(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】スペーサファブリック及び使用
(51)【国際特許分類】
D04B 21/14 20060101AFI20240905BHJP
D04B 21/00 20060101ALI20240905BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240905BHJP
A47C 7/22 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
D04B21/14
D04B21/00 A
B60R13/02 B
A47C7/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515058
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022073290
(87)【国際公開番号】W WO2023036590
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】102021123643.6
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515264089
【氏名又は名称】ミュラー・テクスティール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ゲッケル・ハイデ
【テーマコード(参考)】
3D023
4L002
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB01
3D023BD03
3D023BD12
3D023BD28
3D023BD32
3D023BE04
4L002AA07
4L002AB02
4L002AC07
4L002CA03
4L002CB01
4L002CB05
4L002EA05
4L002FA06
(57)【要約】
【課題】一方では大きな摩耗抵抗性を有し、他方では、様々な種類の内装材に使用可能な、安価かつ容易に製造可能なスペーサファブリックを提供する。
【解決手段】第1の平坦な編地層1と、第2の平坦な編地層2と、これら編地層を結合するスペーサ糸3とを有するスペーサファブリックであって、第1の編地層1が、第1及び第2の糸システムで形成されているとともに、生産方向に延びるウェールと、横方向に延びるコースとを備えている、前記スペーサファブリックにおいて、第1の糸システムが鎖編組織として形成されており、第2の糸システムの糸が編み目形成なしに生産方向に沿って交互の順序でオフセットされて交互に互いに隣り合う少なくとも2つのウェールを介してガイドされており、第1の糸システムの糸が、スペーサ糸3よりも大きな番手を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の平坦な編地層(1)と、第2の平坦な編地層(2)と、これら編地層を結合するスペーサ糸(3)とを有するスペーサファブリックであって、第1の編地層(1)が、少なくとも、第1及び第2の糸システム(5,6)で形成されているとともに、生産方向(P)に延びるウェール(M)と、横方向に延びるコース(R)とを備えている、前記スペーサファブリックにおいて、
第1の糸システム(5)が鎖編組織として形成されており、第2の糸システム(6)の糸が編み目形成なしに生産方向(P)に沿って交互の順序でオフセットされて交互に互いに隣り合う少なくとも2つのウェール(M)を介してガイドされており、第1の糸システム(5)の糸が、スペーサ糸(3)よりも大きな番手を有していることを特徴とするスペーサファブリック。
【請求項2】
スペーサ糸(3)に対する第1の糸システム(5)の糸の番手の比率が少なくとも1.5:1であることを特徴とする請求項1に記載のスペーサファブリック。
【請求項3】
第1の糸システム(5)の糸が、100~300dtex(デシテックス)の番手、好ましくは150~200dtex(デシテックス)の番手を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のスペーサファブリック。
【請求項4】
第2の糸システム(6)の糸が、15~100dtex(デシテックス)の番手、好ましくは20~60dtex(デシテックス)の番手を有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のスペーサファブリック。
【請求項5】
第1の糸システム(5)がガイドバーで形成され、第2の糸システム(6)が1イン1アウトの経通しによるガイドバーで形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のスペーサファブリック。
【請求項6】
第1の編地層(1)が、オフセットされたトリコット編組織として形成された第3の糸システム(7)を備えていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のスペーサファブリック。
【請求項7】
第3の糸システム(7)が1イン1アウトの経通しによるガイドバーで形成されていることを特徴とする請求項6に記載のスペーサファブリック。
【請求項8】
第3の糸システム(7)の糸がフラットヤーンで形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載のスペーサファブリック。
【請求項9】
編地層(1,2)及びスペーサ糸(3)が、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)で構成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のスペーサファブリック。
【請求項10】
VDA230-210に従う面ファスナテストによる少なくとも評点4の面ファスナ抵抗性を有することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のスペーサファブリック。
【請求項11】
カバー材料として請求項1~10のいずれか1項に記載のスペーサファブリックを有することを特徴とする室内装具、特に原動機付き車両用シート被覆材又は原動機付き車両内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の平坦な編地層と、第2の平坦な編地層と、これら編地層を結合するスペーサ糸とを有するスペーサファブリックに関するものであり、第1の編地層は、少なくとも、第1及び第2の糸システムで形成されているとともに、生産方向に延びるウェールと、横方向に延びるコースとを備えている。
【背景技術】
【0002】
スペーサファブリックは、一方では軽量で通気性のある構造によって、他方では平坦な両編地層の間で延びるスペーサ糸により厚さ方向における弾性的な特性によって、特徴付けられる。スペーサファブリックは、当該特性により、ソフトで弾性的な、空気循環を可能とする層として、例えば、マットレス、室内装飾家具、衣類又は靴において設けられることができる。さらに、スペーサファブリックは、弾性的な中間層として空調シート、シートカバー又は内装材部分として用いられるように、技術的な織物(編物)として自動車分野でも更に普及されている。
【0003】
原動機付き車両の内装材を形成する中間層としてのスペーサファブリックは特許文献1から知られており、具体的には、複数の箇所におけるエアバッグあるいはエアバッグフラップについてのスペーサファブリックの使用のために低減された引裂強度が提供される。
【0004】
さらに、特に自動車産業の分野では、スペーサファブリックは中間層としてのみならず、むしろ装飾層として直接用いられることがますます注目されている。すなわち、例えば、特許文献2には、内装材部分又はシートカバーの表面を直接形成するスペーサファブリックが記載されている。このとき、大きな抵抗性を達成するために、第1の編地層におけるスペーサ糸が糸交絡によって編み目を形成する一方、第2の編地層におけるスペーサ糸が編み目を形成せずそこで単に一種の緯糸として編まれている。さらに、第2の編地層の穴構造を設けることができ、当該穴構造は、合目的には第2の編地層の内側において緯糸によって覆われている。通常、このような穴構造は、フィレレース編組織を介して達成されるため、通常、比較的大きく明確に視認可能な個々の穴が複数の編み目から得られる。
【0005】
ただし、公知のスペーサファブリックにおいては、装飾層としての使用時に、機械的な負荷の下で個々の糸が引き出されることがあり、スペーサファブリックが視覚的及び機能的に損なわれるというおそれがある。特に、スペーサファブリックが鋭利な物体又は衣類においてしばしば用いられる面ファスナにさらされるときに、当該おそれがある。
【0006】
織物の面ファスナ抵抗性をチェックするために、織物には、実際にはいわゆる面ファスナテストが行われ、当該面ファスナテストによって、実際に近い方法で面ファスナによる摩耗負荷に対する影響度合い(感度)がチェックされる。このために、ドイツ自動車工業会(VDA)は、2008年12月付けで試験仕様VDA230-210を発行した。面ファスナによる測定サンプルの負荷の後、目視検査による評価が行われ、5段階の評点段階において査定が行われる。表面の変化が小さい場合には、評点5による判定が行われ、表面及び構造の完全な破壊は評点1によって査定される。原動機付き車両における永続的な仕様に適切であるように、上述の試験仕様によれば、少なくとも評点4が求められ、これは、公知のスペーサファブリックでは容易に達成できず、そのため、通常、車両シートは、常に、布地、皮革又は人工皮革(合成皮革)から成る追加的なカバー層を備えている。
【0007】
上述の特許文献2は、既に面ファスナ抵抗性に関して基本的には実証している。ただし、比較的大きな穴構造により、限定された程度においてのみ内装材としてフレキシブルに使用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許発明第102010010524号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102012105134号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「Textile Fertigungsverfahren-Eine Einfuehrung」、Griesら著、第411ページ、第3版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような背景から、本発明の基礎となる課題は、一方では大きな摩耗抵抗性を有し、他方では、様々な種類の内装材に使用可能な、安価かつ容易に製造可能なスペーサファブリックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、請求項1によるスペーサファブリックによって解決される。それによれば、第1の糸システムが鎖編組織(柱編巻組織)として形成されており、第2の糸システムの糸が編み目形成なしに生産方向Pに沿って交互の順序でオフセットされて交互に互いに隣り合う少なくとも2つのウェールMを介してガイドされるように構成されることが本発明において本質的であり、第1の糸システムの糸は、スペーサ糸よりも大きな(糸)番手を有している。
【0012】
このような構成によれば、第1の編地層の穴構造は、フィレレース編組織を介して達成されない。むしろ、第1の編地層は、本質的に古典的な鎖編組織を介して形成され、糸は、それぞれウェールに沿って延びている。それにもかかわらずある程度の穴形成を得るために、編み目形成を有さない一種の緯糸として互いに隣り合う少なくとも2つのウェールを介して交互にガイドされた第2の糸システムが設けられている。このとき、穴形成は、第2の糸システムの糸が交互の順序でオフセットされていることにより達成される。これは、糸が中央のウェールから交互にこれに隣接する左右のウェールを介してガイドされており、これにより第1の糸システムがある程度引っ張られる(たわむ)ことを意味する。このとき、互いに隣り合う3つのウェールから3-2-3-1-2-1という順序が生じ、中央のウェールが2番で示されている。第1の糸システムでは、各コースにおける糸が鎖編組織を用いることで編み目を介してある程度固定されるため、面ファスナが作用する場合にも第1の糸システムの糸が容易に引き出されることはない。
【0013】
第1の糸システムがスペーサ糸をある程度多くことができ、したがって作用する面指すなによってスペーサ糸が容易に捕捉されることがないように、第1の糸システムの糸がスペーサ糸よりも大きな番手を有していることが面ファスナ抵抗性に貢献する。
【0014】
この関係において、織編用糸の番手は、その長さに対する重さについての尺度である。糸の番手は、デニールとも呼ばれる(非特許文献1参照)。より大きな番手あるいはデニールを有する糸は、より小さな番手を有する糸よりも大きな重さと、通常はより大きな厚さも有している。したがって、第1の糸システムの糸のより大きな厚さによって、面ファスナが限定的にのみ第1の編地層の表面へ侵入することができるように糸が穴構造の外部の範囲においてある程度の平坦な延長部を有することが保証される。
【0015】
そのため、全体的に、面ファスナ抵抗性に対して2つの別々のシステムが互いに無関係に考慮されている。一方では、第1の編地層自体はある程度の面ファスナ抵抗性を有することとなるため、特に第1の糸システムの個々の糸は、視覚的な外観を損なうように影響させるように容易に引き出されることがない。このことは、第1の糸システムの鎖編組織によって達成される。この関係では、第1の糸システムの糸がわずかにしかふくらみがついていない材料、特にマルチフィラメント糸で形成されており、したがって過剰な体積を有さないか、あるいは面ファスナの作用により引き出されることができるわずかのみの過剰な体積を有する場合にも合目的である。
【0016】
しかし、他方では、スペーサファブリックへの面ファスナの侵入及びスペーサ糸の捕捉も防止されるべきである。なぜなら、これは、同様に視覚的な観点においても、また機能的な観点においても不利となり得るスペーサファブリックの局所的な圧縮につながるためである。これは、特に比較的小さい細かく構造化された、更に内装材としての異なる使用目的へのより容易な構造的な適合を可能とする穴構造によって達成される。
【0017】
本発明の好ましい一形態によれば、スペーサ糸に対する第1の糸システムの糸の番手の比率は、少なくとも1.5:1、特に好ましくは2:1、非常に特に好ましくは少なくとも3:1である。このとき、個々の糸の番手は、通常、dtex(デシテックス)という単位で記載され、第1の糸システムの糸は、好ましくは100~300dtex(デシテックス)、好ましくは150~200dtex(デシテックス)を有している。
【0018】
本発明の好ましい一発展形態によれば、第1の糸システムの糸は、第2の糸システムの糸よりも大きな番手も有しており、比率は、好ましくは少なくとも2:1,好ましくは少なくとも3:1、非常に特に好ましくは少なくとも4:1である。このような一構成によれば、第2のシステムの糸も、同様に、作用する面ファスナによる引き出しによって第1の糸システムの糸によって保護されることが保証される。第1の糸システムの糸がそのオフセットされた配置に基づき穴構造の形成に決定的であるため、個々の糸の引き出しによって、穴構造が第1の編地層の全表面にわたって維持されることができないこととなる。このことは、特に視覚的な外観を決定的に悪化させ得る。なぜなら、特にスペーサファブリックの均一な構造により個々の損傷がユーザ又は消費者にとって外部から容易に視認可能であり、特に障害のあるものと感じられ得るためである。
【0019】
好ましくは、第2の糸システムの番手は、15~100dtex(デシテックス)、好ましく20~60dtex(デシテックス)である。基本的には、第1の糸システムについても、また第2の糸システムについても、様々な糸の種類を糸として用いることができ、好ましくは、第1の糸システムの糸はマルチフィラメント糸で形成されており、第2の糸システムの糸は物フィラメント糸で形成されている。第1の編地層における鎖編組織のためのマルチフィラメント糸の使用によって、特にふわふわでソフトな表面が得られる。さらに、マルチフィラメント糸は、小さな曲げ強度によって特徴付けられているため、顕著な復帰力なく編み目形成を行うことが可能である。これに対して、第2の糸システムのためのマルチフィラメント糸は不要である。なぜなら、当該フィラメント糸は、第1の編地層の表面の製織には寄与しないか、あるいは本質的には寄与しないためである。さらに、モノフィラメントは、比較的大きな曲げ強度によって特徴付けられているため、これにより、第1の糸システムの個々の編み目を締めることで既に上述した穴構造を形成することが可能である。
【0020】
本発明の好ましい一発展形態によれば、第1の糸システムがガイドバーで形成され、第2の糸システムが1イン1アウトの経通しによるガイドバーで形成されている。
【0021】
基本的には、第1の編地層における第1及び第2の糸システムの使用によって、既に十分に大きな面ファスナ抵抗性を達成することが可能であるが、特に好ましい一構成によれば、第1の編地層には更に第3の糸システムが設けられており、当該第3の糸システムは、オフセットされたトリコット編組織として形成されている。トリコット編組織では、糸は、交互にオフセットされて隣り合う2つのウェールを介してガイドされ、各コースでは編み目形成がなされる。したがって、これは、糸が生産方向におけるコースにおいて編み目形成を有さない緯糸としてのみガイドされる第2の糸システムから第3の糸システムを本質的に区別する。しかし、第2の糸システムに従って、ここではオフセットされた配置であるため、第3の糸システムの糸は、交互の順序において対応してオフセットされて交互に互いに隣り合う少なくとも2つのウェールを介してガイドされている。好ましくは、第3の糸システムの糸は、第2の糸システムの糸がウェールの周囲でガイドされる箇所で編み目を形成する。したがって、本質的に生産方向Pにおいて第2の糸システム及び第3の糸システムの糸の同時の経過が生じ、両糸システムは、編み目形成によってのみ、あるいは編み目形成が存在しないことによってのみ区別される。糸は、第3の糸システムの編み目形成によって固定され、したがって、第1の編地層から容易に引き出されることがない。これにより、糸は、糸が編み目形成なしの構成により第3の糸システムの糸よりも本質的に容易に引き出され得る第2の糸システムのための一種の覆いとして用いられる。カバーによって、面ファスナの侵入時に第2の糸システムの糸も、また第3の糸システムの糸も同時に捕捉されることを達成することができ、第3の糸システムの糸は、過剰な体積が存在しないことにより、それ自体のみならず第2の糸システムの糸も編地層に固定する。さらに、オフセットされたトリコット構造との第3の糸システムの組み込みによって、穴構造をほこり又は汚れの侵入に対してある程度閉鎖することが可能である。
【0022】
好ましくは、第3の糸システムは、1イン1アウトの経通しによる2つのガイドバーで形成されている。さらに、第3の糸システムの糸は、好ましくはフラットヤーン(扁平糸)である。フラットヤーンとは、本質的にしわなく形成された糸と理解される。これにより、長さが後に延伸されることがないか、又は本質的に延伸されることがなく、したがって、個々の編み目間に過剰な体積を有さないか、あるいはわずかにしか有さない。
【0023】
好ましい一構成によれば、編地層及び/又はスペーサ糸は、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)で構成されている。
【0024】
さらに、第1の糸システムのマルチフィラメント糸は、好ましく24~96のフィラメントを備えている。適切なマルチフィラメント糸は、例えば30~80のフィラメントを有することができる。フィラメントの数が増加するにつれて材料がよりソフトになる一方、フィラメントの数が減少するにつれて圧縮硬さ及び機械的な損傷に対するマルチフィラメント糸の抵抗性が増大する。
【0025】
編地層及びスペーサ糸の織物構造において特に魅力的で好ましくは統一的な色の印象を達成するために、少なくとも第1の織物層及びスペーサ糸のマルチフィラメント糸と、好ましくは第2の織物層の糸も、同一の色調のみならず同様に着色されている。このとき、マルチフィラメント糸が原液着色されている構成が特に好ましい。
【0026】
原液着色されたマルチフィラメント糸の場合には、着色剤(染料)は、マスターバッチの形態の高分子物質の個々のフィラメントの製造時に直接添加される。そして、個々のフィラメントは、完全かつ均一に染色されている。機械的な損傷、摩滅又はこれに類するものにおいても、せいぜい表面性状が変化しても色調は変化しない。したがって、原液着色された材料は長期にわたって特に色あせせず、高分子マトリックスでの着色剤は、例えば漂白のような周囲の影響に対しても保護されている。
【0027】
しかし、原液着色されたマルチフィラメント糸のほかに、本発明においては、他の方法が基本的に排除されているわけではない。
【0028】
本発明によるスペーサファブリックは、機械的な負荷に対する大きな抵抗性によって特徴付けられている。本発明の好ましい一構成によれば、スペーサファブリックは、第1の編地層の露出した表面について面ファスナテストが行われる場合に、VDA230-210に従う面ファスナテストによる少なくとも評点4の面ファスナ抵抗性を有することによって特徴付けられている。好ましくは、評点5が達成される。
【0029】
本発明によるスペーサファブリックは、その抵抗性に基づき、織物のカバー層としても高負荷範囲において用いられることが可能である。しかし、さらに、スペーサファブリックは、スペーサファブリックにおいて典型的な弾性的な復帰特性と、軽量で開放された通気性のある構造とを備えている。上述の用途のために、全体厚さは例えば2.5~8mmとなることがあるが、本発明は、この好ましい範囲に限定されるものではない。
【0030】
本発明の対象は、カバー材料あるいは装飾層としての上述のスペーサファブリックを有する室内装具、例えば原動機付き車両用シート被覆材又は原動機付き車両内装材でもある。別の変形態様は、例えば航空機又は鉄道、地下鉄若しくはこれに類するもののようなレール上の車両のシート又は室内装具である。まさに航空機では、一方では飛行重量を低減するために、他方ではできる限り多くの乗客に十分な場所を提供することができるように、できる限り軽量でスペースを取らないシートを用いる努力が行われている。さらに、室内装具は、家具、例えば着座家具であってよい。
【0031】
そして、第1の編地層は、室内装具の表面、すなわち特に原動機付き車両あるいは原動機付き車両室内装具の表面を形成する。面ファスナ又は他の粗い若しくは鋭利な対象物は、高められた抵抗性によって、室内装具の表面を少なくとも損傷しづらい。
【0032】
したがって、本発明によるスペーサファブリックは、抵抗性のある表面によって別の機能を発揮し、別の利点、すなわち弾性的な復帰特性及び通気性が維持される。特に、本発明においては、抵抗性、弾性的な特性及び通気性を各要求に従って適合及び最適化することが可能である。
【0033】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明によるスペーサファブリックを概略的に示す図である。
【
図2】本発明によるスペーサファブリックの第1の編地層の平面図である。
【
図3】第1の編地層の糸システムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1には、スペーサ糸3によって互いに結合された第1の平坦な編地層1及び第2の平坦な編地層2を有するスペーサファブリックが概略的に示されている。さらに、第1の平坦な編地層1が開口部4を有する穴構造を備えていることが
図1から分かる。当該穴構造4は、従来技術から知られたスペーサファブリックとは異なり、フィレレース編組織によって生成されるのではなく、むしろ古典的な鎖編組織を介して生成され、第1の平坦な編地層1の構成が
図2に詳細に図示されている。
【0036】
これによれば、第1の編地層1は、第1の糸システム5及び第2の糸システム6で構成されているとともに、生産方向Pに延びるウェールMと、横方向に延びるコースRとを更に備えている。
【0037】
第1の糸システム5が鎖編組織として形成されており、第2の糸システム6の糸が編み目形成なしに生産方向Pに沿って交互の順序でオフセットされて交互に互いに隣り合う少なくとも2つのウェールMを介してガイドされるように構成されることが本発明において本質的であり、第1の糸システム5の糸は、スペーサ糸3よりも大きな(糸)番手を有している。
【0038】
個々の糸システム5,6の経過は、特に
図3との比較において明らかに見て取ることが可能である。これによれば、第1の糸システム5については開放された鎖編みの編み目を有する古典的な鎖編組織が設けられており、鎖編みの編み目は、ウェールMに沿ってのみ延びている。第2の糸システム6は、全体的に互いに隣り合う3つのウェールMに沿って延びており、隣り合う2つのウェールMが糸によって常に交互の順序で転回される。これにより、第1の糸システム5の個々の鎖編みの編み目が生産方向Pにおいて交互に左右に引っ張られ、
図2に示された開口部4を有する穴構造が形成されることとなる。そして、第2の糸システム6の糸はジグザグ状に延びる。
【0039】
第1の糸システム5の糸は、第2の糸システム6と比べても、またスペーサ糸3と比べても、より大きな番手を有しており、したがって、第1の織物(編物)の編地層1の表面における材料の大部分において貢献する。これにより、面ファスナのフックの侵入が困難となり、したがって、表面の面ファスナ抵抗性が改善される。
【0040】
図2及び
図3の比較に基づき、第3の糸システム7も設けられていることが更に明らかであり、当該第3の糸システムは、第2の糸システム6と共通に延びているが、第2の糸システムと異なり、それぞれ編み目を介して個々のウェールMに結合されている。したがって、一方では第2の糸システム6の安定性に寄与し、他方では開口部4をある程度覆い、したがって汚れ又はほこりの侵入から保護するオフセットされたトリコット編組織である。
【0041】
さらに、第1の編地層1の全ての糸システム5,6,7は、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートで形成されている。これは、スペーサ糸3及び第2の織物(編物)の編地層2にも同様に当てはまる。
【国際調査報告】