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▶ アチーブ ライフ サイエンシーズ, インク.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】シチシン純度を評価する分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20240905BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20240905BHJP
   G01N 30/34 20060101ALI20240905BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20240905BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20240905BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G01N30/88 C
G01N30/26 A
G01N30/34 E
G01N30/72 C
G01N30/74 E
G01N30/86 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515048
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 US2022042699
(87)【国際公開番号】W WO2023038931
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,829
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522099342
【氏名又は名称】アチーブ ライフ サイエンシーズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】カーティス スウィフト
(72)【発明者】
【氏名】ケイティ ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル リチャードソン
(72)【発明者】
【氏名】マルコ デルガド
(57)【要約】
複数の波長での勾配クロマトグラフィーを使用してシチシンの純度を評価する方法が本明細書に提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シチシンの純度を評価するクロマトグラフィー方法であって、
(a)シチシン試料を、ステアリン酸(C18)を含む固定相を含み、かつ150mmの長さ、4.6mmの内径、及び2.5μmの粒子サイズを有するカラムに導入するステップであって、前記シチシン試料が、1つ以上の不純物を含む、導入するステップと、
(b)シチシン及び前記1つ以上の不純物が前記カラム上に保持されるように、約10のpHを有する第1の移動相を前記カラムに適用するステップと、
(c)約10のpHを有する第2の移動相を前記カラムに適用することによって、シチシン及び前記1つ以上の不純物を溶出するステップと、
(d)シチシン及び前記1つ以上の不純物を検出するステップと、を含む、前記クロマトグラフィー方法。
【請求項2】
シチシン及び前記1つ以上の不純物が、ステップ(d)における検出のために質量分析計に向けられる、請求項1に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の移動相が、質量分析計への注入に適合している、請求項1に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の移動相が、揮発性成分を含む、請求項3に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の移動相が、質量分析計への注入に適合している緩衝液を含む、請求項3に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項6】
前記第1の移動相が、10mMのホウ酸緩衝液及びアセトニトリルを約95対約5の比で含む、請求項1に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項7】
前記第2の移動相が、10mMのホウ酸緩衝液及びアセトニトリルを約5対約95の比で含む、請求項1に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項8】
前記1つ以上の不純物が、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、スパルテイン、及びアンモデンドリンからなる群から選択される、請求項1に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項9】
シチシンが、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、及びスパルテインの各々から分離される、請求項8に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項10】
N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、スパルテイン、及びアンモデンドリンの各々が、シチシン及び互いから分離される、請求項8に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項11】
前記第1の移動相が、前記カラムに少なくとも約2分間適用される、請求項1に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項12】
前記第2の移動相が、前記カラムに約20分~約24.5分間適用される、請求項1に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項13】
シチシン及び前記1つ以上の不純物を検出するステップが、1つ以上の波長でのUV/Vis吸収検出を含む、請求項1に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項14】
前記1つ以上の波長が、200nm及び308nmである、請求項13に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項15】
シチシンが、約308nmの波長で検出される、請求項13に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項16】
前記1つ以上の不純物が、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、及びアナギリンからなる群から選択され、前記1つ以上の不純物が、308nmの波長で検出される、請求項13に記載のクロマトグラフィー方法。
【請求項17】
前記1つ以上の不純物が、アングスチフォリン、及び/又はルパニンであり、前記1つ以上の不純物が、200nmの波長で検出される、請求項13に記載のクロマトグラフィー方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2021年9月8日に出願された、米国仮特許出願第63/241,829号の優先権を主張し、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ニコチンは、たばこ喫煙中に急速に吸収される中毒性物質である。薬物は、迅速に分布し、中枢神経系(CNS)における神経性ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)と相互作用すると考えられる。ニコチン中毒は、少なくとも部分的には、この相互作用から生じる。多くの喫煙者が禁煙を試みるが、薬理学的支持治療なしで成功する人は少ない。
【0003】
たばこ喫煙は、世界中で毎年約700万人の早期死亡に寄与する。喫煙は、非常に中毒性があり、補助なしでの禁煙の試みの95%超は、6ヶ月継続することができない。30代半ばを超えて喫煙を続ける1年毎に、その人は3ヶ月の平均余命を失うと推定されている。たばこの規制に関する世界保健機関(WHO)枠組条約は、マスメディアキャンペーン、たばこの増税、禁煙を望む喫煙者のための支援を含む、禁煙を促進するための証拠に基づくアプローチを特定する。
【0004】
(-)-シチシン(シチシニクリン(cytisinicline)、一般に単にシチシンと称される)は、Cytisus laburnum L.(キングサリ)及び他の植物の種子から単離された植物由来アルカロイドである。本明細書におけるシチシンへの言及は、(-)-シチシン、シチシニクリンを指す。
【0005】
シチシンの作用機序は、基礎薬理学者がニコチン性アセチルコリン受容体の様々なサブタイプの複雑な薬理学を理解するのを支援してきた。これらの研究は、ニコチン及びシチシンの両方が、側坐核のシェル及び他の場所におけるドーパミンの放出を媒介するアルファ4、ベータ2(α4β2)受容体に強くかつ優先的に結合することを示している。この受容体サブタイプは、ニコチン依存症の発症及び維持に関与しており、バレニクリンなどの薬物の主要標的であった。
【0006】
より安価で、より効果的で、改善された安全性プロファイルを有し、かつ/又は既知の治療を使用してニコチンをやめることができなかった個体をより成功裏に治療することができる、患者に優しいレジメンでのニコチン中毒治療の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
シチシンの純度を評価するための方法が提供される。
【0008】
いくつかの態様では、本開示は、シチシンの純度を評価するクロマトグラフィー方法であって、(a)シチシン試料を、ステアリン酸(C18)を含む固定相を含み、150mmの長さ、4.6mmの内径、及び2.5μmの粒子サイズを有するカラムに導入するステップであって、シチシン試料が、1つ以上の不純物を含む、導入するステップと、(b)シチシン及び1つ以上の不純物が、カラム上に保持されるように、約10のpHを有する第1の移動相を当該カラムに適用するステップと、(c)約10のpHを有する第2の移動相を当該カラムに適用することによって、シチシン及び1つ以上の不純物を溶出するステップと、(d)シチシン及び1つ以上の不純物を検出するステップと、を含む、クロマトグラフィー方法を提供する。
【0009】
ある特定の実施形態では、シチシン及び1つ以上の不純物は、ステップ(d)における検出のために質量分析計に向けられる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の移動相は、質量分析計への注入に適合している。ある特定の実施形態では、第1及び第2の移動相は、揮発性成分を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の移動相は、質量分析計への注入に適合している緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、第1の移動相は、約95対約5の比で10mMホウ酸緩衝液及びアセトニトリルを含む。ある特定の実施形態では、第2の移動相は、10mMホウ酸緩衝液及びアセトニトリルを約5対約95の比で含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、1つ以上の不純物は、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、及びスパルテインからなる群から選択される。また別の実施形態では、シチシンは、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、スパルテイン、及びアンモデンドリンの各々から分離される。いくつかの実施形態では、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、スパルテイン、及びアンモデンドリンの各々は、シチシン及び互いから分離される。
【0012】
別の実施形態では、第1の移動相は、カラムに少なくとも約2分間適用される。いくつかの実施形態では、第2の移動相は、カラムに約20分~約24.5分間適用される。
【0013】
いくつかの実施形態では、シチシン及び1つ以上の不純物を検出するステップは、1つ以上の波長でのUV/Vis吸収検出を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の波長は、200nm及び308nmである。また別の実施形態では、シチシンは、約308nmの波長で検出される。ある特定の実施形態では、1つ以上の不純物は、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、及びアナギリンからなる群から選択され、1つ以上の不純物は、308nmの波長で検出される。別の実施形態では、1つ以上の不純物は、アングスチフォリン、及び/又はルパニンであり、1つ以上の不純物は、200nmの波長で検出される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施形態によるシチシンの純度を評価するための例示的なプロセス100を示すフローチャートである。
【0015】
図2A-2B】本開示の実施形態による、200nmの波長(図2A)及び310nmの波長(図2B)で検出されたシチシン及び1つ以上の不純物を分離することができなかった、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)イソクラティック方法の例示的なクロマトグラフである。
【0016】
図3A-3G】本開示の実施形態による、シチシン(図3A)並びにN-ホルミルシチシン(図3B)、N-メチルシチシン(図3C)、ルパニン(図3D)、アングスチフォリン(図3E)、アナギリン(図3F)、及びスパルテイン(図3G)を含む既知の不純物の例示的な吸収スペクトルである。
【0017】
図4】本開示の実施形態による、移動相条件の変化に伴う、シチシン及び既知の不純物の各々の保持時間を示す、例示的なプロットである(凡例:(1)-水:TFA(100:0.05)/アセトニトリル:TFA(100:0.05)、(2)-水:ギ酸(100:0.1)/アセトニトリル:ギ酸(100:0.1)、(3)-20mM酢酸アンモニウム(pH5.8)/アセトニトリル、(4)10mM重炭酸アンモニウム(pH8.0)/アセトニトリル、及び(5)-水:ギ酸(100:0.1)/アセトニトリル:ギ酸(100:0.1)イソクラティックホールド)。
【0018】
図5A-5C】本開示の実施形態による、2mMのギ酸アンモニウム(pH8)及びアセトニトリルを含む移動相を使用した、シチシン及びN-ホルミルシチシン(図5A)、N-メチルシチシン及びアナギリン(図5B)、並びにアングスチフォリン及びルパニン(図5C)の例示的なクロマトグラフである。
【0019】
図6A-6C】本開示の実施形態による、2mMのギ酸アンモニウム(pH8)及びメタノールを含む移動相を使用した、シチシン及びN-ホルミルシチシン(図6A)、N-メチルシチシン及びアナギリン(図6B)、並びにアングスチフォリン及びルパニン(図6C)の例示的なクロマトグラフである。
【0020】
図7】本開示の実施形態による、移動相のpH変化に伴う、シチシン及び既知の不純物の各々の保持時間を示す、例示的なプロットである(凡例:(1)-20mMギ酸アンモニウム(pH8.0)/メタノール、(2)-10mMホウ酸(pH8.5)/メタノール、(3)-10mMホウ酸(pH9.0)/メタノール、及び(4)-アンモニア溶液(pH9.2)/メタノール)。
【0021】
図8】本開示の実施形態による、固定相の変化に伴う、シチシン及び既知の不純物の各々の保持時間を示す、例示的なプロットである(凡例:(1)-C18、150×4.6mm、3.5μm粒子サイズ、(2)-フェニル、150×4.6mm、3.5μm粒子サイズ、(3)-フェニル-ヘキシル、150×4.6mm、3.5μm粒子サイズ、(4)-YMC C18、150×4.6mm、3.0μm粒子サイズ、(5)-フェニル、150×4.6mm、3.0μm粒子サイズ、(6)-Synergi MAX-RP、150×4.6mm、4μm粒子サイズ、及び(7)-Gemini C6-フェニル、150×4.6mm、5μm粒子サイズ)。
【0022】
図9A-9C】本開示の実施形態による、10mMのホウ酸緩衝液(pH8)及びメタノールを含む移動相を使用した、シチシン及びN-ホルミルシチシン(図9A)、N-メチルシチシン及びアナギリン(図9B)、並びにアングスチフォリン及びルパニン(図9C)の例示的なクロマトグラフである。
【0023】
図10A-10C】本開示の実施形態による、固定相XBridge C18 3.5μm及びメタノールを使用した、シチシン及びN-メチルシチシン(図10A)、N-ホルミルシチシン及びアナギリン(図10B)、並びにアングスチフォリン、ルパニン、及びスパルテイン(図10C)の例示的なクロマトグラフである。
【0024】
図11】本開示の実施形態による、移動相中のメタノールの包含が、クロマトグラフにおける顕著な勾配上昇を引き起こすことを示す、例示的なクロマトグラフである。
【0025】
図12】本開示の実施形態による、移動相の勾配変化に伴う、シチシン及び1つ以上の不純物の保持時間を示す、例示的なプロットである(凡例:(A)-勾配A、(D)-勾配D、(E)-勾配E、(F)-勾配F、並びに(G)-勾配F、表22に提供される勾配A、及び表23に提供される勾配D~G)。
【0026】
図13A-13F】本開示の実施形態による、200nmの波長(図13A)及び308nmの波長(図13B)でのシチシン及び1つ以上の不純物のオーバーレイ、200nmの波長(図13C)及び308nmの波長(図13D)での高濃度のシチシン及び既知の不純物のオーバーレイ、並びに200nmの波長(図13E)及び308nmの波長(図13F)での低濃度のシチシン及び既知の不純物のオーバーレイを表示する例示的なクロマトグラフを示す。
【0027】
図14A-14F】本開示の実施形態による、308nmでブランク(図14A)、オーバーレイ(図14B)、及びオーバーレイのズームイン(図14C)を含み、200nmでブランク(図14D)、オーバーレイ(図14E)、及びオーバーレイのズームイン(図14F)を含むように、シチシン、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アナギリン、アングスチフォリン、及びルパニンのオーバーレイを表示する、例示的なクロマトグラフを示す。
【0028】
図15A-15B】本開示の実施形態による308nm(図15A)及び200nm(図15B)でのHPLC方法を使用して線形応答を確認する例示的なプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、シチシンの純度を定量的に決定する方法に関する。方法は、特に、シチシン及び既知の不純物を分解するためのクロマトグラフィーの使用を伴う。シチシンは、しばしば、以下の不純物:N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、及びスパルテインと関連付けられ、クロマトグラフィー分離手順におけるこれらの不純物のシチシンとの共溶出は、シチシン純度を評価するための課題を提示している。複数の波長でシチシン及び関連不純物を分解する能力を有する勾配HPLC方法が本明細書に提供される。
【0030】
本明細書に提供される方法は、固定相(例えば、C18、150×4.6mm、2.5μm粒子サイズ)と組み合わせて塩基性移動相(例えば、pH10)を利用することによってシチシン及び既知の不純物の分離を可能にし、移動相は、質量分析などの分析技法と適合しており、例えば、移動相は、質量分析計への注入に適している。本明細書に提供される方法は、シチシン及び既知の不純物に選択的であり、シチシンの純度を評価するために使用される以前の分析技法と比較して優れた分離を提供する。
【0031】
本開示は、様々な形態で具現化されることが可能であるが、いくつかの実施形態の以下の説明は、本開示が本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を示される特定の実施形態に限定することを意図しないことを理解してなされる。見出しは、利便性のためにのみ提供され、いかなる方法でも本発明を限定するものと解釈されるべきではない。任意の見出しの下に示される実施形態は、任意の他の見出しの下に示される実施形態と組み合わされ得る。
【0032】
定義
本出願で指定される様々な定量値で使用される数値は、別途明示的に示されない限り、記載された範囲内の最小値及び最大値が両方「約」という単語によって先行されるかのように近似値として記載される。必ずしも明示的に記載されているわけではないが、全ての数値指定が「約」という用語によって先行されることを理解されたい。そのような範囲フォーマットは、利便性及び簡潔性のために使用され、範囲の限定として明示的に指定された数値を含むが、各数値及び部分範囲が明示的に指定されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲も含むように柔軟に理解されるべきであることを理解されたい。例えば、約1~約200の範囲の比は、約1及び約200の明示的に列挙された限界を含むが、約2、約3、及び約4などの個々の比、並びに約10~約50、約20~約100などのような部分範囲も含むと理解されるべきである。また、必ずしも明示的に記載されているわけではないが、本明細書に記載される試薬は単なる例示であり、そのような等価物は当該技術分野で既知であることを理解されたい。
【0033】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、量又は濃度などのような測定可能な値を指すとき、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、又は更には0.1%の変動を包含することを意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「質量分析」及び「MS」という用語は、それらの質量対電荷比、又は「m/z」に基づいてイオンを濾過、検出、及び測定する方法を指す。一般に、目的の1つ以上の分子はイオン化され、イオンはその後、質量分析装置に導入され、磁場及び電場の組み合わせによって、イオンは、質量(「m」)及び電荷(「z」)に依存する空間における経路に従う。
【0035】
また、範囲の開示は、列挙された最小値と最大値との間の全ての値、及びそのような値によって形成され得る任意の範囲を含む、連続する範囲として意図される。また、本明細書では、開示された数値を任意の他の開示された数値に分割することによって形成され得る任意の及び全ての比(並びに任意のそのような比の範囲)も開示される。したがって、当業者は、多くのそのような比、範囲、及び比の範囲が、本明細書に提示される数値から明確に導出され得、全ての事例において、そのような比、範囲、及び比の範囲が、本開示の様々な実施形態を表すことを理解するであろう。
【0036】
方法
本開示は、シチシンの純度を評価するための方法を提供する。いくつかの態様では、本開示は、クロマトグラフィーを使用してシチシン及び1つ以上の不純物の分解能を改善するための方法を提供する。多くの場合シチシンに関連する不純物としては、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、及びスパルテインが挙げられる。シチシン純度を決定するために、クロマトグラフィー方法は、既知の不純物からのシチシンの最適な分解能を達成する必要がある。
【0037】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるクロマトグラフィー方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。いくつかの実施形態では、方法は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を含む。
【0038】
図1は、シチシン及び1つ以上の不純物の最適な分解能を達成することができる例示的なプロセス100を例示するフローチャートである。ステップ101で、プロセス100は、シチシンの試料を含む溶液を調製することで開始し、試料は、シチシンに関連する1つ以上の不純物を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の不純物としては、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、及び/又はスパルテインが挙げられる。
【0039】
いくつかの実施形態では、シチシンの試料は、移動相Aの同じ組成を有する溶液中で調製され、移動相Aは、ステップ103aでプロセス100に添加される初期溶液である。いくつかの実施形態では、溶液は、水性成分及び有機成分を含む。いくつかの実施形態では、溶液は、揮発性成分を含む塩基性溶液(例えば、pH10)である。いくつかの実施形態では、溶液は、1つのみの水性成分及び1つのみの有機成分を含む2成分系である。いくつかの実施形態では、水性成分は、緩衝液を含み、緩衝液は、質量分析に適合している。いくつかの実施形態では、水性成分は、ホウ酸緩衝液を含み、有機成分は、アセトニトリルを含み、水性成分及び有機成分は、95:5、97:3、又は96:4の比で存在する。いくつかの実施形態では、シチシンの試料は、水性成分及び有機成分を含む溶液に添加され、水性成分は、ホウ酸緩衝液であり、有機成分は、アセトニトリルであり、水性成分対有機化合物の比は、95:5であり、溶液のpHは、約10である。いくつかの実施形態では、溶液は、10mMのホウ酸緩衝液及びアセトニトリルを約95対約5の比で10のpHで含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、溶液のpHは、約8~約10である。例えば、いくつかの実施形態では、溶液のpHは、約8、約9、又は約10である。いくつかの実施形態では、溶液のpHは、約10である。いくつかの実施形態では、ホウ酸緩衝液のpHは、水酸化アンモニウムの添加によって調整される。
【0041】
いくつかの実施形態では、溶液中及び/又は溶液の水性成分中のホウ酸の濃度は、約5mM~約30mMである。例えば、いくつかの実施形態では、溶液中及び/又は溶液の水性成分中のホウ酸の濃度は、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、又は約30mMである。いくつかの実施形態では、溶液中及び/又は溶液の水性成分中のホウ酸の濃度は、約10mMである。
【0042】
いくつかの実施形態では、溶液の有機成分は、アセトニトリルを含む。いくつかの実施形態では、溶液の有機成分は、アセトニトリル及びメタノールを含む。いくつかの実施形態では、溶液の有機成分は、溶液の有機成分の総体積の95体積%のアセトニトリル及び5体積%のメタノールを含む。いくつかの実施形態では、溶液の有機成分は、アセトニトリル以外の有機溶媒を含まない。いくつかの実施形態では、溶液の有機成分は、メタノールを含まない。
【0043】
プロセス100は、シチシンの試料を含む溶液が、固定相を含むカラムに導入される、ステップ102に進むことができる。いくつかの実施形態では、固定相は、分離チャネル又はクロマトグラフィーカラムとして機能する、分離カラムに収容される。いくつかの実施形態では、固定相は、疎水性固定相である。いくつかの実施形態では、固定相は、C18固定相である。いくつかの実施形態では、固定相は、150mmの長さ、4.6mmの内径を有し、平均サイズ3.0μmを有する粒子で充填されたカラム(C18、150×4.6mm、3.0μm)におけるC18固定相である。別の実施形態では、固定相は、150mmの長さ、4.6mmの内径を有し、平均サイズ2.7μmを有する粒子で充填されたカラム(C18、150×4.6mm、2.7μm)におけるC18固定相である。また別の実施形態では、固定相は、150mmの長さ、4.6mmの内径を有し、平均サイズ3.5μmを有する粒子で充填されたカラム(C18、150×4.6mm、3.5μm)におけるC18固定相である。一実施形態では、固定相は、150mmの長さ、4.6mmの内径を有し、平均サイズ2.5μmを有する粒子で充填されたカラム(C18、150×4.6mm、2.5μm)におけるC18固定相である。
【0044】
プロセス100は、移動相がカラムに通され、移動相がステップ103の経過(例えば、勾配相クロマトグラフィー)にかけて意図的に変更される、ステップ103に進むことができる。いくつかの実施形態では、移動相は、シチシン及び1つ以上の不純物を溶出する水性成分及び有機成分を含み、水性成分対有機成分の比は、移動相勾配を提供するように変化する。いくつかの実施形態では、移動相は、ステップ103中に変更されて、シチシン及び既知の不純物の保持に影響を与え、シチシン及び既知の不純物の最適な分解能を提供する。
【0045】
ある特定の実施形態では、1つ以上の移動相は、質量分析などの分析技法に適合しており、例えば、1つ以上の移動相は、質量分析計への注入に適している。移動相は、移動相が揮発性成分を含むため、質量分析などの分析技法に適合し得る。いくつかの実施形態では、移動相は、「不揮発性成分」を実質的に含まない。本明細書で使用される、「不揮発性成分」という用語は、液体クロマトグラフィー系を質量分析計とインターフェースさせるとき移動相溶媒を除去するために使用される条件下で実質的に不揮発性である1つ以上の移動相中に存在する成分を指す。
【0046】
いくつかの実施形態では、ステップ103は、第1の移動相(「移動相A」)がカラムに導入される第1のステップ103aを含む。いくつかの実施形態では、移動相Aは、水性成分及び有機成分を含む溶液である。いくつかの実施形態では、溶液は、揮発性成分を含む塩基性溶液(例えば、pH10)である。いくつかの実施形態では、移動相Aは、1つのみの水性成分及び1つのみの有機成分を含む2成分系である。いくつかの実施形態では、水性成分は、緩衝液を含み、緩衝液は、質量分析に適合している。いくつかの実施形態では、水性成分は、ホウ酸緩衝液を含み、有機成分は、アセトニトリルを含み、水性成分及び有機成分は、95:5、97:3、又は96:4の比で存在する。いくつかの実施形態では、移動相Aは、水性成分及び有機成分を含み、水性成分は、ホウ酸緩衝液であり、有機成分は、アセトニトリルであり、水性成分対有機化合物の比は、95:5であり、移動相AのpHは、約10である。いくつかの実施形態では、移動相Aは、10mMのホウ酸緩衝液及びアセトニトリルを約95対約5の比で10のpHで含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、移動相AのpHは、約8~約10である。例えば、いくつかの実施形態では、移動相AのpHは、約8、約9、又は約10である。いくつかの実施形態では、移動相AのpHは、約10である。いくつかの実施形態では、ホウ酸緩衝液のpHは、水酸化アンモニウムの添加によって調整される。
【0048】
いくつかの実施形態では、移動相A中及び/又は移動相Aの水性成分中のホウ酸の濃度は、約5mM~約30mMである。例えば、いくつかの実施形態では、移動相A中及び/又は移動相Aの水性成分中のホウ酸の濃度は、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、又は約30mMである。いくつかの実施形態では、移動相A中及び/又は移動相Aの水性成分中のホウ酸の濃度は、約10mMである。
【0049】
いくつかの実施形態では、移動相Aの有機成分は、アセトニトリルを含む。いくつかの実施形態では、移動相Aの有機成分は、アセトニトリル及びメタノールを含む。いくつかの実施形態では、移動相Aの有機成分は、移動相Aの有機成分の総体積の95体積%のアセトニトリル及び5体積%のメタノールを含む。いくつかの実施形態では、移動相Aの有機成分は、アセトニトリル以外の有機溶媒を含まない。いくつかの実施形態では、移動相Aの有機成分は、メタノールを含まない。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1のステップ103aで、移動相Aは、少なくとも約2分にわたってカラムに通される。例えば、いくつかの実施形態では、移動相Aは、少なくとも約2分、少なくとも約3分、少なくとも約4分、少なくとも約5分、少なくとも約6分、少なくとも約7分、少なくとも約8分以上にわたってカラムに通される。いくつかの実施形態では、移動相Aを少なくとも約2分にわたってカラムに通すことは、シチシンの固定相への保持を増加させることができ、それによって、1つ以上の不純物からのシチシンの選択的分離を可能にし、シチシン及び1つ以上の不純物の全体的な分解能を増加させる。いくつかの実施形態では、移動相Aを少なくとも約2分にわたってカラムに通すことは、シチシン、N-ホルミルシチシン、及び/又はN-メチルシチシンの固定相への保持を増加させることができ、それによって、他の不純物(例えば、アングスチフォリン、ルパニン、及びアナギリン)から、及び互いからの最適な分解能を提供する。
【0051】
いくつかの実施形態では、ステップ103は、第2の移動相(「移動相B」)がカラムに導入される第2のステップ103bを含む。いくつかの実施形態では、移動相Bは、水性成分及び有機成分を含む溶液である。いくつかの実施形態では、溶液は、揮発性成分を含む塩基性溶液(例えば、pH10)である。いくつかの実施形態では、移動相Bは、1つのみの水性成分及び1つのみの有機成分を含む2成分系である。いくつかの実施形態では、水性成分は、緩衝液を含み、緩衝液は、質量分析に適合している。いくつかの実施形態では、水性成分は、ホウ酸緩衝液を含み、有機成分は、アセトニトリルを含み、水性成分及び有機成分は、5:95、3:97、又は4:96の比で存在する。いくつかの実施形態では、移動相Bは、水性成分及び有機成分を含み、水性成分は、ホウ酸緩衝液であり、有機成分は、アセトニトリルであり、水性成分対有機化合物の比は、5:95であり、移動相BのpHは、約10である。いくつかの実施形態では、移動相Bは、10mMのホウ酸緩衝液及びアセトニトリルを約5対約95の比で10のpHで含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、移動相BのpHは、約8~約10である。例えば、いくつかの実施形態では、移動相BのpHは、約8、約9、又は約10である。いくつかの実施形態では、移動相BのpHは、約10である。いくつかの実施形態では、ホウ酸緩衝液のpHは、水酸化アンモニウムの添加によって調整される。
【0053】
いくつかの実施形態では、移動相B中及び/又は移動相Bの水性成分中のホウ酸の濃度は、約5mM~約30mMである。例えば、いくつかの実施形態では、移動相B中及び/又は移動相Bの水性成分中のホウ酸の濃度は、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、又は約30mMである。いくつかの実施形態では、移動相B中及び/又は移動相Bの水性成分中のホウ酸の濃度は、約10mMである。
【0054】
いくつかの実施形態では、移動相Bの有機成分は、アセトニトリルを含む。いくつかの実施形態では、移動相Bの有機成分は、アセトニトリル及びメタノールを含む。いくつかの実施形態では、移動相Bの有機成分は、移動相Bの有機成分の総体積の95体積%のアセトニトリル及び5体積%のメタノールを含む。いくつかの実施形態では、移動相Bの有機成分は、アセトニトリル以外の他の有機溶媒を含まない。いくつかの実施形態では、移動相Bの有機成分は、メタノールを含まない。
【0055】
いくつかの実施形態では、第2のステップ103bで、移動相Bは、少なくとも約20分にわたってカラムに通される。いくつかの実施形態では、移動相Bは、約20~約24.5分にわたってカラムに通される。いくつかの実施形態では、移動相Bを少なくとも約20分~約24.5分にわたってカラムに通す際、シチシン及び1つ以上の不純物の各々は、異なる時間でカラムから溶出される。
【0056】
いくつかの実施形態では、ステップ103は、移動相Aがカラムに再導入されて、シチシン及び1つ以上の不純物の各々の溶出を確実にする、第3のステップ103cを含む。いくつかの実施形態では、移動相Aは、カラムに再導入され、少なくとも約0.5分にわたって通される。
【0057】
プロセス100は、シチシン及び1つ以上の不純物の各々がカラムから溶出されるステップ104に進むことができ、シチシン及び1つ以上の不純物の各々は、シチシン及び1つ以上の不純物の各々の完全な分離をもたらすように異なる時間でカラムから溶出される。いくつかの実施形態では、シチシンは、1つ以上の不純物の各々から分離される。いくつかの実施形態では、シチシンは、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、及び/又はスパルテインのうちの1つ以上から分離される。いくつかの実施形態では、シチシンは、N-ホルミルシチシンから分離される。いくつかの実施形態では、シチシンは、N-メチルシチシンから分離される。また別の実施形態では、シチシンは、アングスチフォリンから分離される。いくつかの実施形態では、シチシンは、ルパニンから分離される。いくつかの実施形態では、シチシンは、アナギリンから分離される。いくつかの実施形態では、シチシンは、スパルテインから分離される。
【0058】
いくつかの実施形態では、1つ以上の不純物の各々は、シチシンからだけでなく、互いからも分離される。いくつかの実施形態では、N-ホルミルシチシンは、シチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、及び/又はスパルテインのうちの1つ以上から分離される。いくつかの実施形態では、N-メチルシチシンは、シチシン、N-ホルミルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、及び/又はスパルテインのうちの1つ以上から分離される。いくつかの実施形態では、アングスチフォリンは、シチシン、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、ルパニン、アナギリン、及び/又はスパルテインのうちの1つ以上から分離される。いくつかの実施形態では、ルパニンは、シチシン、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、アナギリン、及び/又はスパルテインのうちの1つ以上から分離される。いくつかの実施形態では、アナギリンは、シチシン、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、及び/又はスパルテインのうちの1つ以上から分離される。いくつかの実施形態では、スパルテインは、シチシン、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、及び/又はアナギリンのうちの1つ以上から分離される。
【0059】
プロセス100は、シチシン及び1つ以上の不純物が検出される、ステップ105に進むことができる。いくつかの実施形態では、プロセス100は、シチシン及び1つ以上の不純物が検出器によってカラムから溶出されるとき、シチシン及び1つ以上の不純物を検出することを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、1つの又は移動相は、質量分析などの検出技法に適合している。いくつかの実施形態では、1つ以上の移動相は、質量分析計への試料注入の方法に適合している。いくつかの実施形態では、1つ以上の移動相の水性成分は、質量分析に適合している緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の移動相は、1つ以上の移動相が揮発性成分を含む(例えば、有機相及び/又は水性相は揮発性である)ため、質量分析計への直接注入に適合している。いくつかの実施形態では、緩衝液(例えば、ホウ酸緩衝液)は、質量分析に適合している揮発性緩衝液である。
【0061】
いくつかの実施形態では、方法は、シチシン及び1つ以上の不純物を検出のために質量分析計に向けることを含む。いくつかの実施形態では、シチシン及び1つ以上の不純物(1つ以上の移動相内に含まれる)は、カラムからの溶出後、質量分析計に注入される。いくつかの実施形態では、カラムからの溶出後のシチシン及び1つ以上の不純物の分析は、シチシンの純度を分析する「直接的な」方法を提供する。
【0062】
いくつかの実施形態では、検出技法は、質量分析である。質量分析を使用して流出物を分析するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、エレクトロスプレー質量分析(ES-MS)、大気圧化学イオン化(APCI)、膜導入質量分析(MIMS)、連続フロー高速原子衝撃(cf-FAB)、熱スプレー技法、粒子ビーム、移動ベルトインターフェースなどを含む、溶液中に存在する成分を直接分析することができる任意のタイプの質量分析が使用され得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、質量分析は、検出分解能を増強させるために、「タンデム質量分析」又は「MS/MS」を含むことができる。この技法では、目的の分子から生成された第1の、又は親イオンをMS装置において濾過することができ、この親イオンをその後断片化して、1つ以上の第2の、又は娘イオンを生成することができる、それは次いで第2のMS手順において分析される。親イオンの慎重な選択によって、特定の分析物によって産生されたイオンのみが断片化チャンバーに通され、不活性ガスの原子との衝突がこれらの娘イオンを産生する。親イオン及び娘イオンの両方が、所与のイオン化/断片化条件セット下、再現可能な方法で生成されるため、MS/MS技法は、極めて強力な分析ツールを提供することができる。例えば、濾過/断片化の組み合わせは、干渉物質を排除するために使用することができ、生体試料などの、複雑な試料において特に有用であり得る。
【0064】
他の実施形態では、様々な標準的なHPLC検出器のいずれかを、分析カラムからの溶出時の分析物の検出に使用することができる。この場合、カラムからの化合物の溶出は、クロマトグラムにおいてピークとして検出される。ピークの保持時間は、化合物を特定するために使用され、ピーク高さ(又は面積)は、試料中の化合物の量に比例している。「保持時間」は、分析物をクロマトグラフィー系に通すのに必要な時間であり、注入の時間から検出の時間まで測定される。理想的には、目的の各分析物は、特徴的な保持時間を有するであろう。適切な検出器は、良好な感度、良好な安定性、再現性、数桁にわたる線形応答、短い応答時間、及び操作の容易さを示す。そのような検出器としては、これらに限定されないが、UV/Vis吸収検出器、フォトダイオードアレイ検出器、蛍光検出器、屈折率検出器、及び導電率検出器が挙げられる。
【0065】
いくつかの実施形態では、グラフト光学系での走査型分光光度計を含むUV/Vis吸収検出器を使用することができる。重水素源(UV範囲、190~360nm)の独立した又はタングステン源(可視範囲、360~800nm)との組み合わされた使用は、カラムから出てくる吸収種を検出する簡単な手段を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態では、検出器は、可変波長検出器である。シチシン及び1つ以上の不純物は、UV/Vis検出を介して異なる最大吸収を有し、可変波長検出器は、複数の波長を使用して、シチシン及び1つ以上の不純物を単一クロマトグラムにおいて捕捉することによって、プロセスの感度を最大化することができる。いくつかの実施形態では、シチシン及び1つ以上の不純物は、約308nm及び約200nmの波長で検出される。
【0067】
いくつかの実施形態では、シチシンは、約308nmの波長で検出される。いくつかの実施形態では、シチシンは、約230nmの波長で検出される。
【0068】
いくつかの実施形態では、N-ホルミルシチシンは、約308nmの波長で検出される。いくつかの実施形態では、N-メチルシチシンは、約308nmの波長で検出される。いくつかの実施形態では、アナギリンは、約308nmの波長で検出される。
【0069】
いくつかの実施形態では、アングスチフォリンは、約200nmの波長で検出される。いくつかの実施形態では、ルパニンは、約200nmの波長で検出される。いくつかの実施形態では、シチシンは、約200nmの波長で検出される。いくつかの実施形態では、N-ホルミルシチシンは、約200nmの波長で検出される。いくつかの実施形態では、N-メチルシチシンは、約200nmの波長で検出される。いくつかの実施形態では、アナギリンは、約200nmの波長で検出される。
【0070】
いくつかの実施形態では、シチシン及び1つ以上の不純物は、以下の順序でカラムから順次溶出される:308nmの波長で検出されるN-ホルミルシチシン、シチシン、N-メチルシチシン、及びアナギリン。また別の実施形態では、シチシン及び1つ以上の不純物は、以下の順序でカラムから順次溶出される:200nmの波長で検出されるN-ホルミルシチシン、シチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、及びアナギリン。
【0071】
いくつかの実施形態では、シチシン及び1つ以上の不純物の保持時間(溶質、例えば、シチシンが、カラムを通過するのにかかる時間の尺度)は、1つ以上の不純物からのシチシンの分解をもたらすように異なる。いくつかの実施形態では、1つ以上の不純物の保持時間は、1つ以上の不純物の互い及びシチシンからの分解をもたらすように、互い及びシチシンとは異なる。
【0072】
いくつかの実施形態では、シチシンは、約6.5分の保持時間を有する。いくつかの実施形態では、N-ホルミルシチシンは、約5.5分の保持時間を有する。いくつかの実施形態では、N-メチルシチシンは、約8.2分の保持時間を有する。いくつかの実施形態では、アナギリンは、約10.9分の保持時間を有する。いくつかの実施形態では、アングスチフォリンは、約10分の保持時間を有する。いくつかの実施形態では、ルパニンは、約10.2分の保持時間を有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、シチシンは、約1分の相対保持時間を有する。いくつかの実施形態では、N-ホルミルシチシンは、約0.8分の相対保持時間を有する。いくつかの実施形態では、N-メチルシチシンは、約1.3分の相対保持時間を有する。いくつかの実施形態では、アナギリンは、約1.7分の相対保持時間を有する。いくつかの実施形態では、アングスチフォリンは、約1.53分の相対保持時間を有する。いくつかの実施形態では、ルパニンは、約1.56分の相対保持時間を有する。
【0074】
上記の開示から理解され得るように、本発明は、多種多様な用途を有する。本発明は、以下の実施例によって更に例示され、これらは単に例示的であり、本発明の定義及び範囲をいかなる方法でも限定することを意図しない。
【0075】
実施例:シチシンの純度を評価するための分析方法
この研究の目的は、シチシン純度を評価するための分析HPLC方法を開発することであった。スクリーニングされたパラメータの要約、及びHPLC方法に最適化された最終的な系パラメータの要約を以下に提供する。
【0076】
シチシン純度を評価するためのHPLC方法を開発することに関連する課題の1つは、以下を含む既知の不純物からシチシンを分解する能力である:N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン/テルモプシン(鏡像異性体)、及びスパルテイン(表1)。
【表1】
【0077】
シチシンを分析するための以前の方法は、分析全体を通して使用される移動相が一定のままであった、イソクラティックHPLC方法を使用した。しかしながら、イソクラティック方法は、方法が図2A(波長200nm)及び図2B(波長310nm)に示されるように既知の不純物からシチシンを分解することに失敗したため、限定的であった。
【0078】
更に、C18カラムを使用した逆相クロマトグラフィーに依存したシチシンを分析することに関する以前の報告は、310nmで1つのみの波長を使用した。これは、予想される不純物、アングスチフォリン、ルパニン、及びスパルテインのいくつかが、310nmの波長での吸収を全く有さないため、問題である(シチシン及び既知の不純物についてのUV吸収スペクトルについては図3A~3Gを参照されたい)。これは、既知の不純物からのシチシンの最適な分解能を達成する二重波長方法の必要性を示す。
【0079】
本研究は、複数の波長でシチシン及び予想される関連不純物を分解する能力を有する(イソクラティック方法とは対照的な)勾配HPLC方法をもたらす努力の中で設計された。開発プロセス中、スパルテイン及びアンモデンドリンをスクリーニングプロセスから除去した。これは、アンモデンドリンを調達することができず、スタンドアロンHPLC方法を使用してスパルテインを分析することが困難であるためであった。加えて、ピークがアナギリンに対応する試料中で検出された場合、キラル方法も開発されるであろうことに基づいて、テルモプシンも研究から除去した。
【0080】
1.試料調製
開発の経過にかけて、シチシンのピーク形状及びスクリーニングされた不純物を最適化する目的で、いくつかの希釈剤を試した。スクリーニングされた希釈剤を以下の表2に列挙する。
【表2】
【0081】
アセトニトリル(100%)は、様々な移動相にわたるピーク分割のために好適ではないと証明された。アセトニトリル:水の1:1混合物は、単一の広範なピークをもたらした。顕著な改善は、選択された希釈剤、移動相Aを使用したときに観察され、これは表3に示される好適なピーク形状をもたらした。
【表3】
【0082】
2.移動相スクリーニング:段階1
表4に列挙された移動相を、方法開発中にスクリーニングし、異なるpHレベルの選択をカバーした。表4は、スクリーニングプロセスの第1の段階においてスクリーニングされた移動相を、各行に詳述された水性相及びその対応する有機相で示す。移動相系番号2はまた、イソクラティック方法を模倣する異なる勾配(表5)を使用して実行した。移動相スクリーニングのこの段階では、スパルテインの参照材料は、入手可能ではなかったため、データには含まれない。
【表4】
【表5】
【0083】
スクリーニングは、試料を、0.5mg/mlのシチシン及び入手可能な全ての不純物で、以下の表6及び7に示される標準的なパラメータのセットを備えるHPLC系上で注入することによって行った。
【表6】
【表7】
【0084】
注入の各セットについて、移動相を変更して、各移動相系がクロマトグラフィーに及ぼした効果を調査した。移動相スクリーニングの主な目的は、全ての不純物(例えば、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アナギリン、アングスチフォリン、ルパニン)及び良好なピーク形状の適切な保持を送達した移動相を見つけることであった。
【0085】
図4及び表8は、入手可能な各不純物の保持時間が移動相条件とともにどのように変化するかを示す。
【表8】
【0086】
酸性勾配でのシチシンについての保持の欠如のため、異なる緩衝液系を使用して更なるスクリーニングを行った。20mMのギ酸アンモニウム(pH8.0)を調製し、有機相としてアセトニトリル及びメタノールの両方で別々にスクリーニングした。200nmで見出されるより少ない勾配不純物のため、ギ酸アンモニウムが重炭酸アンモニウムよりも好ましかった。メタノールは、シチシン及びスクリーニングされた不純物の保持に大きな影響を有することが証明された。各不純物について保持を少なくとも2分増加させた。このスクリーニングは、希釈剤が改変される前に実施されたため、ピーク形状は、この時点で依然として非常に悪いが、区別可能なピークは、各クロマトグラムにおいて依然として特定することができる。この段階のスクリーニングのクロマトグラムを、図5A~5C(2mMのギ酸アンモニウム(pH8)及びアセトニトリル)及び図6A~6C(2mMのギ酸アンモニウム(pH8)及びメタノール)に示す。
【0087】
3.移動相スクリーニング:段階2
有機相としてメタノールを使用して観察された保持の増加は、メタノールが移動相スクリーニングの次の段階に引き継がれたことを意味した。更なる緩衝液を異なるpHレベルでスクリーニングした。図7並びに表9及び10は、保持時間がpHとともにどのように変化するかを示す。結果を、メタノールとともに20mMギ酸アンモニウム(pH8.0)に対してプロットし、保持時間比較を示した(図7)。
【表9】
【表10】
【0088】
移動相スクリーニングのこの段階からの所見は、セクション5に詳述される更なる移動相最適化に使用された。
【0089】
4.固定相スクリーニング
固定相スクリーニングは、移動相スクリーニングの第2段階と並行して開始した。このスクリーニングは、移動相スクリーニングと同様の方法で実施したが、移動相の代わりにカラムを変更した。より小さい粒子サイズのカラムで観察された背圧の問題に対処するために、温度を30℃から40℃まで増加した。スクリーニングに使用されるパラメータを表11及び12に列挙する。
【表11】
【表12】
【0090】
スクリーニングされた固定相の範囲は、異なる逆相化学、並びに変動する粒子サイズ及びカラム寸法を組み込む。最良の固定相の選択は、全ての不純物及び同等のピーク形状の良好な分解能に基づいた。必要に応じて、高い試料負荷を可能にするために、シチシンピークの周りの良好なウィンドウも望まれた。スクリーニングされたカラムを以下の表13に列挙する。不純物の分離を実証する報告を図8に示す。
【表13】
【0091】
Synergi Polar-RP結果は、このカラムを使用して2つの化合物のみを溶出したため、この報告からは省略した。Synergi MAX-RPは、シチシンについて非常に悪いピーク形状を示した。フェニル及びフェニル-ヘキシル固定相の両方は、シチシンとN-ホルミルシチシンとの間に十分な分離を与えるのに苦労した。C18固定相は、シチジンピークの周りで最良の分離を与え、良好なピーク形状を示し、全ての不純物を分解した。以下の表14に列挙される更なるC18固定相をスクリーニングして、より多くの粒子サイズを調査した。
【表14】
【0092】
YMC3.0μm及び2.7μm C18固定相は、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、及びルパニンの不十分な分離をもたらした。YMC 3.0μmカラムもまた、N-ホルミルシチシンについて分割ピークをもたらした。2.7μm C18カラムもまた、シチシンについて非常に悪いピーク形状を示した。2.5μm C18、ACE 3.0μm C18、及び3.5μm C18固定相は、シチシン及び予想される不純物の良好な分離をもたらした。これらのカラムは、次の段階に引き継ぎ、追加の移動相に対してスクリーニングした。
【0093】
5.更なる移動相及び固定相スクリーニング
追加の、はるかにより標的化された展開の段階のために、最も有望なカラム及び移動相を組み合わせた。ホウ酸緩衝液移動相が、図9A~9C(20mMギ酸アンモニウム(pH8.0)及びメタノール)及び10A~10C(XBridge C18 3.5μm及びメタノール)に示されるように、シチシンピークの周りで分離を増加させたため、10mMホウ酸緩衝液(pH8.0)を20mMギ酸アンモニウム(pH8.0)とは対照的に使用した。
【0094】
この段階でスクリーニングされた移動相及び固定相は、表17及び18の系パラメータとともに、それぞれ、表15及び16において以下に列挙される。10mMホウ酸緩衝液(pH8.0)及びメタノールの組み合わせは、カラム上の高圧のため、最小粒子サイズについて一緒にスクリーニングすることができなかった。表19は、シチシンピークのピーク高さ、ピーク幅、及びUSPテーリングを有する移動相及び固定相の組み合わせを示す。
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【0095】
メタノールの吸収は、シチシンについてのはるかに小さなピーク高さ及び、したがって、より低い方法感度をもたらした。有機相としてアセトニトリルを有するシチシンについてピーク幅もより狭かった。また、より小さい粒子サイズとピーク高さの増加/ピーク幅の減少との間にも相関がある。しかしながら、USPテーリングの増加が観察された。2.5μm C18カラムを使用してpH10.0に調整されたホウ酸緩衝液で更なるランを行った。移動相には、5%v/vメタノールも含まれた。この実験からの結果を以下の表20に示す。この試験は、異なる検出器を備えた異なる機器で行った。したがって、ピーク高さは、上記の結果と直接比較可能ではない。
【表20】
【0096】
別の試験を、25mMのホウ酸まで増加させた緩衝液の濃度で行い、これはまた、2.5μmのC18カラムを使用して行った。このランの結果は、シチシンピークについて以下の表21に含まれる。
【表21】
【0097】
これらの結果は、緩衝液濃度の増加でのピーク形状に対する顕著な影響がないことを示す。これらの結果に従って、10mMホウ酸(pH10.0)が水性移動相に適しているとみなされた。ホウ酸のpH修飾剤を、水酸化ナトリウムとは対照的に、アンモニアに変更することは、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)との適合性を増加させたことも留意された。
【0098】
6.勾配スクリーニング
メタノールは、シチシンピークの保持に異なる影響を及ぼす。したがって、勾配の簡単な試験を、有機相としてメタノール及びアセトニトリルの組み合わせを使用して行った。表22に列挙された以下の条件(A=10mMホウ酸緩衝液(pH8.0)、B=メタノール、及びC=アセトニトリル)を、不純物間の分離を最適化し、勾配の吸収を低減することを目的としてスクリーニングした。
【表22】
【0099】
メタノールは、全てのスクリーニングされた不純物の分離に影響することが実証されており、5%v/v(勾配A)メタノールは、分離に影響するのに十分である。しかしながら、メタノールを含めることは、追加の複雑さをもたらし、方法堅牢性に影響を及ぼし得る。図11におけるクロマトグラムはまた、メタノールの包含で観察された顕著な勾配上昇を示す。
【0100】
展開は、100%アセトニトリルを有機相として使用し、したがってメタノールを添加する複雑さを除去した、改善された勾配を見出すための更なる調査に進んだ。より長い勾配、及び表23に列挙されるように、最初に2分のイソクラティックホールドを有する勾配をスクリーニングした。この勾配スクリーニングは、移動相の微調整後に行い、これは、ホウ酸緩衝液が、pH8でスクリーニングされた以前の勾配とは対照的に、pH10であったことを意味する。移動相スクリーニングは、pH8からpH10への変化が、ピーク形状を改善し、保持時間への影響が無視できるものであったことを示した。したがって、以前の勾配スクリーニング及びこの更なるスクリーニングの結果は、依然として比較可能であるとみなされた。勾配スクリーニングの結果を表にして、各スクリーニングされた不純物の保持時間を示した。勾配を、許容される勾配上昇を有するメタノールを使用した唯一の勾配であった、勾配A(表22)と比較した(図12)。
【表23】
【0101】
選択された勾配は、シチシン及び関連プロセス不純物についての最適な分離及びピーク形状を与えた。2分ホールドを導入することによって、シチシン、N-ホルミルシチシン、及びN-メチルシチシンの保持が十分に増加し、メタノールの使用なしに適切なクロマトグラフィーを得ることができることを示した。これは、より低い吸収を有する2成分移動相系を可能にし、これはまた、カラムの過圧を受けにくい。最終化された方法パラメータは、以下の表24~26に列挙されている。
【表24】
【表25】
【表26】
【0102】
7.方法性能
開発においてスクリーニングされたシチシン及び全ての不純物は、異なる応答レベルで約200nmのλmaxを有する。シチシン、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、及びアナギリンは、308nmで別のλmaxを有する。シグナル対ノイズ比は、顕著により低い勾配吸収のため、308nmでの方法では約10倍高いことが証明された。結果として、開発は、主に308nmで試料を分析したが、200nmについてもデータを収集して、ルパニン、アングスチフォリン、及び308nmではなく200nmでUVを吸収した任意の他の不純物を依然として検出する方法へと移行した。図13A~13Fに示されるように、200nm及び308nmの例示的なオーバーレイが関連する不純物について含まれている。具体的には、図13A及13Bは、それぞれ、200nm及び308nmでスクリーニングされた不純物の全てを示し、図13C及び13Dは、それぞれ、200nm及び308nmの高濃度試料で収集された試料の典型的なクロマトグラフを示す。最後に、図13E及び13Fは、それぞれ、200nm及び308nmの低濃度試料で収集された試料の典型的なクロマトグラフを示す。
【0103】
8.実験的検証試験
シチシンについての作動濃度(200μg/mL)での系好適性、特異性、検出限界、定量限界、線形性、精度、及び正確性の観点から、予備的検証が実施されている。
【0104】
特異性
特異性試験からのクロマトグラフを図14A~14Fに示し、これは、308nm(図14A~14C)及び200nm(図14D~14F)での、シチシン、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アナギリン、アングスチフォリン(200nmのみ)、及びルパニン(200nmのみ)のオーバーレイされたクロマトグラムとともに、希釈剤のクロマトグラムを含む。シチシンへの干渉は検出されなかった。不純物の前に注入された希釈剤ブランク注入は、全ての不純物の保持時間で定量限界(LOQ)を超えるピークを示さなかった。
【0105】
系好適性試験
系好適性試験は、シチシンを作動濃度(200μg/mL)で6回注入することによって行った。系好適性結果を表27に示す。
【表27】
【0106】
線形性
線形性溶液は、ストック標準溶液を、希釈剤中20~300μg/mlのシチシンの濃度範囲をもたらすように希釈することによって調製した。20~300μg/mlの濃度での線形性溶液のピーク面積結果を、図15A~15Bにグラフで示す。ピーク面積応答は、試験された濃度範囲にかけて線形であった。ピーク面積の線形回帰線の勾配対公称濃度の相関係数は、308nmで0.9997、200nmで0.9962であった。
【0107】
感度
シチシン及びスクリーニングされた全ての不純物の重複注入を行って、(0.2mg/mlの作動濃度で)以下の表28及び29に列挙される検出及び定量の理論的限界を得た。
【表28】
【表29】
【0108】
感度は、308nmで大幅に改善されたが、検出限界(LOD)及びLOQは、依然として典型的な許容基準を上回った(それぞれ、LT0.02%、LT0.05%)。感度の問題に対抗するために、10mg/mLの高濃度で高/低分析方法論が必要であった。
【0109】
アッセイ繰り返し性
6つのシチシン標準物を高濃度10mg/mlで個別に調製し、次いで0.2mg/mlの作業濃度に希釈し、3通りに注入し、系好適標準物に対してアッセイした。各標準物を、約0.15%のN-ホルミルシチシン及びN-メチルシチシンでスパイクした。アッセイ結果及び不純物プロファイル結果を表30に示す。
【表30】
【0110】
アッセイ繰り返し性溶液の結果は、99.37%~99.90%の範囲の正確性及び0.23%RSDの精度で、99.59%の平均アッセイをもたらした。不純物は、0.15%でスパイクし、それぞれ、N-ホルミルシチシン及びN-メチルシチシンについて0.16%及び0.14%の平均をもたらした。正確性は、N-ホルミルシチシンについて0.15%~0.16%、N-メチルシチシンについて0.137%~0.138%の範囲であった。不純物の正確性は、十分に±20.0%以内である。
【0111】
9.シチシン分析手順の要約
上述の所見に基づいて、以下に記載されるような分析手順が開発された。
【0112】
移動相調製
0.62gのホウ酸を脱イオン水に溶解する。水酸化アンモニウム(35%w/w)を溶液に添加することによって、pHを10.0に調整する。この緩衝液を0.22ミクロンフィルターに通して濾過する。50mlの緩衝液を950mlのアセトニトリルに加えて、移動相Bを作製する。50mlのアセトニトリルを残りの950mlの緩衝液に加えて、移動相Aを作製する。
【0113】
ブランク/希釈剤調製
ブランク/希釈剤は、移動相A(10mMホウ酸緩衝液、pH10.0:アセトニトリル(95:5))で構成される。
【0114】
RT-ID標準調製
20mgのシチシン及び10mgの目的の関連物質を100mlメスフラスコに正確に秤量する。溶解し、希釈剤中の体積にする。
【0115】
ストック試料溶液調製
100mgの試料を好適な容器に正確に秤量する。必要に応じて超音波処理を使用して10mlの希釈剤に溶解する。溶液をストック試料溶液としてラベル付けする。
【0116】
希釈された試料溶液調製
1mlのストック試料溶液を50mlメスフラスコに正確にピペットし、希釈剤で体積まで希釈する。希釈された試料溶液としてラベル付けする。
【0117】
HPLCパラメータ
以下の表31及び32において、シチシンの純度を分析するために使用されるHPLCパラメータが列挙される。
【表31】
【表32】
【0118】
クロマトグラム統合並びに不純物%及び純度%の計算
ブランク溶液に起因する全てのピークは、ストック試料クロマトグラムにおいて統合されるべきではない。308nmでは、全てのピークは、ストック試料溶液に統合されるべきである。200nmでは、ルパニン及びアングスチフォリンに対応するピークを統合する。加えて、308nmストック試料クロマトグラムにおいて対応する不純物を有さない200nmでのストック試料における任意のピークを統合する。
【数1】
【表33】
【0119】
相対応答係数を、308nmでのシチシンに関連して計算した。次いで、以下の表33に含まれる正規化係数を、ストック試料溶液から得られたピーク面積に適用する。これらの正規化面積は、不純物%計算に使用されるものである。
【表34】
【0120】
10.結論
結論として、以下の例は、シチシン及び関連物質/不純物の定量化を可能にする方法論を提供する。研究は、具体的には、複数の波長でシチシン及び予想される関連不純物を分解する能力を有する勾配HPLC方法を提供する。
【0121】
文脈が別段に指示しない限り、本明細書に記載される本発明の様々な特徴は、任意の組み合わせで使用され得ることが具体的に意図される。更に、本開示はまた、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の特徴又は特徴の組み合わせが除外又は省略され得ることを企図する。例示するために、本明細書が、複合体が成分A、B、及びCを含むと述べる場合、A、B、若しくはCのうちのいずれか、又はそれらの組み合わせが、単独で、又は任意の組み合わせで、省略され、放棄され得ることが具体的に意図される。
【0122】
項A.シチシンの純度を評価するクロマトグラフィー方法であって、(a)シチシン試料を、ステアリン酸(C18)を含む固定相を含み、150mmの長さ、4.6mmの内径、及び2.5μmの粒子サイズを有するカラムに導入するステップであって、シチシン試料が、1つ以上の不純物を含む、導入するステップと、(b)シチシン及び1つ以上の不純物が、カラム上に保持されるように、約10のpHを有する第1の移動相を当該カラムに適用するステップと、(c)約10のpHを有する第2の移動相を当該カラムに適用することによって、シチシン及び1つ以上の不純物を溶出するステップと、(d)シチシン及び1つ以上の不純物を検出するステップと、を含む、前記クロマトグラフィー方法。
【0123】
項B.シチシン及び1つ以上の不純物が、ステップ(d)における検出のために質量分析計に向けられる、項Aのクロマトグラフィー方法。
【0124】
項C.第1及び第2の移動相が、質量分析計への注入に適合している、項A又はBのクロマトグラフィー方法。
【0125】
項D.第1及び第2の移動相が、揮発性成分を含む、項A~Cのいずれか1つに記載のクロマトグラフィー方法。
【0126】
項E.第1及び第2の移動相が、質量分析計への注入に適合している緩衝液を含む、項A~Dのいずれか1つに記載のクロマトグラフィー方法。
【0127】
項F.第1の移動相が、10mMのホウ酸緩衝液及びアセトニトリルを約95対約5の比で含む、項A~Eのいずれか1つに記載のクロマトグラフィー方法。
【0128】
項G.第2の移動相が、10mMのホウ酸緩衝液及びアセトニトリルを約5対約95の比で含む、項A~Fのいずれか1つに記載のクロマトグラフィー方法。
【0129】
項H.1つ以上の不純物が、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、スパルテイン、及びアンモデンドリンからなる群から選択される、項A~Gのいずれか1つに記載のクロマトグラフィー方法。
【0130】
項I.シチシンが、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、スパルテイン、及びアンモデンドリンの各々から分離される、項Hのクロマトグラフィー方法。
【0131】
項J.N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、アングスチフォリン、ルパニン、アナギリン、スパルテイン、及びアンモデンドリンの各々が、シチシン及び互いから分離される、項Hのクロマトグラフィー方法。
【0132】
項K.第1の移動相が、カラムに少なくとも約2分間適用される、項A~Jのいずれか1つに記載のクロマトグラフィー方法。
【0133】
項L.第2の移動相が、カラムに約20分~約24.5分間適用される、項A~Kのいずれか1つに記載のクロマトグラフィー方法。
【0134】
項M.シチシン及び1つ以上の不純物を検出するステップが、1つ以上の波長でのUV/Vis吸収検出を含む、項A~Lのいずれか1つに記載のクロマトグラフィー方法。
【0135】
項N.1つ以上の波長が、200nm及び308nmである、項Mのクロマトグラフィー方法。
【0136】
項O.シチシンが、約308nmの波長で検出される、項Mのクロマトグラフィー方法。
【0137】
項P.1つ以上の不純物が、N-ホルミルシチシン、N-メチルシチシン、及びアナギリンからなる群から選択され、1つ以上の不純物が、308nmの波長で検出される、項Mのクロマトグラフィー方法。
【0138】
項Q.1つ以上の不純物が、アングスチフォリン、及び/又はルパニンであり、1つ以上の不純物が、200nmの波長で検出される、項Mのクロマトグラフィー方法。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図15A
図15B
【国際調査報告】