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特表2024-533239プルネラ・ブルガリス抽出物およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】プルネラ・ブルガリス抽出物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240905BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240905BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 36/536 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61Q19/10
A61Q7/00
A61K36/536
A61P17/00
A61P25/00
A61P25/18
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514506
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2022073635
(87)【国際公開番号】W WO2023031002
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21306215.1
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】フレシェ・マチルド
(72)【発明者】
【氏名】シャイラ・ハナヌ
(72)【発明者】
【氏名】グランドー・ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ロ・キョンバク
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ウンスン
(72)【発明者】
【氏名】パク・ドクフン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA17
4C076BB01
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC18
4C076DD37
4C076DD39
4C076DD43
4C076DD46
4C076EE05
4C076EE14
4C076EE23
4C076FF15
4C076FF16
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC102
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC442
4C083AD092
4C083EE06
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF01
4C088AB38
4C088AC03
4C088AC05
4C088BA09
4C088BA10
4C088BA13
4C088BA14
4C088CA04
4C088MA17
4C088MA22
4C088MA28
4C088MA34
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA03
4C088ZA18
4C088ZA24
4C088ZA89
4C088ZC03
4C088ZC41
(57)【要約】
本発明は、皮膚および毛の状態の悪化の原因となる精神情緒的ストレスを標的とする、プルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物に関する。好ましくは、本発明は、皮膚および毛包における精神情緒的ストレス関連障害および/または損傷を予防および/または処置することを意図した、プルネラ・ブルガリスの地上部を含むかまたは当該抽出物からなる組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルネラ・ブルガリス(Prunella vulgaris)の葉、茎および花を含む地上部の抽出物であって、水または水とアルコールとの混合物から選択される溶媒中での固/液抽出によって得られ、
i)抽出物の乾燥分の全重量を基準として、1~15重量%、好ましくは2~12重量%、より好ましくは3~10重量%の1種または複数のポリフェノールを含み;
ii)抽出物の乾燥分の全重量を基準として、0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0.001重量%未満、特に0重量%のサポニンを含み;
iii)抽出物の乾燥分は、少なくとも10g/L(重量/溶媒の体積)、好ましくは少なくとも15g/L、さらにより好ましくは少なくとも20g/Lに相当する、
前記抽出物。
【請求項2】
水抽出物である、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
ヒドロメタノール抽出物またはヒドロエタノール抽出物、好ましくはヒドロエタノール抽出物である、請求項1に記載の抽出物。
【請求項4】
以下のステップを含む、プルネラ・ブルガリスの葉、茎および花を含む(任意に乾燥された)地上部の抽出物を製造するための方法:
ii)水またはヒドロアルコール溶媒において前記地上部の固/液抽出を実施するステップ:ここで
a.水における抽出は、80~150℃、好ましくは100~130℃、さらにより好ましくは85~130℃、特に90~120℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1.5~5時間行われ;または
b.ヒドロアルコールにおける抽出は、50~120℃、好ましくは60~115℃、より好ましくは70~110℃、特に80~105℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1.5~5時間行われる;
(ii)ステップ(i)の固体残渣から抽出物を分離するステップ;
(iii)前記の少なくとも1種の溶媒またはその一部を除去することによって前記抽出物を濃縮するステップ。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法の実施によって得ることができる、プルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物。
【請求項6】
(A)活性成分としての、請求項1~3および5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物;および
(B)プルネラ・ブルガリスの前記抽出物以外の少なくとも1種のさらなる化粧用におよび/または薬学的に許容可能な成分、
を含む化粧用または医薬組成物であって、
溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、ペースト、ジェル、ローション、粉末、石鹸、界面活性剤含有水、オイル、シャンプーおよびスプレーからなる群から選択される、外用使用のための組成物であるか;および/または経口投与されるニュートラシューティカル組成物である、前記化粧用または医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物の全重量に対して、0.0001~20重量%、好ましくは0.001~15重量%、より好ましくは0.005~10重量%、特に0.01~5重量%の、請求項1~3および5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含む、請求項6に記載の化粧用または医薬組成物。
【請求項8】
皮膚および毛包の精神情緒的ストレスに関連する障害および/または損傷を予防および/または処置すること、ならびに少なくとも1種の幸福ホルモンの産生による幸福感を促進することを意図する活性成分としての、請求項1~3および5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含むかまたは当該抽出物からなる組成物の化粧用の使用。
【請求項9】
前記抽出物が、ストレス誘発性神経免疫興奮を調節するため、ストレス誘発性感覚ニューロン興奮を調節するため、ストレス誘発性マスト細胞脱顆粒を妨げるため、またはそれらのうちの2つ以上のためのものである、請求項8に記載の化粧用の使用。
【請求項10】
幸福ホルモンがβ-エンドルフィン、オキシトシン、セロトニン、ドーパミン、またはこれらの2つ以上の組み合わせから選択される、請求項8または9に記載の化粧用の使用。
【請求項11】
前記抽出物が、皮膚細胞および/または毛包に対して以下の活性のうちの少なくとも1つを有する、請求項8~10のいずれか1つに記載の化粧用の使用:
(a)マスト細胞のストレス誘発性脱顆粒を妨げるおよび/または減少させる;
(b)皮膚のストレス誘発性の炎症および/または刺激を予防する;
(c)コルチゾール誘発性の毛成長を緩和するかまたは妨げる;
(d)ストレスを受けた毛包のVEGF産生を回復させる;
(e)コルチゾール誘発性の脱毛を緩和するかまたは妨げる;
(f)コルチゾール誘発性の毛包損傷を妨げる;
(g)コルチゾールに曝露された毛包において減少した細胞増殖を促進する;
(h)コルチゾール誘発性の毛包アポトーシスを妨げる;
(i)コルチゾール誘発性の毛の白化を予防するかまたは制限する;
(j)コルチゾールにより低下した毛の緻密化(hair densification)を促進する;
(k)コルチゾール誘発性の毛の薄化を予防するかまたは制限する;
(l)ストレス関連アポトーシスから毛包を保護する
(m)これらのうちの2つ以上の組み合わせ。
【請求項12】
ストレスに関連する障害および/または損傷が、皮膚乾燥、皮膚の赤み(skin redness)、皮膚の異常色素沈着、皮脂調節異常(sebum-deregulation)、皮膚そう痒、皮膚炎症、アトピー性皮膚炎、乾癬、白斑、全身性エリテマトーデス、脱毛、毛成長停止、毛包アポトーシス、毛の硬毛(hair thickness)、毛の白化および毛の薄化、またはそれらの2つ以上から選択される、請求項8~11のいずれか1つに記載の使用。
【請求項13】
対象の皮膚および毛包におけるストレス誘発性障害および/または損傷を予防および/または処置することを意図する化粧用の非治療的方法であって、それを必要とする皮膚または頭皮上に、請求項1~3、5~7のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含むかまたは当該抽出物からなる組成物の有効量を施用することによる、前記方法。
【請求項14】
皮膚および毛包におけるストレス誘発性障害および/または損傷を予防するためおよび/または処置するための非治療的方法において使用するため、および少なくとも1種の幸福ホルモンの産生による幸福感を促進するための活性成分としての、請求項1~3、5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含むかまたは当該抽出物からなる、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚および毛の状態の悪化の原因となる精神情緒的ストレスを標的化するための、プルネラ・ブルガリス(Prunella vulgaris)の抽出物の使用に関する。特に、本発明は、ストレス誘発性感覚ニューロンの興奮を妨げるかまたは緩和すること、少なくとも1種の幸福ホルモンの分泌を調節すること、少なくとも1種の幸福ホルモンの放出の可能性を持たせること、またはこれらの2つ以上のことを意図した、プルネラ・ブルガリスの地上部の少なくとも1種の抽出物を含む組成物の化粧用の使用に関する。さらに、本発明は、毛のケアのためおよび皮膚のケアのための抗ストレス活性成分として上記のような抽出物を含む、化粧用または医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレスは、動揺または難題に適応するための身体の適応的反応を指す用語である。それは、ホメオスタシスに対する現実のまたは知覚される、急性(例えば攻撃)または慢性の脅威の状態であり、生理学的または心理学的であり得る。
【0003】
人々が精神的または感情的圧力下にあるときに生じる精神情緒的ストレス(PES:psychoemotional stress)は、ストレス応答メディエーター、例えばコルチゾール、神経成長因子(NGF)、ヒスタミンおよびサブスタンスP(SP)の産生を媒介する視床下部下垂体副腎(HPA)軸によって脳内で厳密に制御される。
【0004】
ストレスを感知すると、視床下部ニューロンが、下垂体に輸送されるコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)を分泌し、そこでCRH受容体に結合し、α-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)、β-エンドルフィンおよびアドレノコルチコトロピン(ACTH)を含む、プロオピオメラノコルチン(POMC)由来ニューロペプチドの分泌を刺激する。今度は、ACTHが血流を介して副腎皮質内を移動し、コルチゾール、コルチコステロンを含むグルココルチコイド(GC)、およびヒスタミンの産生を刺激する。
【0005】
コルチゾールは、広範囲のストレス応答を調節するヒトにおける一次ストレスホルモンである。さらに、身体が刺激を脅威として知覚すると、視床下部がHPA軸を活性化し、コルチゾールの放出が、身体が高い警戒状態を維持し続けることを可能にする。
【0006】
ストレスを引き起こす出来事は日常生活では避けられないが、急性ストレスと慢性ストレスとの間の重要な違いが強調される。
【0007】
急性ストレス下では、HPA軸はフィードバック機構を介して緊密に調節される。グルココルチコイドフィードバック阻害が、グルココルチコイド放出の大きさおよび持続時間を調節する際に顕著な役割を果たす。急性ストレスは、血液から皮膚へのリンパ球の有意な再分布を誘導し得、皮膚免疫の増強およびストレス適応の成功をもたらす。コルチゾールは血糖値を調節することができ、または代謝を調節することもできる。これらの機能が、コルチゾールを、全体的な健康を保護し、適応機能を提供し、生存を促進し、または成功への動機付けをするための重要なホルモンとしている。
【0008】
急性ストレスとは対照的に、慢性ストレスは生理学的な関与を持たない。ストレス応答系の長期的な活性化、およびコルチゾールおよびそれに続く他のストレスホルモンへの過剰曝露は、ほぼ全ての身体のプロセスを崩壊させ得る。
【0009】
結果として、この状況は身体に、体重増加、にきび、皮膚の菲薄化、顔面紅潮、睡眠問題、重度の疲労などを含む多くの健康問題のリスクの増大をもたらす。
【0010】
皮膚、頭皮および毛包もまた、それら自体の機能的末梢HPA系を発達させた。そこで、CRH、ACTHおよびそれらの受容体が、皮膚細胞および毛包内で産生される。
【0011】
皮内では、最も顕著な内分泌および神経内分泌活性は、皮膚の主要な付属器官、例えば極めて重要な独立した末梢(神経)内分泌器官として認識されるようになった毛包(HF)中に位置すると考えられる。
【0012】
皮膚は高度に神経を発達させているので、末梢皮膚神経線維が、神経ペプチド(例えば、SP)およびニューロトロフィン(例えば、NGF)等の分泌因子を介して皮膚の健康に影響を与え得る。それらは、負の生物学的カスケードとしても知られている神経性炎症を媒介する局所ストレス応答体として働く。NGFは、ストレス誘発性の皮膚の神経過剰支配に寄与し、神経性炎症を促進し、SPの上流のアレルギー性炎症および皮膚ストレス応答性の全ての特徴に影響を及ぼす。
【0013】
PESは、毛包および皮膚細胞によるNGFおよびグルココルチコイドの産生を増加させる。この合成の悪化は、マスト細胞の脱顆粒および/または感覚ニューロンの興奮を誘発する。今度は感覚ニューロンが、サブスタンスPおよびニューロトロフィン、例えばカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)およびNGFを分泌し、これらはマスト細胞活性化、および引き続き炎症性分子の放出を促進する。活性化されたマスト細胞によって分泌されたトリプターゼなどのプロテアーゼは、PAR依存性経路を介してSPなどの炎症性神経ペプチドの放出を誘導し、マスト細胞活性化のオートクリンおよび/またはパラクリンの悪循環機構をもたらし、その後のNGF産生を伴う。
【0014】
いくつかの研究および臨床観察により、毛成長およびストレス誘発性脱毛症に対するPESの負の影響が強調された。それらの中で、ストレスのいくつかのモデルにより、有毛細胞の生存能力および増殖ならびに毛包の成長に対する負の影響が実証された。実際、SPおよびNGFは、ストレス誘導性の毛成長阻害効果の重要なメディエーターとして動員される。
【0015】
例えば、マウスにおいて、げっ歯類におけるコルチゾールストレスホルモン同等物が、毛包幹細胞(HFSC)の静止および毛成長を調節することが実証されている。HFSC活性の全身的阻害剤であるコルチコステロンは、長時間の休止相に毛包を維持し、そのような阻害を取り除くことにより、これらの細胞を毛成長に伴う頻繁な再生サイクルに導くことが実証された。
【0016】
別の研究は、ストレスが毛の白化の加速を引き起こすことを明らかにした。実際に、異なるストレッサーに曝された動物を使用することによって、メラノサイト幹細胞の枯渇および毛の白化における神経の過剰活性化によって放出されるストレス関連神経伝達物質の一部が実証された。
【0017】
毛包周期が皮膚灌流の顕著な変化と関連することも知られている。また、成長期毛包の上皮性毛球は血管新生特性を示し、毛乳頭は血管新生因子を産生することができる。HF関連血管系は、成長期相の間に大規模な拡張を受け、退行期の退化相の間に急速な退縮を受ける。実際に、研究により、血管内皮増殖因子(VEGF)-Aの産生が成長期の間にアップレギュレートされ、血管新生抑制療法の間にそれを遮断するとより薄いHFがもたらされることが実証された。
【0018】
上記の教示により、PESがストレス誘発性の脱毛症および毛の白化を引き起こすことが示されている。皮膚およびその付属器におけるグルココルチコイドの過剰合成、末梢皮膚ニューロンの過剰活性化、ならびにマスト細胞活性化による皮膚炎症の増加は、共に悪循環で作用し、毛成長の停止および長期の休止期相または脱毛を誘導する。さらに、末梢皮膚神経線維の過剰活性化は、毛包におけるメラニン含有量の減少に関与している。
【0019】
末梢神経系(PNS)において、神経伝達物質β-エンドルフィンは、シナプス前神経終末およびシナプス後神経終末の両方でオピオイド受容体(特にμサブタイプ)に結合することによって無痛をもたらす。結合すると、相互作用のカスケードが、疼痛の伝達に関与するSPの放出の阻害をもたらす。β-エンドルフィンはその強力な鎮痛能力のおかげで、身体的および心理的ストレスの調節因子であり、気分、感情および行動の調節において役割を果たす。さらに、毛包が、神経ホルモンおよび神経ペプチド、特にβ-エンドルフィンの標的および供給源と考えられている。さらに、β-エンドルフィンは、毛包内で(毛母基(hair matrix)および毛包メラノサイトにおいて)合成されると、毛包メラノサイトの増殖およびメラニン形成を調節する(Paus et al. 2014, Review CellPress, Vol. 20, Issue 10, P559-570:非特許文献1)。従って、毛包においてβ-エンドルフィン産生を刺激することは、早発の毛の白化を防ぐ可能性がある。
【0020】
分娩期中の射乳および子宮収縮におけるその役割について知られているオキシトシンは、生理学的、行動学的、抗ストレス、抗うつ、社会性および幸福に関与することが示されている。オキシトシンに対する細胞応答には、神経突起伸長の調節、細胞生存能力、および細胞生存率の増加が含まれる。さらに、オキシトシン系は、ヒト皮膚ホメオスタシスにおける新規な神経内分泌メディエーターと考えられ、ストレスを受けた皮膚状態に臨床的に関連する。
【0021】
CRFおよびオキシトシンが両方とも、HPA軸を調節する同じ脳領域から分泌され、血漿オキシトシンレベルが、HPAフィードバック機構の完全性と正に相関することが明らかにされている。従って、コルチゾールによって誘発されるオキシトシンの増加は、HPA軸のフィードバック調節に関与し得、コルチゾールによって媒介されるストレスとオキシトシンによって媒介されるアタッチメントとの間に重要な相互作用が存在し得ることが提唱されている(Tops M. et al.,2012,Frontiers in Psychiatry,Vol.3,Article43:非特許文献2)。
【0022】
プルネラ・ブルガリスは、シソ(Lamiaceae)科に属する植物である。それは、世界の様々な地域で生育する多年生の草本で、汎存種の植物である。それは、例えば消毒剤、抗利尿剤および抗炎症剤として使用されることが知られている。
【0023】
プルネラ・ブルガリスからの抽出物は、化粧料分野で知られている。実際、JPS-A6293217(特許文献1)は、レダクターゼ活性を特異的に阻害することによる養毛料としての、プルネラ・ブルガリスの花抽出物に由来するサポニンを開示している。サポニンは、種々雑多なグリコシドに属する。
【0024】
X-J Gu et al. 2007, Helvetica Chimica Acta, Vol. 90(P.72-78)(非特許文献3)は、プルネラ・ブルガリスの穂状花序のヒドロエタノール抽出物がトリテルペノイドサポニンを含有することを教示している。
【0025】
US-A5624673(特許文献2)は、有効成分としてのプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物またはそのサポニン含有量を教示している。前記抽出物は、水、アルコール(C1~C4炭素)またはそれらの混合物から選択される溶媒を使用することによって得られる。実施例は、プルネラ・ブルガリスの葉のメタノール抽出物またはプルネラ・ブルガリスの葉の水抽出物のいずれかを含む調製物を示し、後者は、加齢に関連する脱毛を予防するためのものである。しかしながら、この文献は、サポニンを含有する抽出物中の乾燥分(dry content)の量については言及していない。
【0026】
JPH-A0710722(特許文献3)は、α-アミリントリテルペンを含有するウツボグサ(Prunella asiatica Nakai)の穂状花序のエタノール抽出物からなる育毛剤を教示している。
【0027】
KR-B101864720(特許文献4)は、酵素11β-HSD1の活性を特異的に阻害し、従ってコルチゾールの産生を阻害することによって、皮膚萎縮を予防するための、プルネラ・ブルガリス抽出物を教示している。前記抽出物は、水、アルコール(C1~C4)またはそれらの混合物を使用することによって得ることができる。しかしながら、この文献は、使用される植物の部分については言及していない。さらに、プルネラ・ブルガリスの地上部の水性抽出物は、不活性コルチゾンの活性コルチゾールへの細胞内変換を触媒する酵素11β-HSD1の発現を阻害する(K-B Roh at al., 2018, Research Article, Article ID 1762478:非特許文献4)。前記抽出物はまた、コラーゲン含有量のコルチゾン媒介性の減少を阻害して、皮膚の完全性およびそのホメオスタシスを維持し、皮膚萎縮を予防する。最後に、前記抽出物中に含まれるロスマリン酸が11β-HSD1の独立した阻害活性を示したことが言及されているが、コルチゾールに関連する皮膚疾患について知るためにはさらなる活性成分同定研究が依然として必要である。CN-A106727928(特許文献5)は、カフェ酸およびロスマリン酸を含むプルネラ・ブルガリスの茎および葉のヒドロエタノールおよびヒドロメタノール濃縮抽出物を開示している。当該抽出物は、アルツハイマー病の処置に有用である。CN-B108272858(特許文献6)は、ロスマリン酸およびカフェ酸を含有するプルネラ・ブルガリスの照射された果実および花からの抽出物を開示している。当該抽出物は、抗酸化活性を有する。
【0028】
前述のプルネラ・ブルガリスの抽出物にはいくつかの技術的欠点がある。
【0029】
達成される化粧的または薬学的な有益な効果は主に、それらが含有しているサポニンに起因し、さらなる抽出ステップおよびさらなる資源を必要とする。他方、プルネラ・ブルガリスの一次抽出物が使用されるが、関連する有益な効果は皮膚または毛のいずれかについてのみであり、両方について同時にではない。さらに、上記の抽出物またはプルネラ・ブルガリスのいずれも、同時に、少なくとも部分的に皮膚および毛の健康または状態に影響を及ぼす精神情緒的ストレスの欠点に対処していない。
【0030】
ストレス条件下では、神経免疫興奮およびその分泌(特に幸せホルモンの)および免疫細胞を調節することが、皮膚の炎症を予防または制限するため(特にマスト細胞の脱顆粒を制御することによって)に適切な手段であり得ることは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】JPS-A6293217
【特許文献2】US-A5624673
【特許文献3】JPH-A0710722
【特許文献4】KR-B101864720
【特許文献5】CN-A106727928
【特許文献6】CN-B108272858
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】Paus et al. 2014, Review CellPress, Vol. 20, Issue 10, P559-570
【非特許文献2】Tops M. et al.,2012,Frontiers in Psychiatry,Vol.3,Article43
【非特許文献3】X-J Gu et al. 2007, Helvetica Chimica Acta, Vol. 90(P.72-78)
【非特許文献4】K-B Roh at al., 2018, Research Article, Article ID 1762478
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
従って、少なくとも1種の幸福ホルモンの放出を促進することによって幸福感を得るために、植物抽出物により、皮膚細胞および皮膚の主要付属器官、例えば毛包細胞内の、少なくともストレス誘導性の感受性神経興奮および/または神経性炎症を軽減することが、未だ満たされておらず依然として必要とされている。
【0034】
植物抽出物によって、ストレス誘導性の感受性神経興奮および/または神経性炎症を軽減すること、より一般的には、皮膚および毛包に対する精神情緒的ストレスに関連する障害および/または損傷を緩和することもまた、未だ満たされておらず依然として別に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0035】
これらの目的は、精神情緒的ストレスの欠点から皮膚および毛包を保護するために、プルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を使用することによって達成される。特に、その使用は、皮膚炎症および/または神経性炎症から皮膚を保護するため、対象に幸福感およびストレス解消の感覚またはスージング効果を提供するため、またはそれらの2つ以上のためである。また、当該使用は、ストレス誘発性の毛の白化から毛包を保護するため、ストレス誘発性の脱毛を制限するため、ストレス誘発性の毛成長停止を制限するため、ストレス誘発性の毛の薄化または密度低下(rarefication)を制限するため、またはそれらの2つ以上のためである。
【0036】
驚くべきことに、プルネラ・ブルガリスの地上部を手頃な溶媒で抽出することにより、皮膚および毛の両方における精神情緒的ストレスに関連する障害および/または損傷を軽減するため、および従ってより一般的には皮膚および毛の状態の両方を改善するための特定の特性を有する抽出物をもたらすことができることが見出された。
【0037】
従って、本発明は、プルネラ・ブルガリスの葉、茎および花を含む(またはそれらからなる)地上部の抽出物であって、水または水とアルコールとの混合物から選択される溶媒中での固/液抽出によって得られる抽出物に関し:
i)それは、抽出物の乾燥分の全重量を基準として、1~15重量%、好ましくは2~12重量%、より好ましくは3~10重量%の1種または複数のポリフェノールを含み;
ii)それは、抽出物の乾燥分の全重量を基準として、0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0.001重量%未満、特に0重量%のサポニンを含み;
iii)抽出物の乾燥分は、少なくとも10g/L(重量/溶媒の体積)、好ましくは少なくとも15g/L、さらにより好ましくは少なくとも20g/Lに相当する。
【0038】
従って、本発明は、以下のステップを含む、プルネラ・ブルガリスの葉、茎および花を含む(またはそれらからなる)(任意に乾燥された)地上部の抽出物を製造する方法にも関する:
i)水またはヒドロアルコール溶媒において前記地上部の固/液抽出を実施するステップ:ここで
a.水における抽出は、80~150℃、好ましくは100~130℃、さらにより好ましくは85~130℃、特に90~120℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1.5~5時間行われるか;または
b.ヒドロアルコールにおける抽出は、50~120℃、好ましくは60~115℃、より好ましくは70~110℃、特に80~105℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1.5~5時間行われる;
(ii)ステップ(i)の固体残渣から抽出物を分離するステップ;
(iii)前記の少なくとも1種の溶媒またはその一部を除去することによって前記抽出物を濃縮するステップ。
【0039】
本発明はまた、皮膚および毛包の精神情緒的ストレス関連障害および/または損傷を予防および/または処置すること、ならびに少なくとも1種の幸福ホルモンの産生による幸福感を促進することを意図する活性成分としての、上記のような地上部の抽出物を含む(または当該抽出物からなる)組成物の(任意に化粧用の)使用に関する。好ましくは、前記使用は、精神情緒的ストレスにさらされた皮膚および毛の状態を改善するためのものである。
【0040】
従って、本発明はまた、以下を含む化粧用または医薬組成物に関する:
(A)活性成分としての、プルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物;および
(B)プルネラ・ブルガリスの前記抽出物以外の少なくとも1種のさらなる化粧用におよび/または薬学的に許容可能な成分、
ここで、前記組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、ペースト、ジェル、ローション、粉末、石鹸、界面活性剤含有水、オイル、シャンプーおよびスプレーからなる群から選択される、外用使用のための組成物であるか;および/または前記組成物は、経口投与されるニュートラシューティカル組成物(nutraceutical composition)である。
【0041】
本発明はまた、皮膚および毛包の精神情緒的ストレス関連障害および/または損傷を処置または予防するための方法における使用のための抗ストレス活性成分として、上記のようなプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含む(または当該抽出物からなる)組成物に関する。
【0042】
本発明のさらなる態様は、対象の皮膚および毛包におけるストレス誘発性障害および/または損傷を、必要に応じて皮膚または頭皮上に、上記のようなプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含む(または当該抽出物からなる)組成物の有効量を施用することによって、予防および/または処置することを意図する化粧用の非治療的方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1は、本発明によるプルネラ・ブルガリスの抽出物中の総サポニン含有量を決定するための検量線を示す。
図2Aおよび2Bは、コルチゾールチャレンジ(ストレスホルモン)に続く感覚ニューロンによるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の放出に対する本発明のプルネラ・ブルガリス抽出物の効果を、それぞれ2時間後および24時間後に測定した結果を示す。図2Cおよび2Dは、ヒスタミンチャレンジに続く感覚ニューロンによるCGRPの放出に対する本発明のプルネラ・ブルガリス抽出物の効果の定量を示す(それぞれ2時間後および24時間後)。
図3Aおよび3Bにおいて、それぞれコルチゾールおよびヒスタミンチャレンジに続く、感覚ニューロンによるオキシトシンの放出に対する本発明のプルネラ・ブルガリス抽出物の効果を、2時間後に測定した。
図4は、本発明のプルネラ・ブルガリス抽出物の存在下での、精神情緒的ストレス分子(コルチゾン)で処理されたかまたは処理されていない毛乳頭細胞(HFDPC)の増殖を測定した結果を示す。
図5は、本発明のプルネラ・ブルガリス抽出物の存在下での、コルチゾンで処理されたかまたは処理されていないHFDPCによる血管内皮増殖因子(VEGF)分泌を測定した結果を示す。
図6は、コルチゾールに対するヒト毛包の成長に対する本発明のプルネラ・ブルガリス抽出物の増強効果を経時的に示す。
図7は、コルチゾールチャレンジの非存在下または当該チャレンジ下で、毛包構造に対する本発明のプルネラ・ブルガリス抽出物の可視的な効果を測定した結果を示す。
図8は、コルチゾールチャレンジに続く、増殖性のまたはアポトーシスを起こした有毛細胞の数に対する本発明のプルネラ・ブルガリス抽出物の効果を測定した結果を示す。
図9は、ベース(ストレス条件なし)下またはコルチゾールチャレンジ下での毛包色素沈着に対する本発明のプルネラ・ブルガリス抽出物の可視的な効果を測定した結果を示す。
図10は、好塩基性細胞(RBL-2H3)によるβ-ヘキソサミニダーゼ活性に対するプルネラ・ブルガリス抽出物の効果を定量化した結果を示す。
図11A~11Dは、ストレス誘発性脱毛を有するストレスを受けたボランティアに対する本発明のプルネラ・ブルガリス抽出物の可視的効果を84日間測定した臨床結果を示す。図11Aは、経時的に毛包の長さを示す。図11Bは、成長期相における毛包の割合を経時的に示す。図11Cは、休止期相における毛包の割合を経時的に示す。図11Dは、経時的に毛包の成長期/休止期比を示す。
【0044】
発明の詳細な説明
本発明の第1の態様は、プルネラ・ブルガリスの葉、茎および花を含む(またはそれらからなる)地上部分の抽出物であって、水または水とアルコールとの混合物から選択される溶媒中での固/液抽出によって得られる抽出物に関し:
i)それは、抽出物の乾燥分の全重量を基準として、1~15重量%、好ましくは2~12重量%、より好ましくは3~10重量%の1種または複数のポリフェノールを含み;
ii)それは、抽出物の乾燥分の全重量を基準として、0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0.001重量%未満、特に0重量%のサポニンを含み;
iii)抽出物の乾燥分は、少なくとも10g/L(重量/溶媒の体積)、好ましくは少なくとも15g/L、さらにより好ましくは少なくとも20g/Lに相当する。
【0045】
一実施態様において、地上部の抽出物は、プルネラ・ブルガリスの葉、茎および花からなる。プルネラ・ブルガリスの抽出物からなる組成物では、前記組成物が抽出物であることが理解されよう。
【0046】
本開示を通して使用される場合に、本発明のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物はまた、「(前記)抽出物」としても、またはプルネラ・ブルガリス抽出物(Prunella vulgaris extract)に対するその略称「PVE」によっても称される。
【0047】
本明細書で使用される場合に、「地上部」という用語は、当技術分野で一般的に理解される最も広い意味で理解され得る。それは、葉、茎、穂状花序についた花によって構成されてもよい。従って、花は穂状花序を含み得る。
【0048】
本明細書で使用される場合に、「サポニン」は、糖と結合したトリテルペンからなるグリコシドの一種を意味する。プルネラ・ブルガリスから単離された2つの主要な報告されたトリテルペノイド成分は、ウルソール酸およびオレアノール酸であり、両方とも高度に非極性の化合物である。従って、対応するサポニンも高度に非極性である。
【0049】
本明細書で使用される場合に、「ヒドロアルコール(性/系)」という用語は、当技術分野で一般的に理解される最も広い意味で理解され得る。それは、1種または複数のアルコールと水を含む任意の組成物であることができる。ヒドロアルコール溶媒は、任意のアルコール/水混合物であってよい。一実施態様において、前記溶媒は、10~90%(v/v)のアルコールを含有するか、または25~85%(v/v)のアルコールを含有するか、または50~82%(v/v)のアルコールを含有するか、または60~80%(v/v)のアルコールを含有するか、または65~75%(v/v)のアルコールを含有するか、または約70%(v/v)のアルコールを含有するアルコール/水混合物である。
【0050】
全ポリフェノールの定量化は、任意の手段によって行うことができる。好ましい実施態様において、本発明の抽出物の総ポリフェノール含有量の定量化は、公知のFolin-Ciocalteu法に従って実施することができる。本発明の抽出物におけるポリフェノールの例は、例えば、カフェ酸およびロスマリン酸であってもよい。
【0051】
一実施態様において、前記抽出物の乾燥分は、少なくとも15g/L、さらにより好ましくは少なくとも20g/Lに相当する。固体含有量は、一定の重量が得られるまで、砂の存在下で所与の初期重量のサンプルを105℃のオーブンを通過させることによって測定される。
【0052】
本発明による抽出物は、標準条件(約20℃の室温、約1013hPaの標準圧力)で、液体、ペースト状または固体であり得る。この文脈において、「液体」および「流体」という用語は、互換可能に理解することができる。好ましくは、抽出物は、最初に液体形態で得られる。次いで、1種または複数の溶媒を、任意選択的に除去して、抽出物の固体形態を得ることができる。液体抽出物はまた、限定されないが、真空濃縮器またはロータリー真空エバポレーターを使用して、減圧下で濃縮することができる。さらに、濃縮後、抽出物を乾燥させてもよい。好ましくは、次いで、1種または複数の溶媒の一部が除去される。任意選択的に、液体またはペースト状の抽出物を得てもよい。任意に、抽出物はまた、溶媒系抽出物を得るために、1種または複数の溶媒で再希釈されてもよい。任意選択的に、抽出物はまた、任意の手段(例えば、結晶化、クロマトグラフ法など)によって精製されてもよい。
【0053】
抽出物は、任意選択的に、「チンキ(tincture)」または「アブソリュート(absolute)」と称してもよい。溶媒系抽出物の製造のために使用される溶媒は、水系溶媒(水またはバッファー)であってもよく、あるいはそれは、水系溶媒と液体有機溶媒との組み合わせであってもよい。従って、本発明によるプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物は溶媒系抽出物であり、希釈溶媒は、水、水系バッファー、アルコール、グリコール、乳酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、トリグリセリド、クエン酸トリエチル、ジカプリリルエーテル、イソステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、酢酸エチルまたはそれらの混合物から選択することができる。アルコールは、好ましくはメタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択され得る。グリコールは、好ましくは、ペンチレングリコールおよびグリセロールから選択され得る。
【0054】
好ましい実施態様において、本発明によるプルネラ・ブルガリスの抽出物は、95/5~5/95、好ましくは80/20~20/80の体積比のグリセロール:水の混合物である。
【0055】
プルネラ・ブルガリスの本発明に従う抽出物は、任意に、一定の分子量カットオフ値を有する限外濾過膜を通した分離、または種々のクロマトグラフ法による分離、あるいは液液分離または結晶化もしくは沈殿を含む他の精製方法を実施することによって生成される画分で得てもよい。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「乾燥抽出物」は、乾燥物質としての、すなわち、溶媒を含まない、本発明による抽出物として最も広い意味で理解され得る。乾燥抽出物は、任意選択的に、乾燥物質として物理的に存在してもよい。しかしながら、乾燥物質に関するパーセンテージを参照する計算では、物理的形態で存在する乾燥物質である必要はなく、乾燥抽出物は溶解した形態で存在してもよいことが直接理解されるであろう。次に、計算において、溶媒の質量が、全質量から数学的に減算される。
【0057】
乾燥物質(物理的形態にある)は、適切な抽出方法、後続の得られた抽出物を乾燥させるステップによって得ることができる。乾燥は、当技術分野で公知のこの目的に適した任意の方法によって行うことができる。乾燥は、抽出のために使用される1種または複数の溶媒を除去することを意味する。1種または複数の溶媒の除去は、任意の手段によって行うことができる。例えば、それは、抽出物を高温乾燥雰囲気に付すこと、および/または溶媒を蒸発させるために抽出物を加熱プレート上に置くことによって達成することができる。例えば、乾燥は、真空および/または上昇させた温度(例えば、ロータリー(真空)エバポレーター中)での蒸発によって、または当該固体材料の結晶化によって達成することができる。代替的にまたは追加的に、乾燥は霧化によりまたは凍結乾燥により達成することができる。
【0058】
本発明の一実施態様において、抽出溶媒は、水およびヒドロアルコール溶液を含む群から選択することができる。アルコールは、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、フェノール、グリセロール、1,3-ブチレングリコール、プロパンジオール、またはそれらの2つ以上の混合物から選択され得る。従って、抽出物は、水および/またはヒドロアルコール抽出物の形態であってもよい。本発明の好ましい実施態様において、溶媒は水および/またはヒドロアルコール(例えば、ヒドロメタノールおよび/またはヒドロエタノール)である。特定の実施態様において、溶媒は水であり、従って抽出物は水抽出物である。
【0059】
本明細書で使用される場合に、「抽出物」という用語は、プルネラ・ブルガリスの葉、茎および花を抽出することに作り出される任意の物質であり得る。本開示によれば、PVEは、前記植物の溶媒抽出によって得られる溶媒系抽出物である。本明細書で使用される場合に、抽出は、少なくとも1種の溶媒、好ましくは極性溶媒を使用することによって達成される。従って、好ましい実施態様において、前記抽出物は溶媒抽出法を実施することによって得られる。好ましい実施態様において、前記抽出物は、冷抽出または熱抽出、超音波抽出、還流冷却、針抽出およびマイクロ波抽出を含めた水および/またはヒドロアルコール抽出法から得られる。しかし、使用される溶媒及び方法は、本開示の趣旨に従う固有の利益効果を提供する抽出物を得ることができる限り、これらに限定はされない。溶媒は、植物材料に添加することができる。これは、本技術分野で公知の任意の手段、例えば、濾過、篩分け、限外濾過、クロスフロー濾過、遠心分離、経時的な沈殿、またはそれらの2つ以上の組み合わせによって達成され得る。
【0060】
好ましい実施態様において、プルネラ・ブルガリスの前記抽出物は水抽出物である。
【0061】
一実施態様において、プルネラ・ブルガリスのヒドロアルコール抽出物は、ヒドロメタノールまたはヒドロエタノール抽出物、好ましくはヒドロエタノール抽出物である。
【0062】
本発明の一態様は、以下のステップを含む、プルネラ・ブルガリスの葉、茎および花を含む(またはそれらからなる)(任意に乾燥された)地上部の抽出物を製造する方法に関する:
i)水またはヒドロアルコール溶媒で前記地上部の固/液抽出を実施するステップ:ここで
a.水における抽出は、80~150℃、好ましくは100~130℃、さらにより好ましくは85~130℃、特に90~120℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1.5~5時間行われるか;または
b.ヒドロアルコール抽出は、50~120℃、好ましくは60~115℃、より好ましくは70~110℃、特に80~105℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1.5~5時間行われる;
(ii)ステップ(i)の固体残渣から抽出物を分離するステップ;
(iii)任意に、前記の少なくとも1種の溶媒またはその一部を除去することによって前記抽出物を濃縮するステップ。
【0063】
1つの特定の実施態様において、熱水抽出が、地上部の乾燥粉末に対して、精製水において、高温、典型的には80~150℃、好ましくは100~130℃、さらにより好ましくは85~130℃、特に90~120℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1.5~5時間で行われ、当該抽出は還流下で行われてもよい。植物材料と抽出溶媒との比は、重量で1:10~1:40の間、好ましくは1:15~1:35の間、より好ましくは1:20~1:30の間に含まれていてよい。得られた液体は、濾過し、20~60℃、好ましくは25~55℃の温度で減圧下で濃縮し、次いで噴霧乾燥することができる。
【0064】
一実施態様において、抽出は周囲圧力(すなわち、980~1200hPa)で、高温(すなわち、80~120℃)で、水および/または5~95%(v/v)の間のアルコールを含有するアルコール/水混合物を使用して行われる。
【0065】
本発明の文脈において、抽出物は、好ましくは乾燥されているか、凍結されているか、凍結乾燥されているか、またはフレッシュである。植物材料は、例えば、粉末、粉砕されたまたは任意の他の形態などの任意の形態で使用することができる。
【0066】
本発明による抽出物は、任意の手段によって得ることができる。それは、任意に、商業的供給者によって得られていてもよく、あるいはプルネラ・ブルガリスの地上部から部分的にまたは完全に調製されてもよい。好ましい実施態様において、溶媒は水、水系バッファーまたはヒドロアルコールである。特に好ましい実施態様において、溶媒は水であり、抽出方法は適切な時間の間、熱水抽出によって行われる。
【0067】
ヒドロアルコール溶媒は、主に1種または複数のアルコールと水とから構成される溶媒混合物である。好ましくは、ヒドロアルコール溶媒は、50重量%超、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%の1種または複数のアルコールおよび水から構成される溶媒混合物であり、1種または複数のアルコールおよび水から(本質的に)なる。任意に、ヒドロアルコール溶媒は、50重量%超、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%の1種または複数のアルコールから構成される溶媒混合物であり、1種または複数のアルコールから(本質的に)なる。ここで使用される場合に、水は、熱水または亜臨界水を含むこともできる。また、1種または複数の水系バッファーを使用してもよい。
【0068】
従って、本発明の一態様は、上記の製造方法の実施によって得ることができるプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物に関する。
【0069】
本発明の別の態様は、皮膚および毛包における精神情緒的ストレス関連障害および/または損傷を予防および/または処置することを意図する活性成分として上記のようなプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含む(または当該抽出物からなる)組成物の化粧用の使用に関する。
【0070】
本発明の一実施態様では、ストレス関連障害および/または損傷が、皮膚乾燥、皮膚の赤み(skin redness)、皮膚の異常色素沈着、皮脂調節異常(sebum-deregulation)、皮膚そう痒、皮膚炎症、アトピー性皮膚炎、乾癬、白斑、全身性エリテマトーデス、脱毛(すなわち、円形脱毛症、休止期脱毛症(anagen effluvium))、毛成長停止、毛包アポトーシス、毛の硬毛(hair thickness)、毛の白化および毛の薄化、またはそれらの2つ以上から選択される。
【0071】
好ましい実施態様では、ストレス関連障害が脱毛、毛成長停止、毛包アポトーシス、毛の硬毛、毛の白化および毛の薄化であり得る。
【0072】
一実施態様においては、本発明の抽出物は、ストレス誘発性神経免疫興奮を調節するため、ストレス誘発性感覚ニューロン興奮を調節するため、ストレス誘発性マスト細胞脱顆粒を妨げるため、少なくとも1種の幸福ホルモンの分泌を促進するため、またはその2つ以上のためのものである。
【0073】
有利には、組織には、皮膚および頭皮が含まれる。皮膚は、乾燥肌、健康肌、普通肌および脂性肌であり得る。
【0074】
本発明による抽出物は、活性成分として使用することができる。さらに、それは、純粋な形態でそのまま使用されてもよく、または1種または複数の他の成分と混合されてもよい。すなわち、それは、組成物中の抗ストレス活性成分として使用することができ、このことはそれが皮膚および毛包における精神情緒的ストレスの不利な効果を制限し、および/またはそれと戦うことができることを意味する。好ましくは、化粧用または医薬組成物中で使用される。
【0075】
特に、本開示において提供される実験研究は、本発明のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含む(または当該抽出物からなる)組成物が、化粧用および/または医薬目的のための、特に皮膚のケアおよび毛のケアのための抗ストレス活性成分として使用できることを実証した。実際に、プルネラ・ブルガリスを含む組成物(またはプルネラ・ブルガリスからなる組成物であっても)は、皮膚および毛の状態の両方を、特にそれらが精神情緒的ストレス状態に直面した場合に、改善することができる。
【0076】
従って、驚くべきことに、本発明の抽出物が、精神情緒的ストレスに応答して、皮膚および毛の両方に固有の有益な効果をもたらす少なくとも1つまたは複数の特定の生理学的応答を、ポジティブに調節することができ、化粧用および医薬目的におけるその使用を正当化することが見出された。
【0077】
特に、本発明による抽出物は、幸福ホルモンの分泌を引き起こすこと、少なくとも1種のストレスメディエーターによって誘発される神経免疫興奮を調節すること、および/または、幸福ホルモン、例えば、β-エンドルフィンおよびオキシトシンの放出を調節することを可能にする。実際、上記で説明したように、神経免疫活性化による精神情緒的ストレスは、毛包および皮膚細胞によるNGFおよびグルココルチコイドの産生を増加させる。これは、マスト細胞脱顆粒および/または感覚ニューロン興奮を誘発し、引き続き、マスト細胞活性化を増強するサブスタンスPおよびニューロトロフィン、例えばCGRPおよびNGFの分泌、その後、炎症性分子の放出が続く。実験データにより、本発明による抽出物が、上記のストレスメディエーター(すなわち、コルチゾール、CGRP、ヒスタミン)のうちの少なくとも1つの分泌を妨げるか、当該分泌を軽減できることが実証された。従って、皮膚および毛の状態を改善することができ、ならびに、幸福感を、例えば、オキシトシン、β-エンドルフィン、ドーパミンおよびセロトニンの産生によって得ることができる。
【0078】
本発明の一実施態様では、幸福ホルモンがβ-エンドルフィン、オキシトシン、セロトニン、ドーパミン、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含み得る。
【0079】
ストレスメディエーターは、コルチゾールなど(すなわち、コルチゾン)、ヒスタミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなど、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含み得る。
【0080】
さらに、本発明の抽出物は、ストレス関連アポトーシスおよび毛包増殖の減少から毛包を保護することを可能にする。実際、グルココルチコイド、例えばコルチゾールは、有毛細胞の生存能力および増殖、ならびに毛包の成長およびその活力に負の影響を誘発する。
【0081】
さらに、本発明による抽出物は、毛包のストレス誘発性の変性を妨げること、および/またはコルチゾール誘発性の毛成長の停止を緩和することを可能にする。実際に、実験データにより、本発明による抽出物が、毛包アポトーシスを防止し、これらの細胞の増殖活性を回復することを可能にすることが実証された。
【0082】
さらに、本発明による抽出物は、毛の白化に関与する毛包色素沈着のストレス誘発性変性を妨げることを可能にする。実際に、実験データにより、前記抽出物が、ストレス条件下で観察される毛包の色素沈着の喪失を防止することを可能にすることが実証された。
【0083】
本発明の好ましい実施態様において、前記抽出物は、皮膚細胞および/または毛包に対して以下の活性の少なくとも1つを有し得る:
(a)マスト細胞のストレス誘発性脱顆粒を妨げるおよび/または減少させる;(b)皮膚ストレス誘発性の炎症および/または刺激を予防する;
(c)コルチゾール誘発性の毛成長を緩和するかまたは妨げる;
(d)ストレスを受けた毛包のVEGF産生を回復させる;
(e)コルチゾール誘発性の脱毛を緩和するかまたは妨げる;
(f)コルチゾール誘発性の毛包損傷を妨げる;
(g)コルチゾールに曝露された毛包において減少した細胞増殖を促進する;
(h)コルチゾール誘発性の毛包アポトーシスを妨げる;
(i)コルチゾール誘発性の毛の白化を予防するかまたは制限する;
(j)コルチゾールにより低下した毛の緻密化(hair densification)を促進する;
(k)コルチゾール誘発性の毛の薄化を予防するかまたは制限する;
(l)ストレス関連アポトーシスから毛包を保護する
(m)これらのうちの2つ以上の組み合わせ。
【0084】
本発明のプルネラ・ブルガリスの抽出物または本発明のそのような抽出物を含む組成物の文脈においてなされる定義および好ましい実施態様が、必要な変更を加えて、それらの前記使用に適用されることは理解されるだろう。
【0085】
本発明を通して使用される場合、用語「精神情緒的ストレス」または「ストレス」は、当技術分野で一般的に理解される最も広い意味で互換的に理解することができる。すなわちそれは、視床下部下垂体副腎(HPA)軸による、サブスタンスP、ニューロトロフィン、例えばカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)およびNGF、グルココルチコイド、例えばコルチゾール、コルチコステロン、およびヒスタミンを含むストレスメディエーターの産生を導く、人々が精神的および感情的圧力下にあるときに生じる身体の状態を指す。例えば、これらのストレスメディエーターは、仕事上の責任、財政上の緊張、健康問題、家庭内の不和など(これらに限定はされないが)の多くのストレッサーに続いて分泌され得る。このストレスは、多くの場合、身体症状、例えば頭痛、睡眠障害、消化系の問題および脱毛に関連する。概して、これらの症状は我々の幸福に負の影響を及ぼす。さらに、光への曝露(例えば、紫外(UV)光への曝露、可視光への曝露および/または赤外(IR)光への曝露)、特定の汚染への曝露、1種または複数の病原体(天然および化学製品を含む)および/またはアレルゲンへの曝露、変動する温度および/または湿度への曝露、ならびに/あるいは機械的制約(剃毛、手袋および/または着用したマスク等の日常の習慣によるものを含む)への曝露も、これらのストレスメディエーターを刺激し得る。
【0086】
本発明を通して使用される場合、用語「ストレス誘発性」または「ストレス関連(ストレスに関連する)」は、当技術分野で一般的に理解される最も広い意味で互換的に理解することができる。言い換えれば、ストレス誘発性とは、皮膚および/または毛に対するストレスによる生理学的および物理的効果を指す。
【0087】
本明細書で使用される場合に、用語「幸福ホルモン(well-being hormone)」または「幸せホルモン(happiness hormone)」は、対象において幸福またはスージング効果を提供することを可能にする分子(例えば、タンパク質またはペプチドからなるホルモン、または化学分子であり得る)として、当技術分野において一般に理解される最も広い意味で互換的に理解され得る。
【0088】
本明細書で使用される場合に、用語「神経免疫興奮」は、マスト細胞脱顆粒および幸福ホルモンの放出をもたらす、感覚ニューロンおよび免疫系の両方の興奮を指す。本明細書で使用される場合に、「感覚ニューロン興奮」という用語は、当技術分野で一般的に理解される最も広い意味で理解され得る。換言すると、興奮シグナル(すなわち、少なくとも1つのストレスメディエーター)を受けた後に、感覚ニューロンが、ストレス応答メディエーター、例えばコルチゾール、神経増殖因子(NGF)、ヒスタミンおよびサブスタンスP(SP)の産生を媒介し、幸福ホルモン、例えばオキシトシンおよびβ-エンドルフィンの産生も同様に媒介することによって、対応する応答を引き起こすことを意味する。
【0089】
本明細書で使用される場合に、「調節する(regulating)」という用語は、文脈に応じてニューロンによって提供されるバランスのとれた応答を指す。実際に、感覚ニューロンが興奮すると、それは、少なくとも1種の幸福ホルモンの分泌およびまたストレス応答メディエーターの産生の両方をもたらす。
【0090】
驚くべきことに、本発明の抽出物は、抗ストレス活性成分として使用できることが見出された。
【0091】
従って、本発明のさらなる態様は、以下を含む化粧用または医薬組成物に関する:
(A)活性成分としての、上記のようなプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物;および
(B)プルネラ・ブルガリスの抽出物以外の少なくとも1種のさらなる化粧用におよび/または薬学的に許容可能な成分、
ここで、前記組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、ペースト、ジェル、ローション、粉末、石鹸、界面活性剤含有水、オイル、シャンプーおよびスプレーからなる群から選択される、外用使用のための組成物であるか;および/または前記組成物は、経口投与されるニュートラシューティカル組成物である。
【0092】
本発明のプルネラ・ブルガリスの抽出物の使用の文脈においてなされる定義および好ましい実施態様が、必要な変更を加えて、そのような抽出物を含む組成物に適用されることは理解されるだろう。
【0093】
ここで、本発明による抽出物は、任意に、活性成分として(または任意に唯一の活性成分としてさえも)みなされてよい。本明細書で使用される場合に、用語「活性成分」は、最も広い意味で、単独で、あるいは1種または複数の他の成分、例えばそれら自体は不活性である1種または複数のキャリアまたは任意に相乗的に作用し得る他の活性成分と一緒に、所望の意図される活性を示し得る成分として理解され得る。好ましくは、本発明の活性成分は、化粧用に活性な成分である。より好ましくは、本発明の活性成分は、抗ストレス関連活性成分である。本明細書で使用される場合に、本発明の文脈における「抗ストレス」という表現は、前記のような活性が、ストレスによって引き起こされる身体的障害および/または損傷と戦うことを可能にし、それが、リラクゼーション、ストレス解消などの心理的利益を提供することを可能にすることを意味する。
【0094】
化粧用または医薬組成物は、任意の目的および任意の形態で使用することができる。好ましい実施形態において、前記組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、ペースト、ジェル、ローション、粉末、石鹸、界面活性剤含有水、オイル、シャンプーおよびスプレーからなる群から選択される、外用使用のための組成物であるか、あるいは前記組成物は、経口投与されるニュートラシューティカル組成物である。
【0095】
前記組成物は、エマルション、ジェル、軟膏、トニック、液体石鹸、固形石鹸、バスオイル、シャワーオイル、マッサージオイル、メーキャップ、頭皮トリートメント、アフターシェーブ、シェービング製品、デオドラント、シャワージェル、シャンプー、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される製品であってもよく、または当該製品中に含まれていてもよい。
【0096】
任意に、化粧用または医薬組成物は、対象に経口投与することができるニュートラシューティカル組成物であってもよい。そして、前記化粧用または医薬組成物は、任意に、食品、例えば、フードサプリメントに含まれていてもよい。そして、前記組成物は、典型的には全身的効果を有し得る。本発明によるニュートラシューティカル組成物は、許容可能なキャリアと共に、経口投与に適した任意の形態に、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒、粉末、溶液、エマルションまたは懸濁液に製剤化することができる。
【0097】
前記化粧用または医薬組成物は、本発明の抽出物を任意の含有量で含むことができる。好ましい実施態様において、前記組成物は、組成物の全重量に対して、30重量%未満の本発明による抽出物を含む。好ましい実施態様において、前記組成物は、組成物の全重量に対して、0.0001~20重量%、より好ましくは0.001~15重量%、さらにより好ましくは0.005~10重量%、特に0.01~5重量%の本発明による抽出物を含む。
【0098】
本発明の抽出物以外の少なくとも1種のさらに別の化粧用におよび/または薬学的に許容可能な成分は、任意の化粧用におよび/または薬学的に許容可能な成分であり得る。好ましい実施態様において、化粧用におよび/または薬学的に許容可能な成分は、少なくとも1種の化粧用におよび/または薬学的に許容可能なキャリアであるか、または当該キャリアを含む。
【0099】
本明細書で使用される場合に、用語「薬学的に許容可能なキャリア」、「薬学的に許容可能な賦形剤」、「化粧用に許容可能なキャリア」、「化粧用に許容可能な賦形剤」、「キャリア」および「賦形剤」は、プルネラ・ブルガリスの抽出物を含有する本発明の組成物の化粧用および/または薬理学的許容性または使用可能性を支持し得る任意の物質として、最も広い意味で互換的に理解され得る。好ましくは、本発明によるプルネラ・ブルガリスの抽出物も、そのような抽出物を少なくとも1種含有する組成物も、組織に施用されたときに毒性ではない。
【0100】
ready to use組成物は、好ましくは、液体製剤、特に外用(topic)および経口投与に適した組成物であることができる。前記組成物の保管形態はまた、液体であってもよいが、乾燥形態(例えば、粉末、例えばプルネラ・ブルガリスの抽出物を含むかまたは当該抽出物からなる粉末)であってもよく、またはペーストもしくはシロップなどであってもよい。任意に、乾燥形態、ペーストまたはシロップは、興味対象の皮膚に投与される前に溶解または乳化されてもよい。
【0101】
化粧用におよび/または薬学的に許容可能なキャリアは、典型的には、水系バッファー、生理食塩水、水、アルコール、植物油、鉱油、ポリマーまたはそれらの2つ以上の組み合わせからなるリストから選択され得る。任意選択的に、化粧用にまたは薬学的に許容可能なキャリアは、1種または複数の化粧用にまたは薬学的に許容可能な添加剤を含み得る。
【0102】
好ましい実施形態では、そのような化粧用におよび/または薬学的に許容可能な添加剤は、香料/芳香物質、色素、顔料、乳化剤、滑沢剤、キレート剤、pH調整剤(acidity regulators)、抗菌剤、防腐剤、酸化防止剤、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、化粧用におよび/または薬学的に許容可能なキャリアは、任意選択的に、1種または複数の洗剤、トリエタノールアミン、1種または複数の香料、1種または複数の発泡剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS:sodium doceyl sulphate))、1種または複数の着色剤(例えば、食品着色剤、顔料)、1種または複数のビタミン、1種または複数の塩(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛塩)、1種または複数の保湿剤(例えば、ソルビトール、グリセロール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、マンニトール、プロピレングリコール、ポリデキストロース)、1種または複数の酵素、1種または複数の防腐剤(例えば、安息香酸、メチルパラベン)、1種または複数の酸化防止剤、1種または複数の薬草および植物抽出物、1種または複数の安定化剤、1種または複数のキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1種または複数のポリマー(例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、セルロース、カルボキシエチルセルロース)、1種または複数の安定剤、1種または複数の可溶化剤、1種または複数の皮膚軟化剤、および/または1種または複数の取り込みメディエーター(例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、細胞透過性ペプチド(CPP)、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)、抗菌ペプチドなど)を含み得る。
【0103】
さらに、本発明の組成物は、プルネラ・ブルガリスの抽出物に加えて、プルネラ・ブルガリスの前記抽出物と、上述のようなその活性またはその意図される用途に影響を及ぼすことなく、相乗的および/または相補的に作用する、1種または複数の他の公知の活性成分を含むことができる。公知の活性成分の例は、参照により本明細書に組み込まれる文献EP-A3681467およびEP-A3643295に記載されているものであってもよいが、これらに限定はされない。
【0104】
本発明による組成物は、化粧品であってもよく、または化粧品に含まれていてもよい。皮膚および毛におけるストレスに関連する有害な影響は、安全性試験および法的要件に従って、軽減または回避することができる。前記組成物は、任意の用途のためのものであり得る。特許請求の範囲に記載の所望の目的をもたらす任意の投与経路が適切である。投与は、局所(local)または全身投与であり得る。好ましくは、投与は局所投与である。投与は、外用投与、経皮投与、経口投与、注射による投与(例えば、静脈内(i.v.)、動脈内(i.a.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、および皮下(s.c.)注射)、または経鼻投与であり得る。例えば、本発明による組成物は、許容可能なキャリアと共に、外用、経口、直腸、経粘膜、経鼻、腸内、経腸および非経口投与のための任意の適切な形態で製剤化することができる。
【0105】
好ましい実施態様において、前記組成物は、外用使用(topic use)のための組成物である。好ましい実施形態において、前記組成物は、対象に外用的に投与される外用使用のための組成物である。好ましい実施形態では、前記組成物は、皮膚の一部、例えば、顔、頭皮、または身体の任意の部分に外用的に投与される外用使用のための組成物である。皮膚は、損傷した肌、乾燥肌、健康肌、通常肌および脂性肌を含めて、全てのタイプの皮膚であることができる。
【0106】
上記のように、プルネラ・ブルガリスの前記抽出物または本発明の組成物は、任意の目的のために使用することができる。好ましくは、化粧用および/または医薬目的のために使用される。
【0107】
本発明の抽出物またはそのような抽出物を含む組成物は、局所的および/または全身的効果を有し得る。好ましい実施形態において、局所的(locally)および/または外用的(topically)に投与される場合、それは(主にまたは完全に)局所的効果を有する。
【0108】
本明細書中で使用される場合、用語「損傷した肌」および「損傷した皮膚表現型」は、少なくとも精神情緒的ストレスを引き起こすのに関与する1種または複数の有害因子に曝露される任意のタイプの皮膚として広義に理解され得る。
【0109】
興味対象の組織、特に皮膚、頭皮および毛を有する対象は、上記のような障害および/または損傷を受け得るか、またはそれ(ら)を発症するリスクを有し得る。
【0110】
本発明の文脈において使用される場合に、用語「対象」は、最も広い意味において任意の生物として理解され得る。対象は、好ましくは、ヒトまたは動物、より好ましくはヒトまたは哺乳類、特にヒトである。
【0111】
本明細書で使用される場合に、用語「障害」は、任意の病理学的状態として、最も広い意味で理解され得る。それは生来の疾患であってもよい。本明細書で使用される場合に、用語「損傷」は、組織、特に(他の点では)健康な組織における、任意の動揺または機能不全として、最も広い意味で理解され得る。特に、本明細書で使用される場合に、ストレス関連障害およびストレス関連損傷は、組織内で精神情緒的ストレスを誘発できる因子によって本質的に引き起こされ得る。組織は、好ましくは、頭皮を含めた皮膚、および毛包を意味する。
【0112】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、文脈が別途要求する場合を除き、オープン型の語句、例えば「含む(comprise)」、「含有する(contain)」、「包含する(include)」等、およびバリエーション、例えば「含む(comprises)」、「含有する(contains)」、「包含する(includes)」、「含んでいる(comprising)」、「含有している(containing)」、「包含している(including)」等は、言及した成分、構成要素、整数またはステップ、あるいは成分、構成要素、整数またはステップの群を含むことを意味するが、任意の他の成分を排除することは意味しないと理解され得る。
【0113】
本発明を説明する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される「a」および「an」および「the」という用語ならびに類似の参照は、本明細書において別段の示唆がない限り、または文脈によって明らかに否定されていない限り、単数形と複数形との両方をカバーするものと解釈すべきである。本明細書における値の範囲の記述は、単に、当該範囲内のそれぞれの別個の値を個々に参照する簡略な方法として機能することを意図するものである。本明細書において別段の示唆がない限り、それぞれの個々の値は、それが本明細書に個々に、ならびに互いに組み合わせて列挙されているかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法および手順ステップ(プロダクト・バイ・プロセスステップを含む)は、本明細書において別段の示唆がない限り、または明確に文脈に相反しない限り、任意の適切な順番で行うことができる。本明細書において供される、いずれかのおよび全ての例、または例示的な語句(例えば、「などの」、「例えば」)の使用は、単に本発明をよりよく理解させることを意図するものであり、別段特許請求される発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいずれの文言も、本発明の実施に必須な特許請求の範囲に記載されていない要素を示していると解釈すべきではない。
【0114】
本発明はまた、対象の皮膚および毛包におけるストレス誘発性障害および/または損傷を、予防および/または処置することを意図する化粧用の非治療的方法であって、それを必要とする皮膚または頭皮上に、上記のようなプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含む(または当該抽出物からなる)組成物の有効量を施用することによる前記方法に関する。
【0115】
本発明のプルネラ・ブルガリスの抽出物の使用または本発明のそのような抽出物を含む組成物の使用の文脈においてなされる定義および好ましい実施態様が、必要な変更を加えて、それらの化粧用の方法に適用されることは理解されるだろう。
【0116】
本発明の別の態様は、皮膚および毛包の精神情緒的ストレス関連障害および/または損傷を予防および/または処置すること、ならびに少なくとも1種の幸福ホルモンの産生による幸福感を促進することを意図する活性成分としての、上記のような地上部の抽出物を含むかまたは当該抽出物からなる組成物の化粧用の使用に関する。
【0117】
より一般的には、前記態様および実施態様を任意の方法でおよび任意の数で組み合わせて追加的な実施態様にできることは理解されよう。本出願において説明されるすべての構成要素の任意の置換および組み合わせは、文脈が別段の指示をしない限り、本出願の記載によって開示されたとみなされるべきである。
【0118】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料が好ましいが、本明細書に記載のものと類似または同等の他の方法および材料も同様に、本発明の実施または試験において使用することができる。
【0119】
本明細書において引用または参照される全ての文献は、参照により組み込まれ、本発明の実施において使用され得る。より具体的には、全ての参照された文献は、あたかも各個々の文献が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されたのと同じ程度まで参照により組み込まれる。
【0120】
以下の例および図面は、本発明のさらなる実施態様をその範囲を限定することなく説明することを意図するものである。
【実施例
【0121】

1.プルネラ・ブルガリスの抽出物の調製
プルネラ・ブルガリスの葉、茎および花を採取し、十分に洗浄して不純物を除去し、40~50℃で乾燥し、粒径1mm以下に粉砕した。次いで、100gの粉末を3Lの蒸留水に浸漬した。沸騰水での抽出を2時間、3回行った。得られた液体を濾紙(Advantec n°2)で濾過し、50℃で減圧下で濃縮し、次いで噴霧乾燥して、13gの乾燥プルネラ・ブルガリス抽出物を得た。この乾燥粉末10gを、グリセロール/水(80/20)(v/v)の溶液1Lに可溶化し、10g/Lの最終的ないわゆるプルネラ・ブルガリス抽出物(以下、PVE)を得た。Folin-Ciocalteu法に従って測定したPVEの総ポリフェノール含有率は、乾燥抽出物の全重量を基準として、0.73g/Lまたは7.3重量%であった。得られたPVEに対して行われた液体クロマトグラフィー質量分析法(HPLC-MS)分析は、サポニンの存在を示さない。
【0122】
PVE中のサポニン含有量の定量
HPLC-MS分析において既に示されたように、PVE中にサポニンが存在しないことを確認するために、以下のプロトコールをさらに実施した。上記乾燥PVE0.1gをメタノール10mLに溶解することによって、サンプル溶液を調製した。次いで、0.005gのギンセノシドReを最初に5mLのメタノールに溶解した。次に、このギンセノシドReのメタノール溶液0.5、1及び2mLをそれぞれメタノールで10mLに希釈し、標準溶液を得た。ギンセノシドReは、例えばオタネニンジン(Panax ginseng)に見られる、トリテルペンサポニンであり、これは、植物抽出物などのサンプルのサポニンの量を評価するための標準として記載されている(Hiai et al.,Planta Medica,Vol.29(2):116-22,1976)。
【0123】
250μLのサンプル溶液及び標準溶液を各試験管に入れ、8%バニリン-エタノール溶液250μL及び72%硫酸溶液2.5mLを加え、氷水浴において混合した。混合溶液を60℃の水浴中で20分間加温し、545nmで吸光度を測定した。PVE中のサポニン(相当のギンセノシドRe)の濃度を検量線から決定した。結果を以下の表1にまとめる:
【0124】
【表1】
検量線(図1)は、上述のギンセノシドReの測定濃度を用いて得られた。サポニンの量を、以下の式に従って決定した:
総サポニン(%)=[(Y-a)/b]*d*100
Y: サンプルの吸光度
a: 線形回帰直線の切片(0.0596)
b: 線形回帰直線の傾き(0.0011)
d: 希釈係数(最終体積/アリコート体積)
上記のPVEを、その後の試験に使用した。
【0125】
2.In-vitro試験:
2.1. PVEのβ-エンドルフィン様効果の評価
コルチゾールおよびヒスタミンチャレンジ下での感覚ニューロンの興奮に対するPVEの効果を評価するために、以下の実験を行った。
【0126】
ヒト感覚ニューロンはhiPS細胞(ヒト人工多能性幹細胞)に由来する。hiPS細胞は、ヒト線維芽細胞をトランスフェクトすることによって得られる。細胞を、分化培地(M1)中、Matrigel(登録商標)(Corning; ref:354277;batch:9238002)の薄層でコートされた96ウェルプレートに播種した。細胞を37℃および5%COで6日間インキュベートし、培養培地を2日ごとに交換した。
【0127】
分化の9日後、培地M1をヒト感覚ニューロンのための成熟培地(M2)で置き換えた。細胞を37℃および5%COで6日間インキュベートし、培養培地を2日ごとに交換した。培養18日目(24時間のプレインキュベーション)または培養19日目(2時間のプレインキュベーション)に、培地を除去し、PVEまたは参照化合物β-エンドルフィン(Bachem;ref:H-2700;batch:1069755)を含む新鮮な培地を添加した。以下の条件を行った:対照培地、50、100または150ppmのPVEを含有する対照培地、10μMのβ-エンドルフィンを含有する対照培地。培養物を37℃および5%COで24時間インキュベートした。2または24時間のインキュベーション後、培養プレートをコルチゾール(Sigma Aldrich;ref:H0888;batch:SLBN5690V)またはヒスタミン(Tocris;ref:3545;batch:1A/18942)によって刺激した(それぞれ10μM)。刺激の30分後、上清を除去し、-80℃で保存した。
【0128】
刺激の30分後に上清中に放出されたCGRPの量をELISAによって定量し、未処理対照と比較した(antibodies-online;ref:abx257902;batch:E2001551F)。全ての値を、平均±標準誤差,平均として表した。統計分析は、ANOVAアッセイ、それに続くDunnettの検定を用いて行った。対照条件に対してp<0.05;**p<0.005;***p<0.001。コルチゾールまたはヒスタミン条件に対して###p<0.001。
【0129】
その結果、図2A図2B図2Cおよび図2Dに示されるように、コルチゾールおよびヒスタミンチャレンジ両方が感覚ニューロンの興奮を有意に増加させ、CGRP放出の強い増加によって示される。当該結果によって、PVEが、ストレス分子との短時間(2時間)または長時間(24時間)のプレインキュベーションの後に、ストレス誘発性の感覚ニューロンの興奮を妨げるかまたは緩和することが実証された。実際、第1に、コルチゾールがCGRP放出の増加によって確認されるように、感覚神経興奮を誘発し、β-エンドルフィンはストレス条件下で、対照条件と類似のレベルで神経興奮を減少させることができる。第2に、感覚ニューロンをストレス条件下でPVEで処理すると、全体でマスト細胞の活性化を強化し、続いて炎症性分子の放出を増強するSP、CGRPおよびNGFの分泌をもたらす感覚ニューロンの興奮を軽減するPVEの能力が実証された。実際に、CGRPのレベルは、用量依存的に減少する。興味深いことに、PVEが、β-エンドルフィンと同一の幸福効果を引き起こすことが実証された。図2Cおよび2Dにおいて、ヒスタミンによって誘発される感覚ニューロン興奮を妨げるPVEの能力が実証された。興味深いことに、PVEが、β-エンドルフィンと同一の幸福効果を引き起こすことが実証された。
【0130】
2.2.PVEの幸福効果の評価
コルチゾールおよびヒスタミンチャレンジ下でのオキシトシン放出に対するPVEの効果を評価するために、以下の実験を行った。
【0131】
感覚ニューロン培養に関して前で説明したプロトコールに基づいて、刺激の30分後に上清中に放出されたオキシトシンの量をELISAによって定量し、未処理対照と比較した(antibodies-online; ref: ABIN2862593; batch: 20XT015a)。
【0132】
その結果、図3Aおよび3Bに示すように、PVEは、2時間のプレインキュベーション後、感覚ニューロンによるオキシトシン放出を強く増加させることが確認された。図3Aにおいて、オキシトシンの分泌を促進し(幸福効果)、コルチゾールによって誘導される感覚ニューロン興奮を妨げるPVEの能力が実証された。図3Bにおいて、ヒスタミンチャレンジ後の感覚ニューロンによるオキシトシンの放出に対するPVEの効果を測定した。これらの結果により、オキシトシンの分泌を促進するPVEの能力、およびヒスタミンによって誘導される感覚ニューロン興奮を妨げるPVEの能力が実証された。さらに、この実験により、β-エンドルフィンがオキシトシン放出に影響を及ぼさないことが示された。これは、コルチゾールチャレンジおよびヒスタミンチャレンジの両方に応答するPVEの最も広い活性を実証するものであり、ストレス条件に応答することを意味している。結論として、コルチゾールとヒスタミンの両方のストレス条件下でのオキシトシンの用量依存性放出が明確に実証されたので、これらの結果によりPVEの幸福に関する潜在能力が強調された。
【0133】
2.3.グルココルチコイド誘導性の毛包細胞の増殖低下を妨げるPVEの能力、およびVEGF分泌を回復させるPVEの能力の評価
HFDP細胞を、Follicle Dermal Papilla Cell Growth Medium(C-26501,PromoCell,ハイデルベルク,ドイツ)において、37℃、5%COで維持した。継代4代目の細胞を、24ウェルプレートに2×10細胞/ウェルで播種した。60%コンフルエンスでHFDPCを、5、10または20ppmのPVEで2時間前処理し、続いて200μMコルチゾンで処理した。60時間インキュベートした後、細胞培養上清を回収し、分泌されたVEGFをELISAキットを用いて測定した。細胞増殖アッセイのために、WST試験を使用した(EZ-Cytox,DogenBio,韓国)。マイクロプレート分光光度法を用いて、450nmの波長で吸光度を測定した。
【0134】
図4に示すように、予想通り、コルチゾン産生をもたらす精神情緒的ストレスが、HFDPC増殖を阻害することが実証された。これらの細胞は、毛の生理機能における主要なプレーヤーである。当該結果によってまた、コルチゾン誘発性の毛の成長停止を回復するPVEの能力も実証された。実際に、当該結果は、コルチゾン処理にもかかわらずHFDPCの成長を促進するPVEの能力を実証し、従って、毛の生理機能、特に毛成長の促進におけるPVEの有益な効果を示唆するものであった。
【0135】
図5に示されるように、当該結果により、コルチゾン処理下でのVEGFの分泌を回復するPVEの用量依存的な能力が実証された。実際に、予想通り、コルチゾン産生をもたらす精神情緒的ストレスが、VEGF産生を減少させることが実証された。VEGFは毛の生理機能において重要であり、なぜなら毛包周囲の微小循環の調節に関与し、従って、毛包の栄養を改善するためである。当該結果により、ストレス下でVEGFを産生するHFDPCの能力を回復し、従って毛の成長を促進するPVEの能力が実証された。換言すると、この結果によって、PVEが強力な抗ストレス誘発性の毛成長成分であり得ることが確認された。
【0136】
2.4.ヒト毛包に対する精神情緒的ストレスから毛成長を保護するPVEの能力の評価
コルチゾールストレス下での毛成長に対するPVEの効果を評価するために、以下の実験を行った。
【0137】
40歳の女性の新鮮な頭皮/顔面皮膚生検試料からヒト毛包を採取した。脱毛後、単離した毛包を顕微鏡観察により選択し、成長期相のものだけを選択した。それらをランダム化し、補充William’s E培地(ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミン(2mM)、ヒドロコルチゾン(0.027μM)、亜セレン酸ナトリウム(10ng/ml)、トランスフェリン(10μg/ml)およびインスリン(10μg/ml))中に置き、処理(対照、100μMのコルチゾール、コルチゾールの存在下または非存在下での50または150ppmのPVE)に付した。
【0138】
37℃、5%CO、相対湿度>95%で、毛包を培養した。培地を1日目および3日目に交換した。単離した毛包の増殖を、実体顕微鏡装置(Carl Zeiss,Microscopy,フランス)を用いて毎日の写真撮影によって5日間モニターした。各毛包の長さは、ImageJソフトウェアを用いて測定した。
【0139】
その結果、図6に示すように、ヒト毛包をコルチゾールで処理すると、1日目から5日目にかけて毛成長が強く低下する。PVEがコルチゾール誘発性毛成長の低下を妨げることが観察された。5日後、PVEで処理された、ストレスを受けた毛包の成長は、PVEで処理されたストレスを受けていない毛包の成長よりも優れている。実際に、PVEによって処理された、ストレスを受けた毛包は、対照条件と比較して平均80μm成長した。並行して、ベース(非ストレス)条件における毛包の長さは、コルチゾール処理下よりも短いことが観察された。まとめると、これらの結果により、PVEがストレス条件下、コルチゾール誘発性の毛成長を回復させ、その後促進する能力が実証された。
【0140】
2.5.毛包構造の保護におけるPVEの能力の評価
コルチゾールストレス下およびベース条件(非ストレス条件)下での毛包構造に対するPVEの効果を評価するために、以下の実験を行った。
【0141】
パラホルムアルデヒド溶液(MM France,Brignais,フランス)中で一晩固定した後、脱水オートマット(STP120 ThermoScientific商標Waltham,MA,米国)を用いて、試料を脱水し、パラフィンに含浸させた。次いで、5μMの切片をSuperfrost(登録商標) Goldスライド上に載せた後、ヘマトキシリン・エオシン・サフラン(HES)染色に進んだ。
【0142】
ヘマトキシリン・エオシン・サフラン(HES)は、組織の可視化に通常使用される、核、細胞質およびマトリックス着色剤を使用する三色系着色法である。
【0143】
その結果、図7に示すように、ヒト毛包をコルチゾールで処理すると、それらの構造(真皮鞘(dermal sheath)および毛母基(hair matrix))は劇的に変化する(矢印によって強調)。真皮鞘はより薄い。逆に、PVEによって処理されたコルチゾールストレスを受けた毛包は、(特に真皮鞘層の)無傷の構造および保存された組織を有する。真皮鞘は、毛包の最も外側の境界に位置し、毛包の結合組織鞘を含む。真皮鞘細胞は、毛周期および毛包新生に寄与することが知られている。毛母基は、毛包の寿命、特に毛幹の産生に重要である。従って、強力な真皮鞘および生存能力を有する毛母基を保存することは、毛包のホメオスタシスの維持および脱毛の予防にも重要である。結果は、培養5日後、毛包は依然として生存能力を有し(対照条件)、対照的に、コルチゾール処理5日後、毛包は明らかに損傷し、脆弱化することを示した。これらの結果により、コルチゾールの負の効果に対して、またベース条件においても、毛包を保護し、強化するPVEの能力が実証された。実際、PVEの存在下では、より厚い真皮鞘がベース条件(ストレッサーなし)で観察された。対照的に、コルチゾール条件下では、真皮鞘は本当に薄く、毛母基は変化していると考えらえる。
【0144】
2.6.コルチゾール誘発性毛包細胞アポトーシスの予防およびそれらの増殖の促進におけるPVEの能力の評価
コルチゾールストレス下での毛包細胞増殖およびアポトーシスに対するPVEの効果を評価するために、以下の実験を行った。
【0145】
免疫染色を行うために、スライド脱パラフィン化を、溶媒の連続浴を用いて手動で行った。Dako Envision Flex溶液(Agilent,Santa Clara,米国)を用いて熱誘導抗原賦活化を行った。Ki-67(希釈1/500)。細胞増殖を、パラフィン切片(マウスモノクローナル抗Ki-67, Dako(商標)M7240、Santa Clara、US)上で実現されるKi-67免疫染色によって研究し、click-iT(登録商標)Plus Alexa 488 TUNEL assay(ThermoScientific(商標),C10617,Waltham,MA,米国)を使用して、供給者の指示に従ってアポトーシスを研究した。
【0146】
TUNELアッセイおよびKi67抗体インキュベーション後、切片をAlexa 568共役二次抗体(A11004,Thermo Fischer Scientific(商標),Waltham,MA,米国)と共に室温で1時間インキュベートした。核対比染色を、Hoechst(Invitrogen,ref H3570)を用いて1/5000で5分間室温で行った。スライドを水性媒体中に置いた。
【0147】
結果として、図8において示されるように、コルチゾールストレスによる5日間のストレスは、対照条件と比較した細胞増殖の減少と同時に、細胞においてアポトーシスを誘導する。この結果により、PVEがアポトーシス細胞の数を有意に減少させることによってコルチゾールの有害作用を効率的に妨げ、毛包細胞増殖を強く増加させることが実証された。この結果により、コルチゾール誘発性の毛包損傷を妨げ、コルチゾール誘発性脱毛を回避または遅らせ、早発のおよび長期の休止期相を予防し、毛の脆弱性から保護するPVEの強力な有効性が確認された。
【0148】
予想されるように、コルチゾール放出によって媒介される精神情緒的ストレスが、アポトーシス細胞の劇的な増加および細胞生存能力の減少に関与することが実証された。これらのデータは、精神情緒的ストレス下で観察された脱毛を説明するものであるかもしれない。興味深いことに、コルチゾール誘発性の毛包細胞損傷アポトーシスをおよび細胞増殖の減少を妨げるPVEの能力が観察された。さらに、アポトーシスおよび細胞増殖に対してPVEを用いた場合の用量依存的改善効果が示された。
【0149】
2.7.毛包色素沈着の構造の保護におけるPVEの能力の評価
ベースまたはコルチゾールストレス下での毛包色素沈着に対するPVEの効果を評価するために、以下の実験を行った。
【0150】
パラホルムアルデヒド溶液(MM France,Brignais,フランス)中で一晩固定した後、脱水オートマット(STP120 ThermoScientific商標Waltham,MA,米国)を用いて、試料を脱水し、パラフィンに含浸させた。次いで、5μMの切片をSuperfrost(登録商標) Goldスライド上に載せた後、マッソン・フォンタナ染色に進んだ。この染色は、メラニン顆粒を可視化するために使用される。メラニンは、毛、眼および皮膚に生理的に存在する、褐色~黒色の非脂質色素である。予想されるように、コルチゾール放出によって媒介される精神情緒的ストレスが、アポトーシス細胞の劇的な増加および細胞生存能力の減少に関与することが実証された。これらのデータは、精神情緒的ストレス下で観察された脱毛を説明するものであるかもしれない。興味深いことに、コルチゾール誘発性の毛包細胞損傷アポトーシスをおよび細胞増殖の減少を妨げるPVEの能力が観察された。さらに、我々は、アポトーシスおよび細胞増殖に対してPVEを用いた場合の用量依存的改善効果を示した。
【0151】
その結果、図9に示すように、ヒト毛包をコルチゾールで処理すると、毛包の色素沈着が大きく影響を受けた。実際に、ほぼ全てのメラニン顆粒が、コルチゾールでの5日間の処置後に消失した。
【0152】
逆に、PVEによって処理したコルチゾールストレスを受けた毛包のメラミン含有率は保存されていた。この結果は、精神感情的ストレス誘発性の毛の白化を緩和するPVEの可能性を強調するものである。予想通り、コルチゾール放出に関与する精神情緒的ストレスが、毛の白化にも関与することが実証された。実際に、コルチゾール条件では、メラニン(黒矢印)がより少ないことが示された。そして、当該結果によって、色素沈着を促進することによる、コルチゾール誘発性の毛の白化の予防におけるPVEの能力が実証された。さらに、PVEの色素沈着促進効果は、ベース条件(150ppmの濃度)でも観察された。
【0153】
2.8.マスト細胞脱顆粒のグルココルチコイド誘発性の増加を妨げるPVEの能力の評価
マスト細胞脱顆粒に対するPVEの効果を評価するために、以下の実験を行った。
【0154】
RBL-2H3細胞株は、炎症、アレルギーおよび免疫学的研究に使用される、広範に使用されるβ-ヘキソサミニダーゼを遊離する細胞株である。このBL-2H3細胞株をマスト細胞モデルとして使用し、β-ヘキソサミニダーゼをマスト細胞脱顆粒のマーカーとして定量した。
【0155】
RBL-2H3、すなわちラット好塩基球性白血病(ATCC、CRL-2256(商標))を、10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM中、37℃、5%COで維持した。細胞を48ウェルプレートに、ウェル当たり2.5×10細胞で播種し、24時間インキュベートした。
【0156】
HEPES緩衝Tyrode溶液(pH 7.4)に置き換えた後、PVEを1時間前処理し、次いで500nMの細胞脱顆粒のカルシウムイオノフォア誘導剤A23187で処理した。A23187を実験陽性対照として使用し、実験を検証した。培養上清を、A23187処理後1時間回収する。細胞を、1%トリトンX-100を含むTyrode溶液で処理し、15分間インキュベートし、次いで、上清を遠心分離によって回収した。50μlの培養上清および溶解液を、それぞれ50μlのp-ニトロフェニルN-アセチル-β-D-グルコサミニド(4mM)(β-ヘキソサミニダーゼ基質)で処理し、37℃で30分間反応させた。50μlの50mM炭酸ナトリウムバッファーで処理することによって反応を停止させ、405nmで測定した。
【0157】
次いで、β-ヘキソサミニダーゼ活性の計算を用いて脱顆粒%を測定した:
脱顆粒(%)=(OD上清-ODブランク)/(OD上清+OD溶解液-ODブランク)*100
【0158】
図10に示されるように、PVEは、用量依存的にマスト細胞脱顆粒を阻害し、従って、脱毛および皮膚損傷に関与する神経性炎症を軽減するその能力が示唆される。
【0159】
3.In-vivo研究: ストレス下の人において、ストレス誘発性の脱毛を予防し、鈍化した毛成長を増進するPVEの能力の評価
コルチゾールストレス下のヒトボランティアにおける毛包に対するPVEの効果を評価するために、二重盲検およびビヒクル対照臨床試験を実施した。これに関して、ヘルシンキ宣言及び医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonization Good Clinical Practice)のガイドラインの勧告を、医薬品以外の試験に適用できるものとして遵守した。
【0160】
ボランティアがストレスを受けることを確実にするために、彼らのストレス状態を、周知の知覚されたストレス尺度(Perceived Stress Scale:PSS)の問診を使用し、Codesna社によって商業化されている特定のストレス測定装置を用いて評価した(US-B2-10856797)。PSSの問診は、ヒトの精神情緒的ストレスの知覚を測定し評価するための神経科学分野で最も広く使用されているツールである。それは、回答がスコア化される10個の質問からなり、以下に要約されるような全体スコアをもたらす:
【0161】
24の閾値が不安検出のために信頼できることが認められたので、脱毛および毛成長パラメータに対するPVEの効果を評価するために、24を超えるスコアを有するボランティアを本試験のために選択した。
【0162】
選択されたボランティアが本当にストレスを受けることを確実にするために、Codesnaの装置による第2の選択が行われた。この測定装置は、神経心臓学分野における脳心臓相互作用について実施された研究に基づいている。心拍変動は、自律神経系(交感および副交感神経反応)内の不均衡を反映し、ストレスレベルを直接反映する。この装置は自律神経系の不均衡をスコア化することにより、主観的(自己)評価にかかわらず、有効な慢性ストレスを評価することを可能にする。実際、前記装置は、以下の生理学的パラメータ:ストレス指数、および対象の不安を反映する心肺アライメントを測定する。
【0163】
以下の情報が、Codesnaの装置のユーザーガイドによって提供される:
- ストレス指数:
○ <15:ストレスなし
○ 15~25:中間のストレス
○ >25:高いストレス
- 1.5を超える心肺アライメントは、不安状態を反映する
【0164】
上記の選択されたボランティアにまた、彼らがストレス誘発性の脱毛に罹患していることを確実にするために、第3の選択を通過させた。これに関しては、標準化された方法でボランティアに櫛通しさせ、抜けた毛を計数することからなるコーミングテストを行うことが通常である。実際、10本を超える抜け毛を示したボランティアのみを、残りの試験に適しているとみなした。
【0165】
ボランティアの生理的ストレスレベルの測定の重要性:
23を超えるPSSスコアを示す27人の女性が予め選択された。彼女たちの生理的ストレスを、Codesnaの装置を用いて、ユーザーズガイドに従うことによって測定した。
【0166】
27人のボランティアのうち、13人の女性(48%に相当する)が、13未満の低い生理的ストレスレベルを示したが(表1)、このことは、これらのボランティアが、自身をストレスを受けていると知覚しているにもかかわらず、生理的ストレスを受けていないことを意味し、なぜなら彼女たちの体が身体的な影響なしに対処していたためである。
【0167】
他の14人の回答者は、15の閾値を超えるストレス指数を示した(14であったが、他の測定パラメーター、すなわち1.5を超える(1.64)心肺アライメントを満たした1人を除く)。
【0168】
これらの14人のボランティアは本当にストレスを受けたと結論付けることができ、このことは、臨床試験に彼女たちを含めることを正当化し、彼女たちの登録が、PVEの効果の臨床的評価に関してより適切なものとなる。
【0169】
【表2】
3.2.ストレス下のボランティアにおいて、ストレス誘発性の脱毛を予防し、鈍化した毛成長を増進するPVEの能力の評価
上記表2に示すように、14人の白人女性(27~56歳、平均42.6歳)を、ストレスを受け、ストレスに関連する毛の損傷(脱毛、毛成長速度の低下)に罹患しているとして選択した。核心は、そのような脱毛が少なくとも部分的に彼女たちのストレスによるものであるかどうかを知ることである。
【0170】
従って、ボランティアに、PVEまたはプラセボ(表2)のいずれかを含むジェルクリーム製剤を、1日1回、84日間、頭皮に施用するように依頼した。処置前(最初の施用の48時間前、および84日目の処置来院の48時間前)に、1cmの頭皮領域をTrichoscan分析のために剃毛した。0日目~48時間目および0日目、ならびに84日目~48時間目および84日目に写真を撮影して、毛成長(毛の長さの測定)、成長期相の割合、休止期相の割合、および成長期/休止期比を評価した。
【0171】
【表3】
表3に要約した2つのジェルクリームを、表1中の選択されたストレスを受けたボランティアの頭皮に施用した。
【0172】
毛の長さ、成長期相の毛包のパーセント、休止期相の毛包のパーセント、および成長期/休止期比を、剃毛直後または剃毛後48時間に、Trichoscanを用いた剃毛領域の写真解析によって測定した。これは、ジェルクリームの使用前および84日後に行った。統計:**:p<0.01、:p<0.05、#:p<0.1、ns:有意でない
図11Aに示されるように、PVEは、ストレスを受けたボランティアにおいて毛成長を増強する。実際に、第一に、プラセボが、ストレス誘発性の毛成長の鈍化を妨げなかったことが実証される。実際、毛成長速度は、D84で10.8%減少した。この結果は、選択されたボランティアが本当にストレスを受けたことを示し、なぜなら彼女たちの毛成長速度が時間とともに減少したからである。これはin vitroの結果とも一致している(図3~9)。第2に、毛が、84日の処置後に対照と比較して、最大21.3%成長したことが実証される。従って、PVEが毛に対するストレスの有害な影響を本質的に妨げ、また、ストレスによって鈍化した毛成長速度を増進すると結論付けることができる。
【0173】
図11Bに示されるように、成長期相の毛包の割合が、対照と比較して5.2%減少したことから、プラセボは、84日の処置後に成長期相の毛包を首尾よく維持しなかったことが実証される。逆に、PVEは成長期相の割合を増加させ(+3.1%)、これはストレスにもかかわらず毛が成長相にあることを意味する。これらの記載は、in vitroの結果とも一致している(例えば図4)。従って、PVEは、ストレス誘発性の脱毛を予防する。
【0174】
図11Cに示すように、休止期相の毛包の割合が対照と比較してD84で26.5%増加したので、プラセボは毛包が休止期相へ入ることを首尾よく妨げないことが実証される。逆に、PVEは、対照と比較して、D84で休止期相の割合を15.6%減少させ、このことは、毛が休止期に維持されて、抜けないことを意味する。これらの記載はin vitroの結果とも一致している(図3~9)。従って、PVEは、ストレス誘発性の脱毛を予防する。
【0175】
図11Dに示すように、成長期/休止期比がD84で23.5%減少したことから、プラセボは毛包が休止期相へストレス誘発性に入ることを首尾よく妨げなかったことが実証される。逆に、PVEは、有意な様式で、ストレス誘発性の成長期/休止期比を増加させる。これらの記載はin vitroの結果と一致している(図3~9)。従ってそれは、PVEが、成長相(成長期)への導入を刺激し、および休止相(休止期)への導入を阻害することによって、毛のダイナミックおよびその発育を促進することを反映しており、このことは最終的には毛成長速度に現れ、ストレス誘発性の脱毛を防止する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
【手続補正書】
【提出日】2023-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルネラ・ブルガリス(Prunella vulgaris)の葉、茎および花からなる地上部の抽出物であって、水または水とアルコールとの混合物から選択される溶媒中での固/液抽出によって得られ、
i)抽出物の乾燥分の全重量を基準として、1~15重量%、好ましくは2~12重量%、より好ましくは3~10重量%の1種または複数のポリフェノールを含み;
ii)抽出物の乾燥分の全重量を基準として、0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0.001重量%未満、特に0重量%のサポニンを含み;
iii)抽出物の乾燥分は、少なくとも10g/L(重量/溶媒の体積)、好ましくは少なくとも15g/L、さらにより好ましくは少なくとも20g/Lに相当する、
前記抽出物。
【請求項2】
水抽出物である、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
ヒドロメタノール抽出物またはヒドロエタノール抽出物、好ましくはヒドロエタノール抽出物である、請求項1に記載の抽出物。
【請求項4】
以下のステップを含む、プルネラ・ブルガリスの葉、茎および花からなる(任意に乾燥された)地上部の抽出物を製造するための方法:
i)水またはヒドロアルコール溶媒において前記地上部の固/液抽出を実施するステップ:ここで
a.水における抽出は、80~150℃、好ましくは100~130℃、さらにより好ましくは85~130℃、特に90~120℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1.5~5時間行われ;または
b.ヒドロアルコールにおける抽出は、50~120℃、好ましくは60~115℃、より好ましくは70~110℃、特に80~105℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1.5~5時間行われる;
(ii)ステップ(i)の固体残渣から抽出物を分離するステップ;
(iii)前記の少なくとも1種の溶媒またはその一部を除去することによって前記抽出物を濃縮するステップ。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法の実施によって得ることができる、プルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物。
【請求項6】
(A)活性成分としての、請求項1~3および5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物;および
(B)プルネラ・ブルガリスの前記抽出物以外の少なくとも1種のさらなる化粧用におよび/または薬学的に許容可能な成分、
を含む化粧用または医薬組成物であって、
溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、ペースト、ジェル、ローション、粉末、石鹸、界面活性剤含有水、オイル、シャンプーおよびスプレーからなる群から選択される、外用使用のための組成物であるか;および/または経口投与されるニュートラシューティカル組成物である、前記化粧用または医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物の全重量に対して、0.0001~20重量%、好ましくは0.001~15重量%、より好ましくは0.005~10重量%、特に0.01~5重量%の、請求項1~3および5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含む、請求項6に記載の化粧用または医薬組成物。
【請求項8】
皮膚そう痒、皮膚炎症、脱毛、毛成長停止、毛包アポトーシス、毛の硬毛(hair thickness)、毛の白化および毛の薄化から選択される皮膚および毛包の精神情緒的ストレスに関連する障害および/または損傷を予防および/または処置すること意図する活性成分としての、請求項1~3および5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含むかまたは当該抽出物からなる組成物の化粧用の使用であって、さらに、少なくとも1種の幸福ホルモンの産生による幸福感を促進するためである前記使用
【請求項9】
前記抽出物が、ストレス誘発性神経免疫興奮を調節するため、ストレス誘発性感覚ニューロン興奮を調節するため、ストレス誘発性マスト細胞脱顆粒を妨げるため、またはそれらのうちの2つ以上のためのものである、請求項8に記載の化粧用の使用。
【請求項10】
幸福ホルモンがβ-エンドルフィン、オキシトシン、セロトニン、ドーパミン、またはこれらの2つ以上の組み合わせから選択される、請求項8または9に記載の化粧用の使用。
【請求項11】
前記抽出物が、皮膚細胞および/または毛包に対して以下の活性のうちの少なくとも1つを有する、請求項8~10のいずれか1つに記載の化粧用の使用:
(a)マスト細胞のストレス誘発性脱顆粒を妨げるおよび/または減少させる;
(b)皮膚のストレス誘発性の炎症および/または刺激を予防する;
(c)コルチゾール誘発性の毛成長を緩和するかまたは妨げる;
(d)ストレスを受けた毛包のVEGF産生を回復させる;
(e)コルチゾール誘発性の脱毛を緩和するかまたは妨げる;
(f)コルチゾール誘発性の毛包損傷を妨げる;
(g)コルチゾールに曝露された毛包において減少した細胞増殖を促進する;
(h)コルチゾール誘発性の毛包アポトーシスを妨げる;
(i)コルチゾール誘発性の毛の白化を予防するかまたは制限する;
(j)コルチゾールにより低下した毛の緻密化(hair densification)を促進する;
(k)コルチゾール誘発性の毛の薄化を予防するかまたは制限する;
(l)ストレス関連アポトーシスから毛包を保護する
(m)これらのうちの2つ以上の組み合わせ。
【請求項12】
ストレスに関連する障害および/または損傷がさらに、皮膚乾燥、皮膚の赤み(skin redness)、皮膚の異常色素沈着、皮脂調節異常(sebum-deregulation)アトピー性皮膚炎、乾癬、白斑、全身性エリテマトーデスまたはそれらの2つ以上から選択される、請求項8~11のいずれか1つに記載の使用。
【請求項13】
皮膚そう痒、皮膚炎症、脱毛、毛成長停止、毛包アポトーシス、毛の硬毛、毛の白化および毛の薄化から選択される皮膚および毛包におけるストレス誘発性障害および/または損傷を予防するためおよび/または処置するための非治療的方法において使用するため活性成分としての、請求項1~3、5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物からなる組成物であって、前記使用がさらに、少なくとも1種の幸福ホルモンの産生による幸福感を促進するためである、前記組成物
【手続補正書】
【提出日】2024-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0175
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0175】
図11Dに示すように、成長期/休止期比がD84で23.5%減少したことから、プラセボは毛包が休止期相へストレス誘発性に入ることを首尾よく妨げなかったことが実証される。逆に、PVEは、有意な様式で、ストレス誘発性の成長期/休止期比を増加させる。これらの記載はin vitroの結果と一致している(図3~9)。従ってそれは、PVEが、成長相(成長期)への導入を刺激し、および休止相(休止期)への導入を阻害することによって、毛のダイナミックおよびその発育を促進することを反映しており、このことは最終的には毛成長速度に現れ、ストレス誘発性の脱毛を防止する。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.プルネラ・ブルガリス(Prunella vulgaris)の葉、茎および花を含む地上部の抽出物であって、水または水とアルコールとの混合物から選択される溶媒中での固/液抽出によって得られ、
i)抽出物の乾燥分の全重量を基準として、1~15重量%、好ましくは2~12重量%、より好ましくは3~10重量%の1種または複数のポリフェノールを含み;
ii)抽出物の乾燥分の全重量を基準として、0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0.001重量%未満、特に0重量%のサポニンを含み;
iii)抽出物の乾燥分は、少なくとも10g/L(重量/溶媒の体積)、好ましくは少なくとも15g/L、さらにより好ましくは少なくとも20g/Lに相当する、
前記抽出物。
2.水抽出物である、上記1に記載の抽出物。
3.ヒドロメタノール抽出物またはヒドロエタノール抽出物、好ましくはヒドロエタノール抽出物である、上記1に記載の抽出物。
4.以下のステップを含む、プルネラ・ブルガリスの葉、茎および花を含む(任意に乾燥された)地上部の抽出物を製造するための方法:
ii)水またはヒドロアルコール溶媒において前記地上部の固/液抽出を実施するステップ:ここで
a.水における抽出は、80~150℃、好ましくは100~130℃、さらにより好ましくは85~130℃、特に90~120℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1.5~5時間行われ;または
b.ヒドロアルコールにおける抽出は、50~120℃、好ましくは60~115℃、より好ましくは70~110℃、特に80~105℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1.5~5時間行われる;
(ii)ステップ(i)の固体残渣から抽出物を分離するステップ;
(iii)前記の少なくとも1種の溶媒またはその一部を除去することによって前記抽出物を濃縮するステップ。
5.上記4に記載の製造方法の実施によって得ることができる、プルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物。
6.(A)活性成分としての、上記1~3および5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物;および
(B)プルネラ・ブルガリスの前記抽出物以外の少なくとも1種のさらなる化粧用におよび/または薬学的に許容可能な成分、
を含む化粧用または医薬組成物であって、
溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、ペースト、ジェル、ローション、粉末、石鹸、界面活性剤含有水、オイル、シャンプーおよびスプレーからなる群から選択される、外用使用のための組成物であるか;および/または経口投与されるニュートラシューティカル組成物である、前記化粧用または医薬組成物。
7.前記組成物の全重量に対して、0.0001~20重量%、好ましくは0.001~15重量%、より好ましくは0.005~10重量%、特に0.01~5重量%の、上記1~3および5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含む、上記6に記載の化粧用または医薬組成物。
8.皮膚および毛包の精神情緒的ストレスに関連する障害および/または損傷を予防および/または処置すること、ならびに少なくとも1種の幸福ホルモンの産生による幸福感を促進することを意図する活性成分としての、上記1~3および5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含むかまたは当該抽出物からなる組成物の化粧用の使用。
9.前記抽出物が、ストレス誘発性神経免疫興奮を調節するため、ストレス誘発性感覚ニューロン興奮を調節するため、ストレス誘発性マスト細胞脱顆粒を妨げるため、またはそれらのうちの2つ以上のためのものである、上記8に記載の化粧用の使用。
10.幸福ホルモンがβ-エンドルフィン、オキシトシン、セロトニン、ドーパミン、またはこれらの2つ以上の組み合わせから選択される、上記8または9に記載の化粧用の使用。
11.前記抽出物が、皮膚細胞および/または毛包に対して以下の活性のうちの少なくとも1つを有する、上記8~10のいずれか1つに記載の化粧用の使用:
(a)マスト細胞のストレス誘発性脱顆粒を妨げるおよび/または減少させる;
(b)皮膚のストレス誘発性の炎症および/または刺激を予防する;
(c)コルチゾール誘発性の毛成長を緩和するかまたは妨げる;
(d)ストレスを受けた毛包のVEGF産生を回復させる;
(e)コルチゾール誘発性の脱毛を緩和するかまたは妨げる;
(f)コルチゾール誘発性の毛包損傷を妨げる;
(g)コルチゾールに曝露された毛包において減少した細胞増殖を促進する;
(h)コルチゾール誘発性の毛包アポトーシスを妨げる;
(i)コルチゾール誘発性の毛の白化を予防するかまたは制限する;
(j)コルチゾールにより低下した毛の緻密化(hair densification)を促進する;
(k)コルチゾール誘発性の毛の薄化を予防するかまたは制限する;
(l)ストレス関連アポトーシスから毛包を保護する
(m)これらのうちの2つ以上の組み合わせ。
12.ストレスに関連する障害および/または損傷が、皮膚乾燥、皮膚の赤み(skin redness)、皮膚の異常色素沈着、皮脂調節異常(sebum-deregulation)、皮膚そう痒、皮膚炎症、アトピー性皮膚炎、乾癬、白斑、全身性エリテマトーデス、脱毛、毛成長停止、毛包アポトーシス、毛の硬毛(hair thickness)、毛の白化および毛の薄化、またはそれらの2つ以上から選択される、上記8~11のいずれか1つに記載の使用。
13.対象の皮膚および毛包におけるストレス誘発性障害および/または損傷を予防および/または処置することを意図する化粧用の非治療的方法であって、それを必要とする皮膚または頭皮上に、上記1~3、5~7のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含むかまたは当該抽出物からなる組成物の有効量を施用することによる、前記方法。
14.皮膚および毛包におけるストレス誘発性障害および/または損傷を予防するためおよび/または処置するための非治療的方法において使用するため、および少なくとも1種の幸福ホルモンの産生による幸福感を促進するための活性成分としての、上記1~3、5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含むかまたは当該抽出物からなる、組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルネラ・ブルガリス(Prunella vulgaris)の葉、茎および花からなる地上部の抽出物であって、水または水とアルコールとの混合物から選択される溶媒中での固/液抽出によって得られ、
i)抽出物の乾燥分の全重量を基準として、1~15重量%、好ましくは2~12重量%、より好ましくは3~10重量%の1種または複数のポリフェノールを含み;
ii)抽出物の乾燥分の全重量を基準として、0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0.001重量%未満、特に0重量%のサポニンを含み;
iii)抽出物の乾燥分は、少なくとも10g/L(重量/溶媒の体積)、好ましくは少なくとも15g/L、さらにより好ましくは少なくとも20g/Lに相当する、
前記抽出物。
【請求項2】
水抽出物である、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
ヒドロメタノール抽出物またはヒドロエタノール抽出物、好ましくはヒドロエタノール抽出物である、請求項1に記載の抽出物。
【請求項4】
以下のステップを含む、プルネラ・ブルガリスの葉、茎および花からなる(任意に乾燥された)地上部の抽出物を製造するための方法:
i)水またはヒドロアルコール溶媒において前記地上部の固/液抽出を実施するステップ:ここで
a.水における抽出は、80~150℃、好ましくは100~130℃、さらにより好ましくは85~130℃、特に90~120℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1. 5~5時間行われ;または
b.ヒドロアルコールにおける抽出は、50~120℃、好ましくは60~115℃、より好ましくは70~110℃、特に80~105℃で、15分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1時間~6時間、最も好ましくは1.5~5時間行われる;
(ii)ステップ(i)の固体残渣から抽出物を分離するステップ;
(iii)前記の少なくとも1種の溶媒またはその一部を除去することによって前記抽出物を濃縮するステップ。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法の実施によって得ることができる、プルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物。
【請求項6】
(A)活性成分としての、請求項1~3および5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物;および
(B)プルネラ・ブルガリスの前記抽出物以外の少なくとも1種のさらなる化粧用におよび/または薬学的に許容可能な成分、
を含む化粧用または医薬組成物であって、
溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、ペースト、ジェル、ローション、粉末、石鹸、界面活性剤含有水、オイル、シャンプーおよびスプレーからなる群から選択される、外用使用のための組成物であるか;および/または経口投与されるニュートラシューティカル組成物である、前記化粧用または医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物の全重量に対して、0.0001~20重量%、好ましくは0.001~15重量%、より好ましくは0.005~10重量%、特に0.01~5重量%の、請求項1~3および5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含む、請求項6に記載の化粧用または医薬組成物。
【請求項8】
皮膚そう痒、皮膚炎症、脱毛、毛成長停止、毛包アポトーシス、毛の硬毛(hair thickness)、毛の白化および毛の薄化から選択される皮膚および毛包の精神情緒的ストレスに関連する障害および/または損傷を予防および/または処置することを意図する活性成分としての、請求項1~3および5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物を含むかまたは当該抽出物からなる組成物の化粧用の使用であって、さらに、少なくとも1種の幸福ホルモンの産生による幸福感を促進するためである前記使用。
【請求項9】
前記抽出物が、ストレス誘発性神経免疫興奮を調節するため、ストレス誘発性感覚ニューロン興奮を調節するため、ストレス誘発性マスト細胞脱顆粒を妨げるため、またはそれらのうちの2つ以上のためのものである、請求項8に記載の化粧用の使用。
【請求項10】
幸福ホルモンがβ-エンドルフィン、オキシトシン、セロトニン、ドーパミン、またはこれらの2つ以上の組み合わせから選択される、請求項に記載の化粧用の使用。
【請求項11】
前記抽出物が、皮膚細胞および/または毛包に対して以下の活性のうちの少なくとも1つを有する、請求項に記載の化粧用の使用:
(a)マスト細胞のストレス誘発性脱顆粒を妨げるおよび/または減少させる;
(b)皮膚のストレス誘発性の炎症および/または刺激を予防する;
(c)コルチゾール誘発性の毛成長を緩和するかまたは妨げる;
(d)ストレスを受けた毛包のVEGF産生を回復させる;
(e)コルチゾール誘発性の脱毛を緩和するかまたは妨げる;
(f)コルチゾール誘発性の毛包損傷を妨げる;
(g)コルチゾールに曝露された毛包において減少した細胞増殖を促進する;
(h)コルチゾール誘発性の毛包アポトーシスを妨げる;
(i)コルチゾール誘発性の毛の白化を予防するかまたは制限する;
(j)コルチゾールにより低下した毛の緻密化(hair densification)を促進する;
(k)コルチゾール誘発性の毛の薄化を予防するかまたは制限する;
(l)ストレス関連アポトーシスから毛包を保護する
(m)これらのうちの2つ以上の組み合わせ。
【請求項12】
ストレスに関連する障害および/または損傷がさらに、皮膚乾燥、皮膚の赤み(skin redness)、皮膚の異常色素沈着、皮脂調節異常(sebum-deregulation)、アトピー性皮膚炎、乾癬、白斑、全身性エリテマトーデス、またはそれらの2つ以上から選択される、請求項に記載の使用。
【請求項13】
皮膚そう痒、皮膚炎症、脱毛、毛成長停止、毛包アポトーシス、毛の硬毛、毛の白化および毛の薄化から選択される皮膚および毛包におけるストレス誘発性障害および/または損傷を予防するためおよび/または処置するための非治療的方法において使用するための活性成分としての、請求項1~3、5のいずれか1つに記載のプルネラ・ブルガリスの地上部の抽出物からなる組成物であって、前記使用がさらに、少なくとも1種の幸福ホルモンの産生による幸福感を促進するためである、前記組成物。
【国際調査報告】