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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】血管閉塞デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514416
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 US2022038058
(87)【国際公開番号】W WO2023038724
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,499
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】521535973
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Limited
【住所又は居所原語表記】Anngrove, IDA Business & Technology Park, Carrigtwohill, County Cork, T45HX08 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ハンクン
(72)【発明者】
【氏名】リー,アンドリュー エス.
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジンフン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD63
(57)【要約】
主要部分の長さ方向に沿った複数の開口部(編組のストランド間の開口部など)を有する細長い主要部分(編組部分など)を備える血管閉塞デバイスである。主要部分は、第1の曲げ剛性を有する。非外傷性の遠位セグメントが、編組部分の遠位端に結合され、編組部分の遠位端から遠位方向に延びる。遠位セグメントは、第2の曲げ剛性を有する。第1の曲げ剛性に対する第2の曲げ剛性の比が特定の範囲内にあり、それにより、デバイスの展開性能を維持しつつ、遠位セグメントが主要部分の開口部に入り込んで係合するという問題が緩和される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイスであって、
近位端および遠位端を有する細長い主要部分であって、第1の曲げ剛性を有する主要部分と、
前記主要部分の遠位端に結合され、前記主要部分の遠位端から遠位方向に延びる非外傷性の遠位セグメントであって、第2の曲げ剛性を有する非外傷性の遠位セグメントとを備え、
前記第1の曲げ剛性に対する前記第2の曲げ剛性の比が、0.5以上1.0以下の範囲内であることを特徴とする医療デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の医療デバイスにおいて、
前記主要部分が、前記主要部分の長さ方向に沿って複数の開口部を有し、
前記非外傷性の遠位セグメントが、遠位先端を有し、前記主要部分の開口部により、前記遠位先端が前記開口部に入って、前記主要部分と係合することが可能であることを特徴とする医療デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の医療デバイスにおいて、
前記第1の曲げ剛性に対する前記第2の曲げ剛性の比が、0.6以上0.8以下の範囲内であることを特徴とする医療デバイス。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の医療デバイスにおいて、
前記細長い主要部分が、編組、メッシュ、および複数の開口を有するチューブのうちの1つを含むことを特徴とする医療デバイス。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の医療デバイスにおいて、
前記遠位セグメントが、コイル、螺旋コイル、チューブ、編組および柔軟ロッドのうちの1つであることを特徴とする医療デバイス。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の医療デバイスにおいて、
編組部分の近位端に結合され、かつ編組部分の近位端から近位方向に延びる非外傷性の近位部分をさらに含むことを特徴とする医療デバイス。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の医療デバイスにおいて、
当該医療デバイスが、血管閉塞デバイスであることを特徴とする医療デバイス。
【請求項8】
血管閉塞デバイスであって、
一緒に編まれた複数の細長いストランドを含む細長い編組部分であって、近位端および遠位端を有し、かつ第1の曲げ剛性を有する編組部分と、
前記編組部分の遠位端に結合され、かつ前記編組部分の遠位端から遠位方向に延びる遠位コイルセグメントであって、第2の曲げ剛性を有する遠位コイルセグメントとを備え、
前記第1の曲げ剛性に対する前記第2の曲げ剛性の比が、0.5以上1.0以下の範囲内であることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記編組部分が、前記編組部分の長さ方向に沿って複数の開口部を有し、
前記遠位コイルセグメントが、遠位先端を有し、前記編組部分の開口部により、前記遠位先端が前記開口部に入って、主要部分と係合することが可能であることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項10】
請求項8に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記編組部分の近位端に結合され、かつ前記編組部分の近位端から近位方向に延びる近位コイルセグメントをさらに備えることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項11】
請求項8~10の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記編組部分が、送達カテーテル内に拘束されたときに送達構成を有し、送達カテーテルから解放されたときに展開構成を有することを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記送達構成が、ほぼ直線形状であり、前記展開構成が、前記送達構成の断面寸法の少なくとも3倍の断面寸法を有する3次元形状であることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項13】
請求項8~12の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記編組部分が、形状記憶材料で形成されていることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項14】
請求項8~13の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記編組部分が、白金、白金合金、および白金-タングステン合金のうちの1つから形成されていることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項15】
請求項8~13の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記編組部分が、金および金合金のうちの1つから形成されていることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項16】
請求項8~13の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記編組部分が、白金-金合金およびニチノールのうちの1つから形成されていることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項17】
請求項8~15の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスを使用する方法であって、
送達カテーテルを患者の血管系内で標的解剖学的腔まで前進させるステップと、
前記血管閉塞デバイスを前記送達カテーテルの近位端内に挿入し、前記送達カテーテル内で前記血管閉塞デバイスを標的解剖学的腔まで前進させるステップと、
前記血管閉塞デバイスを前記送達カテーテルから解剖学的腔内に前進させるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記血管閉塞デバイスが、拘束された送達構成で前記送達カテーテル内を前進し、前記血管閉塞デバイスが、解剖学的腔内に前進すると、前記送達構成とは異なる展開構成に拡張することを特徴とする方法。
【請求項19】
血管閉塞アセンブリであって、
請求項8~16の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスと、
前記血管閉塞デバイスに切り離し可能に結合されたプッシャ部材とを備えることを特徴とする血管閉塞アセンブリ。
【請求項20】
請求項19に記載の血管閉塞アセンブリにおいて、
前記プッシャ部材を前記血管閉塞デバイスに切り離し可能に結合する分離デバイスをさらに備えることを特徴とする血管閉塞アセンブリ。
【請求項21】
請求項20に記載の血管閉塞アセンブリにおいて、
前記分離デバイスが、電解、機械的コネクタ、加熱溶解などのうちの1つを含むことを特徴とする血管閉塞アセンブリ。
【請求項22】
請求項19~21の何れか一項に記載の血管閉塞アセンブリを使用する方法であって、
ガイドワイヤを患者の血管系内で標的解剖学的腔まで前進させるステップと、
前記ガイドワイヤ上で送達カテーテルを標的解剖学的腔まで前進させるステップと、
前記血管閉塞アセンブリを前記送達カテーテル内に挿入し、前記送達カテーテル内で前記血管閉塞デバイスを標的解剖学的腔まで前進させるステップと、
前記血管閉塞デバイスを前記送達カテーテルから解剖学的腔内に押し出すステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
前記血管閉塞デバイスが、前記送達カテーテルから解剖学的腔内へ押し出されると、前記送達カテーテル内で拘束された送達構成から、前記送達構成とは異なる拡張展開構成に拡張するステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、
前記プッシャ部材から前記血管閉塞デバイスを切り離すために、前記分離デバイスを作動させるステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療デバイスおよび血管内医療処置に関し、より詳細には、動脈瘤などの血管障害を閉塞するためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管閉塞デバイスまたはインプラントは、血管内動脈瘤の治療など、様々な理由で使用されている。動脈瘤は、血管などの脈管の拡張であり、破裂、凝固または解離により患者の健康に危険をもたらす可能性がある。例えば、患者の脳の動脈瘤が破裂すると、脳卒中を引き起こし、脳の損傷や死亡につながる可能性がある。脳動脈瘤は、例えば、発作や出血の後に患者において検出され、血管閉塞デバイスを適用することによって治療されることがある。
【0003】
一般的に使用される血管閉塞デバイスは、白金(または白金合金)のワイヤストランドを「一次」マンドレルに巻き付けることによって形成される、柔らかい螺旋状に巻かれたコイルを含む。その後、このコイルは、より大きな「二次」マンドレルに巻き付けられ、二次形状を付与するために熱処理される。例えば、Ritchart等に発行された米国特許第4,994,069号(この特許は、引用によりあたかも全文が記載されているかのように本明細書に完全に援用されるものとする)には、送達カテーテルのルーメンを介して配置するために引き伸ばされると、直線的で螺旋状の一次形状となり、送達カテーテルから放出されて血管系に置かれると、折り畳まれた複雑な二次形状となる血管閉塞デバイスが記載されている。動脈瘤をより適切にフレーミングして充填するために、複雑な3次元の二次形状を血管閉塞デバイスに付与することができ、血管閉塞デバイスの剛性/柔軟性を変更することができる。
【0004】
血管系内の所望の部位、例えば動脈瘤嚢内に血管閉塞デバイスを送達するために、先ず、ガイドワイヤを用いて小さなプロファイルの送達カテーテルまたは「マイクロカテーテル」をその部位に配置することがよく知られている。一般に、マイクロカテーテルの遠位端には、主治医または製造業者によって、患者の特定の解剖学的構造に応じて、例えば、45°、26°、「J」字状、「S」字状または他の曲げ形状などの選択された予め成形された曲げが設けられ、その結果、ガイドワイヤが引き抜かれたときに、1または複数の血管閉塞デバイスを動脈瘤嚢内に放出するために望ましい位置に留まるようになる。その後、送達アセンブリの遠位端に結合された血管閉塞デバイスがマイクロカテーテルの遠位端開口部から動脈瘤嚢内に延びるまで、送達アセンブリまたは「プッシャ」アセンブリまたは「ワイヤ」がマイクロカテーテルに通される。動脈瘤嚢内に入ると、血管閉塞デバイスの一部は、より効率的で完全な充填を可能にするために変形または屈曲することができる。その後、血管閉塞デバイスは、送達アセンブリの遠位端から放出または「分離」され、送達アセンブリはマイクロカテーテルを通して引き戻される。患者の特定のニーズに応じて、1または複数の追加の血管閉塞デバイスを、マイクロカテーテルに通して押し込み、同じ動脈瘤嚢内に放出することができる。
【0005】
重要なことに、蛍光透視法は、通常、動脈瘤内への送達中に血管閉塞デバイスを視覚化するために使用され、一方、磁気共鳴画像法(MRI)は、通常、動脈瘤嚢が適切に閉塞されていることを確認するために、処置後(例えば、動脈瘤の初期治療の数週間後)に治療部位を視覚化するために使用される。このため、血管閉塞デバイスは、動脈瘤の治療中にその放射線不透過性を可能にする一方で、処置後のMRI中に生じる視覚化を妨げるアーチファクトを最小限に抑える(すなわち、MRIに適合する)ように構築されることが重要である。また、動脈瘤の繊細な組織の破裂を防止するために、そのような血管閉塞デバイスが「柔らかく」(すなわち、横方向に柔軟または順応性があり)、それにより非外傷性であることも重要である。
【0006】
また、そのような血管閉塞デバイスが動脈瘤内に長期間保持されることが重要である。しかしながら、一般に「広頚動脈瘤」として知られている大きな口を有する動脈瘤は、動脈瘤嚢内に血管閉塞デバイスを配置して保持することが困難であり、特に、小さくて比較的細い血管閉塞コイルでは、どんなに巧みに配置しても、そのような動脈瘤嚢内の位置を維持するのに十分な機械的強度が不足する。このため、血管閉塞コイルを動脈瘤嚢内に確実に留置するためには、動脈瘤のネック領域に隣接する血管にステントやバルーンを展開する必要があり、それにより処置が複雑になる。この問題に対処するために、少なくとも部分的に編組(または織物)構造で構成された血管閉塞デバイスが開発されている。そのような編組構造の血管閉塞デバイスは、より大きくネックをカバーし、動脈瘤のネックにわたってより効果的なバックボーンを提供するため、バルーンやステントなどの補助的な動脈瘤保持デバイスを展開する必要なく、広頚動脈瘤内に効果的に保持することができる。
【0007】
編組部分を有する血管閉塞デバイスは、使用中にデバイスが前進する動脈瘤および血管系全体の脆弱な組織への損傷を防止するために、血管閉塞デバイスに非外傷性端部を提供するコイルを遠位端および/または近位端に含むこともできる。しかしながら、コイルが編組のストランド/ワイヤ間の開口部に入り込むことによって編組と望ましくない相互作用を起こし、その結果、血管閉塞デバイスの編組部分とコイルとが絡み合うことが判明している。この絡み合う状態は、本明細書では「係合」または「噛み合う」ともいう。コイルと編組との間の係合が生じると、血管閉塞デバイスを適切に操作することができなくなり、例えば、デバイスを送達デバイス(例えば、送達カテーテル)内に引き戻すのを妨げ、かつ/または血管閉塞デバイスの送達構成から展開された拡張構成への適切な移行を妨げる。コイルとブレードとの絡み合いは、より小さいサイズの血管閉塞コストをより小さな動脈瘤腔内に展開する場合に、より頻繁に生じる。これは、より小さい動脈瘤内の限られた空間がデバイスを拘束し、コイルセグメントと編組との接触を増大させるためである。
【0008】
さらに、コイル付きのまたは編組された血管閉塞デバイスが使用されるかどうかにかかわらず、従来の血管閉塞デバイス送達システムでは、そのような血管閉塞デバイスが比較的短く、拡張性が制限されていることが必要であり、そうでなければ、それらをマイクロカテーテル内に押し込むことおよび/またはマイクロカテーテルから取り出すことが(不可能ではないにしても)困難である。残念ながら、動脈瘤嚢内への小さい(短い)血管閉塞デバイスの送達には、より長く、より複雑な手順を必要とする可能性があるため、そのような小さい血管閉塞デバイスはあまり望ましくない。例えば、直径7mmの神経動脈瘤嚢には、通常、5~7個の個別のバネ状コイルが充填されるため、デバイスの数を減らした場合よりも、手順が長く複雑になる可能性がある。
【0009】
理論的には、動脈瘤の治療に必要な血管閉塞デバイスの数を減らすために、血管閉塞デバイスの長さを長くすることができる。しかしながら、血管閉塞デバイスの長さを長くすると、必然的にそのような血管閉塞デバイスと送達カテーテルのルーメンとの摩擦が増大する。そのため、血管閉塞デバイスを動脈瘤内に確実に送達するためには、(例えば、高いヤング率を有する材料を選択するか、または血管閉塞デバイスを形成するワイヤの直径を増加させることによって)そのような血管閉塞デバイスの柱強度を増加させ、かつ/または送達カテーテルの直径を増加させる必要がある。しかしながら、上述したように、動脈瘤に非常に細い血管系を通してアクセスできるようにするためには、送達カテーテルの直径をできるだけ小さくすることと、血管閉塞デバイスが動脈瘤の繊細な組織に外傷を与えないように十分に柔らかくすることの両方が重要である。
【0010】
比較的長い血管閉塞デバイスが、比較的小さい直径の送達カテーテルを通して送達されるのに必要な柱強度を有し、同時に、柔らかさ、放射線不透過性およびMRI適合性の要件を含む他の対抗要件を満足することを可能にする材料は非常に限られている。例えば、血管閉塞コイルの製造に通常使用する白金-タングステン(PtW)合金のような、比較的高いヤング率および比較的高い放射線不透過性を有する既知の材料は、比較的長い血管閉塞デバイスに必要な柱強度を提供するために使用される可能性があるが、血管閉塞デバイスが小径の送達カテーテル内に収まることを可能にしながら、柔らかさの要件を満たすために、そのような血管閉塞デバイスの製造に使用するワイヤの直径を小さくする必要がある。その結果、血管閉塞デバイスの放射線不透過性が低下し、柱強度が低下するため、血管閉塞デバイスを短くする必要があり、かつ/または送達カテーテルの直径を大きくする必要がある。
【0011】
このため、コイル部分と編組部分との間の絡み合いの問題を最小限に抑え、前述した要求を満足する血管閉塞デバイスを提供する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0012】
本開示の医療デバイスおよび血管内医療処置の一態様によれば、血管閉塞デバイスが、動脈瘤嚢内に埋め込むように構成された細長い血管閉塞デバイス(例えば、長さが少なくとも5cm)を含む。血管閉塞デバイスは、送達カテーテル内に拘束されたときの送達構成と、送達カテーテルから動脈瘤嚢内に放出されたときの展開構成とを有する。血管閉塞デバイスは、細長い編組部分を含み、この編組部分が、デバイスの主要な物理的構造を有する。編組部分は、複数の細長いストランドを、ストランド間に隙間または開口部が存在するように一緒に編んで構成される。編組部分は、近位端および遠位端を有する。編組部分は、第1の曲げ剛性を有し、この第1の曲げ剛性は、編組の材料、形状および寸法の関数である。
【0013】
また、血管閉塞デバイスは、編組部分の遠位端に結合された遠位コイルセグメントも有する。別の態様では、遠位コイルセグメントが、通常は編組部分よりも遥かに短く、デバイスの使用中に動脈瘤および血管構造の繊細な組織の損傷を避けるために、デバイスに非外傷性の末端を提供するために使用される。遠位コイルセグメントは、デバイス全体の長さを延長するように編組部分の遠位端から遠位方向に延びている。遠位コイルセグメントは、第2の曲げ剛性を有する。
【0014】
別の態様では、第2の曲げ剛性(遠位コイルセグメントの曲げ剛性)と第1の曲げ剛性(編組部分の曲げ剛性)との比が、0.5以上1.0以下の範囲内、代替的には0.6以上0.8以下の範囲内である。この比の範囲は、編組部分および遠位コイルセグメントを有する従来利用可能な血管閉塞デバイスよりも改善された性能を提供するように決定されている。この遠位コイルセグメント対編組部分の曲げ剛性比は、望ましい性能の予期せぬ組合せをもたらすと同時に、遠位コイルセグメントと編組部分との間の係合の可能性も減少させる。例えば、この範囲外では、遠位コイルセグメントが硬すぎたり柔らかすぎたりして、係合の可能性が高くなり、かつ/またはループ分布の均一性の欠如、より困難な展開(例えば、臨床医によるより多くの手動操作を必要とする)および/または動脈瘤へのアクセスの喪失を引き起こすカテーテルの跳ね返り力など、望ましくない性能特性をもたらす。
【0015】
代替的には、第2の曲げ剛性(遠位コイルセグメントの曲げ剛性)と第1の曲げ剛性(編組部分の曲げ剛性)の比は、0.5~1.0の範囲内、または0.55~0.9の範囲内、または0.65以上0.75以下の範囲内、または0.6以上0.8以下の範囲内の任意の適切な小さい範囲内、例えば0.68以上0.72以下の範囲内とすることができる。
【0016】
さらに別の態様では、血管閉塞デバイスが、編組部分の近位端に結合された近位コイルセグメントをさらに含むことができる。近位コイルセグメントは、デバイス全体の長さを延長するように編組部分の近位端から近位方向に延びている。遠位コイルセグメントと同様に、近位コイルセグメントは、編組部分よりも遥かに短くてもよく、デバイスの使用中に動脈瘤および血管構造の繊細な組織に損傷を与えないように、デバイスに非外傷性の末端を提供する。さらに別の態様では、近位コイルセグメントが、第2の曲げ剛性と実質的に同じ曲げ剛性を有することができる。
【0017】
さらに別の態様では、血管閉塞デバイスの編組部分が、送達カテーテル内に拘束されたときの送達構成と、送達構成とは異なる送達カテーテルから解放されたときの展開構成とを有することができる。例えば、展開構成は、拘束された送達構成よりも大きな断面寸法を有するように拡張した形状であってもよい。例えば、送達構成は、実質的に直線形状または螺旋コイルであってもよい。編組部分は、送達カテーテルからの解放時に展開構成に形成されるようにバイアスされた自己形成/拡張材料から形成されたものであってもよい。編組部分は、解放時に自己形成する、または温度変化、電流などの予め設定された条件に曝されると展開構成に形成される形状記憶材料または構成要素を含むことができる。展開構成は、1または複数の螺旋コイル、1または複数のループ、複雑な3次元形状など、任意の適切な形状であってよい。別の態様では、展開構成が、送達構成の断面寸法の少なくとも3倍、または少なくとも2倍、または少なくとも1.5倍の断面寸法を有する3次元形状である。
【0018】
本開示の医療デバイスおよび血管内医療処置の別の態様によれば、別の血管閉塞デバイスが、近位端および遠位端を有する細長い主要部分と、主要部分の長さ方向に沿った複数の開口部とを備える。例えば、主要部分は、編組、メッシュ、複数の開口を有するチューブ、または他の適切な細長い構造であってもよい。チューブは、細長い中空の物体であってもよく、それには、チューブに巻かれた平らなシートが含まれるが、これに限定されるものではない。開口部は、非外傷性の遠位セグメントの遠位先端が開口部に入って、主要部分と係合するのに十分な大きさである。血管閉塞デバイスは、送達カテーテル内に拘束されたときの送達構成と、送達カテーテルから動脈瘤嚢内に放出されたときの展開構成とを有する。主要部分は、第1の曲げ剛性を有する。
【0019】
血管閉塞デバイスは、主要部分の遠位端に結合された非外傷性の遠位セグメントを有する。遠位セグメントは、主要部分の遠位端から遠位方向に延びる。遠位セグメントは、第2の曲げ剛性を有する。遠位セグメントは、遠位先端を有し、開口部は、遠位先端が開口部に入って主要部分と係合するのに十分な大きさである。
【0020】
第2の曲げ剛性(非外傷性の遠位セグメントの曲げ剛性)と第1の曲げ剛性(主要部分の曲げ剛性)との比は、0.5以上1.0以下の範囲内、または0.6以上0.8以下の範囲内である。この比の範囲は、上述した血管閉塞デバイスと同様に、主要部分と非外傷性の遠位セグメントとを有する従来利用可能な血管閉塞デバイスよりも改善された性能を提供するように決定されている。この遠位セグメント対主要部分の曲げ剛性比は、望ましい性能の予期せぬ組合せをもたらすと同時に、遠位コイルセグメントと主要部分との間の係合の可能性も減少させる。この範囲外では、遠位セグメントが硬すぎたり柔らかすぎたりして、係合の可能性が高くなり、かつ/または望ましくない性能特性をもたらす可能性がある。
【0021】
代替的には、第2の曲げ剛性(遠位セグメントの曲げ剛性)と第1の曲げ剛性(主要部分の曲げ剛性)との比は、0.5~1.0の範囲内、または0.55~0.9の範囲内、または0.65以上0.75以下の範囲内、または0.6以上0.8以下の任意の適切な小さい範囲内、例えば0.68以上0.72以下の範囲内であってもよい。
【0022】
別の態様では、遠位セグメントが、コイル、螺旋コイル、チューブおよび柔軟ロッド、またはそれらの組合せであってもよい。遠位セグメントは、血管閉塞デバイスの使用中に動脈瘤および血管構造の繊細な組織に損傷を与えるのを回避する血管閉塞デバイスのための非外傷性の先端を提供するために、丸みを帯びたかつ/または柔らかい先端を有することができる。
【0023】
別の態様では、血管閉塞デバイスが、主要部分の近位端に結合され、主要部分の近位端から近位方向に延びる非外傷性の近位セグメントも有することができる。近位部分は、遠位セグメントと同一または同様の特性のうちの1または複数を有することができる。
【0024】
追加的な態様では、本明細書に開示の血管閉塞デバイスの何れかが、血管閉塞アセンブリおよび送達アセンブリを含む血管閉塞システムの一部であってよい。例えば、血管閉塞アセンブリは、本明細書に記載の血管閉塞デバイスの何れかと、血管閉塞デバイスに切り離し可能に結合されたプッシャ部材とを含むことができる。プッシャ部材は、臨床医が血管閉塞デバイスを送達カテーテルに沿って患者の血管系を通して、血管閉塞デバイスで治療される動脈瘤などの標的部位まで進め、その血管閉塞デバイスを送達カテーテルの遠位端から押し出して血管閉塞デバイスを展開することができるように構成されている。
【0025】
さらに別の態様では、血管閉塞アセンブリが、プッシャ部材を血管閉塞デバイスに切り離し可能に結合する分離デバイスも含むことができる。例えば、分離デバイスは、電解分離、機械的コネクタ、熱作動分離、溶解分離などを含むことができる。送達アセンブリは、血管閉塞デバイスがそのコンパクトな送達構成で導入され得る送達カテーテルを含むことができる。送達アセンブリは、動脈瘤などの患者の血管系内の標的埋込部位に送達カテーテルを案内するためのガイドワイヤも含むことができる。その後、ガイドワイヤは取り外され、血管閉塞デバイスが送達カテーテルを通して標的埋込部位まで進められる。
【0026】
本開示のさらに別の態様では、デバイスが血管閉塞デバイスに限定されるものではないが、細長い主要部分と、主要部分の遠位端に取り付けられた遠位セグメントとを含み、本明細書に開示の血管閉塞デバイスの他の特徴を有する任意の医療デバイスであってもよい。例えば、医療デバイスは、任意の適切な血栓除去デバイス、ステントリトリーバ、塞栓フィルタ、ステント送達システム、他の埋込デバイス、ガイドワイヤ、血管内デバイス、または他の医療デバイスであってもよい。医療デバイスは、近位端および遠位端を有する細長い主要部分と、主要部分の長さ方向に沿った複数の開口部とを備える。例えば、主要部分は、編組、メッシュ、複数の開口を有するチューブ、または他の適切な細長い構造であってもよい。チューブは、細長い中空の物体であってもよく、それにはチューブに巻かれた平らなシートが含まれるが、これに限定されるものではない。開口部は、非外傷性の遠位セグメントの遠位先端が開口部に入って、主要部分と係合するのに十分な大きさである。任意選択的には、医療デバイスは、送達カテーテル内に拘束されたときの送達構成と、送達カテーテルから動脈瘤嚢内に放出されたときの展開構成とを有することができる。主要部分は、第1の曲げ剛性を有する。
【0027】
医療デバイスは、編組部分の遠位端に結合された非外傷性の遠位セグメントを有する。遠位セグメントは、主要部分の遠位端から遠位方向に延びる。遠位セグメントは、第2の曲げ剛性を有する。遠位セグメントは遠位先端を有し、開口部は、遠位先端が開口部に入って主要部分と係合するのに十分な大きさである。
【0028】
第2の曲げ剛性(非外傷性の遠位セグメントの曲げ剛性)と第1の曲げ剛性(主要部分の曲げ剛性)との比は、0.5以上1.0以下の範囲内、または0.6以上0.8以下の範囲内である。この比率の範囲は、主要部分と非外傷性の遠位セグメントとを有する従来利用可能な医療デバイスよりも優れた性能を提供する。この遠位セグメント対主要部分の曲げ剛性比は、望ましい性能の予期せぬ組合せをもたらすと同時に、遠位コイルセグメントと主要部分との間の係合の可能性も減少させる。この範囲外では、遠位セグメントが硬すぎたり柔らかすぎたりして、係合の可能性が高くなり、かつ/または望ましくない性能特性をもたらす可能性がある。
【0029】
代替的には、第2の曲げ剛性(遠位セグメントの曲げ剛性)と第1の曲げ剛性(主要部分の曲げ剛性)との比は、0.5~1.0の範囲内、または0.55~0.9の範囲内、または0.65以上0.75以下の範囲内、または0.6以上0.8以下の任意の適切な小さい範囲内、例えば0.68以上0.72以下の範囲内であってもよい。
【0030】
別の態様では、遠位セグメントが、コイル、螺旋コイル、チューブおよび柔軟ロッド、またはそれらの組合せであってもよい。遠位セグメントは、血管閉塞デバイスの使用中に動脈瘤および血管構造の繊細な組織に損傷を与えるのを回避する血管閉塞デバイスのための非外傷性の先端を提供するために、丸みを帯びたかつ/または柔らかい先端を有することができる。
【0031】
動脈瘤などの解剖学的腔内に本明細書に開示の血管閉塞デバイスおよび他の医療デバイスのうちの何れかを展開する方法も開示されている。1つの方法では、血管閉塞デバイスが、コンパクトな送達構成で送達カテーテルデバイス内に挿入されて、この送達カテーテルデバイスを介して進められる。送達カテーテルは、先ず患者の血管系に挿入され、送達カテーテルの遠位端を標的挿入部位に配置するように血管系内で前進させられる。この例では、標的挿入部位が動脈瘤である。標的挿入部位は、血管閉塞デバイスが展開される血管系内の任意の適切な解剖学的部位であり得ることを理解されたい。ガイドワイヤが使用される場合、ガイドワイヤは、先ず患者の血管系に挿入され、この血管系を介して動脈瘤の部位まで進められる。その後、送達カテーテルが、ガイドワイヤに沿って動脈瘤まで進められた後、ガイドワイヤが取り除かれる。
【0032】
その後、血管閉塞デバイスがそのコンパクトな送達形態で送達カテーテル内に挿入され、血管閉塞デバイスの遠位端が標的挿入部位に位置するまで送達カテーテルに沿って進められる。次いで、血管閉塞デバイスは、プッシャ部材を使用して送達カテーテルの外に遠位方向に押し出される。遠位セグメント(例えば、遠位コイルセグメント)は、動脈瘤のネックを通って動脈瘤嚢内に進められる。血管閉塞デバイスがプッシャ部材を介して送達カテーテルの外に前進し続けると、編組部分も動脈瘤嚢内に前進する。また、血管閉塞デバイスが送達カテーテルから放出されると、動脈瘤嚢内で拡張展開構成に拡張する。血管閉塞デバイス全体が動脈瘤嚢内に挿入されると、血管閉塞デバイスは、例えば分離デバイスを作動または起動させることにより、プッシャ部材から切り離すことができる。場合によっては、動脈瘤を充填し閉塞するのに単一の血管閉塞デバイスで十分である。複数の血管閉塞デバイスが必要な場合には、動脈瘤を充填して閉塞させるのに十分な数の血管閉塞デバイスを送達するためにこのプロセスを繰り返すことができる。
【0033】
開示の発明の実施形態の他のおよび更なる態様および特徴は、添付の図面を考慮した以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図面は、本明細書に開示のデバイスおよび方法の様々な態様の設計および有用性を示すものであり、同様の要素には共通の符号が付されている。なお、図面は縮尺通りに描かれておらず、同様の構造または機能の要素が、図面全体を通して同様の符号によって示されいることに留意されたい。また、図面は、開示の技術の様々な態様の説明を容易にすることのみを意図していることに留意されたい。それらは、本技術の網羅的な説明あるいは本技術の範囲の限定として意図されるものではなく、本技術の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ規定されるものである。さらに、開示の技術の例示的な実施例は、本明細書に開示または記載のすべての態様または利点を有する必要はない。開示の技術の特定の実施例と関連して説明された態様または利点は、必ずしもその実施例に限定されるものではなく、たとえそのように例示されていなくても、他の任意の実施例において実施することができる。本技術の上記および他の利点および目的が如何にして得られるのかをよりよく理解するために、添付の図面に例示されているその具体例を参照することにより、上で簡単に説明した本技術のより具体的な説明を行うこととする。それら図面および対応する説明は、開示の技術の例示的な実施例のみを示しており、よって、その範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解した上で、添付の図面の使用を通じて、さらに具体的かつ詳細に本技術を説明および記載することとする。
【0035】
図1図1は、血管閉塞デバイスの編組部分と係合した遠位コイルセグメントを示す血管閉塞デバイスの斜視図である。
図2図2Aは、送達カテーテル内で拘束された送達構成にある血管閉塞デバイスを有する血管閉塞システムの断面側面図である。図2Bは、血管閉塞デバイスが送達カテーテルの外に展開されてその拡張した展開構成にある、図1の血管閉塞システムの断面側面図である。
図3図3は、図1の血管閉塞デバイスの遠位セグメントおよび主要部分の曲げ剛性比と、曲げ剛性比の様々な範囲についての性能特性および係合問題との間の関係を示すグラフである。
図4図4は、図2Aおよび図2Bの設計に従って構築された血管閉塞デバイスの実施例に関する経験的データのグラフであり、図1の血管閉塞デバイスの遠位セグメントおよび主要部分の曲げ剛性比と、曲げ剛性比の様々な範囲についての性能特性および係合問題との間の関係を示している。
図5図5は、図2Aおよび図2Bの設計に従って構築された、種々の曲げ剛性比を有する血管閉塞デバイスの実施例に関する経験的データの表である。
図6図6は、動脈瘤の位置まで患者の血管系の一部に進められるガイドワイヤを示す断面側面図である。
図7図7は、ガイドワイヤの上で送達カテーテルを進めた状態の、図6のガイドワイヤおよび患者の血管系を示す断面側面図である。
図8図8は、血管閉塞デバイスを動脈瘤内に展開するために、図2Aおよび図2Bの血管閉塞システムが図7の送達カテーテル内で前進している様子を示す断面側面図である。
図9図9は、血管閉塞デバイスを動脈瘤内に展開した状態の、図7の血管閉塞システムを示す断面側面図である。
図10図10は、図2Aおよび図2Bの血管閉塞システムを使用して、血管閉塞デバイスを動脈瘤内に展開するための例示的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、編組部分102および遠位コイルセグメント104を含む血管閉塞デバイス100の係合の問題を示している。血管閉塞デバイス100は、主要な編組部分102と、編組部分102の遠位端106に取り付けられた遠位コイルセグメント104とを備える。編組部分102、または遠位コイルセグメント104を受け入れるのに十分な大きさの開口部を有する他の部分を含むそのような血管閉塞デバイス100の挿入中に、血管閉塞デバイスが送達カテーテルから出て動脈瘤のような解剖学的腔内に前進するときに、血管閉塞デバイス100が送達カテーテル内の送達構成から拡張した展開構成に移行する際、遠位コイルセグメント104が編組部分102に係合し得ることが発見されている。この係合は、3次元形状を有する展開構成の血管閉塞デバイス100を示す図1に示されている。遠位コイルセグメント104は、図1に示すように、編組部分102の編組ストランドの開口部を通って挿入され、その結果として、遠位コイルセグメント104が編組部分としっかり係合している。この係合は、血管閉塞デバイス100が適切に操作されることを妨げ、例えば、デバイス100が送達デバイス(例えば、送達カテーテル)に引き戻されるのを妨げ、かつ/または血管閉塞デバイス100がその送達構成からその展開された拡張構成に適切に移行するのを妨げるため、非常に望ましくない結果である。
【0037】
本明細書では、解剖学的空間(動脈瘤など)を閉塞するための血管閉塞デバイスに関して係合問題および具体例を説明するが、本開示はそのようなデバイスに限定されるものではなく、細長い主要部分と、主要部分の遠位端に取り付けられた遠位セグメントとを含む任意の医療デバイスを対象とする。例えば、医療デバイスは、任意の適切な血栓除去デバイス、ステントリトリーバ、塞栓フィルタ、ステント送達システム、他の埋込デバイス、ガイドワイヤ、血管内デバイス、または他の医療デバイスであってもよい。
【0038】
図2Aおよび図2Bを参照すると、係合問題を緩和する血管閉塞デバイス210を有する血管閉塞システム200が示されている。また、血管閉塞デバイス210は、挿入中および使用中に良好な性能特性も示す。血管閉塞システム200は、送達アセンブリ202および血管閉塞アセンブリ204を備える。図6および図7に示すように、送達アセンブリ202は、送達カテーテル206および任意のガイドワイヤ208を含むことができる。血管閉塞アセンブリ204は、血管閉塞デバイス210と、分離デバイスまたは接合部214を介して血管閉塞デバイス210に切り離し可能に結合されたプッシャ部材212とを備える。図2Aは、血管閉塞デバイスがそのコンパクトな送達構成にあるように送達カテーテル206内にスライド可能に配置された後の血管閉塞アセンブリ204を示している。
【0039】
送達カテーテル206は、典型的には、細長い可撓性チューブであり、例えば、マイクロカテーテルなどとすることができる。送達カテーテル206は、近位部分216と、遠位部分218と、近位部分216から遠位部分218まで延びるルーメン220とを有する細長いシース本体215を備える。送達カテーテル206の近位部分216は、典型的には、血管閉塞システム200が使用されるときに患者の体外に留まり、臨床医がアクセス可能であるが、遠位部分218は、患者の血管系の遠隔位置に到達するようなサイズおよび寸法とされ、動脈瘤に血管閉塞デバイス210を送達するように構成されている。送達カテーテル206は、シース本体215内に流体を導入するために、またはシース本体から流体を除去するために、ルーメン220と流体連通する1または複数のポート222も有することができる。シース本体215は、ポリエチレン、ステンレス鋼、または他の適切な生体適合性材料もしくはその組合せなど、適切なポリマー材料、金属および/または合金から構成することができる。場合によっては、近位部分216は、シース本体215の押し込み易さを高めるために、編組層またはコイル層などの補強層を含むことができる。シース本体215は、近位部分216と遠位部分218との間に移行領域を含むことができる。
【0040】
血管閉塞デバイス210は、近位端226および遠位端228を有する細長い主要部分224を備える。主要部分224は、弾性のある管状部材を形成するように一緒に編まれた複数のストランドを含む編組部分であってもよい。代替的には、主要部分224は、メッシュ、または複数の開口を有するチューブ(チューブは、限定されるものではないが、チューブに巻かれた平坦なシートを含む、任意の細長い中空の物体であってよい)、または主要部分224の長さ方向に沿った複数の開口部、例えば、主要部分224のほぼ全長、または主要部分224の長さの少なくとも50%、または主要部分の長さの少なくとも75%に沿った複数の開口部を有する他の細長い構造を含むことができる。主要部分224は、曲げ変形に対する主要部分224の抵抗の尺度である第1の曲げ剛性を有する。これは、典型的には「mN/mm」の単位など、単位幅当たりの曲げモーメントで表される。編組部分224の場合、第1の曲げ剛性は、編組構成およびその二次直径(すなわち、編組部分224の外径またはデバイス210の外径)によって決定される。
【0041】
また、血管閉塞デバイス210は、主要部分224の遠位端228に結合された柔軟で非外傷性の遠位セグメント230を有する。遠位セグメント230は、近位端232および遠位端234を有する。図中の遠位セグメント230は、遠位セグメント230が遠位コイルセグメント230となるに螺旋状のコイルを備える。遠位コイルセグメント230の近位端232は、溶接、機械的ファスナ、接着剤などの任意の適切な手段によって、主要部分224の遠位端228に取り付けることができる。また、遠位セグメント230は、螺旋コイル230の遠位端234に取り付けられた非外傷性の先端236も有することができる。非外傷性の遠位セグメント230は、主要部分224の第1の曲げ剛性よりも低い第2の曲げ剛性を有する。遠位セグメント230は、主要部分224よりも柔軟であり、すなわち、主要部分の第1の曲げ剛性よりも低い曲げ剛性を有し、それにより、血管閉塞デバイス210が送達カテーテル206から出て患者の血管構造および動脈瘤内に前進する際に動脈瘤および/または血管構造の繊細な組織に損傷を与えたり、破裂させたり、または他の方法で外傷を引き起こしたりしない血管閉塞デバイスのための非外傷性遠位先端を提供することができる。代替的には、遠位セグメント230は、所望の非外傷性の特性を提供する他の適切な柔軟構造、例えば、ポリマーロッドまたはチューブなどであってもよい。
【0042】
非外傷性の遠位セグメント230は、主要部分224の第1の曲げ剛性とは異なる第2の曲げ剛性を有する。遠位コイルセグメント230の場合、第2の曲げ剛性は、コイルワイヤの直径、ピッチ、一次コイルの直径および二次コイルの直径(二次コイル形状の直径)の関数である。本明細書で説明するように、遠位セグメント230の第2の曲げ剛性と主要部分224の第1の曲げ剛性との比(本明細書では「曲げ剛性比」という)の特定の範囲は、血管閉塞デバイス210の望ましい性能特性を提供しながらも、係合問題を軽減することができる。第2の曲げ剛性と第1の曲げ剛性との比の所望の範囲を目標とするように遠位セグメント230の外径とともに遠位セグメント230の構成を制御することにより、主要部分224の所与の第1の曲げ剛性に対して、遠位コイルセグメント230の第2の曲げ剛性を操作することができる。
【0043】
血管閉塞デバイス210は、動脈瘤嚢240(図6図9を参照)に埋め込むためのサイズであり、その断面において任意の形状または幾何学的形状をとることができる。例えば、図1および図2に示す実施形態では、血管閉塞デバイス210が、内力および/または外力によって部分的に扁平になり得る管状の形状を有する弾性のある編組メッシュまたは多孔性の主要部分224と、螺旋コイルである遠位セグメント230との形態をとる。
【0044】
任意選択的には、血管閉塞デバイス210は、送達カテーテル206内で半径方向に拘束されているときにコンパクトな送達構成を有することができ、動脈瘤嚢240または他の解剖学的腔内への放出のように送達カテーテル206から解放されたときに送達構成とは異なる二次形状を有する展開構成に形成されるように構成することができる。図2Aは、血管閉塞デバイス210が送達カテーテル206内に保持され、送達カテーテル206の長手方向経路(すなわち、形状)に実質的に適合するコンパクトな送達構成にある血管閉塞デバイス210を示している。例えば、図2Aにおいて、血管閉塞デバイス210は、実質的に直線状の軸形状を有する。図8に示すように、送達カテーテル206内に挿入されると、血管閉塞デバイス210は、血管242内で送達カテーテル206の長手方向経路を辿る。血管閉塞デバイス210は、図2Bおよび図9に示すように、送達カテーテル206から放出されると、複数のループおよび/または曲線を含み、それらが重なり合わない、または重なり合う、またはその組合せとなる3次元形状である、その展開構成に形成される。血管閉塞デバイス210の、その展開構成における断面寸法は、例えば、そのコンパクトな送達構成における血管閉塞デバイス210の断面寸法の1.5倍よりも大きく、好ましくは2倍よりも大きく、最も好ましくは3倍よりも大きくてもよい。
【0045】
血管閉塞デバイス210の展開構成は、任意の適切な方法によってデバイスに形成またはプログラムすることができる。例えば、主要部分224(例えば、編組された主要部分224)を形状記憶材料で形成することができる。編組224などの主要部分224は、任意の適切な材料で形成することができ、それには、白金合金、白金-タングステン合金、金合金、またはニチノール、またはそれらの任意の組合せが含まれるが、これに限定されるものではない。主要部分224は、展開された構成のループおよび/または曲線の形状でマンドレルの周りに巻かれ、その後、展開された構成を主要部分224に形成またはプログラムするために加熱処理される。代替的には、主要部分224を形状記憶材料で形成して、温度変化、電流、または他の形状形成条件などの予め設定された条件に主要部分224が曝されたときに、展開構成になるようにプログラムすることができる。
【0046】
本明細書で説明するように、主要部分224は、所望の長さ(例えば、5cm超、5cm~45cm、5cm~30cmなど)を有する編組で形成することができる。編組は、編組機を使用して複数のワイヤまたはストランドから形成され、マンドレル(例えば、主要部分224の所望の最終断面形状に応じた円形、楕円形、平坦な形状、他の形状を有するマンドレル)の周りに編組されることができる。編組後、主要部分224は、メッシュ部分224の直線状の「一次形状」を形成するために、その送達構成にヒートセットすることができる。その後、ヒートセットが完成した編組を第2のマンドレル(例えば、3次元マンドレル)に巻き付け、二回目のヒートセットを行い、3次元の展開構成を付与することができる。
【0047】
図3を参照すると、グラフは、様々な範囲の曲げ剛性比について、血管閉塞デバイス210の所望の性能特性と最小化された係合との最適化された組合せを示している。図3のグラフは、主要部分224の外径(デバイス外径または編組部分の二次形状の外径)に対する曲げ剛性比をプロットしたものである。血管閉塞デバイス210の性能特性には、動脈瘤内でのループ分布の均一性、展開の容易さ、動脈瘤内での遠位セグメント230の効果的な留置(すなわち、展開中、遠位セグメント230が動脈瘤内に留まり、動脈瘤の外に進まない)、および展開中のカテーテルの跳ね返り力(すなわち、送達カテーテル206の遠位端218の変位を引き起こす送達カテーテル206に作用する反動力の大きさ)などの観察可能な機能的属性が含まれる。
【0048】
図3のグラフは、曲げ剛性比が1.0を超えると、血管閉塞デバイス210の係合の度合が高くなり、また遠位セグメントが硬すぎるため、望ましくない性能、例えば、動脈瘤内でのループ分布の均一性の欠如、血管閉塞デバイス210を展開するためにより多くのユーザ入力(例えば、操作)を必要とする展開の困難性、遠位セグメント230の一貫性のない留置、および/または送達カテーテル206の遠位端218が標的挿入部位から離れる原因となるカテーテルの跳ね返りなどが生じることを示している。
【0049】
図3をさらに参照すると、0.8~1.0の範囲の曲げ剛性比の場合、血管閉塞デバイス210は、係合の問題を解消する傾向があるが、依然として望ましくない性能特性を示す。より具体的には、0.8~1.0の範囲の曲げ剛性比を有する血管閉塞デバイス210は、ループ分布の均一性の欠如、展開の困難性、血管閉塞デバイス210を展開するためにより多くのユーザ入力(例えば、操作)を必要とすること、および/または送達カテーテル206の遠位端218が標的挿入部位から遠ざかる原因となるカテーテルの跳ね返りをもたらす。
【0050】
図3は、0.6以上0.8以下の範囲の血管閉塞デバイス210の曲げ剛性比が、望ましい性能特性と係合の回避との最良の組合せを提供することを示している。0.6~0.8の範囲の曲げ剛性は、均一なループ分布、展開中に最小限のユーザ入力を必要とする展開の容易さ、動脈瘤から離脱することのない遠位セグメント230の一貫した留置、および送達カテーテル206の遠位端218が動脈瘤のネック内などの標的挿入部位で適切な位置に留まることを可能にする最小限の跳ね返りをもたらす血管閉塞デバイス210を提供する。
【0051】
図3に示すように、血管閉塞デバイス210の曲げ剛性比が0.6未満であると、血管閉塞デバイス210は、展開中に過剰な係合が生じるが、ループ分布の良好な均一性、展開の容易さ、一貫した留置、および最小限のカテーテルの跳ね返りなどの望ましい他の性能特性を示す。しかしながら、過剰な係合のため、0.6未満の曲げ剛性比を有する血管閉塞デバイス210は望ましくない。
【0052】
図4および図5は、図1および図2に示す本明細書に記載のデバイス210に従って構築された血管閉塞デバイス210のプロトタイプのいくつかの例についての経験的な実験データを提供している。実験データは、係合問題および性能特性に対する曲げ剛性比の影響を分析し、最適な曲げ剛性範囲を求めるために使用した。様々なプロトタイプが、図4のグラフおよび図5の表1においてP1~P6と表示されている。プロトタイプP1の曲げ剛性比は1.20である。試験は、15回の模擬使用サイクルと各プロトタイプ設計の10サンプルについて実施した。図4および図5に示すように、プロトタイプP1は、1.0を超える曲げ剛性比について本明細書で説明するように、望ましくない性能特性および高い係合発生率(40%)を示した。
【0053】
プロトタイプP2は、0.95の曲げ剛性比を有し、0.8~1.0の範囲の曲げ剛性比について本明細書で説明するように、係合の問題はないが、望ましくない性能特性を示した。プロトタイプP3の曲げ剛性比は0.70、プロトタイプP5の曲げ剛性比は0.71、プロトタイプP6の曲げ剛性比は0.67である。プロトタイプP3、P5、P6は、0.6以上0.8以下の範囲の曲げ剛性比について本明細書で説明するように、優れた性能特性を示し、かつ係合の問題はなかった。また、プロトタイプP3(血管閉塞デバイス210の直径OD3mm)、P5(血管閉塞デバイス210の直径OD6mm)およびP6(血管閉塞デバイス210の直径OD8mm)は、血管閉塞デバイス210の直径の相違が性能特性および/または係合問題に重大な影響を及ぼさないことを実証している。
【0054】
プロトタイプP4は、0.55の曲げ剛性比を有し、優れた性能特性を示す一方で、プロトタイプP4は、0.60未満の曲げ剛性比について本明細書で説明するように、模擬使用サイクルの20%において、遠位セグメント230が主要部分224と係合する中程度の係合問題を示した。
【0055】
代替的には、曲げ剛性比は、0.55~0.9の範囲内、または0.65以上0.75以下の範囲内、または0.6以上0.8以下の範囲内の任意の適切なより小さい範囲内、例えば0.68以上0.72以下の範囲内であってもよい。
【0056】
図2Aおよび図2Bに戻ると、血管閉塞アセンブリ204は、プッシャ部材212も含む。プッシャ部材212は、送達カテーテル206のルーメン220内に配置されている。プッシャ部材212は、近位部分250であって、典型的には送達カテーテル206の近位部分216よりも近位側に延びる近位部分と、分離デバイス214を介して血管閉塞デバイス210の近位部分226に切り離し可能に結合された遠位部分252とを有する。プッシャ部材212は、血管閉塞デバイス210を送達カテーテル206の遠位端218を通して動脈瘤嚢240内に押し出すことを可能にするのに十分な柱強度を有する、コイル、ワイヤ、テンドン、従来のガイドワイヤ、トルク伝達型ケーブルチューブ、ハイポチューブなどであってよい(図8および図9を参照)。
【0057】
分離デバイス214は、プッシャ部材212と血管閉塞デバイス210との間に切り離し可能な接続を提供する。分離デバイス214は、電解分離、機械的コネクタ、熱作動分離、溶解分離、または他の機械的、熱的および流体圧機構を含むことができる。例えば、分離デバイス214は、血管閉塞デバイス210をプッシャ部材212から電解的に切り離すための電解的に分解可能なセグメントであってもよい。
【0058】
図6および図7に示すように、送達アセンブリ202の任意選択的なガイドワイヤ208は、近位端244および遠位端246を有する。図7に示すように、ガイドワイヤ208が遠位端246を標的挿入部位に位置させた状態で患者の血管系242内に配置された後、送達カテーテル206は、ガイドワイヤ208が送達カテーテル206のルーメン220内に配置された状態でガイドワイヤ208の上を進められる。送達カテーテル206およびガイドワイヤ208の「急速交換」構成では、ガイドワイヤ208が、急速交換ルーメンなどの送達カテーテル206の遠位部分のみを通って延びる。ガイドワイヤ208は、典型的には、最初に患者の血管系を通してガイドワイヤ208を標的挿入部位(例えば、血管閉塞デバイス210によって満たされる動脈瘤のネック)に進めた後、ガイドワイヤ208の上で送達カテーテル206を標的挿入部位まで進めることによって用いられる。
【0059】
次に、図6図10を参照して、血管閉塞システム200を使用して血管閉塞デバイス210を解剖学的体腔内に展開する例示的な方法300を説明する。この方法は、一例として、血管閉塞デバイス210を動脈瘤嚢240内に展開することに関連して説明される。しかしながら、方法300は、血管閉塞デバイス210を動脈瘤嚢240内に展開することに限定されるものではなく、血管閉塞デバイス210、または本明細書に開示の他の医療デバイスを、患者の血管系を介してアクセスできる任意の適切な解剖学的体腔内に展開するために使用することができる。図10のフローチャートに示すように、ステップ302では、ガイドワイヤ208を患者の血管系242内に挿入し、標的挿入部位、すなわち動脈瘤嚢240まで前進させる。本明細書で説明するように、ガイドワイヤ208の使用は任意であり、血管閉塞システム200を使用して血管閉塞デバイス210を展開する方法300では必須ではない。
【0060】
ステップ304では、送達アセンブリ202の送達カテーテル206を、図7に示すように、開放された遠位端218が動脈瘤の動脈瘤ネック248に隣接するかまたはその中に入る位置まで、ガイドワイヤ208の上を前進させる。ステップ306では、送達カテーテル206を定位置に残したまま、ガイドワイヤ208を送達カテーテル206から引き抜く。ステップ308では、血管閉塞アセンブリ204を、送達アセンブリ202の送達カテーテル206内に挿入して、送達カテーテル206内を前進させ、血管閉塞デバイス210の遠位端234を送達カテーテル206の遠位部分218に隣接して配置する。この位置では、プッシャ部材212の近位部分250が、送達カテーテル206の近位部分216よりも近位側にあり、かつ外側に留まる。本方法300の一態様では、血管閉塞デバイス210を送達カテーテル206内に挿入する前に、血管閉塞デバイス210がその送達構成になるように、血管閉塞デバイス210をシース内に予め導入する。その後、シースの遠位端を送達カテーテル206の近位端216と当接させて、シースから送達カテーテル206内に血管閉塞デバイス210を押し出すことにより、血管閉塞デバイス210を送達カテーテル206内に挿入し、それにより血管閉塞デバイス206が送達カテーテル206内でその送達構成で留まるようにする。
【0061】
ステップ310では、プッシャ部材212の近位部分250を押すことによって、血管閉塞デバイス210を、送達カテーテル206のルーメン220を通して、送達カテーテル206から遠位方向に押し出す。血管閉塞デバイス210が送達カテーテル206の開放された遠位端218から押し出されると、遠位セグメント230が動脈瘤ネック248を通って動脈瘤嚢240内に前進し、それにより血管閉塞デバイス210が動脈瘤嚢240内に置かれる。血管閉塞デバイス210がプッシャ部材212を介して送達カテーテル206の外に続けて前進すると、主要部分224も動脈瘤嚢240内に前進する。また、血管閉塞デバイス210が送達カテーテル206から放出されると、ステップ312では、血管閉塞デバイス210が動脈瘤嚢240内で展開構成を形成する。血管閉塞デバイス210全体を動脈瘤嚢240内に挿入したら、ステップ314では、分離デバイス214を作動、起動または他の方法で操作することにより、血管閉塞デバイス210をプッシャ部材212から切り離す。ステップ316では、プッシャ部材212を、送達カテーテル206を介して外に引き出すことによって、患者の血管系242から除去する。動脈瘤嚢240を充填して閉塞するのに単一の血管閉塞デバイス210で十分である場合には、方法300はステップ320に進んで、送達カテーテル206を患者の血管系242から取り除く。308~316に関して、さらに追加の血管閉塞デバイス210を展開すべきかどうかが決定される。また、複数の血管閉塞デバイス210を埋め込む場合には、ステップ308~318のプロセスを繰り返すことにより、動脈瘤嚢240を充填して閉塞するのに十分な数の血管閉塞デバイス210を送達する。十分な数の血管閉塞デバイス210を動脈瘤嚢240に埋め込んだら、ステップ320において、送達カテーテル206を除去する。
【0062】
開示の発明の特定の実施形態を本明細書に示し説明してきたが、それらが本発明を限定することを意図していないことは当業者には理解されるであろう。また、以下の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ規定される開示の発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更および修正(例えば、種々の部品の寸法)を加えることができることが当業者には明らかであろう。したがって、明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味として見なされるべきである。本明細書に示され説明される開示の発明の様々な実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれ得る、開示の発明の代替物、修正物および均等物を網羅することを意図している。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】