(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】高いオフスペキュラーLiDAR反射率および高い明度フロップを有するコーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 7/61 20180101AFI20240905BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C09D7/61
C09D201/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514412
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022074114
(87)【国際公開番号】W WO2023031220
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202141039874
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(32)【優先日】2022-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】カヤルカッテ,マノイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャナ,ラジクマール
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チンリン
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,ドナルド エイチ
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG121
4J038DA162
4J038DD001
4J038DG001
4J038DG302
4J038HA066
4J038HA166
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA03
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA19
4J038PA00
4J038PA01
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、(A)少なくとも1つのフィルム形成ポリマー(A1)、および(A1)が外部架橋性である場合には、少なくとも1つの架橋剤(A2)、(B)少なくとも1つの金属効果顔料(B)、(C)45°においてCIELABシステムによる値L*<17、a*>-4且つ<9、およびb*>-4且つ<9を有する少なくとも1つの非カーボンブラックLiDAR反射顔料(C1)と、45°においてCIELABシステムによる値L*>85、a*>-2且つ<2、およびb*>0且つ<6を有する少なくとも1つの白色LiDAR反射顔料(C2)とを含む、顔料混合物(C)、(D)成分(D)として水および/または1つ以上の有機溶媒、を含み、(C1)が組成物の総質量に対して0.005~2.0質量%の範囲で存在し、そして(C2)が組成物の総質量に対して0.20~10.0質量%の範囲で存在する、ベースコート組成物に関する。本発明はさらに、ベースコート組成物を利用するコーティングフィルムの形成方法、このようにして得られたコーティングフィルムおよび少なくとも部分的にコーティングされた基材、およびLiDAR用途におけるコーティングの使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
(A) 少なくとも1つのフィルム形成ポリマー(A1)、および(A1)が外部架橋性である場合には、少なくとも1つの架橋剤(A2)、
(B) 少なくとも1つの金属効果顔料(B)、
(C) 顔料混合物(C)であって、
45°においてCIELABシステムによる値L
*<17、a
*>-4且つ<9、およびb
*>-4且つ<9の完全隠蔽を有するマストーン色を有する、少なくとも1つの非カーボンブラックLiDAR反射顔料(C1)または非カーボンブラックLiDAR反射顔料の組み合わせ(C1)、および
45°においてCIELABシステムによる値L
*>85、a
*>-2且つ<2、およびb
*>0且つ<6の完全隠蔽を有するマストーン色を有する、少なくとも1つの白色LiDAR反射顔料(C2)または白色LiDAR反射顔料の組み合わせ(C2)
を含む、顔料混合物(C)、
(D) 成分(D)として、水および/または1つ以上の有機溶媒、
を含むベースコート組成物であって、
(C1)が、該組成物の総質量に対して0.005~2.0質量%の範囲で存在し、そして
(C2)が、該組成物の総質量に対して0.20~10.0質量%の範囲で存在する、ベースコート組成物。
【請求項2】
フィルム形成ポリマー(A1)が、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレートおよび/または前記ポリマーの構造単位のコポリマーからなるポリマーの群から選択され、そして(A1)が外部架橋性である場合、(A2)が、アミノプラスト樹脂、ブロック化ポリイソシアネートおよび遊離ポリイソシアネートからなる架橋剤の群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のベースコート組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの金属効果顔料(B)がプレートレット形状であり、そしてISO13320-1に従ってレーザー粒度分析によって決定して5μm~100μmの範囲の中央粒径(D50)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のベースコート組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの金属効果顔料(B)が、前記ベースコート組成物中に、前記ベースコート組成物の総質量に対して1~10質量%の量で含まれることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のベースコート組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの金属効果顔料(B)がアルミニウム又はその合金であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のベースコート組成物。
【請求項6】
非カーボンブラックLiDAR反射顔料(C1)が、鉄/クロム酸化物化合物、マンガンフェライト黒色酸化物、カルシウムマンガンチタンオキシドおよびクロムを含まない化合物からなる群から選択され、および/または白色LiDAR反射顔料(C2)が、チタン/アルミニウム/シリコンオキシドベースの顔料および棒状アルミニウムドープ二酸化チタン顔料からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のベースコート組成物。
【請求項7】
(C2)対(C1)の質量比が10~30であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のベースコート組成物。
【請求項8】
前記ベースコート組成物の総質量に対する固形分含量が5~85質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のベースコート組成物。
【請求項9】
成分(A1)、(A2)、(B)、(C)及び(D)の各成分と異なる1つ以上のさらなる成分(E)を、前記ベースコート組成物の総質量に対して0.01~25質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のベースコート組成物。
【請求項10】
基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティングフィルムを形成する方法であって、少なくとも工程(a)、すなわち
(a) 請求項1から9のいずれか一項に記載のベースコート組成物を、任意にプレコートされた基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に適用して、前記基材の前記表面上にコーティングフィルムを形成する工程
を含む、方法。
【請求項11】
基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティングを形成する方法であって、請求項10で定義した少なくとも工程(a)、および少なくとも工程(b)、すなわち
(b) 工程(a)の実施後に得たコーティングフィルムを硬化させて、前記基材の前記表面上にコーティングを形成する工程
を含む、方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載のコーティング組成物から、または請求項10に記載の方法により得ることができるコーティングフィルム、または請求項1から9のいずれか一項に記載のコーティング組成物から、または請求項11に記載の方法により得ることができるコーティング。
【請求項13】
請求項11に記載の方法により得ることができる少なくとも部分的にコーティングされた基材。
【請求項14】
請求項11に記載のコーティング方法を行う前に、NIR-反射性ではない、または本質的にNIR-反射性ではないことを特徴とする、請求項13に記載の少なくとも部分的にコーティングされた基材。
【請求項15】
請求項12に記載の本発明によるコーティング、および/または請求項13に記載の本発明による少なくとも部分的にコーティングされた基材、および/または前記基材から製造された物体の、車両およびその部品に関するLiDAR視認性用途における使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属効果顔料および近赤外反射顔料ブレンドを含むベースコート組成物に関する。本発明はさらに、ベースコート組成物を利用するコーティングフィルムの形成方法、このようにして得られたコーティングフィルムおよび少なくとも部分的にコーティングされた基材、およびLiDAR用途におけるコーティングの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転車両およびADAS(先進運転支援システム)搭載車両に関する技術が進歩している。ADAS搭載車両は、運転ストレスの低減、事故件数の減少、燃費の向上などを実現する。
【0003】
典型的には、このような技術では車両の周囲にある物体を検出する必要がある。検出システムは一般に、センサー、カメラ、レーダー、超音波、およびレーザーを含み、車両がそのような物体の周囲を安全に航行できるように、障害物を検出して位置を特定する。検出システムの中には、長距離または非理想的な環境(例えば、低照度条件、霧、雨および雪などの悪天候、または空気中の光散乱性粒子(例えば、スモッグおよびほこり)のある他の条件)で、物体を検出する能力に限界があるものがある。このような制限により、車両が障害物から安全に航行することができなくなる場合がある。
【0004】
ADASは、位置および速度を決定するために、光学的または電磁的手段によるリモート・センシング技術に大きく依存している。
【0005】
LiDAR(光検出および測距)は、このような車両に物体認識の主なソースとして配備することができるリモートセンシング技術である。LiDARは、レーザー光(典型的には905nmまたは1550nm)で周囲の環境を照射することによって、進路上にある物体までの距離をリアルタイムでマッピングし、ソフトウェアとペアリングして近くの物体に安全に反応することができる。例えば、物体が車両に近づきすぎた場合、ソフトウェアはその物体との衝突を回避するように反応することができる。LiDARは近赤外光(近IR光またはNIR光)をその照明源として利用するので、この技術はいくつかの課題を克服しなければならない。
【0006】
多くの明るい色の物体は比較的容易にこの種の光を反射するが、特に暗色および透明な物体は光を吸収するまたは通過させるので、解像度が低下し、LiDARによって物体が十分に観測されずに、このようなシステムを装備した車両に回避される可能性がある。
【0007】
このことは、LiDAR装置とは別に、測定の精度に関する重要な要因のひとつが、照射される物体の表面であることを示している。自動車および他の車両の場合、表面は通常、LiDAR反射率を決定する上で重要な役割を果たす多層コーティングで覆われている。
【0008】
物体が光を反射する能力は、そのバルクおよびその表面の特性に依存し、鏡面反射または拡散として現れる。光の鏡面反射は、光源から一方向に入射した光が、入射波として反射面に垂直な面とは逆の角度で一出射方向に反射される場合に起こる。拡散反射は、光源から一方向に入射した光が、多くの角度で反射する場合に起こる。理論的には、鏡面反射と拡散反射はどちらも車両のLiDAR技術に利用できるが、実際にはかなり難しい。鏡面反射では、輝度の多くは、入射角と反対の角度で観測される。従って、光源側に検出器を配置した移動車両では、このことが、入射角が縦列した光源と検出器の位置関係からずれる場合に、問題になり得る。これは、入射角が反射面に垂直な面から45°以上の場合である。対照的に、拡散反射は全方向から等価な輝度を示すため、この懸念を軽減することができ、すべての角度で検出することが可能となる。
【0009】
依然として、現在のコーティングのほとんどは、耐久性および美観を向上させるために車体などの基材に塗布されるが、通常は、LiDAR技術に対する視認性を高める目的で近IR光を乱反射させる十分な機能を付与しない。
【0010】
近年、特に自動車に適用される多層コーティングのLiDAR反射率を改善するために、いくつかのアプローチが開発された。これらのアプローチを理解するためには、自動車用多層コーティングの典型的な構造を考慮する必要がある。基材から始まる車体およびその部品上のコーティング層は、典型的には、化成コーティング層、電着コーティング層、例えば好ましくはカソード電着層、プライマー層(フィラー層とも呼ばれる)、ベースコート層、およびベースコート層の上にはトップコートとしてのクリアコート層である。前述のプライマー層、ベースコート層およびクリアコート層は、しばしばトリコートと呼ばれる。
【0011】
第1のアプローチでは、NIR反射顔料がベースコート層に含有されている。NIR光は、非NIR吸収保護クリアコート層を通過し、そしてベースコート層のNIR-反射性顔料(複数可)によって反射される。別の第2のアプローチでは、NIR光は非NIR吸収保護クリアコート層と、非NIR吸収着色顔料を含有し得るベースコート層とを通過するが、下にあるプライマー層又はプライマー層が存在しない場合、基材により反射される。
【0012】
両アプローチとも、ソリッドカラーの多層コーティングに対しては良好に機能するが、金属効果顔料をベースコート層に含有させて多層コーティングにいわゆる明度フロップ効果を付与する場合、特に、明度フロップが銀-金属多層コーティングの形態で付与される場合には問題が生じる。用語「明度フロップ」(本明細書では単にフロップ)は、金属コーティング表面から異なる角度で反射される光の量または色相の差を指す。フロップは、コーティング層中の効果顔料粒子の粒径および分布、粒子形状および配向に依存する。フロップ効果の程度は、いわゆるフロップインデックスで表すことができ、これはプレートレット形状の顔料を含有する金属コーティングを視野角の範囲内で回転させたときの反射率の変化の尺度である。フロップインデックス0はソリッドカラーを示し、一方で非常に高いフロップは、15を超えるフロップインデックスになることもある。
【0013】
一般的に、プレートレット形状の粒子は大きいほど良好な反射体であり、より高いフロップインデックスおよび明るさにつながる一方、粒子は小さいほど、端で散乱される光の量が無指向性反射として増加するので、より少ないフロップを示す。さらに粗い金属顔料では、個々の粒子がより見えるようになり、粒状感または質感につながる。
【0014】
このように、最も望ましいプレートレット形状の金属顔料は、典型的には反射性が高く、このような顔料を使用して得られるコーティングは、典型的には高いフロップインデックスを有するが、非常に鏡面反射率も有するので、オフスペキュラー角範囲では反射率が低く、光源/検出器システムの直接正面ではなく、その斜めまたは隣接する車線に存在する車両からのLiDAR反射率に悪影響を及ぼす。
【0015】
その結果、従来の金属顔料含有コーティング組成物を使用して得られたコーティングは、9以上のかなり高いフロップインデックスを示すが、45°の入射角におけるそのLiDAR反射率は、典型的には9%未満、または5%未満などであり、はるかに低い。一般的に、フロップが高いほどLiDAR反射率は低くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って本発明は、従来の銀-金属コーティングとほぼ同じレベルで明度フロップを保持する一方で、そのようにコーティングされた物体のLiDAR検出に対する視認性を改善することを目的とする。これは、プレートレット形状の金属顔料を含むベースコート組成物を提供することによって達成され、該ベースコート組成物を用いて得られたコーティングは高いフロップインデックスを有し、そして該ベースコート組成物は、フロップインデックスに影響を及ぼさない、またはわずかしか影響を及ぼさないが、コーティング組成物から形成されたコーティング層に著しく増加したLiDAR反射率をもたらす傾向のある材料成分をさらに含有する。さらに、従来の銀-金属ベースコート組成物に添加される材料成分は、そのようなベースコート層を含む多層コーティングの優れた外観を可能とするかなり低い隠蔽力を有し、この外観には、その多層コーティングのプライマー層によって提供される色効果が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は、以下の成分、
(A) 少なくとも1つのフィルム形成ポリマー(A1)、および(A1)が外部架橋性である場合には、少なくとも1つの架橋剤(A2)、
(B) 少なくとも1つの金属効果顔料(B)、
(C) 顔料混合物(C)であって、
45°においてCIELABシステムによる値L*<17、a*>-4且つ<9、およびb*>-4且つ<9の完全隠蔽を有するマストーン色を有する、少なくとも1つの非カーボンブラックLiDAR反射顔料(C1)または非カーボンブラックLiDAR反射顔料の組み合わせ(C1)、および
45°においてCIELABシステムによる値L*>85、a*>-2且つ<2、およびb*>0且つ<6の完全隠蔽を有するマストーン色を有する、少なくとも1つの白色LiDAR反射顔料(C2)または白色LiDAR反射顔料の組み合わせ(C2)
を含む、顔料混合物(C)、
(D) 成分(D)として、水および/または1つ以上の有機溶媒、
を含むベースコート組成物を提供することによって達成され、
(C1)は、組成物の総質量に対して0.005~2.0質量%の範囲で存在し、そして
(C2)は、組成物の総質量に対して0.20~10.0質量%の範囲で存在する。
【0018】
本明細書で使用される場合、顔料は、入射角0°で少なくとも15%のLiDAR反射率、入射角45°で少なくとも8.5%のLiDAR反射率、および入射角60°で少なくとも6%のLiDAR反射率を示す場合、LiDAR反射顔料であるとみなされる。あらゆるLiDAR測定は、本発明の方法のセクションに記載のように実施される。
【0019】
用語「完全遮蔽のマストーン色」は、測色において一般的に使用されそして理解されるように使用され、理解される。「マストーン色」とは、黒色および白色の基材(典型的には、部分的に黒色および部分的に白色であるいわゆる「チェッカータイル」が使用される)を完全に覆うように、それぞれの顔料を含有するコーティング層を、黒色および白色の色情報が透過しない層厚で適用することによって得られる色として定義される。それぞれの層厚は、L*、a*およびb*の測色データが、基材のコーティングされた黒色部分および白色部分それぞれについて同じになり、その結果、基材の色固有の情報が顔料の固有の値と混同されないことが保証されるまで、コーティング組成物を繰り返し噴霧することによって得られる。さらなる詳細は、本発明の方法のセクションで開示する。
【0020】
LiDAR反射率、入射角および本明細書で使用される他の用語の理解を容易にするため、
図1を参照されたい。
図1において、1およびΘ
Iはトランスミッターおよび入射角を表し、2およびΘ
Rは鏡面反射および反射角を表し、そして3はレシーバー(対向角)を表す。
【0021】
本発明のさらなる主題は、基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティング層を形成する方法であり、前記方法は、少なくとも工程(a)、すなわち
(a) 先行する請求項のいずれか一項に記載の本発明のベースコート組成物を、任意にプレコートされた基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に適用して基材の表面上にコーティング層を形成する工程
を含む。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、本発明によるコーティング組成物から、または本発明による方法によって得ることができるコーティング層である。
【0023】
本発明のさらなる目的は、本発明による方法によって得ることができる少なくとも部分的にコーティングされた基材である。
【0024】
本発明の別の目的は、LiDAR視認性用途における、特に自律システム、例えば自動運転車両およびADAS搭載車両のための、本発明のコーティング組成物の使用方法である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、トランスミッターおよび入射角、鏡面反射および反射角、そしてレシーバー(対向角)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ベースコート組成物
本発明のベースコート組成物(本明細書では本発明のコーティング組成物ともいう)は、溶媒ベースのベースコート組成物(以下に溶媒系ベースコート組成物ともいう)または水性ベースコート組成物(以下に水系ベースコート組成物ともいう)とすることができる。好ましくは、コーティング組成物は水性ベースコート組成物である。好ましくは、コーティング組成物は一液型溶媒系または水系ベースコート組成物として使用される。本発明のコーティング組成物は、特にプライマー、プライマーサーフェーサーまたはシーラー組成物ではなく、よってプライマー、プライマーサーフェーサーまたはシーラー組成物として使用/適用されない。
【0027】
本発明によるコーティング組成物は、好ましくは、ベースコート層を製造するのに好適である。従って本発明によるコーティング組成物は、特に溶媒系ベースコート材料または水性ベースコート材料である。
【0028】
用語「ベースコート」は当技術分野で公知であり、例えばRoempp Lexikon,「Lacke und Druckfarben」(「Paints and 「Printing Inks」),Georg Thieme Verlag、1998年、第10版、57頁に定義されている。従ってベースコートは、中間コーティング組成物としてベースコートを用いることによって着色および/または光学的効果を与えるために、特に自動車コーティングおよび一般的な産業の塗料着色において使用される。ベースコート組成物は、一般に金属またはプラスチック基材に適用され、任意に前処理および/またはプライマーおよび/またはフィラーでプレコートされ、プラスチック基材の場合にはプラスチック基材上に直接適用されることもあり、そして金属基材の場合には、金属基材上にコーティングされた電着コーティング層上に、または既にプライマーおよび/またはフィラーおよび/または電着コーティングを有する金属基材上に、または再仕上げ用途の場合には、基材としても機能する既に存在するコーティング上に適用される。ベースコート層を特に環境的影響から保護するため、これに少なくとも1つの追加のクリアコート層が適用される。
【0029】
本発明の一般的な文脈において、および特に本発明によるコーティング組成物に関連して、用語「含む」は、「からなる」よりもむしろ「含有する」の意味を有する。特に、「含む」とは、成分(A1)、(A2)、(B)、(C)および(D)に加えて、後述する他の成分の1つ以上が、本発明によるコーティング組成物中に任意に含有され得ることを意味する。あらゆる成分は、後述するそれらの好ましい実施形態に従って、各場合に存在させることができる。
【0030】
本発明によるコーティング組成物中のあらゆる成分(A1)、(A2)、(B)、(C)および(D)およびさらに任意に存在する成分のwt.-%(すなわち、質量%)での割合および量は、コーティング組成物の総質量に対して100質量%まで加算される。
【0031】
本明細書で使用される用語「近IR」または「近赤外線放射または光」または「NIR」は、電磁スペクトルの近赤外線範囲における電磁放射線を指す。そのような近IR電磁放射は、800nm~2500nm、例えば850~2000nm、または例えば900nm~1600nmの波長を有してよい。特に、使用されるNIR光は、880nm~930nmの波長を有し、中心波長として905nmを有する。NIR光を生成するために本発明で使用され得る近IR電磁放射源には、制限なしに、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード、または800nm~2500nmの波長(近IR範囲)を有する電磁放射を放出することができる任意の光源が含まれる。近IR電磁放射源は、LiDARシステムで使用してもよい。LiDARシステムは、900nm~1600nmの波長を有する電磁放射線を生成するためにレーザーを利用してもよい。
【0032】
好ましくは、本発明のコーティング組成物から得られるコーティング層は、NIR光、好ましくは800~2500nmの波長を有するNIR光を反射することができる。
【0033】
成分(B)および(C)の他に、本発明のベースコート組成物は、1つ以上の真珠光沢顔料を成分(E)として含有してよい。しかしながら、好ましくは、本発明のコーティング組成物は如何なるさらなる顔料も含有せず、特に本発明のベースコート組成物には、さらなるソリッドカラー顔料が含まれない。
【0034】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、フィラーである如何なるさらなる成分も含有しない。よって本発明のコーティング組成物は、好ましくはフィラーを含まない。(B)、(C)および(E)以外の顔料および/またはフィラーである任意の成分がコーティング組成物に含有される場合、これらの成分は、好ましくは、如何なる光も吸収しない、または好ましくは実質的に吸収しない。本明細書において、増粘剤、すなわち増粘化剤は、用語「顔料および/またはフィラー」に包含されるとはみなされない。
【0035】
本発明によるコーティング組成物の固形分含量は、好ましくは、各場合にコーティング組成物の総質量に対して>85質量%、または>60質量%、または>40質量%、または>5質量%である。固形分含量、すなわち不揮発分含量の決定は、以下の本発明の方法セクションに記載の方法に従って実施される。好ましくは、本発明によるコーティング組成物の固形分含量は、5~85質量%、より好ましくは>10~80質量%、最も好ましくは>15~75質量%、特に>20~65質量%の範囲である。
【0036】
フィルム形成ポリマー(A1)
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つのフィルム形成ポリマーを、コーティング組成物のフィルム形成バインダー(A1)として含む。
【0037】
本発明の目的のため、用語(A1)とは、フィルム形成に関与するコーティング組成物の不揮発性構成成分であり、添加剤、特に添加剤(E)を除くと理解される。好ましくは、少なくとも1つのポリマー(A1)の少なくとも1つのポリマーは、コーティング組成物の主要なバインダーである。本発明における主要なバインダーとして、コーティング組成物中に他のバインダー成分が存在しない場合に、コーティング組成物の総質量に対して、より高い割合で存在するバインダー成分が好ましくは参照される。
【0038】
用語「ポリマー」は当業者に既知であり、本発明の目的では、重付加物および重合物、および重縮合物を包含する。用語「ポリマー」には、ホモポリマーおよびコポリマーの両方が含まれる。
【0039】
成分(A1)として使用される少なくとも1つのポリマーは、物理的乾燥性、自己架橋性または外部架橋性であってよい。成分(A1)として使用することができる好適なポリマーは、例えば、EP0228003A1、DE4438504A1、EP0593454B1、DE19948004A1、EP0787159B1、DE4009858A1、DE4437535A1、WO92/15405A1およびWO2005/021168A1に記載されている。
【0040】
成分(A1)として使用される少なくとも1つのポリマーは、好ましくは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレートおよび/または前記ポリマーの構造単位のコポリマー、特に、ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタンポリウレアからなる群から選択される。成分(A1)として使用される少なくとも1つのポリマーは、特に好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレートおよび/または前記ポリマーの構造単位のコポリマーからなる群から選択される。本発明の文脈における用語「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」は、各場合に、「メタクリル」および/または「アクリル」または「メタクリレート」および/または「アクリレート」の意味を含む。
【0041】
好ましいポリウレタンは、例えば、ドイツ特許出願DE19948004A1の4頁19行目から11頁29行目(ポリウレタンプレポリマーB1)、欧州特許出願EP0228003A1の3頁24行目から5頁40行目、欧州特許出願EP0634431A1の3頁38行目から8頁9行目、および国際特許出願WO92/15405の2頁35行目から10頁32行目に記載されている。
【0042】
好ましいポリエステルは、例えば、DE4009858A1の6欄53行目から7欄61行目および10欄24行目から13欄3行目、またはWO2014/033135A2の2頁24行目から7頁10行目、および28頁13行目から29頁13行目に記載されている。同様に、ポリエステルは、例えばWO2008/148555A1に記載のように、樹枝状構造を有し得る。
【0043】
好ましいポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー(例えば(メタ)アクリレート化ポリウレタン)およびそれらの調製は、例えばWO91/15528A1の3頁21行目から20頁33行目、およびDE4437535A1の2頁27行目から6頁22行目に記載されている。
【0044】
好ましいポリ(メタ)アクリレートは、水および/または有機溶媒中で、オレフィン性不飽和モノマーの多段フリーラジカル乳化重合によって調製できるものである。例えば、シード-コア-シェルポリマー(SCSポリマー)が特に好ましい。このようなポリマーまたはこのようなポリマーを含有する水性分散体は、例えばWO2016/116299A1から公知である。
【0045】
好ましいポリウレタン-ポリウレアコポリマーは、好ましくは、40~2000nmの平均粒径を有するポリウレタン-ポリウレア粒子であり、該ポリウレタン-ポリウレア粒子は、それぞれ反応した形態で、アニオン性基および/またはアニオン性基に変換可能な基を含有する少なくとも1つのイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマー、および2つの第1級アミノ基および1つまたは2つの第2級アミノ基を含有する少なくとも1つのポリアミンを含有する。好ましくは、このようなコポリマーは水性分散体の形態で使用される。このようなポリマーは原則的に、例えばポリイソシアネートとポリオールおよびポリアミンとの従来の重付加によって調製することができる。
【0046】
成分(A1)として使用されるポリマーは、好ましくは、架橋反応を可能にする反応性官能基を有する。当業者に既知の任意の一般的な架橋性反応性官能基が存在できる。好ましくは、成分(A1)として使用されるポリマーは、第1級アミノ基、第2級アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基およびカルバメート基からなる群から選択される反応性官能基の少なくとも1種類を有する。好ましくは、成分(A1)として使用されるポリマーは、官能性ヒドロキシル基を有する。
【0047】
好ましくは、成分(A1)として使用されるポリマーはヒドロキシ官能性であり、そしてより好ましくは、10~500mgKOH/g、より好ましくは40~200mgKOH/gの範囲のOH価を有する。
【0048】
成分(A1)として使用されるポリマーは、特に好ましくは、ヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー、ヒドロキシ官能性ポリエステルおよび/またはヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリウレアコポリマーである。
【0049】
さらに、本発明のコーティング組成物は、それ自体既知の少なくとも1つの典型的な架橋剤を含有してよい。架橋剤は、コーティング組成物のフィルム形成性不揮発性成分の中に含まれるものであり、従って「バインダー」の一般的な定義に含まれる。よって架橋剤は、成分(A)に包含される。
【0050】
架橋剤(A2)
(A1)が外部架橋性である場合、架橋には架橋剤(A2)が必要であり、これは、好ましくは少なくとも1つのアミノプラスト樹脂および/または少なくとも1つのブロック化または遊離の、好ましくはブロック化ポリイソシアネートであり、そして最も好ましくはアミノプラスト樹脂である。アミノプラスト樹脂の中でも、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂などのメラミン樹脂が特に好ましい。
【0051】
金属効果顔料(B)
用語「金属効果顔料」は、EN ISO18451-1:2019(顔料、染料および体質顔料-用語-第1部)に従って使用される。これは、金属からなるプレートレット形状の顔料と定義される。本発明において、用語「金属からなる」は、金属効果顔料の表面修飾、例えば二酸化ケイ素層などの追加的な酸化物層の存在を除外するものではない。用語「金属効果顔料」で使用される用語「金属」には、同様に金属および金属合金が含まれる。金属効果顔料は、既に上に並べたように、平行に配向させることができ、そしてフレークでの光の反射により、金属光沢を示す。
【0052】
金属効果顔料に使用される典型的な金属および合金は、アルミニウムおよびその合金である。本発明において最も好適且つ好ましいのはプレートレット形状のアルミニウム効果顔料であり、これらはコーティングされていてもコーティングされていなくてもよく、特に、好ましいアルミニウム顔料の場合には、水性ベースコート組成物中の水とのその反応を阻害するために、好ましくはコーティングされている。このような阻害は、例えば、有機リン安定化、化成処理層で、例えばクロメート処理によるアルミニウム顔料の不動態化、ポリマーコーティングまたはシリカコーティングなどの保護層を用いるカプセル化により、達成することができる(Peter Wissling,「Metallic Effect Pigments」、Vincentz Network 2006年、85~89頁)。このようなアルミニウム効果顔料は、例えば、ECKART GmbH社(ドイツ)から商品名STAPA(登録商標)Hydroxal(安定化)、STAPA(登録商標)Hydrolux(クロメート処理)およびSTAPA(登録商標)Hydrolan(シリカカプセル化)で市販されている。顔料表面のさらなる修飾も、例えば、いわゆるセミリーフィング効果をもたらすアルキル基などの非極性基による修飾により、可能である。
【0053】
金属効果顔料、特にアルミニウム効果顔料は、シリカ層などの酸化物層でコーティングしてもよく、この酸化物層は機械的衝撃に対する顔料の安定化にさらに役立ち、そして特に循環ラインの安定性を改善させる。本発明では、シリカカプセル化アルミニウム金属効果顔料が最も好ましい。好ましくは、シリカの量は、このような好ましいアルミニウム効果顔料中のアルミニウムとシリカの量の合計に対して、3~15質量%、より好ましくは5~12質量%、および最も好ましくは6~10質量%の範囲である。しかしながら、用語「金属効果顔料」は、このようなコーティングされた顔料を包含し、そしてこのようなコーティングされた金属効果顔料の総質量は、金属効果顔料の質量であると理解される。よって質量には、コーティング材料が含まれる。
【0054】
本発明のベースコート組成物中の(B)の量は、コーティング組成物の総質量に対して、好ましくは0.5~10質量%の範囲、より好ましくは1~8質量%の範囲、および最も好ましくは1.5~6質量%の範囲である。
【0055】
本発明のコーティング組成物中の(B)/[(A1)+(A2)]の質量比は、好ましくは0.02~1.0の範囲、より好ましくは0.05~0.5の範囲、および最も好ましくは0.1~0.35の範囲である。
【0056】
好ましくは、プレートレット形状顔料は、ISO13320-1に従ってレーザー粒度分析によって決定して、5μm~100μmの範囲およびさらにより好ましくは15μm~30μmの範囲のD50値、すなわち中央粒径を有する(CILAS1064装置で決定)。
【0057】
金属効果顔料は、好ましくは顔料ペーストの形態で本発明のコーティング組成物に用いられ、そのような顔料ペーストは、ペーストの総質量に対して、好ましくは40~70質量%、より好ましくは50~65質量%の金属効果顔料を含有する。揮発性部分は、典型的には、アルコール、好ましくはイソプロパノールなどの有機溶媒である。ペーストは、少量の潤滑剤および他の添加剤をさらに含有してもよい。
【0058】
顔料混合物(C)
本発明のベースコート組成物に使用される顔料混合物は、暗色の非カーボンブラックLiDAR反射顔料(C1)および白色のLiDAR反射顔料(C2)からなる。
【0059】
暗色の非カーボンブラック顔料(C1)の色および白色顔料(C2)の色は、CIELABシステムを使用し、ASTM D2244、E308、E1164およびE2194に従ってBYK Mac I装置(Byk Gardner社製)でL*、a*およびb*の値を測定することにより定義することができる。
【0060】
暗色の非カーボンブラック顔料(C1)の色は、CIELABシステムにより、45°において、L*値が17未満、より好ましくは15未満であること、およびa*値およびb*値が-4超且つ9未満、より好ましくは6未満、および最も好ましくは4未満、および好ましくは0超であることで、特徴付けられる。
【0061】
好ましい暗色の非カーボンブラック顔料(C1)は、有機または無機とすることができ、無機顔料が好ましく、そして鉄/クロム酸化物化合物、例えば鉄/クロム酸化物錯体、鉄/クロム酸化物グリーンブラック、鉄/クロム酸化物ブラウンブラックからなる群から選択される。マンガンフェライト黒色酸化物、カルシウムマンガンチタンオキシドおよびクロムを含まない化合物。
【0062】
市販の暗色の非カーボンブラック顔料(C1)は、例えば、Sicopal Black K0095およびL0095(BASF社から)、10P950、10P922、10G996(3つすべてShepherd社から)、Nubifer NB803KおよびEclipse Black10202(両方ともFerro社から)およびTipaque Black SG103(Ishihara社から)から選択される。
【0063】
白色顔料(C2)の色も、CIELABシステムにより、45°において、L*値が85超、好ましくは90超であり、a*値が-2超2未満、好ましくは0未満であり、そしてb*値が6未満、および好ましくは0超、より好ましくは2または3超であることで特徴付けられる。
【0064】
好ましい白色顔料(C2)は、チタン/アルミニウム/シリコンオキシドベースの顔料および棒状アルミニウムドープ二酸化チタン顔料からなる群から選択される。棒状顔料は、好ましくは、長さ寸法1~5、例えば2~4μm、およびハート寸法(hart dimension)0.2~0.6、例えば0.3~0.5μmを有する。
【0065】
市販の白色顔料(C2)は、例えばAltiris550およびAltiris800(共にVanator社)、およびTipaque PFR404(Ishihara社)から選択される。
【0066】
顔料(C1)および(C2)は、好ましくは、低い隠蔽力および高い散乱力を有する。顔料の隠蔽性が低いとフロップインデックスはわずかにしか減少しないが、散乱力が高いとLiDAR活性がより高度に増加する。
【0067】
(C1)は、組成物の総質量に対して、0.005~2.0質量%、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.015~0.8質量%、例えば0.02~0.5質量%の範囲で存在し、そして(C2)は、組成物の総質量に対して、0.2~10.0質量%、好ましくは0.25~8.0質量%、より好ましくは0.4~6.0質量%の範囲で存在する。
【0068】
一般に、(C1)および(C2)の量はそれぞれ、ベースコート組成物が水性ベースコート組成物である場合、好ましくは、前述の範囲の下方部分、および前述の範囲の好ましい、より好ましい、および最も好ましい範囲の下方部分である。これは、水性ベースコート組成物が、溶媒系ベースコート組成物と比較すると、好ましくは低い総固形分含量を有するからである。総固形分含量が低いほど、バインダー含量が低くなり、バインダー含量が低い場合、顔料(C1)および(C2)の顔料含量が低いことが好ましい。
【0069】
一方で、(C1)および(C2)の量はそれぞれ、ベースコート組成物が溶媒系水性ベースコート組成物である場合、好ましくは、前述の範囲の上方部分、および前述の範囲の好ましい、より好ましい、および最も好ましい範囲の上方部分である。これは、溶媒系ベースコート組成物が、水性ベースコート組成物と比較すると、好ましくは、かなり高い総固形分含量を有するからである。総固形分含量が高いほど、バインダー含量が高くなり、そしてバインダー含量が高い場合、顔料(C1)および(C2)の顔料含量が高いことが好ましい。
【0070】
本発明のコーティング組成物中の[(C1)+(C2)]/[(A1)+(A2)]の質量比は、好ましくは0.005~0.1の範囲、より好ましくは0.01~0.075の範囲、および最も好ましくは0.015~0.05の範囲である。
【0071】
好ましくは、(C2)/(C1)の質量比は、10~30、より好ましくは12~25、さらにより好ましくは14~22の範囲である。
【0072】
成分(D)
本発明のコーティング組成物は、水および/または1つ以上の有機溶媒を成分(D)として含み、前記成分(D)は、組成物の総質量とその固形分含量との質量差である量でコーティング組成物中に存在する。
【0073】
本発明のコーティング組成物が揮発性成分として主に水を含む場合、それは水性または水系組成物と命名される。この場合、該組成物は、好ましくは、有機溶媒をわずかな割合で含むコーティング組成物である。
【0074】
当業者に既知のあらゆる従来の有機溶媒を、本発明のコーティング組成物調製用の有機溶媒として使用することができる。用語「有機溶媒」は、特に1999年3月11日の理事会指令1999/13/ECから当業者に公知である。好ましくは、1つ以上の有機溶媒は、モノアルコールまたは多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エチレングリコール、エチルグリコール、プロピルグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール、エーテル、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、例えばトルエンおよび/またはキシレン、ケトン、例えばアセトン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エステル、例えばメトキシプロピルアセテート、エチルアセテートおよび/またはブチルアセテート、アミド、例えばジメチルホルムアミドおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0075】
コーティング組成物のさらなる任意成分(E)
本発明のコーティング組成物は、任意に、成分(A1)、(A2)、(B)、(C)および(D)のそれぞれとは異なる1つ以上の成分を含んでよい。
【0076】
本発明のコーティング組成物は、所望の用途に応じて、1つ以上の一般的に使用される添加剤(E)を含有してよい。例えば、コーティング組成物は、反応性希釈剤、例えばポリプロピレンジオール、光安定剤、酸化防止剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合阻害剤、可塑剤、フリーラジカル重合開始剤、接着促進剤、流動制御剤、フィルム形成助剤、垂れ制御剤(SCA)、難燃剤、腐食阻害剤、乾燥剤、殺生物剤および/または艶消し剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでよい。これらは既知および通例の割合で使用することができる。好ましくは、本発明によるコーティング組成物の総質量に対するそれらの含有量は、0.01~25質量%、より好ましくは0.05~20質量%、特に好ましくは0.1~15質量%、最も好ましくは0.1~10質量%、特に0.1~7質量%、および最も好ましくは0.1~5質量%である。
【0077】
添加剤の中で、本発明によるコーティング組成物は、少なくとも1つの増粘剤またはレオロジー剤を任意に含有してよい。そのような増粘剤の例は、無機増粘剤、例えばシートシリケートなどの金属シリケート、および有機増粘剤、例えばポリ(メタ)アクリル酸増粘剤および/または(メタ)アクリル酸(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤、ポリウレタン増粘剤およびポリマーワックスである。金属シリケートは、好ましくはスメクタイトの群から選択される。スメクタイトは、特に好ましくは、モンモリロナイトおよびヘクトライトの群から選択される。特に、モンモリロナイトおよびヘクトライトは、アルミニウム-マグネシウムシリケート、ナトリウム-マグネシウムおよびナトリウム-マグネシウムフッ素-リチウムフィロシリケートからなる群から選択される。これらの無機フィロシリケートは、例えばLaponite(登録商標)の商標で市販されている。ポリ(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤をベースとする増粘剤は、任意に架橋され、そしてまたは好適な塩基で中和される。このような増粘化剤の例として、「アルカリ膨潤性エマルション」(ASE)、および疎水的に修飾されたその変種である「疎水的に修飾されたアルカリ膨潤性エマルション」(HASE)が挙げられる。好ましくは、これらの増粘剤はアニオン性である。Rheovis(登録商標)AS1130などの対応する製品が市販されている。ポリウレタンベースの増粘剤(例えば、ポリウレタン会合性増粘剤)は、任意に架橋および/または好適な塩基で中和される。Rheovis(登録商標)PU1250などの対応製品が市販されている。好適なポリマーワックスの例は、エチレン-ビニルアセテートコポリマーをベースとする任意に変性されたポリマーワックスである。対応する製品は、例えばAquatix(登録商標)8421の名称で市販されている。
【0078】
本発明によるコーティング組成物中に少なくとも1つの増粘剤が存在する場合、それは好ましくは多くとも10質量%、より好ましくは多くとも8質量%、最も好ましくは多くとも4質量%、特に多くとも2質量%、最も好ましくは1質量%以下の量で存在し、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対する。増粘剤の最小量は、コーティング組成物の総質量に対して、好ましくは各場合とも0.1質量%である。
【0079】
さらなる任意の材料成分(E)は、真珠光沢顔料も含んでよい。
【0080】
コーティング組成物の調製は、慣用的且つ既知の調製および混合方法および混合ユニットを用いて、または従来のディソルバーおよび/またはスターラーを用いて実施することができる。
【0081】
コーティングフィルムおよびコーティング
本発明のさらなる主題は、本発明のベースコート組成物から、特に本発明のコーティング組成物を、好ましくは以下に開示する本発明の方法に従って適用することによって得ることができる、コーティングフィルムまたはコーティングである。
【0082】
本明細書において、本発明のコーティング組成物およびその好ましい実施形態に関連して上述したあらゆる好ましい実施形態は、本発明のコーティングフィルムおよび本発明のコーティングの好ましい実施形態でもある。
【0083】
好ましくは、本発明のコーティングフィルムおよび本発明のコーティングは、基材の表面上に少なくとも部分的に存在し、前記基材は、NIR-反射性ではなく、または本質的にNIR-反射性ではなく、前記基材は、好ましくは暗色または透明基材である。暗色基材は、特に、灰色のプライマーフィルムなどの暗色の(多層)フィルムを有する基材である。特にこの場合、暗色は、マルチコートフィルムのプライマーコーティング層におけるカーボンブラック顔料の使用の結果である。
【0084】
本発明のコーティングフィルムおよび本発明のコーティングは、700~1560nmの波長を有する近赤外線(NIR)光を反射することができる。
【0085】
本発明の方法
本発明のさらなる主題は、基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティングフィルムを形成する方法であり、前記方法は、少なくとも工程(a)、すなわち
(a) 本発明のベースコート組成物を、任意にプレコートされた基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に適用して、基材の表面上にコーティングフィルムを形成する工程
を含む。
【0086】
本発明のさらなる主題は、基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティングを形成する方法であり、前記方法は、上記で定義した少なくとも工程(a)、および少なくとも工程(b)、すなわち
(b) 工程(a)の実施後に得たコーティングフィルムを硬化させて、基材の表面上にコーティングを形成する工程
を含む。
【0087】
本発明のコーティング組成物、本発明のコーティングフィルムおよび本発明のコーティング、およびその好ましい実施形態に関連して上述したあらゆる好ましい実施形態は、本発明の方法の好ましい実施形態でもある。
【0088】
本発明のコーティング組成物が、好ましくは水性の、ベースコートコーティング組成物である場合、工程(a)または工程(a)および(b)は、基材が金属基材である場合、好ましくは、プレコートされた基材の少なくとも1つの表面上に対して行う。そして前記金属基材は、好ましくは、プライマーおよび/(または)電着コーティングをプレコーティング層として、および/(または)化成コーティング層を前処理として有する。
【0089】
基材がプラスチック(ポリマー)基材である場合、それはプレコートされた基材であってもよく、例えば、プライマーコーティングを有するが、その必要はない。使用される基材とは無関係に、工程(a)または工程(a)および(b)を実施した後、好ましくは、本発明のコーティング組成物を使用して形成されたベースコートコーティング上にクリアコート組成物を適用する。
【0090】
本発明のコーティング組成物は、スプレーコーティング、滴下コーティング、浸漬コーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、および他の技法を含む、当該技術分野で周知の多数の技法によって物体上にコーティングすることができる。好ましくは、本発明のコーティング組成物はスプレーコーティングにより、より好ましくは空気圧または静電スプレーコーティングにより適用される。ウェット・オン・ウェットで適用することもできるが、その必要はない。
【0091】
使用される基材は、プラスチック基材、すなわちポリマー基材とすることができる。好ましくは、熱可塑性ポリマーがそのような基材として使用される。好適なポリマーは、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレートを含むポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートおよびポリビニルアセテートを含むポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレンコポリマー(A-EPDM)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリルエステルコポリマー)およびABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、ポリエーテルイミド、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、TPUを含むポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物である。ポリカーボネートおよびポリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。基材は、複合基材、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、またはポリマー繊維、例えばポリアミド繊維を含有する繊維強化基材とすることもできる。基材は複数のポリマー層からなることも可能である。
【0092】
使用される基材は、金属、例えばスチールおよびアルミニウム、またはこれらの合金とすることもできる。さらに、使用される基材は、ガラスまたは織物、特にガラスとすることもできる。
【0093】
好ましくは、使用される基材はNIR-反射性ではない、または本質的にNIR-反射性ではない。より好ましくは、基材は暗色または透明基材である。暗色基材は、特に、黒色着色フィルムなど暗色着色多層フィルムを有する金属またはプラスチック、例えばポリカーボネートなどの基材である。透明基材は、例えばガラスまたはポリカーボネート基材である。
【0094】
基材
本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって得ることができる少なくとも部分的にコーティングされた基材である。好ましくは、本発明のコーティング方法を実施する前の基材そのものは、NIR-反射性ではなく、または本質的にNIR-反射性ではなく、好ましくは暗色または透明基材である。暗色基材は、特に暗色の(多層)フィルムを有する基材である。
【0095】
本発明のコーティング組成物、本発明のコーティングフィルム、本発明のコーティング、コーティングフィルムおよびコーティングを形成する本発明の方法およびその好ましい実施形態に関連して上述したあらゆる好ましい実施形態は、本発明の基材の好ましい実施形態でもある。
【0096】
コーティングされた基材は、例えば自動車ボディおよびその部品の製造に使用することができる。
【0097】
使用方法
本発明のさらなる主題は、本発明のコーティングおよび/または本発明の少なくとも部分的にコーティングされた基材および/または前記基材から製造された物体の、LiDAR視認性用途における、特に自律システム、例えば自動運転車両およびADAS搭載車両のための使用方法である。もちろん、コーティング材料は、非自律走行車両およびその部品に適用し、そのような車両およびその部品を、自律走行車両など他の車両による検出のためにLiDAR反射性にすることもできる。
【0098】
本発明のコーティング組成物、本発明のコーティングフィルム、本発明のコーティング、コーティングフィルムおよびコーティングを形成する本発明の方法、本発明の部分的にコーティングされた基材、およびその好ましい実施形態に関連して上述したあらゆる好ましい実施形態は、本発明の使用方法の好ましい実施形態でもある。
【0099】
本発明による使用方法から、特に自律システム、例えば自動運転車両およびADAS搭載車両は、より良好な赤外光およびLiDAR視認性からの利益を得ることができる。
【0100】
実験パート
方法
1. 固形分含量の決定
総固形分含量を含む固形分含量(不揮発分)は、DIN EN ISO3251:2008-06に基づき、110℃60分間で測定される。
【0101】
2. 顔料(複数可)(C1)および(C2)のマストーン色の測定
「マストーン色」は、黒色および白色の基材(典型的には、部分的に黒色および部分的に白色であるいわゆる「チェッカータイル」が使用される)を完全に覆うように、それぞれの顔料を含有するコーティング層を、黒色および白色の色情報が透過しない層厚で適用することによって得られる色として決定した。
【0102】
本発明の目的のためのマストーン色を決定するために使用されるコーティング組成物を表1に記載する。各顔料(C1)または(C2)、または各顔料(C1)の混合物または顔料(C2)の混合物について、顔料ペーストを振動振盪によって調製した。各顔料ペーストの材料成分は次の通りであった:それぞれの固体顔料(すなわち、顔料(C1)または顔料(C2)または顔料(C1)の混合物または顔料(C2)の混合物)が30質量部、水が15質量部、ブチル-セロソルブが2質量部、ポリウレタン粉砕樹脂が39.2質量部、Pluracol1010ポリオールが4.8質量部およびByk184が9質量部。
【0103】
それぞれの層厚は、L*、a*およびb*の測色データが、基材のコーティングされた黒色部分および白色部分それぞれについて同じになり、その結果、基材の色固有の情報が顔料の固有の値と混同されないことが保証されるまで、コーティング組成物を繰り返し噴霧することによって得られた。典型的には、これは約20%の顔料体積濃度および約20μmのコーティング厚で達成される。
【0104】
3.LiDAR反射率の決定
顔料(C1)および(C2)のLiDAR反射率を決定するため、顔料(C1)および(C2)のマストーンカラーの測定で記載のようにコーティングを調製し、適用した。その後、UV安定剤を含有するポリオールおよびイソシアネート硬化剤(ProGloss)から形成されるクリアコート層(乾燥膜厚約50μm)を適用し、硬化させた。
【0105】
様々な角度の多層コーティングのLiDAR測定を、Velodyne社のVelodyne VLP-16装置(905nm)を使用し、1mの距離で行った。
【0106】
4. フロップインデックスの決定
フロップインデックスは、以下の式:
【数1】
に従って算出し、
式中、L
*はByk Gardner社のBYK Mac i装置を用いて測定した。フロップは上記のように多層系で決定した。
【実施例】
【0107】
実施例および比較例
層特性の測定は、前処理したスチールパネル上に、Cathoguard800を用いたカソード電着コーティング層、アクリル樹脂/メラミンホルムアルデヒド系を含有する水性プライマー組成物から形成された灰色のプライマー層(L*=65)(乾燥膜厚18~20μm)、本発明のまたは比較例のベースコート組成物から形成された本発明のまたは比較例のベースコートフィルム、およびUV安定剤を含有するポリオールおよびイソシアネート硬化剤(ProGloss)から形成されたクリアコートフィルム(乾燥膜厚約50μm)を含む、多層コーティングで実施した。
【0108】
使用されたクリアコート層は透明な層であり、IR放射線に対しても透明であった。ベースコートはアルミニウムフレーク(すなわちプレートレット形状のアルミニウム顔料)を含有し、これが独特の色と感触をもたらしていた。しかし、アルミニウムによってもたらされる光輝感効果は、残念ながら、オフスペキュラー角、例えば入射角(AOI)45°の角度で比較例配合物に低い反射率をもたらした。
【0109】
一般的なベースコート開始配合物は、以下の表1に示すように調製した(すべて質量部)。
【0110】
【0111】
異なる種類のアルミニウム(CE-1~CE-9)を0.18=(B)/(A1+A2)の質量比で、隠蔽が達成されるまで添加した。以下の表2に示すCE-1~CE-10は、異なる種類のアルミニウム(CE-1~CE-9)および白色対照(Labsphere社のパーマフレクト白)(CE-10)を含有する比較例ベースコートのLiDAR活性を示す。
【0112】
【0113】
これらの様々な比較例(CE-1~CE-10)から、フロップインデックスが10超の場合、LiDAR反射強度は10%をはるかに下回ることがわかる。
【0114】
さらなる発明例および比較例には、表1のベースコート出発配合物を使用した。この配合物に、表3に列挙する効果顔料および顔料混合物を加えて、発明例および比較例のベースコート組成物を形成した。本発明では、2つのIR反射顔料((C1)および(C2))で着色することにより、高いフロップインデックスが達成された。
【0115】
表3では、使用した顔料は、(C2)としてTipaque PFR404(ルチル型TiO2)、(C2)としてAltiris550(ルチル型TiO2)、(C1)として日本の石原産業株式会社のTipaque black SG103(カルシウムマンガン酸化チタンブラック顔料)、および(C1)としてBASF社のSicopal Black L0095であった。さらに、白色顔料として非発明の顔料TiO2-R960、および黒色顔料としてカーボンブラック(Monarch1400)を用いた。顔料(C1)および(C2)および非発明の顔料は、顔料ペーストの形態で使用し、振動振盪によって調製した。各顔料ペーストの材料成分は以下の通りであった:それぞれの固体顔料が30質量部、水が15質量部、ブチル-セロソルブが2質量部、ポリウレタン粉砕樹脂が39.2質量部、Pluracol1010ポリオールが4.8質量部およびByk184が9質量部。
【0116】
比較例CE-11およびCE-12および発明例(E-1~E-3)を表3に示す。Hydrolan2153を、ベースコート開始配合物に添加し、隠蔽下で質量比0.18=(B+C1+C2)/(A1+A2)とした。PFR404およびSG103を含有するティントは、E-1、E-2、E-3を得るために異なる量で添加した。すべての量は質量部である。
【0117】
【0118】
Hydrolan2153は、CE-2でも着色なしで使用した。E-1、E-2、E-3からわかるように、45°のAOIにおけるLiDAR反射率は、フロップインデックスが9超12.5以下のアルミニウムの場合、LiDAR活性が2倍から3倍以下増加した。
【0119】
また、比較例として、TiO2(TI-PURE R-960)およびカーボンブラック(Monarch1400)による着色を示す。この場合、LiDAR活性はフロップインデックス約9.6でわずか8.44%であった。一方で、(C1)/(C2)系による着色は、同様のフロップインデックス9.4に対して11%以下であった。
【0120】
さらに、驚くべきことに、暗色の非カーボンブラック顔料(C1)の特に少ない量と、(C2)対(C1)のかなり高い質量比とが、45°の入射角で高いLiDARを有するコーティングを得るための所望の効果をもたらし、同時に依然として高いフロップインデックスを有していた。よって本発明では、(C1)および(C2)の顔料混合物は、高い隠蔽力を提供するのではなく、着色混合物として作用する。
【0121】
本発明によるさらなる実施例は、(C2)としてAltris550(E-4)およびAltris800(E-5)それぞれを、いずれもコーティング組成物の総質量に対して約0.5質量%の量で、両方の場合において、コーティング組成物の総質量に対して約0.025質量%のTipaque Black SG103(C1)と共に使用し、これは9.7を超えるフロップインデックスおよび10を超える45°のAOIにおけるLiDAR反射率を示した。ベースコートの開始配合物は本質的に表1のものであった。これは、Tipaque PFR404以外の白色LiDAR反射顔料も優れた効果をもたらすことを明確に示している。
【0122】
本発明によるさらなる実施例では、(C2)としてAltris550(E-6)をコーティング組成物の総質量に対して約0.5質量%の量で、コーティング組成物の総質量に対して約0.03質量%のSicopal L0095(C1)と共に使用し、10.6のフロップインデックスおよび45°のAOIにおけるLiDARは10を超えた。ベースコートの開始配合物は本質的に表1のものであった。これは、Atris550などの白色LiDAR反射顔料もまた、Tipaque Black SG103とは異なるSicopal L0095などの黒色顔料で優れた効果をもたらすことを明確に示している。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
(A) 少なくとも1つのフィルム形成ポリマー(A1)、および(A1)が外部架橋性である場合には、少なくとも1つの架橋剤(A2)、
(B) 少なくとも1つの金属効果顔料(B)、
(C) 顔料混合物(C)であって、
45°においてCIELABシステムによる値L
*<17、a
*>-4且つ<9、およびb
*>-4且つ<9の完全隠蔽を有するマストーン色を有する、少なくとも1つの非カーボンブラックLiDAR反射顔料(C1)または非カーボンブラックLiDAR反射顔料の組み合わせ(C1)、および
45°においてCIELABシステムによる値L
*>85、a
*>-2且つ<2、およびb
*>0且つ<6の完全隠蔽を有するマストーン色を有する、少なくとも1つの白色LiDAR反射顔料(C2)または白色LiDAR反射顔料の組み合わせ(C2)
を含む、顔料混合物(C)、
(D) 成分(D)として、水および/または1つ以上の有機溶媒、
を含むベースコート組成物であって、
(C1)が、該組成物の総質量に対して0.005~2.0質量%の範囲で存在し、そして
(C2)が、該組成物の総質量に対して0.20~10.0質量%の範囲で存在する、ベースコート組成物。
【請求項2】
フィルム形成ポリマー(A1)が、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレートおよび/または前記ポリマーの構造単位のコポリマーからなるポリマーの群から選択され、そして(A1)が外部架橋性である場合、(A2)が、アミノプラスト樹脂、ブロック化ポリイソシアネートおよび遊離ポリイソシアネートからなる架橋剤の群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のベースコート組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの金属効果顔料(B)がプレートレット形状であり、そしてISO13320-1に従ってレーザー粒度分析によって決定して5μm~100μmの範囲の中央粒径(D50)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のベースコート組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの金属効果顔料(B)が、前記ベースコート組成物中に、前記ベースコート組成物の総質量に対して1~10質量%の量で含まれることを特徴とする、請求項1
または2に記載のベースコート組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの金属効果顔料(B)がアルミニウム又はその合金であることを特徴とする、請求項1
または2に記載のベースコート組成物。
【請求項6】
非カーボンブラックLiDAR反射顔料(C1)が、鉄/クロム酸化物化合物、マンガンフェライト黒色酸化物、カルシウムマンガンチタンオキシドおよびクロムを含まない化合物からなる群から選択され、および/または白色LiDAR反射顔料(C2)が、チタン/アルミニウム/シリコンオキシドベースの顔料および棒状アルミニウムドープ二酸化チタン顔料からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1
または2に記載のベースコート組成物。
【請求項7】
(C2)対(C1)の質量比が10~30であることを特徴とする、請求項1
または2に記載のベースコート組成物。
【請求項8】
前記ベースコート組成物の総質量に対する固形分含量が5~85質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1
または2に記載のベースコート組成物。
【請求項9】
成分(A1)、(A2)、(B)、(C)及び(D)の各成分と異なる1つ以上のさらなる成分(E)を、前記ベースコート組成物の総質量に対して0.01~25質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1
または2に記載のベースコート組成物。
【請求項10】
基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティングフィルムを形成する方法であって、少なくとも工程(a)、すなわち
(a) 請求項
1に記載のベースコート組成物を、任意にプレコートされた基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に適用して、前記基材の前記表面上にコーティングフィルムを形成する工程
を含む、方法。
【請求項11】
基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティングを形成する方法であって、請求項10で定義した少なくとも工程(a)、および少なくとも工程(b)、すなわち
(b) 工程(a)の実施後に得たコーティングフィルムを硬化させて、前記基材の前記表面上にコーティングを形成する工程
を含む、方法。
【請求項12】
請求項1
または2に記載のコーティング組成物から、または請求項10に記載の方法により得ることができるコーティングフィルム、または請求項1
または2に記載のコーティング組成物から、または請求項11に記載の方法により得ることができるコーティング。
【請求項13】
請求項11に記載の方法により得ることができる少なくとも部分的にコーティングされた基材。
【請求項14】
請求項11に記載のコーティング方法を行う前に、NIR-反射性ではない、または本質的にNIR-反射性ではないことを特徴とする、請求項13に記載の少なくとも部分的にコーティングされた基材。
【請求項15】
請求項12に記載の本発明によるコーティング、および/または請求項13に記載の本発明による少なくとも部分的にコーティングされた基材、および/または前記基材から製造された物体の、車両およびその部品に関するLiDAR視認性用途における使用方法。
【国際調査報告】