチド対PEG-SH対PEG-MALの比を含む。いくつかの実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲル溶液は、すなわち、乾燥の前に、4.0~4.8のpHを有する緩衝液中の、7μlのオリゴヌクレオチド、例えば、DNA、1μlのPEG-SH、及び2μlのPEG-MAを10μlの総体積で含む。特定の実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルは、2mmの長さ及び約1mmの平均直径を有するピペットチップなどの、モールドにおいてキャストされた超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲル1.6μLを含み、本明細書で使用されるそのようなモールドキャストされた超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルは、「小型化超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲル」又は「小型化超濃縮オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックス」と呼ばれる。超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルの一実施形態では、水又は水性媒体中の乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持チオール-マレイミドPEGヒドロゲルベースマトリックスからオリゴヌクレオチドの半分を放出する量に必要な時間(t1/2)は、再水和期間中に約1分~6分である。一実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲルは、0.52mgのその中に装填され、本明細書に記載される方法に従って調製されたDNAを含み、6分の推定t1/2で0~15分の、例えば、対象への投与後の、再水和期間中に、水又は水性媒体中での再水和時にオリゴヌクレオチドの78%の放出を提供し、1.6μLのマトリックスペレット当たり最大1mgの量のオリゴヌクレオチドの増強された(すなわち、増加した)送達に好適にする。乾燥超濃縮オリゴヌクレオチド担持ヒドロゲル製剤の特定の実施形態では、超濃縮オリゴヌクレオチド担持マイクロシリンダー(例えば、ヒドロゲルペレット)は、水、若しくは水性媒体、又は体液若しくは臓器中での浸漬/再水和後1分以内に乾燥1.6μLヒドロゲルマイクロシリンダーから400μgの装填オリゴヌクレオチドのうちの110μgを放出する。
【0058】
組み合わせに適用されるとき、活性剤という用語は、組み合わせて、連続して、又は同時に投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす活性成分の組み合わされた量を指す。
【0059】
以下の例は、本発明の特定の実施形態をより完全に例示するために提示される。しかしながら、それらは、決して本発明の広範な範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0060】
実施例1
【0061】
ヒドロゲル(マトリックス)製剤
【0062】
高濃度のオリゴヌクレオチドをカプセル化する効果的なヒドロゲルマトリックスを特定するために、複数の検証された化学を評価し、2つの具体的な例、歪み促進アジドアルキン環化付加及びチオール-マレイミド(チオール-マイケル付加)を、
図1A~1Bにまとめる。両方の反応は、DNA官能基に直交した。(
図1C)
【0063】
前述の目標に向けた最も迅速で実用的なアプローチを特定する一連の実験後、チオール-マイケル化学に焦点を当てた。具体的な理由は次のとおりであった:(v)容易にモールドにキャストして、オリゴヌクレオチドカプセル化に適した所望のヒドロゲルネットワークを作製することができる(iv)ゲルの実用的な生成を可能にする統制されたpH範囲、(iii)汎用性のある試薬を使用した、(ii)予測可能な方法(時間、粘度)での(i)標的化されたゲルの堅牢な、制御された形成。
図1Bは、チオール-マイケル反応がチオレートアニオン(k約10
6M
1s
-1)に依存することを示す。チオール-マイケルヒドロゲルは、pHに依存する反応速度で形成された(
図2A)。緩衝液は、0.1MのヒスチジンHCl(様々なpH)を含有した。ゲル点は、ピペッティングが非実用的になる時間として測定した。
図2Bは、pH4.7で、ゲルが28秒で形成されることを示す。これは、ヒドロゲル及びオリゴヌクレオチド成分を完全に混合し、混合物をモールド中にキャストして、均一ヒドロゲルネットワークを作製するのに十分な時間であった。pH7.4で、ゲルは、混合すると即時形成され、ヒドロゲル-オリゴヌクレオチド混合物は、
図2Cに示されるように、ピペットチップにはまり込んだ。
【0064】
図3A~3Bに例示されるように、得られたチオール-マイケルヒドロゲルは、特定のモールドによって決定されるミニ及びマイクロ形状の両方への容易な成形を可能にした。代表的な例では、推定1.6μLの前述のヒドロゲル-オリゴヌクレオチド混合物を、従来のピペットチップを使用して成功裏にキャストして、2mm(長さ)×1mm(直径)寸法を有するマイクロシリンダーをもたらした。重要なことに、製剤に好適な所望のマトリックスのサイズ/寸法は、特定の治療適応症(安全な寸法、生体適合性、所望の治療薬濃度、及び/又はカプセル化治療薬の放出パターン)に応じて、マイクロミリメートル(μm)スケールに更に縮小するか、又は10mmサイズに拡大することができる。
【0065】
実施例2
【0066】
ヒドロゲル小型化
【0067】
ヒドロゲル小型化を、ヒドロゲル-オリゴヌクレオチド混合物の直径1mm、長さ1~2mm、及び0.8~1.6μLの体積の寸法制約で行い(
図3A)、1.6μLのヒドロゲル-オリゴヌクレオチド混合物を、2mmの長さ及び約1mmの平均直径を有するピペットチップ(
図3C)においてキャストした。
図3D~3Eは、キャストされた小型化ヒドロゲル-オリゴヌクレオチドを示す。
【0068】
実験例3
【0069】
ヒドロゲルからのオリゴヌクレオチドの放出動態
【0070】
上記のヒドロゲル形成研究後、モデルアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、すなわち、ポリdT(25量体)のカプセル化及び放出動態を研究した。手順についての具体的なプロトコルを
図4にまとめる。放出動態を、260nmの波長での吸収(A
260)を介して水中で監視した。表1は、ヒドロゲル-オリゴヌクレオチド製剤の成分を示す。1.6μLのヒドロゲル-オリゴヌクレオチド混合物を、ピペットチップにおいてキャストし、10分間硬化させた後、取り出し、室温でエンドオーバーエンド混合しながら1mLの水に浸漬した。上清中のDNA濃度をA
260で監視した。
【0071】
【0072】
得られたASO放出動態を、
図5に示す。チオール-マイケルゲルカプセル化ポリdTは、水中での浸漬後1分以内に急速にヒドロゲルから放出され、吸収によって測定されるオリゴヌクレオチドの定量的収率をもたらした。特に、前述の2mm×1mmのヒドロゲル(1.6μL)のペレットによってカプセル化され、放出されるオリゴヌクレオチドの量は、
図5におけるプロットによって証明されるように、約110μgであると推定された。定量的放出は、20分以内に測定された。放出オリゴヌクレオチド質量は、装填オリゴヌクレオチド質量とよく相関した。(A
260、分=A
260、
24時)。
図6A~6Bは、オリゴヌクレオチド質量が、DNA装填ヒドロゲルが水に浸漬された後のオリゴヌクレオチドの放出を決定したことを示す。
【0073】
モデルオリゴヌクレオチドの同一性及び完全性の両方を、
図7A~7Bに示される逆相HPLCによって確認して、ポリdTが確実に特定及び定量化され得ること、カプセル化及び定量的放出の両方を含むプロトコル中に安定であることを完全に示した。
図7Aは、装填及び放出DNAクロマトグラムが同一であることを示す。PEGと反応したDNAは、DNAがヒドロゲルネットワークに共有結合しているため、放出される可能性が低い。
図7Bは、ヒドロゲルカプセル化DNAの溶媒勾配HPLCを示す。カラムは、Waters XBridge(商標)C18 3.5μmであった。溶媒Aは、水中の0.1Mの酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)であり、溶媒Bは、80/20%(H
2O/アセトニトリル)中の0.1MのTEAAであった。溶媒勾配HPLCは、60℃の温度及び1mL/分の流量で行った。
【0074】
実施例4
【0075】
超濃縮(高濃度)オリゴヌクレオチドヒドロゲル製剤
【0076】
次に、親溶液中のその濃度を増加させることを介して、ヒドロゲルによって捕捉されたモデルオリゴヌクレオチドの濃度を増加させる試みがなされた。論理的根拠は、臨床環境において観察される治療薬濃度に一致するように標的化された分子の増加した濃度を示すオリゴヌクレオチドのマトリックスベース製剤に達することであった。代表的な例では、HTT標的化アンチセンスオリゴヌクレオチドTominersen(商標)(Roche)は、治療当たり120mgの総用量で脳脊髄液(CSF)中のボーラス髄腔内(IT)注射で投与される。約150mLのCSFの総体積を考慮すると、オリゴヌクレオチド分子の所望の脳室内濃度は、約0.8mg/mLである。
【0077】
初期の一連の実験では、モデルDNAの一連の(超)濃縮水溶液(ポリdT、25量体)を、同時に超音波処理しながら混合物を60℃に加熱することによって調製した。代表的な例では、チオール-マイケルヒドロゲルによる標的化されたポリdTのかなり高い捕捉は、記載される混合手順に従って達成して、1.6μLのヒドロゲルの総体積当たり推定400マイクログラム装填値をもたらすことができた(表1の成分)。
図8に示されるように、この結果は、オリゴヌクレオチドのより従来的な生得的溶解度に従った以前の実験と好ましく比較される。1.6μLのヒドロゲルの総体積が以前(上記)のように形成され、ヒドロゲル混合物に装填された0.52ngのDNAがDNAの78%を放出した。
【0078】
次に、チオール-マイケルヒドロゲル-ポリdTマトリックス中の捕捉された水の量を低減する試みを行った。以前の実験で得られたヒドロゲルマトリックスを、周囲温度で72時間乾燥させて、60%/40%比のオリゴヌクレオチド対PEGを特徴とするオリゴヌクレオチドヒドロゲル複合体をもたらした。更に、マトリックスは、水中で膨潤して(30分の処理)、高度に予測可能な方法で標的化されたポリdTを放出した。以前に、ヒドロゲルは、85質量%の水(6重量%のPEG及び重量%のDNA)を含有した。
図9に示される72時間の乾燥は、6重量%のPEG及び重量%のDNAを含む以前のオリゴヌクレオチドヒドロゲルマトリックスよりも6.7倍大きい(10.7μL)オリゴヌクレオチドヒドロゲルマトリックスを調製し、同じ質量及びわずかに小さい体積のDNA装填ポリマーヒドロゲルネットワークをもたらした。オリゴヌクレオチド(DNA)の密度は、1.4~1.7g cm
-3であり、PEG密度は、1.1g cm
-3であった。
【0079】
装填及び放出動態の両方を含む、放出研究によって証明されるように、記載される乾燥ヒドロゲルは、増加した量のオリゴヌクレオチドを収容する(
図10A~10B)。動態データは、6分の推定t
1/2で0~15分の間隔中に線形放出速度を示し、(i)1.6μLのマトリックスペレット当たり最大1mgのオリゴヌクレオチドの増強された送達量(「従来」技法を使用した同じ体積当たり140μgに対して)、及び(ii)予測可能な(高速)放出動態に好適にする。
図10A~10Bに示されるように、乾燥ヒドロゲルは、実質的により多くのDNAで装填することができ、DNA放出は、再水和中に遅延される。ヒドロゲル再水和中の遅延された、ほぼ線形の放出相(目測で約10分)が実証された。t
1/2は、水和ヒドロゲルについての1分と比較して、6分であった。905mgの装填されたDNAは、105%の放出を示した。
【0080】
図11Bは、切断及び平坦化されたヒドロゲルフレークの放出動態を示す。乾燥オリゴヌクレオチドヒドロゲルは、平坦化され、小さなフレークに切断された(
図11A)。大きな表面積は、ヒドロゲルマトリックスからのDNAカーゴの急速バースト放出につながる(
図11B)。
【0081】
更に、記載される乾燥ゲルの放出動態は、それらを統制された粒子に加工することによって容易に操作することができる。代表的な例では、乾燥超濃縮チオール-マイケル-ポリdTゲルを更に約100μmのフレークにスライスし、続いて動態研究を行って、以下に記載されるようなオリゴヌクレオチドのほぼ瞬間的な(「バースト」)放出をもたらした。
【0082】
オリゴヌクレオチドの「従来の」溶解度を制限する固定化(黒色の点「ヒドロゲル」)及び本アプローチ(格子柄の点:「乾燥」ヒドロゲル、灰色の点:乾燥/切断ヒドロゲル)(
図12A~12B)を含む、記載されるプロトコル間の比較は、本明細書に記載される新規手順が、(i)装填のかなりの増強(オリゴヌクレオチドの「従来の」溶解度を制限する固定化のほぼ10倍)、及び(ii)乾燥/切断ヒドロゲルのほぼ瞬間的な「バースト」放出と遅延放出オプションとの間の範囲の統制された放出動態を可能にすることを示す。遅延放出オプションは、治療剤、例えば、オリゴヌクレオチドの予測可能な数分から数日/数週間の放出を達成するように更に調節することができる。具体的には、(i)マトリックスの性質、(ii)ヒドロゲル脱水プロトコル、(iii)ヒドロゲル-オリゴヌクレオチド複合体の更なる層化及び/又はカプセル化、(iv)ヒドロゲル内の共有結合、ファンデルワールス、又はイオン微小環境、並びに(v)実際の治療ペイロードを改変することは、本明細書に記載されるアプローチの更なる調整の機会を提供することが期待される。
【0083】
実施例5
【0084】
大型オリゴヌクレオチドヒドロゲル製剤
【0085】
次の一連の実験では、(実施例1~4に記載される比較的小さいサイズの薬剤(<35~50kD)よりも)大きな生体分子、すなわち、DNAプラスミドに注目した。GFPプラスミド(約5.4kbp)をモデルとして選択した。したがって、一連の特定の架橋剤/条件、及びヒドロゲル放出条件を選択し、手元のタスクに一致することを検証した。評価されるいくつかの代表的なモノマーゲル及び重合条件を、
図16及び以下の表2にまとめる。
【0086】
【0087】
一連のコンビナトリアルステップ後、GFPプラスミドを収容する最適化されたヒドロゲル化学に達した。スクロースを含む、特定の添加剤は、プラスミドの加水分解安定性(
図13及び15)、及びそれが適性であることの両方を増強することを目的とし、プラスミドの放出及びそのトランスフェクション能力を劇的に増強した。
図15では、形態1(
図13では「低スクロース」と標識される)は、160:1のスクロース対DNA比(質量)を有し、形態2(
図13では「高スクロース」と標識される)は、500:1のスクロース対DNA比(質量)を有する。具体的には、HEK293細胞におけるGFPタンパク質の発現レベルを測定し、それを非製剤化対照プラスミド(
図13)と比較することによって、理論的装填レベル(Bionaut(商標)ペレット当たり約2.75μg)でのGFPプラスミド(
図14)の堅牢な放出を確認した。
【0088】
この実施例では、安定化プラスミドのための最適化された大型生体分子ヒドロゲル製剤は、標準的な送達と比較して、そのような薬剤についての装填レベルの5倍~10倍増強を可能にする。
【0089】
注目すべきことに、オリゴヌクレオチドを製剤化することへの本明細書に記載されるアプローチは、Bionaut(商標)マイクロロボット媒介プラットフォームによって表されるように、移植及び/又は任意の代替局所送達方法を含む、局所送達後の薬剤(オリゴヌクレオチド)の治療関連濃度/用量(すなわち、治療有効量)を送達するのに好適である。
【0090】
本明細書に引用される、任意の特許、特許出願公開、又は科学刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0091】
本明細書では本発明の特定の特徴が例示され、説明されてきたが、多くの修飾、置換、変更、及び等価物がここで当業者には想起されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨の範囲内に含まれるように、全てのそのような修飾及び変更を網羅することが意図されることを理解されたい。
【国際調査報告】