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特表2024-533203サリノマイシン及びナラシンの鉄活性化可能な窒素含有誘導体、合成並びにがん治療のための使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】サリノマイシン及びナラシンの鉄活性化可能な窒素含有誘導体、合成並びにがん治療のための使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20240905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240905BHJP
【FI】
C07D519/00 CSP
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K45/00 101
A61K31/357
A61P35/04
A61K47/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514118
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2022074451
(87)【国際公開番号】W WO2023031399
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21306208.6
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】506413937
【氏名又は名称】アンスティテュート キュリー
(71)【出願人】
【識別番号】505386960
【氏名又は名称】アンスティテュト ナショナル ド ラ サンテ エ ド ラ ルシェルシュ メディカル (アンセルム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】カネーケ,タチアナ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】アントシュチャク,ミハウ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076CC27
4C076CC42
4C076EE59
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA14
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、サリノマイシン及びナラシンの新規な特異的鉄活性化可能な窒素含有誘導体、それらの合成、並びに特にがんの治療のための療法におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物及びそれらのジアステレオ異性体から選択される化合物であって、
【化1】
式中、Rが、ヒドロキシル基又は基-NR1R2(式中、R1及びR2は、同一であるか又は異なり、独立して、H、C1~C20アルキル基、C3~C6シクロアルキル基、アルキン基、及びアラルキル基から選択される)であり、
式中、R’が、H又はメチルであり、
好ましくは、R1及びR2が異なり、独立して、H、C1~C20アルキル基、C3~C6シクロアルキル基、アルキン基、及びアラルキル基から選択される、化合物。
【請求項2】
式(I’)の化合物及びそれらのジアステレオ異性体から選択され、
【化2】
式中、R及びR’が、上で定義したとおりである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記C3~C6シクロアルキルが、3~6個の炭素原子を含む環状炭化水素基であり、好ましくは、前記C3~C6シクロアルキルが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシル基から選択され、より好ましくは、前記C3~C6シクロアルキルが、シクロプロピルであり、かつ/又は前記アルキン基が、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合(-C≡C-)を含む不飽和炭化水素であり、好ましくは、前記アルキン基が、直鎖状であり、好ましくは、前記アルキン基が、2~10個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子、好ましくは3個の炭素原子を含み、好ましくは、前記アルキン基が、プロピニルである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記C1~C20アルキル基が、1~20個の炭素原子、好ましくは2~15個の炭素原子を含む直鎖若しくは炭化水素基、又は3~20個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子を含む分岐鎖炭化水素基であり、好ましくはエチル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、又はドデシル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記アラルキルが、基-(CHn-アリールであり、式中、nが、1~5の整数であり、アリールが、ヒドロキシル基、C1~C20アルキル基、及びハロゲンから選択される少なくとも1つの基で任意選択で置換されていてもよい単環式又は多環式芳香族炭化水素基であり、好ましくは、前記アラルキル基が、置換されていないか、又は好ましくはパラ位において、ヒドロキシル基、メチルなどのC1~C6アルキル基、及びF若しくはClなどのハロゲンから選択される少なくとも1つの基で置換されているベンジルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Rが、ヒドロキシル基又は基-NR1R2(式中、R1は、C1~C20アルキル基、C3~C6シクロアルキル基、アルキン基、及びアラルキル基から選択され、R2は、H、C1~C20アルキル基、及びアルキン基から選択される)であり、好ましくは、Rが、ヒドロキシル基又は基-NR1R2(式中、R1及びR2は、異なり、独立して、H、C3~C6シクロアルキル基、及びアルキン基から選択される)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Rが、ヒドロキシル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Rが、-NR1R2であり、R2が、Hであり、R1が、C3~C6シクロアルキル基又はアルキン基、好ましくはC2~C6アルキン基であり、好ましくは、R2が、Hであり、R1が、シクロプロピル又はプロピニルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
以下の化合物:
【化3】
【化4】
から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
医薬的に許容可能な媒体中に、請求項1~9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの式(I)の化合物を含む、組成物。
【請求項11】
医薬として使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
対象におけるがんを予防及び/若しくは治療するため、かつ/又はがん転移を予防するため、かつ/又はがん再発を予防するため、かつ/又は化学療法に対する耐性を低下させるために使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物であって、好ましくは、前記がんが、固形がん及び非固形がんから選択され、好ましくは、結腸がん、BRAF変異、特にBRAF V600Eを有する結腸直腸がんなどの結腸直腸がん、メラノ
ーマ、骨がん、トリプルネガティブ乳がんなどの乳がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、膠芽腫などの膠腫、子宮頸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、肝臓がん、膀胱がん、腎臓がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、尿路上皮がん又は副腎皮質がん、急性骨髄性白血病などの白血病、リンパ種、及び多発性骨髄腫から選択される、化合物。
【請求項13】
a)請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物と、
b)少なくとも1つの追加の療法と、を含み、
対象において、がんを治療するため、かつ/又はがん転移を予防するため、かつ/又はがん再発を予防するため、かつ/又は前記追加の療法b)に対する耐性を低下させるための、同時、個別、又は逐次使用のための組み合わせ製品としての、製品。
【請求項14】
前記追加の療法b)が、免疫療法、化学療法、及び/又は放射線療法である、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
前記対象が、がんに罹患し、かつ化学療法に耐性のある、ヒトである、請求項13又は14に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サリノマイシン及びナラシンの新規な特異的鉄活性化可能な窒素含有誘導体、それらの合成、並びに特にがんの治療のための療法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化学療法及び放射線療法に対する耐性は、がんの治療の成功における主要な障害のままである。死滅していないがん細胞の一部が突然変異して耐性になり得る、治療を無効にするタンパク質の過剰発現をもたらす遺伝子増幅が起こり得る、又はがん細胞が治療を不活性化する機構を発達させ得るなど、多くの理由により、がん治療中に耐性が起こり得る。
【0003】
がん幹細胞(cancer stem cell、CSC)は、従来の治療剤に対して抗療性であることが示されており、転移を促進することができ、がん再発に関連付けられている。サリノマイシンは、CSCを選択的に死滅させることができる。サリノマイシン誘導体は、リソソーム中に蓄積し、この細胞小器官中で鉄を隔離する。結果として、鉄の蓄積は、活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)の産生及びリソソーム膜の透過化をもたらし、これは次に、フェロトーシス(ferroptosis)(最近特徴付けられた細胞死機構、すなわち、鉄に依存し、ROSによって媒介される)による細胞死を促進する。したがって、CSCにおける鉄ホメオスタシスが重要である。この機構は、次世代治療薬の開発に向けた機会を生み出す。
【0004】
サリノマイシン及びイロノマイシンは、薬物耐性がん細胞株の治療における強力な抗増殖薬物である。しかしながら、これらの分子は、細胞内でのそれらの分解に関与するカルボキシルラジカルを提示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、腫瘍組織に特異性でありながら効率的とされる新規かつ効率的な抗がん薬物の開発の必要性が存在する。特に、がん幹細胞及び療法耐性がん細胞の両方を死滅させることができる新規かつ効率的な抗がん薬物の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、これらの必要性を解決することを目的とする新しい分子を提案する。
実際、本発明者らは、サリノマイシン、ナラシン、イロノマイシン、及び他の誘導体とジヒドロアルテミシニン(dihydroartemisinin、DHA)との共役を調製した。そのような共役は非常に興味深いプロドラッグである。いかなる理論にも束縛されることなく、それらは細胞及びリソソームに浸透することができ、リソソームにおいて活性画分が遊離される一方で、DHAが分解される。これにより、療法作用を発揮することができる。
【0007】
したがって、本発明は、第1に、式(I)の化合物及びそのジアステレオ異性体から選択される化合物であって、
【0008】
【化1】
式中、Rが、基-NR1R2(式中、R1及びR2は、同一であるか又は異なり、独立して、H、C1~C20アルキル基、C3~C6シクロアルキル基、アルキン基、及びアラルキル基から選択される)であり、
式中、R’が、H又はメチルである、化合物に関する。
【0009】
好ましくは、R1及びR2は、同一であるか又は異なり、ただし、R1及びR2は、同時にHではない。
【0010】
好ましくは、R1及びR2は異なり、独立して、H、C1~C20アルキル基、C3~C6シクロアルキル基、アルキン基、及びアラルキル基から選択される。
【0011】
好ましくは、化合物は、式(I’)の化合物及びそれらのジアステレオ異性体から選択され、
【0012】
【化2】
式中、R及びR’は、上で定義したとおりである。
【0013】
好ましくは、R1及びR2は、同一であるか又は異なり、ただし、R1及びR2は、同時にHではない。
【0014】
好ましくは、R1及びR2は異なり、独立して、H、C1~C20アルキル基、C3~C6シクロアルキル基、アルキン基、及びアラルキル基から選択される。
【0015】
R’がHである場合、式(I)又は(I’)の化合物は、サリノマイシンの共役である。
【0016】
R’がメチルである場合、式(I)又は(I’)の化合物は、ナラシンの共役である。
【0017】
ジアステレオ異性体とは、エピマーを意味する。
【0018】
実際に、Rは、アップ又はダウン結合によって分子に連結され得る。式(I)中、結合
【0019】
【化3】
は、以下の結合のうちの1つに対応する。
【0020】
【化4】
【0021】
言い換えれば、式(I)のジアステレオ異性体は、式(II)及び(III)の化合物から選択することができる
【0022】
【化5】
【0023】
式(I’)のジアステレオ異性体は、式(II’)及び(III’)の化合物から選択することができる
【0024】
【化6】
【0025】
「C1~C20アルキル」とは、1~20個の炭素原子、好ましくは2~15個の炭素原子を含む直鎖若しくは炭化水素基、又は3~20個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子を含む分岐鎖炭化水素基を意味する。C1~C20アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、オクチル、又はドデシル基、好ましくは、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、又はドデシル基を挙げることができる。
【0026】
「C3~C6シクロアルキル」とは、3~6個の炭素原子を含む環状炭化水素基を意味する。C3~C6シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシル基が挙げられる。より好ましくは、C3~C6シクロアルキルは、シクロプロピルである。
【0027】
「アルキン基」とは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合(-C≡C-)を含む不飽和炭化水素を意味する。好ましくは、アルキン基は、直鎖である。好ましくは、アルキン基は、2~10個の炭素原子、好ましくは、2~6個の炭素原子を含む。好ましくは、ア
ルキン基は、3個の炭素原子を含む。好ましくは、アルキン基は、プロピニルである。
【0028】
「アラルキル」とは、基-(CHn-アリールを意味し、式中、nは、1~5の整数であり、アリールは、単環式又は多環式芳香族炭化水素基であり、これは任意選択で置換されていてもよい。好ましくは、アリールは、フェニルである。アリールは、ヒドロキシル基、C1~C20アルキル基(好ましくはC1~C6アルキル基)、及びハロゲンから選択される少なくとも1つの基によって置換されていてもよい。「ハロゲン」とは、フッ素(fluorine、F)、塩素(chlorine、Cl)、ヨウ素(iodine、I)、又は臭素(bromine、Br)を意味する。好ましくは、アリールは、好ましくはパラで、ヒドロキシル基、メチルなどのC1~C6アルキル基、及びF又はClなどのハロゲンから選択される少なくとも1つの基で置換されている。好ましくは、アラルキル基は、置換されていないか、又は好ましくはパラで、ヒドロキシル基、メチルなどのC1~C6アルキル基、及びF若しくはClなどのハロゲンから選択される少なくとも1つの基で置換されているベンジルである。
【0029】
好ましくは、本発明の化合物は、式(II’)であり、
【0030】
【化7】
式中、R及びR’は、上で定義したとおりである。
【0031】
好ましくは、あるいは、本発明の化合物は、式(III’)であり、
【0032】
【化8】
式中、Rは、上で定義したとおりであり、R’は、Hである。
【0033】
好ましくは、Rは、ヒドロキシル基又は基-NR1R2(式中、R1は、C1~C20アルキル基、C3~C6シクロアルキル基、アルキン基、及びアラルキル基から選択され、R2は、H、C1~C20アルキル基、及びアルキン基から選択される)である。
【0034】
好ましくは、Rは、ヒドロキシル基又は基-NR1R2(式中、R1及びR2は異なり、独立して、H、C3~C6シクロアルキル基、及びアルキン基から選択される)である。
【0035】
好ましくは、Rは、ヒドロキシル基である。
あるいは、好ましくは、Rは、-NR1R2である。この場合、好ましくは、R2は、Hであり、R1は、C3~C6シクロアルキル基又はアルキン基、好ましくはC2~C6アルキン基である。好ましくは、R2は、Hであり、R1は、シクロプロピル又はプロピニルである。
【0036】
好ましくは、本発明の式(I)の化合物は、式(I’)の化合物である。好ましくは、本発明の式(I)の化合物は、以下の化合物から選択される:
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
実施例に示されるように、本発明の式(I)の化合物は、非がん性細胞株と比較して、様々ながんのがん性細胞に対して非常に特異的である。その上、表1に示すように、本発明の式(I)の化合物は、選択的な抗がん活性を示す。
【0040】
本発明の化合物の調製
本発明の化合物は、実施例に例示されている以下のプロセスによって特に調製することができる。
【0041】
サリノマイシン若しくはナラシン、又はそれらのそれぞれのC20-アミン誘導体のうちの1つを、無水媒体中でジヒドロアルテミシニン(DHA)と混合する。次いで、式(I)の化合物を得るために、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジ
イミド塩酸塩(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride、EDCI)及び4-ジメチルアミノピリジン(4-dimethylaminopyridine、DMAP)を添加し、得られた混合物を撹拌する。
【0042】
あるいは、本発明のDHA共役プロドラッグは、以下に記載される2つの他のプロトコルを使用して調製され得る。
1.DCC/DMAP/DIPEA-活性化プロトコル:
無水CHCl中のサリノマイシン若しくはナラシン、又はそれらのそれぞれのC20-アミン誘導体のうちの1つを、好ましくは低温(すなわち約0℃)で、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(N,N’-dicyclohexylcarbodiimide、DCC)、DMAP、及びDHAと混合する。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(N,N-diisopropylethylamine、DIPEA)を添加する。インキュベーション後、反応物を室温に温め、十分な時間、好ましくは数時間、好ましくは約24時間撹拌する。
【0043】
2.DCC/PPy/pTSA活性化プロトコル:
無水CHCl中のサリノマイシン若しくはナラシン、又はそれらのそれぞれのC20-アミン誘導体のうちの1つの溶液に、以下の試薬を添加する:DCC、4-ピロリジノピリジン(4-pyrrolidinopyridine、PPy)、DHA、及び触媒性p-トルエンスルホン酸一水和物(p-toluenesulfonic acid
monohydrate、pTSA)。次いで、得られた混合物を撹拌する。好ましくは、得られた混合物をまず低温(すなわち、約0℃)で数時間、好ましくは約6時間撹拌し、次いで、室温で数時間、好ましくは約18時間撹拌する。
【0044】
組成物及び使用
本発明はまた、医薬的に許容可能な媒体中に、本発明による少なくとも1つの式(I)の化合物を含む組成物に関する。
【0045】
本発明はまた、医薬としての本発明による式(I)の化合物の使用に関する。
【0046】
本発明はまた、がんを予防及び/又は治療するための、本発明による式(I)の化合物の使用に関する。
【0047】
抗がん使用
本発明の式(I)の化合物は、がんを予防及び/又は治療するために使用することができる。
【0048】
「予防する」とは、がんが発生することを回避することを意味する。
【0049】
「治療」とは、がんの治癒的治療を意味する。治癒的治療は、がんを完全に治療する(治癒する)又は部分的に治療する(すなわち、腫瘍増殖の安定化、遅延又は退縮を誘導する)治療として定義される。
【0050】
「対象」は、任意の対象を指し、典型的には、患者、好ましくは、免疫療法、化学療法、及び/又は放射線療法などのがんの治療を受けている対象を指す。いずれの場合も、対象は、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、更により好ましくはヒトである。
【0051】
「がん」とは、任意のタイプのがんを意味する。がんは、固形がんであっても非固形がんであってもよく、例えば、結腸がん、結腸直腸がん(例えば、BRAF変異(特にBR
AF V600E)を有する結腸直腸がん)、メラノーマ、骨がん、トリプルネガティブ乳がん(すなわち、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び過剰なHER2タンパク質について陰性である乳がん)などの乳がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、膠芽腫などの膠腫、子宮頸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、肝臓がん、膀胱がん、腎臓がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、尿路上皮がん又は副腎皮質がん、急性骨髄性白血病などの白血病だけでなく、リンパ腫又は多発性骨髄腫などの非固形がんから選択されてもよい。
【0052】
好ましくは、がんは、結腸がん、結腸直腸がん(例えば、BRAF変異(特にBRAF
V600E)を有する結腸直腸がん)、乳がん、例えばトリプルネガティブ乳がん(すなわち、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及び過剰なHER2タンパク質について陰性である乳がん)、膵臓がん、神経膠腫(例えば、膠芽腫)、白血病(例えば、急性骨髄性白血病)、リンパ腫、又は多発性骨髄腫である。
【0053】
がんは、転移性がんであってもなくてもよい。典型的ながんは、第一選択の化学療法に耐性のがんである。
【0054】
本発明はまた、化学療法薬物に対するがんの感受性を増加させるための少なくとも1つの式(I)の化合物の使用に関する。
【0055】
本発明の更なる目的は、化学療法薬物に対するがんの耐性を減少させるための少なくとも1つの式(I)の化合物の使用である。
【0056】
本発明はまた、製品であって、
a)本発明の少なくとも1つの式(I)の化合物と、
b)少なくとも1つの追加の療法と、を含み、
対象において、がんを治療するため、かつ/又はがん転移を予防するため、かつ/又はがん再発を予防するため、かつ/又は追加の療法b)に対する耐性を低下させるための、同時、個別、又は逐次使用のための組み合わせ製品としての、製品を提供する。
【0057】
本発明はまた、少なくとも1つの追加の療法と組み合わせて又は関連して、がんを予防及び/又は治療するための、本発明の少なくとも1つの式(I)の化合物の使用に関する。
【0058】
本発明は更に、少なくとも1つの追加の療法によって治療される対象においてがんを予防及び/又は治療するための、本発明の少なくとも1つの式(I)の化合物の使用に関する。本発明はまた、アジュバントがん療法として使用するための、本発明の少なくとも1つの式(I)の化合物に関する。アジュバント療法は、その有効性を最大化するために、一次又は初期療法(「第一選択の療法」)に加えて与えられる、がんを治療するための療法である。
【0059】
上記追加の療法b)は、免疫療法、化学療法、及び/又は放射線療法であってもよい。好ましくは、追加の療法b)は、免疫療法及び/又は化学療法である。
【0060】
「免疫療法」とは、免疫応答を誘導、増強、又は抑制することができる療法を意味する。上記免疫療法は、好ましくは、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、成長阻害因子、ホルモン、可溶性受容体、デコイ受容体;モノクローナル又はポリクローナル抗体、単一特異性、二重特異性、若しくは多重特異性抗体、モノボディ、ポリボディ;ワクチン接種;又は養子特異的免疫療法から選択される。
【0061】
好ましくは、免疫療法は、モノクローナル又はポリクローナル抗体、単一特異性、二重特異性、又は多重特異性抗体、モノボディ、ポリボディ、例えば、ベバキュジマブ(Bevacuzimab)(mAb、阻害VEGF-A、Genentech)のような抗血管新生剤;IMC-1121B(mAb、阻害VEGFR-2、ImClone Systems);CDP-791(Pegylated DiFab、VEGFR-2、Celltech);2C3(mAb、VEGF-A、Peregrine Pharmaceuticals);VEGFトラップ(可溶性ハイブリッド受容体VEGF-A、PIGF(胎盤増殖因子)Aventis/Regeneron)から選択される。
【0062】
好ましくは、免疫療法は、モノクローナル抗体、好ましくは抗チェックポイント抗体である。
【0063】
抗チェックポイント抗体は、PD1、PDL1、PDL2、CTLA4、BTLA、CD27、CD40、OX40、GITR(「腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18」又はTNFRSF18とも呼ばれる)、CD137(4-1BB又はTNFRS9とも呼ばれる)、CD28、ICOS、IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)、B7H3(CD276とも呼ばれる)、KIR2DL2(キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL2とも呼ばれる)、NKG2(C型レクチン受容体のファミリー)、LAG3(リンパ球活性化遺伝子-3とも呼ばれる)、及びCD70から選択され得る免疫チェックポイントに対する抗体を含む。好ましくは、抗チェックポイント抗体は、抗PD1、抗PDL1、抗PDL2、又は抗CTLA4抗体である。抗PD1抗体は、ニボルマブ及びペムブロリズマブを含む。抗CTLA4抗体としては、イピリムマブ及びトレメリムマブが挙げられる。
【0064】
「化学療法」又は「化学療法剤」は、がんの治療に使用され、かつヒトにおける新生物、特に悪性(がん性)病変の発生又は進行を阻害する機能特性を有する、化合物を指す。
【0065】
化学療法剤は、例えば、DNA又はRNAのいずれかに影響し、細胞周期複製を妨害することによって、異なる作用様式を有する。
【0066】
DNAレベル又はRNAレベルで作用する化学療法剤の例は、以下のとおりである。
- 代謝拮抗物質、例えば、アザチオプリン、シタラビン、フルダラビンリン酸塩、フルダラビン、ゲムシタビン、シタラビン、クラドリビン、カペシタビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びヒドロキシ尿素;
- アルキル化剤、例えば、メルファラン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカラバジン、フォテムスチン、プロカルバジン、クロラムブシル、チオテパ、ロムスチン、テモゾロミド;
- ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドセタキセル、パクリタキセルなどの抗有糸分裂剤;
- トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、ドキソルビシン、アムサクリン、イリノテカン、ダウノルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、イダルビシン、テニポシド、エトポシド、トポテカン;
- 抗生物質、例えば、アクチノマイシン及びブレオマイシン;
- アスパラギナーゼ;
- アントラサイクリン又はタキサン。
【0067】
他の化学療法剤は、チロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor、TKI)である。いくつかのTKIは、様々なタイプのがんの治療のために開発の後期及び初期段階にある。例示的なTKIとしては、BAY 43-9006
(ソラフェニブ、Nexavar(登録商標))及びSU11248(スニチニブ、Sutent(登録商標))、メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標)、Novartis);ゲフィチニブ(Iressa(登録商標)、AstraZeneca);エルロチニブ塩酸塩(Tarceva(登録商標)、Genentech);バンデタニブ(Zactima(登録商標)、AstraZeneca)、チピファルニブ(Zarnestra(登録商標)、Janssen-Cilag);ダサチニブ(Sprycel(登録商標)、Bristol Myers Squibb);ロナファルニブ(Sarasar(登録商標)、Schering Plough);コハク酸バタラニブ(Novartis、Schering AG);ラパチニブ(Tykerb(登録商標)、GlaxoSmithKline);ニロチニブ(Novartis);レスタウルチニブ(Cephalon);パゾパニブ塩酸塩(GlaxoSmithKline);アキシチニブ(Pfizer);カネルチニブ二塩酸塩(Pfizer);ペリチニブ(National Cancer Institute、Wyeth);タンデュチニブ(Millennium);ボスチニブ(Wyeth);セマキサニブ(Sugen、Taiho);AZD-2171(AstraZeneca);VX-680(Merck、Vertex);EXEL-0999(Exelixis);ARRY-142886(Array BioPharma、AstraZeneca);PD-0325901(Pfizer);AMG-706(Amgen);BIBF-1120(Boehringer Ingelheim);SU-6668(Taiho);CP-547632(OSI);(AEE-788(Novartis);BMS-582664(Bristol-Myers Squibb);JNK-401(Celgene);R-788(Rigel);AZD-1152 HQPA(AstraZeneca);NM-3(Genzyme Oncology);CP-868596(Pfizer);BMS-599626(Bristol-Myers Squibb);PTC-299(PTC Therapeutics);ABT-869(Abbott);EXEL-2880(Exelixis);AG-024322(Pfizer);XL-820(Exelixis);OSI-930(OSI);XL-184(Exelixis);KRN-951(Kirin Brewery);CP-724714(OSI);E-7080(Eisai);HKI-272(Wyeth);CHIR-258(Chiron);ZK-304709(Schering AG);EXEL-7647(Exelixis);BAY-57-9352(Bayer);BIBW-2992(Boehringer Ingelheim);AV-412(AVEO);YN-968D1(Advenchen Laboratories);スタウロスポリン、ミドスタウリン(PKC412、Novartis);ペリホシン(AEterna Zentaris、Keryx、National Cancer Institute);AG-024322(Pfizer);AZD-1152(AstraZeneca);ON-01910Na(Onconova);及びAZD-0530(AstraZeneca)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書には、(i)がんを予防又は治療する方法、(ii)化学療法剤に対するがんの感受性を増加させる方法、及び(iii)化学療法薬物に対するがんの耐性を減少させる方法も記載されており、上記方法の各々は、それを必要とする対象に、有効量の上記で定義された少なくとも1つの式(I)の化合物を、好ましくは化学療法薬物と一緒に投与することを含む。
【0069】
本発明の式(I)の化合物は、好ましくは、療法有効量又は用量で投与される。本明細書で使用される場合、「療法有効量又は用量」は、対象、好ましくはヒトにおいて、疾患を予防、除去、減速するか、又は上記疾患によって引き起こされるか若しくはそれに関連する1つ若しくはいくつかの症状若しくは障害を低減若しくは遅延させる、本発明の化合物の量を指す。本発明の化合物及びその医薬組成物の有効量、より一般的には投薬レジメ
ンは、当業者によって決定かつ適合され得る。有効用量は、従来技術の使用によって、及び類似の状況下で得られた結果を観察することによって決定することができる。本発明の化合物の療法有効用量は、治療又は予防される疾患、その重症度、投与経路、関与する任意の併用療法、患者の年齢、体重、一般的な病状、病歴などに応じて変化する。
【0070】
典型的には、患者に投与される化合物の量は、ヒト患者について、約0.01~500mg/kg体重の範囲であり得る。特定の実施形態において、本発明による医薬組成物は、0.01mg/kg~300mg/kg、好ましくは0.01mg/kg~3mg/kg、例えば、25~300mg/kgの本発明の化合物を含む。
【0071】
特定の態様では、本発明の化合物は、非経口経路、局所経路、経口経路、又は静脈内注射によって対象に投与することができる。本発明の化合物又はナノ粒子は、連続する数日間、例えば、連続する2~10日間、好ましくは連続する3~6日間、毎日(例えば1日1、2、3、4、5、6、又は7回)対象に投与され得る。上記治療は、1、2、3、4、5、6若しくは7週間、又は2若しくは3週間毎、又は1、2若しくは3ヶ月毎に繰り返されてもよい。あるいは、いくつかの治療サイクルを、任意選択で2つの治療サイクルの間に、例えば、1、2、3、4、又は5週間の休止期間を設けて行うことができる。本発明の化合物は、例えば、週に1回、2週間に1回、又は月に1回の単回用量として投与することができる。治療は、1年に1回又は数回繰り返すことができる。
【0072】
用量は、当業者によって決定され得る適切な間隔で投与される。選択される量は、投与経路、投与期間、投与時間、化合物又は上記化合物と組み合わせて使用される様々な製品の排出速度、患者の年齢、体重、及び健康状態、並びに患者の病歴、並びに医学において公知の任意の他の情報を含む、複数の因子に依存する。
【0073】
投与経路は、経口、局所又は非経口、典型的には直腸、舌下、鼻腔内、腹腔内(intra-peritoneal、IP)、静脈内(intra-venous、IV)、動脈内(intra-arterial、IA)、筋肉内(intra-muscular、IM)、小脳内、くも膜下腔内、腫瘍内及び/又は皮内であり得る。医薬組成物は、上述の経路の1つ又はいくつかに適合される。医薬組成物は、好ましくは、注射若しくは好適な滅菌溶液の静脈内注入によって、又は消化管を介した液体若しくは固体用量の形態で投与される。
【0074】
本発明はまた、医薬的に許容可能な媒体中に、本発明による少なくとも1つの式(I)の化合物を含む組成物に関する。このような組成物は、医薬的に許容可能な媒体(又は担体)を含む。
【0075】
担体は、製剤の他の成分と適合性であり、その受容体に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。
【0076】
医薬組成物は、医薬的に適合性の溶媒中の溶液として、又は好適な医薬的溶媒若しくはビヒクル中のゲル、油、エマルション、懸濁液、若しくは分散液として、又は当技術分野で公知の方法で固体ビヒクルを含有する丸剤、錠剤、カプセル剤、粉末剤、坐剤などとして、場合によっては持続放出及び/又は遅延放出を提供する投薬形態又はデバイスを通して製剤化することができる。このタイプの製剤には、セルロース、脂質、炭酸塩、又はデンプンなどの薬剤が有利に使用される。
【0077】
製剤(液体及び/又は注射可能及び/又は固体)において使用することができる薬剤又はビヒクルは、賦形剤又は不活性ビヒクル、すなわち、医薬的に不活性かつ非毒性のビヒクルである。
【0078】
例えば、医薬用途に適合し、かつ当業者に知られている、生理食塩水、生理学的、等張、及び/又は緩衝溶液を挙げることができる。組成物は、分散剤、可溶化剤、安定剤、保存剤などから選択される1つ以上の薬剤又はビヒクルを含有し得る。
【0079】
特定の例は、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリン、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、リポソーム、植物油又は動物、アカシアなどである。好ましくは、植物油が使用される。
【0080】
経口投与に好適な本発明の製剤は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル剤、サシェ剤、錠剤、又はトローチ剤などの個別単位の形態;粉末又は顆粒の形態;水性液体又は非水性液体中の溶液又は懸濁液の形態、又は水中油型エマルジョン若しくは油中水型エマルジョンの形態であってもよい。
【0081】
非経口投与に好適な製剤は、好都合には、好ましくは受容体の血液と等張である活性成分の滅菌油性又は水性調製物を含む。そのような製剤はいずれも、例えば、安定剤、酸化防止剤、結合剤、染料、乳化剤又は風味物質などの他の医薬的に適合性の非毒性補助剤を含有することもできる。
【0082】
ここで本発明を以下の実施例により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1の凡例は以下のとおりである。
図1-1】(a)イロノマイシン、AM9、DHA、又は本発明のイロノマイシン-DHAプロドラッグ(イロノマイシン-DHA)で処理した細胞の生存率曲線。 (b)イロノマイシン、AM9、又は本発明のイロノマイシン-DHAプロドラッグ(イロノマイシン-DHA)、及びlysotrackerで処理した細胞の蛍光画像。誤差棒=10μm。 (c)イロノマイシン、AM9、DHA、又は本発明のイロノマイシン-DHAプロドラッグ(イロノマイシン-DHA)(1μM、24時間)で処理した細胞のRhoNox-M蛍光のフローサイトメトリーヒストグラム。
図1-2】(d)イロノマイシン、AM9、DHA又は本発明のイロノマイシン-DHAプロドラッグ(イロノマイシン-DHA)(1μM、24時間)で処理した細胞のCellRox蛍光のフローサイトメトリーヒストグラム。 (e)イロノマイシン、AM9、DHA、又は本発明のイロノマイシン-DHAプロドラッグ(イロノマイシン-DHA)(1μM、24時間)で処理した細胞のBODIPY-C11緑色蛍光のフローサイトメトリーヒストグラム。細胞を、リプロキシスタチンの存在下又は非存在下でDHAで24時間処理した。 (f)リプロキシスタチンの存在下又は非存在下で、イロノマイシン、AM9、DHA、又は本発明のイロノマイシン-DHAプロドラッグ(イロノマイシン-DHA)で処理した細胞の生存率曲線。
【0084】
全てのデータは、膵管腺がん細胞株PDAC053Tを使用して得られた。
【実施例
【0085】
1/ジヒドロアルテミシニン共役プロドラッグ(本発明による式(I)の化合物)の合成のための一般的手順
スキーム1:サリノマイシン及びそのC20-アミン誘導体のジヒドロアルテミシニン共役プロドラッグの合成:
【0086】
【化11】
無水CHCl中のサリノマイシン(1.0当量)又はそのそれぞれのC20-アミン誘導体(イロノマイシンAM5又はAM23、1.0当量)及びジヒドロアルテミシニン(2.0当量)の撹拌溶液に、EDCI塩酸塩(1.2当量)及びDMAP(0.5当量)を一度に添加した。得られた混合物を室温で48時間撹拌した。その後、反応混合物を真空中で蒸発させ、CombiFlashシステム、及び/又はC18逆相カラムを備えたHPLCを使用してシリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製して(勾配:MA-I-023についてはACN/HO/FA 4/1/0.1からACN/FA 1/0.1、又はMA-I-062及びMA-I-082についてはACN/HO/FA 1/1/0.1からACN/FA 1/0.1)、反応の純粋な生成物(17~31%収率)を白色又はクリーム色の非晶質固体として得た。
【0087】
サリノマイシン-ジヒドロアルテミシニンプロドラッグMA-I-023(本発明による式(I)の化合物):収率:153mg、31%。NMRによる純度>95%、TLCによる2つのスポット(約92%のα-エピマー)の白色非晶質固体として単離された。R:シクロヘキサン/EtOAc 50%中0.64及び0.71。PMAで緑色に染色する株;H NMR(400MHz,CDCl)δ 6.40(d,J=9.8Hz,1H),6.01(dd,J=10.8,2.2Hz,1H),5.91(dd,J=10.7,1.2Hz,1H),5.77(s,1H),4.13(dd,J=11.2,6.1Hz,1H),4.02(dd,J=11.0,1.8Hz,1H),3.94(d,J=5.2Hz,1H),3.86-3.68(m,3H),3.61(dd,J=9.8,1.4Hz,1H),3.52(dd,J=10.5,1.7Hz,1H),3.20(dq,J=10.1,7.2Hz,1H),3.03(td,J=11.3,3.7Hz,1H),2.68(ddd,J=13.0,7.6,2.9Hz,2H),2.49(dqd,J=9.9,7.1,4.4Hz,1H),2.41-2.16(m,4H),2.15-0.60(m,71H)ppm;13C NMR(101MHz,CDCl)δ 214.4,174.5,133.3,121.0,106.7,104.3,99.4,93.8,92.3,88.1,81.4,80.8,77.5,74.8,74.5,72.3,71.1,68.8,67.8,57.3,52.0,50.1,48.4,46.4,40.7,39.2,37.0,36.9,36.7,36.6,34.8,33.6,33.1,31.0,30.6,29.5,28.
4,26.5,26.1,25.9,24.9,22.6,22.5,21.9,20.8,20.2,19.6,17.4,15.7,14.8,14.2,13.6,12.7,12.5,10.9,7.4,6.5ppm;HRMS(ESI)m/z[M+NHのC5796NO15に対する計算値は1034.6780、測定値は1034.6765。
【0088】
イロノマイシン-ジヒドロアルテミシニンプロドラッグMA-I-062(本発明による式(I)の化合物):収率:17mg、30%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:シクロヘキサン/EtOAc 50%中0.59。PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCl)δ 6.41(d,J=9.7Hz,1H),6.03(dd,J=22.7,10.8Hz,2H),5.79(s,1H),4.14(dd,J=11.2,6.1Hz,1H),4.04(d,J=10.3Hz,1H),3.78(q,J=6.9Hz,1H),3.61(td,J=10.0,1.7Hz,2H),3.57-3.44(m,3H),3.24(dq,J=9.8,7.3Hz,1H),3.15(s,1H),3.05(td,J=11.3,3.7Hz,1H),2.76-2.68(m,1H),2.49(tdd,J=14.3,7.1,4.6Hz,2H),2.38-2.26(m,3H),2.23(s,1H),2.20-0.60(m,73H)ppm;13C NMR(126MHz,CDCl)δ 214.4,174.7,131.8,120.7,106.8,104.3,99.0,93.9,92.3,87.7,82.9,81.9,80.9,77.4,74.9,74.1,72.2,71.1,70.9,68.7,57.5,55.9,52.0,50.1,48.7,46.4,40.8,39.3,37.6,37.0,36.9,36.8,36.7,34.8,33.6,32.9,31.3,30.9,29.5,28.4,26.5,25.9,25.5,24.9,22.4,21.9,21.7,20.2,19.6,17.3,15.7,14.6,14.1,13.6,12.7,12.5,10.9,7.3,6.5ppm、1つのシグナルが重複;HRMS(ESI)m/z[M+H]のC6096NO14に対する計算値は1054.6831、測定値は1054.6815。
【0089】
C20-シクロプロピルアミノサリノマイシン-ジヒドロアルテミシニンプロドラッグMA-I-082(本発明による式(I)の化合物):収率:14mg、26%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの特定の非晶質固体として単離された。R:シクロヘキサン/EtOAc 50%中0.74。PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCl)δ 6.41(d,J=9.6Hz,1H),6.03(s,2H),5.79(s,1H),4.13(dd,J=10.5,6.3Hz,1H),4.03(d,J=10.0Hz,1H),3.72(dd,J=12.8,6.1Hz,1H),3.61(d,J=9.7Hz,1H),3.52(d,J=9.0Hz,1H),3.46(d,J=10.2Hz,1H),3.25(dt,J=16.1,7.9Hz,1H),3.17(s,1H),3.04(t,J=10.4Hz,1H),2.72(d,J=10.7Hz,1H),2.54-2.46(m,2H),2.35-2.26(m,3H),2.20-0.60(m,74H),0.41(ddd,J=18.2,11.1,6.2Hz,3H),0.28(d,J=7.6Hz,1H)ppm;13C NMR(126MHz,CDCl)δ 214.5,174.7,132.6,120.7,107.2,104.3,98.9,93.9,92.4,87.4,82.0,80.9,77.5,74.9,73.5,72.3,71.2,68.7,57.6,56.6,52.1,50.2,48.7,46.4,40.9,39.4,37.0,36.9,36.8,36.3,34.8,33.7,33.0,31.9,30.9,29.6,29.4,28.5,26.6,25.9,25.0,24.9,22.5,22.2,21.9,21.8,20.2,19.7,17.4,15.8,14.5,14.1,13.6,12.7,12.5,10.9,7
.4,7.3,6.6,6.5ppm;HRMS(ESI)m/z[M+H]のC6098NO14に対する計算値は1056.6987、測定値は1056.6997。
【0090】
2/ジヒドロアルテミシニン共役プロドラッグMA-I-096(本発明による式(I)の化合物)の合成
スキーム2:ジヒドロアルテミシニン共役プロドラッグMA-I-096の合成:
【0091】
【化12】
【0092】
方法A:無水MeOH(2mL)中のC20-エピ-アミノサリノマイシン(50mg、0.07mmol、1.0当量)の撹拌溶液に、室温で、プロピナール(MA-I-0
73、新たに調製した)(4.4mg、0.08mmol、1.1当量)及び氷酢酸(2滴)を添加し、得られた混合物を4時間撹拌した。その後、無水MeOH(1mL)中に溶解したNaBHCN(9.0mg、0.15mmol、2.0当量)を滴下して導入した。混合物を一晩撹拌し、次いで、溶媒を真空中で蒸発乾固させた。残渣を、C18-逆相カラムを備えたHPLCを使用して精製した(勾配:ACN/HO 1/1からACN)。反応の純粋な生成物を白色非晶質固体として収率25%で得た。
【0093】
方法B:室温の無水ACN(2mL)中のC20-エピ-アミノサリノマイシン(50mg、0.07mmol、1.0当量)及びKCO(10mg、0.07mmol、1.0当量)の撹拌溶液に、臭化プロパルギル(トルエン中80重量%)(28mg、0.24mmol、3.5当量)を滴下添加した。次いで、反応混合物を60℃に加熱し、次の20時間激しく撹拌した。その後、反応混合物を濾過し、濾液を真空中で蒸発させた。油状残渣をCHCl(10mL)中に溶解し、HSOの水溶液(15mM、2×7mL)及び水(7mL)で2回抽出した。有機層を減圧下で蒸発させ、C18-逆相カラムを備えたHPLCを使用してクロマトグラフィーにより精製した(勾配:ACN/HO 1/1からACN)。反応の純粋な生成物を白色非晶質固体として収率52%で得た。
【0094】
C20-エピ-イロノマイシン(エピ-AM5):収率:27mg、52%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:CHCl/EtOAc 50%中0.24。PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCN)δ 6.18-6.05(m,2H),4.15(d,J=9.8Hz,1H),3.93(dd,J=10.4,3.9Hz,1H),3.88(dd,J=16.5,1.8Hz,1H),3.76(dd,J=13.0,6.5Hz,1H),3.63-3.56(m,3H),3.50(dd,J=23.1,6.2Hz,2H),2.98(td,J=10.2,4.2Hz,1H),2.72(td,J=14.6,7.2Hz,2H),2.62(d,J=10.2Hz,1H),2.52-2.41(m,1H),2.25-2.12(m,1H),2.10-0.60(m,55H)ppm;13C NMR(126MHz,CDCN)δ 213.5,178.3,132.0,126.5,111.7,99.9,88.3,82.6,77.7,77.6,75.5,74.4,73.0,72.4,71.4,69.2,55.9,55.3,49.8,48.4,40.1,39.2,36.9,36.4,35.2,33.4,31.8,31.7,30.3,28.9,26.9,25.9,23.7,22.9,20.5,17.7,17.6,16.1,15.0,13.7,13.2,12.1,11.6,7.6,6.7ppm;HRMS(ESI)m/z[M+H]のC4574NO10に対する計算値は788.5313、測定値は788.5310。
【0095】
C20-エピ-ジプロパルギロアミノサリノマイシン(エピ-ジAM5):収率:1.4mg、3%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:CHCl/EtOAc 50%中0.70。PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCl)δ 6.10(dd,J=10.4,1.6Hz,1H),5.54(dd,J=10.4,2.9Hz,1H),4.01(dd,J=8.7,8.2Hz,2H),3.78(ddd,J=17.5,15.3,6.1Hz,4H),3.70-3.60(m,3H),3.57(dd,J=11.2,1.3Hz,1H),3.46-3.40(m,1H),3.14-2.92(m,3H),2.85(dd,J=8.5,4.3Hz,1H),2.77(dd,J=11.3,7.2Hz,1H),2.34-2.26(m,2H),2.16(dd,J=11.3,8.6Hz,1H),2.10-0.60(m,53H)ppm;13C NMR(126MHz,CDCl)δ 217.6,177.2,130.9,
127.2,109.9,99.0,85.3,81.2,78.2,76.6,75.3,72.5,72.1(2C),71.7,71.3,71.1,60.8,56.4,49.6,48.3,41.4,39.5,36.8,36.1,34.8,33.2,31.0,29.7,29.4,28.7,26.4,22.8,22.7,21.2,21.0,20.2,18.6,16.2,14.6,13.9,13.5,12.1,11.5,7.4,6.5ppm、2つのシグナルが重複;HRMS(ESI)m/z[M+H]のC4876NO10に対する計算値は826.5469、測定値は826.5467。
【0096】
ジヒドロアルテミシニン共役プロドラッグMA-I-096(本発明による式(I)の化合物)の合成:
無水CHCl(4mL)中のC20-エピ-イロノマイシンエピ-AM5(44mg、0.06mmol、1.0当量)及びジヒドロアルテミシニン(32mg、0.11mmol、2.0当量)の撹拌溶液に、EDCI塩酸塩(13mg、0.07mmol、1.2当量)及びDMAP(3.0mg、0.03mmol、0.5当量)を一度に添加した。得られた混合物を室温で4日間撹拌した。その後、反応混合物を真空中で蒸発させ、C18-逆相カラムを備えたHPLCを使用して精製して(勾配:ACN/HO 1/1からACN)、反応の純粋な生成物MA-I-096(25%収率)を白色非晶質固体として得た。
【0097】
収率:15mg、25%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:シクロヘキサン/EtOAc 50%中0.74。PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCN)δ 6.17(d,J=9.7Hz,1H),6.00(dd,J=10.5,4.5Hz,1H),5.96(d,J=10.6Hz,1H),5.59(s,1H),3.84-3.74(m,2H),3.47(q,J=6.8Hz,1H),3.36(dd,J=9.8,1.8Hz,1H),3.31(dd,J=10.4,1.2Hz,1H),3.25-3.19(m,3H),2.97(dq,J=10.1,7.2Hz,1H),2.93(d,J=4.5Hz,1H),2.86(td,J=11.1,3.7Hz,1H),2.52(s,1H),2.48-2.41(m,2H),2.25-2.17(m,2H),2.05(ddd,J=14.3,13.3,3.8Hz,1H),2.00-0.40(m,74H)ppm;13C NMR(126MHz,CDCN)δ 215.3,175.3,131.3,124.1,110.4,104.8,99.9,94.4,92.9,88.2,84.0,81.4,81.3,77.8,75.1,74.1,72.8,72.2,71.4,69.4,57.6,56.6,52.5,50.6,48.7,46.8,40.6,39.7,37.5,37.4,37.4,37.1,36.6,35.1,34.2,33.8,32.7,31.8,30.4,28.9,26.8,26.2,25.4,25.2,23.0,22.5,22.4,21.1,20.4,20.1,17.6,17.0,15.1,14.5,13.8,13.0,12.7,11.2,7.7,6.8ppm;HRMS(ESI)m/z[M+H]のC6096NO14に対する計算値は1054.6831、測定値は1054.6841。
【0098】
3/ナラシンのジヒドロアルテミシニン共役プロドラッグの合成
スキーム3:ナラシンのジヒドロアルテミシニン共役プロドラッグの合成:
【0099】
【化13】
【0100】
C20-オキソナラシンMA-I-080の合成:CHCl(5mL)中のナラシン(40mg、0.05mmol、1.0当量)の撹拌溶液に、活性化MnO(174mg、2.00mmol、40.0当量)の一分量を一度に添加し、黒色懸濁液を室温で24時間撹拌した。その後、活性化MnOの第2の分量(174mg、2.00mmol、40.0当量)を添加し、撹拌を室温で次の24時間続けた。次いで、反応混合物をセライトを通して濾過し、減圧下で蒸発乾固させ、残渣を、C18-逆相カラム(勾配:ACN/HO/FA 4/1/0.1~ACN/FA 1/0.1)を備えたHPLCを使用して精製した。反応の純粋な生成物を白色非晶質固体として定量的に得た。
【0101】
収率:39mg、98%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:CHCl/EtOAc 50%中0.44。紫外線活性があり、PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCl)δ 7.16(d,J=10.8Hz,1H),6.10(d,J=10.8Hz,1H),4.12(q,J=6.1Hz,1H),3.91(d,J=10.3Hz,1H),3.86(dd,J=10.3,5.3Hz,1H),3.78(d,J=10.2Hz,1H),3.51(dd,J=9.8,1.7Hz,1H),3.44(t,J=4.8Hz,1H),3.21(s,1H),2.85-2.69(m,2H),2.59(dd,J=10.9,1.4Hz,1H),2.45(td,J=12.4,8.9Hz,1H),2.35-2.20(m,1H),2.05-0.60(m,55H)ppm;13C NMR(126MHz,CDCl)δ 214.5,191.1,177.5,144.6,126.4,106.4,98.1,91.6,78.7,76.3,75.3,74.8,73.1,72.4,68.9,55.4,49.7,48.8,40.4,39.2,36.7,36.1,35.8,34.7,33.1,31.0,29.5,28.6,25.0,24.3,23.9,22.0,19.1,18.0,16.13,16.07,14.0,13.7,13.0,12.3,12.2,7.5,6.9ppm;HRMS(ESI)m/z[M+NHのC4374NO11に対する計算値は780.5262、測定値は780.5265。
【0102】
ナラシン-ジヒドロアルテミシニンプロドラッグMA-I-081(本発明による式(I)の化合物)の合成:無水CHCl(2mL)中のナラシン(40mg、0.05mmol、1.0当量)及びジヒドロアルテミシニン(28mg、0.10mmol、2.0当量)の撹拌溶液に、EDCI塩酸塩(12mg、0.06mmol、1.2当量)及びDMAP(3.0mg、0.02mmol、0.5当量)を添加した。得られた混合物を室温で4日間撹拌した。その後、反応混合物を減圧下で蒸発乾固させ、残渣をC18逆相カラムを備えたHPLCを使用して精製した(勾配:ACN/HO/FA 4/1
/0.1からACN/FA 1/0.1)。反応の生成物を白色非晶質固体として収率13%で得た。
【0103】
収率:6.8mg、13%。NMRによる純度>95%、TLCによる2つのスポット(約70%のα-エピマー)の白色非晶質固体として単離された。R:CHCl/EtOAc 50%中0.73及び0.89。PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCl)δ 6.30(dd,J=9.3,5.8Hz,2H),6.02(dd,J=10.7,1.7Hz,1H),5.93(td,J=10.9,2.1Hz,2H),5.83(s,1H),5.73(s,1H),5.59(dd,J=9.9,1.5Hz,1H),4.10(td,J=9.8,5.5Hz,2H),3.98(dd,J=20.6,11.1Hz,3H),3.86-3.71(m,3H),3.67(dd,J=11.4,2.0Hz,1H),3.64-3.50(m,4H),3.19(dq,J=10.1,7.1Hz,1H),3.02(td,J=10.9,4.0Hz,1H),2.95(td,J=10.6,3.4Hz,1H),2.91-2.85(m,1H),2.82(d,J=5.4Hz,1H),2.74-2.60(m,3H),2.55-2.44(m,2H),2.44-2.12(m,8H),2.10-0.60(m,149H)ppm;13C NMR(126MHz,CDCl)δ 214.4,213.9,174.7,174.5,133.5,133.1,130.7,121.1,109.6,106.8,104.34,104.26,99.4,97.8,94.2,93.8,92.2,92.1,88.2,86.5,81.4,80.9,80.8,78.3,77.8,77.6,75.8,74.5,73.7,73.0,72.4,71.10,71.08,69.2,68.4,67.9,67.4,57.1,55.2,52.1,52.0,50.00,49.96,48.7,48.3,46.43,46.35,40.7,39.4,39.2,37.1,37.0,36.81,36.79,36.77,36.7,36.55,36.53,36.4,36.0,35.9,34.8,33.6,33.5,33.4,33.2,31.6,31.1,31.0,30.6,29.7,29.6,29.5,28.7,26.0,25.9,25.1,25.03,24.97,22.6,22.4,22.0,21.8,20.7,20.24,20.18,19.2,19.1,18.7,18.2,17.4,16.4,15.7,14.80,14.75,14.2,13.8,13.6,13.4,13.0,12.82,12.77,12.64,12.62,12.58,8.1,7.9,6.5ppm;HRMS(ESI)m/z[M+NHのC5898NO15に対する計算値は1048.6936、測定値は1048.6945。
【0104】
C20-プロパルギロアミノナラシンMA-I-089の合成:アルゴン雰囲気下で、C20-オキソナラシン(MA-I-080)(67mg、0.09mmol、1.0当量)を無水MeOH(4mL)中に溶解し、続いて分子篩4Å、プロパルギルアミン(55μL、0.87mmol、10.0当量)及び氷酢酸(35μL)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した後、CeCl・7HO(32mg、0.09mmol、1.0当量)を添加し、NaBHCN(7.0mg、0.12mmol、1.3当量)の無水MeOH(3mL)溶液をシリンジポンプを使用して室温で8時間かけて滴下した。次いで、黄色の反応混合物を蒸発乾固した。少量のCHClを油状残渣に添加し、不溶性成分を濾別した。濾液を真空中で蒸発させ、C18-逆相カラムを備えたHPLCを使用して精製した(勾配:ACN/HO/FA 1/1/0.1からACN/FA 1/0.1)。反応の純粋な生成物を白色非晶質固体として収率39%で得た。
【0105】
収率:27mg、39%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:CHCl/EtOAc 50%中0.78。PMAで緑色に染色する株;H NMR(400MHz,CDCl)δ 6.37
(dd,J=10.0,5.3Hz,1H),6.20(d,J=10.2Hz,1H),4.24(d,J=9.8Hz,1H),4.16(dt,J=16.0,2.1Hz,1H),3.89-3.79(m,2H),3.78-3.70(m,2H),3.59(d,J=5.4Hz,1H),3.57-3.50(m,2H),2.67-2.54(m,3H),2.29(t,J=2.3Hz,1H),2.25-2.14(m,1H),2.10-2.00(m,1H),1.99-1.83(m,4H),1.80-0.60(m,53H)ppm;13C NMR(101MHz,CDCl)δ 215.0,178.7,130.6,128.0,109.0,99.7,88.7,80.3,78.2,77.6,75.7,73.8,73.5,73.4,71.2,69.2,55.9,53.2,50.4,50.3,40.0,39.5,38.5,36.5,36.1,35.6,32.8,31.9,30.9,29.6,29.2,28.8,24.4(2C),21.8,17.9,17.6,16.5,15.8,14.6,13.5,13.2,12.9,12.4,8.2,6.6ppm;HRMS(ESI)m/z[M+H]のC4676NO10に対する計算値は802.5469、測定値は802.5469。
【0106】
C20-シクロプロピルアミノナラシンMA-I-090の合成:アルゴン雰囲気下で、C20-オキソナラシン(MA-I-080)(88mg、0.11mmol、1.0当量)を無水MeOH(5mL)中に溶解し、続いて分子篩4Å、シクロプロピルアミン(79μL、1.11mmol、10.0当量)及び氷酢酸(45μL)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した後、CeCl・7HO(42mg、0.11mmol、1.0当量)を添加し、NaBHCN(9.0mg、0.16mmol、1.4当量)の無水MeOH(4mL)溶液をシリンジポンプを使用して室温で8時間かけて滴下した。その後、濁った反応混合物を濾過し、濾液を蒸発乾固させた。油状残渣を少量のCHCl中に溶解し、不溶性成分を濾別し、濾液を真空中で蒸発させ、C18-逆相カラムを備えたHPLCを使用して精製した(勾配:ACN/HO/FA 1/1/0.1からACN/FA 1/0.1)。反応の純粋な生成物を白色非晶質固体として収率47%で得た。
【0107】
収率:44mg、47%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:CHCl/EtOAc 50%中0.87。PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCl)δ 6.43(dd,J=10.3,4.7Hz,1H),6.17(d,J=10.3Hz,1H),4.20(dd,J=10.0,1.3Hz,1H),3.83-3.75(m,2H),3.73(q,J=6.8Hz,1H),3.56(ddd,J=13.8,10.2,2.9Hz,2H),3.36(d,J=4.7Hz,1H),2.80(ddd,J=11.0,7.4,3.8Hz,1H),2.64(dq,J=9.9,7.1Hz,1H),2.57(ddd,J=9.3,7.7,5.0Hz,2H),2.22-2.12(m,1H),2.09-1.86(m,5H),1.80-0.65(m,55H),0.62-0.55(m,1H),0.52-0.45(m,1H)ppm;13C NMR(126MHz,CDCl)δ 215.0,178.6,130.8,126.8,108.2,99.9,89.1,78.1,77.4,76.0,73.7,71.2,69.4,56.9,56.0,50.4(2C),40.3,39.4,38.7,36.1,35.6,32.9,31.3,30.9,30.6,29.5,29.2,28.8,25.0,24.6,22.2,17.9,17.7,16.6,15.9,14.5,13.6,13.4,13.1,12.5,8.2,6.6,6.2,5.1ppm、1つのシグナルが重複;HRMS(ESI)m/z[M+H]のC4678NO10に対する計算値は804.5626、測定値は804.5626。
【0108】
本発明のジヒドロアルテミシニン共役プロドラッグの合成のための一般的手順:
無水CHCl中のナラシンのC20-アミン誘導体(1.0当量)及びジヒドロアルテミシニンのそれぞれのC20-アミン誘導体(2.0当量)の撹拌溶液に、EDCI塩酸塩(1.2当量)及びDMAP(0.5当量)を一度に添加した。得られた混合物を室温で4日間撹拌した。その後、反応混合物を真空中で蒸発させ、C18逆相カラムを備えたHPLCを使用して精製して(勾配:ACN/HO/FA 1/1/0.1からACN/FA 1/0.1)、反応の純粋な生成物(16~18%収率)を白色非晶質固体として得た。
【0109】
C20-プロパルギロアミノナラシン-ジヒドロアルテミシニンプロドラッグMA-I-094(本発明による式(I)の化合物):収率:8.6mg、16%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:シクロヘキサン/EtOAc 50%中0.66。PMAで緑色に染色する株;H NMR(400MHz,CDCl)δ 6.31(d,J=9.7Hz,1H),6.06(dd,J=10.7,2.0Hz,1H),6.01(dd,J=10.8,0.7Hz,1H),5.74(s,1H),4.10(dd,J=10.6,5.2Hz,1H),4.00(d,J=10.1Hz,1H),3.77(q,J=6.7Hz,1H),3.64-3.55(m,2H),3.49(ddd,J=8.4,7.0,2.4Hz,3H),3.22(ddd,J=15.3,10.5,7.5Hz,1H),3.18-3.12(m,1H),2.98(td,J=10.6,3.3Hz,1H),2.75-2.68(m,1H),2.55-2.45(m,1H),2.40-0.60(m,80H)ppm;13C NMR(101MHz,CDCl)δ 214.5,174.5,131.7,120.9,106.9,104.3,99.0,93.8,92.1,87.8,82.9,81.8,80.8,77.9,77.5,74.1,72.8,71.14,71.06,69.0,57.3,55.8,52.1,50.0,48.6,46.4,40.8,39.3,37.6,37.1,36.9,36.8,36.5,36.0,34.8,33.5,33.0,31.4,30.9,29.65,29.60,28.7,25.9,25.5,25.0,22.6,22.4,21.9,21.5,20.2,18.9,17.4,15.7,14.7,14.1,13.7,12.81,12.77,12.6,8.0,6.6ppm;HRMS(ESI)m/z[M+H]のC6198NO14に対する計算値は1068.6987、測定値は1068.6982。
【0110】
C20-シクロプロピルアミノナラシン-ジヒドロアルテミシニンプロドラッグMA-I-095(本発明による式(I)の化合物):収率:9.4mg、18%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:シクロヘキサン/EtOAc 50%中0.74。PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCl)δ 6.30(d,J=9.7Hz,1H),6.05(s,2H),5.74(s,1H),4.10(dd,J=10.5,5.1Hz,1H),3.99(dd,J=10.2,0.9Hz,1H),3.72(q,J=6.8Hz,1H),3.61(dd,J=9.6,2.7Hz,1H),3.54-3.45(m,2H),3.28-3.14(m,2H),2.97(td,J=10.7,3.6Hz,1H),2.75-2.68(m,1H),2.54-2.46(m,1H),2.38-2.25(m,4H),2.20-0.60(m,76H),0.47-0.35(m,3H),0.29(d,J=6.4Hz,1H)ppm;13C NMR(126MHz,CDCl)δ 214.5,174.5,132.5,120.8,107.2,104.3,98.9,93.8,92.2,87.5,81.8,80.8,77.9,77.5,73.4,72.9,71.1,69.1,57.3,56.6,52.1,50.0,48.6,46.4,40.8,39.3,37.1,36.8,36.43,36.36,36.0,34.8,33.5,33.1,31.9,
30.9,29.7,29.6,29.3,28.8,25.9,25.0,24.9,22.6,22.1,21.9,21.5,20.2,18.8,17.4,15.8,14.5,14.1,13.7,12.9,12.8,12.6,8.1,7.2,6.6,6.5ppm;HRMS(ESI)m/z[M+H]のC61100NO14に対する計算値は1070.7144、測定値は1070.7152。
【0111】
4/化合物AM9(陰性対照)の合成
スキーム4:イロノマイシンのC1メチルエステル(AM9、陰性対照)の合成:
【0112】
【化14】
【0113】
C20-オキソサリノマイシンMA-I-097のC1メチルエステルの合成:
アルゴン雰囲気下で、C20-オキソサリノマイシン(200mg、0.26mmol、1.0当量)を無水DMF(5mL)中に溶解した。次いで、炭酸セシウム(111mg、0.34mmol、1.3当量)を添加し、続いてヨウ化メチル(21μL、0.34mmol、1.3当量)を一度に添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌した。その後、黄色の反応混合物を減圧下で蒸発乾固させた。CHClを油状残渣に添加し、不溶性成分を濾別し、濾液を真空中で蒸発させ、C18-逆相カラムを備えたHPLCを使用してクロマトグラフィーにより精製した(勾配:ACNからACN/HO 5/95)。反応の純粋な生成物を白色非晶質固体として収率79%で得た。
【0114】
収率:161mg、79%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:シクロヘキサン/EtOAc 50%中0.87。紫外線活性があり、PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCl)δ 7.24(d,J=10.8Hz,1H),6.20(d,J=10.8Hz,1H),3.94(dd,J=10.9,5.7Hz,1H),3.90(dd,J=10.1,0.9Hz,1H),3.75-3.67(m,5H),3.55(dd,J=9.9,1.8Hz,1H),3.38-3.32(m,1H),3.00(td,J=10.9,4.5Hz,1H),2.91(dq,J=10.0,7.1Hz,1
H),2.65(dt,J=8.7,3.3Hz,1H),2.60-2.51(m,1H),2.13-1.99(m,2H),1.95-0.60(m,53H)ppm;13C NMR(126MHz,CDCl)δ 214.1,190.7,176.7,144.2,127.5,105.8,98.0,89.0,78.4,77.5,75.3,72.7,72.0,71.1,70.1,57.1,52.6,49.2,47.6,40.3,39.3,36.8,34.7,34.5,34.3,30.8,29.7,28.5,26.6,23.2,23.0,21.2,20.1,18.6,17.8,16.0,14.6,14.1,12.5,12.1,11.2,7.4,6.6ppm;HRMS(ESI)m/z[M+NHのC4374NO11に対する計算値は780.5262、測定値は780.5263。
【0115】
イロノマイシンAM9のC1メチルエステルの合成:
C20-オキソサリノマイシンのC1メチルエステル(MA-I-097)(100mg、0.13mmol、1.0当量)を無水MeOH(5mL)中に溶解し、続いてプロパルギルアミン(84μL、1.30mmol、10.0当量)及び氷酢酸(50μL)を添加した。溶液を室温で3時間撹拌した後、CeCl・7HO(48mg、0.13mmol、1.0当量)を添加し、NaBHCN(11mg、0.18mmol、1.4当量)の2mLの無水MeOH溶液をシリンジポンプを使用して室温で8時間かけて滴下した。その後、濁った反応混合物を濾過し、濾液を蒸発乾固させた。次いで、CHClを油状残渣に添加し、不溶性成分を濾別し、濾液を真空中で蒸発させ、C18-逆相カラムを備えたHPLCを使用してクロマトグラフィーにより精製した(勾配:ACN/HO/FA 1/1/0.1からACN/FA 1/0.1)。反応の純粋な生成物を白色非晶質固体として収率29%で得た。
【0116】
収率:31mg、29%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された。R:シクロヘキサン/EtOAc 50%中0.69。PMAで緑色に染色する株;H NMR(500MHz,CDCl)δ 6.14(d,J=10.2Hz,1H),6.04(d,J=10.5Hz,1H),3.99-3.94(m,2H),3.84-3.77(m,4H),3.66-3.52(m,5H),3.28(s,1H),3.09-2.98(m,2H),2.71-2.67(m,1H),2.32-2.24(m,2H),2.18-2.12(m,1H),2.00-0.60(m,55H)ppm;13C NMR(126MHz,CDCl)δ 214.9,176.5,130.7,122.5,106.6,99.0,88.0,82.0,80.0,77.5,75.3,74.1,72.1,71.9,71.1,69.7,56.9,55.8,52.6,49.0,48.3,40.7,39.1,37.5,37.3,36.8,33.3,31.2,31.0,29.6,28.6,26.6,25.4,23.1,22.4,20.19,20.16,17.6,15.7,14.8,14.0,13.4,12.0,11.3,7.6,6.6ppm;HRMS(ESI)m/z[M+H]のC4676NO10に対する計算値は802.5469、測定値は802.5459。
【0117】
細胞生存率
細胞生存率は、製造業者のプロトコルに従ってCellTiter-Blue生存率アッセイを使用して、96ウェルプレートに4000細胞/ウェルを播種することによって評価した。細胞を、示されるような異なる濃度のイロノマイシンで72時間処理した。72時間の処理後にCellTiter-Blue試薬(Promega、G8081)を添加し、細胞を2時間インキュベートした後、蛍光強度(例えば、560nm;em.590nm)を、Perkin Elmer Wallac 1420 Victor2マイクロプレートリーダーを使用して、記録した。
【0118】
IC50も測定した。
【0119】
結果を以下の表及び図1に示す。
【0120】
膵管腺がん細胞株に対する本発明のイロノマイシン/ナラシン誘導体及びプロドラッグのμM単位のIC50
【0121】
【表1】
【0122】
結論として、本発明のプロドラッグは、親薬物と比較してがん細胞に対して同等の有効性を示し、がん性細胞に対してある程度の特異性を有する。
【0123】
乳がん細胞株に対する本発明のイロノマイシン/ナラシン誘導体及びプロドラッグのμM単位のIC50
上記の別個の患者由来膵管腺がん(patient-derived pancreatic ductal adenocarcinoma、PDAC)細胞株に加えて、化合物を非腫瘍形成性上皮乳房細胞MCF10Aに対しても評価した。
【0124】
本発明者らはまた、間葉状態で安定なヒト乳がん幹細胞のモデルである形質転換ヒト乳腺上皮HMLER CD44/CD24細胞に対する、及び対照上皮HMLER CD44/CD24細胞に対するプロドラッグ及び親構造の生物学的活性を評価した。
【0125】
【表2】
【0126】
したがって、プロドラッグMA-I-062、MA-I-082、MA-I-094、及びMA-I-065は、それらのそれぞれの親化合物よりも非腫瘍形成性上皮細胞に対して毒性が低いことが見出され、鉄切断可能プロドラッグを使用することによって治療濃度域を広げることができるという概念が検証された。重要なことに、プロドラッグは、いくつかの患者由来膵臓がん細胞において、親化合物よりも有効であることが見出された。例えば、MA-I-095は、PDAC053T細胞においてNar-AM23よりも強力であった。
図1-1】
図1-2】
【国際調査報告】