(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】パーキンソン病のバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
A61K 38/19 20060101AFI20240905BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240905BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240905BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/275 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/13 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/46 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/4468 20060101ALI20240905BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K38/19
A61P25/16
A61P25/28
A61P43/00 111
A61K31/198
A61K31/137
A61K31/275
A61K31/13
A61K31/519
A61K31/46
A61K31/4468 ZNA
G01N33/53 M
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514401
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 US2022075837
(87)【国際公開番号】W WO2023034915
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507282004
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ネブラスカ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲンデルマン、ハワード
(72)【発明者】
【氏名】モーズリー、アール.、リー
(72)【発明者】
【氏名】モスタファ、マイ
(72)【発明者】
【氏名】オルソン、キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】マチー、ジャティンクマル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA23
4C084CA18
4C084DA19
4C084MA65
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4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA021
4C084ZA022
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4C086AA01
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4C086BC21
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4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA15
4C086ZC02
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA09
4C206FA29
4C206FA56
4C206HA13
4C206KA01
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4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA15
4C206ZC02
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子によるパーキンソン病の治療、並びに診断方法、予後診断方法、及び患者選択方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病に対する薬剤による処置のために患者を選択する方法であって、
前記患者からの生体試料中の1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量を決定する工程を含み、
処置前及び/又は無病状態と比較して、前記バイオマーカーの発現及び/又は活性の変化が示される場合、前記患者は前記処置に適しており、
前記薬剤は、有効量の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、方法。
【請求項2】
前記バイオマーカーが、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、IKBGG、ATG3、ATG7、ロイシンリッチリピートセリン/スレオニンプロテインキナーゼ2(LRRK2)、GABARAPL2、RCOR1、GGA3、ALDH1A1、RFC1、BTF3L4、WBP2、EEA1、NCBP2、PEA15、MCM5、CLTA、VPS41、SRSF4、H2AFX、CD9、RFLNB、GLB1、KRT10、ACAA1、PCK2、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2から選択され、
任意に、前記バイオマーカーが、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、LRRK2、及びGABARAPL2から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAのうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御され、
任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、及びLRRK2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAのうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に下方制御され、
任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、及びLRRK2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に下方制御される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御され、
任意に、ATG7及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ATG3、ATG7及びGABARAPL2のすべてが、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御され、
任意に、ATG7及びGABARAPL2の両方が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に上方制御され、
任意に、ATG7及びGABARAPL2が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に上方制御される、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
(i)HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAのうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御され、
任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、及びLRRK2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御され、かつ
(ii)ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御され、
任意に、ATG7及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオマーカーが、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、サーチュインシグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路から選択される1又は複数の経路に関連する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路に関連する前記バイオマーカーが、GM-CSFによる処置中又は処置後に、下方制御される、又は阻害される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路に関連する前記バイオマーカーが、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に、下方制御される、又は阻害される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
患者のパーキンソン病を治療する方法であって、
(a)パーキンソン病の症状を有する患者を特定する工程と、
(b)前記患者からの生体試料中の1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量を決定する工程と、
(c)治療前及び/又は無病状態と比較して、1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性の変化を示す患者に、有効量のGM-CSF剤を投与する工程と、
を含む、方法。
【請求項13】
前記バイオマーカーが、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、IKBGG、ATG3、ATG7、LRRK2、RCOR1、GGA3、ALDH1A1、RFC1、BTF3L4、WBP2、EEA1、NCBP2、PEA15、MCM5、CLTA、VPS41、SRSF4、H2AFX、CD9、RFLNB、GLB1、KRT10、ACAA1、PCK2、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2から選択され、
任意に、前記バイオマーカーが、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、LRRK2、及びGABARAPL2から選択される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAのうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御され、
任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、LRRK2、及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御される、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAのうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に下方制御され、
任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、及びLRRK2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に下方制御される、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御され、
任意に、ATG7及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される、
請求項12に記載の方法。
【請求項17】
ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のすべてが、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御され、
任意に、ATG7及びGABARAPL2の両方が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ATG3、ATG7、及びGABARAPL2が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に上方制御され、
任意に、ATG7及びGABARAPL2が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に上方制御される、
請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
(i)HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAのうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御され、
任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、及びLRRK2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御され、かつ
(ii)ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御され、
任意に、ATG7及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される、
請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記バイオマーカーが、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、サーチュインシグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路から選択される1又は複数の経路に関連する、請求項12~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路に関連する前記バイオマーカーが、GM-CSFによる処置中又は処置後に、下方制御される、又は阻害される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路に関連する前記バイオマーカーが、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に、下方制御される、又は阻害される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(a)神経学的症状のために神経学的薬剤による治療を受けている又は受けた患者であり、前記神経学的薬剤による治療に対して不成功、不耐症、耐性、又は難治性を示している患者を特定する工程と、
(b)HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数、任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数、の存在、非存在、又は量を決定する工程と、
(c)
(i)治療前及び/又は無病状態と比較して、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及び/又はSDHAのうちの1又は複数、任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、及びLRRK2のうちの1又は複数、の発現及び/又は活性の減少を示す、又は低い前記発現及び/又は活性を示す;及び/又は
(ii)治療前及び/又は無病状態と比較して、ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2のうちの1又は複数、任意に、ATG7及び/又はGABARAPL2、の発現及び/又は活性の増加を示す、又は高い前記発現及び/又は活性を示す
患者に対して、有効量のGM-CSF剤を投与する工程と、を含む、
患者のパーキンソン病を治療する方法。
【請求項24】
(a)神経学的症状のために神経学的薬剤による治療を受けている又は受けた患者であり、前記神経学的薬剤による治療に対して不成功、不耐症、耐性、又は難治性を示している患者を特定する工程と、
(b)神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、及び酸化的リン酸化経路を含む1又は複数の経路からのバイオマーカーの発現及び/又は活性の減少、及び/又はサーチュインシグナル伝達経路からのバイオマーカーの発現及び/又は活性の増加を決定する工程と、
(c)治療前及び/又は無病状態と比較して、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、及び酸化的リン酸化経路の発現及び/又は活性の減少を示す、又は低い前記発現及び/又は活性を示す患者に、有効量のGM-CSF剤を投与する工程と、
を含む、患者のパーキンソン病を治療する方法。
【請求項25】
GM-CSF剤による処置後の患者におけるパーキンソン病の症状の退行、進行、消失、又は再発をモニタリングする方法であって、
(a)前記患者からの生体試料における第1の時点での1又は複数のバイオマーカーのベースライン発現及び/又は活性レベルを決定する工程と、
(b)生体試料における第2の時点及びその後の時点での1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性レベルを決定する工程と、
(c)1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性レベルが前記第1の時点と前記第2の時点との間で変化するかどうかを決定する工程と、を含み、
前記1又は複数のバイオマーカーは、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2から選択され、任意に、前記1又は複数のバイオマーカーは、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、ATG7、及びGABARAPL2から選択される、方法。
【請求項26】
パーキンソン病を治療するために有効量の薬剤又は治療薬を投与することをさらに含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記患者が、酸化ストレス、神経突起完全性の喪失、アポトーシス、ニューロン喪失、又は/及び炎症反応、認知障害、認知機能低下、行動及び性格の変化、震え、動作緩慢、固縮、姿勢とバランスの障害、自動運動の喪失、協調運動の低下、言語の変化、羞明、目の筋肉の制御困難、衝動性眼球運動の遅延、嚥下障害、眼瞼けいれん、起立性低血圧による失神又は立ちくらみ、めまい、膀胱制御の問題、有形性(well-formed)幻視及び妄想、記憶力、集中力、及び判断力の変化、記憶喪失、うつ病、過敏症、不安、急速眼球運動(REM)睡眠障害、てんかん発作、感覚異常、痺れ又はうずき、けいれん、咀嚼又は飲み込み困難、四肢の筋肉のけいれん及び脱力、及び/又は足や手の穿痛感(prickling)又はうずき(tingling)のうちの1又は複数を有することを特徴とする、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量が、タンパク質及び/又は核酸の検出により決定される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量が、ELISA、Luminexマルチプレックスアッセイ、免疫組織化学的染色、ウェスタンブロッティング、インセルウェスタン、免疫蛍光染色、又は蛍光活性化セルソーティング(FACS)のうちの1又は複数により決定される、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量が、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)、逆転写酵素PCR分析、定量的リアルタイムPCR、一本鎖構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション、アレイ分析、及び制限酵素断片長多型分析のうちの1又は複数により決定される、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量が、単一細胞RNAシーケンシング法及び/又は次世代シーケンシング(NGS)法により決定される、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量が、リボ核酸(RNA)シーケンシングにより決定され、任意に、単一細胞RNAシーケンシングにより決定される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記生体試料が、血液、皮膚試料若しくは組織試料、血漿、血清、膿、尿、汗、涙、粘液、痰、唾液、脳脊髄液(CSF)、及び/又は他の体液である、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記生体試料が単球である、又は単球を含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記生体試料が単球集団である、又は単球集団を含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
患者におけるパーキンソン病の進行及び/又は発症を予防、治療、及び/又は緩和する、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
疾患修飾反応を誘発する、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
一時的又は持続的に認知機能の低下を遅らせる、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
神経変性疾患の症状の改善をもたらす、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
神経変性疾患又は神経変性障害の発症及び/又は進行を遅らせる、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
中枢神経系(CNS)における慢性炎症を回復に向かわせる又は予防する、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
内因性又は外因性のCNS免疫細胞の機能不全を減少させ、又は緩和する、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
CNSアストロサイト及び単核貪食細胞の活性化を減少させ、又は緩和する、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記単核貪食細胞が血管周囲マクロファージ及び/又はミクログリア細胞を含む、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
アストログリオパチーを減少させる、緩和する、又は回復に向かわせる、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
CNSにおけるグルタミン-グルタミン酸バランスを、調節、又は維持、又はサポートする、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
慢性的なミクログリア細胞の活性化を減少させる、緩和する、又は逆転させる、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
軸索損傷を軽減又は回復させる、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
1又は複数の炎症性サイトカイン及び/又はタンパク質の過剰な産生及び/又はシグナル伝達を減少させる、又は防止する、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
タンパク質プラークの形成を減少させる、又は防止する、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
タウオパチーを減少させる、又はタウオパチーを防止する、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記GM-CSFが、配列番号1のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、若しくは少なくとも約93%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%の同一性のバリアントを有する、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記GM-CSFが、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4のうちの1つのアミノ酸配列を有するか、又は配列番号2、配列番号3、及び配列番号4のうちの1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、若しくは少なくとも約93%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%の同一性のバリアントを有する、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記GM-CSFが、モルグラモスチム、サルグラモスチム、及びレグラモスチムのうちの1つである、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項55】
前記GM-CSFがサルグラモスチムである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記GM-CSFが皮下投与により投与される、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
レボドパ、カルビドパ(LODOSYN)等のドパミン前駆体;セレギリン(ZELAPAR)等のドパミン拮抗薬;セレギリン(ZELAPAR)等のMAOB阻害剤;エンタカポン(COMTAN)等のカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤;ベンズトロピン(COGENTIN)等の抗コリン薬;アマンタジン;イストラデフィリン(NOURIANZ)等のアデノシン受容体拮抗薬(A2A受容体拮抗薬);及び/又はピマバンセリン(NUPLAZID)から選択される1又は複数の追加の治療薬を投与することをさらに含む、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
(a)パーキンソン病を有し、無病状態と比べて1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性が変化している患者を選択する工程と、
(b)前記患者に有効量のGM-CSFを含む組成物を投与する工程と、を含み、
前記1又は複数のバイオマーカーは、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2から選択され、
任意に、前記1又は複数のバイオマーカーは、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、ATG7、及びGABARAPL2から選択される、
パーキンソン病を治療する方法。
【請求項59】
変化した前記1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性が、GM-CSFの投与の中止を指示するものである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記バイオマーカーのいずれかのレベルが、前記患者からの生体試料中でアッセイされる、請求項58又は59に記載の方法。
【請求項61】
前記生体試料が、血液、組織試料、血漿、血清、膿、尿、汗、涙、粘液、痰、唾液、脳脊髄液(CSF)、及び/又は他の体液を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
パーキンソン病の進行及び/又は発症を予防、治療、及び/又は緩和する、請求項58~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記患者のパーキンソン病の症状を改善する、請求項58~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
治療前と比較して前記患者におけるパーキンソン病の後遺症を減少させる、請求項58~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記GM-CSFが、配列番号1のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、若しくは少なくとも約93%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%の同一性のバリアントを有する、請求項58~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記GM-CSFが、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4のうちの1つのアミノ酸配列を有するか、又は配列番号2、配列番号3、及び配列番号4のうちの1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、若しくは少なくとも約93%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%の同一性のバリアントを有する、請求項58~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記GM-CSFが、モルグラモスチム、サルグラモスチム、及びレグラモスチムのうちの1つである、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項68】
GM-CSFがサルグラモスチムである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記GM-CSFが静脈内経路により投与される、請求項58~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
レボドパ、カルビドパ(LODOSYN)等のドパミン前駆体;セレギリン(ZELAPAR)等のドパミン拮抗薬;セレギリン(ZELAPAR)等のMAOB阻害剤;エンタカポン(COMTAN)等のカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤;ベンズトロピン(COGENTIN)等の抗コリン薬;アマンタジン;イストラデフィリン(NOURIANZ)等のアデノシン受容体拮抗薬(A2A受容体拮抗薬);及び/又はピマバンセリン(NUPLAZID)から選択される1又は複数の追加の治療薬を投与することをさらに含む、請求項58~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
(a)HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数、任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数、の検出に適した核酸又はタンパク質のアレイと、
(b)使用説明書と、
を含む、コンパニオン診断、コンプリメンタリー診断、又は共診断検査キット。
【請求項72】
請求項1~70の1又は複数で使用するための試薬及び説明書を含む、コンパニオン診断、コンプリメンタリー診断、又は共診断検査キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月2日に出願された米国仮特許出願第63/240,233号、及び2022年1月26日に出願された米国仮特許出願第63/303,102号の優先権を主張し、これらのそれぞれの全内容はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、部分的には、パーキンソン病の治療及び/又は軽減、並びに診断方法、予後診断方法及び患者選択方法に関する。
【0003】
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所により授与されたグラント番号R01NS034239に基づく政府支援によりなされた。政府は発明に関して一定の権利を有する。
【0004】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書とともに電子的に提出されたテキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式のコピー(ファイル名:Sequence_Listing_PNR-011PC/127114-5011.xml;記録日:2022年8月26日;ファイルサイズ:5,000バイト)。
【背景技術】
【0005】
神経変性疾患は、世界中で主な死因及び障害(障害調整生存年(disability-adjusted life-years)(DALY;早死損失年数(Years of life lost)[YLL]と障害生存年数(Years lived with disability)[YLD]の合計)を含む)の原因としてますます認識されてきている。世界的に、2016年には、神経障害はDALYの主な要因(約2億7,600万年)であり、第2位の死因(約900万人)であった。Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study (GBD), Lancet Neurol 2019; 18: 459-80を参照。
【0006】
神経変性障害は、その臨床症状によって広く分類することができ、錐体外路運動障害及び錐体運動障害、並びに認知障害又は行動障害が最も一般的である。純粋な症候群を有する患者は少なく、ほとんどは複合的な臨床的特徴を有している。神経変性疾患は通常、特定のタンパク質の蓄積と解剖学的脆弱性によって定義されるが、神経変性疾患は、ユビキチン-プロテアソーム系及びオートファゴソーム/リソソーム系におけるタンパク質毒性とそれに付随する異常、酸化ストレス、プログラム細胞死、神経炎症等、進行性の神経機能不全及び死に関連する多くの基本的なプロセスを共有している。Dugger BN and Dickson DW. Cold Spring Harb Perspect Biol. 2017. 9(7): a028035を参照。
【0007】
パーキンソン病(PD)は、黒質ドパミン作動性ニューロンの進行性喪失を特徴とする進行性の神経変性疾患である。中枢神経系(CNS)の内外の、細胞内封入体内のα-シヌクレイン(a-syn)凝集体の優勢な存在は、多臓器が関与しその結果免疫応答を伴う全身的疾患の特徴となる疾患ドライバーである。自然免疫(単球及びミクログリア)と適応免疫(T細胞)、炎症、及び疾患の間の関連性は十分に確立されている。主要なドライバーは、α-synのミスフォールディングと凝集、タンパク質クリアランスの障害、ミトコンドリアの機能不全、及び炎症である。これらはすべて、ドパミン作動性の神経細胞機能に影響を及ぼし、ノルアドレナリン作動性、グルタミン酸作動性、セロトニン作動性、及びアデノシンのニューロンの活力に二次的な影響を及ぼす。この疾患は、免疫寛容を破壊する、全身循環へのα-syn凝集体の放出によって強調される。特に、活性化された単球は髄膜及び脈絡叢に入り、神経免疫恒常性に初期の有害な影響を与える。これらの知見に基づくと、免疫恒常性を維持する取り組みは、PD修飾療法(PD-modifying therapies)の魅力的な標的である。CNS内外で免疫恒常性を回復する手段の1つは、免疫の変化に焦点を当てている。特に、単球-マクロファージ、エフェクターT細胞(Teff)から制御性T細胞(Treg)へのバランスのとれた変化、及びこれら2つの間の相互作用は、PDだけでなく、アルツハイマー病(AD)、外傷性脳損傷、脳卒中、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)にも臨床上の利点があると推定されている。Tregの数と機能の強化は、生来のミクログリアの恒常性の回復、及び神経炎症と神経保護の制御につながる。Schabitz WR, et al. J Cereb Blood Flow Metab. 2008. 28, 29-43; Brochard V, et al. J Clin Invest. 2009. 119, 182-192; Jain S. Parkinsonism Relat Disord. 2011. 17, 77-83; Waschbisch, A, et al. J Immunol. 2016. 196, 1558-1567; Houser MC and Tansey MG. NPJ Parkinsons Dis. 2017. 3(3); Rocha EM, et al. Neurobiol Dis. 2018. 109, 249-257; Harms AS, et al. Exp Neurol. 2018. 300, 179-187; Nissen SK et al. Mov Disord. 2019. 34, 1711 -1721 ; Machhi J, et al. Mol Neurodegener. 2020. 15(32); J. Jankovic J and Tan EK. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020. 91, 795-808.を参照。
【0008】
炎症がCNSの神経変性疾患において重要な役割を果たし得るという認識の高まりは、適応免疫応答対自然免疫応答の両者が神経変性疾患の様々な段階で観察されることによって強調される。これらの異なる免疫応答は、疾患プロセスを促進するだけでなく、治療標的としても機能する可能性がある。疾患の原因と進行に役割を果たす特定の炎症機構についての継続中の研究により、これらの疾患の出現とそれを治療するための治療法を理解する、炎症性の神経変性に関する教訓が明らかになってきた。MSで成功を収めた増加中の免疫療法戦略は現在、他の神経変性疾患にも適用されている。CNSの免疫機構を抑制するアプローチもあれば、免疫系を利用して有害な産物や細胞を除去するアプローチもある。Mamun AA and Liu F. Neurol Neurother. 2017. 2(1); Chitnas T and Weiner HL. J Clin Invest. 2017. 127(10): 3577-3587を参照。
【0009】
CNSにおけるすべての免疫応答が有害であるわけではなく、多くの場合、それらは実際には修復及び再生に役立つことに留意することが重要である。例えば、ミクログリアはミエリン損傷後にデブリを除去し、これが妨げられると再生の遅れが生じる。免疫活性化は、向神経性ウイルス感染を制限し、虚血後の壊死細胞を除去するためにも重要である。したがって、ミクログリアは神経変性において、損傷を扇動するものとして、及び脳の恒常性を保護するものとして、二重の役割を発揮しうる。ミクログリアに加えて、T細胞も神経変性疾患の回復に役立ち得るが、T細胞のこの有益な役割の正確なメカニズムは明らかではない。細胞レベル及び分子レベルの両方での神経免疫相互作用の詳細な研究により、複雑な相互作用が明らかになり、免疫細胞が神経毒性分子と神経保護分子をいずれも分泌できることが示された。したがって、神経疾患における免疫応答の制御には治療的価値がある。Neumann H et al. Brain. 2009. 132: 288-95; Schwartz M et al. Neuroscience. 2009. 158: 1133-42; Amor S et al. Immunology. 2010. 129(2): 154-69を参照。
【0010】
パーキンソン病の臨床的及び病理生物学的多様性は、疾患の進行及び疾患修飾療法をモニタリングするための関連バイオマーカーの開発における大きな課題として提示されている。さらに、異なる臨床表現型や分子表現型に基づき、治療応答にばらつき得るため、バイオマーカーの開発や検証を含む個別化又はプレシジョンメディシンのアプローチへの移行により、PDのような多くの神経変性疾患の管理が改善されると考えられてきた。
【0011】
顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)は、造血細胞の産生、遊走、増殖、分化、及び機能を調節する血液増殖因子である。これは、in vitroで骨髄前駆細胞の増殖及び顆粒球とマクロファージへの分化を誘導できることが最初に確認された。炎症性刺激に応答して、GM-CSFは、Tリンパ球、マクロファージ、線維芽細胞、内皮細胞等の様々な細胞型によって放出される。次に、GM-CSFは、好中球、好酸球、及びマクロファージの産生と生存を活性化し、強化する。天然型GM-CSFは、通常、in vitroで造血前駆細胞の増殖、分化、及び生存を調節する作用部位の近くで産生されるが、循環血液中にはピコモル濃度(10-10~10-12M)しか存在しない。いくつかの研究では、GM-CSFが骨髄細胞に対する作用において様々な組織にわたって幅広い機能を有することが示されており、GM-CSFの欠失/枯渇アプローチにより、いくつかの炎症性疾患や自己免疫疾患における重要な治療標的としての可能性が示されている。A Metcalf D. Immunol Cell Biology. 1987, 65:35-43; Gasson JC. Blood. 1991 , 77:1131 -1145; Shannon MF et al. Crit Rev Immunol. 1997, 17:301 -323; Alexander WS. Int Rev Immunol. 1998, 16:651 -682; Barreda DR et al. Dev Comp Immunol. 2004, 28:509-554; Lee KMC et al. Immunotargets Then 2020. 9:225-240を参照。
【0012】
組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(rhuGM-CSF)は、化学療法と組み合わせて、好中球減少症、造血機能障害、及び白血病のような悪性腫瘍の治療のためにFDAで承認されている。臨床において、化学療法後の好中球減少症及び再生不良性貧血の治療に使用されるGM-CSFは、骨髄移植に伴う感染のリスクを大幅に軽減する。骨髄性白血病の治療及びワクチンアジュバントとしてのその有用性も十分に確立されている。Dorr RT. Clin Therapeutics. 1993. 15(1): 19-29; Armitage JO. Blood 1998, 92:4491-4508; Kovacic JC et al. J Mol Cell Cardiol. 2007, 42:19-33; Jacobs PP et al. Microbial Cell Factories 2010, 9:93を参照。
【0013】
特定のバイオマーカーの同定は、パーキンソン病のような神経変性疾患の診断、予後診断、又はセラノーシス(theranosis)に使用することができる。パーキンソン病の新規かつより効果的なバイオマーカー及び併用療法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
したがって、いくつかの態様において、本開示は、GM-CSFを含む有効量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、パーキンソン病を治療するための方法であって、前記患者は様々なバイオマーカーの発現及び/又は活性の変化により特徴付けられる、方法に関する。
【0015】
いくつかの態様において、本開示は、GM-CSFを含む有効量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知(down syndrome cognition)、及び脳炎のうちの1又は複数を治療する方法であって、前記患者は、様々なバイオマーカーの発現及び/又は活性の変化により特徴付けられる、方法に関する。
【0016】
いくつかの態様において、本開示は、GM-CSFを含む有効量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、TeffとTregとの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の疾患又は障害を治療するための方法であって、前記患者は、様々なバイオマーカーの発現及び/又は活性の変化により特徴付けられる、方法に関する。
【0017】
いくつかの態様において、パーキンソン病に対する薬剤による処置のために患者を選択する方法、及び/又は、パーキンソン病に対する薬剤への治療応答を評価する方法であって、前記患者からの生体試料中の1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量を決定することを含み、処置前及び/又は無病状態と比較して、前記バイオマーカーの発現及び/又は活性の変化が示される場合、前記患者は前記処置に適しており、前記薬剤は、有効量の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、方法が提供される。
【0018】
いくつかの態様において、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、及び脳炎のうちの1又は複数に対する薬剤による処置のために患者を選択する方法、及び/又は、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、及び脳炎のうちの1又は複数に対する薬剤の治療応答を評価する方法であって、患者からの生体試料中の1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量を決定することを含み、処置前及び/又は無病状態と比較して、前記バイオマーカーの発現及び/又は活性の変化が示される場合、前記患者は前記処置に適しており、前記薬剤は、有効量の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、方法が提供される。
【0019】
いくつかの態様において、TeffとTregとの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の疾患又は障害に対する薬剤による処置のために患者を選択する方法、及び/又は、TeffとTregとの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の疾患又は障害に対する薬剤への治療応答を評価する方法であって、患者からの生体試料中の1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量を決定することを含み、処置前及び/又は無病状態と比較して、前記バイオマーカーの発現及び/又は活性の変化が示される場合、前記患者は前記処置に適しており、前記薬剤は、有効量の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、方法が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA(NK-κB p65)、IKBGG、ATG3、ATG7、ロイシンリッチリピートセリン/スレオニンプロテインキナーゼ2(LRRK2)、GABARAPL2、RCOR1、GGA3、ALDH1A1、RFC1、BTF3L4、WBP2、EEA1、NCBP2、PEA15、MCM5、CLTA、VPS41、SRSF4、H2AFX、CD9、RFLNB、GLB1、KRT10、ACAA1、PCK2、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2から選択され、任意に、前記バイオマーカーは、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、LRRK2、及びGABARAPL2から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAのうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御される。いくつかの実施形態では、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、及びLRRK2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御される。
【0022】
いくつかの実施形態では、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAのうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に下方制御される。いくつかの実施形態では、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、及びLRRK2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に下方制御される。
【0023】
いくつかの実施形態では、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される。いくつかの実施形態では、ATG7及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される。
【0024】
いくつかの実施形態では、ATG3、ATG7及びGABARAPL2のすべてが、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される。いくつかの実施形態では、ATG7及びGABARAPL2の両方が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される。
【0025】
いくつかの実施形態では、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に上方制御される。いくつかの実施形態では、ATG7及びGABARAPL2が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に上方制御される。
【0026】
いくつかの実施形態では、(i)HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAのうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御され、任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、及びLRRK2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御され、かつ、(ii)ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御され、任意に、ATG7及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記バイオマーカーは、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、サーチュインシグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路から選択される1又は複数の経路に関連する。
【0028】
いくつかの実施形態では、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路に関連する前記バイオマーカーは、GM-CSFによる処置中又は処置後に、下方制御される、又は阻害される。
【0029】
いくつかの実施形態では、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路に関連する前記バイオマーカーは、GM-CSFによる処置の約1か月後、約2か月後、約3か月後、約4か月後、約5か月後、及び/又は6か月後に、下方制御される、又は阻害される。
【0030】
いくつかの態様では、患者のパーキンソン病を治療する方法であって、パーキンソン病の症状を有する患者を特定する工程と、前記患者からの生体試料中の1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量を決定する工程と、治療前及び/又は無病状態と比較して、1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性の変化を示す患者に、有効量のGM-CSF剤を投与する工程と、を含む、方法が提供される。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記バイオマーカーは、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、IKBGG、ATG3、ATG7、LRRK2、GABALAPL2、RCOR1、GGA3、ALDH1A1、RFC1、BTF3L4、WBP2、EEA1、NCBP2、PEA15、MCM5、CLTA、VPS41、SRSF4、H2AFX、CD9、RFLNB、GLB1、KRT10、ACAA1、PCK2、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2から選択され、任意に、前記バイオマーカーは、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、LRRK2、及びGABARAPL2から選択される。
【0032】
いくつかの実施形態では、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAのうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御される。いくつかの実施形態では、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、及びLRRK2が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御される。
【0033】
いくつかの実施形態では、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAのうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に下方制御される。いくつかの実施形態では、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、及びLRRK2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御され、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に下方制御される。
【0034】
いくつかの実施形態では、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される。いくつかの実施形態では、ATG7及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される。いくつかの実施形態では、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のすべてが、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される。いくつかの実施形態では、ATG7及びGABARAPL2の両方が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される。いくつかの実施形態では、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置の約1か月後、約2か月後、約3か月後、約4か月後、約5か月後、及び/又は約6か月後に上方制御される。いくつかの実施形態では、ATG7及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置の約1か月後、約2か月後、約3か月後、約4か月後、約5か月後、及び/又は約6か月後に上方制御される。
【0035】
いくつかの実施形態では、(i)HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAのうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御され、任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、及びLRRK2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に下方制御され、かつ、(ii)ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御され、任意に、ATG7及びGABARAPL2のうちの1又は複数が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記バイオマーカーは、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、サーチュインシグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路から選択される1又は複数の経路に関連する。
【0037】
いくつかの実施形態では、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路に関連する前記バイオマーカーは、GM-CSFによる処置中又は処置後に、下方制御される、又は阻害される。
【0038】
いくつかの実施形態では、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路に関連する前記バイオマーカーは、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に、下方制御される、又は阻害される。
【0039】
いくつかの態様では、神経学的症状のために神経学的薬剤による治療を受けている又は受けた患者であり、前記神経学的薬剤による治療に対して不成功、不耐症、耐性、又は難治性を示している患者を特定する工程と、
HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHA、ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2のうちの1又は複数の存在、非存在、又は量を決定する工程と、
治療前及び/又は無病状態と比較して、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及び/又はSDHAのうちの1又は複数の発現及び/又は活性の増加を示す、又は高い前記発現及び/又は活性を示す;及び/又は治療前及び/又は無病状態と比較して、ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2の発現及び/又は活性の減少を示す、又は低い前記発現及び/又は活性を示す、患者に対して、有効量のGM-CSF剤を投与する工程と、
を含む、患者のパーキンソン病を治療する方法が提供される。
【0040】
いくつかの態様では、
神経学的症状のために神経学的薬剤による治療を受けている又は受けた患者であり、前記神経学的薬剤による治療に対して不成功、不耐症、耐性、又は難治性を示している患者を特定する工程と、
HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHA、ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2のうちの1又は複数の存在、非存在、又は量を決定する工程と、
治療前及び/又は無病状態と比較して、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及び/又はSDHAのうちの1又は複数の発現及び/又は活性の減少を示す、又は低い前記発現及び/又は活性を示す;及び/又は治療前及び/又は無病状態と比較して、ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2の発現及び/又は活性の増加を示す、又は高い前記発現及び/又は活性を示す、患者に対して、有効量のGM-CSF剤を投与する工程と、
を含む、患者のパーキンソン病を治療する方法が提供される。
【0041】
いくつかの態様では、
神経学的症状のために神経学的薬剤による治療を受けている又は受けた患者であり、前記神経学的薬剤による治療に対して不成功、不耐症、耐性、又は難治性を示している患者を特定する工程と、
神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、サーチュインシグナル伝達経路、及び酸化的リン酸化経路を含む1又は複数の経路からのバイオマーカーの発現及び/又は活性の増加又は減少を決定する工程と、
治療前及び/又は無病状態と比較して、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、及び酸化的リン酸化経路の発現及び/又は活性の増加を示す、又は高い前記発現及び/又は活性を示す患者に、有効量のGM-CSF剤を投与する工程と、
を含む、患者のパーキンソン病を治療する方法が提供される。
【0042】
いくつかの態様では、
(a)神経学的症状のために神経学的薬剤による治療を受けている又は受けた患者であり、前記神経学的薬剤による治療に対して不成功、不耐症、耐性、又は難治性を示している患者を特定する工程と、
(b)神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、及び酸化的リン酸化経路を含む1又は複数の経路からのバイオマーカーの発現及び/又は活性の減少、及び/又はサーチュインシグナル伝達経路からのバイオマーカーの発現及び/又は活性の増加を決定する工程と、
(c)治療前及び/又は無病状態と比較して、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、及び酸化的リン酸化経路の発現及び/又は活性の減少を示す、又は低い前記発現及び/又は活性を示す患者に、有効量のGM-CSF剤を投与する工程と、
を含む、患者のパーキンソン病を治療する方法が提供される。
【0043】
いくつかの態様では、
神経学的症状のために神経学的薬剤による治療を受けている又は受けた患者であり、前記神経学的薬剤による治療に対して不成功、不耐症、耐性、又は難治性を示している患者を特定する工程と、
神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、及び酸化的リン酸化経路を含む1又は複数の経路からのバイオマーカーの発現及び/又は活性の減少、及び/又はサーチュインシグナル伝達経路からのバイオマーカーの発現及び/又は活性の増加を決定する工程と、
治療前及び/又は無病状態と比較して、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、及び酸化的リン酸化経路の発現及び/又は活性の減少を示す、又は低い前記発現及び/又は活性を示す患者に、有効量のGM-CSF剤を投与する工程と、
を含む、患者のパーキンソン病を治療する方法が提供される。
【0044】
いくつかの態様では、GM-CSF剤による処置後の患者におけるパーキンソン病の症状の退行、進行、消失、又は再発をモニタリングする方法であって、
前記患者からの生体試料における第1の時点での1又は複数のバイオマーカーのベースライン発現及び/又は活性レベルを決定する工程と、
生体試料における第2の時点及びその後の時点での1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性レベルを決定する工程と、
1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性レベルが前記第1の時点と前記第2の時点との間で変化するかどうかを決定する工程と、を含み、
前記1又は複数のバイオマーカーは、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHA、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2から選択される、方法が提供される。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、パーキンソン病を治療するために有効量の薬剤又は治療薬を投与することをさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、患者は、酸化ストレス、神経突起完全性の喪失、アポトーシス、ニューロン喪失、又は/及び炎症反応、認知障害、認知機能低下、行動及び性格の変化、震え、動作緩慢、固縮、姿勢とバランスの障害、自動運動の喪失、協調運動の低下、言語の変化、羞明、目の筋肉の制御困難、衝動性眼球運動の遅延、嚥下障害、眼瞼けいれん、起立性低血圧による失神又は立ちくらみ、めまい、膀胱制御の問題、有形性(well-formed)幻視及び妄想、記憶力、集中力、及び判断力の変化、記憶喪失、うつ病、過敏症、不安、急速眼球運動(REM)睡眠障害、てんかん発作、感覚異常、痺れ又はうずき、けいれん、咀嚼又は飲み込み困難、四肢の筋肉のけいれん及び脱力、及び/又は足や手の穿痛感(prickling)又はうずき(tingling)のうちの1又は複数を有することを特徴とする。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量は、タンパク質及び/又は核酸の検出により決定される。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量は、ELISA、Luminexマルチプレックスアッセイ、免疫組織化学的染色、ウェスタンブロッティング、インセルウェスタン、免疫蛍光染色、又は蛍光活性化セルソーティング(FACS)のうちの1又は複数により決定される。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、定量的リアルタイムPCR、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)、一本鎖構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション、アレイ分析、及び制限酵素断片長多型分析のうちの1又は複数により決定される。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量は、単一細胞RNAシーケンシング法及び/又は次世代シーケンシング(NGS)法により決定される。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量は、RNAシーケンシング、例えば、単一細胞RNAシーケンシングにより決定される。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記生体試料は、血液、皮膚試料若しくは組織試料、血漿、血清、膿、尿、汗、涙、粘液、痰、唾液、脳脊髄液(CSF)、及び/又は他の体液である、又はこれを含む。いくつかの実施形態では、生体試料は単球である、又は単球を含む。いくつかの実施形態では、生体試料は単球集団である、又は単球集団を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記方法は、患者におけるパーキンソン病の進行及び/又は発症を予防、治療、及び/又は緩和する。いくつかの実施形態では、前記方法は、疾患修飾反応を誘発し、及び/又は一時的又は持続的に認知機能の低下を遅らせ、及び/又は神経変性疾患の症状の改善をもたらし、及び/又は神経変性疾患又は神経変性障害の発症及び/又は進行を遅らせ、及び/又は、中枢神経系(CNS)における慢性炎症を回復に向かわせる又は予防し、及び/又は内因性又は外因性のCNS免疫細胞の機能不全を減少又は緩和し、及び/又はCNSアストロサイト及び単核貪食細胞(例えば、血管周囲マクロファージ及び/又はミクログリア細胞)の活性化を減少又は緩和し、及び/又はアストログリオパチーを減少させ、緩和し、又は回復に向かわせ、及び/又はCNSにおけるグルタミン-グルタミン酸バランスを、調節、又は維持、又はサポートし、及び/又は慢性的なミクログリア細胞の活性化を減少させ、緩和し、又は逆転させ、及び/又は軸索損傷を軽減又は回復させ、及び/又は1又は複数の炎症性サイトカイン及び/又はタンパク質の過剰な産生及び/又はシグナル伝達を減少させ、又は防止し、及び/又はタンパク質プラークの形成を減少させ、又は防止し、及び/又はタウオパチーを減少させ、又は防止する。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記GM-CSFは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4のうちの1つのアミノ酸配列を有するか、これに対して少なくとも約90%、若しくは少なくとも約93%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%の同一性のバリアントを有する。いくつかの実施形態では、GM-CSFは、モルグラモスチム、サルグラモスチム、及びレグラモスチムのうちの1つである。いくつかの実施形態では、GM-CSFはサルグラモスチムである。いくつかの実施形態では、GM-CSFは静脈内経路により投与される。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記方法は、レボドパ、カルビドパ(LODOSYN)等のドパミン前駆体;セレギリン(ZELAPAR)等のドパミン拮抗薬;セレギリン(ZELAPAR)等のMAOB阻害剤;エンタカポン(COMTAN)等のカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤;ベンズトロピン(COGENTIN)等の抗コリン薬;アマンタジン;イストラデフィリン(NOURIANZ)等のアデノシン受容体拮抗薬(A2A受容体拮抗薬);及び/又はピマバンセリン(NUPLAZID)から選択される1又は複数の追加の治療薬及び/又は神経学的薬剤を投与することをさらに含む。
【0052】
いくつかの態様では、パーキンソン病を有し、無病状態と比べて1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性が変化している患者を選択する工程と、前記患者にGM-CSFを含む有効量の組成物を投与する工程と、を含み、前記1又は複数のバイオマーカーは、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHA、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2から選択される、パーキンソン病を治療する方法が提供される。
【0053】
いくつかの実施形態では、変化した前記1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性は、GM-CSFの投与の中止を指示するものである。いくつかの実施形態では、前記バイオマーカーのいずれかのレベルは、前記患者からの生体試料中でアッセイされる。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記生体試料は、血液、組織試料、血漿、血清、膿、尿、汗、涙、粘液、痰、唾液、脳脊髄液(CSF)、及び/又は他の体液を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記方法は、パーキンソン病の進行及び/又は発症を予防、治療、及び/又は緩和する。
【0056】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記患者のパーキンソン病の症状を改善する。いくつかの実施形態では、前記方法は、治療前と比較して前記患者におけるパーキンソン病の後遺症(sequelae)を減少させる。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記GM-CSFは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4のうちの1つのアミノ酸配列を有するか、これに対して少なくとも約90%、若しくは少なくとも約93%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%の同一性のバリアントを有する。いくつかの実施形態では、GM-CSFは、モルグラモスチム、サルグラモスチム、及びレグラモスチムのうちの1つである。いくつかの実施形態では、GM-CSFはサルグラモスチムである。いくつかの実施形態では、GM-CSFは静脈内経路により投与される。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記方法は、レボドパ、カルビドパ(LODOSYN)等のドパミン前駆体;セレギリン(ZELAPAR)等のドパミン拮抗薬;セレギリン(ZELAPAR)等のMAOB阻害剤;エンタカポン(COMTAN)等のカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤;ベンズトロピン(COGENTIN)等の抗コリン薬;アマンタジン;イストラデフィリン(NOURIANZ)等のアデノシン受容体拮抗薬(A2A受容体拮抗薬);及び/又はピマバンセリン(NUPLAZID)から選択される1又は複数の追加の治療薬及び/又は神経学的薬剤を投与することをさらに含む。
【0059】
いくつかの態様では、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHA、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数の検出に適した核酸又はタンパク質のアレイと、使用説明書と、を含む、コンパニオン診断、コンプリメンタリー診断、又は共診断検査キットが提供される。
【0060】
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法の1又は複数で使用するための試薬及び説明書を含む、コンパニオン診断、コンプリメンタリー診断、又は共診断検査キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1A】サルグラモスチム処置2か月後のPD患者の単球における差次的に発現されたタンパク質のパスウェイエンリッチメントを示す。CytoscapeとプラグインClueGOを併用して、5つのカテゴリ(免疫応答、生物学的プロセス、細胞成分、KEGG、及びReactome)によるGene Ontology(GO)タームの機能的エンリッチメントを実行した。
【0062】
【
図1B】IPA(Qiagen)を使用して実施したカノニカルパスウェイエンリッチメント解析を示しており、サルグラモスチム処置2か月後のPD患者の単球における差次的に発現したタンパク質を示す。黒い矢印は、
図1Bに示されるカノニカルパスウェイの状態を指す。正のZスコア(活性化)、負のZスコア(阻害)、及び明るい灰色(活性パターンなし)。
【0063】
【
図2A】サルグラモスチム処置6か月後のPD患者の単球における差次的に発現されたタンパク質/遺伝子のパスウェイエンリッチメントを示す。CytoscapeとプラグインClueGOを併用して、5つのカテゴリ(免疫応答、生物学的プロセス、細胞成分、KEGG、及びReactome)によるGene Ontology(GO)タームの機能的エンリッチメントを実行した。
【0064】
【
図2B】IPA(Qiagen)を使用して実施したカノニカルパスウェイエンリッチメント解析を示しており、サルグラモスチム処置6か月後のPD患者の単球における差次的に発現したタンパク質を示す。黒い矢印は、
図2Bに示されるカノニカルパスウェイの状態を指す。正のZスコア(活性化)、負のZスコア(阻害)、及び明るい灰色(活性パターンなし)。
【
図3】サルグラモスチム処置2か月後及び6か月後の単球における潜在的なバイオマーカーの遺伝子及びタンパク質の発現を示すグラフである。ddPCRアッセイを実行して、ベースラインと比較したサルグラモスチム処置開始2か月後(A)及び6か月後(B)のLRRK2、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、及びGABARAPL2の遺伝子発現を測定した。遺伝子発現はHPRT1に対して正規化し、ddPCRアッセイは4回実施した(n=4の技術的反復)。ウェスタンブロット分析を行って、ベースラインと比較したサルグラモスチム処置開始2か月後(C)及び6か月後(D)のβ-アクチン、LRRK2、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、及びGABARAPL2のタンパク質発現を測定した。タンパク質発現をβ-アクチンに対して正規化し、濃度測定による定量化を示す。ウェスタンブロット分析は3回行った(n=3の技術的反復)。データは平均値±SDを表す。各画像の水平線はベースライン発現を表す。線より上の値は上方制御を意味し、線より下の値は下方制御を意味する。
【0065】
【
図4A】ベースラインと比較したサルグラモスチム処置6か月後における患者2003、2004、及び2005のscRNA-seqデータセットとプロテオミクスデータセットとの間の重複遺伝子を示す、scRNA-seqデータ及びプロテオミクスデータの統合を示す。
【0066】
【
図4B】ベースラインと比較したサルグラモスチム処置6か月後における患者2003、2004、及び2005のscRNA-seqデータセットとプロテオミクスデータセットの両方における重複遺伝子の相関を示すグラフを示す。相関は、ピアソン積率相関係数(r)を使用して決定した。
【0067】
【
図5】
図5Aは、LRRK2、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、及びGABARAPL2の遺伝子発現とMDS-UPDRSIIIスコアの変化との間の相関を示すグラフを示す。r=ピアソン積率相関係数。
【0068】
図5Bは、LRRK2、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、及びGABARAPL2の遺伝子発現と生のMDS-UPDRSIIIスコアとの間の相関を示すグラフを示す。r=ピアソン積率相関係数。
【0069】
図5Cは、LRRK2、HMOX1、TLR2、TLR8、及びATG7の遺伝子発現の、MDS-UPDRSIIIスコアの変化に対する影響の多重線形回帰分析を示す。
【0070】
図5Dは、LRRK2、HMOX1、TLR2、TLR8、及びATG7の遺伝子発現の、生のMDS-UPDRSIIIスコアに対する影響の多重線形回帰分析を示す。r=回帰係数。
【0071】
【
図6】
図6Aは、LRRK2、RELA、及びATG7のタンパク質発現とMDS-UPDRSIIIスコアの変化との間の相関を示すグラフを示す。r=ピアソン積率相関係数。
【0072】
図6Bは、LRRK2、RELA、及びATG7のタンパク質発現と生のMDS-UPDRSIIIスコアとの間の相関を示すグラフを示す。r=ピアソン積率相関係数。
【0073】
図6Cは、LRRK2、HMOX1、RELA、及びGABARAPL2のタンパク質発現の、MDS-UPDRSIIIスコアの変化に対する影響の多重線形回帰分析を示す。r=回帰係数。
【0074】
図6Dは、TLR2、TLR8、及びATG7のタンパク質発現の、生のMDS-UPDRSIIIスコアに対する影響の多重線形回帰分析を示す。r=回帰係数。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本開示は、一部、疾患の後遺症(sequelae)及び現在の治療(例えば、パーキンソン病の治療薬による治療の有無)への反応性の予測臨床マーカーとしての特定のバイオマーカーを使用して選択される、パーキンソン病の効果的な治療法としてのGM-CSFの使用に関する。
【0076】
いくつかの態様では、本開示は、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、脳炎、及び/又はTeffとTregの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の症状、のうちの1又は複数の治療を必要とする患者を選択する改良された方法、及び/又は、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、脳炎、及び/又はTeffとTregの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の症状、のうちの1又は複数に対する薬剤への治療応答を評価する改良された方法に関する。一態様では、本開示は、選択された予測バイオマーカーに基づいた、患者における、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、脳炎、及び/又はTeffとTregの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の症状、のうちの1又は複数の改良された治療に関する。例えば、いくつかの実施形態では、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、IKBGG、ATG3、ATG7、LRRK2、GABARAPL2、RCOR1、GGA3、ALDH1A1、RFC1、BTF3L4、WBP2、EEA1、NCBP2、PEA15、MCM5、CLTA、VPS41、SRSF4、H2AFX、CD9、RFLNB、GLB1、KRT10、ACAA1、PCK2、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA、ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2等の1又は複数のバイオマーカー、任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、LRRK2、及びGABARAPL2等の1又は複数のバイオマーカー、の存在、不在、レベル又は活性の評価は、患者の病状の情報を与え又は予測し、限定されないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、脳炎、及び/又はTeffとTregの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の症状、のうちの1又は複数を有する患者へのGM-CSFの投与を指示する。他の実施形態では、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、サーチュインシグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路を含む1又は複数の経路からのバイオマーカーの評価は、患者の病状の情報を与え又は予測し、限定されないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、脳炎、及び/又はTeffとTregの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の症状、のうちの1又は複数を有する患者へのGM-CSFの投与を指示する。
【0077】
いくつかの態様では、バイオマーカーは、1又は複数のタンパク質及び/又はバイオマーカー、並びにシグナル伝達経路及び/又は調節経路に関連する。いくつかの態様では、本開示のバイオマーカーは、疾患の進行と治療への応答をモニタリングするのに役立てるために、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、脳炎、及び/又はTeffとTregの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の症状、のうちの他の1又は複数と組み合わせて用いられる。
【0078】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、選択された臨床バイオマーカーを評価することにより、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、脳炎、及び/又はTeffとTregの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の症状、のうちの1又は複数を治療するための方法を提供する。
【0079】
組成物
いくつかの実施形態では、本開示は、パーキンソン病を治療するための組成物、例えばGM-CSF及び/又は追加の治療薬を含む医薬組成物に関する。
【0080】
いくつかの実施形態では、追加の神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬は、レボドパ、カルビドパ(LODOSYN)等のドパミン前駆体;セレギリン(ZELAPAR)等のドパミン拮抗薬;セレギリン(ZELAPAR)等のMAOB阻害剤;エンタカポン(COMTAN)等のカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤;ベンズトロピン(COGENTIN)等の抗コリン薬;アマンタジン;イストラデフィリン(NOURIANZ)等のアデノシン受容体拮抗薬(A2A受容体拮抗薬);及び/又はピマバンセリン(NUPLAZID)から選択される。
【0081】
いくつかの実施形態では、パーキンソン病を治療するための神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、一本鎖Fv、ダイアボディ、直鎖状抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、及び抗体の抗原結合部分を含む融合タンパク質のうちの1又は複数から選択される抗体又は抗体フォーマットである。
【0082】
GM-CSFの組成
いくつかの実施形態では、GM-CSFは、薬学的に安全で有効な任意のGM-CSF、又はGM-CSFの生物学的活性を有するその任意の誘導体を包含する。いくつかの実施形態では、GM-CSFは、サルグラモスチム(LEUKINE)等のrhuGM-CSFである。サルグラモスチムは、生合成された酵母由来の組換えヒトGM-CSFであり、23位にプロリンに代えてロイシンを有する点で内因性ヒトGM-CSFとは異なる単一の127アミノ酸糖タンパク質を有する。他の天然及び合成GM-CSF、及び天然ヒトGM-CSFの生物学的活性を有するその誘導体も、いくつかの実施形態では同様に有用であり得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、GM-CSFは、細菌、酵母、植物、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞において産生されるか、又は産生可能である。いくつかの実施形態では、GM-CSFは大腸菌(Escherichia coli)細胞において産生されるか、又は産生可能である。いくつかの実施形態では、GM-CSFは酵母細胞において産生されるか、又は産生可能である。いくつかの実施形態では、GM-CSFは、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)において産生されるか、又は産生可能である。いくつかの実施形態では、GM-CSFは大腸菌(E.coli)細胞では産生されない。いくつかの実施形態では、GM-CSFは、グリコシル化を可能にする細胞、例えば酵母細胞又はCHO細胞において産生される。
【0084】
いくつかの実施形態では、GM-CSFは、配列番号1のアミノ酸配列を有するか、又はこれに対して少なくとも約90%、若しくは少なくとも約93%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%の同一性のバリアントを有する。いくつかの実施形態では、GM-CSFは、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4のアミノ酸配列を有するか、又はこれに対して少なくとも90%、若しくは少なくとも約93%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%の同一性のバリアントを有する。いくつかの実施形態では、GM-CSFは、サルグラモスチム、モルグラモスチム、及びレグラモスチムのうちの1つである。いくつかの実施形態では、GM-CSFはサルグラモスチムである。
【0085】
理論に拘束されることを望まないが、hGM-CSFのコアは、角度を付けて詰め込まれた4つのヘリックスからなる。rhGM-CSFの結晶構造と変異原性分析(Rozwarski D A et al., Proteins 26:304-13,1996)によれば、タンパク質コアの無極性側鎖に加えて、10個の埋もれた水素結合残基が主鎖への分子内水素結合に関与しており、他の側鎖原子に水素結合している残基よりも保存性が高いことが示された。非対称ユニット内の2つの分子の同等の位置に24の溶媒和部位が観察され、その中で最も強い溶媒和部位は二次構造要素間の割れ目に位置していた。疎水性側鎖の2つの表面クラスターは、予想される受容体結合領域の近くに位置している。ヘリックスA/ヘリックスC面上の残基の変異誘発により、特定のGlu、Gly、及びGln残基の重要性が確認された。したがって、これらの残基は、本開示で使用するためのhGM-CSFの機能的置換変異体において置換されるべきではなく、これらのヘリックスは、本開示で使用するためのhGM-CSFの機能的断片又は欠失変異体において保持されるべきである。さらに、いくつかの実施形態では、当業者は、バリアントの同一性を知るための構造情報についてUniProtKBエントリP04141を参照することができる。
【0086】
hGM-CSFのN末端ヘリックスは、その受容体への高親和性結合を支配する(Shanafelt A B et al., EMBO J 10:4105-12, 1991)。GM-CSFの生物学的効果の伝達には、少なくとも2つの細胞表面受容体成分との相互作用が必要である(そのうちの1つはサイトカインIL-5と共有される)。上記研究では、一連のヒト-マウスハイブリッドGM-CSFサイトカインにおける固有の受容体結合ドメインを位置決定することにより、GM-CSFにおける受容体結合決定基を同定した。GM-CSFの、その高親和性受容体複合体の共有されるサブユニットとの相互作用は、ペプチド鎖のごく一部によって支配されていた。N末端αヘリックスのいくつかの重要な残基の存在は、相互作用に特異性をもたらすのに十分であった。
【0087】
いくつかの実施形態では、アミノ酸変異はアミノ酸置換であり、保存的置換及び/又は非保存的置換を含み得る。
【0088】
「保存的置換」は、例えば、関与するアミノ酸残基の極性、電荷、サイズ、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の性質の類似性に基づいて行うことができる。20個の天然アミノ酸は、以下の6つの標準アミノ酸グループに分類できる:(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;及び(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0089】
本明細書で使用する場合、「保存的置換」は、上記の6つの標準アミノ酸グループの同じグループ内に列挙された別のアミノ酸によるアミノ酸の交換として定義される。例えば、GluによるAspの交換は、そのように修飾されたポリペプチド内に1つの負電荷を保持する。さらに、グリシンとプロリンは、α-ヘリックスを破壊する能力に基づいて相互に置換され得る。
【0090】
本明細書で使用する場合、「非保存的置換」は、上記の6つの標準アミノ酸グループ(1)~(6)の異なるグループに列挙される別のアミノ酸によるアミノ酸の交換として定義される。
【0091】
いくつかの実施形態では、置換には、非古典的アミノ酸も含まれ得る(例えば、セレノシステイン、ピロリシン、N-ホルミルメチオニン、β-アラニン、GABA、及びδ-アミノレブリン酸、4-アミノ安息香酸(PABA)、一般的なアミノ酸のD体、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコスメ(sarcosme)、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、β-メチルアミノ酸等の人工設計アミノ酸、C α-メチルアミノ酸、N α-メチルアミノ酸、及びアミノ酸アナログ全般)。
【0092】
アミノ酸配列の修飾は、当技術分野で知られている任意の技術、例えば、部位特異的変異誘発又はPCRに基づく変異誘発を使用して達成することができる。このような技術は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y., 1989、及びAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y., 1989に記載されている。理論に束縛されることを意図しないが、生合成GM-CSFのグリコシル化の程度は、半減期、分布、及び除去に影響を与えるようである(Lieschke and Burgess, N. Engl. J. Med. 327:28-35, 1992; Dorr, R. T., Clin. Ther. 15:19-29, 1993; Horgaard et al., Eur. J. Hematol. 50:32-36, 1993)。いくつかの実施形態では、本GM-CSF分子はグリコシル化されている。
【0093】
バイオマーカー
いくつかの態様では、本方法は、パーキンソン病の治療におけるGM-CSFの使用を決定するための新規の予測バイオマーカーの有用性に関する。
【0094】
いくつかの態様では、本方法は、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、及び脳炎のうちの1又は複数の治療におけるGM-CSFの使用を決定するための新規の予測バイオマーカーの有用性に関する。
【0095】
いくつかの態様では、本方法は、TeffとTregとの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の疾患又は障害の治療におけるGM-CSFの使用を決定するための新規の予測バイオマーカーの有用性に関する。
【0096】
一態様では、本開示は、パーキンソン病の治療を必要とする患者を選択する改良された方法に関する。別の態様では、本開示は、選択された予測バイオマーカーに基づいた患者におけるパーキンソン病の改善された治療に関する。他の態様では、パーキンソン病の治療に失敗したか、又は不耐症若しくは難治性である患者の評価は、患者の生体試料中のバイオマーカーを測定することを含む。
【0097】
いくつかの態様では、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、及び脳炎のうちの1又は複数に対する薬剤による処置のために患者を選択する方法、及び/又は、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、及び脳炎のうちの1又は複数に対する薬剤への治療応答を評価する方法であって、前記患者からの生体試料中の1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量を決定することを含み、処置前及び/又は無病状態と比較して、前記バイオマーカーの発現及び/又は活性の変化が示される場合、前記患者は前記処置に適しており、前記薬剤は、有効量の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、方法が提供される。
【0098】
いくつかの態様では、TeffとTregとの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の疾患又は障害に対する薬剤による処置のために患者を選択する方法、及び/又は、TeffとTregとの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の疾患又は障害に対する薬剤への治療応答を評価する方法であって、前記患者からの生体試料中の1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量を決定することを含み、処置前及び/又は無病状態と比較して、前記バイオマーカーの発現及び/又は活性の変化が示される場合、前記患者は前記処置に適しており、前記薬剤は、有効量の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、方法が提供される。
【0099】
いくつかの実施形態では、パーキンソン病患者の評価は、様々な患者パラメータを測定することを含む。いくつかの実施形態では、患者の生体試料は、例えば、免疫組織化学的又は免疫蛍光技術を使用して分析することができ、これらを使用して、免疫浸潤物、例えば、CD4+Th細胞(Tヘルパー細胞)、IL-17産生CD4+Th細胞(Th17細胞)、CD8+T細胞(細胞傷害性T細胞)、及び全身又は循環の中間単球(intermediate monocyte)免疫サブセットを評価することができる。いくつかの実施形態では、多色フローサイトメトリーを使用して、複数の表面マーカー及び細胞内マーカーを測定することができ、細胞の表現型及び活性化状態の特徴付けが可能になる。いくつかの実施形態では、全血を使用して、治療による細胞数の変化、又はサイトカインレベル、例えば、IL-1、IL-4、IL-6、IL-10、IL-12、IL-18、IL-33、IFN-γ、IP-10、M-CSF、TGF-β、VEGF、及びTNFαのレベルの変化を評価することができる。いくつかの実施形態では、ディープシーケンシング技術を使用して、個々の細胞クロノタイプの変化を定量化することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、パーキンソン病患者の評価は、患者の生体試料中の様々なバイオマーカーの存在、非存在、又は量を測定することを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、本開示は、患者におけるパーキンソン病を治療する方法に関し、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、IKBGG、ATG3、ATG7、LRRK2、GABARAPL2、RCOR1、GGA3、ALDH1A1、RFC1、BTF3L4、WBP2、EEA1、NCBP2、PEA15、MCM5、CLTA、VPS41、SRSF4、H2AFX、CD9、RFLNB、GLB1、KRT10、ACAA1、PCK2、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA、ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2のうちの1又は複数、例えば、約1、又は約2、又は約3、又は約4、又は約5、又は約10、又は約15、又は約20、又は約25、又は約30、又は約35、又は約40、又は約45。いくつかの実施形態では、本開示は、患者におけるパーキンソン病を治療する方法に関し、ここで、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、LRRK2、及びGABARAPL2のうちの1又は複数、例えば、約1、又は約2、又は約3、又は約4、又は約5個が、GM-CSFによる処置の必要性を予測又は決定するためのバイオマーカーとして使用される。
【0102】
いくつかの実施形態では、本開示は、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、サーチュインシグナル伝達経路、並びに/又は酸化的リン酸化経路を含む1又は複数の経路からのバイオマーカーが、GM-CSFによる処置の必要性を予測又は決定するために使用される、パーキンソン病を治療する方法に関する。
【0103】
いくつかの実施形態では、本開示は、パーキンソン病の患者を選択する方法、及び/又は、パーキンソン病に対する薬剤への治療応答を評価する方法に関し、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、IKBGG、ATG3、ATG7、LRRK2、GABARAPL2、RCOR1、GGA3、ALDH1A1、RFC1、BTF3L4、WBP2、EEA1、NCBP2、PEA15、MCM5、CLTA、VPS41、SRSF4、H2AFX、CD9、RFLNB、GLB1、KRT10、ACAA1、PCK2、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2のうちの1又は複数、例えば、約1、又は約2、又は約3、又は約4、又は約5、又は約10、又は約15、又は約20、又は約25、又は約30、又は約35、又は約40、又は約45個、任意に、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、LRRK2、及びGABARAPL2のうちの1又は複数、例えば、約1、又は約2、又は約3、又は約4、又は約5個が、GM-CSFによる処置の必要性を予測又は決定するためのバイオマーカーとして使用される。
【0104】
いくつかの実施形態では、本開示は、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、サーチュインシグナル伝達経路、並びに/又は酸化的リン酸化経路を含む1又は複数の経路からのバイオマーカーをアッセイすることによる、パーキンソン病の患者を選択する方法、及び/又は、パーキンソン病に対する薬剤への治療応答を評価する方法に関する。これらは、GM-CSFによる処置の必要性を予測又は決定するために使用される。
【0105】
いくつかの実施形態では、本開示のバイオマーカーは、米国特許出願公開第2014/0349877号(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)及び米国特許出願公開第2019/0117735号(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるバイオマーカーと組み合わせて使用される。
【0106】
いくつかの実施形態では、1又は複数の予測臨床バイオマーカーの存在、不存在、又は量は、患者の生体試料中のタンパク質及び/又は核酸の検出により決定される。
【0107】
いくつかの実施形態では、1又は複数の予測臨床バイオマーカーの存在、非存在、又は量は、ELISA、免疫組織化学的染色、ウェスタンブロッティング、インセルウェスタン、免疫蛍光染色、又は蛍光活性化セルソーティング(FACS)等により患者の生体試料中で決定される。
【0108】
いくつかの実施形態では、1又は複数の予測臨床バイオマーカーの存在、非存在、又は量は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、定量的リアルタイムPCR、一本鎖構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション、アレイ分析、及び制限酵素断片長多型分析のうちの1又は複数により決定される。
【0109】
いくつかの実施形態では、1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量は、次世代シーケンシング(NGS)法により決定される。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量は、ディープシーケンシング法により決定される。
【0110】
いくつかの実施形態では、1又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、又は量は、リボ核酸(RNA)シーケンシングを含むことにより決定される。
【0111】
いくつかの実施形態では、1又は複数の予測臨床バイオマーカーの存在、非存在、又は量を決定する方法は、患者を特徴付ける方法、又はGM-CSFを含む治療のために患者を選択する方法である。
【0112】
いくつかの実施形態では、1又は複数の予測臨床バイオマーカーのレベルを決定する方法は、患者からの生体試料中のバイオマーカーをアッセイすることを含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、本方法、例えば、患者選択の目的で1又は複数の予測臨床バイオマーカーの存在、非存在、レベル又は活性を決定する方法は、血液、皮膚試料若しくは組織試料、血漿、血清、膿、尿、汗、涙、粘液、痰、唾液、脳脊髄液(CSF)、及び/又は他の体液から選択される生体試料を使用する。
【0114】
いくつかの実施形態では、患者選択の方法は、患者の生体試料を使用して行われ、前記試料は、血液、皮膚試料若しくは組織試料、組織生検検体、ホルマリン固定若しくはパラフィン包埋組織標本、細胞学的試料、培養細胞、血漿、血清、膿、尿、汗、涙、粘液、痰、唾液、脳脊髄液(CSF)、及び/又は他の体液から選択される。
【0115】
いくつかの実施形態では、本方法は患者の治療決定を指示する。例えば、いくつかの実施形態では、前記方法は、治療経過中に1又は複数の予測臨床バイオマーカーの発現及び/又は活性をモニタリングする工程を含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、1又は複数の予測臨床バイオマーカーの発現及び/又は活性の変化を検出してもよく、これは、パーキンソン病患者の病状又は治療効果と相関する。このような実施形態では、限定されないが、これは、GM-CSF剤による患者の治療を指示する。
【0116】
いくつかの実施形態では、本開示のバイオマーカーは、プロテオミクスに基づくバイオマーカーである。他のいくつかの実施形態では、バイオマーカーは、1又は複数のタンパク質を含む。別の実施形態では、バイオマーカーは、細胞内の1又は複数のシグナル伝達経路及び/又は調節経路を含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーの発現及び/又は活性は、治療により変化(増加又は減少)し得る。タンパク質バイオマーカーの非限定的な例としては、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA(RELAともいう)、IKBGG、ATG3、ATG7、LRRK2、GABARAPL2、RCOR1、GGA3、ALDH1A1、RFC1、BTF3L4、WBP2、EEA1、NCBP2、PEA15、MCM5、CLTA、VPS41、SRSF4、H2AFX、CD9、RFLNB、GLB1、KRT10、ACAA1、PCK2、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA、ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2が挙げられる。
【0117】
いくつかの実施形態では、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHAが処置中又は処置後に下方制御される。いくつかの実施形態では、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及び/又はSDHAが、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に下方制御される。
【0118】
いくつかの実施形態では、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される。いくつかの実施形態では、ATG7及びGABARAPL2が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御される。いくつかの実施形態では、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に上方制御される。いくつかの実施形態では、ATG7及びGABARAPL2が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に上方制御される。
【0119】
いくつかの実施形態では、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路が、GM-CSFによる処置中又は処置後に、下方制御される、又は阻害される。いくつかの実施形態では、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に、下方制御される、又は阻害される。いくつかの実施形態では、サーチュインシグナル伝達経路が、GM-CSFによる処置中又は処置後に上方制御及び/又は活性化される。いくつかの実施形態では、サーチュインシグナル伝達経路が、GM-CSFによる処置の1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、及び/又は6か月後に、上方制御及び/又は活性化される。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のGM-CSF剤は、パーキンソン病を治療するための療法による治療を強化する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のGM-CSF剤は、例えば、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、ATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、SDHA、ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2のうちの1又は複数、例えば、約1、又は約2、又は約3、又は約4、又は約5、又は約10、又は約15、又は約20、又は約25個の発現及び/又は活性を減少又は増加させることによって、患者の免疫系を調節するために用いられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のGM-CSF剤は、例えば、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、並びに酸化的リン酸化経路を含む様々なシグナル伝達経路の発現及び/又は活性を減少又は増加させることによって、患者の免疫系を調節するために使用される。
【0121】
治療方法及び疾患のモニタリング方法
一態様では、本開示は、有効量の組成物GM-CSFを、それを必要とする患者に投与することを含む、パーキンソン病の治療方法に関する。
【0122】
いくつかの態様では、本開示は、GM-CSFを含む有効量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、パーキンソン病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、進行性核上性麻痺、ダウン症の認知、及び脳炎のうちの1又は複数を治療する方法であって、前記患者は様々なバイオマーカーの発現及び/又は活性の変化により特徴付けられる、方法に関する。
【0123】
いくつかの態様では、本開示は、GM-CSFを含む有効量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、TeffとTregとの間のバランスの不均衡を特徴とする1又は複数の疾患又は障害を治療する方法であって、前記患者は様々なバイオマーカーの発現及び/又は活性の変化により特徴付けられる、方法に関する。
【0124】
別の態様では、本開示は、パーキンソン病の症状を有する患者を特定することと、本明細書に開示されるバイオマーカーのいずれかの存在、非存在、又は量を決定することと、治療前及び/又は無病状態と比較して、前記1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性の変化を示す患者に、有効量のGM-CSF剤を投与することと、を含む、パーキンソン病を治療する方法に関する。
【0125】
別の態様では、本開示は、GM-CSF剤による処置後の患者におけるパーキンソン病の症状の退行、進行、消失、又は再発をモニタリングする方法であって、前記方法は、患者からの生体試料における1又は複数のバイオマーカーのベースライン発現及び/又は活性レベルを決定することと、GM-CSFによる処置中の、患者からの生体試料における1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性レベルを決定することと、GM-CSFによる処置の開始後に、1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性レベルがベースラインの発現及び/又は活性レベルと比較して変化するかどうかを決定することと、を含む、方法に関する。
【0126】
いくつかの態様では、本開示は、
(a)神経学的症状のために神経学的薬剤による治療を受けている又は受けた患者であり、前記神経学的薬剤による治療に対して不成功、不耐症、耐性、又は難治性を示している患者を特定することと、
(b)HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHA、ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2のうちの1又は複数、例えば約1、又は約2、又は約3、又は約4、又は約5、又は約10、又は約15、又は約20個の存在、非存在、又は量を決定することと、
(c)(i)治療前及び/又は無病状態と比較して、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及び/又はSDHAのうちの1又は複数、例えば約1、又は約2、又は約3、又は約4、又は約5、又は約10、又は約15、又は約20個の発現及び/又は活性の増加を示す、又は高い前記発現及び/又は活性を示す;及び/又は(ii)治療前及び/又は無病状態と比較して、ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2の発現及び/又は活性の減少を示す、又は低い前記発現及び/又は活性を示す、患者に対して、有効量のGM-CSF剤を投与することと、を含む、パーキンソン病を治療する方法に関する。
【0127】
いくつかの態様では、本開示は、
(a)神経学的症状のために神経学的薬剤による治療を受けている又は受けた患者であり、前記神経学的薬剤による治療に対して不成功、不耐症、耐性、又は難治性を示している患者を特定することと、
(b)神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、サーチュインシグナル伝達経路、及び酸化的リン酸化経路を含む1又は複数の経路からのバイオマーカーの発現及び/又は活性の増加又は減少を決定することと、
(c)治療前及び/又は無病状態と比較して、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、及び酸化的リン酸化経路の発現及び/又は活性の増加を示す、又は高い前記発現及び/又は活性を示す患者に、有効量のGM-CSF剤を投与することと、
を含む、患者のパーキンソン病を治療する方法に関する。
【0128】
いくつかの実施形態では、本開示は、単独で、又は神経学的薬剤及び/又は追加の薬剤と併用して、GM-CSFを含む有効量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、前記患者は、神経学的処置に対して部分応答者又は非応答者として特徴付けられる、パーキンソン病を治療するための方法に関する。
【0129】
いくつかの実施形態では、前記治療方法は、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及び/又はSDHAのうちの1又は複数、例えば、約1、又は約2、又は約3、又は約4、又は約5、又は約10、又は約15、又は約20個の発現及び/又は活性の減少をもたらす。
【0130】
いくつかの実施形態では、前記治療方法は、ATG3、ATG7、及び/又はGABARAPL2の発現及び/又は活性の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、前記治療方法は、ATG7及び/又はGABARAPL2の発現及び/又は活性の増加をもたらす。
【0131】
いくつかの実施形態では、前記治療方法は、神経炎症シグナル伝達経路、IL-8シグナル伝達経路、一酸化窒素及び活性酸素種の生成経路、インテグリン結合キナーゼ(ILK)シグナル伝達経路、及び酸化的リン酸化経路からのバイオマーカーの発現及び/又は活性の減少をもたらす。
【0132】
いくつかの実施形態では、GM-CSF剤による処置後の患者におけるパーキンソン病の症状の退行、進行、消失、又は再発をモニタリングする方法であって、
(a)前記患者からの生体試料におけるバイオマーカーのベースライン発現及び/又は活性レベルを決定することと、
(b)GM-CSF剤による処置中に、前記患者からの生体試料における1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性レベルを決定することと、
(c)1又は複数のバイオマーカーの発現及び/又は活性レベルがベースラインの発現及び/又は活性レベルと比較してGN-CSFによる処置開始後に変化するかどうかを決定することと、を含む、方法。
【0133】
いくつかの実施形態では、前記治療方法は、患者におけるパーキンソン病の進行及び/又は発症を予防、治療、及び/又は緩和する。いくつかの実施形態では、前記治療方法は患者のパーキンソン病の症状を改善する。いくつかの実施形態では、前記治療方法は、患者において疾患修飾反応を誘発する。他の実施形態では、前記治療方法は、患者の認知機能低下を一時的又は持続的に遅らせる。さらに他の実施形態では、前記治療方法は神経変性疾患の症状の改善をもたらす。さらに他の実施形態では、前記治療方法はパーキンソン病の発症及び/又は進行を遅らせる。
【0134】
いくつかの実施形態では、前記治療方法は、中枢神経系(CNS)における慢性炎症を減少させ、緩和し、回復に向かわせ、又は予防する。いくつかの実施形態では、前記治療方法は、内因性又は外因性のCNS免疫細胞の機能不全を減少させ、又は緩和する。いくつかの実施形態では、前記方法は、CNSアストロサイト及び単核貪食細胞、例えば血管周囲マクロファージ及び/又はミクログリア細胞、の活性化を減少させ、又は緩和する。
【0135】
いくつかの実施形態では、前記治療方法は、アストログリオパチーを減少させる、緩和する、又は回復に向かわせる。いくつかの実施形態では、前記治療方法は、1又は複数のサイトカイン及び/又はタンパク質の発現及び/又は活性を調節する。
【0136】
いくつかの実施形態では、前記治療方法は、CNSにおけるグルタミン-グルタミン酸バランスを、調節、又は維持、又はサポートする。いくつかの実施形態では、前記治療方法は、慢性的なミクログリア細胞の活性化を減少させる、緩和する、又は逆転させる。いくつかの実施形態では、前記治療方法は、軸索損傷を軽減又は回復させる。
【0137】
いくつかの実施形態では、前記治療方法は、タンパク質の病的状態を低減し、又は予防する。いくつかの実施形態では、前記治療方法は、タウオパチーを減少させる、又はタウオパチーを防止する。
【0138】
いくつかの実施形態では、前記治療方法は、治療前と比較して、患者におけるパーキンソン病の後遺症(sequelae)の減少をもたらす。
【0139】
いくつかの実施形態では、患者は、神経系の慢性的進行性障害を患っている。
【0140】
いくつかの実施形態では、患者は、酸化ストレス、神経突起完全性の喪失、アポトーシス、ニューロン喪失、又は/及び炎症反応、認知障害、認知機能低下、行動及び性格の変化、震え、動作緩慢、固縮、姿勢とバランスの障害、自動運動の喪失、協調運動の低下、言語の変化、羞明、目の筋肉の制御困難、衝動性眼球運動の遅延、嚥下障害、眼瞼けいれん、起立性低血圧による失神又は立ちくらみ、めまい、膀胱制御の問題、有形性(well-formed)幻視及び妄想、記憶力、集中力、及び判断力の変化、記憶喪失、うつ病、過敏症、不安、急速眼球運動(REM)睡眠障害、てんかん発作、感覚異常、痺れ又はうずき、けいれん、咀嚼又は飲み込み困難、四肢の筋肉のけいれん及び脱力、及び/又は足や手の穿痛感(prickling)又はうずき(tingling)を有することにより特徴付けられる。
【0141】
いくつかの実施形態では、前記方法は、レボドパ、カルビドパ(LODOSYN)等のドパミン前駆体;セレギリン(ZELAPAR)等のドパミン拮抗薬;セレギリン(ZELAPAR)等のMAOB阻害剤;エンタカポン(COMTAN)等のカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤;ベンズトロピン(COGENTIN)等の抗コリン薬;アマンタジン;イストラデフィリン(NOURIANZ)等のアデノシン受容体拮抗薬(A2A受容体拮抗薬);及び/又はピマバンセリン(NUPLAZID)から選択される1又は複数の追加の治療薬を投与することをさらに含む。
【0142】
薬学的に許容可能な塩及び賦形剤(excipient)
本明細書に記載される組成物(composition)は、無機酸若しくは有機酸と反応して薬学的に許容可能な塩を形成することができる十分に塩基性の官能基、又は無機塩基若しくは有機塩基と反応して薬学的に許容可能な塩を形成することができるカルボキシル基を有することができる。薬学的に許容可能な酸付加塩は、当技術分野で周知のように、薬学的に許容可能な酸から形成される。このような塩としては、例えば、Journal of Pharmaceutical Science, 66, 2-19 (1977)、及びThe Handbook of Pharmaceutical Salts; Properties, Selection, and Use. P. H. Stahl and C. G. Wermuth (eds.), Verlag, Zurich (Switzerland) 2002に列挙される薬学的に許容可能な塩が挙げられ、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
薬学的に許容可能な塩としては、非限定的な例として、硫酸塩、クエン酸塩(citrate)、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩(acid citrate)、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸、グルカロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、パモ酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o-アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン-2-安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、α-ヒドロキシ酪酸塩、ブチン-1,4-ジカルボン酸塩、ヘキシン-1,4-ジカルボン酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、桂皮酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、リンゴ酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、プロピオル酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、セバシン酸塩、スベリン酸塩、p-ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、ナフタレン-1,5-スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、及び酒石酸塩が挙げられる。
【0144】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、カルボン酸官能基等の酸性官能基を有する本開示の組成物(composition)と塩基との塩も指す。適切な塩基としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウム及び亜鉛等の他の金属の水酸化物;アンモニア、及び、非置換又はヒドロキシ置換のモノ、ジ、又はトリアルキルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の有機アミン;トリブチルアミン;ピリジン;N-メチル、N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ-、ビス-、又はトリス-(2-OH-低級アルキルアミン)、例えばモノ-、ビス-、又はトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン、又はトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシル-低級アルキル)-アミン、例えばN,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン又はトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン;N-メチル-D-グルカミン;並びにアルギニン、リジン等のアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、薬学的に許容可能な塩の形態である。
【0146】
医薬組成物及び製剤
いくつかの実施形態では、本開示は、組成物(composition)、例えばGM-CSF及び/又は追加の治療薬、例えば本明細書に記載の治療薬、及び薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0147】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、レボドパ等のドパミン前駆体;ドネペジル(ARICEPT)、リバスチグミン(EXELON)、ガランタミン(RAZADYNE)等のコリンエステラーゼ阻害剤;セロトニン-ドパミン拮抗薬(SDA)、多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)、及びD2部分作動薬(例えば、ABILIFY/アリピプラゾール)を含む非定型抗精神病薬/第二世代抗精神病薬;NMDA受容体拮抗薬であるメマンチン;リルゾール(RILUTEK);NSAID(非ステロイド性抗炎症薬);カフェインA2A受容体アンタゴニスト;及びCERE-120(アデノ随伴ウイルス血清型2-ニュールツリン);脳深部刺激;エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブを含むTNF-αアンタゴニスト;IFN-γ阻害剤;TGF-β調節薬;IL-33阻害剤;IL-18阻害剤;VEGF阻害剤;IL-1阻害剤;病的ベータアミロイド(Ab)プラークの阻害剤、例えば、アデュカヌマブ(ADUHELM)等の病的ベータアミロイド(Ab)特異的モノクローナル抗体;メタセタモール及びアスピリン等のNSAID;リナグリプチン等の糖尿病薬;リラグルチド等のタウ活性化の抑制剤;Abプラーク形成及びタウタンパク質リン酸化を標的とするmiRNA;イチョウ葉(ginkgo biloba)、サルビア・ミルティオリザ(salvia miltiorrhiza)等のα-セクレターゼエンハンサー;黄連(huanglian)やYuanzhi等のβ-セクレターゼ阻害剤;及び上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸、又は誘導体を含む、及び/又はこれらから選択される。
【0148】
本明細書に記載の任意の医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体又はビヒクルを含む組成物の成分として患者に投与することができる。このような組成物は、適切な投与のための形態を提供するために、任意に、適切な量の薬学的に許容可能な賦形剤を含むことができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、医薬賦形剤は、石油、動物、植物、又は合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等の、水及び油等の液体であり得る。医薬賦形剤は、例えば、生理食塩水、アカシアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素等であり得る。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、及び着色剤を使用することができる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤は、患者に投与されるときは無菌である。水は、本明細書に記載の任意の薬剤を静脈内投与する場合に有用な賦形剤である。生理食塩水、デキストロース水溶液、及びグリセロール水溶液も、液体賦形剤、特に注射用溶液の液体賦形剤として使用できる。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノール等も挙げられる。本明細書に記載の任意の薬剤は、必要に応じて、少量の湿潤剤、乳化剤、又はpH緩衝剤を含むこともできる。適切な医薬賦形剤の他の例は、参照により本明細書に組み込まれる、Remington's Pharmaceutical Sciences 1447-1676 (Alfonso R. Gennaro eds., 19th ed. 1995)に記載されている。
【0150】
本開示は、様々な製剤中の記載された医薬組成物(及び/又は追加の治療薬)を包含する。本明細書に記載される任意の医薬組成物(及び/又は追加の治療薬)は、溶液、懸濁液、乳濁液、点滴剤、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル、液体を含むカプセル、ゼラチンカプセル、粉末、持続放出製剤、坐剤、乳濁液、エアロゾル、スプレー、懸濁液、凍結乾燥粉末、凍結懸濁液、乾燥粉末、又は使用に適した他の任意の形態をとり得る。いくつかの実施形態では、組成物はカプセルの形態である。いくつかの実施形態では、組成物は錠剤の形態である。さらに別の実施形態では、医薬組成物はソフトゲルカプセルの形態で製剤される。いくつかの実施形態では、医薬組成物はゼラチンカプセルの形態で製剤される。さらに別の実施形態では、医薬組成物は液体として製剤される。
【0151】
必要に応じて、本発明の医薬組成物(及び/又は追加の治療薬)は、可溶化剤を含むこともできる。また、薬剤は、当技術分野で知られている適切なビヒクル又は送達デバイスを用いて送達することができる。本明細書に概説される併用療法は、単一の送達ビヒクル又は送達デバイスで同時送達することができる。
【0152】
本開示の本医薬組成物(及び/又は追加の治療薬)を含む製剤は、使いやすい単位剤形で提供することができ、薬学の分野で周知の方法のいずれによっても調製することができる。このような方法は一般に、治療薬を、1又は複数の補助的成分を構成する担体と結合させる(bring into association)工程を含む。典型的には、製剤は、治療薬を液体担体、微粉固体担体、又はその両方と均一かつ緊密に結合させ、次いで、必要に応じて、生成物を所望の製剤の剤形に成形することによって調製される(例えば、湿式又は乾式造粒、粉体混合等の後、当該技術分野で公知の従来の方法を使用して錠剤化など)。
【0153】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の医薬組成物(及び/又は追加の治療薬)は、本明細書に記載の投与様式に適合した組成物として通常の手順に従って製剤化される。
【0154】
投与経路としては、例えば、局所、経口、皮内、経皮、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、鼻内、硬膜外、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、直腸内、又は吸入によるものが挙げられる。投与は局所的又は全身的に行うことができる。いくつかの実施形態では、投与は静脈内経路による。投与方法は医師の裁量に任されており、病状の部位に部分的に依存する。ほとんどの場合、投与により、本明細書に記載の任意の薬剤が罹患部位上又は罹患部位内に放出される。
【0155】
いくつかの実施形態では、GM-CSF(及び/又は追加の治療薬)は、静脈内経路を介して投与される。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物(及び/又は追加の治療薬)は、投与に適した組成物として通常の手順に従って製剤化される。静脈内投与の場合、適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、クレモフォールELTM(BASF、ニュージャージー州パーシッパニー)、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。担体は製造及び保管条件下で安定である必要があり、微生物を防いで保存される必要がある。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、及びそれらの適切な混合物等の、溶媒又は分散媒であり得る。
【0157】
非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、及び関節内の注射及び注入)に適した剤形には、例えば、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液等が含まれる。それらはまた、使用直前に滅菌注射媒体に溶解又は懸濁できる滅菌固体組成物(例えば、凍結乾燥組成物)の形態で製造することもできる。これらは、例えば、当技術分野で公知の懸濁剤又は分散剤を含んでもよい。非経口投与に適した製剤成分としては、注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒等の滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;EDTA等のキレート剤;酢酸(acetate)、クエン酸(citrate)、リン酸(phosphate)等の緩衝液;及び、塩化ナトリウム又はデキストロース等の張度を調整するための薬剤が挙げられる。
【0158】
経口送達のための組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、水性又は油性懸濁液、顆粒、粉末、乳濁液、カプセル、シロップ、又はエリキシルの形態であり得る。経口投与される組成物は、1又は複数の薬剤、例えば、口あたりのよい製剤を提供するための、フルクトース、アスパルテーム又はサッカリン等の甘味剤;ペパーミント、ウィンターグリーン油、又はチェリー等の香料;着色剤;及び保存剤などを含むことができる。
【0159】
局所送達のための組成物は、例えば、クリーム、ゲル、軟膏、ローション、スプレー、水性又は油性懸濁液、粉末、又は乳濁液の形態であり得る。皮膚透過性及び浸透の増加は、例えば、本明細書に記載の任意の医薬組成物(及び/又は追加の治療薬)と組み合わせた任意のナノキャリアの使用による、非侵襲的方法によって達成され得る。皮膚はリザーバとして機能することができ、本明細書に記載の組成物(及び/又は追加の治療薬)をより長期間にわたって持続的に送達するために使用することができる。
【0160】
本明細書に記載される任意の医薬組成物(及び/又は追加の治療薬)は、放出制御手段若しくは持続放出手段によって、又は当業者に周知の送達デバイスによって投与することができる。例としては、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;第4,008,719号;第5,674,533号;第5,059,595号;第5,591,767号;第5,120,548号;第5,073,543号;第5,639,476号;第5,354,556号;及び第5,733,556号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されず、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。このような剤形は、例えば、様々な割合で所望の放出プロファイルを提供するために、ヒドロプロピルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、マイクロスフェア、又はそれらの組み合わせを使用して、1又は複数の有効成分の放出制御又は持続制御を提供するのに有用であり得る。本明細書に記載のものを含む、当業者に公知の適切な放出制御又は持続放出製剤は、本明細書に記載の薬剤の活性成分とともに使用するために容易に選択することができる。したがって、本開示は、経口投与に適した単一単位剤形、例えば、限定されないが、放出制御又は持続放出に適合した錠剤、カプセル、ジェルキャップ、及びカプレット等を提供する。
【0161】
活性成分の放出制御又は持続放出は、pHの変化、温度の変化、適切な波長の光による刺激、酵素の濃度又は利用可能性、水の濃度又は利用可能性、又は他の生理学的条件又は化合物を含むがこれらに限定されない、様々な条件によって刺激され得る。
【0162】
他の実施形態では、放出制御システムを治療標的領域の近傍に配置することができ、これにより全身用量の一部のみが必要となる(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release、上記、vol. 2, pp. 115-138 (1984)を参照)。Langer, 1990, Science 249:1527-1533によるレビューで論じられている他の放出制御システムを使用してもよい。
【0163】
医薬製剤は、好ましくは無菌である。滅菌は、例えば滅菌濾過膜を通した濾過により達成することができる。組成物が凍結乾燥される場合、フィルター滅菌は、凍結乾燥及び再構成の前又は後に行うことができる。
【0164】
用法・用量
本開示に従って投与される組成物の実際の用量は、特定の剤形及び投与様式に応じて変化することが理解されるであろう。当業者は、組成物の作用を変更する可能性のある多くの要因(例えば、体重、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、患者の状態、薬剤の組み合わせ、遺伝的性質、及び反応感受性)を考慮に入れることができる。投与は、最大耐用量の範囲内で、連続的に、又は1又は複数の個別の用量で実施することができる。所与の条件群に対する最適な投与速度は、従来の用量投与試験を使用して当業者により確認され得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、GM-CSFは、約125μg、約150μg、又は約200μg、又は約250μg、又は約300μg、又は約350μgの総用量で投与される。いくつかの実施形態では、GM-CSFは、約250μgの総用量で投与される。
【0166】
いくつかの実施形態では、GM-CSFは、約125μg、約150μg、又は約200μg、又は約250μg、又は約300μg、又は約350μgの用量で投与される。
【0167】
いくつかの実施形態では、GM-CSFは1日2回投与される。
【0168】
いくつかの実施形態では、GM-CSFはサルグラモスチムであり、約125μgの用量で1日2回投与される。
【0169】
併用療法と追加の治療薬
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、追加の薬剤、例えば神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬と組み合わせて共投与される。共投与は同時又は逐次的に行うことができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、本開示の追加の神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬とGM-CSFは、同時に患者に投与される。本明細書で使用される「同時に(simultaneously)」という用語は、神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬とGM-CSFが、約60分以下、例えば約30分以下、約20分以内、約10分以内、約5分以内、又は約1分以内の時間間隔をおいて投与されることを意味する。神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬とGM-CSFの投与は、単一の製剤(例えば、追加の治療薬及びGM-CSF組成物を含む製剤)又は別個の製剤(例えば、神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬を含む第1の製剤、及びGM-CSF組成物を含む第2の製剤)の同時投与によって行うことができる。
【0171】
共投与は、投与のタイミングが神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬とGM-CSFの薬理学的活性が時間的に重複し、それにより組み合わせられた治療効果が発揮されるような場合、治療薬を同時に投与する必要はない。例えば、神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬と標的部分、GM-CSF組成物は、逐次的に投与することができる。本明細書で使用される「逐次的(sequentially)」という用語は、神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬とGM-CSFが約60分を超える時間間隔をおいて投与されることを意味する。例えば、神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬とGM-CSFの逐次投与の間の時間は、約60分超、約2時間超、約5時間超、約10時間超、又は約1日超、約2日超、約3日超、約1週間超の間隔、約2週間超の間隔、又は約1か月超の間隔であり得る。最適な投与時間は、代謝、排泄の速度、及び/又は、投与される追加の治療薬及びGM-CSFの薬力学的活性に依存するであろう。神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬、又はGM-CSF組成物のいずれを最初に投与してもよい。
【0172】
共投与はまた、治療薬を同じ投与経路によって患者に投与することを必要としない。むしろ、各治療薬は、任意の適切な経路により投与することができ、例えば非経口的であっても非経口的でなくてもよい。
【0173】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のGM-CSFは、神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬と共投与すると相乗的に作用する。このような実施形態では、GM-CSF組成物及び神経学的薬剤及び/又は追加の治療薬は、薬剤が単剤療法の状況で使用される場合に使用される用量よりも低い用量で投与され得る。
【0174】
生体試料
いくつかの実施形態では、生体試料は、生検検体、組織、及び/又は体液から選択される。
【0175】
いくつかの実施形態では、生体試料は、血液、皮膚試料若しくは組織試料、組織生検検体、ホルマリン固定若しくはパラフィン包埋組織標本、細胞学的試料、培養細胞、血漿、血清、膿、尿、汗、涙、粘液、痰、唾液、及び/又は他の体液から選択される。
【0176】
いくつかの実施形態では、生体試料は、血液、皮膚試料又は組織試料、血漿、血清、膿、尿、汗、涙、粘液、痰、唾液、脳脊髄液(CSF)及び/又は他の体液から選択される。
【0177】
いくつかの実施形態では、生体試料は単球である、又は単球を含む。いくつかの実施形態では、生体試料は単球集団である、又は単球集団を含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、生体試料は、末梢血リンパ球(PBL)、例えば白血球除去法及び遠心エルトリエーションによって単離された末梢血リンパ球(PBL)である。
【0179】
いくつかの実施形態では、生体試料は、リンパ球集団、例えば白血球除去法及び遠心エルトリエーションによって単離されたリンパ球集団である。
【0180】
キット
本開示は、本明細書に記載のバイオマーカーの有無を検出できるキットも提供する。
【0181】
本発明の典型的なキットは、例えば、本明細書に記載のバイオマーカーを検出する薬剤を含む、様々な試薬を含む。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載される様々な検出方法において有用なものを含む、1又は複数の検出用試薬を含む。いくつかの実施形態では、キットは、例えばウェル付きプレート、シリンジ等を含む、評価に必要な材料を含む。いくつかの実施形態では、キットは、記載された試薬の使用を指示するラベル又は印刷された指示書をさらに含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、生体試料中の本バイオマーカーを測定するためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、バイオマーカーに結合する固定化捕捉抗体で被覆されたマルチウェルサンプルプレート;酵素に共有結合しており、バイオマーカーにも結合する検出用抗体;検出用抗体に結合した酵素で触媒される着色又は蛍光産物;及び適切な緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、キットは、バイオマーカーの1つの検出に特異的なELISAプレートを有する。いくつかの実施形態では、キットは、LRRK2、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数、例えば、約1、又は約2、又は約3、又は約4、又は約5個を検出する。
【0183】
いくつかの実施形態では、(a)HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、LRRK2、IKBGG、及びATP5F1D、ATP5PB、ATP5PF、ATP5PO、COX5B、COX7C、NDUFA2、NDUFB1、NDUFB4、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS6、NDUFS7、及びSDHA、ATG3、ATG7、及びGABARAPL2のうちの1又は複数、例えば、約1、又は約2、又は約3、又は約4、又は約5、約10、約15、又は約20個の検出に適した核酸又はタンパク質のアレイと、(b)使用説明書と、を含む、コンパニオン診断、コンプリメンタリー診断、又は共診断検査キットが提供される。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法の1又は複数で使用するための試薬及び説明書を含む、コンパニオン診断、コンプリメンタリー診断、又は共診断検査キットが提供される。
【0185】
配列
配列番号1は、野生型GM-CSFのアミノ酸配列である:
【0186】
APARSPSPSTQPWEHVNAIQEARRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEPTCLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQIITFESFKENLKDFLLVIPFDCWEPVQE
【0187】
配列番号2は、サルグラモスチムのアミノ酸配列である:
【0188】
APARSPSPSTQPWEHVNAIQEALRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEPTCLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQIITFESFKENLKDFLLVIPFDCWEPVQE
【0189】
配列番号3は、モルグラモスチムのアミノ酸配列である:
【0190】
APARSPSPSTQPWEHVNAIQEARRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEPTCLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQIITFESFKENLKDFLLVIPFDCWEPVQE
【0191】
配列番号4は、レグラモスチムのアミノ酸配列である:
【0192】
APARSPSPSTQPWEHVNAIQEARRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEPTCLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQTTFESFKENLKDFLLVIPFDCWEPVQE
【0193】
定義
以下の定義は、本明細書に開示される本発明に関連して使用される。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0194】
「有効量」は、コロナウイルス感染症の治療に有効な薬剤と関連して使用される場合、コロナウイルス感染症を治療又は軽減するのに有効な量である。
【0195】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、又は「the」は、1又は複数を意味し得る。さらに、用語「約」は、参照される数値表示に関連して使用される場合、参照される数値表示プラスマイナスその参照される数値表示の10%までを意味する。例えば、「約50」という言語は45から55の範囲をカバーする。
【0196】
本明細書で言及する場合、特に指定しない限り、すべての組成百分率は全組成物の重量によるものである。本明細書で使用される場合、「含む(include)」という語及びその変形は、非限定的であり、リスト内の項目の記載がこの技術の物質、組成物、デバイス、方法に有用であり得る他の項目を除外するものではないことを意図している。同様に、「~できる(can)」及び「~でもよい(may)」との語及びその変形は、非限定的であり、ある実施形態が特定の要素又は特徴を含むことができる(can)又は含んでもよい(may)という記載が、それらの要素又は特徴を含まない本技術の他の実施形態を除外するものではないことを意図している。
【0197】
本明細書では、含む(including)、含む(containing)、又は有する(having)等の用語の同義語としての「含む(comprising)」というオープンエンドな用語が、本発明を説明及び請求するために使用されるが、本発明又はその実施形態は、代替的に、「からなる(consisting of)」又は「本質的に~からなる(essentially consisting of)」などの代替用語を用いて説明し得る。
【実施例】
【0198】
実施例1:サルグラモスチム処置後の単球プロテオミクスプロファイル
サルグラモスチム処置後の単球プロテオミクスプロファイルの変化を詳細に理解するために、処置の2か月後及び6か月後に、差次的に調節されたタンパク質の機能的エンリッチメント解析及びパスウェイエンリッチメント解析を行った。2か月目に、サルグラモスチム処置により、骨髄性白血球媒介免疫(p=1.33E-08)、免疫応答に関連する骨髄細胞活性化(p=1.30E-07)、及び免疫応答に関連する白血球活性化(p=7.25E-06)を含む複数の免疫プロセスがエンリッチされた(
図1A)。京都遺伝子ゲノム百科事典(KEGG)及びReactome分析により、それぞれ、ファゴソーム(p=2.74E-04)及び自然免疫系(p=1.29E-07)のエンリッチメントが示された(
図1A)。加えて、インターロイキン-8(IL-8)(p=3.64E-02)及び腫瘍壊死因子(TNF)産生経路(p=1.73E-02)の制御を含む炎症プロセスのエンリッチメントがみられた(
図1A)。さらに、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)により、神経炎症シグナル伝達経路(p=1.43E-04)、IL-8経路(p=8.8E-04)、インテグリン結合キナーゼ(ILK)経路(p=2.8E-02)、一酸化窒素及び活性酸素種(ROS)経路(p=3.35E-02)の阻害がみられた(
図1A)。また、サルグラモスチムは、エンドソーム(p=3.14E-02)、ゴルジ小胞(p=1.60E-03)、小胞体-ゴルジ小胞媒介性(p=1.02E-02)、リソソームへのタンパク質標的化(p=2.78E-02)、及び後期エンドソームからリソソームへの輸送機構の制御(p=3.88E-03)に影響を与えた(
図1A)。細胞成分及びReactome分析により、分泌小胞(p=1.14E-13)、エンドサイトーシス小胞(p=2.37E-05)、輸送小胞(p=1.18E-03)、食胞(p=5.16E-03)、ゴルジ関連小胞(p=9.24E-03)、リソソーム(p=2.59E-09)、及びトランスゴルジネットワーク小胞出芽(p=4.19E-02)のエンリッチメントが示された(
図1A)。サルグラモスチム処理はまた、mRNAプロセシングの制御(p=2.16E-05)、及びRNAスプライシングの制御(p=3.96E-04)等のRNAプロセシングに関連する生物学的プロセスの変化を誘導した(
図1A)。同様に、KEGG及びReactomeテストでは、RNAプロセシング(RNA輸送を含む、p=3.70E-02)、mRNAスプライシング(メジャー経路(major pathway)及びマイナー経路(minor pathway)、それぞれp=3.54E-05及びp=4.31E-02)、及びスプライセオソーム(1.24E-03)に影響する経路が示された(
図1A)。
【0199】
サルグラモスチム処置6か月後のプロテオミクス及びscRNA-seq分析でも、単球-マクロファージ媒介免疫(p=6.03E-34)、活性化(p=2.29E-35)、及び自然免疫応答(p=2.91E-27)を含む免疫プロセスのエンリッチメントが示された。さらに、白血球活性化の調節(p=5.05E-03)、リンパ球走化性(p=5.02E-03)、及びリンパ球活性化の調節(p=6.540E-04)が示された(
図2A)。同様に、プロテオミクスReactome分析により、自然免疫(p=3.66E-19)及びファゴソーム形成(p=3.28E-02)のエンリッチメントが示された(
図2A及び
図2B)。6か月後のscRNA-seqデータセットのIPAにより、ケモカインシグナル伝達(p=1.84E-04)、樹状細胞成熟(p=2.03E-04)、及びファゴソーム形成(p=3.73E-07)のエンリッチメントが示された(
図2A及び
図2B)。さらに、ROS代謝の制御(p=3.22E-03)、酸化ストレス(p=7.07E-04)、及び酸素含有化合物(p=1.16E-03)のエンリッチメントも見られた(
図2A)。これらのデータは、サルグラモスチム処置後の抗酸化作用を示唆している。興味深いことに、6か月後のプロテオミクスデータのIPAは酸化的リン酸化の阻害を示した(p=1.36E-06)。これは、サルグラモスチム処置後にROS産生の制御が起こり得ることを示唆している(
図2B)。さらに、6か月後のプロテオミクスデータにより、Reactome分析においてエンリッチされた呼吸電子伝達経路を担う細胞小器官(p=5.29E-15)としてのミトコンドリア機能(p=8.26E-40)のエンリッチメントが示された(
図2A)。加えて、プロテオミクス及びscRNA-seqデータセットの両方の細胞成分分析により、分泌小胞(p=1.59E-38)及び細胞質小胞(p=6.56E-03)のエンリッチメントが示された(
図2A)。6か月後のプロテオミクスデータセットにより、オートファジー(p=4.63E-04)及びマクロオートファジー(1.51E-05)(生物学的プロセス解析)のエンリッチメント、及びサーチュインシグナル伝達経路の活性化(IPA、p=2.19E-11)が示された(
図2A及び
図2B)。6か月後のscRNA-seqデータにより、炎症反応の制御に関連する経路のエンリッチメント(p=5.87E-03)も示され、IL-10は細胞膜関連炎症性メディエーターを負に制御し(p=9.67E-03)、受容体ACKR2はほとんどの炎症性CCケモカインに結合する(p=3.16E-03)(
図2A)。
【0200】
例2:サルグラモスチム処置後の遺伝子及びタンパク質の発現
ddPCR及びウェスタンブロッティングを使用して、サルグラモスチム処置後の疾患の進行及び治療応答を予測するためのバイオマーカーとして、遺伝子及びタンパク質の発現を評価した。個々の対象のベースラインと、サルグラモスチム処置開始2か月後及び6か月後のLRRK2、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、及びGABARAPL2の治療タンパク質発現とを比較した。サルグラモスチム開始後、2か月目では、4/5の患者がLRRK2及びHMOX1のタンパク質発現の有意な減少を示し、3/5の患者がTLR2タンパク質の発現の有意な減少を示した(
図3A)。さらに、3/5の患者がTLR8及びNF-κBのタンパク質発現の減少を示し、1/3の患者では有意な下方制御が見られた。TLR8については被験者2005、NF-κBについては被験者2003である(
図3A)。さらに、1人の患者はATG7タンパク質の発現増加を示し(被験者2003)、同じ被験者においてGABARAPL2タンパク質の発現が有意に増加した(
図3A)。6か月目では、4/5の患者がLRRK2及びTLR2の有意な下方制御を示した(
図3B)。注目すべきことに、5/5の患者がHMOX1のタンパク質発現の減少を示した。前記下方制御は患者の3/5において有意であった(
図3B)。同様に、患者の5/5がNF-κB発現の減少を示し、前記下方制御は患者の4/5で有意であった(
図3B)。さらに、TLR8タンパク質の下方制御が2/5の患者で観察された(
図3B)。被験者2003のみがATG7タンパク質の限定的な発現増加を示し、一方、3/5の患者ではGABARAPL2の上方制御を示し、2/3の患者で有意に近かった(被験者2005及び2006)(
図3B)。遺伝子レベルで、個々の患者のベースラインと、サルグラモスチム投与開始2か月後及び6か月後のLRRK2、HMOX1、TLR2、TLR8、RELA、ATG7、及びGABARAPL2の治療遺伝子発現を比較した。2か月目で、サルグラモスチム処置後、5/5の患者がLRRK2及びHMOX1の遺伝子発現の有意な減少を示し、3/5の患者がTLR2及びTLR8遺伝子の発現の有意な減少を示した(
図3C)。4/5の患者がNF-κBの遺伝子発現の有意な減少を示したにもかかわらず、下方制御はベースラインと比較して15%を超えなかった(
図3C)。興味深いことに、4/5の患者はATG7遺伝子の有意な上方制御を示したが、2/4人の被験者(被検者2005及び2006)では上方制御がベースラインと比較して17%を超えなかった(
図3C)。同様に、3/5の患者はGABARAPL2遺伝子の有意な上方制御を示したが、上方制御は3人の被験者においてベースラインと比較して17%を超えなかった(
図3C)。6か月目では、5/5の患者がHMOX1及びTLR2遺伝子の有意な下方制御を示した(
図3D)。3/5及び4/5の患者は、それぞれLRRK2及びTLR8遺伝子の有意な下方制御を示した(
図3D)。2/5の患者のみが、ベースラインと比較して5%を超えない下方制御でNF-κBの遺伝子発現の有意な減少を示した(
図3D)。興味深いことに、4/5の患者がATG7遺伝子の有意な上方制御を示した(
図3D)。2ヶ月目のddPCRデータによれば、3/5の患者がGABARAPL2の遺伝子発現の有意な増加を示したが、2/3人の被験者において、上方制御はベースラインと比較して6%を超えなかった(被検者2004及び2005)(
図3D)。
【0201】
例3:サルグラモスチム処置後の統合されたscRNA-seq及びプロテオミクスデータ
被験者2003、2004、及び2005のscRNA-seqデータセットとプロテオミクスデータセットとの間で重複する遺伝子を、各データセットで特定された遺伝子の数と両データセットで重複する遺伝子の数を示すベン図で示す(
図4A)。scRNA-seqとプロテオミクスで重複する遺伝子の間のピアソン積率相関係数(r=0.3582、p=8.9627E-77)は、両方のデータセットにおける重複する遺伝子間の有意な中等度の正の関連を示した(
図4B)。これは、両データセットの複数の遺伝子の発現が同じ方向に変化(上方制御又は下方制御)したことを示している。
【0202】
例4:ウェスタンブロットとddPCRによる臨床MDS-UPDRSIIIスコアとの相関
潜在的なバイオマーカーの発現(遺伝子又はタンパク質レベル)とPD患者のMDS-UPDRSIIIスコアとの相関関係を利用して、サルグラモスチムのような免疫調節因子による療法後の疾患進行と治療応答を予測する臨床バイオマーカーを使用する可能性を特定できる可能性がある。そのため、MDS-UPDRSIIIスコアの生スコア及びその変化と、選択されたバイオマーカーのタンパク質レベルとの相関分析を行った。MDS-UPDRSIIIスコアの変化と、LRRK2(r=0.3534、p=0.017)、HMOX1(r=0.0881、p=0.565)、TLR8(r=0.1531、p=0.315)、及びNF-κB(r=0.4258、p=0.004)と、の間に正の相関が示され(
図5A)、これらのタンパク質のいずれかの発現が減少すると運動機能が改善されることが示唆される。また、MDS-UPDRSIIIスコアの変化と、ATG7(r=-0.2440、p=0.106)及びGABARAPL2(r=-0.1376、p=0.367)のタンパク質レベルと、の間に負の相関が示された(
図5A)。同様に、生のMDS-UPDRSIIIスコアと、LRRK2(r=0.2659、p=0.077)、HMOX1(r=0.1109、p=0.468)、TLR2(r=0.3704、p=0.012)、及びNFκB(r=0.1847、p=0.224)のタンパク質レベルと、の間に正の相関が示された(
図5B)一方、生のMDS-UPDRSIIIスコアと、ATG7(r=-0.3002、p=0.045)及びGABARAPL2(r=-0.1110、p=0.468)のタンパク質レベルと、の間には負の相関が示された(
図5B)。LRRK2及びHMOX1はいずれも、MDS-UPDRSIIIスコアの変化を、12.5%のMDS-UPDRSIIIスコアの変化の変動で予測することができた(
図5C)。ただし、このモデルでは、LRRK2がHMOX1よりも強力な影響をもたらした(β=0.3594、p=0.0222)。LRRK2及びNF-κBの影響は有意であり(p=0.0139)、MDS-UPDRSIII値の変化は18.4%であった(
図5C)。NF-κBとGABARAPL2の影響は、MDS-UPDRSIIIスコアの変化に有意な影響を示し(p=0.0128)、MDS-LIPDRSIIIスコアの変化に対して18.7%の影響を及ぼした(
図5C)。TLR2及びTLR8の影響は、MDS-UPDRSIIIスコアの変化に対して有意な影響を示さず(p=0.567)(
図5C)、TLR8及びATG7はMDS-UPDRSIIIスコアの変化に対して影響を示さなかった(p=0.2403)(
図5C)。生のMDS-UPDRSIIIスコアに対する影響についてのさらなる分析は、LRRK2/HMOX1、LRRK2/NF-κB、及びNF-κB/GABARAPL2による有意な影響を示し(それぞれ、p=0.2093、0.2123、及び0.4761)(
図5D)、一方、他の2対の予測因子(TLR2/TLR8及びTLR8/ATG7)は、生のMDS-UPDRSIIIスコアに対して有意な影響を示した(それぞれp=0.0314及びp=0.0046)(
図5D)。
【0203】
同様に、MDS-UPDRSIIIスコアと選択されたバイオマーカーの遺伝子発現との間に相関関係が得られた。これには、LRRK2(r=0.2469、p=0.057)、HMOX1(r=0.3193、p=0.013)、TLR2(r=0.4388、p=0.000)、TLR8(r=0.0385、p=0.770)の、MDS-UPDRS-IIIスコアの変化と間の正の相関が含まれる(
図6A)。それぞれ、遺伝子発現の低下と運動機能の改善との関係を示した。MDS-UPDRSIIIスコアの変化と、ATG7(r=-0.5662、p=0.000)及びGABARAPL2(r=-0.0360、p=0.785)との間には負の相関が認められた(
図6A)。それぞれ、遺伝子発現の増加と運動機能の改善との間の関係を示した。同様に、生のMDS-UPDRSIIIスコアと、LRRK2(r=0.3299、p=0.010)、HMOX1(r=0.1598、p=0.223)、及びTLR2(r=0.3665、p=0.004)と、の間に反復相関(replicate correlation)が見られた(
図6B)。生のMDS-UPDRSIIIスコアと、ATG7(r=-0.5960、p=0.000)及びGABARAPL2(r=-0.0115、p=0.930)との間には負の相関が確認された(
図6B)。データは、両方の予測因子において、MDS-UPDRSIIIスコア変化の11.2%の変動を伴って有意(p=0.0336)であることを証明した(
図6C)。HMOX1は有意性には達しなかったが、より強力な予測因子であった(β=0.2611、p=0.0747)。ddPCR HMOX1発現の各単位増加(unit increase)は、MDS-UPDRSIIIスコアの変化を0.0409ポイント増加させた。LRRK2及びTLR2の影響は有意であり(p=0.0012)、MDS-UPDRSIII値の変化は21%であった(
図6C)。TLR2は、LRRK2よりも大きな影響をもたらした(β=0.4013、p=0.0018)。このモデルは、ddPCR TLR2発現の1単位増加(unit increase)により、MDS-UPDRSIIIスコアの変化が0.0503ポイント増加することを予測した。一方、LRRK2及びTLR8は、MDS-UPDRSIIIスコアの変化に対して有意な影響を示さなかった(p=0.1449)(
図6C)。しかしながら、LRRK2とATG7はMDS-UPDRSIIIスコアの変化と関連しており(p=1.12E-05)、スコア変化に対する影響は33%であった(
図6C)。ATG7はLRRK2よりも大きな影響(P=-0.6326、p=0.0000)をもたらし、ATG7の1単位のddPCR相対発現の増加は、MDS-UPDRSIIIスコア変化に0.0400ポイント影響した。TLR2及びTLR8の影響は有意であり(p=0.0009)、MDS-UPDRSIIIスコアに21.8%変化があった(
図6C)。TLR2は、TLR8よりも有意な影響をもたらした(β=0.5124、p=0.0002)。このモデルは、TLR2のddPCR相対発現の1単位増加(unit increase)により、MDS-UPDRSIIIスコアの変化が0.0643ポイント増加すると予測する。TLR2及びATG7は、MDS-UPDRSIIIスコアの変化と有意に関連しており(p=1.11E-05)、33%のスコアの影響があった(
図6C)。ATG7はTLR2を上回ってMDS-UPDRSIIIスコアの変化に最大の影響を与えた(β=-0.4850、p=0.0012)。ここでは、ATG7のddPCRの1単位増加(unit increase)により、MDS-UPDRSIIIスコアの変化が0.0307ポイント減少した。TLR8及びATG7もまた、MDS-UPDRSIIIスコアの変化に対して有意な影響を示し(p=3.8E-06)、35.5%の影響を示した(
図6C)。
【0204】
均等物
当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書に具体的に説明される実施形態との多数の均等物を認識する又は確認することができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0205】
参照による組み込み
本明細書で参照されるすべての特許及び出版物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0206】
本明細書で使用される場合、すべての見出しは単に整理のためのものであり、いかなる形でも本開示を限定することを意図したものではない。個々のセクションの内容は、すべてのセクションに同様に適用できる。
【配列表】
【国際調査報告】