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特表2024-533246ハロゲンフリー難燃性ポリマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ハロゲンフリー難燃性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20240905BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240905BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C08J3/22 CES
C08L23/08
C08J3/24 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514528
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 US2022044151
(87)【国際公開番号】W WO2023049127
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/246,454
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】カロニア、ポール ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボルツ ザ サード、カート エイ.
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA28
4F070AB03
4F070AB07
4F070AB11
4F070AB19
4F070AB24
4F070AC13
4F070AC37
4F070AC42
4F070AE03
4F070AE07
4F070AE08
4F070FA17
4F070FB04
4F070FB07
4F070FC03
4F070FC05
4F070GA01
4F070GB02
4F070GB06
4F070GC02
4F070GC07
4J002BB06X
4J002BB10W
4J002DE076
4J002FD136
4J002GQ01
(57)【要約】
ポリマー組成物を形成する方法は、エチレン-シランコポリマーと、エチレン酢酸ビニルコポリマー中に分散されたハロゲンフリー難燃剤を含むハロゲンフリー難燃剤マスターバッチとを溶融ブレンドしてポリマー組成物を形成する工程であって、エチレン-シランコポリマーが、エチレン及びビニルトリメトキシシランから誘導された単位のランダムコポリマーであり、更にコポリマーがエチレン-シランコポリマーの総重量に基づいて0.5重量%~2重量%未満のビニルトリメトキシシラン含有量を有する、形成する工程と、ポリマー組成物を複数の粒子に加工する工程と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物を形成する方法であって、
エチレン-シランコポリマーと、エチレン酢酸ビニルコポリマー中に分散されたハロゲンフリー難燃剤を含むハロゲンフリー難燃剤マスターバッチとを溶融ブレンドして前記ポリマー組成物を形成する工程であって、前記エチレン-シランコポリマーが、エチレン及びビニルトリメトキシシランから誘導された単位のランダムコポリマーであり、更に前記コポリマーが、前記エチレン-シランコポリマーの総重量に基づいて0.5重量%~2重量%未満のビニルトリメトキシシラン含有量を有する、形成する工程と、
前記ポリマー組成物を複数の粒子に加工する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
縮合硬化触媒を前記ポリマー組成物の前記粒子と溶融ブレンドする工程と、
組み合わされた前記縮合硬化触媒及び前記ポリマー組成物を押出して、物品を形成する工程と、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水の存在下で前記物品を架橋する工程を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ハロゲンフリー難燃剤マスターバッチ樹脂が、エチレン酢酸ビニルコポリマーであり、前記マスターバッチが、前記ハロゲンフリー難燃剤マスターバッチの総重量に基づいて20重量%~50重量%のエチレン酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
エチレン-シランコポリマーと1つ以上のハロゲンフリー難燃剤とを溶融ブレンドして前記ポリマー組成物を形成する前記工程が、100℃以上の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コポリマーが、前記エチレン-シランコポリマーの総重量に基づいて1.2重量%~2.0重量%のビニルトリメトキシシラン含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ハロゲンフリー難燃剤が、金属水酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エチレン-シランコポリマーと前記ハロゲンフリー難燃剤とを溶融ブレンドして前記ポリマー組成物を形成する前記工程が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて30重量%以上のエチレン-シランコポリマーを用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記エチレン-シランコポリマーと前記ハロゲンフリー難燃剤とを溶融ブレンドして前記ポリマー組成物を形成する前記工程が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%以上のハロゲンフリー難燃剤を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて30重量%~70重量%の前記エチレン-シランコポリマーと、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%~50重量%の前記ハロゲンフリー難燃剤とを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的にはポリマー組成物に関し、より具体的には、ハロゲンフリー難燃剤を含むポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
構造体に利用されるワイヤ及びケーブルの外被は、しばしば、特定の難燃性特性を満たさなければならない。熱可塑性ポリマーは、そのような材料中に高レベルのハロゲンフリー難燃性(halogen free flame retardant、「HFFR」)充填剤を組み込むことが容易であるため、そのような外被のためのベースポリマー組成物として利用される。HFFR充填剤は、金属水酸化物又は様々な他の材料であってもよい。熱硬化性樹脂は、熱可塑性組成物と比較して向上した耐熱性及び耐流体性を提供するので、ワイヤ又はケーブルの意図された用途に応じて、熱硬化性組成物が外被に望ましい場合がある。難燃性組成物の典型的な所望の特性としては、絶縁ケーブル技術者協会(Insulated Cable Engineers Association)(「ICEA」)のT-28-562に従って測定して50%以下の高温クリープ伸び、ASTM D638に従って測定して9mPa以上の未時効引張弾性率、及びASTM D638に従って測定して150%以上の破断点伸びが挙げられる。
【0003】
熱硬化性樹脂へのHFFR充填剤の組み込みは、多くの技術的問題を提起する。熱硬化性組成物を形成するために、架橋剤が組成物に添加される。架橋剤は、典型的には、フリーラジカルプロセスのための有機過酸化物、又は縮合硬化プロセスのためのシラン化合物である。典型的な縮合硬化プロセスでは、シラン化合物がベース樹脂にグラフト化される。グラフト化シラン樹脂は、グラフト化樹脂がより速い架橋速度を提供するので、エチレン-シランコポリマーよりも使用される。シラングラフト化樹脂の架橋又は硬化は、水、熱及び触媒の存在下で起こる。シラングラフト化樹脂によって提供されるより速い硬化速度の利点にもかかわらず、このアプローチは、多くの課題を提示する。例えば、HFFR含有シラングラフト化樹脂の形成は、HFFR材料が水を含む傾向があり、制御されない早期架橋をもたらし得るため、複雑である。この問題を克服するために、従来のアプローチは、シランが樹脂にグラフト化され、その後、HFFR中に配合し、次いで、触媒を用いて組成物を押出成形する、多段階プロセスを含む。この方法の1つの欠点は、配合の前に製造されたシラングラフト化樹脂が、シラン官能基が反応する前に限られた貯蔵時間を有することである。更に、このような方法は、シラングラフト化樹脂中のHFFRの不均一な分散をもたらすことが多い。樹脂中のHFFRの不十分な分散は、HFFR中に存在する水がグラフト化樹脂に導入されるとシラングラフト樹脂の早期架橋を防止するために必要とされる低い配合温度の結果である。
【0004】
シラングラフト化エチレン系ポリマーを使用することによって提起される問題に対処する試みにおいて、エチレン-シランコポリマーを利用する試みもあった。例えば、米国特許第5,266,627号(「‘627特許」)は、HFFRと混合した場合に早期架橋に対して耐性である加水分解性シランコポリマー組成物を提供する。‘627特許は、「エチレン-ビニルトリメトキシシランコポリマーが、...充填剤の存在下では安定ではなく、すなわち、過剰な早期架橋が、加工中若しくは充填されたコポリマーが周囲条件下で貯蔵されるときに観察されるか、又は充填されたコポリマーが、シラノール縮合触媒が添加された後のその後の加工及び押出中に過剰に架橋する、すなわちスコーチする」と説明している。(‘627特許の第6段、第60行~第7段、第3行を参照のこと。)この点を強調しているのが‘627特許の比較例4であり、そこでは、2.1%の共重合されたビニルトリメトキシシラン含有量を有するエチレンとビニルトリメトキシシランとのランダムコポリマーが試験されている。‘627特許は、「[エチレン-シラン]ランダムコポリマーを使用して調製された配合物が、...シラノール縮合触媒による充填されたコポリマーの加工中に高度に架橋されるようになったこと」が明らかであり、したがって許容できなかったと説明している。(‘627特許の第12段、第41~48行を参照のこと。))
【0005】
上記を考慮すると、ICEA T-28-562に従って測定して50%以下の高温クリープ伸び、ASTM D638に従って測定して9mPa以上の未時効引張弾性率、及びASTM D638に従って測定して150%以上の破断点伸びを示すHFFR熱硬化性ポリマー組成物を形成する方法を発見することは驚くべきことである。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、ICEAT-28-562に従って測定して50%以下の高温クリープ伸び、ASTM D638に従って測定して9mPa以上の未時効引張弾性率、及びASTM D638に従って測定して150%以上の破断点伸びを示すHFFR熱硬化性ポリマー組成物を形成する方法を提供する。本出願の発明者らは、エチレン-シランコポリマーの総重量に基づいて0.5重量%~2重量%未満のシラン含有量を有するエチレン-シランコポリマーを利用することによって、HFFR材料とコポリマーとの予備配合が可能になることを発見した。有利なことに、エチレン-シランコポリマー及びHFFERマスターバッチは、早期架橋又はシラン官能基の減少の懸念なく、分配及び後の使用のために溶融ブレンドされ、次いでペレット化され得る。更に、予備配合されたHFFRマスターバッチ及びエチレン-シランコポリマーは、過剰なスコーチを示すことなく押出され得るが、上記の物理的特性を満たすことができる。
【0007】
本開示は、ワイヤ及びケーブルの形成に特に有用である。
【0008】
第1の態様によれば、ポリマー組成物を形成する方法は、エチレン-シランコポリマーと、エチレン酢酸ビニルコポリマー中に分散されたハロゲンフリー難燃剤を含むハロゲンフリー難燃剤マスターバッチとを溶融ブレンドしてポリマー組成物を形成する工程であって、エチレン-シランコポリマーが、エチレン及びビニルトリメトキシシランから誘導された単位のランダムコポリマーであり、更にコポリマーがエチレン-シランコポリマーの総重量に基づいて0.5重量%~2重量%未満のビニルトリメトキシシラン含有量を有する、形成する工程と、ポリマー組成物を複数の粒子に加工する工程と、を含む。
【0009】
第2の態様によれば、本方法は、縮合硬化触媒をポリマー組成物の粒子と溶融ブレンドする工程と、組み合わされた縮合硬化触媒及びポリマー組成物を押出して物品を形成する工程と、を更に含む。
【0010】
第3の態様によれば、本方法は、水の存在下で物品を架橋する工程を更に含む。
【0011】
第4の態様によれば、ハロゲンフリー難燃剤マスターバッチ樹脂は、エチレン酢酸ビニルコポリマーであり、マスターバッチは、ハロゲンフリー難燃剤マスターバッチの総重量に基づいて20重量%~50重量%のエチレン酢酸ビニルコポリマーを含む。
【0012】
第5の態様によれば、エチレン-シランコポリマーと1つ以上のハロゲンフリー難燃剤とを溶融ブレンドしてポリマー組成物を形成する工程は、100℃以上の温度で行われる。
【0013】
第6の態様によれば、コポリマーは、エチレン-シランコポリマーの総重量に基づいて1.2重量%~2.0重量%のビニルトリメトキシシラン含有量を有する。
【0014】
第7の態様によれば、ハロゲンフリー難燃剤は金属水酸化物を含む。
【0015】
第8の態様によれば、エチレン-シランコポリマーとハロゲンフリー難燃剤とを溶融ブレンドしてポリマー組成物を形成する工程は、ポリマー組成物の総重量に基づいて30重量%以上のエチレン-シランコポリマーを用いて行われる。
【0016】
第9の態様によれば、エチレン-シランコポリマーとハロゲンフリー難燃剤とを溶融ブレンドしてポリマー組成物を形成する工程は、ポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%以上のハロゲンフリー難燃剤を用いて行われる。
【0017】
第10の態様によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて30重量%~70重量%のエチレン-シランコポリマーと、ポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%~50重量%のハロゲンフリー難燃剤とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物は、Aを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0019】
別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。
【0020】
試験方法は、試験方法番号でハイフン付きの2桁の数字で日付が示されていない限り、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験協会及び試験方法番号の両方への参照を含む。試験方法組織は、以下の略語のうちの1つによって参照され、ASTMは、ASTM International(旧称、American Society for Testing and Materials)を指し、IECは、International Electrotechnical Commissionを指し、ENは、European Normを指し、DINは、Deutsches Institut fur Normungを指し、ISOは、International Organization for Standardsを指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分がポリマー組成物の総重量に占める重量のパーセンテージを示す。
【0022】
本明細書において、メルトインデックス(I)値は、2.16キログラム(Kilogram、Kg)の質量を用いて摂氏190度(℃)でASTM法D1238に従って決定された値を指し、10分当たりに溶出されるグラム数(「g/10分」)の単位で提供される。
【0023】
本明細書における密度値は、23℃でASTM D792に従って決定された値を指し、1立方センチメートル当たりのグラム数(grams per cubic centimeter、「g/cc」)の単位で提供される。
【0024】
本明細書で使用される場合、Chemical Abstract Services登録番号(「CAS#」)は、本文書の優先日の時点でChemical Abstract Serviceによって化学化合物に最後に割り当てられた固有の数字識別子を指す。
【0025】
ポリマー組成物
本開示は、ポリマー組成物及びポリマー組成物の作製方法に関する。ポリマー組成物は、エチレン-シランコポリマー及びハロゲンフリー難燃剤マスターバッチを含む。ハロゲンフリー難燃剤マスターバッチは、ハロゲンフリー難燃剤と、ハロゲンフリー難燃剤が分散された樹脂とを含む。ポリマー組成物は、縮合硬化触媒、酸化防止剤、及び1つ以上のキャリア樹脂のうちの1つ以上を含んでもよい。任意選択的に、ポリマー組成物は、以下に概説されるような1つ以上の添加剤を更に含んでもよい。
【0026】
エチレン/シランコポリマー
エチレン-シランコポリマーは、エチレンモノマー及びシランモノマーから誘導された単位を含む。「コポリマー」とは、異なる種類のモノマーを反応(すなわち、重合)させることによって調製される巨大分子化合物を意味する。エチレン/シランコポリマーは、エチレンとシランモノマーとの共重合によって形成される。エチレン及びシラン単位は、エチレン-シランコポリマーがエチレン及びシランから誘導された単位のランダムコポリマーであるように、ランダム配向でコポリマー中に配置される。
【0027】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、一方で同時に70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下のエチレン-シランコポリマーを含み得る。
【0028】
エチレン-シランコポリマーは、ASTM D792により測定される場合に、1立方センチメートル当たり0.910グラム(g/cc)以上、又は0.915g/cc以上、又は0.920g/cc以上、又は0.921g/cc以上、又は0.922g/cc以上、又は0.925g/cc~0.930g/cc以上、又は0.935g/cc以上、一方で同時に、0.940g/cc以下、又は0.935g/cc以下、又は0.930g/cc以下、又は0.925g/cc以下、又は0.920g/cc以下、又は0.915g/cc以下の密度を有する。
【0029】
エチレン-シランコポリマーは、フーリエ変換赤外(Fourier-Transform Infrared、FTIR)分光法を使用して測定される場合に、90重量%以上、又は91重量%以上、又は92重量%以上、又は93重量%以上、又は94重量%以上、又は95重量%以上、又は96重量%以上、又は96.5重量%以上、又は97重量%以上、又は97.5重量%以上、又は98重量%以上、又は99重量%以上、一方で同時に、99.5重量%以下、又は99重量%以下、又は98重量%以下、又は97重量%以下、又は96重量%以下、又は95重量%以下、又は94重量%以下、又は93重量%以下、又は92重量%以下、又は91重量%以下のα-オレフィンを含む。α-オレフィンは、C、又はC~C、又はC、又はC、又はC10、又はC12、又はC16、又はC18、又はC20α-オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンを含んでもよい。シラン官能化ポリオレフィンの他の単位は、不飽和エステルを含む(ただしこれらに限定されない)1つ以上の重合性モノマーから誘導され得る。不飽和エステルは、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、又はカルボン酸ビニルであり得る。アルキル基は、1~8個の炭素原子又は1~4個の炭素原子を有することができる。カルボキシレート基は、2~8個の炭素原子又は2~5個の炭素原子を有することができる。アクリレート及びメタクリレートの例としては、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、及び2エチルヘキシルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。ビニルカルボキシレートの例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、及びビニルブタノアートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
エチレン-シランコポリマーは、0.5重量%~2.00重量%の共重合シランを含んでもよい。例えば、エチレン-シランコポリマーは、エチレン-シランコポリマーの総質量に基づいて、0.50重量%以上、又は0.55重量%以上、又は0.60重量%以上、又は0.65重量%以上、又は0.70重量%以上、又は0.75重量%以上、又は0.80重量%以上、又は0.85重量%以上、又は0.90重量%以上、又は0.95重量%以上、又は1.00重量%以上、又は1.05重量%以上、又は1.10重量%以上、又は1.15重量%以上、又は1.20重量%以上、又は1.25重量%以上、又は1.30重量%以上、又は1.35重量%以上、又は1.40重量%以上、又は1.45重量%以上、又は1.50重量%以上、又は1.55重量%以上、又は1.60重量%以上、又は1.65重量%以上、又は1.70重量%以上、又は1.75重量%以上、又は1.80重量%以上、又は1.85重量%以上、又は1.90重量%以上、又は1.95重量%以上、一方で同時に、2.00重量%以下、又は1.95重量%以下、又は1.90重量%以下、又は1.85重量%以下、又は1.80重量%以下、又は1.75重量%以下、又は1.70重量%以下、又は1.65重量%以下、又は1.60重量%以下、又は1.55重量%以下、又は1.50重量%以下、又は1.45重量%以下、又は1.40重量%以下、又は1.35重量%以下、又は1.30重量%以下、又は1.25重量%以下、又は1.20重量%以下、又は1.15重量%以下、又は1.10重量%以下、又は1.05重量%以下、又は1.00重量%以下、又は0.95重量%以下、又は0.90重量%以下、又は0.85重量%以下、又は0.80重量%以下、又は0.75重量%以下、又は0.70重量%以下、又は0.65重量%以下、又は0.60重量%以下、又は0.55重量%以下の共重合シランを含んでもよい。エチレン-シランコポリマー中に存在する共重合されたシランの含有量は、以下でより詳細に説明されるシラン試験によって決定される。
【0031】
エチレン-シランコポリマーを作製するために使用されるシランコモノマーは、加水分解性シランモノマーであってもよい。「加水分解性シランモノマー」は、α-オレフィン(例えば、エチレン)と有効に共重合してα-オレフィン-シランコポリマー(エチレン-シラン反応器コポリマーなど)を形成するシラン含有モノマーである。加水分解性シランモノマーは、構造(I)を有し、
【0032】
【化1】

式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、xは、0又は1であり、nは、1~4、又は6、又は8、又は10、又は12の整数であり、各Rは、独立して、加水分解性有機基、例えば、1~12個の炭素原子を有するアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アラロキシ基(例えば、ベンジルオキシ)、1~12個の炭素原子を有する脂肪族アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノ基若しくは置換アミノ基(例えば、アルキルアミノ、アリールアミノ)、又は1~6個の炭素原子を有する低級アルキル基であるが、ただし、3つのR基のうちの1つ以下がアルキルであることを条件とする。加水分解性シランモノマーは、高圧プロセスなどの反応器内でα-オレフィン(エチレンなど)と共重合して、α-オレフィン-シラン反応器コポリマーを形成してもよい。α-オレフィンがエチレンである例では、そのようなコポリマーは、本明細書ではエチレン-シランコポリマーと称される。
【0033】
加水分解性シランモノマーは、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル、又はガンマ(メタ)アクリロキシアリル基などのエチレン性不飽和ヒドロカルビル基、及び例えば、ヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシ、又はヒドロカルビルアミノ基などの加水分解性基を含むシランモノマーを含んでもよい。加水分解性基は、メトキシ、エトキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロプリオニルオキシ、及びアルキル又はアリールアミノ基を含んでもよい。特定の例では、加水分解性シランモノマーは、不飽和アルコキシシランであり、これは、ポリオレフィン上にグラフト化することができるか、又は反応器内でα-オレフィン(エチレンなど)と共重合することができる。加水分解性シランモノマーの例としては、ビニルトリメトキシシラン(vinyltrimethoxysilane、「VTMS」)、ビニルトリエトキシシラン(vinyltriethoxysilane、「VTES」)、ビニルトリアセトキシシラン、及びガンマ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。構造(I)に関連して、VTMSについては、x=0、R=水素、R=メトキシであり、VTESについては、x=0、R=水素、R=エトキシであり、ビニルトリアセトキシシランについては、x=0、R=H、R=アセトキシである。
【0034】
ハロゲンフリー難燃剤マスターバッチ
上記のように、ハロゲンフリー難燃剤マスターバッチは、ハロゲンフリー難燃剤及び樹脂を含む。ポリマー組成物のハロゲンフリー難燃剤は、炎の生成を阻害、抑制、又は遅延させ得る。ポリマー組成物に使用するのに好適なハロゲンフリー難燃剤の例としては、金属水和物、金属炭酸塩、赤リン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、カーボンナノチューブ、タルク、粘土、有機改質粘土、炭酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、三酸化アンチモン、珪灰石、マイカ、オクタモリブデン酸アンモニウム、フリット、中空ガラス微小球、膨張性化合物、膨張グラファイト、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態では、ハロゲンフリー難燃剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。ハロゲンフリー難燃剤は、8~24個の炭素原子、若しくは12~18個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和カルボン酸、又はその酸の金属塩で任意選択的に表面処理(コーティング)され得る。例示的な表面処理は、米国特許第4,255,303号、米国特許第5,034,442号、米国特許第7,514,489号、米国特許出願公開第2008/0251273号、及び国際公開第2013/116283号に記載されている。代替的に、酸又は塩は、表面処理手順を使用するのではなく、単に同様の量で組成物に添加され得る。シラン、チタネート、ホスフェート、及びジルコネートを含む当該技術分野で既知の他の表面処理も使用されてもよい。
【0035】
ポリマー組成物において使用するのに好適な市販のハロゲンフリー難燃剤の例としては、Nabaltec AGから入手可能なAPYRAL(商標)40 CD水酸化アルミニウム、Magnifin Magnesiaprodukte GmbH&Co KGから入手可能なMAGNIFIN(商標)H5水酸化マグネシウム、Reverteから入手可能なMicrocarb 95T超微粉化及び処理炭酸カルシウム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の重量に基づいて、10重量%以上、又は12重量%以上、又は14重量%以上、又は16重量%以上、又は18重量%以上、又は20重量%以上、又は22重量%以上、又は24重量%以上、又は26重量%以上、又は28%以上、又は30重量%以上、又は32重量%以上、又は34重量%以上、又は36重量%以上、又は38%以上、又は40重量%以上、又は42重量%以上、又は44重量%以上、又は46重量%以上、又は48%以上、又は50重量%以上、又は52重量%以上、又は54重量%以上、又は56重量%以上、又は58%以上、又は60重量%以上、又は62重量%以上、又は64重量%以上、又は66重量%以上、又は68%以上、又は70重量%以上、又は72重量%以上、又は74重量%以上、又は76重量%以上、又は78%以上、一方で同時に、80重量%以下、又は78重量%以下、又は76重量%以下、又は74重量%以下、又は72重量%以下、又は70重量%以下、又は68重量%以下、又は66重量%以下、又は64重量%以下、又は62重量%以下、又は60重量%以下、又は58重量%以下、又は56重量%以下、又は54重量%以下、又は52重量%以下、又は50重量%以下、又は48重量%以下、又は46重量%以下、又は44重量%以下、又は42重量%以下、又は40重量%以下、又は38重量%以下、又は36重量%以下、又は34重量%以下、又は32重量%以下、又は30重量%以下、又は28重量%以下、又は26重量%以下、又は24重量%以下、又は22重量%以下、又は20重量%以下、又は18重量%以下、又は16重量%以下、又は14重量%以下、又は12重量%以下の濃度のハロゲンフリー難燃剤を含み得る。
【0037】
以下でより詳細に説明するように、HFFRは、「マスターバッチ」として、又は予め配合された材料としてエチレン-シランコポリマーに添加される。HFFRはマスターバッチの樹脂内に分散しており、1つ以上の他の化合物を含んでいてもよい。HFFRは、マスターバッチの総重量に基づいて約40重量%~90重量%でマスターバッチ内に存在し得る。例えば、HFFRは、マスターの総重量に基づいて、40重量%以上、又は42重量%以上、又は44重量%以上、又は46重量%以上、又は48%以上、又は50重量%以上、又は52重量%以上、又は54重量%以上、又は56重量%以上、又は58%以上、又は60重量%以上、又は62重量%以上、又は64重量%以上、又は66重量%以上、又は68%以上、又は70重量%以上、又は72重量%以上、又は74重量%以上、又は76重量%以上、又は78%以上、一方で同時に、80重量%以下、又は78重量%以下、又は76重量%以下、又は74重量%以下、又は72重量%以下、又は70重量%以下、又は68重量%以下、又は66重量%以下、又は64重量%以下、又は62重量%以下、又は60重量%以下、又は58重量%以下、又は56重量%以下、又は54重量%以下、又は52重量%以下、又は50重量%以下、又は48重量%以下、又は46重量%以下、又は44重量%以下、又は42重量%以下の量でマスターバッチに存在し得る。
【0038】
マスターバッチの樹脂は、HFFRが分散されている1つ以上のポリマー樹脂を含んでいてもよい。マスターバッチの好適な樹脂の一例は、エチレン-酢酸ビニルコポリマーである。エチレン-酢酸ビニルは、エチレン-酢酸ビニルの総重量に基づいて、18重量%以上、又は20重量%以上、又は22重量%以上、又は24重量%以上、又は26重量%以上、又は28重量%以上、又は30重量%以上、又は32重量%以上、又は34重量%以上、又は36重量%以上、又は38重量%以上、40重量%以上、又は42重量%以上、又は44重量%以上、又は46重量%以上、又は48重量%以上、一方で同時に、50重量%以下、又は48重量%以下、又は46重量%以下、又は44重量%以下、又は42重量%以下、又は40重量%以下、又は38重量%以下、又は36重量%以下、又は34重量%以下、又は32重量%以下、又は30重量%以下、又は28重量%以下、又は26重量%以下、又は24重量%以下、又は22重量%以下、又は20重量%以下の酢酸ビニル含有量を有し得る。マスターバッチは、マスターバッチの総重量に基づいて、20重量%以上、又は22重量%以上、又は24重量%以上、又は26重量%以上、又は28重量%以上、又は30重量%以上、又は32重量%以上、又は34重量%以上、又は36重量%以上、又は38重量%以上、40重量%以上、又は42重量%以上、又は44重量%以上、又は46重量%以上、又は48重量%以上、一方で同時に、50重量%以下、又は48重量%以下、又は46重量%以下、又は44重量%以下、又は42重量%以下、又は40重量%以下、又は38重量%以下、又は36重量%以下、又は34重量%以下、又は32重量%以下、又は30重量%以下、又は28重量%以下、又は26重量%以下、又は24重量%以下、又は22重量%以下の量の樹脂を含み得る。ポリマー組成物のための以下に記載される添加剤のいずれかがマスターバッチに含まれてもよい。
【0039】
添加剤
ポリマー組成物は、酸化防止剤、架橋助剤、硬化促進剤及びスコーチ抑制剤、加工助剤、カップリング剤、紫外線安定剤(UV吸収剤を含む)、帯電防止剤、追加の成核剤、スリップ剤、潤滑剤、粘度調整剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エクステンダオイル、酸捕捉剤、難燃剤、抗滴下剤(例えば、エチレン酢酸ビニル、シリコーンゴムなど)、並びに金属不活性化剤の形態で追加の添加剤を含み得る。ポリマー組成物は、0.01重量%~20重量%の追加の添加剤のうちの1つ以上を含み得る。
【0040】
UV光安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤(hindered amine light stabilizer、「HALS」)及びUV光吸収剤(UV light absorber、「UVA」)添加剤を含み得る。代表的なUVA添加剤には、Ciba,Inc.から市販されているTINUVIN 326(商標)光安定剤及びTINUVIN 328(商標)光安定剤などのベンゾトリアゾール型が含まれる。HAL’s添加剤及びUVA添加剤のブレンドも有効である。
【0041】
酸化防止剤は、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シンナメート)]メタンなどのヒンダードフェノール;ビス[(ベータ-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メチルカルボキシエチル)]-スルフィド、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、及びチオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)-ヒドロシンナメート;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト及びジ-tert-ブチルフェニル-ホスホナイトなどのホスファイト及びホスホナイト;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、及びジステアリルチオジプロピオネートなどのチオ化合物;様々なシロキサン;重合2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、n,n’-ビス(1,4-ジメチルペンチル-p-フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(アルファ、アルファ-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、混合ジ-アリール-p-フェニレンジアミン、及び他のヒンダードアミン劣化防止剤又は安定剤を含み得る。
【0042】
加工助剤は、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウムなどのカルボン酸の金属塩;ステアリン酸、オレイン酸、又はエルカ酸などの脂肪酸;ステアラミド、オレアミド、エルカミド、又はN,N’-エチレンビス-ステアラミドなどの脂肪アミド;ポリエチレンワックス;酸化ポリエチレンワックス;エチレンオキシドのポリマー;エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー;植物ワックス;石油ワックス;非イオン性界面活性剤;シリコーン流体及びポリシロキサンを含み得る。
【0043】
ポリマー組成物を形成する方法
ポリマー組成物の形成は、エチレン-シランコポリマーとハロゲンフリー難燃剤マスターバッチとを溶融ブレンドしてポリマー組成物を形成する工程から始まる。溶融ブレンドは、100℃以上、又は120℃以上、又は140℃以上、又は160℃以上、又は180℃以上、又は200℃以上、又は220℃以上、又は240℃以上、又は260℃以上、又は280℃以上、又は300℃以上の温度で行われてもよい。溶融ブレンドはバッチ又は連続ミキサーで行うことができ、成分は任意の順序で添加することができる。配合設備の例としては、BANBURY(商標)又はBOLLING(商標)密閉式ミキサーなどの密閉式ミキサーが挙げられる。代替的に、FARRELL(商標)連続ミキサー、WERNER(商標)及びPFLEIDERER(商標)二軸スクリューミキサー、又はBUSS(商標)混錬連続押出し機などの、連続単軸又は二軸スクリューミキサーを使用してもよい。利用するミキサーの種類、及びミキサーの動作条件は、粘度、体積抵抗率、及び押出表面平滑性などの組成物の特性に影響を及ぼす。
【0044】
エチレン-シランコポリマーとハロゲンフリー難燃剤マスターバッチとを溶融ブレンドしてポリマー組成物を形成する工程が完了した後、ポリマー組成物を複数の粒子に加工する工程が行われる。ポリマー組成物を加工する工程は、ポリマー組成物の複数の粒子を製造するペレット化、粉砕、粉末化及び/又は他の形態を含んでもよい。粒子は、0.001mm以上、又は0.01mm以上、又は0.1mm以上、又は1.0mm以上、又は2mm以上、又は3mm以上、又は4mm以上、又は5mm以上、又は6mm以上、又は7mm以上、又は8mm以上、又は9mm以上、一方で同時に、10mm以下、又は5mm以下、又は1mm以下の最長長さ寸法(すなわち、直径、長さなど)を有し得る。粒子は、回転楕円体、ディスク、バレル、フィラメント、他の形状、及びこれらの組み合わせを含む様々な形状をとってもよい。
【0045】
ポリマー組成物が複数の粒子に加工された後、縮合硬化触媒をポリマー組成物の粒子と溶融ブレンドする工程が行われる。縮合硬化触媒は、エチレン-シランコポリマーの架橋を促進する。縮合硬化触媒としては、ルイス酸及び塩基、並びにブレンステッド酸及び塩基を挙げることができる。ルイス酸は、ルイス塩基からの電子対を受け入れることができる化学種である。ルイス塩基は、電子対をルイス酸に供与することができる化学種である。好適なルイス酸の非限定的な例としては、ジブチルスズジラウレート(dibutyltin dilaurate、DBTDL)、ジメチルヒドロキシスズオレエート、ジオクチルスズマレエート、ジ-n-ブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、第一スズアセテート、第一スズオクトエートなどのカルボン酸スズ、並びにナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、及びナフテン酸コバルトなどの様々な他の有機金属化合物が挙げられる。好適なルイス塩基の非限定的な例としては、一級、二級、及び三級アミンが挙げられる。
【0046】
縮合硬化触媒をポリマー組成物と溶融ブレンドする工程が行われた後、組み合わされた縮合硬化触媒及びポリマー組成物を押出して物品を形成する工程が行われる。物品は、ストリップ、テープ、フィルム、コーティングされた導体及び/又は他の形態などの様々な形態をとることができる。物品のコーティングされた導体の例では、コーティングされた導体は、導体と、導体上のコーティングとを含み、コーティングは、ポリマー組成物を含む。ポリマー組成物は、導体の周囲に少なくとも部分的に配設されて、コーティングされた導体を製造する。コーティングされた導体物品を製造するためのプロセスは、押出し機内でポリマー組成物を混合し、かつエチレン-シランコポリマーの少なくとも溶融温度に加熱することと、次いでポリマー溶融ブレンドを導体上にコーティングすることと、を含む。「上に」という用語は、ポリマー溶融ブレンドと導体との間の直接接触又は間接接触(すなわち、1つ以上の介在層などとの)を含む。導体は、導電性又は光透過性の構造であってもよい。ポリマー組成物は、導体の上及び/又は周りに配設されて、コーティングを形成する。コーティングは、絶縁層などの1つ以上の内層であり得る。コーティングは、導体を全体的に若しくは部分的に覆うか、又はそうでなければ取り囲むか、若しくは包み得る。コーティングは、導体を取り囲む唯一の構成要素であり得る。代替的に、コーティングは、導体を包む多層外被又はシースのうちの1層であってもよい。コーティングは、導体と直接接触し得る。コーティングは、導体を取り囲む絶縁層に直接接触し得る。コーティングは、1つ以上の導体を取り囲む外被層であってもよい。
【0047】
物品が形成されると、水の存在下で物品を架橋する工程が行われる。架橋は、70℃を超える温度で行うことができる。ケーブルは、70℃以上、又は80℃以上、又は90℃以上、又は95℃以上、一方で同時に110℃以下の温度で、4時間以上、又は6時間以上、又は8時間以上硬化されてもよい。本明細書で定義される場合、「水の存在下」という用語は、水浴中又は相対湿度80%以上を有する環境中を意味すると定義される。水の存在は、縮合硬化触媒を開始させて、エチレン-シランコポリマーを架橋させる。
【実施例
【0048】
材料
SiPOは、0.922g/ccの密度、23℃で46.9重量%の結晶化度、及び1.5g/10分(190℃/2.16kg)のメルトインデックス、1.3重量%~1.7重量%のアルコキシシラン含有量を有するエチレン-シランコポリマーであり、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)からSI-LINK(商標)DFDA-5451 NTとして市販されている。
【0049】
EVA1は、28重量%の酢酸ビニルコモノマー含有量、ASTM D792に従って測定された0.95g/ccの密度、及びASTM D1238に従って測定された190℃/21.6kgで3g/10分のメルトインデックスを有するエチレン-酢酸ビニルコポリマーであり、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)からELVAX(商標)3182として市販されている。
【0050】
EVA2は、40重量%の酢酸ビニルコモノマー含有量、ASTM D792に従って測定された0.967g/ccの密度、及びASTM D1238に従って測定された190℃/21.6kgで3g/10分のメルトインデックスを有するエチレン-酢酸ビニルコポリマーであり、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)からELVAX(商標)40L-03として市販されている。
【0051】
HFFRは、水酸化マグネシウムであり、その例は、Albemarle Corporation(Charlotte,NC,USA)からMAGNIFIN(商標)H-5MVの商品名で市販されている。
【0052】
AOは、6683-19-8のCAS番号を有するテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンであり、Songwon Industrial、South Koreaから商品名SONGNOXTM 1010で市販されている。
【0053】
相溶化剤は、無水マレイン酸グラフト化エチレンビニルアセテートコポリマーであり、The Dow Chemical Company、Midland,MIからFUSABOND(商標)N493として市販されている。
【0054】
触媒は、ポリオレフィン、フェノール化合物、及びシラノール縮合触媒としての2.6重量%のジブチルスズジラウレートの触媒マスターバッチブレンドである。
【0055】
LDPEは、ASTM D792に従って測定された0.92g/ccの密度、及びASTM D1238に従って測定された190℃/21.6kgで1.7~2.1g/10分のメルトインデックスを有する低密度ポリエチレンであり、The Dow Chemical Company、Midland,Michiganから入手可能である。
【0056】
VTMSは、Momentive、Waterford,NYからSILQUEST(商標)Y-9818の商品名で入手可能なビニルトリメチルシロキサンである。
【0057】
DCPは、99重量%以上の濃度を有するジクミルペルオキシドであり、Nouryon、Amsterdam,NetherlandsからPERKADOX(商標)として入手可能である。
【0058】
試験方法
高温クリープ:試料の高温クリープは、ICEA T-28-562に従って測定される。
【0059】
引張弾性率:引張弾性率は、ASTM D638に従って測定される。
【0060】
破断点伸び:破断点伸びは、ASTM D638に従って測定される。
【0061】
試料の調製
試料は、3つの異なる混合方法のうちの1つに従って調製した。3つの混合方法は、本発明の方法及び2つの比較方法を含む。本発明の方法から製造された試料は本発明の実施例(inventive example、「IE」)であり、比較方法から製造された試料は比較例(comparative example、「CE」)である。
【0062】
本発明の方法1では、水分架橋性HFFR配合物A及びBを、エチレン-シランコポリマーをHFFR化合物/マスターバッチとブレンドする本発明の方法に従って調製した。HFFRマスターバッチ組成物を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
HFFRマスターバッチを、BRABENDER(商標)混合ボウル内で調製し、ここで材料を150℃で15分間、30回転/分(revolutions per minute、「RPM」)のローター速度で混合し、次いでバッチを排出し、冷却し、次いで造粒した。マスターバッチは、テープを押出し、表面平滑性を視覚的に検査することによって分散品質について評価した。このテープを、19mmのBRABENDER(商標)押出し機で、バレルプロファイルが160℃、170℃、180℃であり、溶融温度が180℃未満である、スクリーンパックのないポリエチレンスクリューを用いて押出した。厚さ0.51mmのテープを作製し、分散の指標であるその平滑性は許容可能であるとみなした。
【0065】
次いで、マスターバッチ(MB-1、MB-2)をシラン-エチレンコポリマーとBRABENDER(商標)混合ボウル内で150℃で15分間、30RPMのローター速度で混合して、表2に提供されるような水分架橋性HFFR配合物A及びBを生成した。次いで、水分架橋性HFFR製剤をミキサーから取り出し、冷却し、次いで造粒した。
【0066】
【表2】
【0067】
IE1及びIE2を製造するために、架橋性配合物A及びBを表3に示すように触媒とドライブレンドした。
【0068】
【表3】
【0069】
ドライブレンドの前に、架橋性配合物A及びBを60℃のオーブン中で一晩乾燥させた。ドライブレンドした混合物を、160℃、170℃、180℃のバレルプロファイルを用いて、60メッシュスクリーンパックを有するポリエチレン/マドック混合スクリューを備えた19mmのBRABENDER(商標)押出し機で、180℃未満の溶融温度で押出した。1.778mmのダイ開口部を使用したが、特性試験のためにテープを1.27mmの厚さにドローダウンした。テープの品質を検査したところ、スコーチの兆候は見られなかった。テープを90℃の水浴中で8時間硬化させた。
【0070】
比較方法2では、水分架橋性HFFR配合物C及びDを、BRABENDER(商標)混合ボウル内で、表4の全ての成分を単一工程で配合することによって調製した。
【0071】
【表4】
【0072】
エチレン-シランコポリマー、EVAポリマー、HFFR及び他の添加剤をBRABENDER(商標)ミキサーに添加し、次いで150℃で15分間、30RPMのローター速度で混合した。バッチをミキサーから取り出し、冷却し、次いで造粒した。架橋性配合物は、テープを押出し、表面平滑性を視覚的に検査することによって分散品質について評価した。このテープを、19mmのBRABENDER(商標)押出し機で、バレルプロファイルが160℃、170℃、180℃であり、溶融温度が180℃未満である、スクリーンパックのないポリエチレンスクリューを用いて押出した。厚さ0.508mmのテープを作製し、その平滑性は許容可能であるとみなされた。
【0073】
第1の比較方法によってCE1及びCE2を製造するために、架橋性配合物C及びDを、表5による架橋触媒とドライブレンドした。
【0074】
【表5】
【0075】
ドライブレンドの前に、架橋性配合物C及びDを60℃のオーブン中で一晩乾燥させた。ドライブレンドした混合物を、160℃、170℃、180℃のバレルプロファイルを用いて、60メッシュスクリーンパックを有するポリエチレン/マドック混合スクリューを備えた19mmのBRABENDER(商標)押出し機で、180℃未満の溶融温度で押出した。1.778mmのダイ開口部を使用したが、特性試験のためにテープを1.27mmの厚さにドローダウンした。テープの品質を検査したところ、スコーチの兆候は見られなかった。テープを90℃の水浴中で8時間硬化させた。
【0076】
比較方法2では、CE3及びCE4を調製するために、シラングラフト化ポリエチレン(silane grafted polyethylene、「Si-g-PE」)を生成した。Si-g-PEは、98重量%のLDPE、1.82重量%のVTMS及び0.18重量%のDCPの濃度を有していた。VTMSのLDPEへのグラフト化は、最初にLDPEを溶融し、VTMS及びDCP材料を添加し、190℃で30RPMのローター速度で3~5分間混合することによって行った。次に、バッチ温度を10RPMのローター速度で150℃に下げた。HFFRを他の添加剤と共に、表6に示すようにSi-g-PEポリマー中に配合して、架橋性配合物E及びFを形成した。
【0077】
【表6】
【0078】
架橋性配合物E及びFの混合は、BRABENDER(商標)混合ボウル内で実行した。材料を190℃で15分間、30RPMのローター速度で混合した。次いで、バッチを取り出し、平らにプレスし、冷却し、造粒した。次いで、押出されたテープを目視検査することによって、架橋性配合物の分散を評価した。このテープを、19mmのBRABENDER(商標)押出し機で、バレルプロファイルが160℃、170℃、180℃であり、溶融温度が180℃未満である、スクリーンパックのないポリエチレンスクリューを用いて押出した。厚さ0.508mmのテープを作製し、その平滑性は許容可能であるとみなされた。
【0079】
比較混合プロセス2を介してCE3及びCE4を製造するために、架橋性配合物E及びFを、表7に示されるように、造粒された架橋性材料を架橋触媒とドライブレンド混合することによって架橋した。
【0080】
【表7】
【0081】
ドライブレンドの前に、架橋性配合物E及びFを60℃のオーブン中で一晩乾燥させた。ドライブレンドした混合物を、160℃、170℃、180℃のバレルプロファイルを用いて、60メッシュスクリーンパックを有するポリエチレン/マドック混合スクリューを備えた19mmのBRABENDER(商標)押出し機で、180℃未満の溶融温度で押出した。1.778mmのダイ開口部を使用したが、特性試験のためにテープを1.27mmの厚さにドローダウンした。テープの品質を検査したところ、スコーチの兆候は見られなかった。テープを90℃の水浴中で8時間硬化させた。
【0082】
機械的特性試験のために、「ドッグボーン」試験片をダイカットすることによって、本発明及び比較例のそれぞれの試験片をテープから調製した。
【0083】
結果
IE1、IE2、及びCE1~CE4の特性の測定値を以下の表8に提供する。
【0084】
【表8】
【0085】
表8から自明であるように、本発明の方法を利用することにより、ICEA T-28-562に従って測定して50%以下の高温クリープ伸び、ASTM D638に従って測定して9mPa以上の未時効引張弾性率、及びASTM D638に従って測定して150%以上の破断点伸びを達成する試料(すなわち、IE1及びIE2)が製造される。IE1及びIE2は、比較例と比較して、架橋性能が増加しているので(すなわち、より低い高温クリープ値並びにより良好な引張特性及び伸び特性によって示されるように)、これらの特性を達成することができる。IE1及びIE2とは対照的に、CE1及びCE2から、全ての材料を一度に混合すると、高温クリープ伸びが50%を超えることによって実証されるように、許容できないほど低い硬化につながることが分かる。CE3及びCE4は、シラングラフト化エチレンポリマーの使用が、許容できないほど低い硬化及び所望の特性をはるかに下回る破断点伸びをもたらすことを実証する。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物を形成する方法であって、
エチレン-シランコポリマーと、エチレン酢酸ビニルコポリマー中に分散されたハロゲンフリー難燃剤を含むハロゲンフリー難燃剤マスターバッチとを溶融ブレンドして前記ポリマー組成物を形成する工程であって、前記エチレン-シランコポリマーが、エチレン及びビニルトリメトキシシランから誘導された単位のランダムコポリマーであり、更に前記コポリマーが、前記エチレン-シランコポリマーの総重量に基づいて0.5重量%~2重量%未満のビニルトリメトキシシラン含有量を有する、形成する工程と、
前記ポリマー組成物を複数の粒子に加工する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
縮合硬化触媒を前記ポリマー組成物の前記粒子と溶融ブレンドする工程と、
組み合わされた前記縮合硬化触媒及び前記ポリマー組成物を押出して、物品を形成する工程と、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水の存在下で前記物品を架橋する工程を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マスターバッチが、前記ハロゲンフリー難燃剤マスターバッチの総重量に基づいて20重量%~50重量%のエチレン酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
エチレン-シランコポリマーと1つ以上のハロゲンフリー難燃剤とを溶融ブレンドして前記ポリマー組成物を形成する前記工程が、100℃以上の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コポリマーが、前記エチレン-シランコポリマーの総重量に基づいて1.2重量%~2.0重量%のビニルトリメトキシシラン含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ハロゲンフリー難燃剤が、金属水酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エチレン-シランコポリマーと前記ハロゲンフリー難燃剤とを溶融ブレンドして前記ポリマー組成物を形成する前記工程が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて30重量%以上のエチレン-シランコポリマーを用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記エチレン-シランコポリマーと前記ハロゲンフリー難燃剤とを溶融ブレンドして前記ポリマー組成物を形成する前記工程が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%以上のハロゲンフリー難燃剤を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて30重量%~70重量%の前記エチレン-シランコポリマーと、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%~50重量%の前記ハロゲンフリー難燃剤とを含む、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】