(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】固体金属リチウムを含む電気バッテリーからリチウムを安全に抽出する方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/00 20060101AFI20240905BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20240905BHJP
C22B 26/12 20060101ALI20240905BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20240905BHJP
C22B 9/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C22B1/00 101
H01M10/54
C22B26/12
C22B7/00 C
C22B9/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514092
(86)(22)【出願日】2022-09-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2022074623
(87)【国際公開番号】W WO2023036741
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513306615
【氏名又は名称】ブルー ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】デシャン,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ボデネス,ヴァンサン
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA34
4K001BA22
4K001CA01
4K001EA05
5H031AA00
5H031BB00
5H031BB02
5H031BB03
5H031BB10
5H031RR02
(57)【要約】
本発明は、少なくとも2個のセルを具備するバッテリーであって、各々のセルは負極(102)、正極(104;108)及び固体又は準固体金属リチウム(106)を具備し;前記セルの負極が突出している第1の縁部と、前記第1の縁部とは反対の正極が突出している第2の縁部とを有するバッテリーから、リチウムを抽出する方法(300)であって;下記ステップすなわち ― 前記バッテリーを、前記第1及び第2の縁部のうち一方が前記第1及び第2の縁部の他方よりも下になる配向に配置するステップ(308)と; ― 前記バッテリーを、前記固体金属リチウムの融解温度以上である処理温度と呼ばれる温度に加熱するステップ(310)とを含む抽出段階(306)を含む、前記方法(300)において;前記バッテリーのセルのうち少なくとも2個、特に全てのセルの正極間の電気的接続を切断するステップ(314)をさらに含むことを特徴とする方法に関する。本発明はさらに、そのような方法を実行するプラントに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の電気エネルギー貯蔵セル(100)を具備する固体又は準固体リチウム電解質バッテリー(200)であって;
各々のセルは負極(102)、正極(104;108)及び固体(106)又は準固体のリチウム金属を具備し;
前記セルの負極(102)が突出している第1の縁部(110)と、前記第1の縁部(110)とは反対の、正極(104)が突出している第2の縁部(112)とを有するバッテリー
からリチウムを抽出する方法(300;400;500)であって;
下記すなわち:
― 前記バッテリー(200)を、前記第1及び第2の縁部のうち一方(110;112)が前記第1及び第2の縁部の他方(112;110)よりも下になる配向に配置するステップ(308;408)と、
― 前記バッテリー(200)を、前記固体リチウム金属の融解温度以上である処理温度と呼ばれる温度に加熱するステップ(310)と
を含む抽出段階(306;406)を含む、前記方法(300;400;500)において;
前記バッテリー(200)のセル(100)のうち少なくとも2個、特に全てのセルの正極間の電気的接続を切断するステップ(314)をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
切断ステップ(314)は、正極間の接続ワイヤを、前記電気接続ワイヤの側の第2の縁部(112)の位置、特に第2の縁部ぎりぎりの位置にある切断線(802)に沿って切断することを特徴とする、請求項1に記載の方法(300;400;500)。
【請求項3】
切断ステップは、セルを、前記セルの側の第2の縁部(112)の位置、特に第2の縁部ぎりぎりの位置にある切断線(804)に沿って切断することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法(300;400;500)。
【請求項4】
切断ステップ(314)はギロチン式裁断機によって行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法(300;400;500)。
【請求項5】
抽出段階(306;406)の前に、バッテリー(200)を充電するステップ(502)をさらに含み、前記抽出段階(306;406)は前記充電されたバッテリー(200)に適用されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法(500)。
【請求項6】
抽出段階(306;406)はバッテリー(200)を圧迫するステップ(312)をさらに含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法(300;400;500)。
【請求項7】
抽出段階(306;406)の前に、バッテリー(100)から少なくとも1つの電気的コネクタを除去するステップ(302)を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法(300;400;500)。
【請求項8】
配置ステップ(308)は、バッテリー(200)を、前記バッテリーの第1の縁部(110)が前記バッテリー(200)の第2の縁部(112)より下になる配向に配置することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法(300;500)。
【請求項9】
配置ステップ(308)は、第1の縁部(110)が下を向いた状態でバッテリー(200)を垂直に配置することを特徴とする、請求項8に記載の方法(300;500)。
【請求項10】
バッテリー(200)を加熱するステップ(310)は、不活性ガスの中、又は真空下で行なわれることを特徴とする、請求項8又は9のいずれか1項に記載の方法(300;500)。
【請求項11】
配置ステップ(408)は、バッテリー(200)を、前記バッテリーの第1の縁部(110)が前記バッテリーの第2の縁部(112)より上になる配向に配置することと、抽出段階(406)は、加熱ステップ(310)の前に、バッテリー(200)を、液体リチウムよりも密度が高く電気的に絶縁性の処理液と呼ばれる液体(702)に浸漬するステップ(410)をさらに含むこととを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法(400;500)。
【請求項12】
少なくとも2個の電気エネルギー貯蔵セル(100)を具備する固体又は準固体リチウム電解質バッテリー(200)であって;
各々のセルは負極(102)、正極(104;108)及び固体(106)又は準固体のリチウム金属を具備し;
前記セルの負極(102)が突出している第1の縁部(110)と、前記第1の縁部(110)とは反対の、正極(104)が突出している第2の縁部(112)とを有するバッテリー
からリチウムを抽出するための設備(600;700)であって、
― 前記バッテリー(200)を、前記第1及び第2の縁部のうち一方(110;112)が前記第1及び第2の縁部の他方(112;110)よりも下になる配向に配置するための手段(604)と;
― 前記バッテリー(200)を、前記固体リチウム金属の融解温度以上である処理温度と呼ばれる温度に加熱するように構成された加熱手段(602)と
を具備する前記設備(600;700)において;
前記バッテリー(200)のセル(100)のうち少なくとも2個、特に全てのセルの正極間の電気的接続を切断するための手段(612)をさらに具備することを特徴とする設備。
【請求項13】
切断手段(612)はギロチン式裁断機を含むことを特徴とする、請求項12に記載の設置(600;700)。
【請求項14】
加熱手段はオーブン(502)を含むことを特徴とする、請求項12又は13のいずれか1項に記載の設置(600;700)。
【請求項15】
バッテリー(200)を圧迫するための手段(508)を具備することを特徴とする、請求項12~14のいずれか1項に記載の設置(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体リチウム金属を含むバッテリーからリチウムを安全に抽出する方法に関する。
【0002】
本発明の分野は、固体リチウム金属を基にしたバッテリー、特にリチウム金属ポリマーバッテリーの分野であり、さらにより具体的にはこれらのバッテリーの再生利用の分野である。
【背景技術】
【0003】
固体又は準固体のリチウム金属を基にしたバッテリー、例えばリチウム金属ポリマーバッテリー(LMP(登録商標))などは、周知である。これらのバッテリーは、例えば電気自動車又は給電ステーションにおいて続々と使用されつつある。よって、固体又は準固体のリチウム金属を基にしたバッテリーの数は、数年にわたって絶えず増加してきた。
【0004】
そのようなバッテリーの耐用年数は無限ではなく、再生利用することが不可欠である。しかしながらそのようなバッテリーは、寿命を終えた時であってもなお、他のバッテリー又は他の分野に再利用可能な固体リチウム金属を含んでおり、相当に価値がある。
【0005】
バッテリーから固体リチウム金属を回収するための技法は現在のところごくわずかしかない。これらの希少な技法は、液体状態のリチウムを回収するために、固体リチウム金属の融解温度以上の温度にバッテリーを加熱する。しかしながら、これらの技法はバッテリーに火災の危険性をもたらす。
本発明の1つの目的は、上記欠点を修正することである。
【0006】
本発明の別の目的は、リチウム回収の際の短絡の可能性の影響を限定及び制御することにより、電気エネルギー貯蔵セルの、カソード及び電解質が少なくとも181℃まで(又はリチウムの融解温度まで)安定している全ての構成物について、バッテリーから固体又は準固体のリチウム金属を効率的に回収する方法を提案することである。
【発明の概要】
【0007】
[発明の開示]
本発明は、上記目的のうち少なくとも1つを、少なくとも2個の電気エネルギー貯蔵セルを具備するバッテリー、例えば固体又は準固体リチウム電解質バッテリーであって;
各々のセルは正極、負極及び固体又は準固体のリチウム金属を具備し;
前記セルの負極が突出している第1の縁部と、前記第1の縁部とは反対の、正極が突出している第2の縁部とを具備するバッテリー
からリチウムを抽出する方法であって;
下記すなわち:
― 前記バッテリーを、前記第1及び第2の縁部のうち一方が前記第1及び第2の縁部の他方よりも下になる配向に配置するステップと、
― 前記バッテリーを、前記固体リチウム金属の融解温度以上である処理温度と呼ばれる温度に加熱するステップと
を含む抽出段階を含む、前記方法において;
前記バッテリーのセルのうち少なくとも2個、特に全てのセルの正極間の電気的接続を切断するステップをさらに含むことを特徴とする方法
により達成することを可能とする。
【0008】
よって、本発明は、固体リチウム金属の融解温度以上の処理温度にバッテリーを加熱することにより前記バッテリーから固体リチウム金属を回収することを提案する。リチウム金属が融解してしまえば、全部又は一部のリチウム金属が各々のセルから自然に流出する。よって本発明は、固体リチウム金属の簡素かつ単純な回収を可能にする。
【0009】
更に、本発明は、各々のセルについての、該セルが少なくとも傾斜せしめられている特定の配向を提案する。各々のセルのそのような配向は、重力によるセルからの融解リチウムの流出を容易にする。
【0010】
更に、何にもまして、本発明は、バッテリーセルのうち少なくとも2個、優先的には全てのセルの正極間の接続を切断するステップを提供する。換言すれば、切断ステップにより、バッテリーセルの正極間の電気的接続を遮断することが可能となる。よって、切断ステップの後、バッテリーがもはや互いに電気的に接続されていない複数のセルを具備することで、該バッテリーの反応性、かつ従ってリチウムを回収する時にバッテリーが発火する危険性が、低減される。
【0011】
第1の縁部は、リチウムが液体状態になった時に流れて行くはずである側を規定するという事実を特徴とすることができる。
本出願において、「電気エネルギー貯蔵セル」又は「セル」は、少なくとも:
― 固体リチウム金属層によって形成されているか又は固体リチウム金属層を含む負極;
― 正極、
― 正極と負極との間に配置構成された、特にリチウム塩を含んでいる固体電解質、及び
― 正極側の集電体
を具備するアセンブリを意味するものと理解される。
本出願において、「固体又は準固体のリチウム金属」は、
― 純粋なリチウム金属;又は
― 少なくとも1つのリチウム金属合金の組み合わせ;又は
― 純粋なリチウム金属及び少なくとも1つのリチウム金属合金の組み合わせ
を含むことができる。
【0012】
「固体又は準固体のリチウム金属」が、異なる融解温度を有する異なる形態のリチウムの組み合わせ、例えば上述のようなものを含む場合、加熱ステップは、バッテリーを、
― 前記異なる融解温度のうち最も低い温度;及び
― 優先的には、前記異なる融解温度のうち最も高い温度
よりも高いか又は等しい処理温度に加熱する。
1つの非限定的な実施形態によれば、処理温度は180.5℃以上である。
1つの実施形態によれば、処理温度は、例えば300℃の最高温度以下である。
バッテリーは、2個以上のセルを具備することができる。
【0013】
バッテリーは、組み立て方向に沿って、いくつかの組み立てられた、又は具体的には積層された、セルを具備することができる。組み立て方向は、各々のセルによって形成された平面に垂直となりうる。
特に、バッテリーは、セルが直列に接続されているバッテリーに相当してもよい。
【0014】
1つの実施形態によれば、切断ステップは、正極間の接続ワイヤを、前記電気接続ワイヤの側の、第2の縁部の位置、特に第2の縁部ぎりぎりの位置にある切断線に沿って、切断することができる。
【0015】
この実施形態により、電気的接続が切断される時に固体リチウム金属をバッテリーの中に保持すること、又はバッテリーから追い出されないようにすることが可能となり、これによりリチウムの回収率を向上させることが可能となる。
この実施形態では、接続ワイヤは、切断後に異なる正極の間の接触が全くないように、第2の縁部に十分に近い位置で切断されるべきである。
【0016】
別の実施形態によれば、切断ステップは、セルを、前記セルの側の、第2の縁部の位置、特に第2の縁部ぎりぎりの位置にある切断線に沿って、切断することができる。
この実施形態では、失われるリチウムの量を低減するために、切断は第2の縁部のすぐ近くでなければならない。
【0017】
例えば、切断は、2mm以下であるか又はバッテリーの第1及び第2の縁部の間のセルの大きさの1%以下である、第2の縁部からの距離「d」で行なうことができる。
切断ステップはギロチン式裁断により行なうことができる。
この場合、バッテリーは適切な大きさ及び出力のギロチン式裁断機に挿入される。
実施形態によれば、切断ステップは加熱ステップの開始前に行なうことができる。
【0018】
実施形態によれば、切断ステップは加熱ステップの開始後に行なうことができる。この場合、優先的には、切断ステップは固体リチウム金属が融解し始める前に行なうことができる。
実施形態によれば、切断ステップは配置ステップの前に行なうことができる。
実施形態によれば、切断ステップは配置ステップの後に行なうことができる。
実施形態によれば、切断ステップは配置ステップの間に行なうことができる。
【0019】
特に有利な特徴によれば、本発明による方法は、抽出段階の前に、バッテリーを充電するステップをさらに含み、前記抽出段階は前記充電されたバッテリーに適用される、ということが可能である。
【0020】
バッテリーを充電し、かつ充電されたセルについて抽出段階を遂行することにより、リチウム抽出収率を高めることが可能である。実際に、セルの充電によって、リチウムイオンを負極に向かって移動させることにより回収可能なリチウムの量を増加させることが可能となる。
各々のセルは個々に充電されてもよいし、バッテリーを充電することにより充電されてもよい。
特に有利な実施形態によれば、抽出段階は、バッテリーを圧迫するステップをさらに含むことができる。
その結果、融解リチウムが各々のセルから強制的に流出せしめられることにより、回収されるリチウムの量が増大する。
【0021】
圧迫ステップは、抽出段階の全体にわたり連続的に行なわれてもよい。この場合、各々のセルには、抽出段階の全期間を通じて部分的又は全面的に圧迫が加えられる。
【0022】
別例として、圧迫ステップは抽出段階の間に1回又は別々に複数回行なわれてもよい。この場合、抽出段階には、バッテリーが圧迫されていない瞬間が含まれる。
【0023】
有利には、圧迫ステップは、第2の縁部から第1の縁部に向かってバッテリーの表面をスイープする(押し撫でる)ことにより、前記バッテリーの表面に圧迫を加えることができる。よって、融解リチウムは負極が突出している第1の縁部に向かって徐々に移動/誘導され、これにより回収されるリチウムの量が増大し、かつリチウムと正極との間の接触の危険性が低減される。
例えば、圧迫ステップは2つのローラーの間にバッテリーを通過させることにより行なわれてもよい。
別の例によれば、圧迫ステップは、バッテリーを支え面に対して押し付ける圧迫ローラーによって行なわれてもよい。
圧迫は、1回に第2の縁部を始点として第1の縁部に向かってバッテリーの表面をスイープする通過工程を、連続的に実施して適用することができる。
【0024】
圧迫ローラーどうしの間、圧迫ローラーと支え面との間それぞれの空間は、バッテリーの厚さから固体リチウム金属の層の厚さを差し引いたものに一致していてよい。これにより、バッテリー内に固体リチウムがまだ存在している間は圧迫を加えることが可能となる。
【0025】
2つの圧迫ローラーの間、圧迫ローラーと支え面との間それぞれの空間は、連続的な通過の各回が行われるごとに縮小されうるので、圧迫は常にバッテリーに対して加えられている。
バッテリーが圧迫ローラーどうしの間、圧迫ローラーそれぞれを通過する速度、より一般的にはスイープ速度は、1秒間に数mm~数十mmであってよい。
【0026】
更に、本発明による方法は、抽出段階の前に、バッテリーから少なくとも1つの「クリンプ」とも呼ばれる電気的コネクタを除去するステップを含むことができる。
これによりバッテリーの処理が容易になる。
【0027】
更に、本発明による方法は、抽出段階の前に、バッテリーの少なくとも一方の縁部、かつ特に各々の縁部において張り出している任意の材料を除去するステップを含むことができる。
第1の変法によれば、配置ステップは、バッテリーを前記バッテリーの第1の縁部が前記バッテリーの第2の縁部よりも下になる配向に配置することができる。
【0028】
バッテリーの、及び従って各バッテリーセルのそのような配向により、一方では重力によりセルからの融解リチウムの流出を促進すること、及び他方では融解リチウムと正極又は正極の集電体との間の接触(そのような接触は電気的短絡又は電気アークを引き起こす可能性があり、そのような短絡は火災の原因となる可能性がある)を回避することが可能となる。
この第1の変法の好ましい実施形態によれば、配置ステップは、第1の縁部が下を向いた状態でバッテリーを垂直に配置することができる。
【0029】
よって、各々のセルからの融解リチウムの流出は重力によって促進される。
加えて、融解リチウムと正極との間の接触の危険性は低減されるか、さらに言えば排除される。
好ましくは、この第1の変法では、バッテリーを加熱するステップは不活性ガスの中で行われるとよい。
そのようにして、本発明による方法は、事故の危険性、特に火災の危険性を低減する。
【0030】
加えて、本発明による方法は、リチウム抽出中の望ましからぬ、さらに言えば無制御な物理化学的反応により生成される可能性のある汚染物質の形成を回避することを可能とする。
【0031】
非限定的な実施形態によれば、不活性ガスは、次のガスすなわちヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)及びラドン(Rn)のうちいずれか1つであってもよいし、前記ガスのうちいずれか1つを含んでもよい。
この第1の変法の別の実施形態によれば、バッテリーを加熱するステップは真空下で行われてもよい。
【0032】
第2の変法によれば、配置ステップは、バッテリーを前記バッテリーの第1の縁部が前記バッテリーの第2の縁部より上になる配向に配置することができる。この場合、抽出段階はさらに、加熱ステップの前に、バッテリーを、液体リチウムよりも密度が高く電気的に絶縁性の、処理液と呼ばれる液体に浸漬するステップを含む。
【0033】
この第2の変法は、各々のセルが少なくとも傾斜せしめられて、その結果負極が突出している第1の縁部が、第1の縁部とは反対側の正極が突出している第2の縁部の高さよりも上になる、各セルの特定の配向を提示する。各々のセルのそのような配向により、一方では密度差により融解リチウムのセルからの流出を促進すること、及び他方では、融解リチウムと正極又は正極の集電体との間の接触(そのような接触は電気的短絡を引き起こす可能性があり、そのような短絡は火災の原因となる可能性がある)を回避することが可能となる。加えて、液体にセル群を浸漬することにより、特に短絡した際の、セルからの熱エネルギーの散逸を高めること、従って短絡の影響を大幅に制限することが可能となる。
【0034】
本出願において、「密度」とは、対象とする液体の密度と水の密度との間の比を指す。
この第2の変法の好ましい実施形態によれば、配置ステップは、第2の縁部が下を向いた状態でバッテリーを垂直に配置することができる。
その結果、密度差に起因した各々のセルからの融解リチウムの流出が促進される。
加えて、融解リチウムと正極との間の接触の危険性は低減されるか、さらに言えば排除される。
好ましくは、浸漬ステップはバッテリーを処理液に完全に浸漬することにより行うことができる。
【0035】
該処理液は、次の物理化学的性質、すなわち
― 疎水性でありかつリチウムに対して非反応性であること、
― 電気的に絶縁性であること、
― リチウムよりも密度が高いこと、
― 180.5℃であるリチウムの融解温度を超えても熱的に安定であること、
― 可能な限り高い引火点及び自然発火点
を具備する天然又は合成の油であってよい。
【0036】
本発明の別の態様によれば、少なくとも2個の電気エネルギー貯蔵セルを具備する固体又は準固体リチウム電解質バッテリーであって;
各々のセルは正極、負極及び固体又は準固体のリチウム金属を具備し;
前記セルの負極が突出している第1の縁部と、前記第1の縁部とは反対の、正極が突出している第2の縁部とを具備するバッテリー
からリチウムを抽出するための設備であって、
― 前記バッテリーを、前記第1及び第2の縁部のうち一方が前記第1及び第2の縁部の他方よりも下になる配向に配置するための手段と;
― 前記バッテリーを、前記固体リチウム金属の融解温度以上である処理温度と呼ばれる温度に加熱するように構成された加熱手段と
を具備する前記設備において;
前記バッテリーのセルのうち少なくとも2個、特に全てのセルの正極間の電気的接続を切断するための手段をさらに具備することを特徴とする設備が提案される。
【0037】
一般に、該設備は、上記に記載されており簡明にするためここでは詳細に繰り返し記載されない特徴のうち少なくとも1つの任意の組み合わせを実装するように構成された手段を具備することができる。
例えば、切断手段はギロチン式裁断機を含みうる。
特に、加熱手段はオーブンを含みうる。
【0038】
有利には、オーブンは、不活性ガスで満たされるか、又は真空状態であるか、又はさらに言えば液体リチウムよりも密度が高い処理液で満たされるとよい。
本発明による設備は、バッテリーを圧迫するための手段をさらに具備することができる。
圧迫手段は少なくとも1つのローラーを含むことができる。
【0039】
特に、圧迫手段は、バッテリーを支え面に対して押し付ける単一のローラーを含むことができる。支え面は、バッテリーの温度上昇を加速するために加熱されてもよい。
別例として、圧迫手段は、バッテリーを間に通過させる2つのローラーを含んでもよい。
一般に、圧迫手段は、抽出段階の全体にわたって連続的な圧迫を加えるように構成可能である。
【0040】
別例として、圧迫手段は、抽出段階の間に1回又は別々に複数回の圧迫を加えるように構成されてもよい。この場合、抽出段階は、バッテリーが圧迫されていない瞬間を含む。
【0041】
有利には、圧迫手段は、一定値又は様々な値の圧迫を、少しずつ、又はバッテリー表面をスイープすることにより、第2の縁部から第1の縁部へと加えるように構成されることが可能である。こうして融解リチウムは低い位置にある第1の縁部に向かって少しずつ移動/誘導され、これにより、回収されるリチウムの量が増大し、かつリチウムと正極との間の接触の危険性が低減される。
【0042】
1つ又は2つの圧迫ローラーを使用する場合、連続的な通過によってバッテリーに圧迫を加えることができる。通過のたびに、第2の縁部から第1の縁部へのバッテリー表面のスイープにより圧迫が加えられる。各々の通過の最後には、新たな通過を再開するべく第2の縁部に戻るために、ローラー同士を引き離すことにより、又はローラーを支え面から引き離すことにより、圧迫を停止させることができる。
ローラーどうしの間、圧迫ローラーと支え面との間それぞれの距離は、通過するごとに、具体的には2回の連続した通過の間で、縮小することが可能である。
【0043】
本発明は、いくつかのバッテリー、特にバッテリーパックを形成しており前記バッテリーパック内で並列に接続しているいくつかのバッテリーを処理するように実装することが可能である。
【0044】
少なくとも2個のバッテリーを、例えば第1の縁部と平行な方向に、重なり合うことなく隣り合わせに整列させることができる。
この場合、同一の圧迫手段、すなわち一組のローラー又は支え面と相互作用するローラーによって、少なくとも2個のバッテリーに圧迫を加えることができる。
【0045】
[図面及び実施形態の説明]
その他の利点及び特徴については、全く非限定的な実施形態の詳細な説明を検討すれば、かつ添付図面から、明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の意味におけるセルの非限定的な例示の実施形態を示す概略図。
【
図2】本発明の意味におけるバッテリーの非限定的な例示の実施形態を示す概略図。
【
図3】本発明による方法の第1の非限定的な例示の実施形態を示す概略図。
【
図4】本発明による方法の第2の非限定的な例示の実施形態を示す概略図。
【
図5】本発明による方法の第3の非限定的な例示の実施形態を示す概略図。
【
図6】本発明による設備の第1の非限定的な例示の実施形態を示す概略図。
【
図7】本発明による設備の第2の非限定的な例示の実施形態を示す概略図。
【
図8a】本発明において実行可能な、バッテリーセルの正極間の電気的接続の切断の実施例を示す概略図。
【
図8b】本発明において実行可能な、バッテリーセルの正極間の電気的接続の切断の実施例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
明確に了解されることであるが、以降に記載される実施形態は決して限定的なものでない。具体的には、以降に開示された特徴の中から、開示された他の特徴とは分離して特徴が選定され、この特徴の選定が技術的な利益を与えるか又は先行技術に対して本発明を差別化するのに十分である場合、この選定された特徴のみを具備する本発明の変形形態を想定することが可能である。この選定は、少なくとも1つの好ましくは機能上の特徴であって、構造上の詳細を欠いているか、又は構造上の詳細の一部分が単独で技術的な利益を与えるか若しくは先行技術に対して本発明を差別化するのに十分である場合にその一部分のみを有している、特徴を含む。
【0048】
図面においては、いくつかの図面に共通した特徴については同一の参照番号が使用されている。
図1は、本発明の意味におけるセルの非限定的な例示の実施形態の概略図である。
図1に示されたセル100は、固体リチウム金属の層で形成されているか又は固体リチウム金属の層を含む、負極102を具備する。
セル100はさらに正極104を具備する。
固体電解質層106は、負極102と正極104との間に配置構成されている。この固体電解質層106は、例えばリチウム塩を含むことができる。
【0049】
正極104は一般に、ポリマーと活性物質との複合層によって形成される。セル100はさらに、正極104の側面にあって正極104の一部を形成するか又は正極104に関連付けられた集電体108を具備することができる。集電体108は一般にアルミニウムで作製される。
【0050】
慣例的に、セル100の負極102は、セル100の第1の縁部110の側、ここでは図の右側に、セル100の他の要素よりも突出している。集電体108を備えた正極104は、第1の縁部110の反対の第2の縁部112の側に、セル100の他の要素よりも突出している。図中の例では、集電体108だけが第2の縁部112を越えて、ここでは図の左側に、突出している。他の例では、突出部分が正極104だけであることも、さらに正極104及び集電体108であることも考えられる。
【0051】
当然ながら、
図1に示されたセル100は、非限定的な例証のために提供された非常に単純化された実施形態である。本発明の意味におけるセルは、図示されたもの以外の層、又はより多くの層、又はその組成が非限定的な実施例としてここで示された組成とは異なっている層を、含むことができる。
【0052】
図2は、いくつかのセルを含むバッテリーの非限定的な例示の実施形態を示す概略図である。
図2に示されたバッテリー200は、各々のセル100
iの層の面に垂直な方向202に組み立てられた、いくつかの同一のセル100
1~100
nを具備している。
各々のセル100
iは
図1のセル100と同一であってよい。
【0053】
バッテリー200は、すべてのセル1001~100nの正極を互いに接続するワイヤ/トラック/接続ライン202を具備する。これらの接続ライン202は、バッテリー200の陽端子を形成するバッテリー200のコネクタ204に接続される。このコネクタ204は「クリンプ」とも呼ばれる。
【0054】
バッテリー200は、すべてのセル1001~100nの負極を互いに接続するためのワイヤ/トラック/接続ライン(図示せず)を具備する。これらの接続ラインは、バッテリー200の陰端子を形成するバッテリー200のコネクタ(図示せず)に接続される。
【0055】
図3は、本発明による方法の非限定的な例示の実施形態の概略図である。
図3に示された方法300は、バッテリーの電気的コネクタ、特に「クリンプ」とも呼ばれる集線装置が除去される、第1の選択式のステップ302を含む。
選択式のステップ304では、バッテリーの両側の縁部で張り出している全ての材料、特に固体リチウム金属が除去される。
次に、方法300は、バッテリーセルからリチウム金属を抽出するための段階306を含む。
【0056】
抽出段階306は、バッテリーを、負極が突出している第1の縁部が正極及び/又は集電体が突出している第2の縁部よりも低い高さになる配向に配置するステップ308を含む。特に、ステップ308は、バッテリーを、負極が突出している第1の縁部が下を向いた状態で垂直な配向に、すなわち重力ベクトルと平行に、配置する。好ましくは、しかし決して限定するものではないが、バッテリーは抽出段階306の全体にわたってこの配向に保持される。
【0057】
抽出段階306はさらに、バッテリーを、該バッテリー中に存在する固体リチウム金属の融解温度以上の処理温度、例えば180.5℃に加熱するステップ310を含む。この温度により固体リチウム金属は融解し、重力の影響下で自然に流れて各々のセルから抽出されることになる。好ましくは、しかし決して限定するものではないが、バッテリーは抽出段階306の全体にわたってこの温度に維持される。
有利には、加熱ステップは、不活性ガスで満たされた閉止チャンバの中で行なわれる。
【0058】
抽出段階306はさらに、バッテリーの各々のセルから融解リチウムを排出するためにバッテリーを圧迫する選択式のステップ312を含むことができる。圧迫は、抽出段階306の全体又は一部にわたって連続的に行うことができる。別例として、圧迫ステップ312は、抽出段階306の間に別々に数回繰り返されることも可能である。好ましくは、圧迫ステップ312は、バッテリーの表面に対して、正極が突出している第2の縁部から始めて負極が突出している第1の縁部に向かって、徐々に、又はスイープすることにより、圧迫を加える。
【0059】
何よりも方法300は、バッテリーセルのうち少なくとも2個、特に全てのセルの正極/集電体の間の電気的接続を切断するステップ314を含む。そのような切断ステップ314は、バッテリーセルの正極の間の電気的な連結を切断することによりバッテリーの反応性を低減することを可能にする。よって、抽出段階の間のバッテリー発火の危険性は低減され、その結果固体リチウム金属の回収を、より確実にかつ危険性をより低くして行うことができる。
【0060】
図示された例では、電気的接続を切断するステップ314は抽出段階306の前に行われる。別例として、切断ステップ314は、抽出段階306の中で、配置ステップ308の前、途中、若しくは後で、又は加熱ステップ310の前、途中、若しくは後で行われることも可能である。
本発明において実行可能な、セルの正極間の電気的接続を切断するステップのさらなる非限定的な例示の実施形態は、
図8a及び8bに関連して示されている。
【0061】
図4は、本発明による方法の別の非限定的な例示の実施形態の概略図である。
図4に示された方法400は、
図3の方法300と同様に、バッテリーの電気的コネクタを除去する選択式のステップ302と、バッテリーの各々の縁部で張り出している固体リチウム金属を除去する選択式のステップ304とを含む。
方法400は次に、バッテリーセルの正極間の電気的接続を切断するステップ314を含む。
【0062】
次いで、方法400はセルからリチウム金属を抽出する段階406を含む。
抽出段階406は、バッテリーを、負極102が突出している第1の縁部110が、正極104及び集電体が突出している第2の縁部112よりも垂直方向により高い位置になる配向に、配置するステップ408を含む。特に、ステップ408は、バッテリーを、負極が突出している第1の縁部110が上を向いた状態で垂直な配向に、すなわち重力ベクトルと平行に配置する。好ましくは、しかし決して限定するものではないが、バッテリーは抽出段階406の全体にわたってこの配向に保持される。
【0063】
抽出段階406は、液体のリチウムよりも密度が高い中性の処理液の中にバッテリーを浸漬するステップ410を含む。例えば、該処理液は、次の物理化学的性質、すなわち
― 疎水性でありかつリチウムに対して非反応性であること、
― 電気的に絶縁性であること、
― リチウムよりも高い密度、
― 180.5℃であるリチウム融解温度を超えても熱的に安定であること、並びに
― 可能な限り高い、例えば600℃より高温かつ少なくともセルの処理温度より高い、引火点及び自然発火点
を備えた、天然又は合成の油、例えばパラフィン油であってよい。
浸漬ステップ410は、処理液がバッテリーを完全に覆うようにバッテリーを前記処理液に浸漬することにより行なわれる。
【0064】
この浸漬ステップ410は、このステップによりバッテリーと処理液との間の大幅な熱交換が促進されて、これによりバッテリーの過熱の危険性及び短絡した場合に生成される熱エネルギー放出の危険性が制限され、かつ加熱反応速度が改善されるので、特に有利である。
抽出段階406はさらに上述の加熱ステップ310を含み、かつ場合により上述の圧迫ステップ312を含むことができる。
【0065】
加熱ステップの際に、処理温度は、超えると処理液が劣化する処理液の劣化温度を上回ってはならない。換言すれば、処理液は、閾値温度を上回ることにより、その特性が変化して上述の特性はもはや満たされないことになろう。理想的には、処理液の劣化温度は、リチウムの融解温度と比較して+40℃より高く、かつ例えば+20℃~+60℃でなければならない。
【0066】
図5は、本発明による方法の別の非限定的な例示の実施形態の概略図である。
図5に示された方法500は、
図3の方法300、
図4の方法400それぞれの全てのステップを含む。
方法500はさらに、方法300、方法400それぞれのステップの前に、バッテリーの少なくとも1個のセルを再充電するステップ502を含む。
前記少なくとも1個のセルは、部分的又は完全に再充電される。
セルを充電すると、再充電により前記セルの負極へ向かうリチウムイオンの移動が生じるので、抽出の対象となるリチウムの量を増加させることが可能となる。
【0067】
図6は、本発明による設備の非限定的な例示の実施形態の概略図である。
図6に示された設備600は、本発明による方法、特に
図3及び5の方法300及び500を実行するために使用することができる。
【0068】
設備600は、例えば
図2のバッテリー200のような固体リチウム金属を含むバッテリーのセルからリチウムの一部又は全部を抽出及び回収することを可能にする。
【0069】
設備600は、セル中に存在する固体リチウム金属の融解温度以上、例えば180.5℃又は181℃の処理温度にバッテリーを加熱するように構成された、不活性ガスで満たされているか又は真空状態のオーブン602を具備する。
【0070】
設備600は、バッテリー200を、第1の縁部110が第2の縁部112の高さより下に配置される垂直又は少なくとも傾斜した姿勢に保持するために、1対のクランプ604を具備する。クランプ604はそれぞれ、バッテリー200を垂直方向に移動させるために垂直レール606に移動自在に取り付けられる。
【0071】
設備600はさらに、バッテリー200の厚さからリチウム金属の固体層の厚さを差し引いた厚さに相当する隙間を間に有している1対のローラー608を具備する。1対のローラー608は、クランプ604が上に向かって移動された時にバッテリー200が第2の縁部112を先頭にしてローラー608の間を通過するように配置される。その結果、該ローラーにより、第2の縁部112から始めて第1の縁部110に向かって徐々にバッテリー200に圧迫が加わる。
【0072】
該設備はさらに、重力の影響で各セルから流出する融解リチウム金属を回収するための受皿610を具備する。受皿610はリチウムに対して不活性でなければならない。
有利には、設備600はさらに、バッテリーの正極の間の電気的接続を切断するための手段612を具備する。
【0073】
図示された実施例では、切断手段612はオーブン602の中に配置構成される。別例として、切断手段612はオーブン602の外側に配置構成されてもよい。例えば、切断手段612は、オーブン602の上方又はオーブンの側方に、又はオーブン602から距離をおいて、配置構成可能である。
【0074】
図示された実施例では、切断手段612は電気的接続を切断するように設計されたギロチン式裁断機である。バッテリー200は、例えばクランプ604によって、該バッテリーの第2の縁部の側がギロチン式裁断機の顎部の間になるように配置構成される。その後ギロチン式裁断機612は作動して、バッテリーセルの正極の間の電気的接続を切断する。
別例として、切断手段612は、剪断機、円板研削盤、レーザー切断手段であってもよく、かつより一般的には任意の適切な切断手段であってよい。
【0075】
図7は、本発明による設備の別の非限定的な例示の実施形態の概略図である。
図7に示された設備700は、本発明による任意の方法、特に
図4及び5の方法400及び500を実行するために使用することができる。
設備700は、以下に述べる違いに関するものを除き、
図6の設備600の要素をすべて具備する。
【0076】
設備700では、クランプ604は、バッテリー200の第1の縁部110が第2の縁部112より上方にある状態で、バッテリー200を傾斜した状態に、かつ優先的には垂直に、配向するように構成される。
加えて、オーブン602は回収用受皿610を具備しない。
【0077】
更に、1対のローラー608は、バッテリー200の第2の縁部112からバッテリー200の第1の縁部110へと圧迫を加えるためにバッテリー200の上方に配置される。
【0078】
更に、オーブン602は、バッテリー200を完全に覆う処理液702で満たされている。該処理液702は電気的に絶縁性かつリチウムに対して不活性であり、かつ特に融解リチウムよりも密度が高い。リチウムよりも密度が高いこの処理液702は、融解リチウムがバッテリーから出て処理液702の表面に位置付けられて該表面で回収されるように、融解リチウムを第1の縁部110に向かって誘導することを可能とする。
本発明では、バッテリーセルの正極の間の電気的接続の切断は様々な方法で行なうことができる。
【0079】
図8aは、バッテリーの正極の間の電気的接続を本発明に従ってどのように切断することができるかについての第1の例示の実施形態を示す。
【0080】
図の実施例では、切断は、バッテリー200のセル1001~100nの側の、第2の縁部112の位置、特に第2の縁部ぎりぎりの位置にある切断線802に沿って行なわれる。換言すれば、この実施例では、バッテリーを形成しているセルがバッテリーの第2の縁部において切断される。
失われるリチウムの量を低減するために、切断は第2の縁部112のすぐ近くで行なわれるとよい。例えば、切断は、第2の縁部112から2mm以下、又はバッテリー200の第1の縁部110と第2の縁部112との間のセルの大きさの1%以下の距離で、行なわれることが可能である。
【0081】
図8bは、バッテリーの正極の間の電気的接続を本発明に従ってどのように切断することができるかについての別の例示の実施形態を提供する。
【0082】
図の実施例では、切断は、電気接続ワイヤ202の側の、第2の縁部112の位置、特に第2の縁部ぎりぎりの位置にある切断線804に沿って行なわれる。換言すれば、この実施例では、バッテリーを形成しているセルは切断されない。
【0083】
この例示の実施形態は、セルの正極の間の電気的接続が切断された時に固体のリチウム金属がバッテリーの中に保持されること、又はバッテリーか取り出されないことを可能とし、これによりリチウムの回収率を改善することが可能となる。
【0084】
この例示の実施形態では、接続ワイヤ202は、切断後にはもはや正極間に何ら接触がないように、第2の縁部112に十分接近した位置で切断されなければならない。
当然ながら、本発明は上記に詳述された実施例に限定されない。
例えば、各々のセルの組成は
図1に示されたものとは異なっていてもよい。
【0085】
加えて、本発明による設備は、
図6又は7に示されたもの以外のデバイス、例えばバッテリーの電気的コネクタを切断するための手段、縁部のうちの一方又は各縁部の張り出し部を切断するための手段などを具備することができる。
【0086】
記載されたものの別例として、クランプ604は固着されていてもよく、かつ移動可能であるのがローラー608、ギロチン式裁断機612それぞれであってもよい。
【0087】
加えて、本発明は上述の実施形態に限定されず、カソードにポリマーを含まない固体又は準固体電解質バッテリーに適用することも可能である。本発明は、固体又は準固体の電解質と、固体又は準固体の電解質成分の融点温度まで安定なカソードとを有する任意のバッテリーに適用することができる。
【国際調査報告】