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特表2024-533324拡張現実ナビゲーションを使用してオブジェクトを位置決めするための外科手術システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】拡張現実ナビゲーションを使用してオブジェクトを位置決めするための外科手術システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20240905BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20240905BHJP
   A61B 17/17 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B34/10
A61B17/17
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515100
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022042857
(87)【国際公開番号】W WO2023039032
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,758
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514290052
【氏名又は名称】アースレックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARTHREX, INC.
【住所又は居所原語表記】1370 Creekside Blvd, Naples, FL 34108, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・クノプフ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL09
4C160LL12
4C160LL26
4C160LL28
(57)【要約】
術前外科手術計画の態様を実際の外科手術部位に移すために、拡張現実ナビゲーション及び可視化技術を利用する、外科手術システム及び方法が提供されている。外科手術システム及び方法は、実際の外科手術部位と関連付けられた術前外科手術計画と術中解剖学的構造との間の外科手術リーミング処置をガイドするためのガイドピンなどの外科手術位置決めオブジェクトの正確な整列を達成するために利用され得る。拡張現実は、処置中に術中解剖学的構造を閉塞することを回避する様式で、外科手術位置決めオブジェクトの進入点及びドリル軌道の両方の可視化を達成するために利用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術システムのための拡張現実システムであって、
拡張現実可視化デバイスと、
前記拡張現実可視化デバイスを制御して、
患者の解剖学的構造に対して拡張現実環境を提供することと、
ユーザが、前記患者の解剖学的構造に対する外科手術位置決めオブジェクトの所望の進入点及び所望の軌道を術中に達成するために、拡張現実環境とインターフェースすることを可能にすることと、を行うようにプログラムされたプロセッサと、
を備える、拡張現実システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記拡張現実可視化デバイスを制御して、仮想オブジェクトで前記所望の進入点を仮想的に示すように更にプログラムされている、請求項1に記載の拡張現実システム。
【請求項3】
前記仮想オブジェクトが、仮想クロスヘアを含む、請求項2に記載の拡張現実システム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記拡張現実可視化デバイスを制御して、方向インジケータ又は角度差インジケータで前記所望の軌道を仮想的に示すように更にプログラムされている、請求項1に記載の拡張現実システム。
【請求項5】
前記方向インジケータ又は前記角度差インジケータが、前記外科手術位置決めオブジェクトに接続されている軌道マーカ上にオーバーレイされている、請求項4に記載の拡張現実システム。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記拡張現実可視化デバイスを制御して、前記拡張現実環境内の前記患者の解剖学的構造に仮想骨モデルを登録するための登録プロセスを実施するように更にプログラムされている、請求項1に記載の拡張現実システム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記拡張現実可視化デバイスを制御して、前記拡張現実環境内に複数の登録基準点を提示するように更に構成されており、更に、前記複数の登録基準点の各々が、前記仮想骨モデルの前記患者の解剖学的構造への近似を初期化するために、前記ユーザが前記患者の解剖学的構造に物理的に接触するべき場所を視覚的に示す、請求項6に記載の拡張現実システム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記拡張現実可視化デバイスを制御して、前記拡張現実環境内の前記外科手術位置決めオブジェクトの実際の軌道と前記所望の軌道との間の精度を視覚的に示すように更にプログラムされている、請求項1に記載の拡張現実システム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記拡張現実可視化デバイスを制御して、前記拡張現実環境内に提示された仮想インジケータの色を変更することによって、前記精度を視覚的に示すように更にプログラムされている、請求項8に記載の拡張現実システム。
【請求項10】
前記外科手術位置決めオブジェクトが、外科手術ガイドピンである、請求項1に記載の拡張現実システム。
【請求項11】
外科手術方法であって、
拡張現実システムによって生成された拡張現実環境内の外科手術位置決めオブジェクトの所望の進入点及び所望の軌道を術中に画定することと、
前記拡張現実環境内の前記外科手術位置決めオブジェクトの実際の軌道と前記所望の軌道との間の精度の視覚的表示を提供することと、
を含む、外科手術方法。
【請求項12】
前記所望の進入点を術中に画定することが、前記拡張現実環境内に仮想クロスヘアを提示することを含む、請求項11に記載の外科手術方法。
【請求項13】
前記所望の軌道を術中に画定することが、前記拡張現実環境内に仮想軌道を提示することを含む、請求項11に記載の外科手術方法。
【請求項14】
前記精度の前記視覚的表示を提供することが、前記拡張現実環境内に方向インジケータを提示することを含む、請求項11に記載の外科手術方法。
【請求項15】
前記精度の前記視覚的表示を提供することが、前記拡張現実環境内に角度差インジケータを提示することを含む、請求項11に記載の外科手術方法。
【請求項16】
前記精度の前記視覚的表示が、前記外科手術位置決めオブジェクトに接続されている軌道マーカ上に仮想的にオーバーレイされる、請求項11に記載の外科手術方法。
【請求項17】
前記軌道マーカが、前記外科手術位置決めオブジェクトの前記実際の軌道をデジタル化するように構成されている、請求項16に記載の外科手術方法。
【請求項18】
前記所望の進入点及び前記所望の軌道を術中に画定する前に、仮想骨モデルを前記拡張現実環境内の患者の解剖学的構造に登録することを含む、請求項11に記載の外科手術方法。
【請求項19】
前記外科手術位置決めオブジェクトが、外科手術ガイドピンである、請求項11に記載の外科手術方法。
【請求項20】
外科手術方法であって、
外科手術ガイドピンの先端を解剖学的構造の骨表面の場所に位置決めすることであって、
前記場所が拡張現実環境内の仮想クロスヘアによって示される、位置決めすることと、
前記場所にへこみを準備することと、
前記へこみによって確立された旋回点を中心に前記外科手術ガイドピンを旋回させることと、
前記拡張現実環境内で、前記外科手術ガイドピンの実際の軌道を前記外科手術ガイドピンの仮想軌道に整列させることと、
を含む、外科手術方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、2021年9月8日に出願され、かつその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第63/241,758号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、術前外科手術計画の態様を実際の外科手術部位に移すために、拡張現実ナビゲーション及び可視化技術を利用する外科手術システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本開示は、外科手術の分野に関し、より具体的には、例えば、拡張現実ナビゲーション及び可視化技術を利用することによって、外科手術ガイドピンなどのオブジェクトを術中に位置決めするための整形外科手術システム及び方法に関する。
【0004】
関節形成術は、罹患関節を修復又は置換するために実施される整形外科手術処置の一種である。外科医は、関節形成術を実施する前に、外科手術部位の調製、インプラントの選択、及び外科手術部位でのインプラントの配置に関連する術前外科手術計画を確立することを望む場合がある。
【0005】
一部の技術では、外科医は、ガイドピンを利用して、関節形成インプラントを外科手術部位に位置決めするために骨表面のリーミングをガイドし得る。外科医は、外科手術結果を改善するために、術前外科手術計画の態様を外科手術部位に移すための改善された術中ガイダンスを望む場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
外科手術システムのための例示的な拡張現実システムは、とりわけ、拡張現実可視化デバイス及びプロセッサを含み得る。プロセッサは、拡張現実可視化デバイスを制御して、患者の解剖学的構造に対して拡張現実環境を提供するようにプログラムされ得る。プロセッサは、ユーザが、患者の解剖学的構造に対する外科手術位置決めオブジェクトの所望の進入点及び所望の軌道を術中に達成するために、拡張現実環境とインターフェースすることを可能にするように更にプログラムされ得る。
【0007】
例示的な外科手術方法は、とりわけ、拡張現実システムによって生成された拡張現実環境内の外科手術位置決めオブジェクトの所望の進入点及び所望の軌道を術中に画定することを含み得る。拡張現実環境内の外科手術位置決めオブジェクトの実際の軌道と所望の軌道との間の精度の視覚的表示が提供され得る。
【0008】
別の例示的な外科手術方法は、とりわけ、外科手術ガイドピンの先端を、仮想クロスヘアによって示される解剖学的構造の骨表面の場所に位置決めすることと、場所にへこみを準備することと、へこみによって確立された旋回点を中心に外科手術ガイドピンを旋回させることと、拡張現実環境内で、外科手術ガイドピンの実際の軌道を外科手術ガイドピンの仮想軌道に整列させることと、を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】例示的な整形外科手術システムを概略的に例示する。
図2図1の整形外科手術システムの拡張現実システムの態様を概略的に例示する。
図3】外科手術位置決めオブジェクトの位置決めをガイドするための標的化プロセスを概略的に例示する。
図4図1の整形外科手術システムを使用して、術前に計画され、かつ術中に実施され得る、例示的な外科手術方法を概略的に例示する。
図5】整形外科手術システムの拡張現実システムによって提供され得る拡張現実環境を例示する。
図6図5の拡張現実環境の登録モジュールの例示的な態様を例示する。
図7】整形外科手術システムの拡張現実システムによって実施され得る、多段階登録プロセスの例示的な初期化ステップを例示する。
図8】整形外科手術システムの拡張現実システムによって実施され得る、多段階登録プロセスの例示的な初期化ステップを例示する。
図9】整形外科手術システムの拡張現実システムによって実施され得る、多段階登録プロセスの例示的な3Dスキャンステップを例示する。
図10】整形外科手術システムの拡張現実システムによって実施され得る、多段階登録プロセスの例示的な3Dスキャンステップを例示する。
図11】整形外科手術システムの拡張現実システムによって提供され得る別の拡張現実環境を例示する。
図12】拡張現実環境の伝達モジュールの例示的な態様を例示する。
図13】拡張現実環境の伝達モジュールの追加の態様を例示する。
図14】拡張現実環境の伝達モジュールの追加の態様を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、例えば、関節形成術処置などの外科手術処置中に拡張現実可視化を提供するための整形外科手術システム及び方法を説明する。開示された外科手術システム及び方法は、拡張現実ナビゲーション及び可視化技術を利用して、術前外科手術計画の態様を患者の術中解剖学的構造に移す。
【0011】
一部の実装形態では、本開示の整形外科手術システム及び方法は、実際の外科手術部位と関連付けられた術前外科手術計画と術中解剖学的構造との間のリーミング処置をガイドするためのガイドピンなどの外科手術位置決めオブジェクトの正確な整列を達成するために利用され得る。拡張現実は、処置中に術中解剖学的構造を閉塞することを回避する様式で、外科手術位置決めオブジェクトの進入点及びドリル軌道の両方の可視化を達成するために利用され得る。本開示のこれら及び他の特徴は、以下に更に詳述される。
【0012】
本開示の例示的な態様による外科手術システムのための拡張現実システムは、拡張現実可視化デバイス及びプロセッサを含み得る。プロセッサは、拡張現実可視化デバイスを制御して、患者の解剖学的構造に対して拡張現実環境を提供するようにプログラムされ得る。プロセッサは、ユーザが、患者の解剖学的構造に対する外科手術位置決めオブジェクトの所望の進入点及び所望の軌道を術中に達成するために、拡張現実環境とインターフェースすることを可能にするように更にプログラムされ得る。
【0013】
更なる実装形態では、プロセッサは、拡張現実可視化デバイスを制御して、仮想オブジェクトで所望の進入点を仮想的に示すように更にプログラムされている。
【0014】
更なる実装形態では、仮想オブジェクトは、仮想クロスヘアを含む。
【0015】
更なる実装形態では、プロセッサは、拡張現実可視化デバイスを制御して、方向インジケータ又は角度差インジケータで所望の軌道を仮想的に示すように更にプログラムされている。
【0016】
更なる実装形態では、方向インジケータ又は角度差インジケータは、外科手術位置決めオブジェクトに接続されている軌道マーカ上にオーバーレイされている。
【0017】
更なる実装形態では、プロセッサは、拡張現実可視化デバイスを制御して、拡張現実環境内の患者の解剖学的構造に仮想骨モデルを登録するための登録プロセスを実施するように更にプログラムされている。
【0018】
更なる実装形態では、プロセッサは、拡張現実可視化デバイスを制御して、拡張現実環境内に複数の登録基準点を提示するように更に構成されている。複数の登録基準点の各々は、仮想骨モデルの患者の解剖学的構造への近似を初期化するために、ユーザが患者の解剖学的構造に物理的に接触するべき場所を視覚的に示す。
【0019】
更なる実装形態では、プロセッサは、拡張現実可視化デバイスを制御して、拡張現実環境内の外科手術位置決めオブジェクトの実際の軌道と所望の軌道との間の精度を視覚的に示すように更にプログラムされている。
【0020】
更なる実装形態では、プロセッサは、拡張現実可視化デバイスを制御して、拡張現実環境内に提示された仮想インジケータの色を変更することによって、精度を視覚的に示すように更にプログラムされている。
【0021】
更なる実装形態では、外科手術位置決めオブジェクトは、外科手術ガイドピンである。
【0022】
本開示の例示的な態様による外科手術方法は、拡張現実システムによって生成された拡張現実環境内の外科手術位置決めオブジェクトの所望の進入点及び所望の軌道を術中に画定することを含み得る。拡張現実環境内の外科手術位置決めオブジェクトの実際の軌道と所望の軌道との間の精度の視覚的表示が提供され得る。
【0023】
更なる実装形態では、所望の進入点を術中に画定することは、拡張現実環境内に仮想クロスヘアを提示することを含む。
【0024】
更なる実装形態では、所望の軌道を術中に画定することは、拡張現実環境内に仮想軌道を提示することを含む。
【0025】
更なる実装形態では、精度の視覚的表示を提供することは、拡張現実環境内に方向インジケータを提示することを含む。
【0026】
更なる実施形態では、精度の視覚的表示を提供することは、拡張現実環境内に角度差インジケータを提示することを含む。
【0027】
更なる実施形態では、精度の視覚的表示は、外科手術位置決めオブジェクトに接続されている軌道マーカ上に仮想的にオーバーレイされている。
【0028】
更なる実装形態では、軌道マーカは、外科手術位置決めオブジェクトの実際の軌道をデジタル化するように構成されている。
【0029】
更なる実装形態では、方法は、所望の進入点及び所望の軌道を術中に画定する前に、仮想骨モデルを拡張現実環境内の患者の解剖学的構造に登録することを含む。
【0030】
更なる実装形態では、外科手術位置決めオブジェクトは、外科手術ガイドピンである。
【0031】
本開示の別の例示的な態様による外科手術方法は、外科手術ガイドピンの先端を、仮想クロスヘアによって示される解剖学的構造の骨表面の場所に位置決めすることと、場所にへこみを準備することと、へこみによって確立された旋回点を中心に外科手術ガイドピンを旋回させることと、拡張現実環境内で、外科手術ガイドピンの実際の軌道を外科手術ガイドピンの仮想軌道に整列させることと、を含み得る。
【0032】
図1は、本開示の例示的な実施形態による例示的な整形外科手術システム10(以下、「システム10」と称する)を例示する。システム10は、例えば、関節を修復するために関節形成術を実施するための外科手術計画などの外科手術計画を作成、編集、レビュー、及び/又は実行するために使用され得る。本開示の教示は、ヒト筋骨格系の任意の特定の関節に限定されることを意図しておらず、したがって、肩、膝、腰、足首、手首などに適用可能である。
【0033】
システム10は、他のサブシステムの中でも特に、外科手術計画システム12、拡張現実(AR)システム14、記憶システム16、及びネットワーク18を含み得る。システム10は、本開示の範囲内で、より多い又はより少ない数のサブシステムを含み得る。以下でより詳細に論じるように、外科手術計画システム12は、1人以上のユーザが外科手術計画を術前に作成することができるように構成され得、ARシステム14は、1人以上のユーザが術前外科手術計画を術中にレビュー、編集、更新、検証、及び/又は実行することができるように構成され得る。一実施形態では、ARシステム14は、所望のインプラントサイズ及び位置決めなどの態様、並びに所望のインプラントサイズ及び位置決めを受容するための天然解剖学的構造を準備するために必要なリーミング処置をガイドするための所望のガイドピン配置を含むが、これらに限定されない、術前外科手術計画の特定の態様を外科手術部位に移すために使用される。
【0034】
本開示では、「拡張現実」という用語は、所与の環境内に存在する実際のオブジェクト(例えば、患者の解剖学的構造)が、1つ以上の感覚モダリティ(例えば、視覚、聴覚、触覚など)にわたってコンピュータ生成知覚情報で拡張され得る、対話型体験を提供する能力を指すことが意図される。加えて、「拡張現実」という用語は、混合現実、仮想現実、拡張現実、ホログラフィック投影などの態様を包含することが意図される。
【0035】
外科手術計画システム12は、外科手術処置を術前に計画するように構成され得る。外科手術計画システム12によって提供される術前計画は、患者の解剖学的構造の仮想モデルを構築すること、仮想モデル内の目印を識別すること、仮想モデル内の仮想インプラントを選択及び配向すること、仮想モデル内の外科手術リーミング処置をガイドするための最適な挿入点及び軌道を識別することなどの特徴を含み得るが、これらに限定されない。システム10の外科手術計画システム12としての使用に適した例示的な外科手術計画システムは、Arthrex,Inc.から入手可能なVirtual Implant Positioning(商標)(VIP)システムである。
【0036】
外科手術計画システム12は、メモリ24に作動可能に結合されたプロセッサ22を含むコンピューティングデバイス20を含み得る。コンピューティングデバイス20は、ソフトウェア命令を連続的に又は並列に処理するように構成された単一のコンピュータ又は多数のコンピュータであり得る。コンピューティングデバイス20は、ネットワーク18を介してARシステム14及び/又は他のコンピューティングデバイスと通信するように構成され得る。
【0037】
プロセッサ22は、カスタム作製又は市販のプロセッサ、中央処理装置(CPU)、又はソフトウェア命令を実行するための一般に任意のデバイスであり得る。メモリ24は、揮発性メモリ要素及び/又は不揮発性メモリ要素のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含み得る。プロセッサ22は、メモリ24に作動可能に結合され得、他のデバイス又はデータソースから受信した様々な入力に基づいて、メモリ24に記憶された1つ以上のプログラムを実行するように構成され得る。
【0038】
一実施形態では、コンピューティングデバイス20のプロセッサ22は、外科手術の術前、術中、及び/又は術後段階の間に、1つ以上の外科手術計画34を作成、編集、実行、及び/又はレビューするための計画環境26にアクセスし、局所的かつ/又は遠隔的に実行するように作動可能であり得る。計画環境26は、スタンドアロンのソフトウェアパッケージであり得るか、又は別の外科手術ツールに組み込まれ得る。計画環境26は、例えば、1つ以上の骨モデル30及び関連画像、並びに1つ以上のインプラントモデル32及び関連画像のディスプレイ又は視覚化を、1つ以上のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して提供し得る。各骨モデル30、インプラントモデル32、並びに関連画像及び他の情報は、指定されたデータ構造に従って、1つ以上のファイル又は記録に記憶され得る。
【0039】
計画環境26は、所望の計画機能を実施するための様々なモジュールを含み得る。一実施形態では、計画環境26は、外科手術計画34に関するデータにアクセス、取得、及び/又は記憶するためのデータモジュールと、データを表すためのディスプレイモジュール(例えば、GUI内)と、ディスプレイモジュールによって表されたデータを修正するための空間モジュールと、例えば、選択された骨モデルと選択されたインプラントモデルとの間の1つ以上の関係を決定するための比較モジュールとを含む。しかしながら、より大きい若しくはより少ない数のモジュールが利用され得、かつ/又はモジュールのうちの1つ以上を組み合わせて、開示された機能を提供し得る。
【0040】
記憶システム16は、外科手術計画システム12及びARシステム14から/にデータを記憶するか、又はそうでなければ提供するように構成され得る。記憶システム16は、例えば、ネットワーク18を介して外科手術計画システム12及びARシステム14と通信するように構成された記憶エリアネットワークデバイス(SAN)であり得る。別個のデバイスとして示されているが、記憶システム16は、外科手術計画システム12のコンピューティングデバイス20内に組み込まれ得るか、又はそれに直接的に結合され得る。記憶システム16は、コンピュータソフトウェア命令、データ、データベースファイル、構成情報などのうちの1つ以上を記憶するように構成され得る。
【0041】
一実施形態では、外科手術計画システム12は、コンピューティングデバイス20上でコンピュータソフトウェアを実行するように構成されたクライアント-サーバアーキテクチャを含み、これは、コンピューティングデバイス20上で実行されたシンクライアントアプリケーション又はウェブブラウザのいずれかを使用してアクセス可能である。コンピューティングデバイス20は、コンピュータソフトウェア命令をローカルストレージ又は記憶システム16からメモリ24にロードし得、プロセッサ22を使用してコンピュータソフトウェアを実行し得る。
【0042】
システム10は、1つ以上のデータベース28を更に含み得る。データベース28は、例えば、記憶システム16などの中央の位置に記憶され得る。各データベース28は、1つ以上の骨モデル30、1つ以上のインプラントモデル32、及び1つ以上の伝達モデル33を、相互に、かつ/又は外科手術計画34と関連付けるように構成されたリレーショナルデータベースであり得る。各外科手術計画34は、それぞれの患者と関連付けられ得る。各骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル33、及び外科手術計画34は、データベース28内の固有の識別子又はデータベースエントリ又は記録が割り当てられ得る。データベース28は、骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル33、及び外科手術計画34に対応するデータを、1つ以上のデータベース記録若しくは入力に記憶するように構成され得、かつ/又は各それぞれの骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル33、及び外科手術計画34に対応する1つ以上のファイルをリンクする、若しくはそれ以外の方法で関連付けるように構成され得る。データベース28に記憶された骨モデル30は、以前の外科手術例からのそれぞれの患者の解剖学的構造に対応し得、性別、年齢、人種、欠陥カテゴリー、処置の種類などの1つ以上の所定のカテゴリーに分類され得る。
【0043】
各骨モデル30は、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)機械、及び/又は患者の1つ以上の画像を取得するX線機械などの1つ以上の医療デバイス又はツールから取得された情報を含み得る。骨モデル30は、医療デバイスから取得又は導出され得る、患者の解剖学的構造に関連する1つ以上のデジタル画像及び/又は座標情報を含み得る。
【0044】
各インプラントモデル32は、所定のインプラント設計と関連付けられた座標情報を含み得る。計画環境26は、モデル30、32を、二次元(2D)及び/又は三次元(3D)の容積又は構築物として描画するために、コンピュータ支援設計(CAD)パッケージなどの1つ以上のモデリングパッケージを組み込み、かつ/又はそれらと連結し得る。所定の設計は、1つ以上の構成要素に対応し得る。インプラントモデル32は、様々な形状及び大きさのインプラント及び構成要素に対応し得る。各インプラントは、ねじ、アンカー、移植片などを含む外科手術部位に配置され得る1つ以上の構成要素を含み得る。各インプラントモデル32は、単一の構成要素に対応し得るか、又は組立品を確立するように構成され得る2つ以上の構成要素を含み得る。各骨モデル30、インプラントモデル32、及び伝達モデル33は、2D及び/又は3D幾何学形状に対応し得、グラフィカルディスプレイにおいてワイヤフレーム、メッシュ、及び/又はソリッド構造を生成するために利用するために利用され得る。
【0045】
各伝達モデル33は、それぞれの関節の機能を回復させるために、外科手術部位を準備し、1つ以上のインプラントを骨又は他の組織に固定することを含む、各外科手術計画34を実装するために使用される様々な計器及びデバイスに対応し得る。伝達モデル33の各々は、それぞれの外科手術器具若しくはデバイス(例えば、ガイドピン、伝達ガイドなど)、及び/又はそれぞれのインプラントモデル32と関連付けられ得る。各伝達モデル33は、所定の器具設計と関連付けられた座標情報を含み得る。
【0046】
外科手術計画34は、様々な計器、デバイス、及び/又はインプラントを位置決め及び配向するために、組織内に固定されるように寸法設定されたガイドピン(例えば、ガイドワイヤ又はKirschnerワイヤ)などの1つ以上の外科手術位置決めオブジェクトと関連付けられ得る。一部の実装形態では、外科手術位置決めオブジェクトは、所望のインプラントを受容するための患者の解剖学的構造を準備するために必要なリーミング処置をガイドするために使用される。例示的な伝達モデル33は、1つ以上の骨モデル30に対して、1つ以上の外科手術位置決めオブジェクトの仮想進入位置又は挿入位置及び仮想軌道軸を術前に確立するように構成され得る。仮想位置は、患者の解剖学的構造(骨モデル30によって表されるような)に対する外科手術位置決めオブジェクトの指定された挿入点及び軌道と関連付けられ得る。仮想軌道軸は、仮想位置を通って延在し得、任意の所与の手術計画34についての患者の解剖学的構造に対する外科手術位置決めオブジェクトの指定された配向と関連付けられ得る。
【0047】
計画環境26は、骨モデル30及び関連する患者の解剖学的構造に対するそれぞれのインプラントモデル32の配置に応答して、外科手術位置決めオブジェクトの仮想位置及び/又は仮想軸を設定するように構成され得る。仮想位置及び/又は仮想軸は、選択された骨モデル30に対する選択されたインプラントモデル32の位置及び配向に基づいて、かつ/又は計画環境26とのユーザの相互作用に応答して、自動的に設定及び/又は調整され得る。
【0048】
各外科手術計画34は、骨モデル30、インプラントモデル32、及び伝達モデル33のうちの1つ以上と関連付けられ得る。外科手術計画34は、骨モデル30に対する1つ以上の修正、元のかつ/又は修正された骨モデル30に対するインプラントモデル32の所望の位置に関連する情報、及び元のかつ/又は修正された骨モデル30に対する伝達モデル33の外科手術位置決めオブジェクトの所望の位置に関連する情報(例えば、所望の進入点及び軌道)を含み得る。外科手術計画34は、修正された骨モデルに関連する座標情報及び所定のデータ構造におけるインプラントモデル32及び/又は伝達モデル33の相対位置を含み得る。各骨モデル30、及び外科手術計画34の修正は、自動的に、かつ/又は外科手術計画システム12とのユーザの相互作用に応答して、データベース28に記憶され得る。
【0049】
1人以上の外科医及び他のユーザは、コンピューティングデバイス20又は外科手術計画システム12に作動可能にリンクされた別のコンピュータを介して、計画環境26を提示され得る。ユーザは、データベース28に記憶された各骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル33、及び外科手術計画34に同時にアクセスし得る。各ユーザは、外科手術計画34の様々な態様を作成、表示、及び/又は修正するために、計画環境26と相互作用し得る。コンピューティングデバイス20は、骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル33、及び/又は外科手術計画34のローカルインスタンスを記憶するように構成され得、それらは、データベース28とリアルタイムで又は定期的に同期され得る。
【0050】
ARシステム14は、1人以上のユーザが、所与の患者の外科手術計画34を術中にレビュー、編集、更新、検証、及び/又は実行することを可能にし得る。一実施形態では、ARシステム14は、医療施設(例えば、病院、外科手術センターなど)内、より具体的には、医療施設の手術室36内に存在する実際のオブジェクトが、1つ以上の知覚モダリティにわたってコンピュータ生成知覚情報で拡張される、対話式外科手術体験を、1人以上のユーザに提供する。したがって、外科手術処置の前又はその間にARシステム14を使用する場合、ユーザは、現実のオブジェクト及び仮想のオブジェクトの両方を含む画像を認識して相互作用し得る。
【0051】
ARシステム14は、とりわけ、可視化デバイス38、プロセッサ40、及びプロセッサ40に作動可能に結合されたメモリ42を含み得る。可視化デバイス38は、ネットワーク18を介して外科手術計画システム12、記憶システム16、及び/又は他のAR可視化デバイスと通信するように構成され得る。プロセッサ40及びメモリ42は、例えば、可視化デバイス38に作動可能に接続されているコンピューティングデバイス内など、可視化デバイス38上若しくは可視化デバイス38内に提供され得るか、又は可視化デバイス38から分離され得る。
【0052】
一実施形態では、可視化デバイス38は、ユーザの頭部に着用され得るヘッドマウントディスプレイ又はヘッドアップディスプレイである。しかしながら、他のタイプの可視化デバイスがまた、本開示の範囲内で企図される。システム10のARシステム14内での使用に適した例示的な可視化デバイスは、Microsoft Corporationから入手可能なMicrosoft HOLOLENS(商標)ヘッドセットである。他の実施形態では、ARシステム14は、対話式外科手術体験を提供するために一緒に使用され得る複数の異なる可視化デバイスを含み得る。
【0053】
ARシステム14のプロセッサ40は、カスタム作製又は市販のプロセッサ、中央処理装置(CPU)、又はソフトウェア命令を実行するための一般に任意のデバイスであり得る。メモリ42は、揮発性メモリ要素及び/又は不揮発性メモリ要素のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含み得る。プロセッサ40は、メモリ42に作動可能に結合され得、他のデバイス又はソースから受信した様々な入力に基づいて、メモリ42に記憶された1つ以上のプログラムを実行するようにプログラムされ得る。例えば、プロセッサ40は、対話式外科手術体験を提供するために、メモリ42上に記憶された様々なソフトウェア命令を実行するようにプログラムされ得る。一実施形態では、以下でより詳細に論じるように、プロセッサ40は、1つ以上のAR環境をユーザに提示するための可視化デバイス38を制御するようにプログラムされている。AR環境は、術前外科手術計画34の態様を術中解剖学的構造に移すための様々なユーザインターフェース、メニュー、仮想オブジェクトなどを含み得る。
【0054】
プロセッサ40は、記憶システム16のデータベース28から、特定の患者のための関連する骨モデル30、インプラントモデル32、伝達モデル33、及び外科手術計画34に選択的にアクセスするように更にプログラムされ得る。一部の実施形態では、特定の患者のための骨モデル30、インプラントモデル32、及び/又は外科手術計画34と関連付けられた特定の態様は、メモリ42内に直接的に記憶され得、メモリ42は、データベース28とリアルタイムで又は定期的に同期され得、プロセッサ40によって実行され得る。別の実施形態では、外科手術計画システム12と関連付けられた特定の態様及び機能は、メモリ42上に記憶され得、プロセッサ40によって実行され得る。
【0055】
可視化デバイス38は、複数のセンサ(例えば、画像センサ、光学センサ、奥行きセンサ、動きセンサなど)を含むセンサシステム44を追加的に含み得る。センサシステム44は、手術室36の実際の環境に対してAR環境内の仮想オブジェクトを提示、位置決め、移動、及び/又は調整するために、プロセッサ40によって処理され得るデータを収集するように構成され得る。一実施形態では、センサシステム44は、可視化デバイス38によって投影される仮想オブジェクトと相互作用するために、プロセッサ40によって処理され得る手のしぐさ、可聴コマンドなどを検出することができる。
【0056】
一実施形態では、センサシステム44は、飛行時間カメラ45及び可視光ステレオカメラ47の両方を含む。飛行時間カメラ45及び可視光ステレオカメラ47は各々、可視化デバイス38に作動可能に結合され得る。飛行時間カメラ45及び可視光ステレオカメラ47からの画像データは、患者の解剖学的構造上に配置される基準マーカの使用を必要としないインサイドアウト登録プロセスを実施するために、プロセッサ40によって処理され得る。インサイドアウト登録プロセスは、捕捉された画像の3D再構成を行い、その後、術前画像データを患者の解剖学的構造に登録することを含み得る。
【0057】
一実施形態では、ARシステム14のプロセッサ40は、捕捉された画像のステレオ再構成を提供するためにステレオ変圧器モデルを実行するようにプログラムされ得る。ステレオ変圧器モデルは、単一の画像内のセルフアテンション及び複数の画像間のクロスアテンションの両方を利用して、捕捉された画像間のピクセルコレスポンデンスを識別し得る。ステレオ変圧器モデルのアテンション機構は、関心点に近接する識別可能な特徴に付随することによって、モデルがテクスチャなし表面上の特徴対応の曖昧さを軽減することを可能にし得る。したがって、ステレオ変圧器モデルは、比較的テクスチャのない骨表面上であっても、合理的な高密度再構成を生成し得る。
【0058】
ここで図2を参照すると、ARシステム14の可視化デバイス38は、ユーザ46(例えば、外科医又は他の医療従事者)によって着用され得、手術室36内に位置する実際のオブジェクト52(例えば、患者の解剖学的構造、手術台など)上にオーバーレイされ得るAR環境48を提供するように構成されている。したがって、可視化デバイス38は、ユーザ46が手術室36内の仮想オブジェクト及び現実のオブジェクトの両方を術中に可視化することを可能にする。
【0059】
AR環境48は、可視化デバイス38のスクリーン50上にホログラフィック画像として投影され得、とりわけ、外科手術計画システム12を使用して術前に計画された1つ以上の外科手術計画34と関連付けられた仮想詳細を含む1つ以上のユーザインターフェースを提示し得る。一旦投影されると、AR環境48は、手術室36のフォアグラウンドにおけるユーザ46によって視覚的に知覚可能であり、実際のオブジェクト52は、投影された仮想画像のフォアグラウンドに現れる。以下で更に論じるように、ユーザ46は、ライブ外科手術処置中に所与の患者の外科手術計画34を実行するために、AR環境48を可視化し、それと相互作用し得る。
【0060】
ARシステム14によって生成されたAR環境48は、整形外科処置中に術前外科手術計画34の特定の態様を術中解剖学的構造に移すために利用され得る。例えば、以下で更に詳述するように、ユーザは、外科手術位置決めオブジェクト(例えば、ガイドピン80)をそれぞれの患者の解剖学的構造56内に位置決めするための標的化プロセスを実施するために、AR環境48を利用することができる。一部の実装形態では、この標的化プロセスは、AR環境48内のガイドピン80の所望の進入点P及び所望の軌道Tを示すことを含み得る。図3は、ガイドピン80のこうした標的化プロセスを視覚的に示す。標的化プロセスを個別のステップに分解することにより、進入点位置精度(ミリメートル単位)及び軌道回転精度(度単位)の指標を互いに分離し、整形外科処置中のドリル作業性能を評価するために使用されることが可能になる。
【0061】
解剖学的構造56の所望の進入点Pにガイドピン80を位置決めする第1のステップは、ガイドピン80の所望の並進態様を確立すると称され得る。並進距離dは、ガイドピン80の所望の進入点Pとガイドピン80の先端の実際の位置P2との間の距離(例えば、mm単位)を指し得る。
【0062】
ガイドピン80の所望の軌道Tを確立する第2のステップは、ガイドピン80の回転軌道態様を確立すると称され得る。回転は、所望の軌道Tとガイドピン80の実際の軌道T2との間の回転の量Θ(例えば、度数)を指し得る。
【0063】
図4は、引き続き図1図3を参照すると、整形外科手術処置を計画及び実行するためのシステム10を使用して実施され得る例示的な外科手術方法100を概略的に例示する。外科手術方法100は、それぞれの外科手術計画34を作成、編集、及び実行するために、術前及び術中に利用され得る。一実施形態では、外科手術方法100は、肩関節又は任意の他の関節に対する機能を回復させるための関節形成術を実施するために利用される。
【0064】
外科手術方法100は、肩関節形成術中に関節窩の欠損を修復することに関して本明細書で説明されているが、外科手術方法100は、患者の他の場所で、かつ他の整形外科手術処置のために利用され得ることが理解されるべきである。したがって、以下に列挙されるよりも少ない又は追加のステップが、本開示の範囲内で実施され得る。更に、列挙されたステップの順序は、本開示を限定することを意図するものではない。
【0065】
整形外科手術処置は、ブロック102でシステム10の外科手術計画システム12を使用して、術前に計画され得る。術前計画は、患者の解剖学的構造の画像を取得することと、患者の解剖学的構造の仮想モデルを構築することと、仮想モデル内の目印を識別することと、仮想モデル内の仮想インプラントを選択及び配向することと、解剖学的構造56などにリーミングするためのリーミング処置をガイドするためのガイドピン80の所望の進入点P及び所望の軌道Tを識別及びマーキングすることと、それぞれの患者の外科手術計画34の作成をもたらすことと、を含み得る。
【0066】
ユーザは、ARシステム14の可視化デバイス38を使用してAR環境48を術中に生成して、ブロック104で1つ以上の知覚モダリティにわたってコンピュータ生成知覚情報を用いて、医療施設の手術室36内に存在する実際のオブジェクトを増強し得る。例示的なAR環境48を図5に例示する。AR環境48は、所与の外科手術処置中に多数の情報をユーザに提示するように設計された様々なユーザインターフェースモジュール又はメニューを含み得る。ユーザインターフェースモジュールの特定の配置が本開示の図に示されているが、他の配置が本開示の範囲内で更に企図される。したがって、本明細書に示されるARモジュールの特定のサイズ、位置決め、及び全体的な配置は、本開示を限定することを意図するものではない。
【0067】
方法100のステップ104の間、ユーザは、仮想骨モデル54を解剖学的構造56に登録し得る。一実施形態では、AR環境48は、ユーザが仮想骨モデル54(例えば、外科手術計画34から導出される)を患者の実際の解剖学的構造56上にオーバーレイすることを可能にする、登録モジュールを含む。登録モジュールは、ユーザが外科手術処置の前に、かつ/又はその間にAR環境48と相互作用することを可能にするように構成され得る。ユーザは、例えば、手のしぐさ又は可聴コマンドを使用して、選択可能なボタン、メニュー、ウィジェットなどと相互作用し得る。例えば、ユーザは、仮想骨モデル54を解剖学的構造56に対して所望の位置に位置決めするために、自身の手58を使用して、AR環境48内のカーソル59と相互作用し得る。
【0068】
所望の位置が達成されると、ユーザは、手のしぐさ60を実施して、登録メニュー62をAR環境48内に提示させ得る(図6を参照)。ユーザは、登録メニュー62の確認ボタン64を押すか、又は可聴コマンドを使用することによって、オーバーレイの完了を確認することができる。
【0069】
他の実装形態では、AR環境48の登録モジュールは、ユーザ(又は作動可能に接続されている可視化デバイスを有するユーザのグループ)が、多段階登録プロセスを使用して仮想骨モデル54を解剖学的構造56に登録することを可能にするように構成され得る。多段階登録プロセスの初期化ステップは、仮想骨モデル54の位置及び配向を解剖学的構造56に近似させるために最初に実施され得る。初期化ステップの間、システム10は、仮想骨モデル54上に複数の登録基準点85を提示し得る(図7を参照)。3つの登録基準点85-1(例えば、上方基準点)、85-2(例えば、下方基準点)、及び85-3(例えば、前方/後方基準点)が示されているが、AR環境48内の仮想骨モデル54に対して、より多くの又はより少ない数の登録基準点85が提供され得る。更に、当業者であれば、登録基準点85が仮想骨モデル54の任意の場所に提示され得ることを理解するであろう。
【0070】
登録基準点85-1、85-2、85-3は、仮想骨モデル54の解剖学的構造56への近似を初期化するために、ユーザが解剖学的構造56に物理的に接触するべき場所を視覚的に示し得る。登録基準点85-1、85-2、85-3は、解剖学的構造56に対して仮想骨モデル54を配向及び位置決めするために、患者部位によって画定される物理的空間における基準平面を本質的に画定する。概略的に示されるように、ユーザは、登録基準点85-1、85-2、85-3によって示される場所に可能な限り近く対応する、複数の接触点87-1、87-2、及び87-3で解剖学的構造56に物理的に接触し得る(図7を参照)。接触点87-1、87-2、及び87-3は、ユーザの手58の指99、ポインタツール、又は何らかの他の好適なオブジェクトを使用して接触され得る。次に、システム10は、仮想骨モデル54のシルエットを解剖学的構造56の対応する特徴に大まかに整列させることによって、初期化ステップを完了し得る(図8を参照)。
【0071】
多段階登録プロセスの3Dスキャンステップは、次に、患者部位と関連付けられた解剖学的構造56の3D点群メッシュを使用して、解剖学的ボリュームを捕捉、セグメント化、及び分類するために実施され得る。初期化ステップの間、システム10は、解剖学的構造56を三次元的に再構成して、解剖学的構造56に対する仮想骨モデル54の位置精度を改善するために、様々な角度から解剖学的構造56を分析し得る。システム10は、3Dスキャンが実施されるにつれて、AR環境48内に進捗インジケータ89を提示し得る(図9を参照)。進捗インジケータ89は、解剖学的構造56の上にオーバーレイされ得、ユーザへの3Dスキャン動作の進行を視覚的に示すように構成され得る。3Dスキャンステップが完了すると、システム10は、3Dスキャンが完了したことをユーザに視覚的に示すために、進捗インジケータ89に隣接する場所でAR環境48内にグラフィック91(例えば、チェックマークなど)を提示し得る(図10を参照)。
【0072】
初期化及び3Dスキャン動作は、仮想骨モデル54の解剖学的構造56への登録を生成することができる。初期化、3Dスキャン、及び登録が完了した後、方法100の多段階登録プロセスは、可視化デバイス38からのカメラフィードを連続的に分析して、少なくとも可視化デバイス38の動き及び姿勢に基づいて、仮想構造の正確な混合(空間アンカーリング)を維持し得る。
【0073】
仮想骨モデル54を解剖学的構造56に登録した後、ユーザは、術前外科手術計画34の特定の態様を術中解剖学的構造56に移すために、AR環境48を利用し得る。例えば、以下で更に詳述するように、ユーザは、外科手術位置決めオブジェクト(例えば、ガイドピン80)を解剖学的構造56内に正確に位置決めするための標的化プロセスを実施するために、AR環境48を利用することができる。
【0074】
再び図4を参照すると、ユーザは次に、方法100のブロック106で、AR環境48のガイドピン配置モジュールを開始し得る。ガイドピン配置モジュールは、インプラント(例えば、グレノイドベースプレート)の配置をガイドするために、患者の解剖学的構造56(例えば、グレノイド)内に配置されるガイドピン80の入口位置及び軌道を正確に設定するために使用され得る。AR環境48のガイドピン配置モジュールは、AR環境48の別のメニュー68内に提示され得るガイドピン配置ボタン66を作動させることによって初期化され得る(例えば、図11を参照)。
【0075】
仮想クロスヘア70(又は何らかの他の視覚的インジケータ)は、ブロック108でAR環境48内の解剖学的構造56上に表示され得る(図12を参照)。仮想クロスヘア70の場所は、術前外科手術計画34に記憶された情報から導出され得る。仮想クロスヘア70は、ガイドピン80の所望の進入点Pを識別し得、したがって、ガイドピン80の最適な挿入場所の可視化を提供する。
【0076】
次に、ブロック110で、ユーザは、ガイドピン80のドリル先端を使用して、仮想クロスヘア70の場所で解剖学的構造56の骨表面76(例えば、グレノイド表面)に浅いくぼみ74(例えば、へこみ)を準備し得る(図13を参照)。浅いくぼみ74は、骨表面76に対するガイドピン80の回転位置、したがって軌道を調整するための旋回点として作用し得る。ガイドピン80は、外科手術ドリル78などの電動式外科手術器具によって保持され得る(図13を参照)。外科手術ドリル78は、骨表面76に浅いくぼみ74を穿孔するために、ガイドピン80を回転させるように構成され得る。
【0077】
ブロック112では、ユーザは、ガイドピン80の軌道を、AR環境48内に提示され得る仮想軌道82に整列させ得る。仮想軌道82は、AR環境48内に提示され、かつガイドピン80の所望の軌道Tの視覚的表示を提供することが意図される、ドット又は軸によって示され得る。
【0078】
方法100のブロック112の整列ステップは、図14に視覚的に示され、ガイドピン80の中心軸を追跡するためにガイドピン80に接続され得る軌道マーカ84を使用することによって達成され得る。軌道マーカ84は、例えば、ガイドピン80の中心軸の軌道をデジタル化するために利用され得る。
【0079】
一実施形態では、軌道マーカ84は、ガイドピン80の外径よりもわずかに大きい内径を含む、自己較正されたスライドオンディスク設計を含む。軌道マーカ84は、外科手術ドリル78の後面88から近位に突出するガイドピン80の近位部分86の上に摺動され得る。一実施形態では、ガイドピン80は、外科手術ドリル78のハウジング79を完全に通って延在する。
【0080】
ユーザは、ガイドピン80を浅いくぼみ74によって確立された旋回点を中心に旋回させることによって、ガイドピン80の軌道を仮想軌道82に整列させ得る。ガイドピン80が旋回点の周りを移動すると、ガイドピン80の軌道を仮想軌道82に整列させるための標的化ガイダンスを提供するために、AR環境48内のユーザに様々な視覚的インジケータが提示され得る。例えば、方向インジケータ90は、仮想軌道82によって示される所望の軌道の近くを移動するために、ユーザがガイドピン80を旋回させる必要がある方向を視覚的に示すために提供され得る。ガイドピン80の実際の軌道と仮想軌道82との間の角度差を示すための角度差インジケータ92は、AR環境48内の視覚的基準として更に提供され得る。
【0081】
一部の実装形態では、軌道マーカ84をオーバーレイするインジケータリング94は、AR環境48内に提示され得る(例えば、図14を参照)。インジケータリング94は、ガイドピン80の軌道が、不十分な整列位置(例えば、約3度超の誤差)から仮想軌道82に対して適切な整列位置(例えば、約3度未満の誤差)に移動するときに、第1の色(例えば、赤色又は琥珀色)から第2の色(例えば、緑色)に自動的に変化するように構成され得る。
【0082】
軌道マーカ84によって提供される支援を介して所望の軌道を達成した後に、ガイドピン80は、ブロック114で解剖学的構造56内にドリル加工され得る。次いで、所望の関節形成インプラント(例えば、グレノイドベースプレート)を受容するための解剖学的構造56を準備するために、ブロック116でその後のリーミングプロセスを実施し得る。
【0083】
上述の例示的な外科手術方法100は、関節形成術中にインプラントを受容するための骨又は関節を調製するためのガイドピンの使用を想定する。しかしながら、本開示は、位置決めガイドピンに限定されず、術前外科手術計画の態様を術中解剖学的構造に移すために使用され得る任意の外科手術位置決めオブジェクトの位置決めまで拡張することができる。
【0084】
本開示の例示的な外科手術システム及び方法は、有利なことに、整形外科手術処置中に術前外科手術計画を術中解剖学的構造に移すための改善された術中ガイダンスを提供する。術中ガイダンスは、自然解剖学的構造のユーザの視界を遮ることなく、インサイチュ解剖学的構造上にオーバーレイされ得る、1つ以上の拡張現実環境内に提示され得る。したがって、伝達中の改善されたガイダンスは、改善された外科手術結果を提供する。
【0085】
異なる非限定的な実施形態が、特定の構成要素又はステップを有するものとして例示されているが、本開示の実施形態は、それらの特定の組み合わせに限定されない。非限定的な実施形態のうちのいずれかからの構成要素又は特徴のいくつかを、他の非限定的な実施形態のうちのいずれかからの特徴又は構成要素と組み合わせて使用することが可能である。
【0086】
同様の参照番号は、いくつかの図面全体にわたって、対応する又は同様の要素を識別すると理解されたい。これらの例示的な実施形態では、特定の構成要素の配置が開示され、例示されるが、他の配置もまた、本開示の教示から利益を得ることができると更に理解されたい。
【0087】
前述の説明は、例示的であって、いかなる限定的な意味でも解釈されないものとする。当業者は、ある特定の修正が、本開示の範囲内になる場合があることを理解するであろう。これらの理由により、以下の特許請求の範囲は、本開示の真の範囲及び内容を決定するために研究されるべきである。
【符号の説明】
【0088】
10 整形外科手術システム
12 外科手術計画システム
14 拡張現実(AR)システム
16 記憶システム
18 ネットワーク
20 コンピューティングデバイス
22 プロセッサ
24 メモリ
26 計画環境
28 データベース
30 骨モデル
32 インプラントモデル
33 伝達モデル
34 術前外科手術計画
36 手術室
38 可視化デバイス
40 プロセッサ
42 メモリ
44 センサシステム
45 飛行時間カメラ
46 ユーザ
47 可視光ステレオカメラ
48 AR環境
50 スクリーン
52 オブジェクト
54 仮想骨モデル
56 解剖学的構造
58 手
59 カーソル
62 登録メニュー
64 確認ボタン
66 ガイドピン配置ボタン
68 メニュー
70 仮想クロスヘア
76 骨表面
78 外科手術ドリル
79 ハウジング
80 ガイドピン
82 仮想軌道
84 軌道マーカ
85 登録基準点
85-1 登録基準点
85-2 登録基準点
85-3 登録基準点
86 近位部分
87-1 接触点
87-2 接触点
88 後面
89 進捗インジケータ
90 方向インジケータ
91 グラフィック
92 角度差インジケータ
94 インジケータリング
99 指
100 外科手術方法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】