(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】畜殺動物を動物に好ましく安価に麻酔するための麻酔装置および方法
(51)【国際特許分類】
A22B 3/00 20060101AFI20240905BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20240905BHJP
A22B 7/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A22B3/00
B01D53/22
A22B7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514619
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2022074423
(87)【国際公開番号】W WO2023031382
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】102021122996.0
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524084481
【氏名又は名称】ベルント-テニース-シュティフトゥング ケアオブ ゲーケ アンド パートナー
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テニース ロベルト
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006PA01
4D006PB63
4D006PB64
4D006PB70
4D006PC41
(57)【要約】
本発明は、予備麻酔ガス(14)と最終麻酔ガス(16)とを用いて畜殺動物(12)を2段階麻酔するための麻酔装置(10)に関し、麻酔装置(10)は、畜殺動物(12)を麻酔するガス雰囲気を提供するための入口(20)および出口(22)を備えた麻酔管(18)と、麻酔管(18)内を移動し、麻酔管(18)を通して搬送方向(48)に入口(20)から出口(22)へ畜殺動物(12)を搬送する搬送装置(46)と、予備麻酔ガス(14)を麻酔管(18)内に供給する予備麻酔ガス供給部(28)と、最終麻酔ガス(16)を麻酔管(18)内に供給する最終麻酔ガス供給部(32)と、搬送方向(48)で予備麻酔ガス供給部(28)と最終麻酔ガス供給部(32)との間に配置され、ガス雰囲気を麻酔管(18)から排出するガス排出部(36)と、ガス排出部(36)と接続する、予備麻酔ガス(14)および/または最終麻酔ガス(16)の回収装置(44)と、を備える。本発明は、更に、上記麻酔装置(10)を使用して畜殺動物(12)を麻酔する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備麻酔ガス(14)と最終麻酔ガス(16)とを用いて畜殺動物(12)を2段階麻酔するための麻酔装置(10)であって、
畜殺動物(12)を麻酔するガス雰囲気を提供するための入口(20)および出口(22)を備えた麻酔管(18)と、
前記麻酔管(18)内を移動し、前記麻酔管(18)を通して搬送方向(48)に前記入口(20)から前記出口(22)へ前記畜殺動物(12)を搬送する搬送装置(46)と、
前記予備麻酔ガス(14)を前記麻酔管(18)内に供給する予備麻酔ガス供給部(28)と、
前記最終麻酔ガス(16)を前記麻酔管(18)内に供給する最終麻酔ガス供給部(32)と、
搬送方向(48)で前記予備麻酔ガス供給部(28)と前記最終麻酔ガス供給部(32)との間に配置され、前記ガス雰囲気を前記麻酔管(18)から排出するガス排出部(36)と、
前記ガス排出部(36)と接続する、前記予備麻酔ガス(14)および/または前記最終麻酔ガス(16)の回収装置(44)と、を備えた麻酔装置(10)。
【請求項2】
前記麻酔管(18)の第1部分(30)に、主に前記予備麻酔ガス(14)から形成されるガス雰囲気を提供でき、搬送方向(48)に直接接続する前記麻酔管(18)の第2部分(34)に、主に前記最終麻酔ガス(16)から形成されるガス雰囲気を提供でき、前記第1部分(30)および/または前記第2部分(34)内に、前記ガス排出部(36)へのガス移動(38、42)が起こるガス雰囲気を提供できるように前記麻酔装置(10)が設けられる、請求項1に記載の麻酔装置(10)。
【請求項3】
前記麻酔管(18)の第1領域(30)では前記ガス雰囲気のガス移動(38)が搬送方向(48)に提供可能であり、搬送方向(48)に直接接続する前記麻酔管の第2領域(40)では前記ガス雰囲気のガス移動(42)が前記搬送方向(48)とは逆方向に提供可能であるように前記麻酔装置(10)が設けられる、請求項1または2に記載の麻酔装置(10)。
【請求項4】
前記予備麻酔ガス(14)が空気より小さい密度を有する、および/または前記予備麻酔ガス(14)がヘリウムである、および/または前記最終麻酔ガス(16)が窒素および/または二酸化炭素である、請求項1~3のいずれか一項に記載の麻酔装置(10)。
【請求項5】
前記回収装置(44)がヘリウム回収装置である、および/または薄膜を用いたガス分離を行うように形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の麻酔装置(10)。
【請求項6】
前記回収装置(44)が前記予備麻酔ガス供給部(28)および/または前記最終麻酔ガス供給部(32)と接続している、請求項1~5のいずれか一項に記載の麻酔装置(10)。
【請求項7】
前記麻酔管(18)が、前記ガス排出部(36)の領域に、主に前記予備麻酔ガス(14)から形成されるガス雰囲気と、主に前記最終麻酔ガス(16)から形成されるガス雰囲気との混合を減少させる分離装置を備えて形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の麻酔装置(10)。
【請求項8】
前記予備麻酔ガス供給部(28)が前記最終麻酔ガス供給部(32)より高い位置にある、および/または前記予備麻酔ガス供給部(28)が前記ガス排出部(36)より高い位置にある、および/または前記ガス排出部(36)が前記最終麻酔ガス供給部(32)と同じかまたはそれより高い位置にある、請求項1~7のいずれか一項に記載の麻酔装置(10)。
【請求項9】
前記予備麻酔ガス供給部(28)、前記最終麻酔ガス供給部(32)および前記ガス排出部(36)が、前記入口(20)および/または前記出口(22)における前記麻酔管(18)内の圧力が周囲圧力より低いように互いに適合される、請求項1~8のいずれか一項に記載の麻酔装置(10)。
【請求項10】
-1頭または複数頭の畜殺動物(12)を、麻酔装置(10)の麻酔管(18)内を移動する搬送装置(46)上に提供するステップと、
-前記搬送装置(46)上に提供された前記1頭または複数頭の畜殺動物(12)を、前記搬送装置(46)により前記麻酔管(12)を通して搬送するステップであって、前記1頭または複数頭の畜殺動物(12)は、予備麻酔ガス(12)に基づいて予備麻酔された状態で、前記麻酔管(18)の領域(40)を通して導かれ、前記領域(40)においては、ガス雰囲気が前記予備麻酔ガス(14)とは異なる最終麻酔ガス(16)により本質的に形成され、且つ前記ガス雰囲気が回収装置(44)に接続されたガス排出部(36)へガス移動(42)する、ステップと、
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の麻酔装置(10)を用いた畜殺動物(12)の麻酔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜殺動物を麻酔するガス雰囲気を提供するための入口および出口を備えた麻酔管を含む、畜殺動物を予備麻酔ガスと最終麻酔ガスとを用いて2段階麻酔するための麻酔装置に関する。
【0002】
本発明は、さらに、畜殺動物を、特に上述の麻酔装置を用いて麻酔する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1から畜殺動物、特に豚を麻酔する方法および装置が公知であり、ここでは、畜殺動物が第1のガスを含有する第1の環境を通して運ばれ、予備麻酔され、それから第2のガスを含有する第2の環境を通して運ばれ、このとき、第1のガスは第2のガスおよび空気とは異なる密度を有する。畜殺動物の予備麻酔および最終麻酔を適切に行うために、特許文献1は、畜殺動物をゴンドラとして形成された収容部に追い入れることと、畜殺動物を含む収容部を第1の環境を通してまず初めに上方へ、それから下方へ、さらに第2の環境を通して運ぶことを提案していて、このとき、第1のガスとしては空気より小さい密度のガスが、第2のガスとしては空気より大きい密度のガスが使用される。
【0004】
第1の環境および第2の環境内でゴンドラによって引き起こされる大気の乱れによってそれぞれのガスがあまり移動しないように、この2つの環境は垂直方向に部分的に互いに重なるように配置されているので、高さのある装置は大容量且つ高価に設けられている。
【0005】
特許文献2は、ガスを用いた鳥類の、麻酔または屠殺などの処理のための方法および設備を記述している。ガスは、他の成分以外に酸素と二酸化炭素とを含む。装置内で鳥類は、ベルトコンベヤを含むことができる1つのチャンバ内でガスに曝され、このチャンバはさらに3つの処理区域に分かれている。
【0006】
特許文献3は、ガスを用いて畜殺するために動物に麻酔をかける改善された方法および改善された装置に関し、ここでは麻酔をかけるための動物は、ガスが充満した麻酔室を通して運ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第2617288号
【特許文献2】国際公開第98/31231号
【特許文献3】独国特許出願第69715459号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
畜殺動物を畜殺前に動物に好ましく安価に麻酔するという恒常的な必要性が生じる。
【0009】
本発明の目的は、畜殺動物の、動物に好ましく安価な麻酔を可能にする措置を明示することにある。特に、本発明の目的は、麻酔のために使用されるガスの損失を減らす措置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立特許請求項の特徴によって実現される。好ましい発展形態が従属請求項から明らかになる。
【0011】
本発明にしたがって、予備麻酔ガスと最終麻酔ガスとを用いて畜殺動物を2段階麻酔するための麻酔装置が提供され、これは、畜殺動物を麻酔するガス雰囲気を提供するための入口および出口を備えた麻酔管と、麻酔管内を移動し、麻酔管を通して搬送方向に入口から出口へ畜殺動物を搬送する搬送装置と、予備麻酔ガスを麻酔管内に供給する予備麻酔ガス供給部と、最終麻酔ガスを麻酔管内に供給する最終麻酔ガス供給部と、搬送方向で予備麻酔ガス供給部と最終麻酔ガス供給部との間に配置され、ガス雰囲気を麻酔管から排出するガス排出部と、ガス排出部と接続する予備麻酔ガスおよび/または最終麻酔ガスの回収装置とを含む。
【0012】
本発明の一形態は、麻酔管を静止ガス雰囲気によって仕上げるのではなく、予備麻酔ガス供給部、最終麻酔ガス供給部および予備麻酔ガス供給部と最終麻酔ガス供給部との間に配置されたガス排出部を用いて麻酔管内に移動し易いガス雰囲気を提供し、予備麻酔ガスおよび/または最終麻酔ガスの回収のためにガス排出部を回収装置と接続させることである。予備麻酔ガスのための回収装置が好ましく、予備麻酔ガスおよび最終麻酔ガスのための回収装置がさらに好ましい。回収は、麻酔管内で使用した予備麻酔ガスおよび/または最終麻酔ガスを麻酔管から排出されたガス混合物から分離できるようにする。そのようにして、予備麻酔ガスおよび/または最終麻酔ガスの損失、および好ましくは予備麻酔ガスの損失が減らされ、麻酔装置を非常に安価に稼動できるようになる。さらに、予備麻酔ガス供給部、最終麻酔ガス供給部およびガス排出部により生じる少量のガス移動により、麻酔管が比較的大きな構造上の自由度を有することになるので、予備麻酔ガスから提供されたガス雰囲気と最終麻酔ガスから提供されたガス雰囲気とを垂直方向に部分的に互いに重なるように配置するように麻酔管を仕上げることを省略できる。それに応じて、この麻酔装置では、畜殺操業場内に麻酔装置に適した設立場所を見つけることがより容易になる。さらに、麻酔装置の製造コストおよび実装コストが少なくて済む。
【0013】
麻酔管は、好ましくは内壁を有し、そのようにして畜殺動物に麻酔するガス雰囲気を維持できる容積を提供する。入口および出口、ならびに予備麻酔ガス供給部、最終麻酔ガス供給部およびガス排出部を通すように設けられた開口の他に、麻酔管および/または麻酔管の内壁は、好ましくはさらなる開口を有さない。さらに、麻酔管の内壁は、好ましくは気密に設けられる。このことは、予備麻酔ガスおよび/または最終麻酔ガスの損失をさらに減らす。麻酔管の開口、則ち入口および出口、および特に予備麻酔ガス供給部、最終麻酔ガス供給部およびガス排出部の開口は閉鎖可能に仕上げることができる。好ましくは、予備麻酔ガス供給部、最終麻酔ガス供給部およびガス排出部の開口には制御可能な弁が備わっている。そのようにして、目標に向け且つ必要に応じて麻酔管内の少量のガス移動を制御できる。入口および/または出口に、さらに好ましくは、例えば帯状カーテンおよび/または産業用カーテンのような可撓性分離装置を備えることができる。これは、予備麻酔ガスおよび/または最終麻酔ガスの損失をさらに減らす。
【0014】
畜殺動物は、基本的にはあらゆる畜殺動物で有り得る。例えば哺乳動物および鳥類、例えば(家畜の)豚、牛、羊、山羊、馬、鶏、ガチョウ、七面鳥、ウサギ、カイウサギ、鹿、鳥、バイソン、トナカイであり、しかしながら、カンガルーなどの有袋類、および/または例えばワニまたはアリゲーターなどのトカゲ類でもある。畜殺動物は、好ましくは豚である。
【0015】
搬送装置は、1頭または複数頭の畜殺動物を麻酔管を通して入口から出口へ搬送するように設けられている。搬送装置は、連続ベルトコンベヤもしくは不連続ベルトコンベヤまたは不連続ベルトコンベヤおよび連続ベルトコンベヤの並列として仕上げることができる。特に、群棲動物および/または集団動物の場合、個々に麻酔管内へ入れないならば、畜殺動物を落ち着かせることができる。好ましくは、搬送装置が複数の畜殺動物を搬送するように設けられている。豚を畜殺動物とした場合には、搬送装置は、好ましくは6頭~15頭の豚を搬送するように設けられている。
【0016】
本発明の好ましい一発展形態によると、麻酔管の第1部分に、主に予備麻酔ガスから形成されるガス雰囲気を提供でき、搬送方向に直接接続する麻酔管の第2部分に、主に最終麻酔ガスから形成されるガス雰囲気を提供でき、第1部分および/または第2部分内に、ガス排出部へのガス移動が起こるガス雰囲気を提供できるように麻酔装置が設けられるようになっている。言い換えると、好ましくは、麻酔装置を稼動する場合に、麻酔管の第1部分には、主に予備麻酔ガスから形成されるガス雰囲気が存在し、搬送方向に直接接続する麻酔管の第2部分には、主に最終麻酔ガスから形成されるガス雰囲気が存在し、第1部分および/または第2部分内に、ガス排出部へのガス雰囲気のガス移動が存在するようになっている。主に予備麻酔ガスから形成されるガス雰囲気は、ここでは95体積%以上が予備麻酔ガスから形成され、その酸素含有量が1体積%未満のガス雰囲気と理解される。これに類似して、ここでは主に最終麻酔ガスから形成されるガス雰囲気は、95体積%以上が最終麻酔ガスから形成され、その酸素含有量が1体積%未満のガス雰囲気と理解される。好ましくは、さらに第1部分および第2部分内に、ガス排出部へのガス雰囲気のガス移動が存在する。予備麻酔ガスおよび最終麻酔ガスは、好ましくは2つの互いに化学的に異なるガス、またはガス混合物である。
【0017】
この2つの、搬送方向に互いに直接接続する部分が、予備麻酔ガスにより予備麻酔された状態の畜殺動物が最終麻酔ガスを含む麻酔管の部分を通過できるようにする。麻酔状態の畜殺動物は引き続き呼吸するので、第1部分内で畜殺動物により吸い込まれた予備麻酔ガスは、第2部分内で畜殺動物の呼吸運動により畜殺動物の肺から吐き出される。ガス排出部へのガス雰囲気のガス移動により、第2部分内で畜殺動物により吐き出された予備麻酔ガスも回収装置に運ばれることになる。そのようにして、予備麻酔ガスの損失が殊の外小さくなる。
【0018】
搬送方向で第1のガス雰囲気が主に予備麻酔ガスから形成され、これに直接接続するガス雰囲気が主に最終麻酔ガスから形成されている、異なるガス雰囲気を有する、搬送方向に互いに直接接続する部分に基づいて、さらに畜殺動物の麻酔および畜殺を動物に好ましく且つ丁重に行うことができる。予備麻酔部分内の予備麻酔は、出来る限り動物に好ましく麻酔する目的で行うことができ、特にここでは予備麻酔ガスとしてヘリウムおよび/またはアルゴンが使用され、その際畜殺動物は、通常ストレスに起因する拒絶反応を示すことなく、平穏に寝入ることができる。さらに、そのような予備麻酔ガスでは、畜殺動物のストレス反応に基づく食肉品質の低下を懸念しなくてよい。第2部分、最終麻酔部分内では、時間的にその後で畜殺動物の最終麻酔が行われ、その際最終麻酔ガス、例えば窒素またはCO2が使用され、これは、後に続く畜殺および解体のための畜殺動物を出来る限りストレス無く痛み無しに畜殺するために十分な深さと十分な長さで麻酔する目的で選択することができる。屠殺および畜殺直前の畜殺動物のストレス作用による食肉品質の低下は、そのようにして避けられる。予備麻酔を行うことによって、予備麻酔無しでは畜殺動物の拒絶反応またはその他のストレス反応が予想される麻酔剤を最終麻酔ガスとして選択することが可能になる。最終麻酔ガスも、畜殺動物の食肉品質の低下を懸念しなくてよいように選択することができる。ほぼ拒絶反応を引き起こさない予備麻酔ガスを用いた予備麻酔によって、さらに、畜殺動物をほとんど痛み無く、動物に好ましく、正当なやり方で丁重に麻酔し、続いて、麻酔自体により、例えば極端なストレス反応による畜殺動物の屠殺を懸念することなく屠殺することが可能になる。そのことから、近代的な解釈によるハラル基準にしたがった畜殺動物の畜殺さえ可能になる。
【0019】
本発明のさらなる好ましい一発展形態によると、麻酔管の第1領域ではガス雰囲気のガス移動が搬送方向に提供可能であり、搬送方向に直接接続する麻酔管の第2領域ではガス雰囲気のガス移動が搬送方向とは逆方向に提供可能であるように麻酔装置が設けられるようになっている。言い換えると、好ましくは、麻酔装置を稼動する場合に、麻酔管の第1領域には、ガス雰囲気の、搬送方向のガス移動が存在し、搬送方向に直接接続する麻酔管の第2領域には、ガス雰囲気の、搬送方向とは逆方向のガス移動が存在するようになっている。さらに好ましくは、ガス雰囲気の、搬送方向のガス移動が存在する麻酔管の第1領域は予備麻酔部分であり、そのことから第1領域には主に予備麻酔ガスから形成されるガス雰囲気も存在するようになっている。さらに好ましくは、第1領域およびそれに応じて予備麻酔部分が予備麻酔ガス供給部からガス排出部へ延在している。好ましくは、麻酔管の最終麻酔部分が第1領域および/または予備麻酔部分に直接接続している。最終麻酔部分には、好ましくは、主に最終麻酔ガスから形成されるガス雰囲気が存在する。さらに好ましくは、さらに、最終麻酔部分の少なくとも一部にガス雰囲気の、搬送方向とは逆方向のガス移動が存在するようになっている。言い換えると、好ましくは、搬送方向とは逆方向のガス移動を含む第2領域が少なくとも最終麻酔部分の一部に亘り延在するようになっている。
【0020】
麻酔ガスと関連して、好ましい一発展形態によると、予備麻酔ガスが空気より小さい密度を有する、および/または予備麻酔ガスがヘリウムである、および/または最終麻酔ガスが窒素および/または二酸化炭素であるようになっている。ヘリウムは、アルゴンに比べて予備麻酔ガスとして、食肉品質が改善されているという長所を有する。好ましくは、最終麻酔ガスは窒素である。窒素は、二酸化炭素に比べて空気に対する密度差がより小さいので、窒素が麻酔管から漏れ出てしまう場合に、地上近くの層に最終麻酔ガスが集まり、麻酔装置で作業している人の作業安全性を損なう危険が二酸化炭素に比べて減少する。
【0021】
回収装置と関連して、好ましい一発展形態によると、回収装置はヘリウム回収装置である、および/または薄膜を用いたガス分離を行うように形成されているようになっている。ヘリウムは、最も小さく最も軽い希ガスとして高さ100kmを超える大気圏内に分解を増しながら存在し、宇宙空間の400kmを超える高さへ逃れ去っている。地上のヘリウムの、天然ガスからおよび少量の石油からの補充は限られていて、さらに、価格高騰に反映される激しい変動を受けるため、ヘリウムの回収は、麻酔装置の稼動コストを低く安定させることを可能にする。基本的には、ヘリウムを回収するための複数の可能性がある。ヘリウム回収装置は、例えば、低温での気体の液化によりヘリウムを他のガスから分離する低温技術装置として形成することができる。もっとも、好ましくは、回収装置および特にヘリウム回収装置が薄膜によりガス分離を行うように形成されているようになっている。薄膜によるヘリウム回収は、低温条件を必要としないので、それに応じて冷却コストが省略されるという長所を有する。好ましくは、回収装置は2段階薄膜プロセスであり、さらに好ましくはヘリウム-圧力交換吸着装置と組み合わせることができる。
【0022】
基本的には、予備麻酔ガス供給部および/または最終麻酔ガス供給部がそれぞれ予備麻酔ガスあるいは最終麻酔ガス用の予備麻酔タンクと接続できる。それに応じて、予備麻酔ガス供給部は予備麻酔ガスを予備麻酔タンクから麻酔管に供給し、および/または最終麻酔ガス供給部は最終麻酔ガスを予備麻酔タンクから麻酔管に供給することができる。予備麻酔タンクおよび/または最終麻酔タンクは、連続的または断続的に補充され得る。この関連で、本発明のさらなる一発展形態によると、回収装置が予備麻酔ガス供給部および/または最終麻酔ガス供給部と接続しているようになっている。言い換えると、好ましくは回収装置から回収および/または再処理された予備麻酔ガスが直接予備麻酔ガス供給部のために使用され、そのようにして連続補充が可能となる。同じように、回収装置から回収および/または再処理された最終麻酔ガスが最終麻酔ガス供給部のために使用されるようになっている。そのようにして、予備麻酔タンクおよび/または最終麻酔タンクの手動交換が省略されるので、稼動技術的な整備の少ない循環プロセスを利用できる。
【0023】
さらに、本発明の好ましい一発展形態によると、麻酔管がガス排出部領域に、主に予備麻酔ガスから形成されるガス雰囲気と、主に最終麻酔ガスから形成されるガス雰囲気との混合を減少させる分離装置を備えて形成されるようになっている。好ましくは、分離装置は帯状カーテンおよび/または産業用カーテンである。これは、好ましくは予備麻酔部分から最終麻酔部分への移行部に配置されている。この関連で、好ましくは、ガス排出部がガス混合を減少させるために搬送方向で分離装置の前方に、および搬送方向で分離装置の後方にガスを排出するようになっている。さらに、ガス排出部が搬送方向で分離装置の前方に、および搬送方向で分離装置の後方にガスを排出し、回収装置内の2つのガス流は予備麻酔ガスおよび最終麻酔ガスの濃度が異なることから別々に処理できるようになっている。
【0024】
本発明の好ましい一発展形態によると、特に、予備麻酔ガスとして使用される、空気より小さい密度のガスに関連して、麻酔管が、入口と出口の間に、麻酔管の入口および/または出口より高い位置にある領域を有するようになっている。好ましくは、予備麻酔部分がより高い領域にある。さらに好ましくは、入口および出口がほぼ同じ高さにあり、より高い領域が入口および/または出口より高く、好ましくはおよそ4メートル高くにある。さらに好ましくは、麻酔管が反転した略「U」字形の形状を有する。より高い領域は、予備麻酔部分で使用された、好ましくは空気より小さい密度の予備麻酔ガスが、より小さい密度に基づいてより高い領域にすでに集まっているという長所を有する。そのようにして、予備麻酔部分内の予備麻酔雰囲気の提供が容易になる。
【0025】
この関連で、本発明の好ましい一発展形態によると、麻酔管が入口に続いて、搬送方向で上方へ延在する供給部分を有するようになっている。好ましくは、供給部分は垂直に上方へ延在している。言い換えると、供給部分は、好ましくは入口を好ましくはより高くにある予備麻酔部分に接続する。さらに好ましくは、供給部分が搬送方向で予備麻酔部分の直前にあるようになっている。さらにこの関連で、好ましくは、供給部分内の入口領域には畜殺動物を麻酔するガス雰囲気が存在しないようになっている。このことは、そのようにして畜殺動物が自主的に麻酔管の入口内へ走り込むことができるので、この畜殺動物または複数の畜殺動物の麻酔管内への運び入れを容易にする。
【0026】
さらにこの関連で、麻酔管の入口に直接窒素層を生成する引渡手段を設けることができる。引渡手段は、例えば窒素カートリッジを有するかまたはそのような窒素源に接続することができる。畜殺動物が引渡手段により生成した窒素層を通って移動すると、畜殺動物は少なくとも短時間、畜殺動物では低酸素症を招き得る、呼吸気内が上昇した窒素濃度に曝される。この低酸素症は、すでに数秒後には畜殺動物の軽い意識障害と落ち着いた眠りを招くことができる。好ましくは、入口領域内の非麻酔のガス雰囲気は周囲の空気に比べて減少した酸素濃度を有し、すでに畜殺動物を落ち着かせることができる。
【0027】
搬送装置と関連して、さらなる好ましい一発展形態によると、麻酔管の供給部分内を移動する搬送装置は垂直調整可能な搬送ベルトとして形成されるようになっている。ロープまたは鎖に懸架されていて、そのようにして垂直方向に調整可能である搬送ベルトが好ましい。さらに好ましくは、垂直方向に調整可能な搬送ベルトが、水平線に沿った運搬運動もできるように形成されている。特に群棲動物および/または集団動物の場合、個別にではなく麻酔管内へ入れられる場合には畜殺動物を落ち着かせることができる。この関連で、好ましくは、垂直方向に調整可能な搬送ベルトが複数の畜殺動物、豚の場合およそ6~15頭の豚を捕捉するようになっている。
【0028】
好ましくは、供給部分は、その入口を好ましくはより高い位置にある予備麻酔部分に接続する。それに応じて垂直方向に調整可能な搬送ベルトが、好ましくは畜殺動物を、入口領域内に存在する、畜殺動物を麻酔しないガス雰囲気から麻酔管の予備麻酔部分内の好ましくはより高い位置にある予備麻酔雰囲気へ搬送する。供給部分内で搬送装置を垂直方向に調整する場合に、空気吸い上げ作用、および畜殺動物を麻酔しないガス雰囲気と畜殺動物を麻酔する予備麻酔雰囲気との混合を回避するために、供給部分内で使用される搬送装置および好ましくは垂直方向に調整可能な搬送ベルトはガスを透過するように形成されている。
【0029】
好ましくは、供給部分内で使用される搬送装置、好ましくは垂直方向に調整可能な搬送ベルトは、穴を付けた床を有するようになっている。そのようにして、搬送装置を垂直方向に調整する場合に、ガスが穴を付けた床を、特にほとんど有意な流れの抵抗なく通ることができる。床に設けられた穴は、特に畜殺動物がこの穴を付けた床上を自主的に走ることができるほど小さく形成された開口を有する。それと同時に、開口の開口断面の合計は、垂直方向の調整の場合に、仮にではあるが、万一の場合に、背圧を無視できるほど十分な大きさである。
【0030】
さらに、好ましくは、この関連で、予備麻酔部分および最終麻酔部分内を移動する搬送装置がコンベヤベルトとして形成されるようになっている。このことは、予備麻酔および最終麻酔された畜殺動物の麻酔管を通る容易な輸送を可能にする。言い換えると、供給部分内で使用される搬送装置が好ましくは垂直方向に調整可能な搬送ベルトとして形成され、予備麻酔部分および最終麻酔部分内を移動する搬送装置がコンベヤベルトとして形成される。そのようにして、畜殺動物は垂直方向に調整可能な搬送ベルトによって供給部分内を運ばれ、その搬送ベルトおよびそれに続くコンベヤベルトの運搬運動によって畜殺動物は麻酔管内を搬送されることができる。
【0031】
好ましくは、搬送装置は予備麻酔および/または最終麻酔された畜殺動物を搬送するように形成されている。麻酔された畜殺動物は、予備麻酔後に搬送装置上に載せられ、その後特に電動搬送装置により麻酔管内を搬送されることができる。好ましくは、搬送装置は最終麻酔された畜殺動物を麻酔管の出口から運び出すようにも形成されることができる。
【0032】
さらに、本発明のさらなる好ましい一発展形態によると、搬送装置の搬送速度は麻酔管の長さおよび畜殺動物の種類に適合されるようになっている。そのようにして、畜殺動物が、次の畜殺のために十分に深い麻酔が存在し且つそのようにして痛みのない畜殺が可能となるような長さで麻酔管内のガス雰囲気に曝されることが容易に保証される。
【0033】
好ましくは、麻酔管が入口と出口の間に、麻酔管の入口および/または出口より高い位置にある領域を有するようになっている。さらに、好ましくは、麻酔管が入口に続いて、搬送方向で上方に延在する供給部分を有するようになっている。この関連で、本発明のさらなる好ましい一形態によると、麻酔管が予備麻酔ガス供給部とガス排出部との間では水平に延在し、および/または麻酔管がガス排出部と最終麻酔ガス供給部との間では搬送方向で初めに水平に延在し、続いて下方へ傾くようになっている。好ましくは、麻酔管が、これが供給部分内で垂直に上方へ延在した後で予備麻酔部分内、則ち予備麻酔ガス供給部とガス排出部との間で水平に延在するようになっている。言い換えると、麻酔管は、好ましくは供給部分から予備麻酔部分への移行のときに、則ち好ましくは予備麻酔ガス供給部において方向転換している。さらに好ましくは、麻酔管が最終麻酔部分内、則ちガス排出部と最終麻酔ガス供給部との間では搬送方向で初めに水平に延在し、続いて下方へ傾いて進行するようになっている。好ましくは、この傾斜は30度以下である。麻酔管の水平および続く軽く下方へ傾いた進行によって、麻酔された畜殺動物が搬送技術的に無傷で麻酔管の出口に到着することが容易に保証される。
【0034】
麻酔管内の予備麻酔ガスと最終麻酔ガス、特に予備麻酔部分内の予備麻酔ガスと最終麻酔部分内の最終麻酔ガスの有利な分配に関して、本発明の好ましい一発展形態によると、予備麻酔ガス供給部が最終麻酔ガス供給部より高い位置にある、および/または予備麻酔ガス供給部がガス排出部より高い位置にある、および/またはガス排出部が最終麻酔ガス供給部と同じ高さであるかまたはそれより高い位置にあるようになっている。特に好ましくは、予備麻酔ガス供給部が、麻酔管のより高い位置にある領域の天井に、好ましくは搬送方向でより高くに位置し且つ水平に延在する予備麻酔部分の始まりに設けられているようになっている。さらに、ガス排出部は、好ましくは麻酔管の床に、好ましくは予備麻酔部分から最終麻酔部分への移行部に設けられている。さらに、最終麻酔ガス供給部は、好ましくは最終麻酔部分の下方に傾いた領域の天井に設けられていて、そのようにして最終麻酔ガス供給部はガス排出部と同じ高さであるかまたはそれより低くなる。
【0035】
さらなる好ましい一発展形態によると、麻酔装置は、搬送方向で最終麻酔ガス供給部の後方に配置された、ガス雰囲気を麻酔管から排出するさらなるガス排出部を含むようになっている。このさらなるガス排出部は、好ましくは麻酔管の出口の約1メートル前に設けられている。さらに好ましくは、さらなるガス排出部は第1ガス排出部より低い位置にあり、最終麻酔ガス供給部より低い位置にある。好ましくは、さらなるガス排出部は、最終麻酔雰囲気を可能な限り麻酔管の出口までかまたは可能な限り麻酔管の出口直前までに提供することを保証するので、畜殺動物の十分に長く深い最終麻酔が保証される。さらに、さらなるガス排出部は可能な限り最終麻酔ガスが麻酔管から漏れないようにする。このことは、麻酔管における作業安全性を高め、さらに最終麻酔ガスの損失を減少させる。
【0036】
作業安全性と関連して、さらに本発明の好ましい一発展形態によると、予備麻酔ガス供給部、最終麻酔ガス供給部およびガス排出部が、入口および/または出口における麻酔管内の圧力が周囲圧力より低いように互いに適合されるようになっている。さらに好ましくは、予備麻酔ガス供給部、最終麻酔ガス供給部、ガス排出部およびさらなるガス排出部が、入口および/または出口における麻酔管内の圧力が周囲圧力より低いように互いに適合されるようになっている。さらに好ましくは、入口および出口における麻酔管内の圧力が周囲圧力より低いようになっている。そのようにして、少量の周囲空気がその都度麻酔管内へ引き入れられる。それに応じて、予備麻酔ガスおよび/または最終麻酔ガスが麻酔管から漏れ出ないことが保証される。このことは、作業安全性を高め、さらに、特に回収装置のガス排出部に関連する予備麻酔ガスおよび/または最終麻酔ガスの損失を減少させる。
【0037】
麻酔管内に提供されたガス雰囲気のモニタリングを可能にするために、本発明の好ましい一発展形態によると、麻酔装置が、麻酔管から提供されたガス雰囲気の酸素含有量を検査するために複数の酸素センサを含むようになっている。さらに好ましくは、麻酔装置が、麻酔管から提供されたガス雰囲気中の予備麻酔ガスの含有量を検査するために複数の予備麻酔ガスセンサを、および/または麻酔管から提供されたガス雰囲気中の最終麻酔ガスの含有量を検査するために複数の最終麻酔ガスセンサを含むようになっている。好ましくは、センサ、つまり酸素センサ、予備麻酔ガスセンサおよび/または最終麻酔ガスセンサが麻酔管内に搬送方向に沿って互いに間隔をあけて設けられるようになっている。さらに好ましくは、麻酔管が供給部分内におよそ20センチメートルの高さ毎に1つのセンサを有するようになっている。さらに好ましくは、麻酔管が予備麻酔部分および/または最終麻酔部分内に搬送方向に沿っておよそ1メートル毎に1つのセンサを有するようになっている。そのようにして、麻酔管内に提供されたガス雰囲気の完全なモニタリングが容易に可能となる。それによって、予備麻酔ガスおよび/または最終麻酔ガスの濃度が十分に高いかどうか、および/または酸素の濃度が畜殺動物を麻酔するのに十分に低いかどうかを検査できる。麻酔管内の予備麻酔ガス、最終麻酔ガスおよび/または酸素の濃度は、例えば証明のために連続記録できる。
【0038】
この関連で、好ましくは、センサが予備麻酔ガス供給部、最終麻酔ガス供給部、ガス排出部および/またはさらなるガス排出部の制御装置と通信技術的に接続しているようになっている。
【0039】
さらに好ましくは、予備麻酔ガス供給部、最終麻酔ガス供給部、ガス排出部および/またはさらなるガス排出部が、予備麻酔部分および/または最終麻酔部分内の酸素含有量が1体積%未満であるように、特に自動的に制御されるようになっている。代替的または付加的にさらに好ましくは、予備麻酔ガス供給部、最終麻酔ガス供給部、ガス排出部および/またはさらなるガス排出部が、予備麻酔部分内で予備麻酔ガスの濃度が95体積%以上であるように、および/または最終麻酔部分内で最終麻酔ガスの濃度が95体積%以上であるように、特に自動的に制御されるようになっている。
【0040】
麻酔管を通して予備麻酔および最終麻酔された畜殺動物を畜殺するために個別化して供給するために、本発明のさらなる好ましい一発展形態によると、麻酔装置が、搬送方向で麻酔管の出口の直後に配置された、麻酔管を通して運ばれた畜殺動物を個別化するためのコンベヤベルトを含むようになっている。その運搬方向が麻酔管を通して運ばれる搬送装置の搬送方向に交差するコンベヤベルトが好ましい。そのようにして、畜殺動物の個別化が特に容易になる。
【0041】
本発明のさらなる一形態は、上述の麻酔装置を用いて畜殺動物を麻酔する方法に関し、
- 1頭または複数頭の畜殺動物を、麻酔装置の麻酔管内を移動する搬送装置上に提供するステップと、
- 搬送装置上に提供された1頭または複数頭の畜殺動物を、搬送装置を用いて麻酔管内で、1頭または複数頭の畜殺動物が、予備麻酔ガスに基づいて予備麻酔された状態で、ガス雰囲気が主に予備麻酔ガスとは異なる最終麻酔ガスにより形成され且つガス雰囲気が回収装置に接続されたガス排出部へガス移動する麻酔管の領域を通して運ばれるように搬送するステップと、を含む。
【0042】
この方法は、一方では畜殺動物の、動物に好ましく丁重に設けられた麻酔を可能にする。他方では、畜殺動物が予備麻酔ガスにより予備麻酔された状態で、ガス雰囲気が主に最終麻酔ガスにより形成され且つガス雰囲気が回収装置に接続されたガス排出部へガス移動する麻酔管の領域を通過することを可能にする。麻酔状態の畜殺動物はさらに呼吸しているので、畜殺動物によりその前に吸い込まれた予備麻酔ガスがこの領域内で畜殺動物の呼吸運動によって畜殺動物の肺から吐き出される。ガス排出部へのガス雰囲気のガス移動により、この領域内で畜殺動物により吐き出された予備麻酔ガスも回収装置へ供給されることになる。そのようにして、提案された方法では予備麻酔ガスの損失が殊の外小さくなる。
【0043】
さらなる技術的効果およびそれに結び付くこの方法の長所は、麻酔装置の説明ならびに図面の以下の説明から当業者に明らかになる。
【0044】
以下に、本発明を添付図面に関連して好ましい実施例に基づいて例示的に説明し、その際、以下に示した特徴は、それぞれ単独でも組み合わせによっても本発明の一形態を表すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態にしたがった、畜殺動物を追い入れる際の麻酔装置1の略断面図である。
【
図2】畜殺動物を、麻酔装置を通して搬送する際の、
図1からの麻酔装置の略断面図である。
【
図3】畜殺動物を、麻酔装置を通して搬送する際の、
図1からの麻酔装置の略断面図である。
【
図4】畜殺動物を、麻酔装置を通して搬送する際の、
図1からの麻酔装置の略断面図である。
【
図5】畜殺動物を、麻酔装置を通して搬送する際の、
図1からの麻酔装置の略断面図である。
【
図6】畜殺動物を、麻酔装置を通して搬送する際の、
図1からの麻酔装置の略断面図である。
【
図7】畜殺動物を、麻酔装置を通して搬送する際の、
図1からの麻酔装置の略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1に表した麻酔装置10は、この実施例では豚である畜殺動物12が屠殺および畜殺される前に畜殺動物12を麻酔するために使用され得る。畜殺動物12の麻酔は、ここではヘリウムである予備麻酔ガス14およびここでは窒素である最終麻酔ガス16を用いた2段階麻酔である。
図1~
図7に関連して、以下に麻酔装置10および麻酔装置10を用いた畜殺動物12の麻酔方法を説明する。
【0047】
麻酔装置10は、入口20および出口22を備えた麻酔管18を有する。畜殺動物12は入口20を通って麻酔管18に供給され(
図1を参照)、麻酔管18は畜殺動物12を麻酔する、予備麻酔ガス14および最終麻酔ガス16を含むガス雰囲気を提供する。この実施例では、麻酔管18は略反転した「U」字形の形状を有し、このとき麻酔管18は入口20と出口22との間に、等しい高さにある入口20および出口22より高くにある領域24を有する。入口20をより高くにある領域24と接続させるために、麻酔管18はこの実施例では垂直に上方へ延びる供給部分26を有する。
【0048】
供給部分26からより高くにある領域24への移行部に、麻酔管18の天井に予備麻酔ガス14を麻酔管18内に供給するための予備麻酔ガス供給部28がある。そのようにして、少なくとも麻酔管18の水平に形成された部分30内に、少なくとも95体積%が予備麻酔ガスヘリウム14から形成され且つ1体積%未満の酸素を含むガス雰囲気が提供される。この部分30-予備麻酔部分30-内で畜殺動物12が予備麻酔される(特に
図3、
図4および
図6を参照)。
【0049】
さらに、麻酔管18は最終麻酔ガス16、ここでは窒素、を麻酔管18内に供給するための最終麻酔ガス供給部32を有する。そのようにして、麻酔管18のさらなる部分34内に、少なくとも95体積%が最終麻酔ガス窒素16から形成され且つ1体積%未満の酸素を含むガス雰囲気が提供される。このさらなる部分34-最終麻酔部分34-は予備麻酔部分30に直接接続している。最終麻酔部分34内で畜殺動物12が最終麻酔され、そのことから、続く畜殺に対して十分に深い麻酔が存在する(特に
図5~
図7を参照)。最終麻酔部分34は、ここでは予備麻酔部分30に接続して初めに水平に延在し、その後出口22方向に下方へ30度傾く。
【0050】
予備麻酔ガス供給部28と最終麻酔ガス供給部32との間に、ここでは麻酔管18の床にガス雰囲気を麻酔管18から排出するためのガス排出部36が設けられる。予備麻酔ガス供給部28、最終麻酔ガス供給部32およびガス排出部36によって予備麻酔部分30内で予備麻酔ガス雰囲気14のガス排出部36へのガス移動38が生じ、最終麻酔部分34の領域40内でガス排出部36への最終麻酔ガス雰囲気16のガス移動42が生じる。ガス排出部36は、予備麻酔ガス用の回収装置44と接続している。ここでは、薄膜を用いてガス排出部36から排出されたガス混合物からヘリウムを分離するヘリウム回収装置44である。
【0051】
麻酔管18を通して畜殺動物12を運ぶために、麻酔装置10は、麻酔管12内を移動し、麻酔管18を通して搬送方向40に入口20から出口22へ畜殺動物12を搬送する搬送装置46を有する。供給部分26では、搬送装置46が垂直方向に調整可能な搬送ベルト50として形成されている。ロープ(ロープは図には示していない)に懸架された搬送ベルト50により、ロープに基づいた垂直方向の搬送(特に
図2~
図5を参照)ならびに搬送ベルト50運搬による水平方向の運搬ができるようになる。ガスを透過するように形成されている搬送ベルト50は、この実施例ではさらに10頭の豚12を収容するように形成されている。もっとも、分かり易いように、図には1頭の豚12のみを示している。
【0052】
予備麻酔部分30および最終麻酔部分34では、搬送方向40はコンベヤベルト52として形成されている。そのようにして、畜殺動物12が垂直方向に調整可能な搬送ベルト50から供給部分26を通して運ばれた後で(
図2および
図3を参照)、搬送ベルト50およびそれに接続されたコンベヤベルト52の運搬運動によって、畜殺動物は麻酔管18の予備麻酔部分30(
図4を参照)および最終麻酔部分34(
図5~
図7を参照)を通して搬送されることができる。
【0053】
さらに、麻酔管18は、搬送方向40で最終麻酔ガス供給部32の後方にさらなるガス排出部54を有する。さらなるガス排出部54は、麻酔管18の天井内の出口22から1メートル前に取り付けられる。予備麻酔ガス供給部28、最終麻酔ガス供給部32、ガス排出部36およびさらなるガス排出部54は、入口20および出口22における麻酔管18内の圧力が周囲圧力より低いように互いに適合されている。そのようにして、少量の周囲空気56がその都度麻酔管18の入口20および出口22において吸い込まれる。
【0054】
麻酔管18内のガス雰囲気をモニタリングおよび制御するために、麻酔装置10は複数の酸素センサ58を有する。これらは、供給部分26内には20センチメートルの高さ毎に取り付けられ、予備麻酔部分30および最終麻酔部分34内には搬送方向48に沿って1メートル毎に取り付けられている。酸素センサ58は、予備麻酔ガス供給部28、最終麻酔ガス供給部32、ガス排出部36およびさらなるガス排出部54の制御装置と通信技術的に接続していて、そのことから、麻酔管18内のガス雰囲気の全自動制御が行われる。
【0055】
麻酔装置10による畜殺動物12の麻酔方法では、第1ステップで畜殺動物12が麻酔管18内を移動する搬送装置46上に提供される(
図1あるいは
図4を参照)。この時点では畜殺動物12が麻酔されないガス雰囲気内に存在するので、畜殺動物12は麻酔管18内および搬送装置46上へ自主的に入ることができる。ガスを透過するように形成された垂直方向に調整可能な搬送ベルト50の床は、畜殺動物12が自主的にその上を走ることができるようになっている。
【0056】
さらなるステップでは、畜殺動物12を載せた垂直方向に調整可能な搬送ベルト50が麻酔管18の供給部分26を予備麻酔部分30の高さへ走行する(
図2あるいは
図5を参照)。予備麻酔部分30の上方では、主に予備麻酔ガス14により形成されるガス雰囲気が予備麻酔ガス供給部28および酸素センサ58によって制御および管理される。ここに畜殺動物12が予備麻酔されて到着する(
図3あるいは
図6を参照)。
【0057】
その後で、予備麻酔された畜殺動物12は搬送装置46により予備麻酔部分30を通って最終麻酔部分34方向48へ搬送される(
図4あるいは
図6を参照)。畜殺動物12は、すなわち予備麻酔状態で最終麻酔が行われる最終麻酔部分34へ搬送される(
図4を参照)。前述のように、最終麻酔部分34は、ガス雰囲気がガス排出部36へ、したがって畜殺動物の搬送方向48とは逆にガス移動42する領域40を有する。この領域40で畜殺動物12は、予備麻酔部分30で吸い込んだ予備麻酔ガス14を再び吐き出し、吐き出された予備麻酔ガス14は、ガス移動42によりガス排出部36および予備麻酔ガス14用回収装置44へ運ばれる。畜殺動物12が搬送される際(
図4あるいは
図6を参照)、予備麻酔部分30を通り最終麻酔部分34方向48へ、垂直方向に調整可能な搬送ベルト50が畜殺動物12により占領されていなければすぐに供給部分26内を入口20方向に下方へさらなる畜殺動物12の提供のために走行する。
【0058】
さらなるステップでは、最終麻酔された畜殺動物12が(
図6および
図7を参照)搬送装置46により麻酔管18の出口22から、搬送方向48に交差するように配置された横ベルト60上に搬送され、そこで個別化されて次の屠殺および畜殺へ供給される。
【符号の説明】
【0059】
10 麻酔装置
12 畜殺動物、豚
14 予備麻酔ガス、ヘリウム
16 最終麻酔ガス、窒素
18 麻酔管
20 入口
22 出口
24 麻酔管のより高くにある領域
26 供給部分
28 予備麻酔ガス供給部
30 予備麻酔部分
32 最終麻酔ガス供給部
34 最終麻酔部分
36 ガス排出部
38 搬送方向のガス移動
40 搬送方向とは逆にガス移動する領域
42 搬送方向とは逆のガス移動
44 予備麻酔ガスの回収装置、ヘリウム回収装置
46 搬送装置
48 搬送方向
50 垂直方向に調整可能な搬送ベルト
52 コンベヤベルト
54 さらなるガス排出部
56 吸い込まれた周囲空気
58 酸素センサ
60 横ベルト
【国際調査報告】