(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】BCN057、BCN077および類似体を用いた治療の方法
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20240905BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20240905BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240905BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240905BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240905BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240905BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240905BHJP
A61P 33/06 20060101ALI20240905BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240905BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240905BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240905BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20240905BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240905BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07D471/04 108Q
C07D471/04 CSP
A61K31/4709
A61P1/16
A61P1/18
A61P3/10
A61P11/00
A61P35/02
A61P35/00
A61P37/04
A61P33/06
A61P31/18
A61P31/20
A61P31/14
A61P31/06
A61P31/04
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514447
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 US2022042662
(87)【国際公開番号】W WO2023034644
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520046649
【氏名又は名称】ビーシーエヌ バイオサイエンシズ エル.エル.シー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ノリス,アンドリュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シンガー,エリザベス エム.
(72)【発明者】
【氏名】チャクラボーティ,スディップ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA59
4C084ZA75
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZB38
4C084ZC35
4C084ZC55
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB38
4C086ZC35
4C086ZC55
(57)【要約】
本開示は、BCN057、BCN077および類似体の投与により、種々の状態を治療するまたは緩和する方法に関する。BCN057、BCN077および類似体は、PD-1を調節し、PD-1発現が関与する種々の病気を治療するために使用できる。化合物は、抗悪性腫瘍活性を有する。さらに、化合物はまた、それらがGI管への化学療法誘発毒性に対して保護するので、細胞保護活性も有する。本明細書で開示の化合物は、膵臓癌、胃腸(GI)癌および上皮癌を含む、癌における腫瘍負荷量を低減するために使用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
の化合物またはその類似体であって、
R
1=アルキル、アルキルアミン、エーテル、アリールまたはアリールハライドであり、
R
2=HまたはCH
3であり、
R
3=H、OHまたはOCH
3である、
化合物またはその類似体。
【請求項2】
式I:
【化2】
の化合物またはその類似体であって、
R
1=
【化3】
であり、
n=1、2または3であり、
X=F、CF
3Cl、OHまたはCH
2OHであり、
R
2=HまたはCH
3でありかつR
3=H、OHまたはOCH
3である、
化合物またはその類似体。
【請求項3】
式I:
【化4】
の化合物またはその類似体であって、
R
1=
【化5】
であり、
n=1、2または3であり、
X=F、CF
3Cl、OHまたはCH
2OHであり、
Y=O、SまたはNであり、および
R
2=HまたはCH
3でありかつR
3=H、OHまたはOCH
3である、
化合物またはその類似体。
【請求項4】
式I:
【化6】
の化合物またはその類似体であって、
R
1=
【化7】
であり、
n=1、2または3であり、
X=F、CF
3Cl、OHまたはCH
2OHであり、
Y=O、SまたはNであり、
R
2=HまたはCH
3でありかつR
3=H、OHまたはOCH
3である、
化合物またはその類似体。
【請求項5】
式I:
【化8】
の化合物またはその類似体であって、
R
1=
【化9】
であり、
n=1、2または3でありおよび
R
2=HまたはCH
3でありかつR
3=H、OHまたはOCH
3である、
化合物またはその類似体。
【請求項6】
式I:
【化10】
の化合物またはその類似体であって、
R
1=
【化11】
であり、
n=1、2または3でありおよび
R
2=HまたはCH
3でありかつR
3=H、OHまたはOCH
3である、
化合物またはその類似体。
【請求項7】
式I:
【化12】
の化合物またはその類似体であって、
R
1=
【化13】
であり、
n=1、2または3でありおよび
R
2=HまたはCH
3でありかつR
3=H、OHまたはOCH
3である、
化合物またはその類似体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物の治療量を投与することを含む癌を治療する方法。
【請求項9】
前記癌は、膀胱癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、胃腸癌、泌尿生殖器癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、直腸癌、皮膚癌、血液癌、精巣癌、胆道癌、膀胱癌、神経節癌(神経芽腫)、白血病、リンパ腫、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、肺癌(例えば、大細胞癌、非小細胞癌および扁平細胞癌)、軟組織癌(例えば、血管肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、粘液腫および悪性線維性組織球種-悪性線維性組織球腫)、胃癌または甲状腺癌の少なくとも1種である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記対象に1種または複数の追加の薬物を投与することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記対象への化学療法または放射線療法の投与をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
化学療法または放射線療法の1種または複数の副作用を有する対象を治療する方法であって、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物の治療的有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項13】
治療を必要としている対象において上皮細胞への放射線誘発損傷を予防するまたは治療する方法であって、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物の治療的有効量を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項14】
前記上皮細胞への放射線誘発損傷は、放射線誘発胃腸症候群(RIGS)、放射線誘発粘膜炎、放射線誘発口腔粘膜炎、放射線誘発直腸炎または放射線誘発腸炎の1種または複数として特定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物の治療量を投与することを含む、病気を治療するためにPD-1発現を調節する、T細胞応答を高めるまたは免疫細胞の活性を高める方法。
【請求項16】
前記病気は、脳マラリア、トリパノソーマ・クルージ誘導心筋炎、インフルエンザウィルスA、結核菌、クラミジア肺感染症、COPD、急性肺損傷、肝臓感染症(HBVまたはHCV)、膵炎、1型糖尿病、慢性感染症、敗血症、自己免疫疾患またはHIVの少なくとも1種である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
それを必要としている患者に、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容可能なその塩の有効量を投与することを含むPD-1、PD-L1および/またはPD-1/PD-L1相互作用を抑制する方法。
【請求項18】
1種または複数の免疫チェックポイント制御因子の投与をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
追加の治療薬の投与をさらに含み、前記治療薬は、小分子、抗体、抗体フラグメント、抗体コンジュゲートまたは免疫調節剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
対象においてPD-L1とPD-1および/またはCD80の相互作用を遮断する方法であって、1~7の化合物の治療的有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記自己免疫疾患は、橋本甲状腺炎およびグレーブス病(GD)、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)または多発性硬化症(MS)の少なくとも1種である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記対象に1種または複数の追加の薬物を投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記式I:
【化14】
の化合物またはその類似体の治療量を投与することを含む癌を治療する方法であって、
R
1は、アルキル、アルキルアミン、またはエーテルであり;
R
2は、HまたはCH
3であり;および
R
3は、HまたはOHである、
方法。
【請求項24】
前記癌は、膀胱癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、胃腸癌、泌尿生殖器癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、直腸癌、皮膚癌、血液癌、精巣癌、胆道癌、膀胱癌、神経節癌(神経芽腫)、白血病、リンパ腫、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、肺癌(例えば、大細胞癌、非小細胞癌および扁平細胞癌)、軟組織癌(例えば、血管肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、粘液腫および悪性線維性組織球種-悪性線維性組織球腫)、胃癌または甲状腺癌の少なくとも1種である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象へ1種または複数の追加の薬物を投与することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記対象への化学療法または放射線療法の投与をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記式I:
【化15】
の化合物またはその類似体の治療量を投与することを含む、病気を治療するためにPD-1発現を調節する、T細胞応答を高めるまたは免疫細胞の活性を高める方法であって、
R
1は、アルキル、アルキルアミン、またはエーテルであり;
R
2は、HまたはCH
3であり;および
R
3は、HまたはOHである、
方法。
【請求項28】
前記病気は、脳マラリア、トリパノソーマ・クルージ誘導心筋炎、インフルエンザウィルスA、結核菌、クラミジア肺感染症、COPD、急性肺損傷、肝臓感染症(HBVまたはHCV)、膵炎、1型糖尿病、慢性感染症、敗血症、自己免疫疾患またはHIVの少なくとも1種である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象に1種または複数の追加の薬物を投与することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記1種または複数の追加の薬物は、免疫チェックポイント制御因子である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記1種または複数の追加の薬物は、小分子、抗体、抗体フラグメント、抗体コンジュゲートまたは免疫調節剤である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
対象においてPD-L1とPD-1および/またはCD80の相互作用を遮断する方法であって、式I:
【化16】
の化合物またはその類似体のいずれかの治療的有効量を前記対象に投与することを含み、
R
1は、アルキル、アルキルアミン、またはエーテルであり;
R
2は、HまたはCH
3であり;および
R
3は、HまたはOHである、
方法。
【請求項33】
前記式A:
【化17】
またはその類似体の治療量を投与することを含む病気を治療する方法であって、
R
1=HまたはCH
3でありかつR
2は、
【化18】
の1種である、
方法。
【請求項34】
前記病気は、癌であり、かつ
前記癌は、膀胱癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、胃腸癌、泌尿生殖器癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、直腸癌、皮膚癌、血液癌、精巣癌、胆道癌、膀胱癌、神経節癌(神経芽腫)、白血病、リンパ腫、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、肺癌(例えば、大細胞癌、非小細胞癌および扁平細胞癌)、軟組織癌(例えば、血管肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、粘液腫および悪性線維性組織球種-悪性線維性組織球腫)、胃癌または甲状腺癌の少なくとも1種である、
請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象に1種または複数の追加の薬物を投与することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記1種または複数の追加の薬物は、免疫チェックポイント制御因子である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記1種または複数の追加の薬物は、小分子、抗体、抗体フラグメント、抗体コンジュゲートまたは免疫調節剤である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記対象への化学療法または放射線療法の投与をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記病気は、PD-1発現を調節することにより治療され、および
前記病気は、脳マラリア、トリパノソーマ・クルージ誘導心筋炎、インフルエンザウィルスA、結核菌、クラミジア肺感染症、COPD、急性肺損傷、肝臓感染症(HBVまたはHCV)、膵炎、1型糖尿病、慢性感染症、敗血症、自己免疫疾患またはHIVの少なくとも1種である、
請求項33に記載の方法。
【請求項40】
対象においてPD-L1とPD-1および/またはCD80の相互作用を遮断する方法であって、式Aの前記化合物またはその類似体の治療的有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項41】
患者において化学療法の有害な副作用を防止しながら癌を治療する方法であって、治療量の請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物の投与からなる、方法。
【請求項42】
前記癌は、膀胱癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、胃腸癌、泌尿生殖器癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、直腸癌、皮膚癌、血液癌、精巣癌、胆道癌、膀胱癌、神経節癌(神経芽腫)、白血病、リンパ腫、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、肺癌(例えば、大細胞癌、非小細胞癌および扁平細胞癌)、軟組織癌(例えば、血管肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、粘液腫および悪性線維性組織球種-悪性線維性組織球腫)、胃癌または甲状腺癌の少なくとも1種である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
病気を治療する方法であって、式C:
【化19】
の構造を有する化合物またはその類似体の治療的有効量を投与することを含み、
R
3=
【化20】
であり、
Y=OCH
2CH
3、OCH(n)CH
3、NH
2、OH、OMe、Me、H、CH
2OH、BH
2、SeMeまたはSMeであり;および
R
1およびR
2は独立に、水素、直鎖または分岐鎖のC1-C20アルキル、アルケニル、アルキニルであり、これは、置換されるもしくは置換されず、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環式アルキル、またはヘテロ環式アルケニルであり、これは、置換されるもしくは置換されず、フェニル、置換されたフェニル、アリール、置換されたアリール、アミノ、アミド、F、Cl、Br、I、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、アルキルチオ、セレノール、アルキルセレニル、シリル、シロキシ、ボリル、カルボン酸、スルホリル、-SO
4H、アルコキシまたはアシル基である、
方法。
【請求項44】
前記病気は、脳マラリア、トリパノソーマ・クルージ誘導心筋炎、インフルエンザウィルスA、結核菌、クラミジア肺感染症、COPD、急性肺損傷、肝臓感染症(HBVまたはHCV)、膵炎、1型糖尿病、慢性感染症、敗血症、自己免疫疾患またはHIVの少なくとも1種である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
病気を治療するためにPD-1発現を調節する、T細胞応答を高めるまたは免疫細胞の活性を高める方法であって、前記式C:
【化21】
の化合物またはその類似体の治療量を投与することを含み、
R
3=
【化22】
であり、
Y=OCH
2CH
3、OCH(n)CH
3、NH
2、OH、OMe、Me、H、CH
2OH、BH
2、SeMeまたはSMeであり;および
R
1およびR
2は独立に、水素、直鎖または分岐鎖のC1-C20アルキル、アルケニル、アルキニルであり、これは、置換されるもしくは置換されず、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環式アルキル、またはヘテロ環式アルケニルであり、これは、置換されるもしくは置換されず、フェニル、置換されたフェニル、アリール、置換されたアリール、アミノ、アミド、F、Cl、Br、I、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、アルキルチオ、セレノール、アルキルセレニル、シリル、シロキシ、ボリル、カルボン酸、スルホリル、-SO
4H、アルコキシまたはアシル基である、
方法。
【請求項46】
前記病気は、橋本甲状腺炎およびグレーブス病(GD)、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)または多発性硬化症(MS)の少なくとも1種から選択される自己免疫疾患である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記病気は、癌であり、かつ前記癌は、膀胱癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、胃腸癌、泌尿生殖器癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、直腸癌、皮膚癌、血液癌、精巣癌、胆道癌、膀胱癌、神経節癌、白血病、リンパ腫、肝臓癌、肺癌、軟組織癌、胃癌または甲状腺癌の少なくとも1種である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記式C:
【化23】
の化合物またはその類似体の有効量を投与することを含むPD-1、PD-L1および/またはPD-1/PD-L1相互作用を阻害する方法であって、
R
3=
【化24】
であり、
Y=OCH
2CH
3、OCH(n)CH
3、NH
2、OH、OMe、Me、H、CH
2OH、BH
2、SeMeまたはSMeであり;および
R
1およびR
2は独立に、水素、直鎖または分岐鎖のC1-C20アルキル、アルケニル、アルキニルであり、これは、置換されるもしくは置換されず、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環式アルキル、またはヘテロ環式アルケニルであり、これは、置換されるもしくは置換されず、フェニルり、置換されたフェニル、アリール、置換されたアリール、アミノ、アミド、F、Cl、Br、I、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、アルキルチオ、セレノール、アルキルセレニル、シリル、シロキシ、ボリル、カルボン酸、スルホリル、-SO
4H、アルコキシまたはアシル基である、
方法。
【請求項49】
1種または複数の免疫チェックポイント制御因子の投与をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
追加の治療薬の投与をさらに含み、前記治療薬は、小分子、抗体、抗体フラグメント、抗体コンジュゲートまたは免疫調節剤である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
対象においてPD-L1とPD-1および/またはCD80の相互作用を遮断する方法であって、前記式C:
【化25】
の化合物、またはその類似体の治療的有効量を前記対象に投与することを含み、
R
3=
【化26】
であり、
Y=OCH
2CH
3、OCH(n)CH
3、NH
2、OH、OMe、Me、H、CH
2OH、BH
2、SeMeまたはSMeであり;および
R
1およびR
2は独立に、水素、直鎖または分岐鎖のC1-C20アルキル、アルケニル、アルキニルであり、これは、置換されるもしくは置換されず、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環式アルキル、またはヘテロ環式アルケニルであり、これは、置換されるもしくは置換されず、フェニル、置換されたフェニル、アリール、置換されたアリール、アミノ、アミド、F、Cl、Br、I、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、アルキルチオ、セレノール、アルキルセレニル、シリル、シロキシ、ボリル、カルボン酸、スルホリル、-SO
4H、アルコキシまたはアシル基である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年9月3日出願の米国特許仮出願第63/240,847号に対する優先権を主張する。この仮出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、治療的使用のための小分子、より詳細には、BCN057、BCN077およびこれらの類似体の治療適用に関する。
【背景技術】
【0003】
癌は、身体の他の部位を侵襲する、または他の部位に広がる異常な細胞成長を伴う一群の疾患と定義できる。技術の進歩にもかかわらず、癌は、死亡および計り知れない苦痛の大きな原因であり続けている。癌は、米国における死亡の2番目の最も一般的な原因である。
【0004】
癌の患者には多くの場合、限られた治療法の選択肢しかない。治療は、手術、放射線療法、化学療法および標的療法の併用を含み得る。研究の進歩にも関わらず、これらの治療は、最近数十年で比較的変化しないままである。取り組みは、治療がより効果的である、癌の初期診断に注力される場合が多い。しかし、初期診断により得られる生存期間はわずかである。
【0005】
膵臓癌は、胃の後にある腺器官である膵臓の細胞が制御不能状態で増殖し始め、腫瘤を形成する場合に生ずる。これらの癌細胞は、身体の他の部位を侵襲する能力を有する。多くのタイプの膵臓癌が知られている。しかし、最も一般的な膵臓腺癌は、症例の約90%を占める。最も一般的な形態の膵臓癌の徴候と症状は、黄色皮膚、腹部または胃痛、原因不明の体重減少、淡色便、暗色尿、および食欲不振を含む。通常、症状は、疾患の初期段階では認められない。膵臓癌であることを示唆するのに十分に特異的な症状は通常、疾患が進行期に達するまで発生しない。診断の時点までに、膵臓癌はしばしば、身体の他の部位に広がっている。
【0006】
化学療法は、標準的化学療法計画の一部として1種または複数の抗癌剤(化学療法剤)を使用する癌治療の一種である。従来の化学療法剤は、細胞分裂を妨害することにより、細胞傷害性である。しかし、癌細胞は、これらの薬剤に対する感受性において様々である。大体において、化学療法は、細胞の損傷またはストレスにつながると考えることができ、これは、その後、アポトーシスが開始されると、死に至る可能性がある。化学療法の多くの副作用は、急速に分裂し、従って抗有糸分裂薬物に感受性である正常細胞に対する損傷に遡ることができる。これは、最も一般的な化学療法の副作用:骨髄抑制、粘膜炎、および脱毛症、を生ずる。免疫細胞(特にリンパ球)に対する効果のため、化学療法薬はしばしば、自己に対する免疫系の有害な過活動(いわゆる自己免疫性)に起因する疾患の宿主において使用される。
【0007】
免疫細胞上で発現されるチェックポイント阻害剤受容体(例えば、CTLA4およびPD-1)は、免疫抑制シグナル伝達経路を作動させる。CTLA4は、CD80およびCD86への結合に関し、CD28と競合する。PD-1は、PD-L1またはPD-L2に結合し、T細胞受容体(TCR)およびCD28を介する正のシグナルを妨害する。これらの免疫抑制分子は、適応免疫応答を調節するためのブレーキとして機能する。抑制シグナルは、免疫系のバランスを維持するために様々な方法で使用できる。この適用に基づき、PD-1/PD-L経路は、免疫チェックポイントとして際立っている。一般に、PD-L1の発現は、T、B、および抗原提示細胞上でならびにいくつかの非リンパ組織中で観察される。
【0008】
癌患者における腫瘍特異的抗原、リンパ球、およびT細胞応答の特定は、抗腫瘍免疫応答を高めるように設計される免疫療法につながる。生物由来物質または「生物製剤」は、モノクローナル抗体(MAB)などの組換え治療タンパク質を含む。生物学的薬物は、身体を刺激して癌細胞を見つけそれらを攻撃できる。いくつかの生物製剤は、癌細胞を直接攻撃し、成長シグナルを妨害する。他の生物製剤は、患者が化学療法後に感染症と闘うのを支援できる。
【0009】
T細胞は、免疫系の強力な細胞エフェクターであり、同じ抗原により再チャレンジされると応答する記憶を有する。腫瘍免疫療法は、従来の化学療法剤より特異的でかつより毒性が少ないので、それは、再発のリスクのある悪性腫瘍の患者にとって、理想的な補助療法であり得る。化学療法は、活動性疾患を寛解へと誘導するために最初に使用され、続いてメモリーT細胞を経由する腫瘍免疫療法が実施される。しかし、生物製剤もまた、限界を有する。免疫療法は、小さい腫瘍負荷量に対して効果的であるように見えるが、それらは、大きな腫瘍塊を制御できない。さらに、進行した疾患を有する患者は、損傷された免疫を有し、これは、免疫療法の有効性を制限する。従って、免疫療法は腫瘍形成の初期段階で使用されるべきであることが提案されてきた。さらに、生物製剤は、他の薬剤に比べ高価であり、かつそれらは、静脈内で投与される必要がある。さらに、それらの比較的大きなサイズは、血液中でのそれらの機能および半減期を制限する。
【0010】
最近の研究は、小分子の使用を含む、癌治療の新しい機会を提供した。特定の小分子は、生物学的微小分子を結合し、エフェクターとして機能し、それにより標的の活性または機能を変える。それらは、種々の生物学的機能または用途を顕在化させ、細胞内シグナル伝達分子として機能する。例えば、小分子制癌剤は、細胞外、細胞表面受容体ならびに、細胞増殖および転移促進のために下流シグナル伝達において重要な役割を果たす抗アポトーシス性タンパク質を含む、細胞内タンパク質を標的とするためにうまく使用されてきた。多くの小分子薬物は、セリン/チロシンキナーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、ヒートショックタンパク質(HSP)、プロテオソームおよびシグナル伝達経路において重要な他のタンパク質などの重要な癌標的を阻害する。これらの分子の小さなサイズ(<500Da)はまた、それらを細胞膜を通して移動することを可能にする。原理的には、小分子化合物は、標的の細胞内の位置に関係なく、細胞の任意の部分を標的にするように開発され得る。このような薬物は、それらが重要な癌標的を阻害できるので、良好な治療可能性を有する。
【0011】
膵臓癌に対する効果的な治療は、放射線/化学療法に対する抵抗性および不十分な薬物透過性のため困難である。さらに、主に十二指腸および胃腸上皮に対し、治療が引き起こす正常組織毒性は、一般的であり、用量を制限する有害事象である。胃腸毒性はしばしば、治療を受けている患者の全生存期間に影響する重要な因子である、抗癌療法の中断、縮小または早期離脱という結果になる。従って、正常組織毒性を誘発することなく、腫瘍組織を選択的に感受性にする治療薬戦略を開発する差し迫った必要性が存在する。理想的な治療/療法は、癌細胞を標的化し、化学療法の有害な影響を減らすはずである。
【発明の概要】
【0012】
本明細書で開示の化合物BCN057は以前に、米国特許出願第13/813,923号および米国特許出願第14/889,719号に記載された。本発明は、新規の分子および類似体ならびに新規の使用の方法を提供する。BCN057はまた、その構造名により次記のように呼ぶこともできる:(3-[(フラン-2-イルメチル)-アミノ]-2-(7-メトキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)-6-メチル-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-1-イウム)またはYEL002。BCN057およびその類似体は、他の治療法の中でも、炎症性疾患を治療するまたは予防するために、および癌または他の過剰増殖状態を治療するまたは予防するために、有用である。
【化1】
【0013】
出願者らは、小分子BCN057、BCN077は、発癌性RAS膵臓癌細胞の化学感受性を調節できるが、Lgr5陽性腸管幹細胞における化学毒性を緩和すること、それによりバリアー機能を保護することによりこれらの小分子由来のオフターゲット毒性から正常腸上皮を逆に保護する、ということを提案する。さらに、BCN057およびBCN077は、GSK3βを阻害し、それによりKRAS G12D変異体膵臓癌細胞中のc-Junに対するアポトーシス促進性リン酸化パターンを誘導し、PTEN発現の回復および結果として生じるアポトーシスをもたらす、ということが示され、これは、発癌性RAS表現型についての新規の機構的知見である。最後に、そのGSK3β阻害と同時に、BCN057およびBCN077は、ヒト膵臓癌細胞と共培養されたヒトTリンパ球上のPD-1発現の小分子阻害剤である。まとめると、BCN057およびBCN077は、悪性細胞に対し特異的に合成の致死性を促進でき、従って化学療法および放射線療法と併せて、膵臓および上皮癌治療における治療可能比を改善すると見なされるべきである。
【0014】
一実施形態は、式I:
【化2】
の化合物またはその類似体であり、
R
1=アルキル、アルキルアミン、エーテル、アリールまたはアリールハライドであり、
R
2=HまたはCH
3であり、
R
3=H、OHまたはOCH
3である。
あるいは、R
1=
【化3】
であり、
n=1、2または3であり;X=F、CF
3Cl、OHまたはCH
2OHであり;Y=O、SまたはNであり;Z=CH
3、CH
2OHまたはOCH
3である。
あるいは、R
1=
【化4】
であり、n=1、2または3であり;X=F、CF
3Cl、OHまたはCH
2OHであり;Y=O、SまたはNであり;Z=CH
3、CH
2OHまたはOCH
3である。
あるいは、R
1=
【化5】
であり、n=1、2または3であり;X=F、CF
3Cl、OHまたはCH
2OHであり;Y=O、SまたはNである。
あるいは、R
1=
【化6】
であり、n=1、2または3である。
【0015】
一実施形態は、式Iの化合物またはその類似体の治療量を投与することを含む癌を治療する方法である。癌は、例えば、膵臓癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、胃腸癌、泌尿生殖器癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、直腸癌、皮膚癌、血液癌または精巣癌であり得る。
【0016】
癌はまた、胆道癌、膀胱癌、神経節癌(神経芽腫)、白血病、リンパ腫、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、肺癌(例えば、大細胞癌、非小細胞癌および扁平細胞癌)、軟組織癌(例えば、血管肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、粘液腫および悪性線維性組織球種-悪性線維性組織球腫)、胃癌または甲状腺癌であり得る。
【0017】
別の実施形態は、式Iの化合物またはその類似体の治療量を投与することを含む、病気を治療するためにPD-1発現を調節する方法である。病気は、例えば、癌、脳マラリア、トリパノソーマ・クルージ誘導心筋炎、インフルエンザウィルスA、結核、クラミジア肺感染症、COPD、急性肺損傷、HBV&HCV肝臓感染症、膵炎、1型糖尿病、敗血症またはHIV-1であり得る。
【0018】
別の実施形態は、式Iの化合物またはその類似体の有効量を投与することを含むPD-1、PD-L1および/またはPD-1/PD-L1相互作用を阻害する方法である。いくつかの態様では、方法は、PD-L1とPD-1および/またはCD80の相互作用を遮断する。この方法は、小分子、抗体、抗体フラグメント、抗体コンジュゲートまたは免疫調節剤などの、追加の治療薬の投与を含み得る。いくつかの態様では、方法は、1種または複数の免疫チェックポイント制御因子の投与を含む。
【0019】
追加の実施形態は、式Iの化合物またはその類似体を用いて、それを必要としている対象においてウィルス感染症を治療する方法を含む。いくつかの実施形態は、式Iの化合物またはその類似体を用いてうつ病を治療する方法を含む。
【0020】
追加の実施形態は、式Iの化合物またはその類似体を用いて、それを必要としている対象においてウィルス感染症を治療する方法を含む。いくつかの実施形態は、式Iの化合物またはその類似体を用いてうつ病を治療する方法を含む。
【0021】
一実施形態は、式Aの化合物である。追加の実施形態は、下記式Aの構造を有する化合物またはその類似体の治療的有効量を対象に投与することを含む、対象において病気を治療する方法を含む。
【化7】
【化8】
【0022】
追加の実施形態は、治療的有効量の式Aの化合物またはその類似体で対象における癌を治療する方法を含む。癌は、膵臓癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、胃腸癌、泌尿生殖器癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、直腸癌、皮膚癌、血液癌または精巣癌であり得る。治療は、化学療法剤または放射線治療薬ならびに、1種または複数の追加の薬物を対象に投与することを含み得る。
【0023】
追加の実施形態は、式Aの化合物またはその類似体により化学療法剤または放射線治療薬の1種または複数の副作用を有する対象を治療する方法を含む。さらに別の実施形態は、式Bの化合物またはその類似体の治療的有効量を投与することにより、上皮細胞への放射線に誘発される損傷を予防するまたは治療する方法である。上皮細胞への放射線に誘発される損傷は、放射線誘発胃腸症候群(RIGS)、放射線誘発粘膜炎、放射線誘発口腔粘膜炎、放射線誘発直腸炎および/または放射線誘発腸炎として特定され得る。
【0024】
追加の実施形態は、式Aの化合物またはその類似体で線維症を治療する方法を含む。線維症は、肺線維症、特発性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、嚢胞性線維症、非嚢胞性線維症気管支拡張症、肝硬変、肝線維症、心内膜心筋線維症、陳旧性心筋梗塞、心房線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、腎性全身性線維症、クローン病、胃腸線維症、ケロイド状態、強皮症/全身性硬化症、関節線維症(arthrofibrosis)、ペロニー病、デュピュイトラン拘縮、口腔粘膜下線維症、肝線維症、胃腸線維症、透析由来腎線維症および/または癒着性関節包炎であり得る。
【0025】
追加の実施形態は、式Aの化合物またはその類似体を用いてそれを必要としている対象においてウィルス感染症を治療する方法を含む。いくつかの実施形態は、式Bの化合物またはその類似体を用いてうつ病を治療する方法を含む。
【0026】
別の実施形態は、式Aの化合物またはその類似体の有効量を投与することを含むPD-1、PD-L1および/またはPD-1/PD-L1相互作用を阻害する方法である。いくつかの態様では、方法は、PD-L1とPD-1および/またはCD80の相互作用を遮断する。この方法は、小分子、抗体、抗体フラグメント、抗体コンジュゲートまたは免疫調節剤などの、追加の治療薬の投与を含み得る。いくつかの態様では、方法は、1種または複数の免疫チェックポイント制御因子の投与を含む。
【0027】
別の実施形態は、式B:
【化9】
の構造を有する化合物またはその類似体の治療的有効量を対象に投与することを含む、対象において病気を治療する方法であり、
R
1は、アルキル、アルキルアミン、またはエーテルであり;
R
2は、HまたはCH
3であり;および
R
3は、HまたはOHである。
式Bの類似体は、下の表2に詳述される類似体を含み得る。
【0028】
追加の実施形態は、治療的有効量の式Bの化合物またはその類似体で対象における癌を治療する方法を含む。癌は、膵臓癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、胃腸癌、泌尿生殖器癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、直腸癌、皮膚癌、血液癌または精巣癌であり得る。治療は、化学療法剤または放射線治療薬ならびに、1種または複数の追加の薬物を対象に投与することを含み得る。
【0029】
追加の実施形態は、式Bの化合物またはその類似体により化学療法剤または放射線治療薬の1種または複数の副作用を有する対象を治療する方法を含む。別の実施形態は、式Bの化合物またはその類似体の治療的有効量を投与することにより、上皮細胞への放射線に誘発される損傷を予防または治療する方法である。上皮細胞への放射線に誘発される損傷は、放射線誘発胃腸症候群(RIGS)、放射線誘発粘膜炎、放射線誘発口腔粘膜炎、放射線誘発直腸炎および/または放射線誘発腸炎として特定され得る。
【0030】
追加の実施形態は、式Bの化合物またはその類似体で線維症を治療する方法を含む。線維症は、肺線維症、特発性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、嚢胞性線維症、非嚢胞性線維症気管支拡張症、肝硬変、肝線維症、心内膜心筋線維症、陳旧性心筋梗塞、心房線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、腎性全身性線維症、クローン病、胃腸線維症、ケロイド状態、強皮症/全身性硬化症、関節線維症(arthrofibrosis)、ペロニー病、デュピュイトラン拘縮、口腔粘膜下線維症、肝線維症、胃腸線維症、透析由来腎線維症および/または癒着性関節包炎であり得る。
【0031】
追加の実施形態は、式Bの化合物またはその類似体を用いてそれを必要としている対象においてウィルス感染症を治療する方法を含む。いくつかの実施形態は、式Bの化合物またはその類似体を用いてうつ病を治療する方法を含む。
【0032】
別の実施形態は、下記式Cの構造を有する化合物の治療的有効量を対象に投与することを含む、対象において病気を治療する方法であり、
【化10】
R
3=
【化11】
であり、Y=OCH
2CH
3、OCH(n)CH
3、NH
2、OH、OMe、Me、H、CH
2OH、BH
2、SeMeまたはSMeであり;R
1およびR
2は独立に、水素、直鎖または分岐鎖のC1-C20アルキル、アルケニル、アルキニルであり、これは置換されるもしくは置換されず、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環式アルキル、またはヘテロ環式アルケニルであり、これは置換されるもしくは置換されず、フェニル、置換されたフェニル、アリール、置換されたアリール、アミノ、アミド、F、Cl、Br、I、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、アルキルチオ、セレノール、アルキルセレニル、シリル、シロキシ、ボリル、カルボン酸、スルホリル、-SO
4H、アルコキシまたはアシル基である。
【0033】
一実施形態は、式Cの化合物またはその類似体の治療量を投与することを含む癌の治療方法である。癌は、例えば、膵臓癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、胃腸癌、泌尿生殖器癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、直腸癌、皮膚癌、血液癌または精巣癌であり得る。
【0034】
癌はまた、胆道癌、膀胱癌、神経節癌(神経芽腫)、白血病、リンパ腫、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、肺癌(例えば、大細胞癌、非小細胞癌および扁平細胞癌)、軟組織癌(例えば、血管肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、粘液腫および悪性線維性組織球種-悪性線維性組織球腫)、胃癌または甲状腺癌であり得る。
【0035】
別の実施形態は、治療量の式Cの化合物またはその類似体を投与することを含む、病気を治療するためにPD-1発現を調節する方法である。病気は、例えば、癌、脳マラリア、トリパノソーマ・クルージ誘導心筋炎、インフルエンザウィルスA、結核、クラミジア肺感染症、COPD、急性肺損傷、HBV&HCV肝臓感染症、膵炎、1型糖尿病、敗血症またはHIV-1であり得る。
【0036】
追加の実施形態は、式Cの化合物またはその類似体を用いて、それを必要としている対象においてウィルス感染症を治療する方法を含む。いくつかの実施形態は、式Cの化合物またはその類似体を用いてうつ病を治療する方法を含む。
【0037】
追加の実施形態は、式Cの化合物またはその類似体を用いて、それを必要としている対象においてウィルス感染症を治療する方法を含む。いくつかの実施形態は、式Iの化合物またはその類似体を用いてうつ病を治療する方法を含む。
【0038】
別の実施形態は、有効量の式Cの化合物またはその類似体を投与することを含むPD-1、PD-L1および/またはPD-1/PD-L1相互作用を阻害する方法である。いくつかの態様では、方法は、PD-L1とPD-1および/またはCD80の相互作用を遮断する。この方法は、小分子、抗体、抗体フラグメント、抗体コンジュゲートまたは免疫調節剤などの、追加の治療薬の投与を含み得る。いくつかの態様では、方法は、1種または複数の免疫チェックポイント制御因子の投与を含む。
【0039】
別の実施形態では、本開示は、それを必要としている対象において癌を治療する方法を提供し、方法は、BCN057およびBCN077の化合物、またはこれらの類似体の治療的有効量を対象に投与するステップを含む。別の実施形態では、本開示は、それを必要としている対象において癌を治療する方法を提供し、方法は、BCN057およびBCN077の化合物、またはこれらの類似体の治療的有効量を含む薬物の組み合わせを対象に投与するステップを含む。
【0040】
別の実施形態では、本開示は、対象において化学療法または放射線療法の副作用を治療する方法を提供し、方法は、BCN057およびBCN077の化合物、またはこれらの類似体の治療的有効量を対象に投与するステップを含む。別の実施形態では、本開示は、対象において放射線誘発胃腸症候群(RIGS)を治療する方法を提供し、方法は、BCN057およびBCN077の化合物、またはこれらの類似体の治療的有効量を対象に投与することを含む。
【0041】
別の実施形態は、対象においてPD-1および/またはCD80とのPD-L1の相互作用を遮断する方法であり、方法は、式Cの化合物、またはその類似体の治療的有効量を対象に投与することを含む。
【0042】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、式IまたはIIの化合物のプロドラッグであってよく、例えば、親化合物中のヒドロキシルが、エステルまたはカーボネートとして提供され、または親化合物中に存在するカルボン酸が、エステルとして提供される。特定のこのような実施形態では、プロドラッグは、インビボで活性な親化合物へと代謝される(例えば、エステルは、対応するヒドロキシルまたはカルボン酸に加水分解される)。
【0043】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、ラセミ化合物であってよい。特定の実施形態では、本発明の化合物は、1種のエナンチオマーが濃縮されてよい。例えば、本発明の化合物は、30%を超えるee、40%を超えるee、50%を超えるee、60%を超えるee、70%を超えるee、80%を超えるee、90%を超えるee、あるいは95%以上のeeを有し得る。特定の実施形態では、本発明の化合物は、2つ以上の立体中心を有してもよい。特定の実施形態では、本発明の化合物は、1種または複数のジアステレオマーが濃縮されてよい。例えば、本発明の化合物は、30%を超えるde、40%を超えるde、50%を超えるde、60%を超えるde、70%を超えるde、80%を超えるde、90%を超えるde、あるいは95%以上のdeを有し得る。
【0044】
特定の実施形態では、本発明は、上記化合物、その類似体および/または薬学的に許容可能な塩による治療の方法に関する。特定の実施形態では、治療製剤は、主に1種の化合物の鏡像異性体を提供するように濃縮されてよい。
【0045】
特定の実施形態では、治療製剤は、主に1種の化合物のジアステレオマーを提供するように濃縮されてよい。ジアステレオマーが濃縮された混合物は、例えば、少なくとも60モルパーセント、またはより好ましくは少なくとも75、90、95、あるいは99モルパーセントの1種のジアステレオマーを含み得る。
【0046】
特定の実施形態では、本発明は、式I、A、BもしくはC、または薬学的に許容可能なそれらの塩による治療の方法に関する。特定の実施形態では、治療製剤は、主に1種の化合物の鏡像異性体を提供するように濃縮されてよい。
【0047】
特定の実施形態では、治療製剤は、主に1種の化合物のジアステレオマーを提供するように濃縮されてよい。特定の実施形態では、本発明は、上記のいずれかの化合物、および1種または複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含む、ヒト患者で使用するために好適な医薬製剤を提供する。特定の実施形態では、医薬製剤は、本明細書で記載の状態または疾患を治療するまたは予防することにおける使用のためであってよい。特定の実施形態では、医薬製剤は、ヒト患者での使用のために好適であるように、充分低い発熱性物質活性を有する。上記構造のいずれかの化合物は、本明細書で開示の疾患または状態のいずれかの治療のための薬物の製造において使用され得る。
【0048】
本発明の他の様々な目的、特徴、および付随的利点は、それらが添付の図面と併せて考察することによりより良く理解されるようになるので、十分に理解されるであろう。図面では、同様の参照文字は、いくつかの図にわたり同じまたは同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】膵臓癌細胞の生存に対するBCN057の効果を示すヒストグラムである。
【
図2A】10μMのBCN057で治療後の0、15、30、60、120および240分の時点での膵臓癌細胞増殖を示す一群の画像である。
【
図2B】系列希釈BCN057で治療されたPanc-1細胞の発光(RLU)を示す折れ線グラフである。
【
図2C】Panc-1細胞におけるアポトーシス促進性および抗アポトーシスマーカー:Bax、カスパーゼ-3、Akt-1およびBCl-2、のqPCR分析の相対的発現を示すヒストグラムである。
【
図3A】Panc-1細胞中の10μMのBCN057の添加後のS-9でのGSK3βリン酸化の増加を示すウェスタンブロットである。
【
図3B】リン酸化GSK3B/総GSK3Bタンパク質の比率としての相対的発現を示すヒストグラムである。
【
図4A】BCN057が薬物治療後にKRAS変異体Panc-1癌細胞中でJNK依存性リン酸化を増大させることを示すウェスタンブロットである。T-91/93でのc-Junのリン酸化は、アポトーシスを誘導することが知られている。総c-Junタンパク質レベルは、不変であった。
【
図4B】示した時点(20分、1時間、6時間、12時間および24時間)でのビークルまたはBCN057治療(10uM)での同じ試料由来のβアクチン染色による24時間にわたるPTENタンパク質発現のウェスタンブロットである。
【
図4C】PTENレベルの増大を示す、βアクチンに対するPTENの密度計測の比率のヒストグラムである。
【
図5A】全ての薬物の72時間のインキュベーション後の膵臓癌細胞株の生存に対するBCN057および5-FUの効果を示すヒストグラムである。対照(ND)は、薬物を投与されなかった。試験群は、5FU(50μM)、057(BCN057:2、5、10、および20μMまたは5FU+BCN057(50μMでの5FUと組み合わせて、2、5、10、および20μMでのBCN057)を含む。
【
図5B】10μMの057で治療したPanc-1細胞における相対的LGR-5およびBMI-1発現を示すヒストグラムである。
【
図5C】BCN057がGI上皮およびLGR5幹細胞(緑)を5FU細胞傷害性から保護することを示す一群の画像である。
【
図5D】GIでのLGR5+幹細胞中の5-FU誘導アポトーシスの防止を示す陰窩基底部で1mM区分中に残っているLGR5+細胞の%定量を示すヒストグラムである。
【
図6】Panc-1細胞に対する個別のまたは5FUおよびBCN057と組み合わせたオキサリプラチンおよびイリノテカンの細胞傷害性(%生存率)を示すヒストグラムである。
【
図7A】薬物なし(ビークル)で、またはBCN057と共に1、6および12時間Panc-1細胞と共培養したヒトTリンパ球上のPD-1発現を示すウェスタンブロットである。
【
図7B】GSK3βの阻害は、放射線に曝露されるとリンパ球の生存を誘導することを示すヒストグラム(濃度vs発光)である。
【
図8】薬物なし(ビークル)で、またはBCN057と共に2.5、5、7.5および10時間ヒトTリンパ球と共培養したPanc-1細胞上のPDL-1発現(赤矢印)を示すウェスタンブロットである。
【
図9】BCN077の濃度に対する生存率のグラフである。試験を、強力な活性を示すデュークスB型腺癌BCN077から確立されたヒトKRAS G12D変異体結腸直腸癌細胞株LS174T46を用いて実施した。
【
図11】BCN057、076、077、036および078の類似体によるKRAS変異体G12D侵襲性膵臓癌細胞株の増殖の阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
定義
「一実施形態(one embodiment)/態様」または「ある実施形態(an embodiment)/態様」への本明細書での参照は、その実施形態/態様に関して記載された特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態/態様に含まれるということを意味する。本明細書の種々の箇所における「一実施形態/態様では」または「ある実施形態/態様では」という語句の使用は、全てが同じ実施形態/態様を参照することも、他の実施形態/態様の相互に排他的な別のまたは代替の実施形態/態様を参照することも必ずしも意味しない。さらに、種々の特徴が記載され、これらは、いくつかの実施形態/態様により示され得るが、他の実施形態/態様によっては示されない。同様に、種々の要件が記載され、これらは、いくつかの実施形態/態様に対する要件であり得るが、他の実施形態/態様に対してはそうではない。実施形態および態様は、特定の事例では、同じ意味で用いられ得る。
【0051】
本明細書中で使用される用語は一般に、本開示の文脈内の、およびそれぞれの用語が使われる特定の文脈における、技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本開示の記載に使われる特定の用語は、下記で、または本明細書の別の場所で考察されて、本開示の記載に関する開業医への追加の手引きを提供する。同じことが、2つ以上の方法で述べられ得ることが理解されよう。
【0052】
従って、代替の用語および同義語が、本明細書で考察される任意の1つまたは複数の用語に対しても使われてよい。ある用語が本明細書で詳しく述べられているまたは考察されているかどうかには、何ら特別な意味はない。特定の用語に対する同義語が、提供される。1つまたは複数の同義語の記述は、その他の同義語の使用を排除するものではない。本明細書で考察される任意の用語の例を含む、本明細書中のどこかでの例の使用は、例示的な目的のみのためであり、本開示のまたは例示された任意の用語の範囲と意味をさらに限定することを意図するものではない。同様に、本開示は、本明細書で提示された種々の実施形態に限定されない。
【0053】
本開示の範囲をさらに限定する意図なしに、本開示の実施形態による機器、装置、方法およびそれらの関連する結果が、下記に与えられる。見出しまたは小見出しは、読者の便宜のために実施例で使用され得るが、本開示の範囲を限定するものではないことに留意されたい。別に定めのない限り、本明細書で使われる全ての技術および科学用語は、通常、本開示が属する当業者により理解されているものと同じ意味を有する。矛盾がある場合には、定義を含み、本文書が優先される。
【0054】
別段の指示がない限り、本明細書および請求項で使われる特性、項目、量、パラメーター、性質、期間、などを表す全ての数字は、全ての場合において、「約」という語で修飾されているものとして理解されるべきである。本明細書で使用する場合、用語の「約」は、そのように限定された特性、項目、量、パラメーター、性質、期間が、述べられた特性、項目、量、パラメーター、性質、期間の値のプラスまたはマイナス10%高いまたは低い範囲を包含することを意味する。従って、特に指示がない限り、明細書および添付請求項に記載の数値パラメーターは、変わってもよい近似値である。例えば、質量分析装置は、所与の分析物の質量を決定することにおいて僅かに変動し得るので、イオンの質量またはイオンの質量/電荷比の文脈で用語「約」は、±0.50原子質量単位を指す。控えめに言っても、また、請求項の範囲に対する均等論の適用を限定しようとするものでもないが、各々の数値表示は少なくとも、報告された有効桁数を考慮に入れて、および通常の丸め技術を適用することによって解釈しなければならない。
【0055】
実施形態または実施形態の態様に関連して、用語「may」または「can」の使用は、「may not」または「cannot」の別の意味も有する。従って、本明細書が、実施形態または実施形態の態様が、本発明の主題の一部として含んでもよいまたは含み得ることを開示する場合、消極的な限定または除外条件も同様に明示的に意図され、実施形態または実施形態の態様が本発明の主題の一部として含まれなくてもよい、または含まれ得ないことを意味する。同様に、実施形態または実施形態の態様に関連して、用語「任意に」の使用は、このような実施形態または実施形態の態様が本発明の主題の一部として含まれてもよく、または本発明の主題の一部として含まれなくてもよいことを意味する。このような消極的な限定または除外条件が該当するかどうかは、請求された主題中にその消極的な限定または除外条件が記述されているかどうかに基づくであろう。
【0056】
本開示の広い範囲を記載する数値範囲および値は近似値であるにもかかわらず、具体例な実施例に記載の数値範囲および値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値範囲および値も、それらの各試験測定で認められる標準的なずれに起因して必然的に生じる一定の誤差を本質的に含む。本明細書における値の範囲の記載は、その範囲内に入るそれぞれ別々の値を個別に参照する省略表現法として機能することを意図されるに過ぎない。本明細書で特に指示がない限り、数値範囲のそれぞれの個別値は、あたかもそれが個別に本明細書中に記述されているかのように明細書中に組み込まれる。
【0057】
本開示を記載する文脈において(特に、次の特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「a」、「an」、「the」は、別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾することがない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。さらに、特定した要素に対する順序標識-例えば、「第1の」、「第2の」、「第3の」、など-は、特段の定めが無い限り、要素間を区別するために使用され、必要とされるまたは限られた数のこのような要素を示すものでも、暗示するものでもなく、また、このような要素の特定の位置または順序を示すものでもない。本明細書で記載される全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈上明らかに矛盾することがない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書に記載されるあらゆる具体例または例示語(例えば、「などの」)の使用は、単に本開示の理解を容易にすることを意図したものであり、別途特許請求される本開示の範囲を限定するものではない。明細書中のどの用語も、本開示の実施に必須のいずれかの請求されない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0058】
特許請求の範囲で使用される場合、出願時、または補正時の追加であるにかかわらず、開放型移行語「含む(comprising)」(および含む(including)、含む(containing)および有する(having)などのその等価の開放型移行句)は、全ての明示的に記述された要素、限定、ステップおよび/または特徴を単独でまたは非記述主題と組み合わせて包含し、挙げられる要素、限定および/または特徴は不可欠であるが、他の挙げられない要素、限定および/または特徴が追加されてよく、さらに、特許請求の範囲内の構築物を形成し得る。本明細書で開示される特定の実施形態は、「を含む(comprising)」の代わりにまたはそれを補正して、「からなる(consisting of)」、または「から本質的になる(consisting essentially of)」という閉鎖型移行句を使って請求項中でさらに制限され得る。特許請求の範囲で使用される場合、出願時、または補正時の追加であるにかかわらず、「からなる(consisting of)」という閉鎖型移行句は、特許請求の範囲に明示的に記述されないいかなる要素、限定、ステップまたは特徴も除外する。「から本質的になる(consisting essentially of)」という閉鎖型移行句は、特許請求の範囲に明示的に記述される要素、限定、ステップおよび/または特徴および任意ならびに請求される主題の基本的および新規特性に実質的に影響を及ぼさない任意の他の要素、限定、ステップおよび/または特徴を限定する。従って、開放型移行句「含む(comprising)」の意味は、全ての特に記述される要素、限定、ステップおよび/または特徴ならびに任意の自由選択の、指定されない追加のものとして定義される。閉鎖型移行句「からなる(consisting of)」という閉鎖型移行句の意味は、特許請求の範囲に明示的に記述される要素、限定、ステップおよび/または特徴のみを含むとして定義され、一方、「から本質的になる(consisting essentially of)」という閉鎖型移行句の意味は、特許請求の範囲中に特に記述される要素、限定、ステップおよび/または特徴、および請求される主題の基本的および新規特性に実質的に影響を及ぼさない要素、限定、ステップおよび/または特徴のみを含むとして定義される。従って、開放型移行句「含む(comprising)」(およびその等価の開放型移行句)は、その意味中に、限定的な場合として、閉鎖型移行句「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」により指定される請求主題を含む。語句「含む(comprising)」を用いて本明細書で記載のまたはそのように請求されるこのような実施形態は、語句「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」に対し、明示的にまたは本質的に本明細書で明確に記述され、有効にされ、立証される。
【0059】
適用可能な場合、用語「約(about)」または「通常(generally)」は、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、別段の指示がない限り、±20%の許容誤差を意味する。また、適用可能な場合、用語「実質的に(substantially)」は、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、別段の指示がない限り、±10%の許容誤差を意味する。上記用語の全ての使用は、参照範囲が適用できるように数値化できるとは限らないことを理解されたい。
【0060】
用語「活性剤(active agent)」または「有効成分(active ingredient)」は、生物学的に活性であるか、あるいは、それが投与される対象に対して生物学的または生理学的効果を誘導する、物質、化合物、または分子を指す。換言すれば、「活性剤(active agent)」または「有効成分(active ingredient)」は、それに対し組成物の効果の全部または一部が原因である、組成物の成分を意味する。活性剤は、主要な活性剤であってよく、または換言すれば、組成物の効果の全部または一部の原因である、組成物の成分であってよい。活性剤は、二次的薬剤であってよく、または換言すれば、組成物の追加の部分および/または他の効果の原因である、組成物の成分であってよい。
【0061】
用語「癌」は、腺様嚢胞癌、副腎癌、アミロイドーシス、肛門癌、毛細血管拡張性運動失調症、非定型モル症候群、異常母斑症候群、基底細胞癌、胆管癌、バート・ホッグ・デューベ症候群、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、男性乳癌、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、結腸直腸癌、腺管癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、消化管間質腫瘍(Gastrointestinal Stromal Tumor)(GIST)、HER2陽性乳癌、膵島細胞腫瘍、若年性ポリポーシス症候群、腎臓癌、咽喉癌、白血病-急性リンパ芽球性白血病、白血病-急性リンパ球性(ALL)、白血病-急性骨髄AML、白血病-成人性、白血病-小児期、白血病ー慢性リンパ球性-CLL、白血病-慢性骨髄-CML、肝臓癌、小葉癌、肺癌、肺癌-小細胞、リンパ腫-ホジキン、リンパ腫-非ホジキン、悪性神経膠腫、メラノーマ、髄膜腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)、上咽頭癌、神経内分泌腫瘍、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、膵内分泌腫瘍、副甲状腺癌、陰茎癌、腹膜癌、ポイツ・ジェガース症候群、脳下垂体腫瘍、真性多血症、前立腺癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、唾液腺癌、肉腫、肉腫-カポジ、皮膚癌、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、子宮(内膜)癌、膣癌およびウイルムス腫瘍、の1種または複数を挙げることができる。用語「血液癌」には、白血病、リンパ腫、骨髄腫、骨髄異形成症候群および骨髄増殖性疾患の1種または複数を含んでよい。
【0062】
用語「誘導体」は、その化合物に同じまたは類似のコア構造を有するが、1種または複数の原子または官能基の置換、欠失、および/または付加を含む、少なくとも1つの構造的差異を有する任意の化合物を指し得る。用語「誘導体」は、これが該当する場合であっても、出発物質または中間体としての親化合物から誘導体が合成されることを意味しない。用語「誘導体」は、親化合物のプロドラッグ、または代謝物を含んでよい。誘導体は、親化合物中のカルボキシル基が誘導体化されて、メチルおよびエチルエステル、または他のタイプのエステルもしくはヒドラジドを形成している化合物を含む。誘導体は、親化合物中のヒドロキシル基が誘導体化されて、O-アシルまたはO-アルキル誘導体を形成している化合物を含む。誘導体は、親化合物中の水素結合供与基がOH、NH、またはSHなどの別の水素結合供与基で置換されている化合物を含む。誘導体は、親化合物中の水素結合受容体基を、エステル、ケトン、カーボネート、第三級アミン、イミン、チオン、スルホン、第三級アミドおよび硫化物などの別の水素結合受容体基で置換することを含む。誘導体はまた、親化合物の薬学的に許容される塩型またはその誘導体などの、塩型を含み得る。
【0063】
用語「線維症」は、修復のまたは反応の過程で臓器または組織中の過剰線維状結合組織の形成を伴う状態を指す。これは、反応性の、良性の、または病理学的な状態であり得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「軽減(mitigating)」は、同じ時間量の間であるが、治療されない、症状または状態を示す細胞、臓器、組織、または生物に比べて、状態の1種または複数の負の症状を低減することを意味する。
【0065】
いくつかの実施形態では、細胞、臓器、組織、または生物を本発明の化合物と接触させることは、対象に化合物の治療的有効量を投与することを含み得る。本明細書で使用される場合、「治療的有効量」は、負の症状または状態を軽減するのに十分な量である。
【0066】
用語「対象」または「患者」は、治療が望まれる任意の単一の動物、より好ましくは哺乳類(例えば、イヌ、CAT、ウマ、ウサギ、動物園の動物、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、および非ヒト霊長類などの非ヒト動物を含む)を指す。最も好ましくは、本明細書における患者は、ヒトである。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な担体」という用語は、薬学的投与に適合する任意のすべての溶媒、分散媒、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などを指す。薬学的に活性な物質に対しこのような媒体および薬剤を使用することは、当該分野において周知である。組成物はまた、補助的、追加の、または強化された治療作用を提供する他の活性化合物を含み得る。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な組成物」は、1種または複数の薬学的に許容可能な担体と共に処方される本明細書で開示の少なくとも1種の化合物を含む組成物を指す。
【0069】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容可能なプロドラッグ」という用語は、健全な医学判断の範囲内で、合理的利益/リスク比率に見合い過剰な毒性、刺激、およびアレルギー反応なしにヒトおよび下等動物の組織との接触下の使用に適し、かつそれらの意図される使用に対し効果的である、本開示の化合物のプロドラッグ、ならびに可能な場合、本開示の化合物の双性イオン型を表す。考察は、Higuchi et al.,“Prodrugs as Novel Delivery Systems,” ACS Symposium Series,Vol.14,およびRoche,E.B.,ed.Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987で提供される。これら文献の両方は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
用語「薬学的に許容される塩」は、本組成物中に使用される化合物中に存在し得る酸性または塩基性基の塩を指す。塩基性の性質の本組成物中に含まれる化合物は、種々の無機および有機酸と多種多様の塩を形成できる。このような塩基性化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩の調製に使用され得る酸は、非毒性酸付加塩、即ち、薬学的に許容可能なアニオンを含む塩を形成する酸であり、限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩(malate)、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩(glucuronate)、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(即ち、1,1′-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))を含む。アミノ部分を含む本組成物に含まれる化合物は、前述の酸に加えて、種々のアミノ酸を含む薬学的に許容可能な塩を形成し得る。本来は酸性である、本組成物中に含まれる化合物は、種々の薬学的に許容可能なカチオンと共に塩基性塩を形成できる。このような塩の例は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩および、特に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、および鉄塩を含む。
【0071】
用語「化学療法」は、1種または複数の抗癌剤(即ち、化学療法剤)使用する癌治療の一種を指す。化学療法は、治癒的目的で与えられてよく(通常、薬物の組み合わせで)、またはそれは、寿命を延長するまたは症状を軽減するために使用できる(即ち、対症療法的化学療法)。従来の化学療法剤は、細胞分裂(有糸分裂)を妨害することにより、細胞傷害性である。化学療法の共通の副作用は、骨髄抑制、粘膜炎(消化管の内側の炎症)および脱毛症を含む。
【0072】
用語「KRAS」は、細胞内シグナル伝達において「オン/オフ」スイッチとして作用する遺伝子を指す。それが通常に機能する場合、それは、細胞増殖を制御する。それは、アロステリックに活性化され、c-RafおよびPI3-キナーゼなどの他の細胞内シグナル伝達受容体と共に、成長因子の増殖に必要なタンパク質を動員し、活性化する。それが変異されると、負のシグナル伝達は破壊され、細胞を過剰増殖させ、癌へと発達させる。
【0073】
用語「PD-1」、「プログラム細胞死タンパク質1」または「CD279」は、T細胞炎症活性を抑制することにより、免疫系を下方調節すること、および自己免疫寛容を促進することにより、人体の細胞に対する免疫系の応答の調節における役割を有する、TおよびB細胞の表面上のタンパク質を指す。これは、自己免疫疾患を防止するが、それはまた、免疫系が癌細胞を死滅させることを妨害できる。PD-1は免疫チェックポイントであり、2つの機序により自己免疫に対し保護する。第1に、それは、リンパ節中の抗原特異的T細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を促進する。第2に、それは、制御性T細胞(抗炎症、抑制性T細胞)のアポトーシスを低減する。PD-1を遮断する薬物クラスである、PD-1阻害剤は、免疫系を活性化して、腫瘍を攻撃し、特定のタイプの癌を治療するために使用される。隣接する細胞上の、そのリガンド、PD-L1またはPD-L2のいずれかによるPD-1の結合は、TCRシグナル伝達およびTCR媒介増殖、転写活性化およびサイトカイン産生を抑制する。これは、自己免疫疾患を防止するが、それはまた、免疫系が癌細胞を死滅させることを妨害できる。PD-1/PD-L1相互作用を遮断するように設計された治療抗体は、癌の治療に対する潜在能力を有する。
【0074】
プログラム死リガンド1(PD-L1)は、表面抗原分類274(CD274)またはB7相同体1(B7-H1)としても知られ、ヒトではCD274遺伝子によりコードされるタンパク質である。PD-L1は、活性化されたT細胞、B細胞、および骨髄細胞上で見出されるその受容体である、PD-1に結合し、活性化または阻害を調節する。
【0075】
「免疫調節薬」は、免疫応答を調節する物質、薬剤、シグナル伝達経路またはそれらの成分を指す。免疫応答を「制御すること(Regulating)」、「変更すること(modifying)」または「調節すること(modulating)」は、免疫系の細胞におけるまたはこのような細胞の活性における何らかの変化を指す。このような調節は、種々の細胞型の数における増大または減少、これらの細胞の活性における増大または減少、または免疫系内で起こり得る他の何らかの変化により顕在化され得る、免疫系の刺激または抑制を含む。阻害的なおよび刺激的な免疫調節薬の両方は、特定されてきており、これらのいくつかは、癌、感染性疾患または神経変性微小環境において高められた機能を有し得る。
【0076】
用語「免疫療法」は、免疫応答を誘導する、強化する、抑制するあるいは変更することを含む方法による疾患に罹患している、または疾患の再発に苦しむまたは再発の危険がある対象の治療を指す。対象の「治療(Treatment)」または「療法(therapy)」は、疾患に関連する発症、進行、発達、症状の重症度または再発、合併症、状態、または生化学的指標を回復する、緩和する、改善する、抑制する、遅延するまたは予防する目的で、対象に対し実施される任意のタイプの介入または処理、または対象への活性薬剤の投与を指す。
【0077】
用語「グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β」または「GSK3β」は、ヒトにおいてGSK3B遺伝子によりコードされる酵素を指す。それは一体的に、細胞増殖およびアポトーシスの経路に関係する。GSK-3βは、βカテニンをリン酸化することが示されており、従って、それを分解の標的にする。GSK-3βは従って、カノニカルβカテニン/Wnt経路の一部であり、これは、分裂し増殖するよう細胞に信号を送る。それはまた、アポトーシスを調節する転写因子をリン酸化することにより、多数のアポトーシス性シグナル伝達経路に関与する。GSK-3βはまた、結腸直腸、卵巣、および前立腺癌などの、いくつかのタイプの癌で過剰発現される。GSK-3β阻害剤はまた、アルツハイマー病、脳卒中および双極性障害を含む気分障害の治療に役立つ。糖尿病では、GSK-3β阻害剤は、インスリン感受性、グリコーゲン合成、および骨格筋のグルコース代謝を高め、脂肪生成過程に作用することにより肥満症を低減する。
【0078】
用語「SFRP」または「分泌フリズルド関連タンパク質」は、可溶性フリズルド関連タンパク質(sFRPS)の一部であるWntシグナル伝達経路阻害剤を指す。sFRPSは、Wntとの直接相互作用を介してWntシグナル伝達の調節剤として機能する。5つの哺乳類sFRPSが、特定されている(sFRP-1、sFRP-2、sFRP-3、sFRP-4およびsFRP-5)。これらのタンパク質は、シグナル配列、フリズルド様システインリッチドメイン(CRD)、および小さい親水性C末端ドメインを含む約300個のアミノ酸からなる。1つのグループとして、sFRPSは、種々の胚性および成体組織で発現され、Wntシグナル伝達を阻害するための共通の機序を示唆する。しかし、個別のファミリーメンバーは、特異的な空間的および時間的発現パターンを有する。
【0079】
用語「Wntシグナル伝達経路」は、細胞表面受容体を介してシグナルを細胞へ通す一群のシグナル伝達経路を指す。カノニカルWnt経路は、遺伝子転写の調節をもたらす。
【0080】
用語「RIGS」または「放射線誘発胃腸症候群」は、腸陰窩細胞および間質細胞に対する放射線照射の直接の細胞破壊効果の組み合わせから生じ、粘膜のバリアーの喪失および下痢から電解質アンバランス、体重減少および死亡にわたる範囲の症状を伴う。かなりの割合の患者は、放射線照射場中の正常組織に対する損傷に起因する放射線誘発毒性を経験する。放射線療法により誘発される正常組織毒性を低減するまたは防止することを目的とした化学的または生物学的手法の使用は、長年の目標である。
【0081】
用語「放射線療法(radiation therapy)」または「放射性療法(radio therapy)」は、通常悪性細胞を制御するまたは死滅させる癌治療の一部として、電離放射線を用いる療法を意味する。放射線療法は通常、細胞増殖を制御するその能力のため、癌性腫瘍に適用される。電離放射線は、癌組織のDNAに損傷を与えることにより機能し、細胞の死滅をもたらす。主要な副作用は、疲労および皮膚刺激である。急性副作用は、悪心および嘔吐、上皮の表面、口、咽頭への損傷および胃もたれ、腫脹、腸不快感を含み得る。RIGS(放射線誘発胃腸症候群)は、胃腸系に関連する副作用を記述するために使用される一般的用語である。
【0082】
用語「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」は、(1)疾患を抑制すること;例えば、疾患、病状または障害の病態または症候学を経験しているまたは示している個体の疾患、病状または障害を抑制すること(即ち、病態および/または症候学の更なる進展を阻止すること);および(2)疾患を緩和すること;例えば、疾患、病状または障害の病態または症候学を経験しているまたは示している個体の疾患、病状または障害を緩和すること(即ち、病態および/または症候学を回復させること)、例えば疾患の重症度を低減すること、の1つまたは複数を指す。処置は、予防的および/または治療的であり得る。用語「予防的または治療的」処置は当該技術分野において承認されており、1種または複数の目的の組成物の宿主への投与を含む。それが、望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の臨床症状前に投与される場合、処置は、予防的(すなわち、これは、宿主を望ましくない状態の発症に対し保護する)であり、一方でそれが、望ましくない状態の徴候後に投与される場合、処置は、治療的(すなわち、既存の望ましくない状態またはその副作用を減弱させる、寛解する、または安定化させることが意図される)である。
【0083】
本明細書で使用される場合、「単位剤形」または「単位」という用語は、ヒトおよび動物の対象のための単位投与量として適した物理的に個別の単位を指し、各単位は、薬学的に許容可能な希釈剤、担体またはビークルと一緒に所望の効果を生じさせるのに十分な量で計算された所定の量の化合物を含有する。本開示の新規単位剤形についての仕様は、特定の用いられる化合物および達成されるべき効果、および対象における各化合物に関連する薬力学に依存する。
【0084】
本開示の化合物は、1種または複数のキラル中心および/または二重結合を含み得、従って、幾何異性体、鏡像異性体またはジアステレオマーなどの立体異性体として存在する。用語「立体異性体」は、本明細書で使われる場合、全ての幾何異性体、鏡像異性体またはジアステレオマーからなる。これらの化合物は、ステレオジェニックな炭素原子の周りの置換基の配置に応じて、略号「R」または「S」により命名され得る。本開示は、これら化合物の種々の立体異性体およびそれらの混合物を包含する。立体異性体は、鏡像異性体およびジアステレオマーを含む。鏡像異性体またはジアステレオマーの混合物は、命名法では「(±)」と命名され得るが、当業者は、構造は、キラル中心を暗黙的に表し得ることを理解するであろう。
【0085】
本開示の化合物の個別の立体異性体は、非対称または不斉中心を含む商業的に入手できる出発材料から合成的に、またはラセミ混合物の調合とそれに続く当業者に周知の分離法により、調製できる。これらの分離の方法は、(1)キラル補助剤への鏡像異性体混合物の結合、得られるジアステレオマー混合物の再結晶化またはクロマトグラフィーによる分離および補助剤からの光学的に純粋な生成物の遊離、(2)光学的に活性な分割剤を用いる塩形成、または(3)キラルクロマトグラフィーカラムでの光学的鏡像異性体の混合物の直接分離、により代表される。立体異性体混合物はまた、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、キラル塩錯体としての化合物の結晶化、またはキラル溶媒中での化合物の結晶化などの周知の方法によりそれらの成分立体異性体へ分割できる。立体異性体はまた、よく知られた非対称合成法により、ステレオマー的に純粋な中間体、試薬、および触媒から得ることができる。
【0086】
幾何異性体は、本開示の化合物中にも存在し得る。本開示は、炭素-炭素二重結合の周りの置換基の配置、または炭素環の周りの置換基の配置に起因する種々の幾何異性体およびこれらの混合物を包含する。炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、「Z」または「E」配置と表記され、「Z」および「E」は、IUPAC標準に従って使用される。別段の指定がない限り、二重結合を示す構造は、EおよびZ異性体の両方を包含する。
【0087】
炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、代わりに、「シス」または「トランス」と呼ばれることもあり、「シス」は、二重結合の同じ側の置換基を表し、「トランス」は、二重結合の反対側の置換基を表す。炭素環の周りの置換基の配置は、「シス」または「トランス」と表記される。用語「シス」は、環の面の同じ側の置換基を表し、「トランス」は、環の面の反対側の置換基を表す。置換基が環の面の同じおよび反対側の両方に位置される化合物の混合物は、「シス/トランス」と呼ばれる。
【0088】
本明細書で開示される化合物は、互変異性体として存在してよく、両方の互変異性型が、1つのみの互変異体構造が示されていても、両方の互変異性体が本開示の範囲に包含されると意図される。
【0089】
用語「アルコキシ」は、式-ORの化学的置換基を表し、Rは、別段の指定がない限り、任意に置換されるC1-C6アルキル基である。いくつかの実施形態では、アルキル基は置換でき、例えば、アルコキシ基は、本明細書で定義されるように、1、2、3、4、5または6個の置換基を有し得る。
【0090】
用語「アルコキシアルキル」は、本明細書で定義されるように、ヘテロアルキル基を表し、アルコキシ基で置換されるアルキル基と見なされる。例示的な置換されないアルコキシアルキル基は、2~12個の炭素を含む。いくつかの実施形態では、アルキルおよびアルコキシは、それぞれの基について本明細書で定義されるように、1、2、3、または4個の置換基でさらに置換できる。
【0091】
用語「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」は、直鎖、分岐鎖および環状一価置換基、ならびに、置換されない場合CおよびHのみを含む、これらの組み合わせを含む。実施例としては、メチル、エチル、イソブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2-プロペニル、3-ブチニル、などが挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」は、別段の指定がない限り、3~9個炭素(例えば、C3-C9シクロアルキル)を有する一価飽和または不飽和の非芳香族環状アルキル基を表し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロ[2.2.1.]ヘプチル、などにより例示される。シクロアルキル基が1個の炭素-炭素二重結合を含む場合、シクロアルキル基は、「シクロアルケニル」基と呼ばれてよい。例示的シクロアルケニル基は、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、などを含む。典型的には、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1~12個の炭素(例えば、C1-C12アルキル)または2~12個の炭素(例えば、C2-C12アルケニルまたはC2-C12アルキニル)を含む。いくつかの実施形態では、アルキル基は、C1-C8、Cl-C6、C1-C4、C1-C3、またはアルキル基である;またはC2-C8、C2-C6、C2-C4、またはC2-C3アルケニルまたはアルキニル基である。さらに、これらの基の1個上の任意の水素原子は、本明細書で記載される置換基で置換できる。
【0092】
ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルおよびヘテロアルキニルは、同様に定義され、少なくとも1個の炭素原子を含むが、主鎖残基内に1個または複数のO、SまたはNヘテロ原子またはこれらの組み合わせも含み、それによりヘテロアルキル、ヘテロアルケニルまたはヘテロアルキニル中の各ヘテロ原子は、ヘテロ型が対応するアルキル、アルケニルまたはアルキニル基の1個の炭素原子を置換する。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルおよびヘテロアルキニル基は、他の基に基が付着される各末端でCを有し、存在するヘテロ原子は、末端位置に配置されない。当該技術分野で理解されるように、これらのヘテロ型は、3個より多くの近接ヘテロ原子を含まない。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子は、OまたはNである。本明細書で使用される場合、用語「ヘテロシクリル」は、例えば、別段の指定がない限り、窒素、酸素、および硫黄からなる群より独立に選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を含む、3-、4-、5-、6-または7-員環である環状ヘテロアルキルまたはヘテロアルケニルを表す。5-員環は、0~2個の二重結合を有し、6-および7-員環は、0~3個の二重結合を有する。用語「ヘテロシクリル」はまた、1個または複数の炭素および/またはヘテロ原子が単環の2つの非隣接メンバーを架橋する、架橋された多環式構造を有するヘテロ環式化合物、例えば、キヌクリジニル基を表す。用語「ヘテロシクリル」は、上記ヘテロ環のいずれかが1、2または3個の炭素環、例えば、アリール環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロペンタン(cyclopentane)環、シクロペンテン環、または別の単環式ヘテロ環に縮合される二環式、三環式、および四環式基、例えば、インドリル、キノリル、イソキノリル、テトラヒドロキノリル、ベンゾチエニル基、などを含む。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「アルキルスルホニル」は、本明細書で記載されるように、-S(O)2-基を含む、任意に置換されるアルキル基として記載される、ヘテロアルキル基を表す。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「アミノ」は-N(R)2を表し、各Rは、独立に、H、OH、NO2、N(R)2、SO2OR、SO2R、SOR、SO2N(R)2、SON(R)2、N-保護基、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アリール、アルカリル、シクロアルキル、アルクシクロアルキル(alkcycloalkyl)、ヘテロシクリル(例えば、ヘテロアリール)、アルクヘテロシクリル(alkheterocyclyl)(例えば、アルクヘテロアリール)であり、または2個のRが、組み合わさって、ヘテロシクリルまたはN-保護基を形成し、各RN2は、独立に、H、アルキル、またはアリールである。好ましい実施形態では、アミノは、-NH2、または-NHRであり、Rは、独立に、OH、NO2、NH2、NR2、SO2OR、SO2R、SOR、SO2N(R)2、SON(R)2、アルキル、またはアリールであり、各Rは、H、アルキル、またはアリールであり得る。本明細書で使用される場合、用語「アミノアルキル」は、本明細書で定義されるヘテロアルキル基を表し、本明細書で定義されるように、アミノ基で置換されるアルキル基と記述される。アルキルおよびアミノはそれぞれ、それぞれの基について本明細書で定義されるように、1、2、3、または4個の置換基でさらに置換できる。例えば、アルキル部分は、オキソ(=O)置換基を含み得る。
【0095】
「芳香族」部分または「アリール」部分は、環系全体の電子分布の観点で芳香族性の特徴を有する任意の単環または縮合環二環系を指し、フェニルまたはナフチルなどの単環または縮合二環部分を含む;「ヘテロ芳香族」または「ヘテロアリール」はまた、O、SおよびNから選択される1個または複数のヘテロ原子を含むこのような単環または縮合二環系を指す。ヘテロ原子の含有は、6-員環ならびに芳香族とみなされる5-員環の含有を可能にする。従って、典型的芳香族/ヘテロ芳香族系は、ピリジル、ピリミジニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、チエニル、フリル、ピロリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、イミダゾリルを含む。互変異性体が理論的に可能であるので、フタルイミドもまた、芳香族と見なされる。典型的には、環系は、5~12環員原子または6~10環員原子を含む。いくつかの実施形態では、芳香族またはヘテロ芳香族部分は、1~2個の窒素原子を任意に含んでよい6-員芳香環系である。より詳細には、部分は、任意に置換されてよいフェニル、ピリジル、インドリル、ピリミジニル、ピリダジニル、ベンゾチアゾリルまたはベンゾイミダゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリルである。さらに詳細には、このような部分は、フェニル、ピリジル、またはピリミジニルであり、さらにより詳細には、それはフェニルである。「O-アリール」または「O-ヘテロアリール」は、酸素原子を介して別の残基と結合される芳香族またはヘテロ芳香族系を指す。O-アリールの典型例は、フェノキシである。同様に、「アリールアルキル」は、飽和または不飽和の、典型的には、C1-C2、C1-C6、またはより詳細には飽和の場合C1-C4またはC1-C3あるいは不飽和の場合C2-C8、C2-C6、C2-C4、またはC2-C3の炭素鎖を介して別の残基に結合される、芳香族およびそれらのヘテロ型を含むヘテロ芳香族系を指す。より明確にするために述べると、従って、アリールアルキルは、上でまた定義されるアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニルまたはヘテロアルキニル部分に結合された上記で定義されるアリールまたはヘテロアリール基を含む。典型的なアリールアルキルは、アリール(C6-C12)アルキル(C1-C8)、アリール(C6-C12)アルケニル(C2-C8)、またはアリール(C6-C12)アルキニル(C2-C8)、さらにそれらのヘテロ型であろう。典型例は、一般にベンジルと呼ばれる、フェニルメチルである。
【0096】
ハロは、任意のハロゲン原子、特にF、Cl、Br、またはIであり得、さらに詳細にはフルオロまたはクロロである。
【0097】
本明細書で使用される場合、用語「ハロアルキル」は、ハロゲン基(即ち、F、Cl、Br、またはI)で置換された、本明細書で定義されるアルキル基を表す。ハロアルキルは、1個、2個、3個のハロゲン、または2個またはそれを超える炭素のアルキル基の場合、4個のハロゲンで置換され得る。ハロアルキル基は、ペルフルオロアルキルを含む。いくつかの実施形態では、ハロアルキル基は、アルキル基について本明細書で記載されるように、1、2、3、または4個の置換基でさらに置換できる。
【0098】
本明細書で使われる場合、用語「ヒドロキシル」は、-OH基を表す。
【0099】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシアルキル」は、わずか1個のヒドロキシ基がアルキル基の1個の炭素原子に付着され得ることを条件として、1~3個のヒドロキシ基で置換された、本明細書で定義されるアルキル基を表し、ヒドロキシメチル、ジヒドロキシプロピル、などにより例示される。
【0100】
一般に、置換基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリール(上記で定義のヘテロ型を含む)は其れ自体、追加の置換基により任意に置換されてよい。これらの置換基の性質は、上記の基本構造上の置換に関して詳述されるものに類似である。従って、置換基の実施形態がアルキルである場合、このアルキルは、これが化学的に合理的であり、およびこれがアルキルのサイズ限界其れ自体を損なわない場合、置換基として列挙された残りの置換基で任意に置換されてよく;例えば、アルキルによるまたはアルケニルによるアルキル置換は、これらの実施形態について炭素原子の上限を単に拡張し、組み込まれない。例えば、基が置換される場合、その基は、1、2、3、4、5、または6個の置換基で置換されてよい。任意の置換基は、限定されないが、C1-C6アルキルまたはヘテロアリール、C2-C6アルケニルまたはヘテロアルケニル、C2-C6アルキニルまたはヘテロアルキニル、ハロゲン;アリール、ヘテロアリール、アジド(-N3)、ニトロ(-NO2)、シアノ(-CN)、アシルオキシ(-OC(=O)R’)、アシル(-C(=O)R’)、アルコキシ(-OR’)、アミド(-NR’C(=O)R”または-C(=O)NR’R’’)、アミノ(-NR’R’’)、カルボン酸(-CO2H)、カルボン酸エステル(-CO2R’)、カルバモイル(-OC(=O)NR’R”または-NRC(=O)OR’)、ヒドロキシ(-OH)、イソシアノ(-NC)、スルホネート(-S(=OHOR)、スルホンアミド(-S(=OHNRR’または-NRS(=O)2R’)、またはスルホニル(-S(=O)2R)を含み、各RまたはR’は、フロム H、C1-C6アルキルまたはヘテロアリール、C2-C6アルケニルまたはヘテロアルケニル、C2-C6アルキニルまたはヘテロアルキニル、アリール、または ヘテロアリールから独立に選択される。置換基は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の置換基を有し得る。
【0101】
典型的な任意の置換基は、独立にハロ、CN、NO2、CF3、OCF3、COOR、CONRY
2、OR、SR、SOR、SO2R、NR2、NR(CO)R、NRC(O)OR、NRC(O)NR2、NRSO2NR2、またはNRSO2Rを含み、各Rは独立に、Hまたは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、およびアリール(全て、上記で定義の通り)から選択される任意に置換されてよい基であり;または置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、O-アリール、O-ヘテロアリールおよびアリールアルキルから選択される任意に置換されてよい基であり得る。
【0102】
本明細書で使われる他の技術的用語は、それらが種々の技術的辞書により例示されるように使用される当該技術分野における通常の意味を有する。これらの非限定例で考察される特定の値および配置は、変わってもよく、それらは、単に少なくとも1つの実施形態を説明するために言及され、それらの範囲を限定する意図はない。
【0103】
発明の詳細な説明
前述の一般的説明と後述の詳細な説明との両方は、例示的かつ説明的な記述であり、請求される本願の技術のさらなる説明を提供すると意図されることを理解されたい。
本願の技術の追加の特徴と利点は、以下の記述で示され、一部にはその記述から明らかとなる、または本願の技術を実施することにより知り得るであろう。本願の技術の利点は、明細書およびこれに関する請求項において特に指摘される構造により実現および達成されるであろう。
【0104】
BCN057および類似体
YEL002としても知られるBCN057は、下記の構造により表される:
【化12】
本発明がBCN057の化合物、その類似体および塩を包含することは理解されよう。一実施形態では、本発明は、遊離塩基の形態のBCN057の化合物に関する。別の実施形態では、本発明は、BCN057の化合物またはその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0105】
それらの医薬における利用可能性のために、BCN057の化合物の塩は、薬学的に許容可能な塩として好ましい可能性がある。好適な薬学的に許容可能な塩は、酸付加塩を含み得る。薬学的に許容可能な塩は、必要に応じて所望の酸または塩基を用いることにより容易に調製できる。得られた塩は、溶液から沈殿され、濾過により収集されるか、溶媒の蒸発により回収できる。化合物は、立体異性体、互変異性体、薬学的に許容可能な塩、またはその水和物として存在できる。BCN057のいくつかの類似体を以下に示す。
【0106】
実施形態は、式B:
【化13】
の構造を有する化合物の治療的有効量を投与することを含む治療の方法を含み、
R
1は、アルキル、アルキルアミン、またはエーテルであり;
R
2は、HまたはCH
3であり;および
R
3は、HまたはOHである。
【0107】
いくつかの実施形態では、化合物は、式II~XIXから選択される類似体であり、下表2に示されるような化合物H、化合物K、化合物BNB-1、化合物BNB-2、化合物BNB-3、化合物BNB-4および化合物BNB-5を含む。
【0108】
一実施形態は、下記で詳述される、式Iの化合物またはその類似体である。
【化14】
【0109】
BCN057は、本明細書で開示される化合物および類似体と共に、有機合成の当該技術分野で確立された方法に従って調製できる。化合物を合成する一般的な方法は、例えば、Stuart Warren and Paul Wyatt,Workbook for Organic Synthesis:The Disconnection Approach,second Edition,Wiley,2010、で見つけることができる。化合物を製造する例示的な方法は、米国特許出願第13/813,923号および米国特許出願第14/889,719号で提供される。これらの特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。化合物はまた、その化合物の薬学的に許容可能な塩、そのプロドラッグ、その水和物、その溶媒和物およびその多形性の結晶も含む。化合物は、医薬組成物として投与できる。
【0110】
有用性および投与
本明細書で記載のBCN057およびBCN077ならびに類似体は、本発明の方法での使用に有用であり、理論に束縛されるものではないが、一部にはWnt-βカテニンシグナル伝達を調節するそれらの能力によりそれらの望ましい効果を発揮すると考えられる。Wnt経路は、胚中の組織発生および成体での組織維持に関与する。それは、細胞成長、移動および細胞生存を制御する一連の特異的遺伝子を制御する。これらの遺伝子の長期の活性化およびWnt経路の異常な活性化は、制御されない細胞成長および生存につながり、結果として、結腸、肝臓および卵巣を含む一連の組織中で癌形成を促進できる。
【0111】
Wntシグナル伝達経路は、細胞表面受容体を介して細胞中へシグナルを渡すタンパク質により開始される、一群のシグナル伝達経路である。Wnt経路の異常活性化は、ヒト癌、特に、胃腸(GI)管の癌と関連付けられている。癌細胞株における異常なWnt経路活性の阻害は、それらの増殖を遮断でき、新規治療薬の可能性を提供する。
【0112】
Wntリガンドは、上皮陰窩細胞上に存在するLRP5/6およびフリズルド共受容体に結合し、β-カテニン安定化および核移行をもたらし、そこでそれは、核転写因子TCF4に結合して、幹細胞維持、増殖および分化を支援する遺伝子発現プログラムを促進する。Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化はまた、傷害後の陰窩再生にとって重要である。いくつかの研究は、ISC成長因子およびLGR5受容体アゴニストであるRespondin 1(RSPO1)が、Wnt/β-カテニン経路を活性化して、化学療法-放射線誘発傷害後の腸を修復および再生することを実証した。Wnt/β-カテニン経路の負の制御因子であるDKK1は、RSPO1に誘導される腸再生を損なう。
【0113】
Wntシグナルの不在下では、転写活性化因子β-カテニンは、細胞中で活発に分解される。
リン酸化β-カテニンはその後、認識され、ユビチキン化され、そのプロテアソーム分解に至る。遊離β-カテニンのレベルはその結果、低いままであり、これは、DNA結合T細胞因子/リンパ因子エンハンサー因子(Tcf/Lef)タンパク質が転写補助抑制因子と相互作用することを可能にして核中の標的遺伝子発現を阻止する。
【0114】
癌を治療することに加えて、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を制御する治療薬はまた、線維症、炎症状態、骨成長、創傷治癒、骨粗鬆症、脱毛症(即ち、抜け毛)、うつ病およびウィルス感染症を含む、他の病気を治療することにおける潜在能力も有する。従って、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を抑制および/または調節できる化合物および方法に対するニーズが存在する。
【0115】
BCN057および類似体-癌の治療および療法
いくつかの研究は、Wnt経路が、遺伝性家族性大腸腺腫症および自然発生的形態の結腸癌の両方で持続的に活性化されていることを実証した。これらの細胞中のWnt経路の長期活性化は、良性腺腫(ポリープとも呼ばれる)へのそれらの増殖を促進し、これらはしばしば、侵襲的結腸癌腫に進行する。散発性結腸癌の約90%は、通常APC中の変異の結果として、異常なWntシグナル伝達活性を示す。
【0116】
BCN057およびBCN077は、癌を治療する、特に膵臓および胃腸(GI)癌を治療することにおいて効果的である、抗悪性腫瘍小分子である。それは、二重作用により機能する。それは、癌細胞でアポトーシスを誘導する。第2に、それは、上皮細胞の増殖および生存を促進できる。BCN057およびBCN077は特に、膵臓および胃腸(GI)癌に対し効果的である。BCN057およびBCN077は、「KRAS」癌に対し抗悪性腫瘍効果を示した。
【0117】
放射線/化学療法との併用使用
BCN057およびBCN077は、癌を治療する、特に膵臓および胃腸(GI)癌を治療することにおいて効果的である。一態様では、本明細書で開示されるのは、それを必要としている対象における放射線誘発性胃腸症候群(RIGS)を治療する方法であり、方法は、BCN057およびBCN077の化合物、またはこれらの類似体の治療的有効量を対象に投与するステップを含む。類似体は、式II~XIXの化合物の1種または複数であり得る。BCN057(およびBCN077)は、RIGSを軽減し、腹部放射線療法の治療可能比を改善する。さらに、BCN057およびBCN077は、口腔粘膜炎、例えば、咽頭、胃および腸のGI粘膜炎、腸炎および直腸炎を含む、放射線誘発粘膜炎を軽減する。さらに、それは、放射線および化学療法由来の上皮組織に対する損傷を予防および治療できる。化合物はまた、放射線療法に付随するこれらの放射線症候群を治療するまたは予防するために有用である。
【0118】
併用療法
併用療法は、異なる機序で働く薬物により特に効果的であり得、それにより耐性癌細胞が発生する可能性を減らす。異なる効果を有する薬物を組み合わせると、各薬物は、耐えられない副作用なしに、その最適投与量で使用できる。BCN057(およびBCN077)および第2の薬物は、治療効果のために組み合わせることができる。第2の薬物は、異なる機序を有し得る。あるいは、それは、治療効果のために、BCN057と同じ機序を使用し得る。組み合わせは、相乗的効果を介して作用し得る。併用療法はまた、追加の(例えば、第3、第4、第5の、などの)薬物を含み得る。BCN512は、同じ方式で、併用療法において使用できる。
【0119】
ウィルス感染症の治療
追加の実施形態は、ウィルス感染症の治療のためのBCN057、BCN077およびこれらの類似体の使用を含む。ウィルス性疾患感染は、身体が病原性ウィルスにより侵入され、感染性ウィルス粒子が感受性細胞に付着し、侵入する場合に起こる。宿主免疫応答は、疾患および過剰炎症を媒介できる。ウィルス感染症に応答した自然および適応免疫系の刺激は、感染された細胞を破壊し、これは、宿主に対する重篤な病理学的結果(即ち、ウィルス誘導免疫病理学)をもたらし得る。特に、免疫病理は、抗体、インターフェロンおよび炎症促進性サイトカインの過剰な放出、補体系の活性化、または細胞傷害性T細胞の運動亢進に起因する。インターフェロンおよび他のサイトカインの分泌は、細胞損傷、発熱およびインフルエンザ様症状を誘発し得る。2005年のトリH5N1インフルエンザにおけるような、特定のウィルス感染症の重症の場合、宿主免疫応答の異常な誘導は、サイトカインストームとして知られるサイトカインの激発的放出(flaring release)を誘発し得る。
【0120】
Wntシグナル伝達は、ウィルスに対する自然免疫応答にとって重要である。病原性ウィルスは、重要な遺伝子のβ-カテニン下流の発現を抑制して、免疫系の第1の防御線を回避する。β-カテニンは、IFNα/βの発現およびそれに続くインターフェロン誘導遺伝子の転写活性化に不可欠である。IFNβは、抗ウィルス作用遺伝子の自己発現およびパラクリン発現を誘導する。従って、BCN057、BCN077および類似体は、ウィルス誘発免疫病理学などの病理学的結果を防止する。
【0121】
うつ病の治療
追加の実施形態は、うつ病の治療のためのBCN057、BCN077および類似体の使用を含む。Wntシグナル伝達はまた、うつ病を治療するために重要である。1950年代から、炭酸リチウムおよび他の塩が、うつ病を治療するために同様に使用されてきた。リチウムは、wnt下流シグナル伝達経路中のGSK3Bを阻害すること、およびβ-カテニン下流の遺伝子を転写することにより機能する。
【0122】
最近の研究は、改変されたWntシグナル伝達が気分障害の病態生理学に関与できることを示した。β-カテニンレベルは、海馬CA3およびCA4領域中で低減され、Wntレベルは、死後の統合失調症脳の海馬CA4領域で増大される。リチウムは、カノニカルWnt経路の成分であるシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)を阻害するので、この経路は、双極性障害の治療における特異的標的として提案されている。従って、BCN057、BCN077および類似体は、うつ病および気分障害を治療するために使用できる。
【0123】
PD-1調節およびPD-1活性に関連する病気の治療
PD-1は、PD-L1およびPD-L2の受容体である。PD-1/PD-Lシグナル伝達経路は、周辺免疫寛容において中心的な役割を果たし、それは、生理的条件下で不適切な免疫応答を防止する。PD-1は、癌および慢性感染症における免疫系応答を減らすと示される免疫チェックポイント阻害剤である。しかし、感染症または癌では、免疫抑制につながるこの経路の別の役割は、重大な問題を引き起こし得る。
【0124】
いくつかの研究は、PD-1が、癌、自己免疫疾患、慢性感染症および敗血症を含む種々の病気に関与していることを示した。このような研究は、免疫寛容におけるPD-1の二重の役割を強調し、PD-1の減少は、自己免疫疾患を引き起こす。PD-1+T細胞の枯渇は、自己免疫疾患における有益な効果をもたらし、炎症および疾患進行を遅らせる。PD-1の減少は、マウスのPD-1遮断またはノックアウトの実験で記載されるように、自己免疫疾患に罹りやすくさせる。PD-1はまた、多発性硬化症(MS)における免疫療法の標的でもあり得る。
【0125】
癌におけるPD-1の役割は、広範に研究されてきた。腫瘍中または浸潤性免疫細胞中のいずれかでのPD-L1および/またはPD-L2の発現は、多数の腫瘍で検証されており、予後形質および治療標的としてのPD-1/PD-L1軸の役割を示している。自己免疫疾患は、生物の自分自身の細胞および組織に対する異常な免疫応答として定義される。自己免疫疾患の発生率は世界中で増大しており、PD-1およびPD-Lは、中枢性および末梢性の両方の免疫寛容の調節に関与することが示された。特に、胸腺細胞発生の間に、PD-1は、ポジティブ選択の間のシグナル伝達閾値を調節することにより重要な役割を果たす。従って、CD4+CD8+胸腺細胞の集団は、PD-1またはPD-L1の不在下で増大する。さらに、PD-1経路は、自己反応性TおよびB細胞中で負の制御因子として働いて免疫寛容を維持する。
【0126】
本明細書で記載のBCN057、BCN077および類似体は、本発明の方法において有用であり、理論に束縛されるものではないが、一部にはPD-1活性を調節するそれらの能力によりそれらの効果を発揮すると考えられる。特に、出願者らは、PD-1活性を調節するための治療的なBCN057およびBCN057の類似体の使用を提案する。従って、BCN057は、PD-1が関与する特定の病気を治療できる。機序は、GSK3β阻害を伴う。
【0127】
特に、出願者らは、BCN057およびBCN077が、GSK3βを阻害し、それによりKRAS G12D変異体膵臓癌細胞中のc-Jun上のアポトーシス促進性リン酸化パターンを誘導し、PTEN発現の回復および結果としてのアポトーシスをもたらすことを提案する。そのGSK3β阻害と同時に、BCN057(およびBCN077)は、ヒト膵臓癌細胞と共培養されたヒトTリンパ球上のPD-1発現の小分子阻害剤である。BCN057およびBCN077は、悪性細胞に対し特異的に合成致死性を促進でき、従って化学療法および放射線療法と併せて、膵臓および上皮癌治療における治療可能比を改善すると見なされるべきである。
【0128】
慢性感染症は、持続的な高レベルの抗原露出により特徴づけられ、T細胞が次第にエフェクター機能を失い癌の状態に類似の疲弊に進行することを引き起こす。癌の治療におけるその成功を考慮すると、抗PD-1/PD-L1療法は、重度慢性感染症の治療における可能性を有する。さらに、最近の研究は、PD-1が、T細胞疲弊の発生におけるいくつかの代謝変化を調節することを示した。
【0129】
集中治療室での高い死亡率に関連する敗血症は、最初の炎症促進性の時間後の重度の免疫抑制を特徴とする。死亡した敗血症患者の死後検査は、宿主免疫を損なう重要な免疫学的な欠陥を強調する。敗血症は、癌のものと類似の免疫抑制機序を有する。癌患者での宿主免疫の改善および生存の増大におけるCTLA-4およびPD-1特異的抗体の効力を考慮すると、これらの薬剤は、敗血症に対する新規医薬の開発への有望な道を開くことが予測される。
【0130】
実施例
以下の非限定的実施例は、現時点で考えられる代表的実施形態のより完全な理解を容易にするために、例示の目的のみで提供される。これらの実施例は、本明細書で記載の、化合物、医薬組成物、方法および使用に関するものを含む本明細書で記載の実施形態のいずれかを限定するものと解釈されるべきではない。
【0131】
材料および方法
ヒト末梢血汎T細胞を、Stem Cell Technologies(Vancouver,BC,Canada)から購入し、Panc-1細胞を、Kansas University Medical Centerから得た。5-Fu、イリノテカン、およびオキサリプラチン(oxaliplatin)を、Sigma(St.Louis,MO,USA)から購入した。ImmunoCult-XF T Cell Exp Medium、ImmunoCult HuCD3/CD28/CD2 TCellAct、Hu Recom IL-2(CHO Expr.)を、Stem Cell Technologies(Vancouver,BC,Canada)から購入した。ATPLite Luminescence Assay Systemおよび96-ウェルの白色の、不透明無菌組織培養液処理マイクロプレートを、Perkin Elmer(Waltham,Massachusetts,USA)から購入した。RealTime Glo Annxin V Apoptosis and Annexin Assayを、Promega(San Luis Obispo,CA,USA)から購入した。Phospho-GSK-3β(Ser9)、PD-L1(E1L3N)、PD-1(D4W2J)、β-アクチン、抗ウサギIgG、HRP連結抗体、Phospho-Akt(Thr308)、Phospho-c-Jun(T-93)を、Cell Signaling Technology(Danvers,Massachusetts,USA)から購入した。PC膜6ウェルプレートを有する0.4μm TCプレートインサート(thinsert)を、VWR(Radnor Pennsylvania,USA)から購入した。APC標識PD-L1(B7-H1)モノクローナル抗体(MIH1)およびFITC標識(PD-1)モノクローナル抗体(MIH4)を、Thermo Fisher Scientific(Waltham,Massachusetts,USA)から購入した。
【0132】
化合物の調製:以下の化合物のストック溶液を、調製した。DMSO中の150mMオキサリプラチン、DMSO中の100mMイリノテカン、DMSO中の50mMの5Fu、およびBCN057:30%のカプチゾール(登録商標)(β-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム)中の16mg/mLのBCN057。
【0133】
細胞株および細胞培養:Panc-1細胞を、10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM培地中で培養し、37℃、5%CO2下で維持した。ヒト末梢血汎T細胞を、10ng/mlのrhIL-2を含む無血清T細胞拡張培地中で培養し、製造業者の説明書に従って拡張させた。Panc-1細胞およびT細胞を、成長させ、T75フラスコ中で別々に拡張させた。Panc-1細胞を用いる共培養実験のために、ウェル当り250万個のT細胞を、6個のウェルプレートを用いてウェルに播種した。250万個のPanc-1細胞を、thinsert中に播種し、これを、細胞を物理的に分離させるが培地を共有するように、6個のウェルプレートのウェル中に配置した。細胞を、5%CO2下、37℃で24時間インキュベートした。24時間で、培地を、ビークルまたは10uMのBCN057を含有する培地で置換し、次の時点:1時間、6時間、12時間、24時間、の間インキュベートした。Panc-1細胞を、thinsertから細胞を静かにかき取ることにより取り出した。
【0134】
フローサイトメトリー:フローサイトメトリー分析:Panc-1およびT細胞を、独立に採取し、1xPBSで洗浄した。細胞を、3xPBSで洗浄し、室温で1間抗体とインキュベートした。細胞を次に、3xPBSで洗浄し、1xPBSに再懸濁し、NovoCyteフローサイトメーター(Agilent Technologies Inc.Santa Clara,CA)を用いるフローサイトメトリーにより分析し、データを、NovoExpressソフトウエアで分析した。
【0135】
ウェスタンブロット:細胞を、採取し、氷上で15分間、細胞溶解緩衝液に溶解し、溶解物を、13,000rpm、4℃で10分間遠心分離した。上清を、BCAタンパク質定量化アッセイ(Thermo Fisher Scientific)のために新規チューブに移し、試料を、正規化した。3xローディング緩衝液(Cell Signaling)を、タンパク質試料に加え、5分間煮沸した。試料を、SDS-PAGE分析に使用し、ニトロセルロース膜に転写した。膜を、5%BSAを用いて室温下で1時間ブロックし、4℃で一晩一次抗体とインキュベートした。膜を、3回1xTBSTで5分間洗浄し、室温で1時間西洋ワサビペルオキシダーゼ標識二次抗体とインキュベートした。タンパク質を、SuperSignal West Pico Stable Peroxide Solution(Thermo Fisher Scientific)により可視化した。ブロットを、BioRad Versadoc Imaging Systemを用いる化学発光により可視化した。
【0136】
生存率アッセイ。イリノテカン、オキサリプラチンおよび5FUと比較しておよびこれらと組み合わせてBCN057の効果を決定するために、ATPlite発光アッセイシステムを、製造業者の説明書に従って使用した。1日目に、ウェル当り、3,000個のPanc-1細胞を、96ウェルの白色の、不透明な無菌組織培養処理されたマイクロプレートに播種し、37℃、5%CO2で完全培地中にて24時間インキュベートした。2日目に、培地を、10uMのBCN057、25μMの5Fu、75μMのオキサリプラチン、および50μMのイリノテカンの種々の組み合わせを含む培地と交換し、37℃、5%CO2でインキュベートした。3、4、および5日目に、ATP Lite Assayを、24、48、9および72時間の時点について、製造業者の説明書に従い実施した。別に定める場合を除き、値を、各薬物に対するビークルである対照のパーセントとして表した。生存率における差異は、いずれの対照ビークルの間でも認められなかった。
【0137】
QPCR:BCN057またはビークルで治療したPanc-1細胞中のBMI1およびLGR5標的遺伝子のmRNAレベルを比較する。定量的PCR(qPCR)を用いて、表1に収載したプライマー対を用いるリアルタイムPCRにより検出された幹細胞マーカーLGR5、およびBMI1の発現を、測定した。全RNAを、トリゾールキット(Invitrogen,CA,USA)を用いて抽出した。
【表1】
【0138】
統計。結果を、(n)で示される治療されない対照と比較して平均値(±標準偏差)を計算することにより示す。パーセント生存率を、各条件の平均を未治療対照(ビークル)の平均で除算することにより計算した。統計解析を、エクセルで実施した。
【0139】
実施例1
BCN057は、アポトーシスの回復により膵臓癌細胞増殖を抑制する:
最初の実施例は、膵臓癌細胞におけるBCN057の効果を試験することを伴った。G12D KRAS変異体細胞株であるPanc-1細胞を、BCN057で48時間治療した。ATPlite(商標)アッセイ(PerkinElmer)は、BCN057の漸増用量によるPanc1細胞の生存能力における顕著な減少を示した。
【0140】
図1は、薬物の適用後72時間のインキュベーションによるATP Lite(商標)アッセイ(Perkin Elmer)により評価した、膵臓癌細胞株の生存に対するBCN057の効果を示すヒストグラムである。全てのデータポイントは、n=5である。対照(ND)は、薬物を受けず、BCN057は、最終濃度2、5、10、および20μMの投与である。パーセント生存率を、各条件についての平均値を各時点での対照細胞の平均値(V)により除算することにより計算した。
【数1】
【0141】
このデータを、式1を用いてQuest Graph(商標)IC
50 Calculatorでプロットし、それは、1.33mmのIC
50を与えた。この値は、IC
50が494nM~23.9μMの範囲である、膵管腺癌細胞(AsPC-1、BxPC-3、MIA PaCa-2およびPanc-1)に対する、ゲムシタビンなどの細胞傷害性薬物の他の分析に匹敵する。薬物は、用量反応曲線の全ての濃度で細胞に対し強力な細胞傷害性を示すと見出された。さらに、これらの投与量は、げっ歯類の有効性試験中に血漿中で認められた濃度範囲を包含する。その後、顕微鏡画像は、BCN057の適用直後に、細胞の小疱形成およびフラグメント化を示すように見え、アポトーシスの可能性を示している。
図2Aは、10μMのBCN057での治療後の膵臓癌細胞増殖の時間の経過を示す。小疱形成および細胞フラグメント化は、薬物とのインキュベーションの20分に以内に認められた(矢印で示す)。細胞フラグメント化は、薬物への曝露後の20~30分の間に認められた。
【0142】
Panc-1細胞は、他のKRAS変異体腫瘍細胞と類似のコドン12におけるヘテロ接合型ミスセンス変異を有する(p.G12D;GGT>K-RASのGAT)ので、表現型は、アポトーシスの能力の喪失、および結果としての化学療法抵抗性である。BCN057治療は、薬物への曝露後の20分ですぐにアポトーシスの迅速で用量依存性の回復を示すように見えた。
【0143】
BCN057誘導細胞死におけるアポトーシスの関与を検証するために、BCN057含有/不含Panc1細胞を、アネキシンV染色に供した。アネキシンV染色を、最大で6時間まで実施し、BCN057の用量応答の関数として測定した。アポトーシスにおける用量および時間依存性の増大を、BCN057で治療したPanc1細胞で検出した。
図2Bは、Panc-1細胞でのアネキシンVアポトーシスおよびネクローシスアッセイのグラフである。Panc-1細胞を、RealTime-Glo(商標)アネキシンVアポトーシスおよびネクローシスアッセイ試薬の存在または不在下で、BCN057の段階希釈物に曝露した。プレートを、37℃/5%CO
2でインキュベートし、発光(アネキシンV結合)を、6時間にわたり測定した。変化は、同じ時間にわたり蛍光では観察されなかった。アポトーシスは、BCN057の漸増濃度と共に増加するように見えた。アポトーシスは、10分、30分、1時間および6時間の時点で用量依存的におよび時間依存的に観察された。
【0144】
さらなるqPCR分析を、Bax、Bcl-2、Akt-1およびカスパーゼ-3に対し実施し、それは、BCN057が、治療後1時間にPanc1細胞で、アポトーシス促進性遺伝子Baxの発現を誘導するが、抗アポトーシス性Bcl2遺伝子発現を抑制したことを示した。
図2Cは、Panc-1細胞中のアポトーシス促進性および抗アポトーシスマーカーのqPCR分析の結果のヒストグラムである。BAXは、BCN057への曝露の1時間後に有意に上昇され、Bcl-2は減少された。*p<0.05。発現プロファイルは、Akt-1またはカスパーゼ-3に影響せず、カスパーゼ非依存性細胞死と一致した。
【0145】
実施例2
BCN057は、GSK3βシグナル伝達を抑制してPANC1細胞においてアポトーシスを回復する。
Panc1細胞株は、KRASG12D変異を有し、アポトーシスの能力を喪失しており、これは、発癌性RAS変異の特徴である。BCN057がこの細胞株でのアポトーシスの回復において有し得る役割を調査するために、GSK3B c-Jun相関を評価した。なぜならそれは、アポトーシスと直接関連づけられているからである。他の研究者は、Xが発癌性KRAS表現型中で過剰発現されるという事実と一緒に、GSK3Bとc-Junおよびアポトーシスの関連を報告した。10μMのBCN057への曝露後の経時的なGSK3B抑制についてのPanc1細胞の分析は、S-9でのリン酸化の急速な誘導を示した(
図3Aおよび
図3B)。この抑制は、HEK298などの他の形質転換されない細胞型中でも認められた。
【0146】
c-Jun中のT91/93のリン酸化を、総c-Junの関数として測定した。T91/93の顕著なリン酸化が観察され、これは、c-Junのアポトーシス促進活性の活性化と関連すると報告された。この活性は、BCN057あるいは形質転換されないHEK298上皮細胞で治療された場合、形質転換されない細胞で誘導されるとは見出されなかった(データは示さず)。
【0147】
KRAS依存性腫瘍では、c-Junは、プロモーターレベルでホスファターゼおよびテンシン相同体(PTEN)発現を抑制するように作用し、PTEN発現のその抑制は、発癌性RASによる抗アポトーシスおよび細胞形質転換にとって不可欠である。従って、我々は、BCN057に応答したPTEN発現レベルを調査した。細胞のBCN057治療下でのc-Junアポトーシス促進性活性化の知見と一致して、我々は、細胞のアポトーシスの我々の知見と一致して、PTENタンパク質の最大で1時間の増大された発現(
図4Bおよび4C)およびその後に続く減少を見出した(
図2)。
【0148】
図4Aは、ホスホ-c-Jun(T-91/93)のウェスタンブロットである。BCN057は、薬物治療後の20分以内にKRAS変異体Panc-1癌細胞中でJNK依存性リン酸化を顕著に増大させる。T-91/93のc-Junのリン酸化は、アポトーシスを誘導することが知られている。総c-Junタンパク質レベルは、不変であった。
図4Bは、Panc-1細胞中のPTEN発現を示す。特に、PTENのウェスタンブロットは、示した時点でのビークルまたはBCN057治療(10μM)と同じ試料由来のβアクチン染色による24時間にわたるタンパク質発現を示す。
図4Cは、BにおけるPTENレベルの増加倍率を示すβアクチンに対するPTENの密度計測値の比率のヒストグラムである。矢印は、アポトーシスの開始を示す。
【0149】
実施例3
BCN057は、化学療法剤の抗悪性腫瘍効果を高める。
KRASの抗アポトーシス性表現型は、化学療法に対する大きな抵抗性と関連する。従って、BCN057が、5-フルオロウラシル(5FUとしても知られる)などの細胞傷害性化学療法剤を強化するかどうかを調査するために、Panc1細胞を、報告されたように5FUで前治療し、BCN057とインキュベートした。同等の濃度および条件での5FUとBCN057の組み合わせは、5FU単独より大きな細胞傷害性を示した(
図5A)。効果は、BCN057に対する用量依存性応答に従い、BN057治療後24、48および72時間にわたり一定であった(24および48時間は示さず)。
【0150】
図5Aは、ATP Lite(商標)アッセイ(Perkin Elmer)により評価した膵臓癌細胞株の生存に対するBCN057および5-FUの効果を示す(全ての薬物を72時間インキュベーションした)。全てのデータポイントは、n=5である。対照(ND)は、薬物を受けなかった。試験群は、5FU(50μM)、057(BCN057:2、5、10、および20μMまたは5FU+BCN057(50μMの5FUと組み合わせて、BCN057:2、5、10、および20μM)を含む。パーセント生存率を、各条件についての平均値を各時点での対照細胞の標準偏差を含む平均値(V)で除算することにより計算した。
【0151】
膵臓癌中のLGR5およびBMI1:LGR5は、膵臓腫瘍の全ての細胞中で広範な発現を示した。他の研究者は、Panc-1で測定可能な化学療法抵抗性および侵襲性に対する重要な寄与因子としてBMI1を採用した。我々は、BCN057がPanc-1細胞中でこれらの細胞集団の増大をもたらすかどうかを試験したが、存在量の有意な増大は10μmでの投与で認められなかった(
図5B)。
【0152】
上皮LGR5幹細胞:我々のグループならびに他の研究者からの以前の報告は、Lgr5+ve陰窩基底部円柱細胞は、化学放射線療法に感受性であることを示した。我々はまた、治療が誘導する毒性からのLgr5+ve ISCの保護は、腸上皮損傷を最小化するために非常に重要であると報告した。5FUは、フォルフィリノックスの成分であり、カペシタビン(Xeloda(登録商標))から代謝される活性剤である。Lgr5+ISCにおいて化学療法剤が誘導する毒性に対するBCN057の効果を調査するために、Lgr5-Cre-ERT-GFPマウスを、報告されたように5FUで前治療し、その後、BCN057治療に供した。空腸部分の共焦点顕微鏡的画像化は、5FU治療マウス中のLgr5+ISCの顕著な減少を明確に示した。しかし、BCN057を受ける5FU治療マウスは、Lgr5+ve ISCの顕著な存在を示し(
図5Cおよび
図5D)、BCN057が放射線に類似の化学毒性からISCを保護することを示唆している。
【0153】
図5Cは、BCN057が、5FU細胞傷害性からGI上皮およびLGR5幹細胞(緑)を保護することを示す。緑色を有するGI陰窩の染色=LGR5+幹細胞。マウスを、5FUおよび5FU+BCN057で5日間治療した。BCN057を、5FU治療後に追加の2日間にわたり投与した。小腸試料を採取し、最後の5FU注入後に3日間LGR5について染色した。
図5Dは、陰窩基底部の1mM区分中に残存するLGR5+細胞の%定量化のヒストグラムであり、GIでのLGR5+幹細胞中の5-FU誘導アポトーシスの防止を示す。
【0154】
化学療法と細胞傷害作用の組み合わせ:膵臓または結腸直腸癌の治療でよく使われる他の細胞傷害性薬物、例えば、5FU、イリノテカンおよびオキサリプラチンなどのフォルフィリノックス内のものなどを次に、24、48および72時間にわたり同等の投与量のBCN057と組み合わせて類似の方式で調査した。それぞれの場合で、アポトーシスの回復は、治療後に1つ(72時間でのイリノテカン(IRI)およびオキサリプラチン(Ox))を除く全ての時点で、薬物またはBCN057との組み合わせの細胞毒性作用に対し統計的に有意な感受性を誘導した。
【0155】
図6は、Panc-1細胞に対する、個別のまたは5FUおよびBCN057と組み合わせた、オキサリプラチンおよびイリノテカンの細胞傷害性を示すヒストグラムである。細胞を、全てのアッセイでn=4にて、10μMの濃度を有するオキサリプラチン、イリノテカンおよび5FUと、およびまた10μMのBCN057(057)とインキュベートした。全ての場合で、BCN057の添加は、72時間にわたり腫瘍生存率が減少する一般的な傾向をもたらした。*p<0.05、**p<0.005。
【0156】
この傾向は、遙かに高い投与量のオキサリプラチン(75μM)、イリノテカンおよび5FUのそれぞれ50μMの濃度および10μMのままであるBCN057(057)(n=6,データは示さず)を用いた別の試験でも同じままであり、他の研究者の観察と一致する。
【0157】
BCN057および免疫チェックポイント遮断:PDACを含む、多くの形態の癌に対する治療の新たな方法は、免疫チェックポイント阻害剤である。GSK3Bは、特にPD-1/PDL-1軸において、免疫チェックポイントの重要な制御因子であるので、我々は、PD-1/PDL-1発現に対するBCN057の効果を調査しようとした。膜により隔てられるPanc1細胞およびヒトT細胞からなる培養系を、以前に記載されたように用いた(Neubert,N.J.et al.,Frontiers in Immunology 7,2016)。 Panc-1細胞を、T細胞と1日間共培養し、続いて最大で12時間10μMのBCN057で治療した。
【0158】
図7Aは、薬物不含(ビークル)でまたはBCN057と共に1、6および12時間Panc-1細胞と共培養されたヒトTリンパ球上のPD-1発現を示すウェスタンブロットである。
図7Bは、GSK3Bの阻害が、放射線に曝露されるとリンパ球の生存を誘導することを示すグラフである。放射線照射されたマウスTリンパ球に対し漸増濃度のBCN057を用いるインビトロ生存率アッセイでは、EC
50=5.34mMであり、これは、薬物について観察される血漿中濃度内である。
【0159】
図8は、薬物なし(ビークル)でまたはBCN057と共に2.5、5、7.5および10時間ヒトTリンパ球と共培養されたPanc-1細胞上のPDL-1発現(赤矢印)を示すウェスタンブロットである。Panc-1細胞上のPDL-1発現は、認識できるほどに変化しなかったが、細胞は、記載されるように、急速なアポトーシスを受けた。しかし、ヒトTリンパ球上のPD-1発現は、
図7Aに示すように、最初の1時間以内に顕著に減少し、治療後12時間にわたり持続した。マウスTリンパ球を用いた別の試験では、2Gy照射を用いて、漸増量のBCN057を伴いアポトーシスを誘導した。結果は、EC
50=5.34μMで放射線の存在下でのBCN057によるTリンパ球の保護を示し(
図7B)、従って腫瘍と免疫細胞の間の生物学的応答における差異を確立する。
【0160】
まとめると、結果は、BCN057が、発癌性KRAS膵臓癌細胞において化学療法剤の細胞毒性効果を選択的に高めることができることを示す。さらに、それは、正常腸上皮において化学療法剤毒性効果を軽減し、BCN057が治療指数を改選するための補助療法と見なすことができることを示唆する。発癌性RAS表現型においてアポトーシスを回復できる薬剤として、これは、化学療法剤に対するより大きな腫瘍感受性を誘導するための使用事例とうまく合致する。以前の論文(Bhanja,P.,et.al.,Stem Cell Research & Therapy 9,2018)で、我々は、同系KRASG13R変異体MC38腫瘍細胞株を用いるマウスでのモデルを示し、そこでBCN057を受けるマウスは、対照よりも顕著に低い腫瘍負荷量を有したが、放射線療法と共にBCN057を受けたマウスは、より低い腫瘍負荷量を有し、さらに放射線単独を受けたマウスよりも遙かに高い放射線量に絶えることができた。これは、形質転換された表現型対形質転換されない表現型において非常に異なって接続される標的化経路の価値を強調し、殺腫瘍性活性ならびに正常組織温存活性におけるこの二重の活性は、より良好な全生存および無進行生存期間をもたらし得る。
【0161】
医薬担体および投与
本発明の方法は、疾患または状態または疾患または状態の1種または複数の症状を予防し得る。本明細書で使用される場合、障害または状態を「予防する」治療薬は、統計的試料において、治療されない対照試料に比べて治療される試料における障害もしくは状態の発生を減らす、または治療されない対照試料に比べて発症を遅らせるもしくは1種もしくは複数の障害もしくは状態の症状の重症度を低減させる化合物を指す。
【0162】
本開示の組成物および方法は、それを必要としている個体を治療するために使用されてよい。特定の実施形態では、個体は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物などの哺乳動物である。ヒトなどの動物に投与される場合、組成物または化合物は、例えば、本開示の化合物および薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物として好ましくは投与されるまたは使用される。
【0163】
薬学的に許容可能な担体は、当該技術分野において周知であり、例えば、水もしくは緩衝生理食塩水などの水溶液またはその他の溶媒またはグリコール、グリセロールなどのビークル、オリーブ油などの油、または注射可能有機エステルを含む。好ましい実施形態では、このような医薬組成物が、ヒトへの投与のため、特に侵襲的投与経路(すなわち、上皮性関門を通る輸送または拡散を回避する注射または埋め込み、などの経路)のためである場合、水溶液は、発熱性物質非含有または実質的に発熱性物質非含有である。賦形剤は、例えば、薬剤の遅延放出を行うように、または1種または複数の細胞、組織または臓器を選択的に標的にするように、選択できる。医薬組成物は、錠剤、カプセル剤(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、顆粒剤、再構成用の凍結乾燥製剤、粉剤、液剤、シロップ、坐剤、注射剤などの投与単位形態であってよい。組成物はまた、経皮送達システム、例えば、皮膚パッチ中に存在してよい。
【0164】
本明細書で開示の医薬組成物は、個体への日常的な投与を可能にするのに十分な量の治療化合物を含んでよい。特定の実施形態では、本明細書で開示の医薬組成物は、例えば、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも30mg、少なくとも35mg、少なくとも40mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも55mg、少なくとも60mg、少なくとも65mg、少なくとも70mg、少なくとも75mg、少なくとも80mg、少なくとも85mg、少なくとも90mg、少なくとも95mg、または少なくとも100mgの治療化合物を含んでよい。特定の実施形態では、本明細書で開示の医薬組成物は、例えば、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、少なくとも1,000mg、少なくとも1,100mg、少なくとも1,200mg、少なくとも1,300mg、少なくとも1,400mg、または少なくとも1,500mgの治療化合物を含んでよい。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書で開示の医薬組成物は、例えば、約5mg~約100mg、約10mg~約100mg、約50mg~約150mg、約100mg~約250mg、約150mg~約350mg、約250mg~約500mg、約350mg~約600mg、約500mg~約750mg、約600mg~約900mg、約750mg~約1,000mg、約850mg~約1,200mg、または約1,000mg~約1,500mgの範囲で含んでよい。さらなる特定の実施形態では、本明細書で開示の医薬組成物は、例えば、約10mg~約250mg、約10mg~約500mg、約10mg~約750mg、約10mg~約1,000mg、約10mg~約1,500mg、約50mg~約250mg、約50mg~約500mg、約50mg~約750mg、約50mg~約1,000mg、約50mg~約1,500mg、約100mg~約250mg、約100mg~約500mg、約100mg~約750mg、約100mg~約1,000mg、約100mg~約1,500mg、約200mg~約500mg、約200mg~約750mg、約200mg~約1,000mg、約200mg~約1,500mg、約5mg~約1,500mg、約5mg~約1,000mg、または約5mg~約250mgの範囲で含んでよい。
【0165】
本明細書で開示の医薬組成物は、本明細書で開示の治療化合物を溶解するために十分な量の溶媒、乳剤または他の希釈剤を含んでよい。特定の実施形態では、本明細書で開示の医薬組成物は、溶媒、乳剤または希釈剤を、例えば、約90%(v/v)未満、約80%(v/v)未満、約70%(v/v)未満、約65%(v/v)未満、約60%(v/v)未満、約55%(v/v)未満、約50%(v/v)未満、約45%(v/v)未満、約40%(v/v)未満、約35%(v/v)未満、約30%(v/v)未満、約25%(v/v)未満、約20%(v/v)未満、約15%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、約5%(v/v)、または約1%(v/v)未満の量で含んでよい。特定の実施形態では、本明細書で開示の医薬組成物は、溶媒、乳剤または他の希釈剤を、例えば、約1%(v/v)~90%(v/v)、約1%(v/v)~70%(v/v)、約1%(v/v)~60%(v/v)、約1%(v/v)~50%(v/v)、約1%(v/v)~40%(v/v)、約1%(v/v)~30%(v/v)、約1%(v/v)~20%(v/v)、約1%(v/v)~10%(v/v)、約2%(v/v)~50%(v/v)、約2%(v/v)~40%(v/v)、約2%(v/v)~30%(v/v)、約2%(v/v)~20%(v/v)、約2%(v/v)~10%(v/v)、約4%(v/v)~50%(v/v)、約4%(v/v)~40%(v/v)、約4%(v/v)~30%(v/v)、約4%(v/v)~20%(v/v)、約4%(v/v)~10%(v/v)、約6%(v/v)~50%(v/v)、約6%(v/v)~40%(v/v)、約6%(v/v)~30%(v/v)、約6%(v/v)~20%(v/v)、約6%(v/v)~10%(v/v)、約8%(v/v)~50%(v/v)、約8%(v/v)~40%(v/v)、約8%(v/v)~30%(v/v)、約8%(v/v)~20%(v/v)、約8%(v/v)~15%(v/v)、または約8%(v/v)~12%(v/v)の範囲の量で含んでよい。
【0166】
本明細書で開示される医薬組成物中の本明細書で開示される治療化合物の最終濃度は、任意の好適な濃度であってよい。特定の実施形態では、医薬組成物中の治療化合物の最終濃度は、治療的有効量であってよい。特定の実施形態では、医薬組成物中の治療化合物の最終濃度は、例えば、少なくとも0.00001mg/mL、少なくとも0.0001mg/mL、少なくとも0.001mg/mL、少なくとも0.01mg/mL、少なくとも0.1mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも10mg/mL、少なくとも25mg/mL、少なくとも50mg/mL、少なくとも100mg/mL、少なくとも200mg/mL、少なくとも500mg/mL、少なくとも700mg/mL、少なくとも1,000mg/mL、または少なくとも1,200mg/mLであってよい。特定の実施形態では、本明細書で開示される溶液中の治療化合物の濃度は、例えば、最大1,000mg/mL、最大1,100mg/mL、最大1,200mg/mL、最大1,300mg/mL、最大1,400mg/mL、最大1,500mg/mL、最大2,000mg/mL、最大2,000mg/mL、または最大3,000mg/mLであってよい。特定の実施形態では、医薬組成物中の治療化合物の最終濃度は、例えば、約0.00001mg/mL~約3,000mg/mL、約0.0001mg/mL~約3,000mg/mL、約0.01mg/mL~約3,000mg/mL、約0.1mg/mL~約3,000mg/mL、約1mg/mL~約3,000mg/mL、約250mg/mL~約3,000mg/mL、約500mg/mL~約3,000mg/mL、約750mg/mL~約3,000mg/mL、約1,000mg/mL~約3,000mg/mL、約100mg/mL~約2,000mg/mL、約250mg/mL~約2,000mg/mL、約500mg/mL~約2,000mg/mL、約750mg/mL~約2,000mg/mL、約1,000mg/mL~約2,000mg/mL、約100mg/mL~約1,500mg/mL、約250mg/mL~約1,500mg/mL、約500mg/mL~約1,500mg/mL、約750mg/mL~約1,500mg/mL、約1,000mg/mL~約1,500mg/mL、約100mg/mL~約1,200mg/mL、約250mg/mL~約1,200mg/mL、約500mg/mL~約1,200mg/mL、約750mg/mL~約1,200mg/mL、約1,000mg/mL~約1,200mg/mL、約100mg/mL~約1,000mg/mL、約250mg/mL~約1,000mg/mL、約500mg/mL~約1,000mg/mL、約750mg/mL~約1,000mg/mL、約100mg/mL~約750mg/mL、約250mg/mL~約750mg/mL、約500mg/mL~約750mg/mL、約100mg/mL~約500mg/mL、約250mg/mL~約500mg/mL、約0.00001mg/mL~約0.0001mg/mL、約0.00001mg/mL~約0.001mg/mL、約0.00001mg/mL~約0.01mg/mL、約0.00001mg/mL~約0.1mg/mL、約0.00001mg/mL~約1mg/mL、約0.001mg/mL~約0.01mg/mL、約0.001mg/mL~約0.1mg/mL、約0.001mg/mL~約1mg/mL、約0.001mg/mL~約10mg/mL、または約0.001mg/mL~約100mg/mLの範囲であってよい。
【0167】
特定の実施形態では、本明細書で開示される治療化合物の治療的有効量は通常、約0.001mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で開示される治療化合物の有効量は、例えば、少なくとも0.001mg/kg/日、少なくとも0.01mg/kg/日、少なくとも0.1mg/kg/日、少なくとも1.0mg/kg/日、少なくとも5.0mg/kg/日、少なくとも10mg/kg/日、少なくとも15mg/kg/日、少なくとも20mg/kg/日、少なくとも25mg/kg/日、少なくとも30mg/kg/日、少なくとも35mg/kg/日、少なくとも40mg/kg/日、少なくとも45mg/kg/日、または少なくとも50mg/kg/日であってよい。特定の実施形態では、本明細書で開示される治療化合物の有効量は、例えば、約0.001mg/kg/日~約10mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約15mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約20mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約25mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約30mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約35mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約40mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約45mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約50mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約75mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約100mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約150mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約200mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約250mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約300mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約350mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約400mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約450mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約500mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約550mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約600mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約650mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約700mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約750mg/kg/日、または約0.001mg/kg/日~約800mg/kg/日の範囲であってよい。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書で開示される治療化合物の有効量は、例えば、約0.01mg/kg/日~約10mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約15mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約20mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約25mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約30mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約35mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約40mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約45mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約50mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約75mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約150mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約200mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約250mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約300mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約350mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約400mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約450mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約500mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約550mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約600mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約650mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約700mg/kg/日、約0.01mg/kg/日~約750mg/kg/日、または約0.01mg/kg/日~約800mg/kg/日の範囲であってよい。特定の実施形態では、本明細書で開示される治療化合物の有効量は、例えば、約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約15mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約20mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約25mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約30mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約35mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約40mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約45mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約50mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約75mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約100mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約150mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約200mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約250mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約300mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約350mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約400mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約450mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約500mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約550mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約600mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約650mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約700mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約750mg/kg/日、または約0.1mg/kg/日~約800mg/kg/日の範囲であってよい。特定の実施形態では、本明細書で開示される治療化合物の有効量は、例えば、約10mg/kg/日~約15mg/kg/日、約10mg/kg/日~約20mg/kg/日、約10mg/kg/日~約25mg/kg/日、約10mg/kg/日~約30mg/kg/日、約10mg/kg/日~約35mg/kg/日、約10mg/kg/日~約40mg/kg/日、約10mg/kg/日~約45mg/kg/日、約10mg/kg/日~約50mg/kg/日、約10mg/kg/日~約75mg/kg/日、約10mg/kg/日~約100mg/kg/日、約10mg/kg/日~約150mg/kg/日、約10mg/kg/日~約200mg/kg/日、約10mg/kg/日~約250mg/kg/日、約10mg/kg/日~約300mg/kg/日、約10mg/kg/日~約350mg/kg/日、約10mg/kg/日~約400mg/kg/日、約10mg/kg/日~約450mg/kg/日、約10mg/kg/日~約500mg/kg/日、約10mg/kg/日~約550mg/kg/日、約10mg/kg/日~約600mg/kg/日、約10mg/kg/日~約650mg/kg/日、約10mg/kg/日~約700mg/kg/日、約10mg/kg/日~約750mg/kg/日、または約10mg/kg/日~約800mg/kg/日の範囲であってよい。
【0168】
この実施形態の他の態様では、本明細書で開示される治療化合物の有効量は、例えば、約1mg/kg/日~約10mg/kg/日、約1mg/kg/日~約15mg/kg/日、約1mg/kg/日~約20mg/kg/日、約1mg/kg/日~約25mg/kg/日、約1mg/kg/日~約30mg/kg/日、約1mg/kg/日~約35mg/kg/日、約1mg/kg/日~約40mg/kg/日、約1mg/kg/日~約45mg/kg/日、約1mg/kg/日~約50mg/kg/日、約1mg/kg/日~約75mg/kg/日、または約1mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲であってよい。特定の実施形態では、本明細書で開示される治療化合物の有効量は、例えば、約5mg/kg/日~約10mg/kg/日、約5mg/kg/日~約15mg/kg/日、約5mg/kg/日~約20mg/kg/日、約5mg/kg/日~約25mg/kg/日、約5mg/kg/日~約30mg/kg/日、約5mg/kg/日~約35mg/kg/日、約5mg/kg/日~約40mg/kg/日、約5mg/kg/日~約45mg/kg/日、約5mg/kg/日~約50mg/kg/日、約5mg/kg/日~約75mg/kg/日、または約5mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲であってよい。
【0169】
液体および半固形製剤では、本明細書で開示される治療化合物の濃度は典型的には、約50mg/mL~約1,000mg/mLであってよい。特定の実施形態では、本明細書で開示される治療化合物の治療的有効量は、例えば、約50mg/mL~約100mg/mL、約50mg/mL~約200mg/mL、約50mg/mL~約300mg/mL、約50mg/mL~約400mg/mL、約50mg/mL~約500mg/mL、約50mg/mL~約600mg/mL、約50mg/mL~約700mg/mL、約50mg/mL~約800mg/mL、約50mg/mL~約900mg/mL、約50mg/mL~約1,000mg/mL、約100mg/mL~約200mg/mL、約100mg/mL~約300mg/mL、約100mg/mL~約400mg/mL、約100mg/mL~約500mg/mL、約100mg/mL~約600mg/mL、約100mg/mL~約700mg/mL、約100mg/mL~約800mg/mL、約100mg/mL~約900mg/mL、約100mg/mL~約1,000mg/mL、約200mg/mL~約300mg/mL、約200mg/mL~約400mg/mL、約200mg/mL~約500mg/mL、約200mg/mL~約600mg/mL、約200mg/mL~約700mg/mL、約200mg/mL~約800mg/mL、約200mg/mL~約900mg/mL、約200mg/mL~約1,000mg/mL、約300mg/mL~約400mg/mL、約300mg/mL~約500mg/mL、約300mg/mL~約600mg/mL、約300mg/mL~約700mg/mL、約300mg/mL~約800mg/mL、約300mg/mL~約900mg/mL、約300mg/mL~約1,000mg/mL、約400mg/mL~約500mg/mL、約400mg/mL~約600mg/mL、約400mg/mL~約700mg/mL、約400mg/mL~約800mg/mL、約400mg/mL~約900mg/mL、約400mg/mL~約1,000mg/mL、約500mg/mL~約600mg/mL、約500mg/mL~約700mg/mL、約500mg/mL~約800mg/mL、約500mg/mL~約900mg/mL、約500mg/mL~約1,000mg/mL、約600mg/mL~約700mg/mL、約600mg/mL~約800mg/mL、約600mg/mL~約900mg/mL、または約600mg/mL~約1,000mg/mL、であってよい。
【0170】
対象は、ヒト、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ヒツジ、雌ウシ、サル、トリ、または両生類であってよい。他の実施形態では、細胞は、インビボまたはインビトロである。本開示の化合物が投与され得る典型的な対象は、哺乳類、特に霊長類である。獣医学用途については、多種多様な対象、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、雌ウシ、ブタなどの家畜;ニワトリ、アヒル、ガチョウ、七面鳥、などの家禽類;および家畜,特にイヌおよびネコなどのペットが好適である。診断または研究用途については、多種多様な哺乳類が好適な対象であり、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、およびブタ、例えば、近交系ブタなどを含む。さらに、インビトロ診断および研究用途などのインビトロ用途については、上記対象の体液および細胞試料などの哺乳類、特に霊長類、例えば、ヒト血液、尿または組織試料、または獣医学用途について記述した動物の血液尿または組織試料が使用に好適である。
【0171】
生物に投与する場合、化合物は、任意の好適な手段で投与され得る。いくつかの実施形態では、化合物または製剤は、経口投与される。いくつかの実施形態では、化合物または製剤は、注射、例えば、皮下、非経口、または静脈内注射により投与される。
【0172】
いくつかの実施形態では、化合物は、他の可能な緩和剤と組み合わせて投与され得る。特定の実施形態では、組成物は、上記状態の治療のために、成長因子、NSAID、化学療法剤、抗炎症剤、抗生物質、メトホルミン(ルコファージ、グルメツア、他)、スルホニルウレア、メグリチニド、チアゾリジンジオン、DPP-4阻害剤、GLP-1受容体アゴニスト、SGLT2阻害剤、および/またはインスリン療法剤、と共に投与され得る。一態様では、成長因子は、G-CSF(別名、フィルグラスチム、NEUPOGEN(登録商標)またはエリスロポエチン(別名、エポジェン(登録商標))であり得る。
【0173】
他の実施形態では、組成物は、生理学的に許容可能な担体中の有効量の調節物質および/または他の薬学的活性剤を含み得る。担体は、特定の投与経路に望ましい製剤の形態に応じて多種多様な形態であってよい。適切な担体およびそれらの製剤は、例えば、E.W.Martinによる、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。いくつかの実施形態では、化合物は、任意の好適な担体物質中で任意の適切な量で含まれてよく、通常は、組成物の総重量の1~95重量%の量で存在する。組成物は、非経口の(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、または腹腔内で)または経口の投与経路に好適な剤形で提供され得る。医薬組成物は、従来の薬務に従って処方され得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),ed.A.R.Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New York、を参照)。
【0174】
いくつかの実施形態では、組成物は、無菌注射による投与に好適な形態であってよい。一例では、このような組成物を調製するために、組成物は、非経口的に許容可能な液体ビークル中に溶解または懸濁される。許容可能なビークルおよび溶媒で特に使用してよいのは、水、適切な量の塩酸、水酸化ナトリウムまたは好適な緩衝液の添加により好適なpHに調節された水、1,3-ブタンジオール、リンゲル液および等張性塩化ナトリウムおよびデキストロース溶液である。水性の製剤はまた、1種または複数の防腐剤(例えば、メチル、エチルまたはp-オキシ安息香酸プロピル)を含有してよい。非経口製剤の場合、担体は通常、滅菌水を含むが、他の成分、例えば、溶解性を助けるまたは保存のための成分を含んでもよい。注射可能な懸濁液もまた、調製でき、その場合、適切な安定化剤を用い得る。一実施形態では、製剤は、メタンスルホン酸、ポビドン、ベンジルアルコール、n-メチルピロリドン、エタノール、ポロキサマー188、乳酸、カプチゾール(SBE-ベータ-CD)、またはビタミンE、例えばTPGS(d-アルファトコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)の少なくとも1種または複数を含む。
【0175】
非経口的投与に好適な製剤は通常、化合物の無菌の水性の製剤を含み、これは、レシピエントの血液と等張である(例えば、生理食塩水)。このような製剤は、懸濁剤および増粘剤、ならびに化合物を血液成分または1つまたは複数の臓器に向けるように設計されるリポソームまたは他の微粒子系を含んでよい。製剤は、単回投与形態または複数回投与形態で投与され得る。
【0176】
非経口的投与は、全身送達または局所送達に好適な任意の形態を含み得る。投与は、例えば、静脈内、動脈内、髄腔内、筋肉内、皮下、筋肉内、腹部内(例えば、腹腔内)などであってよく、および注入ポンプ(外部または埋め込み型)または任意の他の目的の投与形式に好適な手段で実施されてよい。
【0177】
いくつかの実施形態では、組成物は、経口投与に好適な形態であってよい。経口剤形の組成物では、通常の医薬品媒体のいずれかを用いてよい。従って、例えば、懸濁剤、エリキシル剤および液剤などの液状経口製剤の場合、適切な担体および添加剤は、水、グリコール、油、アルコール、香料、防腐剤、着色剤などを含む。例えば、散剤、カプセル剤および錠剤のなどの固形経口製剤では、好適な担体および添加剤は、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などを含む。所望により、錠剤は、標準的な技術により糖をコートされるか若しくは腸溶コートされてよい。
【0178】
経口投与(例えば、摂取による)に好適な組成物は、カプセル剤、カシェ剤、錠剤、またはロゼンジ剤などの個別の単位として提供されてよく、それぞれが粉末または顆粒として所定の量の有効成分を含む。場合により、水溶液または非水溶液中の懸濁液、例えば、シロップ、エリキシル剤、乳剤、または頓服水剤を、採用し得る。経口使用のための製剤としては、薬学的に許容可能な賦形剤との混合物中の有効成分を含む錠剤が挙げられる。このような製剤は、当業者に既知である。賦形剤は、例えば、不活性希釈剤または充填剤(例えば、スクロース、ソルビトール、ショ糖、マンニトール、微結晶セルロース微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム);造粒およびおよび崩壊剤(例えば、微結晶セルロース、デンプンセルロース誘導体、ジャガイモデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、またはアルギン酸);結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アラビアゴム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはポリエチレングリコール);および潤滑剤、流動促進剤、および抗接着剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油、または滑石)であり得る。他の薬学的に許容可能な賦形剤は、着色剤、香味剤、可塑剤、保水剤、緩衝剤、などであり得る。
【0179】
シロップは、ショ糖、例えばスクロースの濃縮水溶液(これにはまた、任意の補助成分を加えてもよい)に化合物を加えることにより作製できる。このような補助成分は、香味剤、好適な防腐剤、ショ糖の結晶化を遅らせる薬剤、および多価アルコール(例えばグリセロールまたはソルビトール)などの、任意の他の成分の溶解度を高める薬剤、を含み得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、組成物は、鼻のまたは他の粘膜の噴霧製剤の形態(例えば、吸入可能な形態)であり得る。これらの製剤は、保存剤および等張剤を含む、活性化合物の精製水溶液を含み得る。このような製剤は、鼻のまたは他の粘膜と適合するpHおよび等張状態に調節され得る。あるいは、製剤は、ガス担体に懸濁される微粉化された固体粉末の形態であり得る。このような製剤は、任意の適切な手段または方法により、例えば、ネブライザー、アトマイザー、定量吸入器などにより送達され得る。
【0181】
いくつかの実施形態では、組成物は、直腸の投与に好適な形態であり得る。これらの製剤は、ココアバター、水素添加油脂または水素添加脂肪カルボン酸などの好適な担体を用いて坐剤として提供され得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、組成物は、経皮投与に好適な形態であり得る。これらの製剤は、例えば、セルロース系媒体、例えば、メチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどのチキソトロピーまたはゼラチン状担体中に活性化合物を組み込むこと、得られた製剤をその後、着用者の皮膚と経皮接触状態で固定されるように適合された経皮装置中に充填することにより、調製され得る。
【0183】
上述の成分に加えて、本開示の組成物は、カプセル化用材料、希釈剤、緩衝液、香味剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、防腐剤(抗酸化剤を含む)、などから選択される1種または複数の補助成分をさらに含み得る。
【0184】
いくつかの実施形態では、組成物は、即放、徐放、遅延開始放出または当業者に既知の任意の他の放出プロファイル用に処方され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、投与時に実質的に直ちに、または任意の所定の時間に、または投与後の所定の期間に活性化合物を放出するように処方され得る。後者のタイプの組成物は通常、制御放出製剤として知られ、これらは、(i)長期間にわたり身体内で薬物の実質的に一定の濃度を作る製剤;(ii)予め決められている遅れ時間後に、長期間にわたり身体内で薬物の実質的に一定の濃度を作る製剤;(iii)身体中で相対的に一定の効果的なレベルを維持することにより所定の期間作用を維持し、活性物質の血漿中濃度の変動(鋸歯状運動パターン(sawtooth kinetic pattern))と関連する望ましくない副作用を同時に最小化する製剤;(iv)例えば、中枢神経系または脳脊髄液に隣接するまたはそれらの中での制御放出組成物の空間配置により作用を局在化する製剤;(v)用量が、例えば、1または2週毎に1回投与されるように、便利な投与を可能にする製剤;および(vi)病状の部位を標的にする製剤、を含む。いくつかの用途の場合、制御放出製剤は、医学的に有利なレベルで活性を維持するための高頻度の投与の必要性を不要にする。
【0185】
いくつかの戦略のいずれかは、放出の速度が当該化合物の代謝の速度を上回る、制御放出を得るように追求できる。一例では、制御放出は、例えば、種々のタイプの制御放出組成物およびコーティングを含む、種々の処方パラメーターおよび成分の適切な選択により得られる。従って、化合物は、適切な賦形剤と共に、投与時に制御された方式で化合物を放出する医薬組成物へと処方される。例としては、単一または複数単位の錠剤またはカプセル組成物、油剤、懸濁液、乳剤、マイクロカプセル、マイクロスフェア、分子錯体、ナノ粒子、貼付剤、およびリポソームが挙げられる。
【0186】
いくつかの実施形態では、組成物は、リポソームまたは他のカプセル化媒体中の化合物のカプセル化により、または化合物の固定化により、例えば、タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質およびポリサッカライドから選択されるものなどの、好適な生体分子上の、共有結合、キレート化、または会合配位(associative coordination)などにより、「ベクター化された」形態を含み得る。
【0187】
いくつかの実施形態では、組成物は、制御放出のために、マイクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソーム、などの中に組み込まれてよい。さらに、組成物は、懸濁化、可溶化、安定化、pH調節剤、張度調整剤、および/または分散剤を含み得る。あるいは、化合物は、生体適合性担体、インプラント、または注入装置中に組み込まれ得る。
【0188】
マイクロスフェアおよび/またはマイクロカプセルの調製における使用のための材料は、例えば、生分解性/生体内分解性高分子、例えばポリグラクチン(polyglactin)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-L-グルタミン)およびポリ(乳酸)である。制御放出非経口の製剤を処方する場合に使われ得る生体適合性担体は、炭水化物(例えば、デキストラン)、タンパク質(例えば、アルブミン)、リポタンパク質、または抗体である。インプラントにおける使用のための材料は、非生分解性(例えば、ポリジメチルシロキサン)または生分解性(例えば、ポリ(カプロラクトン))、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)またはポリ(オルトエステル)またはこれらの組み合わせであり得る。
【0189】
全ての実施形態では、化合物または他の活性化合物は、薬学的に許容可能な塩として、または活性化合物の他の誘導体、例えばエーテル誘導体、エステル誘導体、酸誘導体、および水溶解度を変更する誘導体として存在し得る。誘導体は、化合物の個別の鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、および他の異性体を含む。誘導体はまた、化合物の全ての多型および溶媒和物、例えば、水和物、および有機溶媒で形成されるものを含む。このような異性体、多型、および溶媒和物は、当該技術分野において既知の方法、例えば位置特異的、および/またはエナンチオ選択的合成および分離により調製され得る。
【0190】
塩を調製する能力は、化合物の酸性または塩基性に依存する。化合物の好適な塩は、限定されないが、酸付加塩、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ペルクルまたは酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、炭酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベネゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、および2-アセトキシ安息香酸を用いて作製される塩;サッカリンを用いて作製される塩;アルカリ金属塩、例えばナトリウムおよびカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウム塩;および有機または無機リガンドを用いて形成される塩、例えば第四級アンモニウム塩を含む。
【0191】
追加の好適な塩は、限定されないが、化合物の、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、硼酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフタレン酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、メチル硝酸塩、硫酸メチル、ムコ酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート、トシル酸塩、トリエチオジドおよび吉草酸塩を含む。
【0192】
薬学的に許容可能な酸付加塩はまた、例えば水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミドなどとの種々の溶媒和物として存在できる。このような溶媒和物の混合物もまた、調製できる。このような溶媒和物の原材料は、結晶化の溶媒、調製または結晶化の溶媒中の内在性の溶媒、またはこのような溶媒に対する外来性の溶媒由来であってよい。
【0193】
湿潤剤、乳化剤およびラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、ならびに着色料、剥離剤、コーティング剤、甘味料、調味料および芳香剤、防腐剤および酸化防止剤もまた、組成物中に存在してよい。
【0194】
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例としては、(1)水可溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、など;(2)油溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、ガリウム酸プロピル、アルファトコフェロール、など;および(3)金属キレート化剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸、など、が挙げられる。
【0195】
文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、全ての実施形態の組成物は、種々の薬学的に許容可能な塩、または上記の他の誘導体を含み得る。
【0196】
このような組成物の処方および製剤は、医薬製剤の当業者に周知である。処方は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、中で見出すことができる。
【0197】
本開示で使用するために用いられる化合物の量は、状態、患者/対象、および状態の程度に応じて変化する。
【0198】
本出願を通して引用される全ての参考文献(文献、発行特許、刊行特許出願を含む)の内容は、これにより、明示的に参照により本明細書に組み込まれる。本開示および方式および製造およびその使用方法は、すべての関連する当業者にこれらの製造および使用を可能にするように、完全、明確、簡潔で正確な用語で記述される。
【0199】
医薬組成物中の有効成分の実際の用量レベルは、患者に対し毒性を示すことなく、特定の患者、組成物および投与方法について所望の治療応答を達成するために効果的である、有効成分の量を得るように、変更されてよい。
【0200】
選択される用量レベルは、用いる特定の化合物もしくは化合物の組み合わせまたはそれらのエステル、塩またはアミドの活性、投与の経路、投与の時間、用いられる特定の化合物(単一または複数)の排出の速度、治療の期間、用いられる特定の化合物(単一または複数)と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、病状、総体的な健康および既往の病歴ならびに医学分野で周知の類似の因子などを含む種々の要因に依存するであろう。
【0201】
当業者である医師または獣医師は、必要とされる医薬組成物の治療的有効量を容易に決定し処方できる。例えば、医師または獣医師は、所望の治療効果を得るために必要とされる量より少ないレベルの用量の医薬組成物または化合物から始め、所望の効果が達成されるまで、徐々に用量を増加するであろう。「治療的有効量」という用語は、所望の治療効果を誘発するのに十分な化合物の濃度を意味する。化合物の有効量は、対象の体重、性別、年齢および病歴に応じて変化すると一般的に理解されている。有効量に影響を与える他の因子は、限定されないが、患者状態の重症度、治療される障害、化合物の安定性および、必要に応じ、本開示の化合物と共に投与される別のタイプの治療薬を含み得る。さらに多くの合計用量を、薬剤の複数回の投与により送達できる。効力および投与量を決定する方法は、当業者にとって既知である(Isselbacher et al.(1996)Harrison’s Principles of Internal Medicine 13 ed.,1814-1882;この文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0202】
一般に、本開示の組成物および方法で使用される活性化合物の好適な一日量は、治療効果を生じるために効果的な最低の用量である化合物の量であろう。このような有効量は通常、上記の要因に依存する。
【0203】
投与量は、一回用量または、累積投与量(逐次投与)であってよく、当業者により容易に決定できる。例えば、治療は、本明細書で開示される医薬組成物の有効量の1回のみの投与を含んでよい。あるいは、治療は、例えば、1日1回、1日2回、1日3回、数日ごとに1回、または1週間に1回などの期間の範囲にわたって行われる医薬組成物の有効量の複数回の投与を含んでよい。投与のタイミングは、個体の症状の重症度などの因子に応じて、個体ごとに変わってよい。例えば、本明細書で開示される医薬組成物の有効量は、不確定の期間、または個体がそれ以上治療を必要としなくなるまで、1日1回、個体に投与されてよい。当業者は、個体の状態が治療の全過程にわたりモニターされること、および投与される本明細書で開示される医薬組成物の有効量がそれに応じて調節できることを認識するであろう。
【0204】
必要に応じ、活性化合物の有効一日量は、任意で、単位剤形で、その日全体にわたり適切な間隔で別個に投与される1、2、3、4、5、6回のまたはそれを超える回数の分割用量として投与されてよい。本開示の特定の実施形態では、活性化合物は、1日2回または3回投与されてよい。好ましい実施形態では、活性化合物は、1日1回投与される。
【0205】
特定の実施形態では、治療化合物の投与の期間は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日間、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週間、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月間、またはそれを越える期間である。特定の実施形態では、治療レジメンは、その間に投与が1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日間、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週間、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月間、またはそれを超えて停止される期間を含み得る。
【0206】
この治療を受ける患者は通常、霊長類を含む、それを必要としている任意の動物、特にヒトおよび他の哺乳動物、例えばウマ、ウシ、ブタおよびヒツジ、ならびに家禽およびペットである。
【0207】
他の実施形態では、本明細書で記載の化合物は、単一の容器中で一緒にまたは別々の容器中でのいずれかで、キット中で1種または複数の追加の治療薬と共に、例えば、本明細書で考察される同席療法で一緒に使用できる別の医薬製剤として、提供されてよい。特定のこのような実施形態では、キットは、例えば、上述のいずれかの状態を治療するまたは予防するための、医薬製剤の共同投与のための説明書をさらに含んでよい。
【0208】
このような組み合わせ製剤は、本明細書の上記で記載の投与量範囲内の本開示の化合物、または薬学的に許容可能なその塩、および認可投与範囲内の他の薬学的活性剤を採用してよい。
【0209】
いくつかの実施形態では、化合物は、電離放射線への曝露後、または偶発的なまたは治療の放射線を含む放射線曝露の開始後、などの述語(predicate)イベント後に投与され得る。一実施形態では、化合物は、曝露後直ちに投与される。別の実施形態では、化合物は、曝露の12時間以内に投与される。別の実施形態では、化合物は、曝露の24時間以内に投与される。別の実施形態では、化合物は、曝露後24時間で投与される。別の実施形態では、化合物は、曝露の24時間後に投与される。別の実施形態では、化合物は、曝露の36時間後に投与される。別の実施形態では、化合物は、曝露の48時間以内に投与される。別の実施形態では、化合物は、曝露の60時間以内に投与される。別の実施形態では、化合物は、曝露の72時間以内に投与される。別の実施形態では、化合物は、曝露の84時間以内に投与される。
【0210】
特定の実施形態または特定の処方では、YEL002/BCN057は、100mMのメタンスルホン酸(MSA)/10%ポビドン(PVP);100mMのMSA/2%ベンジルアルコール/2%のN-N-メチルピロリドン(NMP);および100mMのMSA/10%エタノール/1%ポロキサマー188を用いて、生理学的に適合するpHで水溶液中に可溶化(solubilized)された。さらなる態様では、100mMの乳酸を加え、これらの混合物の溶解度をまた改善した。さらに別の実施形態では、YEL002および30%のカプチゾール(SBE-β-CD)および100mMのMSAを含む処方は、最大でpH4.1にてまたはそれを超えて優れた溶解度をもたらした。
【0211】
別の実施形態では、治療レベルのYEL002/BCN057の静脈内、皮下および経口送達のための処方を、pH4.1以上(1.0NのNaOHで調節した)で30重量%のカプチゾール(SBE-β-CD)および100mMのMSAを含んで開発した。
【0212】
本開示はここで一般的に説明され、それは、次の実施例に言及することによりさらに容易に理解されるであろう。これらの実施例は、特定の態様および本発明の実施形態を例示する目的のためのみに含まれ、本発明を限定する意図はない。
【0213】
この実施形態の他の態様では、本明細書で開示される分子は、疾患の重症度を、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%低減させる。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書で開示される融合タンパク質またはキメラ分子は、例えば、約5%~約100%、約10%~約100%、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約10%~約90%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、または約60%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、または約50%~約70%疾患の重症度を低減させる。
【0214】
最後に、本明細書の態様が、特定の実施形態に言及することにより強調されるが、これらの開示実施形態は、本明細書で開示される主題の原理の例示に過ぎないことは、当業者に容易に認識されるであろうことを理解されたい。従って、開示される主題は、特に明記されない限り、本明細書で記載の特定の化合物、組成物、物品、装置、方法、プロトコル、および/または試薬、などに決して限定されないことを理解されたい。加えて、当業者なら、特定の変更、修正、並べ替え、変化、付加、取り消しおよびこれらの副組み合わせを、本明細書の趣旨から逸脱することなく本明細書の教示に従って行うことができることを理解するであろう。したがって、次の添付特許請求項および以降で導入される特許請求項は、全てのこのような変更、修正、並べ替え、変化、付加、取り消しおよび副組合わせを、それらの請求項の真の趣旨および範囲内にあるものとして包含すると解釈されるべきであると意図される。
【0215】
本開示の特定の実施形態は、本開示を実施するために本発明者らが知る最良の形態を含め、本明細書に記載される。当然のことながら、これらの記載される実施形態に対する変形形態は、これまでの記載を読めば、当業者に明らかとなるであろう。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのような変形形態を用いることを予想し、本発明が本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、準拠法により認められる、添付の特許請求の範囲に記載される内容の修正物および均等物をすべて包含する。さらに、その全ての可能な変形物としての上述の実施形態のいずれの組み合わせもまた、本明細書で特に指示がない限り、または別の理由で文脈と明確に矛楯することがない限り、本開示により包含される。
【0216】
本発明の代替実施形態、要素、またはステップのグループ分けは、本開示を限定するものと解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、または本明細書で開示される他のグループメンバーとの任意の組み合わせで参照され請求されてよい。グループの1つまたは複数のメンバーは、利便性および/または特許性の理由で、グループに含まれてよく、またはグループから除去されてよいことが予測される。このような何らかの包含または削除が生じた場合、明細書は、修正されしたがって添付の請求項で使用される全てのマーカッシュグループの記述要件を満たすグループを含むものと見なされる。
【0217】
本明細書で言及され、特定される全ての特許、特許公報、および他の出版物は、例えば、このような出版物に記載され、本開示との関係で使用可能な組成物および方法を説明し、開示するために、個別に、明示的に参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの出版物は、本出願の出願日に先立つそれらの開示のためにのみ提供される。これに関しては、先行開示を理由にしてまたは何らかの他の理由で本発明者らがそのような開示に先行する権利を与えられないことを承認するものと解釈されるべきではない。これらの文書の内容に関する日付または表現は、出願者らに入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確さに関して何ら承認するものではない。
【0218】
最後に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、本開示の範囲を制限すると意図されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ規定される。したがって、本開示は、図示されおよび記載されるものと正確に同じものに限定されない。
【0219】
実施形態は、式I:
【化15】
の化合物を含み、
R
1=アルキル、アルキルアミン、エーテル、アリールまたはアリールハライドであり、
R
2=HまたはCH
3であり、
R
3=H、OHまたはOCH
3である。
【0220】
実施形態は、式I:
【化16】
の化合物を含み、
R
1=
【化17】
であり、n=1、2または3であり、
X=F、CF
3Cl、OHまたはCH
2OHであり、
R
2=HまたはCH
3であり、R
3=H、OHまたはOCH
3である。
【0221】
実施形態は、式I:
【化18】
の化合物を含み、
R
1=
【化19】
であり、
n=1、2または3であり、
X=F、CF
3Cl、OHまたはCH
2OHであり、
Y=O、SまたはNであり、および
R
2=HまたはCH
3であり、R
3=H、OHまたはOCH
3である。
【0222】
実施形態は、式I:
【化20】
の化合物を含み、
R
1=
【化21】
であり、
n=1、2または3であり、
X=F、CF
3Cl、OHまたはCH
2OHであり、
Y=O、SまたはNであり、
R
2=HまたはCH
3であり、R
3=H、OHまたはOCH
3である。
【0223】
実施形態は、式I:
【化22】
の化合物を含み、
R
1=
【化23】
であり、
n=1、2または3であり、および
R
2=HまたはCH
3であり、R
3=H、OHまたはOCH
3である。
【0224】
実施形態は、式I:
【化24】
の化合物を含み、
R
1=
【化25】
であり、
n=1、2または3であり、および
R
2=HまたはCH
3であり、R
3=H、OHまたはOCH
3である。
【0225】
実施形態は、式I:
【化26】
の化合物を含み、
R
1=
【化27】
であり、
n=1、2または3であり、および
R
2=HまたはCH
3であり、R
3=H、OHまたはOCH
3である。
【0226】
実施形態は、式A:
【化28】
の化合物を含み、R
1=HまたはCH
3であり、R
2は、下記の1種である。
【化29】
【0227】
いくつかの実施形態では、本明細書で記載の1種または複数の化合物は、癌を治療するために治療的に使用され得、免疫チェックポイント制御因子として、PD-1発現を調節し、病気を治療するためにT細胞応答を高めるまたは免疫細胞の活性を高め、化学療法または放射線療法の1種または複数の副作用を改善し、上皮細胞に対する放射線誘発損傷を予防または治療し、ウィルス感染症などの感染症を治療し、および/または炎症を低減する。
【表2】
【国際調査報告】