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特表2024-533322抗原及び薬物-脂質コンジュゲートの免疫調節の組合せ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】抗原及び薬物-脂質コンジュゲートの免疫調節の組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/54 20170101AFI20240905BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/59 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K9/127
A61K9/51
A61P37/06
A61P37/08
A61P29/00 101
A61P17/00
A61P3/10
A61P29/00
A61P13/12
A61P17/06
A61P21/04
A61P1/16
A61P7/06
A61P25/00
A61K45/06
A61P43/00 121
A61K39/00 G
A61K31/573
A61K31/59
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515097
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 CA2022051340
(87)【国際公開番号】W WO2023035068
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,625
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438102
【氏名又は名称】インテグレイテッド ナノセラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTEGRATED NANOTHERAPEUTICS INC.
【住所又は居所原語表記】Suite 205, 4475 Wayburne Drive Burnaby, BC V5G 4X4 Canada
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、サム
(72)【発明者】
【氏名】グエン、アン
(72)【発明者】
【氏名】ザイフマン、ジョシュア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB21
4C076BB24
4C076BB25
4C076BB30
4C076CC04
4C076CC05
4C076CC06
4C076CC07
4C076EE59
4C084AA20
4C084MA05
4C084MA24
4C084MA38
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA551
4C084ZA552
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA02
4C085BB11
4C085BB21
4C085BB24
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086DA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA24
4C086MA38
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZA01
4C086ZA55
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB09
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZC35
4C086ZC75
(57)【要約】
(i)切断可能な連結によって又は切断可能なリンカーを介して親油性部分に共有結合的に連結された免疫調節剤を含む脂質コンジュゲート;ならびに(ii)抗原及び/又は抗原をコードする1種もしくは複数種(1つもしくは複数)の核酸を含む免疫調節の組合せ。抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖である。脂質コンジュゲートならびに抗原及び/又は抗原をコードする1種もしくは複数種(1つもしくは複数)の核酸は、別個の送達ビヒクルに製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断可能な連結によって又は切断可能なリンカーを介して親油性部分に共有結合的に連結された免疫調節剤を含む脂質コンジュゲート;ならびに
抗原及び/又は抗原をコードする1つもしくは複数の核酸であって、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖である、抗原及び/又は抗原をコードする1つもしくは複数の核酸
を含む、免疫調節の組合せであって、
脂質コンジュゲートならびに抗原及び/又は抗原をコードする1つもしくは複数の核酸は、別個の送達ビヒクル内に製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクル内に共に製剤化される、免疫調節の組合せ。
【請求項2】
送達ビヒクルが、脂質ナノ粒子及び/又はリポソームであり、
場合により、送達ビヒクルが、抗原提示細胞(APC)に送達する脂質ナノ粒子である、
請求項1に記載の免疫調節の組合せ。
【請求項3】
抗原又は抗原をコードする1つもしくは複数の核酸が、脂質ナノ粒子又はリポソーム内に捕捉され、脂質ナノ粒子における脂質の正味電荷と反対の正味電荷を有するか、あるいは
抗原が親油性であり、脂質ナノ粒子又はリポソームの脂質区画に取り込まれるか、あるいは
抗原が親水性であり、水性コアを含むリポソームに捕捉される、
請求項2に記載の免疫調節の組合せ。
【請求項4】
脂質コンジュゲートが、抗原又は抗原をコードする1つもしくは複数の核酸と同じ送達ビヒクル内に共に製剤化される、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫調節の組合せ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫調節の組合せであって、脂質コンジュゲートが第1の脂質コンジュゲートであり、免疫調節の組合せが第2の脂質コンジュゲートをさらに含み、第2の脂質コンジュゲートが、切断可能な連結によって又は切断可能なリンカーを介して親油性部分に共有結合的に連結された免疫調節剤を含み、第2の脂質コンジュゲートの免疫調節剤が第1の脂質コンジュゲートの免疫調節剤とは異なり、第1の脂質コンジュゲート及び第2の脂質コンジュゲートが、別個の送達ビヒクル内に製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共に製剤化され、
場合により、免疫調節の組合せが複数の脂質コンジュゲートを含み、複数の脂質コンジュゲートが3、4、5、6、7、8、9、又は10種の免疫調節剤を含み、複数の脂質コンジュゲートの各免疫調節剤が異なり、複数の脂質コンジュゲートの各脂質コンジュゲートが、免疫調節の組合せの他のコンポーネント(成分)とは別個の送達ビヒクルに独立して製剤化されるか、又は免疫調節の組合せの他のコンポーネント(成分)のうちの1つもしくは複数と共製剤化される、免疫調節の組合せ。
【請求項6】
第2の脂質コンジュゲートの免疫調節剤が、第1の脂質コンジュゲートの免疫調節剤とは異なる免疫経路を標的化する、請求項5に記載の免疫調節の組合せ。
【請求項7】
第1の脂質コンジュゲート及び第2の脂質コンジュゲートが、同じ送達ビヒクル内に共に製剤化される、請求項5又は6に記載の免疫調節の組合せ。
【請求項8】
各免疫調節剤が、寛容原性剤又は抗炎症剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の免疫調節の組合せ。
【請求項9】
各免疫調節剤が、免疫賦活剤又は免疫抑制剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の免疫調節の組合せ。
【請求項10】
各免疫調節剤が、独立して、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、インフラマソーム阻害剤、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、コルチコステロイド、mTOR阻害剤、DMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬)、カルシニューリン阻害剤、又はビタミンD受容体アゴニストである、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫調節の組合せ。
【請求項11】
各免疫調節剤が、独立して、プレドニゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、トリアムシノロン、フルニソリド、ベクロメタゾン、フルチカゾン、モメタゾン、フルドロコルチゾン、フルメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、イソフルプレドン、コルチコステロン、酢酸デスオキシコルトン、エナント酸デスオキシコルトン、11-デオキシコルチコステロン、11-デオキシコルチゾール、アルドステロン、デキサメタゾン、カルシトリオール、アセチルサリチル酸、サリチラート、ミコフェノール酸、シロリムス、タクロリムス、コレカルシフェロール、カルシフェジオール、アルファカルシドール、カルシポトリオール、ファレカルシトリオール、マキサカルシトール、パリカルシトール、ドキセルカルシフェロール、22-オキサカルシトリオール、タカルシトール、エルデカルシトール、エロカルシトール、イネカルシトール、ベコカルシジオール、セオカルシトール(seocalcital)、エルゴカルシフェロール、レキサカルシトール、レチノイン酸、シクロホスファミド(ナイトロジェンマスタード)、フィルゴチニブ、バリシチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、ウパダシチニブ、オクラシチニブ、ペフィシチニブ、フェドラチニブ、デルゴシチニブ、デュークラバシチニブ、アブロシチニブ、オーラノフィン、アプレミラスト、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、レフルノミド、メトトレキサート、ミノサイクリン、スルファサラジン、サリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、ナプロキセン、イブプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、ザルトプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラック、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、セレコキシブ、フィロコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、クロニキシン、リコフェロン、MCC950、グリブリド、CY-09、トラニラスト、オリドニン、BOT-4-オン(2-シクロヘキシルイミノ-6-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[1,3]オキサチオール-4-オン)、INF39(エチル2-(2-クロロベンジル)アクリラート)、MNS(3,4-メチレンジオキシ-β-ニトロスチレン)、フェナム酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ケルセチン、JC-171、イブルチニブ、OLT1177、FC11A-2、INF58、JC124、又はエチル2-((2-クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)アクリラートである、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫調節の組合せ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の免疫調節の組合せであって、抗原が第1の抗原であり、免疫調節の組合せが、第2の抗原又は第2の抗原をコードする1つもしくは複数の核酸をさらに含み、第1の抗原が第2の抗原とは異なり、
第2の抗原又は第2の抗原をコードする1つもしくは複数の核酸が、免疫調節の組合せの他のコンポーネントとは別個の送達ビヒクルに製剤化されるか、又は免疫調節の組合せの他のコンポーネントのうちの1つもしくは複数と共に製剤化され、
場合により、免疫調節の組合せが複数の抗原を含むか、又は複数の抗原をコードする1つもしくは複数の核酸を含むか、又は複数の抗原を提供するために抗原及び抗原をコードする核酸(単数又は複数)の組合せを含み、複数の抗原が3、4、5、6、7、8、9、又は10種の抗原を含み、各抗原又は抗原をコードする核酸が、免疫調節の組合せの他のコンポーネントとは別個の送達ビヒクルに独立して製剤化されるか、又は免疫調節の組合せの他のコンポーネントのうちの1つもしくは複数と共に製剤化される、免疫調節の組合せ。
【請求項13】
第1の抗原をコードする1種又は複数の核酸及び第2の抗原をコードする1種又は複数の核酸が、単一の核酸内に含まれ、第1の抗原及び第2の抗原が、同じ送達ビヒクル内に共に製剤化される、請求項12に記載の免疫調節の組合せ。
【請求項14】
抗原誘発性障害もしくは望ましくない抗原駆動性免疫応答を有する対象の処置に使用するための、又は対象を処置するための医薬の製造に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の免疫調節の組合せであって、
場合により、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答が、自己免疫疾患(自己抗原に対するT細胞及び/又は抗体応答)、アレルギー性疾患(環境又は食物抗原に対するT細胞及びIgE応答)、移植(ドナー組織/器官/細胞における主要及びマイナー組織適合抗原に対するT細胞応答)、抗薬物抗体応答(治療薬の有効性を低下させる抗体応答)、遺伝子/タンパク質補充療法(遺伝的タンパク質欠損症で治療的に補充されたタンパク質に対するT細胞/抗体応答)から選択され、
場合により、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答が、多発性硬化症、関節リウマチ、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体障害、白斑、1型糖尿病、原発性胆汁性胆管炎、抗GBM腎炎/グッドパスチャー病、セリアック病、乾癬、重症筋無力症、免疫性血小板減少性紫斑病、グレーブス病、視神経脊髄炎、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、全身性エリテマトーデスSLEを含むループス、自己免疫性肝疾患、筋炎、エバンス症候群、横断性脊髄炎、ギラン・バレー症候群、温式自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性血管性浮腫、橋本甲状腺炎、ランバート・イートン症候群、ピーナッツ/レギュームアレルギー、ツリーナッツアレルギー(カシュー、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、クルミ、アーモンドのうちのいずれか由来の抗原)、卵アレルギー、牛乳アレルギー、大豆アレルギー、魚アレルギー、甲殻類アレルギー、ゴマアレルギー、小麦アレルギー、アレルギー性気道疾患、及び環境アレルゲン(花粉、ダスト、ペットのふけ、カビ及びゴキブリ由来の抗原)によって引き起こされるアレルギーから選択される、免疫調節の組合せ。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の免疫調節の組合せを対象に投与することを含む、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答を有する対象を処置する方法であって、抗原、又は抗原をコードする1つもしくは複数の核酸、及び脂質コンジュゲートを一緒に又は逐次投与し、
場合により、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答が、自己免疫疾患(自己抗原に対するT細胞及び/又は抗体応答)、アレルギー性疾患(環境又は食物抗原に対するT細胞及びIgE応答)、移植(ドナー組織/器官/細胞における主要及びマイナー組織適合抗原に対するT細胞応答)、抗薬物抗体応答(治療薬の有効性を低下させる抗体応答)、又は遺伝子/タンパク質補充療法(遺伝的タンパク質欠損症で治療的に補充されたタンパク質に対するT細胞/抗体応答)から選択され、
場合により、抗原誘発性障害が、多発性硬化症、関節リウマチ、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体障害、白斑、1型糖尿病、原発性胆汁性胆管炎、抗GBM腎炎/グッドパスチャー病、セリアック病、乾癬、重症筋無力症、免疫性血小板減少性紫斑病、グレーブス病、視神経脊髄炎、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、全身性エリテマトーデスSLEを含むループス、自己免疫性肝疾患、筋炎、エバンス症候群、横断性脊髄炎、ギラン・バレー症候群、温式自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性血管性浮腫、橋本甲状腺炎、ランバート・イートン症候群、ピーナッツ/レギュームアレルギー、ツリーナッツアレルギー(カシュー、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、クルミ、アーモンドのうちのいずれか由来の抗原)、卵アレルギー、牛乳アレルギー、大豆アレルギー、魚アレルギー、甲殻類アレルギー、ゴマアレルギー、小麦アレルギー、アレルギー性気道疾患、又は環境アレルゲン(花粉、ダスト、ペットのふけ、カビ及びゴキブリ由来の抗原)によって引き起こされるアレルギーから選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、抗原誘発性障害を処置、予防及び/又は改善するための、免疫調節のための抗原及び免疫調節剤-脂質コンジュゲートの組合せ及び/又は組合せ物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原提示細胞(APC)は適応免疫系を指令する。APCは、外因性(及び自己)抗原を取り込み、処理し、細胞表面上のMHC(又はHLA分子)にそれらを負荷し、それは、その後様々なクラスのTリンパ球によって認識されて、適切な免疫応答を誘発することができる。抗原特異的T細胞を、抗原:MHC複合体を認識するそれらのT細胞受容体を介して関与させる一方、APCは、抗原が炎症促進性又は恒常性/調節シグナルの存在下で取り込まれたかどうかに応じて、これらのT細胞に追加のシグナルを送達する。抗原が炎症促進性シグナル(例えば、感染性病原体に由来する)の存在下で取り込まれた事象では、APCは成熟/活性化され、多くの場合、共刺激分子の高い表面レベルを特徴とする。これらの成熟APCは、抗原特異的T細胞に共刺激シグナルを送達して、抗原に対する下流の体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘発する。対照的に、抗原が炎症性キューの非存在下で取り込まれる場合、APCは未成熟なままであるか、又は抗原特異的T細胞応答を弱めて抗原に対する調節性T細胞応答を誘導する共抑制分子を発現する。したがって、APCは、抗原特異的免疫応答を指令することにおいて中心的な役割を有する。
【0003】
多くの病理学的症状は、好ましくない又は不適切な抗原特異的免疫応答に関連する。これらの免疫応答は多様であり、アレルギー性疾患から自己免疫疾患、移植による拒絶反応にまで及ぶ。既存の処置は、免疫系の全身的で非識別的な全体的抑制を引き起こし、感染及び/又はがんのリスク増加ならびに免疫抑制用薬剤の追加の有害作用を伴う。さらに、これらの処置はいずれも治癒的ではないので、有害反応をさらに悪化させ、重要なことに、疾患を完全に制御することができない処置の慢性使用を必要とする。
【0004】
特定の抗原に対する寛容を誘導するためにAPCを寛容化することは、抗原誘発性障害を処置するための別のアプローチである。そのようなアプローチは、免疫抑制剤に関連する免疫系の非特異的抑制の欠点を回避し得る。しかしながら、治療的処置のためにAPCを寛容化することの主な制限のうちの1つは、APCを対象の身体から取り出し、エクスビボで寛容化する必要性、及び再移植時に関連する疾患組織/部位へのこれらのAPCの制限された輸送である。
【0005】
このように、当技術分野では、例えば、抗原誘発性障害を処置、予防及び/又は改善するために、特定の抗原に対する対象の免疫応答を改変する、既知のアプローチの欠点に対処した免疫調節的処置の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、既知の先行技術のうちの1つ又は複数の制限に対処するか、又はその有用な代替策を提供しようとするものである。
【0007】
本明細書に開示の様々な実施形態は、切断可能な連結によって又は切断可能なリンカーを介して親油性部分に共有結合的に連結された免疫調節剤を含む脂質コンジュゲート;ならびに抗原及び/又は抗原をコードする1種もしくは複数種(一つもしくは複数)の核酸を含む免疫調節の組合せ及び/又は組合せ物に関し、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖であり、脂質コンジュゲートならびに抗原及び/又は抗原をコードする1種もしくは複数の核酸は、別個の送達ビヒクルに製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクル内に共に製剤化される。いくつかの実施形態では、送達ビヒクルは脂質ナノ粒子及び/又はリポソームである。これらの実施形態のいくつかでは、送達ビヒクルは、抗原提示細胞(APC)に送達する脂質ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、抗原又は抗原をコードする1種もしくは複数の核酸は、脂質ナノ粒子又はリポソーム内に捕捉され、脂質ナノ粒子における脂質の正味電荷と反対の正味電荷を有するか、あるいは抗原は親油性であり、脂質ナノ粒子又はリポソームの脂質区画に取り込まれる。他の実施形態では、抗原は親水性であり、水性コアを含むリポソームに捕捉される。
【0008】
いくつかの実施形態では、脂質コンジュゲートは、抗原又は抗原をコードする1種もしくは複数の核酸と同じ送達ビヒクルに共製剤化される。免疫調節の組合せは、2種又はそれを超える(例えば、2、3、又は3種を超える)の脂質コンジュゲートを含み得る。いくつかの実施形態では、脂質コンジュゲートは第1の脂質コンジュゲートであり、免疫調節の組合せは第2の脂質コンジュゲートをさらに含み、第2の脂質コンジュゲートは、切断可能な連結によって又は切断可能なリンカーを介して親油性部分に共有結合的に連結された免疫調節剤を含み、第2の脂質コンジュゲートの免疫調節剤は第1の脂質コンジュゲートの免疫調節剤とは異なり、第1の脂質コンジュゲート及び第2の脂質コンジュゲートは、別個の送達ビヒクルに製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化される。いくつかのそのような実施形態では、第2の脂質コンジュゲートの免疫調節剤は、第1の脂質コンジュゲートの免疫調節剤とは異なる免疫経路を標的化する。いくつかの実施形態では、第1の脂質コンジュゲート及び第2の脂質コンジュゲートは、同じ送達ビヒクルに共製剤化される。
【0009】
様々な実施形態では、本明細書に開示の免疫調節の組合せは、抗原誘発性障害もしくは望ましくない抗原駆動性免疫応答を有する対象の処置に使用されてもよく、又は対象を処置するための医薬の製造に使用されてもよい。したがって、本開示は、本明細書で定義される免疫調節の組合せを対象に投与することを含む、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原特異的免疫応答を有する対象を処置する方法を提供し、抗原又は抗原をコードする1種もしくは複数の核酸、及び脂質コンジュゲートは、一緒に又は逐次投与される。
【0010】
本開示の別の態様によれば、脂質部分にコンジュゲートされた免疫調節剤を含む少なくとも1種のプロドラッグ;ならびに少なくとも1種の抗原及び/又は抗原をコードする核酸を含むワクチン製剤が提供され、少なくとも1種の抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖であり、少なくとも1種のプロドラッグならびに抗原及び/又は抗原をコードする核酸は、別個の送達ビヒクルに製剤化されるか、又は製剤中の同じ送達ビヒクルに共製剤化される。
【0011】
本開示の別の態様によれば、親油性部分にコンジュゲートされた免疫調節剤を含む少なくとも1種のプロドラッグを投与すること;ならびに少なくとも1種の抗原及び/又は抗原をコードする核酸を投与することを含む、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答を有する対象を処置する方法が提供され、少なくとも1種の抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖であり、少なくとも1種のプロドラッグならびに抗原及び/又は抗原をコードする核酸は、送達ビヒクルに別個に製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化され、少なくとも1種のプロドラッグならびに少なくとも1種の抗原及び/又は抗原をコードする核酸は、一緒に又は逐次投与される。
【0012】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1種の抗原及び/又は少なくとも1種の抗原をコードする核酸と組み合わせて、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答を有する対象を処置するための、親油性部分にコンジュゲートされた免疫調節剤を含むプロドラッグの使用が提供され、少なくとも1種の抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖であり、少なくとも1種のプロドラッグならびに抗原及び/又は抗原をコードする核酸は、(i)少なくとも1種の製剤中の同じ送達ビヒクルに共製剤化されるか、又は(ii)対象への逐次投与もしくは共投与のために別個の送達ビヒクルに製剤化される。
【0013】
本開示の別の態様によれば、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答を有する対象を処置するための、親油性部分にコンジュゲートされた免疫調節剤を含むプロドラッグ、ならびに少なくとも1種の抗原及び/又は少なくとも1種の抗原をコードする核酸の組合せが提供され、少なくとも1種の抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖であり、少なくとも1種のプロドラッグ、ならびに抗原及び/又は抗原をコードする核酸は、(i)送達ビヒクルに共製剤化されるか、又は(ii)対象への逐次投与もしくは共投与のために別個の送達ビヒクルに製剤化される。
【0014】
本開示のさらなる態様によれば、親油性部分にコンジュゲートされた免疫調節剤を含む少なくとも2種のプロドラッグを含む製剤が提供され、少なくとも2種のプロドラッグは、別個の送達ビヒクルに製剤化されるか、又は製剤中の同じ送達ビヒクルに共製剤化され、少なくとも2種のプロドラッグは、異なる免疫経路を標的化する。場合により、製剤は、少なくとも1種の抗原及び/又は抗原をコードする核酸を含み、少なくとも1種の抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖である。抗原又は抗原をコードする核酸は、1つの送達ビヒクルに2つのプロドラッグと共製剤化されるか、又はその別個の送達ビヒクルに製剤化されることを含めて、送達ビヒクルに製剤化され得る。
【0015】
本開示の前述の態様のうちのいずれか1つによれば、送達ビヒクルは脂質ナノ粒子であり得る。
【0016】
本開示の前述の態様又は実施形態のうちのいずれか1つによれば、少なくとも1種のプロドラッグは、抗原又は抗原をコードする核酸と同じ送達ビヒクルに共製剤化され得る。
【0017】
本開示の前述の態様又は実施形態のうちのいずれか1つによれば、2種のプロドラッグが製剤中に存在し得、別個に製剤化され得るか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化され得る。
【0018】
本開示の前述の態様又は実施形態のうちのいずれか1つによれば、免疫調節剤は、寛容原性剤又は抗炎症剤であり得る。
【0019】
本開示の前述の態様又は実施形態のうちのいずれか1つによれば、免疫調節剤は、免疫賦活剤又は免疫抑制剤であり得る。
【0020】
さらに、本開示の前述の態様又は実施形態のうちのいずれか1つによれば、少なくとも1種のプロドラッグの免疫調節剤は、プレドニゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、トリアムシノロン、フルニソリド、ベクロメタゾン、フルチカゾン、モメタゾン、フルドロコルチゾン、フルメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、イソフルプレドン、コルチコステロン、酢酸デスオキシコルトン、エナント酸デスオキシコルトン、11-デオキシコルチコステロン、11-デオキシコルチゾール、アルドステロン、デキサメタゾン、カルシトリオール、アセチルサリチル酸、サリチラート、ミコフェノール酸、シロリムス、タクロリムス、コレカルシフェロール、カルシフェジオール、アルファカルシドール、カルシポトリオール、ファレカルシトリオール、マキサカルシトール、パリカルシトール、ドキセルカルシフェロール、22-オキサカルシトリオール、タカルシトール、エルデカルシトール、エロカルシトール、イネカルシトール、ベコカルシジオール、セオカルシトール、エルゴカルシフェロール、レキサカルシトール、レチノイン酸、シクロホスファミド(ナイトロジェンマスタード)、フィルゴチニブ、バリシチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、ウパダシチニブ、オクラシチニブ、ペフィシチニブ、フェドラチニブ、デルゴシチニブ、デュークラバシチニブ、アブロシチニブ、オーラノフィン、アプレミラスト、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、レフルノミド、メトトレキサート、ミノサイクリン、スルファサラジン、サリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、ナプロキセン、イブプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、ザルトプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラック、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、セレコキシブ、フィロコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、クロニキシン、リコフェロン、MCC950、グリブリド、CY-09、トラニラスト、オリドニン、BOT-4-オン(2-シクロヘキシルイミノ-6-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[1,3]オキサチオール-4-オン)、INF39(エチル2-(2-クロロベンジル)アクリラート、MNS(3,4-メチレンジオキシ-β-ニトロスチレン)、フェナム酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ケルセチン、JC-171、イブルチニブ、OLT1177、FC11A-2、INF58、JC124、エチル2-((2-クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)アクリラート、又はそれらの組合せから選択され得る。
【0021】
本開示の前述の態様又は実施形態のうちのいずれか1つによれば、2種又はそれを超える抗原及び/又は抗原をコードする核酸が製剤中に存在し得、別個に製剤化され得るか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化され得る。
【0022】
本開示の前述の態様又は実施形態のうちのいずれか1つによれば、抗原は、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質であり得る。
【0023】
本開示の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明及び図から当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A図1Aは、DiO(3,3’-ジオクタデシルオキサカルボシアニン過塩素酸塩)で標識された脂質ナノ粒子(54/45/1mol:molのLNP、DSPC/コレステロール/DSPE-PEG)の投与の48時間後に、フローサイトメトリーによって、APCマーカー、CD11b及びCD11cについて評価したマウスの膵臓リンパ節からのゲートプロット(生細胞に対してゲート)を示す。マウスは、600mg/kgの用量でi.p.注射されるLNPを、24時間空けて2回の注射を受けた。
【0025】
図1B図1Bは、DiOで標識されたLNPを注射したマウスの膵臓リンパ節におけるDiO陽性APC(CD11b+CD11c+細胞に対してゲート)の計数を示す。
【0026】
図1C図1Cは、DiOで標識された脂質ナノ粒子(54/45/1mol:molのDSPC/コレステロール/DSPE-PEG)の投与の48時間後に、フローサイトメトリーによって、APCマーカー、CD11b及びCD11cについて評価したマウスの膵島からのゲートプロット(生細胞に対してゲート)を示す。
【0027】
図1D図1Dは、DiOで標識されたLNPを注射したマウスの膵島におけるDiO陽性APC(CD11b+CD11c+細胞に対してゲート)の計数を示す。
【0028】
図2A図2Aは、PBS対照、DSPC/コレステロール/DSPE-PEG LNP(54/45/1mol:molのDSPC/コレステロール/DSPE-PEG)又はイオン化可能なLNP(50/10/38.5/1.5mol:molのA002/DSPC/コレステロール/PEG-DMG)を注射したマウス由来の膵島マクロファージ(CD11b+CD11c+)におけるDiO陽性細胞の計数を示す。マウスに、150mg/kgのDiOを負荷したLNP製剤を注射し、24時間後、膵島、膵臓リンパ節及び脾細胞を単離した。
【0029】
図2B図2Bは、DSPC/コレステロールLNP(水平のハッチング)及びイオン化可能なLNP-(対角のハッチング)を注射したマウス由来の、膵島、膵臓リンパ節及び脾臓におけるDiO陽性APC(CD11b+CD11c+細胞)のパーセンテージを示す棒グラフである。
【0030】
図3図3は、ヒト血漿(hPlasma)中での2時間のインキュベーション後の、デキサメタゾン(D045)及びカルシトリオール(D053、D068、D083)脂質コンジュゲート(プロドラッグ)を用いて共製剤化されたLNP(49/40/10/1mol:molのDSPC/コレステロール/プロドラッグ/DSPE-PEG)中に残存する脂質コンジュゲート(プロドラッグ)のパーセンテージを示す棒グラフである。
【0031】
図4図4は、aLNP脂質コンジュゲート(プロドラッグ)処理後の、骨髄樹状細胞(BMDC)の表面上に共刺激分子を有する骨髄樹状細胞(BMDC)のパーセンテージを示す棒グラフである。LNPを、示したように、D034もしくはD045デキサメタゾン脂質コンジュゲート(プロドラッグ)ならびに/又はD053及びD083カルシトリオール脂質コンジュゲート(プロドラッグ)を用いて製剤化した。BMDCを48時間処理し、LNPは様々なカルシトリオール及びデキサメタゾン脂質コンジュゲート(単独又は組合せ)を含んだ。その後、脂質コンジュゲート(プロドラッグ)製剤がLPS媒介性活性化を防止できる(すなわち、BMDCを寛容する)かどうかを判定するために、BMDCをリポ多糖(LPS)刺激を用いて24時間チャレンジした。BMDCの共刺激マーカーを、CD80-CD86-(縦線)、CD80+CD86+dim(横線)及びCD80+CD86+(斜め線)として特徴付けた。処理を、LPSのみ(対照)及びLPSなし(非処理)で処理したBMDCと比較して示す。
【0032】
図5図5は、混合白血球(MLR)反応アッセイで示したように、10~99%のモル%でのデキサメタゾン(INT-D034及びINT-D045)及びカルシトリオール(INT-D053及びINT-D083)のプロドラッグの様々なLNP製剤について、CD4+T細胞の増殖パーセンテージを示す棒グラフである。C57Bl/6マウス由来の骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、最初に様々なモル%のデキサメタゾン又はカルシトリオールコンジュゲートを含むLNPで48時間処理し、次いでLPSとの24時間のインキュベーションによって活性化した。次いで、それらを採取し、Balb/cJマウス(Jackson Laboratories)から単離したCD4+T細胞と5:1又は10:1のT対BMDC比で混合した。処理を、LPSあり及び空のLNP(対照)、LPSあり及びLNPなし(+LPS-LNP)、ならびにLPSなしLNPなし(非処理)で処理したBMDCと比較して示す。
【0033】
図6図6は、デキサメタゾン(D034、D045)及びカルシトリオール(D083)脂質コンジュゲート(プロドラッグ)ならびにこれらのプロドラッグの組合せを用いて製剤化された様々な脂質コンジュゲート(プロドラッグ)LNPについて、T細胞の増殖パーセンテージを示す棒グラフである。C57Bl/6 BMDCを、単一の脂質コンジュゲート(プロドラッグ)又は脂質コンジュゲートの組合せ(プロドラッグ)を含むLNP(DSPC又はDMPC、コレステロール、プロドラッグ、及びPEG-DSPE(49/40/10/1のモル比)で48時間処理し、その後洗浄し、Balb/c CD4+T細胞と共培養した。脂質濃度はすべての処理に対して30μMであった。データを、3連でのCD4+細胞における(CFSE希釈による)増殖%の平均値+SDとして表す。
【0034】
図7図7は、LNPに共製剤化された異なる比のデキサメタゾン(D045)及びカルシトリオール(D083)脂質コンジュゲート(プロドラッグ)の関数としてのT細胞の増殖を示す棒グラフである。LNPにおけるデキサメタゾン(D045)及びカルシトリオール(D083)脂質コンジュゲート(プロドラッグ)の異なる比は、T細胞の増殖に影響を及ぼす。C57BL/6 BMDCを、様々なモル比のD045及びD083を含むLNPで48時間処理し、その後洗浄し、Balb/c CD4+T細胞と共培養した。脂質濃度はすべての処理に対して30uMであった。データを、3連でのCD4+細胞における(CFSE希釈による)増殖%の平均値+SDとして表す。
【0035】
図8図8は、凡例に示された濃度のカルシトリオール(D053)を含む脂質コンジュゲートを用いて製剤化されたLNP、非処理又は対照LNP(Ctr LNP)で前処理したBMDCと混合した後の、OT-IIマウス由来のCD4+T細胞のT細胞増殖を示す棒グラフである。LNP前処理後、BMDCを、様々な濃度の遊離オボアルブミン323-339ペプチド(OVA)を用いてパルスし、CD4+T細胞と共培養した。データを、3連でのCD4+細胞における(CFSE希釈による)増殖%の平均値+SDとして表す。
【0036】
図9図9は、OVAあり/なし、対照LNP、OVAを封入したLNP、又はカルシトリオール及びOVAを用いて共製剤化されたLNP(D053-LNP-OVA)で処理したC57BL/6 BMDCと混合した後の、OT-IIマウスから回収したCD4+T細胞のT細胞増殖を示す棒グラフである。データを、3連でのCD4+細胞における(CFSE希釈による)増殖%の平均値+SDとして表す。
【0037】
図10A図10Aは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
図10B図10Bは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
図10C図10Cは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
図10D図10Dは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
図10E図10Eは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
図10F図10Fは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
図10G図10Gは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
図10H図10Hは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
図10I図10Iは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
図10J図10Jは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
図10K図10Kは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
図10L図10Lは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
図10M図10Mは、例示的な免疫調節剤-脂質コンジュゲートの構造を示す。
【0038】
図11図11は、Ova特異的CD4+T細胞(OTIIマウス由来)と、Ova mRNA及び脂質コンジュゲートを別個に負荷したLNPで前処理したC57BL/6 BMDCとの共培養における抗原特異的T細胞の増殖の棒グラフである。エラーバーは平均値±SDを表す。
【0039】
図12図12は、Ova抗原をコードするmRNA及び本発明の脂質コンジュゲート(プロドラッグ)を共負荷した様々なLNPで前処理したC57BL/6 BMDCとの共培養後の、CFSEで標識されたOva特異的CD4+T細胞(OTIIマウス由来)の増殖を示す一連の棒グラフである。データを、CD4+細胞のパーセントとしてのマーカー陽性細胞の平均値±SDとして示す(Y軸)。
【0040】
図13A図13Aは、Ova抗原をコードするmRNA及び本発明の脂質コンジュゲート(プロドラッグ)を共負荷したLNPで前処理したC57BL/6 BMDCと共培養した、CFSEで標識されたOTII CD4+T細胞の上清で測定されたサイトカインを示す棒グラフのセットである。データを、CD4+細胞のパーセントとしてのマーカー陽性細胞の平均値±SDとして示す(Y軸)。
図13B図13Bは、Ova抗原をコードするmRNA及び本発明の脂質コンジュゲート(プロドラッグ)を共負荷したLNPで前処理したC57BL/6 BMDCと共培養した、CFSEで標識されたOTII CD4+T細胞の上清で測定されたサイトカインを示す棒グラフのセットである。データを、CD4+細胞のパーセントとしてのマーカー陽性細胞の平均値±SDとして示す(Y軸)。
【0041】
図14図14は、Ova mRNAを有するLNPと対比して、脂質コンジュゲートD034をさらに負荷したLNPの注射に対して応答したマウスにおける抗体産生を示す棒グラフである。エラーバーは±SDを表し、統計解析はテューキーの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAにより行い、*P<0.5、****P<0.0001、2回の独立した実験からの群あたりn≧7匹のマウス。
【発明を実施するための形態】
【0042】
免疫調節の組合せ(あるいは、ワクチン製剤と称される)、その使用及びその方法が本明細書で提供される。免疫調節の組合せは、(i)親油性部分に連結された免疫調節剤を含み、送達ビヒクル(例えば、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソームなど)に製剤化される脂質コンジュゲート、及び(ii)送達ビヒクルに製剤化される、抗原又は抗原をコードする1種もしくは複数の核酸を含む。脂質コンジュゲートならびに抗原及び/又はそれをコードする核酸は、別個の送達ビヒクルに製剤化され得るか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、免疫調節剤は、インビトロアッセイ又はインビボアッセイのいずれかによって実証されるように、APCによって取り込まれる。例示するためであり、限定するものではないが、本開示は、本明細書に開示の免疫調節の組合せが骨髄系細胞(例えば、骨髄樹状細胞(BMDC))において寛容化表現型を誘導することができることを示す。さらに、これらの寛容化APCは、抗原特異的T細胞の増殖を抑制し、抗原特異的制御性T細胞を誘導し、Th1及びTh2サイトカイン分泌を減少させ、抗原特異的抗体産生を減少させることができる。
【0044】
定義
【0045】
「ワクチン製剤」は、対象における抗原誘発性障害を処置、予防及び/又は改善するための、本明細書に記載されているような1種又は複数の同じ又は異なる送達ビヒクルを含むあらゆる医薬製剤を指す。用語は、あらゆる好適な薬学的に許容され得る塩及び/又は賦形剤で調製される製剤を含む。
【0046】
「免疫調節剤」は、対象において免疫応答を変化させることができる薬剤を指す。1つの非限定的な実施形態では、免疫調節物質は、対象において免疫応答を増強する免疫賦活剤である。別の非限定的な実施形態では、免疫調節物質は、対象において免疫応答を妨害又は低減する免疫抑制剤である。免疫調節物質は、骨髄系細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球及び顆粒球)又はリンパ系細胞(T細胞、B細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞)及びそれらのあらゆるさらなる分化した細胞を調節することができる。
【0047】
「寛容原性剤」は、免疫応答を抑制するか、又は抗原に対する寛容を誘導する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、寛容原性剤は、抗原に対する免疫応答の抑制を向上、及び/又は抗原に対する寛容の誘導を向上する。例えば、寛容原性剤は、APCによる抗原の寛容原性の提示を促進することができる。
【0048】
「抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答」は、抗原特異的免疫刺激、例えば、抗原提示細胞による抗原に対する免疫系の刺激に関連する対象の症状を指す。そのような障害としては、免疫系のあらゆる望まない刺激が挙げられ、限定されないが、アレルギー、自己免疫疾患、移植による拒絶反応、抗薬物抗体応答などが挙げられる。
【0049】
「抗原」は、当技術分野における通常の意味を有し、特定の抗体又はT細胞受容体に結合して免疫系を改変することができる分子又は分子複合体を指す。いくつかの実施形態では、抗原は、外来の又は非外来のタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖である。いくつかの実施形態では、抗原は抗原誘発性障害を誘導する。
【0050】
「送達ビヒクル」は、免疫調節剤-脂質コンジュゲート(例えば、プロドラッグ)を製剤化することができるあらゆる好適な粒子を指す。非限定的な例としては、脂質ナノ粒子、リポソームなどが挙げられる。
【0051】
脂質コンジュゲート(例えば、プロドラッグ)の一部として免疫調節剤に連結された部分又はイオン化可能なもしくは永久的に荷電した脂質の親油性部分に関する「親油性部分」としては、限定されないが、免疫調節剤、プロドラッグ又は脂質に十分な疎水性を付与して、好適な送達ビヒクルへのその製剤化を容易にする、脂質又は他の親油性基が挙げられる。
【0052】
「足場部分」は、その1つ又は複数の炭化水素鎖、1つ又は複数のそれぞれの生分解性基を介して連結されている、脂質コンジュゲート、プロドラッグ、又はイオン化可能なもしくは永久的に荷電した脂質の親油性部分の炭化水素鎖を指す。
【0053】
本明細書で使用される「プロドラッグ」、「脂質プロドラッグ」、「免疫調節剤-脂質コンジュゲート」、「脂質コンジュゲート」、「薬物-脂質コンジュゲート」又は「プロドラッグコンジュゲート」は、共有結合及び非共有結合を含むあらゆる好適な連結又はリンカーを介して親油性部分に連結された免疫調節剤を指す。いくつかの実施形態では、連結又はリンカーは、共有結合的に付着している。免疫調節剤は、親油性部分からの放出時に活性化されてもよい。
【0054】
脂質コンジュゲート
【0055】
脂質コンジュゲートは、親油性部分に連結された免疫調節剤を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、免疫調節剤は、免疫応答を抑制するか、又は抗原に対する寛容を誘導する寛容原性剤である。いくつかの実施形態では、免疫調節剤は免疫抑制剤である。いくつかの実施形態では、免疫調節剤は免疫賦活剤である。
【0057】
免疫調節剤は、上流及び下流の免疫経路の様々な分子を標的化することによって、対象においてそれらの免疫調節効果を発揮する。上流は薬剤によって直接的に改変される標的であり、下流は免疫調節剤が炎症を阻害する重要な経路である。これらの薬剤の多くは、同じ下流の経路で収束/重複する。上流の標的としては、限定されないが、グルココルチコイド受容体、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)、COX1/COX2(ASAによるような直接的なアセチル化又はサリチラートによるような発現の阻害による)、ビタミンD受容体、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2、及びカルシニューリンが挙げられる。下流の標的としては、限定されないが、NF-カッパB複合体の発現/活性の阻害、AP-1の発現/活性の阻害、p38 MAPキナーゼ経路の阻害、及びNFATファミリーの阻害が挙げられる。
【0058】
脂質コンジュゲートに含めるための免疫調節剤の例としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、インフラマソーム阻害剤、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、コルチコステロイド、mTOR阻害剤、DMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬)、カルシニューリン阻害剤、及び/又はビタミンD受容体アゴニストが挙げられる。いくつかの実施形態では、各免疫調節剤は、NSAID、インフラマソーム阻害剤、JAK阻害剤、コルチコステロイド、mTOR阻害剤、DMARD、カルシニューリン阻害剤、又はビタミンD受容体アゴニストから独立して選択される。いくつかの実施形態では、各免疫調節剤は、デキサメタゾン、カルシトリオール、アセチルサリチル酸、サリチラート、ミコフェノール酸、シロリムス、タクロリムス、コレカルシフェロール、カルシフェジオール、アルファカルシドール、カルシポトリオール、ファレカルシトリオール、マキサカルシトール、パリカルシトール、ドキセルカルシフェロール、22-オキサカルシトリオール、タカルシトール、エルデカルシトール、エロカルシトール、イネカルシトール、ベコカルシジオール、セオカルシトール、エルゴカルシフェロール、レキサカルシトール、レチノイン酸、シクロホスファミド(ナイトロジェンマスタード)、フィルゴチニブ、バリシチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、ウパダシチニブ、オクラシチニブ、ペフィシチニブ、フェドラチニブ、デルゴシチニブ、デュークラバシチニブ、アブロシチニブ、オーラノフィン、アプレミラスト、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、レフルノミド、メトトレキサート、ミノサイクリン、スルファサラジン、サリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、ナプロキセン、イブプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、ザルトプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラック、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、セレコキシブ、フィロコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、クロニキシン、リコフェロン、MCC950、グリブリド、CY-09、トラニラスト、オリドニン、BOT-4-オン(2-シクロヘキシルイミノ-6-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[1,3]オキサチオール-4-オン)、INF39(エチル2-(2-クロロベンジル)アクリラート)、MNS(3,4-メチレンジオキシ-β-ニトロスチレン)、フェナム酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ケルセチン、JC-171、イブルチニブ、OLT1177、FC11A-2、INF58、JC124、又はエチル2-((2-クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)アクリラートから独立して選択される。
【0059】
一実施形態では、免疫調節剤は、デキサメタゾン、カルシトリオール、アセチルサリチル酸、ミコフェノール酸、シロリムス及び/又はタクロリムスから選択される。
【0060】
別の実施形態では、免疫調節剤は、JAK阻害剤、DMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬)、NSAID、インフラマソーム阻害剤及び/又はビタミンD受容体アゴニストである。
【0061】
例えば、JAK阻害剤は、フィルゴチニブ、バリシチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、ウパダシチニブ、オクラシチニブ、ペフィシチニブ、フェドラチニブ、デルゴシチニブ、デュークラバシチニブ及び/又はアブロシチニブから選択され得る。
【0062】
DMARDは、オーラノフィン、アプレミラスト、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、レフルノミド、メトトレキサート、ミノサイクリン及び/又はスルファサラジンから選択され得る。
【0063】
脂質コンジュゲートに取り込まれ得るNSAIDの例としては、サリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、ナプロキセン、イブプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、ザルトプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラック、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、セレコキシブ、フィロコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、クロニキシン及び/又はリコフェロンが挙げられる。
【0064】
脂質コンジュゲートへの取込みのためのインフラマソーム阻害剤としては、MCC950、グリブリド、CY-09、トラニラスト、オリドニン、BOT-4-オン(2-シクロヘキシルイミノ-6-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[1,3]オキサチオール-4-オン)、INF39(エチル2-(2-クロロベンジル)アクリラート)、MNS(3,4-メチレンジオキシ-β-ニトロスチレン)、フェナム酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ケルセチン、JC-171、イブルチニブ、OLT1177、FC11A-2、INF58、JC124及び/又はエチル2-((2-クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)アクリラートが挙げられる。
【0065】
ビタミンD受容体アゴニストの例としては、カルシトリオール、コレカルシフェロール、カルシフェジオール、アルファカルシドール、カルシポトリオール、ファレカルシトリオール、マキサカルシトール、パリカルシトール、ドキセルカルシフェロール、22-オキサカルシトリオール、タカルシトール、エルデカルシトール、エロカルシトール、イネカルシトール、ベコカルシジオール、セオカルシトール、エルゴカルシフェロール及び/又はレキサカルシトールが挙げられる。
【0066】
脂質コンジュゲートの親油性部分は、好適な送達ビヒクルでその製剤化を容易にするのに十分な疎水性を免疫調節剤に付与する。好適な脂質部分の例としては、共同所有及び同時係属中のWO2020/191477(PCT/CA2020/000039;参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものが挙げられる。
【0067】
免疫調節剤を含む2種又はそれを超える脂質コンジュゲートは、同じ又は別個の送達ビヒクルに製剤化され得る。そのような実施形態では、2種又はそれを超える免疫調節剤は、2種(又はそれを超える)の薬剤が相加的又は相乗的であるモル比で同じ送達ビヒクル内に安定に保持されるように製剤化され得る。例えば、2、3、4、又は4種を超える脂質コンジュゲート(例えば、2、3、4、又は4種を超えるプロドラッグ)は、一緒に又は別個の送達ビヒクルに製剤化され得る。いくつかの実施形態では、免疫調節の組合せは複数の脂質コンジュゲートを含み、複数の脂質コンジュゲートは3、4、5、6、7、8、9、10、又は10種を超える免疫調節剤を含み、複数の脂質コンジュゲートの各免疫調節剤は異なり、複数の脂質コンジュゲートの各脂質コンジュゲートは、免疫調節の組合せの他のコンポーネント(成分)とは別個の送達ビヒクルに独立して製剤化されるか、又は免疫調節の組合せの他のコンポーネント(成分)のうちの1種又は複数と共製剤化される。2種又はそれを超える免疫調節剤間の相加的又は相乗的な効果は、当業者に公知のChou Talalay法を含むいずれかの好適な技法によって求められ得る。いくつかの実施形態では、2種の脂質コンジュゲート(例えば、2種のプロドラッグ)は、同じ送達ビヒクルに共製剤化される。本明細書の脂質コンジュゲートは、高い封入効率、例えば、最大90%以上の封入効率で送達ビヒクルへの製剤化に特に適している。
【0068】
いくつかの実施形態では、脂質コンジュゲートは第1の脂質コンジュゲートであり、免疫調節の組合せは第2の脂質コンジュゲートをさらに含み、第2の脂質コンジュゲートは、切断可能な連結によって又は切断可能なリンカーを介して親油性部分に共有結合的に連結された免疫調節剤を含み、第2の脂質コンジュゲートの免疫調節剤は第1の脂質コンジュゲートの免疫調節剤とは異なり、第1の脂質コンジュゲート及び第2の脂質コンジュゲートは、別個の送達ビヒクルに製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化される。いくつかの実施形態では、第2の脂質コンジュゲートの免疫調節剤は、第1の脂質コンジュゲートの免疫調節剤とは異なる免疫経路を標的化する。いくつかの実施形態では、第1の脂質コンジュゲート及び第2の脂質コンジュゲートは、同じ送達ビヒクルに共製剤化される。
【0069】
なおさらなる実施形態では、免疫調節の組合せは、第3の脂質コンジュゲートをさらに含む。いくつかの実施形態では、第3の脂質コンジュゲートの免疫調節剤は、第1及び/又は第2の脂質コンジュゲートの免疫調節剤とは異なる免疫経路を標的化する。なおさらなる実施形態では、免疫調節の組合せは、4種を超える脂質コンジュゲートをさらに含む。
【0070】
免疫調節剤は、有機合成によって生成されるものを含む、脂肪酸、グリセリド、リン脂質又は他の疎水性部分などの脂質部分と共有結合的に又は非共有結合的に連結され得る。親油性部分の免疫調節剤への連結は、典型的には、免疫調節剤の疎水性を増加させる。
【0071】
脂質コンジュゲートのLogPは、免疫調節剤に所望の程度の疎水性を付与するのに十分であり得る。一実施形態では、脂質コンジュゲートの予測LogPは、5~30の間、6~28の間又は7~25の間である。
【0072】
いくつかの実施形態では、免疫調節剤は、親油性部分に共有結合的に連結されている。いくつかの実施形態では、免疫調節剤は、切断可能な連結によって又は切断可能なリンカーを介して親油性部分に共有結合的に連結されている。
【0073】
免疫調節剤は、親油性部分に連結されている場合に生物活性であってもよく、又は対象への投与後に親油性部分から切断されると生物活性であってもよい。これに関して、脂質コンジュゲートは、脂質コンジュゲートを対象に投与すると切断可能な1つ又は複数の生分解性基を含み得る。
【0074】
生分解性基は、エステル、アミド、アミジン、ヒドラゾン、ジスルフィド、エーテル、カルボナート、カルバマート、チオノカルバマート、グアニジン、グアニン、オキシム、イソ尿素、アシルスルホンアミド、ホスホルアミド、ホスホンアミド、ホスホロアミダート、ホスファート、ホスホナート、ホスホジエステル、ホスファートホスホノオキシメチルエーテル、N-マンニッヒ付加物、N-アシルオキシアルキルアミン、スルホンアミド、イミン、アゾ;アルカン、アルケンもしくはアルキンを含む炭素ベースの官能基;メチレン(CH)又は尿素から選択される1種又は複数の官能基を含む連結から独立して選択され得る。
【0075】
一実施形態では、親油性部分は、例えば、5~30個の炭素原子、14~20個の炭素原子又は16~18個の炭素原子を有する前駆体脂肪酸又は他の親油性分子に由来し得る。
【0076】
別の実施形態では、親油性部分は、最大3、4、5又は6つの生分解性基を有する直鎖又は分枝の親油性鎖である。一実施形態では、生分解性基のうちの少なくとも1つは、エステル、アミド、アミジン、ヒドラゾン、ジスルフィド、エーテル、カルボナート、カルバマート、チオノカルバマート及びそれらの組合せのうちの少なくとも1つから選択される。一実施形態では、生分解性基は、インビボでエステラーゼによって切断可能なエステルである。
【0077】
ある特定の実施形態では、脂質コンジュゲートは、免疫調節剤にコンジュゲートされた直鎖又は分枝の親油性部分を含む送達ビヒクルに製剤化され、親油性部分は、以下の式Iの構造を有する:
【化1】


(式中、Lは、L1+L2+L3+L4+L5+L6で表され、Lは、2~100個、2~75個、2~80個、3~60個、4~50個、5~45個又は5~40個の炭素原子及び0~6個のシス又はトランスC=C二重結合を含み;
L1は、0~40個、1~40個、1~35個、又は3~30個の炭素原子を有する炭素鎖であり、場合により、L1は、1個又は複数のシスもしくはトランスC=C二重結合又は0~2個のシスもしくはトランスC=C二重結合を有し;
L2及びL4は炭素原子であり;
L3は、0~20個の炭素原子であり、0~2個のシス又はトランスC=C二重結合を含み;
L5は、0~20個の炭素原子であり、0~2個のシス又はトランスC=C二重結合を含み;
L6は-CH、=CH又はHであり;
各Rは、独立して、0~30個の炭素原子及び0~3個のシス又はトランスC=C二重結合、場合により、0~2個のシス又はトランスC=C二重結合を有する直鎖又は分枝の炭化水素鎖であり、ここで、Rのうちの1つ又は複数が分枝している場合、各分枝点は、場合により、X2官能基を含むか、又は炭素原子であり;
nは0~8であり、pは0~8であり、n+pは0であるか、又は≧1又は1~8、2~6又は2~4であり;
存在する場合、各X2は、独立して、エステル、アミド、アミジン、ヒドラゾン、エーテル、カルボナート、カルバマート、チオノカルバマート、グアニジン、グアニン、オキシム、イソ尿素、アシルスルホンアミド、ホスホルアミド、ホスホンアミド、ホスホロアミダート、ホスファート、ホスホナート、ホスホジエステル、ホスファートホスホノオキシメチルエーテル、N-マンニッヒ付加物、N-アシルオキシアルキルアミン、スルホンアミド、イミン、アゾ;アルカン、アルケンもしくはアルキンを含む炭素ベースの官能基;メチレン(CH)又は尿素であるか;
あるいはX2は、少なくとも1個の水素結合を含む連結である)。
【0078】
一実施形態では、脂質コンジュゲートは足場部分を含む。一実施形態における足場部分は、上記の式IのLで表され、少なくとも1つのRは炭化水素側鎖として存在し、n+pは、1又は1~8又は1~7又は1~6又は1~5又は1~4又は1~3である。
【0079】
いくつかの実施形態では、脂質コンジュゲートは、場合により、式Iの構造を有する1つの親油性部分を含む。いくつかの実施形態では、脂質コンジュゲートは、2つの親油性部分を含み、各親油性部分は、同じであっても異なっていてもよい式Iの構造を独立して有し、各親油性部分は、別個の連結もしくはリンカーを介して免疫調節剤に連結されているか、又は同じ連結もしくはリンカーに連結されている。ある特定の実施形態では、各連結はエステルである。いくつかの実施形態では、脂質コンジュゲートは、2つを超える親油性部分を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、式Iの各親油性部分は、以下によって独立して定義される:L1は、3~30個の炭素原子、及び0~3個のシス又はトランスC=C二重結合を有する炭素鎖であり、
nは0であり、
L3は存在せず、
pは1であり、
X2は、カルボナート又はエステルであり(場合により
【化2】

)、
Rは、1~20個の炭素原子及び0~3個のシス又はトランスC=C二重結合を有する直鎖又は分枝の炭素鎖であり、
L5は、1~10個の炭素原子を有する炭素鎖であり、0~1個のシス又はトランスC=C二重結合を含み、
L6は-CHである;
又はLは、5~20個の炭素原子及び0個のC=C二重結合を有する炭素鎖である。
【0081】
いくつかの実施形態では、式Iの各親油性部分は、以下によって独立して定義される:L1は、5~20個の炭素原子(場合により、8~15個の炭素原子)、及び1又は2個のシス又はトランスC=C二重結合(場合により、1個のシス又はトランスC=C二重結合)を有する炭素鎖であり、場合により、L1は-C6-9-C=C-C-であり、
nは0であり、
L3は存在せず、
pは1であり、
X2は、カルボナート又はエステルであり(場合により
【化3】

)、
Rは、1~20個の炭素原子及び0~2個のシス又はトランスC=C二重結合を有する直鎖又は分枝の炭素鎖(場合により、Rは、-C1-6又はC5-8-C=C-C-C=C-C4-6である)であり、
L5は、1~10個の炭素原子を有する炭素鎖であり、0~1個のシス又はトランスC=C二重結合(場合により、0個のC=C二重結合)を含み、
L6は-CHである;
又はLは、5~15個の炭素原子及び0個のC=C二重結合を有する炭素鎖である。
【0082】
L1は、共有結合的連結によって又は水素結合を介して、X1連結を介して免疫調節剤に連結され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、X1連結は生分解性であり、これは、対象への投与後に切断され得ることを意味する。限定するものではないが、エステル結合は、患者への投与後にエステラーゼによって加水分解され、それによって免疫調節剤を親油性部分から放出することができる。しかしながら、他のX1連結は、疾患部位での環境に曝露されたときのそれらの放出特性に基づいて、調整された薬物放出のために利用され得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、X1は、エステラーゼ、アルカリホスファターゼ、アミダーゼ、ペプチダーゼによって切断可能であるか、又は還元環境及び/又は高もしくは低pHに曝露されると切断可能であり得る。
【0085】
ある特定の実施形態におけるX1の化学的連結は、最も有利にはリンカーである。多種多様な化学リンカーが当業者に公知であり、本明細書に記載のある特定の実施形態で用いられ得る。リンカーは、0~12個の炭素原子及び少なくとも1つの切断可能な官能基を有し得る。一実施形態では、リンカーは、少なくとも2つの官能基、リンカーの一端を免疫調節剤にコンジュゲートするための第1の官能基及びリンカーの他端を式IのL上の炭素原子にコンジュゲートするための第2の官能基を有する。2つの官能基は、エステル、アミド、アミジン、ヒドラゾン、エーテル、カルボナート、カルバマート、チオノカルバマート、グアニジン、グアニン、オキシム、イソ尿素、アシルスルホンアミド、ホスホルアミド、ホスホンアミド、ホスホロアミダート、ホスファート、ホスホナート、ホスホジエステル、ホスファートホスホノオキシメチルエーテル、N-マンニッヒ付加物、N-アシルオキシアルキルアミン、スルホンアミド、イミン、アゾ;アルカン、アルケン又はアルキンなどの炭素ベースの官能基;メチレン(CH)又は尿素からそれぞれ独立して選択され得る。
【0086】
リンカーは、生分解性基の導入によって免疫調節剤の増強された放出を提供し得る。1個又は複数のエステル結合を有するリンカーは、患者への投与後にエステラーゼによって加水分解され、それによって免疫調節剤を脂質コンジュゲートから放出することができ得る。免疫調節剤及びLの間の直接反応から生じる連結と同様に、免疫調節剤及び親油性部分の間にヒドラゾン結合を導入するリンカーは、免疫調節剤に脂質コンジュゲートからのpH感受性放出を付与することができる。
【0087】
しかしながら、前述のことは単なる例示的なものであることが理解されよう。リンカーの追加の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,149,794号に提供されている。米国特許第5,149,794号に記載されているリンカーの非限定的な例としては、アミノヘキサン酸、ポリグリシン、ポリアミド、ポリエチレン、及び1~12個の炭素原子長である炭素骨格を有する短い官能化ポリマーが挙げられる。
【0088】
本明細書に記載の脂質コンジュゲートでの使用に適したリンカーのなおさらなる例は、以下の参考文献に提供されている:
【0089】
前述の参考文献の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらなる実施形態では、X1の化学的連結は、官能基及び別個のリンカーの両方を含む。リンカー及び官能基の様々な組合せが、脂質コンジュゲートに取り込まれ得る。
【0090】
一実施形態では、リンカーの一端をL1にコンジュゲートする少なくとも第2の官能基は、エステル又はアミド連結である。別の実施形態では、リンカーの官能基は、エステラーゼなどの酵素によって加水分解され得る。さらなる実施形態では、リンカーの両方の官能基はエステル連結である。
【0091】
いくつかの例示的な脂質コンジュゲートを、図10A図10Mに示す。本明細書に開示の免疫調節の組合せで使用するための、これら及び他の脂質コンジュゲートの製造は当技術分野で公知であり、以前に記載されている。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO/2020/191477を参照されたい。いくつかの脂質コンジュゲートの合成手順を例に記載する。
【0092】
簡潔には、免疫調節剤を、足場Lの反応性基又はリンカー基へのコンジュゲーションによって脂質部分に付着させて、化学的連結X1を形成することができる。一実施形態では、免疫調節剤は、親油性部分(例えば、式I)又はリンカーとコンジュゲーションすると、ヒドロキシル基又は水素原子を失い、脂質コンジュゲートを形成する。免疫調節剤は、当業者に公知のもの中でもとりわけ、-(C=O)O、-OH、-NH、-NHR、-POなどの1種又は複数の反応性官能基を含む化学構造に由来し得、原子の配向に限定されない。
【0093】
例えば、脂質コンジュゲートは、免疫調節剤の(C=O)OH基及び前駆体足場Pのヒドロキシル基の間のコンジュゲーションによって(直接的に又は1種又は複数の中間体を介して)形成され得る。一般的な反応を、目的の分子(例えば、免疫調節剤)について以下に示す:
【化4】
【0094】
上記の例示的な実施形態では、X1の化学的連結はエステルであり、以下の構造を有する:
【化5】

【0095】
別の例示的な例では、免疫調節剤は、リンカーのカルボキシル基((C=O)OH)と反応するヒドロキシル基(-OH)を有し得る。リンカーの第2のカルボキシル基((C=O)OH)は、縮合反応を介して前駆体足場Pの炭素原子上のヒドロキシル基と反応し得る。以下の反応は、リンカーとしてのコハク酸の使用を示す。そのようなリンカーの使用は、以下の反応による2つのエステル基を有する脂質コンジュゲートをもたらす:
【化6】
【0096】
上記の非限定的な例では、X1の化学的連結は以下の構造を有する:
【化7】

【0097】
上記の反応は2段階で進行してもよいことを理解されたい。すなわち、免疫調節剤を最初にリンカーにコンジュゲートし、結果として得られた薬物-リンカーコンジュゲートをその後前駆体足場Pと反応させて、脂質コンジュゲート(プロドラッグ)反応生成物を生成することができる。
【0098】
前述のものは、コハク酸を使用して脂質コンジュゲートを生成することができること以外には、様々な異なるリンカーとしての単に例示目的のために提供されている。
【0099】
別の例では、免疫調節剤又はリンカーは、Lのアミン基とのコンジュゲーションのためのカルボキシル基((C=O)O)を有し、免疫調節剤及びLの間にアミド又はアミド含有連結X1を形成し得る。以下に考察するように、X1の化学的連結を生成するための、薬物又はリンカーの官能基及び足場Lの間の他の反応は、当業者によって想定され得る。
【0100】
ある特定の免疫調節剤は、前駆体足場Pへの連結のための1つを超える反応性官能基を含み得る。そのような実施形態では、当業者によって理解され得るように、薬物-脂質コンジュゲートの合成中に保護基を用いて、薬物の所与の基を足場Lに選択的にコンジュゲートし、別の基を非コンジュゲートのままにすることができる。
【0101】
抗原又は抗原をコードする核酸(単数又は複数)
【0102】
いくつかの実施形態では、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖である。ある特定の実施形態では、抗原は、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドである。抗原は、本明細書の送達ビヒクルに、そのフラグメント又は誘導体を含むがこれに限定されない、望ましくない免疫応答を誘発することが公知のものと同じ形態で製剤化され得る。抗原は、自己(auto)もしくは「自己(self)」と称される対象の体内に由来してもよく、又は外来もしくは「非自己」と称される外部環境に由来してもよい。
【0103】
抗原としては、アレルゲン、スーパー抗原、寛容原、T依存性抗原、T非依存性抗原又は免疫優性抗原が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、抗原はその供給源によって特徴付けられ、外因性抗原、内因性抗原、自己抗原又はネオ抗原を含む。
【0104】
抗原は、単一のエピトープを有し得るか、又は1個を超えるエピトープ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、100、又は100個を超えるエピトープ)を含み得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗原は、抗原提示細胞(APC)上に提示され、本明細書に記載の送達ビヒクルを使用して免疫系のT細胞を活性化することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗原は、アレルギー反応、自己免疫疾患、器官又は組織の拒絶反応、移植片対宿主病、抗薬物抗体又は遺伝子/タンパク質補充療法に関連する抗原である。これらの障害のうちの1種又は複数は、炎症性障害とも称され得る。抗原が炎症反応に関連する場合、抗原としては、記載されるようなアレルゲンである非自己抗原、又は望まない免疫応答を誘発する自己もしくは非自己抗原が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0107】
抗原がアレルギー反応に関連する場合、抗原としては、動物性物質又は陸生もしくは水性動物からの食物を含む動物源、植物花粉又はグルテンなどの植物源、薬物、食物、昆虫の針、カビ胞子などの真菌源、金属、ラテックスなどに由来する非自己抗原(アレルゲンとも称される)が挙げられ得るが、これらに限定さない。
【0108】
アレルギーの非限定的な例としては、アレルギー性喘息、枯草熱、蕁麻疹、湿疹、植物アレルギー、虫刺されアレルギー、ペットアレルギー、ラテックスアレルギー、カビアレルギー、化粧品アレルギー、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎又はコリザ、トピックアレルギー反応、アナフィラキシー、アトピー性皮膚炎、過敏性反応及び他のアレルギー症状が挙げられる。食物アレルギーの非限定的な例としては、乳アレルギー、卵アレルギー、ピーナッツ/レギュームアレルギー、ツリーナッツアレルギー、魚アレルギー、甲殻類アレルギー、大豆アレルギー及びグルテンアレルギーが挙げられる。
【0109】
炎症性疾患の例としては、アルツハイマー病、関節炎、喘息、アテローム性動脈硬化症、クローン病、大腸炎、嚢胞性線維症、皮膚炎、憩室炎、肝炎、過敏性腸症候群(IBS)、エリテマトーデス、筋ジストロフィー、腎炎、例えば、糸球体腎炎パーキンソン病、帯状疱疹及び潰瘍性大腸炎、心血管疾患、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、慢性胆嚢炎、結核、敗血症、サルコイドーシス、珪肺症及び他の塵肺症、ブドウ膜炎、精巣炎、卵巣炎、膵炎、胃炎、リウマチ熱が挙げられる。
【0110】
自己免疫疾患としては、関節リウマチ、多発性硬化症、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体障害、原発性胆汁性胆管炎、免疫媒介性又はI型糖尿病、全身性エリテマトーデス、乾癬、強皮症、自己免疫性甲状腺疾患、例えば橋本甲状腺炎及び原発性粘液水腫、円形脱毛症、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、セリアック病、シェーグレン症候群、自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性膵炎、水晶体起因性ブドウ膜炎、視神経脊髄炎重症筋無力症、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、アジソン病、強皮症、グッドパスチャー症候群、抗糸球体基底膜疾患、乾癬、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、血小板減少性紫斑病、自己免疫性好中球減少症、白斑、自己免疫性血管炎及び皮膚筋炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
抗原はまた、器官又は組織の拒絶反応に関連する症状を処置、予防及び/又は改善するために使用され得る。そのような抗原としては、同種異系細胞に由来するもの、例えば、同種異系細胞の抽出物由来の抗原及び内皮細胞抗原などの他の細胞由来の抗原が挙げられる。
【0112】
さらなる実施形態では、抗原を使用して、移植可能な移植片に関連する望まない症状を処置、予防及び/又は改善することができる。そのような抗原は、移植可能な移植片のレシピエントにおける望ましくない免疫応答に関連する。いくつかの実施形態では、移植抗原としては、器官又は組織の拒絶反応又は移植片対宿主病に関連するものが挙げられる。そのような抗原はまた、生物学的材料の細胞から、又は移植可能な移植片に関する情報から得られ得るか、又はそれに由来し得る。移植抗原には、一般に、細胞に含まれる又は発現されるものが含まれる。移植可能な移植片に関する情報としては、配列情報、抗原のタイプもしくはクラス及び/又はそれらのMHCクラスI、MHCクラスII、又はB細胞提示の制約が挙げられ得るが、これらに限定されない。他の実施形態では、抗原を産生するために使用される情報としては、移植可能な移植片のタイプ(例えば、自家移植片、同種異系移植片、異種移植片)、移植片の分子及び細胞組成、移植片が由来するか移植片が移植される身体位置(例えば、器官全体又は部分、皮膚、骨、神経、腱、ニューロン、血管、脂肪、角膜など)が挙げられる。
【0113】
ある特定の実施形態によれば、抗原は、抗原性タンパク質、ペプチド、ポリペプチド又はそれらのフラグメントの発現が直接的又は間接的に可能な核酸によってコードされる。抗原は、DNA又はRNA及びそれらのハイブリッドを含むがこれらに限定されない核酸配列によってコードされ得る。DNAには、抗原を発現することができるあらゆるベクターが含まれる。RNAは、今度は、抗原タンパク質、ペプチド、ポリペプチド又はそれらのフラグメントをコードするmRNA又は自己増幅するRNAをコードしてもよい。
【0114】
抗原をコードするDNAは、典型的には環状(例えば、プラスミド、ミニサークル又はナノプラスミド)であるが、本明細書のある特定の実施形態では線状DNAも企図される。いくつかの実施形態では、抗原をコードするDNAは自律的に複製する。自律的に複製するDNAは、宿主細胞において機能的な複製起点又は自律複製配列(ARS)を有する。別の実施形態では、抗原をコードするDNAは、公知の技法を使用して対象の宿主細胞のゲノムに挿入されることによって複製し得る。
【0115】
抗原をコードするDNAは、プロモーター配列及び終結領域などの調節領域をコードし得る。抗原をコードするDNAは、適切な微生物(例えば、大腸菌(E.coli))にクローニングされ、次いで、インビトロ又はインビボでの発現のために本明細書に開示の送達ビヒクルに製剤化され得る。DNA配列はレポーター遺伝子配列を含み得るが、投与のための製剤にレポーター遺伝子配列を含めることは任意である。そのような配列は、動物モデルでの研究のためにDNAに取り込まれ得る。
【0116】
抗原をコードするDNAは、一本鎖、二本鎖であってもよく、又はいくつかの実施形態では、DNA-RNAハイブリッドである。一本鎖核酸としては、アンチセンスオリゴヌクレオチド(DNA及びRNAに相補的)、リボザイム及び三重鎖形成オリゴヌクレオチドが挙げられる。長期間の活性を有するために、いくつかの実施形態における一本鎖核酸は、安定な非ホスホジエステル連結で置換されたいくつかの又はすべてのヌクレオチド連結を有し得る。
【0117】
抗原をコードするDNAは、1つ又は複数の糖部分及び/又はピリミジンもしくはプリン塩基のうちの1つ又は複数において改変がなされた核酸を含み得る。さらなる実施形態では、DNAベクターは、ペプチド、タンパク質、ステロイド又は糖部分で改変され得る。そのような改変は、目的の標的部位への送達を容易にし得る。
【0118】
免疫調節の組合せに使用される核酸は、天然供給源から単離することができ、ATCC又はGenBankライブラリーなどの供給源から得ることができ、又は合成方法によって調製することができる。合成核酸は、様々な溶液又は固相法によって調製され得る。一般に、固相合成が好ましい。ホスファイト-トリエステル、ホスホトリエステル、及びH-ホスホナート化学による核酸の固相合成の手順の詳細な説明は、広く利用可能である。
【0119】
一実施形態では、DNAベクターは二本鎖DNAであり、700を超える塩基対、800を超える塩基対、又は900を超える塩基対、又は1000を超える塩基対を含む。
【0120】
前で考察されたように、核酸は、抗原をコードするRNA、例えば、mRNA又は自己増幅するRNAであり得る。RNAは、天然供給源から精製され、組換え発現系を使用して産生され、場合により精製され得るか、又は化学的に合成され得る。ある特定の実施形態では、抗原をコードするRNAは、改変RNA及び非改変RNAの両方を包含する。
【0121】
RNAが化学的に合成されるそれらの実施形態では、RNAは、化学的に改変された塩基もしくは糖、及び/又は骨格の改変を有する類似体などのヌクレオシド類似体を含み得る。いくつかの実施形態では、RNAは、天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン);ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、シュードウリジン、5-メトキシウリジン、及び5-メチルシチジン);化学的に改変された塩基;生物学的に改変された塩基(例えば、メチル化された塩基);インターカレートされた塩基;改変された糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース);及び/又は改変されたリン酸基(例えば、ホスホロチオアート及び5’-N-ホスホロアミダイト連結)であるか、又はそれを含む。
【0122】
抗原をコードするRNAは、様々な公知の方法のいずれかに従って合成され得る。例えば、ある特定の実施形態におけるRNAは、インビトロ転写(IVT)を介して合成され得る。簡潔には、IVTは、典型的には、プロモーター、リボヌクレオチド三リン酸のプール、DTT及びマグネシウムイオンを含み得る緩衝液系、ならびに適切なRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7又はSP6 RNAポリメラーゼ)、DNAse I、ピロホスファターゼ、ならびに/又はRNAse阻害剤を含む、直鎖又は環状DNA鋳型を用いて行われる。
【0123】
いくつかの実施形態では、インビトロで合成された抗原をコードするRNAを、製剤化及び封入する前に精製して、RNA合成中に使用された様々な酵素及び他の試薬を含む好ましくない不純物を除去することができる。
【0124】
一実施形態では、RNAは、1つ又は複数のコード及び非コード領域を含む。
【0125】
RNAは様々な長さであり得る。いくつかの実施形態では、本開示を使用して、長さが約0.1~20kb、1~20kb、約1~15kb、約1~10kb、約5~20kb、約5~15kb、約5~12kb、約5~10kb、約8~20kb、又は約8~15kbの範囲のインビトロで合成されたRNAを製剤化することができる。いくつかの抗原は、8~12アミノ酸長ほどの小さいものであり得る。
【0126】
典型的には、RNA合成は、5’末端に「キャップ」を、3’末端に「テール」を付加することを含む。キャップの存在は、ほとんどの真核細胞に見出されるヌクレアーゼに対する耐性を提供するのに重要である。「テール」の存在は、RNAをエキソヌクレアーゼ分解から保護するのに役立つ。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗原をコードするRNAは5’及び/又は3’非翻訳領域を含む。いくつかの実施形態では、5’非翻訳領域は、RNAの安定性又は翻訳に影響を及ぼす1種又は複数のエレメント、例えば鉄応答性エレメントを含む。いくつかの実施形態では、5’非翻訳領域は、約50~500ヌクレオチド長の間であり得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、3’非翻訳領域は、ポリアデニル化シグナル、細胞内のある位置におけるRNAの安定性に影響を及ぼすタンパク質に対する結合部位、又はRNAに対する1つもしくは複数の結合部位のうちの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、3’非翻訳領域は、約50~500又はそれを超えるヌクレオチド長の間であり得る。
【0129】
ある特定の実施形態では、インビトロでの転写反応から提供されるRNAが望ましい場合があるが、細菌、真菌、植物、及び/又は動物から産生されるRNAなどの他のRNA供給源が企図される。
【0130】
RNA配列はレポーター遺伝子配列を含み得るが、投与のための医薬製剤にレポーター遺伝子配列を含めることは任意である。そのような配列は、動物モデルのインビボ研究のためにRNAに取り込まれて、生体内分布を評価することができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、免疫調節の組合せは、単一抗原又は単一抗原をコードする1種もしくは複数の核酸を含む。他の実施形態では、免疫調節の組合せは、単一抗原又は1種を超える抗原をコードする1種もしくは複数の核酸を含む。免疫調節の組合せは、抗原(単数又は複数単数又は複数)及び抗原(単数又は複数単数又は複数)をコードする核酸(単数又は複数単数又は複数)の組合せを含み得る。ある特定の実施形態では、1種を超える抗原は2種の抗原を含む。ある特定の実施形態では、1種を超える抗原は2種を超える抗原を含む。
【0132】
ある特定の実施形態では、免疫調節の組合せは、抗原又は抗原をコードする1種もしくは複数の核酸を含む。これらの実施形態のいくつかでは、抗原は第1の抗原であり、免疫調節の組合せは、第2の抗原又は第2の抗原をコードする1種もしくは複数の核酸をさらに含み、第1の抗原は第2の抗原とは異なり、第2の抗原又は第2の抗原をコードする1種もしくは複数の核酸は、免疫調節の組合せの他のコンポーネントとは別個の送達ビヒクルに製剤化されるか、又は免疫調節の組合せの他のコンポーネントのうちの1種もしくは複数と共製剤化される。ある特定の実施形態では、第1の抗原をコードする1種又は複数の核酸及び第2の抗原をコードする1種又は複数の核酸は、単一の核酸内に含まれ、第1の抗原及び第2の抗原は、同じ送達ビヒクルに共製剤化される。
【0133】
ある特定の実施形態では、免疫調節の組合せは、複数の抗原を含むか、又は複数の抗原をコードする1種もしくは複数の核酸を含むか、又は複数の抗原を提供するために抗原及び抗原をコードする核酸(単数又は複数単数又は複数)の組合せを含む。各抗原又は抗原をコードする核酸は、免疫調節の組合せの他のコンポーネントとは別個の送達ビヒクルに独立して製剤化されるか、又は免疫調節の組合せの他のコンポーネントのうちの1種もしくは複数と共製剤化される。各抗原は、1個又は1個を超えるエピトープを含み得る。代替の実施形態では、複数の抗原は、3、4、5、6、7、8、9、10、又は10種を超える抗原を含む。
【0134】
送達ビヒクル
【0135】
様々な送達ビヒクルを使用して、免疫調節の組合せ(あるいは「ワクチン製剤」と称される)を調製することができる。これらとしては、脂質ナノ粒子(LNP)を含むナノ粒子、リポソーム、脂質を含むポリマーナノ粒子、ポリマーベースのナノ粒子、エマルジョン、及びミセルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
本開示の脂質コンジュゲートは、脂質又は他の疎水性コンポーネントを含むナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子、リポソーム、又はポリマーベースの系)への取込みに特に適している。ある特定の実施形態における脂質コンジュゲートの脂質様特性は、これら又は他の送達ビヒクルへのその負荷を容易にし得る。例えば、いくつかの実施形態では、所与のナノ粒子への負荷効率は、75%~100%、80%~100%、又は最も有利には90%~100%である。いくつかの実施形態では、送達ビヒクル(単数又は複数単数又は複数)はリポソーム及び/又は脂質ナノ粒子である。
【0137】
一実施形態では、脂質コンジュゲート及び抗原又はそれをコードする核酸は、小胞を形成する脂質、及び場合によりステロールを含む脂質製剤コンポーネントと混合することによって、脂質ナノ粒子又はリポソームに負荷される。結果として、カーゴを取り込む脂質ナノ粒子及び/又はリポソームを、押出、エタノール注入及びインライン混合を含むがこれらに限定されない、当業者に公知の多種多様なよく記載された製剤方法論を使用して調製することができる。そのような方法は、Maclachlan,I.及びP.Cullis、「Diffusible-PEG-lipid Stabilized Plasmid Lipid Particles”、Adv.Genet.、2005.53PA:157~188;Jeffs,L.B.ら、「A Scalable,Extrusion-free Method for Efficient Liposomal Encapsulation of Plasmid DNA」、Pharm Res、2005.22(3):362~72;及びLeung,A.K.ら、“Lipid Nanoparticles Containing siRNA Synthesized by Microfluidic Mixing Exhibit an Electron-Dense Nanostructured Core”、The Journal of Physical Chemistry.C,Nanomaterials and Interfaces、2012、116(34):18440~18450に記載されており、それらの各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0138】
リポソームは、リン脂質二重層によって囲まれた内部の水溶液を含むが、脂質ナノ粒子は、代替的に親油性コアを含み得る。そのような親油性コアは、脂質コンジュゲート(例えば、プロドラッグ)及び/又は抗原もしくはそれをコードする核酸のためのリザーバとして機能することができる。固体及び液体の脂質ナノ粒子は、本明細書に記載の脂質コンジュゲート(単数又は複数)及び/又は抗原(単数又は複数)もしくはそれをコードする核酸(単数又は複数)の送達のために使用され得る。
【0139】
一実施形態では、リン脂質二重層を含むリポソーム又は脂質ナノ粒子が提供され、脂質コンジュゲートは、二重層内で疎水性油相を形成する。そのような送達ビヒクルは、参照により本明細書に組み込まれるWO2020/191477(PCT/CA2020/000039)に記載されている。別の実施形態では、送達ビヒクルはリポソームである。
【0140】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の送達ビヒクルは脂質ナノ粒子であり、場合により、少なくとも1種の脂質コンジュゲートは、脂質ナノ粒子の脂質区画に取り込まれる。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の送達ビヒクルはリポソームであり、場合により、少なくとも1種の脂質コンジュゲートは、リポソームの脂質二重層の油相内に取り込まれる。ある特定の実施形態では、少なくとも1種の抗原又は少なくとも抗原をコードする1種もしくは複数の核酸は、脂質ナノ粒子又はリポソーム内に捕捉され、脂質ナノ粒子中の脂質の正味電荷とは反対の正味電荷を有する。ある特定の実施形態では、少なくとも1種の抗原は親油性であり、脂質ナノ粒子又はリポソームの脂質区画に取り込まれる。ある特定の実施形態では、少なくとも1種の抗原は親水性であり、水性コアを含むリポソームに捕捉される。
【0141】
送達ビヒクルはまた、界面活性剤によって安定化された脂質コアを含むナノ粒子(例えば、リポソーム又はLNP)であり得る。小胞を形成する脂質は、安定剤として利用され得る。別の実施形態では、送達ビヒクルは、安定化脂質によって囲まれたポリマーナノ粒子コアを含むポリマー-脂質ハイブリッド系である。
【0142】
あるいは、ナノ粒子は、脂質を含まないポリマーから調製されてもよい。そのようなナノ粒子は、ポリマーシェルによって囲まれた薬物の濃縮コアを含んでもよく、又はポリマーマトリックス全体に分散した固体又は液体を有してもよい。
【0143】
本明細書に記載の脂質コンジュゲート及び/又は抗原もしくはそれをコードする核酸はまた、油滴又は油コアを含む薬物送達ビヒクルであるエマルジョンに取り込まれ得る。エマルジョンは脂質安定化され得る。例えば、エマルジョンは、脂質の単層又は二重層などの乳化コンポーネントによって安定化された油で満たされたコアを含み得る。
【0144】
ミセルは、疎水性コア中に存在する薬剤の送達に利用される、両親媒性脂質又はポリマーコンポーネントで構成される自己集合性粒子である。薬物を、本明細書に記載されているような足場分子Lへ及び疎水性基Rとコンジュゲートすることにより、ミセルへの薬物負荷を向上することができる。
【0145】
本明細書の脂質コンジュゲートを封入するために使用され得る、当業者に公知の薬物送達ビヒクルのさらなるクラスはカーボンナノチューブである。
【0146】
前述の送達ビヒクルの調製及び脂質がコンジュゲートされた免疫調節剤のその中への取込みのための様々な方法が利用可能であり、当業者によって容易に実施され得る。
【0147】
本開示で包含されるある特定の脂質コンジュゲートは、担体不含系の一部を形成し得る。そのような実施形態では、脂質コンジュゲートは、粒子に自己集合することができる。限定するものではないが、免疫調節剤が親水性である場合、両親媒性プロドラッグは、安定剤を用いて又は用いずにナノ粒子に集合することができる。
【0148】
LNPは、高圧押出、エタノール注入、マイクロ流体混合及びインライン混合を含む多種多様なよく記載された製剤方法論を使用して作製され得る。
【0149】
いくつかの実施形態では、脂質コンジュゲート(プロドラッグ)及び/又は抗原もしくはそれをコードする核酸を含む薬物送達ビヒクルの多分散性指数(PdI)は、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20又は0.15未満である。
【0150】
本明細書に記載の脂質コンジュゲートは、薬物送達ビヒクルの高い封入効率に特に適している。一実施形態では、脂質コンジュゲート(プロドラッグ)の封入効率は、10~99%、15~99%、20~99%又は25~99%である。
【0151】
脂質コンジュゲート(単数又は複数)を含む送達ビヒクルは、抗原(単数又は複数)もしくはそれをコードする核酸(単数又は複数)と共製剤化されてもよく、又は脂質コンジュゲート(単数又は複数)及び抗原(単数又は複数)もしくは核酸(単数又は複数)は、別個の送達ビヒクルに製剤化されてもよい。いくつかの実施形態では、脂質コンジュゲート(単数又は複数)は、抗原(単数又は複数)又は抗原(単数又は複数)をコードする1種もしくは複数の核酸と同じ送達ビヒクルに共製剤化される。
【0152】
抗原又はそれをコードする核酸は、イオン化可能な又は永久的に荷電した脂質を含む脂質ナノ粒子などの送達ビヒクルに製剤化され得る。ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質である抗原が脂質ナノ粒子に封入される場合、イオン化可能な又は永久的に荷電した脂質は、生理学的pH及び温度での抗原の電荷に応じて、カチオン性又はアニオン性であり得る。荷電した脂質は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、共同所有のWO2021/026647;出願番号PCT/CA2020/051098に記載されているように、足場及び生分解性基によってそれに連結された1つ又は複数の炭化水素側鎖を含む親油性部分を含み得る。
【0153】
荷電した抗原(例えば、タンパク質、ペプチド及び/又は核酸)は、イオン性相互作用を使用してリポソーム又はLNP内に捕捉され得る。抗原がアニオン性である場合、カチオン性脂質を使用することができ、逆もまた同様である。核酸が送達ビヒクルに製剤化される場合、イオン化可能な又は永久的に荷電した脂質は、典型的には、生理学的pHで正に荷電している。同様に、抗原が荷電している場合、イオン化可能な又は永久的に荷電した脂質は、典型的には、脂質ナノ粒子でのその製剤化を容易にするために、抗原の電荷とは反対の電荷を有する。例えば、抗原が、荷電したペプチド、ポリペプチド又はタンパク質である場合、イオン化可能な又は永久的に荷電した脂質は、典型的には、生理学的pHで反対の正味電荷を有し得る。
【0154】
親油性又は疎水性抗原を、混合プロセス(例えば、押出、エタノール注入、インライン混合、マイクロ流体)の前に、脂質混合物へ添加することによって、リポソーム又は脂質ナノ粒子に直接的に負荷することができる。カーゴの疎水性は、ナノ粒子が形成されるときに、ナノ粒子の脂質区画内への自発的捕捉を可能にする。この方法は、天然の親油性又は疎水性のカーゴに適用され得る。
【0155】
水溶性又は親水性の抗原を、水性コアを含むリポソームに受動的に負荷することができる。抗原は、小胞を形成するために使用される緩衝水溶液に直接添加される。リポソームは、確立された方法(例えば、押出、エタノール注入、インライン混合、マイクロ流体など)を使用して作製される。この方法は、一般に、低い捕捉をもたらすが、カーゴの量を、使用される濃度によって制御することができる。少量の抗原が、寛容の誘導のために使用される。
【0156】
リポソームワクチン系のための製剤の例は、以下に提供されている:Schewendener 2014 Ther Adv Vaccines 2:159~182;Schmidtら、2016 Pharmaceutics 8:7;及びKersten 1995 Biochim Biophys Acta 1241:117~138。
【0157】
ある特定の実施形態では、LNP又はリポソーム送達ビヒクルの永久的に荷電した又はイオン化可能な脂質は、ヘッド基、及び例えば、上記の式Iの構造を有する直鎖又は分枝の親油性部分を含む。
【0158】
一実施形態では、永久的に荷電した又はイオン化可能な脂質は、足場部分を含む。一実施形態における足場部分は、上記の式IのL(L1+L2+L3+L4+L5)で表され、少なくとも1つのRは炭化水素側鎖として存在し、n+pは、1又は1~8又は1~7又は1~6又は1~5又は1~4又は1~3である。
【0159】
式IのL1は、直接的に又はリンカーを介してヘッド基に連結されていてもよい。リンカーは、直鎖、分枝又は環構造であり得る。イオン化可能な又は永久的に荷電した脂質の好適なリンカー基の例は、参照により本明細書に組み込まれるWO2021/026647(PCT/CA2020/051098)に提供されているように、当技術分野で周知である。
【0160】
リンカー領域を介してL1に直接的又は間接的に連結され得るヘッド基の例としては、以下が挙げられる:
(i)以下からなる群から選択されるイオン化可能なカチオン性部分:
【化8】

(ii)以下からなる群から選択される永久的に荷電した部分:
【化9】

(iii)以下からなる群から選択されるイオン化可能なアニオン性部分:
【化10】

;又は
(iv)以下からなる群から選択される双性イオン部分:
【化11】

【0161】
抗原提示細胞(APC)への選択的送達
【0162】
本明細書に記載の組成物は、APCへの送達のために使用され得る。例として、限定するものではないが、送達ビヒクルのインビボでのAPC取込みは、膵島(例えば、APCがベータ細胞と相互作用して、1型糖尿病の場合ではベータ細胞抗原を取り上げる場合)又は膵臓リンパ節(例えば、APCがT細胞と相互作用して抗原を提示し、その抗原に対して開始され得るT細胞応答のタイプを指令する場合)において実証され得る。一実施形態では、送達ビヒクルの取込みはAPCに対して選択的であり、非APC免疫細胞の取込みは限定的である。取込みがAPCに対して選択的であるかどうかの判定は、本明細書の例1の方法を使用して実施され得る。例えば、膵島の内分泌細胞及びリンパ節の非APC免疫細胞(例えば、T細胞)への送達ビヒクルの送達は限定的であり得る。
【0163】
例えば、非APCに送達される、本明細書に記載の製剤中の脂質ナノ粒子などの送達ビヒクルの全集団は、例1の技法を使用して測定した場合に、20%未満、15%未満又は10%未満であり得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、送達ビヒクルは、膵島及び/又はリンパ節の抗原提示細胞(APC)に選好的に送達する脂質ナノ粒子である。
【0165】
投与方法
【0166】
いくつかの実施形態では、脂質コンジュゲートを含む送達ビヒクルは、対象の抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答を処置、予防及び/又は改善するために投与される医薬製剤の一部である。医薬製剤は、いずれかの好適な投与量で投与され得、薬学的に許容され得る賦形剤を含み得る。
【0167】
脂質コンジュゲート(単数又は複数)が第1の送達ビヒクルに製剤化され、抗原又は抗原をコードする核酸が第2の送達ビヒクルに製剤化される実施形態では、第1及び第2の送達ビヒクルは別個に又は一緒に投与され得る。別個に投与される場合、第1及び第2の送達ビヒクルは、対象に逐次投与され得る。すなわち、第1の送達ビヒクルは、第2のものの前に投与され得、逆もまた同様である。第1及び第2の送達ビヒクルの投与間の時間枠は、患者要件に基づいて選択され得る。第1及び第2の送達ビヒクルは、典型的には、好適な賦形剤及び薬学的に許容され得る塩を含む医薬製剤の各部分である。
【0168】
一実施形態では、1種又は複数の医薬製剤は、非経口的に、すなわち、動脈内、静脈内、皮下又は筋肉内に投与される。なおさらなる実施形態では、医薬組成物は、腫瘍内又は子宮内投与用である。別の実施形態では、医薬組成物は、鼻腔内、硝子体内、網膜下、髄腔内、又は他の局所経路を介して投与される。
【0169】
本明細書に記載の組成物は、患者を含む対象に投与され得る。これには、ヒト又は非ヒト対象が含まれる。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0170】
処置のために選択される対象は、抗原特異的免疫刺激又は望ましくない抗原駆動性免疫応答に関連する病理学的症状を有し得る。これらの免疫障害及び望ましくない抗原駆動性免疫応答は多様であり、アレルギー反応から自己免疫疾患、移植による拒絶反応にまで及ぶ。いくつかの実施形態では、抗原誘発性障害は、自己免疫疾患(自己抗原に対するT細胞及び/又は抗体応答)、アレルギー性疾患(環境又は食物抗原に対するT細胞及びIgE応答)、移植(ドナー組織/器官/細胞における主要及びマイナー組織適合抗原に対するT細胞応答)、抗薬物抗体応答(治療薬の有効性を低下させる抗体応答)、又は遺伝子/タンパク質補充療法(遺伝的タンパク質欠損症で治療的に補充されたタンパク質に対するT細胞/抗体応答)から選択される。いくつかの実施形態では、抗原誘発性障害は、多発性硬化症、関節リウマチ、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体障害、白斑、1型糖尿病、原発性胆汁性胆管炎、抗GBM腎炎/グッドパスチャー病、セリアック病、乾癬、重症筋無力症、免疫性血小板減少性紫斑病、グレーブス病、視神経脊髄炎、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、全身性エリテマトーデスSLEを含むループス、自己免疫性肝疾患、筋炎、エバンス症候群、横断性脊髄炎、ギラン・バレー症候群、温式自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性血管性浮腫、橋本甲状腺炎、ランバート・イートン症候群、ピーナッツ/レギュームアレルギー、ツリーナッツアレルギー(カシュー、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、クルミ、アーモンドのうちのいずれか由来の抗原)、卵アレルギー、牛乳アレルギー、大豆アレルギー、魚アレルギー、甲殻類アレルギー、ゴマアレルギー、小麦アレルギー、アレルギー性気道疾患、又は環境アレルゲン(花粉、ダスト、ペットのふけ、カビ及びゴキブリ由来の抗原)によって引き起こされるアレルギーから選択される。
【0171】
例示的な実施形態
【0172】
本明細書に開示の様々な非限定的な実施形態を、以下に定義する:
実施形態1.切断可能な連結によって又は切断可能なリンカーを介して親油性部分に共有結合的に連結された免疫調節剤を含む脂質コンジュゲート;ならびに抗原及び/又は抗原をコードする1種もしくは複数の核酸を含む免疫調節の組合せであって、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖であり、脂質コンジュゲートならびに抗原及び/又は抗原をコードする1種もしくは複数の核酸は、別個の送達ビヒクルに製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化される、免疫調節の組合せ。
実施形態2.送達ビヒクルが脂質ナノ粒子及び/又はリポソームであり、場合により、送達ビヒクルが、膵島及び/又はリンパ節の抗原提示細胞(APC)に効果的に送達する脂質ナノ粒子である、実施形態1に記載の免疫調節の組合せ。
実施形態3.抗原又は抗原をコードする1種もしくは複数の核酸が、脂質ナノ粒子又はリポソーム内に捕捉され、脂質ナノ粒子における脂質の正味電荷と反対の正味電荷を有するか、あるは抗原が親油性であり、脂質ナノ粒子又はリポソームの脂質区画に取り込まれるか、あるいは抗原が親水性であり、水性コアを含むリポソームに捕捉される、実施形態2に記載の免疫調節の組合せ。
実施形態4.脂質コンジュゲートが、抗原又は抗原をコードする1種もしくは複数の核酸と同じ送達ビヒクルに共製剤化される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の免疫調節の組合せ。
実施形態5.実施形態1~4のいずれか1つに記載の免疫調節の組合せであって、脂質コンジュゲートが第1の脂質コンジュゲートであり、免疫調節の組合せが第2の脂質コンジュゲートをさらに含み、第2の脂質コンジュゲートが、切断可能な連結によって又は切断可能なリンカーを介して親油性部分に共有結合的に連結された免疫調節剤を含み、第2の脂質コンジュゲートの免疫調節剤が第1の脂質コンジュゲートの免疫調節剤とは異なり、第1の脂質コンジュゲート及び第2の脂質コンジュゲートが、別個の送達ビヒクルに製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化され、場合により、免疫調節の組合せが複数の脂質コンジュゲートを含み、複数の脂質コンジュゲートが3、4、5、6、7、8、9、又は10種の免疫調節剤を含み、複数の脂質コンジュゲートの各免疫調節剤が異なり、複数の脂質コンジュゲートの各脂質コンジュゲートが、免疫調節の組合せの他のコンポ-ネントとは別個の送達ビヒクルに独立して製剤化されるか、又は免疫調節の組合せの他のコンポーネントのうちの1種もしくは複数と共製剤化される、免疫調節の組合せ。
実施形態6.第2の脂質コンジュゲートの免疫調節剤が、第1の脂質コンジュゲートの免疫調節剤とは異なる免疫経路を標的化する、実施形態5に記載の免疫調節の組合せ。
実施形態7.第1の脂質コンジュゲート及び第2の脂質コンジュゲートが、同じ送達ビヒクルに共製剤化される、実施形態5又は6に記載の免疫調節の組合せ。
実施形態8.各免疫調節剤が寛容原性剤又は抗炎症剤である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の免疫調節の組合せ。
実施形態9.各免疫調節剤が免疫賦活剤又は免疫抑制剤である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の免疫調節の組合せ。
実施形態10.各免疫調節剤が、独立して、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、インフラマソーム阻害剤、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、コルチコステロイド、mTOR阻害剤、DMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬)、カルシニューリン阻害剤、又はビタミンD受容体アゴニストである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の免疫調節の組合せ。
実施形態11.各免疫調節剤が、独立して、プレドニゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、トリアムシノロン、フルニソリド、ベクロメタゾン、フルチカゾン、モメタゾン、フルドロコルチゾン、フルメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、イソフルプレドン、コルチコステロン、酢酸デスオキシコルトン、エナント酸デスオキシコルトン、11-デオキシコルチコステロン、11-デオキシコルチゾール、アルドステロン、デキサメタゾン、カルシトリオール、アセチルサリチル酸、サリチラート、ミコフェノール酸、シロリムス、タクロリムス、コレカルシフェロール、カルシフェジオール、アルファカルシドール、カルシポトリオール、ファレカルシトリオール、マキサカルシトール、パリカルシトール、ドキセルカルシフェロール、22-オキサカルシトリオール、タカルシトール、エルデカルシトール、エロカルシトール、イネカルシトール、ベコカルシジオール、セオカルシトール、エルゴカルシフェロール、レキサカルシトール、レチノイン酸、シクロホスファミド(ナイトロジェンマスタード)、フィルゴチニブ、バリシチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、ウパダシチニブ、オクラシチニブ、ペフィシチニブ、フェドラチニブ、デルゴシチニブ、デュークラバシチニブ、アブロシチニブ、オーラノフィン、アプレミラスト、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、レフルノミド、メトトレキサート、ミノサイクリン、スルファサラジン、サリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、ナプロキセン、イブプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、ザルトプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラック、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、セレコキシブ、フィロコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、クロニキシン、リコフェロン、MCC950、グリブリド、CY-09、トラニラスト、オリドニン、BOT-4-オン(2-シクロヘキシルイミノ-6-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[1,3]オキサチオール-4-オン)、INF39(エチル2-(2-クロロベンジル)アクリラート)、MNS(3,4-メチレンジオキシ-β-ニトロスチレン)、フェナム酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ケルセチン、JC-171、イブルチニブ、OLT1177、FC11A-2、INF58、JC124、又はエチル2-((2-クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)アクリラートである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の免疫調節の組合せ。
実施形態12.実施形態1~11のいずれか1つに記載の免疫調節の組合せであって、抗原が第1の抗原であり、免疫調節の組合せが、第2の抗原又は第2の抗原をコードする1種もしくは複数の核酸をさらに含み、第1の抗原が第2の抗原とは異なり、第2の抗原又は第2の抗原をコードする1種もしくは複数の核酸が、免疫調節の組合せの他のコンポーネントとは別個の送達ビヒクルに製剤化されるか、又は免疫調節の組合せの他のコンポーネントのうちの1種もしくは複数と共製剤化され、場合により、免疫調節の組合せが複数の抗原を含むか、又は複数の抗原をコードする1種もしくは複数の核酸を含むか、又は複数の抗原を提供するために抗原及び抗原をコードする核酸(単数又は複数)の組合せを含み、複数の抗原が3、4、5、6、7、8、9、又は10種の抗原を含み、各抗原又は抗原をコードする核酸が、免疫調節の組合せの他のコンポーネントとは別個の送達ビヒクルに独立して製剤化されるか、又は免疫調節の組合せの他のコンポーネントのうちの1種もしくは複数と共製剤化される、免疫調節の組合せ。
実施形態13.第1の抗原をコードする1種又は複数の核酸及び第2の抗原をコードする1種又は複数の核酸が、単一の核酸内に含まれ、第1の抗原及び第2の抗原が、同じ送達ビヒクルに共製剤化される、実施形態12に記載の免疫調節の組合せ。
実施形態14.抗原誘発性障害もしくは望ましくない抗原駆動性免疫応答を有する対象の処置に使用するための、又は対象を処置するための医薬の製造に使用するための、実施形態1~13のいずれか1つに記載の免疫調節の組合せであって、場合により、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答が、自己免疫疾患(自己抗原に対するT細胞及び/又は抗体応答)、アレルギー性疾患(環境又は食物抗原に対するT細胞及びIgE応答)、移植(ドナー組織/器官/細胞における主要及びマイナー組織適合抗原に対するT細胞応答)、抗薬物抗体応答(治療薬の有効性を低下させる抗体応答)、遺伝子/タンパク質補充療法(遺伝的タンパク質欠損症で治療的に補充されたタンパク質に対するT細胞/抗体応答)から選択され、場合により、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答が、多発性硬化症、関節リウマチ、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体障害、白斑、1型糖尿病、原発性胆汁性胆管炎、抗GBM腎炎/グッドパスチャー病、セリアック病、乾癬、重症筋無力症、免疫性血小板減少性紫斑病、グレーブス病、視神経脊髄炎、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、全身性エリテマトーデスSLEを含むループス、自己免疫性肝疾患、筋炎、エバンス症候群、横断性脊髄炎、ギラン・バレー症候群、温式自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性血管性浮腫、橋本甲状腺炎、ランバート・イートン症候群、ピーナッツ/レギュームアレルギー、ツリーナッツアレルギー(カシュー、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、クルミ、アーモンドのうちのいずれか由来の抗原)、卵アレルギー、牛乳アレルギー、大豆アレルギー、魚アレルギー、甲殻類アレルギー、ゴマアレルギー、小麦アレルギー、アレルギー性気道疾患、及び環境アレルゲン(花粉、ダスト、ペットのふけ、カビ及びゴキブリ由来の抗原)によって引き起こされるアレルギーから選択される、免疫調節の組合せ。
実施形態15.実施形態1~13のいずれか1つに記載の免疫調節の組合せを対象に投与することを含む、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答を有する対象を処置する方法であって、抗原、又は抗原をコードする1種もしくは複数の核酸、及び脂質コンジュゲートを一緒に又は逐次投与し、場合により、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答が、自己免疫疾患(自己抗原に対するT細胞及び/又は抗体応答)、アレルギー性疾患(環境又は食物抗原に対するT細胞及びIgE応答)、移植(ドナー組織/器官/細胞における主要及びマイナー組織適合抗原に対するT細胞応答)、抗薬物抗体応答(治療薬の有効性を低下させる抗体応答)、遺伝子/タンパク質補充療法(遺伝的タンパク質欠損症で治療的に補充されたタンパク質に対するT細胞/抗体応答)から選択され、場合により、抗原誘発性障害又は望ましくない抗原駆動性免疫応答が、多発性硬化症、関節リウマチ、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体障害、白斑、1型糖尿病、原発性胆汁性胆管炎、抗GBM腎炎/グッドパスチャー病、セリアック病、乾癬、重症筋無力症、免疫性血小板減少性紫斑病、グレーブス病、視神経脊髄炎、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、全身性エリテマトーデスSLEを含むループス、自己免疫性肝疾患、筋炎、エバンス症候群、横断性脊髄炎、ギラン・バレー症候群、温式自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性血管性浮腫、橋本甲状腺炎、ランバート・イートン症候群、ピーナッツ/レギュームアレルギー、ツリーナッツアレルギー(カシュー、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、クルミ、アーモンドのうちのいずれか由来の抗原)、卵アレルギー、牛乳アレルギー、大豆アレルギー、魚アレルギー、甲殻類アレルギー、ゴマアレルギー、小麦アレルギー、アレルギー性気道疾患、及び環境アレルゲン(花粉、ダスト、ペットのふけ、カビ及びゴキブリ由来の抗原)によって引き起こされるアレルギーから選択される、方法。
実施形態16.脂質部分にコンジュゲートされた免疫調節剤を含む少なくとも1種のプロドラッグ;ならびに少なくとも1種の抗原及び/又は抗原をコードする核酸を含むワクチン製剤であって、少なくとも1種の抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖であり、少なくとも1種のプロドラッグならびに抗原及び/又は抗原をコードする核酸は、別個の送達ビヒクルに製剤化されるか、又は製剤中の同じ送達ビヒクルに共製剤化される、ワクチン製剤。
実施形態17.送達ビヒクルが脂質ナノ粒子である、実施形態16に記載のワクチン製剤。
実施形態18.少なくとも1種のプロドラッグが、抗原又は抗原をコードする核酸と同じ送達ビヒクルに共製剤化される、実施形態16又は17に記載のワクチン製剤。
実施形態19.2種のプロドラッグが製剤中に存在し、別個に製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化される、実施形態16、17、又は18に記載のワクチン製剤。
実施形態20.免疫調節剤が寛容原性剤である、実施形態16~19のいずれか1つに記載のワクチン製剤。
実施形態21.免疫調節剤が免疫賦活剤又は免疫抑制剤である、実施形態16~19のいずれか1つに記載のワクチン製剤。
実施形態22.少なくとも1種のプロドラッグの免疫調節剤が、デキサメタゾン、カルシトリオール、アセチルサリチル酸、ミコフェノール酸、シロリムス、タクロリムス、コレカルシフェロール、カルシフェジオール、レチノイン酸、シクロホスファミド(ナイトロジェンマスタード)、フィルゴチニブ、バリシチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、ウパダシチニブ、オクラシチニブ、ペフィシチニブ、フェドラチニブ、デルゴシチニブ、デュークラバシチニブ、アブロシチニブ、オーラノフィン、アプレミラスト、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、レフルノミド、メトトレキサート、ミノサイクリン、スルファサラジン、サリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、ナプロキセン、イブプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、ザルトプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラック、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、セレコキシブ、フィロコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、クロニキシン、リコフェロン、MCC950、グリブリド、CY-09、トラニラスト、オリドニン、BOT-4-オン(2-シクロヘキシルイミノ-6-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[1,3]オキサチオール-4-オン)、INF39(エチル2-(2-クロロベンジル)アクリラート)、MNS(3,4-メチレンジオキシ-β-ニトロスチレン)、フェナム酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ケルセチン、JC-171、イブルチニブ、OLT1177、FC11A-2、INF58、JC124、エチル2-((2-クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)アクリラート、又はそれらの組合せから選択される、実施形態16~21のいずれか1つに記載のワクチン製剤。
実施形態23.実施形態16~22のいずれか1つに記載のワクチン製剤であって、2種の抗原及び/又は抗原をコードする核酸が製剤中に存在し、別個に製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化される、ワクチン製剤。
実施形態24.親油性部分にコンジュゲートされた免疫調節剤を含む少なくとも1種のプロドラッグを投与すること;ならびに少なくとも1種の抗原及び/又は抗原をコードする核酸を投与することを含む、抗原誘発性障害を有する対象を処置する方法であって、少なくとも1種の抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖であり、少なくとも1種のプロドラッグならびに抗原及び/又は抗原をコードする核酸は、送達ビヒクルに別個に製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化され、少なくとも1種のプロドラッグならびに少なくとも1種の抗原及び/又は抗原をコードする核酸は、一緒に又は逐次投与される、方法。
実施形態25.送達ビヒクルが脂質ナノ粒子である、実施形態24に記載の方法。
実施形態26.少なくとも1種のプロドラッグが、抗原及び/又は抗原をコードする核酸と共に送達ビヒクル内に共製剤化される、実施形態24又は25に記載の方法。
実施形態27.2種のプロドラッグが製剤中に存在し、別個に製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化される、実施形態24、25、又は26に記載の方法。
実施形態28.免疫調節剤が寛容原性剤である、実施形態24~27のいずれか1つに記載の方法。
実施形態29.免疫調節剤が免疫賦活剤又は免疫抑制剤である、実施形態24~28のいずれか1つに記載の方法。
実施形態30.少なくとも1種のプロドラッグの免疫調節剤が、デキサメタゾン、カルシトリオール、アセチルサリチル酸、ミコフェノール酸、シロリムス、タクロリムス、コレカルシフェロール、カルシフェジオール、レチノイン酸、シクロホスファミド(ナイトロジェンマスタード)、フィルゴチニブ、バリシチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、ウパダシチニブ、オクラシチニブ、ペフィシチニブ、フェドラチニブ、デルゴシチニブ、デュークラバシチニブ、アブロシチニブ、オーラノフィン、アプレミラスト、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、レフルノミド、メトトレキサート、ミノサイクリン、スルファサラジン、サリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、ナプロキセン、イブプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、ザルトプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラック、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、セレコキシブ、フィロコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、クロニキシン、リコフェロン、MCC950、グリブリド、CY-09、トラニラスト、オリドニン、BOT-4-オン(2-シクロヘキシルイミノ-6-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[1,3]オキサチオール-4-オン)、INF39(エチル2-(2-クロロベンジル)アクリラート)、MNS(3,4-メチレンジオキシ-β-ニトロスチレン)、フェナム酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ケルセチン、JC-171、イブルチニブ、OLT1177、FC11A-2、INF58、JC124、エチル2-((2-クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)アクリラート、又はそれらの組合せから選択される、実施形態24~29のいずれか1つに記載の方法。
実施形態31.2種の抗原及び/又は抗原をコードする核酸が製剤中に存在し、別個に製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化される、実施形態24~30のいずれか1つに記載の方法。
実施形態32.少なくとも1種の抗原及び/又は少なくとも1種の抗原をコードする核酸と組み合わせて、抗原誘発性障害を有する対象を処置するための、親油性部分にコンジュゲートされた免疫調節剤を含むプロドラッグの使用であって、少なくとも1種の抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖であり、少なくとも1種のプロドラッグならびに抗原及び/又は抗原をコードする核酸は、(i)少なくとも1種のワクチン製剤中の同じ送達ビヒクルに共製剤化されるか、又は(ii)対象への逐次投与もしくは共投与のために別個の送達ビヒクルに製剤化される、使用。
実施形態33.送達ビヒクルが脂質ナノ粒子である、実施形態32に記載の使用。
実施形態34.少なくとも1種のプロドラッグが、抗原又はそのような抗原をコードする核酸と同じ送達ビヒクルに共製剤化される、実施形態32又は33に記載の使用。
実施形態35.2種のプロドラッグが製剤中に存在し、別個に製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化される、実施形態32、33、又は34に記載の使用。
実施形態36.免疫調節剤が寛容原性剤である、実施形態32~35のいずれか1つに記載の使用。
実施形態37.免疫調節剤が免疫賦活剤又は免疫抑制剤である、実施形態32~35のいずれか1つに記載の使用。
実施形態38.少なくとも1種のプロドラッグの免疫調節剤が、デキサメタゾン、カルシトリオール、アセチルサリチル酸、ミコフェノール酸、シロリムス、タクロリムス、コレカルシフェロール、カルシフェジオール、レチノイン酸、シクロホスファミド(ナイトロジェンマスタード)、フィルゴチニブ、バリシチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、ウパダシチニブ、オクラシチニブ、ペフィシチニブ、フェドラチニブ、デルゴシチニブ、デュークラバシチニブ、アブロシチニブ、オーラノフィン、アプレミラスト、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、レフルノミド、メトトレキサート、ミノサイクリン、スルファサラジン、サリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、ナプロキセン、イブプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、ザルトプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラック、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、セレコキシブ、フィロコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、クロニキシン、リコフェロン、MCC950、グリブリド、CY-09、トラニラスト、オリドニン、BOT-4-オン(2-シクロヘキシルイミノ-6-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[1,3]オキサチオール-4-オン)、INF39(エチル2-(2-クロロベンジル)アクリラート)、MNS(3,4-メチレンジオキシ-β-ニトロスチレン)、フェナム酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ケルセチン、JC-171、イブルチニブ、OLT1177、FC11A-2、INF58、JC124、エチル2-((2-クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)アクリラート、又はそれらの組合せから選択される、実施形態32~35のいずれか1つに記載の使用。
実施形態39.2種の抗原及び/又は抗原をコードする核酸が製剤中に存在し、別個に製剤化されるか、又は同じ送達ビヒクルに共製剤化される、実施形態32~38のいずれか1つに記載の使用。
実施形態40.抗原誘発性障害を有する対象を処置するための、親油性部分にコンジュゲートされた免疫調節剤を含むプロドラッグ、ならびに少なくとも1種の抗原及び/又は少なくとも1種の抗原をコードする核酸の組合せであって、少なくとも1種の抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、又は多糖であり、少なくとも1種のプロドラッグならびに抗原及び/又は抗原をコードする核酸は、(i)同じ送達ビヒクルに共製剤化されるか、又は(ii)対象への逐次投与もしくは共投与のために別個の送達ビヒクルに製剤化される、組合せ。
【実施例
【0173】
以下の例は、例示のみを目的として与えられており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0174】

脂質コンジュゲートの合成
【0175】
様々な脂質コンジュゲートを、以下に示す合成手順A~Eを使用して調製した。
【0176】
THF(窒素下でNa/ベンゾフェノンから新たに蒸留したもの)及びEtN、DMF及びCHCl(窒素下でCaHから新たに蒸留したもの)を除いて、すべての試薬及び溶媒を商業的供給業者から購入し、特に明記しない限り、さらに精製することなく使用した。USPグレードのヒマシ油を地元の薬局(Life(商標)ブランド)で購入し、受け取ったまま使用した。NMRについては、化学シフトをδスケールの百万分率(ppm)で報告し、カップリング定数Jはヘルツ(Hz)である。多重度を、「s」(一重線)、「d」(二重線)、「dd」(二重線の二重線)、「dt」(三重線の二重線)、「ddd」(二重線の二重線の二重線)、「t」(三重線)、「td」(二重線の三重線)、「q」(四重線)、「quin」(五重線)、「sex」(六重線)、「m」(多重線)として報告し、さらに「app」(見かけ上)及び「br」(ブロード)として認定する。
【0177】
ヒマシ油(リシノレイン)のヒドロキシ及びカルボキシ誘導体に基づく脂質コンジュゲートの一般的な合成の工程を、以下のスキーム1に提供する。続いて、以下の例E、S、T及びWの脂質コンジュゲートを生成するための工程を記載する、一般手順A~Eと称されるスキーム1が続く。
【0178】
スキーム1:ヒマシ油(リシノレイン)のヒドロキシ及びカルボキシ誘導体に基づく脂質コンジュゲートの一般的な合成。
【化12】
【0179】
スキームIにおける上に記載の合成反応によれば、リシノレイン(リシノール酸のグリセリド)としても公知のヒマシ油は、図3に示すプロドラッグの合成のための出発物質である。
【0180】
上記工程1)では、ナトリウムメトキシド(2.0mLのMeOH中3.0M溶液、6.00mmol、0.20当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中のヒマシ油(28.0g、30.0mmol、1.00当量)の撹拌している室温1:1 THF/MeOH(30mL)溶液に添加した。14時間後、反応混合物を飽和NHCl水溶液でクエンチし、EtO(3×150mL)で抽出した。合わせた有機層を水(1×150mL)、ブライン(1×150mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して、無色透明の油状物のメチル(12R)-ヒドロキシオレアート1(28.0g、定量的収率)を得、これをさらに精製することなく使用した。メチル(12R)-ヒドロキシオレアートの構造及びその物理的特性を以下に示す:
メチル(12R)-ヒドロキシオレアート(1):
【化13】

=0.50(SiO、70:30ヘキサン/EtOAc);
【数1】
【0181】
上記の反応スキームの2)に従って、メチル(12R)-ヒドロキシオレアート(9.37g、30.0mmol)の室温THF(15mL)溶液を、アルゴン下、丸底フラスコ中のLiAlH(1.25g、33.0mmol、1.10当量)の撹拌された氷冷THF(90mL)懸濁液に、20~30分間にわたって添加漏斗から添加した。添加が完了した後、冷浴を除去した。14時間後、反応混合物を氷浴で冷却し、EtO(150mL)で希釈し、クエンチ溶液(1.25mLのHO、1.25mLの1M NaOH水溶液、3.75mLのHO)でクエンチし、室温で1時間撹拌し、EtOで十分に洗浄しながらCeliteを通して濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮して、粗ジオールを淡黄色油状物(定量的収率)として得、これをさらに精製することなく使用した。
【0182】
上記反応スキームの3)に従って、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(3.96g、26.2mmol、1.00当量)の室温DMF(20mL)溶液を、アルゴン下、丸底フラスコ中の上記ジオール(8.21g、28.9mmol、1.10当量)及びi-PrNet(5.73mL、32.8mmol、1.25当量)の10~15℃DMF(25mL)溶液に、30分間にわたって添加漏斗から添加した。反応混合物を14時間にわたって加温し、次いで、飽和NHCl水溶液でクエンチし、1:1EtO/ヘキサン(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をHO(3×100mL)、ブライン(1×100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮して、粗い1番目のシリルエーテルを淡黄色油状物として得た。粗生成物をシリカゲルのプラグ(220mLのSiO、99:1→95:5ヘキサン/EtOAc)を通す濾過によって精製して、シリルエーテル2(8.38g、収率80%)から構成される無色透明の油状物を得た。シリルエーテル2の構造、ならびにその物理的特性を以下に示す:
【0183】
I-1-(tert-ブチルジメチルシリル)-12-ヒドロキシオレイルアルコール(2):
【化14】

=0.16(SiO、95:5ヘキサン/EtOAc);
【数2】
【0184】
上記反応スキームの4)に従って、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(495mg、2.40mmol、1.20当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中のRCOH(279mg、2.40mmol、1.20当量)の氷冷CHCl(6mL)溶液に添加し、その後氷浴を除去し、結果として得られた混合物を15分間撹拌した。この例では、RCOHはヘキサン酸であったが、他のアシル基を利用して所望の炭化水素側鎖Sを生成することができる。反応混合物を氷浴で再び冷却し、シリルエーテル、I-1-(tert-ブチルジメチルシリル)-12-ヒドロキシオレイルアルコール2(797mg、2.00mmol)のCHCl(2mL)溶液、続いてDMAP(366mg、3.00mmol、1.50当量)を添加し、反応混合物を14時間にわたって室温に加温した。反応混合物をEtOで希釈し、10分間撹拌し、次いで、Celiteを通して濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮して、粗エステルを白色半固体として得た。粗生成物をシリカゲルのプラグ(20mLのSiO、95:5ヘキサン/EtOAc)を通す濾過によって精製して、R=0.53(SiO、90:10ヘキサン/EtOAc)を有する中間体エステル(定量的収率)として無色透明の油状物を得た。
【0185】
上記の反応スキームの5)に従って、ニートHF・ピリジン溶液(0.74mLのピリジン中70%HF、6.00mmol、3.00当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中のピリジン(0.48mL、6.00mmol、3.00当量)及び上記シリルエーテル(2.00mmol)の撹拌された氷冷THF(6mL)溶液に添加した。2時間後、反応混合物を飽和NaHCO水溶液でクエンチした。混合物をEtO(2×10mL)で抽出し、次いで、合わせた有機抽出物をHO(1×10mL)、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮して、粗第一級アルコールを得た。粗生成物をシリカゲルのプラグ(20mL、90:10ヘキサン/EtOAc)を通す濾過によって精製して、第一級アルコール3(定量的収率)を以下の構造及び物理的特性を有する無色透明の油状物として得た:
(12R)-ヘキサノイルオキシオレイルアルコール(3):
【化15】
【0186】
上記の反応スキームの6)に従って、固体無水コハク酸(400mg、4.00mmol、2.00当量)及びDMAP(611mg、5.00mmol、2.50当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中の(12R)-ヘキサノイルオキシオレイルアルコール(3)(765mg、2.00mmol、1.00当量)の撹拌している室温CHCl(6mL)溶液に添加した。14時間後、反応を1M HCl水溶液でクエンチし、CHCl(2×15mL)で抽出した。次いで、合わせた有機抽出物を1M HCl水溶液(1×15mL)、HO(2×15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮して、中間体ヘミスクシナート(定量的収率)を淡黄色油状物として得、これをさらに精製することなく使用した。中間体は、R=0.32(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc)を有した。
【0187】
反応スキームの7)に従って、固体DCC(99mg、0.48mmol、1.20当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中の上記ヘミスクシナート(232mg、0.48mmol、1.20当量)の撹拌している氷冷CHCl(2mL)溶液に添加し、次いで、氷浴を除去し、結果として得られた混合物を15分間撹拌した。反応混合物を氷浴で再び冷却し、固体デキサメタゾン(157mg、0.40mmol)及びDMAP(73mg、0.60mmol、1.50当量)を添加した。反応混合物を14時間にわたって加温し、EtOで希釈し、10分間撹拌し、次いで、Celiteを通して濾過した。濾液を濃縮して、淡黄色油状物である粗生成物を得た。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(50mLのSiO、80:20→50:50ヘキサン/EtOAc)によって精製して、以下の構造及び特性を有する所望のプロドラッグ4(328mg、収率95%)として無色透明の油状物を得た:
2-((8S,9R,10S,11S,13S,14S,16R,17R)-9-フルオロ-11,17-ジヒドロキシ-10,13,16-トリメチル-3-オキソ-6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-ドデカヒドロ-3H-シクロペンタ[a]49ctadic49rene-17-イル)-2-オキソエチル((R,Z)-12-(ヘキサノイルオキシ)49ctadic-9-エン-1-イル)スクシナート(4):
【化16】

=0.38(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc);
【数3】
【0188】
脂質コンジュゲートは、スクシナートリンカーによってデキサメタゾンにコンジュゲートされたヘキサノイル(C6:0)側鎖を有するリシノレイル足場Lに基づく(INT-D034)。
上記の例では、ヘキサノイル側鎖(C6:0)を生成するために、上記反応の4)で添加したRCOHはヘキサン酸であったが、他の脂肪酸を利用して、リシノレイル足場に所望の炭化水素側鎖Rを生成することができる。
【0189】
一般手順A-(R)-1-(tert-ブチルジメチルシリル)-12-ヒドロキシオレイルアルコール3のアシル化(4a~h):
【0190】
DCC(1.20当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中の所望のカルボン酸(1.20当量)の撹拌している氷冷CHCl溶液に添加し、次いで、氷浴を除去し、結果として得られたものを15分間撹拌した。反応混合物を氷浴で再び冷却し、アルコール3(1.00当量、CHCl中0.25M)のCHCl溶液、続いてDMAP(1.50当量)を添加し、反応混合物を14時間にわたって室温に加温した。反応混合物をEtOで希釈し、10分間撹拌し、次いで、Celite(登録商標)を通して濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮して、粗エステルを白色半固体として得た。粗生成物をシリカゲルのプラグ(95:5ヘキサン/EtOAc)を通す濾過によって精製して、純粋なエステルを得た。
【0191】
一般手順B-(12R)-アシルオキシオレイルアルコール4a~hの脱シリル化-スクシニル化(5a~h):
【0192】
HF・ピリジン溶液(ピリジン中3.00当量の70%HF)を、アルゴン下、丸底フラスコ中のピリジン(3.00当量)及び12-アシルリシノレイルアルコールシリルエーテル(1.00当量)の撹拌している氷冷THF(出発シリルエーテルに対して0.30M)溶液に添加した。TLCが出発物質の消費を示したとき(2~8時間)、反応混合物を飽和NaHCO水溶液でクエンチした。混合物をEtO(2×10mL)で抽出し、次いで、合わせた有機抽出物をHO(1×10mL)、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮して、粗第一級アルコールを得た。粗生成物をシリカゲルのプラグ(90:10ヘキサン/EtOAc)を通す濾過によって精製し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、高真空下で乾燥させて、第一級アルコールを無色透明の油状物として得、さらに精製することなくその後のスクシニル化に使用した。
【0193】
固体無水コハク酸(2.00当量)及びDMAP(2.50当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中の12-アシルリシノレイルアルコール(1.00当量)の撹拌している室温CHCl(出発第一級アルコールに対して0.30M)溶液に添加した。14時間後、反応を1M HCl水溶液でクエンチし、CHCl(2×15mL)で抽出した。次いで、合わせた有機抽出物を1M HCl水溶液(1×15mL)、HO(2×15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残渣をヘキサンに再溶解し、活性炭で処理し、Celite(登録商標)を通して濾過し、濾液を濃縮して、中間体ヘミスクシナートを無色から淡黄色油状物として得、これをさらに精製することなく使用した。
【0194】
一般手順C-メチル(12R)-リシノレアート2のアシル化(6a~c):
【0195】
DCC(1.20当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中の所望のカルボン酸(1.20当量)の撹拌している氷冷CHCl溶液に添加し、次いで、氷浴を除去し、結果として得られたものを15分間撹拌した。反応混合物を氷浴で再び冷却し、メチル(12R)-リシノレアート(1.00当量、CHCl中0.30M)のCHCl溶液、続いてDMAP(1.50当量)を添加し、反応混合物を14時間にわたって室温に加温した。反応混合物をヘキサンで希釈し、10分間撹拌し、次いで、Celite(登録商標)を通して濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮して、粗ジエステルを白色半固体として得、これをシリカゲルのプラグ(95:5ヘキサン/EtOAc)を通す濾過によって精製して、純粋なエステルを得た。
【0196】
一般手順D-ヘミスクシナートへのデキサメタゾンのコンジュゲーション5a~h:
【0197】
DCC(1.20当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中の12-アシルリシノレイルヘミスクシナート(1.20当量)の撹拌している氷冷CHCl(デキサメタゾン中0.2M)溶液に添加し、次いで、氷浴を除去し、結果として得られたものを15分間撹拌した。反応混合物を氷浴で再び冷却し、固体デキサメタゾン(1.00当量)及びDMAP(1.50当量)を添加した。反応混合物を14時間にわたって加温し、EtOで希釈し、10分間撹拌し、次いで、Celite(登録商標)を通して濾過した。濾液を濃縮して、粗生成物を淡黄色油状物として得、その後フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、80:20→50:50ヘキサン/EtOAc)によって精製して、無色透明の油状物を所望のデキサメタゾンコンジュゲートとして得た。
【0198】
一般手順E-リシノレイン酸へのデキサメタゾンのコンジュゲーション12a~b、13:
【0199】
DCC(1.10当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中のアシルオキシステアリン酸(1.10当量)の撹拌している氷冷CHCl(デキサメタゾン中0.1M)溶液に添加し、次いで、氷浴を除去し、結果として得られたものを15分間撹拌した。反応混合物を氷浴で再び冷却し、固体デキサメタゾン(1.00当量)及びDMAP(1.50当量)を添加した。反応混合物を14時間にわたって加温し、EtOで希釈し、10分間撹拌し、次いで、Celite(登録商標)を通して濾過した。濾液を濃縮して、粗生成物を淡黄色油状物として得、その後フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、無色透明の油状物を所望のコンジュゲートとして得た。
【0200】
(R,Z)-18-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクタデカ-9-エン-7-イルアセタート(4a):
【0201】
塩化アセチル(0.43mL、6.00mmol、1.20当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中のシリルエーテル3(2.00g、5.00mmol、1.00当量)、塩化アセチル(0.43mL、6.00mmol、1.20当量)、トリエチルアミン(0.83mL、6.00mmol、1.2当量)及びDMAP(733mg、6.00mmol、1.20当量)の撹拌している氷冷CHCl(10mL)溶液に滴下し、これを室温に加温した。14時間後、反応混合物をCHClで希釈し、飽和NHCl水溶液(1×15mL)、水(2×15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残渣を溶離液に再溶解し、シリカゲルのプラグ(30mLのSiO、97:3ヘキサン/EtOAc)に通して、エステル4a(1.83g、83%)を淡黄色油状物として得た。
=0.45(SiO、95:5ヘキサン/EtOAc);
【数4】

【化17】
【0202】
(R,Z)-18-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクタデカ-9-エン-7-イルヘキサノアート(4b):
【0203】
一般手順Aに従い、CHCl(15mL)中のシリルエーテル3(2.00g、5.00mmol)、ヘキサン酸(697mg、6.00mmol)、DCC(1.24g、6.00mmol)及びDMAP(916mg、7.50mmol)により、2.37gのエステル4b(2.39g、定量的収率)を無色透明の油状物として得た。
=0.43(SiO、95:5ヘキサン/EtOAc);
【数5】

【化18】
【0204】
(R,Z)-18-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクタデカ-9-エン-7-イルラウラート(4c):
【0205】
一般手順Aに従い、CHCl(8mL)中のシリルエーテル3(997mg、2.50mmol)、ラウリン酸(601mg、3.00mmol)、DCC(619mg、3.00mmol)及びDMAP(458mg、3.75mmol)により、エステル4c(1.38g、定量的収率)を無色透明の油状物として得た。
=0.56(SiO、95:5ヘキサン/EtOAc);
【数6】

【化19】
【0206】
(R,Z)-18-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクタデカ-9-エン-7-イルステアラート(4d):
【0207】
一般手順Aに従い、2:1のTHF/CHCl(6mL)中のシリルエーテル3(997mg、2.50mmol)、ステアリン酸(853mg、3.00mmol)、DCC(619mg、3.00mmol)及びDMAP(458mg、3.75mmol)により、エステル4d(1.56g、94%)を無色透明の油状物として得た。
=0.48(SiO、90:10ヘキサン/EtOAc);
【数7】

【化20】
【0208】
(R,Z)-18-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクタデカ-9-エン-7-イルオレアート(4e):
【0209】
一般手順Aに従い、CHCl(10mL)中のシリルエーテル3(997mg、2.50mmol)、オレイン酸(847mg、3.00mmol)、DCC(619mg、3.00mmol)及びDMAP(458mg、3.75mmol)により、エステル4e(1.64g、定量的)を無色透明の油状物として得た。
=0.41(SiO、95:5ヘキサン/EtOAc);
【数8】

【化21】
【0210】
(R,Z)-18-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクタデカ-9-エン-7-イルリノレアート(4f):
【0211】
一般手順Aに従い、CHCl(7mL)中のシリルエーテル3(847mg、2.12mmol)、リノール酸(715mg、2.55mmol)、DCC(526mg、2.55mmol)及びDMAP(389mg、3.19mmol)により、エステル4f(1.06g、76%)を無色透明の油状物として得た。
=0.46(SiO、95:5ヘキサン/EtOAc);
【数9】

【化22】
【0212】
(R,Z)-18-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクタデカ-9-エン-7-イルリノレナート(4g):
【0213】
一般手順Aに従い、CHCl(8mL)中のシリルエーテル3(997mg、2.50mmol)、リノレン酸(835mg、3.00mmol)、DCC(619mg、3.00mmol)及びDMAP(458mg、3.75mmol)により、エステル4g(1.52g、92%)を無色透明の油状物として得た。
=0.34(SiO、95:5ヘキサン/EtOAc);
【数10】

【化23】
【0214】
(R,Z)-18-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクタデカ-9-エン-7-イルアラキドナート(4h):
【0215】
一般手順Aに従い、CHCl(7mL)中のシリルエーテル3(797mg、2.00mmol)、アラキドン酸(670mg、2.20mmol)、DCC(227mg、2.20mmol)及びDMAP(366mg、3.00mmol)により、フラッシュカラムクロマトグラフィー(99:1→95:5ヘキサン/EtOAc)後、エステル4h(730mg、53%)を無色透明の油状物として得た。
=0.57(SiO、95:5ヘキサン/EtOAc);
【数11】

【化24】
【0216】
(R,Z)-4-((12-アセトキシオクタデカ-9-エン-1-イル)オキシ)-4-オキソブタン酸(5a):
【0217】
一般手順Bに従い、シリルエーテル4a(1.79g、4.07mmol)を、HF・ピリジン溶液(1.52mL、12.2mmol)、ピリジン(0.98mL、12.2mmol)及びTHF(10mL)を用いて脱シリル化して中間体第一級アルコール(1.34g)を得、これを無水コハク酸(814mg、8.14mmol)、DMAP(1.24g、10.2mmol)及びCHCl(10mL)を用いたアシル化に供して、カルボン酸5a(1.72g、定量的収率)を得た。
=0.23(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc);
【数12】

【化25】
【0218】
(R,Z)-4-((12-ヘキサノイルオキシ)オクタデカ-9-エン-1-イル)オキシ)-4-オキソブタン酸(5b):
【0219】
一般手順Bに従い、シリルエーテル4b(2.35g、5.00mmol)を、HF・ピリジン溶液(1.86mL、15.0mmol)、ピリジン(1.21mL、15.0mmol)及びTHF(13mL)を用いて脱シリル化して中間体第一級アルコール(2.01g)を得、これを無水コハク酸(1.00g、10.0mmol)、DMAP(1.53g、12.5mmol)及びCHCl(13mL)を用いたアシル化に供して、カルボン酸5b(2.20g、収率92%)を得た。
=0.32(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc);
【数13】

【化26】
【0220】
(R,Z)-4-((12-ラウロイルオキシ)オクタデカ-9-エン-1-イル)オキシ)-4-オキソブタン酸(5c):
【0221】
一般手順Bに従い、シリルエーテル4c(1.38g、2.50mmol)を、HF・ピリジン溶液(0.93mL、7.50mmol)、ピリジン(0.60mL、7.50mmol)及びTHF(8mL)を用いて脱シリル化して中間体第一級アルコール(1.21g)を得、これを無水コハク酸(500mg、5.00mmol)、DMAP(764mg、6.25mmol)及びCHCl(8mL)を用いたアシル化に供して、カルボン酸5c(1.33g、94%)を得た。
=0.44(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc);
【数14】

【化27】
【0222】
(R,Z)-4-オキソ-4-((12-(ステアロイルオキシ)オクタデカ-9-エン-1-イル)オキシ)ブタン酸(5d):
【0223】
一般手順Bに従い、シリルエーテル4d(1.66g、2.50mmol)を、HF・ピリジン溶液(0.93mL、7.50mmol)、ピリジン(0.60mL、7.50mmol)及びTHF(8mL)を用いて脱シリル化して中間体第一級アルコール(1.30g)を得、これを無水コハク酸(500mg、5.00mmol)、DMAP(764mg、6.25mmol)及びCHCl(8mL)を用いたアシル化に供して、カルボン酸5d(1.29g、収率79%)を得た。
=0.35(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc);
【数15】

【化28】
【0224】
(R,Z)-4-オキソ-4-((12-(オレオイルオキシ)オクタデカ-9-エン-1-イル)オキシ)ブタン酸(5e):
【0225】
一般手順Bに従い、シリルエーテル4e(663mg、1.00mmol)を、HF・ピリジン溶液(0.37mL、3.00mmol)、ピリジン(0.24mL、3.00mmol)及びTHF(5mL)を用いて脱シリル化して中間体第一級アルコール(546mg)を得、これを無水コハク酸(200mg、2.00mmol)、DMAP(305mg、2.50mmol)及びCHCl(5mL)を用いたアシル化に供して、カルボン酸5e(630mg、収率97%)を得た。
=0.42(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc);
【数16】

【化29】
【0226】
4-(((R,Z)-12-(リノレオイルオキシ)オクタデカ-9-エン-1-イル)オキシ)-4-オキソブタン酸(5f):
【0227】
一般手順Bに従い、シリルエーテル4f(1.06g、1.60mmol)を、HF・ピリジン溶液(0.60mL、4.80mmol)、ピリジン(0.39mL、4.80mmol)及びTHF(8mL)を用いて脱シリル化して中間体第一級アルコール(890mg)を得、これを無水コハク酸(320mg、3.20mmol)、DMAP(489mg、4.00mmol)及びCHCl(8mL)を用いたアシル化に供して、カルボン酸5f(1.04g、定量的収率)を得た。
=0.35(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc);
【数17】

【化30】
【0228】
4-(((R,Z)-12-(リノレノイルオキシ)オクタデカ-9-エン-1-イル)オキシ)-4-オキソブタン酸(5g):
【0229】
一般手順Bに従い、シリルエーテル4g(1.54g、2.34mmol)を、HF・ピリジン溶液(0.87mL、7.01mmol)、ピリジン(0.57mL、7.01mmol)及びTHF(6mL)を用いて脱シリル化して中間体第一級アルコール(1.31g)を得、これを無水コハク酸(468mg、4.68mmol)、DMAP(714mg、5.84mmol)及びCHCl(6mL)を用いたアシル化に供して、カルボン酸5g(1.47g、定量的収率)を得た。
=0.35(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc);
【数18】

【化31】
【0230】
4-(((R,Z)-12-(アラキドノイルオキシ)オクタデカ-9-エン-1-イル)オキシ)-4-オキソブタン酸(5h):
【0231】
一般手順Bに従い、シリルエーテル4h(711mg、1.04mmol)を、HF・ピリジン溶液(0.39mL、3.11mmol)、ピリジン(0.25mL、3.11mmol)及びTHF(5mL)を用いて脱シリル化して中間体第一級アルコール(593mg)を得、これを無水コハク酸(201mg、2.01mmol)、DMAP(306mg、2.51mmol)及びCHCl(5mL)を用いたアシル化に供して、カルボン酸5h(582mg、収率87%)を得た。
=0.31(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc);
【数19】

【化32】
【0232】
メチル(12R)-ヘキサノイルオキシオレアート(6a):
【0233】
一般手順Cに従い、CHCl(10mL)中のメチルリシノレアート(2.00g、6.40mmol)、ヘキサン酸(898mg、7.68mmol)、DCC(1.58g、7.68mmol)及びDMAP(1.17g、9.60mmol)により、シリカゲル(95:5ヘキサン/EtOAc)を通した濾過後、リシノレアート6a(2.52g、収率96%)を無色透明の油状物として得た。
=0.62(SiO、70:30ヘキサン:EtOAc);
【数20】

【化33】
【0234】
メチル(12R)-リノレオイルオキシオレアート(6b):
【0235】
一般手順Cに従い、CHCl(5mL)中のメチルリシノレアート(500mg、1.60mmol)、リノール酸(538mg、1.92mmol)、DCC(396mg、1.92mmol)及びDMAP(293mg、2.40mmol)により、シリカゲル(95:5ヘキサン/EtOAc)を通した濾過後、リシノレアート6c(875g、収率93%)を薄黄色油状物として得た。
=0.67(SiO、80:20ヘキサン:EtOAc);
【数21】

【化34】
【0236】
(12R)-ヘキサノイルオキシオレイン酸(7a):
【0237】
アルゴンでフラッシュした丸底フラスコに、メチルエステル6a(1.97g、4.79mmol、1.00当量)及びt-BuOH(12mL)、次いで2.0M NaOH水溶液(1.80mL、3.60mmol、0.75当量)を投入した。17時間後、反応溶液のpHを、1M HCl水溶液を使用して2に調整し、EtO(3×30mL)で抽出した。合わせた有機物を、水(1×30mL)、ブライン(1×30mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残渣をシリカのプラグ(98:2:0→50:45:5ヘキサン:EtOAc:MeOH)に通して濾過して、カルボン酸7a(1.30g、収率92%)を淡黄色油状物として得た。
=0.24(SiO、75:20:5ヘキサン/EtOAc/MeOH);
【数22】

【化35】
【0238】
(12R)-リノレオイルオキシオレイン酸(7b):
【0239】
アルゴンでフラッシュした丸底フラスコに、メチルエステル6b(5.97g、10.4mmol、1.00当量)及びt-BuOH(26mL)、次いで2.0M NaOH水溶液(4.70mL、9.30mmol、0.90当量)を投入した。17時間後、反応溶液のpHを、1M HCl水溶液を使用して2に調整し、EtO(3×30mL)で抽出した。合わせた有機物を、水(1×30mL)、ブライン(1×30mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、95:5:0→80:15:5ヘキサン:EtOAc:MeOH)によって精製して、カルボン酸7b(4.48g、収率85%)を淡黄色油状物として得た。
=0.35(SiO、75:20:5ヘキサン/EtOAc/MeOH);
【数23】

【化36】
【0240】
メチル9,10-ジヒドロキシステアラート(8):
【0241】
KOH(7.01g、125mmol、5.00当量)を、500mLのエルレンマイヤーフラスコ中のオレイン酸(7.06g、25.0mmol)及び水(175mL)の急速に撹拌した室温混合物に添加し、次いで、約10℃に冷却した。水(75mL)中のKMnO(7.11g、45.0mmol、1.80当量)の溶液を、10分間にわたって滴下した。追加で10~15分間撹拌した後、反応を飽和NaHSO水溶液の添加によってクエンチし、次いで、冷却浴の補助を用いて濃HClを添加することによってpH≦2に調整した。白色の綿状混合物を室温で1時間撹拌し、次いで、固体を吸引濾過によって回収し、空気で一晩乾燥させた。結果として得られた白色固体を熱重力濾過し、EtOHから再結晶させて、(±)-syn-9,10-ジヒドロキシステアリン酸を白色結晶として得た(5.86g、収率74%)。
【0242】
濃HSO(0.06mL、1.00mmol、0.05当量)を、上記ジヒドロキシ酸(6.33g、20.0mmol)のMeOH(50mL)懸濁液に添加し、結果として得られた混合物を加熱還流した。14時間後、混合物を室温に冷却し、減圧下、ロータリーエバポレーターで濃縮し、結果として得られた残渣をEtOAc及び飽和NaHCO水溶液の間で分配した。有機層を水(1×75mL)、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下、ロータリーエバポレーターで濃縮して、メチルエステル8(6.44g、収率97%)を白色固体として得た。
=0.45(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc);
【数24】

【化37】
【0243】
メチル9,10,12R-トリヒドロキシステアラート(9):
【0244】
KOH(5.61g、100mmol、2.00当量)を、1Lのエルレンマイヤーフラスコ中のリシノール酸(14.9g、50.0mmol)及び水(500mL)の急速に撹拌した室温混合物に添加し、次いで、約10℃に冷却した。水(250mL)中のKMnO(13.4g、85.0mmol、1.70当量)の溶液を、15分間にわたって滴下した。追加で10~15分間撹拌した後、反応を飽和NaSO水溶液の添加によってクエンチし、次いで、冷却浴の補助を用いて濃HClを添加することによってpH≦2に調整した。白色の綿状混合物を室温で4時間撹拌し、次いで、固体を吸引濾過によって回収し、空気で一晩乾燥させた。結果として得られた白色固体をEtOHを用いて熱重力濾過して、粗9,10,12-トリヒドロキシステアリン酸を得、これをさらに精製することなく使用した。
【0245】
濃HSO(0.13mL、2.50mmol、0.05当量)を、上記ジヒドロキシ酸(6.33g、20.0mmol)のMeOH(120mL)懸濁液に添加し、結果として得られた混合物を加熱還流した。14時間後、混合物を室温に冷却し、減圧下、ロータリーエバポレーターで濃縮し、結果として得られた残渣を温EtOAc及び飽和NaHCO水溶液の間で分配した。有機層を水(1×75mL)、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下、ロータリーエバポレーターで濃縮した。結果として得られた淡黄色固体を温EtOで4回研和して、メチルエステル9(9.52g、収率55%)を白色固体として得た。
=0.33(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc);
【数25】

【化38】
【0246】
メチル9,10-ジヘキサノイルオキシステアラート(10a):
【0247】
DCC(2.27g、11.0mmol、2.20当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中の撹拌している氷冷CHCl(13mL)ヘキサン酸溶液(1.28g、11.0mmol、2.20当量)に添加し、次いで、氷浴を除去し、結果として得られたものを15分間撹拌した。反応混合物を氷浴で再び冷却し、ジオール8(1.65g、5.00mmol)、続いてDMAP(1.53g、12.5mmol、2.50当量)を添加し、反応混合物を14時間にわたって室温に加温した。反応混合物をEtOで希釈し、10分間撹拌し、次いで、Celite(登録商標)を通して濾過した。濾液を1M HCl水溶液(2×30mL)、1M NaOH水溶液(2×30mL)、HO(1×30mL)、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下、ロータリーエバポレーターで濃縮して、トリエステル10a(2.61g、定量的収率)を無色透明の油状物として得た。
=0.66(SiO、70:30ヘキサン/EtOAc);
【数26】

【化39】
【0248】
メチル9,10-ジリノレオイルオキシステアラート(10b):
【0249】
DCC(4.33g、21.0mmol、2.10当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中の撹拌している氷冷CHCl(25mL)溶液リノール酸(5.89g、21.0mmol、2.20当量)に添加し、次いで、氷浴を除去し、結果として得られたものを15分間撹拌した。反応混合物を氷浴で再び冷却し、ジオール8(3.30g、10.0mmol)、続いてDMAP(3.05g、25.0mmol、2.50当量)を添加し、反応混合物を14時間にわたって室温に加温した。反応混合物をヘキサンで希釈し、10分間撹拌し、次いで、Celite(登録商標)を通して濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮して、粗生成物を白色半固体として得、これをシリカゲルのプラグ(95:5ヘキサン/EtOAc)を通す濾過によって精製して、トリエステル10b(7.24g、収率85%)を無色透明の油状物として得た。
=0.57(SiO、70:30ヘキサン/EtOAc);
【数27】

【化40】
【0250】
メチル9,10,12R-トリヘキサノイルオキシステアラート(11):
【0251】
DCC(2.64g、12.8mmol、3.20当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中の撹拌している氷冷CHCl(13mL)ヘキサン酸溶液(1.49g、12.8mmol、3.20当量)に添加し、次いで、氷浴を除去し、結果として得られたものを15分間撹拌した。反応混合物を氷浴で再び冷却し、トリオール9(1.39g、4.00mmol)、続いてDMAP(1.71g、14.0mmol、3.50当量)を添加し、反応混合物を14時間にわたって室温に加温した。反応混合物をヘキサンで希釈し、10分間撹拌し、次いで、Celite(登録商標)を通して濾過した。濾液を1M HCl水溶液(2×30mL)、1M NaOH水溶液(2×30mL)、HO(1×30mL)、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下、ロータリーエバポレーターで濃縮して、トリエステル11(1.99g、収率78%)を無色透明の油状物として得た。
=0.77(SiO、70:30ヘキサン/EtOAc);
【数28】

【化41】
【0252】
9,10-ジヘキサノイルオキシステアリン酸(12a):
【0253】
2.0M KOH水溶液(0.91mL、1.82mmol、1.00当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中のトリエステル10a(1.05g、2.00mmol、1.10当量)の室温t-BuOH(7mL)溶液に添加した。20時間撹拌した後、反応混合物を3M HCl水溶液の添加によってpH≦2に酸性化し、EtO(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下、ロータリーエバポレーターで濃縮した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(90:5:5→85:10:5ヘキサン/EtOAc/MeOH)によって精製して、カルボン酸12a(802mg、収率86%)を無色透明の油状物として得た。
=0.22(SiO、85:10:5ヘキサン/EtOAc/MeOH);
【数29】

【化42】
【0254】
9,10-ジリノレオイルオキシステアリン酸(12b):
【0255】
2.0M KOH水溶液(3.00mL、6.00mmol、1.00当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中のトリエステル10b(5.64g、6.60mmol、1.10当量)の室温t-BuOH(7mL)溶液に添加した。20時間撹拌した後、反応混合物を3M HCl水溶液の添加によってpH≦2に酸性化し、ヘキサン(3×75mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下、ロータリーエバポレーターで濃縮した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(90:10:0→85:10:5ヘキサン/EtOAc/MeOH)によって精製して、カルボン酸12b(2.39g、収率68%)を無色透明の油状物として得た。
=0.33(SiO、85:10:5ヘキサン/EtOAc/MeOH);
【数30】

【化43】
【0256】
9,10,12R-トリヘキサノイルオキシステアリン酸(13):
【0257】
2.0M KOH水溶液(1.47mL、2.94mmol、1.00当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中のテトラエステル11(1.98g、3.10mmol、1.10当量)の室温t-BuOH(10mL)溶液に添加した。20時間撹拌した後、反応混合物を3M HCl水溶液の添加によってpH≦2に酸性化し、ヘキサン(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下、ロータリーエバポレーターで濃縮した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(90:10:0→85:10:5→75:20:5ヘキサン/EtOAc/MeOH)によって精製して、カルボン酸13(1.40g、収率78%)を無色透明の油状物として得た。
=0.32(SiO、80:15:5ヘキサン/EtOAc/MeOH);
【数31】
【0258】
例E:INT-D045の合成
【化44】

2-((8S,9R,10S,11S,13S,14S,16R,17R)-9-フルオロ-11,17-ジヒドロキシ-10,13,16-トリメチル-3-オキソ-6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-ドデカヒドロ-3H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)-2-オキソエチル((R,Z)-12-(リノレオイルオキシ)オクタデカ-9-エン-1-イル)スクシナート(INT-D045):
【0259】
一般手順Dに従い、デキサメタゾン(157mg、0.40mmol)、ヘミスクシナート5f(310mg、0.48mmol)、DCC(99mg、0.48mmol)、DMAP(73mg、0.60mmol)及びCHCl(2mL)により、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、80:20→50:50ヘキサン/EtOAc)後に、INT-D045(278mg、収率68%)を無色透明の油状物として得た。
=0.50(SiO、50:50ヘキサン/EtOAc);
【数32】
【0260】
例S:INT-D053の合成
【化45】

(1R,3S,Z)-3-ヒドロキシ-5-(2-((1R,3aS,7aR,E)-1-((R)-6-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン-2-イル)-7a-メチルオクタヒドロ-4H-インデン-4-イリデン)エチリデン)-4-メチレンシクロヘキシル(R,Z)-12-アセトキシオクタデカ-9-エノアート及び(1S,5R,Z)-5-ヒドロキシ-3-(2-((1R,3aS,7aR,E)-1-((R)-6-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン-2-イル)-7a-メチルオクタヒドロ-4H-インデン-4-イリデン)エチリデン)-2-メチレンシクロヘキシル(R,Z)-12-アセトキシオクタデカ-9-エノアート(INT-D053):JZ-25-057、029
【0261】
DCC(50mg、0.24mmol、1.20当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中の(12R)-アセトキシオレイン酸(82mg、0.24mmol、1.20当量)の撹拌している氷冷1:1 CHCl/THF(4mL)溶液に添加し、次いで、氷浴を除去し、結果として得られたものを15分間撹拌した。反応混合物を氷浴で再び冷却し、固体カルシトリオール(83mg、0.20mmol)及びDMAP(29mg、0.24mmol、1.20当量)を添加した。反応混合物を14時間にわたって加温し、EtOAcで希釈し、10分間撹拌し、次いで、Celite(登録商標)を通して濾過した。濾液を濃縮して、粗生成物を淡黄色油状物として得、その後フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、80:20→65:35ヘキサン/EtOAc)によって精製して、1-及び3-アセチル化コンジュゲートの約1:1の混合物(61mg、収率41%)を無色透明の油状物として得た。
=0.33(SiO、60:40ヘキサン/EtOAc);
【数33】
【0262】
例T:INT-D068の合成
【化46】

(R,Z)-18-(((1R,3S,Z)-3-ヒドロキシ-5-(2-((1R,3aS,7aR,E)-1-((R)-6-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン-2-イル)-7a-メチルオクタヒドロ-4H-インデン-4-イリデン)エチリデン)-4-メチレンシクロヘキシル)オキシ)-18-オキソオクタデカ-9-エン-7-イルリノレアート及び(R,Z)-18-(((1S,5R,Z)-5-ヒドロキシ-3-(2-((1R,3aS,7aR,E)-1-((R)-6-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン-2-イル)-7a-メチルオクタヒドロ-4H-インデン-4-イリデン)エチリデン)-2-メチレンシクロヘキシル)オキシ)-18-オキソオクタデカ-9-エン-7-イルリノレアート(INT-D068):
【0263】
DCC(50mg、0.24mmol、1.20当量)を、アルゴン下、丸底フラスコ中の(12R)-リノレオイルオキシオレイン酸(135mg、0.24mmol、1.20当量)の撹拌している氷冷1:1 CHCl/THF(4mL)溶液に添加し、次いで、氷浴を除去し、結果として得られたものを15分間撹拌した。反応混合物を氷浴で再び冷却し、固体カルシトリオール(83mg、0.20mmol)及びDMAP(29mg、0.24mmol、1.20当量)を添加した。反応混合物を14時間にわたって加温し、EtOAcで希釈し、10分間撹拌し、次いで、Celite(登録商標)を通して濾過した。濾液を濃縮して、粗生成物を淡黄色油状物として得、その後フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、95:5→90:10→70:30ヘキサン/EtOAc)によって精製して、1-及び3-アセチル化コンジュゲートの約1:1の混合物(75mg、収率39%)を無色透明の油状物として得た。
=0.26(SiO、70:30ヘキサン/EtOAc);
【数34】
【0264】
例W:二置換カルシトリオールの合成、INT-D087
【0265】
2つの脂質部分で二置換されたカルシトリオール脂質コンジュゲートを調製するための合成スキームの例を以下に提供する:
【化47】
【0266】
脂質ナノ粒子(LNP)の調製
【0267】
脂質1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)又は1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、コレステロール、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)(PEG-DSPE)又は1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(PEG-DMG)をエタノールに溶解した。DSPC、DMPC、PEG-DSPE及びPEG-DMGを、Avanti Polar Lipids(Alabaster、AL)から購入し、コレステロールはSigma(St Louis、MO)から入手した。
【0268】
免疫調節剤を含む脂質コンジュゲート(以下の例では「プロドラッグ」と称される)(図10A図10Mを参照)を、上記のように、また以前に記載された(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2020/191477を参照)ように合成した。
【0269】
脂質コンジュゲート(プロドラッグ)をエタノール、イソプロパノール、DMSO又はTHFに溶解した。LNPは、クロスジャンクションミキサーを使用して、DSPC又はDMPC、コレステロール、プロドラッグ、及びPEG-DSPE(49/40/10/1のモル比)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と急速に混合することによって調製した。製剤をPBSに対して透析して、残留エタノールを除去した。オボアルブミンペプチド323-329(OVA)などのペプチド抗原がLNP内に共製剤化された場合、ペプチドはPBSに溶解され、脂質相と急速に混合される。透析又はタンジェンシャルフロー濾過を使用して、すべての捕捉されていないペプチドを除去した。
【0270】
抗原をコードするmRNAを含むLNPを調製するために、INT-A002(共同所有のWO2021/026647の32ページ;出願番号PCT/CA2020/051098、これは参照により本明細書に組み込まれる)などのイオン化可能な脂質、DSPC、コレステロール及びPEG-DMGをエタノールに溶解した。プロドラッグをエタノール、イソプロパノール、DMSO又はTHFに溶解した。mRNAを、pH4.0で10mMのクエン酸又は25mM酢酸緩衝液に溶解した。LNPは、エタノール中の脂質コンポーネント(INT-A002/DSPC/コレステロール/PEG-DMG/プロドラッグのモル比45/8.5/35/1.5/10)を緩衝水溶液中の核酸と、体積流量比1:3(エタノール対水溶液、合わせた流量28ml/分)で室温にて急速に混合することによって調製した。次いで、生成物を1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対してpH7.4で24時間透析して、残留エタノールを除去し、pHを上昇させた。
【0271】
上記のように調製したLNPの物理化学的特性を、その後特徴付けた。粒径は、リン酸緩衝生理食塩水への緩衝液交換後にMalvern Zetasizer Nano ZS(Malvern、UK)を使用して動的光散乱によって求めた。数加重サイズ及び分布データを使用した。脂質濃度は、Wako Chemicals USA(Richmond、VA)製のコレステロールE酵素アッセイキットを使用して総コレステロールを測定することによって求めた。mRNAの捕捉は、改変したQuanti-iT Ribogreenアッセイ(ThermoFisher、Waltham、MA)を使用して求めた。LNP-mRNA系を、1%Triton X-100(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)の存在下又は非存在下でインキュベートした。蛍光強度(Ex/Em:480/520nm)を比較して、mRNA捕捉%を求めた。
【0272】
例1:LNPは膵島、膵臓リンパ節及び脾臓のAPCに効率的に蓄積する
【0273】
この例は、LNPが、薬物及び抗原を対象中に位置するAPCに効果的に送達するための潜在的な送達プラットフォームを提供することを実証している。このことは、他の細胞型での薬物蓄積を回避し、APC集団への効果的な送達を提供することによって、副作用を制限し、用量要求量を低減するという追加の効果を有し得る。
【0274】
膵臓APCにおけるLNPの蓄積を求めるために、マウスは、600mg/kgの用量でi.p.注射される蛍光マーカーDiOを含むLNPを、24時間空けて2回の注射を受けた。最初の注射の48時間後、動物を安楽死させ、膵島及びリンパ節を採取した。膵島を手で選んで純度99%にした。膵島及びリンパ節を単一細胞懸濁液に分散させ、生存性、CD45(汎免疫細胞マーカー)ならびにCD11b及びCD11c(APCマーカー)について染色し、DiO陽性細胞の数をフローサイトメトリーによって定量した。
【0275】
図1A図1Dは、単純な注射によって、LNPが膵島及び膵臓リンパ節の両方においてAPCによって取り込まれることを示す。さらに、リンパ節及び膵島の両方において示されるように、膵島における内分泌細胞、及びリンパ節における非APC免疫細胞(例えば、T細胞)を含む、他の細胞型によるLNPの取込みは制限されている(表1)。
【0276】
【表1】
【0277】
膵島APCの標的化に関してLNPの脂質組成物の効果を比較するために、C57Bl/6J雄マウスに、150mg/kg DSPC/コレステロール又はDiOを含むイオン化可能なLNPを、膵島、膵臓リンパ節、及び脾細胞の単離の24時間前に注射した。膵島を手で選んで純度99%にした。組織を単一細胞懸濁液に分散させ、生存性、CD45(汎免疫細胞マーカー)ならびにCD11b及びCD11c(APCマーカー)について染色し、DiO陽性細胞の数をフローサイトメトリーによって定量した。
【0278】
APCにおける顕著な蓄積が、膵島、膵臓リンパ節及び脾臓において、リポソーム及びLNP(DSPC/コレステロール又はイオン化可能)の両方に対して観察される(図2)。
例2:LNPは、寛容化剤の脂質コンジュゲート(プロドラッグ)を効率的に共封入し、安定に保持することができる
例1に示すように、リポソーム及びLNP(DSPC/コレステロール及びイオン化可能)の両方は、インビボでAPCに蓄積することができる。本開示の別の非限定的な態様は、その中に共製剤化された2種又はそれを超える異なる免疫調節剤を有するLNPを提供する。プロドラッグは、その親油性の性質に起因して、共製剤化に独特に適している。結果は、1種を超えるプロドラッグを高い封入効率でLNPに製剤化できることを示すだけでなく、プロドラッグがLNP中に安定に保持され得ることも示す。その上、本明細書の結果は、プロドラッグ戦略が2種又はそれを超える免疫調節剤の組合せの送達に特に適していることを示している。
【0279】
図3に示すように、デキサメタゾン(D045)及びカルシトリオール(D053、D068、D083)脂質プロドラッグの両方は、ヒト血漿中での2時間のインキュベーション後、LNP内に安定に保持される。この例は、最大20モル%のデキサメタゾン及びカルシトリオールプロドラッグを含むLNPを調製する能力を実証しているが、本開示のLNPは、最大99モル%のプロドラッグを取り込むことができることが示されている。したがって、本開示のプロドラッグ戦略を使用して、追加の免疫調節剤(例えば、それらだけに限定されないが、アセチルサリチル酸、ミコフェノール酸、シロリムス及びタクロリムスなど)の共製剤化を、本明細書に開示のLNP製剤において達成することができる。
【0280】
LNPにおける異なる脂質プロドラッグの効率的捕捉を示す結果を、表2に示す。以下の表3、表4及び表5は、これらのプロドラッグの異なる比が捕捉効率に影響を及ぼすことなく達成できることを実証している。
【0281】
【表2】

デキサメタゾン及びカルシトリオール脂質プロドラッグの構造については、WO2020/191477(PCT/CA2020/000039;参照により本明細書に組み込まれる)及び本明細書の図10A図10Gを参照されたい。
【0282】
【表3】
【0283】
【表4】
【0284】
【表5】
【0285】
例3:LNPに封入されたカルシトリオール及びデキサメタゾンプロドラッグを用いたAPCの寛容化
【0286】
この例は、本開示のプロドラッグLNPが、エクスビボでAPCを寛容化することができることを実証している。
【0287】
骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、様々なカルシトリオール及びデキサメタゾンプロドラッグ(単独又は組合せ)を含むLNPで48時間処理した。その後、プロドラッグ製剤がLPS媒介性活性化を防止できる(すなわち、BMDCを寛容化する)かどうかを判定するために、BMDCをリポ多糖(LPS)刺激を用いて24時間チャレンジした。
【0288】
特に、マウス骨髄細胞を、標準的な手順に従って、APC(この場合では樹状細胞)に分化させた。簡潔には、骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、RPMI1640培地(10%FBS、10mMのHEPES、50μMのβ-メルカプトエタノール、1×GlutaMAX、0.1mMの非必須アミノ酸、1%Pen/Strep、30ng/mLのGM-CSF、及び30ng/mLのIL-4を補充)中で培養することによって、C57Bl/6雄マウス(Charles River)から単離した骨髄から生成した。分化の5日後、BMDCを、LNPに封入されたプロドラッグ又は空のLNP(LNP対照)又はビヒクルを用いて48時間処理し、その後リポ多糖(LPS、10ng/mL)の添加によって24時間活性化した。次いで、BMDCを、下流での分析のために採取した。
【0289】
BMDC(上記)の細胞表面マーカーを特徴付けるために、浮遊及びゆるく付着した細胞を回収し、PBSで2回洗浄した。500,000細胞を、1μg/試料のFcブロッカー(Invitrogen CD16、CD32カタログ番号14-016186)と共に室温で10分間インキュベートした。CD80-PE(BioLegendカタログ番号104707)、CD86-PE-Cy7(BioLegendカタログ番号105013)、MHC II-APC(BioLegendカタログ番号107613)、Fixable Viability-eF780(Invitrogenカタログ番号65-0865-14)、及びCD11c-BV510(BioLegendカタログ番号117337)を製造業者の推奨に従って試料に添加し、室温で20分間インキュベートした。次いで、フローサイトメトリーによる分析の前に、試料をFACS緩衝液(PBS、2%FBS)で2回洗浄した。
【0290】
図4に示すように、プロドラッグ処理は、エクスビボでBMDCを効果的に寛容化した。様々な寛容化プロドラッグ及びプロドラッグの組合せは、寛容原性又は未成熟表現型の誘導と一致して、DCの細胞表面上のB7分子(CD80及びCD86)のLPS誘導性発現を阻害した。活性化されたDCは、高いMHCII及びB7分子の発現を有する一方、寛容原性/未成熟DCは、低下したB7の発現を有し得る。さらに、図5に示すように、単一のプロドラッグ処理は、同種異系混合白血球反応において機能的な寛容原性DCを誘導し、増殖の完全な防止がいくつかの製剤で観察された。とりわけ、これは非常に堅牢なタイプの免疫応答(器官の移植による拒絶反応に類似)であり、これらの寛容化プロドラッグの有効性を裏付けている。これらの免疫調節剤の組合せを使用した場合、T細胞の増殖のより大きな寛容又は抑制が観察された(図6及び図7)。
【0291】
例4:プロドラッグ-LNPは、抗原特異的マウスモデルにおいて、CD4+T細胞の増殖を減少させることができる
【0292】
APC及びT細胞がMHC不一致ドナーに由来する同種異系マウスモデルにおいて、APCを寛容化するという以前の実証が成功した。しかしながら、プロドラッグが抗原特異的刺激を減少させる能力を実証するために、抗原特異的マウスモデルを使用した。CD4 T細胞をOT-IIマウスから回収した。これらのマウスは、I-Ab MHCクラスIIに提示された場合に、オボアルブミン323-339ペプチドフラグメント(OVA)に結合し、反応するように操作されたCD4+T細胞上のT細胞受容体を有する。APCにOVAを負荷し、これらのT細胞と混合すると、T細胞の堅牢な増殖が観察される(抗原特異的免疫障害を有することに類似)。
【0293】
抗原特異的モデルのために、脾細胞をOT-IIマウス(B6.Cg-Tg(TcraTcrb)425Cbn/J;Jackson Laboratories)から単離した。CD4+T細胞をCD4陽性選択(EasySep(商標)マウスCD4+T細胞単離キット、カタログ番号19852、Stem Cell Technologies)によって精製し、10μM CFSEで標識し、96ウェルU底プレートに100,000細胞/ウェルの密度で播種した。同日に、プロドラッグで処理したC57BL/6 BMDC(上記)を採取し、OVAペプチドあり/なしでパルスし、30Gyで照射し、RPMI1640培地(10%FBS、10mMのHEPES、50μMのβ-メルカプトエタノール、10mMのピルビン酸ナトリウム、1×GlutaMAX及び1%Pen/Strepを補充)中、50:1、10:1及び5:1のT:DC比で、3日間CD4+細胞と共培養した。その後、細胞を生存性について染色(eBioscience Fixable Viability Dye eFlour780、カタログ番号65-0865)及びCD4(eBioscience CD4モノクローナル抗体(RM4-5)、カタログ番号48-0042-82)し、T細胞の増殖を、フローサイトメトリーによるCFSE希釈によって定量した。
【0294】
図8に示すように、D053は、OVAが負荷されたBMDCによって誘導されるT細胞の増殖の量を有意に減少させる。さらに、この応答は、OVAペプチドを、寛容化プロドラッグを含むLNPに共製剤化した場合に、保存される(図9)。
【0295】
例5:プロドラッグ-LNP及びLNP-mRNAの同時処理中に、CD4+T細胞の増殖の減少が観察される
【0296】
先の例では、免疫調節剤-脂質コンジュゲート(別個のLNPにあるか、又はペプチド抗原と同じLNPに共負荷されるかのいずれか)が、Ova特異的CD4+T細胞の増殖を抑制することができることが示された。ペプチド又はタンパク質に加えて、そのコードされたタンパク質に翻訳され、かつその後抗原提示経路に沿ってプロセシングされるmRNAは、抗原の供給源として使用することができる。
【0297】
この例で使用されたmRNAは、免疫刺激を最小限に抑えるように改変されており、全長オボアルブミン(Ova)タンパク質(Trilink、L-7210)をコードする。骨髄由来樹状細胞(BMDC)を上記のように調製し、H-2b MHCクラスII(C57BL/6ハプロタイプ)に負荷されたOva323-339エピトープを特異的に認識する、単離されたCD4+T細胞(OT-II T細胞)と共培養した。増殖を、フローサイトメトリーによるCFSE希釈に基づいて評価した。遊離Ova323-339ペプチド(0.1μg/mL)を用いて4時間パルスしたBMDCを、抗原負荷した対照(遊離Ovaペプチド)とし、非処理BMDCを抗原なし対照とした。共培養の48時間前に、BMDCを、LNP-mRNAのみ又はLNP-mRNA及びデキサメタゾン(D034)もしくはカルシトリオール(D053)プロドラッグを含むLNPで処理した。
【0298】
図11に示すように、LNP-mRNAは、遊離ペプチド抗原と同様のレベルのT細胞増殖を誘導した。BMDCを、脂質コンジュゲートD034又はD053を含むLNPと共処理した場合、増殖のレベルが抑制された。このことは、抗原がペプチド(図8)であるかmRNA(図11)であるかにかかわらず、プロドラッグ-LNP(すなわち、脂質コンジュゲート-LNP)を使用して、抗原特異的T細胞の増殖を減少させることができることをさらに実証している。
【0299】
例6:LNPは、mRNA及び寛容化剤のプロドラッグを効率的に共封入することができる
【0300】
この例では、mRNA及び免疫調節剤-脂質コンジュゲートを同じLNP内に共負荷する能力が実証されている。最大3つの異なるプロドラッグ及び最大10モル%を、表6に示す。粒径(Z-Ave)、多分散性(PDI)又はmRNA捕捉にはほとんど影響がなかった。プロドラッグの捕捉も影響を受けなかった(表7)。
【0301】
【表6】
【0302】
【表7】
【0303】
例7:mRNA抗原及び免疫調節剤-脂質コンジュゲートを共負荷したLNPは、CD4 T細胞において明確な寛容原性機構を誘発する
【0304】
抗原提示細胞によって提示された抗原を認識すると、T細胞におけるいくつかの応答は、T細胞機能の変化(例えば、アネルギー又は疲弊)、抗原特異的エフェクターT細胞の抑制された増殖又は欠失、ならびにFoxp3+Treg及びIL-10産生Tr1を含む抗原特異的制御性T細胞の増殖を含む、抗原特異的免疫寛容に寄与し得る。抗原をコードするmRNA及びプロドラッグを共負荷したLNPを用いた抗原提示細胞の処理が、抗原特異的T細胞において寛容原性応答を誘導することができるかどうかを判定するために、Ova mRNA及び様々な脂質コンジュゲートを共負荷したLNPで前処理した抗原提示細胞(BMDC)との共培養物に対する応答において、Ova反応性OT-II CD4+T細胞の表現型を研究した。
【0305】
BMDCをC57BL/6ドナーマウスから作成し、LNP製剤で48時間処理(又は非処理)し、10ng/mLのLPSを用いて最後の24時間成熟させた。この例のLNP製剤中の全長OvaをコードするmRNAは、免疫刺激を最小限に抑えるように改変され(L-7210、TriLink)、遊離Ova323-339ペプチド(0.1μg/mL)を用いて4時間パルスしたBMDCを、抗原負荷した対照とした。脾臓CD4+T細胞を、CD4 Easy Sep Kit(Stem Cell Technologies)を使用してOT-IIマウス(I-Ab:Ova323-339特異的TCRトランスジェニックマウス、Jackson Laboratory)から単離し、CFSEで標識した。共培養の日に、BMDCを2回洗浄し、ウェルあたり100,000CD4細胞の密度で、1:5BMDC:CD4細胞の比でCD4 T細胞と共培養した。T細胞を、様々なマーカー(固定可能な生存性色素、CD4、PD1、CTLA4、CD25、Foxp3、CD49b、及びLAG3)との3日間の共培養後に染色し、フローサイトメトリーによって評価した。
【0306】
図12に示すように、OT-II CD4+T細胞は、Ova mRNAのみのLNPで前処理したBMDCに対して応答して大きく増殖した(遊離Ova323-339ペプチドを用いて負荷したBMDCによる誘導に匹敵する)が、OT-II CD4+T細胞は、非処理(抗原なし)のBMDCに対して応答しての増殖は最小限であった。さらに、免疫調節剤-脂質コンジュゲートの非存在下では、Ova抗原を提示するBMDCで刺激したOT-II CD4+細胞の中で、CD49b+LAG3+(Tr1マーカー)細胞、CD25+Foxp3+(Tregマーカー)細胞の頻度に変化はなく、PD1+及びCTLA-4+細胞の誘導はなかった。対照的に、Ova mRNA及び脂質コンジュゲートを共負荷したLNPで前処理したBMDCは、様々なCD4+T細胞応答の変化を誘発した;いくつかのLNP製剤は、エフェクターCD4+T細胞の増殖の減少を示す抗原特異的増殖を減少させた(最上部のパネル);他のLNP製剤は、CTLA-4及びPD1を発現するCD4+細胞の頻度を増加させた(2番目及び3番目のパネル);一方、他の製剤は、Treg(CD25+Foxp3+、4番目のパネル)又はTr1(CD49b+LAG3+、最後のパネル)の頻度を顕著に誘導した。このように、改変mRNAにコードされた抗原及び免疫調節性脂質コンジュゲートの両方を共負荷したLNPは、抗原特異的CD4+T細胞において明確な寛容原性応答(アネルギー、制御性細胞の増殖、制限されたエフェクター細胞の増殖)を誘発するように、BMDCを誘導することができる。
【0307】
図13A及び図13Bは、mRNAにコードされた抗原単独のLNPでの送達が、(mRNAに対する自然免疫応答を最小限に抑えるように改変されているにもかかわらず)Th1及びTh2サイトカイン分泌の誘導を引き起こしたが、様々な免疫調節性プロドラッグの共送達がこの応答を阻害し、多くの場合、ベースラインレベル未満に(IFNγ及びTNFαの場合のように)抑制さえすることを示す。したがって、BMDCへの改変mRNAにコードされた抗原との免疫調節プロドラッグの共送達は、抗原特異的Th1及びTh2応答を低減させる。
【0308】
例8:mRNAにコードされた抗原及び免疫調節性脂質コンジュゲートを共負荷したLNPは、インビボで抗原特異的寛容を誘導することができる。
【0309】
この例は、改変mRNAにコードされた抗原及び免疫調節性脂質コンジュゲートを共負荷したLNPが、インビボで抗原特異的寛容を誘導することができることを実証している。
【0310】
雌C57BL/6Jマウスに、同じ粒子に共負荷されるD034を含む/含まない、改変Ova mRNA(L-7210、TriLink)を負荷したLNPを注射した。マウスに、LNP(10μg mRNA/マウスとして投与)又は緩衝液のみの合計3回の注射のために、隔週で1回、ip注射した。Ova特異的IgG1抗体を、マウス抗Ova IgG1 ELISA(Cayman Chemical、カタログ番号500830-96)によって、最後の注射の2週間後に回収した血清から測定した。
【0311】
図14に示すように、マウスにOva mRNAを有するLNPを注射することにより、血清中に高レベルの抗Ova抗体が誘導され、Ova抗原に対する抗原特異的免疫応答を示している。対照的に、Ova mRNA及び脂質コンジュゲートD034を共負荷したLNPを受けたマウスは、抗Ova IgG1レベルを確実に抑制した。このように、改変mRNAによってコードされるOva抗原に対する体液性免疫応答は、LNPに免疫調節性脂質コンジュゲートを共負荷することによって低減している。同様の結果(図示せず)が、追加の脂質コンジュゲート(D034+D053、及びD034+D053+D097)と組み合わせて、D034を用いて共製剤化されたLNPに対して観察された。
【0312】
本発明を前述の例を参照して説明及び例示したが、本発明から逸脱することなく様々な改変及び変更を行うことができることは明らかであろう。

図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図10I
図10J
図10K
図10L
図10M
図11
図12
図13A
図13B
図14
【国際調査報告】