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  • 特表-曲率を有する二成分繊維 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】曲率を有する二成分繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/06 20060101AFI20240905BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240905BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
D01F8/06
C08L23/04
C08F210/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515034
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 US2022075172
(87)【国際公開番号】W WO2023039337
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/243,320
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ガーグ、アカンクシャ
(72)【発明者】
【氏名】リン、イージャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ランヘ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェフェルス、ロナルド
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4L041
【Fターム(参考)】
4J002BB032
4J002BB051
4J002GK01
4J100AA02P
4J100AA19Q
4J100CA04
4J100DA04
4J100DA11
4J100DA22
4J100DA24
4J100FA10
4J100FA37
4J100JA11
4L041AA07
4L041BA02
4L041BA04
4L041BA06
4L041BA09
4L041BA16
4L041BA22
4L041BC20
4L041BD07
4L041BD11
4L041CA38
4L041CA42
4L041CA43
4L041DD01
4L041DD14
4L041DD17
(57)【要約】
曲率を有する二成分繊維が提供される。二成分繊維は、第1の領域及び第2の領域を含む。第1の領域は、ポリプロピレンブレンドを含み、第2の領域は、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物を含む。ポリプロピレンブレンドは、ポリプロピレンホモポリマー及びプロピレン-エチレンインターポリマーを含み、当該プロピレン-エチレンインターポリマーは、0.860~0.880g/ccの密度及び12g/10分超のメルトフローレートを有する。エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、0.920g/cc超の密度及び10~25g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。二成分繊維は、不織布を形成するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分繊維であって、
繊維重心と、
第1の重心を有する第1の領域及び第2の重心を有する第2の領域と、を含み、
前記第1の領域が、ポリプロピレンブレンドの総重量に基づいて50~90重量%のポリプロピレンホモポリマーと、前記ポリプロピレンブレンドの総重量に基づいて10~50重量%のプロピレン-エチレンインターポリマーとを含むポリプロピレンブレンドを含み、前記プロピレン-エチレンインターポリマーが、0.860~0.880g/ccの密度及び12g/10分超のメルトフローレートを有し、
前記第2の領域が、0.920g/cc超の密度及び10~25g/10分のメルトインデックス(I2)を有するエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物を含み、
前記第1の重心及び前記第2の重心のうちの少なくとも1つが、前記繊維重心と同じではなく、
前記第1の領域の前記第2の領域に対する重量比が55/45~90/10である、二成分繊維。
【請求項2】
前記エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物が、
0.930~0.965g/ccの範囲内の密度と、
1.5~2.6の範囲内の、GPCによって求めたときの重量平均分子量の数平均分子量に対する比(Mw(GPC)/Mn(GPC))として表される分子量分布と、
少なくとも45の1ラジアン/秒における損失正接と、
35℃~110℃の、結晶化溶出分画による改良型コモノマー組成分布(improved comonomer composition distribution、ICCD)の溶出プロファイル上の低温ピーク及び高温ピークと、
前記高温ピークの半値全幅が6.0℃未満であることと、を有する、請求項1に記載の二成分繊維。
【請求項3】
前記第1の重心又は前記第2の重心が、前記繊維重心から少なくとも0.1だけオフセットしている、請求項1又は2に記載の二成分繊維。
【請求項4】
前記第1の領域及び前記第2の領域が、コアシース、サイドバイサイド、分割パイ、又は海島構造で配置されている、請求項1~3のいずれかに記載の二成分繊維。
【請求項5】
少なくとも1.6mm-1の曲率を有する、請求項1~4のいずれかに記載の二成分繊維。
【請求項6】
前記第1の領域及び前記第2の領域のものとは異なるポリマーを含む第3の領域を更に含む、請求項1~5のいずれかに記載の二成分繊維。
【請求項7】
請求項1~6に記載の二成分繊維を含む不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、曲率を有する二成分繊維及び当該繊維を含む不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
二成分繊維は、同じ紡糸口金から押し出された少なくとも2つの異なるポリマー組成物で構成された繊維であり、当該組成物が同じフィラメント又は繊維内に含まれている。繊維が紡糸口金を離れるとき、それは界面で融合する混合されていない成分からなる。2つのポリマー組成物は、それらの化学的特性及び/又は物理的特性が異なり得る。二成分繊維は、当該技術分野で既知の従来の紡糸技術によって形成することができ、不織布を形成するために使用することができる。不織布には、フィルタ、医療用途の使い捨て材料、おむつストックなど、様々な用途がある。不織布の重量を減少させたり、ロフトなどの他の有利な不織特性を得るのを支援するために、曲率を有する二成分繊維が望ましい。しかしながら、曲率を有する二成分繊維を得ることには問題が存在し、依然としてロフトを有する不織布及び曲率を向上させた繊維に対する需要がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示の実施形態は、不織布を形成するために使用することができ、態様において驚くほど高い曲率を提供する、二成分繊維を提供する。本開示の実施形態による二成分繊維は、第1の領域及び第2の領域をそれぞれ含むが、これらの領域は繊維の曲率が向上する一因となる。具体的には、本開示の実施形態による二成分繊維は、ポリプロピレンブレンドと、特定の重量比で繊維の一部である場合に繊維の曲率を高めることができるエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物とを含む。
【0004】
本明細書には、二成分繊維が開示されている。一実施形態では、二成分繊維は、繊維重心と、第1の重心を有する第1の領域及び第2の重心を有する第2の領域と、を含み、当該第1の領域は、ポリプロピレンブレンドの総重量に基づいて50~90重量%のポリプロピレンホモポリマーと、当該ポリプロピレンブレンドの総重量に基づいて10~50重量%のプロピレン-エチレンインターポリマーとを含むポリプロピレンブレンドを含み、当該プロピレン-エチレンインターポリマーは、0.860~0.880g/ccの密度及び12g/10分超のメルトフローレートを有し、当該第2の領域は、0.920g/cc超の密度及び10~25g/10分のメルトインデックス(I2)を有するエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物を含み、当該第1の重心及び当該第2の重心のうちの少なくとも1つは、当該繊維重心と同じではなく、当該第1の領域の当該第2の領域に対する重量比は、55:45~90:10である。
【0005】
本明細書に開示されている二成分繊維から形成される不織布もまた、本明細書に開示されている。例えば、不織布は、本明細書に開示される二成分繊維から形成され得る。一実施形態では、不織布は、繊維重心と、第1の重心を有する第1の領域及び第2の重心を有する第2の領域と、を含み、当該第1の領域は、ポリプロピレンブレンドの総重量に基づいて50~90重量%のポリプロピレンホモポリマーと、当該ポリプロピレンブレンドの総重量に基づいて10~50重量%のプロピレン-エチレンインターポリマーとを含むポリプロピレンブレンドを含み、当該プロピレン-エチレンインターポリマーは、0.860~0.880g/ccの密度及び12g/10分超のメルトフローレートを有し、当該第2の領域は、0.920g/cc超の密度及び10~25g/10分のメルトインデックス(I2)を有するエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物を含み、当該第1の重心及び当該第2の重心のうちの少なくとも1つは、当該繊維重心と同じではなく、当該第1の領域の当該第2の領域に対する重量比が、55:45~90:10である。
【0006】
実施形態の追加の特徴及び利点は、後に続く詳細な説明で述べられ、一部はその説明から当業者にとって容易に明らかになるか、又は後に続く「発明を実施するための形態」を含む本明細書に記載される実施形態、特許請求の範囲、並びに添付図面を実施することによって認識されるであろう。
【0007】
上記及び以下の説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みを提供することを意図していることを理解されたい。添付の図面は、様々な実施形態の更なる理解を提供するために含まれ、かつ本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載される様々な実施形態を例示し、説明とともに、特許請求される主題の原則及び動作を説明する役目を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】偏心コアシース構成及び重心オフセットを有する二成分繊維の走査型電子顕微鏡写真(scanning electron micrograph、SEM)断面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示された二成分繊維の態様は、以下でより詳細に説明される。曲率を有する二成分繊維は、不織布を形成するために使用することができ、そのような不織布は、例えば、ワイプ、フェイスマスク、ティッシュ、包帯、並びに他の医療及び衛生製品を含む、多種多様な用途を有し得る。ただし、これは、本明細書に開示された実施形態の単なる例示的実施であることに留意されたい。実施形態は、上述のものと類似した問題を起こしやすい他の技術にも応用可能である。
【0010】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、任意の追加の成分、工程、又は手順の存在を排除することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲から任意の他の成分、工程、又は手順を排除する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる成分、工程、又は手順を排除する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという用語は、コポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)、及び3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを含む。
【0012】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類又は異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下に、唯一のタイプのモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、及びインターポリマーという用語を包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)は、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれてもよい。ポリマーは、単一ポリマー又はポリマーブレンドであり得る。
【0013】
本明細書で使用するとき、「ポリエチレン」という用語は、50重量%超の、エチレンモノマー及び任意選択で1つ以上のコモノマーに由来する単位を含むポリマーを指す。ポリエチレンは、ポリエチレンホモポリマー、コポリマー、又はインターポリマーを含む。当該技術分野において既知のポリエチレン組成物の一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene、LLDPE)、極低密度ポリエチレン(Ultra Low Density Polyethylene、ULDPE)、超低密度ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene、VLDPE)、直鎖状低密度樹脂及び実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含む、シングルサイト触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(Medium Density Polyethylene、MDPE)、並びに高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書で使用される場合、「不織布(nonwoven)」、「不織ウェブ」、及び「不織布(nonwoven fabric)」という用語は、本明細書で互換的に使用される。「不織布」とは、編地の場合のように識別可能な方式ではなく、ランダムに差し込まれた個々の繊維又は糸の構造を有するウェブ又は布地を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「メルトブローン」という用語は、以下の工程:(a)紡糸口金から溶融熱可塑性ストランドを押出する工程と、(b)高速加熱空気流を使用して、紡糸口金のすぐ下のポリマー流を同時にクエンチし、減衰させる工程と、(c)延伸されたストランドを収集表面上のウェブに収集する工程と、を含むプロセスを介した不織布の製造を指す。メルトブローン不織ウェブは、自己結合(すなわち、更なる処理なしの自己結合)、熱カレンダプロセス、接着結合プロセス、熱風結合プロセス、ニードルパンチプロセス、水流交絡プロセス、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、様々な手段によって結合することができる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「スパンボンド」という用語は、(a)紡糸口金と呼ばれる複数の微細毛細管から溶融熱可塑性ストランドを押出する工程と、(b)熱可塑性物質の溶融ストランドの固化を速めるために、例えば、ポリエチレン組成物を含む熱可塑性ストランドのストランドを、一般には冷却された空気流によってクエンチする工程と、(c)空気流中で空気圧によってフィラメントを取り込むか、又は繊維産業で一般的に使用されている種類の機械式延伸ロールに巻き付けることによって適用することができる、クエンチゾーンを通って延伸張力でフィラメントを前進させることによって、フィラメントを減衰させる工程と、(d)延伸されたストランドを有孔表面上のウェブ(例えば、移動スクリーン又は多孔ベルト)に収集する工程と、(e)緩いストランドのウェブを結合させて不織布にする工程と、を含む不織布の製造を指す。結合は、熱カレンダプロセス、接着結合プロセス、熱風結合プロセス、ニードルパンチプロセス、水流交絡プロセス、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、様々な手段によって達成することができる。
【0017】
二成分繊維
本明細書で教示される繊維は、任意の従来の紡糸技術によって形成され得る。例えば、二成分繊維の第1の領域及び第2の領域は、溶融紡糸を介して繊維に形成され得る。溶融紡糸においては、第1の領域及び第2の領域を溶融し、共押出しし、紡糸口金と呼ばれる金属製プレート内の微細オリフィスを通して空気又は他のガス中に押し込み、そこで、冷却し、固化させて、二成分繊維を形成することができる。固化した繊維は、エアジェット、回転ロール、又はゴデットを介して引き抜かれてもよく、不織布を形成するためのウェブとしてコンベヤーベルト上に置かれることができる。本開示の実施形態による二成分繊維を含むメルトブローン不織布を形成することができる。他の実施形態では、本開示の実施形態による二成分繊維を含むスパンボンド不織布を形成することができる。
【0018】
本明細書に開示される繊維は、曲率を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、二成分繊維は、少なくとも0.50mm-1の曲率を有する。二成分繊維の曲率は、以下に記載される試験方法によって測定することができる。少なくとも0.50mm-1の全ての個々の値及び部分範囲が本明細書に開示され、含まれている。例えば、いくつかの実施形態では、二成分繊維は、以下に記載される試験方法によって測定したときに、少なくとも0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1.00、1.20、1.40、1.60、1.80、2.00、2.20、2.40、又は2.50mm-1の曲率を有することができる。他の実施形態では、二成分繊維は、以下に記載される試験方法に従って測定したときに、0.50~4.50、1.00~4.50、1.50~4.50、2.00~4.50、2.50~4.50、3.00~4.50、1.00~4.20、1.50~4.20、2.00~4.20、又は2.50~4.20mm-1の範囲の曲率を有することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、二成分繊維は、第1の領域及び第2の領域を含み、第1の領域の第2の領域に対する重量比は、55:45~90:10である。55:45~90:10の比の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、実施形態では、第1の領域の第2の領域に対する重量比は、60:40~90:10、70:30~90:10、80:20~90:10、又は55:45~80:20であり得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、二成分繊維は、第1及び第2の領域のものとは異なるポリマーを含む第3の領域を更に含む。実施形態では、二成分繊維は、第3及び第4の領域を更に含み、当該第3及び第4の領域は、当該第1及び第2の領域のポリマーとは異なるポリマーを含む。
【0022】
重心
いくつかの実施形態では、二成分繊維は、繊維重心と、第1の重心を有する第1の領域及び第2の重心を有する第2の領域と、を含み、第1の重心及び第2の重心のうちの少なくとも1つは、繊維重心と同じではない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「重心」という用語は、二成分繊維の断面の領域の全ての点の算術平均を指す。例えば、本開示の実施形態による二成分繊維は、Cと表記する場合がある繊維重心を有し、二成分繊維の領域(例えば、第1又は第2の領域)は、Crx(式中、xは、領域の記号表示である)(例えば、第1の領域は、Cr1と表記する場合があり、第2の領域は、Cr2と表記する場合がある)と表記する場合がある独立した重心を有する。図1は、二成分繊維及びその重心、並びに二成分繊維の第1及び第2の領域の重心を示す。領域重心から繊維重心までの距離は、「Prx」として定義することができ、第1の重心又は第2の重心の繊維重心に対する重心オフセットは、「Prx/r」[式中、「r」は、繊維断面の平均半径(Cから二成分繊維の外面までの平均距離)であり、
【0024】
【数1】

(式中、Aは、二成分繊維断面の面積である)として計算される]として定義することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1の重心及び第2の重心のうちの少なくとも1つは、繊維重心と同じではない。第1の重心又は第2の重心が繊維重心とは異なる場合、二成分繊維は、偏心コアシース、サイドバイサイド、又は分割パイ(segmented pie)などの異なる構成を有し得るが、繊維重心、第1の重心、及び第2の重心が同じである同心構成(例えば、コアシース同心構成)を有することはできない。実施形態では、第1の領域の第1の重心及び第2の領域の第2の重心は、第1の領域及び第2の領域がサイドバイサイド構成になるように配置される。他の実施形態では、第1の領域の第1の重心及び第2の領域の第2の重心は、第1の領域及び第2の領域が区画化されたパイ構成にあるように配置される。更なる実施形態では、第1の領域の第1の重心及び第2の領域の第2の重心は、第1の領域及び第2の領域が偏心コアシース構成にあり、二成分繊維の第1の領域がコア領域であり、第2の領域がシース領域であり、シース領域がコア領域を取り囲むように配置される。実施形態では、第1及び第2の領域は、コアシースで、サイドバイサイドで、分割パイで、又は海島構造で配置される。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1の重心又は第2の重心は、繊維重心から少なくとも0.1、又は少なくとも0.2、又は少なくとも0.4だけオフセットされ、1未満又は0.9未満であり、オフセットは、下記試験方法に従って測定される。
【0027】
第1の領域
二成分繊維は、第1の領域を含む。第1の領域は、コアシース構成の二成分繊維におけるコア領域であり得る。第1の領域は、第1の重心を有する。第1の領域は、ポリプロピレンブレンドを含む。いくつかの実施形態では、ポリプロピレンブレンドは、ポリプロピレンホモポリマー及びプロピレン-エチレンインターポリマーを含む。いくつかの実施形態では、第1の領域のポリプロピレンブレンドは、ポリプロピレンブレンドの総重量に基づいて50~90重量%のポリプロピレンホモポリマーを含む。50~90重量%の全ての個々の値が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、第1の領域は、ポリプロピレンブレンドの総重量に基づいて、55~90重量%、60~90重量%、65~90重量%、65~85重量%、65~80重量%、50~85重量%、50~80重量%、又は50~75重量%のポリプロピレンホモポリマーを含むポリプロピレンブレンドを含み得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、ポリプロピレンブレンドは、ポリプロピレンブレンドの総重量に基づいて10~50重量%のプロピレン-エチレンインターポリマーを含む。10~50重量%の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、ポリプロピレンブレンドは、ポリプロピレンブレンドの総重量に基づいて、10~40重量%、10~35重量%、15~45重量%、15~50重量%、20~40重量%、25~50重量%、又は25~35重量%のプロピレン-エチレンインターポリマーを含み得る。本明細書で使用するとき、「プロピレン-エチレンインターポリマー」という用語は、少なくともエチレンモノマー由来単位と共重合したプロピレンモノマー単位を50重量%超含むインターポリマーを指す。
【0029】
いくつかの実施形態では、ポリプロピレンブレンドのプロピレン-エチレンインターポリマーは、0.860~0.880g/ccの密度を有する。0.860~0.880g/ccの全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、プロピレン-エチレンインターポリマーは、0.860~0.878g/cc、0.862~0.878g/cc、0.864~0.878g/cc、0.865~0.878g/cc、0.867~0.876g/cc、又は0.867~0.874g/ccの密度を有し得、密度はASTM D792に従って測定することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリプロピレンブレンドのプロピレン-エチレンインターポリマーは、12g/10分超のメルトフローレートを有し、メルトフローレートはASTM D-1238に従って230℃、2.16kgで測定される。12g/10分を超える個々の全ての値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、プロピレン-エチレンインターポリマーは、14g/10分超、16g/10分超、18g/10分超、20g/10分超、22g/10分超、又は24g/10分超のメルトフローレートを有していてもよく、又は14~50g/10分、20~48g/10分、22~46g/10分、24~44g/10分、22~40g/10分、又は24~40g/10分の範囲のメルトフローレートを有していてもよく、メルトフローレートは、ASTM D-1238に従って230℃、2.16kgで測定される。
【0031】
繊維の第1の領域の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%(全てのパーセントは、第1の領域の総重量に基づく重量パーセントである)は、プロピレンブレンドであり得る。第1の領域の残りの部分は、1つ以上の他のポリマー及び/又は1つ以上の添加剤などの追加の成分であり得る。他のポリマーは、別のプロピレン系ポリマー又はポリエチレンであり得る。他のポリマーの量は、最大25%であり得る。可能な添加剤としては、帯電防止剤、カラーエンハンサ、染料、潤滑剤、TiO又はCaCOなどの充填剤、乳白剤、核剤、加工助剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、UV安定剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、粘着付与剤、難燃剤、抗菌剤、臭気低減剤、抗真菌剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ポリプロピレンブレンドは、そのような添加剤を含むプロピレンブレンドの重量に基づいて、約0.01、又は約0.1、又は約1重量パーセントから、約25、又は約20、又は約15、又は約10重量パーセントまでの合計重量のそのような添加剤を含有し得る。
【0032】
第2の領域
複合繊維は、第2の領域を含む。第2の領域は、偏心コアシース構成の二成分繊維におけるシース領域であり得る。第2の領域は、第2の重心を有する。いくつかの実施形態では、第2の領域は、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物を含む。いくつかの実施形態では、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、0.920g/cc超の密度及び10~25g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。
【0033】
本明細書で使用するとき、「エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物」という用語は、(インターポリマーの重量に基づいて)過半量のエチレンモノマーと、少なくとも1つのアルファ-オレフィンモノマーとを重合形態で含むインターポリマーを指す。エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、(a)100重量パーセント未満、例えば少なくとも80重量パーセント、若しくは少なくとも90重量パーセントのエチレン由来単位と、(b)20重量パーセント未満、例えば15重量パーセント未満、又は10重量パーセント未満の1つ以上のアルファ-オレフィンコモノマー由来単位と、を含む。アルファ-オレフィンコモノマーは、典型的には、20個以下の炭素原子を有する。例えば、アルファ-オレフィンコモノマーは、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~8個の炭素原子を有し得る。例示的なアルファ-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンからなる群から選択され得るか、又は代替として、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、0.920g/cc超の密度を有する。0.920g/cc超の個々の全ての値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、0.925g/cc超、又は0.930g/cc超、又は0.935g/cc超の密度を有することができ、あるいは0.925~0.965g/cc、又は0.930~0.965g/cc、又は0.925~0.960g/cc、0.925~0.955g/cc、0.925~0.950g/cc、0.930~0.960g/cc、0.930~0.955g/cc、又は0.930~0.950g/ccの範囲の密度を有することができ、密度はASTM D792に従って測定することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、10~25g/10分のメルトインデックス(I2)を有し、メルトインデックス(I2)は、ASTM D-1238に従って190℃、2.16kgで測定される。10~25g/10分の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、10~24g/10分、10~23g/10分、10~22g/10分、10~21g/10分、10~20g/10分、10~18g/10分、10~16g/10分、12~24g/10分、14~25g/10分、16~25g/10分、18~25g/10分、又は17~25g/10分のメルトインデックス(I2)を有することができ、メルトインデックス(I2)は、ASTM D-1238に従って190℃、2.16kgで測定される。
【0036】
いくつかの実施形態では、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、0.930~0.965g/ccの範囲の密度と、10~25g/10分の範囲のメルトインデックス(I2)と、1.5~2.6の範囲の、GPCによって求めたときの重量平均分子量の数平均分子量に対する比(Mw(GPC)/Mn(GPC))として表される分子量分布と、少なくとも45の1ラジアン/秒における損失正接と、35℃~110℃の、結晶化溶出分画による改良型コモノマー組成分布(improved comonomer composition distribution、ICCD)溶出プロファイルにおける低温ピーク及び高温ピークとを有し、当該高温ピークの半値全幅は6.0℃未満である。
【0037】
エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、6.9未満、又は6.8未満、又は6.7未満のI10/I2の比を有することができ、I10は、ASTM D1238に従って190℃、10kgで測定される。より低いI10/I2比は、より良好な紡糸性/加工性につながるより少ない長鎖分岐を示し得る。
【0038】
エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、2.6以下又は2.5以下かつ少なくとも1.5若しくは少なくとも1.7若しくは少なくとも2.0の範囲の重量平均分子量の数平均分子量に対する比(Mw(GPC)/Mn(GPC))として表される、下記の方法による分子量分布を有し得る。この範囲の分子量分布を有するインターポリマー組成物は、より高い分子量分布を有するインターポリマーよりも優れた加工性(例えば、繊維紡糸)を有すると考えられる。エチレン/アルファオレフィンインターポリマーは、(I10/I2)-4.63より大きいMw(GPC)/Mn(GPC)によって特徴付けることができる。
【0039】
エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、15,000g/mol、20,000g/mol、又は30,000g/molの下限から100,000g/mol、120,000g/mol、又は150,000g/molの上限の重量平均分子量を有し得る。Mz(GPC)/Mw(GPC)は、3.0未満又は2.0未満であり得、かつ1.0超であり得る。エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、ICCD溶出プロファイルにおいて2つのピークを有する二峰性ポリマー組成物であり得る。その場合、高温画分は、70,000g/mol以下、又は50,000g/mol以下のピーク位置分子量を有し得る。高温画分は、少なくとも15,000又は少なくとも20,000g/molのピーク位置分子量を有し得る。低温画分は、少なくとも30000、又は少なくとも40,000、又は少なくとも50,000g/molのピーク位置分子量を有し得る。低温画分は、250,000以下又は200,000以下又は150,000g/mol以下のピーク位置分子量を有し得る。
【0040】
エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、少なくとも45又は少なくとも50の、1ラジアン/秒における損失正接(tan δ)を特徴とし得る。エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーは、1ラジアン/秒及び190℃における損失正接の100ラジアン/秒及び190℃における損失正接に対する比が少なくとも12であることを特徴とし得る。これらの特徴は、下記のとおり動的質量分析(dynamic mechanical spectroscopy、DMS)によって測定することができる。
【0041】
エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、改良型コモノマー組成分布(ICCD)の溶出プロファイルにおいて35℃~110℃に少なくとも2つの区別可能なピークがあり、ピーク間に明確な谷(小さなピークのピーク高さと比較して少なくとも10%の下落)があり、ピーク位置が最低10℃離れていなければならないことを特徴とし得る。各ピークは、隣接する谷の最低高さ点に位置する垂直線によって分離される。低温ピークのピーク温度は、少なくとも50℃又は少なくとも60℃であってよく、90℃未満又は75℃未満であってもよい。高温ピークのピーク温度は、少なくとも90℃、又は少なくとも95℃であってよく、かつ110℃未満、又は105℃未満、又は100℃未満であってもよい。
【0042】
低温ピーク画分の重量分率は、溶出されたポリマーの総重量に基づいて、少なくとも25又は少なくとも30重量パーセント、かつ65重量パーセント未満、又は60重量パーセント未満、又は55重量パーセント未満であり得る。高温ピーク画分の重量分率は、溶出されたポリマーの総重量に基づいて、少なくとも35、又は少なくとも40、又は少なくとも45重量パーセント、かつ75重量パーセント以下であり得る。
【0043】
高温ピークの半値全幅は、6.0℃未満であり得る。高密度画分の狭いピークは、紡糸性能を妨げたり、抽出物を生成したりする可能性のある超高分子量種も超低分子量種もない、より狭い組成分布を意味する。
【0044】
エチレン/アルファオレフィンインターポリマー組成物は、0.5未満(すなわち50%未満)、0.3(30%)未満、0.25(25%)未満、0.22(22%)未満、又は0.2(20%)未満の組成分布幅指数(composition distribution breadth index、CDBI)を有し得る。
【0045】
エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、100未満、好ましくは30~80のコモノマー分布定数(comonomer distribution constant、CDC)を有し得る。
【0046】
エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、0.20超、又は0.25超、又は0.30超、又は0.35超、又は0.40超、又は0.45超、又は0.50超の分子量コモノマー分布指数(molecular weighted comonomer distribution index、MWCDI)を特徴とし得る。MWCDIは、従来のゲル浸透クロマトグラフィーから得られる分子量の関数としてのコモノマー取り込みの勾配の尺度である。MWCDIが0.25超(20,000~200,000g/molの分子量範囲)である場合、樹脂構造は、分布の高分子量側により多くのコモノマーを有する、有意な逆のコモノマーの組み込みを有するとみなされる。
【0047】
エチレン/アルファオレフィンインターポリマー組成物は、少量の長鎖分岐(long chain branching、LCB)を特徴とし得る。これは、ゼロ剪断粘度比(zero shear viscosity ratios、ZSVR)が低いことによって示され得る。具体的には、ZSVRは1.35未満又は1.30以下であり得る。ZSVRは、少なくとも1.10であり得る。
【0048】
エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、H-NMRによって求めたときに、230未満、又は210未満、又は190未満、又は170未満、又は150未満の炭素原子1,000,000個当たりのビニル飽和数を特徴とし得る。
【0049】
繊維の第2の領域の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%(全てのパーセントは、第1の領域の総重量に基づく重量パーセントである)が、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物であり得る。第2の領域の残りの部分は1つ以上の他のポリマー及び/又は1つ以上の添加剤などの追加成分であり得る。他のポリマーの量は、最大25%であり得る。可能な添加剤としては、帯電防止剤、カラーエンハンサ、染料、潤滑剤、TiO又はCaCOなどの充填剤、乳白剤、核剤、加工助剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、UV安定剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、粘着付与剤、難燃剤、抗菌剤、臭気低減剤、抗真菌剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。エチレン/アルファオレフィンインターポリマー組成物は、そのような添加剤を含むエチレン/アルファオレフィンインターポリマー組成物の重量に基づいて、合計重量の約0.01、又は約0.1、又は約1パーセントから、約25、又は約20、又は約15、又は約10パーセントまでのそのような添加剤を含有し得る。
【0050】
任意の従来の重合プロセスを用いてエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物を生成することができる。このような従来の重合プロセスとしては、1つ以上の従来の反応器、例えば、ループ反応器、等温反応器、撹拌槽反応器、並列、直列のバッチ式反応器、及び/又はそれらの任意の組み合わせを用いた溶液重合プロセスが挙げられるが、これらに限定されない。そのような従来の重合プロセスにはまた、当技術分野において既知の任意のタイプの反応器又は反応器の構成を使用する、気相、溶液若しくはスラリー重合又はそれらの任意の組み合わせも挙げられる。
【0051】
一般に、溶液相重合プロセスは、1つ以上の等温ループ反応器又は1つ以上の断熱反応器などの1つ以上の十分に混合される反応器において、115~250℃、例えば、115~200℃の範囲内の温度及び300~1000psi、例えば、400~750psiの範囲内の圧力で起こる。一例では、二重反応器における第1の反応器の温度は、115~190℃、例えば115~150℃の範囲であり、第2の反応器の温度は、150~200℃、例えば170~195℃の範囲である。別の例では、単一反応器における反応器の温度は、115~190℃、例えば115~150℃の範囲である。溶液相重合プロセスにおける滞留時間は、典型的には、2~30分、例えば、10~20分の範囲内である。エチレン、溶媒、水素、1つ以上の触媒系、任意選択で1つ以上の助触媒、及び任意選択で1つ以上のコモノマーが、1つ以上の反応器に連続的に供給される。例示的な溶媒としては、イソパラフィンが挙げられるが、これに限定されない。例えば、このような溶媒は、ExxonMobil Chemical Co.(Houston,Tex)からISOPAR Eの名称で市販されている。次いで、得られたエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーと溶媒との混合物を反応器から取り出し、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物を単離する。溶媒は、典型的に、溶媒回収ユニット、すなわち熱交換器及び気液分離器ドラムを介して回収され、次いで、重合系に再循環される。
【0052】
エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物は、二重反応器系、例えば二重ループ反応器系において溶液重合を介して生成され得、その場合、エチレン及び任意選択で1つ以上のα-オレフィンは、1つ以上の触媒系の存在下で重合される。更に、1つ以上の助触媒が存在してもよい。
【0053】
エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーは、単一反応器系、例えば単一ループ反応器系において溶液重合を介して生成され得、その場合、エチレン及び任意選択で1つ以上のα-オレフィンは、1つ以上の触媒系の存在下で重合される。2つの異なる触媒を、二重反応器系で使用してもよい。2つの異なる触媒の一方又は両方は、以下に示すように式(I)を有する。これにより、上記のような二峰性インターポリマー組成物の製造が可能になる。
【0054】
第1のエチレン/アルファオレフィンインターポリマーを生成するのに適した例示的な触媒系は、式(I)の金属-配位子錯体を含むプロ触媒成分を含む触媒系であり得る。
【0055】
【化1】
【0056】
式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムから選択される金属であり、金属は、+2、+3、又は+4の形式酸化状態にあり、nは、0、1、又は2であり、nが1である場合、Xは、単座配位子又は二座配位子であり、nが2である場合、各Xは単座配位子であり、同じであるか又は異なっており、金属-配位子錯体が、全体的に電荷中性であり、各Zは、独立して、-O-、-S-、-N(R)-、又は-P(R)-から選択され、Lは、(C~C40)ヒドロカルビレン又は(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンであり、独立して各R及びRは、(C~C30)ヒドロカルビル又は(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、(C~C40)ヒドロカルビレンは、式(I)中の2つのZ基を連結する1個の炭素原子~10個の炭素原子のリンカー骨格を含む部分(これにLが結合する)を有するか、又は(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンは、式(I)中の2つのZ基を連結する1個の原子~10個の原子のリンカー骨格を含む部分を有し、(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンの1個の原子~10個の原子のリンカー骨格の1~10個の原子の各々は、独立して、炭素原子又はヘテロ原子であり、各ヘテロ原子は、独立して、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、Ge(R、P(R)、又はN(R)であり、独立して、各Rは、(C~C30)ヒドロカルビル又は(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、R及びRは独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、及び式(II)、式(III)、又は式(IV)を有するラジカルからなる群から選択される。
【0057】
【化2】
【0058】
式(II)、(III)、及び(IV)において、R31~35、R41~48、又はR51~59の各々は、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-N=CHR、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、又は-Hから独立して選択され、ただし、R又はRの少なくとも1つは、式(II)、式(III)、又は式(IV)を有するラジカルであり、式中、RC、、及びRは上記で定義したとおりである。
【0059】
式(I)において、R2~4、R5~7、又はR9~16の各々は、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-N=CHR、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、及び-Hから独立して選択され、式中、R、R、及びRは上記で定義したとおりである。
【0060】
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系は、オレフィン重合反応の金属系触媒を活性化するための当該技術分野で既知の任意の技術によって触媒的に活性化され得る。例えば、式(I)の金属-配位子錯体を含むものは、錯体を活性化助触媒と接触させるか、又は錯体を活性化助触媒と組み合わせることによって、触媒的に活性化され得る。本明細書で使用するのに好適な活性化助触媒としては、アルキルアルミニウム、ポリマー又はオリゴマーアルモキサン(アルミノキサンとしても知られている)、中性ルイス酸、及び非ポリマー、非配位性、イオン形成化合物(酸化条件下でのそのような化合物の使用を含む)が挙げられる。好適な活性化技術は、バルク電気分解である。前述の活性化助触媒及び技法のうちの1つ以上の組み合わせもまた企図される。「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリド若しくはモノアルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニウムヒドリド若しくはジアルキルアルミニウムハライド、又はトリアルキルアルミニウムを意味する。ポリマー又はオリゴマーのアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサン、及びイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0061】
ルイス酸活性化剤(助触媒)は本明細書に記載されるように、1~3個の(C~C20)ヒドロカルビル置換基を含有する第13族金属化合物を含む。第13族金属化合物の例としては、トリ((C~C20)ヒドロカルビル)-置換アルミニウム化合物、又はトリ((C~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物が挙げられる。第13族金属化合物の追加の例は、トリ(ヒドロカルビル)-置換アルミニウム、トリ((C~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物、トリ((C~C10)アルキル)アルミニウム、トリ((C~C18)アリール)ホウ素化合物、及びそれらのハロゲン化(過ハロゲン化を含む)誘導体である。第13族金属化合物の他の例は、トリス(フルオロ-置換フェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。活性化助触媒は、トリス((C~C20)ヒドロカルビル)ボレート(例えば、トリチルテトラフルオロボレート)又はトリ((C1~20)ヒドロカルビル)アンモニウムテトラ((C~C20)ヒドロカルビル)ボラン(例えば、ビス(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)であり得る。本明細書で使用されるとき、「アンモニウム」という用語は、((C~C20)ヒドロカルビル)、((C~C20)ヒドロカルビル)N(H)、((C~C20)ヒドロカルビル)N(H) 、(C~C20)ヒドロカルビルN(H) 、又はN(H) である窒素カチオンを意味し、各(C~C20)ヒドロカルビルは、2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。
【0062】
中性ルイス酸活性化材(助触媒)の組み合わせとしては、トリ((C~C)アルキル)アルミニウムと、ハロゲン化トリ((C~C18)アリール)ホウ素化合物、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせを含む混合物が挙げられる。他の例は、そのような中性ルイス酸混合物とポリマー又はオリゴマーアルモキサンとの組み合わせ、及び単一の中性ルイス酸、とりわけトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとポリマー又はオリゴマーアルモキサンとの組み合わせである。(金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)[例えば、第4族金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)]のモル数の比は、1:1:1~1:10:30、又は1:1:1.5~1:5:10であり得る。
【0063】
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系を活性化して、1つ以上の助触媒、例えば、カチオン形成助触媒、強ルイス酸、又はそれらの組み合わせと組み合わせることによって、活性触媒組成物を形成することができる。好適な活性化助触媒としては、ポリマー又はオリゴマーのアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、並びに不活性、相溶性、非配位性、イオン形成性の化合物が挙げられる。好適な助触媒の例としては、変性メチルアルミノキサン(modified methyl aluminoxane、MMAO)、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1)アミン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
前述の活性化助触媒のうち1つ以上を互いに組み合わせて使用してもよい。好ましい組み合わせは、トリ((C~C)ヒドロカルビル)アルミニウム、トリ((C~C)ヒドロカルビル)ボラン、又はアンモニウムボレートとオリゴマー又はポリマーアルモキサン化合物との混合物である。式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数の、活性化助触媒のうちの1つ以上の総モル数に対する比は、1:10,000~100:1である。比は、少なくとも1:5000、又は少なくとも1:1000であり得、かつ10:1以下、又は1:1以下であり得る。アルモキサンを単独で活性化助触媒として使用する場合、好ましくは、用いられるアルモキサンのモル数は、式(I)の金属-配位子錯体のモル数の少なくとも100倍であり得る。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのみを活性化助触媒として使用するとき、用いられ得るトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのモル数対式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数は、0.5:1~10:1、1:1~6:1、又は1:1~5:1の範囲である。残りの活性化助触媒は、概して、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル量におおよそ等しいモル量で用いられる。
【0065】
試験方法
密度
密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定され、グラム/cm(g/cc又はg/cm)で表される。
【0066】
メルトインデックス(I2)、(I10)、及びメルトフローレート
メルトインデックス(I2)は、ASTM D-1238によって190℃、2.16kgで測定される。メルトインデックス(I10)は、ASTM D1238に従って190℃、10kgで測定される。メルトフローレート(MFR)は、ポリプロピレンホモポリマー及びプロピレン-エチレンインターポリマーについて使用され、ASTM D-1238に従って230℃、2.16kgで測定される。メルトインデックス(I2)、(I10)、及びメルトフローレートの値は、g/10分で報告され、これは10分当たりに溶出されるグラムに相当する。
【0067】
動的機械分光法(Dynamic Mechanical Spectroscopy、DMS)
試料を、10MPaの圧力下で、177℃で5分間、厚さ3mm×直径25mmの円形プラークに圧縮成形する。次いで、試料を圧縮機から取り出し、カウンター上に置いて、冷却する。窒素パージ下で、25mmの平行板を備えたARES応力制御レオメーター(TA Instruments)によって、圧縮成形されたプラークに対して等温周波数掃引測定を実行する。各測定につき、ギャップをゼロにする前に、少なくとも30分間、レオメーターを熱的に平衡化する。試料ディスクをプレート上に置き、190℃で5分間溶融させる。次いで、プレートを2mmのギャップまで閉じ、試料をトリミングし、次いで試験を開始する。この方法は温度を平衡化するために、更に5分間の遅延を組み込み得る。実験は、190℃で、0.1~100ラジアン/秒の周波数範囲にわたって、ディケイド間隔当たり5点で実施する。歪み振幅は、10%で一定である。応力応答を振幅及び位相に関して分析し、そこから貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、複素弾性率(G)、動的粘度(η)、及び損失正接(tan δ)(又はtan delta)を計算する。1ラジアン/秒での損失正接及び100ラジアン/秒での損失正接が得られる。
【0068】
改良型コモノマー組成分布(ICCD)
改良型コモノマー組成分布(ICCD)試験は、IR-5検出器(PolymerChar,Spain)及び2角度光散乱検出器モデル2040(Precision Detectors、現在のAgilent Technologies)を備えている結晶化溶出分別測定器(CEF)(PolymerChar,Spain)で実行される。ICCDカラムには、15cm(長さ)×1/4インチ(ID)のステンレス管に金被覆ニッケル粒子(Bright 7GNM8-NiS、Nippon Chemical Industrial Co.)を充填する。カラム充填及び調整は、参考文献(Cong,R.; Parrott,A.、Hollis,C.、Cheatham,M.国際公開第2017040127(A1)号)に従ってスラリー法で行った。トリクロロベンゼン(trichlorobenzene、TCB)スラリー充填物での最終圧力は150バールである。カラムを検出器オーブン中のIR-5検出器の直前に取り付ける。オルトジクロロベンゼン(Orthodichlorobenzene、ODCB、99%の無水グレード又は工業グレード)を溶出剤として使用する。シリカゲル40(粒径0.2~0.5mm、カタログ番号10181-3)は、EMD Chemicalsから入手し、ODCB溶媒を乾燥させるために使用することができる。ICCD機器は、窒素(N)パージ能力を有するオートサンプラーを備える。ODCBは、乾燥Nを1時間スパ-じした後に使用される。試料調製は、160℃で1時間振盪しながら、オートサンプラーを用いて4mg/mL(特に明記しない限り)で行われる。注入量は300μLである。ICCDの温度プロファイルは、3℃/分で105℃~30℃で結晶化し、次いで30℃で2分間熱平衡させ(可溶性画分溶出時間を2分間に設定することを含む)、続いて3℃/分で30℃~140℃で加熱する。溶出中の流量は0.50mL/分である。データは、1データ点/秒で収集する。カラム温度較正は、ODCB中の標準物質線状ホモポリマーポリエチレン(ゼロのコモノマー含量、1.0g/10分のメルトインデックス(I)、従来のゲル浸透クロマトグラフィー1.0mg/mLによる約2.6の多分散性Mw(GPC)/Mn(GPC)を有する)及びエイコサン(2mg/mL)の混合物を使用することによって実行され得る。ICCD温度較正は、次の4つの工程からなる。(1)測定されたエイコサンのピーク溶出温度から30.00℃を差し引いた間の温度オフセットとして定義される遅延体積を計算する工程。(2)ICCD生温度データから、溶出温度の温度オフセットを差し引く工程。この温度オフセットは、溶出温度、溶出流量などの実験条件の関数であることに留意されたい。(3)線状ホモポリマーポリエチレン基準が101.0℃でピーク温度を有し、かつエイコサンが30.0℃のピーク温度を有するように、30.00℃~140.00℃の範囲にわたって溶出温度を変換する線形較正線を作成する工程。(4)30℃の等温で測定される可溶性画分について、30.0℃未満の溶出温度を、参照文献(Cerk及びCongら、米国特許第9,688,795号)に従って3℃/分の溶出加熱速度を使用することによって直線的に外挿する工程。
【0069】
既知のコモノマー含有量を有する12種の基準物質(線状エチレンホモポリマー、及びシングルサイトメタロセン触媒を用いて作製された35,000~128,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する11種のエチレン-オクテンランダムコポリマー)を使用することによって、ICCDのコモノマー含有量の較正線(溶出温度(T)に対するモルパーセントでのコモノマー含有量)を構築する。これらの基準物質の全てを、4mg/mLで先に特定したのと同じ方法で分析する。溶出曲線上のモルパーセントでのコモノマー含有量及びそのピーク温度は、次のとおりである。
【0070】
【数2】
【0071】
ICCD溶出プロファイル上のピーク及び半値全幅の決定
最低及び最高の溶出温度(典型的には35℃~119℃)において相対質量ゼロで開始及び終了する相対質量-溶出プロファイルプロットを作成するために、IR測定シグナルから単一のベースラインを差し引く。便宜上、これは、1に相当する全面積に対して正規化された量として提示される。ICCDからの相対質量-溶出プロファイルプロットにおいて、各温度(T)での重量分率(w(T))を得ることができる。プロファイル(w(T)対T)は、ICCDからの、0.200℃ずつの温度の段階的上昇による35.0℃~119.0℃のものであり、以下のとおりである。
【0072】
【数3】
【0073】
(T)対T溶出プロファイルでは、単一のピークは、中央に1つの最高点を有し、両側(低温側及び高温側)に2つの最低点を有する曲線として定義される。2つの最低点の高さはいずれも、最高点の高さより少なくとも10%低い必要がある。最低点の一方又は両方が最高点の高さよりも10%未満低い高さを有する場合、すなわち、最低点の一方又は両方が最高点の高さの90%よりも高い高さを有する場合、そのような曲線は別のピークに関連するショルダーとみなされるが、ピーク自体ではない。次いで、各個別のピークを、w(T)対T溶出プロファイルプロットにおけるそのピークの最大高さの50%での摂氏度で幅を測定する。この幅は、ピークの半値全幅と呼ばれる。
【0074】
ICCD溶出プロファイルが複数のピークを有する場合、ピーク間の分離点(T分離)は、隣接する2つのピークの最低点として定義され得る。n番目のピーク(WTピークn)の重量分率は、次式に従って計算することができる:
【0075】
【数4】

(式中、ピーク1、ピーク2、...、及びピークnは低温から高温への順のピークであり、T分離、nは、nピークとn+1ピークとの間の分離点である)。
【0076】
半値全幅は、前部温度の第1の交点と、その個々のピークの最大ピーク高さの半分での後部温度の第1の交点との間の温度差として定義される。最大ピークの半分での前部温度は、35.0℃から前方に検索されるが、最大ピークの半分での後部温度は、119.0℃から後方に検索される。
【0077】
コモノマー分布定数(CDC)
コモノマー分布定数(CDC)は、以下の工程に従って、ICCDによるw(T)対T溶出プロファイルから計算される。
(1)0.200℃ずつ温度が上昇する35.0℃~119.0℃の範囲でICCDからw(T)対T溶出プロファイルを得る。35℃~119℃の総重量分率を1.0に対して正規化し、式2に従わなければならない。
(2)累積重量分率0.500における温度中央値(T中央値)を、次式に従って計算する。
【0078】
【数5】

(3)式4に従って、コモノマー含有量較正曲線を用いることにより、中央温度(T中央値)におけるモル%での対応するコモノマー含有量の中央値(C中央値)を計算する。
(4)組成分布幅指数(CDBI)は、35.0℃~119.0℃の0.5中央値~1.5中央値の範囲のコモノマー含有量を有するポリマー鎖の総重量分率として定義される。式2に基づいて、0.5中央値の対応する温度T1及び1.5中央値の対応する温度T2を見出す。組成分布幅指数(CDBI)は、次のようにT1とT2との間の重量分率(w(T))対温度(T)プロットから得ることができる:
【0079】
【数6】

。T中央値が98.0℃よりも高い場合、組成分布幅指数(CDBI)は0.95と定義される。
(5)35.0℃~119.0℃の最大ピークについての各データ点を探索することによって、ICCDのw(T)対Tプロファイルから最大ピーク高さにおける温度(T)を得る(2つのピークの高さが同一である場合、より低い温度のピークを選択する)。ピーク温度の差が各ピークの半値全幅の和の1.1倍以上である場合、インターポリマー組成物の半値幅は、各ピークの半値全幅の算術平均として計算さる。ピーク温度の差が各ピークの半値全幅の和の1.1倍未満である場合、インターポリマー組成物の半値幅は、最高温度ピークの半値全幅として定義される。
(6)次式に従って、温度の標準偏差(Stdev)を計算する。
【0080】
【数7】

(7)コモノマー分布定数(CDC)は、次式から計算される。
【0081】
【数8】
【0082】
従来のゲル浸透クロマトグラフィー(従来のGPC)及びMWCDI
クロマトグラフィーシステムは、内蔵型IR5赤外線検出器(IR5)を備えたPolymerChar GPC-IR(Valencia,Spain)高温GPCクロマトグラフからなる。オートサンプラーのオーブンコンパートメントを160℃に設定し、カラムコンパートメントを150℃に設定する。使用したカラムは、4つのAgilent「Mixed A」30cm、20ミクロンの直線状混合床カラムである。使用されるクロマトグラフィーの溶媒は、1,2,4トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)を含有する。溶媒源を窒素スパージする。使用される注入体積は、200マイクロリットルであり、流速は1.0ミリリットル/分である。
【0083】
GPCカラムセットの較正は、580~8,400,000g/molの範囲の分子量を有する少なくとも20個の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて行われ、個々の分子量間で少なくとも10の間隔を有する6つの「カクテル」混合物中に配置される。標準物は、Agilent Technologiesから購入する。1,000,000g/モル以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.025グラムで、1,000,000g/モル未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.05グラムで、ポリスチレン標準を調製する。ポリスチレン標準を、80℃で穏やかに攪拌しながら30分間溶解させる。ポリスチレン標準ピーク分子量を、次の等式を使用してエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー分子量に変換する(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり)。:
【0084】
【数9】

(式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4315の値を有し、Bは、1.0に等しい)。
【0085】
5次多項式を用いて、それぞれのエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー等価較正点に適合させる。NIST標準のNBS1475を52,000g/molの分子量で得られるように、Aに対してわずかな調整(約0.39~0.44)を行い、カラム分解能及びバンド広がり効果を補正する。
【0086】
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製し、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)エイコサンを用いて実行される。プレートカウント(式8)及び対称性(式9)を、次式に従って200マイクロリットルの注入で測定する:
【0087】
【数10】

(式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大高さであり、1/2高さはピーク最大値の高さの半分である)。
【0088】
【数11】

(式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10高さはピーク最大値の高さの1/10であり、後方ピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、前方ピークはピーク最大値よりも前の保持体積でのピーク前部を指す)。クロマトグラフィーシステムのプレートカウントは、22,000超でなければならず、対称性は0.98~1.22でなければならない。
【0089】
試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動式で調製され、試料の目標重量を2mg/mLとし、PolymerChar高温オートサンプラーを介して、予め窒素注入されたセプタキャップ付きバイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加する。160℃の「低速」振盪下で3時間、試料を溶解させる。
【0090】
n(GPC)、Mw(GPC)、及びMz(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、等間隔の各データ収集点i(IR)でベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、及び式7からの点iに対する狭い標準較正曲線から得られたエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー等価分子量(g/molでのMポリエチレン、i)を用いて、式11a~cに従ってPolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内蔵型IR5検出器(測定チャネル)を用いたGPC結果に基づく。続いて、GPC分子量分布(GPC-MWD)プロット(wtGPC(lgMW)対 lgMWプロット(wtGPC(lgMW)が、lgMWの分子量を有するインターポリマー分子の重量分率である)を得ることができる。分子量はg/molであり、wtGPC(lgMW)は式10に従う。
【0091】
【数12】
【0092】
数平均分子量Mn(GPC)、重量平均分子量Mw(GPC)、及びz平均分子量Mz(GPC)は、以下の式のとおり計算することができる。
【0093】
【数13】
【0094】
経時的な偏差をモニタリングするために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入する。この流量マーカー(FM)を使用して、試料(RV(FM試料))内のそれぞれのデカンピークのRVを、狭い標準較正(RV(FM較正))内のデカンピークのRVと整列させることによって、各試料のポンプ流量(流量(公称))を線形に補正する。その後、デカンマーカーピークの時間におけるあらゆる変化は、実験全体における流量(流量(実効))の線形シフトに関連すると仮定する。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に当てはめる最小二乗適合ルーチンが使用される。次いで、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を解く。流量マーカーピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に関して)実効流量を式12のように計算する。流量マーカーピークの処理を、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを介して行う。実効流量が公称流量の0.5%以内になるように、許容可能な流量を補正する。
【0095】
【数14】
【0096】
IR5検出器比の較正は、ホモポリマー(0個のSCB/1000個の総C)からおよそ50個SCB/1000個の総C(総C=骨格中の炭素+分岐中の炭素)の範囲の既知の短鎖分岐(short chain branching、SCB)頻度(13C NMR方法によって測定)の少なくとも8種のエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー標準(1種のポリエチレンホモポリマー及び7種のエチレン/オクテンコポリマー)を使用して実施することができる。各標準は、GPCによって求めたときに36,000g/mol~126,000g/molの重量平均分子量を有する。各標準は、GPCによって求めたときに2.0~2.5の分子量分布(Mw(GPC)/Mn(GPC))を有する。「IR5メチルチャネルセンサのベースラインを差し引いた領域応答」と「IR5測定チャネルセンサのベースラインを差し引いた領域応答」との「IR5領域比(又は「IR5メチルチャネル領域/IR5測定チャネル領域」)」(PolymerCharによって供給される標準フィルタ及びフィルタホイール:部品番号IR5_FWM01はGPC-IR機器の一部として含まれる)を、「SCB」標準の各々について計算する。次式の形態で、SCB頻度対「IR5領域比」の直線近似を構築する:
SCB/1000個の総C=A+[A×(IR5メチルチャネル領域/IR5測定チャネル領域)](式13)
(式中、Aはゼロの「IR5領域比」におけるSCB/1000個の総Cの切片であり、AはSCB/1000個の総C対「IR5領域比」の傾きであり、「IR5領域比」の関数としてのSCB/1000個の総Cにおける増加を表す)。
【0097】
「IR5メチルチャネルセンサ」によって生成されたクロマトグラムについての一連の線状ベースラインを差し引いたクロマトグラフィー高さを、カラム溶出体積の関数として確立して、ベースライン補正クロマトグラム(メチルチャネル)を生成する。「IR5測定チャネル」によって生成されたクロマトグラムについての一連の線状ベースラインを差し引いたクロマトグラフィー高さを、カラム溶出体積の関数として確立して、ベースライン補正クロマトグラム(測定チャネル)を生成する。
【0098】
「ベースライン補正クロマトグラム(メチルチャネル)」及び「ベースライン補正クロマトグラム(測定チャネル)」の「IR5高さ比」を、試料積分境界にわたって各カラム溶出体積インデックス(各々等間隔で離間されたインデックス、1mL/分の溶出における1秒当たり1データ点を表す)において計算する。「IR5高さ比」に係数A1を乗じ、係数A0をこの結果に加えて、試料の予測SCB頻度を得る。式14のように、結果をモルパーセントコモノマーに変換する:
モルパーセントコモノマー={SCB/[SCB+((1000-SCB コモノマーの長さ)/2)]}100(式14)
(式中、「SCB」は、「1000個の総CあたりのSCB」であり、「コモノマーの長さ」は、コモノマーの炭素数であり、例えばオクテンでは8であり、ヘキセンは6などである)。
【0099】
Williams及びWardの方法(上述)を使用して、各溶出体積インデックスを分子量値(Mwi)に変換する。「モルパーセントコモノマー」をlg(Mwi)の関数としてプロットし、20,000のMwi~200,000g/molのMwiでの傾きを計算する(この計算では、鎖末端に対する末端基の補正を省略する)。線形回帰を使用して、20,000~200,000g/molのMwi間及びそれを含む傾きを計算し、この場合、濃度クロマトグラムの高さ(wtGPC(lgMW)対lgMWプロット)は、クロマトグラムのピーク高さの少なくとも10%である。この傾きを、分子量コモノマー分布指数(MWCDI)として定義する。
【0100】
ゼロ剪断粘度比(Zero-Shear Viscosity Ratio、ZSVR)
ゼロ剪断粘度比は、次式に従って、等価重量平均分子量(Mw(GPC))における分岐ポリエチレン材料のゼロ剪断粘度(ZSV)の線状ポリエチレン材料のZSV(下記のANTEC議事録を参照)に対する比として定義される:
【0101】
【数15】
【0102】
インターポリマーのZSV値(η0Bは、下記の方法によって190℃でのクリープ試験から得られる。Mw(GPC)値は、上述したように、従来のGPC法(式11b)によって求められる。線状ポリエチレンのZSV(η0L)とそのMw(GPC)との間の相関は、一連の線状ポリエチレン参照材料に基づいて確立される。ZSV-Mw(GPC)の関係についての説明は、ANTECの議事録:Karjala et al.,Detection of Low Levels of Long-chain Branching in Polyolefins,Annual Technical Conference-Society of Plastics Engineers(2008),66th 887-891に見出すことができる。
【0103】
クリープ試験
インターポリマーのZSV値(η0B)は、DHR(TA Instrument)を使用して、窒素環境で190℃の一定応力レオメータクリープ試験から得られる。試料を、互いに平行に配置された2つの直径25mmのプレート固定具の間の流れに供する。試料を、インターポリマーのペレットを約1.5~2.0mmの厚さの円形プラークに圧縮成形することによって調製する。プラークを直径25mmのディスクに更にカットし、TA Instrumentのプレート固定具の間に挟む。試料装填後、プレート固定具間のギャップを1.5mmに設定する前に、TA Instrumentのオーブンを5分間閉じ、オーブンを開いて試料の縁部をトリミングし、オーブンを再び閉じる。クリープ試験の前後に、190℃で0.1~100ラジアン/秒、300秒の浸漬時間、10%の歪みの対数周波数掃引を行い、試料が劣化したかどうかを判定する。定常状態の剪断速度がニュートン領域にあるのに十分な程度低いことを確実にするために、試料の全てに20Paの一定の低剪断応力を印加する。定常状態は、「lg(J(t))対lg(t)(式中、J(t)はクリープコンプライアンスであり、tはクリープ時間である)」のプロットの最後の10%の時間ウィンドウ内のデータについて線形回帰を取ることによって決定する。線形回帰の勾配が0.97より大きい場合、定常状態に達したとみなし、次いで、クリープ試験を停止する。この試験における全ての場合において、傾きは、1時間以内に基準を満たす。定常状態の剪断速度を、「ε対t(εは歪みである)」のプロットの最後の10%の時間窓におけるデータ点の全ての線形回帰の傾きから決定する。ゼロ剪断粘度は、加えられた応力と定常状態の剪断速度との比から決定される。
【0104】
H NMR法
10mmのNMR管中の0.133gのポリマー試料に、原液(3.26g)を添加する。原液は、テトラクロロエタン-d2(TCE)及びペルクロロエチレン(重量50:50)と0.001M Cr3+との混合物である。管中の溶液をNで5分間パージして、酸素の量を減少させる。蓋をした試料管を室温で一晩放置して、ポリマー試料を膨潤させる。定期的にボルテックス混合しながら、試料を110℃で溶解させる。試料は不飽和の一因となり得る添加剤、例えば、エルカミド等のスリップ剤を含まない。各H NMR分析は、Bruker AVANCE 400MHz分光計で120℃において10mmの凍結プローブを用いて実行する。
【0105】
不飽和度を測定するために2つの実験を実行し、一方は対照、一方は二重前飽和実験である。対照実験では、データを1Hzの線幅拡大を有する指数窓関数で処理し、ベースラインは約7~-2ppmに補正する。TCEの残留1Hからの信号を100に設定し、約-0.5~3ppmの積分値(I合計)を対照実験における全ポリマーからの信号として使用する。ポリマー中の総炭素数NCは、式16で以下のとおり計算される。
NC=I合計/2(式16)
【0106】
二重前飽和実験では、データを1Hzの線幅拡大を有する指数窓関数で処理し、ベースラインは約6.6~4.5ppmに補正する。TCEの残留Hからの信号を100に設定し、不飽和についての対応する積分値(Iビニレン、I三置換、Iビニル、及びIビニリデン)を積分する。ポリエチレン不飽和を決定するためにNMR分光法を使用することは周知であり、例えば、Busico,V.,et al,Macromolecules,2005,38,6988を参照されたい。ビニレン、三置換体、ビニル、及びビニリデンの不飽和単位の数を、以下のとおり計算する:
ビニレン=Iビニレン/2 (式17)、
三置換体=I三置換体 (式18)、
ビニル=Iビニル/2 (式19)、
ビニリデン=Iビニリデン/2 (式20)。
【0107】
1,000個の総炭素当たりの不飽和単位、すなわち、主鎖及び分岐を含む全てのポリマー炭素は、以下のように計算される:
ビニレン/1,000C=(Nビニレン/NC)×1,000 (式21)、
三置換体/1,000C=(N三置換体/NC)×1,000 (式22)、
ビニル/1,000C=(Nビニル/NCH)×1,000 (式23)、
ビニリデン/1,000C=(Nビニリデン/NC)×1,000 (式24)。
【0108】
TCE-d2からの残留プロトンからのHシグナルでは、化学シフト標準を6.0ppmに設定する。制御は、ZGパルス、NS=4、DS=12、SWH=10,000Hz、AQ=1.64秒、D1=14秒で実行される。二重前飽和実験は、O1P=1.354ppm、O2P=0.960ppm、PL9=57db、PL21=70db、NS=100、DS=4、SWH=10,000Hz、AQ=1.64秒、D1=1秒(D1は前飽和時間)、D13=13sで実行される。
【0109】
13C NMR法
0.025M Cr(AcAc)を含有するテトラクロロエタン-d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物およそ3gを、Norell 1001-7の10mmのNMR管中の0.25gのポリマー試料に添加することによって、試料を調製する。窒素で管ヘッドスペースをパージすることにより、試料から酸素を除去する。次いで、加熱ブロック及びヒートガンを使用して管及びその内容物を150℃に加熱することによって、試料を溶解させ、均質化する。均質性を確保するために、各試料を目視検査する。試料を分析の直前に十分に混合し、加熱したNMRプローブに挿入する前に冷やさないようにする。これは、試料が均質であり、全体の代表とすることを確実にするために必要である。Bruker凍結プローブを備えたBruker 400MHz分光計を使用して、全てのデータを収集する。6秒パルス反復遅延、90度フリップ角、及び120℃の試料温度を用いた逆ゲート付きデカップリングを使用して、データを取得する。全ての測定は、ロックモードで非回転試料に対して行われる。試料を、データ取得前に7分間熱平衡化させる。13C NMR化学シフトは、30ppmでのEEEトライアドを内部参照とする。
【0110】
C13 NMRコモノマー含有量:ポリマー組成を求めるためにNMR分光法を使用することは周知である。ASTM D 5017-96;J.C.Randall et al.,in「NMR and Macromolecules」 ACS Symposium series 247;J.C.Randall,Ed.,Am.Chem.Soc., Washington, D.C.,1984, Ch. 9、及びJ. C.Randall in「Polymer Sequence Determination」,Academic Press,New York(1977)は、NMRスペクトル法によるポリマー分析の全般的方法を提供している。
【0111】
曲率
曲率の量は、光学顕微鏡検査を介して測定される。曲率の量は、繊維によって形成されるらせんの半径の逆数に基づいて計算される。これは、繊維によって形成された螺旋をそれに垂直な表面に投影することによって形成される円の半径に等しくなる。少なくとも5つ測定の平均値を報告する。測定値は、1/ミリメートル(mm-1)の単位で報告される。
【0112】
重心オフセットを測定するための断面画像
SEM又はAFM分析を使用して、繊維の断面画像を収集することができる。SEM分析では、約10本の染色された繊維をエポキシに据付け、同じオーブンで一晩硬化させ、低温で研磨して断面に繊維を露出させた。研磨のために、Leica UC7ウルトラミクロトームを-120℃で操作し、ダイヤモンドナイフを取り付けた。研磨した繊維をSEM試料スタブに取り付け、25秒間スパッタリングしたイリジウムでコーティングし、走査型電子顕微鏡(SEM)で検査した。5kVの加速電圧、4.5のスポットサイズ、#5対物レンズ開口、及び約12mmの作動距離で操作されるFEI Nova SEMが使用されており、全ての画像は、SEMを使用して二次電子放出から捕捉される。
【0113】
AFM分析では、繊維をエポキシに包埋し、AFM分析のために-120℃で操作されたLeica UCT/FCSミクロトームを使用して極低温条件下で研磨した。トポグラフィー及び位相画像は、MikroMaschプローブを備えたBruker Icon AFMシステムを使用することによって周囲温度で捕捉された。プローブは、40N/mのバネ定数、及び約170kHzの共振周波数を有する。0.5~2Hzのイメージング周波数が、約0.8のセットポイント比で使用される。
【実施例
【0114】
エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物の生成
以下のプロセス及び表に従って、開発樹脂(「樹脂1」、「樹脂2」)を調製する。
【0115】
全ての原料(エチレンモノマー及び1-オクテンコモノマー)及びプロセス溶媒(狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン溶媒、ExxonMobil Chemicalから市販されている製品名Isopar-E)を、反応環境に導入する前に分子篩で精製する。水素は、高純度グレードとして加圧されて供給され、それ以上は精製されない。反応器のエチレン供給流を、機械的圧縮機を介して反応圧力を超えるまで加圧する。溶媒及びコモノマーの供給は、ポンプを介して、反応圧力を超えるまで加圧される。個々の触媒成分を、精製された溶媒で好適な成分濃度になるように手動でバッチ希釈し、反応圧力を超えるまで加圧する。全ての反応供給流は、質量流量計を用いて測定され、それぞれ独立してコンピュータにより自動化された弁制御系によって制御される。
【0116】
2つの反応器系を直列構成で使用する。各連続溶液重合反応器は、熱を除去する連続撹拌タンク反応器(continuously stirred tank reactor、CSTR)を再現した、液体が充填された非断熱性の等温循環ループ反応器からなる。全ての新鮮な溶媒、エチレン、水素、及び触媒成分の供給を独立して制御することが可能である。各反応器(溶媒、エチレン、1-オクテン、及び水素)への全ての新鮮供給流は、供給流を熱交換器に通すことによって単一溶液相を維持するように温度制御される。各重合反応器への全ての新鮮供給物を、各注入箇所の間でほぼ等しい反応器体積で、2箇所で反応器に注入する。新鮮供給物は、各注入器が、全新鮮供給物質量流量の半分を受容して制御される。触媒成分は、特別に設計された注入スティンガを通して重合反応器に注入される。一次触媒(プレ触媒)成分の供給は、各反応器のエチレン転化率を特定の目標に維持するようにコンピュータ制御される。助触媒成分は、計算された特定のモル比に基づいて、一次触媒(プレ触媒)成分に供給される。各反応器供給物の注入箇所の直後に、供給流を、静的混合要素を有する循環重合反応器の内容物と混合する。各反応器の内容物を反応熱の大部分を除去する役割を果たす熱交換器に通し、冷却剤側の温度が、特定温度での等温反応環境を維持する役割を果たして、連続的に循環させる。各反応器ループの周りの循環は、ポンプによって提供する。
【0117】
二重直列反応器構成では、第1の重合反応器からの流出物(溶媒、エチレン、1-オクテン、水素、触媒成分、及びポリマーを含有する)は、第1の反応器ループを出て、第2の反応器ループに添加される。
【0118】
第2の反応器の流出物は、ゾーンに入り、そこで水の添加及び水との反応により不活性化される。触媒の不活性化及び添加剤の添加に続いて、反応器の流出物は、ポリマーが非ポリマー流から除去される脱揮発系に入る。単離されたポリマー溶融物をペレット化して回収する。非ポリマー流は、システムから除去されるエチレンの大部分を分離する様々な機器を通過する。溶媒及び未反応の1-オクテンの大部分は、精製システムを通過した後にリサイクルされて反応器へ戻される。少量の溶媒及び1-オクテンをプロセスからパージする。
【0119】
表1の値に対応する反応器ストリームの供給データフローを使用して実施例を製造する。データは、溶媒リサイクル系の複雑さが考慮され、かつ反応系を貫流フローダイアグラムとしてより簡単に処理できるように表示される。使用した触媒成分を表2で参照する。
【0120】
作られたポリマーの各々を、上記の方法に従って様々な特性について試験する。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
樹脂1及び樹脂2に加えて、以下の材料を実施例において使用する。
【0125】
0.900g/ccの密度及び36g/10分のメルトフローレートを有するポリプロピレンホモポリマーであるExxon PP 3155は、ExxonMobil Corporation(Irvine,Texas)から市販されている。
【0126】
0.950g/ccの密度及び17g/10分のメルトインデックス(I2)を有するエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物であるASPUN(商標)6835Aは、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている。
【0127】
0.955g/ccの密度及び30g/10分のメルトインデックス(I2)を有するエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物であるASPUN(商標)6850Aは、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている。
【0128】
0.868g/ccの密度及び25g/10分のメルトフローレートを有するプロピレン-エチレンインターポリマーであるVERSIFY(商標)4301は、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から市販されている。
【0129】
0.876g/ccの密度及び25g/10分のメルトフローレートを有するプロピレン-エチレンインターポリマーであるVERSIFY(商標)4200は、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から市販されている。
【0130】
0.876g/ccの密度及び8g/10分のメルトフローレートを有するプロピレン-エチレンインターポリマーであるVERSIFY(商標)3200は、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から市販されている。
【0131】
0.865g/ccの密度及び8g/10分のメルトフローレートを有するプロピレン-エチレンインターポリマーであるVERSIFY(商標)3401は、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から市販されている。
【0132】
0.963g/ccの密度及び10g/10分のメルトインデックス(I2)を有する高密度ポリエチレンホモポリマーであるDOW(商標)10462Nは、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている。
【0133】
0.917g/ccの密度及び25g/10分のメルトインデックスを有するエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物であるDOWLEX(商標)2517は、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から市販されている。
【0134】
0.941g/ccの密度及びス4g/10分のメルトインデックスを有する線状低密度ポリエチレンであるDOWLEX(商標)2027Gは、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から市販されている。
【0135】
繊維の形成
繊維は、Hills Bicomponent Continuous Filament Fiber Spinning Lineで紡糸する。偏心コアシース構成を有する二成分繊維が作製される。繊維を、以下の条件に従ってHills Lineで紡糸する。230℃の融解温度を達成するように、押出成形機のプロファイルを調整する。各穴のスループット率は、0.6ghm(グラム/穴/分)である。Hills Bicomponentダイを使用し、以下の表4に従って一方の押出機内のポリマーを含む第1の領域及び他方の押出機内の別のポリマーを含む第2の領域を有する40/60のコア/シース比(重量単位)で操作して、比較例(CE)1、2、3、4、5、及び6を形成する。Hills Bicomponentダイを、以下の表5に従って一方の押出機内のポリマーを含む第1の領域及び他方の押出機内の別のポリマーを含む第2の領域を有する70/30のコア/シース比(重量単位)で操作して、比較例(CE)7、8、9、10、11、及び12並びに本発明の実施例(IE)1、2、3、及び4、及び5を形成する。ダイは、0.6mmの穴直径及び4/1の長さ/直径(L/D)を有する144個の穴からなる。急冷空気温度及び流量は、それぞれ15~18℃及び520cfm(立方フィート/分)に設定する。クエンチングゾーンの後、空気流中で空気圧によってスロットユニット内のフィラメントを取り込むことにより144本のフィラメントに延伸張力を印加する。気流の速度は、スロットアスピレータの圧力によって制御する。各実施例につき、異なる圧力で4回の実験を行い、ここでは、スロットアスピレータ圧力を、ある実験では20psi、別の実験では30psi、別の実験では40psi、及び別の実験では50psiに設定する。各実験につき、実施例の繊維の曲率を測定する。以下の表6は、本発明の実施例及び比較例の曲率データを提供する。表から分かるように、70:30の第1領域対第2領域の重量比を有し、第1領域にポリプロピレンブレンドを含み、第2領域にエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物を含む本発明の実施例は、比較例と比較して向上した曲率を示すことができる。例えば、本発明の実施例3は、30psiで3.4mm-1の曲率を示し、これは、比較例のいずれよりも著しく高い曲率である。いかなる理論にも束縛されるものではないが、増大した曲率を有する繊維の能力を生じさせるのは、領域の重量比及び成分(例えば、ポリプロピレンホモポリマー及びプロピレン-エチレンインターポリマーを含むポリプロピレンブレンドであって、当該プロピレン-エチレンインターポリマーが特定の密度及びメルトフローレートを有するもの、並びに特定の密度及びメルトインデックス(I2)を有するエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー組成物)を含む繊維の特定の組成である。
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
【表6】
【0139】
存在する場合、あらゆる相互参照されるか又は関連する特許又は出願、及び本出願が優先権又はその利益を主張するあらゆる特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文献は、明示的に除外されるか、又は別段限定されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。あらゆる文献の引用は、それが本明細書に開示若しくは特許請求されたあらゆる発明に関する先行技術であること、又はそれ単独で、若しくはあらゆる他の参考文献とのあらゆる組み合わせで、そのような発明を教示、示唆、若しくは開示することを認めるものではない。更に、本文書における任意の用語の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書における同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合は、本文書においてその用語に割り当てられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0140】
本発明の特定の実施形態を例示し、説明したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行い得ることは当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内にあるそのような変更及び改変を全て網羅することが意図されている。
図1
【国際調査報告】