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特表2024-533279腫瘍、線維症、及び急性肺損傷の処置のためのエンドスタチンペプチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】腫瘍、線維症、及び急性肺損傷の処置のためのエンドスタチンペプチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/39 20060101AFI20240905BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K38/39
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P19/04
A61K48/00
A61P9/00
A61P11/00
A61P17/02
A61P1/16
A61P17/00
A61P13/12
A61P37/06
A61P15/00
A61P7/00
A61P11/06
A61P3/10
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P9/10
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514681
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 US2022076016
(87)【国際公開番号】W WO2023039399
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,274
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519342839
【氏名又は名称】エムユーエスシー ファウンデーション フォー リサーチ ディベロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】キャロル フェグハリ-ボストウィック
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA23
4C084DC50
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA56
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA45
4C084ZA51
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB08
4C084ZB15
4C084ZB26
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZC35
4C084ZC75
(57)【要約】
本発明は、腫瘍成長、線維症、急性肺損傷、又はそれらの組み合わせの処置又は予防のための組成物及び方法を提供する。一実施形態では、組成物は、エンドスタチンのC末端領域に由来するペプチドを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍活性、抗線維化活性、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活性を含む治療剤を含む組成物であって、前記剤が、配列番号8~27のうちの少なくとも1つ、及びそれらの変異体、誘導体、突然変異体、若しくは断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むC末端エンドスタチン由来ペプチドであるか、又は配列番号8~27のうちの少なくとも1つ、及びそれらの変異体、誘導体、突然変異体、若しくは断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むC末端エンドスタチン由来ペプチドをコードする単離された核酸である、組成物。
【請求項2】
前記C末端エンドスタチン由来ペプチドが、配列番号8~27のうちの少なくとも1つ、それらの断片、及びそれらの変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の治療薬。
【請求項3】
前記C末端エンドスタチン由来ペプチド変異体が、多くとも5つのアミノ酸置換を含む、請求項2に記載の治療薬。
【請求項4】
前記C末端エンドスタチン由来ペプチド断片が、配列番号8~27の少なくとも8個の連続するアミノ酸を含む、請求項2に記載の治療薬。
【請求項5】
第2の薬剤を更に含み、前記第2の薬剤が、抗癌剤及び抗線維化剤からなる群から選択される、請求項1に記載の治療薬。
【請求項6】
疾患又は障害の処置又は予防を必要とする対象における疾患又は障害を処置又は予防する方法であって、前記方法は、前記対象に、薬剤を含む有効量の組成物を投与することを含み、前記薬剤が、配列番号8~27のうちの少なくとも1つ、及びそれらの変異体、誘導体、突然変異体、若しくは断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むC末端エンドスタチン由来ペプチドであるか、又は配列番号8~27のうちの少なくとも1つ、及びそれらの変異体、誘導体、突然変異体、若しくは断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むC末端エンドスタチン由来ペプチドをコードする単離された核酸である、方法。
【請求項7】
前記C末端エンドスタチン由来ペプチドが、配列番号8~27のうちの少なくとも1つ、それらの断片、及びそれらの変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記C末端エンドスタチン由来ペプチド変異体が、多くとも5つのアミノ酸置換を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記C末端エンドスタチン由来ペプチド断片が、配列番号8~27の少なくとも8個の連続するアミノ酸を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患又は障害が、癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記癌が、前立腺癌、肺癌、乳癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、結腸癌、リンパ腫、皮膚癌、膵臓癌、胃癌、骨髄腫、及び神経膠腫からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2の薬剤を投与することを更に含み、前記第2の薬剤が抗癌剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患又は障害が、線維化疾患又は障害或いは線維化関連疾患又は障害である、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記線維化疾患又は障害或いは線維化関連疾患又は障害が、心線維症、特発性肺線維症、間質性肺線維症、家族性肺線維症、放射線誘発肺線維症、炭坑夫塵肺症、石綿肺症、ブレオマイシン肺、類肉腫症、珪肺症、急性肺損傷、ARDS、肥厚性瘢痕、ケロイド瘢痕、肝硬変症、全身性強皮症、限局性強皮症、モルフェア、血管線維症、腎線維症、移植片対宿主病(GVHD)の結果としての線維症、上皮下線維症、心内膜心筋線維症、子宮線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、腎性全身性線維症、手術後の瘢痕化、喘息、糸球体腎炎、多巣性線維硬化症、糖尿病性腎症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、放射線誘発線維症、化学療法誘発線維症、全身性硬化症、肝炎、及びシェーグレン症候群からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第2の薬剤を投与することを更に含み、前記第2の薬剤が抗線維化剤である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記疾患又は障害が、急性肺損傷である、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記急性肺損傷が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、ウイルス誘発急性肺損傷、SARS、COVID-19、インフルエンザ誘発急性肺損傷、敗血症による急性肺損傷、肺炎による急性肺損傷、誤嚥による急性肺損傷、外傷による急性肺損傷、輸血による急性肺損傷、煙による急性肺損傷、毒性ガス吸入による急性肺損傷、膵炎による急性肺損傷、薬物過剰摂取による急性肺損傷、熱傷による急性肺損傷、及び炎症を伴って現れる人工呼吸器関連肺損傷からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月7日に出願された米国仮特許出願第63/241,274号に対する優先権を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
多くの医療処置及び手順の本質は、有害な又は望ましくない組織の除去又は破壊を伴う。このような重要な処置の例としては、癌性成長物の外科的除去、化学療法による転移性腫瘍の破壊、及び腺(例えば、前立腺)過形成の減少が挙げられる。
【0003】
有害な又は望ましくない細胞及び組織を破壊し、したがってそれらの除去を容易にするか又はそれらの更なる成長を阻害するが、主に局所的な効果を有し、全身毒性が最小限であるか又は存在しないと考えられる有効な薬剤が明らかに必要とされている。
【0004】
コラーゲン18のC末端に対応する183アミノ酸タンパク質分解切断断片であるエンドスタチンは、毒性副作用を伴わずに抗腫瘍活性を有する(O’Reilly et al.(1997)Cell,88:277-285、Kisker et al.(2001)Cancer Res,61:7669-7674、Dhanabal et al.(1999)Cancer Res,59:189-197、Yoon et al.(1999)Cancer Res,59:6251-6256、Folkman and Kalluri,(2003)Cancer Medicine,6th edition,pp.161-194.Hamilton:B.C.Decker Inc.)。このタンパク質について、内皮細胞増殖、遊走、及び管形成の阻害などのいくつかの抗血管新生活性が報告されている。この活性は、エンドスタチンのN末端領域に局在化している。エンドスタチンはまた、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)誘導血管透過性を抑制する(Takahashi et al.(2003)Faseb J,17:896-898)。エンドスタチンは、α5β1インテグリンへの結合を介して接着斑キナーゼのリン酸化を阻害することにより、内皮細胞遊走を阻害する(Wickstrom et al.(2002)Cancer Res,62:5580-5589)。細胞表面グリピカンが低親和性エンドスタチン受容体であることも示されている(Karumanchi et al.(2001)Mol Cell,7:811-822)。エンドスタチンは、c-myc活性の下方調節(Shichiri and Hirata(2001)Faseb J,15:1044-1053)、サイクリン-D1活性の下方調節(Hanai et al.(2002)J Biol Chem,277.16464-16469)、及びRhoA活性の下方調節(Wickstrom et al.(2003)J Biol Chem,278:37895-37901)、VEGFシグナル伝達の遮断(Hajitou et al.(2002)Faseb J,16:1802-1804、Kim et al.(2002)J Biol Chem,277:27872-27879)、並びにwntシグナル伝達経路の阻害(Hanai et al.(2002)J Cell Biol,158:529-539)などのいくつかのシグナル伝達経路に関与している。更に、エンドスタチンは、メタロプロテイナーゼと結合してそれを不活性化すること(Kim et al.(2000)Cancer Res,60:5410-5413、Nyberg et al.(2003)J Biol Chem,278:22404-22411、Lee et al.(2002)FEBS Lett,519:147-152)、及び血管新生を抑制する遺伝子のスペクトルを調節すること(Abdollahi et al.(2004)Mol Cell,13:649-663)が示されている。
【0005】
マウスエンドスタチンとヒトエンドスタチンの両方の結晶構造は、解明されており(Hohenester et al.(1998)Embo J,17:1656-1664、Ding et al.(1998)Proc Natl Acad Sci USA,95:10443-10448)、結晶化に必要な高濃度で非共有結合的に保持された二量体を示す(Ding et al.(1998)Proc Natl Acad Sci USA,95:10443-10448)。2つのジスルフィド結合の存在は、高度に折り畳まれた構造をもたらす。エンドスタチンは、分子のN末端における3個のヒスチジン残基(ヒスチジン残基1、3、及び11)及びアスパラギン酸残基76を介して、単量体1つあたり1原子の亜鉛と結合する。エンドスタチンのヘパリン結合特性は、分子の三次元球状表面上にクラスター化された非隣接アルギニン残基によって媒介される(Sasaki et al.(1999)Embo J,18:6240-6248)。
【0006】
オリゴマーエンドスタチン(NC1及び二量体)は、基底膜において主にラミニンと会合することが示されている(Javaherian et al.(2002)J Biol Chem,277:45211-45218)。この会合は、エンドスタチンによって示される生物学的機能のいくつかにとって重要であり得る。他方、エンドスタチンのヘパリン結合特性は、細胞表面との相互作用に現れる。エンドスタチンは、いくつかの生物学的機能がタンパク質の異なる領域によって媒介されている可能性が高い。
【0007】
したがって、当該技術分野では、腫瘍成長、線維症、及び急性肺損傷を処置するための新規かつ非毒性の組成物及び方法が必要とされている。本発明は、この満たされていない必要性を満たすものである。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態では、本発明は、抗腫瘍活性、抗線維化活性、抗肺損傷活性、又はそれらの組み合わせを有する治療剤を含む組成物であって、薬剤が、C末端エンドスタチン由来ペプチド、C末端エンドスタチン由来ペプチドをコードする単離された核酸、又はそれらの変異体、誘導体、突然変異体、若しくは断片である、組成物を提供する。
【0009】
一実施形態では、C末端エンドスタチン由来ペプチドは、配列番号8~27のうちの少なくとも1つ、それらの断片、及びそれらの変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
一実施形態では、C末端エンドスタチン由来ペプチド変異体は、多くとも5つのアミノ酸置換を含む。
【0011】
一実施形態では、C末端エンドスタチン由来ペプチド変異体は、連続するアミノ酸を含む。
【0012】
一実施形態では、C末端エンドスタチン由来ペプチド断片は、配列番号8~27の少なくとも8個の連続するアミノ酸を含む。
【0013】
一実施形態では、治療剤は第2の薬剤を更に含み、第2の薬剤は抗癌剤である。
【0014】
一実施形態では、治療剤は第2の薬剤を更に含み、第2の薬剤は抗線維化剤である。
【0015】
本発明はまた、疾患又は障害の処置又は予防を必要とする対象における疾患又は障害を処置又は予防する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、対象に、薬剤を含む有効量の組成物を投与することを含み、薬剤は、C末端エンドスタチン由来ペプチド、C末端エンドスタチン由来ペプチドをコードする単離された核酸、及びそれらの変異体、誘導体、突然変異体、又は断片からなる群から選択される。
【0016】
一実施形態では、疾患又は障害は、癌である。一実施形態では、癌は、前立腺癌、肺癌、乳癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、結腸癌、リンパ腫、皮膚癌、膵臓癌、胃癌、骨髄腫、又は神経膠腫である。一実施形態では、本方法は、第2の薬剤を投与することを更に含み、第2の薬剤は抗癌剤である。
【0017】
一実施形態では、疾患又は障害は、線維化疾患又は障害或いは線維化関連疾患又は障害である。一実施形態では、線維化疾患又は障害或いは線維化関連疾患又は障害は、心線維症、特発性肺線維症、間質性肺線維症、家族性肺線維症、放射線誘発肺線維症、炭坑夫塵肺症、石綿肺症、ブレオマイシン肺、類肉腫症、珪肺症、急性肺損傷、ARDS、肥厚性瘢痕、ケロイド瘢痕、肝硬変症、全身性強皮症、限局性強皮症、モルフェア、血管線維症、腎線維症、移植片対宿主病(Graft-Versus-Host Disease、GVHD)の結果としての線維症、上皮下線維症、心内膜心筋線維症、子宮線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、腎性全身性線維症、手術後の瘢痕化、喘息、糸球体腎炎、多巣性線維硬化症、糖尿病性腎症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、放射線誘発線維症、化学療法誘発線維症、全身性硬化症、肝炎、及びシェーグレン症候群である。一実施形態では、本方法は、第2の薬剤を投与することを更に含み、第2の薬剤は抗線維化剤である。
【0018】
一実施形態では、疾患又は障害は、急性肺損傷である。一実施形態では、急性肺損傷は、急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome、ARDS)、ウイルス誘発急性肺損傷、SARS、COVID-19、インフルエンザ誘発急性肺損傷、敗血症による急性肺損傷、肺炎による急性肺損傷、誤嚥による急性肺損傷、外傷による急性肺損傷、輸血による急性肺損傷、煙による急性肺損傷、毒性ガス吸入による急性肺損傷、膵炎による急性肺損傷、薬物過剰摂取による急性肺損傷、熱傷による急性肺損傷、及び炎症を伴って現れる人工呼吸器関連肺損傷である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、より良く理解されるであろう。本発明を例示する目的で、現在好ましい実施形態が図面に示されている。しかしながら、本発明は、図面に示される実施形態の正確な配置及び手段に限定されないことを理解されたい。
【0020】
図1】マウスの対照群(n=4)及びBioE4群(n=5、0~5日目;n=4、7~15日目)における経時的な生腫瘍体積についての記述統計量を実証する例示的実験の結果を示す。体積測定はmm単位である。
【0021】
図2A図2A及び図2Bは、対照群及びBioE4群について分離された、マウス特異的腫瘍成長軌道を実証する例示的実験の結果を示す。
図2B図2A及び図2Bは、対照群及びBioE4群について分離された、マウス特異的腫瘍成長軌道を実証する例示的実験の結果を示す。
【0022】
図3】一般線形混合モデルについてのパラメータ推定値を実証する例示的実験の結果を示す。BioE4は指標変数であり、1はBioE4群を表し、0は対照群を表す。
【0023】
図4】上記のモデルを使用した例示的実験の結果を示すが、15日目の平均腫瘍体積及び15日目の腫瘍体積の平均変化率に関して、BioE4と対照との間で直接比較を行った。15日目のモデルベース推定値は、平均腫瘍体積が、BioE4群と比較した場合、対照群において有意に(p=0.0001)大きく、15日目の体積の平均増加率もまた、BioE4群と比較した場合、対照群において有意に(p=0.02)大きかったことを示す。
【0024】
図5】マウスのPBS群(n=5)、Bio96群(n=5)、及びBioE4-03群(n=4)における経時的な生腫瘍体積についての例示的実験の結果及び記述統計量を示す。体積測定はmm単位である。
【0025】
図6A図6A図6Cは、対照群、Bio96群、及びBioE4-03群について分離された、マウス特異的腫瘍成長軌道を実証する例示的実験の結果を示す。
図6B図6A図6Cは、対照群、Bio96群、及びBioE4-03群について分離された、マウス特異的腫瘍成長軌道を実証する例示的実験の結果を示す。
図6C図6A図6Cは、対照群、Bio96群、及びBioE4-03群について分離された、マウス特異的腫瘍成長軌道を実証する例示的実験の結果を示す。
【0026】
図7】PBSをBio96及びBio96E4-03と比較する、一般線形混合モデルについてのパラメータ推定値を実証する例示的実験の結果を示す。
【0027】
図8】上記のモデルを使用した例示的実験の結果を示すが、21日目の平均腫瘍体積及び21日目の腫瘍体積の平均変化率に関して、PBS対照とBio96との間、及びPBSとBioE4-03との間で直接比較を行った。21日目のモデルベース推定値は、平均腫瘍体積が、Bio96群と比較した場合、PBS対照群において有意に大きく(871.4mm対1492.1mm、p=0.003)、平均腫瘍体積が、BioE4-03群と比較した場合、PBS対照群において有意に大きかった(767.7mm対1492.1mm、p=0.0009)ことを示す。21日目に、体積の平均増加率は、Bio96群と比較した場合、PBS対照群において有意に大きく(90.6mm/日対151.1mm/日、p=0.004)、体積の平均増加率は、BioE4-03群と比較した場合、PBS対照群において有意に大きかった(76.0mm/日対151.1mm/日、p=0.0008)。
【0028】
図9】ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色を用いた腫瘍の例示的組織学的分析を示す。
【0029】
図10】マッソントリクローム染色を用いた腫瘍の例示的組織学的分析を示す。
【0030】
図11-01】A549細胞(ヒト肺腺癌腫細胞)における遺伝子発現の例示的分析を示す。
図11-02】A549細胞(ヒト肺腺癌腫細胞)における遺伝子発現の例示的分析を示す。
図12-01】HCT116T細胞(ヒト結腸癌腫細胞)における遺伝子発現の例示的分析を示す。
図12-02】HCT116T細胞(ヒト結腸癌腫細胞)における遺伝子発現の例示的分析を示す。
図13】異なるエンドスタチンペプチドを用いた正常肺線維芽細胞におけるタンパク質発現の例示的分析を示す。
【0031】
図14】Bio96-17で処理した正常ドナーの肺組織由来の線維芽細胞における遺伝子発現の例示的分析を示す。アルファ平滑筋アクチンRNAを、ペプチドBio96-17の存在下又は非存在下でのTGFベータによる処理の48時間後の線維芽細胞において、qRT-PCRによって測定した。
【0032】
図15】Bio96-17で処理した全身性硬化症(systemic sclerosis、SSc)を有する患者の肺由来の線維芽細胞における遺伝子発現の例示的分析を示す。
【0033】
図16】BioE4-03で処理したSScを有する患者の肺由来の線維芽細胞における遺伝子発現の例示的分析を示す。
【0034】
図17】BioE4-03又はBio96-17で処理した特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis、IPF)を有する患者の肺由来の線維芽細胞における遺伝子発現の例示的分析を示す。
【0035】
図18】漸増濃度のE96-87で処理した正常肺線維芽細胞におけるタンパク質発現の例示的分析を示す。
【0036】
図19】異なるペプチド断片で処理した、器官培養中の全身性硬化症肺線維症肺組織におけるマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloprotease、MMP)-1遺伝子発現の例示的分析を示す。
【0037】
図20】BioE4-03で処理した器官培養中のSScを有する患者の肺組織におけるヒドロキシプロリンレベルの例示的分析を示す。
【0038】
図21】BioE4-03で処理した器官培養中のIPFを有する患者の肺組織におけるヒドロキシプロリンレベルの例示的分析を示す。
【0039】
図22】BioE4-03で処理した器官培養中の正常ドナーの肺組織におけるヒドロキシプロリンレベルの例示的分析を示す。
【0040】
図23】Bio96-17で処理した器官培養中の正常ドナーの肺組織におけるヒドロキシプロリンレベルの例示的分析を示す。
【0041】
図24】TGFベータを使用した線維症の誘導後の、Bio96-17で処理した器官培養中の正常ドナーの肺組織における分泌されたCol1A1タンパク質のレベルの例示的分析を示す。
【0042】
図25】BioE4-03で処理した、TGFベータで線維症が誘導されたドナー由来の皮膚組織におけるCol1A1及びフィブロネクチン(fibronectin、FN)遺伝子発現の例示的分析を示す。
【0043】
図26】マウスにおける腫瘍サイズ(Y軸)に対する強制経口投与を介して与えられたBioE4の効果を示す。処置日をX軸に示す。ペプチドを週に2回与えた。赤色の線は未処置の腫瘍を有するマウスを示し、青色の線はBioE4で処置したマウスを示す。
【0044】
図27】ボルテゾミブ耐性多発性骨髄腫細胞(MM.1S BzR)の注射の49日後における、CD138+骨髄腫形質細胞の骨髄浸潤に対する経口投与されたE4の効果を示す。E4又はビヒクルを、MM.1S BzR細胞の注射の14日後に最初に投与し、その後週に2回投与した。骨髄中のCD138+骨髄腫形質細胞の数を、腫瘍負荷及びペプチドの有効性の指標として使用した。
【0045】
図28A図28A及び図28Bは、IL6に対するBioE4-03及びE4-03の効果を実証する例示的実験の結果を示す。図28Aは、ヒト肺腺癌腫細胞(A549)におけるIL-6 mRNAに対するビオチン化E4-03の効果を示す。
図28B図28A及び図28Bは、IL6に対するBioE4-03及びE4-03の効果を実証する例示的実験の結果を示す。図28Bは、A549細胞におけるIL-6 mRNA及びタンパク質発現に対する非ビオチン化E4-03の効果を示す。A549細胞をBioE4-03又はE4-03で48時間処理した後にmRNA発現についてqPCR分析、及び72時間処理した後にタンパク質発現についてELISA分析を行った。
【0046】
図29-01】BioE4-03(配列番号2)のペプシン消化の上部LC-MS/MS結果を示す。以下の実施例4の表1に記載される配列番号によって示される各チャートのX軸は、Y軸に示される各処置群についてのペプチドスペクトルマッチの数を示す:「供給」は、0.1%ギ酸に希釈した未消化BioE4-03を示し、「WKSL」は、ZipTip(登録商標)でアリコートした0.1%ギ酸に希釈した未消化BioE4-03を示し、T0は、ペプシンの添加直後(0分消化)にアリコートしたBioE4-03を示し、T15は、ペプシン消化の15分後にアリコートしたBioE4-03を示し、T45は、ペプシン消化の45分後(T45)にアリコートしたBioE4-03を示す。
図29-02】BioE4-03(配列番号2)のペプシン消化の上部LC-MS/MS結果を示す。以下の実施例4の表1に記載される配列番号によって示される各チャートのX軸は、Y軸に示される各処置群についてのペプチドスペクトルマッチの数を示す:「供給」は、0.1%ギ酸に希釈した未消化BioE4-03を示し、「WKSL」は、ZipTip(登録商標)でアリコートした0.1%ギ酸に希釈した未消化BioE4-03を示し、T0は、ペプシンの添加直後(0分消化)にアリコートしたBioE4-03を示し、T15は、ペプシン消化の15分後にアリコートしたBioE4-03を示し、T45は、ペプシン消化の45分後(T45)にアリコートしたBioE4-03を示す。
図29-03】BioE4-03(配列番号2)のペプシン消化の上部LC-MS/MS結果を示す。以下の実施例4の表1に記載される配列番号によって示される各チャートのX軸は、Y軸に示される各処置群についてのペプチドスペクトルマッチの数を示す:「供給」は、0.1%ギ酸に希釈した未消化BioE4-03を示し、「WKSL」は、ZipTip(登録商標)でアリコートした0.1%ギ酸に希釈した未消化BioE4-03を示し、T0は、ペプシンの添加直後(0分消化)にアリコートしたBioE4-03を示し、T15は、ペプシン消化の15分後にアリコートしたBioE4-03を示し、T45は、ペプシン消化の45分後(T45)にアリコートしたBioE4-03を示す。
図29-04】BioE4-03(配列番号2)のペプシン消化の上部LC-MS/MS結果を示す。以下の実施例4の表1に記載される配列番号によって示される各チャートのX軸は、Y軸に示される各処置群についてのペプチドスペクトルマッチの数を示す:「供給」は、0.1%ギ酸に希釈した未消化BioE4-03を示し、「WKSL」は、ZipTip(登録商標)でアリコートした0.1%ギ酸に希釈した未消化BioE4-03を示し、T0は、ペプシンの添加直後(0分消化)にアリコートしたBioE4-03を示し、T15は、ペプシン消化の15分後にアリコートしたBioE4-03を示し、T45は、ペプシン消化の45分後(T45)にアリコートしたBioE4-03を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
一態様では、本発明は、腫瘍成長の処置、阻害、予防、又は減少のための方法及び組成物を対象とする。別の態様では、本発明は、線維症又は線維化関連疾患若しくは障害の処置、阻害、予防、又は減少のための方法及び組成物を対象とする。一態様では、本発明は、腫瘍成長と線維症又は線維化関連疾患若しくは障害との組み合わせの処置、阻害、予防、又は減少のための方法及び組成物を対象とする。別の態様では、本発明は、急性肺損傷の処置、阻害、予防、又は減少のための方法及び組成物を対象とする。一実施形態では、組成物は、エンドスタチンのC末端領域に由来する薬剤、例えば、単離された核酸、単離されたペプチド、小分子、ペプチド模倣物などを含む。一実施形態では、組成物は、全長エンドスタチンのC末端領域に由来する断片を含む。一実施形態では、組成物は、エンドスタチンのC末端領域に由来する組換え断片を含む。一実施形態では、組成物は、in vivoでの自然消化を介して生成され得るエンドスタチンの断片を含む。
【0048】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を記載する。
【0049】
本明細書で使用される場合、以下の用語の各々は、この節においてそれに関連する意味を有する。
【0050】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0051】
測定可能な値、例えば、量、持続時間などに言及する場合、本明細書で使用される「約」は、指定された値からの±20%、±10%、±5%、±1%、又は±0.1%の変動を、開示される方法を行うのにそのような変動が適切である場合、包含することを意味する。
【0052】
用語「異常性(abnormal)」は、生物、組織、細胞、又はそれらの構成成分の文脈で使用される場合、「正常」な(予想される)それぞれの特徴を示す生物、組織、細胞、又はそれらの構成成分と、少なくとも1つの観察可能又は検出可能な特徴(例えば、年齢、処置、時間など)が異なる、生物、組織、細胞、又はそれらの構成成分を指す。1つの細胞又は組織型において正常であるか又は予想される特徴は、異なる細胞又は組織型において異常性である場合がある。
【0053】
疾患若しくは障害の徴候若しくは症状の重症度、そのような徴候若しくは症状を患者が経験する頻度、又はその両方が低下する場合、疾患又は障害は「緩和」される。特定の癌及び/又はそれらの病態を「緩和すること」には、腫瘍を分解すること、例えば、腫瘍サイズが処置前の腫瘍サイズと比較した場合に縮小するように、腫瘍の構造的完全性又は結合組織を壊すことが含まれる。癌の転移を「緩和すること」には、癌が他の臓器に拡散する速度を低下させることが含まれる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「自己」は、材料が後に再導入されることになる同じ個体に由来する生物学的材料を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「同種」は、材料が導入されることになる個体と同じ種の遺伝的に異なる個体に由来する生物学的材料を指す。
【0056】
用語「細胞」及び「細胞の集団」は、互換的に使用され、複数の細胞、すなわち2個以上の細胞を指す。この集団は、1つの細胞型を含む純粋な集団であり得る。あるいは、集団は、2つ以上の細胞型を含み得る。本発明では、細胞集団が含み得る細胞型の数に制限はない。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の増加、又は癌性状態に関連する様々な生理学的症状の改善によって明らかにされ得る生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」はまた、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞、及び抗体の、第1の場所における腫瘍の発生の予防における能力によっても明らかにされ得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「癌」は、異常(aberrant)細胞の異常性成長を特徴とする疾患として定義される。癌細胞は、局所的に、又は血流及びリンパ系を介して身体の他の部分に拡散し得る。様々な癌の例としては、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、胃癌、骨髄腫、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳癌、リンパ腫、白血病、肺癌、肉腫などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
「疾患」は、動物が恒常性を維持することができず、疾患が改善されない場合、動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。
【0060】
対照的に、動物における「障害」は、動物が恒常性を維持することができるが、動物の健康状態が、障害がない場合よりも好ましくない健康状態である。未処置のまま放置しても、障害は必ずしも動物の健康状態の更なる低下を引き起こすわけではない。
【0061】
「コードすること」は、ポリヌクレオチド(例えば、遺伝子、cDNA、又はmRNA)中のヌクレオチドの特定の配列の、ヌクレオチドの規定された配列(すなわち、rRNA、tRNA及びmRNA)又はアミノ酸の規定された配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおける他のポリマー及び高分子の合成のためのテンプレートとして働く固有の特性、及びそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳によって細胞又は他の生物学的系においてタンパク質が産生される場合、タンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり通常は配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のためのテンプレートとして使用される非コード鎖の両方とも、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードすると言うことができる。
【0062】
化合物の「有効量」又は「治療有効量」は、化合物が投与される対象に有益な効果を提供するのに十分な化合物の量である。送達ビヒクルの「有効量」は、化合物と有効に結合するか又はそれを送達するのに十分な量である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「内因性」は、生物、細胞、組織、又は系に由来するか、又はその内部で産生される任意の物質を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「外因性」は、生物、細胞、組織、又は系の外部から導入されるか、又は外部で産生される任意の物質を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「発現」は、特定のヌクレオチド配列の、そのプロモーターによって駆動される転写及び/又は翻訳として定義される。
【0066】
「発現ベクター」は、発現するヌクレオチド配列に作動的に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用性エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、又はin vitro発現系において供給することができる。発現ベクターとしては、組換えポリヌクレオチドを組み込む当該技術分野で公知の全てのもの、例えば、コスミド、プラスミド(例えば、裸の、又はリポソームに含有される)、及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)が挙げられる。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「線維化疾患」、「線維化障害」、「線維化関連疾患」、及び「線維化関連障害」は、1つ以上の組織における線維症を伴う状態を指す。本明細書で使用される場合、用語「線維症」は、臓器又は組織の正常な構成要素としてではなく、修復プロセス又は反応プロセスとしての線維性組織の形成を指す。線維症は、任意の特定の組織における正常な沈着を超える線維芽細胞蓄積及びコラーゲン沈着を特徴とする。本明細書で使用される場合、用語「線維症」は、「線維芽細胞蓄積及びコラーゲン沈着」と同義的に使用される。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「抗線維化」活性は、活性物質の、様々な身体構造及び臓器におけるコラーゲン瘢痕若しくは結合組織の過剰な病的蓄積(通常、何らかの損傷、アレルギー、感染症によって、又は何らかの遺伝的遺伝子異常によって引き起こされる)を予防するか、又は線維化コラーゲン組織の既存の過剰な病的蓄積の非外科的除去若しくは生物学的溶解を促進する能力を指す。
【0069】
「相同」は、2つのポリペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性又は配列同一性を指す。2つの比較される配列の両方におけるある位置が、同じ塩基又はアミノ酸単量体サブユニットによって占有される場合、例えば、2つのDNA分子の各々におけるある位置がアデニンによって占有される場合、これらの分子は、その位置において相同である。2つの配列間の相同性のパーセントは、2つの配列によって共有される一致する位置又は相同な位置の数を、比較される位置の数で割った値×100の関数である。例えば、2つの配列における10の位置のうち6つが一致又は相同である場合、2つの配列は60%相同である。例として、DNA配列ATTGCC及びTATGGCは、50%の相同性を共有する。概して、比較は、2つの配列が最大相同性を得るように整列される場合に行われる。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「阻害する」は、活性又は機能を、対照値と比較して少なくとも約10パーセント抑制又は遮断することを意味する。いくつかの例では、活性は、対照値と比較して50%、75%、90%、又は95%抑制又は遮断される。
【0071】
本明細書で使用される場合、「説明資料」としては、本発明の組成物及び方法の有用性を伝えるために使用され得る刊行物、記録、図、又は任意の他の表現媒体が挙げられる。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の核酸、ペプチド、及び/若しくは組成物を含有する容器に添付されてもよく、又は核酸、ペプチド、及び/若しくは組成物を含有する容器と一緒に出荷されてもよい。あるいは、説明資料は、説明資料及び化合物が受領者によって協調的に使用されることを意図して、容器とは別個に出荷されてもよい。
【0072】
「単離された」は、天然状態から改変又は取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物中に天然に存在する核酸又はペプチドは「単離」されていないが、その天然状態の共存物質から部分的に又は完全に分離された同じ核酸又はペプチドは「単離」されている。単離された核酸又はタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することができるか、又は非天然環境(例えば、宿主細胞など)中に存在することができる。
【0073】
用語「患者」、「対象」、「個体」などは、本明細書で互換的に使用され、in vitro又はin situのいずれであっても、本明細書に記載される方法に適する任意の動物又はその細胞を指す。特定の非限定的な実施形態では、患者、対象、又は個体はヒトである。
【0074】
組成物の「非経口」投与には、例えば、皮下(subcutaneous、s.c.)、静脈内(intravenous、i.v.)、筋肉内(intramuscular、i.m.)、又は胸骨内注射、又は注入技術が含まれる。
【0075】
本発明の文脈では、一般的に存在する核酸塩基について以下の略語が使用される。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0076】
別段の指定がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重バージョンであり同じアミノ酸配列をコードする、全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という語句にはまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列があるバージョンにおいてイントロンを含有し得る程度まで、イントロンが含まれ得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドの鎖として定義される。更に、核酸は、ヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で使用される核酸及びポリヌクレオチドは、互換的である。当業者は、核酸が、単量体「ヌクレオチド」に加水分解することができるポリヌクレオチドであるという一般知識を有する。単量体ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解することができる。本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドには、限定されないが、当該技術分野で利用可能な任意の手段(組換え手段(すなわち、通常のクローニング技術及びPCR(商標)を使用する組換えライブラリ又は細胞ゲノムからの核酸配列のクローニング)などが挙げられるが、これらに限定されない)によって、及び合成手段によって得られる全ての核酸配列が含まれる。更に、本発明の「ポリヌクレオチド」又は「核酸」には、デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid、DNA)分子とリボ核酸(ribonucleic acid、RNA)分子の両方が含まれる。
【0078】
別段の指定がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重バージョンであり同じアミノ酸配列をコードする、全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という語句にはまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列があるバージョンにおいてイントロンを含有し得る程度まで、イントロンが含まれ得る。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含有する必要があり、タンパク質又はペプチドの配列を構成することができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドとしては、ペプチド結合によって互いに連結された2個以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質が挙げられる。本明細書で使用される場合、この用語は、当該技術分野では一般的に例えば、ペプチド、オリゴペプチド、及びオリゴマーとも呼ばれる短鎖と、多くの型が存在する、当該技術分野で一般にタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を指す。「ポリペプチド」としては、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が挙げられる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「プロモーター」は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始するのに必要な、細胞の合成機構又は導入された合成機構によって認識されるDNA配列として定義される。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「プロモーター/調節配列」は、プロモーター/調節配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列を意味する。いくつかの例では、この配列は、コアプロモーター配列であり得、他の例では、この配列にはまた、エンハンサー配列及び遺伝子産物の発現に必要とされる他の調節エレメントが含まれ得る。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0082】
「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコード又は特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合に、細胞のほとんど又は全ての生理学的状態下の細胞において遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0083】
「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコード又は特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合に、実質的にプロモーターに対応する誘導因子が細胞中に存在する場合にのみ、細胞において遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0084】
「組織特異的」プロモーターは、遺伝子によってコード又は特定されるポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合に、実質的に細胞がプロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ、細胞において遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「対象」及び「患者」は、互換的に使用される。本明細書で使用される場合、対象は、好ましくは哺乳動物、例えば、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)及び霊長類(例えば、サル及びヒト)であり、最も好ましくはヒトである。
【0086】
「治療」処置は、病態の徴候を示す対象に、それらの徴候を減少又は排除する目的で施される処置である。
【0087】
本明細書で使用される場合、「疾患又は障害を処置すること」は、患者が疾患又は障害の症状を経験する頻度を低下させることを意味する。
【0088】
語句「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、疾患、障害、又は状態を予防又は処置する(それらの発生を遅延若しくは予防する、それらの進行を予防する、それらを阻害する、減少させる、又は逆転させる)、例えばそのような疾患の症状を緩和するのに十分又は有効である量を指す。
【0089】
疾患を「処置する」とは、この用語が本明細書で使用される場合、対象が経験する疾患又は障害の少なくとも1つの徴候又は症状の頻度又は重症度を低下させることを意味する。
【0090】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、細胞の内部に単離された核酸を送達するために使用することができる、物質の組成物である。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性化合物又は両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むがこれらに限定されない多数のベクターが当該技術分野で公知である。したがって、用語「ベクター」には、自己複製プラスミド又はウイルスが含まれる。この用語にはまた、細胞への核酸の移入を容易にする非プラスミド及び非ウイルス化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなども含まれると解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、限定されないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられる。
【0091】
範囲:本開示全体を通して、本発明の様々な態様を範囲形式で提示することができる。範囲形式での記載は、単に便宜上及び簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する固定的な限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分範囲に加えて、その範囲内の個々の数値も具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲に加えて、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6も具体的に開示しているとみなされるべきである。このことは、範囲の幅に関係なく当てはまる。
【0092】
説明
本発明は、エンドスタチンのC末端領域に由来するペプチドを、腫瘍成長、線維症、及び急性肺損傷の処置又は予防に使用することができるという発見に一部基づく。したがって、一実施形態では、本発明は、抗腫瘍活性、抗線維化活性、抗肺損傷活性、又はそれらの組み合わせを有する、C末端エンドスタチンペプチド、ポリペプチド、断片などを含む組成物を含む。一実施形態では、これらのペプチドをコードするヌクレオチド、このヌクレオチドで形質転換された宿主細胞、並びにこれらのペプチド及びヌクレオチドを使用する方法は、本発明に含まれる。
【0093】
一実施形態では、本発明は、腫瘍成長、線維症、急性肺損傷、又はそれらの組み合わせを阻害するための組成物を提供する。例えば、本発明は、腫瘍成長、線維症、及び急性肺損傷を阻害するエンドスタチン内の領域の同定に一部基づく。エンドスタチン断片及びそのエンドスタチン由来ペプチドは、腫瘍成長及び線維症の阻害の点でエンドスタチンを模倣することが本明細書において実証される。更に、エンドスタチン断片及びそのエンドスタチン由来ペプチドは、急性肺損傷を有する対象の肺組織において増加し、サイトカインストームを促進するIL-6のレベルを低下させることが本明細書において実証される。
【0094】
特定の実施形態では、エンドスタチン由来ペプチドは、
96:ATGQASSLL(配列番号1)、
E4-03:SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHA(配列番号2)、
E4:SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHAYIVLCIENSFMT(配列番号3)、
96-17:ATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHA(配列番号4)、
96-87:ATGQASSLLGGRLLGQ(配列番号5)、
91-96:SYCETWRTEAPSATGQASSLL(配列番号6)、
91-97、SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQ(配列番号7)のアミノ酸配列、又はその変異体若しくは断片を含む。
【0095】
特定の実施形態では、エンドスタチン由来ペプチドは、配列番号8~27のいずれか1つのアミノ酸配列、又はその変異体若しくは断片を含む。
【0096】
一実施形態では、本発明は、腫瘍成長を処置又は予防するための方法を提供する。本方法は、例えば、肺、乳房、胃、膵臓、前立腺、膀胱、骨、卵巣、皮膚、腎臓、副鼻腔、結腸、腸、胃、直腸、食道、血液、脳及びその被覆物、脊髄及びその被覆物、筋肉、結合組織、副腎、副甲状腺、甲状腺、子宮、精巣、下垂体、生殖器、肝臓、胆嚢、眼、耳、鼻、咽喉、扁桃、口、リンパ節及びリンパ系、並びに他の臓器の腫瘍を処置又は予防するために使用することができる。
【0097】
一実施形態では、本発明は、線維症を処置又は予防するための方法を提供する。本方法は、例えば、肺、乳房、胃、膵臓、前立腺、膀胱、骨、卵巣、皮膚、腎臓、副鼻腔、結腸、腸、胃、直腸、食道、血液、脳及びその被覆物、脊髄及びその被覆物、筋肉、結合組織、副腎、副甲状腺、甲状腺、子宮、精巣、下垂体、生殖器、肝臓、胆嚢、眼、耳、鼻、咽喉、扁桃、口、リンパ節及びリンパ系、並びに他の臓器の線維症を処置又は予防するために使用することができる。
【0098】
一実施形態では、本発明は、急性肺損傷を処置又は予防するための方法を提供する。エンドスタチン断片及びそのエンドスタチン由来ペプチドは、肺由来細胞からのIL-6分泌を低下させることが本明細書において実証される。IL-6レベルは、急性肺損傷を有する患者の肺組織において増加し、サイトカインストームを促進する。したがって、本発明は、急性肺損傷、ARDS、ウイルス誘発急性肺損傷、SARS、COVID-19、インフルエンザ誘発急性肺損傷、敗血症、肺炎、誤嚥、外傷、輸血、煙、毒性ガス吸入、膵炎、薬物過剰摂取、熱傷による急性肺損傷、及び他の肺損傷又は炎症を伴って現れる人工呼吸器関連肺損傷を含む急性呼吸窮迫症候群を処置するための方法を提供する。
【0099】
組成物
一態様では、本発明は、抗腫瘍活性、抗線維化活性、又はそれらの組み合わせを有する、エンドスタチンのC末端領域に由来する薬剤を含む組成物を提供する。例示的な薬剤としては、単離された核酸、ベクター、単離されたペプチド、ペプチド模倣物、小分子などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
一実施形態では、本発明の組成物は、エンドスタチンのC末端領域に由来する単離されたペプチド、又はその生物学的に機能的な断片を含む。組成物は、例えば、任意の生物由来のエンドスタチンを含む、本発明のC末端エンドスタチンペプチドの任意のアイソフォームを含み得る。
【0101】
特定の実施形態では、組成物の単離されたペプチドは、
96:ATGQASSLL(配列番号1)、
E4-03:SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHA(配列番号2)、
E4:SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHAYIVLCIENSFMT(配列番号3)、
96-17:ATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHA(配列番号4)、
96-87:ATGQASSLLGGRLLGQ(配列番号5)、
91-96:SYCETWRTEAPSATGQASSLL(配列番号6)、
91-97、SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQ(配列番号7)のアミノ酸配列、又はその変異体若しくは断片を含む。
【0102】
特定の実施形態では、エンドスタチン由来ペプチドは、配列番号8~27のいずれか1つのアミノ酸配列、又はその断片若しくは変異体を含む。
【0103】
一実施形態では、ペプチドは、N末端でビオチン化されているか、C末端でアミド化されているか、又はそれらの組み合わせである。
【0104】
特定の例では、本明細書に記載されるように、N末端ビオチン化ペプチドは、「Bio」の接頭辞と共に提示される。したがって、一実施形態では、Bio96は、そのN末端でビオチン化されている配列番号1を指す。一実施形態では、BioE4-03は、そのN末端でビオチン化されている配列番号2を指す。一実施形態では、BioE4は、そのN末端でビオチン化されている配列番号3を指す。一実施形態では、Bio96-17は、そのN末端でビオチン化されている配列番号4を指す。一実施形態では、Bio96-87は、そのN末端でビオチン化されている配列番号5を指す。一実施形態では、Bio91-96は、そのN末端でビオチン化されている配列番号6を指す。一実施形態では、Bio91-97は、そのN末端でビオチン化されている配列番号7を指す。特定の実施形態では、ビオチン化ペプチドは、本明細書に記載されるように、C末端でアミド化されている。
【0105】
一実施形態では、組成物は、エンドスタチンのm領域に由来する全長エンドスタチンの断片を含む。全長C末端領域エンドスタチンペプチドの断片としては、配列番号1~27に示される全長C末端領域エンドスタチンペプチドの少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、又は48個の連続するアミノ酸を含む配列番号1~27の断片が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、組成物は、エンドスタチンの組換えC末端断片を含む。
【0106】
一実施形態では、組成物は、配列番号1~27のいずれか1つの断片を含む。例えば、特定の実施形態では、組成物は、配列番号1~27のいずれか1つの断片又は変異体を含み、断片又は変異体は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、又は48アミノ酸残基長である。
【0107】
一実施形態では、本発明は、C末端エンドスタチンポリペプチド及びその変異体を含む。一実施形態では、エンドスタチン由来ペプチドは、エンドスタチンの腫瘍成長、線維症、又はそれらの組み合わせを阻害する能力を模倣するエンドスタチンの断片を含む。一実施形態では、エンドスタチン由来ペプチドは、急性肺損傷を低下、処置、又は予防するエンドスタチンの断片を含む。一実施形態では、エンドスタチン由来ペプチドは、エンドスタチン断片の誘導体を含む。
【0108】
一実施形態では、エンドスタチン断片は、エンドスタチン消化の結果として誘導され得る1つ以上のペプチドを含む。一実施形態では、当該消化は、哺乳動物の胃で自然に起こる。一実施形態では、当該消化は、酵素タンパク質を介してin vitroで起こる。一実施形態では、当該酵素タンパク質は、ペプシンを含む。一実施形態では、消化される当該エンドスタチンは、BioE4-03(配列番号2)を含む。
【0109】
一実施形態では、当該エンドスタチン断片又はエンドスタチン由来ペプチドは、以下の実施例4の表1に示される配列番号8~27からなる群から選択される1つ以上のペプチドと少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のペプチドを含む。一実施形態では、当該エンドスタチン断片は、配列番号8~27からなる群から選択される1つ以上のペプチドの長さの少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のペプチドを含む。一実施形態では、当該エンドスタチン断片は、配列番号8~27からなる群から選択される1つ以上のペプチドの長さの少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である1つ以上のペプチドと少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のペプチドを含む。一実施形態では、当該エンドスタチン断片は、配列番号8~27からなる群から選択される1つ以上のペプチドを含む。
【0110】
一実施形態では、組成物は、配列番号8~27のいずれか1つの断片を含む。例えば、特定の実施形態では、組成物は、配列番号8~27のいずれか1つの断片又は変異体を含み、断片又は変異体は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、又は48アミノ酸残基長である。
【0111】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号8~27のいずれか1つのアミノ酸配列、又はその断片若しくは変異体を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号8~27のいずれか1つの少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、又は48個の連続するアミノ酸である断片を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、多くとも1、2、3、4、又は5つのアミノ酸置換を有する配列番号8~27のいずれか1つを含む。一実施形態では、ペプチドは、多くとも1、2、3、4、又は5つのアミノ酸置換を有する配列番号8~27のいずれか1つの少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、又は48個のアミノ酸である断片を含む。
【0112】
本発明のペプチドは、化学的方法を用いて作製され得る。例えば、ペプチドは、固相技術によって合成し(Roberge J Y et al(1995)Science 269:202-204)、樹脂から切断し、分取高速液体クロマトグラフィーによって精製することができる。自動合成は、例えば、ABI 431 A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer)を製造業者によって提供される説明書に従って使用して達成され得る。
【0113】
一実施形態では、本発明は、エンドスタチンタンパク質のC末端領域に由来するアミノ酸を含む任意の形態のペプチドを含むが、全長エンドスタチンタンパク質もエンドスタチンタンパク質のN末端領域も含まない。一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるC末端エンドスタチン又はC末端エンドスタチン由来ペプチドに対して実質的な相同性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、「実質的に相同」であるペプチドは、エンドスタチンのC末端領域のアミノ酸配列に対して、約50%相同、約70%相同、約80%相同、約85%相同、約90%相同、約91%相同、約92%相同、約93%相同、約94%相同、約95%相同、約96%相同、約97%相同、約98%相同、又は約99%相同である。
【0114】
あるいは、ペプチドは、組換え手段によって、又はより長いポリペプチドからの切断によって作製され得る。ペプチドの組成は、アミノ酸分析又は配列決定によって確認され得る。
【0115】
本発明によるペプチドの変異体は、(i)アミノ酸残基の1つ以上が保存又は非保存アミノ酸残基で置換され、そのような置換アミノ酸残基が遺伝暗号によってコードされるものであってもそうでなくてもよいもの、(ii)1つ以上の修飾アミノ酸残基、例えば置換基の結合によって修飾された残基が存在するもの、(iii)ペプチドが本発明のペプチドの選択的スプライス変異体であるもの、(iv)ペプチドの断片、及び/あるいは(v)ペプチドが、リーダー配列若しくは分泌配列などの別のペプチド又は精製に用いられる配列(例えばHisタグ)若しくは検出に用いられる配列(例えばSv5エピトープタグ又は免疫グロブリンFc領域)と融合しているもの、であってもよい。断片は、元の配列のタンパク質分解切断(多部位タンパク質分解を含む)を介して生成されたペプチドを含む。変異体は、翻訳後修飾され得るか、又は化学的に修飾され得る。このような変異体は、本明細書の教示から当業者の範囲内であるとみなされる。
【0116】
当該技術分野で公知のように、2つのペプチド間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存されたアミノ酸置換体を、第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。変異体は、元の配列と異なり、好ましくは目的のセグメント1つ当たり40%未満の残基が元の配列と異なり、より好ましくは目的のセグメント1つ当たり25%未満の残基が元の配列と異なり、より好ましくは目的のセグメント1つ当たり10%未満の残基が元の配列と異なり、最も好ましくは目的のセグメント1つ当たりわずか数個の残基が元のタンパク質配列と異なり、同時に元の配列に対して、元の配列の機能性及び/又は腫瘍成長、線維症、若しくはそれらの組み合わせを阻害する能力を保存するほど十分に相同である、ペプチド配列を含むと定義される。本発明は、元のアミノ酸配列と少なくとも60%、65%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%類似又は同一であるアミノ酸配列を含む。2つのペプチド間の同一性の程度は、当業者に広く知られているコンピュータアルゴリズム及び方法を用いて決定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、好ましくは、BLASTPアルゴリズムを用いて決定される[BLAST Manual,Altschul,S.,et al.,NCBI NLM NIH Bethesda,Md.20894,Altschul,S.,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)]。
【0117】
本発明のペプチドは、翻訳後修飾することができる。例えば、本発明の範囲内に入る翻訳後修飾としては、シグナルペプチド切断、グリコシル化、アセチル化、イソプレニル化、タンパク分解、ミリストイル化、リン酸化、タンパク質フォールディング、及びタンパク分解プロセシングなどが挙げられる。いくつかの修飾又はプロセシング事象は、追加の生物学的機構の導入を必要とする。例えば、シグナルペプチド切断及びコアグリコシル化などのプロセシング事象は、イヌミクロソーム膜又はアフリカツメガエル卵抽出物を標準的な翻訳反応に追加することによって調べられる(米国特許第6,103,489号)。
【0118】
本発明のペプチドは、翻訳後修飾によって、又は翻訳中に非天然アミノ酸を導入することによって形成される非天然アミノ酸を含み得る。タンパク質翻訳中に非天然アミノ酸を導入するために、種々のアプローチが利用可能である。
【0119】
本発明のペプチド又はタンパク質は、融合タンパク質を調製するために、タンパク質などの他の分子と結合され得る。これは、結果として得られる融合タンパク質が、本発明のC末端エンドスタチンペプチドの抗腫瘍活性、抗線維化活性、又はそれらの組み合わせの機能性を保持するという条件で、例えば、N末端又はC末端融合タンパク質の合成によって達成され得る。一実施形態では、本発明のペプチド又はタンパク質は、ビオチンに融合され得る。
【0120】
本発明のペプチド又はタンパク質は、Reedijk et al.(The EMBO Journal 11(4):1365,1992)に記載されている方法などの従来の方法を使用してリン酸化され得る。
【0121】
本発明のペプチドの環状誘導体もまた、本発明の一部である。環化は、ペプチドが他の分子と会合するためのより好ましい立体構造をとることを可能にし得る。環化は、当該技術分野で公知の技術を使用して達成することができる。例えば、ジスルフィド結合は、遊離スルフヒドリル基を有する2つの適切に間隔を空けた構成成分間で形成され得る、又はアミド結合は、1つの構成成分のアミノ基と別の構成成分のカルボキシル基との間で形成され得る。環化は、Ulysse,L.,et al.,J.Am.Chem.Soc.1995,117,8466-8467によって記載されているように、アゾベンゼン含有アミノ酸を使用して達成することもできる。結合を形成する構成成分は、アミノ酸の側鎖、非アミノ酸構成成分、又はその2つの組み合わせであってもよい。本発明のある実施形態では、環状ペプチドは、正しい位置にベータターンを含み得る。ベータターンは、正しい位置にアミノ酸Pro-Glyを付加することによって本発明のペプチドに導入することができる。
【0122】
上記のようなペプチド結合連結を含有する環状ペプチドよりも柔軟な環状ペプチドを産生することが所望され得る。より柔軟なペプチドは、ペプチドの右及び左の位置にシステインを導入し、2つのシステイン間にジスルフィド架橋を形成することによって調製することができる。2つのシステインは、ベータシート及びターンを変形させないように配置される。ペプチドは、ジスルフィド連結の長さ及びベータシート部分におけるより少ない数の水素結合の結果として、より柔軟である。環状ペプチドの相対的柔軟性は、分子動力学シミュレーションによって決定することができる。
【0123】
本発明はまた、エンドスタチンタンパク質のC末端領域のアミノ酸を含むペプチドに関するが、全長エンドスタチンタンパク質もエンドスタチンタンパク質のN末端領域も含まず、それによって、ペプチドは、標的タンパク質、及び/あるいはキメラタンパク質を所望の細胞構成成分又は細胞型若しくは組織に指向させることができる標的化ドメインに融合又は取り込まれ得る。キメラタンパク質はまた、更なるアミノ酸配列又はドメインを含み得る。キメラタンパク質は、様々な構成成分が異なる供給源からのものであり、したがって天然では一緒に見出されない(すなわち異種である)という意味で組換え体である。
【0124】
一実施形態では、標的化ドメインは、膜貫通ドメイン、膜結合ドメイン、又はタンパク質を例えば小胞若しくは核と会合するように指向させる配列であり得る。一実施形態では、標的化ドメインは、ペプチドを特定の細胞型又は組織に標的化することができる。例えば、標的化ドメインは、細胞表面リガンド又は標的組織の細胞表面抗原(例えば、腫瘍抗原)に対する抗体であり得る。標的化ドメインは、本発明のペプチドを細胞構成成分に標的化することができる。
【0125】
本発明のペプチドは、従来の技術によって合成され得る。例えば、ペプチド又はキメラタンパク質は、固相ペプチド合成を使用する化学合成によって合成され得る。これらの方法は、固相合成法又は液相合成法のいずれかを使用する(例えば、固相合成技術についてはJ.M.Stewart,and J.D.Young,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd Ed.,Pierce Chemical Co.,Rockford Ill.(1984)及びG.Barany and R.B.Merrifield,The Peptides:Analysis Synthesis,Biology editors E.Gross and J.Meienhofer Vol.2 Academic Press,New York,1980,pp.3-254;並びに従来の溶液合成についてはM Bodansky,Principles of Peptide Synthesis,Springer-Verlag,Berlin 1984及びE.Gross and J.Meienhofer,Eds.,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,suprs,Vol 1を参照)。例として、本発明のペプチドは、9-フルオレニルメトキシカルボニル(fluorenyl methoxycarbonyl、Fmoc)固相化学を用いて、N-フルオレニルメトキシ-カルボニル-O-ベンジル-L-ホスホトレオニン誘導体としてホスホトレオニンを直接組み込むことによって合成することができる。
【0126】
他の分子と結合した本発明のペプチド又はキメラタンパク質を含むN末端又はC末端融合タンパク質は、組換え技術を介して、ペプチド又はキメラタンパク質のN末端又はC末端と、所望の生物学的機能を有する選択されたタンパク質又は選択マーカーの配列とを融合することによって調製することができる。得られた融合タンパク質は、本明細書に記載される選択されたタンパク質又はマーカータンパク質に融合したC末端エンドスタチンペプチド又はエンドスタチン由来ペプチドを含有する。融合タンパク質を調製するために使用され得るタンパク質の例としては、免疫グロブリン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase、GST)、赤血球凝集素(hemagglutinin、HA)、及び短縮型mycが挙げられる。例えば、ポリペプチドは、重鎖のCH1、CH2、及び/又はCH3ドメインに連結され得る。定常領域が軽鎖由来である場合、それはカッパ又はラムダ軽鎖由来であり得る。定常領域が重鎖由来である場合、それは、以下のクラスの抗体:IgG、IgA、IgE、IgD、及びIgMのいずれか1つの抗体由来であり得る。IgGは、IgG、IgG、IgG、又はIgGであり得る。定常ドメインは、Fc断片であり得る。定常ドメインは、ヒト抗体などの哺乳動物抗体由来であり得る。可溶性受容体-IgG融合タンパク質は一般的な免疫学的試薬であり、それらの構築方法は当該技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,225,538号、同第5,726,044号、同第5,707,632号、同第750,375号、同第5,925,351号、同第6,406,697号、及びBergers et al.Science 1999 284:808-12を参照)。一例では、免疫グロブリンは、2つの重鎖間の二量体化がヒンジ領域で起こる、ヒトIgG、特にIgGの重鎖の定常部分である。融合ポリペプチドの一部としてのFc領域のCH2及びCH3ドメインの包含は、Fc領域を含むポリペプチドのin vivo循環半減期、及びポリペプチドを含むオリゴマー又は二量体のin vivo循環半減期を増加させることが認識される。
【0127】
本発明のペプチドは、生物学的発現系を用いて開発することができる。これらの系の使用は、ランダムペプチド配列の大きなライブラリの作製、及びこれらのライブラリの、特定のタンパク質に結合するペプチド配列についてのスクリーニングを可能にする。ライブラリは、ランダムペプチド配列をコードする合成DNAを適切な発現ベクターにクローニングすることによって作製され得る(Christian et al 1992,J.Mol.Biol.227:711、Devlin et al,1990 Science 249:404、Cwirla et al 1990,Proc.Natl.Acad,Sci.USA,87:6378参照)。ライブラリはまた、重複ペプチドの同時合成によって構築され得る(米国特許第4,708,871号を参照)。
【0128】
本発明のペプチド及びキメラタンパク質は、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸などの無機酸、又は例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、ベンゼンスルホン酸、及びトルエンスルホン酸などの有機酸と反応させることによって、薬学的塩に変換され得る。
【0129】
一実施形態では、本発明は、C末端エンドスタチン、エンドスタチン由来ペプチド、又はその生物学的に機能的な断片をコードする単離された核酸を含む組成物を提供する。
【0130】
一実施形態では、単離された核酸配列は、C末端エンドスタチンをコードする。様々な実施形態では、単離された核酸配列は、
96:ATGQASSLL(配列番号1)、
E4-03:SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHA(配列番号2)、
E4:SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHAYIVLCIENSFMT(配列番号3)、
96-17:ATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHA(配列番号4)、
96-87:ATGQASSLLGGRLLGQ(配列番号5)、
91-96:SYCETWRTEAPSATGQASSLL(配列番号6)、
91-97、SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQ(配列番号7)のアミノ酸配列、又はその変異体若しくは断片を含むエンドスタチン由来ペプチドをコードする。一実施形態では、ペプチドは、N末端でビオチン化されているか、C末端でアミド化されているか、又はそれらの組み合わせである。
【0131】
更に、本発明は、本明細書に開示されるC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドに対して実質的な相同性を有するペプチドをコードする単離された核酸を包含する。特定の実施形態では、単離された核酸配列は、配列番号1~7から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列相同性を有するC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドをコードする。
【0132】
一実施形態では、C末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドに対して実質的な相同性を有するペプチドをコードする単離された核酸は、以下の実施例4の表1に示される配列番号8~27からなる群から選択される1つ以上のペプチドと少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のペプチドをコードする核酸配列を含む。一実施形態では、当該単離された核酸は、配列番号8~27からなる群から選択される1つ以上のペプチドの長さの少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のペプチドをコードする核酸配列を含む。一実施形態では、当該単離された核酸は、配列番号8~27からなる群から選択される1つ以上のペプチドの長さの少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である1つ以上のペプチドと少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のペプチドをコードする核酸配列を含む。一実施形態では、当該単離された核酸は、配列番号8~27からなる群から選択される1つ以上のペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0133】
C末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドをコードする単離された核酸配列は、当該技術分野で公知の多くの組換え方法のうちのいずれかを用いて、例えば、標準技術を用いて、遺伝子を発現する細胞由来のライブラリをスクリーニングすることによって、遺伝子を含むことが既知のベクターから遺伝子を得ることによって、又は遺伝子を含有する細胞及び組織から直接単離することなどによって、得ることができる。あるいは、目的の遺伝子は、クローニングではなく合成的に作製され得る。
【0134】
単離された核酸は、DNA及びRNAを含むがこれらに限定されない、任意のタイプの核酸を含み得る。例えば、一実施形態では、組成物は、例えば、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はそれらの機能的断片をコードする単離されたcDNA分子を含む単離されたDNA分子を含む。一実施形態では、組成物は、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はそれらの機能的断片をコードする単離されたRNA分子を含む。
【0135】
本発明の核酸分子は、血清又は細胞培養のための増殖培地における安定性を改善するために修飾され得る。修飾は、本発明の核酸分子の安定性、機能性、及び/又は特異性を増強し、免疫刺激特性を最小限にするために加えることができる。例えば、安定性を増強するために、3’-残基は分解に対して安定化されてもよく、例えば、それらはプリンヌクレオチド、特にアデノシン又はグアノシンヌクレオチドからなるように選択されてもよい。あるいは、修飾アナログによるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、2’-デオキシチミジンによるウリジンの置換は許容され、分子の機能に影響を及ぼさない。
【0136】
本発明の一実施形態では、核酸分子は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドアナログを含有し得る。例えば、末端は、修飾ヌクレオチドアナログを組み込むことによって安定化され得る。
【0137】
ヌクレオチドアナログの非限定的な例としては、糖及び/又は骨格修飾リボヌクレオチド(すなわち、リン酸-糖骨格への修飾を含む)が挙げられる。例えば、天然RNAのホスホジエステル結合は、窒素又は硫黄ヘテロ原子のうちの少なくとも1つを含むように修飾され得る。好ましい骨格修飾リボヌクレオチドでは、隣接リボヌクレオチドに結合しているホスホエステル基は、修飾基、例えば、ホスホチオエート基で置き換えられている。好ましい糖修飾リボヌクレオチドでは、2’OH-基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH、NHR、NR、又はONから選択される基で置き換えられており、ここで、RはC~Cアルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、ハロはF、Cl、Br、又はIである。
【0138】
修飾の他の例は、核酸塩基修飾リボヌクレオチド、すなわち、天然に存在する核酸塩基の代わりに少なくとも1つの天然に存在しない核酸塩基を含有するリボヌクレオチドである。塩基は、アデノシンデアミナーゼの活性を遮断するように修飾され得る。例示的な修飾核酸塩基としては、5位で修飾されたウリジン及び/又はシチジン、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン;8位で修飾されたアデノシン及び/又はグアノシン、例えば、8-ブロモグアノシン;デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザ-アデノシン;O-及びN-アルキル化ヌクレオチド、例えば、N6-メチルアデノシンが好適である、が挙げられるが、これらに限定されない。上記の修飾を組み合わせてもよいという点に留意すべきである。
【0139】
いくつかの例では、核酸分子は、以下の化学修飾:1つ以上のヌクレオチドの2’-H、2’-O-メチル、又は2’-OH修飾のうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼに対して増強された耐性を有し得る。ヌクレアーゼ耐性の増加のために、核酸分子は、例えば、2’-修飾リボース単位及び/又はホスホロチオエート結合を含むことができる。例えば、2’ヒドロキシル基(OH)は、いくつかの異なる「オキシ」又は「デオキシ」置換基で修飾又は置き換えられ得る。ヌクレアーゼ耐性の増加のために、本発明の核酸分子は、2’-O-メチル、2’-フッ素、2’-O-メトキシエチル、2’-O-アミノプロピル、2’-アミノ、及び/又はホスホロチオエート結合を含むことができる。ロックド核酸(locked nucleic acid、LNA)、エチレン核酸(ethylene nucleic acid、ENA)、例えば、2’-4’-エチレン架橋核酸、及び特定の核酸塩基修飾、例えば、2-アミノ-A、2-チオ(例えば、2-チオ-U)、G-クランプ修飾の包含もまた、標的に対する結合親和性を増加させ得る。
【0140】
一実施形態では、核酸分子は、2’-修飾ヌクレオチド、例えば、2’-デオキシ、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2'-O-methoxyethyl、2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル(2'-O-aminopropyl、2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-dimethylaminoethyl、2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-dimethylaminopropyl、2’-O-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-dimethylaminoethyloxyethyl、2’-O-DMAEOE)、又は2’-O-N-メチルアセトアミド(2'-O-N-methylacetamido、2’-O-NMA)を含む。一実施形態では、核酸分子は、少なくとも1つの2’-O-メチル修飾ヌクレオチドを含み、いくつかの実施形態では、核酸分子のヌクレオチドの全てが2’-O-メチル修飾を含む。
【0141】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは、以下の特性のうちの1つ以上を有する。
本明細書中で考察される核酸剤は、他の点では修飾されていないRNA及びDNA、並びに例えば、効力を改善するために修飾されたRNA及びDNA、並びにヌクレオシド代用物のポリマーを含む。非修飾RNAとは、核酸の構成成分、すなわち糖、塩基、及びリン酸部分が、天然に存在するもの、好ましくはヒトの体内に天然に存在するものと同じか又は本質的に同じである分子を指す。当該技術分野では、稀又は珍しいが天然に存在するRNAを修飾RNAと称しており、例えば、Limbach et al.(Nucleic Acids Res.,1994,22:2183-2196)を参照されたい。しばしば修飾RNAと呼ばれるこのような稀又は珍しいRNAは、典型的には転写後修飾の結果であり、本明細書で使用される場合、非修飾RNAという用語の範囲内である。修飾RNAは、本明細書で使用される場合、核酸の構成成分、すなわち糖、塩基、及びリン酸部分のうちの1つ以上が、天然に存在するものとは異なる、好ましくはヒトの体内に存在するものとは異なる分子を指す。それらは「修飾RNA」と呼ばれるが、当然ながら、修飾のために、厳密に言えばRNAではない分子を含む。ヌクレオシド代用物は、リボリン酸骨格が、ハイブリダイゼーションがリボリン酸骨格(例えば、リボリン酸骨格の非荷電模倣物)で見られるものと実質的に同様であるような正しい空間的関係で塩基が提示されることを可能にする非リボリン酸構築物で置き換えられている分子である。
【0142】
本発明の核酸の修飾は、リン酸基、糖基、骨格、N末端、C末端、又は核酸塩基のうちの1つ以上に存在し得る。
【0143】
本発明はまた、本発明の単離された核酸が挿入されたベクターを含む。当該技術分野には、本発明において有用な好適なベクターが十分に存在する。
【0144】
簡単に要約すると、C末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドをコードする天然又は合成核酸の発現は、典型的には、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド又はそれらの一部をコードする核酸をプロモーターに作動可能に連結し、その構築物を発現ベクターに組み込むことによって達成される。使用されるベクターは、真核生物細胞における複製及び任意選択で取り込みに好適である。典型的なベクターは、転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、並びに所望の核酸配列の発現の調節に有用なプロモーターを含有する。
【0145】
本発明のベクターはまた、標準的な遺伝子送達プロトコルを使用して、核酸免疫化及び遺伝子療法のために使用され得る。遺伝子送達のための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,399,346号、同第5,580,859号、同第5,589,466号を参照されたい。別の実施形態では、本発明は、遺伝子療法ベクターを提供する。
【0146】
本発明の単離された核酸は、いくつかのタイプのベクターにクローニングすることができる。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドを含むがこれらに限定されないベクターにクローニングすることができる。特に関心のあるベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び配列決定ベクターが挙げられる。本発明のベクターには、植物、動物、及び真菌を含む真核生物、並びに古細菌及び細菌を含む原核生物における発現に好適な任意のベクターが含まれる。
【0147】
更に、ベクターはウイルスベクターの形態で細胞に提供されてもよい。ウイルスベクター技術は当該技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al.(2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)、並びに他のウイルス学及び分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、都合のよい制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ以上の選択マーカーを含有する(例えば、国際公開第01/96584号、同第01/29058号、及び米国特許第6,326,193号を参照)。
【0148】
いくつかのウイルスベースの系が、哺乳動物細胞への遺伝子移入のために開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系のための都合のよいプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当該技術分野で公知の技術を使用して、ベクターに挿入され、レトロウイルス粒子にパッケージングされ得る。次いで、組換えウイルスを単離し、in vivo又はex vivoのいずれかで対象の細胞に送達することができる。いくつかのレトロウイルス系が当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。いくつかのアデノウイルスベクターが当該技術分野で公知である。一実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0149】
例えば、レンチウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターは、導入遺伝子の長期の安定な取り込み及び娘細胞におけるその増殖を可能にするので、長期遺伝子移入を達成するための好適なツールである。レンチウイルスベクターは、肝細胞などの非増殖細胞を形質導入することができるという点で、マウス白血病ウイルスなどのオンコレトロウイルスに由来するベクターに勝る更なる利点を有する。それらはまた、低い免疫原性という更なる利点を有する。一実施形態では、組成物は、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus、AAV)に由来するベクターを含む。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、様々な障害の処置のための強力な遺伝子送達ツールとなっている。AAVベクターは、病原性の欠如、最小限の免疫原性、及び安定かつ効率的な様式で分裂終了細胞に形質導入する能力を含む、AAVベクターを遺伝子療法に理想的に適したものにするいくつかの特徴を有する。AAVベクター内に含有される特定の遺伝子の発現は、AAV血清型、プロモーター、及び送達方法の適切な組み合わせを選択することによって、1つ以上の型の細胞に特異的に標的化することができる。
【0150】
一実施形態では、複製欠損アデノウイルスを使用することができる。一実施形態では、複製欠損血清型5アデノウイルスを使用することができる。
【0151】
特定の実施形態では、ベクターはまた、本発明によって作製したプラスミドベクターをトランスフェクトしたか又は本発明によって作製したウイルスに感染させた細胞における導入遺伝子の転写、翻訳及び/又は発現を可能にする様式で、導入遺伝子に作動可能に連結された従来の制御エレメントを含む。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」配列は、目的の遺伝子と隣接している発現制御配列と、目的の遺伝子を制御するためにトランスで又は一定の距離離れて作用する発現制御配列の両方を含む。発現制御配列は、適切な転写開始、転写終結、プロモーター、及びエンハンサー配列;スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;並びに所望される場合、コードされる産物の分泌を増強する配列を含む。天然、構成的、誘導性、及び/又は組織特異的であるプロモーターを含む多数の発現制御配列が当該技術分野で公知であり、利用することができる。
【0152】
更なるプロモーターエレメント、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは開始部位の30~110bp上流の領域に位置するが、いくつかのプロモーターは、開始部位の下流にも機能的エレメントを含有することが最近示されている。プロモーターエレメント間の間隔は、しばしば柔軟であり、その結果、プロモーター機能は、エレメントが互いに対して反転又は移動している場合にも保存される。チミジンキナーゼ(thymidine kinase、tk)プロモーターにおいて、プロモーターエレメント間の間隔は、50bpまで増加させることができ、これよりも離れると活性が低下し始める。プロモーターに応じて、個々のエレメントは、転写を活性化するために協調的に又は独立して機能し得るようである。
【0153】
好適なプロモーターの一例は、最初期サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに作動的に連結された任意のポリヌクレオチド配列の発現のレベルを高くすることができる強力な構成的プロモーター配列である。好適なプロモーターの別の例は、伸長増殖因子-1α(Elongation Growth Factor-1α、EF-1α)である。しかしながら、シミアンウイルス40(simian virus 40、SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(mouse mammary tumor virus、MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus、HIV)長鎖末端反復配列(long terminal repeat、LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタインバーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、並びにヒト遺伝子プロモーター、例えば、これらに限定されないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチニンキナーゼプロモーターを含むがこれらに限定されない他の構成的プロモーター配列もまた使用され得る。更に、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターもまた、本発明の一部として企図される。誘導性プロモーターの使用は、ポリヌクレオチド配列の発現が望まれる場合に、それが作動的に連結されたポリヌクレオチド配列の発現をオンにするか、又は発現が望まれない場合に発現をオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例としては、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
ベクターに見出されるエンハンサー配列はまた、その中に含有される遺伝子の発現を調節する。典型的には、エンハンサーはタンパク質因子と結合して、遺伝子の転写を増強する。エンハンサーは、それが調節する遺伝子の上流又は下流に位置し得る。エンハンサーはまた、特定の細胞又は組織型における転写を増強するために組織特異的であり得る。一実施形態では、本発明のベクターは、ベクター内に存在する遺伝子の転写をブーストするための1つ以上のエンハンサーを含む。
【0155】
C末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドの発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターはまた、ウイルスベクターを通じてトランスフェクト又は感染されることが求められる細胞の集団からの発現細胞の同定及び選択を容易にするために、選択マーカー遺伝子若しくはレポーター遺伝子のいずれか、又はその両方を含有することができる。他の態様では、選択マーカーは、別個のDNA片上に担持され得、コトランスフェクション手順で使用される。選択マーカーとレポーター遺伝子の両方は、宿主細胞における発現を可能にするために適切な調節配列と隣接され得る。有用な選択マーカーとしては、例えば、neoなどの抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。
【0156】
レポーター遺伝子は、潜在的にトランスフェクトされた細胞を同定するため、及び調節配列の機能性を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物又は組織に存在することもそれによって発現されることもなく、その発現が何らかの容易に検出可能な特性(例えば、酵素活性)によって明らかにされるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の好適な時点でアッセイされる。好適なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、又は緑色蛍光タンパク質遺伝子が含まれ得る(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)。好適な発現系は周知であり、公知の技術を使用して調製され得るか、又は商業的に入手され得る。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す最小5’フランキング領域を有する構築物は、プロモーターとして同定される。このようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され得、プロモーター駆動転写を調整する能力について薬剤を評価するために使用され得る。
【0157】
遺伝子を細胞に導入し発現させる方法は、当該技術分野で公知である。発現ベクターに関連して、ベクターは、当該技術分野における任意の方法によって、宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、又は昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、又は生物学的手段によって宿主細胞に移入することができる。
【0158】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を作製するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Sambrook et al.(2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を参照されたい。宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入のための好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0159】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法としては、DNAベクター及びRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、遺伝子を哺乳動物、例えばヒト細胞に挿入するために最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号及び同第5,585,362号を参照されたい。
【0160】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段としては、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散系、並びに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系が挙げられる。in vitro及びin vivoでの送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0161】
非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質製剤の使用は、宿主細胞への核酸の導入(in vitro、ex vivo、又はin vivo)のために企図される。別の態様では、核酸は脂質と会合していてもよい。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部に封入されていてもよく、リポソームの脂質二重層内に散在していてもよく、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方と会合している連結分子を介してリポソームに付着していてもよく、リポソームに捕捉されていてもよく、リポソームと複合体を形成していてもよく、脂質を含有する溶液に分散されていてもよく、脂質と混合されていてもよく、脂質と組み合わされていてもよく、脂質中の懸濁液として含有されていてもよく、ミセルに含有若しくはミセルと複合体を形成していてもよく、又はそうでなければ脂質と会合していてもよい。脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクター会合組成物は、溶液中のいかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは、ミセルとして、又は「崩壊」構造を有する二重層構造で存在していてもよい。それらはまた、単に溶液に散在していてもよく、サイズ又は形状が均一でない凝集体を形成する可能性がある。脂質は、天然に存在する脂質又は合成脂質であり得る脂肪物質である。例えば、脂質としては、細胞質中に天然に存在する脂肪滴、並びに長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドを含有する化合物のクラスが挙げられる。
【0162】
使用に好適な脂質は、商業的供給源から得ることができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(dimyristyl phosphatidylcholine、「DMPC」)は、Sigma,St.Louis,MOから得ることができ、ジセチルホスフェート(dicetyl phosphate、「DCP」)は、K&K Laboratories(Plainview,NY)から得ることができ、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから得ることができ、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(dimyristyl phosphatidylglycerol、「DMPG」)及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,AL)から得ることができる。クロロホルム又はクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムは、メタノールよりも容易に蒸発するので、唯一の溶媒として使用される。「リポソーム」は、封入された脂質二重層又は凝集体の生成によって形成される種々の単一及び多重膜脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内部水性媒体を有する小胞構造を有するものとして特徴付けることができる。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液に懸濁される場合に自然に形成される。脂質構成成分は、閉鎖構造の形成前に自己再編成を行い、脂質二重層の間に水及び溶解した溶質を捕捉する(Ghosh et al.,1991 Glycobiology 5:505-10)。しかしながら、溶液中で正常な小胞構造とは異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質はミセル構造をとり得るか、又は単に脂質分子の不均一な凝集体として存在し得る。リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0163】
外因性核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞における組換えDNA配列の存在を確認するために、種々のアッセイが実施され得る。このようなアッセイとしては、例えば、サザンブロッティング及びノーザンブロッティング、RT-PCR、RT-qPCR、及びPCRなどの当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ;例えば、免疫学的手段(ELISA及びウェスタンブロット)によって、又は本発明の範囲内に入る薬剤を同定するための本明細書に記載されるアッセイによって、特定のペプチドの存在又は非存在を検出するような「生化学的」アッセイが挙げられる。
【0164】
一実施形態では、本発明は、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子を含む送達ビヒクルを提供する。例示的な送達ビヒクルとしては、マイクロスフェア、マイクロ粒子、ナノ粒子、ポリマーソーム、リポソーム、及びミセルが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、特定の実施形態では、送達ビヒクルには、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子が負荷される。特定の実施形態では、送達ビヒクルは、その負荷されたカーゴの制御放出、遅延放出、又は連続放出を提供する。特定の実施形態では、送達ビヒクルは、送達ビヒクルを処置部位に標的化する標的化部分を含む。
【0165】
本発明はまた、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドを産生する細胞、又はそれらの組み合わせを含む足場又は基質組成物を提供する。別の実施形態では、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドを産生する細胞、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子、又はそれらの組み合わせを、足場の表面に適用する。本発明の足場は、当該技術分野で公知のいかなるタイプのものであってもよい。このような足場の非限定的な例としては、ヒドロゲル、エレクトロスピニングされた足場、発泡体、メッシュ、シート、パッチ、及びスポンジが挙げられる。
【0166】
本発明はまた、本明細書に記載される組成物のうちの1つ以上を含む医薬組成物を提供する。製剤は、従来の賦形剤、すなわち、創傷又は処置部位への投与に好適な薬学的に許容される有機又は無機担体物質と混合して使用され得る。医薬組成物は、滅菌されてもよく、所望であれば、補助剤、例えば、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化物質、浸透圧緩衝剤に影響を与えるための塩、着色物質、及び/又は芳香物質などと混合されてもよい。それらはまた、所望される場合、他の活性剤、例えば、他の鎮痛剤と組み合わされてもよい。
【0167】
本発明の組成物の投与は、例えば、非経口、静脈内、腫瘍内、皮下、筋肉内、気管内若しくは腹腔内注射、吸入、注入によって、又は任意の他の許容される全身的方法によって行われ得る。
【0168】
本明細書で使用される場合、「追加の成分」には、以下:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;顆粒化剤及び崩壊剤;結合剤;潤滑剤;着色剤;保存剤;ゼラチンなどの生理学的に分解性の組成物;水性ビヒクル及び溶媒;油性ビヒクル及び溶媒;懸濁化剤;分散剤又は湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;並びに薬学的に許容されるポリマー材料又は疎水性材料のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物に含まれ得る他の「追加の成分」は、当該技術分野で公知であり、例えば、Genaro,ed.(1985,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA)(これは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0169】
本発明の組成物は、組成物の総重量の約0.005%~2.0%の保存剤を含み得る。保存剤は、環境中の汚染物質に曝露された場合に腐敗を予防するために使用される。本発明に従って有用な保存剤の例としては、ベンジルアルコール、ソルビン酸、パラベン、イミド尿素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい保存剤は、約0.5%~2.0%のベンジルアルコールと0.05%~0.5%のソルビン酸との組み合わせである。
【0170】
ある実施形態では、組成物は、抗酸化剤と、組成物の1つ以上の構成成分の分解を阻害するキレート剤とを含む。いくつかの化合物に好ましい抗酸化剤は、組成物の総重量の約0.01重量%~0.3重量%の好ましい範囲のBHT、BHA、アルファ-トコフェロール、及びアスコルビン酸、より好ましくは0.03重量%~0.1重量%の範囲のBHTである。好ましくは、キレート剤は、組成物の総重量の0.01重量%~0.5重量%の量で存在する。特に好ましいキレート剤としては、組成物の総重量の約0.01重量%~0.20重量%の範囲の、より好ましくは0.02重量%~0.10重量%の範囲のエデト酸塩(例えば、エデト酸二ナトリウム)及びクエン酸が挙げられる。キレート剤は、製剤の貯蔵寿命に有害であり得る組成物中の金属イオンをキレート化するのに有用である。BHT及びエデト酸二ナトリウムはそれぞれ、いくつかの化合物に対して特に好ましい抗酸化剤及びキレート剤であるが、当業者に公知であり得る他の好適かつ等価な抗酸化剤及びキレート剤を代用してもよい。
【0171】
液体懸濁液は、水性又は油性ビヒクルへの本発明の組成物の懸濁を達成するために、従来の方法を使用して調製され得る。水性ビヒクルとしては、例えば、水及び等張生理食塩水が挙げられる。油性ビヒクルとしては、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、又はヤシ油などの植物油、分画植物油、魚油、及び流動パラフィンなどの鉱油が挙げられる。液体懸濁液は、懸濁化剤、分散剤又は湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、保存剤、緩衝剤、塩、香味剤、着色剤、及び甘味剤を含むがこれらに限定されない1つ以上の追加の成分を更に含み得る。油性懸濁液は、増粘剤を更に含み得る。公知の懸濁化剤としては、ソルビトールシロップ、水素化食用脂肪、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴム、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。公知の分散剤又は湿潤剤としては、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと、脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステル、又は脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合生成物(例えば、それぞれ、ポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられるが、これらに限定されない。公知の乳化剤としては、レシチン及びアカシアが挙げられるが、これらに限定されない。公知の保存剤としては、メチル、エチル、又はn-プロピル-パラヒドロキシベンゾエート、アスコルビン酸、及びソルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
腫瘍の処置方法
一実施形態では、本発明のC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドは、線維化肺及び皮膚における線維芽細胞による細胞外マトリックスタンパク質の産生を低下させる。癌関連線維芽細胞(Cancer associated fibroblast、CAF)も線維症を引き起こす。したがって、様々な実施形態では、本発明のC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドは、癌、線維化疾患、又はそれらの組み合わせの処置又は予防に使用することができる。
【0173】
一実施形態では、本発明は、腫瘍成長の処置又は予防を必要とする対象における腫瘍成長の処置又は予防の方法を提供する。本発明によって処置又は予防される例示的な状態としては、肺、乳房、胃、膵臓、前立腺、膀胱、骨、卵巣、皮膚、腎臓、副鼻腔、結腸、腸、胃、直腸、食道、血液、脳及びその被覆物、脊髄及びその被覆物、筋肉、結合組織、副腎、副甲状腺、甲状腺、子宮、精巣、下垂体、生殖器、肝臓、胆嚢、眼、耳、鼻、咽喉、扁桃、口、リンパ節及びリンパ系、並びに他の臓器の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
一実施形態では、本発明は、悪性腫瘍又は他の癌性細胞の転移を予防するための、及び腫瘍成長の速度を低下させる方法を提供する。本方法は、有効量の1つ以上の開示される化合物を、悪性腫瘍若しくは癌性細胞と診断された対象又は腫瘍若しくは癌性細胞を有する対象に投与することを含む。一実施形態では、本方法は、本明細書に記載される、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子を含む組成物を、対象に投与することを含む。
【0175】
一実施形態では、本発明のエンドスタチンペプチドは、肺癌又は皮膚癌の処置又は予防に使用される。しかしながら、本発明は、肺癌の処置に限定されない。以下は、開示される方法及び組成物によって処置又は予防され得る癌の非限定的な例である:急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄白血病、副腎皮質癌腫、虫垂癌、基底細胞癌腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳及び脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、中枢神経系非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸癌、小児視覚路腫瘍、脊索腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、上衣芽細胞腫、上衣腫、食道癌、ユーイングファミリーの腫瘍、頭蓋外癌、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、肝外癌、眼癌、菌状息肉腫、胆嚢癌、胃(gastric)(胃(stomach))癌、消化管癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor、gist)、胚細胞腫瘍、妊娠癌、妊娠絨毛性腫瘍、神経膠芽腫、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部及び視覚路神経膠腫、視床下部腫瘍、眼内(眼)癌、眼内黒色腫、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)癌、ランゲルハンス細胞癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、白血病、唇及び口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、マクログロブリン血症、骨悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、髄芽腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌腫、中皮腫、転移性原発不明扁平上皮性頸部癌、口癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、真菌症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病(myelogenous leukemia)、骨髄白血病(myeloid leukemia)、骨髄腫、骨髄増殖性障害、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口部癌(oral cancer)、口腔癌(oral cavity cancer)、中咽頭癌、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、骨肉腫及び骨悪性線維性組織球腫、卵巣、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、中間分化型松果体実質腫瘍、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞新生物、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系癌、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、腎盂及び尿管癌、15番染色体上のnut遺伝子が関与する気道癌腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、セザリー症候群、皮膚癌(黒色腫)、皮膚癌(非黒色腫)、皮膚癌腫、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌腫、扁平上皮性頸部癌、胃(stomach)(胃(gastric))癌、テント上原始神経外胚葉腫瘍、テント上原始神経外胚葉腫瘍及び松果体芽腫、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫及び胸腺癌腫、甲状腺癌、移行上皮癌、腎盂及び尿管の移行上皮癌、絨毛性腫瘍、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視覚路及び視床下部神経膠腫、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、並びにウィルムス腫瘍。
【0176】
線維症の処置方法
本発明の一態様は、線維症、線維化関連疾患若しくは障害、又は心血管疾患若しくは障害を処置又は予防する方法であって、本明細書に記載される、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子を含む組成物を、対象に投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、線維化関連疾患又は障害としては、心線維症、間質性肺疾患、特発性肺線維症、間質性肺線維症、家族性肺線維症、放射線誘発肺線維症、炭坑夫塵肺症、石綿肺症、ブレオマイシン肺、類肉腫症、珪肺症、急性肺損傷、ARDS、創傷治癒の疾患若しくは障害、肥厚性瘢痕、ケロイド瘢痕、肝硬変症、全身性強皮症、モルフェアを含むがこれに限定されない限局性強皮症、血管線維症、腎線維症、移植片対宿主病(GVHD)の結果としての線維症、上皮下線維症、心内膜心筋線維症、子宮線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、腎性全身性線維症、手術後の瘢痕化、喘息、糸球体腎炎、多巣性線維硬化症、糖尿病性腎症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、放射線誘発線維症、化学療法誘発線維症、全身性硬化症、肝炎、及びシェーグレン症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
一実施形態では、線維化関連疾患又は障害としては、心線維症が挙げられるが、これに限定されない。一実施形態では、心線維症は、心臓損傷から生じる。例えば、一実施形態では、心線維症は、心筋梗塞、大動脈狭窄、拘束型心筋症、全身性高血圧及び肺高血圧、又はカルチノイド心疾患を含むがこれらに限定されない損傷から生じる。一実施形態では、間質性肺疾患としては、特発性肺線維症、間質性肺線維症、炭坑夫塵肺症、石綿肺症、急性肺損傷、及びARDSが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、創傷治癒の疾患及び障害としては、肥厚性瘢痕、ケロイド瘢痕が挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
一実施形態では、線維症は、臓器又は組織の正常な構成要素としての線維性組織の形成とは異なる、修復プロセス又は反応プロセスとしての臓器又は組織における過剰な線維性結合組織の形成又は発達を含む。皮膚及び肺は線維症に罹りやすい。
【0179】
いくつかの例では、線維化疾患は、線維芽細胞の活性化、コラーゲン及びフィブロネクチンの産生の増加、並びに収縮性筋線維芽細胞への分化転換を特徴とする。このプロセスは、通常、何ヶ月及び何年にもわたって起こり、臓器機能不全又は死亡をもたらし得る。線維化関連疾患及び障害は、有効な療法が存在しない障害の最大群の1つを表し、したがって、主要な満たされていない医学的必要性を表す。多くの場合、線維症を有する患者のための唯一の救済策は臓器移植であるが、臓器の供給が需要を満たすには不十分であるため、患者は、好適な臓器を受け取るのを待っている間に死亡することが多い。肺の線維症は、単独で、強皮症、肺疾患、特発性肺線維症、放射線及び化学療法によって誘発される肺の線維症、並びに粉塵粒子の職業上の吸入によって引き起こされる状態における主な死因であり得る。
【0180】
本発明は、線維症と診断されたか又はそれを発症するリスクがある任意の対象において実施することができる。線維症は、多くの疾患及び障害に関連する。対象は、特発性肺線維症、強皮症、放射線誘発肺線維症、ブレオマイシン肺、類肉腫症、珪肺症、家族性肺線維症、自己免疫疾患、又は1つ以上の線維増殖性マトリックス分子沈着、病理学的コラーゲン蓄積の増強、アポトーシス、及び蜂巣化を伴う肺胞中隔破裂が起こる任意の障害を含む間質性肺疾患と診断され得るか、又はそれを発症するリスクがあり得る。対象は、石綿、砕石、シリカ、及び金属粉塵への曝露により、線維症を発症する危険因子であるブレオマイシン、ブスルホン、フェイトイン、及びニトロフラントインなどの薬の投与により、又は唾液腺の線維症を発症する頭頸部癌を有する患者などへの放射線により、線維症を有するか又は線維症を発症するリスクがあると同定され得る。本発明の組成物及び方法は、同種異系臓器移植に続発する臓器線維症、例えば、移植片移植線維症の処置において使用され得ることも企図される。非限定的な例としては、腎臓移植線維症、心臓移植線維症、肝臓移植線維症などが挙げられる。
【0181】
特定の実施形態では、本発明の方法は、心筋梗塞症、硬変症、肝炎などを含む根底にある原因を有する複数の線維化疾患又は障害或いは線維化関連疾患又は障害を処置するために使用される。
【0182】
本発明は、強皮症と診断されたか又はそれを発症するリスクがある任意の対象において実施することができる。強皮症は、線維症(又は硬化)、血管変化、及び自己抗体を特徴とする慢性自己免疫疾患である。2つの主要な形態:限局型全身性強皮症及びびまん型全身性強皮症が存在する。限局型全身性強皮症の皮膚症状は、手、腕、及び顔に影響を及ぼす。この形態の強皮症を有する患者は、以下の合併症:石灰沈着症、レイノー現象、食道機能不全、強指症)、内臓線維症、及び毛細血管拡張症のうちの1つ以上を有することが多い。
【0183】
びまん型全身性強皮症は急速に進行し、広範囲の皮膚並びに1つ以上の内臓、しばしば腎臓、食道、心臓、及び/又は肺に影響を及ぼす。限局性強皮症、例えば、線状強皮症及びモルフェアは、皮膚に影響を及ぼすが、内臓には影響を及ぼさない。
【0184】
強皮症は、全ての臓器において細動脈として知られる小血管に影響を及ぼす。まず、細動脈の内皮細胞が、平滑筋細胞と共にアポトーシスにより死滅する。これらの細胞は、コラーゲン及び他の線維状物質によって置き換えられる。炎症細胞、特にCD4+ヘルパーT細胞は、細動脈に浸潤し、更なる傷害を引き起こす。
【0185】
強皮症の皮膚への現れは、痛みを伴うものであることがあり、患部の使用(例えば、手、指、つま先、足などの使用)を障害することがあり、外観を損なうことがある。皮膚潰瘍形成が起こる場合があり、そのような潰瘍は、感染症又は壊疽さえ起こしやすい場合がある。潰瘍化した皮膚は、治癒するのが困難であるか又は遅い場合がある。皮膚潰瘍形成の治癒の困難さは、循環障害を有する患者、例えばレイノー現象を有する患者において特に悪化する可能性がある。肺病変は、高い罹患率及び死亡率を示す、強皮症患者における主な死因である。特定の実施形態では、本開示の組成物及び方法は、強皮症、例えば、強皮症の皮膚症状を処置するために使用される。特定の実施形態では、強皮症を処置することは、指潰瘍などの皮膚潰瘍形成を処置することを含む。本発明のC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドの投与は、患部組織及び/又は臓器における強皮症の線維化及び/又は炎症症状を低下させるために使用することができる。
【0186】
皮膚症状/現れに加えて、強皮症は、心臓、腎臓、肺、関節、及び消化管にも影響を及ぼし得る。特定の実施形態では、強皮症を処置することは、線維化及び/又は炎症症状を低下させることなどによって、これらの組織のうちのいずれか1つ以上における疾患の症状を処置することを含む。
【0187】
肺の問題は、強皮症の最も重篤な合併症の1つであり、この疾患に関連する死亡率の多くの原因である。強皮症に関連する2つの主な肺状態は、肺線維症及び肺高血圧である。肺病変を有する患者は、いずれか又は両方の状態を有し得る。強皮症に関連する肺の線維症は、本発明のペプチドを使用して処置することができる肺線維症の一例である。
【0188】
肺を含む強皮症は瘢痕化(肺線維症)を引き起こす。このような肺線維症は、強皮症患者の約70%で起こるが、その進行は典型的には遅く、症状は重症度に関して患者間で大きく異なる。肺線維症に関連する症状を有する患者の場合、症状としては、空咳、息切れ、及び運動能力低下が挙げられる。ある程度のレベルの肺線維症を有する患者の約16%が、重度の肺線維症を発症する。重度の肺線維症を有する患者は、著しい肺機能低下及び肺胞炎を経験する。
【0189】
特定の実施形態では、本発明の方法は、強皮症、例えば、強皮症に関連する肺の線維症を処置するための本発明のペプチドの使用を含む。本発明のペプチドの投与は、肺における強皮症の線維化症状を低下させるために使用することができる。例えば、本方法は、肺機能を改善するため、及び/又は強皮症による死亡のリスクを低下させるために使用することができる。例えば、本発明のC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドは、強皮症関連間質性肺疾患を処置するために使用することができる。
【0190】
腎臓病変もまた、強皮症患者において一般的である。強皮症に関連する腎臓線維症(Renal fibrosis)は、本発明のC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドの投与によって処置することができる腎臓線維症の一例である。
【0191】
特定の実施形態では、本発明の方法は、強皮症、例えば、強皮症に関連する腎線維症を処置するために使用される。本発明のC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドの投与は、腎臓における強皮症の線維化症状を低下させるために使用することができる。例えば、本方法は、腎機能を改善するため、尿中のタンパク質を低下させるため、高血圧を低下させるため、及び/又は致命的な腎不全をもたらし得る腎クリーゼのリスクを低下させるために使用することができる。
【0192】
一実施形態では、本方法は、本明細書に記載される、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子を含む組成物を投与することによって、細胞又は対象における線維症を低下させることを含む。一実施形態では、本方法は、本明細書に記載される、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子を含む組成物を投与することによって、細胞又は対象における細胞外マトリックスタンパク質を低下又は分解することを含む。
【0193】
急性肺損傷の処置方法
本発明の一態様は、急性肺損傷を処置又は予防する方法であって、本明細書に記載される、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子を含む組成物を、対象に投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、急性肺損傷としては、ARDSウイルス誘発急性肺損傷、SARS、COVID-19、インフルエンザ誘発急性肺損傷、敗血症、肺炎、誤嚥、外傷、輸血、煙、毒性ガス吸入膵炎、薬物過剰摂取、熱傷による急性肺損傷、及び他の肺損傷又は炎症を伴って現れる人工呼吸器関連肺損傷を含む急性呼吸窮迫症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0194】
急性肺損傷は、肺組織中のIL-6レベルの上昇に関連し、これはサイトカインストームを促進する。本発明のペプチドの投与は、急性肺損傷のサイトカイン誘導性症状を低下させるために使用することができる。例えば、本方法は、肺機能を改善するため、及び/又は急性肺損傷による死亡のリスクを低下させるために使用することができる。例えば、本発明のC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドは、サイトカインストーム及び肺損傷に関連する肺組織におけるIL-6レベルの上昇を処置するために使用することができる。一実施形態では、本方法は、本明細書に記載される、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子を含む組成物を投与することによって、細胞又は対象におけるIL-6レベルを低下させることを含む。
【0195】
投与
特定の実施形態では、本方法は、癌、腫瘍成長に関連する状態、線維症、線維化関連疾患若しくは障害、又は急性肺損傷と診断されたか、それを有することが疑われるか、又はそれを発症するリスクがある対象に、有効量の本明細書に記載される組成物を投与することを含む。特定の態様では、組成物を、腫瘍、線維症、又は急性肺損傷が存在するか、又は発症するリスクがある細胞又は組織に接触させる。一実施形態では、組成物は、対象に全身投与される。
【0196】
本発明の組成物は、多種多様な方法で、必要とする患者又は対象に投与することができる。投与様式としては、経口投与、吸入、術中静脈内、血管内、筋肉内、皮下、脳内、腹腔内、軟部組織注射、外科的留置、関節鏡留置、及び経皮挿入、例えば、直接注射、カニューレ挿入、又はカテーテル法が挙げられる。任意の投与は、本発明の組成物の単回適用及び複数回適用であり得る。投与は、処置される個体における単一部位又は2つ以上の部位に対するものであり得る。複数回投与は、本質的に同時に行われてもよいし、時間的に分離されてもよい。
【0197】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、腫瘍又は罹患組織(例えば、線維化組織)の外科的切除又は減量の間に投与される。例えば、罹患組織又は腫瘍の外科的処置を受けている対象において、組成物は、その部位に、腫瘍、線維症、急性肺損傷、又はそれらの組み合わせを更に処置するために投与することができる。
【0198】
一実施形態では、本方法は、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドを含む足場、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドを発現するように改変された細胞を、対象に投与することを含む。
【0199】
本発明の組成物及び医薬組成物の投与が企図される対象としては、ヒト及び他の霊長類、哺乳動物(非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、及びイヌなどの商業的に関連する哺乳動物を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
本発明の医薬組成物は、処置(又は予防)される疾患に適切な様式で投与することができる。投与の量及び頻度は、対象の状態、並びに対象の疾患の種類及び重症度のような因子によって決定されるが、適切な投薬量は、臨床試験によって決定され得る。
【0201】
「治療量」が示される場合、投与されるべき本発明の組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、疾患の種類、疾患の程度、及び状態の個体差を考慮して、医師によって決定することができる。
【0202】
主題の組成物の投与は、吸入、注射、摂取、輸注、埋め込み、又は移植によるものを含む、任意の都合のよい様式で実施され得る。本明細書に記載される組成物は、患者に、経口、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄腔内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射によって投与され得るか、又は腹腔内投与され得る。一実施形態では、本発明の組成物は、皮内又は皮下注射によって患者に投与される。別の実施形態では、本発明の組成物は、好ましくは、i.v.注射によって投与される。
【0203】
開示される化合物は、ヒト及び動物における腫瘍増殖又は転移を予防、軽減、最小化、制御、及び/又は和らげるために使用することができる。開示される化合物はまた、原発性腫瘍成長の速度を遅くするために使用され得る。開示される化合物は、処置を必要とする対象に投与される場合、癌細胞の拡散を停止するために使用することができる。したがって、本明細書に開示される化合物は、1つ以上の薬物又は他の医薬品との併用療法の一部として投与することができる。併用療法の一部として使用される場合、開示される化合物によってもたらされる転移の減少又は原発性腫瘍成長の減少は、患者を処置するために使用される任意の医薬又は薬物療法のより有効かつ効率的な使用を可能にする。加えて、開示される化合物による転移の制御は、疾患を1つの位置に集中させるより大きな能力を対象に与える。
【0204】
一実施形態では、本発明は、癌の成長又は転移を処置又は予防する方法であって、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子による処置の前に、それと同時に、又はその後に、手術、化学療法、化学療法剤、放射線療法、若しくはホルモン療法、又はそれらの組み合わせなどの癌に対する補完療法で対象を処置することを含む、方法を提供する。
【0205】
化学療法剤としては、細胞毒性剤(例えば、5-フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキセート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、オキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、エストラムシンリン酸ナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド(ifosfamide)、プロカルバジン、マイトマイシン(mitomycin)、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、インターフェロンアルファ-2a組換え体、パクリタキセル、テニポシド、及びストレプトゾシス)、細胞毒性アルキル化剤(例えば、ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、又はエチルスルホン酸)、アルキル化剤(例えば、アサリー(asaley)、AZQ、BCNU、ブスルファン、ビスルファン、カルボキシフタレート白金、CBDCA、CCNU、CHIP、クロラムブシル、クロロゾトシン、シス白金、クロメゾン(clomesone)、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジゾン、シクロホスファミド、ジアンヒドロガラクチトール、フルオロドパン、ヘプスルファム、ヒカントン、イフォスファミド(iphosphamide)、メルファラン、メチルCCNU、マイトマイシンC、ミトゾラミド、ナイトロジェンマスタード、PCNU、ピペラジン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、ストレプトゾトシン、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルナイトロジェンマスタード、及びYoshi-864)、抗有糸分裂剤(例えば、アロコルヒチン、ハリコンドリンM、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、メイタンシン、リゾキシン、パクリタキセル誘導体、パクリタキセル、チオコルヒチン、トリチルシステイン、硫酸ビンブラスチン、及び硫酸ビンクリスチン)、植物アルカロイド(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、L-アスパラギナーゼ、イダルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ミトラマイシン(mitramycin)、マイトマイシン、ダウノルビシン、VP-16-213、VM-26、ナベルビン、及びタキソテール)、生物学的製剤(例えば、アルファインターフェロン、BCG、G-CSF、GM-CSF、インターロイキン-2)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、カンプトテシン、カンプトテシン誘導体、及びモルホリノドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ミトキサントロン、アモナフィド、m-AMSA、アントラピラゾール誘導体、ピラゾロアクリジン、ビサントレンHCL、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン、メノガリル、N,N-ジベンジルダウノマイシン、オキサントラゾール、ルビダゾン、VM-26、及びVP-16)、及び合成物質(例えば、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、o,p’-DDD、ダカルバジン、CCNU、BCNU、シス-ジアンミンジクロロ白金、ミトキサントロン、CBDCA、レバミゾール、ヘキサメチルメラミン、オールトランスレチノイン酸、グリアデル、及びポルフィマーナトリウム)が挙げられる。
【0206】
抗増殖剤は、細胞の増殖を減少させる化合物である。抗増殖剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、酵素、生物学的反応修飾剤、様々な薬剤、ホルモン及びアンタゴニスト、アンドロゲン阻害剤(例えば、フルタミド及び酢酸ロイプロリド)、抗エストロゲン剤(例えば、クエン酸タモキシフェン及びその類似体、トレミフェン、ドロロキシフェン、及びロロキシフェン)が挙げられる。特定の抗増殖剤の更なる例としては、レバミゾール、硝酸ガリウム、グラニセトロン、サルグラモスチムストロンチウム-89クロリド、フィルグラスチム、ピロカルピン、デクスラゾキサン、及びオンダンセトロンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0207】
本発明のエンドスタチンペプチド、又はエンドスタチンペプチドをコードする核酸分子は、単独で、又は細胞毒性/抗新生物剤及び抗血管新生剤を含む他の抗腫瘍剤と組み合わせて投与することができる。細胞毒性/抗新生物剤は、癌細胞を攻撃して死滅させる薬剤として定義される。いくつかの細胞毒性/抗新生物剤は、腫瘍細胞内の遺伝物質をアルキル化するアルキル化剤、例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジン、及びダカバジンである。他の細胞毒性/抗新生物剤は、腫瘍細胞に対する代謝拮抗剤、例えば、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキセート、メルカプトプリン、アザチオプリン、及びプロカルバジンである。他の細胞毒性/抗新生物剤は、抗生物質、例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン(mithramycin)、マイトマイシン、ミトマイシンC(mytomycin C)、及びダウノマイシンである。これらの化合物について市販されている多数のリポソーム製剤が存在する。更に他の細胞毒性/抗新生物剤は、有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)である。これらとしては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びエトポシドが挙げられる。様々な細胞毒性/抗新生物剤としては、タキソール及びその誘導体、L-アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM-26、イホスファミド、ミトザントロン、及びビンデシンが挙げられる。
【0208】
抗血管新生剤は、当業者に周知である。本開示の方法及び組成物における使用に好適な抗血管新生剤としては、ヒト化抗体及びキメラ抗体を含む抗VEGF抗体、抗VEGFアプタマー、並びにアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。血管新生の他の公知の阻害剤としては、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1(アルファ及びベータを含む)、インターロイキン12、レチノイン酸、並びにメタロプロテイナーゼ-1及び-2。(tissue inhibitor of metalloproteinase、TIMP-1及び-2)の組織阻害剤が挙げられる。抗血管新生活性を有するトポイソメラーゼII阻害剤であるラゾキサンなどのトポイソメラーゼを含む小分子も使用することができる。
【0209】
開示される化合物と組み合わせて使用することができる他の抗癌剤としては、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスパーリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ジメシル酸ビスナフィド;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキセート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルオロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;インターロイキンII(組換えインターロイキンII、又はrIL2を含む)、インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペグアスパラガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルホセートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキセート;グルクロン酸トリメトレキセート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシンが挙げられるが、これらに限定されない。他の抗癌薬としては、20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス;抗背側形成タンパク質-1(anti-dorsalizing morphogenetic protein-1);抗アンドロゲン薬、前立腺癌腫;抗エストロゲン薬;抗新生物薬;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシネート;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシス調節剤;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータ-アレチン;ベータクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリアポックスIL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキサミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェンアナログ;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチンアナログ;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタアントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解因子;シトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド;デキシラゾキサン;デキシベラパミル;ジアジクオン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール,9-;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチンアナログ;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトポシド;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオロダウノルニシン(fluorodaunorunicin hydrochloride);ホルフェニメクス;フォルメスタン;フォストリエシン;フォテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロ酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様増殖因子-1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール,4-;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン-Nトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミゾール;リアロゾール;直鎖ポリアミンアナログ;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルートテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテフォシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシンアナログ;ミトナフィド;マイトトキシン線維芽細胞増殖因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン;モノホスホリル脂質A+ミオバクテリア細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;多腫瘍抑制因子1ベース療法;マスタード抗癌剤;マイカペルオキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレーター;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン;O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導因子;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセルアナログ;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペグアスパラガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金-トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAベース免疫モジュレーター;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類;プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン結合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;レニウムRe186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノ
ンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣物;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレーター;一本鎖抗原結合タンパク質;シゾフラン;ソブゾキサン;ボロカプタンナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルフォス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメリシン阻害剤;スルフィノシン;超活性血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポイエチン;トロンボポイエチン模倣物;チマルファシン;チモポイエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;二塩化チタノセン;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキセート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来増殖阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子療法;ベラレソール;ベラミン;ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;及びジノスタチンスチマラマーが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、抗癌薬は、5-フルオロウラシル、タキソール、又はロイコボリンである。
【0210】
特定の実施形態では、線維症又は線維化関連疾患若しくは障害を処置する方法は、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子を、線維症の処置に適切な1つ以上の他の薬物、生物製剤、又は治療的介入と共に、治療レジメンの一部として投与することを含む。特定の実施形態では、追加の薬物、生物製剤、又は治療的介入は、線維症に関連する特定の症状に適切である。例として、本発明のC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドは、メトトレキセート、シクロホスファミド、アザチオプリン、ピルフェニドン、ニンテダニブ、及びミコフェノール酸モフェチルなどの1つ以上の免疫抑制剤と共に、治療レジメンの一部として投与することができる。更なる例として、本発明のC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドは、潰瘍化した指への血流などの血流を増加させるように設計された1つ以上の薬剤(例えば、ニフェジピン、アムロジピン、ジルチアゼム、フェロジピン、又はニカルジピン)と共に、治療レジメンの一部として投与することができる。更なる例として、本発明のC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドは、d-ペニシラミン、コルヒチン、PUVA、リラキシン、及びシクロスポリンなどの、皮膚の線維症を減少させることを意図した1つ以上の薬剤と共に、治療レジメンの一部として投与することができる。更なる例として、本発明のC末端エンドスタチン又はエンドスタチン由来ペプチドは、ステロイド又は気管支拡張薬と共に、治療レジメンの一部として投与することができる。
【0211】
特定の実施形態では、急性肺損傷を処置する方法は、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子を、急性肺損傷の処置に適切な1つ以上の他の薬物、生物製剤、又は治療的介入と共に、治療レジメンの一部として投与することを含む。特定の実施形態では、追加の薬物、生物製剤、又は治療的介入は、急性肺損傷に関連する特定の症状に適切である。急性肺損傷のための処置は限られており、腹臥位、人工呼吸、エポプロステノール又は一酸化窒素などの吸入血管拡張薬、ECMO、肺保護人工呼吸を容易にする神経筋遮断薬、及びステロイドが含まれる。
【0212】
本発明は、疾患及び障害の処置又は予防のための、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子の投与を包含する。本発明の方法を実施するために、当業者は、本明細書に提供される開示に基づいて、本発明の適切な組成物をどのように製剤化し、対象に投与するかを理解するであろう。本発明は、いかなる特定の投与方法にも処置レジメンにも限定されない。
【0213】
一実施形態では、本方法は、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドを含む足場、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドを発現するように改変された細胞を、対象に投与することを含む。
【0214】
投与量及び製剤(医薬組成物)
本発明は、治療剤、例えば、C末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチド、又はC末端エンドスタチン若しくはエンドスタチン由来ペプチドをコードする核酸分子、の投与によって、哺乳動物における疾患又は障害、例えば、癌、線維症、線維化関連疾患又は障害、急性肺損傷などを処置することを想定する。
【0215】
本発明に従う治療剤の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療であるか予防であるか、及び当業者に公知の他の因子に応じて、連続的又は断続的であり得る。本発明の薬剤の投与は、予め選択された期間にわたって本質的に連続的であり得るか、又は間隔を空けた一連の用量であり得る。局所投与と全身投与の両方が企図される。投与される量は、選択された組成物、哺乳動物の特定の疾患、体重、体調、及び年齢、並びに予防又は処置が達成されるべきかどうかを含むがこれらに限定されない様々な因子に応じて変化する。このような因子は、当該技術分野で周知である動物モデル又は他の試験系を使用する臨床医によって容易に決定することができる。
【0216】
本発明の治療剤を有する1つ以上の好適な単位剤形(これは、以下に議論されるように、任意選択で、持続放出(例えば、マイクロカプセル化を使用)のために製剤化され得る(それらの開示が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第94/07529号及び米国特許第4,962,091号を参照))は、非経口経路を含む種々の経路によって、例えば、静脈内、腹腔内、吸入、及び筋肉内経路によって、並びに罹患組織への直接注射によって投与することができる。例えば、治療剤又は修飾された細胞は、腫瘍に直接注射され得る。製剤は、適切な場合、別々の単位剤形で都合よく提供することができ、薬学に周知の方法のいずれかによって調製することができる。そのような方法は、治療剤を液体担体、固体マトリックス、半固体担体、細かく分割された固体担体又はそれらの組み合わせと会合させ、次いで、必要であれば、生成物を所望の送達系に導入又は成形する工程を含み得る。
【0217】
様々な実施形態では、本発明の方法において有用な医薬組成物は、例として、例えば、経口製剤、固体又はエアロゾルを含む吸入製剤、及び局所又は他の類似の製剤において、全身、非経口、又は局所投与され得る。適切な治療組成物に加えて、このような医薬組成物は、薬学的に許容される担体、並びに薬物投与を増強及び容易にすることが公知の他の成分を含み得る。ナノ粒子、リポソーム、再封入赤血球、及び免疫学に基づく系などの他の可能な製剤も、本発明の方法に従って、その適切なモジュレーターを投与するために使用することができる。
【0218】
本発明の治療剤が投与のために調製される場合、それらは、好ましくは、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わされて、医薬製剤又は単位剤形を形成する。このような製剤中の全有効成分は、製剤の0.1~99.9重量%を含む。「薬学的に許容される」は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに有害でない担体、希釈剤、賦形剤、及び/又は塩である。投与のための有効成分は、粉末として又は顆粒として;溶液、懸濁液、若しくはエマルションとして存在し得る。
【0219】
本発明の治療剤を含有する医薬製剤は、周知かつ容易に入手可能な成分を使用して、当該技術分野で公知の手順によって調製することができる。本発明の治療剤は、例えば筋肉内、皮下、又は静脈内経路による非経口投与に適切な溶液として製剤化することもできる。
【0220】
本発明の治療剤の医薬製剤は、水性又は無水溶液又は分散液の形態、又は代替的にエマルション若しくは懸濁液の形態をとることもできる。
【0221】
したがって、治療剤は、非経口投与(例えば、注射、例えばボーラス注射又は持続注入による)のために製剤化されてもよく、アンプル、充填済みシリンジ、小容量注入容器中の単位用量形態で、又は保存剤が添加された複数回用量容器中で提供されてもよい。有効成分は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルションなどの形態をとることができ、懸濁化剤、安定剤、及び/又は分散剤などの製剤化剤を含有することができる。あるいは、有効成分は、使用前に好適なビヒクル(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)を用いて構成するための、滅菌固体の無菌単離によって、又は溶液からの凍結乾燥によって得られた粉末形態であり得る。
【0222】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、吸入によって投与される。特定の実施形態では、本発明は、吹入器、ネブライザー、若しくは加圧パック、又はエアロゾルスプレーを送達する他の都合のよい手段から都合よく送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の好適なガスなどの好適な噴射剤を含み得る。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。特定の実施形態では、本発明は、乾燥粉末組成物、例えば、化合物とラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物の形態をとることができる。粉末組成物は、吸入器又は吹入器を用いて粉末を投与することができる、例えばカプセル若しくはカートリッジ、又は例えばゼラチン若しくはブリスターパックの単位剤形で提供することができる。粉末化又はエアロゾル化製剤は、分散される場合、好ましくは、約0.1ナノメートル~約2000マイクロメートルの範囲の平均粒子又は液滴サイズを有し、本明細書に記載される1つ以上の更なる成分を更に含み得る。
【0223】
必要な有効量は複数の投薬単位の投与によって達成され得るので、各剤形の個々のエアロゾル用量に含有される有効成分(複数可)の単位含量は、それ自体が特定の適応症又は疾患を処置するための有効量を構成する必要はないと理解されるであろう。更に、有効量は、個々に、又は一連の投与のいずれかで、剤形中の用量未満を使用して達成され得る。
【0224】
本発明の医薬製剤は、任意選択の成分として、薬学的に許容される担体、希釈剤、可溶化剤、又は乳化剤、及び当該技術分野で周知の種類の塩を含み得る。本発明の医薬製剤において有用である担体及び/又は希釈剤の非限定的な具体例としては、水及び生理学的に許容される緩衝生理食塩水溶液、例えばpH7.0~8.0のリン酸緩衝生理食塩水溶液が挙げられる。
【0225】
本発明の薬剤は、生物の身体における薬剤の作用部位と有効成分との接触を生じる任意の手段によって、種々の疾患状態を処置するために製剤化及び投与することができる。それらは、個々の治療有効成分として、又は治療有効成分の組み合わせのいずれかで、医薬と併せて使用するために利用可能な任意の従来の手段によって投与することができる。それらは単独で投与することができるが、一般には、選択された投与経路及び標準的な薬務に基づいて選択された医薬担体と共に投与される。
【0226】
一般に、水、好適な油、生理食塩水、水性デキストロース(グルコース)、及び関連する糖溶液、並びにプロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコールが、非経口溶液に好適な担体である。非経口投与のための溶液は、有効成分、好適な安定化剤、及び必要であれば緩衝物質を含有する。単独の又は組み合わされた重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、又はアスコルビン酸などの抗酸化剤は、好適な安定化剤である。クエン酸及びその塩並びにエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(Ethylenediaminetetraacetic acid、EDTA)も使用される。加えて、非経口溶液は、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン又はプロピルパラベン、及びクロロブタノールなどの保存剤を含有し得る。好適な医薬担体は、この分野の標準的な参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0227】
本発明の有効成分は、哺乳動物、特にヒトにおける使用に好適な薬学的に許容される組成物に懸濁されるように製剤化されてもよい。そのような製剤は、米国特許第4,082,735号、同第4,082,736号、同第4,101,536号、同第4,185,089号、同第4,235,771号、及び同第4,406,890号に記載されているムラミルジペプチド誘導体(MDP)又は類似体などのアジュバントの使用を含む。有用な他のアジュバントとしては、ミョウバン(Pierce Chemical Co.)、リピドA、トレハロースジミコレート、及びジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)、フロイントアジュバント、及びIL-12が挙げられる。他の構成成分としては、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー(Pluronic(登録商標))、非イオン性界面活性剤、及びスクアレンなどの代謝可能な油が挙げられ得る(米国特許第4,606,918号)。
【0228】
更に、標準的な薬学的方法を用いて、作用の持続時間を制御することができる。これらは、当該技術分野で周知であり、制御放出調製物を含み、適切な高分子、例えば、ポリマー、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレン酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又は硫酸プロタミンを含み得る。高分子の濃度及び組み込み方法は、放出を制御するために調整することができる。更に、薬剤は、ポリマー材料、例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)、又はエチレン酢酸ビニルコポリマーの粒子に組み込まれ得る。組み込まれることに加えて、これらの薬剤はまた、マイクロカプセル中に化合物を捕捉するために使用され得る。
【0229】
したがって、本発明の医薬組成物は、特定の効果を達成するために、様々な経路を介して哺乳動物体内の様々な部位に送達することができる(例えば、Rosenfeld et al.,1991、Rosenfeld et al.,1991a、Jaffe et al.,前出、Berkner,前出を参照)。当業者は、2つ以上の経路を投与のために使用することができるが、特定の経路が、別の経路よりも迅速かつ有効な反応を提供し得ることを認識するであろう。局所送達又は全身送達は、体腔への製剤の適用若しくは点滴注入、エアロゾルの吸入若しくは吹入、経口投与を含む投与によって、又は筋肉内、静脈内、腹膜、皮下、皮内、及び局所投与を含む非経口導入によって達成することができる。
【0230】
本発明の有効成分は、単位剤形で提供され得、ここで、各投薬単位、例えば、茶さじ1杯、錠剤、溶液、又は坐剤は、所定の量の組成物を、単独で又は他の活性剤と適切に組み合わせて含有する。用語「単位剤形」は、本明細書で使用される場合、ヒト及び哺乳動物対象のための単位投薬量として好適な物理的に別々の単位を指し、各単位は、適切な場合薬学的に許容される希釈剤、担体、又はビヒクルと共に、所望の効果を生じるのに十分な量として計算された、所定の量の本発明の組成物を、単独で又は他の活性剤と組み合わせて含有する。本発明の単位剤形の仕様は、達成されるべき特定の効果、及び特定の宿主における医薬組成物に関連する特定の薬力学に依存する。
【0231】
本明細書に記載されるこれらの方法は、決して全てを含むものではなく、特定の適用に適合する更なる方法は、当業者に明らかであるであろう。更に、組成物の有効量は、所望の効果を発揮することが知られている化合物との類似性によって更に概算することができる。
【実施例
【0232】
以下の実験例を参照することにより、本発明を更に詳細に説明する。これらの例は、例示のみを目的として提供され、別段の指定がない限り、限定することを意図しない。したがって、本発明は、決して以下の例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかになる任意の及び全ての変形例を包含すると解釈されるべきである。
【0233】
更なる説明なしに、当業者は、前述の説明及び以下の例示的な例を使用して、本発明を作製及び利用し、特許請求された方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘するものであり、決して本開示の残りの部分を限定すると解釈されるべきではない。
【0234】
実施例1:腫瘍の処置のためのエンドスタチンペプチド
エンドスタチンペプチドの腫瘍成長を遮断する能力を評価した。ペプチドをN末端でビオチン化し、C末端でアミド化した。
【0235】
実験で評価したペプチドは以下の通りであった。
Bio96配列:ビオチン-NH-ATGQASSLL-CONH(配列番号1)、
BioE4-03配列:ビオチン-NH-SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHA-CONH(配列番号2)、及び
BioE4配列:ビオチン-NH-SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHAYIVLCIENSFMT-CONH(配列番号3)。
【0236】
統計的方法
実験の各々について、腫瘍体積についての記述統計量(平均及び標準偏差)を、各実験群について経時的に計算した(すなわち、実験1:対照対BioE4(図1)、実験2:PBS、Bio96、及びBioE4-03(図5))。腫瘍成長は曲線状である傾向があるので、一般線形混合モデル(general linear mixed model、GLMM)を作成して、経時的な処置特異的成長曲線を推定し、ペプチド処置と対照との間で比較を行った。各実験について別個のGLMMを構築し、各GLMMは、所与のマウス内の反復体積測定が互いに相関するという事実を制御するために、各マウスについてランダム効果を含んだ。腫瘍体積は、各モデルにおいて従属変数としての役割を果たし、時間(日単位)、時間、処置、処置×時間、及び処置×時間は、独立変数として含まれた。これらのモデルを用いて、特定の選択された時点での推定平均腫瘍体積及び特定の選択された時点での腫瘍体積の平均変化率を比較した。マウスの腫瘍があまりに大きく成長した場合、それを屠殺した。しかしながら、屠殺前に測定した全ての腫瘍体積をモデル化プロセスに含めた。SAS v9.4(SAS Institute,Cary,NC)を全ての分析に使用した。全ての仮説検定は両側検定であり、p値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0237】
次に、実験結果について記載する。
前立腺腫瘍成長に対するエンドスタチンペプチドの効果の分析
Jax Labsからの野生型C57BL6マウスの2つの群に、TRAMP C-2マウス前立腺腫瘍細胞を右側腹部に注射した。腫瘍が約150mmのサイズに達したとき、処置を開始した。処置は、水に溶解したペプチド(Bio E4)又はビヒクル対照としての水からなり、50μg/用量の用量で強制経口投与によって100μLの容量で週に2回与えられた。腫瘍を3回/週で測定した。
【0238】
15日目の平均腫瘍体積及び15日目の腫瘍体積の平均変化率に関して、BioE4と対照との間で直接比較を行った(図1図3)。モデルベース推定値は図4である。15日目に、平均腫瘍体積は、BioE4群と比較した場合、対照群において有意に(p=0.0001)大きく、15日目の体積の平均増加率もまた、BioE4群と比較した場合、対照群において有意に(p=0.02)大きかった。
【0239】
結腸腺癌腫腫瘍成長に対するエンドスタチンペプチドの効果の分析
sMIC耐性トランスジェニック(MB481系統)マウス(Liu et al,Perturbation of NK cell peripheral homeostasis accelerates prostate carcinoma metastasis.J.Clin.Invest.123:4410,2013)に、皮下注射により、1×10個のmc-38結腸腺癌腫腫瘍細胞を注射した。腫瘍サイズがおよそ75mmに達したとき、処置を開始した。4つの群で処置を開始する。Bio96 100μg/マウス、BioE4-03 100μg/マウスを、100μLの容量で強制経口投与によって与えた。PBS(100μL)をビヒクル対照として与えた。ペプチド及びビヒクルを2回/週で投与した。腫瘍体積を週に3回測定した。
【0240】
21日目の平均腫瘍体積及び21日目の腫瘍体積の平均変化率に関して、PBS対照とBio96との間、及びPBSとBioE4-03との間で直接比較を行った(図5図7)。モデルベース推定値を図8に示す。21日目に、平均腫瘍体積は、Bio96群と比較した場合、PBS対照群において有意に大きく(871.4mm対1492.1mm、p=0.003)、平均腫瘍体積は、BioE4-03群と比較した場合、PBS対照群において有意に大きかった(767.7mm対1492.1mm、p=0.0009)。21日目に、体積の平均増加率は、Bio96群と比較した場合、PBS対照群において有意に大きく(90.6mm/日対151.1mm/日、p=0.004)、体積の平均増加率は、BioE4-03群と比較した場合、PBS対照群において有意に大きかった(76.0mm/日対151.1mm/日、p=0.0008)。これらのp値は多重比較のために調整されなかったが、例えば、ボンフェローニ調整が行われた場合であっても、それらは統計的に有意なままであり得る。
【0241】
腫瘍の組織学的分析
ビヒクル単独、又はBioE4-03若しくはBio96ペプチドで処置した腫瘍の組織学的分析を実施した。Bio-E4-03で処置したマウスからの腫瘍は、顕著な壊死を有していた(H&E)(図9)。Bio-E4-03又はBio96で処置したマウスからの腫瘍は、より疎な細胞配置を有していた(H&E)(図9)。BioE4-03又はBio96で処置したマウスからの腫瘍は、ビヒクル処置マウスからの腫瘍と比較して、腫瘍においてより薄いコラーゲン束を示した(マッソントリクローム染色)(図10)。
【0242】
ヒト腫瘍細胞に対するBioE4-03の効果
エンドスタチン由来ペプチドが腫瘍成長を減少させ得る潜在的な機構を同定するために、ヒト腫瘍細胞に対するBioE4-03の効果を試験した。
【0243】
腫瘍形成、血管新生、及び癌幹細胞再生に関与するいくつかの遺伝子の発現を、種々の腫瘍型及び臓器において測定した。所見は、エンドスタチン由来ペプチドE4-03が、以下で試験されたヒト癌細胞における腫瘍形成及び血管新生に関与する複数の遺伝子の調節を介して腫瘍成長を減少させることを示唆する。
【0244】
A549細胞(ヒト肺腺癌腫細胞):
腫瘍細胞を10μg/mLのBioE4-03で48時間処理した。RNAを抽出し、リアルタイムPCRによって分析した。N=6~8の独立した実験。対応のあるt検定を用いて統計分析を行った。uPA、uPAR、PAI-I、LOX、PDGF-A、VEGF-A、及びIL-6の発現は、BioE4-03によって有意に低下した(図11)。
【0245】
HCT116T細胞(ヒト肺結腸癌腫細胞):
腫瘍細胞を10μg/mLのBioE4-03で48時間処理した。RNAを抽出し、リアルタイムPCRによって分析した。N=3~4の独立した実験(n=2であるuPARを除く)。uPA、uPAR、PAI-I、PDGF-A、VEGF-A、及びIL-6の発現は、BioE4-03によって有意に低下した(図12)。
【0246】
腫瘍成長に対するエンドスタチンペプチドの効果
図26は、マウスにおける腫瘍サイズ(Y軸)に対する強制経口投与を介して与えられたE4の効果を示す。処置日をX軸に示す。ペプチドを週に2回与えた。赤色の線は未処置の腫瘍を有するマウスを示し、青色の線はE4で処置したマウスを示す。
【0247】
MM.1S BzR細胞(ボルテゾミブ耐性多発性骨髄腫細胞):
免疫不全NOD-scid IL2Rガンマnullマウスに、1×10個のボルテゾミブ耐性多発性骨髄腫細胞(MM.1S BzR)を、外側尾静脈を介して注射した。14日後、週に2回、10mg/kgで経口的に与えられるBioE4ペプチドによる処置を開始した。疾患進行の定性的徴候についてマウスを毎日モニターした。CD138+骨髄腫形質細胞の骨髄浸潤を49日目に評価して、腫瘍負荷及びペプチドの有効性の指標としてCD138+骨髄腫形質細胞の数を測定した(図27)。
【0248】
実施例2:エンドスタチンペプチドドメイン試験
Bio-E4-03及びBio96エンドスタチンペプチドの変異体を、異なる細胞における遺伝子発現に対するそれらの効果について評価した。いくつかの実験では、ペプチドをN末端でビオチン化し、C末端でアミド化した。
【0249】
実験で評価したペプチドは以下の通りであった。
E4-03:SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHA(配列番号2)
96-17:ATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHA(配列番号4)
96-87:ATGQASSLLGGRLLGQ(配列番号5)
91-96:SYCETWRTEAPSATGQASSLL(配列番号6)
91-87:SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQ(配列番号7)
正常肺線維芽細胞における遺伝子発現
正常肺線維芽細胞を、10μg/mLの様々なペプチド断片の存在下又は非存在下で、対照としてのビヒクル(vehicle as control、VC)又はTGFベータ(TGFbeta、T)で処理した。細胞外マトリックスタンパク質、コラーゲン1A1、及びフィブロネクチン(fibronectin、FN)を、免疫ブロッティングを用いて評価した。E4-03及び96-17は、TGFベータによって誘導されたFN及びCol1A1レベルを低下させるのに有効であったが、96-87、91-96、及び91-87はそうではなかった(図13)。
【0250】
線維芽細胞を、ペプチドBio96-17と共に又は伴わずに、TGFベータで48時間処理した。RNAを抽出し、アルファ平滑筋アクチン(smooth muscle actin、SMA)のレベルをqRT-PCRによって測定した。Bio96-17処理は、正常ドナーの肺組織由来の線維芽細胞におけるTGFベータ誘導SMAレベル、したがって筋線維芽細胞分化の有意な低下をもたらした(図14)。更に、Bio96-17は、全身性硬化症(SSc)を有する患者の肺由来の線維芽細胞におけるSMA及びColl1A2レベルの有意な低下をもたらす(図15)。
【0251】
SSc線維芽細胞を10μg/mLのBioE4-03で72時間処理した。RNAを抽出し、SMA及びコラーゲン1A2を測定するために使用した。BioE4-03は、SScを有する患者の肺由来の線維芽細胞におけるSMA及びColl1A2レベルの有意な低下をもたらす(図16)。更に、BioE4-03は、特発性肺線維症(IPF)を有する患者の肺由来の線維芽細胞におけるSMA及びColl1A2レベルの減少傾向をもたらす(図17)。
【0252】
正常肺線維芽細胞を、96-87の濃度を増加させずに、又は増加させて、TGFベータで処理した。上清を、処理の72時間後にフィブロネクチンレベルについて評価した。96-87は、濃度を10μg/mLから80μg/mLに増加させても、TGFベータ誘導FN産生に影響を及ぼさなかった(図18)。
【0253】
ex vivo器官培養試験
全身性硬化症肺線維症肺組織を等しいサイズのコアに分割した。器官培養中の肺組織を、TGFベータの存在下で10μg/mLの最終濃度のエンドスタチンに由来する異なるペプチド断片で120時間処理した。肺組織によって調整された培地におけるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-1(コラゲナーゼとしても知られる)の誘導を、ペプチドの、線維症を低下させ、細胞外マトリックス分解を促進する能力の尺度として調べた。エンドスタチンペプチドドメインのうちの2つ、E4-03及び96-17はMMP-1産生を誘導したが、91-96及び91-87は効果を有さなかった(図19)。
【0254】
BioE4-03は、器官培養で72時間維持されたSSc(図20)及びIPF(図21)を有する患者の肺組織におけるヒドロキシプロリンレベルの有意な低下をもたらす。更に、BioE4-03(図22)とBio96-17(図23)の両方は、TGFベータを使用した線維症の誘導後の正常ドナーの肺組織におけるヒドロキシプロリンレベルの有意な低下をもたらす。Bio96-17はまた、TGFベータを使用した線維症の誘導後120時間培養した正常ドナーの肺組織における分泌Col1A1タンパク質レベルの有意な低下をもたらす(図24)。BioE4-03は更に、TGFベータで線維症が誘導されたドナー由来の皮膚組織におけるCol1A1及びフィブロネクチン(FN)遺伝子発現を低下させる(図25)。
【0255】
実施例3:急性肺損傷の処置のためのエンドスタチンペプチド
急性肺損傷、例えば、ARDS及びCOVID-19関連肺損傷は、肺組織におけるIL-6のレベルの上昇に関連し、これは、サイトカインストームを促進する。したがって、IL-6を低下させて、急性肺損傷のサイトカイン誘導性症状を弱めることができる療法が必要とされている。
【0256】
IL-6 mRNAレベルを、BioE4-03ペプチドで48時間処理したヒト肺腺癌腫細胞(A549)においてqPCRによって測定した。ペプチド処理細胞は、ビヒクル対照と比較して、IL-6 mRNAの発現を有意に低下させた(図28A)。比較のために、非ビオチン化E4-03を用いて並行実験を行った。E4-03はまた、48時間後にIL-6 mRNAの発現を低下させた(図28B)。更に、A549細胞の上清中のIL-6タンパク質レベルを、E4-03ペプチドによる処理の72時間後にELISAによって測定した。IL-6タンパク質レベルは、ビヒクル対照と比較してペプチド処理細胞において有意に低下した(図28B)。
【0257】
実施例4:治療変異体としてのペプシン消化エンドスタチンペプチド断片
エンドスタチン由来ペプチドは、経口投与処置として治療的に実行可能である。したがって、どのペプチド断片が最も優勢であり、したがって天然消化後に治療的に適している可能性が最も高いかを決定するために、N末端ビオチン化(長鎖)及びC末端アミド化E4-03(BioE4-03):
ビオチン-NH-LC-SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHA-CONH(配列番号2)
に対してペプシン消化を実施した。
BioE4-03を0.1%ギ酸に溶解することによって、ペプチド試料を調製した。ペプチドを、1:100のペプシン:ペプチド比のペプシンで0分間(ペプシン添加直後にアリコートを除去)、15分間、及び45分間消化した。消化前(陰性対照として)及び消化後に、ペプシンを排除するために、0.6μLのC18樹脂を有するMillipore(登録商標)ZipTip(登録商標)ピペットチップを使用して、20μLのアリコートを除去した。次いで、各溶出液を7μLの2%アセトニトリル/0.2%ギ酸に溶解した後、LC-MS/MS分析のためにOrbitrap Eliteに注入した。MS1をOrbitrapで検出した。MS2(+1前駆体を含む)を、衝突誘導解離を介してイオントラップ内で検出した。
【0258】
5つの別個の群を、LC-MS/MSを介して分析した:群A(E4-03)は、0.1%ギ酸に希釈した未消化BioE4-03であった。群Bは、ZipTip(NC)でアリコートした0.1%ギ酸に希釈した未消化BioE4-03であった。群Cは、ペプシンの添加直後(T0;0分消化)にアリコートしたBioE4-03であった。群Dは、ペプシン消化の15分後(T15)にアリコートしたBioE4-03であった。群Eは、ペプシン消化の45分後(T45)にアリコートしたBioE4-03であった。
【0259】
以下の表1は、最高から最低までのダルトン単位のMH+分子量によってソートされた、最大数の総ペプチドスペクトルマッチ(peptide spectrum match、PSM)を有する上位20個のペプチドを示す。小文字で示されるN末端残基は、NHS-LC-ビオチン修飾を示し、小文字で示されるC末端残基は、アミド化修飾を示す。これらの結果はまた、図29にグラフで示す。
【0260】
【表1】
【0261】
図29は、BioE4-03(配列番号2)のペプシン消化のLC-MS/MS結果を示す。表1に記載される配列番号によって示される各チャートのX軸は、Y軸に示される各処置群についてのペプチドスペクトルマッチの数を示す:「供給」は、0.1%ギ酸に希釈した未消化BioE4-03を示し、「WKSL」は、ZipTip(登録商標)でアリコートした0.1%ギ酸に希釈した未消化BioE4-03を示し、T0は、ペプシンの添加直後(0分消化)にアリコートしたBioE4-03を示し、T15は、ペプシン消化の15分後にアリコートしたBioE4-03を示し、T45は、ペプシン消化の45分後(T45)にアリコートしたBioE4-03を示す。
【0262】
ペプシン消化後に存在量が増加する本明細書に記載されるペプチドは、例えば、実施例1~3における上記のアッセイを使用して、それらの抗腫瘍及び/又は抗線維化活性について試験されている。科学的理論に束縛されるものではないが、エンドスタチン由来ペプシン消化ペプチドの1つ以上は、上記のように、癌又は1つ以上の線維化若しくは線維化関連疾患若しくは障害の処置における使用のための、抗腫瘍活性、抗線維化活性、又はそれらの組み合わせを有すると考えられる。
【0263】
本明細書に引用される各々及び全ての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、特定の実施形態を参照して開示されているが、本発明の他の実施形態及び変形例が、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのそのような実施形態及び等価な変形例を含むと解釈されることが意図される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11-01】
図11-02】
図12-01】
図12-02】
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図29-01】
図29-02】
図29-03】
図29-04】
【配列表】
2024533279000001.xml
【国際調査報告】