(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】プレキシン-A1の膜貫通ペプチド拮抗剤及びそれらの治療用途
(51)【国際特許分類】
C07K 14/705 20060101AFI20240905BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240905BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240905BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240905BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240905BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240905BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240905BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240905BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240905BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240905BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
A61K38/16
A61K45/00
A61K31/137
A61P25/00
A61P37/06
A61P29/00
A61P13/12
A61P27/02
A61P9/00
A61P35/00
A61P17/06
A61P21/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P15/00
A61P9/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515087
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2022074907
(87)【国際公開番号】W WO2023036842
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509257684
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ストラスブール
(71)【出願人】
【識別番号】500248467
【氏名又は名称】アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サントゥ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル(イーエヌエスエーエールエム)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク バグナール
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ビナム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084NA20
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA021
4C084ZA331
4C084ZA361
4C084ZA451
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB081
4C084ZB111
4C084ZB151
4C084ZB261
4C084ZC541
4C206AA01
4C206FA10
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045CA40
4H045EA20
(57)【要約】
本出願は、ニューロピリン-1/プレキシン-A1のヘテロ二量体化を阻害する、プレキシン-A1の膜貫通ドメインに由来するペプチドに関する。これらのペプチドは、細胞移動及び血管新生に対するSema3Aの阻害効果を中和し、Sema3A及び/又はニューロピリン-1/プレキシン-A1活性に関連する疾患、例えば、脱髄性疾患、及びがんなどの異常な血管新生に関連する疾患の治療に有用であり得る。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドであって、
配列X37-X5-X6-X7-Gの第1のドメインと、
(i)前記第1のドメインのカルボキシ末端で直接結合した式I:-(X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33-X34-X35-X36)-(CterpolyD/E)の第2のドメイン、
(ii)前記第1のドメインのカルボキシ末端で直接結合した式II:-(X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-X22-X23-X24-X25)-(CterGp)の第2のドメイン、又は
(iii)前記第1のドメインのアミノ末端で直接結合した式III:(NterGp)-(X8-X9-X10-X11-X12)-の第2のドメインと、を含み、
式中、
X37が、Gly、L-Ser、又はD-Serであり、
X5、X6、及びX7が、独立して、任意のアミノ酸であり、
X8、X9、X10、X11、及びX12が、独立して、任意のアミノ酸であり、
X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21、X22、X23、X24、及びX25が、独立して、任意のアミノ酸であり、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21、X22、X23、X24、及びX25のうちの2個以下のアミノ酸が、電荷アミノ酸であり、
X26、X27、X28、X29、X30、X31、X32、X33、X34、X35、及びX36が、独立して、任意のアミノ酸であり、X26、X27、X28、X29、X30、X31、X32、X33、X34、X35のうちの2個以下のアミノ酸が、電荷アミノ酸であり、
CterpolyD/Eが、少なくとも2個の負電荷アミノ酸を含む4~10個のアミノ酸の群であり、
NterGpが、少なくとも2個の電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸の群であり、
CterGpが、少なくとも3個の正電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸の群であるか、
又はそのレトロ若しくはレトロインベルソ型、
又はその薬学的に許容される塩であり、
前記ペプチドが、配列TLPAIVGIGGGGGLLLLVIVAVLIAYKRK(配列番号1)を含まないか、又はそれからならない、ペプチド。
【請求項2】
X5、X6、及びX7が、脂肪族非電荷アミノ酸である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
X5、X6、及びX7が、各々独立して、Gly、D若しくはL-Ala、D若しくはL-Val、D若しくはL-Leu、及びD若しくはL-Ileである、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
X5が、D-Leu、L-Leu、D-Ile、又はL-Ileであり、X6が、Gly、D-Val、又はL-Valであり、かつ/又はX7が、Glyである、請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
X5が、L-Leuであり、かつ/又はX6が、L-Valである、請求項4に記載のペプチド。
【請求項6】
X6が、Gly、D-Val、又はL-Valである、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
X37が、Glyである、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
X26が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X27が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X28が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X29が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X30が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X31が、負電荷アミノ酸であり、X32が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X33が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X34が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X35が、負電荷アミノ酸であり、かつ/又はX36が、脂肪族非電荷アミノ酸である、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項9】
X26が、Gly、D-Val、又はL-Valであり、X27が、Gly、D-Val、又はL-Valであり、X28が、D若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X29が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X30が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X31が、D若しくはL-Gluであり、X32が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X33が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X34が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X35が、D若しくはL-Gluであり、かつ/あるいはX36が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileである、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
X26が、L-Valであり、X27が、Glyであり、X28が、L-Leuであり、X29が、L-Leuであり、X30が、L-Leuであり、X31が、L-Gluであり、X32が、L-Valであり、X33が、L-Ileであり、X34が、L-Valであり、X35が、L-Gluであり、かつ/又はX36が、L-Valである、請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33-X34-X35-X36が、VGLLLEVIVEV(配列番号91)、GGELLLVIVE(配列番号92)、VVLLLEVIVEV(配列番号93)、VGLLVEVIVEV(配列番号117)、又はVGLVLEVIVEV(配列番号118)である、請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項12】
CterpolyD/Eが、-X”1-X”2-Z又は-X”3-X”3ビス-X”2-Zの配列を含み、
式中、
X”1が、小さいアミノ酸であり、
X”2が、芳香族アミノ酸であり、
X”3及びX”3ビスが、独立して、長い脂肪族アミノ酸であり、
Zが、2~10個のD/L-Asp及び/又はD/L-Glu残基である、請求項1~11のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項13】
X”1が、D-又はL-Alaである、請求項12に記載のペプチド。
【請求項14】
X”3及びX”3ビスが、独立して、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileである、請求項12又は13に記載のペプチド。
【請求項15】
X”3が、D-又はL-Leuであり、X”3ビスが、D-又はL-Ileである、請求項14に記載のペプチド。
【請求項16】
Zが、3~6個のD/L-Asp及び/又はD/L-Glu残基である、請求項12~15のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項17】
Zが、3~5個のL-Glu残基である、請求項12~16のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項18】
前記ペプチドが、式I又はIIの第2のドメインを含み、かつ前記第1のドメインの前記アミノ末端で結合した1~10個のアミノ酸の第3のドメインを更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項19】
前記第3のドメインが、1~6個のアミノ酸を含む、請求項18に記載のペプチド。
【請求項20】
前記第3のドメインが、式IV:X38-X39-X40-X41-X42-X43の第3のドメインであり、式中、
X38が、D-Thr若しくはL-Thrであるか、又は不在であり、
X39が、D-若しくはL-Leu、D-若しくはL-Ileであるか、又は不在であり、
X40が、Pro、D-若しくはL-Ileであるか、又は不在であり、
X41が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Valであるか、又は不在であり、
X42が、D-若しくはL-Leu、D-若しくはL-Ileであるか、又は不在であり、かつ
X43が、D-若しくはL-Val、D-Thr若しくはL-Thrである、請求項19に記載のペプチド。
【請求項21】
35個以下のアミノ酸を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項22】
30個以下のアミノ酸を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項23】
以下の配列:
AITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号16)、
TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号17)、
GLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号18)、
TLPAIVGIGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号19)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)、
TLPAIVSIGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号21)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEE(配列番号97)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEE(配列番号98)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDDDDD(配列番号99)、
TLPAITGLVGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号100)、
TLPAITGLVGGVGLVLEVIVEVAYEEEEE(配列番号101)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVVYEEEEE(配列番号105)、
dE
dE
dE
dE
dE
dY
dA
dV
dE
dV
dI
dV
dE
dL
dL
dLG
dVGG
dV
dLG
dT
dI
dA
dP
dL
dT(配列番号106)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDD(配列番号107)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDEDED(配列番号108)、
dTLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号111)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIV
dEVAYEEEEE(配列番号112)、又は
TLPAITGLVGGVGLLVEVIVEVAYEEEEE(配列番号113)、のうちの1つを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項24】
以下の配列:
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)、
TLPAITGLVGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号100)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDEDED(配列番号108)、又は
TLPAITGLVGGVGLLVEVIVEVAYEEEEE(配列番号113)、のうちの1つを含む、請求項23に記載のペプチド。
【請求項25】
X8が、脂肪族残基であり、X9が、Pro、又はD-若しくはL-Ileであり、X10が、脂肪族残基であり、X11が、脂肪族残基であり、かつ/あるいはX12が、脂肪族残基である、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項26】
X8が、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X9が、Proであり、X10が、D-若しくはL-Ala、又はD-若しくはL-Valであり、X11が、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、かつ/あるいはX12が、D-若しくはL-Thr、又はD-若しくはL-Valである、請求項25に記載のペプチド。
【請求項27】
X8-X9-X10-X11-X12が、LPAIT(配列番号82)、LPAIV(配列番号83)、IPALV(配列番号84)、LPALV(配列番号85)、LIAIV(配列番号86)、又はLPVIV(配列番号87)である、請求項26に記載のペプチド。
【請求項28】
NterGpが、1個の正電荷アミノ酸及び1個の負電荷アミノ酸を含む、請求項1~7及び25~27のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項29】
NterGpが、式V:X1-X2-X3-X4の4個のアミノ酸の配列を有し、式中、X1が、正電荷残基であり、X3が、負電荷残基であり、X2が、小さいアミノ酸であり、かつX4が、芳香族アミノ酸である、請求項28に記載のペプチド。
【請求項30】
X1が、D-若しくはL-Lysであり、X2が、Glyであり、X3が、D-若しくはL-Aspであり、かつ/又はX4が、D-若しくはL-Trpである、請求項29に記載のペプチド。
【請求項31】
NterGpが、KGDW(配列番号116)である、請求項30に記載のペプチド。
【請求項32】
前記第2のドメインが、前記式IIIの第2のドメインであり、前記ペプチドが、前記第1のドメインの前記カルボキシ末端で結合した1~10個のアミノ酸の第3のドメインを更に含む、請求項1~7及び25~31のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項33】
前記第3のドメインが、式VI:X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33-X34-X35の第3のドメインであり、式中、X26、X27、X28、X29、X30、X31、X32、X33、X34、及びX35が、請求項1及び8~11のいずれか一項に定義される通りである、請求項32に記載のペプチド。
【請求項34】
以下の配列:
KGDWLPAITGLVGGVGLL(配列番号52)、
KGDWLPAIVSIGGGVVLL(配列番号53)、
KGDWIPALVGGGGGGGLL(配列番号54)、
KGDWLPALVSIGGGVGLL(配列番号55)、
KGDWIPALVGLGGGGGLL(配列番号56)、
KGDWLIAIVGIGGG(配列番号57)、
KGDWLPVIVGIGGG(配列番号58)、
KGDWLPAIVGIGGGGGLL(配列番号59)、
KGDWLPAIVGIGGGGGL(配列番号60)、
KGDWLPAIVGIGGGGG(配列番号61)、
KGDWLPAIVGIGGGG(配列番号62)、又は、のうちの1つを含む、請求項1~7及び25~33のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項35】
X13が、脂肪族及び/又は小さい残基であり、X14が、脂肪族及び/又は小さい残基であり、X15が、脂肪族残基又は負電荷残基であり、X16が、脂肪族残基であり、X17が、脂肪族残基であり、X18が、脂肪族残基又は負電荷残基であり、X19が、脂肪族残基であり、X20が、脂肪族残基であり、X21が、脂肪族残基であり、X22が、小さい残基又は負電荷残基であり、X23が、脂肪族残基であり、X24が、脂肪族残基であり、かつ/あるいはX25が、脂肪族残基である、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項36】
X13が、Gly又はD-若しくはL-Valであり、X14が、Gly又はD-若しくはL-Valであり、X15が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuであり、X16が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuであり、X17が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuであり、X18が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuであり、X19が、D-若しくはL-Valであり、X20が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuであり、X21が、D-若しくはL-Valであり、X22が、D-若しくはL-Alaであり、X23が、D-若しくはL-Valであり、X24が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuであり、かつ/あるいはX25が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuである、請求項35に記載のペプチド。
【請求項37】
X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-X22-X23-X24-X25が、GGLLLLVIVAVLI(配列番号88)である、請求項35に記載のペプチド。
【請求項38】
CterGpが、Lys残基及びArg残基の混合物を含む、請求項1~7及び35~37のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項39】
CterGpが、以下の配列:AYKRK(配列番号76)、AYKKR(配列番号77)、AYKRR(配列番号78)、AYRRK(配列番号79)、又はAYRKK(配列番号80)、のうちの1つを含む、請求項38に記載のペプチド。
【請求項40】
請求項1~39のいずれか一項に記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項41】
薬剤として使用するための、請求項1~39のいずれか一項に記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は請求項40に記載の薬学的組成物。
【請求項42】
対象における脱髄性疾患の治療に使用するための、請求項1~39のいずれか一項に記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は請求項40に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
前記脱髄性疾患が、脱髄性自己免疫疾患である、請求項42に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
【請求項44】
前記脱髄性疾患が、多発性硬化症、横断性骨髄炎、視神経脊髄炎(デビック病)、急性出血性白質脳炎、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、シルダーのびまん性脳硬化症、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、カナバン病、クラッベ病、バロ病、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、HIV脳炎、HTLV-I関連性脊髄症(HAM)、ビンスワンガー病(皮質下白質脳症及び皮質下動脈硬化性脳症(SAE))、球様細胞白質萎縮症、異染性白質萎縮症、ペリツェウス・メルツバッハー病、進行性多巣性白質脳症、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、橋中心髄鞘崩壊症、多発性神経根障害、又は抗悪性腫瘍剤、一酸化炭素、ビタミンB12欠乏症、水銀中毒、アルコール若しくは煙草による弱視、低酸素症若しくは照射によって引き起こされる脱髄性疾患である、請求項42又は43に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
【請求項45】
前記多発性神経根障害が、ギラン・バレー症候群(GBS)又は慢性炎症性脱髄性多発性神経根障害である、請求項44に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
【請求項46】
前記脱髄性疾患が、多発性硬化症である、請求項44に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
【請求項47】
異常な血管新生に関連する疾患又は障害の治療で使用するための、請求項1~39のいずれか一項に記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は請求項40に記載の薬学的組成物。
【請求項48】
前記異常な血管新生に関連する疾患又は障害が、がん、血管腫、乾癬、カポジ肉腫、眼新生血管、関節リウマチ、子宮内膜症、又はアテローム性動脈硬化症である、請求項47に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
【請求項49】
前記ペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物が、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項42~48のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
【請求項50】
前記1つ以上の追加の治療剤が、フィンゴリモドを含む、請求項49に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
【請求項51】
対象における脱髄性疾患の治療のための薬剤の製造のための、請求項1~39のいずれか一項に記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は請求項40に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項52】
前記脱髄性疾患が、脱髄性自己免疫疾患である、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
前記脱髄性疾患が、多発性硬化症、横断性骨髄炎、視神経脊髄炎(デビック病)、急性出血性白質脳炎、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、シルダーのびまん性脳硬化症、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、カナバン病、クラッベ病、バロ病、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、HIV脳炎、HTLV-I関連性脊髄症(HAM)、ビンスワンガー病(皮質下白質脳症及び皮質下動脈硬化性脳症(SAE))、球様細胞白質萎縮症、異染性白質萎縮症、ペリツェウス・メルツバッハー病、進行性多巣性白質脳症、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、橋中心髄鞘崩壊症、多発性神経根障害、又は抗悪性腫瘍剤、一酸化炭素、ビタミンB12欠乏症、水銀中毒、アルコール若しくは煙草による弱視、低酸素症若しくは照射によって引き起こされる脱髄性疾患である、請求項51又は52に記載の使用。
【請求項54】
前記多発性神経根障害が、ギラン・バレー症候群(GBS)又は慢性炎症性脱髄性多発性神経根障害である、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
前記脱髄性疾患が、多発性硬化症である、請求項53に記載の使用。
【請求項56】
異常な血管新生に関連する疾患又は障害の治療のための薬剤の製造のための、請求項1~39のいずれか一項に記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は請求項40に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項57】
前記異常な血管新生に関連する疾患又は障害が、がん、血管腫、乾癬、カポジ肉腫、眼新生血管、関節リウマチ、子宮内膜症、又はアテローム性動脈硬化症である、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
前記薬剤が、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項51~57のいずれか一項に記載の使用。
【請求項59】
前記1つ以上の追加の治療剤が、フィンゴリモドを含む、請求項58に記載の使用。
【請求項60】
脱髄性疾患の治療を必要とする対象におけるそれを行うための方法であって、前記対象に、有効量の請求項1~39のいずれか一項に記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は請求項40に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
【請求項61】
前記脱髄性疾患が、脱髄性自己免疫疾患である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記脱髄性疾患が、多発性硬化症、横断性骨髄炎、視神経脊髄炎(デビック病)、急性出血性白質脳炎、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、シルダーのびまん性脳硬化症、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、カナバン病、クラッベ病、バロ病、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、HIV脳炎、HTLV-I関連性脊髄症(HAM)、ビンスワンガー病(皮質下白質脳症及び皮質下動脈硬化性脳症(SAE))、球様細胞白質萎縮症、異染性白質萎縮症、ペリツェウス・メルツバッハー病、進行性多巣性白質脳症、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、橋中心髄鞘崩壊症、多発性神経根障害、又は抗悪性腫瘍剤、一酸化炭素、ビタミンB12欠乏症、水銀中毒、アルコール若しくは煙草による弱視、低酸素症若しくは照射によって引き起こされる脱髄性疾患である、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記多発性神経根障害が、ギラン・バレー症候群(GBS)又は慢性炎症性脱髄性多発性神経根障害である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記脱髄性疾患が、多発性硬化症である、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
異常な血管新生に関連する疾患又は障害の治療を必要とする対象におけるそれを行うための方法であって、前記対象に、有効量の請求項1~39のいずれか一項に記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は請求項40に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
【請求項66】
前記異常な血管新生に関連する疾患又は障害が、がん、血管腫、乾癬、カポジ肉腫、眼新生血管、関節リウマチ、子宮内膜症、又はアテローム性動脈硬化症である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物が、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項60~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記1つ以上の追加の治療剤が、フィンゴリモドを含む、請求項67に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月8日に出願されたEP特許出願第21306229号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、神経変性疾患などのニューロピリン/プレキシン-A1受容体の活性に関する疾患及び状態の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
多発性硬化症(MS)は、若年成人に最も一般的な慢性神経障害であり、米国では約100万人に影響を及ぼす。MSは、患者自身の免疫細胞が、脳内のニューロンを保護するミエリン鞘を攻撃し、破壊する自己免疫疾患である。乏突起膠細胞によるこれらのニューロンの再ミエリン化は、疾患の進行とともに有効でなくなる自発的な現象であり、その後、回復不能な神経損傷及び進行性障害を引き起こす。MSの治療のために現在承認されている化合物は、破壊的な免疫攻撃を制限するように設計されている。
【0004】
多発性硬化症の専門家は、乏突起膠細胞によって生成されるミエリン鞘の再生を刺激する薬物が、更なる損傷を防ぎ、最終的には神経機能を回復させるためにニューロンを保護することによってMS患者に利益をもたらす革新的なアプローチを表すことに同意する。
【0005】
髄鞘形成の初期段階を調節する多くの因子の中で、セマフォリンファミリーのメンバーは、乏突起膠細胞前駆細胞の移動を調節し、それらの成熟を阻害することが示されている。その中で、髄鞘形成の阻害調節因子としてのsema3Aの役割は認識されているが、関与する受容体の重要性はまだ明らかではない。
【0006】
WO2007/000672は、セマフォリン/ニューロピリン複合体の拮抗活性を有する膜貫通ペプチドを記載している。プレキシン-A1は、とりわけ、ペプチドの起源のうちの1つであり、それに関連する特定の治療上の関心はない。
【0007】
Binameら(EMBO Mol Med(2019)11:e10378)は、MS患者において、乏突起膠細胞阻害剤セマフォリン3Aのシグナル伝達受容体であるプレキシン-A1が過剰発現することを示した。著者らは、インビトロで、乏突起膠細胞の移動及び分化に対するSema3A阻害効果を弱めることができる、プレキシン-A1(MTP-PlexA1と呼ばれる)を拮抗するペプチド拮抗剤を記載している。MTP-PlexA1は、プレキシン-A1(TLPAIVGIGGGGGLLLLVIVAVLIAYKRK、配列番号1)の膜貫通ドメインを模倣する合成ペプチドである。ペプチドの投与はまた、保護効果も示し、実験的自己免疫性脳炎(EAE)の文脈において脱髄の重症度の低下をもたらした。
【0008】
しかしながら、新しい拮抗ペプチドの識別の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、阻害シグナル伝達経路Sema3A-ニューロピリン1-プレキシン-A1に関与するプレキシン-A1受容体を遮断する新しいペプチドを提供する。ペプチドは、ニューロピリン-1とプレキシン-A1との間の相互作用と、細胞移動に対するSema3Aの阻害効果と、を阻害する。これらのペプチドは、再ミエリン化の異なる段階を遮断することに関与する経路のうちの1つを阻害することによって再ミエリン化を増加させることが可能であり、多発性硬化症(EAE-PLP及びEAE-MOG)モデルの実験動物モデルに対して保護効果を有し、それによって、多発性硬化症などの脱髄性疾患の治療に対するそれらの治療可能性を示す。更に、本発明者らは、血管新生を阻害し、それによって、腫瘍増殖及び転移、血管腫、乾癬、カポジ肉腫、眼新生血管、関節リウマチ、子宮内膜症、又はアテローム性動脈硬化症などの異常な血管形成を伴う他の疾患におけるブロックペプチドの潜在的な使用を拡大する、ペプチドの能力の証拠を提供する。
【0010】
本発明者らは、拮抗ペプチドを設計するための規則を特定した。ペプチドにおいて、モチーフGxxxGは、活性に関与する。最初のグリシンは、セリンに置き換えられ得ることが分かった。更に、ペプチドの設計のための別の重要な態様は、膜におけるモチーフG/SxxxGの固定、及び膜表面とモチーフG/SxxxGとの間の距離である。実際には、モチーフG/SxxxGの位置が、鍵である。より具体的には、ペプチドがN末端膜アンカーを有する場合、N末端膜アンカーモチーフとモチーフG/SxxxGとの間に5個のアミノ酸を挿入するべきである。ペプチドがC末端膜アンカーを有する場合、モチーフG/SxxxGと正電荷アミノ酸を有するC末端膜アンカーモチーフとの間に13個のアミノ酸を挿入するべきであり、好ましくは、モチーフG/SxxxGと負電荷アミノ酸を有するC末端膜アンカーモチーフとの間に11個のアミノ酸を挿入するべきである。これらの規則が決定されると、本発明者らは、ペプチドが膜アンカーモチーフの反対側のモチーフG/SxxxGまで短縮され得ることを驚くべきことに観察した。この態様は、より短いペプチドの設計を可能にする。
【0011】
本開示は、ペプチド、好ましくは、50、45、又は40アミノ酸以下のペプチドであって、
-配列G/S-X-X-X-Gの第1のドメイン、
-モチーフのC末端で直接結合した配列:-(X)11-(CterpolyD/E)(すなわち、G/S-X-X-X-G-(X)11-(CterpolyD/E)、モチーフのN末端で直接結合した(NterGp)-(X)5-(すなわち、(NterGp)-(X)5-G/S-X-X-X-G)、又はモチーフのC末端で直接結合した-(X)13-(CterGp)(すなわち、G/S-X-X-X-G-(X)13-(CterGp)、の第2のドメイン、及び
-Xが任意のアミノ酸(D-又はL-)であるが、Xの中の2つ以下が電荷アミノ酸であり、
CterpolyD/Eが、少なくとも2個の負電荷アミノ酸を含む4~10個のアミノ酸(D-又はL-)の群であり、NterGpが、少なくとも2個の電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸(D-又はL-)の群であり、CterGpが、少なくとも3個の正電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸(D-又はL-)の群である、を含む、それから本質的になる、又はそれからなる、ペプチド、
又はそのレトロ若しくはレトロインベルソ型配列、
又はその薬学的に許容される塩に関し、
ペプチドが、配列TLPAIVGIGGGGGLLLLVIVAVLIAYKRK(配列番号1)を含まないか、又はそれからならない。
【0012】
一実施形態では、ペプチドは、30個以下のアミノ酸の長さを有する。一実施形態では、ペプチドは、28個以下のアミノ酸の長さを有する。一実施形態では、ペプチドは、26個以下のアミノ酸の長さを有する。一実施形態では、ペプチドは、25個以下のアミノ酸の長さを有する。一実施形態では、ペプチドは、20個以下のアミノ酸の長さを有する。
【0013】
本開示は、
-モチーフG/S-X-X-X-G、
-モチーフのC末端で直接結合した-(X)11-(CterpolyD/E)(すなわち、G/S-X-X-X-G-(X)11-(CterpolyD/E)、モチーフのN末端で直接結合した(NterGp)-(X)5-(すなわち、(NterGp)-(X)5-G/S-X-X-X-G)、又はモチーフのC末端で直接結合した-(X)13-(CterGp)(すなわち、G/S-X-X-X-G-(X)13-(CterGp)、及び
-Xが任意のアミノ酸(D-又はL-)であるが、Xの中の2つ以下が電荷アミノ酸であり、
NterGpが、少なくとも2個の電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸(D-又はL-)の群であり、CterGpが、少なくとも3個の正電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸(D-又はL-)の群であり、CterpolyD/Eが、少なくとも2個の負電荷アミノ酸を含む4~10個のアミノ酸(D-又はL-)の群である、を含む、それから本質的になる、又はそれからなる、ペプチド、
又はそのレトロ若しくはレトロインベルソ型類似体、
又はその薬学的に許容される塩に関し、
ペプチドが、移動に対するSema3Aの阻害効果を阻害し、かつ/又は本明細書に詳述される方法によって測定される、ニューロピリン-1とプレキシンA1との間の相互作用を阻害し、
ペプチドが、MTP-PlexA1(TLPAIVGIGGGGGLLLLVIVAVLIAYKRK、配列番号1)の配列を有しない。
【0014】
より具体的には、本発明者らは、膜貫通ペプチドの文脈において有利な特性を有する新しいクラスの拮抗ペプチドを識別した。これらのペプチドは、MTP-PlexA1に比べて改善された溶解性及び安定性を示す。それらは、24時間よりも長い血漿半減期、並びに脳及び脊髄などの標的器官に到達するのに好適である生体内分布を示す。
【0015】
この有利な態様では、ペプチドは、
G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号2)、
V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号3)、
I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号4)、
A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号5)、
P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号6)、
I/L-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号7)、及び
T-I/L-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号8)、から選択される配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
式中、CterpolyD/Eは、少なくとも2個の負電荷アミノ酸を含む4~10個のアミノ酸の群であり、
この配列は、太字の残基及びN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換を含み得る。
【0016】
任意選択的に、CterpolyD/Eは、-X”1-X”2-(Z)nの配列を有し、X”1が小さいアミノ酸(例えば、G又はA)であり、X”2が芳香族アミノ酸(例えば、Y又はW)であり、Zが負電荷残基(例えば、D又はE)であり、nが2~10、好ましくは4~6の間の整数であるか、又は-X”1-X”1ビス-X”2-(E)nの配列を有し、X”1及びX”1ビスがI又はLなどの長い脂肪族アミノ酸であり、X”2が芳香族アミノ酸(例えば、Y又はW)であり、nが2~10、好ましくは4~6の整数である。
【0017】
任意選択的に、ペプチドは、アミノ酸配列:
G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-E-V-A/LI-Y-(D/E)n(配列番号9)、を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
この配列は、太字の残基並びにN末端及び/又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換を更に含み得、nは、2~10、好ましくは4~6の整数である。
【0018】
任意選択的に、ペプチドは、
AIT-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号10)、
T-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号11)、
G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号12)、
TLPAIV-G/S-IGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号13)、
TLPAIT-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号14)、及び
TLPAIV-G/S-IGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号15)、から選択される配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
この配列は、太字の残基並びにN末端及び/又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換を更に含み得る。
【0019】
より具体的には、ペプチドは、
AITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号16)、
TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号17)、
GLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号18)、
TLPAIVGIGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号19)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)、
TLPAIVSIGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号21)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEE(配列番号97)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEE(配列番号98)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDDDDD(配列番号99)、
TLPAITGLVGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号100)、
TLPAITGLVGGVGLVLEVIVEVAYEEEEE(配列番号101)、
dEdEdEdEdEdYdAdVdEdVdIdVdEdLdLdLGdVGGdVdLGdTdIdAdPdLdT(配列番号106)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDD(配列番号107)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDEDED(配列番号108)、
dTLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号111)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVdEVAYEEEEE(配列番号112)、又は
TLPAITGLVGGVGLLVEVIVEVAYEEEEE(配列番号113)、から選択される配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
この配列は、太字の残基及びN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換を更に含み得る。
【0020】
一実施形態では、ペプチドは、
AITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号16)、
TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号17)、
GLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号18)、
TLPAIVGIGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号19)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)、
TLPAIVSIGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号21)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEE(配列番号98)、
TLPAITGLVGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号100)、
TLPAITGLVGGVGLVLEVIVEVAYEEEEE(配列番号101)、
dEdEdEdEdEdYdAdVdEdVdIdVdEdLdLdLGdVGGdVdLGdTdIdAdPdLdT(配列番号106)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDD(配列番号107)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDEDED(配列番号108)、
dTLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号111)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVdEVAYEEEEE(配列番号112)、又は
TLPAITGLVGGVGLLVEVIVEVAYEEEEE(配列番号113)、から選択される配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
この配列は、太字の残基及びN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換を更に含み得る。
【0021】
一実施形態では、ペプチドは、
AITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号16)、
TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号17)、
GLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号18)、
TLPAIVGIGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号19)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)、
TLPAIVSIGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号21)、
TLPAITGLVGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号100)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDEDED(配列番号108)、又は
TLPAITGLVGGVGLLVEVIVEVAYEEEEE(配列番号113)、から選択される配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
この配列は、太字の残基及びN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換を更に含み得る。
【0022】
ペプチドがN末端膜アンカーモチーフ(すなわち、NterGp)を示す別の態様では、ペプチドは、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G(配列番号22)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V(配列番号23)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V(配列番号24)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E(配列番号25)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L(配列番号26)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L(配列番号27)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E(配列番号28)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V(配列番号29)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I(配列番号30)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V(配列番号31)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E(配列番号32)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V(配列番号33)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-L(配列番号34)、及び
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-L-I(配列番号35)、から選択される配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
式中、NterGpが、少なくとも2個の電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸の群であり、
この配列は、太字の残基及びN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換を含み得る。
【0023】
任意選択的に、NterGpは、4個のアミノ酸X1-X2-X3-X4の配列を有し、X1及びX3は、2個の電荷アミノ酸であり、任意選択的に、一方は、正電荷であり、他方は、負電荷であり、X2は、小さいアミノ酸(例えば、G又はA)であり、X4は、芳香族アミノ酸(例えば、Y又はW)であり、より好ましくは、NterGpは、KGDW(配列番号116)である。
【0024】
ペプチドが、正電荷アミノ酸(すなわち、CterGp)を有するC末端膜アンカーモチーフを含む別の態様では、ペプチドは、
A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-L-I-(CterGp)(配列番号36)、
I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-L-I-(CterGp)(配列番号37)、
V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-L-I-(CterGp)(配列番号38)、及び
G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-L-I-(CterGp)(配列番号39)、から選択される配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
式中、CterGpは、少なくとも3個の正電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸の群であり、
この配列は、太字の残基を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換を含み得る。
【0025】
任意選択的に、CterGpは、5個のアミノ酸X’1-X’2-X’3-X’4-X’5の配列を有し、X’1は、小さいアミノ酸(例えば、G又はA)であり、X’2は、芳香族アミノ酸(例えば、Y又はW)であり、X’3、X’4、及びX’5は、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、CterGpは、AYKRK(配列番号76)、AYKKR(配列番号77)、AYKRR(配列番号78)、AYRRK(配列番号79)、及びAYRKK(配列番号80)から選択される配列である。
【0026】
任意選択的に、ペプチドは、
KGDWLPAIT-G/S-LVGGVGLL(配列番号40)
KGDWLPAIV-G/S-IGGGVVLL(配列番号41)
KGDWIPALV-G/S-GGGGGGLL(配列番号42)
KGDWLPALV-G/S-IGGGVGLL(配列番号43)
KGDWIPALV-G/S-LGGGGGLL(配列番号44)
KGDWLIAIV-G/S-IGGG(配列番号45)
KGDWLPVIV-G/S-IGGG(配列番号46)
KGDWLPAIV-G/S-IGGGGGLL(配列番号47)
KGDWLPAIV-G/S-IGGGGGL(配列番号48)
KGDWLPAIV-G/S-IGGGGG(配列番号49)
KGDWLPAIV-G/S-IGGGG(配列番号50)
KGDWLPAIV-G/S-IGGG(配列番号51)
AIT-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号10)
T-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号11)
G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号12)
TLPAIV-G/S-IGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号13)
TLPAIT-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号14)
TLPAIV-G/S-IGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号15)、から選択されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
この配列は、太字の残基及びN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換を含み得る。
【0027】
非常に特定の態様では、ペプチドは、
KGDWLPAITGLVGGVGLL(配列番号52)
KGDWLPAIVSIGGGVVLL(配列番号53)
KGDWIPALVGGGGGGGLL(配列番号54)
KGDWLPALVSIGGGVGLL(配列番号55)
KGDWIPALVGLGGGGGLL(配列番号56)
KGDWLIAIVGIGGG(配列番号57)
KGDWLPVIVGIGGG(配列番号58)
KGDWLPAIVGIGGGGGLL(配列番号59)
KGDWLPAIVGIGGGGGL(配列番号60)
KGDWLPAIVGIGGGGG(配列番号61)
KGDWLPAIVGIGGGG(配列番号62)
KGDWLPAIVGIGGG(配列番号63)
AITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号16)
TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号17)
GLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号18)
TLPAIVGIGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号19)
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)
TLPAIVSIGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号21)
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEE(配列番号97)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEE(配列番号98)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDDDDD(配列番号99)、
TLPAITGLVGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号100)、
TLPAITGLVGGVGLVLEVIVEVAYEEEEE(配列番号101)、
dEdEdEdEdEdYdAdVdEdVdIdVdEdLdLdLGdVGGdVdLGdTdIdAdPdLdT(配列番号106)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDD(配列番号107)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDEDED(配列番号108)、
dTLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号111)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVdEVAYEEEEE(配列番号112)、又は
TLPAITGLVGGVGLLVEVIVEVAYEEEEE(配列番号113)、から選択されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
この配列は、太字の残基及びN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換を含み得る。
【0028】
一実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)、TLPAITGLVGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号100)、TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDEDED(配列番号108)、又はTLPAITGLVGGVGLLVEVIVEVAYEEEEE(配列番号113)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0029】
本開示はまた、細胞上のニューロピリン-1とプレキシン-A1との相互作用を阻害するための方法であって、細胞を有効量の本明細書に定義される任意のペプチドと接触させることを含む、方法に関する。
【0030】
本開示はまた、細胞上のニューロピリン-1とプレキシン-A1との間の相互作用を阻害するための、本明細書に定義される任意のペプチドの使用に関する。
【0031】
本開示はまた、細胞上のニューロピリン-1とプレキシン-A1との間の相互作用を阻害するための薬剤の製造のための、本明細書に定義される任意のペプチドの使用に関する。
【0032】
本開示はまた、細胞上のニューロピリン-1とプレキシン-A1との間の相互作用を阻害するために使用するための、本明細書に定義されるペプチドに関する。
【0033】
本開示はまた、神経膠細胞(例えば、乏突起膠細胞)におけるSema3Aの抗移動及び抗分化効果を阻害するための方法であって、神経膠細胞を、有効量の本明細書に定義される任意のペプチドと接触させることを含む、方法に関する。
【0034】
本開示はまた、神経膠細胞(例えば、乏突起膠細胞)におけるSema3Aの抗移動及び抗分化効果を阻害するための、本明細書に定義される任意のペプチドの使用に関する。
【0035】
本開示はまた、神経膠細胞(例えば、乏突起膠細胞)におけるSema3Aの抗移動及び抗分化効果を阻害するための薬剤の製造のための、本明細書に定義される任意のペプチドの使用に関する。
【0036】
本開示はまた、神経膠細胞(例えば、乏突起膠細胞)におけるSema3Aの抗移動及び抗分化効果を阻害するために使用するための、本明細書に定義されるペプチドに関する。
【0037】
本開示はまた、脱髄性疾患に罹患している対象などの対象における再ミエリン化を刺激するために使用するための、本明細書に定義されるペプチドに関する。
【0038】
本開示はまた、薬物として使用するための本明細書に定義される任意のペプチドを含む薬学的組成物に関する。
【0039】
本開示は更に、多発性硬化症、横断性骨髄炎、視神経脊髄炎(デビック病)、急性出血性白質脳炎、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、シルダーのびまん性脳硬化症、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、カナバン病、クラッベ病、バロ病、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、HIV脳炎、HTLV-I関連性脊髄症(HAM)、ビンスワンガー病(皮質下白質脳症及び皮質下動脈硬化性脳症(SAE))、球様細胞白質萎縮症、異染性白質萎縮症、ペリツェウス・メルツバッハー病、進行性多巣性白質脳症、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、橋中心髄鞘崩壊症、多発性神経根障害(ギラン・バレー症候群(GBS)及び慢性炎症性脱髄性多発性神経根障害を含む)、抗悪性腫瘍剤、一酸化炭素、ビタミンB12欠乏症、水銀中毒、アルコール若しくは煙草による弱視、低酸素症若しくは照射によって引き起こされる脱髄性疾患を含む脱髄性疾患、特に脱髄性自己免疫若しくは炎性疾患の治療のための、又は血管新生を低減する治療を必要とし得る異常な血管新生に関連する疾患若しくは障害(例えば、血管腫、乾癬、カポジ肉腫、眼新生血管、関節リウマチ、子宮内膜症、若しくはアテローム性動脈硬化症)の治療のための、並びに/又はがんの治療のための、本明細書に定義される任意のペプチドを含む薬学的組成物に関する。それは、本明細書に定義される疾患を含む脱髄性疾患、特に脱髄性自己免疫疾患の治療のための、又は異常な血管新生に関連する疾患若しくは障害の治療のための、及び/又はがんの治療のための薬剤の製造のための、本明細書に定義される任意のペプチドを含む薬学的組成物の使用に関する。最終的に、それは、本明細書に定義される疾患を含む脱髄性疾患、特に脱髄性自己免疫疾患、異常な血管新生に関連する疾患若しくは障害、又はがんの治療を必要とする対象におけるそれを行うための方法であって、治療上有効な量の本明細書に定義される任意のペプチドを含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。
【0040】
様々な態様及び実施形態では、本開示は、以下の項目1~68を提供する:
1.ペプチドであって、
配列X37-X5-X6-X7-Gの第1のドメインと、
(i)第1のドメインのカルボキシ末端で直接結合した式I:-(X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33-X34-X35-X36)-(CterpolyD/E)の第2のドメイン、
(ii)第1のドメインのカルボキシ末端で直接結合した式II:-(X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-X22-X23-X24-X25)-(CterGp)の第2のドメイン、又は
(iii)第1のドメインのアミノ末端で直接結合した式III:(NterGp)-(X8-X9-X10-X11-X12)-の第2のドメインと、を含み、
式中、
X37が、Gly、L-Ser、又はD-Serであり、
X5、X6、及びX7が、独立して、任意のアミノ酸であり、
X8、X9、X10、X11、及びX12が、独立して、任意のアミノ酸であり、
X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21、X22、X23、X24、及びX25が、独立して、任意のアミノ酸であり、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21、X22、X23、X24、及びX25のうちの2個以下のアミノ酸が、電荷アミノ酸であり、
X26、X27、X28、X29、X30、X31、X32、X33、X34、X35、及びX36が、独立して、任意のアミノ酸であり、X26、X27、X28、X29、X30、X31、X32、X33、X34、X35のうちの2個以下のアミノ酸が、電荷アミノ酸であり、
CterpolyD/Eが、少なくとも2個の負電荷アミノ酸を含む4~10個のアミノ酸の群であり、
NterGpが、少なくとも2個の電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸の群であり、
CterGpが、少なくとも3個の正電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸の群であるか、
又はそのレトロ若しくはレトロインベルソ型、
又はその薬学的に許容される塩であり、
ペプチドが、配列TLPAIVGIGGGGGLLLLVIVAVLIAYKRK(配列番号1)を含まないか、又はそれからならない、ペプチド。
2.X5、X6、及びX7が、脂肪族非電荷アミノ酸である、項目1に記載のペプチド。
3.X5、X6、及びX7が、各々独立して、Gly、D若しくはL-Ala、D若しくはL-Val、D若しくはL-Leu、及びD若しくはL-Ileである、項目2に記載のペプチド。
4.X5が、D-Leu、L-Leu、D-Ile、又はL-Ileであり、X6が、Gly、D-Val、又はL-Valであり、かつ/又はX7が、Glyである、項目3に記載のペプチド。
5.X5が、L-Leuであり、かつ/又はX6が、L-Valである、項目4に記載のペプチド。
6.X6が、Gly、D-Val、又はL-Valである、項目1~5のうちのいずれか1つに記載のペプチド。
7.X37が、Glyである、項目1~6のうちのいずれか1つに記載のペプチド。
8.X26が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X27が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X28が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X29が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X30が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X31が、負電荷アミノ酸であり、X32が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X33が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X34が、脂肪族非電荷アミノ酸であり、X35が、負電荷アミノ酸であり、かつ/又はX36が、脂肪族非電荷アミノ酸である、項目1~7のいずれか1つに記載のペプチド。
9.X26が、Gly、D-Val、又はL-Valであり、X27が、Gly、D-Val、又はL-Valであり、X28が、D若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X29が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X30が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X31が、D若しくはL-Gluであり、X32が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X33が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X34が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X35が、D若しくはL-Gluであり、かつ/あるいはX36が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Val、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileである、項目8に記載のペプチド。
10.X26が、L-Valであり、X27が、Glyであり、X28が、L-Leuであり、X29が、L-Leuであり、X30が、L-Leuであり、X31が、L-Gluであり、X32が、L-Valであり、X33が、L-Ileであり、X34が、L-Valであり、X35が、L-Gluであり、かつ/又はX36が、L-Valである、項目9に記載のペプチド。
11.X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33-X34-X35-X36が、VGLLLEVIVEV(配列番号91)、GGELLLVIVE(配列番号92)、VVLLLEVIVEV(配列番号93)、VGLLVEVIVEV(配列番号117)、又はVGLVLEVIVEV(配列番号118)である、項目1~10のいずれか1つに記載のペプチド。
12.CterpolyD/Eが、-X”1-X”2-Z又は-X”3-X”3ビス-X”2-Zの配列を含み、
式中、
X”1が、小さいアミノ酸であり、
X”2が、芳香族アミノ酸であり、
X”3及びX”3ビスが、独立して、長い脂肪族アミノ酸であり、
Zが、2~10個のD/L-Asp及び/又はD/L-Glu残基である、項目1~11のいずれか1つに記載のペプチド。
13.X”1が、D-又はL-Alaである、項目12に記載のペプチド。
14.X”3及びX”3ビスが、独立して、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileである、項目12又は13に記載のペプチド。
15.X”3が、D-又はL-Leuであり、X”3ビスが、D-又はL-Ileである、項目14に記載のペプチド。
16.Zが、3~6個のD/L-Asp及び/又はD/L-Glu残基である、項目12~15のいずれか1つに記載のペプチド。
17.Zが、3~5個のL-Glu残基である、項目12~16のいずれか1つに記載のペプチド。
18.ペプチドが、式I又はIIの第2のドメインを含み、かつ第1のドメインのアミノ末端で結合した1~10個のアミノ酸の第3のドメインを更に含む、項目1~17のいずれか1つに記載のペプチド。
19.第3のドメインが、1~6個のアミノ酸を含む、項目18に記載のペプチド。
20.第3のドメインが、式IV:X38-X39-X40-X41-X42-X43の第3のドメインであり、
X38が、D-Thr若しくはL-Thrであるか、又は不在であり、
X39が、D-若しくはL-Leu、D-若しくはL-Ileであるか、又は不在であり、
X40が、Pro、D-若しくはL-Ileであるか、又は不在であり、
X41が、D-若しくはL-Ala、D-若しくはL-Valであるか、又は不在であり、
X42が、D-若しくはL-Leu、D-若しくはL-Ileであるか、又は不在であり、かつ
X43が、D-若しくはL-Val、D-Thr若しくはL-Thrである、項目19に記載のペプチド。
21.35個以下のアミノ酸を含む、項目1~20のいずれか1つに記載のペプチド。
22.30個以下のアミノ酸を含む、項目1~21のいずれか1つに記載のペプチド。
23.以下の配列:
AITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号16)、
TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号17)、
GLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号18)、
TLPAIVGIGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号19)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)、
TLPAIVSIGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号21)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEE(配列番号97)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEE(配列番号98)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDDDDD(配列番号99)、
TLPAITGLVGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号100)、
TLPAITGLVGGVGLVLEVIVEVAYEEEEE(配列番号101)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVVYEEEEE(配列番号105)、
dEdEdEdEdEdYdAdVdEdVdIdVdEdLdLdLGdVGGdVdLGdTdIdAdPdLdT(配列番号106)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDD(配列番号107)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDEDED(配列番号108)、
dTLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号111)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVdEVAYEEEEE(配列番号112)、又は
TLPAITGLVGGVGLLVEVIVEVAYEEEEE(配列番号113)、のうちの1つを含む、項目1~22のいずれか1つに記載のペプチド。
24.以下の配列:
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)、
TLPAITGLVGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号100)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDEDED(配列番号108)、又は
TLPAITGLVGGVGLLVEVIVEVAYEEEEE(配列番号113)、のうちの1つを含む、項目23に記載のペプチド。
25.X8が、脂肪族残基であり、X9が、Pro、又はD-若しくはL-Ileであり、X10が、脂肪族残基であり、X11が、脂肪族残基であり、かつ/あるいはX12が、脂肪族残基である、項目1~7のいずれか1つに記載のペプチド。
26.X8が、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、X9が、Proであり、X10が、D-若しくはL-Ala、又はD-若しくはL-Valであり、X11が、D-若しくはL-Leu、又はD-若しくはL-Ileであり、かつ/あるいはX12が、D-若しくはL-Thr、又はD-若しくはL-Valである、項目25に記載のペプチド。
27.X8-X9-X10-X11-X12が、LPAIT(配列番号82)、LPAIV(配列番号83)、IPALV(配列番号84)、LPALV(配列番号85)、LIAIV(配列番号86)、又はLPVIV(配列番号87)である、項目26に記載のペプチド。
28.NterGpが、1個の正電荷アミノ酸及び1個の負電荷アミノ酸を含む、項目1~7及び25~27のいずれか1つに記載のペプチド。
29.NterGpが、式V:X1-X2-X3-X4の4個のアミノ酸の配列を有し、式中、X1が、正電荷残基であり、X3が、負電荷残基であり、X2が、小さいアミノ酸であり、かつX4が、芳香族アミノ酸である、項目28に記載のペプチド。
30.X1が、D-若しくはL-Lysであり、X2が、Glyであり、X3が、D-若しくはL-Aspであり、かつ/又はX4が、D-若しくはL-Trpである、項目29に記載のペプチド。
31.NterGpが、KGDW(配列番号116)である、項目30に記載のペプチド。
32.第2のドメインが式IIIの第2のドメインであり、ペプチドが、第1のドメインのカルボキシ末端で結合した1~10個のアミノ酸の第3のドメインを更に含む、項目1~7及び25~31のいずれか1つに記載のペプチド。
33.第3のドメインが、式VI:X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33-X34-X35の第3のドメインであり、式中、X26、X27、X28、X29、X30、X31、X32、X33、X34、及びX35が、項目1及び8~11のいずれか1つに定義される通りである、項目32に記載のペプチド。
34.以下の配列:
KGDWLPAITGLVGGVGLL(配列番号52)、
KGDWLPAIVSIGGGVVLL(配列番号53)、
KGDWIPALVGGGGGGGLL(配列番号54)、
KGDWLPALVSIGGGVGLL(配列番号55)、
KGDWIPALVGLGGGGGLL(配列番号56)、
KGDWLIAIVGIGGG(配列番号57)、
KGDWLPVIVGIGGG(配列番号58)、
KGDWLPAIVGIGGGGGLL(配列番号59)、
KGDWLPAIVGIGGGGGL(配列番号60)、
KGDWLPAIVGIGGGGG(配列番号61)、
KGDWLPAIVGIGGGG(配列番号62)、又は、のうちの1つを含む、項目1~7及び25~33のいずれか1つに記載のペプチド。
35.X13が、脂肪族及び/又は小さい残基であり、X14が、脂肪族及び/又は小さい残基であり、X15が、脂肪族残基又は負電荷残基であり、X16が、脂肪族残基であり、X17が、脂肪族残基であり、X18が、脂肪族残基又は負電荷残基であり、X19が、脂肪族残基であり、X20が、脂肪族残基であり、X21が、脂肪族残基であり、X22が、小さい残基又は負電荷残基であり、X23が、脂肪族残基であり、X24が、脂肪族残基であり、かつ/あるいはX25が、脂肪族残基である、項目1~7のいずれか1つに記載のペプチド。
36.X13が、Gly又はD-若しくはL-Valであり、X14が、Gly又はD-若しくはL-Valであり、X15が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuであり、X16が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuであり、X17が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuであり、X18が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuであり、X19が、D-若しくはL-Valであり、X20が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuであり、X21が、D-若しくはL-Valであり、X22が、D-若しくはL-Alaであり、X23が、D-若しくはL-Valであり、X24が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuであり、かつ/あるいはX25が、D-若しくはL-Ile、又はD-若しくはL-Leuである、項目35に記載のペプチド。
37.X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-X22-X23-X24-X25が、GGLLLLVIVAVLI(配列番号88)である、項目35に記載のペプチド。
38.CterGpが、Lys残基及びArg残基の混合物を含む、項目1~7及び35~37のいずれか1つに記載のペプチド。
39.CterGpが、以下の配列:AYKRK(配列番号76)、AYKKR(配列番号77)、AYKRR(配列番号78)、AYRRK(配列番号79)、又はAYRKK(配列番号80)、のうちの1つを含む、項目38に記載のペプチド。
40.項目1~39のいずれか1つに記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
41.薬剤として使用するための、項目1~39のいずれか1つに記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は項目40に記載の薬学的組成物。
42.対象における脱髄性疾患の治療に使用するための、項目1~39のいずれか1つに記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は項目40に記載の薬学的組成物。
43.脱髄性疾患が、脱髄性自己免疫疾患である、項目42に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
44.脱髄性疾患が、多発性硬化症、横断性骨髄炎、視神経脊髄炎(デビック病)、急性出血性白質脳炎、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、シルダーのびまん性脳硬化症、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、カナバン病、クラッベ病、バロ病、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、HIV脳炎、HTLV-I関連性脊髄症(HAM)、ビンスワンガー病(皮質下白質脳症及び皮質下動脈硬化性脳症(SAE))、球様細胞白質萎縮症、異染性白質萎縮症、ペリツェウス・メルツバッハー病、進行性多巣性白質脳症、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、橋中心髄鞘崩壊症、多発性神経根障害、又は抗悪性腫瘍剤、一酸化炭素、ビタミンB12欠乏症、水銀中毒、アルコール若しくは煙草による弱視、低酸素症若しくは照射によって引き起こされる脱髄性疾患である、項目42又は43に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
45.多発性神経根障害が、ギラン・バレー症候群(GBS)又は慢性炎症性脱髄性多発性神経根障害である、項目44に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
46.脱髄性疾患が、多発性硬化症である、項目44に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
47.異常な血管新生に関連する疾患又は障害の治療で使用するための、項目1~39のいずれか1つに記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は項目40に記載の薬学的組成物。
48.異常な血管新生に関連する疾患又は障害が、がん、血管腫、乾癬、カポジ肉腫、眼新生血管、関節リウマチ、子宮内膜症、又はアテローム性動脈硬化症である、項目47に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
49.ペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物が、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて使用するためのものである、項目42~48のいずれか1つに記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
50.1つ以上の追加の治療剤が、フィンゴリモドを含む、項目49に記載の使用のためのペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物。
51.対象における脱髄性疾患の治療のための薬剤の製造のための、項目1~39のいずれか1つに記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は項目40に記載の薬学的組成物の使用。
52.脱髄性疾患が、脱髄性自己免疫疾患である、項目51に記載の使用。
53.脱髄性疾患が、多発性硬化症、横断性骨髄炎、視神経脊髄炎(デビック病)、急性出血性白質脳炎、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、シルダーのびまん性脳硬化症、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、カナバン病、クラッベ病、バロ病、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、HIV脳炎、HTLV-I関連性脊髄症(HAM)、ビンスワンガー病(皮質下白質脳症及び皮質下動脈硬化性脳症(SAE))、球様細胞白質萎縮症、異染性白質萎縮症、ペリツェウス・メルツバッハー病、進行性多巣性白質脳症、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、橋中心髄鞘崩壊症、多発性神経根障害、又は抗悪性腫瘍剤、一酸化炭素、ビタミンB12欠乏症、水銀中毒、アルコール若しくは煙草による弱視、低酸素症若しくは照射によって引き起こされる脱髄性疾患である、項目51又は52に記載の使用。
54.多発性神経根障害が、ギラン・バレー症候群(GBS)又は慢性炎症性脱髄性多発性神経根障害である、項目53に記載の使用。
55.脱髄性疾患が、多発性硬化症である、項目53に記載の使用。
56.異常な血管新生に関連する疾患又は障害の治療のための薬剤の製造のための、項目1~39のいずれか1つに記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は項目40に記載の薬学的組成物の使用。
57.異常な血管新生に関連する疾患又は障害が、がん、血管腫、乾癬、カポジ肉腫、眼新生血管、関節リウマチ、子宮内膜症、又はアテローム性動脈硬化症である、項目56に記載の使用。
58.薬剤が、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて使用するためのものである、項目51~57のいずれか1つに記載の使用。
59.1つ以上の追加の治療剤が、フィンゴリモドを含む、項目58に記載の使用。
60.脱髄性疾患の治療を必要とする対象におけるそれを行うための方法であって、対象に、有効量の項目1~39のいずれか1つに記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は項目40に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
61.脱髄性疾患が、脱髄性自己免疫疾患である、項目60に記載の方法。
62.脱髄性疾患が、多発性硬化症、横断性骨髄炎、視神経脊髄炎(デビック病)、急性出血性白質脳炎、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、シルダーのびまん性脳硬化症、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、カナバン病、クラッベ病、バロ病、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、HIV脳炎、HTLV-I関連性脊髄症(HAM)、ビンスワンガー病(皮質下白質脳症及び皮質下動脈硬化性脳症(SAE))、球様細胞白質萎縮症、異染性白質萎縮症、ペリツェウス・メルツバッハー病、進行性多巣性白質脳症、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、橋中心髄鞘崩壊症、多発性神経根障害、又は抗悪性腫瘍剤、一酸化炭素、ビタミンB12欠乏症、水銀中毒、アルコール若しくは煙草による弱視、低酸素症若しくは照射によって引き起こされる脱髄性疾患である、項目60又は61に記載の方法。
63.多発性神経根障害が、ギラン・バレー症候群(GBS)又は慢性炎症性脱髄性多発性神経根障害である、項目62に記載の方法。
64.脱髄性疾患が、多発性硬化症である、項目62に記載の方法。
65.異常な血管新生に関連する疾患又は障害の治療を必要とする対象におけるそれを行うための方法であって、対象に、有効量の項目1~39のいずれか1つに記載のペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、又はその薬学的に許容される塩、又は項目40に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
66.異常な血管新生に関連する疾患又は障害が、がん、血管腫、乾癬、カポジ肉腫、眼新生血管、関節リウマチ、子宮内膜症、又はアテローム性動脈硬化症である、項目65に記載の方法。
67.ペプチド、そのレトロ若しくはレトロインベルソ型、その薬学的に許容される塩、又は組成物が、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて使用するためのものである、項目60~66のいずれか1つに記載の方法。
68.1つ以上の追加の治療剤が、フィンゴリモドを含む、項目67に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】膜標的化ペプチドは、NRP1-プレキシンA1受容体二量体化をブロックする。膜標的化ペプチドの干渉活性は、近接ライゲーションアッセイによって測定されたNrp1とプレキシンA1との間の相互作用の減少を促進する。
【
図1A】近接ライゲーションアッセイによって測定される、異なる用量のGUNGNIR又はMIMMINGで処置されたOli-neu細胞当たりのNRP1-プレキシンA1相互作用の定量化(データは、平均±標準誤差として提示され、Kruskal-Wallis試験、***P<0.0001 **P<0.01)。
【
図1B】近接ライゲーションアッセイによって測定される、異なる用量のGUNGNIR又はMIMMINGで処置されたOli-neu細胞当たりのNRP1-プレキシンA1相互作用の定量化(データは、平均±標準誤差として提示され、Kruskal-Wallis試験、***P<0.0001 **P<0.01)。
【
図2】膜標的化ペプチドは、乏突起膠細胞株Oli-neuの移動に対するSema3Aの負の効果を打ち消す。
【
図2A】救援移動のG-X-X-X-Gモチーフを有する異なる合成配列を有するペプチド(SKOLL及びHATIがn=1であることを除いてn=3)。
【
図2B】Sema3Aで処置したOli-neu細胞の救援移動のG/S-X-X-X-Gモチーフを有するが、G-X-X-X-S又はS-X-X-X-Aモチーフを有しないペプチド(SKIRNIRがn=1であることを除いてn=3)。
【
図2C】ペプチドが、Sema3Aで処置したOli-neu細胞のN-ter又はC-ter側の救援移動において、G-X-X-X-Gモチーフの隣に欠失を有するが、モチーフの1つのGの欠失が、ペプチド活性を無効にする(n=1)。
【
図2D】(NterGp)とG-X-X-X-Gモチーフとの間のN-ter短縮は、ペプチド効率を損なう(BROKK及びEITRIがn=1であることを除いてn=3)。
【
図2E】(CterpolyD/E)を有する他のペプチドの配列中で、RATI及びGUNGNIR及びMIMMINGの救援移動(n=3)。
【
図2F】1,2nM(n=3)でのGUNGNIR IC
50計算。
【
図2G】MTP-PlexA1(配列番号1)とそのレトロ類似体(ODIN)との比較。データは、n=3の独立した実験であるときに、平均±標準誤差として提示され、ANOVA、及びビヒクル条件に対するボンフェローニの多重比較検定**P<0.01、***P<0.0001。
【
図3】膜標的化ペプチドの生体内分布の分析。指示された用量(μg/kg)の腹腔内注射から4時間後の異なる臓器におけるGUNGNIR-Cy5の生物発光の割合。
【
図4】GUNGNIRは、EAEの重症度を低減する。
【
図4A】10mg/kgでのGUNGNIRは、PLP免疫化後のEAE臨床スコアを低減する。
【
図4B】10mg/kgでのGUNGNIRは、MOG免疫化後のEAE臨床スコアを低減する。データは、平均±SEMとして提示され、n=7(
図4A)及びn=10(
図4B)であり、非線形回帰(ベル形状)がプロットされ、統計的有意性P<0.0001(
図4A)P=0,0002(
図4B)に使用される。
【
図5A】膜標的化ペプチドは、血管新生を阻害する。細管新生は、HUVECの管状構造交差部を計数することによって測定した。管状構造交差部の数の減少は、MTPによる血管新生の阻害を示す。
【
図5B】HUVEC細胞に対するMTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド)毒性アッセイの結果を示す。
【
図6】ビヒクルと100μg/kgのGUNGNIR群との間で異なることが見出された2つのパラメータを示す、6日間の再ミエリン化後の歩行分析の結果。
【
図7】ビヒクルと10又は100μg/kgのGUNGNIR群との間で異なることが見出された5つのパラメータを示す、11日間の再ミエリン化後の歩行分析の結果。
【
図7E】足は、ピークスタンスの11日間の左後足で変動する
【
図8A】キュプリゾンにより誘導した脱髄を受けたマウスからの脳組織における主なミエリンタンパク質PLPのための染色(
図8A)及びミエリンリン脂質のルクソールファストブルー(LFB)染色(
図8B)を示す組織学実験の結果。
【
図8B】キュプリゾンにより誘導した脱髄を受けたマウスからの脳組織における主なミエリンタンパク質PLPのための染色(
図8A)及びミエリンリン脂質のルクソールファストブルー(LFB)染色(
図8B)を示す組織学実験の結果。
【
図9】キュプリゾンにより誘導した脱髄を受けたマウスにおける体重の結果。
【
図9A】GUNGNIR処置の開始前(すなわち、21日目)の体重。
【
図9D】6日間の再ミエリン化群における21日目の体重減少。
【
図9E】11日間の再ミエリン化群における21日目の体重減少。
【
図9F】6日間の再ミエリン化群における5週目の体重減少。
【
図9G】11日間の再ミエリン化群における5週目の体重減少。
【
図10】EAE-PLPマウスの様々な群における実験の過程にわたる体重モニタリング。
【
図11】EAE-PLPマウスの様々な群における疾患重症度の臨床スコア。
【
図11B】それぞれ、22日目、26日目、28日目、38日目、及び39日目の臨床スコア。
【
図11C】それぞれ、22日目、26日目、28日目、38日目、及び39日目の臨床スコア。
【
図11D】それぞれ、22日目、26日目、28日目、38日目、及び39日目の臨床スコア。
【
図11E】それぞれ、22日目、26日目、28日目、38日目、及び39日目の臨床スコア。
【
図11F】それぞれ、22日目、26日目、28日目、38日目、及び39日目の臨床スコア。
【
図12】EAE-MOGマウスの様々な群における実験の過程にわたる体重モニタリング。
【
図13】EAE-MOGマウスの様々な群における疾患重症度の臨床スコア。
【
図13B】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13C】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13D】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13E】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13F】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13G】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13H】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13I】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13J】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13K】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13L】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13M】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13N】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【
図13O】それぞれ、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、39、及び30日目の臨床スコア。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書に提供される任意の及び全ての実施例、又は例示的な言語(「例えば」、「など」など)の使用は、単に本発明をより良好に例示することを意図しており、別段の記載がない限り、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0043】
本明細書では、「約」という用語は、その通常の意味を有する。「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために用いられるデバイス若しくは方法の誤差についての固有の変動を含むか、又は列挙された値に近似する値、例えば、列挙された値(若しくは値の範囲)の10%若しくは5%以内の値を包含することを示すために使用される。
【0044】
別途明示されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されているものと同じ意味を有する。
【0045】
本明細書に開示される実施形態及び特徴の任意及び全ての組み合わせ及びサブ組み合わせは、本発明に包含される。
【0046】
本開示は、ニューロピリン-1/プレキシン-A1間の相互作用及び/又は移動に対するSema3Aの阻害効果を阻害することができる新しい拮抗ペプチドを提供し、そのような拮抗ペプチドを含む薬学的組成物及びその薬物としての使用に関する。
【0047】
定義
プレキシン-A1は、PLXNA1遺伝子によってコードされるタンパク質である。それは、いくつかのデータベース、すなわちUniProt ID番号Q9UIW2;HGNG ID番号9099に記載されている。参照配列は、mRNAについてはNM_032242.3、タンパク質についてはNP_115618.3の下でGenbankに開示されている。
【0048】
ニューロピリン-1は、NRP1遺伝子によってコードされるタンパク質である。それは、いくつかのデータベース、すなわちUniProt ID番号O14786;HGNG ID番号8004に記載されている。参照配列は、mRNAについてはNM_001330068.1、タンパク質についてはNP_001316997.1の下でGenbankに開示されている。
【0049】
「からなる(consists of)」、「本質的にそれからなる(consists essentially of)」、又は「実質的に~を含む(substantially comprises)」:要素(複数可)への言及などの用語を使用する、本開示の任意の態様又は実施形態の本明細書の説明は、別段の記載がない限り、又は文脈によって明確に矛盾しない限り、特定の要素(複数可)「からなる」、「本質的にそれからなる」、又は「実質的に含む」、本発明の同様の態様又は実施形態へのサポートを与えることが意図されている。例えば、特定の配列を含むものとして本明細書に記載されるペプチド又はタンパク質は、別段の記載がない限り、又は文脈によって明確に矛盾しない限り、その配列からなるペプチド又はタンパク質も記載するものとして理解されるべきである。「本質的にそれからなる」とは、ペプチド又はタンパク質がその配列からなることが意図されているが、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10個の置換、付加、欠失、又はそれらの混合物、特に1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換、付加、欠失、又はそれらの混合物、より具体的には1つ、2つ、又は3つの置換、付加、欠失、又はそれらの混合物も含み得る。特に、「本質的にそれからなる(essentially consist in)」とは、ペプチドが、N末端及び/又はC末端で1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の追加のアミノ酸、特に1個、2個、3個、4個、又は5個の追加のアミノ酸、より具体的には1個、2個、又は3個の追加のアミノ酸、及び/又は1つ、2つ、又は3つの置換、欠失、付加、又はそれらの混合物を含み得ることが意図され得る。特定の態様では、本配列は、2個又は3個以下の置換を有する。好ましくは、置換、付加、欠失、又はそれらの混合物の数は、配列の長さに依存する。例えば、置換、欠失、付加、又はそれらの混合物の割合は、30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは8又は10%以下であり得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、ペプチド配列における別のアミノ酸による単一のアミノ酸の交換を指す。本明細書で使用される場合、「欠失」という用語は、ペプチド配列における単一のアミノ酸の除去を指す。本明細書で使用される場合、「挿入」又は「付加」という用語は、等価であり、ペプチド配列における単一のアミノ酸の付加を指す。
【0051】
「置換、付加、欠失」とは、1個のアミノ酸の置換、付加、欠失が意図される。次いで、「1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、若しくは10個の置換、付加、欠失、又はそれらの混合物」、「1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換、付加、欠失、又はそれらの混合物」、又は「1つ、2つ、又は3つの置換、欠失、付加、又はそれらの混合物」と言及される場合、それは、それぞれ、「置換、付加、欠失、及びそれらの混合物から選択されるアミノ酸の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10個の修飾」、「置換、付加、欠失、又はそれらの混合物から選択されるアミノ酸の1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの修飾」、又は「置換、欠失、付加、又はそれらの混合物から選択されるアミノ酸の1つ、2つ、又は3つの修飾」を意味する。「1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの置換、付加、欠失、又はそれらの混合物」はまた、「1~5つの置換、付加、欠失、又はそれらの混合物」も意味する。「1つ、2つ、又は3つの置換、付加、欠失、又はそれらの混合物」はまた、「1~3つの置換、付加、欠失、又はそれらの混合物」も意味する。
【0052】
本明細書に開示されるペプチド配列では、アミノ酸は、以下の命名法に従って、それらの1文字コード又は3文字コードで表される:A:Ala、アラニン;C:Cys、システイン;D:Asp、アスパラギン酸;E:Glu、グルタミン酸;F:Phe、フェニルアラニン;G:Gly、グリシン;H:His、ヒスチジン;I:Ile、イソロイシン;K:Lys、リジン;L:Leu、ロイシン;M:Met、メチオニン;N:Asn、アスパラギン;P:Pro、プロリン;Q:Gln、グルタミン;R:Arg、アルギニン;S:Ser、セリン;T:Thr、トレオニン;V:Val、バリン;W:Trp、トリプトファン、及びY:Tyr、チロシン。
【0053】
保存的置換は、所与のアミノ酸残基の、同様の化学特性(例えば、電荷、バルク、及び/又は疎水性)を有する側鎖(「R基」)を有する別の残基による置き換えである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させない。保存的置換及び対応する規則は、最先端技術において十分に記載されている。例えば、保存的置換は、以下の表に反映されるアミノ酸の群内の置換によって定義することができる:
【表1】
【表2】
【表3】
【0054】
本明細書に記載されるペプチドは、ペプチドの合成類似体を調製するためのペプチド化学において使用される天然に存在するアミノ酸並びに他のアミノ酸(例えば、天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、核酸配列によってコードされていないアミノ酸など)のL-異性体及びD-異性体の両方を含み得る。天然に存在するアミノ酸の例は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンなどである。他のアミノ酸には、例えば、非遺伝子的にコードされた形態のアミノ酸、並びにL-アミノ酸の保存的な置換が含まれる。天然に存在する非遺伝子的にコードされたアミノ酸には、例えば、ベータ-アラニン、3-アミノ-プロピオン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、アルファ-アミノイソ酪酸(Aib)、4-アミノ-酪酸、N-メチルグリシン(サルコシン)、ヒドロキシプロリン、オルニチン(例えば、L-オルニチン)、シトルリン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン、2-ナフチルアラニン、ピリジルアラニン、3-ベンゾチエニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、2-フルオロフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、4-フルオロフェニルアラニン、ペニシラミン、1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボン酸、ベータ-2-チエニルアラニン、メチオニンスルホキシド、L-ホモアルギニン(Hoarg)、N-アセチルリジン、2-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸、2,4,-ジアミノ酪酸(D-又はL-)、p-アミノフェニルアラニン、N-メチルバリン、ホモシステイン、ホモセリン(HoSer)、システイン酸、イプシロン-アミノヘキサン酸、デルタ-アミノバレリアン酸、又は2,3-ジアミノ酪酸(D-又はL-)などが含まれる。これらのアミノ酸は、生物化学/ペプチド化学の技術分野において周知である。
【0055】
本明細書に記載されるペプチドは、あらゆるL-アミノ酸、あらゆるD-アミノ酸、又はL-アミノ酸とD-アミノ酸との混合物を含み得る。一実施形態では、ペプチドは、L-アミノ酸のみを含む。
【0056】
上述の置換に加えて、類似の側鎖官能基を提供する合成アミノ酸をペプチドに導入することもできる。例えば、芳香族アミノ酸は、D-又はL-ナフチルアラニン、D-又はL-フェニルグリシン、D-又はL-2-チエニルアラニン、D-又はL-1-、2-、3-、若しくは4-ピレニルアラニン、D-又はL-3-チエニルアラニン、D-又はL-(2-ピリジニル)-アラニン、D-又はL-(3-ピリジニル)-アラニン、D-又はL-(2-ピラジニル)-アラニン、D-又はL-p-シアノ-フェニルアラニン、D-又はL-(4-イソプロピル)-フェニルグリシン、D-又はL-(トリフルオロメチル)-フェニルグリシン、D-又はL-(トリフルオロメチル)-フェニルアラニン、D-又はL-p-フルオロフェニルアラニン、D-又はL-p-ビフェニルアラニン、D-又はL-p-メトキシビフェニルアラニン、D-又はL-2-インドール(アルキル)アラニン、及びD-又はL-アルキルアラニンで置換され得、アルキル基は、置換又は非置換のメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソ-ブチル、及びイソ-ペンチルからなる群から選択される。
【0057】
側鎖に第一級アミンを含むリジンの類似体としては、オルニチン、ホモリジン、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、及び2,4-ジアミノ酪酸(Dab)が挙げられる。
【0058】
ヒスチジンの類似体としては、例えば、Ikeda et al.,Protein Eng.(2003)16(9):699-706(例えば、β-(1,2,3-トリアゾール-4-イル)-DL-アラニン)に記載されるもの、Stefanucci et al.,Int.J.Mol.Sci.2011,12(5),2853-2890(アザ-ヒスチジン、ホモ-ヒスチジン、β2-ホモ-ヒスチジン、β3-ホモ-ヒスチジン、ノル-ヒスチジン)、N-イミダゾリルアラニン、メチルヒスチジン、ジメチルヒスチジン、C-トリアゾリルアラニン、ヒスチジンメチルエステル、ヒスチジノール、及びヒスチジンアミドに記載されるものが挙げられる。
【0059】
トリプトファンの類似体としては、例えば、ナフチルアラニン、インデニルアラニン、2Me-Trp(又はMrp)、5-メチル-DL-トリプトファン、アザトリプトファン(7-アザトリプトファン)、ヒドロキシトリプトファン(5-ヒドロキシトリプトファン)、フルオロトリプトファン、アミノトリプトファン、トリプタミン、及びデサミノトリプトファン、α-メチル-トリプトファン;β-(3-ベンゾチエニル)-D-アラニン;β-(3-ベンゾチエニル)-L-アラニン;1-メチル-トリプトファン;4-メチル-トリプトファン;5-ベンジルオキシ-トリプトファン;5-ブロモ-トリプトファン;5-クロロ-トリプトファン;5-フルオロ-トリプトファン;5-ヒドロキシ-トリプトファン;5-ヒドロキシ-L-トリプトファン;5-メトキシ-トリプトファン;5-メトキシ-L-トリプトファン;5-メチル-トリプトファン;6-ブロモ-トリプトファン;6-クロロ-d-トリプトファン;6-クロロ-トリプトファン;6-フルオロ-トリプトファン;6-メチル-トリプトファン;7-ベンジルオキシ-トリプトファン;7-ブロモ-トリプトファン;7-メチル-トリプトファン;D-1,2,3,4-テトラヒドロ-ノルハルマン-3-カルボン酸;6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-1-カルボン酸;L-1,2,3,4-テトラヒドロ-ノルハルマン-3-カルボン酸;5-メトキシ-2-メチル-トリプトファン;2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-β-カルボリン-3-カルボン酸(Tca)、及び6-クロロ-L-トリプトファンが挙げられる。
【0060】
アラニン、グリシン、バリン、及びロイシンの類似体としては、β-アラニン、アミノイソ酪酸(α又はβ)、メチルアラニン、t-ブチルアラニン、アミノヘキサン酸、アルファ,ベータ-ジアミノプロピオン酸、プロパルギルグリシン、ベータ-シクロヘキシル-L-アラニン、ベータ-ヒドロキシロイシン、アミノカプロン酸、及びアリルグリシンが挙げられる。
【0061】
配列がX/Zを含む場合、その配列が、アミノ酸X又はアミノ酸Zを含むことを意味する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」又は「同一性」という用語は、2つのペプチドの正確なアミノ酸対アミノ酸の対応を指す。同一性パーセントは、配列をアライメントさせ、2つのアライメントされた配列間の正確な一致の数を計数し、短い方の配列の長さで除算し、結果を100で乗算することによって、2つの分子間の配列情報の直接比較によって決定することができる。
【0063】
配列同一性は、2つの配列の長さに応じて、全体の又は局所のアライメントアルゴリズムを使用して、2つのペプチド配列のアライメントによって決定され得る。類似の長さの配列は、好ましくは、全体の長さにわたって配列を最適にアライメントさせる全体のアライメントアルゴリズム(例えば、Needleman Wunsch)を使用してアライメントされる一方で、実質的に異なる長さの配列は、好ましくは、局所のアライメントアルゴリズム(例えば、Smith Waterman)を使用してアライメントされる。次いで、配列は、それらが(例えば、デフォルトパラメータを使用してプログラムGAP又はBESTFITによって最適にアライメントされる場合に)配列同一性の少なくともある特定の最小パーセンテージを共有する場合、「実質的に同一」又は「本質的に類似」と称され得る。GAPは、Needleman及びWunschの全体のアライメントアルゴリズムを使用して、2つの配列をそれらの全長(完全長)にわたって、一致の数を最大にし、ギャップの数を最小にしながら、アライメントする。全体のアライメントは、2つの配列が類似の長さを有する場合、配列同一性を決定するために好適に使用される。
【0064】
「レトロ型」又は「レトロ類似体」という用語は、参照ペプチドに対して逆方向にアミノ酸配列を含むペプチドを指す。「レトロインベルソ型」又は「レトロインベルソ類似体」という用語は、参照ペプチドに対して逆方向にアミノ酸配列を含むペプチドを指し、LからDに反転したアミノ酸のキラリティも有する。本開示によるレトロ型及びレトロインベルソ型は、参照ペプチドの生物学的活性を維持し、例えば、ニューロピリン-1とプレキシン-A1との間の相互作用を阻害する能力を有する。
【0065】
「薬学的に許容される塩」という用語は、薬理学的に許容され、それらが投与される対象に実質的に非毒性である、本明細書に記載されるペプチドの塩を指す。より具体的には、これらの塩は、ペプチドの生物学的有効性及び特性を保持し、好適な非毒性の有機又は無機の酸又は塩基から形成される。
【0066】
例えば、これらの塩には、本明細書に記載されるペプチドの酸付加塩が含まれ、このような塩を形成するのに十分な塩基性である。このような酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩などの低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩などのアリールスルホン酸塩、若しくはトルエンスルホン酸塩(トシル酸塩としても既知である)、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、桂皮酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸水素塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イタコン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、ウンデカン酸塩などが挙げられる。
【0067】
更に、塩基性医薬化合物から医薬的に有用な塩を形成するのに一般的に適していると考えられる酸については、例えば、P.Stahl et al.,Camille G.(eds.)Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties,Selection and Use.(2002)Zurich:Wiley-VCH、S.Berge et al.,Journal of Pharmaceutical Sciences(1977)66(1)1-19、P.Gould,International J.of Pharmaceutics(1986)33 201-217、Anderson et al.,The Practice of Medicinal Chemistry(1996),Academic Press,New York、及びThe Orange Book(Food & Drug Administration,Washington,D.C.)によって議論されている。
【0068】
また、本明細書に記載されるペプチドが十分に酸性である場合、本開示の塩は、無機又は有機塩基で形成された塩基塩を含む。そのような塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、及びコバルト塩などの金属塩;トリメチルアンモニウム塩などのアンモニウム塩又は置換アンモニウム塩などの無機アミン塩;並びに有機塩基を有する塩(例えば、有機アミン)、例えば、クロロプロカイン塩、ジベンジルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、ジエタノールアミン塩、エチルアミン塩(ジエチルアミン塩及びトリエチルアミン塩を含む)、エチレンジアミン塩、グルコサミン塩、グアニジン塩、メチルアミン塩(ジメチルアミン塩及びトリメチルアミン塩を含む)、モルホリン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、N-メチルグルカミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、ピペラジン塩、ピペリジン塩、プロカイン塩、t-ブチルアミン塩、テトラメチルアンモニウム塩、t-オクチルアミン塩、トリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン塩、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩が挙げられる。
【0069】
このような塩は、当業者であれば標準的な技術を使って極めて容易に形成することができる。実際には、薬学的ペプチドを塩に化学修飾することは、医薬化学者に周知の技術である(例えば、H.Ansel et.al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(6th Ed.1995)at pp.196 and 1456-1457を参照)。本明細書に記載されるペプチドの塩は、例えば、ペプチドを等量などの酸又は塩基の量と、塩が沈殿するような媒体中又は水性媒体中で反応させてから凍結乾燥することによって形成することができる。
【0070】
「増加した(increased)」、「増加する(increase)」、又は「強化する(enhance)」とは、同じ条件下で試験したペプチドの非存在下で測定された測定値と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%増加した測定値を指すことが意図される。「減少した(decreased)」又は「減少する(decrease)」とは、同じ条件下で試験したペプチドの非存在下で測定された測定値と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%減少した測定値を指すことが意図される。
【0071】
本明細書で使用される、「治療(treatment)」、「治療する(treat)」、又は「治療すること(treating)」という用語は、疾患又は障害の治癒、緩和、又は遅延など、患者の健康状態を改善することを意図した任意の行為を指す。これには、予防的治療及び治療的治療が含まれる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」は、本開示によるペプチドを含むなどの活性剤のうちの1つ以上と、生理学的に好適な担体及び賦形剤などの任意の他の化学成分との調製を指す。薬学的組成物の目的は、活性剤の生物への投与を促進することである。本開示の組成物は、任意の従来の投与経路又は使用に好適な形態であり得る。一実施形態では、「組成物」は、典型的には、活性剤(例えば、化合物又は組成物)と、天然に存在する若しくは天然に存在しない担体、不活性(例えば、検出可能な薬剤又は標識)又は活性剤(例えば、アジュバント、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、防腐剤、アジュバントなど)との組み合わせを意図し、薬学的に許容される担体を含む。本明細書で言及される「許容されるビヒクル」又は「許容される担体」は、薬学的組成物の製剤化に有用であることが当業者に既知である、任意の既知の化合物又はこれらの化合物の組み合わせである。
【0073】
本明細書で使用される場合、「有効量」又は「治療有効量」は、単独で、又は1つ以上の他の活性剤と組み合わせて、対象に治療効果を付与するために必要な活性剤の量、例えば、標的疾患若しくは障害を治療するために、又は所望の効果をもたらすために必要な活性剤の量を指す。「有効量」は、薬剤(複数可)、疾患及びその重症度、年齢、健康状態、サイズ、性別及び体重を含む治療される対象の特性、治療の期間、同時治療の性質(もしあれば)、特定の投与経路、並びに医療従事者の知識及び専門知識の範囲内での同様の因子に応じて異なるであろう。これらの因子は、当業者に周知であり、日常的な実験のみで対処することができる。一般に、個々の成分又はそれらの組み合わせの最大用量、すなわち、健全な医学的判断による最高安全用量が使用されることが好ましい。
【0074】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、障害又は疾患に対する治療的又は予防的特性を有する任意の物質又は組成物を指す。
【0075】
「治療(treatment)」という用語は、疾患又は疾患の症状の治療、予防(prevention)、予防(prophylaxis)、及び遅延など、患者の健康状態を改善することを意図した任意の行為を指す。それは、疾患の治癒的治療及び/又は予防的治療の両方を指す。治癒的治療は、疾患又は疾患の症状、又は疾患が直接的若しくは間接的に引き起こす苦痛を緩和する、改善する、及び/又は排除する、軽減させる、及び/又は安定させる、治癒又は治療をもたらす治療として定義される。予防的治療は、疾患の予防をもたらす治療と、疾患の進行及び/若しくは発生又はその発生のリスクを低減及び/若しくは遅延させる治療との両方を含む。ある特定の実施形態では、そのような用語は、疾患、障害、感染症、又はそれに関連する症状の改善又は根絶を指す。本発明による治療は、必ずしも100%又は完全な治療を意味するわけではない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する様々な程度の治療がある。好ましくは、「治療」という用語は、障害/疾患を有する対象に対する、1つ以上の活性剤を含む組成物の適用又は投与を指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、「障害」又は「疾患」という用語は、遺伝子又は発育異常、感染、毒、栄養欠乏又は不均衡、毒性、又は好ましくない環境因子の影響に起因する身体の不適切に機能する臓器、部分、構造、又は系を指す。好ましくは、これらの用語は、健康障害又は疾患、例えば、正常な身体的又は精神的機能を破壊する疾患を指す。
【0077】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」、又は「患者」という用語は、互換性があり、動物、好ましくは哺乳動物、更により好ましくは、成人、小児、新生児を含むヒトを指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、列挙された材料(例えば、化合物、ペプチド、抗体、ポリペプチド、核酸など)が、それが天然に存在する他の材料から実質的に分離されているか、又はそれと比較して濃縮されていることを示す。特に、「単離された」ペプチドは、その天然環境の構成成分から特定され、分離され、かつ/又は回収されたものである。
【0079】
拮抗ペプチド
本発明者らは、上記で定義されたように、プレキシンA1の拮抗ペプチドを設計するための規則を定義した。
【0080】
ペプチドにおいて、G/S-X-X-X-Gモチーフ又はドメインは、活性に関与する。第1のGly残基をSer残基で置き換える可能性は驚くべきものであり、G-X-X-X-Gモチーフが一般に不可欠であると考えられているため、予測することができなかった。X残基は、任意のアミノ酸であり得る。特定の態様では、3つのX残基の中で、2つ以下の残基が、電荷アミノ酸であり得る。好ましくは、3つのX残基のいずれも、電荷されない。特定の態様では、それらは、脂肪族非電荷アミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、及びIle)の中から選択され、より具体的には、Gly、Val、Ile、及びLeuからなる群において選択され得る。
【0081】
更に、ペプチドの設計のための別の重要な態様は、膜におけるG/S-X-X-X-Gモチーフの固定、及び膜表面とG/S-X-X-X-Gモチーフとの間の距離である。実際には、モチーフの位置が重要であり、モチーフの不適切な位置決めは、ペプチドの拮抗活性の低減又は喪失をもたらす。
【0082】
より具体的には、ペプチドがNterGpなどのN末端膜アンカーを有する場合、好ましくは、N末端膜アンカーモチーフとG/S-X-X-X-Gモチーフとの間に5個のアミノ酸を挿入するべきである。例えば、6個のアミノ酸を有するplexA1-S1、並びにそれぞれ4個のアミノ酸及び2個のアミノ酸を有するBROKK又はEITRIは、乏突起膠細胞の移動に対するSema3Aの負の効果を打ち消すことができなかった(
図2D)。反対に、ペプチドBALDR、FREYR、BRAGI、NJORD、ULLR、SKOLL、HATI、plexA1-S2、FJALAR、GALAR、IVALDI、及びALVISSは全て、N末端膜アンカーモチーフとG/S-X-X-X-Gモチーフとの間に5個のアミノ酸を有するため、乏突起膠細胞の移動に対するSema3Aの負の効果を打ち消した(
図2A~2D)。
【0083】
ペプチドがC末端膜アンカーを有する場合、好ましくは、G/S-X-X-X-Gモチーフと、CterGpなどの正電荷アミノ酸を有するC末端膜アンカーモチーフと、の間に13個のアミノ酸を挿入するべきであり、好ましくは、G/S-X-X-X-Gモチーフと、CterpolyD/Eなどの負電荷アミノ酸を有するC末端膜アンカーモチーフと、の間に11個のアミノ酸を挿入するべきである。より具体的には、CterpolyD/Eなどの負電荷アミノ酸を有するC末端膜アンカーモチーフを有するペプチドの文脈において、G/S-X-X-X-GモチーフとC末端膜アンカーモチーフとの間に11個のアミノ酸を有するペプチドKVASIR、GERD、THRUD、RATI、GUNGNIR、及びMIMMINGは全て、G/S-X-X-X-GモチーフとC末端膜アンカーモチーフとの間に12個のアミノ酸を有するペプチドDRAUPNIRと比較して、乏突起膠細胞の移動に対するSema3Aの負の効果を打ち消すことができた。
【0084】
これらの規則が決定されると、本発明者らは、ペプチドが膜アンカーモチーフの反対側のモチーフG/S-X-X-X-Gまで短縮され得ることを驚くべきことに観察した。この態様は、より短いペプチドの設計を可能にする。
【0085】
例えば、長さが29アミノ酸であるペプチドMTP-PlexA1と比較して、ペプチドBALDR、FREYR、BRAGI、NJORD、ULLR、及びplexA1-S2は、長さが18アミノ酸のみであり、ペプチドFJALARは、長さが17アミノ酸のみであり、ペプチドGALARは、長さが16アミノ酸のみであり、ペプチドIVALDIは、長さが15アミノ酸のみであり、ペプチドSKOLL、HATI、及びALVISSは、長さが14アミノ酸のみである。同様に、C末端ポリEの5個のアミノ酸を含む、ペプチドKVASIR、GERD、THRUDは、それぞれ、長さが26、24、及び23アミノ酸である。
【0086】
したがって、本開示は、
-配列G/S-X-X-X-Gのモチーフ、
-モチーフのC末端で直接結合した-(X)11-(CterpolyD/E)(すなわち、G/S-X-X-X-G-(X)11-(CterpolyD/E)、モチーフのN末端で直接結合した(NterGp)-(X)5-(すなわち、(NterGp)-(X)5-G/S-X-X-X-G)、又はモチーフのC末端で直接結合した-(X)13-(CterGp)(すなわち、G/S-X-X-X-G-(X)13-(CterGp)、及び
-Xが任意のアミノ酸であるが、Xの中の2つ以下が電荷アミノ酸であり、
-NterGpが、少なくとも2個の電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸の群であり、CterGpが、少なくとも3個の正電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸の群であり、CterpolyD/Eが、少なくとも2個の負電荷アミノ酸を含む4~10個のアミノ酸の群である、を含む、それから本質的になる、又はそれからなるペプチドを含む薬学的組成物に関し、
ペプチドが、移動に対するsema3Aの阻害効果を阻害し、及び/又は本明細書に詳述される方法によって測定される、ニューロピリン-1とプレキシンA1との間の相互作用を阻害し、
ペプチドが、MTP-PlexA1(TLPAIVGIGGGGGLLLLVIVAVLIAYKRK、配列番号1)の配列を有しない。
【0087】
本開示はまた、
-配列G/S-X5-X6-X7-Gの第1のドメインと、
-(i)第1のドメインのC末端で直接結合した式I:-(X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33-X34-X35-X36)-(CterpolyD/E)(すなわち、G/S-X-X-X-G-(X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33-X34-X35-X36)-(CterpolyD/E)の第2のドメイン、
-(ii)第1のドメインのC末端で直接結合した式II:-(X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-X22-X23-X24-X25)-(CterGp)(すなわち、G/S-X-X-X-G-(X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-X22-X23-X24-X25)-(CterGp)の第2のドメイン、又は
-(iii)第1のドメインのN末端で直接結合した式III:(NterGp)-(X8-X9-X10-X11-X12)-(すなわち、(NterGp)-(X8-X9-X10-X11-X12)-G/S-X-X-X-G)の第2のドメインと、を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなるペプチドに関し、
X5、X6、及びX7は、任意のアミノ酸、好ましくは非電荷アミノ酸、より好ましくはGly、Ala、Val、Leu、及びIleなどの脂肪族非電荷アミノ酸であり、
X8、X9、X10、X11、及びX12は、任意のアミノ酸、好ましくは非電荷アミノ酸、より好ましくは脂肪族又は非極性の非電荷アミノ酸であり、
X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21、X22、X23、X24、及びX25は、任意のアミノ酸であり、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21、X22、X23、X24、及びX25のうちの2個以下のアミノ酸は、電荷アミノ酸であり、
X26、X27、X28、X29、X30、X31、X32、X33、X34、X35、及びX36は、任意のアミノ酸であり、X26、X27、X28、X29、X30、X31、X32、X33、X34、X35、及びX36のうちの2個以下のアミノ酸は、電荷アミノ酸であり、
NterGpは、電荷アミノ酸を含む膜アンカーモチーフであり、好ましくは、少なくとも2個の電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸を含む膜アンカーモチーフであり、
CterGpは、正電荷アミノ酸を含む膜アンカーモチーフであり、好ましくは、少なくとも3個の正電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸を含む膜アンカーモチーフであり、
CterpolyD/Eは、負電荷アミノ酸を含む膜アンカーモチーフであり、好ましくは、少なくとも2個の負電荷アミノ酸を含む4~10個のアミノ酸を含む膜アンカーモチーフである。
【0088】
ペプチドは、移動に対するSema3Aの阻害効果を阻害する、及び/又はニューロピリン-1/プレキシン-A1間の相互作用を阻害する機能的特性に関連する。好ましくは、ペプチドは、両方の特性を満たす。
【0089】
ニューロピリン-1/プレキシン-A1間の相互作用及びペプチドによるこの相互作用の阻害は、任意の利用可能な方法によって測定することができる。より具体的には、それは、実施例セクションで具体的に詳述されるように、近接ライゲーションアッセイによって測定することができる。ニューロピリン-1/プレキシン-A1間の相互作用は、ペプチドの非存在下での相互作用と比較して、少なくとも10、20、30、40、又は50%阻害される。
【0090】
移動に対するsema3Aの阻害効果に対するペプチドの効果は、任意の利用可能な方法によって測定することができる。より具体的には、それは、実施例セクションで詳述されるように、細胞移動アッセイによって測定することができる。ペプチドが陽性対照の移動の少なくとも80%を回復することができる場合、ペプチドは、移動に対するsema3Aの阻害効果を阻害するとみなされる。
【0091】
(NterGp)、(CterGp)、及び(CterpolyD/E)は、本開示では、膜アンカーモチーフとも呼ばれる。それらは、膜の表面にペプチドを固定することを可能にするアミノ酸の群である。膜アンカーモチーフは、一般に、1個又はいくつかの電荷アミノ酸、例えば、少なくとも2個の電荷アミノ酸、例えば、2~7個の電荷アミノ酸を含む。
【0092】
より具体的には、NterGpは、少なくとも2個の電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸の群であり得る。例えば、NterGpは、Glu又はAspなどの1個の正電荷アミノ酸と、Lys又はArgなどの1個の負電荷アミノ酸と、あるいはGlu又はAspなどの2個の正電荷アミノ酸、あるいはLys又はArgなどの2個の負電荷アミノ酸と、を含むことができる。非常に具体的な態様では、NterGpは、KGDモチーフを含むか、又はそれからなる。任意選択的に、NterGpは、芳香族アミノ酸を更に含み得る。特定の態様では、NterGpは、4個のアミノ酸X1-X2-X3-X4の配列を有し、X1及びX3は、2個の電荷アミノ酸であり、好ましくは、一方は、正電荷であり、他方は、負電荷であり、X2は、小さいアミノ酸(例えば、G又はA)であり、X4は、芳香族アミノ酸(例えば、Y又はW)であり、より好ましくは、NterGpは、KGDW(配列番号116)である。NterGpは、好ましくは、膜の細胞外側に位置するように選択される。
【0093】
一実施形態では、X5は、脂肪族残基、例えば、L又はI、好ましくはLである。一実施形態では、X6は、P又はI、好ましくはPである。一実施形態では、X7は、脂肪族残基、例えば、A又はV、好ましくはAである。一実施形態では、X8は、脂肪族残基、例えば、L又はI、好ましくはIである。一実施形態では、X9は、脂肪族及び/又は小さい残基、例えば、T又はV、好ましくはVである。更なる実施形態では、X8-X9-X10-X11-X12は、LPAIT(配列番号82)、LPAIV(配列番号83)、IPALV(配列番号84)、LPALV(配列番号85)、LIAIV(配列番号86)、又はLPVIV(配列番号87)である。
【0094】
任意選択的に、ペプチドは、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G(配列番号22)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V(配列番号23)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V(配列番号24)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E(配列番号25)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L(配列番号26)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L(配列番号27)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E(配列番号28)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V(配列番号29)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I(配列番号30)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V(配列番号31)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E(配列番号32)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V(配列番号33)、
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-L(配列番号34)、及び
(NterGp)-L/I-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-L-I(配列番号35)、から選択される配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
式中、NterGpは、上記で定義した通りであり、例えば、少なくとも2個の電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸の群であり、
この配列は、太字の残基並びに/あるいはN末端及び/又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換(例えば、保存的置換)を含み得る。
【0095】
一実施形態では、ペプチドは、式IIの第2のドメインを含み、ペプチドは、第1のドメインのN末端で5個以下のアミノ酸を含む。一実施形態では、ペプチドは、第1のドメインのN末端で4個以下のアミノ酸を含む。一実施形態では、ペプチドは、第1のドメインのN末端で3個以下のアミノ酸を含む。一実施形態では、ペプチドは、第1のドメインのN末端で2個以下のアミノ酸を含む。一実施形態では、ペプチドは、第1のドメインのN末端で1個のアミノ酸を含む。一実施形態では、ペプチドは、第1のドメインのN末端で任意のアミノ酸を含まない。
【0096】
一実施形態では、ペプチドは、式IIの第2のドメインを含み、ペプチドは、28個以下のアミノ酸、27個以下のアミノ酸、又は26個以下のアミノ酸の長さを有する。一実施形態では、ペプチドは、式IIの第2のドメインを含み、23~26個のアミノ酸の長さを有する。
【0097】
一実施形態では、X13は、脂肪族及び/又は小さい残基、例えば、G又はV、好ましくはGである。一実施形態では、X14は、脂肪族及び/又は小さい残基、例えば、G又はV、好ましくはGである。一実施形態では、X15は、L又はE、好ましくはLである。一実施形態では、X16は、脂肪族残基、好ましくはLである。一実施形態では、X17は、脂肪族残基、好ましくはLである。一実施形態では、X18は、L又はE、好ましくはLである。一実施形態では、X19は、脂肪族残基、好ましくはVである。一実施形態では、X20は、脂肪族残基、好ましくはIである。一実施形態では、X21は、脂肪族残基、好ましくはVである。一実施形態では、X22は、A又はE、好ましくはAである。一実施形態では、X23は、脂肪族残基、好ましくは、Vである。一実施形態では、X24は、脂肪族残基、好ましくはLである。一実施形態では、X25は、脂肪族残基、好ましくは、Lである。
【0098】
更なる実施形態では、X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-X22-X23-X24-X25は、GGLLLLVIVAVLI(配列番号88)である。
【0099】
より具体的には、CterGpは、少なくとも3個の正電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸であり得る。例えば、CterGpは、KRK、KKR、RRK、又はKRRを含み得る。任意選択的に、それは、芳香族アミノ酸及び/又は小さいアミノ酸を更に含み得る。非常に具体的な態様では、CterGpは、5個のアミノ酸X’1-X’2-X’3-X’4-X’5の配列を有し、X’1は、小さいアミノ酸(例えば、G又はA)であり、X’2は、芳香族アミノ酸(例えば、Y又はW)であり、X’3、X’4、及びX’5は、塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、CterGpは、AYKRK(配列番号76)、AYKKR(配列番号77)、AYKRR(配列番号78)、AYRRK(配列番号79)、及びAYRKK(配列番号80)から選択される配列である。CterGpは、好ましくは、膜の細胞内側に位置するように選択される。
【0100】
任意選択的に、ペプチドは、
A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-L-I-(CterGp)(配列番号36)、
I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-L-I-(CterGp)(配列番号37)、
V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-L-I-(CterGp)(配列番号38)、及び
G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-L-I-(CterGp)(配列番号39)、から選択される配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
式中、CterGpは、上記で定義した通りであり、例えば、少なくとも3個の正電荷アミノ酸を含む3~5個のアミノ酸の群であり、
この配列は、太字の残基を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換(例えば、保存的置換)を含み得る。
【0101】
より具体的には、CterpolyD/Eは、負電荷アミノ酸、特にGluのクラスターを含む。例えば、それは、少なくとも2個、少なくとも3個、又は少なくとも4個の負電荷アミノ酸、例えば、Glu、Asp、又はGluとAspとの組み合わせを含む4~10個のアミノ酸の群であり得る。CterpolyD/Eドメインは、2、3、4、若しくは5個のGlu残基、2、3、4、若しくは5個のAsp残基、又は2、3、4、若しくは5個のGlu残基及びAsp残基の組み合わせを含み得る。特定の態様では、CterpolyD/Eは、-X”1-X”2-(Z)nの配列を有し、X”1が小さいアミノ酸(例えば、G又はA)であり、X”2が芳香族アミノ酸(例えば、Y又はW)であり、ZがD又はEであり、nが2~10、好ましくは4~6の整数であるか、又は-X”1-X”1ビス-X”2-(Z)nの配列を有し、X”1及びX”1ビスがI又はLなどの長い脂肪族アミノ酸であり、X”2が芳香族アミノ酸(例えば、Y又はW)であり、ZがD又はEであり、nが2~10、好ましくは4~6の整数である。非常に特定の態様では、CterpolyD/Eは、-X”1-X”2-(E)nの配列を有し、X”1が小さいアミノ酸(例えば、G又はA)であり、X”2が芳香族アミノ酸(例えば、Y又はW)であり、nが2~10、好ましくは4~6の整数であるか、又は-X”1-X”1ビス-X”2-(E)nの配列を有し、X”1及びX”1ビスがI又はLなどの長い脂肪族アミノ酸であり、X”2が芳香族アミノ酸(例えば、Y又はW)であり、nが2~10、好ましくは4~6の整数である。CterpolyD/Eは、好ましくは、膜の細胞内側に位置するように選択される。一実施形態では、CterpolyD/Eは、配列AYEEEEE(配列番号89)又はLIYEEEEE(配列番号90)を含むか、又はそれからなる。
【0102】
CterpolyD/E膜アンカーモチーフの存在は、そのような膜アンカーモチーフを含むペプチドが可溶性で安定であり、24時間を超える血漿半減期、並びに脳及び脊髄などの標的器官に到達するのに好適である生体内分布を可能にするため、特に好ましい態様である。
【0103】
一実施形態では、X26は、脂肪族及び/又は小さい残基、例えば、G又はV、好ましくはVである。一実施形態では、X27は、脂肪族及び/又は小さい残基、例えば、G又はV、好ましくはGである。一実施形態では、X28は、L又はE、好ましくはLである。一実施形態では、X29は、脂肪族残基、好ましくはLである。一実施形態では、X30は、脂肪族残基、好ましくはLである。一実施形態では、X31は、L又はE、好ましくはLである。一実施形態では、X32は、脂肪族残基、好ましくはVである。一実施形態では、X33は、脂肪族残基、好ましくはIである。一実施形態では、X34は、脂肪族残基、好ましくはVである。一実施形態では、X35は、A又はE、好ましくはEである。一実施形態では、X36は、脂肪族残基、好ましくは、Vである。
【0104】
一実施形態では、X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33-X34-X35-X36は、VGLLLEVIVEV(配列番号91)、又はそのバリアントであり、下線が引かれた残基を除く、保存的置換などの1、2、又は3個のアミノ酸置換を有する。一実施形態では、X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33-X34-X35-X36は、VGLLLEVIVEV(配列番号91)、又はそのバリアントであり、下線が引かれた残基を除く、保存的置換などの1、2、又は3個のアミノ酸置換を有する。一実施形態では、バリアントは、保存的置換などの1又は2個のアミノ酸置換を有する。一実施形態では、バリアントは、保存的置換などの1個のアミノ酸置換を有する。
【0105】
一実施形態では、X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33-X34-X35-X36は、VGLLLEVIVEV(配列番号91)、GGELLLVIVE(配列番号92)、VVLLLEVIVEV(配列番号93)、VGLLVEVIVEV(配列番号117)、VGLVLEVIVEV(配列番号118)である。
【0106】
別の実施形態では、ペプチドは、
G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号2)、
V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号3)、
I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号4)、
A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号5)、
P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号6)、
I/L-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号7)、及び
T-I/L-P/I-A/V-I/L-V/T-G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-A/E-V-(CterpolyD/E)(配列番号8)、から選択される配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
式中、CterpolyD/Eは、上記で定義した通りであり、例えば、少なくとも2個の負電荷アミノ酸を含む4~10個のアミノ酸の群であり、
この配列は、太字の残基並びに/あるいはN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換(例えば、保存的置換)を含み得る。
【0107】
任意選択的に、CterpolyD/Eは、本明細書に開示される任意の特定の態様又は実施形態によるものである。
【0108】
任意選択的に、ペプチドは、アミノ酸配列
G/S-I/G/L-G/V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L-L/E-V-I-V-E-V-A/LI-Y-(E)n(配列番号9)、又は
G/S-L-V-G-G-G/V-G/V-L/E-L-L/V-L/E-V-I-V-E-V-A-Y-(E/D)n(配列番号119)、を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
この配列は、太字の残基並びに/あるいはN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換(例えば、保存的置換)を更に含み得、nは、2~10、好ましくは4~6の整数である。「A/LI」は、ペプチドがアミノ酸A又は2つのアミノ酸LIのいずれかを含むことを意味する。任意選択的に、nは、2、3、4、5、6、7、8、9及び10、好ましくは4、5、6、7、及び8、例えば4、5、又は6からなる群から選択される整数である。任意選択的に、ペプチドは、N末端における1~6個のアミノ酸の付加を含み得る。
【0109】
任意選択的に、ペプチドは、
AIT-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号10)、
T-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号11)、
G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号12)、
TLPAIV-G/S-IGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号13)、
TLPAIT-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号14)、及び
TLPAIV-G/S-IGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号15)、から選択される配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
この配列は、太字の残基及びN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換(例えば、保存的置換)を更に含み得る。
【0110】
非常に特定の態様では、ペプチドは、
AIT-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号10)、
T-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号11)、
G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号12)、
TLPAIV-G/S-IGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号13)、
TLPAIT-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号14)、及び
TLPAIV-G/S-IGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号15)、から選択される配列からなり、
この配列は、太字の残基を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換(例えば、保存的置換)を更に含み得る。
【0111】
追加の非常に特定の態様では、ペプチドは、
AIT-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号10)、
T-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号11)、
G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号12)、
TLPAIV-G/S-IGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号13)、
TLPAIT-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号14)、及び
TLPAIV-G/S-IGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号15)、から選択される配列からなる。
【0112】
任意選択的に、ペプチドは、
AITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号16)、
TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号17)、
GLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号18)、
TLPAIVGIGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号19)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)、及び
TLPAIVSIGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号21)、から選択される配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、
この配列は、太字の残基及びN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換(例えば、保存的置換)を更に含み得る。
【0113】
非常に特定の態様では、ペプチドは、
AITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号16)、
TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号17)、
GLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号18)、
TLPAIVGIGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号19)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)、及び
TLPAIVSIGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号21)、から選択される配列からなり、
この配列は、太字の残基を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換(例えば、保存的置換)を更に含み得る。
【0114】
追加の非常に特定の態様では、ペプチドは、
AITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号16)、
TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号17)、
GLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号18)、
TLPAIVGIGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号19)、
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)、及び
TLPAIVSIGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号21)、から選択される配列からなる。
【0115】
したがって、本開示のペプチドは、
KGDWLPAIT-G/S-LVGGVGLL(配列番号40)
KGDWLPAIV-G/S-IGGGVVLL(配列番号41)
KGDWIPALV-G/S-GGGGGGLL(配列番号42)
KGDWLPALV-G/S-IGGGVGLL(配列番号43)
KGDWIPALV-G/S-LGGGGGLL(配列番号44)
KGDWLIAIV-G/S-IGGG(配列番号45)
KGDWLPVIV-G/S-IGGG(配列番号46)
KGDWLPAIV-G/S-IGGGGGLL(配列番号47)
KGDWLPAIV-G/S-IGGGGGL(配列番号48)
KGDWLPAIV-G/S-IGGGGG(配列番号49)
KGDWLPAIV-G/S-IGGGG(配列番号50)
KGDWLPAIV-G/S-IGGG(配列番号51)
AIT-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号10)
T-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号11)
G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号12)
TLPAIV-G/S-IGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号13)
TLPAIT-G/S-LVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号14)
TLPAIV-G/S-IGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号15)、から選択されるアミノ酸配列を有し得、
この配列は、太字の残基及びN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換(例えば、保存的置換)を含み得る。
【0116】
非常に特定の態様では、ペプチドは、
KGDWLPAITGLVGGVGLL(配列番号52)
KGDWLPAIVSIGGGVVLL(配列番号53)
KGDWIPALVGGGGGGGLL(配列番号54)
KGDWLPALVSIGGGVGLL(配列番号55)
KGDWIPALVGLGGGGGLL(配列番号56)
KGDWLIAIVGIGGG(配列番号57)
KGDWLPVIVGIGGG(配列番号58)
KGDWLPAIVGIGGGGGLL(配列番号59)
KGDWLPAIVGIGGGGGL(配列番号60)
KGDWLPAIVGIGGGGG(配列番号61)
KGDWLPAIVGIGGGG(配列番号62)
KGDWLPAIVGIGGG(配列番号63)
AITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号16)
TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号17)
GLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号18)
TLPAIVGIGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号19)
TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)
TLPAIVSIGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号21)、からなる群の中で選択されたアミノ酸配列を有し、
この配列は、太字の残基及びN末端又はC末端における1~6個のアミノ酸の付加を除く、任意の位置での1個のアミノ酸の1、2、又は3個の置換(例えば、保存的置換)を含み得る。
【0117】
特定の態様では、ペプチドは、35、34、33、32、31、又は30個以下のアミノ酸、特に25又は20個以下のアミノ酸の長さを有する。
【0118】
特定の態様では、ペプチドは、天然には見出されない。ペプチドは、非天然ペプチドである。それは、精製され得る、単離され得るか、又は組換えられ得る。それは、周知のペプチド合成方法によって製造され得る。
【0119】
本明細書に開示されるペプチドのN末端及びC末端は、任意選択的に、タンパク質分解から保護され得る。好ましい実施形態では、N末端は、アセチル基の形態であり得、かつ/又はC末端は、アミド基の形態であり得る。好ましい実施形態では、ペプチドは、遊離C末端を有する。
【0120】
代替的又は追加的に、タンパク質分解に耐性を示すペプチドの内部修飾も企図され、例えば、少なくとも-CONH-ペプチド結合が修飾され、(CH2NH)還元結合、(NHCO)レトロ-インベルソ結合、(CH2-O)メチレン-オキシ結合、(CH2-S)チオメチレン結合、(CH2CH2)カルバ結合、(CO-CH2)セトメチレン結合、(CHOH-CH2)ヒドロキシエチレン結合)、(N-N)結合、E-アルセン結合、又は-CH=CH-結合によって置き換えられる。特定の態様では、ペプチドは、本明細書に開示される任意のペプチドのレトロ類似体(同じ配列であるが逆方向)又は本明細書に開示される任意のペプチドのレトロインベルソ類似体(同じ配列であるが逆方向であり、LからDに反転したアミノ酸のキラリティ)であり得る。
【0121】
例えば、ペプチドは、アセチル化、アシル化、アミド化、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリスチル化、酸化、リン酸化反応などによって修飾され得る。
【0122】
本開示によるペプチドは、希少なアミノ酸である1つ以上のアミノ酸、特にヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、アロヒドロキシリシン、6-N-メチルリシン、N-エチルグリシン、N-メチルグリシン、N-エチルアスパラギン、アロ-イソロイシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルバリン、ピログルタミン、アミノ酪酸、又は合成アミノ酸、特にオルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、及びシクロヘキシル-アラニンを含み得る。
【0123】
任意選択的に、ペプチドは、任意選択的に、リンカー又はスペーサー(例えば、ジグリシン)を介して追加の部分に結合して、例えば、コンジュゲートを形成することができる。任意選択的に、ペプチドは、融合タンパク質の一部であり得る。追加の部分は、ホーミングペプチド、安定化剤、例えば、PEG(ポリエチレングリコール)、オリゴ-N-メトキシ-エチルグリシン(NMEG)、アルブミン、アルブミン結合タンパク質又は免疫グロブリンFcドメイン、親和性タグ、例えば、免疫タグ、ビオチン、レクチン、又はキレート剤、Hisタグなどの精製タグ、光学タグ、キレートランタミド、蛍光染料、又はFRET/BRETアクセプター/ドナーなどの検出可能な標識、標的化部分、分泌シグナルペプチド、又はそれらの組み合わせであり得る。この追加の部分は、例えば、細胞、例えば、がん細胞又は乏突起膠細胞の特異的標的化を可能にすることができる。例えば、ペプチドは、Nguyenら(J Control Release.(2019)298:142-153)又はGamperら(2019,Cancers,11,1609)に詳細されるナノキャリアに結合した標的化部分と組み合わせられ得る。したがって、特定の態様では、本開示は、本開示のペプチドに結合したナノキャリア(例えば、ナノ粒子)に関する。ナノキャリアは、例えば、人工ナノキャリア又はウイルス由来のナノ粒子であり得る(Steinmetz et al.,Org.Biomol.Chem,2007,5,2891-2902、Hashizume et al.,Am.J.Pathol.2000,156,1363-1380、Maeda et al,J.Control.Release,2000,65,271-284、Allen et al.,Science 2004,303,1818-1822、Cho et al.,J.Vis.Exp.2011,52,e2808、Gamper et al,2019,Cancers,11,1609)。ペプチドは、神経系(例えば、中枢神経系(CNS))にペプチドを標的とする、及び/又はペプチドの血液脳関門を越えたCNSへの侵入を容易にする、部分に結合し得る。
【0124】
追加の部分は、ペプチドのN末端又はC末端のいずれかに添加することができ、又はペプチドのアミノ酸のうちの1つ以上の側鎖に(例えば、リジン又はシステイン残基に)結合し得る。好ましくは、追加の部分は、膜アンカーモチーフを担持する末端で融合又はコンジュゲートされる。
【0125】
本開示の別の態様では、ペプチドは、尿クリアランス及び使用される治療用量の減少、並びに血漿中の半減期の増加のために、ペプチドのC末端又はリジン残基によって、ポリエチレングリコール(PEG)分子などのポリマーに、特に1500MW又は4000MWのPEGと共有結合される。また別の実施形態では、ミクロスフェアを形成する薬物送達系のための生分解性及び生体適合性ポリマー材料にペプチドを含めることによって、ペプチドの半減期が、増加される。ポリマー及びコポリマーは、例えば、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)である(US2007/0184015に示すように)。
【0126】
本開示はまた、本開示によるペプチドの薬学的に許容される塩を包含する。薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸などの薬学的に許容される無機酸の塩、酢酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、アスコルビン酸、及び酒石酸などの薬学的に許容される有機酸の塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、若しくはアンモニウムの塩などの薬学的に許容される無機塩基の塩、又は薬学的技術で一般的に使用される塩化性(salifiable)窒素を含有する有機塩基の塩であり得る。当該塩を調製するための方法は、当業者に周知である。
【0127】
特定の態様では、本開示は、本開示によるペプチドをコードするmRNA分子などの核酸に関する。
【0128】
薬学的組成物
本開示は、本明細書に開示されるペプチドを含む薬学的組成物に関する。ペプチドは、活性成分である。
【0129】
薬学的組成物は、薬学的に許容されるビヒクルを更に含み得る。
【0130】
ペプチドを含む薬学的組成物は、当業者によって既知の標準的な薬務(Lippincott Williams & Wilkins,2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New York)に従って製剤化される。
【0131】
例えば、組成物は、エマルジョン、マイクロエマルジョン、水中油型エマルジョン、無水脂質、及び他のタイプのエマルジョンを含むことができる。組成物は、希釈剤、賦形剤、安定剤、及び防腐剤などの1つ以上の添加剤を更に含み得る。
【0132】
一態様では、本開示は、ペプチド又はその塩を含む本開示による薬学的組成物の非経口注射のための安定な製剤を提供し、ペプチドは、乾燥され、次いで使用前に溶媒中で再構成される。ペプチド(又は、製剤が2つ以上のペプチドを含む実施形態では、各ペプチド)を不揮発性緩衝液と混合し、乾燥して乾燥ペプチド粉末にする。好適な緩衝液としては、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一態様では、緩衝液は、グリシン緩衝液である。別の態様では、緩衝液は、クエン酸緩衝液及びリン酸緩衝液の混合物である。代替的に、本開示による薬学的組成物は、水性状態で保存され得る。溶液は、必要に応じて、活性原薬と適合性がなければならない更なる添加剤又は賦形剤を含み得、それらが凍結乾燥段階中に除去されない場合、それらはまた、投与経路と適合性がなければならない。
【0133】
経口投与の場合、組成物は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、並びにシロップ剤、エリキシル剤、及び濃縮点滴剤などの液体調製物などの従来の経口剤形に製剤化され得る。例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、マグネシウム、炭酸塩などを含む非毒性の固体担体又は希釈剤を使用することができる。圧縮錠剤の場合、結合剤(粉末原料に粘着性を与える薬剤)も必要である。例えば、デンプン、ゼラチン、ラクトース又はデキストロースなどの糖、並びに天然又は合成ガムは、結合剤として使用され得る。錠剤の分解を容易にするために、錠剤中に崩壊剤も必要である。崩壊剤としては、デンプン、粘土、セルロース、アルギン、ゴム、及び架橋ポリマーが挙げられる。更に、潤滑剤及び流動促進剤は、製造プロセス中の表面への錠剤材料への接着を防止し、製造中の粉末材料の流動特性を改善するために、錠剤にも含まれる。コロイド状二酸化ケイ素は、流動促進剤として最も一般的に使用され、タルク又はステアリン酸などの化合物は、潤滑剤として最も一般的に使用される。
【0134】
経皮投与の場合、組成物は、軟膏、クリーム又はゲル形態に製剤化することができ、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミドなどの適切な浸透剤又は洗剤は、浸透を促進するために使用され得る。
【0135】
経粘膜投与の場合、鼻腔用スプレー、肺内吸入、直腸又は膣坐剤を使用することができる。一実施形態では、本開示のペプチド、その塩、又は組成物は、当該技術分野で既知の方法による肺内薬物送達デバイスを使用して投与される乾燥粉末又は液体製剤のいずれかを使用して、肺内経路によって投与され得る。活性化合物(ペプチド又はその塩)は、当該技術分野で既知の方法によって、既知の坐剤基剤のうちのいずれかに組み込むことができる。かかる基剤の例としては、ココアバター、ポリエチレングリコール(カーボワックス)、ポリエチレンソルビタンモノステアレート、及び融点又は溶解速度を変更するためのこれらの他の適合性材料との混合物が挙げられる。
【0136】
薬学的組成物の形態、投与経路、投薬量及びレジメンは、自然に、治療される状態、疾患の重症度、患者の年齢、体重、及び性別などに依存する。
【0137】
本開示の薬学的又は治療的組成物は、局所投与、経口投与、非経口投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍内投与、皮下投与、又は眼内投与などのために製剤化することができる。非経口投与の場合、組成物は、皮内、皮下、筋肉内、又は静脈内に注射され得る。
【0138】
一実施形態では、本開示の薬学的又は治療的組成物は、頭蓋内注射又は脳脊髄液への注射(例えば、髄膜注射)などの、対象の神経系、例えば、中枢神経系(CNS)への投与のために製剤化される。
【0139】
特定の態様では、本開示による薬学的組成物は、体重1kg当たり0.01ng~10mgの本開示のペプチドを含む。一態様では、本開示による薬学的組成物は、体重1kg当たり0.1ng~1gの本開示のペプチドを含む。
【0140】
治療的用途
本開示の拮抗ペプチドは、阻害シグナル伝達経路Sema3A-ニューロピリン1-プレキシン-A1に関与するプレキシン-A1受容体を遮断することによって予防又は治療することができる任意の疾患又は障害の治療に有用であり得る。
【0141】
一実施形態では、本開示は、脱髄性疾患の治療に使用するための本明細書に記載されるペプチド、その塩又は組成物、脱髄性疾患の治療のための薬剤の製造のための本明細書に記載されるペプチド、その塩又は組成物の使用、及び対象における髄鞘疾患の治療のための方法に関し、治療有効量の、本明細書に記載されるペプチド、その塩又は組成物を対象に投与することを含む。ペプチド又はその塩の治療効果は、乏突起膠細胞の移動及び分化に対するSema3A阻害効果の阻害を伴う可能性があり、それによって脱髄が抑制され、及び/又は再ミエリン化が促進される。
【0142】
脱髄性疾患は、自己免疫脱髄性疾患であり得る。一実施形態では、脱髄性疾患は、多発性硬化症、横断性骨髄炎、視神経脊髄炎(デビック病)、急性出血性白質脳炎、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、シルダーのびまん性脳硬化症、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、カナバン病、バロ病、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、HTLV-I関連性脊髄症(HAM)、球様細胞白質萎縮症、異染性白質萎縮症、ペリツェウス・メルツバッハー病、進行性多巣性白質脳症、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、橋中心髄鞘崩壊症、及びギラン-バレー症候群(GBS)又は慢性炎症性脱髄性多発性神経根障害を含む多発性神経根障害である。更なる実施形態では、脱髄性疾患は、多発性硬化症などの自己免疫又は炎症性脱髄性疾患である。更なる実施形態では、多発性硬化症は、再発寛解型多発性硬化症である。別の実施形態では、多発性硬化症は、進行性多発性硬化症である。
【0143】
更に、ペプチド、その塩、又は組成物は、脱髄性疾患の治療のために使用される他の活性成分と組み合わせて使用することができるか、又は薬学的組成物は、かかる他の活性成分を更に含み得る。例えば、ペプチド、その塩、又は組成物は、テリフルノミド、インターフェロンベータ-la、インターフェロンベータ-lb、グラチラマーアセテート、フィンゴリモド、ミトキサントロン、又はコルチコステロイドなどの多発性硬化症の治療に使用される活性成分と組み合わせて使用することができる。一実施形態では、ペプチド、その塩、又は組成物は、フィンゴリモドと組み合わせて使用される。
【0144】
本開示の拮抗ペプチド又はその塩は、がん、より具体的には、プレキシンA1/NRP1発現がんの治療に有用であり得る。実際には、それは、Sema3A依存性がん細胞の移動を遮断し、それによって転移の発生を防止する又は低減させるために使用され得る。加えて、実施例に示すように、ペプチドは、抗血管新生効果を示すことができ、それによってがんに対する治療効果を有する。(Albrecht et al,Frontiers in Oncology,2020,10,Article 519)。NRP1/PlexA1ヘテロ二量体化の破壊は、プレキシンA1の血管新生促進活性を遮断し、腫瘍増殖を阻害することが以前に示されている(Jacob et al,2016,Oncotarget,7,57851-57865)。
【0145】
したがって、本開示は、がん(プレキシンA1/NRP1発現がん)の治療に使用するための本明細書に記載されるペプチド、その塩又は組成物、がん(プレキシンA1/NRP1発現がん)の治療のための薬剤の製造のための本明細書に記載されるペプチド、その塩又は組成物の使用、及び対象におけるがん(プレキシンA1/NRP1発現がん)の治療のための方法に関し、治療有効量の、本明細書に記載されるペプチド、その塩又は組成物を対象に投与することを含む。ペプチドの治療効果は、特にがん細胞の移動を低減させることによる、転移の発生の減少、腫瘍増殖の減少、及び/又は血管新生の減少を伴い得る。
【0146】
がんは、造血がん又は固形腫瘍、好ましくは固形腫瘍から選択され得る。がんの例としては、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、及び膵島細胞がんを含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺がん、黒色腫、並びに白血病又はリンパ系悪性腫瘍を含む、固形腫瘍及び血液がんが挙げられるが、これらに限定されない。かかるがんのより具体的な例としては、扁平上皮がん(例えば、上皮性扁平上皮がん)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、及び肺扁平上皮がんを含む)、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん(消化管がんを含む)、膵臓がん、膠芽腫、神経芽細胞腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、尿道がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん又は腎臓がん(kidney or renal cancer)、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝がん、肛門がん、陰茎がん、睾丸がん、食道がん、胆道の腫瘍、並びに頭頸部がんが挙げられる。任意選択的に、がんは、膠芽腫又は胃がんなどのプレキシンA1を過剰発現するがんであり得る。好ましい態様では、がんは、毛様細胞性星状細胞腫、びまん性星状細胞腫、未分化星状細胞腫、膠芽腫、乏突起神経膠腫、上衣腫瘍、髄芽腫、松果体腫瘍、髄膜腫瘍、及び生殖細胞腫瘍、特に膠芽腫などのCNSがんである。
【0147】
更に、ペプチド、その塩、又は組成物は、がんの治療に使用される他の活性成分又は療法と組み合わせて使用することができるか、又は薬学的組成物は、かかる他の活性成分を更に含み得る。がんの治療のために使用される活性成分又は療法の例には、化学療法(例えば、ビンカアルカロイド、微小管形成を妨げる薬剤(例えば、コルヒチン及びその誘導体)、抗血管新生剤、治療用抗体、EGFR標的化剤、チロシンキナーゼ標的化剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、遷移金属錯体、プロテアソーム阻害剤、代謝拮抗剤(例えば、ヌクレオシド類似体)、アルキル化剤、白金系薬剤、アントラサイクリン抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、マクロライド、レチノイド(例えば、全てのトランスレチノイン酸又はその誘導体)、ゲルダナマイシン又はその誘導体(17-AAG)、手術、免疫チェックポイント阻害剤又は免疫療法剤(例えば、抗PD-1/PD-L1抗体などのPD-1/PD-L1阻害剤、抗CTLA-4抗体などのCTLA-4阻害剤、抗B7-1/B7-2抗体などのB7-1/B7-2阻害剤、抗TIM3抗体などのTIM3阻害剤、抗BTLA抗体などのBTLA阻害剤、抗CD47抗体などのCD47阻害剤、抗GITR抗体などのGITR阻害剤)、腫瘍抗原に対する抗体(例えば、抗CD19、抗CD22抗体)、細胞ベースの療法(例えば、CAR T細胞、CAR NK細胞)、並びにIL-2、IL-7、IL-21、及びIL-15などのサイトカインが含まれる。
【0148】
更なる態様では、本開示は、異常な血管新生に関連する疾患若しくは障害の治療に使用するための本明細書に記載されるペプチド、その塩又は組成物、異常な血管新生に関連する疾患若しくは障害の治療のための薬剤の製造のための本明細書に記載されるペプチド、その塩又は組成物の使用、及び対象における異常な血管新生に関連する疾患若しくは障害の治療のための方法に関し、治療有効量の、本明細書に記載されるペプチド、その塩又は組成物を対象に投与することを含む。ペプチドの治療効果は、血管新生の阻害を伴い得る。
【0149】
本明細書で使用される場合、「異常な血管新生に関連する疾患又は障害」という用語は、血管新生を媒介するプロセスの異常調節によって引き起こされる疾患を指す。特に、異常な血管新生に関連する疾患は、血管腫、乾癬、カポジ肉腫、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、腫瘍増殖、炎症、関節リウマチ、湿式加齢黄斑変性症(AMD)、脈絡膜新生血管、眼又は網膜新生血管、並びに糖尿病性網膜症を指す。特定の態様では、異常な血管新生に関連する疾患又は障害は、腫瘍増殖及び転移、血管腫、乾癬、カポジ肉腫、眼新生血管、関節リウマチ、子宮内膜症、又はアテローム性動脈硬化症の中から選択される。
【0150】
プレキシンA1及び/又はNRP1の阻害はまた、免疫細胞浸潤を阻害し、炎症を低減し、炎症性疾患及び自己免疫疾患の治療に好適であることが示されている(例えば、EP 2 497 498 A1及びWO2016/033699を参照されたい)。したがって、別の態様では、本開示は、炎症性又は自己免疫疾患又は状態の治療に使用するための本明細書に記載されるペプチド、その塩又は組成物、炎症性又は自己免疫疾患又は状態の治療のための薬剤の製造のための本明細書に記載されるペプチド、その塩又は組成物の使用、及び対象における炎症性又は自己免疫疾患又は状態の治療のための方法に関し、治療有効量の、本明細書に記載されるペプチド、その塩又は組成物を対象に投与することを含む。ペプチドの治療効果は、免疫細胞浸潤及び/又は炎症の阻害を伴い得る。
【0151】
一実施形態では、炎症性又は自己免疫性疾患又は状態は、貧血(再生不良性貧血、溶血性貧血、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少症)、自己免疫性肝炎、虹彩毛様体炎、強膜炎、ブドウ膜炎、睾丸炎、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病、橋本甲状腺炎、若年性糖尿病、炎症性腸疾患、アジソン病、脱髄性脳炎、多発性硬化症、敗血症性ショック、関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、皮膚炎症、糖尿病、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症(AMD)、未熟期網膜症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、加齢性認知低下/アルツハイマー病、脳卒中、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、又は乾癬である。
【0152】
本発明の更なる態様及び利点は、以下の実験セクションに開示され、これは例示とみなされるべきであり、本出願の範囲を限定するものではない。いくつかの参考文献が、本明細書に引用されており、これらの引用された参考文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例1】
【0153】
実施例1:近接ライゲーションアッセイ
ニューロピリン-1及びプレキシンA1のヘテロ二量体化を破壊する膜標的化ペプチド(MTP)の能力を実証するために、細胞をLab-Tek Permanoxスライド上に一晩播種し、次いで、適切なペプチドで1時間処理した。1% PFAで10分間固定した後、スライスをPBS/0.1% Triton(登録商標) X-100で透過化した。一次抗体(Evitria由来のNRP1、1:500、及びAbcam由来のプレキシン-A1、ab23391、1:200)を、PBS中4℃で一晩インキュベートした。次いで、受容体二量体(ニューロピリン-1/プレキシン-A1)を視覚化することを可能にする近接ライゲーションアッセイを、「検出オレンジ」キット(Sigma)を用いて製造元の推奨に従って行った。ImageJソフトウェアを使用して、相互作用(細胞表面の蛍光ドット)の定量化を行った。
【0154】
結果は、GUNGNIRがNRP1/プレキシンA1相互作用の数の-60%の減少を生じたことを示す。MIMMINGは、同様の-51%の減少を生じたが、対照不活性ペプチドSURTRは、NRP1/プレキシンA1二量体の数に影響を及ぼさなかった(表1)。
【表4】
【0155】
図1A及び1Bに見られるように、GUNGNIR及びMIMMINGの両方は、NRP1/プレキシンA1相互作用の数において用量依存的な効果を示し、IC
50はそれぞれ、74pM及び17nMであった。
【0156】
MTPがNRP1/プレキシンA1二量体を破壊する能力を実証する一方で、これらの結果は、MTPがNRP1/プレキシンA1受容体二量体化の配列依存性のブロッキングを示すことを示す。
【0157】
実施例2:細胞移動アッセイ
MTPが乏突起膠細胞株Oli-neuの移動に対するSema3Aの負の効果を救援することを実証するために、xCELLigence RTCA DP Instrument(ACEA Biosciences Inc.)とTranswell CIM-Plate 16(8μmの細孔径フィルターACEA Biosciences,Inc.)を使用した細胞移動アッセイを行った。細胞を、ビヒクル単独又はMTPで1時間予備インキュベートした。1×105細胞を、150μlの培地を用いて上部チャンバに播種した。下部ウェルは、化学吸引用に2%のウシ胎仔血清を補充した培地160μl、及び反発用に20ng/mlのSema3A(組換えマウスセマフォリン3A Fcキメラタンパク質担体フリーref:5926-S3/CF;RnDシステム)を含有した。分析は、製造元の指示書に従って移動の8時間後に行った。データは、陽性対照の移動、すなわち、2%の血清を有し、Sema3Aを有しないOli-neuの移動の割合で表される。
【0158】
結果は、異なる配列を有するMTPが、対照の移動を救援して、それによってSema3A阻害効果を打ち消すことを示す(
図2A)。G/S-X-X-X-Gモチーフを有するペプチドは、G/S-X-X-X-GモチーフがG-X-X-X-S又はS-X-X-X-Aによって置き換えられたペプチドとは対照的に、移動を救援した(SKIRNIRがn=1であることを除いてn=3、
図2B)。ペプチドが、N末端又はC末端側の救援移動において、G-X-X-X-Gモチーフの隣に欠失を有するが、モチーフのうちの1つのGの欠失が、ペプチド活性を無効にする(
図2C)。(NterGp)とG-X-X-X-Gモチーフとの間のN末端短縮は、ペプチド効率を損なう((BROKK及びEITRIではn=1であることを除いてn=3、
図2D)。(CterpolyD/E)を有する他のペプチド配列の中で、RATI、GUNGNIR、及びMIMMINGの救援移動(n=3、
図2E)。したがって、この機能的アッセイにおいて、GUNGNIRが1.2nMのIC
50を有することが決定された(
図2F)。最後に、MTP-PlexA1(配列番号1)及びそのレトロ類似体であるODIN(配列番号81)(
図2G)について同様の活性が観察され、本明細書に記載されるペプチドのレトロ類似体がそれらの対応するペプチドのレトロ類似体と同様の生物学的活性を示す証拠を提供した。
【0159】
全体的に、これらの結果は、MTPが、乏突起膠細胞の移動に対するSema3A阻害効果の配列依存性救援を示すことを示す。それは、最小限のG/S-X-X-X-Gモチーフ(
図2A~C)及び(N-terGp)(
図2D)及び(C-terGp)(
図2E)からの好適な距離に依存する。
【0160】
実施例3:溶解性研究
MTPの溶解度を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はPBS及びドデシル硫酸リチウム(LDS)の混合物のいずれかで試験した。結果を表1に報告する。
【表5】
【0161】
吸光度測定による濃度の検出に失敗した場合、CterpolyD/Eを有しないペプチドは、PBS 100%に可溶性ではなく、LDSなどの追加のビヒクルを必要とするが、CterpolyD/Eを有するペプチドは、PBS 100%に可溶性であることを示す。これは、より具体的には、C末端ドメインを除いて同じ配列を含むMTP-PlexA1及びDRAUPNIRによって例示された(MTP-PlexA1:TLPAIVGIGGGGGLLLLVIVAVLIAYKRK(配列番号1)、DRAUPNIR:TLPAIVGIGGGGGLLLEVIVEVLIAYEEEEE(配列番号72)。
【0162】
実施例4:生体内分布研究
インビボでのMTPのバイオアベイラビリティに対処するために、3匹のCD1の8週齢の雌マウスを、用量応答実験において、1、10、100、及び1000μg/kgの用量でGUNGNIR-cy5の腹腔内注射に供した。蛍光は、先に記載されているように、Bioimager(Nightowl LB-983,Berthold)のおかげで、ガス麻酔された動物で検出された(Destouches et al.2011,Cancer Res.,71(9):3296-305、Page et al.2011,Ann Rheum Dis.;70(5):837-43)。マウスを4時間で殺処分した後、各臓器について蛍光を測定した。分析のために10秒間の間に収集を行い、Nightowlプログラムを用いて蛍光の表面及び強度を測定した。
図3に示されるように、GUGNIRは、用量依存性様式に除去臓器(肝臓及び腎臓)を含む大きな生体分布プロファイルを示している。脳及び脊髄の含有量は、末梢臓器(心臓、肺)で測定されたものと同様であり、血液脳関門の効率的な交差を示した。したがって、GUNGNIRは、中枢神経系に到達することができ、神経変性疾患などの神経疾患の治療に好適であり得る。
【0163】
実施例5:活性実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の誘導及び評価
GUNGNIRの治療可能性を評価するために、誘導脱髄を患っているマウスにおけるインビボ投与を行った。マウスを、Janvier(免疫化を行う場合、8~9週齢)から購入した。全てのマウスを、自由に食物及び水にアクセスできる制御された環境(25℃)で給餌し、12時間/12時間の昼/夜サイクルで飼育した。マウスを、2匹1組で飼育し(ケージ毎に等しい数の各処置)、ケージを毎週交換した。全ての操作は、午前中に行われた。SJL/JRj雌マウスを、PLP免疫化を伴うEAEプロトコルに使用し、C57BL/6雌マウスを、EAE MOG免疫化に使用した。環境に順応して1週間後、マウスに、Hooke laboratories(EK-2120又はEK-2110)によって開発されたキット(イソフルランによる短時間の麻酔中)を免疫化した。EAE PLP:CFA(完全なフロインドアジュバント)中のPLP139-151断片(HSLGKWLGHPDKF、配列番号74)のエマルジョンを、製造元のプロトコルに従い、50μlの4回の皮下注射として投与した。マウスは、免疫化当日に、0.4μgの百日咳毒素を腹腔内投与された。EAE MOG:CFA(完全なフロインドアジュバント)中のMOG35-55断片(MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK、配列番号75)のエマルジョンを、製造元のプロトコルに従い、100μlの2回の皮下注射として投与した。マウスは、免疫化当日に、0.4μgの百日咳毒素を腹腔内投与され、1日目に第2の用量を投与された。
【0164】
1週間に3回(月曜日/水曜日/金曜日)、PBS(10μg/kg)中で希釈した100μlのPBS又はGUNGNIRの腹腔内投与に依存して、免疫化の1日後(EAE PLP)又は免疫化の3日後(EAE MOG)にペプチド処置を開始した。臨床スコアを、免疫化後6日目から毎日評価し、ペプチド注射の前に体系的に行った。EAEは、以下の基準に従って、盲検下で毎日臨床的に評価された:0、疾患なし;1、尾音低下;2、立ち直り反射及び部分的後肢の感覚異常;3、完全な後肢麻痺;4、部分的前肢麻痺を伴う後肢麻痺;並びに5、瀕死又は死亡。
【0165】
分析は、動物がPLPにおいて10μg/kgのGUNGNIRを受けたときの臨床スコアの有意な低下を示した(再発寛解型の多発性硬化症を模倣する)(
図4A)。同様に、GUNGNIRを受けたマウスの臨床スコアの有意な減少は、EAE MOGモデル(進行性多発性硬化症を模倣する)において過剰に認められた(
図4B)。
【0166】
全体的に、これらの結果は、GUNGNIRがPLP及びMOGモデルにおけるEAEの重症度を低減することを示す。
【0167】
実施例6:血管新生アッセイ
血管新生関連病態(がん及び異常な血管形成につながる他の疾患を含む)におけるプレキシン-A1を標的とするMTPの臨床的可能性に取り組むために、血管新生を遮断するペプチドの能力を測定する血管新生アッセイを行った。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、内皮細胞増殖サプリメント(ECGS、4μL/mL)、ウシ胎仔血清(FCS、20μL/mL、Thermo Fisher Scientific)、ヒト上皮増殖因子(hEGF、0.1ng/mL)、及びヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(hbFGF、1ng/mL、Thermo Fisher Scientific)を補充した内皮細胞培養培地(PromoCell、Heidelberg、Germany)中、37℃、5%CO2下で培養した。アッセイのために、プレート(15μスライド血管新生、Ibidiプレート、Biovalley、Nanterre、France)を、マトリゲル(Merck-Millipore、Billerica、MA、USA)を用いて37℃で1時間コーティングした。続いて、ペプチド処理を伴う培養培地(50μL)中の5000個のHUVECを各ウェルに3時間(37℃、5%CO2)添加した。各ウェル中の細胞を、DIC顕微鏡(Leitz DM RB、Leica、Nanterre、France)によってイメージングし、閉じられたチューブの数を、条件毎に3~5ウェルについて計数した。
【0168】
結果は、GUNGNIR及びRATIが血管新生を阻害する能力を示すが、不活性対照ペプチドHODRは、このアッセイにおいて効果を示さなかった(表2)。GUNGNIRのいくつかの類似体も、血管新生を阻害することが示された(
図5A)。
【表6】
【0169】
実施例7:MTTアッセイ
MTPの毒性を、MTTアッセイを使用して評価した。HUVEC細胞を、ウェル(96ウェルプレート内)によって100μL中の20,000個の細胞の濃度でこのアッセイのために使用した。37℃での24時間のインキュベーションした後、ペプチド又はそのビヒクル(PBS)を、10-7Mの濃度で添加した。37℃で4時間インキュベーションした後、培地を、除去し、Geyの平衡塩溶液(GBSS)を用いて1/20で希釈したMTT(5mg/mLのストック濃度)に置き換えた。37℃で4時間インキュベーションした後、細胞を、ウェルによって100μLのイソプロパノールで溶解し、プレートを、570nmの波長で分光光度法によって分析した。
【0170】
【0171】
実施例8:再ミエリン化試験
実験的な設計及び条件
次に、GUNGNIRが、マウスモデルにおいて、銅キレート剤であるキュプリゾンによって誘導された脱髄後のCNSの再ミエリン化及び運動機能回復を誘導することができるかどうかを評価した。キュプリゾンによる経口中毒は、数日以内に乏突起膠細胞アポトーシスを誘導し、それに続いて脳内の先天性免疫細胞、すなわち、星状細胞及び小膠細胞の活性化が緊密に続き、最終的には、異なる白質及び灰白質の脳領域の脱髄につながる。
【0172】
以下の処置群が研究に含まれた:
(a)対照(n=5)
(b)5週間のキュプリゾン(脱髄を示すため、n=10)
(c)5週間のキュプリゾン、続いて6日間連続してビヒクルによる処置(n=10)
(d)5週間のキュプリゾン、続いて6日間連続してGUNGNIR(10μg/kg)による処置(n=10)
(e)5週間のキュプリゾン、続いて6日間連続してGUNGNIR(100μg/kg)による処置(n=10)
(f)5週間のキュプリゾン、続いて11日間連続してビヒクルによる処置(n=10)
(g)5週間のキュプリゾン、続いて11日間連続してGUNGNIR(10μg/kg)による処置(n=10)
(h)5週間のキュプリゾン、続いて11日間連続してGUNGNIR(100μg/kg)による処置(n=10)
【0173】
5週間連続して、粉砕した標準的なげっ歯類の飼料に混合された0.25%キュプリゾン[ビス(シクロヘキサノン)オキサルジヒドラゾン;Sigma-Aldrich Inc.、St Louis、MO、USA]を含有する餌で、約8週齢(19~21g)の雄マウスを中毒させることによって、急性脱髄が誘導された。ビヒクル又はGUNGNIR化合物(10及び100μg/kg)による処置を、3週間のキュプリゾン投与後(すなわち、4週目の開始時)から実験の終了後(すなわち、6又は11日の再ミエリン化後)まで、3回/週の腹腔内(i.p.)注射処置によって行った。
【0174】
髄鞘形成の評価は、免疫組織化学及び組織化学によって行われた。中枢神経系内の主要なミエリンタンパク質であるミエリンマーカープロテオリピドタンパク質(PLP)を、以下の抗体:Bio-Radカタログ番号MCA839G、RRID:AB_2237198、1:5000を使用して免疫組織化学によって可視化した。無傷及び損傷したミエリンを、ルクソールファストブルー(LFB)/過ヨウ素酸-Shiff(PAS)組織化学染色を使用して更に可視化した。
【0175】
高速腹部平面ビデオ撮影を使用して、運動機能の評価(歩行分析)を行った。歩行分析は、前述のように、DigiGait(商標)15.0分析ソフトウェア(Mouse Specifics,Inc.;Quincy MA)とともにDigiGait(商標)イメージングシステムを使用して、全ての実験マウスで実験の終了前に1回行った(Zhan et al.,2019)。
【0176】
個々の実験群間の差異を、適切な多重比較で統計的に試験した。歩行分析群では、d~e(すなわち、6日間の再ミエリン化)及びf~h(すなわち、11日間の再ミエリン化)を、Kolmogorov-Smirnov検定を使用することによって、正規のデータ分布について別々に試験した。その後、パラメトリックデータについては通常の一元配置分散分析、続いてダネットの多重比較検定を行ったが、非パラメトリックデータについてはKruskal-Wallis検定、続いてダンの多重比較検定を行った。いずれの場合にも、ビヒクルを低用量群及び高用量群と比較することによって、複数の比較を行った。
【0177】
組織学的LFB/PAS関連データについて、非パラメトリックKruskal-Wallis検定、続いてDunnsの多重比較検定を、6日間及び11日間の再ミエリン化のために別々に行った。免疫組織学的抗PLP関連データについて、パラメトリック通常の一元配置分散分析、続いてダネットの多重比較検定を、6日間及び11日間の再ミエリン化のために別々に行った。全ての結果を、平均±標準誤差として示す。
【0178】
群間の重み付けは、通常の一元配置分散分析、続いてダネットの多重比較検定又は非パラメトリックKruskal-Wallis検定、続いてダンの多重比較検定のいずれかを使用して試験した。
【0179】
結果
A.歩行分析
各足(すなわち、左前足、右前足、左後足、右後足)について、最大41の異なる歩行メトリックをDigiGait(商標)イメージングソフトウェアによって別個に評価した。
図6A~Bに要約されるように、再ミエリン化から6日後、1歩行パラメータは、ビヒクルと10μg/kgの群との間で有意に異なり、1歩行パラメータは、ビヒクルと100μg/kgの群との間で有意に異なった。
図7A~Eに要約されるように、再ミエリン化から11日後、1歩行パラメータは、ビヒクルと10μg/kg群との間で有意に異なり、4歩行パラメータは、ビヒクルと100μg/kg群との間で有意に異なった。
【0180】
B.組織学
図8Aに示されるように、高い抗PLP染色強度が、対照マウスにおいて見出され、5週間のキュプリゾン処置マウス(5週間)において顕著な減少があった。6及び11日間の再ミエリン化期間中に染色強度が増加した。11日目に、抗PLP染色強度は、ビヒクル群と比較して100μg/kgで傾向的に高かった(p=0.071)。同じ染色パターンが、LFB処理切片で観察された。
図8Bに示されるように、高いLFB染色強度は、対照マウスにおいて見出され、5週間のキュプリゾン中毒マウス(5週間)において顕著な減少があった。再び、染色強度は、回復したが、より遅い範囲まで回復した。注目すべきことに、11日目のLFB染色強度は、ビヒクル群と比較して100μg/kgで有意に高かった(ビヒクルでは22±3.3であったのに対し、100μg/kgで処置したマウスでは40±5.8であった)。
【0181】
C.体重
実験の異なる時点で、体重を評価した。
図9Aに示されるように、キュプリゾン処置の開始前(すなわち、21日目)に、キュプリゾン処置群間でマウスの体重の有意差はなかった。一元配置分散分析、続いてDunnettの多重比較検定(6日群と11日群とを互いに別々に比較)。比較的に、
図9B及び
図9Cに示されるように、実験の開始時及びGUNGNIRで処置した個々の群の終了日に差は、観察されなかった。
図9D~Gに示すように、3週目及び5週目の体重の減少率は、ビヒクル処置群と比較して、GUNGNIR処置群のいくつかでは、有意に少なかった。
【0182】
実施例9:再発性寛解型実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE-PLP)モデルにおける併用療法
実験的な設計及び条件
GUNGNIR、フィンゴリモド、及びフィンゴリモドとGUNGNIRとの組み合わせの効果を、再発性寛解型実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE-PLP)マウスモデルにおいて研究した。処置は、PBS中のGUNGNIRについては10μg/kgで週3回腹腔内で(IP)、フィンゴリモドについては1mg/kgのIPでD12(ピーク)から毎日投与した。結果を、ビヒクル(PBS、次いでD12から25%エタノールを含むPBS)で週3回処置した対照群と比較した。処置は、GUNGNIRについては誘導(D1)後D2、及びフィンゴリモドについては誘導後D12で開始した。処置は、5週間投与した。スコアは、D7から毎日評価され、体重も評価された。
【0183】
マウスを、製造元の指示書に従って、Hooke Kit(商標)[ser140]-PLP139-151/CFA Emulsion PTX(カタログ番号EK-2120)で誘導した3%イソフルランで麻酔した。簡言すれば、マウスに、左右の臀部及び左右の肩に、各々、0.05mlのPLPエマルジョン(マウス1匹当たり合計0.2mlを意味する)を皮下注射した。次いで、百日咳毒素(PTX)の溶液を、百日咳バッチの濃度に従って、マウス1匹当たり30ngで腹腔内に注射した。
【0184】
結果
実験期間中、全てのマウスは、倫理的限界点(-20%)に達していない体重減少を示した。全ての群は、疾患の同様の経過を示しているため、比較を可能にする(
図10)。処置のいずれも、全ての実験群で類似していたピーク強度に影響を及ぼさなかった(
図11A)。しかしながら、3つの処置群は、対照群と比較して、有意な回復を示した(
図11A)。効果の振幅は、全ての処置について同様であったが、GUNGNIR+フィンゴリモド処置(組み合わせ)は、経時的により優れた有効性を示した(
図11A)。D24から、独立型のフィンゴリモド又はGUGNIRは中間スコアリングを示したが、GUNGNIR+フィンゴリモドの組み合わせは、スコアが1に達しないほぼ完全な保護効果を示した(
図11A)。個々のスコアの分析は、GUNGNIR+フィンゴリモドの組み合わせが、独立型の状態について見られるように、最も効率的な治療効果を提供し、変動が少ないことを確認した(
図11B~F)。
【0185】
実施例10:進行性実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE-MOG)モデルにおける併用療法
実験的な設計及び条件
GUNGNIR、フィンゴリモド、及びフィンゴリモドとGUNGNIRとの組み合わせの効果を、進行性実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE-MOG)マウスモデルにおいて研究した。処置は、PBS中のGUNGNIRについては10μg/kgで週3回腹腔内で(IP)、フィンゴリモドについては1mg/kgのIPでD14から毎日投与した。結果を、ビヒクル(PBS、次いでD14から25%エタノールを含むPBS)で週3回処置した対照群と比較した。処置は、GUNGNIRについては誘導(D1)後D3、及びフィンゴリモドについては誘導後D14で開始した。処置は、5週間投与した。スコアは、D7から毎日評価され、体重も評価された。
【0186】
マウスを、製造元の指示書に従って、Hookeキット(商標)MOG35-55/CFA Emulsion PTX(カタログ番号EK-2110)で誘導した3%イソフルランで麻酔した。簡言すれば、マウスに、0.1mlのMOGエマルジョンを上背中に皮下注射し、同様に0.1mlのエマルジョンを下背中に皮下注射した。2時間後、百日咳毒素(PTX)の溶液を、マウス1匹当たり80ngで腹腔内に注射した。同量のPTXの2回目のIP注射を24時間後に行った。
【0187】
結果
実験期間中、全てのマウスは、倫理的限界点(-20%)に達していない体重減少を示した。全ての群は、疾患の同様の経過を示しているため、比較を可能にする(
図12)。
【0188】
この実験では、対照群は、D17で疾患のピークに達した。対照群の全ての動物は、プロトコルの残りの13日間にわたって疾患の持続を示した(
図13A)。驚くべきことに、全ての処置動物は、D15からの疾患重症度の低下を示した。治療効果は、GUNGNIR+フィンゴリモドの組み合わせでは、D22から研究の最終日までのスコアが1未満でより強かった。独立型のフィンゴリモド又はGUGNIRは、中間スコアリングを示した。個々のスコアの分析は、GUNGNIR+フィンゴリモドの組み合わせが、最良の治療効果を示すことを確認した(
図13B~O)。興味深いことに、この群はまた、より小さな個体間の変動を示した。
【0189】
ペプチド配列
BALDR KGDWLPAITGLVGGVGLL(配列番号52)
FREYR KGDWLPAIVSIGGGVVLL(配列番号53)
BRAGI KGDWIPALVGGGGGGGLL(配列番号54)
NJORD KGDWLPALVSIGGGVGLL(配列番号55)
ULLR KGDWIPALVGLGGGGGLL(配列番号56)
SKOLL KGDWLIAIVGIGGG(配列番号57)
HATI KGDWLPVIVGIGGG(配列番号58)
plexA1-S2 KGDWLPAIVGIGGGGGLL(配列番号59)
FJALAR KGDWLPAIVGIGGGGGL(配列番号60)
GALAR KGDWLPAIVGIGGGGG(配列番号61)
IVALDI KGDWLPAIVGIGGGG(配列番号62)
ALVISS KGDWLPAIVGIGGG(配列番号63)
KVASIR AITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号16)
GERD TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号17)
THRUD GLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号18)
RATI TLPAIVGIGGGGGELLLVIVEVLIYEEEEE(配列番号19)
GUNGNIR TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号20)
MIMMING TLPAIVSIGGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号21)
SURTR TLPVIGVIVLVGSAVLELIAEGVYEEEEE(配列番号64)、MIMMINGのスクランブル
HODR TLPAIGVITLVGLGVLELVAEGVYEEEEE(配列番号65)、GUNGNIRのスクランブル
GULLVEIG KGDWLPAIVSIGGAVVLL(配列番号66)
SKIRNIR KGDWLPAIVGIGGSVVLL(配列番号67)
RATATOSK KGDWLPAIVGIGG(配列番号68)
plexA1-S1 KGDWTLPAIVGIGGGGGLL(配列番号69)
BROKK KGDWPAIVGIGGGGGLL(配列番号70)
EITRI KGDWIVGIGGGGGLL(配列番号71)
DRAUPNIR TLPAIVGIGGGGGLLLEVIVEVLIAYEEEEE(配列番号72)
MJOLLNIR TLPAITGLVGGVGLLVEVAVEIAYEEEEE(配列番号73)
G1a TLPAITGVVVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号94)
G1b TLPAITGLVVGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号95)
G2a TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEE(配列番号96)
G2b TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEE(配列番号97)
G2c TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEE(配列番号98)
G2d TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDDDDD(配列番号99)
G3a TLPAITGLVGGVVLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号100)
G3b TLPAITGLVGGVGLVLEVIVEVAYEEEEE(配列番号101)
G3c TLPAITGLVGGVGLLLVVIVEVAYEEEEE(配列番号102)
G3d TLPAITGLVGGVGLLLEVVVEVAYEEEEE(配列番号103)
G3e TLPAITGLVGGVGLLLEVIVVVAYEEEEE(配列番号104)
G3f TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVVYEEEEE(配列番号105)
Pep1 dEdEdEdEdEdYdAdVdEdVdIdVdEdLdLdLGdVGGdVdLGdTdIdAdPdLdT(配列番号106)
Pep2 TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDD(配列番号107)
Pep3 TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYDEDED(配列番号108)
Pep4 TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEE(配列番号109)
Pep5 TGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEE(配列番号110)
Pep6 dTLPAITGLVGGVGLLLEVIVEVAYEEEEE(配列番号111)
Pep7 TLPAITGLVGGVGLLLEVIVdEVAYEEEEE(配列番号112)
Pep8 TLPAITGLVGGVGLLVEVIVEVAYEEEEE(配列番号113)
Pep9 TLPAITGLVGGVGLLLEVAVEVAYEEEEE(配列番号114)
Pep10 TLPAITGLVGGVGLLLEVIVEIAYEEEEE(配列番号115)
【配列表】
【国際調査報告】