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特表2024-533306認知および気分症状の処置のためのイミダゾベンゾジアゼピン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】認知および気分症状の処置のためのイミダゾベンゾジアゼピン
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20240905BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07D487/04 154
C07D487/04 CSP
A61P25/28
A61K31/551
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515060
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 US2022042832
(87)【国際公開番号】W WO2023039018
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,877
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/334,978
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515076769
【氏名又は名称】ユーダブリューエム・リサーチ・ファウンデーション,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】518332310
【氏名又は名称】センター フォー アディクション アンド メンタル ヘルス
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】プレヴォ,トーマス,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】マーコット,マイケル,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】シビル,エティエンヌ,ローレン
(72)【発明者】
【氏名】クック,ジェームス,エム.
(72)【発明者】
【氏名】リ,グァンガン
(72)【発明者】
【氏名】モンダル,プリス
(72)【発明者】
【氏名】ミアン,エムディ,イェヌス
(72)【発明者】
【氏名】ラシッド,ファルジャナ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB12
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA15
(57)【要約】
アミドまたはオキサジアゾールで3位に置換されている4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン、およびそれらの医薬組成物は、認知を増強する効力を呈し、神経変性および精神神経障害などの認知欠損症の処置において有用性を有し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
からなる群から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
化合物が、
【化2】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
化合物が、
【化3】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
化合物が、
【化4】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
化合物が、
【化5】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
化合物が、
【化6】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
化合物が、
【化7】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
化合物が、
【化8】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
化合物が、
【化9】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
化合物が、
【化10】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
化合物が、
【化11】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
化合物が、
【化12】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
化合物が実質的にエナンチオマー的に純粋である、請求項1から8または10から12のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
治療有効量の請求項1から13のいずれかに記載の化合物、あるいは請求項14に記載の医薬組成物、あるいは
【化13】
からなる群から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、認知を増強する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2021年9月8日に出願された米国仮出願第63/241,877号、および2022年4月26日に出願された米国仮出願第63/334,978号の利益を主張し、これらの全内容は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
この発明は、国立衛生研究所(NIH)によって授与された認可番号DA043204下の政府支援で行われた。政府は、本発明におけるある特定の権利を有する。
【0003】
技術分野
イミダゾベンゾジアゼピンアミドおよびオキサジアゾールならびにそれらの医薬組成物は、神経変性および精神神経障害における認知欠損症の処置に関して認知を増強するのに有用である。
【背景技術】
【0004】
世界保健機関によると、大うつ病性障害(MDD)は、能力障害の主要な原因であり、世界中で3億5千万の人々に影響している。それは、低感情(law affect)、快感消失、不安、反芻思考、食欲変化、睡眠障害、および認知機能障害(impairment)を含む症状を有する複合障害である。それの早期発症および慢性的性質は、教育の喪失および失業に関して深刻な結果を有する。それは、高い再発率、女性におけるより高い有病率、および37%の遺伝率とともに、それぞれ5.3%および13.2%の年間および生涯の推定有病率を有する。MDDは、開発途上国および先進国の両方において、ならびに女性および男性の両方において、能力障害によって失われた年数の主要な原因である。うつ病の負担は増加している。疾病の重症および慢性形態である処置抵抗性うつ病は、常時集団の1~3%の推定有病率を有し、統合失調症および双極性障害の症例を合わせたものよりも大きい割合である。罹患者、彼らの家族および社会に対する許容できない負荷にもかかわらず、製薬会社は、大部分が、新たな抗うつ薬を開発することから撤退してきた。
【0005】
認知機能障害は、不安、快感消失、睡眠障害および他の欠損と並行して発症する共存症状の一部である。認知機能不全は、注意、視覚および聴覚処理、短期および作業記憶、運動機能、学習および記憶プロセスにおける欠損を指す。うつ病における認知機能障害の重要性に対する圧倒的なコンセンサスにもかかわらず、うつ病における認知機能障害の完全なプロファイルに関する結論がない。認知機能障害は、MDDにおける主要な機能不全であり得、いくつかの他の中核症状は、認知機能不全のメディエーターとして作用し得る。現在の抗うつ薬物療法は、全て、50年以上前に偶然に発見された手法および作用モードから誘導されている。これらの薬物は、主として、モノアミン(セロトニンおよびノルエピネフリン)系上で作用する。それらは、しばしば、治療効果を達成するのに数週かかり、対象は、不十分な応答、低い寛解率(約50%)およびかなりの副作用を経験する。さらに、利用可能な抗うつ薬は、認知機能障害を処置するために設計されておらず、一部の場合(一部のベンゾジアゼピンのように)、疾病の一部の側面(不安、快感消失)に対するそれらのプラス効果は、認知に影響する負の副作用によって相殺される。さらに、臨床研究は、認知欠損が、気分症状からの寛解期間においてさえ、まだ検出されることを実証した。それゆえに、認知機能不全、ならびに情動的および動機的症状を潜在的に救済することができる抗うつ薬を開発することは、MDDの将来の処置にとって重要であると思われる。
【0006】
新たな抗うつ薬開発に対する障壁は、疾患機序に対する知識の、および疾病の主要な病理によって情報を与えられる標的の不足から始まり、複数ある。したがって、合理的な薬物設計に向けた努力、または個人化された処置のための生物学的な診断的および治療的マーカーを開発するための努力は現在ほとんどない。
【発明の概要】
【0007】
一態様において、本発明は、
【0008】
【化1】
からなる群から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、
【0010】
【化2】
からなる群から選択される化合物、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、認知を増強する方法における使用のための化合物またはその薬学的に許容される塩を提供し、ここで、化合物は、
【0012】
【化3】
からなる群から選択される。
【0013】
別の態様において、本発明は、認知を増強するための医薬の製造における化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここで、化合物は、
【0014】
【化4】
からなる群から選択される。
【0015】
本開示の他の態様は、詳細な記載および添付の図面を考慮することによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率(alternation rate)の有意な低減を誘発することを示す図である(p<0.001)。この効果は、試験の30分前の、GL-III-68、10mg/kgの急性投与によって逆転される。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるGL-III-68の認知促進(pro-cognitive)効果を示唆している。
図2図2Aは、群間の有意な差異を示す図である(ANOVA:F(2,12)=7.3、p<0.01)。フィッシャーPLSD事後分析は、慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発することを示す(p<0.01)。この効果は、試験の30分前の、MYM-III-29、10mg/kgの急性投与によって逆転される(p<0.05)。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるMYM-III-29の認知促進効果を示唆している。図2Bは、CRSおよび3mg/kgのMYM-III-29での急性処置後、Y迷路において試験されたマウスの結果を示す図である。結果は、群間に有意な差異がないことを示す(ANOVA:F(2,11)=2.7、p=0.1)。
図3】オープンアームにおける移動距離を増加させる、高架式十字迷路における10mg/kg(i.p.)MYM-III-29の有意な効果を示す図である(t試験:p<0.05)。この結果は、MYM-III-29の潜在的な抗不安効果を示唆している。
図4】慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発することを示す図である(p<0.0001)。この効果は、試験の30分前の、FR-III-17、0.3mg/kg($$p<0.01)、1mg/kg($p<0.05)または3mg/kg($p<0.05)の急性投与によって逆転される。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるFR-III-17の認知促進効果を示唆している。
図5図5Aは、群間の有意な差異を示す図である(ANOVA:F(2,11)=2.9、p<0.05)。フィッシャーPLSD事後分析は、慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発することを示す(p<0.05)。この効果は、試験の30分前の、PM-II-26、30mg/kgの急性投与によって逆転される(傾向:p=0.1)。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるPM-II-26の認知促進効果を示唆している。図5Bは、群間の有意な差異を示す図である(ANOVA:F(2,7)=19.6、p<0.001)。フィッシャーPLSD事後分析は、慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発することを示す(p<0.001)。この効果は、試験の30分前の、PM-II-26、10mg/kgの急性投与によって逆転される(p<0.001)。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるPM-II-26の認知促進効果を示唆している。
図6】慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発することを示す図である(p<0.0001)。この効果は、試験の30分前の、MYM-III-41、5mg/kg(p<0.01)および10mg/kg(p<0.05)の急性投与によって逆転される。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるMYM-III-41の認知促進効果を示唆している。
図7】群間の有意な差異を示す図である(ANOVA:F(3,14)=9.7、p<0.001)。フィッシャーPLSD事後分析は、慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発することを示す(p<0.01)。この効果は、試験の30分前の、GL-IV-03、3mg/kg(p<0.01)および30mg/kg(p<0.01)の急性投与によって逆転される。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるGL-IV-03の認知促進効果を示唆している。
図8】群間の有意な差異を示す図である(ANOVA:F(2,28)=5.3、p<0.05)。フィッシャーPLSD事後分析は、慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発することを示す(p<0.01)。この効果は、試験の30分前の、GL-I-65、10mg/kgの急性投与によって逆転される(p<0.05)。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるGL-I-65の認知促進効果を示唆している。
図9】試験の30分前の、GL-I-65、10mg/kgの急性投与を受ける老齢マウスにおける交替率の有意な改善を示す図である(t試験:ビヒクルを受ける老齢マウスと比較して、p<0.05)。
図10】慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発することを示す図である(p<0.001)。この効果は、試験の30分前の、GL-III-60、10mg/kg($$p<0.01)および30mg/kg($p<0.05)の急性投与によって逆転される。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるGL-III-60の認知促進効果を示唆している。
図11】群間の有意な差異を示す図である(ANOVA:F(2,11)=4.4、p<0.05)。フィッシャーPLSD事後分析は、慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発することを示す(p<0.05)。この効果は、試験の30分前の、GL-II-33、10mg/kgの急性投与によって逆転される(傾向p=0.06)。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるGL-II-33の認知促進効果を示唆している。
図12】慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発することを示す図である(p<0.001)。この効果は、試験の30分前の、MYM-III-43、3mg/kg($p<0.05)、10mg/kg($$p<0.01)、および30mg/kg($$p<0.01)の急性投与によって逆転される。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるMYM-III-43の認知促進効果を示唆している。
図13】群間の有意な差異を示す図である(ANOVA:F(2,11)=10、p<0.01)。フィッシャーPLSD事後分析は、慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発することを示す(p<0.05)。この効果は、試験の30分前の、PM-II-84E、30mg/kg(p<0.05)の急性投与によって逆転される。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるPM-II-84Eの認知促進効果を示唆している。
図14】慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発することを示す図である(p<0.001)。この効果は、試験の30分前の、MYM-IV-47、10mg/kg($$<0.01)および30mg/kg($p<0.05)の急性投与によって逆転される。この結果は、作業記憶欠損を逆転させるMYM-IV-47の認知促進効果を示唆している。
図15】オープンアームにおいて費やされる時間を増加させる、高架式十字迷路における10mg/kg(i.p.)PM-II-84Eの有意な効果を示す図である(t試験:p<0.01)。この結果は、PM-II-84Eの潜在的な抗不安効果を示唆している。
図16】作業記憶に関するY迷路空間交替タスクにおける10mg/kgおよび30mg/kg(i.p.)のMYM-V-28が、対照(CRSビヒクル)との比較において、交替率を有意に改善した($p<0.05)ことを示す図である。
図17】作業記憶に関するY迷路空間交替タスクにおける10mg/kg(i.p.)のPM-III-57Rが、対照(CRSビヒクル)との比較において、交替率を有意に改善した($$p<0.01)ことを示す図である。
図18】作業記憶に関するY迷路空間交替タスクにおける10mg/kg(i.p.)のFR-PM-III-57Sが、対照(CRSビヒクル)との比較において、交替率を有意に改善した($p<0.05)ことを示す図である。
図19】10mg/kgでのMYM-IV-46が、対照(CRSビヒクル)との比較において、作業記憶に関するY迷路交替タスクにおいて交替率を改善した($$<0.01)ことを示す図である。
図20】FR-III-17(3mg/kg、i.p.、試験の30分前)およびビヒクル対照を不安様行動に関して高架式十字迷路において試験したことを示す図である。t試験は、FR-III-17が、オープンアームにおいて%時間、%移動距離および%進入を有意に増加させる(p<0.05、**P<0.01)(n=1群当たり6)ことを見出し、抗不安特性を示唆した。
図21】ヒトα1β2γ3、α2β2γ3、α3β2γ3、α4β2γ3、またはα5β2γ3GABA受容体でトランスフェクトされた細胞におけるGL-III-68の電気生理学的解析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本開示の任意の実施形態が詳細に説明される前に、本開示は、それの適用において、以下の記載において説明されているまたは以下の図面に例示されている構成の詳細および構成成分の配置に限定されないと理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々なやり方で実践または実施されることが可能である。
【0018】
医学的介入および生存条件における改善は、平均ヒト寿命を劇的に増加させてきた。結果として、増加する数の人々が、認知症を含めて、神経変性疾患を患っている。2015年には世界的に4,680万の人々が認知症を有して生活しており、この数は、20年ごとに2倍になり、2030年には7,470万人、および2050年には1億3150万人に達すると予想される。認知症を有する人々の大多数は、アルツハイマー病(AD)を患っている。ADは、人生の認知的、情動的および行動学的側面に影響する致死的疾患である。認知症状は、決定をする、単純タスクを行う、または会話についていくという人間の能力に対する負の効果を含む。抗コリン薬は、ADにおける認知欠損のために使用されるが、成功は非常に限定される。ADにおける気分症状としては、感情鈍麻、興味の喪失、低感情、不安および離脱が挙げられる。ADは、ADの個人的、社会的および経済的な負担を増大させており、即ち、2013年には6040億ドルであり、2050年には2兆ドルを超えると予測されており、前駆(軽度認知機能障害)および高いリスク因子(老化およびうつ病)状態の負担を考慮していない。この負担は、ADの古典的な神経病理(即ち、アミロイドプラークおよび濃縮体)に狙いを定めた臨床試験の近年の失敗によって悪化されている。
【0019】
脳障害の生物学的基礎を明らかにすることにおける近年の進歩は、疾患の古典的なカテゴリー診断を超えて細胞および分子病理の重大な共有および連続を実証する。したがって、この文献に記載されているとともにアルファ5含有GABA-受容体でアゴニストまたはポジティブアロステリック活性を有する化合物によって標的化されるGABA関連病理は、精神神経性障害(例えば、うつ病、統合失調症)から神経変性障害(例えばAD)までの脳障害にわたって報告されている。それゆえに、新規な治療的戦略は、精神神経性障害(例えば、うつ病、統合失調症)から神経変性障害(例えば、AD)までの障害にわたる特定の障害ならびに症状の側面(例えば、認知、気分)を対象とすることができる。
【0020】
脳障害の分子および細胞病理は、ヒト死後脳における不偏ゲノムアプローチ(unbiased genomic approaches)を使用して調査されており;遺伝子および環境マウスモデルは、ヒト脳において同定された病理とげっ歯類における気分および認知調節機序との間の因果関係を調査するために使用されており;標的は、それらの原因病理学モジュール内で同定されており、これらの標的の価値を新規な治療的戦略として支持するための予備的前臨床研究を行ってきた。これは、認知改善抗うつ/抗不安処置のための新規な標的として、GABA系におよびアルファ5サブユニット含有GABA受容体に至る。
【0021】
より具体的には、収束する証拠は、うつ病における阻害性GABA系のための役割を長いこと示唆してきた。近年の証拠は、それらの変化についての特定の細胞起源を示唆している(Guilloux et al, Molecular Psychiatry, 2012, 17, 1130-1142; Tripp et al, Am J Psychiatry, 2012, 169, 1194-1202)。これらの所見は、GABA関連の生化学、細胞および脳領域の所見をうつ病における心理学的概念および症状の側面と結びつけるモデルに統合されてきた(Northoff & Sibille, Molecular Psychiatry, 2014, 19, 966-977)。このモデルにおいて、錐体細胞の樹状突起への興奮性入力を調節するソマトスタチン陽性(SST+)GABAニューロンの欠損は、局所細胞回路によって、変更された情報処理に変わり、鍵となる脳領域(前頭および帯状皮質)および神経ネットワーク(デフォルトモードおよび実行ネットワーク)の変更された活性をもたらす。順じて、これらの統合された生物学的欠損は、うつ病の2つの中心的特色である快感消失(喜びを経験することの欠如)および負の自己焦点化(self-focus)の増加(反芻思考、自殺傾向)として表面化する。
【0022】
SST+GABAと錐体ニューロンとの間の細胞特異的結合の分子構成成分の検査に基づき、GABA受容体のアルファ5サブユニットは、うつ病の分子の病理を改善するための、および認知促進および抗うつ様活性を潜在的に発揮するための論理的標的であることが提案される。GABA受容体の異なるアルファサブユニットは、細胞区画にわたるこれらの受容体の局在化を決定する。アルファ5含有GABA受容体は、SST+GABAニューロン末端の反対側の錐体細胞の樹状突起に位置し;それゆえに、それらは、SST+GABAニューロンの機能を媒介する。GABA受容体アルファサブユニットは、ベンゾジアゼピン様化合物の主標的である。これらの化合物は、鎮静、抗不安および抗けいれん効果を有する。この広範な活性は、いくつかのアルファサブユニットのそれらの非特異的標的化による。この全アルファサブユニット活性は、鎮静、耐性および認知の副作用により、それらの治療的可能性をかなり制限している。様々なGABARアルファサブユニットの近年の解剖学的、遺伝子的および機能的特徴付けは、特定のサブユニットの選択的標的化が、精神神経障害のための新規な治療機会を明らかにするという希望を高めている。
【0023】
ここで、うつ病の主要な分子病理によって情報を与えられる、新規な認知促進および抗うつモダリティが提案される。主要な標的は、阻害性GABA受容体アルファ5サブユニットであり、薬理効果は、ポジティブアロステリックモジュレーション(アルファ5-PAM)であり、治療効能は、気分および認知欠損を共有するうつ病および他の障害に対してであり、認知および反芻思考中核症状に潜在的に焦点を合わせる。この標的を選ぶことの理論的根拠は、(1)うつ病におけるGABA-アルファ5含有シナプスでの機能の低減を示唆するヒト死後脳試料を使用した所見、(2)うつ病におけるGABA機能の変更を示唆する大規模な研究調査、ならびに(3)アルファ5-PAMの抗うつ効果(Piantodosi et al, Frontiers in Pharmacology, 2016, 7, 446)および認知促進効果を示す前臨床げっ歯類研究に基づく。近年の所見は、アルファ5含有GABA-受容体の機能を低減することが抗うつ活性を発揮し得ることも示唆する(Fischell et al, Neuropsychopharmacology, 2015, 40, 2499-2509)ことに留意されたい。これは、アルファ5-GABA-受容体機能のための推定逆U字形効果(putative inverted U-shape effect)を示唆し、ここで、高機能および低機能の両方が治療的可能性を有し得る。しかしながら、アルファ5含有GABA-受容体の機能を低減することは、脳障害において観察される主要な病理(即ち、SST細胞機能の低減)を悪化させると特に予測され、それゆえに、それは、長期有害効果についてのより高いリスクと潜在的に関連する。
【0024】
AD、統合失調症、双極性うつ病、および大うつ病を含めた神経学的障害におけるソマトスタチン(SST)陽性阻害性GABAニューロンの発現および機能の低減の強い証拠がある(Lin and Sibille, Frontiers Pharmacology, 2013, 4, 110)。SST陽性GABAニューロンは、脳における主な興奮性細胞であるグルタミン酸作動性錐体ニューロンの樹状区画を阻害することによって特徴付けられる阻害性ニューロンのサブタイプである。SSTニューロンを介するシグナル伝達は、情報および神経プロセスを調節し、認知および気分を調節することに特異的に関わっている。SST陽性ニューロンの主な機能は、神経伝達物質GABAによって、およびアルファ5サブユニットを含有するGABA受容体の特定のサブタイプによって媒介される。アルファ5含有GABA受容体は、錐体細胞の樹状突起上に局在化され、該細胞区画は、SST陽性ニューロンによって標的化される。それゆえに、神経学的障害にわたって観察されるSST陽性細胞における欠損は、アルファ5含有GABA受容体を介するシグナル伝達の低減をもたらすと仮定される。増加するアルファ5含有GABA受容体シグナル伝達は、そのため、脳障害にわたる、ならびに具体的にはADおよびMDDにおける認知および気分症状にとって、治療的価値を有し得る。
【0025】
定義
特定の官能基および化学用語の定義は、下記でより詳細に記載されている。この開示の目的のため、化学元素は、Periodic Table of the Elements、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、第75編集、内側カバーに従って同定され、特定の官能基は、一般に、そこに記載されている通りに定義される。追加として、有機化学の一般原則、ならびに特定の官能部分および反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999;Smith and March March's Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001;Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989;Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載されており;これらの各々の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
当技術分野において使用される慣習に従って、基:
【0027】
【化5】
は、コアまたは骨格構造への部分または置換基の付着点である結合を図示するために、本明細書における構造式において使用される。
【0028】
障害を処置する文脈において、「有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、対象への単一または複数用量の投与で、対象における障害の細胞を処置すること、または対象における障害の症状を治癒、軽減、緩和もしくは改善することに有効である化合物または化合物を含む組成物の量を指す。化合物または組成物の有効量は、用途に従って変動することができる。障害を処置する文脈において、有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに個体における所望の応答を引き出す化合物の能力などの因子に依存し得る。例において、化合物の有効量は、対照と比較した場合の所与のパラメータにおける、例えば、化合物で処置されていない細胞(例えば、細胞の培養)または対象における統計的に有意な変化を生成する量である。
【0029】
「対象」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト、ネコ、イヌ、ウマ、ウシなどの哺乳動物を指す
【0030】
本明細書において列挙されている任意の数値(例えば、範囲)は、低い方の値から高い方の値までの全ての値を含むと具体的に理解され、即ち、列挙されている最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組合せは、この出願において明確に明記されていると考えられるべきである。例えば、濃度範囲が1%から50%と明記されているならば、2%から40%、10%から30%、または1%から3%などの値は、この明細書において明確に列挙されていると意図される。これらは、具体的に意図されるものの例にすぎない。
【0031】
化合物
本発明において有用な化合物は、以下の番号付け実施形態において説明されている。第1の実施形態はE1と示され、別の実施形態はE2などと示される。
E1.
【0032】
【化6】
からなる群から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E1.1.
【0033】
【化7】
からなる群から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E2.
【0034】
【化8】
である、E1の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E3.
【0035】
【化9】
である、E1の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E4.
【0036】
【化10】
である、E1の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E5.
【0037】
【化11】
である、E1の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E6.
【0038】
【化12】
である、E1の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E7.
【0039】
【化13】
である、E1の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E8.
【0040】
【化14】
である、E1の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E9.
【0041】
【化15】
である、E1の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E10.
【0042】
【化16】
である、E1の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E11.
【0043】
【化17】
である、E1の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E12.
【0044】
【化18】
である、E1の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E13.化合物が実質的にエナンチオマー的に純粋である、E1~E8もしくはE10~E12のいずれかの化合物、またはその薬学的に許容される塩。
E14.E1~E13のいずれかの化合物、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
E15.E1~E13のいずれかの化合物、あるいはE14の医薬組成物、あるいは
【0045】
【化19】
からなる群から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、認知を増強する方法。
【0046】
本発明の化合物において、任意の「水素」または「H」は、構造において明確に列挙されていてもまたは暗黙的であっても、水素同位体H(プロチウム)およびH(重水素)を包含する。
【0047】
化合物は、塩の形態、例えば、薬学的に許容される塩であってよい。「薬学的に許容される塩」という用語は、化合物上に見出される特別な置換基に依存して、相対的に非毒性の酸または塩基で調製される活性化合物の塩を含む。この開示の化合物の適当な薬学的に許容される塩としては、例えば、本開示による化合物の溶液を、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸などの薬学的に許容される酸の溶液と混合することによって形成することができる酸付加塩が挙げられる。さらに、本開示の化合物が酸性部分を保有する場合、その適当な薬学的に許容される塩としては、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム塩またはマグネシウム塩;および適当な有機リガンドで形成される塩、例えば第4級アンモニウム塩を挙げることができる。
【0048】
化合物の中性形態は、従来の方式で、塩を塩基または酸と接触させることおよび親化合物を単離することによって再生することができる。化合物の親形態は、極性溶媒における可溶性など、ある特定の物理的特性において様々な塩形態と異なるが、そうでなければ塩は、この開示の目的のための化合物の親形態と同等である。
【0049】
塩形態に加えて、本開示は、プロドラッグ形態である化合物を提供することもできる。化合物のプロドラッグは、化合物を提供するための生理学的条件下で化学変化を容易に受けるような化合物である。プロドラッグは、エクスビボ環境において化学的または生化学的方法によって本開示の化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、適当な酵素または化学的試薬を有する経皮パッチリザーバーに入れられた場合、本開示の化合物にゆっくり変換され得る。
【0050】
化合物は、本明細書に記載されている立体異性体のエナンチオマー的に富化された異性体であってよい。エナンチオマーは、本明細書で使用される場合、分子構造が互いに鏡像関係を有する1対の化学化合物のいずれかを指す。例えば、化合物は、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のエナンチオマー過剰率を有することができる。
【0051】
化合物の調製物は、選択された立体中心に対応する選択された立体化学、例えば、RまたはSを有する化合物の異性体について富化されていてよい。例えば、化合物は、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の、選択された立体中心の選択された立体化学を有する化合物に対応する純度を有することができる。化合物は、例えば、選択された立体中心において選択された立体化学、例えば、RまたはSを有する構造(単数または複数)について富化されている、本明細書において開示されている化合物の調製物を含むことができる。「実質的にエナンチオマー的に純粋」は、示されているエナンチオマーにおける95%以上の富化を指す。
【0052】
化合物の調製物は、化合物のジアステレオマーである異性体(対象異性体)について富化されていてよい。ジアステレオマーは、本明細書で使用される場合、同じ化合物の別の立体異性体の鏡像ではない、2つ以上のキラル中心を有する化合物の立体異性体を指す。例えば、化合物は、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の、選択されたジアステレオマーを有する化合物に対応する純度を有することができる。
【0053】
化合物の所与の立体中心における立体配置について特定の指示がなされていない場合、立体配置のいずれか1つまたは立体配置の混合物が意図される。
【0054】
化合物は、立体特異的合成または分割のいずれかによって、ラセミ体形態でまたは個々のエナンチオマーもしくはジアステレオマーとして調製することができる。化合物は、例えば、光学活性塩基との塩形成による立体異性体対の形成、続いて、遊離酸の分別晶出および再生などの標準的技術によって、それらの構成成分エナンチオマーまたはジアステレオマーに分割することができる。化合物は、立体異性体エステルまたはアミドの形成、続いて、クロマトグラフィー分離およびキラル補助剤の除去によって分割することもできる。代替として、化合物は、キラルHPLCカラムを使用して分割することができる。エナンチオマーも、リパーゼ酵素を使用する、対応するエステルのラセミ体の速度論的分割から得ることができる。
【0055】
化合物の合成
化合物は、市販で利用可能な出発材料から合成することができる。例証的な合成は、実施例において下記に例示されている。
【0056】
本明細書における式の化合物を合成する他の方法は、当業者に明らかである。化合物を合成することにおいて有用な合成化学転換および保護基方法論(保護および脱保護)は、当技術分野において知られており、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989);T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2d. Ed., John Wiley and Sons (1991);L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);およびL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)、ならびにその後続版に記載されているようなものが挙げられる。
【0057】
化合物の評価
化合物は、エクスビボおよびインビボの方法を含めて、多数の方法を使用して分析することができる。
【0058】
例えば、化合物のGABAサブユニット選択性は、競合的結合アッセイを使用して評価することができる。こうしたアッセイは、以前に記載された(Choudhary et al. Mol Pharmacol. 1992, 42, 627-33;Savic et al. Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry, 2010, 34, 376-386)。該アッセイは、[H]フルニトラゼパムなど、GABA受容体に結合することが知られている放射標識化化合物の使用を伴う。膜タンパク質は、収穫し、放射標識化化合物でインキュベートすることができ、非特異的結合は、放射標識化化合物の結合を別の非標識化化合物(例えば、ジアゼパム)と比較することによって評価することができる。結合放射能は、液体シンチレーション計数によって定量化することができる。膜タンパク質濃度は、市販で利用可能なアッセイキット(例えば、Bio-Rad、Hercules、CAから)を使用して決定することができる。
【0059】
化合物は、アフリカツメガエル卵母細胞におけるまたはトランスフェクト細胞株における電気生理学的アッセイにおいて評価することもできる。化合物は、GABAの添加前に予備適用することができ、次いで、ピーク応答が観察されるまで化合物と同時適用することができる。適用間に、卵母細胞またはトランスフェクト細胞株は、脱感作からの完全な回復を確実にするために洗浄することができる。GABA応答規模の電流測定(Fisher et al. Mol Pharmacol,1997, 52, 714-724)のため、卵母細胞またはトランスフェクト細胞に微小電極を刺入し、電圧クランプを使用して記録を行うことができる。
【0060】
本明細書に記載されている化合物は、GABA/α5および/またはGABA/α2、GABA/α3またはGABA/α2/3受容体でのアゴニスト効力の増加により抗うつ、抗不安または認知促進活性を呈するGABA受容体リガンドであってよい。化合物は、GABA/α1受容体に相対して、GABA/α5受容体に対して少なくとも2倍、適当には少なくとも5倍、有利には少なくとも10倍の選択的効力を有することができる。しかしながら、GABA/α5受容体に対するそれらのアゴニスト効力の点から選択的でない化合物も本開示の範疇内に包含される。こうした化合物は、望ましくは、GABA/α1受容体での効力の減少による鎮静催眠/筋弛緩/失調活性の減少とともに、認知促進および/または抗うつ活性を実証することによって機能的選択性を呈する。
【0061】
アゴニストもしくは部分アゴニストまたはポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)として作用するGABAA受容体のリガンドであるGABA作動性受容体サブタイプ選択性化合物は、後文で、「GABA受容体アゴニスト」もしくは「GABA受容体部分アゴニスト」または「アゴニスト」もしくは「部分アゴニスト」または「PAM」と称される。特に、これらは、GABA受容体のベンゾジアゼピン(BZ)結合部位のリガンドであり、それゆえに、BZ部位アゴニスト、部分アゴニストまたはPAMとして作用する化合物である。こうしたリガンドとしては、その上、GABA部位でまたはGABA受容体のベンゾジアゼピン部位以外のモジュレート部位(modulatory sites)で作用する化合物が挙げられる。
【0062】
GABA作動性の受容体サブタイプ選択性化合物は、GABA/α受容体と比較した場合に、GABA/α5受容体を選択的または優先的に活性化することによってアゴニスト、部分アゴニストまたはPAMとして作用する。選択的または優先的治療剤は、GABA/α、GABA/αまたはGABA/α受容体と比較して、GABA/α受容体に対して、より小さい結合親和性または効力を有する。代替として、該薬剤は、GABA/α、GABA/α、GABA/α、およびGABA/α受容体に、匹敵する親和性で結合するが、GABA/α受容体と比較して、GABA/α受容体活性化の優先的な効力を発揮する。代替として、選択的薬剤は、GABA/αに相対して、GABA/αおよびGABA/α受容体へのより大きいまたはより小さい結合親和性を有することもできる。Bz/GABAアゴニストは、それぞれのGABA受容体のベンゾジアゼピン部位で作用するが、それの受容体相互作用においてこの薬物結合性ドメインに制限されない。
【0063】
GABA受容体サブタイプ特異的化合物の薬物動態学的特性は、腹腔内、食道によるおよび静脈内投与に続いて、血漿および脳における化合物含有量を測定して(Piantadosi et al. Front Pharmacol, 2016, 7, 446)判定される。マウスおよびラットは、異なる化合物を異なる用量で受ける。連続の脳および血漿濃度は、異なる時間に得られ、LC/MS/MSは、各試料における各化合物の濃度を測定するために使用される。このアッセイを使用して、Cmax、Tmax、AUC0-12、AUC0-∞、T1/2およびβが、各組織における各化合物、両方の種のための各投与経路について測定される。潜在的な治療的介入のために、最適な薬物動態学的特性を有する化合物が考えられる。
【0064】
GABA受容体サブタイプ特異的化合物の代謝利用可能性は、ヒトおよびマウス肝臓ミクロソームアッセイを使用して化合物の分解速度を測定することによって判定される。肝臓ミクロソームは、各化合物でインキュベートされ、半減期、固有クリアランスおよび代謝速度が測定される。潜在的な治療的介入のために、最適な代謝パラメータを有する化合物が考えられる。
【0065】
細胞毒性および生存能は、インビトロ条件において評価することができる。ヒト細胞(それぞれ肝臓および腎臓からのHEPG2および/またはHEK293細胞株)は、化合物でインキュベートされ、細胞生存能アッセイが、化合物の毒性を決定するために行われる。100μMよりも優れたLD50を有する化合物は、細胞生存能に対して毒性効果を有さないと考えられる。
【0066】
化合物を評価するための他の方法は、当業者に知られている。認知機能を改善する潜在性を評価するため、以下に限定されないが、注意、視覚および聴覚処理、運動機能、短期および作業記憶、複数の認知側面(cognitive dimensions)についての学習および記憶処理(手続、陳述、空間/参照記憶など)についての試験を含めて、多数の行動試験が、げっ歯類および他の哺乳動物において存在する。
【0067】
陳述および手続認知機能は、モリス水迷路、放射状迷路、Barnesホールボードなどを含めて、様々な迷路を使用して、評価することができる(Gallagher et al, Behav Neurosci, 1993, 107,618-626;Vorhees and Williams, ILAR J, 2014, 55,310-332;Schwabe et al. Neurosci & Biobehavioral review, 2010, 34, 584-591)。これらのパラダイムは、学習および記憶能力を試験し、それらの環境を参照することで課題を解決するための動物の学習および記憶能力を改善することにおける化合物の効力を同定するために使用される。動物は、検索/探査試験中にタスクを学習するとともに情報を想起するように訓練される。化合物の潜在的な認知促進特性を試験するための分野における方法は、試験の学習および/または想起段階中の化合物の投与を含む。成功までの潜時ならびに/または学習および/もしくは想起段階中のタスクにおけるエラーの数を低減する化合物は、潜在的な認知促進作用を有すると考えられる。
【0068】
認知機能を測定する他の試験は、熟知した物体/対象と新規な物体/対象との間の判別タスクを含む。これらの試験は、以下に限定されないが、新規物体認識試験、場所認識試験、社会的新規性判別、3チャンバー試験などの変形を含む(Morici et al, Behav Brain Research, 2015, 292, 241-251;Millan and Bales, Neurosci & Biobehavioral Reviews, 2013, 37, 2166-2180)。これらの試験の概念は、それの環境において熟知した要素と新規な要素との間を判別する動物の能力を判定することである。新規な要素と相互作用する時間を増加させる化合物は、認知促進特性を有すると考えられる。
【0069】
短期および作業記憶機能は、その上、モリス水迷路、Y迷路またはT迷路器具または変形を用いた異なるタスクを使用して判定することができる(Lalonde, Neurosci & Biobehavioral Reviews, 2002, 26, 91-104)。簡潔には、これらの試験は、獲得後すぐに情報を想起するために、短時間の間情報を保持するための動物の能力に基づく。作業記憶の効率的な処理は、新たな関連情報の獲得を可能にするために、無関係な情報が「消去」されることを必要とする。例えば、短期作業記憶は、新たな環境を探索するという動物の先天的傾向を利用することによって判定することができ、器具の2つの異なるアームを訪れる選択が反復して与えられた場合に自発的に交替するというそれらの性向に依拠し得る。複数の試行に続き、エラーの数は、干渉の負荷により増加することがある。干渉の負荷は、試行間の遅延の変動によってモジュレートすることができ、長い試行間の間隔は、エラーの数における増加として指標化される干渉の負荷を増加させる。ストレスパラダイム、正常な加齢または精神神経性もしくは神経変性障害の他のモデルは、これらの試験において認知能力を低減するために使用することができる。これは、エラーの数における増加によって特徴付けられる(即ち、水迷路タスクにおけるエラーの増加、または交替タスクにおける50%のチャンスレベル辺りの性能)。これらの欠損を逆転させる化合物は、認知促進作用を有すると考えられる。
【0070】
化合物の抗うつ潜在性を評価するため、以下に限定されないが、不安様、行動絶望様、無力様または快感消失様行動応答のための試験を含めて、情動性を判定するための多数の試験が、げっ歯類および他の哺乳動物において存在する。
【0071】
該分野における標準的方法で、強制水泳試験および尾懸垂試験(Castagne et al. Curr Protoc Neurosci ,2011, Chapter 8)は、主として、げっ歯類における抗うつ作用をスクリーニングするために使用されるが、その上、ストレスへの応答における絶望の行動尺度として用いられる。簡潔には、げっ歯類は、潜在的な抗うつ化合物を試験するために急性的にまたは亜慢性的に注射される。げっ歯類は、不可避な状況に入れられ(水のタンクの中、または尾で吊るされている)、不動時間の計数は、絶望の状態への諦めの指標として測定される。これらの試験において不動を低減した化合物は、潜在的な抗うつ作用を有すると考えられる。
【0072】
抗うつ作用を評価する他の方法は、学習性無力感試験または恐怖条件付けなどの嫌悪的刺激に対する行動反応性を含む(Cryan and Mombereau, Molecular Psychiatry, 2004, 9, 326;Phillips and LeDoux, Behavioral Neuroscience, 1992, 106, 274-285)。両方の試験は、悪条件付けおよび非条件付け刺激に対処するための動物の能力に依拠する。フットショックが動物に適用され、生成された行動応答は、化合物の潜在的な抗うつ特性のための指標として使用される。学習性無力感試験におけるフットショックを避けるための数および/または潜時、ならびに恐怖条件付けパラダイムにおけるすくみに費やされる時間を減少させる化合物は、潜在的な抗うつ作用を有すると考えられる。
【0073】
化合物の潜在的な抗うつ活性は、変更された情動性を呈する動物モデルにおいて観察された快感消失様行動を逆転させるそれらの特性について評価することもできる。例えば、新規性誘発性食欲不振(novelty induced hypophagia)、スクロース嗜好性もしくは摂取、またはクッキー試験は、げっ歯類における快感消失を判定するために用いることができる。快感消失は、以下に限定されないが、美味な溶液または食物を含めて、心地よい経験の探索における減少によって特徴付けられる(Willner, Neuropsychobiology, 2005, 52, 90-110;Nollet et al. Curr Protoc Neurosci ,2013, Chapter 5)。快感経験の探索を増加させる化合物は、潜在的な抗うつ作用を有すると考えられる。
【0074】
化合物を評価するための他の方法は、当業者に知られている。不安症状は、しばしば併存症的であり、うつ病またはADにおいて観察される気分スペクトルから分離することが難しい。例えば、化合物の抗不安効果の判定は、Fischer et al. Neuropharmacology 59 (2010) 612-618に記載されている通り、オペラントベースの対立手順(operant-based conflict procedures)で客観的におよび定量的に達成することができる。簡潔には、正に強化される行動は、軽度の電気ショックなどの有害な刺激の応答付随的投与によって、これらの手順において抑制することができる。化合物が抗不安効果を有するならば、それは、ショックの応答付随的送達によって正常に抑制される応答速度を増加させる。対立手順の強みは、ヒトにおける予想治療効果に関するそれらの予測的妥当性である。
【0075】
潜在的な抗不安活性および自発運動活性は、ホームケージ様器具において評価することができる。高レベルの不安を有する動物は、より多くの時間をそれらのシェルターに隠れて費やす性向を有し、それらの探索行動を制限する。同じ設定が、光チャレンジ(light challenge)の適用で使用され得る。不安な動物は、光課題の最後でさえ照明ゾーン(lit zone)を回避し続ける(Pham et al. J Neurosci Methods, 2009, 178, 323-326)。探索を増加させるとともにこれらの型の試験におけるこの回避行動を制限する化合物は、潜在的な抗うつ/抗不安作用を有すると考えられる。
【0076】
抗不安活性は、Crawley(Neurosci Biobehav Rev 1985, 9, 37-44)によって開発された方法によって、明/暗ボックス試験において評価することもできる。明/暗ボックスは、抗不安活性についての単純な非侵襲的試験である。暗ボックスに進入する潜時を増加させ、および/または照明ボックスにおいて費やされる時間を増加させる化合物は、抗不安作用を有すると考えられる。
【0077】
潜在的な抗不安活性は、高架式十字迷路およびオープンフィールド試験において測定することができる(Bailey and Crawley, Methods of Behavior Analysis in Neuroscience, 2009, 2nd Edition)。両方の試験において、探索するという動物の自然な傾向と、曝露された環境における捕食動物の脅威のそれの先天的恐怖との間に、対立が生じられる。げっ歯類は、明るい光条件下にて迷路/フィールドの中心に入れられる。進入の数ならびに曝露領域(オープンアーム/活動領域の中心)において費やされた時間が記録される。探索行動を減少させることなくこれらのパラメータを増加させる化合物は、抗不安作用を有すると考えられる。
【0078】
化合物の抗不安特性を判定するための他の方法は、食物または加糖溶液に対する動因と新規な環境に入れられるという恐怖との間の対立に依拠する試験を用い得る。これらの試験において、新規に抑制された摂食またはクッキー試験においてアプローチするとともに摂食するための潜時、ならびに新規性誘発性食欲不振においてコンデンスミルクを飲むための潜時は、結果尺度である(Nollet et al. Curr Protoc Neurosci ,2013, Chapter 5)。これらのパラメータを減少させる化合物は、潜在的な抗不安特性を有すると考えられる。
【0079】
ガラス玉覆い隠しアッセイ(Deacon, Nat Protocols, 2006, 1, 122;Kinsey et al., Pharmacol Biochem Behav 2011, 98, 21)は、別の抗不安試験である。マウスまたはラットは、ガラス玉を覆い隠すために掘ることができる寝床材料の上部にガラス玉を有するケージに入れられる。げっ歯類は次いで時間を測定され、覆い隠されたガラス玉の数が数えられる。対照と比較したガラス玉覆い隠しの低減は、抗不安効果と考えられる。
【0080】
障害と関連する認知、うつ病、不安および他の行動的側面は、正常のベースライン条件下にて、または該状態もしくは症状のげっ歯類モデルを使用して評価することができる。こうしたモデルの例は、予測不可能な慢性の軽度ストレス、慢性拘束ストレスおよび社会的敗北パラダイムを含む。例えば、「損なわれた認知」および「うつ病様」の状態は、数週にわたって予測不可能な軽度のストレッサーの延長プロトコールを使用して、げっ歯類において誘発することができる。軽度のストレッサーは、予測不可能な環境を提供するため、ランダム方式で、典型的であるが排他的でなく適用される。軽度のストレッサーとしては、以下に限定されないが、光サイクルにおける変化、ケージ寝床における変化、ケージの変更、捕食動物臭気への、雑音または明るい光への曝露、社会的ストレッサー、攻撃的なマウスへの曝露を挙げることができる。これらのパラダイムに曝露されるげっ歯類は、典型的に、認知機能の変更ならびにうつ病および不安関連行動の増加を呈し、以下に限定されないが、本明細書に記載されているものを含めて、様々な行動試験によって判定することができる。これらの試験において欠損を逆転させる化合物は、治療効能が考えられ得る。
【0081】
これらの障害と関連する認知、うつ病、不安、および他の行動的側面は、該障害と関連する行動的または生理的変化を引き起こす細胞または分子病理を誘発するために遺伝子工学が使用されてきたげっ歯類モデルにおいて評価することができる。例えば、化学遺伝学的な手法を使用するSST GABAニューロンの急性阻害は、行動的情動性(behavioral emotionality)の上昇を誘発し(Soumier and Sibille, Neuropsychopharmacology, 2014, 39:9, 2252-62)、さらに、情動性を低減する化合物は、治療効能が考えられ得る。
【0082】
神経変性障害と関連する認知機能における欠損は、その上、増加されたベータ-アミロイドプラークおよび/または神経原線維濃縮体など、ヒト脳において観察される病理を誘発するために遺伝子操作を使用して開発された複数のげっ歯類モデルにおいて評価することができる。例えば、ADのTgCRND8マウスモデルは、TgCRND8マウスにおいて、突然変異体ヒトbAPP導入遺伝子を発現し、脳におけるアミロイドベータプラークおよび神経原線維濃縮体のレベルを両方増加させることを伴う3カ月齢で空間学習欠損を呈する(Janus et al, Nature, 2000, 408:979-982)。データは、これらのモデルにおいて認知症状を逆転または改善する化合物が、正常または疾患関連の、認知の喪失または病理的状態において有効であることを示唆する。
【0083】
統合失調症を処置する潜在性の評価のため、化合物は、Gill et al. Neuropsychopharmacology 2011, 36: 1903-1911に記載されている通り、マウスモデルを使用して試験することができる。統合失調症のこのマウスモデルは、妊娠17日目に妊娠中の雌親へのDNAメチル化剤、酢酸メチルアゾキシメタノール(MAM)の投与によって誘発される発達障害(development disturbance)から生じる。MAMで処置された子孫は、統合失調症を有するヒト患者において観察されたものと一致する構造および行動異常を呈する。α5GABA受容体(α5GABAR)の拮抗作用または遺伝子欠失は、驚きに対するプレパルス阻害および損なわれた潜在阻害を含めて、統合失調症において見られる行動異常の一部に似ている行動に至る。MAMモデルは、GABARのα5サブユニットに選択的なベンゾジアゼピン-ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)化合物の有効性を示すために使用することができる。Gillらにおいて、脳における持続性ドーパミン伝達(tonic dopamine transmission)の病的増加は逆転され、MAMラットにおいて観察された覚醒剤に対する行動感受性は低減された。データは、こうした化合物が、ドーパミン媒介精神病を軽減することに有効であると示唆する。
【0084】
世界的な自発運動の尺度も、試験化合物の潜在的な鎮静効果を判定するために使用することができる。マウスは、ホームケージ様活動領域に入れられ、移動距離を30~60分間モニタリングされる(Tang et al. Behavioral Brain Research, 2002, 136, 555-569)。移動距離における劇的な低減を誘発する化合物は、鎮静または望ましくない副作用を有すると考えられる。
【0085】
空間および運動協調性の尺度も、化合物の鎮静催眠/筋弛緩/失調活性を判定するために判定することができる。感覚運動ロータロッド試験は、典型的に、これらの判定のために使用される(Voss et al. European Journal of Pharmacology, 2003, 482, 215-222)。この試験は、試験化合物の注射の10分後、30分後および60分後に実施される。マウスまたはラットは、回転するロッド(ロータロッド)上にて15rpmで最大3分間試験され、落下の時間が記録される。試験期間3分前の落下は、化合物によって誘発される任意の自発運動協調機能障害を示す。
【0086】
こうした化合物は、望ましくは、GABA/α1受容体での効力の減少による鎮静催眠/筋弛緩/失調活性の減少で、認知促進および/または抗うつ活性を実証することによって機能的選択性を呈する。
【0087】
GABA-A受容体を活性化する化合物ならびにGABA受容体サブユニットに選択的な化合物は、神経活性のそれらの一般的抑制により、抗てんかん活性をしばしば呈する。したがって、化合物の抗てんかん特性は、米国特許出願公開第US2011/0261711号明細書に記載されている通り、てんかんのいくつかの標準的ラットおよびマウスモデルの発作を抑制する能力について試験することができる。化合物の抗けいれん活性は、ジアゼパムと比較することができる。抗けいれんスクリーニングに組み込まれる標準的モデルは、最大電気ショック試験(MES)、皮下メトラゾール試験(scMet)、および毒性の評価(TOX)を含む。各状態のためのデータは、所与の時間ポイントおよび用量で試験された動物の数に対する保護されたまたは毒性(自発運動活性の喪失)の動物の数のいずれかの比として表すことができる。
【0088】
MESは、全身性強直間代発作のためのモデルであり、脳における全てのニューロン回路が最大活性である場合に発作伝播を防止する化合物の能力の指標を提供する。これらの発作は、高く再現可能であり、ヒト発作と電気生理学的に一致する。MESけいれんに基づく全ての試験のため、60Hzの交流電流(マウスで50mA、ラットで150)が、麻酔剤(0.5%テトラカインHCL)を含有する電解質溶液で満たされた角膜電極によって送達される。試験1のため、マウスは、0.01mL/gの体積のip注射によって与えられる試験化合物30mg/kg、100mg/kgおよび300mg/kgの用量に続いて、様々な間隔で試験される。試験2では、ラットは、0.04mL/gの体積における30mg/kg(po)の用量の後に試験される。試験3は、再び0.04ml/gの体積におけるi.p.注射を介して投与される変動する用量を使用する。動物は、発作の後肢強直性伸筋成分(hindlimb tonic extensor component)の消滅でMES誘発発作から「保護された」と考えられる(Swinyard, E. A., et al. in Antiepileptic Drugs, Levy, R. H. M., et al., Eds;Raven Press: New York, 1989; pp 85-102; White, H. S., et al., Ital J Neurol Sci. 1995a, 16, 73-7;White, H. S., et al., in Antiepileptic Drugs, Levy, R. H. M., Meldrum, B. S., Eds.;Raven Press: New York, pp 99-110, 1995b)。
【0089】
けいれん薬メトラゾールの皮下注射は、実験室動物において間代性発作を生じさせる。scMet試験は、動物の発作閾値を上昇させ、したがって、間代性発作を呈することからそれを保護するという試験化合物の能力を検出する。動物は、様々な用量の試験化合物で(50mg/kg(po)の用量が試験2 scMetについて標準であるが、MES試験と同様の方式で)前処理することができる。試験化合物の予め決定されたTPEで、動物の97%においてけいれんを誘発するメトラゾールの用量(CD.sub.97:85mg/kgマウス)が、頸部の正中線における皮膚の緩いひだに注射される。動物は、ストレスを最小化するために単離ケージに入れられ(Swinyard et al. J. Physiol. 1961, 132, 97-0.102)、発作の存在または非存在について次の30分間観察することができる。前肢および/もしくは後肢、顎、または感覚毛の間代性痙攣のエピソード、およそ3~5秒が、終点と見なされる。この判断基準に合わない動物は、保護されたと考えられる。
【0090】
化合物の抗けいれん活性をさらに特徴付けるため、海馬キンドリングスクリーンが行われ得る。このスクリーンは、複雑部分発作を処置するための物質潜在的有用性(substance potential utility)の同定についての伝統的なMESおよびscMet試験に対する有用な補助物である。
【0091】
ベンゾジアゼピンは、ある特定の処置パラダイムにおける高度に有効な薬物であり得る。それらは、てんかん重積状態および他の急性状態などの緊急事態のために日常的に用いられる。しかし、慢性けいれん疾患におけるそれらの使用は、鎮静ならびに高用量での呼吸抑制、低血圧および他の効果などの副作用により制限されている。さらに、このクラスの薬物の慢性投与は、抗けいれん効果に対する耐性に至り得ることが長く主張されてきた。これは、慢性の抗けいれん状態のための第一選択処置としてのそれらの有用性を制限してきた。減少された副作用プロファイルおよび長期の処置期間にわたる効力を有する強力なBDZの発見が非常に望ましい。
【0092】
組成物および投与経路
別の態様において、本開示は、薬学的に許容される担体とともにこの開示の1種または複数の化合物を含む医薬組成物を提供する。こうした組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下もしくは直腸投与のための、または吸入もしくは吹送法による投与ための;錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、無菌非経口液剤または懸濁剤、定量エアゾールまたは液スプレー剤、点滴剤、アンプル剤、自動インジェクター装置または坐剤などの単位剤形であってよい。その上、化合物は、連続様式において薬物の適切な量を送達するように設計された経皮パッチに組み込むことができると想定される。錠剤などの固体組成物を調製するため、主要活性成分は、薬学的担体、例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウムまたはガムなどの従来の錠剤化成分、および他の医薬希釈剤、例えば水と混合されることで、本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩のための均質の混合物を含有する固体予備製剤組成物を形成する。これらの予備製剤組成物を均質と称する場合、活性成分が組成物の全体にわたって均等に分散されることで、組成物は、錠剤、丸剤およびカプセル剤など同等に有効な単位剤形に簡便に細分化することができることが意味される。この固体予備製剤組成物は、次いで、本開示の活性成分0.1mgから約500mgを含有する、上に記載されている型の単位剤形に細分化される。典型的な単位剤形は、1mgから100mg、例えば、1mg、2mg、5mg、10mg、25mg、50mgまたは100mgの活性成分を含有する。新規な組成物の錠剤または丸剤は、延長作用の利点を与える剤形を提供するためにコーティングまたはそうでなければ配合することができる。例えば、錠剤または丸剤は、内部投与量および外部投与量構成成分を含むことができ、後者は、前者上の外被の形態である。2種の構成成分は、胃における崩壊に抵抗する働きをするとともに内部構成成分が十二指腸へ無傷で通過するのをまたは放出において遅延されるのを可能にする腸溶性層によって分離することができる。様々な材料が、こうした腸溶性層またはコーティングのために使用することができ、こうした材料としては、多数のポリマー酸、ならびにポリマー酸とシェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースなどの材料との混合物が挙げられる。
【0093】
本開示の組成物が経口的にまたは注射による投与のために組み込まれ得る液状形態としては、水溶液、適当には、香味付けシロップ、水性または油性懸濁液、および綿実油、ゴマ油、ヤシ油または落花生油などの食用油での香味付けエマルジョン、ならびにエリキシルおよび同様の医薬ビヒクルが挙げられる。水性懸濁液のための適当な分散剤または懸濁化剤としては、合成および天然ガム、例えば、トラガカント、アカシア、アルギネート、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンが挙げられる。
【0094】
適当な投与量レベルは、1日当たり約0.01mg/kgから250mg/kg、1日当たり約0.05mg/kgから100mg/kg、または1日当たり約0.05mg/kgから5mg/kgである。化合物は、1日当たり1回から4回のレジメンで、または例えば、経皮パッチの使用を介する連続ベースで投与することができる。
【0095】
経腸投与、例えば、経鼻、頬側、直腸、または殊に経口投与のための、および非経口投与、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、硬膜外、硬膜外またはくも膜下腔内投与のための医薬組成物が適当である。医薬組成物は、およそ1%からおよそ95%の活性成分、またはおよそ20%からおよそ90%の活性成分を含む。
【0096】
冠内、脳血管内または末梢血管注射/注入を含めた非経口投与のため、サブユニット選択的GABA受容体アゴニストの溶液、およびその上懸濁液または分散体、殊に、例えば使用の直前に作製することができる等張水溶液、分散体または懸濁液の使用が優先される。医薬組成物は、滅菌することができる、ならびに/あるいは賦形剤、例えば、保存料、安定剤、湿潤剤および/もしくは乳化剤、可溶化剤、粘増剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝液を含むことができ、それ自体知られている方式にて、例えば、従来の溶解および凍結乾燥プロセスの手段によって調製される。
【0097】
経口医薬品調製のため、適当な担体は、殊に、糖、例えばラクトース、ショ糖、マンニトールもしくはソルビトール、セルロース調製物および/またはリン酸カルシウムなどの充填剤、ならびにその上、デンプン、セルロース誘導体および/またはポリビニルピロリドンなどのバインダー、ならびに/あるいは、所望であれば、崩壊薬、流動調整剤および滑沢剤、例えば、ステアリン酸もしくはその塩および/またはポリエチレングリコールである。錠剤コアは、適当な、任意選択により腸溶性のコーティングを提供され得る。染料または顔料は、例えば、同定の目的のために、または活性成分の異なる用量を示すために、錠剤または錠剤コーティングに添加することができる。経口投与のための医薬組成物は、その上、ゼラチンからなる硬カプセル剤、ならびにその上、ゼラチンおよび可塑剤、例えば、グリセロールまたはソルビトールからなる軟密封カプセル剤を含む。カプセル剤は、活性成分を、顆粒の形態で、または油などの適当な液体賦形剤中に溶解もしくは懸濁させて、含有することができる。
【0098】
例えば、長時間期間、例えば1日から20日にわたる投与を可能にする経皮パッチを使用する経皮適用も考えられる。
【0099】
処置の方法
本明細書においてさらに提供されるのは、本明細書において開示されている化合物を用いて障害または状態を処置する方法である。さらに提供されるのは、神経学的障害における認知および気分改善の方法である。
【0100】
障害は、アルツハイマー病(AD)、認知症、外傷性脳損傷(TBI)、脳血管性疾患、麻酔、外傷後ストレス障害(PTSD)、うつ病、例えば、大うつ病および持続性うつ病性障害および双極性うつ病、統合失調症、アルコール依存症、中毒、不安障害、てんかん、神経障害性疼痛、自閉症スペクトラム障害、またはその組合せから選択することができる。
【0101】
不安障害は、全般性不安障害、恐怖症性障害、およびパニック障害に分けられ;各々は、それ自体の特徴および症状を有し、それらは、異なる処置を必要とする。不安障害の特別な例としては、全般性不安障害、パニック障害、恐怖症、例えば、広場恐怖症、社交不安障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害、分離不安障害および小児期不安障害が挙げられる。
【0102】
多くの異なるてんかん症候群があり、各々が、発作型、発症の典型的な年齢、EEG所見、処置、および予後のそれ自体独特の組合せを呈する。例証的なてんかん症候群としては、例えば、小児期の良性中心側頭葉てんかん、小児期の良性後頭部てんかん(BOEC)、常染色体優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)、原発性読書てんかん、小児欠神てんかん(CEA)、若年性欠神てんかん、若年性ミオクローヌスてんかん(JME)、症候性局在関連性てんかん、側頭葉てんかん(TLE)、前頭葉てんかん、ラスムッセン脳炎、ウエスト症候群、ドラベ症候群、進行性ミオクローヌスてんかん、およびレノックス・ガストー症候群(LGS)が挙げられる。遺伝的、先天的および発達的状態は、しばしば、より若い患者の間のてんかんと関連する。腫瘍は、40の年齢を超える患者の原因となり得る。頭部外傷および中枢神経系感染は、いかなる年齢でもてんかんを引き起こすことがある。
【0103】
統合失調症は、思考プロセスの崩壊によっておよび不十分な情動応答性によって特徴付けられる精神障害である。統合失調症の特別な型としては、妄想型、解体型、緊張型、未分化型、残遺型、統合失調症後うつ病および単純型統合失調症が挙げられる。
【0104】
自閉症スペクトラム障害は、様々な文脈にわたる社会的コミュニケーションおよび相互作用における持続的欠損によって特徴付けられる、神経発生中に発現される表現型の範囲を包含する。
【0105】
処置は、下部にある脳病理の側面的視点(dimensional perspective)と一致する、精神神経性(例えば、うつ病、統合失調症)から神経変性(例えば、AD)の障害までの障害にわたる症状の側面(例えば、認知、気分)を対象とすることもできる。
【0106】
方法は、本明細書に記載されている通りの化合物または組成物を、それを必要とする対象に投与することを含むことができる。
【0107】
以下の非限定的な実施例は、純粋に、一部の態様および実施形態の例示であると意図され、開示に従って実施された特定の実験を示す。
【実施例
【0108】
スキーム1.置換3-メチル-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン-2-オンの一般的合成
【0109】
【化20】
スキーム2.置換エチル4-メチル-6-フェニル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレートの一般的合成
【0110】
【化21】
【0111】
スキーム1および2において、Rは、フェニル、クロロ、ブロモ、エチニル、またはシクロプロピルであってよく、Xは、N、C-Cl、またはC-Fであってよい。スキーム2におけるエチルエステルは、塩基性条件下にて加水分解などの周知の方法を使用して、対応するカルボン酸に変換することができる。
【0112】
他のアミドのための一般的手順
カルボン酸(1当量)、塩化チオニル(10当量)および乾燥ジクロロメタンの混合物を、オーブン乾燥させた丸底フラスコにアルゴン下で入れる。この懸濁液を60℃で2時間の間アルゴン下で還流させておく。有機溶媒および過剰の塩化チオニルを減圧下で蒸発させ、これを乾燥ジクロロメタンで5回反復する。得られた生成物を乾燥ジクロロメタン中に溶解させ、0℃に10分間アルゴン下で冷却する。次いで、適切なアミン(2当量)、続いてEtN(1当量)を反応混合物に0℃で添加し、混合物を次いで室温に加温させ、およそ7時間の間撹拌する。反応の完了後、溶媒を減圧下で除去する。生成物を氷水で処理し、ジクロロメタンで抽出する。合わせた有機層をブラインで洗浄する。溶媒を減圧下で除去し、生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製することで、対応する純粋なアミドが得られる。
【0113】
(S)-8-エチニル-N,4-ジメチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキサミド(MYM-III-29)
【0114】
【化22】
出発エステル、エチル(S)-8-エチニル-4-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(1g、2.69mmol)を、セプタムが装着された密閉容器に-30℃で投入し、次いで、メチルアミン(20mL、EtOH中33%wt溶液)を添加した。容器をスクリューキャップで密閉し、60℃で12時間の間撹拌した。溶液を次いで室温に冷却し、メチルアミンおよびエタノールを減圧下で除去した。結果として得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc)によって精製することで、純粋な標題化合物がオフホワイトの粉末として得られた(0.63g、65%):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.56 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.82 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.70 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.52 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.47 (s, 1H), 7.35 (dd, J = 6.7, 5.5 Hz, 1H), 7.17 (s, 1H), 6.90 (q, J = 7.2 Hz, 1H), 3.15 (s, 1H), 2.97 (s, 3H), 1.28 (d, J = 7.2 Hz, 3H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 164.69 (s), 163.40 (s), 157.72 (s), 148.38 (s), 138.74 (s), 136.83 (s), 136.08 (s), 135.95 (s), 134.84 (s), 133.63 (s), 131.57 (s), 128.01 (s), 124.45 (s), 124.07 (s), 122.25 (s), 120.70 (s), 81.84 (s), 79.18 (s), 49.63 (s), 25.57 (s), 14.74 (s). HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M+H] + C21 H17N5Oの計算値356.1506; 実測値356.1474. % EE = >99% (HPLC) . %純度 = >99% (HPLC).
【0115】
(R)-6-(2-フルオロフェニル)-N,N,4-トリメチル-8-フェニル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキサミド(MYM-III-41)
【0116】
【化23】
(R)-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-8-フェニル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボン酸(MYM-III-37)(350mg、0.85mmol)、塩化チオニル(0.6mL、8.5mmol)、触媒量の無水N,N-ジメチルホルムアミド(0.07mL、.085mmol)および乾燥ジクロロメタン(20mL)の混合物を、オーブン乾燥させた丸底フラスコにアルゴン下で投入した。形成したこの懸濁液を50℃で1時間の間アルゴン下で還流させておいた。有機溶媒および過剰の塩化チオニルをロータリーエバポレーター上にて減圧下で除去し、それを無水ジクロロメタン(5×10mL)で5回反復した。無水ジクロロメタン(20mL)中の、結果として得られた黄色の残渣を0℃に10分間アルゴン下で冷却し、続いて、N,N-ジメチルアミン溶液(4.25mL、8.5mmol)を添加した。混合物を次いで室温に加温させ、1時間の間撹拌した。反応の完了後、混合物を氷冷水(15mL)で希釈し、ジクロロメタン(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(EtOAcおよび1%トリメチルアミン)で精製することで、MYM-III-41の淡黄色の固体が得られた(0.29g、80%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.98 (s, 1H), 7.83 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.67 (td, J = 7.5, 1.5 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.52 - 7.47 (m, J = 7.2 Hz, 3H), 7.45 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 7.41 - 7.37 (m, 1H), 7.25 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.02 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 4.40 (q, J = 6.7 Hz, 1H), 3.14 (s,3H), 3.03 (s, 3H), 1.96 (d, J = 6.6 Hz, 3H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 166.36 (s), 163.43 (s), 160.29 (d, J = 251.4 Hz), 140.38 (s), 138.95 (s), 134.84 (s), 133.83 (s), 132.43 (s), 131.92 (d, J = 7.9 Hz), 131.38 (s), 131.36 (s), 130.67 (s), 130.32 (s), 129.51 (s), 129.03 (s), 128.61 (s), 128.20 (s), 128.03 (d, J = 12.4 Hz), 127.13 (s), 124.47 (d, J = 2.5 Hz), 123.06 (s), 116.14 (d, J = 21.4 Hz), 52.26 (s), 39.16 (s), 35.06 (s), 18.55 (s). HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M+H] + C27H23FN4Oの計算値439.1929; 実測値439.1908. % EE = >99% (HPLC). %純度 = >99% (HPLC).
【0117】
(R)-8-シクロプロピル-N-エチル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキサミド(GL-III-68)
【0118】
【化24】
トルエン(50mL)および水(1.46mL)中の(R)-8-ブロモ-N-エチル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキサミド(3.0g、6.8mmol)の溶液に、シクロプロピルボロン酸(3g、34.0mmol)、リン酸カリウム(6.3g、29.7mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジアセテート(1.52g、2.0mmol)をアルゴン下で添加した。還流凝縮器を取り付け、混合物を真空下にてアルゴンで脱ガスした。このプロセスを4回反復した。混合物を撹拌し、100℃に加熱した。12時間後に、反応をTLC(シリカゲル)による分析で完了し、それを次いで室温に冷却した。水(20mL)を添加し、混合物をEtOAc(3×25mL)で抽出し、この後、濾液をブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮した。結果として生じた黒色の残渣を洗浄カラム(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン4:1)によって精製することで、標題化合物が白色の固体として得られた(2.3g、85%):mp189~190℃;1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.79 (s, 1H), 7.61 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 7.41 (t, J = 10.0 Hz, 2H), 7.31 - 7.14 (m, 3H), 7.09 - 6.91 (m, 2H), 6.86 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 3.62 - 3.24 (m, 2H), 1.94 - 1.71 (m, 1H), 1.22 (dd, J = 15.1, 7.6 Hz, 6H), 0.98 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 0.70 - 0.46 (m, 2H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 163.84 (s), 162.71 (s), 160.15 (d, J = 249.0 Hz), 143.60 (s), 138.69 (s), 133.31 (s), 132.27 (s), 131.57 (s), 131.40 (s), 129.35 (s), 129.29 (s), 128.49 (s), 128.29 (s), 127.85 (s), 124.28 (s), 121.79 (s), 115.89 (d, J = 21.8 Hz), 49.82 (s), 33.65 (s), 15.03 (s), 14.82 (s), 9.82 (s); HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H] C24H24FN4Oの計算値403.1929; 実測値403.1927.
【0119】
(R)-6-(2-クロロフェニル)-8-エチニル-N,N,4-トリメチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキサミド(PM-II-26)
【0120】
【化25】
(R)-6-(2-クロロフェニル)-8-エチニル-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-カルボン酸(2g、5.3mmol)を乾燥ジクロロメタンのフラスコ中に添加し、懸濁液をもたらした。塩化チオニル(7当量)を添加し、溶液を還流で2時間の間撹拌した。水素発生が終わったので、反応は2時間後に完了した。結果として得られた酸塩化物を減圧下で乾燥させることで、過剰の塩化チオニルを除去した。酸塩化物を次いで乾燥ジクロロメタン中に溶解させ、ジメチルアミン(6当量)を空のフラスコ中に添加し、温度を氷で0℃に低減した。次いで、酸塩化物をアミンに1時間かけて滴下により添加し、3時間の間室温で撹拌した。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル、1%メタノール)によって精製することで、純粋なPM-II-26が得られた(1.5g、71%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.91 (s, 1H), 7.71 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 7.57 - 7.49 (m, 2H), 7.40 (dd, J = 6.3, 3.1 Hz, 2H), 7.34 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 7.30 (s, 1H), 4.37 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 3.15 (s, 1H), 3.13 (s, 2H), 2.98 (s, 2H), 1.92 (d, J = 6.4 Hz, 3H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ 165.31 (s), 138.69 (s), 135.39 (s), 135.20 (s), 134.42 (s), 133.89 (s), 133.49 (s), 132.67 (s), 132.46 (s), 130.82 (s), 130.67 (s), 130.07 (s), 129.01 (s), 127.19 (s), 122.66 (s), 121.49 (s), 81.56 (s), 79.55 (s), 52.10 (s), 39.03 (s), 34.99 (s), 18.38 (s). HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H] + C23H19ClN4Oの計算値403.132; 実測値403.133.
【0121】
(S)-6-(2-クロロフェニル)-8-エチニル-N,4-ジメチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキサミド(FR-III-17)
【0122】
【化26】
出発エステル、エチル(S)-6-(2-クロロフェニル)-8-エチニル-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(1g、2.48mmol)を、セプタムが装着された密閉容器に-30℃で投入し、次いで、メチルアミン(15mL、EtOH中33%wt溶液)を添加した。容器をスクリューキャップで密閉し、60℃で12時間の間撹拌した。溶媒を蒸発させ、粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル、1%メタノール)によって精製することで、純粋なFR-III-17が得られた(690mg、69%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.81 (s, 1H), 7.66 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.54 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.41 - 7.37 (m, 2H), 7.34 (s, 1H), 7.26 (s, 1H), 7.17 (s, 1H), 6.89 (q, 1H), 3.14 (s, 1H), 2.98 (s, 3H), 1.36 (d, J = 4.3 Hz, 3H).
【0123】
オキサジアゾールのための一般的手順
スキーム3
【0124】
【化27】
エチルエステル(0.52mmol)を乾燥THF(20mL)中に室温でアルゴン下にて溶解させる。3Åモレキュラーシーブを含有した別のフラスコ中で、対応するアミドオキシムRC(=NOH)NH(2.08mmol)を乾燥THF(30mL)中にアルゴン下で溶解させ、水素化ナトリウム(鉱物油中60%分散、0.57mmol)で処理した。結果として得られた混合物を15分間撹拌し、この時点で、エチルエステルを含有する溶液を添加する。結果として得られた反応混合物を、TLC(シリカゲル)による分析で示された通りに出発材料が消費されるまで室温で2時間の間撹拌する。反応混合物を飽和NaHCO水溶液(50mL)でクエンチする。水(50mL)を次いで添加し、生成物をEtOAc(3×100mL)で抽出する。有機層を合わせ、ブライン(30mL)で洗浄し、乾燥させる(NaSO)。溶媒を減圧下で除去する。結果として得られた固体をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)によって精製することで、オキサジアゾールが得られる。
【0125】
スキーム3において、Rは、フェニル、クロロ、ブロモ、エチニル、またはシクロプロピルであってよく;Xは、N、C-Cl、またはC-Fであってよく;Rは、アルキル基またはシクロアルキル基であってよい。
【0126】
5-(8-シクロプロピル-6-(2-フルオロフェニル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-エチル-1,2,4-オキサジアゾール(MYM-III-43)
【0127】
【化28】
N’-ヒドロキシプロピオンイミドアミド(0.9g、10.2mmol)を乾燥THF(20mL)中にアルゴン下で溶解させ、水素化ナトリウム(鉱物油中60%分散、0.068g、2.86mmol)で1時間の間モレキュラーシーブ3Åにて丸底フラスコ中で処理した。エチル8-シクロプロピル-6-(2-フルオロフェニル)-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(1g、2.56mmol)を乾燥THF(20mL)中に別のフラスコ中にて室温でアルゴン下にて溶解させ、次いで、N’-ヒドロキシプロピオンイミドアミドを含有するフラスコに添加した。結果として生じた反応混合物を、TLC(シリカゲル、EtOAc:へクス=50:50)による分析で示された通りに出発材料が消費されるまで室温で2時間の間撹拌した。反応混合物をNaHCO水溶液(20mL)でクエンチした。水(50mL)を次いで添加し、生成物をEtOAc(3×100mLで抽出した)。有機層を合わせ、洗浄し(10%NaCl水溶液、2×30mL)、乾燥させた(NaSO)。溶媒を減圧下で除去した。結果として生じた固体をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc:へクス=50:50)によって精製することで、純粋なオキサジアゾール、MYM-III-43が得られた(白色の粉末、850mg、80%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.05 (s, 1H), 7.64 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.47 - 7.41 (m, 1H), 7.32 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.24 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.07 (s, 1H), 7.03 (t, J = 9.4 Hz, 1H), 6.14 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 4.23 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 2.84 (qd, J = 7.6, 1.1 Hz, 2H), 1.95 - 1.88 (m, 1H), 1.40 (td, J = 7.5, 1.1 Hz, 3H), 1.03 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 0.67 (s, 2H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 171.85 (s), 170.94 (s), 166.63 (s), 160.26 (d, 1J C-F = 251.6 Hz), 144.35 (s), 136.22 (s), 135.60 (s), 132.10 (d, 2J C-F = 8.4 Hz), 131.64 (s), 131.31 (d, 4J C-F = 2.3 Hz), 129.04 (s), 128.78 (s), 128.15 (s), 128.06 (s), 128.02 (s), 124.47 (s), 124.36 (d, 3J C-F= 3.5 Hz), 122.32 (s), 116.10 (d, 2J C-F = 21.6 Hz), 44.82 (s), 19.77 (s), 15.13 (s), 11.57 (s), 9.91 (s). HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M+H] + C24 H20 N5O Fの計算値414.1725; 実測値414.1691.
【0128】
(R)-5-(8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール(MYM-IV-46)
【0129】
【化29】
エチルエステル、エチル(R)-8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(1g、2.5mmol)を、乾燥THF(20mL)中にアルゴン下で溶解させ、別のフラスコの中で、N’-ヒドロキシイソブチルイミドアミド(1.05g、10mmol)を水素化ナトリウム(鉱物油中60%分散、0.065g、2.80mmol)で1時間の間モレキュラーシーブ3Åで処理した。その時点で、エチルエステル溶液を他のフラスコに滴下により添加し、結果として生じた反応混合物を、出発材料が消費されるまで(TLC、シリカゲル、EtOAc:へクス=50:50)、室温で2時間の間撹拌した。反応混合物をNaHCO水溶液(10mL)でクエンチし、水(50mL)で希釈し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を洗浄し(10%NaCl水溶液、2×30mL)、乾燥させ(NaSO)、溶媒を減圧下で除去した。固体残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc:へクス=50:50)によって精製することで、純粋な白色のオキサジアゾール、MYM-IV-46が得られた(940mg、86%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.05 (s, 1H), 7.72 - 7.63 (m, 1H), 7.60 (s, 2H), 7.46 (dd, J = 12.5, 6.5 Hz, 1H), 7.27 (dd, J = 17.0, 7.4 Hz, 2H), 7.06 (t, J = 9.0 Hz, 1H), 6.73 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 3.18 (dt, J = 13.4, 6.6 Hz, 1H), 1.40 (d, J = 6.9 Hz, 6H), 1.36 (d, J = 7.2 Hz, 3H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 175.34 (s), 170.65 (s), 162.02 (d, 1J C-F = 235.7 Hz), 139.10 (s), 136.19 (s), 135.51 (s), 133.50 (s), 132.95 (s), 132.21 (d, 4J C-F = 8.1 Hz), 132.08 (s), 131.35 (s), 131.12 (s), 130.90 (s), 130.33 (s), 129.80 (s), 128.38 (d, 3J C-F = 11.9 Hz), 125.14 (s), 124.62 (s), 124.29 (s), 123.44 (s), 116.29 (d, 2J C-F = 21.4 Hz), 50.33 (s), 26.76 (s), 20.62 (s), 20.56 (s), 14.99 (s). HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M+H] + C23H19N5OFClの計算値436.13349; 実測値436.13746. % EE = >98% (HPLC) . %純度 = >99% (HPLC).
【0130】
(R)-5-(8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-シクロプロピル-1,2,4-オキサジアゾール(MYM-IV-47)
【0131】
【化30】
N’-ヒドロキシシクロプロパンカルボキシイミドアミド(1.07g、10mmol)を水素化ナトリウム(鉱物油中60%分散、0.066g、2.75mmol)で1時間の間モレキュラーシーブ3Åでアルゴン雰囲気下にて処理し、次いで、エチル(R)-8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(1g、2.5mmol、20mL THF)の溶液を反応混合物に滴下により添加し、出発材料の消費まで2時間の間撹拌された。混合物を次いでクエンチし(20mLの飽和NaHCO水溶液)、希釈し(水、50mL)、抽出した(EtOAc、3×100mL)。合わせた有機層を洗浄し(10%NaCl水溶液2×50mL)、乾燥させ(NaSO)、溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:へクス=50:50)によって精製することで、純粋なMYM-IV-47が得られた(白色の粉末、0.99g、91%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.04 (s, 1H), 7.65 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.60 (s, 2H), 7.46 (td, J = 7.4, 1.5 Hz, 1H), 7.26 (dd, J = 14.1, 6.4 Hz, 2H), 7.05 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 6.66 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 4.39 (d, J = 6.2 Hz, 1H), 2.20 - 2.11 (m, 2H), 1.33 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.19 - 1.10 (m, 2H), 1.06 (dd, J = 8.3, 2.2 Hz, 2H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 172.64 (s), 170.48 (s), 162.94 (s), 160.07 (d, 1J C-F = 249.6 Hz), 139.11 (s), 136.16 (s), 135.48 (s), 133.51 (s), 132.92 (s), 132.55 (d, 3J C-F= 8.0 Hz), 132.20 (d, 4J C-F = 7.6 Hz), 132.05 (s), 131.10 (s), 130.88 (s), 130.32 (s), 129.80 (s), 128.36 (d, 2J C-F= 12.0 Hz), 125.01 (s), 124.61 (s), 124.28 (s), 123.41 (s), 116.28 (d, 2J C-F = 21.4 Hz), 50.29 (s), 14.98 (s), 7.76 (s), 6.90 (s). HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M+H] + C23 H17 N5OF Clの計算値434.11784; 実測値434.12100. % EE = >98% (HPLC). %純度 = >99% (HPLC).
【0132】
(R)-5-(8-シクロプロピル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-エチル-1,2,4-オキサジアゾール(GL-IV-03)
【0133】
【化31】
トルエン(30mL)および水(0.65mL)中の(R)-5-(8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-エチル-1,2,4-オキサジアゾール(1.1g、2.38mmol)、トリ(O-トリル)ホスフィン(85.5mg、0.28mmol)、シクロプロピルボロン酸(0.724g、8.43mmol)およびリン酸カリウム(2.56g、12.1mmol)の溶液に、Pd(OAc)(31.5mg、0.14mmol)をAr下にて室温で添加することで、オレンジ色の濁った溶液が形成された。還流凝縮器を取り付けた。混合物を、溶液の色が黄色になるまで室温で5分間撹拌させておき、Pd複合体の形成の表示がその場で生じた。混合物を次いで、予備加熱された油浴に100℃で入れた。2時間後に、反応進行はTLC(シリカゲル)による分析で完了し、それを次いで室温に冷却した。次いで、水(20mL)を添加し、混合物をEtOAc(3×25mL)で抽出し、この後、濾液をブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮した。結果として生じた黒色の残渣を洗浄カラム(シリカゲル、ジクロロメタンおよび5%MeOH)によって精製することで、標題化合物が白色の固体として得られた(815.5mg、81.6%):1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.98 (s, 1H), 7.46 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.38 - 7.25 (m, 1H), 7.13 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 6.93 (t, J = 9.1 Hz, 2H), 6.63 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 2.73 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.84 - 1.65 (m, 1H), 1.27 (dd, J = 14.1, 6.6 Hz, 6H), 0.90 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 0.54 (dd, J = 10.1, 4.8 Hz, 2H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 171.70 (s), 170.95 (s), 164.32 (s), 160.06 (d, J = 250.5 Hz), 144.12 (s), 139.17 (s), 136.28 (s), 131.72 (s), 131.62 (s), 131.17 (s), 129.05 (t, J = 6.2 Hz), 128.61 (s), 127.96 (s), 127.20 (s), 124.36 (d, J = 8.0 Hz), 122.68 (s), 121.94 (s), 115.94 (d, J = 21.6 Hz), 50.13 (s), 19.69 (s), 15.02 (s), 14.68 (s), 11.49 (s), 9.89 (s); HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H] C25H23FN5Oの計算値428.1881, 実測値428.1889.
【0134】
(R)-5-(8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール(GL-III-60)
【0135】
【化32】
N’-ヒドロキシアセトイミドアミド(3g、40.5mmol)およびNaH(鉱物油中60%分散、0.8g、14.9mmol)を用いるオキサジアゾールのための一般的手順に従って、エチル(R)-8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(6g、13.5mmol)から標題化合物を調製した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン 3:2)によって精製することで、標題化合物が白色の粉末として得られた(5.6g、91.8%):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.08 (s, 1H), 7.76 (dd, J = 8.5, 1.9 Hz, 1H), 7.61 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 7.55 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.52 - 7.42 (m, 2H), 7.26 (td, J = 7.6, 0.9 Hz, 1H), 7.11 - 6.99 (m, 1H), 6.74 (q, J = 7.3 Hz, 1H), 2.45 (s, 3H), 1.35 (d, J = 7.3 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 170.69 (s), 167.46 (s), 161.09 (s), 161.06 (d, J = 495.1 Hz), 139.12 (s), 136.31 (s), 135.16 (s), 133.37 (s), 133.25 (s), 132.36 (d, J = 7.7 Hz), 131.26 (s), 131.02 (s), 128.15 (d, J = 11.0 Hz), 124.87 (s), 124.61 (d, J = 3.3 Hz), 123.71 (s), 121.26 (s), 116.29 (d, J = 21.4 Hz), 50.15 (s), 14.98 (s), 11.69 (s); HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H] C21H16BrFN5Oの計算値452.0517, 実測値452.0542.
【0136】
(R)-5-(6-(2-クロロフェニル)-8-エチニル-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-エチル-1,2,4-オキサジアゾール(PM-II-84E)
【0137】
【化33】
(R)-エチル6-(2-クロロフェニル)-8-エチニル-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレートから、標題化合物を調製した。N’-ヒドロキシプロピオンイミドアミド(0.58g、6.5mmol)をNaH(0.043g、1.70mmol)で1時間の間室温でTHF中にて処理した。次いで、THF中に溶解させたエチルエステル(0.658g、1.6mmol)を滴下により30分間添加した。4時間後に、反応が完了した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン3:2)によって精製することで、純粋な標題化合物が白色の粉末として得られた(0.58g、83%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.06 (s, 1H), 7.74 (dd, J = 16.6, 8.1 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.55 - 7.44 (m, 1H), 7.40 (dd, J = 5.6, 3.5 Hz, 3H), 7.29 (s, 1H), 6.71 (Q, J = 12.5, 7.1 Hz, 1H), 3.17 (s, 1H), 2.83 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 1.40 (d, J = 3.4 Hz, 3H), 1.38 (t, J = 5.9 Hz, 3H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ 171.90 (s), 139.51 (s), 139.18 (s), 136.18 (s), 135.32 (s), 134.73 (s), 133.91 (s), 132.38 (s), 130.81 (s), 130.67 (s), 130.16 (s), 129.47 (s), 129.20 (s), 128.34 (s), 127.14 (s), 125.15 (s), 122.02 (s), 121.86 (s), 81.37 (s), 79.90 (s), 50.28 (s), 19.76 (s), 15.11 (s), 11.53 (s). %). HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H] + C24H18ClN5Oの計算値428.127; 実測値428.129.
【0138】
(R)-3-シクロプロピル-5-(8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-1,2,4-オキサジアゾール(MYM-V-28)
【0139】
【化34】
1時間水素化ナトリウム(鉱物油中60%分散、0.068g、2.75mmol)で処理した後、N’-ヒドロキシシクロプロパンカルボキシイミドアミド(1.03g、10.3mmol)の溶液を、乾燥THF(20mL)中のエチル(R)-8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(1g、2.58mmol)の溶液の撹拌溶液に添加した。混合物を次いで、出発材料の消費まで2時間の間撹拌した。混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)でクエンチし、水(10mL)で希釈し、EtOAc(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層を洗浄し(10%NaCl水溶液2×50mL)、乾燥させた(NaSO)。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製することで、純粋なMYM-V-28が白色の粉末として得られた(896mg、82%)。MYM-V-28についてはR=0.6、およびSH-2’F-R-CHについてはR=0.4(シリカゲル、70%EtOAc-ヘキサン)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.07 (s, 1H), 7.75 (dd, J = 14.6, 7.3 Hz, 1H), 7.63 (t, J = 13.9 Hz, 2H), 7.51 - 7.40 (m, 2H), 7.26 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.06 (t, J = 9.3 Hz, 1H), 6.68 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 3.18 (s, 1H), 2.16 (ddd, J = 16.5, 8.2, 3.9 Hz, 1H), 1.34 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 1.16 (dd, J = 11.9, 9.7 Hz, 2H), 1.07 (dd, J = 8.4, 2.3 Hz, 2H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 172.67 (s), 170.43 (s), 163.76 (s), 160.10 (d, J = 250.9 Hz), 139.08 (s), 136.24 (s), 135.52 (s), 134.24 (s), 133.70 (d, J = 20.2 Hz), 132.30 (d, J = 8.7 Hz), 131.19 (s), 129.38 (d, J = 2.6 Hz), 128.24 (d, J = 5.1 Hz), 125.05 (s), 124.58 (d, J = 3.3 Hz), 123.01 (s), 122.24 (s), 121.95 (s), 116.29 (d, J = 21.4 Hz), 81.29 (s), 79.97 (s), 50.15 (s), 15.02 (s), 7.76 (s), 6.90 (s). HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M+H] + C25H18N5OFの計算値424.15681.
【0140】
(R)-5-(6-(2-クロロフェニル)-8-エチニル-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール(PM-III-57R)
【0141】
【化35】
エチル(R)-6-(2-クロロフェニル)-8-エチニル-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(1g、2.4mmol)を無水THF(25mL)中に室温で溶解させた。別のフラスコの中で、N’-ヒドロキシメチルカルボキシイミドアミド(9.6mmol)およびNaH(鉱物油中60%分散、2.6mmol)を室温でTHF(20mL)中にて混合し、1時間の間撹拌した。エチル(R)-6-(2-クロロフェニル)-8-エチニル-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレートの溶液を次いで、N’-ヒドロキシメチルカルボキシイミドアミドおよびNaHの懸濁液に滴下により室温で添加し、4時間の間撹拌した。反応の進行をTLCによってモニタリングした。反応物をクエンチするため、飽和NaHCO水溶液(25mL)を添加し、続いて、水(12mL)で希釈し、EtOAc(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を洗浄し(10%NaCl水溶液3×50mL)、乾燥させた(NaSO)。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製することで、純粋なPM-III-57Rが白色の粉末として得られた(850mg、83%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.06 (s, 1H), 7.73 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.56 - 7.48 (m, 1H), 7.40 (dd, J = 5.8, 3.4 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 37.0 Hz, 2H), 6.73 (q, 1H), 3.17 (s, 1H), 2.47 (s, 3H), 1.39 (d, J = 6.6 Hz, 3H). 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 170.74 (s), 167.42 (s), 165.82 (s), 139.43 (s), 139.21 (s), 136.23 (s), 135.32 (s), 134.66 (s), 133.84 (s), 132.36 (s), 130.80 (s), 130.70 (s), 130.12 (s), 129.46 (s), 129.12 (s), 127.11 (s), 122.05 (s), 121.90 (s), 81.35 (s), 79.95 (s), 50.21 (s), 15.10 (s), 11.66 (s).
【0142】
(S)-5-(6-(2-クロロフェニル)-8-エチニル-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール
【0143】
【化36】
エチル(S)-6-(2-クロロフェニル)-8-エチニル-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(1g、2.4mmol)を無水THF(25mL)中に室温で溶解させた。別のフラスコの中で、N’-ヒドロキシメチルカルボキシイミドアミド(9.6mmol)およびNaH(鉱物油中60%分散、2.6mmol)を室温でTHF(20mL)中にて混合し、1時間の間撹拌した。エチル(S)-6-(2-クロロフェニル)-8-エチニル-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレートの溶液を次いで、N’-ヒドロキシメチルカルボキシイミドアミドおよびNaHの懸濁液に滴下により室温で添加し、4時間の間撹拌した。反応の進行をTLCによってモニタリングした。反応物をクエンチするため、飽和NaHCO水溶液(25mL)を添加し、続いて、水(12mL)で希釈し、EtOAc(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を洗浄し(10%NaCl水溶液3×50mL)、乾燥させた(NaSO)。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製することで、純粋なPM-FR-III-57Sが白色の粉末として得られた(890mg、87%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.06 (s, 1H), 7.72 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.59 - 7.48 (m, 1H), 7.39 (dd, J = 8.3, 4.5 Hz, 2H), 7.37 - 7.29 (m, 2H), 6.72 (q, 1H), 3.17 (s, 1H), 2.46 (s, 3H), 1.39 (d, J = 6.9 Hz, 3H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 170.74 (s), 167.44 (s), 165.84 (s), 139.46 (s), 139.22 (s), 136.23 (s), 135.31 (s), 134.70 (s), 133.87 (s), 132.39 (s), 130.80 (s), 130.70 (s), 130.14 (s), 129.50 (s), 127.12 (s), 124.98 (s), 122.02 (s), 121.88 (s), 81.37 (s), 79.92 (s), 50.22 (s), 15.08 (s), 11.66 (s).
【0144】
Y迷路交替タスク
若齢動物および慢性ストレス手順:8週齢のC57/Bl6マウス、雄性および雌性を正常の収容条件(午前7時に開始する12時間点灯サイクル/水および食物は無制限)に1週間保つ。この週の間、動物を単一収容し、実験者への不安様応答を低減するように取り扱う。作業記憶欠損を誘発するため、マウスを慢性拘束ストレスプロトコール(CRS)にかける。それらを、50mLのFalcon(登録商標)チューブの中に、1日2回、1時間の間、それらの概日周期サイクルの間入れた。ストレスの出現の時間は、予測性を回避するため、毎日無作為化する。CRSは、試験日には適用しない。Y迷路試験は、最後のストレッサーの後、最低15時間で起こる。
【0145】
若齢対老齢動物試験:10カ月齢のC57/Bl6雄性マウスを、それらが22カ月齢に達するまで、正常の収容条件(午前7時に開始する12時間点灯サイクル/水および食物は無制限)に保つ。8週齢動物の若い方のコホートを実験のための対照として使用する。試験する前、実験者に対する不安様応答を低減するように動物を取り扱う。下に記載されている通りのY迷路試験を使用して、正常な加齢誘発作業記憶欠損を判定する。
【0146】
プロトコール:マウスを最初に、連続した2日の間、10分の自由探索セッション(1日当たり1つのセッション)にわたって、Y迷路器具および遠位合図(distal cues)に馴化させる。翌日、動物は、30秒の試行間の間隔(ITI)によって分けられる7つの連続的試行からなる訓練セッションを行い;この訓練セッション中、マウスを実験手順(ドアの開閉およびゴールアームへの拘束)に慣れさせる。各試行のため、マウスは、30秒のITIの間スタートボックスにとどまる。次いで、ドアを開け、マウスを2つのゴールアームの1つに自由に進入させ;選択アームを閉じ、該選択を記録する。選択アームへの30秒の拘束期間後、マウスを取り出し、第1の試行と同一の第2の試行のためにスタートボックスに戻し、この手順を試行シリーズにわたって反復する。
【0147】
ITIを90秒に延長したことを除いて、訓練セッションにおいて使用された同じ一般的手順を24時間後に実践する。この実験のため、試験の開始30分前に、動物にビヒクルまたは薬物をi.p.で急性的に注射する。該シリーズにわたって交替への意欲の最終的進行性喪失と記憶欠損を分離して考えるため、より短いITI(5秒)によって7回目の試行と分けられる8回目の試行を該シリーズに加える。8回目の試行で交替し損なった全ての動物を除外する。平均交替率を算出し、百分率(動物によって行われた交替の数/可能な交替の合計数×100)±SEMで表す。タスク全体の間の交替の百分率は、作業記憶能力の指標として考えられる(50%のランダム交替率(50% of being a random alternation rate))。階乗(Factorial)ANOVAをデータに適用することで、群間の差異を明らかにする。ANOVAが群効果に有意であるならば(p<0.05)、シェッフェ事後分析を行うことで、どの群が互いに異なるかを同定する。
【0148】
薬物調製および投与:全ての薬物を、85% HO、14%プロピレングリコール(Sigma Aldrich)および1%ツイーン80(Sigma Aldrich)を含有するビヒクル溶液中に希釈する。作業溶液を10mg/mLの濃度で調製し、各動物の体重に調整してi.p.で投与する。使用される用量は、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kgまたは20mg/kgのいずれかである。全てのY迷路実験のため、試験の開始30分前に、動物にビヒクルまたは薬物をi.p.で急性的に注射する。
【0149】
GL-III-68を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:CRSにかけられたマウスにGL-III-68を注射し(3mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgのi.p.、試験30分前)、Y迷路における空間作業記憶について試験した。ANOVAは、処置介入(intervention)の全体的な効果を見出した(p<0.001)。ストレスは交替率を有意に低減し(p<0.001)、この機能障害は、10mg/kgのGL-III-60での処置によって逆転された($p<0.05)(図1)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0150】
MYM-III-29を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:データ分析(図2Aおよび2B)は、群間の有意な差異を示した(ANOVA:F(2,12)=7.3、p<0.01)。フィッシャーPLSD事後分析は、慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して、交替率の有意な低減を誘発する(p<0.01)ことを示す。この効果は、試験の30分前のMYM-III-29、10mg/kgの急性投与によって逆転される(p<0.05)。MYM-III-29は、10mg/kgで有意な認知促進効果を有する(p<0.05、対照-ビヒクル群と比較して)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0151】
FR-III-17を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:慢性拘束ストレスにかけられたマウスにFR-III-17を注射し(0.3mg/kg、1mg/kgおよび3mg/kgのi.p.、試験の30分前)、Y迷路における空間作業記憶について試験した。変動の分析は、全体的な効果を見出し(p<0.001)、事後分析は、ストレスは交替率を有意に低減したこと(***p<0.0001)を明らかにし、この欠損は、0.3mg/kg($$p<0.01)、1mg/kg($p<0.05)または3mg/kg(p<0.05)のFR-III-17によって有意に逆転された(図4)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0152】
PM-II-26を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:データ分析(図5Aおよび5B)は、CRSによる損なわれた交替を示し、これは、10mg/kgでのPM-II-26処置によって逆転され(p<0.001)、傾向は30mg/kg(p=0.1)で観察された。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0153】
MYM-III-41を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:CRSにかけられたマウスにMYM-III-41を注射し(1mg/kg、5mg/kg、または10mg/kgのi.p.、試験の30分前)、Y迷路における空間作業記憶について試験した。ANOVAは、処置介入の全体的な効果を見出した(p<0.0001)。ストレスは、交替率を有意に低減し(p<0.001)、この機能障害は、5mg/kgのMYM-III-41(p<0.01)および10mg/kgのMYM-III-41を用いる処置によって逆転された(p<0.05)(図6)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0154】
GL-IV-03を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:データ分析(図7)は、群間の有意な差異を示した(ANOVA:F(3,14)=9.7、p<0.001)。フィッシャーPLSD事後分析は、慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して交替率の有意な低減を誘発する(p<0.01)ことを示す。この効果は、試験の30分前のGL-IV-03、3mg/kg(p<0.01)および30mg/kg(p<0.01)の急性投与によって逆転される。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0155】
GL-I-65を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:データ分析(図8および9)は、群間の有意な差異を示した(ANOVA:F(2,28)=5.3、p<0.05)。フィッシャーPLSD事後分析は、慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して交替率の有意な低減を誘発する(p<0.01)ことを示す。この効果は、試験の30分前のGL-I-65、10mg/kgの急性投与によって逆転される(p<0.05)(図8)。同様の改善が老齢マウスにおいて観察され、ここで、試験の30分前のGL-I-65(10mg/kg)の急性投与は、老齢マウスにおける交替率を改善した(p<0.05)(図9)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0156】
GL-III-60を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:CRSにかけられたマウスに、GL-III-60を注射し(3mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgのi.p.、試験の30分前)、Y迷路における空間作業記憶について試験した。ANOVAは、処置介入の全体的な効果を見出した(p<0.001)。ストレスは、交替率を有意に低減し(p<0.001)、この機能障害は、10mg/kgのGL-III-60($$p<0.01)および30mg/kgを用いる処置によって逆転された($p<0.05)(図10)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0157】
GL-II-33を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:CRSにかけられたマウスにGL-II-33を注射し(3mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgのi.p.、試験の30分前)、Y迷路における空間作業記憶について試験した。ANOVAは、処置介入の全体的な効果を見出した(p<0.001)。ストレスは、交替率を有意に低減し(p<0.001)、この機能障害は、10mg/kgのGL-II-33($p<0.05)を用いる処置によって逆転されたが、3mg/kgまたは30mg/kgでは逆転されなかった(図11)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0158】
MYM-III-43を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:CRSにかけられたマウスにMYM-III-43を注射し(i.p.注射による3mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kg、試験の30分前)、Y迷路における空間作業記憶について試験した。ANOVAは、操作の有意な全体的な効果を見出し(p<0.001)、事後検定は、対照と比較してストレスの有意な効果を明らかにし(***p<0.001)、これは、3mg/kg($<0.05)、10mg/kg$$($$p<0.01)および30mg/kg($$p<0.01)でのMYM-III-43の投与によって逆転された(図12)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0159】
PM-II-84Eを用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:データ分析(図13)は、群間の有意な差異を示した(ANOVA:F(2,11)=10、p<0.01)。フィッシャーPLSD事後分析は、慢性拘束ストレス(CRS)が、対照ビヒクルマウスと比較して交替率の有意な低減を誘発する(p<0.05)ことを示す。この効果は、試験の30分前のPM-II-84E、30mg/kgの急性投与によって逆転される(p<0.05)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0160】
MYM-IV-47を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:CRSにかけられたマウスにMYM-IV-47を注射し(i.p.注射による3mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kg、試験の30分前)、Y迷路における空間作業記憶について試験した。ANOVAは、操作の有意な全体的な効果を見出し(p<0.001)、事後検定は、対照と比較してストレスの有意な効果を明らかにし(***p<0.001)、これは、10mg/kgでのMYM-IV-47($$<0.01)および30mg/kgのMYM-IV-47 rate($p<0.05)の投与によって有意に逆転され、3mg/kgで有意な効果はなかった(図14)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0161】
MYM-V-28を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:CRSにかけられたマウスにMYM-V-28を注射し(i.p.注射による3mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kg、試験の30分前)、Y迷路における空間作業記憶について試験した。ANOVAは、操作の有意な全体的な効果を見出し(p<0.05)、事後検定は、対照と比較してストレスの有意な効果を明らかにし(***p<0.001)、これは、10mg/kg($<0.05)および30mg/kg($p<0.05)でのMYM-V-28の投与によって有意に逆転されたが、3mg/kgでは逆転されなかった(図16)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0162】
PM-III-57Rを用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:CRSにかけられたマウスにPM-III-57Rを注射し(i.p.注射による3mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kg、試験の30分前)、Y迷路における空間作業記憶について試験した。ANOVAは、操作の有意な全体的な効果を見出し(p<0.01)、事後検定は、対照と比較してストレスの有意な効果を明らかにし(**p<0.01)、これは、10mg/kgでのPM-III-57Rの投与によって有意に逆転された($$<0.01)が、3mg/kgまたは30mg/kgでは逆転されなかった(図17)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0163】
FR-PM-III-57Sを用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:CRSにかけられたマウスにFR-PM-III-57Sを注射し(i.p.注射による3mg/kg、10mg/kg、30mg/kg、試験の30分前)、Y迷路における空間作業記憶について試験した。ANOVAは、操作の有意な効果を見出し(p<0.01)、事後検定は、対照と比較してストレスの有意な効果を明らかにした(***p<0.001)。これは、10mg/kgでのFR-PM-III-57Sの投与によって有意に逆転され($<0.05)、30mg/kgでのFR-PM-III-57Sの傾向レベル効果もあった(†<0.10)(図18)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0164】
MYM-IV-46を用いる処置後のY迷路交替タスクの結果:CRSにかけられたマウスにMYM-IV-46を注射し(i.p.注射による3mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kg、試験の30分前)、Y迷路における空間作業記憶について試験した。ANOVAは、操作の有意な全体的な効果を見出し(p<0.001)、事後検定は、対照と比較してストレスの有意な効果を明らかにし(***p<0.001)、これは、10mg/kgでのMYM-IV-46の投与によって有意に逆転された($$<0.01)。30mg/kgのMYM-IV-46で、交替率に対する傾向レベル効果があり(†p<0.1)、3mg/kgで有意な効果はなかった(図19)。これらの結果は、認知欠損を逆転させるというこの化合物の潜在的な効能を示唆する。
【0165】
他の認知試験におけるアルファPAMの効果
モリス水迷路アッセイのための手順:ラットの認知能力に影響する化合物の潜在性は、2つの良く検証された挙動モデルにおいて判定することができる。最初に、モリス水迷路実験を、22±1℃の水で30cmの高さに充填された2m径の円形プールにおいて行う。避難プラットフォーム(15cm×10cm)を水面2cm下に沈める。全ての実験詳細は、Savicら(Int. J. Neuropsychopharmacol. 2009, 12, 1179-1193)に記載されている通りである。連続した5日の各々で、4つの試行からなる1つの水泳ブロックをラットに与える。各試行のため、ラットを4つの疑似無作為に決定された開始位置の1つで水の中に入れる。一旦ラットが避難プラットフォームを発見して乗ると、プラットフォーム上に15秒間とどまることを許す。ラットが120秒内にプラットフォームを見つけ損なったならば、ラットを実験者によってプラットフォームに導く。習得段階中、処置を水泳ブロックの前に1日1回適用する。第6日目に、ラットにプラットフォームのない無処置プローブ試験(60秒)を与える。プローブ試験を新規な最も遠位の位置から開始する。習得試行中に追跡するために選択される従属変数は、避難潜時(秒)、移動合計距離(m)、路効率(最も短い可能な路長対実際の路長の比)、周辺輪における水泳距離の%および平均速度(m/s)である。プローブ試験における選択パラメータは、標的ゾーンにおける水泳距離(秒)および周辺輪における水泳距離の%である。2mg/kgのジアゼパムは対照薬物である。化合物の用量は、それらが、Stamenicら(Eur. J. Pharmacol. 2016, 791, 433-443)に表されている徹底的な薬物動態学的および電気生理学的データの分析に従って、それぞれα5GABAARの軽度、中程度および強度のポジティブモジュレーションを引き出すように選択される。モリス水迷路における習得日からのデータを、各ラットについて平均化し(合計データ/1日当たりの試行の合計数)、反復測定として日数を用いる反復測定(因子:処置および日数)を用いる二元配置ANOVAを使用して分析する。有意な相互作用の場合において、別々の一元配置ANOVAを行うことで、因子日数の個々のレベル内での処置の影響を判定する。一元配置ANOVAを使用して、プローブ試験からのデータを判定する。
【0166】
社会的新規性判別(SND)アッセイのための手順:SND試験は、成体ラットの社会調査時間を、熟知したおよび新規の若年ラットで比較する。試験は、成体対象に対する2つの連続した若年提示期間:期間1(P1)および期間2(P2)からなる。P1の始めに、1匹の若年を成体用ホームケージに入れ、若年を調査する成体によって費やされた時間(肛門生殖器を嗅ぐこと、舐めること、近くで追いかけること、および触ること(pawing))を手動で5分間記録する。P2中、同じ若年および第2の新規な若年を成体と一緒にケージに入れ、各若年を調査する成体によって費やされた時間を独立して3分間測定する。若年ラットの異なる対を、試験される各成体に示す。手動のスコア化を盲検方式で行う。P1とP2との間に30分の遅延があり、それらのSNDは低いと予想されたので、SNDは、対照ラットにおいて、適用されたパラメータ操作によって計画的に損なわれた。SNDにおけるこのように誘発された機能障害に対する化合物の影響を検査する。P1の20分前に以下の処置の1つを受けるラットの5つの群がある:溶媒、1.5mg/kgのジアゼパム、または1mg/kg、2.5mg/kgおよび10mg/kgの試験化合物。P2中に、熟知した(Tf)および新規な(Tn)若年を調査する時間の量を手動でスコア化し、判別指標(Tn-Tf/Tn+Tf)を算出する。P1およびP2中の合計探索時間も手動で記録する。
【0167】
強制水泳試験
強制水泳試験アッセイ(FST)のための手順
動物:8週齢のC57Bl/6雄性マウスを、正常の収容条件下で(午前7時に開始する12時間点灯サイクル/水および食物は無制限)1週間群収容する(4~5匹のマウス/ケージ)。この週の間、実験者に動物を馴化させるとともに行動試験中の動物の不安様応答を低減するように動物を取り扱う。
【0168】
薬物調製および投与:全ての薬物を、85% HO、14%プロピレングリコール(Sigma Aldrich)および1%ツイーン80(Sigma Aldrich)を含有するビヒクル溶液中に希釈する。作業溶液を20mg/mLの濃度で調製し、各動物の体重に調整してi.p.で投与する。使用される用量は、1mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kgのいずれかである。全てのFST実験のため、動物にビヒクルまたは試験化合物をi.p.で注射する。
【0169】
プロトコール:マウスを強制水泳試験(FST)において試験した(抗うつ効力の判定のために使用される絶望様行動の尺度)。潜在的な抗うつ化合物を試験するための分野における標準的方法の通りに、動物に3回(試験の24時間前、20時間前および1時間前)亜慢性的に注射する。
【0170】
最後の注射の1時間後、マウスを水(25cm、25~26℃)で充填された不可避な透明タンクに入れ、ここで、それらは底に触れず、タンクから飛び出せない。動物を6分の期間の間記録し、タンクにおける不動時間の手動計数を、マウス処置履歴が分からない実験者によって2~6分の期間の間測定する。不動は、浮いたままでいるための最小量の動きとして定義される。FSTにおける不動を低減した化合物は、潜在的な抗うつ作用を有すると考えられる。
【0171】
高架式十字迷路(EPM)
EPMは、不安様行動を判定するために前臨床げっ歯類モデルにおいて共通して使用される。簡潔には、マウスを、床から55cmに上げられた十字形状迷路に入れ、2つのオープンアームは向き合っており、2つのクローズドアームは向かい合っている。試験中、マウスを個々に、オープンアームに向いている迷路の中心に入れ、10分間探索させておく。試験の全体にわたって、天井に取り付けられたデジタルカメラを使用して、各マウスの探索を記録する。探索の10分後、カメラを止め、マウスを迷路から取り出し、それのホームケージに戻す。Ethovision XT14ソフトウェアを使用して、ビデオを分析する。考えられる特定のパラメータは、([(オープンアームにおいて費やされた合計時間)/(オープンアームにおいて費やされた合計時間+クローズドアームにおいて費やされた合計時間)]100)を使用して算出されるオープンアームにおいて費やされた%時間、およびオープンアーム進入の数である。
【0172】
PM-II-84Eを用いるEPMにおける結果。PM-II-84E(10mg/kg、i.p.、試験の30分前)およびビヒクル対照で処置されたマウスを高架式十字迷路において不安様行動について試験した。t試験は、オープンアームへの進入のパーセント(p<0.05)およびオープンアームにおいて費やされた時間のパーセント(**p<0.01)に対するPM-II-84Eの有意な効果、ならびにオープンアームにおける移動距離のパーセントに対する傾向レベル効果(†p<0.10)(n=1群当たり6)を見出し、抗不安特性を示唆した(図15)。
【0173】
FR-III-17を用いるEPMにおける結果。FR-III-17(3mg/kg、i.p.、試験の30分前)およびビヒクル対照で処置されたマウスを高架式十字迷路において不安様行動について試験した。t試験は、FR-III-17がオープンアームにおける%時間、%移動距離および%進入を有意に増加させることを見出し(p<0.05、**P<0.01)(n=1群当たり6)、抗不安特性を示唆した(図20)。
【0174】
自発運動活性
試験化合物に関するホームケージ自発運動活性変化は、薄明かり状態における動物の動きを判定するとともに異なる化合物の潜在的な鎮静効果を検出するために定量化することができる。上からのビデオ記録を可能にするために寝床および蓋を用いずに、マウスをそれらのホームケージ(28.2×17.1cm)と同様の清潔なケージに入れる。ANY-Maze(商標)追跡ソフトウェア(バージョン499z)を使用して、追跡を行うとともに移動距離(30分のセッション)を分析することで、ホームケージ環境における自発運動活性を判定する。動物は、試験の1時間前に単回用量の化合物またはビヒクル溶液を受ける。
【0175】
薬物調製および投与:全ての薬物を、85% H2O、14%プロピレングリコール(Sigma Aldrich)および1%ツイーン80(Sigma Aldrich)を含有するビヒクル溶液中に希釈する。作業溶液を20mg/mLの濃度で調製し、各動物の体重に調整してi.p.で投与する。使用される用量は、1mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kgのいずれかである。全ての自発運動活性実験のため、動物に試験の始まる1時間前にビヒクルまたは試験化合物をi.p.で急性的に注射する。
【0176】
運動協調性
ロータロッド試験をマウスロータロッド(Ugo Basile、Comerio、Italy)上で行うことで、15rpmで回転するロッド上に自身を維持するという動物の能力を観察する。試験の前日、マウスを3つのセッションにおいて続けて訓練し、各セッションは180秒続き、間に少なくとも30分の休止がある。翌日、選択がなされ、落下することなくロッド上に自身を180秒間維持するという基準を満たすマウスを、2時間後に開始する試験に含む。雄性C57BL/6マウスを、溶媒(SOL)または化合物の経口適用の20分後、1時間後および3時間後に試験する。ロータロッドから落ちるまでの潜時を実験者によって手動で記録する。化合物の剤形を、超音波処理の助けにより、SOL(85%蒸留水、14%プロピレングリコールおよび1%ツイーン80)中にそれらを希釈/懸濁させることによって調製する。適切な体積の処置物を胃内プローブによって適用する。実験のグラフィック解釈をSigmaプロット12(Systat、USA)において行う。
【0177】
電気生理
手順A:哺乳動物細胞のトランスフェクションおよび電気生理学的記録。哺乳動物発現ベクターにおけるGABA受容体サブタイプのための全長cDNA(寛大にも、Dr.Robert Macdonald、Vanderbilt UniversityおよびDr.David Weiss、University of Texas Health Science Center、San Antonio、TXによって提供された)を、ヒト胎児由来腎臓細胞株HEK-293T(GenHunter、Nashville、TN)にトランスフェクトした(Chestnut et al, 1996, J. Immunol. Methods 193, 17-27)。全てのサブタイプは、ヒトクローンであったα2を除いてラットクローンであった。細胞をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)プラス10%ウシ胎児血清、100IU/mLペニシリン、および100μg/mLストレプトマイシン中で維持した。
【0178】
リン酸カルシウム沈殿を使用して、HEK-293T細胞を一過性にトランスフェクトした。GABA受容体サブタイプcDNAをコード化するプラスミドを、各々2μgの1:1:1比(α:β:γ)で細胞に添加した。31。ポジティブにトランスフェクトされた細胞の同定のため、表面抗体sFvをコード化するcDNAを含有するプラスミドpHook-1(Invitrogen Life Technologies、Grand Island NY)1μgも、細胞にトランスフェクトした。11。3% CO2での4~6時間のインキュベーションに続き、細胞をBBS緩衝液(50mM BES(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]-2-アミノエタンスルホン酸)、280mM NaCl、1.5mM Na2HPO4)中の15%グリセロール溶液で30秒間処置した。pHook発現のための選択手順を18~52時間後に行った。細胞を継代し、pHook抗体に対する抗原でコーティングされた磁気ビーズ3~5μL(およそ6×105個のビーズ)と30~60分間混合した。11。磁気スタンドを使用して、ビーズでコーティングされた細胞を単離した。選択された細胞を、補充されたDMEM中に再懸濁し、ポリL-リジンおよびコラーゲンで処理されたガラスカバースリップ上に平板培養し、翌日に記録のために使用した。
【0179】
細胞を全細胞記録構成において-50mVでパッチクランプした。浴溶液は、pH=7.4および295~305mOsmに調整された容積モル浸透圧濃度で、(mMで)142 NaCl、8.1 KCl、6 MgCl2、1 CaCl2、および10 HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)からなる。記録電極に、pH=7.4および295~305mOsmに調整された容積モル浸透圧濃度で、(mMで)153 KCl、1 MgCl2、5 K-EGTA(エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテルN,N,N’N’-テトラアセテート)、および10 HEPESの溶液を充填する。GABAを、水において新鮮に作製または凍結されたストックからの浴溶液中に希釈する。化合物をDMSO中に溶解させ、0.01%の、細胞に適用された最も高いDMSOレベルで浴溶液中に希釈する。パッチピペットを5~10MΩの抵抗まで2段階プラー(Narishige、日本)上のホウケイ酸ガラス(World Precision Instruments、Sarasota、FL)から引く。GABAまたはGABA+化合物を含有する溶液を、コンピューター駆動のステッパモーター(SF-77B、Harvard Apparatus、Holliston、MA、<50msのオープン先端交換時間)によって制御される3連式(3-barrelled)溶液送達装置を使用して、細胞に5秒間適用する。チャンバーを介する外液の連続的流れがある。電流をAxon 200B(Foster City、CA)パッチクランプ増幅器で記録する。
【0180】
プログラムClampfit(pClamp9 suite、Axon Instruments、Foster City、CA)およびPrism(Graphpad、San Diego、CA)を使用して、全細胞電流を分析する。濃度反応データを4パラメータロジスティック式(電流=[最小電流+(最大電流-最小電流)]/1+(10(logEC50-log[モジュレーター])n)でフィットし、ここで、nはHill数を表す。各細胞についてのGABA単独に対する応答の百分率として表される電流を用いる正規化データに対して、全てのフィットを行う。
【0181】
手順B:GABA受容体サブタイプについての全長cDNAをヒト胎児由来腎臓細胞株HEK-293T中にトランスフェクトする。全てのサブタイプは、ヒトクローンであるα2を除いて、ラットクローンである。細胞を全細胞記録構成において-50mVでパッチクランプする。GABAを浴中に希釈し、化合物をDMSO中に溶解させ、浴溶液中に希釈する。GABAまたはGABA+化合物を含有する溶液を細胞に5秒間適用する。Axon 200Bパッチクランプ増幅器を用いて、電流を記録する。各細胞についてのGABA単独に対する応答の百分率として表されるデータ電流に、データを正規化する。
【0182】
手順BによるGL-III-68の電気生理学的解析:ヒト哺乳動物細胞をヒトα1β2γ3、α2β2γ3、α3β2γ3、α4β2γ3、またはα5β2γ3GABA受容体でトランスフェクトする。細胞を0.03μMから100μMの濃度の範囲にてGL-III-68でインキュベートする。電流を5μMのGABAでの刺激によって誘発し、IonWorks Barracuda(登録商標)試験プラットフォームを使用して記録する。電流を、任意のアロステリックモジュレーターの非存在下で5μMのGABAによって誘発される電流に正規化する。GABA受容体の異なるサブタイプのPAM効果。5μMのGABA単独によって生成される電流(100%に設定)に相対して、電流の%を算出した(図21)。EC50結果は下記に示されている。
【0183】
α1、α2、α3、α4α5、または受容体でトランスフェクトされた哺乳動物細胞におけるα1、α2、α3、α4またはα5でのGL-III-68のEC50
【0184】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図20
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【国際調査報告】