IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィークの特許一覧 ▶ アンスティテュト ナショナル ド ラ サンテ エ ド ラ ルシェルシュ メディカル (アンセルム)の特許一覧 ▶ アンスティテュート キュリーの特許一覧

特表2024-533202ナラシンの窒素含有誘導体、その合成及び使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ナラシンの窒素含有誘導体、その合成及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/20 20060101AFI20240905BHJP
   A61K 31/335 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07D493/20 CSP
A61K31/335
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514114
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2022074390
(87)【国際公開番号】W WO2023031362
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21306209.4
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】505386960
【氏名又は名称】アンスティテュト ナショナル ド ラ サンテ エ ド ラ ルシェルシュ メディカル (アンセルム)
(71)【出願人】
【識別番号】506413937
【氏名又は名称】アンスティテュート キュリー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】カネーケ,タチアナ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】アントシュチャク,ミハウ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、式(I)を有するナラシンの窒素含有誘導体、並びに特にがんの治療及び/又は予防のための、その合成及び使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を有する化合物であって、
【化1】
式中、Rが、基-NRであり、R及びRが、同一であるか又は異なり、好ましくは異なり、独立して、H、(C-C20)アルキル基、(C-C)シクロアルキル基、(C-C20)アルキニル基、及び(C-C10)アリール(C-C)アルキル基からなる群から選択される、化合物、
並びにそのエピマー。
【請求項2】
式(I-1)又は(I-2)を有し、
【化2】
Rが、請求項1で定義したとおりである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが、基-NHRであり、Rが、(C-C20)アルキル基、(C-C)シクロアルキル基、(C-C20)アルキニル基、及び(C-C10)アリール(C-C)アルキル基からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が、(C-C)シクロアルキル基又は(C-C20)アルキニル基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、シクロプロピル又はプロピニル基である、請求項3又は4に記載の化合物。
【請求項6】
式(I-3)を有し、
【化3】
が、(C-C)シクロアルキル基又は(C-C20)アルキニル基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
以下の化合物:
【化4】
から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の調製のためのプロセスであって、以下の工程:
-ナラシンのC20アリルヒドロキシルを対応するα,β-不飽和ケトンに酸化する工
程と、
-前記α,β-不飽和ケトンをアミンHNRと反応させて、対応するイミンを得る工程と、前記イミンを同時に又はその後に還元して、前記式(I)の化合物を得る工程と、を含む、プロセス。
【請求項9】
薬物として使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を含む、薬剤。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物、又はその医薬的に許容可能な塩と、また少なくとも1つの医薬的に許容可能な賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項12】
がんを予防かつ/又は治療するために使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
前記がんが、結腸がん、結腸直腸がん、メラノーマ、骨がん、乳がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、膠腫、子宮頸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、肝臓がん、膀胱がん、腎臓がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、尿路上皮がん又は副腎皮質がん、白血病、リンパ種、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される、請求項12に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
対象におけるがん転移を予防するためかつ/又はがん再発を予防するためかつ/又は化学療法に対する耐性を低下させるために使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物であって、好ましくは、前記がんが、固形がん及び非固形がんから選択され、好ましくは、結腸がん、BRAF変異、特にBRAF V600Eを有する結腸直腸がんなどの結腸直腸がん、メラノーマ、骨がん、トリプルネガティブ乳がんなどの乳がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、膠芽腫などの膠腫、子宮頸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、肝臓がん、膀胱がん、腎臓がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、尿路上皮がん又は副腎皮質がん、急性骨髄性白血病などの白血病、リンパ種、及び多発性骨髄腫から選択される、化合物。
【請求項15】
a)請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物と、
b)少なくとも1つの追加の療法と、を含み、
対象において、がんを治療するため、かつ/又はがん転移を予防するため、かつ/又はがん再発を予防するため、かつ/又は前記追加の療法b)に対する耐性を低下させるための、同時、個別、又は逐次使用のための組み合わせ製品としての製品であって、前記対象が、好ましくはがんに罹患し、化学療法に耐性のあるヒトであり、
前記追加の療法b)が、好ましくは免疫療法、化学療法、及び/又は放射線療法である、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナラシンの新規な窒素含有誘導体、それらの合成、及び療法における、特にがんの治療のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化学療法及び放射線療法に対する耐性は、がんの治療の成功における主要な障害のままである。死滅していないがん細胞の一部が突然変異して耐性になり得る、治療を無効にするタンパク質の過剰発現をもたらす遺伝子増幅が起こり得る、又はがん細胞が治療を不活性化する機構を発達させ得るなど、多くの理由により、がん治療中に耐性が起こり得る。
【0003】
ナラシンは、がんの治療における、特に薬物耐性がん細胞株の治療に有望な抗増殖薬物候補である。しかしながら、この分子は、細胞内でのその分解に関与するカルボキシルラジカルを含有する。
【0004】
したがって、腫瘍組織に特異性でありながら効率的とされる新規かつ効率的な抗がん薬物の開発の必要性が存在する。特に、がん幹細胞及び療法抵抗性がん細胞の両方を死滅させることができる新規かつ効率的な抗がん薬物の必要性が存在する。
【0005】
リソソーム鉄を標的とすることができ、療法抵抗性がん細胞の細胞死を誘導することもできる新しい分子の必要性も存在する。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の目的は、リソソーム鉄を標的とすることができ、かつ療法抵抗性がん細胞の細胞死を誘導することもできる、ナラシン誘導体を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、抗がん活性を有し、好ましくはがん幹細胞及び療法抵抗性がん細胞の両方を死滅させることができる、ナラシン誘導体を提供することである。
【0008】
したがって、本発明は、式(I)を有する化合物であって、
【0009】
【化1】
式中、Rが、基-NRであり、R及びRが、同一であるか又は異なり、好ましくは異なり、独立して、H、(C-C20)アルキル基、(C-C)シクロアルキル基、(C-C20)アルキニル基、及び(C-C10)アリール(C-C
アルキル基からなる群から選択される、化合物、
並びにそのエピマーに関する。
【0010】
好ましくは、R及びRは、同時にHではない。
【0011】
本発明によれば、「エピマー」という用語は、複数の不斉炭素を有するが、不斉炭素のうちの1つにおける立体配置のみが互いに異なる特定のタイプの立体異性体を指す。
【0012】
式(I)の化合物において、R基を有する結合は、アップ又はダウン結合であってよい。式(I)中、結合
【0013】
【化2】
は、以下の結合のうちの1つに対応する。
【0014】
【化3】
【0015】
本発明はまた、式(I-1)又は(I-2)を有する化合物であって、
【0016】
【化4】
Rが、式(I)において上で定義したとおりである、化合物に関する。
【0017】
以下の定義は、本明細書において本発明を説明するために使用される様々な用語の意味及び範囲を例示及び定義するために記載される。
【0018】
「C-C」という表現は、t~z個の炭素原子を有することができる炭素系鎖を意味し、例えば、C-Cは、1~3個の炭素原子を有することができる炭素系鎖を意味する。
【0019】
「アルキル基」という用語は、別段の記載がない限り、1~20個の炭素原子、好ましくは1~15個、より好ましくは3~10個、又は1~6個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素系脂肪族基を意味する。例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、オクチル、又はドデシル基、好ましくは、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、又はドデシル基を挙げることができる。
【0020】
「アリール基」という用語は、6~10個の炭素原子を含む環状芳香族基を意味する。アリール基の例として、フェニル又はナフチル基を挙げることができる。
【0021】
「シクロアルキル基」という用語は、別段の記載がない限り、3~6個の炭素原子を含む環状炭素系基を意味する。例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの基を挙げることができる。好ましくは、(C-C)シクロアルキルは、シクロプロピルである。
【0022】
本明細書で用いられる「アルキニル」という用語は、2~20個の炭素、好ましくは2~6個の炭素を有し、かつ少なくとも1つの三重結合を含む、不飽和非芳香族炭化水素基を含む。好ましくは、アルキン基は、直鎖である。好ましくは、アルキニル基は、-(CH-C≡CH基であり、nは、1~4からなる整数である。
【0023】
好ましくは、アルキニル基は、2~10個の炭素原子、好ましくは、2~6個の炭素原子を含む。好ましくは、アルキニル基は、3個の炭素原子を含む。好ましくは、アルキニルは、プロピニルである。
【0024】
アルキルラジカルがアリール基で置換されている場合、「アリールアルキル」又は「アラルキル」ラジカルという用語が使用される。「アリールアルキル」又は「アラルキル」ラジカルは、アリール-アルキル-ラジカルであり、アリール及びアルキル基は上で定義されたとおりである。アリールアルキル基の中で、特にベンジル又はフェネチルラジカルを挙げることができる。
【0025】
好ましくは、本発明によるアリールアルキルは、基-(CH-アリールであり、式中、nは、1~5の整数であり、アリールは、上で定義したとおりである。
【0026】
アリールは、ヒドロキシル基、(C-C20)アルキル基、好ましくは(C-C)アルキル基、及びハロゲンからなる群から選択される少なくとも1つの置換基によって置換されていてもよい。「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。
【0027】
好ましくは、アリールは、ヒドロキシル基、メチルなどの(C-C)アルキル基、及びF又はClなどのハロゲンから選択される少なくとも1つの基によって、好ましくはパラ位において置換される。好ましくは、アリールアルキル基は、置換されていないベンジル、又はヒドロキシル基、メチルなどの(C-C)アルキル基、及びF又はClなどのハロゲンから選択される少なくとも1つの基によって、好ましくはパラ位において置換されたベンジルである。
【0028】
一実施形態によれば、式(I)、(I-1)又は(I-2)では、Rは、基-NRであり、Rは、(C-C20)アルキル基、(C-C)シクロアルキル基、(C-C20)アルキニル基、及び(C-C10)アリール(C-C)アルキル基からなる群から選択され、Rは、(C-C20)アルキル基及び(C-C20)アルキニル基から選択される。
【0029】
一実施形態によれば、式(I)、(I-1)、又は(I-2)では、Rは、基-NRであり、R及びRは、異なり、独立して、H、(C-C)シクロアルキル基、及び(C-C20)アルキニル基から選択される。
【0030】
一実施形態によれば、式(I)、(I-1)、又は(I-2)では、Rは、-NR
である。この場合、好ましくは、Rは、Hであり、Rは、(C-C)シクロアルキル基又は(C-C20)アルキニル基、好ましくは(C-C)アルキニル基である。好ましくは、Rは、Hであり、Rは、シクロプロピル又はプロピニルである。
【0031】
一実施形態によれば、式(I)、(I-1)又は(I-2)では、Rは、基-NHR(2であり、Rは、(C-C20)アルキル基、(C-C)シクロアルキル基、(C-C20)アルキニル基、及び(C-C10)アリール(C-C)アルキル基からなる群から選択される。
【0032】
好ましくは、Rは、(C-C)シクロアルキル基又は(C-C20)アルキニル基である。
【0033】
より好ましくは、Rは、シクロプロピル又はプロピニル基である。
【0034】
本発明はまた、式(I-3)を有する、上で定義したとおりの化合物に関する。
【0035】
【化5】
は、上で定義したとおりである。
【0036】
好ましくは、式(I-3)では、Rは、(C-C)シクロアルキル基又は(C-C20)アルキニル基である。
【0037】
本発明による好ましい化合物として、以下の化合物を挙げることができる。
【0038】
【化6】
【0039】
本発明の化合物の調製
本発明はまた、上で定義したとおりの式(I)を有する、本発明の化合物の調製のためのプロセスであって、以下の工程:
-ナラシンのC20アリルヒドロキシルを対応するα,β-不飽和ケトンに酸化する工程と、
-α,β-不飽和ケトンをアミンHNRと反応させて、対応するイミンを得る工程と、イミンを同時に又はその後に還元して、ナラシンの対応するC20-アミン誘導体を得る工程と、を含む、プロセスに関する。
【0040】
本発明はまた、上で定義したとおりの式(I)を有する、本発明の化合物の調製のためのプロセスであって、以下の工程:
-ナラシンのC20アリルヒドロキシルを対応するα,β-不飽和ケトンに酸化する工程と、
-ナラシンのα,β-不飽和ケトンのC1カルボキシルを保護して、ナラシンの保護されたα,β-不飽和ケトンを得る工程と、
-α,β-不飽和ケトンをアミンHNRと反応させて、対応するイミンを得る工程と、イミンを同時に又はその後に還元して、ナラシンの対応するC20-アミン誘導体を得る工程と、
-ナラシンの保護されたC20-アミン誘導体のC1位のマスキング基を除去して、式(I)の化合物を得る工程と、を含む、プロセスに関する。
【0041】
一実施形態によれば、本発明によるプロセスは、ナラシンのC20アリルヒドロキシル
の化学選択的酸化と、それに続くC20-オキソナラシンの立体選択的還元的アミン化を含む。
【0042】
一実施形態によれば、本発明によるプロセスは、ナラシンのC20アリルヒドロキシルの化学選択的酸化、次いで、C1官能基のブロッキング、続いてC20-オキソナラシンの立体選択的還元的アミン化、次いで、C1官能基のアンブロッキングを含む。
【0043】
本発明の化合物は、実施例に例示されている以下のプロセスによって調製することができる。
【0044】
上記のように、-NR基は、以下の方法によって導入することができる。
(a)ナラシンのC20アリルヒドロキシルをα,β-不飽和ケトンに酸化すること。
【0045】
アリルアルコールの化学選択的酸化のための方法は、当該分野で周知である。有利には、ナラシンのC20ヒドロキシルの酸化は、活性化MnOを用いて定量的に実施される。
【0046】
ナラシンのC20アリルヒドロキシルは、以下の式(A):
【0047】
【化7】
好ましくは以下の式(A-1):
【0048】
【化8】
によって表すことができる。
【0049】
ナラシンのα,β-不飽和ケトンは、以下の式(B):
【0050】
【化9】
によって表すことができる。
【0051】
(b)任意選択で、ナラシンのα,β-不飽和ケトンのC1カルボキシルを保護すること。
【0052】
カルボン酸に対する任意の好適な保護基を使用することができる。有利には、カルボン酸は、メチルエステル、アリルエステル、又はシリルエステルなどのエステルの形態で保護される。ナラシンのC1カルボキシルはまた、α,β-不飽和ケトンへの化学選択的酸化の前に保護され得る。
【0053】
好適な保護基は、例えば、Greene,「Protective Groups In Organic Synthesis」,(John Wiley & Sons,New York(1981))に開示されている。
【0054】
ナラシンの保護されたα,β-不飽和ケトンは、以下の式(C):
【0055】
【化10】
によって表すことができ、
GPは、上で定義したとおりの保護基を表す。
【0056】
(c)α,β-不飽和ケトンをアミンHNRと反応させ、同時に又はその後にイミンを還元すること。
【0057】
還元的アミノ化によってアミンを調製するための方法は、当技術分野において周知である。有利には、イミンは、酸の存在下、極性溶媒中でアミンを反応させることによって形成される。特定の実施形態では、イミンは、メタノール又はエタノールなどのアルコールと酢酸との混合物中で形成される。イミンのアミンへの還元は、有利には、三塩化セリウムCeClなどのセリウム塩の存在下で、水素化ホウ素ナトリウム又はシアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素を用いて行われる。
【0058】
このようにして得られた任意選択で保護されたC20-アミノナラシンは、以下の式(D):
【0059】
【化11】
によって表すことができ、
GPは、上で定義したとおりの保護基を表す。
【0060】
(d)任意選択で、ナラシンのC1官能基を脱保護して、カルボン酸、したがって本発明による化合物(I)を提供すること。
【0061】
エステルの脱保護のための方法は、例えば、Greene,「Protective Groups In Organic Synthesis」,(John Wiley
& Sons,New York(1981))に開示されている。
【0062】
一実施形態によれば、ナラシンは、特にジクロロメタン中、好ましくは室温で、MnOなどの酸化剤とのその反応によって最初に酸化されて、以下の式(II)を有する化合物C20-オキソナラシンを得る。
【0063】
【化12】
【0064】
次いで、式(II)の化合物を、式HNRのアミンと反応させ、ここで、R及びRは、上で定義したとおりである。この反応は、好ましくは室温で、特に、好ましくはメタノール及び酢酸を含む溶媒の存在下で実施される。
【0065】
次いで、得られた混合物を撹拌し、CeCl x 7HOを上記混合物に添加し、続いてNaBHCNのアルコール溶媒、好ましくは無水メタノール中溶液を室温で滴下する。次に、反応混合物を蒸発乾固させ、CHClをそれに添加し、次いで、不溶性成分を濾別し、濾液を精製して、式(I)の化合物を得る。
【0066】
組成物及び使用
本発明はまた、薬物として使用するための、特に式(I)、(I-1)、(I-2)、又は(I-3)を有する、上で定義されたとおりの化合物に関する。
【0067】
本発明はまた、上で定義したとおりの化合物、特に式(I)、(I-1)、(I-2)、若しくは(I-3)を有する化合物、又はその医薬的に許容可能な塩を含む医薬に関する。
【0068】
本発明はまた、上で定義したとおりの、特に式(I)、(I-1)、(I-2)、若しくは(I-3)を有する少なくとも1つの化合物、又はその医薬的に許容可能な塩と、また少なくとも1つの医薬的に許容可能な賦形剤と、を含む、医薬組成物に関する。
【0069】
抗がん使用
本発明の式(I)の化合物は、がんを予防かつ/又は治療するために使用することができる。
【0070】
「予防する」とは、がんが発生することを回避することを意味する。
【0071】
「治療」とは、がんの治癒的治療を意味する。治癒的治療は、がんを完全に治療する(治癒する)又は部分的に治療する(すなわち、腫瘍増殖の安定化、遅延又は退縮を誘導する)治療として定義される。
【0072】
「対象」は、任意の対象を指し、典型的には、患者、好ましくは、免疫療法、化学療法、及び/又は放射線療法などのがんの治療を受けている対象を指す。いずれの場合も、対象は、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、更により好ましくはヒトである。
【0073】
「がん」とは、任意のタイプのがんを意味する。がんは、固形がんであっても非固形がんであってもよく、例えば、結腸がん、結腸直腸がん(例えば、BRAF変異(特にBRAF V600E)を有する結腸直腸がん)、メラノーマ、骨がん、トリプルネガティブ乳がん(すなわち、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び過剰なHER2タンパク質について陰性である乳がん)などの乳がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、膠芽腫などの膠腫、子宮頸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、肝臓がん、膀胱がん、腎臓がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、尿路上皮がん又は副腎皮質がん、急性骨髄性白血病などの白血病だけでなく、リンパ腫又は多発性骨髄腫などの非固形がんから選択されてもよい。
【0074】
好ましくは、がんは、結腸がん、結腸直腸がん(例えば、BRAF変異(特にBRAF
V600E)を有する結腸直腸がん)、乳がん、例えばトリプルネガティブ乳がん(すなわち、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び過剰なHER2タンパク質について陰性である乳がん)、膵臓がん、神経膠腫(例えば、膠芽腫)、白血病(例えば、急性骨髄性白血病)、リンパ腫、又は多発性骨髄腫である。
【0075】
がんは、転移性がんであってもなくてもよい。典型的ながんは、第一選択の化学療法に耐性のがんである。
【0076】
したがって、本発明は、がんを予防及び/又は治療するために使用するための、特に式(I)、(I-1)、(I-2)、若しくは(I-3)を有する上で定義したとおりの化合物、又はその医薬的に許容可能な塩に関する。
【0077】
好ましくは、がんは、結腸がん、結腸直腸がん、メラノーマ、骨がん、乳がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、膠腫、子宮頸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、肝臓がん、膀胱がん、腎臓がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、尿路上皮がん又は副腎皮質がん、白血病、リンパ種、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。
【0078】
本発明はまた、化学療法薬物に対するがんの感受性を増加させるための少なくとも1つの式(I)の化合物の使用に関する。
【0079】
本発明の更なる目的は、化学療法薬物に対するがんの耐性を減少させるための式(I)の少なくとも1つの化合物の使用である。
【0080】
本発明はまた、製品であって、
a)本発明の式(I)の少なくとも1つの化合物と、
b)少なくとも1つの追加の療法と、を含み、
対象において、がんを治療するため、かつ/又はがん転移を予防するため、かつ/又はがん再発を予防するため、かつ/又は追加の療法b)に対する耐性を低下させるための、同時、個別、又は逐次使用のための組み合わせ製品としての、製品を提供する。
【0081】
本発明はまた、少なくとも1つの追加の療法と組み合わせて又は関連して、がんを予防かつ/又は治療するための、本発明の式(I)の少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0082】
本発明は更に、少なくとも1つの追加の療法によって治療される対象においてがんを予防かつ/又は治療するための、本発明の式(I)の少なくとも1つの化合物の使用に関する。本発明はまた、アジュバントがん療法として使用するための、本発明の式(I)の少なくとも1つの化合物に関する。アジュバント療法は、その有効性を最大化するために、一次又は初期療法(「第一選択の療法」)に加えて与えられる、がんを治療するための療
法である。
【0083】
上記追加の療法b)は、免疫療法、化学療法、及び/又は放射線療法であってもよい。好ましくは、追加の療法b)は、免疫療法及び/又は化学療法である。
【0084】
「免疫療法」とは、免疫応答を誘導、増強、又は抑制することができる療法を意味する。上記免疫療法は、好ましくは、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、成長阻害因子、ホルモン、可溶性受容体、デコイ受容体;モノクローナル又はポリクローナル抗体、単一特異性、二重特異性、若しくは多重特異性抗体、モノボディ、ポリボディ;ワクチン接種;又は養子特異性免疫療法から選択される。
【0085】
好ましくは、免疫療法は、モノクローナル又はポリクローナル抗体、単一特異性、二重特異性、又は多重特異性抗体、モノボディ、ポリボディ、例えば、ベバキュジマブ(Bevacuzimab)(mAb、阻害VEGF-A、Genentech)のような抗血管新生剤;IMC-1121B(mAb、阻害VEGFR-2、ImClone Systems);CDP-791(Pegylated DiFab、VEGFR-2、Celltech);2C3(mAb、VEGF-A、Peregrine Pharmaceuticals);VEGFトラップ(可溶性ハイブリッド受容体VEGF-A、PIGF(胎盤増殖因子)Aventis/Regeneron)から選択される。
【0086】
好ましくは、免疫療法は、モノクローナル抗体、好ましくは抗チェックポイント抗体である。
【0087】
抗チェックポイント抗体は、PD1、PDL1、PDL2、CTLA4、BTLA、CD27、CD40、OX40、GITR(「腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18」又はTNFRSF18とも呼ばれる)、CD137(4-1BB又はTNFRS9とも呼ばれる)、CD28、ICOS、IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)、B7H3(CD276とも呼ばれる)、KIR2DL2(キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL2とも呼ばれる)、NKG2(C型レクチン受容体のファミリー)、LAG3(リンパ球活性化遺伝子-3とも呼ばれる)、及びCD70から選択され得る免疫チェックポイントに対する抗体を含む。好ましくは、抗チェックポイント抗体は、抗PD1、抗PDL1、抗PDL2、又は抗CTLA4抗体である。抗PD1抗体は、ニボルマブ及びペムブロリズマブを含む。抗CTLA4抗体としては、イピリムマブ及びトレメリムマブが挙げられる。
【0088】
「化学療法」又は「化学療法剤」は、がんの治療に使用され、かつヒトにおける新生物、特に悪性(がん性)病変の発生又は進行を阻害する機能特性を有する、化合物を指す。
【0089】
化学療法剤は、例えば、DNA又はRNAのいずれかに影響し、細胞周期複製を妨害することによって、異なる作用様式を有する。
【0090】
DNAレベル又はRNAレベルで作用する化学療法剤の例は、以下のとおりである。
-代謝拮抗物質、例えば、アザチオプリン、シタラビン、フルダラビンリン酸塩、フルダラビン、ゲムシタビン、シタラビン、クラドリビン、カペシタビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びヒドロキシ尿素;
-アルキル化剤、例えば、メルファラン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカラバジン、フォテムスチン、プロカルバジン、クロラムブシル、チオテパ、ロムスチン、テモゾロミド;
-ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドセタキセル、パクリタキセルな
どの抗有糸分裂剤;
-トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、ドキソルビシン、アムサクリン、イリノテカン、ダウノルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、イダルビシン、テニポシド、エトポシド、トポテカン;
-抗生物質、例えば、アクチノマイシン及びブレオマイシン;
-アスパラギナーゼ;
-アントラサイクリン又はタキサン。
【0091】
他の化学療法剤は、チロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor、TKI)である。いくつかのTKIは、様々なタイプのがんの治療のために開発の後期及び初期段階にある。例示的なTKIとしては、BAY 43-9006(ソラフェニブ、Nexavar(登録商標))及びSU11248(スニチニブ、Sutent(登録商標))、メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標)、Novartis);ゲフィチニブ(Iressa(登録商標)、AstraZeneca);エルロチニブ塩酸塩(Tarceva(登録商標)、Genentech);バンデタニブ(Zactima(登録商標)、AstraZeneca)、チピファルニブ(Zarnestra(登録商標)、Janssen-Cilag);ダサチニブ(Sprycel(登録商標)、Bristol Myers Squibb);ロナファルニブ(Sarasar(登録商標)、Schering Plough);コハク酸バタラニブ(Novartis、Schering AG);ラパチニブ(Tykerb(登録商標)、GlaxoSmithKline);ニロチニブ(Novartis);レスタウルチニブ(Cephalon);パゾパニブ塩酸塩(GlaxoSmithKline);アキシチニブ(Pfizer);カネルチニブ二塩酸塩(Pfizer);ペリチニブ(National Cancer Institute、Wyeth);タンデュチニブ(Millennium);ボスチニブ(Wyeth);セマキサニブ(Sugen、Taiho);AZD-2171(AstraZeneca);VX-680(Merck、Vertex);EXEL-0999(Exelixis);ARRY-142886(Array BioPharma、AstraZeneca);PD-0325901(Pfizer);AMG-706(Amgen);BIBF-1120(Boehringer Ingelheim);SU-6668(Taiho);CP-547632(OSI);(AEE-788(Novartis);BMS-582664(Bristol-Myers Squibb);JNK-401(Celgene);R-788(Rigel);AZD-1152 HQPA(AstraZeneca);NM-3(Genzyme Oncology);CP-868596(Pfizer);BMS-599626(Bristol-Myers Squibb);PTC-299(PTC Therapeutics);ABT-869(Abbott);EXEL-2880(Exelixis);AG-024322(Pfizer);XL-820(Exelixis);OSI-930(OSI);XL-184(Exelixis);KRN-951(Kirin Brewery);CP-724714(OSI);E-7080(Eisai);HKI-272(Wyeth);CHIR-258(Chiron);ZK-304709(Schering AG);EXEL-7647(Exelixis);BAY-57-9352(Bayer);BIBW-2992(Boehringer Ingelheim);AV-412(AVEO);YN-968D1(Advenchen Laboratories);スタウロスポリン、ミドスタウリン(PKC412、Novartis);ペリホシン(AEterna Zentaris、Keryx、National Cancer Institute);AG-024322(Pfizer);AZD-1152(AstraZeneca);ON-01910Na(Onconova);及びAZD-0530(AstraZeneca)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
本明細書には、(i)がんを予防又は治療する方法、(ii)化学療法剤に対するがんの感受性を増加させる方法、及び(iii)化学療法薬物に対するがんの耐性を減少させる方法も記載されており、上記方法の各々は、それを必要とする対象に、有効量の上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物を、好ましくは化学療法薬物と一緒に投与することを含む。
【0093】
本発明の式(I)の化合物は、好ましくは、療法有効量又は用量で投与される。本明細書で使用される場合、「療法有効量又は用量」は、対象、好ましくはヒトにおいて、疾患を予防、除去、減速するか、又は上記疾患によって引き起こされるか若しくはそれに関連する1つ若しくはいくつかの症状若しくは障害を低減若しくは遅延させる、本発明の化合物の量を指す。本発明の化合物及びその医薬組成物の有効量、より一般的には投薬レジメンは、当業者によって決定かつ適合され得る。有効用量は、従来技術の使用によって、及び類似の状況下で得られた結果を観察することによって決定することができる。本発明の化合物の療法有効用量は、治療又は予防される疾患、その重症度、投与経路、関与する任意の併用療法、患者の年齢、体重、一般的な病状、病歴などに応じて変化する。
【0094】
典型的には、患者に投与される化合物の量は、ヒト患者について、約0.01~500mg/kg体重の範囲であり得る。特定の実施形態において、本発明による医薬組成物は、0.01mg/kg~300mg/kg、好ましくは0.01mg/kg~3mg/kg、例えば、25~300mg/kgの本発明の化合物を含む。
【0095】
特定の態様では、本発明の化合物は、非経口経路、局所経路、経口経路、又は静脈内注射によって対象に投与することができる。本発明の化合物又はナノ粒子は、連続する数日間、例えば、連続する2~10日間、好ましくは連続する3~6日間、毎日(例えば1日1、2、3、4、5、6、又は7回)対象に投与され得る。上記治療は、1、2、3、4、5、6若しくは7週間、又は2若しくは3週間毎、又は1、2若しくは3ヶ月毎に繰り返されてもよい。あるいは、いくつかの治療サイクルを、任意選択で2つの治療サイクルの間に、例えば、1、2、3、4、又は5週間の休止期間を設けて行うことができる。本発明の化合物は、例えば、週に1回、2週間に1回、又は月に1回の単回用量として投与することができる。治療は、1年に1回又は数回繰り返すことができる。
【0096】
用量は、当業者によって決定され得る適切な間隔で投与される。選択される量は、投与経路、投与期間、投与時間、化合物又は上記化合物と組み合わせて使用される様々な製品の排出速度、患者の年齢、体重、及び健康状態、並びに患者の病歴、並びに医学において公知の任意の他の情報を含む、複数の因子に依存する。
【0097】
投与経路は、経口、局所又は非経口、典型的には直腸、舌下、鼻腔内、腹腔内(intra-peritoneal、IP)、静脈内(intra-venous、IV)、動脈内(intra-arterial、IA)、筋肉内(intra-muscular、IM)、小脳内、くも膜下腔内、腫瘍内及び/又は皮内であり得る。医薬組成物は、上述の経路の1つ又はいくつかに適合される。医薬組成物は、好ましくは、注射若しくは好適な滅菌溶液の静脈内注入によって、又は消化管を介した液体若しくは固体用量の形態で投与される。
【0098】
本発明はまた、医薬的に許容可能な媒体中に、本発明による式(I)の少なくとも1つの化合物を含む組成物に関する。このような組成物は、医薬的に許容可能な媒体(又は担体)を含む。
【0099】
担体は、製剤の他の成分と適合性であり、その受容体に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。
【0100】
医薬組成物は、医薬的に適合性の溶媒中の溶液として、又は好適な医薬的溶媒若しくはビヒクル中のゲル、油、エマルション、懸濁液、若しくは分散液として、又は当技術分野で公知の方法で固体ビヒクルを含有する丸剤、錠剤、カプセル剤、粉末剤、坐剤などとして、場合によっては持続放出及び/又は遅延放出を提供する投薬形態又はデバイスを通して製剤化することができる。このタイプの製剤には、セルロース、脂質、炭酸塩、又はデンプンなどの薬剤が有利に使用される。
【0101】
製剤(液体及び/又は注射可能及び/又は固体)において使用することができる薬剤又はビヒクルは、賦形剤又は不活性ビヒクル、すなわち、医薬的に不活性かつ非毒性のビヒクルである。
【0102】
例えば、医薬用途に適合し、かつ当業者に知られている、生理食塩水、生理学的、等張、及び/又は緩衝溶液を挙げることができる。組成物は、分散剤、可溶化剤、安定剤、保存剤などから選択される1つ以上の薬剤又はビヒクルを含有し得る。
【0103】
特定の例は、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリン、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、リポソーム、植物油又は動物、アカシアなどである。好ましくは、植物油が使用される。
【0104】
経口投与に好適な本発明の製剤は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル剤、サシェ剤、錠剤、又はトローチ剤などの個別単位の形態;粉末又は顆粒の形態;水性液体又は非水性液体中の溶液又は懸濁液の形態、又は水中油型エマルジョン若しくは油中水型エマルジョンの形態であってもよい。
【0105】
非経口投与に好適な製剤は、好都合には、好ましくは受容体の血液と等張である活性成分の滅菌油性又は水性調製物を含む。そのような製剤はいずれも、例えば、安定剤、酸化防止剤、結合剤、染料、乳化剤又は風味物質などの他の医薬的に適合性の非毒性補助剤を含有することもできる。
【0106】
ここで本発明を以下の実施例により説明する。
【0107】
この研究は、欧州研究会議(European Research Council)によって資金提供され、ヨーロッパ連合(European Union)のHorizon 2020研究・革新プログラムの助成契約番号647973、Foundation Charles Defforey-Institut de France,Ligue Contre le Cancer(Equipes Labellisees)の支援を受けて行われた。
【実施例
【0108】
式(I)の化合物の調製
【0109】
【化13】
【0110】
C20-オキソナラシンMA-I-080の合成
CHCl(5mL)中のナラシン(40mg、0.05mmol、1.0当量)の撹拌溶液に、活性化MnO(174mg、2.00mmol、40.0当量)の一分量を一度に添加し、黒色懸濁液を室温で24時間撹拌した。その後、活性化MnOの第2の分量(174mg、2.00mmol、40.0当量)を添加し、撹拌を室温で次の24時間続けた。次いで、反応混合物をセライトを通して濾過し、減圧下で蒸発乾固させ、残渣を、C18-逆相カラム(勾配:ACN/HO/FA 4/1/0.1~ACN/FA 1/0.1)を備えたHPLCを使用して精製した。反応の純粋な生成物を白色非晶質固体として定量的に得た。
【0111】
収率:39mg、98%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:CHCl/EtOAc 50%中0.44。紫外線活性があり、PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCl)δ7.16(d,J=10.8Hz,1H),6.10(d,J=10.8Hz,1H),4.12(q,J=6.1Hz,1H),3.91(d,J=10.3Hz,1H),3.86(dd,J=10.3,5.3Hz,1H),3.78(d,J=10.2Hz,1H),3.51(dd,J=9.8,1.7Hz,1H),3.44(t,J=4.8Hz,1H),3.21(s,1H),2.85-2.69(m,2H),2.59(dd,J=10.9,1.4Hz,1H),2.45(td,J=12.4,8.9Hz,1H),2.35-2.20(m,1H),2.05-0.60(m,55H)ppm;13C NMR(126MHz,CDCl)δ214.5,191.1,177.5,144.6,126.4,106.4,98.1,91.6,78.7,76.3,75.3,74.8,73.1,72.4,68.9,55.4,49.7,48.8,40.4,39.2,36.7,36.1,35.8,34.7,33.1,31.0,29.5,28.6,25.0,24.3,23.9,22.0,19.1,18.0,16.13,16.07,14.0,13.7,13.0,12.3,12.2,7.5,6.9 ppm;HRMS(ESI)m/z[M+NHのC4374NO11に対する計算値は780.5262、測定値は780.5265。
【0112】
実施例1:C20-プロパルギロアミノナラシンの合成(化合物1)
アルゴン雰囲気下で、C20-オキソナラシン(MA-I-080)(67mg、0.09mmol、1.0当量)を無水MeOH(4mL)中に溶解し、続いて分子篩4Å、プロパルギルアミン(55μL、0.87mmol、10.0当量)及び氷酢酸(35μ
L)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した後、CeCl・7HO(32mg、0.09mmol、1.0当量)を添加し、NaBHCN(7.0mg、0.12mmol、1.3当量)の無水MeOH(3mL)溶液をシリンジポンプを使用して室温で8時間かけて滴下した。次いで、黄色の反応混合物を蒸発乾固した。少量のCHClを油状残渣に添加し、不溶性成分を濾別した。濾液を真空中で蒸発させ、C18-逆相カラムを備えたHPLCを使用して精製した(勾配:ACN/HO/FA 1/1/0.1からACN/FA 1/0.1)。反応の純粋な生成物を白色非晶質固体として収率39%で得た。
【0113】
収率:27mg、39%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:CHCl/EtOAc 50%中0.78。PMAで緑色に染色する株;H NMR(400MHz,CDCl)δ6.37(dd,J=10.0,5.3Hz,1H),6.20(d,J=10.2Hz,1H),4.24(d,J=9.8Hz,1H),4.16(dt,J=16.0,2.1Hz,1H),3.89-3.79(m,2H),3.78-3.70(m,2H),3.59(d,J=5.4Hz,1H),3.57-3.50(m,2H),2.67-2.54(m,3H),2.29(t,J=2.3Hz,1H),2.25-2.14(m,1H),2.10-2.00(m,1H),1.99-1.83(m,4H),1.80-0.60(m,53H)ppm;13C NMR(101MHz,CDCl)δ215.0,178.7,130.6,128.0,109.0,99.7,88.7,80.3,78.2,77.6,75.7,73.8,73.5,73.4,71.2,69.2,55.9,53.2,50.4,50.3,40.0,39.5,38.5,36.5,36.1,35.6,32.8,31.9,30.9,29.6,29.2,28.8,24.4(2C),21.8,17.9,17.6,16.5,15.8,14.6,13.5,13.2,12.9,12.4,8.2,6.6 ppm;HRMS(ESI)m/z[M+H]のC4676NO10に対する計算値は802.5469、測定値は802.5469。
【0114】
実施例2:C20-シクロプロピルアミノナラシンの合成(化合物2)
アルゴン雰囲気下で、C20-オキソナラシン(MA-I-080)(88mg、0.11mmol、1.0当量)を無水MeOH(5mL)中に溶解し、続いて分子篩4Å、シクロプロピルアミン(79μL、1.11mmol、10.0当量)及び氷酢酸(45μL)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した後、CeCl・7HO(42mg、0.11mmol、1.0当量)を添加し、NaBHCN(9.0mg、0.16mmol、1.4当量)の無水MeOH(4mL)溶液をシリンジポンプを使用して室温で8時間かけて滴下した。その後、濁った反応混合物を濾過し、濾液を蒸発乾固させた。油状残留物を少量のCHCl中に溶解し、不溶性成分を濾別し、濾液を真空中で蒸発させ、C18-逆相カラムを備えたHPLCを使用して精製した(勾配:ACN/HO/FA 1/1/0.1からACN/FA 1/0.1)。反応の純粋な生成物を白色非晶質固体として収率47%で得た。
【0115】
収率:44mg、47%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:CHCl/EtOAc 50%中0.87。PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCl)δ6.43(dd,J=10.3,4.7Hz,1H),6.17(d,J=10.3Hz,1H),4.20(dd,J=10.0,1.3Hz,1H),3.83-3.75(m,2H),3.73(q,J=6.8Hz,1H),3.56(ddd,J=13.8,10.2,2.9Hz,2H),3.36(d,J=4.7Hz,1H),2.80(ddd,J=11.0,7.4,3.8Hz,1H),2.64(dq,J=9.9,7.1Hz,1H),2.57(ddd,J=9.3,7.7,5.0Hz,2H),2.22-2.
12(m,1H),2.09-1.86(m,5H),1.80-0.65(m,55H),0.62-0.55(m,1H),0.52-0.45(m,1H)ppm;13
NMR(126MHz,CDCl)δ215.0,178.6,130.8,126.8,108.2,99.9,89.1,78.1,77.4,76.0,73.7,71.2,69.4,56.9,56.0,50.4(2C),40.3,39.4,38.7,36.1,35.6,32.9,31.3,30.9,30.6,29.5,29.2,28.8,25.0,24.6,22.2,17.9,17.7,16.6,15.9,14.5,13.6,13.4,13.1,12.5,8.2,6.6,6.2,5.1 ppm、1つのシグナルが重複;HRMS(ESI)m/z[M+H]のC4678NO10に対する計算値は804.5626、測定値は804.5626。
【国際調査報告】