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特表2024-533302体外式膜型人工肺使用時の心室補助装置によるサポートのためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】体外式膜型人工肺使用時の心室補助装置によるサポートのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/546 20210101AFI20240905BHJP
   A61M 60/13 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 60/174 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 60/242 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 60/416 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 60/531 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61M60/546
A61M60/13
A61M60/174
A61M60/242
A61M60/416
A61M60/531
A61M1/16 107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515052
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 IB2022000503
(87)【国際公開番号】W WO2023037162
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/242,828
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/257,715
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニクス クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ベンシュ シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ルンツェ カトリーン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA03
4C077AA04
4C077BB06
4C077DD10
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH13
4C077JJ03
4C077JJ08
4C077JJ16
4C077JJ19
(57)【要約】
血液ポンプ用、特にカテーテルベースの血管内血液ポンプ用の制御装置であって、検出または特定された大動脈圧および左心室圧を利用することで結合係数を算出するように構成される。その結合係数は、血液ポンプをECMO装置と併用する場合などに、血液ポンプの回転速度をどのように調整するかを決定するために使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液ポンプ用、特にカテーテルベースの血管内血液ポンプ用の制御装置であって、
第1の選択可能な動作モードを用いてカテーテルベースの血管内血液ポンプのモータの回転速度を制御するように構成されたプロセッサを備え、
前記第1の選択可能な動作モードは、
検出または特定された大動脈圧力値と、検出または特定された左心室圧力値とを使用して、結合係数kを求めるステップと、
求められた結合係数kの値に基づいて、前記モータの回転速度に対して少なくとも1つの調整を実施するステップとを含み、
前記少なくとも1つの調整は、
結合係数kが第1の閾値より大きい場合に、前記モータの回転速度を第1の量だけ増加させること、または
結合係数kが前記第1の閾値以下かつ第3の閾値より大きい場合に、前記モータの回転速度を前記第1の量より小さい第2の量だけ増加させること、または
結合係数kが第4の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合に、前記モータの回転速度を第3の量だけ減少させること、または
結合係数kが第5の閾値以上かつ前記第4の閾値未満である場合に、前記モータの回転速度を前記第3の量より大きい第4の量だけ減少させること、または
結合係数kが前記第5の閾値未満である場合に、前記モータの回転速度を前記第4の量より大きい第5の量だけ減少させること、または
それらの組み合わせである、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、前記プロセッサはさらに、前記結合係数が前記第2の閾値に等しい場合に、前記モータの回転速度を一定に保つように構成される、制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御装置であって、前記プロセッサは、前記求められた結合係数kの値が前記第1の閾値より大きいか前記第2の閾値より小さい場合に前記モータの回転速度を調整するように構成され、
その調整は、
結合係数kが前記第3の閾値より大きい間は、
結合係数kが前記第1の閾値より大きい場合に前記モータの回転速度を前記第1の量だけ増加させ、結合係数kが前記第1の閾値以下かつ前記第3の閾値より大きい場合に前記モータの回転速度を前記第2の量だけ増加させるステップと、
検出または特定された大動脈圧力値と、検出または特定された左心室圧力値とを使用して、結合係数kを求めるステップとを繰り返すことによって実施し、
結合係数kが前記第3の閾値より大きい間は、
結合係数kが前記第4の閾値以上かつ前記第2の閾値未満である場合に前記モータの回転速度を前記第3の量だけ減少させ、結合係数kが前記第5の閾値以上かつ前記第4の閾値未満である場合に前記モータの回転速度を前記第3の量より大きい前記第4の量だけ減少させ、結合係数kが前記第5の閾値未満である場合に前記モータの回転速度を前記第4の量より大きい前記第5の量だけ減少させるステップと、
検出または特定された大動脈圧力値と、検出または特定された左心室圧力値とを使用して、結合係数kを求めるステップとを繰り返すことによって実施する、制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置であって、前記プロセッサは、前記第1の選択可能な動作モードにおいて、前記モータの回転速度を第1の所定の時間間隔にて調整するように構成される、制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の制御装置であって、前記第1の所定の時間間隔は5~20秒であり、オプションとして、前記第1の所定の時間間隔は0秒である、制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置であって、結合係数kは、第2の所定の時間間隔にて求められる、制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の制御装置であって、前記第2の所定の時間間隔は1~5秒であり、オプションとして、当該時間間隔は2秒である、制御装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の制御装置であって、結合係数kは、検出または特定された左心室圧力値の平均値と、検出または特定された大動脈圧力値の平均値との商である、制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の制御装置であって、検出または特定された左心室圧力値の平均値および検出または特定された大動脈圧力値の平均値は、第3の所定の時間間隔にわたって特定される、制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の制御装置であって、前記第3の所定の時間間隔は8~12秒であり、オプションとして、当該時間間隔は10秒である、制御装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の制御装置であって、前記第1の閾値は0.75、前記第2の閾値は0.55、前記第3の閾値および前記第4の閾値は0.55、前記第5の閾値は0.15である、制御装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の制御装置であって、前記第1の閾値は、結合係数kの目標値に規定値を加算した値であり、前記第2の閾値は、結合係数kの前記目標値から前記規定値を減算した値であり、前記第3の閾値および前記第4の閾値は、結合係数kの前記目標値であり、前記第5の閾値は、結合係数kの前記目標値の15%~35%の値である、制御装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の制御装置であって、前記第2の量は、前記プロセッサが前記第1の選択可能な動作モードを実行するように構成されている前記モータの回転速度の動作範囲の0.8~1.9%であり、前記第1の量および前記第4の量は、前記動作範囲の2~4.5%であり、前記第3の量は、前記動作範囲の8~19%である、制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の制御装置であって、前記モータの回転速度の前記動作範囲は12,000rpm~22,000rpmである、制御装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の制御装置であって、前記プロセッサはさらに、サクションイベントを検出してそれらのサクションイベントに対して対応するように構成され、
その対応は、
第1のサクションイベントを検出した場合に、前記モータの回転速度を第5の量だけ減少させ、
第2のサクションイベントを検出した場合に、前記モータの回転速度を第6の量だけ減少させ、
所定の時間枠内において前記第2のサクションイベントを検出した後に、第1の期間にわたって前記モータの回転速度の上限値を前記第6の量だけ引き下げる
ことによって実施する、制御装置。
【請求項16】
請求項15に記載の制御装置であって、前記第1の期間は10分間~30分間であり、前記所定の時間枠は30秒間~5分間である、制御装置。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の制御装置であって、前記プロセッサはさらに、
体外式膜型人工肺(ECMO)装置が前記制御装置に動作可能に接続されているかどうかを検出し、ECMO装置が検出されない場合に前記第1の選択可能な動作モードの選択または実行を防止すること、または
前記プロセッサが前記第1の選択可能な動作モードを用いて前記血液ポンプを動作させるべきである旨の選択内容を受信すること、または
それらの組み合わせを実施するように構成される、制御装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の制御装置であって、前記プロセッサはさらに、前記第1の選択可能な動作モードを実行する前に、
前記モータの回転速度を、ゼロから、前記第1の選択可能な動作モードの実行時に前記プロセッサが用いるように構成されている最小回転速度まで増加させ、
検出または特定された大動脈圧力値と、検出または特定された左心室圧力値とを使用して、結合係数kを求め、
結合係数kの値に基づいて前記モータの回転速度を調整するように構成され、
その調整は、
k≧1の場合に、前記回転速度を第6の量だけ増加させ、一定期間の経過後にステップb-cを繰り返し、
k<1の場合に、前記第1の選択可能な動作モードに従って前記モータの回転速度を調整し、前記一定期間の経過後に前記第1の選択可能な動作モードに従って前記モータの回転速度を制御することによって実施する、制御装置。
【請求項19】
請求項18に記載の制御装置であって、前記第6の量は、前記プロセッサが前記第1の選択可能な動作モードを実行するように構成されている前記モータの回転速度の範囲の5%~30%である、制御装置。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記プロセッサはさらに、複数の所定の動作回転速度のうちの1つが選択された旨を受信するとともに、前記モータの速度を前記選択された所定の動作回転速度に調整する第2の選択可能な動作モードで動作するように構成され、
前記プロセッサはさらに、前記モータの回転速度を所定のレートにて最大動作回転速度まで増加させるように構成される第3の選択可能な動作モードで動作するように構成される、制御装置。
【請求項21】
請求項20に記載の制御装置であって、前記プロセッサはさらに、
前記第1の選択可能な動作モードを用いた動作中に、検出または特定された大動脈圧力値か、検出または特定された左心室圧力値か、またはその両方が信頼性を欠くかどうかを判定し、
前記検出または特定された大動脈圧力値か、前記検出または特定された左心室圧力値か、またはその両方が、第2の期間にわたって信頼性を欠くと判定された場合に、前記第1の選択可能な動作モードから前記第2の選択可能な動作モードに切り替えるように構成される、制御装置。
【請求項22】
請求項21に記載の制御装置であって、前記第2の期間は30秒間~5分間である、制御装置。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載の制御装置であって、前記プロセッサはさらに、結合係数kが前記第5の閾値未満であると判定された場合に、結合係数kが第6の閾値以上であると判定されるまでアラーム通知を作動させるように構成され、前記第6の閾値は、前記第5の閾値より大きく前記第4の閾値より小さい、制御装置。
【請求項24】
請求項23に記載の制御装置であって、前記第6の閾値は結合係数kの目標値の20%~50%である、制御装置。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載の制御装置であって、さらに、
前記プロセッサによって制御されるディスプレイと、
前記プロセッサを前記カテーテルベースの血管内血液ポンプに動作可能に接続するように構成された第1のポートと、
前記プロセッサを体外式膜型人工肺(ECMO)システムに動作可能に接続するように構成された第2のポートと、
少なくとも前記プロセッサを収容するように構成されたハウジングと
を備える、制御装置。
【請求項26】
血液ポンプシステムであって、
請求項1~25のいずれか1項に記載の制御装置と、
前記制御装置に動作可能に接続されたカテーテルベースの血管内血液ポンプとを備える、血液ポンプシステム。
【請求項27】
システムであって、
体外式膜型人工肺(ECMO)システムと、
前記ECMOシステムと並行して動作することに適した血液ポンプシステムとを備え、
前記血液ポンプシステムは、請求項1~25のいずれか1項に記載の制御装置と、前記制御装置に動作可能に接続されたカテーテルベースの血管内血液ポンプとを含む、システム。
【請求項28】
体外式膜型人工肺(ECMO)システムと連携させて使用する場合の、カテーテルベースの血管内血液ポンプの始動方法であって、
カテーテルベースの血管内血液ポンプのモータの回転速度を、ゼロから所定の最小回転速度まで増加させることと、
検出または特定された大動脈圧力値と検出または特定された左心室圧力値とを使用して結合係数kを求め、k≧1の場合に速度を一定量だけ増加させ、k<1になるまで、一定期間経過後にこのステップを繰り返すこととを含む、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、結合係数kが1未満であると判定された後、体外式膜型人工肺(ECMO)システムと連携した使用に適した自動速度制御モードに自動的に切り替えることを含む、方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、前記一定量は、前記モータの速度の動作範囲の5%~30%である、方法。
【請求項31】
体外式膜型人工肺(ECMO)システムと連携させて使用する場合の、カテーテルベースの血管内血液ポンプの動作方法であって、
検出または特定された大動脈圧力値と、検出または特定された左心室圧力値とを使用して、結合係数kを求めるステップと、
求められた結合係数kの値に基づいて、カテーテルベースの血管内血液ポンプのモータの回転速度に対して少なくとも1つの調整を実施するステップとを含み、
前記少なくとも1つの調整は、
結合係数kが第1の閾値より大きい場合に、前記モータの回転速度を第1の量だけ増加させること、または
結合係数kが前記第1の閾値以下かつ第3の閾値より大きい場合に、前記モータの回転速度を前記第1の量より小さい第2の量だけ増加させること、または
結合係数kが第4の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合に、前記モータの回転速度を第3の量だけ減少させること、または
結合係数kが第5の閾値以上かつ前記第4の閾値未満である場合に、前記モータの回転速度を前記第3の量より大きい第4の量だけ減少させること、または
結合係数kが前記第5の閾値未満である場合に、前記モータの回転速度を前記第4の量より大きい第5の量だけ減少させること、または
それらの組み合わせである、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、さらに、前記結合係数が前記第2の閾値に等しい場合に、前記モータの回転速度を一定に保つことを含む、方法。
【請求項33】
請求項31または32に記載の方法であって、前記モータの回転速度に対して前記少なくとも1つの調整を実施するステップは、
結合係数kが前記第3の閾値より大きい間は、
結合係数kが前記第1の閾値より大きい場合に前記モータの回転速度を前記第1の量だけ増加させ、結合係数kが前記第1の閾値以下かつ前記第3の閾値より大きい場合に前記モータの回転速度を前記第2の量だけ増加させるステップと、
検出または特定された大動脈圧力値と、検出または特定された左心室圧力値とを使用して、結合係数kを求めるステップとを繰り返すことと、
結合係数kが前記第3の閾値より大きい間は、
結合係数kが前記第4の閾値以上かつ前記第2の閾値未満である場合に前記モータの回転速度を前記第3の量だけ減少させ、結合係数kが前記第5の閾値以上かつ前記第4の閾値未満である場合に前記モータの回転速度を前記第3の量より大きい前記第4の量だけ減少させ、結合係数kが前記第5の閾値未満である場合に前記モータの回転速度を前記第4の量より大きい前記第5の量だけ減少させるステップと、
検出または特定された大動脈圧力値と、検出または特定された左心室圧力値とを使用して、結合係数kを求めるステップとを繰り返すこととを含む、方法。
【請求項34】
請求項31~33のいずれか1項に記載の方法であって、前記調整を実施するステップは、所定の時間間隔を経た後に繰り返される、方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法であって、前記所定の時間間隔は5~20秒である、方法。
【請求項36】
請求項31~35のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1の閾値は0.75、前記第2の閾値は0.55、前記第3の閾値および前記第4の閾値は0.65、前記第5の閾値は0.15である、方法。
【請求項37】
請求項31~36のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1の閾値は、結合係数kの目標値に規定値を加算した値であり、前記第2の閾値は、結合係数kの前記目標値であり、前記第4の閾値は、結合係数kの前記目標値から前記規定値を減算した値であり、前記第3の閾値は、結合係数kの前記目標値の15%~35%の値である、方法。
【請求項38】
請求項31~37のいずれか1項に記載の方法であって、前記第2の量は、前記モータの回転速度の動作範囲の0.8~1.9%であり、前記第1の量および前記第4の量は、前記動作範囲の2~4.5%であり、前記第3の量は、前記動作範囲の8~19%である、方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、前記モータの回転速度の前記動作範囲は12,000rpm~22,000rpmである、方法。
【請求項40】
請求項31~39のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、
所定の時間枠内において1つまたは複数のサクションイベントを検出することと、
前記1つまたは複数のサクションイベントのうちの第1のサクションイベントを検出した後に、前記モータの回転速度を第5の量だけ減少させることと、
第2のサクションイベントを検出した場合に、前記モータの回転速度を第6の量だけ減少させることと、
前記1つまたは複数のサクションイベントのうちの前記第2のサクションイベントを検出した後に、第1の期間にわたって前記モータの回転速度の上限値を前記第6の量だけ引き下げることとを含む、方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、前記第1の期間は10分間~30分間であり、前記所定の時間枠は30秒間~5分間である、方法。
【請求項42】
請求項31~41のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、
体外式膜型人工肺(ECMO)装置が制御装置に動作可能に接続されているかどうかを検出し、ECMO装置が検出されない場合に第1の選択可能な動作モードの選択または実行を防止すること、または
前記第1の選択可能な動作モードを用いて前記血液ポンプが動作されるべきである旨の選択内容をユーザインタフェースから受信すること、または
それらの組み合わせを含む、方法。
【請求項43】
請求項31~42のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、
検出または特定された大動脈圧力値か、検出または特定された左心室圧力値か、またはその両方が信頼性を欠くかどうかを判定することと、
前記検出または特定された大動脈圧力値か、前記検出または特定された左心室圧力値か、またはその両方が、第2の期間より長い期間にわたって信頼性を欠くと判定された場合に、前記方法の実行を停止することと
を含む、方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法であって、前記第2の期間は30秒間~5分間である、方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法であって、前記第2の期間は1分間~3分間である、方法。
【請求項46】
請求項31~45のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、結合係数kが前記第5の閾値を下回った場合に、結合係数kが第6の閾値以上であると判定されるまでアラーム通知を作動させることを含み、前記第6の閾値は、前記第5の閾値より大きく前記第4の閾値より小さい、方法。
【請求項47】
請求項42に記載の方法であって、前記第6の閾値は結合係数kの目標値の20%~50%である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2021年9月10日に出願された米国仮特許出願第63/242,828号および2021年10月20日に出願された同第63/257,715号に基づく優先権を主張するものであり、それらの全体を引用により本出願に援用する。
【0002】
本明細書に開示された実施形態は、体外式膜型人工肺のための制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
心原性ショックは、生存状態で病院に到着した急性心筋梗塞(AMI)患者の主な死因である。心原性ショックは、心臓の機能不全または問題によって引き起こされ、心臓が身体に十分な血液を送出できなくなることにつながる。心原性ショックは、血管閉塞性ショックと呼ばれることもある。
【0004】
体外式膜型人工肺(ECMO)および体外式生命維持装置(ECLS)は、肺が正常に機能しない場合に血液のガス交換を可能にする。たとえば、静脈-動脈方式の体外式膜型人工肺(VA-ECMO)および静脈-静脈-動脈方式の体外式膜型人工肺(VVA-ECMO)では、酸素化に問題がある患者に対して機械的な循環装置(たとえば肺補助装置)を使用することが含まれる場合がある。場合によっては、心原性ショックまたは他の形態の血行動態の悪化に起因して酸素化に問題がある患者に、ECMOを使用することがある。それらの装置をそのような状況で使用すると、左心室後負荷が増大する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5911685号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
補助人工心臓(VAD)およびカテーテルベースの補助人工心臓(たとえば血管内血液ポンプなど)は、左心室の機械的な減負荷(たとえば、左心室容積を減少させることで圧力を下げること)と、左心室の減圧(たとえば、左心房と右心房の間の壁の穴によって生じうる左心室の容積減少により、左心室の前負荷を低減すること)のうちの、いずれか一方または両方に使用される場合がある。場合によっては、そのような独立した補助フローは、心原性ショックを単独で治療するには不十分である可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様によれば、血管内血液ポンプなどの血液ポンプ用の制御装置は、第1の選択可能な動作モードを用いてカテーテルベースの血管内血液ポンプのモータの回転速度を制御するように構成されたプロセッサを含む。第1の選択可能な動作モードは、検出または特定された大動脈圧力値と検出または特定された左心室圧力値とを使用して結合係数kを求めるステップと、求められた結合係数kの値に基づいてモータの回転速度を調整するステップとを含む。概して、第1の選択可能な動作モードは、求められた結合係数kの値に基づいてモータの回転速度に対して少なくとも1つの調整を実施することができ、その少なくとも1つの調整は、結合係数kが第1の閾値より大きい場合にモータの回転速度を第1の量だけ増加させること、または、結合係数kが第1の閾値以下かつ第3の閾値より大きい場合にモータの回転速度を第1の量より小さい第2の量だけ増加させること、または、結合係数kが第4の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合にモータの回転速度を第3の量だけ減少させること、または、結合係数kが第5の閾値以上かつ第4の閾値未満である場合にモータの回転速度を第3の量より大きい第4の量だけ減少させること、または、結合係数kが第5の閾値未満である場合にモータの回転速度を第4の量より大きい第5の量だけ減少させること、またはそれらの組み合わせである。オプションとして、第1の選択可能な動作モードはさらに、結合係数が第2の閾値に等しい場合にモータの回転速度を一定に保つように構成されることがある。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の選択可能な動作モードにおいて制御装置は、結合係数が目標範囲外の値である場合に結合係数を目標値に戻そうとし、そうなった後、結合係数が目標範囲外になるまで追加の調整を実施しないように構成される。制御装置は、結合係数kが第1の閾値より大きいか第2の閾値より小さい場合にのみ、速度調整プロセスを開始する。具体的には、速度は次のように調整される。
【0009】
結合係数kが第1の閾値より大きいと判定された場合、制御装置は、結合係数kが所定値未満になるまでモータの回転速度をステップ状に増加させるサブルーチンを開始する。具体的には、当該サブルーチンにおいてモータの回転速度は、結合係数kが第1の閾値より大きい場合に第1の量だけ増加され、結合係数kが第1の閾値以下であるが第3の閾値より大きい場合に第2の量だけ増加され、その後に各圧力値が測定され、結合係数が求められる。このサイクルは、結合係数kが第3の閾値以下であると判定されるまで繰り返され、そう判定された時点で、制御装置はこのサブルーチンを終了し、結合係数の監視に戻り、結合係数が第1の閾値を上回ったか第2の閾値を下回った場合にのみ調整を実施する。
【0010】
結合係数kが第2の閾値より小さいと判定された場合、制御装置は、結合係数kが所定値を超えるまでモータの回転速度をステップ状に減少させるサブルーチンを開始する。具体的には、当該サブルーチンにおいてモータの回転速度は、結合係数kが第2の閾値以上かつ第4の閾値未満である場合に第3の量だけ減少され、または、結合係数kが第5の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合に第3の量より大きい第4の量だけ減少され、または、結合係数kが第5の閾値未満である場合に第5の量だけ減少され、または、それらの組み合わせが実施される。その後に各圧力値が測定され、結合係数が求められる。このサイクルは、結合係数kが第3の閾値以下であると判定されるまで繰り返され、そう判定された時点で、制御装置はこのサブルーチンを終了し、結合係数の監視に戻り、結合係数が第1の閾値を上回ったか第2の閾値を下回った場合にのみ調整を実施する。
【0011】
プロセッサは、第1の選択可能な動作モードにおいて、モータの回転速度を第1の所定の時間間隔t(たとえば、10秒毎など、5~20秒毎であってもよい)にて調整するように構成されることがある。
【0012】
いくつかの実施形態では、結合係数kは、第2の所定の時間間隔(たとえば、2秒毎など、1~5秒毎であってもよい)にて求められる。
【0013】
いくつかの実施形態では、結合係数kは、検出または特定された左心室圧力値の平均値と、検出または特定された大動脈圧力値の平均値との商である。
【0014】
いくつかの実施形態では、検出または特定された左心室圧力値の平均値および検出または特定された大動脈圧力値の平均値は、第3の所定の時間間隔(たとえば、10秒など、8~12秒であってもよい)にわたって特定される。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1の閾値は0.75、第2の閾値は0.55、第3の閾値は0.65、第4の閾値は0.65、第5の閾値は0.15である。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の閾値は、結合係数kの目標値に規定値を加算した値であり、第2の閾値は、結合係数kの目標値から当該規定値を減算した値であり、第3の目標結合係数kおよび第4の目標結合係数kは、結合係数kの目標値であり、第5の閾値は、結合係数kの目標値の15%~35%の値である。
【0017】
いくつかの実施形態では、モータ速度が別々の各量にて調整される場合、第2の量および第3の量は、プロセッサが第1の選択可能な動作モードを実行するように構成されているモータ回転速度の動作範囲(たとえば12,000rpm~22,000rpmであってもよく、プロセッサが制御を実施するように構成されている最大動作速度と最小動作速度との差として特定される範囲)の0.8~1.9%であり、第1の量および第4の量は、当該動作範囲の2~4.5%であり、第5の量は、当該動作範囲の8~19%である。
【0018】
いくつかの実施形態では、プロセッサはさらに、サクションイベントを検出してそれらのサクションイベントに対して対応するように構成されることができ、その対応は、第1のサクションイベントを検出した場合にモータの回転速度を第5の量だけ減少させ、第2のサクションイベントを検出した場合にモータの回転速度を第6の量だけ減少させ、所定の時間枠(たとえば30秒間~5分間、または2分間など)内において第2のサクションイベントを検出した後に第1の期間(たとえば10分間~30分間、または20分間など)にわたってモータの回転速度の上限値を第6の量だけ引き下げることによって実施する。
【0019】
プロセッサはまた、以下のことを実施するように構成されうる:ECMO装置(たとえばVVA-ECMOまたはVA-ECMOなど)が制御装置に動作可能に接続されているかどうかを検出し、VA-ECMO装置が検出されない場合は第1の選択可能な動作モードの選択または実行を防止すること、または、プロセッサが第1の選択可能な動作モードを用いて血液ポンプを動作させるべきである旨の選択内容を受信すること、またはそれらの組み合わせ。いくつかの実施形態では、プロセッサは、ECMO装置が接続されたことをユーザが確認した旨の入力を受信するように構成されることがある。
【0020】
いくつかの実施形態では、迅速かつ安全に適切な動作速度に達するようにポンプを動作させる始動プロセスが用いられる。そのような動作を達成するために、プロセッサは、第1の選択可能な動作モードを実行する前に以下のことを実施するように構成されうる:モータの回転速度を、ゼロから、第1の選択可能な動作モードの実行時にプロセッサが用いるように構成されている最小回転速度(たとえば5,000rpm~50,000rpm、または20,000rpm~40,000rpm、および/または25,000rpm~31,000rpmの回転速度)まで増加させること、ならびに、検出または特定された大動脈圧力値と検出または特定された左心室圧力値とを使用して結合係数kを求めること、ならびに、結合係数kの値に基づいてモータの回転速度を調整すること。具体的には、速度は次のように調整される。k≧1の場合は、回転速度を第6の量だけ増加させ、一定期間(たとえば5~30秒間、または10秒間など)の経過後に、上記求めるステップおよび調整するステップを繰り返す。k<1の場合は、第1の選択可能な動作モードに従ってモータの回転速度を調整し、上記一定期間の経過後に、第1の選択可能な動作モードに従ってモータの回転速度を制御する。
【0021】
いくつかの実施形態では、第6の量は、プロセッサが第1の選択可能な動作モードを実行するように構成されているモータの回転速度の範囲の5%~30%である。
【0022】
制御装置はまた、血液ポンプがECMO装置と並行して動作していない場合などに、モータを他のモードで動作可能にするように構成されることもできる。いくつかの実施形態では、プロセッサは、複数の所定の動作回転速度のうちの1つが選択された旨を受信するとともにモータの速度を当該選択された所定の動作回転速度に調整する第2の選択可能な動作モードと、モータの回転速度を所定のレートにて最大動作回転速度まで増加させるように構成される第3の選択可能な動作モードとで動作するように構成されることがある。
【0023】
いくつかの実施形態では、制御装置は、モータの制御に使用される各圧力値が信頼性を欠くと判定された場合に、第1の選択可能な動作モードを終了するように構成される。いくつかの実施形態では、プロセッサはさらに、第1の選択可能な動作モードを用いた動作中に以下のことを実施するように構成される:検出または特定された大動脈圧力値か、検出または特定された左心室圧力値か、またはその両方が信頼性を欠くかどうかを判定すること、ならびに、検出または特定された大動脈圧力値か、検出または特定された左心室圧力値か、またはその両方が、第2の期間(たとえば30秒間~5分間、または1分間~3分間、または2分間など)にわたって信頼性を欠くと判定された場合に、第1の選択可能な動作モードから第2の選択可能な動作モードに切り替えること。
【0024】
プロセッサは、結合係数kが第5の閾値未満であると判定された場合に、結合係数kが第6の閾値以上であると判定されるまでアラーム通知を作動させるように構成されることもできる。ここで、第6の閾値は、第5の閾値より大きく第4の閾値より小さい。いくつかの実施形態では、第6の閾値は、結合係数kの目標値の20%~15%である。
【0025】
いくつかの実施形態では、制御装置はさらに、プロセッサによって制御されるディスプレイと、プロセッサをカテーテルベースの血管内血液ポンプに動作可能に接続するように構成された第1のポートと、プロセッサを体外式膜型人工肺(ECMO)システムに動作可能に接続するように構成された追加のポートと、少なくともプロセッサを収容するように構成されたハウジングとを備える。
【0026】
本開示の第2の態様によれば、血液ポンプシステムは、上述の血液ポンプ用制御装置と、血液ポンプ用制御装置に動作可能に接続されたカテーテルベースの血管内血液ポンプとを含む。
【0027】
本開示の第3の態様によれば、心室補助装置を伴う体外式膜型人工肺(ECMO)のためのシステムは、体外式膜型人工肺(ECMO)システムと、ECMOシステムと並行して動作することに適した血液ポンプシステムとを含み、血液ポンプシステムは、上述の制御装置と、制御装置に動作可能に接続されたカテーテルベースの血管内血液ポンプとを含む。
【0028】
本開示の第4の態様によれば、ECMOシステムと連携させて使用する場合の、カテーテルベースの血管内血液ポンプなどの血液ポンプの始動方法が提供される。当該方法は一般に、カテーテルベースの血管内血液ポンプのモータの回転速度をゼロから所定の最小回転速度(たとえば5,000rpm~50,000rpm、または20,000rpm~40,000rpm、または31,000rpmなど)まで増加させることと、検出または特定された大動脈圧力値および検出または特定された左心室圧力値を使用して結合係数kを求めることと、k≧1の場合に速度を一定量(たとえば動作範囲の5%~30%など)だけ増加させ、k<1になるまで、一定期間の経過後に圧力値を測定するステップおよび結合係数kを求めるステップを繰り返すこととを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、結合係数kが1未満であると判定された後に、体外式膜型人工肺(ECMO)システムと連携した使用に適した自動速度制御モードに自動的に切り替える。
【0030】
本開示の第5の態様は、体外式膜型人工肺(ECMO)システムと連携させて使用する場合の、カテーテルベースの血管内血液ポンプなどの血液ポンプの動作方法である。当該方法は一般に、検出または特定された大動脈配置値および検出または特定された左心室配置値を使用して結合係数kを求めることと、求められた結合係数kの値に基づいてカテーテルベースの血管内血液ポンプのモータの回転速度を調整することとを含む。
【0031】
当該方法は、求められた結合係数kの値に基づいてモータの回転速度に対して少なくとも1つの調整を実施することを含み、その少なくとも1つの調整は、結合係数kが第1の閾値より大きい場合にモータの回転速度を第1の量だけ増加させること、または、結合係数kが第1の閾値以下かつ第3の閾値より大きい場合にモータの回転速度を第1の量より小さい第2の量だけ増加させること、または、結合係数kが第4の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合にモータの回転速度を第3の量だけ減少させること、または、結合係数kが第5の閾値以上かつ第4の閾値未満である場合にモータの回転速度を第3の量より大きい第4の量だけ減少させること、または、結合係数kが第5の閾値より小さい場合にモータの回転速度を第4の量より大きい第5の量だけ減少させること、またはそれらの組み合わせである。オプションとして、当該方法はさらに、結合係数が第2の閾値に等しい場合にモータの回転速度を一定に保つように構成されることがある。
【0032】
いくつかの実施形態では、結合係数kが第1の閾値より大きいか第2の閾値より小さい場合にのみ、回転速度の調整プロセスが開始される。具体的には、速度は次のように調整される。
【0033】
結合係数kが第1の閾値より大きいと判定された場合、制御装置は、結合係数kが所定値未満になるまでモータの回転速度をステップ状に増加させるサブルーチンを開始する。具体的には、当該サブルーチンにおいてモータの回転速度は、結合係数kが第1の閾値より大きい場合に第1の量だけ増加され、結合係数kが第1の閾値以下であるが第3の閾値より大きい場合に第2の量だけ増加され、その後に各圧力値が測定され、結合係数が求められる。このサイクルは、結合係数kが第3の閾値以下であると判定されるまで繰り返され、そう判定された時点で、制御装置はこのサブルーチンを終了し、結合係数の監視に戻り、結合係数が第1の閾値を上回ったか第2の閾値を下回った場合にのみ調整を実施する。
【0034】
結合係数kが第2の閾値より小さいと判定された場合、制御装置は、結合係数kが所定値を超えるまでモータの回転速度をステップ状に減少させるサブルーチンを開始する。具体的には、当該サブルーチンにおいてモータの回転速度は、結合係数kが第2の閾値以上かつ第4の閾値未満である場合に第3の量だけ減少され、または、結合係数kが第5の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合に第3の量より大きい第4の量だけ減少され、または、結合係数kが第5の閾値未満である場合に第5の量だけ減少され、または、それらの組み合わせが実施される。その後に各圧力値が測定され、結合係数が求められる。このサイクルは、結合係数kが第3の閾値以下であると判定されるまで繰り返され、そう判定された時点で、制御装置はこのサブルーチンを終了し、結合係数の監視に戻り、結合係数が第1の閾値を上回ったか第2の閾値を下回った場合にのみ調整を実施する。
【0035】
いくつかの実施形態では、速度は、所定の時間間隔t(たとえば5~20秒毎、または10秒毎など)にて繰り返し調整される。
【0036】
いくつかの実施形態では、結合係数kは、第2の所定の時間間隔(たとえば、2秒毎など、1~5秒毎であってもよい)にて求められる。
【0037】
本明細書に記載されるように、結合係数kは、検出または特定された左心室圧力値の平均値と、検出または特定された大動脈圧力値の平均値との商である。いくつかの実施形態では、検出または特定された左心室圧力値の平均値および検出または特定された大動脈圧力値の平均値は、第3の所定の時間間隔(たとえば、10秒など、8~12秒であってもよい)にわたって特定される。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の閾値は0.75、第2の閾値は0.55、第3の閾値および第4の閾値は0.65、第5の閾値は0.15である。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1の閾値は、結合係数kの目標値に規定値を加算した値であり、第2の閾値は、結合係数kの目標値から当該規定値を減算した値であり、第3の目標結合係数kおよび第4の目標結合係数kは、結合係数kの目標値であり、第5の閾値は、結合係数kの目標値の15%~35%の値である。
【0040】
いくつかの実施形態では、モータ速度が別々の各量にて調整される場合、第2の量および第3の量は、プロセッサが第1の選択可能な動作モードを実行するように構成されているモータ回転速度の動作範囲(たとえば12,000rpm~22,000rpmであってもよく、プロセッサが制御を実施するように構成されている最大動作速度と最小動作速度との差として特定される範囲)の0.8~1.9%であり、第1の量および第4の量は、当該動作範囲の2~4.5%であり、第5の量は、当該動作範囲の8~19%である。
【0041】
一実施形態によれば、当該方法は、サクションイベントを検出することと、それらのサクションイベントに対して対応することとを含み、その対応は、第1のサクションイベントが検出された場合にモータの回転速度を第5の量だけ減少させ、第2のサクションイベントが検出された場合に第6の量だけ減少させ、所定の時間枠内において第2のサクションイベントを検出した後に第1の期間(たとえば10分間~30分間、たとえば20分間など)にわたってモータの回転速度の上限値を第6の量だけ引き下げることによって実施される。その所定の時間枠は、30秒間~5分間であってもよく、一実施形態では2分間である。
【0042】
当該方法はさらに、ECMO装置が制御装置に動作可能に接続されているかどうかを検出するとともに、ECMO装置が検出されない場合は第1の選択可能な動作モードの選択または実行を防止すること、または、プロセッサが第1の選択可能な動作モードを用いて血液ポンプを動作させるべきである旨の選択内容をユーザインタフェースから受信すること、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、当該方法はまた、圧数値が信頼できるものである場合にのみ血液ポンプの制御を提供する。具体的には、当該方法はさらに、検出または特定された大動脈圧力値か、検出または特定された左心室圧力値か、またはその両方が信頼性を欠くかどうかを判定することと、検出または特定された大動脈圧力値か、検出または特定された左心室圧力値か、またはその両方が、第2の期間(たとえば30秒間~5分間であって、いくつかの実施形態では2分間など、1分間~3分間)より長い期間にわたって信頼性を欠くと判定された場合に、当該方法の実行を停止することとを含むことができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、当該方法は、結合係数kが非常に低い状況にも対応する。具体的には、当該方法はさらに、結合係数kが第5の閾値を下回った場合に、結合係数kが第6の閾値(たとえば結合係数kの目標値の20%~50%の値など)以上であると判定されるまでアラーム通知を作動させることを含むことができる。ここで、第6の閾値は、第5の閾値より大きく第4の閾値より小さい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】体外式膜型人工肺に対する心室補助装置によるサポートを提供するシステムの一部として使用されている、本明細書に開示された制御装置の一実施形態を示す概略図である。
図2】カテーテルベースの血管内血液ポンプの一実施形態の遠位部分を示す図である。
図3】本明細書に開示された制御装置を示すブロック図である。
図4】第1の選択可能な動作モードの一実施形態を示すフローチャートである。
図5】結合係数kの算出に使用される、検出または特定された圧力値の表示を示す代表的な図である。
図6】結合係数の値(kAIC、上側のチャート)との関係で変化するカテーテルベースの血管内血液ポンプのモータの回転速度の値(Nset、下側のチャート)を示すグラフ表示である。
図7】第1の選択可能な動作モードに組み込まれた様々な安全機能の一実施形態を示すフローチャートである。
図8】サクションイベントが検出された場合における、カテーテルベースの血管内血液ポンプのモータの回転速度の制御状態の一例を示すグラフ表示である。
図9】第1の選択可能な動作モードの利用前に用いられる始動ルーチンの一実施形態を示すフローチャートである。
図10】カテーテルベースの血管内血液ポンプの始動ルーチンを示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
VADによるサポートを備えたVA-ECMOが、心原性ショックまたは他の形態の血行動態の悪化の治療用に試験されており、その治療において、ECMO装置は体循環を維持し、VADは左心室を減負荷する(LV減圧と呼ばれることもある)。しかしこの構成では、ECMOが血液を下行大動脈に戻す、つまり一般的な血流とは逆方向に戻すため、場合によっては心臓の後負荷が増大する可能性がある。後負荷の増大に起因して、心臓が、左心室と大動脈の間の圧較差を克服するためにさらに激しく働く必要がある場合がある。
【0047】
VADの性能は、大動脈圧と左心室圧のデカップリングや後負荷の増大などの新たな条件により、課題を抱える可能性がある。これら2つの変化は、差圧、大動脈圧、および拍動性に基づくサクション検出機能などの、装置の安全機能の働きに影響を与えることがある。左心室を減負荷しても、デカップリングに起因してサクション検出機能がサクションアラームをトリガする場合があり、その一部は誤検知である可能性がある。その結果、速度の自動制御時であれば自動的な速度低下が生じてしまい、また、手動で速度を低下させることによるLV減負荷作用の減少、または、連続的なサクション警報(ノイズ/警報疲労を引き起こすもの)が生じてしまう。さらに、高い後負荷が原因で、(たとえばサクションを避けるための)ポンプの最適な速度を手動で見つけることは難しい場合があり、同様の問題が起きる。
【0048】
こうしたことから、本発明者らは、カテーテルベースの血管内血液ポンプなどの血液ポンプ用の制御装置であってECMO装置と併用可能なものには、利点があると認識した。本明細書に記載されるように、その制御装置は、結合係数kに基づいて血液ポンプのモータの速度を制御する特定の始動モードおよび動作モードを備える。
【0049】
図1を参照すると分かるように、本開示によるそのような治療のためのシステム1は、制御装置100、血液ポンプ50、ECMO装置90、およびオプションの別個の人工肺98を含むことがある。ECMO装置90および血液ポンプ50の両方が、患者2の心臓3内の血流に影響を与えうる。図示のように、ECMO装置は、血流の流入部91および流出部92を備えることがあり、流出部92は、血液を心臓3に供給するためのものである。血液ポンプ50はここでは、最遠位部分が心臓3の左心室内に位置し、より近位の部分が大動脈内に位置して示されており、血液を左心室から大動脈へフローカニューレを通じて移動させるように構成されている。血液ポンプ50は、カテーテルベースの血管内血液ポンプである。ECMO装置90は、たとえば1本または複数の通信ケーブル115を介して、制御装置100と通信していてもよい。
【0050】
図1では、制御装置100およびECMO装置90が2つの別個の装置として示されているが、いくつかの実施形態では、ECMO装置の機能および制御装置の機能は、ECMOプロセスの実行および血液ポンプ50の制御を実施可能な単一のユニット(たとえば制御装置100)に統合されることができる。
【0051】
図1は、VA-ECMO用に構成されたECMO装置およびチュービングを示すが、ECMO装置を、たとえばVVA-ECMOを含む他のECMO手段に容易に置換または再構成することが可能であると理解される。
【0052】
図2を参照して、血液ポンプ50の一例を理解することができる。具体的には、図2は、VADの一つの典型的な実施形態として本明細書に記載される、カテーテルベースの血管内血液ポンプ(「血液ポンプ」と呼ばれることもある)を示す。
【0053】
血液ポンプ50はカテーテル10を備えており、それを用いることで、血液ポンプ50は大動脈および大動脈弁を通って心臓の左心室に一時的に導入される。図2にさらに詳細に示すように、血液ポンプはさらに、カテーテルチューブ20の端部に固定された回転ポンプ装置70を含む。回転ポンプ装置70は、モータ部51と、そこから軸方向に離れて位置するポンプ部52とを含む場合がある。フローカニューレ53は、その第1の端部がポンプ部52に接続されてポンプ部52から延伸するとともに、反対側の第2の端部に流入ケージ54を備えることがある。流入ケージ54には、軟質で可撓性のある無外傷性先端部55が取り付けられていてもよい。ポンプ部52は、出口開口部56を有するポンプハウジングを含む場合がある。さらに、ポンプ装置70は、モータ部51からポンプ部52のポンプハウジング内に突出する駆動シャフト57を含むことがある。モータ部51の電動モータは、駆動シャフト57を介して、インペラ58を推力要素として駆動することができる。この推力要素により、回転ポンプ装置70の動作中に、血液は流入ケージ54を通って吸引され、出口開口部56を通って排出されることができる。
【0054】
回転ポンプ装置70はさらに、適したものであれば、逆方向にポンプ動作することもでき、それはたとえば、血液ポンプ50が右心内に配置された場合に必要に応じて実施される。この点に関して、また完全を期すために述べると、図1では血液ポンプ50を、左心内に配置され左心を補助するためのVADの一具体例として示している。
【0055】
図2では、3本のライン、すなわち2本の信号線28A,28Bと、モータ部51に電流を供給するための電源線29とが、カテーテル10のカテーテルチューブ20内を通ってポンプ装置70に至ることができる。2本の信号線28A,28Bおよび電源線29は、それらの近位端が制御装置100に取り付けられることがある。他の実施形態では、さらなる機能のための追加のラインがあってもよいと理解される。たとえば、パージ流体用のライン(図示せず)が、カテーテル10のカテーテルチューブ20を通ってポンプ装置70に至ることもできる。様々なセンシング技術に基づいて追加のラインが追加される場合がある。
【0056】
図2に示されるように、信号線28A,28Bは、それぞれ対応するセンサヘッド30および60を備えた血圧センサの一部であることが可能であり、それらのセンサヘッドは、ポンプ部52のハウジングの外側に位置する。第1の血圧センサのセンサヘッド60は、信号線28Bに関連付けられることができる。信号線28Aは、第2の血圧センサのセンサヘッド30に関連付けられ接続されることができる。血圧センサは、たとえば、米国特許第5,911,685号明細書に記載されているようなファブリ・ペロー型の原理に従って機能する光学式圧力センサであってもよく、その場合に2本の信号線28A,28Bは光ファイバである。ただし、代わりに他の圧力センサを使用することもできる。基本的に、圧力センサの信号はそれぞれ、センサの位置における圧力に関する情報を伝達するものであり、たとえば光学的、油圧的、または電気的などの適切な物理的由来によるものであることが可能であり、それぞれの信号線28A,28Bを通じて制御装置100のデータ処理部110の対応する入力部に送信される。図1に示す例では、圧力センサは、大動脈圧AOPがセンサヘッド60によって測定され、左心室圧LVPがセンサヘッド30によって測定されるように配置されうる。
【0057】
制御装置は、入力ポートを介してそれぞれの信号線28A,28Bに接続し、それらに対応する測定信号、すなわち、大動脈圧AOPに関する測定信号AOPmeasと、左心室圧LVPに関する測定信号LVPmeasとを受信することができる。
【0058】
図3を参照して、制御装置の一例を理解することができる。具体的には、制御装置100は、いくつかのコンポーネントを備える場合がある。第1のコンポーネントは、1つまたは複数のプロセッサ110(当該プロセッサを制御するための命令を含む、関連した非一時的なコンピュータ可読媒体を含むもの)を含むことがある。制御装置100は、システムの他の様々なコンポーネントからの信号の受信、またはシステムの他のコンポーネントへの信号の送信、またはその両方を実施するために、プロセッサ110に動作可能に接続される様々なポート111,112,113,114を備えることができる。図示しないが、制御装置によって読み取りまたは送信されるように信号を適切に符号化、復号化、フォーマット化、または他の方法で変更できるようにする様々なフィルタやコンバータなどもある。制御装置100は、プロセッサを血液ポンプ50に動作可能に接続する少なくとも1つのポート111,112,113を備えうる。いくつかの実施形態では、制御装置100は、たとえば光ファイバ28A,28Bを介して制御装置に接続されて心臓の別々の心室内の圧力を測定する圧力センサなどの2つ以上の圧力センサから圧力信号を受信するための1つまたは複数の入力ポート111,112と、血液ポンプ50のモータ部51に電流を供給する電源線29などのためのポート113とを備えてもよい。いくつかの実施形態では、制御装置100は、たとえば通信ケーブル115または他の適切な追加のラインを介してプロセッサ110をVA-ECMOシステムなどの体外式膜型人工肺(ECMO)システムに動作可能に接続するように構成された追加のポート114を備える場合がある。
【0059】
1つまたは複数のプロセッサ110は、ポンプ流量を推定するための根拠として2つの圧力信号間の差を計算するなどの信号処理、および、左室拡張終期圧EDLVPまたは心臓の充満勾配FGなどの少なくとも1つの特性パラメータaの実数値を導出するなどの信号分析のために、外部信号および内部信号を取得するように構成されることができる。その特性パラメータaは、血液ポンプのモータ速度、すなわち血液ポンプ50のモータユニット51のモータの回転速度を制御するために使用できる。
【0060】
制御装置100はまた、他のコンポーネントを備えることも可能である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のプロセッサ110は、タッチ式ディスプレイなどのディスプレイ130を制御するように構成されることがある。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のプロセッサ110は、音声スピーカ140を(たとえば可聴アラームを生成するように)制御するように構成されることがある。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のプロセッサ110は、1つまたは複数のボタンまたはスイッチ150から入力を受信するように構成されてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、制御装置は、ハウジング160を含む場合があり、そのハウジングは、少なくともプロセッサ110を(ハウジングの外壁によって区画される空間の内部容積内に)収容するように構成される。いくつかの実施形態では、ハウジングの壁には、それを貫通する複数の開口部が形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、ディスプレイ120の少なくとも一部分が、ハウジング160の複数の開口部のうちの少なくとも1つの中に位置する場合がある。いくつかの実施形態では、ディスプレイは、プロセッサ110に動作可能に接続されているが、ハウジング160の内部に位置しない、またはハウジング160に取り付けられていない場合がある。
【0062】
いくつかの実施形態では、制御装置100は、第1の選択可能な動作モードを用いて血液ポンプ50のモータの回転速度を制御するように構成されたプロセッサ110を備えることがある。第1の選択可能な動作モードの一実施形態を、図4に示す。図中、方法200は、圧力値を検出または特定する第1のステップ210を含む。
【0063】
一実施形態では、第1のステップは、2つの圧力値、すなわち左心室圧力値および大動脈圧力値を検出または特定することを含む。本開示の目的において、検出または特定された左心室圧力値は、検出または特定された左心室圧力値のピーク値(LVPmax)である。また、本開示の目的において、検出または特定された大動脈圧力値は、検出または特定された大動脈圧力値のピーク値(AOPmax)である。
【0064】
それらの値は、たとえば血液ポンプ50に設けられた圧力センサで得られる信号に基づいて測定されることができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ110が圧力センサから受信する信号は、左心室圧力値または大動脈圧力値を特定する計算において変数として利用されることがある。
【0065】
それらの値は、たとえば、0.2Hz以上、または0.5Hz以上の頻度で検出または特定されうる。
【0066】
いくつかの実施形態では、第1の選択可能な動作モードの第2のステップ220は、検出または特定された左心室圧力値および大動脈圧力値を使用して結合係数kを求めることである。結合係数kは具体的には、所定の時間間隔で得られる、検出または特定された左心室圧力値の少なくとも一部の平均値と、検出または特定された大動脈圧力値の少なくとも一部の平均値との商を含む。いくつかの実施形態では、この所定の時間間隔は、たとえば2秒など、1秒~5秒であってもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、kは2秒毎に求められる。
【0067】
いくつかの実施形態では、LVPmaxおよびAOPmaxは、たとえば2秒毎など、1~5秒毎に特定される。そして、直前に連続して特定された2~10個のLVPmaxおよびAOPmaxの値の平均値をそれぞれ求めることによって、LVPmax,meanおよびAOPmax,meanを特定することができる。いくつかの実施形態では、LVPmax,meanおよびAOPmax,meanはそれぞれ、直前に連続して特定された5個のLVPmaxおよびAOPmaxの値の平均値を求めることによって特定される場合がある。次いで、結合係数kを、k=LVPmax,mean/AOPmax,meanとして計算することができる。
【0068】
一実施形態では、結合係数を求めるために使用される、検出または特定された左心室圧力値の平均値および検出または特定された大動脈圧力値の平均値は、それ自体、kを求める際に使用される期間とは異なる所定の時間間隔にわたって特定される。いくつかの実施形態では、この異なる時間間隔は、たとえば10秒など、8秒~12秒であってもよい。
【0069】
図5は、制御装置のディスプレイ画面上に現れうる、左心室圧および大動脈圧のグラフ表示300の概略図を示す。左心室圧310および大動脈圧320は、経時的に測定されたものとして示されている。左心室圧のピーク値311に加えて、大動脈圧のピーク値321も示されている。これら2つの値(311、321)は、結合係数kを計算するために使用できる。図5に示すグラフを用いた場合、結合係数kの値は1未満になる。
【0070】
再び図4を参照する。1つまたは複数のプロセッサ110によって使用される方法200は、結合係数kを求めた後に、求められた結合係数kの値に基づいてモータの回転速度を調整することを含むことがある。当技術分野で理解されているように、この「調整」には、間接的な調整が含まれることが可能である。そのような調整では、プロセッサ110は、1つまたは複数の他のコンポーネントまたはモジュールに信号を送信するように構成され、そのコンポーネントまたはモジュールが、当該信号に基づいて何らかのアクションを実行することでモータの速度を調整する。
【0071】
プロセッサ110は、第1の選択可能な動作モードにおいて、モータの回転速度を所定の時間間隔にて調整するように構成されうる。いくつかの実施形態では、この所定の時間間隔は、5秒毎~20秒毎であってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、制御装置100は、10秒毎に、結合係数kの値に基づいてモータ速度を調整するように構成されることがある。たとえば、一実施形態では、結合係数kは、直前の2秒間にわたって検出/特定された圧力値に基づいて2秒毎に求められ、結合係数kの値が5回求められる毎に、結合係数のその5回目の値に基づいて速度が調整される。
【0073】
いくつかの実施形態では、プロセッサ110は、第1の選択可能な動作モードにおいて、前回の速度調整から所定の時間間隔を経た後にのみモータの回転速度を調整するように構成されることがある。いくつかの実施形態では、結合係数kは、たとえば2秒毎など、1~5秒毎に計算されるが、結合係数kが使用されるのは、速度が前回調整された後、たとえば10秒毎など、5~20秒毎にのみである。
【0074】
図4に示すように、結合係数kを求めた後、結合係数kの値に基づいて速度を調整することができる(221)。このことは、一実施形態では、結合係数kを様々な閾値(T,T,…,T)と比較することによって実施されうる。いくつかの実施形態では、閾値は、特定の種類のモータ速度調整に対応する結合係数kの範囲を規定する。
【0075】
いくつかの実施形態では、制御システムは、結合係数の目標値または結合係数の目標値の範囲を中心に設計される。結合係数kの値が目標k値未満である場合にモータの回転速度を自動的に増加させ、結合係数kの値が目標k値より大きい場合にモータの回転速度を自動的に減少させてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、求められた結合係数kの値に基づいて少なくとも1つの速度調整が実施される。その少なくとも1つの調整は、結合係数kが第1の閾値より大きい場合にモータの回転速度を第1の量だけ増加させること、または、結合係数kが第1の閾値以下かつ第3の閾値より大きい場合にモータの回転速度を第1の量より小さい第2の量だけ増加させること、または、結合係数kが第4の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合にモータの回転速度を第3の量だけ減少させること、または、結合係数kが第5の閾値以上かつ第4の閾値未満である場合にモータの回転速度を第3の量より大きい第4の量だけ減少させること、または、結合係数kが第5の閾値より小さい場合にモータの回転速度を第4の量より大きい第5の量だけ減少させること、またはそれらの組み合わせから成る。オプションとして、第1の選択可能な動作モードはさらに、結合係数が第3の閾値に等しい場合にモータの回転速度を一定に保つように構成されることがある。このようなアプローチの簡略化された説明を、以下の表1に示す。
【0077】
表1(kが取りうる値の範囲および関連する回転速度調整の例)
【表1】
【0078】
いくつかの実施形態では、結合係数が第1の閾値(または上限値)と第2の閾値(または下限値)(T,T)の間にある場合は、速度調整は実施されない。すなわち、第2のステップ220の後、結合係数kの値がTとTの間(本明細書において「の間」は、上限値および下限値を含むことが意図される)である場合、何のアクションも実行されない。これらの上限値および下限値は、2つの閾値(T,T)によって規定される結合係数kの目標範囲を中心としていてもよく、あるいは、共通の閾値によって規定された結合係数kの共通の目標値(つまりT=T)を中心としていてもよい。
【0079】
速度の増加量または減少量は、求められた結合係数kが結合係数kの目標値にどの程度近いか、ならびに、結合係数kが結合係数kの目標値より大きいか小さいかによって決まることが可能である。このようなアプローチの簡略化された説明を、以下の表2および表3に示す。
【0080】
表2(結合係数が第1の閾値より大きいと判定された場合に実施される調整)
【表2】
【0081】
表3(結合係数が第2の閾値未満であると判定された場合に実施される調整)
【表3】
【0082】
上記の説明およびアプローチは、限定を課すものではないことが意図される。表1および表2に示されるように、求められた結合係数kの値が第1の閾値より大きい場合、制御装置は、回転速度をステップ状に増加させることで、結合係数kを目標値または目標値の範囲以下になるまで低下させようとする。また、当該値が第2の閾値より小さい場合、制
御装置は、回転速度をステップ状に減少させることで、結合係数kを目標値または目標値の範囲以上になるまで上昇させようとする。
【0083】
いくつかの実施形態では、第1の閾値Tは、結合係数kの目標値に規定値(たとえば0.1、0.15、または0.2など)を加算した値であり、第2の閾値Tは、結合係数kの目標値から当該規定値を減算した値であり、第3の閾値Tおよび第4の閾値Tは結合係数kの目標値であり、第5の閾値Tは、結合係数kの目標値の15%~35%の値である。簡単な例として、結合係数kが0.7、規定値が0.15、第5の閾値が目標の結合係数kの20%であるとすると、制御装置110は、結合係数k>0.85の場合に速度増加を開始するように構成されることができる。その構成では、k>0.85の場合に中程度の速度増加量にて速度が増加され、結合係数kが0.7~0.85の場合に小さな速度増加量が用いられ、結合係数kが0.7以下に達すると速度増加は停止される。また、制御装置は、結合係数kが0.55未満の場合に速度減少を開始するように構成されることができる。その構成では、k<0.14の場合に大きな速度減少量にて速度が減少され、結合係数kが0.14~0.55の場合に中程度の速度減少量が用いられ、結合係数kが0.7以上に達すると速度減少は停止される。
【0084】
一実施形態では、第1の閾値は0.75、第2の閾値および第5の閾値は0.65、第3の閾値は0.15、第4の閾値は0.55である。
【0085】
いくつかの実施形態では、速度調整量は、モータの動作速度範囲(たとえば、モータが第1の選択可能な動作モードで動作するように設計されている最大速度と最小速度との差)に基づくことができる。すなわち、モータがたとえば31,000rpm~46,000rpmで回転する時にこの動作モードで制御されるように設計されている場合、動作速度範囲は15,000rpmでありうる。いくつかの実施形態では、その範囲は12,000rpm~22,000rpmであってもよい。いくつかの実施形態では、小さな速度増加量(第2の量)および/または減少量(第3の量)は動作範囲の0.8%~1.9%の量、中程度の速度増加量および/または減少量(第1および第4の量)は動作範囲の2%~4.5%の量、大きな速度減少量(第5の量)は動作速度の8%~19%の量であることが可能である。
【0086】
いくつかの実施形態では、第1の速度調整量(すなわち絶対量)は、第4の量(すなわち絶対量)に等しい。いくつかの実施形態では、第2の速度調整量(すなわち絶対量)は、第3の量(すなわち絶対量)に等しい。
【0087】
一実施形態では、第2および第3の量は200rpm、第1および第4の量は500rpm、第5の量は2000rpmである。
【0088】
図4は、いくつかの実施形態においてプロセッサ110が使用するように構成された速度調整プロセス221を示す。速度調整プロセス221では、結合係数kが第1の閾値(T)より大きいと判定された場合(230)、または結合係数kが第2の閾値(T)より小さいと判定された場合(231)にのみ、速度が調整される。結合係数kが第1の閾値(T)と第2の閾値(T)の間にある場合、速度調整プロセスは実質上無視され、ステップ210および220が繰り返される。
【0089】
結合係数kが第1の閾値より大きいと判定されると(230)、第1のサブプロセス232が開始され、それによって(前述したように)結合係数が第3の閾値(T)未満になるまで速度は増加される。具体的には、第1のサブルーチン232では、結合係数kが第1の閾値(T)より大きい場合に(234)モータの回転速度は第1の量だけ増加され(235)、結合係数kが第1の閾値(T)以下かつ第3の閾値(T)より大きい場合に(236)モータの回転速度は第2の量だけ増加される(237)ことができる。モータ速度の第2の増加量(すなわち、第2の量によって生じるモータ速度の変化の絶対値)は、第1の量(すなわち、第1の量によって生じるモータ速度の変化の絶対値)より小さいことが可能である。速度調整(235,237)の実施後、圧力値が測定され、ステップ220および221について前述したようにして再び結合係数kが求められる(238)。このサブプロセス232は、結合係数kが第3の閾値(T)以下になるまで繰り返され、そうなった時点でサブプロセス232は終了し、プロセスはステップ210の圧力値測定に戻る。
【0090】
結合係数kが第2の閾値231より小さいと判定されると、第2のサブプロセス233が開始され、それによって(本明細書で開示されるように)結合係数が第4の閾値(T)を上回るまで速度が減少される。いくつかの実施形態では、第4の閾値は第3の閾値(T)と同じでありうる。具体的には、第2のサブルーチン233において、結合係数kが第4の閾値(T)未満かつ第2の閾値(T2)以上である場合に(244)モータの回転速度は第3の量だけ減少され(245)、結合係数kが第5の閾値(T)以上かつ第2の閾値(T)未満である場合に(242)モータの回転速度は第4の量だけ減少され(243)、結合係数kが第5の閾値(T)未満である場合に(239)モータの回転速度は第5の量だけ減少される(240)ことができる。モータ速度の第4の減少量(すなわち、第4の量によって生じるモータ速度の変化の絶対値)は、第5の減少量(すなわち、第5の量によって生じるモータ速度の変化の絶対値)より小さいことが可能である。モータ速度の第3の減少量(すなわち、第3の量によって生じるモータ速度の変化の絶対値)は、モータ速度の第4の減少量(すなわち、第4の量によって生じるモータ速度の変化の絶対値)より小さいことが可能である。速度調整(240,243,245)の実施後、圧力値が測定され、ステップ220および221について前述したようにして再び結合係数kが求められる(241)。このサブプロセス233は、結合係数kが第4の閾値(T)以上になるまで繰り返され、そうなった時点でサブプロセス233は終了し、プロセスはステップ210の圧力値測定に戻る。
【0091】
上記のことは、図6を参照するとグラフで見ることができる。図6に示すように、結合係数kの値が1~0.75である開始時付近601では、モータ速度はステップ状に増加され、その各ステップ(たとえば、更新された圧力値に基づいて結合係数kが再計算される度に実施されるステップ)は、結合係数kの値が0.75~0.65であると判定される(602)までは中程度の速度増加量であり、その後、各ステップでの速度増加量はより小さな量になる。結合係数kが0.65に達すると(603)、結合係数kが0.55~0.75の範囲外になるまで、さらなる速度変更は実施されない。結合係数kが0に向かって急激に低下する状況において、まず、結合係数kが0.55未満であるが0.15より大きいと判定されると(604)、速度は各ステップにおいて中程度の量にて減少されるが、結合係数kが低下し続けて0.15未満であると判定されると(605)、次に結合係数kが0.15より大きく0.55より小さいと判定される(606)まで、速度は各ステップにおいて大幅に減少される。結合係数kが0.15より大きく0.55より小さいと判定される間は、速度減少は続くが、各ステップは中程度の量にとどまる。結合係数kが0.55~0.65であると判定されると(607)、結合係数kが再び0.65以上であると判定される(608)まで速度減少は続くが、各ステップは小さな量にとどまる。結合係数kが0.75を上回る(609)までは、先と同様にさらなる速度変更は実施されず、その後、結合係数kが0.75~0.66になる(610)まで速度は各ステップにおいて中程度の量にて増加され、続いて、結合係数kが最終的に0.65以下に戻る(611)まで、速度は各ステップにおいてより小さな量で増加され続ける。
【0092】
図7に示すように、プロセッサ110は、特定のイベントが発生した際に、必要に応じて他の判定を実施し修正措置を実行するように構成される場合がある。プロセッサは、方法400を実行するように構成されることが可能であり、その方法400では、特定の安全機能を、前述の結合係数の特定220および速度調整221より優先させることができる。たとえば、プロセッサ110は、ポンプ位置が不正確であるかどうか(たとえば、血液ポンプが心室内にあるか、あるいは血液ポンプが大動脈内にあるか)を判定する(410)ように構成される場合があり、その判定は、検出または特定された圧力値に基づくことができる。その場合、自動的な修正措置が実行されてもよい(411)。その修正措置411は、たとえば、ポンプ位置が不正確であると判定されなくなるまで上述の速度調整を一時停止することを含んでもよく、オプションとして、そのように判定されなくなった時点で上述の速度調整を自動的に再開してもよい。血液ポンプは正しく配置されているがサクションイベントが検出された場合(420)、代替の修正措置が自動的に実行されうる(421)。
【0093】
いくつかの実施形態では、プロセッサ110はさらに、1つまたは複数のサクションイベントを検出し(420)、その後、それらのサクションイベントに自動的に対応する(421)ように構成されることがある。いくつかの実施形態では、その対応は、第1のサクションイベントを検出した場合にモータの回転速度を第5の量だけ減少させ、第2のサクションイベントを検出した場合にモータの回転速度を第6の量だけ減少させ、所定の時間枠(たとえば30秒間~5分間、または2分間など)内において第2のサクションイベントを検出した後に、ある期間(たとえば10分間~30分間、または20分間など)にわたってモータの回転速度の上限値を第6の量だけ引き下げる(「一時停止」と呼ばれることもある)ことによって実施される。
【0094】
上記のプロセスを、モータの回転速度の経時的なグラフである図8に概略的に表す。図示のように、モータの回転速度は、0から増加され、P-2(プリセット速度オプション#2、約31,000rpm)を超えて、初期最大許容速度P-9(プリセット速度オプション#9、約46,000rpm)に向かうことができる(801)。回転速度がP-2を超えると、装置は、装置の通常の動作範囲内にある。通常動作中、サクションが発生するリスクがある(802)。実際、第1のサクションイベント810が検出される場合があり、サクションイベントが解消される間に回転速度は即座に減少されることができる(803)。サクションイベントが解消されると(811)、回転速度は再び増加されうる。しかし、2分未満の期間804内に第2のイベント812が検出される場合があり、その時点で、第2のサクションイベントが解消される(813)まで、回転速度は再び自動的に減少されることができる(805)。その時点から20分間(806)にわたって、P-9(以前の最大許容速度)より低い新たな最大回転速度807が設定されてもよい。20分経過後に、最大回転速度はP-9(808)まで再び上昇されることができ、第3のサクションイベントが発生することなくモータは速度を緩やかに上げ始める。
【0095】
いくつかの実施形態では、最大速度が引き下げられた場合、回転速度の引き下げが実施されたことを示すアラームが発せられる。
【0096】
いくつかの実施形態では、上記期間内(たとえば、最大回転速度が引き下げられた10~30分間の時間枠内)にサクションが検出された場合に、サクションが解消されるまで回転速度をさらに減少させることができ、一時停止カウンタをリセットして新たに10~30分間の一時停止を開始させてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、ポンプのモータ速度が、第1の選択可能な動作モードで使用して動作するように構成された下限速度(たとえば31,000rpm)に達した場合に、回転速度はそれ以上減少されないがアラームがトリガされる構成であってもよい。一実施形態では、そのアラームは、最大速度が引き下げられたことを示すアラームとは異なる。
【0098】
上述の技術を有益とするような治療をECMOとVADとが提供するために必要とする協調動作を考慮すると、プロセッサ110は次のことを実施するように構成されることができる:(i)ECMO装置(たとえばVA-ECMOまたはVVA-ECMO装置)が制御装置に動作可能に接続されているかどうか、および/または作動しているかどうかを検出し、ECMO装置が検出されない場合および/または作動していない場合に、第1の選択可能な動作モードの選択または実行を防止すること、(ii)プロセッサが第1の選択可能な動作モードを使用して血液ポンプを動作させるべきである旨の選択内容を受信すること、あるいは(iii)(i)および(ii)の両方。いくつかの実施形態では、プロセッサ110は(i)のみを実施するように構成されうる。すなわち、ECMO装置90が接続および/または作動していると検出されない限り、ユーザは、制御装置100が第1の選択可能な動作モードで動作することを選択できない。
【0099】
いくつかの実施形態では、制御装置100は、ECMO装置90から信号を受信する代わりに、あるいはそれに加えて、ECMO装置90に関連付けられたフローコントローラ99から、ECMOが作動中であることを示す信号を受信するように構成されうる。たとえば一実施形態では、制御装置100は、ECMO装置90が接続されていることを示すECMO装置90からの信号を受信することに加え、ECMO装置90内に血液が流れておりECMO装置90が作動中であることを示すフローコントローラからの信号も受信しない限り、第1の選択可能な動作モードで動作することを許可されないことが可能である。
【0100】
目標の結合係数kが与えられると、血液ポンプ50の速度を適切な動作速度まで迅速かつ安全に増加させる始動プロセスが、プロセッサによって実行されうる。このことは、図9を参照して説明することができる。始動を達成するために、プロセッサ110はさらに、第1の選択可能な動作モード200を実行する前に始動方法500を実施するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、始動方法は、まずモータの回転速度をゼロから最小回転速度まで増加させること(510)を要する。この最小回転速度は、第1の選択可能な動作モードの実行時にプロセッサ110が用いるように構成されている最小回転速度であるべきである。いくつかの実施形態では、この最小速度は5,000rpm~50,000rpmであり、たとえば20,000rpm~40,000rpm、または31,000rpmである。
【0101】
最小回転速度に達すると、プロセッサ110は、上述と全く同じように、検出または特定された大動脈圧力値および検出または特定された左心室圧力値を使用して結合係数kを求めることができる(520)。ここで、結合係数kは、検出または特定された左心室圧力値の平均値と、検出または特定された大動脈圧力値の平均値との商である。また、検出または特定された左心室圧力値は、検出または特定された左心室圧力値のピーク値(LVPmax)であり、検出または特定された大動脈圧力値は、検出または特定された大動脈圧力値のピーク値(AOPmax)である。
【0102】
結合係数kが特定されると、速度を調整することが可能である。
【0103】
図9に示すように、結合係数k≧1の場合(530)、回転速度を第6の量だけ調整したうえで、一定期間の経過後に結合係数kを再び求め、速度を再び調整するようにできる。いくつかの実施形態では、その一定期間は、たとえば10秒など、5秒~30秒であってもよい。一実施形態では、第6の量は、プロセッサが第1の選択可能な動作モードを実行するように構成されているモータの回転速度範囲の5%~30%でありうる。上述したように、いくつかの実施形態では、この範囲は12,000rpm~20,000rpmであってもよい。たとえば、モータがたとえば31,000rpm~46,000rpmで回転する時にこの動作モードで制御されるように設計されているとすると、動作速度範囲は15,000rpmであり、したがって、第6の量は750rpm~4,500rpmとなる。一実施形態では、第6の量は2,000rpm~3,000rpmである。
【0104】
ただし、結合係数k<1になると、別の経路をたどることがある。具体的には、結合係数kが1未満であると判定された場合、モータの回転速度は、第1の選択可能な動作モードに従って上述のように調整されることができる(221)。図2を参照して説明すると、一実施形態では、結合係数kが第1の閾値(T)より大きいと判定された場合(230)、または結合係数kが第2の閾値(T)より小さいと判定された場合(231)にのみ、速度が調整される。結合係数kが第1の閾値(T)と第2の閾値(T)との間にある場合、速度調整プロセスは実質上無視され、ステップ210および220が繰り返される。
【0105】
結合係数kが第1の閾値より大きいと判定されると(230)、第1のサブプロセス232が開始され、それによって(前述したように)結合係数が第3の閾値(T)未満になるまで速度は増加される。具体的には、第1のサブルーチン232では、結合係数kが第1の閾値(T)より大きい場合に(234)モータの回転速度は第1の量だけ増加され(235)、結合係数kが第1の閾値(T)以下かつ第3の閾値(T)より大きい場合に(236)モータの回転速度は第2の量だけ増加される(237)ことができる。モータ速度の第2の増加量(すなわち、第2の量によって生じるモータ速度の変化の絶対値)は、第1の量(すなわち、第1の量によって生じるモータ速度の変化の絶対値)より小さいことが可能である。速度調整(235,237)の実施後、圧力値が測定され、ステップ220および221について前述したようにして再び結合係数kが求められる(238)。このサブプロセス232は、結合係数kが第3の閾値(T)以下になるまで繰り返されることができ、そうなった時点でサブプロセス232は終了し、プロセスはステップ210の圧力値測定に戻る。
【0106】
結合係数kが第2の閾値231より小さいと判定されると、第2のサブプロセス233が開始されることができ、それによって(本明細書で開示されるように)結合係数が第4の閾値(T)を上回るまで速度が減少される。いくつかの実施形態では、第4の閾値は第3の閾値(T)と同じでありうる。具体的には、第2のサブルーチン233において、結合係数kが第4の閾値(T)未満かつ第2の閾値(T2)以上である場合に(244)モータの回転速度は第3の量だけ減少され(245)、結合係数kが第5の閾値(T)以上かつ第2の閾値(T)未満である場合に(242)モータの回転速度は第4の量だけ減少され(243)、結合係数kが第5の閾値(T)未満である場合に(239)モータの回転速度は第5の量だけ減少される(240)ことができる。モータ速度の第4の減少量(すなわち、第4の量によって生じるモータ速度の変化の絶対値)は、第5の減少量(すなわち、第5の量によって生じるモータ速度の変化の絶対値)より小さいことが可能である。モータ速度の第3の減少量(すなわち、第3の量によって生じるモータ速度の変化の絶対値)は、モータ速度の第4の減少量(すなわち、第4の量によって生じるモータ速度の変化の絶対値)より小さいことが可能である。速度調整(240,243,245)の実施後、圧力値が測定され、ステップ220および221について前述したようにして再び結合係数kが求められる(241)。このサブプロセス233は、結合係数kが第4の閾値(T)以上になるまで繰り返され、そうなった時点でサブプロセス233は終了し、プロセスはステップ210の圧力値測定に戻る。
【0107】
第5の閾値は非常に低くて潜在的な懸念を示すことが多いため、プロセッサ110はさらに、結合係数kが第5の閾値未満であると判定された場合にアラーム通知を作動させるように構成されることがある。そのアラーム通知は、結合係数kが、第5の閾値より大きく第4の閾値より小さい別の閾値以上であると判定されるまで残されることができる。いくつかの実施形態では、その別の閾値は、結合係数kの目標値の20%~50%であってもよい。
【0108】
一定期間(たとえば、ステップ531に続く上記一定期間と同じ期間)の経過後、プロセッサは、第1の選択可能な方法200に従って自動的に動作し始めることができる。
【0109】
上記の始動プロセスを図10に示す。図10では、回転速度がまず、0から最小動作速度(ここではP-2)まで増加されうることが分かる。ある期間(ここでは10秒間)の経過後、結合係数kが1以上であると判定された結果、速度は第6の量だけ増加されてP-3になる。このプロセスは、速度がP-6に達するまで数回繰り返され、その後、結合係数kが1未満であると判定される。結合係数kが1未満である期間850中は、第1の選択可能な動作モードに従って調整を実施することができ、図10に示すように、結合係数k=0.65になるまで速度は緩やかに調整される。
【0110】
制御装置100は、モータを第1の選択可能な動作モード以外の他のモードで動作させるように構成されることも可能である。すなわち、制御装置100は、たとえば血液ポンプ50がECMO装置90と並行して動作していない場合でも使用できるように構成されることができる。一実施形態では、制御装置100は、少なくとも1つの他の動作モードで動作するように構成されることがある。たとえば、制御装置100は、少なくとも2つの他の動作モードで動作するように構成されることがある。
【0111】
一実施形態では、プロセッサ110はさらに、(i)プロセッサ110が、複数の所定の動作回転速度のうちの1つが選択された旨を受信し、モータの回転速度を当該選択された所定の動作回転速度に調整する、第2の選択可能な動作モードと、(ii)プロセッサ110が、モータの回転速度を所定のレートにて最大動作回転速度まで増加させるように構成される、第3の選択可能な動作モードとで動作するように構成されることができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、制御装置100は、モータの制御に使用される圧力値が信頼性を欠くと判定された場合に、第1の選択可能な動作モード200を終了するように構成されうる。明らかなように、信頼性の欠如の判定は、当業者に知られている任意の方法で実施することができ、その方法には、たとえば、特定された圧力値が所定の予想圧力値の範囲内にあるかどうか、または、測定された圧力値の標準偏差が閾値を超えているかどうかを判定することが含まれる。
【0113】
いくつかの実施形態では、プロセッサはさらに、第1の選択可能な動作モード200を用いた動作中に、検出または特定された大動脈圧力値、検出または特定された左心室圧力値、またはその両方が信頼性を欠くかどうかを判定し、検出または特定された大動脈圧力値、検出または決定された左心室圧力値、またはその両方が、ある期間にわたって信頼性を欠くと判定された場合、第1の選択可能な動作モードから第2の選択可能な動作モードに切り替えるように構成されることができる。いくつかの実施形態では、ここでの期間は、たとえば2分間など、30秒間~5分間であってもよい。いくつかの実施形態では、第1のモードから第2のモードへの切り替え動作には、複数のプリセット速度のうち現在のモータ速度に最も近いがそれを超えない速度を自動的に特定し、速度をその特定されたプリセット速度に調整することが含まれうる。いくつかの実施形態では、信号が信頼性を欠くと判定された場合、アラームまたは警告が発せられてもよい。
【0114】
本明細書に開示された血液ポンプシステムは、一般に、上述の制御装置100と、当該制御装置に動作可能に接続されたカテーテルベースの血管内血液ポンプ50とを備えることがある。
【0115】
本明細書に開示されたシステム(たとえばECMOとVADを組み合わせたもの)は、一般に、2つの主要なコンポーネントグループを備えることがある。第1のグループは、たとえばVA-ECMOシステムなどの体外式膜型人工肺(ECMO)システム(たとえばECMO装置90、フローコントローラ99、および様々な関連のチューブやフィッティングなど)である。第2のグループは、ECMOシステムと並行して動作することに適した血液ポンプシステムであり、その血液ポンプシステムは、上述の制御装置100と、当該制御装置に動作可能に接続されたカテーテルベースの血管内血液ポンプ50とを備える。
【0116】
当業者であれば、ありふれた実験のみを用いて、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態との多くの均等物を認識または確認することができる。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0117】
本開示の実施形態は、図面を参照して詳細に説明されており、図面において、同様の参照番号は同様のまたは同一の要素を示す。本明細書に開示された実施形態は、本開示の単なる一例であり、様々な形態で具体化されうると理解されるべきである。不必要な詳細によって本開示を分かりにくくすることを避けるために、周知の機能または構造については詳細に説明していない。したがって、本明細書に開示される具体的な構造および機能の詳細は、限定を課すものとして解釈されるべきでなく、単に特許請求の範囲の根拠として、さらには、実質的にあらゆる適切な具体的構造において本開示が様々に使用されることを当業者に教示するための代表的な根拠として、解釈されるべきである。
図1
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【国際調査報告】