(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】マルチ作動モード浮力調節装置及び調節方法
(51)【国際特許分類】
B63C 11/00 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B63C11/00 F
B63C11/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514732
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 CN2022077489
(87)【国際公開番号】W WO2023151128
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】202210123807.9
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520154254
【氏名又は名称】江蘇科技大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.2 Mengxi Road,Zhenjiang,Jiangsu 212003,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 建
(72)【発明者】
【氏名】劉 暢
(72)【発明者】
【氏名】程 鵬
(72)【発明者】
【氏名】展 銘
(72)【発明者】
【氏名】蘇 世杰
(72)【発明者】
【氏名】殷 宝吉
(72)【発明者】
【氏名】李 永勝
(72)【発明者】
【氏名】唐 文献
(57)【要約】
本発明は、キャビンと、推力アセンブリと、キャビティアセンブリと、ゴム製袋アセンブリとを備えるマルチ作動モード浮力調節装置及び調節方法を開示し、キャビティアセンブリは、第一のキャビティと、第二のキャビティとを備え、ゴム製袋アセンブリは、第一のゴム製袋と、第二のゴム製袋とを備え、推力アセンブリは、第一の推力アセンブリと、第二の推力アセンブリとを備え、推力アセンブリは、油と水の出し入れを制御することにより、浮力調節装置の体積及び重力を調節し、さらに浮力調節装置の浮力及び位置姿勢を調節する。本発明は、浮力調節を行う際に、当該浮力調節装置が水中で位置姿勢変換を行うときの装置重心のずれ量の算出式及び様々な作動モードに対応する浮力算出式及び状態判別方法を示し、マルチ作動モードの浮力調節を行うとともに、様々な作動モードでの当該浮力調節装置の重心の位置変化を算出し、実際上の様々なニーズを満たし、実用的である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ作動モード浮力調節装置であって、キャビン(10)と、推力アセンブリと、キャビティアセンブリと、ゴム製袋アセンブリとを備え、
前記キャビティアセンブリは、第一のキャビティ(3)と、第二のキャビティ(26)とを備え、前記ゴム製袋アセンブリは、第一のゴム製袋(12)と、第二のゴム製袋(17)とを備え、前記推力アセンブリは、第一の推力アセンブリと、第二の推力アセンブリとを備え、
前記推力アセンブリは、油と水の出し入れを制御することにより、前記浮力調節装置の体積及び重力を調節し、さらに浮力調節装置の浮力及び位置姿勢を調節する、ことを特徴とするマルチ作動モード浮力調節装置。
【請求項2】
前記第一の推力アセンブリと第二の推力アセンブリは、電気プッシュロッドと、ピストンとを備え、前記ピストンは、電気プッシュロッドの作用で移動する、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチ作動モード浮力調節装置。
【請求項3】
前記キャビティアセンブリとゴム製袋アセンブリとの間は、配管で接続されており、前記キャビティアセンブリとゴム製袋アセンブリには、油又は水の出し入れを制御するゲートバルブが設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチ作動モード浮力調節装置。
【請求項4】
第一のキャビティ(3)と第二のキャビティ(26)の長さをh、直径をdとし、第一のキャビティと第二のキャビティ内には油が収容され、浮力調節装置の重力G
装1が浮力F
浮1よりも大きく、前記浮力調節装置が水平に沈下するステップ(1)と、
第一の推力アセンブリをLだけ移動させて、第二のキャビティ(26)における油(7)を第二のゴム製袋(17)に進入させながら、第二の推力アセンブリをLだけ移動させて、第一のキャビティ(3)における油を第一のゴム製袋(12)に進入させ、前記浮力調節装置の重力G
装2が浮力F
浮2に等しくなり、前記装置が水平に浮遊し、
【数46】
であるステップ(2)と、
第一の推力アセンブリをKだけ移動させて、第二のキャビティ(26)における油(7)を第二のゴム製袋(17)に進入させながら、第二の推力アセンブリをKだけ移動させて、第一のキャビティ(3)における油を第一のゴム製袋(12)に進入させ、前記装置の重力G
装3が浮力F
浮3に等しくなり、前記装置が水平に浮遊し、L<K≦hであるステップ(3)と、
第一の推力アセンブリを2Lだけ移動させて、第二のキャビティ(26)における油を第一のゴム製袋(12)に進入させ、前記装置の重心がずれ、装置の重力G
装4が浮力F
浮4に等しくなり、前記装置が傾斜に浮遊するステップ(4)と、
第一の推力アセンブリをJだけ移動させて、第二のキャビティ(26)における油を第一のゴム製袋(12)に進入させ、第二の推力アセンブリを押圧してJだけ移動させて、第一のキャビティ(3)における油を第一のゴム製袋(12)に進入させ、前記装置が反転し、且つ重心がずれ、前記装置の重力G
装5が浮力F
浮5よりも小さくなるステップ(5)と、
ステップ(5)をした上で、キャビティキャビティ海水を第一の推力アセンブリと第二の推力アセンブリを介して第一のキャビティと第二のキャビティに吸引し、前記装置の重力G
装6が浮力F
浮5よりも大きくなり、且つ装置の重心がずれるが、鉛直方向にあり、装置が垂直に沈下するステップ(6)とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチ作動モード浮力調節装置の調節方法。
【請求項5】
ステップ(1)において、
【数47】
であり、
G
キャビン1は、キャビンが受ける重力であり、G
油1は、装置全体における油が受ける重力であり、
【数48】
であり、
V
キャビンは、キャビンの体積であり、Hは、浮力調節装置の長さであり、Dは、浮力調節装置の直径である、ことを特徴とする請求項4に記載のマルチ作動モード浮力調節装置の調節方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、
【数49】
であり、
ここで、V
油2は、第一のキャビティと第二のキャビティからゴム製袋アセンブリに輸送される油の体積であり、
【数50】
である、ことを特徴とする請求項4に記載のマルチ作動モード浮力調節装置の調節方法。
【請求項7】
ステップ(3)において、
【数51】
であり、
V
油3は、第一のキャビティと第二のキャビティからゴム製袋アセンブリに輸送される油の体積であり、
【数52】
である、ことを特徴とする請求項4に記載のマルチ作動モード浮力調節装置の調節方法。
【請求項8】
ステップ(4)において、
【数53】
であり、
V
油4は、第二のキャビティから第一のゴム製袋に輸送される油の体積であり、
【数54】
であり、
第一のゴム製袋における油の重心(40)に対する装置における油の重心(36)のずれ量をp、第一のゴム製袋における油の重心(40)に対する第二のキャビティにおける油の重心(39)のずれ量をq、キャビン重心(38)に対する装置の重心(37)のずれ量をs、キャビン重心(38)に対する第一のゴム製袋における油の重心(40)のずれ量をrとし、ここで、q、rは、既知量であり、ゴム製袋における油の重心(40)に対する装置における油の重心(36)のずれ量pを算出する式は、式(10)に示し、
【数55】
ここで、m
油1は、第一のキャビティにおける油の質量であり、m
油2は、第一のゴム製袋における油の質量であり、2L=hとすると、式は、式(11)に示し、
【数56】
キャビン重心(38)に対する前記装置の重心(37)のずれ量sの式は、式(12)に示し、
【数57】
ここで、m
油は、装置全体における油の質量であり、m
キャビンは、キャビンの質量であり、
この時に装置全体の重力G
装4は、浮力F
浮4に等しくなり、且つ装置の重心は、一方側にずれて、装置は、傾斜に浮遊する、ことを特徴とする請求項4に記載のマルチ作動モード浮力調節装置の調節方法。
【請求項9】
ステップ(5)において、
【数58】
であり、
【数59】
であり、
ここで、V
油5は、第一のキャビティと第二のキャビティから第一のゴム製袋に輸送される油の体積であり、
キャビン重心(38)に対する装置における油の重心(36)のずれ量をn、キャビン重心(38)に対する装置の重心(37)のずれ量をmとすると、mは、式(15)に示し、
【数60】
この時に装置が受ける重力G
装5は、浮力F
浮5よりも小さくなり、且つ装置の重心は、一方側にずれて、装置は、垂直に浮遊する、ことを特徴とする請求項4に記載のマルチ作動モード浮力調節装置の調節方法。
【請求項10】
ステップ(6)の浮力F
浮6は、ステップ(5)に比べて変わらないが、重力G
装6は、大きくなり、式(16)に示し、
【数61】
ここで、G
水は、装置内に吸引された水が受ける重力であり、式(17)に示し、
【数62】
であるため、この時に装置が受ける浮力F
浮6の式は、式(19)に示し、
【数63】
この時にキャビン重心(38)に対する装置における油の重心(36)のずれ量をy、キャビン重心(38)に対する装置の重心(37)のずれ量をxとすると、xの式は、式(20)に示し、
【数64】
ここで、m
水は、装置に吸引された海水の質量であり、式は、式(21)に示し、
【数65】
この時に装置の重力G
装6は、浮力F
浮6よりも大きくなり、且つ装置の重心は、一方側にずれて、装置は、垂直に沈下する、ことを特徴とする請求項6に記載のマルチ作動モード浮力調節装置の調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋航走体の浮力調節機器に関し、特にマルチ作動モード浮力調節装置及び調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
21世紀は海洋の世紀であり、海洋資源と領有権は、既に各国が求めるホットスポットとなっている。海洋航走体の浮力調節装置は、航走体の降下、浮上、懸架、定深航行及び姿勢の調整を実現するためのものであり、水中航走体が自由運動を実現することが不可欠な構成部分である。特許番号がCN102975835Aである(海水ピストン調節式滑走式潜水機)の全体構造は、
図10に示すとおりであり、当該潜水機は、単気筒のピストンシリンダ構造を採用し、図中の片側ピストンシリンダ6の吸水及び排水によって浮力を調節する目的を達成するが、このような構造では、ピストンシリンダの軸方向寸法が大きすぎて、調節可能な範囲が小さすぎ、同時に単気筒シリンダ設計構造を採用することは、装置全体のバランスと安定に不利である。
【0003】
特許番号がCN202120973457.6である(重心浮心調整制御可能な浮力調節姿勢制御器)は、浮力を調節する際に装置の重心が変化することが提案されているが、重心の計算方法及び式を具体的に決定することは与えられていない。
【0004】
特許番号がCN202020404403.3である(浮力調節機構及び当該浮力調節機構を有する水中航走体)は、双方向ポンプ及び三方電磁弁によって内外オイルポッド間の体積変換を実現して浮力調節を実現できるが、装置の浮上と降下という2つの作動モードしか実現できず、海中にて必要とされる様々な作動モード要求を満たすことができない。
【0005】
上記の課題に対して、如何に構造が確実で、調節可能な範囲が大きく、複数の作動モードを実現できる浮力調節装置を提供し、且つ様々な作動モードにおける当該浮力調節装置の重心の位置変化を計算することは、早急に解決すべき技術的問題となっている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、この問題を鑑み、様々な作動モードの浮力調節を行うとともに、様々な作動モードにおける当該浮力調節装置の重心の位置変化を計算することができるマルチ作動モード浮力調節装置及び調節方法を提供することを目的とする。
【0007】
技術案:本発明に係るマルチ作動モード浮力調節装置であって、キャビンと、推力アセンブリと、キャビティアセンブリと、ゴム製袋アセンブリとを備え、
キャビティアセンブリは、第一のキャビティと、第二のキャビティとを備え、ゴム製袋アセンブリは、第一のゴム製袋と、第二のゴム製袋とを備え、推力アセンブリは、第一の推力アセンブリと、第二の推力アセンブリとを備え、
推力アセンブリは、油と水の出し入れを制御することにより、浮力調節装置の体積及び重力を調節し、さらに浮力調節装置の浮力及び位置姿勢を調節する。
【0008】
第一の推力アセンブリと第二の推力アセンブリは、電気プッシュロッドと、ピストンとを備え、ピストンは、電気プッシュロッドの作用で移動する。
【0009】
キャビティアセンブリとゴム製袋アセンブリとの間は、配管で接続されており、キャビティアセンブリとゴム製袋アセンブリには、油又は水の出し入れを制御するゲートバルブが設けられる。
【0010】
本発明に係るマルチ作動モード浮力調節装置の調節方法は、
(1)第一のキャビティと第二のキャビティの長さをh、直径をdとし、第一のキャビティと第二のキャビティ内には油が収容され、浮力調節装置の重力G
装1が浮力F
浮1よりも大きく、浮力調節装置が水平に沈下するステップ(1)と、
(2)第一の推力アセンブリをLだけ移動させて、第二のキャビティにおける油を第二のゴム製袋に進入させながら、第二の推力アセンブリをLだけ移動させ、ゲートバルブを開けて、第一のキャビティにおける油を第一のゴム製袋に進入させ、浮力調節装置の重力G
装2が浮力F
浮2に等しくなり、装置が水平に浮遊し、
【数1】
であるステップ(2)と、
(3)第一の推力アセンブリをKだけ移動させて、第二のキャビティにおける油を第二のゴム製袋に進入させながら、第二の推力アセンブリをKだけ移動させて、第一のキャビティにおける油を第一のゴム製袋に進入させ、装置の重力G
装3が浮力F
浮3に等しくなり、装置が水平に浮遊し、L<K≦hであるステップ(3)と、
(4)第一の推力アセンブリを2Lだけ移動させて、第二のキャビティにおける油を第一のゴム製袋に進入させ、装置の重心がずれ、装置の重力G
装4が浮力F
浮4に等しくなり、装置が傾斜に浮遊するステップ(4)と、
(5)第一の推力アセンブリをJだけ移動させて、第二のキャビティにおける油を第一のゴム製袋に進入させ、第二の推力アセンブリを押圧してJだけ移動させて、第一のキャビティにおける油を第一のゴム製袋に進入させ、装置が反転し、且つ重心がずれ、装置の重力G
装5が浮力F
浮5よりも小さくなるステップ(5)と、
(6)ステップ(5)をした上で、キャビティキャビティ海水を第一の推力アセンブリと第二の推力アセンブリを介して第一のキャビティと第二のキャビティに吸引し、装置の重力G
装6が浮力F
浮6よりも大きくなり、且つ装置の重心がずれるが、鉛直方向にあり、装置が垂直に沈下するステップ(6)とを含む。
【0011】
ステップ(1)において、
【数2】
であり、
G
キャビン1は、キャビンが受ける重力であり、G
油1は、装置全体における油が受ける重力であり、
【数3】
であり、
V
キャビンは、キャビンの体積であり、Hは、浮力調節装置の長さであり、Dは、浮力調節装置の直径である。
【0012】
ステップ(2)において、
【数4】
であり、
ここで、V
油2は、第一のキャビティと第二のキャビティからゴム製袋アセンブリに輸送される油の体積であり、
【数5】
であり、
ステップ(3)において、
【数6】
であり
V
油3は、第一のキャビティと第二のキャビティからゴム製袋アセンブリに輸送される油の体積であり、
【数7】
であり、
ステップ(4)において、
【数8】
であり、
V
油4は、第二のキャビティから第一のゴム製袋に輸送される油の体積であり、
【数9】
であり、
第一のゴム製袋における油の重心に対する装置における油の重心のずれ量をp、第一のゴム製袋における油の重心に対する第二のキャビティにおける油の重心のずれ量をq、キャビン重心に対する装置の重心のずれ量をs、キャビン重心に対する第一のゴム製袋における油の重心のずれ量をrとし、ここで、q、rは、既知量であり、平行力系中心の算出式に基づいて、ゴム製袋における油の重心に対する装置における油の重心のずれ量pの式は、式(10)に示し、
【数10】
ここで、m
油1は、第一のキャビティにおける油の質量であり、m
油2は、第一のゴム製袋における油の質量であり、2L=hとすると、式は、式(11)に示し、
【数11】
キャビン重心に対する装置の重心のずれ量sの式は、式(12)に示し、
【数12】
ここで、m
油は、装置全体における油の質量であり、m
キャビンは、キャビンの質量であり、
この時に装置全体の重力G
装4は、浮力F
浮4に等しくなり、且つ装置の重心は、一方側にずれて、装置は、傾斜に浮遊する。
【0013】
ステップ(5)において、
【数13】
であり、
【数14】
であり、
ここで、V
油5は、第一のキャビティと第二のキャビティから第一のゴム製袋に輸送される油の体積であり、
キャビン重心に対する装置における油の重心のずれ量をn、キャビン重心に対する装置の重心のずれ量をmとすると、mは、式(15)に示し、
【数15】
この時に装置が受ける重力G
装5は、浮力F
浮5よりも小さくなり、且つ装置の重心は、一方側にずれているため、装置は、垂直に浮遊する。
【0014】
ステップ(6)の浮力F
浮6は、ステップ(5)に比べて変わらないが、重力G
装6は、大きくなり、式(16)に示し、
【数16】
ここで、G
水は、装置内に吸引された水が受ける重力であり、式(17)に示し、
【数17】
であるため、式(16)に式(6)を代入すると、式(18)が得られ、
【数18】
この時に装置が受ける浮力F
浮6の式は、式(19)に示し、
【数19】
この時にキャビン重心に対する装置における油の重心のずれ量をy、キャビン重心に対する装置の重心のずれ量をxとすると、xは、式(20)に示し、
【数20】
ここで、m
水は、装置に吸引された海水の質量であり、式(21)に示し、
【数21】
この時に装置の重力G
装6は、浮力F
浮6よりも大きくなり、且つ装置の重心は、一方側にずれているため、装置は、垂直に沈下する。
【0015】
有益効果:本発明は、従来技術に比べて、以下のような利点を有する。
(1)本発明の浮力調節装置は、対称式構造設計を採用しており、2組の電気プッシュロッド及びピストンを備え、そして6組の管路及び12個のポートを敷設して装置全体における油と水の出し入れを制御し、当該構造は、浮力調節範囲を増大させるだけでなく、装置全体のバランスと安定に有利である。
(2)従来の浮力調節装置と比較して、本発明の浮力調節装置は、原始状態での6つの異なる作動モードを含み、装置が海水にて様な位置姿勢調整を実現し、実際上の様々なニーズを満たすことができる。
(3)従来の浮力調節装置と比較して、本発明は、装置が海にて位置姿勢変換を行う際に、装置重心のずれ量の算出式及び様々な作動モードに対応する浮力算出式及び状態判別方法を示し、強い実用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明マルチ作動モード浮力調節装置の模式図である。
【
図2】本発明マルチ作動モード浮力調節装置の水平浮遊模式図である。
【
図3】本発明マルチ作動モード浮力調節装置の水平浮上模式図である。
【
図4】本発明マルチ作動モード浮力調節装置の傾斜浮遊模式図である。
【
図5】本発明マルチ作動モード浮力調節装置の傾斜浮遊概略図である。
【
図6】本発明マルチ作動モード浮力調節装置の垂直浮上模式図である。
【
図7】本発明マルチ作動モード浮力調節装置の垂直浮上概略図である。
【
図8】本発明マルチ作動モード浮力調節装置の垂直沈下模式図である。
【
図9】本発明マルチ作動モード浮力調節装置の垂直沈下概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から
図9に示すように、本発明に係るマルチ作動モード浮力調節装置であって、キャビン10と、推力アセンブリと、キャビティアセンブリと、ゴム製袋アセンブリとを備え、キャビティアセンブリは、第一のキャビティ3と、第二のキャビティ26とを備え、ゴム製袋アセンブリは、第一のゴム製袋12と、第二のゴム製袋17とを備え、推力アセンブリは、第一の推力アセンブリと、第二の推力アセンブリとを備え、ここで、第一の推力アセンブリは、第一の電気プッシュロッド15と、第二のピストン27とを備え、第二の推力アセンブリは、第二の電気プッシュロッド29と、第一のピストン8とを備える。
【0018】
ゴム製袋アセンブリは、クリップ11を介してキャビン10に固定され、油は、第一のキャビティ3と第二のキャビティ26に貯蔵される。ここで、左エンドキャップ2と右エンドキャップ22は、第一のネジ1を介してキャビン10に固定され、第一の電気プッシュロッド15と第二の電気プッシュロッド29は、第二のネジ14を介してキャビンのベースに固定され、第一のゴム製袋12と第二のゴム製袋17は、クリップ11によってキャビンに固定され、且つ接続箇所に係止溝を開設することで、強固する役割を果たす。
【0019】
第一のピストン8と第二のピストン27の外部には、O型ゴムリング9が嵌められており、O型ゴムリング9の取り付け部がコンパクトで、軽量で、運動摩擦抵抗力が低く、さらにピストンとキャビンとの間の密封が完了する。
【0020】
キャビティの2組の電気プッシュロッドは、ピストンを推進し、そして6本の配管及び12個のゲートバルブにより装置全体の油及び海水の出し入れを制御し、装置全体の体積及び質量を調節する目的を達成し、最終的に装置全体の位置姿勢調節を実現して様々な作動モードに対応する。
【0021】
本発明に係るマルチ作動モード浮力調節の具体的な手順は以下の通りである:
(1)
図1に示すように、浮力調節装置の外形は、円柱体であり、その外部には2つのゴム製袋が接続され、浮力調節装置の長さをH、直径をD、第一のキャビティ3と第二のキャビティ26の長さをいずれもh、直径をいずれもdとする。この時に装置内の第一のキャビティ3における油7は、第一のゴム製袋12内に押し込まれず、第二のキャビティ26における油7は、いずれも第二のゴム製袋17内に押し込まれず、装置全体が水平に沈下する(原始状態)。装置全体が受ける重力G
装1の式は、式(1)に示し、
【数22】
ここで、G
キャビン1は、キャビンが受ける重力であり、G
油1は、装置全体における油が受ける重力であり、その式は、式(2)に示し、
【数23】
1つのキャビティの容積V
キャビティの式は、式(3)に示し、
【数24】
この時に装置全体が受ける浮力F
浮1の式は、式(4)に示し、
【数25】
ここで、V
キャビンは、キャビン全体の体積であり、その式は、式(5)に示し、
【数26】
この時に装置全体が受ける重力G
装1は、装置全体が受ける浮力F
浮1よりも大きく、且つこの時に装置の重心が変わらないため、装置は、水平に沈下する。
【0022】
(2)
図2に示すように、第一の電気プッシュロッド15を起動し、第二のピストン27を右方向、即ち、一方側へ
【数27】
移動させ、5番ゲートバルブ19、6番ゲートバルブ21を開けて、第二のキャビティ26における油7を、3番配管20を介して第二のゴム製袋17に進入させるとともに、第二の電気プッシュロッド29を起動し、第一のピストン8を左へL距離移動させ、11番ゲートバルブ32、12番ゲートバルブ34を開けて、第一のキャビティ3における油7を、6番配管33を介して第一のゴム製袋12に進入させ、最終状態を
図2に示す。ここで、第一の電気プッシュロッドと第二の電気プッシュロッドとを同時に起動してピストンを前進させると、装置が受ける重力G
装2が変わらないが、受ける浮力は、F
浮2と大きくなり、その式は、式(6)に示し、
【数28】
ここで、V
油2は、この作動モードで装置におけるキャビティアセンブリからゴム製袋アセンブリに輸送される油の体積であり、その式は、(7)に示し、
【数29】
この時に装置全体が受ける重力G
装2は、装置全体が受ける浮力F
浮2に等しくなり、且つこの時に装置の重心が変わらないため、装置は、水平浮遊する。
【0023】
(3)
図3に示すように、第一の電気プッシュロッド15を起動し、第二のピストン27を右へK(L<K≦h)距離移動させ、5番ゲートバルブ19、6番ゲートバルブ21を開けて、第二のキャビティ26における油7を、3番配管20を介して第二のゴム製袋17に進入させるとともに、第二の電気プッシュロッド29を起動し、第一のピストン8を左へK(L<K≦h)距離移動させ、11番ゲートバルブ32、12番ゲートバルブ34を開けて、第一のキャビティ3における油7を、6番配管33を介して第一のゴム製袋12に進入させる。ここで、第一の電気プッシュロッドと第二の電気プッシュロッドとを同時に起動してピストンを前進させると、装置が受ける重力G
装3が変わらないが、受ける浮力がF
浮3と大きくなり、その式は、式(8)に示し、
【数30】
ここで、V
油3は、この作動モードで装置における第一のキャビティと第二のキャビティからゴム製袋アセンブリに輸送される油の体積であり、その式は、式(9)に示し、
【数31】
装置全体が受ける重力G
装3=G
装2であるが、装置全体が受ける浮力F
浮3>F
浮2であり、且つこの時に装置の重心が変わらないため、装置は、水平浮上する。
【0024】
(4)
図4に示すように、第一の電気プッシュロッド15を起動し、第二のピストン27を右、即ち右側へ2L距離を移動させるとともに、3番ゲートバルブ13、4番ゲートバルブ18を開けて、第二のキャビティ26における油7を、2番配管16を介して第一のゴム製袋12に進入させ、最終状態を
図5に示すように、装置が左へ傾斜し、装置全体の重心37が左へずれるが、この時に装置が受ける重力は浮力と相殺し、装置は水中に傾斜浮遊する。装置全体が対称であるため、このステップにおいて、他端の機器を制御することにより、位置姿勢を調節し、即ち、第二の電気プッシュロッド29を起動し、第一のピストン8を左側へ2L距離移動させるとともに、9番ゲートバルブ28、10番ゲートバルブ31を開けて、第一のキャビティ3における油7を、5番配管30を介して第二のゴム製袋17に進入させ、装置が右へ傾斜し、装置全体の重心37が右へずれるが、この時に装置が受ける重力は浮力と相殺し、装置は水中に傾斜浮遊する。この時に装置が受ける重力G
装4が変わらないが、受ける浮力F
浮4の式は、式(8)に示し、
【数32】
ここで、V
油4は、この作動モードで装置における第二のキャビティから第一のゴム製袋に輸送される油の体積であり、その式は、式(9)に示し、
【数33】
ゴム製袋における油の重心40に対するこの時に装置全体における油の重心36のずれ量をp、ゴム製袋における油の重心40に対するキャビティにおける油の重心39のずれ量をqとする。キャビン重心38に対する装置全体の重心37のずれ量をs、キャビン重心38に対するゴム製袋における油の重心40のずれ量をrとする。ここで、q、rは、いずれも既知量である。平行力系中心の算出式に基づいて、ゴム製袋における油の重心40に対する装置全体における油の重心36のずれ量pを算出する式は、式(10)に示し、
【数34】
ここで、m
油1は、第一のキャビティにおける油の質量であり、m
油2は、第一のゴム製袋における油の質量であり、ここで、2L=hをとるため、その式は、式(11)に示し、
【数35】
キャビン重心38に対する装置全体の重心37のずれ量sの式は、式(12)に示し、
【数36】
ここで、m
油は、装置全体における油の質量であり、m
キャビンは、キャビン全体の質量であり、
この時に装置全体が受ける重力G
装4は、装置全体が受ける浮力F
浮4に等しくなり、且つ装置の重心が左へずれるため、装置は、傾斜に浮遊する。
【0025】
(5)
図6に示すように、第一の電気プッシュロッド15を起動し、第二のピストン27を右へJ(L<J≦h)距離(ここで、J=hをとった)移動させ、3番ゲートバルブ13、4番ゲートバルブ18を開けて、第二のキャビティ26における油7を、2番配管16を介して第一のゴム製袋12に進入させるとともに、第二の電気プッシュロッド29を起動し、第一のピストン8を左へJ距離移動させ、11番ゲートバルブ32、12番ゲートバルブ34を開けて、第一のキャビティ3における油7を、6番配管33を介して第一のゴム製袋12に進入させ、最終状態を
図7に示す。装置が反転し、装置全体の重心37が左へずれ、この時に装置が受ける重力が浮力よりも小さく、装置は水中に垂直浮上する。この時に装置が受ける重力G
装5が変わらない、受ける浮力F
浮5の式は、式(13)に示し、
【数37】
ここで、V
油5は、この作動モードで装置における第一のキャビティと第二のキャビティから第一のゴム製袋内に輸送される油の体積であり、その式は、式(14)に示し、
【数38】
キャビン重心38に対するこの時に装置全体における油の重心36のずれ量をn、キャビン重心38に対する装置全体の重心37のずれ量をmとすると、mの式は、式(15)に示し、
【数39】
この時に装置全体が受ける重力G
装5は、装置全体が受ける浮力F
浮5よりも小さく、且つ装置の重心が左へずれるため、装置は、垂直に浮遊する。
【0026】
(6)
図8に示すように、ステップ(5)をした上で、全てのゲートバルブと配管を閉じ、1番ゲートバルブ4、2番ゲートバルブ6、7番ゲートバルブ23、8番ゲートバルブ25を開け、第一の電気プッシュロッド15と第二の電気プッシュロッド29を起動してピストンを引き戻し、キャビティ全体が満了するまで、1番配管5、4番配管24で第一のキャビティと第二のキャビティに海水35を吸引する。最終状態を
図9に示すように、装置が吸水した後に、垂直沈下し、装置全体の重心が、依然として鉛直方向にあり、この時に装置が受ける重力が浮力よりも大きくなり、装置は、水中に垂直沈下する。この時に装置が受ける浮力F
浮6がステップ(5)に対して変わらないが、受ける重力G
装6が大きくなり、その式は、式(16)に示し、
【数40】
ここで、G
水は、装置に吸引された水が受ける重力であり、その式は、式(17)に示し、
【数41】
であるため、式(16)に式(6)を代入すると、式(18)が得られ、
【数42】
この時に装置が受ける浮力F
浮6の式は、式(19)に示し、
【数43】
キャビン重心38に対するこの時に装置全体における油の重心36のずれ量をy、キャビン重心38に対する装置全体の重心37のずれ量をxとすると、xの式は、式(20)に示し、
【数44】
ここで、m
水は、装置に吸引された海水の質量であり、その式は、式(21)に示し、
【数45】
この時に装置全体が受ける重力G
装6は、装置全体が受ける浮力F
浮6よりも大きく、且つ装置の重心が左へずれるため、装置は、垂直に沈下する。
【国際調査報告】