(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】多層導電構成を有する導電性の層構造体
(51)【国際特許分類】
A61B 5/263 20210101AFI20240905BHJP
A61B 5/271 20210101ALI20240905BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240905BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240905BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61B5/263
A61B5/271
B32B27/18 J
H05K1/02 P
H05K3/46 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514102
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2022073294
(87)【国際公開番号】W WO2023030940
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521113036
【氏名又は名称】スマートメディクス エスピー. ゼット オー. オー.
【氏名又は名称原語表記】SMARTMEDICS SP. Z O.O.
【住所又は居所原語表記】Pulawska 12/3, 02-566 Warsaw, Poland
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】グジェゴシュ ヴルブレフスキ
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン マチェイェフスキ
(72)【発明者】
【氏名】ウカシュ コルトフスキ
【テーマコード(参考)】
4C127
4F100
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127AA03
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4C127LL22
4F100AK51A
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5E316AA02
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5E338EE13
(57)【要約】
被検体の表面(12)への適用のための、特に医療用製品での使用のための導電性の層構造体(10)は、少なくとも1本の導電経路(16)を有する第1の導電層(14)と、少なくとも1本の導電経路(16)を有する少なくとも1層の他の導電層(14)と、第1及び他の導電層(14)間に少なくとも部分的に延在する少なくとも1層の中間層(24)と、を備え、第1及び他の導電層(14)の少なくとも各部分は層構造体(10)内で相互に重ねて配置され、層構造体(10)は弾性伸張可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の表面(12)への適用のための、特に医療用製品での使用のための、導電性の層構造体(10)であって、
少なくとも1本の導電経路(16)を有する第1の導電層(14)と、
少なくとも1本の導電経路(16)を有する少なくとも1層の他の導電層(14)と、
前記第1及び他の導電層(14)間に少なくとも部分的に延在する少なくとも1層の中間層(24)と、
を備え、
前記第1及び他の導電層(14)の少なくとも各部分が前記層構造体(10)内で相互に重ねて配置され、
前記層構造体(10)は弾性伸張可能である、層構造体(10)。
【請求項2】
前記中間層(24)は絶縁層であり、かつ/又は前記第1及び他の導電層(14)並びに前記中間層(24)は相互に対して相対移動不可でありかつ/若しくは少なくとも間接的に相互に対して固定されている、請求項1に記載の層構造体(10)。
【請求項3】
前記第1及び他の導電層(14)の少なくとも一方に対してシールド効果を与えるように構成された層を備え、前記シールド効果は、以下の:
導電接続の形成、
静電結合、
電磁誘導、
無線周波数干渉、
湿度などの、環境的影響
のうちの少なくとも1つを制限することに関する、請求項1又は2に記載の層構造体(10)。
【請求項4】
前記シールド効果を与える層は、前記第1及び他の導電層(14)の一方によって形成され、前記第1及び他の導電層(14)のそれぞれ他方に対してシールド効果を与える、請求項3に記載の層構造体(10)。
【請求項5】
前記第1及び他の導電層(14)の少なくとも一方は、能動電気部品を有さず、又は能動電気部品よりも多くの受動電気部品を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の層構造体(10)。
【請求項6】
前記第1及び他の導電層(14)が相互に導電接続され、かつ/又は前記第1及び他の導電層(14)が、内部又は外部デバイスに導電接続され若しくは導電接続可能なコネクタ(30)の形態の共通部品に対して、信号が前記導電経路(16)から前記デバイスに前記コネクタ(30)を介して伝達可能となるように、導電接続され若しくは導電接続可能である、請求項1から5のいずれか一項に記載の層構造体(10)。
【請求項7】
前記層構造体(10)の少なくとも1層が、熱可塑性ポリマー材料、特に熱可塑性ポリウレタン材料を含み、又はそれに付着された、請求項1から6のいずれか一項に記載の層構造体(10)。
【請求項8】
前記第1及び他の導電層(14)が、前記被検体の表面(12)において電気信号を捕捉するための測定点(18)に電気的に接続され及び/又はその一部である導電経路(16)を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の層構造体(10)。
【請求項9】
前記測定点(18)と前記被検体の表面(12)との間に全ての層(14、24、26)にわたって前記測定点(18)から延在する凹部(22)が設けられた、請求項8に記載の層構造体(10)。
【請求項10】
前記導電層(14)の少なくとも1層の少なくとも1本の導電経路(16)が、前記層構造体(10)を伸張する際に直線化可能な少なくとも1つの非直線部分(32)を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の層構造体(10)。
【請求項11】
被検体の表面(12)への適用のための、特に医療用製品での使用のための、導電性の層構造体(10)を製造する方法であって、
少なくとも1本の導電経路(16)を有する第1の導電層(14)を設けるステップと、
少なくとも1本の導電経路(16)を有する少なくとも1層の他の導電層(14)を設けるステップと、
前記第1及び他の導電層(14)間に少なくとも部分的に延在する少なくとも1層の中間層(24)を設けるステップと、
を備え、
前記第1及び他の導電層(14)が、その少なくとも各部分が前記層構造体(10)内で相互に重ねて配置されるように設けられ、
前記層構造体(10)は弾性伸張可能である、方法。
【請求項12】
前記第1及び他の導電層(14)の少なくとも一方が、前記中間層(24)に印刷又は付着される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1及び他の導電層(14)が、前記中間層(24)の両対向面に印刷又は付着される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記中間層(24)が、前記第1及び他の導電層(14)の少なくとも一方に印刷又は付着される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の導電層(14)が前記層構造体(10)の第1の小構造体(42)に設けられ、前記他の導電層(14)が前記層構造体(10)の第2の小構造体(44)に設けられ、前記第1及び第2の小構造体(42、44)が、前記層構造体(10)の少なくとも一部を形成するように接合される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の表面への適用のための、特に医療用製品での使用のための導電性の層構造体に関する。本発明は、その層構造体を製造する方法にも関する。層構造体は、被検体の生体認証パラメータを取得するために、特に被検体に対して心電図検査(ECG)、脳波検査(EEG)、筋電図検査(EMG)、電気脈波検査(EOG)、微小除細動及び/又は除細動を行うために構成される。
【背景技術】
【0002】
医療及び非医療の分野の双方において、電気的伝導性要素を備える広範な層構造体が被検体の表面、例えば、患者の身体と相互作用するのに採用される。
【0003】
例えば、電極パッチの形態の層構造体がECGモニタリング(ECG:心電図検査)のために、すなわち、被検体の生体認証パラメータを取得するために使用される。通常、電極パッチは、電極を、当該電極において生成されてそれによって検出された信号を測定するためのデバイスに接続する電気的伝導性(要するに「導電/導電性」)経路を備える。
【0004】
従来技術の電極パッチは特許文献1により周知であり、その開示が全体において参照によりここに取り込まれる。この教示は、従来技術の電極パッチ及びここに開示される電極パッチについての幾つかの使用事例を記載する。当該使用事例は、ここに開示される層構造体にも同様に当てはまる。
【0005】
さらに、層構造体は、例えば、EMS衣類(EMS:電気的筋肉刺激)のために使用され得る。
【0006】
層構造体、特に電極パッチは、高レベルの小型性及び/又はコンパクト性につながるサイズの制限などの様々な要件を満たさなければならない。
【0007】
コンパクト性は、特に、層構造体が被検体の表面を占有する面積を決定する層構造体のフットプリント、すなわち、底面積に関係する。そのフットプリント又は面積を制限することによって、例えば、被検体において層構造体の複雑さを減少させ及び/又は取付けを迅速化することが可能となり得る。これはまた、被検体の表面の占有が減少することを意味し得る。これにより、更なる層構造体又は他の医療システムを取り付けるための余地が残る。また、サイズの制限は、製造及び材料コストを低減し得る。
【0008】
さらに、コンパクト性を増すと、層構造体の効率及び信頼性は低下し得ることが確認されている。
【0009】
また、一般に、従来技術の構造体は、例えば、患者において取扱い及び位置決めが困難であることに起因して、適用が困難となり得ることが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3626158号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
取扱いが難しい、効率及び信頼性が低い、又はコンパクト性が低いなどの上記欠点の少なくとも一部を克服する、被検体の表面への適用のための層構造体を提供することが、本発明の課題である。
【0012】
特に、充分に信頼性が高くかつ/又は効率的な信号測定を実現するためのコンパクトな設計を有する層構造体を提供することが、本発明の課題である。
【0013】
さらに、被検体に容易かつ迅速に取付け可能な層構造体を提供することが、本発明の好適な課題である。
【0014】
これらの課題は、独立請求項の主題によって達成される。任意選択的な実施形態及び任意選択的な特徴は、従属請求項及び以下の説明において規定される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の態様は、被検体の表面への適用のための、特に医療用製品での使用のための層構造体に関し、その層構造体は、
・少なくとも1本の導電経路を有する第1の導電層と、
・少なくとも1本の導電経路を有する少なくとも1層の他の導電層と、
・第1及び他の導電層間に少なくとも部分的に延在する少なくとも1層の中間層と、
を備え、
第1及び他の導電層の少なくとも各部分は相互に重ねて配置され、又は言い換えるとそれらの間に中間層を挟んで相互に重ねて積層される。特に、導電層は(例えば、被検体の表面及び/又は層の平面に直交して延在する軸に沿って見た場合に)層構造体内で相互に重なり及び/又は交差するように(ただし、好ましくは接触せずに)配置され得る。言い換えると、少なくとも第1の導電層の一部分及び他の導電層の一部分が、層構造体内で一致して配置され得る。
【0016】
少なくとも2層及び好ましくは全層、又は少なくとも導電層及び/若しくは中間層が、相互に相対移動不可となり得る。好ましくは、これらの層は、例えば、単に相互に重ねて存在して相互に対して相対移動可能ではなく、相互に対して直接又は間接的に固定される。通常、層構造体は、構成要素が層構造体内で及び/又は相互に対して固定された単一の集積ユニットとして提供され得る。なお、この状態は、患者に取り付けられる前、例えば、層構造体を包装から取り出す時に既に与えられていることになる。
【0017】
概して好適な特徴として、層構造体は、弾性伸張可能である。さらに、本発明は、上記特徴を有する非弾性伸張可能な層構造体にも関するものであり、ここに開示される更なる態様のいずれかと組み合わされ又はそれに従って構成され得る。
【0018】
層構造体又は個々の層の弾性によって、負のモーションアーティファクトが減少し、被検体における位置決めが向上する。層構造体は、1%~1000%、好ましくは100%~900%、より好ましくは200%~800%、より一層好ましくは300%~500%、より一層好ましくは350%~450%の範囲で長手方向に伸張可能であり得る。層構造体の層の各々は、1%~1000%、好ましくは100%~900%、より好ましくは200%~800%、より一層好ましくは300%~500%、より一層好ましくは350%~450%の範囲で長手方向に伸張可能であり得る。導電層の各々は、1.0~100.0N/mm2、好ましくは2.0~50.0N/mm2、より好ましくは3.0~25N/mm2、より一層好ましくは5.0~15.0N/mm2の弾性率(E-modulus)を有し得る。
【0019】
層構造体が使用され得る医療用製品は、医療用パッチ、特に電極パッチであり得る。
【0020】
発明者らは、概して、コンパクトな設計を達成することと、効率及び/又は信頼性を満足することとの間の利害相反を認識した。
【0021】
例えば、導電層構造体をよりコンパクトにするために、当該層構造体内の導電経路の断面を減少させる必要があり得る。これにより、複数の導電経路を高密度にパッケージ化することが可能となる。
【0022】
ただし、結果として、印加可能な電圧及び電流が減少し、導電経路のオーム抵抗値は増加する。これにより、効率は低下する。
【0023】
また、高密度なパッケージ化によって導電経路が、例えば、隣接経路間のクロストーク及び/又は干渉に起因してノイズの影響を受け易くなり得る。これも、効率を制限し、より正確には、測定精度を制限する。
【0024】
またさらに、密集した層構造体内に多数の導電経路が集積されると、例えば、保護層のためのそれまでの残余の利用可能な空間が大幅に減少する。
【0025】
さらに、所望の信頼性を実現することの一部として、層構造体は、通常は充分な除細動耐性を有していなければならない。これは、被検体が除細動器から電気ショックを受けて電極パッチの電極がそれぞれ強い電気信号を検出し及び/又は概して当該ショックに電気的に曝露され得る場合に関係する。このようなシナリオでは、電極パッチは、例えば、過熱しないように又はその他損傷しないように構成されなければならない。なぜなら、これは(例えば、彼/彼女の皮膚を火傷させることよって)患者に有害となり得るためである。例えば、層構造体の、例えば絶縁層の降伏電圧を超えないようにしなければならない。また、電極パッチは、可能な限り早く、被検体の電気信号を正確に再測定する状態に戻らなければならない。これを除細動過負荷回復ということもある。
【0026】
ここでも、公知の電極パッチ設計のコンパクト性を高める場合に、除細動耐性及び過負荷回復が悪影響を受けることがある。
【0027】
一方、ここに開示される解決手段は、以下のように、これらの利益相反を解決するのに役立つ。導電経路を複数層に設けることによって、例えば、経路を1層の共通層内で相互に隣り合わせて配置することと比較して、層構造体のサイズ及び特にフットプリントが減少し得る。これは、上記態様によると、経路が相互に重ねて積層される場合に特に有効であり、それにより、例えば、層構造体の幅及び結果としてフットプリントが減少する。
【0028】
なお、層数を増加させることに起因して恐らくはもたらされる厚さの増加が許容可能となり、例えば、フットプリントの増加よりも許容可能となり得る。言い換えると、厚さの増加は、層構造体のコンパクト性を無用に低下させるものとはみなされない場合がある。なぜなら、当該コンパクト性は、好ましくは、層構造体によって占有される被検体の表面積のサイズに関するためである。このフットプリントの制限は、パッケージ化の観点でも好ましいものとなりかつ/又は潜在的な皮膚刺激の領域を減少させ得る。また、被検体の身体上のフットプリントが小さいほど運動中に収集する応力が小さくなり、信号が測定されている間に与えるノイズが低くなる。フットプリントが小さいと、被検体の身体における皮膚刺激も小さくなる。
【0029】
また、寸法が、特にそのフットプリントの観点で大きい層構造体は、適用が困難であり、それを行うのに二人以上が必要となり得る。ここに開示されるようなコンパクトなものは、追加の補助又は追加の接着テーピングなく一人で適用するのがより容易となり得る。これは、医療従事者がストレス及び時間的プレッシャーの下で動作する場合に特に適切となる。
【0030】
他の有利な効果が、例えば、信号伝送のために外部デバイスと接続するように構成された、制限されたフットプリント及び概ね減少したサイズのコネクタを提供する可能性からもたらされる。それらの導電経路を収容するための1層の主層のみを有する従来技術の層構造体は、通常はそれらの多数の導電経路を相互に隣り合わせにして(すなわち、一共通平面内で)上記コネクタに接続する。そのため、コネクタは大きなフットプリントも有し、それは通常はパッチの残余部よりも硬くなるために装着が不快となり、患者の身体に取り付けるのが困難となる。大型のコネクタにより、その利用可能な自由空間の必要性の増加のために患者の身体にそれを配置することが困難となり、又は不可能とさえなり得る。
【0031】
代替的に、一部の従来技術の解決手段は、電極パッチの平面に対して分散された複数のコネクタを用いる。これらは、適用及び接続が困難である。本解決手段は、好ましくは、1つのコネクタのみを有する。従来技術と比較して、概して小さなコネクタ及び/又は単一のコネクタが使用され得る。
【0032】
大型の単一平面/層の電極パッチは、既存の製造機器では製造するのが困難な場合があり及び/又は製造コストの増加を伴うことも確認されている。一方、本多層構造体は、その制限された層サイズのために(例えば、従来的に製造されてサイズ取りされた層を相互に重ねて積層することによって)既存の製造機器で製造可能である可能性が高い。一方で、同時に、多数の層にわたって分散される導電経路の機能性及び総数は増加する。
【0033】
また、導電経路を複数の層にわたって分散させることによって、経路の断面が(例えば、経路を1層の共通層に配置する場合のそれぞれの断面と比較して)層構造体のフットプリントを増加させることなく増加可能となる。このように、経路のオーム抵抗値が低下し、より大きな電流及び電圧が経路に印加可能となる。したがって、コンパクト性を増加させつつも、高い効率及び精度が実現可能となる。
【0034】
さらに、導電経路を異なる層に配置することによって、それらの間の距離を増加させることができ、それにより、例えば、除細動耐性が高まる。また、より大きな体積の(例えば、中間層によって構成される)材料が、それらの間に配置され得る。これにより、横方向及び縦方向の双方における電気的及び/又は熱的絶縁性が向上し得る。さらに有利なシールド効果は、以下に記載される。
【0035】
結果として、開示される多層構造体は、そのコンパクトな構造を除細動インパルスに対して依然として充分に耐性を有するものとする可能性を与える。言い換えると、多数の層及び導電経路が依然として存在可能であるので、コンパクト性が除細動耐性を低下させてしまうことはない。また、概して多数の導電経路は、特に、同様のサイズ及びフットプリントを有する既存の単層構造体と比較して、生体信号を検出する観点で解像度を増加させ得る。
【0036】
距離の増加及び/又は専用中間層を設けることによっても、局部熱集中の危険が低減する。これは、理論的には、層構造体の電極によって部分的に検出される(外部の)除細動パルスからもたらされ得る。同様に、電気的及び/又は熱的絶縁性の向上によって高電圧を印加することが可能となり、導電経路をノイズから遮蔽するのに役立ち得る。後者は、好適な例によると、例えば、外部の電磁外乱に対して導電経路をシールドする専用シールド層が設けられる場合に特に有効となる。なお、ここに開示される解決手段のフットプリントの好適な減少によって、このシールド層は制限されたサイズを有していてもよく、これによりコストが低減する。
【0037】
シールド層はいずれも受動的であってもよいし(例えば、電気駆動されず、又は給電されない)、能動的であってもよい(例えば、電気駆動され、又は給電される)。後者の場合、例えば、いわゆる駆動ガードが使用され得る。
【0038】
層構造体は、電極パッチであってもよく、通常は電気信号及び特に生体の生体信号を検出及び/又は捕捉するように構成され得る。したがって、層構造体は、例えば、マルチリードECGに使用され得る。そうするために、層構造体は、多数の電極を備え得る。層構造体の導電経路の少なくとも一部の各々は、補足信号を、例えば、コネクタ又は層構造体の他の部品に搬送するように少なくとも1つの電極に電気的に接続され得る。
【0039】
電極は、欧州特許出願公開第3626158号明細書(特許文献1)に開示される実施例のいずれかに従って測定点を備え、又はそれによって形成され得る。したがって、電極は、例えば、銀又は塩化銀からなり得る。また、電極は、導電層(好ましくはその選択された導電経路)と被検体との間の局部的な導電接続を構成することによって(例えば、被検体の表面に取付け可能な層構造体の表面に接続することによって)形成されてもよい。これは、導電物質(例えば、ゲル)が配置され得るチャネル、凹部、開口又は概して自由空間を導電層と好ましくはその選択された導電経路との間に設けるステップを含み得る。なお、これは、それぞれの導電層と、被検体に取り付けられる面との間において、局所的に穿孔し又は概して他のいずれかの層を通じて若しくはそれにわたって延在することを含み得る。これは、他の導電層及び/又は間に配置された中間層にわたって延在することを含み得る。
【0040】
導電層は、上記参照の欧州特許出願公開第3626158号明細書(特許文献1)に開示される実施例のいずれかに従って構成され得る。各導電層は、複数の導電経路を当該経路間の自由空間とともに備え得る。その経路は、相互に交差し、又は相互に局所的に電気的に接続され得る。これらは、追加的又は代替的に、相互から離れて及び/又は相互に平行に延在してもよく、通常は電気的に非接続となり得る。全体として、これは任意の導電層のネット状又はグリッド状の構造体となり得るものであり、その経路はこの構造体のそれぞれの部分を形成する。なお、いずれの導電層も結果として不連続となり得るが、層構造体の規定の(不連続の)層及び/又は規定の段を画定するものとみなされ得る。言い換えると、導電経路が延在する層構造体の平面又は段は導電層といえる。
【0041】
一方、導電層内の自由空間は、隣接層、例えば、絶縁層を設け、好ましくは積層する際に充填されてもよい。代替的に、導電層は、導電経路が配置され又はそれらが埋設される(好ましくは非導電性の)ベース層又は樹脂を含み得る。
【0042】
導電層の導電経路の各々は、1mm~5mm、好ましくは2mm~4mmの幅を有し得る。導電層の導電経路の各々は、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも2mm、より一層好ましくは少なくとも4mmの幅を有し得る。導電層の導電経路の各々は、5mm以下、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下の幅を有し得る。
【0043】
導電層は、好ましくはポリウレタン、シリコーン、ゴム及び/又はポリジメチルシロキサン樹脂などの弾性ポリマー樹脂を有する導電性粒子組成物を含み得る。特に、導電性粒子組成物は、銀-炭素ペーストであり得る。好ましくは、銀-炭素ペーストは、充分な導電性を確保するように少なくとも50重量%の銀ペーストを有する。一方、銀-炭素ペーストの銀ペーストの量は、コストを低減するために、例えば、90重量%未満、好ましくは80重量%未満に低減されてもよい。一方、想定される最良の伸張下でもペーストの導電性を維持するために、炭素ペーストの量は増加されてもよい。銀-炭素ペーストは、50重量%~90重量%の銀ペースト、より好ましくは60重量%~80重量%の銀ペースト、より一層好ましくは70重量%の銀ペーストを有し得る。銀ペーストは、30重量%~80重量%の固形分、好ましくは40重量%~70重量%、より好ましくは50重量%~60重量%の固形分を有し得る。固形分は、組成物の導電性粒子であってもよく、薄片、粉末、粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子、ナノチューブ、球体、ナノワイヤ、マイクロワイヤ、ワイヤ及びその他のうちの少なくとも1つの形態を有し得る。銀ペーストではない銀-炭素ペーストの重量パーセンテージは、炭素ペーストのみであってもよいし、又は他の成分に加えて炭素ペーストであってもよい。
【0044】
導電性粒子組成物は、各々がポリマー樹脂を含む銀ペースト及び炭素ペーストなど、異なる機能相を有する少なくとも2種類のペーストを混合することによって提供され得る。これら樹脂は相溶性でなければならない。代替的に、導電性粒子組成物は、炭素ペーストのみ若しくは銀ペーストのみなど、少なくとも1つの機能相を有する1種類のペーストによって、又は少なくとも2つの異なる機能相を有する1種類のペーストによって提供されてもよい。代替的に、導電性粒子組成物は、少なくとも1つの導電相、例えば、導電性ポリマーペーストを有する1種類のペーストによって提供されてもよい。
【0045】
例示的な導電性成分として銀及び炭素を上述してきたが、原理的には、Au、Cu及びその他の金属、導電性ポリマー並びに/又はヒドロゲルなど、全ての導電性材料が、銀及び/又は炭素に代えて又はそれに加えて使用され得る。
【0046】
充分な導電性を確保するために、導電層の各々は、直流~200kHzの周波数に対して0.005Ωmの最大抵抗率を有し得る。導電層の各々の抵抗率は、直流~200kHzの周波数に対して、好ましくは0.003Ωm未満、より好ましくは0.0005Ωm未満、より一層好ましくは0.00001Ωm未満、より一層好ましくは0.000001Ωm未満である。
【0047】
導電層の各々は弾性的、すなわち、伸張可能であり得るので、導電層は伸張下でも充分にそれらの導電性を維持可能である。例えば、4mmの幅を有する導電経路は、長手方向にその元の長さの150%の長さに延ばされた場合に、依然として0.5Ωm未満、好ましくは0.1Ωm未満、より好ましくは0.05Ωm未満、より一層好ましくは0.03Ωm未満の抵抗率を有し、特に長手方向にその元の長さの175%の長さに延ばされた場合には、1.0Ωm未満、好ましくは0.75Ωm未満、より好ましくは0.5Ωm未満、より一層好ましくは0.3Ωm未満の抵抗率を依然として有し、特に長手方向にその元の長さの200%の長さに延ばされた場合には、10Ωm未満、好ましくは5Ωm未満、より好ましくは2.5Ωm未満、より一層好ましくは1.7Ωm未満の抵抗率を依然として有し得る。
【0048】
また、2mmの幅を有する導電経路は、長手方向にその元の長さの150%の長さに延ばされた場合に、依然として0.5Ωm未満、好ましくは0.25Ωm未満、より好ましくは0.1Ωm未満、より一層好ましくは0.05Ωm未満の抵抗率を有し、特に長手方向にその元の長さの175%の長さに延ばされた場合には、1.0Ωm未満、好ましくは0.75Ωm未満、より好ましくは0.5Ωm未満、より一層好ましくは0.3Ωm未満の抵抗率を依然として有し、特に長手方向にその元の長さの200%の長さに延ばされた場合には、15Ωm未満、好ましくは10Ωm未満、より好ましくは8Ωm未満、より一層好ましくは7.5Ωm未満、より一層好ましくは5Ωm未満の抵抗率を依然として有し得る。
【0049】
また、4mmの幅を有する導電経路は、長手方向にその元の長さの150%の長さに延ばされた場合に、好ましくはその抵抗率を、10000%を超えて増加させず、より好ましくは7000%以下、より一層好ましくは5000%以下、より一層好ましくは4000%以下である。
【0050】
また、2mmの幅を有する導電経路は、長手方向にその元の長さの150%の長さに延ばされた場合に、好ましくはその抵抗率を、12000%を超えて増加させず、より好ましくは10000%以下、より一層好ましくは8000%以下、より一層好ましくは6000%以下である。
【0051】
銀-炭素ペーストに関して、より大量の炭素を有する銀-炭素ペーストはその導電性の観点で伸張に対する耐性がより高く、すなわち、そのようなペーストは伸張された場合に抵抗率の増加が少ないことが確認された。
【0052】
通常、層構造体のいずれの層も、例えば、構造、材質又はテクスチャの観点で同質であり得る。好ましくは、当該層は、ここに開示されるがそれらの組合せではない材料のいずれかを含み得る。これは、確実かつ予測可能な変形を支持し得る。
【0053】
同様に、層構造体のいずれの層も、閉じた皮膜、コーティングなどのように連続的であってもよいし、又は平面の一部の領域にのみ設けられた不連続構造体、パターン、皮膜、コーティングなどのように不連続であってもよい。そのため、本発明に係る層構造体の、上記及び以降に記載される層は、必ずしも層構造体の全ての領域に存在するわけではないことは明らかである。例えば、層の一部のみが、電極が形成される層構造体の領域に設けられてもよい。さらに、規定の層の全てが設けられる層構造体の領域があってもよい。
【0054】
層構造体の導電層の層数及び/又は全体の層数は、例えば、2~300、好ましくは2~100又は2~50の範囲であり得る。各層内の導電経路数は、例えば、1~300、好ましくは1~100又は1~50の範囲であり得る。
【0055】
多層構造体の任意の層及び特に導電層は、例えば、0.5μm~2000μm、好ましくは1μm~1000μm又は10μm~100μmの厚さを有し得る。
【0056】
導電経路幅は、例えば、0.1mm~10mm、好ましくは0.5~5mmの範囲であり得る。
【0057】
共通層に配置された導電経路間の距離は、例えば、0.1mm~20mm、好ましくは0.5mm~15mmの範囲であり得る。降伏電圧の望ましくない超過が0.5mm超、例えば、1mm超、又は少なくとも2mmの距離において確実に回避可能となることが分かっている。一方、中間層がより多く存在するほど、及び/又はこれらの層がより厚く若しくはより高い絶縁性を有するほど、導電経路が相互に対してより近くに位置決めされ得る。また、コンパクトな設計を実現するために、導電経路間の距離は、20mm未満、好ましくは15mm未満、より一層好ましくは10mm未満であり得る。
【0058】
さらに、任意の導電層の概ね好適な放射線透過性が、導電性粒子組成物を変化させ又は選択することによって調整可能となり得る。例示的な銀-炭素ペーストに関して、炭素ペーストの量が多いと、銀-炭素ペーストの放射線透過性が高くなる。ただし、例えば、ポリマー樹脂が導電性銀粒子を含む場合には、完全に銀ペーストからなる導電層であっても充分に放射線透過性となる場合があり、その導電層は比較的薄い。例えば、薄いとは、少なくとも100μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは25μm未満の厚さをいう。そのような薄い導電層は、それぞれの複合堆積物を与えることによって実現可能となる。
【0059】
追加的又は代替的に、層構造体は、担体層(例えば、硬化及び/又は安定化効果を与え、好ましくは、例えば、被検体とは逆を向く層構造体の外側層を形成する)及び記述層(例えば、複数の測定点の少なくとも1つ、並びに/又は被検体に対する層構造体の所定の位置決めを支援するための少なくとも1つの指示及び/若しくは少なくとも1つの基準点を可視化する)のいずれかを備え得る。
【0060】
複数の中間層が存在し得る。層構造体の外面を形成し又はそこに露出可能な粘着層が存在してもよい。接着層は、被検体の表面に粘着して層構造体をそこに固定するように構成され得る。
【0061】
通常、層構造体及び/又はそれによって構成されるいずれかの層は、透明でありかつ/又は放射線透過性であり得る。層構造体の面積の少なくとも90%は、例えば、任意選択的な接着層の放射線透過性及び/又は導電層のいずれかの放射線透過性によって、放射線透過性となり得る。好ましくは、層の面積の少なくとも95%が放射線透過性であり、より好ましくは少なくとも97%が放射線透過性である。より一層好ましくは、層構造体の面積の100%、すなわち、全面積が放射線透過性である。層構造体は好ましくは略平坦な形状又は構成を有しているため、層構造体の面積とは、層構造体の表面積をいう。
【0062】
ここで使用される放射線透過性という用語は、電磁界、磁界及び/若しくは電界並びに/又はX線若しくはMRIなどの一般的な(医療用)撮影手順で採用される放射線に対して、人間の軟質な組織、例えば、筋肉組織と同様の態様及び程度で、実質的に又は完全に透明な材料又は複合材料をいう。言い換えると、本発明に係る層構造体は、X線又はMRIの電磁放射線を遮断せずにそれを通過させ、それによりX線又はMRI画像に干渉して出現しない。したがって、本発明に係る層構造体は、X線又はMRI治療中の患者によって、その治療に悪影響を及ぼすことなく装着可能である。特に、放射線透過性は、層構造体、すなわち、放射線透過性材料が、血管造影及び/又は他の心臓/神経/放射線学的手順(診断及び/又は治療)中に撮影された一般的な病院のX線(RTG)並びに/又は蛍光透視及びX線フィルムの画像を画像輝度の60%を超えて暗転させることはないことを意味し得る。一般的な病院のX線の例示的システムは、40kV~70kVのランプ電圧及び8mA~12mAのランプ電流の例示的設定のSiemens Artis Zeeであり得る。施術者が依然として画像を査定及び評価することができるように、この最大の暗転を超過してはならない。特に、放射線透過性は、層構造体、すなわち、放射線透過性材料が、一般的な病院のX線(RTG)の画像を画像輝度の50%超えて暗転させず、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、より一層好ましくは28%以下、より一層好ましくは18%以下、より一層好ましくは5%以下であることを意味し得る。画像輝度が層構造体によって暗転されないほど、取得画像は施術者によって良好に査定及び評価され得る。言い換えると、放射線透過性は、好ましくは、層構造体、すなわち、放射線透過性材料が放射線を、40.0μGy/minを超えて減衰させず、好ましくは、40.0μGy/min以下、好ましくは30.0μGy/min以下、より好ましくは26.0μGy/min以下、より一層好ましくは23.0μGy/min以下であることを意味する。言い換えると、放射線透過性は、好ましくは、手順中に、放射された放射線の全体線量に対する、層構造体、すなわち、放射線透過性材料によって減衰された放射線の線量の比が5%を超えず、好ましくは3.5%を超えず、より好ましくは2%を超えず、より一層好ましくは1.7%を超えず、より一層好ましくは1.5%を超えないことを意味する。
【0063】
正確な放射線透過性は、例えば、特定の領域に存在する層の数、厚さ及び種類に応じて、層構造体の異なる領域において異なり得ることが理解されるはずである。例えば、接着層の放射線透過性は、導電層の放射線透過性よりも大きくてもよい。
【0064】
実施形態では、層構造体は、可能性ある複数の電極の少なくとも1つ、並びに/又は被検体に対する層構造体の所定の位置決めを支援するための少なくとも1つの指示及び/若しくは少なくとも1つの基準点を可視化する上記の記述層をさらに備え得る。記述層は、担体層上に、すなわち、担体層と導電層の間に配置され得る。好ましくは、記述層又は記述及び導電層は、唯一の透明でない層構造体の層である。結果的に、層構造体を被検体に適用する際に、ユーザは任意選択的な担体層を通じて記述層を見ることができ、担体層及び例えば接着層(及び好ましくはいずれかの導電層)を通じて被検体を見ることができ、それにより、記述層の部分を所定の印、基準点、解剖学的特徴物などに一致させることができる。例えば、肋間線及び胸骨線が基準点として用いられてもよく、それにより、V1/V2電極を第4肋間スペースではなく第2肋間スペースに配置してしまうといったよくある誤りを防止する。したがって、位置決めが簡素化され、層構造体がより正確にかつより迅速に位置決め可能となる。向上した位置決めによって、層構造体を用いて行われる測定の再現性及び一貫性も高まる。
【0065】
好ましくは、層構造体の(その表面積について)少なくとも80%が、少なくとも15%~90%光学的に透明であってもよく、好ましくは少なくとも40%光学的に透明であってもよく、すなわち、370nm~700nmの間の波長の可視光に対して15%~90%、好ましくは少なくとも40%の光透過率を有し得る。
【0066】
また、層構造体及び特に導電層を含まないその任意の層の組合せは、波長370nm~700nmの波長の可視光に対して15%~90%の光透過率、より好ましくは30%~70%、より一層好ましくは40%~55%の光透過率を有し得る。より好ましくは、波長680nmの光に対するそのような層の組合せの光透過率は、波長550nmの光に対する光透過率よりも大きい。特に、波長680nmの光に対するそのような層の組合せの光透過率は波長550nmの光に対する光透過率よりも1%~15%高く(すなわち、680nmに対する光透過率のパーセンテージ=550nmに対する光透過率のパーセンテージ+1%~15%であり)、好ましくは3%~10%高く、より好ましくは5~8%高い。好ましくは、波長680nmの光に対して、そのような層の組合せの光透過率は20%~90%、より一層好ましくは30%~80%、より一層好ましくは40%~60%、より一層好ましくは45%~55%である。中間層は、0.7~2.5の範囲、好ましくは1.0~1.8、より好ましくは1.2~1.6の範囲、より一層好ましくは約1.4の屈折率を有し得る。
【0067】
層構造体の伸張特性は、被検体の表面において層構造体の迅速かつ正確な取付けを支援する。例えば、層構造体は、表面の形状により良好に調整され及び/又はその表面の所望の領域を正確に被覆するように(例えば、被検体の表面に既に部分的に取り付けられた状態で)伸張され得る。したがって、層構造体は、様々な被検体のサイズ及び形状に対して利用可能となる。
【0068】
層構造体の伸張を支持するために、好ましくは、導電層を含むその各層も伸張可能である。なお、弾性的伸張、すなわち、可逆可能な弾性変形が、概して好適である。これは、例えば、その自重下で変形するが伸張可能ではなく、ましてや弾性伸張可能でもない非剛性の柔軟な層構造体を提供することとは異なる。これは、例えば、通常の柔軟な回路基板にも当てはまる。開示される層構造体も、概して非剛性かつ柔軟であり得る。それは、例えば、少なくとも幾らか弾性伸張可能で柔軟な回路基板を備え得る。
【0069】
層構造体又はその個々の層の概して好適な弾性によって、負のモーションアーティファクトが減少し、被検体に対する位置決めが向上する。任意選択的な弾性接着層は、1%~1000%、好ましくは100%~900%、より好ましくは200%~800%、より一層好ましくは300%~500%、より一層好ましくは350%~450%の範囲で長手方向に伸張可能であり得る。任意の弾性導電層は、1%~1000%、好ましくは100%~900%、より好ましくは200%~800%、より一層好ましくは300%~500%、より一層好ましくは350%~450%の範囲で長手方向に伸張可能であり得る。接着層及び導電層の双方の弾性によって、被検体の形状及び寸法への、例えば、患者の身体への最適な適用及び適合が可能となる。したがって、層構造体は、異なる被検体のサイズ及び形状に対して利用可能である。
【0070】
実施形態では、任意選択的な接着層は、1.0~600.0N/mm2、好ましくは2.0~500.0N/mm2、より好ましくは3.0~250.0N/mm2、より一層好ましくは3.0~20.0N/mm2の弾性率を有し得る。任意の導電層は1.0~100.0N/mm2、好ましくは2.0~50.0N/mm2、より好ましくは3.0~25N/mm2、より一層好ましくは5.0~15.0N/mm2の弾性率を有し得る。接着層の弾性率は、任意の導電層の弾性率よりも高くてもよく、特に、接着層の弾性率と任意の導電層の弾性率との比は0.6~10.0の範囲、好ましくは0.6~6.0又は1.0~6.0の範囲、より好ましくは0.6~1.3の範囲、より一層好ましくは1.0~1.3の範囲であり得る。
【0071】
信頼性の高い弾性的伸張は、層構造体の少なくとも1層(例えば、中間層)が変形可能ポリマーを含む場合に実現され得る。例えば、上記層は、熱可塑性ポリマー層、特に、TPU層、PET層、シリコーン層などのうちの少なくとも1つなどのポリマー層として構成され又はそれを含み得る。代替的又は追加的に、層構造体のいずれかの層が、紙又は布などの他の材料を含んでいてもよい。その層は、不織布、織物、皮膜、発泡体、コーティングなどであり得る。また、ポリマー層は、シリコン処理されていてもよい。これは、例えば、製造時にポリマー樹脂をシリコン処理された紙上に成型することによって実現され得る。そのような紙は、層の粗さを決定することにもなる。結果として得られる層の(ISO4287:1999に従って試験される)例示的な粗さは、1~1.5μmPa、1.2~1.7μmPqの範囲、6.4~6.9μmPz及び3.6~4.1Ppの範囲となり得る。
【0072】
中間層は、導電層の材料とは異なる材料を含み得る。以下に詳述するように、中間層は、導電層と比較して異なる電気特性を有していてもよく、例えば、より低い導電性を有していてもよいし、導電性を全く有さなくてもよい(すなわち、絶縁性であってもよい)。中間層は、積層によって、又は導電層(特に、上記層を構成する導電経路)を中間層上に印刷若しくは通常は堆積させることによって、導電層のうちの少なくとも1層に付着され得る。
【0073】
中間層は、例えば、それを、例えば、紙、含浸紙、プラスチックフィルム(例えば、ポリプロピレンフィルム)又はプラスチックプレートからなる追加の層として挿入することによって設けられ得る。代替的に、それは、導電層上に直接堆積された(例えば、印刷され、成型され、スピンコーティングされ、真空蒸着された)特殊コーティング(例えば、パリレン)として設けられてもよい。その後、第2の導電層が、中間層の上部に設けられ(例えば、印刷され)得る。また、層構造体を製造する方法の例を以下に示す。
【0074】
任意選択的な接着層によって構成される接着剤が、例えば、接着層によって構成される支持層上に堆積された接着フィルムとして提供されてもよい。接着剤は、弾性的(伸張可能)であり得る。接着剤は、接着層の本来的な特性であり得る。接着剤は、接着層の特定領域に局所的に提供されてもよいし、接着層の実質的に全面を被覆してもよい。接着剤は、他の方法によって、印刷、分注、噴霧又は堆積されてもよい。接着剤は、皮膚刺激を回避するとともに層構造体の快適性を高めるために皮膚に優しいものであり得る。特に、接着剤は、生体適合性であり得る。好ましくは、細胞毒性試験時に接着剤に接触する細胞の細胞生存の比は、DIN EN ISO 10933-10:2010に準拠して試験され、0.7よりも高く、好ましくは0.8よりも高く、より好ましくは0.9よりも高くなり得る。
【0075】
前述したように、層構造体の除細動耐性のここでの改善は、除細動過負荷回復能力を含み、又はそれとして特定され得る。この能力は、例えば、除細動パルスを被検体に印加した後に(かつ、例えば、規定の時間間隔が経過した後に)、好ましくは他の電圧源に接続されていない層構造体の電極が規定の閾値以上の残留電位を有してはならないことを要し得る。例えば、被検体に接続され及び/又は相互に少なくとも間接的に(例えば、被検体の表面に適用された導電性ゲル、すなわち、ゲル-ゲル接続によって)接続された一対の電極は、除細動試行の後に100mVの最大絶対極性電位を有し得る。電位差は、除細動試行の後、例えば、5秒後の数秒間に測定され得る。このように、電極によって測定された信号が実際に被検体から生じ、従来の除細動過負荷によってもたらされる残留電位差によっては支配されないことが保証される。
【0076】
ここで、例えば、ゲル-ゲル接続された任意の電極が、所望の除細動過負荷回復能力を与えることになり、及び/又は当該除細動過負荷回復能力が存在することを確認するように検査され得る。
【0077】
追加的又は代替的に、除細動耐性は、除細動試行の後に層構造体の電極間の安定残留極性電位を維持する能力を含み及び/又はその能力として特定され得る。これは、例えば、上記電位の変化速度が(例えば、除細動試行に続く規定の時間幅中に)規定の閾値を超えないことを含み得る。例えば、変化速度は、上記の極性電位を測定した後の数秒、例えば、30秒の時間間隔内で±1mV/secに制限され得る。これにより、例えば、除細動試行の後の全体ECGシステムの正確な自動リセットが可能となる。通常、それは、除細動前の状態からの許容閾値(例えば、0.5mV未満)を上回るベースラインのドリフト又はベースラインの逸脱など、ECGシステムに起こる望まれない効果を制限するのに役立ち得る。
【0078】
追加的又は代替的に、除細動耐性は、除細動パルス後に、例えば、10kΩ、好ましくは5kΩ、より好ましくは3kΩの最大インピーダンスを有する上記電極対を含み及び/又はその電極対として特定され得る。これは、ECGシステムの10Hz設定において測定され得る。
【0079】
層構造体が上記要件のいずれか又は各々を満たすか否かを判定するための可能な試験設定は(例えば、上記種類の少なくとも1つの電極対を含み、例えば、適宜の試験面に取り付けられた)層構造体を、少なくとも1つの放電コンデンサ又は多数の連続放電コンデンサに曝露することを含む。好適な例では、例えば、2分まで、好ましくは1分まで、より好ましくは30秒まで(例えば、15~30秒)の時間間隔後に連続的に放電し得る少なくとも4個の連続放電コンデンサが設けられる。上記特性(電位差、その変化速度、インピーダンス)のいずれかが、コンデンサのうちの1つの各放電後に特定され得る。適宜のコンデンサは、例えば、10μFのコンデンサであり、200Vまで充電され、好ましくは100Ωのオーム抵抗値の直列電極対を通じて放電されるものである。
【0080】
好適な実施形態によると、中間層は、絶縁層であり、又は言い換えると非導電である。これは、導電層間の所望の電気的絶縁を与えるのに役立ち得る。シールド/ガードを構成する他の導電物でコーティングされる場合、それは、例えば、電磁照射の望まれない影響に対するシールド効果を与えることにもなる。また、中間層は、スペーサ及び/又は断熱材として作用し、それにより、例えば、層構造体の除細動耐性が向上し得る。
【0081】
通常、各層間、好ましくは少なくとも一対の隣接導電層の間の電気的絶縁は、少なくとも10GΩの絶縁抵抗、好ましくは少なくとも15GΩ、より好ましくは少なくとも18GΩ、より一層好ましくは少なくとも20GΩ、より一層好ましくは少なくとも50GΩ、より一層好ましくは少なくとも100GΩの絶縁抵抗となり得る。この絶縁性は、少なくとも1層の中間層によって与えられ得る。
【0082】
追加的又は代替的に、中間層の降伏電圧は、少なくとも100V、好ましくは少なくとも500V、より一層好ましくは少なくとも1kV、より一層好ましくは少なくとも2kV、より一層好ましくは少なくとも2.5kV、より一層好ましくは少なくとも4kV、より一層好ましくは少なくとも6kVであり得る。
【0083】
好適な例によると、層構造体は、第1及び他の導電層の少なくとも一方に対してシールド効果を与えるように構成された少なくとも1層を備え、シールド効果は、以下の:
・例えば、導電層の少なくとも1本の導電経路と当該層の外部の構造体との間の導電接続の形成、
・例えば、導電層の少なくとも1本の導電経路と当該層の外部の構造体との間の静電結合、
・例えば、導電層の少なくとも1本の導電経路と当該層の外部の構造体との間の電磁誘導であって、導電経路は、例えば、外部の一次巻線又は一次構造体によって(シールド効果なく)励起され得る二次巻線又は二次構造体として作用し得る、電磁誘導、
・例えば、導電層の導電経路によって検出され、それによって搬送される電気信号にノイズを付加し得る無線周波数干渉、
・湿度、温度、塵埃又はガスなどの環境的影響
のうちの少なくとも1つを制限すること(又は好ましくは完全に抑制すること)に関する。
【0084】
上記シールド効果のいずれかを達成するために、当該層は、適切に選択された材料特性を有し得る。上記最初の4種のシールド効果の場合、これらの特性は、当該層の、そのオーム抵抗値又は電磁波透過率などの電気的特性であり、又はそれに関するものであり得る。環境的影響に対するシールドについて、当該層は、低い熱伝導性及び/又は水密性、気密性若しくは防塵性を有し得る。例えば、当該層は、水密性に関しては1~8のいずれかのIP(侵入保護)等級を満たし、防塵性に関しては5~6のいずれかのIP等級を満たし及び/又は特に1μm~100μmの塵埃サイズに対する密閉性を与え得る。
【0085】
一例では、当該層は、電波に対して1~40dB(約1.26~10000倍)、より好ましくは5~35dB(約3.16~約3162倍)、より一層好ましくは10~30dB(10~1000倍)の遮蔽因子を有し得る。通常、電磁照射に対するシールドを実現するためには、当該層は、好ましくは、例えば、導電層のオーム抵抗値と同等であり得る(例えば、20%を超えて又は10%を超えて相違しない)低いオーム抵抗値を有する。
【0086】
当該層は、導電層又は中間層の一方であり得る。中間層は、例えば、非導電性シールド効果及び/又は断熱性を与え得る。導電層は、一方で、例えば、低いオーム抵抗値を有することに起因して、電磁誘導に対して相互を少なくとも部分的にシールドし得る。
【0087】
したがって、好適な例では、シールド効果を与える層は、第1及び他の導電層の一方によって形成され、第1及び他の導電層のそれぞれ他方に対してシールド効果を与える。追加的又は代替的に、シールドは、層構造体によって構成されるいずれかの導電層又は導電部分、例えば、生体信号を搬送するために設けられたものではない層又は部分によって、与えられてもよい。一例では、そのようなシールド層又は部分は、少なくとも部分的に層構造体に垂直に延在して、例えば、垂直方向にシールドされる導電層に沿って延在し又はそれを囲んでいてもよい。
【0088】
追加的又は代替的に、上記シールド効果のいずれかを与える他の層及び特に専用シールド層があってもよい。当該層は、層構造体の導電層同士の間又は最外導電層のいずれかとそれぞれ隣接する外面層との間に配置され得る。一例では、シールド層は、それぞれの外面層によって構成され、又はそれを形成する。専用シールド層を設けることによって、所望のシールド効果が特に確実に達成され得る。
【0089】
好適な例によると、第1及び他の導電層の少なくとも一方は、能動電気部品を有さず、又は能動電気部品よりも多くの受動電気部品を備える。確立された定義に従うと、受動電気部品は、外部電源を要することなくその所望の機能を与える部品であり得る(例えば、抵抗器、トランス又は導電経路であり得る)。一方、能動電気部品は、外部電源を必要とすることになり、例えば、トランジスタ又はマイクロコントローラであり得る。能動電気部品は、供給された電力を用いて電気信号を制御又は補正し得る。
【0090】
能動電気部品は通常は変形し難く又は変形不能でさえあるため、より多くの又は排他的に受動電気部品を用いることによって弾性伸張性が向上し得る。また、これにより、(例えば、比較的高価なマイクロコントローラを含まないことに起因して)層構造体の製造コストが低減し得る。したがって、層構造体は、使い捨ての要素として経済的に利用可能となり得る。
【0091】
任意選択的な態様は、第1及び他の導電層が相互に導電接続されることを含む。例えば、第1の導電層の少なくとも1本の導電経路が、他の層の導電経路に接続されてもよい。これは、例えば、複数の測定点を1つのチャネルに接続し及び/又はアンテナを設けるために、中間層内で又は中間層にわたって専用の導電接続部を形成することによって行われ得る。それ以外では、中間層は、非導電性であってもよい。それは、そのような任意選択的な局部的な接続部とは別に、導電層及びそれらの導電経路を相互に対して電気的に離隔してもよい。代替的に、それぞれの接続部はなくてもよく、導電層は完全に相互に対して離隔されてもよい。
【0092】
追加的又は代替的に、第1及び他の導電層は、内部又は外部デバイスに導電接続され又は接続可能なコネクタなど、共通の部品に導電接続され又は導電接続可能であってもよい。この接続によって、信号を導電経路から外部デバイスにコネクタを介して伝達することが可能となり得る。このように、コストのかかる電気部品及び特に能動部品(特に信号解析に必要なロジック部品又はマイクロコントローラ)は、層構造体の外部に設けられ得る。これによっても、層構造体のコストが低減し、それを経済的に使い捨てとしてもよい。
【0093】
コネクタは、放射線透過性のポリマー系コネクタであってもよい。したがって、それは、X線、MRI又はCT検査のためには電極の除去を必要としない。また、コネクタは、光学的に透明であり得る。コネクタは、単一のソケットコネクタであってもよい。一部の好適な実施形態では、コネクタは、層構造体の取付け状態における被検体とは逆を向く方向に導電経路を露出させるように構成されてもよい。これは、特に、層構造体が、層構造体の取付け状態における被検体とは逆を向く層構造体表面に向けて導電層のいずれかを被覆する担体層を備える実施形態に当てはまる。コネクタは、層構造体の取付け状態における被検体とは逆を向くその表面に導電トレースを有するポリマープレートであってもよい。コネクタは、以下の態様で層構造体に装着される。その態様では、その導電トレースが導電層の導電経路に面しかつ部分的に重なり、より正確には、コネクタの1つの導電トレースが導電層の1本の対応する導電経路のみに部分的に重なり、それにより、導電経路が向く方向を、被検体に向く方向から、層構造体の取付け状態における被検体とは逆を向く方向に反転させる。コネクタの導電トレースは、導電層と同じ組成を有し得る。
【0094】
導電層、電極の任意選択的な物質(例えば、ヒドロゲル)及びコネクタの導電トレースを介した層構造体の導電接続の全てを実現することによって、層構造体は全体としてケーブルをなくすことができ、これにより、層構造体が適用される被検体の快適性が高まる。また、それは、電極が不用意に抜けないことを保証する。さらに、ケーブルが少ないことによって、電磁干渉の収集が少なくなる。
【0095】
更なる実施形態では、デバイスは、磁気的及び/又は機械的にコネクタに取外し可能に接続可能である。コネクタには、1以上の磁石、スナップコネクタ、接着剤又はクリップコネクタが設けられてもよく、デバイスには除去可能な接続を確立するように対応の相手方が設けられ得る。代替的に、デバイス及びコネクタは、単一の一体化部品であってもよい。好ましくは、デバイスは、層構造体によって取得された信号をプロセッサ又は解析部に無線伝達するように送信機を備える。無線伝送には、Bluetooth(登録商標)、近距離通信、WLAN、ZigBee(登録商標)、Z-Wave、LoRa及び/又はGPRSなどの無線通信が使用され得る。代替的に、デバイスは、ケーブルを介して信号を送信してもよい。デバイスは、自動化された信号解釈の方法に使用され得る。また、層構造体から、スマートフォン、タブレット、ラップトップなどのような遠隔デバイスまでの取得信号の連続モニタリングが、ライブ無線伝送により実行されてもよい。
【0096】
層構造体は、変形可能であり、特に屈曲可能であり得る。これは、例えば、何らかのコネクタに接続するために必要に応じて層構造体を配向するのに役立ち得る。
【0097】
例えば、ここに開示される多層設計に限られないが異なる態様で構成された層構造体においても使用され得る更なる態様によると、導電層は、概略として上述したようなコネクタに接続するために専用端部又は接続用部分(例えば、上述したような導電トレース若しくは端部及び/又は接続用電極)を有し得る。これらの接続用部分は、層構造体を適用する際に患者の皮膚に対して、例えば、皮膚と逆を向く層構造体の裏面、外面又は基板に対するよりも近くに配向され得る。具体的には、接続用部分は、例えば、層構造体をそこに取り付ける際に患者の皮膚に最初に面する層構造体の下面付近に、下面に又は下面内に設けられ得る。この状態において、接続用部分は、例えば、上面と上記接続用部分の間に多数の中間層が延在するために、コネクタをそこに接続するためには、上方から(すなわち、層構造体の上面から)アクセス可能でなくてもよい。
【0098】
それでもなお、コネクタを接続するために、層構造体は、概略として、例えば、少なくとも部分的に屈曲されるように構成されてもよく、それにより、接続用部分を備える層構造体の少なくとも一部分が患者の皮膚までの距離を増加させて配置されるように裏返されかつ/又は再配向され得る。この部分は、患者の皮膚に粘着されないが、それに対して屈曲及び移動され得る。
【0099】
例えば、上記接続用部分を備える層構造体の縁部分が(例えば、層構造体を適用する際に、最初に皮膚に沿って若しくは平行に延在した後及び/又は好ましくは皮膚に面した後に)後方に及び/又は皮膚から離れて屈曲され又は折り畳まれ得る。
【0100】
コネクタが取り付けられる接続用部分を備える部分は、患者の皮膚に対して最大距離を有する層構造体の部分を画定する程度に屈曲され又はさらには折り畳まれてもよい。例えば、この部分は、例えば、C字形状(例えば、層構造体の少なくとも一部分のC字形状断面)を画定するように、皮膚に対して平行な延長線に対して90°以上屈曲され得る。屈曲することは、層構造体の下面の一部が結果としてそれぞれ屈曲した層構造体の下面の一部となることにより、接続用部分及び/又はコネクタが取り付けられる層構造体の部分を裏返すことともいえる。
【0101】
上記をまとめると、本開示の更なる態様は、被検体の表面への適用のための、特に医療用製品での使用のための導電層構造体に関し、
・少なくとも1本の導電経路を有する少なくとも1層の導電層であって、当該導電経路は、層構造体をコネクタ(例えば、ここに開示される種類のいずれかのコネクタ)に導電接続するための少なくとも1つの接続用部分を備え又はそれに接続された、導電層
を備え、
層構造体の少なくとも一部分(例えば、接続用部分を備える部分)は、接続用部分の配向が調整され得るように折畳み可能である。この調整は、上記特徴のいずれかを含み、例えば、層構造体の、特にその縁部分の上記少なくとも部分的な裏返しとなり得る。
【0102】
また、本開示の更なる態様は、上記態様又はここに開示されるような多層設計に関する態様のいずれかに係る導電層構造体を適用する方法に関する。その方法は、層構造体を患者の皮膚に適用するステップと、層構造体をコネクタ(例えば、ここに開示される種類のいずれかのコネクタ)に接続するための接続部分を備える層構造体の一部分を折り畳むステップと、コネクタを当該折り畳まれた部分に接続するステップと、を備える。当該折畳み(又は屈曲)は、ここに記載される態様のいずれかに従って実施され得る。
【0103】
上記更なる態様に係る導電層構造体及び方法は、多層設計に関連してここに開示される特徴のいずれかと組み合わされかつ/又はそれをさらに備えてもよい。
【0104】
好適な実施形態によると、層構造体の層の少なくとも1層は、熱可塑性ポリマー材料、特に熱可塑性ポリウレタン材料を含み又はそれに付着される(例えば、積層される)。これは、特に、導電層が粘着される(又はその上に形成される)層、又は導電経路が設けられる(例えば、印刷又は堆積される)導電層のベース層であり得る。それぞれの材料を用いることによって、好適な弾性伸張が実現可能となる。
【0105】
好ましくは、第1及び他の導電層の少なくとも一方は、表面における(又は表面の)電気信号を測定するための電極に電気的に接続され及び/又はその一部である導電経路を有する。言い換えると、導電層の少なくとも1層は、好ましくは、被検体の電気信号を捕捉するように構成された電極を備え又はそれに接続される。電極は、例えば、(例えば、導電経路の端部又は露出部分によって形成される)導電層の測定点と、当該点から層構造体の外面に延在する(すなわち、当該面と測定点の間の接続チャネル又は自由空間を形成する)凹部とによって形成され得る。また、ヒドロゲルなどの導電物質が、凹部に提供されてもよく、好ましくは電極の一部を形成してもよい。
【0106】
まとめると、測定点と被検体の表面との間に全ての層にわたって測定点から延在する凹部が設けられ得る。
【0107】
また、凹部及び/又は凹部の境界によって穿孔される(例えば、その壁部を形成する)層の任意の部分が、電極の一部とみなされ得る。
【0108】
なお、相互に重ねて延在する導電層のために、これは、凹部が上側導電層から下側導電層を介して被検体の表面に向けて延在することも意味し得る(上側及び下側の用語は、その表面からの距離をいう)。
【0109】
凹部は、1つの測定点のみへのアクセスを与えてもよいし、又は(例えば、それぞれの複数の測定点に跨ることによって)複数の測定点へのアクセスを与えるほど充分に広くてもよい。
【0110】
追加的又は代替的に、特定の導電層及び/又は測定点若しくはその電極へのアクセスを与えるために、少なくとも1層の他の、好ましくは下層(例えば、患者の皮膚に適用された場合の下側)が当該導電層の部分を被覆しなくてもよい。言い換えると、全ての層が相互に対して完全に一致して配置されなければならないわけではない。例えば、1層(好ましくは導電層)の縁部又は端部は、他の(好ましくは下側の及び/又は非導電性の)層によって被覆されなくてもよい。それは、被覆されるのではなく、層構造体の側部にさらに突出し若しくは張り出してもよく、かつ/又はより大きなフットプリントを有してもよい。したがって、その測定点及び特にその少なくとも1つの電極は、患者の皮膚に直接対向しかつ/又は接続可能であってもよい。
【0111】
言い換えると、この態様によると、少なくとも1層の導電層は、好ましくは少なくとも1つ又は複数の電極を備えかつ中間層によって皮膚から遮断及び/又は電気的に離隔されない部分(例えば、側部又は縁部)を有し得る。なお、それぞれの非遮断部分は、当該導電層の電極のフットプリントよりも大きくてもよく、例えば、少なくとも2倍又は少なくとも5倍大きくてもよい。これは、そのフットプリントが通常は電極のフットプリントに制限されかつ/又はそこから大きくは逸脱しないようなここに記載のチャネル状凹部によって提供されるもよりも大きな非離隔部分を画定し得る。導電層のそれぞれ大きな非被覆部分を設けることは、皮膚と導電層の間の信頼性の高い導電接続を実現するのに(例えば、製造に関して)効率的な態様となり得る。
【0112】
更なる例によると、導電層の少なくとも1層の少なくとも1本の導電経路は、層構造体を伸張する際に直線化可能な少なくとも1つの非線形な又は非直線の部分を有する。これは、湾曲した、屈曲した、角度付きの、ジグザグ形状の、巻かれた又は他の非線形となった部分が、より線形的な形状となるように引っ張られかつ/又は延ばされ、それにより直線状となることを含み得る。比喩的に言うと、非線形部分は、層構造体を伸張する際の導電経路内の応力(特に引張応力)を制限するように、より線形的な形状を選択的に想定し得る予約部分又は後退部分となり得る。
【0113】
概略として、上記実施形態は、導電経路及び特にそれに接続される電極の調整可能な位置決めを可能とする。そうするために、非線形部は、専用の変形可能な特に直線化可能な部分として作用する。
【0114】
本発明は、被検体の表面への適用のための、特に医療用製品での使用のための層構造体を製造する方法にも関し、その方法は、
・少なくとも1本の導電経路を有する第1の導電層を設けるステップと、
・少なくとも1本の導電経路を有する少なくとも1層の他の導電層を設けるステップと、
・第1及び他の導電層間に少なくとも部分的に延在する少なくとも1層の中間層を設けるステップと、
を備え、
第1及び他の導電層が、少なくともその部分が相互に重ねて配置されるように設けられ又は言い換えると層構造体内で積層され、好ましくは、層構造体は弾性伸張可能である。
【0115】
概略として、方法は、ここに開示される実施形態のいずれかに係る層構造体を製造する任意の追加の手段及び特徴を備え得る。また、層構造体との関連でここに開示される教示、説明、態様及び変形例のいずれも、同様に方法にも当てはまり、かつ有効なものとなり得る。
【0116】
方法は、設けられた層を相互に直接又は間接的に(その間に延在する少なくとも1層の他の層を介して)付着させるステップを含み得る。これは、以下の例のいずれかに従って、かつ通常は、例えば、積層、接着又は超音波溶接によってなされ得る。
【0117】
好適な実施形態によると、第1及び他の層の少なくとも一方は、中間層に印刷又は付着される。例えば、中間層が最初に設けられ及び/又は製造されてから、その表面に(例えば、その上面又は下面に)導電層が設けられてもよい。これにより、例えば、導電層の導電経路をそこに印刷するための専用のベース層が最初に設けられる必要がないため、全体の製造工程数が減少し得る。そのように設けられるのではなく、印刷が、中間層に対して直接行われることになる。
【0118】
一例では、第1及び他の導電層は、中間層の両対向面に印刷又は付着される。このように、中間層は、両導電層のための印刷基板又は印刷ベースとして作用し得る。ここでも、これは、製造される必要のある全体の層数並びにそれによって関連する製造工程数、製造コスト及び結果としての重量を制限し得る。
【0119】
更なる例によると、中間層は、第1及び他の導電層の少なくとも一方(又は導電層が付着され若しくはそれらが堆積された層)に印刷又は付着される。例えば、中間層は、導電層に(例えば、導電経路が印刷されるそのベース層に)積層され得る。
【0120】
またさらに、第1の導電層が層構造体の第1の小構造体に設けられ、第2の導電層が層構造体の第2の小構造体に設けられてもよい。第1及び第2の小構造体は、層構造体の少なくとも一部を形成するように接合され得る。例えば、導電層は、小構造体を形成する層に印刷され得る。これらの層(及びしたがって小構造体)は、その後に接合(例えば、積層)され得る。これらの層は、例えば、小構造体として作用することとは別の機能を与えるために層構造体にいずれかの態様で設けられなければならない場合がある。それらは、例えば、中間及び/若しくは絶縁層又は接着層であり得る。これにより、例えば、導電経路を印刷するための下地が直接利用可能となることにより、迅速かつ信頼性の高い製造が可能となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【
図1】本発明の実施形態に係る層構造体の分解図である。
【
図2】
図1の各層が接合された層構造体の図である。
【
図3】本発明の更なる実施形態に係る層構造体の分解図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る層構造体を屈曲させ及び/又は裏返した場合の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0122】
本発明の実施形態を、以下に添付の模式図面を参照して説明する。図面全体を通じて、同じ構成には同じ符号が付される。
【0123】
図1は、本発明の実施形態に係る層構造体10の各層を示す。層構造体10は、被検体の表面(皮膚)12、例えば、ヒト患者の皮膚に取り付けられるものである。例示的な層構造体10は、例えば、ECGを行うために利用可能な電極パッチである。
【0124】
単なる例示として、層構造体10は、3層の導電層14を備える。各導電層14は、導電経路16を形成する導電性材料の堆積物からなる。この堆積物は、例えば、スクリーン印刷によって製造され得る。少なくとも1本、図示する例では、2本の導電経路16が設けられた層構造体10の領域、平面又は段が、導電層14を形成する。代替的に及び上記のように、導電層14は、導電経路16が位置決めされたベース層を備え得る。
【0125】
概略として、層構造体の各層は、層構造体10の主面及び/又は被検体の表面12に対して直交して延在する厚さ軸Tに対して略直交して延在し得る。
【0126】
各導電経路16は、電極20の一部である測定点18で終端する。上記に詳述したように、電極20は、測定点18と物体の表面12との間に全ての層を通じて又はそれにわたって延在する凹部22を備え得る。言い換えると、凹部22は、それぞれの測定点18を備える導電層14の下方の全ての層を通じて又はそれにわたって延在し得る。
【0127】
最上部の測定点18に対する凹部の各延長線を(
図1では)点線22で示す。それは、被検体の表面12に達するように、当該測定点18の下層の導電層14にわたって及び導電層14が配置される層24、26を通じて延びる。
【0128】
これらの層のうちの2層は、2層の導電層14の間に配置された中間層24である。例えば、少なくとも1層の導電層14が、各中間層24の一方の(
図1では上側の)面に印刷され得る。また、各中間層24は、その反対側の(
図1では下部の)面でその下層に積層され得る。したがって、各中間層24は、他の2層の間に、図示する場合では、2層の導電層14の間にそれらに接触して挟まれ得る。
【0129】
単なる例示として、
図1の上側導電層14は、層構造体10の第1の小構造体42を形成するように上側中間層24に印刷され得る。また、
図1の中央の導電層14は、第2の小構造体44を形成するように下側の中間層24に印刷され得る。これらの小構造体42、44は、その後に、例えば、積層によって接合され得る。
【0130】
中間層24は、好ましくは絶縁性であり、それにより、導電層14を相互に電気的に絶縁させる。これらは通常、導電層14を相互に離隔させ、好ましくは断熱材として作用する。
【0131】
層構造体10の(
図1では)最下層26は、接着層である。被検体の表面12に面するその外面において、層構造体10を患者に固定するために接着剤が与えられる。
【0132】
図1は、被検体の表面12とは逆を向く層構造体10の外面を形成する任意選択的なシールド層28も示す。シールド層28は、上述したシールド効果のいずれか、ただし特に電磁シールドを与え得る。そうするために、シールド層28は、導電性材料、及び好ましくは当該導電性材料を下層の導電層14から電気的に絶縁する絶縁材料を備え得る。
【0133】
層14、24、26、28は、軸Tに沿って相互に重ねて積層される。これは、
図2の合体した層構造体10となる。これは、導電層14及び特にそれらの導電経路16が、大部分において、好ましくは完全に囲まれ、それにより、隣接する層24、26、28によってシールド又はカプセル化されること意味する。これは、放射線、塵埃及びガスなどの環境的影響からの保護を与える。
【0134】
好ましくは、層24、26の各々は、光学的に透明及び/又は放射線透過性である。したがって、
図2に対応して示すように、下層の導電層14の導電経路16は、積層されても外部から視認できる。導電層14が層構造体10内で相互に重ねて積層又は配置されることによって一致して配置されることも明らかである。結果として、それらの導電経路16は、例えば、上方から見た場合に、相互に交差し得る。
【0135】
また、層24、26の各々及び好ましくはさらに導電経路16は、弾性伸張可能である。少なくとも層24、26は、大部分において又は完全に、TPUなどの同質のポリマー材料を含み得る。
【0136】
好適なオプションとして、コネクタ30が図示される。当該コネクタ30は、導電経路16の各々に接続されてそこからの電気信号を受信する。これらの信号は、各導電経路16が接続される電極20から生ずる。したがって、これらは、電極20によって検出され(すなわち、捕捉され)る被検体の表面12における電気信号に対応する。
【0137】
コネクタ30は、外部デバイス(不図示)に接続するためのインターフェースを備える。当該外部デバイスは、電気信号を解析するための更なる電気部品を備える。これは、層構造体10が電気的に受動的であり、それにより経済的に使い捨てとなることを意味する。一方、外部デバイスは、より長い寿命を有し得るものであり、例えば、異なる患者に使用され得る。それは、各特定の患者に適用される使い捨ての層構造体10に選択的に接続され得る。
【0138】
その結果、開示される層構造体10は、電気的に受動的な信号バス及び/又は受動的な信号伝達デバイスを概略的に表し得る。それにより、電気信号が(受動的に)検出されてコネクタ30に(受動的に)導通され得る。
【0139】
図示する実施形態では、導電経路16は、線形的な及び/又は直線的なコースを有さない。それらは、そのように引き回されるのではなく、湾曲、屈曲され又はジグザグ形状を有し得る少なくとも1つの角度付き部分32(
図1参照)を有する。この部分32は、層構造体10を伸張することによって電極20の位置を手動で調整しようとする際の導電経路16の変形に対応する。具体的には、それにより、引張り力Fが施術者によって層構造体10に付与される場合に経路16内の局所的応力を制限しつつ、導電経路16がより直線的となりかつより角度が付けられない形状となることが可能となる。
【0140】
図3は
図1~2の実施形態に基づく更なる実施形態を示し、そのため、同じ符号が使用される。上記の
図1~2の前実施形態に対する相違は、皮膚12に対する少なくとも一部の導電層14の電極20の導電接続である。さらに、以下に詳述するように、
図1~2及び
図3に係る上記導電接続を与える態様は、組み合わされてもよく、すなわち、1つの層構造体10内に併せて提供されてもよい。
【0141】
図3では、
図1に図示するような好ましくはゲル充填凹部22の補助による接続を形成するのではなく、一部の導電経路16の電極20の少なくとも一部が露出されてもよく、すなわち、他のいずれの層によっても被覆されず、特に当該導電経路16及び/又は電極20と皮膚12との間に延在する非導電層によって被覆されなくてもよい。言い換えると、一部の導電経路16の電極20の少なくとも一部は、いずれかの他の層によって皮膚12との導電接触を形成することを、電気的に離隔又は遮断しない。
【0142】
図3では、上記は、少なくとも1層の導電層14の下層の少なくとも1層の中間層24の全長を調整することによって達成される。なお、「下層」とは皮膚12により近い位置を示す。単なる例示として、
図3では、x軸は、厚さ軸Tに直交して、したがって層構造体10の主面内の又はそれに平行に全長を示す。
図3では、層24、26の全長は異なり、厚さ軸Tに沿って皮膚12に向かって見た場合に、x軸に沿って層から層24、26に減少する。これは、最上中間層24が、層構造体10の少なくとも図示する部分の(x軸に関する)最外縁部を形成することを意味する。隣接する下側中間層24は、x軸に沿って上記の上側中間層24に対して後退しているが、最下接着層26はさらに後退している。後退した全長の代わりに、それぞれの上層24、26の同様の非被覆部分を画定するカットアウトが、それぞれの層24、26に設けられてもよい。
【0143】
したがって、点線23で示すように、中間層24の電極20は、皮膚12に対して及び/又はそこから遮断されず、皮膚12に直接(又は皮膚12に適用された不図示の導電性ゲルの補助により)導電的に接触し得る。特に、層構造体10の縁領域では、これは、適宜の代替例となり、
図1に示すような専用のチャネル状凹部22を設けることよりも、皮膚12と電極20の間の導電接続を可能とする恐らくは安価な態様となり得る。
【0144】
なお、電極20の又は導電層14の汎用電気コンタクトの非遮断性が、下方に配置された非導電層内のカットアウトによって与えられてもよく、当該カットアウトは、好ましくは単一の電極凹部よりも大きなサイズを有し、例えば、多数の電極20を被覆する。
【0145】
当然に、
図1~3の実施形態を組み合わせることも可能であり、それにより、一部の電極20に対して
図1に係る凹部22が設けられる一方で、一部の電極20は
図3に従って非遮断及び/又は露出状態のままとなる。
【0146】
図4は、ここに開示されるいずれかの種類の導電層構造体10を、それをコネクタ30に接続するために、屈曲させ及び/又は裏返す任意選択的な態様を示す。なお、本態様は、ここに開示される多層構造体10に限定されず(すなわち、「多(層)」は複数の導電層14を示す)、
図1~3の全体を通じて例示されるような多層構造体10の背景で実施可能でもある。したがって、
図1~3のものと同じ符号が使用される。ただし、
図4の態様は、1層の導電層14のみを有する層構造体10にも使用可能であるが、それとは別に、ここに開示されるいずれかの更なる特徴を備えてもよい。
【0147】
再度、
図4は、層構造体10が適用される患者の皮膚12を示す。層構造体10は、(
図4では)その下面50によって皮膚12に面する。当該下面50において、
図1と同様の接着層26が設けられてもよい。患者の皮膚12とは逆を向くその上面52において、任意の好ましくは非導電性材料及び/又は非導電層、例えば、
図1と同様のシールド層28が設けられてもよい。
【0148】
単なる例示として、1層の導電層14のみが設けられる。その導電経路16は、好ましくは上面52よりも下面50の近くに配置される。それらは、下面50内の一部を形成しかつ/又は下面50内で部分的に延在し得る。導電経路16は、好ましくは、それらの全長に沿って(好ましくは非導電性の)材料によって当該上面52から分離される。ここでも、導電経路16は、ここに開示する態様のいずれかに係る生体信号の測定のための電極20を備え及び/又はそこで終端する。
【0149】
以下に説明する理由のために、
図4の層構造体10は、C字形状となるように折畳み可能である。これは、折畳みの結果として、下面50の一部が患者の皮膚12に向かなくなり、実際にはそことは逆を向くことを意味する。同様に、上記屈曲の結果として、上面52の一部は、患者の皮膚12に面する。
図4では、層構造体10のこれらのそれぞれ再配向された部分は、当初は(すなわち、屈曲の前は)層構造体10の左端部分によって構成される。再配向は、層構造体10の当該部分を裏返すことともいえる。例えば、それにより、当初の下面50は上面52を形成し、又はその逆となる。
【0150】
下面50により近い及び/又は下面50内の導電経路16の位置決めを、点線又は実線を用いて
図4に示す。具体的には、上面52によって被覆されるように見た場合及び/又はそのように配向された場合、導電経路16は、好ましくは非導電性材料によって、より高い程度でシールドされる。そのような状態又はそのような配向において、導電経路16及び電極20は、点線で図示されている。一方、下面50を形成するように見た場合及び/又は配向された場合、導電経路16は、好ましくは非導電性材料によって、より低い程度でシールドされ、又は当該下面50の一部に露出され及び/若しくは一部を形成する。そのような状態又はそのような配向において、導電経路16は、実線で図示される。
【0151】
その結果、
図4では、皮膚12に面してそれに沿って延在する層構造体10の非屈曲部分に延在する導電経路16及び電極20が点線で図示される。層構造体10の屈曲又は裏返し部分に延在する導電経路16は、それらが見る者に面するように、実線で図示されている。
【0152】
この構成により、裏返された部分における導電経路16は、コネクタ30をそこに接続するために一層容易にアクセス可能となる。例えば、コネクタ30は、当該導電経路16の上部に及び特に任意選択的なその接続用部分31に容易に配置可能となり、これは非屈曲構成では可能とはならない。模式的にのみ示される接続用部分31は、導電経路16の開放端又はトレースとして構成可能であり、通常はコネクタ30に導電接続するための接続インターフェースを与えることができる。
【0153】
なお、裏返しによって向上したアクセス性によって、コネクタ30が接続されるべき層構造体10の部分を構造的に適合させるための要件も緩和される。例えば、上面52のいずれの部分も、裏返されない層構造体10のいずれかの導電経路16へのアクセスを得るために局所的に除去される必要はない。
【国際調査報告】