(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】動的核偏極用の偏極剤としてのトリチル-ニトロキシドマルチラジカル
(51)【国際特許分類】
C07D 519/00 20060101AFI20240905BHJP
C07F 9/6561 20060101ALI20240905BHJP
A61K 49/06 20060101ALI20240905BHJP
G01N 24/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07D519/00
C07F9/6561 Z CSP
A61K49/06
G01N24/12 510L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515309
(86)(22)【出願日】2022-09-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2022075326
(87)【国際公開番号】W WO2023036993
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506423291
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(71)【出願人】
【識別番号】509202787
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ アイスランド
(71)【出願人】
【識別番号】516065504
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ド ペップ ガエル
(72)【発明者】
【氏名】ハッラビ ラニア
(72)【発明者】
【氏名】メンティンク-ヴィジェ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】シグルズソン スノッリ ティーエイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ハルブリッター トーマス
【テーマコード(参考)】
4C085
4H050
【Fターム(参考)】
4C085HH07
4C085KA28
4C085KB57
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB90
(57)【要約】
本発明は、動的核偏極(DNP)用の偏極剤としての新規のトリチル-ニトロキシドラジカルに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
nは、0又は1であり、
mは、1、2、又は3であり、
X
1及びX
2は、独立して、N、Pであり、
Q
2は、
【化2】
であり、ここで、
X
3及びX
4は、
【化3】
によって示されるように繋がって、それらが結合される窒素原子と一緒になって、5員~8員の複素環式環、好ましくは5員又は6員の複素環式環、より好ましくは5員の複素環式環を形成し、
前記複素環式環は、任意に置換されており、及び/又は、
前記複素環式環は、任意に1つ以上の炭素-炭素二重結合を含み、
【化4】
は、前記5員~8員の複素環式環、好ましくは前記5員又は6員の複素環式環、より好ましくは前記5員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点であり、
Q
1は、
【化5】
から選択され、ここで、
R
19~R
30は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールであり、
Mは、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からより選択されるアルカリ金属、アンモニウム基であり、好ましくは、Mは、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からより選択されるアルカリ金属、アンモニウム基であり、より好ましくは、Mは、メチル基、又はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からより選択されるアルカリ金属である)の化合物(但し、式:
【化6】
の化合物を除く)。
【請求項2】
Q
2は、
【化7】
(式中、
R
1~R
18は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであるか、又は、
R
1~R
9、R
10、及びR
15~R
18は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであり、かつ、
ジェミナルなR
11とR
12、及びジェミナルなR
13とR
14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、少なくとも1個の環原子が酸素である置換若しくは非置換の5員若しくは6員の複素環式環を形成し、
【化8】
は、前記5員又は6員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である)から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
Q
2は、
【化9】
(式中、
R
1~R
18は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールであり、
【化10】
は、前記5員又は6員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である)から選択される、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
R
1~R
18は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールである、請求項3に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
Q
2は、
【化11】
(式中、
R
1~R
9、R
10、及びR
15~R
18は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールであり、かつ、
ジェミナルなR
11とR
12、及びジェミナルなR
13とR
14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、少なくとも1個の環原子が酸素である置換又は非置換の5員又は6員の複素環式環を形成し、
【化12】
は、前記5員又は6員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である)から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
R
1~R
9、R
10、及びR
15~R
18は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキルであり、かつ、
ジェミナルなR
11とR
12、及びジェミナルなR
13とR
14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、1個の環原子が酸素である置換又は非置換の5員又は6員の複素環式環を形成する、請求項5に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
Q
2は、
【化13】
(式中、
R
1~R
7、及びR
10~R
16は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであるか、又は、
R
1~R
7、R
10、R
15、及びR
16は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであり、かつ、
ジェミナルなR
11とR
12、及びジェミナルなR
13とR
14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、少なくとも1個の環原子が酸素である置換若しくは非置換の5員若しくは6員の複素環式環を形成し、
【化14】
は、前記5員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である)から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
Q
1は、
【化15】
(式中、
R
19~R
30は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールであり、
Mは、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属、アンモニウム基であり、
【化16】
は、-(C=O)基が分子の残部に取り付けられる点である)から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
Q
1は、
【化17】
(式中、
R
19~R
30は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキルであり、
Mは、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属、アンモニウム基であり、
【化18】
は、-(C=O)基(複数の場合もある)が分子の残部に取り付けられる点である)から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
Q
1は、
【化19】
(式中、
Mは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される非置換のアルキル、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属、アンモニウム基であり、
【化20】
は、-(C=O)基(複数の場合もある)が分子の残部に取り付けられる点である)から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項11】
X
1及びX
2は、Nである、請求項1~10のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項12】
【化21】
から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項13】
偏極剤としての、請求項1~12のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項14】
構造生物学、材料科学、固体の核磁気共鳴又は液体試料に適用される核磁気共鳴、粒子物理学、及び医用画像法の状況におけるDNP用の偏極剤(PA)としての、請求項1~12のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項15】
動的核偏極用の試料中の分析物を偏極させる方法であって、
a)分析物を含む試料を準備する工程と、
b)前記試料と、磁場中で前記分析物の最適な核偏極を可能にする偏極剤(PA)としての請求項1~12のいずれか一項に記載の式(I)の化合物とを接触させる工程と、
c)電子スピン反転を引き起こす少なくとも1つの放射線を前記試料に照射して、NMR検出性能又はMRI性能を増強する工程と、
d)任意に前記試料を溶解し、超偏極された試料を得る工程と、
を含み、前記方法は、任意に、前記超偏極された試料のNMR又はMRIを観察することを更に含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的核偏極(DNP)の分野に関し、特に動的核偏極(DNP)用の偏極剤としての新規のトリチル-ニトロキシドラジカルに関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)は、十分に安定した均一な、典型的には数十テスラ(T)までの強力な磁場の中に置かれた核スピンの信号を検出することにより物質を探ることを可能にする非常に有益な特性評価方法である。この技術はスペクトルデータを記録することを可能にし、それらを解釈することで、構造に関する原子スケールの情報、及び研究対象の系のダイナミクスが得られる。NMRの使用は化学、生物学、及び材料科学において広く普及している。
【0003】
固体状態の試料の研究を望む場合、主にマジック角での試料の空気圧による高速回転に基づくアプローチが使用される。「マジック角度回転」(MAS)と呼ばれるこの技術はスペクトル分解能を大幅に向上させる。この方法では広範な情報が得られるが、他の分析技術と比較して感度不足に悩まされる。したがって、対象となる信号の取得には時間がかかることが多く、及び/又は十分に大量の試料(典型的には1mg~100mg)の使用が要求される。この制限は核の特性に固有のものであり、核スピン移行の低い偏極に直接関係している。この感度の不足は、新しい機能性材料(例えば、触媒、エネルギー貯蔵)の研究及び開発のためだけでなく、複雑な生体分子系(例えば、球状タンパク質、膜タンパク質、及び線維状タンパク質)の研究のためにも間違いなくNMRの使用を制限する。
【0004】
この感度の不足を補うのに、動的核偏極(DNP)と呼ばれる超偏極の技術を使用することができる。1953年に弱磁場の場合に発見されたこの現象は、MITのGriffin教授のグループからの研究を受けて、2009年以降に力強く発展した分野となっている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。主要な機器の開発のおかげで、高出力かつ高周波のマイクロ波源の入手を含め、マジック角での回転における固体核磁気共鳴に適用されるDNPは、多くの系において核磁化を大幅に増加させるのに有望な解決策に見える。現在、DNP測定は、典型的には、約1T~21.1Tの磁場で実施されており、殆どの場合、低温(約100K)での測定が必要とされる。測定は0.3μL~40μLの容量を有する試料ホルダー(ローター)内で実施される(非特許文献4)。
【0005】
高磁場DNP実験において、対象となる系は一般に、偏極剤(PA)を含む溶液で溶解、懸濁、又は含浸される。この溶液は、典型的には、研究対象の系との化学的適合性に応じて、DNP効率に関するその特質(低温で形成されるガラスの品質、核スピン及び電子スピンの緩和時間)について選択される。偏極剤には(不対電子を有する)常磁性中心が含まれており、これにより偏極剤に核プロトンスピンよりも約658倍偏極した電子スピンが与えられる。適切なマイクロ波照射の適用により、電子スピンの磁化を周囲の核スピンに移行し、こうして検出されるNMR信号を大幅に増加させることが可能となる。DNPによる信号雑音比増幅を最適化するのに、長年にわたって数多くの偏極剤が開発されてきた。
【0006】
これまでに「固体効果」(SE)及び「交差効果」(CE)等の幾つかの磁化移行機構が説明されてきた。これらの2つの効果は、最近では、試料回転及び高磁場の条件下で理論的に説明されている(非特許文献5、非特許文献6)。
【0007】
いわゆる「交差効果」(CE)は、「マジック角回転」下のDNP(MAS-DNP)にとって最も効率的なアプローチの1つである。CEは、典型的には、偏極剤として特注のビラジカルを使用して得られる。効率的な偏極剤は、最も一般的な実験条件下で、つまり強磁場及び/又は試料の高速回転の存在下で、偏極を移行する時間を最小限に抑えながら、そのような移行を最大化する。
【0008】
MAS-DNPの(2021年での)最も先進的な条件下、すなわち約5T~21.1T又はそれ以上の磁場、1kHz~65kHz(又はそれ以上)の範囲内の試料の回転周波数、及び約100Kの温度の条件下では、まさにCEが現在MAS-DNP実験にとっての最良の結果をもたらす方法である。この種類の実験は、典型的には2つの常磁性中心を含むPA、例えば、2つのニトロキシド単位がブリッジによって接続されたものの使用を含む。電子スピン間の実質的な相互作用を確実にするこのブリッジはCE機構に必要である。この相互作用(双極子又はJ-交換)は大きくなければならないが、核のラーモア周波数と比較して大きすぎてはならない。それというのも、それによりCE効率が低下することになるからである。
【0009】
電子スピン間のカップリングは、偏極の利得を最適化するための唯一の重要な基準ではない。電子スピン間のカップリング及びその有効磁場環境を表す各スピンのg-テンソル等の他の相互作用も重要である。例えば、ビニトロキシドビラジカルの場合、2つのg-テンソルの相対的な配向はCE効率に影響を及ぼし、2つのg-テンソルが平行である状況は避けられるべきである。さらに、電子スピン緩和時間(T1e/T2e)、電子スピンから周囲の核への超微細カップリング、及び核緩和時間もCE効率に強い影響を与える重要なパラメータである。最終的に、DNP実験の有効性を左右するのは複雑なパラメータのセットである。
【0010】
最も一般的に使用される分子は、ビニトロキシドビラジカル(Totapol、bTbKファミリー、bTUreaファミリー)(非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)又はヘテロビラジカル(Tempo-トリチル及びTempo-BDPA)(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)に対応する。
【0011】
ビラジカル開発の観点からすれば、主な問題の1つは、想定されるNMR用途で適したDNP適合性溶媒中での良好な溶解性を維持しながら、電子スピン間の十分な相互作用と、g-テンソルの好ましい相対位置及び配向と、興味深い緩和特性とをどちらも提供し得る化学的ブリッジ及び化学的置換基を見出すことである。さらに、偏極剤の合成はグラム規模での合成に対応する必要がある。
【0012】
これまでに提案されたPAは、高出力(約1W~10W)の高周波マイクロ波源(例えば、ジャイロトロン)(非特許文献3)を用いて、最大約15T~20Tの磁場及び最大30kHz~65kHzのMAS周波数の場合にかなり十分に機能する。それにもかかわらず、依然として大いに改善の余地があるため、特に非常に高い磁場(10T~15Tを超える)及び超高速MAS(30kHzを超える)で効率的なPAの開発を追求することが依然として求められている。この1つ目の課題に加えて、低出力のマイクロ波照射(10mW~1W)を使用する場合に効率的な新しいPAを開発することも求められている。これは、最大10Tの磁場の場合に特に当てはまり、そのために、ジャイロトロンに代わるマイクロ波源が既に実証されているが、DNP効率の低下を伴う(非特許文献13)。これらのマイクロ波源の主な利点は、それらの削減されたコスト、及びそれらの設置に必要とされる実験室スペースが限られていることである。したがって、適切なPAの開発により、DNP市場を多くのNMR施設(学術及び民間)に拡大することに成功すると見込まれる。さらに、このような低出力のマイクロ波源は、(DNPの実験室に現在設置されているジャイロトロンデバイスとは異なり)固定周波数で動作しない。したがって、(周波数固定のジャイロトロンとは異なり)NMRマグネットを掃引することなく、各偏極剤についてのDNP効率を最大化するようにマイクロ波周波数を設定することができる。これは、NMRマグネットが掃引可能である必要がなく、それによりDNPの設備機器の全体的なコストが更に削減されることを意味する。
【0013】
したがって、偏極の移行が増強され、かつそのような移行にかかる時間が最小限に抑えられた新しいPAを開発することに高い関心が持たれている。
【0014】
さらに、意図される用途に適したDNP適合性溶媒中での良好な溶解性を維持しながら、電子スピン間の十分な相互作用と、g-テンソルの好ましい相対位置及び配向と、興味深い緩和特性とをどちらも提供し得る新しいPAが真に求められている。
【0015】
特に、
非常に高磁場(10T~15Tを超える)で効率的であり、及び/又は、
超高速MAS(30kHzを超える)で効率的であり、及び/又は、
高出力及び低出力のマイクロ波照射(10mW~5W又はそれ以上)で効率的であり、
大量に生産することができ、
DNP実験に適した水性溶媒又は有機溶媒中に容易に溶解し得る、新しい偏極剤が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】D. A. Hall et al., Science (80-), vol. 276, no. 5314, pp. 930-932, 1997, doi: 10.1126/science.276.5314.930
【非特許文献2】A. B. Barnes et al., Appl. Magn. Reson., vol. 34, no. 3-4, pp. 237-263, 2008, doi: 10.1007/s00723-008-0129-1
【非特許文献3】R. Griffin et al., Phys. Chem. Chem. Phys, vol. 12, p. 5850, 2010
【非特許文献4】D. Lee, S. Hediger, and G. De Paepe, Solid State Nucl. Magn. Reson., vol. 66-67, pp. 6-20, Apr. 2015, doi: 10.1016/j.ssnmr.2015.01.003
【非特許文献5】K. R. Thurber and R. Tycko, J. Chem. Phys., vol. 137, no. 8, p. 084508, Aug. 2012, doi: 10.1063/1.4747449
【非特許文献6】F. Mentink-Vigier et al., J. Magn. Reson., vol. 224, pp. 13-21, Nov. 2012, doi: 10.1016/j.jmr.2012.08.013
【非特許文献7】C. Song et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 128, no. 35, pp. 11385-90, Sep. 2006, doi: 10.1021/ja061284b
【非特許文献8】Y. Matsuki et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., vol. 48, no. 27, pp. 4996-5000, Jan. 2009, doi: 10.1002/anie.200805940
【非特許文献9】C. Sauvee et al., Chem. - A Eur. J., vol. 22, no. 16, pp. 5598-5606, Apr. 2016, doi: 10.1002/chem.201504693
【非特許文献10】G. Mathies et al., Angew. Chemie - Int. Ed., vol. 54, no. 40, pp. 11770-11774, 2015, doi: 10.1002/anie.201504292
【非特許文献11】D. Wisser et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 140, no. 41, pp. 13340-13349, 2018, doi: 10.1021/jacs.8b08081
【非特許文献12】P. Berruyer et al., J. Phys. Chem. Lett., vol. 11, no. 19, pp. 8386-8391, 2020, doi: 10.1021/acs.jpclett.0c02493
【非特許文献13】I. V. Sergeyev et al., Solid State Nucl. Magn. Reson., vol. 100, no. February, pp. 63-69, 2019, doi: 10.1016/j.ssnmr.2019.03.008
【発明の概要】
【0017】
本発明は、とりわけ、式(I):
【化1】
(式中、
nは、0又は1であり、
mは、1、2、又は3であり、
X
1及びX
2は、独立して、N、Pであり、
Q
2は、
【化2】
であり、ここで、
X
3及びX
4は、
【化3】
によって示されるように繋がって、それらが結合される窒素原子と一緒になって、5員~8員の複素環式環、好ましくは5員又は6員の複素環式環、より好ましくは5員の複素環式環を形成し、
複素環式環は、任意に置換されており、及び/又は、
複素環式環は、任意に1つ以上の炭素-炭素二重結合を含み、
【化4】
は、5員~8員の複素環式環、好ましくは5員又は6員の複素環式環、より好ましくは5員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点であり、
Q
1は、
【化5】
から選択され、ここで、
R
19~R
30は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールであり、
Mは、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属、アンモニウム基であり、好ましくは、Mは、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属、アンモニウム基であり、より好ましくは、Mは、メチル基、又はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)の化合物(但し、式:
【化6】
の化合物を除く)を提供することによって、これらの必要性に対処する。
【0018】
Liu et al., J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 2350-2356において、本明細書で除外される構造CT02-PPTが開示されているが、その分子に関するDNPデータは提供されていない。この論文では、文献においてTEMTriPol-1と呼ばれることが多いCT02-GTの構造も開示されている。CT02-GTについてもDNPデータは提供されていない。
【0019】
非特許文献10において、CT02-PPT(TEMTriPol-PPTと呼ばれる)及びCT02-GT(TEMTriPol-1と呼ばれる)に関するDNP-NMR測定が報告されている。この論文では、凍結溶液モデルにおけるDNP増強率(DNP enhancement factor)及びDNPビルドアップ時間が報告されている。この研究は、TEMTriPol-1がこの研究で試験された構造の中で最良の偏極剤であると結論付けている。CT02-PPTは、Mが水素であり、かつQ
2がTEMPO部分(6員の複素環式ラジカル
【化7】
)である場合に相当することに注目すべきである。
【0020】
式(I)の化合物は、Q1(トリチル部分)とQ2(ニトロキシド部分)、特に6員の複素環式環との間のブリッジ/リンカーが不対電子スピン間のほぼ最適なカップリングを提供する効率的なトリチル-ニトロキシドラジカルである。さらに、トリチル部分はニトロキシドと比較してはるかに長い緩和時間をもたらすことから、それによりDNP実験を行う際に強力なマイクロ波照射の必要性が低下する(非特許文献10)。
【0021】
式(I)の化合物中に存在するQ1部分とQ2部分との間の化学的なブリッジ又はリンカーは、剛性及び剛直性だけでなく、トリチルラジカルとニトロキシドラジカルとの間の好ましいカップリングも提供する。様々な置換基R19~R30及びMは、化合物の溶解性に対して直接的な影響を及ぼす。Mがアルカリ金属又はメチル基に対応する場合は、水性ベース及び有機ベースのそれぞれの用途について特に興味深いものである。
【0022】
最適な偏極剤の構造は、Q1及びQ2によって表される2つのラジカル間の距離、J-交換相互作用の強度、g-テンソルの相対位置及び配向、並びに偏極剤の関連する電子緩和時間及び重水素化レベルを含む複雑な多重パラメータの問題であることは注目に値する。
【0023】
不対電子間の相互作用(双極子カップリング及び/又はJ-交換相互作用と呼ばれる)を増加させることを目的として、本発明者らは、式(I)の化合物において、Q2が5員の複素環式環であり、場合によっては剛性を更に高めるのに二重結合を有する場合が、効率的な高磁場CE DNPにとって特に興味深いものであることを見出した。この場合、Q2にピロリンオキシルラジカルを使用すると、Q1のトリチルラジカルまでの距離が短くなるため、短い偏極時間で効率的なCE DNPを起こすのに適したg-テンソル主軸値を維持しながら、2つのラジカル部分間のカップリングが増加する。
【0024】
より重要なことには、式(I)の化合物において、ブリッジが大きな利点をもたらす。これらの新しく開発されたラジカルは、非特許文献10によって説明される既知のTEMTriPol-Iとは対照的に、合成が容易であり、かつ精製が容易であり得る。後者は容易に入手することができず、合成には困難で低収率のHPLC精製が含まれる。
【0025】
本発明の新たに開発されたラジカルを、トリチルラジカル(Q
1)が1つ(m=1)、2つ(m=2)、及び3つ(m=3)のニトロキシド(
【化8】
)に接続されたマルチラジカルとして調製することができ、それぞれビラジカル、トリラジカル、及びテトララジカルが得られ、DNP性能の向上がもたらされることは注目に値する。
【0026】
式(I)の化合物は、あらゆる媒体、すなわち、水ベース又は有機溶媒ベースの媒体に適している。
【0027】
したがって、トリチル-ニトロキシド(複数の場合もある)ラジカルの新しいファミリーは、高磁場及び高速MASでのDNP用の容易に入手可能なラジカルを提供する。これらの新しいラジカルは、固体マイクロ波源等の低出力のマイクロ波源と組み合わせた場合に特に魅力的である。
【0028】
本発明の別の対象は、偏極剤としての式(I)の化合物の使用である。
【0029】
本発明の別の対象は、構造生物学、材料科学、固体の核磁気共鳴又は液体試料に適用される核磁気共鳴、粒子物理学、及び医用画像法の状況におけるDNP用の偏極剤(PA)としての、本発明による式(I)の化合物の使用である。
【0030】
特に、式(I)の化合物を、核磁気共鳴(NMR)分光法において核のNMR活性同位体を偏極させるDNP剤として使用することができる。本明細書において使用されるNMR分光法という用語は、固体NMR(SS-NMR)分光法、液体NMR分光法、及び磁気共鳴画像法(MRI)を包含し、その全てにおいて本発明の化合物をDNP剤として使用することができる。
【0031】
本発明の更なる対象は、動的核偏極によって試料中の分析物を偏極させる方法であって、
a)分析物を含む試料を準備する工程と、
b)上記試料と、磁場中で分析物の最適な核偏極を可能にする偏極剤としての式(I)の化合物とを接触させる工程と、
c)電子スピン反転を引き起こす少なくとも1つの放射線を上記試料に照射して、NMR検出性能又はMRI性能を増強する工程と、
d)任意に試料を溶解し、超偏極された試料を得る工程と、
を含む、方法である。
【0032】
本発明を、その実施の形態を例示する以下の図面及び実施例によって更に説明する。これらの実施例及び図面は、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施例1に記載される合成プロトコルに従って調製されたピペラジンニトロキシド2のClCH
2CH
2Cl中1.0mMでの電子常磁性共鳴(EPR)スペクトルを示す図である。
【
図2a】実施例1に記載される合成プロトコルに従って調製されたPyrroTriPol-OMeのClCH
2CH
2Cl中1.0mMでのEPRスペクトルを示す図である。
【
図2b】PyrroTriPol-OMeのHPLCクロマトグラムを示す図である。
【
図3a】実施例1において調製されたPyrroTriPolのH
2O中1.0mMでのEPRスペクトルを示す図である。
【
図3b】PyrroTriPolのHPLCクロマトグラムを示す図である。
【
図4】実施例2に記載される合成プロトコルに従って調製されたピペラジンニトロキシド5のClCH
2CH
2Cl中1.0mMでのEPRスペクトルを示す図である。
【
図5a】実施例2に記載される合成プロトコルに従って調製されたPyrroTriPol-H-OMeのClCH
2CH
2Cl中1.0mMでのEPRスペクトルを示す図である。
【
図5b】PyrroTriPol-H-OMeのHPLCクロマトグラムを示す図である。
【
図6a】実施例2において調製されたPyrroTriPol-HのH
2O中1.0mMでのEPRスペクトルを示す図である。
【
図6b】PyrroTriPol-HのHPLCクロマトグラムを示す図である。
【
図7a】実施例3に記載される合成プロトコルに従って調製されたDiPyrroTriPol-OMeのClCH
2CH
2Cl中1.0mMでのEPRスペクトルを示す図である。
【
図7b】DiPyrroTriPol-OMeのHPLCクロマトグラムを示す図である。
【
図8a】実施例4に記載される合成プロトコルに従って調製されたTriPyrroTriPolのClCH
2CH
2Cl中1.0mMでのEPRスペクトルを示す図である。
【
図8b】TriPyrroTriPolのHPLCクロマトグラムを示す図である。
【
図9a】実施例5に記載される合成プロトコルに従って調製されたDiPyrroTriPol-H-OMeのClCH
2CH
2Cl中1.0mMでのEPRスペクトルを示す図である。
【
図9b】DiPyrroTriPol-H-OMeのHPLCクロマトグラムを示す図である。
【
図10a】実施例6において調製されたTriPyrroTriPol-HのClCH
2CH
2Cl中1.0mMでのEPRスペクトルを示す図である。
【
図10b】TriPyrroTriPol-HのHPLCクロマトグラムを示す図である。
【
図11】(a)水溶液の場合のPyrroTriPol/TEMTriPol-I、(b)有機溶液の場合のPyrroTriPol-OMe/TEMTriPol-I-OMe、及び(c)トリラジカルDiPyrroTriPol-OMe/DiTEMTriPol-I-OMEの化学構造を示す図である。
【
図12】(a)0.25MのU-
13C,
15N-プロリンを含むグリセロール-d
8/D
2O/H
2O(60:30:10(容量/容量/容量))中10mMのPyrroTriPol及びTEMTriPol-I、(b)TCE中16mMのPyrroTriPol-OMe及びTEMTriPol-1-OMe、並びに(c)六方晶窒化ホウ素粉末を加えた1,1,2,2-テトラクロロエタン中11mMのDiPyrroTriPol-OMe及びDiTEMTriPol-1-OMeの、9.4、8kHzのMAS(3.2mmのローター)、及び約110Kでの実験性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、式(I):
【化9】
(式中、
nは、0又は1であり、
mは、1、2、又は3であり、
X
1及びX
2は、独立して、N、Pであり、
Q
2は、
【化10】
であり、ここで、
X
3及びX
4は、
【化11】
によって示されるように繋がって、それらが結合される窒素原子と一緒になって、5員~8員の複素環式環、好ましくは5員又は6員の複素環式環、より好ましくは5員の複素環式環を形成し、
複素環式環は、任意に置換されており、及び/又は、
複素環式環は、任意に1つ以上の炭素-炭素二重結合を含み、
【化12】
は、5員~8員の複素環式環、好ましくは5員又は6員の複素環式環、より好ましくは5員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点であり、
Q
1は、
【化13】
から選択され、ここで、
R
19~R
30は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールであり、
Mは、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属、アンモニウム基であり、好ましくは、Mは、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属、アンモニウム基であり、より好ましくは、Mは、メチル基、又はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)の化合物(但し、式:
【化14】
の化合物を除く)である。
【0035】
式(I)の化合物において、1位及び4位(すなわち、X1及びX2)にヘテロ原子を含む飽和6員環として本明細書で示されるブリッジ/リンカーは、剛性を与え、可撓性を低下させる。そのブリッジ/リンカーはまた、Q1ラジカル中心とQ2ラジカル中心との間に良好な距離範囲を与え、これが偏極の効率的かつ高速な移行を促進する。
【0036】
式(I)の化合物は、高いεオン/オフ増幅率、最小限に抑えられた減偏極効果、及び高速の核偏極ビルドアップを伴う水性溶媒及び有機溶媒用の効率的なトリチル-ニトロキシドの拡張可能な合成をもたらす。
【0037】
本明細書において使用される場合、別段の指示がない限り、「アルキル」という用語は、1個~10個の炭素原子、例えば1個~6個の原子を有する飽和の直鎖状、分岐状の炭化水素を意味する。アルキルの例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、及びイソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、イソブチル、t-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル等のそれらの分岐状異性体が挙げられる。
【0038】
本明細書において使用される場合、別段の指示がない限り、「シクロアルキル」という用語は、3個~10個の炭素原子、例えば3個~6個の炭素原子を有する飽和の環状炭化水素を意味する。環状アルキルの例としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピルメチルが挙げられる。
【0039】
アルキル(直鎖状であっても、又は分岐状であってもよい)は、非置換であり得るか、又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、ニトロ(-NO2)、ニトリル(-CN)、アリール、CO-アリール、-CO-アルキル、-CO-シクロアルキル、-CO-アルコキシ、-CO2H、-CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、1個~6個の炭素原子を有するアルキルである)、-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)の中から選択される1つ以上の適切な置換基で置換され得て、ここで、アルキルは上記で定義される通りであり、かつヒドロキシル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、及びアリールは以下で定義される通りである。
【0040】
シクロアルキルは、非置換であり得るか、又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、ニトロ(-NO2)、ニトリル(-CN)、アリール、CO-アリール、-CO-アルキル、-CO-シクロアルキル、-CO-アルコキシ、-CO2H、-CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、1個~6個の炭素原子を有するアルキルである)、-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)の中から選択される1つ以上の適切な置換基で置換され得て、ここで、アルキルは上記で定義される通りであり、かつヒドロキシル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、及びアリールは以下で定義される通りである。
【0041】
本明細書において使用される場合、別段の指定がない限り、「ハロゲン化アルキル」という用語は、少なくとも1個の水素原子がフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素から選択されるハロゲン原子により置換されている、上記のアルキル又は「シクロアルキル」を指す。ハロゲン化アルキルの非限定的な例は、フッ化メチル、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、フッ化エチル、塩化エチル、臭化エチル、二フッ化メチル、二塩化メチル、クロロフッ化メチル、ブロモクロロフッ化メチル、2-クロロプロピル、フルオロシクロペンチル、(ジブロモメチル)シクロヘキシル、2-ヨード-2-メチルプロピル、2,4-ジブロモペンチル、三フッ化メチル、三塩化メチル、三臭化メチル、三ヨウ化メチルである。
【0042】
本明細書において使用される場合、別段の指示がない限り、「アンモニウム基」は式(NH4)+のカチオンを意味する。
【0043】
本明細書において使用される場合、別段の指示がない限り、「アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して別の基に連結された上記で定義されたアルキル又はシクロアルキル(すなわち、-O-(シクロ)アルキル)を意味する。
【0044】
本明細書において使用される場合、別段の指示がない限り、「ヒドロキシル」という用語は、-OHを意味する。
【0045】
本明細書において使用される場合、別段の指示がない限り、使用される又は他の用語と組み合わせて使用される「ハロゲン又はハロゲン化」という用語は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を意味する。
【0046】
本明細書において使用される「複素環式環」という用語は、少なくとも1個の環原子が酸素、硫黄、及び窒素から選択されるヘテロ原子である、非芳香族の、部分不飽和の、又は完全飽和の5員環、6員環、7員環、又は8員環、例えば5員環~8員環、又は5員環~6員環を指す。複素環式環の残りの原子は炭素原子である。
【0047】
複素環式環は部分不飽和であってもよく、これは複素環式環が1つ以上の不飽和炭素-炭素結合を含み得ることを意味する。好ましくは、不飽和炭素-炭素結合は炭素-炭素二重結合(C=C)である。幾つかの実施形態において、複素環式環は1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む。幾つかの実施形態において、複素環式環は1つの炭素-炭素二重結合を含む。
【0048】
複素環式環において存在する窒素原子が、
【化15】
を形成する置換基R
xを有する窒素である実施形態において、R
xは、水素、ヒドロキシル、置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、上記で定義されるシクロアルキルであり得て、ここで、
【化16】
は、他の環員に窒素が取り付けられる点を表す。
【0049】
複素環式環は、いずれかの炭素環原子を介して分子の残部に繋がっている。
【0050】
複素環式環の炭素原子上の置換基としては、アルキル、シクロアルキル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アリール、ニトロ(-NO2)、ニトリル(-CN)、-CO-アリール、-CO-アルキル、-CO-シクロアルキル、-CO-アルコキシ、-CO2H、-CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、1個~6個の炭素原子を有するアルキルである)、-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)が挙げられ、ここで、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、及びアリールは本明細書において定義される通りである。
【0051】
本明細書において使用される場合、別段の指示がない限り、「アリール」という用語は、最大14個の炭素原子、例えば6個~14個の炭素原子を有し、単環(単環式)又は互いに縮合された若しくは共有結合により連結された多環(二環式から三環まで)であり得る芳香族炭化水素を指す。アリール部分のあらゆる適切な環位置を、定義された化学構造に共有結合により連結させることができる。アリールの例としては、限定されるものではないが、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ビフェニル、アントリル、フェナントリルが挙げられる。アリールは、非置換であり得るか、又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、アリール、ニトロ(-NO2)、ニトリル(-CN)、-CO-アリール、-CO-アルキル、-CO-シクロアルキル、-CO-アルコキシ、-CO2H、-CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、1個~6個の炭素原子を有するアルキルである)、-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)を含む1つ以上の適切な置換基で置換され得て、ここで、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、及びアリールは本明細書において定義される通りである。
【0052】
置換アリールの非限定的な例は、トリル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、トリメトキシフェニル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、三フッ化メチルフェニル、ニトロフェニル、メチルニトロフェニル、メトキシニトロフェニル、ジメトキシニトロフェニルクロロニトロフェニル、ニトリルフェニル、トリルニトロフェニル、メトキシナフチル、-CO-フェニルであり得る。
【0053】
本明細書において使用される場合、別段の指示がない限り、「任意の」及び「任意に」という用語は、その用語が指すものが必須ではないことを意味する。
【0054】
化学基(すなわち、複素環式環)が「任意に置換されている」とされる場合、その基の置換は必須ではなく、その基は置換されていても、又は置換されていなくてもよいことを意味する。どちらの実施形態もこの表現によって包括される。
【0055】
化学基(すなわち、複素環式環)が「1つ以上の炭素-炭素二重結合を任意に含む」とされる場合、1つ以上の二重結合が存在することは必須ではなく、上記化学基は1つ以上の炭素-炭素二重結合を含んでも、又は含まなくてもよいことを意味する。どちらの実施形態もこの表現によって包括される。
【0056】
方法が「任意の工程」を含む場合、これは上記工程が必須ではなく、実施されても、又は実施されなくてもよいことを意味する。どちらの実施形態もこの表現によって包括される。
【0057】
本発明の第1の実施形態において、Q
2は、式(I)の化合物において、
【化17】
(式中、
R
1~R
18は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであるか、又は、
R
1~R
9、R
10、及びR
15~R
18は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであり、かつ、
ジェミナルなR
11とR
12、及びジェミナルなR
13とR
14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、少なくとも1個の環原子が酸素である置換若しくは非置換の5員若しくは6員の複素環式環を形成する)から選択される。
【0058】
【化18】
は、5員又は6員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である)
【0059】
この第1の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2、及びQ1は上記の通りである。
【0060】
本発明の第2の実施形態において、Q
2は、式(I)の化合物において、
【化19】
(式中、
R
1~R
18は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールである)から選択される。
【0061】
【化20】
は、5員又は6員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である。
【0062】
この第2の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2、及びQ1は上記の通りである。
【0063】
好ましくは、R1~R18は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールである。
【0064】
より好ましくは、R1~R18は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキルである。
【0065】
本発明の第3の実施形態において、Q
2は、
【化21】
(式中、
R
1~R
9、R
10、及びR
15~R
18は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールであり、かつ、
ジェミナルなR
11とR
12、及びジェミナルなR
13とR
14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、少なくとも1個の環原子が酸素である置換又は非置換の5員又は6員の複素環式環を形成する)から選択される。
【0066】
この第3の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2、及びQ1は上記の通りである。
【0067】
【化22】
は、5員又は6員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である。
【0068】
変形実施形態において、
R1~R9、R10、及びR15~R18は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールであり、かつ、
ジェミナルなR11とR12、及びジェミナルなR13とR14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、少なくとも1個の環原子が酸素である置換又は非置換の5員又は6員の複素環式環を形成する。
【0069】
別の変形実施形態において、R1~R9、R10、及びR15~R18は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキルであり、かつ、
ジェミナルなR11とR12、及びジェミナルなR13とR14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、1個の環原子が酸素である置換又は非置換の5員又は6員の複素環式環を形成する。
【0070】
ジェミナルなR11とR12、及びジェミナルなR13とR14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換シクロアルキル、1個の環原子が酸素である置換された5員又は6員の複素環式環を形成する場合、上記シクロアルキル及び上記複素環式環は、好ましくは、
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、
ヒドロキシル、
1個~6個の炭素原子を有する非置換のアルキル、
置換としてCO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、1個~6個の炭素原子を有するアルキルである)、-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、1個~6個の炭素原子を有する置換アルキル、
シクロアルキル、
ハロゲン化アルキル、
アルコキシ、
アリール、
ニトロ(-NO2)、
ニトリル(-CN)、
-CO-アリール、
-CO-アルキル、
-CO-シクロアルキル、
-CO-アルコキシ、
-CO2H、
-CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、
-NRaRbRc(Ra、Rb、及びRcは、独立して、1個~6個の炭素原子を有するアルキルである)、
-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、
を含む1つ以上の適切な置換基で置換されており、
ここで、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、及びアリールは、本明細書に定義される通りである。
【0071】
本発明の第4の実施形態において、Q
2は、
【化23】
から選択され、
ここで、R
31~R
36は、独立して、
水素、
ヒドロキシル、
アルコキシ(ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される非置換のアルキル、
置換としてCO
2M
a(ここで、M
aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、-NR
aR
bR
c(ここで、R
a、R
b、及びR
cは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO
3(M
b)
2(ここで、M
bは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される置換アルキル、
非置換のフェニル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群におけるハロゲン原子、CO
2M
a(ここで、M
aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、-NR
aR
bR
c(ここで、R
a、R
b、及びR
cは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO
3(M
b)
2(ここで、M
bは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、置換フェニル、
CO
2M
a(ここで、M
aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、
-NR
aR
bR
c(ここで、R
a、R
b、及びR
cは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
-OPO
3(M
b)
2(ここで、M
bは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、
を表す。
【0072】
この第4の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2、及びQ1は上記の通りである。
【0073】
【化24】
は、5員又は6員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である。
【0074】
本発明の第5の実施形態において、Q
2は、
【化25】
(式中、
R
1~R
7、及びR
10~R
16は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであるか、又は、
R
1~R
7、R
10、R
15、及びR
16は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであり、かつ、
ジェミナルなR
11とR
12、及びジェミナルなR
13とR
14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、少なくとも1個の環原子が酸素である置換若しくは非置換の5員若しくは6員の複素環式環を形成する)から選択される。
【0075】
変形実施形態において、
R1~R7、及びR10~R16は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~6個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであるか、又は、
R1~R7、R10、R15、及びR16は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~6個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであり、かつ、
ジェミナルなR11とR12、及びジェミナルなR13とR14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、少なくとも1個の環原子が酸素である置換又は非置換の5員又は6員の複素環式環を形成する。
【0076】
別の変形実施形態において、R1~R7、R10、R15及びR16は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキルであり、かつ、
ジェミナルなR11とR12、及びジェミナルなR13とR14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、1個の環原子が酸素である置換又は非置換の5員又は6員の複素環式環を形成する。
【0077】
ジェミナルなR11とR12、及びジェミナルなR13とR14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換シクロアルキル、1個の環原子が酸素である置換された5員又は6員の複素環式環を形成する場合、上記シクロアルキル及び上記複素環式環は、好ましくは、
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、
ヒドロキシル、
1個~6個の炭素原子を有する非置換のアルキル、
置換としてCO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、1個~6個の炭素原子を有するアルキルである)、-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、1個~6個の炭素原子を有する置換アルキル、
シクロアルキル、
ハロゲン化アルキル、
アルコキシ、
アリール、
ニトロ(-NO2)、
ニトリル(-CN)、
-CO-アリール、
-CO-アルキル、
-CO-シクロアルキル、
-CO-アルコキシ、
-CO2H、
-CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、
-NRaRbRc(Ra、Rb、及びRcは、独立して、1個~6個の炭素原子を有するアルキルである)、
-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群からから選択されるアルカリ金属である)、
を含む1つ以上の適切な置換基で置換されており、
ここで、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、及びアリールは、本明細書に定義される通りである。
【0078】
【化26】
は、5員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である。
【0079】
この第5の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2は上記の通りであり、かつQ1は上記の通りであり、ここで、Mは、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から群から選択されるアルカリ金属、アンモニウム基である。好ましくは、Mは、メチル基、又はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から群から選択されるアルカリ金属である。
【0080】
既に上述のように、式(I)の化合物において、1位及び4位(すなわち、X1及びX2)にヘテロ原子を含む飽和6員環として本明細書で示されるブリッジ/リンカーは、剛性を与え、可撓性を低下させる。そのブリッジ/リンカーはまた、Q1ラジカル中心とQ2ラジカル中心との間に良好な距離範囲を与え、これが偏極の効率的かつ高速な移行を促進する。さらに、その剛性、並びにQ1及びQ2からの2つの電子スピン間のカップリング(双極子カップリング及び/又はJ-交換相互作用と呼ばれる)は、Q2が5員複素環式環であり、場合によってはリンカーからのC=O基と共役した二重結合を有する場合、高磁場用途に特に好ましい。これは、例えば、Q2がピロリンオキシルラジカルに相当する場合に当てはまる。
【0081】
本発明の第6の実施形態は、Q1が上記の通りであり、ここで、Mが水素である第5の実施形態に対応する。
【0082】
本発明の第7の実施形態において、Q
2は、
【化27】
から選択され、
ここで、R
31~R
34は、独立して、
水素、
ヒドロキシル、
アルコキシ(ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される非置換のアルキル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から群から選択されるハロゲン原子、CO
2M
a(ここで、M
aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、-NR
aR
bR
c(ここで、R
a、R
b、及びR
cは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO
3(M
b)
2(ここで、M
bは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される置換アルキル、
非置換のフェニル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、CO
2M
a(ここで、M
aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、-NR
aR
bR
c(ここで、R
a、R
b、及びR
cは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO
3(M
b)
2(ここで、M
bは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、置換フェニル、
CO
2M
a(ここで、M
aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
-NR
aR
bR
c(ここで、R
a、R
b、及びR
cは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
-OPO
3(M
b)
2(ここで、M
bは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
を表す。
【0083】
この第7の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2は上記の通りであり、かつQ1は上記の通りであり、ここで、Mは、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属、アンモニウム基である。より好ましくは、Mは、メチル基、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である。
【0084】
【化28】
は、5員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である。
【0085】
本発明の第8の実施形態は、Q1が上記の通りであり、ここで、Mが水素である第7の実施形態に対応する。
【0086】
本発明の第9の実施形態において、Q
2は、
【化29】
から選択され、式中、
R
1~R
4、R
7、及びR
11~R
15は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであるか、又は、
R
1~R
4、R
7、及びR
15は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであり、かつ、
ジェミナルなR
11とR
12、及びジェミナルなR
13とR
14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、少なくとも1個の環原子が酸素である置換若しくは非置換の5員若しくは6員の複素環式環を形成する。
【0087】
変形実施形態において、
R1~R4、R7、及びR15は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールであり、かつ、
ジェミナルなR11とR12、及びジェミナルなR13とR14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、少なくとも1個の環原子が酸素である置換又は非置換の5員又は6員の複素環式環を形成する。
【0088】
別の変形実施形態において、
R1~R4、R7、及びR15は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキルであり、かつ、
ジェミナルなR11とR12、及びジェミナルなR13とR14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、1個の環原子が酸素である置換又は非置換の5員又は6員の複素環式環を形成する。
【0089】
ジェミナルなR11とR12、及びジェミナルなR13とR14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換シクロアルキル、1個の環原子が酸素である置換された5員又は6員の複素環式環を形成する場合、上記シクロアルキル及び上記複素環式環は、好ましくは、
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、
ヒドロキシル、
アルコキシ(ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される非置換のアルキル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される置換アルキル、
非置換のフェニル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、置換フェニル、
CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルからなる群から選択される非置換のシクロアルキル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルからなる群から選択される置換シクロアルキル、
ニトロ(-NO2)、
ニトリル(-CN)、
-CO-アルキル(ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
-CO-フェニル、
-CO-シクロアルキル(ここで、シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルである)、
-CO-アルコキシ(ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
-CO2H、
-CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
-NRaRbRc(Ra、Rb、及びRcは、独立して、1個~6個の炭素原子を有するアルキルである)、
-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
を含む1つ以上の適切な置換基で置換されている。
【0090】
この第9の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2は上記の通りであり、かつQ1は上記の通りであり、ここで、Mは、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属、アンモニウム基である。好ましくは、Mは、メチル基、又はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である。
【0091】
【化30】
は、5員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である。
【0092】
本発明の第10の実施形態は、Q1が上記の通りであり、ここで、Mが水素である第9の実施形態に対応する。
【0093】
本発明の第11の実施形態において、Q
2は、
【化31】
から選択され、
ここで、R
33及びR
34は、独立して、
水素、
ヒドロキシル、
アルコキシ(ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される非置換のアルキル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、CO
2M
a(ここで、M
aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、-NR
aR
bR
c(ここで、R
a、R
b、及びR
cは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO
3(M
b)
2(ここで、M
bは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される置換アルキル、
非置換のフェニル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、CO
2M
a(ここで、M
aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、-NR
aR
bR
c(ここで、R
a、R
b、及びR
cは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO
3(M
b)
2(ここで、M
bは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、置換フェニル、
CO
2M
a(ここで、M
aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
-NR
aR
bR
c(ここで、R
a、R
b、及びR
cは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
-OPO
3(M
b)
2(ここで、M
bは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
を表す。
【0094】
【化32】
は、5員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である。
【0095】
この第11の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2は上記の通りであり、かつQ1は上記の通りであり、ここで、Mは、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属、アンモニウム基である。好ましくは、Mは、メチル基、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である。
【0096】
本発明の第12の実施形態は、Q1が上記の通りであり、ここで、Mが水素である第11の実施形態に対応する。
【0097】
本発明の第13の実施形態において、Q
2は、
【化33】
から選択され、式中、
R
1~R
7、及びR
10~R
16は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであるか、又は、
R
1~R
7、R
10、R
15、及びR
16は、独立して、水素、1個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリールであり、かつ、
ジェミナルなR
11とR
12、及びジェミナルなR
13とR
14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル、少なくとも1個の環原子が酸素である置換若しくは非置換の5員若しくは6員の複素環式環を形成する。
【0098】
変形実施形態において、
R1~R4、R7、及びR15は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールであり、かつ、
ジェミナルなR11とR12、及びジェミナルなR13とR14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、少なくとも1個の環原子が酸素である置換又は非置換の5員又は6員の複素環式環を形成する。
【0099】
別の変形実施形態において、
R1~R4、R7、及びR15は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキルであり、かつ、
ジェミナルなR11とR12、及びジェミナルなR13とR14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、1個の環原子が酸素である置換又は非置換の5員又は6員の複素環式環を形成する。
【0100】
ジェミナルなR11とR12、及びジェミナルなR13とR14とが繋がって、これらが結合される炭素と一緒になって、3個~6個の炭素原子を有する置換シクロアルキル、1個の環原子が酸素である置換された5員又は6員の複素環式環を形成する場合、上記シクロアルキル及び上記複素環式環は、好ましくは、
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、
ヒドロキシル、
アルコキシ(ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される非置換のアルキル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される置換アルキル、
非置換のフェニル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、置換フェニル、
CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルからなる群から選択される非置換のシクロアルキル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、-NRaRbRc(ここで、Ra、Rb、及びRcは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルからなる群から選択される置換シクロアルキル、
ニトロ(-NO2)、
ニトリル(-CN)、
-CO-アルキル(ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
-CO-フェニル、
-CO-シクロアルキル(ここで、シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルである)、
-CO-アルコキシ(ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
-CO2H、
-CO2Ma(ここで、Maは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
-NRaRbRc(Ra、Rb、及びRcは、独立して、1個~6個の炭素原子を有するアルキルである)、
-OPO3(Mb)2(ここで、Mbは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
を含む1つ以上の適切な置換基で置換されている。
【0101】
【化34】
は、5員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である。
【0102】
この第11の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2は上記の通りであり、かつQ1は上記の通りであり、ここで、Mは、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属、アンモニウム基である。好ましくは、Mは、メチル基、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である。
【0103】
本発明の第14の実施形態は、Q1が上記の通りであり、ここで、Mが水素である第13の実施形態に対応する。
【0104】
本発明の第15の実施形態において、Q
2は、
【化35】
から選択され、
ここで、R
31及びR
32は、独立して、
水素、
ヒドロキシル、
アルコキシ(ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される非置換のアルキル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、CO
2M
a(ここで、M
aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、-NR
aR
bR
c(ここで、R
a、R
b、及びR
cは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO
3(M
b)
2(ここで、M
bは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される置換アルキル、
非置換のフェニル、
置換としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子、CO
2M
a(ここで、M
aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、-NR
aR
bR
c(ここで、R
a、R
b、及びR
cは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、-OPO
3(M
b)
2(ここで、M
bは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)が挙げられる、置換フェニル、
CO
2M
a(ここで、M
aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
-NR
aR
bR
c(ここで、R
a、R
b、及びR
cは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体である)、
-OPO
3(M
b)
2(ここで、M
bは、水素、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である)、
を表す。
【0105】
この第13の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2は上記の通りであり、かつQ1は上記の通りであり、ここで、Mは、1個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属、アンモニウム基である。好ましくは、Mは、メチル基、又はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属である。
【0106】
【化36】
は、5員の複素環式環が分子の残部に取り付けられる点である。
【0107】
本発明の第16の実施形態は、Q1が上記の通りであり、ここで、Mが水素である第15の実施形態に対応する。
【0108】
本発明の第17の実施形態において、Q
1は、
【化37】
から選択され、式中、
R
19~R
30は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリールであり、
Mは、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、3個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル、6個~14個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属、アンモニウム基である。
【0109】
この第16の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2、及びQ2は上記の通りである。
【0110】
【化38】
は、-(C=O)基が分子の残部に取り付けられる点である。
【0111】
本発明の第18の実施形態において、Q
1は、
【化39】
から選択され、式中、
R
19~R
30は、独立して、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキルであり、
Mは、水素、1個~6個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖状、分岐状のアルキル、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属、アンモニウム基である。
【0112】
この第17の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2、及びQ2は上記の通りである。
【0113】
【化40】
は、-(C=O)基(複数の場合もある)が分子の残部に取り付けられる点である。
【0114】
本発明の第19の実施形態において、Q
1は、
【化41】
から選択され、式中、Mは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれらの分岐状異性体から選択される非置換のアルキル、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)からなる群から選択されるアルカリ金属、アンモニウム基である。
【0115】
この第19の実施形態において、n=1であり、m、X1、X2、及びQ2は上記の通りである。
【0116】
【化42】
は、-(C=O)基(複数の場合もある)が分子の残部に取り付けられる点である。
【0117】
本明細書において開示される全ての実施形態において、X1及びX2は、好ましくはNである。
【0118】
本発明の第20の実施形態は、Q1が上記の通りであり、ここで、Mが水素である第19の実施形態に対応する。
【0119】
既に示したように、式:
【化43】
の化合物は、本発明の一部ではなく、本明細書に開示される全ての実施形態から除外される。
【0120】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化44】
である。
【0121】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化45】
である。
【0122】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化46】
である。
【0123】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化47】
である。
【0124】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化48】
である。
【0125】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化49】
である。
【0126】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化50】
である。
【0127】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化51】
である。
【0128】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化52】
である。
【0129】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化53】
である。
【0130】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化54】
である。
【0131】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化55】
である。
【0132】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化56】
である。
【0133】
本発明による例示的な実施形態において、式(I)の化合物は、
【化57】
である。
【0134】
これまでに提案されたニトロキシド-炭素ベースのビラジカルは、高磁場及び高速のMASで低から中程度の性能をもたらす。より重要なことには、これらが限られた化学的安定性(HyTEK)に悩まされるか、又は時間のかかる合成を必要とするため、これまでその広範な使用は制限されていた。両方の側面によりこれらのラジカルの商業化はこれまで妨げられていた。
【0135】
式(I)の化合物は、ニトロキシド-炭素ベースのビラジカルの限られた効率及び安定性の両方の問題に対処している。さらに、これらの化合物についての合成経路は大規模合成ひいては商業化に適合している。
【0136】
本出願に開示される偏極剤ファミリーの性能を説明するのに、本発明者らは、このファミリーの幾つかのメンバーについての返されたDNP効率を記載し(すなわち、
図11aにおけるPyrroTriPol、
図11bにおけるPyrroTriPol-OMe、
図11cにおけるDiPyrroTriPol-OMe)、これらをTEMTriPol-1(
図11a、非特許文献10)、TEMTriPol-OMe(
図11b)、及びDiTEMTriPol-OMe(
図11c)と比較している。ここで留意すべきは、TEMTriPol-OMeビラジカル及びDiTEMTriPol-OMeトリラジカルはこれまでに報告されておらず、水溶液中に可溶なTEMTriPol-1とは対照的に、有機溶媒(例えば、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロホルム等)中に可溶なTEMTriPol誘導体に相当することである。
【0137】
図12において、本発明者らは、0.25MのU-
13C,
15N-プロリンを含むグリセロール-d
8/D
2O/H
2O(60:30:10(容量/容量/容量))中10mMのPyrroTriPol及びTEMTriPol-Iについての実験データを報告している。
【0138】
さらに、本発明者らは、1,1,2,2-テトラクロロエタン中16mMのPyrroTriPol-OMe及びTEMTriPol-OMeについての実験データを
図12bにおいて報告しているだけでなく、1,1,2,2-テトラクロロエタン中11mMのDiPyrroTriPol-OMe及びDiTEMTriPol-OMeについての実験データも
図12cにおいて報告している。
図12において報告される結果は、PyrroTriPolが、部分的にプロトン化された水性マトリックスにおいて高いDNP増強率(約80のε
オン/オフ)及び短いビルドアップ時間(約2秒のTb)をもたらすことを示している。より重要なことには、返された感度は、TEMTriPol-1を用いるよりもPyrroTriPolを用いた方が1.6倍高く、これはDNPの増強がより高いのに対し、DNPのビルドアップ時間及び減偏極効果が同等であるという事実と一致している。この傾向は非水性のDNPマトリックスの場合にも当てはまる。際だったことに、PyrroTriPol-OMeは0.8秒のビルドアップ時間で120のDNP増強率を返す。これは換言すると、TEMTriPol-1-OMeと比較して感度が2倍向上したことになる。
【0139】
補足として、TEMTriPolファミリー及びPyrroTriPolファミリーの両方についてのトリラジカルの場合も
図12cにおいて報告されている。最初に留意すべきことは、TEMTriPolの場合に、2つ目のニトロキシド部分を追加するとDNPの性能が低下するということである。DNP増強率ε
オン/オフは、TEMTriPol-OMeの場合の73からDiTEMTriPol-I-OMeの場合の20に低下する。本発明者らは、これがJMR 244 (2014) 98-100においてYauらによってなされた考察とは異なることに注目した。この研究において、Yauらは、ニトロキシドベースの偏極剤の場合、トリラジカルはビラジカル又はテトララジカルよりも高い感度を返すと考察した。この比較により、後者の考察を原則として全ての偏極剤構造に対して一般化することができないことも分かる。PyrroTriPolの場合、本発明者らは、トリラジカル型(DiPyrroTriPol-OMe)が、ビラジカルの場合(PyrroTriPol-OMe)と同等の感度(僅かに小さい)を返すことに注目した。
【0140】
本発明による式(I)の特定の化合物の合成を実施例において詳細に記載する。
【0141】
本発明の化合物の一般的な合成方法を、以下に記載される一段階合成に従って得ることができる。
【0142】
反応に使用される溶媒は、同じであっても、又はジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジオキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アセトニトリル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、若しくはトルエンから選択されてもよい。
【0143】
反応温度は20℃から50℃の間、好ましくは20℃から30℃の間であり得る。
【0144】
反応時間は1時間から48時間の間、より好ましくは6時間から24時間の間であり得る。
【0145】
トリチル化合物とニトロキシドラジカルとの間のモル比は、1から6の間、特に1から1.2の間であり得る。
【0146】
式(I)の化合物を、必要に応じて、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶化、様々なクロマトグラフィー技術等のような有機合成化学において使用される慣例的な分離/精製方法により単離及び精製することができる。
【0147】
本発明の化合物は安定であり、水性溶媒中又は有機溶媒中のどちらにも可溶である。
【0148】
本発明の別の対象は、偏極剤としての式(I)の化合物の使用に関する。
【0149】
本発明の別の対象は、構造生物学、材料科学、固体の核磁気共鳴又は液体試料に適用される核磁気共鳴、粒子物理学、及び医用画像法の状況におけるDNP用のPAとしての、本発明による式(I)の化合物の使用である。特に、式(I)の化合物を、核磁気共鳴(NMR)分光法において核のNMR活性同位体を偏極させるDNP剤として使用することができる。本明細書において使用されるNMR分光法という用語は、固体NMR(SS-NMR)分光法、液体NMR分光法、及び磁気共鳴画像法(MRI)を包含し、その全てにおいて本発明の化合物をDNP剤として使用することができる。
【0150】
NMR活性スピンを有する核は、例えば、1H、2H、6Li、7Li、10B、11B、13C、14N、15N、17O、19F、23Na、25Mg、27Al、29Si、31P、33S、35Cl、37Cl、39K、41K、43Ca、47Ti、49Ti、50V、51V、53Cr、77Se、89Y、117Sn、119Sn、及び199Hgであってもよい。
【0151】
本発明の更なる対象は、動的核偏極用の試料中の分析物を偏極させる方法であって、
a)分析物を含む試料を準備する工程と、
b)上記試料と、磁場中で分析物の最適な核偏極を可能にする偏極剤としての式(I)の化合物とを接触させる工程と、
c)電子スピン反転を引き起こす少なくとも1つの放射線を上記試料に照射して、NMR検出性能又はMRI性能を増強する工程と、
d)任意に試料を溶解し、超偏極された試料を得る工程と、
を含む、方法に関する。
【0152】
上記方法は、任意に、超偏極された試料のNMR又はMRIを観察することを更に含む。
【0153】
照射は、好ましくはマイクロ波照射である。NMR活性核に偏極を移行するマイクロ波照射の周波数範囲は、通常5GHz~800GHzである。
【0154】
本明細書において使用される「分析物」という用語は、結晶格子又は非晶質固体構造を有する固体の無機材料、有機材料、又は有機金属材料(例えば、ゼオライト、ナノ粒子、メソ多孔質材料及び多孔質材料、ガラス、有機金属フレームワーク(MOF))、ポリマー化合物及び巨大分子化合物を含む分子化学的化合物又は生物学的化合物(例えば、タンパク質、酵素、DNA/RNA、及び生物学的実体(例えば、NMR分光法により調査される1つ以上のNMR活性スピンを有する細胞全体、葉、ウイルス粒子、組織成分若しくは骨成分、又は全身))等の化学的実体又は生物学的実体を指す。化学的実体又は生物学的実体は単離されていても、又はその自然環境にあってもよい。分析物は、水性媒体、有機溶媒若しくは溶媒混合物、又は水性/有機溶媒混合物中に溶解されていてもよい。分析物は、溶媒なしで試料中に存在していてもよい。
【0155】
NMR分光法による調査は、構造決定、反応速度論のモニタリング、フローイメージング等であり得る。
【0156】
偏極剤を、試料の溶媒(複数の場合もある)中に溶解しても、又はドープされたポリマー、偏極剤で官能化された材料、若しくは生体試料上の常磁性スピンラベルのように、分析物に化学的に結合される溶媒なしで導入してもよい。
【0157】
また、偏極剤を、例えば最初に偏極剤を溶媒とともに導入し、次の工程で溶媒を蒸発させて偏極剤及び分析物を残すことによって分析物中に分散させても、又は湿式含浸によって導入してもよい。また、偏極剤を合成調製工程中に添加してもよい。
【0158】
偏極剤は、偏極時間の間に、分析物を含む凍結溶媒若しくは溶媒混合物を含む凍結溶液中又は固体状態でのように固体状態で存在してもよい。
【0159】
偏極剤は、偏極時間の間に、液体状態で又は液体溶液中に存在してもよい。
【0160】
本発明による式(I)の化合物は、偏極剤として使用される場合、0.01mM~200mMの濃度で使用される。
【0161】
固体NMR実験において、偏極剤を含む試料の温度は1K~300Kの範囲内である。
【0162】
本発明を以下の図面及び実施例によって更に説明する。
【実施例】
【0163】
全ての市販の試薬をSigma-Aldrich, Inc.又はAcros Organicsから購入し、更に精製せずに使用した。全ての水分及び空気に敏感な反応を、オーブン乾燥させたガラス器具内でArの不活性雰囲気下にて実施した。薄層クロマトグラフィー(TLC)を、シリカゲル(0.25mm、F-25、Silicycle)でプレコートされたガラスプレートを使用して実施し、化合物をUV光下で視覚化した。カラムクロマトグラフィーを、230メッシュ~400メッシュのシリカゲル(Silicycle)を使用して実施した。ラジカルは常磁性の性質によりNMRシグナルの広幅化及び損失を示すため、これらのNMRスペクトルは示されていない。EPRスペクトルを、MiniScope MS200(Magnettech、ドイツ)分光計で記録した。全ての有機化合物の質量分光分析を、ESI-HRMS(Bruker、MicrOTOF-Q)で正イオンモード又は負イオンモードにおいて実施した。
【0164】
PyrroTriPol及びPyrroTriPol-Hの精製を、Agilentの分取HPLCシステムでGL SciencesのInertsustain C18 14×250mmカラムを使用して、λ=254nmでのUV検出により10mL/分の流量にて、次の勾配を使用して実施した:溶媒A、H2O;溶媒B、CH3CN;0分→4分でアイソクラティックな4%のB、4分→20分で勾配4%→100%のB、20分→21分でアイソクラティックな100%のB、21分→23分で100%→4%のB。全てのビラジカルの純度を、Agilentの分析的HPLCシステムでPursuit 5 C18 4.6×250mm分析カラムを使用して、λ=254nmでのUV検出により、1mL/分の流量にて、PyrroTriPol-OMe、DiPyrroTriPol-OMe、TriPyrroTriPol、PyrroTriPol-H-OMe、DiPyrroTriPol-H-OMe、及びTriPyrroTriPol-Hについてアイソクラティック溶離(isocratic run):0分→16分で100%を使用して分析した。
【0165】
実施例1:
ピペラジンニトロキシド2の合成
【化58】
【0166】
EtOAc(5.0mL)中のニトロキシド1(doi: org/10.1016/j.saa.2008.07.045)(0.100g、0.54mmol)の溶液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、すなわちDCC(0.167g、0.81mmol)及びN-ヒドロキシベンゾトリアゾール、すなわちHOBt(0.124g、0.81mmol)を加え、得られた溶液を22℃で5分間撹拌し、EtOAc(10mL)及びEt3N(0.11mL、0.81mmol)中のピペラジン(0.140g、1.63mmol)の溶液に滴加した。反応混合物を22℃で12時間撹拌した。沈殿物を濾別し、溶媒を真空中で除去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH(9:1)+0.1%のEt3N)により精製して、ピペラジンニトロキシド2(0.108g、0.43mmol、79%)を黄色の固体として得た。
【0167】
TLC(シリカゲル、CH
2Cl
2:MeOH(9:1))、Rf(ピペラジンニトロキシド2)=0.1
ESI-HRMS:C
13H
22N
3O
2[M+H
+]についての計算値253.1785、実測値253.1776(Δm=0.0009、誤差=3.6ppm)
EPR(ClCH
2CH
2Cl、1.0mM):
図1に示されるEPRスペクトル。
【0168】
【0169】
DMF(2.0mL)中のトリチル3(doi: 10.1055/s-0035-1561299)(0.030g、0.029mmol)の溶液に、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(0.020g、0.044mmol)、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.006g、0.044mmol)、及びDIPEA(0.008mL、0.044mmol)を加え、得られた溶液を22℃で5分間撹拌した。ニトロキシド2(0.008g、0.032mmol)を溶液に加え、得られた反応混合物を22℃で12時間撹拌した。飽和NaHCO3水溶液(10mL)を加え、溶液をEtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を、Na2SO4を介して乾燥させ、溶媒を真空中で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc(6:4))により精製して、PyrroTriPol-OMe(0.033g、0.026mmol、88%の収率)を緑色の固体として得た。
【0170】
TLC(シリカゲル、石油エーテル:EtOAc(1:1))、Rf(PyrroTriPol-OMe)=0.4
ESI-HRMS:C
55H
63N
3O
7S
12[M+Na
+]についての計算値1284.1207、実測値1284.1164(Δm=0.0043、誤差=3.3ppm)。
EPR(ClCH
2CH
2Cl、1.0mM):
図2aに示されるEPRスペクトル
HPLC:
図2bに示されるHPLCクロマトグラム。
【0171】
【0172】
MeOH(2.0mL)中のPyrroTriPol-OMe(0.015g、0.012mmol)の溶液に、NaOH(0.003g、0.072mmol)及びH2O(0.1mL)を加えた。反応混合物を22℃で48時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残留物をC18-HPLCにより精製して、PyrroTriPol(0.013g、0.010mmol、86%の収率)を緑色の固体として得た。
【0173】
ESI-HRMS:C
53H
59N
3O
7S
12[M-H
+]についての計算値1232.0929、実測値1232.0922(Δm=0.0007、誤差=0.6ppm)。
EPR(H
2O、1.0mM):
図3aに示されるEPRスペクトル
HPLC:
図3bに示されるHPLCクロマトグラム。
【0174】
実施例2:
ピペラジンニトロキシド5の合成
【化61】
【0175】
EtOAc(5.0mL)中のニトロキシド4(doi:org/10.1039/C7CP07444A)(0.100g、0.54mmol)の溶液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、すなわちDCC(0.167g、0.81mmol)及びN-ヒドロキシベンゾトリアゾール、すなわちHOBt(0.124g、0.81mmol)を加え、混合物を22℃で5分間撹拌し、EtOAc(10mL)及びEt3N(0.11mL、0.81mmol)中のピペラジン(0.140g、1.63mmol)の溶液に滴加した。得られた混合物を22℃で12時間撹拌した。沈殿物を濾別し、溶媒を真空中で除去し、カラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH(9:1)+0.1%のEt3N)により精製して、ピペラジンニトロキシド2(0.099g、0.39mmol、72%)を黄色固体として得た。
【0176】
TLC(シリカゲル、CH
2Cl
2:MeOH(9:1))、Rf(ピペラジンニトロキシド5)=0.1
ESI-HRMS:C
13H
24N
3O
2[M+Na
+]についての計算値277.1761、実測値277.1760(Δm=0.0001、誤差=0.4ppm)。
EPR(ClCH
2CH
2Cl、1.0mM):
図4に示されるEPRスペクトル
【0177】
PyrroTriPol-H-OMeの合成
【化62】
【0178】
DMF(2.0mL)中のトリチル3(doi: 10.1055/s-0035-1561299)(0.030g、0.029mmol)の溶液に、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(0.020g、0.044mmol)、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.006g、0.044mmol)、及びDIPEA(0.008mL、0.044mmol)を加え、得られた溶液を22℃で5分間撹拌した。ニトロキシド5(0.008g、0.032mmol)を溶液に加え、得られた反応混合物を22℃で12時間撹拌した。飽和NaHCO3水溶液(10mL)を加え、溶液をEtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を、Na2SO4を介して乾燥させ、溶媒を真空中で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc(6:4))により精製して、PyrroTriPol-H-OMe(0.032g、0.025mmol、86%の収率)を緑色の固体として得た。
【0179】
TLC(シリカゲル、CH
2Cl
2:MeOH(9:1))、Rf(PyrroTriPol-OMe)=0.4。
ESI-HRMS:C
55H
65N
3O
7S
12[M+Na
+]についての計算値1286.1363、実測値1286.1354(Δm=0.0009、誤差=0.7ppm)。
EPR(ClCH
2CH
2Cl、1.0mM):
図5aに示されるEPRスペクトル。
HPLC:
図5bに示されるHPLCクロマトグラム。
【0180】
【0181】
MeOH(2.0mL)中のPyrroTriPol-H-OMe(0.015g、0.012mmol)の溶液に、(0.003g、0.072mmol)及びH2O(0.1mL)を加えた。反応混合物を22℃で48時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残留物をC18-HPLCにより精製して、PyrroTriPol-H(0.013g、0.010mmol、88%の収率)を緑色の固体として得た。
【0182】
ESI-HRMS:C
53H
60N
3O
7S
12[M+H
+]についての計算値1234.1085、実測値1234.1034(Δm=0.0051、誤差=4.1ppm)。
EPR(H
2O、1.0mM):
図6aに示されるEPRスペクトル。
HPLC:
図6bに示されるHPLCクロマトグラム。
【0183】
実施例3:
DiPyrroTriPol-OMeの合成
【化64】
【0184】
DMF(1.0mL)中のトリチル6(doi: 10.1055/s-0035-1561299)(0.010g、0.010mmol)の溶液に、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、すなわちBOP(0.013g、0.030mmol)、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール、すなわちHOBt(0.004g、0.030mmol)、及びDIPEA(0.011mL、0.060mmol)を加え、得られた溶液を22℃で5分間撹拌した。実施例1において合成したニトロキシド2(0.008g、0.030mmol)を加え、得られた溶液を22℃で12時間撹拌した。飽和NaHCO3(10mL)を加え、溶液をEtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を、Na2SO4を介して乾燥させ、溶媒を真空中で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc(3:7))により精製して、DiPyrroTriPol-OMe(0.013g、0.009mmol、88%の収率)を緑色の固体として得た。
【0185】
TLC(シリカゲル、石油エーテル:EtOAc(3:7))、Rf(DiPyrroTriPol-OMe)=0.4。
ESI-HRMS:C
67H
81N
6O
8S
12[M+Na
+]についての計算値1504.2657、実測値1504.2583(Δm=0.0074、誤差=4.9ppm)。
EPR(ClCH
2CH
2Cl、1.0mM):
図7aに示されるEPRスペクトル。
HPLC:
図7bに示されるHPLCクロマトグラム。
【0186】
実施例4:
TriPyrroTriPolの合成
【化65】
【0187】
DMF(1.0mL)中のフィンランドトリチル(doi: 10.1055/s-0035-1561299)(0.010g、0.010mmol)の溶液に、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、すなわちBOP(0.020g、0.045mmol)、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール、すなわちHOBt(0.006g、0.045mmol)、及びDIPEA(0.016mL、0.090mmol)を加え、得られた溶液を22℃で5分間撹拌した。実施例1において合成したニトロキシド2(0.011g、0.045mmol)を加え、得られた反応溶液を22℃で12時間撹拌した。飽和NaHCO3(10mL)を加え、溶液をEtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4を介して乾燥させ、溶媒を真空中で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc(6:4))により精製して、TriPyrroTriPol(0.013g、0.008mmol、76%の収率)を緑色の固体として得た。
【0188】
TLC(シリカゲル、EtOAc)、Rf(TriPyrroTriPol)=0.4。
ESI-HRMS:C
79H
99N
9O
9S
12Na[M+Na
+]についての計算値1726.4112、実測値1726.4120(Δm=0.0008、誤差=0.5ppm)。
EPR(ClCH
2CH
2Cl、1.0mM):
図8aに示されるEPRスペクトル。
HPLC:
図8bに示されるHPLCクロマトグラム。
【0189】
実施例5:
DiPyrroTriPol-H-OMeの合成
【化66】
【0190】
DMF(1.0mL)中のトリチル6(doi: 10.1055/s-0035-1561299)(0.010g、0.010mmol)の溶液に、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、すなわちBOP(0.013g、0.030mmol)、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール、すなわちHOBt(0.004g、0.030mmol)、及びDIPEA(0.011mL、0.060mmol)を加え、得られた溶液を22℃で5分間撹拌した。実施例2において調製したニトロキシド5(0.008g、0.030mmol)を加え、得られた反応溶液を22℃で12時間撹拌した。飽和NaHCO3(10mL)を加え、溶液をEtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を、Na2SO4を介して乾燥させ、溶媒を真空中で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc(3:7))により精製して、DiPyrroTriPol-H-OMe(0.008g、0.005mmol、54%の収率)を緑色の固体として得た。
【0191】
TLC(シリカゲル、石油エーテル:EtOAc(3:7))、Rf(DiPyrroTriPol-H-OMe)=0.4。
ESI-HRMS:C
67H
85N
6O
8S
12[M+Na
+]についての計算値1508.2970、実測値1508.2953(Δm=0.0017、誤差=1.1ppm)。
EPR(ClCH
2CH
2Cl、1.0mM):
図9aに示されるEPRスペクトル。
HPLC:
図9bに示されるHPLCクロマトグラム。
【0192】
実施例6:
TriPyrroTriPol-Hの合成
【化67】
【0193】
DMF(1.0mL)中のフィンランドトリチル(doi: 10.1055/s-0035-1561299)(0.010g、0.010mmol)の溶液に、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、すなわちBOP(0.020g、0.045mmol)、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール、すなわちHOBt(0.006g、0.045mmol)、及びDIPEA(0.016mL、0.090mmol)を加え、得られた溶液を22℃で5分間撹拌した。実施例2において調製したニトロキシド5(0.011g、0.045mmol)を加え、得られた反応溶液を22℃で12時間撹拌した。飽和NaHCO3(10mL)を加え、溶液をEtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を、Na2SO4を介して乾燥させ、溶媒を真空中で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc)により精製して、TriPyrroTriPol-H(0.010g、0.006mmol、58%の収率)を緑色の固体として得た。
【0194】
TLC(シリカゲル、EtOAc)、Rf(TriPyrroTriPol-H)=0.4。
ESI-HRMS:C
79H
105N
9O
9S
12[M+Na
+]についての計算値1732.4582、実測値1732.4589(Δm=0.0007、誤差=0.4ppm)。
EPR(ClCH
2CH
2Cl、1.0mM):
図10aに示されるEPRスペクトル。
HPLC:
図10bに示されるHPLCクロマトグラム。
【0195】
上記で合成した化合物でのようにアミド結合を介してトリチル部分及びニトロキシド部分に連結されたピペラジンブリッジは、不対電子間の相互作用(双極子カップリング及び交換相互作用と呼ばれる)を増加させ、化合物中の2つの常磁性中心(トリチル及びニトロキシド)の相対的な配向を拘束する。
【0196】
ピペラジンブリッジ/リンカーは低下した可撓性を有し、到達可能な化合物の立体構造の数を制限する。これは、典型的には、双極子カップリング及びJ-交換相互作用のより狭い分布と言い換えられる。さらに、このような剛直なブリッジ/リンカーは、典型的には最適ではないDNP移行をもたらす短すぎるニトロキシド-トリチルの距離(TEMTriPol-Iの場合とは異なる)を有する立体構造の存在も妨げる。
【0197】
上記で合成された化合物は試験に成功した。技術水準の偏極剤と比較して非常に良好な偏極の移行効率をもたらすことに加えて、これらの化合物は、高速の回転周波数の様式(すなわち、10kHzよりも大きなMAS周波数)において、かつ高磁場(すなわち、約5T~21T)で依然として優れた性能を発揮する。さらに、新しく開発されたトリチル-ニトロキシドは、様々な溶媒に対して持続性があり効率的なトリチル-ニトロキシドビラジカルをより大量に調製するのに合成及び精製が容易である。
【国際調査報告】