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特表2024-533241調整された上部電極-異なる大きさの正および負電圧を使用して電気泳動ディスプレイの光学状態を切り替えるための駆動電極電圧
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  • 特表-調整された上部電極-異なる大きさの正および負電圧を使用して電気泳動ディスプレイの光学状態を切り替えるための駆動電極電圧 図1
  • 特表-調整された上部電極-異なる大きさの正および負電圧を使用して電気泳動ディスプレイの光学状態を切り替えるための駆動電極電圧 図2
  • 特表-調整された上部電極-異なる大きさの正および負電圧を使用して電気泳動ディスプレイの光学状態を切り替えるための駆動電極電圧 図3
  • 特表-調整された上部電極-異なる大きさの正および負電圧を使用して電気泳動ディスプレイの光学状態を切り替えるための駆動電極電圧 図4
  • 特表-調整された上部電極-異なる大きさの正および負電圧を使用して電気泳動ディスプレイの光学状態を切り替えるための駆動電極電圧 図5
  • 特表-調整された上部電極-異なる大きさの正および負電圧を使用して電気泳動ディスプレイの光学状態を切り替えるための駆動電極電圧 図6
  • 特表-調整された上部電極-異なる大きさの正および負電圧を使用して電気泳動ディスプレイの光学状態を切り替えるための駆動電極電圧 図7
  • 特表-調整された上部電極-異なる大きさの正および負電圧を使用して電気泳動ディスプレイの光学状態を切り替えるための駆動電極電圧 図8
  • 特表-調整された上部電極-異なる大きさの正および負電圧を使用して電気泳動ディスプレイの光学状態を切り替えるための駆動電極電圧 図9A
  • 特表-調整された上部電極-異なる大きさの正および負電圧を使用して電気泳動ディスプレイの光学状態を切り替えるための駆動電極電圧 図9B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】調整された上部電極-異なる大きさの正および負電圧を使用して電気泳動ディスプレイの光学状態を切り替えるための駆動電極電圧
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1685 20190101AFI20240905BHJP
   G02F 1/167 20190101ALI20240905BHJP
   G02F 1/16757 20190101ALI20240905BHJP
   G02F 1/1681 20190101ALI20240905BHJP
   G02F 1/16766 20190101ALI20240905BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20240905BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G02F1/1685
G02F1/167
G02F1/16757
G02F1/1681
G02F1/16766
G09G3/34 C
G09G3/20 621B
G09G3/20 612J
G09G3/20 622B
G09G3/20 623B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514515
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 US2022043292
(87)【国際公開番号】W WO2023043714
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】17/474,375
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/320,524
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】テルファー, スティーブン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】グエン, クリスタル
(72)【発明者】
【氏名】デリワラ, アミット
(72)【発明者】
【氏名】ラダバック, コスタ
(72)【発明者】
【氏名】ホーゲブーム, クリストファー エル.
【テーマコード(参考)】
2K101
5C080
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BA02
2K101BB44
2K101BB64
2K101BB92
2K101BC02
2K101BC13
2K101BD21
2K101BD61
2K101EC08
2K101EC72
2K101ED13
2K101ED25
2K101ED27
2K101ED32
2K101EE02
2K101EG52
5C080AA13
5C080BB05
5C080CC03
5C080EE29
5C080FF11
5C080JJ01
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ05
5C080JJ06
5C080KK08
(57)【要約】
正および負電圧源であって、電圧源は、異なる大きさを有する、正および負電圧源と、2つの電圧源と接地との間で上部電極を循環させながら上部電極と反対側の少なくとも2つの駆動電極を駆動することを調整するコントローラとを使用する電気泳動媒体の簡略化された駆動のためのシステム。結果として生じるシステムは、各駆動電極に6つの独立した駆動レベルおよび接地を供給するものと比較して、ほぼ同じ色状態を達成することができる。したがって、このシステムは、色域におけるわずかな損失のみを伴う要求される電子機器を簡略化する。システムは、特に、異なる粒子の4つの組を含む電気泳動媒体にアドレスするために有用であり、例えば、粒子のうちの3つは、着色され減法的であり、粒子のうちの1つは、光散乱である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動媒体を駆動するためのシステムであって、前記システムは、
電気泳動ディスプレイであって、前記電気泳動ディスプレイは、
視認表面における光透過性上部電極と、
第1の駆動電極と、
第2の駆動電極と、
前記上部電極と前記第1および第2の駆動電極との間に配置された電気泳動媒体と
を含む、電気泳動ディスプレイと、
正電圧および負電圧を提供することが可能である電源であって、前記正電圧の大きさと前記負電圧の大きさとは、異なる、電源と、
前記上部電極のドライバ、前記第1の駆動電極のドライバ、および前記第2の駆動電極のドライバに結合されたコントローラと
を備え、
前記コントローラは、
第1のフレームにおいて、前記上部電極に前記正電圧を提供し、前記第1の駆動電極に前記負電圧を提供し、かつ前記第2の駆動電極に前記正電圧を提供することと、
第2のフレームにおいて、前記上部電極に前記負電圧を提供し、前記第1の駆動電極に前記負電圧を提供し、かつ前記第2の駆動電極に前記負電圧を提供することと、
第3のフレームにおいて、前記上部電極に接地電圧を提供し、前記第1の駆動電極に前記接地電圧を提供し、かつ前記第2の駆動電極に前記正電圧を提供することと、
第4のフレームにおいて、前記上部電極に前記正電圧を提供し、前記第1の駆動電極に前記正電圧を提供し、かつ前記第2の駆動電極に前記正電圧を提供することと
を行うように構成されている、システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
第5のフレームにおいて、前記上部電極に前記負電圧を提供し、前記第1の駆動電極に前記接地電圧を提供し、かつ前記第2の駆動電極に前記負電圧を提供することと、
第6のフレームにおいて、前記上部電極に前記接地電圧を提供し、前記第1の駆動電極に前記接地電圧を提供し、かつ前記第2の駆動電極に前記接地電圧を提供することと
をさらに行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電気泳動媒体は、複数のマイクロカプセル内にカプセル化されており、前記マイクロカプセルは、前記上部電極と前記第1および第2の駆動電極との間のポリマー結合剤中に分散させられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電気泳動媒体は、開口部を有するマイクロセルのアレイ内にカプセル化されており、前記開口部は、ポリマー結合剤を用いてシールされ、前記マイクロセルの前記アレイは、前記上部電極と前記第1および第2の駆動電極との間に配置されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電気泳動媒体は、非極性流体と、異なる光学特性を有する粒子の4つの組とを備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記粒子の第1の組と第2の組とは、反対極性の電荷を帯び、前記粒子の第3の組と第4の組とは、反対極性の電荷を帯び、前記第1の粒子は、光散乱粒子であり、前記粒子の第2、第3、および第4の組の各々は、互いに異なる減法原色である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色が前記視認表面において表示され得るように、前記正電圧、前記負電圧、および前記接地電圧の組み合わせを前記上部電極および前記第1の駆動電極に提供するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記粒子の第1の組と第2の組とは、反対極性の電荷を帯び、前記粒子の第3および第4の組は、前記第2の粒子と同じ電荷を帯び、前記第1の粒子は、光散乱粒子であり、前記粒子の第2、第3、および第4の組の各々は、互いに異なる減法原色である、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色が前記視認表面において表示され得るように、前記正電圧、前記負電圧、および前記接地電圧の組み合わせを前記上部電極および前記第1の駆動電極に提供するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記正電圧は、+15Vであり、前記負電圧は、-9Vである、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記正電圧は、+9Vであり、前記負電圧は、-15Vである、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
電気泳動媒体を駆動するためのシステムであって、前記システムは、
電気泳動ディスプレイであって、前記電気泳動ディスプレイは、
視認表面における光透過性上部電極と、
第1の駆動電極と、
第2の駆動電極と、
前記上部電極と前記第1および第2の駆動電極との間に配置された電気泳動媒体と
を含む、電気泳動ディスプレイと、
正電圧および負電圧を提供することが可能である電源であって、前記正電圧の大きさと前記負電圧の大きさとは、異なる、電源と、
前記上部電極のドライバ、前記第1の駆動電極のドライバ、および前記第2の駆動電極のドライバに結合されたコントローラと
を備え、
前記コントローラは、
第1のフレームにおいて、前記上部電極に前記正電圧を提供し、前記第1の駆動電極に前記負電圧を提供し、かつ前記第2の駆動電極に前記正電圧を提供することと、
第2のフレームにおいて、前記上部電極に前記負電圧を提供し、前記第1の駆動電極に前記負電圧を提供し、かつ前記第2の駆動電極に前記負電圧を提供することと、
第3のフレームにおいて、前記上部電極に接地電圧を提供し、前記第1の駆動電極に前記接地電圧を提供し、かつ前記第2の駆動電極に前記正電圧を提供することと、
第4のフレームにおいて、前記上部電極に前記正電圧を提供し、前記第1の駆動電極に前記正電圧を提供し、かつ前記第2の駆動電極に前記正電圧を提供することと
を行うように構成されている、システム。
【請求項13】
前記コントローラは、
第5のフレームにおいて、前記上部電極に前記負電圧を提供し、前記第1の駆動電極に前記接地電圧を提供し、かつ前記第2の駆動電極に前記負電圧を提供することと、
第6のフレームにおいて、前記上部電極に前記接地電圧を提供し、前記第1の駆動電極に前記接地電圧を提供し、かつ前記第2の駆動電極に前記接地電圧を提供することと
をさらに行うように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記電気泳動媒体は、複数のマイクロカプセル内にカプセル化されており、前記マイクロカプセルは、前記上部電極と前記第1および第2の駆動電極との間のポリマー結合剤中に分散させられている、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記電気泳動媒体は、開口部を有するマイクロセルのアレイ内にカプセル化されており、前記開口部は、ポリマー結合剤を用いてシールされ、前記マイクロセルの前記アレイは、前記上部電極と前記第1および第2の駆動電極との間に配置されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記電気泳動媒体は、非極性流体と、異なる光学特性を有する粒子の4つの組とを備えている、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記粒子の第1の組と第2の組とは、反対極性の電荷を帯び、前記粒子の第3の組と第4の組とは、反対極性の電荷を帯び、前記第1の粒子は、光散乱粒子であり、前記粒子の第2、第3、および第4の組の各々は、互いに異なる減法原色である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色が前記視認表面において表示され得るように、前記正電圧、前記負電圧、および前記接地電圧の組み合わせを前記上部電極および前記第1の駆動電極に提供するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記粒子の第1の組と第2の組とは、反対極性の電荷を帯び、前記粒子の第3および第4の組は、前記第2の粒子と同じ電荷を帯び、前記第1の粒子は、光散乱粒子であり、前記粒子の第2、第3、および第4の組の各々は、互いに異なる減法原色である、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記コントローラは、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色が前記視認表面において表示され得るように、前記正電圧、前記負電圧、および前記接地電圧の組み合わせを前記上部電極および前記第1の駆動電極に提供するように構成されている、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願)
本願は、2022年3月16日に出願された米国仮特許出願第63/320,524号の優先権を主張する。本願は、加えて、2021年9月14日に出願された米国特許出願第17/474,375号の優先権を主張する。本明細書に開示される全ての特許および公開は、参照することによってそれらの全体として組み込まれる。
【0002】
電気泳動ディスプレイ(EPD)は、光透過性視認表面に対する荷電着色粒子の位置を修正することによって、色を変更する。そのような電気泳動ディスプレイは、結果として生じるディスプレイが、紙上のインクとほぼ同様に、高コントラストを有し、日の当たる所で読めるので、典型的に、「電子ペーパー」または「eペーパー」と称される。電気泳動ディスプレイは、電気泳動ディスプレイが、書籍同様の読書体験を提供し、少ない消費電力を使用し、ユーザが、軽量な携行デバイス内に数百冊の書籍のライブラリを携行することを可能にするので、AMAZON KINDLE(登録商標)等、電子書籍読み取り機において幅広く採用されている。
【0003】
何年もの間、電気泳動ディスプレイは、2つのタイプの荷電色粒子、すなわち、黒色および白色のみを含んでいた(確実にするために、「色」は、本明細書内で使用されるように、黒色および白色を含む)。白色粒子は、多くの場合、光散乱型であり、例えば、二酸化チタンを備えている一方、黒色粒子は、可視スペクトルにわたって吸収性であり、カーボンブラック、または銅クロマイト等の吸収性金属酸化物を備え得る。最も単純な意味では、黒色および白色電気泳動ディスプレイは、視認表面における光透過性電極、背後電極、および反対荷電白色および黒色粒子を含む電気泳動媒体のみを要求する。1つの極性の電圧が提供されると、白色粒子が、視認表面に移動し、反対極性の電圧が提供されると、黒色粒子が、視認表面に移動する。背後電極が、制御可能領域(ピクセル)-分割電極またはトランジスタによって制御されるピクセル電極のアクティブマトリクスのいずれか-を含む場合、あるパターンが、視認表面において電子的に現れるように作製されることができる。このパターンは、例えば、書籍のための本文であり得る。
【0004】
さらに最近では、3色ディスプレイ(黒色、白色、赤色、および黒色、白色、黄色)および4色ディスプレイ(黒色、白色、赤色、黄色)を含む様々な色の選択肢が、電気泳動ディスプレイのために商業的に利用可能となっている。黒色および白色電気泳動ディスプレイの動作と同様、3つまたは4つの反射性顔料を伴う電気泳動ディスプレイは、所望の色粒子が、視認表面に対して駆動されるので、単純な黒色および白色ディスプレイと同様に動作する。この駆動スキームは、黒色および白色のみよりはるかに複雑であるが、最終的に、粒子の光学機能は、同じである。
【0005】
高度カラー電子ペーパー(ACePTM)も、4つの粒子を含むが、シアン色、黄色、およびマゼンタ色粒子が、反射性ではなく減法的であり、それによって、数千色が、各ピクセルにおいて生じさせられることを可能にする。色プロセスは、オフセット印刷およびインクジェットプリンタにおいて長い間使用されてきた印刷方法と機能的に同等である。所与の色は、明るい白色ペーパー背景上で、シアン色、黄色、およびマゼンタ色の正しい比率を使用することによって生じさせられる。ACePの事例では、視認表面に対するシアン色、黄色、マゼンタ色、および白色粒子の相対的な位置が、各ピクセルにおける色を決定するであろう。このタイプの電気泳動ディスプレイは、各ピクセルにおいて数千色を可能にするが、厚さ約10~20ミクロンの作業空間内で、(50~500ナノメートルサイズの)顔料の各々の位置を慎重に制御することが、極めて重要である。明白なこととして、顔料の位置の変動は、誤った色が所与のピクセルにおいて表示されることをもたらすであろう。故に、精緻な電圧制御が、そのようなシステムのために要求される。このシステムのさらなる詳細は、以下の米国特許において入手可能であり、その全てが、参照することによって全体として組み込まれる:米国特許第9,361,836号、第9,921,451号、第10,276,109号、第10,353,266号、第10,467,984号、および第10,593,272号。
【0006】
本発明は、カラー電気泳動ディスプレイに関し、具体的に、排他的ではないが、複数の着色粒子、例えば、白色、シアン色、黄色、およびマゼンタ色粒子を備えている電気泳動材料の単一層を使用して、3つ以上の色をレンダリング可能である電気泳動ディスプレイに関する。いくつかの事例では、粒子のうちの2つは、正荷電であり、2つの粒子は、負荷電であろう。いくつかの事例では、粒子のうちの3つは、正荷電であり、1つの粒子は、負荷電であろう。いくつかの事例では、1つの正荷電粒子は、厚いポリマーシェルを有し、1つの負荷電粒子は、厚いポリマーシェルを有する。
【0007】
用語「グレー状態」は、結像技術におけるその従来的な意味で本明細書で使用され、2つの極限ピクセルの光学状態の中間の状態を指し、必ずしもこれら2つの極限状態の間の黒色-白色遷移を含意するわけではない。例えば、下で参照されるE Ink特許および公開された出願のうちのいくつかは、中間グレー状態が実際には淡い青色であろうように、極限状態が白色および濃青色である電気泳動ディスプレイを説明している。実際、すでに述べられたように、光学的状態の変化は、色の変化では全くないこともある。用語「黒色および白色」は、以降では、ディスプレイの2つの極限光学状態を指すために本明細書で使用され得、通常、厳密に黒色および白色ではない極限光学状態、例えば、前述の白色および濃青色状態を含むとして理解されたい。
【0008】
用語「双安定」および「双安定性」は、当技術分野におけるそれらの従来の意味で、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備え、その第1または第2の表示状態のいずれかを示すように、有限持続時間のアドレスパルスを用いて、任意の所与の要素が駆動されてから、アドレスパルスが終了した後、表示要素の状態を変化させるために要求されるアドレスパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、その状態が持続するであろうディスプレイを指すために本明細書で使用される。グレースケール対応のいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、その極限黒色および白色状態においてだけではなく、その中間グレー状態においても安定しており、同じことがいくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイに当てはまることが、米国特許第7,170,670号に示されている。このタイプのディスプレイは、適切に、「双安定」ではなく、「多安定」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定」が、本明細書では、双安定および多安定ディスプレイの両方を包含するために使用され得る。
【0009】
用語「インパルス」は、電気泳動ディスプレイの駆動を指すために使用されるとき、ディスプレイが駆動される期間中の時間に対する印加電圧の積分を指すために本明細書で使用される。
【0010】
広帯域または選択された波長のいずれかにおいて、光を吸収、散乱、または反射する粒子は、本明細書では、着色または顔料粒子と称される。染料またはフォトニック結晶等の光を吸収または反射する顔料(不溶性着色材料を意味するとものとしてのその用語の厳密な意味において)以外の種々の材料も、本発明の電気泳動媒体およびディスプレイにおいて使用され得る。
【0011】
粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、何年にもわたって、精力的研究および開発の対象となっている。そのようなディスプレイでは、複数の荷電粒子(時として、顔料粒子とも称される)が、電場の影響下で流体を通して移動する。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較したとき、良好な輝度およびコントラスト、広視野角、状態双安定性、および低電力消費の属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期画質に伴う問題は、その広範な使用を妨げている。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降する傾向があり、これらのディスプレイの不十分な耐用年数をもたらす。
【0012】
前述のように、電気泳動媒体は、流体の存在を要求する。大部分の従来技術電気泳動媒体では、この流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生じさせられることもできる。例えば、Kitamura,T.,et al.,Electrical toner movement for electronic paper-like display,IDW Japan,2001,Paper HCS1-1およびYamaguchi,Y.,et al.,Toner display using insulative particles charged triboelectrically,IDW Japan,2001,Paper AMD4-4を参照されたい。米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。そのようなガスベースの電気泳動媒体は、例えば、媒体が垂直面に配置される看板等、媒体がそのような沈降を可能にする配向で使用されるとき、粒子沈降に起因して、液体ベースの電気泳動媒体と同じタイプの問題の影響を受けやすいと考えられる。実際、粒子沈降は、液体のものと比較して、ガス状懸濁流体のより低い粘度が、電気泳動粒子のより高速な沈降を可能にするので、ガスベースの電気泳動媒体では、液体ベースにおけるより深刻な問題であると考えられる。
【0013】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡された出願、またはそれらの名義である多数の特許および出願は、カプセル化された電気泳動および他の電気光学媒体内で使用される種々の技術を説明している。そのようなカプセル化された媒体は、多数の小型カプセルを備え、カピセルの各々自体は、電気泳動的可動粒子を流体媒体中に含む内相と、内相を包囲するカプセル壁とを備えている。典型的に、カプセルは、それら自体、ポリマー結合剤内に保持され、2つの電極間に位置付けられるコヒーレント層を形成する。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む:
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号参照);
(b) カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号参照);
(c)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法(例えば、米国特許第7,072,095号および第9,279,906号参照);
(d)マイクロセルを充填およびシールする方法(例えば、米国特許第7,144,942号および第7,715,088号参照);
(e)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号参照);
(f)バックプレーン、接着剤層、および他の補助層、およびディスプレイにおいて使用される方法(例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号参照);
(g) 色形成および色調節(例えば、米国特許第6,017,584号、第6,545,797号、第6,664,944号、第6,788,452号、第6,864,875号、第6,914,714号、第6,972,893号、第7,038,656号、第7,038,670号、第7,046,228号、第7,052,571号、第7,075,502号、第7,167,155号、第7,385,751号、第7,492,505号、第7,667,684号、第7,684,108号、第7,791,789号、第7,800,813号、第7,821,702号、第7,839,564号、第7,910,175号、第7,952,790号、第7,956,841号、第7,982,941号、第8,040,594号、第8,054,526号、第8,098,418号、第8,159,636号、第8,213,076号、第8,363,299号、第8,422,116号、第8,441,714号、第8,441,716号、第8,466,852号、第8,503,063号、第8,576,470号、第8,576,475号、第8,593,721号、第8,605,354号、第8,649,084号、第8,670,174号、第8,704,756号、第8,717,664号、第8,786,935号、第8,797,634号、第8,810,899号、第8,830,559号、第8,873,129号、第8,902,153号、第8,902,491号、第8,917,439号、第8,964,282号、第9,013,783号、第9,116,412号、第9,146,439号、第9,164,207号、第9,170,467号、第9,170,468号、第9,182,646号、第9,195,111号、第9,199,441号、第9,268,191号、第9,285,649号、第9,293,511号、第9,341,916号、第9,360,733号、第9,361,836号、第9,383,623号、および第9,423,666号、および米国特許出願公開第2008/0043318号、第2008/0048970号、第2009/0225398号、第2010/0156780号、第2011/0043543号、第2012/0326957号、第2013/0242378号、第2013/0278995号、第2014/0055840号、第2014/0078576号、第2014/0340430号、第2014/0340736号、第2014/0362213号、第2015/0103394号、第2015/0118390号、第2015/0124345号、第2015/0198858号、第2015/0234250号、第2015/0268531号、第2015/0301246号、第2016/0011484号、第2016/0026062号、第2016/0048054号、第2016/0116816号、第2016/0116818号、および第2016/0140909号参照);
(h)ディスプレイを駆動する方法(例えば、米国特許第5,930,026号、第6,445,489号、第6,504,524号、第6,512,354号、第6,531,997号、第6,753,999号、第6,825,970号、第6,900,851号、第6,995,550号、第7,012,600号、第7,023,420号、第7,034,783号、第7,061,166号、第7,061,662号、第7,116,466号、第7,119,772号、第7,177,066号、第7,193,625号、第7,202,847号、第7,242,514号、第7,259,744号、第7,304,787号、第7,312,794号、第7,327,511号、第7,408,699号、第7,453,445号、第7,492,339号、第7,528,822号、第7,545,358号、第7,583,251号、第7,602,374号、第7,612,760号、第7,679,599号、第7,679,813号、第7,683,606号、第7,688,297号、第7,729,039号、第7,733,311号、第7,733,335号、第7,787,169号、第7,859,742号、第7,952,557号、第7,956,841号、第7,982,479号、第7,999,787号、第8,077,141号、第8,125,501号、第8,139,050号、第8,174,490号、第8,243,013号、第8,274,472号、第8,289,250号、第8,300,006号、第8,305,341号、第8,314,784号、第8,373,649号、第8,384,658号、第8,456,414号、第8,462,102号、第8,514,168号、第8,537,105号、第8,558,783号、第8,558,785号、第8,558,786号、第8,558,855号、第8,576,164号、第8,576,259号、第8,593,396号、第8,605,032号、第8,643,595号、第8,665,206号、第8,681,191号、第8,730,153号、第8,810,525号、第8,928,562号、第8,928,641号、第8,976,444号、第9,013,394号、第9,019,197号、第9,019,198号、第9,019,318号、第9,082,352号、第9,171,508号、第9,218,773号、第9,224,338号、第9,224,342号、第9,224,344号、第9,230,492号、第9,251,736号、第9,262,973号、第9,269,311号、第9,299,294号、第9,373,289号、第9,390,066号、第9,390,661号、および第9,412,314号、および米国特許出願公開第2003/0102858号、第2004/0246562号、第2005/0253777号、第2007/0091418号、第2007/0103427号、第2007/0176912号、第2008/0024429号、第2008/0024482号、第2008/0136774号、第2008/0291129号、第2008/0303780号、第2009/0174651号、第2009/0195568号、第2009/0322721号、第2010/0194733号、第2010/0194789号、第2010/0220121号、第2010/0265561号、第2010/0283804号、第2011/0063314号、第2011/0175875号、第2011/0193840号、第2011/0193841号、第2011/0199671号、第2011/0221740号、第2012/0001957号、第2012/0098740号、第2013/0063333号、第2013/0194250号、第2013/0249782号、第2013/0321278号、第2014/0009817号、第2014/0085355号、第2014/0204012号、第2014/0218277号、第2014/0240210号、第2014/0240373号、第2014/0253425号、第2014/0292830号、第2014/0293398号、第2014/0333685号、第2014/0340734号、第2015/0070744号、第2015/0097877号、第2015/0109283号、第2015/0213749号、第2015/0213765号、第2015/0221257号、第2015/0262255号、第2015/0262551号、第2016/0071465号、第2016/0078820号、第2016/0093253号、第2016/0140910号、および第2016/0180777号参照)(これらの特許および出願は、以降、MEDEOD(電気光学ディスプレイを駆動する方法)出願と称され得る);
(i)ディスプレイの用途(例えば、米国特許第7,312,784号および第8,009,348号参照);
(j)非電気泳動ディスプレイ(例えば、米国特許第6,241,921号、および米国特許出願公開第2015/0277160号、および米国特許出願公開第2015/0005720号および2016/0012710号参照)。
【0014】
前述の特許および出願の多くは、カプセル化された電気泳動媒体内の別々のマイクロカプセルを包囲する壁が、連続相と置換され、したがって、電気泳動媒体が、電気泳動流体の複数の別々の液滴と、ポリマー材料の連続相とを備えているいわゆる「ポリマー分散型電気泳動ディスプレイ」を生じさせ得、そのようなポリマー分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の別々の液滴は、いかなる別々のカプセル膜も各個々の液滴に関連付けられないにもかかわらず、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得ることを認識する。例えば、米国特許第6,866,760号を参照されたい。故に、本願の目的のために、そのようなポリマー分散型電気泳動媒体は、カプセル化された電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0015】
関連タイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されていないが、代わりに、伝搬媒体、典型的に、ポリマーフィルム内に形成される複数の空洞内に保持される。例えば、米国特許第6,672,921号および第6,788,449号を参照されたい。
【0016】
電気泳動媒体は、多くの場合、不透過性であり(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子は、ディスプレイを通る可視光の透過を実質的に遮断するので)、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、1つのディスプレイ状態が実質的に不透過性であり、1つが光透過性であるいわゆる「シャッタモード」で動作するように作製されることができる。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。誘電泳動ディスプレイは、電気泳動ディスプレイと類似するが、電場強度の変動に依拠し、類似のモードで動作することができる。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイも、シャッタモードで動作することが可能であり得る。シャッタモードで動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイのために、多層構造で使用されることができる。そのような構造では、ディスプレイの視認表面に隣接する少なくとも1つの層は、シャッタモードで動作して、視認表面からより離れた第2の層を露出することまたは隠すことを行う。
【0017】
カプセル化された電気泳動ディスプレイは、典型的に、従来的な電気泳動デバイスのクラスタ化および沈降故障モードに悩まされることがなく、多種多様な可撓性および堅い基板上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する(「印刷」という語の使用は、限定ではないが、前計量コーティング、例えば、パッチダイコーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等、ロールコーティング、例えば、ナイフオーバーロールコーティング、フォワード・リバースロールコーティング、グラビアコーティング、浸漬コーティング、吹き付けコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーン印刷プロセス、静電気印刷プロセス、熱印刷プロセス、インクジェット印刷プロセス、電気泳動析出(米国特許第7,339,715号参照)、および他の類似技法を含むあらゆる形態の印刷およびコーティングを含むことを意図している)。したがって、結果として生じるディスプレイは、可撓性であり得る。さらに、ディスプレイ媒体は(種々の方法を使用して)印刷されることができるので、ディスプレイ自体は、安価に作製されることができる。
【0018】
上記に示されるように、最も単純な従来技術電気泳動媒体は、本質的に、2つの色のみを表示する。そのような電気泳動媒体は、第2の異なる色を有する着色流体中の第1の色を有する単一タイプの電気泳動粒子(その場合、第1の色は、粒子がディスプレイの視認表面に隣接して存在するときに表示され、第2の色は、粒子が視認表面から間隔を置かれているときに表示される)、または非着色流体中の異なる第1および第2の色を有する第1および第2のタイプの電気泳動粒子(その場合、第1の色は、第1のタイプの粒子がディスプレイの視認表面に隣接して存在するときに表示され、第2の色は、第2のタイプの粒子が視認表面に隣接して存在するときに表示される)のいずれかを使用する。典型的に、2つの色は、黒色および白色である。フルカラーディスプレイが所望される場合、色フィルタアレイが、モノクロ(黒色および白色)ディスプレイの視認表面の上に堆積させられ得る。
【0019】
色フィルタアレイを伴うディスプレイは、エリア共有および色混成に依拠して、色刺激を作成する。利用可能なディスプレイエリアは、赤色/緑色/青色(RGB)または赤色/緑色/青色/白色(RGBW)等の3または4原色間で共有され、フィルタが、1次元(ストライプ)または2次元(2×2)反復パターンで配置されることができる。他の選択肢の原色または4つ以上の原色も、当技術分野において公知である。3つ(RGBディスプレイの場合)または4つ(RGBWディスプレイの場合)のサブピクセルが、十分に小さくあるように選定され、それによって、意図される視認距離において、それらは、視覚的に一緒に均一色刺激(「色混成」)を伴う単一ピクセルに融合する。エリア共有の固有の不利点は、着色剤が常時存在し、色が、下層のモノクロディスプレイの対応するピクセルを白色または黒色に切り替える(対応する原色をオンまたはオフに切り替える)ことによってのみ変調されることができることである。例えば、理想的RGBWディスプレイでは、赤色、緑色、青色、および白色原色の各々は、ディスプレイエリアの4分の1(4つのうちの1つのサブピクセル)を占有し、白色サブピクセルは、下層のモノクロディスプレイの白色と同程度に明るいが、着色サブピクセルの各々は、モノクロディスプレイの白色の3分の1より明るくない。全体としてディスプレイによって示される白色の輝度は、白色サブピクセルの輝度の2分の1を上回り得ない(ディスプレイの白色面積は、各4つのうちの1つの白色サブピクセルに加えて、白色サブピクセルの3分の1に匹敵するその着色形態における各着色サブピクセルを表示することによって生じさせられ、したがって、組み合わせられる3つの着色サブピクセルは、1つの白色サブピクセルを上回って寄与しない)。色の輝度および飽和は、黒色に切り替えられる色ピクセルとのエリア共有によって低下させられる。エリア共有は、黄色を混合するとき、それが、等しい輝度の任意の他の色より明るく、飽和させられた黄色が、白色とほぼ同程度に明るいため、特に問題となる。青色ピクセル(ディスプレイエリアの4分の1)から黒色への切り替えは、著しく暗い黄色にする。
【0020】
輝度および色相の両方を含む、ディスプレイの色特性を定量化するために一般的に使用されるシステムは、CIELABシステムであり、それは、(例えば、色温度6500Kを伴う)CIE標準光源D65の下、典型的な色反射性ディスプレイデバイスによって表示される色に対応する、色座標値(すなわち、L、a、b)を割り当てる。Lは、0から100のスケールで、黒色から白色までの明度を表す一方、aおよびbは、何ら具体的な数値限界を伴わない色度を表す。負のaは、緑色に対応し、正のaは、赤色に対応し、負のbは、青色に対応し、正のbは、黄色に対応する。Lは、以下の式:L=116(R/R0)1/3-16を用いて、反射率に変換されることができ、式中、Rは、反射率であり、R0は、標準反射率値である。
【0021】
米国特許第8,576,476号および第8,797,634号は、独立してアドレス可能なピクセル電極備えている単一バックプレーンと、共通光透過性フロント電極とを有する多色電気泳動ディスプレイを説明している。共通光透過性フロント電極は、上部電極としても公知である。バックプレーンとフロント電極との間に複数の電気泳動層が配置される。これらの出願に説明されるディスプレイは、原色のいずれか(赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンタ色、黄色、白色、および黒色)を任意のピクセル場所にレンダリングすることが可能である。しかしながら、アドレス電極の単一組間に位置する複数の電気泳動層の使用に対して不利点がある。特定の層内の粒子によって経験される電場は、同じ電圧でアドレスされる単一電気泳動層の場合に該当するであろうものより低い。加えて、視認表面に最も近い電気泳動層内の光学損失(例えば、光散乱または望ましくない吸光によって生じる)は、下層の電気泳動層内に形成される画像の外観に影響を及ぼし得る。
【0022】
単一電気泳動層を使用してフルカラー電気泳動ディスプレイを提供するための試みが、成されている。例えば、米国特許第8,917,439号は、クリアかつ無色または着色溶媒中に分散させられた1つまたは2つのタイプの顔料粒子を備えている電気泳動流体を備え、電気泳動流体が共通電極と複数のピクセルまたは駆動電極との間に配置されたカラーディスプレイを説明している。駆動電極は、背景層を露出するように配置される。米国特許第9,116,412号は、反対電荷極性を帯び、2つのコントラスト色である2つのタイプの荷電粒子を備えている電気泳動流体で充填されるディスプレイセルを駆動する方法を説明している。2つのタイプの顔料粒子は、着色溶媒、または分散させられた非荷電または弱荷電着色粒子を伴う溶媒中に分散させられる。方法は、全駆動電圧の約1~約20%である駆動電圧を印加することによって、ディスプレイセルを駆動し、溶媒の色または非荷電または弱荷電着色粒子の色を表示することを含む。米国特許第8,717,664号および第8,964,2822号は、電気泳動流体と、電気泳動ディスプレイを駆動する方法とを説明している。流体は、第1、第2、および第3のタイプの顔料粒子を備え、その全ては、溶媒または溶媒混合物中に分散させられる。第1および第2のタイプの顔料粒子は、反対電荷極性を帯び、第3のタイプの顔料粒子は、第1または第2のタイプの電荷レベルの約50%未満である電荷レベルを有する。3つのタイプの顔料粒子は、異なるレベルの閾値電圧、または異なるレベルの移動度、または両方を有する。これらの特許出願のいずれも、その用語が以下で使用される意味でのフルカラーディスプレイを開示しておらず、それは、少なくとも8つの独立した色(白色、赤色、緑色、青色、シアン色、黄色、マゼンタ色、および黒色)を達成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第9,361,836号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
フルカラー電気泳動ディスプレイを駆動する改良された方法、およびこれらの駆動方法を使用するフルカラー電気泳動ディスプレイが、本明細書において開示される。一側面では、本発明は、視認表面における光透過性電極と、ピクセル電極に結合された薄膜トランジスタのアレイを含むバックプレーンであって、各薄膜トランジスタは、金属酸化物半導体層を備えているバックプレーンと、光透過性電極とバックプレーンとの間に配置されたカラー電気泳動媒体とを含むカラー電気泳動ディスプレイを伴う。カラー電気泳動媒体は、(a)流体と、(b)流体中に分散させられた複数の第1および複数の第2の粒子であって、第1および第2の粒子は、反対極性の電荷を帯び、第1の粒子は、光散乱粒子であり、第2の粒子は、減法原色のうちの1つを有する、複数の第1および複数の第2の粒子と、(c)流体中に分散させられた複数の第3および複数の第4の粒子であって、第3および第4の粒子は、反対極性の電荷を帯び、第3および第4の粒子の各々は、互いに、かつ第2の粒子と異なる減法原色を有する、複数の第3および複数の第4の粒子とを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、第3および第4のタイプの粒子によって形成された集団を分離するために要求される第1の電場は、任意の他の2つのタイプの粒子から形成された集団を分離するために要求される第2の電場より大きい。いくつかの実施形態において、第2、第3、および第4の粒子のうちの少なくとも2つは、非光散乱性である。いくつかの実施形態において、第1の粒子は、白色であり、第2、第3、および第4の粒子は、非光散乱性である。いくつかの実施形態において、第1および第3の粒子は、負荷電であり、第2および第4の粒子は、正荷電である。いくつかの実施形態において、第1、第2、第3、および第4の粒子は、それぞれ、白色、シアン色、黄色、およびマゼンタ色であり、白色および黄色粒子は、負荷電であり、マゼンタ色およびシアン色粒子は、正荷電である。いくつかの実施形態において、顔料が顔料と1.55未満の屈折率の液体とを備えている厚さ1μmの層内に体積比15%で略等方的に分布させられたとき、黄色、マゼンタ色、およびシアン色顔料は、それぞれ、650、550、および450nmにおいて、2.5%未満の拡散反射率(黒色背景を覆って測定)を示す。いくつかの実施形態において、液体は、約5未満の誘電定数を有する非極性液体である。いくつかの実施形態において、流体は、約20,000を超過する平均分子量の数値を有し、粒子上に本質的に非吸着性であるポリマーをその中に溶解または分散している。いくつかの実施形態において、金属酸化物半導体は、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)である。上記の発明は、電子ブック読み取り機、可搬型コンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートカード、看板、腕時計、棚標識、またはフラッシュドライブに組み込まれ得る。
【0026】
別の側面では、カラー電気泳動ディスプレイは、コントローラと、視認表面における光透過性電極と、ピクセル電極に結合された薄膜トランジスタのアレイを含む、バックプレーンであって、各薄膜トランジスタは、金属酸化物半導体層を備えている、バックプレーンとを含む。カラー電気泳動媒体は、光透過性電極とバックプレーンとの間に配置され、(a)流体と、(b)流体中に分散させられた複数の第1および複数の第2の粒子であって、第1および第2の粒子は、反対極性の電荷を帯び、第1の粒子は、光散乱粒子であり、第2の粒子は、減法原色のうちの1つを有する、複数の第1および複数の第2の粒子と、(c)流体中に分散させられた複数の第3および複数の第4の粒子であって、第3および第4の粒子は、反対極性の電荷を帯び、第3および第4の粒子の各々は、互いに、かつ第2の粒子と異なる減法原色を有する、複数の第3および複数の第4の粒子とを含む。コントローラは、ピクセル電極に、複数の駆動電圧を提供するように構成され、それによって、光透過性電極を定電圧で維持しながら、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色が、各ピクセル電極において表示されることができる。いくつかの実施形態において、コントローラは、25ボルトを上回る電圧および-25ボルト未満の電圧をピクセル電極に提供するように構成されている。いくつかの実施形態において、コントローラは、25V~0Vの電圧および-25V~0Vの電圧を追加的に提供するように構成されている。いくつかの実施形態において、金属酸化物半導体は、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)である。
【0027】
別の側面では、カラー電気泳動ディスプレイは、コントローラと、視認表面における光透過性電極と、バックプレーン電極と、光透過性電極とバックプレーン電極との間に配置されたカラー電気泳動媒体とを含む。カラー電気泳動媒体は、(a)流体と、(b)流体中に分散させられた複数の第1および複数の第2の粒子であって、第1および第2の粒子は、反対極性の電荷を帯び、第1の粒子は、光散乱粒子であり、第2の粒子は、減法原色のうちの1つを有する、複数の第1および複数の第2の粒子と、(c)流体中に分散させられた複数の第3および複数の第4の粒子であって、第3および第4の粒子は、反対極性の電荷を帯び、第3および第4の粒子の各々は、互いに、かつ第2の粒子と異なる減法原色を有する、複数の第3および複数の第4の粒子とを含む。コントローラは、光透過性電極に第1の高電圧および第1の低電圧を提供し、バックプレーン電極に第2の高電圧、ゼロ電圧、および第2の低電圧を提供するように構成され、それによって、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色が、視認表面において表示されることができ、第1の高電圧、第1の低電圧、第2の高電圧、および第2の低電圧のうちの少なくとも1つの大きさは、同じではない。いくつかの実施形態において、第1の高電圧の大きさおよび第2の高電圧の大きさは、同じである。いくつかの実施形態において、第1の低電圧の大きさおよび第2の低電圧の大きさは、同じであり、第1の高電圧の大きさおよび第1の低電圧の大きさは、同じではない。
【0028】
別の側面では、カラー電気泳動ディスプレイは、コントローラと、視認表面における光透過性電極と、バックプレーン電極と、光透過性電極とバックプレーン電極との間に配置されたカラー電気泳動媒体とを含む。カラー電気泳動媒体は、(a)流体と、(b)流体中に分散させられた複数の第1および複数の第2の粒子であって、第1および第2の粒子は、反対極性の電荷を帯び、第1の粒子は、光散乱粒子であり、第2の粒子は、減法原色のうちの1つを有する、複数の第1および複数の第2の粒子と、(c)流体中に分散させられた複数の第3および複数の第4の粒子であって、第3および第4の粒子は、反対極性の電荷を帯び、第3および第4の粒子の各々は、互いに、かつ第2の粒子と異なる減法原色を有する、複数の第3および複数の第4の粒子とを含む。コントローラは、以下の駆動電圧、:1)第1回目の時間のための高電圧、第2回目の時間のための低電圧、および第3回目の時間のための高電圧、または2)第1回目の時間のための低電圧、第2回目の時間のための高電圧、および第3回目の時間のための低電圧のうちの1つを光透過性電極に提供しながら、複数の時間依存性駆動電圧のうちの1つをバックプレーン電極に提供することによって、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色を視認表面において表示させるように構成されている。
【0029】
別の側面では、電気泳動媒体を駆動するためのシステムは、電気泳動ディスプレイと、正電圧および負電圧を提供することが可能である電源であって、正電圧および負電圧の大きさは、異なる、電源と、上部電極ドライバ、第1の駆動電極ドライバ、および第2の駆動電極ドライバに結合されたコントローラとを備えている。電気泳動媒体は、視認表面における光透過性上部電極と、第1の駆動電極と、第2の駆動電極と、上部電極と第1および第2の駆動電極との間に配置された電気泳動媒体とを含む。コントローラは、A)第1のフレームにおいて、上部電極に正電圧を提供し、第1の駆動電極に負電圧を提供し、かつ第2の駆動電極に正電圧を提供すること、B)第2のフレームにおいて、上部電極に負電圧を提供し、第1の駆動電極に負電圧を提供し、かつ第2の駆動電極に負電圧を提供すること、C)第3のフレームにおいて、上部電極に接地電圧を提供し、第1の駆動電極に接地電圧を提供し、かつ第2の駆動電極に正電圧を提供すること、および、D)第4のフレームにおいて、上部電極に正電圧を提供し、第1の駆動電極に正電圧を提供し、かつ第2の駆動電極に正電圧を提供することを行うように構成されている。一実施形態において、コントローラは、E)第5のフレームにおいて、上部電極に負電圧を提供し、第1の駆動電極に接地電圧を提供し、かつ第2の駆動電極に負電圧を提供すること、およびF)第6のフレームにおいて、上部電極に接地電圧を提供し、第1の駆動電極に接地電圧を提供し、かつ第2の駆動電極に接地電圧を提供することをさらに行うように構成されている。一実施形態において、電気泳動媒体は、複数のマイクロカプセル内にカプセル化されており、マイクロカプセルは、上部電極と第1および第2の駆動電極との間のポリマー結合剤中に分散させられる。一実施形態において、電気泳動媒体は、開口部を有するマイクロセルのアレイ内にカプセル化されており、開口部は、ポリマー結合剤を用いてシールされ、マイクロセルのアレイは、上部電極と第1および第2の駆動電極との間に配置される。一実施形態において、電気泳動媒体は、非極性流体と、異なる光学特性を有する粒子の4つの組とを備えている。一実施形態において、粒子の第1および第2の組は、反対極性の電荷を帯び、粒子の第3および第4の組は、反対極性の電荷を帯び、第1の粒子は、光散乱粒子であり、粒子の第2、第3、および第4の組の各々は、互いに異なる減法原色である。一実施形態において、コントローラは、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色が視認表面において表示され得るように、正電圧、負電圧、および接地電圧の組み合わせを上部電極および第1の駆動電極に提供するように構成されている。一実施形態において、粒子の第1および第2の組は、反対極性の電荷を帯び、粒子の第3および第4の組は、第2の粒子と同じ電荷を帯び、第1の粒子は、光散乱粒子であり、粒子の第2、第3、および第4の組の各々は、互いに異なる減法原色である。一実施形態において、コントローラは、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色が視認表面において表示され得るように、正電圧、負電圧、および接地電圧の組み合わせを上部電極および第1の駆動電極に提供するように構成されている。一実施形態において、正電圧は、+15Vであり、負電圧は、-9Vである。一実施形態において、正電圧は、+9Vであり、負電圧は、-15Vである。
【0030】
別の側面では、電気泳動媒体を駆動するためのシステムは、電気泳動ディスプレイと、正電圧および負電圧を提供することが可能である電源であって、正電圧および負電圧の大きさは、異なる、電源と、上部電極ドライバ、第1の駆動電極ドライバ、および第2の駆動電極ドライバに結合されたコントローラとを備えている。電気泳動媒体は、視認表面における光透過性上部電極と、第1の駆動電極と、第2の駆動電極と、上部電極と第1および第2の駆動電極との間に配置された電気泳動媒体とを含む。コントローラは、A)第1のフレームにおいて、上部電極に正電圧を提供し、第1の駆動電極に負電圧を提供し、かつ第2の駆動電極に正電圧を提供すること、B)第2のフレームにおいて、上部電極に負電圧を提供し、第1の駆動電極に負電圧を提供し、かつ第2の駆動電極に負電圧を提供すること、C)第3のフレームにおいて、上部電極に接地電圧を提供し、第1の駆動電極に接地電圧を提供し、かつ第2の駆動電極に正電圧を提供すること、およびD)第4のフレームにおいて、上部電極に正電圧を提供し、第1の駆動電極に正電圧を提供し、かつ第2の駆動電極に正電圧を提供することを行うように構成されている。一実施形態において、コントローラは、E)第5のフレームにおいて、上部電極に負電圧を提供し、第1の駆動電極に接地電圧を提供し、かつ第2の駆動電極に負電圧を提供すること、およびF)第6のフレームにおいて、上部電極に接地電圧を提供し、第1の駆動電極に接地電圧を提供し、かつ第2の駆動電極に接地電圧を提供することをさらに行うように構成されている。一実施形態において、電気泳動媒体は、複数のマイクロカプセル内にカプセル化されており、マイクロカプセルは、上部電極と第1および第2の駆動電極との間のポリマー結合剤中に分散させられる。一実施形態において、電気泳動媒体は、開口部を有するマイクロセルのアレイ内にカプセル化されており、開口部は、ポリマー結合剤を用いてシールされ、マイクロセルのアレイは、上部電極と第1および第2の駆動電極との間に配置される。一実施形態において、電気泳動媒体は、非極性流体と、異なる光学特性を有する粒子の4つの組とを備えている。一実施形態において、粒子の第1および第2の組は、反対極性の電荷を帯び、粒子の第3および第4の組は、反対極性の電荷を帯び、第1の粒子は、光散乱粒子であり、粒子の第2、第3、および第4の組の各々は、互いに異なる減法原色である。一実施形態において、コントローラは、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色が視認表面において表示され得るように、正電圧、負電圧、および接地電圧の組み合わせを上部電極および第1の駆動電極に提供するように構成されている。一実施形態において、粒子の第1および第2の組は、反対極性の電荷を帯び、粒子の第3および第4の組は、第2の粒子と同じ電荷を帯び、第1の粒子は、光散乱粒子であり、粒子の第2、第3、および第4の組の各々は、互いに異なる減法原色である。一実施形態において、コントローラは、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色が視認表面において表示され得るように、正電圧、負電圧、および接地電圧の組み合わせを上部電極および第1の駆動電極に提供するように構成されている。一実施形態において、正電圧は、+15Vであり、負電圧は、-9Vである。一実施形態において、正電圧は、+9Vであり、負電圧は、-15Vである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の方法との使用のために好適なカプセル化された電気泳動ディスプレイの実施形態を示す概略断面図である。
【0032】
図2図2は、本発明の方法との使用のために好適なカプセル化された電気泳動ディスプレイの実施形態を示す概略断面図である。
【0033】
図3図3は、電気泳動ディスプレイの単一ピクセルの例示的等価回路を図示し、単一ピクセルにおける電圧は、トランジスタを用いて制御される。図3の回路は、一般的に、アクティブマトリクスバックプレーンにおいて使用される。
【0034】
図4図4は、2つの別個の駆動電極において必要とされる駆動電圧を達成するために、正電圧源および負電圧源が上部電極および2つの別個の駆動電極に印加され得る方法を図示する。
【0035】
図5図5は、黒色、白色、減法三原色、および加法三原色を表示するときの着色電気泳動媒体中の種々の着色粒子の位置を示す概略断面図である。
【0036】
図6図6は、3つの減法粒子および散乱(白色)粒子を含む電気泳動媒体にアドレスするための例示的プッシュプル駆動スキームを示す。
【0037】
図7図7は、3つの減法粒子と散乱(白色)粒子とを含む電気泳動媒体内での8つの色の生産のための簡略化されたトッププレーン駆動波形を描写する。
【0038】
図8図8は、2つの電圧源のみを使用して、第1の駆動電極の上方の視認表面における緑色光学状態、および第2の駆動電極の上方の視認表面における黄色光学状態を達成するための例示的駆動パターンを示す。
【0039】
図9A図9Aは、同じ4粒子電気泳動媒体が7つの独立した駆動電圧または2つの電圧源を用いて駆動され、調整された上部電極電圧循環を使用するときの8つの色指数のL値における変化を示す。
【0040】
図9B図9Bは、シミュレートされた色として、図9Aのグラフにおける日付を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
電気泳動媒体の簡略化された駆動のためのシステムであって、システムは、正および負電圧源であって、電圧源は、異なる大きさを有する、正および負電圧源と、2つの電圧源と接地との間で上部電極を循環させながら上部電極と反対側の少なくとも2つの駆動電極を駆動することを調整するコントローラとを使用する、システム。結果として生じるシステムは、各駆動電極に6つの独立した駆動レベルおよび接地を供給することと比較して、ほぼ同じ色状態を達成することができる。したがって、このシステムは、色域におけるわずかな損失のみを伴う要求される電子機器を簡略化する。システムは、特に、異なる粒子の4つの組を含む電気泳動媒体にアドレスするために有用であり、例えば、粒子のうちの3つは、着色され減法的であり、粒子のうちの1つは、光散乱である。
【0042】
本発明は、いわゆるトッププレーン切り替え(すなわち、上部(共通)電極における電圧が、デバイス更新の過程の間に変動させられる)を用いて、電気光学媒体デバイスを駆動する改良された方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、4粒子を含む電気泳動媒体と共に使用され、粒子のうちの2つは、着色され減法的であり、粒子のうちの少なくとも1つは、散乱性である。典型的に、そのようなシステムは、白色粒子と、シアン色、黄色、およびマゼンタ色の減法原色粒子を含む。いくつかの実施形態において、粒子のうちの2つが、正荷電であり、粒子のうちの2つが、負荷電である。いくつかの実施形態において、粒子のうちの3つが、正荷電であり、粒子のうちの1つが、負荷電である。いくつかの実施形態において、粒子のうちの1つが、正荷電であり、粒子のうちの3つが、負荷電である。そのようなシステムが、図5に図式的に示され、それは、全てのピクセルにおいて、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色を提供することができる。
【0043】
ディスプレイデバイスは、従来技術において公知であるいくつかの方法において、本発明の電気泳動流体を使用して構築され得る。電気泳動流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されるか、または、マイクロセル構造の中に組み込まれ、マイクロセル構造は、その後、ポリマー層でシールされ得る。マイクロカプセルまたはマイクロセル層は、導電性材料の透明コーティングを帯びているプラスチック基板またはフィルムの上にコーティングまたはエンボス加工され得る。このアセンブリは、導電性接着剤を使用して、ピクセル電極を帯びているバックプレーンにラミネートされ得る。代替として、電気泳動流体は、ピクセル電極のアクティブマトリクスを含むバックプレーン上に配置された薄い開放セルグリッド上に直接分注され得る。充填されたグリッドは、次いで、統合された保護用シート/光透過性電極を用いて上部シールされ得る。
【0044】
図1および2を参照すると、電気泳動ディスプレイ(101、102)は、典型的に、上部光透過性電極110と、電気泳動媒体120と、底部駆動電極130/135とを含み、底部駆動電極130/135は、多くの場合、薄膜トランジスタ(TFT)を用いて制御されるピクセルのアクティブマトリクスのピクセル電極である。代替として、底部駆動電極130/135は、コントローラまたはある他のスイッチに直接配線され得、コントローラまたはある他のスイッチは、電気泳動媒体120の光学状態、すなわち、分割電極における変化をもたらすための電圧を底部駆動電極130/135に提供する。重要なこととして、駆動電極130/135間の接合点が、マイクロカプセルの交点またはマイクロセルの壁127と対応することは必要ではない。電気泳動媒体120が、十分に薄く、カプセルまたはマイクロセルが、十分に幅広であるので、コンテナのパターンではなく、(正方形、円形、六角形、波形、文字列、または別様の)駆動電極のパターンが、ディスプレイが視認表面から視認されるとき、見えるであろう。電気泳動媒体120は、少なくとも1つの電気泳動粒子121を含むが、しかしながら、第2の電気泳動粒子122または第3の電気泳動粒子123、第4の電気泳動粒子124、またはそれを上回る粒子が、実現可能である[第3の電気泳動粒子123および第4の電気泳動粒子124は、図1のマイクロカプセル126内に含まれ得るが、明瞭性のために省略されていることに留意されたい]。電気泳動媒体120は、典型的に、イソパラフィン等の溶媒を含み、分散ポリマーと、状態安定性、例えば、双安定性(すなわち、いかなる追加のエネルギーを入力することなく、電気光学状態を維持するための能力)促進するための電荷制御剤とを含み得る。
【0045】
電気泳動媒体120は、典型的に、マイクロカプセル126またはマイクロセル127の壁によって等、区画化される。ディスプレイ全体のスタックは、典型的に、基板150上に配置され、それは、剛体または可撓性であり得る。ディスプレイ(101、102)はまた、典型的に、保護層160も含み、それは、上部電極110を損傷から単に保護し得るか、または、それは、水の浸入等を防止するためにディスプレイ(101、102)全体を包囲し得る。電気泳動ディスプレイ(101、102)はまた、必要に応じて、1つ以上の接着剤層140、170および/またはシール層180を含み得る。いくつかの実施形態において、接着剤層は、電極層110への接着を改良するために、プライマー成分を含み得るか、または、別個のプライマー層(図1または2には図示せず)が、使用され得る(電気泳動ディスプレイの構造、および構成要素部品、顔料、接着剤、電極材料等は、米国第6,922,276号、第7,002,728号、第7,072,095号、第7,116,318号、第7,715,088号、および第7,839,564号(これらの全ては、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる)等のE Ink Corporationによって公開された多くの特許および特許出願において説明されている)。
【0046】
薄膜トランジスタ(TFT)バックプレーンは、通常、ピクセル電極または推進電極あたり1つのみのトランジスタを有する。従来、各ピクセル電極は、それに関連付けられたコンデンサ電極を有し、それによって、ピクセル電極およびコンデンサ電極は、コンデンサを形成する;例えば、国際特許出願第WO01/07961号を参照されたい。いくつかの実施形態において、N型半導体(例えば、非晶質シリコン)が、トランジスタを形成するために使用され得、ゲート電極に印加される「選択」および「非選択」電圧は、それぞれ、正および負であることができる。
【0047】
図3に図示されるように、各トランジスタ(TFT)は、ゲートライン、データライン、およびピクセル電極(推進電極)に接続される。TFTゲート上に十分な正電圧(またはトランジスタのタイプに応じて、負電圧)が存在するとき、走査線とTFTドレインに結合されるピクセル電極との間に、低インピーダンスが存在し(すなわち、Vgが「オン」または「開」状態であり)、したがって、走査線における電圧が、ピクセルの電極に伝達される。しかしながら、TFTゲート上に負電圧が存在するとき、高インピーダンスが存在し、電圧は、ピクセル貯蔵コンデンサ上に貯蔵され、他のピクセルが、アドレスされているとき、走査線における電圧によって影響を受けない(すなわち、Vgが「オフ」または「閉」である)。したがって、理想的に、TFTは、デジタルスイッチとしての機能を果たすはずである。実践では、TFTが「オン」設定にあるとき、依然として、ある量の抵抗が存在し、したがって、ピクセルは、充電するためにある程度の時間を要する。加えて、TFTが、「OFF」設定にあるとき、電圧は、VからVpixに漏出し、クロストークを引き起こし得る。貯蔵コンデンサCsの静電容量を増加させることは、クロストークを減らすが、ピクセルを充電することをより困難にするという代償を払い、充電時間を増加させる。図3に示されるように、別個の電圧(VTOP)が、上部電極に提供され、したがって、上部電極とピクセル電極との間に電場(VFPL)を確立する。最終的に、それは、関連する電気光学媒体の光学状態を決定する、VFPLの値である。貯蔵コンデンサの第1の側が、ピクセル電極に結合される一方、貯蔵コンデンサの第2の側は、電荷がピクセル電極から除去されることを可能にする別個のライン(VCOM)に結合される。例えば、米国特許第7,176,880号(参照することによってその全体として組み込まれる)参照[いくつかの実施形態において、N型半導体(例えば、非晶質シリコン)が、トランジスタを形成するために使用され得、「選択」および「非選択」電圧が、それぞれ、正および負であり得るゲート電極に印加される]。いくつかの実施形態において、VCOMは、接地され得るが、しかしながら、例えば、米国特許第10,037,735号(参照することによってその全体として組み込まれる)において説明されるように、電荷コンデンサから電荷を流出させるための多くの異なる設計が、存在する。
【0048】
従来の非晶質シリコンTFTに伴う1つの問題は、動作電圧が、おおよそ±15Vに限定されることであり、おおよそ±15Vで、トランジスタは、電流を漏出し始め、最終的に、故障する。±15Vの動作範囲は、多くの2粒子電気泳動システムのために好適であるが、増加した電圧範囲を有することが、異なるゼータ電位を伴う粒子を分離することを容易にし、より高速に更新し、より多くの再現可能な色を有する高度電気泳動ディスプレイを結果としてもたらすことが見出されている。ピクセル電極に対する電圧範囲を増加させるための1つの解決策は、トッププレーン切り替えを使用すること、すなわち、それによって、上部(共通)電極における電圧が、時間の関数として変動させられることである。
【0049】
トッププレーン切り替えの原理は、図4に図示されている。例示的電気泳動ディスプレイ401は、上部電極410と(底部)駆動電極430との間に配置される、電気泳動媒体420を含む。図4における電気泳動媒体420は、4つの異なるタイプの電気泳動粒子を伴って示されているが、しかしながら、電気泳動媒体420は、示されるものより少ないタイプの異なる粒子または多いタイプの異なる粒子を有することができる。図4の簡略化された実施形態において、上部電極410および駆動電極430の両方が、2つの異なる電源440および460によって供給されるが、それらは、同じ電源(図示せず)からであり得る。加えて、接地電圧470が、利用可能である。典型的に、1つの電源は、接地に対して正であり、1つの電源は、接地に対して負である。所与の単位時間(フレーム)において、どの電源(または接地)が、どの電極に接続されるかは、コントローラ470によって制御される。コントローラは、電圧基板の出力を制御するために、UltraChipによって製造されるような市販の電気泳動ディスプレイコントローラであり得るか、または、それは、E Ink Corporationによって提供されるもの等の研究用コントローラ(HULK Controller,ARC30TMコントローラ)であり得るか、または、それは、例えば、LABVIEW(登録商標)を使用する仮想コントローラであり得る。
【0050】
図4の電気泳動ディスプレイ401の下方の式において例証されるように、上部電極410および駆動電極430に提供される電圧の各組み合わせは、電気泳動媒体420においてΔV=V(駆動電極)-V(上部電極)の電圧差を結果としてもたらす。式によって分かり得るように(かつ下で議論されるように)、上部電極における電圧を修正することによって、電気泳動媒体420における電圧のより大きい動的範囲が、達成されることができる。加えて、440および460の大きさが、異なる場合、電気泳動媒体上の中間差異電圧値が、達成されることができる。図4に示されるように、いつ上部電極410および駆動電極430が、どの電源に接続されるかを慎重に調整することによって、7つの異なる電圧が、電気泳動媒体420に対して利用可能である。
【0051】
図4は、単一の駆動電極430のみを図示するが、この原理が、アクティブマトリクスバックプレーンとともに利用可能であるもの等、多くの駆動ピクセルを伴うシステムに対して拡張され得ることを理解されたい。しかしながら、特定のピクセルを横断する所望の電圧差を達成するために必要とされる上部電極電圧を調整することは、ピクセルの数が増加するにつれて、非常に急速に複雑になる。実践では、アクティブマトリクスバックプレーンを伴うトッププレーン切り替えは、トッププレーンおよびピクセル電極のための独立した電圧コントローラを使用し、個々のピクセル電極が、所望の波形を生じさせるために切り替えられている間、多くのフレームにわたって継続する上部電極の電圧サイクルを要求する。方法のさらなる詳細が、米国特許第10,593,272号(参照することによってその全体として組み込まれる)において説明されている。
【0052】
ACeP(登録商標)の事例では、8つの主要色(赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンタ色、黄色、黒色、および白色)の各々は、4つの顔料の異なる配置に対応し、それによって、視認者に、白色顔料の視認側にあるそれらの着色顔料のみ(すなわち、光を散乱する顔料のみ)が見える。より具体的に、シアン色、マゼンタ色、および黄色粒子が、白色粒子の下方に存在するとき(図5における状況[A])、白色粒子の上方に粒子は、存在せず、ピクセルは、単に、白色を表示する。単一粒子が、白色粒子の上方にあるとき、その単一粒子の色が、図5における状況[B]、[D]、および[F]において黄色、マゼンタ色、およびシアン色でそれぞれ表示される。2つの粒子が白色粒子の上方に存在するとき、表示される色は、これらの2つの粒子のそれらの組み合わせである。すなわち、図5において、状況[C]では、マゼンタ色および黄色粒子は、赤色を表示し、状況[E]では、シアン色およびマゼンタ色粒子は、青色を表示し、状況[G]では、黄色およびシアン色粒子は、緑色を表示する。最後、全3つの着色粒子が、白色粒子の上方に存在するとき(図5における状況[H])、全ての入射光は、3つの減法原着色粒子によって吸収され、ピクセルは、黒色を表示する。
【0053】
1つの減法原色が光を散乱させる粒子によってレンダリングされ得ることが可能であり、それによって、ディスプレイは、2つのタイプの光散乱粒子を備え、それらのうちの一方が白色であり、他方が着色であるであろう。しかしながら、この場合、白色粒子を覆う他の着色粒子に対する光散乱着色粒子の位置が、重要となるであろう。例えば、黒色をレンダリングすることにおいて(全3つの着色粒子が白色粒子を覆って位置するとき)、散乱着色粒子は、非散乱着色粒子を覆って位置することができない(そうでなければ、それらは、散乱粒子の背後、部分的または完全に隠され、レンダリングされる色は、散乱着色粒子であり、黒色ではないであろう)。2つ以上のタイプの着色粒子が、光を散乱する場合、黒色をレンダリングすることは容易ではないであろう。
【0054】
これらの色を作製するために、4つの顔料を適切な構成に並べ替えるための波形は、少なくとも7つの電圧レベル(高い正、中間の正、低い正、ゼロ、低い負、中間の負、高い負)を用いて最も良好に達成されることが見出されている。図6は、上で説明される4粒子カラー電気泳動ディスプレイシステムを駆動するために使用される(簡略化された形態での)典型的な波形を示す。そのような波形は、「プッシュプル」構造を有し、すなわち、それらは、反対極性の2つのパルスを備えている双極子から成る。それらのパルスの大きさおよび長さは、取得される色を決定する。一般に、「高い」電圧の大きさが高くなればなるほど、ディスプレイによって達成される色域は、より良好になる。「高」電圧は、典型的に、20V~30Vであり、より典型的に、約25V、例えば、24Vである。「中」(M)レベルは、典型的に、10V~20Vであり、より典型的に、約15V、例えば、15Vまたは12Vである。「低」(L)レベルは、典型的に、3V~10Vであり、より典型的に、約7V、例えば、9Vまたは5Vである。当然ながら、H、M、Lの値は、幾分、粒子の組成、および電気泳動媒体の環境に依存するであろう。いくつかの適用では、H、M、Lは、これらの電圧レベルを生じさせることおよび制御することを行うための構成要素のコストによって設定され得る。
【0055】
図6に示されるように、上部電極が、一定の電圧において保持される(すなわち、トッププレーン切り替えされない)場合、ACeP(登録商標)システムのための「単純な」波形であっても、駆動電子機器が、ディスプレイの選択されたピクセルの更新中、7つの異なる電圧(+H、+M、+L、0、-L、-M、-H)をデータラインに提供することを要求する。7つの異なる電圧を送達することが可能であるマルチレベルソースドライバが、利用可能であるが、電気泳動ディスプレイのための多くの市販のソースドライバは、単一フレームの間、3つのみの異なる電圧(典型的に、正電圧、ゼロ、および負電圧)が送達されることを可能にする。
【0056】
当然ながら、図6の駆動パルスを用いて所望の色を達成することは、既知の状態からプロセスを開始する粒子次第であり、それは、ピクセル上に表示される最後の色である可能性は低い。故に、一連のリセットパルスが、駆動パルスに先行し、それは、第1の色から第2の色にピクセルを更新するために要求される時間量を増加させる。リセットパルスは、参照することによって組み込まれる米国特許第10,593,272号により詳細に説明されている。これらのパルス(リフレッシュおよびアドレス)および任意のレストの長さ(すなわち、パルス間のゼロ電圧の期間)は、波形全体(全体波形にわたる時間に対する電圧の積分)がDC平衡される(すなわち、経時的電圧の積分は、実質的にゼロである)ように選定され得る。DC平衡は、リセット段階において供給される正味インパルスが、(その段階中、ディスプレイが、特定の所望の色に切り替えられる)アドレス段階において供給される正味インパルスと大きさが等しく、符号が反対であるように、リセット段階におけるパルスおよびレストの長さを調節することによって達成されることができる。
【0057】
加えて、波形の前述の議論、具体的に、DC平衡の議論は、キックバック電圧の問題点を無視している。実際、前述のように、全てのバックプレーン電圧は、キックバック電圧VKBと等しい量だけ、電力供給源によって供給される電圧からオフセットされる。したがって、使用される電力供給源が、3つの電圧+V、0、および-Vを提供する場合、バックプレーンは、実際、電圧V+VKB、VKB、および-V+VKBを受け取るであろう(VKBは、非晶質シリコンTFTの場合、通常、負の数であることに留意されたい)。しかしながら、同じ電力供給源は、任意のキックバック電圧オフセットを伴わずに、+V、0、および-Vをフロント電極に供給するであろう。したがって、例えば、フロント電極が、-Vを供給されるとき、ディスプレイは、最大電圧2V+VKBおよび最小電圧VKBを経験するであろう。別個の電力供給源を使用してVKBをフロント電極に供給する(コストがかかり、不便であり得る)代わりに、波形は、区分に分割され得、フロント電極は、正電圧、負電圧、およびVKBを供給される。キックバックに加えて、
【0058】
(金属酸化物バックプレーンを用いた高電圧アドレス)
レール電圧を修正することは、4粒子電気泳動システムとは異なる電気光学性能を達成することにおいてある程度の柔軟性を提供するが、トッププレーン切り替えによって導入される多くの限界が存在する。例えば、典型的に、本発明のディスプレイを用いて白色状態を作製するために、より低い負電圧VM-が最大負電圧VH-の半分未満であることが好ましい。しかしながら、上記式に示されるように、トッププレーン切り替えは、より低い正電圧が、常時、最大正電圧の少なくとも半分であること、典型的に、半分を上回ることを要求する。
【0059】
トッププレーン切り替えの複雑性に対する代替解決策は、より高い電子移動度を有するあまり一般的ではない材料から制御トランジスタを製作し、それによって、トランジスタが、より大きい制御電圧、例えば+/-30Vを直接切り替えることを可能にすることによって提供されることができる。新たに開発されたアクティブマトリクスバックプレーンは、タングステン酸化物、スズ酸化物、インジウム酸化物、および亜鉛酸化物等の金属酸化物材料を組み込む、薄膜トランジスタを含み得る。これらの適用では、チャネル形成領域は、そのような金属酸化物材料を使用して、各トランジスタのために形成され、より高い電圧のより高速な切り替えを可能にする。そのようなトランジスタは、典型的に、ゲート電極と、ゲート絶縁フィルム(典型的に、SiO)と、金属ソース電極と、金属ドレイン電極と、少なくとも部分的にゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極に重なるゲート絶縁フィルムを覆う金属酸化物半導体フィルムとを含む。そのようなバックプレーンは、Sharp/Foxconn、LG、およびBOE等の製造業者から入手可能である。
【0060】
そのような適用のための1つの好ましい金属酸化物材料は、インジウムガリウム亜鉛酸素(IGZO)である。IGZO-TFTは、非晶質シリコンの20~50倍の電子移動度を有する。アクティブマトリクスバックプレーンにおいてIGZO TFTを使用することによって、好適なディスプレイドライバを介して、30Vより大きい電圧を提供することが可能である。さらに、少なくとも5つ、好ましくは、7つのレベルを供給することが可能であるソースドライバは、4粒子電気泳動ディスプレイシステムのための異なる駆動パラダイムを提供する。ある実施形態において、2つの正電圧、2つの負電圧、およびゼロボルトが存在するであろう。別の実施形態において、3つの正電圧、3つの負電圧、およびゼロボルトが存在するであろう。ある実施形態において、4つの正電圧、4つの負電圧、およびゼロボルトが存在するであろう。これらのレベルは、上で説明されるようなトッププレーンの切り替えによって課される限定を伴わず、約-27V~+27Vの範囲内で選定され得る。
【0061】
金属酸化物バックプレーン等の高度バックプレーンを使用すると、好適なプッシュプル波形(すなわち、図6に説明されるような)を用いて、各ピクセルを直接アドレスすることが可能である。これは、各ピクセルを更新するために要求される時間を大幅に減らし、いくつかの事例では、6秒の更新を1秒未満に一変させる。いくつかの場合、アドレスのための始点を確立するために、リセットパルスを使用することが必要であり得る場合があるが、リセットは、より高い電圧において、より迅速に行われることができる。加えて、減らされた色の組を有する4色電気泳動ディスプレイでは、図6に示されるプッシュプル波形よりわずかにのみ長い特定の波形を用いて、第1の色から第2の色に直接駆動することが、可能である。
【0062】
(簡略化されたトッププレーン切り替え)
更新の時間の長さおよびフラッシネスを減らすために、フロントプレーン切り替えの複雑性は、利用可能な色をより少なくすることと引き換えに、減らされることができる。加えて、粒子は、電気泳動媒体内で有限の速さを有するので、双極子が印加される時間量も、色域のサイズに影響を与える。
【0063】
図7は、簡略化されたトッププレーン切り替えパルスシーケンス(左上パネル)が使用されるそのような解決策を示し、簡略化されたバックプレーンパルスシーケンス(左側;下)は、単一のトッププレーンシーケンスに合致させられ、それによって、少なくとも異なる色を提供する。トッププレーンは、2つの電圧、すなわち、1つの正と1つの負との間で切り替えられる一方、バックプレーンは、3つの異なる電圧、すなわち、正、負、およびゼロをとることができる(図7では、電圧レベルは、相対的であり、すなわち、1、0、-1であるが、多くの事例では、非晶質シリコン薄膜トランジスタを含む商業用バックプレーンに関して典型的であるように、実際に、15V、0、およびー5Vである)。バックプレーンパルスシーケンス(図7左)からトッププレーンのパルスシーケンスを差し引くことによって、図6の8色のシーケンス(図7右)が、達成されることに留意されたい。図6および図7のパルスシーケンスに関し、電気泳動流体は、負荷電である白色顔料と、正荷電であるマゼンタ色顔料およびシアン色顔料と、正または負荷電のいずれか、または本質的に中性であり得る黄色顔料とを含むことを理解されたい。他の色/電荷の組み合わせが、可能であり、波形は、それに応じて、調節されることができる。
【0064】
先に議論されるように、図7の波形では、少なくとも5つの異なる電圧が、要求される。アクティブマトリクス駆動環境では、これは、(a)特定の行が特定の時間に選択されているとき、5つの異なる電圧のうちのある選択肢を列に供給することによって、または、(b)特定の行が第1回目に選択されているとき、より少数の(例えば、3つの)異なる電圧のうちのある選択肢を列に提供し、同じ行が第2回目に選択されているとき、電圧の異なる組を提供することによって、または、(c)第1回目および第2回目の両方において、3つの電圧のうちの同じ選択肢を列に提供するが、第1回目と第2回目との間でフロント電極の電位を変更することによって達成され得る。選択肢(c)は、特に、供給されるように要求される電圧のうちの少なくとも1つが、バックプレーン電子機器が支持できるより高いとき、役に立つ。
【0065】
トッププレーン切り替えを用いると、高い正電位および高い負電位を同時にアサートすることは、不可能であるので、バックプレーンの-/+双極子に対して、トッププレーンの+/-双極子をオフセットすることが必要である。図7に示される波形では、遷移毎に1つの双極子のみが存在する。これは、各双極子が、2つの可視光学変化をディスプレイにもたらすので、可能な最も少ない「閃光のような」波形を提供する。この場合、各行が、選択されているとき、5つの異なる電圧レベルがバックプレーン電極に供給されることができる場合、および、バックプレーン電子機器が必要とされる最高電圧を支持することができる場合、図7に示される様式で双極子をオフセットする必要はない。
【0066】
(循環させられるトッププレーン電圧を用いた駆動)
図7の駆動シーケンスに関して、トッププレーンに印加される電圧は、それぞれ、Vt+およびVt-と表され、バックプレーンに印加される電圧は、それぞれ、Vb+およびVb-と表され、|Vt+|=|Vt-|=|Vb+|=|Vb-|=Vである。故に、商業用バックプレーンに関して典型的であるように、最大供給電圧が+/-15ボルトであるとき、電圧は、電気泳動媒体を横断して、30V、28V、0V、-28V、および-30Vとなる。
【0067】
しかしながら、トッププレーン電極およびバックプレーン電極の最大電圧の大きさ(すなわち、「レール」)は、同じである必要はない。例えば、レール電圧のオフセットは、ある公称最大電圧の大きさの値、すなわち、Vから計算されることができる。レール毎のオフセットは、w、x、y、およびzと表され得るが、ゼロ電圧レールが、ゼロに維持され、トッププレーンに印加されないと仮定される。
したがって、以下の通りである。
【数1】
【0068】
バックプレーン電圧を参照すると、トッププレーンがVt+に設定されているとき、高い、中程度、および低い大きさの3つの異なる負電圧が、電気泳動媒体に印加され得、それらは、VH-、VM-、およびVL-と表される(すなわち、V-Vであり、Vは、上で示される3つの値のうちのいずれかをとり得る)。
これらの電圧は、以下の通りである。
【数2】
トッププレーンが、Vt-に設定されているとき、使用可能な電圧は、以下の通りである。
【数3】
トッププレーンが、0に設定されているとき、使用可能な電圧は、以下の通りである。
【数4】
【0069】
w=yおよびx=zのとき、トッププレーンがVt+に設定されるか、Vt-に設定されるか、0に設定されるかに関わらず、ゼロ電圧状態を維持することが可能であることは、明白である。実践では、最適な色が取得されるべき場合、波形は、著しく大変な複雑性および長さを要求する。故に、トッププレーン切り替えパターンは、したがって、図7に図示されるものより、著しく複雑であることを要求する。しかしながら、1つの波形の長さより短い分だけ分離されたずれた開始時間を伴うディスプレイの異なる領域における同時の更新を要求する適用では、ある困難が、生じる。トッププレーン電位がディスプレイ全体にわたってアサートされるので、別の場所で先に始められた更新の終了前、ディスプレイの1つの領域で新しい更新を始めることは、不可能であり得る。
【0070】
それぞれがトッププレーン切り替えを要求する複数の同時更新を調整するという問題は、図8に図示されるように、波形を引き伸ばしながら、トッププレーン電圧を循環させることによって解決されることができる(VTE=上部電極電圧、VDE1=第1の駆動電極電圧、VDE2=第2の駆動電極電圧、ΔVDE1=第1の駆動電極と上部電極との間の電気泳動媒体における電圧差、ΔVDE2=第2の駆動電極と上部電極との間の電気泳動媒体における電圧差)。任意のフレーム内の任意のピクセル場所において、+/-24V、+/-15V、+/-9V、または0Vを提供することが可能である7レベルバックプレーンのために先に作成された緑色の波形および黄色の波形は、循環させられるトッププレーン駆動のために修正された。コントローラは、図9に示されるように、+15V、-9V、および0V(すなわち、上記の式において、V=15V、w=y=0V、およびx=z=6V)の連続フレームを上部電極に提供する。波形を引き伸ばし、第1および第2の駆動電極への電圧を上部電極サイクルと調整することによって、トッププレーン切り替えを使用して、2つの異なる駆動電極における同時色更新をもたらすことが、可能であった。
【0071】
上部電極が、+15Vにあるとき、電気泳動媒体に対して利用可能な電圧差は、-24V、-15V、-0Vである。上部電極が、-9Vにあるとき、電気泳動媒体に対して利用可能な電圧差は、24V、9V、および0Vである。上部電極が、接地(0V)にあるとき、電気泳動媒体に対して利用可能な電圧差は、15V、0V、および3番目における-9Vである[慣例により、電圧差は、ΔV=V(駆動電極)-V(上部電極)である]。したがって、7つの電圧レベル、すなわち、+/-24V、+/-15V、および+/-9V+0Vが、利用可能であった。特定の駆動電極が、次の上部電極フレームを「待つ」必要があるとき、その駆動電極は、電気泳動媒体を横断する電圧差が、そのフレームに関してゼロであるように、上部電極と同じ電圧に設定されることに留意されたい。明白なこととして、これは、時間において、波形をより長くし、各「単純な」波形は、ここで、元々のマルチレベル波形より3倍長い更新を要求する。
【0072】
4粒子電気泳動システムのモデルを使用して、+15V、-9V、および0を伴う上部電極循環駆動が、7つの個々の駆動レベルおよび静的上部電極を有する同じシステムに対して試験された。その結果が、下で、表1および2において示され、図9Aのグラフおよび図9Bのシミュレートされた色表において表される。
【表1】
【表2】
【0073】
表1および2を比較すると、より長い更新時間以外に、上部電極循環に関する犠牲は、ほとんど存在しないように思われる。実際、色域(色空間)は、実際のところ、上部電極循環方法に関して、わずかにより大きい。2つの方法間の差異はさらに、図9Aおよび9Bを検討することによって可視化され得る。図9Aでは、塗り潰された円は、7レベルドライバのL測定値を表す一方、白抜き円は、循環させられる上部電極駆動のL測定値を表す。図9Aおよび9Bから分かり得るように、結果として生じる原色状態は、非常に類似する(塗り潰された円に対して白抜き円の位置を比較されたい)。最大の変化は、緑色原色(図9Aの左中央)において見られ、この場合、緑色原色は、黄色に向かってかなりドリフトする。緑色原色に関する色状態の差異は、図9Bにおいても明白である。
【0074】
したがって、本発明は、トッププレーン切り替えを伴う、および伴わない電気泳動媒体を直接アドレスすることが可能であるフルカラー電気泳動ディスプレイと、そのような電気泳動ディスプレイのための波形とを提供する。これまで、本願の技術のいくつかの側面および実施形態が説明されたが、種々の改変例、修正例、および改良例が、当業者に容易に想起されるであろうことを理解されたい。そのような改変例、修正例、および改良例は、本願に説明される技術の精神および範囲内であるように意図される。例えば、当業者は、本明細書に説明される機能を実施する、および/または結果および/または利点のうちの1つ以上のものを取得するための種々の他の手段および/または構造を容易に想定し、そのような変形例および/または修正例の各々は、本明細書に説明される実施形態の範囲内であると見なされる。当業者は、単なる日常的実験を使用して、本明細書に説明される具体的実施形態の多くの均等物を認識すること、またはそれを確認することが可能であろう。したがって、前述の実施形態は、一例としてのみ提示され、添付の請求項およびその均等物の範囲内において、本発明の実施形態は、具体的に説明されるものと別様に実践され得ることを理解されたい。加えて、本明細書に説明される2つ以上の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせも、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が、互いに矛盾しない場合、本開示の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
【国際調査報告】