(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ロープ又はケーブルを案内するためのインサート要素、ロープ案内ローラ又はケーブル案内ローラ及びインサート要素を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B65H 57/26 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B65H57/26
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024515050
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022073319
(87)【国際公開番号】W WO2023036591
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】102021123217.1
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505437206
【氏名又は名称】センペリット アクチェンゲゼルシャフト ホールディング
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヘリング,ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ミースバッハー,ヘルヴィグ
(72)【発明者】
【氏名】ロイヤー,リオネル
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥルム,フロリアン
【テーマコード(参考)】
3F110
【Fターム(参考)】
3F110BA02
3F110CA06
3F110DA03
3F110DB04
3F110DB11
(57)【要約】
特にケーブルカーシステムのためのロープ又はケーブルを案内するためのインサート要素(1)。インサート要素(1)は、案内されるロープ又はケーブルと接触するように設計されている第一のカバー層側(6)及び第一のカバー層側(6)とは反対側の第二のカバー層側(7)を有するカバー層(2)と、カバー層(2)の上及び/又は中に配置されているインジケータ要素(3)とを含む。インジケータ要素(3)は、インサート要素(1)の摩耗状態を示すように設計されている。さらに、インサート要素(1)を含むローププーリ及びインサート要素(1)を製造する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にケーブルウェイ施設のためのロープ又はケーブルを案内するためのインサート要素(1)であって、
案内されるロープ又はケーブルと接触するように設計されている第一の表面層側(6)及び前記第一の表面層側(6)とは反対側の第二の表面層側(7)を有する表面層(2)と、
前記表面層(2)の上及び/又は中に配置されているインジケータ要素(3)と
を含み、前記インジケータ要素(3)が、前記インサート(1)の摩耗状態を示すように設計されている、インサート要素(1)。
【請求項2】
一体に形成されている、請求項1記載のインサート要素(1)。
【請求項3】
前記インジケータ要素(3)が前記第一の表面層側(6)及び/又は前記第二の表面層側(7)を少なくとも部分的又は区分的に覆う、前記請求項のいずれか1項記載のインサート要素(1)。
【請求項4】
前記表面層(2)がSBR、NR、NBR、EPDM、CSM、BR及び/又はFKMを含む、前記請求項のいずれか1項記載のインサート要素(1)。
【請求項5】
前記インジケータ要素(3)がPE、PP、TPE、PA及び/又はPETPを含む、前記請求項のいずれか1項記載のインサート要素(1)。
【請求項6】
前記インジケータ要素(3)及び前記表面層(2)が、特に硬さ、密度、引裂抵抗、破断点伸び、すり減り、反発弾性、圧縮永久ひずみ、引裂伝ぱ抵抗、ガラス転移温度、導電率及び/又は膨潤度などの異なる性質を有する、前記請求項のいずれか1項記載のインサート要素(1)。
【請求項7】
前記インジケータ要素(3)が布地、少なくとも一本の糸、蛍光物質、着色液、特にインク及び/又はフォイルを含む、前記請求項のいずれか1項記載のインサート要素(1)。
【請求項8】
前記インサート要素(1)に通されたロープ又はケーブルに印加された電圧を検知するように適合された少なくとも一つの導電率センサをさらに含む、前記請求項のいずれか1項記載のインサート要素(1)。
【請求項9】
前記インジケータ要素(3)が少なくとも一つの金属ロッド及び/又はワイヤを含む、前記請求項のいずれか1項記載のインサート要素(1)。
【請求項10】
前記インサート要素(1)の半径方向(20)に分散した複数のインジケータ要素(3)を含み、各インジケータ要素(3)が異なる性質を有する、前記請求項のいずれか1項記載のインサート要素(1)。
【請求項11】
前記インサート要素(1)の半径方向(20)における前記表面層(2)の材料厚さに対する前記インジケータ要素(3)の材料厚さの比が、0.01~0.7の範囲、好ましくは0.07~0.5の範囲、より好ましくは0.1~0.3の範囲である、前記請求項のいずれか1項記載のインサート要素(1)。
【請求項12】
半径方向の力を吸収するように設計されている布地層をさらに含み、前記インサート要素(1)の半径方向(20)における前記表面層(2)の材料厚さに対する前記布地層の材料厚さに対する比が、0.8~9の範囲、好ましくは1~8の範囲、より好ましくは2~7の範囲である、前記請求項のいずれか1項記載のインサート要素(1)。
【請求項13】
前記表面層(2)が、ロープ又はケーブル案内方向に対して横向きの断面でその第一の表面層側(6)に、案内領域(5)と、前記案内領域に隣接する二つの肩領域(4)とを有し、
前記案内領域(5)が、前記肩領域(4)の少なくとも一つに対して凹み間隔だけ深められている凹み(8)を有し、
前記ロープ又はケーブル案内方向(10)に対して横向きの断面における両肩領域(4)の幅に対する前記凹み間隔の比が、0.2~5の範囲、好ましくは0.4~3の範囲、より好ましくは0.7~2.5の範囲である、前記請求項のいずれか1項記載のインサート要素(1)。
【請求項14】
案内されるロープ又はケーブルと接触するように設計されている第一の表面層側(6)及び前記第一の表面層側(6)とは反対側の第二の表面層側(7)を有する表面層(2)と、前記表面層(2)の上及び/又は中に配置されている、インサート要素(1)の摩耗状態を示すように設計されているインジケータ要素(3)とを含むインサート要素(1)、ならびに
前記ロープ又はケーブル案内プーリの回転可能な取り付けのための軸受け区域
を含むロープ又はケーブル案内プーリ。
【請求項15】
特に請求項1~13のいずれか1項記載のロープ又はケーブルを案内するためのインサート要素(1)を製造する方法であって、
インジケータ要素(3)を提供するステップ、
前記インジケータ要素(3)を表面層(2)の中又は上に適用するステップ、及び
前記インジケータ要素(3)及び前記表面層(2)を加硫処理するステップ
を含み、前記インジケータ要素(3)が前記インサート要素(1)の摩耗状態を示すことができる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、ロープ又はケーブルを案内するためのインサート要素、ロープ又はケーブル案内ローラ及びインサート要素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インサート要素は、ライニングと呼ばれることもあり、架空ロープウェイであるか、レールロープウェイであるか、ドラッグリフトであるかを問わず、ロープウェイのローププーリ又は偏向プーリに使用される。インサート要素の目的は、ロープ又はケーブルを支持し、案内することである。さらに、インサート要素はまた、吸音及び振動減衰効果を有する。ロープウェイなどの敏感なシステムにおけるそのような要素の装備のため、そのようなインサート要素の摩耗を定期的にモニタリングして、故障する前にインサート要素を適時に交換し得るようにしなければならない。そのようなモニタリングは通常、インサート要素を点検する訓練を受けた作業員によって実行される。ゲージ又はノギスを使用してインサート要素の形状を測定し、初期状態と比較する。インサート要素の形状のその初期状態からの偏差に基づいて、摩耗状態を推測することができる。インサート要素は手が届きにくいことが多いため(たとえば、ケーブルカーの支柱上にある)、インサート要素のモニタリングは労働集約的であり、困難であり、時間を要し、ひいては費用を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、インサート要素のモニタリングを簡単化することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1の特徴を有するインサート要素、請求項13の特徴を有するロープ又はケーブル案内ローラ及び請求項14の特徴を有するインサート要素を製造する方法によって解決される。好ましい実施形態が従属項に記されている。
【0005】
本発明の一態様にしたがって、特にケーブルカー施設のためのロープ又はケーブルを案内するためのインサート要素であって、案内されるロープ又はケーブルと接触するように設計されている第一の表面層側及び第一の表面層側とは反対側の第二の表面層側を有する表面層と、表面層の上及び/又は中に配置されているインジケータ要素とを含み、インジケータ要素が、インサート要素の摩耗状態を示すように設計されている、インサート要素が提供される。
【0006】
本発明の一態様にしたがって、インサート要素はまた、リフト、エレベータ、クレーンなどのプーリに使用することもできる。基本的に、ケーブル又はロープが案内される、走らされる、又は偏向されるところならばどこでも。本発明はまた、一体型の閉じたローププーリインサート要素としてではなく、ロック可能なストリップとして提供されることができる、いわゆる摩耗ストリップに関する。たとえば、そのような摩耗性バンドは、ロープ又はケーブルを、建物又は他の構造物との直接接触から保護することができる。ロープ又はケーブルは耐荷重構造であることもできる。特に、ケーブル又はコードは非通電性(すなわち電力供給)要素であってもよい。そのような二重の機能は逆効果的であろう。理由は、電力供給に使用されるケーブルは、同時に荷重を担持するために使用されるべきではないからである。それでも、試験電流などをケーブル又はロープに導通することはできる。
【0007】
本発明の一態様にしたがって、ローププーリのためのインサート要素、ライニング又はライニングは、一方では、ロープ又はケーブルを保護し、他方では、ローププーリそのもの、むしろ、それを形成する通常は金属製のプーリプーリ束を保護する。さらに、ローププーリ及び支持構造の軸受けを保護することもできる。さらに、インサート要素はまた、ロープをプーリに通して案内するとき、機械的及び音響的に静かな走行を保証することにより、増大した快適性を提供することができる。この目的のために、インサート要素は、インサート要素を提供することができるところのプーリよりも軟質及び/又は弾性の材料でできていることができる。したがって、インサート要素は、たとえばエラストマー又はゴムから一体型のリングとして作製されることができる。インサート要素は、柔軟な織物又は柔軟なワイヤメッシュインサートを用いて実現することもできるし、用いずに実現することもできる。高荷重の場合、インサート要素はプラスチック製であることができ、プラスチックは、ベースポリマーとしてポリウレタンを含むことができ、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のカテゴリーに属することができる。
【0008】
従来技術とは対照的に、本発明のインサート要素を用いると、インサート要素の摩耗状態をチェックするために人がインサート要素のすぐ近くにいる必要はない。それどころか、インジケータ要素を使用してインサート要素の摩耗状態を容易に認めることができるため、離れたところからインサート要素を点検するだけで十分である。たとえば、ロープウェイシステムに使用される場合、たとえば双眼鏡などを使用して地上からインサート要素を点検し、それによって摩耗状態に関する情報を即座に得るだけで十分である場合もある。これは、点検に要する時間を有意に減らすことができ、インサート要素の摩耗状態は、たとえば運転走行中にそれが通過するとき、点検し得るようになる。このようにして、これまで知られていた時間を要する危険なインサート要素チェック作業を減らす、又は避けることができ、同時に、インジケータ要素による客観的な表示のおかげで、点検を実施する人とは無関係に、摩耗状態を客観的に判定し得ることを保証することができる。これは、インサート要素が常に同時に交換されることを保証する。対照的に、人による、純粋に目視での個別点検は、いくつかのインサート要素が同時に客観的に評価されることを保証しない。その結果、本発明の一態様のインサート要素を使用することにより、インサート要素の交換間隔を標準化することができる。
【0009】
インサート要素は、別個の部品であり、ローラに固定されるように設計されることができる。ローラは逆に、支柱などの構造物上に回転可能に保持されることができる。たとえば、プーリは、すべり軸受け又は転がり軸受けによって構造物に回転可能に取り付けることができる。ロープ又はケーブルをインサート要素上に配置し、インサート要素によって支持及び/又は案内することができる。ケーブル案内方向が、案内されるケーブルが延びる方向を指定することができる。インサート要素はまた、ケーブル案内方向に対して横向きの横変位からケーブルを保護するように設計されることもできる。この目的のために、インサート要素は、プーリよりも低い強度を有することができる。換言するならば、インサート要素は、案内されるケーブルを少なくとも部分的に包囲する弾性材料から形成されることができる。案内性能を改善するために、インサート要素は、案内されるロープの形状に少なくとも部分的に適合することができる。
【0010】
好ましくは、インサート要素は単一部品として設計される。換言するならば、インサート要素は、非破壊的なやり方でその構成部品へと分解することはできない。これが、インサート要素の高い安定性及び簡単な製造を保証することができる。特に、単一部品型又は一体型のインサート要素の場合、所定の配置が保証され(たとえば、インサート要素の集中生産中に)、複数のインサート要素があっても、インジケータ要素がたとえば表面層に対して常に同じ相対位置を有するようになる。これが、インサート要素の摩耗の一貫した判定を保証することができる。
【0011】
表面層は、三つの空間方向すべてに広がる体積のある層であることができる。特に、ケーブルが案内される方向に対して横向きの断面において、表面層は、第一の表面層側と、反対側の第二の表面層側とを有することができる。第一の表面層側の表面層の表面及び第二の表面層側の表面層の表面は、表面層の側面の何倍もの大きさであることができる。表面層の第一の側は、ロープ又はケーブルをインサート要素に通して確実に案内することができるような形状を有することができる。この目的のために、第一の表面層側は、たとえば、案内されるロープ又はケーブルに相補的である形状を有することができる。好ましくは、第一の表面層側は、ロープが少なくとも部分的に表面層の中に収容されるような形状を有する。この目的のために、表面層は、たとえば第一の表面層側が凹んでいることもできるし、異なる(たとえば、より軟質の)材料から形成されている区域を有することもできる。
【0012】
インジケータ要素は、インサート要素、特に表面層の摩耗状態がインジケータ要素(たとえば、インジケータ要素の状態)によって示され得るようなやり方で、運用によって(すなわち、ロープと表面層及び/又はインジケータ層との間の接触によって)影響及び/又は変化を受けることができる。たとえば、インジケータ要素は、たとえば表面層の第二の表面層側に配置されるさらなる層であることができる。その場合、インジケータ要素は、表面層の摩耗の結果として見えるようになり、外側から第一の表面層側を見たとき、表面層又はインサート要素が一定の摩耗状態にあることを速やかかつ容易に判定し得るようになる。リング形のコア要素の場合、たとえば、摩耗状態は、コア要素の半径方向に外側(すなわち、コア要素とロープ又はケーブルとの間の接触側)を見ることによって判定することができる。この目的のために、インジケータ要素は、たとえば、表面層とは異なる色を有することができる。たとえば、表面層を黒にし、インジケータ要素を白にすることができる。これは、高いコントラストが、インジケータ層がコア要素の表面と接触したことを認めることを速やかかつ容易にすることを保証する。
【0013】
本発明のさらなる態様にしたがって、インジケータ要素は、表面層の第一の表面層側の、少なくともロープが表面層に通して案内される領域に提供されるストリップであることができる。たとえば、インジケータ要素は、表面層の第一の側の中又は上に、ロープが案内される方向に対して横向きに位置する、及び/又はロープが案内される方向に沿って位置する、ストリップ様要素であることができる。この場合もまた、インジケータ要素は、表面層とは異なる色を有することができる。運用中、表面層及びインジケータ要素はすり減ることができる。この場合、インジケータ要素は、表面層よりも小さい材料厚さを有することができ、すり減り中のどこかの時点でインジケータ要素が消滅して(すなわち、もはや見えなくなって)、第一の表面層側で見ると、インジケータ要素がそこにまだ存在するかどうかを認め得るようになる。さらに、インジケータ要素は、第一の表面層側から離れるとともに狭まる、又は広がる形状を有することもできる。したがって、目に見えるインジケータ要素は、摩耗に依存して厚くなる、又は薄くなることができる。したがって、インジケータ要素は、表面層が摩耗しているかどうか、及び/又はどの程度に摩耗しているのかを示すことができる。特に、インジケータ要素がロープ案内方向に対して横向きに延びる実施形態では、第一の表面層側のどの区域でロープ又はケーブルによる特に大きなすり減りが起こっているのかを認めることが容易である。また、このようにして、運用状態(たとえば、ロープ案内の偏り、コア要素への不均等な荷重など)に関する結論を導き出すことが可能である。その結果、運用をさらに最適化し、安全性を高めることができる。
【0014】
好ましくは、いくつかのインジケータ要素を表面層の中又は上に提供することができる。たとえば、いくつかのインジケータ要素を、互いに積み重なるやり方で、第一の表面層側に対して平行な層として提供することができる。各インジケータ層は異なる色を有することができる。たとえば、第一の表面層側に最も近いインジケータ要素は緑色を有し、次のインジケータ要素はオレンジ色を有し、その次のインジケータ要素は赤色を有することが考えられる。したがって、本実施形態では、インサート要素は、それぞれが別個の層として設計されている全部で三つのインジケータ要素を有することができる。その場合、運用中、まず表面層が少なくとも部分的に摩耗して、第一の(緑色の)インジケータ要素が見えるようになる。こうして、インジケータ要素は、表面層がすでに摩耗していることを示すことができるが、インサート要素のさらなる運用はまだ可能である(第一のインジケータ要素の緑色により)。第一のインジケータ要素もまた摩耗するならば、第二のインジケータ要素(黄色の層)が出現し、インサート要素がまもなく摩耗し、交換しなければならなくなることを示す。赤色のインジケータ要素が見えるようになるとすぐに、インジケータ要素は、今やインサート要素を交換しなければならないことを示す。同様に、インサート要素は、数多くの異なる層をインジケータ要素として有することができ、インサート要素の綿密なモニタリングが可能になる。また、インジケータ要素が第一の表面層側に対して可変的に延びることも考えられる。このようにして、表面層が摩耗したとき、表面層の第一の側に目に見えるパターンを作り出すことができる。パターンは、シーリング(sealing)状態に依存して変化することができる。たとえば、インジケータ要素は、表面層の第一の側に対して波状に延びることができる。インジケータ要素の可変的配置は、専門の作業員及び/又は画像認識システムだけが摩耗状態を検知することができ、乗客又は来訪者は検知することができないことを意味する。これが、素人がインジケータ要素を誤って解釈することを防ぐ。
【0015】
上記インサート要素は、一方で、インサート要素を点検しなければならない作業員にとっての潜在的危険を減らし、他方で、インサート要素の摩耗の判定に伴う労力を減らす。たとえば、運用行程中に一定の距離からインサート要素をチェックすることができる。
【0016】
好ましくは、インジケータ要素は第一の表面層側及び/又は第二の表面層側を少なくとも部分的又は区分的に覆う。
【0017】
インジケータ要素が体積のある層として設計されている場合、インジケータ要素は、少なくとも、ロープ又はケーブルが表面層と接触する区域において表面層を覆うことができる。換言するならば、この場合、インジケータ要素は、第一の表面層側に配置することができる。代替的又は追加的に、インジケータ層は、第二の表面層側(すなわち、表面層の、ロープ又はケーブルとは反対側)に提供され、第二の表面層側に延びることができる。この場合、インジケータ層は、表面層が摩耗したときにのみ出現する。代替的又は追加的に、インジケータ層は、表面層の第一の側及び/又は表面層の第二の側を部分的に覆うこともできる。この場合、インジケータ要素は、ストリップ要素として配置することができる(たとえば、ロープ案内方向に対して横向きに、又はその方向に沿って)。したがって、インジケータ要素は、インサート要素の用途に応じて配置することができる。たとえば、インジケータ要素の部分的配置は、ケーブル又はロープが既知の区域で表面層と接触する場合に好都合であることができる。他方、摩耗がどこで起こるのかが事前に明確でない場合、インジケータ要素の平坦な配置を提供することができる。後者は、たとえば、大面積インサート要素に当てはまることができる。これは、インサート要素を常に所期の用途のために適切に提供し得ることを意味する。また、インジケータ要素を表面層の中に提供することも考えられる。たとえば、表面層の材料厚さの半分で。これは、たとえば、インサート要素が半分ほど摩耗しているときの摩耗状態を示し得ることを意味する。結果として、インサート要素の予想耐用寿命の確実なモニタリングを提供することができる。
【0018】
好ましくは、表面層はSBR、NR、NBR、EPDM、CSM、BR及び/又はFKMを含む。
【0019】
これは、表面層が、ケーブル又はロープが確実に案内され、かつ必要な防音効果及び振動減衰効果が達成されることを保障するのに十分な弾性を有し得ることを意味する。さらに、材料であるSBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、CSM(ハイパロン)、BR(ポリブタジエンゴム)及び/又はFKM(フッ素ゴム)は加工しやすく、表面層を容易に適当な形状へと製造することができる。特に、インサート要素は加硫製品であることができる。加えて、上述の材料は安価であり、したがって、インサート要素の製造プロセスを効率的にする。さらに、表面層は上記材料の混合物を含むことができる。上記材料又はそれらのブレンドは、それぞれ、ベースポリマーを構成することができ、カーボンブラックなどの添加物によって増量することができる。このようにして、インサート要素の所期の用途に求められる所望の性質(色など)を容易に達成することができる。
【0020】
好ましくは、インジケータ要素はPE、PP、TPE、PA及び/又はPETPを含む。
【0021】
上記材料を使用すると、インジケータ要素は、一方では摩耗状態を好適に示すことができ、他方では、たとえばロープ又はケーブルを安全に案内し、それと接触した場合でもなお、インサート要素の摩耗状態を示すのに十分な強度を有するのに適した性質を得ることができる。換言するならば、インジケータ層はPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、TPE(熱可塑性エラストマー)、PA(ポリアミド)及び/又はPETP(ポリエチレンテレフタレート)を含むことができる。さらに、インジケータ要素はまた、上記材料の混合物を含むこともできる。上記材料は、単にベースポリマーを表し、カーボンブラックなどのさらなる添加物を含むこともできる。その結果、インジケータ要素はまた、インサート要素のそれぞれの使用区域に好適に適合させることができ、長期的運用に十分な強度及び耐性を有することができる。
【0022】
好ましくは、インジケータ要素及び表面層は、特に硬さ、密度、引張強さ、破断点伸び、すり減り、反発弾性、圧縮永久ひずみ、引裂伝ぱ抵抗、ガラス転移温度、導電率及び/又は膨潤度などの異なる性質を有する。
【0023】
表面層は、好ましくは、81ショアよりも大きいショアA硬さを有する。対照的に、インジケータ要素は、80ショア未満のショアA硬さを有することができる。ケーブルカーシステムのための案内ローラにインサート要素を使用する場合、上述の範囲内で特に高いエネルギー効率(特に、インサート要素の変形に関して)を達成し得ることがわかった。インジケータ要素は表面層に比べて低い硬さを有するという事実が、ロープ又はケーブルと接触したときインジケータ要素が表面層よりも早く侵食されて、摩耗状態をある程度の距離からでも明確かつ容易に認め得るようになることを保証する。硬さは、たとえば、DIN53505、DIN EN ISO868などにしたがって測定することができる。
【0024】
インジケータ要素の密度は、好ましくは、表面層の密度よりも低い。好ましくは、インジケータ要素の密度は1.25g/cm3未満であり、表面層の密度は、好ましくは1.25g/cm3より高い。これは、インサート要素の摩耗状態が明確に示され得ることを保証する。密度は、好ましくは、EN ISO1183-1規格にしたがって測定することができる。好ましくは、表面層は、1.26g/cm3~1.28g/cm3の範囲の密度を有する。これは、特にケーブルウェイシステムのためのプーリとともに使用する場合、インサート要素の重量が適当な範囲に収まることを保証する。この場合、特に効率的なプーリの運用が可能である。
【0025】
引張強さは、材料が破損する(たとえば破断する)前に耐えることができる最大の機械的引張応力を示すことができる。好ましくは、表面層は、15N/mm2よりも大きい引張強さを有する。対照的に、インジケータ要素は、15N/mm2未満の引張強さを有することができる。この範囲では、表面層が十分な耐破損性を有することを保証することができる。これは、ロープ又はケーブルを案内する際に必要な安全性を保証することができる。対照的に、インジケータ要素の場合、より低い引張強さで十分である。理由は、ロープ又はケーブルを案内するためには、せいぜい部分的にしか使用されないからである。インジケータ要素はより低い引裂抵抗を備えるだけでよく、ひいてはより安価であるため、先に示した区域を使用して、特に効率的なインサート要素を形成することができる。
【0026】
破断点伸びは、構成部品が力によって荷重されたときの、その初期長さに対する構成部品の永久的な伸びを示す特性値であることができる。換言するならば、破断点伸びは構成部品の変形能力を示すことができる。好ましくは、破断点伸びは、DIN53504-S2規格にしたがって測定することができる。好ましくは、表面層は、少なくとも120%の破断点伸びを有する。対照的に、インジケータ要素は、少なくとも200%の破断伸びを有する。これは、インジケータ要素がロープ又はケーブルの案内に関与する場合でさえ、早期破損のリスクなしでインサート要素の安全な運用が約束されることを保証する。
【0027】
すり減り(すり減り又は侵食としても知られる)は、構成部品の表面の材料の損失を指すことができる。すり減りは、摩擦などの機械的応力又は環境的影響によって生じることができる。材料が構成部品から除去されるとき、通常、非常に小さな粒子が生成されることができる。材料科学では、すり減りは摩耗と呼ぶこともできる。好ましくは、すり減りは、ISO4649-方法A規格にしたがって体積として測定される。好ましくは、表面層は、160mm3よりも大きいすり減りを有する。対照的に、インジケータ要素は、好ましくは160mm3未満のすり減りを有する。さらに、表面層及びインジケータ要素のすり減りは最大200mm3に制限されることができる。これはまた、インサート要素の永久的な運用を保証することができる。これは、インジケータ要素が表面層の材料中に位置する場合に、特に好都合である。さらに、すり減りの上限が、過度な材料が環境に侵入するのを防ぐことができる。
【0028】
反発弾性は、衝撃応力下でのエラストマーの弾性挙動を評価するために使用することができる。好ましくは、表面層は、少なくとも40%の反発弾性を有する。対照的に、インジケータ要素は、好ましくは、40%未満の反発弾性を有する。好ましくは、反発弾性は、DIN53512規格にしたがって測定される。さらに、表面層及びインジケータ要素は、少なくとも25%の反発弾性を有することができる。これは、ロープ又はケーブルが、インサート要素から跳ね返ることなく、インサート要素上で確実に案内されて、したがって、ロープが確実に案内されることを保証する。
【0029】
圧縮永久ひずみは、長期間の一定の圧縮永久ひずみ及びその後の緩和中にエラストマーがどのように挙動するかの尺度である。好ましくは、圧縮永久ひずみは、ISO815タイプB規格にしたがって、70℃及び20%ひずみで24時間にわたって測定される。好ましくは、表面層は、20%未満の圧縮永久ひずみを有することができる。対照的に、インジケータ要素は、少なくとも20%の圧縮永久ひずみを有することができる。これは、インサート要素が長期的な荷重に付された場合でさえ、ロープが確実に案内されることを保証する。さらに、インジケータ要素がコア要素の摩耗状態を確実に示すということを保証することができる。上記区域には、特に耐久性のインサート要素を提供することができる。
【0030】
体積抵抗率は、構成部品が電流をどれほどよく伝導するかの尺度であることができる。体積抵抗率は、測定された体積抵抗率に測定面積を掛け、それをサンプル長で割ることによって得られる。好ましくは、体積抵抗率は、IEC62631-3-2規格にしたがって測定される。好ましくは、表面層は、6.7*1013オーム*cm未満の体積抵抗率を有する。対照的に、インジケータ層は、好ましくは、少なくとも5×1014オーム*cmの体積抵抗率を有する。これは、インジケータ要素が非導電性であることを保証する。これは、たとえば、導電性の表面層(たとえば、1.9×105オーム*cmの体積抵抗率を有する)が使用される場合に好都合である。この場合、ロープがインジケータ要素を介してのみインサート要素と接触し、それにより電気抵抗値が有意に増加するとき、それを検知することが可能である。換言するならば、案内されるロープ又はケーブルに電圧を印加することができ、その電圧を導電性の表面層上で測定することができる。表面層が摩耗し、ロープ又はケーブルがインジケータ要素を介してのみインサート要素と接触するようになるとすぐ、抵抗値の増加を検知することができる。これは、表面層が摩耗しているという結論を導くことを可能にする。あるいはまた、この構成は、表面層が非導電性であり、インジケータ要素が検知器要素(たとえばセンサ要素)と案内されるケーブルとの間に導電性接続を確立するよう、逆に設計することもできる。この場合もまた、表面層が摩耗していることを検知することが可能である(この場合、電気的接続を確立することによって)。
【0031】
引裂伝ぱ抵抗は、たとえば、ONORM C9446:2007 02 01にしたがって測定することができる。引裂伝ぱ抵抗は、材料に裂け目を形成するために必要な最大の力であることができ、材料の厚さに相関することができる。表面層の引裂伝ぱ抵抗の、インジケータ要素の引裂伝ぱ抵抗に対する比は、好ましくは0.7~1.9の範囲であることができる。この範囲では、表面層がすでに大きく摩耗している場合でさえ、インジケータ要素を表面層中又は表面層上に確実に保持し得ることがわかった。これは、表面層が進行段階まで摩耗する場合でさえ、インジケータ要素が摩耗状態を確実に示すことを保証する。さらに、表面層の摩耗がすでに進行段階にある場合でさえ、ロープ又はケーブルをインジケータ要素によって確実に支持することができる。
【0032】
ガラス転移温度は、好ましくは、ISO11357-2規格にしたがって測定することができる。好ましくは、表面層は、少なくとも70℃のガラス転移温度を有する。対照的に、インジケータ要素はより低いガラス転移温度を有することができる。ガラス転移温度は、それを超えるとポリマーがゴム状から粘稠状態に変化するところの温度であることができる。換言するならば、ガラス転移温度を超えると、表面層は、ロープを案内するために必要であるその性質を突然変化させてしまう。したがって、表面層が、連続運用中でさえロープをコア要素に通して安全に案内することを保証するのに十分なほど高いガラス転移温度を有することが好都合である。対照的に、インジケータ要素は、特にそれが表面層上で区分的又は部分的にしか提供されない場合、ロープを案内する役割を主に担わないため、より低いガラス転移温度を有することができる。結果として、表面層とインジケータ要素との効率的な相互作用を達成することができる。さらに、上記の測定された表面層のガラス転移温度のおかげで、インサート要素は、高速回転するプーリ(すなわち、運用中で発熱量がより大きい)とでも使用することができる。
【0033】
好ましくは、インジケータ要素は布地、少なくとも一本の糸、蛍光物質、着色液、特にインク及び/又はフィルムを含む。
【0034】
布地は、たとえば、少なくとも二つの糸系(thread systems)を含む、表面層中又は表面層上に広く提供される表面織布であることができる。布地が外側から見えるような程度まで表面層が摩耗しているならば、インサート要素の摩耗状態を判定することができる。布地はまた、たとえばワイヤ、コード又は他の要素でできていることもできる。好ましくは、布地はまた、インサート要素に作用する半径方向の力を布地によって吸収することができるような安定化効果を有する。これは、インサート要素がより薄くなることを許し、それが製造コストを節約することができる。さらに、インサート要素はまた、小さなロールに使用することもできる。
【0035】
少なくとも一つの糸は、表面層が摩耗すると糸が露出する(すなわち、外側から見えるようになる)ようなやり方で、表面層の中又は上に配置することができる。これは、インサート要素の摩耗状態に関する結論を導くことを可能にする。糸は、表面層中に真っ直ぐに配置することもできるし、カーブさせて配置することもできる。好ましくは、糸は、より遠くからでも容易に識別することができるよう、目立つ色(たとえば、表面層よりも明るい色)を有することができる。
【0036】
蛍光物質を使用して、インサート要素の摩耗状態を検知することができる。さらに、蛍光物質は、その励起後に光の放出が起こるというさらなる性質を有することができる。光が放出するとき、光子が放出されることができる。たとえば、試験対象のインサート要素を光源で照らして、表面上で認識可能な蛍光物質がそれに応じて光を放出するようにする。これは、暗闇の中でさえ摩耗に関してインサート要素をチェックし得ることを意味する。これは、インサート要素のメンテナンスを簡単にすることができる。蛍光物質は、インジケータ要素の上又は中にペイント又はラッカーの形態で塗布することができる。蛍光物質を励起させるために使用される光源は、たとえばUV光源であることができる。原則的に、任意の蛍光物質がインジケータ要素との使用に適当である。
【0037】
着色液は、たとえば、表面層中でカプセルの中に配置することができる。表面層の摩耗又はすり減りの場合、それらのカプセルが損傷して、液体がインサート要素の表面に出ることができる。これが、インサート要素が一定の摩耗状態に達したことを認めやすくする。この実施形態では、小さなすり減りがある場合でさえ、液体がインサート要素の表面上の広い区域に分散して、表面層に対する小さな損傷がある場合でさえ、一定の摩耗状態に達したことを認めることが容易かつ簡単になることが好都合である。液体を含むカプセルは、第一の表面層側から半径方向に一定の距離のところで表面層中に配置することができる。さらに、インサート要素中の位置に依存して(たとえば、第一の表面層側からの距離に依存して)、異なる色の液体を提供することもできる。このように、インサート要素の表面に出現する様々な色を使用して、インサート要素の摩耗がどれほど進行したのかを判定することができる。
【0038】
フォイルは、インサート要素中の第一の表面層側に対して平行に配置されるプラスチック箔又はアルミニウム箔であることができる。表面層が摩耗すると、フォイルは部分的又は完全に露出して、それによってインサート要素の摩耗状態を示すことができる。また、アルミニウム粉末を表面層に混入させて、表面層が摩耗すると、アルミニウム粉末が見えるようになることも考えられる。これは、インジケータ要素を実現することを特に簡単にする。
【0039】
好ましくは、インサート要素は、インサート要素を通過するロープ又はケーブルに印加された電圧を検知するように設計されている少なくとも一つの導電率センサを含む。
【0040】
この実施形態は二つの方法で実現することができる。第一に、たとえば架空索道の場合のように、表面層が絶縁材料であることができる。この場合、インサート要素を通って延びるケーブルは、信号(たとえば電話信号)を運ぶために使用される。インサート要素が絶縁されていないならば、この信号は妨害を受け、適当な形では受信機に到達しないであろう。対照的に、インジケータ要素は、導電性であるように設計されることができる。表面層が、インサート要素を通過するケーブルがインジケータ要素と接触するような程度までこすれ落ちるならば、回路が閉じ、ケーブルを介して伝導された信号はインサート要素上のセンサによって検知されることができる。これは、遠隔モニタリングを使用して、インサート要素が摩耗しているかどうかを判定し得ることを意味する。さらに、このシステムはまた、より大きなシステムの中で、摩耗したコア要素の正確な位置を検知することもできる。他方、表面層が導電性であるように設計され、インジケータ要素が表面層の中又は表面層の第二の側に提供され、絶縁性を有することも可能である。表面層が摩耗するならば、表面層が一定の厚さを有する限り、インサート要素を通過するロープからインサート要素へと張力を伝達することができる。表面層が摩耗し、すり減りが、ロープがインジケータ要素と(たとえばインジケータ層と)接触するほど大きいならば、ロープは絶縁され、もはや張力を測定することはできない。この場合もまた、コア要素が摩耗していることを検知することが可能である。
【0041】
好ましくは、インジケータ要素は少なくとも一つの金属ロッド及び/又はワイヤを含む。
【0042】
たとえば、金属ロッドは、表面層中で、ケーブルが案内される方向に対して直角に位置することができる。ワイヤが表面(すなわち、表面層の第一の側)に達するような程度まで上層が摩耗する、又はすり減るならば、上層は摩耗していると判定することができる。金属ロッドは表面層よりも有意に高い強度を有するため、これは、金属ロッドにより、さらなる摩耗が不可能である、又は少なくとも大幅に軽減されるという利点を提供する。この目的のために、金属ロッドは、表面層中の、インサート要素を交換することが望ましい所定の位置に(すなわち、第一の表面層側から所定の距離に)配置することができる。このようにして、インサート要素の摩耗限界を簡単なやり方で決定することができ、それがなおもインサート要素の運用継続を許す。
【0043】
同様に、ワイヤを表面層の中又は上に配置し、それにより、金属ロッドと同様の効果を有することができる。さらに、互いに切り離された異なるワイヤを表面層内の異なる位置に配置することができる。たとえば、各ワイヤは、表面層の第一の側から異なる距離を有することができる。たとえば、ワイヤは色が異なることができる。表面層が、ワイヤが表面層の表面と接触するような程度まですり減るならば、ワイヤが認められ、摩耗状態が示されることができる。さらなる運用中、ワイヤ(金属ロッドとは対照的に)はさらに摩耗する、すなわち、インサート要素から外れることができる(次のワイヤが出現するまで)。異なるワイヤの異なる色により、異なる摩耗状態を示すことができる。また、各ワイヤに電圧を印加し、これをワイヤごとに別々に測定することが考えられる。印加電圧を測定することができるならば、インサート要素がまだ無傷であると想定することができる。他方、一つ以上のワイヤで電圧を測定することができないならば、表面層の材料厚さが減ったことにより、これらのワイヤはインサート要素からすでに外れたと想定することができる。個々のワイヤの、互いとの距離及び第一表面層側までの距離は既知であるため、ワイヤがインサート要素中に提供されている間隔にしたがってすり減りの深さ又は摩耗状態を正確に決定することができる。さらに、この摩耗状態はまた、遠隔及び/又は自動化メンテナンスによって判定することもできる。これは、たとえば多数のシステム要素を含むシステムの詳細なモニタリングが容易に可能であることを意味する。また、少なくとも一つのインサート要素の摩耗状態をモニタリングするため自動化システムを提供することが考えられる。モニタリングシステムは、たとえば、所定の摩耗状態に達したときアラームを自動的に発することができる。これは、摩耗したインサート要素が検知され、適時に交換されることを保証することができる。
【0044】
好ましくは、インサート要素は、インサート要素の半径方向に分散している複数のインジケータ要素を含み、各インジケータ要素は異なる性質を有する。
【0045】
インサート要素の半径方向とは、リング様形状を有するインサート要素を指すことができる。それにもかかわらず、インサート要素はまた、平らな物体であることもできる。いずれにせよ、半径方向は、第一のオーバレイ側と直交し、第二のオーバレイ側に延びる方向であることができる。いくつかのインジケータ要素の提供は、上記実施形態における第一の被覆層側から異なる距離における異なるワイヤの提供に類似している。換言するならば、第一の表面層側から異なる距離にインジケータ要素を提供することにより、他のインジケータ要素によって異なる摩耗状態を実現することもできる。
【0046】
好ましくは、インサート要素の半径方向における表面層の材料厚さとインジケータ要素の材料厚さとの比は、0.01~0.7の範囲、好ましくは0.07~0.5の範囲、より好ましくは0.1~0.3の範囲である。
【0047】
第一の区域では、表面層とインジケータ要素との間に最適な相互作用があることがわかった。これは、インジケータ要素がインジケータ層として設計されている場合に特に当てはまる。最初に述べた区域は、二層の間の応力の発生に関して特に好都合である。理由は、二層の厚さは、表面層とインジケータ層との間の界面で応力ピークが発生しないような相互の比にあるからである。これがインサート要素の耐久性を保証する。
【0048】
前述の第二の区域では、利点は、複数のインジケータ要素が提供されるとしても(先に指定した第二の比では、存在するすべてインジケータ層の材料厚さが合算される)、個々の層すべての十分な密着が保証されるということである。
【0049】
さらに、最後に定めた区域では、インサート要素の摩耗状態が、メンテナンス作業員がそれに注目することができるよう、最後の区域によって十分に長く示されるということがわかった。これは、インサート要素の摩耗状態を十分な期間にわたって確実に示すことができ、また、確実に検知し得ることを意味する。
【0050】
好ましくは、インサート要素は、半径方向の力を吸収するように設計されている布地層を含み、インサート要素の半径方向における表面層の材料厚さと布地層の材料厚さとの比は、0.8~9の範囲、好ましくは1~8の範囲、より好ましくは2~6の範囲である。
【0051】
上述した第一の区域は、インサート要素を幅広い範囲の用途で使用し得るという利点を提供する。たとえば、インサート要素はまた、大きな半径方向の力がインサート要素に作用するシステムで使用することもできる。そのような場合でさえ、安全な運用が実現される。
【0052】
上述した第二の区域では、布地層は、表面層とちょうど同じ厚さである、又はそれよりも薄い。ここでの利点は、全体的により薄いインサート要素を提供し得、表面層によって十分なすり減り余量(reserves)を実現し得るということである。同時に、インサート要素は、半径方向の力を吸収するのに十分な抵抗力を提供する。
【0053】
特にケーブルカーシステムを運用する場合、後者の区域が最適となることがわかった。この場合、ケーブルカーシステムで発生する半径方向の力は十分に吸収され、それでいて十分に薄いインサート要素を提供することができ、効率的な運用が可能になる。
【0054】
好ましくは、表面層は、その第一の表面層側に、ケーブル又はケーブル案内方向に対して横向きの断面と、案内領域と、案内領域に隣接する二つの保護領域とを有し、案内領域は、肩領域の少なくとも一つに対して凹み距離だけ凹んでいる凹みを有し、ケーブル又はケーブル案内方向に対して横向きの断面における両肩領域の幅と凹み間隔との比は、0.2~5の範囲、好ましくは0.4~3の範囲、より好ましくは0.7~2.5の範囲である。
【0055】
これは、表面層の第一の側を、ケーブルを表面層に通して所定のやり方で案内することができるような方法で構造化し得ることを意味する。好ましくは、凹みは円形であり、凹み間隔を半径として有する。これは、表面層の第一の側が、案内されるケーブル又はロープに対して相補的になることを許し、それが案内を改善する。指定された比は、凹みの深さの、ケーブル案内方向に対して横向きのインサート要素の幅に対する比を示す。第一の比は、いかなるタイプのロープ又はケーブルでも問題なくインサート要素と適合するという利点を提供する。たとえば、非常に太いロープでさえ、インサート要素に通して好適に案内することができる。さらに、上記で定めた第一の区域におけるインサート要素の使用の範囲は非常に大きく、インサート要素を多様な用途に使用し得るようになる。上記で定めた第二の範囲では、インサート要素の半径方向及びロープが案内される方向に対して横向きに力がインサート要素に加えられる用途でさえ、インサート要素はそのような作用力に対して十分な強度又は抵抗力を有し、永久的な運用が可能になるという利点がある。換言するならば、肩区域に作用する力は、インサート要素の凹みの中にロープが沈み込む深さに依存する。こうして、上記で定めた第二の区域は、ロープを効率的に案内すると同時に、最適な横方向剛性を提供する。上記で定めた最後の区域は、ロープ又はcalfに対する最適な横方向案内性がインサート要素によって提供され、それにより、インサート要素を最小限の材料使用で実現し得るという利点を提供する。
【0056】
本発明のさらなる態様にしたがって、案内されるロープ又はケーブルと接触するように適合された第一の表面層側及び第一の表面層側とは反対側の第二の表面層側を有する表面層と、表面層側の上及び/又は中に配置された、インサート部材の摩耗状態を示すように適合されているインジケータ部材とを含むインサート部材、ならびにロープ又はケーブル案内プーリを回転可能に支持するための軸受け部分を含むロープ又はケーブル案内プーリが提供される。
【0057】
そのようなプーリは、たとえば、ケーブルカー、エレベータ、クレーンなどで、ロープ又はケーブルを偏向させる、及び/又は案内するために使用することができる。インサート要素はまた、上記インサート要素の一つにしたがって設計されることもできる。
【0058】
本発明のさらなる態様にしたがって、特に上記態様のいずれかのロープ又はケーブルを案内するためのコア部材を製造する方法であって、
インジケータ要素を提供するステップ、
インジケータ要素を表面層の中又は上に適用するステップ、及び
インジケータ要素及び表面層を加硫処理するステップ
を含み、インジケータ要素がインサート要素の摩耗状態を示すことができる、方法が提供される。
【0059】
さらに、方法は、表面層の第一の面に溝を切削又はフライス加工するステップを含むことができる。溝はケーブル案内方向に延びることができる。インジケータ要素(たとえば、異なる色のテープ)を溝に挿入したのち、表面層とともに加硫処理することができる。このようにして、インジケータ要素を表面層に接着することができる。好ましくは、インジケータ要素は、表面層の凹みの最も深い地点に位置する。凹みは、インサート要素の運用の開始時、案内されるロープ又はケーブルが凹みの最深点に触れないような方法で設計されることができる。ケーブル又はロープは、表面層の摩耗又はすり減りの結果としてのみ、凹みの最深点に接触し、インジケータ要素をすり減らすことができる。インジケータ要素がもはや見えなくなるならば、一定の摩耗状態に達したと定めることができる。たとえば、インジケータ要素がもはや見えなくなると、インサート要素を交換することができる。
【0060】
デバイスに関連して上記で挙げた実施形態の変形及び利点は方法にも同様に適用され、方法に関連して上記に挙げた実施形態の変形及び利点はデバイスにも同様に適用される。個々の実施形態の個々の特徴を互いに組み合わせて、新たな実施形態を形成することもできる。個々の特徴の利点もまた、新たな実施形態に当てはまる。以下、図面を参照しながら好ましい実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】本発明の一実施形態によるインサート要素の概略斜視図。
【
図2】
図1に示すインサート要素の、ロープ案内方向に対して横向きの断面図。
【
図3】本発明のさらなる実施形態によるインサート要素の概略表面図。
【
図4】本発明のさらなる実施形態によるインサート要素の概略表面図。
【
図5】本発明によるさらなる実施形態のインサート要素の概略断面図。
【
図6】本発明のさらなる実施形態によるインサート要素の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、本発明の実施形態によるインサート要素1の概略斜視図である。本実施形態によるインサート要素1は、リング様形状を有し、簡略化のため、
図1ではその一部のみが示されている。インサート要素1は表面層2を有する。表面層2は、表面層2の外側(すなわち、環境に面する)を表す第一の表面層面6と、表面層2の内側を表す第二の表面層面7とを有する。第二の表面層側7には、インジケータ層がインジケータ要素3として提供されている。さらに、表面層2は、その第一の表面層側6に、ケーブル案内区域5及び二つの肩区域4を有する。二つの肩区域4は、その中央にケーブル案内区域5を囲い込む。案内されるロープ又はケーブル(図示せず)はロープ案内区域5で止まって、表面層2と接触するようになる。ケーブル案内区域5は、肩区域4に対して半径方向内側に凹んでいる凹み8を有する。ケーブルは、インサート要素1に通してケーブル案内方向10(
図1では、右から左又は左から右)に案内される。換言するならば、ケーブルは、ケーブル案内方向10には動くことができる。インサート要素1はまた、ロープの動きにしたがって動く(すなわち回転する)こともできる。たとえば、インサート要素1が配置されているプーリは回転することができる。特に、ロープとコア要素との間の相対速度がゼロに等しくないため、ロープの案内が表面層2を摩耗させることができる。摩耗はすり減りを生じさせ、それが表面層2をして材料を失わせる。インジケータ層3が出現する(すなわち、コア要素の表面図で外側から見える)ような程度まで表面層2がすり減るならば、コア要素の摩耗状態を外側から認めることができる。したがって、インサート要素1を交換する必要があると判定することができる。
【0063】
図2は、
図1に示すインサート要素1の、ケーブル案内方向10に対して直角に見た断面図である。したがって、
図2中、ケーブル案内方向は紙面の中及び外へと延びる。
図2中、ケーブル案内区域5中に凹み8を見てとることができる。また、凹み8は、凹みを画定する半径を有することを見てとることができる。さらに、
図2には、半径方向20及び軸方向30が示されている。本実施形態のインジケータ層3は加硫処理によって表面層2に接着される。これが、表面層2とインジケータ層3との間に十分な密着があることを保証することができる。
【0064】
図3は、本発明のさらなる実施形態によるインサート要素1の表面図である。この実施形態でも、表面層2は二つの肩領域4および一つのロープ案内領域5を有する。しかし、本実施形態では、インジケータ要素は、表面層2の第二の表面層側7にインジケータ層として配置されるのではなく、軸方向に互いに対して平行かつケーブル案内方向10に対して横向きに延びるストリップ様要素として配置されている。インジケータ要素3は、肩区域4とロープ案内区域の両方に延びる。これは、摩耗がコア要素1の幅全体にわたって示され得ることを意味する。本実施形態では、インジケータ要素3はコア要素1の表面上に(すなわち、第一の表面層側6に)位置して、インジケータ要素3がもはや存在しないならば、コア要素1の一定の摩耗状態が発生したものと結論付け得るようになっている。
【0065】
図示しないもう一つの実施形態では、表面に取り付けられたインジケータ要素3に加えて、さらなるインジケータ要素が表面層2内に配置される。インジケータ要素3は色が異なる。より正確には、表面層2の表面上に(すなわち、第一の表面層側6に)配置されるインジケータ要素3は、表面層2内に配置されるインジケータ要素3とは異なる。これは、異なる色分けを使用して、インサート要素1の摩耗がどれほど進行したのかを容易かつ速やかに識別し得ることを意味する。
【0066】
図4は、本発明のさらなる実施形態によるインサート要素1の表面図を示す。本実施形態は、
図3に示す実施形態にほぼ一致するが、この場合、インジケータ要素3がケーブル案内方向10に延びる点が異なる。本実施形態では、一つのインジケータ要素がケーブル案内区域5の凹み8の最深点に配置され、一つのインジケータ要素3が各肩区域4に配置されている。これは、インジケータ要素3の不均一な摩耗によってインサート要素1に対して周期的に生じる不均一な荷重をも検知し得ることを意味する。
【0067】
図5は、本発明のさらなる実施形態によるインサート要素1の断面図である。
図5に示す実施形態は、
図2に示す実施形態に本質的に一致するが、インジケータ要素3が、インジケータ層としてではなく、着色液を含む複数のカプセルとして形成されている点が異なる。カプセル3は、表面層2内に異なる深さで配置されている。換言するならば、カプセル3は、インサート要素1の半径方向20に異なる位置に配置されている。この場合、表面層2がケーブル又はロープによって摩耗するならば、カプセルが損傷し、液体が第一の表面層側6に漏れることができる。着色液は、インサート要素1の一定の摩耗状態に達したことを示すことができる。
【0068】
図6は、本発明のさらなる実施形態の概略断面図である。
図6に示す実施形態は、
図3に示す実施形態に本質的に一致するが、インジケータ要素3が、インサート要素1内に配置された、ケーブル案内方向10に延びるワイヤを含む点が異なる。ワイヤ3は、表面層2の第一の表面層側6から異なる距離に配置され、したがって、第一の表面層側6の表面に出るワイヤ3により、インサート要素1の異なる摩耗状態を示すことができる。さらなる実施形態では、電圧をワイヤ3に印加し、センサによって測定することができる。ワイヤ3への損傷(たとえば摩耗による)は電圧を変化させることができる。特に、各ワイヤを個別にモニタリングすることができる。これは、遠隔診断を使用して、インサート要素が摩耗している程度を検知し得ることを意味する。
【0069】
ロープ案内方向はまた、丸いインサート要素の周方向と呼ぶこともできる。図示しないさらなる実施形態では、インジケータ要素は、表面層の表面上に(すなわち、第一の表面層側6に)構造物として形成される。たとえば、インジケータ要素3はロープ案内区域5中の凹みであり、凹みがもはや存在しないならば、一定の状態の摩耗が生じていると結論付けることができる。図示しないさらなる実施形態では、インサート要素は、表面層及びインジケータ要素に加えて、半径方向の力を吸収するように設計された布地層を含む。
【符号の説明】
【0070】
1 インサート要素
2 表面層
3 インジケータ要素
4 肩区域
5 ロープ案内区域
6 第一の表面層側
7 第二の表面層側
8 凹み
10 ケーブル案内方向
20 半径方向
30 軸方向
【国際調査報告】