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特表2024-533356抗HER3抗体薬物複合体及びその組成物並びに用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】抗HER3抗体薬物複合体及びその組成物並びに用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240905BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240905BHJP
   C07D 493/22 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K31/357
A61K39/395 L
C07D493/22
A61P35/00
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515317
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2022119214
(87)【国際公開番号】W WO2023041006
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111085308.7
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ティアンシ
(72)【発明者】
【氏名】シュ、トンジェ
(72)【発明者】
【氏名】タン、シャオチー
(72)【発明者】
【氏名】フェン、ウェイウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン、ゼンピン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076EE59
4C085AA26
4C085BB11
4C085CC23
4C085DD52
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA16
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
4H045AA11
4H045BA51
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA50
(57)【要約】
連結された抗体部分と、中間リンカー部分と細胞傷害性薬物部分とを含む抗HER3抗体薬物複合体を提供する。提供される抗体薬物複合体には、優れた抗腫瘍活性又は/及び良い安全性が実現されている。提供される抗体薬物複合体は、がんの治療に用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Ab-(L-U)を有する(式中、Abは抗体部分を表し、Lはリンカー部分を表し、Uは細胞傷害性薬物部分を表し、nは1~10の整数又は小数から選ばれる)抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物であって、
前記抗体薬物複合体は、次の式IIaで示される構造を含むことを特徴とする、抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【化1】
(式中、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
又は、
とRとそれらに連結された原子が、任意に置換された5~8員のヘテロシクリル基を形成する。)
【請求項2】
前記抗体薬物複合体は次の式IIIaで示される構造を含む、請求項1に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【化2】
【請求項3】
前記抗体薬物複合体は次の式IVで示される構造である、請求項1又は2に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【化3】
(式中、
Abは抗体部分を表し、
nは1~10の整数又は小数から選ばれる。)
【請求項4】
及びRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基から選ばれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項5】
前記抗体薬物複合体は次の式IIIa-1で示される構造を含む、請求項1又は2に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【化4】
【請求項6】
前記抗体薬物複合体は次の式IV-1で示される構造である、請求項3に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【化5】
【請求項7】
前記nは、2~4.8、2.6~4.8、3.5~4.8、4~4.8、2~4.5、2.6~4.5、3.5~4.5、4~4.5、3.5~4.2、3.5~4、4~4.2、7~8、7~7.9、7~7.6、7~7.5、7.1~8、7.1~7.9、7.1~7.6、7.5~8、7.6~8、又は7.6~7.9である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項8】
前記nは、約2.6、約4、約4.2、約4.8、約7、約7.1、約7.5、約7.6、約7.9又は約8である、請求項7に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項9】
前記Abは抗HER3抗体又はその抗原結合断片である、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項10】
前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1で示されるアミノ酸配列のHCDR1を含み、配列番号2で示されるアミノ酸配列のHCDR2を含み、配列番号3で示されるアミノ酸配列のHCDR3を含み、配列番号4で示されるアミノ酸配列のLCDR1を含み、配列番号5で示されるアミノ酸配列のLCDR2を含み、そして配列番号6で示されるアミノ酸配列のLCDR3を含む、請求項9に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項11】
前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は配列番号7で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号8で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、又は前記重鎖可変領域は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項12】
前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖は配列番号9で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖は配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項10又は11に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項13】
前記抗HER3抗体はパトリツマブである、請求項9に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項14】
前記抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物は、下記の特性、即ち、
(a)HER3と結合する特性
(b)HER3とリガンドとの結合を遮断する特性
(c)HER3を発現する細胞でエンドサイトーシスを示す特性
(d)HER3を発現する腫瘍細胞に対して殺傷活性がある特性
(e)バイスタンダー効果がある特性
の1つ又は複数の組み合わせを示す、請求項9~13のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を含み、任意に、薬学的に許容される担体をさらに含む、医薬組成物。
【請求項16】
がんを治療するための薬物の製造における請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物又は請求項15に記載の医薬組成物の用途であって、好ましくは、前記がんはHER3陽性がんであり、好ましくは、前記がんは胆道がん、がん肉腫、食道がん、食道胃接合部がん、乳がん、胃がん、膵臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、腎がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮がん、黒色腫、咽頭がん、口腔がん、皮膚がん、肺がん、多形膠芽腫、膠芽腫、尿路上皮がん、前立腺がん、膀胱がん、消化管間質腫瘍、扁平上皮がん、腹膜がん、肝がん、唾液腺がん、外陰がん、甲状腺がん、精巣がん、肛門がん又は陰茎がんである、用途。
【請求項17】
必要とする患者に治療有効量の、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物又は請求項15に記載の医薬組成物を投与することを含むがんの治療方法であって、好ましくは、前記がんはHER3陽性がんであり、好ましくは、前記がんは胆道がん、がん肉腫、食道がん、食道胃接合部がん、乳がん、胃がん、膵臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、腎がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮がん、黒色腫、咽頭がん、口腔がん、皮膚がん、肺がん、多形膠芽腫、膠芽腫、尿路上皮がん、前立腺がん、膀胱がん、消化管間質腫瘍、扁平上皮がん、腹膜がん、肝がん、唾液腺がん、外陰がん、甲状腺がん、精巣がん、肛門がん又は陰茎がんである、方法。
【請求項18】
腫瘍細胞を前記抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物、又は前記医薬組成物と接触させることにより、腫瘍細胞を殺傷し又は腫瘍細胞の成長を抑制することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
式IIIで示される構造を有するリンカー-薬物中間体化合物である。
【化6】
(式中、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
又は、RとRとそれらに連結された原子が、任意に置換された5~8員のヘテロシクリル基を形成する。)
【請求項20】
及びRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基から選ばれることを特徴とする請求項19に記載のリンカー-薬物中間体化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結された抗体部分と、中間リンカー部分と細胞傷害性薬物部分とを含む抗体薬物複合体に関する。本発明は、また、がんを治療するための薬物の製造における前記抗体薬物複合体の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
HER3(human epidermal growth factor receptor 3、ヒト上皮成長因子受容体3)は、ErbB-3(Receptor tyrosine-protein kinase erbB-3、受容体型チロシンタンパク質キナーゼerbB-3)とも呼ばれ、EGFR(ErbB-1)、HER2/c-neu(ErbB-2)、HER3(ErbB-3)及びHER4(ErbB-4)を含むヒト上皮成長因子受容体(HER/EGFR/ERBB)ファミリーのメンバーである。HER3は、細胞外リガンド結合ドメイン(ECD)、ECD内の二量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、タンパク質チロシンキナーゼドメイン(TKD)及びC末端リン酸化ドメインを有するが、細胞内チロシンキナーゼ活性を欠いている。
【0003】
HER3のリガンドであるニューレグリン(neuregulin、NRG、別称heregulin、ヘレグリン、HRG)は、HER3の細胞外ドメインと結合し、他のHERファミリーメンバーとの二量体化、及びその細胞内ドメインのリン酸転移作用を促進することにより、受容体によって媒介されるシグナル伝達経路を活性化する。HER3と他のHERファミリーメンバーの二量体形成はHER3のシグナル伝達能力を拡張し、シグナルを多様化させる手段としてだけでなく、シグナルを増幅させる手段としても用いられる。例えば、HER2/HER3ヘテロ二量体は、HERファミリーメンバーの中で最も重要な有系分裂促進シグナルの1つを誘導する。HER3は、乳がん、卵巣がん、結腸がん、胃がん、肺がん、皮膚がん、膵臓がんを含む様々ながんで一般的に発現される。
【0004】
抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)は、治療用抗体の高い特異性と細胞傷害性薬物の高い殺傷活性を併せ持つ薬物であり、そのうち、治療用抗体部分と細胞傷害性薬物部分は中間のリンカー部分によって連結される。現在、世界で少なくとも10種のADC薬が販売されており、そのうち、ブレンツキシマブ ベドチン(brentuximab vedotin)、ポラツズマブ ベドチン(polatuzumab vedotin)及びエンホルツマブ ベドチン(enfortumab vedotin)の抗体部分は、それぞれ、CD30、CD79b及びネクチン-4(Nectin-4)を標的とし、トラスツズマブ エムタンシン(Trastuzumab emtansine)及びトラスツズマブ デルクステカン(Trastuzumab deruxtecan)の抗体部分は、HER2を標的とし、ゲムツズマブ オゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin)及びイノツズマブ オゾガマイシン(inotuzumab ozogamicin)の抗体部分は、それぞれ、CD33、CD22を標的とし、サシツズマブ ゴビテカン(sacituzumab govitecan)の抗体部分は、TROP2を標的とし、新たに承認されたベランタマブ マホドチン(belantamab mafodotin)及びロンカスツキシマブ テシリン(loncastuximab tesirine)は、それぞれ、BCMA、CD19を標的とする。細胞傷害性薬物部分であるブレンツキシマブ ベドチン(brentuximab vedotin)、ポラツズマブ ベドチン(polatuzumab vedotin)、エンホルツマブ ベドチン(enfortumab vedotin)及びベランタマブ マホドチン(belantamab mafodotin)にはいずれも微小管に作用するアウリスタチン類(auristatins)が用いられ、トラスツズマブ エムタンシン(Trastuzumab emtansine)には微小管に作用するメイタンシノイド類(maytansinoid)毒素分子が用いられ、ゲムツズマブ オゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin)及びイノツズマブ オゾガマイシン(inotuzumab ozogamicin)にはDNAに作用するカリケアミシン類(calicheamicins)毒素分子が用いられ、トラスツズマブ デルクステカン(Trastuzumab deruxtecan)及びサシツズマブ ゴビテカン(sacituzumab govitecan)にはいずれもカンプトテシン類毒素分子が用いられ、ロンカスツキシマブ テシリン(loncastuximab tesirine)の方にはDNAに作用するPBD二量体が用いられる。中間リンカー部分であるトラスツズマブ エムタンシン(Trastuzumab emtansine)、ベランタマブ マホドチン(belantamab mafodotin)には非切断可能なリンカーが用いられ、他の8つの分子にはいずれも切断可能なリンカーが用いられる。
【0005】
エリブリン(Eribulin、次の式I)は、海洋天然物ハリコンドリンB(halichondrin B)の合成類似体であり、微小管の成長期を抑制することができ、チューブリンに基づく抗有糸分裂メカニズムによって機能し、G2/M細胞周期の停止、有糸分裂で紡錘体の破壊を起こし、最終的に長期の有糸分裂の停止後にアポトーシスが起こる。現在、エリブリンは、転移性乳がん及び軟部組織肉腫の治療に承認されている。
【化1】
【0006】
ADC薬は細胞傷害性低分子の高い効果及び特定の腫瘍細胞に対する抗体の高い選択性の2つの利点を組み合わせている。現在、より多くの適応症に対する効果的で低毒性のADC薬を開発することがなおも必要である。
【発明の概要】
【0007】
抗体薬物複合体(ADC):
本発明は、抗体薬物複合体を提供し、ただし、抗体又はその抗原結合断片は細胞傷害性薬物エリブリン又はその誘導体と複合され、好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片はHER3と特異的に結合する。
【0008】
本発明の一態様では、一般式Ab-(L-U)を有する抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を提供し、式中、Abは抗体部分を表し、Lはリンカー部分を表し、Uは細胞傷害性薬物部分を表し、nは1~10の整数又は小数から選ばれる。いくつかの実施形態では、抗体部分Abとリンカー部分は特定の官能基によって連結され、当該抗体部分は抗原と特異的に結合できる。
【0009】
本発明の一態様では、一般式がAb-(L-U)である抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を提供し、ただし、細胞傷害性薬物部分Uと抗体部分Abはリンカー部分Lによって複合される。いくつかの具体的な実施形態では、本発明によって提供される抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物において、各細胞傷害性薬物部分Uと抗体部分Abは1つのリンカー部分Lによって複合される。本発明のリンカー部分Lは当分野で知られているいずれかの方法により抗体部分と連結されてもよく、好ましくは、リンカー部分と抗体部分はメルカプト基及び/又はアミノ基によって連結される。いくつかのより好ましい実施形態では、本発明のリンカー部分はメルカプト基によって抗体部分と連結される。
【0010】
本発明の一態様では、一般式がAb-(L-U)である抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を提供し、ただし、細胞傷害性薬物部分Uと抗体部分Abはリンカー部分Lによって複合され、前記リンカー部分は切断可能なリンカー又は非切断可能なリンカーであってもよい。いくつかの実施形態では、本発明のリンカー部分は切断可能なリンカーであり、例えば、低pH分解型(ヒドラゾン結合、カーボネート結合などを含む)、プロテアーゼ分解型(ペプチド結合を含む)又は高グルタチオン濃度分解型(ジスルフィド結合を含む)などであってもよい。切断可能なリンカーは標的細胞内で切断することができ、これによって細胞傷害性薬物が放出される。また、いくつかの実施形態では、本発明のリンカー部分は非切断可能なリンカーであり、例えば、マレイミドカプロイル基などであってもよい。
【0011】
本発明の一態様では、一般式がAb-(L-U)である抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を提供し、ただし、抗体部分Abは1つ又は複数の細胞傷害性薬物部分Uと複合され、細胞傷害性薬物は、例えば、アルカロイド類、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、アルキル化剤類、白金類などから選ばれてもよく、細胞傷害性薬物として好ましいのは微小管阻害剤類細胞傷害性薬物(メイタンシノイド類、アウリスタチン類、エリブリン類などを含む)又はDNAに作用する細胞傷害性薬物(カリケアミシン類、デュオカルマイシン(duocarmycin)類、PBD(pyrrolobenzodiazepine、ピロロベンゾジアゼピン)類、トポイソメラーゼI阻害剤類などを含む)である。
【0012】
いくつかの具体的な実施形態では、本発明によって提供される一般式がAb-(L-U)である抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物の細胞傷害性薬物部分Uは微小管阻害剤である。
【0013】
いくつかの具体的な実施形態では、本発明によって提供される一般式がAb-(L-U)である抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物の細胞傷害性薬物部分Uはエリブリン又はその誘導体である。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記細胞傷害性薬物部分とリンカー部分は官能基によって連結され、腫瘍細胞内では、細胞傷害性薬物分子が遊離して、抗腫瘍効果を発揮する。
【0015】
本発明の一態様では、一般式Ab-(L-U)を有する抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を提供し、式中、Abは抗体部分を表し、Lはリンカー部分を表し、Uは細胞傷害性薬物部分を表し、nは1~10の整数又は小数から選ばれ、ただし、前記抗体薬物複合体は、次の式IIaで示される構造を含む。
【化2】
式中、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
又は、
とRとそれらに連結された原子が、任意に置換された5~8員のヘテロシクリル基を形成する。いくつかの実施形態では、前記R及びRは、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基から独立的に選ばれる。いくつかの実施形態では、前記R及びRは水素原子である。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記抗体薬物複合体は、次の式IIa-1に記載の構造を含む。
【化3】
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、一般式Ab-(L-U)を有する抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を提供し、式中、Abは抗体部分を表し、Lはリンカー部分を表し、Uは細胞傷害性薬物部分を表し、nは1~10の整数又は小数から選ばれ、ただし、前記-Uは式IIaで示される構造であり、
式中、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
又は、
とRとそれらに連結された原子が、任意に置換された5~8員のヘテロシクリル基を形成する。いくつかの実施形態では、前記R及びRは、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基から独立的に選ばれる。いくつかの実施形態では、前記R及びRは水素原子である。いくつかの実施形態では、前記-Uは式IIa-1で示される構造である。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明によって提供される一般式がAb-(L-U)である抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物は、次の式IIIaで示される構造を含む。
【化4】
式中、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
又は、
とRとそれらに連結された原子が、任意に置換された5~8員のヘテロシクリル基を形成する。いくつかの実施形態では、前記R及びRは、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基から独立的に選ばれる。いくつかの実施形態では、前記R及びRは水素原子である。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記抗体薬物複合体は、次の式IIIa-1に記載の構造を含む。
【化5】
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明によって提供される一般式がAb-(L-U)である抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物は、次の式IVで示される構造であり、
【化6】
式中、
Abは抗体部分を表し、
nは1~10の整数又は小数から選ばれ、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
又は、
とRとそれらに連結された原子が、任意に置換された5~8員のヘテロシクリル基を形成する。いくつかの実施形態では、前記R及びRは、それぞれ、水素原子又はC1~5アルキル基から独立的に選ばれる(好ましくは、C1~4アルキル基であり、例えば、C1~3アルキル基である)。いくつかの実施形態では、前記R及びRは、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基から独立的に選ばれる。一実施形態では、前記R及びRは水素原子である。
【0021】
本発明の具体的な一実施形態では、次の式IV-1で示される抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を提供し、
【化7】
式中、
Abは抗体部分であり、
nは1~10の整数又は小数から選ばれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、上記の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物において、前記nは、2~4.8、2.6~4.8、3.5~4.8、4~4.8、2~4.5、2.6~4.5、3.5~4.5、4~4.5、3.5~4.2、3.5~4、4~4.2、7~8、7~7.9、7~7.6、7~7.5、7.1~8、7.1~7.9、7.1~7.6、7.5~8、7.6~8、又は7.6~7.9である。いくつかの実施形態では、前記nは、約2.6、約4、約4.2、約4.8、約7、約7.1、約7.5、約7.6、約7.9又は約8である。
【0023】
本発明の抗体薬物複合体(ADC)で抗体部分と複合される細胞傷害性薬物の数は変わってもよく、これにより、本発明によって提供される抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物が不均一なものであってもよく、即ち、本発明の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物は、異なる数の細胞傷害性薬物が複合された抗体又はその抗原結合断片を含み、例えば、1分子の抗体又はその抗原結合断片に0分子(即ち、細胞傷害性薬物を含まない)、1分子、2分子、3分子、4分子、5分子、6分子、7分子、8分子又はより多い分子の細胞傷害性薬物が複合されている。
【0024】
上記の異なる数の細胞傷害性薬物が複合された抗体又はその抗原結合断片の比率を制御することにより、異なる薬物抗体比(DAR)を有する抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を得ることができる。本明細書では、「DAR」と「n」は入れ替えて使用されてもよい。なお、前記DAR又はnは、ADCにおける細胞傷害性薬物と抗体又はその抗原結合断片の平均モル比であり、即ち、抗体又はその抗原結合断片の1分子あたりに複合されている細胞傷害性薬物の数である。例えば、「DARは約4である」又は「nは約4である」とは、1分子あたりに異なる数の細胞傷害性薬物が複合されている抗体又はその抗原結合断片を含む(例えば、各抗体又はその抗原結合断片に0、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又は8つの細胞傷害性薬物が複合されている)不均一な混合物であって、ただし細胞傷害性薬物と抗体又はその抗原結合断片の平均モル比は約4である抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を指す。同様に、「DARは約8である」又は「nは約8である」とは、当該ADCで細胞傷害性薬物と抗体又はその抗原結合断片の平均モル比は約8であることを指す。
【0025】
一態様では、本発明によって提供される一般式Ab-(L-U)を有する抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物において、Ab(抗体部分)は腫瘍抗原と特異的に結合することができ、前記腫瘍抗原は、当分野で知られているいかなる腫瘍治療標的から選ばれてもよく、前記標的の非限定的な例は、HER2、HER3、EGFR、CD20、CD30、CD33、CD47、CD79b、VEGF、VEGFR、MET、RET、PD-1又はPD-L1を含む。本発明のいくつかの実施形態では、式IV-1で示される抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を提供し、Ab(抗体部分)は腫瘍抗原と特異的に結合することができ、前記腫瘍抗原は、当分野で知られているいかなる腫瘍治療標的から選ばれてもよく、前記標的の非限定的な例は、HER2、HER3、EGFR、CD20、CD30、CD33、CD47、CD79b、VEGF、VEGFR、MET、RET、PD-1又はPD-L1を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物において、Abは抗HER3抗体又はその抗原結合断片である。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記Abは抗HER3抗体又はその抗原結合断片であり、前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の重鎖CDR(HCDR)1を含み、配列番号2で示されるアミノ酸配列のHCDR2を含み、配列番号3で示されるアミノ酸配列のHCDR3を含み、配列番号4で示されるアミノ酸配列の軽鎖CDR(LCDR)1を含み、配列番号5で示されるアミノ酸配列のLCDR2を含み、そして配列番号6で示されるアミノ酸配列のLCDR3を含む。
【0028】
前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片のCDRのアミノ酸配列は、次の表S1で提供される。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明によって提供される一般式がAb-(L-U)である抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物の抗体部分は、次の表S1で示される配列を有するパトリツマブ(Patritumab)である。
【表1】
【0030】
いくつかの実施形態では、前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、配列番号7で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号8で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7で示され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号8で示される。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は、免疫グロブリンの定常領域、又は前記定常領域の断片、類似体、バリアント若しくは誘導体をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記定常領域は、ヒト免疫グロブリン重鎖、例えば、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4又は他のクラスの免疫グロブリンの重鎖、好ましくは、IgG1の重鎖に由来する。いくつかの実施形態では、前記定常領域は、本明細書に記載のいずれかの修飾、例えば、アミノ酸の挿入、欠失、置換又は化学修飾を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記定常領域は、エフェクター機能を変更する変異を含む。いくつかの実施形態では、前記定常領域のいずれかのアミノ酸残基がいずれかのアロタイプ(allotype)のアミノ酸残基によって置換されてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖は、配列番号9で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖は、配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖は配列番号9で示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖は配列番号10で示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片の重鎖のアミノ酸配列は配列番号9で示され、軽鎖のアミノ酸配列は配列番号10で示される。
QVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCAVYGGSFSGYYWSWIRQPPGKGLEWIGEINHSGSTNYNPSLKSRVTISVETSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARDKWTWYFDLWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号9)
DIEMTQSPDSLAVSLGERATINCRSSQSVLYSSSNRNYLAWYQQNPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号10)
【0033】
いくつかの実施形態では、前記抗HER3抗体は、次の抗体、即ち、パトリツマブ(Patritumab)、セリバンツマブ(Seribantumab)、エルゲムツマブ(Elgemtumab)、デュリゴツズマブ(Duligotuzumab)、CDX-3379、ルムレツズマブ(Lumretuzumab)又はGSK2849330からなる群から選ばれる。いくつかの具体的な実施形態では、前記抗HER3抗体はパトリツマブである。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、単離されたCDR領域、scFv、ナノボディ又は融合タンパク質から選ばれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物は、一般式がAb-(L-U)であり、式中、Abは修飾されてもよく、例えば、1つ又は複数のアミノ酸配列の変更、添加又は削除を含む。本明細書では、修飾後のAbにはその対応する抗原と特異的に結合する活性が保たれている。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明によって提供される抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物は、次に示す構造である。
【化8】
いくつかのこのような実施形態では、前記nは、2~4.8、2.6~4.8、3.5~4.8、4~4.8、2~4.5、2.6~4.5、3.5~4.5、4~4.5、3.5~4.2、3.5~4、4~4.2、7~8、7~7.9、7~7.6、7~7.5、7.1~8、7.1~7.9、7.1~7.6、7.5~8、7.6~8、又は7.6~7.9である。いくつかの具体的な実施形態では、前記nは、約2.6、約4、約4.2、約4.8、約7、約7.1、約7.5、約7.6、約7.9又は約8である。
【0037】
一態様では、本発明によって提供される一般式Ab-(L-U)を有する抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物は、下記の特性、即ち、
(a)HER3と結合すること
(b)HER3とリガンドとの結合を遮断すること
(c)HER3を発現する細胞でエンドサイトーシスを示すこと
(d)HER3を発現する腫瘍細胞に殺傷活性があること
(e)バイスタンダー効果があること
の1つ又は複数の組み合わせを示す。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物はヒトHER3と結合する。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明によって提供される抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物は、異なるHER3発現量の細胞で強いエンドサイトーシスを示しており、エンドサイトーシスの時間の増加につれてエンドサイトーシスされたADCの量を継続的に蓄積することができる。
【0040】
医薬組成物:
本発明の一態様では、本発明の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。本発明のいくつかの実施形態では、本発明による抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。薬学的に許容される担体は、例えば、賦形剤、希釈剤、カプセル化材料、充填剤、緩衝剤又は他の試薬を含む。
【0041】
用途:
本発明の一態様では、がんを治療するための薬物の製造における本発明の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物の用途を提供する。本発明の一態様では、がんを治療するための薬物の製造における本発明の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物の用途を提供する。本発明の一態様では、がんを治療するための薬物の製造における本発明の医薬組成物の用途を提供する。
【0042】
本発明の一態様では、がんを治療するための抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物、又は上記の医薬組成物を提供する。
【0043】
本発明の一態様では、がんの治療方法を提供し、当該方法は、必要とする患者に治療有効量の、本発明の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物又は本発明の抗体薬物複合体若しくは薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を投与することを含む。本発明の一態様では、がんの治療方法を提供し、当該方法は、必要とする患者に治療有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、腫瘍細胞を前記抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物、又は前記医薬組成物と接触させることにより、腫瘍細胞を殺傷し又は腫瘍細胞の成長を抑制することを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、患者に治療有効量の本発明の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物、又は本発明の医薬組成物を投与することで、腫瘍細胞を殺傷し又は腫瘍細胞の成長を抑制することができる。
【0045】
本発明の一態様では、本願の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物のがんを治療する用途を提供する。本発明の一態様では、本発明の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物と、薬学的に許容される担体とを含む本願の医薬組成物のがんを治療する用途を提供する。本発明の一態様では、また、本発明の医薬組成物のがんを治療する用途を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、上記の方法又は用途において、前記患者は、HER2を標的とする薬物での治療に適さない。いくつかの実施形態では、上記の方法又は用途において、前記患者はHER2を標的とする薬物に耐性である。
【0047】
いくつかの実施形態では、上記の方法又は用途において、前記がんはHER3陽性がんである。いくつかの実施形態では、本発明の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物は、HER3タンパク質を発現するがんの治療に用いることができる。いくつかの実施形態では、患者に治療有効量の本発明の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物、又は本発明の医薬組成物を投与することで、HER3を発現する腫瘍細胞を殺傷し又はHER3を発現する腫瘍細胞の成長を抑制することができる。がんの例は、胆道がん、がん肉腫、食道がん、食道胃接合部がん、乳がん、胃がん、膵臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、腎がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮がん、黒色腫、咽頭がん、口腔がん、皮膚がん、肺がん、多形膠芽腫、膠芽腫、尿路上皮がん、前立腺がん、膀胱がん、消化管間質腫瘍、扁平上皮がん、腹膜がん、肝がん、唾液腺がん、外陰がん、甲状腺がん、精巣がん、肛門がん又は陰茎がんを含み、ただしそれらに限定されない。
【0048】
リンカー-薬物中間体化合物:
本発明のいくつかの態様では、次の式IIIで示される構造のリンカー-薬物中間体化合物を提供する。
【化9】
式中、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
又は、RとRとそれらに連結された原子が、任意に置換された5~8員のヘテロシクリル基を形成する。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記式IIIで示される構造のリンカー-薬物中間体化合物において、式中、R及びRは、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基から独立的に選ばれる。
【0050】
本発明の具体的な一実施形態では、次の式III-1で示される構造のリンカー-薬物中間体化合物を提供する。
【化10】
【発明の効果】
【0051】
本発明で用いるリンカー構造は、抗腫瘍化合物エリブリン又はその誘導体と抗体又はその抗原結合断片を連結させ、提供される抗体薬物複合体には優れた抗腫瘍効果及び/又は安全性が実現されている。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体の抗腫瘍効果及び/又は安全性はエリブリンより優れている。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体の抗腫瘍効果及び/又は安全性は第一三共株式会社の抗HER3抗体薬物複合体U3-1402(Patritumab deruxtecan、パトリツマブ デルクステカン)より優れている。いくつかの実施形態では、提供される抗HER3抗体薬物複合体は腫瘍細胞に対する良好な殺傷活性を示しており、様々な腫瘍細胞及び/又は異なるHER3発現レベル(高及び/又は中等度及び/又は低)の細胞に良好な殺傷活性を示している。いくつかの実施形態では、提供される抗HER3抗体薬物複合体はトラスツズマブ耐性腫瘍細胞に良好な殺傷活性を示している。いくつかの実施形態では、提供される抗HER3抗体薬物複合体は優れた安全性を有する。いくつかの実施形態では、提供される抗体薬物複合体、例えば、抗HER3抗体薬物複合体は凝集しにくい。いくつかの試験では、本発明のリンカー構造を用いて抗腫瘍化合物エリブリン又はその誘導体と抗体又はその抗原結合断片を連結させるのは抗体薬物複合体の抗凝集特性を向上できるということが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1A図1Aは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブの結合活性である。
図1B図1Bは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブの結合活性である。
図1C図1Cは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブの結合活性である。
図1D図1Dは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブの結合活性である。
図1E図1Eは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブの結合活性である。
図1F図1Fは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブの結合活性である。
図1G図1Gは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブの結合活性である。
図2A図2Aは、異なるHER3発現レベルの細胞における異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブのエンドサイトーシスである。
図2B図2Bは、異なるHER3発現レベルの細胞における異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブのエンドサイトーシスである。
図2C図2Cは、異なるHER3発現レベルの細胞における異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブのエンドサイトーシスである。
図2D図2Dは、異なるHER3発現レベルの細胞における異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブのエンドサイトーシスである。
図3A図3Aは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、及びパトリツマブ-DDDXd-D8の細胞殺傷率である。
図3B図3Bは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、及びパトリツマブ-DDDXd-D8の細胞殺傷率である。
図3C図3Cは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、及びパトリツマブ-DDDXd-D8の細胞殺傷率である。
図3D図3Dは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、及びパトリツマブ-DDDXd-D8の細胞殺傷率である。
図3E図3Eは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、及びパトリツマブ-DDDXd-D8の細胞殺傷率である。
図3F図3Fは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、及びパトリツマブ-DDDXd-D8の細胞殺傷率である。
図3G図3Gは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、及びパトリツマブ-DDDXd-D8の細胞殺傷率である。
図3H図3Hは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、及びパトリツマブ-DDDXd-D8の細胞殺傷率である。
図3I図3Iは、異なるHER3発現レベルの細胞に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、及びパトリツマブ-DDDXd-D8の細胞殺傷率である。
図4図4は、JIMT-1ヒト乳がん細胞のヌードマウス皮下移植腫瘍モデルでマウスの腫瘍体積の変化に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及び溶媒対照の影響である。
図5図5は、JIMT-1ヒト乳がん細胞のヌードマウス皮下移植腫瘍モデルでマウス体内の腫瘍の重量に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及び溶媒対照の影響である。
図6図6は、JIMT-1ヒト乳がん細胞のヌードマウス皮下移植腫瘍モデルでマウスの体重変化に対する異なるDAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体、パトリツマブ-DDDXd-D8及び溶媒対照の影響である。
【0053】
説明と定義:
特に説明がない限り、本願で使用する下記の用語は次の意味を有する。特定の用語は、特に定義されない場合に、確定しないもの又は不明瞭なものとしてではなく、本分野の通常の意味で理解する。本明細書で商品名が記載される場合は、対応する商品又はその有効成分を指す。
【0054】
用語「置換された」とは、特定の原子の原子価が正常であり、且つ置換後の化合物が安定的なものでさえあれば、当該原子上のいずれか1個又は複数の水素原子が置換基によって置換されることを指す。置換基が酸素置換(=O)である場合は、2個の水素原子が置換されることになる。酸素置換はアリール基に起こらない。
【0055】
用語「任意の」又は「任意に」とは、続いて記述される事項又は状況は生じてもよいし又は生じなくてもよいことを指し、当該記述には前記事項又は状況が生じる場合及び前記事項又は状況が生じない場合が含まれる。用語「任意に置換された」は、置換された又は置換されていないことを表し、例えば、エチル基が「任意に」ハロゲンによって置換されるとは、エチル基は置換されなくてもよいし(CHCH)、単置換されてもよいし(例えば、CHCHF)、多置換されてもよいし(例えば、CHFCHF、CHCHFなど)又は完全に置換されてもよい(例えば、CFCF)。当業者が理解できることだろうが、1つ又は複数の置換基を含む基には、空間的に存在し得ない且つ/又は合成できない置換又は置換形態が認められない。
【0056】
本明細書でCm~nとは、当該部分が所定の範囲のうちの整数又は小数の炭素原子を有することを指す。例えば、「C1~6」とは、対象基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子又は6個の炭素原子を有してもよいことを指す。
【0057】
化合物の組成又は構造で特定の変数(例えば、R)が1回以上出現した場合は、出現するたびに独立的に定義される。したがって、例えば、対象基が2つのRによって置換される場合に、各Rは独立的に選択される。
【0058】
特定の接続基の数が0であり、例えば、-(CH-である場合は、当該接続基が共有結合であることを表す。
【0059】
変数が共有結合から選ばれる場合は、それによって接続された2つの基が直接に接続されることを表す。例えば、A-L-ZでLが共有結合を表す場合に、当該構造は実際にA-Zであることを表す。
【0060】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0061】
用語「ヒドロキシ基」とは、-OH基を指す。
【0062】
用語「シアノ基」とは、-CN基を指す。
【0063】
用語「メルカプト基」とは、-SHを指す。
【0064】
用語「アミノ基」とは、-NH基を指す。
【0065】
用語「ニトロ基」とは、-NO基を指す。
【0066】
用語「アルキル基」とは、一般式がC2n+1である炭化水素基を指す。当該アルキル基は、直鎖でもよいし分岐鎖でもよい。例えば、用語「C1~6アルキル基」とは、1~6個の炭素原子を含むアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基など)を指す。同様に、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルスルホニル基及びアルキルチオ基のアルキル基部分(即ちアルキル基)には上記と同じ定義が適用される。
【0067】
用語「アルコキシ基」とは、-O-アルキル基を指す。
【0068】
用語「アルキルアミノ基」とは、-NH-アルキル基を指す。
【0069】
用語「ジアルキルアミノ基」とは、-N(アルキル)基を指す。
【0070】
用語「アルキルスルホニル基」とは、-SO-アルキル基を指す。
【0071】
用語「アルキルチオ基」とは、-S-アルキル基を指す。
【0072】
用語「アルケニル基」とは、炭素原子及び水素原子からなる直鎖又は分岐鎖で少なくとも1つの二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルケニル基の非限定的な例は、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、イソブテニル基、1,3-ブタジエニル基を含み、ただしそれらに限定されない。
【0073】
用語「アルキニル基」とは、炭素原子及び水素原子からなる直鎖又は分岐鎖で少なくとも1つの三重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキニル基の非限定的な例は、エチニル基(-C≡CH)、1-プロピニル基(-C≡C-CH)、2-プロピニル基(-CH-C≡CH)、1,3-ジアセチレニル基(-C≡C-C≡CH)などを含み、ただしそれらに限定されない。
【0074】
用語「シクロアルキル基」とは、完全飽和で単環、架橋環又はスピロ環として存在し得る炭素環を指す。特に指定がない限り、当該炭素環は一般的に3~10員環である。シクロアルキル基の非限定的な例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基(ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基)、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、アダマンタニル基などを含み、ただしそれらに限定されない。
【0075】
用語「シクロアルケニル基」とは、非完全飽和で単環、架橋環又はスピロ環として存在し得る非芳香族炭素環を指す。特に指定がない限り、当該炭素環は一般的に5~8員環である。シクロアルケニル基の非限定的な例は、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタジエニル基などを含み、ただしそれらに限定されない。
【0076】
用語「ヘテロシクリル基」とは、完全飽和又は一部不飽和であり(ただし完全不飽和のヘテロアリール基ではない)且つ単環、架橋環又はスピロ環として存在し得る非芳香族環を指す。特に指定がない限り、当該複素環は一般的に硫黄、酸素及び/又は窒素から独立的に選ばれる1~3個(好ましくは1個又は2個)のヘテロ原子を含む3~7員環である。ヘテロシクリル基の非限定的な例は、オキシラニル基、テトラヒドロフリル基、ジヒドロフリル基、ピロリジニル基、N-メチルピロリジニル基、ジヒドロピロリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ピラゾリジニル基、4H-ピラニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、テトラヒドロチエニル基などを含み、ただしそれらに限定されない。
【0077】
用語「ヘテロシクロアルキル基」とは、完全飽和で且つ単環、架橋環又はスピロ環として存在し得る環状基を指す。特に指定がない限り、当該ヘテロシクロアルキル基は一般的に、硫黄、酸素及び/又は窒素から独立的に選ばれる1~3個(好ましくは1個又は2個)のヘテロ原子を含む3~7員環である。3員ヘテロシクロアルキル基の例は、オキシラニル基、チイラニル基、アジリジニル基を含み、ただしそれらに限定されず、4員ヘテロシクロアルキル基の非限定的な例は、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基を含み、ただしそれらに限定されず、5員ヘテロシクロアルキル基の例は、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、ピロリジニル基、イソオキサゾリジニル基、オキサゾリジニル基、イソチアゾリジニル基、チアゾリジニル基、イミダゾリジニル基、テトラヒドロピラゾリル基を含み、ただしそれらに限定されず、6員ヘテロシクロアルキル基の例は、ピペリジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、1,4-チオキサニル基、1,4-ジオキサニル基、チオモルホリニル基、1,3-ジチアニル基、1,4-ジチアニル基を含み、ただしそれらに限定されず、7員ヘテロシクロアルキル基の例は、アゼパニル基、オキセパニル基、チエパニル基を含み、ただしそれらに限定されない。好ましくは、5個又は6個の環原子を有する単環式ヘテロシクロアルキル基である。
【0078】
用語「アリール基」とは、共役のπ電子系を有する全炭素単環又は縮合多環の芳香族環状基を指す。例えば、アリール基は、6~20個の炭素原子、6~14個の炭素原子又は6~12個の炭素原子を有してもよい。アリール基の非限定的な例は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンなどを含み、ただしそれらに限定されない。
【0079】
用語「ヘテロアリール基」とは、N、O又はSから選ばれる少なくとも1個の環原子を含み、残りの環原子はCであり、且つ少なくとも1つの芳香環を有する単環式又は縮合多環式の環系を指す。好ましくは、ヘテロアリール基は4~8員環、特に5~8員環を1つ、又は6~14個、特に6~10個の環原子を含む複数の縮合環を有する。ヘテロアリール基の非限定的な例は、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、テトラゾリル基、トリアゾリル基、トリアジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、イソインドリル基などを含み、ただしそれらに限定されない。
【0080】
「誘導体」とは、母体化合物分子の原子又は原子団が他の原子又は原子団によって置換されて形成される化合物であり、母体化合物の誘導体と呼ばれる。
【0081】
本願の化合物及び中間体は、異なる互変異性体の形態で存在してもよく、そのような形態の全てが本願の範囲に含まれる。用語「互変異性体」又は「互変異性体形態」とは、低エネルギー障壁によって相互に変換できる、異なるエネルギーを持つ構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体とも呼ばれる)は、プロトン転移による相互変換、例えば、ケトン-エノール異性化、イミン-エナミン異性化を含む。プロトン互変異性体の具体例は、プロトンが2つの環上窒素原子の間で転移できるイミダゾール部分である。原子価互変異性体は、いくつかの結合電子の組み替えによる相互変換を含む。
【0082】
本願の化合物は、例えば、1つ又は複数の立体異性体を有するなど、非対称のものであってもよい。特に説明がない限り、エナンチオマー、ジアステレオマーなど全ての立体異性体が含まれる。本願の非対称炭素原子を含む化合物は、光学的に純粋な形態又はラセミ体の形態として単離させることができる。光学的に純粋な形態は、ラセミ混合物から分割してもよいし、又は不斉原料若しくは不斉試薬を使用して合成してもよい。
【0083】
本発明で標識して合成される化合物のいずれかの原子は特に指定がない限り、当該原子のいずれかの安定的な同位体を表すことができる。特段の説明がない限り、構造のある位置がH、即ち水素(H-1)と定義される場合に、当該位置は天然に存在する同位体だけを含む。同様に、特段の説明がない限り、構造のある位置がD、即ち重水素(H-2)と定義される場合に、当該位置の同位体量は少なくとも天然に存在する同位体量(0.015%)より3340倍多く(即ち、少なくとも50.1%の重水素同位体を含む)、標識して合成される化合物の構造で、ある1つ又は複数の位置がD、即ち重水素(H-2)と定義される場合に、当該構造で示される化合物の含有量は少なくとも52.5%、少なくとも60%、少なくとも67.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%であってもよい。本発明で標識して合成される化合物の重水素化率とは、標識して合成されるものの同位体含有量と天然に存在する同位体量の比を指す。本発明で標識して合成される化合物の各対象重水素原子の重水素化率は少なくとも3500倍(52.5%)、少なくとも4000倍(60%)、少なくとも4500倍(67.5%)、少なくとも5000倍(75%)、少なくとも5500倍(82.5%)、少なくとも6000倍(90%)、少なくとも6333.3倍(95%)、少なくとも6466.7倍(97%)、少なくとも6566.7倍(98.5%)、少なくとも6600倍(99%)、少なくとも6633.3倍(99.5%)であってもよい。本発明では、同位体種(isotopologues)とは、化学構造的に同位体構成だけが異なる化合物を指す。本発明で標識して合成される化合物は同じ化学構造を有し、その分子の原子の同位体構成だけが異なる。したがって、本発明で標識して合成される特定の位置で重水素を含む化合物は、当該位置における水素同位体種をもわずかに含み、本発明で標識して合成される化合物のある位置における水素同位体種の量は、重水素化試薬(DO、D、NaBD、LiAlDなど)の重水素同位体の純度、重水素同位体導入の合成方法の有効性など多くの要因から決定される。しかし、そのようなある位置における水素同位体種の総量は49.9%より少ない。本発明で標識して合成される化合物のある位置における水素同位体種の総量は、47.5%、40%、32.5%、25%、17.5%、10%、5%、3%、1%又は0.5%より少ない。
【0084】
本発明では、重水素と指定されない各原子はその天然同位体の存在度で存在する。
【0085】
用語「バイスタンダー効果」(Bystander effect)は、本明細書で使用される場合に、切断可能な又は非切断可能なリンカーによって抗体又はその抗原結合断片に複合されている細胞傷害性薬物は、抗体又はその抗原結合断片から放出されると拡散して細胞膜を超えて、隣接する細胞に対する殺傷が起こるという能力を持つという効果を指す。拡散して細胞膜を超える能力は細胞傷害性薬物又は細胞傷害性薬物とリンカーの組み合わせの疎水性に関係している。このような細胞傷害性薬物は、例えば、エリブリン又はMMAEである。特に、標的発現が不均一な腫瘍及び抗体の通過が制限される固形腫瘍には、バイスタンダー効果が望ましい。
【0086】
用語「治療」とは、疾患又は前記疾患に関連する1つ又は複数の症状を予防、改善又は解消するために、本願に記載の化合物又は医薬組成物を投与することを意味し、且つ、以下の事項を含み、ただしそれらに限定されない。
(i)哺乳動物における疾患又は疾患の状態の出現を予防することであって、特に当該疾患の状態になりやすい哺乳動物が、当該疾患の状態であると診断されていない時の予防
(ii)疾患又は疾患の状態を抑制し、即ちその進行を抑制すること
(iii)疾患又は疾患の状態を緩和し、即ち当該疾患又は疾患の状態を解消させること
(iv)疾患又は疾患の状態のいずれかの直接の又は間接的な病理学的影響を低下させること。
【0087】
用語「治療有効量」とは、(i)特定の疾患、病状若しくは障害を治療又は予防すること、(ii)特定の疾患、病状又は障害の1種若しくは複数種の症状を軽減、改善若しくは解消すること、又は(iii)本明細書に記載の特定の疾患、病状若しくは障害の1種若しくは複数種の症状の発生を予防若しくは遅延させる、本願の化合物の用量を指す。本願の化合物又は医薬組成物に係る「治療有効量」は、例えば、当該化合物又は医薬組成物、及びその個体に所望の応答を引き起こす能力、疾患の状態及びその重症度、投与方式及び被治療哺乳動物の年齢、性別、体重であるいくつかの要因によって変わる。有効量は、一般的に、当業者によってその知識又は本開示の内容に基づいて決定されてもよい。
【0088】
用語「薬学的に許容される」とは、ヒト及び動物の組織に接触して使用するのに適し、毒性又は刺激性はなく、アレルギー反応、その他の問題や合併症を引き起こさないと医学的に判断され、利益対リスクが合理的である化合物、材料、組成物及び/又は剤形に対して使用される。
【0089】
薬学的に許容される塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基と形成した塩、無機酸と形成した塩、有機酸と形成した塩、塩基性又は酸性のアミノ酸と形成した塩などが挙げられる。
【0090】
用語「溶媒和物」とは、化合物が溶媒分子と会合して形成される物質を指す。
【0091】
用語「抗体」は、所望の生物学的活性を備えさえすれば、完全なモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2種の完全な抗体によって形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、多機能抗体、抗体断片を含むと、最も広い意味で使用される。
【0092】
用語「ヒト化抗体」とは、非ヒト抗体に由来するCDR領域を含む抗体であって、当該抗体分子の他の部分が1種又は複数種のヒト抗体に由来する抗体を指す。
【0093】
用語「変異体」とは、オリジナルのペプチドと異なるアミノ酸で1個又は2個又はそれ以上のアミノ酸を置き換え、1個又は2個又はそれ以上の野生型アミノ酸を欠失させ、野生型には存在しない1個又は2個又はそれ以上のアミノ酸を挿入し、且つ/又は野生型には存在しないアミノ酸を野生型のアミノ末端(N末端)及び/又はカルボキシ末端(C末端)に添加する(まとめて「変異」という)ように、ペプチドのアミノ酸配列から誘導されるアミノ酸配列を含むペプチドを指す。本発明では、「挿入」は「添加」にも含まれている。
【0094】
用語「CDR(相補性決定領域)」は、「超可変領域」とも呼ばれ、配列が高度に可変であり且つ/又は構造が限定されているループを形成する抗体可変ドメインの各領域を指す。天然のテトラボディは一般的に、3つが重鎖可変領域にあり、3つが軽鎖可変領域にある6つのCDRを含む。
【0095】
用語「可変領域」とは抗体の軽鎖又は重鎖のN末端ドメインで限定される、約100~110個又はより多いアミノ酸からなる主に抗原認識を担うドメインを指す。用語「軽鎖可変領域(VL)」「重鎖可変領域(VH)」は、それぞれ、これらの軽鎖及び重鎖のドメインを指す。
【0096】
用語「Fab」とは、軽鎖の定常ドメイン(CL)及び重鎖の第1定常ドメイン(CH1)と、それぞれ軽鎖、重鎖にある可変ドメインVL(軽鎖可変領域)及びVH(重鎖可変領域)を含むものを指す。可変ドメインは、抗原結合に関与する相補性決定領域(CDR)を含む。
【0097】
用語「scFv」は、抗体のVH及びVLドメインを含み、それらのドメインが1つのポリペプチド鎖に存在する。いくつかの実施形態では、scFvはVHとVLドメインの間にあるポリペプチドリンカーをさらに含み、これによってscFvは抗原結合に必要な構造を形成できる。
【0098】
用語「抗体部分」とは、抗体薬物複合体の抗体の部分を指す。いくつかの特定の実施形態では、それと中間リンカー部分は特定の官能基によって連結され、当該抗体部分は抗原と特異的に結合できる。
【0099】
用語「リンカー部分」とは、抗体薬物複合体における抗体部分と細胞傷害性薬物部分を連結させる部分を指し、切断可能なものであってもよいし又は非切断可能なものであってもよく、切断可能なリンカーは標的細胞内で切断することができ、これによって細胞傷害性薬物が放出される。
【0100】
用語「細胞傷害性薬物部分」とは、抗体薬物複合体における細胞傷害性薬物の部分を指す。いくつかの特定の実施形態では、それと中間リンカー部分は官能基によって連結され、腫瘍細胞内では、細胞傷害性薬物分子が遊離して、抗腫瘍効果を発揮する。
【0101】
用語「トラスツズマブ」(一般名Trastuzumab)は、ヒト上皮成長因子受容体-2(HER2)のECD4に選択的に作用する組換えヒト化モノクローナル抗体であり、HER2陽性がんの治療に用いることができる。その一例は、商品名HERCEPTIN(登録商標)で販売される治療用モノクローナル抗体製品である。
【0102】
用語「Patritumab」又は「パトリツマブ」は、HER3タンパク質を発現するがんの治療に用いることができる完全ヒト抗HER3モノクローナル抗体である。
【0103】
用語「HER2」とは、EGFRファミリーの2番目のメンバーであり、チロシンキナーゼ活性を有し、ただしHER2の発現レベルは免疫組織化学法で検出することができ、HER2陽性とは、IHC3+を指し、HER2陰性とは、IHC1+/0を指し、IHC2+の場合はさらにISH検出を行って判明する必要がある。
【0104】
用語「HER3」(ヒト上皮成長因子受容体3、別称ErbB3)は、他にHER1(EGFRとも呼ばれる)、HER2及びHER4を含む受容体タンパク質チロシンキナーゼの上皮成長因子受容体(EGFR)サブファミリーに属する受容体タンパク質チロシンキナーゼである。HER3は、細胞外リガンド結合ドメイン(ECD)、ECD内の二量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内タンパク質チロシンキナーゼドメイン(TKD)及びC末端リン酸化ドメインによって構成される膜貫通受容体である。HER3はいくつかのタイプのがん(例えば、乳がん、胃腸がん、膵臓がん)で過剰発現されることが判明した。HER2/HER3の発現と、非侵襲性から侵襲性の段階への進行との間に関係性が示されている。
【0105】
用語「トリプルネガティブ乳がん」とは、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体及びヒト上皮成長因子受容体2がいずれも発現陰性である乳がんを指す。
【0106】
用語「EC50」とは、抗原結合構築物の最大応答の50%を引き起こす有効濃度を指す。EC50はELISA又はFACS解析又は本分野で知られるいずれの他の方法で測定することができる。
【0107】
用語「同一性」は、一致性とも呼ばれる。アミノ酸配列の「同一性パーセント(%)」とは、被比較配列と本明細書で示される具体的なアミノ酸配列を比較し、且つ必要ならば、最大の配列同一性パーセントに達するためにギャップを導入した後、しかもいかなる保存的置換をも配列同一性の一部として考えない場合に、被比較配列における本明細書で示される具体的なアミノ酸配列のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセントを指す。同一性のアミノ酸配列の比較では当分野の範囲内で様々な方式、例えば、ソフトウェアのBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)を用いて行ってもよい。当業者は、比較配列の全長において最大の比較範囲を得るためのいずれのアルゴリズムを含む配列比較のための適切なパラメータを決定することができる。
【0108】
本明細書では、用語「被験者」「患者」又は「主体」は入れ替えて使用されてもよい。いくつかの実施形態では、用語「被験者」「患者」又は「主体」は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、前記被験者、患者又は主体はマウスである。いくつかの実施形態では、前記被験者、患者又は主体はヒトである。
【0109】
本明細書で使用される場合に、「約」は、特定の値に対し、当業者が判定した誤差を含む許容可能範囲であり、部分的には当該値の測定方法、即ち測定システムの限界によって決定される。例えば、本分野の常識によれば、「約」は1倍の又は1倍を超える標準偏差以内を表す。又は、「約」は最大±5%の範囲を表し、例えば、示される数値範囲±2%の範囲以内、±1%の範囲以内又は±0.5%の範囲以内で変動する。本明細書又は特許請求の範囲で特定の値が示される場合に、特に説明がない限り、「約」の意味は当該特定の値に許容される誤差範囲以内にあると理解される。本明細書では、特に説明がない限り、ステップのパラメータ又は条件で示される値は「約」によって修飾されると見なされる。
【発明を実施するための形態】
【0110】
本発明は、また、次のいくつかの具体的な実施形態を提供し、ただし本発明の保護範囲はそれらに限定されない。
(実施形態1)一般式Ab-(L-U)を有する抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物であって、Abは抗体部分を表し、Lはリンカー部分を表し、Uは細胞傷害性薬物部分を表し、nは1~10の整数又は小数から選ばれ、ただし、前記抗体薬物複合体は、次の式IIaで示される構造を含み、
【化11】
式中、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
又は、
とRとそれらに連結された原子が、任意に置換された5~8員のヘテロシクリル基を形成する、抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【0111】
(実施形態2)前記抗体薬物複合体は次の式IIIaで示される構造を含む、実施形態1に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【化12】
【0112】
(実施形態3)前記抗体薬物複合体は次の式IVで示される構造であり、
【化13】
式中、
Abは抗体部分を表し、
nは1~10の整数又は小数から選ばれる、実施形態1又は2に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【0113】
(実施形態4)R及びRは、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基から独立的に選ばれる、実施形態1~3のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【0114】
(実施形態5)前記抗体薬物複合体は次の式IIIa-1で示される構造を含む、実施形態1又は2に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【化14】
【0115】
(実施形態6)前記抗体薬物複合体は次の式IV-1で示される構造である、実施形態3に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【化15】
【0116】
(実施形態7)前記nは、2~4.8、2.6~4.8、3.5~4.8、4~4.8、2~4.5、2.6~4.5、3.5~4.5、4~4.5、3.5~4.2、3.5~4、4~4.2、7~8、7~7.9、7~7.6、7~7.5、7.1~8、7.1~7.9、7.1~7.6、7.5~8、7.6~8、又は7.6~7.9である、実施形態1~6のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【0117】
(実施形態8)前記nは、約2.6、約4、約4.2、約4.8、約7、約7.1、約7.5、約7.6、約7.9又は約8である、実施形態7に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【0118】
(実施形態9)前記Abは抗HER3抗体又はその抗原結合断片である、実施形態1~8のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【0119】
(実施形態10)前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1で示されるアミノ酸配列のHCDR1を含み、配列番号2で示されるアミノ酸配列のHCDR2を含み、配列番号3で示されるアミノ酸配列のHCDR3を含み、配列番号4で示されるアミノ酸配列のLCDR1を含み、配列番号5で示されるアミノ酸配列のLCDR2を含み、そして配列番号6で示されるアミノ酸配列のLCDR3を含む、実施形態9に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【0120】
(実施形態11)前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は配列番号7で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号8で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、又は前記重鎖可変領域は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む、実施形態10に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【0121】
(実施形態12)前記抗HER3抗体又はその抗原結合断片は重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖は配列番号9で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖は配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態10又は11に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【0122】
(実施形態13)前記抗HER3抗体はパトリツマブである、実施形態9に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【0123】
(実施形態14)前記抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物は、下記の特性、即ち、
(a)HER3と結合すること
(b)HER3とリガンドとの結合を遮断すること
(c)HER3を発現する細胞でエンドサイトーシスを示すこと
(d)HER3を発現する腫瘍細胞に殺傷活性があること
(e)バイスタンダー効果があること
の1つ又は複数の組み合わせを示す、実施形態9~13のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【0124】
(実施形態15)実施形態1~14のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を含み、任意に、薬学的に許容される担体をさらに含む、医薬組成物。
【0125】
(実施形態16)がんを治療するための薬物の製造における実施形態1~14のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物又は実施形態15に記載の医薬組成物の用途であって、好ましくは、前記がんはHER3陽性がんであり、好ましくは、前記がんは胆道がん、がん肉腫、食道がん、食道胃接合部がん、乳がん、胃がん、膵臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、腎がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮がん、黒色腫、咽頭がん、口腔がん、皮膚がん、肺がん、多形膠芽腫、膠芽腫、尿路上皮がん、前立腺がん、膀胱がん、消化管間質腫瘍、扁平上皮がん、腹膜がん、肝がん、唾液腺がん、外陰がん、甲状腺がん、精巣がん、肛門がん又は陰茎がんである、用途。
【0126】
(実施形態17)必要とする患者に治療有効量の、実施形態1~14のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物又は実施形態15に記載の医薬組成物を投与することを含むがんの治療方法であって、好ましくは、前記がんはHER3陽性がんである、方法。
【0127】
(実施形態18)腫瘍細胞を前記抗体薬物複合体又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物、又は前記医薬組成物と接触させることにより、腫瘍細胞を殺傷し又は腫瘍細胞の成長を抑制することを含む、実施形態17に記載の方法。
【0128】
(実施形態19)前記がんは、胆道がん、がん肉腫、食道がん、食道胃接合部がん、乳がん、胃がん、膵臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、腎がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮がん、黒色腫、咽頭がん、口腔がん、皮膚がん、肺がん、多形膠芽腫、膠芽腫、尿路上皮がん、前立腺がん、膀胱がん、消化管間質腫瘍、扁平上皮がん、腹膜がん、肝がん、唾液腺がん、外陰がん、甲状腺がん、精巣がん、肛門がん又は陰茎がんである、実施形態17又は18に記載の方法。
【0129】
(実施形態20)式IIIで示される構造を有するリンカー-薬物中間体化合物であって、
【化16】
式中、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、重水素原子、任意に置換されたC1~6アルキル基、任意に置換されたC3~7シクロアルキル基、任意に置換されたC3~7ヘテロシクリル基、任意に置換されたC6~10アリール基、任意に置換されたC5~12ヘテロアリール基から選ばれ、
又は、RとRとそれらに連結された原子が、任意に置換された5~8員のヘテロシクリル基を形成する、リンカー-薬物中間体化合物。
【0130】
(実施形態21)R及びRは、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基から独立的に選ばれる、実施形態20に記載のリンカー-薬物中間体化合物。
【0131】
以下、本発明が一層明瞭になるよう、実施例を用いて更なる説明を行い、ただし本願の範囲は実施例に限定されない。本願で使用される試薬は一般的に市販品であり、精製しなくても使用できる。
【0132】
本願の実施例で用いるパトリツマブ(Patritumab)は、通常の方法で製造される抗体であり、最初に発現ベクター(例えば、CN107001463Aに開示されているpcDNA3.1ベクター、CN109422811Aに開示されているpCHO1.0ベクターなどを含む)を構築し、Expi-CHO宿主細胞をトランスフェクションした後に発現し、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製する。パトリツマブの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号9、10に示すとおりである。重水素化MC-GGFG-DXd(MC-GGFG-DDDXd)の合成は、特許開示WO2022033578A1の実施例14の方法を参照する。
【0133】
本願の実施例に関わる細胞及びその提供は、次の表に示すとおりである。
【表2】
【0134】
実施例1:化合物III-1の製造
【化17】
100mgの化合物A(0.12mmol)及び75mgの化合物B(0.145mmol)を秤量して20mLの反応管に加え(化合物AのCAS番号は2413428-36-9、化合物BのCAS番号は441045-17-6)、2mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、0℃に下げて、70mgの2-(7-アザベンゾトリアゾール)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(0.18mmol)及び49mgのN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.36mmol)を加え、0℃で1時間反応させ、分取液体クロマトグラフィーで精製して約70mgの化合物III-1(MC-GGFG-Eribulin、MC-GGFG-エリブリン)を得た。ESI-MSで分析したところ、化合物III-1のm/z=1241.72[M+H]であった。化合物III-1のH NMRスペクトルは次のとおりであった。
H NMR(500MHz,DMSO)δ 8.22(t,J=5.3Hz,1H),8.12(d,J=8.0Hz,1H),8.06(t,J=5.4Hz,1H),7.99(t,J=5.3Hz,1H),7.65(d,J=5.2Hz,1H),7.30-7.21(m,4H),7.18(d,J=6.4Hz,1H),6.99(s,2H),5.02(d,J=26.0Hz,2H),4.79(d,J=38.9Hz,2H),4.65-4.60(m,2H),4.56(d,J=3.7Hz,1H),4.50-4.42(m,1H),4.26(d,J=10.1Hz,1H),4.21-4.14(m,1H),4.10(s,3H),4.05-3.98(m,1H),3.86-3.64(m,8H),3.60-3.45(m,4H),3.37-3.30(m,2H),3.26(s,4H),3.17-3.09(m,1H),3.08-2.99(m,2H),2.84(d,J=10.4Hz,1H),2.86-2.66(m,3H),2.56-2.50m,1H),2.37-2.18(m,5H),2.15-2.05(m,3H),2.05-1.96(m,2H),1.95-1.84(m,4H),1.75-1.57(m,6H),1.55-1.38(m,6H),1.35-1.25(m,3H),1.23-1.12(m,3H),1.03(d,J=6.0Hz,3H),1.00-0.92(m,1H).
【0135】
実施例2:抗体薬物複合体の製造
試薬:
溶液A:pHが7.4のPBS緩衝液
溶液B:10mMのTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩)水溶液
溶液C:DMSO
溶液D:ヒスチジン緩衝液(0.89mg/mLのL-ヒスチジン及び4.04mg/mLの塩酸L-ヒスチジン一水和物を含む)
溶液E:700mg/mLのスクロース溶液(溶液Dで調製)
溶液F:20mg/mLのポリソルベート80(溶液Dで調製)
試験手順:
1.抗体の置換
a.30kDの限外濾過遠心管を溶液Aで十分に湿潤させた。
b.抗体を溶液Aに置換させた。
c.適量の溶液Aを加えて抗体濃度を調整した。
2.抗体の還元
a.抗体のモル量を計算し、N1と記した。
b.抗体溶液に適量の溶液Bを加えて、反応系のTCEPのモル量をN2にした。
c.アルミ箔で包み、ロータリーインキュベーターに置いて低速(20rpm)で振盪し、37℃で暗所1時間反応させた。
3.複合
a.適量のリンカー-ペイロード(linker-payload)をDMSOで溶解し、最終濃度は10mg/mLであった。
b.抗体溶液にDMSOを加えて、濃度を5%とし、さらに適量のリンカー-ペイロード(linker-payload)溶液を加えて、モル量をN3とした。
c.アルミ箔で包み、ロータリーインキュベーターに置いて低速(20rpm)で振盪し、22℃で暗所1.5時間反応させた。
4.複合の停止
a.溶液Dで限外濾過遠心管を湿潤させた。
b.抗体を溶液Dに置換させて、適量の溶液E、Fを加え、-80℃で冷凍保存した。
抗体薬物複合体のDAR値(1抗体分子あたりの平均薬物連結数)の測定:
LC-MS法を用いてDAR値を測定した。50μgのADCサンプルに、1μLのグリコシダーゼPNGase F(中国瑞安生物)を加え、37℃で20時間インキュベートした。試験で質量分析計は高解像度Xevo G2-XS(米国Waters)であった。サンプルの濃度を5μMに調整し、直接注入法を用いて、正イオンモードにおける質量分析データを収集した。収集した非変性質量分析データはソフトウェアUNIFI 1.8.2.169(米国Waters)を用いて分析処理を行った。
【0136】
抗体薬物複合体のタンパク質濃度の測定:
ローリー(lowry)法を用いてタンパク質濃度を検出した。マイクロプレートリーダーで波長650におけるサンプルの吸光度値ODを測定し、標準曲線を当てはめし、サンプルの吸光度値を標準曲線に代入して、タンパク質濃度を計算した。
【0137】
上記の方法で式IV-1の抗体薬物複合体(IV-1(Patritumab、パトリツマブ)を含む)及び式IVシリーズの他の抗体薬物複合体を製造した。
【化18】
【化19】
【0138】
それぞれ、サンプル1及びサンプル2を製造した。サンプル1:DAR=4.8、タンパク質濃度=1.71mg/mL、サンプル2:DAR=7.1、タンパク質濃度=1.65mg/mL。
【0139】
実施例3:小分子細胞傷害性化合物及び抗体薬物複合体の細胞活性
小分子細胞傷害性化合物に対して、培地を使用して35000ng/mL~0.0896ng/mLに希釈し、合計で9つの濃度であった。対数増殖期の腫瘍細胞を使用して、密度を1×10細胞/mLに調整してプレーティングし、各ウェルに100μLを加え、対照として無細胞ブランクウェルを設置した。上記の勾配希釈したサンプルを加え、各ウェルは50μLであった。37℃で5%のCOインキュベータにおいて5日培養した。培養液を捨て、CCK-8(同仁化学、製品番号CK04)作業溶液を加え、各ウェルは100μLであり、インキュベートして4~5時間発色させてからマイクロプレートリーダー(メーカーThermo、型番VarioskanFlash)に置いて、参照波長630nmで、波長450nmでのウェルプレートの吸光度値を読み取り、記録した。腫瘍細胞の増殖抑制率を計算した。
【0140】
抗体薬物複合体に対して、培地を使用して5000ng/mL~0.0128ng/mLに希釈し、合計で9つの濃度であった。対数増殖期の腫瘍細胞を使用して、密度を2×10細胞/mLに調整してプレーティングし、各ウェルに100μLを加え、対照として無細胞ブランクウェルを設置した。上記の勾配希釈したサンプルを加え、各ウェルは50μLであった。37℃で5%のCOインキュベータにおいて培養した。培養液を捨て、CTG検出液(Promega、製品番号G7572)を加え、各ウェルは100μLであり、インキュベートして10分間発色させてから多機能プレートリーダー(メーカーThermo、型番VarioskanFlash)に置いて、化学発光値を読み取った。腫瘍細胞の増殖抑制率を計算した。
【表3】
【0141】
実施例4:抗体薬物複合体の製造
試薬:
溶液G:ヒスチジン/塩酸ヒスチジン緩衝液(1.43mg/mLのL-ヒスチジン、2.27mg/mLの塩酸L-ヒスチジン一水和物)
溶液H:10mMのTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩)水溶液
溶液I:DMSO(ジメチルスルホキシド)
溶液J:500mg/mLのスクロース溶液(溶液Gで調製)
溶液K:30mg/mLのポリソルベート80(溶液Gで調製)
溶液L:10%のDMSOの溶液G
溶液M:0.3MのNaHPO
抗体:パトリツマブ
リンカー-ペイロード(linker-payload)(リンカー-薬物中間体化合物):実施例1の式III-1で示される構造の化合物MC-GGFG-エリブリン(パトリツマブ-エリブリン複合体の製造に使用)、MC-GGFG-DDDXd(パトリツマブ-DDDXd複合体の製造に使用)。
【0142】
(1)次の試験手順に従って、DARが2.6又は7.6であるパトリツマブ-エリブリン複合体を製造し、それぞれ、パトリツマブ-エリブリン-D2、パトリツマブ-エリブリン-D8と命名した。次の試験手順に従って、DARが7.9であるパトリツマブ-DDDXd複合体を製造し、パトリツマブ-DDDXd-D8と命名した。
試験手順:
1.抗体の置換:
30kDの限外濾過遠心管を溶液Gで十分に湿潤させ、抗体を溶液Gに置換させ、適量の溶液Gを加えて抗体濃度を10mg/mLに調整した。次に適量の溶液Mを加えて抗体溶液のpHを約7.0に調整した。
【0143】
2.抗体の還元:
抗体のモル量を計算し、N1と記した。抗体溶液に適量の溶液Hを加えて、反応系のTCEPのモル量をN2にした。得られた混合物を37℃で暗所1時間振盪し、これによって抗体のジスルフィド結合が還元されて、反応溶液1を得た。
【0144】
3.抗体とリンカー-薬物中間体化合物の複合:
適量のリンカー-ペイロード(linker-payload)を50%のアセトン水溶液で溶解し、最終濃度は10mg/mLであった。反応溶液1に溶液I(溶液I:反応溶液1(v/v)=1:10)を加え、均一に混合し、さらに適量の上記でアセトン水溶液を用いて溶解したリンカー-ペイロード(linker-payload)溶液を加えて、リンカー-ペイロード(linker-payload)のモル量をN3とした。反応混合物を22℃で暗所1時間振盪して、反応溶液2を得た。
【0145】
4.複合反応の停止:
溶液Lで限外濾過遠心管を湿潤させた。20倍量の溶液L、次に20倍量の溶液Gで反応溶液2を限外濾過して、適量の溶液J、Kを加え、-80℃で冷凍保存した。
【0146】
ただし、試験条件及び群の設定は、次の表1-1に示すとおりであった。
【表4】
【0147】
(2)次の試験手順に従って、DARが4.0~4.2であるパトリツマブ-エリブリン複合体を製造し、パトリツマブ-エリブリン-D4と命名した。
試験手順:
1.抗体の置換:
30kDの限外濾過遠心管を溶液Gで十分に湿潤させ、抗体を溶液Gに置換させ、適量の溶液Gを加えて抗体濃度を10mg/mLに調整した。次に適量の溶液Mを加えて抗体溶液のpHを約7.0に調整した。
【0148】
2.抗体の還元:
抗体のモル量を計算し、N1と記した。抗体溶液に適量の溶液Hを加えて、反応系のTCEPのモル量をN2にした。得られた混合物を5~10℃で暗所6時間反応させ、これによって抗体のジスルフィド結合が還元されて、反応溶液3を得た。
【0149】
3.抗体とリンカー-薬物中間体化合物の複合:
適量のリンカー-ペイロード(linker-payload)を50%のアセトン水溶液で溶解し、最終濃度は10mg/mLであった。反応溶液3に適量の上記でアセトン水溶液を用いて溶解したリンカー-ペイロード(linker-payload)溶液を加えて、リンカー-ペイロード(linker-payload)のモル量をN3とした。反応混合物を5~10℃で暗所40分間反応させて、反応溶液4を得た。
【0150】
4.複合反応の停止:
溶液Lで限外濾過遠心管を湿潤させた。次に20倍量の溶液L、次に20倍量の溶液Gで反応溶液4を限外濾過して、適量の溶液J、Kを加え、-80℃冷凍保存した。
【0151】
ただし、試験条件及び群の設定は、次の表1-2に示すとおりであった。
【表5】
【0152】
実施例5:抗体薬物複合体のDAR値の測定
ブチル基が結合された非多孔質ポリスチレン/ジビニルベンゼン(PS/DVB)フィラーを用いて、上記の実施例4で製造されたパトリツマブ-エリブリン複合体の各成分を単離させ、中性の高塩分移動相を利用してタンパク質分子の疎水特性を向上させ、これによりカラムの疎水性結合と結合させ、次に塩濃度を徐々に低下させながら、イソプロピルアルコールの比率を徐々に増加させることにより物質を溶出し、疎水性の低い成分は先に溶出し、疎水性の高い成分は後から溶出する。
【0153】
カラムの仕様は、Sepax HIC-Butyl、4.6×100mm、5μmであり、カラム温度は25℃であった。移動相Aは、10mMのリン酸塩緩衝液-1.5Mの硫酸アンモニウムであり、pHは7.0であった(1.42gの無水リン酸水素二ナトリウム、198.21gの硫酸アンモニウムを秤量して、約800mLの超純水を加え、充分に溶解するまで撹拌した後、リン酸でpHを7.0±0.1に調整して、1Lに定容し、均一に混合してから0.22μm濾過膜で濾過した)。移動相Bは10mMのリン酸塩緩衝液であり、pHは7.0であった(1.42gの無水リン酸水素二ナトリウムを秤量して、約800mLの超純水を加え、充分に溶解するまで撹拌した後、リン酸でpHを7.0±0.1に調整して、1Lに定容し、均一に混合してから0.22μm濾過膜で濾過した)。移動相Cは100%のイソプロピルアルコールであった。流量は0.5mL/分であり、30分間勾配溶出し、移動相のパラメータは、0~15分には75%の移動相A及び25%の移動相Bから75%の移動相B及び25%の移動相Cに上昇し、15~20分には75%の移動相B及び25%の移動相Cであり、20~30分には75%の移動相A及び25%の移動相Bであった)。0分の初期移動相でパトリツマブ-エリブリン複合体を1倍希釈して供試品溶液とし、パトリツマブ-エリブリン複合体の濃度に基づいて注入量を調整して50μgのタンパク質を注入し、波長280nmで吸光度値を検出した。
【0154】
データの処理では、面積百分率法を用いて結果を定量的に分析した。それぞれ、0、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ及び8つの細胞傷害性薬物を含有するADCのピーク面積のパーセンテージを計算し、DAR値を計算して結果を得た。計算式は、DAR値=(細胞傷害性薬物のないADCのピーク面積のパーセンテージ×0+1つの細胞傷害性薬物を含有するADCのピーク面積のパーセンテージ×1+2つの細胞傷害性薬物を含有するADCのピーク面積のパーセンテージ×2+3つの細胞傷害性薬物を含有するADCのピーク面積のパーセンテージ×3+4つの細胞傷害性薬物を含有するADCのピーク面積のパーセンテージ×4+5つの細胞傷害性薬物を含有するADCのピーク面積のパーセンテージ×5+6つの細胞傷害性薬物を含有するADCのピーク面積のパーセンテージ×6+7つの細胞傷害性薬物を含有するADCのピーク面積のパーセンテージ×7+8つの細胞傷害性薬物を含有するADCのピーク面積のパーセンテージ×8)/100%であった。
【0155】
実施例4及び実施例5の方法で、次の構造を有するパトリツマブ-エリブリン複合体を製造し、測定した。
【化20】
ただし、パトリツマブ-エリブリン-D2に対して測定したDAR値は2.6であり、パトリツマブ-エリブリン-D4に対して測定したDAR値は4~4.2であり、パトリツマブ-エリブリン-D8に対して測定したDAR値は7.6であった。
【0156】
実施例4及び実施例5の方法で、次の構造を有するパトリツマブ-DDDXd-D8を製造し、測定した。
【化21】
測定したDAR値は7.9であった。
【0157】
実施例6:抗体薬物複合体の凝集体の検証
ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて上記の実施例4で製造したパトリツマブ-薬物複合体の各成分を単離させた。10%のイソプロピルアルコールを添加した中性pH緩衝液を移動相として溶出し、各成分は分子量が小さくなる順にそれぞれ溶出された。カラムは、仕様がACQUITY UPLC Protein BEH SEC Column 200Å、1.7μm、4.6×300mmであるゲル濾過カラムであり、カラム温度は25℃であった。移動相は、50mMのリン酸塩緩衝液-200mMの塩化ナトリウム-10%のイソプロピルアルコールであり、pHは7.0であった(12.53gのリン酸水素二ナトリウム十二水和物、2.33gのリン酸二水素ナトリウム二水和物、11.69gの塩化ナトリウムを秤量して、約800mLの超純水を加え、充分に溶解するまで撹拌して、使用に備えて超純水を加えて1000mLとし、100mLのイソプロピルアルコールを上記の溶液に加えて1000mLとし、均一に混合してから0.22μm濾過膜で濾過した)。20μgのパトリツマブ-薬物複合体を正確に計量して液体クロマトグラフに注入し、波長280nmで検出した。流量は0.3mL/分であり、15分間アイソクラティック溶出した。
【0158】
データの処理では、面積百分率法を用いて結果を定量的に分析した。凝集体、免疫グロブリン単量体及び低分子量不純物のピーク面積のパーセンテージをそれぞれ計算し、そのうちメインピーク前は凝集体であり、メインピークは免疫グロブリン単量体であり、メインピーク後は低分子量不純物であった。パトリツマブ-薬物複合体の単量体、凝集体及び低分子量不純物の含有量の比率は表2のとおりであった。
【表6】
【0159】
実施例7:抗体薬物複合体の細胞結合活性
FACS法を利用して、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブを対照として、HER3高発現レベルのMCF-7、HCC1569、BT474細胞、HER3中等度発現レベルのMDA-MB-468、JIMT-1細胞、HER3低発現レベルのSW620細胞及びHER3陰性のA549細胞を含む異なるHER3発現レベルの細胞に対する、上記の実施例4で製造されたパトリツマブ-エリブリン複合体の結合活性を分析した。
【0160】
1×10個の細胞を96ウェル細胞培養プレートの各ウェルに加え、パトリツマブ-エリブリン複合体を135.14nMの開始濃度から、4倍希釈で9つ濃度勾配にし、FACS緩衝液(Miltenyi Biotec、製品番号130-091-221)において希釈し、4℃で60分間インキュベートした後、1000rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、予冷したPBS(pH7.4)で3回洗浄し、1:200(v/v)で希釈したヤギ抗ヒトIgG Fcγ-PE二次抗体(Jackson immunoresearch、製品番号109-116-170)を加え、100μL/ウェルであり、4℃で30分間インキュベートした。予冷したPBS(pH7.4)で3回洗浄し、100μLのPBS(pH7.4)で再懸濁させ、次にフローサイトメーター(Sartorius、iQUE)を用いて検出蛍光信号を分析した。染色の平均蛍光強度(MFI)で上記の各細胞に対するパトリツマブ-エリブリン複合体及び対照の結合活性を測定した。GraphPad Prism5を用いてデータを分析し、結果は図1A図1Gに示され、計算されたEC50は次の表3に示された。結果は、HER3高、中等度、低発現レベルの細胞に対する各DAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体の結合活性はいずれもパトリツマブと同等であり、HER3陰性のA549細胞と結合しないということを明らかにした。
【表7】
【0161】
実施例8:抗体薬物複合体のエンドサイトーシス試験
FACS法を利用して、パトリツマブ-DDDXd-D8及びパトリツマブを対照として、HER3高発現レベルのMCF-7、BT474細胞、HER3中等度発現レベルのNCI-N87細胞及びHER3低発現レベルのSW620細胞を含む異なるHER3発現レベルの細胞における上記の実施例4で製造されたパトリツマブ-エリブリン複合体のエンドサイトーシスの状況を分析した。
【0162】
細胞密度を1×10個/mLに調整し、50μL/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに加えた。サンプルの用意として、パトリツマブ-エリブリン複合体をあらかじめ濃度20μg/mLに希釈して、S1とマークし、次に3倍の濃度勾配で希釈して、9つのサンプルS1~S9を得た。勾配希釈したサンプル溶液を細胞培養プレートに加え、各ウェルに50μLを加え、4℃で30分間インキュベートした。インキュベーションの終了後に96ウェル細胞培養プレートを取り出して、4℃、400gで4分間遠心分離し、上清を捨てた。1:200(v/v)でpHrodo(商標) Green Maleimide(グリーンマレイミド、Invitrogen、製品番号P35370)で標識したAffiniPure Goat Anti-Human IgG、Fcγ fragment specific(ヤギ抗ヒトIgG、Fc断片特異性抗体、Jackson Immuno、製品番号109-005-190)を希釈し、各ウェルに50μLを加えた後に4℃でインキュベートした。30分間後に洗浄し、各ウェルに50μLの細胞培地を加え、均一に混合した後に37℃で2時間インターナリゼーションし、フローサイトメーター(Sartorius、iQUE)に置いて、BL1チャネルの蛍光値を測定した。GraphPad Prism5を用いてデータを分析し、結果は図2A図2Dに示され、計算されたEC50は次の表4に示された。結果は、各DAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体は、HER3高、中等度発現レベルの細胞では明らかなエンドサイトーシスを示し、低発現レベルのSW620細胞ではエンドサイトーシスが弱いということを明らかにした。
【表8】
【0163】
実施例9:抗体薬物複合体の細胞殺傷活性
腫瘍細胞に対する上記の実施例4で製造されたパトリツマブ-エリブリン複合体の増殖抑制効果を検出するために、パトリツマブ-DDDXd-D8を対照として、HER3高発現レベルのBT474、MCF-7、HCC1569細胞、HER3中等度発現レベルのSKBR3、NCI-N87、JIMT-1、MDA-MB-468細胞、及びHER3低発現レベルのSW620、WiDr細胞を含む異なるHER3発現レベルの細胞を用いて、それぞれ、殺傷活性を検出した。
【0164】
対数増殖期の細胞を96ウェルプレートに加え、100μL/ウェルであり、細胞密度は1×10個/mL又は2×10個/mLであった。37℃、5%のCOで壁に付着させて一晩培養した。サンプルの用意として、10%のFBSを含む基礎培地を用いてパトリツマブ-エリブリン複合体を被測定サンプルとして調製した(5μg/mLから、5倍の勾配希釈で、9つの勾配)。壁に付着させて一晩培養した細胞を取り出して、試験群は50μL/ウェルで希釈した被測定サンプルを加え、対照群は50μL/ウェルで10%のFBSを含む基礎培地を加え、引き続き96時間、120時間又は144時間培養した後にCellTiter-Glo Luminescent Cellキット(Promega、製品番号G7572)を用いて検出し、96ウェルプレートを取り出して、各ウェルに75μLのCTG検出液(Promega、製品番号G7572)を加え、振盪して均一に混合し、室温で暗所10分間インキュベートした後に各ウェルから180μL吸い出して白色の不透明プレートに移し、気泡を除去して、化学発光値を読み取り、殺傷率を計算した。
殺傷率(%)=(1-試験群の発光値/対照群の発光値)×100%
【0165】
Graphpad Prism5を用いてデータを分析及び処理し、結果は図3A図3Iに示され、計算されたEC50は次の表5-1及び表5-2に示された。結果は、HER3高、中等度、低発現レベルの細胞に対して、DAR値が大きいほど、パトリツマブ-エリブリン複合体の殺傷活性は強く、且つ各DAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体の殺傷活性はいずれもパトリツマブ-DDDXd-D8より優れているということを明らかにした。
【表9】
【表10】
【0166】
実施例10:JIMT-1ヒト乳がん細胞のヌードマウス皮下移植腫瘍モデルにおける抗体薬物複合体の薬力学評価
トラスツズマブ耐性細胞株JIMT-1ヒト乳がん細胞のヌードマウス皮下移植腫瘍モデルにより、上記の実施例4で製造されたパトリツマブ-エリブリン複合体のインビボ薬力学を評価した。
【0167】
SPF雌ヌードマウス(提供は常州▼カ▲文斯実験動物有限公司)の右腋窩にJIMT-1細胞を皮下接種し、2×10個/匹であった。平均腫瘍体積が100~300mmに達している時に、動物を5群に分け、各群は6匹であり、具体的な群分け及び投与計画は表6に示された。
【表11】
【0168】
群分け当日は0日目であり、群分け後の1日目に尾静脈投与した。週に2~3回腫瘍体積を測定し、またマウスの体重を量り、データを記録した。マウスの日常的な挙動を毎日観察及び記録した。試験終了後に腫瘍を摘出して重さを量り、写真を撮った。
【0169】
検出指標は、次のものを含む。
腫瘍体積TV(mm)=1/2×(a×b)であり、ここで、aは長径であり、bは短径である。
【0170】
相対腫瘍体積RTV=TV/TVであり、ここで、TVは0日目の腫瘍体積であり、TVは各回の測定時の腫瘍体積である。
【0171】
相対腫瘍増殖率T/C(%)=TRTV/CRTV×100%であり、ここで、TRTVは治療群のRTVであり、CRTVは対照群のRTVである。
【0172】
腫瘍成長抑制率1-T/Cである。
【0173】
腫瘍抑制率TGI(%)=(1-TW/TW)×100%であり、ここで、TWは治療群の腫瘍重量であり、TWは対照群の腫瘍重量である。
【0174】
体重変化率WCR(%)=(Wt-Wt)/Wt×100%であり、ここで、Wtは0日目の動物の体重であり、Wtは各回の測定時の動物の体重である。
【0175】
腫瘍体積、腫瘍重量、及びマウスの体重に対する各薬物の影響は図4図6のとおりであり、検出指標の結果は次の表7に示された。21日目の試験終了で、死亡した動物はなく、各治療群のマウスの体重増加はモデル群と同等であり、薬物に明らかな毒性作用はなく、安全性は良い。各DAR値のパトリツマブ-エリブリン複合体はいずれも、パトリツマブ-DDDXd-D8より優れている良い体内腫瘍増殖抑制活性を示し、パトリツマブ-エリブリン複合体のDAR値が大きいほど、体内腫瘍増殖抑制活性は強い。
【表12】
【0176】
本願で開示される内容によれば、好ましい実施形態に基づいて本願の方法を説明しているものの、当業者は、本願の概念、趣旨及び範囲から逸脱することなく、ここに記載の方法及び前記方法のステップ又はステップの順番を変更することができる。
【0177】
本明細書で言及される全ての文献の開示内容を援用してここに組み込み、例示的な、手順上の及び他の詳細を提供して本明細書の記載内容を補足するように援用している。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4
図5
図6
【配列表】
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【国際調査報告】