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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】船舶用の動力システム
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/14 20060101AFI20240905BHJP
   B63H 20/00 20060101ALI20240905BHJP
   B63H 20/08 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B63H20/14 100
B63H20/00 610
B63H20/00 823
B63H20/08 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514621
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2022074681
(87)【国際公開番号】W WO2023036755
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】21382805.6
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524084469
【氏名又は名称】イーシー プロパルション,エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ペトラス,カルロス
(57)【要約】
船舶用の動力システム(10)が提供される。船舶用の動力システムは、プロペラ(111、112)と、電気モータ(20)と、電気モータに結合されたギアボックス(30)とを備える。船舶用の動力システムは、第1の方向(1)に延びる入力シャフト(50)と、中間シャフト(60)と、プロペラシャフト(70)とをさらに備える。入力シャフトは、ギアボックスに結合された第1の端部と、中間シャフトに回転可能に結合された第2の端部とを有する。中間シャフトは、入力シャフトに回転可能に結合された第1の端部と、プロペラシャフトに回転可能に結合された第2の端部とを有する。プロペラシャフトは、中間シャフトに回転可能に結合された第1の端部と、プロペラに回転可能に結合された第2の端部とを有する。中間シャフトは、第2の方向(2)に延びる上部部分(63)と、上部部分に回転可能に結合された下部部分(64)とを備える。加えて、船舶用の動力システムは、上部支持構造(120)および下部支持(130)構造を備える。上部支持構造は、船舶にチルト可能に結合されるように構成される。下部支持構造は、第2の方向を中心に回転するように上部支持構造に回転可能に結合される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用の動力システムであって、
プロペラと、
電気モータと、
前記電気モータに結合されたギアボックスと、
入力シャフトと、中間シャフトと、プロペラシャフトとであって、
前記入力シャフトが、前記ギアボックスに結合された第1の端部と、前記中間シャフトに回転可能に結合された第2の端部とを有し、前記入力シャフトが、前記第1の端部から前記第2の端部まで第1の方向に延びており、
前記中間シャフトが、前記入力シャフトに回転可能に結合された第1の端部と、前記プロペラシャフトに回転可能に結合された第2の端部とを有し、前記中間シャフトが、第2の方向に延びている上部部分と、前記上部部分に回転可能に結合された下部部分とを備え、
前記プロペラシャフトが、前記中間シャフトに回転可能に結合された第1の端部と、前記プロペラに結合された第2の端部とを有し、前記プロペラシャフトが、前記第1の端部から前記第2の端部まで第3の方向に延びており、
前記第1の方向が、前記第2の方向に垂直であり、前記第3の方向に略平行である、入力シャフトと、中間シャフトと、プロペラシャフトと、
前記電気モータおよび前記ギアボックスを支持する上部支持構造であって、船舶にチルト可能に結合されるように構成される上部支持構造と、
前記プロペラおよび前記プロペラシャフトを支持する下部支持構造であって、前記第2の方向を中心に回転するように前記上部支持構造に回転可能に結合されている下部支持構造とを備える、動力システム。
【請求項2】
前記中間シャフトが、前記中間シャフトの前記上部部分を前記下部部分に回転可能に結合するユニバーサルジョイントを備えている、請求項1に記載の動力システム。
【請求項3】
前記電気モータが、電気モータ毎分回転数で回転するように構成されており、前記ギアボックスが、前記電気モータ毎分回転数を入力シャフト毎分回転数に低減させるように構成されている、請求項1又は2に記載の動力システム。
【請求項4】
前記入力シャフトの前記第2の端部と前記中間シャフトの前記第1の端部が、入力シャフト毎分回転数を中間シャフト毎分回転数に低減させるように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の動力システム。
【請求項5】
前記中間シャフトの前記第2の端部と前記プロペラシャフトの前記第1の端部が、中間シャフト毎分回転数をプロペラシャフト毎分回転数に低減させるように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の動力システム。
【請求項6】
前記下部支持構造を前記上部支持構造に回転可能に結合する軸受をさらに備えている、請求項1から5のいずれか一項に記載の動力システム。
【請求項7】
前記下部支持構造を前記上部支持構造を中心に回転させるための操舵システムをさらに備えている、請求項1から6のいずれか一項に記載の動力システム。
【請求項8】
左舷-右舷方向に沿って左舷側から右舷側に延び、船首-船尾方向に沿って船首から船尾に延びている船体であって、結合部分を備えている船体と、
請求項1から7のいずれか一項に記載の動力システムであって、前記動力システムの前記上部支持構造が、前記船体の前記結合部分にチルト可能に結合されている動力システムとを備えている、船舶。
【請求項9】
前記上部支持構造が、取付ブラケットを備えており、前記船舶が、前記船体の前記結合部分を前記動力システムの前記上部支持構造の前記取付ブラケットに接続する接続部材をさらに備えている、請求項8に記載の船舶。
【請求項10】
前記接続部材が、前記船体の前記結合部分に回転可能に結合されている、請求項9に記載の船舶。
【請求項11】
前記取付ブラケットが、前記接続部材に固定的に接続されている、請求項9または請求項10に記載の船舶。
【請求項12】
前記接続部材が、
接続部材第1の端部軸を中心に回転するように前記船体の前記結合部分に回転可能に結合されている第1の端部と、
接続部材第2の端部軸を中心に回転するように前記動力システムの前記上部支持構造の前記取付ブラケットに回転可能に結合されている第2の端部とを備えている、請求項10または11に記載の船舶。
【請求項13】
前記動力システムを水位に対して位置決めする位置決めシステムをさらに備えている、
請求項8から12のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項14】
前記位置決めシステムが、前記左舷-右舷方向に平行な軸を中心に前記動力システムを回転させるために前記接続部材を回転させるように構成された回転アクチュエータを備えている、請求項13に記載の船舶。
【請求項15】
前記位置決めシステムが、前記船体に結合された第1の端部から前記上部支持構造に結合された第2の端部まで一定の長さを延びるリニアアクチュエータであって、前記左舷-右舷方向に平行な軸を中心に前記動力システムを回転させるために長さを変えるように構成されたリニアアクチュエータを備えている、請求項13または請求項14に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月7日に出願された欧州特許出願第21382805.6号の利益を主張する。
本開示は、船舶用の動力システム、および動力システムを備える船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶またはボートは、動力システムまたは推進システムによって生成されるスラスト力によって水上を移動する。動力システムは、モータ、例えばディーゼルモータ、および/または電気モータを含み得る。動力システムの配置に応じて、動力システムは、船内動力システム、船外動力システム、または船内外動力システムであり得る。
【0003】
船内動力システムは、船舶の船体内に設置され支持されているモータを含む。したがって、モータを配置するためには船体内にかなりのスペースが必要であり、キャビンスペース、貯蔵などの他の目的で使用される利用可能なスペースが制限される。加えて、モータが船体の内側の限られたスペースに配置されているため、メンテナンス作業のためのモータへのアクセスが妨げられる。
【0004】
船内動力システムのモータは、一般に、モータに結合された第1の端部と、プロペラに結合された第2の端部とを有する単一のプロペラシャフトを駆動する。プロペラシャフトは、船舶の船尾に沿って延び、プロペラシャフトの軸を中心に回転する。プロペラシャフトは、一般に、船舶の船体と固定角度を形成し、この角度は水位に対して調整または変更することができない。よって、プロペラの位置は船舶に対して固定され、藻類および軟体動物がプロペラシャフトおよびプロペラ上に付着することを可能にする。したがって、チルティング操作、すなわちモータを持ち上げることができない。船体は、モータをプロペラに接続するためにプロペラシャフトを船体に通すための開口部を備える。この開口部は密閉され得るが、水および水分が船体に入る可能性があり、船内動力システムと直接接触する可能性がある。これは腐食をもたらし得、摩耗が進む可能性がある。加えて、過剰な振動および/または騒音を防止するために、プロペラシャフトの正確な整列が必要とされる。したがって、船内動力システムの取り付けは、労働集約的なプロセスを伴い得る。
【0005】
さらに、船内動力システムは、船舶を操舵するために垂直方向を中心に回転することができない。プロペラの後ろに位置する1つまたは複数の舵が船舶を操舵するために使用されるが、この舵は、船舶の喫水を逆に増加させる可能性がある。
【0006】
船外動力システムでは、モータは船舶の船体の外側に配置されている。船外動力システムは、典型的には、モータを支持する上部構造と、垂直入力シャフトと、水平プロペラシャフトを支持する下部構造とを含む。
【0007】
船外動力システムは、典型的には、船舶のトランサムに取り付けられる。船外動力システム全体は、垂直軸を中心に回転させて船舶を操舵することができる。加えて、船外動力システム全体は、チルティング操作、すなわち、船外動力システムを水位より上に持ち上げる操作、および/またはトリミング操作、すなわち、船体に対するプロペラシャフトのスラスト角をわずかに調整する操作を実行するように、船舶の左舷-右舷方向に平行に延びる軸線を中心に枢動することができる。トランサムは摩耗する可能性があり、これにより、船外動力システムがトランサムから外れるリスクが高まる可能性がある。加えて、船外動力システム全体が、例えば操舵、チルティング、および/またはトリミングのために動かされるので、トランサムに高い負荷がかかる可能性がある。これらの高い負荷に耐えるために、トランサムの構造的補強が必要とされ得る。これはトランサムのサイズおよび/または重量を増加させる可能性があり、このことにより、船体内の利用可能なスペースが制限される可能性がある。船外動力システム全体を動かすことができるため、通常、大きなアクチュエータが必要とされる。
【0008】
加えて、船外動力システムで使用されるモータの寸法は、典型的には、船外動力システムを船舶に対して動かす(例えば、チルティング、トリミング、および/または操舵)のに必要な力によって制約される。これに応じて、より大きなモータを使用することは、典型的には回避される。
【0009】
さらに、電気モータを使用する船外動力システムは、電気モータおよびバッテリが典型的には船外動力システム内に一体化されているため、重量が増加する。これは、動力システムが船舶に対して動かされると、より高い負荷を発生させる。このため、船外動力システムでは、典型的には、強力な電気モータは使用されない。
【0010】
船内外動力システムは、船舶の船体の内側に配置されたモータと、プロペラに結合された船体から突出する駆動システムとを含む。したがって、船内動力システムと同様に、船体の内側の貴重なスペースが使用され、メンテナンス作業のためのモータへのアクセスが妨げられる。
【0011】
船内外動力システムの駆動システムは、一般に、モータに結合された第1の端部と、垂直中間シャフトに結合された第2の端部とを有する水平入力シャフトを備える。この垂直中間シャフトは、水平プロペラシャフトを介してプロペラに接続される。水平入力シャフト、垂直中間シャフト、および水平プロペラシャフトは、典型的には、船舶の船体から外向きに延びる支持構造によって囲まれて支持される。
【0012】
加えて、船体は、モータを垂直中間シャフトに接続するために、水平入力シャフトを船体に通すための開口部を備える。この開口部は密閉され得るが、水および水分が船体に入る可能性があり、船内外動力システムのモータと直接接触する可能性がある。これは腐食をもたらし、摩耗が進む可能性がある。
【0013】
いくつかの例では、船体から外向きに延びる支持構造は、トリミング操作、すなわち船体に対するプロペラシャフトのスラスト角をわずかに調整することを可能にし得る。しかしながら、操舵動作(すなわち、所望の方向に航行すること)および/またはチルティング動作(すなわち、支持構造を水位より上に持ち上げること)は、一般に、支持構造の寸法によって制限される。よって、限られた操舵および/またはトリミング操作もしくは動作のみを実行することができる。これにより、水位より下の支持構造の一部分に藻類および軟体動物が付着する可能性がある。その結果、ウォーターレバーより下の部品の摩耗が進む可能性がある。
【0014】
前述したように、モータは電気モータとすることができる。電気モータは、プロペラ毎分回転数よりも典型的には高い電気モータ毎分回転数で回転する。よって、電気モータ毎分回転数をプロペラ毎分回転数に適合させるために、減速機を使用することができる。これらの減速機は、大きなスペースを必要とする場合がある。よって、上述の動力システムのいずれかに電気モータを組み込むことは困難な場合がある。
本開示の例は、前述の問題の1つまたは複数を少なくとも部分的に軽減しようとするものである。
【発明の概要】
【0015】
第1の態様では、船舶用の動力システムが提供される。船舶用の動力システムは、プロペラと、電気モータと、電気モータに結合されたギアボックスとを備える。船舶用の動力システムは、入力シャフトと、中間シャフトと、プロペラシャフトとをさらに備える。
【0016】
入力シャフトは、ギアボックスに結合された第1の端部と、中間シャフトに回転可能に結合された第2の端部とを有する。入力シャフトは、第1の端部から第2の端部まで第1の方向に延びる。中間シャフトは、入力シャフトに回転可能に結合された第1の端部と、プロペラシャフトに回転可能に結合された第2の端部とを有する。中間シャフトは、上部部分と、上部部分に回転可能に結合された下部部分とを備える。中間シャフトの上部部分は、第2の方向に延びる。プロペラシャフトは、中間シャフトに回転可能に結合された第1の端部と、プロペラに回転可能に結合された第2の端部とを有する。プロペラシャフトは、第3の方向に第1の端部から第2の端部まで延びる。第1の方向は、第2の方向に垂直であり、第3の方向に略平行である。
【0017】
加えて、船舶用の動力システムは、上部支持構造および下部支持構造を備える。上部支持構造は、電気モータおよびギアボックスを支持する。上部支持構造は、船舶にチルト可能に結合されるように構成される。下部支持構造は、プロペラおよびプロペラシャフトを支持する。下部支持構造は、第2の方向を中心に回転するように上部支持構造に回転可能に結合される。
【0018】
この態様では、スラスト力によって船舶を水上で移動させるための電気モータを備えた動力システムが提供される。よって、電気モータを備えたコンパクトな動力システムが提供される。本開示による動力システムでは、任意の適切な電気モータが使用され得る。
動力システム全体、すなわち電気モータからプロペラまでは、船舶の船体の外側に配置される。したがって、動力システムは、船体の内側のスペースを節約することができる。さらに、船体への水の進入に関する問題を回避することができる。
【0019】
加えて、動力システム全体は、船舶から独立して製造されてもよい。例えば、動力システムは、工場で製造され、その後ボートディーラーで船舶に取り付けられてもよい。よって、製造および物流を改善することができる。加えて、ボートディーラーで船舶に動力システムを取り付けるために必要とされる労働集約的なプロセスが少ない。その結果、動力システムを船舶に取り付ける効率および汎用性が向上され得る。さらに、メンテナンス作業を簡素化することができる。例えば、動力システム全体を船舶から取り外すことができ、メンテナンス作業をより容易に行うことができる。したがって、動力システムの任意の部分に容易にアクセスすることができる。故障した部品を交換するためのコストおよび時間を削減することができる。
【0020】
電気モータは、入力シャフトに接続されたギアボックスを駆動する。入力シャフトは延び、第1の方向を中心に回転するように構成される。使用時、第1の方向は略水平であり、船首-船尾方向に略平行に延びる。第1の方向を中心とする入力シャフトの回転は、第2の方向を中心とする中間シャフトの回転を駆動する。入力シャフトと中間シャフトは、略垂直である。中間シャフトの第1の端部に配置された第1の中間シャフトギアと噛み合わせるために、入力シャフトの第2の端部に入力シャフトギアを配置し得る。これらのギアは、垂直方向に動力を伝達するためのベベルギアおよび/またヘリカルギアとすることができる。
【0021】
第2の方向を中心とする中間シャフトの回転は、第3の方向を中心とするプロペラシャフトの回転を駆動し、プロペラを回転させて船舶を移動させる。第3の方向と第1の方向とが実質的に平行であるため、中間シャフトとプロペラシャフトとは略垂直である。中間シャフトの第2の端部に連結されたギアは、中間シャフトの第1の端部に連結されたギアと噛み合うことができる。例えば、これらのギアは、ベベルギアおよび/またヘリカルギアとすることができる。
【0022】
これらのシャフトの構成は、電気モータからプロペラに動力をコンパクトに効率よく伝達することを可能にする。加えて、電気モータによって提供される回転速度は、プロペラの回転速度に適合させることができる。その結果、電気モータによって提供される電気モータ毎分回転数は、プロペラの毎分回転数の範囲に合わせるために、プロペラシャフト毎分回転数に低減され得る。例えば、回転速度を低下させるために、例えば入力シャフトから中間シャフトへのシャフトの方向の変更を使用することができる。
【0023】
いくつかの例では、電気モータは、電気モータ毎分回転数で回転するように構成され、ギアボックスは、電気モータ毎分回転数を入力シャフト毎分回転数に低減させるように構成される。電気モータ毎分回転数から入力シャフト毎分回転数まで回転速度を低下させるために、異なる構成のギアボックスを使用することができる。
【0024】
いくつかの例では、入力シャフトの第2の端部と中間シャフトの第1の端部は、入力シャフト毎分回転数を中間シャフト毎分回転数に低減させるように構成され得る。各々が入力シャフトおよび中間シャフトのうちの一方に連結された一対のギアを使用して、回転速度を低下させ、シャフトの方向を変更することができる。
【0025】
いくつかの例では、中間シャフトの第2の端部とプロペラシャフトの第1の端部は、中間シャフト毎分回転数をプロペラシャフト毎分回転数に低減させるように構成され得る。例えば、中間シャフトの第2の端部に配置された第2の中間シャフトギアは、プロペラシャフトギアと噛み合って、毎分回転数を低下させることができる。
【0026】
本開示によれば、上部支持構造は、上部支持構造および下部支持構造が水位よりも上方に位置決めされ得るように、船舶に対してチルトされ得る。よって、動力システムは、単一のユニットとして船舶に対してチルトされ得る。その結果、メンテナンス作業を行うために、電気モータ、ギアボックス、シャフト、およびプロペラに容易にアクセスすることができる。そのうえ、水位より上に動力システムをチルトさせることにより、水が動力システムと直接接触するのを防ぐことができる。その結果、動力システムの内部の重要な領域への水分または水の浸入を回避することができ、よって、腐食および摩耗を低減させ得る。さらに、動力システムを水位より上にチルトさせることにより、藻類および軟体動物が動力システムに付着するのを防ぐことができる。よって、摩耗を低減させることができ、動力システムの性能を改善することができる。
【0027】
下部支持構造が上部支持構造に回転可能に結合されているため、プロペラは上部構造に対して回転することができる。これに応じて、操舵操作を実行するのに必要なのは、下部構造の回転のみであり得る。その結果、プロペラの操舵に必要な負荷を軽減することができる。加えて、抗力を軽減することができ、所定の操舵角または操舵方向を維持するために必要な負荷を軽減することができる。
【0028】
いくつかの例では、動力システムは、下部支持構造を上部支持構造に回転可能に結合する軸受をさらに備え得る。適切な軸受の例は、ローラ軸受および滑走パッド軸受とすることができる。
【0029】
下部支持構造が上部支持構造に対して回転することを可能にするために、中間シャフトは、第2の方向を中心に下部部分に対して回転することができる上部部分を備える。よって、下部部分は、上部部分によって駆動され、第2の方向を中心に上部部分に対して回転することができる。よって、下部部分および上部部分の回転軸は、第2の方向に平行である。いくつかの例では、中間シャフトは、中間シャフトの上部部分を下部部分に回転可能に結合するユニバーサルジョイントを備え得る。
【0030】
いくつかの例では、動力システムは、下部支持構造を上部支持構造を中心に回転させるための操舵システムをさらに備え得る。操舵システムは、プロペラを所定の方向、すなわち操舵角に位置決めするように下部支持構造を配向させる。操舵システムは、下部支持構造を上部支持構造を中心に回転させるアクチュエータを備え得る。アクチュエータは、上部支持構造に結合された第1の端部と、下部支持構造に結合された第2の端部とを有し得る。アクチュエータがその長さを変えると、アクチュエータは、下部支持構造に結合されたその第2の端部を押したり引いたりすることができる。下部支持構造が上部支持構造に回転可能に結合されているため、アクチュエータは、その長さを変えることによって下部支持構造を上部支持構造を中心に回転させる。操舵システムは、下部支持構造のみを回転させ得るため、回転に必要な負荷を軽減することができる。これに応じて、比較的小型のアクチュエータを使用してもよい。
【0031】
さらなる態様では、本明細書に開示の例のいずれかによる船体と動力システムとを備える船舶が提供される。船体は、左舷-右舷方向に沿って左舷側から右舷側に延び、船首-船尾方向に沿って船首から船尾に延び、船体は結合部分を備える。この態様では、動力システムの上部支持構造は、船体の結合部分にチルト可能に結合される。
この第2の態様に由来する利点は、第1の態様の動力システムに関して述べたものと同様であり得る。すなわち、船体の内側のスペースを節約し、動力システムの取り付けを簡素化し、メンテナンスを改善し、操舵角を維持するために必要な負荷を軽減する。さらに、例えば、動力システムを水位より上にチルトさせると、腐食および摩耗を防止することができる。
【0032】
いくつかの例では、結合部分は船体内に一体化されてもよい。さらなる例では、結合部分は、船体、例えば船体の船尾側に取り付けられてもよい。
いくつかの例では、船舶は、水位に対して動力システムを位置決めする位置決めシステムを備える。よって、位置決めシステムは、船体に対して動力システムをチルトさせることができる。位置決めシステムは、船舶の船体に配置され得る。いくつかの例では、位置決めシステムは、船舶の船体に固定的に結合されてもよい。代わりに、位置決めシステムは、動力システムをチルトさせることが必要なときに船体上に配置されてもよい。左舷-右舷方向に平行な軸を中心に動力システムを回転させるために、すなわち動力システムをチルトさせるために、回転式アクチュエータおよび/またはリニアアクチュエータを使用することができる。
【0033】
いくつかの例では、上部支持構造は、上部支持構造を船舶に接続する接続部材を支持するための取付ブラケットを備え得る。接続部材は、船体の結合部分を上部支持構造の取付ブラケットに接続し得る。接続部材は、上部支持構造を船舶を中心にチルトさせることを可能にするために、船体の結合部分に回転可能に結合され得る。
これらの例のいくつかでは、取付ブラケットは、左舷-右舷方向に平行な方向に延びる接続部材に固定的に接続されてもよい。回転式アクチュエータは、左舷-右舷方向に平行な軸を中心に動力システムを回転させるように接続部材を回転させるために使用され得る。
【0034】
代わりに、接続部材は、船体の結合部分に回転可能に結合された第1の端部と、上部支持構造の取付ブラケットに回転可能に結合された第2の端部とを備える。接続部材は、接続部材第1の端部軸を中心に結合部分に対して、および接続部材第2の端部軸を中心に取付ブラケットに対して回転することができる。接続部材第1の端部軸および接続部材第2の端部軸は、左舷-右舷方向に略平行であってもよい。さらに、接続部材第1の端部軸は、接続部材第2の端部軸から距離を置いて配置されてもよい。これに応じて、上部支持構造は、接続部材第1の端部軸を中心におよび接続部材第2の端部軸を中心に回転することができる。接続部材第1の端部軸と接続部材第2の端部軸とは、接続部材の長さに大体対応する距離だけ離れている。これにより、水位に対するプロペラの高さの精度が向上する。例えば、この配置は、大きなチルト操作および/またはトリミング操作を実行することを可能にする。したがって、船舶に対するプロペラシャフトの位置は、水位に合わせて修正または調整され得る。
本開示の非限定的な例を、添付の図面を参照して以下に説明する。図面において、
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本開示の一例による動力システムの簡略図である。
図2】本開示の一例による動力システムを備える船舶の等角投影図である。
図3a】異なる操舵角における本開示の一例による動力システムの上部側面図を示す。
図3b】異なる操舵角における本開示の一例による動力システムの上部側面図を示す。
図4a】本開示の一例による船舶に結合された異なる位置での動力システムの側面図を示す。
図4b】本開示の一例による船舶に結合された異なる位置での動力システムの側面図を示す。
図4c】本開示の一例による船舶に結合された異なる位置での動力システムの側面図を示す。
図5a】本開示の一例による船舶に結合された異なる位置での動力システムの側面図を示す。
図5b】本開示の一例による船舶に結合された異なる位置での動力システムの側面図を示す。
図5c】本開示の一例による船舶に結合された異なる位置での動力システムの側面図を示す。
図5d】本開示の一例による船舶に結合された異なる位置での動力システムの側面図を示す。
図6】本開示の一例による動力システムの断面図である。
図7】本開示の一例による動力システムおよび結合部分を備える船舶の等角投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
これらの図では、一致する要素を示すために同じ参照符号が使用されている。
図1は、電気モータ20と、電気モータ20に結合されたギアボックス30とを備える動力システム10の一例の簡略図を示す。電気モータ20は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する。電気モータ20は、ステータによって囲まれたロータを備える交流(AC)モータ(例えば、非同期モータ、同期モータ)であってもよい。ステータは静止要素であり、ロータは回転要素である。ロータは、ロータが軸を中心にステータに対して回転することができるように、軸受を介してステータに回転可能に取り付けられ得る。一方で、ステータは、ステータのスロットを通過する巻線を受け入れるためのスロットを備える。他方で、ロータは、電気モータシャフト40を備える。ステータの巻線に交流電流が流れると、回転磁場が発生する。結果として、ロータに電流が誘導され、ロータの周りに誘導磁場が生じる。回転磁場と誘導磁場との相互作用により、ロータは電気モータシャフト40の軸を中心に回転する。したがって、電気モータ20は、電気モータシャフト40を電気モータ毎分回転数で回転させるように構成され得る。
【0037】
電気モータ毎分回転数は、電気モータシャフト40の一分間の回転数として理解することができる。
ギアボックス30は、シャフトカップリングを介して電気モータ20の電気モータシャフト40に結合される。ギアボックス30は、電気モータ毎分回転数を低減させるように配置された減速ギアボックスとすることができる。
いくつかの例では、ギアボックス30は、エピサイクリックギア機構を備える減速ギアボックスとすることができる。エピサイクリックギア機構は、太陽ギア、1つまたは複数の遊星ギア、リングギア、および遊星ギアを支持するキャリア要素を含むことができる。
【0038】
太陽ギアは、電気モータシャフト40の回転が太陽ギアに伝達され得るように、電気モータシャフト40に結合され得る。太陽ギアは、電気モータ毎分回転数で太陽ギア軸を中心に回転することができる。
太陽ギアは、遊星ギアと係合し得る。太陽ギアおよび遊星ギアは、太陽ギアのギア歯が遊星ギアのギア歯と噛み合うようにギア歯を含むことができる。
遊星ギアは、太陽ギアとリングギアの内面との間に配置され得る。リングギアの内面は、遊星ギアのギア歯と噛み合うように構成されたギア歯を含むことができる。
【0039】
太陽ギアが回転すると、遊星ギアは、太陽ギア軸を中心に同心円状に回転し、太陽ギアの外側で、かつリングギアの内側で回転することができる。よって、遊星ギアの回転は、太陽ギア軸を中心にキャリア要素を回転させることができる。
遊星ギアに対する太陽ギア、リングギアに対する太陽ギアなどのギア比は、電気モータ毎分回転数を所定の毎分回転数に低減させるように選択され得る。
【0040】
この例では、リングギアは静止している(すなわち、リングギアは太陽ギアの軸を中心に回転しない)。図1のギアボックスの運転中、太陽ギアは、電気モータ毎分回転数で回転する電気モータシャフトによって回転され得る。この例では、太陽ギアは、遊星ギアと噛み合い、遊星ギアは、太陽ギアの軸を中心に同心円状に回転し、これに次いで、遊星ギアに固定されたキャリア要素が回転される。結果として、エピサイクリックギア機構を備えるギアボックス30の出力は、電気モータ毎分回転数よりも低い毎分回転数で回転することができる。
【0041】
動力システムは、入力シャフト50と、中間シャフト60と、プロペラシャフト70とをさらに備える。入力シャフト50は、第1の方向1に第1の端部51から第2の端部52まで延びる。
入力シャフトの第1の端部51は、ギアボックス30に結合される。よって、ギアボックス30は、電気モータ毎分回転数の回転速度を入力シャフト毎分回転数に低減させ得る。入力シャフト毎分回転数は、入力シャフト50の一分間の回転数として理解することができる。したがって、第1の端部51を介してギアボックスに結合された入力シャフト50は、電気モータシャフトの1分間の回転数よりも少ない1分間の回転数を実行することができる。
【0042】
この例では、電気モータ20は、電気モータ毎分回転数で回転し、ギアボックス30は、電気モータ毎分回転数を入力シャフト毎分回転数に低減させる。
この図では、中間シャフト60は、第1の端部61および第2の端部62を備えている。中間シャフト60は、上部部分63と下部部分64とをさらに備える。上部部分63は、第2の方向2に延び、プロペラシャフト70は、第3の方向3に第1の端部71から第2の端部72まで延びる。
【0043】
第1の方向1は、第2の方向2に垂直であり、第3の方向3に平行である。その結果、入力シャフト50は中間シャフト60に略垂直である。さらに、入力シャフト50は、プロペラシャフト70に略平行である。
中間シャフト60の第1の端部61は、第1の結合機構80を介して入力シャフト50の第2の端部52に回転可能に結合されている。
第1の結合機構80は入力シャフトギアと第1の中間シャフトギアとを備え得る。入力シャフトギアは、第1の中間シャフトギア(図1では見えない)と噛み合い得る。入力シャフト50の第2の端部52は入力シャフトギアを備え得、中間シャフト60の第1の端部61は第1の中間シャフトギアを備え得る。
いくつかの例では、入力シャフトギアおよび第1の中間シャフトギアは、例えば、第1の方向1に延びる入力シャフトの方向を、第2の方向2に延びる中間シャフトの上部部分の方向に変更するためのベベルギア、ヘリカルベア、および/またはウォームギアとすることができる。
【0044】
入力シャフトギアと第1の中間シャフトギアのギア比は、入力シャフト毎分回転数の回転速度を、特定の中間シャフト毎分回転数、すなわち中間シャフト60の一分間の回転数に低減させるのに適し得る。
したがって、入力シャフト50の第2の端部52と中間シャフト60の第1の端部61は、入力シャフト毎分回転数を中間シャフト毎分回転数に低減させるように構成され得る。
【0045】
本明細書で前述したように、中間シャフト60は、上部部分63と下部部分64とを備える。この例では、下部部分64は、ユニバーサルジョイント90を介して上部部分63に回転可能に結合されている。ユニバーサルジョイント90は、第2の方向2を中心とする、上部部分63に対する下部部分64の回転を可能にする。トルクおよび/または回転運動が、上部部分63から下部部分64に伝達され得る。
【0046】
いくつかの例では、ユニバーサルジョイント90は、可変回転速度で可変角度を介して上部部分63から下部部分64にトルクおよび/または回転運動を伝達するための可変速ジョイント、例えばカルダンジョイント、クロスジョイント、ボールアンドトラニオンジョイントとすることができる。
代わりに、ユニバーサルジョイント90は、等速ジョイント、例えばダブルカルダンジョイント、トラクタジョイント、ルゼッパジョイント、バーフィールドジョイント、ワイスジョイント、トリポードジョイント、マルページジョイント、および/またはトンプソンジョイントとすることができる。
【0047】
加えて、ユニバーサルジョイント90は、上部部分63と下部部分64との間の小さな角度変動を可能にすることができる。上部部分63は、上部部分軸4に沿って延びる。上部部分軸4は、第2の方向2に略平行であってもよい。同様に、下部部分64は、下部部分軸5に沿って延びる。この図では、下部部分軸5は、上部部分軸4および/または第2の方向2に略平行であってもよい。
いくつかの例では、下部部分軸5は、上部部分軸4と角度を形成してもよい。角度は、+175°~+185°の間の角度をとることができる。その結果、第1の方向1に延びる入力シャフト50は、第3の方向3に延びるプロペラシャフト70と略平行である。
【0048】
この図では、プロペラシャフト70の第1の端部71は、第2の結合機構100を介して中間シャフト60の第2の端部62に回転可能に結合されている。
第2の結合機構100は、プロペラシャフト70の第1の端部71に配置されたプロペラシャフトギア(図1では見えない)と噛み合う中間シャフト60の第2の端部62に配置された第2の中間シャフトギアを備え得る。
第2の中間シャフトギアおよびプロペラシャフトギアは、例えば、第2の方向2に延びる中間シャフトの方向を、第3の方向3に延びるプロペラシャフトの方向に変更するためのベベルギア、ヘリカルベア、および/またはウォームギアとすることができる。
第2の中間シャフトギアとプロペラギアのギア比は、中間シャフト毎分回転数の回転速度を低減させるように選択され得る。結果として、第2の中間シャフトギアおよびプロペラギアは、中間シャフト毎分回転数をプロペラシャフト毎分回転数、例えば、プロペラシャフト70の一分間の回転数に低減させ得る。
【0049】
したがって、中間シャフト60の第2の端部62とプロペラシャフト70の第1の端部71は、中間シャフト毎分回転数をプロペラシャフト毎分回転数に低減させるように構成され得る。
プロペラシャフト70の第2の端部72は、動力システム10のプロペラアセンブリ110に結合される。この例では、プロペラアセンブリ110は、第1のプロペラ111と第2のプロペラ112とを備える。プロペラシャフト70の第2の端部72は、第1のプロペラ111に結合され得る。第1のプロペラ111を第2のプロペラ112にシャフトで接続し得る。プロペラシャフト70は、例えば、電気モータ毎分回転数を、プロペラの毎分回転数の範囲に合わせるために、プロペラシャフト毎分回転数に低減させるように、プロペラアセンブリ110に結合され得る。
いくつかの例では、プロペラシャフト70は、第1のプロペラ111および/または第2のロペラ112に結合され得る。
【0050】
さらに、動力システム10は、上部支持構造120と下部支持構造130とを備える。
下部支持構造130は、略円筒形であり、または内面を有する中空内部を含み得る。下部支持構造130の内面は、下部支持構造の内面がプロペラシャフト70およびプロペラアセンブリ110を支持するように、プロペラシャフト70およびプロペラアセンブリ110を支持および受容するための支持体を備え得る。
よって、下部支持構造130は、プロペラシャフト70およびプロペラ110を支持する。いくつかの例では、第2の結合機構100もまた、下部支持構造130によって支持され、すなわち、下部支持構造130は、中間シャフト60の第2の端部62およびプロペラシャフト70の第1の端部71をさらに支持し得る。
【0051】
前述したように、下部支持構造130は、第2の方向2を中心に回転するように上部支持構造120に回転可能に結合される。いくつかの例では、下部支持構造130を上部支持構造120に回転可能に結合するために軸受が配置され得る。
これらの例のいくつかでは、軸受は、第1の軸受部品と第2の軸受部品とを備える。第1の軸受部品は、下部支持構造130に結合され得、第2の軸受部品は、上部支持構造120に結合され得る。第1の軸受部品が、第2の軸受部品に対して回転するように構成され得るように、第1の軸受部品と第2の軸受部品との間に軸受要素が配置され得る。
軸受要素は、例えば滑走パッドおよび/または転がり要素を備え得る。滑走パッドは、第1の軸受部品と第2の軸受部品との間の摩擦を低減させ得る。代わりにまたは加えて、第2の方向を中心とした下部支持構造の回転を可能にするために、第1の部品と第2の部品との間に1つの転がり要素または複数の転がり要素が配置され得る。
【0052】
上部支持構造120は、略円筒形であり、または中空内部を含み得る。上部支持構造120の内面は、上部支持構造の内面が電気モータ20およびギアボックス30を支持するように、電気モータ20およびギアボックス30を保持するための支持体を備え得る。
よって、上部支持構造120は、電気モータ20およびギアボックス30を支持する。いくつかの例では、上部支持構造120は、入力シャフト50および中間シャフト60の上部部分63をさらに支持し得る。
【0053】
加えて、追加の構成要素、例えば、第1の結合機構80、入力シャフトギアおよび/または第1の中間シャフトギアが、上部支持構造120によって支持され得る。
この例では、上部支持構造120は、電気モータ20、ギアボックス30、入力シャフト50、および中間シャフト60の上部部分63を収容しカバーする。この図の下部支持構造130は、中間シャフトの下部部分64およびプロペラシャフト70を収容しカバーする。よって、これらの部品はそれぞれ、上部支持構造120および下部支持構造130によって保護される。加えて、下部支持構造130は、プロペラアセンブリ110を支持する。
いくつかの例では、下部支持構造は、例えば、第2の結合機構100、第2の中間シャフトギアおよび/またはプロペラシャフトギアをさらに支持し得る。
上部支持構造120と下部支持構造との間には、これらの支持構造の内部に水が浸入するのを防止するための封止部材が配置され得る。
【0054】
図1では、上部支持構造120は、上部支持構造120を船舶に接続する接続部材を支持するための取付ブラケット140を備える。よって、上部支持構造120と船舶との間の接続が確立され得る。この接続は、上部支持構造が船舶にチルト可能に結合されることを可能にする。上部支持構造120は、上部支持構造120および下部支持構造130が水位よりも上方に位置決めされるようにチルトされ得る。よって、メンテナンス作業を行うために、電気モータ、ギアボックス、シャフト、およびプロペラに容易にアクセスすることができる。
【0055】
図2は、本明細書に開示の例のいずれかによる動力システム10を備える船舶400を示す。船舶400は、左舷-右舷方向186に沿って左舷側185から右舷側184に、船首-船尾方向183に沿って船首182から船尾181に延びる船体180を備える。動力システム10は、船体180の結合部分190にチルト可能に結合される。
動力システムは、本明細書に開示の例のいずれかに従って船体の結合部分に結合され得る。この例では、船舶の長さは5から15メートルの間とすることができる。いくつかの例では、船舶の長さは5から24メートルの間とすることができる。
【0056】
図3aおよび図3bはそれぞれ、異なる操舵角における本開示の一例による動力システム10の上部側面図を示す。図3aおよび図3bは、操舵操作、すなわち下部支持構造130を上部支持構造120を中心に回転させるための操舵システム150を示す。
この例では、操舵システム150は、左舷側アクチュエータ151と右舷側アクチュエータ152と、一対のアクチュエータを備える。しかしながら、他の例では、操舵システムは単一のアクチュエータを備えてもよい。これらの図のアクチュエータ151、152の各々は、上部支持構造120に結合された第1の端部155、156と、下部支持構造130に結合された第2の端部157、158とを有する。
【0057】
アクチュエータの各々について、対応する第1の端部155、156から対応する第2の端部157、158までの間の長さが画定され得る。これらのアクチュエータの長さは、変更され得、すなわち、伸張または短縮され得る。これらの図の2つのアクチュエータ151、152の各々の長さを制御することによって、下部支持構造130は第2の方向を中心に回転する。よって、アクチュエータ151、152は、そのそれぞれの第2の端部157、158を押したり引いたりして、上部支持構造120に対して下部支持構造130を回転させることができる。
操舵角13は、第1の方向1と第3の方向3とによって画定される角度として定義することができる。操舵角13は、船舶を操舵または案内するためにプロペラアセンブリ110によって採用される角度である。図3aでは、操舵角13は約30°であり、図3bでは約-30°である。操舵角13は、船舶を特定の方向に操舵するために変えることができる。操舵角は、+60°~-60°の間、任意選択的に+45°~-45°の間の角度をとることができる。
【0058】
図3aでは、下部支持構造130を反時計回り方向に回転させるように、左舷側アクチュエータ151は伸張されており、右舷側アクチュエータ152は収縮されている。反対に、図3bでは、下部支持構造130を時計回り方向に回転させるように、左舷側アクチュエータ151は収縮されており、右舷側アクチュエータ152は伸張されている。
したがって、アクチュエータ151、152は、下部支持構造130を上部支持構造120を中心に回転させて操舵操作を可能にするように、その長さを変えるように構成され得る。これらの図の操舵システム150は下部支持構造130のみを回転させるため、操舵操作に必要な負荷を軽減することができる。これにより、比較的小さいアクチュエータを使用することが可能になり得る。
【0059】
これらの図のアクチュエータ151、152は、リニアアクチュエータ、例えば油圧および/または空気圧アクチュエータである。しかしながら、他の適切なアクチュエータを使用することもできる。
【0060】
いくつかの例では、操舵システム150は、回転アクチュエータと、円形ラックアンドピニオンシステムとを備え得る。この例では、回転アクチュエータは、上部支持構造に固定的に結合された本体と、ピニオンに結合された回転アクチュエータシャフトとを備え得る。ピニオンは、下部支持構造に結合された円形ラックと係合し得る。回転アクチュエータは、下部支持構造を上部支持構造を中心に回転させて操舵操作を可能にするように、ピニオンを介して円形ラックを回転させるように構成され得る。この例では、操舵角は、+180°~-180°の間の角度をとることができる。
この図では、上部支持構造120は、取付ブラケット140を含む。取付ブラケット140は、上部支持構造120の向かい合う両側に位置する左舷側ブラケット141と右舷側ブラケット142とを備える。この例では、取付ブラケット140は、船舶に結合される接続部材160を受け入れる。
【0061】
いくつかの例では、この図のように、接続部材160は、左舷-右舷方向に平行な方向に延びる。この例の接続部材160は、管状形状からなる。この図では、接続部材160は、取付ブラケット140に固定的に取り付けられている。接続部材160は、左舷側ブラケット141および右舷側ブラケット142に接続され得る。接続部材160をブラケットに接続するために、溶接、ボルト締め、ポカヨケ要素の使用またはブラケットの貫通孔内での管の収縮を使用することができる。
【0062】
代わりに、接続部材160は、船首-船尾方向と略平行な方向に延びてもよい。
図4a、図4b、図4cは、船舶に結合された異なる位置での動力システムの側面図を示す。これらの図の動力システムは、本明細書に開示の例のいずれかによる操舵システムを備え得る。これらの図の動力システム10は、船舶の船体180に回転可能に結合されている。(第3の方向3に平行な)プロペラの軸は、図4aの水位210に略平行であり、水位210と角度211を形成する。これらの図の動力システム10は、左舷-右舷方向に平行な軸を中心に回転する。
【0063】
図4aでは、動力システム10は、船体180の船尾181と中間シャフト(この図には示されていない)との間の距離が200mmよりも大きく、任意選択的に200mmから800mmの間であるように船体180に結合される。
図4bの動力システム10は、トリム位置にある。よって、プロペラシャフトの傾斜は、特定の条件下で航行するために水位210に対して調整される。図4bでは、角度211は約7°である。図4cでは、動力システムはチルト位置である。動力システムは、単一のユニットとして水位より上に持ち上げられている。この位置では、プロペラアセンブリは水位と接触していない。結果として、動力システム10の内部の重要な領域への水分または水の浸入を回避することができ、よって、腐食および摩耗を低減させ得る。さらに、動力システムを単一のユニットとして水位より上に持ち上げると、藻類および軟体動物が動力システム10に付着するのを防ぐことができる。よって、摩耗を低減させることができ、動力システム10の性能を改善することができる。図4cの角度211は約45°である。これらの図では、角度211は、-20°~+70°の間で変化され得る。この範囲では、トリミングおよびチルティング操作を行うことができる。
【0064】
これらの図では、船体180は結合部分190を備える。動力システム10は、接続部材160を介して船体180に結合される。接続部材160は、船体180の結合部分190を、動力システム10の上部支持構造120の取付ブラケットに接続する。これらの図では、接続部材160は左舷-右舷方向に平行な方向に延び、例えば、溶接またはボルト締めによって、取付ブラケットに固定的に接続される。接続部材の回転は、上部支持構造が船舶を中心にチルトすることを可能にする。したがって、動力システム10全体を船体180に対してチルトすることができる。よって、動力システムは、船舶にヒンジ式に接続される。
【0065】
これらの図では、船体180の結合部分190は、各々が接続部材160を受け入れるための貫通孔を有する一対のプレートを備える。よって、接続部材を、これらの貫通孔を中心に回転させることができる。プレートは、結合部分190を補強するための任意の適切な材料とすることができる。
これらの図の接続部材160は、動力システムの一方の側から反対側に延びる単一の管状シャフトとすることができる。しかしながら、さらなる例では、接続部材は、動力システムの左舷側から延びる左舷側接続部材と、動力システムの右舷側から延びる右舷側接続部材とを備え得る。
これらの図の動力システムは、水位210に対して動力システム10を位置決めする位置決めシステム200を備える。これらの図の位置決めシステム200は、図4cのようなチルティング操作、および/または図4bのようなトリミング操作を実行することができる。
これらの図では、位置決めシステム200は、左舷-右舷方向に平行な軸を中心とした動力システムの回転を引き起こすために長さを変えるリニアアクチュエータ201を備える。リニアアクチュエータ201は、第1の端部203および第2の端部204を備える。リニアアクチュエータ201の一方の端部203は船体180に取り付けられ、他方の端部204は上部支持構造に取り付けられる。アクチュエータ201がその長さを変えると、アクチュエータは、上部支持構造に結合されたその第2の端部204を押したり引いたりすることができる。したがって、リニアアクチュエータ201は、左舷-右舷方向に平行な軸を中心に動力システム10を回転させるためにその長さを変えるように構成される。よって、リニアアクチュエータ201の長さは、角度211を画定する。
【0066】
代わりにまたは加えて、位置決めシステムは、接続部材160と係合する回転式アクチュエータを備え得る。回転式アクチュエータの回転は、接続部材160の回転を誘発する。接続部材が動力システム10に剛性的に取り付けられると、接続部材の回転は動力システム10全体の回転を誘発する。
位置決めシステムは、アクチュエータの動作を制御するためのコントローラを備え得る。例えば、コントローラは、動力システムを所定の角度に位置決めするようにリニアアクチュエータの長さを制御し得る。
【0067】
図5a、図5b、図5c、図5dはそれぞれ、本開示の一例による船舶に結合された異なる位置での動力システムの側面図を示す。これらの図はまた、接続部材160の拡大図を含む。これらの図の動力システムは、図4a、図4b、図4cに示す動力システムと同様であり得る。しかしながら、図5a、図5b、図5c、図5dでは、接続部材160は、上部支持構造に回転可能に接続されている。
これらの図では、接続部材160は、接続部材第1の端部161から接続部材第2の端部162まで延びる。これらの図の接続部材は、略棒状である。これらの図の接続部材160は、左舷側接続部材と右舷側接続部材とを備える。これらの図では、左舷側接続部材のみが示されている。接続部材第1の端部161は、接続部材第1の端部軸163を中心に回転するように船体180の結合部分190に回転可能に結合される。よって、接続部材第1の端部161と船体180の結合部分190との間にヒンジ接続が形成される。
接続部材第2の端部162は、動力システム10の上部支持構造120の取付ブラケットに回転可能に結合され、接続部材160が接続部材第2の端部軸164を中心に回転することを可能にするヒンジ接続を形成する。接続部材第1の端部軸163および接続部材第2の端部軸164は、左舷-右舷方向に略平行である。接続部材第1の端部軸163は、左舷-右舷方向に略平行であり得る。これらの軸は間隔を置いて配置される。
これらの図の接続部材160は、船舶および水位に対する動力システムの可能な位置の数を増加させる。他の例のように、動力システム全体を船舶を中心に回転させ得る。加えて、これらの図では、動力システムと船尾との間の距離は調整することができる。さらに、船舶に対する動力システムの高さは、図5aおよび図5dに示すように、航行の種類に合わせて調整することができる。
【0068】
図5aおよび図5dでは、第3の方向3は水位210に略平行である。しかしながら、船舶に対する動力システムの高さ、すなわち垂直距離は、図5aよりも図5dの方が大きい。図5aの動力システムは、図5dの動力システムと比較すると引き上げられている。図5aでは、接続部材160は、接続部材第1の端部161の上方に接続部材第2の端部162を有する第1の方向と略平行に延びている。この位置は、比較的低速で航行するために使用され得る。
図5dでは、接続部材160は傾斜している。接続部材第1の端部161は、接続部材第2の端部162の上方にある。これにより、プロペラアセンブリの垂直位置を調整することが可能である。この配置は、効率的な方法でフォイルを使用することを可能にし得る。
船舶は、例えば、船体180の左舷側および/または右舷側に設けられ得る複数のフォイルを備え得る。
フォイルは、水中で動作する揚力面として理解することができる。船舶が水中を移動すると、フォイルは水流を偏向させ、フォイルに上向きの力が加えられ、船体が水位210より上に持ち上げられる。図4dの位置は、プロペラアセンブリを水位210より下に維持することを可能にする。したがって、十分なスラスト力を維持することができる。よって、フォイルの揚力効果は、プロペラアセンブリの垂直位置を調整するプロペラシステムの能力によって補償され得る。
【0069】
この図5dでは、水位210は船体より下にある。この図では、船体に結合されたフォイルは、船体を水位210より上に持ち上げている。しかしながら、いくつかの例では、航行条件に応じて、船体の最も低い側が水位210より下にあることもあり得る。
図5bの動力システム10は、プロペラシャフトの傾斜が特定の条件下で航行するように調整されたトリム位置にある。図4bと同様に、角度211は約7°である。図4cに示すように、図5cの動力システム10は、角度211が約45°のチルト位置にある。角度211は、-20°~+70°の間で変化し得る。
この図5bでは、船体の最も低い側が水位210より下にある。しかしながら、いくつかの例では、航行条件に応じて、水位210が船体より下にあることもあり得る。
これらの図の動力システム10は、リニアアクチュエータ201および回転式アクチュエータ(これらの図には示されていない)を備える位置決めシステム200を備える。回転式アクチュエータは、接続部材第1の軸163を中心とした接続部材第1の端部161の回転を制御するように構成される。回転式アクチュエータは、接続部材第1の端部161に剛性的に接続されたシャフトを駆動する、船舶に配置されたモータを備え得る。このようにして、モータは、接続部材161を接続部材第1の軸163を中心に回転させる。
リニアアクチュエータ201は、船体に結合された第1の端部203と、上部支持構造に結合された第2の端部204とを備える。リニアアクチュエータは、2つの端部間の長さを変えることができる。リニアアクチュエータの長さの変化は、船舶に対する動力システムの回転を引き起し得る。
【0070】
これらの図では、位置決めシステム200は、リニアアクチュエータ201および回転式アクチュエータの動作を制御するためのコントローラを備える。
コントローラは、接続部材160を接続部材第1の端部軸163を中心に回転させるために回転式アクチュエータを選択的に動作させ、および上部支持構造を接続部材第2の端部軸164を中心に回転させるために長さを変えるリニアアクチュエータ201を選択的に動作させるように構成され得る。これらの2種類のアクチュエータの動作を制御することにより、図5a、図5b、図5c、図5dに示すように、複数の正確な位置に達することができる。
例えば、コントローラは、回転式アクチュエータを固定位置に、すなわち回転しないように維持し、リニアアクチュエータの長さを増加させることができる。このようにして、接続部材160は、リニアアクチュエータの作用により、接続部材第2の軸163を中心にのみ回転する。または、リニアアクチュエータが作動されていない場合、すなわち、その長さが変えられていないが、回転式アクチュエータが接続部材第1の端部161を回転させる場合、動力システム全体が接続部材第1の軸163を中心に回転される。
【0071】
コントローラはまた、回転式アクチュエータを回転させ、リニアアクチュエータを作動させることができる。動力システムは、接続部材第1の軸163を中心に、および接続部材第2の軸164を中心に、第1の位置から第2の位置まで回転され得る。
図6は、本開示の一例による動力システム10の断面図を示す。図6の動力システム10は、本明細書に開示の例のいずれかによるものであり得る。例えば、動力システム10は、本明細書に開示の例のいずれかによる接続部材および/または操舵システムを備え得る。
この図では、動力システム10は、電気モータ20とギアボックス30とを備えている。この図の電気モータ20は非同期モータであるが、他の例では、他の適切な電気モータを使用してもよい。この例のギアボックス30は、エピサイクリックギア機構である。
この図では、動力システム10は、入力シャフト50と、中間シャフト60と、第1の端部76を有する第1のプロペラシャフト75と、第1の端部78を有する第2のプロペラシャフト77とをさらに備えている。第1のプロペラシャフト75および第2のプロペラシャフト77は、第3の方向に延びる。
入力シャフト50の第1の端部51は、ギアボックスに結合され、第1の入力シャフト支持要素220によって囲まれる。入力シャフト50の第2の端部52は、中間シャフト60の第1の端部61に回転可能に結合される。
第1の入力シャフト支持要素220および第2の入力シャフト支持要素230は、入力シャフト50を支持する。第1の入力シャフト支持要素220および第2の入力シャフト支持要素230は、外輪および内輪を有する軸受を備える。外輪は、上部支持構造120の内面に接続され、内輪は、入力シャフト50の第1の端部51および第2の端部52にそれぞれ接続される。
入力シャフトの第2の端部52に入力シャフトギア240が配置される。入力シャフトギア240は、第1の中間シャフトギア250と噛み合う。第1の中間シャフトギア250は、第1の中間シャフトギア支持要素260とさらに噛み合い得る。第1の中間シャフトギア支持要素260は、第1の中間シャフトギア240と噛み合うギアを備える。第1の中間シャフトギア支持要素260は、ギアが第1の方向を中心に回転することを可能にする軸受を備える。この図の第1の中間シャフトギア250は、入力シャフトギア240と第1の中間シャフトギア支持要素260との間に配置される。よって、上部部分63中間シャフトの不整列が防止される。
【0072】
加えて、この図の動力システムは、中間シャフトの上部部分63を回転可能に支持するための第1の中間シャフト支持要素261を備える。この支持要素は、中間シャフトの上部部分63の端部に接続された内輪と、上部支持構造に接続された外輪とを有する軸受を備える。
中間シャフトの上部部分63と下部部分64との間には、ダブルカルダンジョイント91が設けられる。他の例では、上部部分63と下部部分64は、本明細書に開示の例のいずれかに従って結合されてもよい。ダブルカルダンジョイント91は、下部部分64が中間シャフトの上部部分63を中心に回転することを可能にする。この図では、軸受92は、上部支持構造120を下部支持構造130に接続している。
中間シャフトの下部部分64は、第1のプロペラシャフト75の第1の端部76に回転可能に結合される。第2の中間シャフト支持要素291は、中間シャフトの下部部分64を支持し、整列させる。
第2の中間シャフトギア270は、中間シャフトの下部部分64の端部に配置され、第1のプロペラシャフト75の第1の端部76に配置された第1のプロペラシャフトギア280と噛み合う。この図では、第2の中間シャフトギア270は、第2のプロペラシャフトギア290と噛み合っている。第2のプロペラシャフトギア290は、第2のプロペラシャフト77の第1の端部78に配置される。第2のプロペラシャフトギア290は、第3の方向を中心に回転し、第2の中間シャフトギア270と噛み合うギアを備える。したがって、この図の第2の中間シャフトギア270は、第1のプロペラシャフト75と第2のプロペラシャフト77が第3の方向を中心に反対方向に回転するように、第2のプロペラシャフトギア290と第1のプロペラシャフトギア280との間に配置される。
【0073】
この図では、第1のプロペラシャフト75は、第2のプロペラシャフト77の周りに同心円状に取り付けられている。第1のプロペラシャフト75と第2のプロペラシャフト77は、反対方向に回転するように結合される。この図では、第2のプロペラシャフト77は、第2のプロペラシャフト77を受け入れるように配置された中空部分を有する第1のプロペラシャフトの内側に位置決めされている。他の例では、異なる構成が採用されてもよく、例えば、単一のプロペラシャフトが使用されてもよい。
この図では、第1のプロペラシャフトは第1のプロペラ111に結合されており、第2のプロペラシャフトは第2のプロペラに結合されている。
第1のプロペラシャフト75の第1の端部76は、プロペラシャフト支持要素300を通過する。プロペラシャフト支持要素300は、外輪および内輪を有する軸受を備える。外輪は、下部支持構造130の内面に接続され、内輪は、第1のプロペラシャフト75の第1の端部76に接続される。
第1の入力シャフト支持要素220、第2の入力シャフト支持要素230、第1の中間シャフト支持要素260、第1の中間シャフトギア支持要素261、第2の中間シャフトギア支持要素291および/またはプロペラシャフト支持要素300は、それぞれのシャフトおよび/またはシャフトギアに対する支持および適切な整列を提供し得る。この例によるギアは、ベベルギアである。他の例では、他のタイプのギアも適切であり得る。
【0074】
図7は、本明細書に開示の例のいずれかによる動力システム10を備える船舶400を示す。例えば、動力システム10は、本明細書に開示の例のいずれかによる接続部材および/または操舵システムを備え得る。動力システム10は、結合部分190にチルト可能に結合される。
この図では、結合部分190は船体180に取り付けられている。これにより、結合部分190と船体180とに異なる材料を使用することが可能になる。他の例では、結合部分190は船体180内に一体化されてもよい。
いくつかの例では、結合部分190は、連結構造、例えばアーム、ブラケットおよび/または鋳造構造を含み得る。
図7の結合部分は、船舶の船尾181から、船体180に固定的に結合された結合部分190の貫通孔193まで延びる2つのアーム191、192を含む。
この図では、貫通孔193は、接続部材160の少なくとも一部分が結合部分190を通過するように配置されている。
アーム191、192を船尾181に固定的に結合するために、溶接、ボルト締め、ポカヨケ要素の使用、または管の収縮を使用することができる。
接続部材160は、左舷-右舷方向に平行な方向に延びる。この例の接続部材160は、管状形状からなる。この図では、接続部材160は、取付ブラケット140に固定的に取り付けられている。接続部材160をブラケットに接続するために、溶接、ボルト締め、ポカヨケ要素の使用、またはブラケットの貫通孔内での管の収縮を使用することができる。
接続部材160は、接続部材160が左舷-右舷方向186に平行な軸を中心に回転することを可能にするヒンジ接続を形成する貫通孔193に回転可能に結合される。
【0075】
完全を期すために、本開示の様々な態様を、以下の番号付きの条項に記載する。
条項1.
船舶用の動力システムであって、
プロペラと、
電気モータと、
電気モータに結合されたギアボックスと、
入力シャフトと、中間シャフトと、プロペラシャフトとであって、
入力シャフトが、ギアボックスに結合された第1の端部と、中間シャフトに回転可能に結合された第2の端部とを有し、入力シャフトが、第1の端部から第2の端部まで第1の方向に延びており、
中間シャフトが、入力シャフトに回転可能に結合された第1の端部と、プロペラシャフトに回転可能に結合された第2の端部とを有し、中間シャフトが、第2の方向に延びている上部部分と、上部部分に回転可能に結合された下部部分とを備え、
プロペラシャフトが、中間シャフトに回転可能に結合された第1の端部と、プロペラに結合された第2の端部とを有し、プロペラシャフトが、第1の端部から第2の端部まで第3の方向に延びており、
第1の方向が、第2の方向に垂直であり、第3の方向に略平行である、入力シャフトと、中間シャフトと、プロペラシャフトと、
電気モータおよびギアボックスを支持する上部支持構造であって、船舶にチルト可能に結合されるように構成される上部支持構造と、
プロペラおよびプロペラシャフトを支持する下部支持構造であって、第2の方向を中心に回転するように上部支持構造に回転可能に結合されている下部支持構造とを備える、動力システム。
条項2.ギアボックスが、エピサイクリックギア機構を含む、条項1に記載の動力システム。
条項3.入力シャフトの第2の端部が、入力シャフトギアを備えており、中間シャフトの第1の端部が、入力シャフトギアと噛み合う第1の中間シャフトギアを備えている、条項1から2のいずれか一項に記載の動力システム。
条項4.入力シャフトギアおよび第1の中間シャフトギアが、ベベルギアおよび/またはヘリカルギアである、条項3に記載の動力システム。
条項5.中間シャフトの第2の端部が、第2の中間シャフトギアを備えており、プロペラシャフトの第1の端部が、第2の中間シャフトギアと噛み合うプロペラシャフトギアを備えている、条項1から4のいずれか一項に記載の動力システム。
条項6.第2の中間シャフトギアおよびプロペラシャフトギアが、ベベルギアおよび/またはヘリカルギアである、条項5に記載の動力システム。
条項7.中間シャフトが、中間シャフトの上部部分を下部部分に回転可能に結合するユニバーサルジョイントを備えている、条項1から6のいずれか一項に記載の動力システム。
条項8.ユニバーサルジョイントが、カルダンジョイントを含む、条項7に記載の動力システム。
条項9.電気モータが、電気モータ毎分回転数で回転するように構成されており、ギアボックスが、電気モータ毎分回転数を入力シャフト毎分回転数に低減させるように構成されている、条項1から8のいずれか一項に記載の動力システム。
条項10.入力シャフトの第2の端部と中間シャフトの第1の端部とが、入力シャフト毎分回転数を中間シャフト毎分回転数に低減させるように構成されている、条項1から9のいずれか一項に記載の動力システム。
条項11.中間シャフトの第2の端部とプロペラシャフトの第1の端部とが、中間シャフト毎分回転数をプロペラシャフト毎分回転数に低減させるように構成されている、条項1から10のいずれか一項に記載の動力システム。
条項12.上部支持構造が、入力シャフトおよび中間シャフトの第1の端部をさらに支持する、条項1から11のいずれか一項に記載の動力システム。
条項13.下部支持構造が、中間シャフトの第2の端部およびプロペラシャフトの第1の端部をさらに支持する、条項1から12のいずれか一項に記載の動力システム。
条項14.下部支持構造を上部支持構造に回転可能に結合する軸受をさらに備えている、条項1から13のいずれか一項に記載の動力システム。
条項15.軸受が、
下部支持構造に結合された第1の軸受部品と、
上部支持構造に結合された第2の軸受部品と、
第1の軸受部品と第2の軸受部品との間に配置された軸受要素と、を備えており、
第1の軸受部品が、第2の軸受部品に対して回転するように構成されている、条項14に記載の動力システム。
条項16.軸受要素が、滑走パッドを備えている、条項15に記載の動力システム。
条項17.軸受要素が、転がり要素を備えている、条項15に記載の動力システム。
条項18.下部支持構造を上部支持構造を中心に回転させるための操舵システムをさらに備えている、条項1から17のいずれか一項に記載の動力システム。
条項19.操舵システムが、上部支持構造に結合された第1の端部から下部支持構造に結合された第2の端部まで一定の長さを延びるアクチュエータを備えており、アクチュエータが、下部支持構造を上部支持構造を中心に回転させるために長さを変えるように構成されている、条項18に記載の動力システム。
条項20.上部支持構造が、上部支持構造を船舶に接続する接続部材を支持するための取付ブラケットを備えている、条項1から19のいずれか一項に記載の動力システム。
条項21.左舷-右舷方向に沿って左舷側から右舷側に延び、船首-船尾方向に沿って船首から船尾に延びている船体であって、結合部分を備えている船体と、
条項1から20のいずれか一項に記載の動力システムであって、動力システムの上部支持構造が、船体の結合部分にチルト可能に結合されている動力システムとを備えている、船舶。
条項22.船体の船尾と中間シャフトとの間の距離が、200mmより大きく、任意選択的に200mmから800mmの間である、条項21に記載の船舶。
条項23.上部支持構造が、取付ブラケットを備えており、船舶が、船体の結合部分を動力システムの上部支持構造の取付ブラケットに接続する接続部材をさらに備えている、条項21または22に記載の船舶。
条項24.接続部材が、船体の結合部分に回転可能に結合されている、条項23に記載の船舶。
条項25.接続部材が、左舷-右舷方向に平行な方向に延びている、条項24に記載の船舶。
条項26.取付ブラケットが、接続部材に固定的に接続されている、条項23から25のいずれか一項に記載の船舶。
条項27.接続部材が、
接続部材第1の端部軸を中心に回転するように船体の結合部分に回転可能に結合されている第1の端部と、
接続部材第2の端部軸を中心に回転するように動力システムの上部支持構造の取付ブラケットに回転可能に結合されている第2の端部とを備えている、条項23または24に記載の船舶。
条項28.結合部分が、接続部材の少なくとも一部分が結合部分を通過するように配置されている貫通孔を備えている、条項21から27のいずれか一項に記載の船舶。
条項29.結合部分が、接続部材を受け入れる貫通孔を備えているプレートをさらに備えている、条項28に記載の船舶。
条項30.動力システムを水位に対して位置決めする位置決めシステムをさらに備えている、
条項21から29のいずれか一項に記載の船舶。
条項31.位置決めシステムが、左舷-右舷方向に平行な軸を中心に動力システムを回転させるために接続部材を回転させるように構成された回転式アクチュエータを備えている、条項30に記載の船舶。
条項32.位置決めシステムが、回転式アクチュエータを制御するためのコントローラを備えている、条項31に記載の船舶。
条項33.位置決めシステムが、船体に結合された第1の端部から上部支持構造に結合された第2の端部までの長さを変えるリニアアクチュエータであって、左舷-右舷方向に平行な軸を中心に動力システムを回転させるために長さを変えるように構成されたリニアアクチュエータを備えている、条項30から32のいずれか一項に記載の船舶。
条項34.位置決めシステムが、リニアアクチュエータを制御するためのコントローラを備えている、条項33に記載の船舶。
条項35.接続部材が、
接続部材第1の端部軸を中心に回転するように船体の結合部分に回転可能に結合されている第1の端部であって、接続部材第1の端部軸が左舷-右舷方向に平行である、第1の端部と、
接続部材第2の端部軸を中心に回転するように動力システムの上部支持構造の取付ブラケットに回転可能に結合されている第2の端部であって、接続部材第2の端部軸が左舷-右舷方向に平行である、第2の端部とを備えており、
位置決めシステムが、
位置決めシステムが、水位に対する動力システムの第1の位置を、水位に対する動力システムの第2の位置に調整するように、
接続部材を接続部材第1の端部軸を中心に回転させるように構成された回転式アクチュエータと、
船体に結合された第1の端部から上部支持構造に結合された第2の端部までの長さを変えるリニアアクチュエータであって、上部支持構造を接続部材第2の端部軸を中心に回転させるために長さを変えるように構成されている、リニアアクチュエータと、
コントローラであって、
接続部材を接続部材第1の端部軸を中心に回転させるために回転式アクチュエータを選択的に動作させ、
上部支持構造を接続部材第2の端部軸を中心に回転させるために長さを変えるリニアアクチュエータを選択的に動作させるように構成されたコントローラと、をさらに備えている、条項30から34のいずれか一項に記載の船舶。
条項36.船体が、複数のフォイルをさらに備えている、条項21から35のいずれか一項に記載の船舶。
条項37.複数のフォイルが、左舷側および/または右舷側に配置されている、条項36に記載の船舶
本明細書にはいくつかの例のみ開示されているが、他の代替、修正、使用および/または等価物が可能である。さらに、記載の例のすべての可能な組合せも網羅される。よって、本開示の範囲は、特定の例によって限定されるべきではなく、以下の条項を公正に読むことによってのみ決定されるべきである。図面に関連する参照符号が条項内の括弧内に記載されている場合、それらは単に条項の分かりやすさを高めるように試みたためのものであり、条項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7
【国際調査報告】