(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】導電性コーティングおよびデータ伝送ウィンドウを有するグレージング、その製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20240905BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240905BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
H01Q1/24 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514087
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 GB2022052207
(87)【国際公開番号】W WO2023031590
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ローランド デイ
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AB17
5J046LA12
5J047EC02
(57)【要約】
本発明は、グレージング10であって、ガラス板1と、ガラス板1の表面上の導電性コーティング2と、導電性コーティング2中にあるまたは導電性コーティング2に隣接するデータ伝送ウィンドウ3と、を備え、データ伝送ウィンドウ3は、少なくとも部分的にコーティングがなく、データ伝送ウィンドウ3は、短辺5と長辺6とを有する長方形部分4と、短辺5または長辺6からの突出7と、を備え、突出7は、長辺6に平行な軸を有する軸方向部分8を備える、グレージング10に関する。グレージングの製造方法、および例えば自動車の窓としてのグレージングの使用をも特許請求する。本発明は、例えばUHF周波数帯域で動作する無線周波数識別(RFID)トランスポンダに適している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレージング10であって、
ガラス板1と、
前記ガラス板1の表面上の導電性コーティング2と、
前記導電性コーティング2中にあるまたは前記導電性コーティング2に隣接するデータ伝送ウィンドウ3と、を備え、
前記データ伝送ウィンドウ3は、少なくとも部分的にコーティングがなく、
前記データ伝送ウィンドウ3は、
短辺5と長辺6とを有する長方形部分4と、
前記短辺5または前記長辺6からの突出7と、を備え、
前記突出7は、
前記長辺6に平行な軸を有する軸方向部分8を備え、
前記突出7および前記軸方向部分8は、コーティングがなく、
前記長方形部分4は、ある間隔を有する複数の水平のコーティングのない線と、複数のコーティングされた正方形を形成するための同じ間隔または複数のコーティングされた長方形を形成するための異なる間隔を有する複数の垂直のコーティングのない線とを備え、
前記間隔は、前記データ伝送ウィンドウ3を通じて所定の周波数で伝送可能であるように選択され、
前記間隔は、前記ガラス板1の短縮係数を乗算した所定の周波数に対応する波長の10分の1以下であり、
前記軸方向部分8の少なくともセクションは、前記ガラス板1の短縮係数を乗算した所定の周波数の波長の6分の1以上の所定の長さを有する、
グレージング10。
【請求項2】
複数の突出7、7a、7b、7cを備える、請求項1に記載のグレージング10。
【請求項3】
前記突出7またはいずれかの前記複数の突出7、7a、7b、7cは、長方形、三角形、弓形、線形、曲げ線、直線またはそれらの組み合わせから選択される形状を有する、請求項1または2に記載のグレージング10。
【請求項4】
前記突出7またはいずれかの複数の突出7、7a、7b、7cは、各々が長辺6に対して平行な軸を有する複数の軸方向部分8を備える、請求項2または請求項3に記載のグレージング10。
【請求項5】
前記軸方向部分8または前記複数の軸方向部分8a、8b、8c、8dは、直線の形状である、請求項1から4のいずれか一項に記載のグレージング10。
【請求項6】
前記軸方向部分8または前記複数の軸方向部分8a、8b、8c、8dは、10μm~5mm、より好ましくは20μm~4mm、最も好ましくは30μm~200μmの範囲の幅を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のグレージング10。
【請求項7】
前記軸方向部分8または前記複数の軸方向部分8a、8b、8c、8dは、10~50mm、より好ましくは20~40mm、最も好ましくは25~35mmの範囲の長さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のグレージング10。
【請求項8】
前記導電性コーティング2は、透明導電性酸化物、好ましくはドープされた透明導電性酸化物、より好ましくはフッ素がドープされた酸化スズの層を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のグレージング10。
【請求項9】
前記導電性コーティング2は、325オーム/スクエア未満、より好ましくは20オーム/スクエア未満、最も好ましくは7オーム/スクエア未満のシート抵抗を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のグレージング10。
【請求項10】
外部装置と通信するための制御ユニットを備えるRFIDトランスポンダをさらに備え、前記制御ユニットは、識別データを記憶するためのメモリを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のグレージング10。
【請求項11】
所定の長さ14は、前記ガラス板1の短縮係数を乗算した所定の周波数の波長の半分以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載のグレージング10。
【請求項12】
グレージング10を製造する方法であって、
ガラス板1を準備するステップと、
前記ガラス板1の表面に導電性コーティング2を堆積させるステップと、
前記導電性コーティング2中にあるまたは前記導電性コーティング2に隣接するデータ伝送ウィンドウ3を形成するステップと、を含み、
前記データ伝送ウィンドウは、少なくとも部分的にコーティングがなく、
前記データ伝送ウィンドウ3は、
短辺5と長辺6とを有する長方形部分4と、
前記短辺5または前記長辺6からの突出7と、を備え、
前記突出7は、
前記長辺6に平行な軸を有する軸方向部分8を備え、
前記突出7および前記軸方向部分8は、コーティングがなく、
前記長方形部分4は、ある間隔を有する複数の水平のコーティングのない線と、複数のコーティングされた正方形を形成するための同じ間隔または複数のコーティングされた長方形を形成するための異なる間隔を有する複数の垂直のコーティングのない線とを備え、
前記間隔は、前記データ伝送ウィンドウ3を通じて所定の周波数で伝送可能であるように選択され、
前記間隔は、前記ガラス板1の短縮係数を乗算した所定の周波数に対応する波長の10分の1以下であり、
前記軸方向部分8の少なくともセクションは、前記ガラス板1の短縮係数を乗算した所定の周波数の波長の6分の1以上の所定の長さを有する、
グレージング10を製造する方法。
【請求項13】
前記ガラス板1の製造中に、前記導電性コーティング2を熱分解によって堆積させるステップをさらに含む、請求項12に記載のグレージング10を製造する方法。
【請求項14】
前記導電性コーティング2の少なくとも一部をレーザー除去することによって前記データ伝送ウィンドウ3を形成するステップをさらに含む、請求項12または請求項13に記載のグレージング10を製造する方法。
【請求項15】
自動車のフロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウもしくはルーフウィンドウとして、または建物用の窓、冷蔵庫のドアの窓もしくは街頭設置物における、請求項1に記載のグレージング10の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性コーティングおよびデータ伝送ウィンドウを備えるグレージング、その製造方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性コーティングおよびデータ伝送ウィンドウを有するグレージングが知られている。導電性コーティングは、赤外線反射による断熱用または電気加熱用であり得る。データ伝送ウィンドウによって、例えばグレージング上またはグレージング中の送信機応答機(トランスポンダ)との間で無線周波数(RF)通信が可能になる。
【0003】
無線周波数識別(RFID)は、RF通信を使用した非接触の自動識別技術である。アンテナおよびRFチップを備えるRFIDトランスポンダは、車両の窓上または窓中に位置し得る。RFIDトランスポンダは、高速道路の自動料金徴収、交通管理、自動車の盗難防止などに使用され得る。
【0004】
米国特許第6275157号明細書(Mays)は、915MHzで動作するRFIDトランスポンダを有する車両フロントガラスを開示している。フロントガラスは、導電性物質が選択的に除去された透明な空間を有する断熱用の導電性フィルムを有する。RFIDトランスポンダは空きスペースに配置される。米国特許出願公開第2004107641号明細書(Walton)は、加熱または赤外線放射用の金属パネルおよび自動料金収受トランスポンダを有する車両の窓を開示している。金属パネルには、複数の開口を有するアパーチャが形成されている。サイドローブ制御を可能にするために、開口の間隔およびサイズはアパーチャ全体で変化する。
【0005】
国際公開2020048677号(Holtstiege)は、800MHz~3GHzの範囲で動作するRFIDトランスポンダおよび導電性コーティングを有する車両の窓を開示している。RFIDトランスポンダは、好ましくは窓のコーティングのない領域の中央に配置される。
【0006】
導電性コーティングを有しアンテナ性能が改善されたグレージングが依然として必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の目的は、改善されたRF通信を有するグレージングを提供することである。第2の目的は、当該グレージングを製造する簡単な方法を提供することである。第3の目的は、車両の窓として使用する際にRF通信を改善するグレージングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、請求項1に記載の特徴を備えるグレージングを提供する。
【0009】
本発明は、電気加熱、太陽光制御、またはIR太陽熱加熱の制御のためのグレージングであって、ガラス板と、ガラス板の表面上に配置される導電性コーティングと、導電性コーティング中にあるまたは導電性コーティングに隣接するデータ伝送ウィンドウと、を備え、データ伝送ウィンドウは、少なくとも部分的にコーティングがなく、データ伝送ウィンドウは、長辺と短辺とを有する長方形部分と、長辺または短辺からの突出と、を備え、突出は、長辺に平行な軸を有する軸方向部分を備え、突出および軸方向部分は、コーティングがなく、長方形部分は、ある間隔を有する複数の水平のコーティングのない線と、複数のコーティングされた正方形を形成するための同じ間隔または複数のコーティングされた長方形を形成するための異なる間隔を有する複数の垂直のコーティングのない線とを備え、間隔は、データ伝送ウィンドウを通じて所定の周波数で伝送可能であるように選択され、間隔は、ガラス板1の短縮係数を乗算した所定の周波数に対応する波長の10分の1以下であり、軸方向部分の少なくともセクションは、ガラス板1の短縮係数を乗算した所定の周波数の波長の6分の1以上の所定の長さを有する、グレージングを提供する。
【0010】
従来技術に関しては、本発明によるグレージング、本発明による方法、および本発明による使用を使用して本発明の目的を達成し得ることは、当業者には推測可能ではなかった。驚くべきことに、長辺に平行な軸方向部分を有する突出は、隣接して配置されたRFIDトランスポンダのデータ伝送ウィンドウを介したRF通信を改善する。
【0011】
本発明者は、長辺に平行な軸方向部分を有する突出が、データ伝送ウィンドウの周囲に誘導される電流を制限することを発見した。
【0012】
本発明は、例えば車両の窓を通したデータ伝送ウィンドウなどのRF通信の工業試験要件を満たすグレージングを提供する。
【0013】
ガラス板は、フロート法を使用して製造されたソーダ石灰シリカガラスであることが好ましい。ガラスの厚さは、2~12mmの範囲が好ましい。ガラス板は、強化ガラスまたは焼き鈍しガラスであり得る。ガラス板は、モノリシックであり得、またはガラス板の間に中間層材料、好ましくはポリビニルブチラール(PVB)の層を挟んでそれらを共に結合する別のガラス板に積層され得る。
【0014】
好ましくは、導電性コーティングは、水が周辺で導電性コーティングに接触するのを防ぎ、水による導電性コーティングの腐食を避けるために、ガラス板の周辺から内側に間隔を置いて配置される。好ましくは、コーティングのない周辺領域の幅は、5mm~25mmの範囲であり、より好ましくは10mm~20mmの範囲である。
【0015】
好ましくは、軸方向部分の軸は、-30度~+30度、より好ましくは-15度~+15度、最も好ましくは-5度~+5度の角度公差内で長辺に平行である。
【0016】
好ましくは、グレージングは、複数の突出を備える。
【0017】
好ましくは、突出または複数の突出は、コーティングがない。
【0018】
好ましくは、突出またはいずれかの複数の突出は、長方形、三角形、弓形、線形、曲げ線、直線、またはそれらの組み合わせから選択される形状を有する。
【0019】
好ましくは、複数の突出の各突出は、各々長辺に平行な軸を有するそれぞれの軸方向部分を備える。
【0020】
好ましくは、突出は、2つの軸方向部分を有する。好ましくは、2つの突出は、短辺からのものである。 好ましくは、突出は、長辺を有する角に隣接する短辺からのものである。
【0021】
好ましくは、軸方向部分または複数の軸方向部分には、コーティングがない。
【0022】
好ましくは、軸方向部分または複数の軸方向部分の各々は、直線または長方形の形状である。
【0023】
好ましくは、軸方向部分または複数の軸方向部分の各々は、10μm~5mm、より好ましくは20μm~4mm、最も好ましくは30μm~200μmの範囲の幅を有する。
【0024】
好ましくは、導電性コーティングは、透明導電性酸化物、好ましくはドープされた透明導電性酸化物、より好ましくはフッ素がドープされた酸化スズの層を備える。
【0025】
好ましくは、導電性コーティングは、2層、3層、または4層の銀を備える。
【0026】
好ましくは、導電性コーティングとガラス板との間にアンダーコート層が位置し、アンダーコート層は、シリコン、より好ましくはシリコンと酸素、最も好ましくはシリコンと酸素と炭素を含む。
【0027】
好ましくは、導電性コーティングは、325オーム/スクエア未満、より好ましくは20オーム/スクエア未満、最も好ましくは7オーム/スクエア未満のシート抵抗を有する。
【0028】
好ましくは、所定の長さは、ガラス板の短縮係数を乗算した所定の周波数の波長の半分以下である。
【0029】
好ましくは、グレージングは、外部装置と通信するための制御ユニットを備えるRFIDトランスポンダをさらに備え、制御ユニットは、識別データを記憶するためのメモリを備える。
【0030】
好ましくは、RFIDトランスポンダは、グレージングの表面に適用され、好ましくはポリマーの自己接着層によってグレージングの表面に取り付けられる。
【0031】
第2の態様では、本発明は、請求項12に記載のステップを含むグレージングの製造方法を提供する。
【0032】
本発明は、本発明によるグレージングを製造する方法であって、ガラス板を準備するステップと、ガラス板の表面に導電性コーティングを配置するステップと、導電性コーティング中にあるまたは導電性コーティングに隣接するデータ伝送ウィンドウを構成するステップと、を含み、データ伝送ウィンドウは、少なくとも部分的にコーティングがなく、データ伝送ウィンドウは、長辺と短辺とを有する長方形部分と、短辺または長辺からの突出と、を備え、突出の軸方向部分は長辺に平行な軸を有し、突出および軸方向部分、はコーティングがなく、長方形部分は、ある間隔を有する複数の水平のコーティングのない線と、複数のコーティングされた正方形を形成するための同じ間隔または複数のコーティングされた長方形を形成するための異なる間隔を有する複数の垂直のコーティングのない線とを備え、間隔は、データ伝送ウィンドウを通じて所定の周波数で伝送可能であるように選択され、間隔は、ガラス板の短縮係数を乗算した所定の周波数に対応する波長の10分の1以下であり、軸方向部分の少なくともセクションは、ガラス板1の短縮係数を乗算した所定の周波数の波長の6分の1以上の所定の長さを有する、方法を提供する。
【0033】
好ましくは、グレージングを製造する方法は、導電性コーティングを熱分解によって堆積させるステップをさらに含む。好ましくは、コーティングは、化学蒸着(CVD)によって堆積される。好ましくは、コーティングは、ガラス板の製造中に堆積される。
【0034】
好ましくは、グレージングを製造する方法は、導電性コーティングの少なくとも部分的なレーザー除去によってデータ伝送ウィンドウを形成するステップをさらに含む。
【0035】
コーティングのない領域は、コーティング堆積プロセス中にマスキングすることによって形成され得る。あるいは、導電性コーティングを堆積し、その後部分的に除去してコーティングのない領域を形成し得る。
【0036】
導電性コーティング材料の除去は、レーザーによる除去また機械的研磨などの任意の方法によって行われる。好ましくは、コーティングのない線の幅は10μm~5mm、より好ましくは20μm~200μm、さらに好ましくは30μm~100μmである。
【0037】
データ伝送ウィンドウは、所定の周波数に対する周波数選択面(FSS)を形成するコーティングのない線の少なくとも1つのグリッドを備える。所定の間隔を有する複数の水平のコーティングのない線と同じ間隔を有する複数の垂直のコーティングのない線とは、複数のコーティングされた正方形を形成する。この間隔は、データ伝送ウィンドウを通じて所定の周波数で伝送可能に選択される。この間隔は、所定の周波数に対応する波長にガラス板の短縮係数を乗じた値の10分の1以下である。例えば、3GHzの所定の周波数では、短縮係数0.6のため、1cm以下、好ましくは6mm以下の間隔が必要である。
【0038】
コーティングされた正方形の代わりに、異なる間隔を有する複数のコーティングのない垂直線が、複数のコーティングされた長方形を形成する。ある間隔および異なる間隔については、間隔は、ガラス板の短縮係数を乗算した所定の周波数に対応する波長の10分の1以下である。好ましくは、この間隔は、異なる間隔よりも大きい。
【0039】
好ましくは、データ伝送ウィンドウの短辺および長辺の長さは、それぞれ、データ伝送ウィンドウの近くに配置されるRFIDトランスポンダの幅および長さと同様である。
【0040】
第3の態様では、本発明は、陸、海、空用の乗り物の加熱窓として、例えば自動車のフロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウまたはルーフウィンドウとしての、本発明によるグレージングの使用を提供する。本発明はまた、建物の窓、冷蔵庫のドアの窓、または街頭設置物の窓としても使用され得る。本発明は、UHF帯域、好ましくは900MHz~950MHzで使用され得る。
【0041】
本発明は、非限定的な図面、非限定的な実施例および比較例によってさらに開示される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】長辺からの突出を有する本発明の実施形態を示す図である。
【
図2】長辺からの2つの突出を有する実施形態を示す図である。
【
図3】短辺からの突出を有する本発明の実施形態を示す図である。
【
図4】2つの短辺からの突出を有する実施形態を示す図である。
【
図5】短辺からの2つの突出を有する実施形態を示す図である。
【
図6】短辺からの4つの突出を有する実施形態を示す図である。
【
図7】3つの突出および2つのカットを有する実施形態を示す図である。
【
図8】6つの突出および2つのカットを有する実施形態を示す図である。
【
図9】
図7と同様の実施形態であるが、角度をなした軸方向部分を有する図である。
【
図10】
図8と同様の実施形態であるが、角度をなした4つの軸方向部分を有する図である。
【
図11】周辺領域に軸方向部分を有する実施形態を示す図である。
【
図12】
図11と同様の実施形態であるが、全幅の突出を有する図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、ガラス板1を備える本発明によるグレージング10を開示している。導電性コーティング2は、ガラス板1の表面上に配置され、ガラス板1の周辺から内側に離隔する。
【0044】
データ伝送ウィンドウ3は、導電性コーティング2中にある。データ伝送ウィンドウ3は、RF通信を可能にするために、少なくとも部分的にコーティングがない。例えば、データ伝送ウィンドウ3は、周波数選択面を形成するレーザー除去線の長方形グリッドであり得る。
【0045】
データ伝送ウィンドウ3は、短辺5と長辺6とを有する長方形部分4を備える。長方形部分4の形状は、RFIDトランスポンダの形状に類似する。長辺6は水平に示されているが、水平に対して角度をなして配向され得る。
【0046】
データ伝送ウィンドウ3は、さらに突出7を備える。突出7は、任意の形状、例えば、長方形、三角形、弓形、線形、または曲げ線状であり得る。
図1における突出7の形状は、長辺6に対して曲げ部まで約45度の角度の部分と、長辺6にほぼ平行な軸を有する軸方向部分8とを備える曲げ線である。
【0047】
図2は、
図1と同様に、本発明によるグレージング10を開示している。第1の突出7は、データ伝送ウィンドウ3の長辺6から、長辺6に対して約45度での角度で第1の曲げ部まで延在する。第1の突出7は、長辺6に平行な軸を有する第1の軸方向部分8を有する。第2の突出7aは、長辺6から約45度の角度で第2の曲げ部まで延在する。第2の突出7aは、長辺6に平行な軸を有する第2の軸方向部分8aを有する。第1および第2の軸方向部分8、8aは、それぞれ第1および第2の曲げ部から延在する。第1および第2の軸方向部分8、8aは、それぞれ左および右に延在する。
【0048】
図3は、
図1と同様に本発明によるグレージング10を開示しているが、突出7がデータ伝送ウィンドウ3の長方形部分4の短辺5から延在する。突出7は、長辺6に平行な軸を有する軸方向部分8を備える。突出7の形状は、直線であるため、突出7全体は、軸方向部分8と同軸を有する。
【0049】
図4は、
図3と同様に、本発明によるグレージング10を開示している。第1の突出7は、第1の短辺5から延在する。第1の突出7の第1の軸方向部分8は、長辺6に平行な軸を有する。第2の突出7aは、第2の短辺5aから延在する。第2の突出7aは、長辺6に平行な軸を有する第2の軸方向部分8aを有する。第1および第2の軸方向部分8、8aは、それぞれ左および右に延在する。第1および第2の短辺5、5aは、それぞれ長方形部分4の左辺および右辺である。
【0050】
図5は、
図3と同様に、第1の短辺5上に複数の突出7、7bを備える、本発明によるグレージング10を開示する。複数の突出7、7bの各々は、第1の補助突出7bが第1の突出7に隣接するように第1の短辺5から延在する。第1の補助突出7bは、長辺6に平行な軸を有する第1の補助軸方向部分8bを有する。
【0051】
図6は、
図5と同様に、第2の短辺5a上に第2の突出7aおよび第2の補助突出7cを備える、本発明によるグレージング10を開示する。第2の補助突出7cは、第2の突出7aに隣接している。第2の突出7aは、長辺6に平行な軸を有する第2の軸方向部分8aを有する。第2の補助突出7cは、長辺6に平行な軸を有する第2の補助軸方向部分8cを有する。
【0052】
図7は、
図5と同様に、第2の長辺6a上に非整列突出9を備える、本発明によるグレージング10を開示している。突出7とは異なり、非整列突出9は、長辺6に平行な軸を有する軸方向部分8を備えない。
【0053】
図7の非整列突出9の形状は三角形である。非整列突出9は、長方形または曲げ線などの他の形状を有し得る。
【0054】
図7のグレージング10はまた、長辺6に隣接する2つのカット9’、9’aを備える。突出7とは異なり、カット9’、9’aは、長方形部分4に接続されていない。カット9’、9’aは、導電性コーティング2のコーティングのない線である。1つ以上のカット9’、9’aは、導電性コーティング2中の電流の流れを誘導するが、長方形部分4の辺5、5a、6、6aでの電流の流れを遮断しない。
【0055】
図8は、
図7と同様に、第2の長辺6a上に補助非整列突出9aを備える、本発明によるグレージング10を開示している。
【0056】
グレージング10は、第2の短辺5a上に第2の突出7aと第2の補助突出7cとを備える。第2の補助突出7cは、第2の突出7aに隣接している。第2の突出7aは、長辺6に平行な軸を有する第2の軸方向部分8aを有する。第2の補助突出7cは、長辺6に平行な軸を有する第2の補助軸方向部分8cを有する。
【0057】
図8における突出7の形状は、長辺6に対して曲げ部まで約40度の角度での部分と、その長辺6とほぼ平行な軸を有する軸方向部分8とを備える曲げ線である。
図8における第2の突出7aの形状は、長辺6に対して曲げ部まで約40度の角度の部分と、長辺6にほぼ平行な軸を有する第2の軸部分8aとを備える曲げ線である。
【0058】
図9は、
図7と同様に本発明によるグレージング10を示しており、突出7の形状は曲げ線であり、軸方向部分8は長辺6にほぼ平行な軸を有し、角度公差は+30度である。
【0059】
図10は、
図8と同様に本発明によるグレージング10を開示しており、第2の突出7aの形状は曲げ線であり、軸方向部分8aは長辺6にほぼ平行な軸を有し、角度公差は+30度である。
【0060】
図11は、
図1と同様に本発明によるグレージング10を開示しており、突出7の形状は、長方形、すなわち突出7の第2の長方形部分、および長辺6に平行な軸を有する軸方向部分8である。軸方向部分8は、ガラス板の周囲のコーティングのない領域に形成され、導電性コーティング2が除去されている。周辺のコーティングのない領域は、腐食を防ぐ。
【0061】
図11のグレージング1はまた、導電性コーティング2に電流を供給するための第1のバスバー11、第1の補助バスバー11aおよび第2のバスバー12をも備える。第1の補助バスバー11と第1の補助バスバー11aは、突出7の第2の長方形部分の左右に位置し、軸方向部分8に平行に延在する。第1のバスバー11は、供給導体13によって外部電源に接続され、第1の補助バスバー11aは補助供給導体13aによって外部電源に接続される。
【0062】
供給導体13および補助供給導体13aは、それぞれ軸方向部分8の左端と右端として機能する。供給導体13と突出7の第2の長方形部分との間の軸方向部分8の左側部分は、所定の長さ14を有する。補助供給導体13aと突出7の第2の長方形部分との間の軸方向部分8の右側部分は、所定の長さ14を有する。所定の長さ14は、所定の周波数の4分の1波長にガラス板1の短縮係数を乗算したものである。
【0063】
図12は、
図10と同様に本発明によるグレージング10を開示しており、突出7の第2の長方形部分は長方形部分4の全幅、すなわち長辺6の長さである。
【実施例】
【0064】
(実施例および比較例)
グレージング上またはグレージング中にRFIDトランスポンダなどのRF通信用のトランスポンダを有する自動車の窓としての使用を参照して、本発明によるグレージングの実施例および比較例を説明する。
【0065】
比較例は、ガラス板とその上の導電性コーティングとを備えるグレージングである。導電性コーティングには、2つの短辺と2つの長辺とを有する長方形部分を備えるデータ伝送ウィンドウがある。短辺または長辺から非整列突出が設けられる。長方形部分と同様の寸法のRFIDトランスポンダは、グレージング中またはグレージング上にある。
【0066】
本発明による実施例は比較例と似ているが、長辺に平行な軸を有する少なくとも1つの軸方向部分をさらに備える。
【0067】
実施例の少なくとも1つの軸方向部分は、データ伝送ウィンドウの周囲の電流を制限し、その結果、比較例と比較してRF通信が改善される。
【0068】
実施例および比較例は、電気加熱のために導電性コーティングに電流を供給するバスバーも備える。実施例の抵抗は比較例の抵抗より大きいため、電気加熱に利用できる電力は少なくなる。驚くべきことに、電力の差は霜取りにはあまり影響しないが、RFIDトランスポンダへのRF通信の改善は顕著である。
【0069】
コーティングのない線の所定の長さ14および間隔は、ガラス板の誘電率に依存する。サンプルまたはシミュレーションを作成する場合、短縮係数は強化ガラスの場合は0.7、積層ガラスの場合は0.6、またはコーティングのない線を有するコーティングされたガラスの場合は0.5と推定される。選択した周波数を測定するには、サンプルを無響室でテストする必要がある。プロトタイプを作成するには、選択した周波数のサンプル測定値を所定の周波数と比較するべきである。所定の長さ14およびコーティングのない線の間隔は、サンプル測定に基づく短縮係数の改訂された推定値に従って、プロトタイプ用に改訂されるべきである。
【0070】
本発明の効果は、グレージング10の視野領域に影響を与えることなく、データ伝送ウィンドウ3を長方形部分4よりも大きくすることである。その結果、RF通信が改善され、レーザー除去が少なくなり、狭い間隔で必要となるよりも安価になる。本発明は、視覚領域に影響を与える長方形部分4の長辺6に対して垂直にデータ伝送ウィンドウ3を拡張することを回避する。フロントガラス中の視野領域の例としては、車両ドライバーが除去されたコーティングによる光透過率のわずかな違いまたはコーティングの縁からの光の回折など、気を散らせる人工物のない前方視界を必要とする領域があげられる。
【0071】
所定の長さ14を有する軸方向部分8の断面は、軸方向部分8の長さ、または突出7の第2の長方形部分に当接していない部分の長さである。
図11および
図12では、突出7の第2の長方形部分が中心で軸方向部分8に当接し、軸方向部分8の2つの部分が所定の長さ14を有する。
【0072】
図面中の参照は次のとおりである。
【符号の説明】
【0073】
1 ガラス板
2 導電性コーティング
3 データ伝送ウィンドウ
4 長方形部分
5 短辺
5a 第2の短辺
6 長辺
6a 第2の長辺
7 突出
7a 第2の突出
7b 補助突出
7c 第2の補助突出
8 軸方向部分
8a 第2の軸方向部分
8b 補助軸方向部分
8c 第2の補助軸方向部分
9 非整列突出
9a 補助非整列突出
9´ 非連結線
9a´ 補助非連結線
10 グレージング
11 第1のバスバー
11a 第1の補助バスバー
12 第2のバスバー
13 供給導体
13a 補助供給導体
14 所定の長さ
【国際調査報告】