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特表2024-533299充電を実行するための適切な充電スタンドのインテリジェントな事前選択を設定するための方法、充電計画アシスタント、および車両
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  • 特表-充電を実行するための適切な充電スタンドのインテリジェントな事前選択を設定するための方法、充電計画アシスタント、および車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】充電を実行するための適切な充電スタンドのインテリジェントな事前選択を設定するための方法、充電計画アシスタント、および車両
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/40 20240101AFI20240905BHJP
   G01C 21/28 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
G06Q50/40
G01C21/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515047
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2022071075
(87)【国際公開番号】W WO2023041231
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021004631.5
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン・ブレム
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・エックハルト
(72)【発明者】
【氏名】マルティーン・ケプラー
(72)【発明者】
【氏名】デニス・シュヴァルツ
【テーマコード(参考)】
2F129
5L050
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129DD47
2F129DD49
2F129EE02
2F129EE80
2F129EE90
2F129EE96
2F129FF11
2F129FF39
2F129FF59
5L050CC42
(57)【要約】
本発明は、電気駆動可能な車両(3)のトラクションバッテリ(2)を充電するために充電を実行するための適切な充電スタンド(1)のインテリジェントな事前選択を設定するための方法に関し、充電を実行するための指示が、少なくとも1つの車両の要求、利用者の要求および/または環境要因の形で記録された変数に応じて出力される。本発明は、記録された変数とは異なる少なくとも1つの車両の要求、利用者の要求、環境要因および/または走行固有の要因の値が、記録された変数を評価することによって推定され、それらの要求および/または要因を少なくとも1つの充電スタンド固有の属性と比較することによって、充電を実行するために少なくとも1つの適切な充電スタンド(1)が、記録された変数および推定された値に応じて提案されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動可能な車両(3)のトラクションバッテリ(2)を充電するために充電を実行するための適切な充電スタンド(1)のインテリジェントな事前選択を設定するための方法であって、充電を実行するための指示が、少なくとも1つの車両の要求、利用者の要求および/または環境要因の形で記録された変数に応じて出力される、前記方法において、
前記記録された変数とは異なる少なくとも1つの車両の要求、利用者の要求、環境要因および/または走行固有の要因の値が、前記記録された変数を評価することによって推定され、前記要求および/または前記要因を少なくとも1つの充電スタンド固有の属性と比較することによって、充電を実行するための少なくとも1つの適切な充電スタンド(1)が、前記記録された変数および前記推定された値に応じて提案されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
- 車両の要求は、トラクションバッテリ(2)の充電レベル、タイヤ空気圧、オイル温度、冷媒温度および/または車両コンポーネントの不具合によって構成され、
- 利用者の要求は、空腹、喉の渇き、尿意、眠気、防護および/または疲労から構成され、
- 環境要因は、時刻、曜日、季節、気象条件および/または前記充電スタンド(1)の近くにある施設が、前記充電スタンド(1)から特定の距離に存在することから構成され、および/または
- 走行固有の要因は、前記車両(3)で走行しているルート、前記ルートの距離、前記ルートの少なくとも一部を走行するために必要な時間、座席の占有度および/またはある場所での前記車両(3)の滞在時間から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
充電のために前記車両(3)で少なくとも一度は訪れたことのある充電スタンド(1)が履歴のある充電スタンド(1)としてマークされ、履歴ありとしてマークされた充電スタンド(1)が、さらなる充電を実行するために優先的に提案されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
履歴のある充電スタンド(1)の少なくとも1つの属性が記録され、前記履歴のある充電スタンド(1)の少なくとも1つの前記属性を有している、履歴のある充電スタンド(1)とは異なる少なくとも1つの充電スタンド(1)が、さらなる充電を実行するために優先的に提案されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
充電スタンド(1)の属性は、以下の特徴、
- 特定の充電インターフェース、
- 特定の電気タイプ、特に充電電圧、充電電流、充電出力および/または周波数、
- 電気料金、
- 前記充電スタンド(1)の運営会社、
- エネルギー供給会社、
- ボーナスプログラム、
- 支払い方法、
- 既存の天候防護、
- 現在の、計画中の、および/または平均の占有率、
- 既存の照明、および/または
- 前記充電スタンド(1)の近くの設定距離内にある施設、
のうち少なくとも1つから構成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ヒューマン・マシン・インターフェースおよび演算装置(4)を備えた充電計画アシスタントであって、
前記ヒューマン・マシン・インターフェースおよび前記演算装置(4)は、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法を実行するために取り付けられていることを特徴とする、前記充電計画アシスタント。
【請求項7】
車両(3)であって、
請求項6に記載の充電計画アシスタントが搭載されていることを特徴とする、前記車両(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に詳しく定義されている種類の、電気駆動可能な車両のトラクションバッテリを充電するために充電を実行するための適切な充電スタンドのインテリジェントな事前選択を設定するための方法、請求項6の上位概念に詳しく定義されている種類の充電計画アシスタント、ならびに充電計画アシスタントを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ駆動式車両では、車両のエネルギー貯蔵装置にエネルギーを充填するための充電プロセスに対して、例えば液体燃料で駆動される内燃機関車両よりも複雑な要件が課されている。液体燃料が給油ポンプで比較的迅速に車両のタンクに充填できるのに対し、バッテリ駆動式車両のトラクションバッテリの充電は比較的長い時間がかかる。また、このために使用される充電スタンドは、そのバッテリ駆動式車両と互換性のない充電インターフェースを有していることもある。さらに、充電スタンドのネットワークは、ガソリンスタンドのネットワークに比べてまだ比較的貧弱である。充電スタンドが、他の利用者によってすでに使用されていることも少なくない。また、純粋なバッテリ駆動式車両は、内燃機関車両よりも航続距離が短いことも多い。特にこの理由から、バッテリ駆動式車両の利用者は、充電スタンドでの充電プロセスを慎重に計画し、時間を無駄にしないようにする必要がある。
【0003】
特許文献1から、電気自動車のルート計画のための装置、方法、およびシステムが公知である。この特許文献で開示されているルート計画の支援により、電気自動車のトラクションバッテリを充電するために、そのルートの近く、またはそのルート上にある充電スタンドが提案されることで、電気自動車を運転する人の快適性が改善される。これにより、車両を運転する人は自分で充電スタンドを探す必要がなくなる。システムによって提案される充電スタンドは、車両を運転する人にとって、ルートの走行時間ならびにコストが最小になるように選択される。このとき、電気自動車のトラクションバッテリの予想充電レベルがシステムによって推定される。そのために、気象条件、経路、ならびに交通量などの影響要因が考慮される。さらに、車両の利用者は、予定および/または利用者の好むレジャー活動などの利用者情報を保存することができ、それに応じて、例えば映画館など、利用者の好むレジャー活動の近くにある充電スタンドをシステムが優先的に選択する。選択された充電スタンドを決定するために多基準最適化が実行され、利用者は、個々の基準に対して個々の重み付け係数を設定することができる。例えば、利用者は、特定のレジャー活動と充電スタンドまでの近さが最適化にとって特に重要であり、電気料金は下位の役割を果たすようにするか設定できる。
【0004】
特許文献2は、許容できる車両充電スタンドの識別を開示している。この特許文献には、第三者評価を用いて充電スタンドを特徴付ける方法が説明されている。第三者評価とは、特定の充電スタンドの全体的印象を評価したものである。この第三者評価は、一次評価と二次評価から構成されている。一次評価は、成績(例えば1、3などの数字)または星(例えば5つ星)による評価に相当する。二次評価には、充電スタンドに関する情報(充電スタンド周辺の安全性など)、アトラクションまたは施設(ショップやレストランなど)の有無、ならびに利便性評価(充電スタンドが有している充電インターフェースの数および種類)、どれくらいの電気料金が発生するか等々が含まれている。適切な充電ステーションの快適な選択のため、利用者は、充電プロセスに提案されるには充電スタンドが最低どれくらいの第三者評価を有している必要があるかを入力することができる。車両のトラクションバッテリの充電レベルが大きく低下した場合は、第三者評価のより悪い充電スタンドも自動的に考慮されるようにすることができる。充電スタンドのすべての利用者は第三者評価を行うことができる。第三者評価の入力は、例えば充電スタンドで直接行うこともできるし、スマートフォンなどの移動端末によって、および/または車両のインフォテイメントシステムによって行うこともできる。入力は、音声によっても可能である。さらに、この特許文献に開示されているシステムは、ナビゲーションルートが入力されていない場合、その車両が走行するルートを予測したり、例えば過去にその車両が走行した区間などの履歴データからルートを学習したりすることもできる。
また、特許文献3は、旅行計画方法および旅行計画モジュールを開示している。この方法によれば、例えば燃料残量の低下またはトラクションバッテリの充電レベルの低下などのように、車両の要求がある場合、また食べ物や飲み物を摂る、またはトイレに行くなどのように、利用者の要求がある場合、および/または環境要因が存在する場合は停車が推奨される。環境要因とは、例えば天気、夕暮れ時、食事の時間帯等々である。この特許文献によれば、システムは、緊急性の高い要求事項と緊急性の低い要求事項を優先付けすることができる。車両を運転する人の快適性を高めるため、充電スタンドの近くになければならない特定の施設を、チェックボックスによってリストから選択することができ、それによって停車する充電スタンドが提案される。例えば、車両を運転する人がレストランをマークした場合、それによってレストランが近くにある充電スタンドだけを提案させるようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE102018214986A2
【特許文献2】DE102016123669A1
【特許文献3】DE102019116323A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電気駆動可能な車両のトラクションバッテリを充電するために充電を実行するための適切な充電スタンドのインテリジェントな事前選択を設定するための方法を提供するという課題に基づいており、その支援によって、車両を利用する際に車両を運転する人の快適性が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この課題は、充電を実行するための適切な充電スタンドのインテリジェントな事前選択を設定するための、請求項1の特徴を持つ方法によって解決される。有利な実施形態および発展形態、ならびに充電計画アシスタントおよびそのような充電計画アシスタントを搭載した車両は、この請求項1に従属する請求項から明らかになる。
【0008】
電気駆動可能な車両のトラクションバッテリを充電するために充電を実行するための適切な充電スタンドのインテリジェントな事前選択を設定するための方法であって、充電を実行するための指示が、少なくとも1つの車両の要求、利用者の要求および/または環境要因の形で記録された変数に応じて出力される方法において、本発明に基づき、記録された変数とは異なる少なくとも1つの車両の要求、利用者の要求、環境要因および/または走行固有の要因の値が、記録された変数を評価することによって推定され、それらの要求および/または要因を少なくとも1つの充電スタンド固有の属性と比較することによって、充電を実行するための少なくとも1つの適切な充電スタンドが、記録された変数および推定された値に応じて提案される。
【0009】
本発明に基づく方法の支援により、電気駆動可能な車両を利用する際に、車両を運転する人の特に快適なユーザー体験が可能になる。従って、記録された変数を評価することによって、少なくとも1つの車両の要求、利用者の要求、環境要因および/または走行固有の要因の形で値を推定することができ、これにより、利用者および/またはその車両の要求を特に快適に考慮することが可能になる。これにより、利用者は、その人自身の要求があることを車両に知らせる必要がなくなる。さらに、車両の要求を検出するために、車両の要求が発生することは必要ない。従って、車両の要求を記録するだけの場合と比較して、早期に車両の要求を特定することができる。このことは、適宜適切な充電スタンドの選択時に考慮することができる。それにより、存在している要因を考慮して特定の充電スタンドに行く場合は、存在するすべての要求を実現できる確率が高くなる。
【0010】
さらに、車両の要求、利用者の要求および/または環境要因の形で記録された変数から、少なくとも1つの走行固有の要因も推定することができる。走行特有の要因を考慮すれば、状況に応じて、充電を実行するためのさらに適切な充電スタンドを提案することが可能である。
【0011】
本方法の有利な発展形態において、
・ 車両の要求は、トラクションバッテリの充電レベル、タイヤ空気圧、オイル温度、冷媒温度および/または車両コンポーネントの不具合によって構成され、
・ 利用者の要求は、空腹、喉の渇き、尿意、眠気、防護および/または疲労から構成され、
・ 環境要因は、時刻、曜日、季節、気象条件および/または充電スタンドの近くにある施設が、充電スタンドから特定の距離に存在することから構成され、および/または
・ 走行固有の要因は、車両で走行しているルート、ルートの距離、ルートの少なくとも一部を走行するために必要な時間、座席の占有度および/またはある場所での車両の滞在時間から構成されるようになっている。
【0012】
記録された変数および推定された値に応じて、異なる要求達成度に伴って、さまざまな充電スタンドに行くことができる。例えばトラクションバッテリを充電する必要がある、タイヤ空気圧を補充する必要がある、車両コンポーネントを修理する必要がある等々の理由で、車両の要求が存在する場合、近くに車両を修理できる場所および/またはメンテナンスできる場所がある充電スタンドに行くのは賢明なことである。これにより、車両を運転する人は充電スタンドから遠く離れた整備工場まで行く必要はない。このことは、車両を運転する人の快適性を改善する。
【0013】
車両を運転する人が空腹や喉の乾きを感じていれば、近くにスナックバー、レストラン等々が見つけられる充電スタンドに行くことが考えられる。車両を運転する人がトイレを使用する必要がある場合は、そこでトイレに行くこともできる。眠気、疲労がある場合、および/または防護を求める必要がある場合は、例えばホテルの近くにある充電スタンドに行くことが考えられ、それによって車両を運転する人はそこで休息をとることができる。
【0014】
同様に、環境要因に応じて、特定の充電スタンドに行き、特定の充電スタンドを回避することも車両を運転する人にとって賢明なことであるかもしれない。例えば時刻から、必要に応じて季節を考慮して、昼なのか、朝なのか、夕暮れ時または夜なのかを判断することができる。夜または夕暮れ時の場合は、より安全な充電スタンドまたは少なくとも安全に感じられる充電スタンドに行く必要があるかもしれない。そのような充電スタンドは、例えば犯罪率の少ない地域にあり、および/または充電スタンドの近くには公共施設や、人の集まる施設またはアクティビティのある施設がある。より安全な充電スタンドは、特に広範囲に照明があることによっても特徴づけられる。気象条件に応じて、例えば荒天および/または雨の場合は、天候状態から防護された充電スタンドに行き、充電プロセス中に濡れないようにすることは、車両を運転する人にとって有益であるかもしれない。
【0015】
当該車両を使って走行するルートに応じて、同様に特定の充電スタンドは優先的に表示され、特定の充電スタンドは充電のために提案されないようにすることもできる。例えば、車両で走行しているルートの比較的近くにある充電スタンドだけが表示される。これにより、車両を運転する人が充電スタンドまで迂回しなければならない時間を短縮する。当該車両が滞在時間の基準値を超えてある場所に留まっている場合、この滞在時間をトラクションバッテリの充電に使用することができる。しかしながら、車両がその場所に比較的短時間留まっている場合は、充電プロセスを実行する価値はない。
【0016】
列挙した要求および/または要因から、その他の要求および/または要因も推定することができる。トラクションバッテリがほとんど空になっており、充電する必要がある場合、30分走行した後にトイレのある充電スタンドに行くよりは、電気料金のできるだけ安い充電スタンドに行く方が好まれるかもしれない。しかし、トラクションバッテリが空になるまで4時間走行した後では、近くにトイレがある充電スタンドの方が、電気料金の安い充電スタンドよりも好まれるかもしれない。というのも、この場合、車両を運転する人および/またはその他の車両乗員は、このようなケースにおいて強い尿意を催している場合があるからである。
【0017】
時刻を考慮して、例えばランチタイムでは近くにレストランおよび/またはスナックバーのある充電スタンドが好まれ、午後では近くにカフェのある充電スタンドが好まれるかもしれない。
【0018】
記録された変数を考慮して、例えば休日かどうかを推定することができる。そのために、例えば現在の日付、ナビゲーションルート、ならびにルートの長さおよび/または走行目的地を分析することができる。さらに、座席占有センサの評価により、例えば車両を運転している人の子供など、その他の車両乗員が当該車両で旅行しているかを検知することもできる。その他の車両乗員がいる場合、例えば特にファミリーに優しい充電スタンドを提案することができる。そのような充電スタンドは、例えば充電スタンドの近くに遊び場および/または犬用の遊び場があることによって特徴づけられる。
【0019】
走行目的地の評価により、滞在時間も推定することができる。例えば車両が見本市の近くで停車していれば、車両を運転する人は、場合によっては一日を見本市会場で過ごしたいと思っているだろう。従って、そこから結果的に生じる比較的長い滞在時間は、車両のトラクションバッテリの充電に適している。
【0020】
同様に、推定された滞在時間は、走行戦略を計画する際に考慮することができる。走行目的地で充電を実行する確率が高い場合、このとき確率が高いとは、設定した確率値、例えば80%を超えている必要があることを意味しており、この車両での走行は、車両が比較的低いトラクションバッテリ充電レベル、例えば10%の残存容量で走行目的地に到着するように計画される。比較的短い滞在時間が予想される場合、意味のある充電を実行することも不可能である。この場合、車両は比較的高い残存容量、例えば60%で走行目的地に到着するように計画される。
【0021】
そのようなシナリオにおいては、車両によるナビゲーションを実行する必要はない。車両は、例えば、車両の位置を自動的に確認し、車両の近くにある施設、例えば見本市会場、車両を運転する人の仕事場、車両を運転する人の居住地等々を考慮することによって潜在的な滞在時間を推定することができる。滞在時間が長いことを車両が推定すると、例えば音による警告および/または視覚的警告の形で、今が充電の実行に適したタイミングであるという指示を、車両を運転する人に与えることができる。
【0022】
見本市会場の代わりに、例えばべーカリーや郵便局に到着した場合は、比較的短い滞在時間を予想することができる。この場合、充電の可能性は予想されず、および/または充電は提案されない。
【0023】
本発明に基づく方法のさらなる有利な実施形態によれば、充電のために当該車両で少なくとも一度は訪れたことのある充電スタンドが履歴のある充電スタンドとしてマークされ、履歴ありとしてマークされた充電スタンドが、さらなる充電を実行する際に優先的に提案される。車両を運転する人が、すでに一度、充電を実行するために特定の充電スタンドを使用している場合、そのことから、車両を運転する人がこの特別な充電スタンドで快適な充電を実行したと推定することができる。
【0024】
一般には、これに加え、車両を運転する人が特定の充電スタンドで充電を実行している頻度も、これらの特別な充電スタンドを提案するために用いることができる。つまり、車両を運転する人が特定の充電スタンドで充電を実行している頻度が高いほど、次の充電を実行するためにこの充電スタンドが車両を運転する人に提案される優先度は大きくなる。履歴のある充電スタンドの例は、車両を運転する人の居住地のウォールボックス、車両を運転する人の仕事場の充電スタンド、車両を運転する人の休暇先の特定の充電スタンドまたは車両を運転する人が頻繁に走行するルート沿いにある充電スタンドである。
【0025】
本発明に基づく方法のさらなる有利な実施形態は、さらに、履歴のある充電スタンドの少なくとも1つの属性が記録され、履歴のある充電スタンドの少なくとも1つの属性を有している、履歴のある充電スタンドとは異なる少なくとも1つの充電スタンドが、さらなる充電を実行するために優先的に提案されるようになっている。これにより、車両を運転する人にとって、充電を計画する際の快適性がさらに改善される。従って、車両を運転する人は、充電を実行する際に自分の好みを充電計画システムに伝えるために、積極的に入力を行う必要はない。特定の充電スタンドが、例えば特に安い料金設定を有している場合、アイスクリームパーラーの近くにある場合、特に高い充電容量を備えている場合など、車両を運転する人がそのような充電スタンドをまだ一度も訪れたことがなくても、同じ属性を持つその他の充電スタンドを提案することも可能である。
【0026】
好ましくは、充電スタンドの属性は、以下の特徴、
・ 特定の充電インターフェース、
・ 特定の電気タイプ、特に充電電圧、充電電流、充電出力および/または周波数、
・ 電気料金、
・ 充電スタンドの運営会社、
・ エネルギー供給会社、
・ ボーナスプログラム、
・ 支払い方法、
・ 既存の天候防護、
・ 現在の、計画中の、および/または平均の占有率、
・ 既存の照明、および/または
・ 充電スタンドの近くの設定距離内にある施設、
のうち少なくとも1つによって構成される。
【0027】
このとき、一般に、車両を運転する人は、好ましい施設が、近くの充電スタンドからどれくらいの距離内になければならないかを設定することもできる。例えば、車両を運転する人は、そのために、10メートル、100メートル(またはキロメートル)の距離を入力することができる。
【0028】
本発明に基づき、前述の方法を実行するために、ヒューマン・マシン・インターフェースおよび演算装置を備えた充電計画アシスタントが取り付けられている。ヒューマン・マシン・インターフェースを介して、車両を運転する人は、充電計画アシスタントと対話することができる。例えば、充電計画アシスタントには、インフォメーションを出力するためのディスプレイなどの表示部と、操作アクションを入力するためのタッチスクリーン、タッチパネル、ボタン、スイッチ、ロータリーコントローラ等々の操作要素とが含まれている。充電計画アシスタントは、そのために、記録される変数を記録し、推定される値を推定する能力がある。さらに、充電計画アシスタントは、車両を運転する人が充電を実行するのに、どの属性を持つ充電スタンドを好んで訪れているか評価することにより、特定の利用者の挙動を学習することもできる。従って、充電計画アシスタントは、車両を運転する人にとって特に快適な充電プロセスを実現する能力がある。
【0029】
本発明に基づき、車両には充電計画アシスタントが搭載されている。この車両は、乗用車、トラック、トランスポータ、バス、またはEバイクやEスクータのような小型車両など、任意の車両であってよい。ヒューマン・マシン・インターフェースとしては、例えばインストルメントクラスタ、ヘッドユニット、ダッシュボードの操作要素など、車両の該当するコンポーネントを使用することができる。しかし、一般には、本発明に基づく充電計画アシスタントを、例えばスマートフォン、タブレットコンピュータなどの移動端末で実行することも可能である。とはいえ、車両に搭載された充電計画アシスタントは、車両を運転する人が個別のデバイスを操作する必要がないので、特に高いユーザー利便性を提供する。特に好ましくは、充電計画アシスタントを利用するために、車両を運転する人が個別の操作アクションを入力する必要はない。従って、適切な充電スタンドの提案は自動的に行われる。
【0030】
充電を実行するための適切な充電スタンドのインテリジェントな事前選択を設定するための本発明に基づく方法のさらなる有利な実施形態は、下記において図面を参照しながら詳細に説明する実施例からも明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】充電計画アシスタントを備えた本発明に基づく車両の概略図である。
図2】本発明に基づく方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、バッテリによって駆動可能な本発明に基づく車両3を示している。このために、車両3には、少なくとも1つのトラクションバッテリ2、ならびに少なくとも1つの電気駆動機械5が含まれている。車両3は、ハイブリッド車として実施されていてもよい。さらに、車両3は、充電ケーブル7を接続するための充電インターフェース6を有し、充電ケーブル7を使って充電スタンド1から車両3に電気エネルギーを供給することができる。
【0033】
さらに、車両3は演算装置4を備え、この演算装置4で本発明に基づく充電計画アシスタントが実行される。車両を運転する人と対話するために、さらに、車両3は少なくとも1つの表示部8ならびに少なくとも1つの操作アクションの入力装置9も有している。無線通信インターフェース10を介して、車両3または演算装置4は、車両外部の中央演算装置11とデータを交換することができる。例えば、車両3は、車両3の近くにある充電スタンド1に関するインフォメーションを中央演算装置11から受信できる。これには、充電スタンド1の位置以外に、現在提供されている電気料金、充電スタンド1の現在の利用状況、充電スタンド1で利用可能な充電インターフェース、使用可能な電気タイプなどの充電スタンド固有の属性も含まれている。
【0034】
このとき、通常は、充電スタンド1も中央演算装置11と通信可能である。そのような通信は、例えば移動無線やWiFi等を介して無線で行うことができる。従って、充電スタンド1は、例えば第三の車両によって充電スタンド1での充電がすでに予約されている時間帯を演算装置11に通知することができる。
【0035】
充電の特に快適な計画のために、図2に示された方法200が実行される。そのために、第1の方法工程201では、少なくとも1つの測定可能な変数が、少なくとも1つの車両要求、利用者要求および/または環境要因の形で記録される。そのために、例えばトラクションバッテリ2の充電レベルが監視され、オイル温度が監視され、車両を運転する人の健康状態が監視され、時刻が記録され、外気温度が測定され、および/または等々のことが行われる。
【0036】
それに続く方法工程202では、記録された変数の少なくとも1つから、記録された変数とは異なるさらなる車両の要求、利用者の要求、環境要因および/または走行固有の要因の値が推定される。例えば、一般的な昼食の時間帯であれば、車両を運転している人が空腹であることを時刻から推定することができる。車両を運転している人が比較的長い時間車両3を運転していれば、車両を運転している人が尿意を催していることを放電しているトラクションバッテリから推定することができる。同様に、このために、車両3の作動時間も記録することができる。車両3の現在の場所から、滞在時間を導き出すことができる。45分などの比較的長い滞在時間の場合、充電スタンドに行くのを推奨することができる。6分などの比較的短い滞在時間の場合、そのような推奨は出力されない。
【0037】
方法工程202に続く方法工程203では、充電計画アシスタントによって、充電を実行するための適切な充電スタンドが出力される。例えば、充電スタンドは、マップ上に表示することもできるし、リストで表示することもできる。このリストは、車両を運転している人にとっての快適性の値または利便性の値に従って並べることができる。このとき、特に便利な、すなわち快適な充電スタンドがリストの最初に示される。同様に、このリストは、充電スタンドと現在の車両位置の距離に従って並び替えることもできる。車両を運転する人が、1つまたは複数の提案された充電スタンド1をマークすると、それに応じて、例えばその充電スタンド1の属性などの追加情報が表示される。これにより、車両を運転する人は、特定の充電スタンド1に行くことを決定する前に、充電を実行するために潜在的に考慮の対象となる充電スタンド1に関する詳細な情報を得ることができる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-04-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動可能な車両(3)のトラクションバッテリ(2)を充電するために充電を実行するための適切な充電スタンド(1)のインテリジェントな事前選択を設定するための方法であって、充電を実行するための指示が、少なくとも1つの車両の要求、利用者の要求および/または環境要因の形で記録された変数に応じて出力される、前記方法において、
前記記録された変数とは異なる少なくとも1つの車両の要求、利用者の要求、環境要因および/または走行固有の要因の値が、前記記録された変数を評価することによって推定され、前記要求および/または前記要因を少なくとも1つの充電スタンド固有の属性と比較することによって、充電を実行するための少なくとも1つの適切な充電スタンド(1)が、前記記録された変数および前記推定された値に応じて提案されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記車両の要求は、前記トラクションバッテリ(2)の充電レベル、タイヤ空気圧、オイル温度、冷媒温度および/または車両コンポーネントの不具合によって構成され、
前記利用者の要求は、空腹、喉の渇き、尿意、眠気、防護および/または疲労から構成され、
前記環境要因は、時刻、曜日、季節、気象条件および/または前記充電スタンド(1)の近くにある施設が、前記充電スタンド(1)から特定の距離に存在することから構成され、および/または
前記走行固有の要因は、前記車両(3)で走行しているルート、前記ルートの距離、前記ルートの少なくとも一部を走行するために必要な時間、座席の占有度および/またはある場所での前記車両(3)の滞在時間から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
充電のために前記車両(3)で少なくとも一度は訪れたことのある充電スタンド(1)が履歴のある充電スタンド(1)としてマークされ、履歴ありとしてマークされた充電スタンド(1)が、さらなる充電を実行するために優先的に提案されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
履歴のある充電スタンド(1)の少なくとも1つの属性が記録され、前記履歴のある充電スタンド(1)の少なくとも1つの前記属性を有している、履歴のある充電スタンド(1)とは異なる少なくとも1つの充電スタンド(1)が、さらなる充電を実行するために優先的に提案されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
充電スタンド(1)の属性は、以下の特徴、
- 特定の充電インターフェース、
- 特定の電気タイプ、特に充電電圧、充電電流、充電出力および/または周波数、
- 電気料金、
- 前記充電スタンド(1)の運営会社、
- エネルギー供給会社、
- ボーナスプログラム、
- 支払い方法、
- 既存の天候防護、
- 現在の、計画中の、および/または平均の占有率、
- 既存の照明、および/または
- 前記充電スタンド(1)の近くの設定距離内にある施設、
のうち少なくとも1つから構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
ヒューマン・マシン・インターフェースおよび演算装置(4)を備えた充電計画アシスタントであって、
前記ヒューマン・マシン・インターフェースおよび前記演算装置(4)は、請求項1または2に記載の方法を実行するために取り付けられていることを特徴とする、前記充電計画アシスタント。
【請求項7】
車両(3)であって、
請求項6に記載の充電計画アシスタントが搭載されていることを特徴とする、前記車両(3)。
【国際調査報告】