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特表2024-533234CD27に結合する能力を有する抗体、そのバリアントおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】CD27に結合する能力を有する抗体、そのバリアントおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240905BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240905BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240905BHJP
   C07K 16/42 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/42
A61P35/00
A61P35/02
A61K38/17 100
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 G
A61K39/395 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514484
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2022074696
(87)【国際公開番号】W WO2023031473
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21195118.1
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22173126.8
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】イオアン アンドレーア
(72)【発明者】
【氏名】ビュールスケンズ フランク
(72)【発明者】
【氏名】デ ヨング ロブ
(72)【発明者】
【氏名】スフールマン ジャニーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイ エステル シー. ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥンタシュ イシル
(72)【発明者】
【氏名】デ フーイェ パウリーネ リンダ
(72)【発明者】
【氏名】サテン デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ボロス ピーテル
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン ウール
(72)【発明者】
【氏名】ギーゼケ フリーデリッケ
(72)【発明者】
【氏名】ムイク アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ショーデル クリスティナ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA05
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
4C084BA02
4C084DA39
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB36
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヒトCD27に結合する能力を有する抗体、および該抗体のFc-Fc相互作用を増強する1つまたは複数の変異を含む改変されたFc領域を含むそのバリアントに関する。本発明は、該抗体を含む薬学的組成物、ならびに、特にがん治療における、治療および診断手法のための該抗体の使用をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD27に結合する能力を有する少なくとも1つの抗原結合領域を含む抗体であって、それぞれSEQ ID NO:5、6、および7に示されている配列を含む重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:9、10および11に示されている配列を含む軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、該抗体。
【請求項2】
ヒトCD27に結合する能力を有する2つの抗原結合領域を含み、
それぞれSEQ ID NO:5、6、および7に示されている配列を含む重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:9、10および11に示されている配列を含む軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、
請求項1記載の抗体。
【請求項3】
SEQ ID NO:4に示されている配列を含むVH領域を含む、請求項1または2のいずれか一項記載の抗体。
【請求項4】
SEQ ID NO:8に示されている配列を含むVL領域を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の抗体。
【請求項5】
それぞれSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:8に示されている配列を含むVHおよびVL領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項6】
ヒト抗体またはヒト化抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項7】
軽鎖定常領域(CL)および重鎖定常領域(CH)をさらに含む全長抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項8】
軽鎖定常領域がヒトカッパである、請求項7記載の抗体。
【請求項9】
軽鎖定常領域がヒトラムダである、請求項7記載の抗体。
【請求項10】
重鎖定常領域をさらに含み、該重鎖定常領域が、ヒトIgGアイソタイプの、任意で、改変されたヒトIgGの重鎖定常領域である、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項11】
ヒトIgGまたは改変されたヒトIgGが、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4、例えばヒトIgG1より選択される、請求項10記載の抗体。
【請求項12】
前記IgGが、1つまたは複数のアミノ酸置換を含む改変されたヒトIgGである、請求項10または11記載の抗体。
【請求項13】
前記改変されたヒトIgGが、1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば2つまたはより多くのアミノ酸改変を含む改変されたヒトIgG1である、請求項10~12のいずれか一項記載の抗体。
【請求項14】
前記改変されたヒトIgGの重鎖定常領域が、最大で10個のアミノ酸置換、例えば最大で9個、例えば最大で8個、例えば最大で7個、例えば最大で6個、例えば最大で5個、例えば最大で4個、例えば最大で3個、例えば最大で2個のアミノ酸置換を含む、請求項10~13のいずれか一項記載の抗体。
【請求項15】
前記重鎖定常領域中の前記改変が、野生型IgG1抗体の重鎖定常領域を含むことを除いて同一の抗体と比較してCD27アゴニズムの増加を誘導する、請求項10~14のいずれか一項記載の抗体。
【請求項16】
Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置E345またはE430に対応する位置におけるアミノ酸残基が、A、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、WおよびYを含む群より選択される、請求項10~15のいずれか一項記載の抗体。
【請求項17】
Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置E345に対応する位置におけるアミノ酸残基がRである、請求項10~16のいずれか一項記載の抗体。
【請求項18】
Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置E430に対応する位置におけるアミノ酸残基がGである、請求項10~17のいずれか一項記載の抗体。
【請求項19】
Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置P329に対応する位置におけるアミノ酸残基がRである、請求項10~18のいずれか一項記載の抗体。
【請求項20】
Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置E345およびP329に対応する位置におけるアミノ酸残基が両方ともRである、請求項10~19のいずれか一項記載の抗体。
【請求項21】
野生型IgG1重鎖定常領域を含む親抗体と同様の薬物動態プロファイルを有する、請求項10~20のいずれか一項記載の抗体。
【請求項22】
SEQ ID No 12、13、14、15、18、19、20、21、22、23、27、28、29、30、31、32、33、34および36を含む群より選択される配列を含む重鎖定常領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項23】
SEQ ID No 15に示されている配列を含む重鎖定常領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項24】
前記抗体が重鎖定常領域を含み、
前記抗体が親抗体と比べてより低い程度まで1つまたは複数のFc媒介性エフェクター機能を誘導するように、該重鎖定常領域が改変されている、
前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項25】
1つまたは複数のFc媒介性エフェクター機能が、少なくとも20%、例えば少なくとも30%または少なくとも40%、または少なくとも50%または少なくとも60%または少なくとも70%、または少なくとも80%または少なくとも90%減少している、請求項24記載の抗体。
【請求項26】
1つまたは複数のFc媒介性エフェクター機能を誘導しない、請求項24または25記載の抗体。
【請求項27】
1つまたは複数のFc媒介性エフェクター機能が、以下の群:
補体依存性細胞傷害(CDC)、補体依存性細胞媒介性細胞傷害(CDCC)、補体活性化、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性ファゴサイトーシス(ADCP)、C1q結合およびFcγR結合
より選択される、請求項24~26のいずれか一項記載の抗体。
【請求項28】
実施例8の方法により測定された場合にC1q結合を誘導しない、請求項26または27のいずれか一項記載の抗体。
【請求項29】
一価抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項30】
二価抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項31】
単一特異性抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項32】
前記請求項のいずれか一項記載のヒトCD27に結合する能力を有する第1の抗原結合領域を含み、かつヒトCD27上の異なるエピトープに結合する能力を有するかまたは異なる標的に結合する能力を有する第2の抗原結合領域を含む、二重特異性抗体
である、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項33】
前記ヒトCD27が、SEQ ID NO:1に示されている配列またはSEQ ID NO:2に示されているヒトCD27バリアントを含む、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項34】
a. 例えば実施例4および10に記載されるように、CD27発現ヒトT細胞に結合する能力を有するか、
b. 例えば実施例4に記載されるように、CD27発現カニクイザルT細胞に結合する能力を有するか、
c. 本明細書の実施例6もしくは7に記載されるようにアッセイされた場合に、ヒトT細胞、例えばCD4およびCD8T細胞、例えばヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞の増殖を誘導する能力を有するか、
d. ヒト制御性(CD4)T細胞の増殖を誘導しないか、
e. 例えば本明細書の実施例2に記載されるように、ヒトCD27発現JurkatレポーターT細胞の活性化を誘導する能力を有するか、または
f. 例えば本明細書の実施例11に記載されるように、Fcγ受容体IIb架橋の非存在下でヒトCD27発現JurkatレポーターT細胞の活性化を誘導する能力を有する
場合の、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項35】
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域;
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域;
c. SEQ ID No:15に示されるアミノ酸配列を含むCH領域;および
d. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項36】
SEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列を含む重鎖およびSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項37】
請求項1~36のいずれか一項に定義されている抗体を含む組成物。
【請求項38】
請求項1~36のいずれか一項に定義されている抗体、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項39】
医薬としての使用のための、請求項1~36のいずれか一項に定義されている抗体。
【請求項40】
疾患の処置における使用のための、請求項39記載の医薬としての使用のための抗体。
【請求項41】
疾患ががんである、請求項40記載の医薬としての使用のための抗体。
【請求項42】
がんが固形腫瘍または血液がんである、請求項41記載の医薬としての使用のための抗体。
【請求項43】
疾患を処置する方法であって、請求項1~36のいずれか一項に定義されている抗体、請求項37に定義されている組成物、または請求項38に定義される薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、該方法。
【請求項44】
がんの処置のためである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
請求項1~36のいずれか一項記載の抗体をコードする、単離された核酸配列または核酸配列の組合せ。
【請求項46】
SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域をコードする、核酸配列。
【請求項47】
SEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、SEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含むVL領域をコードする、核酸配列。
【請求項48】
SEQ ID NO:4に示されているアミノ酸配列を含むVH領域をコードする、請求項45および46のいずれか一項記載の核酸配列。
【請求項49】
SEQ ID NO:8に示されているアミノ酸配列を含むVL領域をコードする、請求項45および47のいずれか一項記載の核酸配列。
【請求項50】
請求項1~36のいずれか一項記載の抗体の重鎖をコードする、核酸配列。
【請求項51】
請求項1~36のいずれか一項記載の抗体の軽鎖をコードする、核酸配列。
【請求項52】
前記重鎖が、SEQ ID NO:4に示されている配列を含むVH領域と、アミノ酸残基がEuインデックスに従って番号付けされるP329および/またはE345の変異を含むヒトIgG1 CH領域、例えばSEQ ID NO:13、14、15、27、29、30および36のいずれか1つに示されているIgG1 CH配列とを含む、請求項50記載の核酸配列。
【請求項53】
前記重鎖が、SEQ ID NO:24または35に示されているアミノ酸配列を含む、請求項46、48、50および52のいずれか一項記載の核酸配列。
【請求項54】
前記軽鎖が、SEQ ID NO:8に示されている配列を含むVL領域と、SEQ ID NO:16または17、好ましくはSEQ ID NO:17に示されている配列を含むヒト定常領域とを含む、請求項51記載の核酸配列。
【請求項55】
前記軽鎖が、SEQ ID NO:25に示されているアミノ酸配列を含む、請求項47、49、51および54のいずれか一項記載の核酸配列。
【請求項56】
前記核酸がRNAまたはDNA、例えばmRNAである、請求項45~51のいずれか一項記載の核酸配列、または核酸配列の組合せ。
【請求項57】
単離された核酸配列である、請求項46~56のいずれか一項記載の核酸配列。
【請求項58】
請求項45~57のいずれか一項記載の核酸配列またはその組合せを含む、発現ベクター。
【請求項59】
哺乳動物細胞中での発現における使用のための、請求項45~57のいずれか一項記載の核酸配列、または核酸配列の組合せ。
【請求項60】
請求項1~36のいずれか一項に定義されている抗体を産生し、任意で、請求項58記載の発現ベクターを含む、組換え宿主細胞。
【請求項61】
真核または原核細胞である、請求項60記載の組換え宿主細胞。
【請求項62】
請求項45~57のいずれか一項記載の核酸配列、または請求項58に定義されている発現ベクターと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項63】
請求項1~36のいずれか一項記載の抗体を製造する方法であって、該抗体を製造するために好適な培養培地中および条件下で請求項60または61記載の組換え宿主細胞を培養する工程、ならびに、任意で、培養培地から該抗体を精製または単離する工程を含む、該方法。
【請求項64】
例えば、コンパニオン診断薬として使用する/請求項1~36のいずれか一項に定義されている抗体を用いる処置に応答する傾向を有する患者を患者の集団内で同定するために使用するためのキットであって、請求項1~36のいずれか一項に定義されている抗体と、該キットの使用のための使用説明書とを含む、該キット
である、キット・オブ・パーツ。
【請求項65】
請求項1~36のいずれか一項に定義されているCD27に結合する能力を有する抗原結合領域に結合する、抗イディオタイプ抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、CD27に結合する能力を有する抗体、およびFc領域中に1つまたは複数の変異を含むその抗体バリアント、ならびにそのような抗体およびFcバリアントの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
CD27(TNFRSF7)は、そのリガンドCD70への結合後にT細胞活性化を共刺激する腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー(TNFRSF)の55kDa I型膜貫通タンパク質メンバーである。それはヒトにおいて、T、B、NK細胞、およびそれらの直接の前駆細胞の細胞膜上に発現され、これらのすべてはリンパ系列の部分である。ヒトT細胞上で、CD27は、静止αβ CD4(Tregおよび従来型T細胞)、CD8T細胞、幹細胞メモリー細胞、ならびにセントラルメモリー様細胞上に発現される。ヒトB細胞上で、CD27はメモリーB細胞マーカーであり、CD27シグナル伝達は形質細胞へのB細胞の分化を促進する。
【0003】
CD27の唯一の公知のリガンドはII型膜貫通タンパク質CD70(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー7、TNFSF7;CD27リガンド、CD27L)であり、これは、T、B、NK、および樹状細胞(DC)を含む、活性化された免疫細胞上にかなり制約的にかつ一過的にのみ発現される。
【0004】
CD70へのCD27の結合で、切断された32kDaの形態のCD27がマトリックスメタロプロテイナーゼの作用を通じて放出され得る(可溶性CD27、sCD27として公知)。
【0005】
CD27は、一次免疫応答の早期生成において役割を果たし、T細胞免疫の生成および長期維持のために要求される。CD27-CD70の結合はNF-KBおよびMAPK8/JNK経路の活性化に繋がる。アダプタータンパク質TRAF2およびTRAF5は、CD27エンゲージメントの結果としてもたらされるシグナル伝達を媒介することが示されている。
【0006】
T細胞は、それらのエフェクター機能を解除するために、抗原提示細胞(APC)の表面上の主要組織適合複合体(MHC)分子の文脈におけるそれらのコグネイト抗原のT細胞抗原受容体媒介性認識、および共刺激受容体の活性化を要求する。CD27およびCD28は、T細胞上に発現される最も重要な共刺激受容体であると考えられている。
【0007】
マウスにおいて、T細胞活性化のプライミング期の間のCD27刺激は、IL-2非依存性生存シグナル伝達による抗原特異的CD4およびCD8T細胞のクローン性拡大増殖を促進することが見出されている(Carr JM et al,Proc Natl Acad Sci USA 2006 Dec 19;130(51):19454-9)。CD27はまた、連続的な分裂を通じて活性化されたT細胞のアポトーシスに対抗しており、そしてまたマウスCD8T細胞のメモリー分化において重要な役割を果たすことが示された(van de Ven K,Borst J.Immunotherapy 2015;7(6):655-67)。結果として、CD27刺激は、リンパ系臓器におけるエフェクターT細胞の生成を促進し、レスポンダーT細胞のレパートリーを広げる。ヒトナイーブT細胞において、CD27刺激は、CD4T細胞のTヘルパー-1(Th1)分化を促進し、細胞傷害性Tリンパ球のエフェクター分化をサポートする(Oosterwijk et al,Int Immunol.2007 Jun;19(6):713-8)。
【0008】
一部の血液学的悪性腫瘍中の腫瘍細胞上でのその存在とは反対に、CD27発現は固形悪性腫瘍中の腫瘍細胞上では検出されていない。しかしながら、CD27発現リンパ系細胞は、血液学的悪性腫瘍および固形がんの両方の腫瘍微環境において報告されている。
【0009】
がんの処置において、免疫応答の関与および刺激は、免疫チェックポイント阻害剤の臨床的な成功により例示されるように、抗腫瘍免疫を誘導および/または増強して臨床応答を結果としてもたらすことが示されている。能動免疫応答および/または既存の抗腫瘍免疫は、共刺激シグナル伝達、例えばCD27共刺激シグナル伝達を提供することにより増加され得る。
【0010】
マウス腫瘍モデルにおいて、T細胞機能およびしたがって抗腫瘍免疫は、アゴニストCD27抗体により増強され得る。hCD27トランスジェニックリンパ腫マウスモデルにおいて、アゴニスト抗体を使用するCD27活性化は、強力な抗腫瘍活性、ならびにCD4およびCD8T細胞に依存する保護免疫の誘導を示した(He LZ et al.,J Immunol.2013 Oct 15;191(8):4174-83)。さらには、モノクローナル抗体を使用するCD27活性化は、数ある中でも、白血病(Vitale et al,Keler T.Clin Cancer Res.2012 Jul 15;18(14):3812-21)、黒色腫(Roberts DJ,et al.,J Immunother.2010 Oct;33(8):769-79)、結腸癌、および胸腺腫(He LZ,et al.,J Immunol.2013 Oct 15;191(8):4174-83)に由来するモデルを含む、マウス異種移植片において腫瘍成長を予防した。
【0011】
ヒトCD27に対するモノクローナルIgG1アゴニスト抗体は先行技術において開示されている。
【0012】
WO2008/051424は、がん、感染症、炎症、アレルギー、および自己免疫の処置のためならびにワクチンの有効性を増強するための、単独でのまたは別の部分、例えば免疫刺激剤もしくは免疫モジュレーターとの連関での、CD27アゴニスト、好ましくはアゴニストCD27抗体に関するが、いかなるCD27抗体の配列も開示していない。
【0013】
WO2012/004367においてヒト化抗ヒトCD27アゴニスト抗体(hCD27.15と呼称される)が記載されている。hCD27.15は、免疫応答のCD27媒介性共刺激を活性化させるためにFcyR発現細胞による架橋を要求しないことが報告されている。しかしながら、この抗体は、hCD27において頻繁に存在するSNP(A59T)に結合せず、またカニクイザルCD27に結合しない。
【0014】
WO2011/130434は、1F5と呼称されるヒトアゴニスト抗ヒトCD27抗体を開示しており、1F5は、FcyR発現細胞による架橋でCD27を活性化させ、さらにリガンド(sCD70)遮断性である。1F5は、標的細胞においてCDCおよびADCC活性を有し、ならびに免疫応答を増強し、ならびにマウスモデルにおいて抗腫瘍活性を有することが報告されている。
【0015】
WO2018/058022は、アゴニストマウス抗ヒトCD27抗体131Aおよびそのヒト化バージョンを開示している。131Aは、hCD27において頻繁に存在するSNP(A59T)およびカニクイザルCD27に結合することが開示されている。WO2018/058022は、抗体131Aはマウス腫瘍モデルにおいて抗体1F5と比較してより強い抗腫瘍応答を有したことをさらに開示している。
【0016】
WO2019/195452は、BMS-986215と呼称される非リガンド遮断性アゴニスト抗ヒトCD27抗体を開示しており、BMS-986215は、上記されるCD27抗体1F5よりも高いヒトおよびカニクイザルのCD27についての親和性を有することが報告されている。そのリガンドCD70への結合によるT細胞のCD27共刺激がBMS-986215の存在下で起こることが開示されている。BMS-986215は制御性T細胞(Treg)によるCD4レスポンダーT細胞の抑制を低減させること、ならびにBMS-986215は、中程度のADCCおよび低いレベルのADCP、CDCを誘導し、C1qに結合することがさらに開示されている。BMS-986215は、FcyRの非存在下および可溶性CD70の非存在下で弱いアゴニスト活性のみを有することがさらに開示されている。
【0017】
抗CD27抗体は、CD27アゴニズムを誘導するために形質膜上のCD27のクラスタリングを誘導しなければならない。野生型IgG1抗体の場合、CD27のクラスタリングは、FcyR保有細胞、例えば単球、マクロファージ、B細胞および他の免疫細胞との膜結合型CD27抗体の相互作用を通じて達成され得る。帰結として、抗CD27 IgG1分子は、FcyR発現細胞の数が限定されている場合により低い効率であり得る。追加的に、FcyRエンゲージメントはまた、望ましくないエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)、および補体依存性細胞傷害(CDC)の活性化を結果としてもたらすことがあり、これは、CD27陽性T細胞の望ましくない枯渇を引き起こし得る。
【0018】
抗体のFc領域の改変によるエフェクター機能の最適化は、がんまたは他の疾患を処置するための治療抗体の有効性を向上させて、例えば、抗原発現細胞に対する免疫応答を誘発する抗体の能力を向上させ得る。そのような努力は、例えば、WO 2013/004842 A2;WO 2014/108198 A1;WO2018/146317;WO2018/083126;WO 2018/031258 A1;Dall'Acqua,Cook et al.J Immunol 2006,177(2):1129-1138;Moore,Chen et al.MAbs 2010 2(2):181-189;Desjarlais and Lazar,Exp Cell Res 2011,317(9):1278-1285;Kaneko and Niwa,BioDrugs 2011,25(1):1-11;Song,Myojo et al.,Antiviral Res 2014,111:60-68;Brezski and Georgiou,Curr Opin Immunol 2016,40:62-69;Sondermann and Szymkowski,Curr Opin Immunol 2016,40:78-87;Zhang,Armstrong et al.MAbs 2017,9(7):1129-1142.;Wang,Mathieu et al.Protein&Cell 2018,9(1):63-73;Beurskens FJ et al.,Science.2014 Mar 14;343(6176):1260-3)において記載されている。
【0019】
しかしながら、当技術分野におけるこれらおよび他の努力にもかかわらず、増加したアゴニズムおよび/もしくは増加した効力を有し、かつ/またはFcyR発現細胞の数が限定されている場合であっても有効なアゴニストCD27治療抗体が必要とされている。そのため、高い効力およびアゴニズムを有し、かつ、細胞膜上のCD27のクラスタリングのための二次的な架橋を提供するFcgR発現細胞の数に非依存的にT細胞増殖のより高い活性化を誘導する、抗CD27抗体を提供することが本発明の目的である。そのため、免疫応答のCD27媒介性共刺激を活性化させるためにFcyR発現細胞による架橋を要求することのない抗CD27抗体を提供することはさらなる目的である。ヒトCD27に結合し、かつhCD27において頻繁に存在するSNP(A59T)にさらに結合し、かつカニクイザルCD27にも結合する抗CD27抗体を提供することはさらなる目的である。C1qによる二次的な架橋に非依存的にまたはFcyR非依存性の方式で、IgG六量体形成の増強を通じてCD27アゴニズムを誘導するCD27アゴニスト抗体を提供することは本発明のさらなる目的である。がんの文脈において、そのような抗体は抗腫瘍免疫を増加させ得る。抗腫瘍免疫応答を増強する強力なアゴニスト活性を呈する抗CD27抗体が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、CD27結合性抗体およびそのFcバリアントに関する。
【0021】
そのため、1つの局面において、本発明は、ヒトCD27に結合する能力を有する少なくとも1つの抗原結合領域を含む抗体であって、それぞれSEQ ID NO:5、6、および7に示されている配列を含む重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:9、10および11に示されている配列を含む軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、抗体に関する。
【0022】
1つの局面において、本発明は、それぞれSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:8に示されている配列を含むVHおよびVL領域を含む抗体に関する。
【0023】
1つの局面において、本発明は、それぞれSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:8に示されている配列を含むVHおよびVL領域を含み、かつ軽鎖定常領域(CL)および重鎖定常領域(CH)をさらに含む抗体に関する。
【0024】
1つの局面において、本発明は、それぞれSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:8に示されている配列を含むVHおよびVL領域を含み、かつ軽鎖定常領域(CL)および重鎖定常領域(CH)をさらに含む抗体であって、ヒトIgG1アイソタイプの抗体である、抗体に関する。
【0025】
1つの局面において、本発明は、Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置E345またはE430に対応する位置におけるアミノ酸残基が、A、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、WおよびYを含む群より選択される改変されたFc領域を有する上記されている抗体に関する。
【0026】
1つの局面において、本発明は、Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置P329に対応する位置におけるアミノ酸残基がRである改変されたFc領域をさらに有する上記されている抗体のいずれかに関する。
【0027】
1つの局面において、本発明は、それぞれSEQ ID NO:5、6、および7に示されている配列を含む重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:9、10および11に示されている配列を含む軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、かつEu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置E345およびP329に対応する位置におけるアミノ酸残基が両方ともRである改変されたFc領域をさらに含む抗体に関する。
【0028】
1つの局面において、本発明は、ヒト抗体またはヒト化抗体に関する。
【0029】
1つの局面において、本発明は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域;
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域;
c. SEQ ID No:15に示されるアミノ酸配列を含むCH領域;および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む抗体に関する。
【0030】
1つの局面において、本発明は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域;
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域;
c. SEQ ID No:15に示されるアミノ酸配列を含むCH領域;および
d. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む抗体に関する。
【0031】
1つの局面において、本発明は、SEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列を含む重鎖およびSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体に関する。
【0032】
1つの局面において、本発明は、本明細書における任意の局面または態様に係る抗体をコードする単離された核酸に関する。
【0033】
1つの局面において、本発明は、そのような核酸を含む発現ベクターに関する。
【0034】
1つの局面において、本発明は、本明細書における任意の局面または態様に係る抗体を産生する組換え宿主細胞に関する。
【0035】
1つの局面において、本発明は、本明細書における任意の局面または態様に係る抗体を製造する方法であって、抗体を製造するために好適な培養培地中および条件下でそのような組換え宿主細胞を培養する工程を含む、方法に関する。
【0036】
1つの局面において、本発明は、本明細書における任意の局面または態様において定義されている抗体、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物に関する。
【0037】
1つの局面において、本発明は、医薬としての使用のための本明細書における任意の局面または態様に係る抗体に関する。
【0038】
1つの局面において、本発明は、がんの処置または予防における使用のための本明細書における任意の局面または態様に係る抗体に関する。
【0039】
1つの局面において、本発明は、疾患を処置する方法であって、本明細書における任意の局面もしくは態様に係る抗体、本明細書における任意の局面もしくは態様に係る組成物、または本明細書における任意の局面もしくは態様に係る薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【0040】
1つの局面において、本発明は、キット・オブ・パーツ、例えば、コンパニオン診断薬として使用する/本明細書における任意の局面または態様に係る抗体を用いる処置に応答する傾向を有する患者を患者の集団内で同定するために使用するためのキットに関する。
【0041】
1つの局面において、本発明は、本明細書におけるいずれか1つの局面または態様において定義されているCD27に結合する能力を有する抗原結合領域に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、CD27 Jurkatレポーターバイオアッセイにおいて決定された、抗CD27抗体およびその六量体化増強FcバリアントのCD27アゴニスト活性を示す。解凍して使用されるGloResponse NFκB-luc2/CD27 Jurkatレポーター細胞を、抗体濃度系列(左から右に0.04μg/mL、0.30μg/mL、2.50μg/mL、および20μg/mL)の指し示される抗体と6hインキュベートした。ルシフェラーゼ活性を、CD27細胞内シグナル伝達についてのリードアウトとして、発光(RLU:相対発光単位)を決定することにより定量化した。指し示されるように、以下の抗体をWT IgG1および/またはE430GもしくはE345R変異を有するバリアントとして含めた:E345R変異を含む非結合性抗HIV-gp120対照抗体(IgG1-b12-E345R、対照)、抗CD27抗体IgG1-CD27-A、IgG1-CD27-B、IgG1-CD27-C、IgG1-CD27-D、IgG1-CD27-E、およびIgG1-CD27-F、ならびに先行技術の抗CD27ベンチマーク抗体IgG1-CD27-131AおよびIgG1-CD27-15。
図2図2は、フローサイトメトリーにより決定された、(A、C)PBMC中のT細胞上または(B、D)CD27トランスフェクトHEK293F細胞上に発現された(A、B)ヒトCD27および(C、D)カニクイザルCD27に対する抗CD27抗体の結合を示す。抗体結合を中央値蛍光強度(MFI)として提示している。抗HIV-gp120抗体IgG1-b12-FEAR(対照)を非結合性陰性対照抗体として含めた。
図3図3は、フローサイトメトリーにより決定された、HEK293F細胞上に発現されたヒトCD27-A59Tバリアントに対する抗CD27抗体IgG1-CD27-A、IgG1-CD27-B、およびIgG1-CD27-Cの結合を示す。抗体結合を中央値MFIとして提示している。抗HIV-gp120抗体IgG1-b12-FEAL(対照)を非結合性陰性対照抗体として含めた。
図4A-1】図4は、CSFE希釈アッセイにおいてフローサイトメトリーにより決定された、Fc変異P329R、G237A、またはK326A-E33Aと組み合わせてFc変異E430RまたはE345Rを宿す1μg/mLのCD27特異的抗体バリアントIgG1-CD27-A、-B、または-Cの存在下でTCR刺激された(A)CD8および(B)CD4T細胞の増殖のヒートマップを示す。4人のヒト健常ドナーからのPMBCをT細胞の供給源として使用した。FlowJoソフトウェアを使用することによりCFSE希釈を経た細胞(CFSElow peaks)についてゲーティングすることにより算出された、T細胞分裂指数またはT細胞の増殖のパーセンテージとしてT細胞増殖を表した。
図4A-2】図4-1の説明を参照のこと。
図4B-1】図4-1の説明を参照のこと。
図4B-2】図4-1の説明を参照のこと。
図5図5は、フローサイトメトリーにより決定された、IgG1-CD27-A、IgG1-CD27-A-P329R-E345R、または先行技術の抗CD27クローンIgG1-CD27-131A、IgG1-CD27-CDX1127、およびIgG1-CD27-BMS986215とのヒト健常ドナーPBMCのインキュベーション後の(A、B)非刺激、または(C~F)TCR刺激された、(A、C、E)CD4、または(B、D、F)CD8T細胞の、(A~D)増殖したT細胞のパーセンテージ、(E、F)拡大増殖指数を示す。抗HIV-gp120抗体バリアントIgG1-b12-E345R-P329R(対照)を非結合性陰性対照抗体として含めた。CFSE希釈を経た細胞(CFSElow peaks)についてゲーティングすることにより細胞の増殖%を算出した。拡大増殖指数は、ウェル中の細胞の増加倍数を同定し、FlowJoバージョン10中のProliferation Modelingツールを使用して算出された。ピークに対する手動の調整を必要な場合に行って、存在するピークの数をより一貫して定義した。
図6図6は、FACSにより決定された、本発明の膜結合型CD27抗体に対するC1qの結合を示す。E430GまたはE345R六量体化増強性変異(IgG1-CD27-A-E430GおよびIgG1-CD27-A-E345R)ならびにP329R変異(IgG1-CD27-A-P329R-E345R)を含有するIgG1-CD27-Aバリアントを、C1qに結合する能力について試験した。抗HIV-gp120抗体IgG1-b12-F405L(対照)を非結合性陰性対照抗体として含めた。
図7図7は、表面プラズモン共鳴(SPR)により決定された、ヒトFc受容体に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの結合を示す。Biacore表面チップを抗His抗体と共有結合的に連結し、組換えHisタグ付加Fc受容体(A)FcγRIa、(B)FcγRIIa-H、(C)FcγRIIa-R、(D)FcγRIIb、(E)FcγRIIIa-F、または(F)FcγRIIIa-Vで被覆した。抗HIV-gp120抗体IgG1-b12(対照)を参照として含めた。示されるのは、バックグラウンドサブトラクション(無Fc受容体フローセル)後のBiacore SPRにより決定された場合の絶対共鳴単位である。
図8図8は、フローサイトメトリーにより決定された、ヒト健常ドナーPBMC試料中のヒト(A)CD4および(B)CD8T細胞サブセットに対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの結合を示す。陰性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345R(対照)は、P329RおよびE345R変異を含む抗HIV gp120非結合性アイソタイプ対照抗体である。提示されるデータは、二連の試料の平均MFI+/-SDである。
図9-1】図9は、レポーターアッセイにおいて決定された、FcγR媒介性架橋の存在および非存在下での抗CD27抗体のCD27アゴニスト活性を示す。固定された数のNFκB-luc2/CD27 Jurkatレポーター細胞を、(B、G)1:1、(C、H)1:1/3、(D、I)1:1/9、または(E、J)1:1/27のNFκB-luc2/CD27 Jurkat:FcγRIIb CHO-K1比において、FcγRIIb-CHO-K1細胞の(A、F)非存在または(B~J)存在下で、(A~E)IgG1-CD27-A-P329R-E345RまたはIgG1-CD27-A、(F~J)IgG1-CD27-131A、IgG1-CD27-CDX1127またはIgG1-CD27-BMS986215と培養した。IgG1-b12-P329R-E345RおよびIgG1-b12は抗HIV gp120非結合性対照抗体(対照)である。発光をCD27活性化についてのリードアウトとして測定し、相対発光単位(RLU)として提示した。
図9-2】図9-1の説明を参照のこと。
図10図10は、25mg/kgのIgG-CD27-AまたはIgG-CD27-A-P329R-E345R抗体の静脈内注射後の、SCIDマウスの血漿中のヒトIgGレベルを示す。全ヒトIgG血漿濃度をサンドイッチELISAにより決定し、注射後の時間に対してプロットした。示されるデータは、群(n=3匹のマウス)毎の血液試料の平均血漿濃度+/-SEMである。
図11図11は、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rまたは野生型CD20抗体IgG1-CD20の存在下でのhMDMとの4hの共培養(E:T=2:1)後の生存CD27Daudi細胞のパーセンテージを示す。Daudi細胞をCellTrace(商標)Violetで標識し、細胞生存をフローサイトメトリーにより測定した。示されるデータは、2回の実験において試験された4人のドナーのうちの1人についての抗体なし対照に対して正規化された生存Daudi細胞(TO-PRO-3-CTVCD11b-)のパーセンテージの二連の平均±SDである。
図12図12は、ELISAにより決定された、NHS中のIgG1-CD27-A-P329R-E345RのインキュベーションでのC4d沈着を示す。IgG1-b12-P329R-E345Rはアイソタイプ対照抗体であり、IgG1-b12はWT Fcドメインを有する対照抗体であり;IgG1-b12-RGYはC4d沈着についての陽性対照抗体(溶液中の六量体抗体)である。示されるのは、行われた3回の実験のうちの1つの代表的な実験の三連の平均±SDである。
図13図13は、抗CD27抗体によるDaudi細胞上のCD70結合の阻害を示す。CD27Daudi細胞を、50μg/mLの非結合性対照抗体(IgG1-b12-P329E-E345RもしくはIgG1-b12)またはCD27抗体(IgG1-CD27-A、IgG1-CD27-A-P329R-E345R、IgG1-CD27-CDX1127、IgG1-CD27-BMS986215、もしくはIgG1-CD27-131A)の存在または非存在下で6μg/mLのビオチン化組換えヒトCD70 ECDとインキュベートした。Daudi細胞に対するビオチン化CD70断片の結合を、BV421標識ストレプトアビジンを使用してフローサイトメトリーにより検出した。示されるデータは、行われた3回の実験のうちの1つの代表的な実験の二連のウェルからのgMFI±SDである。
図14A-1】図14は、抗CD27抗体を用いた処理でのポリクローナルに活性化されたCD4およびCD8T細胞におけるT細胞活性化マーカーの発現レベルを示す。ヒト健常ドナーPBMCを0.1μg/mLのCD3抗体および30μg/mLのIgG1-CD27-A-P329R-E345R、CD27抗体ベンチマークまたは非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rと2日間または5日間インキュベートした。抗体処理された試料中の(A)CD4および(B)CD8T細胞の表面上のT細胞活性化マーカーHLA-DR、CD69、GITR、CD25、CD107a、および4-1BBの発現レベルをフローサイトメトリーにより定量化し、同じドナーの非結合性対照試料と比べたMFI(±SD)における平均変化倍数として提示した。点線は、非結合性対照として使用され、1に設定されたIgG1-b12-P329R-E345Rを用いて処理された細胞についての変化倍数を指し示す。示されるデータは、1つの実験において二連で試験された3人のドナーからのものである。
図14A-2】図14A-1の説明を参照こと。
図14B-1】図14A-1の説明を参照こと。
図14B-2】図14A-1の説明を参照こと。
図15図15は、OVAを用いた免疫化および抗CD27抗体を用いた処理後のhCD27-KIマウスの脾臓におけるOVA特異的CD8T細胞のパーセンテージを示す。hCD27-KIマウスにs.c.で5mgのOVAを0、12および21日目に注射し、同時にi.v.で30mg/kgのIgG1-CD27-A-P329R-E345R、IgG1-CD27-CDX1127または非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rを用いて処置した。28日目に、マウスを安楽死させ、脾臓を切除し、単一細胞懸濁液として加工した。OVA特異的CD8T細胞の拡大増殖をフローサイトメトリーにより評価した。示されるデータは、行われた1回の実験からの処置群(5匹のマウス/群)当たりのCD8細胞のOVA%の平均±SDである。
図16図16は、IFNγ-ELISpotにより測定された、OVAを用いた免疫化および抗CD27抗体を用いた処理後28日目におけるIFNγ産生脾臓細胞の数を示す。hCD27-KIマウスにs.c.で5mgのOVAを0、12および21日目に注射し、同時にi.v.で30mg/kgのIgG1-CD27-A-P329R-E345R、IgG1-CD27-CDX1127、または非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rを用いて処置した。28日目に、脾臓を切除し、単一細胞懸濁液として加工し、IFNγ-ELISpotを使用してIFNγ産生脾臓細胞を検出した。示されるデータは、行われた1回の実験からの各々の処置群(5匹のマウス/群)のウェル当たりのスポットの数の平均±SEMである。
図17図17は、OVAを用いた免疫化および抗CD27抗体を用いた処理後のhCD27-KIマウスの脾臓における活性化CD8T細胞のパーセンテージを示す。hCD27-KIマウスにs.c.で5mgのOVAを0、12および21日目に注射し、同時にi.v.で30mg/kgのIgG1-CD27-A-P329R-E345R、IgG1-CD27-CDX1127または非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rを用いて処置した。28日目に、マウスを安楽死させ、脾臓を切除し、単一細胞懸濁液として加工した。フローサイトメトリーにより脾臓中のCD8細胞のPD-1パーセンテージを測定することによりCD8T細胞の活性化を脾臓試料において評価した。示されるデータは、行われた1回の実験からの処置群(5匹のマウス/群)当たりの平均±SDである。
図18図18は、OVAを用いた免疫化および抗CD27抗体を用いた処理後のhCD27-KIマウスの脾臓におけるエフェクターCD8T細胞のパーセンテージを示す。hCD27-KIマウスにs.c.で5mgのOVAを0、12および21日目に注射し、同時にi.v.で30mg/kgのIgG1-CD27-A-P329R-E345R、IgG1-CD27-CDX1127または非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rを用いて処置した。28日目に、マウスを安楽死させ、脾臓を切除し、単一細胞懸濁液として加工した。メモリーT細胞の拡大増殖をフローサイトメトリーによりCD44およびCD62Lの発現により評価した。示されるデータは、行われた1回の実験からの処置群(5匹のマウス/群)当たりの平均±SDである。(A)CD45細胞のうちのCD8CD44CD62L-エフェクターメモリーのパーセンテージ。(B)CD8T細胞のうちのCD44CD62L-エフェクターメモリーのパーセンテージ。(C)CD45細胞のうちのCD8CD44-CD62L-プレエフェクターのパーセンテージ。(D)CD8T細胞のうちのCD44-CD62L-プレエフェクターのパーセンテージ。
図19図19は、OVAを用いた免疫化および抗CD27抗体を用いた処理後のhCD27-KIマウスの脾臓におけるT細胞のパーセンテージを示す。hCD27-KIマウスにs.c.で5mgのOVAを0、12および21日目に注射し、同時にi.v.で30mg/kgのIgG1-CD27-A-P329R-E345R、IgG1-CD27-CDX1127または非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rを用いて処置した。28日目に、マウスを安楽死させ、脾臓を切除し、単一細胞懸濁液として加工した。血液および脾臓中のCD3細胞をフローサイトメトリーにより評価した。示されるデータは、行われた1回の実験からの処置群(5匹のマウス/群)当たりの平均±SDである。
図20図20は、抗原特異的研究におけるT細胞サイトカイン産生に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの効果を示す。(A)内因性PD-1を発現するかまたは(B)PD-1を過剰発現するCLDN6-TCR発現CD8+T細胞および自家CLDN6発現iDCの共培養物を、10μg/mLのIgG1-CD27-A-P329R-E345R、CD27ベンチマーク抗体IgG1-CD27-131A、または非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rと2日間インキュベートした。共培養上清中のサイトカインレベルをマルチプレックスECLIAにより分析した。示されるデータは、行われた2回の実験において試験された7人のドナーのうちの1人の代表的なドナーからの三連のウェルの濃度の平均±SDである。略語:CLDN6=クローディン6;ECLIA=電気化学発光アッセイ;iDC=未熟樹状細胞;PD-1=プログラム細胞死タンパク質1;SD=標準偏差;TCR=T細胞受容体。
図21図21は、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rとインキュベートされた抗原特異的CD8+T細胞における細胞傷害性関連分子の発現を示す。CLDN6-TCRエレクトロポレートCD8+T細胞をIgG1-CD27-A-P329R-E345R、CD27ベンチマークIgG1-CD27-131A、または非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rの存在下でhCLDN6-MDA-MB-231細胞と2日間共培養した。GzmBおよびCD107aの細胞内発現をフローサイトメトリーにより決定した。GzmBおよびCD107aの両方を発現するCD8+T細胞のパーセンテージの他に、CD8+T細胞におけるGzmBおよびCD107aの発現レベル(IgG1-b12-P329R-E345Rに対して正規化されたMFI)を示す。示されるデータは、2回の実験の実験における単一の複製物において試験された6人のドナーの平均±SDである。**、P<0.01;*、P<0.05;ダンの多重比較検定を伴うフリードマン検定。略語:CLDN6=クローディン6;GzmB=グランザイムB;MFI=平均蛍光強度;SD=標準偏差;TCR=T細胞受容体。
図22図22は、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rの存在下での抗原特異的CD8+T細胞媒介性腫瘍細胞殺傷を示す。hCLDN6-MDA-MB-231細胞のCD8+T細胞媒介性殺傷をリアルタイム細胞分析により評価した。CLDN6 TCRエレクトロポレートCD8+T細胞をIgG1-CD27-A-P329R-E345R、CD27ベンチマークIgG1-CD27-131A、または非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rの存在下でhCLDN6-MDA-MB-231細胞と5日間共培養した。2時間間隔で実行されたインピーダンス測定から細胞指数値を導出した。AUCを5日の共培養にかけての細胞指数データから得た。各々の処理条件のAUCを、同じドナーからのIgG1-b12-P329R-E345R処理された培養物に対して正規化した。示されるデータは、2回の実験中の実験において二連で試験された6人のドナーからの平均±SDである。**、P<0.01;ダンの多重比較検定を伴うフリードマン検定。略語:AUC=曲線下面積;CLDN6=クローディン6;SD=標準偏差;TCR=T細胞受容体。
図23図23は、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rでの処理後の原発性腫瘍培養物中のCD4+およびCD8+T細胞ならびにNK細胞の絶対細胞数を示す。ヒトNSCLC腫瘍組織を10μg/mLのIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの存在または非存在下で低用量IL-2(45~50U/mL)と共に培養した。TILサブセットの絶対細胞カウントを処理の14日後にフローサイトメトリーにより決定した。示されるデータは、行われた4回の実験のうちの1つにおいて試験された5つの腫瘍組織のうちの1つからの4つの複製ウェルの平均±SDである。略語:IL=インターロイキン;NK=ナチュラルキラー;NSCLC=非小細胞肺がん;SD=標準偏差;U/mL=単位/mL。
図24図24は、Daudi細胞およびhuCD27-K562細胞の細胞表面上のIgG1-CD27-A-P329R-E345R抗体間の生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)分析により決定された、分子近接性を示す。細胞を、指し示されるようにNanoLuc(ドナー)およびHaloTag(アクセプター)タグ付加抗体(各々5μg/mL):IgG1-CD27-A-P329R-E345R、WT IgG1-CD27-Aまたは非結合性対照IgG1-b12-P329R-E345Rの混合物とインキュベートした。抗体ペアIgG1-CD20-11B8-E430G-LNLucおよびIgG1-CD37-37.3-E430G-LHaloを陽性対照として使用した。BRETをmilliBRET単位(mBU)=(618nmem/460nmem)×1000において算出し、無リガンド対照の値を引くことによりドナーブリードスルー(bleed-through)について補正した。示されるデータは、行われた3回の実験のうちの1つの代表的な実験の二連のウェルからの補正BRETである。
図25図25は、FcγRIa結合についての陽性対照としての関連しない抗原結合領域を有するWT IgG1抗体(IgG1-b12)、ならびにP329RおよびE345R変異を有する同じ抗体のバリアント(IgG1-b12-P329R-E345R)と比較した、M0およびM1マクロファージに対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの結合を示す。マクロファージに対する抗体の結合を、PE標識ヤギ抗ヒト二次抗体を使用してフローサイトメトリーにより検出した。示されるデータは、試験された2人のドナーの平均+SDである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
発明の詳細な説明
定義
本発明の文脈における用語「抗体」(Ab)は、抗原に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそのいずれかの誘導体を指す。本発明の抗体は、免疫グロブリンのFcドメインおよび抗原結合領域を含む。抗体は、2つのCH2-CH3領域および接続領域、例えば、ヒンジ領域、例えば少なくともFcドメインを一般に含有する。そのため、本発明の抗体はFc領域および抗原結合領域を含んでもよい。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常または「Fc」領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および補体システムの構成要素、例えば補体活性化の古典的経路における第1の構成要素であるC1qを含む、宿主組織または因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介してもよい。本明細書において使用される場合、文脈に矛盾しなければ、免疫グロブリンのFc領域は、免疫グロブリンCHの少なくともCH2ドメインおよびCH3ドメインを典型的には含有し、接続領域、例えば、ヒンジ領域を含んでもよい。Fc領域は、典型的には、例えば、2つのヒンジ領域を接続するジスルフィドブリッジおよび/または2つのCH3領域の間の非共有結合性相互作用を介して、二量体化した形態である。二量体は、ホモ二量体(2つのFc領域単量体アミノ酸配列は同一である)またはヘテロ二量体(2つのFc領域単量体アミノ酸配列は1つもしくは複数のアミノ酸において異なる)であってもよい。当技術分野において周知のように、全長抗体のFc領域断片は、例えば、パパインでの全長抗体の消化により生成され得る。本明細書において定義されている抗体は、Fc領域および抗原結合領域に加えて、免疫グロブリンCH1領域およびCL領域の1つまたは両方をさらに含んでもよい。抗体はまた、多特異性抗体、例えば二重特異性抗体または類似した分子であってもよい。用語「二重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる、典型的にはオーバーラップしない、エピトープについて特異性を有する抗体を指す。そのようなエピトープは、同じまたは異なる標的上にあってもよい。エピトープが異なる標的上にある場合、そのような標的は、同じ細胞または異なる細胞もしくは細胞タイプ上にあってもよい。上記に指し示されるように、他に記載されないか、または文脈に明確に矛盾しなければ、本明細書における抗体という用語は、Fc領域の少なくとも部分を含み、かつ抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片を含む。そのような断片は、任意の公知の技術、例えば酵素切断、ペプチド合成および組換え発現技術により提供されてもよい。抗体の抗原結合機能は全長抗体の断片により行われ得ることが示されている。用語「Ab」または「抗体」に包含される結合性断片の例は、一価抗体(GenmabによりWO2007059782において記載されている);2つの重鎖のみからなり、例えばラクダ科動物において天然に存在する、重鎖抗体(例えば、Hamers-Casterman(1993)Nature 363:446);ThioMab、Roche、WO2011069104);非対称かつ二重特異性抗体様分子である鎖交換操作ドメイン(strand-exchange engineered domain;SEEDまたはSeed-body)(Merck、WO2007110205);Triomab(Pharma/Fresenius Biotech、Lindhofer et al.1995 J Immunol 155:219;WO2002020039);FcΔAdp(Regeneron、WO2010151792);Azymetric Scaffold(Zymeworks/Merck、WO2012/058768);mAb-Fv(Xencor、WO2011/028952);Xmab(Xencor);二重可変ドメイン免疫グロブリン(Abbott、DVD-Ig、米国特許第7,612,181号明細書);二重ドメイン二重ヘッド抗体(Unilever;Sanofi Aventis、WO20100226923);Di-diabody(ImClone/Eli Lilly);ノブ-イントゥー-ホール抗体フォーマット(Genentech、WO9850431);DuoBody(Genmab、WO 2011/131746);二重特異性IgG1およびIgG2(Pfizer/Rinat、WO11143545);DuetMab(MedImmune、US2014/0348839);静電ステアリング抗体フォーマット(Amgen、EP1870459およびWO 2009089004;Chugai、US201000155133;Oncomed、WO2010129304A2);二重特異性IgG1およびIgG2(Rinat neurosciences Corporation、WO11143545);CrossMAb(Roche、WO2011117329);LUZ-Y(Genentech);Biclonic(Merus、WO2013157953);二重標的化ドメイン抗体(GSK/Domantis);Two-in-one抗体または2つの標的を認識する二重作用Fab(Genentech、NovImmune、Adimab);架橋されたMab(Karmanos Cancer Center);共有結合的に融合したmAb(AIMM);CovX-body(CovX/Pfizer);FynomAb(Covagen/Janssen ilag);DutaMab(Dutalys/Roche);iMab(MedImmune);IgG様二特異物(ImClone/Eli Lilly、Shen,J.,et al.J Immunol Methods,2007.318(1-2):p.65-74);TIG-body、DIG-bodyおよびPIG-body(Pharmabcine);二重親和性再標的化分子(Fc-DARTまたはIg-DART、Macrogenics、WO/2008/157379、WO/2010/080538);BEAT(Glenmark);Zybodies(Zyngenia);共通軽鎖(Crucell/Merus、US7262028)または共通重鎖(NovImmuneによるκλBodies、WO2012023053)を用いるアプローチの他に、Fc領域様scFv融合物を含有する抗体断片に融合したポリペプチド配列を含む融合タンパク質、例えばZymoGenetics/BMSによるBsAb、Biogen IdecによるHERCULES(US007951918);SCORPIONS(Emergent BioSolutions/TrubionおよびZymogenetics/BMS);Ts2Ab(MedImmune/AZ(Dimasi,N.,et al.J Mol Biol,2009.393(3):p.672-92);scFv融合物(Genentech/Roche);scFv融合物(Novartis);scFv融合物(Immunomedics);scFv融合物(Changzhou Adam Biotech Inc、CN 102250246);TvAb(Roche、WO 2012025525、WO 2012025530);mAb2(f-Star、WO2008/003116);ならびに二重scFv融合物を含むが、これらに限定されない。抗体という用語は、他に特定されなければ、モノクローナル抗体(例えばヒトモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、単一特異性抗体(例えば二価単一特異性抗体)、二重特異性抗体、任意のアイソタイプおよび/またはアロタイプの抗体;例えばSymphogenおよびMerus(Oligoclonics)により活用された技術により生成される、抗体混合物(組換えポリクローナル)、WO2015/158867に記載されているマルチマーFcタンパク質、ならびにWO2014/031646に記載されている融合タンパク質を含むことが理解されるべきである。これらの異なる抗体断片およびフォーマットは抗体の意味に一般に含まれるが、それらは全体的におよび各々独立して本発明の独特の特色であり、異なる生物学的特性および有用性を呈する。
【0044】
天然の受容体のための「アゴニスト抗体」は、該受容体に結合して受容体-抗体複合体を形成し、かつ前記受容体を活性化させ、それにより経路シグナル伝達およびさらなる生物学的プロセスを開始させる化合物である。
【0045】
用語「アゴニズム」および「アゴニスト(の)」(agonistic)は、本明細書において交換可能に使用され、直接的にまたは間接的に、CD27の生物学的活性または活性化を実質的に誘導し、促進し、または増強する能力を有する抗体を指すか、または記載する。任意で、「アゴニストCD27抗体」は、NF-KBおよびMAPK8/JNK経路の活性化を含んでもよい1つまたは複数の細胞内シグナル伝達経路の活性化を結果としてもたらす、CD70(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー7、TNFSF7;CD27リガンド、CD27L)として公知の、CD27のリガンドと類似した機序によりCD27受容体を活性化させる能力を有する抗体である。本明細書において定義されている「アゴニズム」は、本明細書の実施例2に従って決定されてもよい。
【0046】
本明細書に記載されている「CD27抗体」または「抗CD27抗体」は、タンパク質CD27、特にヒトCD27に特異的に結合する抗体である。
【0047】
「バリアント」は、本明細書において使用される場合、親または参照配列から1つまたは複数のアミノ酸残基において異なるタンパク質またはポリペプチド配列を指す。バリアントは、例えば、親または参照配列に対して少なくとも80%、例えば90%、または95%、または97%、または98%、または99%の配列同一性を有してもよい。追加的に、または代替的に、バリアントは、12またはそれ未満、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えばアミノ酸残基の置換、挿入、または欠失により、親または参照配列から異なってもよい。よって、本明細書において交換可能に使用される「バリアント抗体」または「抗体バリアント」は、例えば、抗原結合領域、Fc領域または両方において、親または参照抗体と比較して1つまたは複数のアミノ酸残基において異なる抗体を指す。同様に、「バリアントFc領域」または「Fc領域バリアント」は、親または参照Fc領域と比較して1つまたは複数のアミノ酸残基において異なる、任意で、12またはそれ未満、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えばアミノ酸残基の置換、挿入、または欠失により、親または参照Fc領域アミノ酸配列から異なる、Fc領域を指す。親または参照Fc領域は、典型的には、文脈に依存して特定のアイソタイプであってもよい、ヒト野生型抗体のFc領域である。バリアントFc領域は、二量体化した形態であってもよく、ホモ二量体またはヘテロ二量体であってもよく、例えば、二量体化したFc領域のアミノ酸配列の1つが変異を含み、他方が親または参照野生型アミノ酸配列と同一であるものであってもよい。Fc領域アミノ酸配列を含む、野生型(典型的には親または参照配列)IgG CHおよびバリアントIgG定常領域アミノ酸配列の例は、表3に示されている。
【0048】
用語「免疫グロブリン重鎖」または「免疫グロブリンの重鎖」は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリンの重鎖の1つを指すことが意図される。重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)および免疫グロブリンのアイソタイプを定義する重鎖定常領域(本明細書においてCHと略記される)を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3を典型的には含む。用語「免疫グロブリン」は、本明細書において使用される場合、構造的に関連する糖タンパク質のクラスであって、ポリペプチド鎖の2つのペア、低分子量軽(L)鎖の1つのペアおよび重(H)鎖の1つのペアからなり、4つすべてがジスルフィド結合により潜在的に相互接続されているものを指すことが意図される。免疫グロブリンの構造は、よく特徴付けられている(例えばFundamental Immunology Ch.7 Paul,W.,2nd ed.Raven Press,N.Y.1989を参照)。免疫グロブリンの構造内で、2つの重鎖は、いわゆる「ヒンジ領域」中のジスルフィド結合を介して相互接続されている。重鎖と同様に、各々の軽鎖は、いくつかの領域;軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)および軽鎖定常領域を典型的には含む。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメイン、CLを含む。さらには、VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域を差し挟まれた、相補性決定領域(CDR)とも称される、超可変性の領域(または構造的に定義されたループの配列および/もしくは形態において超可変的であってもよい超可変領域)にさらに分けられ得る。各々のVHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4において並べられた、3つのCDRおよび4つのFRから典型的には構成される。本明細書におけるCDR配列は、IMGTに従って定義される(Lefranc MP.et al.,Nucleic Acids Research,27,209-212,1999]およびBrochet X.Nucl.Acids Res.36,W503-508(2008)を参照)。
【0049】
本明細書において使用される場合、用語「半分子」、「Fabアーム」および「アーム」は1つの重鎖-軽鎖ペアを指す。二重特異性抗体が、第1の抗体「に由来する」半分子抗体、および第2の抗体「に由来する」半分子抗体を含むと記載される場合、用語「~に由来する」は、二重特異性抗体が、任意の公知の方法により、前記第1および第2の抗体の各々からの前記半分子を組み換えて、結果としてもたらされる二重特異性抗体にすることにより生成されたことを指し示す。この文脈において、「組み換える」は、組換えの任意の特定の方法により限定されることは意図されず、そのため、例えば、当技術分野において「Fabアーム交換」およびDuoBody(登録商標)方法としても記載される「半分子交換」による組換えの他に、核酸レベルでのおよび/または同じ細胞中での2つの半分子の共発現を通じた組換えを含む、以下において本明細書に記載される二重特異性抗体を製造する方法のすべてを含む。
【0050】
用語「抗原結合領域」または「結合領域」または抗原結合ドメインは、本明細書において使用される場合、抗原に結合する能力を有する抗体の領域を指す。この結合領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域を差し挟まれた、相補性決定領域(CDR)とも称される、超可変性の領域(または構造的に定義されたループの配列および/もしくは形態において超可変的であってもよい超可変領域)にさらに分けられ得る抗体のVHおよびVLドメインにより典型的には定義される。抗原は、例えば、細胞、細菌、またはビリオン上に存在する、任意の分子、例えばポリペプチドであることができる。用語「抗原結合領域」および「抗原結合性部位」および「抗原結合ドメイン」は、文脈に矛盾しなければ、本発明の文脈において交換可能に使用されてもよい。
【0051】
用語「抗原」および「標的」は、文脈に矛盾しなければ、本発明の文脈において交換可能に使用されてもよい。
【0052】
用語「結合」は、本明細書において使用される場合、リガンドとしての抗体およびアナライトとしての抗原を使用してバイオレイヤー干渉法により決定された場合に、典型的には1E6 Mもしくはそれ未満、例えば5E7 Mもしくはそれ未満、1E7 Mもしくはそれ未満、例えば5E8 Mもしくはそれ未満、例えば1E8 Mもしくはそれ未満、例えば5E9 Mもしくはそれ未満、または例えば1E9 Mもしくはそれ未満のKDに対応する結合親和性を有する、予め決定された抗原または標的に対する抗体の結合を指し、予め決定された抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的な抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対する結合についてのその親和性よりも少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和性で予め決定された抗原に結合する。
【0053】
用語「KD」(M)は、本明細書において使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指し、kdをkaで割ることにより得られる。
【0054】
用語「kd」(sec-1)は、本明細書において使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値はまた、koff値またはオフレートと称される。
【0055】
用語「ka」(M-1×sec-1)は、本明細書において使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数を指す。前記値はまた、kon値またはオンレートと称される。
【0056】
用語「CD27」は、本明細書において使用される場合、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー7(TNFRSF7)としても公知の、CD27と称されるヒトタンパク質を指す。SEQ ID NO:1(Uniprot ID P26842)に示されるアミノ酸配列において、アミノ酸残基1~19はシグナルペプチドであり、アミノ酸残基20~240は成熟ポリペプチドである。文脈に矛盾しなければ、CD27はまた、CD27のバリアント、そのアイソフォームおよびオルソログを指すことがある。A59T変異を含むヒトCD27の天然に存在するバリアントはSEQ ID NO:2に示される。
【0057】
カニクイザル(マカカ・ファシクラリス(Macaca fascicularis))において、CD27タンパク質は、SEQ ID NO:3(Genbank XP_005569963)に示されるアミノ酸配列を有する。SEQ ID NO:3に示される240アミノ酸の配列において、シグナルペプチドは定義されていない。
【0058】
用語「抗体結合領域」は、抗体が結合するエピトープを含む、抗原の領域を指す。抗体結合領域は、バイオレイヤー干渉法を使用してエピトープ結合により、アラニンスキャンにより、またはシャッフルアッセイ(抗原の領域が別の種のものと交換されている抗原構築物を使用し、抗体が抗原に依然として結合するか否かを決定する)により決定されてもよい。抗体との相互作用に関与する抗体結合領域内のアミノ酸は、水素/重水素交換質量分析によりおよびその抗原に結合した抗体の結晶分析により決定されてもよい。
【0059】
用語「エピトープ」は、抗体により特異的に結合される抗原決定因子を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸、糖側鎖またはその組合せなどの分子の表面グルーピングからなり、通常、特定の三次元構造的特徴の他に、特定の電荷的特徴を有する。配座および非配座エピトープは、前者への結合は変性溶媒の存在下で喪失されるが後者への結合はそうではないという点において区別される。エピトープは、結合に直接的に関与するアミノ酸残基、および結合に直接的に関与しない他のアミノ酸残基、例えば抗体が抗原に結合している場合に抗体により有効に遮断またはカバーされるアミノ酸残基(換言すれば、アミノ酸残基は特有の抗体のフットプリント内にあるか、またはその近くに隣接している)を含んでもよい。
【0060】
用語「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、または「mAb」などは、本明細書において使用される場合、単一の分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープについての単一の結合特異性および親和性を示す。よって、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を指す。ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合した、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニックまたはトランス染色体非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスまたはラットから得られたB細胞を含むハイブリドーマにより製造されてもよい。モノクローナル抗体はまた、組換えにより改変された宿主細胞から、または抗体をコードする核酸配列のインビトロ転写および/もしくは翻訳をサポートする細胞抽出物を使用するシステムから製造されてもよい。
【0061】
用語「アイソタイプ」は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリンクラス(例えばIgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、もしくはIgM)またはその任意のアロタイプ、例えば重鎖定常領域遺伝子によりコードされるIgG1m(za)およびIgG1m(f)を指す。さらに、各々の重鎖アイソタイプは、カッパ(κ)またはラムダ(λ)軽鎖のいずれかと組み合わせられ得る。
【0062】
用語「全長抗体」は、本明細書において使用される場合、抗体が、断片ではなく、天然においてそのアイソタイプについて通常見出される特定のアイソタイプのドメインのすべて、例えば、IgG1抗体についてVH、CH1、CH2、CH3、ヒンジ、VLおよびCLドメインを含有することを指し示す。全長バリアント抗体において、重鎖および軽鎖定常および可変ドメインは、全長親または野生型抗体と比較した場合に抗体の機能的特性を向上させるアミノ酸置換を特に含有してもよい。本発明に係る全長抗体は、(i)完全な重鎖配列および完全な軽鎖配列を含む好適なベクター中にCDR配列をクローニングする工程、ならびに(ii)好適な発現系において完全な重鎖および軽鎖配列を発現させる工程を含む方法により製造されてもよい。CDR配列または全体可変領域配列のいずれかから出発した場合に全長抗体を製造することは当業者の知識の範囲内である。そのため、当業者は、本発明に係る全長抗体を生成する方法を知っている。
【0063】
用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用される場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変およびフレームワーク領域ならびにヒト免疫グロブリン定常ドメインを含む抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含んでもよい(例えば、変異、挿入または欠失が、インビトロでランダムもしくは部位特異的変異誘発によりまたはインビボで体細胞変異により導入されている)。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用される場合、別の非ヒト種、例えばマウスの生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフトされている抗体を含むことは意図されない。
【0064】
用語「ヒト化抗体」は、本明細書において使用される場合、ヒト抗体定常ドメインおよびヒト可変ドメインに対して高いレベルの配列相同性を含有するように改変されている非ヒト可変ドメインを含有する遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、一緒になって抗原結合性部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を相同的なヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)上にグラフトすることにより達成され得る(WO92/22653およびEP0629240を参照)。親抗体の結合親和性および特異性を完全に再構成するために、ヒトフレームワーク領域中への親抗体(すなわち、非ヒト抗体)からのフレームワーク残基の置換(復帰突然変異)が要求され得る。構造的相同性モデリングは、抗体の結合特性のために重要なフレームワーク領域中のアミノ酸残基を同定することを助け得る。そのため、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主に、非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰突然変異を任意で含むヒトフレームワーク領域、および完全にヒトの定常領域を含んでもよい。任意で、必ずしも復帰突然変異ではない、追加のアミノ酸改変が、好ましい特徴、例えば親和性および生化学的特性を有するヒト化抗体を得るために応用されてもよい。
【0065】
用語「Fc領域」または「Fcドメイン」は、本明細書において使用される場合、交換可能に使用されてもよく、抗体のN末端からC末端の方向において、少なくともヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域を含む重鎖定常領域の領域を指す。抗体のFc領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および補体システムの構成要素を含む、宿主組織または因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介してもよい。
【0066】
用語「親ポリペプチド」または「親抗体」は、他に記載されないか、または文脈に明確に矛盾しなければ、親ポリペプチドまたは親抗体は変異を有しないことを除いて、本発明に係るポリペプチドまたは抗体と同一であるポリペプチドまたは抗体として理解されるべきである。例えば、本発明の抗体IgG1-CD27-AはIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの親抗体である。
【0067】
用語「ヒンジ領域」は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指す。そのため、例えばヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、Kabat,E.A.et al.,Sequences of proteins of immunological interest.5th Edition-US Department of Health and Human Services,NIH publication No.91-3242,pp 662,680,689(1991)に示されているEu番号付け(Euインデックス)に従ってアミノ酸216~230に対応する。しかしながら、ヒンジ領域はまた、本明細書に記載されている他のサブタイプのいずれかであってもよい。
【0068】
用語「CH1領域」または「CH1ドメイン」は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリン重鎖のCH1領域を指す。そのため、例えばヒトIgG1抗体のCH1領域は、Kabat(前掲)に示されているEu番号付けに従うアミノ酸118~215に対応する。しかしながら、CH1領域はまた、本明細書に記載されている他のサブタイプのいずれかであってもよい。
【0069】
用語「CH2領域」または「CH2ドメイン」は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指す。そのため、例えばヒトIgG1抗体のCH2領域は、Kabat(前掲)に示されているEu番号付けに従うアミノ酸231~340に対応する。しかしながら、CH2領域はまた、本明細書に記載されている他のサブタイプのいずれかであってもよい。
【0070】
用語「CH3領域」または「CH3ドメイン」は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指す。そのため、例えばヒトIgG1抗体のCH3領域は、Kabat(前掲)に示されているEu番号付けに従うアミノ酸341~447に対応する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載されている他のサブタイプのいずれかであってもよい。
【0071】
用語「Fc媒介性エフェクター機能」または「Fcエフェクター機能」は、本明細書において使用される場合、交換可能に使用され、かつ、細胞膜上の標的または抗原に対するポリペプチドまたは抗体の結合の帰結である機能を指すことが意図され、ここで、Fc媒介性エフェクター機能は、ポリペプチドまたは抗体のFc領域に起因する。Fc媒介性エフェクター機能の例は、(i)C1q結合、(ii)補体活性化、(iii)補体依存性細胞傷害(CDC)、(iv)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、(v)Fcガンマ受容体(FcγR)結合、(vi)抗体依存性、FcγR媒介性抗原架橋、(vii)抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)、(viii)補体依存性細胞傷害(CDCC)、(ix)補体増強性細胞傷害、(x)抗体により媒介されるオプソニン化された抗体の補体受容体に対する結合、(xi)オプソニン化、および(xii)(i)~(xi)のいずれかの組合せを含む。
【0072】
用語「減少したFcエフェクター機能」または「減少したFc媒介性エフェクター機能」は、本明細書において使用される場合、交換可能に使用され、同じアッセイにおける親ポリペプチドまたは抗体のFcエフェクター機能と直接的に比較した場合に抗体について減少しているFcエフェクター機能を指すことが意図される。
【0073】
用語「不活性」(inertness)、「不活性の」(inert)または「非活性化性の」(non-activating)は、本明細書において使用される場合、少なくとも、いずれのFcγRにも結合することができないか、FcγRのFc媒介性架橋を誘導することができないか、または個々の抗体の2つのFc領域を介して標的抗原のFcγR媒介性架橋を誘導することができないか、またはC1qに結合することができないFc領域を指す。そのため、本発明のある特定の態様において、Fc領域は不活性である。したがって、ある特定の態様において、Fc媒介性エフェクター機能の一部またはすべては減弱されているか、または完全に存在しない。
【0074】
用語「オリゴマー化」は、本明細書において使用される場合、単量体を有限の重合度まで変換する過程を指すことが意図される。本発明に係る抗体は、例えば、細胞表面における、標的結合後にFc領域の非共有結合性会合を介して、オリゴマー、例えば六量体を形成することができる。Fc:Fc相互作用を通じた細胞表面結合での抗CD27抗体のオリゴマー化は、CD27細胞内シグナル伝達の活性化を結果としてもたらすCD27クラスタリングを増加させてもよい。細胞表面結合でオリゴマー、例えば六量体を形成するE345RまたはE430G変異を含む抗体の能力は、de Jong RN et al,PLoS Biol.2016 Jan 6;14(1):e1002344に記載されるように評価され得る。抗体のFc-Fc媒介性オリゴマー化は、隣接する抗体の間のFc領域の分子間会合を通じて(細胞)表面上の標的結合後に起こり、E345RまたはE430G変異(Euインデックスによる番号付け)の導入により増加される。
【0075】
用語「クラスタリング」は、本明細書において使用される場合、非共有結合性相互作用を通じた抗体のオリゴマー化を指す。
【0076】
用語「Fc-Fc増強性」(Fc-Fc enhancing)は、本明細書において使用される場合、抗体が細胞表面上でオリゴマー、例えば六量体を形成するように2つのFc領域含有抗体のFc領域の間の結合強度を増加させること、または該Fc領域の間の相互作用を安定化させることを指すことが意図される。この増強は、抗体のFc領域中のある特定のアミノ酸変異、例えばE345RまたはE430Gにより得られ得る。用語「一価抗体」は、本発明の文脈において、1つのみの抗原結合ドメイン(例えば1つのFabアーム)を用いて、抗原上の特異的なエピトープと相互作用することができる抗体分子を指す。二重特異性抗体の文脈において、「一価抗体結合」は、1つのみの抗原結合ドメイン(例えば1つのFabアーム)を用いる抗原上の1つの特異的なエピトープに対する二重特異性抗体の結合を指す。
【0077】
用語「単一特異性抗体」は、本発明の文脈において、1つのエピトープのみに対して結合特異性を有する抗体を指す。抗体は、単一特異性、一価抗体(すなわち1つのみの抗原結合領域を有する)または単一特異性、二価抗体(すなわち2つの同一の抗原結合領域を有する抗体)であってもよい。
【0078】
用語「二重特異性抗体」は、2つの非同一の抗原結合ドメイン、例えば2つの非同一のFabアームまたは非同一のCDR領域を有する2つのFabアームを含む抗体を指す。本発明の文脈において、二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープについて特異性を有する。そのようなエピトープは、同じまたは異なる抗原または標的上にあってもよい。エピトープが異なる抗原上にある場合、そのような抗原は、同じ細胞または異なる細胞、細胞タイプもしくは構造、例えば細胞外マトリックスもしくは小胞および可溶性タンパク質上にあってもよい。二重特異性抗体は、そのため、複数の抗原、例えば2つの異なる細胞を架橋する能力を有してもよい。本発明の特定の二重特異性抗体は、CD27および第2の標的に結合する能力を有する。
【0079】
用語「二価抗体」は、1もしくは2つの標的もしくは抗原上のエピトープに結合するか、または同じ抗原上の1もしくは2つのエピトープに結合する2つの抗原結合領域を有する抗体を指す。それゆえ、二価抗体は、単一特異性二価抗体または二重特異性二価抗体であってもよい。
【0080】
用語「アミノ酸」および「アミノ酸残基」は、本明細書において交換可能に使用されることがあり、限定的であると理解されるべきではない。アミノ酸は、各々のアミノ酸に特有の側鎖(R基)と共に、アミン(-NH2)およびカルボキシル(-COOH)官能基を含有する有機化合物である。本発明の文脈において、アミノ酸は、構造および化学的特徴に基づいて分類され得る。そのため、アミノ酸のクラスは、以下の表の1つまたは両方において反映され得る:
【0081】
(表1)R基の構造および一般的な化学的特徴付けに基づく主な分類
【0082】
(表2)アミノ酸残基の代替的な物理的および機能的分類
【0083】
1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換は、保存的または非保存的置換として分類されてもよい。本発明の文脈において、「保存的置換」は、1つのアミノ酸の、類似した構造的および/または化学的特徴を有する別のアミノ酸での置換、例えば1つのアミノ酸残基の、上記の2つの表のいずれかにおいて定義されている同じクラスの別のアミノ酸残基への置換であり:例えば、ロイシンはイソロイシンで置換されてもよく、というのは、それらは両方とも脂肪族の、分岐した疎水性物質であるからである。同様に、アスパラギン酸はグルタミン酸で置換されてもよく、その理由は、それらは両方とも小さい、負に荷電した残基であるからである。
【0084】
本発明の文脈において、抗体中の置換は、
元々のアミノ酸-位置-置換されたアミノ酸
として指し示され;
任意のアミノ酸残基を指し示すためのコード「Xaa」または「X」を含む、アミノ酸のためのよく認識されている表記法、3文字コード、または1文字コードへの参照が使用される。そのため、XaaまたはXは、20個の天然に存在するアミノ酸のいずれかを典型的には表し得る。用語「天然に存在する」は、本明細書において使用される場合、以下のアミノ酸残基;グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、およびシステインのいずれか1つを指す。よって、表記「K409R」または「Lys409Arg」は、抗体がアミノ酸位置409におけるリジンのアルギニンでの置換を含むことを意味する。
【0085】
所与の位置のアミノ酸の、任意の他のアミノ酸への置換は、
元々のアミノ酸-位置;または例えば「K409」
と称される。
【0086】
元々のアミノ酸および/または置換されたアミノ酸が、1つより多くの、但しすべてではないアミノ酸を含んでもよい改変について、該1つより多くのアミノ酸は、「,」または「/」により分離されてもよい。例えば、位置409におけるリジンの、アルギニン、アラニン、またはフェニルアラニンでの置換は、「Lys409Arg,Ala,Phe」または「Lys409Arg/Ala/Phe」または「K409R,A,F」または「K409R/A/F」または「K409→R、A、もしくはF」である。
【0087】
そのような指定は、本発明の文脈において交換可能に使用され得るが、同じ意味および目的を有し得る。
【0088】
さらには、用語「置換」は、任意の1もしくは他の19個の天然アミノ酸への、または他のアミノ酸、例えば非天然アミノ酸への置換を包含する。例えば、位置409におけるアミノ酸Kの置換は、以下の置換:409A、409C、409D、409E、409F、409G、409H、409I、409L、409M、409N、409Q、409R、409S、409T、409V、409W、409P、および409Yの各々を含む。なお、これは指定409Xと同等であり、Xは元々のアミノ酸以外の任意のアミノ酸を指定する。これらの置換はまた、K409A、K409Cなど、またはK409A,Cなど、またはK409A/C/などと指定されてもよい。同じことが、本明細書において言及される各々のおよびあらゆる位置に同様に適用されて、そのような置換のいずれのものも本明細書において特に含まれる。
【0089】
本発明に係る抗体はまたアミノ酸残基の欠失を含んでもよい。そのような欠失は「del」と表されることがあり、例えば、K409delという記載を含む。そのため、そのような態様において、位置409におけるリジンはアミノ酸配列から欠失されている。
【0090】
用語「宿主細胞」は、本明細書において使用される場合、発現ベクターが導入されている細胞を指すことが意図される。そのような用語は、特定の対象細胞を指すだけでなく、そのような細胞の子孫も指すことが意図されることが理解されるべきである。ある特定の改変が、変異または環境上の影響のいずれかに起因して後続する世代において起こり得るので、そのような子孫は親細胞に実際には同一でないことがあるが、本明細書において使用されるような用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。組換え宿主細胞は、例えば、トランスフェクトーマ、例えばCHO細胞、HEK-293細胞、Expi293F細胞、PER.C6細胞、NS0細胞、およびリンパ球性細胞、ならびに原核細胞、例えば大腸菌(E.coli)ならびに他の真核宿主、例えば植物細胞および真菌を含む。
【0091】
用語「トランスフェクトーマ」は、本明細書において使用される場合、抗体または標的抗原を発現する組換え真核宿主細胞、例えばCHO細胞、PER.C6細胞、NS0細胞、HEK-293細胞、Expi293F細胞、植物細胞、または、酵母細胞を含む、真菌を含む。
【0092】
本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列の間の配列同一性は、好ましくはバージョン5.0.0またはそれ以降のバージョンのEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277)のNeedleプログラムにおいて実装されているNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443-453)を使用して決定される。使用されるパラメーターは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップ伸長ペナルティ、およびEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最も長い同一性」(-nobriefオプションを使用して得られる)として標識されるNeedleの出力は、同一性パーセントとして使用され、以下:
(同一の残基×100)/(アライメントの長さ-アライメント中のギャップの総数)
のように算出される。
【0093】
類似した残基の保持は、BLASTプログラム(例えば、標準的な設定BLOSUM62、オープンギャップ=11および伸長ギャップ=1を使用するNCBIを通じて利用可能なBLAST 2.2.8)の使用により決定されるように、類似性スコアにより追加的にまたは代替的に測定されてもよい。好適なバリアントは、親配列に対して少なくとも約45%、例えば少なくとも約55%、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはより高い%(例えば、約99%)の類似性を典型的には呈する。
【0094】
用語「内部移行した」または「内部移行」は、本明細書において使用される場合、分子、例えば本発明に係る抗体が、細胞膜により飲み込まれ、細胞の内部に導かれる生物学的プロセスを指す。内部移行はまた「エンドサイトーシス」と称され得る。
【0095】
本明細書において使用される場合、用語「エフェクター細胞」は、免疫応答のエフェクター期に関与する免疫細胞を指す。例示的な免疫細胞は、骨髄またはリンパ系起源の細胞、例えばリンパ球(例えばB細胞および細胞溶解性T細胞(CTL)を含むT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、多形核細胞、例えば好中球、顆粒球、肥満細胞、および好塩基球を含む。一部のエフェクター細胞は、Fc受容体(FcgR)または補体受容体を発現し、特有の免疫機能を実行する。一部の態様において、エフェクター細胞、例えば、ナチュラルキラー細胞などは、ADCCを誘導する能力を有する。例えば、FcgRを発現する単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞およびクッパー細胞は、標的細胞の特異的な殺傷および/または免疫系の他の構成要素への抗原の提示、または抗原を提示する細胞への結合に関与する。一部の態様において、ADCCは、抗体駆動性の古典的な補体活性化によりさらに増強されて、標的細胞上の活性化されたC3断片の沈着を結果としてもたらすことができる。C3切断生成物は、骨髄細胞上に発現される補体受容体(CR)、例えばCR3のリガンドである。エフェクター細胞上のCRによる補体断片の認識は、Fc受容体媒介性ADCCの増強を促進し得る。一部の態様において、抗体駆動性の古典的な補体活性化は標的細胞上のC3断片に繋がる。これらのC3切断生成物は、直接的な補体依存性細胞傷害(CDCC)を促進し得る。一部の態様において、エフェクター細胞は、標的抗原、標的粒子または標的細胞を貪食することがあり、これは、抗体結合に依存し、エフェクター細胞により発現されるFcγRにより媒介され得る。エフェクター細胞上の特定のFcRまたは補体受容体の発現は、液性因子、例えばサイトカインにより調節され得る。例えば、FcγRIの発現は、インターフェロンγ(IFN γ)および/またはG-CSFにより上方調節されることが見出されている。この増強された発現は、標的に対するFcγRI保有細胞の細胞傷害活性を増加させる。エフェクター細胞は、標的抗原を貪食することができるか、または標的細胞を貪食もしくは溶解することができる。一部の態様において、抗体駆動性の古典的な補体活性化は標的細胞上のC3断片に繋がる。これらのC3切断生成物は、エフェクター細胞による直接的なファゴサイトーシスを、または抗体媒介性ファゴサイトーシスを増強することにより間接的にファゴサイトーシスを促進し得る。抗体が不活性のFc領域を有する本明細書におけるある特定の態様において、抗体はFc媒介性エフェクター機能を誘導しない。
【0096】
「エフェクターT細胞」または「Teffs」または「Teff」は、本明細書において使用される場合、免疫応答の機能、例えば腫瘍細胞の殺傷および/または身体からの腫瘍細胞のクリアランスを結果としてもたらすことができる抗腫瘍免疫応答の活性化を実行するTリンパ球を指す。Teff表現型の例はCD3CD4およびCD3CD8を含む。Teffは、マーカー、例えばIFNγ、グランザイムBおよびICOSを分泌、含有、または発現し得る。Teffはこれらの表現型に完全に制限され得ないことが理解される。
【0097】
「メモリーT細胞」は、本明細書において使用される場合、感染が除去された後の長い時間的期間にわたり身体中に残存するTリンパ球を指す。メモリーT細胞の例はセントラルメモリーT細胞(CD45RA-CCR7+)およびエフェクターメモリーT細胞(CD45RA-CCR7-)を含む。メモリーT細胞はこれらの表現型に完全に制限され得ないことが理解される。
【0098】
「制御性T細胞」または「Tregs」または「Treg」は、本明細書において使用される場合、他のT細胞および/または他の免疫細胞の活性を、通常はそれらの活性を抑制することにより、調節するTリンパ球を指す。Treg表現型の例はCD3CD4CD25CD127dimである。TregはFoxp3をさらに発現し得る。Tregはこの表現型に完全に制限され得ないことが理解される。
【0099】
本明細書において使用される場合、用語「補体活性化」は、表面上の抗体-抗原複合体に結合するC1と呼ばれる大きい高分子複合体により開始される古典的な補体経路の活性化を指す。C1は、6つの認識タンパク質C1qおよびセリンプロテアーゼのヘテロ四量体、C1r2C1s2からなる複合体である。C1は、C4のC4aおよびC4bへのならびにC2のC2aおよびC2bへの切断と共に開始される切断反応のシリーズを伴う古典的な補体カスケードの早期事象における第1のタンパク質複合体である。C4bは沈着され、C2aと共にC3転換酵素と呼ばれる酵素活性転換酵素を形成し、C3転換酵素は補体構成要素C3をC3bおよびC3aに切断し、これはC5転換酵素を形成させる。このC5転換酵素はC5をC5aおよびC5bに分割し、最後の構成要素は膜上に沈着され、次いで補体活性化の後期事象のトリガーとなり、該後期事象において末期補体構成要素C5b、C6、C7、C8およびC9は膜侵襲複合体(MAC)にアセンブルする。補体カスケードは、補体依存性細胞傷害(CDC)としても公知の、細胞の溶解を引き起こす細胞膜中のポアの作出を結果としてもたらす。抗体が不活性のFc領域を有する本明細書におけるある特定の態様において、抗体は補体活性化を誘導しない。
【0100】
補体活性化は、C1q結合有効性、CDC動態CDCアッセイ(WO2013/004842、WO2014/108198に記載されている)を使用することにより、またはBeurskens et al.,J Immunol April 1,2012 vol.188 no.7,3532-3541に記載されているC3bおよびC4bの細胞沈着の方法により評価され得る。
【0101】
用語「C1q結合」は、本明細書において使用される場合、その抗原に結合した抗体に対するC1qの結合の文脈におけるC1qの結合を指すことが意図される。その抗原に結合した抗体は、本明細書に記載される文脈においてインビボおよびインビトロの両方で起こると理解されるべきである。本明細書の実施例8に記載されるように、C1q結合は、例えば、人工的な表面上に固定化された抗体を使用することにより、または細胞もしくはビリオン表面上の予め決定された抗原に結合した抗体を使用することにより評価され得る。抗体オリゴマーに対するC1qの結合は、高いアビディティの結合を結果としてもたらす多価相互作用として本明細書において理解されるべきである。例えば本発明の抗体における変異の導入の結果としてもたらされる、C1q結合における減少は、変異した抗体のC1q結合をその親抗体(同じアッセイ内での変異を有しない本発明の抗体)のC1q結合と比較することにより測定されてもよい。
【0102】
用語「処置」は、症状または疾患状態の緩和、寛解、停止、または根絶(治癒)の目的を伴う有効量の本発明の治療的に活性の抗体の投与を指す。
【0103】
用語「有効量」または「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要な、投与量および時間的期間についての効果的な量を指す。抗体の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因に従って変化してもよい。治療有効量はまた、抗体バリアントの任意の毒性または有害効果を治療的に有益な効果が凌ぐ量である。
【0104】
用語「薬物動態プロファイル」は、本明細書において使用される場合、本明細書の実施例12に記載されるように経時的な血漿IgGレベルとして決定され得る。
【0105】
本発明の特有の態様
第1の局面において、本発明は、ヒトCD27に結合する能力を有する少なくとも1つの抗原結合領域を含む抗体であって、それぞれSEQ ID NO:5、6、および7に示されている配列を含む重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:9、10および11に示されている配列を含む軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、抗体を提供する。さらなる局面において、本発明は、それぞれSEQ ID NO:5、6、および7に示されている配列を含むVH領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:9、10および11に示されている配列を含むVL領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む前記抗原結合領域の2つを含む抗体を提供する。本発明により、ヒトCD27に結合することおよびさらにA59Tの変異を含むヒトCD27のバリアントに結合することができる抗CD27抗体が提供される。本発明の一態様において、抗体は、例えばT細胞上のCD27に結合し、その標的への結合においてアゴニスト性である。本発明により、T細胞の活性化および増殖を刺激する抗体が提供される。抗体は、T細胞のメモリー形成および生存をさらに刺激してもよい。そのような抗体は、例えばがんの処置において有用である。抗体は、抗体の毒物学研究のために有用であるカニクイザルCD27に結合する能力をさらに有する。
【0106】
抗体のVHおよびVL中の変異は、例えば、その標的抗原に対する抗体の親和性を増加させるため、その潜在的な免疫原性を低減させるためおよび/または宿主細胞により発現される抗体の収率を増加させるために為され得ることが当技術分野において周知である。よって、一部の態様において、本発明に係る抗体のCDR、VHおよび/またはVL配列のバリアント、特にはそれぞれSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:8に示されているVHおよび/またはVL領域の機能的なバリアントを含む抗体もまた想定される。機能的なバリアントは、例えば、1つまたは複数のCDRにおいて、親VHおよび/またはVL配列と比較して1つまたは複数のアミノ酸において異なってもよいが、抗原結合領域が親抗体の親和性および/または特異性の少なくとも実質的な割合(少なくとも約50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント、95パーセントもしくはより高いパーセント)を保持するか、またはそのすべてを保持することを依然として可能とする。典型的には、そのような機能的なバリアントは、親配列に対して意義深い配列同一性を保持する。例示的なバリアントは、12またはそれ未満、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えばアミノ酸残基の置換、挿入、または欠失により、それぞれの親VHまたはVL領域から異なるバリアントを含む。例示的なバリアントは、主に保存的アミノ酸置換により親配列のVHおよび/またはVLおよび/またはCDR領域から異なるバリアントを含み;例えば、バリアント中のアミノ酸置換の12、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個は保存的であることができる。本発明のさらなる局面において、抗体は、それぞれVH CDR領域中および/またはVL CDR領域中に最大で1、2または3個の変異を含んでもよい。そのような変異は置換であってもよい。そのような置換は、本発明の抗CD27抗体の結合親和性および/または結合特異性を重大に変化させないことが好ましい。よって、本発明は、本発明の抗CD27抗体のバリアントであって、SEQ ID NO:5、6、および7に示されているVH領域CDR配列、ならびにSEQ ID NO:9、10および11に示されているVL領域CDR配列を含む抗体と同じ機能的な特色を有する、バリアントを包含する。
【0107】
本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:4に示されているVH領域に対して少なくとも80%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:4に示されているVH領域に対して少なくとも85%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:4に示されているVH領域に対して少なくとも90%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:4に示されているVH領域に対して少なくとも95%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:4に示されているVH領域に対して少なくとも96%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:4に示されているVH領域に対して少なくとも97%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:4に示されているVH領域に対して少なくとも98%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:4に示されているVH領域に対して少なくとも99%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:4に示されている配列を含むVH領域を含む。
【0108】
本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:8に示されているVH領域に対して少なくとも80%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:8に示されているVH領域に対して少なくとも85%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:8に示されているVH領域に対して少なくとも90%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:8に示されているVH領域に対して少なくとも95%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:8に示されているVH領域に対して少なくとも96%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:8に示されているVH領域に対して少なくとも97%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:8に示されているVH領域に対して少なくとも98%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:8に示されているVH領域に対して少なくとも99%同一の配列を含むVH領域を含む。本発明の別の局面において、抗体は、SEQ ID NO:8に示されている配列を含むVH領域を含む。
【0109】
本発明の別の局面において、抗体は、それぞれSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:8に示されている配列を含むVHおよびVL領域を含む。
【0110】
1つの局面において、本発明の抗体は単離された抗体である。
【0111】
1つの態様において、抗体はヒト抗体である。別の態様において、抗体はヒト化抗体である。別の局面において、抗体はキメラ抗体である。
【0112】
本発明の抗体は好ましい態様において全長抗体である。よって、本発明の抗体は、軽鎖定常領域(CL)および重鎖定常領域(CH)をさらに含んでもよい。CHは、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域を好ましくは含む。
【0113】
本発明に係る抗体は、ヒトカッパ軽鎖である軽鎖定常領域を含んでもよい。別の局面において、それはヒトラムダ軽鎖定常領域を含んでもよい。
【0114】
本発明に係る抗体は、ヒトIgGアイソタイプの重鎖定常領域である重鎖定常領域を好ましくはさらに含んでもよい。それは、改変されたヒトIgGの定常領域を任意で含んでもよい。そのようなヒトIgGは、CH2およびCH3領域を含むFc領域を含む。Fc領域中のIgG定常領域を改変することにより、例えば、抗体のFcエフェクター機能を調節すること、またはFc-Fc相互作用およびそれによりクラスター、例えば六量体を形成する抗体の傾向を増加させることが可能である。本発明の1つの局面において、ヒトIgGまたは改変されたヒトIgGは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4より選択される。1つの態様において、それはIgG1である。別の局面において、それはIgG2である。さらに別の局面において、それはIgG3である。さらなる局面において、それはIgG4である。1つの特定の局面において、IgGは、Fc領域中に1つまたは複数のアミノ酸置換を含む改変されたヒトIgGである。1つの態様において、それは、Fc領域中に1つまたは複数のアミノ酸置換を含む改変されたヒトIgG1であってもよい。本発明のさらなる局面において、IgG1は、Fc領域中に2つまたはより多くのアミノ酸置換を含む。1つの態様において、IgG1 Fc領域は2つのアミノ酸置換を有する。
【0115】
本発明のさらなる局面において、改変されたヒトIgGの重鎖定常領域は、Fc領域中に最大で10個のアミノ酸置換を含む。別の局面において、それは最大9個のアミノ酸置換を含む。別の局面において、それは最大8個のアミノ酸置換を含む。別の局面において、それは最大7個のアミノ酸置換を含む。別の局面において、それは最大6個のアミノ酸置換を含む。別の局面において、それは最大5個のアミノ酸置換を含む。別の局面において、それは最大4個のアミノ酸置換を含む。別の局面において、それは最大3個のアミノ酸置換を含む。別の局面において、それはFc領域中に最大2個のアミノ酸置換を含む。
【0116】
EUインデックスに従って番号付けされるヒトIgG1重鎖中のE430、E345およびS440に対応する位置におけるアミノ酸残基における変異は、CDCを誘導する抗体の能力を向上させることができる。理論により縛られないが、これらの位置における1つまたは複数のアミノ酸を置換することにより、抗体のオリゴマー化が刺激され、それにより、Fc媒介性エフェクター機能をモジュレートして、例えば、C1q結合、補体活性化、CDC、ADCP、内部移行、またはインビボ有効性を提供し得る他の関連する機能を増加させることができると考えられる。
【0117】
本発明は、1つの局面において、抗原結合領域およびバリアントFc領域を含むバリアント抗体に関する。
【0118】
ある特定の態様において、ヒトCD27に結合する抗体バリアントは、
(a)SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域、ならびにE430、E345およびS440(アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる)の1つまたは複数において変異を含むヒトIgG1 CH領域を含む重鎖;
(b)SEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖
を含む。
【0119】
他のある特定の態様において、ヒトCD27に結合する抗体バリアントは、
(a)SEQ ID NO:4を含むVH領域、ならびにE430、E345およびS440(アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる)の1つまたは複数において変異を含むヒトIgG1 CH領域を含む重鎖、ならびに
(b)SEQ ID NO:8を含むVL領域を含む軽鎖
を含む。
【0120】
本発明のバリアント抗体は、バリアントFc領域またはP329、E430およびE345の1つもしくは複数において変異を含むバリアントヒトIgG1 CH領域を含む。以下において、Fc領域中の変異への言及は、ヒトIgG1 CH領域中の変異に同様に適用されてもよく、逆もまた成り立つ。
【0121】
本明細書に記載されるように、Fc領域中の変異させるアミノ酸の位置は、Euインデックスに従って番号付けされる場合に、天然に存在する(野生型)ヒトIgG1重鎖中のその位置に関して(すなわち、該位置に「対応して」)与えられ得る。そのため、親Fc領域が1つもしくは複数の変異を既に含有する場合および/または親Fc領域が、例えば、IgG2、IgG3もしくはIgG4 Fc領域である場合、Euインデックスに従って番号付けされるヒトIgG1重鎖中のアミノ酸残基、例えば、E430などに対応するアミノ酸の位置は、アライメントにより決定され得る。特に、親Fc領域は、ヒトIgG1重鎖配列中のE430に対応する位置における残基を同定するために野生型ヒトIgG1重鎖配列とアライメントされる。表3に示される異なるヒトIgG1アロタイプのいずれか1つを含む、任意の野生型ヒトIgG1定常領域アミノ酸配列はこの目的のために有用であり得る。
【0122】
本発明の1つの局面において、IgG Fc領域中の改変は、同じアイソタイプ、例えばIgG1の野生型IgG Fc領域を含むことを除いて同一の抗体と比較して増加したCD27アゴニズムを誘導する。これは、例えば、Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置E345および/またはE430に対応するアミノ酸位置においてE以外のアミノ酸を導入することにより得られてもよい。本発明の1つの態様において、Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置E345に対応する位置におけるアミノ酸残基は、A、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、P、R、S、T、V、WおよびYを含む群より選択される。本発明の別の局面において、Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置E430に対応する位置におけるアミノ酸残基は、A、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、P、R、S、T、V、Wを含む群より選択される。
【0123】
好ましい態様において、Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置E345に対応する位置におけるアミノ酸残基はRである。よって、本発明の抗体は、Fc領域中のE345R置換を含んでもよい。本発明の別の局面において、Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置E430に対応する位置におけるアミノ酸残基はGである。よって、本発明の抗体は、Fc領域中のE430G置換を含んでもよい。別の態様において、抗体は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Yを含む群より選択されるアミノ酸置換を含む。
【0124】
本発明により、抗体結合で細胞表面上のCD27の抗体依存的なクラスタリングに繋がり得る増強したFc-Fc相互作用を有し、それにより本発明の抗体のアゴニズムを増加させる抗体が提供される。
【0125】
本発明の抗体の別の態様において、Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置P329に対応する位置におけるアミノ酸残基は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、WおよびYを含む群より選択されるアミノ酸で置換される。よって、本発明の抗体は、位置329において変異をさらに含んでもよい。
【0126】
本発明のさらなる局面において、抗体は、Eu番号付け従うヒトIgG1重鎖中の位置P329に対応する位置においてアミノ酸残基Rを有する。よって、本発明の抗体は、Fc領域中にP329R置換を有してもよい。理論により縛られないが、(例えばSEQ ID NO:13に示されるように)Fc領域中のE345R変異を含む本発明の抗体は増加した血清クリアランスを有すると考えられる。位置329における変異、例えば(例えばSEQ ID NO:15に示されるように)P329Rをさらに導入することは、例えばSEQ ID NO:12に示されるwt IgG1を含む抗体のレベルまで本発明の抗体のクリアランスを回復させることを本発明者らは見出した。
【0127】
別の好ましい態様において、Eu番号付けに従うヒトIgG1重鎖中の位置P329およびE345に対応する位置におけるアミノ酸残基は両方ともRである。本発明により、同じVHおよびVL領域を含み、かつ位置329において野生型アミノ酸Pおよび位置345において野生型アミノ酸Eを含むという例外と共に同一のIgG1重鎖定常領域を含む抗体と比較した場合に、増加したCD27受容体アゴニズムおよび同等の薬物動態特性、例えば血清クリアランスなどを有する抗体が提供される。
【0128】
そのため、一態様において、本発明は、CD27への結合において増加した受容体アゴニズムを有し、かつ、同じVHおよびVL領域を含むが例えばSEQ ID NO:12に示されるものなどの野生型IgG1重鎖定常領域を含む抗体の薬物動態特性と比較した場合に、同等の、例えば類似したまたは同一の薬物動態特性である薬物動態特性をさらに有するCD27結合性抗体を提供する。換言すれば、本発明は、野生型IgG1重鎖定常領域を含むことを除いて同一のCD27結合性抗体の薬物動態特性と重大に異ならない薬物動態特性を有するCD27結合性抗体を提供する。
【0129】
本発明の他の態様において、抗体は、先行するセクションのいずれか1つに係るバリアントFc領域を含み、バリアントFc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4 Fc領域からなる群より選択されるヒトIgG Fc領域のバリアントである。すなわち、E430およびE345およびP329に対応するアミノ酸残基の1つまたは複数における変異は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4 Fc領域からなる群より選択されるヒトIgG Fc領域である親Fc領域において為される。好ましくは、親Fc領域は、天然に存在する(野生型)ヒトIgG Fc領域、例えばヒト野生型IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4 Fc領域、またはその混合されたアイソタイプである。そのため、バリアントFc領域は、(E430およびE345およびP329より選択されるアミノ酸残基の1つまたは複数における)記載される変異を除いて、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4アイソタイプ、またはその混合されたアイソタイプであってもよい。
【0130】
1つの態様において、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は野生型ヒトIgG1アイソタイプである。
【0131】
そのため、バリアントFc領域は、(E430またはE345またはP329における)記載される変異を除いて、ヒトIgG1 Fc領域であってもよい。
【0132】
特有の態様において、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域はヒト野生型IgG1m(f)アイソタイプである。
【0133】
特有の態様において、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域はヒト野生型IgG1m(z)アイソタイプである。
【0134】
特有の態様において、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域はヒト野生型IgG1m(a)アイソタイプである。
【0135】
特有の態様において、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域はヒト野生型IgG1m(x)アイソタイプである。
【0136】
特有の態様において、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は、混合されたアロタイプのヒト野生型IgG1、例えばIgG1m(za)、IgG1m(zax)、またはIgG1m(fa)などである。
【0137】
そのため、バリアントFc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は、(E430またはE345またはP329における)記載される変異を除いて、ヒトIgG1m(f)、IgG1m(a)、IgG1m(x)、IgG1m(z)アロタイプまたはそのいずれか2つもしくはより多くの混合されたアロタイプであってもよい。
【0138】
特有の態様において、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域はヒト野生型IgG1m(za)アイソタイプである。
【0139】
特有の態様において、親Fc領域はヒト野生型IgG2アイソタイプである。
【0140】
特有の態様において、親Fc領域はヒト野生型IgG3アイソタイプである。
【0141】
特有の態様において、親Fc領域はヒト野生型IgG4アイソタイプである。
【0142】
野生型ヒトIgGアイソタイプおよびIgG1アロタイプの特有の例のCH領域アミノ酸配列は表3に示される。
【0143】
別の局面において、本発明は、SEQ ID No 12、13、14、15、18、19、20、21、22、23、27、28、29、30、31、32、33、34および36を含む群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む抗体を提供する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:13のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:15のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:19のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:20のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:21のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:22のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:23のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:27のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:28のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:29のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:31のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:32のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:33のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:34のアミノ酸配列を有する。1つの局面において、重鎖定常領域はSEQ ID NO:36のアミノ酸配列を有する。
【0144】
一態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:15に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0145】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:12に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0146】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:13に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0147】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:14に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0148】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:18に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0149】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:19に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0150】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:20に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0151】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:21に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0152】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:22に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0153】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:23に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0154】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:27に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0155】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:28に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0156】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:29に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0157】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:30に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0158】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:31に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0159】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:32に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0160】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:33に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0161】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:34に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0162】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
a. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
b. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
c. SEQ ID No:36に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
d. SEQ ID No:16に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0163】
上記の抗体の代替的な態様において、CL領域は、SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列であってもよい。
【0164】
一態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:15に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0165】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:12に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0166】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:13に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0167】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:14に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0168】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:18に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0169】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:19に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0170】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:20に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0171】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:21に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0172】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:22に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0173】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:23に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0174】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:27に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0175】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:28に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0176】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:29に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0177】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:30に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0178】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:31に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0179】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:32に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0180】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:33に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0181】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:34に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0182】
別の態様において、本発明に係る抗体は、
e. SEQ ID No:4に示されるアミノ酸配列を含むVH領域
f. SEQ ID No:8に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
g. SEQ ID No:36に示されるアミノ酸配列を含むCH領域および
h. SEQ ID No:17に示されるアミノ酸配列を含むCL領域
を含む。
【0183】
別の態様において、本発明に係る抗体は、SEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列を含む重鎖およびSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0184】
別の態様において、本発明に係る抗体は、SEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列を含む重鎖およびSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0185】
さらに別の局面において、本発明は、改変を除いて同一の抗体と比べてより低い程度までFc媒介性エフェクター機能を抗体が誘導するように改変された重鎖定常領域を含む抗体を提供する。その例は、P329RおよびE345R置換を含む本発明のCD27結合性抗体である。そのような抗体は、P329R置換を含まないことを除いて同じ配列を含む抗体と比較して、そしてまたP329RおよびE345R置換を含まないことを除いて同じ配列を含む同じ抗体、例えば野生型IgG1重鎖と比較して、より低い程度まで1つまたは複数のFc媒介性エフェクター機能を誘導する。1つの態様において、Fc媒介性エフェクター機能は少なくとも20%減少している。別の局面において、Fc媒介性エフェクター機能は少なくとも30%減少している。別の局面において、Fc媒介性エフェクター機能は少なくとも40%減少している。別の局面において、Fc媒介性エフェクター機能は少なくとも50%減少している。別の局面において、Fc媒介性エフェクター機能は少なくとも60%減少している。別の局面において、Fc媒介性エフェクター機能は少なくとも70%減少している。別の局面において、Fc媒介性エフェクター機能は少なくとも80%減少している。別の局面において、Fc媒介性エフェクター機能は少なくとも90%減少している。別の局面において、抗体は、1つまたは複数のFc媒介性エフェクター機能を誘導しない。減少しているかまたは全く誘導されない1つまたは複数のFcエフェクター機能は、以下の群:補体依存性細胞傷害(CDC)、補体依存性細胞媒介性細胞傷害(CDCC)、補体活性化、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性ファゴサイトーシス(ADCP)、C1q結合およびFcγR結合より選択されてもよい。よって、1つの態様において、本発明の抗体は、野生型IgG1 HC定常領域を除いて同一の抗体と比べて少なくとも20%、例えば少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%減少しているか、または少なくとも90%減少している程度までCDCを誘導する。別の態様において、本発明の抗体はCDCを誘導しない。
【0186】
別の局面において、本発明の抗体は、野生型IgG1 HC定常領域を有することを除いて同一の抗体と比べて少なくとも20%、例えば少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%減少しているか、または少なくとも90%減少している程度までCDCCを誘導する。別の態様において、本発明の抗体はCDCCを誘導しない。
【0187】
別の局面において、本発明の抗体は、野生型IgG1 HC定常領域を有することを除いて同一の抗体と比べて少なくとも20%、例えば少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%減少しているか、または少なくとも90%減少している程度までADCCを誘導する。別の態様において、本発明の抗体はADCCを誘導しない。
【0188】
別の局面において、本発明の抗体は、野生型IgG1 HC定常領域を有することを除いて同一の抗体と比べて少なくとも20%、例えば少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%減少しているか、または少なくとも90%減少している程度までADCPを誘導する。別の態様において、本発明の抗体はADCPを誘導しない。
【0189】
別の局面において、本発明の抗体は、野生型IgG1 HC定常領域を有することを除いて同一の抗体と比べて少なくとも20%、例えば少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%減少しているか、または少なくとも90%減少している程度までC1q結合を誘導する。別の態様において、本発明の抗体はC1q結合を誘導しない。好ましくはC1q結合は実施例8におけるように決定される。
【0190】
別の局面において、本発明の抗体は、野生型IgG1 HC定常領域を有することを除いて同一の抗体と比べて少なくとも20%、例えば少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%減少しているか、または少なくとも90%減少している程度までFcγR結合を誘導する。別の態様において、本発明の抗体はFcγR結合を誘導しない。好ましくはFcγR結合は実施例9におけるように決定される。
【0191】
1つの態様において、本発明の抗体は、P329R置換を含まないことを除いて同じアミノ酸配列を含む抗体と比較して低減されたC1q結合および低減されたFcγR結合を有する。
【0192】
1つの態様において、本明細書における任意の局面または態様に係る抗体は、記載される変異を除いて、ヒト抗体である。
【0193】
本発明の一態様において、抗体は一価抗体である。
【0194】
別の態様において、抗体は二価抗体である。
【0195】
さらに、本発明の抗体は単一特異性抗体であってもよい。
【0196】
1つの態様において、本明細書における任意の局面または態様に係る抗体は、モノクローナル抗体、例えばヒトモノクローナル抗体、例えばヒト二価モノクローナル抗体、例えばヒト二価全長モノクローナル抗体である。
【0197】
好ましい態様において、本明細書における任意の局面または態様に係る抗体は、Fc領域中の任意の記載される変異を除いて、IgG1抗体、例えば全長IgG1抗体、例えばヒト全長IgG1抗体、任意でヒトモノクローナル全長二価IgG1,κ抗体、例えばヒトモノクローナル全長二価IgG1m(f),κ抗体である。
【0198】
本発明に係る抗体は、有利には、同じエピトープに結合する2つの抗原結合領域を含む、二価単一特異性フォーマットである。しかしながら、抗原結合領域の1つが異なるエピトープに結合する二重特異性フォーマットもまた想定される。そのため、本明細書における任意の局面または態様に係る抗体は、文脈に矛盾しなければ、単一特異性抗体または二重特異性抗体のいずれかであることができる。
【0199】
よって、別の態様において、本発明の抗体は、本明細書に記載されているヒトCD27に結合する能力を有する第1の抗原結合領域を含み、かつヒトCD27上の異なるエピトープに結合する能力を有する第2の抗原結合領域を含む、二重特異性抗体である。別の態様において、本発明の抗体は、本明細書に記載されているヒトCD27に結合する能力を有する第1の抗原結合領域を含み、かつ異なる標的に結合する能力を有する第2の抗原結合領域を含む二重特異性抗体である。そのような標的は、CD27と異なる細胞上または同じ細胞上にあってもよい。
【0200】
本発明の一局面において、抗体は、SEQ ID NO:1に示されている配列を有するヒトCD27に結合する能力を有する。しかしながら、ヒトCD27は、一部の個体において、そのバリアントとして発現され得る。そのため、別の局面において、本発明の抗体は、ヒトCD27バリアント、例えばSEQ ID NO:2に示されているヒトCD27バリアントなどに結合する能力をさらに有する。別の態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:3に示されるものなどの、カニクイザルCD27に結合する能力をさらに有する。
【0201】
本発明のさらなる態様において、抗体は、CD27発現ヒトT細胞に結合する能力を有する。
【0202】
本発明の別の態様において、抗体は、CD27発現カニクイザルT細胞に結合する能力を有する。
【0203】
本発明の1つの態様において、全長IgG1抗体は、HCのC末端リジンが切断されている。そのような抗体は「全長抗体」とも考えられる。
【0204】
本発明の別の態様において、抗体は、ヒトT細胞、例えばCD4およびCD8T細胞、例えばヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞の増殖を誘導する能力を有する。そのような活性は、本明細書における実施例6または7に記載されるようにアッセイされてもよい。
【0205】
本発明の別の態様において、抗体は、本明細書の実施例2に記載されているものなどのヒトCD27発現JurkatレポーターT細胞の活性化を誘導する能力を有する。
【0206】
本発明の別の態様において、抗体は、本明細書の実施例11に記載されているものなどのFcγ受容体IIb架橋の非存在下のヒトCD27発現JurkatレポーターT細胞の活性化を誘導する能力を有する。
【0207】
本発明の別の態様において、抗体は、セントラルメモリーT細胞表現型を有するCD4+およびCD8T細胞の増殖を誘導する能力を有する。
【0208】
本発明の別の態様において、抗体は、IFNガンマの産生を誘導する能力を有する。
【0209】
抗体は、様々な疾患の処置において使用され得る治療剤として周知である。それを必要とする対象への抗体の投与のための別の方法は、前記抗体のインビボ発現のための前記抗体をコードする核酸または核酸の組合せの投与を含む。
【0210】
それゆえ、1つの局面において、本発明はまた、本発明に係る抗体の重鎖をコードする核酸であって、前記重鎖が、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域ならびにヒトIgG1 CH領域を含む、核酸に関する。
【0211】
別の局面において、本発明はまた、本発明に係る抗体の重鎖をコードする核酸であって、前記重鎖が、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域、ならびにヒトIgG1 CH領域を含み、E430およびE345(アミノ酸残基はEuインデックスに従って番号付けされる)の1つまたは両方において変異を有する、前記核酸に関する。
【0212】
別の局面において、本発明はまた、本発明に係る抗体の重鎖をコードする核酸であって、前記重鎖が、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域、ならびにP329およびE345(アミノ酸残基はEuインデックスに従って番号付けされる)の1つまたは両方において変異を有するヒトIgG1 CH領域を含む、核酸に関する。
【0213】
1つの局面において、本発明はまた、本発明に係る抗体をコードする、核酸または核酸の組合せに関する。
【0214】
一部の態様において、本発明は、
a)SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3、SEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含む抗原結合領域、ならびに
b)ヒトIgG1重鎖中のP329およびE345に対応する1つまたは両方のアミノ酸において変異を含むバリアントFc領域であって、該アミノ酸残基がEuインデックスに従って番号付けされる、バリアントFc領域
を含む抗体をコードする核酸または核酸の組合せに関する。
【0215】
1つの態様において、本発明の抗体は1つの核酸によりコードされる。そのため、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列は1つの核酸配列または同じ核酸分子中に存在する。
【0216】
別の態様において、本発明の抗体は、核酸配列の組合せにより、典型的には2つの核酸配列によりコードされる。1つの態様において、核酸配列の前記組合せは、前記抗体の重鎖をコードする核酸配列および前記抗体の軽鎖をコードする核酸配列を含む。
【0217】
一部の態様において、本発明は、
a)SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域、ならびにP329およびE345(アミノ酸残基はEuインデックスに従って番号付けされる)の1つまたは両方において変異を含むヒトIgG1 CH領域を含む重鎖;
b)SEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖
を含む抗体をコードする核酸配列または核酸配列の組合せに関する。
【0218】
1つの態様において、本発明の抗体は1つの核酸によりコードされる。そのため、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列は1つの核酸または同じ核酸分子中に存在する。
【0219】
別の態様において、本発明の抗体は、核酸配列の組合せにより、典型的には2つの核酸配列によりコードされる。1つの態様において、核酸配列の前記組合せは、前記抗体の重鎖をコードする核酸配列および前記抗体の軽鎖をコードする核酸配列を含む。
【0220】
上記されるように、核酸配列は、それを必要とする対象に治療用タンパク質、例えば抗体を供給するための手段として使用されてもよい。
【0221】
一部の態様において、前記核酸はデオキシリボ核酸(DNA)であってもよい。治療用タンパク質、例えば抗体のインビボ発現のために好適なDNAおよびDNAを調製する方法は当業者に周知であり、Patel A et al.,2018,Cell Reports 25,1982-1993に記載されるものを含むがそれに限定されない。
【0222】
一部の態様において、前記核酸は、リボ核酸(RNA)、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)であってもよい。一部の態様において、mRNAは、天然に存在するヌクレオチドのみを含んでもよい。一部の態様において、mRNAは、修飾されたヌクレオチドを含んでもよく、修飾されたは、前記ヌクレオチドが、天然に存在するヌクレオチドとは化学的に異なることを指す。一部の態様において、mRNAは、天然に存在するヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドの両方を含んでもよい。
【0223】
対象における治療用タンパク質、例えば抗体のインビボ発現のために好適な異なる核酸配列は当業者に周知である。例えば、対象における治療用抗体の発現のために好適なmRNAは、多くの場合に、オープンリーディングフレーム(ORF)を含み、ORFは、特有の配列を含む非翻訳領域(UTR)により隣接されており、かつ5'および3'末端は、キャップ構造およびポリ(A)テイルにより形成されている(例えばSchlake et al.,2019,Molecular Therapy Vol.27 No 4 Aprilを参照)。
【0224】
インビボ発現のために好適なRNAおよびRNA分子、例えばmRNAの最適化方法の例は、US9254311;US9221891;US20160185840およびEP3118224に記載されているものを含むが、これらに限定されない。
【0225】
インビボ発現のために対象に投与されるネイキッドの核酸配列は、分解および/または対象において免疫原性応答を引き起こす傾向がある。さらには、核酸配列によりコードされる抗体のインビボ発現のために、前記核酸配列は、核酸配列が対象の細胞に入るために好適な形態で典型的には投与される。インビボ発現のために核酸配列を送達する異なる方法が存在し、機械的な手段を伴う方法および化学的な手段を伴う方法の両方を含む。例えば、そのような方法は、エレクトロポレーションまたは皮膚への核酸のタトゥーを伴ってもよい(Patel et al.,2018,Cell Reports 25,1982-1993)。対象への核酸配列の投与のために好適な他の方法は、好適な製剤中の核酸の投与を伴う。そのため、本発明はまた、本発明の核酸を含む送達媒体に関する。
【0226】
一部の態様において、前記送達媒体は、本発明に係る抗体の重鎖をコードする核酸配列を含んでもよい。そのため、1つの態様において、前記核酸配列は、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域、ならびにP329およびE345(アミノ酸残基はEuインデックスに従って番号付けされる)の1つまたは両方において変異を有するヒトIgG1 CH領域を含む重鎖をコードしてもよい。
【0227】
一部の態様において、本発明はまた、本発明に係る抗体の軽鎖をコードする核酸配列を含む送達媒体に関する。そのため、1つの態様において、前記核酸配列は、SEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖をコードしてもよい。
【0228】
本発明はまた、本発明に係る抗体の重鎖をコードする核酸配列を含む送達媒体および本発明に係る抗体の軽鎖をコードする核酸配列を含む送達媒体を含む送達媒体の混合物に関する。そのため、1つの態様において、送達媒体の前記混合物は、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域、ならびにE430およびE345(アミノ酸残基はEuインデックスに従って番号付けされる)の1つまたは両方において変異を有するヒトIgG1 CH領域を含む重鎖をコードする核酸配列を含む送達媒体;ならびにSEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖をコードする核酸配列を含む送達媒体を含む。
【0229】
一部の態様において、前記送達媒体は、本発明に係る抗体の重鎖および核軽鎖をコードする核酸配列または核酸配列の組合せを含む。
【0230】
そのため、1つの態様において、前記送達媒体は、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域、ならびにE430およびE345(アミノ酸残基はEuインデックスに従って番号付けされる)の1つまたは両方において変異を有するヒトIgG1 CH領域を含む重鎖;ならびにSEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖をコードする核酸配列を含んでもよい。
【0231】
さらに一態様において、前記送達媒体は、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域、ならびに変異P329RおよびE345R(アミノ酸残基はEuインデックスに従って番号付けされる)を有するヒトIgG1 CH領域を含む重鎖;ならびにSEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖をコードする核酸配列を含んでもよい。
【0232】
別の態様において、前記送達媒体は、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域およびWTヒトIgG1 CH領域を含む重鎖;ならびにSEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖をコードする核酸配列を含んでもよい。
【0233】
そのため、本発明に係る抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸配列は1つの(同じ)核酸分子中に存在する。
【0234】
別の態様において、前記送達媒体は、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域およびWTヒトIgG1 CH領域を含む重鎖をコードする核酸配列;ならびにSEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖をコードする核酸を含んでもよい。
【0235】
別の態様において、前記送達媒体は、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域、ならびにE430およびE345(アミノ酸残基はEuインデックスに従って番号付けされる)の1つまたは両方において変異を有するヒトIgG1 CH領域を含む重鎖をコードする核酸配列;ならびにSEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖をコードする核酸配列を含んでもよい。
【0236】
別の態様において、前記送達媒体は、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域、ならびにP329RおよびE345R(アミノ酸残基はEuインデックスに従って番号付けされる)の変異を有するヒトIgG1 CH領域を含む重鎖をコードする核酸配列;ならびにSEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖をコードする核酸配列を含んでもよい。
【0237】
そのため、本発明に係る抗体バリアントの重鎖および軽鎖をコードする核酸配列は、別々のまたは異なる核酸分子上に存在する。
【0238】
一部の態様において、前記送達媒体は脂質製剤であってもよい。製剤の脂質は、粒子、例えば脂質ナノ粒子(LNP)であってもよい。本発明の核酸配列または核酸配列の組合せは、前記粒子内に、例えば前記LNP内に被包されてもよい。
【0239】
インビボ発現のための対象への核酸の投与のために好適な異なる脂質製剤は当業者に周知である。例えば、前記脂質製剤は、脂質、イオン化可能なアミノ脂質、PEG-脂質、コレステロールまたはその任意の組合せを典型的には含んでもよい。
【0240】
治療用抗体の発現のための対象への核酸配列の投与のために好適な脂質製剤の様々な形態および調製方法は当技術分野において周知である。そのような脂質製剤の例は、US20180170866(Arcturus)、EP 2391343(Arbutus)、WO 2018/006052(Protiva)、WO2014152774(Shire Human Genetics)、EP 2 972 360(Translate Bio)、US10195156(Moderna)、およびUS20190022247(Acuitas)に記載されるものを含むがこれらに限定されない。
【0241】
本発明はまた、本明細書に記載される局面および態様のいずれか1つに係る抗体バリアントをコードする単離された核酸配列およびベクターの他に、バリアントをコードするベクターおよび発現システムを提供する。抗体およびそのバリアントのための好適な核酸構築物、ベクターおよび発現システムは当技術分野において公知であり、実施例に記載されるものを含むが、それに限定されない。バリアント抗体が、(例えば、scFv-Fc融合タンパク質におけるように)単一のポリペプチド中に含有されるのではなく別々のポリペプチドであるHCおよびLCを含む態様において、重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、同じまたは異なる核酸またはベクター中に存在してもよい。
【0242】
よって、1つの局面において、本発明は、本明細書における任意の局面または態様に係る抗体をコードする単離された核酸配列または核酸配列の組合せを提供する。本発明はまた、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3を含むVH領域をコードする核酸配列を提供する。
【0243】
さらに、本発明は、SEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、SEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含むVL領域をコードする核酸配列を提供する。
【0244】
さらに、本発明は、SEQ ID NO:4に示されているアミノ酸配列を含むVH領域をコードする核酸配列を提供する。本発明はまた、SEQ ID NO:8に示されているアミノ酸配列を含むVL領域をコードする核酸配列に関する。
【0245】
さらなる局面において、本発明は、本明細書に記載される任意の局面または態様に係る抗体の重鎖をコードする核酸配列を提供する。さらなる局面において、本発明は、本明細書に記載される任意の局面または態様に係る抗体の軽鎖をコードする核酸配列を提供する。別の局面において、本発明は、SEQ ID NO:4に示されている配列を含むVH領域と、P329および/またはE345(アミノ酸残基はEuインデックスに従って番号付けされる)の変異を含むヒトIgG1 CH領域とを含む重鎖をコードする核酸配列に関する。さらに別の局面において、本発明は、SEQ ID NO:8に示されている配列を含むVL領域とSEQ ID NO:16に示されている配列を含むヒトカッパ定常領域とを含む軽鎖をコードする核酸配列を提供する。さらに別の局面において、本発明は、SEQ ID NO:8に示されている配列を含むVL領域とSEQ ID NO:17に示されている配列を含むヒトラムダ定常領域とを含む軽鎖をコードする核酸配列を提供する。
【0246】
本発明の一態様において、核酸配列または核酸配列の組合せはRNAまたはDNAである。本発明の一態様において、核酸配列または核酸配列の組合せはmRNAである。
【0247】
本発明は、本明細書に記載される任意の局面または態様に係る核酸配列またはその組合せを含む発現ベクターをさらに提供する。
【0248】
別の局面において、本発明は、哺乳動物細胞中での発現における使用のための本明細書に記載されている核酸配列または核酸配列の組合せに関する。
【0249】
さらなる態様において、本発明は、本明細書において定義されている抗体を産生する組換え宿主細胞であって、任意で上記される発現ベクターを含む、組換え宿主細胞に関する。ある特定の態様において、組換え宿主細胞は真核または原核細胞である。
【0250】
別の局面において、本発明は、本明細書における任意の局面または態様に係る抗体を製造する方法であって、抗体を製造するために好適な培養培地中および条件下で上記されている組換え宿主細胞を培養する工程、ならびに、任意で、培養培地から抗体を精製または単離する工程を含む、方法に関する。
【0251】
1つの局面において、本発明は、
(i)本明細書に開示される態様のいずれか1つに係る抗体の重鎖配列をコードするヌクレオチド配列;
(ii)本明細書に開示される態様のいずれか1つに係る抗体の軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列;または
(iii)(i)および(ii)の両方
を含む核酸または発現ベクターに関する。
【0252】
1つの局面において、本発明は、本明細書に開示される態様のいずれか1つに係る抗体バリアントの重鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸または発現ベクターに関する。
【0253】
1つの局面において、本発明は、本明細書に開示される態様のいずれか1つに係る抗体の重鎖配列および軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列または発現ベクターに関する。
【0254】
1つの局面において、本発明は、第1および第2の核酸の組合せまたは第1および第2の発現ベクターの組合せであって、任意で同じ宿主細胞中にあり、第1のものが(i)に係るヌクレオチド配列を含み、かつ第2のものが(ii)に係るヌクレオチド配列を含む、組合せに関する。
【0255】
本発明の文脈における発現ベクターは、染色体、非染色体、および合成核酸ベクター(発現制御エレメントの好適なセットを含む核酸配列)を含む、任意の好適なベクターであってもよい。そのようなベクターの例は、SV40、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAとの組合せに由来するベクター、およびウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターの誘導体を含む。1つの態様において、核酸は、例えば、直鎖状発現エレメント(例えばSykes and Johnston,Nat Biotech 17,355 59(1997)に記載されている)、コンパクト化核酸ベクター(例えばUS 6,077、835および/もしくはWO 00/70087に記載されている)、プラスミドベクター、例えばpBR322、pUC 19/18、もしくはpUC 118/119、「ミジ」(midge)最小サイズ核酸ベクター(例えばSchakowski et al.,Mol Ther 3,793 800(2001)に記載されている)、または沈殿した核酸ベクター構築物、例えばCaP04沈殿構築物(例えばWO200046147、Benvenisty and Reshef,PNAS USA 83,9551 55(1986)、Wigler et al.,Cell 14,725(1978)、およびCoraro and Pearson,Somatic Cell Genetics 7,603(1981)に記載されている)を含む、ネイキッドDNAまたはRNAベクター中に含まれる。そのような核酸ベクターおよびその使用は当技術分野において周知である(例えばUS 5,589,466およびUS 5,973,972を参照)。
【0256】
1つの態様において、ベクターは、細菌細胞中での抗体の発現のために好適である。そのようなベクターの例は、発現ベクター、例えばBlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke&Schuster,J Biol Chem 264,5503 5509(1989))、pETベクター(Novagen、Madison WI)などを含む。
【0257】
発現ベクターは、追加的にまたは代替的に、酵母システムにおける発現のために好適なベクターであってもよい。酵母システムにおける発現のために好適な任意のベクターが用いられ得る。好適なベクターは、例えば、構成的または誘導性プロモーター、例えばアルファ因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHを含むベクターを含む(F.Ausubel et al.,ed.Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley InterScience New York(1987)、およびGrant et al.,Methods in Enzymol 153,516 544(1987)において総説されている)。
【0258】
発現ベクターは、追加的にまたは代替的に、哺乳動物細胞における発現のために好適なベクター、例えば、選択マーカーとしてグルタミンシンテターゼを含むベクター、例えばBebbington(1992)Biotechnology(NY)10:169-175に記載されているベクターであってもよい。
【0259】
核酸および/またはベクターはまた、ポリペプチド、例えば新生ポリペプチド鎖を、ペリプラズム空間にまたは細胞培養培地中に標的化することができる分泌/局在配列をコードする核酸配列を含んでもよい。そのような配列は当技術分野において公知であり、分泌リーダーまたはシグナルペプチドを含む。
【0260】
発現ベクターは、任意の好適なプロモーター、エンハンサー、および他の発現促進エレメントを含むか、またはそれらと関連付けられるものであってもよい。そのようなエレメントの例は、強力発現プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサーの他に、RSV、SV40、SL3 3、MMTV、およびHIV LTRプロモーター)、有効なポリ(A)終結配列、大腸菌におけるプラスミド製造のための複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子、ならびに/または好都合なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)を含む。核酸はまた、構成的プロモーター、例えばCMV IEとは対照的に誘導性プロモーターを含んでもよい。
【0261】
1つの態様において、抗体をコードする発現ベクターは、ウイルスベクターを介して宿主細胞または宿主動物に配置および/または送達されてもよい。
【0262】
本発明はまた、本明細書に開示されている抗体を産生する組換え宿主細胞であって、任意で本発明に係る単離された核酸またはベクターを含む、組換え宿主細胞を提供する。典型的には、宿主細胞は、該核酸またはベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトされている。主張される組換え宿主細胞は、例えば、真核細胞、原核細胞、または微小生物細胞、例えば、トランスフェクトーマであることができる。特定の態様において、宿主細胞は真核細胞である。特定の態様において、宿主細胞は原核細胞である。一部の態様において、抗体は重鎖抗体である。ほとんどの態様において、しかしながら、抗体は重鎖および軽鎖の両方を含有し、そのため前記宿主細胞は、同じまたは異なるベクター上の、重鎖をコードする構築物および軽鎖をコードする構築物の両方を発現する。
【0263】
宿主細胞の例は、酵母、細菌、植物および哺乳動物細胞、例えばCHO、CHO-S、HEK、HEK293、HEK-293F、Expi293F、PER.C6、NS0細胞、Sp2/0細胞またはリンパ球性細胞を含む。1つの態様において、宿主細胞はCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞である。例えば、1つの態様において、宿主細胞は、細胞ゲノムに安定的に組み込まれた第1および第2の核酸構築物を含んでもよく、第1のものは本明細書に開示されている抗体バリアントの重鎖をコードし、かつ第2のものは軽鎖をコードする。別の態様において、本発明は、上記に特定されている第1および第2の核酸構築物を含む、組み込まれていない核酸、例えばプラスミド、コスミド、ファージミド、または直鎖状発現エレメントを含む細胞を提供する。
【0264】
1つの態様において、前記宿主細胞は、タンパク質のAsn連結グリコシル化の能力を有する細胞、例えば真核細胞、例えば哺乳動物細胞、例えばヒト細胞である。
【0265】
1つの態様において、前記宿主細胞は、抗体重鎖からC末端リジンK447残基を効率的に除去する能力を有しない宿主細胞である。例えば、Liu et al.(2008)J Pharm Sci 97:2426(参照により本明細書に組み入れられる)のTable 2は、C末端リジンの部分的な除去のみが得られる多数のそのような抗体製造システム、例えばSp2/0、NS/0またはトランスジェニック乳腺(ヤギ)を列挙している。1つの態様において、宿主細胞は、変更されたグリコシル化機構を有する宿主細胞である。そのような細胞は当技術分野において記載されており、本発明のバリアントを発現し、それにより変化したグリコシル化を有する抗体を製造するための宿主細胞として使用することができる。例えば、Shields,R.L.et al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740;Umana et al.(1999)Nat.Biotech.17:176-1の他に、EP1176195;WO03/035835;およびWO99/54342を参照。操作されたグリコフォームを生成する追加の方法は当技術分野において公知であり、Davies et al.,2001,Biotechnol Bioeng 74:288-294;Shields et al,2002,J Biol Chem 277:26733-26740;Shinkawa et al.,2003,J Biol Chem 278:3466-3473)、US6602684、WO00/61739A1;WO01/292246A1;WO02/311140A1;WO 02/30954A1に記載されているもの;Potelligent(商標)技術(Biowa,Inc.Princeton、N.J.);GlycoMAb(商標)グリコシル化操作技術(GLYCART biotechnology AG、Zurich、Switzerland);US 20030115614;Okazaki et al.,2004,JMB,336:1239-49に記載されているものの他に、WO2018/114877、WO2018/114878およびWO2018/114879に記載されているものを含むがこれらに限定されない。
【0266】
いっそうさらなる局面において、本発明は、本明細書に開示されている抗体を産生する、ヒト重鎖およびヒト軽鎖の1または2つのセットをコードする核酸を含むトランスジェニック非ヒト動物または植物に関する。
【0267】
1つの態様において、上記される方法により得られたかまたは得られ得る抗体が提供される。
【0268】
別の局面において、本発明はまた、本発明の抗体の少なくとも1つのエフェクター機能を増加または減少させる方法であって、Euインデックスに従って番号付けされるヒトIgG1重鎖のFc領域中のE430、E345、およびP329に対応する1つまたは複数のアミノ酸残基において抗体中に変異を導入する工程を含む、方法に関する。
【0269】
そのため、ある特定の態様において、親抗体のエフェクター機能、例えばFc媒介性エフェクター機能を増加させるか、または例えば抗体の生物学的活性、例えばCD27アゴニズムを増加させる方法であって、前記親抗体が、Fc領域およびCD27に結合する抗原結合領域を含み、前記方法が、アミノ酸残基がEuインデックスに従って番号付けされるヒトIgG1重鎖のFc領域中のE430およびE345に対応する1つまたは両方のアミノ酸残基において変異をFc領域中に導入する工程を含み;かつ抗原結合領域が、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3、SEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含む、方法が提供される。
【0270】
他のある特定の態様において、SEQ ID NO:5に示されている配列を含むVH CDR1、SEQ ID NO:6に示されている配列を含むVH CDR2、SEQ ID NO:7に示されている配列を含むVH CDR3、SEQ ID NO:9に示されている配列を含むVL CDR1、SEQ ID NO:10に示されている配列を含むVL CDR2、およびSEQ ID NO:11に示されている配列を含むVL CDR3を含み、かつアミノ酸残基がEuインデックスに従って番号付けされるヒトIgG1重鎖のFc領域中のE345Rのアミノ酸置換をさらに含む親抗体のエフェクター機能、例えばC1q結合またはFcgR結合を減少させる方法であって、Euインデックスに従って番号付けされるヒトIgG1重鎖のP329に対応するアミノ酸位置においてFc領域中にさらなるアミノ酸置換を導入する工程を含む、方法が提供される。本発明の好ましい態様において、方法はP329Rの置換を含む。本発明により、親抗体のエフェクター機能、例えばC1q結合またはFcgR結合は、減少され得るか、または完全に排除され得る。
【0271】
上述の方法のいずれか1つの1つの態様において、増加されるエフェクター機能はCD27アゴニズムを含む。
【0272】
上述の方法のいずれか1つの1つの態様において、エフェクター機能はC1q結合である。
【0273】
上述の方法のいずれか1つの1つの態様において、エフェクター機能はFcgR結合である。
【0274】
上述の方法のいずれか1つの1つの態様において、減少されるエフェクター機能はC1q結合およびFcgR結合の両方を含む。
【0275】
上述の方法のいずれかの1つの態様において、1つまたは複数のアミノ酸残基における変異は、E430G、E430S、E430F、E430T、E345K、E345Q、E345R、E345YおよびP329Kを含む群より選択される。例えば、1つまたは複数のアミノ酸残基における変異は、E430GもしくはE345Rを含むか、またはE430GもしくはE345Rからなるものであってもよい。
【0276】
上述の方法のいずれかの1つの態様において、抗体のFc領域は、記載される変異を除いて、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4 Fc領域、またはこれらのアイソタイプの混合である。SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、およびSEQ ID NO:36として示される配列のうちの1つのFc領域を任意で含む。特定の態様において、抗体のFc領域はヒトIgG1 Fc領域である。例えば、抗体は、ヒト全長IgG1抗体、任意でヒトモノクローナル全長二価IgG1,κ抗体であることができる。追加的に、抗体は、単一特異性または二重特異性抗体、例えば単一特異性抗体であることができる。
【0277】
抗体のFc領域は天然に存在する(野生型)配列であってもよいが、一部の態様において、抗体のFc領域は、本明細書の他の箇所において記載されるように、1つまたは複数のさらなる変異を含む。
【0278】
本発明はまた、上記の方法のいずれかに従って得られたかまたは得られ得る抗体に関する。
【0279】
本発明はまた、本発明に係る抗体、本発明に係る核酸、本発明に係る発現ベクターまたは本発明に係る宿主細胞を含む組成物に関する。
【0280】
さらなる態様において、本発明に係る組成物は、薬学的に許容される担体を典型的には含む、薬学的組成物である。1つの態様において、薬学的組成物は、本明細書に開示される任意の局面もしくは態様において定義されている抗体、または本明細書に開示される任意の局面もしくは態様において定義されている発現ベクターを含有する。
【0281】
よりさらなる態様において、本発明は、
- 本明細書に開示される局面および態様のいずれかにおいて定義されている抗体、ならびに
- 薬学的に許容される担体
を含む薬学的組成物に関する。
【0282】
1つの態様において、薬学的組成物は、静脈内または皮下注射または注入により投与される。
【0283】
本発明はまた、キット・オブ・パーツ、例えば、本明細書において定義されている抗体を用いる処置に応答する傾向を有する患者を患者の集団内で同定するためのコンパニオン診断薬として使用するためのキットであって、本明細書に開示される任意の局面または態様において定義されている抗体と、前記キットの使用のための使用説明書とを含む、前記キット、に関する。
【0284】
本発明はまた、本発明に係る抗体、または本発明に係る抗体を含む組成物を含む、治療における使用のためのキット・オブ・パーツであって、任意で、抗体の1つより多くの投薬量を含む、前記キット・オブ・パーツに関する。
【0285】
1つの態様において、キット・オブ・パーツは、1つまたは複数の容器、例えばバイアル中に、そのような抗体または組成物を含む。
【0286】
1つの態様において、キット・オブ・パーツは、治療における同時の、別々の、または逐次的な使用のために、そのような抗体または組成物を含む。
【0287】
本発明の抗体は、CD27を発現する免疫細胞を活性化させることにより処置され得る疾患および障害の処置を伴う多数の治療的な用途を有する。例えば、抗体は、様々な障害および疾患を処置または予防するために、培養中の細胞に、例えば、インビトロもしくはエクスビボで、またはヒト対象に、例えば、インビボで、投与されてもよい。本明細書において使用される場合、用語「対象」は、利益を得ることができるかまたは抗体に応答し得るヒトおよび非ヒト動物を含むことが意図される。対象は、例えば、例えばCD4および/またはCD8T細胞集団が拡大増殖されるようにCD27機能をモジュレートすることにより矯正または寛解され得る疾患または障害を有するヒト患者を含んでもよい。よって、抗体は、T細胞集団、例えばヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞のインビボまたはインビトロ増殖を誘発するために使用されてもよい。
【0288】
そのため、1つの局面において、本発明は、医薬としての使用のための本発明に係る抗体、本発明に係る核酸もしくは核酸の組合せ、本発明に係る送達媒体、本発明に係る発現ベクター、本発明に係る宿主細胞、本発明に係る組成物、または本発明に係る薬学的組成物に関する。
【0289】
1つの局面において、本発明は、疾患または障害を処置または予防するための医薬の調製における本発明に係る抗体、本発明に係る核酸もしくは核酸の組合せ、本発明に係る送達媒体、本発明に係る発現ベクター、本発明に係る宿主細胞、本発明に係る組成物、または本発明に係る薬学的組成物の使用に関する。
【0290】
1つの局面において、本発明は、疾患または障害を処置する方法であって、本発明に係る抗体、本発明に係る核酸もしくは核酸の組合せ、本発明に係る送達媒体、本発明に係る発現ベクター、本発明の請求項に係る宿主細胞、本発明に係る組成物、または本発明に係る薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【0291】
1つの局面において、本発明は、医薬としての使用のための任意の局面または態様に係る抗体に関する。
【0292】
1つの局面において、本発明は、疾患または障害を処置または予防するための医薬の調製における任意の局面または態様に係る抗体の使用に関する。
【0293】
1つの局面において、本発明は、疾患または障害の処置または予防における使用のための任意の局面または態様に係る抗体に関する。
【0294】
1つの局面において、本発明は、診断薬における使用のためまたは診断方法における使用のための任意の局面または態様に係る抗体に関する。
【0295】
1つの局面において、本発明は、疾患または障害を処置する方法であって、任意の局面または態様に係る抗体を、それを必要とする対象に、典型的には治療有効量でかつ/または疾患もしくは障害を処置するために十分な時間にわたり、投与する工程を含む、方法に関する。
【0296】
1つの局面において、本発明は、医薬としての使用のための、任意の局面または態様に係る抗体を含む薬学的組成物に関する。
【0297】
1つの局面において、本発明は、疾患または障害の処置または予防における使用のための、任意の局面または態様に係る抗体を含む薬学的組成物に関する。
【0298】
1つの局面において、本発明は、疾患または障害を処置する方法であって、任意の局面または態様に係る抗体を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に、典型的には治療有効量でかつ/または疾患もしくは障害を処置するために十分な時間にわたり、投与する工程を含む、方法に関する。
【0299】
1つの局面において、本発明は、疾患または障害を処置する方法であって、
・疾患または障害を患っている対象を選択する工程、および
・対象に任意の局面もしくは態様に係る抗体、または該抗体を含む薬学的組成物を、典型的には治療有効量でかつ/または疾患もしくは障害を処置するために十分な時間にわたり、投与する工程
を含む、方法に関する。
【0300】
1つの態様において、疾患または障害は、がん、すなわち腫瘍形成性の障害、例えば、血液がんまたは固形悪性腫瘍などである。別の態様において、疾患または障害は炎症性および/または自己免疫疾患または障害である。
【0301】
さらなる局面において、本発明は、CD27に結合する能力を有する少なくとも1つの抗原結合領域を含む抗体、すなわち本明細書に記載されている発明に係る抗体に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。特定の態様において、抗イディオタイプ抗体は、本明細書に記載されているCD27に結合する能力を有する抗原結合領域に結合する。
【0302】
抗イディオタイプ(Id)抗体は、抗体の抗原結合性部位と一般に関連付けられる独特の決定因子を認識する抗体である。抗Id抗体は、抗Idが調製されているモノクローナル抗体を用いて抗CD27モノクローナル抗体の供給源と同じ種および遺伝子型の動物を免疫化することにより調製されてもよい。免疫化された動物は、典型的には、免疫化抗体のイディオタイプ決定因子を認識し、それに応答して、これらのイディオタイプ決定因子に対する抗体(抗Id抗体)を産生することができる。そのような抗体を製造する方法は例えばUS 4,699,880に記載されている。そのような抗体は本発明のさらなる特色である。
【0303】
抗Id抗体はまた、いわゆる抗-抗Id抗体を産生させる、さらに別の動物において免疫応答を誘導するための「免疫原」として使用されてもよい。抗-抗Id抗体は、抗Id抗体を誘導した元々のモノクローナル抗体とエピトープ的に同一であってもよい。そのため、モノクローナル抗体のイディオタイプ決定因子に対する抗体を使用することにより、同一の特異性の抗体を発現する他のクローンを同定することが可能である。抗Id抗体は、任意の好適な技術により、例えば本発明のCD27特異的抗体に関して本明細書の他の箇所に記載される技術により、変更(それにより抗Id抗体バリアントが製造される)および/または誘導体化されてもよい。例えば、モノクローナル抗Id抗体は、担体、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に連結され、BALB/cマウスを免疫化するために使用されてもよい。これらのマウスからの血清は、元々/親の抗CD27抗体と、同一でないとしても、類似した結合特性を有する抗-抗Id抗体を典型的には含有する。
【0304】
Fc領域は、それらのC末端においてリジンを有してもよい。このリジンの起源は、これらのFc領域が由来するヒトにおいて見出される天然に存在する配列である。組換え抗体の細胞培養製造の間に、この末端リジンは、内因性カルボキシペプチダーゼによるタンパク質加水分解により切断除去されて、同じ配列を有するがC末端リジンを欠いた定常領域を結果としてもたらすことができる。抗体の生産の目的のために、この末端リジンをコードするDNAは、抗体がリジンなしで製造されるように配列から省略され得る。末端リジンをコードする核酸配列、またはコードしない核酸配列のいずれかから製造される抗体は、配列および機能において実質的に同一であり、その理由は、例えばCHOベース製造システムにおいて製造される抗体を使用する場合に、末端リジンのプロセシングの程度は典型的には高いからである(Dick,L.W.et al.Biotechnol.Bioeng.2008;100:1132-1143)。それゆえ、本発明に係るタンパク質、例えば抗体は、末端リジンをコードもしくは有することと共にまたはそれなしで生成され得ることが理解される。末端リジンを有する配列、例えば末端リジンを有する定常領域配列は、末端リジンを有しない対応する配列として理解され得ること、および末端リジンを有しない配列もまた、末端リジンを有する対応する配列として理解され得ることもまた本発明に従って理解される。
【実施例
【0305】
実施例1:抗ヒトCD27抗体およびそのFcバリアントの生成
免疫化およびハイブリドーマ生成を通じた抗ヒトCD27抗体の生成はAldevron GmbH(Freiburg、Germany)において行った。ヒトCD27(全長およびECD)をコードするcDNAをAldevronの専有的な発現プラスミドにクローニングした。粒子衝撃用の携帯式デバイス(「遺伝子銃」)を使用するヒトCD27 cDNA被覆金粒子の皮内適用を使用した、OmniRat動物(完全ヒトイディオタイプを有する抗体の多様化されたレパートリーを発現するトランスジェニックラット;Ligand Pharmaceuticals Inc.)の免疫化により、抗CD27抗体を生成した。血清試料を免疫化のシリーズの後に収集し、全長ヒトCD27発現のために上述の発現プラスミドを一過的にトランスフェクトされたHEK細胞におけるフローサイトメトリーにより試験した。抗体産生細胞をラット脾臓から単離し、標準的な手順に従ってマウス骨髄腫細胞(Ag8)と融合させた。CD27特異的抗体を産生するハイブリドーマからのRNAをシークエンシングのために抽出した。
【0306】
71のCD27抗体の一団から、6つの抗体をさらなる特徴付けのために初代T細胞に対する結合およびインビトロでのCD27結合競合アッセイにおける多様性に基づいて選択した。これらの6つの抗体は、本明細書においてIgG1-CD27-A、IgG1-CD27-B、IgG1-CD27-C、IgG1-CD27-D、IgG1-CD27-EおよびIgG1-CD27-Fと命名される。
【0307】
関心対象の重鎖および軽鎖の生産のために不利と考えられたアミノ酸残基(例えば、遊離システインまたはグリコシル化部位)を除去するための単一点変異を有する場合もある可変領域を遺伝子合成し、ヒト抗体軽鎖およびヒトIgG1重鎖のための骨格配列を含有する発現ベクターにクローニングした。
【0308】
6つの異なる抗体のFcバリアントを、Eu番号付けに従う以下のアミノ酸変異の1つまたは複数の導入により生成した:E345R、E430G、P329R、G237A、K326A、E333A(下記の表3および表5を参照)。以下に記載されているインビトロでの機能的特徴付けの後に、CD27特異的IgG1-CD27-Aは最も最適な生物学的特性を有すると考えられた。ベンチマークとして本明細書において使用された先行技術のCD27標的化抗体の配列は以下のように得られた:IgG1-CD27-15(WO2012004367;SEQ ID No 3および4)、IgG1-CD27-131A(WO2018/058022;SEQ ID No 10および15)、IgG1-CD27-CDX1127(WO2016145085;SEQ ID No:1および2)、ならびにIgG1-CD27-BMS986215(WO2019195452A1;SEQ ID No 8および9)。タイプI抗ヒトCD20抗体のVHおよびVL配列はWO2019/145455A1(SEQ ID No 35および39)において以前に記載されている。
【0309】
(表3)アミノ酸配列のリスト
【0310】
実施例2:CD27活性化レポーター細胞アッセイにおける抗CD27抗体のアゴニスト活性
E345RまたはE430G六量体化増強性Fc変異を有するおよび有しない異なる抗CD27抗体のCD27アゴニスト活性を、CD27 Thaw and Use Bioassay kit(Promega、Custom Assay Services、CAS#CS1979A25)を使用して測定した。キットは、ヒトCD27の構成的な発現と共にNF-κB応答エレメントの制御下でホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現するNF-κBレポーター-Jurkat組換え細胞を含有し、これを本質的に製造者の使用説明書に従って使用した。簡潔に述べれば、Thaw-and-Use GloResponse NFκB-luc2/CD27細胞を解凍し、96ウェル平底培養プレート(PerkinElmer、カタログ#6005680)中、Bio-Glo Luciferase Assay Buffer中の抗体希釈系列(最終濃度範囲0.04~20μg/mL)と37℃、5%CO2で6hインキュベートした。抗CD27抗体は、野生型(WT)IgG1-CD27-A、IgG1-CD27-B、IgG1-CD27-C、IgG1-CD27-D、IgG1-CD27-E、IgG1-CD27-F、およびE430GまたはE345R変異を宿す各々のバリアントであった。抗CD27ベンチマーク抗体は、IgG1-CD27-131A(WTおよびE430Gバリアント)ならびに非六量体化IgG1-CD27-15(IgG1-CD27-15-P329R-E345R-K439E;六量体化を予防するFc変異の組合せを有し、そのため変異はこの実験の文脈において機能的に関連せず、したがって図中でWTと称される)ならびにE345R変異を含むIgG1-CD27-15の六量体化バリアントであった。抗HIV gp120ヒト抗体、IgG1-b12-E345Rを非結合性陰性対照抗体(対照)として使用した。抗体のインキュベーション後に、Bio-Glo Luciferase Assay Reagent(RTに平衡化した)を各々のウェルに加え、RTで5~10分間インキュベートした。EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)を使用して発光を測定し、GraphPad Prismソフトウェアを使用して生成された棒図表において相対発光単位(RLU)として提示した。
【0311】
六量体化増強性Fc変異(E345RまたはE430G)の導入は、抗体クローンIgG1-CD27-A~-Eならびにベンチマーク抗体IgG1-CD27-131A(E430Gと共に試験された)およびIgG1-CD27-15(E345Rと共に試験された)について、対応するWT抗体と比較してCD27アゴニズムの増強を結果としてもたらした(図1)。
【0312】
IgG-CD27-A、BおよびCは、試験されたすべての濃度においてE430GまたはE345Rの導入後にCD27アゴニスト活性の増強を実証した一方、六量体化増強性変異を含有するIgG1-CD27-DおよびEバリアントは、最低の抗体濃度においてアゴニズムの増加を示さなかった。E430GまたはE345R変異を有するIgG1-CD27-Fバリアントは、試験された最も高い抗体濃度においてのみCD27アゴニズムの増強を示した。バリアントIgG1-CD27-A~-Eについて、E345R変異の導入はE430G変異よりも強いCD27活性化を結果としてもたらした。E345R変異を有する抗体IgG1-CD27-A~-Eは、E430G変異を有するIgG1-CD27-131AまたはE345R変異を有するCD27-15と比較してそれぞれより高いまたは類似したCD27活性化レベルを示した。
IgG1-CD27-BおよびIgG1-CD27-FについてのWT抗体は、この実験の文脈において機能的に関連しないIgG Fcドメイン中のF405L変異を有していた。
【0313】
実施例3:組換えヒト、マウスおよびカニクイザルCD27についての抗ヒトCD27抗体の結合親和性
組換えヒト、カニクイザルおよびマウスのCD27タンパク質についての5つの抗ヒトCD27 IgG1抗体(IgG1-CD27-A、-B、-C、-Dおよび-E)の結合親和性を、Octet HTX機器(ForteBio、Portsmouth、UK)上で標識フリーバイオレイヤー干渉法を使用して決定した。抗体がCD27について一価であるように1つのCD27特異的Fabアームおよび非結合性Fabアームを含む、二重特異性抗体を使用して、実験を行った。(Labrijn AF et al.,Nat Protoc.2014 Oct;9(10):2450-63に記載されるように)CD27抗体と非結合性抗体との間の制御されたFabアーム交換によりこれらの二重特異性抗体を生成した。
【0314】
ヒトおよびマウスのCD27についてのCD27抗体の親和性を決定するために、100nMの組換えHisタグ付加マウスまたはヒトCD27タンパク質(Sino Biological、カタログ#10039-H08B1[ヒト]、カタログ#50110-M08H[マウス])を、予めコンディショニングされたanti-Penta-HIS(HIS1K)バイオセンサー(ForteBio、カタログ#18-5120)に600秒間ロードした。
【0315】
カニクイザルCD27についてのCD27抗体の親和性を評価するために、5μg/mLの組換えカニクイザルCD27-Fc融合タンパク質(R&D systems、カタログ#9904-CD-100)を、活性化されたAmine Reactive 2nd Generation(AR2G)バイオセンサー(ForteBio、カタログ#18-5092)にロードした。
【0316】
Sample Diluent(ForteBio、カタログ#18-1104)中の300秒間のベースライン測定後に、CD27抗体の会合(200秒)および解離(1,000秒)を、Sample Diluent中の2倍希釈ステップを伴う0.78~800nMの抗体濃度系列について決定した。150kDaの抗体分子質量を算出のために使用した。参照センサーをSample Diluentとインキュベートした。
【0317】
Data Acquisition Software v11.1.1.19(ForteBio)を使用してデータを取得し、Data Analysis Software v9.0.0.14(ForteBio)を用いて分析した。参照センサーの減算により抗体毎にデータトレースを補正した。Y軸はベースラインの最後の10秒にアライメントし、解離に対するInterstep CorrectionアライメントおよびSavitzky-Golayフィルタリングを適用した。応答が<0.05nmであり、かつ算出された平衡が飽和に近い(50秒の解離時間を使用してReq/Rmax>95%)場合にデータトレースを分析から除外した。200秒に設定された会合および50秒に設定された解離時間について関心対象のウィンドウを使用してデータを1:1モデルとフィッティングした。解離時間は、曲線フィットの良好性の概算値である決定係数(R2)(優先的に>0.98)、曲線の目視検査、および会合工程の間の少なくとも5%のシグナル減衰に基づいて選択した。
【0318】
ヒトCD27についての親和性を、ナノモル濃度範囲のKD値と共に3つのCD27抗体(IgG1-CD27-A、B、C)について正確に決定することができた(表4)。IgG1-CD27-D、および-Eについて、バイオレイヤー干渉法実験により、類似した範囲の親和性を伴うヒトCD27への結合が確認されたが、最適以下の曲線フィッティングのため正確なKD値の算出は可能でなかった(表4に指し示される)。
【0319】
IgG1-CD27-Aおよび-Bはまた、ヒトCD27と同じ範囲のKD値を伴う、組換えカニクイザルCD27への結合を示した。IgG1-CD27-C、-Dおよび-Eで得られた結果により、類似した範囲の親和性を伴うカニクイザルCD27への結合も確認されたが、最適以下の曲線フィッティングのため正確なKD値の算出は可能でなかった(表4に指し示される)。
【0320】
組換えマウスCD27への結合は、抗体IgG1-CD27-Cについてのみ観察された。
【0321】
(表4)指し示される種からのCD27に対するIgG1-CD27-A~-E抗体の結合親和性
:結合が観察されたが、KD、konおよびkdisは、1:1モデルを使用して信頼できない解釈を結果としてもたらす、最適以下の曲線フィッティングに起因して低い信頼性の値である。
注記:結合は観察されなかった。
【0322】
実施例4:細胞表面に発現されるヒトおよびカニクイザルのCD27に対する抗CD27抗体の結合
細胞表面に発現されるヒトおよびカニクイザルのCD27に対する抗CD27抗体IgG1-CD27-A~-Eおよび先行技術のIgG1-CD27-131Aの結合を、一過的にトランスフェクトされたHEK293F細胞およびCD27を内因性に発現する初代T細胞を使用してフローサイトメトリーにより分析した。非結合性対照抗体IgG1-b12-FEARを陰性対照抗体として使用した。
【0323】
製造者の使用説明書に従って293fectin Transfection Reagent(ThermoFisher、カタログ#12347019)を使用して、FreeStyle 293-F懸濁細胞(HEK293F;ThermoFisher、カタログ#R79007)を、全長ヒトまたはカニクイザルCD27をコードする哺乳動物発現ベクターpSBを用いて一過的にトランスフェクトした。
【0324】
ヒトおよびカニクイザルのPBMCを、ヒト健常ドナー(Sanquin Blood Bank、the Netherlands)またはカニクイザル(BPRC、the Netherlands、カタログ#S-1135)から得られたバフィコートから、製造者の使用説明書に従ってLymphocyte Separation Medium(LSM;Corning、カタログ#25-072CV)を使用して低密度勾配遠心分離により精製した。
【0325】
PBS(Lonza、カタログ#BE17-517Q)+1%BSA(Roche、カタログ#10735086001)+0.02%アジ化ナトリウム(Bio-World、カタログ#41920044-3)からなるFACS緩衝液を用いる洗浄工程を間に伴う逐次的なインキュベーションのために細胞を96ウェルプレート(100,000細胞/ウェル;Greiner Bio-one、カタログ#650180)に播種した。以下のインキュベーションを適用した:抗体濃度系列(0.0001~10μg/mLの最終濃度)を4℃で30分間;生/死マーカーFVS510(BD、カタログ#564406、PBS中1:1,000の希釈)をRTで20分間;PE標識ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research、カタログ#109-116-098、1:500の希釈)を4℃で30分間;およびT細胞同定のための抗CD3抗体(抗ヒトCD3:BD、カタログ#555335、1:10の希釈;抗カニクイザルCD3:Miltenyi、カタログ#130-091-998、1:10の希釈)を4℃で30分間。すべての試料をFACSCelestaフローサイトメーター(BD)およびFlowJoソフトウェアにおいて分析した。GraphPad Prismを使用してデータを処理および可視化した。
【0326】
すべての試験された抗体は、ヒトT細胞およびトランスフェクトされたHEK293F細胞の両方において、ヒトCD27に対する用量依存的な結合を示した(図2A図2B)。IgG1-CD27-AおよびIgG1-CD27-131Aについての中間的な結合、ならびにIgG1-CD27-DおよびIgG1-CD27-Eについての低い結合と比較して、最も高い最大の結合がIgG1-CD27-BおよびIgG1-CD27-Cについて観察され、差異はヒトT細胞を使用して最も著しかった。カニクイザルCD27 T細胞に対する結合について、最も高い結合がIgG1-CD27-Bについて観察され、続いてIg1-CD27-131AおよびIgG1-CD27-Aであった。より低い結合がIgG1-CD27-Dおよび-Eについて観察された一方、IgG1-CD27-CはカニクイザルT細胞に対する最小の結合を示した。すべてのCD27抗体は、カニクイザルCD27をトランスフェクトされたHEK細胞に対する用量依存的な結合を示した。最も高い最大の結合がIgG1-CD27-BおよびIgG1-CD27-131-Aについて観察され、いくぶんより低い結合がIgG1-CD27-A、-Dおよび-Eについて観察された。IgG1-CD27-Cは、カニクイザルCD27をトランスフェクトされたHEK細胞に対する最も低い結合を示した(図2C図2D)。
【0327】
結論として、IgG1-CD27-AおよびIgG1-CD27-Bは、ヒトまたはカニクイザルT細胞上に内因性に発現される、およびトランスフェクトされたHEK細胞において一過的に発現されるヒトおよびカニクイザルのCD27に対する用量依存的な結合を示した。IgG1-CD27-AおよびIgG-CD27-131AはヒトT細胞に対する同等の結合を示した一方、IgG1-CD27-Bはより高い最大の結合を示した。
注記:IgG1-CD27-A、-B、-C、-Dおよび-Eは、この実験の文脈において機能的に関連しないIgG Fcドメイン中の変異F405L-L234F-L235E-D265Aを有していた。IgG1-CD27-131Aは、IgG1 Fcドメイン中の機能的に関連しないF405L変異を有していた。
【0328】
実施例5:天然ヒトCD27-A59Tバリアントに対する抗CD27抗体の結合
ヒト集団の約19%は、細胞外ドメイン中にA59T変異を宿す天然のCD27バリアントを発現する(SEQ ID NO.2)。ヒトCD27-A59Tに対する結合を抗CD27抗体IgG1-CD27-A、IgG1-CD27-B、IgG1-CD27-CおよびベンチマークIgG1-CD27-131Aについてフローサイトメトリーにより試験した。非結合性抗体IgG1-b12-FEALを陰性対照抗体として使用した。ヒトCD27-A59Tを発現する一過的にトランスフェクトされたHEK293F細胞(15,000細胞/ウェル)を一次試験抗体IgG1-CD27-A~-C、非結合性対照抗体IgG1-b12(対照)、および、CD27-A59Tに結合することが以前(WO2018/058022)に記載されている先行技術ベンチマークIgG-CD27-131Aの濃度系列(10倍希釈ステップを使用して0.0001~10μg/mL)とインキュベートした。インキュベーション後に、ポリクローナルヤギ抗ヒトIgGを用いて抗体をPE標識した。結合をFACSCelestaフローサイトメーター(BD)およびFlowJoソフトウェアにおいて分析した。GraphPad Prism v.8を使用してデータを処理および可視化した。
【0329】
試験された抗CD27抗体IgG1-CD27-A、IgG1-CD27-B、IgG1-CD27-C、およびIgG1-CD27-131Aは、異なる抗体の間の類似した結合曲線と共にCD27-A59TトランスフェクトHEK293F細胞に対する用量依存的な結合を示した(図 実施例5)。
注記:IgG1-CD27-A、-Bおよび-Cは、この実験の文脈において機能的に関連しないIgG Fcドメイン中の変異F405L-L234F-L235E-D265Aを有していた。IgG1-CD27-131Aは、IgG1 Fcドメイン中の機能的に関連しないF405L変異を有していた。
【0330】
実施例6:抗CD27抗体によるヒトT細胞増殖の誘導
E345RまたはE430G変異の導入でのFc-Fc相互作用を通じたIgG六量体化の増強は抗CD27抗体のCD27アゴニスト活性を増強したので(実施例2)、TCR活性化T細胞の増殖を増加させるE430GまたはE345R変異を有するIgG1-CD27-A、IgG1-CD27-B、およびIgG1-CD27-C抗体バリアントの能力をインビトロで試験した。
【0331】
追加的に、C1qおよびFcgRに対する結合を低減させる(G237AもしくはP329R)またはC1qに対する結合を増強する(K326A/E333A二重変異)ことが報告されたFc変異を導入して、E345RまたはE430G変異を有するCD27抗体のCD27アゴニスト活性に対するそれらの潜在的な効果を試験した。K326A/E333A二重変異は、C1q結合を増強することおよびFc-Fc相互作用増強性変異を含むDR5特異的ヒト化IgG1抗体のアゴニスト活性の増強に寄与することが、以前に示された(WO2018/146317A1)。E430GまたはE345Rに加えて、変異G237A、P329R、またはK326A/E333Aを、IgG1-CD27-A、IgG1-CD27-BおよびIgG1-Cに導入し(表5)、健常ドナーから得られたヒトPBMC(Sanquin Blood Bank、the Netherlands)を使用してT細胞増殖に対するそれらの効果を決定した。
【0332】
(表5)抗体IgG1-CD27-A、IgG1-CD27-B、またはIgG1-CD27-CのFcドメイン中の変異およびそれらの生物学的効果
IgG1-CD27-XにおけるXは、IgG1-CD27クローンIgG1-CD27-A、IgG1-CD27-B、またはIgG1-CD27-Cを指す。
【0333】
PBMCをPBS中に5×106細胞/mLの密度で再懸濁し、製造者の使用説明書に従ってCellTrace CFSE Cell Proliferation Kit(Invitrogen、カタログ#C34564;1:10,000)を使用してCFSEで標識した。CFSE標識されたPBMC(100,000細胞/ウェル)を、96ウェル丸底プレート(Greiner Bio-one、カタログ#650180)中、5%Normal Human Serum(NHS;Sanquin、製品#B0625)を補充したT-cell Activation Medium(ATCC、カタログ#80528190)中で、T細胞を活性化させるための0.1μg/mLの抗CD3抗体クローンUCHT1(Stemcell Technologies、カタログ#60011)、およびCD27抗体(1μg/mLの最終濃度)と共に、37℃/5%CO2で96hインキュベートした。フローサイトメトリーによるCD4およびCD8T細胞サブセット中の生存細胞の同定のために、細胞を生/死マーカーFVS510(1:1,000)とRTで20分間、ならびにAPC-eFluor780標識された抗ヒトCD4抗体(Invitrogen、カタログ#47-0048-42、1:50)、AlexaFluor700標識された抗ヒトCD8a抗体(BioLegend、カタログ#301028;1:100)、PE-Cy7標識されたマウス抗ヒトCD14抗体(BD Biosciences、カタログ#557742;1:50)およびBV785標識された抗ヒトCD19抗体(BioLegend、カタログ#363028;1:50)を含有するリンパ球マーカー用の染色ミックスと4℃の暗所中で30分間、逐次的にインキュベートした。試料をFACSCelesta(BD Biosciences)フローサイトメーターで測定し、生存CD4およびCD8T細胞サブセット(FVS510-CD14-CD19-CD4およびFVS510-CD14-CD19-CD8)におけるCFSE希釈ピークを、FlowJo 10ソフトウェアを使用してT細胞増殖についてのリードアウトとして分析した。両方ともFlowJoソフトウェア(バージョン10)を使用することにより算出された細胞の増殖のパーセンテージまたは分裂指数としてT細胞増殖を表した。細胞の増殖(分裂)のパーセンテージは、CFSE希釈を経た細胞(CFSElow peaks)についてゲーティングすることにより決定した。分裂指数は、細胞が経た分裂の平均数である。GraphPad Prismバージョン8を使用してヒートマップを生成した。4人の異なる健常ドナーからのPBMCを使用して増殖アッセイを行った。
【0334】
E430GまたはE345R変異を有するIgG1-CD27-A、-Bおよび-Cのバリアントは、試験された4人のドナーのうちの2人において対照抗体と比較してCD8T細胞の増殖における小さい増加を誘導した。E430G変異を有するIgG1-CD27-A、-Bまたは-Cバリアントへの追加の変異(P329R、G237AまたはK326A/E333A)の導入は、4人のPBMCドナーにわたりCD8T細胞増殖における変動する効果を示した。対照的に、E345R変異を有するIgG1-CD27-AおよびIgG1-CD27-CバリアントへのP329R変異の導入は、活性化CD8T細胞の増殖を増強する能力を一貫して増加させた。これはIgG1-CD27-Aに特に該当し、測定されたCD8T細胞増殖は、ドナーの各々においてIgG-CD27-A-E345R、IgG1-CD27-B-E345RおよびIgG1-CD27-C-E345Rについて同等であった一方、追加のP329R変異の導入は、IgG1-CD27-B-E345RまたはIgG1-CD27-C-E345Rと比較してクローンIgG1-CD27-A-E345RについてCD8T細胞増殖におけるより高い増加に一貫して繋がった。そのため、TCR活性化CD8T細胞の増殖におけるP329R変異と組み合わせたE345R変異の効果は、IgG1-CD27-BおよびIgG1-CD27-CよりもクローンIgG1-CD27-Aについて一貫してより大きかった。試験されたすべての抗体バリアントにわたり、IgG1-CD27-A-E345R-P329Rは、すべてのドナーにおいてCD8T細胞増殖における最大の増加を誘導した(図4A)。
【0335】
E345R変異を有するCD27抗体バリアントへの変異G237AまたはK326A-E333Aの追加は、単一変異E345Rを含む抗体と比較して、試験されたクローンのいずれにおいてもCD8T細胞の増殖を増加させなかったか、または最小にのみ増加させた(図4A)。
【0336】
CD4T細胞においても、T細胞増殖における最も高いかつ最も一貫した増加は、IgG1-CD27-A-E345R-P329Rの存在下で観察された。CD4T細胞増殖は、E430GまたはE345R変異のみを有するIgG1-CD27-A、-Bおよび-Cバリアントの間で概して同等であった一方、追加のP329R変異の導入は、IgG1-CD27-A-E430GまたはE430GもしくはE345R変異のいずれかを有するIgG1-CD27-Bもしくは-Cバリアントと比較して、E345Rバリアントを有するIgG1-CD27-AバリアントについてCD4T細胞増殖におけるより大きい増加に繋がった。この効果は、試験された4人のドナーのうちの3人において観察された。ドナー1において、CD4T細胞増殖におけるE430GまたはE345Rに加えた追加の変異の効果は一般に小さく、このドナーにおいて観察された効果は他の3人のドナーにおいて再現されなかった。
【0337】
P329R変異とのE345Rの組合せはまた、IgG1-CD27-CについてCD4T細胞増殖を一貫して増加させたが、単独でのE345R変異と、E345RとP329Rとの組合せとの間の差異は、クローン-AについてよりもクローンIgG1-CD27-Cについてより小さかった。クローンIgG1-CD27-Bについて、CD4T細胞増殖における控えめな増加が、4人のドナーのうちの2人においてIgG1-CD27-B-E345Rと比較してIgG1-CD27-B-E345R-P329Rについて観察された。
【0338】
E430G変異を有するIgG1-CD27-A、-B、または-CバリアントへのP329R、G327AまたはK326A/E333A変異の導入は、CD4T細胞増殖において効果を誘導しなかったか、または誘導が一貫していなかった。同様に、E345R変異を有するIgG1-CD27-A、-Bまたは-CバリアントにおけるG327AまたはK326A/E333Aの導入後に効果は観察されなかったか、または一貫しない効果が観察された。
【0339】
要約すると、IgG1-CD27-A-E345R-P329Rは、活性化CD8およびCD4T細胞の増殖において最も高い増加を一貫して誘導し、IgG1-CD27-A-E345R-P329Rは最も効率的なCD27アゴニズムを誘導することを実証した。P329R変異を有するDR5特異的、六量体化増強抗体は、P329R変異を有しないDR5特異的六量体化増強抗体と比較して、DR5アゴニズムを誘導する能力の低減を以前に示した(Overdijk et al,Mol Canc Ther 2020)。そのため、IgG1-CD27-AにおけるE345R変異に加えてP329R変異を導入することがCD27アゴニスト活性を増強することは驚くべきことと考えられた。さらに、E345R+P329R変異の組み合わせられた効果がIgG1-CD27-BまたはIgG1-CD27-CよりもIgG1-CD27-Aについて一貫してより大きかった理由は知られていない。
【0340】
実施例7:抗CD27抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345RによるヒトT細胞増殖の誘導
TCR刺激ヒトCD4およびCD8T細胞の増殖を増加させるIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの能力を、ヒト健常ドナーPBMCを使用してCSFE希釈アッセイにおいて分析し、先行技術の抗CD27クローンIgG1-CD27-131A、IgG1-CD27-CDX1127、およびIgG1-CD27-BMS986215と比較した。T細胞増殖アッセイは、軽微な逸脱(75,000細胞/ウェル;濃度範囲0.002~10μg/mL)と共に、実施例6に記載されるように行った。抗CD3刺激を伴わないT細胞を使用する試料を含めて、T細胞受容体活性化の非存在下での抗体の潜在的なCD27アゴニスト活性を試験した(図5Aおよび図5B)。そのような活性は、抗体が静止T細胞の増殖を誘導することができる場合に安全性のリスクを課すので望ましくない。
【0341】
FlowJoソフトウェアを使用して、細胞分裂を指し示すCFSE蛍光の低減を伴う細胞のパーセンテージとして、増殖したT細胞のパーセンテージ(図5A図5B図5C図5D)を算出した。拡大増殖指数(図5Eおよび図5F)はウェル中の細胞の増加倍数を同定し、FlowJoバージョン10中のProliferation Modelingツールを使用して算出された。ピークに対する手動の調整を必要な場合に行って、存在するピークの数をより一貫して定義した。
【0342】
ここで試験された本発明のCD27抗体および先行技術抗体のいずれも、刺激されていないT細胞、すなわちCD3架橋の非存在下で、増殖を誘導しなかった(図5Aおよび図5B)。
【0343】
CD27抗体のほとんどは、試験された最も高い抗体濃度において活性化CD4およびCD8T細胞のある程度の増殖を誘導した(図5Cおよび図5D)。これに基づいて、拡大増殖指数を算出した(図5Eおよび図5F)。本発明の抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、先行技術の抗CD27クローンIgG1-CD27-131A、IgG1-CD27-CDX1127およびIgG1-CD27-BMS986215と比較してインビトロでCD4およびCD8T細胞の増殖をより著しく増強した。
IgG1-CD27-131AおよびIgG1-CD27-BMS986215のために、この実験の文脈において機能的に関連しない、F405L変異を有するバリアントを使用した。
【0344】
実施例8:膜結合型CD27抗体に対するC1qの結合
P329R変異は、C1qおよびFcgRとのIgG1抗体の相互作用を低減させることが以前に記載された(Overdijk et al,Molecular Cancer Therapeutics 2020)。E345R変異を含むIgG1-CD27-AのC1q結合に対するP329R変異の効果を、ヒト健常ドナーT細胞を使用してインビトロで細胞C1q結合アッセイにおいて試験した。抗HIV gp120抗体IgG1-b12-F405Lを非結合性アイソタイプ対照抗体(対照)として使用した。RosetteSep Human T cell Enrichment cocktail(Stemcell、カタログ#15061)を使用してヒト健常ドナーPBMCからT細胞を濃縮し、0.1%BSAおよび1%Pen/Strep[Lonza、カタログ#DE17-603E])を補充した培養培地(RPMI 1640[Gibco、カタログ#A10491-01]に再懸濁した。T細胞(2×106細胞/ウェル)を、抗体希釈系列(15μg/mLの最終アッセイ濃度で開始した8回の5倍希釈)を含むポリスチレン96ウェル丸底プレート中37℃で15分間プレインキュベートして、抗体をT細胞に結合させた。次に、細胞を氷上で冷却し、ヒトC1qの供給源としてNHSを補充し(20%NHSの最終アッセイ濃度)、氷上で45分間インキュベートした。細胞を引き続いて、FITC標識されたウサギ抗ヒトC1q抗体(DAKO、カタログ#F0254;20μg/mL)と氷上で30分間インキュベートし、TO-PRO-3(ThermoFisher、カタログ#T3605;1:5,000の希釈)を含むFACS緩衝液に再懸濁した。生細胞におけるFITCシグナルを測定するフローサイトメトリーによりC1q結合を決定した。
【0345】
膜結合型WT IgG1-CD27-A抗体はC1q結合を示さなかった(図6)。六量体化増強性変異E430GまたはE345Rの導入(IgG1-CD27-A-E430GおよびIgG1-CD27-A-E345R)は、細胞表面上の六量体抗体環構造に対する六量体C1qタンパク質の結合アビディティの増加と合致して、T細胞表面上のCD27抗体に対するC1qの結合を結果としてもたらした(図6)。IgG1-CD27-A-E345RにおけるP329R変異の導入(IgG1-CD27-A-P329R-E345R)はC1q結合の喪失を結果としてもたらし(図6)、IgG1-CD27-A-P329R-E345RはC1qに結合できないことを実証した。
【0346】
これらのデータは、IgG1-CD27-A-P329R-E345RはT細胞の細胞表面上のCD27への結合時にC1qに結合できないことを示す。これは、C1q結合はIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの抗体誘導性CD27アゴニスト活性に寄与しないことを指し示す。これは、他の六量体化増強アゴニスト抗体について以前に記載されたこととは対照的である。さらに、C1q結合の欠如は、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは補体活性化の古典的経路を活性化させることができないことを指し示す。そのため、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、その活性は望ましくないT細胞における補体活性化およびCDCを誘導しないことが予想される。
【0347】
実施例9:ヒトFc受容体に対する抗CD27抗体の結合
ヒトFcγRバリアントに対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの結合を、Biacore表面プラズモン共鳴(SPR)システムを使用して分析し、抗HIV gp120抗体IgG1-b12(対照)と比較した。製造者の使用説明書に従ってアミン-カップリングおよびHis捕捉キット(Cytiva、カタログ#BR100050およびカタログ#29234602)を使用してBiacore Series S Sensor Chips CM5(Cytiva、カタログ#29104988)を抗His抗体で共有結合的に被覆した。次に、HBS-P+(Cytiva、カタログ#BR100827)中の125nMのFcγ受容体FcγRIa、FcγRIIa(167-His[H]および167-Arg[R])、FcγRIIbまたはFcγRIIIa(176-Phe[F]および176-Val[V])(Sino Biological、カタログ#10256-H08S-B、カタログ#10374-H27H、カタログ#10374-H27H1-B、カタログ#10259-H27H-B、カタログ#10389-H27H-Bおよびカタログ#10389-H27H1-B)を表面上に捕捉させた。3サイクルの緩衝液の後に、抗体試料を36サイクルにわたり注入して、FcγRIについて0~3,000nMおよび他のFcγRについて0~10,000nMの抗体範囲を使用して結合曲線を生成した。FcR被覆表面(活性表面)上で分析された各々の試料を、バックグラウンド補正のために使用されたFcRを有しない並列フローセル(参照表面)上でも分析した。10mMのグリシン-HCl(pH 1.5)(Cytiva、カタログ#BR100354)を使用して表面の再生により抗His被覆表面からの解離を行った。Biacore Insight Evaluationソフトウェア(Cytiva)を使用してセンサーグラムを生成し、4パラメーターロジスティック(4PL)フィットを適用して、参照試料(対照)に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの相対的な結合を算出した。
【0348】
高親和性受容体FcγRIaに対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの結合は、対照抗体と比較して強く低減されたが、より高い抗体濃度においてある程度の結合が観察された(図7A)。IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、ヒト低親和性受容体FcγRIIa(図7Bおよび図7C)、FcγRIIb(図7D)ならびにFcγRIIIa(図7Eおよび図7F)に結合しなかった。
【0349】
結論として、IgG1-CD27A-P329R-E345Rは、ヒトIgG Fc受容体に対する最小の結合を示す(FcγRIa)か、または結合を示さない(FcγRIIa、FcγRIIb、およびFcγRIIIa)。
【0350】
実施例10:ヒトT細胞に対する抗CD27抗体IgG1-CD27-A-E345R-P329Rの結合
フローサイトメトリーを使用してヒト健常ドナーT細胞上のCD27に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの結合をより詳細に特徴付けた。抗HIV gp120抗体バリアントIgG1-b12-P329R-E345Rを非結合性対照抗体(対照)として使用した。ヒトPBMCを、ヒト健常ドナーから得られたバフィコートから単離した。FACS緩衝液中のPBMC(1×105細胞/ウェル)をポリスチレン96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one、カタログ#650101)に加え、300×gで3分間、4℃での遠心分離によりペレット化した。細胞を、FACS緩衝液中への連続抗体希釈液(3倍希釈ステップにおいて0.0015~10μg/mLの範囲)50μL/ウェルの中に再懸濁し、4℃で30分間インキュベートした。細胞をペレット化し、FACS緩衝液で2回洗浄し、50μL/ウェルにおいてFITCコンジュゲート二次抗体(FITC AffiniPure F(ab')2断片ヤギ抗ヒトIgG、F(ab')2断片特異物、Jackson ImmunoResearch、カタログ#109-096-097、1:100の希釈)と4℃の暗所中で30分間インキュベートした。細胞を再びペレット化し、FACS緩衝液で2回洗浄し、BV711標識された抗ヒトCD19抗体(BioLegend、カタログ#302246、1:50)、AlexaFluor700標識された抗ヒトCD8a抗体(BioLegend、カタログ#301028、1:100)、APC-eFluor780標識された抗ヒトCD4抗体(Invitrogen、カタログ#47-0048-42、1:50)、PE-CF594標識されたマウス抗ヒトCD56抗体(BD Biosciences、カタログ#564849、1:100)、PE-Cy7標識されたマウス抗ヒトCD14抗体(BD Biosciences、カタログ#557742、1:50)およびeFluor450標識された抗ヒトCD3抗体(Invitrogen、カタログ#48-0037-42、1:200)を含有するリンパ球マーカー用の50μL/ウェルの染色ミックス中で4℃の暗所中で30分間インキュベートした。細胞を再びペレット化し、FACS緩衝液を使用して2回洗浄し、死細胞マーカー7-アミノ-アクチノマイシンD(7-AAD;BD Biosciences、カタログ#51-68981E、1:240の希釈)を含有する80μLのFACS緩衝液に再懸濁した。試料をLSRFortessa(BD)フローサイトメーター上でフローサイトメトリーにより測定し、FlowJoソフトウェアを使用して分析した。GraphPad Prism 8ソフトウェアを使用して非線形回帰(可変の傾きを伴うシグモイド用量-応答)を使用して結合曲線を分析した。
【0351】
抗CD27抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、CD4およびCD8T細胞についての類似した結合特徴と共に、健常ドナーT細胞に対する用量依存的な結合を示した(図8)。
【0352】
実施例11:抗CD27抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345RによるCD27細胞シグナル伝達のFcγR非依存的な誘導
二次的なFcγR媒介性架橋に非依存的にCD27シグナル伝達を誘導することができるCD27特異的モノクローナル抗体は、FcγR陽性細胞の非存在下で免疫賦活性であり得、これはFcγR保有細胞の頻度が低い腫瘍において利点となる。
【0353】
IgG1-CD27-A-P329R-E345RのCD27アゴニスト活性をFcγR保有細胞の存在または非存在下で試験し、対応するWT抗体IgG1-CD27-Aならびに先行技術抗体IgG1-CD27-131A、IgG1-CD27-CDX1127、およびIgG1-CD27-BMS986215と比較した。非結合性抗体IgG1-b12-P329R-E345Rを陰性対照(対照)として使用した。CD27レポーターアッセイは、本質的に実施例2に記載されるように行ったが、本実施例において、Thaw-and-Use GloResponse NFκB-luc2/CD27 Jurkat細胞を、膜結合型抗体のFcgR媒介性架橋を促すことができるヒトFcyRIIb発現細胞の存在下で培養するという例外を伴った。
【0354】
Thaw-and-Use effector FcγRIIb CHO-K1細胞(Promega、カタログ#JA2251)を、希釈せずにまたは3つの増加性希釈(1/3、1/9、1/27)で、96ウェル平底培養プレート(PerkinElmer、カタログ#0815)にプレーティングし、37℃/5%CO2で終夜インキュベートした。抗体の段階希釈(最終濃度範囲0.0002~10μg/mL)を含有する、Bio-Glo Luciferase Assay Buffer中の固定された細胞濃度(非希釈FcγRIIb CHO-K1細胞についての1:1のNFκB-luc2/CD27 Jurkat:FcγRIIb CHO-K1比で開始する)のThaw-and-Use NFκB-luc2/CD27 Jurkat細胞懸濁液により接着FcyRIIb発現細胞の上清を置き換えた。37℃/5%CO2での6hのインキュベーション後に、プレートをRTに平衡化し、生物発光を測定し、実施例2に記載されるようにRLUとして提示した。
【0355】
IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、FcγRIIb発現細胞に非依存的に、用量依存的なCD27活性化を誘導した(図9A)。対照的に、E345R六量体化増強性変異およびP329R変異を有しない、対応するWT抗体IgG1-CD27-Aは、FcγRIIb発現細胞の存在下でのみCD27アゴニズムを示した(図9A図9E)。同様に、先行技術抗体IgG1-CD27-131A、IgG1-CD27-CDX1127およびIgG1-CD27-BMS986215によるCD27活性化もまたFcγRIIb発現細胞の存在に依存し、NFκB-luc2/CD27 Jurkat:FcγRIIb CHO-K1比の減少と共に徐々に減少した(図9F図9J)。
【0356】
結論として、これらのデータは、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは二次的なFcγR媒介性架橋に非依存的にCD27アゴニズムを誘導できることを指し示す。これは、CD27アゴニズムを誘導するためにFcγR保有細胞の存在に依存した先行技術の抗CD27抗体とは対照的である。
IgG1-CD27-131AおよびIgG1-CD27-BMS986215のために、この実験の文脈において機能的に関連しない、F405L変異を有するバリアントを使用した。
【0357】
実施例12:マウスにおいて研究された、標的結合の非存在下での抗CD27抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345Rの薬物動態(PK)分析
標的結合の非存在下での、抗CD27抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345Rの薬物動態特徴をマウスにおいて分析し、対応するWT抗体IgG1-CD27-Aと比較した。IgG1-CD27-AはマウスCD27に結合せず(実施例3、表4)、したがって、標的結合の非存在下で、インビボでIgG1-CD27-AおよびIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの薬物動態挙動を試験するために実験を設計した。研究は、Crown Bioscience(China)により、有資格の職員により、承認されたIACUCプロトコールおよびCrown Bioscience,Inc.Standard Operating Proceduresに従って実行した。11~12週齢の雌SCIDマウス(C.B-17、Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.(VR、Beijing、China;3匹のマウス/群)の静脈内に500μgの抗体(25mg/kg)を200μLの注射体積で注射した。40μLの血液試料を抗体投与の10分、4時間、1日、2日、7日、14日および21日後に収集し、血漿を血液試料から収集し、ELISAによる全ヒトIgG濃度の決定まで-80℃で貯蔵した。96ウェルELISAプレート(Greiner、カタログ#655092)を2μg/mLの抗ヒトIgG(Sanquin、The Netherlands、商品#M9105、ロット#8000260395)を用いて4℃で終夜被覆し、引き続いてPBSA(0.2%ウシ血清アルブミン[BSA、Roche、カタログ#10735086001]を補充したPBS)を用いて1h遮断した。次に、間に洗浄工程を伴って、抗ヒトIgG被覆プレートを、プレートシェーカー上RTで1h、ELISA Buffer(0.05%Tween20[Sigma-Aldrich、カタログ#P1379]を補充したPBSA)中で段階希釈された血漿試料と、RTで1hポリクローナルペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG二次抗体(Jackson、カタログ#109-035-098)と、および最後に2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS;Roche、カタログ#11112422001)と、逐次的にインキュベートした。2%シュウ酸(Riedel de Haen、カタログ#33506)を加えることにより反応を停止させた。注射のために使用されたそれぞれの材料の希釈系列を使用して参照曲線を生成した。吸光度をEL808マイクロタイタープレートリーダー(BioSPX)において405nmで測定し、全ヒトIgG濃度(μg/mL)をプロットした。
【0358】
マウスにおいて静脈内注射後の異なる時点に血漿IgGレベルを測定することにより決定された、IgG1-CD27-A-P329R-E345RのPKプロファイルと対応物WT抗体IgG1-CD27-AのPKプロファイルとの間に、実質的な差異はなかった(図10)。
【0359】
初期(分布)段階におけるより急な低下が、マウスにおけるヒトIgG1についての予測と比較して、IgG1-CD27-A-P329R-E345RおよびそのWT対応物(IgG1-CD27-A)について観察されたが、両方の抗体の末期排除は、2コンパートメントモデルに基づくヒト野生型IgG1についての予測速度と合致していた(Bleeker WK,Teeling JL,Hack CE.Blood.2001 Nov 15;98(10):3136-42)。
【0360】
合わせると、これは、P329RおよびE345R変異の導入は標的結合の非存在下でIgG1-CD27-Aの薬物動態特性に影響しなかったことを実証する。
注記:この実施例に記載される実験は、この実験の文脈において機能的に関連しない、F405L変異を有するIgG1-CD27-AおよびIgG1-CD27-A-P329R-E345Rのバリアントを使用した。
【0361】
実施例13:抗CD27抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345Rによる抗体依存性細胞ファゴサイトーシスの誘導
抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、主にNK細胞上に発現されるFcγRIIIaを通じて媒介される一方、抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)は、FcγRI、FcγRIIa、およびFcγRIIIを介して単球、マクロファージ、好中球、および樹状細胞により媒介され得る(Hayes,J.M et al 2016)。FcγRIa発現免疫細胞のエフェクター機能におけるFcγRIaに対する抗CD27抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345Rの残留結合(実施例9)の効果を理解するために、CTV標識されたCD27バーキットリンパ腫Daudi細胞を標的細胞として、およびヒト単球由来マクロファージ(hMDM)をエフェクター細胞(E:T=2:1)として使用して、ADCPを誘導するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの能力をインビトロで分析した。
【0362】
製造者の使用説明書に従ってCD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、カタログ番号130-050-201)を使用して陽性選択によりPBMCからhMDMを単離した。PBMCを遠心分離(1,200RPM、5分、RT)し、氷冷した単球単離緩衝液(PBS、0.5%BSA、2mM EDTA)に1.25×107PBMC/mLの密度で再懸濁した。80μLのPBMC懸濁液当たり20μLのCD14マイクロビーズを加え、ローラーバンク上4℃で15分間、撹拌と共にインキュベートした。30mLの氷冷した単球単離緩衝液を加え、PBMC/CD14マイクロビーズ混合物を遠心分離(300×g、10分、4℃)し、6mLの氷冷した単球単離緩衝液に再懸濁した。LSカラム(Miltenyi Biotec、カタログ番号130-042-401)を3mLの氷冷した単球単離緩衝液でリンスし、各々のカラムに3mLのPBMC/CD14マイクロビーズ混合物をロードした。CD14-細胞を流し、氷冷した単球単離緩衝液中でカラムを3回洗浄した後に、プランジャーを使用することによりCD14単球を3mLの氷冷した単球単離緩衝液に回収した。ViaStain(商標)Viability Dyeアクリジンオレンジ/ヨウ化プロピジウム(AOPI;Nexcelom Bioscience、カタログ番号CS2-0106)を使用してCellometer Auto 2000 Cell Viability Counter(Nexcelom Bioscience)においてCD14細胞をカウントし、RTでプレートを静置することにより細胞採取を可能とするUpCell(商標)Surfaceを有する100mm2 Nunc(商標)ディッシュ(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号174902)中のマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF;Gibco、カタログ番号PH9501;50ng/mLの最終濃度)および3mLの単球懸濁液(すなわち、2.4×106個の単球)を補充したCelgene(登録商標)GMP DC培地(CellGenix、カタログ番号20801-0500)に0.8×106細胞/mLの密度で再懸濁した。3日のインキュベーションの後に、5×M-CSFを含有する2mLの新鮮な培地をプレートに加えた。7日間のインキュベーション(37℃、5%CO2)の後に、RTでプレートを1~1.5h静置することによりマクロファージを表面から剥離した。剥離したマクロファージを遠心分離によりペレット化し、AOPIを使用してカウントし、培養培地(10%DBSIを含むRPMI 1640)に1×106細胞/mLの密度で再懸濁した。
【0363】
製造者の使用説明書に従ってCellTrace(商標)Violet Cell Proliferation Kit(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号C34557)を使用してヒトバーキットリンパ腫Daudi細胞(ATCC(登録商標)CCL-213(商標))を標識した。簡潔に述べれば、Cell Trace Violet(CTV)を0.2μMの最終濃度までPBS中の1mL当たり1×106個のDaudi細胞に加え、暗所中37℃で20分間インキュベートした(15mLのインキュベーション体積)。10mLのDBSIを加えて、結合していない色素を不活性化させた。細胞を遠心分離(300×g、5分)によりペレット化し、PBS中で洗浄し、AOPIでカウントした。CTV標識されたDaudi細胞を培養培地に0.5×106細胞/mLの密度で再懸濁した。
【0364】
ADCPアッセイのために、hMDM(50,000細胞/ウェル)およびCTV標識されたDaudi細胞(25,000細胞/ウェル)を一緒に(E:T=2:1)、氷上で、96ウェルプレート中150μLの最終体積の培養培地に播種し、抗CD27抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345Rまたは抗CD20抗体IgG1-CD20(10倍希釈で0.000001~10μg/mLの濃度範囲)と4h(37℃、5%CO2)インキュベートした。インキュベーション後に、100μLのHuman BD Fc Block(商標)(BD Biosciences、カタログ番号564220;FACS緩衝液中1:100)を加え、4℃で10分間インキュベートした。細胞を遠心分離(300×g、5分)によりペレット化し、PE-Cy7コンジュゲート抗ヒトCD11b抗体(BioLegend、カタログ番号301322;1:80)およびTO-PRO-3(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号T3605;1:25,000)を含有するFACS緩衝液に再懸濁し、4℃で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁し、FACSymphony(商標)A3 Cell Analyzer(BD Biosciences)上で収集および分析した。FlowJoソフトウェアを使用してデータを分析して、生存標的細胞数および食細胞hMDMを測定し、GraphPad Prismソフトウェアを使用して処理および可視化した。
【0365】
各々の条件についての生存Daudi細胞のパーセンテージは、以下の式によって算出した。
【0366】
各々の条件についての食細胞hMDMの量は、TO-PRO-3-CD11bCTV細胞の%として決定した。
【0367】
IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、4人の異なるヒト健常ドナーからのhMDMを使用して、ファゴサイトーシスアッセイにおいて食細胞hMDMのパーセンテージを増加させることも生存Daudi細胞のパーセンテージを低減させることもなかった。これは、残留FcγRIa結合は、IgG1-CD27-A-P329R-E345RについてFcγRIa媒介性エフェクター機能を結果としてもたらさなかったことを実証する(代表的なヒト健常ドナーからのデータを図11に示す)。食細胞hMDMのパーセンテージにおける増加および生存Daudi細胞のパーセンテージにおける減少により実証されるように、陽性対照抗体IgG1-CD20は、高いレベルのCD20を発現するDaudi細胞のファゴサイトーシスを効率的に誘導した。
【0368】
結論として、FcγRIaに対する残留結合は、CD27細胞のIgG1-CD27-A-P329R-E345R依存性ADCPを誘導するために十分でなかった。
【0369】
実施例14:C4d沈着の測定により決定された、抗CD27抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345Rによる、流体相での標的非依存的補体活性化
Fc-Fc相互作用増強抗体は、溶液中で単量体IgG1分子として一般に存在し、標的結合で細胞表面上で六量体化して、活性Fc領域の場合にC1qドッキング場所を形成する(Diebolder,C.A et al 2014;de Jong,R.N et al,2016)。抗CD27抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345RのIgG FcドメインはP329R変異の導入によりサイレンシングされ、これは、膜結合型IgG1-CD27-A-P329R-E345Rに対するC1q結合の欠如を結果としてもたらす(図6)。IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは標的結合の非存在下で溶液中で補体を活性化させることができないことを確認するために、古典的な補体経路の活性化のための指標と考えられるC4d沈着の決定により標的非依存的な補体活性化を調べた。MicroVue(商標)C4d Enzyme Immunoassay(EIA;Quidel、カタログ番号A008)を使用して酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によりIgG1-CD27-A-P329R-E345Rによる流体相C4d断片沈着を分析し、これは製造者のプロトコールに従って行った。Heat Aggregated Gamma Globulin(HAGG;補体活性化剤;Quidel、カタログ番号A114)をアッセイのための陽性対照として使用した。IgG1-b12およびIgG1-b12-RGY(WO2014006217A1)を対照抗体として含めた。IgG1抗体中のE345R/E430G/S440Y(RGY)Fc変異の導入は、溶液中での六量体の形成を誘導して、流体相補体活性化を結果としてもたらすことが記載されている(Diebolder,C.A et al,2014;Wang,G.,R.N et al,2016;de Jong,R.N et al,2016)。IgG1-b12-P329R-E345Rをアイソタイプ対照抗体として含めた。
【0370】
10mg/mLの濃度まで希釈されたHAGGを除いて、リン酸緩衝化食塩水(PBS)中で1mg/mLの濃度までの抗体希釈液を調製した。次に、試験試料を90%(最終濃度)の通常ヒト血清(NHS)(CompTech、ロット番号42a)中で100μg/mL(モノクローナルIgG)または1,000μg/mL(HAGG)の濃度までさらに希釈し、37℃で1hインキュベートした。並行して、「抗体なし」試料(抗体なし、90%NHS)および「PBS単独」試料(抗体なし、NHSなし)を陰性対照として含めた。次に、キットに提供される冷却したComplement Specimen Diluent中で試料を1:250に希釈した。一方、マウス抗ヒトC4d抗体を被覆したストリップを96ウェルプレートに入れ、最初の洗浄後の1分の待機工程と共に250~300μLの洗浄緩衝液を用いてアッセイウェルを3回洗浄した。試験試料をウェル(100μL/ウェル)に加え、陰性対照として、補体検体希釈剤のみ(ブランク)をELISAにおいて使用した。並行して、キットにより提供される100μLの標準品(標準A-E)および内部対照を別々のウェルに加えた。プレートをRTで30分間インキュベートした。次に、プレートを上記されている洗浄緩衝液で5回洗浄した。50μLのC4dコンジュゲート(ペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトC4d)をウェルに加え、プレートをRTで30分間インキュベートした。上記されている洗浄緩衝液での5回の洗浄工程後に、100μLのC4d基質[0.7% 2-2'-アジノ-ジ-(3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸ジアンモニウム塩]を加え、再びプレートをRTで30分間インキュベートした。最後に、50μLのキットにより提供される停止溶液を加え、1h以内に、ELISAプレートリーダー(EL808 BioSPX、BioTek)を使用して405nmで光学密度を測定した。
【0371】
IgG1-CD27-A-P329R-E345Rおよび対照抗体IgG1-b12-P329R-E345R(IgG1-CD27-A-P329R-E345Rと同じFc骨格を有する)は、100μg/mLの試験された濃度において流体相C4d沈着を誘導せず;測定されたC4dレベルは、野生型Fcドメインを有する対照抗体(IgG1-b12)および抗体なし対照のバックグラウンドレベルと類似していた(図12)。対照的に、溶液中で六量体を形成することが既知である陽性対照抗体IgG1-b12-RGYは、HAGGと同じレベルまでC4d沈着を誘導した。
【0372】
これらのデータは、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、標的非依存的な、流体相補体活性化をインビトロで誘導しなかったことを示す。
【0373】
実施例15:CD70とリガンド結合について競合する抗CD27抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345Rの能力
抗CD27抗体IgG1-CD27-A-P329R-E345Rがその天然リガンドCD70とのCD27の相互作用に干渉するかどうかを決定するために、ヒトバーキットリンパ腫細胞株Daudi上に内因性に発現されるCD27に対する飽和濃度のビオチン化組換えヒトCD70細胞外ドメイン(ECD)の結合を過剰なIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの存在および非存在下で研究した。
【0374】
鉄を含む10%ドナーウシ血清(DBSI;Gibco、カタログ番号20731-030)を補充したRPMI 1640培地(Gibco、カタログ番号A10491-01)中で培養されたDaudi細胞(ATCC(登録商標)CCL-213(商標))を、丸底96ウェルプレート(Greiner Bio One、カタログ番号650261)に50,000個の細胞/ウェルで播種した。細胞を遠心分離(300×g、3分、4℃)によりペレット化し、抗CD27または対照抗体(50μg/mLの最終濃度)を含有するFACS緩衝液(PBS、1%BSA[Roche、カタログ番号1073508600])に再懸濁した。ビオチン化組換えヒトCD70 ECD(Abcam、カタログ番号ab271443)を飽和濃度(6μg/mL)で加え、細胞を4℃で30分間インキュベートした。
【0375】
細胞を2回洗浄し、Brilliant Violet(BV)421(商標)標識されたストレプトアビジン(BioLegend、カタログ番号405225;0.0025μg/mLの最終濃度)およびRフィコエリトリン(PE)標識されたポリクローナルAffiniPure F(ab')2断片ヤギ-抗ヒトIgG Fc(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109 116098;0.0025μg/mLの最終濃度)を含有するFACS緩衝液に4℃で30分間再懸濁した。細胞を2回洗浄し、TO-PRO-3ヨージド(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号T3605;1:25,000)を含有するFACS緩衝液に再懸濁し、分析した。データをBD FACSymphony(商標)A3フローサイトメーター(BD Biosciences)上で収集し、FlowJoソフトウェアを使用して分析した。補償のために、1滴のUltraComp eBeads(商標)Compensation Beads(Life Technologies、カタログ番号01-2222-42)を各々のウェルに加えた。2μLの各々の抗体を加え、ミックスを20分間インキュベートした。プレートを遠心沈降にかけ、ビーズをFACS緩衝液に再懸濁し、測定した。生存の補償のために、細胞を65℃で10分間処理し、生存細胞と1:1で混合した。細胞を遠心沈降させ、FACS緩衝液中に希釈されたTO-PRO-3に再懸濁した。GraphPad Prismを使用してデータを処理および可視化した。
【0376】
IgG1-CD27-A-P329R-E345RまたはIgG1-CD27-Aは、CD27Daudi細胞に対するCD70 ECDの結合を遮断せず、CD70結合レベルは、非結合性アイソタイプ対照抗体IgG1-b12-P329R-E345RもしくはIgG1-b12とインキュベートされたDaudi細胞、または抗体なしの細胞の場合と同等であった(図13)。また、先行技術の抗CD27抗体IgG1-CD27-BMS986215およびIgG1-CD27-131Aは、CD70 ECDに対するCD27の結合における弱い遮断効果を示した。対照的に、CD70は、リガンド結合を遮断することが以前に報告された先行技術の抗CD27抗体IgG1-CD27-CDX1127(Vitale et al、2012)の存在下でDaudi細胞上の表面CD27に結合することができなかった(図13)。
【0377】
結論として、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rの結合は、Daudi細胞上の天然リガンドCD70によるCD27の結合を遮断しない。
【0378】
実施例16:抗CD27抗体とのポリクローナルに刺激されたヒトPBMCのインキュベーションでのT細胞活性化マーカーの発現
ポリクローナルに活性化されたT細胞におけるT細胞活性化マーカーの発現に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの効果を、3人の異なる健常ヒトドナーから得られたPBMCを使用して研究した。PBMCをIgG1-CD27-A-P329R-E345Rまたは先行技術の抗CD27抗体と2日間および5日間インキュベートした後にHLA-DR、CD25、CD107a、および4-1BBの発現を分析した。
【0379】
96ウェルU底プレート(Greiner Bio-One)中の細胞培養培地に、1ウェル当たり、新たに単離された75,000個のPBMCを播種した。二連のウェルを同時に抗CD3抗体(UCHT1クローン;Stemcell;0.1μg/mL);およびIgG1-CD27-A-P329R-E345R(3倍希釈における0.0005~30μg/mL);または先行技術の抗CD27抗体IgG1-CD27-CDX1127、IgG1-CD27-131A、およびIgG1-CD27-BMS986215(30μg/mL);または非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345R(10μg/mL)と共にインキュベートした。処理の非存在下での各々の活性化マーカーの発現を決定するために、非処理(抗CD3抗体も抗CD27抗体もなし)の細胞を含む二連の対照ウェルに単独で培養培地を補充した。活性化マーカー陽性細胞を同定するためのゲートを設定するために、fluorescence minus one(FMO)対照を使用した。FMO対照のために、二連のウェル中の活性化マーカーに対応するものを除く実験において使用されたすべての抗体を、抗CD3抗体を用いて活性化された1人のドナーからのウェル当たり75,000個のPBMCに加えた。染色抗体を含まない単一のウェル中の各々のドナーからの非処理の細胞を陰性対照として含めた。生存細胞を検出するために、各々のドナーからの非処理の細胞を単一のウェル中で4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)単独で染色した。
【0380】
2日間または5日間のインキュベーション(37℃、5%CO2)の後に、プレートをFACS緩衝液で1回洗浄し、T細胞活性化マーカー4-1BB、CD25、CD107a、ヒト白血球抗原(HLA)-DRのための抗体;ならびにフローサイトメトリーにおいてCD4およびCD8T細胞サブセットをゲーティングするための抗体を含有するFACS緩衝液中の抗体混合物に再懸濁した。4℃で30分間のインキュベーションの後に、すべてのプレートをFACS緩衝液で2回洗浄し、細胞をFACS緩衝液に再懸濁した。FlowJoソフトウェアを使用してBD LSRFortessa Cell Analyzer上で試料を分析して、CD4およびCD8T細胞上の各々のT細胞活性化マーカーについての中央値蛍光強度(MFI)および陽性細胞のパーセンテージを決定した。T細胞活性化マーカーの発現レベルにおける抗CD27抗体誘導性の変化を、非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rと比べた抗CD27抗体試料のMFIにおける変化倍数として提示した。FlowJoソフトウェアを使用してBD LSRFortessa(商標)Cell Analyzer(BD Biosciences)上で試料を分析した。
【0381】
IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、活性化CD4T細胞上のCD25、CD107aおよび4-1BBの発現を増加させた(図14A)。これらの効果は、5日のインキュベーションの後よりも2日のインキュベーションの後により著しかった。CD8T細胞上で、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rとのインキュベーションは、2日のインキュベーション後および5日のインキュベーション後の両方においてHLA-DR、CD107aおよび4-1BBの発現の増加を結果としてもたらした(図14B)。
【0382】
3つの先行技術抗体との2日間および5日間のインキュベーションでのT細胞活性化マーカーの発現も評価した。IgG1-CD27-131AおよびIgG1-CD27-BMS986215は、CD4およびCD8T細胞上のHLA-DR、4-1BB、CD25、およびCD107aの発現における同等の増加を誘導したが、T細胞活性化マーカー発現に対するIgG1-CD27-CDX1127との2日間または5日間のインキュベーションの効果はより弱いものであった。
【0383】
結論として、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rとのポリクローナルに活性化されたPBMCのインキュベーションは、CD4およびCD8T細胞上の活性化マーカーHLA-DR、CD25、CD107aおよび4-1BBの発現の増加を結果としてもたらした。
【0384】
実施例17:ヒトCD27-KIマウスモデルにおける抗CD27抗体の注射後のOVAタンパク質免疫化マウスにおけるOVA特異的CD8T細胞のパーセンテージ
脾臓細胞におけるhCD27 KI OVAモデルにおける抗原特異的T細胞の拡大増殖に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345R処置の効果をフローサイトメトリーにより分析した。
【0385】
C57BL/6バックグラウンドのホモ接合性ヒトCD27(hCD27)-KIマウス(hCD27 KIマウス)をBeijing Biocytogen Co.,Ltd.(系統名C57BL/6-Cd27tm1(CD27)/Bcgen、ストック番号110006)から得た。この系統は、Crown BioscienceのHuGEMM(商標)プラットフォームとの共同で開発され、機能的な免疫系を有するマウス内のヒト化された薬物標的(この場合CD27)を特色とするものであった。hCD27 KIマウスにおいて、細胞外ドメインをコードするマウスCD27遺伝子のエクソン1~5をヒトCD27エクソン1~5により置き換えた。OVA特異的T細胞をhCD27-KIマウスにおいて免疫原オボアルブミン(OVA)の皮下(s.c.)注射によりインビボで誘導し、静脈内(i.v.)に抗体を用いてマウスを同時に処置することによりIgG1-CD27-A-P329R-E345Rのアゴニスト効果を試験した。
【0386】
0日目に、マウスにs.c.で5mgのOVA(InvivoGen、カタログ番号vac-pova-100、ロット番号EFP-42-04)を注射し、尾静脈へのIgG1-CD27-A-P329R-E345R(30mg/kg)、IgG1-CD27-CDX1127(30mg/kg)またはIgG1-b12-P329R-E345R(30mg/kg)のi.v.注射により処置した。12日目および21日目に、マウスをOVAでブーストし、0日目と同様の抗体で処置した。10日目、19日目および24日目に、頬袋または伏在静脈を介してエチレンジアミン四酢酸二カリウム(K2-EDTA;BD、カタログ番号365974)を含有するBD Microtainer(登録商標)血液収集チューブ中に血液を収集し、さらなる分析において直ちに使用した。28日目に、マウスを安楽死させ、無菌条件下で脾臓を切除した。
【0387】
RPMI1640培地(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号C22400500BT)中の切除された脾臓組織をgentleMACs(商標)C Tubes(Miltenyi Biotec、カタログ番号130-093-237)に移し、製造者の使用説明書に従ってgentleMACS(商標)Dissociator(Miltenyi、カタログ番号130-093-235)を使用して単一細胞懸濁液に機械的に解離させた。解離後に、細胞懸濁液を70μmの細胞ストレーナー(Falcon、カタログ番号352350)に通して濾過した。次に、試料を3mLの洗浄緩衝液(4% FBS[Gibco、カタログ番号10099 141]を補充した無菌PBS[Hyclone、SH0256.01B])中の再懸濁により2回洗浄した。細胞をCellometer Auto T4(Nexcelom Bioscience)でカウントし、細胞の数をチューブ当たり2×106個の脾臓細胞に調整した。
【0388】
2×106個の脾臓細胞をFACSチューブ(Falcon、カタログ番号352052)に移し、1μg/mLの精製されたラット抗マウスCD16/CD32(Mouse BD Fc Block(商標)、BD Biosciences、カタログ番号553141)を補充した洗浄緩衝液(4% FBS[Gibco、カタログ番号10099 141]を補充した無菌PBS[Hyclone、SH0256.01B])に再懸濁した。2~8℃の暗所中で10分間のプレインキュベーションの後に、10μLのPE標識されたOVA四量体(MBL Life science、カタログ番号TS 5001 1C)を加え、試料を穏やかにボルテックスした後に、2~8℃の暗所中で30~60分間さらにインキュベートした。洗浄なしで、T細胞サブセットのフローサイトメトリーゲーティングのために使用される標識された抗体および化合物を加えた。試料を穏やかにボルテックスし、2~8℃の暗所中でさらに30分間インキュベートした。次に、試料を2mLの洗浄緩衝液中の再懸濁により2回洗浄し、300×gで5分間遠心分離した。最後に、細胞を250μLの洗浄緩衝液に再懸濁し、BD LSRFortessa(商標)X-20 Cell Analyzer(BD Biosciences)で分析した。Kaluza Analysis Software(Beckman Coulter)を使用してデータを処理した。
【0389】
IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、OVAタンパク質ワクチン接種を同時に注射されたマウスの血液および脾臓においてOVA特異的CD8T細胞のパーセンテージを増加させた。30mg/kgのIgG1-CD27-CDX1127で処置されたマウスにおけるOVA特異的CD8T細胞のパーセンテージは、IgG1-CD27-A-P329R-E345R処置群よりも低く、IgG1-b12-P329R-E345R処置群と同等であった(図15)。
【0390】
実施例18:抗CD27抗体を注射されたOVA免疫化マウスの脾臓からのOVA特異的CD8T細胞によるIFNγ分泌
RPMI1640培地中の切除された脾臓組織(実施例17を参照)を70μmの細胞ストレーナー(Falcon、カタログ番号352350)で穏やかにマッシュし、遠心分離(1,500rpm、5分)によりペレット化し、10mLのAmmonium-Chloride-Potassium(ACK)Lysing Buffer(Invitrogen、カタログ番号A1049201)に再懸濁した。RTで3~5分のインキュベーションの後に、試料を10~20mLのPBSで2回洗浄し、50U/mLのペニシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシン(pen/strep、Gibco、カタログ番号15070-063)を補充した5mLのCellular Technology Limited(CTL)Test(商標)Medium(ImmunoSpot、カタログ番号CTLT-005)に再懸濁した。収集された脾臓細胞を再び70μmの細胞ストレーナーに通して濾過し、Vi-CELL(商標)XR Cell Viability Analyzer(Beckman Coulter)でカウントして、pen/strepを含有するCTL-Test Mediumで3.125×106細胞/mLに濃度を調整した。
【0391】
本質的に製造者により説明されるように、Mouse IFN-γ ELISpotPLUS kit(Mabtech、カタログ番号3321-4HPW-2)を使用して脾臓細胞によるIFNγ産生を分析した。プレコーティングされたMultiScreenHTS IP Filter(MSIP)白色プレート(mAb AN18)をウェル当たり200μLの無菌PBSで4回洗浄し、pen/strepを含有する200μLのCTL-Test Mediumでコンディショニングした(RT、30分)。培地を除去し、ウェル当たり5×105個の脾臓細胞を二連で2μg/mLのOVA257-264ペプチドSIINFEKL(Invivogen、カタログ番号vac-sin)、またはスクランブル化対照ペプチドFILKSINE(SB-PEPTIDE、カタログ番号SB073-1MG)と180μL/ウェルの総体積で20h、加湿されたインキュベーター(37℃、5%CO2)中でインキュベートした。IFNγ産生の陽性対照として、脾臓細胞を並行して、500ng/mLのホルボールミリステートアセテート(PMA)および10μg/mLのイオノマイシン(PMA+イオノマイシン、Dakewe Biotech、カタログ番号DKW ST PI)からなる細胞刺激カクテルとインキュベートした。ペプチドなしの脾臓細胞の培養物を陰性対照として含めた。インキュベーション後に、細胞を除去し、プレートをPBSで5回洗浄した。次に、プレートを、間にPBSでの5回の洗浄工程と共に、ビオチン化検出mAb(R4-6A2;RT、2h)、ストレプトアビジン-ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP;RT、1h)、および最後に3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液(すべてキットにより提供される)と逐次的にインキュベートした。別個のスポットが出現した場合、脱イオン水中での大規模な洗浄により反応を停止させた。spotAID V8ソフトウェア(AID)を使用してAID iSpot ELISpot Reader(Autoimmun Diagnostika[AID]GMBH、ELR08IFL)上でスポットをカウントした。GraphPad Prismソフトウェアを使用してELISpotデータを分析し、棒図表に提示し、処置群当たりのすべてのマウス(n=5)からのウェル当たりのスポットの平均数±SEMとして提示した。
【0392】
ELISpot分析により実証されるように、すべてのIgG1-CD27-A-P329R-E345R処置動物群からの脾臓細胞は、OVAペプチドでの処置に応答してIFNγ産生を増加させたことを示した(図16)。スクランブル化対照ペプチドでの脾臓細胞の刺激は、IFNγ産生を誘導しなかったか、または最小のIFNγ産生を誘導し、IFNγはOVA特異的T細胞により産生されたことを示唆した。対照的に、IFNγ産生は、30mg/kgのIgG1-CD27-CDX1127で処置されたマウスからの脾臓細胞において観察されなかった。
【0393】
実施例19:インビボでのOVA免疫化マウスにおけるT細胞活性化に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345R処置の効果
CD8T細胞活性化に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345R処置の効果を、OVA処置されたhCD27-KIマウスに由来するCD8T細胞上のPD-1の発現を分析することによりインビボで研究した。実施例17に記載されるようにマウスを処置した。また、脾臓細胞を得、それをFACSにより分析する方法は実施例17に記載されている。
【0394】
IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、28日目に活性化マーカーPD-1を発現するCD8T細胞のパーセンテージにおける増加を誘導した。CD8PD-1T細胞のパーセンテージは、IgG1-CD27-CDX1127または対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rで処置された動物において低かった(図17)。
【0395】
実施例20:OVA免疫化マウスにおけるT細胞サブセットのインビボ誘導に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345R処置の効果
T細胞サブセットの拡大増殖に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの効果を、OVA処置されたhCD27-KIマウスからの脾臓細胞試料中のCD44およびCD62Lの発現を分析することにより研究した。IgG1-CD27-A-P329R-E345R処置された、OVA免疫化された、hCD27-KIマウスの脾臓に由来するメモリーCD8T細胞を、フローサイトメトリーにより定量化した。メモリーT細胞をエフェクターメモリー(CD44CD62L-)およびプレエフェクターT細胞(CD44-CD62L-;Nakajima,Y.,K et al 2018)として分類した。実施例17に記載されるようにマウスを処置した。また、脾臓細胞を得、それをFACSにより分析する方法は、実施例17に記載されている。
【0396】
IgG1-CD27-A-P329R-E345R(30mg/kg)は、IgG1-b12-P329R-E345Rで処置されたマウスの脾臓細胞と比較した場合に28日目に脾臓中のプレエフェクターT細胞およびエフェクターメモリーCD8T細胞のパーセンテージの増加を誘導した(図18)。CD45集団内で、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、IgG1-CD27-CDX1127(30mg/kg)よりも高いパーセンテージのプレエフェクターT細胞およびエフェクターメモリーT細胞を誘導したが、同等の平均パーセンテージのこれらのT細胞集団が、脾臓細胞のCD8画分中で両方の抗CD27抗体により誘導された。
【0397】
実施例21:OVA免疫化マウスにおけるT細胞のインビボ拡大増殖に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345R処置の効果
T細胞の拡大増殖に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの効果を、OVA処置されたhCD27-KIマウスからの脾臓細胞および血液試料中のCD3の発現を分析することにより研究した。実施例17に記載されるようにマウスを処置した。また、脾臓細胞および血液試料を得、それらをフローサイトメトリーにより分析する方法は、実施例17に記載されている。
【0398】
30mg/kgのIgG1-CD27-A-P329R-E345RでのOVA免疫化hCD27-KIマウスの処置は、非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rでの処置と比較して、脾臓におけるCD3T細胞のパーセンテージを増加させなかった(図19)。対照的に、ベンチマーク抗体IgG1-CD27-CDX1127(30mg/kg)での処置は、脾臓におけるCD3T細胞の減少を結果としてもたらした。類似した観察が末梢血試料において為された。
【0399】
実施例22:抗原特異的研究におけるT細胞サイトカイン産生に対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの効果
サイトカイン産生を増加させるIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの能力を、コグネイト抗原により刺激されたT細胞を使用して研究した。製造者の使用説明書に従ってFicoll-Paque密度勾配分離(GE Healthcare、カタログ番号17 1440 03)により健常ヒトドナーから得られたバフィコートからPBMCを単離した。
【0400】
ヒト磁気CD14およびCD8マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、それぞれカタログ番号130 050 201および130 045 201)をヒトPBMCからのCD14単球の陽性選択およびCD14-PBLの陰性選択、ならびに凍結されたPBLからのCD8T細胞の陽性選択のために使用した。細胞懸濁液を遠心分離し、磁気活性化細胞選別(MACS)緩衝液(5μMのEDTAおよび0.2%ヒトアルブミンを含むダルベッコリン酸緩衝化食塩水[DPBS])に80μLのMACS緩衝液当たり1×107個の生細胞で再懸濁した。1×107個の細胞当たり、12μLのCD14またはCD8マイクロビーズを加えた。引き続いてのMACS分離を、自動化された磁気細胞分離機器を使用してまたは手動の分離により行った。自動化されたMACS分離は、製造者の使用説明書に従ってautoMACS(登録商標)Pro Separator(Miltenyi Biotec)を使用して行った。溶出されたCD14単球およびCD8T細胞を遠心分離(8分、300×g、RT)し、X-VIVO 15培地(Lonza)に再懸濁し、エリスロシンB溶液を用いてさらなる使用;すなわち、iDCへの単球分化またはPD-1および/もしくはCLDN6特異的T細胞受容体(TCR)mRNAを用いたCD8T細胞のエレクトロポレーションのためにカウントした。
【0401】
単球由来iDCの生成のために、最大40×106個のPBMC由来CD14単球をT175フラスコ中、100ng/mLのヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF;Miltenyi Biotec、カタログ番号130-093-868)および50ng/mLのヒトIL-4(Miltenyi Biotec、カタログ番号130093 924)を補充したDC培地(RPMI 1640、5%のプールされたヒト血清[PHS;One Lambda、カタログ番号A25761]、1×最小必須培地非必須アミノ酸溶液[MEM NEAA、Life Technologies、カタログ番号11140 035]、1mMピルビン酸ナトリウム[Life Technologies、カタログ番号11360 039])中で5日間培養(37℃、5%CO2)した。3日の培養後に、フラスコ当たり培地の半分を置き換えた。フラスコから得られた培地中の非接着性単球をペレット化(8分、300×g、RT)し、200ng/mLのGM-CSFおよび100ng/mLのIL-4を補充した新鮮なDC培地に再懸濁し、次に元々のフラスコに戻した。5日のインキュベーションの後に、培養フラスコに接着していたiDCを、2mM EDTAを含有する10mLのDPBSを使用して剥離した(37℃、10分)。単離されたiDCを洗浄し、ペレット化(8分、300×g、RT)し、CLDN6 mRNAを用いるエレクトロポレーションのために使用した。
【0402】
ヒトCD8T細胞に、ヒトCLDN6に特異的なマウスTCRのアルファおよびベータ鎖をコードするRNAを、単独でまたはPD-1をコードするRNAと共に、エレクトロポレートし、ヒト単球由来iDCに、ヒトCLDN6をコードするRNAをエレクトロポレートした。最大5×106個のiDCまたは15×106個のCD8T細胞を、ECM 830 Square Wave Electroporation System(BTX(登録商標))を使用してRTで250μLのX-VIVO 15培地中でエレクトロポレートした。細胞をRNAと混合し、パルス処理(T細胞について500V、3ms、またはiDCについて300V、12ms)し、750μLの予め温めたアッセイ培地(5%PHSを含むIMDM GlutaMAX[Life technologies、カタログ番号31980030])で直ちに希釈した。エレクトロポレートしたiDCを6または12ウェルプレートに移し、O/N(37℃、5%CO2)培養した。O/Nのインキュベーションの後に、エレクトロポレートしたCD8T細胞およびiDCをフローサイトメトリーにより評価して、細胞純度、トランスフェクトされたRNAの発現(CD8T細胞上のPD-1およびCLDN6-TCRならびにiDC上のCLDN6)、ならびにCD8T細胞上のCD27およびPD-1ならびにiDC上のPD-L1のベースライン発現を評価した。エレクトロポレートしたCD8T細胞の約78%~93%、78%~92%、および36%~98%は、それぞれCLDN6-TCR、PD-1、および内因性CD27を発現した。エレクトロポレートしたiDCの約47%~91%および94%~99%は、それぞれCLDN6および内因性PD-L1を発現した(図示せず)。
【0403】
CD8T細胞およびiDCを10:1の比(ウェル当たり7.5×104個のT細胞および7.5×103個のiDC)で96ウェル丸底プレートに播種した。IgG1-CD27-A-P329R-E345Rをアッセイ培地中で希釈し、25μLの希釈されたIgG1-CD27-A-P329R-E345Rをウェルに加えて、10μg/mLの最終濃度に達した。同様に、対照抗体IgG1-CD27-131AおよびIgG1-b12-P329R-E345Rを10μg/mLの最終濃度に達するまで加えた。CLDN6を発現および提示するように形質導入されたiDCと共培養された、CLDN6-TCRを発現するように形質導入されたT細胞の上清中のサイトカインを測定することにより、抗体処理での抗原特異的T細胞活性をインビトロで分析した。上清を2日後に収集し、複数の炎症促進性サイトカインおよびケモカインの濃度を、製造者の使用説明書に従って10-spot U-PLEX ImmunoOncology Group 1(human)kit(MSD;カタログ番号K151AEL 2)を使用してマルチプレックス電気化学発光アッセイ(ECLIA)により決定した。
【0404】
10-spot U-PLEX Immuno-Oncology Group 1 kitのために、ビオチン化された捕捉抗体を、ビオチン結合ドメインを有する割り当てられたリンカーと共にRTで30分間プレインキュベートし、続いて停止溶液と30分インキュベートした。RTで振盪と共に1hrインキュベートすることにより、リンカーにより連結された捕捉抗体のミックスでプレートを被覆した。プレートを1×MSD洗浄緩衝液で3回洗浄した。上清試料またはキット標準品をアッセイ希釈剤中で1:2に希釈し、ウェルに加え、RTで2h、一定の振盪と共にインキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、キットからのSULFO-TAGコンジュゲート検出抗体とRTで1h、一定の振盪と共にインキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した後に、電気化学発光反応を触媒するためにリード緩衝液Bを加えた。MESO QuickPlex SQ 120 imager(MSD)で光強度を測定することによりプレートを直ちに分析した。
【0405】
2日のインキュベーション後のCD8T細胞/iDC共培養物からの上清におけるマルチプレックスECLIAによりサイトカイン産生におけるIgG1-CD27-A-P329R-E345R誘導性変化を評価した(n=4の異なるドナー)。IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、内因性レベルのPD-1を発現するCD8T細胞を用いるCD8T細胞/iDC共培養物においてGM-CSFおよびIFN-γの産生における有意な増加を誘導したが(図20A)、IL-13およびTNFα産生における増加も観察された。同じサイトカインについてのかなりの増加が、PD-1過剰発現T細胞を含有する培養物において観察された(図20B)。T細胞がPD-1を過剰発現する場合にサイトカインレベルは一般に減少したが、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rの存在下でのサイトカイン産生における相対的な増加(増加倍数)はこの設定において最も高かった(図20Aおよび図20B)。対照的に、先行技術の抗CD27抗体IgG1-CD27-131Aは、非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rと比較してサイトカイン産生に対する最小の効果を示した(図20Aおよび図20B)。
【0406】
実施例23:IgG1-CD27-A-P329R-E345Rとインキュベートされた抗原特異的CD8T細胞による細胞傷害性関連分子の発現
CLDN6-TCRを発現するように形質導入されたヒト健常ドナーT細胞およびMDA-MB-231_hCLDN6標的細胞の共培養物においてフローサイトメトリーにより抗原特異的T細胞上の細胞傷害性関連分子の発現を分析することにより抗体処理でのT細胞媒介性細胞傷害の誘導を研究した。
【0407】
MDA-MB-231_hCLDN6細胞をレンチウイルス形質導入により生成した。この目的のために、10%FBS(非熱不活化)を補充した250μLのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Thermo Fisher Scientific、カタログ番号31966~047)中の2×105個のMDA-MB-231細胞を12ウェル組織培養プレート中のウェル毎に播種した。細胞を37℃(7.5%CO2)で1~2hインキュベートした。ヒトCLDN6をコードするレンチウイルスベクター(pL64b42E(EF1a-hClaudin6)Hygro-T2A-GFP)を含有する上清を氷上で解凍し、750μLのDMEM/10%FBSの総体積で希釈して、2×105、8×104、および3.2×104TU/mLの力価を得た。これらの力価は、それぞれ1、0.4、および0.16のMOIに対応した。上清を次にMDA-MB-231細胞に加え、細胞を攪乱なしで37℃(5%CO2)で72hインキュベートした。本実施例に記載される実験のために、MDA-MB-231-hCLDN6細胞をDMEM/10%FBS中で培養した。細胞を継代し、70%~90%のコンフルエンスにおいて実験のために採取した。細胞をAccutase(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号A11105010)で5分間(37℃、7.5%CO2)の処理により剥離し、培養培地の追加により再懸濁した。細胞を遠心分離(300×g、4分、RT)し、カウントした。MDA-MB-231_hCLDN6細胞は、20継代より多く培養しなかった。
【0408】
MDA-MB-231_hCLDN6細胞を1.2~1.5×104細胞/ウェルで96ウェル平底プレート(フローサイトメトリー分析のため)およびxCELLigence E-plates(Agilent、カタログ番号05232368001;インピーダンス測定のため)に播種し、RTで30分間静置した。次に、プレートをそれぞれインキュベーターおよびxCELLigence real-time cell analysis(RTCA)機器(ACEA Biosciences)において1日インキュベートした(37℃、5%CO2)。
【0409】
単離されたCD8T細胞(実施例22を参照)にCLDN6特異的TCR mRNAをエレクトロポレートし、O/Nでインキュベートした。CD8T細胞単離およびエレクトロポレーションの後に、T細胞培養物は49%~99%のCD8T細胞を含有した。これらのエレクトロポレートされたCD8T細胞のうち、約78%~93%はCLDN6-TCRを発現し、CLDN6-TCRCD8細胞の59%~98%はCD27であった。細胞を遠心分離(8分、300×g、RT)し、DMEM/10%FBSに再懸濁し、カウントした。細胞を再び遠心分離し、3×106細胞/mLでDMEM/10%FBSに再懸濁し、以前に播種されたMDA-MB-231_hCLDN6細胞を含有するウェルに加えた(1.5×105個のCD8T細胞/ウェル;T細胞:腫瘍細胞比、エフェクター:標的比は10:1)。IgG1-CD27-A-P329R-E345R、IgG1-CD27-131A、および非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rを共培養物に10μg/mLで加えた。CD107aおよびGzmBの発現をフローサイトメトリーにより決定した。
【0410】
10μg/mLのIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの存在下での2日のインキュベーションの後に、GzmBCD107aCD8T細胞のパーセンテージは、非結合性対照抗体または先行技術の抗CD27抗体IgG1-CD27-131Aでの処理と比較して有意に増強された(図21)。
【0411】
結論として、これらのデータは、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、活性化された抗原特異的T細胞上に細胞傷害性関連分子を誘導することができたことを示す。
【0412】
実施例24:T細胞媒介性腫瘍細胞傷害を誘導するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの能力
T細胞媒介性細胞傷害を評価するために、CLDN6-TCRエレクトロポレートCD8T細胞をMDA-MB-231_hCLDN6細胞と、IgG1-CD27-A-P329R-E345R、先行技術の抗CD27抗体IgG1-CD27-131A、または非結合性対照抗体IgG1-b12-P329R-E345Rの存在下で5日間、実施例23に記載されるように、2時間間隔でのインピーダンス測定と共に、xCELLigenceリアルタイム細胞分析機器(Acea Biosciences)において共培養した。2時間間隔で実行されたインピーダンス測定から細胞指数値を導出した。曲線下面積(AUC)を5日の共培養にかけての細胞指数データから得た。IgG1-b12-P329R-E345Rで処理された共培養物に対してAUCを正規化した。インピーダンスの規模は、細胞数、細胞形態、および細胞サイズならびにプレートへの細胞接着の強度に依存し、これらは共に、腫瘍細胞量の間接的なリードアウトとしてこの特定の場合において使用される。この実験設定におけるインピーダンスにおける減少は、CD8T細胞による腫瘍細胞殺傷の代用物と考えられる。インピーダンスは、T細胞の増殖に起因して腫瘍細胞殺傷を過小評価し得ることが留意されるべきである。
【0413】
IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、腫瘍細胞殺傷の指標となる、細胞指数における減少を誘導した。IgG1-CD27-131Aは、細胞指数に対する可視的な効果を有さず、腫瘍細胞殺傷を増加させる最小の能力を指し示した(図22)。
【0414】
実施例25:腫瘍浸潤性リンパ球の拡大増殖を誘導するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの能力
腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)サブセット(CD4およびCD8T細胞、NK細胞、ならびに制御性T細胞[Treg])の拡大増殖を誘導するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの能力を、NSCLC患者から外科的に切除された凍結保存された腫瘍を使用してエクスビボで評価した。
【0415】
外科的に切除されたヒトNSCLC組織を輸送培地(HypoThermosol(登録商標)FRS Preservation Solution[BioLife Solutions、カタログ番号101104]、7.5μg/mLのアムホテリシンB[Thermo Fisher Scientific、カタログ番号15290026]、および300単位/mL(U/mL)のpen/strep[Thermo Fisher Scientific、カタログ番号15140-122])中で受領した。試料を洗浄培地(5mLのX-VIVO 15[Lonza]、2.5μg/mLのアムホテリシンB、[Thermo Fisher Scientific]および100U/mLのpen/strep[Thermo Fisher Scientific])で3回洗浄し、細胞培養ディッシュに移した。脂肪組織および壊死区画を外科用メスで除去し、組織を約5mm3の断片に切断した。各々の断片を個々のクライオバイアルに入れ、1mLの凍結培地(FBS、10%DMSO)を各々のバイアルに加えた。バイアルを、-80℃の冷凍器中に置かれた制御された凍結チャンバー(Mr.Frosty凍結コンテナー)に移した。-80℃で少なくとも16hの後に、バイアルを長期貯蔵のために液体窒素に移した。
【0416】
1つの腫瘍検体からの約5mm3の腫瘍断片を含有する4~6個の凍結保存されたバイアルを実験毎に37℃の水浴中で約2分間解凍し、洗浄培地で5回洗浄し、細胞培養ディッシュに移した。腫瘍断片を外科用メスで約1mm3の断片にさらに解剖した。断片のほとんどは、IL-2および処理抗体との培養でのTIL拡大増殖のために使用し、残りの断片は、いかなる処理も伴わない、ベースラインでの特有の細胞表面マーカーの発現を決定するために使用した。
【0417】
(平均で)ウェル当たり2つの腫瘍断片を24ウェルプレート(2mL/ウェルの総体積容量がアッセイにおいて使用された)中の0.1mLの予め温めたTIL培養培地(45~50U/mLのIL-2(Proleukin S;Novartis Pharma、カタログ番号PZN-02238131)を含有する2%ヒト血清アルブミン[HSA;CSL Behring、カタログ番号PZN-00504775]、100U/mLのpen/strep[Thermo Fisher Scientific]、および2.5μg/mLのアムホテリシンB[Thermo Fisher Scientific]を含むX-VIVO 15[Lonza])に播種した。IgG1-CD27-A-P329R-E345Rを、45~50U/mLのIL-2を含有するTIL培養培地中で希釈し、900μLのこの希釈液を適宜ウェルに加えた。ウェル中の最終IgG1-CD27-A-P329R-E345R濃度は1または10μg/mLであった。対照として、抗体なしで45~50U/mLのIL-2を含有する培地を別々のウェル中の腫瘍断片に加えた。全部で8~16個のウェルをドナー毎の各々の実験条件(37℃、5%CO2)のためにインキュベートした。
【0418】
3日の培養後に、45~50U/mLのIL-2およびIgG1-CD27-A-P329R-E345Rを含有する新鮮なTIL培養培地をウェルに加えた(1mL/ウェル、上記と同じ抗体濃度)。アッセイ開始の5~14/17日後に、培養物を顕微鏡で、組織断片から遊走したTILの増殖およびTILマイクロクラスターの形成について、定期的にモニターした。7日または8日の培養の後に25個より多くのTILマイクロクラスターが1つのウェル中に観察された場合、2つの同一に処理された元々のウェルからの細胞および組織断片を、培養培地を含む6ウェルプレートの1つのウェルに再懸濁およびプールし(5~6mL/ウェルの総体積容量をアッセイにおいて使用した)、新鮮なIL 2含有TIL培養培地を加えた(33U/mLのIL-2最終濃度と概算された)。
【0419】
2~3日毎に、培養物に新鮮なIL-2含有TIL培養培地を補充した。培養物に加える培地中のIL-2濃度を10U/mLに低減したか、または最初に25U/mL、その後に10U/mLに低減し、アッセイの全体を通じてウェルに培地を補充した。14または17日目に、細胞をフローサイトメトリー分析のために採取した。
【0420】
IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、IL-2単独で処理された対照培養物と比較してTILサブタイプの拡大増殖を増強し、細胞カウントにおける最大の相対的な増加がCD8T細胞およびTregについて観察され、続いてCD4T細胞、およびNK細胞であった。すべてのTILサブセットについて、拡大増殖は、10μg/mLよりも1μg/mLでIgG1-CD27-A-P329R-E345Rを用いた場合に、より著しかった(表6および図23)。
【0421】
(表6)IgG1-CD27-A-P329R-E345R処理されたTILの拡大増殖倍数
ヒトNSCLC検体に由来する腫瘍組織をIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの存在または非存在下で低用量IL-2と共に培養した。指し示される細胞サブセットの絶対細胞カウントを処理の14~17日後にフローサイトメトリーにより決定した。IL-2で処理された培養物と比べたIgG1-CD27-A-P329R-E345R処理された培養物についての細胞数における差異倍数を示している。示されるデータは、5つの独立した実験において試験された個々の患者からの5つの腫瘍組織からのものである。P=0.0236、1μg/mL vs.10μg/mL IgG1-CD27-A-P329R-E345R(二元配置ANOVA)。
a平均およびSDの算出では、細胞集団の間のより良好な比較可能性のために患者#561を除外している。
略語:ANOVA=分散分析;n.d.=決定せず;NK=ナチュラルキラー;NSCLC=非小細胞肺がん;SD=標準偏差;TIL=腫瘍浸潤性リンパ球;Treg=制御性T細胞。
【0422】
実施例26:細胞表面上のIgG1-CD27-A-P329R-E345R分子の分子間相互作用を評価するためのBRET分析
細胞表面上のCD27への結合後に分子間Fc-Fc相互作用を増加させる六量体化増強性変異(E345R)を宿すCD27抗体の能力を、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)分析を使用して決定した。この分子近接性ベースアッセイは、生物発光タンパク質ドナーから蛍光タンパク質アクセプターへのエネルギー移動を測定することによりタンパク質相互作用を検出する。エネルギー移動は、ドナーおよびアクセプターが緊密な近接性(<10nm[Wu and Brand,1994;Dacres et al,2012])にある場合にのみ起こる。
【0423】
最初に、CD27の他に、(陽性対照分子として)CD20およびCD37の細胞表面発現を、ヒトCD27を安定的に発現するように遺伝子改変されたヒト慢性骨髄性白血病細胞株、huCD27-K562上で、およびDaudi細胞上で、間接免疫蛍光アッセイ(QIFIKIT、Agilent Technologies、カタログ番号K0078)を使用して決定した。細胞を100,000細胞/ウェルで播種し、10μg/mLの一次抗体(CD27:IgG1-7730-143-C102S-FEAL;CD20:IgG1-11B8-FEAR;CD37:IgG1-3009-010-FEAR)とインキュベートした。これに続いて、FITC標識されたポリクローナルヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-096-097)とのインキュベーション、これと並行して、定義された数の抗体分子で被覆されたQIFIKITビーズとのインキュベーションを行った。ビーズ当たりの既知の数の抗体分子に対して個々のビーズ集団の平均蛍光強度(MFI)をプロットすることにより生成された軟正曲線において試験試料の測定されたMFIを補間することにより、細胞当たりの抗体分子の数を決定した。試料をLSRFortessa Cell Analyzerフローサイトメーター(BD Biosciences)で測定し、FlowJoソフトウェアを使用して分析した。
【0424】
QiFi分析は、Daudi細胞上の中等度のCD27発現ならびに高いCD20およびCD37発現を示した一方、huCD27-K562細胞は、高いレベルのCD27を発現したが、CD20およびCD37を発現しなかった(表7)。
【0425】
(表7)細胞当たりの抗体分子の細胞表面発現
【0426】
BRETアッセイ(NanoBRET(商標)System、Promega、カタログ番号N1661)は、本質的に製造者の使用説明書に従って行った。NanoLuc(ドナー)およびHaloTag(アクセプター)タグ付加抗体を生成するために、NanoLucまたはHaloTagのいずれかを有する可変軽鎖配列(表3、配列37~44)を遺伝子合成により調製し、適切な発現ベクターにクローニングし、実施例1に記載されるように全長抗体を製造した。分析のために、0.5×105個のhuCD27-K562またはDaudi細胞を96ウェル丸底プレート(Greiner Bio-One、カタログ番号650101)に100μLの総体積で播種した。細胞を遠心分離(3分、300×g)によりペレット化し、各々5μg/mLの濃度でNanoLucまたはHaloTagタグ付加抗体ペアの混合物を含有する50μLのアッセイ培地(Opti-MEM I[Gibco、カタログ番号11058-021]+4%FBS[ATCC、カタログ番号30-2020])に再懸濁した。次に、50μLのHaloTag NanoBret 618リガンド(Promega、カタログ番号G980A、アッセイ培地中1:1000の希釈)を加えた。各々の抗体混合物のために、HaloTag NanoBret 618リガンドを含まない50μLの培地を加えることにより、無リガンド対照試料を並行して調製した。細胞を37℃の暗所中で30分間インキュベートし、培地で2回洗浄し、FBSを含まない100μLのアッセイ培地に再懸濁した。25μLのNanoBRET NanoGLO基質(Promega、カタログ番号N1571、FBSを含まないアッセイ培地中1:200の希釈)を各々のウェルに加えた。プレートを30s振盪し、120μLの各々の試料をOptiPlate(Perkin Elmer、カタログ番号6005299)に移した。EnVision Multilabel Reader(Perkin Elmer)を使用して460nmにおいてドナー発光および618nmにおいてアクセプター発光を測定した。
【0427】
BRETはmilliBRET単位(mBU)=(618nmem/460nmem)×1000において算出した。
【0428】
結果は補正BRETとして報告しており、これは、ドナー寄与のバックグラウンドまたはブリードスルーについて補正されており、mBUリガンド-mBU無リガンド対照として算出される。
【0429】
細胞表面上のCD27に結合した後のNanoLucおよびHaloTag標識されたIgG1-CD27-A-P329R-E345R抗体の近接性を、同じタグを有するWT IgG1-CD27-A抗体と比較した。六量体化を誘導するE430G変異(WO2019243636A1)を含有する、IgG1-CD20-11B8-E430G-LNLucおよびIgG1-CD37-37.3-E430G-LHalo抗体を近接性誘導性BRETのための陽性対照として使用した。IgG1-CD20-11B8-E430GおよびIgG1-CD37-37.3-E430Gは、分子近接性アッセイを使用して、CD20およびCD37を発現する細胞への結合でヘテロ六量体を形成することが以前に示されている(Oostindie,S.C.et al,Haematologica,2019)。非結合性抗体IgG1-b12-P329R-E345Rを陰性対照として使用した。
【0430】
BRETシグナル誘導の陽性および陰性対照として、Daudi細胞(高いCD20およびCD37発現)およびhuCD27-K562細胞(CD20およびCD37発現なし)を、抗体ペアIgG1-CD20-11B8-E430G-LNLucおよびIgG1-CD37-37.3-E430G-LHaloでオプソニン化した。BRET誘導はDaudi細胞においてのみ検出され、CD20およびCD37を欠いたhuCD27-K562細胞において検出されなかった(図24)。同様に、非結合性対照抗体ペア(IgG1-b12-P329R-E345R-LNLuc+IgG1-b12-P329R-E345R-LHalo)は、いずれの細胞株においてもBRETを誘導しなかった。huCD27-K562細胞を、六量体化増強性変異を有するNanoLucおよびHaloTag標識されたCD27抗体の混合物(IgG1-CD27-A-P329R-E345R-LNLuc+IgG1-CD27-A-P329R-E345R-LHalo)でオプソニン化した場合、高いBRETが検出されたが、Daudi細胞におけるBRETはバックグラウンドレベルを上回らなかった(図24)。IgG1-CD27-A-LNLucおよびIgG1-CD27-A-LHalo(WT)抗体の混合物は、P329RおよびE345R変異を有するCD27抗体と比較して、huCD27-K562細胞においてかなり低いBRETを誘導し、Daudi細胞においてBRETを誘導しなかった。これらの結果は、BRETシグナルはより高い標的発現と関連付けられたことを指し示す。huCD27-K562細胞上のCD27発現は、Daudi細胞上よりも約26倍高いことが見出され、huCD27-K562細胞上のCD27結合性IgG1-CD27-A-P329R-E345RについてのBRETレベルはDaudi細胞におけるよりも約24倍高かった。NanoLucおよびHaloTag標識された非結合性およびCD27結合性抗体ペアの混合物(それぞれIgG1-b12-P329R-E345R-LNLuc+IgG1-CD27-A-P329R-E345R-LHalo、およびIgG1-CD27-A-P329R-E345R-LNLuc+IgG1-b12-P329R-E345R-LHalo)は、いずれの細胞株においてもBRETを誘導しなかった。これは、観察されたBRETは、細胞表面標的に結合したドナーおよびアクセプター抗体の同時の相互作用に依存していたことを裏付ける。
【0431】
要約すると、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rは、そのWTバリアントと比較してhuCD27-K562細胞において高いBRETを誘導した。この発見は、細胞表面結合抗体の間のE345R増強性Fc-Fc相互作用と合致して、そのWTバリアントと比較した、膜結合型IgG1-CD27-A-P329R-E345R分子の間の近接性の増強を裏付ける。
注記:この実施例に記載される実験は、この実験の文脈において機能的に関連しない、F405L変異を有するIgG1-CD27-Aのバリアントを使用した。
【0432】
実施例27:FcγRIaM0およびM1マクロファージに対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの結合
実施例9では、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用してヒトFcγRバリアントに対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの結合を評価し、組換えヒトIgG Fc受容体分子に対する最小の結合(FcγRIa)または結合なし(FcγRIIa、FcγRIIb、およびFcγRIIIa)を示した。この残留FcγRIa結合は、CD27細胞のIgG1-CD27-A-P329R-E345R依存性ADCPを誘導するために十分でなかった(実施例13を参照)。FcγRIa陽性マクロファージとのIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの相互作用をさらに除外するために、M0およびM1マクロファージに対するIgG1-CD27-A-P329R-E345RのFc媒介性結合を決定した。
【0433】
実施例13に記載されるようにヒトCD14単球を2人の健常ドナーからのPBMCから単離し、M0マクロファージを得るために50ng/mLのM-CSF(Gibco、カタログ番号PHC9501)、またはM1マクロファージへの分化のために50ng/mLのGM-CSF(Immunotools、カタログ番号11343125)を補充した培地(CellGenix、カタログ番号20801-0500)中で細胞を培養することにより、単球由来マクロファージに分化させた。6日の培養後に、M0およびM1表現型が、表8において定義されているマーカーの発現に応じてFACS分析により確認された。追加的に、両方のマクロファージサブタイプは、ヒトFc受容体FcγRIa、FcγRIIおよびFcγRIIIaを発現することが確認された(表8)。
【0434】
(表8)
【0435】
M0およびM1マクロファージに対するIgG1-CD27-A-P329R-E345Rの結合を、FcγRIa結合についての陽性対照としての関連しない抗原結合領域を有するWT IgG1抗体(IgG1-b12)、およびFcγRとの相互作用を低減させることが以前に記載されたP329R変異も有する同じ抗体のバリアント(IgG1-b12-P329R-E345R)の結合と比較した。マクロファージはCD27を発現しないはずであるので、観察される任意の結合は、一価IgGに結合する唯一のFcγRであるFcγRIaを介して起こるという仮説が立てられる。分化したマクロファージをIgG1-CD27-A-P329R-E345Rまたは対照抗体(DC培地中30μg/mL)、およびPE標識されたポリクローナルヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-116-097、希釈1:200、30分、4℃)と15分間インキュベートした。インキュベーション後に、細胞を洗浄し、核染色性DAPI(BD Pharmingen、カタログ番号564907、1:5000の希釈)を含有する100μLのFACS緩衝液に再懸濁した。試料をFACSymphonyフローサイトメーター(BD Biosciences)で測定し、FlowJoソフトウェアを使用して分析した。
【0436】
2人の独立したドナーから単離されたM0またはM1マクロファージに対するバックグラウンド(二次抗体のみ)を上回る結合は、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rまたは対照IgG1-b12-P329R-E345Rのいずれでも観察されなかった(図25)。活性Fc領域を含有するWT IgG1-b12は、M0およびM1マクロファージの両方に一貫して結合した。
【0437】
結論として、IgG1-CD27-A-P329R-E345Rおよび対照IgG1-b12-P329R-E345Rは、FcγRIa、FcγRIIおよびFcγRIIIaを発現するM0またはM1マクロファージに結合しない。
図1
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図4A-2】
図4B-1】
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図14B-1】
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【配列表】
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【国際調査報告】