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特表2024-5332042‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールの新規塩及びこれを含む薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールの新規塩及びこれを含む薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 249/04 20060101AFI20240905BHJP
   A61K 31/4192 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07D249/04 503
C07D249/04 CSP
A61K31/4192
A61P25/00
A61P9/10
A61P13/12
A61P1/00
A61P1/04
A61P13/00
A61P17/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514119
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 KR2022017235
(87)【国際公開番号】W WO2023080708
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0150651
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524079351
【氏名又は名称】ネクストジェン バイオサイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】リー ボンギョン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヤンヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンジョン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC60
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA81
4C086ZA92
(57)【要約】
本発明は、2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールの新規塩及びこれを含む薬学的組成物に関する。本発明による2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールの新規塩は、2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールの塩酸塩及びその他塩と比べた結果、低吸湿性、標準原液の安定性、光安定性、酸化安定性、pHによる安定性、溶解度などにおいて、いずれも優れる効果を示し、前記新規塩を有効成分として含む本発明の薬学的組成物は、多発性硬化症(multiple sclerosis)、脳虚血(ischemic storke)、巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis、FSGS)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、間質性線維症及び尿細管萎縮(Interstitial fibrosis and tubular atrophy、IFTA)または円形脱毛症(alopecia areata、AA)の予防または治療用途で有用に使うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1aで表される化合物である2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのヘミフマル酸塩:
【化1】
【請求項2】
前記塩は結晶形である請求項1に記載のヘミフマル酸塩。
【請求項3】
6.3±0.2゜、9.4±0.2゜、18.5±0.2゜、19.0±0.2゜、19.9±0.2゜、20.7±0.2゜、25.5±0.2゜、28.7±0.2゜、及び29.0±0.2゜の2θ値を含む粉末X‐線回折分光度(XRPD)パターンを示す請求項2に記載のヘミフマル酸塩。
【請求項4】
DVSで90%RHの条件で水分吸着率が2%未満である請求項1または請求項2に記載のヘミフマル酸塩。
【請求項5】
高湿度(40℃/75±5%RH)の条件で2週間後にも純度は99%以上である請求項1または請求項2に記載のヘミフマル酸塩。
【請求項6】
pH6.8であるリン酸塩緩衝液/40±2℃の条件で2週間後98%以上の純度を有する請求項1または請求項2に記載のヘミフマル酸塩。
【請求項7】
示差走査熱量(DSC)で約82℃の溶融吸熱開始温度を有する請求項1または請求項2に記載のヘミフマル酸塩。
【請求項8】
請求項1に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのヘミフマル酸塩を有効成分として含む多発性硬化症(multiple sclerosis)または脳虚血(ischemic storke)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのヘミフマル酸塩を有効成分として含む巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis、FSGS)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのヘミフマル酸塩を有効成分として含む炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項11】
前記炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎(UC)またはクローン病(CD)である請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのヘミフマル酸塩を有効成分として含む間質性線維症及び尿細管萎縮(Interstitial fibrosis and tubular atrophy、IFTA)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのヘミフマル酸塩を有効成分として含む円形脱毛症(alopecia areata、AA)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項14】
1種以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤及び/または賦形剤をさらに含む請求項8ないし請求項13のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記薬学的組成物は心血管疾患の副作用を引き起こさない請求項8ないし請求項13のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
薬学的に有効な量の請求項1に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールヘミフマル酸塩を個体に投与することを含む多発性硬化症(multiple sclerosis)、脳虚血(ischemic storke)、巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis、FSGS)、間質性線維症及び尿細管萎縮(Interstitial fibrosis and tubular atrophy、IFTA)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)または円形脱毛症(alopecia areata、AA)を治療する方法。
【請求項17】
前記炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎(UC)またはクローン病(CD)である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、心血管疾患の副作用を引き起こさない請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
多発性硬化症(multiple sclerosis)、脳虚血(ischemic storke)、巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis、FSGS)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、間質性線維症及び尿細管萎縮(Interstitial fibrosis and tubular atrophy、IFTA)または円形脱毛症(alopecia areata、AA)の治療のための薬剤の製造において、請求項1に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールヘミフマル酸塩の用途。
【請求項20】
前記炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎(UC)またはクローン病(CD)である請求項19に記載の用途。
【請求項21】
下記化学式1bで表される化合物である2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのフマル酸塩:
【化2】
【請求項22】
前記塩は結晶形である請求項21に記載のフマル酸塩。
【請求項23】
13.9±0.2゜、18.9±0.2゜、19.4±0.2゜、22.1±0.2゜、及び22.5±0.2゜の2θ値を含む粉末X‐線回折分光度(XRPD)パターンを示す請求項22に記載のフマル酸塩。
【請求項24】
DVSで90%RHの条件で水蒸気吸着率が3%超過5%未満の請求項21または請求項22に記載のフマル酸塩。
【請求項25】
請求項21に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのフマル酸塩を有効成分として含む多発性硬化症(multiple sclerosis)、脳虚血(ischemic storke)、巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis、FSGS)、間質性線維症及び尿細管萎縮(Interstitial fibrosis and tubular atrophy、IFTA)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)または円形脱毛症(alopecia areata、AA)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項26】
薬学的に有効な量の請求項21に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールフマル酸塩を個体に投与することを含む多発性硬化症、脳虚血、巣状分節性糸球体硬化症、間質性線維症及び尿細管萎縮、炎症性腸疾患または円形脱毛症を治療する方法。
【請求項27】
多発性硬化症、脳虚血、巣状分節性糸球体硬化症、間質性線維症及び尿細管萎縮、炎症性腸疾患または円形脱毛症の治療のための薬剤の製造において、請求項21に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールフマル酸塩の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールの新規塩及びこれを含む新規用途の薬学的組成物に関する。より具体的に、本発明は、2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのフマル酸塩またはヘミフマル酸塩及びこれを含む新規用途の薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオール化合物(以下、化合物1という)は、S1Pサブタイプそれぞれの受容体(receptor)に選択的に結合し、多発性硬化症(multiple sclerosis)または脳虚血(ischemic storke)の予防または治療用途で有用に使われることができる。
【0003】
しかし、化合物1は吸湿性が非常に高く、高い湿度条件に露出した後は物理的に不安定であり、化合物1の遊離塩基物またはこの塩酸塩より安定性に優れた新規塩はいまだに発見されていない。したがって、上述した遊離塩基物及びこの塩酸塩の短所を解決しながらも、自然状態で優れる固体状態の特性、及び吸湿性が抑制されて長期保管の際にも一定した純度が維持されて安定性が改善された、製剤化に容易な化合物の新規塩の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10‐2017‐0087813号(2017年07月31日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、自然状態で吸湿性が抑制され、長期保管の際にも一定した純度が維持されて安定性が改善され、薬物としての開発が容易でありながら大量生産の適用が可能であり、高純度の均質な品質で得られる2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオール(化合物1)の新規塩とこの製造方法及びこれを有効成分として含む新規な用途の薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、下記化学式1で表される化合物である2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオール(化合物1)のヘミフマル酸塩(化合物1a、NXC736)及びこれを有効成分として含む薬学的組成物を提供する。
【0007】
【化1】
【0008】
本発明の一具体例において、前記ヘミフマル酸塩は結晶形である。
【0009】
本発明の一具体例において、化合物1aは、6.3±0.2゜、9.4±0.2゜、18.5±0.2゜、19.0±0.2゜、19.9±0.2゜、20.7±0.2゜、25.5±0.2゜、28.7±0.2゜、及び29.0±0.2゜の2θ値に主要な回折ピークがある粉末X‐線回折分光度(XRPD)パターンを示す。
【0010】
本発明の一具体例において、化合物1aは、示差走査熱量(DSC)で開始融点が約82℃(82.42℃)の溶融吸熱開始温度を示す。
【0011】
本発明の一具体例において、化合物1aは、DVSで90%RHの条件で2%未満の水分吸着率を示す。
【0012】
本発明の一具体例において、化合物1aは、高湿度(40℃/75±5%RHまたは60℃/75±5%RH)の条件で2週後にも結晶形がそのまま維持されながら、純度は99%以上に維持される。
【0013】
本発明の一具体例において、化合物1aは、pH6.8であるフォスフェートバッファー/40±2℃の条件で、2週後98%以上の純度を示す。
【0014】
本発明の一具体例において、化合物1aは、結晶性組成物として存在することができる。
【0015】
本発明の一具体例において、化合物1aを有効成分として含有する薬学的組成物が提供され、前記薬学的組成物は1種以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤及び/または賦形剤をさらに含むことができる。
【0016】
また、本発明は、下記化学式1で表される化合物である2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオール(化合物1)のフマル酸塩(化合物1b)及びこれを有効成分として含む薬学的組成物を提供する。
【0017】
【化2】
【0018】
本発明の一具体例において、前記フマル酸塩は結晶形である。
【0019】
本発明の一具体例において、化合物1aは、13.9±0.2゜、18.9±0.2゜、19.4±0.2゜、22.1±0.2゜、及び22.5±0.2゜の2θ値に主要な回折ピークがある粉末X‐線回折分光度(XRPD)パターンを示す。
【0020】
本発明の一具体例において、化合物1aは、DVSで90%RHの条件で3%超過5%未満の水分吸着率を示す。
【0021】
本発明の一具体例において、本発明による化合物1の新規塩、例えば、化合物1のヘミフマル酸塩またはフマル酸塩を有効成分として含む本発明の薬学的組成物は、多発性硬化症(multiple sclerosis)、脳虚血(ischemic storke)、巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis、FSGS)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、間質性線維症及び尿細管萎縮(Interstitial fibrosis and tubular atrophy、IFTA)または円形脱毛症(alopecia areata、AA)の予防または治療に有用に使われることができる。
【0022】
本発明の一具体例において、炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎(UC、ulcerative colitis)またはクローン病(CD、crohn’s disease)であってもよい。
【0023】
上述した医薬用途の中で多発性硬化症及び脳虚血に係る薬理効果は韓国特許登録第10‐1830244号に記載されており、その他医薬用途に対する薬理効果は後述する。
【0024】
有機化学分野の当業者は多くの有機化合物が反応したり、沈澱または結晶化される溶媒と錯体を形成できることを理解することができる。このような錯体は「溶媒化物」として知られている。例えば、水との錯体は「水和物」として知られている。本発明の化合物の薬学的に許容可能な溶媒化物は本発明の範疇内にある。
【0025】
本発明による化合物1の新規塩は、化合物1の塩酸塩及びその他塩に比べた結果、低吸湿性、標準原液の安定性、光安定性、酸化安定性、pHによる安定性、溶解度などでいずれも優れる効果を示すので、長期的に含量の変化及び不純物の増加なしに安定的に維持されることができる。
【0026】
本発明による化合物1の新規塩は、高純度の原料物質で収得可能であり、長期間保管の際にも柔軟物質の増加が著しく低くいため、高い純度を長期間維持することができ、相対湿度の範囲で低い吸湿性を示す長所がある。よって、医薬品の加工及び保管において非常に有利で製剤化が容易であり、これを含む製剤の製造後も同一状態を維持して製剤含量の均一性が長期間、安定的に維持されることができて、大量生産に容易に適用されることができる。
【0027】
本発明の化合物1の新規塩をマウスとラットに経口投与した結果、免疫抑制作用を示すことを確認し、UUO(Unilateral Urinary Obstruction)腎臓繊維化モデル、アデニン(Adenine)誘発腎臓繊維化モデルで優れる抗繊維化効果を示すので、多発性硬化症、脳虚血、巣状分節性糸球体硬化症、炎症性腸疾患、間質性線維症及び尿細管萎縮または円形脱毛症などを予防または治療することができる薬学的組成物の有効成分として有用に使われることができる。
【0028】
本発明の一具体例において、上述した薬学的組成物に含まれる化合物1の新規塩は結晶形であってもよく、より具体的に、6.3±0.2゜、9.4±0.2゜、18.5±0.2゜、19.0±0.2゜、19.9±0.2゜、20.7±0.2゜、25.5±0.2゜、28.7±0.2゜、及び29.0±0.2゜の2θ値に主要な回折ピークがある粉末X‐線回折分光度(XRPD)パターンを示す結晶形であってもよい。
【0029】
本発明の一具体例において、本発明の薬学的組成物は、投与のために有効成分である化合物1の新規塩の他に追加的に薬学的に許容可能な担体を1種以上さらに含むことができる。薬学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、D形グルコース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分の中で1成分以上を混合して使うことができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。よって、本発明の組成物は、パッチ剤、液剤、丸薬、カプセル、顆粒、錠剤、坐剤などであってもよい。これら製剤は、当分野で製剤化に使われる通常の方法またはRemington’s Pharmaceutical Science(最新版)、Mack Publishing Company、Easton PAに開示されている方法によって製造されることができ、各疾患によってまたは成分によって多様な製剤に製剤化されることができる。
【0030】
本発明の一具体例において、本発明の薬学的組成物は、目的とする方法によって経口投与したり、非経口投与、例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に投与することができ、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重度などによってその範囲が多様である。
【0031】
本発明の一具体例において、薬学的に有効な量の本発明による化合物1の新規塩を個体に投与することを含む多発性硬化症、脳虚血、巣状分節性糸球体硬化症、炎症性腸疾患、間質性線維症及び尿細管萎縮または円形脱毛症を治療する方法が提供される。
【0032】
本発明の一具体例において、前記方法に使われる本発明による化合物1の新規塩は結晶形であってもよく、より具体的に、6.3±0.2゜、9.4±0.2゜、18.5±0.2゜、19.0±0.2゜、19.9±0.2゜、20.7±0.2゜、25.5±0.2゜、28.7±0.2゜、及び29.0±0.2゜の2θ値に主要な回折ピークがある粉末X‐線回折分光度(XRPD)パターンを示す結晶形であってもよい。
【0033】
本発明の一具体例において、多発性硬化症、脳虚血、巣状分節性糸球体硬化症、炎症性腸疾患、間質性線維症及び尿細管萎縮または円形脱毛症の治療のための薬剤の製造において、本発明による化合物1の新規塩の用途が提供される。
【0034】
本発明の一具体例において、前記用途に使われる本発明による化合物1の新規塩は結晶形であってもよく、より具体的に、6.3±0.2゜、9.4±0.2゜、18.5±0.2゜、19.0±0.2゜、19.9±0.2゜、20.7±0.2゜、25.5±0.2゜、28.7±0.2゜、及び29.0±0.2゜の2θ値に主要な回折ピークがある粉末X‐線回折分光度(XRPD)パターンを示す結晶形であってもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明による2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオール(化合物1)の新規塩は、化合物1の塩酸塩及びその他塩と比べた結果、吸湿性、標準原液の安定性、光安定性、酸化安定性、pHによる安定性、溶解度などでいずれも優れる効果を示し、前記新規塩を有効成分として含む本発明の薬学的組成物は、多発性硬化症、脳虚血、巣状分節性糸球体硬化症、炎症性腸疾患、間質性線維症及び尿細管萎縮または円形脱毛症の予防または治療用途で有用に使うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】化合物1aのDSCデータである。
図2】化合物1aのDVSデータである。
図3】化合物1aのXRPDデータである。
図4】化合物1a(3mg/kg/day)の経口投与後、マウスの全体T細胞及びT細胞サブタイプの細胞数変化を示すグラフである。
図5】化合物1a(10mg/kg/day)の経口投与後、ラットの全体T細胞及びT細胞サブタイプの細胞数変化を示すグラフである。
図6】DSS誘発大腸炎マウスモデルで化合物1a(5、10mg/kg/day)が炎症性腸疾患の抑制に及ぼす影響を示すグラフである。
図7】hERG遺伝子(hERG gene)が過発現したHEK293細胞における化合物1a(1、3、10、30μM)の影響を評価試験した表である。
図8】化合物1a(12.5、25、50mg/kg)の経口投与後、ビーグル犬の心拍数測定結果を示すグラフである。
図9】UUOマウスモデルにおいて、化合物1a(10、30、90mg/kg/day)が腎臓繊維化に及ぼす影響を示すグラフである。
図10】アデニン誘発CKDマウスモデルにおいて、化合物1a(10、30、90mg/kg/day)が腎臓繊維化に及ぼす影響を示すグラフである。
図11】化合物1の遊離塩基、化合物1a及び化合物1の塩酸塩のそれぞれを60℃/75%RHの条件下で置いた後、初期及び2週後の性状変化を観察した写真である。
図12】化合物1の遊離塩基、化合物1a及び化合物1の塩酸塩を60℃の条件で2週間サンプルとともに保管した後、サンプルの腐食性の度合いを確認した写真である。
図13】円形脱毛を誘発させた10~16週齢のC3H/HeJマウスに化合物1aを30mg/kgを12週間経口投与した後、AA lesion areaを測定した結果である。
図14】円形脱毛を誘発させた10~16週齢のC3H/HeJマウスに化合物1aを30mg/kgを12週間経口投与した後、Disease free ratioを測定した結果である。
図15】円形脱毛を誘発させた10~16週齢のC3H/HeJマウスに化合物1aを投与した後、円形脱毛誘発を比べた写真である。
図16】化合物1bのDSCデータである。
図17】化合物1bのDVSデータである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
一般的定義及び用語
他に具体的に定義しない限り、比率(百分率を含む)または部分は、本願で重量を基準にして計算される。
【0038】
本発明で使われた表現である「含む」またはこれの同義語「含有する」、「含んで」または「持つ」などは開放形であり、他に記載されていない要素、段階または成分を排除しない。
【0039】
「約」という用語の使用は、それ自体で値または媒介変数を含んで説明する。例えば、「約x」は「x」自体を含んで説明する。いくつかの様態において、測定と係って使われたり、値、単位、定数、または値の範囲を定義するために使われる用語「約」は別に記載しない限り、±1%ないし±10%の偏差を指す。例えば、いくつかの様態において、「約82℃」は82℃ないし83℃を含む。
【0040】
用語「薬学的組成物」は、一つ以上の薬学的に許容可能な成分(例えば、制限せずに、担体及び/または賦形剤)と任意に配合された、活性成分を指す。活性成分は、化学式Iの化合物またはこのヘミフマル酸塩、本発明による一つ以上の結晶形または本発明による一つ以上の結晶性組成物に例示される。
【0041】
用語「投与」または「投与する」などは、化合物または組成物の目的とする生物学的作用部位への伝達を可能にする方法を指す。このような方法は、経口、非経口(静脈内、皮下、腹膜内、筋肉内、血管内注射または注入を含む)、局所、直腸投与などを含むが、これに制限されない。
【0042】
薬学的または薬理的活性剤において、用語「有効量」は、毒性ではないながら目的とする効果を達成するに十分な医薬または作用剤(agent)の量を指す。本願において、経口剤形に係って組成物内の活性物質に対する「有効量」は、組成物内のまた他の活性物質とともに目的とする効果を達成するように求められる量を指す。有効量は個別的に決まることができ、収容者だけでなく、特定の活性物質の材齢(age)及び一般的条件によって異なる。特定の場合、有効量は通常的な試験を通じて当業者によって決まることができる。
【0043】
用語「活性成分」、「治療剤」、「活性物質」または「活性剤」は、標的障害、疾患または病症を効果的に治療または予防するのに有用な化学的エンティティー(chemical entity)を指す。本願でこのような用語は、例えば、化学式Iの化合物またはこのヘミフマル酸塩、本発明による一つ以上の結晶形または本発明による一つ以上の結晶性組成物を指すことができる。
【0044】
本発明で使われる用語「低吸湿性」は、物質が空気中の水分を吸収したり、吸着しない性質を意味し、物質の周辺環境から水分子を引っ張って保有しようとする吸湿性(hygroscopicity)と対照される概念である。
【0045】
本発明で使われる用語「安定性(stability)」は、本発明の化学式1で表される化合物の塩またはこれを含む組成物が特定の条件と時間の間、化学的または物理的に安定した度合いを示す用語である。安定性試験の目的は、温度、湿度及び光のような多様な環境要因の影響下で本発明の塩の品質が時間が経つにつれてどのように変わるのかに対する根拠を提供し、追ってこれを利用した医薬品の製造の際に完製医薬品の使用期間(または有効期間)と勧められた保管条件を設定するためのものである。
【0046】
韓国の食品医薬品安全処の告示による医薬品等の安定性試験基準によると、苛酷条件下で医薬品などの分解過程及び分解産物を確認するための「苛酷試験」を規定し、この試験条件として、光線、温度、湿度の条件を検体の特性を考慮して設定し、検体が原料である場合は、水溶液状態の試験条件を含み、酸化及び光分解が原料医薬品に及ぼす影響及びpH値の範囲による加水分解に対する敏感性を評価しなければならないと記載している。
【0047】
これによる本発明の安定性試験基準のうち「標準原液の安定性」は、本発明の塩を標準原液に溶解させた後、特定の温度及び湿度の条件下で特定の時間及び期間保管した後、この純度を確認して柔軟物質(不純物)の発生有無を測定した。また、以下の実施例で規定した特定の条件にしたがって、本発明の塩に対する「光安定性」、「酸化安定性」及び「pHによる安定性」を評価した。
【0048】
X‐線粉末回折(XRPDまたはXRD)スペクトルにおいて、結晶性化合物から収得された回折パターンは、一般的に特定の結晶形に対して特性的であり、ここで、(特に、低い角での)バンド(band)の相対的強度は、結晶化条件、粒径及び他の測定条件の差による優れる配向効果(orientation effect)によって多様である。よって、回折ピークの相対的強度は所定の結晶形に対して特性的ではない。結晶形が当業界に公知されたものと同一であるか否かを測定する場合、ピークの相対的強度よりはピークの相対的位置に注目することがより重要である。また、任意の所定の結晶形に対するピーク位置に多少の誤差(error)が存在することがあり、これはまた結晶学分野でよく知られている。例えば、ピークの位置は、サンプル分析の間に温度、サンプルの移動または装置の校正(instrument calibration)での変化によって移動されることがあるし;2θ値の測定誤差は、時々約±0.2゜、典型的に約±0.1゜であり得る。よって、結晶構造を測定する場合、このような誤差が考慮されなければならない。もし本発明による結晶形が図面に示されたように実質的に記載される場合、用語「実質的に」はまた回折ピークでのこのような差を含むものと意図される。
【0049】
XRPDパターンにおいて、ピーク位置は一般的に各2θまたは結晶面(crystal surface)距離dで表され、dとθとの間の単純変換(simple conversion)は、d=λ/2sinθであり、ここで、dは結晶面距離を示し、λは入射X‐線(incident X‐ray)の波長を示し、θは回折角(diffraction angle)である。同一な化合物の同一な結晶形において、XRPDパターンのピーク位置は全体的に類似であり、相対的な強度誤差は大きいことがある。また、混合物の識別において、一部の回折ライン(diffraction line)は含量減少のような要因によって消失するおそれがあり、よって、これは高純度サンプルで観察された全体バンドに依存する必要はなく、なお、1つのバンドは所定の結晶に対して特性的であるということを留意しなければならない。
【0050】
結晶がこの結晶構造または結晶溶融時の変化によって、熱を吸収したり放出する場合の転移温度を測定するために、示差走査熱量測定法(Differential scanning calorimetry:DSC)が利用される。熱転移温度及び融点(melting point)の誤差は、連続分析で同一化合物の同一結晶形に対して典型的に約5℃、一般的に約3℃内である。化合物が所定のDSCピークまたは融点(melting point)を持つものと記載される場合、これはDSCピークまたは融点±5℃を意味する。相違する結晶形を識別するために、DSCによる補助的方法が提供される。相違する結晶形は、これらの相違な転移温度の特性によって識別されることができる。混合物のDSCピークまたは融点は広範囲にたわって様々である。また、融点は、物質の溶融の間の分解に起因する昇温速度に係る。
【0051】
水分吸着分析(DVS、Dynamic Vapor Sorption)は原料医薬品(API、Active Pharmaceutical Ingredient)、及び医薬品製造物と水分との間の相互作用を調査するために長い間利用されてきた方法であって、特定の温度で試料の吸湿率を分析するために、DVS水分吸着装備(吸湿性分析装置)を利用して試料の重量変化が安定化するまで所望の相対湿度に露出させることで測定が行われる。
【0052】
本発明の塩の製造方法及びこれを通じた塩の選別過程は、以下のとおりである。まず、化合物1の遊離塩基物は自然状態で若干の塩基性(pKa=8.12)を持つものと確認し、よって、酸性の相対イオンの中で適切にマッチングされることができる酸を選別するために多様な方法を利用した。具体的に、上述の化合物1の遊離塩基物のpKaとマッチングが適切な酸をコンピューターで計算し、これらの酸は主にpKaが2ないし5の付近にある酸と確認された。
【0053】
したがって、前記範囲の酸を様々な種類の溶媒と共に多様に実験して総22種の結晶形固体を得て、これらのそれぞれの結晶度を確認し、DSC及びDVS分析を行った。この結果、ヘミフマル酸塩またはフマル酸塩が結晶度、融点、吸湿性などにおいて最も優れる塩であることを確認した。
【0054】
スフィンゴシン‐1‐フォスフェート(S1P)受容体1‐5は、7個の膜横断ドメインを持つGタンパク質‐カップリングされた受容体のファミリを構成する。S1P1ないしS1P5と称されるこれら受容体は、スフィンゴシンキナーゼ‐触媒化されるスフィンゴシンのリン酸化によって生成されたスフィンゴシン‐1‐フォスフェートによる結合を通じて活性化される。S1P1、S1P4、及びS1P5受容体はGiを活性化させるがGqは活性化させないことに対し、S1P2及びS1P3受容体はGi及びGqを両方とも活性化させる。S1P3受容体は細胞内のカルシウムの増加によって効能剤に反応するが、S1P1受容体はそうではない。
【0055】
2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオール化合物(以下、化合物1という)は、S1Pサブタイプそれぞれの受容体(receptor)に選択的に結合し、機能的拮抗剤(functional antagonist)として作用して末梢血流でリンパ球(lymphocyte)を減少させる。
【0056】
化合物1は、多発性硬化症及び脳虚血の治療に有用であり、これは本願に参照として含まれた韓国特許公開公報第10‐2017‐0087813号を参照する。
【0057】
一方、炎症性腸疾患は、腸内部に非正常的な炎症が繰り返される慢性疾患である。腸内細菌叢に対する免疫反応によって発生し、「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」が代表的である。西洋人に主に生じるが、徐々に東洋人の食生活が西欧化しながら韓国での患者数も増えている。潰瘍性大腸炎は肉食を主にするヨーロッパと北米地域で発病率が高い疾患であったが、最近は西欧化された食習慣によって、韓国を含む東アジア地域でも発病率が増加する傾向を見せている。クローン病は口から肛門まで消化管全体にわたってどの部位でも発生することがある慢性炎症性腸疾患であり、いまだに潰瘍性大腸炎を完治することができる薬物治療法はない。
【0058】
また、全世界的に臓器移植は、2015年、約120,700件程度で、前年度に比べて5.8%増加し、この中で約60%が腎臓移植である。間質性線維症及び尿細管萎縮(Interstitial fibrosis and tubular atrophy、IFTA)は、腎臓移植から1年後に25%程度の患者で発病する。移植された腎臓の組織病理学的変化によって間質部位(interstitial space)が拡張されて、正常組織を取り替えることにより、尿細管萎縮と間質線維化の形態が発生し、糸救体のろ過率の減少と蛋白尿の増加を引き起こす。移植後5年目に66%、移植後10年目に90%まで誘発され、このような症状は初期には免疫学的原因によって主に発病するが、後期には主に免疫抑制剤であるカルシニューリン(Calcineurin)阻害剤の毒性に起因する。
【0059】
移植後の免疫抑制維持療法で主に使われるカルシニューリン阻害剤のIFTA誘発機序は明確ではないが、血管収縮、酸化的ストレス(oxidative stress)、TGF‐βなどを誘発するなど、繊維証を引き起こす原因を提供するものとして知られている。
【0060】
現在、慢性移植拒否症に対し、カルシニューリン阻害剤の他、抗代謝剤、ステロイド併合療法などを利用しているが、今までIFTAに対して明確に確立された治療方法がないため、免疫抑制機能と抗繊維化効果を同時に示す薬物を開発すれば、移植後の患者の生活の質を改善させることができると期待する。
【0061】
巣状分節性糸球体硬化症(FSGS、focal segmental glomerular sclerosis)は、腎臓のろ過システムである糸救体上皮細胞の構造的損傷(例えば、硬化症)などによって発生する、ろ過障害及び蛋白尿誘発症で末期腎不全の最も有りがちな原因疾患である。世界中の患者数は約30万人以上で、アメリカ患者数は約8万人であり、成人腎炎症候群の1/3を占めている。現在、ステロイド、免疫抑制剤、アンジオテンシン受容体遮断剤などが使われているが、腎不全、貧血など深刻な合併症を誘発していて、従来FSGS治療剤の副作用及び薬効が改善された薬物の開発が必要である。
【0062】
円形脱毛症は毛髪が円形に抜ける疾患で、一ヶ所や2ヶ所で円形の脱毛を見せたり、ひどい場合は多くの箇所に同時に発生することがあり、脱毛部位が融合されて頭皮の毛髪以外に眉毛やひげの毛髪も消失する現象を見せる。頭皮全体の毛髪が消失された場合を前頭脱毛症、頭皮だけでなく全身の毛髪の消失を見せる場合を汎発性脱毛症という。側頭部と後頭部の外縁に沿って帯状に発生する場合、蛇行性頭部脱毛症という。円形脱毛症は免疫体系が変化して兔疫細胞が毛嚢を攻撃して炎症を起こす自己兔疫性疾患であり、ストレス及び遺伝的原因によるものと考えられている。円形脱毛患者の約10%未満でアトピー皮膚炎、甲状腺疾患及び悪性貧血などの他の自己免疫疾患が伴われるおそれがあり、男女及び全年齢帯で発生するが、児童と若い成人の間で最も頻繁に表れる疾患であり、全体人口の約1~2%の有病率を示す。
【0063】
円形脱毛の代表的な治療はステロイドである。ステロイド注射、ステロイド服用薬、免疫抑制剤などは治療剤として認められて使われるが、長期間治療してみると初期は効果がある程度表れるが、むしろもっと悪くなったり、頭皮炎、頭皮陥没、高血圧、体重増加、胃荒れ、胃炎などの副作用が高く、よく再発されるきらいがある。現在、グローバルでは関節リウマチの治療剤として知られた経口用JAK抑制剤オルミエント(成分名Baricitinib)が2022年6月にアメリカ食品医薬品FDAから最初の円形脱毛全身治療剤として承認を受けた。その後続いてグローバル1位の製薬会社であるファイザーもJAK抑制剤の一種であるPF‐06651600(成分名Ritlecitinib)の3相試験完了後、オルミエントと類似な効能データを発表し、特に、安全性の側面でJAK阻害剤の長期投与時に懸念される主要な心臓異常反応(MACE)、感染副作用などは観察されず、このような結果に基づいてFDAに市販の許可を申し込んだ。よって、円形脱毛症治療に使われることができる、薬物効能に優れ、副作用ないし毒性面で安全な医薬の開発が持続的に求められている。
【0064】
これにより、本発明者らは、スフィンゴ脂質化合物の中でS1Pサブタイプ受容体に選択的に作用する独立的な化合物を開発するために鋭意努力する中、本発明による化合物がS1PR1とS1PR4受容体に特異的に結合して機能的阻害剤(antagonist)の役目をすることで、S1PRサブタイプに対する非選択性による心血管系疾患の副作用を引き起こさないと同時に、巣状分節性糸球体硬化症の予防及び治療、間質性線維症及び尿細管萎縮の予防及び治療、炎症性腸疾患の予防または治療効果、円形脱毛症の予防または治療効果があることを確認して本発明を完成した。
【実施例
【0065】
以下では、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。しかし、下記の実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。下記実施例は本発明の範囲内で当業者によって適切に修正、変更されることができる。
【0066】
実施例1:2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオール(化合物1)のヘミフマル酸塩の製造
フマル酸98mg(0.55倍の該当量)と化合物1‐遊離塩基物500mgとをMIBK(Methyl Isobutyl Ketone)(23.9mg/mL)25mLに入れて5分間常温で掻きまぜながら混合した。該当懸濁液は次のような冷却結晶化過程を経た。まず、懸濁液を10時間40℃で熱を加えて、引き継いで12時間5℃で掻きまぜた。反応完了時にどろどろな白色懸濁液が形成された。懸濁液の固形物質は円心分離によって沈殿物を分離し、常温で16時間真空状態(‐700mmHgの条件)で乾燥させて525.5mg(89.2%)の最終生成物を得た。
製造されたヘミフマル酸塩は、6.3±0.2゜、9.4±0.2゜、18.5±0.2゜、19.0±0.2゜、19.9±0.2゜、20.7±0.2゜、25.5±0.2゜、28.7±0.2゜、及び29.0±0.2゜の2θ値に主要な回折ピークがある粉末X‐線回折分光度(XRPD)パターンを示す。
1H‐NMR(DMSO‐d6):δ0.8(3H,t)、1.2(15H,m)、1.75(4H,m)、2.65(2H,m)、3.4(4H,t)、4.25(2H,t)、6.4(1H,m)、7.8(1H,s)
前記1H‐NMRデータにおいて、δ6.4ppmに表れるフマル酸を構成する>CH陽子の陽子数(統合数値基準)が該当遊離塩基物の陽子数の半分に計算され、最終生成物の塩形成構成の割合は1:0.5であることが確認された。
【0067】
実施例2:2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオール(NXC736)のフマル酸塩の製造
フマル酸196mg(1.1倍該当量)とNXC736‐遊離塩基物500mgとをアセトン25mLに入れて5分間常温で掻きまぜながら混合した。該当懸濁液を実施例1と同様の冷却結晶化過程を通じて処理し、真空状態(‐700mmHgの条件)で乾燥させて562mgの最終生成物を得た。
最終生成物であるフマル酸塩は、13.9±0.2゜、18.9±0.2゜、19.4±0.2゜、22.1±0.2゜、及び22.5±0.2゜の2θ値に主要な回折ピークがある粉末X‐線回折分光度(XRPD)パターンを示す。
【0068】
比較実施例1ないし6:化合物1のその他塩の製造
多くの種類の酸及び化合物1の遊離塩基物を混合して化合物1の塩を製造し、使われた酸及び溶媒は表1に示す。
【0069】
実験例1:吸湿性試験
比較実施例1ないし6で製造した塩と本願発明の新規塩をDVS方法を通じて特性分析を行い、その結果を下記表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
化合物1の塩酸塩(比較実施例1)のDVS分析結果によると、該当化合物が90%RHの条件で49.5%の水分吸着率を示し、自然状態での潮解性を示す。同時に、比較実施例2ないし6の塩も比較的に吸湿性が非常に高いものと表れた。
【0072】
一方、実施例1は上述した比較実施例1ないし6と比べると、DVS評価結果、90%RHの条件で水分吸着率が2%未満であり、非常に優れる低吸湿性を持つものと確認された。
【0073】
また、実施例2も数回繰り返して実験したDVS評価結果、90%RHの条件で水蒸気吸着率が3%超過5%未満であり、優れる吸湿性を持つものと評価された。
【0074】
実験例2:化合物1aの溶解度研究
実施例1で製造された化合物1aの溶解度をpH1.2の塩酸緩衝液、pH3.0のクエン酸塩緩衝液、pH4.7の酢酸塩緩衝液、pH6.8のリン酸塩緩衝液、模擬胃液、空腹状態の模擬腸液、食後状態の模擬腸液、及び水などの幾つか異なる媒体で評価した。各媒体当たり約2.17mgの試料(化合物1‐遊離塩基物基準)を2mLの透明ガラスバイアルに取って、0.5mLの媒体を添加した(塩の構成成分は、化合物1:相対イオン=1:0.5と見なす;目標濃度:2mg/mL)。混合物は磁石撹拌機を利用して25℃で24時間250RPMで撹拌した。次に、混合物のpHと外観を記録し、MultiScreen(登録商標)HTS‐HV96‐ウェルプレート(製造企業:Merck;0.45μm親水性、低タンパク質結合性Durapore(登録商標)Membrane)を使って混合物をろ過した。溶解度はHPLCを使って決定し、知られた濃度の化合物1aを注入して検量線を作った。ろ過された試料を注入し(必要に応じて適切に希釈する)、検量線でろ過液の化合物1a(mg/mL)の濃度を計算した(塩係数を考慮する)。分析結果は次のとおりである。
【0075】
【表2】
【0076】
化合物1aの溶解度はリン酸塩緩衝液(pH6.8)を除いて、上に言及されたすべての水溶性媒体で2mg/mL以上であり、実質的に全体試料が完全に溶解されたが、同一条件の化合物1の塩酸塩は一部の試料で溶解されていないサスペンションが観察された。
【0077】
実験例3:安定性研究
化合物1aの標準原液、pH、塩分、光、及び酸化安定性を以下のような多様な条件で確認した。
実験例3‐1:標準原液の安定性研究‐40℃/75±5%RHの条件
該当結晶性化合物の安定性を40℃/75±5%RHの条件で調査した。物理的安定性は、試験前後のXRPD比較分析を通じて確認し、化学的安定性はHPLC方法で確認した。化合物1aに対する安定性試験の際に利用した実験条件と試験結果は次のとおりである。
【0078】
安定性条件及び試験方法:
40℃/75±5%RH:バイアルの蓋を開いてまっすぐ立てた状態の条件
必要な量(~1mg)の固形物質を希釈液1mL(1:1メタノール/水)に溶かし、用意された溶液をHPLCで分析した。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
表3で化合物1の塩酸塩は高湿度(40℃/75±5%RH)の条件で一週間経った後、物理的に不安定だと見なされる液状に変化し、一部のサンプルは潮解性を示した。しかし、表4によれば、化合物1aの場合、高湿度(40℃/75±5%RH)の条件で2週経過しても結晶形がそのまま維持されながら、純度は99%以上に維持されて標準原液の安定性が非常に優れることが分かる。
【0082】
実験例3‐2:標準原液の安定性研究‐60℃/75±5%RHの条件
該当結晶性化合物の安定性を60℃/75±5%RHの条件で調査し、純度はHPLC方法で確認した。化合物1aに対する安定性試験の際に利用した実験条件と試験結果は次のとおりである。
【0083】
安定性条件及び試験方法:
60℃/75±5%RH:バイアルの蓋を開いてまっすぐ立てた状態の条件
必要な量(~1mg)の固形物質を希釈液1mL(1:1メタノール/水)に溶かし、用意された溶液をHPLCで分析した。
【0084】
【表5】
【0085】
表5で化合物1aは、化合物1の遊離塩基より高湿度(60℃/75±5%RH)の条件で1週間及び2週間経過した後、柔軟物質の発生及び含量の変化が非常に低く、純度が98%以上に維持されて、相対的に標準原液の安定性が優れることが分かる。
【0086】
図11は、化合物1の遊離塩基、化合物1a及び化合物1の塩酸塩それぞれを60℃/75±5%RHの条件下で置いた後、初期及び2週間後の性状変化を観察した写真であって、塩酸塩の場合、水分を吸収して液状に変わったことが見られる。また、図12で化合物1の遊離塩基、化合物1a及び化合物1の塩酸塩を60℃の条件で2週間サンプルとともに保管した後、サンプルの腐食性の度合いを確認した結果、塩酸塩の場合、腐食が発生したことを確認して塩酸塩による水分吸収が起きたことが分かった。
【0087】
実験例3‐3:pH安定性及び塩分安定性
初期目標濃度である2mg/mLの条件で化合物1‐ヘミフマル酸塩のpH及び塩分安定性試験を遂行した。化合物1‐ヘミフマル酸塩の評価に使われたpH及び塩分安定性の条件及び評価結果は以下のとおりである。
【0088】
安定性条件及び試験方法:
40±2℃:バイアルの蓋を閉じてまっすぐ立てた状態の条件
安定性のための保管容器:2mLのスクリューネック透明ガラスバイアル(製造社:La‐Pha‐Pack)
目標濃度:~2mg/mL(試料を媒体1mLに添加した後、30秒間渦流混合する)
試験混合液500μLを希釈液500μLに溶解させて(1:1メタノール/水)、用意された溶液をろ過過程なしにHPLCで分析した。
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
前記表7で見られるように、化合物1aはpH6.8のリン酸塩緩衝液/40±2℃の条件で2週間後98%超過の純度を示し、その他多様なpH変化及び塩分の添加にもかかわらず、ほとんど純度がそのまま維持される傾向を示すので、全般的に優れるpH安定性及び塩分安定性を示す。
【0092】
しかし、同一条件下で化合物1の塩酸塩のデータである表6を見れば、pH6.8のリン酸塩緩衝液/40±2℃の条件で2週間後98%未満の純度を示し、塩分を添加して1週間経過した場合も98%以下の純度を示すことを確認した。
【0093】
したがって、化合物1aは化合物1の塩酸塩に比べて、相対的に優れるpH安定性及び塩分安定性を持つことを確認することができた。
【0094】
実験例3‐3:光安定性及び酸化安定性
光安定性試験のために化合物1aの10mgを常温で120万 ルクス 時間(1.2million lux hours)条件の紫外線及び可視光線に露出させた。酸化安定性試験のために30%H22を0.2mLと化合物1aを1mg取って2mLのバイアルに入れて、最大24時間25℃の条件で保管した。化合物1‐フマル酸塩の評価に使われた光及び酸化安定性条件及び評価結果は以下のとおりである。
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
前記表9で見られるように、化合物1aは120万 ルクス 時間(1.2million lux hours)条件の紫外線及び可視光線に露出されても純度及び物理的性状に大きい変化がないため、優れる光安定性を確認することができ、酸化ストレス条件でも24時間後に分解が観察された。しかし、表8で見られるように、化合物1の塩酸塩は120万 ルクス 時間(1.2million lux hours)条件の紫外線及び可視光線に露出する際に、一部の純度の変化が観察されたし、酸化ストレスの条件では20時間後に約8%以上の分解率を示した。よって、化合物1aは化合物1の塩酸塩に比べて相対的に優れる光安定性及び酸化安定性を持つことを確認することができた。
【0098】
結論的に、本発明による2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオール(化合物1)のヘミフマル酸塩は、化合物1の塩酸塩及びその他塩に比べた結果、低吸湿性、標準原液の安定性、光安定性、酸化安定性、pHによる安定性、溶解度などでいずれも優れる効果を示し、固体状態の特性(結晶度、融点、低吸湿性)を基準にして判断しても最も物性が優れることを確認することができた。
【0099】
また、本発明による化合物1aは、臨床のための大量生産及び保管のための最低限の条件である、1)DVSで90%RHの条件で水分吸着率が2%未満である低吸湿性要件、及び2)高湿度(40℃/75%RHなど)の条件で2週間以上安定しなければならない標準原液の安定性要件、そして、円滑な臨床進行のための最低限の条件である全ての水溶性媒体で2mg/mL以上の溶解度を持たなければならない溶解度要件を全て満たす塩であることを確認した。
【0100】
また、本発明による化合物1bも水分吸着率で若干差を見せるだけで、全体的に化合物1aと類似な物理的、化学的性質を示す塩であることを確認した。
【0101】
実験例4:化合物1aのマウス兔疫細胞に対する抑制効果確認
FTY720(Fingolimod)は、リンパ節または骨髓でリンパ球の一部を可逆的に捕獲することにより、リンパ球を2次リンパ器官に隔離して中枢神経系への進入を抑制するか、または血流内を循環するリンパ球の個体数を減少させて脳に到逹する活性化されたリンパ球の個数を減少させる作用機序を持つ多発性硬化症治療剤である。
【0102】
S1P受容体に作用する化合物1もリンパ球減少に効果を示すのかを確認するために、化合物1が兔疫細胞に及ぼす影響を評価した。マウスに化合物1を3mg/kg/day経口投与後、末梢血流(PB、peripheral blood)、骨髓(BM、Bone marrow)でのリンパ球変化をT細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞に分類し、試験物質投与後0、4、8、12、24、36時間別にFACS分析を行った。細胞数(cell number)を測定して、0time基準に百分率(% of control)で示す。
【0103】
図4を参照すれば、化合物1aの3mg/kg投与によって末梢血流(PB)では4時間後からT細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞のいずれにおいて0時間40.6%/41.6%、16.4%/17.6%、5.9%/9.3%水準まで減少されることを確認することができた。12時間まで減少が維持されてから、回復して36時間では88.9%に回復した。用量依存性は、投与後24時間にT細胞で表れ、CD4 T細胞、CD8 T細胞の場合、投与後4時間から24時間まで用量依存的な減少効果を確認することができた。
【0104】
骨髓(BM)では化合物1aを3mg/kg投与後、4時間後に135%、120%、24時間後には131%、118%でT細胞の分布を確認することができた。これは化合物1によって受容体内在化(Receptor internalization)が発生してT細胞の遊離が抑制されて表れる現象と判断される。
【0105】
化合物1aを3mg/kg投与後、T細胞での細胞数(cell number)は4時間から減少される現象が表れ、24時間まで抑制効果がある程度維持されてから回復することを確認することができた。結論的に、化合物1aの投与によって血流内を循環するリンパ球(lymphocyte)の個体数が減少、免疫抑制効果が示されることを確認することができた。
【0106】
実験例5:化合物1aのラット兔疫細胞に対する抑制効果確認
化合物1aのラット兔疫細胞に対する影響を評価するために、SDラットに化合物1aを10mg/kg/day経口投与した後、末梢血流(PB)及び骨髓(BM)でのT細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞に分類し、試験物質の投与後、0、4、8、12、24、36、48時間別にFACS分析を行った。細胞数(cell number)を測定して0timeを基準にして百分率(%of control)で示し、T細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞の数を測定して0timeを基準にして% of controlで示す。
【0107】
図5を参照すれば、化合物1aの投与後、末梢血流(PB)では4時間からT細胞が減少されることを確認することができた。抑制効果は用量依存的に表れ(70%、80%、87%)、化合物110mg/kgの投与によって、24時間まで抑制効果が維持されることを確認することができた。骨髓(BM)では逆に変化がないか、増加する傾向を確認することができた。
【0108】
本研究を通じて化合物1aは、経口投与した後、末梢血流(PB)でリンパ球数を減少させて免疫抑制効果を示すことを確認することができた。また、骨髓(BM)では変化がないか増加する傾向を確認することができた。このような効果は化合物1がリンパ節(lymph node)、骨髓(BM)などに存在するS1P受容体に機能的拮抗剤として作用して、リンパ球の遊離を抑制する機序と関連すると判断される。
【0109】
実験例6:マウスDSS誘発モデルを利用した炎症性腸疾患の抑制効能確認
Dextran Sulfate Sodium(DSS)induced Colitisモデルを利用して化合物1aの炎症性腸疾患に対する有効性評価を行った。前記マウスモデルは、DSSを2.5%濃度の飲水をマウスに投与して炎症性腸疾患を誘発した。治療群は化合物1aを投与する試験群、オザニモド(Ozanimod)または、MTX(methotrexate)を投与する陽性対照群、ビークル(Vehicle)群及び正常対照群からなって、各群はn=10である。前記炎症性腸疾患が誘発されたモデルを対象にして、本発明の化合物である化合物1を7日間、1日1回、5、10mg/kgの用量でそれぞれ経口投与し、陽性対照物質としてオザニモド(Ozanimod)は5mg/kgを1日1回経口投与し、陽性対照物質としてMTX(methotrexate)は3mg/kgを週3回腹腔注射して投与した。
【0110】
図6では、DSS誘発大腸炎マウスの疾病活性指数(DAI)及びDSS誘発大腸炎マウスの疾病活性指数の曲線下の面積(AUC)を示す。DAIは、マウスの初期体重と比べた体重減少、大便濃度(Stool consistency)、及び腸出血度合いの合計点数を示すものである。DAIの算出基準は下記表10のとおりであり、DAIは0、1、2、3、4、5、6、7及び8日に評価した。
【0111】
【表10】
【0112】
図6を参照すれば、陽性対照物質のMTXを3mg/kg、オザニモド(Ozanimod)を5mg/kg、化合物1を5mg/kg、及び化合物1を10mg/kgが投与群全てにおいて陰性対照群(Vehicle)と対比して統計的に有意な減少効果を確認することができた。
【0113】
特に、化合物1aを5mg/kg、及び化合物1aを10mg/kgを投与した結果、従来の潰瘍性大腸炎の標的治療剤として使われたオザニモド(Ozanimod)と対比して、体重減少量、大便濃度、及び腸出血度合いによる臨床指標が同等以上を示すことを確認することができた。
【0114】
前記評価結果は、陰性対照群と試験群、または2つの試験群の間の統計分析を遂行し、群を比較するためにStudent’s t‐testあるいはMann Whitney U testでp valueが0.05以下と有意な水準を示す。
これにより、化合物1aは炎症性腸疾患の抑制効果がある物質であることを確認することができた。
【0115】
実験例7:化合物1aが心血関係に及ぼす影響評価
1)hERG geneが過発現されたHEK293細胞での化合物1aの影響評価
hERG(human Ether‐a‐go‐go Related Gene)を導入してhERGカリウムイオンチャンネルを安定に発現させたHEK‐293細胞に化合物1aを適用してhERGチャンネル電流(hERG channel currents)に及ぼす影響を評価した。化合物1aは、1、3、10及び30μMの濃度に設定した。また、各実験当日には陰性対照物質または各濃度別試験物質に対するhERGチャンネル電流(hERG channel currents)の記録が終わった任意の1個の細胞に処理した。
【0116】
図7を参照すれば、1、3、10及び30μMの濃度での化合物1(BないしE group)のhERGチャンネル電流(hERG channel currents)の抑制率(Compensated suppression rate、%)は、それぞれ9.94±1.96、13.98±4.48、35.03±12.09及び82.62±7.31%(n=3)で、陰性対照群(A group)のhERGチャンネル電流(hERG channel currents)の補償された抑制率(Compensated suppression rate、%)は0±4.12(n=3)値を示す。すなわち、10及び30μM濃度でのNCX736(D及びE group)は陰性対照群(A group)と比べて統計学的に有意な値の差を示すことを確認することができた。
【0117】
これと同一条件下で陽性対照群(F group)で使った0.1μM濃度のE‐4031を処理した。hERGチャンネル電流(hERG channel currents)の補償された抑制率(Compensated suppression rate、%)は92.64±1.66%(n=5)の高い値を示す。このような結果からみると、本試験法は化合物1のhERGチャンネル電流(hERG channel currents)に及ぼす影響を評価するために適した方法であると判断される。
【0118】
前記条件下でhERG遺伝子が導入されたHEK‐293細胞を利用したhERGチャンネル電流(hERG channel currents)に及ぼす影響評価において、試験物質である化合物1aを最大30μM濃度まで処理した結果、hERGチャンネル電流(hERG channel currents)の補償された抑制率(Compensated suppression rate、%)は82.62±7.31%を示し、K+イオンチャンネルの阻害能(IC50)は12.94μM(ヒール係数(Hill coefficient):1.527)に算出された。したがって、化合物1aはhERGカリウムチャンネル活性を阻害せず、心臓異常を誘発しない物質であることを確認することができた。
【0119】
2)ビーグル犬を利用して心血関係に及ぼす影響確認
遠隔送信機が挿入された無痲酔及び拘束されていない状態の雄ビーグル犬4匹に化合物1aを経口投与した。以後、ビーグル犬4匹に対して心拍数を測定して化合物1が心血関係に及ぼす影響を評価し、肉眼で異常症状の発現有無を確認した。
【0120】
本実験は、ビーグル犬4匹それぞれに対して、4段階にわたって実験物質を投与した。1次投与段階(化合物1を0mg/kg)では、対照物質として賦形剤である0.5%のMC水溶液を投与し、2次投与段階では化合物1aを12.5mg/kg投与し、3次投与段階では化合物1aを25mg/kg投与し、4次投与段階では化合物1aを50mg/kg投与した。1次ないし4次投与は、1週間隔で施行した。また、実験物質投与前に0時間(hours)、実験物質投与0.5時間(hours)、1時間(hours)、2時間(hours)、3時間(hours)、4時間(hours)、6時間(hours)、8時間(hours)、12時間(hours)、及び24時間(hours)経過した後、ビーグル犬の心拍数を測定した。
【0121】
図8を参照すれば、化合物1を12.5、25、50mg/kgの用量で投与しても心拍数(Heart rate)に変化が起きないことを確認することができた。
【0122】
また、肉眼でビーグル犬に対して一般の症状を観察した結果、化合物1aを12.5、25、50mg/kg用量の投与による異常症状は観察されなかった。
【0123】
以上のように、マウスDSS誘発モデルを利用した炎症性腸疾患の抑制効能評価の結果及び化合物1を投与したビーグル犬の心拍数及び肉眼で異常症状の発現有無を確認した結果によれば、本発明による化学式1で表される化合物、この光学異性体またはこの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む薬学的組成物は、S1PR1とS1PR4に対する機能的阻害剤として作用して炎症性腸疾患の予防または治療効果があることを確認することができた。また、本発明による薬学的組成物は、S1P受容体のサブタイプ(S1P1、S1P2、S1P3、S1P4及びS1P5)のうち、S1PR1とS1PR4に対する機能的阻害剤として作用して、炎症性腸疾患の予防または治療効果があると同時に、心血管疾患の副作用を引き起こさない効果があることを確認することができた。
【0124】
実験例8:マウス腎臓繊維化(Kidney fibrosis)モデルを利用した繊維化抑制効能確認
腎臓繊維化疾患モデルである片側尿管閉塞(Unilateral Ureteral obstruction、UUO)モデルを利用して化合物1aの腎臓疾患での抗繊維化効能を評価した。マウスの片側の尿管を結紮して腎臓繊維化を誘発した後、化合物1aを10、30、90mg/kg/day、陽性対照物質テルミサルタン(Telmisartan)30mg/kg/dayを1日1回、2週間経口投与した。
【0125】
図9を参照すれば、ビークル(Vehicle)で繊維症部位(Sirius red positive area(%))と腎臓ヒドロキシプロリンが陰性対照群(sham)と対比して有意的に増加され、腎臓繊維化が誘発されたことを確認することができた。陽性対照物質として使ったテルミサルタン(Telmisartan)は、腎臓ヒドロキシプロリンを統計的に有意に減少させた(p<0.0001)。化合物1aを10、30、90mg/kg/day投与したすべての群において、腎臓ヒドロキシプロリンが統計的に有意に(p<0.05、p<0.01、P<0.001)減少し、特に、化合物1aを90mg/kg/dayで腎臓ヒドロキシプロリンが統計的に有意に(p<0.05)減少されたことを確認することができた。これにより、化合物1は繊維化抑制効果がある物質であることを確認することができ、化合物1はUUOで誘発したマウス腎臓繊維化モデルから用量依存的に腎臓繊維化抑制効果を示すことを確認することができた。
【0126】
実験例9:アデニン誘発腎不全(Adenine induced renal failure)マウスモデルを利用した抗繊維化効能確認
アデニンで誘発した慢性腎臓疾患モデルを利用して化合物1aの抗繊維化効果を評価した。0.5%のアデニン(in 0.5% CMC)をマウスに4週間経口投与して慢性腎臓症候群(chronic kidney disease)を誘発し、化合物1aを10、30、90mg/kg/day及び陽性対照物質テルミサルタン(Telmisartan)10mg/kg/dayを3週間経口投与した後、血清クレアチニン、血清BUN、腎臓ヒドロキシプロリンの測定及び組織病理を実施した。また、前記測定結果に基づいてTubular‐interstitial index値を見出した。
【0127】
Biochemical分析結果、アデニンによって誘発されたCKDモデルでビークル(vehicle)群はコントロール(control)群と対比して血清クレアチニンの水準が1.15±0.25(mg/dl)、血清BUNの水準が202.3±32.1(mg/dl)と有意に増加した。化合物1aを90mg/kg/dayで血清クレアチニンの水準がビークル(Vehicle)群と対比して0.90±0.12mg/dl減少し、血清BUNの水準がビークル(Vehicle)群と対比して157.4±32.3(mg/dl)減少し、化合物1aを30mg/kg/day投与群で腎臓ヒドロキシプロリンの水準が対照群と対比して統計的に有意に減少した。図10を参照すれば、Tubular‐interstitial indexでは、化合物1aを90mg/kg/dayに経口投与した群とテルミサルタン(Telmisartan)投与群とで統計的に有意に腎臓繊維化が減少することを確認することができた。結論的に、アデニンによって誘発された慢性腎臓繊維化モデルで化合物1の抗繊維化効果を確認することができた。
【0128】
実験例10:マウス円形脱毛症モデルを利用した円形脱毛症抑制効能確認
自然に(Spontaneous)発生する円形脱毛症モデル(C3H/HeJ)を利用して化合物1aの円形脱毛症に対する有効性評価を行った。試験に利用したC3H/HeJマウスは、週齢が増加することにつれ、自然に円形脱毛が進められる動物である。自然に円形脱毛が誘発された20週齢以上のC3H/HeJマウスから得たリンパ節細胞を増殖して円形脱毛が誘発されていない10~16週齢のC3H/HeJマウスに注射して円形脱毛を誘発し、化合物1aを30mg/kg、12週間経口投与した後、Disease free ratio、AA lesion areaを測定した。
【0129】
化合物1aの投与群と対照群(control)の間の有意的な体重の差を確認することができず、化合物1aの投与群で円形脱毛が後で観察された(100%円形脱毛の観察日:対照群:56日、化合物1a投与群:84日)。また、化合物1a投与群の場合、対照群に比べて円形脱毛が観察される部位が統計的に有意に少ないことが見られた。(84日目のAA lesion area‐対照群:約80%、化合物1a投与群:約10%)。
参考として、本明細書で使われる略語リストは以下のとおりである。
【0130】
【表11】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1aで表される化合物である2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのヘミフマル酸塩:
【化1】
【請求項2】
前記塩は結晶形である請求項1に記載のヘミフマル酸塩。
【請求項3】
6.3±0.2゜、9.4±0.2゜、18.5±0.2゜、19.0±0.2゜、19.9±0.2゜、20.7±0.2゜、25.5±0.2゜、28.7±0.2゜、及び29.0±0.2゜の2θ値を含む粉末X‐線回折分光度(XRPD)パターンを示す請求項2に記載のヘミフマル酸塩。
【請求項4】
DVSで90%RHの条件で水分吸着率が2%未満である請求項1または請求項2に記載のヘミフマル酸塩。
【請求項5】
高湿度(40℃/75±5%RH)の条件で2週間後にも純度は99%以上である請求項1または請求項2に記載のヘミフマル酸塩。
【請求項6】
pH6.8であるリン酸塩緩衝液/40±2℃の条件で2週間後98%以上の純度を有する請求項1または請求項2に記載のヘミフマル酸塩。
【請求項7】
示差走査熱量(DSC)で約82℃の溶融吸熱開始温度を有する請求項1または請求項2に記載のヘミフマル酸塩。
【請求項8】
請求項1に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのヘミフマル酸塩を有効成分として含む多発性硬化症(multiple sclerosis)または脳虚血(ischemic storke)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのヘミフマル酸塩を有効成分として含む巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis、FSGS)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのヘミフマル酸塩を有効成分として含む炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項11】
前記炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎(UC)またはクローン病(CD)である請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのヘミフマル酸塩を有効成分として含む間質性線維症及び尿細管萎縮(Interstitial fibrosis and tubular atrophy、IFTA)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の2‐アミノ‐2‐(2‐(1‐デシル‐1H‐1,2,3‐トリアゾール‐4‐イル)エチル)プロパン‐1,3‐ジオールのヘミフマル酸塩を有効成分として含む円形脱毛症(alopecia areata、AA)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項14】
1種以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤及び/または賦形剤をさらに含む請求項8ないし請求項13のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記薬学的組成物は心血管疾患の副作用を引き起こさない請求項8ないし請求項13のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【国際調査報告】