(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ用ガラス及びそれを含むヘッドアップディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240905BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G02B27/01
C03C27/12 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515374
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2022126733
(87)【国際公開番号】W WO2023066378
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】202111230958.6
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516151818
【氏名又は名称】フーイャォ グラス インダストリー グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ツォ,ファイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,グオフー
(72)【発明者】
【氏名】ルー,グオシュイ
(72)【発明者】
【氏名】リン,ガオチアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,リシャン
(72)【発明者】
【氏名】福原 康太
【テーマコード(参考)】
2H199
4G061
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA11
2H199DA42
2H199DA43
4G061AA26
4G061AA31
4G061BA02
4G061CB12
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)用ガラスが提供される。HUD用ガラスは、背向する第1表面(10-1)および第2表面(10-2)を有する合わせガラス(10)を含み、第2表面(10-2)は、表示領域(31)および非表示領域(32)を有する。表示領域(31)において、第1ナノフィルム(20-1)が設けられており、第1ナノフィルム(20-1)は、第2表面(10-2)から外に向かって交互に積層された、少なくとも1つの第1の高屈折率層(21-1)および少なくとも1つの第1の低屈折率層(22-1)を含み、第1の高屈折率層(21-1)の屈折率は1.9~2.7であり、第1の低屈折率層(22-1)の屈折率は1.3~1.8である。55°~75°で入射したP偏光に対する表示領域(31)の反射率は10%以上であり、0°~10°で入射した可視光に対する非表示領域(32)の反射率は、0°~10°で入射した可視光に対する表示領域(31)の反射率よりも小さい。このHUD用ガラスは、コストが低いだけでなく、HUD画像が鮮明で、ガラスの視覚干渉が少ないので、走行中の安全性および快適性を確保できる。さらに、HUDシステムが提供される。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)用ガラスであって、
前記HUD用ガラスは、背向する第1表面および第2表面を有する合わせガラスを含み、前記第2表面は、表示領域および非表示領域を有し、
前記表示領域において、第1ナノフィルムが設けられており、前記第1ナノフィルムは、前記第2表面から外に向かって交互に積層された、少なくとも1つの第1の高屈折率層および少なくとも1つの第1の低屈折率層を含み、前記第1の高屈折率層の屈折率は1.9~2.7であり、前記第1の低屈折率層の屈折率は1.3~1.8であり、
55°~75°で入射したP偏光に対する前記表示領域の反射率は10%以上であり、0°~10°で入射した可視光に対する前記非表示領域の反射率は、0°~10°で入射した可視光に対する前記表示領域の反射率よりも小さい、
ことを特徴とするHUD用ガラス。
【請求項2】
0°~10°で入射した可視光に対する前記表示領域の反射率と、0°~10°で入射した可視光に対する前記非表示領域の反射率との差が2%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のHUD用ガラス。
【請求項3】
0°~10°で入射した可視光に対する前記表示領域の反射率は10%~30%であり、0°~10°で入射した可視光に対する前記非表示領域の反射率は1%~15%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のHUD用ガラス。
【請求項4】
55°~75°で入射したP偏光に対する前記非表示領域の反射率は、55°~75°で入射したP偏光に対する前記表示領域の反射率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のHUD用ガラス。
【請求項5】
前記第2表面は、前記表示領域と前記非表示領域との間に位置する過渡領域をさらに有し、0°~10°で入射した可視光に対する前記過渡領域の反射率は、0°~10°で入射した可視光に対する前記非表示領域の反射率よりも大きく、かつ、0°~10°で入射した可視光に対する前記表示領域の反射率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のHUD用ガラス。
【請求項6】
前記非表示領域は露出された合わせガラスである、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のHUD用ガラス。
【請求項7】
前記非表示領域において、第2ナノフィルムが設けられており、前記第2ナノフィルムは、前記第2表面から外に向かって交互に設けられた、少なくとも1つの第2の高屈折率層および少なくとも1つの第2の低屈折率層を含み、前記第2の高屈折率層の屈折率は1.9~2.7であり、前記第2の低屈折率層の屈折率は1.3~1.8であり、前記第2ナノフィルムの厚さは、前記第1ナノフィルムの厚さよりも小さい、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のHUD用ガラス。
【請求項8】
前記第2の高屈折率層の厚さは、前記第1の高屈折率層の厚さよりも小さい、
ことを特徴とする請求項7に記載のHUD用ガラス。
【請求項9】
前記第2の低屈折率層の厚さは、前記第1の低屈折率層の厚さよりも小さい、
ことを特徴とする請求項7に記載のHUD用ガラス。
【請求項10】
前記第1の低屈折率層は、少なくとも2つの第1の低屈折率サブ層を含み、前記第2の低屈折率層は、少なくとも2つの第2の低屈折率サブ層を含み、前記第1の低屈折率層のうち前記合わせガラスから最も遠い第1の低屈折率サブ層の厚さは、前記第2の低屈折率層のうち前記合わせガラスから最も遠い第2の低屈折率サブ層の厚さよりも大きい、
ことを特徴とする請求項7~9のいずれか一項に記載のHUD用ガラス。
【請求項11】
前記第1の高屈折率層は、少なくとも2つの第1の高屈折率サブ層を含み、前記第2の高屈折率層は、少なくとも2つの第2の高屈折率サブ層を含み、前記第1の高屈折率層のうち前記合わせガラスに最も近い第1の高屈折率サブ層の厚さは、前記第2の高屈折率層のうち前記合わせガラスに最も近い第2の高屈折率サブ層の厚さよりも大きい、
ことを特徴とする請求項7~10のいずれか一項に記載のHUD用ガラス。
【請求項12】
前記表示領域の色のLab値と前記非表示領域の色のLab値とのうち、a値がいずれも2以下であり、b値がいずれも2以下である、
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のHUD用ガラス。
【請求項13】
前記表示領域の色のa値と前記非表示領域の色のa値との差の絶対値は2以下であり、前記表示領域の色のb値と前記非表示領域の色のb値との差の絶対値は2以下である、
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のHUD用ガラス。
【請求項14】
前記HUD用ガラスは、さらに、防指紋フィルム、断熱フィルム、電気加熱フィルム、紫外線カットフィルム、防曇フィルムのうちの一種または多種を含む、
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のHUD用ガラス。
【請求項15】
前記非表示領域において、第2ナノフィルムが設けられており、前記第2ナノフィルムは、前記第2表面から外に向かって交互に設けられた、少なくとも1つの第2の高屈折率層および少なくとも1つの第2の低屈折率層を含み、前記第2の高屈折率層の屈折率は1.9~2.7であり、前記第2の低屈折率層の屈折率は1.3~1.8であり、前記第2ナノフィルムは、前記第1ナノフィルムと異なる、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のHUD用ガラス。
【請求項16】
前記第2ナノフィルムと前記第1ナノフィルムとは、各層の材料、各層の配列、各層の厚さのうち、少なくとも1つが異なる、
ことを特徴とする請求項15に記載のHUD用ガラス。
【請求項17】
前記第2ナノフィルムと前記第1ナノフィルムとは、各層の材料及び各層の配列が同じであり、各層の厚さのうち、少なくとも一層の厚さが異なる、
ことを特徴とする請求項15に記載のHUD用ガラス。
【請求項18】
前記第1ナノフィルムまたは前記第2ナノフィルムは、除膜法または不均一コーティング法により作製され、前記除膜法は、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、マスキング法のうちの一種または多種を含む、
ことを特徴とする請求項15に記載のHUD用ガラス。
【請求項19】
前記第1ナノフィルムは、まず、前記表示領域および前記非表示領域に第2ナノフィルムを形成し、次に、除膜法により前記表示領域の第2ナノフィルムに対して除膜を行うことで取得されたものであり、あるいは、前記第2ナノフィルムは、まず、前記表示領域および前記非表示領域に第1ナノフィルムを形成し、次に、前記除膜法により前記非表示領域の第1ナノフィルムに対して除膜を行うことで取得されたものである、
ことを特徴とする請求項15に記載のHUD用ガラス。
【請求項20】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムであって、
前記HUDシステムは、P偏光を生成するための投影ユニットと、請求項1~19のいずれか一項に記載のHUD用ガラスとを含み、前記P偏光は前記表示領域に入射する、
ことを特徴とするHUDシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、発明の名称が「ヘッドアップディスプレイ用ガラス及びそれを含むヘッドアップディスプレイシステム」とされ、2021年10月21日に出願された中国特許出願第202111230958.6号という先願の優先権を主張し、上記先願のすべての内容が引用として本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、ヘッドアップディスプレイ(Head Up Display、HUD)の技術分野に関し、具体的に、HUD用ガラス及びそれを含むHUDシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
HUDは、自動車でますます広く適用されている。車載HUDシステムは、光反射の原理を利用して、フロントガラスに重要な走行情報を表示するものである。既存のフロントガラスでは、HUDの機能を実現するために、フロントガラスの中間層として、ほとんどくさび形のポリビニルブチラール(Polyvinyl Butyral、PVB)層が使用されているが、くさび形のPVB層の作製工程が複雑で、コストが高く、また、適用性が悪いので、車種によって異なる仕様のPVB層を使用する必要がある。従って、既存のHUD用ガラスのコストが高く、適用性が悪いという問題を解決するために、新型のHUD用ガラスを提供する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
以上の点に鑑み、本出願は、コストが低いだけでなく、HUD画像が鮮明で、ガラスの視覚干渉が少ないので、走行中の安全性および快適性を確保できるHUD用ガラスを提供する。
【0005】
本出願は第一態様において、HUD用ガラスを提供する。HUD用ガラスは、背向する第1表面および第2表面を有する合わせガラスを含み、第2表面は、表示領域および非表示領域を有する。表示領域において、第1ナノフィルムが設けられており、第1ナノフィルムは、第2表面から外に向かって交互に積層された、少なくとも1つの第1の高屈折率層および少なくとも1つの第1の低屈折率層を含み、第1の高屈折率層の屈折率は1.9~2.7であり、第1の低屈折率層の屈折率は1.3~1.8である。55°~75°で入射したP偏光に対する表示領域の反射率は10%以上であり、0°~10°で入射した可視光に対する非表示領域の反射率は、0°~10°で入射した可視光に対する表示領域の反射率よりも小さい。
【0006】
本出願のHUD用ガラスでは、表示領域にナノフィルムが設けられているので、表示領域は比較的に高いP偏光反射率を有し、従って、表示領域が鮮明な画像を表示できることが確保される。0°~10°で入射した可視光に対する非表示領域の反射率は、0°~10°で入射した可視光に対する表示領域の反射率よりも小さいという設計により、非表示領域のミラー効果を弱め、非表示領域での映り込みの視覚干渉を低減し、運転中の安全性および快適性を確保することができる。
【0007】
選択可能に、0°~10°で入射した可視光に対する表示領域の反射率と、0°~10°で入射した可視光に対する非表示領域の反射率との差が2%以上である。
【0008】
選択可能に、0°~10°で入射した可視光に対する表示領域の反射率は10%~30%である。
【0009】
選択可能に、0°~10°で入射した可視光に対する非表示領域の反射率は1%~15%である。
【0010】
選択可能に、55°~75°で入射したP偏光に対する非表示領域の反射率は、55°~75°で入射したP偏光に対する表示領域の反射率よりも小さい。
【0011】
選択可能に、第2表面は、表示領域と非表示領域との間に位置する過渡領域をさらに有し、0°~10°で入射した可視光に対する過渡領域の反射率は、0°~10°で入射した可視光に対する非表示領域の反射率よりも大きく、かつ、0°~10°で入射した可視光に対する表示領域の反射率よりも小さい。
【0012】
選択可能に、非表示領域は露出された合わせガラスである。
【0013】
選択可能に、非表示領域において、第2ナノフィルムが設けられており、第2ナノフィルムは、第2表面から外に向かって交互に設けられた、少なくとも1つの第2の高屈折率層および少なくとも1つの第2の低屈折率層を含み、第2の高屈折率層の屈折率は1.9~2.7であり、第2の低屈折率層の屈折率は1.3~1.8であり、第2ナノフィルムの厚さは、第1ナノフィルムの厚さよりも小さい。
【0014】
選択可能に、第2の高屈折率層の厚さは、第1の高屈折率層の厚さよりも小さい。
【0015】
選択可能に、第2の低屈折率層の厚さは、第1の低屈折率層の厚さよりも小さい。
【0016】
選択可能に、第1の低屈折率層は、少なくとも2つの第1の低屈折率サブ層を含み、第2の低屈折率層は、少なくとも2つの第2の低屈折率サブ層を含み、第1の低屈折率層のうち合わせガラスから最も遠い第1の低屈折率サブ層の厚さは、第2の低屈折率層のうち合わせガラスから最も遠い第2の低屈折率サブ層の厚さよりも大きい。
【0017】
選択可能に、第1の高屈折率層は、少なくとも2つの第1の高屈折率サブ層を含み、第2の高屈折率層は、少なくとも2つの第2の高屈折率サブ層を含み、第1の高屈折率層のうち合わせガラスに最も近い第1の高屈折率サブ層の厚さは、第2の高屈折率層のうち合わせガラスに最も近い第2の高屈折率サブ層の厚さよりも大きい。
【0018】
選択可能に、表示領域の色のLab値と非表示領域の色のLab値とのうち、a値がいずれも2以下であり、b値がいずれも2以下である。
【0019】
選択可能に、表示領域の色のa値と非表示領域の色のa値との差の絶対値は2以下であり、表示領域の色のb値と非表示領域の色のb値との差の絶対値は2以下である。
【0020】
選択可能に、HUD用ガラスは、さらに、防指紋フィルム、断熱フィルム、電気加熱フィルム、紫外線カットフィルム、防曇フィルムのうちの一種または多種を含む。
【0021】
選択可能に、非表示領域において、第2ナノフィルムが設けられており、第2ナノフィルムは、第2表面から外に向かって交互に設けられた、少なくとも1つの第2の高屈折率層および少なくとも1つの第2の低屈折率層を含み、第2の高屈折率層の屈折率は1.9~2.7であり、第2の低屈折率層の屈折率は1.3~1.8であり、第2ナノフィルムは、第1ナノフィルムと異なる。
【0022】
選択可能に、第2ナノフィルムと第1ナノフィルムとは、各層の材料、各層の配列、各層の厚さのうち、少なくとも1つが異なる。
【0023】
選択可能に、第2ナノフィルムと第1ナノフィルムとは、各層の材料及び各層の配列が同じであり、各層の厚さのうち、少なくとも一層の厚さが異なる。
【0024】
選択可能に、第1ナノフィルムまたは第2ナノフィルムは、除膜法または不均一コーティング法により作製され、除膜法は、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、マスキング法のうちの一種または多種を含む。
【0025】
選択可能に、第1ナノフィルムは、まず、表示領域および非表示領域に第2ナノフィルムを形成し、次に、除膜法により表示領域の第2ナノフィルムに対して除膜を行うことで取得されたものであり、あるいは、第2ナノフィルムは、まず、表示領域および非表示領域に第1ナノフィルムを形成し、次に、除膜法により非表示領域の第1ナノフィルムに対して除膜を行うことで取得されたものである。
【0026】
本出願は第二態様において、ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムを提供する。HUDシステムは、P偏光を生成するための投影ユニットと、第一態様に記載のHUD用ガラスとを含み、P偏光は表示領域に入射する。
【0027】
本出願の第二態様において提供されているHUDシステムは、本出願のHUD用ガラスを採用するので、鮮明な画像を呈することができ、視覚干渉が少なく、比較的に高い安全性および快適性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1は、本出願の1つの実施形態に係るHUD用ガラスの構造を示す概略図である。
図2は、本出願の1つの実施形態に係る合わせガラスの構造を示す概略図である。
図3は、本出願の1つの実施形態に係るナノフィルムの構造を示す概略図である。
図4は、本出願のもう1つの実施形態に係るナノフィルムの構造を示す概略図である。
図5は、本出願のもう1つの実施形態に係るナノフィルムの構造を示す概略図である。
図6は、本出願のもう1つの実施形態に係るHUD用ガラスの構造を示す概略図である。
図7は、本出願のもう1つの実施形態に係るHUD用ガラスの構造を示す概略図である。
図8は、本出願の1つの実施形態に係るナノフィルムの構造を示す概略図である。
図9は、本出願のもう1つの実施形態に係るナノフィルムの構造を示す概略図である。
図10は、本出願のもう1つの実施形態に係るナノフィルムの構造を示す概略図である。
図11は、本出願の1つの実施形態に係る合わせガラスの第2表面の仕切りを示す概略図である。
図12は、本出願のもう1つの実施形態に係る合わせガラスの第2表面の仕切りを示す概略図である。
図13は、本出願のもう1つの実施形態に係る合わせガラスの第2表面の仕切りを示す概略図である。
図14は、本出願のもう1つの実施形態に係る合わせガラスの第2表面の仕切りを示す概略図である。
図15は、本出願のもう1つの実施形態に係る合わせガラスの第2表面の仕切りを示す概略図である。
図16は、本出願のもう1つの実施形態に係るHUD用ガラスの構造を示す概略図である。
図17は、本出願の1つの実施形態に係るHUDシステムの構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本出願の実施例の図面を参照しながら、本出願の実施例の技術的解決策を明確且つ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は、本出願の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではない。本出願の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力なしに得られるすべての他の実施例は、本出願の保護範囲に属する。
【0030】
理解を容易にするために、本出願に関するいくつかの用語を以下のように説明する。屈折率とは、透過光の波長が550nmであるときの材料の屈折率をいう。可視光反射率とは、入射角が0°~10°であるとき(すなわち、垂直に入射したとき)の可視光反射率をいう。第2表面から外に向かう方向とは、合わせガラスの第2表面から、合わせガラス本体から離れる方向をいう。
【0031】
図1を参照すると、
図1は、本出願の1つの実施形態に係るHUD用ガラスの構造を示す概略図である。HUD用ガラスは、背向する第1表面10-1および第2表面10-2を有する合わせガラス10を含み、合わせガラス10の第2表面10-2において、ナノフィルム20が設けられている。
図2を参照すると、
図2は、本出願の1つの実施形態に係る合わせガラスの構造を示す概略図である。合わせガラス10は、外側ガラス板11と、内側ガラス板13と、外側ガラス板11と内側ガラス板13との間に設けられた中間層12と、を含む。外側ガラス板11は、第1表面11-1および第2表面11-2を有し、外側ガラス板の第1表面11-1は、すなわち合わせガラスの第1表面10-1である。内側ガラス板13は、第1表面13-1および第2表面13-2を有し、内側ガラス板の第1表面13-1は、すなわち合わせガラスの第2表面10-2である。外側ガラス板11の第2表面11-2と内側ガラス板13の第2表面13-2とは、それぞれ中間層12の2つの表面に接着固定されている。本出願のHUD用ガラスが適用される場合、内側ガラス板13の第1表面13-1は車窓の内側(自動車の内側)に位置し、すなわち合わせガラス10の第2表面10-2は車窓の内側に位置する。外側ガラス板11の第1表面11-1は車窓の外側(自動車の外側)に位置し、すなわち合わせガラス10の第1表面10-1は車窓の外側に位置する。本出願の実施形態において、ナノフィルム20は、内側ガラス板13の第1表面13-1に設けられている。
【0032】
本出願の実施形態において、ナノフィルムは、交互に積層された、少なくとも1つの高屈折率層および少なくとも1つの低屈折率層を含み、高屈折率層の屈折率は1.9以上であり、低屈折率層の屈折率は1.8以下である。
図3を参照すると、
図3は、本出願の1つの実施形態に係るナノフィルムの構造を示す概略図である。HUD用ガラスにおいて、ナノフィルム20は、外部方向に沿って交互に積層された高屈折率層21及び低屈折率層22を含み、外部方向は、合わせガラスの第2表面から外に向かう方向である。上記構造を有するナノフィルムは、HUD用ガラスの良好な光透過性を満足しつつ、HUD用ガラスのP偏光反射率を効果的に向上させ、画像の鮮明度を向上させることができる。
【0033】
本出願の実施形態において、高屈折率層は高屈折率材料からなり、高屈折率材料の屈折率は1.9以上であり、高屈折率材料の屈折率は、具体的に1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、またはより高いものとされることができるが、これらに限定されない。高屈折率層の材料および厚さを合理的に設計することにより、ナノフィルムは、優れた機械的性能、化学的性能、および熱安定性を有し、比較的に長い耐用年数を有することができ、これに加えて、ナノフィルムのP偏光反射率をさらに向上させ、他の光学指標を最適化することもできる。本出願のいくつかの実施形態において、高屈折率材料の屈折率は1.9~2.7である。本出願のいくつかの実施形態において、高屈折率層は、複数の高屈折率サブ層を含み、高屈折率サブ層は、具体的には、2層、3層、4層、または5層有することができるが、これらに限定されない。
図4を参照すると、
図4は、本出願のもう1つの実施形態に係るナノフィルムの構造を示す概略図である。
図4において、ナノフィルム20は、高屈折率層21および低屈折率層22を含み、高屈折率層21は、高屈折率サブ層21aおよび高屈折率サブ層21bを含み、高屈折率サブ層21aは、合わせガラス10の第2表面10-2により近い。本出願のいくつかの実施形態において、高屈折率サブ層21aの屈折率は1.9~2.2であり、高屈折率サブ層21bの屈折率は2.3以上である。本出願のいくつかの実施形態において、高屈折率層は、2つ以上の高屈折率サブ層を含み、いずれか1つの高屈折率サブ層の屈折率は、合わせガラス10の第2表面10-2により近い他の高屈折率サブ層の屈折率よりも大きい。例えば、高屈折率層は3つの高屈折率サブ層を含む。3つの高屈折率サブ層は、合わせガラス10の第2表面10-2から離れる方向に沿って、それぞれ、高屈折率サブ層a、高屈折率サブ層b、および高屈折率サブ層cである。高屈折率サブ層aは内側ガラス板に近く、高屈折率サブ層cは低屈折率層に近い。この場合、高屈折率サブ層bの屈折率は、高屈折率サブ層aの屈折率よりも大きく、高屈折率サブ層cの屈折率は、高屈折率サブ層bの屈折率よりも大きい。
【0034】
本出願のいくつかの実施形態において、高屈折率材料は、Zn、Sn、Ti、Nb、Zr、Ni、In、Al、Ce、W、Mo、Sb、Biのうちの少なくとも1種の元素の酸化物を含む。本出願のいくつかの実施形態において、高屈折率材料は、Si、Al、Zr、Y、Ce、Laのうちの少なくとも1種の元素の窒化物または窒素酸化物を含む。本出願のいくつかの実施形態において、高屈折率材料の屈折率は2.35以上であり、高屈折率材料は、TiOx、TiOxNy、またはドープされたTiOxのうちから選ばれた一種または多種であり得る。本出願のいくつかの実施形態において、高屈折率材料の屈折率は1.9以上且つ2.35以下であり、高屈折率材料は、ZnSnOx、Si3N4、ZnO、またはAZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)のうちから選ばれた一種または多種であり得る。
【0035】
本出願の実施形態において、低屈折率層は低屈折率材料からなり、低屈折率材料の屈折率は1.8以下であり、低屈折率材料の屈折率は、具体的には、1.8、1.7、1.6、1.55、1.4、1.3、またはより低いものとされることができるが、これらに限定されない。低屈折率層の材料および厚さを合理的に設計することにより、ナノフィルムは、優れた機械的性能、化学的性能、および熱安定性を有し、比較的に長い耐用年数を有することができ、これに加えて、ナノフィルムのP偏光反射率をさらに向上させ、他の光学指標を最適化することもできる。本出願のいくつかの実施形態において、低屈折率材料の屈折率は1.3~1.8である。本出願のいくつかの実施形態において、低屈折率層は、複数の低屈折率サブ層を含み、低屈折率サブ層は、具体的には、2層、3層、4層または5層有することができるが、これらに限定されない。本出願のいくつかの実施形態において、低屈折率材料の屈折率は、1.55以下であり、低屈折率材料は、SiO2、Al2O3、またはMgF2のうちから選ばれた一種または多種であり得る。本出願のいくつかの実施形態において、低屈折率材料は、減反射機能を有する材料を含み、減反射機能を有する材料は、多孔質SiO2または多孔質Al2O3であってもよい。本出願のいくつかの実施形態において、低屈折率層は、モスアイフィルム、グラデーションフィルムなどの段階的な屈折率を有するフィルム層である。
【0036】
本出願のいくつかの実施形態において、高屈折率層および低屈折率層はいずれも複数あり、すなわち、ナノフィルムは、少なくとも2つの高屈折率層および少なくとも2つの低屈折率層を含む。
図5を参照すると、
図5は、本出願のもう1つの実施形態に係るナノフィルムの構造を示す概略図である。ナノフィルムは、2つの高屈折率層および2つの低屈折率層を含む。高屈折率層および低屈折率層が交互に積層されており、すなわち、高屈折率層21、低屈折率層22、高屈折率層23および低屈折率層24が交互に積層されている。
【0037】
走行中、安全運転を確保するために、HUD用ガラスは、運転者が走行情報を取得しやすいように、鮮明な画像を呈することが望ましく、同時に、HUD用ガラスを通して、車外の状況が鮮明に見られることが望ましい。本出願のナノフィルムは、比較的に高いP偏光反射率Rpを有するため、表示領域において鮮明に画像を呈することができる。しかし、ナノフィルムが比較的に高いP偏光反射率Rpを有する場合、ナノフィルムも比較的に高い可視光反射率を有するため、HUD用ガラスを自動車のフロントガラスとして使用するとき、フロントガラスの内面にミラー効果が生じることで、車内の物体がフロントガラスの内面に映り込み、それによって、運転者の視覚的快適性さらに運転の安全性に影響を与えることがある。上記問題を解決するために、本出願の発明者がHUD用ガラスを改良し、それによって、HUD用ガラスが鮮明に画像を呈しつつ、比較的に良い視覚効果を有することができる。本出願のHUD用ガラスにおいて、合わせガラスの第2表面は、表示領域(HUD領域)および非表示領域(LR(low reflectivity)領域)を有する。表示領域は、投影ユニットがP偏光を投影する領域、すなわち、走行情報が表示される領域を指し、非表示領域は、HUD用ガラスにおいて、走行情報を表示する必要のない領域を指す。本出願の実施形態において、非表示領域の可視光反射率は、表示領域の可視光反射率よりも小さい。
【0038】
本出願の実施形態において、合わせガラスの第2表面の表示領域にはナノフィルムが設けられており、このナノフィルムは、表示領域のP偏光反射率を向上させることができ、ひいては、合わせガラスの前方に鮮明なHUD画像を表示することができる。本出願の実施形態において、表示領域のP偏光反射率は10%以上であり、P偏光の入射角は55°~75°であり、P偏光の入射角は、具体的には、55°、60°、65°、70°、または75°であり得るが、これらに限定されない。本出願において、表示領域のP偏光反射率は、具体的には、10%、13%、15%、20%、または25%とされることができるが、これらに限定されない。本出願の実施形態において、55°~75°で入射したP偏光に対する非表示領域の反射率は、55°~75°で入射したP偏光に対する表示領域の反射率よりも小さい。
【0039】
本出願のいくつかの実施形態において、HUD用ガラスは、表示領域における可視光透過率が70%よりも大きく、これにより、運転の安全性をできるかぎり確保することができる。本出願のいくつかの実施形態において、表示領域がHUD用ガラスの一部しか占めていないことを考慮して、表示領域が比較的に高い可視光反射率と比較的に低い可視光透過率を有しても、それはHUD用ガラス全体に与える視覚的影響が比較的に小さい。HUD用ガラスの表示領域における可視光透過率は50%~70%であってもよく、これにより、表示領域の画像の鮮明度を向上させつつ、運転の安全性を確保することができる。本出願の実施形態では、HUD用ガラスの非表示領域における可視光透過率は、70%以上である。
【0040】
本出願の実施形態において、表示領域の可視光反射率は10%以上である。本出願のいくつかの実施形態において、表示領域の可視光反射率RHは10%~30%であり、表示領域の可視光反射率は、具体的には、10%、15%、20%、25%、または30%であってもよいが、これらに限定されない。本出願の実施形態において、非表示領域の可視光反射率は1%~15%である。本出願のいくつかの実施態様において、非表示領域の可視光反射率は1%~5%であり、非表示領域の可視光反射率は、具体的には1%、2%、3%、4%、または5%とされることができるが、これらに限定されない。本出願のいくつかの実施態様において、非表示領域の可視光反射率は6%~8%であり、非表示領域の可視光反射率は、具体的には6%、7%、または8%とされることができるが、これらに限定されない。本出願のいくつかの実施態様態様では、非表示領域の可視光反射率は9%~15%であり、非表示領域の可視光反射率は、具体的には9%、10%、11%、12%、13%、14%、または15%とされることができるが、これらに限定されない。
【0041】
本出願では、表示領域の可視光反射率と非表示領域の可視光反射率との差は2%以上である。表示領域の可視光反射率と非表示領域の可視光反射率との差は、具体的には、2%、5%、7%、10%、または15%であってもよいが、これらに限定されない。表示領域の可視光反射率と非表示領域の可視光反射率との差が大きいほど、HUD用ガラスの快適性が向上するようになり、HUDの画像が鮮明になる。
【0042】
本出願のいくつかの実施形態において、合わせガラスの第2表面の非表示領域には、ナノフィルムが設けられず、非表示領域は露出された合わせガラスであり、すなわち、合わせガラスの第2表面において、表示領域のみにナノフィルムが設けられ、ナノフィルムは第2表面の一部の領域のみを覆っている。この構造により、ナノフィルムのミラー効果による視覚への干渉を回避することができる。
図6を参照すると、
図6は、本出願のもう1つの実施形態に係るHUD用ガラスの構造を示す概略図である。
図6において、合わせガラス10の第2表面10-2にナノフィルム20が設けられ、ナノフィルム20の面積は第2表面10-2の面積よりも小さい。非表示領域が露出された合わせガラスである場合、非表示領域の可視光反射率R
Lは、合わせガラスの第2表面の可視光反射率である。本出願の実施形態において、合わせガラスの第2表面の可視光反射率は6%~8%である。合わせガラスの第2表面の可視光反射率は、具体的には、6%、6.5%、7%、または8%であってもよいが、これらに限定されない。
【0043】
本出願のいくつかの実施形態において、非表示領域にもナノフィルムが設けられている。非表示領域の可視光反射率が表示領域の可視光反射率よりも小さいことを確保するために、非表示領域のナノフィルムと表示領域のナノフィルムとは同じではない。ナノフィルムはある程度の反射色を有するので、非表示領域のナノフィルムは、ガラス全体の外観の色の整合性を破壊し、HUD用ガラスの視覚効果にも影響を与える可能性がある。表示領域と非表示領域との間の色差をなくすために、本出願のいくつかの実施形態において、表示領域の色のa値と非表示領域の色のa値との差の絶対値は2以下である。例えば、表示領域の色のa値が-3であるとき、非表示領域の色は(-5)~(-1)である。本出願のいくつかの実施形態において、表示領域の色のb値と非表示領域の色のb値との差の絶対値は2以下である。例えば、表示領域の色のb値が-8であるとき、非表示領域の色のb値は(-10)~(-6)である。表示領域の色のa値と非表示領域の色のa値との差の絶対値、及び表示領域の色のb値と非表示領域の色のb値との差の絶対値が小さいほど、表示領域と非表示領域との色差が小さくなり、HUD用ガラスの外観の整合性が良好になる。ここで、Lab値はLabカラーモデルに基づくものであり、L値、a値、およびb値は、それぞれLab値(またはLab色彩値)におけるL、a、およびbに対応し、Lは輝度チャンネルであり、aおよびbは2つの色彩チャンネルである。本出願のいくつかの実施形態において、表示領域の色のa値と非表示領域の色のa値とは2以下であり、好ましくは、表示領域の色のa値と非表示領域の色のa値とは(-8)~0である。表示領域の色のb値と非表示領域の色のb値とは2以下であり、好ましくは、表示領域の色のb値と非表示領域の色のb値とは(-12)~0である。上記範囲内のa値及びb値を有するナノフィルムは、中間色を呈するため、HUD用ガラスは比較的に良好な視覚効果を有することができる。
【0044】
本出願において、非表示領域にナノフィルムが設けられている場合、表示領域のナノフィルムは第1ナノフィルムであり、非表示領域のナノフィルムは第2ナノフィルムである。第2ナノフィルムと第1ナノフィルムとは、各層の材料、各層の配列、各層の厚さのうち、少なくとも1つが異なる。生産製造を容易にするために、好ましくは、第2ナノフィルムと第1ナノフィルムとは、各層の材料および各層の配列が同じであり、各層の厚さのうち、少なくとも一層の厚さが異なる。本出願の実施形態において、第1ナノフィルムの可視光反射率は第2ナノフィルムの可視光反射率よりも大きく、第1ナノフィルムのP偏光反射率は第2ナノフィルムのP偏光反射率よりも大きい。
図7を参照すると、
図7は、本出願のもう1つの実施形態に係るHUD用ガラスの構造を示す概略図である。
図7において、ナノフィルム20は、第1ナノフィルム20-1及び第2ナノフィルム20-2を含み、第1ナノフィルム20-1は、合わせガラスの第2表面10-2の表示領域に設けられており、第2ナノフィルム20-2は、合わせガラスの第2表面10-2の非表示領域に設けられている。第2ナノフィルムの可視光反射率が低いほど、車両走行中の安全性及び快適性を向上させることに役立つ。本出願のいくつかの実施形態において、第1ナノフィルムの可視光反射率と第2ナノフィルムの可視光反射率との差は2%以上である。理解できるように、第1ナノフィルムが表示領域に設けられており、第2ナノフィルムが非表示領域に設けられているので、表示領域の可視光反射率R
Hと非表示領域の可視光反射率R
Lとの差は2%以上である。R
HとR
Lとの差が大きいほど、HUD用ガラスの視覚効果がよりよく、表示領域は走行情報を鮮明に表示でき、非表示領域を通して車外の状況をはっきりと見ることができる。表示領域の可視光反射率R
Hと非表示領域の可視光反射率R
Lとの差は、具体的には、2%、3%、4%、5%、6%、またはより高いものであってもよいが、これらに限定されない。本出願のいくつかの実施形態において、表示領域の可視光反射率は16%であり、非表示領域の可視光反射率は14%であり、表示領域の可視光反射率R
Hと非表示領域の可視光反射率R
Lとの差は2%である。
【0045】
本出願のいくつかの実施形態において、第2ナノフィルムの厚さは第1ナノフィルムの厚さよりも小さい。第2ナノフィルムの厚さが比較的に薄い場合、第2ナノフィルムの可視光反射率は低下するようになる。本出願のいくつかの実施形態において、第1ナノフィルムは、合わせガラスの第2表面から外に向かって交互に設けられた、第1の高屈折率層および第1の低屈折率層を含む。第2ナノフィルムは、合わせガラスの第2表面から外に向かって交互に設けられた、第2の高屈折率層および第2の低屈折率層を含む。第2の高屈折率層の厚さは、第1の高屈折率層の厚さよりも小さい。本出願のいくつかの実施形態において、第2の低屈折率層の厚さは、第1の低屈折率層の厚さよりも小さい。
図8を参照すると、
図8は、本出願の1つの実施形態に係るナノフィルムの構造を示す概略図である。ナノフィルムは、第1ナノフィルム20-1および第2ナノフィルム20-2を含み、第1ナノフィルム20-1は、第1の高屈折率層21-1および第1の低屈折率層22-1を含み、第2ナノフィルム20-2は、第2の高屈折率層21-2および第2の低屈折率層22-2を含む。ここで、第2の高屈折率層21-2の厚さは、第1の高屈折率層21-1の厚さよりも小さく、第2の低屈折率層22-2の厚さは、第1の低屈折率層22-1の厚さよりも小さい。上記構造配置により、第2ナノフィルムの可視光反射率を効果的に低下させ、第2ナノフィルムの可視光反射率を第1ナノフィルムの可視光反射率より低くし、第1ナノフィルムと第2ナノフィルムとの色差をより小さくすることができる。
【0046】
本出願において、第1の高屈折率層が複数の第1の高屈折率サブ層を含む場合、第1の高屈折率層の厚さは、複数の第1の高屈折率サブ層の厚さの合計を指す。同様に、第1の低屈折率層が複数の第1の低屈折率サブ層を含む場合、第1の低屈折率層の厚さは、複数の第1の低屈折率サブ層の厚さの合計を指す。本出願のいくつかの実施形態において、第1の低屈折率層は、少なくとも2つの第1の低屈折率サブ層を含み、第2の低屈折率層は、少なくとも2つの第2の低屈折率サブ層を含み、第1の低屈折率層のうち合わせガラスから最も遠い第1の低屈折率サブ層の厚さは、第2の低屈折率層のうち合わせガラスから最も遠い第2の低屈折率サブ層の厚さよりも大きい。
図9を参照すると、
図9は、本出願のもう1つの実施形態に係るナノフィルムの構造を示す概略図である。ナノフィルムは、第1ナノフィルム20-1および第2ナノフィルム20-2を含む。第1ナノフィルム20-1は、第1の高屈折率層21-1および第1の低屈折率層22-1を含み、第1の低屈折率層22-1は、第1の低屈折率サブ層22a-1および第1の低屈折率サブ層22b-1を含む。第1の低屈折率サブ層22b-1は合わせガラスからより離れている。第2ナノフィルム20-2は、第2の高屈折率層21-2および第2の低屈折率層22-2を含み、第2の低屈折率層22-2は、第2の低屈折率サブ層22a-2および第2の低屈折率サブ層22b-2を含む。第2の低屈折率サブ層22b-2は合わせガラスからより離れており、第2の低屈折率サブ層22b-2の厚さは、第1の低屈折率サブ層22b-1の厚さよりも小さい。
【0047】
本出願のいくつかの実施形態において、第1の高屈折率層は、少なくとも2つの第1の高屈折率サブ層を含み、第2の高屈折率層は、少なくとも2つの第2の高屈折率サブ層を含み、第1の高屈折率層のうち合わせガラスに最も近い第1の高屈折率サブ層の厚さは、第2の高屈折率層のうち合わせガラスに最も近い第2の高屈折率サブ層の厚さよりも大きい。
図10を参照すると、
図10は、本出願のもう1つの実施形態に係るナノフィルムの構造を示す概略図である。ナノフィルムは、第1ナノフィルム20-1および第2ナノフィルム20-2を含む。第1ナノフィルム20-1は、第1の高屈折率層21-1および第1の低屈折率層22-1を含み、第1の高屈折率層21-1は、第1の高屈折率サブ層21a-1および第1の高屈折率サブ層21b-1を含む。第1の高屈折率サブ層21a-1は、合わせガラスにより近い。第2ナノフィルム20-2は、第2の高屈折率層21-2および第2の低屈折率層22-2を含み、第2の高屈折率層21-2は、第2の高屈折率サブ層21a-2および第2の高屈折率サブ層21b-2を含む。第2の高屈折率サブ層21a-2は合わせガラスにより近く、第2の高屈折率サブ層21a-2の厚さは、第1の高屈折率サブ層21a-1の厚さよりも小さい。
【0048】
本出願は、第1ナノフィルム及び第2ナノフィルムにおける高屈折率層及び低屈折率層の厚さを調整することにより、第2ナノフィルムの可視光反射率を第1ナノフィルムの可視光反射率より低くすることができ、それによって、HUD用ガラスでの投影及び低反射率を両立させる効果を実現し、運転の安全性及び快適性を向上させることができる。
【0049】
本出願のいくつかの実施形態において、合わせガラスの第2表面は、表示領域と非表示領域との間に位置する過渡領域をさらに有し、過渡領域の可視光反射率は、非表示領域の可視光反射率よりも大きく、かつ、表示領域の可視光反射率よりも小さい。表示領域と非表示領域との間に過渡領域を設けることで、表示領域と非表示領域との色がある程度のグラデーションを持つことができ、それによって、HUD用ガラスは良好な外観の協調性を持つことができる。本出願の実施形態において、過渡領域の可視光反射率は、規則的に変化してもよく、例えば、表示領域から非表示領域への方向において、過渡領域の可視光反射率は低減する傾向がある。過渡領域の可視光反射率は、不規則的に変化してもよい。
【0050】
本出願のいくつかの実施形態において、HUD用ガラスは、さらに、防指紋フィルム、断熱フィルム、電気加熱フィルム、紫外線カットフィルム、防曇フィルムのうちの一種または多種を含む。本出願のいくつかの実施形態において、防指紋フィルムは、合わせガラスの第2表面10-2に設けられ、かつ少なくとも表示領域を覆っている。好ましくは、防指紋フィルムは、指紋等による表示領域の汚れを防止するために、表示領域と非表示領域の両方を覆っており、それにより、表示領域がより高い品質を有するHUDを実現できる。本出願の実施形態において、断熱フィルムは、合わせガラスの外側ガラス板の第2表面に、合わせガラスの内側ガラス板の第2表面に、又は外側ガラス板の第2表面と内側ガラス板の第2表面との間に設けられていてもよい。断熱フィルムは、単重銀系断熱フィルム、二重銀系断熱フィルム、三重銀系断熱フィルム、四重銀系断熱フィルム、断熱/熱吸収PVB、およびNiCr、TiN等の金属材料又は非金属材料に基づく断熱フィルムのうちの一種または多種であってもよい。単重銀系断熱フィルム、二重銀系断熱フィルム、三重銀系断熱フィルム、四重銀系断熱フィルムは、それぞれ、1つの銀層、2つの銀層、3つの銀層、4つの銀層を有する透明ナノ断熱フィルムを指す。透明ナノ断熱フィルムは、銀層に加えて少なくとも2層の誘電体層を含む。断熱フィルムは、車内の乗り心地を向上させることができる。単重銀系断熱フィルム、二重銀系断熱フィルム、三重銀系断熱フィルム及び四重銀系断熱フィルムは、マグネトロンスパッタリング堆積により、合わせガラスの外側ガラス板の第2表面又は合わせガラスの内側ガラス板の第2表面に直接配置されることができ、又は中間層の表面に配置されることができる。中間層は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)であってもよい。その後、合わせガラスの外側ガラス板の第2表面と合わせガラスの内側ガラス板の第2表面との間に、単重銀系断熱フィルム、二重銀系断熱フィルム、三重銀系断熱フィルム及び四重銀系断熱フィルムが配置された中間層を配置する。
【0051】
本出願のいくつかの実施形態において、電気加熱フィルムは、合わせガラスの外側ガラス板の第2表面に、合わせガラスの内側ガラス板の第2表面に、または、外側ガラス板の第2表面および内側ガラス板の第2表面に設けられる。電気加熱フィルムは、単重銀系電気加熱フィルム、二重銀系電気加熱フィルム、三重銀系電気加熱フィルム、四重銀系電気加熱フィルム、五重銀系電気加熱フィルムのうちのいずれか一種であってもよい。外側ガラス板の第2表面と内側ガラス板の第2表面との間に少なくとも2つのバスバーを設けることで、給電電源の電流を電気加熱フィルムに入力することができ、それにより、電気加熱フィルムを発熱させて合わせガラスを加熱して、霜、曇り、さらに、氷、雪の取り除き機能を実現し、運転安全性を一段と向上させ、表示領域が環境の干渉を受けてHUDを実現できないことを防止することができる。ここで、単重銀系電気加熱フィルム、二重銀系電気加熱フィルム、三重銀系電気加熱フィルム、四重銀系電気加熱フィルム、五重銀系電気加熱フィルムは、それぞれ1つの銀層、2つの銀層、3つの銀層、4つの銀層、5つの銀層を有する透明ナノ導電膜を指す。透明ナノ導電膜は、銀層に加えて少なくとも2つの誘電体層を含む。
【0052】
本出願のいくつかの実施形態において、断熱/熱吸収PVBおよび紫外線カットフィルムは、外側ガラス板の第2表面と内側ガラス板の第2表面との間に設けられてもよい。断熱/熱吸収PVBおよび紫外線カットフィルムは、標準PVBに赤外線反射成分、赤外線吸収成分、および/または紫外線吸収成分を添加することで得られることができる。
【0053】
本出願のいくつかの実施形態において、防曇フィルムは、合わせガラスの第2表面10-2に設けられ、かつ、少なくとも表示領域を覆っている。好ましくは、防曇フィルムは、表示領域と非表示領域の両方を覆っている。防曇フィルムは、表示領域のHUD機能の実現が水ミスト等に影響されることを防止することができ、防曇フィルムはさらに、合わせガラスに取り付けられたセンサの信号に対する水ミストの影響を一段と低減し、カメラ、レーザーレーダー等のセンサの認識精度を確保することができる。
【0054】
本出願では、表示領域の位置および大きさと非表示領域の位置および大きさをニーズに応じて調整することができる。
図11を参照すると、
図11は、本出願の1つの実施形態に係る合わせガラスの第2表面の仕切りを示す概略図である。
図11において、合わせガラスの第2表面は、表示領域31と非表示領域32とを含み、表示領域31は、HUD用ガラスの中部に位置する。
図12を参照すると、
図12は、本出願のもう1つの実施形態に係る合わせガラスの第2表面の仕切りを示す概略図である。
図12において、合わせガラスの第2表面は、2つの表示領域31を含み、表示領域31以外の領域は、非表示領域32である。ナノフィルムは、近くにある物体に対するミラー効果がより顕著であるため、すなわち、HUD用ガラスの内面に近い物体の映り込みがより鮮明であるため、HUD用ガラスの底部は、非表示領域として設けられる。
図13を参照すると、
図13は、本出願のもう1つの実施形態に係る合わせガラスの第2表面の仕切りを示す概略図である。
図13において、非表示領域32は、第2表面の底部に設けられている。
図14を参照すると、
図14は、本出願のもう1つの実施形態に係る合わせガラスの第2表面の仕切りを示す概略図である。
図14における第2表面は、表示領域31と、非表示領域32と、表示領域31と非表示領域32との間に位置する過渡領域33とを含む。
図15を参照すると、
図15は、本出願のもう1つの実施形態に係る合わせガラスの第2表面の仕切りを示す概略図である。
図15における第2表面は、2つの表示領域31と3つの非表示領域32とを含み、表示領域は第2表面の中間領域に位置する。
【0055】
本出願において、表示領域の面積は、内側ガラス板の第2表面の面積よりも小さく、表示領域の面積は、ニーズに応じて調整されることができる。本出願のいくつかの実施形態において、表示領域の面積は、25mm2以上であり、表示領域の面積は、具体的には、50mm2、100mm2、200mm2、500mm2、1000mm2、5000mm2または10000mm2などであってもよいが、これらに限定されない。表示領域の面積が25mm2未満であると、投影画像が比較的に小さく、投影できる走行情報が比較的に少なく、使用上不都合が生じる。本出願のいくつかの実施形態において、拡張現実型ヘッドアップディスプレイ(Augmented Reality Head-up Display、AR-HUD)を実現するために、表示領域の面積は500mm2以上であり、表示領域の面積は例えば120000mm2であってもよい。
【0056】
本出願に係るHUD用ガラスは、表示領域において鮮明な画像を呈することができる一方、非表示領域において可視光反射率が小さいことにより、ミラー効果を弱め、車内での映り込みを低減し、安全運転を実現することができる。
【0057】
本出願のHUD用ガラスは、様々な方法で作製されることができる。本出願のいくつかの実施形態において、HUD用ガラスは、薄膜パターニング法(除膜法)により作製される。除膜法とは、既に作製されたフィルム層の一部を除去することで、あるフィルム層の厚さを薄くし、またはあるフィルム層を直接除去することを指す。例えば、まず、合わせガラスの第2表面に第1ナノフィルムを作製し、表示領域と非表示領域に第1ナノフィルムを形成した後、非表示領域の第1ナノフィルムに対して除膜を行って非表示領域に要求を満たさせ、その後、非表示領域に第2ナノフィルムを作製することができる。本出願のいくつかの実施形態において、まず、合わせガラスの第2表面に第2ナノフィルムを作製し、表示領域及び非表示領域に第2ナノフィルムを形成した後、表示領域の第2ナノフィルムに対して除膜を行って第1ナノフィルムを作製し、表示領域に要求を満たさせることができる。
【0058】
本出願の実施形態において、除膜法は、ドライエッチング法(例えば、レーザーなど)、ウェットエッチング法(例えば、エッチングペースト、酸エッチングなど)、マスキング法(例えば、剥離可能な接着剤、カバー板など)のうちの一種または多種を含む。具体的な作製工程では、フィルムの材料に応じて異なる除膜工程を使用することができる。本出願のいくつかの実施形態において、第1ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(38nm)/TiO2(52nm)/SiO2(115nm)(ZnSnOx(38nm)はガラスに近い側にある)である。この場合、HUD用ガラスはマスキング法によって作製される。具体的には、カバー板を用いて非表示領域を覆い、表示領域に第1ナノフィルムを作製し、カバー板を取り外してHUD用ガラスを取得する。本出願のいくつかの実施形態において、第2ナノフィルムは、ZnSnOx(18nm)/SiO2(28nm)/ZnSnOx(102nm)/SiO2(90nm)からなるフィルム系である。表示領域と非表示領域に同時に第2ナノフィルムを作製し、その後、レーザーを用いて表示領域のフィルム層を除去し、第2ナノフィルムで覆われていない表示領域を取得し、その後、カバー板を用いて非表示領域を覆い、表示領域に第1ナノフィルムを作製し、HUD用ガラスを取得する。第1ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(38nm)/TiO2(52nm)/SiO2(115nm)である。
【0059】
本出願のいくつかの実施形態において、第1ナノフィルムは、ZnSnOx(14.4nm)/TiO2(58.6nm)/SiO2(112.4nm)(ZnSnOx(14.4nm)はガラスに近い側にある)である。第2ナノフィルムはZnSnOx(14.4nm)/SiO2(112.4nm)である。HUD用ガラスは以下のように作製されることができる。まず、合わせガラスの第2表面にZnSnOxフィルムとTiO2フィルムを堆積させ、次に、非表示領域にTiO2フィルムがないように、非表示領域のTiO2フィルムを除去し、次に、表示領域と非表示領域に同時にSiO2フィルムを堆積させ、HUD用ガラスを取得する。
【0060】
本出願のいくつかの実施形態において、第1ナノフィルムはZnSnOx(38nm)/TiO2(52nm)/SiO2(115nm)であり、第2ナノフィルムはZnSnOx(47nm)/TiO2(52nm)/SiO2(115nm)である。HUD用ガラスは以下のように作製されることができる。まず、合わせガラスの第2表面に47nmのZnSnOxを堆積させ、レーザードライエッチング等の除膜法を用いて表示領域のZnSnOxを9nm除去し、次いでTiO2(52nm)およびSiO2(115nm)を作製し、表示領域に第1ナノフィルムを取得し、非表示領域に第2ナノフィルムを取得する。
【0061】
本出願のいくつかの実施形態において、第1ナノフィルムはZnSnOx(38nm)/TiO2(52nm)/SiO2(115nm)であり、第2ナノフィルムはZnSnOx(38nm)/TiO2(52nm)/SiO2(110nm)である。HUD用ガラスは以下のように作製されることができる。まず、合わせガラスの第2表面に第1ナノフィルムを作製し、エッチングペーストまたはレーザーエッチング法を用いて、非表示領域から厚さ5nmのSiO2を除去し、第2ナノフィルムを取得する。
【0062】
本出願のいくつかの実施形態において、不均一コーティング法を用いてHUD用ガラスを作製する。自動車のフロントガラスの面積は一般に1.2m
2よりも大きいので、スパッタリングなどの真空コーティング法を使用する場合、比較的に大きなコーティングチャンバーが必要となり、また、コーティングチャンバーに送り込まれる気体は一定の割合に従って分布されるので、気体の分布割合を変更することでフィルム層の堆積厚さを調節することができ、さらに、合わせガラスの表面に異なるフィルム層を形成することができる。本出願のいくつかの実施形態において、第1ナノフィルムは、ZnSnO
x(38nm)/TiO
2(52nm)/SiO
2(115nm)であり、第2ナノフィルムは、ZnSnO
x(38nm)/TiO
2(52nm)/SiO
2(105nm)であり、ZnSnO
x(38nm)は、合わせガラスに近い側にある。HUD用ガラスは、次のように作製されることができる。まず、合わせガラスの第2表面にZnSnO
x(38nm)およびTiO
2(52nm)を作製し、SiO
2フィルムを作製する際、正常に表示領域に気体を送り込んでZnSnO
x(38nm)/TiO
2(52nm)の表面に厚さ115nmのSiO
2フィルムを形成し、非表示領域に酸素気体の流量を増加させ、コーティング終了時に、非表示領域のSiO
2フィルムの厚さは、表示領域のSiO
2フィルムの厚さより小さく、非表示領域のSiO
2フィルムの厚さは105nmである。
図16を参照すると、
図16は、本出願のもう1つの実施形態に係るHUD用ガラスの構造を示す概略図である。第2ナノフィルム20-2は、合わせガラス10の第2表面10-2の中部に位置し、第1ナノフィルム20-1は、合わせガラス10の第2表面10-2の縁部に位置する。この構造を有するHUD用ガラスは、不均一コーティング法により作製されることができる。コーティングチャンバー内の気体が一定の割合で分布されるため、第2ナノフィルムの厚さが段階的に変化し、これはHUD用ガラスの外観の整合性を向上させることに役立つ。
【0063】
本出願は、HUDシステムをさらに提供する。HUDシステムは、P偏光を生成するための投影ユニットと、本出願のHUD用ガラスとを含む。P偏光は表示領域に入射する。
図17を参照すると、
図17は、本出願の1つの実施形態に係るHUDシステムの構造を示す概略図である。HUDシステムは、投影ユニット200と、本出願に係るHUD用ガラス100とを含み、HUD用ガラス100は、合わせガラス10とナノフィルム20とを含む。投影ユニット200は、速度、エンジン回転数、燃費、タイヤ空気圧、動的ナビゲーション、ナイトビジョン、ライブマップ等の走行中の関連文字および画像情報を、HUD用ガラスに投影するように用いられる。それによって、これらの情報は観察者の目300に観察される。具体的には、投影ユニット200はP偏光を生成することができる。P偏光Aはナノフィルム20に入射し、ナノフィルム20は偏光の一部を直接反射して反射光A1を形成し、反射光A1は観察者の目300によって直接観察されることができ、これにより、観察者は投影された情報を取得することができる。同時に、本出願の非表示領域は、比較的に低い可視光反射率有し、ミラー効果が比較的に弱いため、非表示領域を通して車外の状況をはっきりと見ることができ、運転中の安全性および快適性を確保することができる。
【0064】
本出願の実施形態において、ナノフィルム20に入射するP偏光の入射角は55°~75°であり、ナノフィルム20のP偏光反射率は10%以上であり、これにより、HUDを実現し、さらにはAR-HUDを実現することができる。本出願の実施形態において、投影ユニット200の位置及びP偏光の入射角は、観察者の位置及び高さに応じて調整され得る。本出願では、投影ユニット200によって生成されるP偏光の割合は、80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらには100%である。
【0065】
以下、複数の実施例に基づいて本出願の技術的解決策をさらに説明する。
<実施例1>
【0066】
HUD用ガラスの作製方法は、次の内容を含む。
【0067】
第1のガラス板を提供し、第1のガラス板をコーティング生産ラインに移送し、第1のガラス板の表面に、厚さ38nmのZnSnOxフィルム、厚さ52nmのTiO2フィルム、厚さ115nmのSiO2フィルムを順に堆積させて第1ナノフィルムを形成する。レーザーを用いて、非表示領域の第1ナノフィルムをエッチングして除膜を行い、非表示領域に厚さ10nmのZnSnOxフィルムを残して第2ナノフィルムを取得する。
【0068】
表示領域の第1ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(38nm)/TiO2(52nm)/SiO2(115nm)である。
【0069】
非表示領域の第2ナノフィルムの構造はZnSnOx(10nm)である。
【0070】
第1のガラス板にナノフィルムを形成した後、第1のガラス板を合わせガラスの内側ガラス板として使用し、フーイャォ・グラス・インダストリー・グループ・カンパニー・リミテッド(会社名であり、以下、フーイャォグループと略す)製の厚さ2.1mmのSG(solar green)ガラスを外側ガラス板として使用し、自動車用ガラスの高温成形工程に従って外側ガラス板と内側ガラス板に対して曲げ成形を行い、厚さ0.76mmの無色PVBフィルムを用意し、このPVBフィルムと、曲げ成形された外側ガラス板および内側ガラス板とを仮積層し、第1のガラス板のナノフィルムはPVBフィルムから離れており、オートクレーブにおいて高圧で積層した後、HUD用ガラスを取得する。
<実施例2>
【0071】
HUD用ガラスの作製方法は、次の内容を含む。
【0072】
第1のガラス板を提供し、第1のガラス板をコーティング生産ラインに移送し、第1のガラス板の表面に、厚さ38nmのZnSnOxフィルム、厚さ52nmのTiO2フィルム、厚さ115nmのSiO2フィルムを順に堆積させて第1ナノフィルムを形成する。
【0073】
メルク(Merck、会社名)製のエッチングペーストを用いて、非表示領域の第1ナノフィルムをエッチングし、非表示領域の第1ナノフィルムを除去する。すなわち、非表示領域は露出されたガラス表面である。
【0074】
表示領域の第1ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(38nm)/TiO2(52nm)/SiO2(115nm)である。
【0075】
非表示領域:露出されたガラス表面。
【0076】
第1のガラス板を合わせガラスの内側ガラス板として使用し、フーイャォグループ製の厚さ2.1mmのSGガラスを外側ガラス板として使用し、自動車用ガラスの高温成形工程に従って外側ガラス板と内側ガラス板に対して曲げ成形を行い、厚さ0.76mmの無色PVBフィルムを用意し、このPVBフィルムと、曲げ成形された外側ガラス板および内側ガラス板とを仮積層し、第1のガラス板のナノフィルムはPVBフィルムから離れており、オートクレーブにおいて高圧で積層した後、HUD用ガラスを取得する。
<実施例3>
【0077】
HUD用ガラスの作製方法は、次の内容を含む。
【0078】
第1のガラス板を提供し、第1のガラス板をコーティング生産ラインに移送し、第1のガラス板の表面に、まず厚さ14.4nmのZnSnOxフィルムを堆積させ、カバー板を用いて非表示領域をカバーし、表示領域に厚さ58.6nmのTiO2フィルムを堆積させ、カバー板を取り外して表示領域および非表示領域に厚さ112.4nmのSiO2フィルムを堆積させ、第1ナノフィルムおよび第2ナノフィルムを形成する。
【0079】
表示領域の第1ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(14.4nm)/TiO2(58.6nm)/SiO2(112.4nm)である。
【0080】
非表示領域の第2ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(14.4nm)/SiO2(112.4nm)である。
【0081】
第1のガラス板を合わせガラスの内側ガラス板として使用し、フーイャォグループ製の厚さ2.1mmのSGガラスを外側ガラス板として使用し、自動車用ガラスの高温成形工程に従って外側ガラス板と内側ガラス板に対して曲げ成形を行い、厚さ0.76mmの無色PVBフィルムを用意し、このPVBフィルムと、曲げ成形された外側ガラス板および内側ガラス板とを仮積層し、第1のガラス板のナノフィルムはPVBフィルムから離れており、オートクレーブにおいて高圧で積層した後、HUD用ガラスを取得する。
<実施例4>
【0082】
HUD用ガラスの作製方法は、次の内容を含む。
【0083】
第1のガラス板を提供し、第1のガラス板をコーティング生産ラインに移送し、第1のガラス板の表面に、厚さ25nmのZnSnOxフィルム、厚さ10nmのSiO2フィルム、厚さ70nmのTiO2フィルム、および厚さ110nmのSiO2フィルムを順に堆積させ、不均一コーティング法を用いてTiO2フィルムを作製し、酸素気体の流量を制御することでコーティングチャンバー内の酸素気体の分布割合を調整し、ZnSnOx/SiO2フィルムの表面に、異なる厚さのTiO2フィルムを堆積させる。表示領域のTiO2フィルムの厚さは60nmであり、非表示領域のTiO2フィルムの厚さは70nmであり、過渡領域のTiO2フィルムの厚さは60nmより大きく70nm未満である。
【0084】
表示領域の第1ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(25nm)/SiO2(10nm)/TiO2(60nm)/SiO2(110nm)である。
【0085】
過渡領域のナノフィルムの構造はZnSnOx(25nm)/SiO2(10nm)/TiO2(60-70nm)/SiO2(110nm)である。
【0086】
非表示領域の第2ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(25nm)/SiO2(10nm)/TiO2(70nm)/SiO2(110nm)である。
【0087】
第1のガラス板を合わせガラスの内側ガラス板として使用し、フーイャォグループ製の厚さ2.1mmのSGガラスを外側ガラス板として使用し、自動車用ガラスの高温成形工程に従って外側ガラス板と内側ガラス板に対して曲げ成形を行い、厚さ0.76mmの無色PVBフィルムを用意し、このPVBフィルムと、曲げ成形された外側ガラス板および内側ガラス板とを仮積層し、第1のガラス板のナノフィルムはPVBフィルムから離れており、オートクレーブにおいて高圧で積層した後、HUD用ガラスを取得する。
<実施例5>
【0088】
HUD用ガラスの作製方法は、次の内容を含む。
【0089】
第1のガラス板を提供し、第1のガラス板をコーティング生産ラインに移送し、第1のガラス板の表面に、厚さ10nmのTiO2フィルム、厚さ45nmのSiO2フィルム、および厚さ20nmのTiO2フィルムを順に堆積させ、カバー板を用いて非表示領域を覆い、表示領域に厚さ150nmのSiO2フィルム、厚さ46.5nmのTiO2フィルム、および厚さ110nmのSiO2フィルムを順に堆積させ、そしてカバー板を取り外して、第1ナノフィルムと第2ナノフィルムを取得する。
【0090】
表示領域における第1ナノフィルムの構造は、TiO2(10nm)/SiO2(45nm)/TiO2(20nm)/SiO2(150nm)/TiO2(46.5nm)/SiO2(110nm)である。
【0091】
非表示領域における第2ナノフィルムの構造は、TiO2(10nm)/SiO2(45nm)/TiO2(20nm)である。
【0092】
第1のガラス板を合わせガラスの内側ガラス板として使用し、フーイャォグループ製の厚さ2.1mmのグリーンガラスを外側ガラス板として使用し、自動車用ガラスの高温成形工程に従って外側ガラス板と内側ガラス板に対して曲げ成形を行い、厚さ0.76mmの無色PVBフィルムを用意し、このPVBフィルムと、曲げ成形された外側ガラス板および内側ガラス板とを仮積層し、第1のガラス板のナノフィルムはPVBフィルムから離れており、オートクレーブにおいて高圧で積層した後、HUD用ガラスを取得する。
<実施例6>
【0093】
HUD用ガラスの作製方法は、次の内容を含む。
【0094】
第1のガラス板を提供し、第1のガラス板をコーティング生産ラインに移送し、剥離可能な接着剤で非表示領域をカバーし、表示領域に厚さ30nmのZnSnOxフィルム、厚さ30nmのTiO2フィルムを順に堆積させ、多孔質SiO2ゾルを用いて、ディップコート法(dip-coating method)により、表示領域に多孔質SiO2層を作製し(多孔質SiO2層が表示領域のみに形成されるように、マスキング法により第1のガラス板の仕切られていない側の表面を覆う)、剥離可能な接着剤を除去する。
【0095】
表示領域の第1ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(30nm)/TiO2(30nm)/多孔質SiO2(110nm)である。
【0096】
非表示領域は:露出されたガラス表面。
【0097】
第2のガラス板を提供し、第2のガラス板は厚さ2.1mmの無色ガラスであり、第2のガラス板に二重銀系断熱フィルムを堆積させ、二重銀系断熱フィルムの構造は、ZnSnOx(23nm)/AZO(10nm)/Ag(9.7nm)/AZO(15nm)/ZnSnOx(67nm)/AZO(10nm)/Ag(9.0nm)/AZO(10nm)/ZnSnOx(28.5nm)である。
【0098】
第1のガラス板を合わせガラスの内側ガラス板として使用し、第2のガラス板を外側ガラス板として使用し、自動車用ガラスの高温成形工程に従って外側ガラス板と内側ガラス板に対して曲げ成形を行い、厚さ0.76mmの無色PVBフィルムを用意し、このPVBフィルムと、曲げ成形された外側ガラス板および内側ガラス板とを仮積層し、第1のガラス板のナノフィルムはPVBフィルムから離れており、第2のガラス板の二重銀系断熱フィルムはPVBフィルムに近く、オートクレーブにおいて高圧で積層した後、HUD用ガラスを取得する。高温成形後の多孔質SiO2層の屈折率は1.383である。
<効果実施例>
【0099】
本出願により作製されたHUD用ガラスの性能を検証するために、本出願は効果実施例も提供する。
【0100】
1)実施例1~6のHUD用ガラスと投影ユニットを組み立ててHUDシステムを形成する。投影ユニットは、LEDバックライトを利用する薄膜トランジスタ-液晶ディスプレイ(TFT-LCD)プロジェクターであり、P偏光を生成することができる。観察者の観察できる表示画像が最も鮮明になるように、投影ユニットの位置、出射光の角度、入射方向を調整する。実施例1~6では、P偏光の入射を維持し、P偏光を入射角60°で入射させ、HUD用ガラスのP偏光反射率を測定し、HUD用ガラスの可視光反射率を測定する。測色計を用いて、実施例1~6のHUD用ガラスの表示領域及び非表示領域の色度[Lab(CIE)]をテストし、ここで、aは赤-緑の色度インデックスを示し、bは黄-青の色度インデックスを示す。実施例1~6のHUD用ガラスの性質パラメータを表1に示す。
【0101】
実施例1~6のHUD用ガラスの性質パラメータを示す表
【表1】
【0102】
表1から分かるように、本出願に係るHUD用ガラスの作製方法により、合わせガラスの表面に、比較的に高いP偏光反射率を有する表示領域と比較的に低い可視光反射率を有する非表示領域を取得することができる。それによって、表示領域の鮮明な画像を確保しつつ、非表示領域のミラー効果を弱め、視覚干渉を低減し、運転の安全性および快適性を向上させることができる。同時に、本出願に係るHUD用ガラスは、断熱などの機能を持つことも可能であり、例えば、実施例6のように、合わせガラスに二重銀系フィルムを添加することで、HUD用ガラスの断熱性能を向上させるだけではなく、また、表示領域のHUD画像の表示品質に影響を与えず、HUD用ガラスが良好なHUD機能を有することも確保できる。
【0103】
本出願の上記実施例は、HUD用ガラスの構造と構成を説明するものである。例えば、フィルム層の具体的な堆積工程およびパラメータ、HUD用ガラスの具体的な製造工程及びパラメータは記載されていない。理解できるように、上記全ての内容は当業者にとって周知のものであるため、記載されていない部分は本出願の保護範囲に影響を与えない。また、本出願の明細書の内容は、本出願の好ましい実施形態であるが、本出願の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。当業者にとって、本出願の原理から逸脱しないことを前提に、いくつかの改良および潤色を行うことができ、これらの改良および潤色も本出願の保護範囲とみなされる。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
選択可能に、第1ナノフィルムは、まず、表示領域および非表示領域に第2ナノフィルムを形成し、次に、除膜法により表示領域の第2ナノフィルムに対して除膜を行い、表示領域に第1ナノフィルムを作製することで取得されたものであり、あるいは、第2ナノフィルムは、まず、表示領域および非表示領域に第1ナノフィルムを形成し、次に、除膜法により非表示領域の第1ナノフィルムに対して除膜を行い、非表示領域に第2ナノフィルムを作製することで取得されたものである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
図1を参照すると、
図1は、本出願の1つの実施形態に係るHUD用ガラスの構造を示す概略図である。HUD用ガラスは、背向する第1表面10-1および第2表面10-2を有する合わせガラス10を含み、合わせガラス10の第2表面10-2において、ナノフィルム20が設けられている。
図2を参照すると、
図2は、本出願の1つの実施形態に係る合わせガラスの構造を示す概略図である。合わせガラス10は、外側ガラス板11と、内側ガラス板13と、外側ガラス板11と内側ガラス板13との間に設けられた中間層12と、を含む。外側ガラス板11は、第1表面11-1および第2表面11-2を有し、外側ガラス板
11の第1表面11-1は、すなわち合わせガラス
10の第1表面10-1である。内側ガラス板13は、第1表面13-1および第2表面13-2を有し、内側ガラス板
13の第1表面13-1は、すなわち合わせガラス
10の第2表面10-2である。外側ガラス板11の第2表面11-2と内側ガラス板13の第2表面13-2とは、それぞれ中間層12の2つの表面に接着固定されている。本出願のHUD用ガラスが適用される場合、内側ガラス板13の第1表面13-1は車窓の内側(自動車の内側)に位置し、すなわち合わせガラス10の第2表面10-2は車窓の内側に位置する。外側ガラス板11の第1表面11-1は車窓の外側(自動車の外側)に位置し、すなわち合わせガラス10の第1表面10-1は車窓の外側に位置する。本出願の実施形態において、ナノフィルム20は、内側ガラス板13の第1表面13-1に設けられている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
本出願のいくつかの実施形態において、非表示領域にもナノフィルムが設けられている。非表示領域の可視光反射率が表示領域の可視光反射率よりも小さいことを確保するために、非表示領域のナノフィルムと表示領域のナノフィルムとは同じではない。ナノフィルムはある程度の反射色を有するので、非表示領域のナノフィルムは、ガラス全体の外観の色の整合性を破壊し、HUD用ガラスの視覚効果にも影響を与える可能性がある。表示領域と非表示領域との間の色差をなくすために、本出願のいくつかの実施形態において、表示領域の色のa値と非表示領域の色のa値との差の絶対値は2以下である。例えば、表示領域の色のa値が-3であるとき、非表示領域の色のa値は(-5)~(-1)である。本出願のいくつかの実施形態において、表示領域の色のb値と非表示領域の色のb値との差の絶対値は2以下である。例えば、表示領域の色のb値が-8であるとき、非表示領域の色のb値は(-10)~(-6)である。表示領域の色のa値と非表示領域の色のa値との差の絶対値、及び表示領域の色のb値と非表示領域の色のb値との差の絶対値が小さいほど、表示領域と非表示領域との色差が小さくなり、HUD用ガラスの外観の整合性が良好になる。ここで、Lab値はLabカラーモデルに基づくものであり、L値、a値、およびb値は、それぞれLab値(またはLab色彩値)におけるL、a、およびbに対応し、Lは輝度チャンネルであり、aおよびbは2つの色彩チャンネルである。本出願のいくつかの実施形態において、表示領域の色のa値と非表示領域の色のa値とは2以下であり、好ましくは、表示領域の色のa値と非表示領域の色のa値とは(-8)~0である。表示領域の色のb値と非表示領域の色のb値とは2以下であり、好ましくは、表示領域の色のb値と非表示領域の色のb値とは(-12)~0である。上記範囲内のa値及びb値を有するナノフィルムは、中間色を呈するため、HUD用ガラスは比較的に良好な視覚効果を有することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
本出願の実施形態において、除膜法は、ドライエッチング法(例えば、レーザーなど)、ウェットエッチング法(例えば、エッチングペースト、酸エッチングなど)、マスキング法(例えば、剥離可能な接着剤、カバー板など)のうちの一種または多種を含む。具体的な作製工程では、フィルムの材料に応じて異なる除膜工程を使用することができる。本出願のいくつかの実施形態において、第1ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(38nm)/TiO2(52nm)/SiO2(115nm)(ZnSnOx(38nm)はガラスに近い側にある)である。この場合、HUD用ガラスはマスキング法によって作製される。具体的には、カバー板を用いて非表示領域を覆い、表示領域に第1ナノフィルムを作製し、カバー板を取り外してHUD用ガラスを取得する。本出願のいくつかの実施形態において、第2ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(18nm)/SiO2(28nm)/ZnSnOx(102nm)/SiO2(90nm)からなるフィルム系である。表示領域と非表示領域に同時に第2ナノフィルムを作製し、その後、レーザーを用いて表示領域のフィルム層を除去し、第2ナノフィルムで覆われていない表示領域を取得し、その後、カバー板を用いて非表示領域を覆い、表示領域に第1ナノフィルムを作製し、HUD用ガラスを取得する。第1ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(38nm)/TiO2(52nm)/SiO2(115nm)である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
本出願のいくつかの実施形態において、第1ナノフィルムの構造は、ZnSnOx(14.4nm)/TiO2(58.6nm)/SiO2(112.4nm)(ZnSnOx(14.4nm)はガラスに近い側にある)である。第2ナノフィルムの構造はZnSnOx(14.4nm)/SiO2(112.4nm)である。HUD用ガラスは以下のように作製されることができる。まず、合わせガラスの第2表面にZnSnOxフィルムとTiO2フィルムを堆積させ、次に、非表示領域にTiO2フィルムがないように、非表示領域のTiO2フィルムを除去し、次に、表示領域と非表示領域に同時にSiO2フィルムを堆積させ、HUD用ガラスを取得する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
本出願のいくつかの実施形態において、第1ナノフィルムの構造はZnSnOx(38nm)/TiO2(52nm)/SiO2(115nm)であり、第2ナノフィルムの構造はZnSnOx(47nm)/TiO2(52nm)/SiO2(115nm)である。HUD用ガラスは以下のように作製されることができる。まず、合わせガラスの第2表面に47nmのZnSnOxを堆積させ、レーザードライエッチング等の除膜法を用いて表示領域のZnSnOxを9nm除去し、次いでTiO2(52nm)およびSiO2(115nm)を作製し、表示領域に第1ナノフィルムを取得し、非表示領域に第2ナノフィルムを取得する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
本出願のいくつかの実施形態において、第1ナノフィルムの構造はZnSnOx(38nm)/TiO2(52nm)/SiO2(115nm)であり、第2ナノフィルムの構造はZnSnOx(38nm)/TiO2(52nm)/SiO2(110nm)である。HUD用ガラスは以下のように作製されることができる。まず、合わせガラスの第2表面に第1ナノフィルムを作製し、エッチングペーストまたはレーザーエッチング法を用いて、非表示領域から厚さ5nmのSiO2を除去し、第2ナノフィルムを取得する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
本出願のいくつかの実施形態において、不均一コーティング法を用いてHUD用ガラスを作製する。自動車のフロントガラスの面積は一般に1.2m
2よりも大きいので、スパッタリングなどの真空コーティング法を使用する場合、比較的に大きなコーティングチャンバーが必要となり、また、コーティングチャンバーに送り込まれる気体は一定の割合に従って分布されるので、気体の分布割合を変更することでフィルム層の堆積厚さを調節することができ、さらに、合わせガラスの表面に異なるフィルム層を形成することができる。本出願のいくつかの実施形態において、第1ナノフィルム
の構造は、ZnSnO
x(38nm)/TiO
2(52nm)/SiO
2(115nm)であり、第2ナノフィルム
の構造は、ZnSnO
x(38nm)/TiO
2(52nm)/SiO
2(105nm)であり、ZnSnO
x(38nm)は、合わせガラスに近い側にある。HUD用ガラスは、次のように作製されることができる。まず、合わせガラスの第2表面にZnSnO
x(38nm)およびTiO
2(52nm)を作製し、SiO
2フィルムを作製する際、正常に表示領域に気体を送り込んでZnSnO
x(38nm)/TiO
2(52nm)の表面に厚さ115nmのSiO
2フィルムを形成し、非表示領域に酸素気体の流量を増加させ、コーティング終了時に、非表示領域のSiO
2フィルムの厚さは、表示領域のSiO
2フィルムの厚さより小さく、非表示領域のSiO
2フィルムの厚さは105nmである。
図16を参照すると、
図16は、本出願のもう1つの実施形態に係るHUD用ガラスの構造を示す概略図である。第2ナノフィルム20-2は、合わせガラス10の第2表面10-2の中部に位置し、第1ナノフィルム20-1は、合わせガラス10の第2表面10-2の縁部に位置する。この構造を有するHUD用ガラスは、不均一コーティング法により作製されることができる。コーティングチャンバー内の気体が一定の割合で分布されるため、第2ナノフィルムの厚さが段階的に変化し、これはHUD用ガラスの外観の整合性を向上させることに役立つ。
【手続補正9】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)用ガラスであって、
前記HUD用ガラスは、背向する第1表面および第2表面を有する合わせガラスを含み、前記第2表面は、表示領域および非表示領域を有し、
前記表示領域において、第1ナノフィルムが設けられており、前記第1ナノフィルムは、前記第2表面から外に向かって交互に積層された、少なくとも1つの第1の高屈折率層および少なくとも1つの第1の低屈折率層を含み、前記第1の高屈折率層の屈折率は1.9~2.7であり、前記第1の低屈折率層の屈折率は1.3~1.8であり、
55°~75°で入射したP偏光に対する前記表示領域の反射率は10%以上であり、0°~10°で入射した可視光に対する前記非表示領域の反射率は、0°~10°で入射した可視光に対する前記表示領域の反射率よりも小さい、
ことを特徴とするHUD用ガラス。
【請求項2】
0°~10°で入射した可視光に対する前記表示領域の反射率と、0°~10°で入射した可視光に対する前記非表示領域の反射率との差が2%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のHUD用ガラス。
【請求項3】
0°~10°で入射した可視光に対する前記表示領域の反射率は10%~30%であり、0°~10°で入射した可視光に対する前記非表示領域の反射率は1%~15%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のHUD用ガラス。
【請求項4】
55°~75°で入射したP偏光に対する前記非表示領域の反射率は、55°~75°で入射したP偏光に対する前記表示領域の反射率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項
1に記載のHUD用ガラス。
【請求項5】
前記第2表面は、前記表示領域と前記非表示領域との間に位置する過渡領域をさらに有し、0°~10°で入射した可視光に対する前記過渡領域の反射率は、0°~10°で入射した可視光に対する前記非表示領域の反射率よりも大きく、かつ、0°~10°で入射した可視光に対する前記表示領域の反射率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項
1に記載のHUD用ガラス。
【請求項6】
Lab色空間に基づいて、前記表示領域の色のa値と前記非表示領域の色のa値とはいずれも(-8)~0であり、前記表示領域の色のb値と前記非表示領域の色のb値とはいずれも(-12)~0である、
ことを特徴とする請求項
1に記載のHUD用ガラス。
【請求項7】
前記表示領域の色のa値と前記非表示領域の色のa値との差の絶対値は2以下であり、前記表示領域の色のb値と前記非表示領域の色のb値との差の絶対値は2以下である、
ことを特徴とする請求項
1に記載のHUD用ガラス。
【請求項8】
前記HUD用ガラスは、さらに、防指紋フィルム、断熱フィルム、電気加熱フィルム、紫外線カットフィルム、防曇フィルムのうちの一種または多種を含む、
ことを特徴とする請求項
1に記載のHUD用ガラス。
【請求項9】
前記非表示領域において、第2ナノフィルムが設けられており、前記第2ナノフィルムは、前記第2表面から外に向かって交互に設けられた、少なくとも1つの第2の高屈折率層および少なくとも1つの第2の低屈折率層を含み、前記第2の高屈折率層の屈折率は1.9~2.7であり、前記第2の低屈折率層の屈折率は1.3~1.8であり、前記第2ナノフィルムは、前記第1ナノフィルムと異なる、
ことを特徴とする請求項
1に記載のHUD用ガラス。
【請求項10】
前記第2ナノフィルムと前記第1ナノフィルムとは、各層の材料、各層の配列、各層の厚さのうち、少なくとも1つが異なる、
ことを特徴とする請求項
9に記載のHUD用ガラス。
【請求項11】
前記第2ナノフィルムと前記第1ナノフィルムとは、各層の材料及び各層の配列が同じであり、各層の厚さのうち、少なくとも一層の厚さが異なる、
ことを特徴とする請求項
9に記載のHUD用ガラス。
【請求項12】
前記第2ナノフィルムの厚さは、前記第1ナノフィルムの厚さよりも小さい、
ことを特徴とする請求項9に記載のHUD用ガラス。
【請求項13】
前記第2の高屈折率層の厚さは、前記第1の高屈折率層の厚さよりも小さく、および/または、
前記第2の低屈折率層の厚さは、前記第1の低屈折率層の厚さよりも小さい、
ことを特徴とする請求項9に記載のHUD用ガラス。
【請求項14】
前記第1の低屈折率層は、少なくとも2つの第1の低屈折率サブ層を含み、前記第2の低屈折率層は、少なくとも2つの第2の低屈折率サブ層を含み、前記第1の低屈折率層のうち前記合わせガラスから最も遠い第1の低屈折率サブ層の厚さは、前記第2の低屈折率層のうち前記合わせガラスから最も遠い第2の低屈折率サブ層の厚さよりも大きく、または、
前記第1の高屈折率層は、少なくとも2つの第1の高屈折率サブ層を含み、前記第2の高屈折率層は、少なくとも2つの第2の高屈折率サブ層を含み、前記第1の高屈折率層のうち前記合わせガラスに最も近い第1の高屈折率サブ層の厚さは、前記第2の高屈折率層のうち前記合わせガラスに最も近い第2の高屈折率サブ層の厚さよりも大きい、
ことを特徴とする請求項9に記載のHUD用ガラス。
【請求項15】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムであって、
前記HUDシステムは、P偏光を生成するための投影ユニットと、請求項1~
14のいずれか一項に記載のHUD用ガラスとを含み、前記P偏光は前記表示領域に入射する、
ことを特徴とするHUDシステム。
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正11】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正12】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正13】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正14】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】