IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナイオ, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-533275核酸データストレージのための組成物、システム、および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】核酸データストレージのための組成物、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240905BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240905BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12P19/34 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514663
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 US2022042660
(87)【国際公開番号】W WO2023038907
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,479
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/262,686
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524035911
【氏名又は名称】ナイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クール, エリック
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR58
4B063QR62
4B063QX02
4B064AF27
4B064CA21
4B064CC24
4B064DA20
(57)【要約】
データストレージのための書き込み可能なポリマーおよび関連する方法が本明細書に記載される。一般に、書き込み可能なポリマーは、データコードを提供することが可能な1つまたは複数の変換可能な残基(例えば、切り換え可能な蛍光状態を有する修飾可能なフルオロフォアを含む変換可能な残基)を含有し得る。様々な方法を利用して、書き込み可能なポリマー(例えば、書き込み可能な核酸ポリマー)を生成することができる。様々な方法を利用して、1つまたは複数の変換可能な残基(例えば、修飾可能なフルオロフォア)を選択的に修飾することによって書き込み可能なポリマーを符号化することができる。データが符号化されたポリマーを読み取る様々な方法も本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを符号化するためのポリマーであって、
前記ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記ポリマーの骨格に共有結合により連結した複数の変換可能な残基を含み、
前記複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれが第1の蛍光状態を有し、前記第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、前記第1の蛍光状態と前記第2の蛍光状態が異なり、
前記複数の変換可能な残基の全てまたはサブセットのそれぞれがフルオロフォアを含み、前記複数の変換可能な残基が前記第1の蛍光状態および前記第2の蛍光状態で前記ポリマーに共有結合により連結している、ポリマー。
【請求項2】
前記フルオロフォアが、修飾可能なフルオロフォアである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記フルオロフォアが、光によって修飾可能である、請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
変換可能な残基の前記サブセットのフルオロフォアそれぞれが、前記ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記骨格を介して連結している、請求項1から3までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される複数の荷電した構成成分をさらに含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
前記複数の修飾可能なフルオロフォアが、脱ケージドフルオロフォアに光により変換することが可能なケージドフルオロフォアを含む、請求項2から5までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記ケージドフルオロフォアのそれぞれが、
【化10】
から選択される、請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
前記フルオロフォアが、放出可能なクエンチャーの近傍に存在し、前記クエンチャーを、光によって放出させることが可能であり、放出の際に蛍光を消光することができる、請求項2から7までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項9】
前記複数の変換可能な残基のサブセットの変換可能な残基のそれぞれが前記クエンチャーを含む、請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
前記クエンチャーが、
【化11】
から選択される、請求項8または9に記載のポリマー。
【請求項11】
前記修飾可能なフルオロフォアが、光変換型フルオロフォアを含み、前記光変換型フルオロフォアが、第1の発光波長を有する第1の構造的状態で存在し、光パルスによって第2の発光波長を有する第2の構造的状態に変換することが可能である、請求項2から10までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項12】
前記光変換型フルオロフォアの前記第1の構造的状態から第2の構造的状態への変換が、第1の波長の光パルスによるものであり、前記光変換型フルオロフォアが、第2の波長の光パルスによって第3の発光波長を有する第3の構造的状態に変換することが可能である、請求項11に記載のポリマー。
【請求項13】
前記光変換型フルオロフォアが、光によって活性化される、請求項11に記載のポリマー。
【請求項14】
前記光変換型フルオロフォアが、添加剤の存在下で光によって活性化される、請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
前記光変換型フルオロフォアが、光によって不活化される、請求項11に記載のポリマー。
【請求項16】
前記光変換型フルオロフォアが、添加剤の存在下で光によって不活化される、請求項15に記載のポリマー。
【請求項17】
前記光変換型フルオロフォアが、ポリメチンシアニン色素を含む、請求項12に記載のポリマー。
【請求項18】
前記光変換型フルオロフォアが、
【化12】
を含む、請求項12または13に記載のポリマー。
【請求項19】
前記複数の修飾可能なフルオロフォアが、前記ポリマーから光によって放出させることが可能である放出可能なフルオロフォアを含む、請求項2から18までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項20】
前記複数の修飾可能なフルオロフォアが、光によって退色させることが可能である光退色性フルオロフォアを含む、請求項2から18までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項21】
前記修飾可能なフルオロフォアが、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内に構成的フルオロフォアとケージドフルオロフォアの複数のペアを含み、構成的フルオロフォアとケージドフルオロフォアの前記複数のペアが、前記ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記ケージドフルオロフォアが、脱ケージドフルオロフォアに光により変換することが可能である、請求項2から19までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項22】
前記修飾可能なフルオロフォアが、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内に構成的フルオロフォアと消光フルオロフォアの複数のペアを含み、構成的フルオロフォアと消光フルオロフォアの前記複数のペアが、前記ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、消光フルオロフォアそれぞれが、光パルスによって放出させることが可能なクエンチャーの近傍に存在する、請求項2に記載のポリマー。
【請求項23】
前記修飾可能なフルオロフォアが、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内に2つのケージドフルオロフォアの複数のペアを含み、2つのケージドフルオロフォアの前記複数のペアが、前記ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記ペアのケージドフルオロフォアそれぞれが、光パルスによって脱ケージすることが可能であり、前記ペアの第1のケージドフルオロフォアが、脱ケージされると第1の発光波長で蛍光を発することが可能であり、前記ペアの第2のケージドフルオロフォアが、脱ケージされると第2の発光波長で蛍光を発することが可能である、請求項2に記載のポリマー。
【請求項24】
前記ペアの前記第1のケージドフルオロフォアが、第1の波長の光パルスによって脱ケージされ、前記ペアの前記第2のケージドフルオロフォアが、第2の波長の光パルスによって脱ケージされる、請求項23に記載のポリマー。
【請求項25】
前記複数の修飾可能なフルオロフォアが、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内に2つの消光フルオロフォアの複数のペアを含み、2つの消光フルオロフォアの前記複数のペアが、前記ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記ペアの消光フルオロフォアそれぞれが、光パルスによって放出させることが可能なクエンチャーの近傍に存在し、前記ペアの第1の消光フルオロフォアが、その近傍のクエンチャーが放出されると前記第1の発光波長で蛍光を発することが可能であり、前記ペアの第2の消光フルオロフォアが、その近傍のクエンチャーが放出されると前記第2の発光波長で蛍光を発することが可能である、請求項2に記載のポリマー。
【請求項26】
前記ペアの前記第1の消光フルオロフォアが、前記第1の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在し、前記ペアの前記第2の消光フルオロフォアが、前記第2の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在する、請求項25に記載のポリマー。
【請求項27】
前記複数の修飾可能なフルオロフォアが、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内にフルオロフォアの複数のペアを含み、前記ペアの第1のフルオロフォアが、ケージングされており、光パルスによって脱ケージすることが可能であり、前記ペアの第2のフルオロフォアが、光パルスによって放出させることが可能なクエンチャーの近傍に存在する消光フルオロフォアであり、前記2つのフルオロフォアの前記複数のペアが、前記ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記ペアの前記ケージドフルオロフォアが、脱ケージされると第1の波長で蛍光を発することが可能であり、前記ペアの前記消光フルオロフォアが、その近傍のクエンチャーが放出されると第2の波長で蛍光を発することが可能である、請求項2に記載のポリマー。
【請求項28】
前記ペアの前記第1のケージドフルオロフォアが、前記第1の波長の光パルスによって脱ケージされ、前記ペアの前記第2の消光フルオロフォアが、パルス波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在する、請求項27に記載のポリマー。
【請求項29】
前記ペアの前記第1のケージドフルオロフォアが、前記第1の波長の光パルスによって脱ケージされ、または第2の波長および前記ペアの前記第2の消光フルオロフォアが、前記第1の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在する、請求項27に記載のポリマー。
【請求項30】
生体ポリマーである、請求項1から29までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項31】
前記ポリマーが、核酸ポリマーであり、前記複数の変換可能な残基が、変換可能な核酸塩基である、請求項1から30までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項32】
前記核酸ポリマーが、一本鎖核酸ポリマーである、請求項31に記載のポリマー。
【請求項33】
前記核酸ポリマーが、二本鎖核酸ポリマーである、請求項31に記載のポリマー。
【請求項34】
前記核酸ポリマーが、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、2’-O-アルキルRNA、ホスホロチオエートDNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、またはこれらの組合せを含む、請求項31から33までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項35】
前記核酸ポリマーが、10個よりも多くの変換可能な残基を含む、請求項31から34までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項36】
前記核酸ポリマー内のヌクレオチドの総数の前記変換可能な残基に対する比が、2から1000の間である、請求項31から35までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項37】
前記核酸ポリマー内のヌクレオチドの総数の前記変換可能な残基に対する比が、2から100の間である、請求項31から36までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項38】
前記核酸ポリマー内のヌクレオチドの総数の前記変換可能な残基に対する比が、3から100の間である、請求項31から37までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項39】
前記複数の変換可能な核酸塩基が天然に存在しない核酸塩基である、請求項31から36までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項40】
前記複数の変換可能な核酸塩基が修飾された天然に存在する核酸塩基または天然に存在する核酸塩基の誘導体である、請求項31に記載のポリマー。
【請求項41】
前記第1の蛍光状態および前記第2の蛍光状態にある前記複数の変換可能な残基が、ポリメラーゼによって読み取り可能である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項42】
有機ポリマーである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項43】
前記フルオロフォアが、前記変換可能な核酸塩基の塩基に直接結合している、請求項31に記載のポリマー。
【請求項44】
前記フルオロフォアが、前記核酸塩基の塩基にリンカーによって結合している、請求項31に記載のポリマー。
【請求項45】
前記フルオロフォアが、前記核酸塩基の塩基にリンカーまたはリンカー原子なしで結合している、請求項31に記載のポリマー。
【請求項46】
前記複数の変換可能な残基が、蛍光核酸塩基を含む、請求項31に記載のポリマー。
【請求項47】
前記フルオロフォアが核酸塩基である、請求項31に記載のポリマー。
【請求項48】
前記核酸塩基が蛍光核酸塩基である、請求項46に記載のポリマー。
【請求項49】
前記複数の変換可能な核酸塩基が前記核酸の骨格に糖を介して共有結合により連結している、請求項31に記載のポリマー。
【請求項50】
前記フルオロフォアが、光、電圧、酵素剤、化学試薬、または酸化還元剤によって活性化可能であり、それにより、前記第1の蛍光状態から前記第2の蛍光状態に変換される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項51】
前記フルオロフォアが、光によって活性化可能であり、それにより、前記第1の蛍光状態から前記第2の蛍光状態に変換される、請求項50に記載のポリマー。
【請求項52】
前記第1の蛍光状態から前記第2の蛍光状態への変換が、不可逆反応によって起こる、請求項51に記載のポリマー。
【請求項53】
前記ポリマーの骨格(例えば、核酸ポリマーのリン酸および糖)が、前記第1の蛍光状態から前記第2の蛍光状態への変換の間、変化しないままである、請求項1から52までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項54】
前記ポリマーが、変換可能な残基の2つまたはそれよりも多くの異なるセットを含み、変換可能な残基の各セットが第1の蛍光状態を有し、前記第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、前記第1の蛍光状態と前記第2の蛍光状態が異なる、請求項1から53までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項55】
変換可能な残基の前記2つまたはそれよりも多くの異なるセットが、波長が異なる光によって活性化可能である、請求項54に記載のポリマー。
【請求項56】
変換可能な残基の第1のセットが、第1の波長の光によって活性化可能であり、変換可能な残基の第2のセットが、第2の波長の光によって活性化可能であり、前記第1の波長と前記第2の波長が異なる、請求項55に記載のポリマー。
【請求項57】
前記フルオロフォアが、1つまたは複数の光により除去可能なまたは光により切断可能な基を含む、請求項1から56までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項58】
前記変換可能な残基が、脱離基を含む、請求項1から57までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項59】
前記脱離基が、クエンチャーおよび/またはケージ(例えば、光により除去可能なまたは光により切断可能な基)である、請求項58に記載のポリマー。
【請求項60】
前記複数の変換可能な残基が、325nm、360nm、400nm、500nm、600nm、700nm、または800nmの波長の光によって変換することが可能である、請求項1から59までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項61】
前記複数の変換可能な残基の前記第1の蛍光状態および前記第2の蛍光状態が、蛍光検出デバイスによって読み取り可能である、請求項1から60までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項62】
前記蛍光検出デバイスが、蛍光プレートリーダー、ゲルイメージャー、蛍光分光計、蛍光顕微鏡、またはフローサイトメーターである、請求項61に記載のポリマー。
【請求項63】
前記複数の変換可能な残基の前記第1の蛍光状態および前記第2の蛍光状態が、天然に存在しないおよび/または修飾された核酸塩基を検出し区別をつけることが可能なシーケンシング方法によって読み取り可能である、請求項1から60までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項64】
前記複数の変換可能な残基が前記第2の蛍光状態に変換されると、前記第1の蛍光状態と比較して前記複数の変換可能な残基の特性が改変される(例えば、サイズが縮小する、形状が変更される、H結合が改変される、および/またはポリメラーゼ基質能が改変される)、請求項1から60までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項65】
前記複数の変換可能な残基の前記第1の蛍光状態および前記第2の蛍光状態が、ナノポアシーケンシングによって読み取り可能である、請求項1から60までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項66】
前記複数の変換可能な残基のうちの1つまたは複数が、前記第2の蛍光状態から第3の蛍光状態に変換することが可能であり、前記複数の変換可能な残基のうちの前記1つまたは複数が、前記第3の蛍光状態で前記核酸ポリマーに共有結合により付着している、請求項1から65までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項67】
前記複数の変換可能な残基のそれぞれが、独立に、かつ選択的に変換することが可能である、請求項1から66までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項68】
前記ポリマーの骨格を介して連結した複数のスペーサー残基をさらに含み、前記複数の変換可能な残基のそれぞれが、前記複数のスペーサー残基のうちの1つまたは複数のスペーサー残基によって隔てられている、請求項1から67までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項69】
前記複数の変換可能な残基の間の反復間隔が、前記ポリマー上にデータを符号化するための書き込み機構の分解能に適合する、請求項1から68までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項70】
2つの隣接する変換可能な残基の間の反復間隔が、データを前記ポリマーに符号化するためのデータ符号化機構の分解能と等しいまたはそれよりも大きい、請求項1から69までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項71】
前記複数のスペーサー残基が、前記変換可能な残基の読み取りに干渉しない、請求項1から70までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項72】
前記ポリマー内の前記複数のスペーサー残基が、同じスペーサー残基である、請求項1から71までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項73】
前記複数のスペーサー残基が、2つまたはそれよりも多くの異なるスペーサー残基(例えば、異なる核酸塩基、例えば、異なる天然に存在する核酸塩基)を含む、請求項1から72までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項74】
スペーサー残基から本質的になる、請求項1から73までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項75】
前記複数の変換可能な残基のそれぞれが、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、20個、30個、40個、または50個のスペーサー残基によって隔てられている、請求項2から73までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項76】
前記複数の変換可能な残基のそれぞれが、6個のスペーサー残基によって隔てられている、請求項75に記載のポリマー。
【請求項77】
前記複数のスペーサー残基が、天然に存在する核酸塩基、天然に存在しない核酸塩基、テトラヒドロフラン無塩基残基、またはエチレングリコール残基を含む、請求項2から76までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項78】
前記複数のスペーサー残基が、天然に存在する核酸塩基を含む、請求項77に記載のポリマー。
【請求項79】
前記ポリマーの骨格に連結した1つまたは複数のデリミタをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項80】
前記1つまたは複数のデリミタのそれぞれが、1つまたは複数の天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基を含む、請求項79に記載のポリマー。
【請求項81】
前記1つまたは複数のデリミタが、天然に存在する核酸塩基を含む、請求項79または80に記載のポリマー。
【請求項82】
前記1つまたは複数のデリミタが、前記ポリマー内の2つまたはそれよりも多くの隣接するデータフィールドを隔てる、請求項79から81までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項83】
1つまたは複数のデータタグをさらに含む、請求項2から82までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項84】
前記1つまたは複数のデータタグが、1つまたは複数の天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基を含む、請求項83に記載のポリマー。
【請求項85】
前記ポリマーが、核酸ポリマーであり、前記1つまたは複数のデータタグが、前記核酸ポリマーの5’末端または3’末端に存在する、請求項83または84に記載のポリマー。
【請求項86】
前記1つまたは複数のデータタグが、前記核酸ポリマーの合成の間に、前記複数の変換可能な残基の前記第2の蛍光状態への変換の間に、または前記複数の変換可能な残基が前記第2の蛍光状態に変換された後のライゲーションによって、前記核酸ポリマーに組み入れられる、請求項83から85までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項87】
標準的な核酸保存プロトコールの下で保存することができる、請求項1から86までのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項88】
適当なヌクレアーゼ不含溶液中、室温でまたは低温(例えば、-20℃)で保存することができる核酸ポリマーである、請求項87に記載のポリマー。
【請求項89】
安定剤なしで室温で保存することができる、請求項87または88に記載のポリマー。
【請求項90】
データ書き込みのためのシステムであって、
複数の変換可能な残基を含む書き込み可能なポリマーであって、前記複数の変換された残基それぞれが、フルオロフォアを有する第1の残基を含み、前記複数の変換された残基それぞれが、前記ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記ポリマーの骨格に共有結合により連結しており、前記複数の変換可能な残基のそれぞれが第1の蛍光状態を有し、前記第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、前記第1の蛍光状態と前記第2の蛍光状態が異なり、前記複数の変換可能な残基が前記第1の蛍光状態および前記第2の蛍光状態で前記ポリマーに共有結合により連結している、書き込み可能なポリマーと、
前記書き込み可能なポリマー上にデータを書き込むためのデータ書き込みデバイスと
を含む、システム。
【請求項91】
前記書き込み可能なポリマーが、書き込み可能な核酸ポリマーであり、前記複数の変換可能な残基が、変換可能な核酸塩基である、請求項90に記載のシステム。
【請求項92】
前記データ書き込みデバイスが、ナノポアを含む、請求項90または91に記載のシステム。
【請求項93】
前記データ書き込みデバイスが、前記複数の変換可能な残基を光パルス、電圧パルス、酵素剤、または酸化還元剤によって前記第2の蛍光状態に変換する、請求項90から92までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項94】
前記データ書き込みデバイスが、前記複数の変換可能な残基を光パルスによって前記第2の蛍光状態に変換する、請求項93に記載のシステム。
【請求項95】
前記データ書き込みデバイスが、光照射デバイスを含む、請求項90から94までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項96】
書き込み可能な核酸ポリマーを生成するための方法であって、
環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型を用意するステップであって、前記環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型が、複数の変換可能な核酸塩基を含む繰り返しデータフィールドと相補的であり、前記複数の変換可能な核酸塩基それぞれが、フルオロフォアを含む、ステップと、
前記環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型を核酸プライマー、ポリメラーゼ、および三リン酸ヌクレオチドの存在下でインキュベートするステップであって、前記三リン酸ヌクレオチドが、第1の蛍光状態にあり前記第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能である前記複数の変換可能な核酸塩基のサブセットを含み、前記第1の蛍光状態と前記第2の蛍光状態が異なる、ステップと
を含む、方法。
【請求項97】
前記環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型が、前記変換可能な核酸塩基と相補的な核酸塩基を含み、前記相補的な核酸塩基が繰り返し間隔をあけて配置され、その結果、前記鋳型を前記核酸プライマー、前記ポリメラーゼ、および前記三リン酸ヌクレオチドと共にインキュベートすると、前記核酸ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記核酸ポリマーの骨格を介して共有結合により連結した複数の前記変換可能な核酸塩基を含む核酸ポリマーがもたらされ、前記複数の前記変換可能な核酸塩基が前記第1の蛍光状態および前記第2の蛍光状態で前記核酸ポリマーに共有結合により連結している、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記繰り返しデータフィールドが、スペーサー核酸塩基をさらに含み、前記三リン酸ヌクレオチドが、三リン酸スペーサーヌクレオチドをさらに含む、請求項96または97に記載の方法。
【請求項99】
書き込み可能なポリマーを生成するための方法であって、
複数のオリゴマーを化学合成するステップであって、各オリゴマーが、複数の変換可能な残基を含み、変換可能な残基のそれぞれがフルオロフォアを含み、前記複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれが、前記ポリマー骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記ポリマー骨格を介して連結しており、前記複数の変換可能な残基のそれぞれが第1の蛍光状態を有し、前記第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、前記複数の変換可能な残基が、前記第1の蛍光状態および前記第2の蛍光状態で前記ポリマーに共有結合により付着しており、前記第1の蛍光状態と前記第2の蛍光状態が異なる、ステップと、
前記複数のオリゴマーをライゲーションして、前記書き込み可能なポリマーを形成するステップと
を含む、方法。
【請求項100】
前記複数のオリゴマーのそれぞれが前記核酸ポリマーの骨格を介して連結した複数のスペーサー残基を含み、前記複数の変換可能な残基のそれぞれが、前記複数のスペーサー残基のうちの1つまたは複数のスペーサー残基によって隔てられている、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記ライゲーションするステップが、化学的ライゲーションによるものである、請求項99または100に記載の方法。
【請求項102】
前記ライゲーションするステップが、酵素的ライゲーションによるものである、請求項99または100に記載の方法。
【請求項103】
前記ライゲーションするステップにおいて相補DNAスプリントを使用する、請求項99から102までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記ライゲーションするステップの前に、複数の相補物を前記オリゴマーとアニーリングさせるステップ
をさらに含む、請求項99から103までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
データが符号化されたポリマーであって、
前記ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、骨格を介して連結した複数のフルオロフォアであって、光パルスによって第1の構造的状態から第2の構造的状態に修飾された複数の修飾されたフルオロフォアを含む、複数のフルオロフォアと、前記ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される複数の荷電した構成成分と
を含む、ポリマー。
【請求項106】
前記複数のフルオロフォアが、前記第1の構造的状態で前記ポリマーに組み入れられており、前記複数の修飾されたフルオロフォアが、ナノポアを含むデバイスによって修飾されており、前記デバイスが、前記ナノポアを介して前記ポリマー横断させ、データコードに従って前記光パルスによって前記複数のフルオロフォアを選択的に修飾することが可能である、請求項105に記載のポリマー。
【請求項107】
前記複数の修飾されたフルオロフォアが、脱ケージドフルオロフォアを含む、請求項105に記載のポリマー。
【請求項108】
前記複数の修飾されたフルオロフォアが、不消光フルオロフォアを含む、請求項105に記載のポリマー。
【請求項109】
前記複数の修飾された残基が、放出可能なフルオロフォアが放出される部位を含む、請求項105に記載のポリマー。
【請求項110】
前記複数の修飾されたフルオロフォアが、光によって不活化または光退色したフルオロフォアを含む、請求項105に記載のポリマー。
【請求項111】
前記複数の修飾されたフルオロフォアが、光変換フルオロフォアを含み、前記光変換フルオロフォアの前記第2の構造的状態により、前記第1の構造的状態から発せられる波長とは異なる波長の蛍光が発せられる、請求項105に記載のポリマー。
【請求項112】
書き込み可能なポリマー上にデータを符号化する方法であって、
前記ポリマー骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記ポリマー骨格と連結した複数の変換可能な残基を含む書き込み可能なポリマーを用意するステップであって、前記複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれが、第1の蛍光状態を有して用意され、前記第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、前記第1の蛍光状態と前記第2の蛍光状態が異なり、前記複数の変換可能な残基の全てまたはサブセットのそれぞれがフルオロフォアを含み、前記複数の変換可能な残基が前記第1の蛍光状態および前記第2の蛍光状態で前記ポリマーに共有結合により連結している、ステップと、
データ書き込みデバイスを利用して、前記複数の変換可能な残基のサブセットを前記第2の蛍光状態へと選択的に修飾し、その結果、データが符号化されたポリマーが生成される、ステップと
を含む、方法。
【請求項113】
前記データ書き込みデバイスが、ナノポアを含み、前記方法が、前記書き込みデバイスのナノポアを介して前記書き込み可能な核酸ポリマーを通過させるステップをさらに含み、前記ナノポアが、複数の修飾可能なフルオロフォアのサブセットに光パルスを当てて前記第2の蛍光状態にする手段を含む、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記複数の修飾可能なフルオロフォアが、光によって脱ケージすることが可能なケージドフルオロフォアを含む、請求項112または113に記載の方法。
【請求項115】
前記複数の修飾可能なフルオロフォアが、クエンチャーの近傍にフルオロフォアを含み、前記クエンチャーを、光によって放出させることが可能である、請求項112または113に記載の方法。
【請求項116】
前記複数の修飾可能なフルオロフォアが、放出可能なフルオロフォアを含み、前記放出可能なフルオロフォアを、光によって放出させることが可能である、請求項112または113に記載の方法。
【請求項117】
前記複数の修飾可能なフルオロフォアが、光変換型フルオロフォアを含み、前記光変換型フルオロフォアの第1の構造的状態が第1の発光波長を有し、前記光変換型フルオロフォアの第2の構造的状態が第2の発光波長を有する、請求項112または113に記載の方法。
【請求項118】
前記データ書き込みデバイスを利用して、前記複数の変換可能な残基のサブセットを前記第2の蛍光に選択的に修飾するステップが、ケージドフルオロフォアの脱ケージング、クエンチャーの放出、フルオロフォアの放出、フルオロフォアの光不活化、フルオロフォアの光活性化、フルオロフォアの退色、またはこれらの組合せを含む、請求項112または113に記載の方法。
【請求項119】
前記ケージドフルオロフォアの前記脱ケージングが、前記フルオロフォアからケージを放出させることを含む、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記複数の変換可能な残基が、順を追って選択的に修飾される、請求項112に記載の方法。
【請求項121】
前記複数の変換可能な残基が、前記ポリマーの一方の末端から前記ポリマーの他方の末端まで順を追って選択的に修飾される、請求項112に記載の方法。
【請求項122】
前記生成されたポリマーの前記符号化されたデータを読み取るステップをさらに含む、請求項112から121までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
前記符号化されたデータを、前記データ読み取りユニットのナノポアを介して前記生成されたポリマーを通過させることによって読み取り、前記データ読み取りユニットの前記ナノポアが、前記複数の変換可能な残基の前記蛍光状態のそれぞれの蛍光を検出するように構成された検出モジュールを含む、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記データ読み取りユニットが、前記データ書き込みデバイスと同じデバイスを含む、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
データを読み取るためのナノポアデバイスが、データを書き込むためのものと同じナノポアデバイスである、請求項123に記載の方法。
【請求項126】
前記符号化されたデータを、前記生成されたポリマーの引き伸ばしおよびイメージングによって読み取る、請求項123に記載の方法。
【請求項127】
前記ポリマー上の前記符号化されたデータが順を追って読み取られる、請求項123に記載の方法。
【請求項128】
前記ポリマー上の前記符号化されたデータが前記ポリマーの一方の末端から前記ポリマーの他方の末端まで順を追って読み取られる、請求項123に記載の方法。
【請求項129】
書き込み可能なポリマー上にデータを書き込むための方法であって、
前記ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記ポリマーの骨格を介して共有結合により連結した複数の変換可能な残基を含む書き込み可能なポリマーを用意するステップであって、前記複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれが、第1の蛍光状態を有するフルオロフォアを含み、前記第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、前記第1の蛍光状態と前記第2の蛍光状態が異なる、ステップと、
データ書き込みデバイスを利用して、前記複数の変換可能な残基のうちの1つまたは複数を前記第2の蛍光状態に選択的に変換し、その結果、データが符号化されたポリマーが生成される、ステップと
を含む、方法。
【請求項130】
前記書き込み可能なポリマーが、書き込み可能な核酸ポリマーであり、前記複数の変換可能な残基が、変換可能な核酸塩基である、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記データ書き込みデバイスが、ナノポアを含み、前記方法が、
前記書き込みデバイスのナノポアを介して前記書き込み可能なポリマーを通過させるステップをさらに含み、前記ナノポアが、前記複数の変換可能な残基のうちの1つまたは複数を前記第2の蛍光状態に変換するを含む、請求項129または130に記載の方法。
【請求項132】
前記ナノポアが、光パルスまたは局部的なエネルギーを供給して、変換可能な核酸塩基を前記第1の蛍光状態から前記第2の蛍光状態に選択的に変換するプラズモニックナノポアである、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記データ書き込みデバイスが、プラズモニックウェルまたはチャネルを含み、前記方法が、
前記書き込み可能なポリマーをデータ符号化デバイスの前記プラズモニックウェルまたはチャネルに移すステップであって、前記プラズモニックウェルまたはチャネルが、光パルスまたは酸化還元エネルギーを供給して、変換可能な核酸塩基を前記第1の蛍光状態から前記第2の蛍光状態に選択的に変換する、ステップ
をさらに含む、請求項129または130に記載の方法。
【請求項134】
前記データ書き込みデバイスが、前記変換可能な残基を光パルス、電圧パルス、酵素剤、または酸化還元剤によって前記第2の蛍光状態に選択的に変換する、請求項129から131までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
前記データ書き込みデバイスが、前記変換可能な残基を光パルスによって前記第2の蛍光状態に選択的に変換する、請求項129から132までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項136】
前記複数の変換可能な残基が、2つまたはそれよりも多くの型の変換可能な残基を含み、第1の型の変換可能な残基が、第1の波長の光によって活性化可能であり、第2の型の変換可能な残基が、第2の波長の光によって活性化可能である、請求項129から135までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項137】
前記複数の前記変換可能な残基の間の反復間隔が、前記変換可能な残基を選択的に変換するための前記データ書き込みデバイスの分解能に適合する、請求項129から136までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
前記選択的に変換するステップが、前記書き込み可能なポリマーの特定の位置付けを必要としない、請求項129から137までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項139】
前記変換可能な残基の前記第2の蛍光状態への変換が、前記データが符号化されたポリマー上で一様ではない、請求項129から137までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記変換可能な残基の前記第2の蛍光状態への変換が、前記データが符号化されたポリマー上のある特定の位置に限定されない、請求項129から137までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項141】
前記書き込み可能なポリマー(例えば、書き込み可能なDNA)を固体支持体上に引き伸ばすまたはコーミングするステップをさらに含む、請求項129から140までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
色素を使用して前記変換可能な残基の場所を可視化するステップをさらに含む、請求項129から141までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
前記書き込み可能なポリマーを局所的に照明するステップをさらに含む、請求項129から142までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項144】
前記局所的に照明するステップが、誘導放出抑制(STED)レーザー法を使用する、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
2つまたはそれよりも多くの書き込み可能なポリマーからの2つまたはそれよりも多くのデータフィールドを端から端まで接合し、それにより、2つまたはそれよりも多くのデータフィールドを含む接合ポリマーを生じさせるステップをさらに含む、請求項129から144までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項146】
前記書き込み可能なポリマーが前記書き込みデバイスの前記ナノポアを通る通過速度を制御するステップをさらに含む、請求項129から145までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項147】
複数の書き込み可能なポリマーが前記データ書き込みデバイスを通過して、同じデータを書き込む(例えば、データ重複性を生じさせる)、請求項129から146までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
データが符号化されたポリマーからデータを読み取るための方法であって、
前記ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記ポリマーの骨格に共有結合により連結した複数の変換可能な残基を含む、前記データが符号化されたポリマーを用意するステップであって、前記複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれが前記ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記ポリマーの骨格を介して共有結合により連結しており、前記複数の変換可能な残基の第1のサブセットが第1の蛍光状態にあり、前記変換可能な残基の第2のサブセットが第2の蛍光状態にあり、前記第1の蛍光状態と前記第2の蛍光状態が異なる、ステップと、
データが符号化された書き込み可能なポリマーを、データ読み取りユニットを通過させて、前記データが符号化されたポリマー上の前記符号化されたデータを読み取るステップと
を含む、方法。
【請求項149】
前記書き込み可能なポリマーが、書き込み可能な核酸ポリマーであり、前記複数の変換可能な残基が、変換可能な核酸塩基である、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
前記第1の蛍光状態にある前記変換可能な残基を光によって前記第2の蛍光状態に変換することができる、請求項148または149に記載の方法。
【請求項151】
前記データ読み取りユニットが、ナノポアを含む、請求項148から150までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項152】
前記データ読み取りユニットが、蛍光スキャナー、蛍光プレートリーダー、ゲルイメージャー、蛍光分光計、蛍光顕微鏡、またはフローサイトメーターを含む、請求項148から150までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項153】
前記データ読み取りユニットが、シーケンシングデバイスである、請求項148から150までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項154】
前記書き込み可能なポリマーが通過する間の電解質の電流の流れを測定するステップをさらに含む、請求項148から151まで、または153のいずれか一項に記載の方法。
【請求項155】
前記複数の変換可能な残基のそれぞれが前記第1の蛍光状態にあるのかまたは前記第2の蛍光状態にあるのかを、前記書き込み可能なポリマーが通過する間の測定された電解質の電流の流れに基づいて決定するステップをさらに含む、請求項148から154までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項156】
前記データが符号化されたポリマー上の前記符号化されたデータが順を追って読み取られる、請求項148から155までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項157】
前記データが符号化されたポリマー上の前記符号化されたデータが前記ポリマーの一方の末端から前記ポリマーの他方の末端まで順を追って読み取られる、請求項123に記載の方法。
【請求項158】
前記データが符号化されたポリマーをデータ読み取りデバイスに再度通過させて、前記データが符号化されたポリマー上の前記符号化されたデータを再度読み取るステップをさらに含む、請求項148から157までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項159】
前記データが符号化されたポリマーの複数のコピー上の前記符号化されたデータを比較することにより、前記データが符号化されたポリマー上の前記符号化されたデータを検証し、補正するステップをさらに含む、請求項148から158までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項160】
データが符号化されたポリマーからデータを読み取るまたは復号するための方法であって、
複数の変換された残基であって、変換された残基それぞれが第1のフルオロフォアを含み、前記第1の変換された残基が第1の蛍光状態から光によって第2の蛍光状態に変換されており、前記第1の蛍光状態と前記第2の蛍光状態が異なる、複数の変換された核酸塩基と、
複数の変換可能な残基であって、変換可能な残基のそれぞれが第2のフルオロフォアを含み、前記変換可能な残基が第1の蛍光状態でもたらされ、前記第1の蛍光状態から光によって第2の蛍光状態に変換することが可能であり、前記第1の蛍光状態と前記第2の蛍光状態が異なる、複数の変換可能な残基と
を含む、前記データが符号化されたポリマーの複数の重複コピーを用意するステップであって、
前記変換された残基と変換可能な残基が、前記ポリマー骨格を介して連結している、ステップと、
前記ポリマーの前記複数の重複コピーの各重複コピーの配列を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項161】
前記複数の変換された核酸塩基および前記複数の変換可能な残基を検出するステップと、
検出された複数の変換された残基に基づいて前記データを復号するステップと
をさらに含む、請求項160に記載の方法。
【請求項162】
前記第1の蛍光状態および前記第2の蛍光状態にある前記複数の変換された残基がポリメラーゼによって読み取り可能である、請求項160または161に記載の方法。
【請求項163】
前記第1の蛍光状態および前記第2の蛍光状態にある前記複数の変換可能な残基がポリメラーゼによって読み取り可能である、請求項160から162までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項164】
前記複数の変換された残基および前記複数の変換可能な残基が、前記データが符号化された核酸ポリマーの前記重複コピーの配列決定結果に基づいて検出される、請求項160から163までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項165】
データを符号化するための書き込み可能なポリマーを作出するための方法であって、
溶液中のポリマーを用意するステップであって、前記ポリマーが、前記ポリマーの骨格に共有結合により連結した、繰り返し間隔をあけて配置される反応性部分を含む、ステップと、
化学修飾可能な構造のセットを前記溶液に添加するステップであって、化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、前記ポリマーの前記反応性部分と反応することが可能な化学基で官能化され、それにより、化学修飾可能な構造のセットが繰り返し間隔をあけて配置される書き込み可能なポリマーが得られる、ステップと
を含み、
前記化学修飾可能な構造が、第1の状態(例えば、第1の蛍光状態)を有し、第2の状態(例えば、第2の蛍光状態)に変換することが可能であり、前記第1の状態と前記第2の状態が異なり、
前記化学修飾可能な構造が前記第1の状態および前記第2の状態で前記ポリマーに共有結合により連結している、方法。
【請求項166】
書き込み可能な核酸ポリマーを作出するための方法であって、
第1の溶液中の一本鎖核酸ポリマーを用意するステップと、
前記第1の溶液に、(i)前記一本鎖核酸ポリマーと相補的なプライマー配列、(ii)デオキシヌクレオチド三リン酸のセット、および(iii)核酸ポリメラーゼを含む混合物を添加するステップであって、前記デオキシヌクレオチド三リン酸のセットが、反応性部分を有する修飾されたデオキシヌクレオチド三リン酸を含む、ステップと、
前記混合物を前記第1の溶液中でインキュベートして、前記反応性部分を有する修飾された核酸塩基を含む、前記一本鎖核酸ポリマーの相補鎖を得るステップと、
前記相補鎖を化学修飾可能な構造のセットと共に第2の溶液中でインキュベートするステップであって、化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、前記相補鎖に組み入れられた前記修飾された核酸塩基の前記反応性部分と反応することが可能であり、その結果、化学修飾可能な構造のセットが繰り返し間隔をあけて配置される書き込み可能な核酸ポリマー(nucleic polymer)が得られる、ステップと
を含み、
前記化学修飾可能な構造が、第1の状態(例えば、第1の蛍光状態)を有し、第2の状態(例えば、第2の蛍光状態)に変換することが可能であり、前記第1の状態と前記第2の状態が異なり、
前記化学修飾可能な構造が前記第1の状態および前記第2の状態で前記ポリマーに共有結合により連結している、方法。
【請求項167】
書き込み可能な有機ポリマーを作出するための方法であって、
溶液中の有機ポリマーを用意するステップであって、前記有機ポリマーが、前記ポリマーの骨格に共有結合により連結した、繰り返し間隔をあけて配置される反応性部分を含む、ステップと、
化学修飾可能な構造のセットを前記溶液に添加するステップであって、化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、前記有機ポリマー上の前記反応性部分と反応することが可能であり、その結果、化学修飾可能な構造のセットが繰り返し間隔をあけて配置される書き込み可能な有機ポリマーが得られる、ステップと
を含み、
前記化学修飾可能な構造が、第1の状態(例えば、第1の蛍光状態)を有し、第2の状態(例えば、第2の蛍光状態)に変換することが可能であり、前記第1の状態と前記第2の状態が異なり、
前記化学修飾可能な構造が前記第1の状態および前記第2の状態で前記ポリマーに共有結合により連結している、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、そのそれぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月7日出願の米国仮特許出願第63/241,479号、および2021年10月18日出願の米国仮特許出願第63/262,686号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
背景
世界中でデジタルデータの量が増加するにつれ、デジタルデータの長期にわたる保存の複雑化が急速に膨らむ問題になりつつある。電子的にまたは磁気的にアーカイブされたデジタルデータは、保存中に容易に操作される、歪められる、かつ/または失われる恐れがある。アーカイブデータストレージのための効率的なソリッドステート電子的方法が存在するが、何年もの期間にわたって安定なものではなく、データを定期的に書き直すか新しいデバイスに移行するかしなければデータが消失する。同様に、磁気テープがデータアーカイブのために一般に使用されるが、これも経時的に劣化する。したがって、データを効率的に符号化し、特に長期間にわたって保存するための方法が非常に積極的に探求されている。
【0003】
ポリマー(核酸分子を含む)により、データストレージに伴う問題を克服するための潜在的な解決法がもたらされる。ポリマーは、単量体が反復される配列を有するので、高密度で非常に長い持続時間にわたって安定に保存することができる、デジタル情報を含有する分子として利用することができる。例えば、天然のDNAは、4つの塩基:A、C、T、およびGに符号化されたデジタル情報を含有し、合成される鎖の配列にバイナリデータを符号化するために使用することができる。DNAの単一のポリマー分子は非常に長いものであり得(例えば、染色体に関して)、数百万ビットのデータを符号化することができる。1立方インチのDNAに1018バイトのデータを符号化することができると推定されている。さらに、DNAは比較的安定であり、数万年の年月を経た試料からさえも配列情報が得られている。したがって、DNAは、データのアーカイブに関して注目すべき見込みをもたらすものである。他のポリマーも同様に長期間安定であり得る。
【0004】
デジタルデータを符号化するためのポリマー分子の使用が研究の対象になっている。原理上は、単量体または選択された単量体に結合した繰り返し間隔をあけて存在する官能基の配列をバイナリの意味では1と0に符号化することができる。そのような分子データ符号化では、単一分子に多くのビット数のデータを符号化することができるので、非常に高いデータ密度の可能性がもたらされる。さらに、一部のポリマー(例えばDNAなど)は電子または磁気媒体よりも長く安定なままであり得、したがって、アーカイブストレージのためにデータを頻繁に書き直す必要がなくなる。
【0005】
核酸はデータストレージの重要な潜在的供給源であるが、核酸、特にデータを定義する配列を合成するプロセスは非効率的であり、したがって、核酸への符号化プロセスが、核酸をデータストレージとして利用するための実質的な障壁になる。DNAにデータを保存するための現行の手法は、デジタル情報が符号化された任意の配列の鎖を化学的にまたは酵素的に合成することを伴う(その開示がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるG. M. Church, Y. Gao, and S. Kosuri Science. 2012; 337:1628;X. Chengtao, et al., Nucleic Acids Res. 2021; 49:5451-5469;およびE. Yoo, et al., Comput Struct Biotechnol J. 2021; 19:2468-2476を参照されたい)。オリゴヌクレオチド合成機により、およそ100~200ヌクレオチドまでの長さのDNAを作製することができる。特殊化された合成機では、数百または数千オリゴヌクレオチドを1回で作製することができ、よりハイスループットのデータ書き込みが見込まれる。化学的DNA合成に加えて、ポリメラーゼまたは他の酵素を伴う酵素的手法も、任意のデータが符号化された配列のDNAの創出に関して調査されている。これらの酵素的手法は、特殊化されたヌクレオチド(またはヌクレオチドの小さな群)を1度に1つずつ付加すること、またはDNAの短いセグメントを段階的に付加することを伴う。
【0006】
DNAの合成および解析のための方法は十分に開発されているので、このバイオポリマーは分子データ符号化研究において群を抜いて注目を集めている。合成の間にDNAにデータを符号化する手法は、収率、鎖の長さ、時間、および費用によって制限される。現行の効率的なDNA合成機では、最長でおよそ200ヌクレオチドの鎖が作製され、したがって、符号化される情報は比較的少量である。配列の短さを補うためには、多数の異なるオリゴヌクレオチドを合成しなければならない。オリゴヌクレオチド合成には、段階的高収率を実現するために過剰な試薬が必要であり、試薬および溶媒の費用のかかる消費が必要である。また、ヌクレオチドの付加毎にこれらの高収率を実現するために時間も必要になり(一般に、各ステップに1~5分)、これは、より多量のデータを符号化するためには長時間が必要になることを意味する。開発中の一般的な酵素的手法は、同様にヌクレオチドまたはヌクレオチドの群を段階的に付加するものであり、非常に長い鎖を作製し、大量のデータを符号化する能力に関する著しい改善は未だなされていない。酵素的手法も段階的に行われるので、データ符号化のスピードに限界がある。さらに、上記の化学的戦略および酵素的戦略はどちらも、一般には比較的短い鎖を作製するものであるので、単一分子シーケンシングに理想的ではない可能性があり、その代わりに、1つ1つの書き込みされたDNAをより多量に必要とするシーケンシング方法に依拠し得る。非常に長いDNAポリマー(例えば、10キロベースを超える)にデータを符号化することが理想的であるが、任意の配列の非常に長いDNAを作出するための方法は限られているか存在しない。生物学的に合成されるDNAは、非常に長い一方で、任意の配列では存在せず、これらのポリマーにデータを効率的に符号化する能力が限定される。
非DNA(例えば、有機)ポリマーも多くの単量体を含有し、同じくデータ保存の潜在性を有し得る。しかし、ポリマーは通常、一段階で合成され(重合)、分子鎖に含有される単量体の配列を制御することができず、したがって、配列に基づいてデータを符号化することが困難である。段階的な合成(ペプチド合成など)の場合、ポリマーも長さが極めて限定され、各ステップにかなりの時間が必要になる。これらの理由で、ポリマーにデータを符号化するための改善された解決法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G. M. Church, Y. Gao, and S. Kosuri Science. 2012; 337:1628
【非特許文献2】X. Chengtao, et al., Nucleic Acids Res. 2021; 49:5451-5469
【非特許文献3】E. Yoo, et al., Comput Struct Biotechnol J. 2021; 19:2468-2476
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
一つの態様では、データを符号化するためのポリマーであって、
ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマーの骨格に共有結合により連結した複数の変換可能な残基を含み、
複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれが第1の蛍光状態を有し、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態が異なり、
複数の変換可能な残基の全てまたはサブセットのそれぞれがフルオロフォアを含み、複数の変換可能な残基が第1の蛍光状態および第2の蛍光状態でポリマーに共有結合により連結している、ポリマーが本明細書で提供される。
【0009】
特定の実施形態では、フルオロフォアは、修飾可能なフルオロフォアである。
【0010】
特定の実施形態では、フルオロフォアは、光によって修飾可能である。
【0011】
特定の実施形態では、変換可能な残基のサブセットのフルオロフォアそれぞれは、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、骨格を介して連結している。
【0012】
特定の実施形態では、ポリマーは、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される複数の荷電した構成成分をさらに含む。
【0013】
特定の実施形態では、複数の修飾可能なフルオロフォアは、脱ケージドフルオロフォアに光により変換することが可能なケージドフルオロフォアを含む。
【0014】
特定の実施形態では、ケージドフルオロフォアのそれぞれは、
【化1】
から選択される。
【0015】
特定の実施形態では、フルオロフォアは、放出可能なクエンチャーの近傍に存在し、クエンチャーを、光によって放出させることが可能であり、放出の際に蛍光を消光することができる。
【0016】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基のサブセットの変換可能な残基のそれぞれはクエンチャーを含む。
【0017】
特定の実施形態では、クエンチャーは、
【化2】
から選択される。
【0018】
特定の実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、光変換型フルオロフォアを含み、光変換型フルオロフォアは、第1の発光波長を有する第1の構造的状態で存在し、光パルスによって第2の発光波長を有する第2の構造的状態に変換することが可能である。
【0019】
特定の実施形態では、光変換型フルオロフォアの第1の構造的状態から第2の構造的状態への変換は、第1の波長の光パルスによるものであり、光変換型フルオロフォアは、第2の波長の光パルスによって第3の発光波長を有する第3の構造的状態に変換することが可能である。
【0020】
特定の実施形態では、光変換型フルオロフォアは、光によって活性化される。
【0021】
特定の実施形態では、光変換型フルオロフォアは、添加剤の存在下で光によって活性化される。
【0022】
特定の実施形態では、光変換型フルオロフォアは、光によって不活化される。
【0023】
特定の実施形態では、光変換型フルオロフォアは、添加剤の存在下で光によって不活化される。
【0024】
特定の実施形態では、光変換型フルオロフォアは、ポリメチンシアニン色素を含む。
【0025】
特定の実施形態では、光変換型フルオロフォアは、
【化3】
を含む。
【0026】
特定の実施形態では、複数の修飾可能なフルオロフォアは、ポリマーから光によって放出させることが可能である放出可能なフルオロフォアを含む。
【0027】
特定の実施形態では、複数の修飾可能なフルオロフォアは、光によって退色させることが可能である光退色性フルオロフォアを含む。
【0028】
特定の実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内に構成的フルオロフォアとケージドフルオロフォアの複数のペアを含み、構成的フルオロフォアとケージドフルオロフォアの複数のペアは、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ケージドフルオロフォアは、脱ケージドフルオロフォアに光により変換することが可能である。
【0029】
特定の実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内に構成的フルオロフォアと消光フルオロフォアの複数のペアを含み、構成的フルオロフォアと消光フルオロフォアの複数のペアは、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、消光フルオロフォアそれぞれは、光パルスによって放出させることが可能なクエンチャーの近傍に存在する。
【0030】
特定の実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内に2つのケージドフルオロフォアの複数のペアを含み、2つのケージドフルオロフォアの複数のペアは、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ペアのケージドフルオロフォアそれぞれは、光パルスによって脱ケージすることが可能であり、ペアの第1のケージドフルオロフォアは、脱ケージされると第1の発光波長で蛍光を発することが可能であり、ペアの第2のケージドフルオロフォアは、脱ケージされると第2の発光波長で蛍光を発することが可能である。
【0031】
特定の実施形態では、ペアの第1のケージドフルオロフォアは、第1の波長の光パルスによって脱ケージされ、ペアの第2のケージドフルオロフォアは、第2の波長の光パルスによって脱ケージされる。
【0032】
特定の実施形態では、複数の修飾可能なフルオロフォアは、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内に2つの消光フルオロフォアの複数のペアを含み、2つの消光フルオロフォアの複数のペアは、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ペアの消光フルオロフォアそれぞれは、光パルスによって放出させることが可能なクエンチャーの近傍に存在し、ペアの第1の消光フルオロフォアは、その近傍のクエンチャーが放出されると第1の発光波長で蛍光を発することが可能であり、ペアの第2の消光フルオロフォアは、その近傍のクエンチャーが放出されると第2の発光波長で蛍光を発することが可能である。
【0033】
特定の実施形態では、ペアの第1の消光フルオロフォアは、第1の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在し、ペアの第2の消光フルオロフォアは、第2の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在する。
【0034】
特定の実施形態では、複数の修飾可能なフルオロフォアは、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内にフルオロフォアの複数のペアを含み、ペアの第1のフルオロフォアは、ケージングされており、光パルスによって脱ケージすることが可能であり、ペアの第2のフルオロフォアは、光パルスによって放出させることが可能なクエンチャーの近傍に存在する消光フルオロフォアであり、2つのフルオロフォアの複数のペアは、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ペアのケージドフルオロフォアは、脱ケージされると第1の波長で蛍光を発することが可能であり、ペアの消光フルオロフォアは、その近傍のクエンチャーが放出されると第2の波長で蛍光を発することが可能である。
【0035】
特定の実施形態では、ペアの第1のケージドフルオロフォアは、第1の波長の光パルスによって脱ケージされ、ペアの第2の消光フルオロフォアは、パルス波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在する。
【0036】
特定の実施形態では、ペアの第1のケージドフルオロフォアは、第1の波長の光パルスによって脱ケージされ、または第2の波長およびペアの第2の消光フルオロフォアは、第1の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在する。
【0037】
特定の実施形態では、ポリマーは、生体ポリマーである。
【0038】
特定の実施形態では、ポリマーは、核酸ポリマーであり、複数の変換可能な残基は、変換可能な核酸塩基である。
【0039】
特定の実施形態では、核酸ポリマーは、一本鎖核酸ポリマーである。
【0040】
特定の実施形態では、核酸ポリマーは、二本鎖核酸ポリマーである。
【0041】
特定の実施形態では、核酸ポリマーは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、2’-O-アルキルRNA、ホスホロチオエートDNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、またはこれらの組合せを含む。
【0042】
特定の実施形態では、核酸ポリマーは、10個よりも多くの変換可能な残基を含む。
【0043】
特定の実施形態では、核酸ポリマー内のヌクレオチドの総数の変換可能な残基に対する比は、2から1000の間である。
【0044】
特定の実施形態では、核酸ポリマー内のヌクレオチドの総数の変換可能な残基に対する比は、2から100の間である。
【0045】
特定の実施形態では、核酸ポリマー内のヌクレオチドの総数の変換可能な残基に対する比は、3から100の間である。
【0046】
特定の実施形態では、複数の変換可能な核酸塩基は、天然に存在しない核酸塩基である。
【0047】
特定の実施形態では、複数の変換可能な核酸塩基は、修飾された天然に存在する核酸塩基または天然に存在する核酸塩基の誘導体である。
【0048】
特定の実施形態では、第1の蛍光状態および第2の蛍光状態にある複数の変換可能な残基は、ポリメラーゼによって読み取り可能である。
【0049】
特定の実施形態では、ポリマーは、有機ポリマーである。
【0050】
特定の実施形態では、フルオロフォアは、変換可能な核酸塩基の塩基に直接結合している。
【0051】
特定の実施形態では、フルオロフォアは、核酸塩基の塩基にリンカーによって結合している。
【0052】
特定の実施形態では、フルオロフォアは、核酸塩基の塩基にリンカーまたはリンカー原子なしで結合している。
【0053】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基は、蛍光核酸塩基を含む。
【0054】
特定の実施形態では、フルオロフォアは、核酸塩基である。
【0055】
特定の実施形態では、核酸塩基は、蛍光核酸塩基である。
【0056】
特定の実施形態では、複数の変換可能な核酸塩基は、核酸の骨格に糖を介して共有結合により連結している。
【0057】
特定の実施形態では、フルオロフォアは、光、電圧、酵素剤、化学試薬、または酸化還元剤によって活性化可能であり、それにより、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換される。
【0058】
特定の実施形態では、フルオロフォアは、光によって活性化可能であり、それにより、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換される。
【0059】
特定の実施形態では、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態への変換は、不可逆反応によって起こる。
【0060】
特定の実施形態では、ポリマーの骨格(例えば、核酸ポリマーのリン酸および糖)は、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態への変換の間、変化しないままである。
【0061】
特定の実施形態では、ポリマーは、変換可能な残基の2つまたはそれよりも多くの異なるセットを含み、変換可能な残基の各セットは、第1の蛍光状態を有し、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態が異なる。
【0062】
特定の実施形態では、変換可能な残基の2つまたはそれよりも多くの異なるセットは、波長が異なる光によって活性化可能である。
【0063】
特定の実施形態では、変換可能な残基の第1のセットは、第1の波長の光によって活性化可能であり、変換可能な残基の第2のセットは、第2の波長の光によって活性化可能であり、第1の波長と第2の波長が異なる。
【0064】
特定の実施形態では、フルオロフォアは、1つまたは複数の光により除去可能なまたは光により切断可能な基を含む。
【0065】
特定の実施形態では、変換可能な残基は、脱離基を含む。
【0066】
特定の実施形態では、脱離基は、クエンチャーおよび/またはケージ(例えば、光により除去可能なまたは光により切断可能な基)である。
【0067】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基は、325nm、360nm、400nm、500nm、600nm、700nm、または800nmの波長の光によって変換することが可能である。
【0068】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の蛍光状態および第2の蛍光状態は、蛍光検出デバイスによって読み取り可能である。
【0069】
特定の実施形態では、蛍光検出デバイスは、蛍光プレートリーダー、ゲルイメージャー、蛍光分光計、蛍光顕微鏡、またはフローサイトメーターである。
【0070】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の蛍光状態および第2の蛍光状態は、天然に存在しないおよび/または修飾された核酸塩基を検出し区別をつけることが可能なシーケンシング方法によって読み取り可能である。
【0071】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基が第2の蛍光状態に変換されると、第1の蛍光状態と比較して複数の変換可能な残基の特性が改変される(例えば、サイズが縮小する、形状が変更される、H結合が改変される、および/またはポリメラーゼ基質能が改変される)。
【0072】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の蛍光状態および第2の蛍光状態は、ナノポアシーケンシングによって読み取り可能である。
【0073】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基のうちの1つまたは複数は、第2の蛍光状態から第3の蛍光状態に変換することが可能であり、複数の変換可能な残基のうちの1つまたは複数は、第3の蛍光状態で核酸ポリマーに共有結合により付着している。
【0074】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基のそれぞれは、独立に、かつ選択的に変換することが可能である。
【0075】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリマーは、ポリマーの骨格を介して連結した複数のスペーサー残基をさらに含み、複数の変換可能な残基のそれぞれは、複数のスペーサー残基のうちの1つまたは複数のスペーサー残基によって隔てられている。
【0076】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基の間の反復間隔は、ポリマー上にデータを符号化するための書き込み機構の分解能に適合する。
【0077】
特定の実施形態では、2つの隣接する変換可能な残基の間の反復間隔は、データをポリマーに符号化するためのデータ符号化機構の分解能と等しいまたはそれよりも大きい。
【0078】
特定の実施形態では、複数のスペーサー残基は、変換可能な残基の読み取りに干渉しない。
【0079】
特定の実施形態では、ポリマー内の複数のスペーサー残基は、同じスペーサー残基である。
【0080】
特定の実施形態では、複数のスペーサー残基は、2つまたはそれよりも多くの異なるスペーサー残基(例えば、異なる核酸塩基、例えば、異なる天然に存在する核酸塩基)を含む。
【0081】
特定の実施形態では、ポリマーは、スペーサー残基から本質的になる。
【0082】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基のそれぞれは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、20個、30個、40個、または50個のスペーサー残基によって隔てられている。
【0083】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基のそれぞれは、6個のスペーサー残基によって隔てられている。
【0084】
特定の実施形態では、複数のスペーサー残基は、天然に存在する核酸塩基、天然に存在しない核酸塩基、テトラヒドロフラン無塩基残基、またはエチレングリコール残基を含む。
【0085】
特定の実施形態では、複数のスペーサー残基は、天然に存在する核酸塩基を含む。
【0086】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリマーは、ポリマーの骨格に連結した1つまたは複数のデリミタをさらに含む。
【0087】
特定の実施形態では、1つまたは複数のデリミタのそれぞれは、1つまたは複数の天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基を含む。
【0088】
特定の実施形態では、1つまたは複数のデリミタは、天然に存在する核酸塩基を含む。
【0089】
特定の実施形態では、1つまたは複数のデリミタは、ポリマー内の2つまたはそれよりも多くの隣接するデータフィールドを隔てる。
【0090】
本明細書で提供されるポリマーは、1つまたは複数のデータタグをさらに含む。
【0091】
特定の実施形態では、1つまたは複数のデータタグは、1つまたは複数の天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基を含む。
【0092】
特定の実施形態では、ポリマーは、核酸ポリマーであり、1つまたは複数のデータタグは、核酸ポリマーの5’末端または3’末端に存在する。
【0093】
特定の実施形態では、1つまたは複数のデータタグは、核酸ポリマーの合成の間に、複数の変換可能な残基の第2の蛍光状態への変換の間に、または複数の変換可能な残基が第2の蛍光状態に変換された後のライゲーションによって、核酸ポリマーに組み入れられる。
【0094】
特定の実施形態では、ポリマーは、標準的な核酸保存プロトコールの下で保存することができる。
【0095】
特定の実施形態では、ポリマーは、適当なヌクレアーゼ不含溶液中、室温でまたは低温(例えば、-20℃)で保存することができる核酸ポリマーである。
【0096】
特定の実施形態では、ポリマーは、安定剤なしで室温で保存することができる。
【0097】
別の態様では、データ書き込みのためのシステムであって、
複数の変換可能な残基を含む書き込み可能なポリマーであって、複数の変換された残基それぞれが、フルオロフォアを有する第1の残基を含み、複数の変換された残基それぞれが、ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマーの骨格に共有結合により連結しており、複数の変換可能な残基のそれぞれが第1の蛍光状態を有し、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態が異なり、複数の変換可能な残基が第1の蛍光状態および第2の蛍光状態でポリマーに共有結合により連結している、書き込み可能なポリマーと、
書き込み可能なポリマー上にデータを書き込むためのデータ書き込みデバイスと
を含む、システムもまた本明細書で提供される。
【0098】
特定の実施形態では、書き込み可能なポリマーは、書き込み可能な核酸ポリマーであり、複数の変換可能な残基は、変換可能な核酸塩基である。
【0099】
特定の実施形態では、データ書き込みデバイスは、ナノポアを含む。
【0100】
特定の実施形態では、データ書き込みデバイスは、複数の変換可能な残基を光パルス、電圧パルス、酵素剤、または酸化還元剤によって第2の蛍光状態に変換する。
【0101】
特定の実施形態では、データ書き込みデバイスは、複数の変換可能な核酸塩基残基を光パルスによって第2の蛍光状態に変換する。
【0102】
特定の実施形態では、データ書き込みデバイスは、光照射デバイスを含む。
【0103】
なお別の態様では、書き込み可能な核酸ポリマーを生成するための方法であって、
環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型を用意するステップであって、環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型が、複数の変換可能な核酸塩基を含む繰り返しデータフィールドと相補的であり、複数の変換可能な核酸塩基それぞれが、フルオロフォアを含む、ステップと、
環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型を核酸プライマー、ポリメラーゼ、および三リン酸ヌクレオチドの存在下でインキュベートするステップであって、三リン酸ヌクレオチドが、第1の蛍光状態にあり第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能である複数の変換可能な核酸塩基のサブセットを含み、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態が異なる、ステップと
を含む、方法もまた本明細書で提供される。
【0104】
特定の実施形態では、環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型は、変換可能な核酸塩基と相補的な核酸塩基を含み、相補的な核酸塩基は繰り返し間隔をあけて配置され、その結果、鋳型を核酸プライマー、ポリメラーゼ、および三リン酸ヌクレオチドと共にインキュベートすると、核酸ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、核酸ポリマーの骨格を介して共有結合により連結した複数の変換可能な核酸塩基を含む核酸ポリマーがもたらされ、複数の変換可能な核酸塩基が第1の蛍光状態および第2の蛍光状態で核酸ポリマーに共有結合により連結している。
【0105】
特定の実施形態では、繰り返しデータフィールドは、スペーサー核酸塩基をさらに含み、三リン酸ヌクレオチドが、三リン酸スペーサーヌクレオチドをさらに含む。
【0106】
なお別の態様では、書き込み可能なポリマーを生成するための方法であって、
複数のオリゴマーを化学合成するステップであって、各オリゴマーが、複数の変換可能な残基を含み、変換可能な残基のそれぞれがフルオロフォアを含み、複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれが、ポリマー骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマー骨格を介して連結しており、複数の変換可能な残基のそれぞれが第1の蛍光状態を有し、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、複数の変換可能な残基が、第1の蛍光状態および第2の蛍光状態でポリマーに共有結合により付着しており、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態が異なる、ステップと、
複数のオリゴマーをライゲーションして、書き込み可能なポリマーを形成するステップと
を含む、方法もまた本明細書で提供される。
【0107】
特定の実施形態では、複数のオリゴマーのそれぞれは、核酸ポリマーの骨格を介して連結した複数のスペーサー残基を含み、複数の変換可能な残基のそれぞれは、複数のスペーサー残基のうちの1つまたは複数のスペーサー残基によって隔てられている。
【0108】
特定の実施形態では、ライゲーションするステップは、化学的ライゲーションによるものである。
【0109】
特定の実施形態では、ライゲーションするステップは、酵素的ライゲーションによるものである。
【0110】
特定の実施形態では、ライゲーションするステップにおいて相補DNAスプリントが使用される。
【0111】
特定の実施形態では、方法は、ライゲーションするステップの前に、複数の相補物をオリゴマーとアニーリングさせるステップをさらに含む。
【0112】
なお別の態様では、データが符号化されたポリマーであって、
ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、骨格を介して連結した複数のフルオロフォアであって、光パルスによって第1の構造的状態から第2の構造的状態に修飾された複数の修飾されたフルオロフォアを含む、複数のフルオロフォアと、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される複数の荷電した構成成分と
を含む、ポリマーが本明細書で提供される。
【0113】
特定の実施形態では、複数のフルオロフォアは、第1の構造的状態でポリマーに組み入れられており、複数の修飾されたフルオロフォアは、ナノポアを含むデバイスによって修飾されており、デバイスは、ナノポアを介してポリマー横断させ、データコードに従って光パルスによって(vial the light pulses)複数のフルオロフォアを選択的に修飾することが可能である。
【0114】
特定の実施形態では、複数の修飾されたフルオロフォアは、脱ケージドフルオロフォアを含む。
【0115】
特定の実施形態では、複数の修飾されたフルオロフォアは、不消光フルオロフォアを含む。
【0116】
特定の実施形態では、複数の修飾された残基は、放出可能なフルオロフォアが放出される部位を含む。
【0117】
特定の実施形態では、複数の修飾されたフルオロフォアは、光によって不活化または光退色したフルオロフォアを含む。
【0118】
特定の実施形態では、複数の修飾されたフルオロフォアは、光変換フルオロフォアを含み、光変換フルオロフォアの第2の構造的状態により、第1の構造的状態から発せられる波長とは異なる波長の蛍光が発せられる。
【0119】
なお別の態様では、書き込み可能なポリマー上にデータを符号化する方法であって、
ポリマー骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマー骨格と連結した複数の変換可能な残基を含む書き込み可能なポリマーを用意するステップであって、複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれが、第1の蛍光状態を有して用意され、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態が異なり、複数の変換可能な残基の全てまたはサブセットのそれぞれがフルオロフォアを含み、複数の変換可能な残基が第1の蛍光状態および第2の蛍光状態でポリマーに共有結合により連結している、ステップと、
データ書き込みデバイスを利用して、複数の変換可能な残基のサブセットを第2の蛍光状態へと選択的に修飾し、その結果、データが符号化されたポリマーが生成される、ステップと
を含む、方法が本明細書で提供される。
【0120】
特定の実施形態では、データ書き込みデバイスは、ナノポアを含み、方法は、書き込みデバイスのナノポアを介して書き込み可能な核酸ポリマーを通過させるステップをさらに含み、ナノポアは、複数の修飾可能なフルオロフォアのサブセットに光パルスを当てて第2の蛍光状態にする手段を含む。
【0121】
特定の実施形態では、複数の修飾可能なフルオロフォアは、光によって脱ケージすることが可能なケージドフルオロフォアを含む。
【0122】
特定の実施形態では、複数の修飾可能なフルオロフォアは、クエンチャーの近傍にフルオロフォアを含み、クエンチャーを、光によって放出させることが可能である。
【0123】
特定の実施形態では、複数の修飾可能なフルオロフォアは、放出可能なフルオロフォアを含み、放出可能なフルオロフォアを、光によって放出させることが可能である。
【0124】
特定の実施形態では、複数の修飾可能なフルオロフォアは、光変換型フルオロフォアを含み、光変換型フルオロフォアの第1の構造的状態は第1の発光波長を有し、光変換型フルオロフォアの第2の構造的状態は第2の発光波長を有する。
【0125】
特定の実施形態では、データ書き込みデバイスを利用して、複数の変換可能な残基のサブセットを第2の蛍光に選択的に修飾するステップは、ケージドフルオロフォアの脱ケージング、クエンチャーの放出、フルオロフォアの放出、フルオロフォアの光不活化、フルオロフォアの光活性化、フルオロフォアの退色、またはこれらの組合せを含む。
【0126】
特定の実施形態では、ケージドフルオロフォアの脱ケージングは、フルオロフォアからケージを放出させることを含む。
【0127】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基は、順を追って選択的に修飾される。
【0128】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基は、ポリマーの一方の末端からポリマーの他方の末端まで順を追って選択的に修飾される。
【0129】
特定の実施形態では、方法は、生成されたポリマーの符号化されたデータを読み取るステップをさらに含む。
【0130】
特定の実施形態では、符号化されたデータを、データ読み取りユニットのナノポアを介して生成されたポリマーを通過させることによって読み取り、データ読み取りユニットのナノポアは、複数の変換可能な残基の蛍光状態のそれぞれの蛍光を検出するように構成された検出モジュールを含む。
【0131】
特定の実施形態では、データ読み取りユニットは、データ書き込みデバイスと同じデバイスを含む。
【0132】
特定の実施形態では、データを読み取るためのナノポアデバイスは、データを書き込むためのものと同じナノポアデバイスである。
【0133】
特定の実施形態では、符号化されたデータを、生成されたポリマーの引き伸ばしおよびイメージングによって読み取る。
【0134】
特定の実施形態では、ポリマー上の符号化されたデータが順を追って読み取られる。
【0135】
特定の実施形態では、ポリマー上の符号化されたデータがポリマーの一方の末端からポリマーの他方の末端まで順を追って読み取られる。
【0136】
なお別の態様では、書き込み可能なポリマー上にデータを書き込むための方法であって、
ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマーの骨格を介して共有結合により連結した複数の変換可能な残基を含む書き込み可能なポリマーを用意するステップであって、複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれが、第1の蛍光状態を有するフルオロフォアを含み、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態が異なる、ステップと、
データ書き込みデバイスを利用して、複数の変換可能な残基のうちの1つまたは複数を第2の蛍光状態に選択的に変換し、その結果、データが符号化されたポリマーが生成される、ステップと
を含む、方法もまた本明細書で提供される。
【0137】
特定の実施形態では、書き込み可能なポリマーは、書き込み可能な核酸ポリマーであり、複数の変換可能な残基は、変換可能な核酸塩基である。
【0138】
特定の実施形態では、データ書き込みデバイスは、ナノポアを含み、方法は、
書き込みデバイスのナノポアを介して書き込み可能なポリマーを通過させるステップをさらに含み、ナノポアは、複数の変換可能な残基のうちの1つまたは複数を第2の蛍光状態に変換するを含む。
【0139】
特定の実施形態では、ナノポアは、光パルスまたは局部的なエネルギーを供給して、変換可能な核酸塩基を第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に選択的に変換するプラズモニックナノポアである。
【0140】
特定の実施形態では、データ書き込みデバイスは、プラズモニックウェルまたはチャネルを含み、方法は、
【0141】
書き込み可能なポリマーをデータ符号化デバイスのプラズモニックウェルまたはチャネルに移すステップであって、プラズモニックウェルまたはチャネルが、光パルスまたは酸化還元エネルギーを供給して、変換可能な核酸塩基を第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に選択的に変換する、ステップ
をさらに含む。
【0142】
特定の実施形態では、データ書き込みデバイスは、変換可能な残基を光パルス、電圧パルス、酵素剤、または酸化還元剤によって第2の蛍光状態に選択的に変換する。
【0143】
特定の実施形態では、データ書き込みデバイスは、変換可能な残基を光パルスによって第2の蛍光状態に選択的に変換する。
【0144】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基は、2つまたはそれよりも多くの型の変換可能な残基を含み、第1の型の変換可能な残基は、第1の波長の光によって活性化可能であり、第2の型の変換可能な残基は、第2の波長の光によって活性化可能である。
【0145】
特定の実施形態では、複数の変換可能な残基の間の反復間隔は、変換可能な残基を選択的に変換するためのデータ書き込みデバイスの分解能に適合する。
【0146】
特定の実施形態では、選択的に変換するステップは、書き込み可能なポリマーの特定の位置付けを必要としない。
【0147】
特定の実施形態では、変換可能な残基の第2の蛍光状態への変換は、データが符号化されたポリマー上で一様ではない。
【0148】
特定の実施形態では、変換可能な残基の第2の蛍光状態への変換は、データが符号化されたポリマー上のある特定の位置に限定されない。
【0149】
特定の実施形態では、方法は、書き込み可能なポリマー(例えば、書き込み可能なDNA)を固体支持体上に引き伸ばすまたはコーミングするステップをさらに含む。
【0150】
特定の実施形態では、方法は、色素を使用して変換可能な残基の場所を可視化するステップをさらに含む。
【0151】
特定の実施形態では、方法は、書き込み可能なポリマーを局所的に照明するステップをさらに含む。
【0152】
特定の実施形態では、局所的に照明するステップは、誘導放出抑制(STED)レーザー法を使用する。
【0153】
特定の実施形態では、方法は、2つまたはそれよりも多くの書き込み可能なポリマーからの2つまたはそれよりも多くのデータフィールドを端から端まで接合し、それにより、2つまたはそれよりも多くのデータフィールドを含む接合ポリマーを生じさせるステップをさらに含む。
【0154】
特定の実施形態では、方法は、書き込み可能なポリマーが書き込みデバイスのナノポアを通る通過速度を制御するステップをさらに含む。
【0155】
特定の実施形態では、複数の書き込み可能なポリマーは、データ書き込みデバイスを通過して、同じデータを書き込む(例えば、データ重複性を生じさせる)。
【0156】
なお別の態様では、データが符号化されたポリマーからデータを読み取るための方法であって、
ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマーの骨格に共有結合により連結した複数の変換可能な残基を含む、データが符号化されたポリマーを用意するステップであって、複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれがポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマーの骨格を介して共有結合により連結しており、複数の変換可能な残基の第1のサブセットが第1の蛍光状態にあり、変換可能な残基の第2のサブセットが第2の蛍光状態にあり、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態が異なる、ステップと、
データが符号化された書き込み可能なポリマーを、データ読み取りユニットを通過させて、データが符号化されたポリマー上の符号化されたデータを読み取るステップと
を含む、方法がさらに本明細書で提供される。
【0157】
特定の実施形態では、書き込み可能なポリマーは、書き込み可能な核酸ポリマーであり、複数の変換可能な残基は、変換可能な核酸塩基である。
【0158】
特定の実施形態では、第1の蛍光状態にある変換可能な残基は、光によって第2の蛍光状態に変換されることができる。
【0159】
特定の実施形態では、データ読み取りユニットは、ナノポアを含む。
【0160】
特定の実施形態では、データ読み取りユニットは、蛍光スキャナー、蛍光プレートリーダー、ゲルイメージャー、蛍光分光計、蛍光顕微鏡、またはフローサイトメーターを含む。
【0161】
特定の実施形態では、データ読み取りユニットは、シーケンシングデバイスである。
【0162】
特定の実施形態では、方法は、書き込み可能なポリマーが通過する間の電解質の電流の流れを測定するステップをさらに含む。
【0163】
特定の実施形態では、方法は、複数の変換可能な残基のそれぞれが第1の蛍光状態にあるのかまたは第2の蛍光状態にあるのかを、書き込み可能なポリマーが通過する間の測定された電解質の電流の流れに基づいて決定するステップをさらに含む。
【0164】
特定の実施形態では、データが符号化されたポリマー上の符号化されたデータが順を追って読み取られる。
【0165】
特定の実施形態では、データが符号化されたポリマー上の符号化されたデータがポリマーの一方の末端からポリマーの他方の末端まで順を追って読み取られる。
【0166】
特定の実施形態では、方法は、データが符号化されたポリマーをデータ読み取りデバイスに再度通過させて、データが符号化されたポリマー上の符号化されたデータを再度読み取るステップをさらに含む。
【0167】
特定の実施形態では、方法は、データが符号化されたポリマーの複数のコピー上の符号化されたデータを比較することにより、データが符号化されたポリマー上の符号化されたデータを検証し、補正するステップをさらに含む。
【0168】
なお別の態様では、データが符号化されたポリマーからデータを読み取るまたは復号するための方法であって、
複数の変換された残基であって、変換された残基それぞれが第1のフルオロフォアを含み、第1の変換された残基が第1の蛍光状態から光によって第2の蛍光状態に変換されており、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態が異なる、複数の変換された核酸塩基と、
複数の変換可能な残基であって、変換可能な残基のそれぞれが第2のフルオロフォアを含み、変換可能な残基が第1の蛍光状態でもたらされ、第1の蛍光状態から光によって第2の蛍光状態に変換することが可能であり、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態が異なる、複数の変換可能な残基と
を含む、データが符号化されたポリマーの複数の重複コピーを用意するステップであって、
変換された残基と変換可能な残基が、ポリマー骨格を介して連結している、ステップと、
ポリマーの複数の重複コピーの各重複コピーの配列を決定するステップと
を含む、方法がさらに本明細書で提供される。
【0169】
特定の実施形態では、方法は、複数の変換された核酸塩基および複数の変換可能な残基を検出するステップと、検出された複数の変換された残基に基づいてデータを復号するステップとをさらに含む。
【0170】
特定の実施形態では、第1の蛍光状態および第2の蛍光状態にある複数の変換された残基は、ポリメラーゼによって読み取り可能である。
【0171】
特定の実施形態では、第1の蛍光状態および第2の蛍光状態にある複数の変換可能な残基は、ポリメラーゼによって読み取り可能である。
【0172】
特定の実施形態では、複数の変換された残基および複数の変換可能な残基は、データが符号化された核酸ポリマーの重複コピーの配列決定結果に基づいて検出される。
【0173】
なお別の態様では、データを符号化するための書き込み可能なポリマーを作出するための方法であって、
溶液中のポリマーを用意するステップであって、ポリマーが、ポリマーの骨格に共有結合により連結した、繰り返し間隔をあけて配置される反応性部分を含む、ステップと、
化学修飾可能な構造のセットを溶液に添加するステップであって、化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、ポリマーの反応性部分と反応することが可能な化学基で官能化され、それにより、化学修飾可能な構造のセットが繰り返し間隔をあけて配置される書き込み可能なポリマーが得られる、ステップと
を含み、
化学修飾可能な構造が、第1の状態(例えば、第1の蛍光状態)を有し、第2の状態(例えば、第2の蛍光状態)に変換することが可能であり、第1の状態と第2の状態が異なり、
化学修飾可能な構造が第1の状態および第2の状態でポリマーに共有結合により連結している、方法がさらに本明細書で提供される。
【0174】
なお別の態様では、書き込み可能な核酸ポリマーを作出するための方法であって、
第1の溶液中の一本鎖核酸ポリマーを用意するステップと、
第1の溶液に、(i)一本鎖核酸ポリマーと相補的なプライマー配列、(ii)デオキシヌクレオチド三リン酸のセット、および(iii)核酸ポリメラーゼを含む混合物を添加するステップであって、デオキシヌクレオチド三リン酸のセットが、反応性部分を有する修飾されたデオキシヌクレオチド三リン酸を含む、ステップと、
混合物を第1の溶液中でインキュベートして、反応性部分を有する修飾された核酸塩基を含む、一本鎖核酸ポリマーの相補鎖を得るステップと、
相補鎖を化学修飾可能な構造のセットと共に第2の溶液中でインキュベートするステップであって、化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、相補鎖に組み入れられた修飾された核酸塩基の反応性部分と反応することが可能であり、その結果、化学修飾可能な構造のセットが繰り返し間隔をあけて配置される書き込み可能な核酸ポリマー(nucleic polymer)が得られる、ステップと
を含み、
化学修飾可能な構造が、第1の状態(例えば、第1の蛍光状態)を有し、第2の状態(例えば、第2の蛍光状態)に変換することが可能であり、第1の状態と第2の状態が異なり、
化学修飾可能な構造が第1の状態および第2の状態でポリマーに共有結合により連結している、方法がさらに本明細書で提供される。
【0175】
なお別の態様では、書き込み可能な有機ポリマーを作出するための方法であって、
溶液中の有機ポリマーを用意するステップであって、有機ポリマーが、ポリマーの骨格に共有結合により連結した、繰り返し間隔をあけて配置される反応性部分を含む、ステップと、
化学修飾可能な構造のセットを溶液に添加するステップであって、化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、有機ポリマー上の反応性部分と反応することが可能であり、その結果、化学修飾可能な構造のセットが繰り返し間隔をあけて配置される書き込み可能な有機ポリマーが得られる、ステップと
を含み、
化学修飾可能な構造が、第1の状態(例えば、第1の蛍光状態)を有し、第2の状態(例えば、第2の蛍光状態)に変換することが可能であり、第1の状態と第2の状態が異なり、
化学修飾可能な構造が第1の状態および第2の状態でポリマーに共有結合により連結している、方法がさらに本明細書で提供される。
【0176】
以下の図面およびデータグラフを参照することで説明および特許請求の範囲がより詳細に理解されよう。以下の図面およびデータグラフは、例示的な実施形態として示すものであり、本開示の範囲の完全な記述であると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0177】
図1A-1B】図1Aおよび1Bは、種々の実施形態による、書き込み可能なポリマーの概略図を提示する。
【0178】
図2A-2C】図2A~2Eは、種々の実施形態による、書き込み可能なポリマーに使用するための種々のケージドフルオロフォア(caged fluorophore)の分子構造図を提示する。
図2D-2E】図2A~2Eは、種々の実施形態による、書き込み可能なポリマーに使用するための種々のケージドフルオロフォア(caged fluorophore)の分子構造図を提示する。
【0179】
図3A-3B】図3Aおよび3Bは、種々の実施形態による、書き込み可能なポリマーに使用するための種々の放出可能なクエンチャーの分子構造図を提示する。
【0180】
図4図4は、種々の実施形態による、書き込み可能なポリマーに使用するための例示的な光変換型フルオロフォア(photoconvertible fluorophore)の分子構造図を提示する。
【0181】
図5A図5Aは、2つの別個のケージドフルオロフォアを利用する書き込み可能な2フルオロフォアビットの例を例示する。
図5B図5Bは、種々の実施形態による、クエンチャーおよびケージドフルオロフォアを利用する例示的な修飾可能なフルオロフォアビットを提示する。
【0182】
図6A-6B】図6A~6Cは、種々の実施形態による、修飾可能なフルオロフォアが組み入れられる例示的な有機ポリマーを提示する。
図6C図6A~6Cは、種々の実施形態による、修飾可能なフルオロフォアが組み入れられる例示的な有機ポリマーを提示する。
【0183】
図7図7は、種々の実施形態による、化学修飾可能な構造のセットをポリマーに組み入れて、書き込み可能なポリマーを生成することの概略図を提示する。
【0184】
図8A図8A~8Cは、種々の実施形態による、書き込み可能なポリマーに使用するための例示的な化学修飾可能な構造のセットの分子構造図を提示する。
図8B図8A~8Cは、種々の実施形態による、書き込み可能なポリマーに使用するための例示的な化学修飾可能な構造のセットの分子構造図を提示する。
図8C図8A~8Cは、種々の実施形態による、書き込み可能なポリマーに使用するための例示的な化学修飾可能な構造のセットの分子構造図を提示する。
【0185】
図9図9は、種々の実施形態による、化学修飾可能な構造を核酸ポリマーに組み込むための例示的な反応の図を提示する。
【0186】
図10図10は、種々の実施形態による、化学修飾可能な構造をポリマーに組み込むために利用することができる官能基の例を提示する。
【0187】
図11図11は、種々の実施形態による、官能基を核酸ポリマーにポリメラーゼ伸長によって組み込むための例示的な方法の概略図を提示する。
【0188】
図12図12は、種々の実施形態による、安定かつ変更可能な二次高次構造を核酸ポリマーに組み込むための例示的な方法の概略図を提示する。
【0189】
図13図13は、種々の実施形態による、安定かつ変更可能な二次高次構造を組み込むために核酸ポリマーに組み入れるための例示的な変換可能な残基の分子構造図を提示する。
【0190】
図14図14は、標識DNAの電気泳動の結果の例を示す。レーン1はCy5標識DNAを含有し、レーンMはSafegreen 1kb DNAラダーを含有する。
【0191】
図15A-15C】図15A~15Cは、退色の前後のCy5標識DNAのDNAイメージングの結果を提示する。図15Aは、退色前のCy5標識DNAの画像を示し、図15Bは、局部的な光退色後のCy5標識DNAの画像を示す。図15Cは、2つの横断プロファイル:退色前(1501)および退色後(1502)を示すプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0192】
詳細な説明
データ符号化/復号(書き込み/読み取り)およびデータストレージのための、データ符号化可能ポリマー(例えば、核酸ポリマー)の組成物、ならびにその方法およびシステムが本明細書に提示される。本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)を作出する方法も本明細書に提示される。
【0193】
種々の実施形態による、ポリマーを利用するデータストレージの組成物およびシステム、使用方法および合成方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、データストレージのシステムは、1つまたは複数の変換可能な残基を有する書き込み可能なポリマーを含む。一部の実施形態では、変換可能な残基は、変換可能なヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、データストレージのシステムは、変換可能な1つまたは複数の残基を有する書き込み可能な(すなわち、データ符号化可能な)ポリマーを含む。したがって、書き込み可能な核酸ポリマーは、符号化可能なブランクテープに類似したものであり、書き込み可能な核酸ポリマーの1つまたは複数の核酸塩基を変換することにより、書き込み可能な核酸ポリマーへの符号化がなされる。変換可能な残基の変換は、バイナリコードであると考えることができ、変換可能な残基それぞれが「ビット」に類似したものであり、変換されていない変換可能な残基は「0」に類似したものであり、変換された変換可能な残基は「1」に類似したものである。しかし、バイナリコードのみが可能なのではなく、コードを3進数、4進数、または他の数字方式のコードで書き込むこともでき、これは、複数の型の変換可能な残基を利用して、または、複数回の書き込みを実施して変換可能な残基の状態をさらに変更することによって行うことができることが理解されるべきである。一部の実施形態では、変換可能な残基の変換は安定または恒久的なものであり、長期間にわたるアーカイブが可能になる。一部の実施形態では、2つの変換可能な残基の組合せが「ビット」を構成する。
【0194】
一部の実施形態では、第1の蛍光状態は、ブランク状態(例えば、書き込まれていない状態)、「0」状態、または「1」状態を含む。一部の実施形態では、第2の蛍光状態は、ブランク状態(例えば、書き込まれていない状態)、「0」状態、または「1」状態を含む。一部の実施形態では、第3の蛍光状態は、ブランク状態(例えば、書き込まれていない状態)、「0」状態、または「1」状態を含む。一部の実施形態では、ブランク状態を含む第1の蛍光状態を、「1」状態を含む第2の蛍光状態に変換することができる。一部の実施形態では、「1」状態を含む第1の蛍光状態を、「0」状態を含む第2の蛍光状態に変換することができる。
【0195】
一部の実施形態では、変換可能な残基の第1の状態から第2の状態への変換を書き込みデバイスによって実行する。一部の実施形態では、書き込みデバイスは、光を当てるモジュール(例えば、光源)を含む。一部の実施形態では、状態(例えば、第1の状態、第2の状態、第3の状態など)を読み取りデバイスまたはユニットによって検出する。一部の実施形態では、読み取りユニットは書き込みデバイスを含む。一部の実施形態では、読み取りユニットは(蛍光)検出デバイスを含む。一部の実施形態では、読み取りユニットは解析モジュールを含む。
【0196】
一部の実施形態では、変換可能な残基の変換は、フルオロフォアの光活性化、フルオロフォアの不活化(例えば、光によるもの)、フルオロフォアの放出、ケージドフルオロフォアの脱ケージング(uncaging)、クエンチャー(例えば、変換可能な残基からのクエンチャー放出)によるフルオロフォアの消光、およびフルオロフォアの光退色を含めた、蛍光状態のあらゆる検出可能な変化を含む。
【0197】
一部の実施形態では、変換可能な残基は、フルオロフォアを含み得る。一部の実施形態では、フルオロフォアは、修飾可能なフルオロフォアを含み得る。一部の実施形態では、変換可能な残基は、脱離基を含み得る。一部の実施形態では、脱離基は、クエンチャーまたはケージ(例えば、光により除去可能な基または光により切断可能な基)であり得る。一部の実施形態では、フルオロフォアは、脱離基を含む。一部の実施形態では、フルオロフォアの脱離基はケージであり得る。一部の実施形態では、フルオロフォアは、ケージドフルオロフォア(例えば、ケージを含むフルオロフォア)であり得る。一部の実施形態では、ケージは、修飾可能なフルオロフォアの脱離基であり得る。一部の実施形態では、変換可能な残基は、変換可能なフルオロフォアであり得る。一部の実施形態では、変換可能な残基は脱離基を含み、脱離基はクエンチャーであり得る。
【0198】
一部の実施形態では、変換可能な残基は、光によって活性化することができる修飾可能なフルオロフォアを含む。一部の実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、添加剤(例えば、ホスフィン)の存在下で光によって活性化することができる。一部の実施形態では、変換可能な残基は、光によって不活化することができる修飾可能なフルオロフォアを含む。一部の実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、添加剤(例えば、ホスフィン)の存在下で光によって不活化することができる。
【0199】
一部の実施形態では、変換可能な残基は、ポリマーから光によって放出させることが可能である放出可能なフルオロフォアを含む。
【0200】
一部の実施形態では、変換可能な残基は、光によって光退色させることが可能である光退色性フルオロフォアを含む。
【0201】
データを符号化するための(書き込み可能な)ポリマーであって、ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマーの骨格に共有結合により連結した複数の変換可能な残基を含み、複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれが第1の蛍光状態を有し、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態が異なり、複数の変換可能な残基の全てまたはサブセットのそれぞれがフルオロフォアを含み、複数の変換可能な残基が第1の蛍光状態および第2の蛍光状態でポリマーに共有結合により連結している、ポリマーの種々の組成物、システム、作出方法および使用方法が本明細書に記載される。
【0202】
複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれがポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置される一部の実施形態では、繰り返し間隔をあけて配置されるとは、ほぼ規則的に間隔をあけて配置されると称され得る。
【0203】
一部の実施形態では、変換可能な残基(例えば、修飾可能なフルオロフォアを含む残基または放出可能なクエンチャーを含む残基)は、書き込み可能な「ビット」と称され、変換された残基(例えば、変更された発光を有する変換されたフルオロフォア)は、書き込まれた「ビット」と称される。
【0204】
一部の実施形態では、「書き込み可能な」および「データ符号化可能な」という用語は、本明細書では互換的に使用される。一部の実施形態では、「書き込み」および「データ符号化」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0205】
一部の実施形態では、「脱離基」および「除去可能な基」という用語は、本明細書では互換的に使用される。一部の実施形態では、変換可能な残基について言及する場合、「ペア(pair)」および「一対(duad)」という用語は、本明細書では互換的に使用される。「一対」とは、本明細書で使用される場合、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)内の、単回の書き込み作用または事象(例えば、同じ光のパルスまたは同じ電圧パルス)に両方が曝露されるように互いに対して十分近くに位置する、異なる変換可能な残基(例えば、書き込み可能なビット)のペアを指す。したがって、一対を含む変換可能な残基は、書き込み作用または事象の分解能よりも近くに存在する。
【0206】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変換可能な残基は、1つまたは複数の修飾可能なフルオロフォアを含む。したがって、書き込み可能なポリマーは、符号化可能なブランクテープに類似したものであり、フルオロフォアをオン/オフするまたは変換することによって書き込み可能なポリマーへの符号化がなされ、これは、フルオロフォアを修飾することができる任意の方法によって行うことができる。種々の実施形態では、フルオロフォアの修飾を、利用する修飾機構に応じて、脱ケージング、不消光(unquenching)、および/または光変換によって行うことができる。フルオロフォアの修飾は、バイナリコードであると考えることができ、修飾可能なフルオロフォアは「ビット」に類似したものであり、フルオロフォアの1つの状態が「0」に類似したものであり、フルオロフォアの第2の状態が「1」に類似したものである。例えば、一実施例では、ケージドフルオロフォアが「0」に類似したものであり得、脱ケージドフルオロフォア(uncaged fluorophore)が「1」に類似したものであり得る。しかし、バイナリコードのみが可能なのではなく、コードを3進数、4進数、または他の数字方式のコードで書き込むこともでき、これは、複数の型のフルオロフォアを利用して、または、複数回の書き込み/修飾を実施してフルオロフォアの状態をさらに変更することで行うことができることが理解されるべきである。フルオロフォアの修飾は、安定または恒久的なものであり、特に、暗い保存場所で維持した場合、長期間にわたるアーカイブが可能になる。一部の実施形態では、2つの独自に同定可能なフルオロフォアの組合せが「ビット」を構成する。例えば、ケージドフルオロフォアと消光フルオロフォアを単一のビットとして利用することができ、その場合、第1の蛍光発光強度または波長を有する脱ケージドフルオロフォアが「0」に類似したものであり得、第2の蛍光発光強度または波長を有する不消光フルオロフォアが「1」に類似したものであり得る。
【0207】
一部の実施形態では、核酸ポリマーは、一本鎖核酸ポリマーまたは二本鎖核酸ポリマーである。一部の実施形態では、核酸ポリマーは、一本鎖核酸ポリマーである。一部の実施形態では、核酸ポリマーは、二本鎖核酸ポリマーである。
【0208】
多くの実施形態が、書き込み可能なポリマーの組成物を対象とする。(これらに限定されないが)生体ポリマー、有機ポリマー、および無機ポリマーを含めた任意の適当な繰り返し荷電したポリマーを利用することができる。生体ポリマー(およびそれらの類似体)としては、DNA、RNA、ホスホロチオエートDNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、2’-フルオロ-DNA、2’-O-メチルRNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド鎖、およびペプトイド鎖が挙げられる(しかしこれらに限定されない)。核酸ポリマーは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。さらに、核酸ポリマーは、任意の鏡像異性体(例えば、R-DNA、L-DNA)を利用したものであってよい。同様に、ペプチドポリマーは任意の鏡像異性体であってよい。一部の実施形態では、ポリマーは、荷電した骨格を有することによって繰り返し荷電したものである。一部の実施形態では、ポリマーは、荷電した構成成分を有する単量体を組み入れることによって繰り返し荷電したものである。種々の実施形態では、ポリマーの反復電荷は、負に荷電したリン酸基、負に荷電した硫酸基、負に荷電したカルボン酸基、または正に荷電したアンモニウム基によってもたらされる。
【0209】
一部の実施形態では、DNA、RNA、ホスホロチオエートDNA、グリセロール核酸(GNA)、2’-OMe-RNA、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、およびこれらの組合せを含めた(しかしこれらに限定されない)任意の適当な核酸ポリマーを利用することができる。
【0210】
いくつかの実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーは、ポリマー骨格によって連結した複数の修飾可能なフルオロフォアを含む。ある特定の実施形態では、修飾可能なフルオロフォアビットを、間隔をあけて配置して、データ符号化に従って各フルオロフォアビットが独立してかつ選択的に修飾され得るような空間分解能をもたらす。一部の実施形態では、図1Bに示されている通り、ポリマー骨格を介して連結したスペーサー残基を利用して、修飾可能なフルオロフォアビットの間に間隔をもたらす。種々の実施形態では、図1Aに示されている通り、書き込み可能な核酸ポリマーは、データを標識するまたはその位置を特定するためのデリミタおよび/またはデータタグをさらに含み得る。一部の実施形態では、デリミタは、フルオロフォアを含み得る。
【0211】
一部の実施形態では、図6Aに示されている通り、修飾可能なフルオロフォアは、ROMPポリマー骨格によって連結している。一部の実施形態では、図6Bに示されている通り、修飾可能なフルオロフォアは、ペプチドポリマー骨格によって連結している。一部の実施形態では、図6Cに示されている通り、修飾可能なフルオロフォアは、リン酸ポリマー骨格によって連結している。
【0212】
いくつかの実施形態では、書き込み手順を利用して、書き込み可能なポリマーにデータを符号化する。データ符号化は、ポリマーのフルオロフォアビットを選択的に修飾することによって実施することができ、したがって、書き込まれたポリマーは、「0」と「1」のバイナリコードに類似した、修飾されたフルオロフォアの配列を含有する。フルオロフォアを修飾する(例えば、オン/オフする;蛍光波長をモジュレートする)ために任意の適当な機構を利用することができる。種々の実施形態によると、フルオロフォアは、光によって修飾可能である。
【0213】
一部の実施形態では、書き込み手順は、書き込み可能なポリマーに沿って順を追って行われる。一部の実施形態では、書き込み手順は、ポリマーの一方の末端から開始してポリマーの他方の末端まで順を追って進んで行われる。
【0214】
多くの実施形態によると、データが書き込まれたポリマーを、光退色を生じさせる光が存在しない暗闇中で保存する。一部の実施形態では、データが書き込まれたポリマーを、空気または酸素が排除される環境中で保存し、それにより、安定性を増強することができる。(例えば)アルコール、抗酸化剤、キレート剤および生物学的阻害剤(例えば、ヌクレアーゼ阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤)などの安定剤を、保存されるポリマーと共に含めることができる。書き込まれた核酸ポリマー上のデータを読み取るために、Pacific BioscienceのSingle Molecule,Real-Time(SMRT)sequencing platform(Menlo Park、CA)などの、個別化されたフルオロフォアを検出することが可能な任意の適当なナノポアまたは単一モード導波管を利用することができる。あるいは、例えば、Oxford Nanopore TechnologiesのPromethION、MinION、およびGridIONシーケンシングプラットフォーム(Oxford、UK)など、単量体の構造的差異を解析することが可能なナノポアを利用することができる。また、データの読み取りのために、ナノポアデバイスを製作または製造することができる。ナノポアは、固体の状態の材料で構成されるものであってもよく、1つまたは複数のタンパク質もしくは他の生物学的に産生された分子を含有するものであってもよい。
【0215】
本開示では、合成とデータ符号化を別個のステップに分離することにより、従来の核酸およびポリマーデータストレージに関連する制限の多くを克服する。伝統的に、ポリマーデータストレージはDNAに焦点が当てられてきた。また、いくつかの実施形態ではデータストレージのために生体ポリマーを利用するが、本開示の多くの実施形態では、非生物学的ポリマーを利用する。本開示は、修飾可能なフルオロフォアを有する書き込み可能なポリマーの長い鎖を作製するための戦略を提供し、ここで、ポリマーの作製とは、データの符号化を行うものではなく、データを書き込むことが可能なポリマーを作製するものである。したがって、書き込み可能なポリマーをデータ符号化より前にまとめて作製することができる。本開示は、第1の状態から第2の状態にスイッチさせることができ、したがって、バイナリコードで「0」および「1」を定義する、または「ブランク」状態から「0」ビットへの変化もしくは「ブランク」から「1」ビットへの変化を定義する、データの「ビット」として作用する修飾可能なフルオロフォアを設計するための分子戦略をさらに提供する。本開示は、データをこれらのポリマーに、単一分子レベルで、したがって、ごくわずかな量の材料の消費で、書き込むための方法をさらに提供する。データ書き込みは、物理的に、(例えば)光パルスを利用して実現することができる。最後に、書き込まれたポリマーは長いので、分子当たりに多量のデータが潜在的に符号化され、ハイスループットのナノポア技法によって効率的にかつ迅速に読み取ることができる。ナノポア技術の進歩によって解析の費用が低減し、スピードが上昇しており、したがって、ポリマー中のデータを効率的に読み取ることが可能である。より新しいナノポア技術により、配列をポリマーの単一分子から数秒~数分で読み取ることが可能になり(その開示がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるN Kono and K. Arakawa, Dev Growth Differ. 2019; 61:316-326;およびQ Chen and Z. Liu, Sensors (Basel).2019; 19:1886を参照されたい)、また、数万単量体の長さまたはそれよりも長い鎖の配列を読み取ることが可能である。本明細書に記載の組成物、システム、および方法は、ポリマーへのデータ符号化のスピードおよび密度を著しく増加させる一方で費用を低減させるものである。
【0216】
データを符号化するための書き込み可能なポリマー
一態様では、データを符号化するためのポリマーが本明細書に提示される。
【0217】
一部の実施形態では、データを符号化するためのポリマーは、ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマーの骨格に共有結合により連結した複数の変換可能な残基を含み、複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれが第1の蛍光状態を有し、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することが可能であり、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態が異なり、複数の変換可能な残基の全てまたはサブセットのそれぞれがフルオロフォアを含み、複数の変換可能な残基が第1の蛍光状態および第2の蛍光状態でポリマーに共有結合により連結している。一部の実施形態では、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態は異なる(例えば、変換可能な残基は、第1の状態の時と第2の状態の時で構造が異なる)。一部の実施形態では、第1の蛍光状態にある複数の変換可能な残基および第2の蛍光状態にある複数の変換可能な残基は、蛍光検出デバイスによって読み取り可能である。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基の変換可能な残基のそれぞれは、ポリマーの骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置される。
【0218】
一部の実施形態では、蛍光検出デバイスは、蛍光プレートリーダー、ゲルイメージャー、蛍光分光計、蛍光顕微鏡、またはフローサイトメーターである。
【0219】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーは核酸ポリマーであり、複数の変換可能な残基は変換可能な核酸塩基を含む。
【0220】
一部の実施形態では、変換可能な残基の間に繰り返し間隔をあけて配置して、各残基を独立に変換することができるような空間分解能がもたらされるようにする。一部の実施形態では、任意の適当なスペーサー(例えば、書き込み可能でない、すなわち、データ書き込み機構に対して非反応性である)を変換可能な残基の間に存在させる。一部の実施形態では、ポリマー骨格によって連結した残基をスペーサーとして利用することができる。一部の実施形態では、書き込み機構および/または書き込みデバイスの空間分解能に応じて、スペーサーが変換可能な残基の間に間隔をあけて並んだ。一部の実施形態では、スペーサーは、残基であり、書き込み機構に対して非反応性のものであり得る。一部の実施形態では、これらのスペーサーは、修飾されていないDNAヌクレオチドである。種々の実施形態では、ポリマーは、データを標識するためのデリミタおよび/またはデータタグをさらに含む。
【0221】
一部の実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)は、ポリマーの骨格を介して連結した複数のスペーサー残基をさらに含む。複数の変換可能な残基のそれぞれは、複数のスペーサー残基のうちの1つまたは複数のスペーサー残基によって隔てられている。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基の間の間隔の量(例えば、距離)は、ポリマー上にデータを符号化するための書き込み機構の分解能に適合する。一部の実施形態では、2つの変換可能な残基の間の間隔は、データをポリマー上に符号化するためのデータ符号化機構の分解能と等しいまたはそれよりも大きい。一部の実施形態では、書き込み機構の分解能は、少なくとも1nmである。一部の実施形態では、複数のスペーサー残基は、変換可能な残基の読み取りに干渉しない。一部の実施形態では、ポリマー内の複数のスペーサー残基は、同じスペーサー残基である。一部の実施形態では、複数のスペーサー残基は、2つまたはそれよりも多くの異なるスペーサー残基(例えば、異なるヌクレオチド、例えば、異なる存在するヌクレオチド)を含む。
【0222】
一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くの異なる変換可能な残基は、書き込み機構の分解能の範囲内に入る。一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くの異なる変換可能な残基は、2つの同時の光パルス内に存在する異なる波長の光に応答する書き込み機構の分解能の範囲内に入る。
【0223】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーは、ブランクテープである。一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーは、DNAのブランクテープである。本明細書で使用されるブランクテープとは、書き込み可能な核酸ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される変換可能な残基を含み、したがって、変換可能な残基の第1の状態から第2の状態への変換により、データの符号化がもたらされる、書き込み可能な核酸ポリマーを指す。ブランクテープ自体はデータを含有しないが、適当な書き込みシステムを使用することにより(例えば、光により)、変換可能な残基を変換することによってデータを符号化させることが可能である。
【0224】
一部の実施形態では、ブランクテープは、その全長にわたって書き込み可能である。一部の実施形態では、ブランクテープ内の変換可能な残基はそれぞれ、独立に、かつ個別に書き込み可能である。
【0225】
一部の実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)は、スペーサー残基から本質的になる。
【0226】
一部の実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)は、デリミタもデータタグも含まない。
【0227】
一部の実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)は、スペーサー残基および変換可能な残基からなる。
【0228】
一部の実施形態では、複数の変換可能な残基のそれぞれは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、20個、30個、40個、または50個のスペーサー残基によって隔てられている。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基のそれぞれは、6個のスペーサー残基によって隔てられている。一部の実施形態では、複数のスペーサー残基は、天然に存在する核酸塩基、非天然核酸塩基(non-natural nucleobase)、テトラヒドロフラン無塩基残基、またはエチレングリコール残基を含む。一部の実施形態では、複数のスペーサー残基は、天然に存在する残基を含む。
【0229】
一部の実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)は、ポリマーの骨格に連結した1つまたは複数のデリミタをさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のデリミタのそれぞれは、1つまたは複数の天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基(non-naturally nucleobase)を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のデリミタは、天然に存在する核酸塩基を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のデリミタは、ポリマー内の2つまたはそれよりも多くの隣接するデータフィールドを隔てる。一部の実施形態では、デリミタは、フルオロフォアであり得る。一部の実施形態では、デリミタは、距離または位置の検出可能なマーカーとしての機能を果たすフルオロフォアである。
【0230】
一部の実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)は、1つまたは複数のデータタグをさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のデータタグは、1つまたは複数の天然に存在する残基(例えば、1つの天然に存在する残基)または複数の非天然残基(例えば、1つの非天然残基)を含む。一部の実施形態では、ポリマーは、核酸ポリマーであり、1つまたは複数のデータタグは、核酸ポリマーの5’末端または3’末端に存在する。一部の実施形態では、1つまたは複数のデータタグは、核酸ポリマーが合成される間に、複数の変換可能な残基が第2の状態に変換される間に、または複数の変換可能な残基が第2の状態に変換された後のライゲーションによって、核酸ポリマーに組み入れられる。
【0231】
一部の実施形態では、ポリマーは、任意の数または長さの単量体単位、例えば、10単量体単位の短さから100,000単量体単位よりも長くまでを有し得る。種々の実施形態では、ポリマーは、500単量体単位を超える、1,000単量体単位を超える、5000単量体単位を超える、10,000単量体単位を超える、50,000単量体単位を超える、または100,000単量体単位を超える。
【0232】
一部の実施形態では、核酸ポリマーは、10個よりも多くの変換可能な残基を含む。一部の実施形態では、核酸ポリマーは、100個よりも多くの変換可能な残基を含む。一部の実施形態では、核酸ポリマーは、500個よりも多くの変換可能な残基を含む。一部の好ましい実施形態では、核酸ポリマーは、1,000個よりも多くの変換可能な残基を含む。一部の実施形態では、核酸ポリマーは、10,000個よりも多くの変換可能な残基を含む。一部の実施形態では、核酸ポリマーは、100,000個よりも多くの変換可能な残基を含む。
【0233】
一部の実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)内の単量体単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の変換可能な残基に対する比は、2から500の間である。一部の実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)内の単量体単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の変換可能な残基に対する比は、2から200の間である。一部の実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)内の単量体単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の変換可能な残基に対する比は、2から100の間である。一部の実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)内の単量体単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の変換可能な残基に対する比は、2から10の間である。一部の実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)内の単量体単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の変換可能な残基に対する比は、10から50の間である。
【0234】
一部の実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)内の単量体単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の変換可能な残基に対する比は、10から100の間である。一部の実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)内の単量体単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の変換可能な残基(例えば、変換可能に対する比は、20から100の間である。一部の実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)内の単量体単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の変換可能な残基に対する比は、20から50の間である。一部の実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)内の単量体単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の変換可能な残基に対する比は、100よりも大きい。
【0235】
本開示の実施形態による化合物は、書き込み可能なデータビットに類似した複数の修飾可能なフルオロフォアを有する繰り返し荷電したポリマーに基づく。「フルオロフォアビット」それぞれが、「0」に類似した第1の状態、少なくとも「1」に類似した第2の状態、および一部の実施形態では追加の状態、の2つまたはそれよりも多くの状態で存在し得る。あるいは、第1の状態は「ブランク」(書き込まれていない)状態を符号化するものであり得、第2の状態は「0」ビットを符号化するものであり得、第3の状態は「1」ビットを符号化するものであり得る。いくつかの実施形態では、「ブランクテープ」に類似したものである、修飾することができる書き込まれていない状態の複数の修飾可能なフルオロフォアビットを有する書き込み可能なポリマーを合成する。一部の実施形態では、データビットは、単一の修飾可能なフルオロフォアからなる。一部の実施形態では、単一の修飾可能なフルオロフォアと構成的フルオロフォアを、単一のビットを符号化するためのペアとして使用する。構成的フルオロフォアのみが蛍光である場合、そのビットにより「0」が符号化され、一方、構成的フルオロフォアが蛍光であり、修飾可能なフルオロフォアを修飾して蛍光になるものである場合、そのデータビットにより「1」が符号化される。一部の実施形態では、2つの異なる修飾可能なフルオロフォアを、単一のデータビットを符号化するためのペアとして使用する。第1の修飾可能なフルオロフォアの修飾により「0」が符号化され、一方、第2のフルオロフォアの修飾により「1」が符号化される。また、一部の実施形態では、2つの異なる修飾可能なフルオロフォアを、単一のデータビットを符号化するためのペアとして使用する。第1の修飾可能なフルオロフォアに修飾により「0」が符号化され、一方、第1のフルオロフォアおよび第2のフルオロフォアの修飾により「1」が符号化される。
【0236】
書き込み可能なポリマーを長い長さに(例えば、5~100,000単量体、またはそれよりも長く)創出することができ、また、データ書き込みの前にまとめて作製することができる。
【0237】
いくつかの実施形態では、書き込み可能なポリマーは、修飾可能なフルオロフォアがポリマー骨格によって連結した複数の単量体を含む。ある特定の実施形態では、修飾可能なフルオロフォアビットの間に繰り返し間隔をあけて配置して、フルオロフォアビットをそれぞれが独立に修飾されるような空間分解能がもたらされるようにする。空間分解能は、少なくとも一部において、書き込み機構に依存する。例えば、分解能が1nmである光学光源およびデバイスを使用してフルオロフォアを修飾する場合、フルオロフォアビットをそれぞれ少なくとも1nm隔てることができる。フルオロフォアビットの間に任意の適当なスペーサーを利用することができる。一部の実施形態では、ポリマー骨格によって連結した残基をスペーサーとして利用することができる。ポリマーとして核酸を利用する一部の実施形態では、スペーサーは、フルオロフォアが結合していない核酸塩基である。種々の実施形態では、書き込み可能なポリマーは、データを標識、マーキング、または分離するためのデリミタおよび/またはデータタグをさらに含み得、そのそれぞれを特定の残基基列によってもたらすことができる。
【0238】
図1Aに、複数の修飾可能なフルオロフォアビット(例えば、修飾可能なフルオロフォアまたは「F」)103を有する書き込み可能なポリマー101の例示的な概念を例示する。書き込み可能なポリマーは、いくつもの繰り返しの修飾可能なフルオロフォアビットを含み、修飾可能なフルオロフォアビットは、「0」状態から「1」状態への切り換えに類似した、1つの蛍光状態から第2の蛍光状態への構造的変化を受け得る。これらの修飾可能なフルオロフォアビットのそれぞれが、データ符号化のための「ビット」に類似したものである。「1」と「0」の定義は任意のものであり、単にバイナリコードを示すことを意味することが理解される。あらゆるデータ書き込みの前に、修飾可能なフルオロフォアビットを、最初の、書き込まれていない状態で最初に用意する。一部の実施形態では、書き込み可能なポリマーは、複数の修飾可能なフルオロフォアビットを含み、スペーサー104またはデリミタも含有し得るデータフィールドを含む。図1Bに、スペーサーによって隔てられた複数の修飾可能なフルオロフォアビットを有するポリマー配列の例示的な概念を提示する。一部の実施形態では、書き込み可能なポリマーは、データの型、日付、または他の情報などのドキュメンテーションを示す1つまたは複数の固有のデータタグ配列を含む。固有のデータタグは、化学的もしくは酵素的結合機構によって、またはポリマーを新しいひとまとまりでさらに伸長させることによって、末端に付加することができる。ポリマーに結合させたデータタグ(ID)102の例については図1Aを参照されたい。
【0239】
種々の実施形態では、書き込み可能なポリマーは、任意の長さ、例えば、15単量体の短さから、大多数の有機ポリマーに関しては5000単量体を超える長さまで、核酸ポリマーに関しては100,000単量体を超える長さまでであってよい。種々の実施形態では、書き込み可能なポリマーは、100単量体長を超える、200単量体を超える、300単量体を超える、400単量体を超える、500単量体を超える、1000単量体を超える、5000単量体を超える、10,000単量体を超える、50,000単量体を超える、または100,000単量体を超える。最大長は、選択されたポリマー種の安定性によって、それらを作出するために使用される方法によって、および書き込まれたデータを読み取るために使用される方法によってのみ限定される。より多くのビットを含有する長い鎖には、分子当たりに含有されるデータがより多くなるという利点がある。
【0240】
一部の実施形態では、複数の変換可能な残基は、1つまたは複数のポリメラーゼ酵素によって核酸ポリマーに組み入れることが可能である。
【0241】
一部の実施形態では、複数の変換可能な残基は、天然に存在しない残基(例えば、天然に存在しない核酸塩基)である。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基は、修飾された天然に存在する残基(例えば、天然に存在する核酸塩基)または天然に存在する残基の誘導体である。
【0242】
一部の実施形態では、複数の変換可能な残基のそれぞれは、化学修飾可能な部分(例えば、フルオロフォア)を含む。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基のそれぞれにおいて、化学修飾可能な部分(例えば、フルオロフォア)は、変換可能な残基に直接結合している。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基のそれぞれにおいて、化学修飾可能な部分(例えば、フルオロフォア)は、変換可能な残基にリンカーも側鎖もなしで結合している。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基は、ポリマーの骨格に共有結合により連結している。
【0243】
一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも1つの原子を含む。一部の実施形態では、リンカーなしの2つの部分の連結とは、いかなる原子も介在しない連結を指す。
【0244】
一部の実施形態では、変換可能な残基は、ポリマーの骨格(例えば、核酸ポリマー)に、ネイティブなヌクレオチドの核酸塩基が核酸ポリマーの骨格に連結している(ヌクレオチドの糖を介して)のと同様に、リンカーを介在せずにまたは側鎖として連結している。
【0245】
一実施形態では、化学修飾可能な部分は、光によって活性化可能であり、それにより、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換される。一部の実施形態では、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態への変換は不可逆反応によって起こる。一部の実施形態では、変換可能な残基は、第1の蛍光状態ではケージドフルオロフォアを有し、第2の蛍光状態への変換後は、脱ケージドフルオロフォアを有する。一部の実施形態では、変換可能な残基は、第1の蛍光状態ではクエンチャーを有するフルオロフォアを有し、第2の蛍光状態への変換後は、クエンチャーが放出されている。一部の実施形態では、ポリマーの骨格(例えば、核酸ポリマーのリン酸および糖)は、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態への変換の間、変化しないままである。一部の実施形態では、化学修飾可能な部分は、光、電圧、酵素剤、化学試薬、または酸化還元剤または酸化還元電極によって活性化可能であり、それにより、第1の状態から第2の状態に変換される。一部の実施形態では、化学修飾可能な部分は、1つまたは複数の光により除去可能な基を含む。
【0246】
いくつかの実施形態は、書き込み可能なポリマーに組み入れることができる修飾可能なフルオロフォアビットを対象とする。種々の実施形態による修飾可能なフルオロフォアビットは、制御された光反応化学によって第1の蛍光状態(例えば、蛍光がオフであるまたは低い)から第2の蛍光状態(例えば、蛍光がオンであるまたは高い)に構造的に変更することが可能な1つまたは複数のフルオロフォアである。一部の実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、ケージドフルオロフォアであり、その場合、ケージドフルオロフォアが第1の蛍光状態であり、ケージの放出により、第2の蛍光状態がもたらされる。一部の実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、消光フルオロフォアであり、その場合、消光フルオロフォアが第1の蛍光状態であり、クエンチャーを放出させることにより、第2の、通常はより明るい、蛍光状態がもたらされる。一部の実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、特定の蛍光の質(例えば、第1の発光または吸収波長)を有する第1の状態から第2の区別可能な蛍光の質(例えば、第2の発光または吸収波長)を有する第2の状態に変換することが可能なフルオロフォアである。一部の実施形態では、修飾可能なフルオロフォアと構成的フルオロフォアをペアにしてビットをもたらす。構成的フルオロフォアは、それ自体が一貫した調節されない蛍光を生じさせるフルオロフォアである。構成的フルオロフォアを陽性対照として利用することができる、および/または構成的フルオロフォアにより、ビットが非蛍光のままである(例えば、ケージングまたは消光に起因して)修飾可能なフルオロフォアを含む場合にビットの場所を検出する手段をもたらすことができる。構成的フルオロフォアを、クエンチャーが近くに存在するかしないかによって間接的に修飾することもでき、したがって、クエンチャーの修飾または放出により、構成的フルオロフォアのシグナルの変化を間接的に引き起こすことができる。
【0247】
一部の実施形態では、変換可能な残基が第1の(蛍光)状態から第2の(蛍光)状態に変換された際の(蛍光)状態の変化としては、これらに限定されないが、強度の変化、吸収波長の変化、発光波長の変化、蛍光の寿命の変化またはこれらの組合せが挙げられる。
【0248】
一部の実施形態では、変換可能な残基を変換するステップは、変換可能な残基のケージドフルオロフォアからケージを放出させることを含み得る。一部の実施形態では、変換可能な残基を変換するステップは、フルオロフォアを含む第1の変換可能な残基の極めて近傍に存在する第2の変換可能な残基のクエンチャーを放出させることを含み得る。一部の実施形態では、変換可能な残基を変換するステップは、変換可能な残基のフルオロフォアの光退色を含み得る。一部の実施形態では、変換可能な残基を変換するステップは、変換可能な残基のフルオロフォアの放出を含み得る。一部の実施形態では、変換可能な残基を変換するステップは、変換可能な残基のフルオロフォアの光活性化を含み得る。一部の実施形態では、変換可能な残基を変換するステップは、変換可能な残基のフルオロフォアを光不活化することを含み得る。
【0249】
図2A~2Eに、骨格によって連結したポリマー内の単量体に関連して利用することができるケージドフルオロフォアの例を、それらのケージされた状態および脱ケージされた状態で提示する。いくつかの実施形態では、ケージドフルオロフォアをデータの「ビット」に類似した様式で利用し、それにより、「0」または「1」デジタルビット指定に類似した、第1の構造状態(例えば、ケージされた)から第2の構造状態(例えば、脱ケージされた)への変換を可能にすることができる。一部の実施形態では、構成的フルオロフォアを、ケージドフルオロフォアと併せて利用して、ケージドフルオロフォアの検出の位置特定を補助する。あるいは、ケージドフルオロフォアを第2の修飾可能なフルオロフォアと共に利用してビットをもたらすことができる。ビットの蛍光状態は、個々のフルオロフォア分子の蛍光を検出することが可能なナノポアデバイスを利用することで、または書き込まれたビットの構造的差異を検出することができるナノポアデバイスによって検出可能である。
【0250】
一部の実施形態では、複数の修飾可能なフルオロフォアは、光により脱ケージドフルオロフォアに変換することが可能である、ケージドフルオロフォアである。
【0251】
一部の実施形態では、ケージドフルオロフォアのそれぞれが、
【化4】
を含む。
【0252】
図2A~2Eに提示されているケージドフルオロフォアのそれぞれは、局部的な光のパルスによって放出させることができ、その結果、検出可能な蛍光を生じさせることが可能なフルオロフォアを生じさせる、ケージの例である。種々の光により除去可能な基を、ケージドフルオロフォアに組み入れることができる(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるY. Zhao, et al., J Am Chem Soc. 2004; 126:4653-63を参照されたい)。図において見ることができるように、フルオロフォアそれぞれが、光エネルギーで切断可能なリンカー(例えば、エーテル基)によって連結したケージング構成成分を有する。フルオロフォアは、ポリマー骨格に直接結合させることもでき、図においてR基によって示されている通り骨格に結合した残基に結合させることもできる。数例を提示しているが、任意の適当な光により除去可能な基およびフルオロフォアを種々の実施形態に従って使用することができることが理解される。一部の実施形態では、光により除去可能な基は、光により切断可能な基またはケージと称され得る。
【0253】
一部の実施形態では、1つまたは複数の光により除去可能なまたは光により切断可能な基は、
【化5】
(式中、Xは、NR2、NHR、OR、またはSRを表し、Rは、光により除去可能なまたは光により切断可能な基が結合している、ポリマー内の原子である)
である。
【0254】
一部の実施形態では、複数の変換可能な残基のそれぞれが、酸化還元によって活性化可能な化学修飾可能な部分を含む。一部の実施形態では、化学修飾可能な部分は、局部的な酸化によって活性化することが可能である。一部の実施形態では、化学修飾可能な部分は、電極を使用した酸化によって活性化することが可能である。
【0255】
一部の実施形態では、複数の変換可能な残基のそれぞれが、光によって修飾可能な修飾可能な部分(例えば、修飾可能なフルオロフォア、ケージドフルオロフォア、またはクエンチャー)を含む。
【0256】
一部の実施形態では、変換可能な残基(例えば、変換可能な核酸塩基)を含むヌクレオチドは、
【化6】
からなる群から選択される。
【0257】
一部の実施形態では、変換可能な残基は、O6-グアニン、N2-グアニン、N7-グアニン、N6-アデニン、N5-アデニン、O4-チミン、N3-チミン、2-チオ-チミン、4-チオ-チミン、N4-シトシン、またはN3-シトシンからなる群から選択される。
【0258】
一部の実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の状態および第2の状態は、天然に存在しないおよび/または修飾された核酸塩基を検出し区別をつけることが可能なシーケンシング方法によって読み取り可能である。一部の実施形態では、第1の状態にある複数の変換可能な残基および第2の状態にある複数の変換可能な残基は、ポリメラーゼ酵素によって読み取り可能である。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の状態および第2の状態は、ナノポアシーケンシングによって読み取り可能である。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の状態および第2の状態は、合成によるシーケンシングによって読み取り可能である。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基が第2の状態に変換されると、第1の状態と比較して複数の変換可能な残基の特性が改変される(例えば、サイズが縮小する、形状が変更される、H結合が改変される、および/またはポリメラーゼ基質能が改変される)。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基のうちの1つまたは複数は、第2の状態から第3の状態に変換することが可能であり、複数の変換可能な残基のうちの1つまたは複数が、第3の状態で核酸ポリマーに共有結合により付着している。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基のそれぞれが、独立に、かつ選択的に変換することが可能である。
【0259】
一部の実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)は、変換可能な残基の2つまたはそれよりも多くの異なるセットを含み、変換可能な残基の各セットが第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換することが可能であり、第1の状態と第2の状態が異なる。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基のそれぞれが、光によって修飾することができる化学修飾可能な部分を含み、変換可能な残基の2つまたはそれよりも多くの異なるセットは、波長が異なる光によって修飾可能である。一部の実施形態では、変換可能な残基の第1のセットは第1の波長の光によって修飾可能であり、変換可能な残基の第2のセットは第2の波長の光によって修飾可能であり、第1の波長と第2の波長は異なる。
【0260】
図3Aおよび3Bに、クエンチャーを光によって放出させることができる、放出可能なクエンチャーの例を提示する。いくつかの実施形態では、クエンチャーをフルオロフォアと共に使用し、したがって、消光フルオロフォアをデータの「ビット」に類似した様式で利用し、それにより、「0」または「1」デジタルビット指定に類似した、第1の構造状態(例えば、消光)から第2の構造状態(例えば、不消光)への変換を可能にすることができる。一部の実施形態では、消光フルオロフォアを第2の修飾可能なフルオロフォアと共に利用して、ビットをもたらすことができる。ビットの蛍光状態は、個々のフルオロフォア分子の蛍光を検出することが可能なナノポアデバイスを利用することで、または書き込まれたビットの構造的差異を検出することができるナノポアデバイスによって、検出可能であり得る。
【0261】
一部の実施形態では、複数の変換可能な残基のサブセットの変換可能な残基のそれぞれがクエンチャーを含む。
【0262】
一部の実施形態では、クエンチャーは、
【化7】
を含む。
【0263】
図3Aおよび3Bに提示されている放出可能なクエンチャーはそれぞれが、局部的な光のパルスによって放出させることができ、したがって、近くのフルオロフォアと併せて使用した場合、検出可能な蛍光をもたらすフルオロフォアを生じさせる、クエンチャーの例である。種々のクエンチャー基を、ケージドフルオロフォアに組み入れることができる(例えば、その開示がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる、J. R. Lakowicz, (Ed.). (2013). Principles of fluorescence spectroscopy. Springer science & business media. pp. 277-330 "Quenching of Fluorescence";およびM. K. Johansson, Methods Mol Biol. 2006; 335:17-29を参照されたい)。図において見ることができるように、各クエンチャーが、光エネルギーを用いて切断可能であり得るリンカー(例えば、ニトロベンジル基)を有する。クエンチャーは、ポリマー骨格に直接結合させることもでき、図3Aおよび3BにおいてR基によって示されている通り骨格に結合した残基に結合させることもできる。数例を提示しているが、任意の適当なクエンチャー、放出機構、およびフルオロフォアを種々の実施形態に従って使用することができることが理解される。
【0264】
図4に、特定の波長の光によりフルオロフォアを変換して第2のおよび/または第3の蛍光波長が発するようにすることができる、光変換型フルオロフォアの例を提示する。いくつかの実施形態では、光変換型フルオロフォアをデータの「ビット」に類似した様式で利用し、それにより、「0」または「1」デジタルビット指定に類似した、第1の構造的状態(例えば、第1の発光波長)から第2の構造的状態(例えば、第2の発光波長)への変換を可能にすることができる。一部の実施形態では、光変換型フルオロフォアを、第1の放出状態(例えば、第1の発光波長)から第2の放出状態(例えば、第2の発光波長)に、そしてさらに第3の放出状態(例えば、第3の発光波長)に変換することができ、それにより、3進数コードまたは正に書き込まれたバイナリコード(すなわち、第1の放出状態は書き込まれていない状態であり、第2の放出状態は「0」に類似したものであり、第3の放出状態は「1」に類似したものである)が可能になる。ビットの蛍光状態は、個々のフルオロフォア分子の蛍光を検出することが可能なナノポアデバイスを利用することで検出可能である。
【0265】
一部の実施形態では、光変換型フルオロフォアの第1の構造的状態から第2の構造的状態への変換は、第1の波長の光パルスによるものであり、光変換型フルオロフォアは、第2の波長の光パルスによって第3の発光波長を有する第3の構造的状態に変換することが可能である。
【0266】
一部の実施形態では、複数の変換可能な残基は、325nm、360nm、400nm、500nm、600nm、700nm、または800nmの波長の光によって変換することが可能である。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基は、325nm、360nm、または400nmの波長の光によって変換することが可能である。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基は、325nmの波長の光によって変換することが可能である。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基は、360nmの波長の光によって変換することが可能である。一部の実施形態では、複数の変換可能な残基は、400nmの波長の光によって変換することが可能である。
【0267】
一部の実施形態では、光変換型フルオロフォアは、ポリメチンシアニン色素を含む。一部の実施形態では、光変換型フルオロフォアは、
【化8】
を含む。
【0268】
一部の実施形態では、光変換型フルオロフォアは、
【化9】
を含む。
【0269】
一部の実施形態では、データ書き込みは、ケージドフルオロフォアの脱ケージング、クエンチャーの放出、フルオロフォアの放出、フルオロフォアの光不活化、フルオロフォアの光活性化、フルオロフォアの退色、またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、ケージドフルオロフォアの脱ケージングは、フルオロフォアからケージを放出させることを含む。一部の実施形態では、フルオロフォアの退色は、添加剤を用いて退色させることを含む。一部の実施形態では、添加剤はホスフィンを含む。
【0270】
種々の光変換型フルオロフォア基を利用することができる(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるT. J. Chozinski, L. A. Gagnon, and J. C. Vaughan, FEBS Lett. 2014; 588:3603-12を参照されたい)。図4の例において見ることができるように、ヘプタメチンシアニン色素を特定の波長の光によってペンタメチンシアニン色素またはトリメチンシアニン色素のいずれかに変換することができる。本実施例では、7炭素アルケン含有鎖を有するヘプタメチンシアニン色素は近赤外蛍光を発する。およそ740nmの光エネルギーにより、ヘプタメチンシアニン色素のアルケン含有鎖が修飾され、その結果、5炭素鎖を有するペンタメチンシアニン色素がもたらされる。ペンタメチンシアニン色素は赤色蛍光を発する。さらに、およそ638nmの光エネルギーにより、ヘプタメチンシアニン色素またはペンタメチンシアニン色素のアルケン含有鎖が修飾され、その結果、3炭素鎖を有するトリメチンシアニン色素がもたらされる。トリメチンシアニン色素は黄色/緑色光を発する。したがって、この手法では、データを、赤色発光シグナルと黄色/緑色発光シグナルのバイナリコードとして符号化することができる。フルオロフォアは、ポリマー骨格に直接結合させることもでき、図においてR基によって示されている通り、骨格に結合した残基に結合させることもできる。数例を提示しているが、任意の適当な光変換型フルオロフォアを種々の実施形態に従って使用することができることが理解される。
【0271】
図5Aは、2つの別個のケージドフルオロフォアを利用する書き込み可能な2フルオロフォアビットの例を例示する。一部の実施形態では、2フルオロフォアビットは、互いにおよそ30オングストローム以内に存在する2つのフルオロフォアを有し得る。この2フルオロフォアビットを波長の長い光エネルギーに曝露させることにより、フルオロフォアのうちの一方の脱ケージングをもたらし、したがって、青色蛍光を生じさせることができる。あるいは、この2フルオロフォアビットを波長の短い光に曝露させることにより、フルオロフォアの両方の脱ケージングをもたらし、その結果、青色光と緑色光の組合せを生じさせる。両方のフルオロフォアが脱ケージされると、青色フルオロフォアから緑色フルオロフォアにエネルギーが供与され、それにより、フェルスターエネルギー移動がもたらされ、緑色蛍光が増強され、青色蛍光が低減する。2つの異なる波長を利用することにより、各波長により固有の蛍光シグナルがもたらされ、バイナリコードを生成して、データを保存することができる。0と1のデジタル割り当ては任意のものであり、いずれの蛍光シグナルも「0」または「1」に対応させることができることが理解される。
【0272】
図5Bは、放出可能なクエンチャーとケージドフルオロフォアの組合せを利用する書き込み可能な2フルオロフォアビットの例を例示する。一部の実施形態では、2フルオロフォアビットは、互いにおよそ30オングストローム以内に存在する2つのフルオロフォアを含む。一部の実施例では、各ビットが、色が異なる2つのフルオロフォア:修飾されていないクマリンおよび光ケージド(PC)Tokyo greenを利用する。さらに、光により放出可能な蛍光クエンチャー(Q)も、光により切断可能なリンカー(CL)と共に、2つの色素の近くに組み入れる。データ書き込み前は、ポリマーは、蛍光クエンチャーおよび一方のフルオロフォアのケージングに起因して、蛍光発光をほとんどまたは全く有し得ない。データのビットを書き込むために、およそ430nmの光の単一のパルスを使用して、蛍光クエンチャーを放出させ、それにより、修飾されていないクマリンから青色蛍光を生じさせ得るか、または、約430nmおよび約365nmの二重パルスを使用して、クエンチャーを放出させ(release the quencher release)、かつTokyo greenを脱ケージし、それにより、クマリンによる青色発光シグナルとそれに加えてTokyo greenによる緑色発光シグナルを生じさせる。あるいは、蛍光クエンチャーを放出させ、Tokyo greenフルオロフォアを脱ケージするために、約365nmの光の単一のパルスが十分であり得る。両方のフルオロフォアが不消光かつ脱ケージである場合、青色フルオロフォアから緑色フルオロフォアにエネルギーが供与され得、それにより、フェルスターエネルギー移動がもたらされ、緑色蛍光が増強され、青色蛍光が低減する。したがって、この手法では、データを、ポリマーに沿って順を追って青色発光シグナルと緑色発光シグナルのバイナリコードとして符号化することができる。
【0273】
多数の実施形態が、スペーサー、デリミタ、およびデータタグのうちの1つまたは複数がさらに組み入れられる書き込み可能なポリマー(特に、生体ポリマー)も対象とする。種々の実施形態によると、スペーサーは、書き込み可能なポリマーに組み入れられる、フルオロフォアビットの間にデータ書き込み機構の空間分解能に応じて必要な間隔をもたらす残基であり得る。多くの実施形態では、スペーサーは、蛍光能を欠くものであり得、したがって、スペーサーはフルオロフォアビットを読み取る能力に干渉しないものであり得る。一部の実施形態では、スペーサーは、データ書き込み機構に対して非反応性のものであり得る。一部の実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーは、ありとあらゆるスペーサーに同じ残基を繰り返し利用することができる。しかし、一部の実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーは、スペーサーとして2つまたはそれよりも多くの異なる残基を利用することができる。天然に存在する核酸塩基、非天然核酸塩基、テトラヒドロフラン無塩基残基、および/またはエチレングリコール残基を含めた、蛍光を発する能力を欠く任意の適当な残基をスペーサーとして利用することができる。
【0274】
デリミタは、種々の実施形態によると、境界を示す残基であり得る。一部の実施形態では、デリミタを利用して、2つの隣接するデータフィールドを隔てることができる。天然に存在する核酸塩基、非天然核酸塩基、テトラヒドロフラン無塩基残基、および/またはエチレングリコール残基を含めた、蛍光を発する能力を欠く任意の適当な残基をデリミタとして利用することができる。
【0275】
いくつかの実施形態では、データタグは、ある特定のデータを示す一続きの単量体の列(一般には4つまたはそれよりも多くの残基)であり得る。例えば、データタグは、データの型、日付、データソース、または任意の他の情報を示すものであり得る。天然に存在する核酸塩基、非天然核酸塩基、テトラヒドロフラン無塩基残基、および/またはエチレングリコール残基を含めた、蛍光を発する能力を欠く任意の適当な残基をデータタグ残基として利用することができる。
【0276】
書き込み可能なポリマーは、長いポリマーを生成するための任意の適当な方法によって生成することができる。一般に、有機ポリマーおよび無機ポリマーは、フリーラジカル重合、基転移重合、開環メタセシス重合、RAFT重合、および縮合重合を含めた(しかしこれらに限定されない)、直鎖状ポリマーを制御可能に生じさせる適当な重合化学によって生成される(例えば、その開示がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるS. K. Samal, et al., Chem Soc Rev. 2012; 41:7147-94; S. L. Baker, et al., Biomacromolecules. 2019; 20:2392-240;およびP. Strasser and I. Teasdale, Molecules. 2020; 25:1716を参照されたい)。蛍光標識をポリマーに組み入れるための方法は当業者には公知である(例えば、その開示がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるW. Zhaoqiang and M. Lingzhi, Progress in Chemistry. 2007; 19:1381-1392;およびE. K. Riga, et al., Macromol Chem Phys. 2017; 218:1700273を参照されたい)。修飾可能な蛍光標識は、重合の間にポリマーの単量体(複数可)に含めることによって組み入れることもでき、後で結合させることもできる。例えば、合成後のポリマーが、反復配列内に反応性チオール基を含有する場合、その反応性チオール基を、マレイミドとコンジュゲートした変更可能なフルオロフォアと反応させることができる。
【0277】
図6A~6Cに、溶解性およびナノポアを通じた移動性のための繰り返し反復される荷電基を含有する有機反復ポリマーの例を提示する。これらの例示的なポリマーに、データの書き込みのための修飾可能なフルオロフォアをさらに組み入れる。例示的な構造は限定と解釈されるべきではない。ナノポア移動性および1つまたは複数の活性化可能な蛍光色素の反復単位への組み入れのために、反復単位当たり1つまたは複数の荷電基を有する任意のポリマーをいくつかの実施形態に従って利用することができる。種々の実施形態では、有機ポリマーは、合成方法および単量体の型に応じて100個から5000個の間の単量体を含む。一部の実施形態では、有機ポリマーはホモポリマーであり得る。一部の実施形態では、有機ポリマーは、交互共重合体であり得る。
【0278】
生体ポリマーに関しては、種々の実施形態によると、ポリメラーゼ伸長または化学合成を利用して、書き込み可能な生体ポリマーを生成することができる。ポリメラーゼ伸長を利用する場合、ポリメラーゼによって重合させることができる適当なヌクレオチド、核酸塩基および残基を利用することができる。化学合成を利用する場合、より広範囲の核酸塩基および残基を利用することができるが、一般に、合成によりもたらされる核酸鎖は短く(例えば、10残基から200残基の間)、これを一緒にライゲーションして、より長いポリマーを生成することができる。ポリメラーゼおよびライゲーション方法はどちらも、繰り返し書き込み可能な核酸ポリマーを一本鎖または二本鎖のいずれの状態でも構築することができることが理解される。
【0279】
データ書き込みおよび読み取りの方式
いくつかの実施形態は、修飾可能なフルオロフォアを利用してポリマー上にデータを書き込むことおよびポリマー上にデータを読み取ることを対象とする。多くの実施形態では、書き込み可能なポリマーは、修飾可能なフルオロフォアおよび電荷がポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置されるように用意することができる。用意された書き込み可能なポリマーは、本明細書に記載の通り、スペーサー、デリミタ、およびデータタグも有し得る。ポリマー上にデータを書き込むために、種々の実施形態によると、個々の鎖を、ナノポアを有するデバイスを通過させる。種々のナノポアデバイスにより、単一のフルオロフォアがポアを通過するにしたがってその単一のフルオロフォアを光励起することが可能である(例えば、その開示がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるD. Garoli, et al., Nano Lett. 2019; 19:7553-7562;およびM. Rahman, et al., Lab Chip. 2021; 21:3030-3052を参照されたい)。光ケージまたは切断可能なリンカーが光励起されると、化学結合の切断が生じ、それにより、蛍光ビットのバイナリコードが得られる。そのようなデバイスは、極めて局部的な位置に対して光エネルギーを増幅する構造をナノポアの付近に含み得る。例として、金属ボウタイ、金属ナノロッド、またはゼロモード導波管などのプラズモニック増幅器が挙げられる(しかしこれらに限定されない)(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるJ. D. Spitzberg, et al., Adv Mater. 2019; 31: e1900422を参照されたい)。そのようなプラズモニック構造に光を照射することにより、1ナノメートルという小さな分解能を得ることができる。あるいは、STED技法によって2つのレーザーの使用を用いて、極めて局部的な照明を実現することができる(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるS. J. Sahl and S. W. Hell High-Resolution 3D Light Microscopy with STED and RESOLFT. 2019 Aug 14. In: Bille JF, editor. High Resolution Imaging in Microscopy and Ophthalmology: New Frontiers in Biomedical Optics. Cham (CH): Springer; 2019. Chapter 1を参照されたい)。
【0280】
一部の実施形態では、フルオロフォアの修飾をポリマーの反復単位毎に実施する必要はない場合がある。書き込みプロセスの間に単位をスキップすることができる。スキップされた単位を有するポリマーを読み取る場合、そのようなスキップされた単位をブランクまたはヌルとみなすことができ、リーダーを次の蛍光位置に進めて、列内の次のビットを見いだす。書き込みの間および読み取りの間の反復単位のスキッピングを意図的に実施して、書き込み方法の分解能に最適になるようにビット書き込みを並べることができる;スキッピングはまた、確率的な移動、および分子がポアを通過する速度の変更に起因してランダムに起こり得る。
【0281】
多くの実施形態では、書き込みデバイスには、ポリマーにデータを書き込むためのソフトウェアコードが用意される。したがって、このコードによって方向づけられる書き込みデバイスでは、フルオロフォアを選択的に修飾するために光のパルスを時間および/もしくは波長によって制御するかまたはポリマーのクエンチャーを制御して、データコード(例えば、バイナリコード)を得る。データのコードがポリマーに書き込まれたら、そのポリマーを、暗闇中、ポリマー分子の完全性を維持するための任意の適当な手段によって保存することができる。例えば、データが書き込まれたポリマーを、乾燥させて、沈殿物として、または適当な溶液中で、室温で、または低温(例えば、-20℃)で保存することができる。(例えば)アルコール、抗酸化剤、キレート剤および生物学的阻害剤(例えば、ヌクレアーゼ阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤)などの安定剤を保存されるポリマーと共に含めることができる。
【0282】
ポリマーは、データを単一分子レベルで最も効率的に保存し、それにより、最も高い情報の潜在的密度をもたらすものである。しかし、一部の実施形態では、データストレージの正確度をより良好にするためにデータの重複性が必要な場合、複数のポリマーを使用して、複数のポリマーの各ポリマーに同じデータを重複して書き込むことができる。デジタルデータストレージのためのエラー補正アルゴリズムがすでに十分に開発されており、これらのアルゴリズムのうちのいくつかを本手法に適用することができる(その開示が参照により本明細書に組み込まれるJ. Li, et al., IEEE Transactions on Emerging Topics in Computing. 2021; 9:651-663を参照されたい)。
【0283】
極めて局部的な光励起を、STEDXなどの特殊化された顕微鏡によるサブ波長集束戦略によって、またはボウタイなどのナノプラズモニック構造を使用することによって、またはゼロモード導波管を使用することによって実現することができる(その開示がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるY. Fang and M Sun, Light Sci Appl. 2015; 4: e294;およびX. Shi, et al. Small. 2018; 14: e1703307を参照されたい)。忠実度を伴ってデータが符号化されるように、光パルスと書き込み可能なポリマーの制御された通過のタイミングを適当な間隔と協調させることができる。
【0284】
多くの実施形態では、書き込まれた核酸ポリマー上のデータを読み取るために、単一のフルオロフォアの蛍光を読み取ることが可能なまたは単量体の構造的差異を解析することが可能な任意の適当なナノポアを利用することができる。ある特定の実施形態では、デバイスは、核酸または有機ポリマーへの書き込みおよび核酸または有機ポリマーからの読み取りの両方を行うことが可能である。ある特定の実施形態では、単一のナノポアは、ポリマーへの書き込みおよびポリマーからの読み取りの両方のための二重機能性を有するが、一部のデバイスは、書き込みと読み取りを実施するために別個のナノポアを含み得る。種々のナノポアデバイスが利用可能である、あるいは、データの書き込みおよび/または読み取りのためのナノポアデバイスを製作または製造することができる。ナノポアは、固体の状態の材料で構成されるものであってよい。
【0285】
読み取りのためにナノポアデバイスを利用することに加えて、ポリマーを引き伸ばし、引き伸ばされたポリマーに沿ってフルオロフォアを読み取ることが可能な(capable or reading)デバイスを利用してイメージングすることができる。ポリマー(特に、DNA)を引き伸ばすまたはコーミングする方法は当業者には公知である(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるZ. E. Nazari and L. Gurevich, J. Self-Assembly and Molecular Electronics 2013; 1:125-148; A. Kaykov, et al., Sci Rep. 2016; 6:19636を参照されたい)。あるいは、一部の実施形態では、高い空間分解能を実現するために、超解像顕微鏡法を使用することができる(STED手法または他の公知の方法によって)。STEDによって単一のDNA鎖をイメージングすることにより、一続きのビットを表す一連の色素呈色を得ることができる。一部の実施形態では、方法を、ハイスループットのために、1つの視野内に多くの鎖を引き伸ばすこと、および、一続きの色素(ビット)を読み取り、それをデジタル情報に変換する自動化イメージングソフトウェアを用いて、自動化することができる。
【0286】
一部の実施形態では、光を使用して、反復ポリマー内の色素および/またはクエンチャーを変換するまたは他の点で変更させることにより、ポリマーの反復単位における検出可能な構造的な変化を生じさせることができる。したがって、上記の蛍光による方法に加えて、書き込まれたポリマーを蛍光によらない方法によって読み取ることもできる。一部の実施形態では、イオンの流れの変更を使用することによるナノポアシーケンシングを使用することができる。別の方法は、鎖がポアを通過するにしたがって、変更された色素の光学的吸収または他のスペクトルシグネチャー(例えば振動モード)を読み取ることを伴う。
【0287】
一部の実施形態では、複数の変換された残基は、順を追って読み取られる。
【0288】
一部の実施形態では、複数の変換された残基は、ポリマーの一方の末端からデータが符号化されたポリマーの他方の末端まで順を追って読み取られる。
【0289】
ビットを組み込む方法
種々の実施形態による、ポリマーを利用したデータストレージのための組成物およびシステム、ならびにデータビットの組込み方法および使用方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、データストレージのシステムは、ポリマーに1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットが組み込まれた、書き込み可能なポリマーを含む。一部の実施形態では、化学修飾可能な構造は、修飾可能なフルオロフォアであり得る。したがって、書き込み可能なポリマーは、符号化可能なブランクテープに類似したものであり、ポリマー鎖に沿って修飾可能な構造のセットを修飾することによって書き込み可能なポリマーへの符号化がなされ、これは、局部的な光または酸化還元エネルギーを含めた(しかしこれらに限定されない)修飾のための任意の書き込み方法によって行うことができる。多くの実施形態では、セットは、データのビットを符号化するために修飾することができる1つまたは複数の化学修飾可能な構造を含む。種々の実施形態では、化学修飾可能な構造は、ケージング基(例えば、ケージまたは光により除去可能な基)、クエンチャー、光変換型フルオロフォア、または核酸の安定な二次構造であり得る。したがって、種々の実施形態では、化学修飾可能な構造を、脱ケージング、クエンチャーを放出させること、フルオロフォアを光により変換すること、または核酸の安定な二次構造を変更することによって修飾することができる。1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットの修飾は、データコードであると考えることができ、その場合、1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットは「ビット」に類似したものであり得る;セットの一方の構造的状態が「0」に類似したものであり、セットの第2の構造的状態が「1」に類似したものである。例えば、一実施例では、化学修飾可能な構造のセットは、ケージドフルオロフォアと消光フルオロフォアとを含み得、クエンチャーのみの放出が「0」に類似したものであり得、クエンチャーの放出およびケージドフルオロフォアの脱ケージングが「1」に類似したものであり得る。しかし、バイナリコードのみが可能なのではなく、データコードを3進数、4進数、または他の数字方式のコードで書き込むことができ、これは、複数の型の化学修飾可能な構造を利用することまたは複数回の書き込み/修飾を実施することによって行うことができることが理解されるべきである。1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットの修飾は、安定または恒久的なものであり得、特に、暗い保存場所で維持した場合、長期間にわたるアーカイブが可能になる。
【0290】
多くの実施形態では、ポリマーに、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される反応性基を組み入れ、その反応性基を、1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットを結合反応によって組み込むために利用することができる。同様に、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが反応性基を含み得、その反応性基を利用して、ポリマーの繰り返し間隔をあけて配置される反応性基の1つと結合させ、したがって、各セットを組み込むことができる。多くの実施形態では、1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットをポリマーに組み込むことにより、ポリマーを、1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットを介してデータを符号化することが可能な書き込み可能なポリマーに変換する。
【0291】
多くの実施形態は、書き込み可能なポリマーの組成物を対象とする。生体ポリマー、有機ポリマー、および無機ポリマーを含めた(しかしこれらに限定されない)任意の適当なポリマーを利用することができる。生体ポリマー(およびそれらの類似体)としては、DNA、RNA、ホスホロチオエートDNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、2’-フルオロ-DNA、2’-O-メチルRNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド鎖、およびペプトイド鎖が挙げられる(しかしこれらに限定されない)。核酸ポリマーは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。さらに、核酸ポリマーは任意の鏡像異性体(例えば、d-DNA、l-DNA)を利用したものであってよい。同様に、ペプチドポリマーは任意の鏡像異性体であってよい。
【0292】
いくつかの実施形態では、ポリマーに、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される荷電基を組み入れることができる。一部の実施形態では、ポリマーを、荷電した骨格を介して繰り返し荷電したものにすることができる。一部の実施形態では、ポリマーを、荷電した構成成分を有する単量体を組み入れることにより、繰り返し荷電したものにすることができる。種々の実施形態では、ポリマーの反復電荷は、負に荷電したリン酸基、負に荷電した硫酸基、負に荷電したカルボン酸基、または正に荷電したアンモニウム基によってもたらすことができる。
【0293】
いくつかの実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーは、ポリマー骨格によって連結した1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットを含む。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットは、空間分解能がもたらされるように間隔をあけて配置され得、データ符号化に従って各セットを独立に、かつ選択的に修飾することができるようにすることができる。一部の実施形態では、ポリマー骨格を介して連結したスペーサー残基を利用して、修飾可能なフルオロフォアビットの間に間隔をもたらす。種々の実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーは、データを標識するまたはその位置を特定するためのデリミタおよび/またはデータタグをさらに含み得る。
【0294】
いくつかの実施形態では、書き込み手順を利用して、書き込み可能なポリマーにデータを符号化する。ポリマーの1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットを選択的に修飾することによってデータ符号化を実施し、その結果、書き込まれたポリマーは「0」と「1」のバイナリコードに類似した一連の構造的修飾を含有する。
【0295】
一部の実施形態では、複数の変換可能な残基が順を追って選択的に修飾される。
【0296】
一部の実施形態では、複数の変換可能な残基がポリマーの一方の末端からポリマーの他方の末端まで順を追って選択的に修飾される。
【0297】
多くの実施形態によると、データが書き込まれたポリマーを、光退色を生じさせる光が存在しない暗闇中で保存する。一部の実施形態では、データが書き込まれたポリマーを、空気または酸素が排除される環境中で保存し、それにより、安定性を増強することができる。(例えば)アルコール、抗酸化剤、キレート剤および生物学的阻害剤(例えば、ヌクレアーゼ阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤)などの安定剤を保存されるポリマーと共に含めることができる。書き込まれた核酸ポリマー上のデータを読み取るために、例えば、Oxford Nanopore TechnologiesのPromethION、MinION、およびGridIONシーケンシングプラットフォーム(Oxford、UK)など、単量体の構造的差異を解析することが可能なナノポアを利用することができる。また、データの読み取りのために、ナノポアデバイスを製作または製造することができる。ナノポアは、固体の状態の材料で構成されるものであってもよく、1つまたは複数のタンパク質を含有するものであってもよい。あるいは、フルオロフォアを1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットに利用する場合、Pacific BioscienceのSingle Molecule,Real-Time(SMRT)sequencing platform(Menlo Park、CA)などの、フルオロフォアの蛍光を検出することが可能な任意の適当なナノポアを利用することができる。
【0298】
本開示は、種々の実施形態による、例えば長い有機ポリマーおよび/またはDNAなどの既存のポリマーに化学修飾可能な構造を組み込む方法を提供する。化学修飾可能な構造を組み込むことにより、これらのポリマーに、局部的な光または酸化還元シグナルを介してデータを書き込むことが可能になり得る。これらの「書き込み可能な」基をデータ書き込みの前にポリマーに沿って繰り返し付加し、それにより、ポリマー分子をデータ符号化可能ポリマーにすることができる。局部的な光学または電子シグナルをポリマーに沿って反復基に対して利用して、これらの書き込み可能な基を化学的に修飾して修飾された構造的状態にすることができ、これは1と0のバイナリコードに類似したものであり、蛍光イメージングによって、または時間分解電流測定によって読み取ることができる。この手法により、非常に長いポリマーにデータを符号化し、それにより、高いデータ密度を実現すること、および迅速なデータ書き込みの機構をもたらすことが可能になる。
【0299】
データを保存するための、ポリマーへの修飾可能なデータビットの組込み
本開示の実施形態による化合物および合成方法は、1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットを既存のポリマーに組み込んで、データ符号化可能ポリマーを生成することに基づく。1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットを単量体に付加して、データ「ビット」を創出し、したがって、ポリマーにコード(例えば、バイナリコード)で符号化することができる。化学修飾可能な構造のセットそれぞれ(すなわち、ビット)は、書き込まれていない状態、および少なくとも第1の書き込まれた状態、および一部の実施形態では追加の書き込まれた状態、の2つまたはそれよりも多くの状態で存在し得る。一部の実施形態では、書き込まれていない状態はバイナリコードの「0」に類似したものであり、書き込まれた状態は「1」に類似したものである。一部の実施形態では、第1の書き込まれた状態はバイナリコードの「0」に類似したものであり、第2の書き込まれた状態は「1」に類似したものである。書き込み可能なポリマーは、長い長さに(例えば、化学修飾可能な構造のセットの付加を伴って5~100,000単量体、またはそれよりも長く)創出することができ、また、データ書き込みの前にまとめて作製することができる。
【0300】
いくつかの実施形態では、書き込み可能なポリマーは、ポリマー骨格によって連結したものであり得る化学修飾可能な構造のセットが付加された複数の単量体を含む。ある特定の実施形態では、化学修飾可能な構造のセットの間に繰り返し間隔をあけて配置して、化学修飾可能な構造のセットそれぞれを独立に修飾することができるような空間分解能がもたらされるようにすることができる。空間分解能は、少なくとも一部において、書き込み機構に依存する。例えば、分解能が1nmである光学光源およびデバイスを使用して化学修飾可能な構造を修飾する場合、化学修飾可能な構造ビットのセットそれぞれを少なくとも1nm隔てることができる。フルオロフォアビットの間に任意の適当なスペーサーを利用することができる。一部の実施形態では、ポリマー骨格によって連結した残基をスペーサーとして利用することができる。ポリマーとして核酸を利用する一部の実施形態では、スペーサーは、化学修飾可能な構造のセットが組み込まれていない核酸塩基であり得る。種々の実施形態では、書き込み可能なポリマーは、データを標識するためのデリミタおよび/またはデータタグをさらに含み得、そのそれぞれを特定の残基基列によってもたらすことができる。
【0301】
図7に、種々の実施形態による、複数の化学修飾可能な構造をポリマーに組み込んで、書き込み可能なポリマーを生成することについての例示的な概略図を提示する。いくつかの実施形態では、化学修飾可能な構造は、データコード(例えば、「0」および「1」に類似したバイナリコード)を得るために光または酸化還元シグナルによって少なくとも第2の別個の状態に修飾可能である。図7には、反応性基Yを含む反復単量体を有する一般的なポリマー鎖が示されている。ここに示されているポリマー化学構造は一般的なものであり、DNAを含め、事実上あらゆるポリマーを表すことに留意されたい。Yは、ポリマーに組み入れることができる反応性基を示し、ポリマー合成の間に組み入れることができ、Xは、化学修飾可能な構造上の相補的な反応性基を示す。ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される化学修飾可能な構造を得るために、XをYと反応させて、化学結合を形成することができる。多くの実施形態では、(例えば)超解像レーザー励起などにより(その開示が参照により本明細書に組み込まれるS. J. Sahl and S. W. Hell High-Resolution 3D Light Microscopy with STED and RESOLFT. 2019 Aug 14. In: Bille JF, editor. High Resolution Imaging in Microscopy and Ophthalmology: New Frontiers in Biomedical Optics. Cham (CH): Springer; 2019. Chapter 1)、またはナノポアデバイスを使用することにより(その開示がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるD. Garoli, et al., Nano Lett. 2019; 19:7553-7562;およびM. Rahman, et al., Lab Chip. 2021; 21:3030-3052)、または(DNAに関しては)鎖に沿って進行する増感タンパク質により(その開示が参照により本明細書に組み込まれる特許出願第63/248407号を参照されたい)、局部的な光または酸化還元シグナルを鎖に沿って逐次的に供給することによってデータを書き込むことができる。
【0302】
種々の実施形態では、化学修飾可能な構造のセットを組み込むためのポリマーは、任意の長さ、例えば、15単量体の短さから、大多数の有機ポリマーに関しては5000単量体を超える長さまで、核酸ポリマーに関しては100,000単量体を超える長さまでであってよい。種々の実施形態では、ポリマーは、100単量体長を超える、200単量体を超える、300単量体を超える、400単量体を超える、500単量体を超える、1000単量体を超える、5000単量体を超える、10,000単量体を超える、50,000単量体を超える、または100,000単量体を超える。最大長は、選択されたポリマー種の安定性によって、それらを作出するために使用される方法によって、および書き込まれたデータを読み取るために使用される方法によってのみ限定される。より多くのビットを含有する長い鎖には、分子当たりに含有されるデータがより多くなるという利点がある。
【0303】
いくつかの実施形態は、書き込み可能なポリマーを創出するために既存のポリマーに組み入れることができる1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットを対象とする。化学修飾可能な構造は、種々の実施形態によると、制御された反応化学(例えば、光エネルギーまたは酸化還元エネルギー)によって第1の構造状態(例えば、ケージされた)から第2の構造的状態(例えば、脱ケージされた)に構造的に変更可能な1つまたは複数の化学基を含む。一部の実施形態では、化学修飾可能な構造に、ケージされ得るフルオロフォアを組み入れ、その場合、ケージドフルオロフォアは第1の構造的状態にあり、ケージの放出により、第2の構造的状態がもたらされる。一部の実施形態では、化学修飾可能な構造に、消光フルオロフォアを組み入れ、その場合、消光フルオロフォアは第1の構造的状態を有し、クエンチャーの放出により、第2の構造的状態がもたらされ、それにより、より明るい蛍光が生じ得る。一部の実施形態では、化学修飾可能な構造に、特定の蛍光の質(例えば、第1の発光または吸収波長)を有する第1の状態から第2の区別可能な蛍光の質(例えば、第2の発光または吸収波長)を有する第2の状態に変換することが可能なフルオロフォアを組み入れる。一部の実施形態では、化学修飾可能な構造に、2つの構造的に変更可能な基を組み入れて、少なくとも2つの異なる状態に書き込み可能なビットをもたらす。
【0304】
図8A~8Cのそれぞれに、種々の実施形態による、書き込み可能な「ビット」として利用することができる化学修飾可能な構造のセットの例を提示する。多くの実施形態では、化学修飾可能な構造のセット(the of sets of)をポリマー鎖に沿って付加することができる。図8A~8Cに示されている通り、これらの化学修飾可能な構造のセットは、デュアルビット書き込み能を有する。したがって、化学修飾可能な構造のセットそれぞれを書き込まれていない状態で単量体に付加し、次いで、第1の書き込まれた状態および/または第2の書き込まれた状態に変換する。「X」は、ポリマー単量体と共有結合を形成することができる反応性基を示す。ポリマーは、DNAもしくは修飾DNA(図9を参照されたい)、または反応性基を有するポリマー(図10を参照されたい)であり得る。
【0305】
図8Aの例は、2つのケージドフルオロフォアを含む化学修飾可能な構造のセットである。一部の実施形態では、2フルオロフォアビットは、互いにおよそ30オングストローム以内に存在する2つのフルオロフォアを含む。本実施例では、色が異なる2つのフルオロフォア:クマリンおよびTokyo greenを化学修飾可能な構造のセットに利用する。さらに、フルオロフォアそれぞれをケージング基でケージすることができる。データ書き込み前は、フルオロフォアのケージングに起因して、ポリマーによる蛍光発光はほとんどまたは全くない可能性がある。データのビットを書き込むために、紫色光(例えば、およそ430nm)の1回または複数回のパルスを使用して、青色クマリンフルオロフォアのみを脱ケージして、青色蛍光を生じさせることができる。あるいは、UV光(例えば、およそ365nm)の1回または複数回のパルスを利用して、青色クマリンフルオロフォアとTokyo greenフルオロフォアの両方を脱ケージし、それにより、クマリンによる青色の発光シグナルとそれに加えてTokyo greenによる緑色発光シグナルを生じさせることができる。あるいは、紫色光(例えば、およそ430nm)とUV光(例えば、およそ365nm)の二重パルスにより、青色クマリンフルオロフォアとTokyo greenフルオロフォアの両方を脱ケージし、それにより、クマリンによる青色の発光シグナルとそれに加えてTokyo greenによる緑色発光シグナルを生じさせることができる。両方のフルオロフォアが脱ケージされ得る一部の実施形態では、青色フルオロフォアから緑色フルオロフォアにエネルギーが供与され得、その結果、フェルスターエネルギー移動が生じ、緑色蛍光が増強され、青色蛍光が低減する。したがって、この手法では、データを、ポリマーに沿って順を追って青色発光シグナルと緑色発光シグナルのバイナリコードとして符号化することができる。一部の実施形態では、化学修飾可能な構造のセットをポリマーに、図8A~8CにおいてXによって示されている通り骨格に結合した反応性残基を介して組み込むことができる。数例を提示しているが、任意の適当なフルオロフォアおよびケージを種々の実施形態に従って使用することができることが理解される。
【0306】
種々の光により除去可能な基を、ケージドフルオロフォアに組み入れることができる(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるY. Zhao, et al., J Am Chem Soc. 2004; 126:4653-63を参照されたい)。一部の実施形態では、フルオロフォアそれぞれが、エネルギー(例えば、光または酸化還元)を用いて切断可能なリンカー(例えば、エーテル基)によって連結したケージング構成成分を有し得る。フルオロフォアは、ポリマー骨格に直接、骨格に結合した残基の反応基を介して結合させることができる。数例を提示しているが、任意の適当な光により除去可能な基およびフルオロフォアを種々の実施形態に従って使用することができることが理解される。
【0307】
図8Bの例は、特定の波長の光によりフルオロフォアを変換して、第2および/または第3の蛍光波長を発するようにすることができる、光変換型フルオロフォアを含む化学修飾可能な構造のセットである。いくつかの実施形態では、光変換型フルオロフォアをデータの「ビット」に類似した様式で利用し、それにより、「0」または「1」デジタルビット指定に類似した、第1の構造的状態(例えば、第1の発光波長)から第2の構造的状態(例えば、第2の発光波長)への変換を可能にすることができる。一部の実施形態では、光変換型フルオロフォアを、第1の放出状態(例えば、第1の発光波長)から第2の放出状態(例えば、第2の発光波長)に、そしてさらに第3の放出状態(例えば、第3の発光波長)に変換することができ、それにより、3進数コードまたは正に書き込まれたバイナリコード(すなわち、第1の放出状態は書き込まれていない状態であり、第2の放出状態は「0」に類似したものであり、第3の放出状態は「1」に類似したものである)が可能になる。ビットの蛍光状態は、個々のフルオロフォア分子の蛍光を検出することが可能なナノポアデバイスを利用することで検出可能である。
【0308】
種々の光変換型フルオロフォア基を利用することができる(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるT. J. Chozinski, L. A. Gagnon, and J. C. Vaughan, FEBS Lett. 2014; 588:3603-12を参照されたい)。図8Bの例において見ることができるように、ヘプタメチンシアニン色素を、特定の波長の光のパルスによってペンタメチンシアニン色素またはトリメチンシアニン色素のいずれかに変換することができる。一部の実施形態では、7炭素アルケン含有鎖を有するヘプタメチンシアニン色素は近赤外蛍光を発する。一部の実施形態では、およそ740nmの光エネルギーにより、ヘプタメチンシアニン色素のアルケン含有鎖が修飾され、その結果、5炭素鎖を有するペンタメチンシアニン色素がもたらされる。ある特定の場合では、ペンタメチンシアニン色素は赤色蛍光を発する。さらに、一部の実施形態に関しては、およそ638nmの光エネルギーにより、ヘプタメチンシアニン色素またはペンタメチンシアニン色素のアルケン含有鎖が修飾され、その結果、3炭素鎖を有するトリメチンシアニン色素をもたらすことができる。一部の例に関しては、トリメチンシアニン色素は黄色/緑色光を発し得る。したがって、この手法では、データを、赤色発光シグナルと黄色/緑色発光シグナルのバイナリコードとして符号化することができる。図8A~8CにおいてXにより示されている通り、化学修飾可能な構造のセットをポリマーに、骨格に結合した反応性残基を介して組み込むことができる。数例を提示しているが、任意の適当な光変換型フルオロフォアを種々の実施形態に従って使用することができることが理解される。
【0309】
一部の実施形態では、図8Cに示されている通り、化学修飾可能な構造のセットは、放出可能なクエンチャーとケージドフルオロフォアの組合せを含み得る。一部の実施形態では、2フルオロフォアビットは、互いにおよそ30オングストローム以内に存在する2つのフルオロフォアを含む。一部の実施例では、色が異なる2つのフルオロフォア:修飾されていないクマリンおよび光ケージドTokyo greenを化学修飾可能な構造のセットに利用する。さらに、光により放出可能な蛍光クエンチャーを、光により切断可能なリンカーと共に2つの色素の近くに組み入れることができる(また、本実施例ではクマリン青色フルオロフォアに結合している)。一部の実施形態では、データ書き込み前は、蛍光クエンチャーおよびフルオロフォアのケージングに起因して、ポリマーによる蛍光発光はほとんどまたは全くない可能性がある。データのビットを書き込むために、紫色光(例えば、およそ430nm)の1回または複数回のパルスを使用して、クエンチャーのみを放出させ、その結果、青色クマリンから青色蛍光を生じさせることができる。あるいは、UV光(例えば、およそ365nm)の1回または複数回のパルスを利用して、クエンチャーを放出させ、Tokyo greenフルオロフォアを脱ケージし、それにより、クマリンによる青色の発光シグナルとそれに加えてTokyo greenによる緑色発光シグナルを生じさせることができる。あるいは、紫色光(例えば、およそ430nm)とUV光(例えば、およそ365nm)の二重パルスによりクエンチャーを放出させ、かつTokyo greenフルオロフォアを脱ケージし、それにより、クマリンによる青色の発光シグナルとそれに加えてTokyo greenによる緑色発光シグナルを生じさせることができる。両方のフルオロフォアが不消光および脱ケージされると、青色フルオロフォアから緑色フルオロフォアにエネルギーが供与され得、その結果、フェルスターエネルギー移動が生じ、緑色蛍光が増強され、青色蛍光が低減する。したがって、この手法では、データを、ポリマーに沿って順を追って、青色発光シグナルと緑色発光シグナルのバイナリコードとして符号化することができる。図8A~8CにおいてXによって示されている通り、化学修飾可能な構造のセットをポリマーに、骨格に結合した反応性残基を介して組み込むことができる。数例を提示しているが、任意の適当なフルオロフォアおよびケージを種々の実施形態に従って使用することができることが理解される。
【0310】
種々のクエンチャー基を利用することができる(例えば、その開示がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるJ. R. Lakowicz, (Ed.). (2013). Principles of fluorescence spectroscopy. Springer science & business media. pp. 277-330 "Quenching of Fluorescence";およびM. K. Johansson, Methods Mol Biol. 2006; 335:17-29を参照されたい)。一部の実施形態では、クエンチャーは、光エネルギーを用いて切断可能なリンカー(例えば、ニトロベンジル基)を有する。クエンチャーは、ポリマー骨格に直接結合させることもでき、骨格に結合した残基に結合させることもでき、フルオロフォアに結合させることもできる。数例を提示しているが、任意の適当なクエンチャー、放出機構、およびフルオロフォアを種々の実施形態に従って使用することができることが理解される。
【0311】
図9に、一部の実施形態に関して化学修飾可能な構造(例えば、フルオロフォア)のセットを組み込むために使用することができる、核酸および修飾された核酸ポリマーを用いた反応の例を提示する。一部の実施形態では、化学修飾可能な構造のセットを組み込むための反応として、アルキル化、アシル化、還元アミノ化、「クリック」化学、およびオキシム形成を伴う酵素的ウラシル除去が挙げられる(しかしこれらに限定されない)。数例を提示しているが、任意の適当な結合形成反応を種々の実施形態に従って使用することができることが理解される。DNA、RNA、ホスホロチオエートDNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、2’-フルオロ-DNA、2’-O-メチルRNA、およびロックド核酸(LNA)を含めた(しかしこれらに限定されない)任意の核酸ポリマーを利用することができる。核酸ポリマーは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。さらに、核酸ポリマーは、任意の鏡像異性体(例えば、R-DNA、L-DNA)を利用したものであってよい。多くの実施形態では、化学修飾可能な構造のセットを天然に存在するDNAポリマー(例えば、生物学的供給源から抽出されたもの)に組み込む。
【0312】
多くの実施形態では、ポリメラーゼ伸長または化学合成を利用して、生体ポリマーを生成することができる。あるいは、多くの実施形態では、生体ポリマーを生物学的供給源から抽出することができる。ポリメラーゼ伸長を利用する場合、ポリメラーゼによって重合させることができる適当なヌクレオチド、核酸塩基および残基を利用する。化学合成(例えば、ホスホロアミダイト合成)を利用する場合、より広範囲の核酸塩基および残基を利用することができるが、一般に、合成によりもたらされる核酸鎖は短く(例えば、10残基から200残基の間)、これをライゲーションして、より長いポリマーを生成することができる。ポリメラーゼおよびライゲーション方法はどちらも、反復核酸ポリマーを一本鎖または二本鎖のいずれの状態でも構築し得るものであることが理解される。
【0313】
図10に、適切に官能化された化学修飾可能な構造のセットと反応させることができるポリマー側鎖官能基の例を提示する。利用することができる官能基としては、アミン、チオール、アルコール、カルボン酸、アジド、アルキン、およびアルケンが挙げられる(しかしこれらに限定されない)。数例を提示しているが、任意の適当な結合形成性官能基および反応を種々の実施形態に従って使用することができることが理解される。利用可能な官能基を有する任意のポリマーを利用することができ、長いポリマーを生成するための任意の適当な方法によって生成することができる。一般に、有機ポリマーおよび無機ポリマーは、フリーラジカル重合、基転移重合、開環メタセシス重合、RAFT重合、および縮合重合を含めた(しかしこれらに限定されない)、ポリマーを制御可能に生じさせる適当な重合化学によって生成される(例えば、その開示がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるS. K. Samal, et al., Chem Soc Rev. 2012; 41:7147-94; S. L. Baker, et al., Biomacromolecules. 2019; 20:2392-240;およびP. Strasser and I. Teasdale, Molecules. 2020; 25:1716を参照されたい)。例えば、合成後のポリマーが、反復配列内に反応性チオール基を含有する場合、その反応性チオール基をマレイミドとコンジュゲートした化学修飾可能な構造のセットと反応させることができる。
【0314】
任意の結合形成反応を利用して、書き込み可能なビットをポリマーに組み込むことができる。一部の実施形態では、結合形成反応は、脱離基(例えば、ヨージド、ブロミド、クロリド、トシレート、トリフレート、メシレート、または同様のもの)を有するsp3炭素に対するアミン、チオール、またはアルコールによる求核攻撃である。求核剤となる反応性基がポリマー上に存在し、求電子剤が書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、求核剤となる反応性基が書き込み可能なビット上に存在し、求電子剤がポリマー上に存在してもよい。
【0315】
一部の実施形態では、結合形成反応は、アミン基とカルボン酸基の間のアミド結合形成反応である。アミド結合形成は、縮合もしくはカップリング試薬、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、または水溶性カルボジイミド、例えばEDC、またはウロニウムおよびホスホニウムペプチドカップリング試薬、例えば、PyBOPおよびHBTUによって促進することができる。カルボン酸がポリマー上に存在し、アミンが書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、カルボン酸が書き込み可能なビット上に存在し、アミンがポリマー上に存在してもよい。
【0316】
一部の実施形態では、結合形成反応は、アミンと活性化エステルの間のアミド結合形成である。活性化エステルとしては、NHSエステルまたはチオエステルが挙げられる(しかしこれらに限定されない)。活性化エステルがポリマー上に存在し、アミンが書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、活性化エステルが書き込み可能なビット上に存在し、アミンがポリマー上に存在してもよい。
【0317】
一部の実施形態では、結合形成反応は、アミンとイソシアネートまたはイソチオシアネートの反応による尿素またはチオ尿素の形成である。イソシアネートまたはイソチオシアネートがポリマー上に存在し、アミンが書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、イソシアネートまたはイソチオシアネートが書き込み可能なビット上に存在し、アミンがポリマー上に存在してもよい。
【0318】
一部の実施形態では、結合形成反応は、アジド-アルキン環化付加をもたらす、アジドとアルキンの間の「クリック」電子環化反応である。アジドがポリマー上に存在し、アルキンが書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、アジドが書き込み可能なビット上に存在し、アルキンがポリマー上に存在してもよい。
【0319】
一部の実施形態では、結合形成反応は、テトラジンとひずみアルケンの間のテトラジン環化付加である。テトラジンがポリマー上に存在し、ひずみアルケンが書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、テトラジンが書き込み可能なビット上に存在し、ひずみアルケンがポリマー上に存在してもよい。
【0320】
一部の実施形態では、結合形成反応は、アルデヒドまたはケトンとアミノオキシ基またはヒドラジン基の間のオキシムまたはヒドラジン形成である。アルデヒドもしくはケトンがポリマー上に存在し、アミノオキシ基もしくはヒドラジン基が書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、アルデヒドもしくはケトンが書き込み可能なビット上に存在し、アミノオキシ基もしくはヒドラジン基がポリマー上に存在してもよい。
【0321】
一部の実施形態では、結合形成反応は、アミンとアルデヒドまたはケトンの間の反応、その後の水素化ホウ素試薬での還元による還元アミノ化である。アルデヒドもしくはケトンがポリマー上に存在し、アミンが書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、アルデヒドもしくはケトンが書き込み可能なビット上に存在し、アミンがポリマー上に存在してもよい。
【0322】
一部の実施形態では、結合形成反応は、マイケル受容体へのチオール付加である。マイケル受容体としては、マレイミドおよびブロモマレイミドが挙げられる(しかしこれらに限定されない)。チオールがポリマー上に存在し、マイケル受容体が書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、チオールが書き込み可能なビット上に存在し、マイケル受容体がポリマー上に存在してもよい。
【0323】
一部の実施形態では、結合形成反応は、ジスルフィドとのチオール交換反応である。ジスルフィドがポリマー上に存在し、チオールが書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、ジスルフィドが書き込み可能なビット上に存在し、チオールがポリマー上に存在してもよい。
【0324】
一部の実施形態では、結合形成反応は、光によって媒介されるアルケンへのチオール付加である(時には「チオール-クリック」反応と称される)。チオールがポリマー上に存在し、アルケンが書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、チオールが書き込み可能なビット上に存在し、アルケンがポリマー上に存在してもよい。
【0325】
一部の実施形態では、結合形成反応は、活性化スルホニル種に対するアミン、チオール、またはアルコールによる求核攻撃である。スルホニル種としては、硫黄(VI)交換基質、フッ化スルフリル、およびオキシ二フッ化イミノ硫黄(iminosulfur oxydifluoride)が挙げられる(しかしこれらに限定されない)。求核剤となる反応性基がポリマー上に存在し、求電子剤が書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、求核剤となる反応性基が書き込み可能なビット上に存在し、求電子剤がポリマー上に存在してもよい。
【0326】
一部の実施形態では、結合形成反応は、メタセシスによるアルケン間の金属触媒反応である。第1のアルケンがポリマー上に存在し、第2のアルケンが書き込み可能なビット上に存在してよい。
【0327】
一部の実施形態では、結合形成反応は、活性化アリール基に対するアミン、チオール、またはアルコールによる求核攻撃である。アリール基としては、ペンタフルオロベンゼンおよびパラ-クロロ-アシルベンゼンが挙げられる(しかしこれらに限定されない)。求核剤となる反応性基がポリマー上に存在し、求電子剤が書き込み可能なビット上に存在してもよく、または逆に、求核剤となる反応性基が書き込み可能なビット上に存在し、求電子剤がポリマー上に存在してもよい。
【0328】
種々の実施形態では、有機ポリマーは、合成方法および単量体の型に応じて、100個から5000個の間の単量体を含む。一部の実施形態では、有機ポリマーは、ホモポリマーである。一部の実施形態では、有機ポリマーは、交互共重合体である。
【0329】
多くの実施形態では、ポリマーは、ポリマーに沿って繰り返し荷電しており、それが、電荷を利用してポリマーをポアを通して移動させるナノポアデバイスでポリマーのデータを読み取るのに役立つ。一部の実施形態では、ポリマーは、荷電した骨格を有することによって繰り返し荷電したものである。一部の実施形態では、ポリマーは、荷電した構成成分を有する単量体を組み入れることによって繰り返し荷電したものである。種々の実施形態では、ポリマーの反復電荷は、負に荷電したリン酸基またはホスホン酸基、負に荷電した硫酸基またはスルホン酸基、負に荷電したカルボン酸基、または正に荷電したアンモニウム基によってもたらされる。
【0330】
多数の実施形態が、スペーサー、デリミタ、およびデータタグのうちの1つまたは複数がさらに組み入れられるポリマー(特に、生体ポリマー)も対象とする。種々の実施形態によると、スペーサーは、ポリマー内に組み入れられる、化学修飾可能な構造ビット間にデータ書き込み機構の空間分解能に応じて必要な間隔をもたらす残基である。多くの実施形態では、スペーサーは、化学修飾可能な構造のセットに結合する能力を欠き、したがって、スペーサーは、化学修飾可能な構造のポリマーへの組込みに干渉しない。一部の実施形態では、スペーサーは、化学修飾可能な構造のセットを組み込むための反応の型に非反応性である。一部の実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーは、ありとあらゆるスペーサーに同じ残基を繰り返し利用する。しかし、一部の実施形態では、核酸ポリマーは、スペーサーとして2つまたはそれよりも多くの異なる残基を利用する。天然に存在する核酸塩基、非天然核酸塩基、テトラヒドロフラン無塩基残基、および/またはエチレングリコール残基を含め、ビットを組み込む能力を欠く任意の適当な残基をスペーサーとして利用することができる。
【0331】
デリミタは、種々の実施形態によると、境界を示す残基である。一部の実施形態では、デリミタを利用して、2つの隣接するデータフィールドを隔てる。天然に存在する核酸塩基、非天然核酸塩基、テトラヒドロフラン無塩基残基、および/またはエチレングリコール残基を含め、ビットを組み込む能力を欠く任意の適当な残基をデリミタとして利用することができる。
【0332】
いくつかの実施形態では、データタグは、ある特定のデータを示す一続きの単量体(一般には4つまたはそれよりも多くの残基)である。例えば、データタグは、データの型、日付、データソース、または任意の他の情報を示すものであり得る。天然に存在する核酸塩基、非天然核酸塩基、テトラヒドロフラン無塩基残基、および/またはエチレングリコール残基を含め、ビットを組み込む能力を欠く任意の適当な残基をデータタグ残基として利用することができる。
【0333】
多くの実施形態では、任意の既存の核酸分子を、化学修飾可能な構造のセットを付加するための基体(substrate)として利用することができる。一部の実施形態では、化学修飾可能な構造のセットを、既存の核酸分子に、核酸塩基との化学反応によって組み込む(例えば、図9参照)。一部の実施形態では、既存の核酸分子に対してポリメラーゼ伸長を実施して、反応性官能基を有する残基を組み入れる(例えば、図10参照)。ポリマー伸長を実施するための任意の適当な手段を利用することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー伸長を実施する場合、1つまたは複数のヌクレオシド三リン酸を官能基で修飾し、したがって、ポリマー鎖全体を通して官能基が核酸ポリマーに組み入れられる。反応性官能基を組み入れることにより、ポリマーに沿って官能基のそれぞれに対して化学修飾可能な構造のセットを組み込むことが可能になる。
【0334】
図11に、天然由来のDNA分子をポリマー伸長およびアルファ-Sヌクレオチドの組み入れによって光学的に書き込み可能なポリマーに変換するための例示的な手法を示す概略図を提示する。一部の実施形態では、DNAを細胞から単離することができ、それを変性させ、それにより、2つの一本鎖を生じさせる。一方の鎖と相補的なプライマーを、Mg2+を含有するポリメラーゼ支持緩衝液中、ポリメラーゼおよびヌクレオシド三リン酸と共に付加することができる。一部の実施形態では、ヌクレオシド三リン酸の1つまたは複数がアルファ-Sヌクレオチドであり、したがって、求核性チオレート(thiolate)反応性基がポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置されるDNAポリマーがもたらされる。各求核性チオエートにより、ポリメラーゼによって反応性基がどこに挿入されるかにかかわらずホスホロチオエート連結を形成するための手段をもたらすことができる(その開示が参照により本明細書に組み込まれるZ. Yang, A. M. Sismour, and S. A. Benner, Nucleic Acids Res. 2007; 35:3118-27を参照されたい)。得られたDNAポリマーをアルキル化基と反応させて、鎖に沿って化学修飾可能な構造のセットを組み込むことができる。同じプロセスを、天然由来ではない長いDNA、(例えば)ローリングサークル反応増幅またはライゲーションを伴う化学合成から得られた反復DNAなどに適用することができ、それにより、反応性基のより制御された間隔を所望の通りもたらすことができる。ローリングサークル反応増幅またはライゲーションを伴う化学合成に関するさらなる情報については、特許出願第63/226,720号を参照されたい。
【0335】
いくつかの実施形態は、データビットを記述するための、核酸の安定かつ変更可能な二次高次構造の使用を対象とする。多くの実施形態では、データビットは、1つ、2つ、またはそれよりも多くの二次高次構造において安定に適合させることができる比較的短い核酸列(例えば、2塩基から200塩基の間)を含み得る。いくつかの実施形態では、安定な二次高次構造は、光または酸化還元エネルギーによって変更可能である。一部の実施形態では、安定な二次高次構造は、光または酸化還元エネルギーによって変更されるまで、そのコンフォメーションに固定されている。安定なコンフォメーションを生成するために、多くの実施形態によると、核酸ポリマーに残基のペアを組み入れ、各残基が利用可能な反応性基を有し、したがって、残基のペアが互いに安定な結合を形成し得る。いくつかの実施形態では、残基のペアは二次高次構造において互いに近傍に存在し、したがって、反応性基が互いに安定な結合を形成することが可能である。一部の実施形態では、データビットは、2つのコンフォメーションをとることが可能である連結可能な残基のペアを1つ含む。一部の実施形態では、データビットが、2つのコンフォメーションをとることが可能であり得る場合、その2つのコンフォメーションは、ヘアピン内の近くの残基間の結合で安定になったヘアピン、および単純な二重鎖(すなわち、ヘアピンなし)であり得る。一部の実施形態では、データビットは、3つのコンフォメーションをとることが可能な連結可能な残基のペアを2つ含む。3つのコンフォメーションをとることが可能なデータビットの一部の実施形態では、その3つのコンフォメーションは、近くの残基間の結合で安定になった第1のヘアピン、近くの残基間の結合で安定になった第2のヘアピン、および単純な二重鎖(すなわち、ヘアピンなし)である。3つのコンフォメーションをとることが可能なデータビットの一部の実施形態では、3つのコンフォメーションは、それぞれ近くの残基間の結合で安定になった第1のヘアピンと第2のヘアピン、近くの残基間の結合で安定になった第1のヘアピンのみ(すなわち、一方の残基のペアが連結して安定なヘアピンを形成し、他方の残基のペアが連結せずに、単純な二重鎖コンフォメーションをとっているもの)、および単純な二重鎖(すなわち、ヘアピンなし)である。連結可能な残基のペアを2つ利用して2つのヘアピンを形成する一部の実施形態では、2つのヘアピンは他方と区別可能であり得る(例えば、一方のヘアピンが他方のヘアピンよりも長い)。
【0336】
図12に、反復DNAポリマーの、変更可能であるが、それでも書き込みまでは安定である構造的状態を3つ有し、構造的状態それぞれがデータコード(例えば、バイナリコード)に対応する、安定な構造的に折り畳まれたポリマーへの変換を示す概略図を提示する。図12において、「X」、「Y」、「Z」、および「Q」は、オリゴヌクレオチド化学合成によって、またはポリメラーゼ伸長によってDNAに組み入れられた残基上の利用可能な反応性基を示す。そのような反応性基の例は図10および図13に提示されている。さらに、一部の実施形態では、反応性基を、適当に間隔をあけたペアで提供して、安定な二次構造(例えば、ヘアピン)を形成させる。示されている通り、XとY、およびZとQは、それぞれペアとして働き、この2つのペアを併せてデータビットとして利用することができる。反応性基Xは反応性基Yに対して2残基以内に存在し、同様に、反応性基Zは反応性基Qに対して2残基以内に存在するが、反応性基は、二次高次構造における場合、ただ単に互いに反応するために近接している必要があるだけで、配列内で隣り合っている必要はないことが理解されるべきである。さらに、各ペアの少なくとも一方の反応性基は、残基からの反応性基の放出を可能にするために、(例えば)光により切断可能なリンカーなどの切断可能なリンカーを含有し得る。一部の実施形態では、安定な二次立体配置を組み立てるために、一本鎖の折り畳まれたポリマーを反応させて、ペアであるXとY、およびZとQの間に結合を形成することができる(例えば、図12に示されているスルフィド架橋)。折り畳まれたヘアピン内で反応基を近傍に置くことによってペア形成を促進することができる。一部の実施形態に関しては、近くの残基間の結合により、DNAを二次フォールディング状態に安定にトラップすることができ、単純な二重鎖の形成を不安定化することができる。一部の実施形態では、安定な二次高次構造を第1の構造的状態とみなすことができる。さらに、安定な二次高次構造の結果として、一部の実施形態に関しては、DNAポリマー鎖が相補鎖(complementary stand)とハイブリダイズする場合、二次ヘアピン構造を維持することができる(図12参照)。一部の実施形態では、データを書き込むために、光または酸化還元エネルギーを利用して、一方または両方のペアの反応性基を選択的に切断することができる。図12の例において示されている通り、紫色光エネルギー(例えば、およそ430nm)の1回または複数回のパルスにより、ZとQのペアの官能基の切断をもたらすことができ、その結果、ZとQの間の連結の「ロック解除(unlocking)」、およびヘアピン形成の単純な二重鎖への変更がもたらされる。他方では、UV光エネルギー(例えば、およそ365nm)の1回または複数回のパルスにより、ZとQのペアおよびXとYのペアの両方の官能基の切断をもたらすことができ、その結果、両方の連結のロック解除、および両方のヘアピン形成の単純な二重鎖への変更をもたらすことができる。あるいは、紫色光エネルギー(例えば、およそ430nm)およびUV光エネルギー(例えば、およそ365nm)の両方の1回または複数回のパルスにより、ZとQのペアおよびXとYのペアの両方からの官能基の切断をもたらすことができ、その結果、両方の連結のロック解除、および両方のヘアピン形成の単純な二重鎖への変更をもたらすことができる。これらの3つの異なるDNAコンフォメーション(小さなヘアピン、大きなヘアピン、単純な二重鎖)は、ナノポアシーケンシングプラットフォームにより、構造がポアを通過するにしたがった電流の流れの差異によって区別可能であり得る(その開示が参照により本明細書に組み込まれるA. T. Guy, T. J. Piggot, and S. Khalid, Biophys J. 2012; 103:1028-36を参照されたい)。したがって、一部の実施形態では、3つのコンフォメーションを利用して、書き込まれていないデータビットと2つの区別可能な書き込まれたデータのビットのバイナリコードを区別する。また、一部の実施形態では、3つのコンフォメーションを利用して、3つのデータのビットを3進数コードで区別する。
【0337】
データ書き込みおよび読み取りの方法
いくつかの実施形態は、化学修飾可能な構造(例えば、フルオロフォア)のセットを利用してポリマー上にデータを書き込むことおよびポリマー上のデータを読み取ることを対象とする。多くの実施形態では、書き込み可能なポリマーを、化学修飾可能な構造が組み込まれた状態で用意する。一部の実施形態では、荷電基がポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される。用意された書き込み可能なポリマーは、本明細書に記載の通り、スペーサー、デリミタ、およびデータタグも有し得る。ポリマー上にデータを書き込むために、種々の実施形態によると、個々の鎖を、ナノポアを有するデバイスを通過させる。種々のナノポアデバイスは、化学修飾可能な構造がポアを通過するにしたがって化学修飾可能な構造の構造的な変化を可能にし得る(例えば、その開示がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるD. Garoli, et al., Nano Lett. 2019; 19:7553-7562;およびM. Rahman, et al., Lab Chip. 2021; 21:3030-3052を参照されたい)。鎖に沿って次第に光ケージまたは切断可能なリンカーが光励起されると、化学結合の切断が生じて、構造的修飾ビットのバイナリコードが得られる。そのようなデバイスは、極めて局部的な位置に対して光エネルギーまたは酸化還元エネルギーを増幅する構造をナノポアの付近に含み得る。例としては、金属ボウタイ(metallic bowtie)、金属ナノロッド、またはゼロモード導波管などのプラズモニック増幅器が挙げられる(しかしこれらに限定されない)(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるJ. D. Spitzberg, et al., Adv Mater. 2019; 31: e1900422を参照されたい)。そのようなプラズモニック構造にエネルギーをパルスすることにより、1ナノメートルの小ささの分解能を得ることができる。あるいは、STED技法によって2つのレーザーの使用を用いて、極めて局部的な照明を実現することができる(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるS. J. Sahl and S. W. Hell High-Resolution 3D Light Microscopy with STED and RESOLFT. 2019 Aug 14. In: Bille JF, editor. High Resolution Imaging in Microscopy and Ophthalmology: New Frontiers in Biomedical Optics. Cham (CH): Springer; 2019. Chapter 1を参照されたい)。
【0338】
一部の実施形態では、化学修飾可能な構造の修飾をポリマーの反復単位毎に実施する必要はない場合がある。書き込みプロセスの間に単位をスキップすることができる。スキップされた単位を有するポリマーを読み取る場合、そのようなスキップされた単位をブランクまたはヌルとみなすことができ、リーダーを次の蛍光位置に進めて、列内の次のビットを見いだす。書き込みの間および読み取りの間の反復単位のスキッピングを意図的に実施して、書き込み方法の分解能が最適になるようにビット書き込みを並べることができる;スキッピングはまた、確率的な移動、およびポリマー分子がポアを通過する速度の変更に起因してランダムに起こり得る。
【0339】
多くの実施形態では、書き込みデバイスを、ポリマーにデータを書き込むためのソフトウェアコードとして用意する。したがって、このコードによって方向づけられる書き込みデバイスでは、ポリマーの化学修飾可能な構造を選択的に修飾するために、エネルギーのパルスを時間および/または波長によって制御して、データコード(例えば、バイナリコード)を得る。一部の実施形態では、データのコードがポリマーに書き込まれたら、そのポリマーを、暗闇中、ポリマー分子の完全性を維持するための任意の適当な手段によって保存することができる。例えば、データが書き込まれたポリマーを、乾燥させて、沈殿物として、または適当な溶液中で、室温で、または低温(例えば、-20℃)で保存することができる。(例えば)アルコール、抗酸化剤、キレート剤および生物学的阻害剤(例えば、ヌクレアーゼ阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤)などの安定剤を保存されるポリマーと共に含めることができる。
【0340】
ポリマーは、データを単一分子レベルで最も効率的に保存し、それにより、情報の最も高い潜在的密度をもたらすものである。しかし、一部の実施形態では、データストレージの正確度をより良好にするためにデータの重複性が必要な場合、複数のポリマーを使用して、複数のポリマーの各ポリマーに同じデータを重複して書き込むことができる。デジタルデータストレージのためのエラー補正アルゴリズムがすでに十分に開発されており、これらのアルゴリズムのうちのいくつかを本手法に適用することができる(その開示が参照により本明細書に組み込まれるJ. Li, et al., IEEE Transactions on Emerging Topics in Computing. 2021; 9:651-663を参照されたい)。
【0341】
極めて局部的な光励起をSTEDXなどの特殊化された顕微鏡によるサブ波長集束戦略によって、またはボウタイなどのナノプラズモニック構造を使用することによって、またはゼロモード導波管を使用することによって実現することができる(その開示がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるY. Fang and M Sun, Light Sci Appl. 2015; 4:e294;およびX. Shi, et al. Small. 2018; 14:e1703307を参照されたい)。一部の実施形態では、他の高分解能の光学的励起方法も可能である。忠実度を伴ってデータが符号化されるように、エネルギーパルスと書き込み可能なポリマーの制御された通過のタイミングを、適当な間隔と協調させることができる。
【0342】
多くの実施形態では、書き込まれた核酸ポリマー上のデータを読み取るために、単一のフルオロフォアの蛍光を読み取ることが可能なまたは構造的差異を解析することが可能な任意の適当なナノポアを利用することができる。ある特定の実施形態では、デバイスは、生体または有機ポリマーへの書き込みおよび生体または有機ポリマーからの読み取りの両方が可能である。ある特定の実施形態では、単一のナノポアは、ポリマーへの書き込みおよびポリマーからの読み取りの両方のための二重機能性を有するが、一部のデバイスは、書き込みと読み取りを実施するために別個のナノポアを含み得る。種々のナノポアデバイスが市販されている、またはあるいは、データの書き込みおよび/または読み取りのためのナノポアデバイスを製作または製造することができる。ナノポアは、固体の状態の材料で構成されるものであってよい。
【0343】
読み取りのためにナノポアデバイスを利用することに加えて、ポリマーを引き伸ばし、引き伸ばされたポリマーに沿ってフルオロフォアを読み取ることが可能な(capable or reading)デバイスを利用してイメージングすることができる。ポリマー(特に、DNA)を引き伸ばすまたはコーミングする方法は当業者には公知である(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるZ. E. Nazari and L. Gurevich, J. Self-Assembly and Molecular Electronics 2013; 1:125-148; A. Kaykov, et al., Sci Rep. 2016; 6:19636を参照されたい)。あるいは、一部の実施形態では、高い空間分解能を実現するために、超解像顕微鏡法を使用することができる(STED手法または他の公知の方法によって)。STEDによって単一のDNA鎖をイメージングすることにより、一続きのビットを表す一連の色素呈色を得ることができる。方法を、ハイスループットのために、1つの視野内に多くの鎖を引き伸ばすこと、および、一続きの色素(ビットを読み取り、それをデジタル情報に変換する自動化イメージングソフトウェアを用いて自動化することができる。
【0344】
エネルギーパルスを使用して、反復ポリマー内の色素および/またはクエンチャーを変換するまたは他の点で変更させることにより、ポリマーの反復単位における検出可能な構造的な変化を生じさせることができる。したがって、上記の蛍光による方法に加えて、書き込まれたポリマーを蛍光によらない方法によって読み取ることもできる。例として、イオンの流れの変更を使用することによるナノポアシーケンシングが挙げられる。別の方法は、鎖がポアを通過するにしたがって、変更された色素の光学的吸収または他のスペクトルシグネチャー(例えば振動モードなど)を読み取ることを伴う。別の方法は、鎖がポアを通過するにしたがって酸化還元シグナルを読み取ることを伴う。
【0345】
番号を付した実施形態
【0346】
実施形態1.組み込まれた化学修飾可能な構造を利用したデータ符号化のための書き込み可能なポリマーであって、
ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットを含み、1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが骨格に連結した単量体に結合しており、化学修飾可能な構造が、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって修飾することが可能である、書き込み可能なポリマー。
【0347】
実施形態2.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって脱ケージすることが可能なケージドフルオロフォアを2つ含む、実施形態1のポリマー。
【0348】
実施形態3.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、クエンチャー、第1のフルオロフォア、およびケージドフルオロフォアを含み、クエンチャーが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって放出させることが可能であり、ケージドフルオロフォアが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって脱ケージすることが可能である、実施形態1のポリマー。
【0349】
実施形態4.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、第1のフルオロフォアと第2のフルオロフォアをフェルスター共鳴エネルギー移動距離(Forster resonant energy transfer distance)内に含む、実施形態1、2または3のいずれか1つのポリマー。
【0350】
実施形態5.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、光変換型フルオロフォアを含み、光変換型フルオロフォアが、第1の発光波長を有する第1の構造的状態で存在し、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって第2の発光波長を有する第2の構造的状態に変換することが可能である、実施形態1のポリマー。
【0351】
実施形態6.光変換型フルオロフォアの第1の構造的状態から第2の構造的状態への変換が、第1の波長の光のパルスによるものであり、光変換型フルオロフォアが、第2の波長の光のパルスによって第3の発光波長を有する第3の構造的状態にさらに変換することが可能である、実施形態5のポリマー。
【0352】
実施形態7.ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される複数の荷電した構成成分をさらに含む、実施形態1から6までのいずれか1つのポリマー。
【0353】
実施形態8.複数の荷電した構成成分が、骨格内に存在する、実施形態7のポリマー。
【0354】
実施形態9.複数の荷電した構成成分が、ポリマーの単量体内に存在する、実施形態7のポリマー。
【0355】
実施形態10.複数の荷電した構成成分が、負に荷電したリン酸基、負に荷電した硫酸基、負に荷電したカルボン酸基、または正に荷電したアンモニウム基である、実施形態7のポリマー。
【0356】
実施形態11.生体ポリマーである、実施形態1から10までのいずれか1つのポリマー。
【0357】
実施形態12.DNA、RNA、ホスホロチオエートDNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、2’-フルオロ-DNA、2’-O-メチルRNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド鎖、またはペプトイド鎖である、実施形態11のポリマー。
【0358】
実施形態13.有機ポリマーである、実施形態1から12までのいずれか1つのポリマー。
【0359】
実施形態14.二次構造コンフォメーションを利用したデータ符号化のための書き込み可能なポリマー(例えば、ブランクテープ)であって、
【0360】
複数の一続きの残基を含む核酸ポリマーを含み、複数の一続きの残基が核酸ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、複数の一続きの残基の各一続きの残基がヘアピン構造を含み、ヘアピン構造内の第1の残基が第1の反応性基を含み、ヘアピン構造内の第2の残基が第2の反応性基を含み、第1の残基と第2の残基が隣り合う残基ではなく、第1の反応性基と第2の反応性基が結合している、書き込み可能なポリマー(例えば、ブランクテープ)。
【0361】
実施形態15.第1の反応性基が、切断可能なリンカーを含む、実施形態14のポリマー。
【0362】
実施形態16.核酸ポリマーが、一本鎖である、実施形態14または15のポリマー。
【0363】
実施形態17.核酸ポリマーが二本鎖であり、第1の反応性基と第2の反応性基の結合により、ヘアピン構造の残基と、ヘアピン構造と相補する残基との間での単純な二重鎖の形成が不安定化する、実施形態14または15のポリマー。
【0364】
実施形態18.切断可能なリンカーの切断により、ヘアピン構造が不安定化し、ヘアピン構造の残基と、ヘアピン構造と相補する残基との間での単純な二重鎖の形成が促進される、実施形態17のポリマー。
【0365】
実施形態19.複数の一続きの残基の各一続きの残基が20残基から200残基の間である、実施形態14から18までのいずれか1つのポリマー。
【0366】
実施形態20.複数の一続きの残基の各一続きの残基が同じ数の残基を有する、実施形態14から19までのいずれか1つのポリマー。
【0367】
実施形態21.複数の一続きの残基の各一続きの残基が同じ配列を有する、実施形態14から20までのいずれか1つのポリマー。
【0368】
実施形態22.二次構造コンフォメーションを利用したデータ符号化のための書き込み可能なポリマーであって、
複数の一続きの残基を含む核酸ポリマーを含み、複数の一続きの残基が核酸ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、複数の一続きの残基の各一続きの残基が、第1のヘアピン構造および第2のヘアピン構造を含み、
第1のヘアピン構造内の第1の残基が第1の反応性基を含み、第1のヘアピン構造内の第2の残基が第2の反応性基を含み、第1のヘアピン構造の第1の残基と第2の残基が隣り合う残基ではなく、第1のヘアピン構造の第1の反応性基と第1のヘアピン構造の第2の反応性基が結合し、
第2のヘアピン構造内の第1の残基が第1の反応性基を含み、第2のヘアピン構造内の第2の残基が第2の反応性基を含み、第2のヘアピン構造の第1の残基と第2の残基が隣り合う残基ではなく、第2のヘアピン構造の第1の反応性基と第2のヘアピン構造の第2の反応性基が結合する、
書き込み可能なポリマー。
【0369】
実施形態23.第1のヘアピン構造の第1の反応性基および第2のヘアピン構造の第1の反応性基がそれぞれ切断可能なリンカーを含み、第1のヘアピン構造の切断可能なリンカーが、第1の波長の光の1回または複数回のパルスによって切断可能であり、第2のヘアピン構造の切断可能なリンカーが、第2の波長の光の1回または複数回のパルスによって切断可能であり、第2のヘアピン構造の切断可能なリンカーが、第1の波長の光の1回または複数回のパルスでは切断可能でないものである、実施形態22のポリマー。
【0370】
実施形態24.第1のヘアピン構造の切断可能なリンカーが、第2の波長の光の1回または複数回のパルスによっても切断可能である、実施形態23のポリマー。
【0371】
実施形態25.第1のヘアピン構造の切断可能なリンカーが、第2の波長の光の1回または複数回のパルスでは切断可能でないものである、実施形態23のポリマー。
【0372】
実施形態26.核酸ポリマーが、一本鎖である、実施形態22から25までのいずれか1つのポリマー。
【0373】
実施形態27.核酸ポリマーが、二本鎖であり、第1のヘアピン構造の第1の反応性基と第2の反応性基の結合により、第1のヘアピン構造の残基と、第1のヘアピン構造と相補する残基との間での単純な二重鎖の形成が不安定化する、実施形態22から25までのいずれか1つのポリマー。
【0374】
実施形態28.第1のヘアピン構造の切断可能なリンカーの切断により、第1のヘアピン構造が不安定化し、第1のヘアピン構造の残基と、第1のヘアピン構造と相補する残基との間での単純な二重鎖の形成が促進される、実施形態27のポリマー。
【0375】
実施形態29.核酸ポリマーが二本鎖であり、第2のヘアピン構造の第1の反応性基と第2の反応性基の結合により、第2のヘアピン構造の残基と、第2のヘアピン構造と相補する残基との間での単純な二重鎖の形成が不安定化する、実施形態22から28までのいずれか1つのポリマー。
【0376】
実施形態30.第2のヘアピン構造の切断可能なリンカーの切断により、第2のヘアピン構造が不安定化し、第2のヘアピン構造の残基と、第2のヘアピン構造と相補する残基との間での単純な二重鎖の形成が促進される、実施形態29のポリマー。
【0377】
実施形態31.第1のヘアピン構造の残基の数と第2のヘアピン構造の残基の数が等しくない、実施形態22から30までのいずれか1つのポリマー。
【0378】
実施形態32.複数の一続きの残基の各一続きの残基が20残基から200残基の間である、実施形態22から31までのいずれか1つのポリマー。
【0379】
実施形態33.複数の一続きの残基の各一続きの残基が同じ数の残基を有する、実施形態22から32までのいずれか1つのポリマー。
【0380】
実施形態34.複数の一続きの残基の各一続きの残基が同じ配列を有する、実施形態22から33までのいずれか1つのポリマー。
【0381】
実施形態35.組み込まれた化学修飾可能な構造を利用してデータが符号化されたポリマーであって、
ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットを含み、1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが骨格に連結した単量体に結合しており、1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットが、第1の構造的状態が光または酸化還元エネルギーのパルスによって修飾されて第2の構造的状態になった複数の修飾された構造を含む、データが符号化されたポリマー。
【0382】
実施形態36.1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットの1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれがその単量体に第1の構造的状態で組み込まれており、複数の修飾された構造がナノポアを含むデバイスによって修飾されており、デバイスが、ナノポアを介してポリマーを横断させ、データコードに従って1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットを光または酸化還元エネルギーのパルスによって選択的に修飾することが可能である、実施形態35のポリマー。
【0383】
実施形態37.複数の修飾された構造が、光または酸化還元エネルギーのパルスによって脱ケージされた、脱ケージドフルオロフォアを含む、実施形態35または36のポリマー。
【0384】
実施形態38.複数の修飾された構造が、光または酸化還元エネルギーのパルスによってクエンチャーが放出された構造を含む、実施形態35、36、または37のポリマー。
【0385】
実施形態39.複数の修飾された構造が、光変換フルオロフォアを含み、光変換フルオロフォアの第2の構造的状態が、第1の構造的状態から発せられる波長とは異なる波長の蛍光を発し、光変換フルオロフォアが、光エネルギーのパルスによって変換されたものである、実施形態35または36のポリマー。
【0386】
実施形態40.二次構造コンフォメーションを利用してデータが符号化されたポリマーであって、
ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置された、繰り返し間隔をあけて配置された構造である複数の一続きの残基を含む核酸ポリマーであって、一続きの残基の複数のセットが、光または酸化還元エネルギーのパルスによって、第1のヘアピン構造状態から第2の単純な二重鎖構造状態に修飾された、複数の修飾された構造を含む、核酸ポリマーを含む、ポリマー。
【0387】
実施形態41.一続きの残基の複数のセットが複数の修飾されていない構造をさらに含み、複数の修飾されていない構造の構造それぞれがヘアピン構造であり、ヘアピン構造内の第1の残基が第1の反応性基を含み、ヘアピン構造内の第2の残基が第2の反応性基を含み、第1の残基と第2の残基が隣り合う残基ではなく、第1の反応性基と第2の反応性基が結合している、実施形態40のポリマー。
【0388】
実施形態42.複数の修飾された構造および複数の修飾されていない構造がデジタルコードである、実施形態41のポリマー。
【0389】
実施形態43.核酸ポリマーが二本鎖であり、第1の反応性基と第2の反応性基の結合により、ヘアピン構造の残基と、ヘアピン構造と相補する残基との間での単純な二重鎖の形成が不安定化する、実施形態41または42のポリマー。
【0390】
実施形態44.複数の修飾された構造が、ナノポアを含むデバイスによって修飾されたものであり、デバイスが、ナノポアを介してポリマーを横断させ、データコードに従って複数の一続きの残基の第1のヘアピン構造状態を光または酸化還元エネルギーのパルスによって選択的に修飾することが可能である、実施形態41のポリマー。
【0391】
実施形態45.複数の修飾された構造が、第1のヘアピン構造状態を安定化しているリンカーの切断によって修飾されたものであり、リンカーの切断が、第1のヘアピン構造状態から第2の単純な二重鎖構造への修飾を可能にするものであり、リンカーの切断が、光または酸化還元エネルギーのパルスによってなされたものである、実施形態41または44のポリマー。
【0392】
実施形態46.複数の一続きの残基の各一続きの残基が20残基から200残基の間である、実施形態41から45までのいずれか1つのポリマー。
【0393】
実施形態47.複数の一続きの残基の各一続きの残基が同じ数の残基を有する、実施形態41から46までのいずれか1つのポリマー。
【0394】
実施形態48.複数の一続きの残基の各一続きの残基が同じ配列を有する、実施形態41から47までのいずれか1つのポリマー。
【0395】
実施形態49.書き込み可能なポリマー上にデータを符号化する方法であって、
ポリマー骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマー骨格を介して連結した1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットを含む書き込み可能なポリマーを用意するステップであって、1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットの1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、第1の状態を有して用意され、そのそれぞれを、第1の構造的状態から第2の構造的状態へと修飾することが可能である、ステップと、
データ書き込みデバイスを利用して、1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットのサブセットを第2の構造的状態へと選択的に修飾し、その結果、データが符号化されたポリマーが生成される、ステップと
を含む、方法。
【0396】
実施形態50.データ書き込みデバイスが、ナノポアを含み、方法が、
書き込みデバイスのナノポアを介して書き込み可能なポリマーを通過させるステップをさらに含み、ナノポアが、1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットのサブセットに光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスを当てて第2の状態にする手段を含む、実施形態49の方法。
【0397】
実施形態51.1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって脱ケージされるケージドフルオロフォアを含む、実施形態49または50の方法。
【0398】
実施形態52.1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットが、クエンチャーの近傍にフルオロフォアを含み、クエンチャーが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって放出される、実施形態49、50または51の方法。
【0399】
実施形態53.1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットが、光変換型フルオロフォアを含み、光変換型フルオロフォアの第1の構造的状態が第1の発光波長を有し、光変換型フルオロフォアの第2の構造的状態が第2の発光波長を有する、実施形態49または50の方法。
【0400】
実施形態54.
【0401】
生成されたポリマーの符号化されたデータを読み取るステップをさらに含む、実施形態49から53までのいずれか1つの方法。
【0402】
実施形態55.符号化されたデータを、データ読み取りデバイスのナノポアを介して生成されたポリマーを通過させることによって読み取り、読み取りデバイスのナノポアが、1つまたは複数の化学修飾可能な構造の複数のセットの第2の状態の蛍光を検出する手段を含む、実施形態54の方法。
【0403】
実施形態56.データ読み取りデバイスが、データ書き込みデバイスと同じデバイスである、実施形態55の方法。
【0404】
実施形態57.データを読み取るためのナノポアデバイスが、データを書き込むためのものと同じナノポアデバイスである、実施形態56の方法。
【0405】
実施形態58.符号化されたデータを、生成されたポリマーの引き伸ばしおよびイメージングによって読み取る、実施形態54の方法。
【0406】
実施形態59.書き込み可能なポリマー上にデータを符号化する方法であって、
書き込み可能な核酸ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される複数の一続きの残基を含む書き込み可能な核酸ポリマーを用意するステップであって、複数の一続きの残基の各一続きの残基がヘアピン構造を含み、ヘアピン構造内の第1の残基が第1の反応性基を含み、ヘアピン構造内の第2の残基が第2の反応性基を含み、第1の残基と第2の残基が隣り合う残基ではなく、第1の反応性基と第2の反応性基が結合している、ステップと、
データ書き込みデバイスを利用して、複数の一続きの残基のサブセットのヘアピン構造を単純な二重鎖構造的状態へと選択的に修飾する、ステップと
を含む、方法。
【0407】
実施形態60.データ書き込みデバイスが、ナノポアを含み、方法が、
書き込みデバイスのナノポアを介して書き込み可能な核酸ポリマーを通過させるステップをさらに含み、ナノポアが、複数の一続きの残基のサブセットのヘアピン構造に光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスを当て、その結果、複数の一続きの残基のサブセットのヘアピン構造それぞれを修飾して単純な二重鎖構造的状態にする手段を含む、実施形態59の方法。
【0408】
実施形態61.第1の反応性基が、切断可能なリンカーを含み、当てられた光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスにより、切断可能なリンカー 複数の一続きの残基のサブセットのヘアピン構造の第1の反応性基が切断される、実施形態60の方法。
【0409】
実施形態62.切断可能なリンカーの切断により、ヘアピン構造が不安定化し、ヘアピン構造の残基と、ヘアピン構造と相補する残基との間での単純な二重鎖の形成が促進される、実施形態61の方法。
【0410】
実施形態63.複数の一続きの残基の各一続きの残基が20残基から200残基の間である、実施形態59から62までのいずれか1つのポリマー。
【0411】
実施形態64.複数の一続きの残基の各一続きの残基が同じ数の残基を有する、実施形態59から63までのいずれか1つのポリマー。
【0412】
実施形態65.複数の一続きの残基の各一続きの残基が同じ配列を有する、実施形態59から64までのいずれか1つのポリマー。
【0413】
実施形態66.書き込み可能なポリマー上にデータを符号化する方法であって、
核酸ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される複数の一続きの残基を含む核酸ポリマーを用意するステップであって、複数の一続きの残基の各一続きの残基が、第1のヘアピン構造および第2のヘアピン構造を含み、
第1のヘアピン構造内の第1の残基が第1の反応性基を含み、第1のヘアピン構造内の第2の残基が第2の反応性基を含み、第1のヘアピン構造の第1の残基と第2の残基が隣り合う残基ではなく、第1のヘアピン構造の第1の反応性基と第1のヘアピン構造の第2の反応性基が結合しており、
第2のヘアピン構造内の第1の残基が第1の反応性基を含み、第2のヘアピン構造内の第2の残基が第2の反応性基を含み、第2のヘアピン構造の第1の残基と第2の残基が隣り合う残基ではなく、第2のヘアピン構造の第1の反応性基と第2のヘアピン構造の第2の反応性基が結合している、ステップと、
第1の波長の光エネルギーのパルスを利用し、第1の複数の一続きの残基のサブセットの第1のヘアピン構造のみを選択的に修飾して単純な二重鎖構造的状態にするステップと、
第2の波長の光エネルギーのパルスを利用し、第2の複数の一続きの残基のサブセットの第2のヘアピン構造を選択的に修飾して単純な二重鎖構造的状態にするステップ
を含む、方法。
【0414】
実施形態67.第1のヘアピンの第1の反応性基が、第1の切断可能なリンカーを含み、第1の波長の光エネルギーのパルスにより、第1の切断可能なリンカー 第1の複数の一続きの残基のサブセットの第1のヘアピン構造の第1の反応性基が切断される、実施形態66の方法。
【0415】
実施形態68.第2のヘアピンの第1の反応性基が、第2の切断可能なリンカーを含み、第2の波長の光エネルギーのパルスにより、第2の切断可能なリンカー 第2の複数の一続きの残基のサブセットの第2のヘアピン構造の第1の反応性基が切断される、実施形態66の方法。
【0416】
実施形態69.化学修飾可能な構造のセットを核酸に組み込むための方法であって、
溶液中の核酸ポリマーを用意するステップと、
溶液に化学修飾可能な構造のセットを添加するステップであって、化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、核酸ポリマーの核酸塩基と反応することが可能な化学基で官能化されており、その結果、化学修飾可能な構造のセットが繰り返し間隔をあけて配置される書き込み可能なポリマーが得られ、化学修飾可能な構造が、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって修飾することが可能である、ステップと
を含む、方法。
【0417】
実施形態70.化学基がsp3炭素に結合した脱離基であり、核酸塩基が利用可能なアミンを有する、または
化学基がアミンであり、核酸塩基が利用可能なsp3炭素に結合した脱離基を有する、実施形態69の方法。
【0418】
実施形態71.脱離基が、ヨージド、ブロミド、クロリド、トシレート、トリフレート、またはメシレートである、実施形態70の方法。
【0419】
実施形態72.化学基がアミンであり、核酸塩基が利用可能なカルボン酸を有し、縮合もしくはカップリング試薬を利用して、化学基と核酸塩基との間の反応を促進する、または、
化学基がカルボン酸であり、核酸塩基が利用可能なアミンを有し、縮合もしくはカップリング試薬を利用して、化学基と核酸塩基との間の反応を促進する、実施形態69の方法。
【0420】
実施形態73.化学基がアミンであり、核酸塩基が利用可能な活性化エステルを有する、または
化学基が活性化エステルであり、核酸塩基が利用可能なアミンを有する、実施形態69の方法。
【0421】
実施形態74.化学基がアミンであり、核酸塩基が利用可能なイソシアネートもしくは利用可能なイソチオシアネートを有する、または
化学基がイソシアネートもしくはイソチオシアネートであり、核酸塩基が利用可能なアミンを有する、実施形態69の方法。
【0422】
実施形態75.化学基がアジドであり、核酸塩基が利用可能なアルキンを有する、または
化学基がアルキンであり、核酸塩基が利用可能なアジドを有する、実施形態69の方法。
【0423】
実施形態76.化学基がテトラジンであり、核酸塩基が利用可能なひずみアルケンを有する、または
化学基がひずみアルケンであり、核酸塩基が利用可能なテトラジンを有する、実施形態69の方法。
【0424】
実施形態77.化学基がアルデヒドまたはケトンであり、核酸塩基が利用可能なアミノオキシ基もしくは利用可能なヒドラジン基を有する、または
化学基がアミノオキシ基もしくはヒドラジン基であり、核酸塩基が利用可能なアルデヒドもしくは利用可能なケトンを有する、実施形態69の方法。
【0425】
実施形態78.化学基がチオールであり、核酸塩基が利用可能なマイケル受容体を有する、または
化学基がマイケル受容体であり、核酸塩基が利用可能なチオールを有する、実施形態69の方法。
【0426】
実施形態79.マイケル受容体が、マレイミドまたはブロモマレイミドである、実施形態78の方法。
【0427】
実施形態80.化学基がチオールであり、核酸塩基が利用可能なジスルフィドを有する、または
化学基がジスルフィドであり、核酸塩基が利用可能なチオールを有する、実施形態69の方法。
【0428】
実施形態81.化学基がチオールであり、核酸塩基が利用可能なアルケンを有し、光を利用して、化学基と核酸塩基との間の反応を促進する、または
化学基がアルケンであり、核酸塩基が利用可能なチオールを有し、光を利用して、化学基と核酸塩基との間の反応を促進する、実施形態69の方法。
【0429】
実施形態82.化学基がアミン、チオール、もしくはアルコールであり、核酸塩基が利用可能な活性化スルホニル種を有する、または
化学基が活性化スルホニル種であり、核酸塩基が利用可能なアミン、利用可能なチオール、または利用可能なアルコールを有する、実施形態69の方法。
【0430】
実施形態83.活性化スルホニル種が、硫黄(VI)交換基質、フッ化スルフリル、またはオキシ二フッ化イミノ硫黄である、実施形態78の方法。
【0431】
実施形態84.化学基がアルケンであり、核酸塩基が利用可能なアルケンを有し、金属を利用して、化学基と核酸塩基上の利用可能なアルケンとの間の反応を促進する、実施形態69の方法。
【0432】
実施形態85.化学基がアミン、チオール、もしくはアルコールであり、核酸塩基が利用可能な活性化アリール基を有する、または
化学基が活性化アリール基であり、核酸塩基が利用可能なアミン、利用可能なチオール、または利用可能なアルコールを有する、実施形態69の方法。
【0433】
実施形態86.活性化アリール種が、ペンタフルオロベンゼンまたはパラ-クロロ-アシルベンゼンである、実施形態85の方法。
【0434】
実施形態87.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって脱ケージすることが可能なケージドフルオロフォアを2つ含む、実施形態69から86までのいずれか1つの方法。
【0435】
実施形態88.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、クエンチャー、第1のフルオロフォア、およびケージドフルオロフォアを含み、クエンチャーが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって放出させることが可能であり、ケージドフルオロフォアが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって脱ケージすることが可能である、実施形態69から86までのいずれか1つの方法。
【0436】
実施形態89.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、第1のフルオロフォアと第2のフルオロフォアをフェルスター共鳴エネルギー移動距離内に含む、実施形態69から88までのいずれか1つの方法。
【0437】
実施形態90.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、光変換型フルオロフォアを含み、光変換型フルオロフォアが、第1の発光波長を有する第1の構造的状態で存在し、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって第2の発光波長を有する第2の構造的状態に変換することが可能である、実施形態69から86までのいずれか1つの方法。
【0438】
実施形態91.光変換型フルオロフォアの第1の構造的状態から第2の構造的状態への変換が、第1の波長の光のパルスによるものであり、光変換型フルオロフォアが、第2の波長の光のパルスによって第3の発光波長を有する第3の構造的状態に変換することが可能である、実施形態90の方法。
【0439】
実施形態92.化学修飾可能な構造のセットを核酸に組み込むための方法であって、
第1の溶液中の一本鎖核酸ポリマーを用意するステップと、
第1の溶液に、一本鎖核酸ポリマーと相補的なプライマー配列、デオキシヌクレオチド三リン酸のセット、および核酸ポリメラーゼを添加するステップであって、デオキシヌクレオチド三リン酸のセットが、利用可能な官能基を用いて修飾された、修飾されたデオキシヌクレオチド三リン酸を含む、ステップと、
核酸ポリメラーゼにより一本鎖核酸ポリマーの相補鎖を重合させるステップであって、修飾されたデオキシヌクレオチドが相補鎖に組み入れられ、それにより、利用可能な官能基を有する修飾された核酸塩基が組み入れられた相補鎖が得られる、ステップと、
相補鎖を化学修飾可能な構造のセットと共に第2の溶液中でインキュベートするステップであって、化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、相補鎖に組み入れられた修飾された核酸塩基の利用可能な官能基と反応することが可能な化学基で官能化されており、その結果、化学修飾可能な構造のセットが繰り返し間隔をあけて配置される書き込み可能なポリマーが得られ、化学修飾可能な構造が、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって修飾することが可能である、ステップと
を含む、方法。
【0440】
実施形態93.化学基がsp3炭素に結合した脱離基であり、利用可能な官能基がアミンである、または
化学基がアミンであり、利用可能な官能基がsp3炭素に結合した脱離基である、実施形態92の方法。
【0441】
実施形態94.脱離基が、ヨージド、ブロミド、クロリド、トシレート、トリフレート、またはメシレートである、実施形態93の方法。
【0442】
実施形態95.化学基がアミンであり、利用可能な官能基がカルボン酸であり、縮合もしくはカップリング試薬を利用して、化学基と利用可能な官能基との間の反応を促進する、または
化学基がカルボン酸であり、利用可能な官能基がアミンであり、縮合もしくはカップリング試薬を利用して、化学基と利用可能な官能基との間の反応を促進する、実施形態92の方法。
【0443】
実施形態96.化学基がアミンであり、利用可能な官能基が活性化エステルである、または
化学基が活性化エステルであり、利用可能な官能基がアミンである、実施形態92の方法。
【0444】
実施形態97.化学基がアミンであり、利用可能な官能基がイソシアネートもしくはイソチオシアネートである、または
化学基がイソシアネートもしくはイソチオシアネートであり、利用可能な官能基がアミンである、実施形態92の方法。
【0445】
実施形態98.化学基がアジドであり、利用可能な官能基がアルキンである、または
化学基がアルキンであり、利用可能な官能基がアジドである、実施形態92の方法。
【0446】
実施形態99.化学基がテトラジンであり、利用可能な官能基がひずみアルケンである、または
化学基がひずみアルケンであり、利用可能な官能基がテトラジンである、実施形態92の方法。
【0447】
実施形態100.化学基がアルデヒドもしくはケトンであり、利用可能な官能基がアミノオキシ基もしくはヒドラジン基である、または
化学基がアミノオキシ基もしくはヒドラジン基であり、利用可能な官能基がアルデヒドもしくはケトンである、実施形態92の方法。
【0448】
実施形態101.化学基がチオールであり、利用可能な官能基がマイケル受容体である、または
化学基がマイケル受容体であり、利用可能な官能基がチオールである、実施形態92の方法。
【0449】
実施形態102.マイケル受容体が、マレイミドまたはブロモマレイミドである、実施形態101の方法。
【0450】
実施形態103.化学基がチオールであり、利用可能な官能基がジスルフィドである、または
化学基がジスルフィドであり、利用可能な官能基がチオールである、実施形態92の方法。
【0451】
実施形態104.化学基がチオールであり、利用可能な官能基がアルケンであり、光を利用して、化学基と核酸塩基上の利用可能なアルケンとの間の反応を促進する、または
化学基がアルケンであり、利用可能な官能基がチオールであり、光を利用して、化学基と利用可能な官能基との間の反応を促進する、実施形態92の方法。
【0452】
実施形態105.化学基がアミン、チオール、もしくはアルコールであり、利用可能な官能基が活性化スルホニル種である、または
化学基が活性化スルホニル種であり、利用可能な官能基がアミン、チオール、もしくはアルコールである、実施形態92の方法。
【0453】
実施形態106.活性化スルホニル種が、硫黄(VI)交換基質、フッ化スルフリル、またはオキシ二フッ化イミノ硫黄である、実施形態105の方法。
【0454】
実施形態107.化学基がアルケンであり、利用可能な官能基がアルケンであり、金属を利用して、化学基と利用可能な官能基との間の反応を促進する、実施形態92の方法。
【0455】
実施形態108.化学基がアミン、チオール、もしくはアルコールであり、利用可能な官能基が活性化アリール基である、または
化学基が活性化アリール基であり、利用可能な官能基がアミン、チオール、もしくはアルコールである、実施形態92の方法。
【0456】
実施形態109.活性化アリール種が、ペンタフルオロベンゼンまたはパラ-クロロ-アシルベンゼンである、実施形態108の方法。
【0457】
実施形態110.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって脱ケージすることが可能なケージドフルオロフォアを2つ含む、実施形態92から109までのいずれか1つの方法。
【0458】
実施形態111.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、クエンチャー、第1のフルオロフォア、およびケージドフルオロフォアを含み、クエンチャーが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって放出させることが可能であり、ケージドフルオロフォアが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって脱ケージすることが可能である、実施形態92から109までのいずれか1つの方法。
【0459】
実施形態112.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、第1のフルオロフォアと第2のフルオロフォアをフェルスター共鳴エネルギー移動距離内に含む、実施形態92から111までのいずれか1つの方法。
【0460】
実施形態113.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、光変換型フルオロフォアを含み、光変換型フルオロフォアが、第1の発光波長を有する第1の構造的状態で存在し、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって第2の発光波長を有する第2の構造的状態に変換することが可能である、実施形態92から109までのいずれか1つの方法。
【0461】
実施形態114.光変換型フルオロフォアの第1の構造的状態から第2の構造的状態への変換が、第1の波長の光のパルスによるものであり、光変換型フルオロフォアが、第2の波長の光のパルスによって第3の発光波長を有する第3の構造的状態に変換することが可能である、実施形態113の方法。
【0462】
実施形態115.化学修飾可能な構造のセットを有機ポリマーに組み込むための方法であって、
溶液中の有機ポリマーを用意するステップであって、有機ポリマーが、複数のその単量体に第1の利用可能な官能基を含有する、ステップと、
溶液に化学修飾可能な構造のセットを添加するステップであって、化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、有機ポリマー上の複数の第1の利用可能な官能基と反応することが可能な第2の利用可能な官能基で官能化されており、その結果、化学修飾可能な構造のセットが繰り返し間隔をあけて配置される書き込み可能なポリマーが得られ、化学修飾可能な構造が、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって修飾することが可能である、ステップと
を含む、方法。
【0463】
実施形態116.第1の利用可能な官能基がsp3炭素に結合した脱離基であり、第2の利用可能な官能基がアミンである、または
第1の利用可能な官能基がアミンであり、第2の利用可能な官能基がsp3炭素に結合した脱離基である、実施形態115の方法。
【0464】
実施形態117.脱離基が、ヨージド、ブロミド、クロリド、トシレート、トリフレート、またはメシレートである、実施形態116の方法。
【0465】
実施形態118.第1の利用可能な官能基がアミンであり、第2の利用可能な官能基がカルボン酸であり、縮合もしくはカップリング試薬を利用して、第1の利用可能な官能基と第2の利用可能な官能基との間の反応を促進する、または
第1の利用可能な官能基がカルボン酸であり、第2の利用可能な官能基がアミンであり、縮合もしくはカップリング試薬を利用して、第1の利用可能な官能基と第2の利用可能な官能基との間の反応を促進する、実施形態115の方法。
【0466】
実施形態119.第1の利用可能な官能基がアミンであり、第2の利用可能な官能基が活性化エステルである、または
第1の利用可能な官能基が活性化エステルであり、第2の利用可能な官能基がアミンである、実施形態115の方法。
【0467】
実施形態120.第1の利用可能な官能基がアミンであり、第2の利用可能な官能基がイソシアネートもしくはイソチオシアネートである、または
第1の利用可能な官能基がイソシアネートもしくはイソチオシアネートであり、第2の利用可能な官能基がアミンである、実施形態115の方法。
【0468】
実施形態121.第1の利用可能な官能基がアジドであり、第2の利用可能な官能基がアルキンである、または
第1の利用可能な官能基がアルキンであり、第2の利用可能な官能基がアジドである、実施形態115の方法。
【0469】
実施形態122.第1の利用可能な官能基がテトラジンであり、第2の利用可能な官能基がひずみアルケンである、または
第1の利用可能な官能基がひずみアルケンであり、第2の利用可能な官能基がテトラジンである、実施形態115の方法。
【0470】
実施形態123.第1の利用可能な官能基がアルデヒドもしくはケトンであり、第2の利用可能な官能基がアミノオキシ基もしくはヒドラジン基である、または
第1の利用可能な官能基がアミノオキシ基もしくはヒドラジン基であり、第2の利用可能な官能基がアルデヒドもしくはケトンである、実施形態115の方法。
【0471】
実施形態124.第1の利用可能な官能基がチオールであり、第2の利用可能な官能基がマイケル受容体である、または
第1の利用可能な官能基がマイケル受容体であり、第2の利用可能な官能基がチオールである、実施形態115の方法。
【0472】
実施形態125.マイケル受容体が、マレイミドまたはブロモマレイミドである、実施形態124の方法。
【0473】
実施形態126.第1の利用可能な官能基がチオールであり、第2の利用可能な官能基がジスルフィドである、または
第1の利用可能な官能基がジスルフィドであり、第2の利用可能な官能基がチオールである、実施形態115の方法。
【0474】
実施形態127.第1の利用可能な官能基がチオールであり、第2の利用可能な官能基がアルケンであり、光を利用して、ポリマー上の第1の利用可能な官能基とアルケンとの間の反応を促進する、または
第1の利用可能な官能基がアルケンであり、第2の利用可能な官能基がチオールであり、光を利用して、第1の利用可能な官能基と第2の利用可能な官能基との間の反応を促進する、実施形態115の方法。
【0475】
実施形態128.第1の利用可能な官能基がアミン、チオール、もしくはアルコールであり、第2の利用可能な官能基が活性化スルホニル種である、または
第1の利用可能な官能基が活性化スルホニル種であり、第2の利用可能な官能基がアミン、チオール、もしくはアルコールである、実施形態115の方法。
【0476】
実施形態129.活性化スルホニル種が、硫黄(VI)交換基質、フッ化スルフリル、またはオキシ二フッ化イミノ硫黄である、実施形態128の方法。
【0477】
実施形態130.第1の利用可能な官能基がアルケンであり、第2の利用可能な官能基がアルケンであり、金属を利用して、第1の利用可能な官能基と第2の利用可能な官能基との間の反応を促進する、実施形態115の方法。
【0478】
実施形態131.第1の利用可能な官能基がアミン、チオール、もしくはアルコールであり、第2の利用可能な官能基が活性化アリール基である、または
第1の利用可能な官能基が活性化アリール基であり、第2の利用可能な官能基がアミン、チオール、もしくはアルコールである、実施形態115の方法。
【0479】
実施形態132.活性化アリール種が、ペンタフルオロベンゼンまたはパラ-クロロ-アシルベンゼンである、実施形態108の方法。
【0480】
実施形態133.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって脱ケージすることが可能なケージドフルオロフォアを2つ含む、実施形態115から132までのいずれか1つの方法。
【0481】
実施形態134.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、クエンチャー、第1のフルオロフォア、およびケージドフルオロフォアを含み、クエンチャーが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって放出させることが可能であり、ケージドフルオロフォアが、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって脱ケージすることが可能である、実施形態115から132までのいずれか1つの方法。
【0482】
実施形態135.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、第1のフルオロフォアと第2のフルオロフォアをフェルスター共鳴エネルギー移動距離内に含む、実施形態115から134までのいずれか1つの方法。
【0483】
実施形態136.1つまたは複数の化学修飾可能な構造のセットそれぞれが、光変換型フルオロフォアを含み、光変換型フルオロフォアが、第1の発光波長を有する第1の構造的状態で存在し、光エネルギーまたは酸化還元エネルギーのパルスによって第2の発光波長を有する第2の構造的状態に変換することが可能である、実施形態115から132までのいずれか1つの方法。
【0484】
実施形態137.光変換型フルオロフォアの第1の構造的状態から第2の構造的状態への変換が、第1の波長の光のパルスによるものであり、光変換型フルオロフォアが、第2の波長の光のパルスによって第3の発光波長を有する第3の構造的状態に変換することが可能である、実施形態136の方法。
【0485】
実施形態138.データ符号化のための書き込み可能なポリマーであって、
ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、骨格を介して連結した複数の修飾可能なフルオロフォアであって、光パルスによって修飾することが可能である、修飾可能なフルオロフォアと、
ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される複数の荷電した構成成分と
を含む、書き込み可能なポリマー。
【0486】
実施形態139.複数の修飾可能なフルオロフォアが、光パルスによって脱ケージすることが可能なケージドフルオロフォアを含む、実施形態138のポリマー。
【0487】
実施形態140.複数の修飾可能なフルオロフォアが、クエンチャーの近傍にフルオロフォアを含み、クエンチャーを、光パルスによって放出させることが可能である、実施形態138のポリマー。
【0488】
実施形態141.複数の修飾可能なフルオロフォアが、光変換型フルオロフォアを含み、光変換型フルオロフォアが、第1の発光波長を有する第1の構造的状態で存在し、光パルスによって第2の発光波長を有する第2の構造的状態に変換することが可能である、実施形態138のポリマー。
【0489】
実施形態142.光変換型フルオロフォアの第1の構造的状態から第2の構造的状態への変換が、第1の波長の光パルスによるものであり、光変換型フルオロフォアが、第2の波長の光パルスによって第3の発光波長を有する第3の構造的状態に変換することが可能である、実施形態141のポリマー。
【0490】
実施形態143.複数の修飾可能なフルオロフォアが、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内に構成的フルオロフォアとケージドフルオロフォアの複数のペアを含み、構成的フルオロフォアとケージドフルオロフォアの複数のペアが、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ケージドフルオロフォアが、光パルスにより脱ケージされることが可能である、実施形態138のポリマー。
【0491】
実施形態144.複数の修飾可能なフルオロフォアが、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内に構成的フルオロフォアと消光フルオロフォアの複数のペアを含み、構成的フルオロフォアと消光フルオロフォアの複数のペアが、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、消光フルオロフォアそれぞれが、光パルスによって放出させることが可能なクエンチャーの近傍に存在する、実施形態138のポリマー。
【0492】
実施形態145.複数の修飾可能なフルオロフォアが、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内に2つのケージドフルオロフォアの複数のペアを含み、2つのケージドフルオロフォアの複数のペアが、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ペアのケージドフルオロフォアそれぞれが、光パルスによって脱ケージすることが可能であり、ペアの第1のケージドフルオロフォアが、脱ケージされると第1の波長で蛍光を発することが可能であり、ペアの第2のケージドフルオロフォアが、脱ケージされると第2の波長で蛍光を発することが可能である、実施形態138のポリマー。
【0493】
実施形態146.ペアの第1のケージドフルオロフォアが、第1の波長の光パルスによって脱ケージされ、ペアの第2のケージドフルオロフォアが、第2の波長の光パルスによって脱ケージされる、実施形態145のポリマー。
【0494】
実施形態147.ペアの第1のケージドフルオロフォアが、第1の波長の光パルスによって脱ケージされ、ペアの第2のケージドフルオロフォアが、第1の波長または第2の波長の光パルスによって脱ケージされる、実施形態145のポリマー。
【0495】
実施形態148.複数の修飾可能なフルオロフォアが、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内に2つの消光フルオロフォアの複数のペアを含み、2つの消光フルオロフォアの複数のペアが、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ペアの消光フルオロフォアそれぞれが、光パルスによって放出させることが可能なクエンチャーの近傍に存在し、ペアの第1の消光フルオロフォアが、その近傍のクエンチャーが放出されると第1の波長で蛍光を発することが可能であり、ペアの第2の消光フルオロフォアが、その近傍のクエンチャーが放出されると第2の波長で蛍光を発することが可能である、実施形態138のポリマー。
【0496】
実施形態149.ペアの第1の消光フルオロフォアが、第1の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在し、ペアの第2の消光フルオロフォアが、第2の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在する、実施形態148のポリマー。
【0497】
実施形態150.ペアの第1の消光フルオロフォアが、第1の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在し、ペアの第2の消光フルオロフォアが、第1の波長または第2の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在する、実施形態148のポリマー。
【0498】
実施形態151.複数の修飾可能なフルオロフォアが、フェルスター共鳴エネルギー移動距離内にフルオロフォアの複数のペアを含み、ペアの第1のフルオロフォアが、ケージングされており、光パルスによって脱ケージすることが可能であり、ペアの第2のフルオロフォアが、光パルスによって放出させることが可能なクエンチャーの近傍に存在する消光フルオロフォアであり、2つのフルオロフォアの複数のペアが、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ペアのケージドフルオロフォアが、脱ケージされると第1の波長で蛍光を発することが可能であり、ペアの消光フルオロフォアが、その近傍のクエンチャーが放出されると第2の波長で蛍光を発することが可能である、実施形態138のポリマー。
【0499】
実施形態152.ペアの第1のケージドフルオロフォアが、第1の波長の光パルスによって脱ケージされ、ペアの第2の消光フルオロフォアが、第2の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在する、実施形態151のポリマー。
【0500】
実施形態153.ペアの第1のケージドフルオロフォアが、第1の波長の光パルスによって脱ケージされ、ペアの第2の消光フルオロフォアが、第1の波長または第2の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在する、実施形態151のポリマー。
【0501】
実施形態154.ペアの第1のケージドフルオロフォアが、第1の波長または第2の波長の光パルスによって脱ケージされ、ペアの第2の消光フルオロフォアが、第1の波長の光パルスによって放出可能なクエンチャーの近傍に存在する、実施形態151のポリマー。
【0502】
実施形態155.複数の荷電した構成成分が、骨格内に存在する、実施形態138のポリマー。
【0503】
実施形態156.複数の荷電した構成成分が、ポリマーの単量体内に存在する、実施形態138のポリマー。
【0504】
実施形態157.複数の荷電した構成成分が、負に荷電したリン酸基、負に荷電した硫酸基、負に荷電したカルボン酸基、または正に荷電したアンモニウム基である、実施形態138のポリマー。
【0505】
実施形態158.生体ポリマーである、実施形態138のポリマー。
【0506】
実施形態159.DNA、RNA、ホスホロチオエートDNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、2’-フルオロ-DNA、2’-O-メチルRNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド鎖、またはペプトイド鎖である、実施形態158のポリマー。
【0507】
実施形態160.有機ポリマーである、実施形態158のポリマー。
【0508】
実施形態161.データが符号化されたポリマーであって、
ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置され、骨格を介して連結した複数のフルオロフォアであって、光パルスによって第1の構造的状態から第2の構造的状態に修飾された複数の修飾されたフルオロフォアを含む、複数のフルオロフォアと、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置される複数の荷電した構成成分と
を含む、ポリマー。
【0509】
実施形態162.複数のフルオロフォアが、第1の構造的状態でポリマーに組み入れられており、複数の修飾されたフルオロフォアが、ナノポアを含むデバイスによって修飾されており、デバイスが、ナノポアを介してポリマー横断させ、データコードに従って光パルスによって複数のフルオロフォアを選択的に修飾することが可能である、実施形態161のポリマー。
【0510】
実施形態163.複数の修飾されたフルオロフォアが、脱ケージドフルオロフォアを含む、実施形態161のポリマー。
【0511】
実施形態164.複数の修飾されたフルオロフォアが、不消光フルオロフォアを含む、実施形態161のポリマー。
【0512】
実施形態165.複数の修飾されたフルオロフォアが、光変換フルオロフォアを含み、光変換フルオロフォアの第2の構造的状態により、第1の構造的状態から発せられる波長とは異なる波長の蛍光が発せられる、実施形態161のポリマー。
【0513】
実施形態166.書き込み可能なポリマー上にデータを符号化する方法であって、
ポリマー骨格に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマー骨格を介して連結した複数の修飾可能なフルオロフォアを含む書き込み可能なポリマーを用意するステップであって、複数の修飾可能なフルオロフォアの修飾可能なフルオロフォアそれぞれが、第1の状態を有して用意され、そのそれぞれを、第1の構造的状態から第2の構造的状態へと修飾することが可能である、ステップと、
データ書き込みデバイスを利用して、複数の修飾可能なフルオロフォアのサブセットを第2の構造的状態へと選択的に修飾し、その結果、データが符号化されたポリマーが生成される、ステップと
を含む、方法。
【0514】
実施形態167.データ書き込みデバイスが、ナノポアを含み、方法が、書き込みデバイスのナノポアを介して書き込み可能な核酸ポリマーを通過させるステップをさらに含み、ナノポアが、複数の修飾可能なフルオロフォアのサブセットに光パルスを当てて第2の状態にする手段を含む、実施形態166の方法。
【0515】
実施形態168.複数の修飾可能なフルオロフォアが、光パルスによって脱ケージすることが可能なケージドフルオロフォアを含む、実施形態166の方法。
【0516】
実施形態169.複数の修飾可能なフルオロフォアが、クエンチャーの近傍にフルオロフォアを含み、クエンチャーを、光パルスによって放出させることが可能である、実施形態166の方法。
【0517】
実施形態170.複数の修飾可能なフルオロフォアが、光変換型フルオロフォアを含み、光変換型フルオロフォアの第1の構造的状態が第1の発光波長を有し、光変換型フルオロフォアの第2の構造的状態が第2の発光波長を有する、実施形態166の方法。
【0518】
実施形態171.生成されたポリマーの符号化されたデータを読み取るステップをさらに含む、実施形態166の方法。
【0519】
実施形態172.符号化されたデータを、データ読み取りデバイスのナノポアを介して生成されたポリマーを通過させることによって読み取り、読み取りデバイスのナノポアが、複数の修飾可能なフルオロフォアの第2の状態の蛍光を検出する手段を含む、実施形態171の方法。
【0520】
実施形態173.データ読み取りデバイスが、データ書き込みデバイスと同じデバイスである、実施形態172の方法。
【0521】
実施形態174.データを読み取るためのナノポアデバイスが、データを書き込むためのものと同じナノポアデバイスである、実施形態173の方法。
【0522】
実施形態175.符号化されたデータを、生成されたポリマーの引き伸ばしおよびイメージングによって読み取る、実施形態174の方法。
【実施例
【0523】
ポリマーを利用したデータストレージのための組成物、システム、および方法の種々の例が本明細書に記載される。書き込み可能な核酸ポリマー、そのようなポリマーを作製するための方法、データを書き込むための方法、およびデータを読み取るための方法の例が提示される。
【0524】
(実施例1)
プラズモニックナノポアを使用した光パルスによるDNAまたはROMPポリマーへのデータの書き込み
修飾可能なフルオロフォアビットを有する反復DNA鎖またはROMPポリマーを、各反復単位に、スペクトルにより区別可能なケージド色素が2つ含有されるように構築する。選択される色素は、図2Cに示されているクマリンおよび図2AのTokyo greenケージド色素である。これらの2つの色素を、照射により両方の色素が同時に照明されるように、反復単位内の互いに近くに置く。この書き込まれていない(「ブランク」)DNAまたはROMPポリマーをポアの出口に金プラズモニックボウタイをさらに含むナノポア装置に入れる。DNAまたはROMPポリマーを、ナノポアの、暗闇側の、500mMの塩化ナトリウムを含有する緩衝液に入れる。ポアの両側に置かれた溶液中の電極によって電圧を印加し、それにより、DNAまたはROMPポリマーがナノポアを通って移動する起動力をもたらす。書き込まれていないDNAまたはROMPポリマーがポアを通過するにしたがい、レーザーまたはLED光がポアの出口のボウタイ構造にパルスとして当てられる。10ミリ秒の長い波長(455nm)のパルスによりクマリン色素の脱ケージングがもたらされ、その結果、「0」ビットが書き込まれ、それを後でその青色蛍光によって同定することができる。DNAがさらに通過するにしたがい、365nmの光のパルスがボウタイ構造に当てられ、それにより緑色色素の脱ケージングがもたらされ、その結果、「1」ビットが書き込まれ、それを後でその緑色蛍光によって同定することができる。このように、DNA鎖がポアを通過するにしたがい、一連の光のパルスによりDNA鎖にバイナリデータが書き込まれる。書き込みの効率およびスピードを、DNAまたはROMPポリマーの通過速度を変更することによって、ならびに光パルスの長さおよび強度によって、調整することができる。
【0525】
(実施例2)
光変換による有機ポリマーへのデータの書き込み
ポアの出口に金プラズモニックボウタイをさらに含むナノポア装置を使用し、反復単量体それぞれにヘプタメチン色素を含有するポリアクリル酸(PAA)ポリマーを使用して、鎖にデータを書き込む。PAAポリマーを、ナノポアの暗闇側の、500mMの塩化ナトリウムを含有する緩衝液に入れる。ポアの両側に置かれた溶液中の電極によって電圧を印加し、それにより、DNAがナノポアを通って移動する起動力をもたらす。書き込まれていないポリマー鎖がポアを通過するにしたがい、レーザーまたはLED光がポアの出口のボウタイ構造にパルスとして当てられる。長い波長(740nm)パルスにより、2つのメチン単位の消失がもたらされ、その結果、ペンタメチン色素がもたらされ、それが「0」ビットとして書き込まれ、それを後でその赤色蛍光によって同定することができる。ポリマーがさらに通過するにしたがい、740nmおよび638nmの二重波長の光のパルスがボウタイ構造に当てられ、それにより、2つのメチン単位および追加の2つのメチン単位の二段階消失の結果として、ヘプタメチン色素のトリメチン色素への変換がもたらされる。これにより、「1」ビットが書き込まれ、それを後でその緑色/黄色蛍光によって同定することができる。このように、ポリマー鎖がポアを通過するにしたがい、一連の光のパルスによりポリマー鎖にバイナリデータが書き込まれる。書き込みの効率およびスピードを、ポリマーの通過速度を変更することによって、ならびに光パルスの長さおよび強度によって調整することができる。
【0526】
(実施例3)
クエンチャーおよびケージの光により誘発される放出によるDNAへのデータの書き込み
書き込み可能なビットを有する反復DNA鎖を、ポアの出口に金プラズモニックボウタイをさらに含むナノポア装置に入れる。DNAを、ナノポアの、暗闇側の、500mMの塩化ナトリウムを含有する緩衝液に入れる。ポアの両側に置かれた溶液中の電極によって電圧を印加し、それにより、DNAがナノポアを通って移動する起動力をもたらす。書き込まれていないDNAがポアを通過するにしたがい、レーザーまたはLED光がポアの出口のボウタイ構造にパルスとして当てられる。10ミリ秒の長い波長(430nm)パルスにより、クエンチャーの消失がもたらされ、その結果、「0」ビットが書き込まれ、それを後でその青色蛍光によって同定することができる。DNAがさらに通過するにしたがい、365nmの光のパルスがボウタイ構造に当てられ、それにより、クエンチャーの消失および緑色色素の脱ケージングがもたらされ、その結果、「1」ビットが書き込まれ、それを後でその緑色/青色蛍光によって同定することができる。このように、DNA鎖がポアを通過するにしたがい、一連の光のパルスによりDNA鎖にバイナリデータが書き込まれる。DNAの通過速度を変更することによって、ならびに光パルスの長さおよび強度によって書き込みの効率およびスピードを調整することができる。
【0527】
(実施例4)
書き込まれたDNAポリマーのナノポアシーケンシングによる読み取り
一般的なナノポアシーケンシングデバイスでは、DNA分子がポアを通過する間の電解質の電流の流れを測定する。DNA塩基はそれぞれサイズおよび形状が異なるので、それぞれの異なる塩基がポアを通過すると電流がわずかに変更される。本実施例では、市販のナノポアデバイスを用いて実験を実施し、書き込まれたDNAテープが通過している間、電流の変化を経時的に読み取る。「1」および「0」ビットは、GおよびニトロベンジルGを含み、これらはサイズが相当に異なる。ビットが全て「0」の状態であるDNAテープ(ブランクポリマー)を用いた実験により、最も大きなニトロベンジルGヌクレオチドが通過した時に電流が低下し、これらの「0」ビットとスペーサーおよびデリミタの電流の差異を区別することができることが明らかになった。別途、全てが「1」のポリマーであるDNAを測定すると、「1」(G)ビットが通過した際に観察される電流のレベルが示される。これらの実験により、「1」ビットおよび「0」ビットを示す電流レベルの読み取りおよび区別に関する較正がもたらされる。次に、完全に書き込まれたDNAポリマーを通過させる。「1」および「0」を示す電流レベルを読み取り、スペーサーおよびデリミタについて見られた電流レベルの状況下に置く。必要であれば、データ読み取りの正確度を改善するために同じ鎖の複数の読み取りを使用する。
【0528】
(実施例5)
ナノポアの電流の流れによるDNAのデータの読み取り
実施例1による書き込まれたDNAポリマーをプラズモニックナノポアデバイスに入れる。DNAを、ナノポアの、暗闇側の、500mMの塩化ナトリウムを含有する緩衝液に入れる。ポアの両側に置かれた溶液中の電極によって電圧を印加し、それにより、DNAがナノポアを通って移動する起動力をもたらす。ボウタイ構造に365nmの光が連続的に当てられ、それにより、非暗色色素が通過するにしたがい、励起される。デバイスは、デバイスの明るい側にイメージングセンサーをさらに含む。クマリンのみが脱ケージされた場合、青色色素が観察される。両方の色素が脱ケージされた場合、クマリンからTokyo greenへのフェルスター共鳴エネルギー移動に起因して緑色シグナルが観察される。連続モードでの顕微鏡によるイメージングにより、青色シグナルと緑色シグナルの列がもたらされ、ソフトウェアによりこの列がバイナリコードに変換される。
【0529】
(実施例6)
生物由来DNAへの書き込み可能なビットの組込み
本実施例では、バクテリオファージラムダ由来の48kbpの二本鎖ゲノムDNAを、化学修飾可能な構造のセットの組込みに使用する。DNAを、DMSOを含有する水溶液に溶解させる。DMSOにより、化学修飾可能な構造として利用される光変換型ヘプタメチン色素の溶解が補助される(図8B)。ビットヘプタメチン色素モジュールを、メシレート基を用いて官能化し、二本鎖DNA内のグアニンとの反応性を付与する。ビットモジュールを、DNAを伴う溶液中、1mMに溶解させ、37℃で48時間インキュベートして、最大数の付加物を組み込む。次いで、DNAを沈殿によって単離する。その後の解析により、大多数のグアニンヌクレオチドがビットモジュールによってアルキル化され、それにより、光変換型ヘプタメチン色素が繰り返し間隔をあけて配置される書き込み可能なポリマーが得られたことを明らかにする。
【0530】
(実施例7)
反応性基を核酸ポリマーに組み入れるためのポリメラーゼ伸長
本実施例では、バクテリオファージラムダ由来の直鎖状の48kbpの二本鎖ゲノムDNAを緩衝液中に溶解させ、熱によって変性させ(95℃、10分間)、次いで、氷上で急速に冷却し、それにより、2本の分離されたゲノムDNAの一本鎖を得る。ssDNA鎖を、ゲノム鎖の一方の3’末端と相補的な配列を有する25ntのDNAプライマーと、ハイブリダイゼーションを支持するMg2+含有緩衝液を含有する25℃の溶液中で混合する。BST DNAポリメラーゼを、それぞれ100μMの3つの標準的なdNTP(dATP、dCTP、dGTP)およびアミノプロピニル-dUTP(その開示が参照により本明細書に組み込まれるS. E. Lee, et al., Nucleic Acids Res. 2001; 29:1565-73)と共に溶液に添加する。DNAおよびポリメラーゼ溶液を65℃で数時間インキュベートし、それにより、T位にアミン官能基を有する第1の鎖の完全なコピーがポリメラーゼにより合成される。このDNAの二重鎖はこれらのアミン位において求核性であり、求電子剤と反応し得る。次いで、ビットを組み込むために、反応性NHSエステル基を有するビットモジュール(すなわち、化学的に変更可能な基を2つ含有する)溶液を、溶液中のアミン基の数を超えるモル過剰でインキュベートする。ビットモジュールを溶解させ、DNAを溶解したまま保持するために十分なDMSOを存在させる。長時間のインキュベーションの結果、大多数のアミン基がアシル化された、ビットモジュールを有する二本鎖DNAがもたらされる。この書き込み可能なDNAを過剰な試薬から、および一本鎖DNAから単離する。
【0531】
(実施例8)
DNAへのホスホロチオエート基の組み入れおよびビットモジュールの組込み
本実施例では、バクテリオファージラムダ由来の直鎖状の48kbpの二本鎖ゲノムDNAを緩衝液中に溶解させ、熱によって変性させ(95℃、10分間)、次いで、氷上で急速に冷却させ、それにより、2本の分離されたゲノムDNAの一本鎖を得る。ssDNA鎖を、ゲノム鎖の一方の3’末端と相補的な配列を有する25ntのDNAプライマーと、ハイブリダイゼーションを支持するMg2+含有緩衝液を含有する25℃の溶液中で混合する。BST DNAポリメラーゼを、それぞれ100μMの3つの標準的なdNTP(dTTP、dCTP、dGTP)およびdATP-アルファ-Sと共に溶液に添加する。DNAおよびポリメラーゼ溶液を65℃で数時間インキュベートし、それにより、A位にホスホロチオエート連結を有する鎖の完全なコピーがポリメラーゼにより合成される。このDNAの二重鎖はこれらのホスホロチオエート位で求核性であり、求電子剤と反応し得る。次いで、反応性ヨードアセチル基を有するビットモジュール(すなわち、化学的に変更可能な基のセット)を、反応中のチオエート基の数を超えるモル過剰でインキュベートする。ビットモジュールを溶解させ、DNAを溶解したまま保持するために十分なDMSOを存在させる。長時間のインキュベーションの結果、大多数のチオエート基がアルキル化された、ビットモジュールを有する二本鎖DNAがもたらされる。この書き込み可能なDNAを過剰な試薬から、および一本鎖DNAから単離する。
【0532】
(実施例9)
安定かつ変更可能な二次構造を介した核酸へのデータ符号化
本実施例では、図12に示されている配列を有するが、各鎖の5’末端に、追加の4ヌクレオチド(TCGA)がライゲーション可能な末端として、末端5’リン酸基と共に付加された、合成DNAオリゴヌクレオチドを構築する。修飾されたデオキシウリジン単量体をDNA合成の間に「上の」鎖に組み入れ(図13の例を参照されたい)、それにより、反応性官能基を有する修飾されたデオキシウリジン単量体のペアを得る。これらの2つの鎖(修飾された鎖および修飾されていない相補物)をそれぞれ別々にT4 DNAリガーゼおよびATPとライゲーションし、末端を接合するために短い「スプリント」オリゴヌクレオチドを使用して、長い反復ポリマーにする。修飾されたデオキシウリジン単量体の各ペアの少なくとも一方は光により切断可能なリンカーを含有する。そのような反応性基の例は図10に見いだされる。フォールディングを促進するために塩を含有する緩衝水溶液中の一本鎖の折り畳まれた修飾鎖ポリマーを反応させて、XとYの間に、および別途ZとQの間に安定かつ変更可能な連結を形成し、この連結の形成は、折り畳まれたヘアピン内でこれらが近傍に存在することによって促進される(図12参照)。これらの安定な結合により、DNAが折り畳まれた状態にトラップされ、単純な二重鎖が不安定化される。結果として、相補DNAポリマーとのハイブリダイゼーションにより二重ヘアピン構造が維持される。データをポリマーに符号化するために、ポリマーが光エネルギー源を通過するにしたがい、また符号化されるデジタルコードに従って、紫色光エネルギー(例えば、およそ430nm)の1回または複数回のパルスがポリマーの指定の場所に供給されて、ZとQのペアの官能基が切断され、その結果、ZとQの間の連結の「ロック解除」、およびヘアピン形成の単純な二重鎖への変更がもたらされる。さらに、UV光エネルギー(例えば、およそ365nm)の1回または複数回のパルスがポリマーの指定の場所に供給されて、ZとQのペアおよびXとYのペアの両方から官能基が切断され、その結果、両方の連結のロック解除、および両方のヘアピン形成の単純な二重鎖への変更がもたらされる。これらの3つの異なるDNAコンフォメーション(小さなヘアピン、大きなヘアピン、単純な二重鎖)は、ナノポアシーケンシングプラットフォームにより、構造がポアを通過するにしたがった電流の流れの差異によって区別可能である。
【0533】
(実施例10)
光変換型フルオロフォアを用いた有機ポリマーへの書き込み可能なビットの組み入れ
本実施例では、ノルボルネン-イミドを利用した開環メタセシス重合(ROMP)(その開示が参照により本明細書に組み込まれるS. Sutthasupa, M. Shiotsuki, and F. Sanda, Polym J. 2010; 42:905-915)によってポリマーを調製する。イミドの窒素をアジドブチル基によって置換した後に重合を行い、それにより、各単量体にアジド側鎖基を有するポリマーをもたらす。ポリマーをジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させる。「X」位に末端アルキン基を有する光変換型ヘプタメチン色素ビットモジュール(図8Bを参照されたい)をDMF溶液に、モル過剰のアジド側鎖基の下で添加する。CuAAc反応を行うために、銅(I)およびトリス(トリアゾリル)メチルアミンリガンドを添加して反応を触媒させ、溶液を、暗闇中、室温で2日間、撹拌しながらインキュベートする。官能化されたポリマーを単離し、その後の解析により、大多数のアジド側鎖が光変換型ヘプタメチン色素ビットモジュールで修飾されていることを明らかにする。
【0534】
(実施例11)
ペプチドポリマーへの書き込み可能なビットの組み入れ
本実施例では、反復配列Lys-Alaで構成されるポリマーペプチドを使用して、データ書き込み可能なポリマーを生成する。ペプチドをジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させる。クエンチャー、青色クマリンフルオロフォア、およびケージドTokyo greenフルオロフォアを含み、「X」位においてカルボン酸基で官能化されたビットモジュール(図8C参照)をDMFに添加する。ペプチドカップリング剤EDCを添加し、溶液を、暗闇中、室温で2日間、撹拌しながらインキュベートする。官能化されたポリマーペプチドを単離し、その後の解析により、大多数のリシン側鎖が、クエンチャー、青色クマリンフルオロフォア、およびケージドTokyo greenフルオロフォアを含むビットモジュールで修飾されていることを明らかにする。
【0535】
(実施例12)
Cy-5標識DNAの調製および局部的な光退色
本実施例では、フルオロフォア(Cy-5)標識合成DNAの引き伸ばしおよび書き込みを実証する。
【0536】
本実施例では、以下の配列(配列番号1)を使用した:
【0537】
ATTCGCGGCCGCAGGCTAGGTGGAGGCTCAGTGATGATAAGTCTGCGATGGTGGATGCATGTGTCATGGTCATAGCTGTTTCCTGTGTGAAATTGTTATCCGCTCAGAGGGCACAATCCTATTCCGCGCTATCCGACAATCTCCAAGACATTAGGTGGAGTTCAGTTCGGCGTATGGCATATGTCGCTGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCTATTCAACAAAGCCGCCGTCCCGTCAAGTCAGCGTAAATGGGTAGGGGGCTTCAAATCGTCCGCTCTGCCAGTGTTACAACCAATTAACAAATTCTGATTAGAAAAACTCATCGAGCATCAAATGAAACTGCAATTTATTCATATCAGGATTATCAATACCATATTTTTGAAAAAGCCGTTTCTGTAATGAAGGAGAAAACTCACCGAGGCAGTTCCATAGGATGGCAAGATCCTGGTATCGGTCTGCGATTCCGACTCGTCCAACATCAATACAACCTATTAATTTCCCCTCGTCAAAAATAAGGTTATCAAGTGAGAAATCACCATGAGTGACGACTGAATCCGGTGAGAATGGCAAAAGCTTATGCATTTCTTTCCAGACTTGTTCAACAGGCCAGCCATTACGCTCGTCATCAAAATCACTCGCATCAACCAAACCGTTATTCATTCGTGATTGCGCCTGAGCGAGACGAAATACGCGATCGCTGTTAAAAGGACAATTACAAACAGGAATCGAATGCAACCGGCGCAGGAACACTGCCAGCGCATCAACAATATTTTCACCTGAATCAGGATATTCTTCTAATACCTGGAATGCTGTTTTCCCGGGGATCGCAGTGGTGAGTAACCATGCATCATCAGGAGTACGGATAAAATGCTTGATGGTCGGAAGAGGCATAAATTCCGTCAGCCAGTTTAGTCTGACCATCTCATCTGTAACATCATTGGCAACGCTACCTTTGCCATGTTTCAGAAACAACTCTGGCGCATCGGGCTTCCCATACAATCGATAGATTGTCGCACCTGATTGCCCGACATTATCGCGAGCCCATTTATACCCATATAAATCAGCATCCATGTTGGAATTTAATCGCGGCCTCGAGCAAGACGTTTCCCGTTGAATATGGCTCATAACACCCCTTGTATTACTGTTTATGTAAGCAGACAGTTTTATTGTTCATGATGATATATTTTTATCTTGTGCAATGTAACATCAGAGATTTTGAGACACAACGTGGCTTTCCCCCGCCGCTCTAGAACTAGTGGATCCAAATAAAACGAAAGGCTCAGTCGAAAGACTGGGCCTTTCGTTTTATCTGTTGTTTGTCGCATTATACGAGACGTCCAGGTTGGGATACCTGAAACAAAACCCATCGTACGGCCAAGGAAGTCTCCAATAACTGTGATCCACCACAAGCGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGACGTTGTAAAACGACGGCCAGTCATGCATAATCCGCACGCATCTGGAATAAGGAAGTGCCATTCCGCCTGACCTTGCCTCTCGCCAGCATTGTAATAGGCCTCAGCTACCTGGGTACCTGAATCCATCGCTGCGTAGCTGGATAGGTGCGTGACTAAATGAGTAAGTGAGTCGCTACATCCCTACATCCGTCGCTGGCTAACTCACTGCGTAACTCCATGGCTGAATGAGTCGATAGCTCGCTGAATGAGTACGTGAATCAGTAAGTACGTAGATCGGTGGCTGCGTACCTGAATCCCTCAATGAATCACTAGGTCACTAACTCAATACATGCCTAGGTAGGTAAGTAAGTCAATGACTGGCTGGCTGAATCGATAACTGCATAGCTACATCAGTAGATACATAAGTGAATGAGTCCGTAGATGGGTAACTCCATGAATCACTGCCTGAATCAGTCAATCACTACGTAGGTAACTAGATAAATCGGTGAATACGTGCGTGAATGGATAGGTAGATAGGTAGCTGGATCCGTCCCTAACTCGCTCAGTGCGTAGATCACTGAATCAGTCGATCCGTACGTACCTCAGTCGATACGTGAGTAGCTAGGTCGCTCGCTCAATGGGTAAATACATACATCACTGCCTGCGTGAGTCCGTGCATCGATAAGTGGATGGCTAAGTGGCTGAGTAACTCAATGAATACATACGTGAGTCGCTGCCTAGATGCATCGCTACCTGAATGAATACCTGCGTGGGTCAGTGCCTAGCTGGGTCAGTAACTCGATGAGTCCCTAGATCCGTCACTCAGTAGCTGAATGCATCGCTCGCTAGGTAACTCCCTCGATACATCCATAGATACGTCACTGGCTGGATCACTCGATGAATGCATCACTCAGTCAATCCATCGCTCACTCGCTCCCTGGGTGACTCAATGCGTCAGTGAATAAGTGACTCGCTGGATGGATGCATCAGTCAGTGCATCACTAAATGGGTAGATACGTACCTACCTACATCAGTCCATCACTCACTACCTAAATGAGTGGCTGGATCGGTCGGTCACTAAGTACGTACCTCCCTAACTCACTCGGTGCCTAACTCGATAGGTACCTAAATCAGTGAATACGTGCCTCGGTAGCTAGATAAGTGCCTCGATGAATACGTAACTAGATACATCCGTGGGTGGCTCCGTGGATCGGTGAGTGGGTCGATGCCTCACTGCCTGAGTAAATGCCTCACTGGCTGCCTACGTGACTACATCCCTGCGTGGCTCACTCACTCGGTGCGTAGATCAGTCCCTGGCTGCGTCCCTGCGTGCCTGGCTGAATAGGTGGATGCGTACATCAGTACATCCCTGCATGGCTCGGTGCATACCTGACTCCGTCACTGGCTCAGTACCTCGATAAGTGACTCGGTCAATCAGTGCGTGGGTCCATCAATCAATCACTGGCTCCCTCAGTCCATCAATACATGGCTGAGTGAATACATACCTGGATGCATCACTGGGTGGCTGGCTGGATACCTAAGTACGTAGGTGCCTACATAAGTAACTAAGTCGCTGCATCGATCCGTACCTGCGTCAATGGCTAGGTCCGTCCGTAAGTCGATACGTGAGTCCATGGATGCATACATCGATACGTCCATAGATCGATACGTGCATACATAAGTCGCTACGTGAGTAACTACCTACATGAATACATCCATCCATGCGTGACTAAGTAGATCCGTGGCTGGATCACTACATCGATCGCTGCGTGCGTGCGTCACTAGCTCAGTGGATACGTGAATGAATGAATACATCGGTCACTCGCTAGGTGCATAAGTCGATGAATAGGTGCATACGTGAGTAACTAAATGCCTCGCTGGATGAATCACTGGCTGAATAGATAACTGCGTAGGTGGGTAGGTAGCTCCATCGGTGGCTCCATGGGTGAATCCCTAACTGGATGGGTGCCTACCTAACTGAGTAGCTGGGTCGATAAATCGATCCCTCCGTAACTAACTACATCGCTGCGTACCTGCGTGGATCGCTGAATCGGTCCCTGAATCGATCACTAGATAAATACCTCGATCGCTAAATGGCTGCCTGGATAGGTGAATAGCTAGGTGGGTACCTCACTAGATGCATAGCTCCATGACTCCCTCCATCGATACGTCGGTGACTCCCTGGCTAGGTGCCTAGGTGACTCCATACGTGCGTAGCTGGATGACTCGGTGCGTCCATCGGTGGGTGGCTAAGTCGCTACATCCGTGGGTGCCTCGATCCATCCCTGGATCCATAAGTCCATACGTGCATACATGACTACCTAGCTCGGTGGATACATCGCTCCATGACTGCATCAGTACGTAAATAACTCGGTAGATGCATAGATACATGGCTGCGTGACTCGATCAATGAATAGGTCAATAGCTCCGTCGCTGCCTCGCTAGCTGGGTGGATGACTACGTGGATACATAAGTGGATGAATGGCTGGCTGGATCCCTCCCTCCATCACTGGCTACCTAAGTGAATAACTACCTAACTAGCTAGATGGCTGGGTCCATCAATGGCTAGATCCCTCAATAGGTACATCGGTCCATGCATCCATAACTACGTCAGTCCATACGTCCATCCATGAGTCGATCGATGGGTAGGTACATACGTAAATGCGTAAGTCAATCCCTACATGCCTACATCACTAGGTGGATGAGTCGGTGGATGCGTAGCTGCATCCCTAGGTACATCACTCCGTGAGTAAATACCTACATGGCTAGGTAAATCCATAAGTCGGTCACTCGCTCCGTCCCTGCGTCCCTGCCTAAGTAGATGAATAGGTCACTGCATGCCTAGCTAACTAGATCCCTAAGTACATGAGTAAATCAATCCCTGCATGCCTCGGTGCATACATAGGTGAGTGAATGAGTCGCTACGTAACTCACTCAATCGATAAGTCAGTACCTCCCTGCCTACCTGACTAGGTGCGTAAATAGATAAATACGTGGCTCCATACATAAGTAGGTGGCTAACTCACTAGCTGGATGGCTCAATCGGTGCCTCGCTAGCTCGCTGCGTAACTCGGTAAATCACTAGCTAACTGCGTCCCTGAGTAGCTCCGTAACTAGCTAAGTGCCTAACTCAGTGCGTAGCTAACTAACTAGCTCGCTGAGTCACTGCATCAATCAATGCATAACTGGGTGAATAAATCAATACCTCCATGAGTAGATAAATAAGTGCGTCGGTGAATGCCTGAGTGACTCGATCAGTCAGTGCGTGGCTAGGTGGGTCGGTCCGTCACTGGCTCGCTACGTGGGTGACTGCCTGCCTCCGTACGTACCTGCGTAGGTACATAGATACCTCAGTAACTCGCTGCCTCGCTAGCTGGGTACGTGGATAACTAGATCGGTAGGTCCATGAATCAATACGTACATCCCTCAATACGTGAGTAAATCCCTCACTCGCTAAATGGCTGACTACGTCCGTCCGTGACTAAGTAGGTAAGTCGCTGGATAACTCAATACCTGGCTACATAGCTCAGTCGGTACCTAAATGCCTCAATGGCTCGCTGAGTCGGTCAATCCCTCCATCCGTAACTCACTAAGTCAGTCCATGCCTAGGTAACTCCCTCGATAACTAACTGGGTAAATGACTAACTCGCTACGTAAATGCCTGCGTACGTCAATAGATCACTCCCTGAATGGGTGGCTGGCTGGGTCGCTAGCTCCATCCATACATGGCTCCGTGCGTCGCTACATCAATGCGTAGCTCGGTCAATGCCTGCGTACGTCGATAAATAGCTGCCTACGTGAGTAGATGGGTCCCTCAATCCCTGAATAAGTACGTAAGTCCGTACCTCAATACCTAACTGCCTGCATCAATACCTAGATAAGTGCGTGACTGAATAGGTCAGTCGATCGCTAGGTCAATGAGTGGCTCGATGCATGGGTAGATAGATGCGTGGATAGATACGTGCCTGGCTGAATAGGTAGATGCCTACATCCATGACTCGCTCGGTCGGTCACTCAATGGATAAATGACTAAGTACGTCGCTGCATCACTCCATCCGTCCCTAAGTAGGTGGCTACGTCAGTCGATGAGTGGGTGAGTAGATCGATAACTGAATAGCTCAATAAATGGGTCCATGGCTGGCTGGATGCGTCGGTGAGTGCATGGGTCCGTACATCGGTCACTCCCTCGATGGCTCCATCGGTCCATGCCTGGCTCGATACGTGAATAGATACATAGCTGACTGGGTCACTAAGTGAGTGCGTCCATGCATCCCTACGTACGTGAGTCAGTACGTCAATGCGTAACTACGTGCATGAATAACTCGATCCGTCAGTGCCTAAGTGAATAGCTGGCTAACTGGATCACTGCATAGCTCCATCCCTGGCTCCATGGATGAATCGCTGCATCCATAACTCGATCCGTACGTACGTCAATAGGTGACTCCCTGAGTCAGTAGATGGCTACGTCGATGCCTAGATAGGTGGATGCGTACCTCGATAGGTAACTACGTAAGTCGATCGATCCATCCGTGCCTGCGTGGATCGGTAGATAACTAGCTACATCCCTCCATGCATACATACATAAATGAATGACTCGCTCCATCACTGCGTGACTGCATACGTGAATAAATACGTGCGTGCCTCGATACATGCGTGACTCAATGACTCGCTCCGTCCGTGCGTCCGTAACTCGGTAAATCGGTACATGCCTGCATACATCAGTGCCTCCGTCCCTGCATACGTCCGTCCATCGATCGATAGCTGGCTAAATAGGTGGGTAGGTAGATGCCTGCGTCGATAGATGAATACATCGGTAAATGGCTCGCTACGTAAGTAGGTGGGTAGATCAGTGGGTACGTCGCTAGCTAGATAGGTCGATACATAACTGACTCACTCGGTCCGTACGTGGGTAAATCAATAGCTAGCTACCTGCGTACCTGCATCGATGGCTAAATCCATACGTCCATAGATCACTCCCTGCATCGGTGAATGGGTGAATCAATCAGTGCGTCCCTGGGTACGTGGCTAAATAACTAGATGGCTGCATAGGTAACTGCATCGATACATCACTACGTACATCCATAAGTCCGTCCATAAGTCGATCGCTAGATAAATGAGTGCGTAAATGAGTGCCTCGGTGGATAGATGCGTACCTCGATAGGTGCGTGGCTACCTCGGTACGTCCGTCCCTAGATGGCTAGGTGCATAACTGGCTACGTAACTCGCTCCGTCGGTGCCTACCTAAATAAGTCCGTGCGTCCCTGCATCCATCCCTAAATCGATAAGTCGCTAGCTCGATCAGTAAGTACATCCCTGAATCAATAAGTAAATCCCTCCGTACGTGAGTGAGTGCGTAGGTGCATCAGTGGATAAGTGGGTGCATCACTGCGTCCATGCATCACTACCTAAGTCCGTGCGTAGGTAGATCAGTACGTGAGTGCCTAAGTGCGTAGCTACGTAAGTGAGTGACTGAGTGCCTGGGTCCATGAATACCTCCATACGTGGGTACCTACGTCGGTGACTAGGTCACTGCATACCTGGGTCCGTAGGTACCTAGCTGCATAGATAAGTCCCTGCGTGGATGCCTCCGTGGCTGAATCGGTCAATGCATGGATAAATACGTGCATCGCTGAATGGCTCAGTCAATACATCAGTGG.
【0538】
プラスミドを使用したDNAの調製
上記の配列(配列番号1)を有するDNAを、プラスミドおよびDNAポリメラーゼを使用し、Tを色素標識dUTP(例えば、Cy5-dUTPなど)によって置き換え、それにより、標識Uを有するDNA、例えば(配列中、NはAまたはCまたはGであり得る):
……NNNNNNNNNUNNNUNNNUNNNUNNN……
をもたらすことによって調製した。
【0539】
DNAクリーンアップ
調製されたDNAを含有する反応混合物をCleanNGS DNA&RNA Clean-Up Magnetic Beads 100μLと混合し、室温で5分間インキュベートし、磁気スタンド上で3分間放置した。透明な液体を吸引し、廃棄した。磁気ビーズを70%エタノール400μLで2回洗浄し、毎回1分間インキュベートした。エタノール洗浄後、ビーズを1分間自然乾燥させ、次いで、IDTE緩衝液50μLと共にラック上で5分間インキュベートした。次いで、管を磁気スタンドに戻し、3分間放置した。全ての磁気ビーズが側面に移動した後、透明な液体を新しい1.5mLエッペンドルフ管に移した。DNAの濃度をQubit蛍光光度計を使用して測定し、ゲル電気泳動を使用して完全性を確認した。一般には、標識DNA 500~1000ngを回収した。標識DNAの電気泳動の例を図14において見ることができ、レーン1はCy5標識DNAを含有し、レーンMはSafegreen 1kb DNAラダーを含有する。
【0540】
DNAのコーミングおよび引き伸ばし
DNAコーミングプロトコールのための材料には以下が含まれた:Genome Visionから購入したファイバーコーム器具、ゲノムDNA抽出キット、引き伸ばしリザーバーおよびビニルシランでコーティングされたカバーガラス。Prolong Gold封入溶液はThermofisherから入手し、YOYO-1はBiotiumから入手した。
【0541】
DNA引き伸ばしプロトコールにおいて、標識DNA 1μL(20~50ng)をゲノムDNA抽出キットのBuffer 6 2.4mLに希釈した。溶液を37℃まで温めて5分間置き、次いで、リザーバーにローディングした。ビニルシランでコーティングされたカバーガラスをリザーバー中で3分間インキュベートし、ゆっくりと引き上げ、ファイバーコーム器具を使用してDNAをカバーガラス上に引き伸ばした。カバーガラスを125℃まで加熱して3分間置き、次いで、1μMのYOYO-1を含むProlong Gold封入溶液10μLでスライドをマウントした。カバーガラスをマニキュア液で密封した。
【0542】
DNA退色およびイメージング
カバーガラス上に引き伸ばしたDNAを、Cytiva OMX-SR顕微鏡を使用してイメージングした。DNAが引き伸ばされたスライドを顕微鏡に製造者の指示に従ってロードした。引き伸ばされたDNAに対して垂直の長方形の箱を使用して、Cy5標識DNAのセグメントを、633nmのレーザーを使用し、25ミリ秒にわたって退色させた。
【0543】
Cy-5標識Uを有する調製されたDNAを、光を用いて局所的に光退色させて、DNA上に書き込んだ。DNAイメージングおよび退色の結果が図15A~15Cに示されている。Y軸は発光強度を示し、X軸は距離(ミクロン)である。
【0544】
図15Aに退色前のCy5標識DNAの画像を示し、図15Bに逐次的な光退色後のCy5標識DNAの画像を示す。図15Cに2つの横断プロファイル:退色前(1501)および退色後(1502)を示すプロットを示す。これらにより、DNAの暗いスポット、および強度プロットにおける谷として観察可能な3つの別個の部位の退色が示される。ピークから谷までの距離は約700nmである。図15Cから、退色前プロファイル(1501)によって表される退色前の状態と退色後プロファイル(1502)によって表される退色後の状態との分離が明白に認められる。
図1A-1B】
図2A-2C】
図2D-2E】
図3A-3B】
図4
図5A
図5B
図6A-6B】
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A-15C】
【国際調査報告】