(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】大きな生理活性物質及び賦形剤を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240905BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240905BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240905BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240905BHJP
A61K 47/16 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K47/28
A61K38/02
A61K31/715
A61K31/7088
A61K47/46
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/16 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514661
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 KR2022013497
(87)【国際公開番号】W WO2023038450
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0118832
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】318012089
【氏名又は名称】ディーアンドディー ファーマテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パク, ウン ジ
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジ ヨン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA30
4C076AA31
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4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA11
(57)【要約】
本発明は、体内における大きな生理活性物質の吸収率を効率的に増大させる医薬組成物、具体的には、(i)大きな生理活性物質と、(ii)胆汁酸誘導体を含む賦形剤A、または(iii)CYP450阻害、抗酸化作用、もしくは消化管酵素活性阻害作用を有する化合物を含む賦形剤Bとを含む医薬組成物、ならびにそれを調製するための方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
(i)大きな生理活性物質と、(ii)胆汁酸誘導体を含む賦形剤A、または
(iii)CYP450阻害、抗酸化作用、もしくは消化管酵素活性阻害作用を有する化合物もしくはその誘導体を含む賦形剤Bと、を含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記(i)大きな生理活性物質が、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ヌクレオチド、またはそれらの類似体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記賦形剤Aにおいて、前記胆汁酸誘導体が、グリココール酸、グリココールケノデオキシコール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、リトコール酸、デヒドロコール酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記賦形剤Aにおいて、前記胆汁酸誘導体が、グリココール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記賦形剤Aにおいて、前記胆汁酸誘導体が、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記賦形剤Aにおいて、前記胆汁酸誘導体が、タイトジャンクション開口胆汁酸誘導体を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記賦形剤Aにおいて、前記胆汁酸誘導体が、非タイトジャンクション開口胆汁酸誘導体を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記賦形剤Aにおいて、前記胆汁酸誘導体が、タイトジャンクション開口胆汁酸誘導体A-1、及び非タイトジャンクション開口胆汁酸誘導体A-2を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記賦形剤Bが、CYP450阻害、抗酸化作用、または消化管酵素活性阻害作用のうちの少なくとも1つを有する化合物もしくはその誘導体を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記賦形剤Bにおいて、前記(iii)CYP450阻害、抗酸化作用、または消化管酵素活性阻害作用を有する化合物もしくはその誘導体が、CYP450阻害化合物、抗酸化化合物、タンパク質分解酵素阻害化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記CYP450阻害化合物が、没食子酸プロピル、またはその薬学的に許容される塩である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記抗酸化化合物が、没食子酸、カフェー酸、リポ酸、クエン酸、アセチルカルニチン、アセチルシステイン、グルタチオン、アスコルビル化合物、トコフェリル化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記タンパク質分解酵素阻害化合物が、没食子酸プロピル、アプロチニン、メシル酸カモスタット、メシル酸ガベキサート、大豆クニッツトリプシン阻害剤(SBTI)、大豆クニッツトリプシン-キモトリプシン阻害剤(SBTCI)、大豆ボーマン-バーク阻害剤、EDTA、バシトラシン、オボムコイド、クエン酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記賦形剤Bが、没食子酸プロピル;及びメシル酸カモスタット、クエン酸、大豆トリプシン阻害剤、またはEDTAからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記賦形剤Bが、没食子酸プロピル、メシル酸カモスタット、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記賦形剤Aにおいて、前記胆汁酸誘導体が、ケノデオキシコレート、ウルソデオキシコレート、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記賦形剤Bが、没食子酸プロピル、メシル酸カモスタット、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記(i)大きな生理活性物質と前記(ii)賦形剤Aとの重量比が1:1~1500である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記(ii)賦形剤Aが2つ以上の胆汁酸誘導体を含み、各々の重量比が、前記大きな生理活性物質の重量に対して1~1500である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記(i)大きな生理活性物質と前記(iii)賦形剤Bとの重量比が1:0.1~300である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物が経口投与される、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
医薬組成物を製造する方法であって、(i)大きな生理活性物質と、(ii)胆汁酸誘導体を含む賦形剤A、または(iii)CYP450阻害、抗酸化作用、もしくは消化管酵素活性阻害作用を有する化合物もしくはその誘導体を含む賦形剤Bとを混合するステップを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子の経口バイオアベイラビリティを増大させるための製剤に関する。具体的には、本発明は、(i)大きな生理活性物質と、(ii)胆汁酸誘導体を含む賦形剤A、または(iii)CYP450阻害、抗酸化作用、もしくは消化管酵素活性阻害作用を有する化合物もしくはその誘導体を含む賦形剤Bとを含む医薬組成物、ならびにそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の食習慣に関して現代社会では、食習慣の変化による心血管疾患、糖尿病、及び骨粗しょう症などの生活習慣病を多くの人が患っている。生活習慣病の一種である糖尿病は、世界中に蔓延しており、毎年150万人超が糖尿病で死亡していると推定される。世界的な糖尿病市場は、2016年の801.5億ドルから12.4%のCAGRで成長し、2022年には1,616億9000万ドルに達すると予想される。加えて、医療の進歩に起因する高齢化により、骨粗しょう症及び心血管疾患を含む全ての分野で市場規模が拡大している。
【0003】
薬物送達方法の観点から、大きくは経口剤形と非経口剤形とに分けられ、コスト、患者投与の利便性、製造の容易さなどを考慮して、多数の経口剤形の薬物が開発されている。患者の治療コンプライアンスの観点からは、一般的に、治療薬の経口投与が非経口投与よりも優れた投与経路であると考えられており、これは、治療薬の性質または治療する症状の性質が毎日複数回の治療薬の投与を必要とする場合に特に当てはまる。しかしながら、これにもかかわらず、ポリペプチド及び多糖類などの高分子は、うまく経口投与することが非常に困難であることが知られており、それゆえ、高分子は、例えば、皮下、筋肉内、または静脈内注射により非経口投与されている。したがって、高分子の経口バイオアベイラビリティを、こうした高分子の経口投与を可能にする範囲にまで増強する製剤を提供することが非常に望ましい。市場規模が大きく、また成長ポテンシャルが高い糖尿病治療の場合、多くの企業によって経口剤形が開発されている。具体的には、DPP-4阻害剤系には、MSDのJanuvia、Boehringer IngelheimのTrajenta、LG ChemのZemiglo、NovartisのGalvus、ならびにAstraZenecaのOnglyza及びKombiglyzeが挙げられ、SGLT-2阻害剤系には、AstraZenecaのFarxiga、Xigduo、及びBoehringer IngelheimのJardianceが挙げられ、TZD系には、TakedaのActos、及びChong Kun DangのDuvierが挙げられる。さらに、経口GLP-1であるNovo NordiskのRybelsusもある。しかしながら、上記の薬物の中で、DPP-4阻害剤は、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン、及びゲミグリプチンであり;SGLT-2阻害剤は、ダパグリフロジン、イプラグリフロジン、及びエンパグリフロジンであり;TZDは、チアゾリジンジオンであり、これらは、高分子薬物ではない。
【0004】
インスリン、ヘパリン、カルシトニン、インターフェロン、及び成長ホルモンなどの高分子薬物の大量生産は、電子操作及び生物学的処理の進歩により可能になったが、高分子薬物は、その大きな分子量に関連する問題を有し、高分子薬物が消化管粘膜を通過すること、または消化酵素によって容易に分解されることが困難となるために経口投与が制限され、結果的に静脈内注射及び筋肉内注射などの方法によって治療が行われる。静脈内注射及び筋肉内注射などのこれらの投与形態は、全身循環に直接入るため、高いバイオアベイラビリティ及び薬物作用の迅速な発現という利点を有するが、血液中への薬物の直接投与による薬物作用の発現は、副作用のリスクを増大させる。さらに、注射による投与は、痛み及び不快感に起因する低い患者コンプライアンスを伴う。また、自己投与が不可能な場合、または院内で投与を行う必要がある場合もある。後者の場合、薬物の半減期が短い場合、及び反復投与が必要な場合に、これは面倒な問題となることもあり、また入院治療または入院が必要な場合には社会に対する負担の増大が問題となり得る。この問題を解決するため、経口薬物を製造するために国内外で研究が行われているが、高分子薬物は、一般的に経口投与時に0~2%のバイオアベイラビリティを有するのみであり、成功率が低いという問題がある。
【0005】
近年、高分子薬物の経口吸収について多くの研究が行われているが、経口薬物に対する需要が増大しており、その供給が不十分な状況である。本発明者は、胆汁酸系賦形剤を使用することによってこの問題を解決することを目的とする。
【発明の概要】
【0006】
解決しようとする課題
上記の問題を解決するために、本発明は、大きな生理活性物質を特定の賦形剤と混合して優れた経口吸収率を有する医薬組成物を調製することによって、大きな生理活性物質の生体吸収率を効率的に増大させることを目的とする。
【0007】
課題を解決する手段
上記目的を達成するために、本発明は、(i)大きな生理活性物質と、(ii)胆汁酸誘導体を含む賦形剤A、または(iii)CYP450阻害、抗酸化作用、もしくは消化管酵素活性阻害作用を有する化合物もしくはその誘導体を含む賦形剤Bと、を含む、医薬組成物を提供する。
【0008】
本発明の一態様では、(i)大きな生理活性物質は、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ヌクレオチド、またはそれらの類似体である。
【0009】
本発明の一態様では、(ii)賦形剤Aにおいて、胆汁酸誘導体は、グリココール酸、グリココールケノデオキシコール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、リトコール酸、デヒドロコール酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。さらに、本発明の一態様では、胆汁酸誘導体は、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0010】
さらに、本発明の一態様では、(ii)賦形剤Aにおいて、胆汁酸誘導体は、グリココール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。さらに、本発明の一態様では、胆汁酸誘導体は、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0011】
さらに、本発明の一態様では、(ii)賦形剤Aにおいて、胆汁酸誘導体は、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。さらに、本発明の一態様では、胆汁酸誘導体は、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0012】
本発明の別の態様では、(ii)賦形剤Aにおいて、胆汁酸誘導体は、ケノデオキシコール酸及びウルソデオキシコール酸、またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0013】
本発明の別の態様では、(ii)賦形剤Aにおいて、胆汁酸誘導体は、タイトジャンクション開口胆汁酸誘導体を含む。
【0014】
本発明の別の態様では、(ii)賦形剤Aにおいて、胆汁酸誘導体は、非タイトジャンクション開口胆汁酸誘導体を含む。
【0015】
本発明の1つの特定の態様では、(ii)賦形剤Aにおいて、胆汁酸誘導体は、タイトジャンクション開口胆汁酸誘導体A-1及び非タイトジャンクション開口胆汁酸誘導体A-2を含む。
【0016】
本発明の一態様では、賦形剤Bは、CYP450阻害、抗酸化作用、または酵素活性阻害作用のうちの1つ以上を有する化合物またはその誘導体である。
【0017】
本発明の一態様では、賦形剤Bにおいて、CYP450阻害、抗酸化作用、または酵素活性阻害作用を有する少なくとも1つの化合物もしくはその誘導体は、CYP450阻害化合物、抗酸化化合物、プロテアーゼ阻害化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。または、上記の群から選択される2種類以上である。
【0018】
本発明の一態様では、CYP450阻害化合物は、没食子酸プロピルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0019】
本発明の一態様では、賦形剤Bにおいて、抗酸化化合物は、没食子酸、カフェー酸、リポ酸、クエン酸、アセチルカルニチン、アセチルシステイン、グルタチオン、アスコルビル化合物、トコフェリル化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、抗酸化化合物は、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0020】
本発明の一態様では、アスコルビル化合物は、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。
【0021】
本発明の一態様では、トコフェリル化合物は、トコフェロール、酢酸トコフェリル、コハク酸トコフェリル、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。
【0022】
本発明の一態様では、タンパク質分解酵素阻害化合物は、消化管内の酵素活性を阻害する作用を有する。
【0023】
本発明の一態様では、タンパク質分解酵素阻害化合物は、没食子酸プロピル、アプロチニン、メシル酸カモスタット、メシル酸ガベキサート、大豆トリプシン阻害剤(大豆クニッツトリプシン阻害剤、SBTI)、大豆トリプシン-キモトリプシン阻害剤(大豆クニッツトリプシン-キモトリプシン阻害剤、SBTCI)、大豆ボーマン-バーク阻害剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、バシトラシン、オボムコイド、クエン酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、抗酸化化合物は、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0024】
本発明の一態様では、(iii)賦形剤Bは、没食子酸プロピル、メシル酸カモスタット、クエン酸、大豆トリプシン阻害剤、EDTA、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、抗酸化化合物は、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0025】
本発明の一態様では、(iii)賦形剤Bは、没食子酸プロピル、メシル酸カモスタット、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0026】
本発明の1つの特定の態様では、(ii)賦形剤Aは、ケノデオキシコレート、ウルソデオキシコレート、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上であり、(iii)賦形剤Bは、没食子酸プロピル、メシル酸カモスタット、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、各賦形剤は、上記の群から選択される2種類以上である。
【0027】
本発明の一態様では、医薬組成物は、賦形剤A及び賦形剤Bを含み、賦形剤Aと賦形剤Bとの重量比は1:0.001~5である。
【0028】
本発明の一態様では、(i)大きな生理活性物質と(ii)賦形剤Aとの重量比は1:1~1500である。
【0029】
本発明の一態様では、(ii)賦形剤Aは2つ以上の胆汁酸誘導体を含み、それぞれの重量比は、大きな生理活性物質の重量に対して1~1500である。
【0030】
本発明の一態様では、(i)大きな生理活性物質と(iii)賦形剤Bとの重量比は1:0.1~300である。
【0031】
本発明の一態様では、医薬組成物は経口投与される。
【0032】
さらに、本発明は、(i)大きな生理活性物質と、(ii)胆汁酸誘導体を含む賦形剤A、または(iii)CYP450阻害、抗酸化作用、もしくは酵素活性阻害作用を有する化合物もしくはその誘導体を含む賦形剤Bとを混合するステップを含む、医薬組成物を製造するための方法に関する。
【0033】
本発明の一態様では、(i)大きな生理活性物質と(ii)賦形剤Aとの重量比は1:1~1500である。
【0034】
本発明の一態様では、(i)大きな生理活性物質と(iii)賦形剤Bとの重量比は1:0.1~300である。
【0035】
本発明の一態様では、上記製造方法において、医薬組成物は、賦形剤A及び賦形剤Bを含み、賦形剤Aと賦形剤Bとの重量比は1:0.001~5である。
【0036】
発明の効果
本発明において、2つ以上の賦形剤を使用することにより、大きな生理活性物質の分解を防ぐことができ、また腸管膜透過が可能であるために体内での吸収率が著しく増大して優れた吸収率を有するという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】Caco-2における胆汁酸誘導体による細胞毒性を確認する図である。
【
図2】Caco-2における胆汁酸誘導体及び没食子酸プロピルのタイトジャンクション開口性を確認する図である。
【
図3】胆汁酸誘導体によるCaco-2細胞膜透過経路を確認する図である。
【
図4】大きな生理活性物質(化合物1及び14)及び1種類の胆汁酸を含む組成物のCaco-2細胞膜透過性を測定する図である。
【
図5】大きな生理活性物質(化合物1)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の血糖調節能力を測定する図である。
【
図6】大きな生理活性物質(化合物1)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の血糖調節能力を測定する図である。
【
図7】大きな生理活性物質(化合物14)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の減量効果及び食欲抑制効果を測定する図である。
【
図8】大きな生理活性物質(化合物14)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の減量効果及び食欲抑制効果を測定する図である。
【
図9】大きな生理活性物質(化合物15)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の減量効果及び食欲抑制効果を確認する図である。
【
図10】大きな生理活性物質(化合物15)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の減量効果及び食欲抑制効果を確認する図である。
【
図11】大きな生理活性物質(化合物17)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の減量効果及び食欲抑制効果を確認する図である。
【
図12】大きな生理活性物質(化合物17)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の減量効果及び食欲抑制効果を確認する図である。
【
図13】大きな生理活性物質(化合物17)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の減量効果及び食欲抑制効果を確認する図である。
【
図14】大きな生理活性物質(化合物18)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の血糖調節能力を確認する図である。
【
図15】大きな生理活性物質(化合物19)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の血糖調節能力を確認する図である。
【
図16】大きな生理活性物質(化合物19)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の血糖調節能力を確認する図である。
【
図17】大きな生理活性物質(化合物20、21、及び22)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含む組成物の血糖調節能力を確認する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明は、(i)大きな生理活性物質と、(ii)胆汁酸誘導体を含む賦形剤A、または(iii)CYP450阻害、抗酸化作用、もしくは消化管酵素活性阻害作用を有する化合物もしくはその誘導体を含む賦形剤Bと、を含む、医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、当業者が本発明を容易に実施できるように、本発明の実施態様例及び実施例を詳細に説明する。
【0040】
しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で実施され得、本明細書に記載される実施態様例及び実施例に限定されない。本発明の明細書を通して、一部分が、ある特定の成分を「含む」場合、それは、特に断らない限り、他の成分を排除することではなく他の成分がさらに含まれていてもよいことを意味する。
【0041】
本発明の明細書全体を通して、マーカッシュ形式の表現の中に含まれている「その組み合わせ」及び「それらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現の中に記載されている構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合物または組み合わせを指しており、上記構成要素からなる群から選択される1つ以上が含まれることを意味する。
【0042】
本発明において、「誘導体」及び「類似体」とは、構造の一部が、欠失、置換、付加などによって改変されていることを意味する。
【0043】
本発明において、「薬学的に許容される」とは、含まれる成分が、生体を大きく刺激せず、生物学的活性及び特性を阻害しないことを意味する。
【0044】
本発明において、「薬学的に許容される塩」とは、ヒトまたは動物の生物学的活性及び特性を阻害することなく望ましい生物学的活性を持つ塩を指し、無機酸塩(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸)、有機酸(酢酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、安息香酸、アスコルビン酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピリジン)、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩)、アンモニウム塩、それらの付加塩形態などを含むが、それらに限定されない。
【0045】
本発明では、胆汁酸は両親媒性分子であり、生体膜を通る薬物透過を促進することができる。胆汁酸またはその誘導体は、本発明の大きな生理活性物質と組み合わされた形態で吸収され、それによって、経口投与中の大きな生理活性物質の損失を最小限に抑え、体内での吸収率を改善する。さらに、本発明では、胆汁酸またはその誘導体を他の賦形剤と混合して、体内での吸収をさらに改善することができる。体内での吸収率は、上記の組み合わせに応じて、腸内の所望の場所で透過するように調整することができる。例えば、胃内の大きな生理活性物質の分解を阻害することによって、製剤は小腸または結腸に到達して作用することができる。
【0046】
さらに、細胞安定性、細胞毒性、体内での吸収率などを考慮して、胆汁酸の一部が置換、欠失または付加された胆汁酸誘導体を適切に選択することができる。
【0047】
本発明は、(i)大きな生理活性物質と、(ii)胆汁酸誘導体を含む賦形剤A、または(iii)CYP450阻害、抗酸化作用、もしくは酵素活性阻害作用を有する化合物もしくはその誘導体を含む賦形剤Bと、を含む、医薬組成物に関する。
【0048】
本発明では、大きな生理活性物質は、当該技術分野で公知の分子量を有し、具体的には、1000Da以上のサイズを有し、ヒトまたは動物の体内で活性である物質を指す。
【0049】
大きな生理活性物質は、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ヌクレオチド、またはその類似体を含み、以下の例を含む:
(a)グルカゴン、GLP-1、GLP-2、GIP、エキセンジン-4、エキセナチド、セマグルチド、リラグルチド、インスリン、副甲状腺ホルモン、チルゼパチド、アミリン、プラムリンチド、脂質化エキセンジン-4、脂質化エキセナチド、脂質化インスリン、脂質化アミリン、脂質化GluB、ビオチニルエキセンジン-4、ビオチニルエキセナチド、ビオチニルアミリン、ビオチニル副甲状腺ホルモン、オクトレオチド、ロイプロリド、ゴセレリン、成長ホルモン、エタネルセプト、抗体、抗体断片、アルブミン及びその断片、ガラニン、カルシトニン、セクレチン、ヒストン、インターフェロン、エリスロポエチン、セロトニン、リツキシマブ、トラスツズマブ、ウリカーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、チモグロビン、ワクチン、トランスフェリン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、フィルグラスチム、プラムリンチドアセテート、エプチフィバチド、ミオシン、アクチン、ジストロフィン、アンチベニン、IgG、IgM、HGH、チロキシン、血液凝固第VII因子、血液凝固第VIII因子、モノクローナル抗体、抗原切片、インターロイキン、サイトカイン、TNF、TGF、酵素、結合タンパク質、細胞受容体、シグナル伝達タンパク質、シグナル伝達分子、それらの類似体、及びそれらのコンジュゲート、
(b)グリコーゲン、ラブロース(labulose)、ラクトース、グルカン、キチン、グリコーゲン、セルロース、デンプン、デキストリン、ペクチン、ヘパリン、キトサン、シゾフィラン、デンプン、アラバン、フルクタン、ヒアルロン酸、ケラタン、コンドロイチン、キシラン、それらの類似体、それらのコンジュゲート、ならびに
(c)AMP、GMP、UMP、CMP、IMP、XMPなどを含むリボヌクレオチド;dAMP、dGMP、dUMP、dCMP、dIMP、dXMPなどを含むデオキシリボヌクレオチド;cAMP、cGMP、c-di-GMP、c-di-AMP、cADPなどを含む環状ヌクレオチド;ADP、GP、UDP、CDP、dADPなどを含むヌクレオシド二リン酸塩;それらの組み合わせを含むオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド;それらの類似体、それらのコンジュゲートなど。しかしながら、上記の物質は例示であり、大きな生理活性物質はそれらに限定されない。
【0050】
本発明において、ビオチン化は、ポリペプチド、タンパク質、多糖類などの一部がビオチン部分に結合している形態を指し、ビオチン部分は、ビタミンB、ビタミンB複合体、またはビタミンB類似体の一部もしくは全てを指す。さらに、この場合、ビタミンB複合体とは、ビタミンBがアミノ酸、脂肪酸などに結合している形態の1つ以上のビタミンBを含む複合体形態を指す。
【0051】
さらに、本発明において、「脂質化」は、ポリペプチド、タンパク質、多糖類などの一部が脂肪酸部分に結合している形態を指し、脂肪酸部分は、飽和または不飽和のいずれかである長い脂肪族鎖を有するカルボン酸の一部または全てを指す。結合可能な脂肪酸部分としては、例えば、飽和酸の種類であるカプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、セロチン酸、飽和脂肪酸の種類であるミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、アルファ-リノレン酸などが挙げられる。しかしながら、これらは例示であり、脂肪酸部分はそれらに限定されない。
【0052】
さらに、本発明において、ビオチン化/脂質化は、ビオチン化及び脂質化の両方を含む形態を指し、ビオチン部分及び脂肪酸部分が、ポリペプチド、タンパク質、多糖類などの一部に結合している形態を意味する。さらに、ビオチン化及び脂質化は、1つのアミノ酸においてビオチン化及び脂質化の両方を含む形態(例えば、アミノ酸-脂肪酸部分-ビオチン部分、アミノ酸-ビオチン部分-脂肪酸部分-ビオチン部分など)で存在し得るか、または2つ以上の異なるアミノ酸でビオチン化及び脂質化をそれぞれ含む形態で存在し得る。
【0053】
本発明の一態様では、(i)大きな生理活性物質は、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ヌクレオチド、またはそれらの類似体である。
【0054】
本発明の一態様では、(i)大きな生理活性物質は、GLP-1、GCG、GIP、インスリン、アミリン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、ヘパリン、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、及びそれらの類似体からなる群から選択される1つ以上である。
【0055】
本発明の一態様では、(i)大きな生理活性物質は、GLP-1、GCG、GIP、インスリン、アミリン、副甲状腺ホルモン、及びそれらの類似体からなる群から選択される1つ以上である。
【0056】
本発明の一態様では、(i)大きな生理活性物質は、GLP-1受容体アゴニスト、GCG受容体アゴニスト、GIP受容体アゴニスト、GLP-1/GCG受容体アゴニスト、GLP-1/GCG/GIP受容体アゴニスト、インスリン、インスリン受容体アゴニスト、アミリン、アミリン受容体アゴニスト、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン受容体アゴニスト、それらのビオチン化類似体、それらの脂質化類似体、及びそれらのビオチン化/脂質化類似体からなる群から選択される1つ以上である。
【0057】
本発明の1つの特定の態様では、(i)大きな生理活性物質は、GLP-1受容体アゴニスト、GLP-1/GCG受容体アゴニスト、インスリン、インスリン受容体アゴニスト、アミリン、アミリン受容体アゴニスト、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン受容体アゴニスト、それらのビオチン化類似体、それらの脂質化類似体、及びそれらのビオチン化/脂質化類似体からなる群から選択される1つ以上である。
【0058】
本発明の一態様では、(i)大きな生理活性物質は、グルカゴン、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)、GLP-2(グルカゴン様ペプチド-2)、GIP(グルコース依存性インスリノトロピックポリペプチド)、エキセンジン-4、エキセナチド、セマグルチド、リラグルチド、インスリン、副甲状腺ホルモン(PTH)、チルゼパチド、アミリン、プラムリンチド、脂質化エキセンジン-4、脂質化エキセナチド、脂質化インスリン、脂質化アミリン、脂質化GluB、ビオチニルエキセンジン-4、ビオチニルエキセナチド、ビオチニルアミリン、ビオチニル-PTH、オクトレオチド、ゴセレリン、ロイプロリド、成長ホルモン、エタネルセプト、及びそれらの類似体からなる群から選択される1つ以上である。
【0059】
さらに、本発明の一態様では、(i)大きな生理活性物質は、エキセンジン-4、エキセナチド、セマグルチド、インスリン、副甲状腺ホルモン(PTH)、アミリン、それらの類似体、それらのビオチン化類似体、それらの脂質化類似体、及びそれらのビオチン化/脂質化類似体からなる群から選択される1つ以上である。
【0060】
ビオチン化は、アミノ酸、ポリペプチド、アルキレン、アミン、またはポリアミドアミン構造によって達成することができる。この場合、アミノ酸としては、リジン、5-ヒドロキシリジン、4-オキサリジン、4-チアリジン、4-セレナリジン、4-チアホモリジン、5,5-ジメチルリジン、5,5-ジフルオロリジン、トランス-4-ジヒドロリジン、2,6-ジアミノ-4-ヘキシン酸、シス-4-ジヒドロリジン、6-N-メチルリジン、ジアミノピメリン酸、オルニチン、3-メチルオルニチン、α-メチルオルニチン、シトルリン、ホモシトルリン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、オルニチン、プロリン、セリン、またはスレオニンが挙げられるが、これらは例示であり、アミノ酸はそれらに限定されない。
【0061】
ビオチン化は、ポリペプチドの一部を置換または挿入することによって達成され得、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列の不活性領域の中の1つ以上のアミノ酸が、リジンアミノ酸によって置換または挿入され得る。さらに、それに限定されないが、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列の不活性領域の中のアミノ酸のうちの1つ以上が、2-アミノイソ酪酸(Aib)によって置換されてもよく、リジンアミノ酸が挿入されてもよい。さらに、例えば、アミノ酸配列の不活性部分の中の任意の1つ以上のアミノ酸が、ピログルタミン酸(pyr)によって置換されてもよい。
【0062】
本発明の一態様では、ビオチン化は、以下の化合物が結合するビオチン化であり得る:
【化1-1】
【化1-2】
この場合、*はアミノ酸に結合した部分である。
【0063】
さらに、本発明の一態様では、脂質化は、以下の化合物が結合されている状態の脂質化であり得る:
【化2】
この場合、*はアミノ酸に結合した部分である。
【0064】
本発明の1つの特定の態様では、(i)大きな生理活性物質は、配列番号1~9または配列番号13~17からなる群から選択される。さらに、本発明の1つの特定の態様では、(i)大きな生理活性物質は、配列番号10及び11のアミノ酸配列を有するタンパク質、または配列番号12及び11のアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。
【0065】
さらに、本発明の1つの特定の態様では、(i)大きな生理活性物質は、ビオチン部分または脂肪酸部分が、上記配列番号で構成されるタンパク質の1つ以上のアミノ酸に結合しているポリペプチドであり得る。
【0066】
本発明において、賦形剤A及びBは、インビボで大きな生理活性物質の吸収を補助、促進、及び増強し、それによって吸収率を増大させる。
【0067】
本発明の一態様では、(ii)胆汁酸誘導体を含む賦形剤A、及び(iii)CYP450阻害、抗酸化作用、または酵素活性阻害作用を有する化合物を含む賦形剤Bは、それぞれ1つ以上の種類を含んでもよい。本発明において、賦形剤A及び賦形剤Bの種類及び数は、大きな生理活性物質の種類に応じて変動し得る。
【0068】
本発明の一態様では、賦形剤A及びBにおいて、賦形剤は、タイトジャンクション開口化合物または非タイトジャンクション開口化合物を含む。
【0069】
本発明において、上記のタイトジャンクション開口は、細胞間結合の開口の種類を指し、具体的には、上皮細胞のタイトジャンクションを開口することによって活性高分子の吸収を促進することができる作用機構を指す。
【0070】
本発明では、非タイトジャンクション開口性(非タイトジャンクション開口)とは、タイトジャンクション開口機構以外の経口吸収率を改善することができる全ての機構を指し、例えば、タイトジャンクション以外の接合部の開口などの機構であって、消化管における分解の低下、胃腸透過性の改善などの腸管受容体への結合を促進する機構、腸内における接着接合、接着斑、半接着斑、ギャップ結合などを含む。
【0071】
本発明の一態様では、賦形剤A及びBにおいて、賦形剤は、タイトジャンクション開口胆汁酸誘導体、非タイトジャンクション開口胆汁酸誘導体、または非タイトジャンクション開口化合物から選択される1つ以上を含む。
【0072】
本発明の一態様では、タイトジャンクション開口胆汁酸誘導体は、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、またはそれらの薬学的に許容される塩であり得る。
【0073】
本発明の一態様では、非タイトジャンクション開口胆汁酸誘導体は、ウルソデオキシコール酸またはその薬学的に許容される塩であってもよい。
【0074】
本発明の一態様では、非タイトジャンクション開口化合物は、没食子酸プロピルまたはその薬学的に許容される塩であってもよい。
【0075】
賦形剤Aは、胆汁酸誘導体を含み、本明細書では、胆汁酸誘導体は、例えば、グリココール酸、グリココールケノデオキシコール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、リトコール酸、それらの類似体、コンジュゲートなどを含む。
【0076】
本発明の一態様では、(ii)賦形剤Aにおいて、胆汁酸誘導体は、グリココール酸、グリココールケノデオキシコール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、リトコール酸、デヒドロコール酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。
【0077】
本発明の一態様では、(ii)賦形剤Aにおいて、胆汁酸誘導体は、グリココール酸、グリココールケノデオキシコール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、リトコール酸、デヒドロコール酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される2種類以上である。
【0078】
本発明の一態様では、(ii)賦形剤Aにおいて、胆汁酸誘導体は、グリココール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0079】
さらに、本発明の一態様では、(ii)賦形剤Aにおいて、胆汁酸誘導体は、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0080】
さらに、本発明の一態様では、(ii)賦形剤Aにおいて、胆汁酸誘導体は、ケノデオキシコール酸及びウルソデオキシコール酸、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む。
【0081】
賦形剤Bにおいて、CYP450阻害、抗酸化作用、または酵素活性阻害作用を有する化合物には、
例えば、クマル酸、カフェー酸、フェルラ酸、シナピン酸、及び没食子酸などのフェノール酸、ケルセチン、ミリセチン、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、アピゲニン、及びルテオリンなどのフラボノイド、レスベラトロール及びプテロスチルベンなどのスチルベン、ならびにセサミン、セサモリン、ノルジヒドログアイアレチン酸、ゴミシンA、及びセコイソラリシレシノールなどのリグナンを含むポリフェノール化合物;
L-カルニチン、D-カルニチン、アセチルL-カルニチン、アセチルD-カルニチン、プロピオニルカルニチン、及び塩酸カルニチンなどのカルニチン化合物;
少なくとも1つのシステイン、シスチン、またはメチオニンを含むアミノ酸部分;システイン、シスチン、メチオニン、アデノシルメチオニン、グルタチオン、グルタチオンジスルフィド、タウリン、チアミン、ビオチン、アルファ-リポ酸、ジヒドロ-アルファ-リポ酸などの硫黄含有化合物;
植物由来のトリプシン阻害剤、大豆トリプシン阻害剤、ボーマン-バーク阻害剤、トウモロコシプロテアーゼ阻害剤、動物由来のトリプシン阻害剤、キモスタチン、ナファモスタットメシレート、メシル酸カモスタット、ガベキサートメシル酸塩、アプロチニン、アンチパイン、ベンズアミジン、ロイペプチン、ペプスタチン、ホスホラミドン、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)、トシル-L-リシル-クロロメタン塩酸塩(TLCK)、トシル-L-フェニルアラニルフルオロメチルケトン(TPCK)、アミノフェニルメタンスルホニルフルオリド塩酸塩(APMSF)、ジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP)、フェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、オボムコイド、セピモスタット、アマスタチン、ベスタチン、ジプロチンA、バシトラシン、ピューロマイシン、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、及びデキストロースなどのタンパク質分解酵素阻害化合物;ならびに
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、キトサン-EDTAコンジュゲート、クエン酸塩、EGTA、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、及びBAPTAなどのキレート剤が挙げられる。
【0082】
さらに、賦形剤Bはさらに、例えば、ビタミンC、ビタミンE、アルファ-トコフェロール、リンゴ酸、フマル酸、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、ガラクトース、グルコース、マルトースなどの薬学的に許容される化合物を含み得る。
【0083】
本発明の一態様では、賦形剤Bは、CYP450阻害、抗酸化作用、または酵素活性阻害作用のうちの1つ以上を有する化合物またはその誘導体である。
【0084】
本発明の一態様では、賦形剤Bにおいて、CYP450阻害、抗酸化作用、または酵素活性阻害作用を有する化合もしくはその誘導体は、CYP450阻害化合物、抗酸化化合物、タンパク質分解酵素阻害化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、抗酸化化合物は、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0085】
本発明の一態様では、CYP450阻害化合物は、没食子酸プロピルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0086】
本発明の一態様では、抗酸化化合物は、没食子酸、カフェー酸、リポ酸、クエン酸、アセチルカルニチン、アセチルシステイン、グルタチオン、アスコルビル化合物、トコフェロール化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、抗酸化化合物は、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0087】
本発明の一態様では、アスコルビル化合物は、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。
【0088】
本発明の一態様では、トコフェリル化合物は、トコフェロール、酢酸トコフェリル、コハク酸トコフェリル、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。
【0089】
さらに、本発明の一態様では、タンパク質分解酵素阻害化合物は、消化管内の酵素活性を阻害する作用を有する。
【0090】
本発明の一態様では、タンパク質分解酵素阻害化合物は、没食子酸プロピル、アプロチニン、メシル酸カモスタット、メシル酸ガベキサート、大豆トリプシン阻害剤(大豆クニッツトリプシン阻害剤、SBTI)、大豆トリプシン-キモトリプシン阻害剤(大豆クニッツトリプシン-キモトリプシン阻害剤、SBTCI)、大豆ボーマン-バーク阻害剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、バシトラシン、オボムコイド、クエン酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、抗酸化化合物は、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0091】
さらに、本発明の一態様では、タンパク質分解酵素阻害化合物は、没食子酸プロピル、メシル酸カモスタット、大豆トリプシン阻害剤、クエン酸、EDTA、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、抗酸化化合物は、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0092】
本発明の一態様では、賦形剤Bは、没食子酸プロピル、メシル酸カモスタット、クエン酸、大豆トリプシン阻害剤、EDTA、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、抗酸化化合物は、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0093】
本発明の一態様では、賦形剤Bは、没食子酸プロピル、メシル酸カモスタット、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。または、上記構造群から選択される2種類以上である。
【0094】
本発明の1つの特定の態様では、胆汁酸誘導体は、ケノデオキシコレート、ウルソデオキシコレート、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上であり、賦形剤Bは、没食子酸プロピル、メシル酸カモスタット、クエン酸、大豆トリプシン阻害剤、EDTA、及びそれらの薬学的に許容される塩である。または、各賦形剤は、上記群から選択される2種類以上である。
【0095】
本発明の1つの特定の態様では、賦形剤Aは、ケノデオキシコレート及びウルソデオキシコレート、またはそれらの薬学的に許容される塩であり、賦形剤Bは、没食子酸プロピル、没食子酸プロピル及びカメシル酸カモスタット、またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0096】
一般に、大きな生理活性物質は、その高い水溶性のために消化管内の吸収領域に制限を有し、また医薬組成物としての使用に制限があるBCS(生物薬剤学分類システム)のクラス3に分類される。しかしながら、本発明の一実施形態による大きな生理活性物質を、1種類の賦形剤A及び1種類の賦形剤B;2種類の賦形剤A及び1種類の賦形剤B;または2種類の賦形剤A及び2種類の賦形剤Bと一緒に使用することにより、腸管膜透過性が増大し得る。
【0097】
本発明の一態様では、医薬組成物は、賦形剤A及び賦形剤Bを含み、賦形剤Aと賦形剤Bとの重量比は1:0.001~5である。具体的には、重量比は、1:0.002~4.9、1:0.003~4.8、1:0.004~4.7、及び1:0.005~4.6である。より具体的には、賦形剤Aと賦形剤Bとの重量比は1:0.005~4.5である。
【0098】
本発明の一態様では、医薬組成物は、賦形剤A及び賦形剤Bを含み、この場合、大きな生理活性物質と賦形剤との重量比は1:1~2000である。この場合、賦形剤は、賦形剤Aと賦形剤Bとの重量合計である。具体的には、大きな生理活性物質と賦形剤との重量比は、1:2~1900、1:3~1850、1:4~1800、及び1:5~1800である。より具体的には、大きな生理活性物質と賦形剤との重量比は1:5~1750である。
【0099】
本発明の一態様では、(ii)賦形剤Aは2つ以上の胆汁酸誘導体を含み、それぞれの重量比は、大きな生理活性物質の重量に対して1~1500である。さらに、本発明の一態様では、(i)大きな生理活性物質と(iii)賦形剤Bとの重量比は1:0.1~300である。
【0100】
本発明の一態様では、賦形剤Aは、胆汁酸またはその誘導体として、グリココール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸、デオキシコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上を含み得、それらの重量は、それぞれ0.1mg/kg~500mg/kgであり得る。より具体的には、重量は、0.1mg/kg~300mg/kg、0.2mg/kg~100mg/kg、0.2mg/kg~50mg/kg、0.2mg/kg~30mg/kg、0.2mg/kg~10mg/kg、0.3mg/kg~10mg/kg、0.3mg/kg~8mg/kg、0.4mg/kg~8mg/kg、0.4mg/kg~7mg/kg、及び0.4mg/kg~6mg/kgであり得る。
【0101】
具体的には、ケノデオキシコレート及びウルソデオキシコレートを含み、それぞれの重量は、0.1mg/kg~500mg/kgであり得る。より具体的には、重量は、0.1mg/kg~300mg/kg、0.2mg/kg~100mg/kg、0.2mg/kg~50mg/kg、0.2mg/kg~30mg/kg、0.2mg/kg~10mg/kg、0.3mg/kg~10mg/kg、0.3mg/kg~8mg/kg、0.4mg/kg~8mg/kg、0.4mg/kg~7mg/kg、及び0.4mg/kg~6mg/kgであり得る。
【0102】
本発明の一態様では、賦形剤Bは、没食子酸プロピルを含み、その重量は0.01mg/kg~500mg/kgであり得る。より具体的には、重量は、0.01mg/kg~100mg/kg、0.01mg/kg~50mg/kg、0.01mg/kg~30mg/kg、0.01mg/kg~10mg/kg、0.01mg/kg~8mg/kg、0.01mg/kg~7mg/kg、0.01mg/kg~6mg/kg、及び0.02mg/kg~6mg/kgであり得る。
【0103】
本発明の一態様では、賦形剤Bは、EDTAを含み、その重量は0.01mg/kg~500mg/kgであり得る。より具体的には、重量は、0.01mg/kg~100mg/kg、0.01mg/kg~50mg/kg、0.01mg/kg~30mg/kg、0.01mg/kg~10mg/kg、0.01mg/kg~8mg/kg、0.01mg/kg~7mg/kg、0.01mg/kg~6mg/kg、及び0.02mg/kg~6mg/kgであり得る。
【0104】
本発明の一態様では、賦形剤Bは、メシル酸カモスタットを含み、その重量は、0.001mg/kg~10mg/kgであり得る。より具体的には、重量は、0.001mg/kg~5mg/kg、0.002mg/kg~5mg/kg、0.003mg/kg~3mg/kg、0.005mg/kg~2mg/kg、または0.005mg/kg~1mg/kgであり得る。
【0105】
本発明の一態様では、賦形剤Bは、大豆クニッツトリプシン阻害剤(SBTI)を含み、その重量は0.001mg/kg~10mg/kgであり得る。より具体的には、重量は、0.001mg/kg~5mg/kg、0.002mg/kg~5mg/kg、0.003mg/kg~3mg/kg、及び0.005mg/kg~1mg/kgであり得る。
【0106】
本発明の一態様では、賦形剤Bは、クエン酸を含み、その重量は0.01mg/kg~100mg/kgであり得る。より具体的には、重量は、0.01mg/kg~50mg/kg、0.05mg/kg~50mg/kg、0.05mg/kg~30mg/kg、0.07mg/kg~30mg/kg、及び0.07mg/kg~20mg/kgであり得る。
【0107】
本発明の一態様では、医薬組成物は経口投与される。
【0108】
具体的には、大きな生理活性物質のみが存在する場合と比較して、経口吸収率は、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上、1.5%以上、1.6%以上、1.7%以上、1.8%以上、1.9%以上、及び2%以上改善され得る。
【0109】
本発明では、医薬組成物は、大きな生理活性物質の種類に応じて、治療的効果または予防的効果を有し得る。本発明の実施例による医薬組成物において、大きな生理活性物質は、糖尿病の予防または治療、肥満症の予防または治療、骨粗しょう症の予防または治療、脂肪肝疾患の予防または治療、過敏性腸症候群の予防または治療、及び神経変性疾患の予防または治療に使用される物質であり得る。しかしながら、これらは例示であり、脂肪酸部分はそれらに限定されない。
【0110】
本発明の一態様では、医薬組成物を含有する、糖尿病、肥満症、脂肪肝疾患、腸疾患、及び神経変性疾患を予防または治療するための医薬組成物が提供され得る。
【0111】
本発明の医薬組成物は、賦形剤A及び賦形剤Bに加えて、賦形剤をさらに含んでもよい。この場合、それらに限定されないが、賦形剤は、安定化剤、界面活性剤、可塑剤、滑沢剤、可溶化剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、吸着剤、矯風味剤、結合剤、懸濁化剤、抗酸化剤、光沢剤、コーティング剤、着香剤、香味剤、湿潤剤、湿度調整剤、消泡剤、咀嚼剤、清涼剤、着色剤、糖衣剤、等張化剤、pH調整剤、軟化剤、乳化剤、接着剤、接着増強剤、粘性剤、増粘剤、発泡剤、賦形剤、分散剤、推進剤、崩壊剤、崩壊性錠剤、芳香剤、除湿剤、防腐剤(antiseptics)、防腐剤(preservatives)、鎮痛剤、溶剤、溶解剤、可溶化剤、流動化剤などを含んでもよい。
【0112】
本発明において、医薬組成物は、固形製剤用のデンプン、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなど、及び液体製剤用の懸濁液、内用液剤、乳剤、シロップなどをさらに含んでもよく、さらに、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、防腐剤などを含んでもよい。さらに、増殖性疾患または自己免疫疾患に対する治療としての有効性を改善するために、カルシウムまたはビタミンD3を添加してもよい。本発明において、経口投与のための医薬製剤は、例えば、糖衣錠、錠剤、丸剤、粉末、顆粒剤またはカプセル、及びアンプルなどの単位剤形で存在し得る。これらは、公知の方法を使用して、例えば、従来の混合、造粒、調合、溶解または凍結乾燥方法を使用して調製される。例えば、経口投与のための医薬製剤は、大きな生理活性物質を固体担体と混合し、混合物を造粒し、適切な添加剤を必要に応じて添加し、次いで混合物または造粒物を錠剤または糖衣錠の形態に製剤化することによって調製され得る。
【0113】
本発明の一態様では、医薬組成物は固形製剤である。本発明の1つの特定の態様では、医薬組成物は、顆粒剤または錠剤である。
【0114】
本発明の一実施形態による医薬組成物の投薬量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食事、投与時間、投与方法、排出速度、及び疾患の重篤度に応じて変動し得るが、一般的に、1日の有効投薬量の範囲内で、1日に1回または分割された用量で投与され得る。さらに、有効用量を、1~2週間に数回の投与によって投与してもよい。
【0115】
さらに、本発明は、(i)大きな生理活性物質と、(ii)胆汁酸誘導体を含む賦形剤A、または(iii)CYP450阻害、抗酸化作用、もしくは消化管酵素活性阻害作用を有する化合物もしくはその誘導体を含む賦形剤Bとを混合するステップを含む、医薬組成物を製造するための方法を提供する。
【0116】
さらに、本発明は、(i)大きな生理活性物質と、(ii)胆汁酸誘導体を含む賦形剤A、または(iii)CYP450阻害、抗酸化作用、もしくは消化管酵素活性阻害作用を有する化合物もしくはその誘導体を含む賦形剤Bとを混合するステップを含むことによって顆粒剤を製造するステップと、錠剤プレスを使用して錠剤を製造し、次にそれらをコーティング機でコーティングするステップとを含む、医薬組成物を製造するための方法を提供する。
【0117】
本発明において、混合ステップは、大きな生理活性物質及び賦形剤の特性に応じて適切に調整することができる。それらに限定されないが、例えば、単純な混合、湿式造粒、及び乾式造粒方法を実施してもよい。
【0118】
賦形剤A及び賦形剤Bの具体的な種類、重量比、及び使用量は上記の通りである。
【0119】
さらに、本発明は、医薬組成物を含む予防または治療方法に関する。
【0120】
さらに、本発明は、糖尿病、肥満症、脂肪肝疾患、腸疾患、及び神経変性疾患を予防または治療するための医薬組成物を含む方法に関する。
【0121】
以下、実施例及び実験例を使用して本発明について詳細に説明する。しかしながら、下記の実施例及び実験例は本発明を例示するのみであって、本発明の内容は以下の実施例及び実験例に限定されるものではない。
【0122】
<実施形態1:大きな生理活性物質及び賦形剤の組み合わせ>
大きな生理活性物質
以下の表1に示す大きな生理活性物質(高分子)を使用した。大きな生理活性物質それぞれの種類及び使用量を表1に示す。この場合、エキセンジン-4誘導体、脂質化インスリン、脂質化アミリンなどは、韓国特許出願第10-2019-0064370号、同第10-2020-0163362号、同第10-2020-0163363号、及び同第10-2020-0065484号に開示されている方法に従って製造することができる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0123】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【0124】
賦形剤
賦形剤として、以下の表2に示す物質を使用した。各賦形剤は、表2に示される通りである。
【表2】
【0125】
<実施形態2:胆汁酸誘導体及び没食子酸プロピルのタイトジャンクション開口性の確認>
<実験例1>Caco-2細胞における胆汁酸誘導体の細胞毒性
賦形剤の細胞毒性を、以下の方法を使用して、Caco-2細胞を使用して評価した。まず、細胞内蓄積の量を確認するために、96-ウェルプレートにウェル1つ当たり1×10
5でCaco-2細胞を分布し、CO
2インキュベーター内で37℃の温度で培養した。各ウェルから培養液を除去し、新たな培地との交換を行う。その後、調製した賦形剤2.5μLを添加し、これをCO
2インキュベーター内で37℃で培養した。2時間後、各ウェルを100μLのルシフェラーゼ試薬(Promega、#G7571)で処理し、室温でインキュベートした。10分後、各ウェルの発光値を測定した。細胞生存率(%)を以下のように計算し、解析結果を
図1に示す。
図1に示されるように、DC及びCDCの細胞毒性は類似しており、UDCが最も少ない毒性を有することが確認された。
細胞生存率(%)=(発光値/対照発光値)×100
【0126】
<実験例2>Caco-2細胞における胆汁酸誘導体及び没食子酸プロピルのタイトジャンクション開口性の確認。
Caco-2細胞の単層膜を使用して、TEER値の変化によって賦形剤のタイトジャンクション開口性及び非タイトジャンクション開口性を評価した。まず、Caco-2細胞単層を形成するために、12-トランスウェルプレートにウェル1つ当たり1.5×10
5の細胞を分注し、37℃のCO
2条件下で3~4週間培養した。第1週目は培地を2日に1回交換し、その後は培地を3日に1回交換した。実験では、播種後3~4週間の試料を使用した。賦形剤によるCaco-2細胞単層への損傷の程度を評価するために、半透膜上の単層として培養された細胞の度合いを頂端側と側底側との間の電気抵抗の差によって測定した。まず、各試験で使用するトランスウェルを、洗浄緩衝液(HBSS)を使用して洗浄し、培地に置き換え、37℃のCO
2インキュベーターで15分間平衡化する。調製された賦形剤500μLを頂端側に添加し、賦形剤を含まない1.5mLの培地で側底側を処理した後、処理時から各時点(0、5、15、30、45、60、90、120分)でMillicell ERS-2 Voltohmmeterを使用してTEER値の変化を測定した。TEER変化(%)を以下のように計算し、解析結果を
図2に示す。
TEER変化(%)=(TEER値/対照TEER値)×100
【0127】
図2に示すように、TEER値の変化によると、タイトジャンクション開口性を有する賦形剤はCDC及びDCであり、非タイトジャンクション開口性を有する賦形剤はUDC及びPGであった。タイトジャンクション開口性を有する賦形剤であっても、処理後60~120分以内に正常レベルに戻る可逆的なタイトジャンクション開口性を有することが確認された。
【0128】
<実施形態3>胆汁酸誘導体のCaco-2細胞膜透過経路の測定
Caco-2細胞単層を使用して、賦形剤による各透過経路のマーカーの透過性の変化を、以下の方法を使用して評価した。まず、Caco-2細胞単層を形成するために、12-トランスウェルプレートにウェル1つ当たり1.5×10
5の細胞を分注し、37℃のCO
2条件下で3~4週間培養した。第1週目は培地を2日に1回交換し、その後は培地を3日に1回交換した。実験では、播種後3~4週間の試料を使用した。細胞単層の形成を検証するために、TEER値及びルシファーイエロー値を測定し、300Ω・cm
2以上のTEER値、及び3%以内の測定されたルシファーイエローの透過率を有する細胞単層膜のみを試験で使用した。各試験に使用するトランスウェルを輸送培地(HBSS)を使用して洗浄し、37℃のCO
2インキュベーターで1時間インキュベートした後、500μLの胆汁酸誘導体及び透過性マーカーを頂端側に添加し、1.5mLの薬物を含まない輸送培地を側底側に処理し、その後37℃のCO
2インキュベーターで2時間インキュベーションを行った。このとき、フルオレセインイソチオシアネート-デキストラン(FD4)を傍細胞マーカーとして使用し、メトプロロールを経細胞マーカーとして使用して、胆汁酸誘導体処理による透過係数の変化を確認した。2時間後、側底側から1mLごとにサンプリングし、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)及び液体クロマトグラフィー-質量分析法(HPLC)を使用して薬物の透過係数(Papp値)を測定した。透過係数(Papp)値を以下のように計算し、解析結果を
図3に示す。
-Papp(10
-7cm/s)=(dC
r/d
t)xV
r/(AxC
0)
(*dC
r-透過した試料の濃度、d
t-薬物処理時間、V
r-側底量、A-トランスウェル面積、C
0-初期適用薬物濃度)
【0129】
図3に示すように、Caco-2試験システムにおいて、CDCは傍細胞輸送及び経細胞輸送の両方を促進する。UDCの場合、2つの輸送メカニズムに増強効果がないことがわかった。
【0130】
<実施形態4>大きな生理活性物質(化合物1及び14)及び1種類の胆汁酸を含有する製剤の調製、ならびに製剤中の大きな生理活性物質のCaco-2細胞膜透過性の測定
まず、Caco-2細胞単層を形成するために、12-トランスウェルプレートにウェル1つ当たり1.5×10
5の細胞を分注し、37℃のCO
2条件下で3~4週間培養した。第1週目は培地を2日に1回交換し、その後は培地を3日に1回交換した。実験では、播種後3~4週間の試料を使用した。細胞単層の形成を検証するために、TEER値及びルシファーイエロー値を測定し、300Ω・cm
2以上のTEER値、及び3%以内の測定されたルシファーイエローの透過率を有する細胞単層膜のみを試験で使用した。輸送培地(HBSS)を使用する各試験で使用するトランスウェルを洗浄した後、37℃のCO
2インキュベーターで1時間インキュベーションを行い、次いで、大きな生理活性物質(50μM)及び胆汁酸誘導体(100μM)の500μLごとを頂端側に添加し、1.5mLの薬物を含まない輸送培地を側底側に処理した。その後、37℃のCO
2インキュベーター中で2時間インキュベーションを行った。2時間後、側底側から1mLごとにサンプリングし、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用して薬物の透過係数(Papp値)を測定した。透過係数(Papp)値を以下のように計算し、解析結果を
図4に示す。
-Papp(10
-7cm/s)=(dC
r/d
t)xV
r/(AxC
0)
(*dC
r-透過した試料の濃度、d
t-薬物処理時間、V
r-側底量、A-トランスウェル面積、C
0-初期適用薬物濃度)
【0131】
図4に示すように、この実験例を通して、Caco-2試験では、UDCの場合、大きな生理活性物質の透過性を改善する効果は認められず、CDCは大きな生理活性物質の透過性を改善する効果を有したことが確認された。
【0132】
<実施形態5>大きな生理活性物質(化合物6)、1つの胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含有する製剤の調製ならびに腸管吸収率の測定
表2に示される賦形剤組成を用いて、対応するビヒクル(生理食塩水または生理食塩水中に0.5%のCMC)中に溶解させることによってビオチニルエキセナチド誘導体(化合物6)を製剤化し、腸管吸収による薬学的挙動を、スプラーグドーリーラットへの十二指腸内投与を通して比較した。結果は、以下の表3に示す通りである。
【表3-1】
【表3-2】
【0133】
<実施形態6>大きな生理活性物質(化合物6)、1つの胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含有する製剤中の大きな生理活性物質の安定性の評価
腸管吸収を通した高いバイオアベイラビリティを有する3種類の胆汁酸誘導体について、1種類の胆汁酸誘導体及び没食子酸プロピル製剤中の大きな生理活性物質の安定性を評価した。表3に示される賦形剤組成を用いて化合物6を40℃で2週間保管し、次いで対応する溶媒(10mMのPBS(pH7.4)中に0.02%のポリソルベート80)に溶解させた。その後、溶液を濾過し、大きな生理活性物質(化合物6)の純度の変化をHPLCによって解析し、結果を表4に示す。40℃で2週間保管した後の試験物質の純度の変化を解析した結果、DC及び没食子酸プロピル組成物中の大きな生理活性物質(化合物6)の安定性が最も低かったことが確認された。
【表4】
【0134】
<実施形態7>大きな生理活性物質、1つの胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含有する製剤の調製ならびに腸管吸収率の測定
表1の化合物を含有する材料を、表4に示される賦形剤組成を用いて、対応するビヒクル(生理食塩水中に0.02%のポリソルベート80)中に溶解させることによって製剤化した。実験ラット(SDラット)の十二指腸への投与後、薬学的挙動を比較した。結果は、表5に示す通りである。
【表5】
【0135】
<実施形態8>大きな生理活性物質(化合物10)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含有する製剤の調製ならびに腸管吸収率の測定
大きな生理活性物質(化合物10)を、表6に示される賦形剤組成を用いてビヒクル中に溶解させることによって製剤化した。このとき、ビヒクルは、ポリソルベート80、プロピレングリコール、CMC、生理食塩水またはリン酸緩衝液を適切に混合することによって製剤化した。実験ラットの十二指腸に上記製剤を投与した後、薬学的挙動を比較した。結果は、以下の表6に示す通りである。
【表6】
【0136】
<実施形態9>大きな生理活性物質(化合物24)、1つの胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含有する製剤の調製ならびに腸管吸収率の測定
大きな生理活性物質(化合物24)を、上記の表6に示される賦形剤組成を用いて、対応するビヒクル(10mMのPBS(pH7.4)中に0.02%のポリソルベート80)中に溶解させることによって製剤化した。実験ラットの十二指腸に上記製剤を投与した後、C
maxを比較した。対応する結果を、同じ製剤中のビオチン部分を含まない大きな生理活性物質である化合物23を投与することによって得られた結果と比較し、以下の表7に示す。
【表7】
【0137】
<実施形態10>大きな生理活性物質(化合物14)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含有する固形製剤の調製ならびに経口吸収率測定
大きな生理活性物質(化合物14)の固形製剤を、表8に示される賦形剤組成を用いて調製し、ビーグル犬への経口投与後、薬物動態挙動を比較した。
【0138】
固形製剤については、大きな生理活性物質、胆汁酸誘導体、没食子酸プロピル及び固形製剤を製造するために使用される一般的な賦形剤(マンニトール、クロスポビドン、ステアレートなど)をその中に混合し、これを、乾式造粒方法を使用して顆粒剤へと製造し、次いで錠剤プレスを使用して錠剤へと製造した。その後、コーティング機を使用して腸溶コーティングを行った。結合剤及び崩壊剤の量を調整することによって、錠剤を即時放出錠剤及び持続放出錠剤へと製造した。即時放出錠剤では、大きな生理活性物質の80%超が、溶出条件下(pH6.8、50rpm、37℃)で60分以内に溶出し、持続放出錠剤では、大きな生理活性物質の80%超が、溶出条件下(pH6.8、50rpm、37℃)で360分以内に溶出した。
【表8-1】
【表8-2】
【0139】
<実施形態11>大きな生理活性物質(化合物1)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルを含有する製剤の血糖調節能力の測定
グルコース耐性を確認するために、大きな生理活性物質及び賦形剤の組み合わせを含有する製剤をマウスに経口投与し、次いで腹腔内グルコース耐性試験(IPGTT)により血糖調節の有効性を測定した。大きな生理活性物質(化合物1)を、以下の表9に示される賦形剤組成を用いて、ビヒクル(10mMのPBS(pH7.4)中に0.02%のポリソルベート80)中に溶解させることによって製剤化した。
【表9】
【0140】
動物モデルにおける腹部グルコース耐性を測定するために、9週齢の雄マウス(C57BL/6)に100μlの試料(化合物1に基づいて25nmol/kg)を-20分で経口投与し、次いで200μlのグルコース(2g/kg)を腹腔内注射し、尾静脈から採取された血液中の血糖の変化を-20、0、20、40、60、90、及び120分で観察した。測定結果を
図5に示す。
【0141】
図5に示されるように、1種類ではなく2種類の胆汁酸を吸収促進剤として使用した場合、経口吸収に応じてグルコースを調節する能力が増大したことが確認された。2種類の胆汁酸の中で、CDC+DC+没食子酸プロピル、及びCDC+UDC+没食子酸プロピル製剤が最良の血糖調節効果を有したことが確認された。
【0142】
さらに、最良のグルコース調節能力を有したCDC+DC+PG製剤及びCDC+UDC+PG製剤を調製し、室温で1日間放置し、次いでマウスに経口投与し、腹腔内グルコース耐性試験により血糖調節の有効性を測定した。これにより、製剤中の大きな生理活性物質の安定性の効果は、大きな生理活性物質の有効性に適用可能であることが確認された。
図6に示すように、結果は、1日後、CDC+UDC+PG製剤の有効性は維持されたが、CDC+DC+PG製剤の有効性は82%に低下したことを確認した。
【0143】
<実施形態12>大きな生理活性物質(化合物14)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピル製剤の経口投与による体重減少及び食欲抑制効果の確認
大きな生理活性物質(化合物14)及び賦形剤を含有する製剤のマウスへの経口投与後、マウス体重の変化を確認した。具体的には、化合物14の投与用量は1000nmol/kgであり、投与された製剤中の賦形剤濃度は、CDC6.8mg/mL、UDC13.6mg/mL、及びPG13.6mg/mLであった。10mMのPBS(pH7.4)中に0.02%のポリソルベート80のビヒクルを使用した。
【0144】
6週齢の雄マウス(C57BL/6)に高脂肪食を16週間与えることによって肥満マウスを誘発し、次いで2種類の胆汁酸誘導体及び没食子酸プロピルを含有する製剤を使用して、ビオチン部分及び脂肪酸部分を組み合わせた物質(化合物14)を4週間毎日経口投与した。体重変化を確認した結果、飼料摂取量の減少及び体重減少が確認された。測定結果は、
図7及び
図8に示す通りである。
【0145】
<実施形態13>大きな生理活性物質(化合物15)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルまたは酵素阻害剤を含有する製剤の調製、ならびにラットにおける腸管吸収率の測定
大きな生理活性物質(化合物15)を、表9に示される賦形剤組成を用いて、対応するビヒクル(10mMのPBS(pH7.4)中に0.02%のポリソルベート80)中に溶解させることによって製剤化した。体重約200gの実験ラット(SDラット)に、それぞれ100及び500μg/kgの量で試料を十二指腸に投与した後、血清を採取し、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用して経時的な血中薬物濃度の変化を測定した。頸静脈から血液試料を採取した。結果を平均値として計算し、結果を表10に示す。
【表10】
【0146】
<実施形態14>大きな生理活性物質(化合物15)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピルまたは酵素阻害剤を含有する製剤の経口吸収による血糖調節能力の測定
大きな生理活性物質(化合物15)を、表10に示される賦形剤組成を用いて、対応するビヒクル(10mMのPBS(pH7.4)中に0.02%のポリソルベート80)中に溶解させることによって製剤化した。グルコース耐性を確認するために、大きな生理活性物質と賦形剤の組み合わせを含有する製剤をマウスに経口投与し、次いで腹腔内グルコース耐性試験(IPGTT)により血糖調節の有効性を測定した。まず、動物モデルにおける腹部グルコース耐性を測定するために、9週齢の雄マウス(C57BL/6)に100μlの試料(化合物1に基づいて25nmol/kg)を-30分で経口投与し、次いで200μlのグルコース(2g/kg)を腹腔内注射し、尾静脈から採取した血液中の血糖値の変化を-20、0、20、40、60、90、及び120分で観察した。測定結果は、表11に示す通りである。
【表11】
【0147】
<実施形態15>大きな生理活性物質(化合物15)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピル製剤の経口投与による体重減少及び食欲抑制効果の確認
大きな生理活性物質(化合物15)及び賦形剤を含有する製剤のマウスへの経口投与後、マウス体重の変化を確認した。具体的には、化合物15の投与用量は1000nmol/kgであり、使用された製剤中の賦形剤濃度は、CDC6.8mg/mL、UDC13.6mg/mL、及びPG13.6mg/mLであった。10mMのPBS(pH7.4)中に0.02%のポリソルベート80のビヒクルを使用した。6週齢の雄マウス(C57BL/6)に高脂肪食を16週間与えることによって肥満マウスを誘発し、次いで脂肪酸部分と組み合わせたGLP-1受容体アゴニスト(化合物15)を、胆汁酸吸収促進剤製剤を使用して3週間毎日経口投与し、体重変化を確認した。結果として、飼料摂取量の減少及び体重減少が確認された。測定結果は、
図9及び
図10に示す通りである。
【0148】
<実施形態16>大きな生理活性物質(化合物17)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピル製剤の経口投与による体重減少及び食欲抑制効果の確認
大きな生理活性物質(化合物17)及び賦形剤を含有する製剤をマウスに経口投与した後、マウス体重の変化及び抗糖尿病効果を確認した。具体的には、化合物17の投与用量は300~1000nmol/kgであり、使用された製剤中の賦形剤濃度は、CDC6.8mg/mL、UDC13.6mg/mL、及びPG13.6mg/mLであった。10mMのPBS(pH7.4)中に0.02%のポリソルベート80のビヒクルを使用した。6週齢の雄マウス(C57BL/6)に高脂肪食を16週間与えることによって肥満マウスを誘発し、次いでビオチン部分と脂肪酸部分を組み合わせたGLP-1/グルカゴン受容体デュアルアゴニスト(化合物17)を、胆汁酸吸収促進剤製剤を使用して3週間毎日経口投与することによって体重変化を確認した。飼料摂取量の減少、体重減少、及び抗糖尿病効果を確認した。測定結果は、
図11~
図13に示す通りである。
【0149】
<実施形態17>大きな生理活性物質(化合物18)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピル製剤の経口投与による血糖調節能力の測定
グルコース耐性を確認するために、ビオチンと脂肪酸部分を組み合わせた大きな生理活性物質であるGLP-1/グルカゴン/GIP受容体トリプルアゴニスト(化合物18)と以下の表12の賦形剤を組み合わせることで作製された製剤のマウスへの経口投与後、腹腔内グルコース耐性試験(IPGTT)を使用して血糖調節の有効性を測定した。
【表12】
【0150】
まず、動物モデルにおける腹部グルコース耐性を測定するために、9週齢の雄マウス(C57BL/6)に100μlの試料(化合物1に基づいて25nmol/kg)を-20分で経口投与し、次いで200μlのグルコース(2g/kg)を腹腔内注射し、尾静脈から採取した血液中の血糖値の変化を-20、0、20、40、60、90、及び120分で観察した。測定結果は、
図14に示す通りである。吸収促進剤として1種類ではなく2種類の胆汁酸を使用した場合、経口吸収に応じてグルコースを調節する能力が増大したことが確認された。
【0151】
<実施形態18>大きな生理活性物質(化合物19)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピル製剤の経口投与による血糖調節能力の測定
グルコース耐性を確認するために、脂肪酸部分を有する大きな生理活性物質であるインスリン(化合物19)と、以下の表13の賦形剤とを組み合わせることによって作製した製剤のマウスへの経口投与後、腹腔内グルコース耐性試験(IPGTT)を使用して血糖調節の有効性を測定した。
【表13】
【0152】
まず、動物モデルにおける腹部グルコース耐性を測定するために、9週齢の雄マウス(C57BL/6)に100μlの試料(化合物1に基づいて25nmol/kg)を-20分で経口投与し、次いで200μlのグルコース(2g/kg)を腹腔内注射し、尾静脈から採取された血液中の血糖の変化を-20、0、20、40、60、90、及び120分で観察した。測定結果を
図15に示す。吸収促進剤として1種類ではなく2種類の胆汁酸を使用した場合、経口吸収に応じてグルコースを調節する能力が増大したことが確認された。2種類の胆汁酸の中で、CDC+DC、CDC+UDC、及び没食子酸プロピル製剤が最良の血糖制御の有効性を有したことが確認された。
【0153】
さらに、最良のグルコース調節能力を有したCDC+DC+PG製剤及びCDC+UDC+PG製剤を、室温で1日間放置し、次いでマウスに経口投与し、腹腔内グルコース耐性試験により血糖調節の有効性を測定した。これにより、製剤中の大きな生理活性物質の安定性の効果は、大きな生理活性物質の有効性に適用可能であることが確認された。
図16に示されるように、CDC+UDC+PG製剤の有効性は1日後に維持されたが、CDC+DC+PG製剤は、試験物質の投与後20分の対照群と比較して、血糖低減効果が64%~76%に低下したことが確認された。
【0154】
<実施形態19>大きな生理活性物質(化合物20、21、22)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピル製剤の経口投与による血糖調節能力の測定
グルコース耐性を確認するために、マウスへの経口投与後、インスリン(化合物21)を大きな生理活性物質としてビオチンと、及びインスリン(化合物22)をビオチン部分もしくは脂肪酸部分及び賦形剤と組み合わることによって作製した製剤をマウスに投与し、腹腔内ブドウ糖耐性試験(IPGTT)を使用して血糖調節の有効性を測定した。まず、動物モデルにおける腹部グルコース耐性を測定するために、9週齢の雄マウス(C57BL/6)に100μlの試料(化合物1に基づいて25nmol/kg)を-20分で経口投与し、次いで200μlのグルコース(2g/kg)を腹腔内注射し、尾静脈から採取された血液中の血糖レベルの変化を-20、0、20、40、60、90、及び120分で観察した。測定結果は、
図17に示す通りである。ビオチンのみをインスリンと組み合わせた場合と比較して、ビオチン部分及び脂肪酸部分とインスリンとを組み合わせた場合、経口吸収に応じたグルコース調節能力が増大したことが確認された。
【0155】
<実施形態20>大きな生理活性物質(化合物25~37)、1つ以上の胆汁酸誘導体、及び没食子酸プロピル製剤の経口投与による血糖調節能力の測定
大きな生理活性物質及び賦形剤の組み合わせを使用した製剤をマウスに単回経口投与した後、体重変化を24時間確認した。ビオチンを有するアミリン誘導体(化合物26、29、32、35)、ならびにビオチン及び脂肪酸部分を有するアミリン誘導体(化合物27、30、33、36)を、胆汁酸吸収促進剤製剤を使用して単回投与として経口投与して体重変化を判定し、24時間後の体重減少を確認し、測定結果を表14に示す。
【表14】
【0156】
上記実施例1~20に示すように、大きな生理活性物質を単独で投与する場合と比較して、賦形剤が一緒に使用される場合、大きな生理活性物質の存在に起因する有効性及び薬物動態パラメータに関して全体的な改善があったことが確認された。
【0157】
当業者であれば、本明細書に記載の本発明の特定の実施例に対する多くの等価物を、認識するか、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。本発明の上記の説明は、例示の目的のためであり、当業者は、本発明をその技術的思想または本質的な特徴を変更することなく他の特定の形態に容易に変更し得ることを理解するであろう。したがって、上記の実施例は、全ての態様において単なる例示であり、限定的ではないことを理解されたい。例えば、単数形として記述されている各構成要素は、分散して実装されてもよく、また同様に、分散されているとして記述されている構成要素は、組み合わされた形態で実装されてもよい。以下に記載する特許請求の範囲の意味及び範囲、ならびにそれらの同等の概念から派生した全ての変更または修正された形態は、本発明の範囲内にあると解釈されるべきである。
【0158】
産業上の利用可能性
本発明は、体内における大きな生理活性物質の吸収率を増大させることができ、製薬産業で使用することができる。
【配列表】
【国際調査報告】