(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】金属空気電池の改善
(51)【国際特許分類】
H01M 12/08 20060101AFI20240905BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01M12/08 K
H01M4/38 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514348
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 US2022042351
(87)【国際公開番号】W WO2023034509
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524079960
【氏名又は名称】デイライト,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,カレブ・タイラー
【テーマコード(参考)】
5H032
5H050
【Fターム(参考)】
5H032AA03
5H032AS01
5H032AS02
5H032AS03
5H032BB04
5H032CC06
5H032CC16
5H032CC17
5H032EE01
5H032EE04
5H032HH04
5H032HH08
5H050AA02
5H050BA20
5H050CA12
5H050CB12
5H050CB13
5H050DA19
5H050HA04
5H050HA17
(57)【要約】
水性金属空気電池を改善する方法が開示される。本方法は、伝導性基板上に固体電解質を形成すること;固体電解質上に保護表面を形成すること;別個の酸素還元および酸素発生電極を設け、改善すること;酸素還元および酸素発生電極のガス拡散を改善すること;および電池セルの構造を改善することを含む。このような改善を含む改善された金属空気電池がさらに開示される。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または金属合金から形成されたアノードであって、該金属または金属合金は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、亜鉛、およびアルミニウムのうちの1種またはそれより多くを含む、アノード;
該アノードに付着された固体電解質;ならびに
水性電解質
を含む金属空気電池であって、水性の金属空気電池は、
該固体電解質の表面をコーティングする保護薄膜;および
それぞれが触媒を含む、酸素発生電極および酸素還元電極
のうちの1種またはそれより多くをさらに含む、上記金属空気電池。
【請求項2】
前記固体電解質の表面上に前記保護薄膜を含む、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項3】
前記保護薄膜が、複数のリガンドまたはカチオン交換膜を含む、請求項2に記載の金属空気電池。
【請求項4】
前記複数のリガンドが、エーテル、ケトン、エステル、カルボン酸、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、炭酸、過酸化物、アルコール、RSO3-、ROSO3-、カルボキサミド、アミジン、アミン、ケチミン、アルジミン、イミド、アジド、アゾ、シアン酸、イソシアン酸、硝酸、ニトリル、イソニトリル、ニトロソオキシ、ニトロ、ニトロソ、オキシム、ピリジル、カルバミン酸、チオール、硫化物、二硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルフィノ、スルホ、チオシアン酸、イソチオシアン酸、カルボノチオイル、カルボチオS-酸、カルボチオO-酸、チオールエステル、チオノエステル、カルボジチオ酸、カルボジチオ、ホスフィノ、ホスホノ、およびリン酸リガンドのうちの1種またはそれより多くを含む、請求項3に記載の金属空気電池。
【請求項5】
前記複数のリガンドが、遠位端に、アニオン性基または立体障害基を含む、請求項4に記載の金属空気電池。
【請求項6】
前記固体電解質が、約50マイクロメートル未満の厚さを有する、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項7】
前記固体電解質が、多層構造を有する、請求項6に記載の金属空気電池。
【請求項8】
前記固体電解質が、約0.25Ω/cm
2~約5Ω/cm
2のイオン抵抗を有する、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項9】
セラミック材料が、ナシコン型セラミックである、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項10】
前記セラミック材料が、ナシコン型セラミック、リシコン型セラミック、ガーネット型セラミック、ペロブスカイト型セラミック、NaPON型セラミック、LiPON型セラミック、Li
3N型セラミック、Na
3N型セラミック、アルジロダイト型セラミック、アンチペロブスカイト型セラミック、ナトリウム-ベータアルミナセラミック、リチウム-ベータアルミナセラミック、カリウム-ベータアルミナセラミック、リン酸型セラミック、またはホウ酸型セラミックセラミックを含む、請求項9に記載の金属空気電池。
【請求項11】
前記固体電解質が、ナシコン型セラミックを含む、請求項10に記載の金属空気電池。
【請求項12】
前記固体電解質が、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリアクリロニトリル(「PAN」)、ポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)、ポリアクリレート(「PA」)、ポリメタクリル酸メチル(「PMMA」)、ポリシアノアクリレート(「PCA」)、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、およびポリ(ビニレンカーボネート)のうちの1種またはそれより多くの中にブレンドされた、リチウム塩および/またはナトリウム塩のうちの1種またはそれより多くを含む、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項13】
前記金属空気電池が、前記酸素発生電極および前記酸素還元電極を含み;
前記酸素還元電極の前記触媒が、金属窒化物を含む、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項14】
前記金属空気電池が、前記酸素発生電極および前記酸素還元電極を含み;
前記酸素発生電極の前記触媒が、ニッケル、鉄、マンガン、および銅のうちの1種またはそれより多くの酸化物、水酸化物、またはオキシ水酸化物を含む、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項15】
前記水性電解質が、前記アノードの水酸化物を含み、ニッケルイオン、鉄イオン、マンガンイオン、銅イオン、アノードイオン、ハロゲンイオン、ならびに固体電解質の成分およびイオンの1種またはそれより多くをさらに含む、請求項14に記載の金属空気電池。
【請求項16】
前記金属空気電池が、前記酸素発生電極および前記酸素還元電極を含み;
前記酸素発生電極および前記酸素還元電極のそれぞれが、ガス拡散層を含む、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項17】
前記固体電解質の表面上の前記保護薄膜;ならびに
前記酸素発生電極および前記酸素還元電極
を含む、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項18】
前記酸素還元電極が、前記水性金属空気電池の外部シェルを形成する、請求項17に記載の金属空気電池。
【請求項19】
充電サイクルまたは放電サイクルを選択するためのスイッチをさらに含む、請求項17に記載の金属空気電池。
【請求項20】
前記金属空気電池が、ナトリウム空気電池であり、前記水性電解質が、水酸化ナトリウムを含む、請求項1に記載の金属空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2021年9月1日付けで出願された米国仮特許出願第63/239,601号の「水性の金属空気電池セル構造(Aqueous Metal-Air Battery Cell Structure)」;2021年9月1日付けで出願された米国仮特許出願第62/239,487号の「薄膜セラミック固体電解質(Thin Film Ceramic Solid Electrolyte)」;2021年9月3日付けで出願された米国仮特許出願第63/240,389号の「薄膜固体電解質の安定性(Thin Film Solid Electrolyte Stability)」;2021年9月3日付けで出願された米国仮特許出願第63/240,394号の「安定な酸素還元および酸素発生触媒を有する水性の金属空気電池(Aqueous Metal-Air Battery with Stable Oxygen Reduction and Oxygen Evolution Catalysts)」;および2022年4月4日付けで出願された米国仮特許出願第63/327,328号の「安定な、低コストの活性ガス拡散電極(Stable, Low Cost, Active Gas Diffusion Electrodes)」の優先権の利益を主張し、これらのそれぞれは、参照によりこれらそれぞれの全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府のライセンスの権利
[0002]本発明は、米国エネルギー省によって付与された中小企業技術移転フェーズ1助成金(Small Business Technology Transfer Phase 1 Grant Award)DE-SC0022492に基づく政府支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
[0003]本発明の開示は、一般的に、改善された性能およびライフタイムを可能にする金属空気電池の改善に関する。
【背景技術】
【0004】
[0004]電池は、現代世界にとってますます重要になりつつあり、時計から大陸送電網に至る様々なスケールで電力を供給するのに使用される。しかしながら、従来の電池化学は、近い将来、電池容量に対する需要を満たすのに苦戦することが予想される。例えば、輸送業界の電化とグリッドスケールのエネルギー貯蔵はそれぞれ、再充電可能な電池容量のかつてない増加を必要とする。従来の再充電可能な電池の化学物質としては、例えばニッケル-カドミウム(「NiCD」)、ニッケル水素(「NiMH」)、鉛酸、およびリチウムベース(例えば、リチウムイオン(「Liイオン」)およびリン酸鉄リチウム(「LiFePO4」))電池などがあるが、これらはそれぞれ、低い出力密度、毒性、または高いコストなどの様々な問題があり、それによって、輸送業界電化または再生可能な発電を可能にするのに十分なグリッドスケールのエネルギーに求められる必要な電池容量を供給できなくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】[0005]
図1Aは、一実施態様による伝導性基板に付着させた固体電解質の側面図を示す。
【
図1B】[0006]
図1Bは、一実施態様による充放電サイクルを示す
図1Aの固体電解質の側面図を示す。
【
図2A】[0007]
図2Aは、一実施態様による固体電解質上の薄膜保護コーティングの側面図を示す。
【
図2B】[0008]
図2Bは、
図2Aの薄膜保護コーティングの構造的な化学的概略図を示す。
【
図2C】[0009]
図2Cは、別の実施態様による固体電解質上の代替の薄膜保護コーティングを示す。
【
図3A】[0010]
図3Aは、一実施態様による例示的な水性の金属空気電池の側面図を示す。
【
図3B】[0011]
図3Bは、別の実施態様による代替の例示的な水性の金属空気電池の側面図を示す。
【
図3C】[0012]
図3Cは、一実施態様による並列充電配置での一連の水性の金属空気電池セルを示す。
【
図3D】[0013]
図3Dは、一実施態様による負極区画の断面図を示す。
【
図3E】[0014]
図3Eは、特定の実施態様による金属空気電池の負極区画の上面図を示す。酸素還元電極および酸素発生電極は示されていない。
【
図3F】[0014]
図3Fは、特定の実施態様による金属空気電池の負極区画の上面図を示す。酸素還元電極および酸素発生電極は示されていない。
【
図4】[0015]
図4は、一実施態様による電池コアの内部構造の詳細を示すための、金属空気電池の負極区画の例示的な側面図を示す。
【
図5】[0016]
図5は、一実施態様による非対称な金属空気電池セルの側面図を示す。
【
図6A】[0017]
図6Aは、実施例の固体電解質に関する電気化学的データを示す。
【
図6B】[0017]
図6Bは、実施例の固体電解質に関する電気化学的データを示す。
【
図6C】[0017]
図6Cは、実施例の固体電解質に関する電気化学的データを示す。
【
図6D】[0017]
図6Dは、実施例の固体電解質に関する電気化学的データを示す。
【
図6E】[0017]
図6Eは、実施例の固体電解質に関する電気化学的データを示す。
【
図6F】[0017]
図6Fは、実施例の固体電解質に関する電気化学的データを示す。
【
図6G】[0017]
図6Gは、実施例の固体電解質に関する電気化学的データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0019]金属空気電池は、酸素を還元して水酸化物または過酸化物にしたり、水酸化物または過酸化物を酸化して酸素に戻したりするために、正極またはカソードが空気に晒されている電池の分類を指す。金属カソードを機能的に重量のない周囲空気で置き換えることによって、金属空気電池は、理論上、金属(酸化物)カソードを有する従来の電池化学より高い比容量とより高いエネルギー密度に達することができる。表1は、これらに限定されないが、様々な起こり得る負極および酸素還元反応のための、標準的な還元電位と、それに対する標準的な水素電極(「SHE」)を示す。表1は、さらに、様々な金属空気電池の、対応する充電容量、および理論上のエネルギー密度を報告する。比較として、鉛酸電池(lead acid battery)の理論上のエネルギー密度は170Wh/kgであり、リチウムイオン電池は400~700Wh/kgであることから、金属空気電池の理論上の性能が、従来の電池と比較して実質的に高いことが実証される。理解できるように、このような理論上のエネルギー密度により、公知の電池化学を使用して電力供給することが不可能であった用途、例えば航空機より重い電池による電力供給など、で金属空気電池が使用され得るようになるだろう。
【0007】
【0008】
[0020]金属空気電池の理論上のエネルギー密度は、比較的従来の電池化学と比較してはるかに高いにもかかわらず、金属空気電池は、現実での性能やサイクル寿命の不良などを含む、金属空気電池の広範な展開を阻止する様々な問題によって妨げられてきた。非水性の金属空気電池が抱える問題の一部としては、空気電極の不溶性放電生成物からの放電中の目詰まりや、大気中の酸素、水蒸気、および二酸化炭素のそれぞれの拡散からの金属アノード表面上の絶縁性の金属酸化物、金属水酸化物、および金属炭酸塩の形成が挙げられる。水性の金属空気電池は、保護固体電解質なしで高度に自己放電したり、あるいは固体電解質が厚すぎる、イオン伝導率が低すぎる、および/または固体電解質-金属アノード界面で高い接触抵抗を有することにより充放電速度が遅いという問題を有する傾向がある。水性の金属空気電池と非水性の金属空気電池との両方について、活性であり安定な酸素触媒への必要性がある。
【0009】
[0021]本明細書に記載される通り、金属空気電池の改善、加えてその金属空気電池が開示される。この改善は、金属空気電池が、特定には水性の金属空気電池と共に使用される場合、長いライフスパンを有し、その理論限界に極めて近い望ましい性能を発揮することを可能にする。改善としては、改善された薄膜固体電解質;固体電解質のための改善された薄膜保護コーティング;正極または空気カソードのための改善された酸素発生および酸素還元触媒;改善された活性ガス拡散電極;および改善された水性の金属空気電池セル構造が挙げられる。
【0010】
[0022]本明細書に記載される改善は金属空気電池に関して記載されるが、このような改善は、他の用途にも有用性を有する可能性があることが理解されるべきである。例えば、酸素発生および還元触媒および活性ガス拡散電極に関する本明細書に記載される改善は、燃料電池、塩素アルカリプロセス、および他の電解質プロセスにとって有用な可能性がある。同様に、固体電解質および固体電解質の保護表面への改善は、例えば様々な保護コーティング、脱塩フィルム、センサー、容器などの、高度に腐食性の条件に晒される用途において広範な有用性を有する。このようなさらなる用途は、本明細書において予期されており、本出願の範囲内とみなされる。
【0011】
[0023]一般的に、本明細書に記載される金属空気電池の改善およびその金属空気電池は、全ての公知の金属空気電池化学に広く適用することができる。例えば、本明細書に記載される改善は、アルカリ金属空気電池、アルカリ土類金属空気電池、および第一列遷移金属空気電池に適用することができる。より具体的には、これらに限定されないが、本明細書に記載される改善は、ナトリウム空気電池、リチウム空気電池、鉄空気電池、カリウム空気電池、亜鉛空気電池、マグネシウム空気電池、カルシウム空気電池、アルミニウム空気電池、スズ空気電池、またはゲルマニウム空気電池に適用することができる。特定の実施態様において、改善は、特定には、アルカリ金属アノードを有する水性の金属空気電池に適用可能である。
【0012】
[0024]
固体電解質
[0025]本明細書に記載される特定の実施態様において、改善された固体電解質が開示される。固体電解質は、水および酸素に対して不浸透性のイオン伝導性層またはフィルムであって、これは、イオン性電荷担体の通過を可能にしながらアノードとカソードとを分離するものである。理解できるように、セパレーターへの何らかの損傷は、電池の不具合をもたらすと予想され、同時に、より厚いセパレーターは電気抵抗を増加させ、電池の性能を低下させることから、固体電解質は、長持ちすることと同時に薄いことの両方が必要である。本明細書で開示される改善された固体電解質は、伝導性基板に直接的に付着させることによって公知の固体電解質を改善し、それによって、公知の金属空気電池の自己支持型の固体電解質またはセパレーターと比較して、本質的に完全な、またはほぼ完全な金属-固体電解質界面の接触、および固体電解質に対する追加の機械的強度および耐久性が提供される。このような付着はまた、輸送する必要があるイオン性電荷担体の距離を最小化し、それによりイオンの抵抗を低下させることによって電池の効率を増加させることもできる。
図1Aは、伝導性基板110に付着させた改善された固体電解質120を示す。
【0013】
[0026]特定の実施態様において、伝導性基板は、金属空気電池のカソードまたはアノード上に形成されていてもよい。しかしながら、他の実施態様において、固体電解質は、代替として、これらに限定されないが、ステンレス鋼、銅、またはアルミニウムなどの異なる伝導性材料上に形成されていてもよい。このような実施態様において、このような伝導性材料は、金属空気電池の集電体であってもよく、これは、電池が放電状態で組み立てられることを意味し、これは、「アノードレス」設計として記載される。金属空気電池の組み立ての後、電池の充電により、固体電解質と伝導性基板との間の目的のイオンをアノード上に電気めっきして、電池を完成させることができる。このような実施態様は、固体電解質がアノードと優れたコンフォーマル接触を形成し、電気的な接触抵抗を減少させ、アルカリ金属を含む水性電池を組み立てることに関連するリスクを回避するために特に望ましい。
【0014】
[0027]金属空気電池の動作は、ナトリウム空気電池のアノードの充電および放電を例示する
図1Bに示される。
図1Bに示される通り、ナトリウムイオンは、充電の間、固体電解質120を介して伝導性基板110上の電着物に移動し、それによって金属アノード130が形成される。放電の間、電子の損失はナトリウムイオンの形成を引き起こし、ナトリウムイオンは固体電解質120を介して電解質溶液に移動する。理解できるように、他の金属空気電池の場合でも類似の酸化還元反応は起こる。例えば、リチウム空気電池の場合、リチウムおよび水酸化リチウムは、ナトリウムおよび水酸化ナトリウムと置き換えられる。
【0015】
[0028]本明細書に記載される固体電解質の薄さは、欠陥の形成がエネルギー的に好ましくないようにすることができ、それにより固体電解質により高い機械的強度とフレキシビリティーを付与し、一方で、伝導性基板への付着は、完全な、またはほぼ完全な固体-固体の界面を固体電解質に提供することができる。このような特性のために、固体電解質を極めて薄くすることができる。例えば、様々な実施態様において、固体電解質は、約100マイクロメートル以下、約50マイクロメートル以下、約10マイクロメートル以下、約3マイクロメートル以下、約1マイクロメートル以下、約500ナノメートル以下、約300ナノメートル以下の厚さを有していてもよく、またはさらには約100ナノメートル以下もの厚さを有していてもよい。加えて、この固体電解質は、伝導性基板に永続的に付着されていない従来の固体電解質に比べて、金属空気電池の物理的な動きによって損傷を受ける可能性がそれほど高くないため、機械的な損傷に対してより抵抗性であり得る。電池の効率を改善する特定の実施態様において、固体電解質のイオン抵抗は、約10Ω/cm2未満であってもよい。例えば、特定の実施態様において、イオン抵抗は、約0.1Ω/cm2~約10Ω/cm2、約0.25Ω/cm2~約5Ω/cm2、または約0.5Ω/cm2~約3Ω/cm2であってもよい。理解できるように、このようなイオン抵抗は非常に低く、本明細書に記載される電池の効率が改善される。比較のリチウム-イオン電池は、約20Ω/cm2~約25Ω/cm2のイオン抵抗を有し得る。
【0016】
[0029]特定の実施態様において、固体電解質は単層として形成されてもよい。他の実施態様において、固体電解質は複数の層から構築されてもよい。特定のこのような実施態様において、層は、同じであってもよいし、または異なる材料で形成されていてもよい。
【0017】
[0030]一般的に、固体電解質は、水と酸素を通さずにイオンをセパレーターに移動させることができるあらゆる好適な材料で形成されていてもよい。特定の実施態様において、このような材料はセラミック材料であってもよく、他の実施態様において、このような材料は、代替として、または加えて、高分子材料であってもよい。好適なセラミック材料の例としては、ナトリウムベータアルミナ、カリウムベータアルミナ、リチウムベータアルミナ、ナシコン(Nasicon)型、リシコン(Lisicon)型、ガーネット型、ペロブスカイト型、NaPONおよびLiPON型、Li3N型、Na3N型、アルジロダイト型、アンチペロブスカイト型セラミック、リン酸系セラミック(Li/Na/K/Rb/Cs/Fr)3PO4、およびホウ酸系セラミック(Li/Na/K/Rb/Cs/Fr)3BO3が挙げられる。
【0018】
[0031]理解できるように、ナシコン型およびリシコン型セラミックは、それぞれ、ナトリウム超イオン伝導体およびリチウム超イオン伝導体を指す。このような伝導体は、極めて高いイオン伝導率(例えば、室温で約10-3S/cm)を有しながらも、水および酸素に対して不浸透性のままであることで知られている。ナトリウム空気電池の場合、ナシコン型セラミックは、ナトリウムイオンに対して非常に高いイオン伝導率を有するために特に有用であり、一方でリチウム空気電池の場合、リシコン型セラミックがより有用であり得る。
【0019】
[0032]このようなクラス内の好適なセラミックは、広範囲に様々であり得る。例えば、好適なナシコン型組成物は、化学式AxMaM’2-a(XO4)3を有していてもよく、式中、Aは、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、H+、H3O+、NH4
+、Cu+、Cu2+、Ag+、Pb2+、Cd2+、Mn2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Al3+、Ln3+(Ln=希土類)、Ge4+、Zr4+、Hf4+のうちの1種またはそれより多くであるか、または非存在であり;MまたはM’は、電荷のバランスを好適にとるために、二価(Zn2+、Cd2+、Ni2+、Mn2+、Co2+)、三価(Fe3+、Sc3+、Ti3+、V3+、Cr3+、Al3+、In3+、Ga3+、Y3+、Lu3+)、四価(Ti4+、Zr4+、Hf4+、Sn4+、Si4+、Ge4+)および五価(V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、As5+)の原子価の遷移金属イオンのうちの1種またはそれより多くであり;Xは、S、P、Si、As、Ge、Seのうちの1種またはそれより多くであり;酸素は、Sで置換されていてもよい(すなわちXS4)。一般的に、ナシコン型セラミックは、菱面体晶系、単斜晶系、三斜晶系、斜方晶系、ラングバイナイト、ガーネット、sw型(斜方晶系タングステン酸スカンジウムSc2(WO4)3)、コランダム様および無定形結晶構造などの様々な結晶の幾何学的配置を有していてもよい。
【0020】
[0033]金属空気電池がナトリウム空気電池である特定の実施態様において、特に好適なナシコンは、Na1+xZr2P3-xSixO12(0≦x≦3)であり、特定には、xは約2~約2.2であり、その場合、最大のナトリウムイオン伝導率が示される。特定の実施態様において、前述のナシコンは、最大約0.2のZrを、Sr、Y、Zn、Mg、Ca、Ni、Co、LA、およびFeのうちの1つまたはそれより多くで置換されていてもよい。
【0021】
[0034]好適なリシコン型セラミックは、式Li2+2xZn1-xGeO4を有していてもよい。好適なリシコン型セラミックの具体的な例としては、式(1-x)Li2S-(x)P2S5(0≦x≦1)を有するもの;Li4-xGe1-xPxS4(0<x<1);Li2GeS3、Li4GeS4、Li2ZnGeS4、Li4-2xZnxGeS4(0≦x≦0.2)、Li5GaS4およびLi4+x+δ(Ge1-δ’-xGax)S4;(Li4-xSi1-xPxS4、Li4-2xZnxGeS4、Li4-xGe1-xPxS4)空孔ドープ、(Li4+xSi1-xAlxS4、Li4+xGe1-xGaxS4)格子間ドープ;Li10GeP2S12;Li10±1MP2X12(式中、Mは、Ge、Si、Sn、Al、Pのうちの1種またはそれより多くであり;Xは、O、S、およびSeのうちの1種またはそれより多くである);0.33[(1-y)B2S3-yP2S5]-0.67Li2S(0≦y≦0.3、0.9≦y≦1.0);Li7PS6;Li3PS4;およびLi4P2S6が挙げられる。
【0022】
[0035]好適なガーネット型セラミックは、化学式A7B3M2O12を有していてもよく、式中、Aは、Li、Be、Fe、Zn、Ga、Al、B、Br、Agのうちの1種またはそれより多くであり;Bは、Na、K、Rb、Ca、Sr、Ba、Y、Bi、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Lu、Acのうちの1種またはそれより多くであり;Mは、Mg、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Au、Hg、Ce、Eu、Th、Pa、Np、Pu、C、Si、Ge、Asとして、S、Cl、Se、In、Sn、Sb、Te、I、Tl、およびPbのうちの1種またはそれより多くである。例えば、好適なガーネット型セラミックは、Li7La3Zr2O12である。特定の実施態様において、ガーネット型セラミックは、アルミニウムでドープされていてもよい。
【0023】
[0036]好適なペロブスカイト型セラミックは、化学式ABC3を有していてもよく、式中、Aは、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、およびLn(希土類元素)のうちの1種またはそれより多くであり;Bは、遷移金属(例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、またはHg)であり;Cは、H、C、N、O、F、S、Cl、As、Se、Br、I、Rh、およびPdのうちの1種またはそれより多くである。
【0024】
[0037]好適なNaPON型セラミックおよびLiPON型セラミックは、無定形の結晶幾何学的配置を有するリチウムまたはナトリウムリンオキシ窒化物である。
[0038]好適なLi3N型セラミックは、式A3Nを有していてもよく、式中、Aはアルカリ金属であり、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、またはルビジウムである。好適なNa3N型セラミックは、化学式A3N-ABを有していてもよく、式中、Aはアルカリ金属であり、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、またはルビジウムであり、Bはハロゲンであり、例えばフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素である。
【0025】
[0039]好適なアルジロダイト型セラミックとしては、Li6PS5X(式中、Xは、Cl、Br、またはIであり、Liは、Na、K、Rb、Cs、Frであってもよい);Li6PO5X(式中、Xは、Cl、Br、またはIであり、Liはまた、Na、K、Rb、Cs、Frであってもよい);およびLi2xSiP2S7+x(10<x<12)(式中、Liはまた、Na、K、Rb、Cs、またはFrであってもよい)が挙げられる。
【0026】
[0040]好適なアンチペロブスカイトセラミックは、化学式ABX3を有していてもよく、式中、Aは、ハロゲンまたはハロゲンの混合物(F-、Cl-、Br-、I-、At-
、またはBH4)であり;Bは、酸素または硫黄であり、Xは、Li、Na、K、Rb、Cs、またはFrである。アンチペロブスカイトセラミックはまた、マグネシウム、カルシウム、およびバリウムなどの2+の原子価を有する金属でドープされていてもよい。他の好適なアンチペロブスカイトセラミックは、化学式X4BA2(式中、Xは、LiまたはNaであり、Bは、OまたはSであり、Aは、Cl、Br、またはIである);Na3NO3;Na3OCN;およびX3BA(式中、Xは、LiまたはNaであり、Aは、Cl-、Br-、I-、S2-、Se2-、Te2-、CN-、NO2
-、BH4
-、BF4
-、AlH4
-、BCl4
-、またはSO4
2-であり、Bは、F-、O2-、H-、S2-、またはOH-である)を有していてもよい。
【0027】
[0041]特定の実施態様において、固体電解質は、代替として、好適な塩と共にブレンドしたポリマー材料で形成されていてもよい。このような実施態様において、好適な塩としては、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(「LiTFSI」)/ナトリウム(I)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(「NaTFSI」)、Li/NaClO4、Li/NaNO3のうちの1種またはそれより多くなどのリチウムおよびナトリウム塩を挙げることができる。一般的に、水やアルカリの攻撃に対して抵抗性のあらゆるポリマーが好適である可能性があり、その例としては、これらに限定されないが、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリアクリロニトリル(「PAN」)、ポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)、ポリアクリレート(「PA」)、ポリメタクリル酸メチル(「PMMA」)、ポリシアノアクリレート(「PCA」)、脂肪族ポリカーボネート、例えばポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、およびポリ(ビニレンカーボネート)などが挙げられる。
【0028】
[0042]一般的に、本明細書に記載される固体電解質は、当業界で公知の通りに形成されてもよい。例えば、物理蒸着法、スパッタリング、化学蒸着、化学溶液堆積、プラズマ支援化学蒸着、電気化学析出、分子線エピタキシー、イオン注入、原子層堆積などを使用して、固体電解質を形成し、それを伝導性基板に望ましい厚さで堆積させることができる。理解できるように、このような堆積技術はまた、固体電解質を形成する従来の方法に比べてより均一な表面も作り出すことができる。
【0029】
固体電解質表面のための改善された薄膜保護コーティング
[0043]理解できるように、水性金属空気電池の電解質溶液は、水酸化物で形成される高度にアルカリ性の溶液であり、最大0.5wt%のヘキサノールを含む。ひっかき、ピンホール、またはひび割れによって固体電解質が損傷を受けているような万が一のケースにおいて、0.5wt%のヘキサノールは、水-Na金属の接触による水素放出反応を穏やかな泡立ち程度にまで遅くし、水素による火災の可能性をなくすであろう。固体電解質は、水酸化物によるアルカリの攻撃に抵抗性を有し得るが、金属空気電池の限定要素の1つは、作動中の高度に腐食性の溶液からの腐食に起因する固体電解質の破壊である。改善された電解質表面コーティングが本明細書に記載され、固体電解質と金属空気電池の両方のライフスパンを全体として改善する。改善された電解質表面は、固体電解質に付着させた薄膜保護コーティングであり、水酸化物の固体電解質表面への移動を防止および/または最小化しながらイオンの伝導を可能にする。
【0030】
[0044]特定の実施態様において、薄膜保護コーティングは、
図2Aに示される通り、リガンドを固体電解質の表面に付着させることによって形成されてもよい。具体的には、
図2Aは、複数のリガンド220がセパレーター210に付着した固体電解質210を例示する。
【0031】
[0045]好適なリガンドとしては、イオン種の移動を可能にしながら水酸化物をはじくことができるあらゆるリガンドを挙げることができる。例えば、好適なリガンドとしては、エーテル、ケトン、エステル、カルボン酸、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、炭酸、過酸化物、アルコール、SO3-、OSO3-、カルボキサミド、アミジン、アミン、ケチミン、アルジミン、イミド、アジド、アゾ、シアン酸、イソシアン酸、硝酸、ニトリル、イソニトリル、ニトロソオキシ、ニトロ、ニトロソ、オキシム、ピリジル、カルバミン酸、チオール、硫化物、二硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルフィノ、スルホ、チオシアン酸、イソチオシアン酸、カルボノチオイル、カルボチオS-酸(carbothioic S-acid)、カルボチオO-酸(carbothioic O-acid)、チオールエステル、チオノエステル、カルボジチオ酸、カルボジチオ、ホスフィノ、ホスホノ、およびリン酸リガンドを挙げることができる。
【0032】
[0046]理解できるように、様々な実施態様において、このようなリガンドはさらに、改変されていてもよい。例えば、特定のリガンドとしては、メタン基または-CR3基などの末端基を挙げることができ、この場合、R基は、メタン、エタン、プロパンなどの混合物であってもよい。大きい末端基は、リガンドを介した水酸化物イオンの移動の立体的な妨げになり得る。特定の実施態様において、末端基は、代替としてアニオン性基であってもよい。加えて、または代替として、このようなリガンドは、側鎖としてエポキシ、チオール、または他の基を有していてもよく、これらはリガンドを周囲のリガンドか、あるいは固体電解質の表面上の追加の位置に架橋できる、。
【0033】
[0047]特定の実施態様において、好適なリガンドは、リガンド末端の一方もしくは両方、および/またはリガンドの様々な側枝に、様々な脱離基および/またはシランを有していてもよい。このような脱離基および/またはシランは、リガンドの一方の末端、両方の末端への、または複数の分枝からの電解質の表面へのリガンドの付着を容易にすることができる。好適な脱離基としては、これらに限定されないが、トシル、トシレート、トリフレート、硫酸メチル、メシレート、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、およびベンジル/共鳴する基が挙げられる。リガンドの一方の末端が電解質の表面に付着され、他方の末端が遊離している実施態様において、末端基は、一般的に、RO
-、-NH
2、RN
-H、RCH
2
-,R
2N
-、HS
-、RSe
-、Cl
-、Br
-、I
-、F
-、CN
-、OH
-、RCO
2
-、硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、または水酸化物をはじく他のあらゆるアニオン種であってもよい。このような脱離基を有するリガンドは、リガンドの溶液を固体電解質に適用すること、次いで担体溶液を洗浄して取り除くかまたは蒸発させることによって、固体電解質に付着させてもよい。特定の実施態様において、固体電解質は、リガンドを適用する前に、結合を改善するために官能化されていてもよい。
図2Bは、単座リガンドの固体電解質への共有結合を示す。
【0034】
[0048]好適なリガンドは、どのような長さを有していてもよい。例えば、好適なリガンドは、炭素約1個~炭素約5000個の長さであってもよいし、またはそれよりさらに長くてもよい。一般的に、リガンドは長いほどイオン抵抗の増加という犠牲を払うが、保護層を介した水酸化物の移動に対してより優れた抵抗を提供することができる。理解できるように、架橋の程度およびリガンドに含有される官能基は、保護コーティングの必要となる厚さに影響する可能性がある。
【0035】
[0049]代替として、特定の実施態様において、改善された電解質表面は、
図2Cに示される通りカチオン交換膜の付着によって形成されてもよく、この場合、固体電解質210は、セパレーター210に付着されたカチオン交換膜230を有する。カチオン交換膜は、時にはプロトン交換膜と呼ばれ、水酸化物に対しては抵抗性でありながらイオンに対しては高度に伝導性であるため、燃料電池において広く使用される。カチオン交換膜は、主鎖と、水酸化物をはじきカチオンを引き付けるために主鎖に付着された負電荷を有する基および/または高度に極性化された基とを含む。
【0036】
[0050]好適なカチオン交換主鎖としては、炭化水素主鎖、部分的にフッ素化された主鎖、ポリスチレン主鎖、ポリ(アリーレンエーテルスルホン)主鎖、ポリ(アリーレンエーテルケトン)主鎖、酸ドープされたポリベンゾイミダゾール主鎖、ポリ(塩化ビニル)主鎖、および他のあらゆるプラスチックで形成される主鎖が挙げられる。好適な負電荷を有する基または極性化された基としては、ナフィオン、フレミオン、およびアシプレックスを挙げることができる。特定の実施態様において、負電荷を有する基または高度に極性化された基は、直接、またはベンゼン要素などの好適な結合要素を介してのいずれかで主鎖に付着した、HSO3、アルキル、ハロゲンアルコキシ、CF=CF2、CN、NO2および/またはOH基であってもよい。一般的に、カチオン交換膜は、当業界で公知の通りに固体電解質に付着させることができる。例えば、固体電解質の表面を官能化してもよいし、次いでカチオン交換膜を付着させてもよい。
【0037】
二重の酸素還元および酸素発生電極(Dual Oxygen Reduction and Evolution Electrodes)
[0051]金属空気電池のライフタイムおよび効率は正極またはカソードのライフタイムおよび効率に一部依存しており、空気からの溶存酸素ガスを放電中に還元し(酸素還元反応(「ORR」))、カソード液(catholyte)からの水酸化物を酸化して酸素ガスを生成する(酸素発生反応(「OER」)必要がある。しかしながら、ORRとOERとのサイクリングは、カソード触媒のライフスパンに有害な可能性があり、OERの高度に酸化性の電位へのサイクリングによって、酸素還元電極が特に損傷を受ける。
【0038】
[0052]ORRおよびOER反応におけるその効率を改善するために、カソードが、それぞれ触媒を含む酸素還元電極と酸素発生電極とに分離された改善された金属空気カソード設計が本明細書に記載される。これは集合的に二重の酸素還元および酸素発生電極と呼ばれ、改善された設計は、金属空気電池の効率とライフタイムの両方を改善させることができる。具体的には、分離した酸素還元電極と酸素発生電極とを有することによって、サイクリングによる損傷を電極に与えず、さらに、電極表面上に具体的な触媒を含むことによる具体的な反応にそれぞれ合わせることができることから、それぞれのライフスパンを改善できることが発見されている。理解できるように、電極の表面積は2乗で増加するのと比較して電池の体積は3乗で増加するため、酸素還元電極と酸素発生電極とを分離するのに必要な余分な重量および表面積もより大きい容量の電池を作製することによって部分的に軽減できる。
【0039】
[0053]酸素発生電極および酸素還元電極のための好適な触媒としては、ペロブスカイト、スピネル;特定の層状の材料;層状の二重の水酸化物(layered double hydroxides);伝導性炭素;金属、およびその酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭化物、窒化物、リン酸塩、硫化物、およびリン化物;酸化還元メディエーター;ならびに分子無機構造体が挙げられる。
【0040】
[0054]好適なペロブスカイト型触媒は、化学式ABC3を有していてもよく、式中、Aは、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、およびLn(希土類元素)のうちの1種またはそれより多くであり;Bは、遷移金属(例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CO、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、またはHg)であり;Cは、H、C、N、O、F、S、Cl、As、Se、Br、I、Rh、およびPdのうちの1種またはそれより多くである。
【0041】
[0055]好適なスピネル型触媒は、化学式AB2O4を有していてもよく、式中、Aは、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hgのうちの1種またはそれより多くであり;Bは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hgのうちの1種またはそれより多くである。
【0042】
[0056]好適な層状の材料は、化学式M1-xM’O2を有していてもよく、式中、Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Frのうちの1種またはそれより多くであり;M’は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、およびHgのうちの1種またはそれより多くであり;Xは、0または1である。
【0043】
[0057]好適な層状の二重の水酸化物は、式MOOHを有していてもよく、式中、Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、およびHgのうちの1種またはそれより多くである。層状の二重の水酸化物は、任意選択で、中間層のアニオンを含んでいてもよく、例えばCO3
2-、C2O4
2-、SO4
2-、およびNOを含んでいてもよい。
【0044】
[0058]好適な伝導性炭素ベースの触媒としては、純粋な炭素ベースの触媒(例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラッシーカーボンなど)、加えて、Fe、Co、Mn、O、N、F、S、PおよびBのうちの1種またはそれより多くでドープした炭素が挙げられる。
【0045】
[0059]好適な金属酸化物、金属水酸化物、金属オキシ水酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属リン酸塩、金属硫化物、およびリン化物は、様々であってもよい。例えば、好適な金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Bi、Pb、Po、Tl、Sb、Te、Sn、In、As、Se,Ge、Ga、Al、およびSiのうちの1種またはそれより多くを挙げることができる。好適な金属炭化物および金属窒化物としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、およびHgの金属炭化物および金属窒化物が挙げられる。好適な金属リン酸塩としては、式A1-xBPO4を有するものが挙げられ、式中、Aは、Li、Na、K、Rb、Cs、およびFrのうちの1種またはそれより多くであり;Bは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、およびHgのうちの1種またはそれより多くであり;xは、0~1である。好適な金属水酸化物、金属硫化物、および金属リン化物としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、およびHgのうちの1種またはそれより多くから形成されるものが挙げられる。
【0046】
[0060]好適な酸化還元メディエーターとしては、ヨウ素および臭素メディエーター、例えばI2、I-、I3
-、IO3、およびBr2を挙げることができる。
[0061]金属無機構造体は、様々な無機リガンドにコードされている金属イオンまたはクラスターを有する配位ポリマーの一種である。いずれの好適な金属無機構造体も、本明細書に記載される酸素発生電極または酸素還元電極のための触媒として使用することができる。
【0047】
[0062]酸素還元電極にとって特に好適な触媒としては、酸素ガスの還元において触媒的に効率的であることと電気伝導性であることの両方のために、金属窒化物が挙げられる。例えば、特定の実施態様において、鉄窒化物は、酸素還元電極のための触媒として使用することができる。電気伝導性は、別個の伝導性添加剤を必要とすることなく、酸素還元触媒が金属空気電池のための集電体として二重に機能することを可能にする。同様に、酸素発生電極にとって特に好適な触媒としては、ニッケル、鉄、マンガン、および銅などの金属の、金属酸化物、金属水酸化物、金属オキシ水酸化物が挙げられる。例えば、酸素発生触媒のための好適な触媒は、ニッケルおよび鉄をおよそ3:1の比率で有するニッケル鉄オキシ水酸化物(例えば、Ni0.75Fe0.25OOH)であってもよい。
【0048】
[0063]特定の実施態様において、酸素発生電極および酸素還元電極の安定性は、ニッケルイオン、鉄イオン、マンガンイオン、銅イオン、アノードイオン、ハロゲンイオン、固体電解質の成分および電解質中のイオンのうちの1種またはそれより多くを溶解させることによってさらに強化することができる。電解質に追加のイオンを溶解させることによって、成分が溶液と平衡状態になり、電極の元素を溶液中に溶解させる駆動力がなくなると予想される。
【0049】
[0064]活性ガス拡散電極
[0065]酸素発生電極および酸素還元電極をさらに改善するために、電極の製造への改善をさらに開発した。
【0050】
[0066]一実施態様によれば、安定な、低コストの活性ガス拡散電極は、発泡剤(blowing agent)を、カソード溶液に対して安定な電気伝導性触媒およびポリマーと組み合わせて使用することによって形成することができる。発泡剤の使用は、製造中、発泡剤からのガス放出により電極内の孔を迅速に拡張させることができ、さらなる3つの相(気体-液体-固体)の界面からより効率的な酸素還元および酸素発生を可能にすることができる。
【0051】
[0067]一般的に、このような電極は、成分のそれぞれを一緒に混合し、薄膜を形成し、次いで発泡剤を活性化して混合物の発泡を生じさせ、それによって高い表面積を有する電極を形成することによって形成することができる。このような特定の実施態様において、成分をそれぞれ粉末として供給し、一緒に混合し、融解させ、次いで押し出したり、および/または薄膜に圧延したりすることができる。
【0052】
[0068]発泡剤の添加以外は、改善された電極の成分は、一般的に、前述された成分と同じであってもよい。例えば、電気伝導性触媒は、本明細書で前述された二重の酸素還元および酸素発生電極における触媒と同じであってもよい。例えば、触媒は、金属窒化物、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属オキシ水酸化物、伝導性炭素などであってもよい。ポリマーは、固体電解質との使用に適していると前述されたポリマーなどの電解質と共に化学的に安定なあらゆるポリマーであってもよい。
【0053】
[0069]好適な発泡剤は、一般的に、あらゆる公知の発泡剤を包含する。特に好適な発泡剤は、酸と接触すると二酸化炭素ガスを生産する酸で活性化される発泡剤であってもよく、例えば重炭酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムであってもよい。しかしながら、理解できるように、当業界で公知のように、他の発泡剤も使用することができる。代替として、溶融したプラスチック前駆体に大量のガスを溶解させ、次いで薄膜を真空に晒してバブリングを引き起こすことを選択する場合、発泡剤は省略してもよい。
【0054】
[0070]他の実施態様において、高い表面積を有する電極は、代替として、本来的に高い表面積を有する表面上に電気伝導性触媒を堆積させることによっても形成することができる。このような実施態様において、このような表面の例としては、メッシュ、スクリーン、および微細加工した表面を挙げることができる。電気伝導性触媒は、化学溶液堆積、物理蒸着法、スパッタリング、化学蒸着、プラズマ支援化学蒸着、電気化学析出、無電解メッキ、分子線エピタキシー、イオン注入、原子層堆積などを使用して表面に適用することができる。
【0055】
改善された金属空気電池セル構造
[0071]改善された金属空気電池は、本明細書に記載される改善のうちの1つまたはそれより多くを取り入れることができる。特定の実施態様において、特に好適な金属空気電池は、金属アノード、少なくとも1つの空気カソード、固体電解質、および水性電解質層(時にはカソード液層(catholyte layer)と呼ばれる)を含む水性金属空気電池である。理解できるように、この設計の多くのバリエーションが可能である。
【0056】
[0072]例えば、特定の実施態様において、金属アノードは、金属空気電池の充電中に集電体上にめっきすることによって、その場で形成することができる。このようなアノードレス電池は、特定には、アノードが水に曝露されると激しく反応するリチウムまたはナトリウムなどのアルカリ金属である場合、金属空気電池のより簡単でより安全な製造および輸送を可能にすることができる。このような実施態様において、金属空気電池セルは、固体電解質を集電体に付着させて組み立てることができる。次いで、電池の充電により金属アノードを集電体上に電気めっきしてもよいし、またはそれ以外の方法で堆積させてもよい。例えば、ナトリウム空気電池は、電解質中の水酸化ナトリウムから解離したナトリウムイオンを金属ナトリウムに還元することによって、ナトリウム金属を集電体上にめっきすることができ、それによってアノードが形成される。
【0057】
[0073]
図3Aに、本明細書に記載される改善された金属空気電池の例示的な側面図を示す。
図3Aに示される通り、電池300は、集電体310、集電体310を取り囲むアノード320、アノード320に結合した固体電解質340、固体電解質340と流体接触しておりそれを取り囲む水性電解質360、水性電解質360中の酸素発生電極370、および電池300の外壁として作用する酸素還元電極380を含んでいてもよい。電池300はさらに、酸素発生電極370と酸素還元電極380との間で選択するためのスイッチ390を含んでおり、充電モードから放電モードへの、およびその逆の電池300の切り換えを容易にすることができる。スイッチ390は機械的なスイッチとして示されているが、スイッチ390は、特定の実施態様において、トランジスタなどの使用を介して自動的に作動可能な電子スイッチであってもよい。特定の実施態様において、スイッチはまた、必要に応じて電池を充電または放電に最適な温度にするために、ヒーター要素を自動的に制御することもできる。電池300はさらに、集電体310を取り囲むポリマー縁330、および保護カバー350を含むものとして示される。ポリマー縁330は、固体電解質340を位置決めし、それを安定化させることを助けることができる。ポリマー縁はまた、ナトリウム金属が電気めっきされ集電体310から固体電解質340を持ち上げる際に、端部での応力も緩和することができる。任意選択の保護カバー350は、水性電解質360の移動が、電池300の末端におけるアノード320および集電体310に到達するのを防ぐことを助けることができる。任意選択の保護コーティング350はまた、水および水酸化物イオンの移動がアノード320および集電体310に到達するのを防ぐこともできる。酸素発生電極370および酸素還元電極380が互いに電気接点を形成しないようにするため、追加のセパレーター395が含まれる。追加のセパレーター395は、好適なポリマー材料、例えばポリプロピレンまたはポリエチレンで形成されていてもよい。
【0058】
[0074]
図3B~3Fに、例示的な金属空気電池のさらなるバリエーションを更に示す。
図3Bは、酸素還元電極と酸素発生電極との間ではなく負極の下に貯蔵された、より大量の水性電解質360を有する電池を示す。このような設計は、酸素還元電極380から負極への距離を減少させて、カソード液における抵抗の損失を最小化することができ、同時に放電生成物を溶解させ高エネルギー密度を維持するのに十分な量の溶媒を存在させることをそれでもなお可能にする。
【0059】
[0075]
図3Cは、水性電解質360の共通のプールを使用する、並列した複数の金属空気電池の断面図を示す。
図3Cにおいて、複数のセルが、同じ酸素還元電極380および酸素発生電極370を共有する。理解できるように、
図3Cの設計は、外部ケースが個々のセルと電解質溶液とを保持している鉛酸電池(示されていない)に類似している。このような設計は、機械的な複雑さや重量が低減されることでモジュールまたはパックの構築を容易にし、より高いエネルギー密度を提供することができる。
【0060】
[0076]
図3Dは、集電体を取り囲む固体電解質320およびポリマー縁330および金属コーティング355を含む、放電状態における負極区画の断面図(金属アノードなし)を示す。
【0061】
[0077]
図3Eおよび3Fは、金属空気電池の負極の上面図を示し、集電体310および固体電解質330の配置を示す。集電体タブ310のサイズは、
図3Eと3Fとで異なっている。
【0062】
[0078]
図4は、別の金属空気電池の負極400のコアの断面図を、見やすさのために部品を誇張されたサイズで例示して示す。電池コア400は、集電体410、集電体410上にめっきされたアノード(見えない)、ポリマー縁420、固体電解質430、および固体電解質430の端部を取り囲む追加のポリマー縁440を含む。ポリマー縁420は、パリレンなどの、水性水酸化物溶液およびアルカリ金属に対して非反応性のあらゆる好適なポリマーで形成されていてもよい。特定の実施態様において、ポリマー縁420は、
図4に示される通り、ノッチ450があってもよい。ノッチ450(細部を誇張して示される)は、固体電解質430に付着させ保持するための追加の表面積を提供することができる。特定の実施態様において、金属コーティング(示されていない)がさらにポリマー縁420を覆っていてもよい。ポリマー縁がノッチを有する場合、金属コーティングも同様に、このようなノッチを含んでいてもよい。
【0063】
[0079]
図5は、別の実施態様による水性金属空気電池500の側面断面図を示す。
図5の水性金属空気電池500は、
図3Aの金属空気電池に類似しているが、対称的な配置ではなく層状の配置で形成される。水性金属空気電池500は、集電体510、集電体510上のアノード520、アノード520に結合した固体電解質540、固体電解質540上で流体接触している水性電解質560、水性電解質540中の酸素発生電極570、および電池500の外壁として作用する酸素還元電極580を含む。電池500はさらに、酸素発生電極570と酸素還元電極580との間で選択するためのスイッチ590を含む。電池500はさらに、集電体510を取り囲むポリマー縁530、および保護カバー550を含むものとして示される。
【0064】
[0080]理解できるように、様々な実施態様において、ポリマー縁および保護カバーなどの特定の要素は、任意選択であり得る。
[0081]一般的に、本明細書に記載される金属空気電池は、本明細書に記載される改善のうちの1つまたはそれより多くを含むんでいてもよい。例えば、固体電解質およびその表面への改善は、非水性金属空気電池において使用することができる。代替として、水性金属空気電池は、本明細書に記載される改善された固体電解質および固体電解質表面を含み得るが、酸素発生反応と酸素還元反応の両方を実行する従来の空気カソードを使用するか、または発泡剤なしで形成されたカソードを使用し得る。
【実施例】
【0065】
[0082]固体電解質
[0083]ナシコン固体電解質をステンレス鋼上に形成して、固体電解質の性能を評価した。固体電解質上にスパッタリングされたAu電極は、0.079cm2のサイズを有すると測定され、固体電解質は、それぞれおよそ300nmの厚さの多層から構築された。
【0066】
[0084]電気化学インピーダンス分光法(「EIS」)を、
図6Dに示される通りに電極を設置した固体電解質に実行した。
図6A、6E、および6Fは、並列の抵抗器およびキャパシタとしてモデル化された、固体電解質の半円形状になったEISの結果を示し、これは、ピンホールがないフィルムを示す。高インピーダンスのx切片の後に垂直の、または45°の角度のテールがないことは、電子がフィルムを通過できるほどフィルムが薄いことを示し、これは、固体電解質の層をより多くより厚く堆積させることによって抑制され得る。これはまた、イオン領域の比抵抗が信じられないほど小さく、切片がゼロに近いことも示唆する。
図6Bは、その電子抵抗を測定するための、0.1Vの定電位ステップからの固体電解質の電流対時間のプロファイルを示し、
図6Cで示されるように、
図6Aの高インピーダンスのx切片からの総抵抗から
図6Bの電子抵抗を差し引いたものは、面積固有イオン抵抗(area specific ionic resistance)を示す。
図6Cで見られるように、本明細書に記載される固体電解質は、同等の18650リチウムイオン電池より実質的に少ないイオン抵抗を示す。
図6Gは、ステンレス鋼(ss)箔対照、ナシコン固体電解質でコーティングされたss、および19MのNaOH中のエポキシまたはアクリル酸コーティングのいずれかで覆われたss-ナシコンコーティングされた箔の、開路電位対Pt擬似参照電極を示す。これは、固体電解質上に化学的に不活性なフィルムを追加することが、ある程度の腐食防止特性を提供できることを実証する。
【0067】
[0085]
図6H~6Kに、固体電解質の電子顕微鏡観察を示す。
図6Hで見られるように、セパレーターの厚さは300nmであり、
図6Iおよび6Jに示される通り、固形で極めて均一な表面を有し、欠点のサイズは約2マイクロメートル以下であった。
図6Kに、原子の拡がりを示す。
【0068】
[0086]本明細書で開示される寸法および値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるとして理解されないものとする。その代わりに、別段の規定がない限り、このような各寸法は、列挙された値とその値の周辺の機能的に同等な範囲の両方を意味することが意図される。
【0069】
[0087]本明細書にわたり示されるいずれの最大の数値限定も、それより低い数値限定が本明細書に明示的に記載されたかのように、そのような全てのより低い数値限定を含むことが理解されるものとする。本明細書にわたり示されるいずれの最小の数値限定も、このようなより高い数値限定が本明細書に明示的に記載されたかのように、あらゆるより高い数値限定を含むものとする。本明細書にわたり示されるいずれの数値範囲も、このようなより狭い数値範囲が全て本明細書に明示的に記載されたかのように、このようなより広い数値範囲内に含まれるあらゆるより狭い数値範囲を含むものとする。
【0070】
[0088]本明細書において引用されたいずれの文書も、全ての相互参照されたあるいは関連する特許または出願を含み、明示的に排除されない限り、または別段の限定がない限り、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。いずれの文書の引用も、本明細書において開示されたまたは特許請求されたいずれかの発明に関する先行技術であることの承認ではなく、またはそれらが、単独で、または他のいずれか1つまたは複数の参考文献とのあらゆる組合せで、このようないずれかの発明を教示する、示唆する、または開示することの承認ではない。さらに、この文書における用語のいずれかの意味または定義が、参照により組み入れられる文書における同じ用語のいずれかの意味または定義と矛盾するような場合、この文書においてその用語に割り当てられた意味または定義が優先されるものとする。
【0071】
[0089]実施態様および実施例の前述の記載は、説明の目的で提示されたものである。網羅的であること、または記載された形態に限定することを意図したものではない。上記の教示の観点から、多数の改変が考えられる。これらの改変の一部はすでに論じられており、他のものは、当業者であれば理解しているであろう。実施態様は、様々な実施態様の例示のために選択されて記載された。当然ながら、範囲は、本明細書に記載の実施例または実施態様に限定されず、当業者により様々な用途および等価な物品で採用することができる。むしろ、範囲は、ここに添付された特許請求の範囲によって定義されることが本明細書において意図されている。
【0072】
[0090]様々な実施態様の特定の形態、特色、構造、または特徴は、全体を交換してもよいし、または部分的に交換してもよいことが理解されるものとする。特定の実施態様への言及は、特定の実施態様に関連して記載される特定の形態、特色、構造、または特徴が、少なくとも1つの実施態様に含まれてもよいし、特定の他の実施態様と交換されてもよいことを意味する。明細書の様々な場所における語句「特定の実施態様において」の出現は、必ずしも全て同じ実施態様を指すわけではないし、特定の実施態様が必ずしも他の特定の実施態様と相互排他的であるわけでもない。本明細書に記載の方法のステップは、必ずしも記載された順番で実行される必要はないことが理解されるものとし、このような方法のステップの順番は、単に例示的であることが理解されるものとする。同様に、このような方法に追加のステップが含まれていてもよく、特定の実施態様と一致する方法において、特定のステップを省略してもよいし、または組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
110 伝導性基板
120 固体電解質
130 金属アノード
210 固体電解質、セパレーター
220 リガンド
230 カチオン交換膜
300 電池
310 集電体
320 アノード
330 ポリマー縁
340 固体電解質
350 保護カバー、保護コーティング
355 金属コーティング
360 水性電解質
370 酸素発生電極
380 酸素還元電極
390 スイッチ
395 追加のセパレーター
400 電池コア
410 集電体
420 ポリマー縁
430 固体電解質
440 ポリマー縁
450 ノッチ
500 水性金属空気電池
510 集電体
520 アノード
530 ポリマー縁
540 固体電解質
550 保護カバー
560 水性電解質
570 酸素発生電極
580 酸素還元電極
590 スイッチ
【国際調査報告】